大学振興部会(第2回) 議事録

1.日時

令和4年7月11日(月曜日)16時~18時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 大学等からのヒアリング
  2. 意見交換

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)吉岡知哉副部会長
(委員)越智光夫,日比谷潤子,村田治の各委員
(臨時委員)大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,清家篤,曄道佳明,古沢由紀子,益戸正樹の各委員

文部科学省

(事務局)増子宏高等教育局長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),西條大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),伊藤文部科学戦略官,古田大学振興課長,柿澤高等教育政策室長,平野大学入試室長,髙橋高等教育企画課課長補佐ほか

5.議事録

【永田部会長】  皆さんおそろいになったようなので,大学振興部会第2回を始めます。
 皆さん,オンラインで自由な発言ができる環境にいらっしゃるということで進めさせていただきます。
 また,YouTubeでライブ配信しております。
 それでは,事務局から連絡事項等をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  事務局でございます。本日は,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,挙手のボタンを画面上で押していただいて,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。
 また,御発言後は再度挙手のボタンを押して表示を消していただくようにお願いいたします。
 また,発言時以外は,マイクをミュートにしていただくなど,御配慮をいただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は,既にホームページで公表し,お送りさせていただいているとおりでございます。
 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。今日の議事は,前回に引き続きまして,文理横断・文理融合教育等についてです。本日は大学からのヒアリングを予定しています。九州大学,金沢大学,東洋大学,大正大学の各大学からお話を伺います。
 それでは,早速,議題に入らせていただきます。最初に九州大学からヒアリングをさせていただきます。九州大学からは共創学部の取組について意見を聴取させていただきます。
 それでは,よろしくお願いいたします。

【鏑木九州大学共創学部長】  九州大学共創学部長の鏑木でございます。
 それでは,これより,共創学部のコンセプト,カリキュラム,成果,文理横断・融合教育の視点からということで,10分ほどでお話しさせていただきたいと思います。
 資料の内容でございますが,今日は4つの点に即してお話ししてまいります。
 まず初めに九州大学の概要ということで,九州大学がどのくらいの規模を持った大学なのかということのイメージをまず持っていただければと思っております。学生数1万9,000,教職員数で8,000,学部が12学部ある,そのような総合大学でございます。共創学部は12番目の学部として,2018年度に設置されました。
 その設置経緯と構想につきまして,4ページ以下,お話しさせていただきます。
 共創学部が設置された経緯というのはおおよそ3つに分けて考えることができます。
 まず初めは,まだ共創学部という名称ではございませんで,「国際教養学部(仮称)」という形で,様々な申請書に九州大学が新しい学部をつくっていくという,そうした構想を発表してきたのが最初の段階でございます。
 特に,グローバル30,そしてSGUの申請書にそうした構想が書かれました。と同時に,第2期中期目標・中期計画に国際教養学部の設置に向けた検討体制を整備するという形で,これを実行していくためのいろんな準備をしていたわけでございます。
 当初,SGUの申請書に書かれていたのは,定員400名ぐらいで,原則3か月以上の海外交換留学など,つまり,今回のテーマの文理横断・融合というよりは,国際教養,留学生を増やしていくという,そうした構想の中で出てきたものでございます。
 2番目の段階としまして,国際教養学部を実現していこうということで,全学の意思決定がなされたのが6ページでございます。2014年,国際教養学部構想ワーキンググループというものでおおよその方向性が決まりました。この中では決まったポイントがおおよそ4つあるということです。
 まず,規模は,当初想定されていたものよりもやや少なめの105名規模の新学部とすること。
 その学部は,全学出動,全学参加,そうした形で設置するということでございます。
 中身については,他大学にはない九州大学の研究の強みを生かした内容とするということで,この段階では具体的にどんな学部にするのかということが,本当に白紙状態のような形でございました。
 ただし,九州大学には「21世紀プログラム」というものがございまして,2001年度から始まった,学部を横断して学んでいくプログラム,このプログラムを包含したようなものとするということが,大きな方向性として出されていたわけでございます。
 この枠組み,言わば学部の容器の中に学部の内容を詰めていったわけです。それが7ページにございます第3フェーズでありまして,構想の具体化・設置に向けて様々な会議体が設けられ,いろんな段階でいろんな会議がなされました。その中で,おおよそ学部の色といいますか,方向性を決めたのが2015年の学部素案作成作業部会というものでございます。
 こちら,メンバーのほう書かせていただいておりますが,農学研究院,基幹教育院という,これは九州大学の教養部を担っているような,そうした組織でございます。人文科学,芸術工学,このような多様な組織からメンバーを集めまして,どのような学部を設置すればよいのかということを検討したわけでございます。
 その後,カリキュラム検討ワーキングや入試検討ワーキングなど,そうしたものを走らせまして,2017年度に設置の趣旨を記載した文書を文科省に提出し,2018年度より設置・開設したということでございます。
 では,どのような学部にするかということの一番のもともとの発想,それを作業部会の案の中から幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 8ページ目にございますように,九州大学は理念として「国際性の原則」というものを掲げておりますので,全学参加の学部にするに当たっては,学部,大学としての原則から考えていこうというふうに理念を導き出しております。
 ただし,その理念をどうやって実現したらよいのかということで,目的のほうでは,もう少し21世紀プログラム的な多様なものを学んでいくというような方向性が出されております。すなわち,「現実社会の課題に,学問領域を超えた様々な視点から取り組み,科学者コミュニティーの枠を超えた人々と協力して課題解決に立ち向かう能力を持った学生を養成する」ということです。
 ここにある「課題解決」というのが,今回の共創学部の一番のキーとなる概念でございます。
 続けて,9ページにございますが,そうした方向性の中で具体的な人材像ということで,予想を超えた変化の中から取り組むべき課題とは何かを設定し,「企画構想力(デザイン力)をもって課題解決の方策を提言できる人材」という形で,当時出てきましたデザイン思考とか,そうしたものを学部の中の柱として取り入れていこうという方向性でございます。
 その上でさらに学部教育の特徴として,英語の能力とデザイン思考力をもって社会的課題の設定,学際性(共創),この段階ではまだ共創学部という名称は決まっておりませんでしたが,共創による課題解決,課題解決法のプレゼンテーションの3つの能力,そうしたものを社会構想力,経験,表現スキル,さらには全てを統合した知の創造を学ぶことができる新しい学際的学部,リベラルアーツ的学部という形で,何とか新しい学部を表現するためのいろんな言葉を模索して,こうした構想案となっております。
 この構想案は,幾つか学部の組織の中にも反映されていまして,専門を学ぶ,やはりいろんなものを学ぶといってもある程度専門性を出していかないと分かりにくいということで,その専門性を表現する言葉として「専門エリア」という言葉を出し,その中で,「人間・生命」,「人と社会」,この当時はまだ「アジアと日本」,そして「地球と環境」,この4つのエリア,こうしたものを学生が学んでいく1つの領域として設定しました。
 その上でさらに,「フューチャーアースの諸問題を解決する」ということで,学部全体,1学部1学科として1つの統合的なテーマを設定しております。
 その上で,そうしたエリアをまたいで考えていく手法として,データサイエンスや科学技術,そしてデザイン思考などのこういった科目を設定していくことで,今でいう文理融合的なものも含んだようなものを構想したという次第でございます。
 いざそれを具体化していくのが11ページ以下の資料となります。こちらのほうは,学部が一体どのようにしてできたのかということを示すものでございます。九州大学は,「学府・研究院制度」といいまして,学生の組織と教員の属する組織を分けております。既存学部の入学定員から105名分を拠出しまして,今言った専門エリアや,エリア横断を教えられる教員に全学の部局から来ていただくという形を取っております。当初21部局から参画し,48名でありましたが,それが拡大していって完成年度では,現在23部局・51名の専任教員,そして授業だけを担当する科目副担当教員という形で,約83名の教員が学部教育に携わっているということでございます。
 さらに学部全体の概要ですけれども,13ページにございますように,学生の定員は105名。そこに来る学生の多様性を確保するために,総合型選抜,学校推薦型選抜,そして一般選抜,国際型入試ということで,日本語ができない10月入学私費留学生も加えて105名としております。
 このような入試の結果,入学してくる特性として,男女比は男子が44,これは1期生から4期生までの総合ですけれども,44対56で,女子が若干多め。文理比というのは高校のときに,数学Ⅲを学んでいるかどうかということで出したものですが,いわゆる文系クラスから出てきているのが55%,そして理系クラスから45%という,こうした割合になっております。
 以下,幾つかのスライドは,こちら共創学部の特徴を書いているものですが,14ページにあるような概念図に基づいてカリキュラムを設計しております。
 15ページにございますように,共創学部の教育の特徴としては,語学教育,協働学習,そして海外大学等への留学ということで,留学も必須としております。ただし,今般,コロナのために予定していた留学等がうまく実施できなくて,学生らは大変苦労しながら学んだということがございました。
 16ページにございますのは,各学部が,既存の学部がディシプリンベースでやっているのに対して,共創学部は,課題解決ということで,複数の学問を学んで,それを課題解決に役立てていこうという,そうした発想をここに書いているものでございます。これを4年間の学ぶプロセスに表現したものが17ページということになります。
 入学した当初は,九州大学では基幹教育と申しますが,全学の教養教育,基礎教育を実施します。この中で,九州大学は,全学部の学生に「課題協学」という形で,グループラーニング,チームベースドの課題ベースの学習を実施します。共創学部では,これを2年生,3年生にわたって1つの大きな柱として継続して実施していきます。それらをもって最終的には,4年目に「ディグリープロジェクト」と言って,自分で設定した課題に対して,複数の学知,メインとサブとの学びを通して課題解決に当たるという,そうしたことをやっております。
 この図の中で星印を2つつけております。「共通基礎科目」と「ディグリープロジェクト」ですが,この中に今日のテーマである文理横断的な設定がございます。
 まず共通基礎科目ですけれども,「グローバルな課題解決に取り組むための基本7つ道具」ということで,以下の7つの科目が設定されております。いずれも日本語と英語による授業を用意しておいて,学生はそのいずれかを取るということにしております。
 この中身ですが,要は,最初に課題解決の発想を身につけるということで,「共創デザイン思考発想法」,データに対してデータを扱う力,データを取ってくる力,そうしたことを「データサイエンス基礎」,「フィールド調査法」ということで学び,科学についてのリテラシーを身につけると同時に,いわゆる課題というのは部分と全体との調和がうまくいかないようなところから出てきますので,それを自然や倫理や歴史に即して全体と部分を即して考えるような科目を設定しております。
 さらに,それらのいろんな,先ほど専門エリアと申しましたけれども,学生が専門を学んでいくに当たって,それぞれの課題領域として4つのエリア,及び,それらのエリアを横断して学ぶことのできる専門的なデザイン思考やデータサイエンスなど,それをエリア横断という形で,こうした形で1つの文理融合の形というものを整えております。
 20ページには,その結果,今年の3月に初めて卒業生を出しました。その卒業生3人の例をちょっと履歴のような形で書いております。
 Aさんの場合には,高校時代,文系クラスでしたが,地球・環境エリアを選んで,最終的には環境系の研究をしまして,大学院もその分野に進んでいきました。
 Bさんの場合には,文系クラスから人と社会の基盤エリアを選択し,国産コーヒーの6次産業化に向けということで,地域を素材にして研究し,民間企業に就職していっております。
 もう1人は,高校時代は理系クラスでしたけれども,いわゆる文科系の国家と地域の課題に関心を持ち,中国の研究をして,経済システム専攻へと進学していきました。
 こうした高校時代の文系,理系を横断して進んでいったというような事例が多数ございます。
 最後に,共創学部の卒業生,今年の3月に出たばかりですが,その卒業生の状況と今後の課題について述べて終わりとしたいと思います。
 22ページにございますように,この3月の卒業候補者数としては100人だったんですけれども,先ほど言ったように,留学を必須としている学部で,なかなか留学できないということもあって,卒業者数は最終的には77名となりました。そのうちおおよそ3分の1が進学,大学院に進学し,3分の2が就職したということでございます。大学院につきましても,文系から理系に関わる様々な多様な領域に進路を取りました。民間につきましても,金融から流通,建設や,電力や,いろんな業界に羽ばたいていったということでございます。
 最後になりますが,卒業生アンケートなどを見て,この4年間の文理融合の教育の結果,どんなことが見えてきたのかということをお話しして終わりたいと思います。
 まず,全体にわたりまして,履修指導やクラス規模など,授業の中身についてはある程度評価をいただくことができました。
 ただし,そうした中で,授業の開講分野における偏り,各分野の専門性の体系的な学びという面で不十分な点があるということを,学生自らも自覚しながら学部の課題として挙げてくれました。
 このような文理横断の学部の非常に難しい点は,他の学部と比べたときに,こうした専門性の学びという面で,ある意味で劣らざるを得ないという点があるわけです。
 しかし,他方で,ほかの各部では学ぶことのできないコンビネーションを学ぶことによって新しい可能性もあるわけで,そうしたものを彼ら自身が積極的にどう捉えていけばいいのか,そのために今後取り組むべきこととして,文理を超えて幅広く学ぶことの積極的意義というものを彼ら自身が経験し理解していくような,そうした教育を展開していくことが必要ではないか,と思っているところでございます。
 以上,共創学部の経験から,以上お話しさせていただきました。

