大学振興部会(第6回) 議事録

1.日時

令和4年11月16日(水曜日)16時~18時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 「出口の質保証」に関する議論 ・大学関係者等からのヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)吉岡知哉副部会長
(委員)越智光夫,日比谷潤子,村田治の各委員
(臨時委員)大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,曄道佳明,古沢由紀子,益戸正樹の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長,西條大臣官房審議官(高等教育・科学技術政策連携担当),伊藤文部科学戦略官,山下高等教育企画課長,柿澤高等教育政策室長,髙橋高等教育企画課課長補佐ほか

5.議事録

 
【永田部会長】   第6回目の大学振興部会を始めます。
 相変わらずハイブリッドの方式でYouTubeにてライブ配信をしております。音声など,そのほか準備は整っていることだと思います。それでは早速ですが,事務局からまず御説明をお願いいたします。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  事務局でございます。本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,部会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言くださるようお願いいたします。また,御発言の後は再度挙手のボタンを押して表示を消していただきますようお願いします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は次第のとおりでございます。事前にメールでお送りしているとおりでございます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 今回,「出口の質保証」についての3回目の話合いということになります。
 前回,覚えていらっしゃると思いますが,ゼミ教育について,特に人社系のゼミ教育についてのヒアリングをして,意見交換をしました。
 今回は,日本技術者教育認定機構(JABEE)の工学分野における質保証についてヒアリングをさせていただきます。また,学修成果の可視化という観点からは,大森委員から御発表いただく予定にしております。その後に意見交換をさせていただくということになります。
 それでは早速ですが,最初のヒアリングをさせていただきます。専門教育プログラムの認定など行っていらっしゃいますJABEEから,国際的な質保証の確保を目指していらっしゃるということで,その詳細をお聞きしたいと思います。JABEEからは園部審査部長が御出席と聞いております。それでは,園部様,よろしくお願いいたします。
 
【園部審査部長】  どうもありがとうございます。画面を共有させていただきます。
 
【永田部会長】  お姿も拝見したいのですがよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 
【園部審査部長】  よろしくお願いいたします。本日はこの機会をいただきましてありがとうございました。日本技術者教育認定機構の園部と申します。本日は専務理事の三田も同席させていただいております。それではよろしくお願いいたします。
 では早速,内容に移らせていただきます。
 まず本日の目次といたしましては,技術者教育認定の歴史とJABEEの沿革ということで,これを簡単に述べさせていただきます。その後,今日のメインのテーマになりますJABEEの認定・審査と質保証という形での御説明をさせていただきます。それと関連しまして,私どもの技術者教育認定というのは非常に国際的な枠組みの中で活動しておりますので,その活動についても3番目に述べさせていただくという形で今日は御説明させていただければと存じます。それではよろしくお願いいたします。
 まず,技術者教育認定の歴史とJABEEの沿革ということで,技術者教育認定の歴史というのは,欧米での教育認定の始まりというのが約90年前頃から生じておりまして,これのベースは,ここにございますように,職能団体です,技術者協会等がその職業に就く人材の質の確保と,それによる技術者の社会的地位の向上を目的として開始されております。また,教育の独立性を確保するという意味で,非政府組織主体で行われているということになっております。
 こういう中で,米国の認定団体でありますABET,Accreditation Board for Engineering and Technologyが1932年から技術者教育プログラムの認定を実施し始めたということになります。
 それで,各国の認定団体が加盟する国際協定が設立され,加盟団体,また,国の間で認定プログラム修了生の実質的同等性を相互承認するという形で,私どもJABEEとしましては,エンジニアリング系としてワシントン協定,これ自体は1989年から始まっておりますし,ソウル協定,これは情報系ということで2008年から,キャンベラ協定と言われる建築設計・計画系が2008年からという形で,UNESCO-UIA建築教育憲章にのっとった教育プログラムを認定という形で行われております。
 後でも御説明しますが,近年は特にアジア,中南米諸国がこういう協定の中に積極的に加盟しているという状況でございます。
 それを踏まえまして,JABEEの沿革といたしましては,ここに赤で示しましたような,設立からそれぞれの国際協定への加盟というところを主だったところとして赤で表示してございます。これについては見ていただければと存じます。
 それでは次のJABEEの認定・審査と質保証になりますけれども,まず私どものビジョンにつきましては,国際的に通用する技術者の育成を通じて社会と産業の発展に寄与するということになります。これについて,近年も含めまして,高等教育が拡大(多様化)していること,つまり,入学する学生,卒業生の進路,高等教育の機能,内容の多様化と,高等教育のグローバル化ということをベースにしております。
 そして,ミッションといたしましては,高等教育・専門職大学院の国際的な質保証を確保するということで,私どもとしましては,学界と産業界との連携によって,統一的基準に基づいて,大学等の高等教育機関が行う技術者を育成する専門教育プログラムの認定を行い,かつ,国際的な実質的同等性を確保しているということになります。
 それで,技術者教育認定の対象ということになりますと,ここに赤で示しておりますように,高等教育機関,大学,大学院,高専になります。高専の場合は大学の学部相当ということで本科4-5年と専攻科,そして大学等における工学系,農学系及び理学系の教育課程が対象になっております。
 この教育課程の認定の単位としましては,プログラムという形で称しております。例えばこの中には何々学科全体で受けていらっしゃる場合もありますし,その中の何々コースと言われているような場合もあります。それぞれがそのプログラムとしての単位になります。もう一つ特徴としましては,分野別の認定を行っているということになります。
 JABEEの認定種別と認定分野という形になりますと,ここにお示ししておりますようなエンジニアリング系学士課程,エンジニアリング系修士課程,それと情報専門系学士課程,建築系学士修士課程というふうに主に分けられます。
 ここにそれぞれ分野が書いてございますが,後でもまた申し上げますけれども,16分野にわたって分類されているという形になります。ここに記載しておりますこれらの課程に対応してJABEEが認定したプログラムの修了生については,全て技術士第一次試験が免除されるということになっております。
 私どもの正会員のところは,JABEEの認定に関わる各分野の学協会ということで,ここに記載してございます61団体が,4月現在,参加していただいております。
 それと,企業からの賛助会員という形では,ここに示しております25企業・団体の方々に御支援いただいているという形になっております。
 これを踏まえまして,JABEE認定の手順と各関係機関の関連図をここに示してございますけれども,先ほど御紹介しました専門学協会様が審査チーム派遣機関という形になります。そして各教育機関がございまして,まず教育機関から認定の申請,マル1のところが出されて,それを私どもが受けて,審査実施の委託を学協会様にするという形になっております。これを受けて審査が行われて,それに対して自己点検書を教育機関から審査の側に提出されるという形になります。その後,審査結果の報告があって,JABEEの中で審議を行って,その結果を認定として各教育機関にお伝えするという形になっておりまして,それぞれ産業界の方,企業の方も審査員として参画いただいておりますし,先ほどありました国際機関としての対応も取っているという形になります。それと,国としては技術士関係ということで支援をいただいて,御協力をいただいているという形になります。
 認証評価とJABEE認定の比較ということで,機関別評価ですとか,それも含めまして,認証評価の内容を左の欄に書いてございまして,私どもの認定の特徴のところは,ここに赤で記載しておりますように,法的義務はなく,プログラムが自主的に申請をしてこの認定を行っているというところです。あと,国際協定の取り決めに従い,国際的同等性が認められるということ。それと,修了生は国際協定に基づく同等性の承認及び技術士第一次試験免除資格が与えられるということになっております。
 技術者の知識・能力を示す方法の比較ということで,いろいろ示す方法はあるわけですけれども,その中で私どもJABEEがやっているのは,教育機関が,修了生全員が具備している知識・能力を示すということに対して教育の保証を行っているということです。これをベースに,国際協定により,加盟国間で相互に卒業生(認定プログラム修了生)の持つ知識・能力の実質的同等性を承認しているという形になります。
 JABEEの認定基準とプログラムに求める質保証ということで,ここにはいろいろ書いてございますけれども,黄色の枠で囲まれたところの,下の段にございますように,JABEEが求める教育(プログラム)の質保証というものは,教育プログラムに関与する全ての関係者(学生を含む)が,適切に設定された学習・教育到達目標とその達成に関して何をなすべきかを認識し,確実に実施し,その学習・教育到達目標を達成した学生のみがプログラムの修了生になるということです。学習・教育到達目標とその達成度のレベル及び教育方法を継続的に改善していることというようなことが求められるということになります。
 基準の概要につきまして,基準1から4までございまして,それぞれがPlan,Do,Check,Actという形になっておりまして,学習・教育到達目標の設定と公開,教育手段,学習・教育到達目標の達成,基準4で教育改善,継続的な教育改善というこのサイクルをスパイラルアップして,教育の質保証をしていくという形になっております。
 それで,JABEEの認定基準は,ここにありますように,基準1から2,3,4となっておりまして,これと別に個別の分野別要件はございますけども,基本的にはこの基準4までということで,右側にポイントとして書いてございますが,基準1に対しては,育成しようとする技術者像とそのために学生が修了時に身につけておくべき知識・能力を学習・教育到達目標として定め,公開・周知していること。基準2に対しては,学習・教育到達目標を達成させるためのカリキュラム,評価基準,体制・環境・制度を整え,教育を実施していることという形になります。基準3につきましては,目標をプログラム修了生としてアウトカムズとして評価を行って,その適正度を点検しているということで,基準4は点検システムが存在して,継続的な改善が行われているかという形の評価になっております。
 このの中の基準の1.2というところに知識・能力観点というのがございまして,これはプログラムの学習・教育到達目標に含めるべき事項ということで,これはGraduate Attributesというワシントンアコードの中にある項目に該当するのですけれども,それぞれ規定されたものをここの(a)から(i)までの各項目に落とし込んで,それを基準として評価しているという形になります。
 具体的には,自己点検書に基準1.2の知識・能力観点と授業科目の対応として記入していただくわけですけれども,例えばここにあります表1のように,知識・能力観点(a)から(i)に具体的に学習・教育到達目標(A)…がどのように対応しているか,また,その中で主体的に達成度の中に含まれているところと付随的に含んでいることを区別し,さらに表4にて教育科目A…等が具体的に学習・教育到達目標(A)…にどのように該当しているかということをこういう表に提示して出していただくという形になっております。
 到達度点検はここに書いてありますので,後で見ていただければと存じます。
 知識・能力観点から見た修了生の到達度点検の判定の目安ということで,私どもはS,W,Dの3項目で判定していまして,S(満足)は,そこの基準を満たしている,W(弱点)については,認定基準への適合が今後6年以内に危うくなるおそれが大きい場合,D(欠陥)の場合は,現時点で既に重大な影響があり,基準を満足していないという判定になります。
 審査結果の報告書はこういう書き方になっておりまして,左側に点検項目が書いてございまして,右側,これは中間審査ということで,前回の審査のときに弱点があったところに対して,前の結果はどうで,今回はこういうふうに改善されている,またはこういうふうになったという形になっております。
 こういうことで具体的になっておりますけれども,技術者教育認定の国際的枠組みということで考えますと,国際エンジニアリング連合(IEA)の中に,技術者教育認定に関する国際協定,ここのところが私どもJABEEが関与しているところになりますが、それと専門職資格認定に関する国際協定については技術士会様がIPEAとかAPECを通じてカバーしているという形になっております。
 これは,GA&PC,Graduate Attributes(修了生のとしての知識・能力),とProfessional Competencies(専門職としてのコンピテンシー)ということが生涯教育として言われているわけですけども,高等教育として私どもがやっていますJABEEの認定プログラムから実際に技術士になった後,生涯教育として質保証をやっていくという形で,この1本の線で表示してございます。
 実際のところはいろいろな協定の中でそれぞれの質保証に対応した枠組みがあるわけですけども,ここにありますワシントン協定ですとかソウル協定,キャンベラ協定の中で,領域とそれぞれの認定種別,加盟団体というのが記載されてございまして,特にワシントン協定は21団体が参加していて,国際的にも質の保証がお互いのモビリティといいますか,修了生同士のモビリティが国際的同等性を基に図られているという形になります。
 ワシントン協定の加盟団体の推移はここに記載したようになっております。世界で見ますと,協定加盟国と地域としては,ここに書いてございますそれぞれのところで参加していて,さらに加盟団体も今増えてきているということになります。
 世界を見てみますと,ワシントン協定加盟団体を見ましても,例えばアメリカの場合はMITですとかUCバークレーですとかUCLAですとか含めて有名校が積極的に認定を取得していて,その国の認定システムを主導している場合が多いということがわかります。
 ところが,私どもJABEEの認定プログラムの推移を見てみますと,2009年あたりをピークとして,プログラムが少しずつ減ってきている状態です。
 分野別の認定プログラム数ではここにありますそれぞれの累計と比率になっています。
 ワシントン協定加盟団体の認定プログラム数の推移を国ごとに見ていきますと,ここに書いてございますように,ブルーの矢印は増えているところ,赤の矢印が下がっているとところで,日本と韓国は減少しているんですが,他の国はどんどん数が増えているという形になっております。
 その中で,ワシントン協定での国際的質保証の同等性相互承認事例としてどういうことがあるかということで申し上げますと,まず,マレーシアの国費留学要件としまして,ワシントン協定の認定を受けているプログラム以外の留学に対しては国費留学生の扱いとならないということで,このプログラムに入っていないと国費として留学できないということが例としてあります。こういうことも含めて,アジアからの留学生を日本に呼び戻すという意味でも,この協定に入っているということは1つの利点になります。
 あともう一つは,先ほどありました技術士第一次試験免除の取扱いですけれども,これにつきましても,2022年3月,今年の3月に新たに,ワシントン協定に入っている修了生もJABEEの認定プログラム修了生と同等に試験の免除が適用されるということになって,これも1つのメリットとなっております。
 技術士試験の合格者ということで,それに関連して見ていきますと,JABEE修了生の合格率は非常に向上しており,また,合格者自体の平均年齢でも,全体平均よりも10歳若い年齢で合格しています。2021年度の全合格者に対するJABEE認定プログラム修了生の割合は16.5%で,かつ,最年少の合格者はJABEEが半分以上を占めています。このように,JABEE認定プログラムの修了生が増えているということも含めて,この技術士の合格者に対するJABEEの寄与が高まっているということになります。
 その他にも,JICAのプロジェクトでインドネシアの支援を行っているということもございまして,インドネシアでJABEEと同じようなプログラム認定機構を立ち上げるということに対して,JICA様と一緒に支援を行って,今,そのIABEEというところも暫定加盟から正式加盟に移ろうとしているという形になっております。
 最後にもう一つ関連して,現在,高専の国際化ということが言われておりまして,それの支援という形で,KISと言われるKIS,KOSEN International Standard,国立高専教育国際標準をもって高専を国際化しようという動きがございまして,そのシステムを私どもJABEEのほうで認証するという活動も今現在始まっているところでございます。そういう意味で,KISの認証をしつつ,従来のJABEEの認定・審査では,その結果を踏まえて,認定・審査そのものの負荷軽減して,受審校の審査にかかる負担を軽減しようということで,今,活動が続いているところでございます。
 以上でございます。少し長くなりまして申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
 
