質保証システム部会(第9回) 議事録

1.日時

令和3年7月7日(水曜日)16時00分~18時30分

2.場所

WEB会議

3.議題

(1)質保証システムの見直しについて
(2)その他

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,大森昭生,川嶋太津夫,小林浩,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,曄道佳明,長谷川知子,濱中淳子,林 隆之,前田早苗,宮内孝久,吉見俊哉,米澤彰純の各委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),絹笠文部科学戦略官,岸本主任視学官,西田高等教育企画課長,新田大学振興課長,武藤高等教育政策室長,草野大学設置室長,西大学改革推進室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐,一色大学振興課課長補佐,大塚専門教育課課長補佐ほか

オブザーバー(外部有識者)

島田 敬士 九州大学大学院システム情報科学研究院教授
山田 剛史 関西大学教育推進部教授
 

5.議事録

【吉岡部会長】  所定の時刻になりましたので,第9回質保証システム部会を開催いたします。御多忙の中,御出席くださいまして誠にありがとうございます。
 本日も新型コロナウイルス感染症対策のため,Webexによるウェブ会議として開催し,その様子をユーチューブにてライブ配信しております。会議資料それから音声,画像は大丈夫でしょうか。何かありましたら御連絡ください。
 本日はオンライン授業に関するヒアリングのために,島田敬士・九州大学大学院システム情報科学研究院教授と,山田剛史・関西大学教育推進部教授に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に入る前に,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  事務局でございます。先生方,本日もよろしくお願いいたします。
 本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のマークのボタンを押していただき,部会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言を頂きたいこと,また,御発言後は再度挙手のマークのボタンを押していただきまして,表示を消していただきますようにお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと有り難く存じます。不都合が生じることなどございますかと思いますけれども,御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 また,会議資料につきましては次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしております。
 最後に,事務局に人事異動がございましたので御紹介させていただきます。
 7月1日付で文部科学戦略官として絹笠誠,また高等教育企画課長に西田憲史,大学振興課長に新田正樹,設置認可を担当する主任視学官として岸本織江が着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは議事に入ります。本日はオンライン授業に関してヒアリング等を行った後,前回に引き続きまして定員管理に関する審議を行い,その後,大学設置基準等に関して審議を行いたいと思います。まず,事務局よりオンライン授業に係る制度等に関して御説明をお願いいたします。

【大塚専門教育課課長補佐】  失礼いたします。専門教育課の大塚と申します。
 それでは資料1-1に基づいて御説明をさせていただきます。こちらの資料は,オンライン授業に係る制度と文部科学省で今般実施いたしました新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査の結果をまとめたものとなっております。
 3ページ目をお開きいただけますでしょうか。こちらは大学における授業の方法と教育課程について,通学制,通信制それぞれの仕組みをお示しした資料でございます。授業の方法といたしましては,通学制の場合には面接授業とメディアを利用して行う授業の2つの方法がございます。通信制の場合には,これらに加えて印刷教材等による授業,放送授業も方法として可能となっております。
 今般のコロナ禍におきましては,面接授業につきまして特例的な措置といたしまして,水色の点線囲みの部分でございますけれども,新型コロナウイルス感染症の拡大により,面接授業の実施を予定していた授業科目に係る授業を,十分な感染対策を講じたとしても面接授業により実施することが困難な場合,遠隔授業等を行う弾力的な運用を認めるとしておりまして,これにつきましてはほかの災害時にも特例措置が適用されることを,通知により明確化しているところでございます。
 また,メディアを利用して行う授業につきましては,同時性又は即応性を持つ双方向性を有し,面接授業に相当する教育効果を有すると認められるものであることを求めておりまして,活用促進に向けて,通知によりこの趣旨の明確化を図っているところでございます。
 このページの中ほどの注釈にありますとおり,「メディアを利用して行う授業」につきましては,オンライン授業・オンライン教育,遠隔授業など様々な用語が用いられてございますけれども,この質保証システム部会や教育再生実行会議の資料におきましては,いずれも法令上は「メディアを利用して行う授業」を指すものとして御理解いただければと思います。
 教育課程の部分でございますけれども,通学制におきましては,卒業に必要な124単位のうち,メディアを利用して行う授業は60単位までとなっておりますけれども,残り64単位分も授業のうちで主として面接授業を行えば,半分未満は遠隔授業を実施可能となっております。すなわち,学生に半分以上の授業時数を対面で受けることを求めている場合,その授業は面接授業として取り扱うことができ,60単位の上限のカウントに含める必要がないことになっております。このことについても,この趣旨を通知やQ&Aで明確化を図っているところでございます。
 通信制につきましては,4種類の授業方法を組み合わせて実施することが可能でございますけれども,面接授業又はメディアを利用して行う授業を30単位以上実施する必要があり,この30単位のうち10単位までは放送授業で代替することも可能となっております。通信制の大学の場合にはいわゆるフルオンライン,124単位について全てメディアを利用して行う授業で実施することも可能となっておりまして,実際にそのような大学もあるところでございます。
 4ページ目につきましては,今ほど御説明いたしました内容に対応する法令上の規定を引用してございます。
 続いて,文部科学省で実施し,今年5月に結果を公表しました,「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査」の結果についても御紹介させていただきます。
 こちらの調査につきましては,新型コロナウイルス感染症による学生生活への影響について実態を把握することにより,今後の国,大学等における学生への支援策の検討に役立てる趣旨で実施したものでございまして,無作為に抽出した学生約3,000名のうち,1,744名から有効回答を得ております。専用のウェブサイトから学生に直接回答いただく形で調査を行いまして,今年3月5日~27日の期間で実施しております。サンプルとしては,国・公・私・高専や学年など,大体実際の学生数の比率に応じた割合で抽出しております。
 この調査項目の中でオンライン授業に係る内容をまとめたものが次のページとなっております。
 令和2年度後期に履修した授業のうち,オンライン授業がほとんど又は全てだったと回答した学生は全体の6割となっておりまして,全体的な満足度といたしましては,不満に感じる割合よりも満足に感じる割合の方が多い結果になっております。オンライン授業についてよかった点として,自分の選んだ場所で授業を受けられること,自分のペースで学修できることが多く回答された一方で,悪かった点としては,友人と授業を受けられない,レポートなどの課題が多い,質問など双方向のやり取りの機会が少ない,対面授業より理解しにくいなどが多く回答されております。
 全体的にはオンライン授業に満足している学生が多かったという結果になっておりますが,理解のしにくさや人との関わりが少ないことなど,教育の質に関する課題によって不満を持つ学生も一定数おりまして,オンライン授業の実施に当たっては,学生の声を丁寧に聞き,教育の質の向上に努めることが必要であることが言えるかと思います。
 全体的にはオンライン授業に満足している学生が多かったという結果になっておりますが,理解のしにくさや人との関わりがないことなど,教育の質に関する課題によって不満を持つ学生も一定数おりまして,オンライン授業の実施に当たっては,学生の声を丁寧に聞き,質の向上に努めることが必要であることが言えるかと思います。
 続く8ページ目から11ページ目につきましてはオンライン授業と直接には関係いたしませんので,説明については割愛させていただきまして,12ページ目に飛んでいただけますでしょうか。こちらについては,6ポツ,国や学校などへの意見・要望ということで,自由記述で書いていただいたものをまとめたものとなっております。
 オンライン授業につきましては,肯定的な意見といたしまして,オンラインでも質が保たれる授業はあったためコロナ後も適宜導入すべき。コロナ禍以前に戻すことなく新しい大学の在り方を考えてほしいといった御意見があった一方で,否定的な意見といたしまして,孤独や学修への意欲の低下を感じる。レポート等の課題が増えることへの合理的な説明をしてほしいといった意見もありました。
 また,授業形態に関する今後課題等といたしまして,学部や学年ごとにオンライン授業を選択できてもよいのではないか。授業はオンラインでもよいがゼミや就職のための講座は対面がよい。オンラインでもグループワークや教授からのフィードバックなど,一方通行ではない双方のやり取りに関する工夫をしてほしいといった意見が寄せられております。
 また,受講環境に関する課題等といたしまして,オンライン授業に必要な技術やトラブルを解決してくれる窓口が充実するとよい。教職員の負担が大きいと感じる。また,教員ごとにオンラインのツールに関する理解が異なっているので,ガイドラインの配付や講習会などの実施を進めて授業の質向上に取り組んでほしいという意見。また,通信環境の整備や空き教室等の受講場所の提供ができるとよいといった意見も寄せられております。
 次ページ以降は参考資料といたしまして,通学制・通信制の大学の違いをまとめた資料,また遠隔授業に関する文部科学省の通知やQ&Aの抜粋をまとめておりますので,こちらについても適宜御参照いただければと思います。
 駆け足での説明になりましたけれども,説明は以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 ざっと聞いただけでは分かりにくいかもしれませんが,時間の関係もありますので,今この点についての質疑は行わないことにしたいと思います。
 続きまして,それでは本題に入りたいと思います。まず九州大学大学院システム情報科学研究院の島田敬士教授より,説明を頂きたいと思います。島田先生,よろしくお願いいたします。

【島田教授】  九州大学の島田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料1-2を御覧ください。こちらの資料に沿って,九州大学におけるオンライン授業の状況とデータ分析から見える課題について,少しお話しさせていただきます。
 1枚おめくりください。ページ番号2番です。まず,こちらのページには本学で利用しているオンライン授業のツールを紹介しております。
 一番上がTeams会議室になりまして,これはマイクロソフトの会議システムを利用して,授業開始時に接続して,音声配信等を中心に行っているものです。
 2つ目がMoodleと呼ばれるLMSでして,これも授業開始時に学生さんはコースに接続しまして,出席の確認や,その日の授業で使う資料あるいはほかの各種システムへのリンク,そういう意味のポータルという観点での利用方法が主流ではないかなと思います。
 3つ目がデジタル教材の配信システムでして,こちらは独自開発のツールではありますけれども,電子教材を学生さんに配付して,そのシステムにアクセスしてもらい,場合によってはページをめくるだけではなくて,大事なところにマーカーを残してもらうとか,ブックマークあるいはメモを残してもらうとか,そういう使い方をしているのがこのデジタル教材のシステムです。
 一番下のダッシュボードシステムですけれども,これはまだ一部の科目での展開にとどまってはいるのですけれども,例えば先生にとってみればオンラインで受講している学生さんの進行状況,学習状況が一目で把握できたり,あるいは学生さん同士でもほかの学生さんがどういうことを今やっているかが,ざっくりですけれども把握することができたりとか,そういうことができるシステムになっております。
 それでは1枚おめくりください。そういうツールを使いながら昨年度からオンライン授業を行ってきたわけですけれども,一つ分かりのいい事例の科目として,その前の年までであればオンラインではなくて対面で一斉授業をやっていた科目がございます。昨年度はそれがオンラインになったのですけれども,利用している資料は全く同じです。しかも学生さんは2019年度までも本学ではBYODを開始しておりましたので,1人1台PCを現場に持ってきて,そこでデジタル教材にアクセスして授業を聴いているという状況でございました。そのため,大きく違うのは教室で受講したか,各自の自宅からオンラインに接続して受講したか,その違いになります。実施方法もそんなに大きく変わっていないのですけれども,オンライン授業の際には少し事前学習をお願いしたところが例年と異なるところです。
 その結果を,先ほど御紹介したいろいろなシステムへのアクセス状況を分析してみますと,真ん中のところに書いてある予習時間,これは授業の前にどれぐらい勉強してきたかという時間ですけれども,オンライン授業のときの方が少し予習にかけている時間が増えているなということはデータとして見えてきております。
 一方で,その下に書いております小テストの平均点。こちらについては例年とさほど大きくは平均点も変わりないですし,得点の分布を見ていただいてもさほど大きく分布が変わっているようには見受けられないかなと思います。特に有意差もあるわけではないので,オンラインであれ対面であれ,一定の学習効果は出ているのではないかというのが,こちらの科目の特徴になります。
 もう1枚おめくりください。4ページ目です。今度は成績の評価の方法ですけれども,こちらはOpenBook形式と呼ばれる方法で実施した,また別の科目の結果です。このOpenBookというのは,その名のとおり試験中に教材を開いてもいいですよという状況で実施している科目になります。といいますのが,オンラインでの試験になりましたので,どうしてもその時間の中で調べ物をしてはいけないという歯止めをかけるのは非常に難しい状況ですので,基本的には調べ物もいいですよと。そういう状況の中でどうやって能力を測ろうかということで行ったのがこのOpenBook形式の試験になります。
 こちらもその前の年まではOpenBookではなくて,完全にクローズドな状況で試験に臨んでもらっていたものです。上の分布がオンラインのOpenBookでやったときの得点分布になります。右下が参考でその前の年の,対面で完全にクローズドでやったときの試験の結果です。
 平均点はそんなに大きく変わらないのですけれども,分布が今度は全然違う形をしていることが見てとれるかと思います。つまりOpenBookになると調べ物が可能ということで,得点分布は真ん中にピークが立つような形で,できなさ過ぎるような状況にもならないですし,その分難しい試験問題を課しているので,パーフェクトな結果を取れるような学生さんも少し減っているかなという状況がOpenBook形式では見えてきました。一方で,対面でやると難しくて全く解けない学生さんと,全部解けるような学生さんの両端に結構人数分布が偏るみたいなことが出てきております。
 1枚おめくりください。そういういろいろな実施を通してオンライン授業で見えてきた課題について,4点,今日は申し上げたいと思っております。
 まず1点目が学習時間の変化です。特に対面授業時と比べると,授業時間外の学習量が増えてきている科目も多いなと思っています。ただし,その下に書いていますように,科目にも依存しています。試験を実施しない代わりにレポート等で評価する科目も出てきていますので,そういうことで課題の量が増えて,授業時間外の学習量も増えてきているのかなというところが見受けられます。また,オンデマンド型で授業を行っている形式もありますので,そういう授業であると,正規の授業時間外で学習の時間が増えている傾向もあるのかなと推察されます。
 2つ目が先ほどの試験の実施方法です。OpenBook形式ということで,今後もしそういうオンラインでの試験が広がっていくのであれば,どういうふうに能力評価をやっていくべきかというところは,まだまだ検討の余地があるなと思っています。成績分布が対面のときと変わらなければ本当にそれでいいのかと。OpenBookを取り入れたが故に,もうちょっと違う方法で測るべきではないかというところは,まだまだ検討しないといけないかなと思います。
 3つ目が,今度はオンライン授業に対するネガティブな印象です。先ほどの御紹介にもありましたけれども,孤立感とか孤独を少なからず感じている学生さんとか,あとは課題が増えたと感じられている学生さんもいるようです。
 最後の4つ目が,こちらも先ほどありましたけれども,授業で利用するツールが多様化,増えてきています。先生方にとってみれば準備のやり方,そのときにどう使えばいいか,学生にとってみてもツールの新しいものの使い方がよく分からないということで,そういう問合せ件数が飛躍的に増えたのもこの1年の大きな特徴かなと思います。
 次のページ以降がこれらの課題に関して検討状況を少しずつ御紹介する資料になっております。まず6ページ目。これは課題1に関するもので,授業時間外の学習量が増えたと先ほど申し上げましたけれども,やはりこれは科目にも結構依存しているなということをこちらのグラフで示しております。演習系の科目,文系の科目,理系の科目の代表的なものを幾つか取ってきているのですけれども,赤い横棒がオンラインのとき,青が対面時の学習時間ですけれども,増えている科目もあればやはり減っているところもあって,こういうところの背景にどういう実際の実施方法だったかというところをもう少し詰めて,これは今後分析しないといけないところで,問題提起の一つとしてこちらは示させていただきました。
 もう1枚おめくりください。今度は試験の結果を踏まえて,これは実際の成績の分布になります。GPです。A・B・C・D・F,過去5年同じ科目をトラッキングしたときに,左3本が対面時の成績の分布です。右2本がオンライン時,オンライン試験,Open Book形式で実施した後の成績の分布ですけれども,やはりオンラインのOpenBookでやると中間層の人数がちょっと増えているかなと。よくできる学生さんと全くできない学生さんが少しずつ減ってきているかなと。そういう傾向が見てとれるのがこちらです。
 次に8ページ目です。これは先ほどの調査の結果もありましたので,ここはスキップしたいと思いますけれども,デメリットに関する反応としては,やはりほかの学生さんの状況が分からないという孤立感に由来するような反応が少し高く,本学でも出ておりました。
 もう1枚おめくりいただいて,9ページ目を御覧ください。少しデータを使って孤立感を解消する一つのトライアルな施策として,単に教科書を開くのではなくて,その教科書に対して,今,どういうところが説明されているとか,ほかの学生さんがどういうところに注目しているとかという状況をダッシュボード上で共有できるような仕掛けを展開することによって,少しでもそういう孤立感の解消につながるような取組を進めているのがこちらです。
 最後に10ページ目です。こちらがいろいろなツールを利用しているというところで,問合せが増えてきました。電話・メールでの回答に限界がどうしても出てきましたので,チャットボットを導入して,自動応答で利用の方法や,あるいは入学前に必要な情報を,これまでだったら電話・メールで問い合わせていたところも,チャットボットで応答するような取組も新たに導入し始めているところです。
 少し長くなりましたけれども,以上で私からの説明とさせていただきます。ありがとうございました。