【永田部会長】  それでは御質問や御意見いただきたいと思います。いかがでしょうか。曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】  ありがとうございます。御説明どうもありがとうございました。大変魅力のある取組をお伺いすることができて,大いに参考になりました。23ページで,卒業生からのアンケートから見えた課題ということなんですけれども,御説明があったのかもしれませんが,指摘をされている課題の2つ目に各分野の専門性の体系的な学びの不十分さということが挙げられていて,これを卒業生,つまり,学生の目線で感じて指摘があるということについては,彼らにとっては,専門性が十分ではないのではないかということは,どういう場面から学生はそれを感じ取っているのか。もし今後何かこれに対する取組としてお考えがあればお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。共創学部はクオーター制を取っておりまして,1単位の科目が多くございます。そして,設置審のときは,各先生方に,大学,学部の趣旨をお伝えしていろいろ検討した上で授業を出していただいたんですが,科目間の連携という点で,ちょっとそうしたものが学生に見えにくいというところがあったと思っております。
 そうした点から,どうしてもそれぞれの学生は他の学部と自分のところを比較してしまいますので,ある部分,要するにそれぞれの専門においてはどうしても既存学部のほうが積み重ねという点では優れているといいますか,高く上っていけるように見えるわけでございます。そうした専門性の点で,科目間の連携,体系性などという点でもう少し改善してほしいという要望を受けたということでございます。
 その点は,私どもも当初からかなり重要な問題だと考えておりました。ただ,設置後4年間というのは,その科目をしっかり実施しなければいけませんので,それを実施した上で,今現在カリキュラム改革のために検討しているというところです。
 この点がまず1点になりますが,もう一つ重要な点は,やはり教員もそうなんですが,学生も,やはりどうしても専門を学ぶということにすごく,それを価値と感じるというところがあると感じています。つまり,「何かを学んだ」といったときの「何か」というものが,特定のもので名指しできると,それを学んだと実感しやすいわけです。ところが,それが,色んなものを学んだということだけだと,何を学んだのかというのを説明しにくくなってしまうわけです。
 ですから,多様なものを学んだということの意義を積極的に打ち出せるような仕組みといいますか,それを考えていくということが大切じゃないかなという,そういうお話をさせていただきました。

【曄道委員】  どうもありがとうございました。

【永田部会長】  続きまして,小林委員,どうぞ。

【小林委員】  ありがとうございます。3つほど質問したいのですけれども,まず1つは,すばらしい試みだと思うのですけど,共創学部をつくるに当たって学生の定員をほかの学部からシフトさせているのですけども,そのときに教員の定員というのは増えてはいないのかというのが1つですね。
 それからもう一つは,課題解決型のこういった教育というのはとてもすばらしいと思うのですけども,進学というものを見ていると,他の研究科に進学されているのですけど,共創学部は将来的に大学院をつくる予定がおありなのかということと,3番目が一番重要かもしれませんけども,エリアを4つ選ばれているのですけども,九州大学の国際性の原則から4つのエリアがちょっとばらばらに見えるのですけど,それを選んだ理由を教えていただければと思います。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。まず教員の定員ですけれども,学部をつくるに当たって,新規教員をトータルで,学内の教員資源の再配分で4名の教員をつけて,さらに概算要求で1名,つまり5名の教員を新しくつけました。
 それ以外は全てもともといたそれぞれの九大の教員に,元の所属部局から共創学部に出てきていただくという形で学部の構成員となっていただいております。
 まずこの点よろしいでしょうか。

【小林委員】  はい。それから,設置するに当たって,建物とかは新しく造られたのでしょうか。

【鏑木九州大学共創学部長】  建物は,ちょうど移転期でありまして,学内の1つの建物の中に3フロアを用意していただくような形で場所を用意していただきました。

【小林委員】  1点目はそれで結構です。ありがとうございます。

【鏑木九州大学共創学部長】  そして続いて,大学院をつくるかどうかということですけれども,この点については,学内の中でもいろんな意見があるんですが,現在のところ,共創学部から,共創学部のためのといいますか,専門の大学院をつくるという計画はまだございません。むしろ既存の大学院で,九州大学の中にもいろんな学際系の大学院が既にございますので,むしろそちらのほうに進学していくというのが今想定されている学び方といいますか,履修の進め方と考えております。

【小林委員】  ありがとうございます。

【鏑木九州大学共創学部長】  そして最後にエリアの件ですけれども,こちら,なかなか難しいんですが,課題解決ということで,課題のある領域をおおよそ4つに分けるといったときに,広いところからだんだん領域が中間的なものになっていくという形でイメージしています。
 1つは,地球・環境という形で,グローバルな,そうした領域性を持ったもの。さらにもう少し,アジアとか,あるいはそうした形で地域性,国家と地域という形でもう少し狭い分野といいますか,そうした領域の問題。さらに,人と社会,そしてさらにはいろんな生物学の先生などもたくさんいますので,そういった生命の領域という形で,一応段階としてはマクロからミクロへというようなイメージで組み立てておりますが,この点は確かに分かりにくさという点での御指摘はいただいておりまして,今現在どうしたらよりよい分け方といいますか,学び方を設定できるのかということ,先ほどお話ししたカリキュラム改定と併せて検討しているところでございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。川嶋委員,どうぞ。

【川嶋委員】  どうもありがとうございます。川嶋です。手短に3つ質問いたします。1つは簡単な質問ですけれども,授与する学位の分野,学士の分野を教えてください。恐らく学術だと思うのですけれども。
 2つ目は,先ほどから議論になっていることと関連するのですけれども,学部段階,学士課程段階なので,こういうイシューベースというか,学際的なことを学ぶということは大きな意義があるかと思うのですが,大学院進学ということを考えたときに,先ほど先生のほうから御説明あって,九大の学際的な大学院へ進学している例が多いというお話でしたけれども,実際大学院に進学するなかに,1人,経済研究科に進学したという事例が出ていました。このような大学院というのはどちらかというとディシプリンベースの研究科,専攻が多いんですけれども,このようなディシプリンベースの大学院との接続というのはどういうふうにお考えなのかということ。それから最後に,学生さんから出た課題の中で,学ぶ分野が偏っているという課題が出ていましたが,これは学部新設に当たって,教員を新たに配置する際に,もともと母体となる学部なり大学院に偏りがあったということが背景にあったのか。この3点をお願いします。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。まず,1つ目の質問への回答は,「学士(学術)」でございます。
 2つ目の質問の,大学院との接続については,確かに専門性を求める大学院の場合に非常に難しいといいますか,学生が自分で学ばなくちゃいけない部分が多い,これが大きな課題だと思っています。ただ,この点は共創学部の教育理念とも関わるので,そうした大学院予備校みたいなことも望ましくないとも思っています。そうした点は,少なくとも九州大学の中で共創学部を設置したことの意味ということで検討していかなくちゃいけないという方向性といいますか,そうした意見が出てきているところです。
 最後の分野の偏りですが,これは各部局から教員を出していただく際に,基本的にそれぞれの部局の中で出してくださる教員を選んでいますので,その点でどうしても分野の偏りが生じてしまったということです。ただし,この点を考慮して,今,教員の入替えも進められるように制度を整えて,既にその形で動き出しているところです。

