令和2年7月3日(金曜日)10時~12時
WEB会議
(部会長)吉岡知哉部会長 (副部会長)日比谷潤子副部会長 (委員)永田恭介委員 (臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,土屋恵一郎,長谷川知子,濱中淳子,古沢由紀子,宮内孝久の各委員 (専門委員)大森昭生,小林浩,林隆之,前田早苗,吉見俊哉の各委員
(事務局)伯井高等教育局長,森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),牛尾高等教育企画課長 他
(1)部会長の選任等について 委員の互選により吉岡委員が部会長に選任された。副部会長については,吉岡部会長から日比谷委員が指名された。 (2)質保証システム部会の運営について 事務局から,質保証システム部会の会議の公開について資料2に基づき説明があり,原案のとおり決定された。 また、公開に関する規則に基づき,この時点から会議が公開された。 (ライブ配信開始) 【吉岡部会長】それでは,初回の質保証システム部会の開催をすることにいたします。開催に当たりまして,私からまず一言御挨拶させていただきます。 この部会は,質保証システム部会という名称でございます。質保証部会ではなくて,システムという名前が付いているということで,基本的にこれはシステム,制度を考えるという部会になっております。ただ,そうではありますけれども,制度を考えるときには,当然,理念であるとか目的であるとかということを考えざるを得ないので,議論は恐らく質保証をめぐる議論とか,そもそも高等教育をめぐる議論というものにも踏みこまざるを得ないというふうに思っております。その上で,制度に具体的に落とし込んでいくわけですので,教育の現場の現在の問題であるとか,あるいは,さらに,ここのところの新型コロナウイルスの問題,これもそもそもの制度のかなり根幹のところに関わる,いろいろな諸論点を作り出しているというふうに思っておりますが,そういう現実問題に対応しなければなりません。 そういう意味で,制度に落とし込むというかなり大変な作業をこの部会でやらなければならないということで,いささか心もとないところがございますけれども,この委員の方々には,設置審の経験者の方もたくさんおられます。設置審,長年様々な問題を抱えておりますので,そのこともここで多分議論の中に出てくることになると思います。単位の考え方であるとか,学位の考え方であるとか,様々な問題がこれまで議論されてきました。それもいろいろな形で考えざるを得ないというふうに思っております。 かなり大きな問題に関わっておりますけれども,何とかまとめていきたいと思いますので,御協力いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 それでは,続いて,文部科学省を代表して,伯井高等教育局長から御挨拶を頂ければと思います。伯井局長,お願いいたします。 【伯井高等教育局長】 文部科学省の高等教育局長,伯井でございます。第1回目の大学分科会質保証システム部会の開催に当たりまして,一言御挨拶をさせていただきます。 皆様方には,それぞれ御多忙の中,委員をお引き受けいただきまして,また,本日御参加いただきまして,ありがとうございます。 中央教育審議会におきましては,平成30年に,2040年に向けた高等教育のグランドデザインについて答申を頂きました。その中におきましては,高等教育の学修者本位の教育への転換,それを実現するための質保証システムの確立の必要性を御提言いただきました。今期の大学分科会におきまして,新たに本部会を設置することになりました。答申におきましては,時代の変化や情報技術の進歩,大学教育の進展を踏まえまして,質保証システムを現在に即したものに見直す必要があるとの御指摘がございました。 これを踏まえて今回議論を行うものでございますが,重ねて,withコロナ,postコロナの社会におきまして,遠隔授業,オンライン,リモートの授業と,対面の授業というのを上手に組み合わせた授業の在り方,ハイブリッド型あるいはベストミックスの姿での新たな大学の姿を作り上げていくことが求められております。当然,それに見合った質保証システムの在り方ということの検討が必須となっているということでございます。 また,社会のグローバル化が進む中,国内外に我が国の高等教育の質を保証する国際通用性の観点というのも,ますます重要な課題となっております。 本部会におきましては,こうした今後の大学の在り方ということも見据えていただきながら,現行の質保証システムを検証していただきまして,具体的な改善方策を御検討いただければと存じております。是非活発な御議論をお願いしたいと思っております。 なお,withコロナ,postコロナ期における新たな学びの在り方につきましては,これは初等中等教育,高等教育を通じまして,総理の下に置かれております教育再生実行会議において今後議論が行われる予定であるというふうに聞いております。そうした議論の中で,本部会と共通するテーマも出てくるやもしれませんけれども,ある意味,本部会で高等教育の質保証のシステムの確立をどうするのかということにつきましては,先行して課題を抽出,論点整理をしていただければというふうにも考えておりますので,今後,そうした政府全体の会議との連動ということもあり得るかもしれませんが,そうしたことも念頭に置きながら御検討いただきたいということを私の方から冒頭申し上げまして,御挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。 【吉岡部会長】 伯井局長,ありがとうございました。 本日の議事ですけれども,審議を開始するに当たり,審議体制と進め方について御確認いただきます。事務局より説明をお願いいたします。 【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。資料3と資料4に基づき御説明を差し上げます。 まず,資料3でございますが,こちらは平成31年3月27日の大学分科会で決定した部会の設置でございます。1ポツの質保証システム部会,本部会の設置が決定されております。少し時間がたちましたけれども,本日第1回目を迎えるというものでございます。 資料4を御覧ください。こちらは,今後の質保証システム部会の進め方を記載してございます。第10期,今期,来年の2月までのスケジュールを整理させていただいたものになります。現行制度に関する共通理解と課題設定を中心に審議を頂きまして,最終的には課題・見直し論点の中間的整理(案)のおまとめをお願いできればと考えております。 今後月1回ペースで会議を予定しておりまして,1回から3回につきましては,委員の皆様方との問題意識,意見交換を実施して,大学団体等現場からのヒアリングを予定しております。その後,論点を整理した上で,具体的な共通認識あるいは課題設定というものを進めてまいりたいと思っております。 御説明は以上でございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,本日の審議事項に入ります。本日は,我が国の高等教育の質保証システムの在り方について,最初から大問なのですけれども,御審議いただきたいと思います。 まず,事務局より,現行の質保証システム等についての説明をお願いいたします。 【牛尾高等教育企画課長】 高等教育企画課長の牛尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私の方から,資料に基づきまして御説明をさせていただきます。 まず,現行制度の御説明の前に,資料5-1を御覧いただければと思います。これからの検討に当たりまして,検討の視点の例を事務局として整理させていただいております。これまでの大学分科会等における様々な御議論を踏まえまして,整理をさせていただきました。 第1の視点としましては,Society5.0,それから,今般の感染症などを踏まえたニューノーマルなど将来を見据えた新しい大学像を考えていく必要があるというのが1点目でございます。 2点目でございますが,大学に対する様々な御意見がある中で,社会の信頼を確保するための最低限の質保証の在り方をどうするのかというものでございます。 それから,3点目でございますけれども,グローバルな社会でございますので,その中での我が国の大学の国際通用性を確保するということでございます。 それから,4点目でございますけれども,現在,特に事後的な評価について様々な仕組みがございまして,こういったものについて負担感や重複があるのではないかといったような御指摘もあるところでございます。実効的かつ効率的な質保証の仕組みという観点も必要かと考えているところでございます。 続きまして,資料5-2でございますが,こちらでは,具体的に想定される論点,これについてもこれまでの様々な場所での御議論を踏まえて,主なものだけを整理をさせていただいております。大きくは4点になるかと思います。 まず,この後御説明しますように,現在の質保証の仕組み,大学設置基準をベースにいたしまして,事前チェックである設置認可,それから,大学自身の内部質保証,事後チェックである認証評価というシステムになっておりますが,それぞれの役割等についてどう考えるか。 2点目につきまして,定員管理の在り方について。現在の設置基準等のベースは,収容定員に基づく様々な基準が設定されておりますけれども,これをどのように考えるかというのが二つ目でございます。 3点目としまして,情報技術の進展を踏まえた様々な新しい授業の在り方が進んでおりますので,これを基準上どのように位置付けるかということ。 4点目としまして,大学の活動を社会に説明するという観点から,情報公表の在り方,これについても具体的に検討する必要があるかと思っております。 資料5-2の2ページ以降には,先ほど御紹介いたしました2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(以下,「グランドデザイン答申」という。)におけます質保証システムに関係ある記述を抜粋しておりますので,適宜御参照いただければと思います。 続きまして,資料6に基づきまして,今回御議論いただきます質保証システムの現状等について,ポイントを絞って御紹介させていただきたいと思います。 まず,スライドの2を御覧いただければと思います。簡単に,我が国の質保証システムの沿革を整理させていただいております。基本的に我が国におきましては,大学設置基準とそれに基づく設置認可審査による事前規制というものを中心に質保証を進めてまいりました。 これにつきまして,まず,平成3年の段階で,大学設置基準の大綱化というものが行われたときに基準を一定緩めた部分があるのですが,その際に大学の自己点検・評価の努力義務というものを導入いたしまして,事後的なチェックの仕組みを,努力義務という形ではありますが,初めて導入したということになります。 続いて,スライドの4を御覧いただければと思います。その後,大きな変革としまして,平成15年に質保証システムについて大きな変革がございまして,現在の制度の基になる形ができたところでございます。このときに,規制改革会議での御提言,さらにはそれを受けての中央教育審議会の答申を踏まえまして,国の事前規制である設置認可については弾力化をする,その一方で,大学設置後の状況について,第三者が客観的な立場から継続的に評価を行う体制を整備する,事前と事後でチェックするということが本格的に制度化をされたわけでございます。 下にございますように,まず,設置認可につきましては,一定の場合については認可ではなくて届出でよいという制度を導入しますと同時に,それ以前は大学の新設は基本的に抑制しておりましたけれども,その方針を撤廃する等の変化が行われております。さらに,第三者評価制度の導入がございまして,国の認証を受けた評価機関による,大学を定期的に評価するという仕組みを入れたところでございます。