質保証システム部会作業チーム会合(第1回) 議事録

1.日時

令和3年11月26日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

(1)座長の選任等について
(2)質保証システムの見直しについて
(3)その他

4.出席者

委員

(座長)吉岡知哉座長
(座長代理)日比谷潤子座長代理
(臨時委員)浅田尚紀,大森昭生,川嶋太津夫,杉谷祐美子,米澤彰純の各委員

文部科学省

(事務局)絹笠文部科学戦略官,西田高等教育企画課長,新田大学振興課長,柿澤高等教育政策室長,草野大学設置室長,西大学改革推進室長,一色大学振興課課長補佐,大塚専門教育課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐

5.議事録

(1)座長の選任等について
委員の互選により,吉岡委員が座長に選任された。座長代理については,吉岡座長から日比谷委員が指名された。
 
(2)質保証システム部会作業チームの運営について
事務局から,質保証システム部会作業チームの会議の公開について資料2に基づき説明があり,原案のとおり決定された。
また、公開に関する規則に基づき,この時点から会議が公開された。
 
(ライブ配信開始)
【吉岡座長】  ただいま会議の公開をいたしました。また,YouTubeライブ配信を御覧の皆様におかれましては,配付資料を文部科学省のホームページに掲載しておりますので,適宜,御参照いただければと思います。

 それでは,初回の作業チームの開催に当たり,私から一言御挨拶をさせていただきます。
作業チームの座長を務めることになりました吉岡です。よろしくお願いいたします。また,座長代理を日比谷委員にお願いいたしますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 私は,親委員会の質保証システム部会の部会長をしております。部会長が作業チームの座長を兼ねる場合ですけれども,論点の整理とか,あるいは部会との接続という点ではもちろんメリットがあるのですけれども,一方,無意識に議論を単純化させてしまったり,需要な論点を見落としたりするということがあるのかなということも懸念しております。作業チーム,主に専門的・技術的な問題を扱うことになりますので,これは正に質保証システムの一番根本に関わる事柄の審議ということになります。注意深く丁寧に議論を進めていきたいと思いますので,是非御協力いただき,忌憚(きたん)のない御意見を賜ればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは,本日の審議事項に入ります。質保証システムの見直しについての審議を行います。設置基準,設置認可審査,認証評価制度及び情報公表の在り方等を一体とした質保証システムの見直しについて,専門的な調査審議を行うために質保証システム部会が置かれ,議論が進められているわけですけれども,その質保証システムの制度面の専門的・技術的な事項について調査審議を行うということで本作業チームが置かれております。ここでは質保証システムの見直しの素案を作成することになっていますので,闊達(かったつ)な議論に資するため,これまでの質保証システム部会の議論も踏まえ,部会長として資料3のとおりの論点メモを作成しております。
 つきましては,本日はこの論点メモを下地にしながら審議を進めたいと思っております。お手元の資料3を御覧いただければと思います。全部読み上げますと大変長いので,要点をお話しさせていただきます。質保証部会の方での議論を踏まえておりますので,質保証部会での議論と,そういう意味では重なっているといいますか,そこの要約部分が主たる部分になります。
 これは整理のためというつもりがございますので,ここに書かれていることをそれ自体として前提とする必要はなくて,たたき台として自由に議論をしていただければと思います。大きな論点として,3つ。1つが保証すべき「質」について。2番目が見直しの方向性について。それから3番目が質保証システムに関する論点として,設置基準・設置認可審査,それから認証評価制度という,やや具体的な側面を扱うということになります。

 では,まず1の保証すべき「質」という点でございます。質保証システム部会の議論が積み重ねられてまいりまして,大体以下の点についての前提が共有されているのではないかと思います。
 教育研究の質ということですけれども,学校教育法,そこの四角枠の中に引用してありますけれども,学校教育法の第83条1項に「教育研究を行い,その成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与する」という文言がございます。質というのは正にこの教育研究の質ということですけれども,同時に教育の問題と研究の問題を分けて考えられるところもあるということが,これまでの議論だったと思います。教育の質ということは,学修者の学びと成長という視点から,これはこの前提の1つですけれども,これは正に学生の学びの質と水準ということだろうと思います。つまり,学ぼうという意欲や意志を持つ学生が自ら学びを発展,進化させていくことができるだけの仕組みを教育機関が整備する必要性があるということです。
 具体的には大学が自らの教育理念・目標を踏まえて、いわゆる3つのポリシーを基にして学習目標の達成に学生を導くべく,大学が必要な教育環境・教育体制を整えているかということ。それから,内部質保証の体制を整えているかということ。そしてこれが制度として整っているだけではなくて,実際に機能しているかという点。こういった点を確認し,評価しながらいくことが質保証ということであろうと考えます。
 また今,教育の質という言い方をしましたが,一方,教育と研究を両輪として考えるという観点からは,研究環境の整備等が行われているかということも非常に重要であるということで,こういうことの確認もしていくべきではないかという議論が行われているところです。

 2番目,見直しの方向性でございます。枠の中に大きく2つの見直しの方針と,それから4つの視座を設定してあります。これは質保証部会においての議論の中で提示してきたものでございます。2つの見直しの方針というのは,学修者本位の大学教育の実現,これは「グランドデザイン答申」で打ち出されているもの。それから,第10期システム部会で言われてきた,社会に開かれた質保証の実現ということ。外から見て分かるということ,簡単に言えばそういうことだと思います。
 それから,見直しの視座として,客観性の確保,透明性の向上,それから先進性・先導性の確保(弾力性)あるいは柔軟性の問題,それから4番目の厳格性の担保という,この4つの視座でございます。3つ目と4つ目のところですね、厳格性の要請と,柔軟性を向上させていく必要があるということが,これは場合によってはトレードオフの関係になることを注意する必要があるということです。また質保証システムは,全体として事前規制から事後チェックまでを含む複合的なシステムであるわけですので,これを全体として機能するような形で効果的,効率的な見直しを行っていく。その点に留意する必要があると考えております。

 3番目,各質保証システムの見直し。ここでやや具体的な方針を考えているところです。1番目が大学設置基準・設置認可審査でございます。大学設置基準の性質ですけれども,大学設置基準それ自体は,基本的に最低基準という形で重要な役割を果たしているものです。同時に設置基準は正に最低基準ですので,内部質保証やあるいは情報の公表,あるいは認証評価等の事後チェックを含めた全体としての質保証システムの中で,大学自らが不断に質的な改善を図っていくことが必要であるということであります。現行の日本の質保証システムは,事前規制の形をとっている設置基準に基づいた事前の審査,それからそれ以降の事後チェックを組み合わせた形でそれぞれの長所を組み合わせていくという,そのようなものとして考えられております。したがって,例えば設置基準の規定を見直すといった場合であっても,全体の中での機能ということをきちんと考え,バランスを考えていく必要があるだろうと思います。
 ここのところの議論の背景のことにちょっと触れておきますと,要するに非常に大きな社会変化が起こっていて,グローバル化であるとか日本における少子高齢化,それから技術的な,デジタル技術を中心にした科学技術といいますか,通信技術等の発達があるということ。それから,もう1つ,これは当初は余り予想していなかったことですけれども,新型コロナウイルスの世界的な感染拡大があって,それに対応していく教育のシステムということも考えていかなければならなくなったということであります。その経験を踏まえて,時代の変化に対応したシステムの柔軟化の必要ということが指摘されてまいりました。
 また,これは日比谷先生が中心になってまとめてくださった議論の中に含まれていますけれども,学位プログラムという考え方の重要性が非常に強調されるようになってまいりました。また,大学等の組織も昔のような学部単位という形で独立した学部があるという発想から,教員組織と教育組織が分離した「教教分離」という言い方がされますけれども,そういうものが実際にもう導入されているということになってまいりました。
 また,先ほど申しましたデジタル技術の発達であるとか,それから実際にパンデミックで学校に行けないというようなこともあったりして,大学の施設の役割であるとか,機能についても検討していく必要が出てまいりました。そのようなことがそこの枠の中に書かれたところでございます。2番目のポツの所でまとめてありますが,下のところ,マル1,マル2にしてありますが,マル1,時代の変化に対応しつつ将来を見通した設置基準全体の見直しを行うとともに,マル2,共通となる最低基準性を担保しつつ,大学教育の多様性・先導性を向上させていくような設置基準の見直しが必要ではないかということでございます。

