大学振興部会(第4回) 議事録

1.日時

令和4年9月14日(水曜日)16時~18時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 文理横断・文理融合教育について
  2. 大学教育における「出口の質保証」について

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)吉岡知哉副部会長
(委員)越智光夫,日比谷潤子,村田治の各委員
(臨時委員)大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,古沢由紀子,益戸正樹の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長,西條大臣官房審議官(高等教育・科学技術政策連携担当),伊藤文部科学戦略官,鈴木文部科学戦略官,山下高等教育企画課長,柿澤高等教育政策室長,平野大学入試室長,髙橋高等教育企画課課長補佐ほか

5.議事録

【永田部会長】   大学振興部会,第4回目の会議を始めます。コロナの沈静状況から見て,ウェブとのハイブリッドです。また,YouTubeでライブ配信しております。
 それでは,事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,端末の挙手のボタンを押していただき,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言ください。また,御発言後は再度挙手のボタンを押して,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は,次第のとおりでございます。事前にメール等でお送りしておりますので,御確認ください。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 議事次第を見ていただきますと,本日は大きく分けて2つの話題で,1点目は,ずっと続けてきました文理横断・文理融合教育についてです。前回,経団連とSMBCバリュークリエーションから御発表いただきました。今回は,日本貿易会からヒアリングをさせていただきます。
 2点目は,この振興部会で議論すべき3つのポイントのうちの2つ目,つまり,1つ目が文理横断・文理融合教育,2つ目が大学教育における「出口の質保証」問題ですが,これについて意見をお伺いしたいと思います。3つ目までありましたが,今回,2つ目について議論を始めたいということです。
 よろしいですか。それでは,議事に入らせていただきます。
 最初に申し上げたとおり,日本貿易会からお考えをお聞かせいただきます。
 今まで理工系の会社,あるいは,情報系の会社とありましたが,人文社会系の学生がたくさん就職,あるいは,就職希望を持っている,例えば,上位の商社などが入っている会です。
 それでは,的場様,どうぞよろしくお願いいたします。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  伊藤忠商事人事・総務部長の的場でございます。現在,日本貿易会の人事委員会において委員長を拝命しております関係で,商社を代表して,この場に立たせていただいております。
 本日の進め方ですが,まず「当社の働き方改革を通じた企業価値の向上」と題してプレゼンテーションをさせていただきます。その後,御質問をお受けしたいと存じます。
 
 皆さんお手元にある資料の2ページを御覧ください。2010年に岡藤がまずはニーズの高かった社内託児所を設置しました。これが働き方改革の始まりです。
 当時,改革にあたり,当社には,外すことができない2つの大前提がございました。それは現在も変わっておりません。
 1つ目が,当社の社員数が財閥系の他商社と比較して,圧倒的に少ないことです。グラフが示すように,当社の社員数は一貫して他商社の7割程度となっておりまして,この少数体制を堅持していかなければならないということです。
 2つ目が,当社のお客様の多くが消費者に近いところにおられますので,当社社員もお客様と共にあらねばならないということです。
 3ページを御覧ください。この2つの大前提の下,新たに働き方改革で目指したことは,次の5点です。
 1つ目,少ない社員数ゆえに,一人一人が他商社よりもより力を発揮できる環境が必要であるということ。
 2つ目,働きやすさだけではなく,成果もしっかり求めた厳しさを伴う社員のやりがいを目指すこと。
 3つ目,成果を上げたならば,社員を含む全てのステークホルダーに還元すること。
 4つ目,定量的な目標を,連結純利益を従業員数で割った労働生産性とすること。
 5つ目,改革は当社創業の精神で企業理念でもある「三方よし」の精神にのっとって行うこととなっております。
 4ページをお願いします。こちらは,働き方改革により労働生産性を押し上げるための概念図です。少ない社員数で成果を上げるためには,まずは社員が効率的に働かなくてはならない。そのためには,生き生きと高いモチベーションを維持しなくてはならない。また,能力が高くなくてはならない。さらには,一人一人の社員が健康でなくてはならないということです。これらが相乗して労働生産性を押し上げていくと考えています。
 5ページをお願いします。ここに示しておりますのは,主たる働き方改革の変遷です。このうち,2013年に導入した「朝型勤務制度」と,直近2022年の「働き方改革第2ステージ」につき説明いたします。
 6ページをお願いします。朝型勤務は,トップの強烈なイニシアティブで始まりました。夜の残業を廃し,朝にシフトすることによって,仕事の効率を上げるというものです。そのためのインセンティブとして,朝に業務を行う場合は,深夜業務と同じ割増賃金を支払い,日々多彩な朝食を無償で用意しました。実施後,直ちに成果が表れ,20時以降の残業は30%から5%に減少しました。夜10時以降の深夜残業は,10%からほぼゼロになりました。あわせて,電気使用量やタクシー代なども大きく減少しました。
 当時前例のない変革だったのですが,多くの社員や労働組合から歓迎されました。また,朝型勤務は驚くほどの反響を呼び,開始後,数百社に及ぶ企業・団体から見学の申入れがありました。当社はその全てを受け入れ,持てるノウハウの一切を提供いたしました。政府からも注目され,2014年6月には,政府の「日本再興戦略」の中に取り入れられ,閣議決定がなされたほか,2015年には,政府の推奨によって,経団連が各企業へ通達を出されました。政府も「ゆう活」という取組を開始され,日本社会の中に1つの大きなうねりをつくることになりました。
 7ページをお願いします。当社の働き方も進化しており,2022年5月から,社員の働き方により柔軟性を持たせ,朝型勤務の精神は踏襲しつつ早帰りも可能とする「朝型フレックスタイム制度」を導入しました。加えて,コロナ禍ではない通常期においても,在宅勤務を可能とし,朝型フレックスタイム制度と併用しながら,仕事と私生活に合わせた柔軟な働き方の実現を目指しております。
 そして,男女問わず,仕事と私生活の両立を支援しております。男性の育児休業の取得促進も踏まえた育児両立手当や,不妊治療に対しての休暇制度を導入しました。
 8ページをお願いします。当社が改革当初より目指していたのは,労働生産性の向上です。改革実施以降,2021年度末で,2010年度の5.2倍へと拡大しました。
 9ページをお願いします。当社のステークホルダーへの還元につきましては,2010年度から2021年度末にかけて,株主配当は6.1倍,株価は4.4倍へと大きく拡大し,株主様への還元はしっかり行うことができていると考えております。なお,2022年度の株主配当は130円を下限とすることをお約束しておりまして,その場合には,株主配当は7倍を超えることとなります。この間,従業員の給料も増えています。
 10ページをお願いします。こちら,当社の人材育成の図です。
 企業理念である「三方よし」に込められた意図を継承し,企業行動指針である「ひとりの商人,無数の使命」を体現できる人材を育成します。
 「OJTによる業務経験付与」を育成の中心として,「評価とフィードバック」によって成長意欲を醸成して,研修によって「知識・スキル習得」を補強しております。
 さらには,個々の適性・キャリアを踏まえた成長機会を付与して,それぞれの分野で活躍できる「業界のプロ」とお客様目線の「マーケットインの発想」を併せ持つ,世界で活躍する人材へと育成してまいります。
 11ページをお願いします。こちらで最後となりますが,これは学生の就職観の変化を表したグラフです。御覧のとおり,楽しく働きたい,私生活と仕事を両立させたい,人のためになる仕事をしたいといった意向が強まっています。こうした就職観を踏まえ,当社でも学生目線の採用活動,それから,若手に響く活躍支援策というものを打ち出しております。
 以上となります。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  続きまして,事前にいただいた御質問にお答えいたします。

【永田部会長】  よろしくお願いいたします。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  それでは,産業界から見た文理横断・文理融合の教育の必要性についてですが,今後の企業というのは,多様化する市場や顧客のニーズに対する課題解決力というものが求められます。当社では,これをマーケットへの発想と称して,大変に重視しております。
 従いまして,文系・理系を横断した知識を習得するというよりも,総じて,課題が何かを発見して,その課題解決のために何をすればよいのか,論理的に考え抜いて解を導き出して,さらには,その解決策のために周囲を巻き込んで,調整して,成功に導く実行力というものが必要だと考えています。前段では理系的な思考というのが役に立ちますし,これは文系の学生さんにも必要な能力になっております。一方で,理系の学生についても,後段のような対話力であるだとか,調整力,実行力が求められる能力となります。
 専門分野を磨くことで生み出されるイノベーションというのもありますので,専門性の希薄化ではない形での文理横断教育が望まれます。一つの学問を研究として突き詰めていく上で,ほかの分野との意見交換をするということは,多様な視点を養う上では必要だと思います。例えば,理系学部の論文の発表の場に文系の学生を入れて議論するなどです。その際には理系の学生は文系の学生にも分かるように説明しなければなりませんし,文系の学生にとっても良い刺激になるのではないかなと考えております。
 昨今,ESG,SDGsなどの大きな潮流の変化に基づいて,企業に求められることも変わってきております。従来の営利主義だけではなくて,社会貢献,地球への貢献などの視点に基づいて,人文科学,社会科学,自然科学の知識を有した上での新たなビジネスを構築する能力が必要となっております。また,新しいビジネスの構築とか,ビジネスの編成をもたらすためのツールとしまして,DXの存在は欠かせないとも考えております。
 このような視点を踏まえて,社会に出る前に文理横断教育を経て,知識を有した人材が企業にとっても有用であると考えております。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 ただいま的場様から概要と,こちらからお願いしていた内容についてのプレゼンがありました。それでは,ただいまの御発表に関しまして,御質問,あるいは,御意見等あればお伺いいたします。いかがでしょうか。
 越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございました。
 朝型に変わることによって労働生産性がちょっと上がったということを,単なる疑問なんですけれども,教えてください。何がどういうふうに変わることによって,労働生産性が5.2倍にまで上がることになったんでしょうか。
 それと,もう一つは,5時から働くということになると,保育園について,会社の中にある保育園で全部収容できるのならいいんですけれども,5時から開けるということになるんでしょうか。そういうところがないと,全体的に支援がしにくいのかなと思ったので,質問いたしました。
 以上です。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  御質問ありがとうございます。
 5時から始業が可能ではありますが,自分の予定に合わせて,6時でも,7時でも,開始時間が選択できます。例えば,保育園への送迎は,在宅勤務を組み合わせると,朝早く、家で仕事を始めて,その後,お子さんを保育園に送って,また家に戻って仕事を再開する,もしくは出社することが可能です。また,お迎えは,仕事を早く切り上げて行くこと等を想定しておりまして,多様な働き方を提供することで,自分の時間を有効活用することが可能となり,業務効率化にも役立っております。
 朝早く仕事を始めると、15時や16時になると集中が切れて疲れてくることがあるかもしれませんので、早めに終業して,次の日の朝早くに集中して仕事をすることも可能です。夜までずるずる,上司が帰らないから座って待っているということはしないよう指導しています。また,夕方からの会議は極力避けて,業務時間内に実施することによって,社員が業務時間内に計画的に仕事を終わらせる事ができるようになり,社員の労働生産性の向上に非常に役に立ちました。
 