併せまして,国の措置といたしまして,法令違反状態にある大学に対する是正措置,従前は学校の閉鎖命令だけでございましたけれども,改善勧告や変更命令等の段階的な是正措置を導入したところでございます。これが現在におけます質保証システムの骨格をなしているところでございます。 以後,それぞれのパーツについて簡単に御紹介します。まず,スライドの6を御覧いただければと思います。現在の大学設置基準の概要を簡単にまとめております。大学設置基準でございますけれども,昭和31年に文部省令という形で制定されたものでございます。以下,項目のみの御紹介になっておりますけれども,教員の組織や資格,収容定員,教育課程,卒業要件,校地・校舎等の面積等についての基準が定められております。定量的な基準としては,基本的には学部ごとの収容定員をベースにしまして,必要な教員の数であるとか校地・校舎等の面積を定める,こういう仕組みが取られているところでございます。また,教育の関係では,1単位当たり45時間の学修とする,あるいは,卒業に必要な単位数というものをこの基準で定めているところでございます。後ろの方に設置基準そのものが出ておりますので,後ほど適宜御参照いただければと思います。 続きまして,スライド7を御覧ください。設置認可制度の概要でございます。大学あるいは大学の学部等を設置する場合には文部科学大臣の認可が必要でございますが,その際には大学設置・学校法人審議会への諮問が必要とされております。大学設置審査でございますけども,審査の基準としまして認可の基準というものが定められておりまして,ここには,学校教育法,大学設置基準等の法令に適合すること,それから,学生確保の見通し,また,定員管理の状況などが定められているところでございます。実際の審査におきましては,設置の趣旨を確認した上で,それに沿った教育課程になっているかどうか,それに十分な教育組織,あるいはそれにふさわしい教員がきちんと手当てされているかどうか等について審査いただいているところでございます。 スライド8に,これまでの設置認可・届出の件数の推移をまとめております。先ほど申し上げたように,平成16年のところで一部の認可事項について届出に変えたということがございまして,その時点で法科大学院の新設等もございまして,非常に件数が増えておりますが,その後は徐々に減ってきているというのが現在の状況でございます。 スライドの9を御覧いただければと思います。大学の設置の認可あるいは届出が行われました後,原則としまして完成年度,卒業生が出るまでの間,設置計画どおりに実際に確実に大学の運営がなされているかどうかについて確認するために,大学設置分科会に設けられました調査委員会において専門的な見地からのチェックをしていただいているところでございます。必要に応じ指摘事項を大学に対して伝達し,改善を促しているということでございます。 その状況につきましては,スライドの10にまとめてございます。この5年間で見ますと,400件ぐらいの対象校がございまして,指摘が付されている大学の数は,この5年間につきまして言いますと,徐々に減っているという状況でございます。 続きまして,スライドの11,認証評価制度について御説明をさせていただきます。繰り返しになりますけれども,認証評価制度は,大臣の認証を受けました第三者機関による評価を定期的に受ける仕組みとして導入されたものでございます。 大きく二つに大別されます。右のところに小さな字で恐縮ですが,書かれてございます。機関別評価というものと分野別評価でございます。機関別評価の方は,大学等の組織全体を丸ごと評価するものでございまして,7年に1回の評価受審が義務付けられているところでございます。それに加えまして,専門職養成をしております専門職大学院等におきましては,教育課程,教員組織等について分野ごとの評価を5年ごとに受けるということが,加えて義務付けられているところでございます。 この認証評価制度は,大学の教育研究水準の維持向上を図るということを目的としております。評価結果に基づいて国による直接的な行政上の措置が行われるというものではございませんけれども,認証評価の結果を踏まえて,例えば,不適合の場合におきましては,国においても法令違反等がないかのチェックをするということをしているところでございます。 スライドの12を御覧ください。認証評価の実施状況をおまとめしております。これまでのところ,2,466の大学の評価が行われておりまして,その中で,延べ件数でいいますと29の大学について不適合が出されているところでございます。 それから,分野別評価の代表例として,法科大学院の認証評価の状況についても,その下に御紹介をさせていただいているところでございます。 続きまして,スライドの14を御覧ください。こちら,大学の情報公表の関係をまとめております。大学の教育研究活動等の状況についての情報提供につきましては,平成11年に大学設置基準に義務付けられたというのが,法令的な縛りとしては初めてのものでございます。その後,平成23年には,具体的に公表すべき情報の項目を省令上明確にするというようなことも行われているところでございます。 スライドの15でございますけれども,それらに基づきまして,より詳細な項目について,どんな項目が今現在公表されているのかということをまとめたものでございます。卒業生の就職先,あるいは入学者選抜の状況,シラバスの内容などにつきましては広く公表が行われているところでございますが,それ以外の項目については大学間でばらつきがあるというのが現状でございます。 それから,スライドの16でございますけれども,これらの情報公表について,各大学がばらばらにするのではなくということで,情報公表のポータルサイトといたしまして,大学ポートレートというものを平成27年から運用させていただいているということの御紹介でございます。 続きまして,以下,スライドの18以降で,関連して大学改革の取組状況についてまとめております。ごく概略だけを御紹介しますと,スライドの19のところでは,様々現在進められております教育改革の取組,シラバス等,あるいはナンバリング等々の状況をまとめさせていただいております。 スライドの20では,ICTを活用した教育の実施状況ということでございまして,取組は進んでおりますけれども,多い項目でも半分程度というのがこれまでの現状でございました。 一方で,スライドの21を御覧いただきますと,今回のコロナウイルス感染拡大への対応ということでは,多くの大学が遠隔教育に取り組んでおりまして,6月1日現在では90%以上の大学が遠隔授業を実施しているという状況にございます。 それから,スライドの24では,社会人入学の動向をまとめております。近年では,ほぼ横ばいという状況にございます。 国際的に比較した場合どうなるかということについて,スライドの25でまとめているところでございます。諸外国に比べますと,25歳以上の大学等への入学者の割合が日本は低いということでございます。 それから,外国人留学生の状況につきまして,スライドの26にまとめております。近年,着実に留学生が伸びているところでございますが,こちらも国際比較で見ますと,スライドの27にございますように,諸外国に比べますと,留学生の割合は必ずしも多くないというのが現状でございます。 以下,更に詳細な資料を付けておりますが,適宜,御参考にしていただければと思います。 あともう一点,御紹介だけでございますけれども,参考資料としまして,令和元年度「全国学生調査(試行実施)」の結果というものを用意しております。こちらは,昨年末に全国515大学の学部3年生を中心に実施をさせていただいたものでございます。将来的には全ての大学に御参加いただいてこのような調査を実施し,学生の目から見た大学教育あるいは学びの実態を把握して公表したいというものでございまして,今回につきましては,試行調査という形で御協力いただける大学にだけ御参加いただいたということでございます。全国の4年制大学の約3分の2の大学に御参加いただきまして,学生数でいうと約41万人を対象に実施させていただきました。お時間の関係もありますので,中身は御紹介いたしませんが,こちらの学生からの声というものも,是非,審議に当たっては御参考にしていただければと思います。 以上,簡単でございますが,現状等の御紹介でございました。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 大変詳細な資料でございますけれども,これからの議論で,もしも委員の方で,こういう資料が欲しいということがあったら,お申し出いただければというふうに思います。 何か直接御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。 それでは,ただいまの説明に関して,現行の質保証システムについて,各委員からお一人ずつ,問題意識等,御意見を伺えればというふうに考えております。資料1のお手元の名簿順に順番に御意見を頂ければと思います。時間の制限もございますので,大体一人3分から,長くても4分ぐらいでお話しいただければということでございますので,その辺の時間管理もお願いいたします。 それでは,よろしくお願いいたします。最初,順番で永田委員からお願いいたします。 【永田委員】 簡潔に述べさせていただきます。今,牛尾課長から御説明いただいた内容そのものに論点はほとんど含まれていたと思います。従いまして,ここでは問題の背景と具体例を少しだけ挙げさせていただこうかと思います。 設置基準については,先ほど御説明があった通り昭和三十一年に制定された規定ですから,時代に合わない部分が出てきていると思うので,一体どこが現状に合わないのかをしっかりともう一度見通して議論をしないといけないだろうと思います。これだけICTが進展した中で,例えば,校地・校舎の面積の考え方は昔のままでいいのかといった議論が必要だろうと思います。 また,大学の役割は教育、研究,社会貢献となっているわけですけれども,設置認可の際に研究については、個人レベル以外では議論されていないということが非常に問題だと思います。というのは,例えば,新しい学部や学科の名称が出てきたときに,そのような名称の学問分野があるのだろうかという議論をすることになります。学問体系として確立しているか否かは,研究が組織としてどのように行われているかという問題なので,各教員の研究がどうであるかだけではなくて,その大学が研究をどういうふうに捉えて設置されるのかということを,もう少し丁寧に検証する必要があると思います。 次に認証評価ですけれども,大学が大学にとって良くあるべく向上するためにという観点からいえば,もともとは大学が自ら作った団体から始まり、それが法律で定められた認証評価というシステムで運用されています。このような認証評価システム自体の国際通用性を含めた有り様も議論する必要があるだろうと思います。 大学の現場における問題としては,情報公表について御説明がありましたけれど,より重要な問題は,単位についての十分な認識であると思います。これにも国際標準という考え方が当然ありまして,実は国大協でフランスの大学協会と協定を結ぶ際に大きな障壁となったのは,両国の間の単位に関する考え方の違いでした。日本の認識が若干甘かったところがありまして,個々の大学同士ではなく大学グループ同士だったのでなおさら大きな問題になったのではと思いますが,やはり国際標準の考え方のもとで単位をどう定義し認識するのか,また,今後どのように改善したら良いのかということを考えなければいけないだろうと思います。 入学定員についても御説明がありましたが,学部や学科単位で見るのではなく,例えば大学全体で見るなど、学問の大きな流れあるいは社会のニーズなどに即応できる形の学生定員の在り方を考えるべきだと思います。 また、内部質保証が重要であるという御説明もありましたが,この問題については,法律的な観点とシステムの観点,さらには大学の現場の観点それぞれを認識しながら議論する必要があるのではないかと思います。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,日比谷委員,お願いいたします。 