【永田部会長】  園部様,ありがとうございました。
 確認したいこと,あるいは御質問等あればお伺いいたしますが,いかがでしょうか。
 村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございます。人文社会系の私にとっては非常に新鮮なお話で,ありがとうございました。
 1つだけ御質問させていただきたいと思います。30ページのプログラム数の推移で,2009年ぐらいをピークに減ってきているというお話だったんですが,31ページの分野別のところで,特に6番と7番,化学,情報のところが減ってきているのですが,減ってきている要因というのは何か分かるんでしょうか。
 
【園部審査部長】  アンケート等を取って,その理由を述べていただいていることもあるのですけれども,1つは,JABEEの認定審査が2巡,3巡目の受審サイクルを終え,もう自分たちのところで質保証はできるのでという理由や受審における教員の負担が大きく,対応が難しいので辞退したいということが主な理由としてはございます。
 
【村田委員】  ありがとうございました。
 
【永田部会長】  曄道委員,どうぞ。
 
【曄道委員】  どうもありがとうございます。御説明ありがとうございました。私から1点お伺いいたします。お示しいただいた認定の種別・分野というページに一覧で挙げていただいておりますけれども,今,盛んに,文理まで広げるとちょっと大きいかもしれませんが,複合型・融合型の教育をといったような声も聞かれる中で,ここに書いていただいている関連の分野というものがどの程度の自由度を持っているのか,あるいは,ここにある認定分野の,この横断というものがどの程度許されるのか,その辺についてお伺いできますでしょうか。
 
【園部審査部長】  まず,私どものところに,審査を受ける年度の事前に申請書を出していただくのですけれども,そのときに,受審プログラムからこの分野で受審したいという申請を指定いただく必要がまずあります。
 それで最近は,例えば高専さんの場合は,先ほどおっしゃいましたように,特に専攻科は非常に複合・融合が進んできていますので,そういう意味での認定分野として,工学(複合融合)という分野がございまして,ここで審査していただくという形が最近は増えております。
 以上でございます。
 
【曄道委員】  ありがとうございました。
 
【永田部会長】  越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございます。私,2点あるんですけれども,33ページに,マレーシアの場合ということで,国費留学生の扱いとならないというところが気になったんですが,だんだん認定を受けている機関が下がってくるということは,アジアからの留学生が現実的に全体としては減ってきているんでしょうか。
 
【園部審査部長】  トータル的な数は,最近のデータを見ますと,やはり下がってきているようで,これはコロナの影響もあるかと思いますが,そういう傾向が見えてはいるので,やはりこの点は私どもももう少し受審校様に周知しないといけない点だと思っています。こういうメリットもあるんですよというところを受審校様も御理解いただければ,もっと自分のところの認定を継続したいとか,もっとプログラム数を増やしたいということも言われるようになるのではないかと思っております。
 
【越智委員】  それともう1点は,海外に出ていった場合に,JABEE認定を持っているメリット,国内ではあるんだろうというふうには分かるんですけど,海外でJABEE認定を持っているというメリットはあるのでしょうか。
 
【園部審査部長】  そうですね,技術士という資格を持った場合は,国際的にその意味での同等性を,技術者のモビリティという形で相互に行き来できるようになってきつつあるという状況になりますが,JABEEの認定という意味ではワシントン協定等のもとでの同等性ということになります。
 
【三田専務理事】  JABEEの事務局の三田でございますが,今の先生の御質問ですけども,海外における日本でいう技術士,プロフェッショナルエンジニアの資格を取ろうとしたときに,やはり学歴要件がありまして,その学歴要件の中には,ワシントン協定の認定プログラム修了といったようなものが条件になっている国があるものですから,ワシントン協定の認定プログラムということで,JABEEの認定プログラムを修了していれば,海外に行ったときに,そこの国でプロフェッショナルエンジニアの資格を取ろうということになったときには,要は卒業要件となっているところが対応できるということになっております。
 
【越智委員】  ありがとうございました。
 
【永田部会長】  今の技術士を英語に訳すと,何に相当しますか。
 
【三田専務理事】  プロフェッショナルエンジニアです。
 
【永田部会長】  分かりました。
 川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】 ありがとうございます。1つは意見,1つは御質問です。
 意見の方は,30ページのプログラム数の推移を見ていただくと,十二,三年前に,ピークを迎えて,その後,漸減しているんですが,その頃は,今日の審議のメモのところに出ているように,高等教育のグローバル化が叫ばれ,これからは人材が国境を越えて移動する時代になる。特に専門職と言われる人たちは,国際的な認定を受けた資格を持っていないと,今御発言ありましたけど,海外で同様の仕事ができないというようになるということで,JABEEというのが1つの先駆的な例として紹介されて、受審大学・学部が増えていたというような記憶があります。
 そうなりますと,資格に結びつかないようなプログラム,例えば人文社会系などは、必ずしも特定の職業資格に結びつくような教育プログラムではありませんので,JABEEのような仕組みは難しい。分野別質保証としてどのようなやり方があるのか、私も考えてみたいなというのが意見です。
 2点目の質問は,非常に簡単で,今,受審大学数のグラフに関して,もう少し詳しい内訳はわかりますか。例えば単科大学、総合大学、高専ごとの数字はありますか。今すぐに出ないかもしれませんけれども,お聞きしたいと思います。
 と言いますのも,私,前任校で共通教育に携わっていたときに,突然,ある学部のある学科から,今度JABEEを受けるので,共通教育のところのシラバスを完備するということと,あと,レポートとか答案用紙を全部コピーして残しておいてくれと依頼されたことがありました。しかし、総合大学ではある1つのプログラムの評価のためだけに共通教育,あるいは語学教育が全てそれに対応するというのは難しいと感じていました。先ほど受審大学が少しずつ減ってきているのは、対応が大変だからというお話もありましたけれども,背景には私の経験したことと同じような事情があるのではと思って,内訳がもしお分かりであればお聞きしたいということで質問させていただきました。
 
【園部審査部長】  まず第1点目の比率のところですが,これはこちらの方でデータを調べてからご回答したいと思います。ちょっとお時間をいただくことになるかと思いますけれども。
 2番目は,負荷の点になりますか,今御質問のところは。
 