【永田部会長】  越智委員,よろしいでしょうか。
 
【越智委員】  まだ聞きたいことはあるんですが,ほかにも手が挙がっているようなので。ありがとうございます。
 
【永田部会長】  それでは,川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  ありがとうございます。大きく2点お聞きしたいと思います。
 御社での採用についてまずお聞きしたいのですが,学部卒と修士卒と博士卒の,細かなところはいいんですが,大ざっぱな割合が、もし分かれば教えていただきたいということと,その中で,いわゆる法経といった文系学部と,工学部と理学部といったいわゆる理系の採用者の中での比率について,もしお分かりであれば教えていただきたいというのが1点。
 もう1点は,この人材育成方針に書かれているのを拝見しますと,OJTによる業務経験付与を育成の中心としてと2点目に書かれているんですが,社員の皆様の学び直しということについて,社外での学び直しの機会,例えば,改めて大学や大学院に戻って学ぶとか,留学もあるかもしれません。そういうことについての会社としての支援の方策というのがもしあれば,お教え願いたいと思います。
 以上です。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  修士に関しては,2割程度です。
 昨今,理系の学生のエントリーが多くなっているという印象はございますが、理系も2割ぐらいです。理系の学生は大歓迎で,多様性が確保される点が重要だと考えております。
 女性も積極的に採用しており,文系だけではなくて,理系の女性にも非常に活躍していただいており,大歓迎でございます。
 また,OJTですが,新入社員は、現場で先輩から手取り足取り仕事を教えてもらいます。また,節目節目で種々研修を用意しており,国内外のビジネススクールに派遣する場合もありますし,eラーニングもたくさんのメニューの中から選べるようになっています。また、当社独自のMBAプログラムも開催しておりますので若手の育成の機会は豊富にあります。
 
【川嶋委員】  ありがとうございます。
 最後の点は,御社からどこかの大学院MBAコースに,こういうプログラムを作っていただきたいという要請をしているということでしょうか。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  そうです。我々の望むプログラムを設計していただき,それを当社の社員が活用しています。
 
【川嶋委員】  ありがとうございました。
 
【永田部会長】  村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございました。
 素朴な質問を,教えていただきたいんですけれども,9ページと8ページのグラフがあるんですけれども,8ページのグラフは労働生産性のグラフなんですが,2010年を1とした指標で,21年が5.2倍,一方で,9ページのグラフで連結純利益,これ,労働生産性のグラフでは付加価値として表されているものなんですが,これも2010年を1とした場合,5.1倍で,ほぼ労働生産性と連結純利益が同じ動きをしていますので,労働生産性の伸びというのは,この連結純利益が伸びていることによって伸びている,こう理解してよろしいでしょうか。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  ご理解の通りで,弊社は労働生産性を経営のひとつの指標としております。連結純利益をこの少ない人数でいかに上げていくかを追求しております。それが給与にも反映され、社員のインセンティブになっています。また、経営に関心を持ち、株価を意識させるために,持株会への加入を推奨しています。
 
【村田委員】  そうすると,20年から21年に急激に上がっていますが,これは別の要因があるんでしょうか。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  社員数は大きく変わっておりませんので、純粋に連結純利益が伸びているということでございます。
理由は、資源価格の高騰に加えて,我々が,こつこつと積み上げてきた生活消費財ビジネスも,順調に伸びました。我々のポートフォリオはバリエーションが多岐にわたり,ビジネスの積み上がりと、資源価格の高騰の相乗効果で一気に連結純利益が伸びたということです。
 
【村田委員】  ありがとうございます。どうもありがとうございました。
 
【永田部会長】  吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  ありがとうございます。
 私の友人にも,もうふた昔ぐらい前の商社の社員だった友人なんかがいるんですけれども,商社というのは,多分,社会状況とか世界の状況によってものすごく,どんどん変化していると思うので,一概に言えないのかもしれないですけれども、その頃,その友人が言うには,要するに,商社というのは一人一企業のようなものであると。要するに,一人一人が自分の能力の,ある意味であらゆる能力を使いながら仕事をしているんだという言い方をしていました。
 OJTというのも,実際に恐らく本当にそうで,現場に飛び込んでやっていくという側面が今でも多分あるんだろうと思うんですね。つまり,知力も必要だし,もちろん体力も必要である,そういう世界だろうと思います。そういう非常に変化の激しい,会社自体も変化が激しい、要するに,国内で会社の建物の中にいたりするという,そういうのではなくて,世界を飛び回るという側面もあるだろうと思うのです。そういう商社が,採用のときにどういう学生を欲しいと考えるのか。それから,学生時代にこういうことをしている学生が商社の会社としては欲しいという,そういうメルクマールといいますか,人事のほうで,こういう人がやはり重要だというのはありますでしょうか。抽象的でも構いませんけれども。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】 弊社は,好奇心旺盛にチャレンジする人を求めています。学生時代に何か打ち込んだものがあり、何かを達成された学生は非常にいいと思っておりますし,もちろん,学業に力を入れている学生も高く評価します。
 個人の力が問われますので、理系の論理的思考と文系の交渉力といったようなものを両方持っている方は非常に強いと思っています。現在は縦割りではなくて,組織横断型のビジネスが増えてきていますので,そういう意味で,文系と理系の両分野への理解が深い学生を大いに求めています。
 あと,データサイエンスを学んだ学生も積極的に採用したいと考えています。
 
【吉岡委員】  ありがとうございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 古沢委員,どうぞ。
 
【古沢委員】  後から申し訳ありません。
 私のほうで手短に伺いますけれど,女性の割合,先ほど女性も歓迎だとおっしゃっていたので伺いたいのと,あと,理系の女性が非常に活躍されているというお話があったので,差し支えない範囲で,どういう分野でどういうふうに活躍されているのかをお聞きしたいと思いました。
 以上です。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】 女性社員は現在24%程度です。採用数は25~30%程度になっています。応募割合も同じぐらいでもっと多くの女性が受けに来ていただけるようPRを続けています。
 理系女性で当社で活躍される方は,数字に強いというところが強みとなっています。経理や財務でも活躍いただけますが、最近は事業投資やM&Aも多く、分析力等、理系の論理的思考が必要となります。
 
【永田部会長】  古沢委員,よろしいですか。
 
【古沢委員】  ありがとうございます。
 
【永田部会長】  そのほか,いかがでしょうか。
 私からも1つだけお聞きしたいのですが,我々から見て,例えば伊藤忠商事というのは世界のトップクラスの商社です。当然ながら,社長室に相当するところは,経営分析や将来分析を行っていると思っているわけです。そのようなところにいる方は,どう調達されているのでしょうか。
 いらっしゃらなかったら,この変動の激しい中で,トップレベルで生き残ることは,大変なことだと思います。だから,どのような方がいて,どうやってリクルートされているのかと思いました。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】 弊社の中で,経営企画を担っているのは,業務部という部署で,経営戦略立案を担当しております。
 当社にはカンパニーが8つございまして、各カンパニー、職能から選抜されたメンバーで、業務部は構成されています。
 
【永田部会長】  そこの文系・理系比率も,大体20%理系とおっしゃっていましたが,先ほどおっしゃったような一般的な比率と同じでしょうか。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  そうですね。理系の社員、女性もおりますし、多様なバックグランドを有する優秀なメンバーで構成されています。
 
【永田部会長】  少ししつこいのですが,システムエンジニアのような方は入っていないのでしょうか。 
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  システムエンジニアはおりません。
 