【川嶋委員】  ありがとうございました。

【永田部会長】  古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  ありがとうございます。私のほうも手身近に質問させていただきます。非常に先進的な取組で,興味深くお聞きしました。私は以前に九州大学の21世紀プログラムについてお話を伺ったことがあるんですが,これは比較的早く専門分野に入るものだったと思うんですが,どのように生かされているのかということが1つと,あともう一つ,文系,理系の比率,55対45であったということと,あと一般入試,英語,文系数学,小論文という構成だったと思うんですけれど,文系で少し数学,文系的,一定程度の数学ができる人という想定というのは,入学者について想定されていたのか,それとも総合選抜などでもう少し理系的な素養のある人を見ていたのかというのをお聞きしたいと思いました。
 以上です。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。21世紀プログラムの基本を後継プログラムとして受け入れるようにという方針でしたので,21世紀プログラム的な学びができるということは想定しておりました。
 ただし,21世紀プログラムは,プログラムであって,各学部に行ってそれぞれの学部をいろいろ学んでいく必要があります。共創学部は学部ですので,学部として1つのプログラムが完結しなければいけないという点がございます。その点が非常に大きな違いでして,学部としてどういう専門性を身につけるのかといった点で,共創学部の場合には,共創的課題解決能力という形で,独自のそうした能力というものを身につけるという,その設定をしている点が21世紀プログラムと違っている点です。
 もう1点,文理の観点ですが,これについては,本当に私たちは,文系クラスの子も理系クラスの子も来てほしいということで,どちらが有利・不利にならないような点に注意しながら募集をかけたというところがございます。比較的理科系の生徒は数学で点数が取りやすいというメリットがあると考えられますし,文系の学生さんのほうが英語で比較的いいのかもしれないと。その辺りは,いずれの学生も,いずれのクラスの学生にもやって入れそうだと思ってもらえるような幅広いものを考えました。

【古沢委員】  ありがとうございました。

【永田部会長】  日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】  ありがとうございます。私も13ページの入学者の特性及び入学選抜の方法について絡めて質問がございます。このタイプの学部というのは,ほとんどのところそうだと思いますが,押しなべて女子学生が多い傾向にあります。ここもそうなんだなと思いましたが,一方,文理比と男女比が1%違いですが,ちょうど逆になっているところでございます。今のところは女子学生の理系が大変に少ないので,どうしたら増やせるかということも今非常にあちこちで問題になっていますが,今お手元でお分かりにならないかもしれませんが,文理比のところの中の理系・文系の男女比がもしお分かりでしたらぜひ教えていただきたい。後日でも結構でございます。
 もう一つは,入試方法のうち,1(総合型選抜),2(学校推薦型),4(国際型入試)ですね,一般選抜を除くものが増えれば増えるほど女子学生比率が高まるというのが,少なくとも今の段階では一般的なトレンドだと思うんですが,こういう構成をなさっているのは,九州大学全体としてジェンダーバランスを変えたいというような隠れたアジェンダがおありになったかということを伺いたいと思います。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。まず,各選抜枠の中での男女比というところまでは今回資料を整理しておりません。ただ一般的に,一般選抜のところで男子がほかよりも多めというのは,今御指摘のあったとおりです。
 それと,4つの入試とジェンダーのことなんですが,九州大学としては,むしろ4つの入試をやることで多様な学生を集めていこうという,そういう大きな入試改革がありまして,そうした多様性ということは言われていましたけれども,とりわけジェンダーに焦点を当てたということまではありません。
 ただ,確かに九州大学の他の学部と比べた場合,女子学生が多いという点が1つの特徴的な点だと思います。

【永田部会長】  吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  ありがとうございます。ちょっと伺いたいのは,文理横断・文理融合という,そういう視点の問題なのですけれども,これも部会のテーマの1つなわけです。この文理融合とか文理横断といったときに,ここの学部の中で,共創学部の中でどんなイメージが共有されているのかということを伺いたいと思います。つまり,例えばデータサイエンスとか統計学とか情報学というのは,その分野それ自体が分野として融合的なわけですね。
 一方で,どんな学問とかをしていても,例えば統計はやったほうがいいし,データサイエンスはやったほうがいいし,情報処理はできなくちゃいけない。そういうある種のスキルとしてのそういうものを身につけようという話があると思うんです。
 それからさらに,ちょっと違うと思うのですけども,例えば古典文学を勉強しているのだけども,物理学も勉強するという,つまり,1人の中で全然違う分野をやるということって学生にとっても重要なことなわけで,そういう文理横断というのもあると思うんですが,その辺,どういうイメージを共有しながらというか,議論があるかということをちょっと伺いたいと思います。

【鏑木九州大学共創学部長】  まず共創学部の場合には,文理融合・文理横断というのは,あくまで課題解決のための分野を横断していくということであって,文理融合がマストと考えていたわけではございません。
 したがって,課題解決のためであれば文・文融合やあるいは理・理融合のようなことも考えています。重要なことは,課題解決のために2つ以上のアプローチを取ろうということで,そのことは学部の中で全体の教員,そして学生にも伝えています。願わくば文理融合の幅広い学びができるように,共通基礎の中では文理横断的な,そうした科目を必修としているということです。

【吉岡委員】  ありがとうございます。

【永田部会長】  大森委員,どうぞ。

【大森委員】  ありがとうございます。本当にすばらしいなと思って,ディシプリンベースからイシューベースへというのを本当にやりたくてやりたくてしようがないんだけれども,なかなか色々あるというところで,本当にお手本を見せていただいた気持ちです。
 2点です。1つは,先ほど来議論があった専門性みたいな話のときに,現実問題として,入り口と出口で,例えばうちも似たようなことをオープンキャンパスで話すと,高校の先生から,「で,お宅は専門は何?」とすぐ聞かれる。それから就職活動のときも,「あなたは専門は何を学んできたの?」ってすぐ聞かれる。この辺りで,学生さん,さっきも専門性ということがあったけども,どう対応されたのかということが1点。
 それから,17ページのカリキュラムの概念図の中で,これ最も重要なのが,協働科目がこれを全部つないでいくというイメージ。この協働科目はいわゆるゼミみたいな位置づけだと思うんですけれども,ここの先生方というのは御自身の専門を超えた指導をしていかなきゃいけなくなると。その辺のカリキュラム・ポリシーというか,うまくこれがつなげられてディグリープロジェクトまで行くあたりのFDとか相当にされてつなげていかれたのか,その辺りをお聞きできれば。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。まず専門性について私たちが言っているのは,共創的課題解決力というのを学んでいこうと。それが1つの4年間の学びの成果なんだということで,この言葉を出しています。
 ただ,繰り返しになりますが,やっぱりそれが一体何なのかということの実感というのがまだ十分に成熟していないと感じていますので,その点が今後の課題だと考えています。
 ただ,高校生については,やはりこの学部で学びたい,ほかの学部でできないと思ってくれる高校生が少なくないと感じておりまして,九州大学の中でも,他の学部より募集面で比較的よい状況にあります。
 もう一つは,1つの柱の協働科目ですが,こちらはゼミというよりは,チームベースドラーニングで,1つのクラス,少人数ですが,20人から30人とかでチームを組んでやるんですけれども,2人以上の教員が組んで,分野の違う教員,それらの先生方が話し合って課題を設定し,マテリアルやいろんなものを英語と日本語で用意して,4回や8回の授業を構成していくというような,そうした形でやっております。
 ですから,先生方は自分の専門というよりは,お互い話し合って今度はこういう課題をやっていこう,そのためにどういったものが必要かというのを話し合って授業を経営しているという,そういうようなやり方をしております。

【大森委員】  ありがとうございます。

【永田部会長】  越智委員,先ほどお手が挙がっていたと思いますが,いかがでしょうか。

【越智委員】  私も別の質問をちょっと考えていたんですけど,ここで時間がちょっと取られ過ぎてもいけないというので,手を下ろしたので,また。

【永田部会長】  また後でよろしいでしょうか。

【越智委員】  いいですか。

【永田部会長】  御協力ありがとうございます。

【越智委員】  すいません。また質問させていただきます。

【永田部会長】  鏑木先生,どうもありがとうございました。そのままお残りになると聞いていますので,また後で追加の質問等,お答えいただくことになるやもしれません。
 それでは,次に金沢大学からヒアリングさせていただきます。学域・学類制度,リベラルアーツ教育・STEAM教育の拡充,必修化ということに取り組んでいらっしゃいます。学長補佐の片岡先生,谷内先生からの御発表と聞いております。よろしくお願いいたします。