【川嶋委員】  はい。大規模な大学であればあるほど作業が大変かなと。経験があるものですから。
 
【園部審査部長】  そうですね,審査のときにかかる負荷につきましては,数年前と比べますと,このコロナ禍にあって非常に軽減されております。まず,2019年に審査基準が変わって統合化されたということもございまして,その内容がかなりコンパクトになってきているということが一つございます。
 それともう一つは,このコロナ禍で,ウェブ審査を主体として行っておりますので,そういう意味で,ウェブ審査に対応した内容について,なるべく最低限のところの,例えば審査を行うときに見るテストの内容の状況ですとか内容ですとかについても,例えばボーダーライン近くの学生さんの資料を見せてくださいとか,そういう,ある一定の範囲で審査をやっていただくことにより,なるべく受審校さんと,審査員の負荷が少なくなるような形で,かつ,適切に評価ができるという形での審査を行っていただくように,いろいろ研修会等でも私どもお願いしているところでございます。
 
【川嶋委員】  ありがとうございます。
 
【永田部会長】  そのほか,いかがでしょうか。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】 私も人文社会科学系の人間なので,大変興味深く拝聴いたしました。JABEEのお名前,以前から聞いていたんですけれど,そのことも含めてお伺いしたいんですが,この仕組み自体が,最初の歴史のところにあるように,いかにもヨーロッパの中世的な,中世的なと言っちゃいけない,中世からの同業者組合の仕組みを現代の中に生かしてきているという気がいたします。同時に,例えば,これは枠組みの問題でもあると思うんですけれども,伝統的な枠組みから,ここのところで非常に現代的に,今までの枠組みを完全に超えていくような工学分野も恐らくあると思うんですけれども,特に情報系等でそういうことが起こってきた場合の,今までの枠組みの中では捉えられない,非常に先端的な技術が出てきたとか,そういうようなものの評価をどういうふうに柔軟性をもって対応されているのかということを伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。
 
【園部審査部長】  そうですね,基本は,御提示しておりますような枠組み,それと各分野というのがベースにございまして,もしもそれを外れるような内容ができた場合は,私どもの委員会が,例えば認定事業委員会ですとかそういうところがございまして,その中で審議いただいて,どういう形で運用するかということで今後の対応を行っていくという形になるかと思います。
 また、IEAとしても先端技術分野の出現や技術者に求められる役割が変化していることに対応すべく,GA&PCの改訂を行っています。
 
【吉岡委員】  ありがとうございます。
 
【永田部会長】  それでは,ほか,よろしいですか。
 一旦,ここまでとさせていただきますが,JABEEさんは残られるのでしょうか。
 
【園部審査部長】  そのまま,よろしければこちらのほうに。
 
【永田部会長】  分かりました。ありがとうございます。また後ほど質問が出るかもしれません。御発表ありがとうございます。大変有益な内容だったと思います。
 続きまして,共愛学園前橋国際大学の大森委員から御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
 
【大森委員】  お世話になります。委員の大森です。よろしくお願いします。
 学修成果の可視化ということについてというお話をいただきまして,先生方,何度かお聞きいただいているような内容もあるかもしれませんけど,うちも少しずつは,一歩一歩は進んでいるので,少しお話しさせていただきたいと思います。画面を共有しながら,本学の取組ということを共有させていただいて,その上で,議論の土台にしていただければということでございます。よろしくお願いします。
 学修成果/教育成果の可視化の実際,うちではどういうことをやっていて,何が課題になっているのか,まだ全然完成し切っていないのですけれども,そんなことをお話しします。
 「はじめに」があって,本学のベースとなる取組のお話をして,今,どこに向かおうとしているか。また,この教学マネジメントを展開するための体制がどんなふうになっていて,それから学修成果をキャリアにつなげていくという,その出口保証から出口接続みたいなイメージを持ちながらやっているんですけれども,そんなようなこと。でも課題がいっぱいあるよというお話で締めたいと思います。よろしくお願いします。
 大学については,後ろに簡単な紹介を載せてありますので,御覧ください。
 初めに,「学修成果/教育成果の可視化とは」というのは,これは私が言うことではなくてなんですが,御承知のように,教学マネジメント指針に定義が出ていて,やっぱり教学マネジメントの本丸として,この学修成果の可視化があるわけですね。それは,そこに何て書かれているかというと,一人一人の学生が自らの学びの成果,これを学修成果,として身につけた資質・能力を自覚できるようにすると。それが重要で,その学生たちは,エビデンスとともにそれを自ら説明できるように。大学は一方で,同方針,ディプロマ・ポリシーに定める資質・能力を備えた学生を育成できていること,これを教育成果と呼ぶと。も,学修成果と同様に説明できることが必要だと。
 つまり,学修成果の可視化の主体は学生であり,教育成果の可視化の主体は大学であると。ここがすごく明快に示されたのが教学マネジメント指針であったし,すごく分かりやすいというと同時に,実はその難しさというところもここに起因しているというところがあるかもしれません。
 では,本学でどういうことをしているかですが,エビデンスベースの自己評価,学生による自己評価による学修成果の可視化,それに伴って,学生が自律的な学修者に育っていくということを目論んでいます。
 本学では,KYOAI CAREER GATEと名づけたeポートフォリオを運用しており,学生は入学から卒業するまでの間,ずっと授業の振り返りであるとか,それぞれが取り組んでいるいろいろなチャレンジングな活動であるとか,これをeポートフォリオに蓄積していきます。そして,その蓄積されたものをエビデンスに本学の学修成果指標「共愛12の力」が毎年度どこまで伸びたかを自己評価していきます。さらに,ここにためたエビデンスを外部に発信するショーケースを持っていて,私の学びを知りたかったらここを見てくださいということで,外部に自らの言葉で公表していく,そんな取組をしてきました。
 もう少し具体的に見ると,「共愛12の力」というのが肝なわけですけれども,この12の力は,学修成果指標,この力がどこまで身に付いたかで学修成果を測っていきましょうというものなんですけれども,これは,本学の建学の理念や教育の目的,そしてもちろんDP,さらに地域の産業界のお声を反映させて,教職員みんなで議論しながらつくった12の力ということになります。
 この12の力は当然シラバスともひもづいていますし,学生たちは,活動を記録するときは,どの12の力と関係した活動かというのを自分でフラグを立てていく,そんなようなことにもなっています。
 ここにいろいろな授業から学内活動,学外活動,とにかく学生たちの成長というのは,授業だけではなくて,4年間の総体としてその資質・能力を身につけていくということになりますので,そのエビデンスを蓄積した上で,学生は毎年度自己評価をします。
 自己評価をした上で,その評価を基に先生とのリフレクション面談をして,その評価を精緻化させていくと。学生,評価者としては最初はやっぱり未熟ですので,このリフレクションをしながらそれをだんだんと高めていって,また,ショーケースとして表にもオープンにしていくと。
 このことを通して,エビデンスをベースにした自己評価をすることによって,学修成果を明らかにし,かつ,このプロセス全体を通して,学生自身が自分で学んだことを自分で評価して,自分の言葉で表現していける,そういう自律的な学修者に,この予測困難な時代に生きる彼らには育っていってほしいと。そんなふうに設計されています。
 学生たちは,例えば主体性という12の力の項目があったときに,これを自分でチェックしていったり,あと,授業は先生たちがひもづけをしています。そうすると,それが自動的にシステムの中に反映されていますので,学生が自分で自己評価をするときに,「主体性」をぽちっとやると,関係している授業とか自分が書き込んだ取組とかがばーっと一覧で出てくるんですね。それを,1年間振り返りながら,もう1回読み返しながら,なぜ自分はここまで行けたのかというのを,もちろんコモンルーブリックのどこまで行ったかというのを自分で判断して評価をし,さらにそれを作文にしていく。これはかなり短くはしょって事例として載っけていますけれども,ここがレベル幾つまで行きました,なぜならばこういう研修に参加してこんなことをやったからです,ここはここまで行きました,なぜならばというのを自分の言葉で表現して書き込んでいくという,小学校でいえば,1年間を通しての最後の振り返りの作文を書こうねということなんだと思いますけれども,そういうことをします。
 さらに,これがショーケースのものですけれども,URLを知っている人ならばこれを見られるということで,こんな賞状を取りました,そこまで行くのに結構大変でしたみたいなことが書いてあって,それを例えば履歴書にここを見てくださいって,何をオープンにするかは自分で選べますので,これとこれを見せたいなと思って,そのURLを見るとそれが見られるようになっているというような形を取っています。
 ここまでが本学が基本として展開してきた学修成果の可視化,学生の自らの評価,それを先生たちがリフレクション面談でサポートしながら学修成果を可視化して,自分にはこんな力がついたと自分で言えるようにしていく,そのことをやってきたというベーシックな部分です。
 これからはというか,これまでもなんですけれども,この学修成果の可視化の信頼性を高めていく,それから教育成果をどういうふうに大学として可視化していくかという模索も並行して続けてきました。
 ステップでいうと,ステップ1,2,3ということで,今,2の最終段階に来ているんですけれども,まだできていないこともあって,あせりながらです。
 今お話ししたのは,このステップ1のところで2015年ぐらいからやり始めたものが,今,順調に動いているなというところだと思います。
 ステップ2で,今年度中ぐらいまでには,とは言え,学修成果,12の力の,学生のコモンルーブリックによる1つの軸での評価だけじゃなくて,やっぱり多元的な可視化をしていく,多元的可視化の構造化みたいなものができないかどうかということ。それから,リフレクション面談をやっているんですけれども,それの効果検証みたいなこともやらなきゃならないし,それから,まだ議論が定まっていないのが,卒業のときに,じゃあ,この12の力がどこまで行ったら卒業していいよということにするのかしないのか,参考指標なのか卒業要件なのかみたいなことですね,そういうことの議論を今やっているところです。
 あと,大きなアクションとしては,来年から新しいカリキュラム,DPを達成するために設計し直したカリキュラムが動くので,来年からは,ここがうまくいけば,新たな第3ステップ,最後のフェーズに入っていくかなと考えています。
 それにしても,2015年から始めて,本当に10年がかりですごい時間がかかっていて,本当にお恥ずかしいというか,うちは小さい大学だし,いわゆる高等教育の専門家は誰もいないので,何ていうか,見よう見まねというか,勉強しながらやっているので,なかなか時間がかかってしまうんですけれども,そのぐらいの時間をかけてやってきました。
 多元的可視化の構造化というのは,教学マネジメント指針では,こういうDPの項目を表すにはこれとこれとこれを組み合わせるといいよねと。例えば卒論,前回勉強させていただいたようなこともあるだろうし,というようなことを各大学がちゃんと,どういうものを合わせてそれを明らかにするのかを考えていきましょうねとなっているわけですね。
 今,うちは学生の自己評価だけでやっているので,それだけでは十分じゃなくて,やっぱりいろいろなものを合わせて,多面的にその力を評価できるようにしてあげるといいよねという,そんなことを考えているわけです。
 教育成果のほうでは,大学全体レベルではこんなことの情報を集めてストーリーとしてまとめていくといいよねとか,学位プログラムレベルではこういう情報で評価できるんじゃないかとか,授業レベルではこういうことで評価できるんじゃないかなんていう議論を今していて,これは分かりやすいほうなんですね。教育成果として,大学としてというところですけれども,そんなことも考えています。
 新しいカリキュラムとしては,これが今動いているカリキュラムなんですけれども,例えば本学のグローカルなというDPを達成するのに,実は副専攻でやっていたみたいなものを,ちゃんとみんながDPを達成するためには,ちゃんと主専攻に入ってこないと駄目だよねというような議論の下で,来年から新しいカリキュラム,そしてDPに向かっていくとおのずとカリキュラムがスリム化されますので,恐らくこのぐらいになるんじゃないか,まだ最終確定に至っていませんけれども,そういうようなカリキュラム改革が来年から,新しいカリキュラムが動きます。
 これは参考までに,短大も,短大は資格系なんですけど,クオーター制をやって,授業を入れないところで何とか資質・能力をやっていこうということを考えています。
 さらに,2023年から始まるカリキュラムでは,DPに向かっていくツリーを非常に明確に描けるようにしたので,これは来年以降にまた検討していくことなんですけれども,やっぱりDP達成度を評価するような,いわゆるマイルストーン科目のようなものをしっかりと各学年に置いていって,その科目の評価が12の力のこれとこれの評価と一致するねという評価の仕方を,科目の中でちゃんとそれをやれるようにして,それも教育成果として明らかにしつつ,学生たちが頑張っている学修成果の可視化,この学修成果と教育成果を何とか,これは理論上というか,まだ机の上なんですけれども,リフレクション面談をせっかくやっているんだから,そこを突き合わせることで,より信頼性の高い学修成果あるいは教育成果の可視化につなげていくことができるんじゃないかと。これまた少し時間がかかることですけれども,そんなところを考えているところです。
 こういったことを考えながら動かしてきている教学マネジメントの体制ですけれども,本学には教学マネジメント本部を設置しまして,その中にカリキュラム編成部門と教育実践部門と教学IR部門を置いて,これがクロスオーバーしていくわけですけれども,それぞれの役割を担いながら,でも,これはかなり一体的に動いていくことですので,本部がこれをマネージングしながら,カリキュラムでこういうことを目指していくんだったら評価はこうだよね,FDはこういうことができるよね,こんなデータを取っていけるといいよねというのをこの本部で検討していくということをやっています。
 内部質保証との関係でいくと,内部質保証委員会の中にあるわけではないんですけれども,内部質保証全体の中の教学マネジメントができていないと内部質保証ができているとは多分言えないので,非常に大きな位置を占めていて,教学マネジメント本部が展開する出てくる成果,可視化されたものというのが内部質保証の会議や教育プログラムレビューなどでもまれて,それを教学マネジメントとして情報公表というよりも,内部質保証として情報公表していこうと。そんな動きになっています。
 学修成果のキャリアとの接続ということですけど,出口の質保証から接続へということで,KYOAI Career Gateを活用し,ショーケースというものを展開することで,これを企業さんと共有していくような形のKYOAI Career Gate採用を,地元の1社さんと今年構築しました。まだ数名がこれに乗っかっての採用となっていますが,今,横展開を少しずつしていくということになっていて,質保証といっても,全ての学生が100%になって出ていくわけではもちろんないですよね。この学生はここは得意なんだ,この学生はここが苦手なんだ,あるいはこういう経験をしてきたんだということを知ってもらって,マッチングして,採用に生かしたり,その後の配属だとか育成,海外研修にこれだけ行ってきたなら海外部門かな,商品開発をやってきたのなら商品企画に行ってもらおうかなとかいって,せっかくの学びをキャリアにつなげていってもらうような,そういう質保証から接続へということができたらいいなという理想を持ちながら,取組をしています。
 それから,キャリアとの接続という意味では,企業さんに共愛12の力,本学の学生はどうですかというのも聞いています。それで足りないところを強化していこうとか,そうやって一緒に学生を育てていく,そんなことも必要かなと思います。
 卒業生調査も本学は3割ぐらいの学生が回答してくれていて,いろいろなものを取っているんですけど,この間,参考になったのは,やっぱり図表とかが苦手だという学生,やっぱり一番苦手なんですね。それで来年からのカリキュラム改革にも効いてくるというところになります。
 最後です。いろいろ解決しなきゃならないことがあるんですが,多元的可視化に向けた構造化をしていくときに,学修成果と教育成果を混同しちゃいけないということを我々も自戒しながら進めていきたいと思っていて,複数のエビデンスで評価をして可視化していくときに,学生がそれを説明できなきゃいけない,学修成果なら。それが結構難しいなと思いながら議論しています。
 それからリフレクション面談。これはここと関わるんですが,卒業要件化するという場合には,しっかりと全員が最後の評価を学生自身が記入しなきゃいけません。そしてリフレクションしなきゃいけません。今,九十数%の学生が面談を受けていますけれども,それを100%にしていくとなったときに,やっぱり先生たちの負荷ということもあるし,持続可能な体制ってどうしていったらいいのかというのをここは議論していきます。
 それから,各授業がその力とひもづいているなら,その力が身についたかどうか,授業の中でもアセスメントしてよねってシラバスでは書くようになっているんですが,実際かなり難しいです,授業レベルでは。
 それを超えるために,各授業というよりも,マイルストーン科目でやっていくとしたらどうだというソリューションを今考え始めているんですが,それでいいのかどうかみたいなこと,いろいろな課題がまだまだ残っていて,御指導いただけたらありがたいなと。
 教学マネジメント指針では,課題が明らかになったとしても,真摯に取り組み続けていること自体を肯定的に捉えて,長期的な視点で評価することが大事だと書いていただいておりますので,そういう視点で見ていただけたらありがたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
 