【永田部会長】  分かりました。
 そのほか,よろしいでしょうか。
 ほかにないようです。的場様,どうも本当にありがとうございました。
 
【的場伊藤忠商事人事・総務部長】  ありがとうございました。失礼いたします。
 
【永田部会長】 どうもありがとうございました。
 文理横断・文理融合教育についてというのは,何回か開きましたが,そろそろ収束させていきたいと思っております。
 実は,もう一社,日立アカデミーにヒアリングをする予定だったのですが,どうしても今日は都合がつかないということで,資料2としてヒアリング内容のペーパーを頂いております。事務局のほうから簡潔に説明いただいて,それから自由討議にしたほうがいいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【柿澤高等教育政策室長】  承知いたしました。
 大学院部会の迫田雷蔵委員からヒアリングを行ったところでございます。こちら,迫田委員の御了解をいただいて,この大学分科会のほうで報告をさせていただく次第でございます。資料2を御覧いただければと思います。
 まず1つ目の丸,理系については,かつては「課題解決能力」をひたすら鍛えていれば仕事になった。課題がある中で皆が頑張ってその課題を解決すればよく,それで国も企業も成長できた。しかし現在は,「課題を見つける力」,「課題を提起する力」が重要になっているということでございます。
 ここで迫田委員,課題解決能力という言葉につきましては,教員ですとか,外から与えられた課題の解を出すという意味で,ここを課題解決力という言葉を使っておられました。
 日本が海外に負けるのはその部分。その意味で,リベラルアーツ教育が重要。課題を発見し解決する力が身につく教育が,現状は圧倒的に足りていない。企業も社会もそういった視点が欠けていると思うということでございます。
 また,2つ目の白丸のところ,メーカーとして危惧するのは,「ものづくり力」でも既に日本は負けているのではないかという点というところ。
 一例としまして,2つ目の段落を御覧いただければと思います。ものづくり全体,トータルで見たときに,本当に勝っているか分からない。例えば,設計の段階では3次元CADでデジタル化されているものが,正式な契約図面は2次元に作り直し,印鑑が必要だったりする。デジタルデータのまま顧客から承認を受けすぐさま発注作業というように自動化されている海外とは大きな違いが生まれている。職人技やこだわりで勝てても,トータルのものづくり全体やサプライチェーンまで見渡すと,日本は負けているのではないかと危惧する。日立としても,世界のトップにいるのではなく,追いかけている途中という認識ということでございます。
 2ページ目を御覧いただければと思います。2つ目の丸のところでございます。DXにつきまして,経産省のDXレポート「2025年の崖」のインパクトが大きかったが,DXとはレガシーなシステムの刷新,ITの課題である,と誤解を与えたのではないか。これによってDXは経営上の課題だというところに思いが至らず,DXに対する意識が経営者の中で低い。
 また,次の丸でございます。大学で行うべき学修については,要は,幅広い教養が必要という話と。幅広い教養や物事を突き詰めて考えること,自分の考えている課題を幅広く捉え過去の文献をひも解くなどは,仕事と切り離してできる社会人は例外的で少数であり,だからこそ,幅広く教養を深め,自ら興味を持って調べる基本的な態度等については,大学時代にもっと学んでもらうべきだと思う。真善美等の価値を判断する基準を考えるなどは,入社後の企業内教育でやれというのは無理ということでございます。
 また,次の丸でございます。即戦力を求めるという観点から,専門性を重視する企業が多くなるのも理解できる。しかし,そういう戦い方でこの先もやっていけるのかという懸念がある。そういう時代ではなくなっているのではないか。課題解決力や頑張る力だけでは戦えない局面が事実生じている中で,昭和,高度経済成長期の戦い方で相変わらずやろうとしているようにも見える。そこは乗り越えていかないといけない。基本的な課題発見力があって初めて専門性も活きてくる。
 また,一番下の段落ですけれども,海外のトップ大学では,幅広い知識を身につけた人材を育てているということから考えると,少なくともリーダー層をどう教育するかは明確にしていくべきだと思うということでございます。
 3ページを御覧いただければと思います。1つ目の丸,総合知について触れられております。例えば,AI等の問題等は,企業として個人に頼る,個人に委ねるのは難しいと思うということでございました。皆が知っておくべきことは皆が知っておくようにする必要がある。検討の段階では様々な立場の人間がいろいろな知恵を出す形でやっているが,具体化する際には,必要な人に必要な知識やルールが行き渡るようにするのが必要。
 企業の中には様々な専門家集団がいるので,個々の社員が全てのことを分かる必要はない。プロフェッショナルが担うべき点は,プロフェッショナルが担えばよいと思う。こういった点は個人に任せ過ぎると,組織としてどこかで止めるという話になり,無駄や手戻りも生じるので,組織としての対応が必要な点。
 また,採用,出口の質保証のところでございます。最後の白丸でございます。デジタル・グローバルで戦う企業は,大学学部までの勉強では圧倒的に足りず,大学院レベルの人材が大量に必要であり,そこから人材を採用するという形にならないと戦っていけない。
 メンバーシップ型でやっていて「元気の良い学生が欲しい」という企業もまだまだ多く,経済界としても意見が分かれるところ。
 個人としては,圧倒的に大学院レベルの人材が足りないと思っており,大学院の進学率が低いのは,国としての生産性で言うとマイナスではないかと思うということでございました。
 また,少なくともリーダーとなる層は大学院まで行くというのは,早く当たり前にならねばならないということでございました。
 簡潔ですけれども,以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 とても素直に書いていただいており,よく分かると思います。迫田様に今日は御質問できないので,そこは残念ですが,こちらも参考にして,皆さんに御意見をお聞きしたいと思っていますが,最初に私から述べさせていただきます。
 ほとんどうなずける内容ですが,海外のトップ大学では,幅広い知識を身につけた人材を育てていると書いてあります。それであれば,海外で育った子をたくさん採ればいいのではないかと思います。日立は全世界企業として,50%ぐらいが外国人だと思います。あらゆる白物家電からアフリカのシャベルカーの輸出まで含めてなので,そのような意味で実践されているのかもしれません。
 少しだけ疑問なのは,ほとんどの大学は,知識を持たせないで卒業はさせていないと思うのですが,このように言われる,そのゆえんは,やはり最初に書いてある,課題が見つけられない。見つけた課題を解決できない,そこから遡及して,結局,知識の幅が狭いのではないかという,これはそのような順番の文章ではないかと思って読んでいます。直接聞けないので残念ですが、そのようなことを思いながら実は読んでいました。
 最初に書かれた大命題である課題を見つける力,課題を提起して,それを解決する。幅広い知識を身につけた人材が日本では育っていないということになって,一方で,ものづくりのところは,職人みたいなのはいる,そのようなことが書いてある。確かに,それは日本がやってきたことの一部だとは思うのですが。私はそう思ってこれを読ませていただきました。
 さて,全般におきまして,もう一度元に戻らなければいけません。ここのテーマは,文理横断・文理融合教育というものの価値,あるいは,価値を認めるのであれば,それをどのようにやっていったらいいのかというのが実は骨子でありまして,みんなで文理融合は大切であると言っているのでは駄目です。文理融合の必要性と,それから,それをどう実践するかという,そこを話し合わないと,ここは最終的にはまとまらないと思います。キーワードはすでにたくさん出ているし,骨子も書かれたとおりなので,ある意味では集約しつつあるのですが,もう一度原初に戻って考えてみるのも大切だと思うので,どのような類いの御意見でもお聞きしたいと思います。
 委員の皆さん,どうぞ。ここで言っておいて,あと,書き手が十分理解した,もうあとは任せてくださいと言えるような意見が欲しいのですが,いかがでしょうか。
 我々も話していて,だんだん忘れるのだが,それを実際にやるという,そこのところにどうしたらいいかというのは政策なので,このようなことをやらないといけないのではないか,あるいは,このような方向に持っていかなければいけないのではないか。でないと,中教審としては全く意味がありません。
 大森委員,遅れてご出席されたのでどうぞ。
 
【大森委員】  すみません。ありがとうございます。
 実際にといったところで,今日お話も伺っていて,前,私も申し上げたことでもあるんですけれども,1つは,一人の人が両方の知見というか,総合的な知見を持っていて,一人で発見して解決していける,もちろんチームを組むにしても,ということと,それから,一方では,プロフェッショナルがいて,プロフェッショナルとプロフェッショナルが協働して解決をしていくというようなことと,どっちというふうに目指すのか,どっちが正解というのか,あるいは,両方ありだよねというのか。
 それで,さっきの具体的な教育プログラムといったときに,例えば,理系の人が発表会をやるときに文系の人が聞きに来てみたいなアドバイスもあったと思うんですけど,それは学びの中で文理を融合する機会を設けていくということだと思うんですけれども。
 幾つかパターンがあって,一人の人が両方持っていけたらいいよねというのと,それぞれ専門を極めつつ,違う専門の人と協働できる力を持てるといいよねというのと,二本立てがあってもいいような気はしているんですが,どっちが正解なのか,私,まだ分かっていないところはあるんですが。何となく,例えばうちの大学なんかだと,隣の工科大の学生と一緒に学びながら,協働してというようなことをやってきていて,そういう力も必要かななどと思ったりもしているところです。という,そういうお話でした。
 以上です。
 
【永田部会長】   迫田様は全くそのとおりおっしゃっていると思います。ものづくりのところで,きちんとできなければいけないと。ただ,そこにはまり込んでしまう人は,そこから生産性とは全く関係ない世界で企業で生きているみたいなのがあって,そうではなくて,そこはお互いいろいろ人が協働して企業の最大利益を上げるように,それぞれの専門を活かすようにと多分ここに書かれています。ただ,違うのは,それを牽引する人は広い視野を持っていろと書いてあると思うのです。
 今ここで大森委員に指摘していただきました。そのような分け方は嫌ですが,リーダーとなる人はどうなのだろうという場合には,多分,誰しもが,その人は一人の中にいろいろ幅広い視野を持っているべきではないだろうか。そうしないと,みんなを束ねていけないだろうと。しかし,それぞれ個々の業態の中では,実は専門のほうが重要であって,そこのところを基盤として人と語り合う,コミュニケーションを取る能力がそこでは一番大切であると大森委員も多分おっしゃっていて,迫田様も多分そうおっしゃっています。それをそのまま認めると,水準差別みたいな感じでよくないのですが,これを具体の現場で考えたときには,多分両方あると思います。だから,それを加味した形で書かないと,全員,リーダーが持つべき素養を持てというような書きぶりになったら多分いけないし,全員が専門家で頑張れというと,これまたおかしいので,書きぶりとして,やはりそのような多様性がある,それぞれの役割として多様性があるということをきちんとうたってから述べないといけないのではないかと思います。
 前から大森委員はおっしゃっていて迫田様もそのような内容であったので,明確に,委員の方々,全部理解したと思います。ありがとうございます。
 
【大森委員】  ありがとうございます。
 
【永田部会長】  吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  今の大森委員の話とも重なるのかもしれないんですけれど,ここを教育の問題,特に大学,高等教育の問題で考えたときに,ずっとここのところで日本がやってきたことの一つの欠陥というのか,落とし穴というのは,やはり能力とか知識というのを個人レベルで捉える。個人レベルの能力とか,個人レベルの知識を測るということに収れんしてきたことなのではないかというふうに思うわけです。
 前にもここの議論のときに言いましたが、大学の持っている重要なことというのは,友人関係ができていく中で,それぞれがいろんな能力を持っているという人たちと接触することで,例えば,この点についてはあいつがすごくよくできるから任せようとか,この点は俺に任せてくれれば俺がやれるみたいな,そういう距離感とか,本来のコミュニケーションの能力というのを育てることではないかなと思うわけです。
 それで,吉見委員が前にも言っていることですけれども,例のミネルバ大学というのは,あれはオンライン教育なんですけれども,実は重要なことは,学生たちは一緒に暮らしているわけですよね。要するに,世界中何か所かにキャンパスがあって,そこを移動しながら,そこでフィールドワークをしたりしながら,しかし,知識というものはオンラインで身につける,専門的な知識を身につけるという,そういう方式なわけです。ですから,要するに,課題はどこにあるのかとか,課題を発見する能力,それから,課題を解決するためにどうすればいいのかということに知識を利用するプロセスというのは,それ全体がミネルバの仕組みになっているというところも重要だろうと思うんですね。
 ここのところでのコロナ以来のオンラインをめぐる議論でも,要するに,オンライン化が,やはり一人でも時間が自由になって勉強ができるみたいな,そういう議論になってしまったところがあって,それはちょっと気になっていたのです。やはり重要なことは,個人の知識とか個人の能力ということよりも,複数の多様な能力をつなぎ合わせていくような力というのを,少なくとも大学時代に身につけていくということが必要なのではないか。
 そのためには,必ずしも寮生活を復活しろとは思いませんけれども,様々なプロジェクトを協働してやるとか,それから,生活を一緒にするということができれば,それに越したことはないですけれども,そういうようなプログラムを積極的に入れていくということがやはり今後必要ではないかなと思いました。
 以上です。
 
