質保証システム部会(第11回) 議事録

1.日時

令和3年9月17日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

(1)質保証システムの見直しについて
(2)その他

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)永田恭介委員
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,大森昭生,川嶋太津夫,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,土屋恵一郎,曄道佳明,長谷川知子,濱中淳子,林 隆之,古沢由紀子,前田早苗,宮内孝久,吉見俊哉,米澤彰純の各委員

文部科学省

(事務局)森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),森高等教育局私学部長,絹笠文部科学戦略官,岸本主任視学官,西田高等教育企画課長,武藤高等教育政策室長,草野大学設置室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐,一色大学振興課課長補佐ほか

5.議事録

【吉岡部会長】  皆様,おはようございます。所定の時刻になりましたので,第11回質保証システム部会を開催いたします。皆様,ビデオ等をオンにしていただければと思います。よろしいでしょうか。御多忙の中,御出席いただき誠にありがとうございます。
 本日は,毎回そうなっておりますが,新型コロナウイルス感染症対策のため,WebexによるWEB会議として開催し,その様子をYouTubeライブ配信にて公開いたします。会議資料はお手元に届いていると思います。音声もよろしいでしょうか。聞こえておりますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 それでは,議事に入りたいと思いますが,まず事務局からの連絡事項をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  おはようございます。先生方,本日もよろしくお願いいたします。
 本日は,WEB会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のマークのボタンを押していただき,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきたいこと,また,御発言後は再度挙手のマークのボタンを押していただきまして,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますと有り難く存じます。不都合が生じることもあるかと存じますが,御協力のほどよろしくお願いいたします。
 また,会議資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,議事に入りたいと思います。本日は,資料をお配りしておりますが,前回の部会での審議を受けまして,まず1つは,質保証システムの見直しに関して,当部会のミッションの確認を行うとともに,質保証システムを構成する各制度を見直していくために,基本的にこういうことが共通の理解であるということのある種の確認をまず行いたいと思います。そして,それを受ける形になりますが,部会の下に専門的・技術的な事項について調査・審議をするための作業チームを設置することに関して審議を行いたいと考えております。よろしいでしょうか。
 まず,1つ目の質保証システムの見直しに係る考え方について,お手元に部会長としてのメモといいますか,資料をお配りしておりますので,御覧いただければと思います。資料1-1でございます。
 タイトルの最後に(案)というのがまだつけてあります。そういう意味では,たたき台というつもりもございますので,御覧いただければと思います。長いですけれども,説明させていただきます。
 前回の会議において,本部会で議論すべき事項をめぐって様々な意見が出されました。本部会のミッション,それから,議論の前提となる「保証すべき質」というものが何であるかという質の考え方,それから,質保証システムをめぐる現状と課題といったことがテーマになりました。それを事務局と相談の上,私なりに整理したものがお手元の資料でございます。
 3つの部分からなっております。1が,質保証システム部会のミッションということ,2が,質保証システムと保証すべき質について,それから,3のところで,現行の質保証システムの現状と課題というふうに3部に分けてございます。私からはまず1と2のことをここでお話しして,3のところは,これまでの経緯と意見の整理ということになっておりまして,資料1-2のところに資料がある程度まとめてありますので,この後の議論のときにそれを御覧いただければと思っております。
 
 では,私の資料の説明をさせていただきます。
 まず,質保証システムの設置目的でございます。立ち位置というふうに書いてありますけれども,これは2018年の「グランドデザイン答申」に基づいて,質保証システムについて,ここで専門的に審議を行うというために設置された部会であります。ここで考えられることは,「学修者本位の教育の実現」ということを中心にしたグランドデザイン答申の考え方を質保証システムという制度の側面へと反映させていくということがミッションであると考えております。具体的には,設置基準,設置認可の具体的な審査,それから,設置計画履行状況等の調査,いわゆるACですが,それから認証評価,そして様々な情報公表といったような,そういう全体で動いているシステムがあるわけですが,今申し上げた例えば設置基準であるとかという,そういう個々の制度の問題と,それから,それによって構成されている質保証全体の仕組みというものが,まずはグランドデザイン答申の方向性に沿っているのかということの検証と,それから,現状に合っているかということも含めて,それを見直していくというのが,ここでの具体的な作業であると思っております。
 本部会におけるこれまでの議論ですけれども,前期の10期のときは,「質保証システム全体を通じた考え方/質が保証されている大学」というものが何であるかということの基礎となるような議論が行われました。1つは,質保証システムというものが,大学の自主性・自律性に基づく自己改善を促進するためのものである。大学は,そうした一連の営みを通じて社会から理解と支持を得るべきである。社会との相互的な関係ですね。対話という言い方もされましたが,それを行っていくということ。それから,「社会に開かれた質保証」というものが必要であるということが議論されました。
 今期の議論は,第8回の6月15日の会議で,そこの四角で囲んである部分を御覧いただければと思いますけれども,質保証システム見直しの方向性ということで,以下のようなことが合意されたと考えております。
 2つの大方針,1つは,これはこれまでも繰り返し言われてきた,学修者本位の大学教育というものの基礎となるシステムを実現していくということ。そして,もう一つは,今申しました「社会に開かれた質保証」ということだろうと思います。つまり,大学が質保証を通じて,自己改善に努めていく。そして,社会に対して必要な説明責任を果たし,それによって社会からも必要な支援を受けるということで,大学の教育研究機能を充実していくという,一種の往復運動,往還運動を実現していく,そのようなものとしてシステムをつくっていくべきだろうというのが大きな方針であったと思います。
 そして,その下,4つの見直しの視座と書いてありますが,1つは,客観性の確保ということです。法制度であるということなので,客観性を確保していく必要がある。これは当然,ステークホルダーといいますか,関係者全てに分かりやすく,しかも,何かやるときの予見可能性が必要であるということ。そして,各大学の取組というものの実行可能性を担保していくようなもの,それを阻害しないということでもある。
 それから,2番目は,透明性の向上ということで,客観的な情報の適切な公開が必要であるということ。それから,誰でもこのシステムの仕組みというものにアクセスが可能であるということ。そして,それぞれの大学が取り組んでいる事柄というものが,実際にちゃんとやっているのかということも含めて,その公正性を担保している,そういう意味での透明性というものを向上していくべきだということです。
 3番目は,大学の持っている先導性・先進性というものを確保するために,ここで考えられている質保証システムというもの自体の柔軟性の向上ということが必要であろう。常に変化し続ける社会に対応するための柔軟性というものをいかに担保していくのかということが重要な視座であるということになります。
 4番目,これは今の3番目のことと一見矛盾する側面を持っているかもしれませんけれども,厳格性の担保ということであります。つまり,質保証システムというものが,きちんと実効性を持っているということ。つまり,ここで質保証のシステムが動いていることによって,具体的に大学がそれに対応していくべきであり,社会がそれに対する信頼性を持つための厳格性の担保ということが必要であろうということであります。
 以上が,これまでの今期の議論ということであります。

