質保証システム部会(第12回) 議事録

1.日時

令和4年1月7日(金曜日)13時00分~14時45分

2.場所

WEB会議

3.議題

(1)質保証システムの見直しについて
(2)その他

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)永田恭介委員
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,川嶋太津夫,小林浩,杉谷祐美子,谷本和子,土屋恵一郎,長谷川知子,濱中淳子,古沢由紀子,前田早苗,宮内孝久,吉見俊哉,米澤彰純の各委員

文部科学省

(事務局)森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),里見大臣官房審議官(高等教育局担当),西田高等教育企画課長,柿澤高等教育政策室長,草野大学設置室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,大塚専門教育課課長補佐,一色大学振興課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐ほか

5.議事録

【吉岡部会長】  所定の時間になりましたので,第12回質保証システム部会を開催いたします。御多忙の中,御出席いただき誠にありがとうございます。皆様,画面と音声の準備をよろしくお願いいたします。
 本日は新型コロナウイルス感染症対策のため,Zoomによるウェブ会議として開催し,その様子をYouTubeライブ配信にて公開いたします。会議資料,音声等,御準備よろしいかと思いますが,あと映り込みに御注意ください。よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  事務局でございます。
 本日はお忙しい中,お集まりいただきましてありがとうございます。
 本日はWEB会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のマークのボタンを押していただき,部会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言を頂きたいこと,また,御発言後は再度挙手のマークのボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますとありがたく存じます。不都合が生じることもあるかと存じますが,御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 また,会議資料につきましては,議事次第に記載のとおり事前にメールでお送りしております。
 事務局からは以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは早速議事に入りたいと思います。前回,昨年9月の部会で承認されて設置されました作業チームが11月26日,12月20日の2回開催されました。作業チームでは,システム部会の部会長である私から,これまでのシステム部会での議論を踏まえた論点をチーム員各位に提示いたしまして,質保証システムの見直しの方向性について具体的な議論を行ってまいりました。これまで作業チームの議論を積み重ねてまいりましたが,今回,作業チームの見直し素案として中間報告をまとめましたので,本日,本部会に中間的な報告を行い,御議論いただきたいと考えている次第です。
 本部会といたしましては年度内に審議まとめを行う予定ですが,今後の進め方といたしましては,本日の御議論を踏まえて改めて作業チームで検討を行い,審議まとめの素案を作成した上で,部会において取りまとめに向けた議論を進めていただくような手順を考えております。本部会の取りまとめのイメージとしては,おおよそ,この後説明いたします作業チームの見直し素案のような形で,設置基準をはじめとする質保証システムの改正の方向性を示すものとなるということでございます。更に具体的な設置基準の条文案につきましては,本部会の審議まとめを踏まえ,文部科学省において条文化の作業が行われることになります。それが大学分科会に諮問される形になりますので,その手順といいますか,動きの認識を共有させていただければと思っております。よろしいでしょうか。
 まず,本部会に関係する動きとしまして規制改革会議あるいは教育未来創造会議等の動きがありますので,事務局から情報共有をお願いいたします。事務局,お願いします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 参考資料2及び参考資料3に基づきまして御説明させていただきます。まず,参考資料2の方でございます。こちらが規制改革会議の関係の動きでございます。令和3年12月22日に規制改革推進会議といたしまして,こちらは内閣府に設置されているところでございます規制改革推進会議において「当面の規制改革の実施事項」が取りまとめられております。「3.『人』への投資」の中で,「大学設置基準等の見直し」という形で提言されている形になります。ですので,内閣府の方から文部科学省に対してこのようなことを検討できないかということが投げかけられている形でございます。
 例えばaですけれども,「文部科学省は」という主語の下,学修者本位の学びを実現する観点で大学設置基準の見直しを検討すると。先生方に質保証システム部会で正に今,御議論いただいている検討というところでございます。
 またbといたしまして,オンライン授業と対面授業の二項対立から脱した質の高い教育を実現するために,オンライン授業・対面授業双方の質保証の在り方を検討するとともにと。また,最後の方に行きますけれども,オンライン授業の卒業単位への算入上限の削除の可否を含め,在り方を検討するということが投げかけられております。
 またcでございますと,設備であったり校地・校舎の面積,空地に関する規定等に関して削除の可否を含め見直しを検討すると。また,他大学・機関・自治体等と共有・共用できることを周知するといったことが投げかけられております。
 またdといたしましては,図書館関係でございます。現行の紙の本や黙読・自学自習を前提とした図書館設備等に関して規定を見直すということが投げかけられております。
 またeといたしましては,定員管理の在り方について。次のページに行きましてfでございますと,専任教員に関する規制を見直すことができないか。gでは修業年限の規定の見直し。またhですと単位互換といったことが,それぞれ規制改革推進会議から検討事項として投げかけられているところが1点目でございます。
 こちらの資料の後ろの方に,規制改革推進会議でこちらの実施事項を取りまとめるに当たりまして,子育て・教育・働き方ワーキング・グループというワーキング・グループでヒアリングが行われております。担当大臣は牧島大臣となっております。当日,日本私立大学連盟の村田副会長も御出席いただきましてヒアリングが行われておりますので,その模様も併せて記録として添付させていただいております。
 もう1点,参考資料3でございます。こちらは教育未来創造会議となってございます。令和3年12月に閣議決定して設置されておりまして,議長が内閣総理大臣,議長代理として内閣官房長官に加え,文部科学大臣兼教育再生担当大臣が議長代理を務める形でございます。具体的な構成員の名簿は2ページ目にございます。本システム部会からは日比谷先生がこちらの教育未来創造会議のメンバーとしても御参画いただいていることになってございます。
 こちらの会議,12月27日,年末に開催されておりまして,資料5として後ろにつけております主な論点案が示されております。こちらのページ番号が2ページ,主な論点案という形で四角囲みされている部分でございます。こちらで丸1,未来を支える人材を育む大学等の機能強化という中に,本部会に関係する内容といたしましてはデジタル技術を駆使したハイブリッド型教育の推進が論点案として示されているところでございます。
 次のページにお付けしておりますのが,官邸のホームページで教育未来創造会議の当日の模様に関して上げられているもの。岸田総理からの御発言内容が抜粋されております。「総理は,本日の議論を踏まえ,次のように述べました」とありまして,真ん中辺り,1点目,2点目,3点目と記載されているところの,特に関係するのは2点目の部分でございます。「高等教育の新たな可能性を切り拓いていくため,デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育を進めてまいります。対面授業と遠隔・オンライン教育との双方の良さをいかし,大学等の創意工夫でオンライン教育を現行の取得上限を超えて実施できるようにするなど,規制を緩和する特例を設けてまいります」と,このように総理から御発言がされているところでございます。この後,吉岡部会長から作業チームとしての見直しの素案を御説明いただきますけれども,その作業チームの議論の内容とも軌を一にするものになっているところでございます。
 事務局からは以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 これらの会議における議論にも留意しながら本日の議論を進めていきたいと考えております。作業チームは参考資料1-2を御覧いただければそこにメンバー表が出ております。私が座長を務めておりますので,作業チームを代表して,資料1に即して質保証システム見直しについてその素案を御説明いたしますので,他のチームメンバーの方もその後適宜補足していただければと思っております。資料1-1が概要で,1-2が本文になっているものでございます。

 それでは内容の説明をさせていただきます。まず1ページ目「はじめに」,それから4ページ目からの「1.質保証システムで保証すべき『質』について」,及び8ページからの「2.見直しの方向性」の辺りまでは,これまでシステム部会で整理してきた資料を改めて記してあるものです。具体的には,昨年9月の第11回システム部会でお示ししました「質保証システム部会のミッションと質保証システムが保証すべき『質』及び見直しに関する方向性について」という文書,それから更に一昨年9月の第4回システム部会でお示ししました「質保証システム部会における今後の議論の進め方について」でまとめた考え方を記しております。この部会においても既に御議論されている内容ですので詳細は割愛させていただきますが,何点か重要な点をリマインドするということで触れておきたいと思います。

