質保証システム部会(第4回) 議事録

1.日時

令和2年9月28日(月曜日)13時~15時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 我が国の高等教育の質保証システムの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,土屋恵一郎,長谷川知子,濱中淳子,宮内孝久の各委員
(専門委員)大森昭生,小林浩,林隆之,前田早苗,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),淵上高等教育企画課長,西田大学振興課長,森下大学設置室長 他

オブザーバー

  村井美代子全国公立短期大学協会副会長(三重短期大学学長),川並弘純日本私立短期大学協会常任理事(聖徳大学短期大学部理事長・学園長・学長)

 

5.議事録

【吉岡部会長】 定刻になりましたので,第4回質保証システム部会を開催いたします。御多忙の中,御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は,新型コロナウイルス感染症対策のため,Webexによるウェブ会議として開催し,その様子をライブ配信にて公開しております。 議事に入る前に,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 事務局でございます。本日もウェブ会議,ライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,「手を挙げる」ボタンを押して,部会長から指名されましたら,御発言をお願いいたします。御発言が終わった後に改めて,この「手を挙げる」ボタンを押していただくと手が下がる仕組みになっております。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますと有り難く存じます。また不都合等あるかと思いますけれども,何とぞよろしくお願いいたします。
 また,会議資料につきましては,議事次第のとおり,事前にメール送付させていただいておりますので,併せて御確認をお願いいたします。
 以上でございます。

【吉岡部会長】 それでは早速,議事に入りたいと思います。
 本日の議題ですが,我が国の高等教育の質保証システムについて,前回に引き続き関係団体よりヒアリングを行い,その後,質疑応答を含む意見交換をしたいと思います。
 それが終わりました後,今後の議論の進め方について提案を作成しておりますので,その説明をさせていただき,それに関する意見交換を行いたいと思います。
 では,ヒアリングを行う前に,前回までの議論の概要について,事務局から説明をお願いいたします。

【淵上高等教育企画課長】 資料1-1を御覧ください。前回の御議論につきまして,前々回までのものに赤字で加えているものが前回の御意見の概要でございます。
 1ページ目,本部会の役割のところで,設置審査で丁寧な審査をしているけれども,その後も大学は時間の中で常に変化をしていると。その中で質保証を具体的にどう行っていくのかを考えていく必要があるという御意見がございます。
 それから,6ページに,設置基準のところの総論部分といたしまして,新型コロナウイルスが解消されていくと,飽くまでリアルな対面授業を大切に,前提としていくことが必要なのではないかという御意見のほか,オンライン教育の推進に伴って必要となっていくのが時間のマネジメントであり,時間の組織化や時間の質保証が重要といった御意見。また,21世紀の大学像を見据えた質保証システムの構築が必要で,対面とオンラインの接合によって大学はどう変わっていくのかと。そうした時代の大学像にふさわしい設置基準を考えていく必要があるという御意見。
 7ページ目に参りまして,単位のところでございますが,1単位45時間の適切性の問題。あるいは,アメリカなどでは1科目3単位ということがあるわけですけれども,これについてどう考えるかという御意見。
 また9ページのところでは,内部質保証の関係で,内部質保証が有効に機能していると判断する場合について,認証評価機関連絡協議会などでの話合いも重要だという御意見がございます。
 それから11ページは,認証評価で不適合になった大学の情報公表の問題がございます。
 13ページが定員管理のところでございますけれども,定員管理について,入学定員から収容定員へ,また学部単位から大学単位へ,単年度から複数年度単位へという考え方が重要だという御指摘がございます。
 14ページが,社会人の受入れについて,履修証明や科目等履修の場合の学生数カウントについての御意見がございました。
 概要は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。前回の部会の後に,土屋委員から御意見を頂いております。資料1-2を御覧ください。土屋委員,何かコメント等あればお願いいたします。