 さて,それから見直しの観点でございます。1つは学修者本位の教育の実現ということであります。学位プログラム自体が3つのポリシーに基づいて編成されるものであって,各大学における内部質保証は学位プログラムを基礎として行われるという考え方を,例えば理念という形でもっと明確にしてはどうかということが考えられます。また,内部質保証による教育活動の不断の見直しということですね。サイクルを持って不断に見直していくことが求められているということを,これも理念上の考え方として明確にしてはどうかということが議論されてまいりました。
 それから,客観性の向上ということですが,学位プログラムは組織的に教員・事務職員等が連携して実施していくことが重要であるということで,これは設置基準の個々の項目というよりも全体の組立ての問題ですけれども,現在,いろいろなところに分散されている教員とか事務職員,あるいは各種組織に関する規定を再整理してはどうかという考え方があるだろうと思います。
 それから,教員の考え方ですけれども,クロスアポイントメント等の多様な働き方が広がっていることを踏まえると,いわゆる1つの大学に限って専任教員となるという専任教員の在り方について,見直しをしていく必要があるかどうかということも考える必要があるだろうと思います。
 それから,図書とか雑誌という表現が出ていますけれども,先ほど言いましたように,電子的な学術情報の重要性が増しているなかで,これを例えば教育研究に必要な資源とするような形で,電子化とかIT化を踏まえた規定に再整理してみるのはどうだろうかということ。
 それから,空地についての規定もありますけれども,これも役割,機能をもう少し明確にする。教員と学生,学生同士の交流の場という形で再整理してはどうだろうか。
 それから,教員だけではなくてTA,SA等の教育補助者も授業に参画できるように,これを設置基準上,教育を補助する者という形で明示的に規定してみたらどうだろうかというような点があるだろうと思います。
 次は先進性・先導性の確保であります。専任教員の問題は先ほど触れましたけれども,ここでいうと,四角の中ですと2番目の丸になりますが,柔軟な教育課程編成を可能とするために講義・演習・実習・実験の時間区分の大括り化などをして,単位制度の柔軟な運用を可能とするような見直しを図ってはどうか。
 それから,大学の創意工夫に基づく取組を促進するために,内部質保証等の体制が十分機能していることを前提にしてですけれども,教育課程等に係る特例を認める制度を新設するということは考えられるだろうか。規定そのものに直接手をつけるというよりも,まずは特例の制度を組み立てていくことで,幾つかの条件をつける必要があるだろうと思いますけれども,十分特例に対応できるだけの質保証が担保されている組織については,特例を認めるという方向で考えることは可能かどうかということであります。
 また,校舎等の施設についてもいろいろな使い方がされるということもありまして,機能に着目した一般的な規定にしてはどうか。
 運動場とか体育館等のスポーツ施設等についても,各大学の実情や必要性に応じて整備が行えるような規定に改めることは考えられるだろうかということでございます。
 以上,やや細かいところに入った議論でございます。

 続いて,2番目の認証評価制度であります。認証評価制度は御存じのように平成16年度より制度化されていて,現在,機関別評価については3サイクル目に入っているところであります。この認証評価の発展のプロセスの中で,内部質保証の重点的な評価が強められてまいりました。また,不適合の場合には文部科学大臣が報告又は資料の提出を求めることができるという形で,認証評価の機能をどういう形で高めていくかが課題となっております。
 認証評価は言うまでもなく事後チェックの中核を担う重要な仕組みでありますけれども,一方で機能的な有効性とか,あるいは評価機関が複数作られておりますので,評価機関による結果や水準の違いが生じてくると。評価機関の独自性ということが一方にあるわけですが,そういう違い。それから,評価結果の公表の在り方。それから,機関別評価と分野別評価のサイクルがずれているということで,これは大学の負担になっているのではないかという議論があります。また,不適合を受けた,それの対応をどういう形で充実させていくかということ等,様々な論点が出されておりますけれども,一方で受審負担の軽減を図りつつ,実効性のある制度への転換ということを考えていく必要があるだろうと思います。
 このことを踏まえまして,以下のような見直しが考えられるのではないかということでございます。この四角の中を御覧いただければと思います。1つは学修者本位の教育の実現ということで,内部質保証について自己点検評価結果によりどう改善されたかを評価し,公表する形へと充実させていく。つまり,改善の要素を追いかけることができるようにしていくというのはどうかということ。
 それから,認証評価を受けるのは負担であるということが議論されますが,しかしこのことの意義というのがむしろそもそもあるわけで,そのことの意義を高めるということが考えられるのではないか。
 それから,学修成果の把握や評価に関することや,研究支援体制等を追加するということが考えられるかどうかということですね。成果の把握や評価という問題をどうするかということであります。
 次は客観性の向上ということで,認証評価機関の評価や,先ほど申しました評価を受ける大学の多様性に配慮しつつ,認証評価機関の質保証に関する取組について考えることができるかどうか。認証評価機関の質保証でございます。
 それから,透明性の向上ということで,各評価機関の評価結果を社会が利用しやすい形で公表するということで,一覧性を持って公表することを検討してはどうかという議論がございます。その際,設置計画履行状況等調査における指摘事項等も合わせて公表してはどうかということですね。どういう形で公表し,かつある種の一覧性をできるようにしていくということですが,一方で指標の立て方とか,あるいは公表の仕方それ自体が非常に重要な論点だろうと思います。
 次は,先進性・先導性の確保ということで,先ほどからの話でいうと,柔軟性の問題ですけれども,1つは分野別評価と機関別評価のサイクルのずれ等,これも直接指摘されていることですけれども,仕組みとして大学の受審負担を軽減することが考えられるだろうか。
 また,負担軽減の問題ですが,認証評価で内部質保証の体制・取組が特に優れていることが認定された大学に対しては,次回の評価は評価項目や評価手法を簡素化するなどの弾力的な措置が考えられるだろうかということです。
 一方,厳格性の担保という点では,不適合の大学については受審期間を短くすることが考えられるかどうかということであります。あとの負担軽減と,それとは逆に不適合だった場合の負担の加重化が生じてくる必要があるのではないかということであります。

 3番目,その他で,その他の議論を幾つか拾ってあります。情報公表その他の事項についても,質保証全体のバランスの中で見直しを検討していく必要があるということで,以下のような事項が考えられるのではないか。1つは学修者本位の教育の実現ということですが,まず遠隔授業の問題です。時間的・空間的な制約が緩和されてきたということで,これは実際にパンデミックの中で各大学が様々な努力をする中で遠隔授業は急速に発達したわけですけれども,一方で双方向性が少ないとか,学生にしてみればキャンパスに行く機会がないというようなこと等を含めて,不満といいますか批判の声というのも学生側からも上がってきている。そういう点から,授業の質保証及び新たな取組の促進の観点から,一定のガイドラインの策定をする。あるいは教育課程等に係る特例ですね,どういう形でこれを緩めるかということに関わる先ほどの特例の問題と関わっておりますけれども,特例を認める制度を新設するということが考えられるかどうかという論点です。
 それから,2番目の丸は,ちょっとレベルの違うことですけれども,学修者本位ということで,大学教育における学生の関わり方をどう考えるかということであります。そこに例として考えられることを挙げましたけれども,いわゆる授業アンケートというのは,今多くの大学が実施していますけれども,授業アンケートの結果をきちんと組織的に検討して,授業内容に反映する機会を設定していくということを考えることはどうか。あるいは,より踏み込んだ形になるかもしれませんが,学生企画型,あるいは学生が参加する授業運営委員会等を置くことで,学生の主体的な大学への関与,ここでは授業を中心に考えていますけれども,そういう学生の関与ということを考えることができるかどうかということであります。
 それから,最後になりますが,透明性の向上ということで,専任教員の算定の問題ですね。そこで学位プログラムごとの教員学生比を公表対象として義務付けることが考えられるかどうかということ。それから,先ほどの遠隔授業の問題ですけれども,各授業科目における授業方法あるいはその中における遠隔授業の割合等について情,報公表を義務化することが考えられるかどうか。透明性の確保の方法についての考え方であります。
 以上,幾つかの論点,質保証システム部会での議論を踏まえた形で論点を整理し,それから,やや試案のような形でこういうことが考えられるかどうか,あるいは考えたらどうかということも含めた形でメモを作りました。先ほど申しましたように,たたき台といいますか,半分以上整理でございますので,自由に御議論いただければと思いますし,ここで落ちているなという新たな論点等ありましたら御発言いただき,論点の提示もしていただければと思います。取りあえず,私からの論点メモについての説明をさせていただきました。

 ということでこれを踏まえて,先ほど申しましたように自由な議論を今日は行っていきたいと思いますので,御発言をいただければと思います。細かな点でも,取りあえず全体の考え方であるとか,あるいはこういうふうにやった方が作業チームとして議論がしやすいのではないかというようなことでも結構でございます。
 よろしくお願いいたします。