【日比谷委員】 私は,先ほどちょっと御紹介も頂きましたけれども,本日は,教学マネジメント特別委員会の座長を務めましたので,特にその立場から,この部会に期待していることをお話ししたいと思います。 こうしてお顔ぶれを見ましても,あのとき大変白熱した議論を1年間重ねてきたお仲間が複数お入りいただきまして,心強いばかりで,きょう全員18人だと画面が見えるのですが,皆さんにニコっとかなさって,うれしいですね。 実は教学マネジメント特別委員会で何をしたかというと,新しい委員の方もいらっしゃいますので,ちょっと復習ですけれども申し上げますと,授業科目とか教育課程を編成,実施していくために,具体的にどんなことをしなければいけないかという指針を策定したわけです。学校それぞれに個性がありますから,型にはめるんじゃないかとか,マニュアル化してはいけないとか,いろいろな行きつ戻りつの議論がございましたけれども,結論として,あれはチェックリストではないけれども,あそこに盛り込んだ理念というのは,グランドデザイン答申にも掲げられた学修者本位の教育への転換を是非ともするのだという,その大きな目標を実現するために,考え方としては絶対に必要なものであるということを盛り込んだわけです。 つきましては,特に設置基準は,先ほど永田委員からもお話がありましたように,昭和というのは随分前のことになりまして,根本がやはり今とは全然違う。社会も世界も違うし,大学の在り方も違うし,進学率も違うし,何もこれも違うというときに大枠が作られたもの,その後,いろいろな修正,改正はございましたけれども,やはりこれからの時代の大学というものをよく考えた上で,新しい設置基準を作っていく必要があると強く思っております。 特に,一つ例を挙げるならば,あちこちで言っていることではございますけれども,教員と学生の比率,いわゆるST比,それから,これをどのレベルで保証するか。3年次4年次専門のところに見るのか,あるいは1年生で入ってきたところで,ある意味,一番大学教育で大事なところだと私は思いますけれども,そこで大きい教室で何か講義を聴いているというようなことがないように,今年はちょっとコロナで非常に,1年生,入った人は特殊な状況になってしまって気の毒な面もありますけれども,これから,さあ大学生として勉強するぞというときに,教学マネジメント指針に挙げたようなことが一つ一つきちんとクリアされているような教育体制が作れるような設置基準,あるいは認証評価の基準を求めたいと思っております。 あと,永田委員が絶対おっしゃると思ったので言わないつもりだったんですけど,ちょっと時間ありますので,学位名称ですね。先ほど研究分野がということをおっしゃって,それはそのとおりなんですけど,研究分野をしっかり見ても,余り好きな学位名称をどんどん付けられるようになってしまうと,何かよく分からないということになってしまいますので,学位名称の在り方についても考えた方がよいかなと思っております。 以上です。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,次に,浅田委員,お願いいたします。 【浅田委員】 浅田でございます。 私は,大学設置認可の審査,設置計画履行状況調査の委員,認証評価の評価と,今回話題になります質保証にここしばらく関わってきましたので,その経験から感じている問題意識を述べたいと思います。 最初に,牛尾課長からお話がありましたように,制度が大きく変化して約30年たつと思うんですけれど,事前規制から事後チェックという大きな移行をした中でいろいろな修正がなされてきたと思います。当初,規制緩和の流れで設置基準が大綱化され,準則化され,届出制が導入された。これは自由度を増す形ですが,一方で,規制強化も同時に進んでいきました。自己点検・評価,情報公表の義務化,認証評価制度の導入,是正措置などが導入されてきた。この緩和と強化という両方が並行して進んだ大きな流れの中で起きたバランスシフトには,功罪があったんだと私は理解しています。 功の部分は,社会変化に柔軟に対応して大学の多様化を促進しました。一方で,罪の部分は,少子化が進む中で,大学がどんどん増加し,歯止めが利かなくなりました。その中で,意識の低い大学も参入しているという事実があります。当初議論された中で,悪質な大学は自然淘汰されるという市場原理が言われたんですが,これは機能しなかったという現実があるわけです。 当初の理念というのは現在もずっと続いていると思うんですけど,基本的に大学は性善説にあると思います。最高学府としての高い志を持った大学は,社会責任を自覚している。だから自己改革を続けていく。これは多くの大学が共有しているところだと思うんですが,一方で,非常に悪質な大学が社会問題化して大きく取り上げられる。結果として,質保証をどんどん強化しなくちゃいけない方向ができたと思います。 当初の理念,ある種,理想を追いかけたんですが,それにどんどん後付けの規制強化が入って,一貫性がなくなってきて,制度疲労が生じているのが現状だというのが私の理解です。 このタイミングで質保証システムの部会を立ち上げられて議論するのは正にタイムリーだと私も思っていますので,経験を生かしたいと思っております。中央教育審議会の議論が活発に行われていて,私自身が感じているのは,中央教育審議会の委員の方というのは,社会の代表者が集まっていますので,視点の違う人が混在しているという印象です。つまり,非常に上位の大学を意識して,もっと世界水準で高めていかなくちゃいけない,自由度を上げなくちゃいけない,競争を高めなきゃいけないという性善説に立った,いわゆるトップ大学を意識されている意見と,一方で,非常に低迷している大学に視点を置いて,性悪説に立って,もっと厳しくして退場をさせないといけない,厳しい規制をしなくてはいけないという意見があります。性善説に立つのは大学側の人たちだと思うんですけど,社会を代表する方々は大学への不信感を持って,厳しく意見を出されるというのが混在していると思います。 私自身の感覚で言いますと,大多数の大学は,平均的に適度な規制と適度な自由度で,体力差はあるんですけど,自己改革を行っていると思います。だから,その多くの大学を全部含めて規制強化をして,角を矯めて牛を殺すようなことはしてはいけないというのが,私の感想です。 現行制度の問題点としては,設置認可というのは計画審査であり,計画は飽くまで計画なので,形式的に整えば認可せざるを得ないんです。認可するときに,審査の委員皆さんはじくじたる思いを持ちながら,ACで見てもらおうと先送りします。ACは,完成年度まで設置計画の履行についてきちんと見ます。でも,そこでも懸念が残る大学はあるんですが,これは認証評価に任せようと先送りします。認証評価は,残念ながら強制力も罰則もありません。 その認証評価は,全部を請け負って,厳しい判断ができない。認証評価そのものは先送りする先がないので,自分に返ってくるわけですね。だから,この3段階いずれにも限界があるので,私自身が評価とか審査に関わってきて思うのは,基本的には大学の自己責任で公表する内容をもっときちんと義務化して,国公私で共通化した方がいいと思うんです。大学ポートレートは,現状では不完全だと思います。それから,認証評価でいわゆる適格グレーゾーンの大学というのがあるんですけれど,そういうものは文部科学省がやっぱり引き取って,きちんと指導,警告,あるいは最終的には廃止も含めた厳しい措置が必要なのではないかと思います。例えば,認可,届出のACはありますけれど,認証評価のACのようなもの,こういうものがないと,多分,認証評価を幾ら触っても,恐らく現状の大きな変化はないのではないかと思います。 あと,細かい話では,先ほど出ました学位の名称の話であるとかがありますが,もう一つ,設置認可で一つ気になっていますのは,国立大学と公私立大学は扱いが違うという点,これは,制度上は未整備のところだと思いますので,これもそろそろ整備された方がいいのではないかと思っています。 それから,もう一つ,大学が撤退するプロセスが今の設置基準には入っていないので,これも必要なのではないかと思っています。 私からは以上です。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,飯吉委員,お願いいたします。 【飯吉委員】 飯吉です。よろしくお願いいたします。 アメリカで20年,日本に戻って10年,教育研究財団とか大学で高等教育の進展に関わってきました。特にテクノロジーを活用したイノベーションに自分の主軸を置いてきましたが,それを通して見ていて,やはり高等教育におけるテクノロジーの利用というのは,日本では欧米に比べると10年は遅れてきたのだろうと思います。長らくその10年という差が縮まらないまま,このコロナ状況に突入したという訳です。図らずも大学の現場レベルでは,このオンライン授業が,先ほど9割という調査結果の報告がありましたが,入っている。凄まじいことで,教職員も学生も,今無理やり ITのリテラシーを強制的に身に付けさせられているという感じです。 ですので,その意味では,強風が,追い風とはいえ暴風が吹いてきた感じはあるのですが, これで日本の大学がテクノロジーの導入,オンライン化を果したというのはまだ尚早です。 例えば各学部や大学院のプログラムレベル,それから大学の執行部が,これらをどのように活用していくのか,応用していくのかという意識の部分が非常に未熟であり,ここが本丸です。 言い換えれば,今各大学でオンライン授業をやって問題になっているのは,「オンライン授業の質保証」だと思います。ただ,これから考えていかなければならないのは,「オンライン教育で質保証」,つまり,ハイブリッド,それからベストミックスというお話も先ほど伯井局長の方からありましたが,それらを取り入れることによって,大学教育,高等教育システム全体の質を上げていき保証するということが,非常に大事になってくる。 さらに,現行の大学のシステムの中でどう生かすかということに加えて,高等教育の拡充ということも考えていかなければいけない。MOOCの資料とかも入れていただいてすが,約2年前の資料で,MOOCの数にしても,利用者にしても,この2年間で既に二,三割増になっているという世界の状況の中で,日本はその辺が非常に冷え切ったままという状況であります。 MOOCを使った学位プログラムも,もう世界では50ほどあります。MOOCを利用しているものだけでもです。マイクロクレデンシャル(例えば, MicroMastersやNanodegree)のようなものも出て来ており,いわゆる大学の正規カリキュラムの中でトラディショナルな既存の学生さんに提供しているオンライン教育に加えて,社会人,それから大学に進学する前の皆さんがこういうものを使えるようになっています。このようなマイクロクレデンシャルが質保証され,大学の単位や単位群に置き換えられて学位の取得に繋がっていくことで,多様で柔軟な高等教育システムが作られつつあります。 残念ながら,例えば卓越大学院プログラムを見ても,このようなテクノロジーやオンラインを活用して,世界と対抗していこうというものがほとんど見られないという非常に残念な状況であります。ですから,今回,「転んでもただでは起きない」ではありませんが,このコロナによって喚起されたところがありますので,それを如何にもっと高等教育や大学のシステムのレベルで活用していくかが重要です。国際化なども,しばらくは留学の行き来などもできないと思いますし,ある意味でこのような活用のチャンスだと考えます。 以上です。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,杉谷委員,お願いいたします。 【杉谷委員】 杉谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 私は,設置認可審査とか設置計画履行状況調査,それから認証評価や法人評価,主に評価者の側(がわ)の立場に立ってやらせていただきました。とともに,大学の方では学部学科に所属しておりますので,そういった現場感覚をもった評価を受ける側(がわ)の立場と,両方から考えてきたことを申し上げさせていただきたいと思います。