【土屋委員】 ありがとうございます。これまでの議論は,今の文部科学省のまとめにもありましたので,それに改めてコメントするというよりは,アクセントをつけておく必要があるのではないかなと思います。議論は非常に多岐にわたってまいりましたので,アクセントは21世紀の大学像にふさわしい大学設置基準への制度改革であると私は思います。
 その中で吉見委員からは,脱空間化とか,あるいは脱時間化ということも出ており,私も大変それに大賛成でありますが,とりわけ吉見委員からずっと出ている科目数を削減すべきであるという意見は,実は私立大学においても多くの学長は,そう思っていると思います。何とかそれを少なくしたい。
 ただ,どのように科目数を減らしているのかに関しては,やはり大学であれば教授会の議論もありますので,なかなか難しいところもあります。しかし,できれば大学設置基準等で一定の方向性は示していただけると各教授会あるいは学長も有り難いのではないのかなと思います。
 また,オンライン授業に対してリアルな対面授業の有効性を最近,非常に強く強調されておりますが,私もそれには賛成であります。しかし,やはりオンライン授業か対面授業かという二者択一ではなくて,それを組み合わせた形で,新しい時代にふさわしい大学の在り方というものを追求していくべきではないかと思います。
 また最近は,オンライン海外留学の問題があります。これに関しては,やはりオンライン海外留学がだんだん増えていくと思いますので,現状ではそれぞれ海外の大学もオンラインでの留学を認める方向にあります。これを,どのような形で設置基準等でオンラインの海外留学を認めていくのかということも,是非議論していただきたい。
 いずれにしても,21世紀型の大学像にふさわしい大学設置基準へと改革の方向を歩んでいただきたい,あるいは歩みたいと,そう思っておりますので,ある意味では,今までのことをただ言っているにすぎないわけでありますが,そこを強調しておきたいと思いました。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。土屋委員に対する御質問等は後の議論の中でお願いできればと思います。
 それでは,ヒアリングを始めたいと思います。最初に,全国公立短期大学協会から,村井美代子副会長,三重短期大学学長より御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【村井副会長】 今,公立短期大学が全国的に非常に減っておりまして,いろいろ御質問も受けますので,本日の資料の最後2ページに,現在の学科構成や総定員数等,御参考までにつけさせていただきました。14校のうち半分の7校が,いわゆる直営経営でございます。それから7校が法人経営でございまして,協会の中でも経営形態も違いますし,県も様々でございます。そうした中で,最大公約数的に本日は,認証評価と内部質保証の観点と,それからオンライン授業の在り方,この2点につきまして,課題と要望等を取りまとめました。
 まず認証評価と内部質保証の中の自己点検・評価,公立短期大学の現状でございます。2016年から評価を受けることが義務づけられましたけれども,各公立短期大学,これ以前から自己点検・評価を実施しております。それから認証評価が導入されまして,現在,2回受審しております。3度目をそろそろ迎える時期でございますが,おかげさまで全て適格と判断を頂戴しておりまして,認証評価はございますが,以前と変わらず自己点検・評価を毎年実施し,報告書をホームページ上で公表しているというのが現状でございます。
 適格という判断を頂戴しましても,アドバイスあるいは努力課題は頂戴しておりますので,次回の自己点検・評価に生かし,平成30年の中央教育審議会の答申にも示されていますとおり,大学が率先して取り組むという姿勢を,公立短期大学としては維持しているというのが現状でございます。
 そういうことで,認証評価につきまして,特にラジカルな意見等は協会としては,どの大学からも出ておりませんが,3点ほど要望がございましたので,御紹介いたします。
 1点は,複数回受審して,こちらが慣れてきたということもございますが,少々画一的な記述になりがちであるということ,あるいは評価項目が細分化され始めておりまして,少々記述内容が重複しているところが,我々としても非常に気になるところでございます。各短期大学において学生確保のために様々な学科,カリキュラムを展開しておりますので,そうした短期大学の特色,実情が反映されるような,例えば特色ある取組とかアピールポイント等を記載できるような評価項目があればという要望が出ております。
 それから資料の2ページでございますけれども,従来危機管理の項目は少しございましたが,特に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大,あるいは大規模な災害が頻発しております中で,4年制大学だけでなく短期大学でも活動指針,対応フローなど策定に取り組んでおりますので,短期大学としては危機管理という観点から内部質保証の検証も今後必要になるのではと考えております。
 3点目は,地方自治体が抱えている短期大学がまだ7校ございますので,認証評価の重要性は十二分に認識しておりますけれども,やはり評価にかかる費用が,小規模な自治体では,かなり大きな財政負担になっておりまして,今後,認証評価が回を重ねて,内容も充実していくに従って,費用はどのようになっていくのかは注視させていただいている点でございます。
 それから内部質保証の観点でございますが,先ほど御意見もございましたが,短期大学としては2点課題を掲げておりまして,リカレント教育,それから地域貢献でございます。社会人入学生を短期大学,本学も1割程度でございますが,受け入れております。そうした社会人の方と,それから高校卒業したばかりの若い学生とが机並べて授業を実際に受けるわけですけれども,理解度とか,大学教育に求めるものに特に大きな差異がございまして,両者のニーズを満たす質保証という検討が継続的な課題でございます。また学外の市民対象の公開講座等も1回ずつアンケート等は実施しておりまして,教員にフィードバックをしておりますけれども,この部分,FD活動が実施できておりませんので,学外の地域貢献事業の一つとしての講義における質保証というものを検討していかねばと考えております。
 それからもう一点が,先ほど申し上げました資料で御覧いただけますように,かなり規模が小さくございまして,専任教員も少ない中で,短期大学の進学率も落ちております。学生確保のためにコースなどを充実させておりますし,また非常勤の先生方を対象に,研修会,懇談会などを開催しておりますけれども,なかなか出席していただけず,非常勤の先生方も含めて教育の質というものでございますので,こういう先生方と専任教員とで質向上の意識共有が継続的な課題でございます。
 それからオンライン教育,遠隔授業に関わる課題でございますが,これは前回までの部会での先生方の御発言を聞かせていただきまして,ほぼ公立短期大学も同じ課題を抱えております。
 最後の3ページでございますけれども,3点あり,既に複数の委員の御発言がこれまでにございました。
 一つはオンライン・遠隔授業の質保証でございます。対面につきましては一定程度FD活動を確立しておりますけれども,オンライン・遠隔授業は初めてのこともございまして,特にライブのテレビ会議方式の講義等の質保証,学生のアンケートも含めまして,まだまだこれから確立していくべき課題であると考えております。
 それから情報環境の整備,これも課題に出ておりました。特に公立短期大学は安い学費で早く卒業して就職したいという経済的に厳しい学生が多数おりますので,受講環境の整備等,急がねばと思っておりますけれども,大学の財政状況,自治体の財政状況等によりましては,情報関連機器,施設の充実が厳しい場合もございまして,今後,環境整備,それから学生への機器の貸与等も含めまして,至急検討しなければならない課題と考えております。
 それから3点目は,前期はオンライン,遠隔で通してまいりましたが,先ほども御発言ございましたが,やはり後期から,特に短期大学は進路指導もございますし,学生のメンタル面のサポートもございますので,一部対面を入れていかねばならないと思っております。その際,前期よりも一層多様なハイブリッド授業の実施が増えるものと思われますので,授業の水準もさることながら,多様な授業形態の中で質保証の在り方が今後,継続的に必要な課題と考えております。
 公立短期大学として抱えております課題,要望は以上でございます。よろしく御審議をお願いいたします。