【川嶋委員】  これはどこの項目に関係なくということでよろしいですか。

【吉岡座長】  取りあえず,はい。自由で。

【川嶋委員】  座長におかれましては論点を分かりやすく整理していただきまして,ありがとうございました。
 何点かございまして,まず,この質保証システムあるいは日本の高等教育全体の改善を目指すに当たって,1つ頭に入れておかなければいけないのは,今の高等教育,大学教育の制度のもとになっております新制に変わったときに作られた学校教育法というのが,それまでの旧制の大学の仕組みと第二次世界大戦後のアメリカの影響を受けて入ってきた米国モデルのハイブリッドという形で,新制大学の制度ができていると私は理解しております。
 その中で,例えば学位プログラムという考え方が入ってきたときに,そもそも大学には学部を設置するのを常例とするというような,学校教育法自体が今の状況に合っていないのですが,そこは根幹に関わりなかなか修正が難しいので,今回設置基準等で学校教育法の前提を大幅に変えるのではなく,柔軟な対応をしようという御提言だったと思います。
 そこで,1つは最初の保証すべき質のところでございますけれども,ここの枠の中で書かれているとおり,やはり大学は教育の質と学生の学びの質と水準を保証するために3ポリシーを明確にするということと,3ポリシーに基づいてしっかりと教育を提供する。そして,ポリシーに基づいて教育が体系的に提供されているかどうか,そしてまた学修成果が上がっているかということを内部質保証システムできちんと確認していくことが肝要かつ不可欠です。ですから,ここに書かれておりますように3ポリシーと内部質保証システム,大学の観点からすると,この2つが質保証にとって重要な仕組みであり,取組だと思います。
 内部質保証システムについては,大学改革支援・学位授与機構が数年前に出した内部質保証のガイドラインというのがありますが,それによれば最後の方の論点にもありましたけれども,自己点検,評価,改善というところに加えて,学部・学科あるいは学位プログラムを新設あるいは改組するときに,学内における設置審査というような体制の存在が重要と指摘されています。海外ではレビューとデベロップメントという2つの用語で整理していますけれども,既存のプログラムのレビューをしっかりやるということと,新しいプログラムの開発を内部質保証システムの中で確実に行うというのが重要かと思います。認証評価の第3サイクルでレビューつまり点検、評価、改善のところは少しずつ体制が整ってきましたが,まだまだデベロップメント,つまり学内で新しい教育プログラムを開設するに当たって,きちんと大学で審査を行うというところはまだ十分できていないのではないかと思います。今後は、これらを第三者評価の認証評価がきちんと評価していくのだろうと考えております。
 
 それから2つ目, 2ページ目の見直しの方向性で,バランスというのが非常に重要かと思います。事前規制と事後チェックの間のバランスをどうするのかということと,具体的には厳格性と柔軟性です。このバランスというのが,今後質保証を考える際には非常に重要だろうと思います。柔軟性については,大学は様々な工夫を行う際に余り大きな制約にならないような形で制度を整えていくということが必要かと思います。今でも学部等連携プログラム等,かなり特例化というか柔軟化されておりますが,その点が非常に重要かと思います。一方で新設大学については,やはり厳格に審査を行う必要があるかと思います。
 これに関連して,少し先の論点になるのですが,単位のことが先ほど言及されて実習,実験等というお話がありました。それで,少し我々自身も誤解しているのかもしれませんが,1単位45時間というのを授業時間15時間・事前15時間・事後15時間というように計量的に考えているのですが,基準上は45時間の学習を必要とする内容で構成するということになっていますので,余り事前・事後というところよりは,授業が15時間,15回で1単位という,アメリカでは完全にシートタイムといって実質の授業時間で単位数を計算するということになっていますので,授業時間がきちんと確保された上で,予復習時間にかかわらず学修成果がきちんと上がっているかどうかをもって単位を授与するかという方向性もあるのではないかと思います。

 それともう1つは,一番問題だと思われますが,4年間で124単位といいますが,実際には履修のパターンはピラミッド型になっていて,1年生,2年生で80単位とか90単位取って,3年,4年で就職と卒業研究に従事するというような形になっていますが,これは本来の履修の姿ではなくて,4年間均等に学修をしていくことが重要かと思います。1年,2年で40単位とか50単位履修すると,実際学びの深まりには到底つながりませんので,単位の実質化という観点から非常に由々(ゆゆ)しき事態かと思います。
 これは大学の問題もあるのですが,実際には企業の就職活動等でどうしても3年生,4年生は授業を離れて学外で活動しなければいけないということもありますので,是非これは企業や産業界の御協力を得て,ある意味,教育の途中で採用の可否を決めるのは、評価が十分できるのかなと私自身思いますので,その点は産業界等の協力も得て,本来の単位の実質化に向けて努力をしていったらどうかということです。

 それから,認証評価については,先ほど内部質保証が優れているという大学には特例的に認めてはどうかというお話がございました。その内部質保証が優れているかどうかの判断は,今のところ各認証評価機関が行っているわけですけれども,座長からも御指摘がございましたように複数の認証評価機関がありまして,それぞれが独自の評価基準に基づいて評価を行っているということで,なおかつ事実上,設置者別で認証評価が行われているということで,なかなか横並びで認証評価結果の評価はできないという状況であります。とりわけ私立大学の観点からすると,多様性ということを重視してほしいということで,一覧性を持って認証評価結果を公表するということは難しいかとは思うのですが,是非認証評価機関の間で連携を取っていただきたいと思います。現在,連絡協議会というのがあるそうですが,まずはここでお互いの認証評価結果のピアレビューとか,あるいは認証評価に当たってこういうところを工夫したというような評価の方法について,いわゆるグッドプラクティスの共有といったようなことを少しずつ進めていただいて,ある程度どの認証評価機関で評価を受けても同等とみなされるような評価結果が出るような形にしていただければよいのかなと思います。
 その際,認証評価機関で結果が異なるということの1つの対応としては,分野別参照基準とか,日本ではまだできていませんけれども,学位ごとのアウトカムを整理したナショナルクオリフィケーションフレームワークとか,そういうものの整備をしつつ,できる限りこの認証評価機関の評価結果というものが社会から見て,学生から見て,きちんと分かりやすく示されるということを求めてはどうかということです。

 最後に,認証評価については第3サイクルでは先ほど御指摘のように,内部質保証、すなわち自己点検評価プラス改善ということで,内部質保証の仕組みというのが重点項目になりましたが,それに加えて学修成果の挙証というものをより一層求めるような形に認証評価の在り方を変えていってはどうかということでございます。現状,まだ質的な学修成果の挙証というのはなかなか日本の大学では進んでいなくて,これは先ほど申したように参照基準とかそういうものがないということが背景にあるわけですけれども,今のところは量的な学修成果の挙証というところにとどまっていて,更にもう少し一歩踏み込んだ形で質的な学修成果の挙証を求めるような形でも改善を,認証評価については求めてはどうかと思います。
 少し長くなりましたが,以上,全体について私として考えてみたところをお話しさせていただきました。ありがとうございます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。非常に重要な指摘を幾つも挙げてくださいました。今後の議論の中で答える必要があるような形なら答えていきたいと思いますが,まずはほかの委員の方々からの御意見をいただければと思います。
 米澤委員,お願いいたします。

【米澤委員】  まず,「4つの見直しの視座」というところで,3番目のところの先進性・先導性の確保(弾力性)のところは,既に部会の中でコンセンサスの得られているところなので,基本的にいじるまではないかもしれませんけれども,ずっと気になっているのは,先進性・先導的な取組と厳格性というのはトレードオフとなるというところが強調されているということで理解はしているのですけれども,もう1つ踏み込んでもいいのかなというところは正直考えています。
 つまり先進性・先導性というものを通じて,より質を高めていくというような,あるいは質を高める方向での先進性・先導性というのを積極的に支援していくというような考え方はあって,これは必ずしも弾力性と同じことではないと私は考えていて,ここの整理の仕方がずっと気にはなっております。
 その上で,個人的には時代に応じて柔軟性があってというところは分かりつつ,もうちょっと時代を先取りしてもいいのかなというのは感じていて,その心は,単純に設置基準は変えるということをやって,設置審査を経てそれが実際に教育に反映されて卒業するまでに数年はかかるわけですね。あるいは10年かかるということを考えた場合に,少し次の世代というのを考えて変えていかないと間に合わないという批判は常に起こるだろうということが気になっております。
 その上で,4ページ目の一番下の「客観性の向上」のところに出てくるところで,先ほどからずっと問題になっている1つの問題は,人的な配置,人員の配置だと思うのです。例えば事務職員という言葉が設置基準の中には今でもあって,我々も日常生活では使ってはいるのですけれども,実態として,もう多くの大学では事務職員は事務をしているわけではないという感じになっていて,その部分はその次のページに出てくるTAの話と関わってくるので,その部分で包括的な変更というか,見直しを行うというのは大変賛成でございます。
 そのときに,最後にいわゆる教員学生比率というのが情報公表として出てくるのですけれども,多分ここで重要なのは,クロスアポイントメントを含めて既に議論は何度がしておりますけれども,フルタイム・イクイバレントの考え方を今回どこかで設置基準の中に入れ込むということをすると,随分次につながるのではないかなと思います。実態として今の,例えば教員学生比率は,私は多分公表する必要はないと思っているのですけれども,というのは,実際には教員の数は公表されていて学生の数も公表されているのであれば,比率は計算できるわけなので,実際されていることもありますし,その仕方も相当あるのですけれども,そのときに今の段階ではいわゆるフルタイムではない教員の考え方に共通のコンセンサスがないのだと思うのですね。これが世界的に見ても,例えば国際ランキングに日本の大学の教員学生比率はもう既に出ているのですけれども,明らかに大学によってばらつきがあって,フルタイムだけで計算しているところと,パートタイムまで入れ込んだとしか思えない計算の仕方をしたところで数字が違ったりするのですね。その辺の考え方の整理は設置基準の中でして,最終的な答えはないと思うのですけれども,入れておいた方がいいのではないかということがあります。

