質保証システム部会(第6回) 議事録

1.日時

令和2年12月23日(水曜日)10時~12時

2.場所

WEB会議

3.議題

 (テーマ)質保証システム全体を通じた考え方、「質が保障されている大学」について
     (1) 学修成果の保証や質保証を担う人材について有識者ヒアリング
     (2) 通信制大学の質保証について有識者ヒアリング
     (3) 意見交換
     (4) その他
 

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(委員) 永田恭介,日比谷潤子の各委員
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,
長谷川知子,濱中淳子,宮内孝久の各委員
(専門委員)古沢由紀子,大森昭生,小林浩,林隆之,前田早苗,吉見俊哉の各委員
 

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,淵上高等教育企画課長,吉田専門教育課長,
森下大学設置室長,奥井高等教育企画課長補佐,一色大学振興課長補佐 他
 

オブザーバー

独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 森 利枝 教授
山形大学学術研究院 浅野 茂 教授
公益財団法人私立大学通信教育協会 髙橋 陽一 理事長
放送大学 岩永 雅也 副学長
 

5.議事録

【吉岡部会長】 おはようございます。所定の時刻になりましたので,第6回質保証システム部会を開催いたします。御多忙の中,御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は,新型コロナウイルス感染症対策のため,Webexによるウェブ会議として開催し,その様子をYouTubeライブ配信にて公開いたします。会議資料,音声など,皆様御準備はよろしいでしょうか。
本日は,学修成果の保証や質保証を担う人材に関するヒアリングのため,独立行政法人大学改革支援・学位授与機構より森利枝教授,山形大学より浅野茂学術研究院教授,通信制大学の質保証に関するヒアリングのため,公益財団法人私立大学通信教育協会より高橋陽一理事長,放送大学より岩永雅也副学長に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議事に入る前に事務局から連絡事項をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課長補佐】 失礼いたします。本日,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,挙手マークのボタンを押していただき,部会長から御指名されましたらお名前をおっしゃっていただき,御発言をお願いいたします。また,御発言後は,再度挙手マークのボタンを押して,表示を消していただきますようお願いいたします。発言時以外は,マイクをミュートにしていただくよう御配慮いただけますと幸いでございます。御不都合等あるかと思いますけれども,御協力のほどよろしくお願いいたします。
会議資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしておりますので,御確認をお願いいたします。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,議事に入ります。本日も前回に引き続き「質保証システム全体を通じた考え方,質が保証されている大学」をテーマとしてヒアリングを行い,その後,意見交換を行います。
第10期中の大学分科会質保証システム部会の進め方を資料1としてお配りしています。前回の当部会での議論を踏まえ,波線部分にありますとおり,本日,通信制大学の質保証に関して,また,次回において学生調査を活用した質保証,情報公表に関して有識者をお招きしてヒアリングを行うという構成にしております。
前回の主な意見は時間の都合上説明を割愛いたしますので,適宜資料を御覧になって,議論の前提としてください。
それでは,最初に,独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の森利枝教授に御説明いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【森教授】 大学改革支援・学位授与機構の森利枝でございます。本日は,アメリカの高等教育におけるCompetency-Based Educationの展開について御説明いたします。
2013年のオバマ大統領のスピーチを御紹介することから御説明を始めたいと思います。当時アメリカでは,高等教育修了者が大きな奨学金負債を負って卒業していること,そして,それが焦げ付く可能性が高いことが社会問題となっておりました。
それに関連してオバマ大統領が打ち出した三つの政策について,主にアメリカの大学生をオーディエンスとして行った説明を御紹介いたします。まず一つ目が,新しい大学の格付システムです。これは今まであったような授業料や寮がどれだけすてきか等といったことではなくて,学生の卒業率や奨学金の返済額の妥当性,就業可能性,あるいは卒業後どれほど「よい仕事」に就けているかに注目するというものです。
二つ目は,イノベーションによる学費の抑制というものです。これはオンライン教育を拡大するとともに,学生が授業内容を既に理解していて,能力,すなわちコンピテンシーを証明できれば,決められた時間を教室で過ごすことなく迅速に単位が修得でき,修業期間が短くなるので,学費を低減できるようなシステムというのを促進するということです。
三つ目が,連邦奨学金の所得スライド式返還方式なんですけれども,これはこの当時既に導入されていたものです。
本日は主に二つ目についてお話しいたしますが,その前に当時のアメリカの状況について簡単に御説明したいと思います。3ページのグラフは70年以降の連邦奨学金総額の推移を示していますが,2008年のリーマン・ショックの年はぐっと上がっていました。オバマ大統領のスピーチは,2010年にピークを打った後,この総額が減ってはいたんだけれども,まだ定常というか,リーマン・ショック前のレベルには戻っていないという状況の中で行われたものでございます。
一つ目の提言であった新しい大学の格付のシステムはCollege Scorecardというもので,2015年に公開されたものです。連邦教育省が公開しました。学費や卒業率,入学10年後の収入,平均奨学金返済額等の量的な情報が入っていました。これが公開のされたのは画期的なことでしたが,量的情報に偏り過ぎていて個々の大学の文脈が無視されている,連邦奨学金を受けた学生のデータに限られていて,奨学金を受けていない学生のデータがない,更に入学10年後の収入等は専攻分野ごとに違うはずなのに,それを機関で丸めているのは余りにも乱暴である等の批判が出ました。
6ページが,オバマ大統領が始めたCollege Scorecardなのですけれども,最近になりまして,2017年に機関間比較の搭載ができました。そして2019年,トランプ政権下で,機関レベルのデータに加えて,専攻分野ごとのデータも異なる枠組みとして提供できるような新しいバージョンになりました。所得は課程修了2年目のデータです。まだいろいろと批判されていることに全て応えているわけではないんですけれども,情報は精緻化されています。
College Scorecardが行ってきたことを7ページにまとめていました。個別機関のコスト,卒業率,リテンション率,転学率,その他入学選抜度・共通テストの点数などを公開しています。特に新しいのは,卒業後の所得と奨学金の返済額に関する情報が出たということです。オバマ大統領は当初,高等教育機関を数値により格付したいという政策上の目標があったわけですけれども,これはまあまあ実現したと言えます。機関比較を可能にして進路選択に資するという政策上の目標がほぼうまくいくような仕掛けができたということでございます。
先ほども申し上げましたけれども,College Scorecardはオバマ政権下で機関レベルの情報で開始され,トランプ政権下で専攻分野レベルの情報に細分化いたしました。
この一連の動きは,学修成果そのものとは言い難(がた)いですが,連邦政府として高等教育の効果と認識しているものはどういうものかという,その項目の実質的なマニフェストであると捉えることもできるのではないかと思っております。
ここからが本題ですけれども,イノベーションによる学費の抑制,これがCompetency-Based Educationの話になります。このCompetency-Based Educationが何かと申しますと,先ほどの2013年のオバマ大統領のスピーチでも触れられていましたが,アメリカの高等教育史をひもときますと,学生の能力いかんで単位などの証明を得るまでの時間を短くする,あるいは長くするという試みが1960年代に既に始まっていたと言われています。