主に3点ございます。これまでのかなりシステム的な話とずれるところもあるかと思いますが,御容赦ください。 一つは,当たり前といえば当たり前かもしれませんけれども,評価と,それから,特に情報公表に関して,その目的が何にあるのか。事前チェックや事後チェックの目的が何にあるのかということを改めてよく確認した上で,それに合わせたシステム,方法というのを検討すべきだというふうに思っております。 それぞれに問題があるかと思いますけれども,その評価の結果を,特に情報を公表するということで社会に提供することはとても重要だとは思います。ただその一方で,例えばグランドデザイン答申などでは,その情報を比較できるように一覧化するという内容も提案されています。これを制度として機能させていくことが,本当に現場にとってもよい影響があるのかということを改めて考えているところでございます。 2点目は,主に事後評価に関わるところです。先ほどの論点にもありますように,いかに評価の内容や方法を現場がやりやすく簡素化,あるいは重点化していくかというところも必要なところではないかなと思います。ともすると,制度の枠組みを作ったり,政策文書を表明したりいたしますと,それが現場には非常に大きな影響を与えるかと思います。大学の自主性,自律性というのが教育基本法でも尊重はされていますけれども,制度化は想定以上に大きな影響を与えて,標準化というのを招きかねないという議論も以前からございます。それを厳密に守り過ぎて,形式的に守ることに腐心しがちなところもありますので,現場の疲弊感というのも並々ならぬものがあるかと思いますし,それが徒労感にもつながっていくところがございます。 毎年の評価結果などを見ていくと,大きく変わる部分はなくはないですけれども,特に変わらない部分,継続的な部分もあるかと思いますので,そこら辺のバランスを取りながら,重点を置くような内容というのを考えるべきではないかなと思います。 3点目は,学修成果に関することです。近年,学修成果を可視化するということで非常に重視されておりまして,その重要性ももちろん理解できます。しかしながら,学修成果は,達成されるべき目標,期待される成果として挙げられているものと,実際に達成された結果という場合の学修成果という両方の意味がございます。それらが混同されがちで,特に最近は達成された結果の方の測定というのに力点が置かれがちです。しかし,教育研究を見ていましても,評価研究というのは,測定・評価方法についてはどうしてもまだ研究途上な面が否めないかと思います。 ですので,そのあたりのことも踏まえた上で,過度に学修成果の結果だけ重視されるような形にならないように,これもまた情報公表と関わりますけれども,そのあたりのことを検討できればと思っております。 以上でございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございました。 では,瀧澤委員,お願いいたします。 【瀧澤委員】 科学ジャーナリストの瀧澤美奈子と申します。先生方,皆さんお互いに御存じの方が多いというふうに伺いましたけれども,私は今回初めてこういった高等教育の議論に加わらせていただきましたので,きょう,前半のお話を皆さんから聞いていただけで私の知識のなさというのを痛感しております。 私はふだん科学ジャーナリストとして,主に科学の分野の研究者にお会いして取材をしたりして,その結果,本や記事に情報発信をしている者でありますけれども,質保証システムというのは歴史が長くあって,皆さんいろいろ腐心されてきたというのはよく分かったんですが,一つ,私はどういった手段でもって何を狙うかというところの議論がまだ勉強不足でできませんので,ふだん私が見聞きしている中で,これからの大学に求められる,大学を卒業した人たちに求められる像というのがどうなのかなというのをちょっと考えてみましたので,お話ししたいと思います。先ほど浅田委員からお話がありましたように,上位大学と下位大学で考え方は全く違うと思うんですが,特に上位大学の大学を卒業した,社会を担うエリートのところに焦点を絞ってみますと,やはりこれからの日本の人口の減少を考えてみても,国際化が避けられないということです。特に小中高の教育で日本人としてのアイデンティティーというのをしっかり築いているわけですので,大学では国際化を是非重視していただいて,国際標準の教育というものをしっかりとやっていただきたいなと思います。 特に海外の人たちと対等に議論ができる。特に日本人はネガティブフィードバックに弱いというふうに言われていますけれども,対等に議論して,国際的な場でリーダーシップを取っていける,リーダーシップの教育と国際化ということが鍵になってくるんではないかなと思います。MOOCの話などもありましたけれども,そういった国際的な基準でもって教育が行われるというのを是非意識してやれるといいのではないかなと。大学の評価自身も国際的な評価をどんどん入れていくということではないかなというふうに,すみません,雑駁(ざっぱく)ですけれども,今の段階ではその辺で勘弁していただければと思います。勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,谷本委員,お願いいたします。 【谷本委員】 皆様,どうもこんにちは。私もこのような高等教育の議論に携わらせていただくのは初めてのことですので,どうぞよろしくお願いいたします。 関西外国語大学短期大学部に勤めております。短期大学の教育に携わる立場から,3点お話しさせていただきたいと思います。 一つ目は,大学設置基準のことですけれども,高等教育機関として必要となる基本的な質保証の仕組みと考えております。ですから,設置認可がなされた後も定期的にチェックを受ける必要性,また,基本となる施設,設備を担保する必要性というのは重々に感じておりますが,これからはSociety5.0を見据えて,今後必要となる施設や設備というのを加えていく,あるいは検討していくことになるかと思います。 その点に関して,委員の先生方に,グローバルに展開する大学に携わっておられる方が多いかと思いますが,一般的な大学・短期大学で必要とされる施設や設備,教育といったものもしっかり議論の俎上(そじょう)に載せて,進めていただけたらと思っております。 二つ目なのですけれども,短期大学について少しお話しさせていただきたいと思います。短期大学は地方に多く存在しておりまして,コミュニティ・カレッジとして地域の文化,教育を担っております。保育士,栄養士,看護師など地域に必要とされる人材を輩出しておりまして,実習などを通して地域に貢献し,評価を頂いております。 地方からそのような若い人が都会に流れて遠方の規模の大きな大学に行く,進学や就職で若い人が離れてしまいますと,その地域社会が疲弊してしまいます。ですので,グローバルな観点からの議論は大切で,今回,多くの先生方のお話の中に入っておりましたけれども,地域社会と大学という観点にも配慮して議論を進めていただけたらと思っております。 また,都会の大規模な大学と地方に根差した規模の小さな短期大学が同じ基準で同じ設備,教育コンテンツを揃えていくことには,なかなか難しいところがあります。そのような事象もまた配慮,御考慮いただけましたら幸いに思います。 三つ目なのですけれども,基礎資料として頂いているものの26枚目のスライドに外国人留学生の数の推移というものがございまして,大変興味を持って拝見しました。現在,約30万人の外国人留学生が学生ビザを使って日本で勉強している。学生ビザを使わない短期の留学生はここに含まれていないということです。そのうちの3分の2の学生さん,留学生たちが高等教育機関,大学,短期大学,高等専門学校等に在籍しており,残りの8万人から9万人の留学生が日本語教育機関にいるということです。この学生たちの多くが,東京近辺の首都圏のところにたくさんいらっしゃるということですが,日本語を勉強した後で,次のステップとして大学に進学する,あるいは,資格を取るといったところをしっかりケアをしていかなければ,日本の教育の国際的な通用性等も難しくなってくるかというふうにちょっと考えます。 この学生たち,例えばですけれども,2年制の介護あるいは栄養士等の資格が取れるようなところに,日本語スキルを身に付けた後に編入学なり,入学することができたならば,日本で就職する,あるいは本国に帰ったときに,日本の栄養士であるとか,あるいは保育士,看護師等の資格を持って活躍できるのではないかなと考えていました。 国際的な通用性について,勤務校が外国語大学なので,海外提携校といろいろな企画を検討しているところです。また質保証システム部会の方で先生方のお話を拝聴しながら,私も勉強させていただきたいと思います。 私からは以上です。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,土屋委員,お願いいたします。 【土屋委員】 飯吉委員,先ほどの御発言ありがとうございました。とても印象深く聞かせていただいたんですが,まさしく私も十数年前からオンライン授業というものが大学の質保証の中心的な役割を果たすものなのではないかということを考えておりました。そのきっかけになったのは,12年ほど前にMITの宮川繁教授に明治大学に来ていただきまして,MITが展開しているオープンコースウエアについてお話を伺いました。 そのときに3点ほど宮川教授がおっしゃっていたのは,オープンコースウエア,つまり,オンラインのオープン化が果たした役割については,一つは大学のメッセージを社会的に発信することができる。もう一つは,受験生や父母に対して大学で今何をやっているかを発信することができる。3点目として,教員相互がそれぞれの授業を見ることができるということを挙げていらっしゃいました。これは正に私たちがFDと言っていることでありますけれども,なかなかできないというか,ほとんどできないことだったんですね。リアルな対面授業では,ほかの教員の授業を見ることはできませんでしたので,このオンライン授業によって初めてほかの教員が何をやっているかを見ることができて,教員相互の連携も可能になるということを宮川教授がおっしゃったんですね。 それを聞いたときに,何とかこれをやりたいと思ったんですが,残念なことに,やはりなかなか大学の先生方はこれをやってくれなかったんですよね。ところが,今回,コロナによってやらざるを得ない状況になったときに,まさしく今,飯吉委員がおっしゃったように,大学の質保証に関しての最も中核的な部分が,今やっと始まったというふうに私は考えております。もちろんこれまでも,IRをはじめ,あるいは自己点検・評価等でかなりのエネルギーを注(そそ)いで各大学はやってまいりましたけれども,日常的な場面での質保証ということは,まさしくFDにありますので,それを今回,オンライン授業という形でできるようになったということは,大変危機下ではありますが,大きな進展ではなかったのかと思っております。 そういう意味では,飯吉委員,ありがとうございました。私もそのことを大変きょう,強調しておきたかったことであります。その点でいうと,設置基準では今60単位までを遠隔授業で認めているんですけれども,今回,コロナ禍の下で特例的な措置として弾力的な運用を行うことも認められましたが,果たしてそうした制限が,限定が,設置基準上,遠隔授業の定義を含めて,どのようにしてやっていくのかということについてはかなりきちっと考えていく必要があるし,そもそも限定が必要なのかということも含めて考えていく必要があると思います。 ちょうど今週,JMOOCはオンライン授業についての成績評価等も含めた,あるいはアクティブ・ラーニングを含めたオンラインについてのシンポジウムをやりますので,是非御覧いただきたいと思います。MOOCはたまたま今,明治大学の中に幹事校として置いておりますので,今後ともMOOCの仕事には注目していきたいと思っております。 