 もう1つ大きな話は,いわゆる遠隔教育と通信制との関係をどう考えるかだと思います。論点の中で,教育再生実行会議の話が余りここで出てこないのですけれども,通信制と通学制の区分をなくした方がいいのではないかという議論が出ていることは,それなりに重く受け止める必要があると思っているのですが,私は結論としては,今の通信制というものと通学制が分かれていることのメリットの方が大きいと思っています。今更,あるいは今すぐに変える必要はないと思うのですけれども,少なくとも通学制のところの大学が,何らかの形で実験的に通信制に近い形でのものを行う。あるいは遠隔教育を入れた場合には,ある程度通信制で我々が持っている経験というのを生かしていくような感じというものを,少し柔軟に考えるということが,ここで1つ考えられる方向かなと感じております。
 最後に,情報公表の仕方なのですけれども,今回,大きな柱として設置基準と認証評価の見直しというところが1番の柱になっていて,それを補完するものとして情報公表があると思うのですけれども,あえて言えば,情報公表がきちんとしていれば認証評価は相当に軽くできるのだと私は思っています。あるいは,機関による評価結果の水準が明らかに違うということが,情報公表がされていればはっきりすると思うので,そういうようなところで間接的にできることというのはたくさんあるかなと思います。
 取りあえず,以上でございます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。大森委員が挙手されています。大森委員,どうぞ。

【大森委員】  ありがとうございます。私からは,ちょっと気が付いたというか,考えたことを2点申し上げます。1つ目は今,米澤委員もおっしゃったところと関係するのですけれども,座長がおまとめいただいている最低基準性を担保しながらも,多様性・先導性を向上させていくという今回の考え方。そしてそこがトレードオフになっていくという,我々が常に頭を悩ませる問題ですけれども,その中で今日の論点の整理のところで,特例という表現が2度,3度出てくる中で,これが1つのソリューションになり得るのではないかと,私は少し期待を持って読ませていただいたところです。
 今までの議論の中で,現場にいる者としては,なるべく緩くしてもらっていろいろなチャレンジができるようにしてほしいというのは本音です。本音なのですけれども,今までの議論の中でいうと,そうすると本当に学生たちを守っていけるのか,守れないような大学が出てくるということも受け入れざるを得ないのではないかという,そこのところがすごく悩ましかったところです。
 そういう意味からいくと,まず出発点のところは,一定の基準でしっかりとやりましょうと。で,一定程度活動がなされた上で,そこの質が保証されているということが分かったところに関して,新たな柔軟性を持ったチャレンジができるという,これを特例と呼ぶと本当に限られたという感じがするのですけれども,2段階の制度みたいなこともあっていいのかなと思っています。
 言ってみれば,例えば学生たちにはキャップ制を持っていて,これ以上授業を取っては駄目だよということになっているのだけれども,一定の成績を修めた学生には,ちょっとそれを超えて取ってもいいよという制度があったりするわけですが,そのような形でいく。で,それをベースに捉えるといろいろな議論が,これはその制度のところで2段階目でできる形だよねという理論になっていくと思うので,実は意思決定というか,それを前提とした議論をするのか,いや,やはり一律なのだとするのかというのを,ある程度ここで青写真があった方が議論がしやすくなるのではないかなと。最初のスタートアップのときは,ここをしっかりやってもらいましょうと。でもそれをやっていったら,ここは緩めていいよねと。で,緩めていい項目というのは何なのだろうみたいな議論ができる可能性があるなと思って期待をして聞いていたところです。
 緩めるというところでいけば,オンラインの単位数の話であるとか,それから教員数の話とか,もう1つ,一番重要だと思っているのは,自ら開設ということ。本当に124を自らなのか,新しい学びに対応して地域のニーズに応えてといった時には,他の大学さんと協力しながら学位プログラムを作っていくというようなことも,それをゼロからスタートする大学さんにそれをどうぞというのはちょっと心配かなというところもあるけれども,しっかりと今までそれをやってきた実績があるところ同士が組むのであれば,それもありだよねというようなことが言えるかなと思って,今日吉岡先生のお話を聞かせていただきました。そこを確認した上で,すぐ決定はできないと思うのですけれども,議論ができるといろいろやりやすくなるかと思いました。それが1点目です。

 もう1点目は,組織規定の見直しというところに賛成ですということです。教員と職員という枠組み自体がもう非常にオーバーラップしている中で,そういう意味では対学生の数というのも,そこも込みの話になってくるということもあるのかなという気もしたりしております。そして,専任教員のフォローアップも今「一つの大学」となっていますけれども,一方で学位プログラムをベースとした質保証ということになれば,1つの大学というよりも1つのプログラムなのか,複数のプログラムなのか,その教員のベースが大学という表現が適切かどうかは検討をするところかなと思います。
 最後にすごく細かいことですけれども,教員数の算定が,これは単純な疑問ですけれども,分野によって数が異なっていますよね。別表第1,何でああいう数になっているかという根拠とか経緯とか,もし分かったら後で結構なので教えていただきたい。例えば文学は先生が少なくていいけれども,経済は多くなければいけないのは……。でも学生にとっては同じだよなと思ったりしていて,そこが分からないというところがあるので,もし何かがあるなら教えていただけると議論ができるかもしれないと思ったところです。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。浅田委員,お願いいたします。

【浅田委員】  ありがとうございます。
 論点を整理いただきまして,ありがとうございます。
 何点かございますが, 2つの方針と4つの視座という,この部分については全く異論がありません。いろいろな見直しをこれからしていく上でお願いしたいのは,複雑化する方向ではなくて,シンプルにする方向に是非お願いしたいのです。今の設置基準はいろいろな制度が後から追加されて,例えば10章以降は,いろいろつぎはぎになってしまっているのですね。これがまた新たな制度とかあるいは考え方が入って,さらに複雑化していくとますます分からなくなるので,シンプルにする方向に進めていただきたいのが,まず1点目です。
 それから理念を明確化する,例えば数字を触ってテクニカルに調整することも重要なのですが,何でそうするのかという理念をまず共有しないと,数字合わせになってしまうので,まず理念を整理する,そのときに2つの方針がここで効くのだろうと思うのです。

 1つ目の学修者本位の教育ということですが,グランドデザインと教学マネジメント指針を通じて貫かれている学位プログラムの考え方を今回出していただいているというのは非常に有り難いと思っています。というのは,現在動いている大学の組織は多様で,学部・学科という単位で動いている元々の組織に加えて,新たに学位プログラムというのを立てられているところもあるのですけれども,大学はそもそも学位授与をする機関なので,全ての教育プログラムは学位につながっているのですね。ですから,そういう意味では現在動いている大学教育は全て学位プログラムと呼び直すことはできるはずだと思っています。
 なぜこの概念を統一的に入れたらいいかというと,大学の教育改革を進める上で一番大事なのは,教員の意識改革だからです。教員が今までずっとやってきたことを見直す。そのときに言葉の転換というのは重要で,そういう意味では学位プログラムという表現,学位につながる教育プログラムということを言葉で表しているのですけれども,それが学生にとっても自分はこの学位プログラムに所属する,実際には学部・学科に所属しているのかもしれませんが,自分の学ぶ先に学位があって,そのためにこういう教育を受けているのだという,学位プログラムに属しているという認識は学位を自覚することにつながりますし,教員側もその学位を出すためにこの教育をしているのだという意識を持ちます。
 だから,学生中心にするには,学位という言葉で統一することが,教員側の意識の転換にも役立つのだろうと私は思っています。学生中心で行うというのは,言葉ではみんな理解しているのですけれども,なかなか体感できないといいますか,体がついていかないところがあるのです。それは結局のところ,教員にとって提供する教育は,今までやってきた教育の延長として見てしまうので,そこはやはり発想の転換が必要で,学位という言葉で統一すれば,同じものであっても見え方が変わるし,軸足の置き方も変わってくるという意味で,学位プログラムを是非理念としては中心に置いていただきたいと思います。