端的に言うと,学生が定められた領域における能力を有している,あるいは獲得したことを証拠立てられれば大学が単位を与えるというプログラムであって,学修時間によらず,能力の直接評価によるものです。ですので,職場や家庭に責任を持つ成人学生との親和性が高い,あるいは達成すべき学修成果があらかじめ設定されているのは従来の教室型のプログラムと同じなのですけれども,このCompetency-Based Educationは名前のために少し誤解を受けがちです。最も典型的な誤解は,既存の科目や教育内容を個々人に合わせてカスタマイズするものであるというものですが,そうではなくて,むしろ現有の学力と達成されるべき学修成果までの差分,その差分を埋めるペースが学生によって異なるということに着目した仕組みであると言えると思います。
ですから,このCompetency-Based Educationは,1時間の授業内学修に対して2時間の教室外学修を15週繰り返すと1単位出るといういわゆるアメリカ発祥の単位制度を体現するプログラムとは全く異なるものと言えると思います。
11ページに簡単に展開の歴史を示しております。これに関しては詳しくは申しませんけれども,ごく最近になりまして,このCompetency-Based Educationプログラムの認定を連邦奨学金の受給対象にするというように要件が緩和されました。サブスクリプション型のCompetency-Based Educationのプログラムの学生にも連邦奨学金の受給資格が発生するように規則が改正されまして,来年からこれが実現されることになってございます。
サブスクリプション型のプログラムは,Competency-Based Educationに特有の単位修得の形態で,伝統的単位制度と比べて,CBEでは学修にかける時間の制約が緩やかであるため,一定期間に修得できる単位数や履修できる授業科目数を制御するという従来型のコントロールが利きにくくなっております。
したがって,Competency-Based Education提供大学の多くは,一定期間ごとに定額の学費を徴収して,その期間の間は幾らでも単位を取ってもよいというような仕組みを導入しております。
例えば,Southern New Hampshire Universityという私立大学において,このCBEのプログラムの学費は半年で2,500ドルで,普通の私立大学の学費を考えると大変安く,その期間内に修得できる単位数に上限はないということになっております。
中身はどんなものかをお示しするため,13ページに図を用意いたしました。これはヘルスケアマネジメントの学士なのですけれども,120単位分の卒業要件を,例えばGeneral Studies42単位,ヘルスケアマネジメントの準学士レベルのコンピテンシー,それからヘルスケアマネジメントの学士レベルのコンピテンシー51単位,Concentration9単位というように分かれていますが,例えば,図の左上にありますように,科学技術に関する複雑な問題に倫理の視点を適用できるという能力を持っていると判断されれば1単位与えられる。あるいは,Concentrationのところにある公衆衛生における感染学の役割を説明できると判断されれば,また1単位得られる。こんな形で120単位修得して学士が得られるというようなプログラムになっております。
したがって,14ページの図を御覧いただきたいのですが,伝統的な単位制度は,AさんからJさんまで10人いたら,全て同じペースで15回,15週勉強すると達成するべき学修成果が得られるけれども,CBEの場合は,初めから個々の学生の能力が異なっているということを前提にして,その既得の能力によってスタート地点は異なり,ゴールに至る速さも違うというモデルであると言えると思います。したがって,有職者など成人学生の学修のモードと親和性が高いということが言えます。
それで,ここで気になるのは,学生が,例えばさっき言ったような,公衆衛生における感染学の重要性を説明できる能力を持っているということはどのように評価できるのか。すなわち実際のCBEプログラムはどのように運営されているのかというところかと思います。
そこで,16ページからはCBEに関するプログラムの実態調査を御紹介したいと思います。昨年3,000以上の機関に調査して,回答機関が608しかなく,かつCBEプログラムを導入済みの大学は64機関しかないという状態ですけれども,データをお示しします。まず,設置形態に関しては大体非営利の私立,営利の私立,そして,公立の4年制と2年制でそれぞれ大体4分の1ずつになっております。そして,大体学士,あるいは学士ないし準学士のプログラムが提供されていることが分かります。導入の動機については,18ページのとおりです。提供されている専攻の分野に関しては,19ページのとおりです。
20ページの表に着目すると,教員と職員の責任のシェアに関して,学生への直接の指導や学生の達成の評価は,主に教員が行っている。つまり,新しいイノベーティブなプログラムだからといって,取り立てて伝統的な大学教員以外の職業の人はアドバイスやコーチはするけれども何か評価をしているということではなく,指導,評価等は教員の仕事であるということが分かります。
さらに,このCompetency-Based Educationプログラムを質保証する上では,教育省から各アクレディテーション団体に特別な要請が来ており,21ページの2ポツですが,CBEの学生が資格のある教員と接触できることを確認することとあります。この資格のある教員とは,適切な学位と当該領域の知識の応用の経験を有するとアクレディテーション団体が認めた者を指します。コーチやアドバイザーは重要かもしれないけれども,最終的な評価や重要なアドバイスは,教員が行うべきということです。教員と定期的かつ相当量の接触ができるようにプログラムが構築されていなくてはならないと決められています。
このように見ていきますと,イノベーションを主眼としたCompetency-Based Educationで達成されるべき学修成果は,大学が特定しています。そして,課業を定量化するに当たっては,伝統的な単位の考え方が使われております。例えば,Southern New Hampshire Universityは当初,単位制を用いずに能力コンポーネントという,能力あるいは学力のグループのようなものを達成し,それを積み重ねれば学士や準学士を与えるという設計であって,単位を与えるということではなかったのですけれども,プログラムを申請するときには,連邦教育省とアクレディテーション団体に対して,この能力のコンポーネントが何単位分であるかということを説明しなくてはならないというつくりになっていました。
また,資格のある教員による助言と指導と評価が必要であるということは先ほど申し上げたとおりです。
これに関して,私はウィスコンシン大学というところのCompetency-Based Educationのプログラムの学部長先生にお話を聞きました。この評価というのは大変難しいものではないかと尋ねたところ,大学の教員は学生を評価する経験を積んでいるので,CBE,Competency-Based Educationの評価は,方法は違うけれども,本質は通常の授業の学期末の評価との大きな差はないと仰(おっしゃ)っていました。
私が勤めている大学改革支援・学位授与機構の学位授与事業でも,恐らく同様の現象が起きているかと思います。つまり,会ったこともない学修者の単位修得と,レポート,試験だけを見て学位を出せるか出せないかを判断していただいているのですけれども,その委員をしてくださっている大学の先生方は,恐らく慣れない仕事だけれどもできないことではないと思ってくださっていると思います。
そして,伝統的なスキームにのっとっているCompetency-Based Educationにおいて革新的なものは何なのかを考えますと,学修成果の達成方法のみを新規にしているのであって,例えば女子高等教育や通信教育など,かつて新規であったプログラムが一般的になったことを考えますと,このCBEも,もしかするとそのうち一般的なプログラムになっていくのかもしれないということが考えられます。
また,大学改革支援・学位授与機構の学位授与事業もそうですけれども,特に方法が新規である場合には,原則はより強く意識されるのではないかというふうに考えることもございます。
学修成果の質保証を考える上で,Competency-Based Educationの仕組みが何を示唆してくれるか。CBEでは単位制度が依拠している時間にこだわらず,能力の直接評価による単位の修得が可能です。しかしこの仕組みから学修成果の質保証を考える上でのヒントは得られても,直接の答えを出すことはできないと思われます。
ここで得られるヒントというのは,達成すべき個別の学修成果の設定の具体性,教員による指導と評価の重要性や,単位という通貨が便利なものであったということなどのほか,高等教育へのアクセスの拡大への期待はあると思われます。期待は大きいのですけれども,展開の現状は緩慢にはなっております。
一方,アメリカの高等教育の個別大学のミッションや専攻分野の差を捨象したような統一性の高い学修成果を同定するための議論は,2010年までに一旦終息しております。その後は,CBEのプログラムを含め,方法論のチューニングが続いている状態だと言えると思います。
特に高等教育政策における学修成果の測定の議論においては,最初に御紹介したCollege Scorecardに見られるような,効果の測定のための指標の提示を含めた情報公開などの試行錯誤が続くのではないかと考えているところでございます。
以上,私の御報告とさせていただきます。ありがとうございます。