【片岡金沢大学学長補佐】  金沢大学の片岡と申します。よろしくお願いいたします。
 本学の文理横断・文理融合教育の取組について,駆け足で説明させていただきます。
 まず1枚目のシートを御覧ください。このシートは,過去15年間の本学の教育改革を時系列で示したものです。本学は,社会の中核的リーダーたる“金沢大学ブランド人材”の輩出を教育目標に掲げており,本年度,新執行部に変わりましたが,ここで策定された金沢大学未来ビジョン『志』においても,本学のあるべき姿として教育の中心に据えられています。
 この目標を達成するために,本学は,図に示した様々な教育改革を間断なく実施し,教育研究における異分野融合を強く推進してまいりました。
 本日は,黄色で示しました学域・学類制への移行,それから共通教育改革,令和2年度に採択いただきました知識集約型社会を支える人材育成事業,そして入試改革の4点について説明いたします。
 2枚目に移ります。まず,学域・学類制への移行です。本学は平成20年度にそれまでの8学部25学科を再編し,3学域16学類の教育体制に移行しました。同時に教員組織の再編も行い,教教分離も実現しております。
 この背景には,細分化された専門分野では自分の学びたい分野を志願者自身が正確にイメージすることが難しく,ミスマッチが起こりやすいということ,また,縦割りの体制では,社会的要請度の高い融合した新領域の教育研究体制の構築が難しいということがあり,これを打破するための組織改革です。
 学域・学類制の特徴は,学生の所属単位が拡大するということで,幅広い教育内容の提供が可能となり,また柔軟な教育体制を構築することができます。
 この体制移行が後の文理融合教育の拡大へと続く端緒となっており,将来の予測が困難なVUCAの時代を先取りして,総合知,未来知を創造する人間,人材の形成につながっていると思います。
 また,この移行により,2年または3年次に専門に分かれるレイトスペシャライゼーションの枠組みが全学類に導入されました。
 続いて,3枚目のシートに移ります。共通教育改革です。金沢大学ブランド人材の人材像を具現化して,全学レベルの教育目標として策定された基準を本学では金沢大学グローバルスタンダード,KUGSと呼んでおります。
 平成26年度のKUGS作成当初は,図の赤枠で示している5つのスタンダードとその学習成果として定義されました。KUGS策定の2年後に,共通教育を担う国際基幹教育院を創設し,それぞれのコンピテンシーを修得する科目を「共通教育GS科目」として開発しました。
 この結果,全学出動体制で運営していた共通教育科目,約3,000科目がGS科目の30科目に統合・集約されました。各GS科目は複数クラスで開講しますが,専任教員が共通の教科書を内製で独自作成し,統一の基準で評価するなど,科目の統一性と公平性を担保して運営しています。
 昨年度,科目の大幅な見直しを行い,STEAM教育に対応する第6のスタンダードを新設し,全学で低学年時からSTEAM教育を展開しています。
 また,外国語教育におきましても,TOEICの受験を義務化して,そのスコアを卒業要件化するなど,英語教育にも力を注いでいます。
 続いて4枚目です。知識集約型社会を支える人材育成事業の取組です。本事業は,社会課題を解決に導くSTEAM人材の育成を目指し,4つの実施項目に取り組んでおります。
 第1に,文理融合の新学域,融合的学域の設置です。融合学域は,広範な分野にわたる文理融合の知見と課題発見,解決の知を展開することで,イノベーション人材を養成することを目的としています。
 昨年度,社会変革人材,アントレプレナーの育成を目指す先導学類,今年度,新たな観光価値を創出する人材を育成する観光デザイン学類を設置し,ただいま第3学類を設置申請中です。
 さきの九州大学の場合と同様に,学びのコアエリアを複数に開設して,実践の探求エリアと往還しながらイノベーション人材を養成するカリキュラムを用意しています。
 2つ目の実施項目は,全学生を対象とするSTEAM教育の必修化と専門教育におけるリベラルアーツ科目の拡充です。前のシートで紹介した「共通教育GS科目」に,STEAM教育に対応する第6群を開設するだけでなく,専門教育では,文系にもデータサイエンス科目を必修として課し,今年度から大学院へこの取組を拡張,拡大しております。
 続きまして,次のシートで,3つ目の実施項目ですが,融合学域の文理融合教育を全学展開する特別プログラムの開設です。その内容は,受講者が協働する導入科目4単位,それからデータサイエンス系の科目4単位,これが必修です。文系学生が理系科目,理系学生が文系科目をクロスして履修する10単位の選択科目,最後に, PBL科目である実践インターンシップまたは留学を体験する重層的なカリキュラム構成で,STEAM人材に必要な5つのコンピテンシー,俯瞰力,提案力,協働力,課題発見力,挑戦・実践力を設定し,これを修得させます。
 科目選択においては,専属のアカデミックアドバイザーの支援の下,オーダーメイドでカリキュラムを構築できるということになっています。
 この文理融合プログラムによって,いわゆるT字型の社会変革人材を育成しております。
 6枚目に進みます。4つ目の項目として,学修者本位の教育の実現のために,教学マネジメントセンターを設置しました。本センターは,本学のFD活動,教学IR,教育DX,それから知識集約事業を所掌します。
 これら4つの実施項目の現在の目標達成状況について紹介しますと,まず新設の融合学域ですが,先導学類の初年度志願倍率が3.5倍,観光デザイン学類は初年度3倍と,学内では屈指の高倍率となりました。イノーベーター養成の社会の期待の高さがうかがえます。
 先導STEAM人材育成プログラムでは,導入科目の実践演習,これの履修希望者が定員の2倍を超えて,抽選を実施するなど,高い人気を博しております。
 なお,本プログラムの対象科目の受講は,教務システムにて自動でカウントされて,学生に可視化され,履修を促す,モチベーションを喚起するというような仕組みを取っております。
 共通教育のGS科目第6群は,昨年度,延べでいうと4,000人が受講して,新しいリベラルアーツ教育を着実に実施しているところです。先ほど申しましたように,今年度から大学院学生も4単位の必修で共通科目を配置して,順次枠組みを拡大しています。
 7枚目に移ります。文理分断の高校教育から文理融合の大学教育に接続する入試改革の取組です。本学を第1志望とする多様な志願者をより広範に受け入れるとともに,質の高い入学者の確保を目的に,シートの中ほどの10項目の入試改革を実施しております。
 例えば後期日程入試を廃止し,特別選抜と大くくり入試の募集定員を全体の30%を目標に増やす方向です。
 また,調査書を用いる主体性評価を全学類で導入しています。
 一般選抜では,文系一括,理系一括,3学類の一括など,大くくり入試で,経過選択制の枠組みを拡大しております。
 特別選抜では,高大接続プログラムを開設し,その修了者に出願資格を与えるKUGS特別選抜,金沢大学コンテストの入賞者に資格を与える超然特別入試など,特徴的な入試を実施しております。
 最後のシートは,その2つの特徴的な特別入試の仕組みを示しています。上半分のKUGS特別入試では,ここでは接続プログラムとして多数開講する公開講座のLiveセミナー,ラウンドテーブル,Webセミナーから複数受講し,生徒がレポートを提出します。さらに,高校での探究活動に関するレポートも提出し,どちらのレポートも大学教員の指導を受けて,その成長を評価されて出願資格を獲得するという仕組みです。
 下は,特異な才能を発掘するコンテンストを有する入試です。日本数学A-lympiadによる数学的な才能,超然文学賞により文学的な才能を見出して,受賞者に出願資格を与えています。これらの特別選抜の募集定員は今後拡大する予定で計画してあります。
 以上,駆け足でしたが,金沢大学の文理横断・文理融合の教育について簡単に説明させていただきました。御清聴ありがとうございました。

【永田部会長】  どうもありがとうございました。それでは,ただいまの金沢大学の御発言につきまして,質問,御意見等をお伺いいたしますが,いかがでしょうか。
 越智委員,どうぞ。

【越智委員】  ありがとうございました。よく分かりました。いろいろな新しいチャレンジをしているのが,よく説明していただいて分かりましたが,私は最後のページのことをちょっと1つお伺いしたいんです。8ページですね。KUGSの特別入試で,合格はいつ出るんでしょうか。高大接続,私もそれ考えているんですけれども,結局,入試のときの際の合格が前期の試験のぎりぎり前に出るということになると,実際には,高校生は合格するかどうか分からないので,今までどおりの入試の勉強をそこの時点までやらないといけないというのが一番大きな問題ではないかと思っています。もし夏休み明けぐらいに合否が出るのであれば,その後はアドバンスドプレースメントという形で,大学の先取りした形,あるいは大学が望むような教育というのを,チューターを決めてやっていくのがいいのではないかと今現在考えているんですけれども,この合格というのはいつ頃出るんでしょうか。

【谷内金沢大学学長補佐】  学長補佐の谷内です。私のほうからお答えさせていただきます。KUGS特別入試については,学類ごとに共通テストを課すもの,ほとんどの学類が共通テストを課しております。幾つかの学類では共通テストを課さないところがあります。共通テストを課さないところでは年内に結果が出るんですけれども,ほとんどの学類は共通テストを課しておりますので,今御指摘がありましたように,一般選抜前期日程の直前に結果が出ているという状態になります。
 ですので,早めに合格を決めて,大学が求める入学前の教育を行うというよりは,直前まで普通の一般選抜用の勉強も続けているということになっているかなと思います。
 ただ,その点のメリットとしては,高校の先生方,よく特別選抜だと基礎的な学力がなかなか伸びないまま入学が決まってしまうということで心配される声をよく聞くのですけれども,直前まで特別入試の結果が出ないということで,高校生は一般の学力も伸ばしつつ臨んでいるというのは悪いことばかりではないかなという印象を持っています。御指摘ありがとうございます。

【越智委員】  ありがとうございました。それともう1点よろしいでしょうか。

【永田部会長】  どうぞ。

【越智委員】  広島大学の総合科学部というのがかなり古く,昭和49年にできたと思うんですけれども,その中に国際共創学科と,英語だけで4年間を終えるのが4年前にできて,卒業生が出たばかりです。その中でやはり私自身が概念を変えないといけないとは思うんですけども,文理横断とか文理融合は伝統的な質保証の考え方では対応ができにくいという面があるんじゃないかと思います。その点に関してはどういうふうにお考えなのかということと,もう一つは,知識の伝達とか内容の深化とかいうことに関して,文理融合型の場合には実践的な経験を基に知識の伝達,修得という面が重要になってくるのではないかと思うんですけれども,学問の深化には新しいアプローチとかが導入されていかないといけないと思うんですが,それが本当にできていくのだろうかというようなところをちょっと心配している部分もあって,知識とか学問の深化がなければ新しい取組というのも時代遅れになっていってしまうのではないかと考えていますが,いかがでしょうか。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。質保証の点ということで,非常に大きな課題だと思っております。共創学部としましては,知識の伝達の部分という部分において,どうしてもその部分は専門性というところで今まで担われてきたのではないかなと思っています。九州大学は共創学部のほかに11学部がありまして,それぞれ多様な分野の知識の承継といいますか,知識伝達というのをやっております。それに対して,新しい,予測不可能な時代に,今まで持っていた知をいかにして課題解決に生かしていくのかという部分に,今私たちが直面している課題がまさにあると。その部分について,共創学部という形で九州大学は新たな挑戦をさせていただいていると考えています。
 ただ,共創学部は定員105名の九大全体からすれば非常に小さな学部です。設置のときには,共創学部の教育成果をいかに全学に展開していくかということが課題になっており,今もそれを展開するためにどうしたらいいかということを全学で検討しているところでございます。
 まとめますと,それぞれ各学部で行っている知識伝達という部分と共創学部でやっている課題解決というものを組み合わせることによって,新たな知の創造といいますか,伝達と創造ということを併せてやっていきたいと考えているところでございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。金沢大学も何か今の越智委員からの質問で,うちはというようなものがあれば,御披露いただければと思いますが,いかがでしょうか。

【片岡金沢大学学長補佐】  ありがとうございます。金沢大学でも融合学域のほうではやはりプロジェクトベースで知の伝達を行うというような形を取りますので,九州大学さんと一緒で,そういうプロジェクベースのものと同時に,普通の教員からの専門に応じた知の伝達というのを併せて行うことで分野融合の強みを出していければと思っております。

【永田部会長】  ありがとうございます。次に,吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  すみません,ごく簡単に。お話を伺っていて,ちょっと考えていたんですが,STEAM人材と言われているものとリベラルアーツとの関係でもあるんですが,それが伝統的な人文学領域を目指している学生とか,あるいは社会科学の領域の学生と,STEAMという人材との関係というのはどういうふうに実際に組まれているのかということとか,どういうふうに考えているのかということでお話しいただければと思います。

【片岡金沢大学学長補佐】  ありがとうございます。プロジェクトベースで考えるときには,やはり一般社会ではたくさんの課題を解決していかなければいけないということで,STEAM人材のように,たくさんのディシプリンを横につなげながら課題解決を行うチームビルディングが必要ですので,そういう形で,STEAMの理系の科目等も理解して使えるような人材を育成しなければならないと考えて,STEAMを文系学生に対しても要求していると考えております。