【永田部会長】  川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  私もいろいろなことを考えているので,今日の発言は必ずしも論理一貫した話ではなくて,あちこち飛ぶかと思いますので、その点は御容赦ください。
 まず1つは,今日の迫田さんのヒアリングのペーパーを拝見して,私,非常に同意するところが多いんですが,例えば,2ページの一番下の丸のところで,幅広い基礎的な能力と専門能力についてアンケートを取れば,即戦力を求めるという観点から云々かんぬんと書いてあります。この議論というか,この迫田さんの話というのは,高等教育の中のどのレベルを前提にお話しされているのかを確認したいと思います。やはり、ここは学士課程,学部卒の話かなというふうに理解しているんですが。それで,こちらのペーパーも,よくよく見てみると,学士課程を前提にして,文理横断とか文理融合の重要性というのを議論しているのかなと,私はそういうふうに理解しました。
 もちろん,一方で,大学院でも高度教養教育とか,つまり専門だけではなく幅広い教養教育が必要だ、重要だという議論はあることは承知しているんですが,我々の議論の焦点をどこにするのかというのをまず明確にしていかないと,それぞれの観点の違いから,議論が拡散してしまうおそれがあるので,まずそこを押さえた上でというふうに考えています。
 その上で,学士課程に焦点を絞ると,1つは,ここに専門ということが企業から求められているという話があるのですが,学士課程における専門教育という場合,どの程度の専門なのかということは明確にしたほうが良いと思います。よく言われますが,専門の知識って本当に数年で陳腐化してしまいます。むしろ,専門にかかわらず,社会に出てからの基盤となるような資質や能力を、私は以前より知的インフラと呼んでいますが、それを学士課程で身につけて,さらに高度な専門については,迫田さんのペーパーにあるように,大学院でというのが本来的な在り方かなと思っています。
 そこで,学士課程ではどういう教育が必要なのかですが,先ほど答えのない社会で主体的に活動できる人材育成が急務であると,随分前から指摘されてきました。というのも,キャッチアップ型社会であれば、課題や問題は明確なので,その解決に向けて、より効率的・合理的な解を求めることができる教育、そこで育った人材で十分だったわけです。一時,日本の電化製品,自動車が世界を席巻したということがありますが,そのような教育が有効だったわけです。その後,我が国は少子高齢化が急速に進み、さらに地震など様々な自然災害を経験し、資源にも恵まれていないなど、人類共通の多くの課題を抱えており、課題先進国だと言われるようになりました。そこで、どの国も経験のないこれらの課題に対して、問題を新たに整理し,それらに対してどういう解を求めていくかということが日本の社会全体で求められている,そういう議論になってきたわけです。そのような状況の中で、改めて知的インフラを構築する学士課程教育における専門教育の意味や意義を改めて整理する必要があります。また,高校と大学の関係については,京大の前総長の山極先生が,昨年あたりに出版された新書の中で,高校教育と大学教育の違いというのを書かれていて,高校での教育は,一つの正解を見つけるための教育である。ところが,大学では,正解のない問題を極めていくのが大学の教育だと書かれていて,なるほどと思いました。
 高校で一つの正解しかないという教育を受けていると,大学へ入っても自分で問いを立てられない,そういう性向が身についてしまっているというのがあるのではないかと思います。
 ただ,個人的には,今後,探求活動が高等学校教育で重視されるので,そこでは研究に近いような,自ら問いを立てて,情報を集めて分析して,解を出して,それを人々に伝えていくというような活動になるので,私は大いに期待しています。そこで重要なのが、両方の教育を取り結ぶ大学入試になります。共通テスト、個別試験も合わせて、大学入試が、変わりつつある高校教育にどのように対応していくのかというのは今後の大きな課題だと思います。
 大学に入学後の教育ですが,吉岡委員がご指摘の,寮とか,コミュニティの中でいろいろお互いのつながりを求めるということも重要だと思います。その上で,大学教育の授業科目,カリキュラムの中で、幅広い分野を学んで,それぞれの授業科目が全体の知識体系の中で、どういう関係にあるのかという,この前吉見委員は、複眼的な見方とおっしゃっていましたけれども、いろんな分野を俯瞰できるような,資質・能力を学士課程教育の中で育成していくことが重要かと思います。
 そうしないと,海外の大学,特に迫田さんが、アメリカのアイビーリーグとかリベラルアーツカレッジのことを前提にお話しされていると理解しますが,そういう学生には負けてしまうと思います。
 最後に,このペーパーの書き方ですが,いろんなことが書いてあって,先ほどの学部か大学院かということも含めて,私は,大学に求めている三ポリシーに準じた構成にすると,議論が明確になるのではないかなと思います。
 今後,こういう社会になります,予測が難しい社会になります,では,そういう社会でどういう人材が求められるのかという,求められる人材像があって,その求められる人材像はどういう能力・資質を身につけているべきなのか,いわゆるディプロマ・ポリシーとして,獲得すべき学修成果は,こういうものです。学修成果としての文理横断的で俯瞰的な能力を身につけるためには,いろんなアプローチがあります。それが、カリキュラム・ポリシーに相当するもので,このペーパーの中でもまたヒアリングをしましたけど,いろんなアプローチがある。最後はアドミッション・ポリシーで,では,どういう高大接続の仕方が求められますか。先ほど申し上げたように,文系・理系に早期に分かれてしまって,特定の数科目しか受験勉強しないというようなことで,これからの時代、社会で求めている人材像が育成できるのですか。このような構成で、この議論を整理していくと,割と腑に落ちるというか,そういう議論になるのではないかと思います。
 いろいろ拡散したお話ばかりですが,失礼しました。以上です。
 
【永田部会長】  越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございます。
 私も幾つかあるんですけど,高校と大学の間は,やっぱり高大接続で,かなりコミュニケーションが取れてきているのではないのかというふうに私は思います。その一方で,大学と会社というんですか,それもポストかアンダーグラジュエートかで少し違うと思うんですけど,それのコミュニケーションが十分取れているんだろうかとちょっと思うんですね。
 だから,この中に書き込まないといけないということなので,書き込むということになると,やはり多様性というような書き方しかできないのかも分かりません。その結果,全部,何か言われるとずっと金太郎飴みたいになって,同じような方向にこの議論も流されていったりするような傾向がちょっとあるのではないのかなとはちょっと思います。
 それで,アメリカ型がいいというのであれば,もうアメリカ型をそのまま輸入するのがいいと思うんですけれども,しかし,そうではやはりないと思うんですね。やはり日本は日本の伝統があって,その中にいかにうまくアメリカ型のいいところを取っていくかというところで,皆さん苦労しているんだろうと思います。
 一方で,さっきもお話があった伊藤忠の方の話では,何か一つのものに熱中してやり遂げてくれる人とかいうことになると,やはりサッカー部のキャプテンだったような人を積極的に採ろうかという話にもなると思うんですよね。ですから,この中では,私自身は,社会が一体となって大学を考えていくという考え方が要ると思います。
 一つの解について,確かに正解を求める傾向はあるんですけれど,今はもう徐々にそういう傾向が変わってきているのではないかと思うんですね。特にスーパーサイエンスハイスクールとかでは,今大学でやろうとしているようなことを前倒ししている。ところが,入試になって,やはりもう一回元に戻ってしまう。一つの正解を求めるような方向に帰っていく。私はそれが一番大きな問題ではないかと思って,幾つかの場所で提言もしているんですけれども,入試の在り方というのをやはり考えていくということも,大学のことを考えると,必要ではないかと思っています。
 それと,密度の濃い主体的な学修ということに関しては,具体的にお話ししますと,観点学習とか,ウェブ上のオンデマンドの良質な授業などを活用するのも有効だろうと思いますし,今,吉見委員も言われたかも分かりませんけれども,広島大学では,同時期に受講する科目を減らして,授業時間以外の学習時間を確保すると。だから,ターム制にして1科目を週に2度実施するということで,ある程度,授業時間以外の学習時間を確保し,十分それに集中できるようなシステムを取っていくというようなことをやっております。
 私の話もちょっと雑駁になったかもしれませんけれども,以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 小林弘祐委員,どうぞ。
 
【小林委員】  よろしいですか,小林弘祐でございます。
 議論も尽きないとは思うんですけれども,9月4日に教育未来創造会議からの第一次提言が出されていて,その中を見ますと,文理横断・文理融合教育のことが項目としてあるんですけど,その中が,我々,中央教育審議会の大学分科会において審議するのはどれかと思って見てみると,学修の幅を広げる教育の推進等についてと書いてあるんですね。その項目は,リベラルアーツ教育の強化や複数専攻の学修の促進,これが教育未来創造会議が我々に求めていることではないかと思いますので,その中で,議論があまり拡散するよりは,そちらのほうにもうちょっと集中して議論を詰めたほうがいいのではないかと思います。
 期間は来年の3月までぐらいに工程表はなっているので,時間はあるんですけれども,やるべきことを先にやってからいろいろ議論したほうが,安心して議論できるような気もしました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 日比谷委員,どうぞ。
 