【吉岡部会長】 村井副会長どうもありがとうございました。

【村井副会長】 ありがとうございました。

【吉岡部会長】 続きまして,日本私立短期大学協会から,川並弘純常任理事,聖徳大学短期大学部理事長・学園長・学長より御説明いただきます。御質問等は,この後まとめてお受けしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 では,川並常任理事,よろしくお願いいたします。

【川並常任理事】このたびは短期大学の立場からお話をさせていただきたいと思います。 
 さて,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」において,「地域における必要な高等教育機関としての教育の質を高めることが短期大学では重要」であるということや,「大学制度における短期大学の位置づけの再構築」を検討する必要が提言されております。
 加えて,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,Society5.0に対して自律的,主体的に行動できる者を輩出すべく,教育内容や方法の再構築を模索しているさなかに,ニューノーマルと言われる生活様式が求められるようになりました。
 このような観点から,質保証システム部会で御検討いただきたく,幾つかの提言をさせていただきたいと思います。
 短期大学は,学生の85%以上が女性であり,1950年の制度の発足から,女性の高等教育と社会教育に大きく貢献してきました。自県内入学率が7割弱と,4年制大学に比べて地域に根差しており,特に地域における自県内入学率は高い傾向を示しております。自県内就職率も7割以上と高く,地域貢献に適した高等教育機関となっていますが,収容定員規模で見ると,400名以下の小規模な短期大学が,特に人口の少ない地域に立地しているという特徴がございます。
 認証評価とは,もう皆様方御存じのとおりに,アメリカのアクレディテーションの仕組みによく似ておりますが,アメリカでは,学生が4年制カレッジから別のカレッジに転学したり,2年制のカレッジの卒業生が4年制のカレッジに編入学を可能にするための仕組みとしてつくられたと考えております。
 一昨年に我が国の認証評価のシステムが第3クール目に入っているということで,大分,認証評価についても根づいてきたのではないかと思っております。
 まず,昭和25年の学校教育法の改正により,当分の間,2年又は3年制による大学の設置が認められ,「短期大学」と称することとされました。その後,専科大学法案等の複雑な経過がありましたが,昭和39年の法改正のとき,恒常的な組織として認められたのが短期大学であります。
 しかしながら,「短期」という期限がついた「短期大学」という名称は,国際通用性の観点からも問題があり,学校教育法第108条第3項の「短期大学」と称する文言改正を検討していただきたいということで,例えば大学前期課程とか,大学2年制,3年制とか,そのような名称を検討していただきたいということでございます。
 また,平成3年の学校教育法の改正により「準学士」の称号が規定され,平成17年には大学としての教養教育や,その基礎の上に立った理論的背景を持つ専門教育が評価され,「短期大学士」の学位が認められました。
 しかしながら,先ほど話しました短期大学の名称と同様に,短期大学士の学位には国際通用性がなく問題があるということで,学校教育法第104条第5項中の「短期大学士」の学位の名称の改正を検討していただきたいということでございます。例えば準学士等々でございます。
 そして,短期大学に,専攻科という制度がありまして,大学改革支援・学位授与機構に認められた認定専攻科のうち,一定の実績を有する「特例適用専攻科」に関しては,「大学改革支援・学位授与機構」が在学生の学習の成果に基づいて学士の学位を授与する特例が認められていますけれども,多くの短期大学が設置する「認定専攻科」修了生の学士の学位授与については,「大学改革支援・学位授与機構」の試験,審査に合格しなければならないというように,学生に対して短期大学の専攻科修了の上に,さらなる負担を強いることになり,専攻科進学への障害にもなっています。
 短期大学にとっても,5年ごとに行われる「大学改革支援・学位授与機構」の教員審査は大きな負担となっているというのが現状です。
 短期大学に「特例適用専攻科」と同等の,仮称でありますが,「学術専攻課程」等のものを設置し,これを修了した者に学士の学位を授与できる機関となることができる制度を検討していただければと思います。
 加えて,その認定につきましても,認証評価機関を活用できるように御検討いただきたいと思います。
 地域に根差した短期大学は,その特性上,小規模な短期大学が多く,また,先ほど公立短大の方でも出ておりましたが,教員の数が少なく,更に手厚い少人数教育を行っているために,認証評価に係る自己点検・評価報告書の作成や実地審査の対応等に人手を十分に割けないところも存在しています。
 認証評価の結果で差をつけることは難しいかもしれませんが,アメリカのように,評価結果によって現在の7年の評価期間を最長10年まで延長できるような仕組みを考えていただけたらと思います。
 また,短期大学の現状を鑑みて,認証評価にかかる費用負担の軽減を図る方策も考えていただきたいと思います。
 同じように負担の軽減ということについては,大学ポートレートについても,負担が大きい割に十分に活用されているとは言えないと思っています。認証評価等に活用できるよう工夫をし,小規模で教職員数の少ない短期大学の負担軽減を図れるように検討していただけたらと思います。
 このたびのコロナ禍で,いや応なくオンラインでの教育に切り替えざるを得なくなった短期大学も多数存在いたします。予想外の教育効果を上げた例も側聞しております。全ての授業をオンラインに置き換えることは難しいと思いますが,現行上限30単位の単位認定基準の緩和を是非検討していただきたいと思います。
 また,学生たちの情報インフラの整備についても,個人の努力に依存している部分が非常に多いという中で,教育の質を保証する上で,フリーWi-Fiのスポットの拡充など,社会的基盤の整備を積極的に推進していただけるように検討していただければと思います。
 最後になりますが,歴史的な経緯の中で,学校教育法第1条が定める学校以外からの編入学,転入学が行えるようになっておりますが,それらの機関に関しても,アメリカのアクレディテーションの考え方同様に,質保証を行うことが最重要であると思っています。このことも,是非議論の中に加えて,国際通用性のある教育体系を整えていただけたらと思います。
 長くなりましたが,以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。それでは,今の二つの団体からのプレゼンテーションに対しての質問,御意見等がありましたら,挙手ボタンを押していただければと思います。濱中委員,お願いいたします。