【吉岡部会長】  島田先生,ありがとうございました。
 続きまして,関西大学教育推進部教授の山田剛史先生にお願いいたします。山田先生,よろしくお願いします。

【山田教授】  よろしくお願いいたします。
 それでは,「遠隔授業のインパクトとニューノーマルの高等教育」という少し大きな題をつけさせていただいていますが,短い時間ですが報告させていただきます。
 大きくは,2020年度の緊急対応型遠隔授業は教員・学生にどんなインパクトを与えたのかということについて,2つの調査から見てみたいということです。
 1つ目,Phase1と右側に書いていますが,遠隔授業が一斉に導入された昨年前期の影響を,前任校の京都大学にいたときに行った教員調査の結果から見てみたいということが一つ。
 もう一つ,昨年後期,Phase2と書いていますが,遠隔授業がまだまだ続く中で,学生生活を守るために推奨されてきた対面授業を遠隔授業と比較しながら,それがどういうインパクトをもたらしたのかということに関して,現任校である関西大学の学生調査から見るのが2つ目。
 それから,それらを踏まえて遠隔授業の特徴とメリット・デメリットを簡単に整理したもの。そして最後に,これからの高等教育の実践的な課題を,現場とデータとを重ね合わせながら見えてきたところを紹介したいと思います。
 まず1つ目ですけれども,京都大学で実施した教員調査の結果です。こちらについての詳細は国情研のシンポジウムでも昨年報告させていただきましたけれども,先生方が実際にどのように感じたのかということです。左側にあるとおり,学習効果が想定前と比べてどうだったのかということですけれども,「効果を実感している」「ある程度効果を実感している」の割合を足すと82%ということで,かなりの先生が実際にやってみて,やる前に比べればそれなりにうまくいったのではないかという実感を持たれているということ。また,右側にあるとおり,それが実施形態によってどう違うのかというものを比較したところ,混合型が最も高くて,逆にオンデマンドのテキスト型が低かったというところが出ています。
 また,教員から見たオンライン授業でよかったことについて,教員としてどうなのかということと,学生にはどうなのかということ,両方を合わせて先生方に聞いています。これを見ると,教員にとっても学生にとっても最もメリットが大きかったのは「場所を選ばずに授業できる,あるいは受講できる」というもの。それから「自分のペースで授業できる,あるいは学習できる」「教材がつくりやすい,利用しやすい」については学生の方にメリットということですので,どちらかというと,教員にとってのメリットというよりは,学生にとってのメリットの方が大きいと先生方は認識されているようです。
 また,困っていることですけれども,こちらはパーセンテージの高いものから順に並べていますが,最も多かったのは「授業準備に時間が取られる」「授業資料・課題をオンライン授業用に新しくする必要がある」という準備に対する負担です。これは昨年前期のことですので,すべての授業をオンラインに対応しなければいけない状況でしたので,恐らくこの辺りは少しずつ緩和してきているかなと思いつつ,それでもまだまだ準備の負担は多いのだろうと思います。
 もう一つの課題は,ブルーの線で引いていますけれども,「学生とのコミュニケーションがとれない」「学生の理解度が測れない」「学生へのフィードバックが大変」ということで,オンライン授業で大きな問題として考えていることの一つは,学生との双方向性の確保が難しいと先生方は捉えている。そんなことも見えてきました。ツールに関しては,ある程度使っていけば使えるようになると考えておられるようです。
 ここまでが京都大学調査になります。
 次に,関西大学の学生に対して昨年12月に実施した調査です。関西大学では春学期は遠隔授業で,秋学期は対面授業を原則として授業を開講しました。学生には遠隔授業を経験した上で対面授業を経験し,その対面授業や遠隔授業がどう評価されるのかという観点で捉えることを目的にして調査を行いました。
 まず,遠隔授業と対面授業の満足度等に関する差異ですけれども,こちらを見ていただくと,遠隔授業全てにポジティブな影響が出ていると。遠隔授業の方が好き,遠隔授業の方が満足している,遠隔授業の内容を理解できている等々でした。
 この結果はいろいろな解釈が可能だと思っているのですけれども,またここでの遠隔授業は,オンデマンドや同時双方向,テキスト教材等をひっくるめた形で遠隔授業と呼んでいますので,更に細かい分析までは今回はできていません。今,実施中の調査ではそれが出来るように設計していますが,このような結果が出てきた。そうすると,想定以上に遠隔授業は功を奏したのではないかという見方が一方ではできます。
 ではこの結果をもう少し見てみたいということで行ったのがこちらの分析です。対面授業で一番困ったことは何ですかと聞いたときに一番多く挙がっていたのが,一方向型講義が多いということでした。それをキーにして,一方向型授業が多いと答えている人とそうでない人で,対面授業に対する満足度等に違いがあるのかを比較したのがこのデータです。これを見ると,同じ対面授業の中の話なのですけれども,左側が「当てはまらない」,つまり一方向型講義が多いとは認識していないという学生。赤はそれが多いと感じている学生。そこの間でもこれだけの満足度等に差があったことが出てきたということです。
 つまるところ,対面授業に戻したからといって,それで学生が満足するわけではなく,1時間半,2時間かけて通う学生も多いですので,それだけかけて教室に行って,そこで一方向型授業を受けるぐらいだったら,片道1時間半の往復で3時間,オンデマンドだったら2コマ分受けられる。オンデマンド,遠隔授業の方がいいじゃないかと考えるのも無理もないかと考えられます。つまり遠隔授業が一斉導入された,経験されたことによって対面授業の在り方が相対化されたと考えられ,ただ対面に戻せばいいというわけではないということが,一つの方向性として見えたのではないかと感じています。
 そしてそれぞれ,遠隔授業と対面授業の利点・欠点を比較したものがこちらです。左側が利点ですけれども,全く同じ項目ではないものもあるのですが,ブルーでアンダーラインを引いているものが,遠隔授業がとりわけ利点として多くの学生が選択していたもの。先ほどの報告にもありましたが,物理的・時間的な制約を受けないこと,予習復習がしやすいこと,こちらが利点として挙がってきます。
 一方,対面授業の方は赤のラインを引いているところですが,ほかの受講生との交流,孤独感の少なさ,あるいは先生からの指示が受けやすい,こんなところが挙がっている。
 困ったところでいうと,課題が多い,対面授業だと一方的に講義されることが多いといったものが挙がっていますが,右側の欠点を見るとブルーのラインが全体的に上がっている。
 ここを見ると,遠隔授業は物理的・時間的な制約を受けないことに特化したメリットがあるだろうと。対面授業は対人的な要素であったり,授業の臨場感であったり,それ以外の要素も含まれてくる。そんなことも両方重ね合わせてくると見えてくるのかなと感じています。
 以上,これらのデータや,それ以外にも多くの学生や先生方から様々な感想や意見を聞いている印象も踏まえると,それぞれ4つの特徴がこんなふうに表現されるのかなということです。こちらは文字数も多いですので,また御覧いただければと思います。従来の右上の対面授業だけに対して,3つのタイプの遠隔授業が今回出てきた。そしてそれぞれの特徴を組み合わせていくと,今求められている個別最適な学びや協働的な学びに対しても,今までとは違うアプローチが可能になったと言うことはできるかと思います。
 そのことを踏まえつつ,ちょっと失礼な表なのかもしれないですけれども,少し自分の中で整理したいなと思ったので,この4つのタイプをこういう観点で機能表みたいな形で整理してみた次第です。例えば,今回遠隔授業の中でもオンデマンド型は物理的・時間的制約を受けず,かつ知識や技能の獲得でいうとポジティブな結果が出てきたことが学生調査やGPA等々からも見えてきます。一方,双方向性や対話性といったところが難しいことも言えます。
 また,今回の遠隔授業が結構な盛り上がりを見せ,効果があったのではないかということを見るにつけ,少し気になることがあります。この間大学は3つのポリシーを軸にディプロマ・ポリシーの獲得に向けてカリキュラム・ポリシーを整えてということを進めてきましたし,その実現手段としてのアクティブラーニングが推進されてきました。そこでは,知識の獲得だけではなくて,思考力・判断力・表現力,主体性や協働性等々の育成も重要だということが求められてきました。遠隔授業がポジティブな結果を生んだことは,ある種限定的に見ないといけないのかなと。本来,この右側にあるような力をどう育むかということも併せて考えていかないといけないので,私見としては,やはり使いどころは慎重に考えないといけないのかなと思っています。そのようなことをこの1,2,3,4にも記載させていただいています。
 時間の関係がありますので,最後に入りたいと思います。ハード面での準備は順次進められていますけれども,依然通信環境の改善は課題なのかなということ。
 また,同時双方向型,いわゆるZoom等々を利用したタイプは一定の効果があった,対面状況に近い形で遠隔のよさも組み合わせられるということで,私も多用しているのですけれども,いざこれが対面を原則に授業が移行した場合に,非常に難しいのが時間割編成の問題だと認識しています。いくらその授業が単体で同時双方向型で授業をやると言っても,その前後の授業が対面形式だったら,実際問題,そこでは実施できないことになります。あるいはキャパシティーを確保するための教室の確保が必要になります。こういう最終的な落とし込みをしていったときに,難しい問題が出てくるなというのは学内のガイドライン策定にも関わっている関係でも浮き彫りになってきます。
 ですので,争点は,オンデマンド型をどういうふうに質保証していくのかというところに焦点化されていくのではないかなと思っています。以下,ここに書いてあるとおりですが,カリキュラム全体の中での位置づけであったり,先ほども紹介がありましたようなラーニングアナリティクスであったり,学内のルールやガイドラインであったり,こんなものをそれぞれの大学で整えていく必要があると考えています。
 また,独自のLMSの活用などによって,オンデマンドでも一定の双方向性を取り入れた授業の展開は可能になったけれども,客観試験の実施は依然として難しいのではないかと考えます。ですので,先ほどあったようなOpenBookであるとか,そういう形で学習評価の在り方そのものも変えていく必要があるのかなと。そのためにも,教員の意識や力量のアップデートがまだまだ必要なのかなと考えています。
 すいません。雑ぱくでしたけれども,以上になります。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは質疑と御意見,ディスカッションに入りたいと思うのですが。今回も大変盛りだくさんのプログラムになっております。それで時間も延長したのですけれども,それでもなおかつ苦しい感じですので,御質問,御意見はできるだけ簡潔にということと,1対1で双方向をやり続けているといつまでたっても終わらない可能性がありますので,御発言いただいたものをまとめて,お二人からお答えないしコメントを頂く方式を採りたいと思います。それでは御意見,御質問のある方は挙手をお願いいたします。
 米澤委員,お願いいたします。

【米澤委員】  ありがとうございます。
 一つは,対面とオンラインが同じ授業の中で,一部の学生は対面で,一部の学生はオンラインで参加するような形があると思うのですけれども,そのようなときにどういう形で授業が行われるのか。今の話だとオンラインと対面では授業の仕方自体が多分違うという話だと思うのですけれども,これはどういう整理されるのかが一点。
 それから山田先生からあった自習室の確保の難しさということがあったのですけれども,これでもし成功している例があったら教えていただきたいというのが2点目です。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは飯吉委員,お願いいたします。

【飯吉委員】  2つあります。
 一つ目は,島田先生のご報告に関してです。スライド3では「オンラインと対面の学習効果の影響」ということで,「対面の方がいい」という結果が出ています。これに反して,スライド7を見させていただくと,20年,21年,それからその前の18年,19年の対面。これらをざっと見ると,オンラインの方が成績がいいのではないかと見受けられるのですが,ここの矛盾はどのように考えればいいのか,というのがまず島田先生への質問です。
 それから,山田先生への質問が1つあります。スライドページ数で10です。各授業型のメリットとデメリットに関してですが,私見であるとは言われましたが,やはりかなりざっくりかと。これだと対面が全部いいように見えますし,特に質保証の部分は二重丸がついているので,対面であれば質が高いような感じですが,対面授業の質がいい先生は多分成熟した形でオンライン授業をやれば,質保証については同様に優れているのではないかと思います。
 オンデマンドも悪者にされがちですが,例えばMOOCのような非常に時間と手間をかけたパッケージ型のものを作り込めば,これで受講者の満足度が低いという話はMOOCの質保証をやっている立場としては,あまり聞こえてこない。ですから山田先生が最後のスライドで言われたような,やはり「それぞれの各先生がどのように各タイプを生かして授業設計,教材設計をするかということがまだ成熟し切っていない」という,FD的な問題が多分あると思います。ここで挙げられている特徴は,このようなことに影響されている過渡期的なことなのか。もし先生がたが各授業型で教えることに熟達され,縦横無尽に色々とできるようになった場合に,今ここのスライド10でお示しになっているような特徴がそのまま残るのかということをお伺いしたい。よろしくお願いします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。では杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】  ありがとうございます。
 今,飯吉先生が言われたこととほぼ同じようなことですけれども,山田先生に伺いたいと思います。スライド10で,特に期待される学習成果の思考力・判断力・表現力等,これが下から上にかけてバツから二重丸に移っていくということの,この判断の根拠をどこに求められているのかと。飯吉先生のお話にもありましたように,例えばオンデマンドでも扱う内容や教材の作り込み,それからフィードバックの在り方によって,大分違うのではないかなと思われるのですが,その辺りについてお考えを伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。では前田委員,大森委員,濱中委員の順番でお願いいたします。前田委員,お願いします。