もう一つきょう言っておきたかったのは,この間,やはりこれは設置基準の変更もありましたが,学部を越えた学位認定をやるということになっているわけですが,その場合,学部を越えた学位認定の,正に先ほどからお話しになる学位名称,あるいはそれぞれの3ポリシーは一体どうなっていくんだろうか。そもそも3ポリシーというものでこれに対応できるのかということをやはり考えておく必要があるのではないのかと思います。 ディプロマポリシーといったときに,学部を越えた学位についてのディプロマポリシーって一体何なのか,あるいは,アドミッションポリシーというのは一体何であるのかということを考えなきゃならないでしょうし,設置基準上もそれについての様々な配慮が必要なのではないのかと思います。 また,それについて言うなら,学部中心的な縦割りの大学から,学部を越えた,むしろ横につながるような横断的に大学が変化しているときに,現在の入学定員の管理方法でいいのかということが一つあると思います。今の入学定員の管理はどうしても学部中心でありますので,学部を越えた大学へと変貌しているときに,むしろ大学全体を対象とした定員管理へ移っていく必要があるのではないのかなということを強く感じております。 これについては,日本私立大学連盟も,入学定員の管理については大学全体を対象にしたものに変えるべきであると申しておりますので,そこでの趣旨も含めて,やはり大学全体の定員管理へと移行していく必要が,設置基準の上で考えていく必要があるかなと思います。 また,教員の組織に関しても,実務家教員については,今回,設置基準でも変更になりましたが,あるいは設置基準の中には教員の年齢構成については書かれているんですが,男女教員比については書かれておりません。正に我々は女性教員を増やしたいと思っていますが,残念ながらなかなか増えないんですよね。それでも何とか目標値としては,30%とか40%を考えながらこれからやっていこうとしているんですが,設置基準の中には実はこの男女教員比は書かれていないと思います。これについて触れなくていいんだろうか。つまり,このチャンスに,質保証システムというチャンスの中で女性教員の採用枠を増やしていくような方法を考えていく必要があるのではないのか。 また,LGBTにつきましても,今我々大変苦労しているのは,LGBTを対象にする大学施設をどう変えていくのか。トイレの問題,あるいは体育の着替えをする部屋の問題であるとか,そういうことでいろいろ苦労しているところでありますけれども,施設の面においてLGBTを対象にするような,あるいはそうした配慮を必要とする学生に対する施設面での考慮を設置基準上どうしていくのかということもやっていく必要が私は絶対出てくると思います。それが同時に学生に対しても,自分たちの大学における立場というものがきちんとあるんだということを認識させることにもつながるので,是非こういう男女教員比,あるいはLGBTの教職員や,あるいは施設という問題についてもやはり設置基準上考えなくていいのだろうか。あるいは宗教を問題とするような形での,これもやはり我々は今いろいろ苦労しておりますけれども,施設をどうするのかということもありますので,そうしたことも設置基準上,考えなくていいんだろうか。 余り多くのことを言ってもあれですけれども,私としては,こういう問題のプロではないので,プロではないという立場からかなりとんでもないことを言うかもしれませんが,是非そうした諸問題についてもこの場で御協議いただきたい。そう思っております。 以上でございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,長谷川委員,お願いいたします。 【長谷川委員】 ありがとうございます。経団連SDGs本部の長谷川と申します。 ふだんは経団連のトップと国公私立大学のトップで構成する,「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(産学協議会)の事務局をさせていただいておりまして,そういった活動を踏まえて,この活動に参加させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 私は,資料の5-1にある,Society5.0のニューノーマルを見据えた新しい大学像,大学教育の在り方という視点は非常に重要だと思っております。現在、多くの企業が,非常事態宣言が解除された後も,テレワークを継続する、大体5割減とか,そういった目標を掲げてローテーションを組んでテレワークを続けるという方針を示しております。つまり,ニューノーマルの時代の新しい働き方を追求するということなんですけれども,そうなりますと,在宅勤務では、実際に何時から何時まで働いたかという時間管理や,仕事をどういうプロセスで進めたかというプロセスによる人事評価が難しくなることから,今後は,時間やプロセスではなく,成果やアウトプットによる人事評価の方向に変えていこうということが、企業では喫緊の課題となっており、そうした議論が始まっています。こうした流れは,大学教育の質保証の議論とも関係するのではないかと考えております。全体的な方向としては,学生や教員の人数とか,校舎の面積,施設,設備といった外形標準による大学教育の質保証から,やはりグランドデザイン答申で示されたとおり,学生が何を身に付けたか,何ができるようになったかという学修の成果による評価という方向へ変わっていくべきではないかと考えております。 また,withコロナやpostコロナにおいて,大学教育がオンライン化されるという指摘が皆様からございますけれども,そのメリットとしてやはり一番大きいのは,海外大学との教育連携がより容易になり、推進されることだろうと思っています。その面では,海外大学とのジョイントディグリーは今もありますけれども,その設置認可は、もっと緩和してやりやすくした方が良いのではないかと考えております。 そのほか,産学協議会が今年3月31日に公表した報告書の中で,大学の設置基準に関わる要望が幾つかございますので,主なものを紹介させていただきます。 第一は,既に土屋委員や永田委員からも御発言があったとおり,大学の定員管理は,学部単位ではなく大学単位で行うべきだということです。大学に独立した法人として学長が経営することを求めていくのであれば,定員管理は重要な経営戦略の一部ですし,また,土屋委員から御発言があったとおり,文理融合など学部を越えたいろいろな教育プログラムが増えていく中で、多様な学生が多様な期間で卒業するようなことも踏まえれば,大学全体で定員を管理していく方がよいのではないかということです。 第二は,企業の立場からということで,授業の実施場所に関する要件の緩和も求めております。特に社会人を対象としたリカレント教育プログラムに関しては,今も文部科学省の通知によって認められる場合はあるということにはなっているんですが,もっと柔軟に企業の施設ですとか,公開空地ですとか,野外のいろいろなフィールドなども活用して、特に産学連携で実施する場合は、企業と大学の柔軟な発想で,いろいろな場所で実施できるようにする方が良いのではないか、という要望を出しております。 以上です。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,濱中委員,お願いいたします。 【濱中委員】 早稲田大学の濱中でございます。よろしくお願いいたします。 これまでの先生方のお話を伺っていますと,先生方,本当にいろいろなお立場で質保証に関わっていらっしゃる方ばかりで,私は逆にほとんど関わっていない立場でございまして,どちらかといえば一般教員に近い立場なんだと思います。 そうした私が,もし,申し上げられることがあるとすれば,「質保証に対する意見というのは,見えている景色によって大きく異なる」という,そういった印象を持っているということです。 質保証が本格化したのは2000年前後だと理解していますが,当時,私は大学院生でした。そのときは,はっきり申し上げて,大学の質保証に対して,あまり関心を持っておりませんでした。「よく分からなかった」といったほうが正しいのかもしれません。というのは,私にとって大学というのは自律的に学ぶところであって,放っておかれることも含めて教育。そのような印象を持っておりましたので,ちょっとよく分からない,というところがありました。 それが今度,アカデミックポスト,大学入試センターに着任しまして,その頃から非常勤の授業を担当するようになりました。周りの同世代の研究者たちと授業の話をするようになったんですけれども,そのときは,みんなすごく教育に力を入れているな,という印象を持っていました。領域も限られますし,私的なつながりに限定されるんですけれども,若い世代は意欲的に教育に取り組んでいました。 したがって,質保証の議論については,主張は分からないでもないが,私たちこんなに頑張っているのに,と,どちらかというと否定的にみていました。当時,公の場でも,「これ以上何を求めるのか」とか,「大学はよくやっている」とか,「教員は頑張っている」とか,そんなことを話してもおりました。 入試センターが終わって,今度,国立大学の方に行きました。東京大学だったんですけれども,そこはやっぱりST比,恵まれているところもありまして,充実した教育をしているという印象を持ちました。出身大学でもあるのですが,私が学生だった時よりも,教育に力を入れている,とも思いました。やはり大学は頑張っているんだなという認識でしたが,それで昨年度,今度は私立大学に移りました。大規模私立大学の現状を目の当たりにしまして,私がまだ慣れていないだけのところもあり,要領も悪いというところもありますし,そのよさに気付いていないだけかもしれませんが,質保証には課題がある,ということも見えてきたとも感じています。 また,昨年度から NIADの認証評価の方にも携わらせていただいておりまして,実際に関わってみて,ようやく認証評価がどういう意味を持っているのかというのが分かってきたということもあります。実際に評価は大事で,でも,バランスも大事で,というようなことがやっと見えてきた。理解できた,そのような状況です。 何を申し上げたいのかと言いますと,二つありまして,一つは,質保証システムを機能させるためには,何のためにこういうことをしているのかというのを,まず大学人で共有する必要があるのではないか。その観点が議論から抜けているのではないか。そのような気がしています。私の経験で申し上げましたように,大学関係者に限っても,立場によって見える景色も違えば,質保証に対する意見も全く変わってくるように思います。大学人は自分なりに質保証の意味付けをしていると考えられますが,おそらくその意味付けはばらばらである,と。下手すると,何か余計なことをやっているとか,無駄な仕事を増やしているとか,そのように感じている教員も多いのではないか。そうだとすれば,評価はあまり機能しないようにも思われます。社会の理解だったり,社会の公表だったり,そのようなことは議論されているのですが,まずは大学人でこの評価の世界をきちんと共有する。そのための努力も必要なのではないかな,というような気がしています。 そして第二は,評価のことを分かっている人材を育てることも大事だということです。というのは,キーパーソンが各大学にいるだけで,状況は全く違ってくるんだと思うんですよね。評価のことを本当に分かっている人材というのは,いま,大学の数はこれだけありますけれども,何人いるのかといったら,心もとないところもあるのではないでしょうか。 加えてもうひとつ,質保証というのは,どうしてもその基盤に教員の協力,関わりが必要になってきますので,幾ら制度を整えても,教員が時間的に厳しい,きちんと対応できないほど忙しいということになれば,評価は機能しないはずです。教員がついていけないということは避けねばならないことであって,先ほど,大学生の調査の話が出ましたけれども,もしかしたら大学教員の生活時間調査もやった方がいいのではないかという気もしています。教員の時間がどうなっているのかということを踏まえたものにしないと,質保証を実質化させることは難しい。再構築するのであれば,必要な作業であるように思います。余談なんですけれども,私,今から6~7年ほど前に,東京都の開成中学・高等学校と,兵庫県の灘中学・高等学校の卒業生調査をさせていただいたことがあります。