【濱中委員】 村井副会長に,御発表の中で挙げられていた「多様化」というキーワードについて,もう少し教えていただければと思っています。多様化の中での質保証というのは,これからの質保証の在り方を考える大事な視点になると考えています。村井副会長は御発表で,社会人学生と高校卒業したばかりの学生との違いについて触れられていました。理解度だったりニーズだったり,両者には違いがあって,その両者のニーズを満たす質保証の検討が大事だと御指摘くださったと理解しています。これからの高等教育を考えると,リカレント教育というのはかなり大事なポイントになるはずですが,村井副会長から御覧になって,ストレート学生と社会人学生はどのような点が異なっており,この多様化に対応するための質保証の課題は何か,既に御意見をお持ちでいらっしゃったらお聞きしたいと思います。

【村井副会長】 本学は社会人と申しましても22歳以上を指定しておりますので,20代でしたら大丈夫ですが,特に科目。私は語学を担当しておりますので,英語や情報関連の授業等では,退職された年齢の方も御入学されておりまして,かなり授業の進捗度に差が出ております。また本学は短期大学でございますので,編入学希望が非常に多くおります。また,男子学生も3割,夜間の場合は5割以上でございますので,編入学して,もうワンステップと考えている彼らと,ゆっくり学んで100単位以上取得される社会人学生の方がいらっしゃいます。
 先ほど濱中委員がおっしゃっていた,いわゆるダイバーシティーというものがゼミ等は非常にうまくいくんです。ですので,恐らく4年制大学の大学院とかは非常にうまくいくのであろうなと思われるんですけれども,科目によりましては,かなり求められるものが違いますので,ちょうど中庸のスピードで,社会人学生は語学でも,パソコン,特に資格関連科目等はかなり苦戦をされますもので,補講なり,オフィスアワーにお越しいただいて授業を進めるなりしています。授業中のやり取りも非常にフリーに話されて,ある意味でのアクティブ・ラーニングですけれども,進捗度という面では,特に短期大学,本当に高校出たての学生と,御年配のいろいろ社会的に経験をお持ちの方がいらっしゃいますので,そういうダイバーシティーが一つの中で学ぶというので理想ですが,実際教育,アンケート等を見ましても,多様なメンバーになっておりますので,今そのところをFDの方でも検討中でございますし,社会人の方が少ないので,その方の補講をしていくというような形で対応していかねばならないというのが現状でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。今の点は,恐らく短大に限らず,社会人を受け入れている大学が直面する,かなり大きな問題です。社会人コースを独自につくっていて,主として社会人を教育するという枠組みを持っているところと,一般の学生といいますか,ストレートの学生も社会人も,年代も様々な学生が一緒に授業を受けるというところに重点を置くといいますか,そのメリットを考えてそういう仕組みをつくっている大学と,いろいろあるのですけれども,そこで常に,一緒にやった場合の進捗度であるとか,要求度の違いとかというのは,実際問題として非常に大きな問題だろうと思います。ありがとうございました。
 ほかに御意見,御質問はございますでしょうか。土屋委員,お願いいたします。

【土屋委員】 今,村井副会長のお話,大変興味深く聞かせていただいたのですが,オンライン授業についてのFDの問題ですね。これは確かに大変だろうなと,今お聞きして思っておりました。
 ただ私は,これまでオンライン授業について,むしろFDをやるにはオンライン授業の方がやりやすいというようなことも申していたのですけれども。つまり,他の教員もそれを見ることができて,お互いに議論することが可能であるということでは,相互にチェックが可能ではないのかなと思っておりましたので,今,村井先生のお話を伺って,それ以外にも,やはりいろいろ難しい点があるなということを大変勉強になりました。
 そこでもう一つ,今の社会人教育の件ですが,例えば私ども,専門職大学院を持っておりますが,専門職大学院では,オンラインのオンデマンドで,授業をもう一回見られるようにしているんですね。それは,社会人はなかなか常に学校へ来られるわけではないものですから。特に今もそうですけど,社会人にとっては,やはりオンデマンドで授業を見えることが,いわば授業の追いついていかれないとかと,いろんな問題を解決する大変大きな手段になって,オンデマンドで見る学生がとても多いですね。
 そういうことは,例えば村井副会長の大学の社会人に対しては今後,今もおやりになっていらっしゃるんでしょうか。