【前田委員】  ありがとうございます。御発表ありがとうございました。
 島田先生にお伺いのですけれども,すごく単純な質問です。スライドの6で教科書の閲覧時間の例で,オンラインと対面で,オンラインの方が教材動画も併用した分,閲覧時間は減少かという,これはクエスチョンがついているのですけれども,ここのところをちょっと理解ができなかったので,もう少し御説明いただきたいなと思いました。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。続いて大森委員,よろしくお願いします。

【大森委員】  大森です。今日は遅刻しまして申し訳ありませんでした。
 山田先生にお伺いしたいのは,先ほどの杉谷先生のお話にちょっとかぶるというか,方向性は違うのですけれども。私は10ページの御説明を聞いて納得したというか,私のもやもやが少し解けたのは,オンラインがいいというお話は聞くのだけれども,ずっとこの間,質転換をやってきて,アクティブラーニングがほとんどの授業になっている中で,本当にこのコンピテンシーをどういうふうにするかといったときに,オンラインがどういうふうにそれを授けられるのかというのがどうもしっくりこなくて,これはすごくしっくりきました。という話なのですが。
 逆に言うと,それでもオンデマンドが残ったときに,そういう思考・判断あるいは主体性といったものをつけてあげられる可能性はないのか。どうなのかなというところをお聞きできればなと思った次第です。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。では濱中委員,お願いします。

【濱中委員】  ありがとうございました。島田先生に1点,島田先生と山田先生に共通して1点ということでお願いしたいのですが。
 まず,島田先生の3ページのスライドですけれども,真ん中の予習時間は,単位は「分」でいいのでしょうか。「分」なのであれば,解釈としては15回でこれだけ上がった,つまり,2020年度は1回当たり1時間ぐらい予習時間が増えたという理解でいいのかどうか。だとすれば,それぐらい上がったにもかかわらず,平均点が下がったと見ていいのかどうかなのかを教えていただきたいのが最初の質問です。
 続けて島田先生と山田先生に,これは感触レベルの質問で恐縮ですが,ご意見をお聞かせいただければと思います。私自身は2020年度と2021年度のオンライン授業に違った印象を持っておりまして,というのも2020年度はやはり学生も教員も初めてのオンライン授業でしたので,それぞれが一生懸命で,学生の方についていえば,何とかついていこうというような,熱心さが見られました。けれども2021年度はお互いオンライン授業慣れしたといいますか,学生についても取り組み方が変わってきたような感じがします。
 何が言いたいかといえば,いま2020年度のデータをお示しいただきましたが,この2020年度の状況は特殊事例になるのではないかという,そのような素朴な疑問があるということです。その辺りの先生方の感触を教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 多岐にわたる御質問がありましたけれども,適宜まとめて構いませんので,まず島田先生からお答えいただけますでしょうか。

【島田教授】  島田です。御質問ありがとうございます。
 まず学生の一部が対面,学生の一部がオンラインという形で,多分これはハイフレックス型の授業のことをおっしゃっているのかなと思ったのですけれども。そういう授業も一部の科目では行われてきております。そのときの小難しさはやはりハウリングをどう抑えるかとか,現場と遠隔から参加している学生のできるだけ臨場感は同じように保ってあげるには,では遠隔の学生さんが退屈しない仕掛けをどうすればいいかとか,そういうところは結構工夫点としては,やはりまだまだ検討の余地があるなと。
 一方で,演習科目とかの場合は交互に出てきてもらうとか,そういう取組も検討は一部の科目ではなされてきました。というのが,演習をしっかりやる日と,今日は説明をしっかり聞く日を交互に実施すれば,全員が全員,大学に出てこなくても交互に半々で学生さんを出てこさせることで,一部の学生さんは対面を今日はやります,一部の学生さんで今日はオンラインでやりますみたいな実施方法を取れるような科目も実際にはございました。
 次の,自習室の確保についても,今年度に関していうと,オンラインで実施しているときにも,大学に来てオンライン授業に参加するような学生さんはいるので,その時間その時間で空いている部屋がどこにありますという情報を学生さんには周知するようなことがなされておりました。
 あとは,私の資料3ページ目の内容で,対面の方が少し平均点は確かによかったのですけれども,これは有意差が出るほどの差はなかった。なので,大きく対面の方がよかった,オンラインによって悪い結果が起こったとは言いづらいかなというところは思っております。
 一方で,予習時間に関して申し上げますと,これは申し訳ありません,単位は分です。だからおっしゃるとおりで,1時間ほど毎回の授業で,授業外学習で教科書を開いている時間が少し増えているのがオンライン授業のときでした。
 これも最後の御質問にも関連するのですけれども,やはり去年初めてオンラインでやる状況でしたので,かなり学生さんも構えていたと思う。これはかなり頑張らないと単位を取れないのではないかとか。そういうこともあって結構みんな頑張って予習したのではないかなとは思います。
 今年度はそこがどうだったかというと,やはりこなれているなというのは正直印象としてありました。まず1回目の授業のときにすんなりみんなつないできましたので,この辺が去年だったら1回目は結構接続トラブルがあったとかやっていたところが,今年度に限っていうとほとんどそういうことはなく,1回目の授業もすんなり入れたなと思いますし,日頃の課題の提出状況とか授業中の態度を見ていても,もうオンラインにかなり慣れてきているなというのはひしひしと感じるところがあります。
 7ページ目に関しておっしゃった話ですかね。オンラインのときの方が対面に比べてどうかというところですけれども,やはりこれはどう見るのがいいのかなというところです。オンラインになったときに,これはOpenBookで試験をやっていますので,それで成績が少し上がっているかなというのはあります。一方で3ページ目の方は,これはOpenBookももともと全部OpenBookです。これは対面授業のときもOpenBookでやっていた科目ですので。そういう意味で,どちらもOpenBookだとそこまで成績に差はなかったのですけれども,この7ページ目で挙げているような2020年,2021年ではこれはOpenBookでやったのがこの2年間ですので,そこでは成績はやはり上位の方に偏るような傾向が見受けられたと考えております。
 最後に6ページ目にありましたオンラインが動画を併用しているという話ですけれども,これはすいません,ちょっと説明が足りておりませんでした。教材の配信に加えて,説明の動画も一緒にMoodleのコース上にこの科目では上げておりました。そのため,学生さんによっては,教材を見るのではなくて,動画を見るだけにとどめているような学生さんも少なからずいるようです。そういう学生さんに関しては教科書へのアクセスログの分析をしても,閲覧時間にはそれはカウントされないので,そこの分,減ったかなという,まだ疑問を残しつつの考察を書いているのがこちらになります。
 以上,私からの回答とさせていただければと思いますけれども,漏れがあったら申し訳ないです。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは山田先生,お願いいたします。

【山田教授】  ありがとうございます。やはりああいう形で出すことによって,いろいろなコメントを頂けるというのは有り難いことです。
 大体同じようことだったかなと思うのですが,まず丸・バツをつけた考え方についてお答えします。飯吉先生からもありましたが,対面型の質保証が二重丸と書いているのは,対面型が質保証を十分されているということではなくて,質保証が検討しやすい,あるいは思考力や判断力が育成するような授業を展開しやすいという意味合いが込められています。
 逆に言うと,例えば教材提示型とかオンデマンド型になってくると,実際に学生からも聞くのですが,教材だけアップロードしていて,実際に先生がどれだけの時間授業をしたかとか,学生がどれだけ学習したかということが把握できない状態になってしまう。同時双方向型の授業であっても,例えば30分しかZoomを開かないという授業もあったりする。
 そういう意味では,少なくとも質保証する上で必要な要件を整えやすいという判断で,この二重丸,丸,三角,バツをつけています。丸がついているからできているということではありません。説明が足りておらず申し訳ありません。あくまで可能性を込めてということになっています。
 米澤先生もおっしゃられたことですが,御指摘のとおり,今回の報告は4つのタイプをタイプ単体で評価しているものです。実際は,それを単体ではなくて,組み合わせて実施していかないといけない。ハイブリッドやハイフレックスというもの。それもどの程度のハイブリッドになるのか,ハイフレックスになるのかということを更に分解していくと,様々なパターンがあります。さらにクラスサイズであったり,学年の専門性のレベルであったりとかに合わせて組み合わせを考えるとなると,非常に多様になってきます。授業15回のうちの8回とか7回とかだけではなくて,1回の授業の中のハーフ・アンド・ハーフということもあり得ます。
 今回効果検証の話は詳しくしなかったのですけれども,今後は実際問題としてコロナ禍の制約から離れていったときに,これらをどう使っていくかということを考えようと思うと,細かな効果検証が必要になってくるのだろうと。そしてそれはそう単純ではないだろうと思っています。御指摘のとおり今回は非常に単純化された形で比較しましたけれども,実際にはこの組合せの検証がこれから必要になってくるのだろうと思っています。
 大森先生から発言もあったコンピテンシーを,どうやって遠隔授業で,あるいは遠隔授業を活用して育成していくのかということも,今後さらに考えていかないといけないだろうと思っています。また,個別の先生の取組レベルではオンデマンドでも思考力を育成するような授業を展開されている先生もいるし,個別で見ていけばそういう授業も確かにあります。実際には,知識の伝達部分をオンデマンドをうまく活用して,活用した分,対面授業の中で演習やディスカッションなどの活動に時間を割いて実施していく,例えば反転授業のような取り組みが期待されます。これまでも言われてきたことを更に先鋭化していくというか,そういう意味では,オンライン単体で育成するというのは実際には難しいかなと思っています。でもそれらを組み合わせることによって,トータルとしての学生の資質能力の向上は図れるのではないかと思っていますが,効果検証が十分ではないと思っています。
 全国で行われた調査でも,緊急対応型の遠隔授業は,とにかく学びを止めないことを中心にやってきましたので,それが大丈夫だったのか,満足だったのかというところにとどまっていますが,これからはより精緻な学習成果の検証などにシフトしていかないといけないのだろうと思っています。
 米澤先生から頂いた自習室の確保等の事例について,例えば千葉工業大学では時間割を触りました。オンラインの時間帯と対面の時間帯というふうに時間割を変えたのはかなり大変だっただろうと思います。他にも,分散登校であったりとか,実際には低年次の学生にとっては対面をベースに,高年次の学生には遠隔を中心にというふうに,学年で少し分けて教育の展開の仕方をすることによって密になるのを防ぐであったりとか,そういう取組は聞いています。
 最後に濱中先生から頂いた2020年と2021年の違いは私も感じています。いい意味でも悪い意味でも。今年の遠隔への急展開は大きな混乱が起きなかったです。昨年度に比べてすっと移行して,本学でも2日間のインターバルで一斉に遠隔授業に切り替えるなんていうことができました。昨年のことを考えると相当違うことで,教員もかなり適応能力が上がっていますし,学生も「ああ,また遠隔ね」というぐらいで,割とキャンパスの中でも場所を見つけて,そこから参加するみたいな感じでした。
 そういう意味で混乱はなかったのですけれども,濱中先生がおっしゃったみたいに,モチベーションのことでいうと,去年は6月,7月ぐらいになってきてしんどくなってきた子たちが多かった。どちらかというとメンタルの方にきてしまったのですけれども,今年はどちらかというと学習意欲の方が落ちてくるのが早いのかなというのは印象として持っています。昨年度と今年度はまた違う文脈が入ってきていますので,そういうものも含めて分析していかないといけないのかなと思っています。
 以上になります。

【吉岡部会長】  ありがとうございました。
 時間のことがありますので,以上で質疑を終わらせていただきたいと思います。
 一言だけ。このある種の問題設定がオンライン授業と対面授業というものを対比的に考える格好なのですが,今までの議論にありましたようにオンライン授業はそれこそ昨年まず緊急対応として始まった。その中で皆さん手探りをしながら,そういう意味ではすごく頑張ったと思いますけれども,それでやってきた中で見えてきたものがあるということが一つ。
 それから同時に,対面授業の持っていた,つまり対面授業でもこうすればいいではないかというような,対面授業の反転授業化というようなこととか,繰り返し授業ができるのであれば対面授業に録画方式を持ち込むとか,いろいろやり方はあるわけで,そういう授業改善の手掛かりは非常にはっきりした部分があるのではないかと思います。
 オンラインだからいいとかというところがあるわけではなくて,例えばオンラインでも非常に退屈な授業を延々と流し続けることだってあり得るわけなので,それも含めてちょっと全体的な授業構成の在り方に,ある意味では非常に刺激的な問題が提起されていると思いました。
 ということで,お二人の先生方,大変ありがとうございました。山田先生はこれで御退席ということですが,島田先生はこの後の議論にもお付き合いいただけるということでございますので,引き続きよろしくお願いいたします。皆さん,ありがとうございました。
 では,これまでの御説明等も踏まえながら,遠隔授業やICTを活用した授業内容・授業方法の進展に伴う質保証の在り方についての審議に入っていきたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

【大塚専門教育課課長補佐】  失礼いたします。資料2を御覧いただけますでしょうか。
 こちらは,遠隔授業やICTを活用した授業内容・授業方法の進展に伴う質保証の在り方について御議論いただきたい論点をお示ししております。
 教育再生実行会議第12次提言では「国や大学等は,遠隔・オンライン教育がどのような属性の学生に対してどのような効果があるのか,どのような授業に適しているのか,面接授業との効果的な組合せの在り方はどのようなものかなどについて,学修者のニーズや質保証の観点も踏まえながら検証・評価を行い,遠隔・オンライン教育の単位修得の柔軟化を速やかに検討する」と指摘されておりますけれども,これについてどのような方策が考えられるか,御議論を頂ければと思っております。
 冒頭御説明させていただいた国の調査でも,また有識者の先生方が発表された中でも,オンライン授業に満足する学生もいれば,そうではない学生もいるという結果でございましたけれども,遠隔授業と面接授業の効果をどのように評価し,比較・検証するのか。また,遠隔授業における単位取得の柔軟化の検討を行うに当たり,必要なエビデンス,考慮すべき要素としてどのようなものがあるのかなど,網かけ部分でお示ししているような内容について御審議を頂ければと思っております。
 こちらの資料の次ページ以降は教育再生実行会議の提言の関連部分の抜粋を引用しておりますので,こちらについても適宜御参照いただければと思います。
 簡単ですが,説明は以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 実は時間は多分これは10分ちょっとしか取っていないのですが,ここで書かれている問題は実は非常に大きな問題であるのはお分かりだと思います。かなり無理な設定だと思いますが,同じように御意見,御質問等があれば御発言いただきたいと思います。また,この後も定員管理の議論を今日は行いますので,そちらに関わることはそちらでというふうにお願いできればと思います。また幾つか御意見を伺った後に,事務局から例えば質問に対する回答とかがあればまとめてというふうにしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。それでは御意見,御発言がある方はお願いいたします。
 宮内委員ですね,お願いいたします。