【吉岡部会長】 どうもありがとうございました。
続けて山形大学の浅野茂学術研究院教授に御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【浅野教授】 山形大学の浅野でございます。本日,よろしくお願いいたします。
「山形大学における質保証」,サブタイトルとして「IR/IE」ということを入れさせていただいております。なお,限られた時間ですべてをお話しするのではなく,基盤力テストの概要と成果を中心にお話をさせていただきたいと考えております。プロフィールなどは適宜御参照いただければと思います。
簡単に御紹介いたしますと,私の専門は経営学で,神戸大学で学位を取得いたしました。その後,神戸大学で企画評価のお仕事に携わらせていただきまして,独立行政法人大学評価・学位授与機構において,大学評価に関する業務に従事し,平成27年4月から山形大学で現職に従事しております。
山形大学について,御存じの方も多いと思いますが,簡単に御紹介いたしますと,6学部7研究科を有する,東北では2番目の規模を誇る国立の総合大学になります。学生数は約9,000人。特徴的なのは,工学部の定員が非常に多く,全体の4割を占めています。学生の内訳は基本的に東北が多く,入学者も就職者も東北が多いという状況です。
では,山形大学においてどのような形で質保証を考えているのかを御説明したいと思います。その前に,前提条件として我々が捉えている質保証について簡単に補足させていただきます。
海外においては,特にイギリスなどヨーロッパを中心に,Qualification Framework,通称QFと言われるものがありますが,アメリカにおいてはDQP,通称Degree Qualifications Profileというものが置かれています。日本においては学士力というふうに定義されているものもあろうかと思います。
また,学協会レベルで見ていきますと,分野別質保証に関わる参照基準というのが,日本あるいは欧米でも進んでいます。機関レベルでは,それぞれの目的を定め,学位レベルでの3つの方針,そして授業レベルでは到達目標などを明確にしています。こういった共通の流れが見られる一方,5ページの図にお示ししますように,欧州型のQuality Assuranceという質保証の考え方と,アメリカにおけるInstitutional Effectivenessという異なる2つの考え方があります。我々はどちらかというと,このアメリカ型の発想で物事を捉えているというのが本日のお話の根幹にあります。
山形大学の取組を推進する組織について簡単に御紹介いたしますと,学長直下に2つの組織を置いております。学士課程基盤教育機構と,次世代形成・評価開発機構がございます。本日のお話のメインは,次世代形成・評価開発機構のIR部門であり,学内ではOIREというふうに呼んでおりますが,こちらで様々なデータを収集し,分析いたします。当機構が特徴的なのは,FD部門を並列しておいていることでございます。OIREで測定した結果などを次のアクションに結び付けていくためには,FD部門との密接な連携が必要だという前提の下にこのような体制になっております。
また,FD部門と同時に,教育を企画する部門もありますので,これらを学長の下で一体的に動かす体制としているという特徴がございます。
では,OIREを簡単に御紹介させていただきます。この組織は,2016年12月1日からこのような形になっており,2007年に設置されたEM室からの発展を経て現在に至っております。
7ページにこの組織におけるIRとIEというのを定義しております。IRというのは,客観的なデータ分析に基づく様々な効果検証を行う組織であるということです。図にお示ししていますように,データを集めて分析をし,情報提供していくということを行っております。ここから質保証に関わる取組の総称として,Institutional Effectivenessを提示しています。これはIR側で分析,収集したデータを実際に改善に結び付けていくというものです。IR単体ではできないということから,大学コミュニティと書いておりますが,大学全体でこのサイクルを回していきますよということを明示したものでございます。
8ページは,このオフィスで行っている代表的な業務の御紹介です。IR系の業務として,様々な学外の情報を収集し,学内のデータ等と組み合わせて,マイクロソフト社のPower BIというツールを使って様々なレポートを学内に公開しております。本日はそのうちの基盤力テストというものを中心にお話をさせていただきます。
次に,IEに関わる部分は質保証に強く結びついているということで,現在施行しておりますプログラム・レビューというものを御紹介いたします。
では,まず,一つ目の基盤力テストについてお話をさせていただきます。平成28年の大学教育再生加速プログラム,通称APに採択いただきまして,9ページにお示ししているコンセプトで展開している事業です。
基盤力テストのポイントは,独自にテストを開発し,学生の能力を直接評価するということでございます。また,学生が入学した段階,そして入学から1年の教育を経た段階,また,3年が終わった段階の3地点で学生の能力の推移や到達度を見ていこうという設計のもとで行っているテストとなります。
テストの構成は,先ほどの森先生のお話にありましたコンピテンシーとはやや異なりますが,学問基盤力,実践地域基盤力,国際基盤力という大学全体で定めている「基盤力」がございます。学問基盤力は,どちらかというと専門的な知識,実践地域基盤力は,山形大学ではいわゆるリーダーシップ等の学生が自ら持っている素質も含めた人間力と定義をしております。更に国際基盤力は,英語を中心とする国際理解力として捉えております。
時間の関係で,本日は学問基盤力に限定してお話をさせていただきます。
この基盤力テストを大学全体で実施するとなると,フィージビリティーの問題がございます。特に医学部等のカリキュラムが固定化されている学部においては,なかなか正規のカリキュラムの中に取り入れて実施することが難しく,ほかのプログラムにおいても同様に,時間割の中に試験などを組み込むのが難しい現状がございます。そこで独自の取組として,「YU Portal」というスマートフォンアプリを開発しました。学生さんにはガイダンスなどの機会で,12ページの図にありますように,一堂に会する機会を利用して回答していただき,短時間で効率的に実施できるようにしております。また,スマートフォンを使うことによって,コンピューター適応型テストが実施でき,このアプリによって大幅に回答時間を短縮するとともに,学生ごとにより適正な能力値の測定が実現できております。
出題数は各分野5問ずつ,設問の制限は1問当たり3分,そして,試験時間を5科目で30分程度と設定しています。5問ずつで本当に能力が測れるのかという批判もございますが,現代テスト理論に基づいて出題パターンを学生ごとに変え,より適切に学生の能力値を評価できるような仕組みを導入しております。
実際の問題を13ページに例示させていただきました。計算問題とか,学生が知っているかどうかといった問いではなく,特定の概念を理解できているかどうかを問う内容となっております。直接評価ということもありますし,昨今の政策にもありますように,学生ができるようになっている,あるいは理解できているかを測るというところに主眼を置いておりますので,問題の背後にある理論などをしっかり自分なりに租借して,回答していくという形になっております。
実際に測定した結果が14ページでございます。表の見方に注意が必要ですので,時間を頂いて御紹介したいと思います。こちらは現在,6学部の全プログラムの学生さんが受けている数的文章理解という分野の結果になります。2019年に入学した学生さんが入学時に受けたテストの結果,そして,2年次に受けた結果という形になりますので,1年間の山形大学における教育の効果を可視化したものでございます。
この表では学部の各プログラムを,匿名化して示しています。問題を設定する際に,1年間の教育を経た学生さんがこれぐらいのレベルに到達しているだろうという想定で能力値を設定しており,基本的に0が我々が想定するレベルでございます。この数値を基に,1年間の教育を経て回答したら,この能力がどう変化するのかを比較するものになっております。能力値の差というのが,2年生に受けたものと1年生で受けたものを差引きしたものです。基本的には,マイナスが多いですが,プラスに転じている部分もございます。例えば,Dというプログラムでは,入学時から1年生の間に0.29の能力値の上昇が見られ,効果量が一定程度確認できたといったことを統計的に有意差と効果量として示しています。しかしながら,テストの本格実施から十分な期間とはなっておらず,妥当性の検証なども兼ねて実施しているため,この数字が本当に学生の能力を適切に測れているかは,今後も追跡していかなければならないと考えております。
直近の20年度の入学生に関しましては,現在,15ページにお示しする入学時のデータのみですが,くしくもこのデータは,全てオンラインの授業を受けた学生ですので,来年の4月に測定値が出てまいりますと,先ほどの表と比べることによって,対面とオンライン授業の効果測定といったことにも活用できると捉えております。
そして,16ページは実際に学生さんが回答した後の結果のフィードバックで,こちらに関しましては,例えば,物理学の分野ですと,物理学と身の回りの現象について云々(うんぬん)と書いておりますが,4段階のレベルでお示ししております。スコアで何かを比較するというよりは,学修への動機付けを意図しており,学生さんが結果を見て取り組むべきことを促すようなメッセージを出させていただいております。このメッセージは全分野の解答終了後,すぐに学生さんにフィードバックしております。
以上が1つ目の基盤力テストのお話です。ここからはIEに絡めたプログラム・レビューについてお話ししていきたいと思います。
山形大学では,学位プログラムごとに,更に下のレベルの教育プログラムを設けております。端的に申し上げますと,学科・コースのレベルということです。例えば,理学部などかなり大くくり化された学位のものに数学,物理,化学など,教育目標の異なるプログラムを構成するケースがあります。そうなりますと,学位プログラムレベルで3ポリシーを作成するということは,ややあやふやになってしまいますので,より具体化したいという思いから,教育プログラムレベルでこの目標とポリシーを整理してきております。
なお,整理を進めていく際に重視したのは大学全体の目標を定め,各プログラム間では共通項目を踏襲し,その下にありますそれぞれの項目について,プログラムごとに少しずつ色を出していただくという点です。整理したものは既にウェブで公開しておりますが,19ページのような形で大学全体として社会にも公開しているということになります。
ポリシーの整理と併せて取り組んでおりますのが,カリキュラムマッピングという手法です。これはアメリカの大学でもよく取り入れられているものですけれども,これを参考に1つだけ特色を出しましたのは,個々の科目がどのカリキュラム・ポリシーに則(のっと)って配当され,かつどのディプロマ・ポリシーのどの目標を達成しようとしているのかといったことをプログラムごとに整理しているという点です。
この整理を行いますと,カリキュラム・ポリシーとカリキュラムの対応,そして,ディプロマ・ポリシーとカリキュラムの対応が数値化できるようになります。21ページは極端な例ですけれども,プログラム1のように,3つのカリキュラム・ポリシーがあったとして,このカリキュラムではややカリキュラム・ポリシー1に偏っていて,2,3に則(のっと)って配当されている科目が少ないといったようなことが見えます。
こちらの理想としては,プログラム2のように,それぞれのポリシーがある程度バランスよく分布しているのがよいと考えておりますが,こういった状況にないということを,まず数値化,見える化し,カリキュラム,あるいはカリキュラム・ポリシーの見直しにつなげています。
同様に,ディプロマ・ポリシーにおいても,プログラム1のように,ある程度分布しているようなプログラムもあれば,3,4のように特定のカリキュラムにある程度偏っているようなものがあるとしますと,特に学修成果の達成という観点からはやや問題があると捉えられますので,見直しの契機にしております。
この対応を取った上で更に行っておりますのが,22ページの表にありますようなレベル分けをするということです。I,R,M,Aという4つの記号がありますが,これによって,それぞれの学修の達成度,順次性を確認できるようにしております。更にディプロマ・ポリシーごとの分布,そして,学年進行ごとの分布が見えるようにしております。
こういった整理によって,我々の持つIRデータと組み合わせて,24ページにありますように,プログラム・レビューを行っております。そのことを通じて,適切な規模や内容となっているか,科目が適切に配置されているかどうかなど,教育の質保証に関わるような部分を見ております。
以上,基盤力テストとプログラム・レビューについてお話をさせていただきました。最後に簡単にまとめて終わらせていただきたいと思います。まず,質保証について,我々はアメリカのIEという概念の中で取り組んでおります。先ほどお話ししましたように,ポリシーを定め,プログラム・レビューを定着させるということをやっております。
そして,その一つとして,先ほどの基盤力テストをはじめ,それ以外の学生さんの間接的な評価である授業アンケートなどの結果も用いて,今後のカリキュラムや授業改善の基礎情報として確立する,学生あるいは社会にも積極的に発信していくという姿勢で,現在,実施結果については速やかに定例記者会見などを通じて社会にも発表しております。
また,推進体制というのも必要になってまいりますので,現在の責任体制の見直し,いわゆるアメリカのProvost制の導入を検討しております。アメリカのProgram Chair制度を参考に,山形大学では教育ディレクター制度というのを早くから導入しておりますので,この制度の下でプログラム単位での改革につなげていく,すなわち質保証を継続的に推進できる環境を模索し続けているというのが,本日の発表のポイントでございます。
以上,私の報告とさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。