 一つは,現行の質保証システムは,事前規制型の長所と事後チェック型の長所を併せ持つように設計されているということであります。それから現行のシステムについては,事前規制を弾力化することで高等教育機関全体の新陳代謝を促しつつ,質の低下が懸念される場合には大学等の自主的・自律的な改善を促すことによって質を保証すると。そういう仕組みになっているということで,一定の機能を果たしてきたと言うことはできるだろうと思います。その上で,様々な社会状況の変化等を踏まえ,時代の変化に対応した,将来を見据えた改正を行うべく見直しの議論を進めてきたということになります。
 また,5ページになりますが,保証すべき「質」とは何かというところで,これもリマインドでございますが,学校教育法の規定に照らして考えると,まずこれは「教育研究の質」であるということ。そしてそれが学修者の視点からすれば「学生の学びの質と水準」であるということ。つまり,学生が学びたいことをきちんと学ぶことができる条件・環境が整っているか。そして実際に何を学び,いかに成長できたのかという意味で,各大学において確認されていくべきものであるということ。これが中教審答申で示された学修者本位の質保証を考えていく上で重要な前提であると考えております。
 更に,教育と研究を両輪とする大学の在り方,これも中教審大学分科会で中心的に議論されていることでございますが,それを実現する観点から,持続的に優れた研究成果が創出されるよう研究環境の整備等が行われていることについて,質保証システムとして一定程度確認していくことも検討されるべきではないかと考えているところです。
 8ページからの「見直しの方向性」です。本部会のミッションですが,先ほども触れました平成30年のグランドデザイン答申に基づき,学修者本位の教育の実現をはじめとする考え方を質保証システムへと反映させることがメインのミッションであると考えております。それらを踏まえて2つの見直しの方針,「学修者本位の大学教育の実現」と「社会に開かれた質保証の実現」,この2つが大きな方針であるということであります。
 この2つの方針の下で具体的な個別の制度の見直しを検討していくということで,その視座として「客観性の確保」「透明性の向上」「先導性・先進性の確保」あるいは「柔軟性の向上」という言い方もしていましたが,それから「厳格性の担保」という4つの視点を設定してまいりました。
 11ページ以降から「各質保証システムの見直し」ということで,作業チームで集中的に検討を行った内容が記してございます。よろしいでしょうか。

 まず,大学設置基準・設置認可審査についての見直しの点について説明をさせていただきます。まず前提となることですけれども,大学設置基準の性質というのは,必要最低限の量的・質的構成要素を具現しているものかどうかを確認するための基準として定められている。その意味で正に最低限の質保証を図るものとしてそれは重要な役割を果たしていると言えるだろうと思います。したがって,これらの規定の見直しに当たっては,各規定が最低限の質保証を担保する上で果たしている役割や,その見直しによって起こる影響,それから高等教育の質保証システム全体のバランスも考慮しながら検討を進める必要があることを確認しているところです。
 その上で,考慮すべき指摘や論点がございます。一つは,社会全体が大きく変動する中,学修者本位の観点から,大学が創意工夫に基づく多様で先導性・先進性のある教育研究活動を行っていく際に,質保証システム全体として最低限保証すべき質を厳格に担保しつつも,現代に応じて柔軟性のある仕組みにしていく必要があるのではないかという指摘がございます。
 それから2番目といたしまして学位プログラムの重要性の問題です。これは「教学マネジメント指針」でも中心的に置かれたものでございます。現在の設置認可制度は,教員の所属組織と一対一対応していないようなケースも組み込んでありまして,その意味では既に学位プログラムごとの質保証が行われる形になっていると解釈できると思います。しかし,必ずしもその点が分かりやすく前面に出ているわけではないということで,大学教育の質保証の単位が学位プログラムであること,それから各大学における内部質保証は学位プログラムを基礎として行われるべきであることを更に分かりやすく明確にすべきではないかという指摘がございます。
 そのほか,教育課程の在り方・考え方が柔軟化するのと同時に,教員の在り方,図書・資料等の確保の仕方,それから授業運営の方法,施設設備・教育環境等についても近年の状況の変化等に対応し,規定を見直す必要が指摘されているところです。
 これらの指摘を踏まえた上で,1つ目としましては,時代の変化に対応しつつ将来を見据えた設置基準全体の見直しを行うということ,2番目として,共通となる最低基準性を担保しつつ大学教育の多様性・先導性を向上させる見直しが求められているであろうということでございます。
 それらの考え方を踏まえまして,具体的な見直しの方向性については12ページから14ページにかけて四角い囲みの中に記載してありますので御覧ください。全体といたしまして,本日のシステム部会における議論も踏まえて,更に作業チームで詳細を検討する必要があると考えておりますけれども,特に詳細設計について作業チームで議論の必要がある点を網かけにして分かりやすく明示してあります。
 まず,学修者本位の大学教育の実現という観点からは,各大学の内部質保証は学位プログラムを基礎として行われるべきこと,また,内部質保証による教育研究活動の不断の見直しが求められることなどを理念上明確にするということで,そのような書き方をしてはいかがかと考えております。
 また,客観性の確保という観点からは,現在設置基準の様々な箇所に分散して規定されている教員やいわゆる事務職員,それから各種組織に関する規定を一体的に整理して構成し直してはどうかと考えております。また,クロスアポイントメント等多様な働き方が広がっていることも踏まえて,「一の大学に限り専任教員となる」といういわゆる専任教員の現行の在り方について,その定義等を見直す必要があるだろうと。それから,「図書」や「雑誌」等の表現について,これも電子化・IT化を踏まえた規定に再整理する。「空地」につきましては,教員と学生,学生同士の交流の場として再整理する。またTA・SAなどの教育補助者についても大学設置基準上,明示的に規定することというようなことを盛り込んでいるところです。
 また,先導性・先進性の確保という観点からは,「講義・演習・実習・実験」のいわゆる時間区分の大くくり化など,単位制度の柔軟な運用を可能とするよう見直しを行うこと。それから,大学の創意工夫に基づく取組を促進し,今後の大学設置基準の改善につなげるために,内部質保証等の体制が十分機能していることを前提にした上で,教育課程等に係る特例を認める制度を新設するということ。そして,校舎等の施設,運動場や体育館等についても規定を弾力化することが考えられないかとしているところでございます。

 次に,15ページを御覧ください。これは認証評価制度の論点でございます。認証評価については,定期的に文部科学大臣の認証を受けた第三者機関による評価を受けることで,評価結果を踏まえて自ら改善を図ることを促すシステムということで,平成16年度より制度化されたことは御存じのとおりです。機関別評価については現在7年に1度の評価で,3回目となる第3サイクルの評価が現在実施されているところであります。そして,国際通用性のある質保証の枠組みとして,質保証システムにおける事後チェックの中核部分をなしているということであります。
 しかし,一方,内部質保証が真に有効に機能しているか否か,また,大学の教育研究活動の状況,学修の質や水準,研究環境整備等が必ずしも十分に評価できていないのではないかという指摘があります。また,認証評価機関によって評価結果や評価水準の違いが存在するのではないか,また評価結果について社会が利用しやすい形で公表されていないのではないか,それから機関別と分野別のサイクルが異なることを含め,評価に伴う大学の負担が増加しているのではないか,といった様々な指摘が行われております。
 これらを踏まえまして,16ページ目からの四角囲みの中に具体的な見直しの方向性をまとめております。学修者本位の大学教育の実現という観点からは,内部質保証について,自己点検評価の体制が整っているかだけではなくて,どう改善されたかを評価し公表する形へと充実させていくこと。例えば,大学設置基準の特例を認める際に認証評価で適合の評価を受けていることを要件とするなど,認証評価を受けることの意義・意味を高めるということ。あるいは,学修成果の把握や評価に関することや研究成果を継続的に生み出すための環境整備や支援の状況に関することについても,大学評価基準に追加することが考えられないかと考えているところでございます。