【村井副会長】 現在のところ,土屋委員におっしゃっていただきました社会人ですが,本学の場合,最近とみに社会人は22歳以上の,いわゆるフリーターの学生ともうほぼ退職年齢になられたフリーの方でございまして,働き盛りの方に本来は来ていただきたいんですけれども,その年代の学生が今,夜間にほとんど入学されておらず,実はその対策として,来年度から長期履修制度を実施しまして,働き盛りの方にもお越しいただこうと実施を検討し,実施をいたしますが,そうなりますと,正にオンデマンドの配信が必要になるなと今改めて思いました。
 今,本学は,ライブでZoom等受信する環境が厳しい学生が多く,実際,今,遠隔授業をほとんどオンデマンドにしておりますので,そういう意味では,社会人の方が,先生の早口が聞き取れないので何度も聞けて有り難いという声を聞きます。我々としては,ライブ配信が厳しい場合は,二通り準備しなければならないので,そこの厳しさはございますけれども,御指摘どおり,社会人,本当に今,会社勤めの方がもっと今後増えていくようでございましたら,今回のコロナ禍ということとは別に,何度も復習して学習していただけるという環境づくりは必要かと,今よい御意見頂戴しましたので,また学内でも活用していきたいと思います。ありがとうございます。

【土屋委員】 ありがとうございました。

【吉岡部会長】 他にいかがでしょうか。では,宮内委員,お願いいたします。

【宮内委員】 お二方に伺います。短期大学の場合 ,2年間しか時間がない。限られた時間の中で初年次教育,若しくはリメディアル教育ということに特に意識してプログラムを作っていらっしゃるのでしょうか。すなわち,4年間でもなかなか「何ができるようになったか」とならないわけですけれども,この限られた2年間で成果を求めるには,かなりの基礎学習が必要になるとの懸念を持って伺う次第です。

【吉岡部会長】 では,まず村井副会長からお願いいたします。

【村井副会長】 ありがとうございます。おっしゃるとおりで,入った途端に,もう入学式の日から出口のことを指導いたしますので,ジェットコースターに乗ったような状況でございますが,一応,初年次教育,各学科の方で,いわゆる入門科目というのは半期物で用意をして,リレー形式で,その専攻の教員が2回ずつぐらい,法律系ですと民法,憲法を全て全体的に話すということを今のところはしておりますが,これで教育効果があるのかという声も少々上がっておりまして,来年度以降,少し見直しを検討しております。
 それからキャリア教育等も,急に就職活動というふうに持っていけませんので,こちらも前期の方でリレー方式で,市長からお呼びして,卒業生の方にいろいろなお話をしていただくということで,大体半期,前期,夏休みまでに詰め込みまして,夏休み明けに進路調査をし,もう割り振っていって,進路に振り分けていくという作業になってしまっております。
 学生の方からも,ゼミの前倒しを希望する学科の学生が増えておりまして,これまで2年生から全学,ゼミ必修で開講しておりましたんですけれども,法律が既に前倒しで1年生後期から,経商コースの方も1年生後期からと,学生の方から早く,そういう居場所というか,勉強する方向性が欲しいという声が上がっておりますので,ゼミの前倒しということで,来年度以降,少し検討していきたいと思っておりますが,時間的に非常に厳しく,詰め込み式になってしまうことが,どうしても避けられないことで,何年かに一度カリキュラム改編しながら,工夫に工夫を重ねているのが現状でございます。

【吉岡部会長】 では,川並常任理事,お願いいたします。

【川並常任理事】 やはり短期大学2年間で,特に免許,資格を持たない学科の学生については,1年生の3月から就職活動が始まるということで,実質1年で,ある程度の学習成果を獲得してもらわないといけないという問題があります。
 本学の場合は,10年前から改革を始めまして,入学してすぐに,1泊2日でキャンプみたいなことを行い,大学での学びというものについて意識を変えてもらい,更に論理的思考や,自分たちが考えていることを相手にしっかり伝えることができる,又は相手が言っていることをしっかりと聞いて理解できる,そういう学びを1年の前期から行わせていただいております。
 1年の後期になりますと,今度は就職に向けてということで,キャリアを志向した学びを特に入れておりますけれども,短期大学は,やはり地域に密着している部分が非常に特徴になっておりますので,地域貢献というものをプログラムの中に入れております。
 免許,資格を取る学生については,実習がありますので,その実習を通して社会と触れ合う,そのことによって社会人としての意識を養ったり,自分が社会に出ていくことを意識したりするわけですけれども,免許,資格を取らない学生については,この地域貢献で,地元の方々と協力して,いろいろなものをつくり上げていくということが,学生たちの気づきの場と学びの場であり,加えて自らのその学びのフィールドが広くなっていきます。よろしいでしょうか。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。 では,飯吉委員,お願いいたします。