【吉岡部会長】 どうもありがとうございました。
それでは,続けて大森委員から御説明をお願いいたします。大森委員,お願いします。

【大森委員】 大森でございます。よろしくお願いします。
私の勤めている共愛学園前橋国際大学における学修成果の可視化と教学マネジメントについてということで,KYOAI CAREER GATEという仕組みを使っておりますので,その御紹介をさせていただきます。
また,質保証のための体制整備やこの部会での議論のテーマである人材育成についても最後に少し補足をさせていただきます。
皆様の資料には入っておりませんが,前提として少しだけ共愛学園前橋国際大学を御紹介します。共愛学園前橋国際大学は,学校法人共愛学園が設置する大学です。学校法人の中にはこども園,小学校,中学校,高等学校,大学があります。来年4月からは,他の法人から移管されて,短期大学も運営いたします。明治21年に新島襄などが発起人となってできた,いわゆるキリスト教の大学です。
大学は小さな大学で,国際社会学部のみを有する単科大学,その中に学科に匹敵する内容ですが5つのコースを持って学びを展開しています。収容定員が1,000名程度という,本当に地方小規模大学の典型でございます。
それでは,学修成果の把握・可視化ということで,教学マネジメント指針が出されましたけれども,その中で言われている学修成果というのは,一人一人の学生が自らの学びの成果として身に付けた資質・能力を自覚でき,エビデンスとともに自ら説明できるようにする,ということだと言われています。また,一方で,大学が教育成果も説明できるということが必要だということで,学修成果と教育成果という言葉を使って,その成果を可視化する主体が学生自身であるのが学修成果の可視化,そして,それをベースに教育の成果を説明する責任を持っているのが大学であるという位置づけになっているかと思います。これを前提にお話をさせていただきます。
本学が持っている「KYOAI CAREER GATE」(以下,「KCG」という。)という仕組みはいわゆるeポートフォリオです。ポートフォリオと学生に言っても,分かりづらいということで,キャリア,将来に向かってのものであるいうことでCAREER GATEという名前をしています。このeポートフォリオ上に,学生は授業の振り返りや,地域での実践,ボランティア,海外研修等の様々な取組を振り返りとして記録していきます。
そして,記録されたものをエビデンスにして,本学の学修成果指標である「共愛12の力」が年度ごとにどのぐらい成長しているのかというのを評価していきます。更にエビデンスとしての振り返りの記述を社会に公開できるショーケースという機能を持っていまして,学生が自らの言葉で社会にそれ公開をし,説明をしていくということをしています。もう少し詳しく御説明いたします。
本学の建学の精神は共に愛し共に生きるということです。教育の目的は,国際的な視野を持ちながら,地域の諸課題を解決できる,いわゆるグローカル人材を育成するということです。
それを踏まえて4つのディプロマ・ポリシー(以下,DPという。)が定められていますが,どれも抽象度の高いポリシーになっています。本来はもっと具体化しなければならないこと承知しておりますが,DPとしては4ページに示した4つになっています。
この大学の理念や目的,DP,更に地域産業界のニーズからこの達成目標,共愛12の力を導いて作っています。地域産業界のニーズは地元の産業界へのヒアリングやアンケート等により収集しています。ちなみにこの「共愛12の力」は,誰か一人が作ったというより,もちろん原案は誰かが考えたんですけれども,SD,FDとしてみんなでディスカッションしながらまとめていきました。これは研修として行いましたが,教育の目標を皆で一緒に考えるというプロセスは非常に有意義だったと思っています。
授業に関して言うと,教員はシラバスに「共愛12の力」との対応関係を明記していきます。この授業ではこのような力が付くはずだということを記入すると,ポートフォリオに自動的に紐(ひも)付いた形で授業が表記されます。
ちなみに,授業アンケートでは,学生にも受講した授業でどの力が付いたかを聞いています。すると,教員がこの力が付くはずだと思って授業をしていたけれども,学生は違う力が付いたと思っているといったこと見えてきて,授業のチューニングにも役に立っているところです。もちろんここに付けたものがカリキュラムマップに落とし込まれていくということにもなります。
実際にどのように評価をしていくかについて,本学はエビデンスベースの自己評価にこだわっています。学生はeポートフォリオ,KCGにため込んだ学内の活動,授業での振り返り,学外活動等を全部エビデンスとして蓄積をしていき,1年に1回,自己評価をします。自分に「共愛12の力」がどこまで身に付いたかを評価する。
ただ,学生は評価者としてはまだまだ未熟な部分がありますので,評価者として成長してもらうという思いも込めて,教員とのリフレクション,個別面談をしながら,評価を言語化したり,評価内容の調整を行います。
ちなみに評価は,コモンルーブリックを作って実施しています。ちなみに,このルーブリックもFDでみんなで議論して作りました。これも非常に重要なプロセスだったと思っています。
ただ,エビデンスを蓄積しましょう,振り返りをしましょうといっても,なかなか学生たちには難しい部分があるのは承知しています。ですので,学生の自主的な取組に加えて,授業の中で,毎回の振り返りをすること,授業の振り返りのところにしっかりとまとめの振り返りを書くことを課題として課して,少し慣らしていく。エビデンスをためることに慣れさせたり,ゼミ選択の選抜が必要になったときには,KCGの蓄積内容を見て評価しますよなんていうことで,動機付けも行ったりしています。
また,ショーケースを作っていく中では,キャリアプランニングのような授業の中でショーケースづくりを行うプログラムを入れ込んで,実際に学生たちが作ったりもしています。昨日も私のゼミの学生が,今取り組んでいるプロジェクトについてショーケースに書きたいので写真を撮りたいのですが,ということを言っていました。それもキャリアプランニングで課題が出たので今やっているんですと言っておりました。大学全体として動機付けをしながら,学修成果の可視化をするとともに,学生に自律的な学修者に育っていってもらいたいと思っています。これからの時代,学生は,卒業した後も,学び直しを繰り返しながら,自分で自分の学びを評価し,言語化し,そして自己アピールしながら生き抜いていって,幸せに生きていってもらいたい。そのような意味で,こういう自己評価をベースにした学修成果の可視化に取り組んでいるところです。
CAREER GATEの実際については,今後リニューアルをする予定ですけれども,9ページのようなことを記録をしていきます。授業は自動的にシラバスと連動して,「共愛12の力」と紐(ひも)付きますけれども,学生が自ら書き加えるものについては,学生自身がどの力と関係するかをタグ付けができるようになっています。そうすると,振り返りのときに,例えば主体性という項目について学生が振り返るときに,横断検索ができて,それに関連する授業や取組が一覧で出てきます。それを,そういえば4月に保育園にボランティアに行ったななんていうことを思い出しながら,ルーブリックを見て自己評価をしていきます。
更に学生は,その振り返りの中で,なぜそういう評価をしたのかを文章化していきます。これは抜粋をして短くしていますが,実際はもう少し長く書いてあります。
そして,右側の例は社会に公開しているショーケースです。子供たちの何かをやった,半年間の長期インターンに行った等を,公開されているURLを分かっている人に見せられるという形になっています。このURLを履歴書やエントリーシートなどに書いて,就職活動,そのときにも私の学びを知りたかったらここを見てくださいとできるようになっています。
キャリア部門と広報部門がチームで作ってくれたのだと思いますが,ホームページに,URLの代わりにお知らせした番号を入れると,その学生のものが見られるというシステムができていました。
次は本学の教学マネジメントの進捗状況についてお話しします。DPを見直して「共愛12の力」を作ってカリキュラム・ポリシー(以下,CPという。)を見直して,CAP制等も整えてきました,まだカリキュラムマップやカリキュラムツリーが十分にできていない状況です。アセスメントポリシーを作って,見直してみると「共愛12の力」をきちんと達成できるカリキュラムになっていないということで,今,カリキュラム改編に全員で取り組んでいるところです。これから改めてマップ,ツリーを作り直すことに1年半ぐらいかけていこうと考えており,10ページに示すようなサイクルが回っていったらいいなと思っています。
教育成果の可視化に関して,学生の「共愛12の力」は,全体のデータとしても当然取っています。これで十分というわけではないですが,データ収集の努力も頑張ってしてみようということです。授業の形が変わっていくことで,学生の授業外学修時間が増え,授業の形によっても「共愛12の力」の獲得感が違う等といったことをみんなで共有しながら伸びていくと,間接評価である学生調査等でも,「力が付いたと思うか」という項目の数値が伸びているという結果が得られます。あるいは外部テストをやってみるということもチャレンジをしているところです。
質保証に向けての体制整備は,まだまだ十分ではありません。教学マネジメントも緒に就いたばかりというところではあります。副学長の1人に,教学のProvostみたいな立ち位置で教学マネジメントを統括してもらうようなことを行っています。まだ位置づけの域なので,規程上こういうProvostという職があるわけではありませんが,そのような位置づけで,教学マネジメントセンターなる組織を作って,主要メンバーで今動かしています。今後,教学マネジメントは他分野にわたるので,IR担当とかFD担当とか,学生調査,アドミッション,キャリア,広報,あるいは各コースのコース長,そういった者を加えた総合的なセンターとして展開をしていけたらなと思っています。
そして,教学マネジメントは内部質保証の非常に重要な一部をなすという理解をしており,内部質保証担当が,そのサイクルを回していくということを一体的にやっていかなければならないと理解をしています。
一方で内部監査の必要性も言われており,これは法人が主導して,中長期計画の監査等もしてもらっていますが,ここは協働していけるような体制を作っているところです。
最後に,質保証を担う人材育成に向けてということで,本学に関して言うと,質保証に向けた体制を作っていくときに,本当にいろいろな人たちがそこに関わっていきます。もちろん個々の授業担当者も非常に大きな役割を担うことになると思います。なので,やはり質保証はどこかの部署がやるというようにならないようにする必要があると思っています。そのような意味では,質保証の専門人材にクエスチョンを付けたのは,専門の人材がどのような人材なのかというのはまだ分からないからなのですが,専門の人を雇用すればいいというものではないと思ってもいます。一方で,そういった人材がいるならば是非来てほしいとも思っていて,うちは高等教育の専門家もいなければ,IRの専門家もいなければ,本当に素人集団が何かみんなで話合いをしながら進めているので,そういう人がいてくれたらもちろんうれしいわけですけれども,それだけで済むというものではないということです。
一方で,うちのような小規模大学は,IRerだとかFDerとか,その部門部門の専門家を雇うというところまでの余裕はありません。そうであれば,リーダーシップを発揮するポジションに就く人が,内部質保証や教学マネジメントとは何かを理解していることが必要で,リーダー研修が重要になってくると思っています。例えば,文部科学省としてそれを側面から支援する意味でも,IRer研修やFDer養成の講座などがいろいろな組織で実施してくれているように,文部科学省としても学長や学部長などのリーダー研修を企画することも必要になってくると考えているところです。
以上です。御清聴いただきましてありがとうございました。