【吉岡委員】  ありがとうございます。

【永田部会長】  そのほかいかがでしょうか。
 私のほうからは,お手を挙げている方いらっしゃらないと認識していますが,よろしいですか。
 それでは,金沢大学片岡先生,谷内先生,どうもありがとうございました。
 次に,東洋大学の経済学部経済学科における数学が必須の入試の取組について児玉先生から御発表いただけると聞いております。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  東洋大学経済学部経済科の児玉と申します。本日は報告の機会を与えていただき,誠にありがとうございます。
 これまでの2大学の話を伺って,非常に未来志向,かつ高邁で,それらと比べると,重箱の隅を突つくような内容で誠に恐縮ですが,これからお話しさせていただきます。
 2ページ目から始まります。2022年度入試の結果を御覧ください。2022年度現在,本学科の一般選抜方式は,上段の表のようで,その中で赤字が,この発表のタイトルである数学必須方式になります。
 一般と付した学内実施入試では,数Ⅰ,数A,数Ⅱを課し,大学入学共通テストでは数Bも課しております。
 『朝日新聞EduA』の記事では,数学必須方式による入学者の一般選抜入学者に対する比率が81%と記載されておりますが,その値,今年度は71%に下がっております。なぁーんだという感想もお有りかと存じますが,私も同様に感じました。
 そこで,下段の表で,一般選抜受験者に対する数学方式受験者の比率を求めると,昨年度の36%強から50%弱,非必須型での数学選択者も加えると,過半に上昇しています。
 もちろん数学受験が必須な国公立大から見れば,たったの半分という御印象かとは察します。しかし,いわゆる中堅私立大学の文系学科で1学年の半分以上,という値は珍しいのではないかと見ております。この状況は一朝一夕では実現しておりませんので,以下経緯を御説明いたします。
 次の3ページをご覧ください。1990年代までの本学は,1学部1学科550名という,いわゆるマスプロ学部です。入試はほとんどの受験生が英・国・社を選択する,という典型的な私立文系学部でした。
 このままでは特色もなく埋もれるという危機感から,1991年に実証分析を内容として,100名の数理情報コースを設けました。しかし,狙いどおりには機能せず,数年間で形骸化しました。理由として,入試に数学必須方式がなく,数学受験の入学者も少数で,学生の基礎学力が多様過ぎたこと,コースの性格づけが曖昧だったためと考えられます。
 2000年にいわゆる大綱化に合わせて,経済学は3学科に改組されました。200名前後という,あくまで私学としては,小回りのきく大きさになると同時に,様々な事項を学科単位で進めることになりました。
 経済学科は,卒業認定・学位授与方針を,標準的な経済学の着実な修得に置きました。ほかの2学科と異なり,経済学科は,受験生からは,どこの大学にもあるごく普通の学科と見えるでしょうから,あえて地味で堅実な目標といたしました。その上で,入試で数学を受験しない数学の苦手な学生に,教育上どのように対応すればよいか,を教員間で話し合ってカリキュラムをつくり上げました。
 4ページを御覧ください。2008年度から現在まで続いている経済学科のカリキュラムは,表のようですが,1,2年次では応用的な専門科目は履修させず,必修科目修得のための問題演習を繰り返し行います。選択科目である問題演習クラスでは,数学のプレースメントテストに基づいて1学年を3つのコースに分け,各コースに教員と3,4年生のアシスタントが数人ついて履修者を指導します。問題演習クラスの履修者は,必修科目の授業,問題演習,eラーニング自習システムの3つを受講しますが,それでも理解不足な学生にはサポートデスクを設けております。
 これらで経済学の基礎知識の確実な修得を目指しています。
 このカリキュラムの学力向上への効果については,実証的に確認しておりますが,2010年度頃から限界にぶつかり,学年全体の向上が厳しくなってきました。原因を検討した結果,一層の効果を得るには,入学者の数学レベルをそろえる必要があり,それには入試制度に手を加えざるを得ないという結論に到達しました。
 この過程をいわゆる3ポリシーから見るならば,教育課程編成・実施方針から入学者受入方針の流れとして捉えられると存じます。
 5ページにお進みください。1988年から今までの入試方式の変遷を表にまとめました。2000年からが3学科分割以降になりますが,変化が細かく頻度も高く,分かりにくいと思われるため,内容は重複しますが,次の2ページで概要を説明いたします。
 2010年度までは,先ほど申し上げましたが,私立文系学部としてごく一般的な入試で,学内入試もセンター利用入試も数学は必須ではありませんでした。
 数学必須方式の第一歩は,2011年度に5名受け入れる予定で導入した,センター試験利用の4教科型です。2012年度は10名に増やしましたが,定員比では,11年度は2%,12年度は4%,とごく一部でした。
 いずれの年度も,受験者数が受入数の10倍を超え,壊滅的な結果とはならなかったため,13年度にセンター利用の3教科ベスト2,それから3月実施の2教科英・数型を導入しました。受入予定数は総数で35名,定員比では14%でした。一挙に増やしたように見えますが,実は2010年度までの3教科選択型で数学受験者が約10%いたため,実際には数%の増加とは目算していました。
 当初の3年間に一挙に数学必須方式を展開しなかった理由ですが,本学科が入試上は大学間で劣位という認識からです。今でも受験生は,本学科を凡庸なイメージで見ていると認識しております。しかも,上位私立大学では,3教科英・国・地公型や2教科英・国型が主流で,大半の受験生は入試で数学は不要ですから,数学を課すと,志願者の大幅減少が予想されました。
 また,2011年度,12年度のセンター試験利用方式は,間口が広く,様々な受験生が対象となりますが,13年度の一般利用は,本学を志望する学生が対象で,間口が狭い。結果として,マイナスの影響をもろに受けると考えられ,こわごわ取り組んだというのが実情です。
 数学必須方式を実践してみた結果ですが,一般選抜方式でも数学受験者は一定数存在するということが分かりましたので,まず,それまで実施していた3教科ベスト2や2教科英・数の枠を拡大しました。それから,従来型のセンター試験利用3教科の,申し訳ありませんが,7ページ3行目の記述が違っておりまして,数学を外すのではなく,受入数を削っていきました。これらの変更を行っても,質を維持しながら入学者を充足できることが分かりましたので,学内入試でも本格的に導入していきました。
 2月初旬の3教科型を英・国・地公と英・国・数,つまり数学必須とに分け,入試実施日が3日間に増えましたから,受験回数を3回に増やしました。また,大学の入学受入方針で多科目型を展開しようという話になりましたので,16年度に学内入試に4教科型,18年度にセンター利用で5教科型を導入しました。当然,これらは数学必須です。
 さらに学内入試を補強するため,2月下旬に3教科数学重視を導入して,19年度からほぼ現在の方式に落ち着きました。
 以上が経緯ですが,冒頭で述べましたように,現時点では,数学必須方式導入によって志願者数は大幅に減少しておりませんし,むしろ予想外のプラス面が発生しました。以下,プラス面を多少御紹介いたします。
 8ページを御覧ください。経済学科では,入学直後にクラス分けのプレースメントテストを数学と英語で実施しております。このテストは,学科全体の数学の平均点が右の表のように変化しております。一見すると2019年度が一番高いのですが,実は19年度に数学必須入学者の平均点が90点を超えてしまいまして,プレースメントの役割を果たさないということで,20年度からは問題を平均で10点程度難しくしています。この難易度の上昇を考慮すると,17年度を除いて毎年平均点は上がっていると見て取れます。もちろん平均点の上昇は,数学受験入学者が増えたのだから当然である,とは言えます。しかし,実は3教科英・国・地公方式,表の右下にありますが,数学を受けない受験者の平均点も,先ほどの難易度10点アップを考慮すると,5点から8点上昇していると判断できます。
 この平均点上昇の理由は,本当のところはよく分かりませんが,次のように推測しております。数学必須方式導入前は,英・国・社方式は,数学の不得手な生徒が受験していたと思われます。しかし,数学受検者の比率が上がるに伴って,英・国・・社の受験枠が狭まり,近年は,数学もそれなりにできるのですが,相対的には社会の得意な生徒が受験しているのではないか,と見ております。
 次に9ページでございますが,ではプレースメント数学テストの平均点上昇で何が変わったかというと,最も目立つのは入学後の学習行動の変化です。
経済学科では,数学関連科目として,1年次に基礎数学と経済数学Ⅰが設けられています。いずれも,2年次必修科目のミクロ経済学とマクロ経済学で必要な数学的知識を教えます。両者のうち基礎数学は,数学の不得意な,プレースメント数学テストの得点の低い学生を対象に,中学校程度の数学から微分の基礎までを教える科目です。これらの発展科目として,2年次に設けられている経済数学Ⅱは,3,4年次の専門科目で必要な数学的知識の修得を目的としています。これら科目の履修者数について,10年前は数学の不得意な学生が大半でしたから,経済数学Ⅱの履修者は全体の2割程度でしたが,現在は6割に増加しております。他方,基礎数学の履修者はかつて60人ぐらいおりましたが,現在は1割前後の20数名に減少しております。
 時間が押しておりますので,それ以外の事柄,3番目,10ページの入学後の学力変化,4番目の女子学生比率の上昇,5番目の進学校からの受験者増加は割愛させていただき,13ページに進ませていただきます。今回の報告に際し,改めて経緯を眺め,気づいたことがございます。数学必須方式の導入時には意識しておらず,また全く考えてもおりませんでしたが,導入の流れは,卒業認定・学位授与方針,つまり,ディプロマ・ポリシーからカリキュラム・ポリシー,さらにはアドミッション・ポリシーという,3ポリシーの展開に沿って結局は進んだんだな,ということです。言い換えれば,教育上の必要性から数学必須方式を導入しており,もちろん先進事例として参考にはしましたが,他大学・他学部が実施したからとか,あるいは入試上有利になるからという理由ではなかったとは断言できると思います。
 資料の残り14ページは現在の学科の課題ですが,大した話ではございませんので,以上で終了させていただきたいと思います。御清聴,誠にありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございました。それでは,御質問や御意見を承りますが,いかがでしょうか。村田委員,どうぞ。