【宮内委員】  宮内でございます。
 ニューノーマルというのは始まったばかりです。例えば今のオンラインについても緊急対応から実験段階に入って,これから発展段階に入るわけですね。全てが発展途上にある。学生も社会も教員側も。そういう中で,私はあせってルールを決めてはいけないと思います。できるだけ融通無碍(むげ)に,フレキシブルに対応するのを我々の基本姿勢にしておく。冒頭で通信制と通学制という範ちゅうの議論がありましたけれども,これを通学制だから何時間,何単位まではオンラインでいいとかいけないとかということを今決めてしまいますと,その先の4年後,5年後の変化についていけないばかりか,変化対応を阻害する可能性がある。
 ということで,基本姿勢として,できるだけルールづくりは融通無碍(むげ)にする。その代わり原則として我々は常に時代から学んでいくと,イノベーションするという,私たちの総意に持っていけたらいいかなと思っております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。続いて長谷川委員,お願いいたします。その後,川嶋委員,吉見委員,飯吉委員,林委員と続けたいと思います。よろしくお願いします。長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】  まず,大学でオンライン教育を実施する目的を確認すべきとだと思います。デジタル技術を活用したオンライン教育の目的は,単にコロナ禍への対応ということだけではなく,正にDXの社会に対応し,時間と場所の制約から解放された新しい教育,また個別最適化された教育の実現ということであって,これ迄できてこなかった新しい教育を実施するためだ,ということをまず確認すべきだと思っています。
 それによって,これ迄,十分に実現されてこなかった国内外の大学とのジョイント・ディグリーですとか,社会人がより学びやすい環境でのリカレント教育の実施ですとか,若しくはオンラインとリアルを組み合わせた新しい留学プログラムの策定といったようなことが可能になると思います。
 前も申し上げましたけれども,経団連と大学で構成しております産学協議会では,このポストコロナ時代においては,対面とリモートによるハイブリッド型教育を常態化させること,それをデファクトスタンダードにすべきことで合意しております。
 ですから,その観点からいうと,対面とオンライン授業の全ての組合せについて国が考えるというよりは,逆にハイブリッド型の授業の質を担保するために最低限,留意すべき事項のみを国が示すことにして,後は,各大学が,カリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシーに基づき,より質の高いハイブリッド型教育を実現するために,大学の特徴や学生の性質・特徴を踏まえて,創意工夫して考えていくべきものではないかと考えます。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。続いて川嶋委員,お願いします。

【川嶋委員】  川嶋です。
 冒頭のアンケートの調査で,学生さんから寄せられたコロナ禍以前に戻すことなく新しい大学の在り方を考えてほしいというコメントが紹介されていましたが,正にそのとおりで,これからの大学は,元の対面授業中心の大学教育に戻せばいいということではないと思います。
 ただ,今日お二方の事例報告がありましたけれども,現状では様々な課題があるということが明らかになりました。本学でも調査しておりますけれども,いろいろ課題が明らかにはなっています。
 ですから,今後の検討の方法として,一つは部会長からも御指摘がございましたけれども,今回の大学授業のオンライン化を経験して,現在の我が国の大学教育の在り方について問題が大きくクローズアップされたと思います。一つは吉見委員も含めて,また私も含めて指摘しているところですけれども,履修科目数が多すぎるという問題です。学生からは課題が多くて困るという意見があるけれども,それに伴い学習時間がかなり増えていることが明らかになりました。教員側からは授業の準備に大変苦労したというお話もあって,これは結局教員もたくさんの授業を担当しているので,その分オンライン化になって新たに教材をたくさん作らなければいけなくなってしまった。学生は学生で毎週たとえば10科目受けていると10科目ごとにそれぞれ課題が出されて,もう学習時間がある意味単位制度を超えるような形で現実には増えてしまったわけです。ということは,従来は全然単位制度が守られていなかったということになります。そういう意味で今回のコロナ禍で我が国の大学教育の重要な課題が浮き彫りになったということです。
 その中で,今後この問題を考えていく際には,例えば一つは,先ほどありましたオンライン型の大学とキャンパス型といいますか通学制の大学におけるICT技術の活用という問題,これは分けて考える必要があるかと思います。特にキャンパス型の場合は,オンライン型大学のように全てオンラインでやればいいというものではなくて,キャンパスライフというものは,これは学生さんも今回不満に感じるところが多く示され,友人や教員・職員との交流がなくて非常に残念だったという話もあります。キャンパス型,通学制におけるこういうハイブリッド,ハイフレックス型の授業を今後どう充実させていくかという問題と,社会人とか留学生を対象としたような形でのオンラインを中心としたオンライン型大学での授業・教育の在り方とは,分けて議論していかないと,検討状況が混乱していくのではないかなと感じております。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。吉見委員,お願いします。

【吉見委員】  吉見でございます。
 オンラインにしても,ある意味では定員にしてもそうですけれども,デジタル化と少子高齢化,そしてグローバル化という3つの大きな波によって,私たちの大学あるいは大学教育は根本から再定義を迫られているという基本認識に私は立っております。
 それをベースにお話しさせていただきますと,オンラインが突きつけている問いは,そもそも授業とは何なのかという,授業の根本とは何かというところをはっきりしていかないと,何がベストなのかということの答えがなかなか出てこないと思います。
 雑駁ですけれども,私が考える限り少なくとも授業には2つの側面がある。一つは知識とか技能を伝えるということです。もう一つは,やはり知的コミュニティーといいますか,お互いに一緒に頑張る主体をつくっていくというか,先ほどから出ている主体性とかアクティブラーニングとか,そういうものを全部含めるのですけれども,ある種のコミュニティーをつくっていくことが授業の中には必須の側面としてあると思います。
 そしてこれがなかなかオンラインだけで知的コミュニティーをつくることには限界がある。お互いを知る,あるいはお互いに何か一緒にやる,教員と学生が本当に深く相手を見るということは,どうしても一緒に時間を過ごすということ,できれば一緒に空間を共有することが不可欠の条件になってきます。
 そうなってくると,そこの部分,つまりオンラインが非常に広がっていく流れだと思うのですけれども,そのときに何が求められているかというと,逆に対面の授業をどうしていくのかという対面の方の再定義といいますか,対面の授業をどうするかということがよりエッセンシャルにというか,より先鋭に問われてきていると私は思います。そのことが一番大きなことです。
 それにもう一つ付け加えておくと,ではこの対面の授業をどうマネジメントしていくのかという,特に時間割の編成ですけれども,時間割のマネジメントというか,大学における学びの時間をマネジメントが本当に各学部の先生方任せでいいとは私には思えない。ですから,大学がどうやって時間のマネジメント能力を持っていくのかということが,アドミニストレーティブなレベルでは一番の課題だし,それから対面の授業を実際にどうやっていくのかというここの問題にかなり絞られてくると思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  今の吉見委員のお話に続く感じですが,まず,「対面授業の質はそもそも保証されているのか」ということです。もしこれに対する答えが「Yes」なのであれば,オンライン授業の質保証に関しても,まずは同じ基準・方法をベースにして考えればいいのではないかと。普通,対面授業については各科目,各学部や研究科で審査や認可をしていると思います。教務委員会とかですね。その際には主にシラバスが参考にされ,これが大学の設置認可で言えば「設置審」に当たるわけです。その後,授業が走り始めると,今度は学生による授業評価等々,京大は学生による授業評価が中心ですが,それ以外の方法での評価を併せてやっている大学もあると思います。これは認証評価的なことで,「この両方を合わせて授業の質が保証されている」とされるのが一般的ではないかと思います。
 これでいいのであれば,このような基準・方法を踏まえてオンラインの方も考えればいいと思いますし,もし現在の対面授業の質保証が怪しいということであれば,今,吉見委員が言われたように,対面授業の質保証についても併せて考える必要があると思います。
 その一方で,オンラインを用いる通信制ではオンライン授業の質は保証されているはずです。そうであるとすれば,今後は,先ほど宮内委員が言われた「融通無碍」と言われたように柔軟性をもって対応していくことが重要です。様々な授業形態のミックスを包括できる授業の質保証の仕組みは,まずこれまでの知見をブレンドし,それから「合わせ技」で拡充していく形で対応できるのではないかと思います。要するに,「授業の質保証」の基本的な考え方はオンラインが入ってきても根源的にはあまり変わらないのではないか,ということです。とにかく,オンライン教育・オンライン授業だけに照準を合わせて,その部分だけについて教育の質保証を抜き出して考えるのは不自然ではないかと考えます。
 以上です。

【吉岡部会長】  林委員,お願いします。

【林委員】  今まで言われた話の繰り返しになるかもしれませんが,2点です。
 1点目,論点ペーパーで効果検証に当たり学年とか分野の違いをどう扱うかという話ですが,基本的に文科省とかがそれをこの分野はどうというふうに設定することはできないと思っていまして。今日,お二人の先生方からお話がありましたけれども,ああいうような効果検証をしっかりやっているかということを,質保証でしっかりと見ることを文科省は決めればいいのであって,今の認証評価の基準でも教育方法の適切な組合せみたいな基準はどこも持っているのですが,今までここまでオンラインが入ってこなかったときには,組合せを質保証で見るといったってさらっと見て特に論点もなかったのですが,そこを今後まともに見て,プログラムとしての効果を発揮するためにどういう組合せになっていて,それをどう効果測定をしているかということをしっかりと質保証で見るという,それを求めていくのだと思います。
 それから2点目ですけれども,先ほどどなたかの委員でジョイント・ディグリーとかそういう話もありましたけれども。やはり今日2大学の先生方がされたお話も,基本的には今まで対面でやっていたものと同じ先生が基本的には同じような授業をオンラインで代替したというお話だと思っているのですけれども,そうすると,これくらい違いがありましたといっても,もしかしたらそれは誤差程度のものでしかないかもしれないと。やはりオンラインでやるという,つまり物理的な距離は関係なく,例えばほかの国の大学と一緒に授業をやる,あるいは距離の離れた大学であっても一緒にやる,そういうことができるような設置基準の仕組みに変えていくことが必要だと思います。
 現在もコンソーシアムで特に教養教育とかで単位互換とかをやっていると思いますけれども,それも上限があると思うのですけれども,そういう形ではなくて,やはり共同で授業を開講して,ただそこでは設置基準上,大学が自分で授業を開講するという話になっていますから,そこをどうクリアするのかであるとか,あるいは授業,あるいは成績の質保証をどういう仕組みでやっていくのかとか,そういうものを併せて考えていって,オンライン型の,オンラインだからこその質の高い授業を実現するような,足かせを,現状あるものを取っていくという議論をしていくべきだと思います。
 以上になります。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。事務局のタイムスケジュールでいうと,既に10分超過しております。それで,今,手を挙げていらっしゃるのが曄道委員,小林委員,瀧澤委員,杉谷委員の4名ですので,手短にお願いいたしたいと思います。では曄道委員,お願いします。

【曄道委員】  ありがとうございます。
 先ほど宮内委員が言われたように,今は過渡期と捉えるべきで,そのときにやはりルール化を余り厳密にやってしまうことに非常に懸念を持っております。やはり柔軟性をそこに残しておくことが,今,正に林委員が御指摘になったように,オンライン環境の可能性を今後我々も,大学も発展的に考えていける土壌をつくることになろうかと思います。
 それから,文科省の資料で示されているオンライン授業の満足度が,最近いろいろなところで聞くと,全体としては57%程度の学生が満足,あるいはどちらかというと満足と答えているという捉え方として伝わっていると思うのですけれども,これは確かにマクロに見ての学生の満足度ですが,もしこれが私の授業アンケートの回答だとすると非常にがっかりする結果であろうと思います。つまり,4割以上の学生は満足しないということでありますので,やはりこの点についてオンライン授業,特に学生の満足度についてはもう少し大学として留意していく必要があるかなと思います。
 最後ですが,個別最適化とか,あるいは学習者主体のといったようなことが言われる中で,そこにもオンライン教育はかなり効果を発揮すると思います。例えば学生の多様なキャリア形成とか,そういうところにも手段としてかなり威力を発揮すると思いますので,そういったことも冒頭で申し上げたようなオンライン教育の可能性というところで議論が広げられるような生地をつくっていただきたいなと思います。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  それでは小林委員,お願いします。

【小林委員】  私は,昨年の補正予算で出てきた,デジタルを活用した大学の教育高度化プランの委員をさせていただいておりました。そのときの提案が,教育研究を高度化していくということを,デジタルというかXRですね,ARとかVRを含めて,実技を含めたりとか,あるいはキャンパス間を横断したりとか,大学間連携をしていったりとか,グローバルキャンパスですとか,かなり多様な高度化の提案がされていました。こういったものの今ある教育の置き換えではなくて,これを更に高度化して,デジタルトランスフォーメーションが推進される中で,今後の教育研究の文化を変えていくようなものを支援していく形での制度設計ができるといいのではないかなと思っております。そういう意味では,いわゆるそれを阻害しないようなルールづくりが必要になります。
もう一つが,教学マネジメントでも主体に置かれております学修者本位の教育の実現というところです。やはりこれは先ほど出ました個別最適化とか,オンライン化で問題になるメンタルの問題,あるいは学習意欲の問題,コーチングの問題,フィードバックの問題,こういったところをいかにシステムの中で解決していくかというところでの課題になります。知識・技能は習得できるけれども,では個人に寄り添った形の学修者本位の教育をどのようにこのオンライン教育の中で実現していくかという,もう一つの視点も必要なのではないかという2点を申し上げさせていただきます。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  では瀧澤委員,お願いします。