 また,客観性の確保という観点からは,認証評価機関の質保証のさらなる充実に資する取組を推進することや,透明性の向上として,各認証評価機関の評価結果を社会が利用しやすい形で一覧性を持って公表することを検討してはどうかということも考えているところです。更に加えまして,先導性・先進性の確保の観点から,認証評価で内部質保証の体制・取組が特に優れていることが認定された大学に対しては,次回の評価において評価項目や評価手法を簡素化することができないか。あるいは,法令適合性等について適切な情報公表を行っていることを前提に,法令適合性等に関する評価項目や評価手法を簡素化するなどの弾力化を図っていく。そして,大学の受審負担を軽減する仕組みや,分野別評価の合理化の在り方を検討していってはどうかと考えているところです。
 今のは優れた活動を行っているところということですが,一方で,評価結果が不適合の大学に対しては例えば受審期間を短縮化する,例えば3年にするとかという形で厳格性を担保してはどうかということも考えているところでございます。
 18ページ以降で,今度は情報公表について触れてございます。情報公表につきましては,この情報公表を徹底することが「社会に開かれた質保証」の実現のために極めて重要であって,これまでも関連規定の整備等に基づき,各大学で情報公表の取組が進展しつつあると認識しています。また,データベースを用いた大学の教育情報の共通プラットフォームとして「大学ポートレート」が平成27年3月から運用されておりますし,この運用につきましては大学ポートレート運営会議で決定され,大学コミュニティーによる自律的な運営が行われている。そのような形を取っております。
 しかし,現在法令上公表が義務化されている項目だけでは,つまり学生が実際にどのような知識や能力を修得し,大学が実際にどのような教育成果を上げたかなどの,そういう意味での成果の確認ができないという指摘があります。また,学生の学びの質と水準に大きく関わる項目について,大学による取組状況に実質的な差が見られるという指摘もございます。
 また,これはやや形式的なことかもしれませんが,大学ポートレートそれ自体が国公立と私立でプラットフォームが異なっていることから,例えば取得可能な資格から大学検索する場合には,国公立・私立別々に検索し直す必要があるなど,必要な情報を容易に入手できないという技術的な課題,あるいは大学の教育研究の質に関わる重要な情報が必ずしも分かりやすく示されていないといった課題が指摘されているところです。また,教学IRの観点からも,大学に関する情報を多様な観点から比較分析が可能な形で共通のプラットフォームを通じて提供することも求められているところです。
 これらを踏まえまして,20ページ目の四角囲みの中に見直しの方向性を記載しています。情報公表については本日の部会でも重点的に議論していただくことでより具体化していきたいと考えている点ですので,やや総論的な記述が中心になっております。どのような項目がどのような手法で公表されてくることを担保するのが適当かということを検討すること。それから,認証評価の際に教学マネジメント指針を踏まえて情報公表に関する取組を評価すること。また,各種情報を大学ポートレートに分かりやすく掲載することを基本とするとともに,ベンチマークの提示ができるよう改善する。そういう方向で検討してはどうかということを考えているところでございます。
 22ページ,23ページ以降につきましてはその他ということで,大学の実務担当に十分理解されていないと考えられる制度運用や周知等を含む,その他の事項についてまとめてあります。つまり,現行制度の範囲内で可能な対応というものを整理したものでございます。
 まず,学修者本位の大学教育の実現の観点からは,遠隔授業に関して,授業の質保証及び新たな取組の促進の観点から一定のガイドラインを策定することを検討してはどうかということ。
 また,客観性の確保の観点からは,実務家教員の定義の明確化を図る観点から,設置認可の教員審査における業績の考え方についてより具体的に周知する必要があるだろうと。また,大学の名称について,その名称に教育研究の内容が含まれている場合,大学が行う教育研究の内容を適切に表現したものとするように,これも周知すると。そうではないものがあるということでございますが,周知するということ。それから,教育研究上支障がないことを前提とした上で,施設等の共有が可能だということを分かりやすく周知していくこと。それから,SD,スタッフ・ディベロップメント,それからFD,ファカルティ・ディベロップメントの取組等を把握・周知することでSD・FDの充実を促進すること。そういったことがこれから必要であるだろうと考えているところです。
 更に,大学の自らの創意工夫による多様な教育活動を促すためにも,設置認可を経て認められた分野の範囲内であれば,組織の改組や融合領域の創設を含め,当該大学の判断で新たな学位プログラムを実施可能であることを周知することも必要だと考えています。
 以上,作業チームで議論した上でまとめました見直しの素案についての説明を行いました。以上でございますが,作業チーム員である委員からは是非,作業チームにおける議論の状況など,適宜補足していただければと思います。また,最初に申しましたけれども,この部会の取りまとめのイメージとしては設置基準をはじめとする質保証システムの改正の方向性を示すということで,具体的な条文案については,本部会の審議まとめを踏まえて文部科学省において設置基準の改正作業が行われ,それが大学分科会に諮問される手順になるということでございます。
 以上,ざっとというところがございますけれども御報告させていただきました。御意見があればと思いますが。永田委員,先にどうぞ。

【永田委員】  内容自体は作業チームで御検討されるということなので詰めていっていただきたいと思いますし,大体網羅されていると思います。
 一つだけどうしても述べておきたいことがあります。それは設置認可審査という部分について,以下のこの観点で御議論いただけないでしょうか。具体的には6ページを見ていただきますと,現在の設置認可審査において確認されている点,大きく分けて設置計画の審査と教員審査の2つであるとなっています。この中で審査の部分で丸1から丸4になっています。学校教育法あるいは教育基本法上,大学とは何かというときに,教育・研究,その成果をもって社会貢献になっているわけですが,設置するときに,研究について問われていません。設置審でいつも問題になるのは,最後の丸4の必要な施設等のところで,研究室がないという大学の申請が出てくるような時です。なぜなら研究について語っていないからです。
 できれば,ここは提案なので後で幾らでも変えていいのですが,丸2で,必要な教育課程が体系的に編成されているか,またそのための大学の研究の方針はどうなっているのか,あるいは丸3で,必要な教育組織と研究体制並びに必要な教員という具合に,研究について設置趣旨に書かざるを得ないようなことにしていただけないか。このことは設置審に出ていた先生方は全員感じているはずです。現在は,法令的には研究の話は教員審査でしかできないのです。ですから大学全体が何を考えて研究をどうしようかということは全く関係なく,ひどいところは研究室がないという状態で出てきます。
 こちらとしては,法令違反ではないので意を尽くして一生懸命研究室を置いていただきたいと設置審で伝えるのですが,法令違反でも何でもないわけです。ところが,今のような文言があって,教育課程を支える研究基盤ができているのかといった項目があれば書かざるを得ないわけです。設置審議会を経験された方はそう思っていらっしゃるはずで,教育・研究を進めてその成果をもって社会に貢献していくという文言に対応する部分が設置認可書類にないのはどうしたことか。何回もこれは文科省に問い合わせるのですが,それは教員審査でやっていますと回答される。教員審査でやっていたとしても,研究施設がなかったらこの教員はどうするのか,となってしまう。ところが研究施設がなくても法令違反ではないという問題がありますので,何らかの形で設置の趣旨を説明するところに,法律上でなくても,あるいはどこかでその内容が担保できるようにお考えいただけないかと思っています。
 以上です。設置審議会で毎回七転八倒しています。相手は法令上の問題でなければ聞きませんので,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。こちらのチームでの審議でも,やはり先ほども最初のところで申し上げましたけれども,そもそも分科会で教育と研究を両輪とする大学という言い方をしており,その教育と研究が,研究者がやはり教育者であるし,教育者はやはり研究なしでは大学・高等教育はできないという考え方が基礎になっておりますので,少なくとも最低限,研究環境の整備等ということが質保証システムの中に組み込んでいく必要があるだろうという議論はなされておりますので,永田委員のおっしゃることをどういう形でか組み込んでいくようにしたいと考えております。ありがとうございます。
 永田委員に先に御発言いただきましたが,それではまずチーム員の方から,今の私の説明に補足あるいは注釈等があれば御発言いただきたいと思います。順番で,では日比谷委員からお願いしましょう。日比谷委員,お願いいたします。

【日比谷委員】  皆様,明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 吉岡先生が御説明くださったとおりではありますけれども,作業チームの中での議論を思い起こしながらお話ししますと,特例を設けるという線で進むことは意見の一致を見ておりますし,これによって,いろいろ世間からといったらいいのかちょっとよく分かりませんが,いろいろなところから言われていることにもある程度応えられると私も思っているんですが。じゃあ,どういう時に特定を認めるかという具体的な議論になりますと,多分作業チーム員の中でもまだコンセンサスは取れていないと思いますし,これからいろいろ議論を詰めていく必要があるのかなと思っております。
 それから作業チームの話から若干外れるんですけれども,冒頭で御紹介がありましたとおり,私,教育未来創造会議のメンバーになりまして,暮れも押し詰まって12月27日に官邸で1回目が開かれまして,それに出席いたしました。総理,その他大臣の御都合もあったかと思いますが,全体で1時間しかなく,委員は1人,もう厳守で2分といって,私は何をやりたいというような話をしました後,御出席の総理を含む大臣全員から,こちらは1分でお話がございました。冒頭,御紹介のあったオンラインを是非やろうというのは岸田総理のお話の中に入っていて,新聞等でもかなり取り上げられましたので皆様御存じのとおりかと思います。
 余りどこにも私が見た限りでは出ていないんですが,財務大臣が設置基準を是非規制緩和の観点から緩めるというような御発言がございまして,これはそれなりにもちろん緩めるといいますか,見直していることは,作業チームでもそうですし,このシステム部会でもそうなるとは思うものの,どんどん規制緩和だということで質の保証ができないようなことになってしまうことは,私はかなりの懸念を持ったこともまた事実ですので,質の保証はしつつ,しかし余り時代に合わないものはもちろんですけれども,考えていかなければいけないところはよく議論をして変えていくべきかなと思っております。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは浅田委員,お願いいたします。

【浅田委員】  ありがとうございます。
 吉岡座長がお話しされた内容に全部盛り込まれているんですけれども,基本的には2つの考え方,学修者本位の大学教育,社会に開かれた質保証ということで,制度を複雑化するのではなくて,シンプルに整理していく形にしてほしいということは私から発言したところがあります。
 先ほど日比谷委員からありましたように,特例を設けて緩和することで前進しようという,そこのところは現実的な選択肢としてはそうなるんだろうと思います。ただ,特例の条件であるとか,特例の審査であるとか,また新たなものが加わってくるので,そこの議論は慎重にしていくべきだろうし,それで制度がどんどん複雑化していくのはやはり望ましい方向ではないので,全体の大きな流れは整理が要るんだろうと思います。基本的に学位プログラムという考え方で統一し,情報の公表を徹底して社会に開かれたという今回整理されるのは,私はいいかなと思っています。
 それから全体のシステムとしては認証評価が関わってくるんですけれども,私が懸念しているのは,細目省令のところを更に追加していく形で大学評価基準をそろえていきましょうという議論がある点です。認証機関の多様な存在を認めていきましょうという附帯決議がある中で,その辺をどう整理していくかというのは少しこの部会ではテーマが大き過ぎるような気がしますので,大学分科会等で認証制度そのものを今度どうしていくのかは議論していただいた方がいいかなという印象を持っております。
 私からは以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。本日,大森委員が御欠席ですので,川嶋委員,お願いいたします。