 それでは,2のところに入りますけれども,質保証システムで保証すべき質というものが何であるかということです。一番基本になるのは,学校教育法第83条第1項になるだろうと思いますけれども,大学というものの持つ教育と研究の質をちゃんと維持するということ,それから,いかに社会の発展に寄与するためにその成果を提供することができるかというのが,やはり質ということを考えるときの基本であろうと思います。
 それでは,「教育研究の質」とは何かということで,まずは教育と研究ということを一応分けて,「教育の質」ということを考えていった場合に,過去の中央教育審議会大学分科会の中では,「学生の学びの質と水準」という言い方がされていますけれども,「学生の学びの質と水準」というものをいかに確認するのかということが当然重要になっていくわけです。このときに,これは私なりの言い方になっていますけれども,学生が学びたいことを学ぶことができる状況・環境が整っているのかということが,やはり非常に重要だろうと思います。かつ,実際に学生が何を学び,いかに成長できたのか,あるいは,できているのかということを確認できるようにしていければいいと思います。これが成果ということの一番中心になることではないかと思います。この点は,まず何よりも各大学において確認される。それぞれの大学における質保証がまずなされるべきである。これは学修者本位ということの質保証を考える上での重要な前提ではないかと思います。
 一方,ここで考えていく質保証システムということを制度として考えていく場合には,これは設置基準等,つまり,国の制度という側面を持っているといいますか,国の制度であるわけですね。つまり,今申し上げたような大学の自律的な質保証,いわゆる内部質保証というものを担保し,しかも,これを確認・評価していくシステムであるということになります。このことは,要するに,大学の持っている自主性と場合によってはぶつかることがあるわけですから,どのような形で適切かつ現実的なものをつくっていくのかということが課題になるだろうと思います。その場合の基礎は,まずは大学が自らの教育理念・目標を踏まえて策定・公表する,いわゆる3つのポリシー,そして,そこで示されていく学修目標ということであるだろうと思います。したがって,こういう学修目標の達成に学生を導くために,大学が必要な教育環境・教育体制を整えているのかということが何よりも判断の基準になっている。同時に,そのシステムというものを,自分たちの3つのポリシーに基づく大学の在り方というものを担保する内部質保証を整えているかということ,そして,実際にその仕組みが機能しているのかということの判断ということがされていくということだろうと思います。実際,今申し上げたような,大学が必要な教育環境・教育体制を整えているのかということの1つが設置審査の作業であり,内部質保証を整えているのかというのも,まず設置の審査のところで考えていくわけで,それが実際にその仕組みが機能しているのかということをACや認証評価で判断していくという,そういう仕組みが動いているわけですし,実際に設置審査の際は,そういう観点から議論が行われていると思います。
 もう1点,これまでのここでの議論で出てきた点ですけれども,つまり,「教育研究の質」というときの「研究の質」の問題をどう考えるかということです。研究の質というものをどういうふうに組み込むのかということについては,実際あまり論じられてこなかったのではないかと思いますけれども,しかし,当然ながら,高度で専門的で,かつ実践的な学びというものを提供していくためには,大学は常に独自性と先進性に満ち,新たな知を生み出す活動である研究というものを展開し続ける必要があるわけですね。この観点というのは,中教審の大学分科会がこの間出した審議のまとめの中で,教育と研究を両輪とする大学という言葉で表されているものです。これを実現するという観点からは,持続的に優れた研究成果が創出されるように研究環境の整備等が行われているということ。つまり,大学の審査に当たっても,そういう研究のシステムといいますか,その環境が整えられているか,例えば,研究室があるかとか,ちゃんと研究設備が整っているか等々を含めてのところも,やはり判断の中にある程度入れていかなければならないのかということが,これまでの議論の中で指摘されてきたところです。
 「教育の質」という言い方を我々はしていますけれども,これを学修者の学びと成長というふうな視点から捉えると,これは正に「学修の質」に他ならないだろうと思います。それを保証するためには,何よりも学修目標の達成に至るプロセスの担保,その過程が重要であると思います。その出発点が設置基準等の法令への適合ということだろうと思うわけです。日本の質保証システムというものの特徴は,今申し上げてきたような事前規制,それから,事後チェックというのを両方組み合わせた形になっています。事前規制というのは,言うまでもなく設置基準を基にした,それ及び関係法令ですけれども,設置認可の審査がそこで行われるわけで,そこで,例えば十分な学生確保の見通しがあるか等についての審査を経て,最終的には文部科学大臣が認可するという仕組みを持っているわけです。その場合も,大学設置基準等の関係法令というのは,これは設置基準自体に書いてありますけれども,そもそも大学というものが実体として成立するかというためのミニマム・リクワイアメント,最低基準であるわけですね。これは,そういう意味では,質保証の最低の部分,前提条件であるだろうと思います。
 具体的には,設置認可審査では,「設置計画についての審査」と「教員審査」が行われます。そこに書きましたけれども,「設置計画についての審査」というのは,1つは,設置の趣旨・目的が学校教育法上の大学の目的に適合しているかということ。それから,必要な教育課程が体系的に編成されているかということ。それから,必要な教育研究組織並びに必要な教員が置かれているかということ。それから,名称等が大学として適当であるか,必要な施設設備等を有しているかといった,そういった点から設置の審査というのが行われているわけです。それと並行して「教員審査」が行われています。これもここでしばしば話題になっていることですけれども,これは基本的には研究等の業績を中心にして行われていますけれども,しかし,当然ながら,教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有する者であるか否かということも審査の対象になっています。
 これがやや形式的な設置審査の場面ですけれども,しかし,この事前規制の仕組みだけで教育の質が保たれているとは当然言えないわけで,そこに事後チェックを含む観点というものが入ってくるわけです。その中心になっているのが認証評価制度であるわけですが,この場合は,認証評価機関が定めている大学評価基準というのは,認証評価団体は幾つかあるわけですが,大学設置基準に基づいて評価が行われる。その場合の大学評価基準というのは,設置基準等が基礎になっていますけれども,それに対する法令適合性以外にも,大学の教育研究の実際の状況の評価というものが行われているわけです。例えば,内部質保証の仕組みが学内に設けられて,それが実際に機能しているかということであるとか,あるいは,公表すべき情報として,学校教育法施行規則に定められている事項では「学修の成果に係る評価及び卒業又は修了に当たっての基準」であるとか,「大学が行う学修,進路選択及び心身の健康等に関する支援」等の学生支援,そういうものについての評価も行われている。つまり,大学が実際に教育機関として機能しているかということの判断が行われる。つまり,設置認可の際の最低限遵守すべき事項に加えて,実際に大学が点検作業をしながら教育活動を行っていき,そして,自分たちが設定した使命や目的を達成しているのかということ。それから,学修者や社会が期待している学修成果が認められるかということが判断されるわけですが,同時に,これはそれぞれの大学が自らこれを示していくということができて,初めて教育の質が保証されるというふうに言えるだろうと思います。そういう意味では,外部の評価というのは,内部からのそういう自発的な活動とペアになって初めて機能する,あるいは,外部からの認証評価というのも,本来これはピアレビューが原則ですので,それぞれの大学の自発性というものを尊重し,かつ,それを促進していくというものが基本である,考え方の理念だろうと思います。こういうことがそれぞれの大学で行われ,できれば全ての大学が行うということで,我が国の高等教育全体の質が上がっていく,保証されていくという,そういうことが考えられるべきだろうと思います。
 やや繰り返しになりますけれども,その基礎になるのが3つのポリシーと,それから,大学内部の自主的な点検評価体制ということであるわけです。3つのポリシーについて,皆さん十分御理解されていると思いますけれども,これは要するに教育の質を保証していく上での核になるものであるわけです。この3つのポリシーが一貫性・整合性あるものとして定められているということがまず重要であって,かつ,大学としては,この三者の関係というのを分かりやすく示して,大学内外に積極的に発信していくことが当然必要です。これが,しかも理解可能な形で表現されているということ。とりわけ私が重要だと思うのは,これが大学の構成員,つまり内部に対して,内部で教員,職員,学生がきちんとこの大学はどういう大学であるかということを理解しているということが必要だろうと思います。現実に3つのポリシーというのが教員の中に理解されているかというと,これは結構難しい問題かもしれませんけれども,やはりこれは非常に重要なことではないかと思います。
 それと連動していますけれども,教学マネジメントが機能しているかということ。これは学生の側(がわ)からすれば,大学に入ったときから実際に自分の学びたいことが学べる道筋ができているということだろうと,そういうカリキュラムが組まれているということだろうと思います。そのことと連動しているわけですけれども,自己点検評価の仕組みが教育組織の単位で整備されている,それで,学生や社会の声が不断にそこに反映されて見直しがなされていくという,そういう動的な仕組みが動いているということだろうと思います。これを実質化していくためには,学修目標の達成に至るプロセスや環境が可視化され,そして,これもなかなか難しいかもしれませんけれども,教育課程に関して教員相互でピアレビューが実施されているということが望ましいだろうと思います。それから,外部からの評価を定期的に受けていて,そして,設置基準や大学評価基準に係る情報等が積極的に社会に公表されている,つまり,社会から見えるようにしている,そういうことが必要ではないかと思うわけです。
 今申し上げたようなことが,質保証のシステムというものを考えるときの大前提として,この部会の中で一応共有しておきたいなということでございます。
 質保証システムを構成する各制度について,四角に囲んでありました2つの方針と4つの観点から見た際の問題点や改善点を洗い出し,そして,質保証システムの見直しにつなげていくという,そういう議論の組立てをしていければと思っております。
もう1点付け加えますが,そのメモには書いていないんですが,この部会,中教審の部会なわけですので,ここでできれば,つまり,ある種の政策提言,少なくとも政策の基礎となる考え方を示していくということが必要だろうと思います。そのことは,実際の作業としては,問題点や改善点の指摘であるとか,それから,いろんな要望といいますか,必要性というものが出てくるわけですが,それを整理するというところにとどまらないで,どうすればその改善点や問題点を解決していくことができるか,あるいは,様々な要望であるとか,こういう問題が次のステップで必要だといった場合の,それをどうすれば実現できるかということを考えていくというのが,この部会の基本的なミッションだろうと思います。それを通じて,グランドデザインで示された方向性を現実化するための道筋というものを示していく。そのことを念頭に置いておく必要があるだろうと考えております。
 1と2を中心にお話しいたしましたけれども,まず申し上げたいことは以上でございます。

 これからの議論の進め方ですけれども,一応今のは私のプレゼンですけれども,1点目は,今申し上げたようなことで,ミッションと保証すべき質についてという議論をまず行うということで,今の中には私なりの考え方も含めておりますけれども,これをたたき台にして,皆様の意見を伺いながら,この部会の基礎的な考え方を固めておくということが必要ではないかと思いますので,そのための時間をまず取りたいと思います。
 もう1点は,私のメモの3のところに当たるものですけれども,現状と課題ということで,これは書き下してあるので見にくいかと思いますが,資料1-2のほうの方向性,それから,これまでの御意見がいろんな形で出ているのを事務局が整理してくださった,これ自体かなり長いものですけれども,お手元にございますので,これを参照しながら,質保証システムの現状と課題ということの議論を進めると。一応分けようかなと思います。
 まずは,今,私が説明申し上げた,この部会の基本的な考え方と方向性ということを,部会のやるべきことということで御議論いただければと思うわけです。その後,それを30分から40分ぐらいやって,それから,現状と課題ということで,これまでの御意見を基にして,もうちょっとフリーなディスカッションを行う,そういう手順にできればと思っております。以上でございます。
ということで,御質問や御意見があれば,それこそ御自由に御発言いただければと思います。ありがとうございました。
 それでは,前田委員,お願いします。それから,次,飯吉委員,浅田委員,吉見委員という順番にさせていただきたいと思います。その後,川嶋委員が挙手されています。そこで一旦切りますので。
 では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】  ありがとうございます。
 大変困難なところを広範におまとめいただきまして,自分でも頭の中をもう一回整理しようと思っているところです。
 1つ気になりました点は,4ページのところで,「研究の質」というお話をされたと思うのですが,大学が教育と研究を両輪とするものであるということは当然だと思いつつも,専門職大学,専門職大学院というところは,実務家を4割以上入れなければいけないとなっていて,今のところ,4割以上だったら,ほとんど全部実務家でもだめとは言えない状況になっています。このあたりを専門職の大学大学院を分けて考えるのか,大学という同じくくりで考えるのか,そのあたりが少し気になりました。
 それと,研究を視野に入れていくと,認証評価側としては,かなり大変な作業がもしかしたら加わるかもしれないと思いました。大事な点だとは思うのですけれども,気になることとして,このことを挙げさせていただきます。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 川嶋委員まで発言いただいて,事務局が私やほかの方の御意見も含めてというふうにさせていただきたいと思います。最初の5人の発言をお聞きしたいと思います。
 飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  ありがとうございます。
 先ほど部会長にお話しいただいた中の「4つの見直しの視座」のところで,③の「先導性・先進性の確保(柔軟性の向上)」と厳格性の確保が矛盾するようなこともあるのではないか,ということを言われましたが,それに関して提言させていただきたいことがあります。ご案内のように,最低限の質保証,基準やそれらを担保する仕組みについては,本部会でもずっと活発に議論されてきたと思いますが,特に気になるのが,質保証システムの中に,「大学の自主的な質向上の仕組み」をどうやって埋め込めるのかということです。
 例えば,大学・学部・研究科・教育プログラムによっては,「研究者としての専門性の育成」という教育的ミッションを持っており,そうでなくても,各大学・教育プログラムには固有の教育理念や目標などがあり,いい意味で大学間とか部局間で競争をしているわけです。これらを踏まえて,より高い質の教育をどうやって自主的に設定し,進めていくのか。「最低限の基準や枠組みがあるのだから,これらを満たしていればそれでいい」ということだと,教育の質の底上げはできるかもしれません。その一方で,よりやる気がある大学や研究者養成等のミッションを持っている大学が,自主的により高い基準な厳格な枠組みを設定するのかというと,「自分の首を絞める」というわけではないですが,自らを追い込んでいくようなところがあるのでなかなか難しい。
 つまり,より高い教育の提供を目指し実現してもらうために,どのような仕組み・仕掛け・工夫が必要かということも,ややオプショナルかもしれませんが,何か入れるべきで,例えば,各大学の自主点検評価において,「教育における先導性・先進性や改善・改革が進んでいるかをどのように扱うか,どのように入れられるか」というようなことかと思います。
 例えば,オンライン授業・ハイブリッド授業や,それらの活用も謳われていますが,例えば,対面と代替しても効果は同じであり「最低限の質保証・基準」という点では満たされている,ということだけであれば,活用は多分進まないと思います。他方で,代替しても効果は同じだが,ITを活用すれば,もっと色々な可能性が出てきて,それが教育的質向上に繋がるということであれば,ここに先導性や先進性が芽生える。
 ということで,このような取組を,「今は何とかなっているからそれでいい」という意味での質保証を超えて,どうやって各大学で進めてもらえるのかについても少し考えていただければと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 浅田委員,お願いします。