【村田委員】  ありがとうございます。私も経済学が専門なので,お話よく分かります。そこで御質問をさせていただきたいんですけれども,テストの中身,数学の数A,数Ⅱとあるんですけれども,基本的に経済学の場合は,微分の概念を持てば,限界概念が非常に理解しやすくなってくるんですが,微分は数Ⅱでは,今,範囲に若干入っているかと思うんですが,数Ⅲをというのは考えなかったんでしょうか。その辺り教えていただければと思います。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  ありがとうございます。先ほど申し上げたと思いますが,予備校などで使われる言い方で申し上げると,東洋大学は日東駒専という大学群,レベルに属しています。その大学で例えば数Ⅲを文系で課した場合にどうなるか。恐らく誰も来ないと思います。そうなってしまうと,入試どころの話ではなくなってしまい,大学から,何をやっているんだ,と言われるだけだろうと思います。ですから,ある程度,受験生が受けてくれないとお話にならないということで,あえて数Ⅲはやめました。
 それから,最初の計画では数Bも入れたかったのですが,東洋大学では,文系学部の数学入試では,数Bは入れていません。ですから,残念ながら数Bは指定していないのですが,大学入学共通テストでは,そのような制約はありませんから,数Bを課しています。

【村田委員】  それほど大きく,受験生の,数学を入れたからといっても,変化がなかったので,今後どういうふうにお考えなんでしょうか。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  先ほど報告から割愛した課題でも多少触れましたが,現在,数学の受験生は,志願者で5割強,入学者で見て,一般入試の7割,推薦を含めても5割越えと,学科定員の半分以上が数学で受験しています。そうすると,例えば経済数学を教えている同僚の話では,そんなこと知っているよ,という顔している学生が少なからず見られるそうです。であるならば,教育内容のレベルを上げざるを得ない。では,具体的に何をどのように上げていこうかという話になります。例えば,データサイエンスとして導入するかどうか分からないのですが,計量経済学とか,あるいは多変量解析,それらを本格的に取り入れた授業にしよう,そのようには考えております。実現すれば,今後は,計量経済学に向いた学生を取るために数Ⅲを入れようとか,大学全体を口説いて数Bを学内入試に入れようなどと展開してい行くと思います。ですから,数Ⅲの導入は今後の課題と認識はしております。

【村田委員】  ありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございます。大森委員,どうぞ。

【大森委員】  ありがとうございました。共愛学園の大森でございます。数学を入れられるということで,徐々に入れていかれたというところに御苦労を垣間見たというか,慎重にされたんだなとよく分かりました。
 それで,数学を入れていくといったときに,結果,今,受験生は大丈夫だということであれなんですけれども,その頃いろんな議論が学内であったと思うんですけど,やっぱり無理じゃないというような話とかで,例えばリメディアルで対応しようとかいうようなことは考えなかったですかということと,それから,今,かなり優秀な数学ができる学生が入ってきているというお話でした。幅が大分広がってきて,基礎数学が少なくなったとはいえ,広がっている中で,いわゆるリメディアルという対応もお考えかどうか,お聞かせいただけますでしょうか。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  経済学科の推薦入試には,運動部優秀選手という枠があります。体育会系運動部に所属する学生で,主に試合の戦績に基づいて合否を判断します。彼らは一般入試を受験しませんから,そのような学生をどのように教育していくかは,課題となります。他にも,指定校推薦や,附属高校からの進学者など,同じく一般入試を受験しない学生がおり,同様な問題の対象となります。学科で色々議論をしましたが,最終的に,既に申し上げた基礎数学という科目を設けました。プレースメント数学テストで得点の低い学生が対象で,中学数学レベルから始めます。この科目の履修者は2008年の設置当初は6,70人で,1年生全体の2割以上,2割5分近くいましたが,現在では,20数名程度,推薦入試経由の入学生の4割程度まで減っています。減った理由ですが,1つには,入試部が,高校対象の入試説明会で,経済学科の数学必須入試について繰り返し話した結果かもしれません。経済学科に行ったら数学をやらなくちゃいけない,ということがかなり高校に浸透したようで,運動部枠についても,ある程度は学習している生徒が受けるようになったのではないか。これを効果と言って良いかどうか分かりませんが,入試関連の説明により減ったのではないかと推測されます。
 ですから,現在,基礎数学を履修している学生は,推薦入試で入学した数学の不得手な学生と,一般入試でも,3教科英・国・地公方式受験で,英語はかなりできるが数学が苦手という,そういう学生が来ているようです。ただし,基礎数学を履修した学生の多くは,必修科目の試験結果で見ると,以前よりは速やかにキャッチアップできていますので,私はリメディアル教育までは考えませんでした。もしも全く逆の方向に事態が動いていたら,当然,我々もリメディアル教育を考えたと思います。
 なお,余分な話題として,入試制度を変えていくときに数学導入への反対意見はなかったのかについて申し上げておきます。経済学科の専門科目担当者は,全員が日本経済学会に所属していますから,みな数学の一通りできる者が教員になっています。さらに,一般教養の教員も理系出身者が過半数です。すると,一般教員の先生も,もっと数学を導入しろ,と発言するので,その点では学科としてぶれが全くなかった。むしろ,とにかくどんどん進めろ,という感じでしたから,非常にスムーズに議論が進んだのは間違いないと思います。もし,そうではない方が多数おられた場合にどうなったかは,申し訳ありませんが,分かりません。

【大森委員】  ありがとうございます。

【永田部会長】  越智委員,どうぞ。

【越智委員】  ありがとうございます。いろいろな試み,よく分かりました。数学が強い卒業生の率が増えてきたということによって,例えば大学院への進学率とかが変わってきたり,あるいは,就職した企業からの評価がどういうふうに変わったかというデータはお持ちでしょうか。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  就職先が変わっていったという点について,就職先でどのように評価をしているかという点は,現在,これから関連する調査を実施しようという話は出ております。ですから,現時点では,就職先でどうしているかなどはちょっと分からないのですが,大学への進学ということでは,例えば上位大学である,一橋や,早稲田の政経学部,そういうところに進学する学生は毎年1人や2人出るようになってきたのは確かです。できれば,もっと多く出れば良いのでしょうが,導入前は全くいませんでしたから,そういう点では改善されたとは思います。

【越智委員】  ありがとうございました。

【永田部会長】  古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  ありがとうございます。非常に多くの私学が,経済学部でも,数学,入試科目になかなか課せない,課したいけど課せないという状況,ずっとあると思うんですけど,その中で東洋大学さんが入試科目を増やす試みって,前から注目されていたと思うんですが,非常に多くの大学にとって参考になるプロセスを今非常に詳しく教えていただいて,とても意義が大きいと思います。
 非常に入試制度は複雑なので,受験者に占める数学必須の入試を経た人の比率とかいうことは出していただいたんですが,募集枠に占める数学を受けないと入れない割合というのがどのくらいかというのを,もし分かれば教えていただきたいと思います。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  それは資料2ページに書いたはずで,確認すると2ページの表の上段ですね。つまり,一般入試に占める数学必須の割合は65%です。

【古沢委員】  枠としてということなんですね。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  推薦入試の枠を除き,学科定員が250ですから,一般入試枠200名に占める数学必須方式を受験しなくてはいけない数の割合は65.5%になります。

【古沢委員】  それで,結果的には71%が入ったという。

【児玉東洋大学経済学部経済学科教授】  65.5%が71%になる理由ですが,英語,国語,社会,つまり,いわゆる私立文系3教科の合格者が,残念ながら,上位大学,マーチとか早慶に入学してしまいますので,その分だけ減ってしまいます。逆に数学がある程度できる生徒が入学したりするということから,70%や80%になっているということです。残念ながら,まだ東洋大学,あるいは経済学科には,そこまでブランド力はございませんので。

【古沢委員】  数学で受けた人が7割ということですね。

【児玉経済学部経済学科教授】  7割というのは,数学受験者の一般入試入学者総数に対する割合です。

【古沢委員】  受験者の割合。分かりました。ありがとうございます。

【児玉経済学部経済学科教授】  そうですね。250人が定員で,そのうち大体25.6%が指定校など推薦です。ですから,残りの74%に占める数学受験者の割合が……。

【古沢委員】  選択制も含めてですね。

【児玉経済学部経済学科教授】  はい。70%とか81%になると。

【古沢委員】  分かりました。ありがとうございます。

【児玉経済学部経済学科教授】  分かりにくくて申し訳ありません。

【永田部会長】  ほかよろしいでしょうか。

【児玉経済学部経済学科教授】  すいません,少しだけ追加いたします。先ほど大学院の進学者数が変わったと申し上げましたが,他に,公務員に進む学生の比率が高くなったということもあります。かつては5%未満だったのが,現在は,10%近い時もあり,少なくとも5%後半になりました。