【瀧澤委員】  ありがとうございます。
 今までの先生方の御指摘に賛成でして,今の資料2のこの四角の枠に書いてあることを割とフィックスにしていくような方向性で示されていると思うのですけれども。私自身もオンラインの授業を毎回Zoomにて双方向でやっていますが,あえて全くお互いに会ったことがない,学科が違う学生たちが集まってくる教科なものですから,会ったことのない人たちでグループワークをして,最終的に1回だけ会ってみましょうと。そのときにどういった心理的な動きがあるのかというのを自分たちで体験してみようというようなことを企図してやっておりました。ちょっと教室の確保ができなくて,実現はできなかったのですけれども。そういった新しい試行錯誤をそれぞれの先生方がやっていって,それで何が起きたかということをまたお互いに学び合えるような仕組みができるといいなと感じています。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】  ありがとうございます。
 本日の御報告並びにこれまでの先生方の御意見を伺っていて,オンライン授業もそれなりの効果が一定程度明らかかと思われます。ただ,オンラインだけではなく,対面授業のよさも取り入れるということ。コミュニティーとしての大学というお話もありましたけれども,やはり学生同士が対面で接する機会が重要だということで,対面とオンラインをどう組み合わせていくかというのが今後の課題かと思われます。
 少し具体的な話になりますが,今の設置基準上は60単位まで遠隔教育が可能だということです。それから残り64単位に関しても,面接授業のうち半分未満になれば遠隔教育を取り入れられることになれば,ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども,32単位をプラスして92単位近く,つまり4分の3近く,遠隔教育を用いることも可能ということです。これならば通信制とほぼ変わらないような状況にもできることを考えると,ここの単位設定をどうするのか。むやみに大きくする必要はないのではないのかなと思っている次第です。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 いろいろな御意見があると思いますが,時間の関係で次に進めたいと思います。
 忘れてはならないのは,今,我々はやはり状況に非常にとらわれていて,特に去年,今年にかけてのところでオンライン授業をやっているのは,一つはキャンパスに入れないということがあるわけで,もしもキャンパスがあるのであれば,オンライン授業をやりながら,例えば対面授業を併用するであるとかということももう少し可能なわけで,途中で緊急事態宣言になったりして途中で授業を変えなくてはいけないとかという,それこそ緊急事態に対応しながら行われていることはやはり忘れてはならないのではないか思います。その中で,ここでの議論はやはりシステムをつくっていくことですので,そういう意味ではある種の長い目で見ながら制度をつくっていくことが必要だろうと思いますし,新しい動きの足かせにならないようにということがとても大切だろうと思います。
 それでは大幅に時間が遅れておりますが,できるだけ取り返していきたいと思います。
 それでは定員管理の在り方についての審議に入りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。それでは資料3-1,3-2,3-3を御参照いただきながら御説明させていただこうと思います。
 資料3-1ですけれども,前回お配りしておりました定員管理に関する論点を,前回先生方に御議論いただいた内容を踏まえましてアップデートした構成になってございます。
 おめくりいただきまして2ページ目です。前回お示ししておりました論点の1つ目でございまして,定員管理に関する今日的な役割・目的をどのように考えるかというところでございます。下の網かけ部分ですけれども,今日的な定員管理の在り方をどのように考えるのか。定員管理の仕組み自体は維持しつつ,弾力化・柔軟化を図ってはどうかということで御議論いただきました。
 おめくりいただきまして3ページ目です。前回先生方から頂きました主な御意見といたしましては,例えば1つ目の丸,定員管理には教育環境の確保という話だけではなくて,ファンディングやマーケットの話が含まれていて,それらをきちんと峻別(しゅんべつ)した上で議論する必要があるのではないか。また,学修者本位の教育における定員という概念はどのように再定義され得るのか。また,質を担保するためには,社会が急激に変化しても定員管理をきちんと行わなければならないといった御意見を頂いております。
 それを踏まえまして,引き続き定員管理を行う必要はあると考えられますが,いかがでしょうかということ。またもう一つ,学修者本位の教育という観点から定員管理の新たな定義としてどのようなことが考えられるのかという観点に関して御議論いただければと思っております。
 続きまして1ページ飛ばしまして,5ページ目でございます。こちらも前回お示ししておりました論点の2つ目でございまして,定員管理の単位の問題でございます。下の網かけ部分ですけれども,現在,定員管理について政策手段ごとに各々の管理の仕組みが取られていると。それらの関係が合理的なものになっているのか。また,定員管理の弾力化・柔軟化についてどのように考えるのかというところで,入学定員ベースから収容定員ベースに,単年度から複数年度での管理,学部学科単位から大学単位へということを示させていただきました。
 おめくりいただきまして6ページ目でございます。前回の議論の中ですと,まず質保証のための制度と政策手段としての制度というところでございまして,そこをきちんと分けて議論する必要があると。制度の問題と政策の問題は分けられる部分があるのではないかという御意見を頂きました。
 また,弾力化・柔軟化の方向性といたしましては,定員管理の弾力化・柔軟化それ自体には賛成であるという御意見を頂いております。
 また,単年度から複数年度の平均へ,入学定員から収容定員にというところでございますと,学部単位の入学定員から収容定員で行う,また単年度ではなくて複数年度の平均を見ることにしてほしいというところ。また,私学助成とのリンクというところでございますと,入学定員ではなく収容定員で評価してほしいという御議論を頂きました。
 一方で,学部学科単位から大学単位というところに関しては,教員の専門性の確保や,学部間で定員未充足・超過があるにもかかわらず大学全体としては定員どおりということで本当によいのか,また学位の質保証という観点に問題があるのではないかということを御意見として頂戴しております。
 おめくりいただきまして7ページ目でございます。これらを踏まえまして,定員管理に関しましては,まず前提といたしましては政策的な取扱いと制度的な取扱いをきちんと分けて考える必要があるであろうと。その上で,私学助成や設置認可審査の際の取扱いに関して,大学設置基準に合わせて入学定員による管理から収容定員に基づく管理に見直すこととしてはどうかと。また,開設から完成の年度までの間の取扱いはどのように考えるのか。また,その次のところでございますけれども,学部学科単位から大学単位に収容定員を見直すことについては,学位の質保証の観点から懸念の声が示されているが,どのように考えるか。そしてこれらを踏まえまして,次のページにありますように定員の在り方を見直してはどうかと考えますがいかがでしょうかということで,8ページ目でございます。
 こちらのマトリックスの表ですけれども,制度と政策を分けて考える必要があるのではないかという御意見を頂いておりますので,まず法令及び運用,こちらが制度の方でございます。政策上の取扱い,こちらの方で設置認可審査の定員超過の際の取扱いや経常費の配分の部分ということで,分けて考えさせていただいております。
 上の部分,制度のところですけれども,大学設置基準に関しましては,現状といたしましては学科・課程を単位として学部ごとに定める収容定員に基づき管理が行われております。収容定員に応じ,専任教員数や校地校舎の面積,それぞれが算定されていると。また,設置認可申請については設置基準に照らして審査をすることになってございます。
 そこに対して課題という意味ですと,組織に着目した規定となっておりまして,プログラムを実施するための人員配置ではなく,組織を維持するための人員配置となりがちなのではないか。また,大学内での学部学科の再編が円滑に行いにくいのではないかという声が聞かれております。
 それらを踏まえまして,また前回の御議論を踏まえまして,見直しの方向性といたしましては,例えば現行の収容定員に基づく管理の在り方は維持しつつ,学部等連携課程制度の利活用を促進することによって学位プログラムとしての教育の質を維持しつつ,柔軟な学部学科の編成を促進することとしてはどうかと。また,設置認可の在り方に関しては,設置基準の見直しの検討に合わせて対応することとしてはどうかという形で案を作らせていただいております。
 また政策上の取扱いですけれども,まず設置認可審査の定員超過の際の取扱い,上の部分ですけれども,現状といたしましては平均入学定員超過率が一定以上の場合には認可しないこととなってございます。しかしながら,一部の学部で定員超過をしてしまった場合に,大学全体で新たな再編が行いにくいことが課題として挙げられております。
 それを踏まえて見直しの方向性といたしましては,平均入学定員超過率を平均収容定員の超過率に見直しをすることとしてはどうかと思っております。ただその際に,厳格な成績管理との両立を図る観点から,過年度在学生を含めた質保証の在り方に関しては別途検討することが必要ではないかと思っております。それによって柔軟な学部学科の編成を可能とすることを実現してはどうかと思っております。
 またその下の段,経常費の配分,ファンディングの関係でございますけれども,現状,私学助成に関して,また国立大学の運営交付金におきまして,学部単位・大学単位で収容定員や入学定員の超過率に応じて減額措置等の措置が実施されております。この課題といたしましては,過度な入学者調整,追加募集や合格者等のために,一部の受験生が不安定な状況に比較的長く置かれてしまう現状があるのではないかということが指摘されております。
 こうしたことを踏まえまして,見直しの方向性といたしまして,資源配分における算定の単位を,入学定員による単年度管理から収容定員による複数年度管理に見直しをしてはどうか。その際,定員管理が収容定員に一本化することになりますので,教育の質を確保するための収容定員管理の厳格化を検討してはどうかと。それによりまして,右側の最後,効果の欄ですけれども,大学にとって入学者調整の負担軽減となり,受験生にとっては不安定な状況が緩和される可能性があると。また,中長期を見据えた計画的な教育研究運営・投資環境の確保に係る,単年度あるいは突発的な事態の影響を緩和することが可能となるのではないかと考えてございます。
 これらを踏まえまして,先生方に是非御議論を賜れればと思っております。
 最後に10ページ目でございます。こちらは前回,論点としては提示していなかった論点となりますけれども,前回の議論を踏まえて今回新たに加えさせていただいております。前回の御議論の中で,定員管理を実施するに当たって,留学生や社会人を学生数の算定から除外すべきではないかと意見がありました。しかしそれを教育環境の確保という観点からどのように考えるのかという点に関しても,是非御議論いただければと思っております。
 観点といたしましては,下の網かけ部分ですけれども,多様性の確保による教育環境の高度化に関しまして,以前より留学生や社会人等の受入れを促進する観点で制度改正等がこれまでも行われてまいりました。それらを更に促進するためにはどのような方策が考えられるか。その際に,これまで先生方に御議論いただいた定員管理の議論の状況を踏まえまして,教育環境の確保との関係をどのように考えるのか。その辺りも踏まえまして是非御議論を賜れればと思っております。
 資料3-2に関しましては,前回定員管理に関する先生方の御議論を整理させていただいたものになってございます。また資料3-3に関しましては,事前にこちらの論点の資料を御覧いただきまして,先生方からお寄せいただいている御意見になってございます。これらも参照いただきまして,是非御議論を賜れればと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは議論に入りたいと思いますが,資料3-3に7名の委員が事前のペーパーを出されているのがお手元にあると思います。今日は残念ながら永田委員,土屋委員,古沢委員の3名が御欠席ですので,今ここにいらっしゃるのは4名となります。で,時間の問題もありますので,毎度そればかりですみませんけれども,まずこのペーパーを提出していただいた先生方から,本当に要点ないしは追加といいますか,ちょっと補足ということでできれば1分程度でコメントしていただいて,その後,ほかの委員も含めた議論にしたいと思います。その場合も発言はまず1分から1分半ぐらいのうちにまとめて発言いただくというふうにしたいと思います。大分押しておりますので,よろしくお願いいたします。
 ということでよろしければ,まず大森委員から一言といいますか,提出されたペーパーについて何か補足でもあればと思います。皆さん,一応目は通していらっしゃると思うので,要点をお話しいただければと思います。

【大森委員】  分かりました。ありがとうございます。
 定員管理の単位については,もう読んでいただいたとおりです。運用の部分の柔軟化ということで対応できるのではないかというのが私の意見です。やはり学位プログラムと定員は結構密接なので,そう簡単な話ではないのではないのかなと感じている。けれども,運用の部分はかなり柔軟化していくべきではないかと思っているということです。
 それからST比も,ST比が小さいからといって大規模授業ばかりがあるのだと意味がないので,その辺は考えなければいけないということを書きました。
 2番目,学生。定員の主体は学生ですけれども,学生については留学生を外出しする気持ちというか考え方はよく分かるのですけれども,一方で,例えばAPUのように非常に,留学生の数によってという言い方は語弊がありますけれども,教育の手法としてあるいはプログラムとして非常に有用に活用されているケースもあって,例えばあの大学が外ですよと言ったらこれは大変なことになるなというようなこともあるので,中に入れたいところ,外に出したいところ,一定の枠を取って大学のDPに応じて対応できるようなことができないかという柔軟な捉え方の提案です。
 それから留学生や社会人学生はパートタイム学生が結構多い場合もあるのだけれども,地方においてリカレントをやるときには,そういったパートタイム学生も一定数の時間数授業を受けているのであれば,定員に入れてもらわないと,地方の大学がリカレントに手を挙げませんよという話です。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。では曄道委員,お願いします。

【曄道委員】  ありがとうございます。
 私からは,所属しております日本私立大学連盟で平成31年3月に中教審での「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を受けて表明したものについて,資料として出させていただいております。既にこの部会での委員の方々の意見と重複するところも多々ありますが,一応まとめて御紹介させていただきます。
 一つは,定員管理の厳格化,これはST比率を向上させて教育の質を担保する効果がうたわれておりますけれども,一方で現在における日本の大学の改善点とも考えられる入り口管理から出口管理に移行することに対して,この定員管理が非常に阻害している面があるということです。ST比の考え方は,一般的には非常勤講師の数は含まない一方で,研究のみ従事する教員はこれに含まれているということで,必ずしも教育の質そのものを表すものではないことも留意する必要があろうかと思います。
 また,御承知のとおりで,学部ごとで管理されているといったことが非常にやはり動きを鈍くしておりまして,特に私学の場合には私学助成の配分それから設置認可の条件として,収容定員8,000人以上の大規模大学では1.1を超過した場合に,当該学部分の助成が全額不交付になる,あるいは大学全体として超過すると大学に対する補助が全て不交付となります。
 したがって,我々は非常に敏感にこれに反応せざるを得ないということで,先ほども御紹介があったように,入試に対する合格の出し方に非常に,先ほど過度な入試の考え方という紹介がありましたが,我々もそうはしたくないものの,やはり例えば補欠を頻繁に少しずつ出していくといったようなことで,相当な時間と労力を要している。一方で,受験生にとっては補欠合格というちょっと不本意な入学の仕方を多数に与えることになるといったような欠点もあります。
 それから,私大連のこの考え方は学生定員の管理を放棄するものでは決してありませんので,合理的な方法に見直していただきたいということ。特に学部単位の入学定員から大学単位の収容定員,あるいは単年度ではなく複数年度ということで,これも先ほどちょっと申し上げたのですけれども,学修者本位の教育を実現していく,あるいは出口管理に力を入れていくといったときに,こういった定員管理の考え方が影響を及ぼすのはよろしくないだろうと。特に文理融合とか,教育カリキュラムの改革を行うというところでこの定員管理が常に阻害の作用を働かないように,今後議論を進めていただければと思っております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは続いて宮内委員,お願いいたします。

【宮内委員】  この定員管理をフレキシブルにやるということは皆さんおっしゃるとおりで,それでよろしいと思います。この定員管理の裏には,マスコミ用語で言うところの官製カルテル的な意味合いがあると思います。有名大学等々に集中してしまうと,これまで支えてきた新設私立大学の経営を悪化させることがあり得ます。
 私が申し上げたかったことは,定員管理という分かりやすいKPIを契機として,退出を促す仕組みを作ることです。退出すべき大学,また創立者たちの意欲もなくなった大学等々がいっぱいあると思います。そういう大学を退出しやすくする,タオルを投げやすくする。地銀の再編等々が非常に我が国は遅れておりますが,これはまだいいですよ。経済団体だから。だけど,大学で中途半端な大学が残ってしまうと学生や卒業生には迷惑で,これが最悪だろうと思います。
 私は定員管理を議論の切り口とし,大学の再編,主として退出を促すための仕組みをつくりたい。例えば校庭の買上げ等々になりますが,かなり複雑な仕事が待っているかなと考えております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは米澤委員,お願いいたします。米澤委員は非常に長い,きちんとしたレポートを書いてくださっているので,1分というのは難しいかもしれませんが,お願いいたします。