 もう1つ,社会に開かれた質保証なのですけれども,これはシステム全体の話で,設置認可の後動き出した大学を認証評価で追いかけるという,この制度全体に関することなのですが,ここで重要な理念として出してほしいのは,情報の徹底した公表です。今の制度では,文科省が大学に対して認可の審査をするので,大学は当然それに従った形でスタートします。スタートした後に学位授与権をもらった大学は自律的に社会に対して責任を負うはずなのですが,今の制度というのは,文科省が認証評価機関に対して細目省令で様々なことをチェックしなさいという指示をして,その指示に従って大学評価基準をそれぞれの機関が作って,それを大学に対して示して,大学はそれに従うという形になっている。その時に一番の問題は,大学は認証評価機関の方を向いてしまうことです。本来,大学は学位授与機関として社会に対して直接責任を負わなくてはいけないし,社会を向かなくてはいけないのです。ところが結局のところ,評価を受ける側は認証評価機関の方を向いてしまいます。受審する認証評価機関が示した大学評価基準と自己点検評価のフォーマットに合わせて自己点検評価書を作る。つまり社会を向いているのではなくて,認証評価機関を向いている。それを大きく転換していただきたいのです。
 そのためには情報公表のフレームワークを具体的にきちんと決めて,それに従うように徹底していただきたいのです。これは国公私関わらず共通に。そうすれば,先ほどから議論になっている柔軟化する基準ですよね。この特例の基準を設けるのは大変だと思うので,これがOKになったらこの大学は緩和できますというのは基本的には徹底した情報公表をできるかできないかだと思っています。徹底した情報公表をしているというのは,自分の大学は,国際通用性を持った学位を出す,自信を持ってこれだけの教員をそろえて,これだけのカリキュラムを動かして,これだけの施設・設備を持って提供していますということを,全部ガラス張りにすべきだと。そうすれば,その大学はより発展するために様々なチャレンジをしてもらっていい大学だろうと。そういうことをすれば,先ほど米澤先生がおっしゃったように,認証評価はものすごく軽量化できるのですね。
 なぜかというと,法令適合性の部分は大学が自ら満たして,それを社会に出さなくてはいけないはずです。それを今は認証評価機関が法令チェックしている。それはおかしいのではと思っています。認証評価機関は本来そんなことをする機関ではなくて,内部質保証ができているか,機能しているか,更に質向上のためにどういうふうにしていくかというところを重点的にやるのが機関別評価だと思うのです。そこを法令適合性まで飲み込んでチェックするから,大学側も大変だと言っているのですが,そもそも大学を作ったときは法令適合しているはずです。それをずっと維持し続ける責任は大学にあるのだから,法令適合性を社会に対してきちんと説明する責任は大学にあるはずなのです。それを,こういう情報は出したくないとか,法令の定めがないから出せないというのは,おかしなことだと思うのです。だから,そこのところを是非クリアにしていただきたいなと思います。

 今回のメモの中で少し残念に思ったのは,情報公表のところが最後に追いやられているのですけれども,これは社会に開かれた質保証の絶対的な条件として入れてほしいのです。これも先ほどから議論になっている弾力性,柔軟性と厳格性。弾力性を与えるというか,柔軟にしていくのは,私は賛成なのですけれども,より高度な大学は発展してほしいし,世界と勝負してほしいので,それは是非進めていただきたいのですが,その部分を担保するものはやはり厳格性なのです。厳格性を誰がどのようにチェックするかでまた新しい制度を作るのは大変ですし,認証評価が今以上に負荷が高まると破綻しますので,情報公表は大学が自ら社会に堂々と説明する,そういう枠組みを作ってほしいなと思うのです。そうすれば,認証評価の責任がどんどん高まっていく部分というのは,随分制度として変えられると思っています。
 恐らく今の流れでいってしまうと,緩和すればするほどそれをチェックする仕組みが絶対必要になって,それは認証評価ですみたいな話になったら,認証評価は持たなくなると思っています。でも,先ほど言いました認証評価に求めている細目省令の項目というのは,あれは実は大学に直接求めて公表させるべきものだろうと私は思っています。
最低基準として設置基準で定められて定量的なものは明らかなのですが,定性的なものがかなり難しいですね。例えば,専任教員の議論が先ほどありました。専任教員の定義を見直すのは,私もいると思うのですが,定義を見直しても多分時代とともにずれてきて,はみ出すものができて,どうするかということに必ずなると思うのですね。それに対しても先ほど言いましたように,大学が,我が大学は専任教員としてこの教員をこれだけ集めていますということ,それはパートタイムとか関係なしに,大学の学位プログラムに対して責任を負って,運営も含めて関わるという教員はこの人たちです,というのをきちんと出せるようにしたらいいわけです。そうすれば,先ほどの学生対教員比とか,そんなもの全部オープンになっていれば,何も後でチェックするために資料を出すという必要は全くない。だから,私は今回のスキーム全体の見直しの中で,今後を左右する一番大きな武器は情報公表,そこの部分だと思うのです。それの一元化と徹底した共通化みたいなものを是非お願いしたいなと思っています。
 私からは以上でございます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。日比谷委員,お願いします。

【日比谷座長代理】  まずは吉岡先生,論点を整理していただきまして,まことにありがとうございました。
 それぞれいろいろな御意見が出まして,私が言おうとしていたことも一部含まれているのですが,ひとつこの作業チームの進め方といいますか,先の見通しについて合意しておく必要があるかなと思っております。御承知のとおり,これは質保証システム部会の下に置かれています。作業チームでの議論はシステム部会と時々往還するような形で,部会の意見も取り入れつつまとめ,部会で更にまとめたものが今度大学分科会に諮って,ようやっと決まっていくというプロセスを踏むのだと思うのです。
 そうしますと,ある程度議論の範囲を限定しないと,これからどこを中心にするか皆さんで決めることなのですけれども,もう余りにも拡散してしまっていつまでたっても,で,また扱っている案件が重いだけに,永遠に時間をかけているわけにはいかないと私は痛感しています。
 例えば1つ例を挙げますと,今日もお話が出ましたけれども,別表の教員数については私も言いたいことが山のようにあり,いろいろ変えた方がいいと思っているところではありますけれども,なかなか議論し出すと収拾がつかなくなるかなと懸念もございます。というような中で,この部会として着実に進められる範囲がどこかということをある程度絞り込んでいく必要があると思いますので,それを最初に申し上げます。

 それから,専任教員の在り方を見直した方がいいとか,認証評価の問題についてはいろいろ御意見が出ていますけれども,私はやはり国際的な観点から見ても,評価機関の間で今のようにばらつきがあることは,本当に看過できないと思っています。全ての大学に当てはまらないかもしれませんけれども,海外から学生を迎える,こちらから送り出すといったときに,認証評価機関できちんとした認証を受けているかということは,設置基準がどうこうということよりも,国際的に見ればはるかに重要ですので,ここはやはりきちんとすべきだと思います。
 そこがきちんとできているという前提で,いろいろな特例を設けることには私は大賛成です。特に今回の出口といいますか,先ほど見通しをもって議論を進めるべきだと言いましたけれども,私個人としては,やはりそれなりの特例を認めるということを結論の1つにするのは妥当だと考えていますが,そうするとそのためには,例えば情報公開を徹底するとか,順番が付いてくると思うのです。その順番付けと,ここからやっていこうというようなことを,最初のうちにしっかり議論していくことが重要かなと思っています。
 それから,だんだん細かくなってくるのですけれども,事務職員の話もどなたかおっしゃって,そのとおりなのですが,私はTAとSA,特にTAの授業参画について,これは是非取り組みたいと思っています。学修者本位の教育ということをさんざん言いまして,教学マネジメント指針を作るときにも言ったのですよね。その後,コロナ禍(か)が起こりまして,図らずもと言っていいと思いますが,オンライン授業をする大学はほとんど全部そうなったのですけれども,今や一口にオンライン授業と言われているものは似て非なるものとあえて言ってしまいますが,非常にすばらしいオンライン授業ができている先生なり大学と,何と言ったらいいのでしょうか,そもそも学修者本位の教育ということを始めたときのすごく重要なポイントは,双方向的な授業の実現であるとか,ただ講義を一方的に聞いているだけではなくてディスカッションに参加するとか,学生同士がいろいろな活動をするというようなところにあったはずだったのですね。で,オンライン授業になって,慣れないということもあったと思いますが,本当に一方通行の授業をしていて,これはもう新聞記事等にもさんざんなりましたけれども,ただ一方的に授業を聞いて,先生間で調整がないから山のように課題が出て課題地獄になり,どうしてくれるのだ,不安だと。フィードバックもないという話が最初の頃に随分ありました。
 でも,そうこうしているうちに,技術が伴う,あるいは慣れてきた先生は,例えばブレークアウトセッションを使うとか,チャット機能で質問が来るものにどんどん答えていくとか,私も今は授業をする立場ではありませんが,講演とかFDプログラムに呼んでいただいたりすると,その場で聞いている方の反応をチャットでバーッと取れたりするのはすごく便利なのです。これは一人の先生がどのぐらいの人数で授業をしていているかによりますけれども,授業もしながらチャットも見てというようなことは本当にできないので,そういうところでTAがパッパッと質問を見て大括りにまとめて,この質問,この質問をそこで答えるみたいなことをするようなことは非常に重要です。私はある程度,オンライン授業の単位数の緩和をすることも考えていいと思うのですけれども,ただ配信しているだけみたいなことではもちろんよろしくないわけで,その1つの可能性も含めてTA,SAの授業参画のところはほかのことに比べると細かい話になりますけれども,是非ともここで取り上げたいと思います。
 以上です。