そのデータを用いて,職業別に多忙感を分析したことがありますが,ミドル以降の層でもっとも多忙だったのは,大学教員だったんです。 飯吉委員,そして土屋委員もおっしゃっているように,オンラインの授業がこれだけ本格的に始まったというのは,このコロナの状態で不謹慎かもしれないんですけれども,教員の時間の使い方を変える大きなチャンスのような気もしますので,新しい大学の在り方,大学教育の在り方,そこでの質保証の在り方というのを改めて考える,そういうタイミングなんだなと思いながら今この場にいさせていただいております。よろしくお願いいたします。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,古沢委員,お願いいたします。 【古沢委員】 よろしくお願いいたします。古沢と申します。 私は,主に取材で外から見た大学の様子というのがベースになるかと思うんですけれど,今回コロナの影響で多くの大学で対面授業が休止されまして,オンラインに切り替えたところが大半だと思います。これまでの大学の在り方を大きく問い直す状況にありますが,今後,同様の事態も想定して教育を改善するとともに,長期的に大学の教育研究の質を高める視点がもちろん必要になるかと思います。 設置認可について,事前の規制を緩和して事後にチェックをするという流れは,確かに教育研究の多様化という面ではメリットはあったと思うんですけれど,これだけ18歳人口の減少が見込まれて,企業と異なり新陳代謝が起きにくい,また,学生のためにも安定的な運営が求められるということから,事前の規制について,地域のニーズとか,将来的な見通しについて,やはりある程度重点的に見ていく必要性もあるのではないかと思っています。 それから,認証評価については,関係者の御苦労というのを見聞きすると,非常に大切ではありますが,やはり効率化,重点化というのは必要な点もあるかと思います。 それから定員管理については,コロナで今後,大教室の授業が見直されて,授業がハイブリッドになっていく可能性もあるというのは確かにそうだと思うんですけれど,それだからこそ,大学や学生の現状に合った,対面授業を確保して質を高めるということが一層必要になると思いますので,一定の定員管理とか,ST比の維持向上というのは,是非考えていただきたい,考えたいというふうに思います。 一方で,他大学とか学部との流動性や厳格な成績管理を進める上で,定員がハードルになるという意見もあります。そうした課題を改善する方向でも定員というのは考えたいと思っています。 資料6の49ページにもあるんですが,入学定員の超過について,余りに細かく見ていくと,ここ数年,御存じのとおり大学入試で混乱が生じておりまして,各大学の時代に対応した教育研究の見直しにも影響している状況があります。その運用については,見直す必要があると私も考えます。 政府による23区の規制,これがもちろん設置認可や定員管理を大きく左右するもので,所管は内閣府だとは思うのですが,それらの制度がこれまでにどのような影響を及ぼしているか,検証が必要だと思います。 資料6の72ページで,私立大学の定員充足率が回復しているように見えます。これが23区の規制が影響しているのか,あるいは定員そのものを絞る傾向があるのか,こういったデータの分析も,外部のデータかもしれませんが,本来設置認可,定員の問題を議論する上では欠かせないというふうに思います。 最後に,情報公表について,今回コロナの対応で,各大学のホームページなどを見る機会がいつも以上にありました。大学としての対応にはかなりばらつきがありまして,学生はもちろん,地域社会にも情報発信をもっと充実させていく余地というか,可能性があるのではないかと思っています。 以上です。ありがとうございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 続きまして,宮内委員,お願いいたします。 【宮内委員】 宮内でございます。 私は,三菱商事副社長を4年前に退任し,教育界に入りました門外漢であります。ビジネスを通じて常々感じていたことは,自分を含めて日本人が薄っぺらになってきたということなんです。金太郎あめ的で没個性的,国際社会においてリーダーシップを取れない人が多く,日本社会にはセキュリティー音痴,デジタルアレルギーが蔓延(まんえん)しているということです。 一方で,ジャパンアズナンバーワンと言われた二,三十年前の栄光をいまだに引きずっていることです。日本の地位を取り戻すには,もっと思慮深く,論理的で伸び伸びと考える人材が必要であり,そのためには,クリティカルシンキング教育,これが不可欠と考えております。 大学全入時代に大学を一つの概念で語ることは無理ですが,どの分野,様々なレベルの学生たちに共通して必要なものは,「なぜか」とか,「何のために」という考える力だと思います。物事を表面的に捉えず,また,うのみにせず,疑って考える習慣付けであります。それと,基礎教育,読み書き,そろばんですね。これを併せてクリティカルシンキングと言っております。昨年,長谷川委員の産学協議会がまとめた問題意識,指摘事項には全く異存はありませんが,もっと具体的な能力やキャリア形成を示すべきであったというような表現は,産業界出身の私としては,おこがましくてとても言えません。要は,日本社会は,一人一人の個の確立が未熟のまま硬直化して,内向きになって環境を客観的に捉えることができずに,失われた30年間になったわけです。我々が理念よりも実利に傾き過ぎ,軽薄になってしまった結果と反省しております。 教育とは,一人一人を精神的にも経済的にも自立させることと考えます。クリティカルシンキング教育の目標としては,人生100年を充実させるために,学び方を学び,自分の頭で批判的に考えることを第一に掲げるべきと考えております。理不尽で不条理な社会において個々人が主体的に物事を考えるという人材の育成が,結果として産業界のイノベーションや成長に貢献するのですね。短期的に必要とする技術や能力開発に焦点を当て過ぎると,均一的でつまらない社会になってしまうと考えております。 私の現場,神田外語大学には,学生にはサイエンスアレルギーというのがあります。また,新聞を読みません。素直過ぎて,AIや権力に簡単にだまされそうです。学生たちをこのSociety5.0時代の負け組にしないために,「なぜか」とか,「何のために」ということを考えるクリティカルシンキング教育,これの必修化ということを私は訴えております。この内容というのは非常に単純で,作文,キャリアデザイン,STEM教育,時事問題,この4本柱です。STEM教育では,例えば,オックスフォード出版のサイエンス初級テキストを使って,英語力の強化を狙うといったイメージです。 私は,ノンアカデミアの人材を学校に招き,オムニバス講座とか,新聞を読もうというような講座を開講していますが,学生がなかなか集まってきません。これが現実です。卒業単位にならない講座には学生が集まってこないんです。必修化したくても,学内でコンセンサスを得るということは非常に難しい。 私がいた三菱商事,これは人気企業なので,優秀な学生がいっぱい集まるはずですが,最近は,英語はできるんですけど,驚くほどパッションと基礎教養がありません。理科系出身者は,歴史や文学に対する興味が薄く,例えばスターリン,チャーチル,毛沢東という話をしてもぴんとこない。文系では,微積分の概念が分からず,また,1ミリオンダラーを円換算で,11億と桁を間違えて訳しちゃう人もいるわけです。量のイメージが湧かなくて,ビジネスなんかできるわけがないですね。これでは世界で負けます。 私は,国家が大学の教育の箸の上げ下ろしにまで介入するということには疑問を持っております。しかし,残念ながら,この社会は自己変革力に劣るようで,文部科学省がクリティカルシンキングコース,これを必修化しろというようなガイドラインを出さないと,なかなか大学全体の,それぞれのレベルの大学のレベルをもっと上げることにはつながらないかなと考えるに至っております。 以上でございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 大森委員,お願いいたします。 【大森委員】 大森でございます。どうぞよろしくお願いします。いつも先生方,大変お世話になっております。 私が所属している共愛学園は,群馬で新島襄が発起人で132年,こども園,小中高大と総合学園なんですけれども,大学は収容定員1,000人という非常に小規模な大学です。今回,この会議に参加させていただいた,私,高等教育の専門でも何でもありませんので,自分なりに役割を考えると,大学の現場の声を反映させるということと,大学の中でも言わば,私は日本の大学の一つの典型であると思っていますけれども,地方小規模大学の立場からの発信なのかなというふうに思っております。三つ目は,日比谷委員にも御指導いただいて,教学マネジメント特別委員会も参加させていただいていたので,その立場ということかなというふうに思っています。 この部会,本当に質保証に関する幅広なテーマが用意されるかなというふうに思うんですけれども,細かいことはすごくたくさんあります。留学生や社会人の定員の問題とか,専任教員の在り方みたいなものとか,言い出すと切りがないので,きょうは,それは議論の中でお話をさせていただいて,大きいことで悩んでいること,専門じゃないんですが,悩んでいることを二つお話ししたいと思うんですけれども,まず,設置基準ですけれども,一律の最低限の質を保証するためのものであるということは理解をしているんですけれども,これまで大学業界は,ずっと機能分化ということを進めてきたと思います。そういうふうな方針だったと思います。 超高度な研究を推進する大学もあれば,本学のようにしっかりと地域の未来を創っていく人材を育成している大学もあるというふうに思います。私は,機能分化が進んでないという御意見もあるんですけれども,各大学自ら自分の役割を認識して,それを全うするために,結構主体的に機能分化を進めてきているんじゃないかというふうには感じています。 どのような機能を中心に据えた大学であろうと,さっき上位大学,下位大学みたいな御議論もありましたけど,その機能間に上下関係というものがないというふうに自負はしているところです。優劣関係もないだろうと思っています。大学の規模とか立地とかでも大きな違いがありますけれども,正に浅田委員や谷本委員もおっしゃっていましたけど,さらにその機能も違っているという場合に,この一律の質保証システムというものが,きょう今まで先生方の御意見を聞いていても,やっぱり大分幅が広いのかなというふうに感じていますけれども,そういった一律の質保証システムということが,それぞれの大学が目指す役割の質を保証できるのかということが一つ気になっているところではあります。ただ,どうしたらいいかというソリューションを述べずに言いっぱなしで本当に申し訳ないんですけれども,気になっているところ。 二つ目ですけれども,やっぱり社会の変化と大学の変化のスピード感の齟齬(そご)ということはどうしても否めないというふうには感じていて,そこの背景に,設置基準を柱とする質保証システムがあるんじゃないかということは思っています。アフターチェックも含めると,計画から6年とか7年とか掛かって完成をしていくというところの中で,実は本学は約20年間,設置の先生方にお世話になっていなくて,設置審,受けていないんですね。組織改編せずとも,中身の質転換で大学改革が可能だということの一つの証左じゃないかというふうにも自負はしているんですけれども,一方でいうと,改編しないのではなくて,改編できなかったという側面も実はあります。余りにも早い社会のニーズの変化の中で,さらに地方ではニーズの人材マーケットというのが非常に小さいわけです。臨機に応変,自戒を込めて応変できてこなかったというふうに思っています。地方を支える多くの小規模大学の役割というのは相当に大きくて,そういった小さな大学が地元のニーズに応えることというのはとても大事だというふうに思っています。 