【永田部会長】  大森委員,どうもありがとうございました。大変分かりやすく御説明いただいたと思います。
 それでは,御質問,御意見,この件に関してあればお受けしたいと思いますが,いかがでしょうか。
 1つ,私からです。教育成果と学修成果を混同しないように,これは当然だと思うのですが,その両者の関連をつなげていくという,つまり,この教育効果とこの学修成果が本当にパラレルかどうか。あるいは,違うところのものがここに反映していて,結局は学習成果が高いレベルに行ったみたいな,教育成果と学修成果をどういう関数で結ぶかということについては,どうしたらいいのでしょうか。
 
【大森委員】  ぜひ教えていただきたい。(笑)それは本当に難しい話で,さっきの図の中でも,教育成果の部分,今は学修成果の可視化しかできていないんですね。それから教育成果の可視化は可視化で,IR的にそれなりにやっている,そこは学生にも見せられていなくて,全く別物として動いています。
 そこを何とかというところで,やっぱり学生も,自分のルーブリックによる評価だけじゃなくて,こういうことがあるからこの力がついたと言えるように,複合的に構造化して説明できるようにしたいよねというところが次のステップなんですけど,まだこれから歩み出そうとしているのと,あと,先生たちが教育成果を確認した上で面談をして,教育成果と学修成果をその面談でマッチングできないかみたいなことを考え始めていて,でも,これって相当難しいんじゃないかな,正直やってみないととちょっと思っていますが,努力を続けるしかないなと。
 
【永田部会長】  分かりました。
 越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございます。すばらしい試みで,着々と成果が出ていると思いました。
 ただ,構成員,先生含めて教職員の負荷が非常に大きいんじゃないのかということがちょっと心配になりました。地域に根差す大学として,私自身も大学だけからの出口戦略じゃなくて,もし地域に根差すのであれば,企業と相互に,お互いがやっぱり出口,どういうものが要るかというのを考えていくという視点では,すばらしい試みだと思うんです。
 ただ,一方で,もう少し規模の大きい大学になると,外に出ていく学生もたくさんいますので,その際に,企業と最大公約数的な,ここだけはというようなものができたら,これがどこの大学にも使えるようになるのかなと思っております。
 それがまず1点で,その点,どうお考えかという点と,企業との話合いというのはいつの時点で行われるのが多いでしょうか。例えば3年生の時点でやるのであれば,ディプロマ・ポリシーを全部満たしてはいない,本当を言えば4年間でどうだったのかというところで企業も評価すべきではないかと。これはそもそも論になるのかも分かりません。そういうところをどういうふうに捉えられて,例えば3年のときにこうであったけど,4年の実際に卒業したときはどうであったのかというような再評価とかというのは,企業サイドあるいは大学サイドで行われているのでしょうか。
 その2点,お願いします。
 
【大森委員】  ありがとうございます。まず,企業さんとのどういう力が必要かみたいなディスカッションで,私もどちらかというと,さっきお示しした共愛12の力は,地元の商工会議所とかそういうところとディスカッションしながらですけど,相当に最大公約数になっていると思っています。
 過去には,地元企業の採用担当と高校の進路担当とうちの教職員で,ずっと群馬に必要な人材はというディスカッションを3年ぐらい続けてやるという地域人材育成協議会をやっていたんですけど,結論から言うと,例えば全国で経団連さんがおっしゃっているような力と群馬での企業が欲しいと言っている力とどこが違うって,実はあまり違いが見えてきませんでした。
 ただ,唯一違うのは,群馬ラブが欲しいというのは,それはそうだよねっていうことであって,そうすると,実は最大公約数ということがやっぱりありなのと,あと,特に地方においては,この業種に合った人,この業種に合った人って育て始めると,その業種自体の雇用マーケットはすごく小さいですから,とても追いつかないですね。
 だから,やっぱり最大公約数としてのまさに資質・能力を持った学生をしっかりと育てるということを担保した上で,その専門力は各業界団体とか何とかが育ててくれるということになるという役割分担が特に地方においては求められて,何とかの分野に必要なというよりは,やっぱりDPに定められたような資質・能力をという最大公約数が重要だと感じています。
 それから,企業さんと学生とのマッチングのところは,どうしても採用が絡むので,3年生後半から,あとは解禁した後というぐらいで,卒業のときにマッチングにはやっぱりなっていないです,現状は。最終的にこうなりましたのでと言ったときに,じゃあ採用を取り消すとか何とかというわけにもいかないので,今は,ここまでこんな活動をして,今ここまでの段階ではこのレベルまでいっていますで見てもらうということしかやっぱりできないなというのが現状かと思っています。
 もう1つ,まだうちが完成していないのは,卒業のときに共愛12の力のレベル幾つまでいかないと卒業させませんよとまではまだ決めていないんですね。決め切れていなくて,それを決めるとなるかどうかにもよって,卒業時のリアクションとかも変わってくるかなと思っていますけれども,そんなところで,まだ発展途上でございます。
 