【浅田委員】  ありがとうございます。
 吉岡部会長には非常に分かりやすくまとめていただき,ありがとうございます。
 私からは2点ありまして,1点目は,重要なキーワードを拾ってまとめていただいて,分かりやすくなったのですけど,私が入れてほしかったのは,学位プログラムというキーワードです。内部質保証と学位プログラムという,重要な概念というか言葉が,実は今の大学設置基準とか,あるいは審査のところに明示的に出ていない。これは重要なものとして皆が共有すべきものだと思いますので,今回の質保証システムの見直しの中では,これを基軸として,全部に通す言葉として位置づけてほしいと思います。
 というのは,内部質保証の中には情報公表とか,そういうものが含まれていきますし,学位プログラムの中には3つのポリシーとかは全部含まれていきます。そういう意味では,非常に重要な根幹となる概念をきちんと一貫して通るような全体のシステム構成にしていただきたいというのが1点です。
 もう一つは,4ページに,「教育の質」は「学修の質」に他ならないという記述があるのですけど,この2つの言葉,教育と学修なのですが,私自身がまだ十分整理できていないのですけれど。例えば,博士課程になれば,教員と学生が1対1になって,教育と学修というのは正に向かい合った表裏一体だと思うのですけれど,学部教育を考えると,1つの学位プログラム,教育システムの中に数十人から数百人の学生がいる形になります。そうすると,教育という1つのシステムが動いている中で,学修は非常に多様なものが同時進行していることになるので,学修の質というものをどう捉えているのか,それと教育の質との関係性というのは,皆さんがどうお考えなのか分からないのですが,私自身は,少なくとも全てが表裏一体ではないと思っています。
 今までは教員視点だったものが学修者視点に移らなくてはいけない。これは大きな改革ですが,そのときに,学修成果の可視化というのがずっと言われていまして,何をもって学修成果とするのか,これもまた難しい課題が我々に投げかけられているのですけど。そのときに,我々がこの質保証システムの中でいろいろ決めて動かしていける,あるいは,いろんな方向性を出していけるものというのは,教育システムの方です。教育システムの中に学生という学修者が入ってきて,そこで育つ。もちろん個人も大事にして,学修の成果を丁寧に見ていかなくてはいけない。これはもちろんですが,学修者は多様です。例えば,簡単な例でいくと,スポーツで同じトレーニングをしても,すごく伸びて成果を出す人と伸びない人もいるわけですね。だから,学修者が伸びるように取り組んで,意欲とか能力も含めて丁寧に教育するというのはもちろん大事な話ですが,教育の質の話と学修の質の話は,やはり随分違う点もあるので,この辺のところも丁寧な議論をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,吉見委員,お願いします。

【吉見委員】  ありがとうございます。
 吉岡先生に大変包括的にまとめていただきまして,ありがとうございました。
 私のほうからは2点あるのですけれども,1点目は,保証すべき「質」とは何かという,学生の学びの質と水準に関わるところですけれども,このメモで言うと,3ページの真ん中あたりです。吉岡先生の言葉で言うと,学生が学びたいことを学ぶことができる条件・環境が整っているかとなっているのですけれども。私は,これ以上に重要なことは,学生が学びたいことを十分に深く学ぶことができる条件・環境が整っているかというふうに是非入れていただきたいと思います。
 その次のところにも,「そして実際に学生が何を学び……」となっているのですけれども,実際に学生が何をどのように,あるいは,どれだけ学びというところが重要だと思います。つまり,学びの深さについての質だと思います。
 これは私の持論になってしまうのですけれども,今の大学教育の仕組みの中で一番観点として欠けているのは,時間の問題だと思います。時間がちゃんと保証されていない。学びの時間がちゃんと保証されていないし,ちゃんと組織されていないということです。その観点を入れていかないと,過剰に知識を提供して,過剰に学生が学ぼうとして,元も子もないみたいなことが繰り返されていくということを心配しますので,そうではなくて,やっぱり学びを深くするための時間はどうなのか,それから,時間がちゃんと保証されているのか,そして,学びを十分に深くしていくための時間がきちんと組織されているのかということを是非観点に入れていただきたいと思います。これが第1点です。
 それから,第2点の,研究の話が出てきましたので,これも言うことにしたのですけれども。研究を入れるのか入れないのかというところは選択としてあると思うのですけれど,入れるという選択をされているので,ならばということで申し上げるのですけれども。私,21世紀の大学というのは,フンボルト原理型の研究と教育の一致ということだけでは不十分になっているということが非常に重要なポイントだと思います。むしろ研究と教育と社会実践というトライアドな構造に変わってきている。そうだとするならば,もうちょっと踏み込んで研究のことを書くのであれば,研究だけではなくて,研究と言っちゃうと,どうしてもオーソドックスな普通のピアレビューとか,業績審査とか,そういう話に必ずなる。そうすると,結構つまらない話に最終的になる。先が見えてしまう。
だけど,そうではなくて,研究が一方にあるときは,もう一方の大きな柱として,社会的実践という,社会実践が出てきている。だから,さっきのいろいろな御発言で,実務者協議とか,いろんな話が出てくるわけで。そうすると,研究を入れるのだったら,研究と社会実践と教育の関係がどうなるのかということに,もう一歩踏み込んで書いていく必要があるのではないか,考えていく必要があるのではないかということ,これが第2点でございます。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,川嶋委員,お願いします。

【川嶋委員】  ありがとうございます。川嶋です。
 まず部会長のこの御提案の内容については,基本的にはこれでよろしいというふうに賛成の意を示したいと思います。その上で,もう少し細かな点について,2点あるいは2.5点になるのかもしれませんけれども,意見を述べさせていただきます。
 まず1点目は,2ページの囲みの中の客観性の確保というところで,先ほど部会長も読み上げられた,分かりやすくかつ予見可能性があることが必要であるという,この「分かりやすく」というところで,社会からの理解を得るということで言えば,制度としてはシンプルというか,あまり複雑な制度設計はしないほうがいいのではないかということです。そのほうが,大学関係者のみならず,社会一般の方々からの質の保証の在り方がどうなっているのかということの理解が進むのではないかというのが,まず1点目です。
 2点目は,保証すべき質とは何かということで,基本的には,3ページにありますように,学生の学びの質と水準と,そのための前提の条件・環境という,この2つだろうと思います。あるいは,先ほど浅田委員も御指摘されていた,4ページの教育の質と学修の質という,この2つが大学教育として,あるいは,大学が保証すべき教育に関わる質の補償の対象になるかと思います。
 これはイギリスのQAAの考え方では,クオリティとスタンダードということで,クオリティというのは,要するに,大学が提供している教育の質あるいは水準を指し,スタンダードというのは,学生が学んだ学修の質と水準を指すということです。これは先ほど部会長もおっしゃいましたけれども,特に言えば,3ポリシーの中のCPとDPに関わることだろうと思います。各大学が掲げる達成水準としてのDP,これがいわゆる学修の質ということになろうかと思います。
 その前提として,各学生が大学が掲げる学修目標に到達するために,どういう教育を提供し,どういう学修機会を保証するのかということを定めるのが,カリキュラムポリシーということになろうかと思います。APもございますけれども,今のこの議論の焦点と言えば,DPとCPの関係がきちんと各大学のいわゆる内部質保証の取組の中で保証されているということが,質の保証にとっては重要だろうと思います。
 カリキュラムポリシーというのは,日本人的な和製英語だというので,なかなか分かりにくいのですけれども,大学改革支援・学位授与機構の用語集では,このカリキュラムポリシーの英訳を,たしかteaching and learning strategyというふうに英訳していたと思うんですけれども。要は,先ほど学修者一人一人の個性があるというお話でしたけれども,そういうものを踏まえた上で,できるだけ多くの学生がDPに掲げた目標を達成,その概念性を高めるために,どういう教育を提供し,どういう学修機会を提供しているのかというのはCPだと思いますので,基本はDP,COと,部会長がおっしゃったように,質保証システム,この3つの要素が非常に重要になるのではないかと思います。
 あと,先ほど研究ということが出ておりましたけれども,国立大学の法人評価でも,研究のところは現況分析ということで,2つの観点から評価を行っています。1つはいわゆる研究環境ということで,それから,もう一方は研究の水準ということで,アウトカムのほうの研究というのはなかなか評価しにくいので,もし研究というのを評価に入れるのであれば,少なくとも大学教員の研究のための条件がどの程度整っているかという観点が最低限必要なのかなと思います。
 その点に関しては,先ほど前田委員から,専門職大学院とか専門職大学のお話も出ましたけれども,たしか専門職大学については,実務的な能力だけではなくて,研究力も同時に求めるという,非常にハードルが高い要件になっていたと思う。ですから,少なくとも,研究の成果はともかく,大学教員が研究する条件がきちんと大学として整備されているかというところは,研究の質を評価する際には不可欠かなと思います。
 以上です。ありがとうございました。
 