すなわち大学が社会に臨機に対応していくことができる環境を整えることと,しかし,一方で学生たちを守るために最低限の質を保証すること,このバランスの分岐点がどこの辺にあるのかなというのが悩ましいところだなというふうに思っているところです。是非御指導いただきながら,議論に参加させていただければなと思っております。引き続きどうぞよろしくお願いします。 以上です。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 それでは,小林委員,お願いします。 【小林委員】 リクルート進学総研の所長で,高等教育の専門誌『リクルート カレッジマネジメント』編集長の小林でございます。きょうはよろしくお願いいたします。 私は,大学の外の立場で,各大学にお伺いせていただいておりますが,いろいろな大学を取材して,あるいはいろいろなステークホルダーの調査を通じて,大学の外から見た視点というところでお話をさせていただければというふうに思います。 先ほど浅田委員から,大学の外からはかなり厳しい目線が注(そそ)がれているという御発言がありました。その背景としましては,設置基準大綱化の前,1990年,今の大学生の保護者の世代、人事部長とか人事課長が大学に行っていた時代は,短大を含めると36.3%でしたが,大学進学率は24.6%だったんですね。小学校のクラスで4人に1人しか大学に行かなかったということで,大学に行くこと自体に価値があったということだと思います。しかし,2019年になりますと,大学進学率が,大学だけで53.7%。つまり,小学校に入ったクラスの半分以上が大学に行くといったような,マーチン・トロウさんの言葉で言うと,大学のユニバーサル化,大衆化となってきていて,大学の役割が変化しているということがあるのだと思います。 ただ,今でも,外から見たときにまだ昔のままのイメージで大学を捉えている方もたくさんいらっしゃいまして,そうなってくると,大学が外から見たときに,質が保証されていないのではないか、情報公開が進んでいないんじゃないか、情報は公開しているんだけれども,非常に分かりづらいとか,比較検討ができないとか,そういったことが言われているのだと思います。 それから, 1990年頃は受験戦争と言われていて,偏差値という絶対的な軸みたいなものがあったのですが,今は入学者の4割以上が総合型選抜や学校推薦型選抜に変わってきています。いわゆる入学時の価値も多様化していくということになってきます。そうすると,入学時が問題ではなくて,入学時のいわゆる偏差値による単独の軸から,卒業時の,卒業段階の多面的な成果というようなことが求められてくるんじゃないかと思います。 そうしたときに,学修成果が見えづらいということが言われています。先ほども皆さんの御発言の中でありましたけど,学部の名称は1990年までは29しかありませんでした。今は700以上存在しています。 そうしたときに,きちんと三つのポリシーを作ると言っているんですが,三つのポリシーはきちんと外から見て分かるようになっているかどうか。学修成果というのは,別にぎちぎちにやる必要はないと思うんですけど,その大学の個性がきちんと生きているのかどうか。こんな人材を育成するぞというメッセージが込められているのかどうか。アドミッションポリシーについては,高校の先生にアンケートを採ったところ,大学に期待することの1位は,分かりやすいアドミッションポリシーだったんですね。今,高校でも,アドミッションポリシーをきちんと見るようにという指導がされています。しかし、進学を希望する学生にとって比較検討ができるかというと,まだまだそうなっていないということがあると思います。 大学目線ではなく利用者目線で情報を整理して,理解できるような指標とか名称をきちんと利用していく。それから,大学の個性や教育や学びの特徴,学修成果が外から見て分かるような情報公表の工夫が必要だということです。 そして,今,大学ポートレートというものがかなり進んできていますが,まだまだ浸透していません。高校の先生に聞くと,ほとんど最初は知っていたのですが,今は知らない人の方が増えていて,ほとんど見ていないということになります。 これは,国が保証しているシステムだと思うんですが,中身は大学が独自に入れているので,例えば,うちの大学はナンバーワンですよという,本当かうそか分からない情報がたくさん載っています。あるいは認証評価についても,不適合になった大学の何校かは,その情報は載せていません。あるいは,不適合になる前の自己点検・評価書だけのリンクを載せているというような大学がありまして,これではなかなか社会からの質保証という形では認められないのではないかと思います。 一方,私は認証評価にも関わっていまして,そうすると,いろいろな大学,非常に多大なパワーを掛けて,自己点検・評価,認証評価を受けていることが分かります。しかし、これを社会から見ると,この認証評価って一体何なのかというところが全く分からなくて,多分,新聞とかでも,今は不適合になってもほとんど取り上げられず,ニュースにもならないというような状況になっています。 では,認証評価というのは何を保証してくれているのかというのが,いくつかある認証機関ごとに基準が若干違っているとは思います。こうした点も、外から見たときに分かりやすくしていかないといけないのではないか思っております。 これから18歳人口が更に減少していくというのは,これはグランドデザイン答申でも出ています。その中で,今,定員厳格化ということで,現状では、かなり中小規模の大学も充足率が高まっています。しかし,これが2040年に88万人まで人口が減っていったときに,大学の質がこれまでどおり担保,保証されていくのだろうかということがより課題になっていくと思います。 この部会で,中長期の視点に立った議論が進めていければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 では,林委員,お願いします。 【林委員】 政策研究大学院大学の林と申します。 私は,今の大学に来る前は認証評価機関で働いておりましたので,きょうも質保証であるとか,認証評価の点について意見を述べさせていただきたいと思います。 まず1点目は,認証評価は第3サイクルから内部質保証重視という形で大きくかじを切ったんですが,今恐らくやるべきは,それをモニタリングするべきだということだと思っています。先生方御承知のように,昔は内部質保証とか質向上という言葉があっても,そこで何を見ていたかというと,大学単位のFDをやっているかとかを見ていたんですが,それ以降は,3ポリシー,3ポリシーは基本的にプログラムごとに作るということになりますので,そうすると,プログラムごとにちゃんと教育ができ,学修成果が出ているかという,そのプログラムと学部あるいは大学という,階層構造の下での質保証が重要だという話に変わってきています。それは日比谷委員がまとめられた教学マネジメント指針も基本的には同じ方向を向いていて,質保証も教学マネジメントも,みんなそちらの方向に向いているというふうに考えています。 ただ,一方で,大きく認証評価は内部質保証重視にかじを切ったんですが,始まって1年,あるいは認証評価機関によっては2年目ですが,まだほとんどの大学がそこで考えられているような内部質保証のシステムを作れていない状況にあります。ほとんどの大学が認証評価を受ける直前,あるいは場合によっては訪問調査が来て,評価委員と話をすることによって,やっと内部質保証が何かということを理解して,内部質保証の体制であるとか手続をそこで何とか決めると。なので,まだほとんどそれが動いていないという状態にあります。 なので,今すべきなのは,質保証あるいは認証評価をどう変えるかという話よりは,今こうやって進めようとしている内部質保証重視の認証評価が,どう実際に認証評価を進めることによって大学に対して効果を及ぼしているかのモニタリングをしていくことなんだと思います。基本的には,そういう発想は将来的にはリスクベースアプローチという形で,内部質保証がしっかりできているところは,極めて簡素な認証評価にしてしまって,一方で,できていないところはがっちりと評価するという,メリハリをつける形に変えていくことで,できているところにはビューロクラティックな負担はもう避けるといいますか,そういう発想になります。今後,そういう仕組みに移行できるかを見るために,今モニタリングをしっかりしていくべきだというふうに思っています。 それから,2点目でございますが,学修成果の質保証のところで,何とかもう少し外部の視点を入れられないかという点です。質保証のところでは,質と水準という二つの言葉を分けて使うんですが,質は教育のマネジメントがうまくできているかという話で,水準はどちらかというと,学修成果のレベルが,例えば学位に適切なレベルになっているかであるとか,各大学プログラムが設定している水準レベルになっているかというところを見るわけなんですが,日本はどちらかというと,マネジメントがうまくいっているかは見てきたんですが,学修成果のレベルがどうかというところは見てこなかったという傾向があると思います。 ただ,私,昨年度末にオーストラリアに行ったんですが,そうすると,例えば,グループオブエイトという,オーストラリアのトップ8の研究大学の間では,分野ごとに4年目の,日本でいえば卒業論文相当のレポートを大学間でチェックし合う。それがトップ大学のレベルに適合するような卒業論文になっているか,あるいは,そのレベルをチェックするような審査基準になっているかとか,そういうものをチェックするようになっています。 それに加えて,例えば,教育学部の方にお話を聞くと,心理分野の団体であるとか,あるいは教育関係の団体であるとか,専門職団体からも頻繁に評価を受ける。1年に二,三対応しなければいけないというようなこともあって,そこでは学生の意見も当然ながら提示しなければいけないと。そのように,学術的な視点も,あるいは社会とか専門職団体の視点,それから学生の視点,それら様々な視点の下で評価がなされていて,内部質保証はそれに準備をするためのものとしてしっかりとやっていると。 日本はこういう環境がないので,内部質保証をやれと言われても,なかなか「何のために」というのが出てきてしまうんですけれども,大学の間であるとか,あるいは社会との間でこういう学修成果を確認するような構造というのが,もうちょっとできないかというふうに考えております。 それから最後の点ですが,やはりコロナの話です。コロナの話で,先ほど教育の革新が進むだろうという面もあると思うんですが,一方で,やっぱり質保証の方の議論では,例えば,ブレンド教育にすることによって,学修成果の水準が低下していないかであるとか,学生の満足度が低下していないかをちゃんとチェックしようであるとか,あるいは,実技を含むような教育であるとか,あるいは場合によっては,課程外教育もちゃんと効果が得られるようになっているのかということをしっかりとチェックしようであるとか,さらには,入学する前にちゃんと学生に対しては対面とオンラインでどのくらいの学修,教育をするのかを事前に示すことによって,学生が入学する前の消費者保護という観点から,学生にちゃんとそれを伝えておくことが必要であるとか,やっぱり質保証の観点からの視点というのはちょっとまた別にあるので,そういうものについてもどういうふうに考えていくかということについて検討が必要じゃないかというふうに思っております。 以上になります。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 前田委員,お願いいたします。 【前田委員】 前田です。どうぞよろしくお願いします。 今までの委員の方々と重なる部分が結構あるかと思うんですけれども少し意見を述べさせていただきます。まず,大学設置基準について,特に定員のお話が幾つか出ていたかと思います。私も認証評価に深く携わっておりまして,その経験からすると,設置基準を大綱化するときには,基準になくても大学自身が一定の水準にあるということを証明できることが大事だと思います。 