【川嶋委員】  川嶋です。よろしくお願いします。
 部会長及び2名の委員の方々が御指摘されたところに特に付け加えることはないのですけれども,その特例も改めて考えると,何をもって特例を適用すべき大学なのかというところの判断材料は今のところは質保証ができているというところだけなんですが,そこを今,浅田委員がおっしゃったような認証評価の内容によって判断するのか。ただし,その場合,認証評価の結果ですが,私は浅田委員とは逆の見解なんですが,評価機関によって全く評価基準が異なっていることもあって,どういうところで優れているのかいないのかの線引きするのかということが曖昧(あいまい)である。また,特例と認定する場合,特定の設置基準,例えば今話題になっているオンラインで認める単位数の上限の制限に限るのか,もっと広範な基準においてかなり柔軟な対応を大学に認めるのか。特例のあり方について,どういう範囲を対象にするのかは今後の議論だと思います。
 それからもう一点は,一応今回の中間報告でも何か所が言及されているんですが,設置認可されてからの質の保証で一番重要なのは自己点検評価だと思います。そして,その結果を社会に対して公表するところだと思います。平成3年に自己点検・評価が努力義務化され,その後さらに平成11年に学校教育法等で公表も含めて義務化されてきたわけです。当初は,御記憶の方も多いかと思うんですが,各大学が一生懸命自己点検・評価を実施して,その結果を非常に大部な報告書を印刷して公表するという,非常に熱心に行われていたんです。けれども,現状では,むしろそれが認証評価のためのとか,法人評価のための自己点検・評価という形になっていまして,本来質保証の核心である自己点検・評価の本来の在り方とは大分ずれてきていると私自身は考えています。改めてその自己点検・評価の重要性という原点に戻って考えることも必要かなと思いました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】  杉谷です。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 今回のメインは恐らく特例制度のことかなと思いますけれども,それに関しては既に先生方から詳しく御議論の様子なども教えていただいたかと思います。
 それプラス,最後の方の議論にございました情報公表に関してですけれども,これについて若干補足させていただきたいと思います。このチームでもどこまでこの点に関して具体的に詳細に踏み込むかということは少し議論になりました。
 というのも,既に御紹介がありましたように,恐らく情報公表するときの媒体は大学ポートレートが中心になるかと思うんですが,そちらはそちらでまた運営会議があって自律的な運営が行われているということになっているかと思います。ですので,情報公表を促すように,法令で規定されている事項プラス必要な部分をある程度義務化しつつも,本来的には大学側がこの情報公表を自主的・自律的に積極的に活用できるような形で,どんどんそれを公表していくことによって評価され,社会からの理解を取りつけていくように促されていくことが望ましいだろうという話にはなっていたかと思います。そのために,どこまでこの作業チームで具体的に言及していくかというところは少し議論になっておりましたので,引き続き審議が続くものと思っております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは米澤委員,お願いいたします。

【米澤委員】  ありがとうございます。私からは2点でございます。
 一つは,特例のことについて既に幾つもお話があったと思いますけれども,例えば未来創造会議を含めて議論になっておりますオンラインの教育をどう定義するかということについては,この部会の中でもハイブリッドであるのか,オンデマンドであるのか,リアルタイムのものであるのかみたいなところで,正直まだエビデンスは固まっていないところであるんだと思います。そういう意味で特例という形で実験的にできる場をつくるということだと思うんですけれども。同時に,浅田委員がおっしゃっていただいたように,最終的にはかなりやはりシンプルな形で整理されるべきだと思いますし,特例を外れて多くの大学に進んでいくような形になっていくという形で。その特例がその後,特例のままで終わるのではなくて,一般的なものに速やかに変わっていくような形での制度設計をビルトインしておくべきかなとは思います。
 それからもう一つは,これは議論の中で必ずしも名案があるわけではないんですけれども,現在の大学設置審の大学設置基準を見ますと,そこには大学の職員という言葉があって,その下に大学の教員というものと事務職員というものが置かれています。この事務職員というのが,それはそれで長い歴史があるんだと思うんですけれども,名は体を表しているのかということについては少し疑問があるんですが。だとしたら,どういう言葉がいいのかはちょっとまだ正直アイデアが浮かんでいないところがございますので,是非皆さんの御意見を頂ければと思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。以上,メンバーからのコメントでございました。
 メンバー内では今の御意見等を含め,それからそれぞれの概念について当然完全に一致しているわけではなくて,議論の途中のものもいろいろあることの認識はされているところです。それを踏まえまして,ほかの本日の部会の委員の先生方から御質問,御意見等をお聞きしたいと考えております。どなたからでも結構ですので御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。システムが変わりましたのですぐに対応できるかどうかちょっと自信がないですが,よろしくお願いいたします。小林委員が手を挙げていらっしゃいますね。では小林委員からお願いします。

【小林委員】  小林でございます。よろしいでしょうか。

【吉岡部会長】  どうぞお願いいたします。

【小林委員】  御説明ありがとうございました。
 一つ,私がもしかしたら聞き逃しているかもしれないので教えていただきたいんですが。先ほどの規制改革会議等でも指摘があった定員管理についてはこの部会でもかなり大きな一つのテーマだったように思うんですが,厳重な定員管理の在り方について見直す,厳密な定員管理の在り方の見直しを検討するという指摘がある中で,これについてはどのような議論がされていたかを教えていただければと思いますが,いかがでしょうか。

【吉岡部会長】  では事務局から先に答えていただきましょう。どうぞ。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 今回,質保証システムの見直しについてというふうにおまとめいただいたのは,作業チームとして今回議論されたものをまとめていただいたものになっております。定員管理は今,小林委員から御指摘いただきましたとおり,このシステム部会でかなり重点的に議論いただいたことになっております。ですので,本日は参考資料4として基礎資料集をお配りしておりますけれども,その中で155ページ,ちょっと大部になっていて恐縮ですけれども,155ページに昨年7月の第9回システム部会で先生方に御議論いただきました定員管理の見直しの方向性という形で資料が入っているところでございます。
 この中ですと,当時の議論で定員管理に関して,正に設置基準であったり設置認可審査を行う際の定員管理の話と,私学助成をはじめとする運営費交付金であったり基盤的経費の配分に関する政策上の取扱いというところは,まず分けて議論する必要があろうと。法令及び運用に関する部分に関しては,現行の大学設置基準や設置認可審査で行われているような,収容定員に基づいて学部・学科単位でしっかりと管理していくのは維持していきつつ,政策上の取扱いとしての設置認可審査上の定員超過した場合に設置認可の申請ができなくなるような部分であったり,私学助成等の経常費が減額されるような部分に関しては平均入学定員超過率が用いられていたり,入学定員と収容定員の両方を使ったような管理がされている部分に関しては,大学設置基準が収容定員管理になっている部分を踏まえて,平均収容定員超過率に基づく形で設置認可審査のペナルティをかけていくというところであったり,経常費の支援に関しても,現行の入学定員による単年度の管理から収容定員による複数年度の管理に見直していくことにしてはどうかという形で議論いただいていたと承知しております。
 ですので,作業チームといたしましてはこの部分に関してシステム部会の本体の方で議論されているところで,作業チームの議論としてはこの点は重点的には議論されておりませんので,今後システム部会として審議まとめをつくっていく中で,これまでの議論を踏まえた形でビルトインされていく形になろうかと思ってございます。

【小林委員】  ありがとうございます。承知しました。

【吉岡部会長】  次に前田委員,お願いいたします。

【前田委員】  ありがとうございます。
 8ページから9ページにかけて,客観性の確保と透明性の向上,先導性・先進性の確保(柔軟性の向上),で,厳格性の担保と,4つの重要な点が挙がっています。その4点に異論があるわけではないですが,このうちの1と2と4は比較的認証評価は得意な分野ではないかと思います。というのは,形式的に見ていくことができるからです。第3については,実に大事だと思いつつ認証評価においてどのように見ていけるのかというのもこれから課題になると思います。
 それともう一つは,特例というのも恐らく認証評価がその判断の前提となるとしたときに,認証評価機関がどのような評価を行うのかは難しい問題を含んでいると思います。例えば教員が専任ではなくても十分に専任と同じような役割を果たしているとか,教育が十分になされているのだというようなことを大学がどのようにして証明していくのかというようなことです。その辺を認証評価機関は単に外形的にできているか・できていないかだけを見るのではなく,例えばきちんとそのプロセスにも関わるなりして,大学と一緒につくっていくようなことをしなければいけないのではないかと思っています。
 現時点で認証評価は何々ができているかという形で見るので,結果として形式が整っているかどうかを見ることが中心です。その評価内容は今までの設置基準の定量的なものから定性的なものへと移ってきてはいますが,やはり今ちゃんと動いているのか,効果が上がっているのかというところを評価するのは,今のやり方ではちょっと難しいかなと思っています。ここで方針に対して異論があるわけではないんですけれども,本当にこれを動かしていくにはこれからどうやっていけばいいのかというところを考えていく必要があるだろうと思いました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。質保証システムの中で先ほどのまとめの中でも申し上げましたけれども,全体の流れとしては事前規制というよりも認証評価を中心とした,事後評価というのは変ですけれども,質保証を担保していくシステムにシフトしていくといいますか,それがむしろ本来の在り方であろうということについては,この部会でも議論の中でありましたし,作業チームでもそういう議論がある種の前提にはなっております。
 ただ一つ,これも部会でもそのことの議論があったかと思いますし,先ほどの発言にもあったのですが,一つは認証評価団体は基本的には第三者団体で,設置審とは異なる基礎を持っているということ。それから各認証評価団体がそれぞれの認証評価のシステムを持っているということで,その認証評価団体の方向性とか,こういうことをしていくべきだということを、提言していくことはできますけれども,法的に規制することはなかなか難しい。先ほどの発言にもありましたけれども,一方で認証評価団体の多様性をきちんと担保していくこともやはり必要であるということがありますので,その辺のことも考えながらやっていかなければならないと考えております。
 おっしゃるとおり,むしろ認証評価の問題がきちんと進まない限り質保証が実質化していくことはないことについての合意はできているものと考えております。
 それでは濱中委員,お願いします。