【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 ほかの方の御意見の前に、まず,ここまでのところで私が答えられる範囲の言葉でお答えして,それで,次の発言を受けるというふうにしたいと思います。
 今の川嶋委員のお話にもありましたし,吉見委員の話にもありましたけれども,研究というのをどうするのかというのは,1つは,やはり教育と研究の両輪という考え方が,そもそも大学分科会で基本的な考え方としてあるわけで,それをどういう形で部会の中で生かしていくのかということが1つです。
 それと,もう一つは,もっと実際的な問題で,設置審査なんかをしていると,学部の教員の研究スペースというのがほとんど確保されていないというのが出てくることがあります。高校の職員室みたいなものが想定されている。そこにもちろん教員は研究の業績を踏まえて入ってくるわけですけれども,当然,その人たちは,その大学にいる間には自分の研究を進めることができないような,そういう設計になっている場合というのも,極端な場合には生じてくるわけですね。
 これは,そういう意味では,やや実際の問題として,そういうものをどう判断するのかということで,やはり研究者が教員として入ってくるわけですから,その研究の場というものをきちんと設定するということを何らかの形で保証しないと,まずそこで教員として入ってきた人はすぐやめていくでしょうし,それから,やはり研究がきちんとしていなくて大学の教育で水準が保てるとは考えられないので,そういう意味での,教育ということを一方の柱に置きながら,なお,やはり研究の条件というものを考えておく必要があるのではないかという,そういう点から入れてあります。
 これからの大学が研究と教育という形でのフンボルト型で済むというふうに私も思っておりませんし,それから,吉見先生の社会的実践の問題を組み込むというのは,それはあり得るといいますか,重要なことだと思いますので,今後の議論の中にもちろん組み込んでいくべき問題だろうと思います。
 そうすると,例えば大学における,これも基準に入れるかどうかは別にして,例えば,課外教育の形で行われているような様々な課外プログラムの持っている意味とか,あるいは,課外活動の持っている意味とかということをやはり我々は念頭に置いて,それを,例えば法令に入れるかどうかは別にして,考えていかないと,大学というものの在り方自体が非常に空疎なものになっていってしまうだろうと私も考えているところです。
 それから,大学の自主性を基準にしながら,それをどういうふうに付加していくのかということ,飯吉委員が言ったことは非常に重要なことです。ただ,実際に制度としてやれるということは,やはりまずはきちんと内部質保証がされている,システムが動いているかということの検証というところが最初だろうというふうには思います。その中で,先進的な試みがされていくということは,それはそれで評価していく。それを競争的と言えるかどうか分かりませんけれども,そういうグッドプラクティスに対して何らかの補助をしていくとか,それを伸ばしていくようなシステムというのを考えていく必要があると思いますが。
 ただ,例えば,これだけDXが進んでいくとしても,一方で,ある大学が,自分たちは寮を中心に,もう本当に昔のイギリスのカレッジのようなものをつくって,一人一人の教育をやるというものを出してきて,それを理念としてポリシーを立ててきた場合には,そこにDXが入っていなくても,それはやっぱり新しい――むしろ新しくなっちゃったわけですが,古い試みをもう一度やるような,そういう試みというのは,むしろ設置審においても認めていったほうがいいだろうと思う。そういう多様性をむしろ認めていくということが前提かなと思っております。
 それから,吉見委員がおっしゃっていた,深い学びが重要だというのは,そのとおりです。ここの文章ではそういう書き方はしていませんけれども,学生がこれを学びたいと思って,そこに足を踏み入れたら,その先がずっと深くなっていくという,学修者の意欲を駆り立てながら,更に先に進めるような形を取っていくというのは,やはり大学教育の基本だと思っています。学位プログラムはそうだと思う。学位プログラムというのは,何らかの形で組み込むべきだと思います。
 それから,教育の質とは学修者の質に他ならないというのは,やや筆を滑らせたのですけれども。教育の質というと,要するに,大学が何をするかという話ばっかりになってくるので,むしろやはり学生がどういうふうに大学の中で勉強を進めていくのか。今申し上げたように,例えば,ある分野に入っていったら,そこはすごく面白いことで,それを深めていくことができるような,そういうようなことが,やはり深さという意味で質の問題なので,あえて教育の質とは,学修者の点から考えるならば,学修の質であるという言い方をしました。
 実際に,それを大学で行う場合には,当然ずれがあるわけですけれども,例えば,大教室でやった場合であっても,その中でその授業に関心を持った学生が更に先に進んでいくようなシステムというものはやはり当然進めていくべきで,それは助教の役割や,それから,様々な大学院生が補助としてつくような,そういうようなシステムであるとか,サブゼミの組み方であるとか,そういうところにつながっていくことだろうと思って,あえてこういう言葉遣いをしてみました。そういうようなところでございます。
 落ちているところがあるかもしれませんが,これからの議論でまた進めていきたいと思います。
 それでは,今の議論を前提でもちろん構いませんので,御意見を伺いたいと思います。永田委員,米澤委員,林委員,大森委員が挙手されていますので,その順番で御発言いただきたいと思います。
 永田委員,お願いします。

【永田委員】  ありがとうございます。
 基本的に,最初に吉岡先生がおっしゃいましたが,質保証システムに何を含んでいるかということですが、設置のところから情報公開までというように定義をされていて,このシステム部会において話すのはその内容だと思います。
 今いろいろな御意見が出ていて,それらはもっともなことだと思います。少し違う観点から申し上げると,吉岡先生がおっしゃったように,最終的には法律に影響を与えるような大きな議論も入ってくる可能性があると思っています。
 今出てきた中で,大きく分けて言うと,設置基準はミニマムエッセンシャルであるというような言い方がありました。この捉え方として,その先に保証されなければならないのは,大学の個性です。教育も研究も,その観点において自分たちの目標があるはずです。論文の数が問題ではないと思いますし,その大学が目指す研究の成果の出し方というものを考えればいいことであり,教育についても同じことだと思います。
 そうすると,ミニマムエッセンシャルが定めるものは何かということを考えておかなければいけません。それから,大学の個性に鑑みて,その特性をよく発揮させるために,そのミニマムエッセンシャルではない部分,必要条件ではない十分条件の部分というのは,設置基準上,設定するのは極めて難しいだろうと思います。そうすると,もちろん大学を設置するときにいろいろな目的を述べられますから,それについて設置審議会は読むわけですが,それに合った先生や先生の数が配置されていなければなりません。またその先に,先ほど述べたシステムでいうと,何年か経った後に認証評価をやっていくというプロセスがあります。そうすると,認証評価というのは,ミニマムエッセンシャルについては、ちゃんと環境が整っているということがすぐに分かれば良いわけです。問題は,ここで認証評価がやることというのは,大学の個性が十分発揮されているかどうかということではないかと考えます。
 そのように見たときに,教育としてミニマムエッセンシャルは決まっていて,目標も立てていて、それについて個別の努力をされるとき、ある指標を目標にされる大学もあってもいいし,そうではない大学もあるでしょう。研究についても同じだと思います。こういうものを目標にしていて、その目標に向かって動いているかどうかを見るのはミニマムエッセンシャルではないので,それを今回の質保証システム部会で考えるのであれば,どこが何をどうチェックするかを明確にしなければなりません。個別の議論はたくさんあるとしても,先ほど資料1-1にありましたが,先生のおっしゃっているようにシステムとして全体を見るときは,そこを分けないといけないのではないか、つまり主にどの段階でどこを見るのかということだと思います。
 また,研究については,吉見先生が言われたとおりですが,ある大学は,研究の成果として論文を書くという大学もあるかもしれませんが,それを社会において、例えば少しでもバスの運行がよくなるように、一所懸命アンケートベースの何かをやられる場合もあって良いと思います。それは少なくとも研究と呼ばれるからには,そこの部分で,ほんの小さくても何かしらの新しい知恵を生んでいるのであって,それで良いのではないか、またそこで画一的な水準を求める必要はないだろうと考えます。
 今聞いていて,ちょうど川嶋先生が述べられていたので最後に一つだけ追加します。英語で見てみると結構分かりやすいのですが,ラーニングという概念でいったときに,ティーチャーが出てきます。しかし,大学はラーニングだけでは良くなくて,スタディがないといけないわけです。スタディといったときには,つまり,研究部分も含まれているわけですが,そこの部分というのは,ミニマムエッセンシャルでどう書くのかということと,大学の個性を活かすときにどう書くかという問題だと思います。
 ラーニングにおいても,個性を出すのが当然ですが,ミニマムエッセンシャルは示されているべきだと思います。どこの法律とどこのシステムが何を見るのか,幾らでも多様性を認めるところと,それからこの質は担保しなければいけないというところを分けないと,いつまで経っても交錯してしまい,法律のミニマムエッセンシャルという定義と,ダイバーシティを使っていろいろな活力を生み出すというのが,混在していくと思います。
 意見としましては,今言いましたように,設置基準と認証評価,あるいは,ミニマムエッセンシャルと大学の個性というようなものをどういうふうに設定していくのかということがあって,その中ではもっと多様な議論が起こっていいのではないかと思って聞いておりました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,米澤委員,お願いします。