【日比谷委員】  日比谷でございます。ありがとうございます。
 私も,ちょっとこの全体が総花的になり過ぎていて,あれもこれもというふうになっちゃっているかなという印象を受けています。かねてよりの持論でございますが,先ほど越智委員が,ターム制にして週に複数回授業をする,単位数も増やしてとおっしゃっていましたけど,ようやっと私が10年以上も言ってきたことが実を結んできたかなと,大変にうれしく伺いましたけれども。
 ここで言うと,9ページの上のところで,履修科目数がとにかく多いと。なので,精選・統合とか書いてあるんですけれども,ここはやっぱりもっとフォーカスしたほうがいいかなと思います。というのは,文理横断とか文理融合と言っていると,じゃ,あれもやらなくちゃいけない,これもやらなくちゃいけないというので,逆の方向に走ってしまうのではないかなということを私は非常に心配しています。あれもこれもやればいいということを言っているわけではないということは,やっぱりしっかり書くべきかなと思います。
 それから,もう一つは,先ほどどなたかがおっしゃった中で,大学院でも教養教育をする動きというのは確かにあるんですけれども,私は,学士課程でそれがしっかりできていれば,大学院へ行った人は,何かプログラムがあってするというようなことではなくて,それは自主的に学問研究を進めていく中で,自らできるようになっていないといけないと思いますので,そのためにも,やはり学士課程でのリベラルアーツ教育の充実ということが求められていると思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 だんだん皆さん,書きぶりをどうしたらいいかという心配になってきているみたいで,そちらへのサジェスチョンが増えてきました。
 益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】  ありがとうございます。益戸です。
  私からは、企業側ではこのような変化があり、それによりこんな問題が起っているという事をお伝えしたいと思います。
 様々な社会変化により、教育の方法にも大きな変化が求められています。例えば、年功序列型終身雇用が変化してきたと。この雇用形態は今後も残るとは思いますが、益々ジョブ型雇用も増える方向です。もう一つは、スタートアップ企業増加が日本においても非常に重要です。もっともっと増やしていかなければいけませんが、ジョブ型ですとかスタートアップ企業などは、今まで以上に深い専門性と幅広い議論をする力などが成功のカギです。ですから、今までの仕事の仕方と変わった点を、教育で更にバックアップしていくかという観点は非常に重要だと思います。
 それから、よく多様性という言葉やコミュニケーション能力という言葉が使われますが、これは、以前は、いろんな人がいるねとか、うまくお互いに意見を話し合えればいいねという意味合いが強かったかもしれませんが、今はある一定以上の知識と知恵がないとお互いに議論はできないのです。片方が全然何も分からなかったらコミュニケーションが取れないのです。現実にはそういうことが起こっています。ですから、学士レベル、修士、博士の段階で、それぞれ違いがあるような教育をしないといけないのではないでしょうか。ちなみに,ある一定基準の知識・知恵を持っていなければいけないというのは、最低、学士においては当たり前ということだと思います。
 最後に申し上げたいことは、これは書きぶりに非常に気をつけなければいけないとは思いますが、エリート教育ないしはエリートを育てるということは、非常に重要なことではないかと思っていて、企業において、例えば、MBA取得の留学をさせるとか、他の組織に若いうちに出向するのは、これは、エリート教育なのです。選ばれた人間が行くわけであって、手を挙げた人間が行けるわけではないのです。ところが、社会経済のテンポが速くなってしまったので、企業が従来のスピードで人材育成する前に、ある程度出来上がった優秀な学生が出てきて、スタートアップの会社をやっていくとか、ジョブ型で会社の収益部門を引っ張っていくことがより必要になってきています。それは行政機関や政治においても,同じことが言えると思います。やはりエリート教育というようなものをどう表現するかというのは、一つの大きな課題でありますし、ぜひお願いしたいことだと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 大森委員と古沢委員,手が挙がっています。その順番で,一旦ここまでとさせていただきます。それでは,大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  2回目で申し訳ありません。短くします。
 文理融合・分野融合ということを言ったときに,ちょっと振り返って反省したときに,我々というか,私というか,大学教員って本当に文理融合の人材なのかなというのをちょっと思ってしまって,結構専門に,特に学会の中でぐっと専門に入っていっているという感じは実はあるなと。
 今議論しているのは,学生たちが文系的な科目も,あるいは理系的な科目も一緒に受けられるといいよねみたいなイメージなんだけれども,ただ,ここの中で,書きぶりに入っちゃうんですが,例えば,その両方をミックスしたイシューベースのプロジェクト学習なんかも有効だみたいに書いてあるときに,一人の教員がまたそれを指導できるかみたいなところのときに,やっぱり大学においてもチームティーチングみたいなことも意識を変えていかなければいけないのではないかというようなことは,重要なのかどうかあれですけど,そこは結構ポイントにもなるのではないかなと思ったので,一言付け加えました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 古沢委員,どうぞ。
 
【古沢委員】  ありがとうございます。
 私も,ほかの委員がおっしゃっているように,やっぱり高大接続の問題は非常に大きいなと今までの審議の中でも実感していまして,特に,ボリュームゾーンである私立大学を受験し,併願の事前などもあって,なかなかやるのは難しいというお話もヒアリングでお聞きしましたけれど,この問題の解決こそが大学教育を変えていくことになるのではないかなと思います。
 ちょっとそういうペーパーにも影響があったかもしれませんけれど,以前からずっとされている共通テストの基礎的なレベルのテストについて,実際に大学によっては,AOとか推薦で学力試験をあまり課していないようなところは使いたいという声も聞いております。そういったものを,やっぱり任意で使うような形のものを今後検討する価値はあるのではないかと思います。高校生にとっても目標になるものを,広い高校生の目標になるものもちょっと考えていいのではないかと個人的には思います。
 それと,政府,未来創造会議のほうで経営学部の割合の話が出ていまして,いろいろ文科省のほうでも検討しているようですけれど,何らかの見解というか,編集があってもいいのかなという気がしております。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 御意見いただいているのですが,やはり皆さん,どうやってまとめるのだという危惧があるので,そこに今日はたくさん意見が来ました。
 でも,どうしても,大森委員が先ほどおっしゃったように,教員はそれぞれ専門家であって,文理融合を,経験しているかもしれませんが,その人が全部やるわけではありません。そのように考えると,リベラルアーツの理解が違う。やはりいまだに政府の官邸の会議も,リベラルアーツが定義できていないのではないかと思います。ですから,文理横断,せっかく題名に上がっているので,教養教育ではないということをきちんとと理解しないといけないと思うのです。
 リベラルアーツというのは,皆さんがここで言っている,文理のそれぞれのコンポーネントの本当に基礎部分,本当にここがこうであるという,それを専門家に習うことを言うわけで,一般教養として習うことではないわけです。そこのところが1つです。
 ただ,迫田様の書いている中で,会社に入ってから真善美の基本は教えられないと書いてあるわけで,これが,答えなのではないかと思います。ただ,もともと真善美の全てを教えるのは無理だと思うのです。真善美というものを,例えば,理系のこの科目と文系のこの科目を通して学ぶのではないかと思うのです。それができていればいいのであって,おっしゃるとおりで,企業で真善美なんかやっている暇はない,そんなの教えられない,もうある方向に出来上がっている。
 であれば,そのように考えればよくて,リベラルアーツという問題と文理融合なり横断というのが,真善美というのは,この間のフィロソフィーみたいなものであり,少しおかしくなるかもしれませんが,そこの基本の基本だと思うのです。それを理系の人,文系の人がそれぞれ学んでいないというのが大問題だということは,だから,入試がまずいだろうというところにつながっていて,外に出ると,理系の人が文系の真善美に関わる何か一つでも理解していてほしいし,文系の人が理系の何か真善美のどこかを一つでも知っていてほしい,そうであればコミュニケーションは取れるではないか。相手のことを,専門は分からないが,その人が専門にしている基盤だけは分かるので,何をお互いに話せばいいかぐらいは分かるだろう。そういう意味なのだろうと思うのです。だから,そのような意味に捉えていかないといけないのではないか。
 それが,先ほどは書きようとしては,私もある程度賛成ですが,川嶋委員の出口・入口というか,逆かもしれない,どちらから書いたらいいのか,出口から書いたほうがいいかもしれませんが,もう一個,今日話すのが出口の質保証です。実は,今回答申されている3つ,(1)(2)(3)とあったものは,実はそうなっています。入口から出口までの話なのです。まとめて書くわけであり,文理融合だけ書くわけではないので,(1)(2)(3)を書くわけです。そのように考えたら,やはりそのような書き方がいいのだろうと思います。そうすると,先ほど言ったように,入試の問題も必ず入口で議論になるだろうし,どのような能力を身につけていればいいかというのは,学修,習得の度合いのところで出るだろうし,各大学の個性豊かなカリキュラムでそれをやればいいということになって,そのカリキュラムでは,あれとこれを教えなさいではないと思っています。要するに,文系における真善美とか,理系における真善美を,何かの科目を通じて学べばいいのだろうと思うのです。
 それと,もう一つ,今日も出てきた一人で全部行うのは無理だから,やはり専門家としてある程度分かっていれば,あとは専門を磨いてくださいというのは本心だと思うのです。しかし,先ほどエリートとおっしゃったのですが,リーダーやエリートになる人は,それは高いレベルで両方を理解していてほしいわけです。いろいろな人がいるのだから,Aさんだけではなくて,A,B,C,D,Eさんという理系の人と,F,G,Hの文系の人がいるわけですから,そんな簡単なことではないと。だから,そこをどう書くかは,やはりきちんと考えないといけないと思って聞いていました。
 ですから,もう一度,中間まとめの審議経過のメモも,順番を変えたり,場所を変えたりしながらやらないといけなくなってきました。別に捨てるものはないし,書いてあることが別に悪いわけではないのですが,理解しにくいです。
 本日はここまでとさせていただきまして,そういった3つ課題があるのですが,あと2つのうちのもう1個の課題を今日少し始めようと思っています。それが,密度の濃い主体的な学修を可能とする学修者本位の教育の実現,ディプロマ・ポリシーに定める卒業生の資質・能力を保証する「出口の質保証」です。「出口の質保証」が徹底され,社会との「信頼と支援の好循環」を形成する仕組みづくりについて議論をしたいというわけです。
 文理横断ではなくて,出口の質保証,これをどうするかということで,事務局で用意した資料がありますから,それを一緒に見たいと思います。事務局,お願いします。
 