【吉岡部会長】 大森委員,どうもありがとうございました。
今のお三方の御発表に関して,質問がある方は挙手をお願いできますでしょうか。では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】 ありがとうございます。森先生の御発表についてお伺いしたいと思いますが,大変興味深い御発表をありがとうございました。
CBEモデルの件ですけれども,CBEではいろいろなレベルの人がいて,そこからスタートするというお話でしたが,いろいろなレベルというのは,どこで誰がはかるのかというのと,そこから先の達成に関して,どのような教育が用意されることになるのか。例えば,授業15回のうち8回目までやって,あと7回やるということではないと思いますので,その辺り,もしお分かりになれば,お教えいただければと思いました。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
ほかに,御質問の方いらっしゃいますでしょうか。まとめてお答えいただくという形にしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
では,お願いいたします。

【森教授】 御質問ありがとうございます。まず,2点目の方からお答えしようと思います。CBEの教育内容は,おっしゃるとおり,教室で何かインストラクションを受けるというよりも,何か学生がプロジェクトを持って,そのプロジェクトを達成する上でどのような能力があることが証明されるかということを評価して,単位が出ているのが一般的であると思います。
1つ目の御質問がよく聞こえなかったので,もう一度お願いできますか。

【前田委員】 すみません。最初にどのぐらいまで能力を持っているということは,誰がどのようにして測るのかということです。

【森教授】 何か最初の能力測定のようなことをやるというのではなくて,そもそも人間は異なったレベルの能力を持っているということが前提となっているということを申し上げたかったのでございます。つまり,あなたはここからここまで,あとどれだけということが明示されるのではなくて,一つのプロジェクトを終了するまでに,ここまでの能力は既に持っていたことがレトロスペクティブに分かるというイメージで捉えていただければいいかと思います。お答えになりましたでしょうか。

【前田委員】 分かりました。ありがとうございました。

【吉岡部会長】 では,杉谷委員,よろしくお願いします。

【杉谷委員】 ありがとうございます。浅野先生にお伺いします。基盤力テストに関して,別の資料等を拝見したことがありますが,内容的には理数的な内容が中心かと思います。全学部には数的な文章理解が必要になっているというお話でしたけれども,具体的に授業とどのように連動しているのかというところと,プログラム単位で結果を出されていたかと思いますが,そこで言われているプログラムの意味と,その2つを教えてください。お願いいたします。

【浅野教授】 御質問ありがとうございます。まず,1点目の御質問に対して,なかなか文系に特化した試験は,海外どこを見てもなかなか我々が参考にできるものがないというのが実情です。
取組として本日御紹介いたしませんでしたが,文系の学生さん向けに語彙力テストを2年ぐらい前から導入しております。大学教育において頻出する語彙について,その意味が分かっているかどうかというのを測るものです。現在,この語彙力テストの考え方に準拠して,専門の知識を測れるようなテストとして再構成できないかを検討しております。
ただ,先ほど御紹介いたしました数的文章理解は,どちらかというと,統計の基礎的な理解力を問う問題ですので,一見すると,文系に馴染(なじ)まないようにも見えます。この部分については,共通教育プログラムに全学生必修の科目があり,情報処理の一部,数学基礎のように文系学生を含む全プログラムに課しているものもありますので,そういったものの習得をまず測れるところで測っているのが現状です。
それ以外の分野については,どちらかというと理系の科目が多いのは,先ほどお話ししました理由により起こっている問題です。
2点目のプログラムといいますのは,これは先ほどカリキュラムマッピングのところでお話ししました,学科・コース単位というふうに読み替えていただけるとよいか思います。学部の下にある,例えば物理学科,数学科,農学部ですと農学科,医学部ですと医学科,看護学科といった,このレベルでのプログラムという形になります。
以上,お答えになっていますでしょうか。

【杉谷委員】 ありがとうございます。明快になりました。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,まだ御質問があるかと思いますが,次に,通信制大学の質保証についてのヒアリングに移ります。
まず,事務局から,通信制大学の概要についての説明をしていただき,その後,各団体からの御説明に入りたいと思います。よろしくお願いします。

【吉田専門教育課長】 専門教育課長の吉田でございます。資料6に基づきまして,大学通信教育制度の概要について簡単に御説明申し上げます。
資料1ページを御覧ください。大学通信教育は,学校教育法第84条に定められておりまして,地理的・時間的な制約がある社会人など,通学課程とは異なる様々な学びのニーズに対応し,大学教育の機会を広く提供するものとして定められているものでございます。
現状の大学数は,通信教育を行う大学数,学部が44大学,大学院が修士25,博士10,専門職大学院が2,短期大学が11でございます。学生数は,学部が約16万人,大学院修士が約3,000人,短期大学が1万8,000人でございます。
右側の円グラフは,分野別の学生数の割合を示しており,3分の1が人文科学・社会学の分野でございます。また,16%が教育,芸術が約6%でございます。その他が7万1,000人,39%ございますが,この多くが放送大学の学生が占めております。
その下のグラフが学生数の推移でございます。平成17年の約23万人が学生数のピークでございまして,それから徐々に減少傾向でございます。令和元年度は約18万5,000人となっております。
続きまして,2ページを御覧ください。通学制と通信制における授業方法の比較を簡単にまとめております。基準上では,授業方法につきましては,4つ定められております。通学制の大学につきましては,丸1の面接授業,それから丸2のメディアを利用して行う,いわゆる遠隔授業が基本でございます。
一方,右側,通信制の大学におきましては,丸3の放送授業,それから,丸4の印刷教材を送付若しくは指定して学修させる,印刷教材による授業が基本的な授業形態になっております。
また,両方の形態に共通している丸2の遠隔授業については,下の方に米印で告示を書かせていただいておりますが,質保証という観点で申しますと,大学において面接授業に相当する教育効果を有すると認められるものであり,1ポツの同時かつ双方向に行われるものはいわゆるオンラインでございますし,2ポツにございますように,毎回の授業の実施に当たって,指導補助者が学生等に対面する,又は,授業の終了後速やかに設問解答や添削指導等による十分な指導を併せ行うもの,かつ学生等の意見交換の機会が確保されているものというのは,いわゆるオンデマンド型の授業でございます。こうしたところを担保するということが告示上の要件となっております。
3ページを御覧いただきますと,修了要件の部分につきましてもう少し分かりやすく図にまとめております。卒業に必要な単位数124単位のうち,通学制大学につきましては,いわゆる面接授業が基本でございますけれども,そのうち60単位までは,いわゆる遠隔授業が可能という整理がされているところでございます。
一方,通信制大学につきましては,丸1にございますように,94単位が主に印刷教材による授業,放送授業,あるいはメディア授業を使った授業という形になっておりまして,そのうち丸2,残りの30単位につきましては,面接授業又は遠隔授業を行うことができます。更に丸3のところで,この丸2のうちの10単位は放送授業で代替することが可能になっていて,どこが主の授業方法になるのかというところが違っているということでございます。
更に学生構成につきまして,学生数は先ほど申し上げましたが,その内訳を見ていただきますと,通学制大学につきましては,主に18歳・19歳の入学者が95%,更に最低在学年限超過数,4年で卒業できる,4年若しくは6年で卒業できるというのがほぼ大半ということでございますが,通信制大学につきましては,18歳から22歳の学生は11%,職業を持っている学生の割合が40%強となっております。さらに,超過卒業割合も6割になっていて,状況がかなり大きく違っております。
こうした点を踏まえまして,定員管理・財政支援なども,通信制大学については,通学制よりも緩和されております。
また,コストの観点でも,通学制は,国立大学4年分の一例でございますが,約240万円に対しまして,放送大学は卒業までに要する学費が70万円でかなり低廉で単位,学位が取れるというものです。
4ページは参考といたしまして,法令上の規定を添付させていただいております。簡単ではございますが,以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,次に,公益財団法人私立大学通信教育協会の高橋陽一理事長に御説明をお願いいたします。高橋理事長,よろしくお願いいたします。