【米澤委員】  ありがとうございます。
 途中から部会に入ったのですが,全体像が分かりました。大変ありがとうございました。その上で,2点申し上げたいと思います。
 1つは,川嶋委員が整理いただいた3ポリシーの話というのは,原則論として,要は,入り口とプロセスと出口をきちんと管理しようという話のことだと解釈していて,そのとおりだなと思って伺っておりました。その上で,今,永田委員がおっしゃったミニマムな部分と多様性の部分というものがあり,恐らくファンディングを通じて奨励するというところも含めて質保証が進められるわけですが,多分,この質保証システム部会としては,どちらかというと,多様性を認めつつ,ミニマムをきちんとするというところで,少し抑制的に議論してもいいのではないかなと思います。
 その上で,研究のところで少し別の形の先進性・多様性というか,あるいは,根本に戻る話かもしれませんが,恐らく研究を教員が活動としてどれだけすばらしいことをやっているか,あるいは,実務家教員がどこまで社会実践としてすばらしいことをやっているかというパフォーマンス自体はあまり本題ではないと思っています。学修者が学修の延長線上に,今スタディという言葉が出てきましたけれども,研究につながるような学修,あるいは,学修の先に見える研究,あるいは,社会実践みたいなところにつながっていくということが,多分意味があると思います。
 それを申し上げるのは,端的に言えば,パートタイム学生,あるいは社会人学生みたいな感じで,要するに,学修とその先にある知的な探究,あるいは仕事,あるいは生活というものが,より柔軟な形でまぜこぜになっていくというような社会が来るだろうということは,多分,グランドデザインを超えて,この2年間ぐらいで我々が理解し始めていることではないかと思うのです。それが多分,教育再生実行会議で話題になった個別最適化とかで出てきている議論だと思います。
 それで,もう一回立ち戻って考えると,そういう話はある程度ざっと盛り込んでいただきたいというのが1つと,それを立ち戻って考えると,最終的に3ポリシーにつながるような入り口,プロセス,出口の話はどういうふうに処理するかというと,究極的には,1つのクラスの中で入り口があって,出口があって,プロセスがある。つまり,一つ一つのクラスあるいは授業は,今まで以上に粒がそろっていないといけないというような話になってくると同時に,それを全部このシステムとしての質保証システムで担保しようとすると,ものすごいマイクロマネジメントになってしまうと思うのです。そういう文脈を理解しつつ,非常に抑制的に質保証システムをつくっていく必要があるかなと思ったということでございます。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 林委員,お願いします。

【林委員】  ありがとうございます。
 書かれていることについては,だいたい私,賛同するところでございますが,大きな点が1点と小さな点を1点申し上げたいと思います。
 大きな点のほうは,質保証システムといったときに,ここに今書かれていないのが,国のインフラ的な部分です。具体的に何をイメージしているかと言うと,例えば,クオリフィケーションフレームワーク,つまり,各学位のディスクリプターをどうするのかという話とか,あるいは,今文科省で動き出している国共通の学生アンケートみたいなものをどうやっていくのかという話であるとか,あるいは,情報公開の,今ポートレートはありますけれども,うまく動いているのかどうかの反省というか,そういうところもどうするのかという,国のインフラをどう使っていくのかという話がちょっと入っていないのではないかなと思っていまして。それは恐らく文脈としては,やっぱりここに書かれているように,学修成果をいかに客観的に示していくのか。あるいは,質と水準という言葉があって,さっきも川嶋先生の議論もありましたけれど,やはり水準ということを考えたときに,そういうインフラをうまく使っていくということはあると思いますし,それから,また先ほどからずっと議論のあるダイバーシティとミニマムの話ですね。
 前の教学マネジメントの委員会のときも,二極化という話を大分したと思いますけれども,要は,しっかりやっているところとしっかりできていない大学があって,しっかりできていない大学は,本当にそういう大学の3ポリシーに基づいて目標を達成していますという言葉をどこまで信じていいのかと,ちょっと表現が良くないかもしれませんけれども,そういう議論はやっぱりあるわけですね。そうなったときに,やっぱりナショナルなインフラというのはしっかりとあったほうがいいのではないかと思っています。
 クオリフィケーションフレームワークは,ずっと議論としてはあって,日本がつくっていない数少ない国の一つだという話で,それを今後どうするのか。つくらないならつくらないと決めてもいいのですけれども,ずっとどうするのかと言ったまま10年くらい経っている気がしていて,それをどうするのかという話は議論したほうがいいと思いますし,やはりさっきも言った学修成果のアンケートですね。それは在学生だけではなくて,卒業生も含めて,あるいは,以前にここの部会でも報告させていただいたと思いますけれども,年金データとか,そういうのから学修の効果みたいなもの出しているような,イギリスはそういう取組もしていますので,そういうような仕組みというのをどう考えていくのかとか,そういうことはちょっと考えてもいいのではないかなと思っています。これが1個大きな話です。
 それから,小さな話のほうは,やはり研究のほうでして,今まで皆さんが御議論いただいたことは,もうそのとおりなのでいいのですが,別の視点として,日本は,教育のほうが認証評価があって,研究のほうは,さっき川嶋先生が国立大学は法人評価があると言ったんですけれども,なかなか研究環境の質保証みたいな話というのは十分できていないんですね。具体的に何をイメージしているかというと,例えば,オランダの研究評価は,研究のプロダクティビティとか,そういうのも見るのですけれども,やっぱり環境を見ていて,例えば,今この現代だと,オープンサイエンスをちゃんと大学がしっかりやっているかとか,あるいは,博士課程の学生を研究室の中でどう訓練しているかとか,あるいは,ポスドクみたいなのもやっぱり研究室に入るので,ポスドクの研究環境とか,今後の育成をどうやって大学で考えるのかとか,そういう研究環境の質保証というのはやっぱり研究評価の中に入っているのですけれども,日本はその仕組みがないですね。
 ここで議論することではないかとは思うのですけれども,ここの議論,最初から大学院の質保証もあまり焦点ではないというふうに事務から聞いて,学部焦点だと聞いているのですけれども。今申し上げたのは,やっぱり大学院博士課程の質保証とはかなり密接に関わってくるところなので,ここで議論しないのであれば,例えば大学院部会であるとか,別の部会でしっかり議論してくれというふうに申し送るということは,ちょっと意識していただけるといいのかなと思っています。
 以上になります。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 大森委員,お願いします。

【大森委員】  ありがとうございます。大森です。
 本当におまとめいただいて,私も読ませていただいて,すごく勉強になったというか。恐らく今日御覧になっている皆さんとか,大学でそれぞれ見ていらっしゃる皆さんにとっても,すごく参考になるペーパーになったのではないかなと思っていて,本当に有り難いなと思っています。
 その中で,保証すべき質とは何かという一番大事かもしれないところで,ちょっと悩ましいというか,客観性との関係で,今林先生もおっしゃったことに関わるかもしれないのですけど,質を保証するのは,その成果で保証するのか,プロセスというか仕組みが保証するのか。恐らくその両輪でしょうけれども,今,どちらかというと,仕組みのほうに重きが置かれていてというふうに感じられるのかなと思って,私はそれに賛成です。
 賛成ですけれども,対社会の客観性みたいなことで言うと,学修成果がどうなっているのかとか,あるいは,ほかの様々なデータとかがどうなっているのかという,成果を求められることがある。だけれども,やっぱり我々が質保証を内部質保証としてやっていくときには,場合によっては成果が出なかったという結果に基づいて反省をして,それは出なかった学生さんには本当に申し訳ないことだけれども,それを成果が出るように取組を改善していくというプロセスが非常に重要なのであるということを考えると,そこを社会の皆さんにも分かっていただく。教学マネジメントのときにも,必ずしもその成果が十分でなくても,それを改善するという努力をしていくということのほうが必要で,そのことの理解ということが求められるというようなことも書いたと思うのですけれども。結果が整っているのかということで質が保証されるのか,その仕組みをしっかりとしているということで質が保証されているというのか,もちろんその両輪だけど,そのバランスみたいなことが少し分かりやすくなるといいのかなと感じたところです。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 瀧澤委員,お願いします。

【瀧澤委員】  どうもありがとうございます。瀧澤でございます。
 部会長にこのようにお示しいただいて,大きな考え方の流れがはっきりしましたので,大変感謝しております。
 それで,言葉の意味でちょっと分かりにくいなとどうしても思ってしまうところがありまして。4つの見直しの視座の四角の囲みの中のマル1の「客観性の確保」というところですが,この客観性が何を意味しているかというのですが。この質保証の仕組み自体が客観的なものであるという。主観的なものであっては困るなというのは当然に感じるところですけれども,その客観性というのが,例えば,今までお示しいただいている3つのポリシーのような,これまでの議論で積み上げてきている,どの大学も持つべき基準というようなことを示しておられるのか,それとも,計測可能ないろいろな指標というようなことを示しておられるのか,その辺,客観性という言葉が私のような初学者にとっては分かりにくいという気がしましたので,もし補足して説明していただければ助かります。
 それから,似たようなところですが,マル4の厳格性の担保というところの,「質保証のシステムの実効性を確保する観点から,厳格性が担保」というふうに書いてあるのですが,この厳格化というのも,どこまでができるのか。例えば,大学に対して,これが守られていないので,大学の方針を変えない限りは継続できないみたいなことが言えるのかどうか。その厳格化というのが具体的に何を示しているのかが,私のような者から見ると,不明確でちょっと分かりにくいなというのは正直なところです。意見ではなくて質問ですが,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 濱中委員,お願いします。