【吉岡座長】  杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】  
 ありがとうございます。吉岡先生におかれましてはこれまでの議論を非常に分かりやすくすっきりした形でおまとめいただきまして,ありがとうございました。
 もう先生方からいろいろ御指摘を受けているので,私から申し上げることはそれほどないかと思うのですけれども,1つは特例の扱いについてかと思います。恐らく,部会の議論を伺っていましても,柔軟性を増していくという方向性が,かなり御意見が上がっていたと思いますし,今回の作業チームの方でも先生方,皆さん御支持されている方向性なのかなと思われます。
 で,こちらの方の具体的な制度設計というのがまだ見えない感じですので,特例に関してどういう形で判断をしていくのか。それから,情報公表や認証評価の話も出ておりますけれども,特例に何か認証評価の結果をうまく連動させられないのかなとは,伺っていて思いました。恐らく新規に大学を設置するケースというのは,この特例にはまず当たらないかと思いますので,これまでの実績を示すに当たって認証評価の結果を利用する部分というのができないのだろうか。それが認証評価の意義にもつながってこないのかなと思っていたところです。ただ,それを設置審査のような組織体で新たに特例の部分を審査するのか,どういう形になるか分かりませんけれども,そこのところを念入りに設計していく必要があるなと改めて思った次第です。

 それから,学修成果に関しては,部会の方でもいろいろ御意見が上がっていたかと思います。こちらの方にある認証評価制度の見直しについて,学修成果の評価に関することを大学評価基準に追加することは考えられるかという御指摘に関しては,現行の認証評価機関の評価基準においても学修成果に関する項目は必ず入っているかと思います。むしろ後半の研究の方の支援の部分ですね,そこら辺はちょっと不足する部分なのかもしれません。学修成果の把握というのはもちろん必要なことですが,それを把握する際に定性的な部分も含めて評価していくというのがまだまだ難しいところもあるかと思いますので,余りここを厳格に,厳密に規定しすぎない方がいいのではないかなと考えております。
 それから,最後の情報公表のところですね。情報公表を徹底してということで,恐らく大学ポートレートの方をもっと活用すべきだとか,国公私を通じて一元化する方向性が望ましいとか,さんざん御議論が出ているかと思います。そういう方向性は目指しつつ,そこで「一覧性」をどう解釈するかです。同じ媒体に掲載していく,それから,ある程度共通の項目でやっていくというのは重要なことかと思う一方,その時の示し方というのが難しいと思います。定量的なものに関してはある程度は見本というのを見せられるかと思うのですけれども,やはり様々なミッション,規模,それから財政状況も含めていろいろな分野がある高等教育機関の在り方を余り規制することは避けたほうがよいと考えます。義務付ける項目はある程度最低限決めて,あとは各大学の示し方,自律性に任せるということも必要なのではないかなとは思います。余りこれで共通化していって,ランキングするのは民間のやりたいようにやらせればいいかと思います。国として提供する情報として最低限はここまでで,質的な部分を含めて示し方はある程度柔軟性を持ってという形でできるのが望ましいかと。今の情報公表の状況を見てもかなりガラッと変えていくのは難しい部分かと思いますので,認証評価の部分と連動しながら柔軟性を持たせられないかなと考えております。

 あとは最後に,川嶋先生が御指摘された点ですけれども,やはり1年生から4年生にかけて履修単位数が相当にアンバランスです。深い学習を進めていくために,例えば科目を精選していくというような御意見が部会の方でも出ていました。もちろんそういう方向が望ましいとは思うのですけれども,なかなかそれを各大学で実際に進めていくのは難しい部分かと思います。まずは履修単位数のところである程度過密になりすぎないようにバランスをとって学年配置できるような形にできるよう,社会に向けて何かメッセージを発する部分ができないかなと。直接設置基準に反映するのはまだまだ難しいかと思いますので,社会に対する理解を得るためにも,何かそういったことも本部会からメッセージを発出できないのかとは思いました。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。大森委員,どうぞ。

【大森委員】  申し訳ありません。情報公表について私も非常に重要だと認識をしていて,議論の方向性に全く賛同なのですけれども,その上で情報公表のイメージを我々が共有しておく必要があるかとは思っています。
 もしかすると,浅田先生にお尋ねをした方がいいのかもしれないのですけれども,先生,情報公表をしっかりやるべきだと私も大賛成なのですけれども,今,学校教育法の中で公表すべき事項というのは定められていて,全ての大学が公表していると思うのですね。それから今後,教学マネジメント指針のあそこでは義務化しないということでしましたけれども,情報公表のこういうものが情報が集められるといいよねというのは示していて,それはこちらの部会の方で義務化するかどうかは検討してくださいねというふうに渡ったと思うのですけれども,そこを掛け合わせると,ほぼ今杉谷先生がおっしゃった基本的な情報というのは,全ての大学が公表しているということになるのではないかと思う。で,批判的に言っているのではなくて,その上で,更にどういう情報をとか,どういう公表の仕方の議論をするのか,情報の公表の項目をもっと充実させようという議論をするのか,その辺り,どういうイメージで情報公表を捉えられているか。それによって私も議論の参加の仕方みたいなのがあれかなと思って,お尋ねできたらなと思って手を挙げさせていただきました。

【吉岡座長】  ありがとうございます。浅田委員,今の,何か直接お答えはありますか。

【浅田委員】  御指名を頂きまして,ありがとうございます。
 情報公表は飽くまで大学を信頼して,自律的に公表している存在として認めているというのが大前提だと思います。大学は良識をもって質向上に努め学位を出している。学位は国際通用性があるものを出している。だから世界と勝負しようとしたときには世界にさらされるわけだから,この情報を出します,出しませんというのはないと。で,先生が今おっしゃったように,法令で定められた情報というのは,基本的に出しているといえば出しているのですが,それも含めて今認証評価機関が細かくチェックして,いや,これちょっと足りませんよ,とかやっているわけですよね。そんな面倒なことをもうやめたらどうですかということなのです。
 というのは,逆に言うと情報を出す,出さないもあり得る。大学の自律性だと考えてもいいかなと思っています。でも,出さないところは出さない理由があるわけだから,それはそれで,もうその部分は勝負しませんと言っているのと同じなのですよね。だからそういう意味で言うと,例えば非常に高度な柔軟化を認める制度を作っても,いやそれには至っていないという,ある意味の判断基準になると。つまり,大学は自ら自分の存在をどう社会に対して説明するかという責任も負っているわけですから,先生がおっしゃるように,何を出すか出さないかというのは,大学の判断です。その内容も出し方も様々なので,非常に曖昧な部分とか,あるいは米澤先生がおっしゃったように,基準が違うので数字が並べられないよというのは,もちろん今あるわけです。でも,基本的に社会に対してこういう基準で出しましょうというものにきちんと沿って全部出しているところは,世界と勝負されているのだろうから,どんどん発展的に制度を活用して,新たな取り組みをしてくださいということは認めていいと思います。これはできませんし,これはまだ出したくないですというところは,それも自主性と認めるならば,そういう範囲内で活動されればいいのだろうと。だから,飽くまでも大学の自主性は尊重しなければいけないと思うのです。杉谷先生がおっしゃるように。
 ただ,それで先ほども言われた特例の話が結構難しいと思っています。ここはいい,ここは悪いという線引きをどうするのかという話は絶対出てきて,またそれが複雑化して,制度化したときに機能しなくなるというのが予想されそうな気がするのです。ものすごく骨抜きになってしまうかもしれないし,ある意味で厳しすぎて全然自由度が上がらなかったではないかということになるかもしれない。今回は,非常に質もそろえていて,発展する大学はどんどん発展して世界と勝負してほしいわけです。日本の大学はもっと強くなってほしい。それが根幹にあって,それは皆さん共有していると思うのです。
 ただ,大学によって規模もあるしレベルもあって,必ずしも世界と今すぐ勝負するという大学ではないかもしれない。でも,そういう中でも,社会に対して学生を受け入れて,学位を出して送り出すということは,やはり共通の責務を負っているという部分,ここも最低限のところは担保するのは情報の公表だと思うのです。情報の公表をどのように出すかというのは,もちろん議論はあると思いますが,少なくとも今,例えば大学が出している情報も,はっきり言ってバラバラです。認証評価を受けて,認証評価機関も公表しますが,認証評価機関が別々なので,またバラバラです。文科省は設置審査した結果は公表されていますが,それはそっちへ見に行かないと分からない。しかもフォーマットも全部違うので,受験生とかあるいは社会,企業などが大学をどういう大学か知ろうとしても,それを全部調べて,集めて,しかもこの大学とこの大学はどう違うのだという比較も全部,自分で情報を集めないと分からない。しかも,先ほど言われたように,数字の基準も違うから比べようもない。これは全く社会に対して説明できていないし,その重要な情報のアクセスができない状態なので,これはやはりまずいと思うのですね。
 大学というものを1つのくくりで考えるなら,国公私関係なく同じ土俵の中で見られるようにしておく部分があると思うのです。そこに例えば参加する,しないも大学の自由であっていいとは思います。というのは,そこに参加するということは,私たちはそのレベルで社会に対して向かい合いますという覚悟を示されているのだから,それなりに内容を持たれているし,そこに公表されているということは認証評価のときにほとんどの情報はそこでチェック済みにできるわけです。だからそういう意味でも,そういう自主性は尊重して,それは大前提だと思うのですが,一方で情報公表というのは,今のようにこれは出さないでおきましょうというグループを作るのではなくて,同じように大学1つ1つがそういうものに対して自主判断して,自分の新たな発展に向かうならば,それに見合った情報公表も出していく。何かそういうふうなものが動くといいかなと,私のイメージです。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。米澤委員,お願いします。