【飯吉委員】 村井副会長と川並常任理事のお二人にお伺いしたいのですが,今後20年,30年を見越して,日本の短期大学の社会的なミッション,在り方について,どのようにお感じ,お考えになっておられるでしょうか。
 自分はアメリカに長く在住していたのですが,御存じのようにアメリカのコミュニティ・カレッジは,見ようによってはかなり厳しい状況です。在学する学生数は多く,アメリカの高等教育全体の4割ぐらいの学生が短大に所属しています。ただ,2年制のプログラムを6年以内に卒業できる人は40%に満たないということで,日本的な入り口と出口の質保証をしっかりやって2年で卒業させるという観点からみれば,かなり苦境に置かれた高等教育機関と言えると思います。
 ただ,そもそもアメリカのコミュニティ・カレッジの社会的なミッションの一つとして,高等教育の入り口を安価で用意するということがあります。もちろん学位プログラムの中には,ある意味で資格取得的とも言えるような,2年間でプロフェッショナルな技能・知識を身につけ,すぐ社会に即戦力として出る,というプログラムも相当数ありますが,その一方で,4年制大学への接続・トランスファーがかなり強く意識されているプログラムもあります。
 アメリカで,自分の知人も含めて短期大学に行く広い年齢層の人たちを多く見てきましたが,最初から,自分は一流のこの州立大学に行く予定なんだけれども,高い学費が払えないから,計画的にまず短期大学に行って,2年間頑張っていい成績を取って4年制の大学にトランスファーしていくというような人生設計をしている方もおられます。
 特にアメリカの場合は,貧富の差の拡大や人種的な社会的経済格差など,いろいろな課題がある中で,コミュニティ・カレッジは,それらを乗り越えて高等教育を受けようという人たちの支えや救いになっています。日本でも恐らく,今後同じような高等教育を取り巻く社会的な課題が出てくると思われます。
 例えば,社会人と一言で言っても,大学に行きかったが,経済的な理由でまずは稼がなければならないという人たちもいると思いますし,そういう人たちを受け入れ,支えてあげられるような高等教育システムが必要です。ただ,そのためには,今のこのガチッとした質保証の仕組みや出口・入り口管理を,ある部分,緩める必要がありそうだが,同時に,それによる質の低下は避けたいというジレンマもあるのでしょう。
 あと,日本は資格大国ですので,そのステークホルダーとの利害もあります。資格を取得するための専門学校・予備校的な教育機関との競争や棲(す)み分けもありますし,ましてや,これから4年制大学が,オンラインで短大的な教育プログラムをいろいろと仕掛けてくる可能性を考えると,先ほど「学士前期課程」というようなお考えも示されましたが,短大は今後ますます苦戦されるのではないかと思うのですが。
 以上のようなことを踏まえて,何かお考えあれば,是非お聞かせいただきたいのですが。よろしくお願いします。

【吉岡部会長】 村井副会長,お願いいたします。

【村井副会長】 貴重な御提案ありがとうございます。おっしゃるとおり,実は本学,平成29年に県内の高校生,2年生と,それから進路指導の先生方,県内企業100社と,2年生は1万5,000名ぐらいを対象に,アンケートを採らせていただきまして,当然,全国的なパーセントと同じで,現時点で短期大学を考えているという高2は5%で,これ全国的な数値とほぼ一緒でございました。
 ただ,短期大学の今後の在り方を問うた場合に,やはり必要だというお声が非常に大きかったわけです。本学も4年制,それから併設,それから短大のままということで,いろいろ御意見頂戴したんですけれども,やはり地域に根差した,経済的に非常に厳しい学生もいるので,そういう意味で必要であると。
 本学は今,県内6割,それから県外4割でございます。一応,定員割れせずに毎年,学生確保しており,資格取得の食物栄養学専攻もありますが,食物栄養学あるいは福祉系,あるいは建築士系ではなく,全く資格も取れません法経科の方が,ずっとこの間,堅調でございまして,一般企業に就職していくという進路と,編入学がございます。
 ですので,短期大学に資格取得のみを求められているのでないのだなというのは,我々教員としての実感でございます。
 高等教育の支援も整ってまいりましたので,今,経済的に厳しくて,高校卒業で就職せざるを得ないという生徒さんに対して,まだまだアプローチしていく余裕はございますし,非常に優秀でありながら経済的に進学を断念される方も,まだまだ多くいらっしゃいますので,高大連携を強化いたしまして,最初から就職を考えておられる生徒さんにも,更に就職の道が,もう2年学べば開けるということで,学びの継続を訴えていければと大学として考えておりますし, 4年制志向が強いですけれども,まだまだ高校のみで就職する生徒さんもいらっしゃいますので,社会人学生と併せて,その辺りも大学,短期大学で学んでいただく方向に誘致できればと思っております。
 以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。では,川並常任理事,お願いいたします。

【川並常任理事】 私立の短期大学は,ピークのときは平成9年の504校あったわけですね。令和2年306校という中で,短期大学の存在意義というものについて,疑問をおっしゃる方もいるのは事実だと思います。私は,高等教育を受けるというのは,自分に対する投資と考えることができると思います。
 そこに2年間かける投資と,4年間かける投資で,それが一生涯のうちに回収できるかどうかということを含めて,割り切って考えたときに,この短期の高等教育という存在はなくならないと思っていますし,そのニーズは,まだまだあると思っています。
 ただ,問題なのは,質保証をしっかりとしていく。短期大学は認証評価を受けて質保証しているわけですけれども,実際に十分な質保証をされていない高等教育を名のっている機関からの,大学への編入とか,大学院への進学とかそういったものの質を,どのように国として担保していくのかということを考えていかないと,共倒れになってしまうのではないかと思っております。
 今,大学・短期大学基準協会はアメリカのACCJC(米国西地区学校・大学基準協会二年制高等教育機関認定委員会)と協定を結んで認証評価を行っていますけれども,アカデミックとボケーショナルの部分を,どうやって区別するかということ。これを私たちが自分たちでしっかりとやっていかないと,日本の国の高等教育の国際通用性が薄まっていってしまうのではないかと危惧をしております。少し答えとずれましたが。