【高橋理事長】 本日は,このような形で報告の場を与えていただきまして,ありがとうございます。公益財団法人私立大学通信教育協会の理事長で,武蔵野美術大学で,通学・通信課程とも教えております高橋と申します。
専門教育課長からも法令上の御説明を頂いておりますので,私からは,様々な形での大学通信教育の在り方の実態,とりわけテーマとなる質保証のお話をしていきたいと思っております。
私が理事長を務めております通信教育協会は,戦前は学校教育法で大学通信教育が公式に制度として認められておりませんでしたので,戦後から当時の大学を中心にスタートして今に至るという流れで,長い間,基準に関するガイドライン,スタンダードに関することに関わっておりました。
そして同時に,大学通信教育がなかなか広がらないということで,広くそれを伝えていく周知普及事業に協会各59校の加盟校の共通の課題として取り組んでいるところでございます。
それでは,社会人のための大学通信教育の変化ということで,資料が非常に多くございますので,さっさと流れるような形になりますけれども,お話をしてまいります。
まずは,大学通信教育に関わっておられない大学あるいはその他の分野の方もいらっしゃるので,大学通信教育でよくある誤解がございます。大学通信教育の場合,大抵の大学では入学試験は行いません。そういったことを前提として,誰にでもできる,畳の上の水練といいますか,水準が低いんですかという誤解です。これは入学しようとしている人には逆の意味の不安もあるわけで,質保証が大変厳しく問われます。
ただ,これに対しては,当然のことながら,通学と通信の同じ大学を卒業する,そういう意味においては,ディプロマ・ポリシーは通学課程と同じでございますし,逆に言うと,誰でも入れる大学でなぜそれが可能かというと,授業科目における質保証,それとともに長期的な在学を保障することによって,学生たちの学びを支援してきたという70年以上の歴史があるからです。
そして,通信を行う大学の場合は,大学設置基準でオーケーというだけではなくて,更に大学通信教育設置基準もクリアする体制の整備が求められております。
そして,学生たちは,この十数年,二十数年の流れを見てみますと,中高年の方,主婦層や,あるいは定年退職の方が増加傾向でございます。
ただ,実態を見ますと,有職(ゆうしょく),社会人の人数も変わらずに維持されていて,更に人生100年時代,様々な社会参加には,中高年以降も含めて取り組んでいくというところで,大学通信教育の役割が果たされていると考えております。
また,大学通信教育というのは,当初,大学に行けなかった方に教育の機会均等を保障していくという性格でありましたが,今現在は短期大学,専門学校も含めて,4分の3が既卒者です。つまり,リカレント教育の場として,大学を卒業してからもう一度入る大学,資格取得そのほかの学び直しというのが大きなテーマになっているという実態もまた理解していただきたいところです。
そして,大学生全体の10分の1程度を占めながら,学費の低廉化や,それに関わる様々な,第4種郵便,そのほかの制度が整えられています。
そして,卒業は,4年制大学の4年間でという形の方が4割程度でございまして,フルタイムの仕事で働きながら,通信で努力をするという学びのパターンも確立されております。
続きまして,本題の質保証の話へと進んでまいります。まず,通信教育のみで可能となっております印刷教材等による授業につきましては,各大学ともまずは教科書を作るということに非常に努力を注(そそ)いでおりまして,そして,そのことによって教材がオープンになっているという,文字どおり誰でも見られる質保証というのをしております。
学生の側(がわ)からすると,これを読んで試験で合格したら終わりではなくて,その前に例えば,2単位であれば2回のレポートを出して個別指導,添削指導を受けないといけない。だから,2単位科目だったとしても,非常に細やかな指導,学生の側(がわ)からするとハードルが設けられているということになります。
さらに,面接授業につきましては,通学課程と同様に資格等の関係で実技・実習等が重視されており,通信でいうと約4分の1を占めております。
さらに,メディア授業,遠隔授業につきましては,同時双方向型とともに,非同時双方向型についても,編集をしてスタジオで収録したものを配信できるレベルにしていくという努力が長年行われておりました。ですので,このコロナ禍におきましては,通学制の大学では教員が一人で撮ったものを一人で流すというのが随分見られましたけれども,そこのところとは違う作り込みがされて,質保証がされてきたという流れがございます。
続きまして,学生の側(がわ)から見るとどうかというと,実を言うと,4分の1の部分を占めているにすぎないと言える面接授業が非常に評価が高いです。そして,近年ではメディア授業に対する希望が非常に増大しています。
そして,例えば,先ほど第4種郵便を使ってレポートをやり取りすると申し上げました。しかし実際には,通信授業も,どんどんとメディア化が進んで,レポートのオンラインでのやり取りが,標準的な形になりつつあります。
また,公式統計としてのメディア授業,遠隔授業については,学校基本調査では,大学通信教育のみが取られておりましたので,その部分のデータを抜粋しましたが,面接授業からメディア授業へと移行しつつあるということがかなり大きなトレンドとして認識されようかと存じます。
これは通学制大学の話ですが,前期にほとんどの大学がオンライン授業だったときに東洋大学が実施した調査では,学生の4割が引き続きオンラインを希望するという回答でした。これは本当にそうなのかという検証で,私も自分の大学の通学課程の学生たちに調査したのですが,オンライン希望と回答した学生は半分を超えたので,私も驚きました。通信のみのものであったメディア授業,遠隔授業というものが今後通学へと広がっていく,そのトレンドがまたニーズの側面から見られるかと思っております。
さて,大学通信教育では,各法令とともに,私ども大学団体としての自主的なガイドラインの制定,そして,それに基づくところの自己点検・自己評価,更に情報の公開・公表をしております。また,メディア授業についてもしかりで,今は教職課程について取り組んでいる最中となります。
一方では,特区制で行われた大学での事例ですが,文部科学省から勧告のあったメディア授業について質保証,とりわけ毎回法令上必要なはずの質疑応答等がされていないという指導がされた事例などがございます。
こういったことがどんどんと改善されていく中で,特区制の大学につきましても,本則の大学通信教育設置基準に入れていく,そこで緩和されていたところの施設条件等も,本来の設置基準に入れていくという営みが行われました。
この議論がされるときに,私も文部科学省のワーキンググループに参加させていただいておりましたが,面接授業の対面性に代わるようなメディア授業における双方向性が本当に確立しているのかどうか,更に学生たちの所属意識や様々な相談,交流等できるかという部分が焦点になっておりました。これらについては引き続き考えていきたい課題でございます。
私どもの作っているガイドラインに即して申し上げますと,メディア授業については,双方向性が必ず確立されていないといけない。単に小さなテストをたくさんすれば終わりというのは双方向性ではございませんので,教員とのやり取り,更に学生相互のやり取りをいかに確立していくかというシステムが非常に大切です。
続きまして,学生本人の認証を単にID,パスワードだけではなくて,その場面に応じての第3の認証や,あるいは学力判定等についても厳密に行われるべきであるという考え方が,やはり大学通信教育の質の在り方であり,学生たちがプライドを持って卒業していくためにも非常に大切なものだと考えております。
私のおります武蔵野美術大学で実際に行っている本人認証の取組を御紹介します。試験の段階では,60分制限だったら60分だけ有効のパスワードを発行します。個人で持つパスワードのほか,第2パスワードを入れて受験する。そのような形で,あなたの学力であり,あなたのテストであるということをシステムを開発することによって維持しております。
さて,通学課程の124単位,今は60単位ですけれども,この単位が全部メディア授業でよいのではないかという議論に対しては,大学通信教育で営まれてきたような双方向性や学力判定のシステム確立が,果たして全ての大学で本当にできるのだろうかという疑問があります。やはり今年行われていることは,コロナに関する緊急対応というふうに理解すべきではないかと思います。
また,通学のよい点である学生の人間形成について,通信制,つまり,社会人で忙しい人たちのケースと同一に論じるというのは,やはり粗いのではないかという考え方を持っております。
最後になりますが,通信教育からの提起といたしましては,今後は通信・通学とともに,やはり著作権法第35条改正もあって,大いにメディア授業,遠隔授業が進展していく。その中で正に御議論なさっている質の維持ということが大きなテーマになる。私自身は,学生のニーズを見ても,ハイブリッド型,それによる双方向性の維持というものが非常に大切だと思います。
また,これは通信独自かもしれませんが,リカレント教育としての水準の維持,資格のことも含めて学び直す時代への対応が必要になっています。
また,大学通信教育というのは学費が低廉であるということに学生も教員も甘んずるところがありますが,やはり社会人のことを考えたときには,様々な政策的フォローも必要な時代ではないかと思います。
以上で私の発表を終了いたします。御清聴ありがとうございました。

【吉岡部会長】 高橋理事長,どうもありがとうございました。
それでは,続きまして,放送大学学園より岩永雅也副学長に御説明をお願いいたします。岩永先生,よろしくお願いします。