【濱中委員】  ありがとうございます。濱中でございます。作業チームの先生方,どうもありがとうございました。
 お伺いしたいのは,社会に開かれた質保証の実現という点を考えた場合に,第10期の部会で意見提出したことでもありますが,グランドデザイン答申に書いてある「国は、全国的な学生調査や大学調査を通じて整理し、比較できるよう一覧化して公表すべきである」「これらの情報について、当該大学のみならず社会全体が効果的に活用することができるよう、全国的な学生調査や大学調査を通じて、整理し、比較できるよう一覧化する機能を設ける」ということにどう対応するのか,ということです。
 今回出していただいた資料1-2で全国学生調査については20ページに書かれています。本格実施では大学・学部単位で調査結果を公表すること,その際,結果の数値の羅列だけではなく,という書き方で,大学教育の多面性,多様性に配慮した書き方になっていると思いながら読んでいたんですが。同時に,ここで結局どうしたいのかが余り読み取れないといいますか,ふわっとした感じになっているような気がしました。全国学生調査をどうするか,どう使うかで,質保証のあり方も変わってくると思います。作業チームの先生方がこの点について,どう議論されたのかを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。全国学生調査そのものについての議論は作業チームでは必ずしも行われておりませんが,全国学生調査を今後どうするかということについては事務局か文科省で何か発言があればと思いますが。どうぞ。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  事務局でございます。
 全国学生調査に関しましては別途有識者会議が設けられておりまして,そちらでどのような質問項目にしていくのか,現在,試行調査をまた改めて実施していこうという段階になっておりますので,このシステム部会及び作業チームの中で検討というよりも,別途そちらの有識者会議でしっかり検討していただく立てつけになっていると承知しております。

【濱中委員】  分かりました。ありがとうございます。

【吉岡部会長】  よろしいでしょうか。それでは続きまして吉見委員,飯吉委員,宮内委員の順番で御発言をお願いいたします。吉見委員,お願いします。

【吉見委員】  ありがとうございます。作業チームの先生方,精密な御検討,大変御苦労さまでございました。
 1点,これは質問に近く,あと2点,部分的なことですけれどもコメントさせていただきたいと存じます。
 質問に近い話は,これは主として認証評価に関わるんだと思いますが,国際的な通用性といいますか,国際発信といいますか,その辺との関係がどういうふうに考えられているのかをお聞きしたいと思いました。これはそもそもの認証評価機関の成立の仕方からしてそうなのですけれども,やはり例えば米国におけるアクレディテーションとのすり合わせとか,国際標準の様々な認証評価に相当する仕組みとのすり合わせをどうやっていくのか。そうすることによって日本の高等教育の国際発信力をもっと強くしていく国際戦略とどうこれがつながってくるのかの見通しというか,その辺のお考えを教えていただければ幸いです。これが質問でございます。
 あと2点,こちらはコメントでございますけれども。先ほど永田委員がおっしゃった研究体制というものがちゃんと書き込まれるべきであろうということについて私も賛成ですけれども,その時に,研究体制というのは当然ながら人,金そして空間,更に時間といったところが基本的な要素になるかと思います。私はもうこれは持論ですけれども,やはりこの中で落とされがちになるのが時間の問題でして,研究体制といったときにやはり非常に重要なのは研究時間が確保されていること。もちろん研究室も大切なんですけれども,研究の時間がちゃんと確保されていることが大学にとってはとても重要だと思います。学修者にとっては学修の時間,研究者にとっては研究の時間ということです。こういう観点も,是非何らかの形で入れていただければと思います。
 3点目ですけれども,先ほどお話に出た未来創造会議もそうですけれども,世の中の関心は今,オンラインに向かっているわけですね。だからこの会議でも,オンラインに関して何を出してくるのと,関心がメディア的にも向かうのだと思います。ですから,この中教審としてオンラインに関してこういう指針を示し,その質保証はこういうふうにしていくんだということを,積極的に出していくことが,世の中的にちゃんとメッセージを発信していることになるんじゃないかと思います。
 今後,いろいろな会議体からいろいろなものが出てくるでしょうけれども,先を制してオンラインの質保証を具体的に明示することは戦略的に重要だと思うのです。その場合に特に,オンラインというのは先生が一人でやるのではやっぱり駄目で,ちゃんとしたサポートスタッフを大学が確保できているかがオンライン教育のクオリティを決めていきますので,その辺の視点も是非御検討いただければと思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。認証評価については先ほども御質問がありましたけれども,永田委員がしょっちゅうおっしゃっているように,認証評価こそが国際水準の確保のために必要であるということの認識は共有されていると思います。
 その上で,どういう形で国際的な,あるいは他国の認証評価システムの評価基準とのすり合わせをどういうふうにしていくかというところは,残念ながらまだそこまでは議論が進んでおりません。非常に重要な論点であると考えておりますが,一方で,先ほど申しましたように,各認証評価機関の独自性といいますか,あるいは多様性をどうやって確保するかということとも関係していることだろうと思っております。
 それから吉見委員がおっしゃっている,研究にせよ教育にせよ学修にせよ,時間という論点を入れないと実質的には機能しないというのは私もそのとおりだと思います。実際に時間をどういうふうに,例えば法的な基準の中に時間の管理を組み込むのは裏表といいますか,下手なことをしない方がいいと私は思いますのでなかなか難しいと思いますが,観点としては非常に重要だと思います。例えば担当授業コマ数がやたら多い形を取っているところで研究を保証しろといってもほとんど意味がないということも含めて,実際に実態としてはそういうところはかなりあるだろうと思いますので。あるいはまた逆で,教育に一切関わっていなくていいのかという問題もあると思います。その辺のところはどういう形で実質的な基準の問題に持ち込めるかどうか分かりませんけれども,考え方としては明確にしていくべきだろうと思っております。
 それからオンラインのこともそのとおりだと思います。一方で,オンラインに限らずですけれども技術の発展は非常に速くて,オンラインということで2年前にオンラインが必要だと考えたときには,恐らく大学教員の大部分はオンデマンド型の一度録画すればいいぐらいの形で対応すると思った。それも大変だったわけですが。それがどんどん双方向性が実質的に可能となり,かつ,それを媒介するような形で補助するような技術的なスタッフも必要で、大学によってはそろえることができていますけれども,そこにもちろん格差が生じてくることもあるかもしれません。そういう意味では実際にオンラインでやれることはこの2年間で急速に増えた。まだ物に触れることはできないかもしれませんが,かなりバーチャルなレベルも上がってきているわけで,そういうことも含めて,このシステム部会で結論を出すことができないかもしれませんが,あるいはこれは本当に急速な科学技術の進歩ですので,注目しつつ,そのことが視野から落ちないようにしていくことが必要だろうと思います。やはり想像以上の進歩だと思っている次第です。
 飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  ありがとうございます。作業チームの皆さん,ありがとうございました。
どうなるのかなと思っていた論点が結構灰色で網かけになっていて,やはり大変なんだろうなということを改めて思い知らされました。
 規制改革推進会議とか教育未来創造会議では、かなり大胆でダイナミックな提言がされていて,規制改革推進会議では,この部会があちこちに蛇行しているように言われているのが少々口惜しいです。
 これまでもポイントの一つとして挙げられていますが,「質保証と規制緩和のバランスの落としどころ」の話が重要だと思います。特例というのは、非常に便利だと思います。ただ,特例と言う場合は,特区などの場合もそうですが,それが非常に敷居の高いものになっている場合と,特例がぽんぽん出しやすいようになっている場合とがあると思います。この場合は趣旨でいうと,やはり「特例を認めやすくすること」が、大学をどんどん改革していく上では大事なんだろうと思います。
 そこで懸案の「特例を認める場合の要件」という話になるわけですが,例えばご提案されている「今までの既存のものの質保証ができているから特例とすることを認めていく」という考え方は分かりますが,「学位プログラムの先導性・先進性」を考えた場合に,もちろん「どのような学位プログラムであるか」という中身の部分が大事だと思いますが,一方で,先ほどのオンラインの話にもあったように,形とか教育方法,単位認定のやり方等々において,やはり先導的・先進的なものが出てくると思います。その場合,「既存の質保証ができている大学だから」ということで,どれだけその先導的・先進的なプログラムの質保証の担保ができるのかが気に懸かります。新しいものに対しては,「有識者会議等における確認」等で対応するというような提案もされていますが,結構責任は重大だと思います。ここも手探りでやる,ということですね。
 そうなると留まるところ,「ローカルなケース・バイ・ケースの質保証」というか,既存の質保証をしっかりしていると認められた大学が「丸投げされた形で,新たな教育のやり方の質保証をしなくてはいけない」ということにならないのか,という心配が出てきます。その点で,先ほど吉見委員が言われた,この部会で,オンラインに関わることだけではないかもしれませんが,新しい教育の方法や仕組みに対する質保証のための指針のようなものをある程度出した方が,やはりこの部会の存在価値を示し,貢献が図れるのではないかと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。宮内委員,お願いいたします。