【柿澤高等教育政策室長】  それでは,資料4-1を御覧いただければと思います。今回,「出口の質保証」に関する議論の1回目という形になりますので,主な論点ということで,幾つか用意をしております。
 まず(1)でございます。「出口の質保証」の意味するところは何かということで,1つ目のポツ,一人ひとりの学生が,密度の濃い主体的な学修を通じて「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)に定める資質・能力を身につけることを保証するための大学による教育上の営みと言えるのではないか。
 その際,ディプロマ・ポリシーに定める資質・能力が,大学の使命や目的に基づくだけでなく,卒業生を受け入れる社会のニーズ,期待を考慮していることも求められるとしております。
 また,「出口の質保証」の前提として,ディプロマ・ポリシーを起点として3つのポリシーを一貫性のあるものとして定め,アドミッション・ポリシーに基づく入学者選抜,カリキュラム・ポリシーに基づく計画的・体系的な教育が行われることが重要としております。
 (2)でございます。「出口の質保証」とは,上記のとおり,およそ大学教育の質保証に係る取組全般に関わるが,これが求められる背景としてと,次のところは経団連の文章の抜粋になります。「わが国の大学は,定員管理上の必要性や就職を希望する学生への配慮などから,ともすれば必要な能力や資質が身に付いていない学生であっても卒業・修了させることがある。そのため,3つのポリシーのうちディプロマ・ポリシーが十分に機能しているとは言い難」いといった見方があることを踏まえれば,「出口の質保証」に特に密接に関わる取組として,例えば次のようなものが挙げられるかということで,1つ目としては,個々の授業における成績評価や学位授与の前提となる卒業認定を厳格に行い,その信頼性を確保すること。
 2ページ目へ行きまして,2点目として,学修成果・教育成果の把握・可視化を図ること。そして,学修成果・教育成果等についての社会に対する積極的な情報公表などとしております。
 また,(3)としまして,成績評価への信頼性の確保や学修成果・教育成果の把握・可視化に向けて,どのような取組が求められるか。
 (4)としまして,「密度の濃い主体的な学修」を実現する上で,ST比の改善等による教育体制の充実が必要であるとの指摘もあるが,どのように考えるか。
 (5)「密度の濃い主体的な学修」を促す観点から,各大学においては,どのような教育課程上の工夫が必要であると考えるか。
 (6)としまして,学修管理システム(LMS)の導入やオンラインによる遠隔教育の普及・進展は,「出口の質保証」を徹底する上で,どのような効果があるか。通信制における質保証の取組も参考になるのではないか。
 また,(7)としまして,「出口の質保証」がなされている大学・学部等を積極的に評価,支援していくためにはどのような取組が考えられるか。この点,参考としまして,質保証システム部会審議まとめにおきましては,「学修成果の把握や成果に関すること」を大学評価基準に追加するということが提言されておって,今後これを踏まえた対応があるということでございます。
 また,(8)としまして,大学における「出口の質保証」の取組を進める上で,産業界とどのような連携・協力が求められるかというところでございます。
 資料4-2につきましては,今御紹介した論点に関係する参考資料を用意しております。ごくかいつまんで御説明申し上げます。
 おめくりいただきまして,2ページ目,これは3つのポリシーに関するガイドラインというところで,よく御案内の内容かと思います。
 また,3ページ目以降で,これまでの各種審議会や会議等における提言の中で,「出口の質保証」に関する指摘ということでございまして,4ページ,5ページでは,教育再生実行会議,令和3年6月に取りまとめられた第十二次提言のところでございます。5ページのところにありますとおり,「教学マネジメント指針」に基づいた教学の改善・改革が必要だといった指摘がされているところでございます。
 また,6ページ,7ページのところは,先ほど御紹介もいたしました,経団連が本年の1月に取りまとめた提言でございます。経団連提言の中でも,カリキュラム・マップ,カリキュラム・ツリー,あるいは,キャップ制といったところについても具体的な言及があるところでございます。
 また,資料の8ページになりますけれども,こちら,教育未来創造会議の第一次提言,本年5月に取りまとめられたものでございます。ここのところで,下線が引いてあるところ,修業年限だけで卒業させることなく,大学修了時までに必要な資質能力を身につけさせ,厳格な卒業認定を行う「出口の質保証」の確立を図るとともに,真剣に学び,育った学生は,その後巣立つ社会において正当に評価されることも必要であると。この後にST比への言及もございまして,そのためには,教員一人当たりの学生数(ST比)の改善等を通じて,密度の高い主体的な学修を実現するための適正な教育環境が整備されるとともに,学修成果や大学の教育研究の状況が高い透明性をもって公にされることも必要であるといった指摘があるところでございます。
 次に,少し飛びまして,11ページ目以降のところで,「成績評価」あるいは「学修成果と教育成果の把握・可視化」関係で参考資料を入れております。
 こちらの部分につきましては,基本的には,教学マネジメント指針が,この学修成果・教育成果の把握・可視化,あるいは,成績評価の信頼性の確保といったところで様々な記述を入れておりますので,そちらを少し抜粋しているところでございます。
 また,実際の大学の取組の状況というところで,15ページ以降に少しデータを紹介しております。
 成績評価基準の明示ということでは,全ての科目をシラバスにより明示している大学が98.4%ということで,非常に定着しているというところでございます。
 また,ルーブリックの活用というところにつきましては,全ての科目をルーブリックにより明示というところは5.4%,一部の科目をルーブリックにより明示というところが28.2%といった数字もございます。
 また,16ページへ行きまして,GPA制度の活用を行っている大学も非常に多くなっているというようなところでございます。
 18ページ,19ページは,また「教学マネジメント指針」の学修成果・教育成果の把握・可視化関係のところになりますけれども,ここもデータが少しございます。20ページを御覧いただければと思います。
 課程を通じた学生の学修成果の把握状況ということで,これを行っている大学が60%ということになっております。ここで意味するところは,単に大学としての単位の認定や学位の授与を行う,あるいは,卒業判定を行うということではございません。それであれば全ての大学が行っておりますので,100%になります。そうではなくて,ここではアセスメントテスト等を用いることにより,何らかの客観的な測定方法等を用いながら学生の学修成果の把握を行っている大学の割合というところで,そこが6割ということでございます。
 具体的なところは21ページのところにございまして,例えば,把握方法というところですが,標準化されたテスト,学生の学修経験を問うアンケート調査,あるいは,ルーブリック,学修ポートフォリオ,そういった様々な方法があるというところでございます。
 次に,22ページから,密度の濃い主体的な学修関係というところでございまして,23ページで,これは今日の会議でもございましたけれども,日本の学生,非常に履修している科目数が多いといった状況が23ページでございます。
 また,24ページ,25ページ,今日,プロジェクト学習の重要性といったお話もございましたけれども,24ページを御覧いただきますと,ST比が高い社会科学系学部は,アクティブ・ラーニングの実施率が比較的低いといったデータ。
 また,25ページになりますけれども,ここは卒業論文・卒業研究の必修化というところで,これは学部全体で行う学部は66%,また,分野別で見ると,理工農系が当然高いということにはなりますけれども,ST比が比較的高い社会科学系学部の中でも,ST比が高く大人数授業を実施する学部であるほど,卒業論文・卒業研究必修化の実施率が低いといった数字もございます。
 26ページ以降で,LMS,オンライン教育関係というところがございます。
 27ページのところで,LMSの導入状況が入ってございますけれども,これは令和元年度までの数字でありまして,これはコロナ禍におきましては,飛躍的に数字が上がっているのではないかということでございます。2021年にOECDが出したレポートの中でも,世界的に見ても,PMSの導入が飛躍的に伸びているということがございますので,今後,コロナ禍においてどう導入が進んだのかというところ,また新たな調査結果が出てきましたら,会議のほうでも紹介させていただければと思っております。
 また,28ページ,29ページは大学通信教育のところでございます。質保証システム部会の中でも,遠隔教育の質保証のためのガイドラインを策定するということが提言されましたけれども,その際にも,大学通信教育のガイドライン等も参考になる,そこの取組も参考になるのではないかといったことがございましたので,ここで少し紹介をしております。
 29ページを御覧いただきますと,そもそも入学している学生の属性というものも違うわけですけれども,通学制大学においては,最低在学年限,つまり,4年間超過学生割合が3.3%。ここは通信制の場合は,この最低学年数超過卒業者の割合が58%と。そもそも4年間で卒業することを目指して通信制に入っているわけではない学生も多数いるということではございますけれども,こうした通信制においても,どうした質保証の取組をしているのかというところは,オンライン教育ですとか遠隔教育の質保証等を考える上でも参考になるのではないかということで,資料として入れております。
 次に,30ページ目以降は,「出口の質保証」の評価等というところでございます。
 先ほど学修成果・教育成果等について,社会に対して積極的な情報公表ということを申し上げましたけれども,1つの例としまして,イギリスにおけるTEF(Teaching Excellence Framework)というものがございます。こちら,2016,5年から始まりまして,今,全ての大学が参画していくことになっているわけですけれども,6つの指標に基づいて評価を受けるということで,これが金銀銅の評価になるというような仕組みでございます。
 32ページ目を御覧いただきますと,教育の質,学習環境,学生の成果及び学習の効果といったところで,6つのコア指標があるということで,その結果に基づいて金銀銅といった結果が出るというようなところでございます。
 1点だけ留意点を申し上げますと,このTEFの取組自体は,イギリスの大学を,日本の大学について,たまに偏差値ランキングというような形で,上から下へ並べるというような発想がございますけれども,このTEFはそういう形ではなくて,むしろ学生の属性ですとか,社会人学生の割合がどれくらいいるのか,フルタイム・パートタイムはどうかとか,そういった様々な大学の環境などから,同じような環境にある大学であれば,どういう数字を残しているのかと,そういったベンチマークの考え方で金銀銅という形を出していくという形なので,必ずしも,いわゆる選抜性が高いですとか,研究力が高いところが金になるというような形の評価ではないということでございます。
 最後に,35ページ目のところで,産業界との連携・協力という部分でございますが,36ページ,こちら,経団連のアンケート結果でございますけれども,「大学での学修履歴」を最も重視する学生の学修経験として挙げる企業が多いというところでございます。一方で,最も重視する大学での学修履歴というときに,大学での学修利益を特に問わないという企業も2割程度は存在するというようなところでございます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 新しい話題なので,まだ完全につかみ切れていない可能性もありますが,この「出口の質保証」,今日は自由に御議論いただいて,次回以降のネタにしたいと思います。いかがでしょうか。
 益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】  益戸です。資料4の2ページ目、(4)番に、「密度の濃い主体的な学修」を実現する上で、ST比の改善等による教育体制の充実が必要である、どのように考えるか、というところが出てきます。これは企業で言いますと、従業員一人当たりの売上であるとか、従業員一人当たりの収益化みたいなふうに私は捉えたのですが、これは決して全ての方に分かりやすいKPIとは思えないと思いますが、いかがでしょうか。様々な分野もありますし、レベルの違う大学もありますから、これ自体をKPIと捉えるのは再考すべきと感じました。
 次に、大学の質保証の本質はどんなことなのか考えてみたいのですが、極めて単純で、大学卒業時点で学生がどういう能力を身につけているのか、それがやはり社会ですとか企業などの第三者から見て、分かりやすく理解できるものでないといけないのではと思います。
 最近は、学生が大学で何を学んだのかを見ている企業も増えたと思います。Aの数だけではなく、例えば学生時代の集大成である卒業論文などです。企業においても、何かプロジェクトをやったり、新しい業務にチャレンジするときには、卒論と同じように多くの文献などをネットでいろいろ調べて、自ら論理構成を考え、それなりの文章をしっかりと書かなければいけないわけです。卒論を仕上げるという事は、多分学生の皆さんにとって、それまでの人生では経験したことのない一大プロジェクトだと思います。それをしっかり経験しておくことは大切なことではないでしょうか。以前の部会で、学生時代にもっと学業の負荷をかけてはいかがかという趣旨の発言を致しましたが、まさにそれが卒論ではないかと考えております。
 もう一つ、この参考資料を見ますと、大体全ての学生が卒論を書いて卒業するものだと思っていましたが、必ずしもそうでもない事がわかりました。一般的には意外とこのような現実は知られていないと思いますので、もう少し詳しい現状を事務局から頂ければありがたいと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございます。私から3点申し上げたいと思います。
 まず大きいところで言いますと,いわゆる学修成果の可視化,この参考資料にもたくさん出ているんだとは思いますけれども,これをどうするかということが一番重要なんだろうなと思います。もちろん,学修成果の可視化をどう図るかというのは,なかなか難しい問題でもあるんですけれども,逆に,若干違うんですが,いわゆる認証評価の第3期,内部質保証というのはキーワードになっていますが,この内部質保証,PDCAをどう回すかということなんですが。基本的に内部質保証というのは,教育の質保証ですから,まさにどういう形で学修成果を可視化していくのかということと直結するわけで,内部質保証をどうするかというときに,各大学が,それぞれの大学のやり方で学習教育の質保証をどうするかということをちゃんと出していくということになっているので,ここをもう少しちゃんと強化していくことがまず重要なのではないかなと思います。
 2つ目は,先ほど益戸委員も言われたところで,ST比のところなんですが,益戸委員は,ST比は利益率みたいな,アウトプットというふうにおっしゃったんですが,むしろST比は,これは教育にとってのインプットなんですよね。これを今さら指標にするというのは,ちょっとどうなんでしょうと。ラーニングアウトカム,学修成果と言っているときに,インプットを指標にするのはどうなのかな。密度の濃い主体的な学修というところから,ST比がというのは,確かに結果としてそうなっているのかもしれませんが,益戸委員おっしゃったように,卒業論文を課すとか,あるいは,今やオンデマンドだとか,オンラインだとか,いろんなツールがあるわけですから,ST比が必ずしもいいとは思えないので,ここはちょっとどうなんだろうなと思います。
 それから,もう一つ細かい話をしますと,今日の資料にも出ていましたように,質を保証する,出口をちゃんと管理するという意味では,GPAをもう少しちゃんと使うようにすることが重要で,例えば,10%の大学ぐらいがGPAを卒業判定に使ったりしている。例えば,2.0とか1.5と極端に低いGPAの場合は卒業はできないんだとかというふうな形にするとか,そういう工夫も今後必要なのかなと思いました。
 私からは以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  ありがとうございます。川嶋です。
 幾つかあって,まず1点目は,先ほど益戸委員も御指摘されましたけれども,もう少し最新かつ詳しいデータを頂けないかなということです。例えば,先ほどの資料4-2の25ページに卒業論文・卒業研究を課しているデータがあるんですが,これ,朝日新聞と河合塾の調査で,なおかつ2017年ですので,もし文部科学省独自のこのようなデータがあれば,なおかつ,より最新のものがあれば,議論の参考としてぜひお願いしたいというのが1点です。
 2つ目は,ST比のことについては,村田委員がおっしゃるとおり,むしろもう少しミクロレベルで,例えば,STというのはマクロなので,もう少しミクロレベル,例えば,15名以下の授業科目が全体の科目の何%あるとか,そういう指標というのの公表を求めると。
 ちなみに,これは雑談ですけれども,アメリカの大学ランキングで,コロンビア大学が15%以下の授業科目数を過大に報告したというので,2位から十何位に下がったのと,そんなのがあるんですけど,正確な情報をちゃんと出すようにするというのが,このST比に関しては,そういう少人数科目のパーセントを公表するということも必要なのかもしれません。
 そもそも,これは先ほど日比谷委員もおっしゃっていましたけれど,このデータを見ると,やはり学生の4年間の学びがすごくいびつなんですね。1年生,2年生でたくさんの科目を取って,学年が3年,4年になると,就職活動ということもあるんでしょうけど,ほとんど授業に出ることがなくなってきている。これをまず均等にするというのが非常に重要かなと。
 なおかつ,科目数が多過ぎるというのが,やはり浅い学びになってしまっているので,そういう意味では,キャップ制というのが今努力義務になっているんですけど,また,実際,キャップ制を導入している大学もあるんですけれども,それは実質化していない。形式化していて,年間上限50単位までとか,全くキャップ制の意義が分かっていないようなキャップ制を導入している大学もあると思うので,ここをしっかりとしていってはどうかということです。
 それに加えて,先ほど村田委員も日比谷委員もおっしゃっていましたけれども,授業科目数を少なくするキャップ制を導入すると同時に,複数回開講,一つの科目をしっかりと深く学ぶという,そういうことで,この密度の濃い主体的な学修を可能とすると。
 最後に,卒論の話も出ていましたけれども,言わば124単位で,例えば,2単位の科目を数十科目,それぞれ合格することで,最終的に124単位を獲得して卒業するということなんですが,これは卒業時の出口の質保証という観点からいくと,各授業科目が必ず学修成果というか,DPをひもづけられて,その上で各授業科目できちんと成績評価がなされていれば,124単位というものが,大学が示しているDPをきちんと獲得した上で卒業できているという証になるかもしれませんが,必ずしもそういうつくりにはなっていないということ。
 それから,もう一つは,個々の授業科目の成績評価って,ある意味で形成的評価なんですね。それぞれ,それぞれの評価と。やはりもう一つの評価である総括的な評価というのも,質保証については必要かもしれない。そういう意味で,益戸委員おっしゃったような卒業研究とか卒業論文というのも必要かなと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】   ありがとうございます。
 今の卒業論文とか,それの単位ですが,多分,どこの大学も,例えば,卒業研究を20単位と置いているところはないと思うのです。私はいいと思うのですが,置けないです。多分,今の各ディシプリンで教えなければいけない内容を見ると,そのようなことを行ってしまうと教えられないという恐怖心がそこに先立ってくるわけです。いや,もっと言えば,4年生,卒業研究28単位と設定して,2単位だけ自由にしてくださいと言われて,やるわけがありません。多分,それはやはり医学なんかは顕著なわけで,学ばなければいけない内容があまりに多くて,とてもではありませんが,そのようには組めないとは思うのです。だから,124で収まらなくて,どんどん今増えているのではないかと思って危惧しています。
 大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  すみません。ありがとうございます。
 今,川嶋委員がおっしゃったこととちょっと関連するんですけど,テクニカルなところというか,基本的に,大学の出口の質保証って,教学マネジメント指針以降で言うと,ディプロマ・ポリシーを達成したかということにある意味集約されたというふうには思うんですけれども。そうすると,各大学さんのDPの書きぶりとして,川嶋委員おっしゃったように,124単位を取ると,イコールDPが達成されますよという書きぶりになっている大学さんと,124単位を取った上で,こういう能力を備えた場合に学位記を授与しますという書きぶりになっている大学さんとがあって,それは教学マネジメント指針でも,そこは最終的に結論が出ないというか,だったかなと。つまり,124だけが大学教育ではないみたいな議論もありながら,例えば,課外も含めたとかいうこともあって。
 ただ,そのときに,これはテクニカルに教えていただきたいんですけど,4年間と学則に定められていたとして,そして,その4年間いて124単位を取ったのに,例えば何とかチェックテストでDPが達成できていないというふうに判定された場合に,124で4年間いるのに卒業させないという権限というか,それが大学に可能なのかどうか。これは結構大きなポイントになってくると思うんですが,それ,どなたかお分かりの方が……。
 教学マネジメント指針の議論のときは,それは駄目なんだよという話をどこかで聞いたような気がするんですね。そうすると,質保証の仕方って,結構124にかなりひもづけたことを考えていかなければいけないということになるかなと思うんですが,どなたか,お分かりですか。
 