【永田部会長】  それでは,ほかにないようでしたら,児玉先生,どうもありがとうございました。
 続きまして,大正大学から総合型教養教育,データサイエンス教育等についてヒアリングをさせていただきます。神達先生,前田先生からお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【神達大正大学副学長】  大正大学です。本日はこのような機会を頂戴しまして,誠にありがとうございます。
 それでは,ちょっと画面を共有させていただきます。
 大正大学は,東京都内にある学生数約5,000人規模の私立文系大学です。日本仏教の複数の宗派の教育機関が合することで,大正15年に設立をいたしました。間もなく創立100周年を迎えるところですが,現在はこのような御覧のような6学部3研究科から成っています。
 建学の理念は,大乗仏教の精神にちなみ,「智慧と慈悲の実践」を掲げています。
 本学では,仏教精神を中心に据えながら,常に社会との関わりを大事にしてまいりました。
 現在では,Society5.0時代の到来を聞きつつ,全学的な教育改革を推進しています。それが本日御説明する「新時代の地域のあり方を構想する地域戦略人材育成事業」であり,幸いに令和2年度知識集約型社会を支える人材育成事業に採択がされました。
 この事業は,近年,本学が推進してきた地学連携・産学協創の強みを生かしながら,学融合,あるいは課題解決型の教育プログラムによって,幅広い学融合の知識,対応力,コミュニケーション力を身につけさせることを目的としています。
 本学では,地域戦略人材とは,多面的な性質を持つ地域の課題解決に向けて,異なる専門分野の多様な人材を統合し,調整する新しいリーダー,そのように定義しています。
 本事業の推進のために全学共通教育の改編を行いました。これまでは全学共通の教育を第Ⅰ類,学部の専門教育を第Ⅱ類,教職課程などの諸資格科目などを第Ⅲ類としてまいりました。そこを大幅にてこ入れいたしました。第Ⅲ類科目は,この図のようにアントレプレナーシップ教育を導入し,卒業後のキャリアを見据えた科目群としました。
 そして,本日主に御説明する第Ⅰ類科目,これは1,2年次に学ぶ,履修する科目ですが,ここにデータサイエンス教育を導入,さらに統合型教養教育,チュートリアル教育を特色とした探求科目を開講しています。
 この第Ⅰ類科目で育成する資質・能力については,このスライドのようになっています。
 また,第Ⅰ類科目は,このスライドのような科目から構成がされています。
 各科目の卒業要件における位置づけはこのようになっています。第Ⅰ類科目はクオーター制で運用されておりまして,2こま連続ということで,1クオーターで2単位ということになっています。
 先ほど示した第Ⅰ類科目で育成する資質・能力と各科目との関係はこのスライドのようになっております。
 さて,探求科目は,御覧のように,人間の探求,社会の探究,自然の探求の3科目です。それぞれの内容はこのようになっているところでございます。
 そして,人間の探求,社会の探求,自然の探求にはそれぞれテーマが設けられておりまして,学生は希望する科目を選択して履修いたします。
 今御覧いただいたテーマは探求の専門パートに相当いたします。探求は,専門パートと共通パートから構成がされています。1クオーター14回の授業のうち,7回が共通パート,7回が専門パートです。専門パートで学ぶ内容は異なりますが,共通パートで学ぶ内容は全クラスで同じです。
 このような構成を取ったのは,これまで別々に展開していた教養の授業とアカデミックスキル,あるいはキャリア教育の授業を同じ授業の中で行うということにありました。例えば,先ほどの自然の探求では,専門パートでは,自然科学における物の見方,考え方を学びます。そして,共通パートの部分では,レポート・論文の書き方など文章作成のスキルを学びます。これらを統合して,学生たちは自然科学に関するアカデミックエッセイを学期末に作成することになっています。
 いずれの探求においても,学生たちが学んだことを自分ごと化することを目的にこのような授業の構成をしているところです。
 とはいいましても,従来型の授業ではこのような目的を達成するということは非常に難しいかと思われます。そこで,第Ⅰ類科目ではチームティーチングの体制を取って学生の学びを支援しています。チームティーチングでは,教員2名,そこにチューターが加わります。さらに,オリジナルのeポートフォリオを用いて学生のリフレクションをチェックするなど,学生の学習状況には目を配っています。
 学習支援も,ただ面倒見がよいだけでは主体的な学習態度は身につきません。図のようにグラデーションをつけて学修支援を行い,学部の専門教育やアントレプレナーシップ教育につなげていくことを目指しています。
 特に探求で行っているリフレクションについて,このスライドで示しています。一部の学生は,リフレクションの繰り返しによって,非常に学びが深くなっていると実感できます。
 以上,第Ⅰ類の統合型教養教育について副学長の神達からお話しいたしました。以降,データサイエンス教育について本学前田教授から御説明をいたします。

【前田大正大学地域創生学部/総合学修支援機構DAC教授】  前田です。よろしくお願いいたします。超スマート社会の中で地域を支え,活躍する人材を育成する教育プログラムの構築ということでデータサイエンス教育が開始されました。
 次お願いします。そもそも学生の状況なんですけれども,数学の成績は全体的に低く,ばらつきも大きいというのが特徴です。
 ただ一方で,入学時のアンケートを毎年取っているんですが,数学の必要性を感じている学生は7割ということで,そこに期待をして授業を展開しております。
 データサイエンス科目ですけれども,昨年度から全学必修科目ということで進めております。
 次お願いします。科目の考え方ですけれども,社会に欠かせないスキルを身につけたデータに強い文系学生を育てるというところで,最終的には社会や地域の問題発見力と課題解決力の育成ということ,力を入れております。
 また,科目の特徴としては,「ひとりもとりこぼさない教育」という,これはあくまで目標なんですけれども,先ほどお話があったチームティーチングと学修支援で数学が苦手な学生をサポートしております。
 授業設計の工夫としては,後ほども少し説明しますが,「頭で理解する」と「手を動かす」というのを,1回の1こまの授業でセットで学修をしていくというところが特徴かなと思います。さらに反復学修で定着させていくということと,常に学生にはビジネスシーンとか社会での利活用の場面をイメージさせるような教育を進めていくというところが授業の工夫となっております。
 次お願いします。教育目標は,データを基に意思決定を行うデータドリブンな思考を高めて,社会の課題を解決し,価値を創造していく人材と位置づけております。
 次お願いします。データサイエンスは,データサイエンスⅠからⅥまで,これが必修科目で,2年間で6単位を取るという形になっております。データサイエンスⅠからⅣは,基本的な情報リテラシー,データサイエンスの基礎とか統計学を学びながら,ⅤとⅥでは社会の課題解決ということで,産学連携で実践的な学びというところで発展学修としております。
 次,お願いします。ちょっと繰り返しになりますけれども,チュートリアル教育ということで,チームティーチングを推進しております。学修者主体の学びを教員とチューター,SAで教育支援を行いながら進めております。
 また,産学連携の実践的学修では,これは昨年度の連携先なんですけども,三鷹市,サイゼリヤさん,そしてソフトバンクさん,ニューラルポケットさん,こちらはAIの関係の会社ですけども,ここと連携して取り組んでおります。
 次お願いします。また,評価方法なんですけれども,最初のうち,データサイエンスⅠ,Ⅱのところは,とにかく演習や課題をしっかり取り組めば何とか評価できる形になっているんですけども,科目が進むにつれて,テストやプレゼンの資料,アウトプットの配点が高くなるように組み立てております。
 次お願いします。先ほどお話しした「頭で理解する」と「手を動かす」のセットで学修というところを少し御説明させていただければと思います。これは各データサイエンスⅠからⅥで,どんな切り口で,どんな授業テーマでやっているのかというものをまとめたものなんですけれども,例えば,次のページお願いします。例えば,データサイエンスⅠの4回目,5回目のところで統計の概要と平均とか,基本統計量ということを「統計の基礎」というテーマで学びます。ここはちょっと電卓で計算したりとか,頭で理解する領域で頑張って取り組んだりいうことになります。
 次のページお願いします。同じ4回目と5回に,このままエクセルのワーク,演習に入っていく形になっています。4回では,平均値を中心としたその他の関数をやったりとか,5回目は,基本統計量に関する関数のMEDIANとかMODE.SNGLみたいなものを扱ったり,より理解を深めていくと。これが「手で動かす」というパートになります。
 1年生のデータサイエンスⅢからはtableauというBIツールを使った学習に切り替わっていきます。こちらも統計の基礎を復習をしながら進めていきます。
 次お願いします。社会の課題解決,実践的な取組ということなんですけども,これは連携先からデータの提供を受けて,データサイエンスⅤとⅥで問題解決型ミッション,価値創造型ミッション形式という形で,データを分析し,課題を抽出し,課題解決の提案を企業側に,または自治体に行うという形の組立てになっております。
 ここが令和3年度に取り組んだ各連携先からのミッションと具体的なテーマになっております。
 次,お願いします。少しずつ成果も出ていまして,授業で学んだことを外部の,これは三鷹市がやっている「ミライ研究アワード」という学生のためのコンテストなんですけれども,ここに出場して,何とこの学生たち,公共政策学科という学生なんですけども,優秀賞と三鷹市長賞のダブル受賞をしたというような成果も出ております。
 次お願いします。まとめですね。数学が苦手な学生でも必要性があるということを前提に,我々の工夫によって意欲的にデータ分析や可視化に取り組む学生を育成するということはできるなというのが我々の実感というか,手応えとして考えているところです。
 また,後半の実践的な学修で,頭で理解するのではなくて,学生たち自身が説得力のあるエビデンスや論理展開とは何かというようなことを自分の言葉で語れるまでに成長しているなと思っています。
 その前提には,とにかく授業の中でも,社会の利活用,あと,ビジネスシーンをひたすら学生たちにイメージさせる,また,そこにつながるようなデータを使って授業を進めていくというところが一つの成果につながっているかなと思います。
 次お願いします。最後に,今明らかになった課題ということなんですけれども,ちょっと入学時のITリテラシーの格差が,この3年間なんですけども,どんどん広がってきているというところで,そこに対してどうやって対応していくかというところは1つの課題かなと思っています。
 そして,まだ我々も取り組んで日が浅いので,学生たちの伸長した能力と伸長していないところというところ,しっかり把握できているかというと,まだまだ分析し切れていないところがありますので,その辺りに関しては把握と対応策の検討をしていきたいと思います。
 以上となります。ありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございました。それでは,御質問,御意見等をお伺いいたしますが,いかがでしょうか。
 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  ありがとうございます。大正大学に限らず,本日プレゼンいただいた4大学の皆さんにぜひ教えていただきたいと思います。まず,4大学とも様々な大学の特色を生かして文理融合への新しい取組をなさっていることに,大変すばらしく興味深いと感じました。同時に、そもそもグランドデザイン(答申)の議論に参画したときは,2040年,一体どうなっているのか?というとこからスタートしているわけで,私は2040年には現在はない職業に学生たちが就くことだってあるのだろうと思っています。そのためには,どのような準備をするべきなのかという視点で物事を考えておりました。
 この文理融合というのはとても大切なことですが,まさに通過地点と捉えております。本日のプレゼンでは,大学の経営側からのお話というのが非常に多かったと思います。例えば入試の方法であるとか,その倍率がどうなっていたかとかいう点は、経営上非常に重要な指数なのかもしれません。
 ただ一方で,文理融合の話は,学修者ないし卒業生が社会に出たときに,こういう教育を受けたからよかった、ということに繋がっていかなければいけないと思います。そもそも文理融合の話が出てきたのは,社会からの要請だったと思いますが、一部,越智委員から東洋大学や大正大学のまとめの中にお話が出てきましたが、どのように卒業生や就職先からフィードバックを取っているのか。
実はこの各4大学の卒業生はどんな企業に就職しているのかネット上で調べてみました。名立たる上場企業を中心に入っているわけですが、逆に中堅・中小企業のオーナーを目指したり,NPO法人で活躍したり,または両親の会社を手伝うという学生もいると思います。やはり、評判や,何が役に立ったかという点のフィードバックをしっかり取ること,そして,それをこれからの入学者,学修者ないしは在校生に対し還元していくということが非常に重要なことなのではないでしょうか。もしその点について御説明がいただけるようであれば,ぜひお願いしたいと思いますし,今後はそういう視点でも,この新しい取組については御検討いただきたいと思いました。
 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。いずれの大学でも結構です。結局新しいプログラムをつくった,新しい入試制度をつくった,その結果としてキャリアパスとしてどうなっているのか,あるいはその中での実力,キャパシティーの見せ方がどうなっているのか,そのような質問です。4大学,いずれも残っていらっしゃると思いますが,いかがでしょうか。九州大学さん,どうぞ。