【飯吉委員】 どうもありがとうございました。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。あと小林委員,杉谷委員から手が挙がっております。このお二人で終わりにしたいと思います。 では,小林委員お願いします。

【小林委員】 川並常任理事に御質問させていただきたいと思います。川並常任理事は認証評価における大学ポートレートの積極活用というのを御提言されています。私も現場の負担軽減というところには,すごい大きな影響があると思っていまして,賛同しております。
 しかし,この大学ポートレートを運用している大学改革・学位授与機構によると,国公立大学と公立短期大学は既にデータ,基礎データが提供されているんですけれども,私立大学と私立短期大学においては,認証評価の補足資料に必要なデータを,まだ提供いただけていないということらしいんですね。
 これ,なかなか様々な課題があると思うんですけれども,私立大学あるいは私立短期大学が,必要なデータを提供するということについては,どのような手段というか,手続というか,運用を取ったらよいかという案があったら教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【川並常任理事】 ぱっと出てこないんですけれども,どうなんですかね,このポートレートの活用について。例えば,一番簡単な例が,財務諸表,決算書ですから,統一化されているフォーマットで作られていますから,この財務諸表を認証評価に,データをもらって使えないかとかという話が出ているようですけれども,実際に認証評価に使う年限分が用意できないとか,例えば3年分提出しなければならないものが,3年分情報が提供されないとか,そういう部分があって,なかなかうまくいかないということと,我々の心の中に多分,抵抗感として,マスコミが大学ランキングみたいなところで,このポートレートを使って,大学,短大の実態が分からない方々が,そのランキングの数字だけ見て大学を評価してしまうような事態が起こることを懸念している部分もあるのではないかなと。

【吉岡部会長】 今の大学ポートレートの仕組みについて事務局からの発言を伺いたいと思います。

【淵上高等教育企画課長】 現在の仕組みの補足をさせていただきます。先ほど小林委員から御指摘ありましたように,国公立あるいは公立の短期大学につきましてはNIADの方に情報を提供していただくということになっておりますけれども,私立大学あるいは私立短期大学につきましては,私学事業団の方にデータをお出しいただいて,事業団の方で各大学の情報を一括して提供しているという状況になっています。この二元性があること自体どう考えるのかという問題はもちろんあるわけですけれども,ポートレートの様々な御議論の中で,今はそういう状況になっております。
 私立大学の先生方が情報を提供いただいているということ自体はされておりますので,その点,補足させていただきます。

【小林委員】 先週の大学ポートレート運営会議で,まだ私立大学はできていないという報告がされているので,その旨を申し上げました。

【吉岡部会長】 事務局,何か追加ありますか。

【森大臣官房審議官】 大学ポートレートと認証評価の関係については,大学ポートレートのデータは認証評価でも活用できるようにということで,認証評価連絡協議会の方で議論をして,こういうデータがそろえば大学ポートレートのデータを活用できるのではないかというのを前に連絡協議会の方でつくったことがあるかと思います。
 ただ,それ自体に基づいて,大学ポートレートのシステムの改修等,大学支援・学位授与機構の方では,そのシステム改修を進めているかと思いますけれども,事業団の方については,更にそういった準備を進めている段階なのではないかと理解はしているところではございます。

【小林委員】 承知しました。

【吉岡部会長】 情報公表の仕組みに関係することですので,そのシステムも含めて,今後の議論の中で,現状も含めて事務局から紹介していただく等,進めていきたいと思います。では最後に杉谷委員,よろしくお願いいたします。

【杉谷委員】 川並常任理事にお伺いしたいのですが,先ほどの御回答の中で,質保証をしっかりとしていくという御発言と,それから一部の短期大学で十分な質保証をできていないということで共倒れになっていく,そういう危機感をお持ちだというお話でした。
 そこでおっしゃっている質保証が伴っていないというところを,どの辺りで感じられているのかということを,お差し支えなければお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 川並常任理事,よろしくお願いいたします。
 
【川並常任理事】 少し誤解があったかもしれません。短期大学は文部科学大臣に認証された認証評価機関に評価を受けています。そこを活用して,しっかりと質保証をしているわけですけれども,4年制大学に編入できる教育機関は短期大学だけではないわけで,そこの質保証がどうなっているのかということについて疑問があるということを申し上げたつもりでございます。誤解がありましたら申し訳ございませんでした。
 