【宮内委員】  作業チームの方々,大変ありがとうございました。
 このルール,質保証システム等々はミニマムリクワイアメントの範囲でできるだけフレキシブルに融通無碍(むげ)に時代の進化とともにこのルールを柔軟に変えていくべきです。先ほどどなたかおっしゃったように,特例を認めながら,その特例の中で取捨選択しながらいい方向性に行く柔軟性が一番大事と常々思っております。
 私はこのシステムそのものというよりも,システムの運用がとても大事と考えます。その点をこの見直しの中で強調していただけるとありがたい。具体的に申しますと,評価機構によって評価基準がいろいろと異なり、また評価者によって視点が違い,ばらつきがある。この評価のやり方,運用の標準化をしていかなければいけないと思います。
 要は,評価機構の質保証が大事かなと思っております。形式要件のチェックはAIでできます。先ほど前田委員がおっしゃっていたように,私たちの仕事は,共に成長していくための場としてのこの質保証のシステムが機能すればよいと思うんです。例えば第三者評価のチェックにいく,そこで議論して,お互いが成長していくような仕掛けが必要と思います。企業への税務調査,また金融庁の金融機関に対するチェックとは違うわけです。私たちの狙いは教育の質保証であります。世界の中で大分ビハインドになってしまっている,たちの硬直化した教育の実態をどうやって変えていくかです。これは形式要件を決めることによって変革させるのではなく,質の内容を構成員評価者と被評価者が一緒に考える。これが大事だろうと考えております。
 私が経験した第三者評価は何か互助会のような,何というか,傷のなめ合いというか,お互いによく頑張っていますねと励まし合う。こんなんじゃ緊張感も何もなく,イノベーションは起きないわけであります。どうやってそういうイノベーティブな雰囲気をつくるか,その演出が今回の設計になるのかなと思っております。
 私は大学社会に入って4年目なんですが,先ほど米澤委員が指摘されていましたが,大学社会は教授とか教員が偉くて中心にいて,事務職員はそのサブでサポート役になっているような構造になっているように見受けられます。何とか経営のプロ,大学の経営のプロとしての事務職員を育てたいと考えます。教員をスタートとして経営のプロになるのもいいし,事務から大学経営のプロになるのもいい。私は大学経営のプロフェッショナルの育成をするような機関,例えば政策大学院のような形でもいいんですが,そこでMAとかPhDを取らせる。大学経営のプロフェッショナルをつくる提案です。
 大学経営のプロフェッショナルをつくっていくためには別に大学院だけではなくて,評価システムの中で第三者評価をお互いにしながら成長していくような仕組みに設計ができるといいかなと思います。それでそこにはノンジャパニーズも入れていかなければいけないし,大学関係者以外の人を入れ,結果を公表することも大事ですが、プロセスを見える化していく事と考えます。社会的な器としての大学の透明性を高めるのは,結果公表ではなく,そのプロセスを透明化していくことが大事かなと思っておりまして,そういったことがこの質保証システムの見直しの中で実現できればうれしいと考えております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。今,土屋委員,古沢委員,谷本委員が挙手されておりますので,その順番でまず発言いただきたいと思います。土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  ありがとうございました。
 皆さんの御努力のおかげで問題点はかなり明確になってきていると思いますけれども,私もこれまでずっと主張してまいりましたのは,オンライン授業の重要性を非常に強調してまいりました。その意味では教育未来創造会議やあるいは規制改革会議での様々な発言が私の発言とほぼ軌を一にしているので,大変頼もしく思っているわけでありますけれども。しかしこの問題はただ……,先ほどちょっと今の問題だからやっておいた方がいいんじゃないかという発言がありましたけれども,これは将来に向けても,未来に向けても正にオンライン教育をどうするかということはかなり重要な問題になってくるだろうと思います。
 なので,吉岡部会長の発言にあったとおり,例えばメタバースについての言及が規制改革会議でありましたけれども,これからのオンライン授業は今までのように単に一方向的に発信していく,あるいはオンデマンドでやるといったようなレベルではなくて,同時に,言わば相互にアバターが行って,あるいはアバターが来て,そこで授業を受けるような形も今後は起こってくるだろうと思います。その未来を考えるならば,特例事項として遠隔授業による修得単位上限をどうするかなんていう記述もありますけれども,もはや特例事項でいっている段階ではないんじゃないのか。むしろ将来にわたって遠隔授業による修得単位上限はむしろ撤廃した上で,更により充実したものとしてやっていくのかということが本来は議論されるべきではないのかと私は思います。
 また,質保証されているから遠隔授業が行えるのではなくて,遠隔授業が行われること自身が正に質保証の条件である。私はそう思います。そういう意味では,むしろ遠隔授業の条件が整っていなければ,例えば現在はですけれども,大学教育の質は保証されないわけです。今のようなコロナ禍においてはいかに遠隔授業ができているかということが,つまり対面授業の要は欠落を補っているわけであって,このことを言えば,将来にわたってもこのような状況が想定されるならば,むしろ質保証の条件こそが遠隔授業であると私は思います。そのことの様々な言わばシステムがきちんと整えられている大学になっているかどうかということがこれから問われるんだろうと思っておりますので,そういう意味ではむしろオンライン授業をだけでもやはり私はこのことを言うのはとても大事だなと思っております。
 質保証は前からも申し上げていますが,実はファカルティ・ディベロップメントや様々なことを含めても,要はオンライン授業が行われるかどうかということが質保証の基本的な条件なんだということは,私はずっと強調してまいりました。その意味では,ここは特例事項となっておりますが,できればより踏み込んだ形で修得単位上限の撤廃をきちんと言っていくべきではないのかと私は思います。その上で,むしろそれこそが大学の質保証の基本的な条件であることを言わないと,この部会が,吉岡座長がおまとめになったような先進性を持った部会になることにはならないんじゃないのかということを申し上げておきたいと思います。
 あといろいろあるんですけれども,私としては,私の役割はこのことをやはり言うことであると思っていますので,是非そのことを御理解いただきたいと思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。すみません。長谷川委員がずっと手を挙げていらしたのを見落としておりました。本当に申し訳ございません。まず長谷川委員に御発言いただきたいと思います。

【長谷川委員】  作業チームの皆様,本当にありがとうございました。
 このまとめ自体は大変よくできていると思いますが,やはり経団連としては,VUCAと言われる激しい時代の変化に対応して,大学設置基準自体を抜本的に見直すべきだと考えております。その際,800以上ある大学に一律に同じ基準を適用していくこと自体にもう無理があるのではないかと考えております。
 そういう意味で設置基準の制度自体の抜本的な見直しが必要だと思いますが,当面の対応としては,今回お示しいただいたように,内部質保証や教学マネジメント等で高い評価を受け続けている大学等に対しては、設置基準や認証評価の適用を一部緩和するなど,異なる基準を適用していく、そういう特例を認めることは、改革の第一歩としては賛成いたします。
 12ページにも書いていただいております見直しのための4つの視座でございますが,産業界としては,やはり本来目指すべき学修者本位の大学教育の実現という観点を踏まえるならば,先導性・先進性の確保,柔軟性の向上が最も重要な視座だと考えております。そのため、具体的には、定員管理については学部単位ではなく大学単位,また単年度ではなく複数年度で管理することや,またオンライン授業による修得単位数の上限の撤廃ですとか,校地・校舎等の施設に関する物理的な空間に関する量的な評価ではなく,デジタル機能などの教育機能に関する質的評価に設置基準を改定すべきであると考えております。しかし,当面の対応としては,今回の御提案いただいたように特例措置という形で進めることも一案だと存じます。その際、本当に少ない,非常にまれなケースの特例で認めるということではなく,先ほど別の委員からも御指摘がございましたが,より柔軟に幅広く特例措置を認めていくべきであり,それが質の高い新しい先導的な教育を実現していくことにつながるのではないかと思っております。
 また,素案の9ページの後半で,質保証の仕組みについては,社会との相互作用の中で営まれるエコシステムとしての質保証として捉えていく視点も重要と記載いただいておりまして,これにも大変賛成しております。今後,大学による内部質保証だけではなくて,学生自身のマインドの改革による,教学マネジメント指針にも書いてございますが,自律的な学修者という視点での学生自身による教育の質保証という視点も非常に重要ではないかと思っております。
 ですので,今回の提案では22ページで,学生自らが質保証に参加する方法として,授業実施における意見を取り入れるとか,学生企画型の授業科目なども御指摘いただいておりますが,そういう狭いところにとどまるのではなくて,大学の正課以外の外部での活動なども含めまして,学生自らが行う自律的な学修に対して,それも含めた教育の質保証という観点をもっと重視していくべきではないかと考えております。企業におきましても現在,これまでは会社側が従業員のキャリア形成を指示・指導して行っていく面もあったのですが,今はそれから転換して,従業員,働き手自らが自律的に自分のキャリアを能動的に形成していくことに変わってきております。同じように,大学教育の質保証も学生自らが能動的な学修者として自らの学びの質保証に参画していく視点が非常に重要ではないかと思っております。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。すみません。それでは古沢委員,谷本委員の順でお願いいたします。古沢委員,お願いします。