【永田部会長】  124単位というのは1つのメルクマールになっているのですが,違ういい方をしてみると,例えば,委員がおっしゃった中で,例えば,全部61点で124単位取りました。その人を総合的にその大学として判断してみたときに,良いのかどうか。全部61点だと,ある意味到達していないかもしれない。それは今でもあり得て、委員がおっしゃったことだと思うのです。ですから,そこは,124単位取ったから卒業できますというのは,高校ではないので,やはり大学のディプロマ・ポリシーそのものに私はよると思います。
 今の例は分かりやすかったと思うのですが,幾ら何でも,みんな不合格にならない点数を何十科目並べて,それで大学にはいました,だけど,大学で学びましたになるかというと,単位は取ったということです。単位修得から考えれば,それは,分科会のほうで清水一彦委員がたしかおっしゃっていて,単位取るだけではないという話だと思います。
 
【大森委員】  ありがとうございます。
 そうすると,必ずしも124取って4年間いたからといって,相当に説明責任は必要になるけれども,卒業できないよということもあるし,さっきどなたかおっしゃっていたGPAとの絡みで,今うちも,例えば,ナンバリングとGPAの計算の仕方をもう一回,ナンバー1の科目ばっかりを取ってGPAが高いと言えるのかみたいなことも議論が始まっているんですけれど,そういうことも含めて,結構考える余地が広がるのかなと思って。
 