【越智委員】  ありがとうございました。参考になりました。
 
【永田部会長】  次,古沢委員,どうぞ。
 
【古沢委員】  ありがとうございます。大変興味深く伺いました。実は企業側からどういう力が欲しいということをお聞きしようかと思って,今のお答えで大体承知したんですけど,1つ補足して伺いたかったのは,学生の追跡調査を何年後ぐらいまでやっていらっしゃって,今後もどのぐらいまで続けられるのかということと,あと,学生の専門性を生かして配属先とか,就職後にマッチングまで結びつけていこうということを先ほどおっしゃっていて,今,学生にもそういう要望,非常に強いと聞いているんですけれど,もし具体化されていれば,どのように進めていこうと思われていますでしょうか。
 以上です。
 
【大森委員】  ありがとうございます。まず,卒業生に対する調査というのは,正直に言うと,認証評価もあるというところがあって,そこに併せて,毎年毎年やっていると,卒業者もまた来たよという話になるので,卒業後6年間ぐらいの学生たちに聞いているという形にしています。今回の調査もそれということになります。それぐらいだと,実はすごく,今日お示ししたグラフは結構いい感じのが出ているグラフなんですけれど,これはあくまでも3割の子,回答してくれた子です。
 もう一つ言うと,6年ぐらいの幅を取ってみると,意外と離職している学生の状況も見えてきます。力は,何て言うのかな,離職は必ずしも全部が悪いとは言いませんけれども,意外とうちの学生も離職しているんだなとかということが見えてきます。これが一,二年だとちょっと見えないんだろうというところで,そのぐらいのスパンは必要かなと思っています。
 それから,すみません,もう一つは何でしたっけ。
 
【古沢委員】  就職後のマッチングにまで結びつけたいというお話だったんですが。
 
【大森委員】  マッチング。これは,さっきも言った,まだ理想の段階ですという話で,1つの企業さんとまずモデルケースをやっと今年つくってみたんですね。これでまず採用までこぎ着けられるのか,これ見ても全然意味なかったよみたいな話なのかというので,まずパイロットケースでつくってみて,採用まではいけたというところなので,今度はその企業さんがどういうふうに配属するかとかどう育成してくれるかとか,常に連絡ができる体制で一緒に組んでいるので,1人の子,何人か採用してもらいましたけど,を見ながら,少し時間がかかっていくなと思っています。
 ただ,理想はそうだということで一緒に始めているんですけど,企業さんのいろいろな事情もおありでしょうから,そのとおりにならないこともあるかもしれません。ただ,採用だけではい終わりにならないようなつながりができたらすてきだなと。これ,全員にそれができるかというと,それも難しいと承知しています。
 以上です。
 
【古沢委員】  ありがとうございました。
 
【永田部会長】  ありがとうございました。
 日比谷委員,どうぞ。
 
【日比谷委員】  大森委員のお話は何回も伺っておりますけれども,絶えず進化する共愛学園前橋国際大学の今を今日は伺いまして,ありがとうございました。
 最初に事実関係の質問でございますが,リフレクションアワーを担当なさっている先生というのは,いろいろ御事情はあると思いますけど,原則として同じ先生が学生4年間,御覧になるという理解でよろしいですか。
 
【大森委員】  いえ,違います。1年生は1年生のゼミの担当の先生で,1・2年生は同じ先生になりますね。で,3年生と4年生は同じゼミに2年間所属しますので,3・4年生はまたそのゼミの先生ですから……。
 
【日比谷委員】  変わるという意味……。
 
【大森委員】  同じ先生が見ると。
 
【日比谷委員】  ありがとうございます。それで今,スライドの7ページのところで質問があるんですけれども,エビデンスベースの自己評価を学生がすると。それは9ページにお示しいただいたコモンルーブリックを基準として行うという御説明でしたが,誰しもそうですが,自己評価を適切に行うというのは物すごく難しいことだと思うんですね。特に学部に入ったばかりの学生にとってそれは非常に難しくて,気質にもよりますけど,物すごく自信たっぷりで過大評価する人も中にはいますが,一般的に言うと,伝統的な日本人の学生は比較的低めかなという気がします。
 今,継続してお持ちなのかということを伺ったのは,仮にすごく自己評価が低い,自己肯定感があまり高くない学生がいた場合に,いや,そんなことなくてこんないいところがあるじゃないかと引き上げていくと,やっぱり継続して見ていくことによって,前もこう言ったんだからもっと高くしてもいいんじゃないのというようなことが言いやすいと思うんですが,今の御説明だと,2年から3年に変わるときに,担当の先生間でしっかり引継ぎがあるとか,コメントがどこかに書いてあってそれを見られるというようなことになっているのかということが1つと,そもそも正しく自己評価できるような学生を育成するためにどんなことをお考えになっているかということを伺いたいと思います。
 それからもう1点は,これはたまたま例としてお示しになっただけですので,いろいろあるんだとは思うんですが,10ページのKYOAI Career Gateの実際というところで,幾つかの力に書かれていることが出ていますけれど,たまたまかもしれませんが,ミッショングローバル研修とかインバウンド人材育成PRGとか,割と活動型のものがやっぱりこの力が身についたよというときに言いやすいし例も挙げやすいんだと思うのですが,しかし,大学でございますので,いわゆる専攻科目といったようなものも当然重要なわけで,そういう比較的伝統的な座学系の授業,あるいは,GPAと共愛12の力のレーダーチャートが出ていますが,これの高いの低いのというようなことと連動しているかどうかみたいなということは御覧になっているかというのが2点目の質問です。
 よろしくお願いします。
 
【大森委員】  ありがとうございます。だんだんAPの面接みたいな感じになってしまっていますけれど。(笑)ありがとうございます。
 まず,面談者,先生おっしゃるとおりで,ここは実は今まさにディスカッションが起こっているところです。というのは,やっぱり先生たちは大変なんですね。1学年だけ見るんだったら,8人とかそのぐらいを見ていけばいいんだけど,それが3学年になると24人ですよね。ちょっと多いゼミだったら30人とかを見ていったりとかしますので,持続可能性をどういうふうにしていくか,ゼミ担がいいのか,それとも人数割にして,先生側サイドからすれば,学修者本位じゃない話ですれば,分担を平準化していくという手はあるかなとかいう議論をしています。でも,そうすると今度先生側から,知らない学生の面談をしても,学生を勇気づけられないよとかサポートしてあげられないよという意見が出てきて,じゃあ,お願いしようかなと。でも,うちのゼミ多いんだよなとか,そういうのをずっとやっているところであります。
 2年から3年に行くときというのは確かにそういうことはあるんですけれども,大体1年生のゼミ担当が,コースという,うちは,ICUでいうとメジャーよりはちょっと大きいんですけれども,そのコースに所属していて,コースの中でゼミを3年生も選んでいきますので,そのコースの子たちというのは先生たちは大体把握しています。
 だから,そういう意味では,小さい大学だからという言い訳になっちゃいますけれども,先生が代わったからって学生が知らない先生にまた言われてというふうにはならない感じはありますが,すみません,引継ぎ資料みたいなものまで用意しているかというと,さっきの負担感もあるので,そこまではまだできていないというのが現実です。
 それから,GPAとの関連は,一応GPAの伸びと共愛12の力の伸びみたいなのは相関がありそうだみたいなところまでは見えてきている感じは,さっきのIR部門が出し始めていますので,またそういう資料が整ったらどこかで報告したいなと思っています。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  ありがとうございます。いつも面白いというか,いつも聞いていて,いろいろこういうことをやってみたいなと多分聞いている人はみんな思うんだろうと思います。1つは,感想に近いのですが,先ほど永田委員からもお話のあった,学修成果と教育成果との関係ということをどういうふうに把握するかということですけれど,やや理念的な言い方になりますが,基本的にはやはり学生がそれをどう捉えているかということだと思うんですね。33ページの共愛学園前橋国際大学の特長というところに学生中心主義というのがあって,大学運営への学生参加,それから反映させる取組,学生による取組等々があって,学生がいろいろな形で大学に関わっていて,それからTAもやっていたり,図書館のピアチューターをやったりしているわけで,ある意味で,学生自身が教育課程と学びの側との両方に関わっている人たちがたくさんいる。多分そこの意見がうまく吸い上げられるかというところが1つの要かなと。多分カリキュラムにどういうふうに学生が関与するかということにも関わるかなと思って聞いていました。
 それと同時に,学生と教員の関係を媒介する職員の役割みたいなのが多分大きくて,職員が教員に物申すことができるような環境というのが多分共愛学園にはあるのではないかとこの図を見ていると思うのですけれども,やはり学生と教員の両方を見ていて,ここがおかしいと思ったときに,教員に職員が言えるということは大きいかなと思いました。それが意見というか感想です。
 もう一つは,大ざっぱな話になるんですが,ある種の企業秘密かもしれませんけれども,前橋国際大学でやっていることというのは多分どの大学も関心を持つことだと思うのですが,これが前橋国際大学だからできるというところと,これはもっと大きな大学であるとか都市型の大学であったっていろいろできるところもあるような気がするんですが,この成果が表れてきている理由というのを大森委員はどういうふうに考えておられるか。
 もちろん学長のリーダーダーシップがすごいとかというのはあるかもしれませんが,例えば先ほどおっしゃったように,規模の適切性,それから分野の,ある意味では限られた分野,分野の特性であるとか,それからもちろん前橋という,あるいは群馬という地域性の環境というのもあると思うんです。そういったことを含めて,すごく大ざっぱなことでいいんですけれども,これをほかの大学がやってみたいなと思ったときに,多分諦めちゃう大学も多いと思うんですが,そのことも含めて,どういうふうに考えていらっしゃるかということを伺えればと思います。
 