【濱中委員】  濱中でございます。よろしくお願いいたします。
 部会長,本当にありがとうございました。
 私からお伺いしたいのは,本日の部会の議題がこのような内容になっているその意図について,少し教えていただきたいということです.
 質保証を「システム」という視点から捉え,システムの中に含まれる「設置基準」,「設置認可審査」,「設置計画履行状況等調査」,「認証評価」,そして「情報公表」など,それぞれをどう動かしていくのかということを順に議論していくというのが,この部会の進め方だと理解しておりました。以前に配布された今後のスケジュールでもそのようになっていたかと思います。
 実際,これまでの進め方を見ていますと,例えば,オンライン教育について,設置認可,設置基準について,定員管理について議論するような会が設けられていて,表現に難があるかもしれませんが,いろんな質保証のための「部品」があり,部品それぞれについて議論をしましょうという進め方だったと思います。「部品」それぞれにも課題があり,委員の先生方から重要な点が指摘されてきました。
 そうした進め方を一回止め,本日,改めてこういう部会長のお考えをお示ししていただいたというのは,スケジュールで示された流れでの議論を一旦やめにして,これまでとは異なったアプローチで議論を展開していくという御趣旨だったのかどうなのかということを教えていただきたく,手を挙げました。
 よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それから,杉谷委員の意見を伺ってから,一旦そこで切りたいと思います。杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】  ありがとうございます。
 これは現状と課題のほうの議論に関わるかなと思っていたのですけれども,先ほどから学修成果の話も出てきましたので,少し述べさせていただきたいと思います。
 吉岡先生に,これまでの議論を踏まえて,重要なポイントを突かれた文章を取りまとめいただき,本当にありがとうございました。今後の指針というのが非常に明確に示されているかと思います。
資料1-2などを拝見しますと,学修成果の観点からの質保証を求める御意見が結構多く見られたりもするのですが,それに引換え,こちらの文章のほうは,かなりそういった言葉がトーンダウンされていて,非常に私としては望ましいことだなと思っております。
 再三申し上げてきたかと思いますけれども,やはり学修成果の測定自体がまだ非常に研究途上の段階です。それこそ先ほど御質問が上がりましたように,客観的なデータとして保証されるものは何なのかといったときに,まだ模索されているような状況かと思います。日本の国内の最新の研究動向でもそういうふうな状況ですので,それをあたかも学修成果が客観的に測定できるものだというような前提の下に質保証を行っていくのは少々危険と思われます。もちろん,個々の学生に対して,どの程度の水準にあるのかということについて納得感のある説明を大学側がしていくことは非常に有用なことだと思います。
 ただ,もう一つ,社会に開かれた質保証といったときに,社会に対してそれを情報として公表していくのをどこまでやっていくのかということには,非常に慎重であるべきではないかとかねてから申し上げていたかと思います。ここに関しても,吉岡先生の文章によると,「必要な情報を社会に公表し」となっておりますので,やはり学生に対して説明する部分と社会に対して説明する部分と,その提示の在り方というのは当然異なってくると思われます。そのあたりを,国としてのインフラを整備するにしても,どのような情報の活用の仕方をしていくのか,情報の提示をしていくのかというのをきちんと議論すべきではないかなと考えております。
 その意味では,学修成果というところも含めて,ちょっとトーンダウンしている慎重な姿勢のこの文章は,今後の議論の基盤として非常に重要なものではないかなと考えている次第です。
 以上でございます。
 
【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,答えられる範囲から。1つ,濱中委員がおっしゃっていた,これまでの議論と今日の議論との関係ですけれども。実はといいますか,私の心積もりでは,これまでの議論も,部品を部品として扱ってどうこうというつもりは必ずしもなかったのです。つまり,例えば,私ら設置審なんかに関わっている人はよく分かると思うのですが,個々の情報の問題のように扱われているものが,実は大学の在り方に関わってくるので,要するに,いろんな問題から,どういう形で質保証のシステムを考えていくかというふうな道筋を考えていたわけです。
 前回のときにもちょっと申し上げましたけれども,この質保証の考え方を考えていく手掛かりとして,現実に起こっている問題というものから入っていくというようなやり方をこれまでやってきたといいますか,それはまず必要だったと思っております。例えば,オンラインの問題。オンラインというのは,ここのところ急速に起こってきたわけで,そのオンラインの問題をどう考えるのかというのは,授業を考えるときには非常に重要なことだったので,やはり議論をしないわけにはいかないということであります。
 今回は一応そういうような議論をしてきたのですけれども,一方で,例えば,設置基準上の条項が具体的にどういう機能を果たしているのか,あるいは,設置審査するときに,この条項では,例えば審査がきちんとできないとか,スルーしてしまうというようなこともいろいろあるわけです。そういうようなところに踏み込む必要が出てきているので,この後,要するに,部会の下にそういうやや専門委員会のようなものをつくって,どこに問題があるのかとかという,そういう個々の問題のあぶり出しといいますか,そういうことをやって,それをまたこちらに戻すということをやったほうがいいかなと考えた次第です。
 そういう意味では,これまでとつながっていて,いろんな問題の背景にある問題みたいなものがある程度議論されてきたということなので,一応まとめてみて,これを部会の下の作業部会におろして細かいところをもう一度やっていってという,そういう往還運動をやったらどうかというのが,私と事務局の考え方でございます。
 それから,何人かの方がおっしゃってくださった成果の問題ですが,1つは,成果というものをどう測るかというのはやはり常に問題になるわけですが,成果をどう測るかという議論をしちゃうと,これは大変大問題になると思います。大学教育の成果というのは,やはり非常に指標を立てにくいもので,私がむしろ避けたいのは,例えば,うちの大学はこんなに一流企業に何人も入っていますというようなことをもって成果とするような風潮というのは,むしろやめていく,それはそうではないというふうに思うわけですね。
 学修者の視点というふうに言った場合には,やはり学修者がここの大学で学んだ一番貴重な4年間,青年期の4年間――もちろん会社員とか,そういういろんな人がいるにしても,中心の人たちがその後ちゃんと生きていけるだけのものを身につけていくことができたのかという点は除くわけにはいかない。やっぱりそこが一番中核だろうと思うわけです。
 これを指標として立てるのは非常に難しいのですが,ただ,先ほど林委員がおっしゃったように,それこそそういうことについては,卒業後のいろんな進路であるとか,調査であるとかということについてのナショナルなレベルでの調査とかが実際に行われていくことができれば,かなりの部分は研究が進むし,それがフィードバックできるだろうとは思います。
 ただ,現状では,それはできていなくて,一方で,大学間競争みたいな話になった場合に,それぞれの大学は,どの企業に何人入ったかとか,それの就職先の順位であるとかというような話に,どうしてもそういう広報になっていくということにならざるを得ない。
 そういう意味では,この文章の中では,あえて成果ということを,学修者の視点からということを入れたのは,そういう趣旨でございます。ただ,成果を測らなくていいと思っているわけではなくて,それはやはり議論の中で考えていくべきだろうと思いますが。その場合でも,やはり基本は,それぞれの大学がこういう人材を育てたい,あるいは,こういう人間を育てていきたい,それに対してこういうような授業を展開しているという,それがかなり具体的に機能しているのかということを見ていくということが大事だろうと思うのです。うまくいくかどうか分からないのですが,やはりそれは逃さないほうがいいかなと思うわけです。
 実際には,大学関係者の方はお分かりと思いますが,卒業生のアンケートって取りたいとみんな思いながら,なかなかこれが実際には難しいわけですね。卒業後,例えば,20年後の卒業生というものを統計的に捉えられれば,自分たちの教育に反映できるとみんな思うわけですけれども,これ,ほとんど不可能なので,それこそ,むしろナショナルなレベルでのそういうようなインフラといいますか,そういうデータというものをつくっていくということが考えられるだろうと思います。
 これはここでの直接の議論ではないのですけれども,ここの部会での審議のまとめみたいな形にした場合に,こういうことが考えられるとか,こういうことが重要であるとか,あるいは,こういう制度をつくっていくべきだという提言を入れていくということはできるでしょうし,大学分科会のほうでそれを更に上に上げていくということは考えてもいいのではないかと思う次第です。
 それから,大きな問題であるミニマムの問題,ミニマムエッセンシャルと多様性の問題ですね。これは中心的な議論,つまり,作業部会に落とさずに,部会でやっていくべき非常に大きな議論だろうと思います。
 私,これを書いた後にちょっと反省したのは,この文章の中に多様性という言葉があんまり入っていないのですね。やはりミニマムが重要だということは,逆に,それは多様性を阻害しないといいますか,多様性を認めていくためにミニマムをつくっていくわけで,その基準というのは多様性を排除するものであってはならないわけです。
 実際に,大学はこういう人材をつくるというふうに掲げたとしても,そこに来る学生たちがそこで学んで身につけていって,その先の将来に生かしていくものがそのとおりの人材像であるとは限らないですし,それはそれでも,私はそれでいいと思うわけです。つまり,大学で育って,そこできちんと何かを身につけて,それをその人で生かしていくことができればいいわけですので,そういう意味での内部の人間の多様性も含めて,学生能力の多様性も含めて,多様性ということを保証するための基準をつくっていくということが基本的な姿勢であろうと思っています。
 全てにお答えできるわけではないですけれども,やや考え方の基礎にあるところまで含めてお話ししました。またこの後,御発言があると思いますので,先に進めたいと思います。
 それと,時間のことを考えますと,これまでの議論,1-2に関わるような部分というのは,これまでの御発言の中にも入ってきていますけれども,これから先,1と2のところで質問等があれば,それも少し含めていただければと思います。御意見があればと思いますが,ほかの先生方,いかがでしょうか。
 長谷川委員,お願いします。

【長谷川委員】  ありがとうございます。
 質問というよりは,どちらかというと1-2に関わることと思ったので,発言を控えていました。今までの議論を聞いていて,今回お示しいただきました大方針と4つの視座ということについては,私もよく分かりましたし,基本的には賛成いたします。
 御説明の中にも,4つの視座には矛盾する面もあるという御指摘もございましたが,この4つの視座は全て重要だと思います。ただ,やはりこの4つの視座を今後、具体的にどう担保していくのかというところが多分一番難しいところだろうと思っております。企業でもよくあることですが,総論,原則はみな賛成するのですが,各論に入ると難しくなり,なかなか進まないということがよくございます。各論を具体的にどう担保して進めていくのかというところが,今後、一番重要ではないかと思っております。
 吉岡先生におまとめいただいたペーパーの7ページにも書いていただいたのですが,やはり,これだけ多様な大学があることと,時代の変化が非常に速いということを踏まえますと,ここに記載いただいている中でも,特に「先導性と柔軟性」ということが重要だと経済界としては思っております。最後のところにも書いていただきましたけれども,3つのポリシーと自己点検評価,自己改善の取組が確実になされている大学が先進的な取組を行おうとする場合について,そういった取組を阻害しない,そういうダイバーシティを認めていくという視点が,一番、経済界としてはお願いしたいところです。
 これについて御参考ですけれども,企業のコーポレート・ガバナンスコードも基本的には3年ごとに改定しているのですが,今回の最新の改定では,いわゆる企業の規模に応じてプライム市場向け、スタンダード市場向け、グロース市場向けで、同コードの適用の範囲を変えるとことを始めております。この背景には,全ての上場企業に同じ基準でコードを適用するのは,既に企業も非常に多様になっているので,無理だということが指摘されます。そういった観点からも,大学設置基準にリスクベースのアプローチを取るという議論は前にもございましたが,国際的な観点とか,この間まで議論していたハイブリッド型教育の観点ですとか,そういうところも,是非多様性を重視する観点から御検討いただければと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 古沢委員,お願いします。