【鏑木九州大学共創学部長】  ありがとうございます。今のご質問が,まさに今大学に問われている本当に重要なことだと思っております。九州大学について言えば,就職先からのどういう評判といいますか,学生がどういった評価を受けているのかというのは,これからの第4期中期目標期間の大きな課題ということで,今後取り組んでいくということです。
 共創学部を設置するときに,地域社会のいろんな方々にアンケートを取りまして,そうしたアンケートを基に,協働する能力であるとか,もちろん英語もそうなんですけれども,特に要望として高かったのは,一緒になって課題解決に取り組むということでした。このように,私たちの進んでいる方向性が正しいかどうかを確認した上で進めてきております。
 今後は,そういった教育を受けた学生が,実際にどういう仕事をして,どういう評価をもらっているのかというのをやはりきちんとチェックしていく必要があると思っております。今後の課題というところだと思っております。

【永田部会長】  ありがとうございます。そのほかの大学はいかがでしょうか。金沢大学さん,どうぞ。

【片岡金沢大学学長補佐】  ありがとうございます。本学も,就職先アンケート,それから卒業生アンケート,こういったアンケートを利用して,卒業生,修了生,それから就業先の声を聞いております。
 卒業生に対するアンケートについては,回収率がすごく低くて,1%ぐらいしか返ってはきていないんですけども,DPの達成したものが社会でどれぐらい役に立っているのかというような質問を返していただくような形で声を拾っております。同時に,学び直しの機会等が必要なのかとか,希望するかというような質問もしておりまして,その辺は卒業生からかなりの,学び直し,大学で学びたいというような声が返ってきておりますので,そういったところでもリカレントが必要とされているのではないかと思います。
 就業先のほうからも大学に向けていろいろアドバイスをいただいておりますので,そういったところをカリキュラムのほうに反映させていこうと思っております。

【永田部会長】  ありがとうございます。大正大学さん,どうぞ。

【神達大正大学副学長】  大正大学では,卒業生につきましては,現在本学は教学IR体制を強化しておりまして,昨年度,学長を部会長とします教学IR推進部会を立ち上げました。その中で卒業生調査,企業調査などを行っており,本学の卒業生がどのように社会で活躍するかということをこれからまさにいろいろとデータ等を集積していろいろと考えていきたいと考えております。
 地域戦略・人材育成事業とは,まさに地域課題,課題解決に向けて活躍できる人材ということで,この事業の推進の中でどのような教育の効果があるかというところをこれから本学でも期待しているところでございます。
 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,小林委員から御質問でしょうか。

【小林委員】  ありがとうございます。大正大学様にお伺いしたいのですけども,統合型教養教育とか,それからデータサイエンスは非常に新しい試みなのですけど,1つは,30単位ですか,もう一つは6単位ということで,普通の専門科目に新しく上乗せするとあっという間に50単位,1年間超えてしまうというような感じがするのですけど,今までそういうリベラルアーツの教育をやっていて,それを今,さま変わりさせて,新しい,いわゆる教えるだけじゃなくて身につけるような形で新しく教育課程を変えたということで理解してよろしいでしょうか。

【神達大正大学副学長】  御質問ありがとうございます。実は30単位の中にデータサイエンスの6単位も含まれておりますので,1,2年次に履修する共通教育科目は全部で30単位となります。
 これまで,私も十数年の歴史しか見てきていませんけれども,これよりも共通教育で履修する単位が多かった時期もございます。この単位数というのがいろいろと変動していく中で,現在は30単位というところで落ち着いているところです。
 ただ,今回,もう一つ変化を加えたのが,2年生以降に,先ほど申し上げた第Ⅲ類教育というもの,これ,一部必修化しておりまして,こちらのほうの単位を取得するということでこれまでと違う試みをしているところでございます。
 1,2年次の教養教育については,そこまで,ですから,うちの中でも極端に増えたというわけではございません。お答えになっていますでしょうか。

【小林委員】  大体分かりました。ということは,1991年に大学設置基準の大綱化があって,リベラルアーツを減らして,専門教育を増やしている大学が多かったのですけども,大正大学様はいわゆるリベラルアーツはそのまま残していたということでよろしいでしょうか。

【神達大正大学副学長】  そうですね。私がこの大学に赴任してからも,先ほど申し上げたような自然の,文系大学なんですが,自然の探求といった自然科学の教養教育というのが必修としてありましたので,ずっと残っていたというのが事実でございます。

【小林委員】  非常にそういう形で新しくさま変わり,衣替えするというか,現在に合わせたということはすばらしいと思います。
 少し事情は違いますけども,九州大学とか金沢大学様のリベラルアーツの取組も,身につけるという意味では似たような取組かと思いましたので,意見を言わせていただきました。ありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございました。それでは,ここまでで4大学からのヒアリングを終わります。時間があまり残っておりませんが,今度は委員の方々の中から,全体を通じて,今日ヒアリングをした中から,このような文理横断を目指したようなことの難しさや良さ,そういったものに対するご意見いかがでしょう,感じしか今はつかめないかもしれません。具体的な事例4つでしたが,そのようなことがあれば御発言いただきたいと思います。
 村田委員,どうぞ。

【村田委員】  ありがとうございます。今日,皆さんには,非常に面白いお話を聞かせいただいたと思います。文理の横断というときに,学部,大学ごと,あるいは学部としての,あるいは経済学部の取組など,様々あると思うんですけれども,恐らく文理の横断というときに,これは何回も言っていることですが,文系から理系がなかなか難しく,まさにそれが今日の東洋大学様の経済学部の取組で,非常に苦労されているってよく分かるんですね。それでは,この数学の入試を入れることによってどれぐらい受験者が減るのだろうかというようなことを気にしながらされているわけですから,やっぱり入試のところへどう数学を入れていくか。それから,大正大学さんのところでもAIを導入するときの授業をやるときに,最終的にAIを分かろうと思えば,数Ⅲの領域は入らざるを得ないので,この辺りの議論,どういうふうに仕組みをしていくのかということがこれから大きな課題なのではないかなと思うんですが,私の感想と意見を述べさせていただきました。

【永田部会長】  ありがとうございます。越智委員,どうぞ。

【越智委員】  ありがとうございます。私もやはり高校のレベルからちょっと考えていかないと大学全体のことは変えられないと思います。東洋大学さんの試みというのはすばらしいと私も思っております。広島大学のほうも,前期の試験で文系に数学の独自の試験とかいうのを入れていったほうがいいんじゃないかと私も提案するんですけれども,なかなか受けてくれにくいというような実情があります。どこらまで今行けるのかというのをいま一度考え直す必要があるんじゃないか。それは高校レベルからの話になると私は理解しております。
 以上です。

【永田部会長】  どうもありがとうございます。実は今日御欠席の山口県知事の村岡委員のほうからは意見が出ています。簡潔に議題に合うような感じで御紹介いただけますか。

【柿澤高等教育政策室長】  分かりました。山口県知事,村岡政委員からもコメントをいただいております。村岡知事,委員のほうからも,STEAM教育の強化による文理横断教育が望まれていることを強く認識しているということ。
 また,地域の知の拠点である大学がそのポテンシャルを十分に発揮して,時代のニーズに応じた教育を柔軟に提供できるよう,大学教育の多様性や先導性・先進性を向上させていくことも必要ということでございます。
 また,山口県内の取組として,山口大学が共通教育においてデータサイエンスを全学必修しているとか,山口県立大学でも基盤教育において取り組み始めているといったところも御紹介いただいております。
 こうした動きが県内の他の高等教育機関へも波及するように,地域連携プラットフォームである大学リーグやまぐちにデータサイエンス教育ワーキングを立ち上げて教育プログラムの開発を行うこととしており,地方であっても質の高い教育へのアクセスが可能となるよう県としても支援していきたいと考えているという御意見をいただいております。

【永田部会長】  ありがとうございます。今の村岡知事の御意見等,世の中もこのような認識かなという気が若干して聞いておりました。数理・データサイエンス・AIをやると文理融合という理解だとすると大間違いだと思います。数理・データサイエンス・AIは,英語が話せるか,書けるかということと同じレベルだという認識なので,これをもって文理横断ではないだろう。
 今日お聞きしたように,皆さんとても努力されています。金沢も,九州も,東洋も,皆さん,要するに,リベラルアーツ的な要素を入れて,きちんと自然と人間とかというような形で,いわゆる自然科学と文系的な視点をマージさせていこうと努力されています。やはりこの辺りを今度は,企業からヒアリングしてみなければいけないのですが,文理融合,文理横断とおっしゃっているニーズが,数理・データサイエンス・AIだったら,少し残念な感じであり,それは違うだろうと思います。
 今日は大学側の努力を聞いて,越智委員がちょうどおっしゃったことが一番の焦点になっていて,村田委員も実はほとんど似ていることをおっしゃっていました。平たく言ってしまえば、大学で文理横断を行おうとするときに,高校時代の文系,理系に分かれて、大学受験ということにより,決定的にその先が苦しくなっていくということを御指摘になったと思います。ですから,高校時代からのことを考えなければならないとおっしゃったと思います。
 ヒアリングを十分させていただいたので,今後の議論に役に立つところまで来ていると思います。
 ただ,村田委員と越智委員のお二人が,最後に全般を通しての意見として出てきたのは,そのようなことだったと思うので,もう一度その辺を我々も考えながら,今現在の高等教育が続く限りにおいての将来像をつくらなければいけないのです。この大学振興部会というのは,直近のこともやるし,直近を通じて将来のこともやっていかなければいけないので,とても重い現実を知ったのだろうというところではないかと思います。
 先生方,何か特別に御発言ありますか。今日ヒアリングを聞いたところでの全体像の中での問題点ということだと,今,ちょうど村田委員,越智委員がおっしゃったあたりが,各大学が苦しみながら努力しているゆえんでもあり,工夫の見せどころでもあったということになるかと思います。
 それでは,時間も押しておりますので,大変参考になるヒアリングをさせていただいたということで,4つの大学に対しましては心から御礼を申し上げたいと思います。どうも本当にありがとうございました。
 それでは,今言いましたように,今度は企業側からも聞いてみないといけないので事務局から今後の予定等をお示しいただければと思います。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日は,大学の皆様におかれてはヒアリングに御協力いただきまして誠にありがとうございました。
 また,委員の皆様におかれては,活発な御議論,誠にありがとうございます。
 次回の大学振興部会は,8月9日,火曜日,16時から18時を予定しております。
 実施方法等については改めてお知らせいたします。
 本日,時間の都合上,御発言できなかった内容等については事務局までお送りください。
 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。
 8月9日は,お盆の前ですので,夏休み前の会合になると思いますが,その後はゆっくりと休んでいただければと思います。
 それでは,8月にまたお会いしたいと思います。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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