【米澤委員】  ありがとうございます。
 私は今の仕事の前にIR室長というのを2年ぐらいやっていたので,少しIRが今どうなっているかは分かっているつもりなのですけれども,恐らく情報の使い方,出し方がここ5年ぐらいですごく変わったのだと思うのですね。今出ている情報は非常に複雑なものになっていて,単純にランキングするというもので一通りに一元化されるというイメージとは相当に違うものになってきている気がいたします。
 国立大学に関しては,大学ポートレートに付随する形で,例えば教員の数とか学生の数とか非常に細かく一覧として手に入るのですが,逆に細かすぎて,それを見たからすぐにざっと並べて分かるとかいうのをはるかに超えた,かなりプロフェッショナルな仕事をしないと理解できないぐらい複雑なものになっているので,逆に,出したことによってすぐに並べられるというイメージとは,かなり違うものになってきているのではないかと思うのですね。そういう生のデータがたくさん実際にはあって,それから例えば学校基本調査1つとっても,そのデータはあるわけですね。で,実際出しているわけですし,設置審に出しているものも,どこまで出すかは別として存在しているので,実はそこの手間というのは余りないのではないかというのは,私はあえて言えば思っております。共通化していることがむしろ大事だなと感じていますし,それがそのまま多くの人がそれぞれの解釈で,大学も含めて使えるという状況を作っていくことが,インフラとして大事かなと思います。
 その上で,この部会を進める上で,日比谷委員がおっしゃったフォーカスをどこに置くかというところなのですけれども,できること,できないことがあると思うのですね。設置審に関しては,ここは国の仕組みなので,ある意味ではっきりいろいろなことができる,具体的なことができるところだと思うのですけれども,認証評価に関してはかなり微妙で,飽くまで認証評価団体がそれぞれ決めるべきことをメタで見るというところが国のスタンスだと思うので,そこでやれることというのはある程度限られてくると思います。ただ,それをやることは大事だと思います。
 で,最後のところで,浅田先生からおっしゃったように,情報公表のところは明らかに大事なのだけれども,どういうスタンスで臨むかははっきりしておいた方がいいかなと思うのですね。要するに,どこまで国として直接関与するような形で情報公表を求めるというメカニズムで考えていくのか,その場合何が問題なのかということは,少し論点としてはっきりさせておかないといけないかなと思います。

 最後にもう1つ,多分ここでは話さない方がいいというか,このワーキンググループで話さない方がいいのですが,システム部会本体としては,例えば先に出ていたナショナルクオリフィケーションフレームワークとか,もう少し大きな話というのはどこかで言っておかないと漏れるかなという感じがするので,その辺の整理としてはそんなことを今,印象としては持っております。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。

【川嶋委員】  よろしいでしょうか。

【吉岡座長】  はい。

【川嶋委員】  
 情報公表のことについてですけれども,もともとポートレートの構想が出たときは,いろいろなマスメディア等からそれぞれランキングの資料なり,大学情報誌を作る際に、各大学に毎年毎年,学生数は何名ですかとか,教員数は何名ですとかいちいち照会が来て,それが大学側にとっては非常に負担になるということで,このポートレートに行っていただければそれぞれの大学の情報は得られるということで始まったと私は理解しています。
 それに加えて,受験生とか社会から見て各大学がどういう状況にあるかというのが分かって,できれば一覧性で,例えば私は経済学の近代経済学を学びたいのだけれども,どの大学でどういう近代経済学のプログラムがあるのかという,つまり進路先の選択が支援できるような,そういうところまでという大きく2つの目的があったと思います。
 その点に関して言うと,今でもかなり各大学個別にいろいろな情報を出してくださいという依頼が来ていて,やはりポートレートを一層整備して,どういうデータを共通の情報データとして各大学が整備して公表すべきかを明確にすべきかと思います。そして一番の問題は,データの定義だと思います。学校基本調査ではある程度定義されていますけれども,それ以外に定義がバラバラというようなデータもありますので,情報公表については,このワーキングでさえなかなか最終的な整理がつかないかとも思います。その観点からすると、情報公表については,まず公表の前にしなければいけないという作業があるのではないかなと思っています。
 浅田先生がおっしゃるように,認証評価において法令遵守の項目のところは,それなりにかなり省力化・合理化して,大学教育について重点的に評価をすべきだというのは,私はそのとおりだと思いますが,その点は各評価機関で第3サイクルになってからそこを効率化するというか,大学に負担を掛けないような形の工夫はある程度されているのではないかなと思っています。それでも,先ほど浅田先生から御指摘がありましたけれども,幾つかの大学は,法令上公表を求められている情報についても必ずしも公表されていないという状況がございます。ですから,韓国は一時,第三者評価をやめて情報公表だけで質を保証するというような方向も実施しておりましたけれども,情報公表については,ここだけで集中議論するのは難しいなと思います。非常に重要であるからこそ,もう少しじっくりと定義から含めて,どういう情報が社会から求められているかを含めて,改めてどこかで議論すべきかと思いました。
 以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。結局いろいろ多岐にわたる議論になっていると思いますけれども,どこまでがこの作業チームの仕事なのかということは難しいのですが,幾つかの論点のレベルというのはあると思うのですね。
 1つは理念という言い方がされたりしております。私もちょっとその言葉を使ったのですけれども,つまり何のためにこの制度があるのかとかということを,それぞれはっきりさせなければならない。例えば情報公表についても,何のための情報公表なのかということをある程度明確にして,それがないと制度の意味がなくなってしまうので,それをある程度明確にする必要はあるだろうと思います。ただ,これは作業チームの仕事なのか,そもそも大学分科会レベルなのかもしれないのですけれども,でも,ここから定義をすることはできるだろうと思います。
 今,川嶋委員がおっしゃったみたいに,ポートレートの話も確かに思い出してみれば各大学いろいろな受験産業から出てくる話を1箇所にまとめた方が便利だというような話が一方に合ったことは確かです。そのときはそこでいう情報公表というものは,そういう意味では余り理念的には詰めていなくて,みんなの役に立つでしょうレベルがかなり大きな意味を占めていたのかもしれないと,振り返ってみると思います。ただ,そのときに考えられていた情報公表ということと,我々が今,今日の議論の中で議論してきた情報公表の意義というのは,レベルが変わっているだろうと思います。ですので,現在における情報公表の意味というようなことを含めて,ややその辺のところをここで整理してもいいのだと思うのですけれども,システム部会に上げていくときに考える必要があるだろうと思いました。
 その理念に関わることですけれども,そもそも設置基準型にした,少なくとも大綱化の話は,初期のところの考え方は規制緩和をして,みんな情報をそこそこ公表して,大学の競争関係というものを作ればいい大学が伸びるし,駄目な大学は退場していくだろうというような,そういう市場モデルが基礎だったのだろうと思うのですね。ただ,実際には教育というのはそういうふうには動かないわけで,大学のそれぞれの特殊性とか,それから学生といいますか,社会がそれぞれの大学に求めている事柄というのは実は非常に多様で,例えば就職がいいからみたいな形で一本化できるわけではないわけです。
 そこでつまり,そういう意味では更にもう1つ前の,大学というものをどう考えるかという問題になってしまうのですけれども,その辺からもう時代が変わっているということを念頭に置いた上で,設置基準の基本的な考え方をやはりどこかでチェックしていく必要があるだろうと思います。どこまでやれるかというのは難しい。その大きな議論をまずすべきだという意味ではないのですけれども,それに全部関わっているということです。

 それからもう1つ,意見を頂いた中でひとつ結構大きいのは,文科省の関わり方といいますか,国の関わり方の問題だろうと思います。1つは設置審というもの自体は,これは国の審査で,それこそ先ほど言ったように,これだけの最低条件がある組織が大学の競争関係に入る資格があるというところで始まったものだと思います。だからこそこれは国がやっていると思うのですけれども,米澤先生がおっしゃったように,認証評価は基本的にはプライベートな機関といいますか,大学の相互評価機関としての性格を持っていると。にもかかわらず,浅田委員がおっしゃるように,いろいろな形で国が関与している。その関与の仕方の問題は実はすごく大きな問題で,結局設置審といいますか,設置の問題と評価の問題というのは,実はやっている組織も違うし考え方も違うし,本来理念が違うのだということは,大学の多くも余り考えていないのだろうと思うのですよね。しょうがないからやっているというのに近くなっている。そこをきちんと踏まえた上で規定等についても考えなければならないと思いました。
 