【古沢委員】  ありがとうございます。古沢です。
 先ほどから出ている特例という言葉ですけれども,一般的にはごく一部限られた対象ということになると思います。ただ,御説明を聞いていると,やはり認証評価で一定の基準を満たした場合はかなり幅広く認められていくのかなというイメージもありまして,特例という言葉がふさわしいのか,あるいは要件とか段階的に進めていくかによってもかなり異なるとは思うんですけれども,それを分かりやすく示していく必要があるかと思います。
 それからやはり先ほどから出ているオンライン授業,遠隔授業の在り方,ガイドラインを盛り込むことがこの文書の中にも入っていて,非常に望ましいと思います。以前にも申し上げたとは思うんですけれども,質保証の部会であるならば,オンラインの教育について急速に普及しているのですから,ある程度踏み込んで方向を示すことは不可欠ではないかと思います。
 その上で遠隔授業についてですけれども,日本の大学は海外の大学に比して圧倒的に18歳,19歳が多くて,高校からそのまま進学してくる方が近年更に増えております。授業方式や大学生活への影響が非常に大きく,遠隔授業についてもメディアというふうなお話も何度も出ておりますけれども,影響が大きいのは否めないですし,やはりそれは世間の関心が大きいのは自然なことではないかなと,私はメディアの一員であるからこそ思うのかもしれませんが,恐らく多くの方が,保護者などもそのように思うのではないかと思うので,そういった成長段階に配慮しながらオンラインの利点も活用していく視点を是非入れていただいた方がいいのではないかなと思いました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは谷本委員,お願いします。

【谷本委員】  作業チームの先生方,大変分かりやすく論点をまとめて整理していただきまして,どうもありがとうございました。私からは2点ございます。
 1点目は情報公開についてでございます。各大学・短期大学が自主的・自律的にそれぞれのホームページなどに個性的でユニークな取組等を公表されています。更に大学ポートレートでは,社会に様々な教育情報を統一的に公開しています。今後の方向性として,立地や分野等が共通する大学や短期大学との間で,より細やかに比較ができるようなベンチマークの提示を検討されているとのことです。大学ポートレートは各大学・短期大学の個別の情報が統一的に記載されて,内容がとても充実しています。しかし高校生や保護者の目線から必要な項目を、シンプルに比較できるような比較の機能をつけたり,情報量を少し整理できたらいいのではないかなと,考えております。
 2つ目,保証すべき質とはというところなのですけれども,教育の質が保証されるべきで,それは学生の学びの質と水準であるということです。そのために教育・研究の設備や人員を整えることを設置基準,質の保証で取り組んでおられます。その中に教員の教育力という観点を含めていただけたらと思っております。これは測定する方法,あるいはどのように基準を考えていくのかが難しいところかと思います。教員の研究力は競争的な研究資金をどれだけ獲得しているか,論文をどれだけ書いているか,公表しているかというところで測定できると思います。学生が何を学んだのか,何を身につけたのかという観点から,責任を持って学生を指導できる,教員の教育力を何らかの尺度で見ていく必要性があるのではないかと考えております。
 今回,コロナ禍において様々なイベントが制限される中で,本学では職員が学生たちを支援してオープンキャンパスや学祭,国際交流等いろいろな活動をオンラインのプラットフォームを使って実施しておりました。それを考えますと,職員の教育力も考慮する必要があると考えます。事務局職員は一定の専門性の高い仕事をするということですが,大学という教育機関の中において,学生の人間的な成長や教育支援に携わるケースも多数ございますので,そういった観点での質保証も検討していただけたらと思います。
 私からは以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 今,取りあえずこれで全員発言されましたね。ありがとうございます。それではまだあと時間が30分ほどありますので,今までの議論について御自由に御意見があれば,あるいは御意見に対する質問でも構いませんが,少しフリーディスカッションを行いたいと思います。御発言があればと思います。米澤委員,お願いします。

【米澤委員】  ありがとうございます。
 吉見委員から出ていた国際的な発信力について少しコメントさせていただきたいと思います。基本的なところで,今,吉岡座長からもお話があったように,システムとしては認証評価というものをやっている団体が国際的な認証評価ネットワークであるアジアパシフィックのもの,あるいは国際的な,最終的に世界的なINQAAHEというところに今参加していて,そこで情報交換をしてできているのと同時に,東京規約それから国際規約,世界規約で保証されていく仕組みになっていると思うんです。
 それを超えて特に先進的なところについてどういうふうに質保証団体として,あるいは質保証システムとしてリードしていくのかというのはかなり難しいテーマなのかなと思っています。つまり,逆に質保証という形で干渉してしまうことが,むしろその進歩を止めてしまったり,いろいろな形のイノベーションを止めてしまうみたいなところがあって,そこの部分について必ずしも世界的に見ても私はどうも進んでいないのではないかなというような関心を持ってはいるんですけれども。
 その上であえて前田委員とかに伺いたいところではあるんですけれども,まず一つのやり方としては,やはり認証評価団体自体がそれぞれ切磋琢磨して新しいものを先進的にしていくようなメカニズムが働けばいいのかなとは常に思っているところで,それが働いていると必ずしも思っていないから言っているところもあるんですけれども。日本の中でせっかく複数の認証評価団体が認められる仕組みが成り立っている中で,そのような形でよりイノベーティブなものを認めていくような形で切磋琢磨していくような仕組みをつくるためにはどうすればよいのかみたいなところが知りたいところであると思います。
 それと同時にもう一つ考えなければいけないのは,そのような中で過去10年ぐらいを考えたときには,そのイノベーションを支えていたのはやはり国際的につながるとか,国際的な質保証をすること自体が,国際的にネットワークがつながることでイノベーションだったわけです。けれども,今,オンラインが拡大し,普及することで完全に違うステージに入ってきていて,デジタルな教育のあり方についてどう質保証していくのかということは,ほぼ世界的な課題でありながらどこにもその答えが今のところないので,多分認証評価という仕組みだけではうまくいかないところをどうやってガイドラインをつくっていくのかについてはもう一歩お知恵が頂きたいなと思ったところでございます。
 問題提起に近いんですけれども,以上でございます。

【吉岡部会長】  非常に重要な指摘です。前田委員,今御指名でしたが,何か発言があれば。

【前田委員】  大変難しいテーマだなと思います。というのは,複数の評価機関のどこを受けてもいいという,そして認証という行為以外にあまり国が関わっていない,そういうシステムを持っている国はほとんどないだろうと思うんです。アメリカが,いわゆる機関別アクレディテーション団体の古くからあるところのほかに新しいものが幾つかあります。宗教関係の教育機関を認定しているところ,キャリア,職業関係の教育機関を認定しているところなどです。そちらを選ぶこともできるんですけれども,学位を授与する大学型の高等教育機関であれば,それがどの州にあるかで評価機関が決まっています。日本のようなシステムはほかの国にないと思います。
 今回の資料にもありましたけれども,認証評価機関には一定の線引きが必要と思います。現時点でも,評価機関の多様性はかなり認められていると感じています。その辺りはもう少しきちんとしていかなければいけないと思っています。
 ちょっと長くなりますけれども,例えば学修成果について大学の認証評価機関5つを比べてみたら,その厳しさがかなり違うのではないかと思います。学修成果を把握する仕組みを持っていればいいとするところもあるし,実際に何らかの方法で測っていなければいけないとするところもあります。これは多様性では片づけられない問題だろうと思っています。
 もう一つ考えていて評価機関に提案しようかなと思っていたのは,評価システムをその評価機関が1つしか持っていないという必要性はないのではないか。最低限できていればいいというものと,ちょっと上を目指す大学向けのものというように複数の評価システムがあってのいいのではないかと思います。うちの大学はこの先進的な方の評価システムを受けましたというようなことがあってもいい。認証評価としてはベースができていればいいので,一番ベーシックなところを受けていればもちろん法令は満たしていると。そうするとやりがいも出てくるかなと思います。その上の段階を目指す場合は,やはり評価機関と一緒に,どうやったら次の段階に進めるかということを考えていけるようなシステムができたらいいなと思っています。
 米澤委員のお答えになってはいないんですけれども,以上です。すみません。