【古沢委員】  ありがとうございます。
 これからの流れを示していただいてありがとうございました。大きく言うと,ミニマムの最低限の厳格性をキープした上で,多様性に基づいて柔軟化するというのが大きな流れなのかなと理解したのですけれど。
 私のように大学関係者ではない者から言うと,現状の評価をある程度分かりやすく示していくことが,やっぱりこれからの議論でも必要かなと思っておりまして,今,作業部会に落とされるということなので,非常に期待しているところですけれど,主に今のシステム,具体的に言うと,設置審査がどういう機能を果たしていて,例えば,どういう弊害があり事例があるとかということも含めて示して,示された上で,今後のあるべき姿を示していくことが一般の人にも分かりやすいのではないかと思いました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 谷本委員,お願いします。

【谷本委員】  ありがとうございます。
 御提案いただいた質保証システムの見直しの方向性,大変分かりやすくこれまでの議論をまとめていただきました。2つの大きな方針と4つの見直しの視座,私も,大変すばらしくまとめていただきまして,この形で議論を進めていくのが良いことだと思います。
 短期大学の教育に携わる者として,一言申しておきたいのですけれども,吉見委員がお話しされたこと,研究と教育と社会的実践という3つの観点を御提案いただきました。短期大学では,研究というのに割く時間と教育というものに割く時間を考えますと,教育のほうに力を入れております。また,教育から実習に向けて学生を指導していくというスケジュールというのでしょうか,そちらの時間をかなり取っておりまして,教育のシステムを考える場合,ミニマムの基準,そして,多様性を担保するという議論もここで行われておりますけれど,多様性を担保する中で,研究,教育,そして社会実践か実習,その実習によっての学生が獲得した成果を測定していく。それは学生自身が,やはり自分の成長であるとか,培った技術を実感して測定していけるような,何らかの指標を提示していけたらいいかなと思っております。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 土屋委員,お願いします。
 
 【土屋委員】  ありがとうございました。
 私も,吉岡部会長のおまとめを大変良かったなと思います。また,このおまとめをこれ以上更に拡大してやると,具体的な問題についての視点が欠けてしまうので,この枠の中でやはり議論をされていくべきだとも思います。
その意味で言うと,ここで4つの見直しの視座というものの中で,私がこれまでの議論との関わりで言えば,全てに共通するのは実はオンライン授業です。メディア授業です。このメディア授業は,正に見直しの視座4つの観点について,それを保証していく重要なアイテムであると私は思います。
 対面の授業の代替物としてのオンラインではなくて,むしろ教育の質保証の主要な柱としてのオンライン授業というものを考えていくのが,これから必要だろうと思います。そういう具体的な議論へと是非落としていただいて,設置基準上,それがどういうふうに保証されていくのかという議論へと進んでいただきたいなと思います。
 また,先ほど研究のことが触れられておりましたけれども,研究についても,やはり研究環境をいかに整備するのかということについての議論ならば分かるのですけど,研究成果ということに関して言うならば,この部会にも国立大学と私立大学,両方の教員がいます。しかし,研究成果に関しては,明らかに文科省が研究助成金の部分で国立大学と私立大学の間に格差を設けているという現実を考えるならば,私立大学と国立大学を同じ平面で研究成果を質保証システムの中に組み込むことが果たしてできるのだろうかと。そもそも文科省自身がやはり大学評価について,大学に対する助成金等について格差をなくすということが前提でなければ,質保証システムの中での研究成果というものをどう読み込んでいくのか,大変難しいのではないのかと思います。
 それから,もう一つ,先ほど林委員がおっしゃっていた,ナショナルレベルでの学生アンケートの集約等についての肯定的な御意見がありましたが,私ども,例えば,私も所属しておりました明治大学は,実は,この文科省の学生アンケートには参加しませんでした。その理由ははっきりしていまして,私立大学としては,学生情報を国に渡していいのかということが基本にあります。そのことは,先ほど杉谷委員からもお話のあったこととつながるのですけれども,やはり学生は個人情報ですので,それを国に渡して,あるいは,インフラレベルでそれを集約していいのかという疑問は,私立大学であるならば当然持つと思います。そういうことで言えば,ナショナルレベルで学生の情報を集めたいという意図は分からなくはないのですけれども,しかし,私立大学の立場からすれば,それはなかなか難しいのではないかなと思います。

う少し具体的なレベルに落として,これから議論していただきたいと思います。吉岡座長のこのまとめを更に拡大していくことではなくて,具体的にどういうレベルでそれを保証していくのかという議論に是非つなげていただきたいと,そう思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 先ほどの議論のときに瀧澤委員から客観性という言葉についての質問があったのにお答えしていないのですが。確かに,客観性というここの言葉遣いは若干不明確なところがありまして,1つは,制度の客観性,つまり,法的な客観性といいますか,制度として法的な文言につくっていくので,それが実は透明性ということや予見可能性と結びついているわけですが,その意味での客観性という,法の客観性という意味での客観性ということと,それから,実際に動いている大学というものをどういうふうに見ていくかというときの,視点の客観性みたいなのがちょっと混ざっている言葉遣いにはなっていると思います。
 私は,この中では,むしろ制度としての客観性ということを念頭には置いていたのですけれども,視点の客観性みたいな話がちょっと混ざっているかなとは思いました。この4つの点というのは,若干まだ練れていないようなところがあって,分かりやすく言葉にしているものですから,若干練れていないかもしれません。意図は,そういうところでございます。
 それから,谷本委員がおっしゃったこと,先ほどの話もありますが,学生の成長というのをどう考えていくかということは,繰り返しになりますが,非常に重要なことだと思います。やはり学生が大学,短大も含めてですけれども,高等教育機関でどういうふうに成長していったのかということが,どこかの段階で自覚されていくわけですので,それが多分学生にとっての成長ということだろうと思う。
注意すべきだと私が思っているのは,学生の成長というのは,学生の満足度にすり替えられるのはやはりちょっとまずいかなとは思っています。卒業時のアンケートって今どの大学もやっていて,これはこれでやらないよりよっぽど良くて,どういう点で学生が満足したのかということは,やはり大学の改革のときの非常に刺激的なものになるのですけれども。
 ただ,卒業時に学生がその大学に満足したかどうかという,その時点での問題というのは,学生の成長の問題と必ずしもイコールではないわけですね。成長というのは,必ず本人に自覚されているかどうか分からないところもあります。多分,40,50の人に大学時代で自分は何を学んで,大学生活,勉強したかというと,大体の人は大して勉強しなかったし,学んだことは社会で役に立ったかというと,あんまり役に立っていないですというふうに言うわけですが。でも,それはそんなことはないわけで,それはそういう形で言葉にされるかどうかという問題とは別に,成長の問題とか成果の問題というのはある。それは杉谷委員がおっしゃっていたことと関わってくると思いますが。したがって,それを客観的に判断するということはなかなか難しいのですけれども。しかし,非常に重要なことである。そのための何らかのツールを考えていくということは必要だろうと思います。
 先ほど,これは土屋委員の非常に重要な指摘ですけれども,ナショナルレベルでそういうことを考えていくときのアンケートみたいな話ですけれども,これは国が一律にやるということよりも,むしろこれは教育学であるとか,そういう学問的なレベルで行っていくこととリンクすることが必要だろうと思います。その場合,もちろん個人情報であるとかということは注意した上で,やはりそれは国の仕事というよりも,教育界全体の仕事,あるいは,社会全体の仕事というふうに考えて,それをどういう形でやっていくかということは,これもここでの直接のテーマではないわけですけれども,考えていくべき事柄であるということは指摘していっていいのではないかと思います。
 それから,これも土屋委員がおっしゃっていたオンラインの問題であるとか,定員管理であるとか,ここまで議論してきた事柄については,作業部会に具体的な問題として,何が問題かということをもう一度検討していくということが必要だろうと思います。それは,次の議論に入っていくことになりますけれども,作業チームをつくるという,そういうことである程度のところまでやって。ただ,作業チームだけで結論を出そうということではなくて,論点の整理ということが一番大きい,作業チームの最初の課題だと思います。随時部会のほうで,こういうことをどう考えるかということを議論していただくというふうにしてはどうかと考えております。
 いかがでしょうか。
 結局,吉岡プレゼンで、様々な議論が出て,私は大変面白いですし,勉強になりました。1-2のほうの様々な意見も含めて,今までの議論には入っておりますけれども,今日の大きな意味での1の議題について,質保証システム見直しについての議論の,これまでの議論の整理等々について,何か御意見等はございますか。
 前田委員,お願いします。それから,川嶋委員,お願いします。
 前田委員,お願いします。

【前田委員】  ありがとうございます。
 1,2との関連が強いかどうか分からないのですけれども,認証評価によって適合とされること,不適合とされることの意味はどういうことなのかという点があまり明確ではないと思います。一体不適合とはどういうことなのか。例えば,法科大学院ですと,不適合になっても,そこで学んだ学生は司法試験を受けられます。ですので,いわゆるアメリカのアクレディテーションのような厳格性はないです。
 一方で,大学基準協会には,留学してきた学生が,日本で所属していた大学が基準協会の会員校であるか,認定校であるかということは,いまだに問合せがあると伺いました。国際的な通用性としての意味は大きいと思います。日本において,設置認可というのは非常に重要な,これはもう外せないものですけれども,その上で,認証評価をやることの意味ですね。ここのところが少し不明確であると思っておりますので,お考えいただきたいと思いました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 川嶋委員,お願いします。