【米澤委員】  ありがとうございます。細かい点は書いてありますので割愛させていただきます。
大きな点として,今,宮内委員がおっしゃったように官製カルテルというわけではないのですけれども,ある種の需給の調整みたいなことを,ここ数年間は18歳人口の減少局面の中でやってきたことのよさと,多分いろいろな矛盾みたいなことが出てきたというのが実態だと思います。ただ,これがもう続かないだろうということは多分コンセンサスとして皆さんあって,その点については全面的に賛成するところでございます。
 吉見委員が前回おっしゃっていただいた定員とは何かという問題提起は非常にやはり私も気になって,いろいろ調べてみましたし文科省も調べていただいたようですけれども,その中であえて言えば,需要が非常にあった時期には日本はこれを使って最も世界で有効な形での需給調整をしてきた国というプラスな面もあるのではないかと思います。ただ,その考え方が恐らく海外との関わるところでは徹底的に通じないという問題が今起きているのではないかと思います。それが一つはジョイント・ディグリーで,これはやはり考え方が全然違っていて,設置審を一つ一つ通していくような今のやり方はちょっともう無理があるかなというのが一点でございます。
 それから留学生の問題は,学生のファンディングの問題と定員の問題を分けて考える必要があって,場合によって定員は設けるけれどもファンディングをしないみたいなものを試験的にやってみることも検討していいのかなとは思います。
 それから最後に,学位プログラムについて現状で何もある意味では設置審は載っていないことがあって,ここがある意味で可能性はあるのですけれども,融通無碍になってしまっているところがあるのだと思います。これをただ,今みたいな学部学科のものを私は変更しなくていいと思いますけれども,それをただデュプリケートするような形でつくるのではなくて,もっと違う形での自由なものができる形で設計できるか。それに対して,あとは情報公開をきちんとして,特に海外の大学と,例えばST比でもいいのですけれども,比較できるような形での制度設計をした方がいいのではないかというのが,以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは議論を広げたいと思いますので,御意見,御質問のある方は挙手をお願いいたします。手短にお願いいたします。いかがでしょうか。
 日比谷委員,お願いします。

【日比谷委員】  ちょっと本部の会議の関係で入室が遅れまして,大変申し訳ございませんでした。
 今,米澤委員が御指摘になった問題につきまして,JDの審査にここ数年携わってきた立場から,強力なサポート意見を申し述べたいと思います。
 非常に申請をする大学にとってももう膨大な負担を要求するような審査になっています。かつ,これはやはり可能性のある大学がそれほど多いわけではないので,同じ大学から幾つも幾つも出てくるのですけれども,そのたびごとに,それこそ面積がどうしたとか教室がちゃんとそろっているとかいうところまで,もちろん基はあるわけですけれども,その書類がまたどさっと来てやっていくというのは非常に不合理だと思っています。
 それともう一つは,非常にこれは1対1でないとできない(音声途切れ)の海外大学は例えば5つぐらいの国とコンソーシアムを組むような形でジョイント・ディグリーを出しているのだけれども,こちらの大学は1対1対応をしなければいけないとなると,A・B・C・D・Eとある海外の大学のうち,例えばBならBとジョイント・ディグリーを日本のX大学は組むのですけれども,そこを通じてA・C・D・Eに何か行けるみたいなことが書いてあるのだけれども非常に無理があったりするので,ここは是非改善して,一定の条件を満たしている大学は1対1であっても1対多であってもかなり簡略化すると。その代わり,きちんと行われているかということをどこかでチェックすることは必要だと思いますが,設置認可はもっとずっと柔軟性を持たせた方がいいと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。では吉見委員,お願いします。

【吉見委員】  今,日比谷委員あるいは先ほど米澤委員おっしゃったジョイント・ディグリーについては私も全く同感です。
その上で,私が申し上げておきたいのは,まず,原理的に定員というのは,適正な学修者の数だと思います。グランドデザイン答申が言ったような学修者本位の教育というときの学修者,その適正な数を本来の定員として考えるべきだと思う。
 そうすると,当然ながらそのときの教育の質保証との関係が問題になってきます。こういう議論がどういうふうに入るのかが分からないので,今,質問のような形で問いを提起させていただくのですけれども。定員と教育の質保証をつなごうとするときに,現行で多分落ちているポイントが幾つかあって,一つは教員の質,クオリティーとの関係の問題。それからST比に関わるのですけれども,ST比とダイレクトに対応しない問題として授業の規模の問題があります。さらにもう一つは,これはますます難しいのですけれども,学生がどれだけ伸びたのかという学生の伸び代の問題。
 こういう教育の質保証を考えるときに必要な幾つかの問題が,学修者の数としての定員の問題とどう絡んでくるのかというクリアな構図がまだ見えていないのですね。どなたか,これについての有効な連立方程式を教えていただけると幸いでございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。浅田委員,川嶋委員が手を挙げていらっしゃいますので,浅田委員,お願いします。

【浅田委員】  ありがとうございます。
 定員管理の問題は非常に多岐にわたった要素が絡んでいて複雑で難しいので,前回もいろいろな先生のお話を聞きながら,自分の頭を整理し切れませんでした。複雑であればあるほどシンプルに考えるしかないかなと思っていまして,前回示されました見直しの基本コンセプトが2つあります。学修者本位の大学教育と社会に開かれた質保証,これに常に立ち返るしかないと思っています。
 この2つが出てきた背景を考えると,いわゆる学修者本位ではないからそれをちゃんとしましょうということで,では何本位かというと,教育者本位や経営者本位であるということが裏に言われているだろうと思います。社会に開かれたというのは開かれていない部分があるということで,社会が求める情報に十分にアクセスできない現状があるという,そこを言われているだろうと思います。
 定員管理に関していうと,定員を定めるのは大学です。大学自身が定員を定めて認可を得ていくという,そういうプロセスの中で,定員管理が不自由だからいろいろ問題があるというのが出ています。多くの方が言われていますように,今はもう学位の保証という意味での学位プログラムという概念が共通化しているので,学位プログラム単位での定員という概念は要ると思っています。
 大学ができるだけ自由度を増したいというこの要求も時代の流れとして必要だと思います。ただ,自由度を増すということは大学自身に責任が多くなることを常に考えなくてはいけなくて,例えばある学位プログラムの定員を学生が入ってこなくなったので減らしたい。で,あるプログラムは増やしたい。あるいは新たにプログラムを設けたい。そういう自由度をどんどん増やしていこうとしたときに,教育の質保証の責任は大学自身にあるので,例えば定員が減った学位プログラムの質保証,例えば教員の数,施設,教育内容そのものをどう保証するかは,大学がきちんと社会に示して,それを担保しなくてはいけない。学生が増えるようなところ,あるいは新たにつくるところは当然そういうものを全て大学の責任として社会への説明責任を求める必要があると思います。
 ただそれだけでは不十分なので認証評価があり,認証評価でも手に負えないものは文科省がしっかりとチェックして,先ほど退場というお話をされましたけれども,非常に悪質な場合はやはり厳しい措置も要るだろうと思います。
 大学が自由度を増やすことは,大体皆さん賛成されていると思いますので,それそのものは時代の流れに合わせて,より発展的に考えればいいと思うのですが,自由度を上げることと同時に責任が重くなるという,そこは常に一体化しておかないと,好きにしていいということになるとこれはもう大変なことになると思います。その自主規制をきちんとかける意味での質保証という概念をきちんと徹底させて,情報公開を徹底させて,その公開された情報がきちんとチェックできるようにする。そこまでの全体メカニズムを一体として整備してほしいなと私は思っています。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。川嶋委員,お願いします。

【川嶋委員】  今の浅田委員とほぼ内容は同じなのですけれども,これを考える際,2つの観点が必要かと思います。
 一つは,やはり大学のマネジメントの観点です。大学の持っているリソースをどのように活用するかということですが,大学のリソースといえば学生,教員・職員,それから土地・建物・設備,あとは予算ということになります。これが日本は伝統的にセグメント化されている。キャンパスの土地管理でも極端な話,大学の敷地のうち,ある学部はここからここまでが管理地であって,その隣は別の学部学科が管理する土地だということもあります。それと同じように大学の学生も本当に重要なリソースですが,やはりセグメント化されているので,大学として戦略を実行するには非常に足かせになっている現状があります。これはもともと日本の大学の成り立ちが帝国大学の分科大学から始まったので,そういうサイロ的な構造になっているところに源があると思います。ですから大学のリソースマネジメントの観点からすれば,定員とか教員とか土地・建物とかは全体で大学がきちんと管理できるようにする仕組みが必要だと思います。
 それに加えて,今,浅田委員がおっしゃったように,質保証ということが非常に重要で,これはもう先ほどからつとに強調されております内部質保証システムが鍵になります。大学が学生数を配分し直したり,教員を配分し直したりするときは,それぞれ各大学の責任においてきちんと質を保証していくという,その仕組みをきちんと確立していくことが不可欠です。例えば新しいプログラムを開始して,教員を再配置する際には,先ほど飯吉委員からも発言がありましたけれども,学内設置審査委員会のような仕組みをきちんと確立して,適切な先生がきちんと新しいプログラムに配置されているかといったようなことを確認する必要があります。それを今は認証評価で確認することになっていますので,大学の全体のリソースマネジメントと質保証と第三者評価,こういうものを組み合わせて学生定員の問題は考えていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。今,手を挙げていらっしゃるのは林委員,飯吉委員,濱中委員,前田委員です。時間は既に30分以上オーバーしておりますので,手短にお願いします。
 では林委員,お願いします。

【林委員】  2点申し上げます。どちらも質保証,質向上のインセンティブとの関係です。
 1点目は,浅田委員,川嶋委員がおっしゃったことのとおりでして,今,質保証,内部質保証がよくできていることによって,大学にとって何のメリットがあるかということをここの会議でもまた議論すると思いますけれども,それの典型的なものが,やはり学内での定員のフレキシビリティーをある程度のパーセントの上限つきで上げることだと思います。今,例えば学位授与機構だと基準の2-4で新しいプログラムをちゃんと学内で,ある種学内設置審査をやっているかというような基準になっていると思います。ただ現状,ほとんどなかなか機能していないと思いますけれども,そういうところがうまくできているところはフレキシビリティーを上げるのが一つの方法かと思います。
 それから2点目ですが,前回,私はこの会議を欠席したので分からないのですが,もしかしたら出ていない議論が,私はこの間まで国立大学運営交付金の配分の話に関わっていて,そこでもやはり教育の質が高い大学あるいは学部にどうインセンティブをつけるかという話があります。なかなか教育の質の評価でインセンティブをというと何か嫌な顔をされる方もいらっしゃいますけれども,もっと純粋に質の高い教育をしているところには今よりももっと学生を受け入れてもらって,質の高い教育の下で卒業してもらうということが当たり前のようにうまくいくような仕組みが欲しいということです。
 そうすると,やはり何らかの評価,それが認証評価かもしれませんし,国立大学の場合は法人評価とかそういうものもあるかもしれませんけれども,そういうところでよい評価が出ているところには上限を,例えば先ほどの上限120だとかあると思いますけれども,そういうものをある程度緩和して,もうちょっと高くして受け入れられるようにするとか,そういう措置をすることで教育の質を高めるインセンティブをつけていくことももっと考えたらいいのではないかと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  定員管理については,曄道委員が最後に言われていたように「学部単位の入学定員から大学単位の収容定員へ」ということに基本的に賛成ですが,幾つか懸念もあります。その一つは,定員管理の調整を巡って大学内で学部・部局間の争いが激しくなり永遠に戦国時代みたいになるのではないかということです。
 ただ個人的に考えるのは,例えば今回前半で「教育方法の柔軟化」の話がありましたが,現在は大学レベルで基本的には通学制か通信制かを決めていますが,このレベルを少し下げて,学部・学科・プログラムレベルで例えば通信制的な認可も少し緩和できないかということです。これと合わせて,定員を自由に大学内で采配することを可能にすれば,留学生をどのように獲得していくかについて,様々な対応が柔軟にできるようになるのではないか。故に,大学レベルでの収容定員に賛成なのであります。
 もう一つについては,米澤委員に色々と資料を出していただいた中,実員やファンディング,「その積算単位を定員及び定員管理ではなく,実員,教育成果としての学位授与に置くことを徹底すべきである」というご意見がありました。これは非常に実利的だと思いますが,例えばこういうものを導入する時に考えなくてはいけないのは,出口管理がやはり甘くなるという点です。学位授与数を上げるために「とにかく卒業させればいいでしょう」ということになれば,そこから質保証のシステムが大学内で揺らいでくる。収容定員の話もそうですが,浅田委員や川嶋委員が言われたように「各大学内での責任と質保証の確立,リソースマネジメントがしっかりできる」という前提が必要不可欠であり,その部分の保証が確立できれば,是非緩和し,大学単位の収容定員で定員管理をしていただければと思います。

【吉岡部会長】  では前田委員,お願いします。

【前田委員】  前田です。ありがとうございます。
 設置基準に関しては,今までは緩くなったら緩くなったなりにレベルが下がっていく大学が出てきてしまって,浅田委員がおっしゃったように内部質保証は非常に重要だということになると思います。定員管理については,アメリカでは聞いたことはないのですが,アクレディテーション団体のホームページをみると,学生数についてもいろいろなデータを大学に取らせていて,経年で見ることでアカデミッククオリティーのエビデンスにしています。大学にお任せではなく,アクレディテーション団体がデータ収集分析について大学を導いていくようなこともなされているようです。
 やはり定員だけでは考えられず,最終的には質ということになっていくので,学修成果というのはなかなか難しいにしても,それに近づけるような,大学がいろいろな努力をしているということを示せるような状況もつくってこれと組み合わせないと,定員管理の話だけではなかなか難しいという気がしています。

【吉岡部会長】  濱中委員,お願いします。

【濱中委員】  ありがとうございます。
 今の前田委員の意見とちょっと重なると思うのですけれども,やはりどういう情報を公表するかによって,定員含め,何をどう管理するのかというのは変わってくると思いますので,この部会でもいずれ情報公表のことは扱うと思うのですけれども,その際にまた改めてこの観点は取り上げるべきではないかということがまず1点目です。
 そしてもう一点,資料3-1で出していただいた8ページ目を見ますと,例えば政策上の取扱いで,一番下のところですけれども,算定の単位を「入学定員による単年度管理から収容定員による複数年度管理に見直し」という方向性を示した横に効果のみが記されていると,「何だ,こんな効果があるならやればいいじゃないか」という判断につながってしまう。そうではなく,効果もあるけれども,こういう懸念材料もあるということを併せて記していただけると,議論のベースとして役立つかなという気がいたしました。最後はお願いみたいなことになりますけれども,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  谷本委員,お願いします。