【永田部会長】   ディプロマ・ポリシーが正確に書かれていないから駄目なのです。大学院では幾らでもあって,Cell,Natureなどで3報書いたとしても,平気で落ちます。あなたは世界に出て,オリジナリティのある研究は絶対できないから学位はあげませんというのは当たり前のことだと思うのです。
 小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】  ありがとうございます。
 村田委員も川嶋委員もかなりST比のことでお話しされていたんですけれども,先ほど5月4日の教育未来創造会議の第一次提言で,学修者本位の教育の実現,出口の質保証が徹底され,社会との信頼と支援の好循環を形成する仕組みづくり等について中央教育審議会大学分科会で審議と書いているので,これはまさに今やっていることなんですけれども,その題目が,ST比の改善等による教育体制の充実化になっているんですね。
 したがって,ST比というのを議論せざるを得ないんですけれども,今日の資料4-2,25,26に書いていますけど,あまり議論されていないというか,そのST比が高い社会科学系学部,これは悪いというんですかね。アクティブ・ラーニングの実施率が比較的低いし,それから,卒業論文も課していないと。そういうことになるので,ただST比でこういう議論を進めるのが本当に妥当かどうか。私立大学にとっては,文化系の大学にとっては結構死活問題かもしれませんし,総合大学も,多くのところは文系の収入によって理系の赤字を埋めているという,そういう構造のところが多いので,なかなかST比で乱暴に切ってしまっていいのかどうかをもうちょっと議論を深めたいと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 そのとおりで,先ほども米国型の教育がどうのというのが出ていましたが,アメリカの2年次ぐらいまでは,かなりの部分がマス教育ですからST比なんて信じられないほど悪いわけです。それでも,広く一般的に学んで,ディベートする授業も高学年になるとあるからできるのですが,一概に言ってしまうと,米国の1・2年次の教育って,受けてはいけない教育になってしまいます。だから,ST比で物を言ってはいけないとは思います。
 越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】 ありがとうございます。
 その点に関して,やはり高校の教育が関係しているのではないかと思うんです。しつこいようですけど,入試のありようというのが,やはりそこに関与していると思うんですね。少ない時間でいかにいい点を取るかというふうなところが,高校でうまくやっていく,入試に通る方法だろうと思うんですけど,それをそのまま持ち込む。要するに,市場原理を大学,高等教育に持ち込めば,やはりできるだけ低い点で卒業して,そこの学位記をもらうということになろうかと思うんですね。
 ですから,高校教育との高大接続の中で,やはりこれは考えていく必要があるのではないのかなというふうに,また元に返るようで申し訳ないんですけれど,それしかないのではないのかと思いますし,やはりオンデマンドの学習で興味深いようなものをみんなで共有するような形でやっていくしかないと思います。
 データはここにあるんですけれども,ST比だけで全ては語れないのではないのかと思うんですね。絶対ST比の改善でやらなければならないというふうに方向が出ておるのなら別ですけれども,小さいから本当にそれがいいのかというようなことは,もう一回議論をするべきではないかと思います。
 それと,別に私立大学だけではなくて,今,国立大学も徐々に運営費交付金を削られていまして,なかなかこのST比を小さくするというのが簡単にはできるとは思えないんですね。ですから,それに代わるような密度の濃い学修というのをどういうふうにして組み立てていくかということを,この場で考えるべきではないかと考えます。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 このST比の問題は,実は政策的には非常に波乱含みになると思うので,そう軽々に議論できる問題ではないと思います。
 古沢委員,どうぞ。
 
 
【古沢委員】  私はやっぱりST比のことで申し上げておきたいと思ったんですけど,皆さんと意見は違うとは思うんですけれど,やはり学生の立場から見ると,どういう大学教育を受けられるかという点では軽視できない,やっぱり判断材料にしたいという点だと思います。
 かつては,この25ページの調査結果も非常にうなずけるんですけれど,極端にST比が高い大学では,卒業研究も指導しきれない,受けたくても受けられないということがあって,今,非常に改善が進んで,定員も少なくなっているので,改善したなと思うんですけれど,やっぱり少なくとも,川嶋委員もおっしゃっていましたが,実態把握することが大事かなと思います。
 出し方としては,いろいろ,何をしていいか,今は非常に難しいというのは皆さんおっしゃるのは分かるんですが,先ほど川嶋委員おっしゃった少人数科目の割合とか,より教育の質に関係するような形で把握をすることが大事かなと思います。
 あと,キャップ制で密度の調整というのは,ぜひ進めるべきだと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  ST比に関係する議論は,質保証システム部会でも議論されて,直接ST比として扱ったわけではないんですけれども,議論の1つの重要なポイントだったと思います。
 ただ,この場合難しいのは,学生数とか教員数というのをまずどの単位で捉えるか。つまり,大学で捉えるのか,学部で捉えるのか,学科で捉えるのかということからまず議論しなくてはいけないわけです。システム部会のときには,そういう議論にはならなくて,むしろ学生の立場からした場合には,例えば,授業自体は大教室授業であったとしても,それをフォローするような,例えば,TAであるとか,そういう中間的な教員といいますか,助手であるとか,助教であるとか,そういう者を置いていくということが事実として重要だという議論がなされました。そのことが設置基準の中で,そういう教育の補助者というものもちゃんと設置基準の中に組み込みましょうという議論に結びついていったわけです。
 ですので,ST比の話になると,要するに,数の話になってしまうんですけれども,一応この部会では,まずその前に,やはり学生の学修の質を高めるためには,どういうシステムが必要なのかということを踏まえておいたほうがいいかなと思いましたということです。
 それから,すみません,先ほどの,ここで議論するのはどうかと思うんですが,124単位取った場合に,卒業できないかどうかというのは、ちょっと難しいと思うのは,124単位というのは,やはり大学なり学部なりが,この科目をちゃんと124単位取ったら卒業できるような組立てをしているべきなのであって,なので,今,科目についても,どの大学も多分,学部でも必修科目と選択科目とか,それから,自由選択科目みたいにしてあるわけで,自由選択科目124単位取ったって卒業できないようにしているわけですね。逆に,学生が、必修科目をきちんと組み立てて単位をとれば,多分61点であっても、ちゃんと組み立てた場合には,卒業させざるを得ないのではないかと。それで卒業させられないとすると,それはシステムのほうの問題であるというふうになって,多分,それは裁判を起こされたら勝てないというふうにちょっと思いました。
 
【永田部会長】 先ほど言ったように,ディプロマ・ポリシーに書いてあれば別なので,必要条件は124,十分条件はこれですというのが書いてあればいいのです。
 
【吉岡委員】  まさにそういうことですね。
 
【永田部会長】  時間も押してきています。今のところ御発言の御希望はないようですが,最後の産業界とのコラボレーションのところについて産業界とどのような連携・協力ができるか。学位授与権を持っている大学にとっては,卒業研究をやる前に,インターンシップへ行って,あちらと一緒に先生も行って,その場で点数をつけていけば,それで,こんな子は社会に出たとしても採れませんと言われる子をいっぱい育てているわけです。結局,社会からは要らない子を育てていると言われてしまうのだから,例えば,必修にしてしまえばいい。その後,今度はそれを直すために,卒業研究の中で,あるいは,ゼミの中で,あるいは,そのほかの単位の中で,ちゃんと修得できていないものがあるのなら,修得すればいい。例えば,極端に言えば,それに企業が協力しても私はいいのではないかと思います。
 本質的に,先ほどから言っている,このような観点に欠けているというのを言われているのですから,それも大学もうんと言うのだったら,一方的に単位を企業の方がつけるというのは,多分,学位授与権のある大学にとっては,手放してしまうことになるのでいけないでしょうが,一緒に協力してやる分には,私はいいと思います。それを最後にして卒業すると直せないので,少し早めに,それこそ就活もあるのでしょうが,真剣に,これは足りていないというのだったら,どうしても課題を解決できないというのなら,卒論のゼミなどで徹底的にそこを集約して指導すればいいのではないかと思って,産業界にも積極的に出てきてもらうのもいいのではないかと。
 ただ,全面的に産業界におんぶに抱っこしてしまうのは,これまた困りものなので,どのように行うのかはしっかりと考えないといけないかもしれない。ということを思いました。
 
【吉岡委員】  ちょっといいですか。今のことなんですが,多分,永田委員は理系のことを考えていらっしゃると思うんですけど,文系でも,経営学部なんかで,あるプロジェクトを企業と一緒に組み立てて,チームでやったりするわけですが,最後にプレゼンをして,そのプレゼンの評価を一緒にやった企業の人たちと教員とでやると。最終的な単位認定権は当然教員の手元にあるわけですけれども。しかし,そういうことというのは多分非常に重要な,有効なことだろうと思いますし,それこそ,理系と言っちゃいますけど,工学部とか理学部等で企業の研究所の人たちと一緒にやっていくということは,当然非常に有益なことになるだろうなとは思います。
 
【永田部会長】  文系でもできることはあると思います。
 
【吉岡委員】  それはできることだと思います。
 
【永田部会長】  実は,オーリン・カレッジ工科大学の卒研はそれです。絶対に企業と組んだ卒業研究をやらないといけないということになっていまして,オーリン・カレッジは,工学分野の学士課程で多分全米ナンバーワンの大学であり,大学院を持っていません。近くのボストンエリアの超有名な大学の大学院にみんな進学しているのですよ。だけど,そこは徹底して,社会とディスカッションしながら問題解決をするというのをわざと組み込んでいて,今言いましたように,就職ではなく,ほとんどがハーバード,MITといった大学院に皆さん研究で進むのです。
 ですから,物はやりようだと思って,少しと高いのですが,年に一回研修をやっているから,うちも送りました。実際行ってみると,極めて少人数とオンラインをうまく組み合わせていて,しかも,今言ったように,社会と問題を一緒に解決する。スポンサーにもなってくれていまして,実験とか調査に行くお金は企業が出してくれるとか,そのような感じになっています。現実にそのような大学が,しかも,全米の工科大学ナンバーワンというのは事実です。
 
【吉岡委員】  最初の迫田ペーパーに出てくる,今,永田委員は問題解決と言ったけれども,多分,問題発見のプロセスでもあるんだろうと。そこはとても重要だし,学部でやるべきことというのはそういうことかなと。

【永田部会長】  だから,越智委員がおっしゃるように,アドミッションのところの話もやはり出てくるし,出口保証も出てくるし,今みたいにカリキュラムそのものの話も出てくるので,この調子でいいのではないかと思うのです。それは最終的に出口のところにどうつながるかで,先ほどの文理横断とは少し違う方向に今行っているので,それはそれで積み重ねていけばいいのかなと思っております。
 そのほか,よろしいでしょうか。時間も来ましたので,今日はここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは,事務局のほうから今後の日程等についてお知らせいただきます。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日は,日本貿易会様,伊藤忠商事の的場様,日立アカデミーの迫田様に御協力いただきまして,誠にありがとうございました。活発な議論いただきまして,大変ありがとうございます。
 本日,意見等言い足りなかったところなどがございましたら,事務局のほうにまた御連絡いただければと思います。
 次回の大学振興部会は,10月28日金曜日の10時から12時を予定しております。実施方法等は,また改めてお知らせさせていただきます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,進行等,御協力ありがとうございました。お開きとさせていただきます。
 
―― 了 ――
 

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