つまり,入学定員を大学全体で見ていくことになると,あるプログラムを見たら,学生数に対してそのプログラムに関わる教員はどのぐらいいるのかということを,おそらく認証評価では細かく見ていけないだろうと思うんです。大学自身として,きちんとそういうことが最低限の質としてできているということを証明できる,そういう前提がないと難しいという気がしています。そうでないと,易(やす)きに流れるのではないかと思っております。 それと,認証評価に関しましては,内部質保証重視ということになりまして,そこでは三つのポリシーを設定し,学修成果を中心に据えた内部質保証をするということになると思いますが,認証評価機関が認証評価の基準を設定するときには,大学の改善・向上に資する視点から評価基準が定められていることというふうになっておりまして,自分の経験上,評価される側(がわ)も認証する側(がわ)も経験していますが,なかなか改善・向上に資する観点から,実際に認証評価が行われているかというと、少し弱いと思っております。ですから,認証評価に関しては,そういう大学の改善・向上に資するという視点が一つ必要だろうとは思います。 ただ,内部質保証重視というときに,現在,大学を評価する認証評価機関は5機関ございます。これらの機関が,何ができていれば内部質保証ができているとするのかということに関して,少し差があるのではないかと危惧しております。かなり厳しいところは,実質的に機能しているかを深く掘っていきますし,これができていないと不合格にする評価機関もあります。ですので,このあたり,内部質保証をチェックする認証評価機関が,どのあたりまで足並みをそろえるのかということが気になっています。 そして,学修成果重視ということを言われていますけれども,大学のトップの人たちは理解しているかもしれませんが,教員レベルになると,いつまでにルーブリックを作成せよとか,シラバスの記述の統一とか、作業としてやらなければいけないことだけが伝えられるという状況にあります。質保証ができているという形を整えるだけになってしまっているのではないかというのが気になります。ですので,どなたか委員の方もおっしゃっていましたけれども,大学の中で、認証評価のためではなく,内部質保証を,自分たちのためにやるものだという理解を浸透させるということが重要ではないかと思っています。 アメリカの大学にインタビューに行ったときに,ある大学の方が,教員に理解してもらうには10年掛かったというふうにおっしゃっていました。アメリカでもそうなんだというのを実感した次第です。 ですので,大学の中で質を保証するシステムを十分に育てること,大学のためになるのだという理解を浸透させることも,非常に重要と考えております。 あと,文部科学省の役割なんですけれども,認証評価で合否を付けるというところまで来ましたので,国際的通用性という点では,例えば,ホームページ等に認証評価についての情報がもっと載ってもいいのかなという気はしています。例えば,認証評価を受けて合格した大学のリストが見られるとか,認証評価機関のどのページでそれが見られるとか,そういうようなこともやっていいのかなという気がしています。 質保証の件で,認証評価が負担であるということなんですけれども,最初の件に戻ると,さっき林委員もおっしゃっていたように,大学の中で内部質保証がきちんと育てば,そういうところはかなり楽な認証評価にしてもよいのではないかというふうに思っています。 以上でございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 吉見委員,お願いいたします。 【吉見委員】 吉見俊哉でございます。皆様、お疲れさまですが私が最後です。 私は,永田委員の下での大学分科会でのグランドデザイン答申づくり,それから日比谷委員の下での教学マネジメントに関わらせていただきました。ずっと見てくると,一連の作業は一貫性があったと思うのですね。一言で言えば,学修者からの視点,グランドデザイン答申の中にございますけれども,学修成果を学修者が実感できる教育。一連の改革が向かう先は,これに尽きます。これが最も重要なことであると私は認識しております。 そうすると,現在,あるいはこれまでの大学でそれを妨げてきた最大の問題は何かというと,これも一言で言うと,時間の劣化です。先生方はいい授業を用意しようにも,忙しくて十分準備ができない。研究も忙しくて集中できない。学生も,あっちの教室,こっちの教室,あっちの授業,こっちの授業,10から12の多くのコマに出ていますから,忙しくて出席するのが精いっぱい。これが日本の大学の現状です。この時間の劣化を何とかしない限り,大学の質保証システムが自主的に機能することはあり得ないと思っています。 その観点から3点だけ申し上げますが,1点目は,時間の劣化を防止し改善する最大する最重要の出発点,つまり一丁目一番地は何かと言うと,私は同一期間内,つまり一学期に学生が履修する科目数を半分に減らすことだと断言できます。当然ながら,1科目当たりの単位数は倍にするわけですけれども,週に2回3回,同じ科目に学生が出ていって,同じ先生やTAと議論をする仕組みを日本の大学でも実現しなくてはいけない。つまり,細切れの科目を多く薄く学ぶ体制ではなくて,少なく深く学ぶ科目の形に日本の大学のカリキュラムの基本形を変えていかなければならないのです。これが、最も重要なことです。 2番目ですが,知識の在り方が,この21世紀に大きく変わっていると思います。21世紀の大学が目指すべきなのは,19世紀的な国民国家型の大学ではなくて,地球社会型です。それは、SDGsももちろん一つですけれども,SDGsにとどまらず,21世紀の地球社会がどうあるべきなのかを根本から考える,文理を超えて哲学的深みで考えるという,そういう大学を目指すべきだと私は思っています。そのときに最も重要なことは,大学教育の中で複線的な学びの仕組みを可能にする。アメリカのカレッジだったら,メジャー,マイナーとか,ダブルメジャーとかがございます。ICUをはじめ幾つかの日本の大学でももうおやりになっていますけれども,大規模総合大学は学部の壁はとても厚いですから,なかなか全学的なレベルではできていない。そうすると,この複線的な教育の仕組みをいかに新しい地球規模の学びに向けて組織していくのかのビジョンが必要になってきます。 最後です。コロナの話が出ました。コロナで一番言われたのが,「三密」はいかんと言われているんですね。大学における「三密」は何かといったら,やっぱり大学が学部や学科で閉じてサイロ化すること。私は甲殻類と言っているのですが,要するに,組織や集団の壁が厚いこと。壁が厚いところに学生も教員もずっといると,換気が悪くて感染が広がる。それを防ぐには,やっぱり穴を空けて風通しをよくするしかありません。これには,先ほど何人かの先生方もおっしゃいましたように,オンラインが有効に機能し得ます。 しかし,そこで大きな壁として出てくるのは,時間の壁です。つまり,オンラインをして,それで大学間で地域や国を越えて授業を共通化しようとしても,時間割がばらばらだったり,学事暦がばらばらだったりすると,根本的に時間が合わず,難しいのですね。時間のフレイムが違うと,双方向型のオンラインの共同化はできないわけです。この時間のマネジメントがものすごく重要で,国内、国際の標準化が必要です。この時間の壁をどうやって新しい教育の仕組みの中で越えていくかが,3番目にこれは大変重要な課題になってくる。これからますますオンライン化の中で大きな課題となると思っております。 【吉岡部会長】 ありがとうございます。 今,委員の方々にお話を頂きました。私はまだ発言しておりませんので,最後に一言だけ申し上げたいと思います。 本当に水準においても非常に具体的なもの,実例的なものから理論的なものまで,様々な意見が出ております。ありがとうございます。これをどうやってまとめていくのかちょっとよく分からないところがありますけれども,非常に大切な論点であったというふうに思っています。 一つは,やはり非常に重要なのは,質保証というのが,それぞれの大学及び教員たちの問題であるということ,それが基本だということだと思います。先ほど何人かの方がおっしゃっていましたけれども,質保証の目的ないし効果でもいいんですけれども,目的ということについての大学の中あるいは教員たちの中での意識の共有がやはり何らかの形で必要だというか,非常に重要だということはそのとおりだと思います。 一方で,最初に申し上げましたけれども,質保証をシステムの問題にして,これを認証評価,あるいは設置審査というふうに問題にしていきますと,設置審査,これは行政行為になるわけですね。つまり,法的な客観性というものが必要になってくる。 一方で,そういう行政行為としての客観性ということ,あるいはもうちょっと言いますと,ある種の外部からの評価というところがどうしても出てくるわけですね。それを組み立てながら,それぞれの大学あるいは教員レベルまでの質保証の考え方を刺激していくといいますか,それに寄与していくという方向を考えていく。ここで最終的な報告を作っていくときには,そういう視点を作っていくことが必要なのではないかと思いました。 そもそも大綱化のときに,自己点検・評価というのはそれとペアになっていたわけで,仕組みとしての大きな考え方はそこにあったはずだろうと思っております。これ自体が非常に難しいことだと思いますが。 もう一点,質保証と言ったときの教育の問題の中心になるのは,これも繰り返しグランドデザイン答申のときにも強調されてきたことですけれども,学修者の視点ないしは立場ということだと思います。学生がいかに成長していくのかということを考えるのが高等教育の基本だろうと思いますが,これ,実は非常に難しくて,それを評価の指標に入れるのをどうするのか。例えば,卒業時の満足度という,この満足度というのは非常にいろいろな視点が入っていることになります。しかも,アンケートというのは個人ばらばらに出てくるものなんですね。そういう意味では,ある部分は当てにならないといいますか,全く個別の意見といいますか,考え方でしか出てこない。しかし,学生というのは,やはり私は大学というものの最も重要な構成員だというふうに思っています。学生たちがばらばらになっている,アンケートという形でばらばらでしか捉えられないということは,一方で学生が消費者化しているという,よく言われる問題とペアになっていることだと思います。 最終的には,評価の視点にどう入れるかということもあるかもしれませんけれども,やはり学生という存在を大学の構成員としてどう捉えて,それが質保証あるいは自己点検ということの中に組み込めるかというのは重要なことではないかと考えております。 ということで,皆様の意見をお聞きいたしました。ここでちょうど時間がちょっと過ぎたところでございますので,ここで本日の議論を終わりにしたいと思いますけれども,何か一言最後に,あるいは今後のことで御発言があればと思いますが,いかがでしょうか。 よろしいでしょうか。次回に向けて,先ほど申し上げましたけれども,何か御意見があったら事務局の方にもお伝えいただければというふうに思います。 それでは,今後の質保証システム部会の開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。 【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。本日は,活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。 次回につきましては,7月31日金曜日10時から12時を予定しております。また開催方法などにつきましては,追って御連絡をさせていただきます。 また,追加で御意見等ございましたら,事務局宛てに御連絡をお願いいたします。 以上でございます。 【吉岡部会長】 ありがとうございました。 それでは,本日の議事,これにて終了させていただきます。どうもありがとうございました。 ―― 了 ――
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室