【谷本委員】  これまで複数の委員の先生方がおっしゃっていらっしゃったことを繰り返すことになってしまうかもしれませんけれども,定員の管理につきまして,やはり学部ごとに厳しく管理ということになりますと,規模の小さなところでは大変厳しい判断をしなければいけない状況になっております。ですので,教育の質保証,学生の学びの環境を担保するということからも,定員は学位プログラムごとに定めていくような形で,少し運用の部分で工夫をさせていただけるようにしまして,その運用の部分できちんと内部質保証をさせていただくような取組で考えていただけないかなと思っております。
 また,入学定員の内容と私学助成とのリンクというのが,また,制度の問題と政策というのが補助金の政策の内容と複雑にリンクしてしまっているので,やはりそれを別々に考えていくような,そこで,より教育のこととそれ以外のことというのを分けて考えるようにしていただけたらと思います。
 私からは以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 いろいろな意見が出ておりますけれども,1つは,先ほどの吉見委員の御意見というか御質問とも絡むのですけれども,恐らく,そもそもこの制度の発想は,やはり,学部とか,学科でもいいのですけれども,自分たちが,管理というのはよくないですけれども,自分たちのところの学生の教育環境を整え,教育ができるということの責任が,学科,学部というところで考えられている。それは教員の集団としての教授会がカリキュラム等も含めて,卒業の認定まで含めて,責任を持っているということと込みになっていると思います。ですから,定員管理の場合も,個々の授業が,例えば300人授業であるのか,二,三人のゼミであるのかということは一切関係ない――関係ないというのは変ですけれども,そういう問題ではなくて,やはり,学生の教育あるいは成長をつかさどる教員団の責任ということが,多分,背景にある。そのことは,やはり重要なことだろうと私は思います。それから,実質的にそれが大きく変わってきつつあるということを踏まえた上で,1つは,学位プログラムをどういう形で組み込むかということが重要になるだろうと思います。
 もう1点ですが,設置審をやっていますと,だんだん懐疑的になるところがありまして,今,設置審の審査で結構問題になるのは,新しい学部,学科ができてくるときに,ほかの学部,学科の定員が超過しているのではなくて,定員が非常に満たされていない大学が新しい学部をつくってくる。そこで多くの学生を集めようとしているということになると,学部,学科単位における枠の外し方の問題を,やはり,きちんと考えなくてはいけない。つまり,大学全体ということになると,先ほど言いました,それぞれの学部,学科が持っている責任というのが見えなくなる可能性がある。それから,学年が進行するにつれて,やめていく学生がたくさんいるような大学もあるわけで,そういう場合には,では,入学定員を少し多めに取っていいのかというと,やはり,そういう問題ではないだろうと。やや懐疑的な問題です。細かい,場合によってはさ末なことなのかもしれませんけれども,やはり,どの単位が教育を担っているのかということは念頭に置いておくべきではないかと思います。
 それと,先ほどありましたように,その問題が補助金事業と連動してしまっているというようなことが大きな問題になっているので,補助金と連動しているので大学単位にすべきだというのは,議論としては,ワンステップ飛んでいるのではないかと思います。やはり,分けて考えるという,谷本委員の御発言もありますけど,その辺も含めて,ちょっと整理する必要があるかなと思いました。
 ということで,すみません,最後に自分でしゃべっていて何ですが,今のところ,当初の予定より30分ずれ込んでおります。それで,この後,大学設置基準についての議論ということになっておりますが,定員管理の問題については一応一段落ということで,少し整理をした後で,また次回以降に,必要に応じて戻りたいと思います。それで,あと30分しかなくて,本来1時間取っている分を30分ですが,大学設置基準等についての論点の議論,議論までいかないかもしれませんが,大学設置基準と,それから,設置審査のシステムというのが実際にどう動いているのか,どこに問題があるのかということを,ここで勉強がてら議論をしたいと思います。
 事務局から,資料4についての説明をお願いして,その後,浅田委員が長らく設置審に関わっていらっしゃって,設置認可システムの構造についての資料を提出いただいているので,浅田委員の御意見を御発表いただいて,時間があれば,そこで少し議論をして,今日は終わりたいと思います。
 では事務局,お願いいたします。

【一色大学振興課課長補佐】  それでは,まず資料4-1に基づき,質保証システムにおける大学設置基準の性質・構造や役割,主な各種論点について説明させていただきます。
 まず,資料4-1の2ページ目を御覧ください。
 大学設置基準の性質ですけれども,上にありますが,学校教育法第3条において,「学校を設置しようとする者は,文部大臣の定める設置基準に従い,これを設置しなければならない」とされております。
 それを受けて,大学設置基準第1条第2項において,「この省令で定める設置基準は,大学を設置するのに必要な最低の基準とする」とされておりまして,同条第3項において,「大学は,この省令で定める設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより,その水準の向上を図ることに努めなければならない」とされているところでございます。
 次に,大学設置基準の構造ですけれども,大きく分かりやすく整理しておりまして,学内組織等の関係,教員の関係,施設等関係,教育課程関係等ということで大きく4つのカテゴリーに分けておりますけれども,そのうち,専任教員数,校地面積,校舎面積については,先ほど審議いただきました大学の定める収容定員から必要となる資源量がそれぞれ算定されるという関係となっております。
 また,私立大学等の設置に際しては,注釈を付しておりますけれども,設置基準における専任教員数や校舎面積,その他の施設について,標準設置経費・標準経常経費の算出根拠等としても活用されているところでございます。
 この設置基準の各規定,また,他の関連法令も踏まえまして,設置認可審査や設置計画履行状況等調査が行われておりまして,また,事後チェックとして,認証評価等において,法令適合性の確認等がなされている運用となっています。
 6ページ目以降に,参考として,設置基準と設置認可審査の関係がイメージしやすくなるようなものとして,各条項と審査時の申請資料でどういったものを確認しているかということを簡単に整理しておりますので,後ほど御参考にしてください。
 次に,3ページ目から4ページにかけて,今後,数回に分けまして,大学設置基準,また,設置認可審査に関連して,それぞれ詳細な論点について御審議いただくことを予定しておりますが,審議の最初に,論点全体像を示した方がより円滑な審議に資するだろうという観点から,本部会でこれまでに頂いた意見,また,昨年8月,9月に各大学団体から御提出いただいた意見,また,前回事務局より紹介いたしました産学協議会,教育再生実行会議,規制改革推進会議等の各種提言等を踏まえまして,学内組織に関する論点など,設置基準の構造に即して,関係する主な論点を整理しております。
 なお,各種提言や各大学団体からの御意見については,17ページ以降に抜粋等を記載しておりますので,後ほど御参考にしてください。
 これら論点全体像は,ある種,見取図として用意したもので,これ自体を審議するということではございませんけれども,簡単に御説明させていただきます。
 まず,3ページ目を御覧ください。学内組織に係る論点です。
 1ポツ目は,この後,御審議いただきたいと思っておりますけれども,設置認可の在り方についてです。
 2ポツ目は学内組織の役割等についてですけれども,組織的・体系的な教育課程の編成や運営,検証,見直しの必要性について,また,科目の大くくり化など,密度の濃い主体的な学修を実現するための体制の在り方。また,それらを支えるための事務組織・事務職員の役割等の見直し。
 3ポツに移りまして,ティーチング・アシスタントやスチューデント・アシスタントなど,教員以外の授業補助者の活用やチーム・ティーチングの必要性,教職員等の育成確保や,卒業や成績要件の厳格化等についてです。
 4ポツ目は学生からの視点ということで,学生への教育課程等の編成における参画の必要性。また,学生が持つ時間という有限の資源を,学修,アルバイト,サークル,就職活動等へ配分が行われているという実態を踏まえて,システムを見直すべきだという観点でございます。
 次に,4ページ目に移ります。
 ②として,教員の在り方ですけれども,本日,ちょっとお時間をいただけるかはありますが,教員の専任性の必要性について,御審議いただこうと思っております。次回以降,教員審査,教員資格の必要性,また,実務家教員等の定義等の在り方について。
 ③施設等の在り方として,校地・校舎面積や必置施設等の必要性,図書館や情報処理施設の在り方,また,既存教育資源の共有・活用についてです。
 ④教育課程の在り方として,遠隔授業については先ほど御審議いただいたところでございますが,次回以降,通学制・通信制の在り方,また,単位制度の検証や各種教育課程等に係る各基準の在り方。
 ⑤としましては,大学名称の在り方など,設置認可審査における基準のさらなる明確化や精選等について。
 また,⑥として,これら見直しを検討するに当たり,システム全体として質保証を担保する必要性からの論点でございます。
 以上,御紹介した論点以外にも,ここには記載し切れない,詳細な個別具体の論点もございますが,今後,設置基準,設置審査に係る個別論点別の審議を進める中で,個別具体に御意見等をいただければと考えております。
 続きまして,資料4-2について御説明させていただきます。
 資料4-2は,先ほど御紹介した各種論点のうち,先ほど御審議いただいた定員管理についても密接に関連する論点として,設置認可に関することと専任教員に関することの大きく2つについて御審議いただきたいと思っております。
 まず,2ページ目を御覧ください。
 設置認可の性質として,教育研究上の理念など設置の趣旨が具体的かつ明確に示されているか,また,設置の趣旨に照らし教育課程は適切であるか,教育課程を展開するのにふさわしい教員組織であり,かつ,校舎等施設・設備が質的,量的に十分であるかという観点から,大学設置・学校法人審議会で審査等が行われております。
 また,平成15年からは,大学が主体的・機動的・弾力的に組織改編できるよう,学問分野を大きく変更しない学部等については届出するという弾力的な措置が講じられているところでございます。
 その後,中教審の答申においては,やはり事後評価のみでは不十分ではないか,一定の事前評価は必要ではないかといった設置認可の役割・機能の重要性が指摘されているところでございます。
 次に,3ページ目に移らせていただきます。
 こうした設置認可制度の性質を踏まえまして,論点を3点掲げております。
 1点目は,そもそもとして,国が事前規制として設置認可を行うという制度についてどのように考えるかということです。さきに御紹介した設置認可制度の役割等の重要性を踏まえると,引き続き,一定の役割としての必要性はあるのではないかと事務局としては考えておりますけれども,本部会での御意見を伺えればと考えております。
 2点目に,適切に教育課程を実施する体制等を確認する観点から,教育課程を編成する単位で最低限必要となる教育資源を確認するという基本的な仕組みについてどのように考えるかということです。先ほど,学位プログラム,また,学部等の議論もございましたけれども,ここで特に確認いただきたいのは,正に責任を持つ主体としての教育課程を編成する単位と必要最低限となる教育資源の関係を確認するという仕組みについて,現行のままでよいかどうかという点でございます。
 2点目とも関連しますけれども,3点目としまして,学位分野を変更する場合も,設置認可が必要というのが現行制度でございますけれども,その仕組みについてどのように考えるかということでございます。
 これらは設置認可制度の基本的枠組みやシステム全体にも影響する論点であることから,皆様の共通認識を得るためにも御審議いただきたいと考えているところでございます。
 次の論点に移らせていただきます。4ページ目に移らせていただきます。
 専任制について,「専任」という概念ですけれども,従来,教育研究上必要な専攻分野を定め,必要な教員を置くという講座制,また,教育上必要な学科目を定め,必要な教員を置く学科目制において,専任の教授等が担当するとされるなど,教員組織における教育実施体制に関連して大学設置基準上規定がなされておりました。
 これら講座制・学科目制の規定は平成18年に廃止されておりまして,現在は,一般的な事項として,各教員の役割分担や組織的連携体制の確保,また,個々の主要授業科目については原則として専任教員が担当することなどが規定されているところでございます。
 「専任教員」の定義ですけれども,昭和31年の制定時から長らく,「教員は,一の大学に限り,専任教員となるものとする。」とのみ規定されておりましたけれども,設置審査手続の透明化を図る観点等から,平成15年及び平成18年に一定の見直しが行われて,現行の規定となっております。
 この資料の21ページ,30ページ,34ページに当該条項の主な変遷がございますので,後ほど御参考にしてください。
これら一定の見直しを行っておりますが,今も設置認可審査において,教員の専任制については,授業担当時数や給与等を勘案して個々の教員における専任性の確認がなされているのが現状でございます。
 次に,5ページ目を御覧ください。
 専任教員数でございますが,大学設置基準上,学生定員に応じた最低限必要な教員数を算定しております。
 平成3年の大綱化以前は必要教員数を授業科目ごとに区分して定めておりましたけれども,大綱化時に,「当該大学を置く学部の種類に応じ定める数」と「大学全体の収容定員に応じ定める数」の合計数をもって専任教員数の基準としております。
 また,専任教員数の半数以上は原則として教授とするという考え方は,今日まで維持されているところでございます。
 次に,6ページ目を御覧ください。
 組織的な教育実施体制について,学修者本位の教育を実現するためには組織的な教育の実施が必要であると,先ほども様々御審議いただいたところでございますし,また,中教審の答申等においても様々指摘がされているところでございますし,近年でも教学マネジメント指針において同様の指摘がなされているところでございます。
 一方で,設置基準を見ますと,「教員の適切な役割分担の下で,組織的な連携体制を確保し,教育研究に係る責任の所在が明確となるように教員組織を編成する」。「大学は,当該大学,学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し,体系的に教育課程を編成する」。「大学は,教育上主要と認める授業科目については原則として専任の教授等に担当させる」など,全体として組織的・体系的に教育課程を編成・実施する概念は含まれておりますが,実際にどの学内組織がどのように担うのかなどの関係性については必ずしも明確になっていないところでございます。
 また,その際,事務組織も重要な役割を担うことが期待されておりますけれども,教育課程の編成・実施等における具体的な役割というのは必ずしも明確になっているところではございません。
 次に,7ページ目を御覧ください。こうした背景,課題等を踏まえ,専任教員に関する論点を整理しております。
 まず1点目ですが,「専任」の判断性は現在も基準上明確ではなく,講座制等の教員組織を前提とした仕組みは現在の基準上廃止されていることを踏まえ,「専任」の概念から転換し,最低限の教育資源としての教員数を算定する観点から,より客観的な定義に見直す方向としてはどうかという御提案でございます。
 その際,教育の安定性・継続性や組織運営上の必要性の観点から常勤性を考慮するとともに,ICT技術の発展に鑑み,他大学を本務とする非常勤教員もチームの一員として授業を行うことなどが想定されますことから,実際に教育を担当する業務量に基づく柔軟な算定方法が行えるよう定義を見直してはどうかということでございます。
 この場合において,見直し方の例として,参考として2つ掲げさせていただいておりますが,1点目は,本務教員で原則整理としつつ,兼務教員についてもフルタイム換算により,教員数を算定するといった方法が一つ考えられます。
もう一つは,専門職大学院のみなし専任教員規定のように,「主として教育に従事する教員」として整理し,年間一定単位数以上の授業科目を担当する人数で整理するという考え方などが考えられるかと思います。
 こうした見直し方そのものについて,また,見直す場合の具体的な定義の仕方について,御審議いただければと考えております。
 次に,8ページ目でございますが,こうした見直しと併せ,個々の授業科目を1人の専任教員が担当するという科目主義的な考え方から,組織的かつ体系的な教育課程編成の下で,必要となる授業科目の開設やチームとして教育を実施する体制に転換していくという方向で見直してはどうかということです。
 そして,専任教員の定義変更に伴い,算定する教員数の基準についても見直しの検討が必要となりますが,その見直しの例として3点掲げております。
 1点目は,現行の別表で教員数が定められておりますけれども,今の各分野別に必要な教員数を定めているものでもあり,その数をそのまま活用するという考え方でございます。
 2点目は,この際,改めて分野別に別表を見直していくかということでございます。その場合,分野別に専門的見地からの審議が必要となると考えられますけれども,どのような形で,いつまでを目指して議論するかといった点についても御意見をいただければと思っております。
 3点目は,今の別表ではなく,卒業修了に責任を持つ体制の確保という観点から,指導可能な学生数の上限値を基準として定め,学生数に比例的に最低教員数を算定するという方法が考えられます。現行でも,分野によらず,別表で定める学生数を超えた収容定員を定めている大学においては,収容定員400人につき,専任教員3人を増加するという考え方がなされております。
こうした算定方法の変更について,専任教員の定義の変更における考え方と併せて御審議いただければと思っております。
 なお,17ページから19ページにかけて,学校基本調査又は学校教員統計調査を基に,教員に関する参考データを掲載させていただいております。国公私別の本務教員数や兼務教員数,教員1人当たりの学生数,分野別や大学規模別のデータ等を掲載しておりますので,審議の際,御参考にしていただければと思っております。
 最後に,9ページ目,本日,直接の審議の対象ではございませんけれども,次回,関連する論点として掲げさせていただいているものでございます。審議の際に御参考にしていただければと思っております。
 以上,駆け足で大変恐縮ですけれども,事務局からの説明とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。多分,聞いてもよく分からない方もいっぱいいらっしゃるのではないかと思いますが,事務局で,論点として,こういう考え方があるのではないかと,かなり細かいところまで出してくださっていますので,今後,議論の中で,少しずつ,こういうところに踏み込んでいきたいと思っております。
 それで,浅田委員のお話を伺いたいと思います。今18時20分で,既に2時間20分やっておりますので,この後の議論というのは,皆さんも疲れておられると思うので,余りやるよりも,浅田委員の議論を伺って,分かりにくいところを少し質問して,今日は一旦閉じた方がいいのではないかと思います。疲れて議論をしても余り生産的ではないという単純なことですけれども。ということで,浅田委員,すみません,お願いいたします。