【岩永副学長】 まず,お話をする前に3点ほど申し上げたいことがございます。実は今回のコロナ禍で様々な点で放送大学は今までのやり方を臨機応変に変えております。非常に大きく変わっているところがありますので,ここではその部分は取り上げないで,通常実施している内容について御報告させていただくというのが1点目です。
2点目としては,山形大学や共愛学園前橋国際大学の御報告を先ほど伺いましたけれども,本学とは事情がかなり異なる。通学制の大学と通信制の大学では状況が異なりますので,質保証の指標も全然違うということで御理解いただきたいということです。
3点目としては,先ほど私立大学通信協会さんの報告がありましたが,放送大学は私立大学通信協会にも参加しておりませんので,先ほど調査で放送を使うのがいいというのが1.4%となっておりましたけれども,放送大学の学生はサンプルに入っておりませんので,むしろ私などは拝見していて,1.4%もあったのかと驚いたぐらいです。
それでは,内容に入らせていただきます。まず,放送大学の特徴ということで,スライドの1番目ですけれども,放送及び面接授業によって授業を行っています。現在のところ,テレビ授業科目が166,ラジオが180,そしてオンラインを数年前から定着して作っており,現在61科目で,オンラインに関しては毎年増えていく状況になっております。面接授業は年間3,000科目以上です。
それから,1つ飛ばしまして,右側の学生数ですけれども,大体8万7,000人。特徴的なのは,最近,特に20代30代の人が増えていて,それで過半数を占めています。一時期は放送大学は60代以上の大学のようになっておりましたけれども,今,いろいろな事情で若い人たちが増えているというのが特徴です。
授業科目ですけれども,放送大学の教育の質のキーはコンテンツの質です。このコンテンツの質に関しては2つ側面があり,1つはもちろん学術的な質です。学問体系に照らし合わせて,正しく分かりやすく説明しているかどうか。もう一つは,学生が評価する質で,分かりやすさ,絵としての面白さ,ラジオの場合には言葉としての面白さ等があり。この2面から質は評価されるのであろうと思います。
放送授業はテレビとラジオですが,2ページの赤字で書いてありますように,1番目2番目3番目という要素で質が担保されていると考えられておりますし,我々もそれを自覚しております。まず1番目は,みんなが見ているということです。日本中の人たちが,特に同業者が見ているということは,授業科目の質を維持するために非常に重要な要素だと思います。
2番目としては,1人がカメラの前で勝手に作るのではなくて,チームによって作っているということがありまして,これが質の保証になっているのではないかと思います。
3番目としては,外部の先生も多数,科目作成に参加されますので,スキルやスキームの提供や共有を制度化してきちんとするようになっているということです。
右側に行きまして,オンライン授業科目,これは増えているものですけれども,参考資料2を後で御覧になっていただくと,7ページ8ページのところにございますが,単に授業をしている先生の絵を撮って流しているというだけではなくて,様々な方法で文字型のものを重視したり,動画を実施したり,それからパターンを重視したりと様々な手法を併用しています。昨年度ぐらいまではいろいろ実験を行っていました。実験の要素もあったのですが,だんだんにそれが定着してきて,学生の様々なニーズや内容に合わせた手法が利用できるようになっています。
また,先ほど面接授業は3,000科目あると申し上げましたが,受講は2日連続で全国で行って,研究指導は,チームで行っているということです。
次のページは学びの支援あるいはその進化ということですけれども,これは読んでいただくと分かるのですが,エキスパート制を取っていたり,それから,ナンバリングや科目区分に工夫したりということをしています。
また,ハンディキャップの学生が比率として非常に高いです。そのような方々に対する特別に配慮した科目の作り方や提供の仕方をしています。
そして,厳格な成績評価について,放送大学は学部に関してオープンアドミッションで,入学試験がないので,一回一回の単位認定試験が非常に厳格に行われているということをここに書いております。
さらに,キャリアアップと豊かな人生に向けてということで,生涯学習的な科目,あるいはリカレント的な科目についても近年力を入れておりまして,資格取得,何度も入っていただく方の奨励やインターネット配信を公開講座にしているというようなことを行っています。
次の4ページが,今回の発表の肝の部分ですけれども,PDCAサイクルを回して評価しているということです。全体として一つお話ししておかなければいけないのは,一般の通学制の大学であれば行っていたような学生の学力や達成度というものを指標にするのが必ずしも適切でないということです。放送大学の場合には,学生が学んで満足感を得ていることや,再び入るといったようなことが達成の評価の一つの指標になっており,学生が何人,志望する企業に就職したかというような指標は全く考えられていないということです。
特にこの中で重要なのは,黄色で示してあります学生による授業評価でありまして,全ての授業を必ず初年度に学生によって評価させるということをしております。それを各教員,担当する教員に全てフィードバックして,自分の科目はどこが弱いかというようなことも明示しているということです。
IR活動としては,教務データを使って,実習状況がどうか,合格率はどうかを全体として分析して,それを関係者にプッシュしています。
最後に,大学経営の継続・発展のためにということで,今の放送大学のシステムはこれでいいのか,運営の仕方はこれでいいのか,教育の内容はこれでいいのか,学生は満足しているのかということを常にフィードバックしながら,検討を続けております。
ということで,非常に駆け足での御紹介になりましたけれども,放送大学の質の評価は,学生の対応,学生がそれをどう受け止めて,どのように学んでいるかということに尽きるということで今までやってきました。
先ほども言いましたように,若年者が増えており,若年の入学者の多くがリカレントや資格,職業的なスキルというものを目指して入ってくる方です。ですから,余暇に学習を楽しむという人たちはほとんどいないということもあり,これまでの満足度を中心にした評価の方法も今後は少し考えていかなければいけないということを内部で議論しており,早急に開発を進めていく方向であるということを最後に御報告させていただきます。どうもありがとうございました。

【吉岡部会長】 岩永先生,ありがとうございました。
今のお二方の御発表に対して,質問がある方は挙手をお願いいたします。
では,古沢委員,お願いします。

【古沢委員】 高橋先生にお伺いしたいのですが,学費の低廉性が通信制の特徴だというお話をされていて,大学によってかなり差があるのでしょうか。また,通学制課程との併設の大学については,どのような観点から通信制について設定されているかというのをお聞きしたいです。これは今後,こういったメディアによる教育が進むと重要な観点だと思っております。
岩永先生にお聞きしたいのは,今,満足度を中心とした評価の内容を見直したいということですが,差し支えない範囲で,どういった方向に見直すことが必要だと考えていらっしゃるかということです。
以上2点です。よろしくお願いします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
続いて,飯吉委員,質問をお願いいたします。

【飯吉委員】 ありがとうございます。岩永先生に御質問ですが,スライドの1枚目で在学者数等はお示しいただいていますが,修士・博士課程の修了率を教えていただきたいです。あと,だいたいで結構ですが,その修了率について,例えば社会人や若い人等の属性で何か傾向があるようでしたら,教えていただければと思います。

【吉岡部会長】 それでは,高橋先生からお願いいたします。まとめてで結構です。

【高橋理事長】 古沢委員からの御質問ということで,学費の低廉性については,御指摘のとおりで,50数校,あるいは非加盟校も,放送大学はじめ幾つかありますので,全体を見てみますと,学費は様々です。ですから,10分の1程度のところから,あと,単位型といいますか,スクーリングのときには費用をプラスアルファする等,様々な学修システムが取られております。ちなみに私のおります大学の場合ですと,通学と比べて通信の場合は半分から4分の1程度ですが,修業年限のことも含めて変化があります。
一つだけ申し上げますと,先ほど森先生のお話はとても勉強になったんですが,オンラインにすると安くなるというのは,実を言いますと,アメリカの通信教育の場合は,必ずしも授業料が安くないというのが,私どもの世界からすると不思議なポイントで,実を言うと,メディア授業をやるとすごく手間,あるいはそれに関わる職員によるフォローアップ等が非常に大変で,例えば,加盟校である早稲田大学の場合は,通信・通学ともに,4年間でフルで取った場合は同じ授業料になるという設定がされております。
このような正に多種多様であるということと,実はオンライン授業の,とりわけコンテンツ開発にはすごくお金がかかるとともに,学生たちに対するフォローと双方向性にかかる負担は非常に大きいです。
続いて併設の話ですが,放送大学が80年代にスタートするときに,いわゆる単独設置型通信教育がスタートしまして,併設がむしろ普通である。つまり,通学で培ってきた教育研究のノウハウなりコンテンツなりを通信としてやっていくというのが70年前からのモデルでございました。その後,通信制大学もできたのですが,私自身の感覚で言うと,通学の学生も通信の学生も同じ学生であり,年齢や目指しているところや属性はもちろん違いはありますが,同じ一つの大学の学生であり,実際それで卒業後も,卒業生グループ,校友会,同窓会等で,同じような形で地域で活躍していく。そんな姿を見ていて,私自身も卒業後も応援をしております。併設が一般的であると理解していただければと思います。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,岩永先生,お願いいたします。

【岩永副学長】 2つ御質問を受けました。古沢委員の,今後満足度中心の調査をどう変えていくかということでしたけれども,我々がその調査をするときに考えておりますのは,達成ということです。実際3月にはあなたはどう変わったのか,どのような点で達成したか等,何が変化したかというようなことを中心に聞く調査項目を考えておりまして,若い方などは,やはり放送大学で4年なり5年なり勉強したけれども,何も変わっていないということだと余り意味がないと考えております。それが調査の項目の変化ですね。満足度を聞かなくするということでありません。満足度は,必ず聞くようにしていますが,学生の達成ということについて,少し重心をシフトしていこうということです。
もう一つ飯吉委員のお話で,恐らく修士と博士を重点的にということで御疑問があったと思いますが,学部だと,4年後に卒業するのは3割強です。10年目まで累積すると,それでも4割強ということになりますが,修士の場合,今すぐにはデータが出てこないですが,私の経験から申し上げると,修士の場合は大体6割から7割ぐらいの人が2年間で修了しております。場合によっては,3年,4年かかる人もいますが,累積すると,やはり7割程度。あとの3割で残念ながら修了できないという方も毎年出てきます。
博士課程は,まだ学位を出し始めて日が浅いんですけれども,毎年十二,三名の方が入ってきまして,大体4名から5名ぐらいの学位を出しておりますので,大体3割の比率で学位を出していると考えたらいいと思います。
また,どういう方がというような御質問については。これもエビデンスがないので私の印象になりますが,プログラムによって全然違います。社会経営科学というところでは,実務で地方自治体の管理職をされている人たち,人間発達科学では,教員や管理職という人たちが非常に多いです。7割から8割がそのような方たちで占められています。そのような方たちは,日頃子供たちと接していて,品のない言い方ですが,ネタをたくさん持っておりますので,論文の達成率が高くて,8割から9割ぐらいの方は修士を取って出ていくというのが現状だと思います。これでお答えになっていましたでしょうか。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。では,質が保証されている大学とはどのような大学かという大きな問題に戻って,御発言を頂ければと思います。挙手のボタンを押していただければ,こちらで指名いたします。では,吉見委員,お願いいたします。