【大森委員】  ありがとうございます。最後のところだけお答えすると,吉岡委員が最初におっしゃってくれた学生が大学運営や教育に参画しているとか,職員が,物申すという感じではないんですけど,一緒にやる。もう少し物申してくれていいと思ってはいるんですけれども,教職協働って,だからさっきの共愛12の力とかルーブリックを決めるのも,教職員みんなでディスカッションして決めていますから,職員の目標の中にも共愛12の力のこれを伸ばしてあげるみたいな目標が出てきたりするんですね。なので,教育も一緒に,まさに教育研究実践何とかというあれなんですけれども,まさに一緒にやっていくというような関係があるのでということがあると思っています。
 それから,小ささは正直あります。なので,大きい大学さんでお話しするときは,学部単位で考えてみてくれませんかって。学位プログラムって学部ですよねって。学部,うちも1学部ですから,言っても。なので,学部でやっているって思ったら,もしかしたらできるかもしれませんよねというお話をしています。
 あと,群馬という地域というのは本当にそのとおりだし,実はこれはうち特有ですけど,共愛学園が群馬県で134年ずっとここで学びを続けさせてもらっているという,その信頼感というのは,これはうちの持っているポテンシャルだったかなって,そんなふうに思っています。
 それと,一緒にやろうというチームをつくっていくといったときに,教員人事ってすごく大事だと思っていて,誰をバスに乗せていくかということをやるときに,研究業績一本ではない人事をずっとやってきましたので,そこがじわじわと効いてきたなと,そんなふうに思っています。
 以上です。
 
【吉岡委員】  ありがとうございます。
 
【永田部会長】  川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】 ありがとうございます。手短に。質問というより,私の所感と言ったほうがいいかと思うんですが,1点は,先ほど日比谷委員がおっしゃったように,出口での学修成果のアセスメントと、各授業における学修成果のアセスメントと成績評価をどういうふうに関連づけて行うのか、これが大きな論点かと思います。授業でのアセスメントと成績評価とは別に、何かテストしたりするというアセスメントの仕方もあるかもしれませんけれど,学生への負荷を考えると,授業の成績評価の結果が出口での学修成果のアセスメントにつながるというやり方がよろしいんではないかと思います。本日出席されている越智学長の広島大学は随分前からハイプロスペクトという取組をされています。それから新潟大学はNBASSという成績評価とアセスメントを結びつける取組をされていますので,今後はそれが主流になるのかなと私は思っています。実際は、なかなか難しいですが。
 なぜ難しいかというと,日本の大学はたくさんのDPを掲げ過ぎているからです。日本の大学は非常に真面目なので,あれもこれも身につけさせて社会に送り出したいと思っているので,非常にたくさんの出口での学修成果を掲げ,評価というかアセスメントするのが難しく,複雑になっている。それが日本の大学の現状かと思います。
 ですから,ある意味で,必ずこれだけは獲得しないと卒業させないというmustのものか,これはできるだけ身につけていってほしいというhighly recommended outcome,さらに,これはできたらいいよねというrecommendedといったように、学修成果に濃淡づけを行い、mustな学修成果だけは獲得できないと卒業させませんよ,できませんよという,濃淡づけも必要なのかなと思います。
 非常に卑近な例なんですけれど,ある国立大学では,教養部があった時代は,体育実技の必修で50メートル泳げないと体育の単位がもらえないので,これは非常に明確なディプロマ・ポリシーというか卒業要件だった。それからアメリカのある大学では,体重が120ポンド以下にならないと卒業させないというDPというか卒業要件に掲げたカレッジもありました。それからあるアメリカの総合大学では,総合大学だとあれもこれもになるんですが,結局,議論の結果,ライティングだけはどの専攻でも一定の能力を獲得させて,アセスメントして単位を与えて卒業させるということを実践しています。
 したがって、日本の大学も,学修成果として,あれもこれもというのは親心かもしれませんけれども,カリキュラムの精選することに加えて,学修成果の精選も今必要なのではないかと思った次第です。
 以上です。特に御質問というわけではございません。
 
【大森委員】  ありがとうございます。1点だけコメント。先生おっしゃっていただいた成績評価とDPとのひもづけって,我々も新潟大学なんかにも本当に学ばせていただきましたし,なんですけど,難しいなと思ったのは,我々の力不足を知っていたからなんですね。
 例えばコミュニケーション力というのは,コミュニケーション技法という授業でひもづいていて,それでSを取ったらすごく伸びるはずなんだけど,本当にコミュニケーション技法の評価がコミュニケーション力の評価とひもづくようなアセスメントプランを各授業でつくれるのかというと,我々にはその力がまだ身についていないと判断して,そこは難しいだろうと思ったんです。
 コミュニケーション力があるよといって卒業した子が,企業に行ってみたら,全然ないじゃねえかと。コミュニケーション技法はSだったんですということになりかねないなということと,これはマネジメント会議でもありましたけど,124だけでDPを達成するのか,課題も含めた4年間なのかというディスカッションはまだ全国的に,これは各大学の決めだと思うんですけど,そうすると,学生を教員は360度評価はできなくて,学生自身でしかできないよねという議論にもなったというところであります。
 なので,ここだけはというマイルストーン科目を設定して,共愛12の力のレベル2まではみんな何とかやって,あと金棒の部分は,専門性とかここが得意というのを設けようというようなことに次のステップは行くだろうと思っていますけど,ありがとうございます。
 
【永田部会長】  ヒアリングに関する内容の議論だったのですが,ここからが実は今日の主題です。出口の質保証に関して議論を続けたいのですが,3回目なので,過去に行ってきた議論を簡単に事務方でまとめてくれています。これを聞いた上で,フォーカスをどこかに絞りながら議論を続けたいと思うので,ぜひともこれまでの意見要約をお示しください。
 