【川嶋委員】  この部会長ペーパーの3に関わることなので,ちょっと発言を控えていたのですけど,今,前田委員の御指摘の認証評価について,二,三コメントさせていただきたいと思います。
 前田委員ご指摘の最後の点ですけれども,日本では認証評価で,アメリカではアクレディテーションと言いますけれども,第三者評価である日本の認証評価というのは,国際的には非常に重要な取組で,今,前田委員がおっしゃったように,第三者評価できちんと評価されて認証されているかどうかというのが,留学生の交換とか,大学間の研究協定とかという大学の国際的活動にとっては,非常に重要な役割を果たしている。
 つまり,国際的には,設置基準とか設置審査というのは,かなり日本的な制度ですけれども,第三者評価というのは,国際的な標準的な質保証の仕組みです。それについては,前田委員がおっしゃったように,我が国の質保証の中での位置づけを明確にするということと,さらに,不適合への対応を含めて,より一層充実させていく必要がありますが,他方、今のところ日本国内でもなかなか社会一般の方々に認証評価の重要性,とくに国際的な観点から,大学教育の質保証の取組としての重要性というのは十分理解されているとは言えないのは非常に残念なことだと思います。
 そこで,1つは,各認証評価機関あるいは協議会で,それぞれが今以上に結果の公表とか重要性について社会に周知していくということが必要かと思います。
 さらに,前回までも,今後認証評価の在り方については,7年ごとに1回というのが,大学から見ると,負担感があるとか,国立大学から見ると,認証評価と法人評価があるので,これもまた二重の負担感があるという指摘もありました。そこで,リスクベースで認証評価の結果を活用してはどうかという議論が今後しっかりと検討すべきだとは思います。
 例えば,その際には,今のところここの議論には入ってきていませんが,先ほど林委員のほうからナショナルクオリフィケーションフレームワークというお話が出ましたが,もう一つ、もう10年以上前から日本学術会議で,分野別参照基準の作成が進んでいるわけです。これがどれくらい使われているか。つまり,認証評価のときに,単なる自己判断基準ではなくて,それこそ教育の設計について参照基準が活用されているかどうか,あるいは,ナショナルクオリフィケーションフレームワークができれば,そういうものを活用して教育プログラム,学位プログラムを設計しているかどうか,という観点から評価し、そういう大学は優れた取組として取り上げてはどうか。
 あるいは,内部質保証のシステムが十分機能しているということが判断できるような大学であれば,今の7年以内という一律の認証評価期間を猶予するというか,柔軟に考えるということも考えていいかと思いますし,また,これも以前議論されていたと思うのですが,その際には,段階別評価という評価方法もある。この段階別評価の可能性については以前分科会で議論されていたのですけど,今のところ十分各認証評価機関で議論されていないのですが,段階別評価の結果を、今後はリスクベースの判定に活用してはどうかというふうには思っております。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 日比谷委員と飯吉委員が挙手されていますが,残り時間13分ほどですので,手短にお願いいたします。
 では,日比谷委員,お願いします。

【日比谷委員】  本当に手短にいたします。今,川嶋委員から認証評価のお話が出たところで,続けて認証評価に関して1つ意見を申し述べたいと思います。
 これまで,この部会ではありませんが,中教審関係の様々な分科会・部会等でも何回か複数の方から御意見が上がっていますが,今,認証評価団体というのは複数ございます。この画面に映っている方々も,それぞれに関係していらっしゃると思うのですが。その中で,はっきり言ってしまうと,かなりばらつきがあるということは度々指摘されています。こちらの評価団体では不適合になったのだけど,Aというところでは不適合だったからBに行ったら適合になるというようなケースが実際にございます。
 ただし,先ほどお話があったように,海外の大学は認証評価を非常に重視しておりますし,これからやはり留学生が来る,逆に送り出すというような場合にも,きちんとしたアクレディテーションを受けているかということは必ず重要になると思いますので,どこまでできるかちょっと分かりませんけれども,認証評価団体の間での,全く統一する必要があるとは私は思いませんけど,ある種のレビュー感をそろえるといったことも是非検討していければと思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  本日,「教育の質」と「学修の質」は違うのではないかという指摘があり,また,「『プロセス・仕組み』と『学修成果』の両方が,『教育の質保証』においては大事なのではないか」という話もありました。その中で,学修成果に関しては,「成果をしっかり測定できるのか,そこが揺らいでいたら元も子もない」という話もありましたが,中心となる考えは「学修者本位の教育の実現」ということですので,やはり成果を重んじざるを得ないというか,これが非常に大事だと思います。
 部会長に出していただいたものに少し付け加えていただけるのか,ちょっと分からないのですが,教育のDX化で収集できるデータやエビデンスベースで「学びの質」を担保していくという考え方があります。DXは,MOOCやオンライン授業では教育の表面に出てきていますが,裏方というか,縁の下の力持ちとしてのDXもこれから非常に重要になってくると思います。エビデンスに裏打ちされた「学びの質の保証」があってこそ,多様性,柔軟性や先進性などに打って出られるわけで,そうしないと,「ただ面白そうだからやってみよう」とか「新しいからやってみよう」ということで,大した結果が出ないうちに,皆どんどん次に行ってしまうということになります。何かこのようなループをうまく閉じて回すことの重要性について,吉岡先生のほうでどこかに一,二行入れていただけると大変有り難いというお願いです。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。飯吉委員のほうが専門家なので,いろいろと,この会議で考えていければと思います。
 おっしゃるとおりだと思います。やはり成果抜きには議論できないわけですが,何を指標に立て,かつ,それをちゃんとデータとしてきちんとエビデンスにできるかというのが非常に重要なことですので,それはやはり考えていかなければならないと思っております。
今,非常に重要な御指摘があった認証評価の問題ですね。これはこれまでの議論にありましたけれども,実際にそれが重要なわけですけれども,教育の質ということを考えていく場合には,設置のレベルの問題よりも,むしろその後の大学がちゃんとやっているかとか,認証評価の問題のほうに,つまり,実際に動いているものをどういうふうに評価していくかということに重点が置かれていくというのは当然のことだというのがまず1つです。
 それから,これは永田委員が前からおっしゃっているように,国際的に問題になるのは実は認証評価であって,設置基準とか何とかというのは,これは国内的な問題だと。日比谷委員がおっしゃったとおりでございます。
 一方で,設置は文科大臣の認可という形を取って,国の事業として組まれている。それに対して,認証評価というのは,理念的には大学のピアレビューなわけですね。だから,団体が自主的につくられているということが基本になっているわけです。したがって,少なくとも事務局にとっては言いにくいということがあるのだろうと思いますけれども,認証評価が重要だというのは当然なことだと思います。
 ただ,やはり認証評価の持っている自主性,大学間のピアレビューという視点ですが,あるいは,研究者のピアレビューという視点というのは崩れないようにしつつ,かつ,その質を上げていくというために何ができるかということは,やはり質保証のシステムとして考えていく必要があると思っています。
 自主性というのは,日比谷委員がおっしゃったこととつながりますけれども,結局,仲間内の評価にすり替わるということが幾らでもあり得るわけですので,その仲間内の評価ということで閉じてしまったら,認証評価制度自体の信用性が落ちていくわけですので,認証評価団体間,それから,それを更に客観的に認証評価を研究されている研究者の方々もいらっしゃるわけですので,そういう知恵を拝借しながら,ここの質保証システム部会としてどこまで言えるか,何ができるかということを考えていく必要があるだろうと思っております。それは多分,大学分科会のテーマにもなっていくだろうと考えております。
 ということでございますが,よろしいでしょうか。
 今までのところでよろしければ,今日のもう一つのほうの議題である作業チームの設置の資料2がございますけれども,そちらに議論を移して,これ,ここで決めないとつくれませんので。今までの議論の中で,これを巡る論点というのはある程度出てきているかと思いますので,そちらのほうに移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 
 それでは,資料2,御覧ください。中教審の審議会令第6条第4項及び中教審運営規則の第4条第5項の規定に基づき,制度面に関して専門的・技術的な事項について調査審議を行う作業チームを以下のとおり設置する。
 作業チームは,調査審議が終了したときには廃止するものとする。
 作業チームの審議状況は,適宜,質保証システム部会に報告するものとする。
 ということで,所掌事務は,設置基準,設置認可審査,認証評価制度及び情報公表の在り方等を一体とした質保証システムの見直しについて専門的な調査審議を行う。
 という枠組みで,ここではかなり具体的に,設置審の例えばこの条項は時代遅れであるとか,あるいは,そこをこういうふうに変えるべきだけれども,変えた場合にどういうメリットあるいはデメリットが生じるかというところまでできれば考えて,やや技術的なところも含めて考えるということをする。基本的には論点整理ということが中心になると思いますけれども,それを作業部会でやって,ここの部会に随時上げて議論していただくというふうにしたいと考えておりますが,御意見等あればと思いますが,いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。先ほどお話ししましたように,これまでの議論を踏まえて,いろんな御意見が出ていますので,それを整理しつつ,この部分をまとめるとかということをしていくということになると思いますが,やはり具体的に何が起こっているのかということも含めて議論する必要があると思いますので,これはやはり作業チームをつくったほうがいいと思いますので,このように提案させていただく次第です。
 よろしいでしょうか。これで部会を開かなくなるということはもちろんございませんので,部会のほうは,むしろそういう大きな問題といいますか,そこで生じてくる論点を含めて,質保証システム全体をどういうふうに動かしていくか,あるいは,つくっていくかということを議論することができればと思っております。よろしいでしょうか。
 それでは,特に御異議がなければ,作業チーム,このような形でつくらせていただきたいと思います。作業チームの構成員は御一任いただければと思いますし,随時,チームメンバーではなくても御意見を伺うという形で御協力いただくということがあると思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 ありがとうございます。それでは,そのような形で作業チームをつくって,問題点の洗い出しと論点の整理を行って,部会のほうに戻すというふうにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 やや急停車になっていますが,本日の議題は以上でございます。大変活発な議論ができて,私も勉強になりました。御発言いただいた内容等については,調整しつつ,また,このメモの修正なりしながら,提示するようにしていきたいと思います。ありがとうございます。
 今後の開催日程等について,事務局から説明させていただきます。事務局,お願いします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  事務局でございます。活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
 次回の質保証システム部会の日時,開催方法等につきましては,また追って御連絡させていただければと存じます。
 なお,本日,時間の都合上,御発言できなかった内容等につきましては,事務局宛てに御連絡いただければと思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 ちょうど時間ぴったりという感じになりました。以上で本日の議事を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


 

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)