【米澤委員】  ありがとうございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。大変勉強になりました。おっしゃるとおりだと思います。私,全くこの辺のところは素人なのですけれども,教育学でどういうふうに議論されているかということも分からないのですが。日本の認証評価機関というか,認証評価機関のシステム自体が,ある意味では法的な規制の中に半分入っているような形になっているおかげで,要するに正に認証を受けた評価機関がやっているのですけれども,それでその評価は7年に1度受けなければならないという形で制度化されていることで,評価の本来の意味での多様性であるとか,革新性というんですかね,柔軟性が難しくなっている面はあるのかなと,今の話を聞いていて思いました。
 やはり機関別評価以外にも分野別評価はいろいろな形で動いているわけですが,それこそ分野というふうに言えないような,先ほどあったキャリアであるとかそういうようなことについてもいろいろな形で評価するような第三者機関が発達してくるならばちょっと様相は変わってくるだろうと,今のお話を聞いていて思いました。ちょっとここでやるべきことではないかもしれませんが,少し,そういう評価というものについての考え方,あるいは国民的合意みたいなものがイメージ自体に差があるいいますか,うまく成熟していないかなとちょっと今思った次第です。
 すみません,ちょっと余計な個人的感想を入れましたが。ほかにいかがでしょうか。飯吉委員,どうぞ。

【飯吉委員】  小さいトピックのようにも思えるんですが,小さくないとも思うので,少し発言させていただきたいのですが。
 米澤委員が言われた,事務職員の呼称に関連することです。今的には多分「事務」というのを外す,まあ一言で「事務」と教員の間では言ってしまっているところもありますが,「職員」と普通は言って,「事務」という部分を少し弱めるような方向には動いていると思います。
 自分の経験でもアメリカなどの大学では,日本の大学のような事務職員という感じの役割・位置づけはあまりなくて,まるっと「スタッフ」と呼ばれています。その中で,各自の役割が非常に明確化されていて,いろいろな職名,例えば「インストラクショナル・デザイナー」や「シニア・ラーニングアナリスト」という職名があります。また,これらの職名は大学や部局の方で,比較的自由につくれます。これも大きなテーマですが,必要とされる学位等についても,この職階の人たちは修士号が必要,この職階の人はスタッフでも博士号が必要というように規定されていて,それが給与にもきちんと反映されています。国連やUNESCOのような国際機関等においても,同様だと思います。
 これらがなぜ大事かというと,やはり様々な専門性・経験を持った人たちがチームになって働いていることを示せることによって,そのような体制によって支えられている教育の質保証が明示できる部分があるからです。これを,「教務係の人が関わっている」とか「教務課の人が関わっている」というような示し方をしても,実際のところ、誰が何をしているのかよく分からないですし,そもそも一般的な事務職員という分類で括っても,国立大学などでは,ぐるぐる部署を回されてしまっている場合などもあり,なかなか専門性が育たない。よほど専門性に秀でている人であれば,関連部署に留まるような形にはなっていますが。
 ということで,もちろんこの部会で決められることは限られているとは思いますが,TAとかSAの話もこれまで出ていますし,教職協働という形で教育の質保証という話もよく出てくるようになっていますので,是非この辺りも含めた質保証についても考えていくことも大事だと思います。「事務」というような呼称や職名の問題は「氷山の一角」で,実はいろいろな大きな問題をはらんでいるのではないか,というコメントです。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。職員の在り方はやはり非常に重要な課題で,どこまでここの部会でやるべきことかというのはちょっと難しいところはあると思うのですが,個人的には学生が育っていくときに職員が果たしている役割は実に大きいと思っています。特に私立大学の経験をされている方々はそう思われると思いますが,私立大学などの場合,職員の方がむしろ学生の面倒を見ているといいますか,面倒という言い方がいいかどうか分かりませんけれども,職員発の様々なプロジェクトであるとか,あるいは戦後でいうと学生相談所を中心にして展開されていったような,学生の助育と言われたり,学生厚生補導と言われるようなそういう領域はかなり確固としたものがあって,そこである種のプロフェッショナル的な人たちが育っていったことがあると思います。その辺は多分国立大学の事務職員との違いで,余り一律に言えないところかなと思いますが。
 それをこの質保証のシステムの中にどういうふうに入れるかどうかは難しいかもしれませんが,明らかに学生生活とかキャンパスの自律性とかということを保っているのはそういう人たちが動いているからで,それは単なる教員の補助者ではないと私は思っているところです。その辺のところもつまり質保証全体で考えるときには非常に重要なことかなと思っています。これも個人的な感想でございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。非常にいろいろな多岐にわたる議論が展開されていて,これもまたまとめていくのはなかなか難しいと思いますし,質保証ということでようやく我々の中で,全体の中である程度のイメージができてきていると思いますけれども,質保証という言葉で指している事柄がやはりいろいろなところを指しています。それを具体的にどういうふうにシステムと考えるかということとか,それをそれこそ設置基準のような形で法的な仕組みに落とすのかというようなところについていろいろ差があってしかるべきなので,その辺のところを考えながら,ここでの議論が,先ほどあったように,それこそそれぞれの大学や学生も含めた意味での高等教育のシステムがより活性化していくような方向になっていかなければならないと思っています。足を引っ張る方向になってしまってはならないというのが一番重要なことだと思っております。
 いかがでしょうか。以上のような形でまた少しまとめて,作業チームでまた論点をまとめつつ,問題提起も含めてこの部会に戻させていただきたいと思っております。宮内委員,挙手されていますね。失礼しました。

【宮内委員】  ありがとうございます。  先ほど財務省ですか,規制緩和論があるというお話が日比谷委員からありましたけれども,これはどういった観点からの規制緩和論なんでしょうか。長谷川委員が言われたような800もある大学の中で1つの基準で縛るのも無理なのよというような話なのか,それとも外資をもっと導入する,競争条件を整えて大学の質を上げるには規制があるからいけないんだという通産省的な発想なのか,一体どういうことで規制緩和論が議論されているのかなと興味がありまして質問する次第であります。

【日比谷委員】  よろしいですか。

【吉岡部会長】  どうぞ。日比谷委員,お願いします。

【日比谷委員】  申し上げましたとおり,当日はとにかく大臣は持ち時間が1分でした。財務大臣はほかのこともおっしゃいましたので,規制緩和の観点からというのは私の推測も少しは入っているんですけれども,大学設置基準の見直しとおっしゃったかな,でもかなり撤廃に近いようなニュアンスの御発言に私は受け取りましたけれども。その背景が何であるかとか,どういう観点から私は言っているというようなことを含めるような時間は全くありませんで,時間は大変に厳しく管理されておりましたので,それ以上のことは今の時点で私からはお答えできません。

【宮内委員】  分かりました。一般の市民から大学設置基準を見ると世間常識上奇妙だなということは皆さんが御指摘しているとおりで,図書館の本が何冊なければいけないとか,校庭の面積はどのくらいなければいけないから始まって,専任教員問題につながる漠然とした批判がある。ちょうどワクチンの接種をするときに80歳の医師なら資格があるけれども薬剤師はないとか,そういうような話に似たような形式批判が先に走っている。授業なんか受けなくても学位をもらえる日本の大学をつくってしまった原因は,形式論に走っている我が国の設置基準にあり,これがめちゃくちゃ駄目にしているんだとの意見も傾聴に値します。これが我々の出す日本の学位に対する信頼を低くしているわけであります。
 信頼度を上げるための規制緩和というキーワードを使い,世の中の大学設置基準に対する不信感のようなものを払拭していくのも,今回の私たちの部会の仕事だと思います。つまり,進化のためならば何をやってもいいのよと言いつつ,ただ最低限の質は保証しなければいけないんだよという,このバランスをどこかで枕言葉なりでしつこいようですが説明していったらいかがかなと思いました。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。まだ時間がありますので御発言いただければと思いますが,よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは本日の議論をまとめる形を取りながら,次の時に出せるかどうかと思いますが,先ほど言いましたように年度内に議論をまとめていきたいと考えておりますので,そのような形で進めていきたいと思います。本日欠席されている方もいらっしゃいますし,それから発言が,後で考えてみたら,あるいは読み直してみたらこういうことだということがありましたら,事務局にお伝えいただければと思っているところです。ありがとうございました。
 頂いた御意見を踏まえて,改めて作業チームで議論を行い,次回の部会では作業チームとしての見直し案をお示しして審議する形にしたいと思いますし,大学分科会にも審議経過の報告を行うことになっております。よろしくお願いいたします。
 本日の議題は以上でございます。それでは今後の日程等について事務局から説明をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 本日は活発な御議論を頂き,誠にありがとうございました。次回の質保証システム部会の日時,開催方法等につきましてはまた追って御連絡させていただきます。なお,本日の時間の都合上,御発言できなかった内容等につきましては事務局宛てに御連絡いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  それでは本日の議事は終了いたします。どうもありがとうございました。失礼いたします。
 
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