【柿澤高等教育政策室長】  よろしくお願いいたします。高等教育政策室長の柿澤でございます。
 それでは,資料3-1を御覧いただければと思います。審議時間の都合もございますので,ごくかいつまんで御紹介いたします。
 まず,1でございますけれども,「出口における質保証」が求められる背景等というところをまとめております。激化するグローバル競争下に置かれる産業界においてはジョブ型採用や通年採用の拡大など採用方法の多様化が進行し,「即戦力」的人材への需要が高まっていると。こうしたことも「出口における質保証」を意識した質の向上を図っていくことが求められる背景として述べております。
 また,1ページ目の,そこから2つほど,これまでの中教審での議論ですとか,あるいは教育再生実行会議,教育未来創造会議では,日本経済団体連合会における提言等について触れております。
 1ページの一番下の丸のところでございますけれども,「出口における質保証」を求める声は,今後,ジョブ型雇用の浸透や採用のグローバル化の進展等により,企業内人材育成から働き手による自主的・自律的なキャリア形成にシフトしていく中で,一層強まっていくものと考えられると。
 また,2ページ目の一番上の丸ですけれども,こうした産業界からの要請等に加えて,学位の国際通用性の確保や相互承認に向けた国際的な高等教育の質保証の取組においても大学教育のアウトカムに着目した評価に基づく質保証が重視されており,高等教育のグローバル化の進展に伴って「出口における質保証」に対する要請が高まっていると捉えることができるとしております。
 次のところで,大学教育の質保証をめぐる近年の取組と現状というところをまとめております。ここではグランドデザイン答申における指摘ですとか,あるいは教学マネジメント指針で示されている事項,さらには,認証評価の第3サイクルにおいても内部質保証を重視した評価が行われていること,質保証システム部会の審議まとめにおいても,質保証の観点から,大学設置基準の改正等が行われているといった流れを紹介しているところでございます。
 次に,3ページ目になりますけれども,学生の学修時間等に見られる課題というところでございます。こちら,前回の会議でデータに基づいて御紹介した部分を文章でもまとめているということでございます。大学教育の質保証に向けた取組が進展する一方で,改善に真剣に取り組む大学と改善の努力が不十分な大学とに二極化しているという指摘,改善の取組が単に認証評価への対応等のための形式的・表層的なものに留まっており,学修者本位の教育の実現や授業科目レベルでの教育の改善にはつながっていないという指摘もあるということでございまして,その次の丸以降のところで,全国学生調査(第2回試行実施)の結果に基づく課題等を分析しております。
 例えば3ページ目の真ん中の辺りになりますけれども,授業への出席時間に比して授業に関する学修時間が短いことの背景として,学生が過剰な単位登録をしていると。これは,キャップ制を設けている大学は95%に及ぶが,そもそも上限設定が高過ぎるなど,キャップ制が実質的に機能していないものと思われるといったこと。また,単位制度の趣旨に鑑みて,密度の濃い学修,主体的な学修の必要性という観点からも,大きな課題であるといったことを指摘してございます。
 また,4ページ目のところですけれども,こちら,学生調査は2年生と4年生を対象にしましたけれども,上から4行目になりますが,これは卒論等に取り組んでいる学生とそうでない学生がいるという中で,最終学年においては,学修時間が極めて短い学生も一定数いることが伺えると。「出口における質保証」という観点からも問題であると言わざるを得ないと。
 また,次の丸のところで,これは分野での傾向に大きな差があることも明らかになっているということでございまして,一番最後の行のところになりますが,そうした分野間の差というものが,分野別質保証における取組に起因する部分もあるということも述べております。
 次に,5ページからが,「出口における質保証」の充実に向けた方向性というところでございます。
 上から3つの丸のところ,教学マネジメントの改善というところでございますが,各大学における教学マネジメントの改善が最も重要であることは論を待たないということで,キャップ制ですとか授業科目の精選・統合等,また,教員の採用・評価等における教育業績についても評価軸に盛り込むといったことも述べております。
 次のところで,卒業論文・卒業研究やゼミナール教育の充実等ということで,ここは前回審議の議論をまとめているところになりますけれども,我が国の大学教育の特長として挙げられる卒業論文・卒業研究やゼミナール教育(ゼミ)は,多くの大学で学位プログラムが提供する教育の集大成的な位置づけで実施されており,「出口における質保証」においても重要な役割を担うと。一方で,必ずしも期待どおりの成果を上げていないとの指摘もあるということでございます。
 6ページに参りまして,ゼミや卒業論文等を「出口における質保証」において有効に機能させるためには,教育課程改善のための組織的な取組の一環として,その学修目標や評価基準について,ディプロマ・ポリシーに定めた資質・能力を踏まえて規定し,学生に周知していくこと。加えて,最終学年でゼミや卒業論文等を通じて学修目標を達成するために必要なスタディ・スキルを学生が低年次から系統的に学び,身につけることができるよう教育課程を工夫することも重要と。さらに,テーマ設定や評価等において地域社会や企業等の連携を図ることは,教育の充実・活性化や公開性の向上につながり,大学教育の社会からの理解と信頼を得ていく上でも有効であるとしてございます。
 また,次の2つ目の丸のところですが,ディプロマ・ポリシーに定める資質・能力や適切な評価方法等は大学のミッションや分野の特性等に応じて多様であり,当然ながらゼミや卒業論文等の取組が全ての学位プログラムに適しているものでない。そうした多様性は前提としながらも,「出口における質保証」に資する教育課程の改善方策の一つとして,高学年次においてディプロマ・ポリシーに定める資質・能力を総合的・客観的に評価する必修科目を設けることは効果的であると考えられるというふうにしてございます。
 また,一番下の丸のところ,分野間のところでございますが,こうした議論は,例えば国際的な認証の必要性等から分野別質保証の取組が進展し,OSCE等を活用した卒業論文等によらない卒業時の質保証が行われている医学分野などには必ずしも当てはまらないと。人文・社会科学分野においても,学問分野によって,ゼミや卒業論文等の必修化の状況や取り組んでいる学生の割合が相当程度異なる実態があるということでございまして,大学においては,こうした学問分野間の違い,学生の学修実態等を考慮に入れた上で,各学位プログラムについて,「出口における質保証」の観点からどのような課題があり,どう改善すべきかについて検討していくことが求められるというふうにしてございます。
 次に,7ページから,「出口における質保証」と教員一人当たりの学生数(ST比)について,こちらも多数御意見をいただいた論点でございます。教育未来創造会議第一次提言の中で,「出口における質保証」の強化を図る具体的取組の一つとして設置基準の見直しを行うなど,ST比の改善等による教育体制の充実を図ることが挙げられております。密度の濃い主体的な学修を促す教育プログラムの実施や厳格な成績評価等を大学が責任を持って実施するためには教育体制の充実が重要であることは当然であり,一般的に教員1人当たりの学生数が少ない方が,一人ひとりの学生に対してよりきめ細かな教育,支援を行うことが可能となるというところでございます。
 一方で,次の丸ですが,大学設置基準等の法令において,各大学が遵守すべき基準としてST比を規定することについては課題もあり,慎重な検討が必要となるということで,例えばということで,ST比について,算定によって大きく数字が異なるということ,また,こうした数値はあくまで教員の頭数に着目したものであるが,世界に伍する研究大学を目指す大学から地域の担い手となる人材育成を担う中小規模の大学まで多様なミッションを有する大学が存在する中で,教員が教育に割くエフォートは大学間・学部間等で相当程度異なり,必ずしも学修者目線での教育体制の充実度を正確に表す指標とは言い難い面があるということ。また,オンライン授業の普及・拡大など多様な教育方法の実践が進んでいる中,例えば知識の教授が中心となる講義をオンライン授業による配信としつつ,教員の適切な指導の下,TAやSAなどの指導補助者がディスカッションや協同学習の指導等を行うハイブリット型の教育も実践されていると。こうした教育上の工夫もST比という指標の中で捉えることは難しいと。また,質保証システム部会においては,こうした多様な教育実践を促す観点からも,これらの指導補助者について設置基準上に明示的に規定するとしたところでございます。
 なお,学生の主体的な学修を促すために,地域におけるフィールドワークや,企業との連携による業務体験等を伴うキャリア教育,プロジェクト学修など,教室の内外におけるアクティブ・ラーニングの手法も進化と。これらの教育方法においては,従来の「授業」の概念自体が変化してきており,ST比で捉えることは難しいことにも留意すべきということでございます。
 これらを踏まえれば,現段階においては,ST比を教育の質保証における遵守すべき基準として用いることができるかについては国際的な動向等も含めたさらなる研究・知見の蓄積を要する課題としつつも,当面は,質保証システム部会審議まとめを受けて導入された基幹教員制度や指導補助者等に係る改正が大学の教育研究体制等にどのような影響を及ぼしているのかについてデータやエビデンスに基づいた分析や評価・検証を行うことが適当と。その上で,ST比が一定の制約はありつつも,大学の教育研究体制を表す一つの重要な指標であることも踏まえれば,各大学における積極的な情報公表を促していくことが重要であるとしております。
 次の丸のところで,各大学においては,単なる人数比のみならず,例えば開設科目のうち学生数を20名以下に設定している授業の割合といったクラスサイズに関する情報や指導補助者の活用状況等に関する情報を併せて公表するなど,各学位プログラムの教育の全体像がつかめるようなきめ細かな情報公表に努めることが求められるということでございます。
 最後に,産業界等との連携・協力というところで,1つ目の丸,産業界においては,まずもって,採用選考活動に当たって,成績証明等を取得して活用することなどにより,学修成果や学業への取組状況を適切に評価することが求められる。併せて,求める人材のイメージ,資質・能力や技能等について具体的に示していくことや,大学における学修成果を重視しているとのメッセージを学生に対して積極的に発信することが求められると。
 最終ページでございますけれども,大学において成績評価や卒業認定の厳格化を進めるに当たっては,受け皿となる産業界等においても,そうした取組の重要性を認識していることや年齢主義的な採用選考を行っていないことについて積極的に発信していくことが必要と。
 また,次の丸のところで,就職・採用活動の日程等の遵守徹底,学事日程への十分な配慮が必要と。
 最後の丸になりますけれども,企業等においては,「出口における質保証」に向けた大学の取組により積極的にコミットすることも期待される。プロジェクト学修や業務体験等を含む企業と連携した教育は学生のキャリア教育においても重要といったこと。また,例えばゼミや卒業論文等において連携・協力を行うとともに,その過程や様々な機会を捉えて,大学教育の在るべき姿や産学連携の深化等について大学と積極的に対話することなどが考えられるというふうにしております。
 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。今,全体をお聞きしていて,随分話してきましたが,具体的に出口の保証に関して,これといって物すごくいいアイデアが出ているわけではないと思うのです。今日,学修成果と教育成果という話が出てきましたが,教員個々にとってみると,多かれ少なかれ,ある一定の努力の中で科目の教育の価値を伝えていると思うのです。だとすると,学修成果のほうは,先ほど大森委員のよく分かるとおりで,非常にいいことが日比谷委員の部会でできている中で,学生に認識させることというところが一番重要で,学生が自分はここまで学んでいるし,このぐらいのことできますということが分かるという努力をするのは重要ですが,実はあまり具体的な議論が過去にはないです。
 いわゆる成績評価であるとか,大森委員のところは個別に先生が対応してやっていますが,一般的に言って,成績のよしあしではなくて,できたことを認識するということについては非常に難しくて,そこのところというのは多分重要なポイントだと思うのです。
 教育成果のほうは,先ほど言ったように,先生は先生なりにそれぞれやっていいのだが,先生は,それがどのように学生さんの育成に役に立っているかが全く分からないのだと思います。自分は信じてやっているが,定量的にこれを見せてくれと言われたとしても,まず見せられないのだろうと思います。
 そこに問題があって,外堀りは,設置基準が変わるとか,さっきのST比は私はあまり好きではありませんが,ST比の問題を討論したりしても,やはり何かはっきりしません。
 社会との接続の部分については少し分かってきたと思うのですが,出口の保証は,結局学生さんが得た能力やコンピテンシーを実際に社会で使わなければいけないので,実はそこから定義しないと本当はいけないのだろうと思うのです。そこは実はあまりやっていないです。そのつもりで教えていますが,本当に役に立ったかどうかは知らない。大森委員のところは企業さんとも相談してやっていらっしゃるかもしれない。
 英国は,卒業生に背番号がついていて,全員の給与が追えるので,給与額というよりもGDPへの貢献度を追いかけているのです。バルクに見たときに,頑張っていますという結論に大体なっています。要するに,それで大学を競争するというよりも,大体大学を出た人のレベルであれば英国は助かっていますという結論になっているわけです。
 それは英国のやり方だとしても,我々は我々で,社会に出て役に立っている学生本人の,それをどう把握するかということすらできていないので,議論が空論に陥るのです。
 ですから,我々としては,今回,何かしらのそのようなたくさんのことはもちろん,今も書きましたが,最後の産業界等との連携・協力というところをもっと具体的にやらないと,結局いつまでたっても変わらないと思います。
 大森委員の話を聞いていて,片方で英国のことを思い出しながら,だから,国全体でやっているときに,委員は学部ごとにやればできるかもしれないとおっしゃいましたが,それも相当のFDを重ねないとなかなか進まない大学もたくさんあると思います。それをやればベストかというと,多分大森委員のところもまだ改善を続けながら進歩されていると思うので,必ずしもそれがベストかどうかも分からない。
 でも,事実は,大学で教育を受けた,その結果が社会で活躍する,あるいは社会の一部にきちんと貢献するということだと思うと,やはりそこのところの何かしらの指標が必要。それが最大のアウトカムだとすれば,アウトプットはどうか,それは各大学のディプロマ・ポリシーとの間の設定は自由なので,評価が難しいのです。
 このまま放っておくと,何となくできない,あれもできない,これもしたい,こうしたい,ああしたいと言いながら終わってしまいそうなので,焦点を絞りたいのですが,今言いましたように,学修の途中段階でのいろいろなことについては,相当事例も踏んでいるし,こうやったらいい,ああやったらいいというのは分かるのですが,やはり最後の最後のところだと思います。本当に出口の保証と言っているので,出口の保証というのは出た先で活用できることを保証するのでしょうから,その能力がきちんと身についているかどうか,あるいはつけさせられるようにできているのかというわけです。
 そのようなことを含めて何でも話していただいて結構なのですが,具体的に何をすればいいかということを念頭に置きながら,ある意味でのフィロソフィカルな議論は大分進んだので,この辺が重要,あの辺が重要,あれもそうだ,考えないと,ここも考えないとなるのですが,やはり我々としては,中央教育審議会の大学振興部会ですから,このようなものをやったらどうですかという結論になっていかないといけないと思うのです。ぜひとも今日はその辺りを絞ってお話をお聞きしたいなと思うのですが,いかがでしょうか。
 益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】  ありがとうございます。今,座長がおっしゃったことを実際に実験してみました。ある経済団体の教育問題の会議で,グランドデザイン答申以降の答申を,文科省に御協力いただいて,御出席の皆さん全員に事前に配りました。会議の前に読んでいただいてスタートしました。お一人だけ,村田委員とよく話をされているので中教審の議論をご存じの方がいらっしゃいましたが,それ以外の方はこの様な議論しているのかと驚かれていらっしゃいました。
 これが現実です。やはり中教審がこういう問題意識を持って,出口の質保証を求めて,大学がそれに応えて教育の質保証に力を入れているという話自体は,大きく今後の社会を変えていく話だと思うのです。そうしますと,従来のやり方ではなかなか社会全体に届いていかないということは,まさに座長がおっしゃった問題意識だと思います。ですから,この議論は,議論の出口をどう質保証するかというような言い方に変えてもいいのではないか。きちんと手を打つべき大事な議論と思います。
 それからもう一つ,今後の議論ですが,先日,令和3年の出生数が81万人で,予想よりも少なかったと発表がありました,大学を取り巻く環境が一層厳しくなる中で,社会を変えていこうという議論をしていく上で,非常に重要なことがあります。それは,どうしてもこれから大学の撤退であるとか経営不振というものが増加する予想を持つべきだという事です。特に大学を取り巻く様々なステークホルダーへの影響,例えば学生を当てにしてアパート経営している方もいらっしゃるし,その地域での就職を当てにしている企業もいらっしゃるし,何しろ全体の数が減っていく中で質を一定に保とうとしたら,それなりの努力をしなければいけないわけですから,上手くいかなかった時に、学生保護の仕組みなどの準備が必要であると思っています。
 お話を聞いたら,大学が撤退する場合,学生がどこまで保護されているかなどの話は明文化されていないと聞きました。皆さん御記憶にあると思うのですが、90年代の後半に金融機関が次々と破綻していく中で,社会不安が起りました。その連鎖を止めたのは,セーフティネットの整備をすること,それから預金者保護の仕組みなどがきっちり,時間をかけずに整備されていった結果でした。ですから、今後ある程度の予想を持って,大学の経営不振などが考えられるのであれば,何が起こって何をしなければいけないのかを,泥縄ではなくて,前もって保護の仕組みをきちんと見える形で整備するとこの一連の議論は社会を変えていく事に繋がると確信します。連携とか統合とか全体の規模をどうするかなど,テクニカルな話もとても大切だとは思いますが,まず,セーフティネットの構築というものの議論を進めていかなければいけないのではないかと思いました。
 以上です。
 