【吉見委員】 ありがとうございます。先ほどの質問のところでお話しした方がよかったのですが,先ほどの高橋先生のお話で,非同時の通信制の教育の中でも双方向性が非常に重要なんだというお話がございました。これは,非同期であっても,学ぶ者と教える者のある種の共同体意識や,一緒にやり取りをしながら学んでいくという過程が極めて重要だということの御指摘だったと解釈をいたしました。
この問題がなぜ質保証に重要なのかというと,特に通信制の場合,学生がとてつもなく多様になる,つまり,年齢的にも,階層的というか,収入の面でも,地域の広がりの面でも多様になるからです。オンライン授業を一括で実施したときに出てくる問題が,非常にはっきり通信制に表れてくるということだと思いました。
すると,そのような状況の中で,学ぶ者と,教える者の共同性を担保するために一番重要な要素は一体何なんだろうかという根本的な問いが出てくると思います。それは教室や建物といった施設ではないとすると,スタッフなのか。スタッフだとすると,教員以外にどういう専門職が必要なのか。又は,ITのシステムだとすると,どのようにIT上のシステムが担保されることが必要なのかということを,特に高橋先生,岩永先生や森先生に是非御教示いただきたいと思いました。
以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,杉谷委員,お願いします。

【杉谷委員】 ありがとうございます。本日,特に前半のお話を伺いまして,2つほど改めて考えました。1つは,学修成果のことでございます。今回御報告いただいた大学さんは,国内でも非常に熱心で先端的な取組をされ,AP事業にも採択されており,高く評価されている取組を行っているかと存じます。しかしながら,それでもやはり各大学の文脈や状況に応じたような学修成果というのを模索されていて,またその測定も完璧ではない,試行錯誤中であるというお話でもございました。ですので,学修成果の可視化は非常に重要な取組でありながらも,公表する場合は,その形式や内容に関して慎重になるべきではないかと考えます。この辺りの議論は,教学マネジメントの委員会でもかなり議論されていたようでございますので,その点,今後も引き続き検討すべきではないかと思った次第です。
もう一つは,質保証システムについて,森先生のお話とも関係するんですけども,国としての質保証のシステムが,大学の格付ということを目的としていくのか,そこまでではないにせよ,それにつながりかねないことに動いていくのかどうかというのを,きちんと検討,議論した上で進めていくべきではないかと思いました。
アメリカは,特に奨学金の返済と絡んだような形で,オバマ政権以降取り組まれた大学の格付のような動きかと思います。そういった背景事情も踏まえた上で,今の日本において何を行っていくべきなのかを考えるべきではないかと思った次第です。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,瀧澤委員,お願いいたします。

【瀧澤委員】 ありがとうございます。瀧澤です。いろいろな大学の性格,規模,目的に応じて,いろいろな方法で質保証をされているなというのが印象でしたが,特に印象深かったのが,共愛学園前橋国際大学の質保証で,エビデンスベースで自己評価を先生とリフレクションしながら自分で評価をしていくということです。そのような取組をされているというのが,通常の大規模の大学ではなかなか今までできていなかったことかと思いますが,このように今,非常に速く流動化していく中で,このような取組を大きな大学でも取り入れることができるならば,その方法を考えた方がいいと感じました。
大森委員にお伺いしたいことが2点ありますが,1点目は教員1人当たり何人ぐらいの学生さんを見ていらっしゃるのかということです。2点目は,普通の大学教育ですと,例えば理工系の知識をお持ちの先生方が,こういった学生一人一人に対してのカウンセリングやコンサルティングとするのはなかなか難しいのではないのかと思いますが,こういったリフレクションベースの自己評価をさせる場合,教育者に求められる資質ですとか訓練の機会というのはどのように設けていらっしゃるんでしょうかということです。 以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,高橋先生,お願いいたします。

【高橋理事長】 吉見委員から御質問がありましたので,簡潔に述べさせていただきたいと思います。
人なのかシステムなのかというポイントですが,実を言いますと,コロナ禍において通学制大学で導入されたシステムは,汎用性のシステムですね。商品名は申し上げませんけれども,かなり私たちから見ると,危ないところがございます。
ただ,システムは人によって乗り越えられます。別の言い方をすると,丁寧な対応等々をしていけば,双方向性はできるという見方がされ出して半年以上たつと思っております。
この場で強調したいことは,やはり大学通信教育を維持していくには,それぞれニーズや立場が違うので,教員1人では無理です。大学院又は大学院修了者による,いわゆるTA型で担っている大学,又はカウンセリング的な立場で経験のある方が担う大学等,様々あります。
すなわち,教員とともに,それをサポートしていくチームの在り方,中央教育審議会でいうと,初等中等教育分科会で議論されているようなお話ですが,コロナ禍で大学教員は働き過ぎかなと僕は見ております。
私は私立の学校法人では労務担当理事をしておりましたので,大学通信教育を併せて行う課程の場合には,もう70年の間,通信を担当すると働き過ぎになるという問題があり,改革が必要だと思っております。通信教育をサポートしていくだけの人材をそれぞれの大学において確保して初めて双方向性の確保や学びの共同体ができていくという期待をしております。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。森先生,浅野先生,岩永先生,何か御発言ございますでしょうか。岩永先生,どうぞ御発言ください。

【岩永副学長】 吉見委員からお話のあった同時双方向について,放送大学にはいろいろなタイプの方が居られ,年配の方が多いですが,最大限に学びの共同体や教員との触れ合いを求める層が確かにあります。それに対して,私は自分で一人で勉強したい,余り人とは関わりたくないといってそれらを最小限にしたいという方もおられます。そのような意味では,匿名性というのは,放送大学ではほかの大学よりもかなり保証されますので,それを目的に来る方もいらっしゃいます。
ただ,マックスで求める層に対して,それが実現できるようなシステムは用意しなければいけないということを私たちは考えておりまして,使う使わないはその人の目的や考え方,スタンスによって決まりますが,システムは用意しないといけない。したがって,吉見委員からの御質問に対する回答としては,私たちはそこはシステムで担保するということを考えております。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。森先生,お願いします。

【森教授】 吉見委員の御質問にお答えしようと思います。CBEにしても,オンライン教育にしても,学びのコミュニティーを大変作りにくいというのはそうだと思います。
連邦教育省は,CBEについて教員の重要性を説いているのですけれども,実際にプログラムを見ますと,アドバイザーやチューターなどの人々の層の厚さを感じます。ただ,学生同士のネットワーキングというのはやはり弱さがあるなと思いました。
また,杉谷先生がおっしゃった,アメリカの連邦による格付の件なのですが,本来,オバマ政権で狙われていたのは,もっとカッティングエッジな比較というか,ランキングに近いようなことだったのですが,それは周辺の専門家からのヒアリングなども経て,今出ているのは軟着陸版だと見ていいと思います。いわゆるランキングというのは,それを発表する出版社もありますので,それは連邦の仕事ではなかろうというのが,今のアメリカの,現実から逆算した結論かと思います。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。それでは,浅野先生,お願いできますでしょうか。

【浅野教授】 本日の御報告の中でもお話しさせていただきましたが,山形大学においてもいろいろと模索をしておりまして,試行錯誤状態にあります。学修成果を測定するというのは,言葉では非常に明確ですが,実際にやりますと非常に様々な困難を伴います。
代表的な2つの困難がありまして,まず,測定した結果の妥当性をどう担保するかということ,これを学内でどう受け入れてもらえるかがまず1つ目の困難です。
もう一つが,スライドでお話ししましたけども,我々も社会に対して定例記者会見などを通じて発表していますが,なかなか難し過ぎて理解いただけないという実情があります。頑張って測定し,それを社会に説明しようとするとすごく難しく,なかなか理解いただけない状況の中に置かれているのが現状です。
一方,測り過ぎの議論などいろいろありますが,我々としては,とにかくできることをまずやってみて,できないことがあれば率直にそれはできないということをお話ししていくしかないというのが今考えている状況でございます。以上,御参考になるか分かりませんけれども,実際に担当している者としては,そのように感じております。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,大森委員,お願いします。

【大森委員】 1人当たりの学生数ですけれども,三十数名だと思います。余りST比はよくありません。私学はなかなか難しいかと思います。
ただ,大規模大学と小規模大学の比較でいくと,大きな大学でも,学部や学科単位で考えれば,うちも1学部の単位で行っている取組なので,十分に同じような環境が作れるかと思います。
もう一つ,教員の資質の問題ですけれども,それは考えたことがなかった観点でして,教員は研究者であると同時に教育者であって,面談の方法や,「共愛12の力」の意味に関する研修というか学び合いは当然していますけれども,ふだんから就職に向かっての面談もやっているし,学修相談もやっているし,それらは先生の仕事の基礎的なことで,そこに疑問を余り感じていませんでした。ただ,やはり質保証という言葉や基準を考えたときにずっと申し上げているのは,教員の基準を研究業績だけで見ていくというからの脱却については,次回以降の議論につなげていただければと思います。
ありがとうございました。以上です。

【瀧澤委員】 どうもありがとうございました。

【吉岡部会長】 どうもありがとうございました。
今日は5人のゲストに発表いただき,大変勉強になりました。特に通信系の大学のお話からはいろいろなヒントを頂いたと思います。まだ御発言されたい方がいらっしゃると思うのですけれども,場合によってはメモを頂ければと思います。それでは,事務局から今後の予定等についてお知らせをお願いいたします。

【奥井高等教育企画課長補佐】 失礼いたします。本日も活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。次回の会議につきましては,年が明けて1月25日月曜日15時から17時を予定してございます。開催方法等につきましては,追って御連絡をいたします。
また,御発言できなかった内容がございましたら,事務局までメールでお寄せいただければと思います。以上でございます。

【吉岡部会長】 どうもありがとうございました。
これで今年の会議は終わりでございます。大変な1年でしたけれども,来年が皆様にとってよい年でありますようにお祈りして,この会議を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


 

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