【浅田委員】  ありがとうございます。時間が余りないですけれど,資料5を提出させていただきました。
 実は,質保証システムの議論をすると,内容が物すごく多岐にわたっていて,自分自身の頭を整理しなくてはついていけなくなったというのが,この図を描いた意図です。設置審査とアフターケア(AC)と,それから認証評価に一通り関わってきて,どういう関係性とか,どういう役割分担をしているかというのを1ページ目に書いております。
 大学が内部質保証をしなければならない,これは当然ですが,文科省に対しては,申請と届出をして,それに対して認可,ACが大学に対して行われる。認証機関に対しては,自己点検評価を提出して適合判定を受けるという,その関係ですけど,大事なことは,大学に主体があって,大学自身が内部質保証を徹底してやらなければならない,これがまず大前提です。ただ,やはりそれだけでは不十分なものがあるので,質保証システム全体としては,外部質保証として機能している文科省であり,認証機関である,そこのところがうまくバランスを取って機能しなくてはいけないなというのがここで書いた意図です。
 もう一つ,社会に向かって情報公表という矢印を3つ出しているのですけれど,実はそれぞれから情報が公表されているのですが,これが一体化されていないというのは大問題だと思っています。実は,大学ポートレートという試みがあるのですけど,残念ながら,あれはまだ十分機能していないと思っています。社会から,あるいは受験生など様々な関心を持つ人たちが大学に関していろいろな情報を得ようと思うと,まず,大学のホームページへ行くのはいいのですけれど,例えば,その大学が設置認可あるいはACにおいてどのような審査を受けて,どういう結果が出ているかというのは,文科省に行けばあるのですけれど,つながっていない。それから,認証評価の結果も,当然,認証機関が全部公表してくれているのですけど,それを載せている大学もあれば載せていない大学もある。だから,これが完全に一元化されて,大学をたどっていけばこういうものが全部含めて見られるような大学情報ポータルサイトが,やっぱり,きちんと整備されてほしいなと思っています。というのは,あっちも見,こっちも見,なかなかたどり着けないというのは,やはり情報を公表して,社会の目に堪え得るものとしては不十分なシステムになっているのではないかということで,ここに書いたのはそういうことです。
 次のページ,表を書いています。これがいわゆる外部質保証としての設置審査があって,ACがあって,認証評価という,この3段階ですが,実はこれ,結構,性質が複雑に絡んでいるので表にしてみたものです。
 まず,段階として,設置審査は計画段階を見ている。ACは初期段階で,認証評価は定常状態ですね。
 組織としては,設置審査とACは文科省がしていて,認証評価は第三者機関である認証評価機関が行っている。
 事前・事後で言いますと,計画審査である設置審査は事前であり,ACと認証は事後になっています。
 基準として共通しているのは大学設置基準ですけれど,前の2段階は,いわゆる大学が出した設置計画を基に全部チェックします。それに対して認証評価は,それとは別に,機関が設定した大学評価基準というもので評価をしている。当然,そこのところで違いがあります。
 もう一つ,内容というところで少し細かく書いたのは,私がいろいろ考えていて,なかなか整理がつかなかったので書いてみたのですけれど,まず,当然,教育(研究)の審査をするのですが,(研究)となっているのは,実は教育機関としての審査はしっかりするのですけど,研究機関としての審査はかなり弱い,あるいはほとんどできていないというのが1つ大きな問題だと思っている。
 次,財務と書いたのは,何でこれが入ったかというと,実は,ここのところは国公立と私立は違う。設置認可のときも,学校法人分科会というのが私学の財務をチェックしておられますが,国公立は,そういうプロセスはないですね。ただ,認証評価では財務もきちんとチェックしなさいという項目が入っています。ここのところ,なかなか難しいなと思っているのは,財務に関しては,国公立と私立では,大分,重要性,内容が変わってきます。国立大学法人と公立大学法人は,法人評価で財務を見ていて,私立大学は私学事業団が財務を見られているので,それらとうまく連動して認証評価に接続ができるといいのではないかということで,財務の項目を出しました。
 それから,教員資格を書いたのは,資格審査は文科省がやっていて設置認可とACのところではチェックできていますが,実は教育の質保証で非常に重要な要素である教員の質と量の量は大学設置基準で書いてあるのですが,質のところはチェックできていない。これは認証評価でもやられていないと思います。これ,実はすごく大事な教育の質保証の原点だと思うのですけれど,実は大学が設置,認可を経て,完成年度を迎えると,大学自身が自律的に教員審査をするという立てつけになっているのですが,残念ながら,十分機能していない大学が現実にあります。この部分って結構大事ですけれど,実際にACなんかをやっていてもそうですけど,悪質で重大な問題を抱えた大学は必ずある。そういうところに関しては,かなり強制的な力が働かなくてはいけないなと思っている。
 下に「権限」と書いていますが,権限があるのは文科省ですね。一方で,認証機関は強制力を持たないので,例えば,不適合を受けたら別の認証機関に移るなんてことができてしまうような今の立てつけは,やはり,大問題だと思う。
 実態把握に関して言うと,実は設置認可,かなり強力なことをされているのですが,計画段階ですので,ほぼ現状把握ができない。つまり,もっと言えば,うまく書けば通ってしまう,あるいは,いろいろ意見をつけられたものを,そのとおりですと直していけば通ってしまうという,その弱さがどうしてもあります。
 それに対してACは動き出したところを見るので,まず,事実が見えます。例えば,学生定員がきちんと確保されているか,教員がきちんと着任しているか,講義がきちんと開かれているか,そういうことも含めて全部チェックできるので,強力に,しかもここでは是正もできる強力なものです。
 認証評価も実態を全部調べられますので,そういう意味では実態把握はできるのですが,残念ながら,それに対して強制的に,ここを直しなさいと言えないところが弱い。そういう意味で,全体として,外部質保証のシステムは,やはり要ると思う。そのときに,認証評価にかなり頼っている中で,そこで持て余す部分についてのきちんとしたフォローができるようなシステム構築をしなくてはいけないなというのが,私がこの辺り関わってきた感想です。
 私からは以上です。

【吉岡部会長】  浅田先生,ありがとうございました。
 ということで,今,18時30分になってしまいました。中心的な議論は,やはりこの次に送りたいと思いますけど,今の浅田委員の御発表と,それから,その前の事務局のことで,これから次の時までに理解するというのが皆様の宿題になると思いますけれども,今のところで質問しておきたいということがあれば,質問に限ってということで御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 瀧澤委員,お願いします。それから,杉谷委員が挙手をされました。
 では,瀧澤委員,お願いします。

【瀧澤委員】  素人の質問ですいません。ACというのは何の略でしたっけという言葉の質問ですけれども。

【吉岡部会長】  どうぞ浅田委員,浅田委員がずっとやっていらっしゃったので。

【浅田委員】  事務局から説明いただいて。

【吉岡部会長】  では,事務局から。

【一色大学振興課課長補佐】  資料4-1に正式名称が書いてありますけれども,設置計画履行状況等調査の略になります。

【吉岡部会長】  直接,英語として正しいかどうか分かりませんけど,たしか,このACは,もともとはアフターケアですよね。多分,それでACと言われていますけれども,要するに,認可後の完成年度までの間をチェックしているということで,本当の意味ではアフターではないわけですが,認可されてつくられた年から最初の卒業生を出すまで,その間をチェックするという意味です。

【瀧澤委員】  すいません,ありがとうございます。

【吉岡部会長】  杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】  すみません,質問ではないのですが,事務局にお願いということで。大学設置基準を検討する際に,先ほどの図ですと,ちょっと漏れているものもあるのではないかなと思われます。例えば,目的に関するところとか,入学者選抜に関する条項とか,さらには設置認可の際に,設置基準だけではなくて,学校教育法施行規則とか,そういったものも非常に重視されますので,その辺りの情報も含めて考えないと,単純に設置基準の問題だけで考えていいのか,それ以外の法令等で補則されているのかどうかというところを確認すべきだと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。それでは,事務局で,少し資料を整理していただければと思います。恐らく,設置基準の当初の考え方は,要するに,ある種の自由市場のようなものを考えて,そこの市場に乗っかっていく最低限の線を引くというのが設置基準で,したがって,設置基準のはじめのところに,これは最低限だということが書かれているわけです。ただ,実際問題は,その後,内部質保証の問題であるとか,具体的な質保証をどうしていくかということで,設置審査自体では3ポリシーをかなり重視した議論がされ,それに基づいた仕組みができているかということについて,そういう意味では,かなり個別的な審査が行われているということです。ですので,当初の考え方から,あるいはそもそもの考え方と実際の動き方,それから,それに対応する大学の行動の仕方というのも随分多様化していると思います。それを含めながら,一方で大学の設置基準が持っている歯止めとしての側面ということも重要であるのと同時に,質保証を具体的にどういう形でやっていくのかということを考えていく。ただ,この会議自体はシステム部会なので,それを制度の制度として考えていく。ただ,制度として考えるということは,必ずしも最低限を決めればいいということではないので,どのような形で質保証のシステムをつくるかというところを考えながら議論していく必要があると思います。あらゆる問題が今ここに集中しているという気がいたしますが,そのことも踏まえて,次回に議論していきたいと思います。
 何か是非という,ごめんなさい,前田委員,お願いします。

【前田委員】  時間がないところ,申し訳ありません。浅田委員に御確認させていただきたいのですけれども,先ほどの表の中で,教育のところに括弧して研究とあって,研究の評価がないことが大変問題だとおっしゃっていたのですけれども,これは大学としての研究活動という意味でよろしいでしょうか,それとも,教員の研究活動といいますか,バックグラウンドとしての研究という意味でしょうか,考えるための資料にさせていただきたいので,教えていただければと思います。

【浅田委員】  よろしいでしょうか。

【吉岡部会長】  はい,どうぞ。

【浅田委員】  ここで書きましたのは,いわゆる大学は教育研究機関として常に言われるのですけど,設置審査にしても,大学設置基準にしても,基本的に教育機関として,かなりしっかりとチェックがされる。認証評価でも教育機関としての評価がきちんとされている。でも,研究機能は,明示的に扱われているところがなくて,国立大学の法人評価では教育研究評価ということで研究評価がされていますし,認証評価機関によっては選択評価の形で研究機能を評価されているところがあるのですけど,実は,この質保証システムの中で,研究というところをきちんと扱ったような仕組みには埋め込まれていないなというのが,ここの問題意識として書いたものです。実はそれを扱うのはすごく難しいので,認証評価に分野別評価が入ってこないと,恐らく,認証評価に全部かぶせるのは不可能ではないかなと思っています。認証評価では大学全体の内部質保証が重点化されたので,内部質保証ができていれば,多分,いろいろな部局があっても,そこもきちんと管理できているというのが前提になっていますけど,実態としては,やはり分野別で,その分野の教育あるいは研究の質というものをきちんと見ていく仕組みが整備されていかないと,ここは難しいかなという思いで括弧をつけたという意味です。
 以上です。

【吉岡部会長】  よろしいでしょうか。
 一方で,大学が教員採用するときには研究歴ばかり見ているという問題があるという,実はそのことと裏腹だろうと思います。教育と研究の両輪という言い方もされますけれども,そのことも踏まえて,ちょっと考えていく必要があるだろうと考えます。
 よろしいでしょうか。
 本当に盛りだくさんで,どうしていいか分からないような気がいたしますけれども,今日の議論は幾らか整理されてきたなと思うところもありますので,事務局でこれを整理し直してくださると思います。
 それでは事務局,今後の事務的なことについてお願いいたします。

【堀家高等教育政策室室長補佐】  事務局でございます。
 先生方,本日は遅い時間まで非常に活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。
 次回の質保証システム部会につきましては,8月4日水曜日の16時からを予定しております。開催方法,場所等につきましては,追って御連絡させていただきます。
 なお,本日,時間の都合上,御発言できなかった内容等につきましては,事務局宛てにメール,書面等で御連絡いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。委員は全部で21人,それだけたくさんのメンバーで動いているということもあって,発言の機会が短くなってしまうことがあると思いますが,その分,レポートを出していただくとか,お願いできればと思います。
 あと,これからの議論の基礎的な資料は今日随分出ておりますので,復習と予習をしていただければと思います。
 ということで,何か御質問等はございますか。
 よろしいでしょうか。
 そもそも,長く時間を取ったのを更にオーバーしてしまって,大変申し訳ございませんでした。これにて今日の審議会は終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


 

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