【永田部会長】   ありがとうございます。だんだん見えてきました。セーフティネットが必要であると。逆に,入場はまだあるのかもしれないが,退場もあるのだが,その入退場を,規則はないのだが,逆に言うと,出口の質保証がどれだけできているかという大学が自然にコンペティションの中で残るというふうに仕組まないといけないということです。その上で,セーフティネットとしては,この国を支えるだけのあるレベルの水準のマスをきちんと育てていかなければいけないのだと。この2つです。
 まさにいいところを言っていただきまして,退場のルールは,基本的にはよほど変なことをやらない限りはないわけですが,自然にコンペティションの中でそれが起こるように,いかにきちんと仕組んでいくかというのは,多分,一方で研究力,もう一方で,ここで今話している学生の問題だと思うのです。
 村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございます。あと五,六分で,次の会議が始まりますから,先にお話しさせていただきます。
 先ほど永田部会長からお話ございましたように,具体的なことをやはり考えていく必要があるんだろうと思います。同時に,これも永田部会長から問題提起があり,教育の成果と学修成果,これは恐らく関係づけるのが難しいと思うんですね。
 というのは,教育成果というのは,大学の成果なのか,高校の成果なのか,小学校の成果なのか,生まれつきの能力なのかというのは分からないわけで,だからこそ,出口の質保証というのは,学修成果あるいは学生の質保証でしかないわけですから,まさに教育の成果というよりは,これをやり出すと,正直言って永遠に解決しないだろうと思いますので,やはり学生の質保証,学修成果だと思います。
 そういう観点から,3点,話をさせていただきます。
 1つは,先ほど永田部会長から英国の例があったんですが,アメリカでも,いわゆる各大学の卒業生の年収が測られており,これは1つの指標なんですね。これだけで全てとは言いません,言わないんだけれども,そういった形で質保証がされている。日本は全くそれがされていないということで,これはやっぱりちゃんとしておくべきだと思うんですね。その辺は客観的な指標として,1つの保証かもしれませんが,客観的な質の保証であると。これが1つ目です。
 2つ目なんですが,6ページの3つ目の丸のところに,認証評価を行うべき事項として「学修成果の把握や評価に関すること」を追加と。これはぜひすべきだと思うんです。今,認証プログラムの第3期サイクルでは,各大学がPDCAをどう回しているかという,その仕組みを独自にとは言っているんですが,そして,それが実効性ある有効なと書いてはあるんですが,実質,そこまでできていない。ちゃんとそこのところはやるようにしておかないといけないんだろうなと思うんですね。
 先ほどの年収の話では,本学は既にOB調査で年収を測っております。ちゃんと記名式でひもづけて年収を測っているんですね。じゃあ,どの学部でどれが,どのクラブをすればだとか,そんなこともある程度分かってきています。まさにそういった学修成果を測る仕方をちゃんとしてないと駄目だということを義務づけることが2つ目。
 それから3つ目なんですが,これも非常に難しいところですが,先ほど来,GPAの話が出たんですが,御存じのように,GPAって量的指標と質的指標,つまり,件数が何件だったかということと,何単位取っているか,両方入っているんですね。ところが,124単位という卒業要件は決まっていて,これは量的指標です。だから,量的指標があるんだから,逆にGPAを質的指標だけにしてしまわないと,何か同じようなことやっているなと。
 もう一つ,さらに重要なのは,今,124単位が卒業要件でしかないわけですけれども,それ以外に,今私が申し上げたGPAを質的指標にして,それ以外の要件を出す。つまり,各大学が質保証するために,124というのはこれはあくまでも量的な指標でしかないわけですから,質的な指標を各大学がつくって,それを卒業要件にする。抜本的に考えていかないといけないわけで,124単位はまさに単位制度に基づいている。しかしながら,今やオンライン,オンデマンドでやっていて,早回しで聞く学生がいるわけで,質のところの指標が全くないわけで,これを各大学がまず独自でつくってもいい,あるいはそれを組み入れてもいいというふうに制度を変えていくことをやっぱり考えていかないといけないのかなと思うんですね。
 それからもう一つ,最後,卒業した後,どういうふうに役に立っているかというようなこと,これは最近,アメリカではCBEという制度,competency-based education,単位制あるいは通信制含めて,まさに学生がどういうことを学んだかというようなことが実際に単位制と組み合せながらやられている新しい制度があるわけで,そういった制度も含めて中期的には研究をしていって,本当に学生の質保証をどうするかということを考えていかないといけないと思うんですね。
 まず短期的には,具体的には,6ページに書いてあるような仕組みをちゃんと義務づける。2つ目が,124単位という量的指標以外に卒業要件を別途定めるということを検討すべき
かなと。具体的にと言われましたので,こういうことを御提案させていただこうと思いま
す。
 私から以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。先程,大森委員もマストを何にするか悩んでいらっしゃいましたから,定量的な部分以外に,今御提案あったようなことは重要です。
小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】  ありがとうございます。今までのいろいろな議論を伺っていて,出口の質保証を一体誰に対して質保証をするかというのは結構難しいという気がしまして,受け入れる先ですね,それはその学生がどこに行くかによって質保証も大分変わってきてしまう。大森委員が先ほど接続とかマッチングという話をされていましたけども,その前に,それの受皿がどういう質の保証を求めているかにもよって,出口の質保証も少し変わってくるんじゃないかと思います。
 私どもの大学は医学や生物系の大学なので,特に医学部は,医学教育分野が全体として質保証する取組を相当前から始まって,OSCEとかCBTとかコアカリキュラムとか分野別認証,国際認証,とにかく認証機関が何回も何回も大学を訪れて調べるという,それで質保証を担保しているんだと思います。
 先ほどのJABEEもそうですね。我々も海洋生命科学部とか獣医学部の1学科では,認証を得るために質保証をしているというようなやり方もあると思います。
 一方で,大森委員がやっていらっしゃるように,自前できちんと質保証する余裕が,余裕というか,時間があるところはそれができる。特に文系の場合はそれができると思うんですけども,分野によっては,それは認証機関が山のようにあるので,それで認証されているという考え方になるんじゃないかと私は思いました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。そのとおりでいいと思うのです。別に全員同じことをやれという議論ではなくて,何をやるのかという,最後の学生の質なり,あるいは社会への貢献ができるコンピテンシーを持った人を育てているということだと思うので,別に全部がピアレビューをやりながら育てればいいということでは全然ないと思うし,分野によっても違うし,学生も違う。ましてや,先生がおっしゃるとおり,学生は行く場所が違います。違うが,多分北里に期待されていることはきっとあるわけなので,それは今,定量的にも定性的にもなかなか簡単には言えないような内容でしょうが,それなりの歴史と,それからやはり教育や研究の積み重ねの上に成り立っていると思うのです。それは大学によって違うので,全部が同じ基準でこれをしなさいと言っているわけではなくて,どこに視点を置いて自分の大学を見詰めるかということだとは思うのです。
 そういう意味では,委員がおっしゃったとおりに,各大学,各分野によって全然違うと思いますし,それをどううまく提言できるかということかと思っています。すみません,もう時間がないのですが,越智委員,手が挙がっていましたが。
 
【越智委員】  いや,いるんですけど,もう時間がないんで,手を下ろしました。
 
【永田部会長】  まだ,あります。あと6分ほどなので,三,四分ならどうぞ。
 
【越智委員】  三,四分ですか。
 
【越智委員】   具体的にというところで,具体的にはあまりないんですけど,私自身も大学とか今後の社会における大学の役割とかによって出口の質保証は変わってくるんじゃないかなというのは非常に強く思っています。
 特にジョブ型の雇用というのが1ページの下のほうに出ています。補正予算で3,000億つき,特に情報関係がこれから増えるということになっていますよね。ジョブ型であるのであれば,これは,きっちり4年間やらないといけない,やった後に評価があるべきじゃないかと思うので,大森委員の質問とちょっと重なる部分があるんですけど,3年のときに既に就職活動を始めてオーケーが出ているというようなのではちょっと難しいんじゃないかなと思っています。やはりジョブ型であれば,4年なら4年,きっちり終わった後に評価を受けて,就職するような出口の形というのがないといけないのかなと思っています。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。基本的に留学生はまさにそうなので,日本で就職するにしても,母国に帰るにしても,課程が全部終わってからじゃないと始まらないので,そのようなのは国際的な価値として議論の中に入れておけば,これからの社会の中での考え方もあると思います。
 今日はありがとうございました。2つのグループからヒアリングさせていただきまして,それから,これまでの議論をまとめたのを皆さんでお聞きしたので,もう少しフォーカスを絞りながら,事務方とも相談をして,次回以降,どの辺りにフォーカスするかを絞って,また先生方と議論させていただきたいと思っております。
 それでは,今後の予定等を述べて,お開きとさせていただきます。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  後ろから失礼します。次回の大学振興部会は12月6日火曜日の10時から12時で予定しております。実施方法等については,改めてお知らせいたします。本日は時間の都合上,御発言できなかった内容等については,事務局までお送りください。以上でございます。
 
【永田部会長】  今度はフォーカスをして議論したいと思います。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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