 それともう1つは,今ここで議論しているところの更にもうちょっと外側まで含めての,制度の外側の問題というのは実は非常に大きいと思います。1つは単位取得のピラミッド型になってしまっているということも含めて,例えば産業界との関わりですよね。就職状況の在り方とか,就職の仕方みたいなこととか,産業界のリクルートの仕方というようなことが大学教育に与えている影響がものすごく大きくて,そのことがもたらしているひずみと,それから我々がきちんとこうすべきだというところのすり合わせの問題というのがあります。
 それから,情報公表にも深く関係していますけれども,実は高校生にしても大学自体にしても,高校の先生たちにしても,何をもって大学の判断をしているかというと,基本的には受験産業の情報なわけです。情報公表というのが躊躇(ちゅうちょ)する,つまり情報公表に対してややネガティブな意見,いろいろなレベルがあると思いますけれども,それが風評被害という言い方をされて,風評かどうか分からないですけれども,それが非常に単純なランキングのレベルになって流布される。つまり情報産業の問題ですね。ランキングみたいなものに象徴的に表れるような,そういう問題というのが実は大きな力を持っている。その中で設置基準とか,それ以降の質保証のシステムというのをどう設計するかということだと思うのです。だから,本来ここで考えるべきではないようなことかもしれないのですけれども,そのことを考えずに実質的な実効的な制度ができないということは,考える必要があると思います。だから,情報公表といった場合もその情報公表というのが何を目的にしてということを明確にしていく。そのためにどういう基準を立てるのかというところまでふみこまないとならないだろうと思います。

 それから特例。私も基本的に,ここに書いてあるようにやっぱり特例制度型の形でやっていくというのが,少なくとも取りあえずは重要だと思うのですが,その特例の基準ですよね。先ほどから議論にあった,誰がどういう基準で個々の大学について特例として認めますよと言えるかというためのまた新たな審査機構を作ると,浅田先生がおっしゃるとおり,ますますまた複雑になってしまう。その辺をどうするかということがあるだろうと思いました。

 これらはどれも私の印象的なものですし,具体的なところにフィードバックしているものではありませんけれども,先生方の御意見というのは,幾つかのレベルがあって,それぞれとても重要なので,再度整理する必要があるかなと思いました。
 今のような観点から論点を考えながら議論することで,設置基準の組み方とか,情報公表というときに何のための,理念に関わるんですが,何を公表すべきなのかということとか,それから教員数もおっしゃるとおり,実際の専任教員数と,実際の大学で授業をしている教員の数とか関わり方というのは全然違うわけです。非常勤で来てくださっている先生が非常に深く関わっている大学もあるし,学生にとっても重要な役割をしている非常勤の先生もいる。では専任の教員がより深く大学の運営まで含めてきちんと関与しているかというのだってよく分からないので,そこは数には還元できないわけです。では質をどうやって判断するかという場合の基準の立て方というのは大変難しいと思います。その辺を,それこそ米澤先生,川嶋先生等に,外国といいますか,他国等のそういうときの例ですね。例というか,どういうふうにその辺を考えているのかみたいなことを,少し教えていただければと思いました。
 思い付きですけれども,以上のようなことを感じた次第です。

 いかがでしょう。時間があとちょうど10分ぐらいですので,もしも何か,ここで新たな議論をするのは難しいですけれども,次回の会議までにこの点を例えば事務局でまとめてほしい等も含めて,ございますでしょうか。

【川嶋委員】  よろしいでしょうか。

【吉岡座長】  川嶋委員。

【川嶋委員】  最後に座長が非常に本日の議論も含めて整理していただいて,レベルという言葉をお使いでしたけれども,私は大学教育の質保証のエコシステムと捉えるといいのかなと。それぞれのアクターというかがあって,大学がその中心にあるときに,御指摘のように,大学や文部科学省だけでは質保証ができないという部分が非常に大きいという,就職活動も含めてですね。そういう意味で,個々の大学における質保証を取り巻く様々なシステムを,エコシステムという形で整理できるのかなと,お話を聞きながら考えておりました。

 もう1つ,リクエストというお話に関しては,先ほど日比谷先生とかほかの委員の方からも御意見が出た,別表1の根拠というのは,これはもともと最初にできた1900何年かの大学基準協会が作った大学基準の中にあったものなのか,その辺の経緯をもし遡れるのだったら調べていただけると有り難いなと思いました。
 それから,これは私の単なる興味だけかもしれませんが,資料集のスライド161に大学における授業科目開設状況調査というマル1というグラフが並んでいるのですが,個々の大学にとっても,言い方は悪いかもしれませんが,今後大学教育の合理化ということを考えていくと,非常に授業開講科目数が過多になっているのではないか。もちろん大学専任教員の在り方にも関わってくることなのですけれども,マル1の図の中に大学当たりの平均総科目数(設置者別)と書いてあるのですが,国立大学がめちゃめちゃ多いのですけれども,これだけだとなかなか状況が分からないので,是非学生数別とか,設置学部数別,もう少しブレイクダウンしていただくと,情報としてはもう少し得られるのかなと思いました。
 私からは以上です。

【吉岡座長】  ありがとうございます。ほかに,いかがでしょうか。理念の1つである学修者本位というのは,必ずしも学修者の要求にみんなが従おうという話では全くないので,そうではなくて,学修者あるいは本人が自覚してないところまで含めて成長していくということを,どうやって教育として組み立てていくかということだろうと思うのですね。教育というのは物品のやり取りとは違って,欲しいものをあげればいい教育だということは全くないので,その辺のところを考えなくてはいけないとは常に思っています。
 そういう意味では授業の数,要するに学生がこういう授業を受けたいと言うと,結構大学というのはそういうものを増やしていく傾向があると思うのですけれども,それだけではなくて,逆にそれを絞りながら質を上げていくということが必要であると。これは大学分科会等でもしばしば議論になってきたことです。
 米澤委員,どうぞ。

【米澤委員】  ありがとうございます。一言だけ。学修者のイメージがかなり変わってきているということは,どこかで認識を共通に持っていた方がいいかと思います。要するに,学士課程の中で私は今でも大事だと思うのですが,4年間きちんと一貫して勉強したり,あるいは6年間ということはあると思うのですけれども,一方でアドホックに2時間学ぶとか,そういうのがだんだん普通になってくるということは,ある程度盛り込んで設計をしていく必要があると思います。
 以上でございます。

【吉岡座長】  今の点はすごく重要で,いわゆるリカレント教育ということであったり,リカレント教育という言葉だとそこでイメージされているのは人によって違ったりして,大分意味が違うのですけれども,パートタイム学生のような形で行くとか,それから大学である程度単位を取った後,その大学をやめてまた何年かたってから別の大学に入っていった場合,前の大学で学んだことをどう生かせるかみたいなことも含めて考えておく必要があるだろうと思います。
 これは結構重要なことだろうと思いますが,やはり今の設置基準等を含めて大学イメージというのは,学部・学科単位で,18歳から22歳を中心に4年間勉強してというのが学生だというイメージは非常に強い。これは中核であることは確かなのですが,そうではない部分が入ってくることによって,むしろ大学教育は豊かになっていくはずですので,その辺は実際に設置基準等に手を付けるというところまで行く場合には,少なくともそれが入り込めるようなことを考えておく必要があるだろうと思います。ありがとうございます。

 いかがでしょうか。結局,課題はたくさんあるということの確認のようになって,日比谷委員がおっしゃったように限定しないと,ここでの議論がある程度まとめても,またその上の部会,更に大学分科会のところで同じように非常に大きな議論に広がっていくだけになってしまうと収拾がつかなくなります。ですので,少なくともこの点は重要であって,これについてはこういう考え方であり,制度化するとそれとこれが問題だというところを少なくとも幾つか出さないと,作業チームの役割が果たせませんのでそれをやり,それから今後の課題も含めて整理しておくという,最終的には幾つか段階を踏んだ,レベルを含んだものを部会の方に戻すということになるだろうと思います。
 ありがとうございました。また何か御意見等ありましたら,事務局の方にお送りいただければと思います。
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

【一色大学振興課課長代理】  事務局からですけれども,先ほど川嶋先生から御質問いただきました別表1について,大学基準協会が定めました大学基準の方には規定はなくて,昭和31年に作られました大学設置基準において初めて規定されたものでございます。またそのときには,専門科目のほか一般科目,また外国語科目など科目別に教員数が定められておりましたけれども,平成3年度の大綱化の際に学部別,またその大学全体の収容定員に応じた数ということで再整理されたものでございます。
 以上でございます。

【川嶋委員】  ありがとうございます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。だんだん歴史も勉強しなくてはいけなくなってきましたけれども,理念といいますか,今後どうするかというときに結構そういうことって重要で,何のためにどうしてこの制度があるのかということが分からないと,どう変えていいか分かりませんので,必要な限りでは勉強していきたいと思います。
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは,事務局から何か連絡事項等ありますか。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  本日は活発な議論を頂きまして,まことにありがとうございました。今回,更に御発言できなかった点などございましたら,事務局あてに御連絡を頂戴できればと思っております。
 次回の作業チームですけれども,12月10日の10時からを予定しております。詳細につきましては追って御連絡させていただきます。

【吉岡座長】  ありがとうございます。最初に申しましたけれども,論点メモに含まれていないものとか,また重要な論点というのが出てくる可能性があり,制度上見直しが必要なものというかなり技術的に必要なものもあると思いますので,その点は事務局の方でまた整理していただければと思います。
 どうもありがとうございました。これで閉会させていただきたいと思います。
 
―― 了 ――

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