【杉谷委員】 はい,承知しました。ありがとうございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。お聞きしていて,短期大学の質保証及び現状も含めてですけれども,抱えていらっしゃる問題というのは,もちろん短期大学独自の問題もありますけれども,多くがやはり4年制大学の抱えている問題と,凝縮して現れているようなところもあるという意味では大変勉強になりました。
 両団体の大学の方々,どうもありがとうございました。今後とも,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは続きまして,今後の議論の進め方というペーパーを作りましたので,それについての説明を行いたいと思います。資料4を御用意ください。
 これまでの議論を踏まえて,事務局とも相談いたしまして,ある種の論点とか考え方というものについて一応の文章にしてみました。文章にしましたが,相変わらずかなり広い問題を扱っていると思いますけれども,この後,これを基にして少し議論をして全体の方向を,確定することまではできないかもしれませんけれども,少し整理できればと考えております。
 では資料4,既に目を通していらっしゃる方が多いと思いますけれども,読み上げさせていただきます。
 質保証システム部会における今後の議論の進め方について(案)。本部会のミッションです。「質保証システム部会」のミッションは,設置基準,設置認可審査及び認証評価制度等を一体とした質保証システムの在り方について専門的な調査審議を行うことにある。このことを意識しつつ,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。)の取りまとめに至る議論の経緯や,これまでの質保証システム部会における議論を踏まえ,これからの質保証システムの在り方を展望する議論を展開していきたいと考える。
 質保証システム部会での議論の前提となる大学の在り方です。どのような質を保証するべきか議論を行うに当たっては,その前提となる「大学の在り方」について意識する必要がある。「グランドデザイン答申」では,「保証すべき教育の質」として「何を学び,身につけることができるのかが明確になっているか」,「学んでいる学生は成長しているのか」,「学修の成果が出ているのか」,「大学の個性を発揮できる多様で魅力的な教員組織・教育課程があるか」といったことが重要な要素として列記されている。これらについては,各高等教育機関は自らの「強み」として発信・情報公表を徹底することが求められるとともに,設置認可の段階や認証評価の段階においても,確認されるべき質の根本的な要素であり,「学修者」を中心に据えた教育の在り方と「多様な大学の在り方」を具体化することの重要性が指摘されている。また,従来の常識や方法がそのままでは通用しない予測不可能な時代にあっては,多様な価値観を持つ人材が協働して社会と世界に貢献していくことが必要であり,高等教育はそのための「知の共通基盤」であることから,「多様な学生が学ぶキャンパス」の実現が求められることも指摘されている。その実現のためには魅力的な高等教育を提供するとともに,我が国の高等教育の質が保証されていることが国内外で認知されることが重要となる。これら「グランドデザイン答申」で示された大学の在り方は,本部会における議論の重要な出発点であり,いま一度,認識を共有する必要がある。加えて,今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際しては,学生の学びを止めないために各大学の創意工夫の下,オンライン教育の取組をはじめ,従来の枠組みにとらわれない様々な取組が進められた。その結果,オンラインと対面による授業それぞれの強みと弱み等,新たな知見や気づきが浮かび上がっており,今後の大学の在り方を検討する際には,従来の空間に依存した在り方ではなく,時間的・空間的な制約を超え,学内外の様々な資源を活用してどのように学修の成果を最大化させていくのかという観点からの検討が求められることとなる。あわせて,今般のコロナ禍が「大学のレジリエンス」という点でも大きな教訓をもたらしたことも踏まえた検討が必要となる。本部会において質保証システムの在り方を検討する際には,こうした「グランドデザイン答申」において指摘されていた大学の在り方と,今般のコロナ禍を受けて表出した新たな大学の在り方をめぐる諸課題を踏まえつつ,議論を充実させていきたい。
 現行の質保証システムの全体像。振り返りでございます。議論の前提として,現行の質保証システムについて概観すると,平成15年までの我が国の大学の質保証システムは,設置基準とその設置基準に基づく設置認可審査による事前規制型であった。これは我が国の高等教育の整備に際して,質の保証の観点から一定程度の共通性を担保する上で重要な役割を果たすものであった。しかしながら,進学率の上昇や社会の成熟化に伴い,多様な高等教育が求められる中,事前規制型の質保証システムへの過度の依存は,大学の画一化や新たな取組の抑制につながるという懸念が示されるようになった。平成14年の中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」において「国による規制を可能な限り緩和し事前規制型から事後チェック型へと移行する方向」が示されたことを受け,認可事項の縮減や届出制の導入をはじめとする設置認可の弾力化と認証評価制度が導入された。特に,認証評価については,「大学における質保証は,各大学が自ら行うことが原則で」あり,「内部質保証の取組は設置後の大学の質保証の根本かつ要である」という平成28年の中教審大学分科会の審議まとめの認識に基づき,平成30年より内部質保証が重点評価項目となり,各大学の自律的な改革サイクルを促すことを最重要目的とするものとなっている。また大学の情報公表については,教育機関自身が,自らが行う教育の質の保証に努め,社会に対する説明責任を果たす必要性から,当初,大学設置基準において定められていたところ,平成19年に法律レベルで規定,平成23年からは更に公表すべき情報について具体的に規定するとともに,情報公開への取組状況を認証評価において確認することとなった。このように,現行の我が国の質保証システムの全体像は,教育課程・教員数・教員資格,校地・校舎面積などの最低基準を定める「大学設置基準」を基礎として,大きく分けて,(1)「設置認可審査」と「設置計画履行状況等調査」による入り口による質保証と,(2)その後の大学による「自己点検・評価」「自己改善」に基づく「内部質保証」,社会に対する情報公表及び第三者からの外部評価を定期的に受審する「認証評価」による恒常的な質保証が一連の仕組みとなっている。このように,事前規制と事後確認の併用型を取ることにより,一定水準以上の大学であることを保証する事前規制型の長所と,大学の特性や多様性に配慮しつつ,恒常的に大学の質を保証する事後確認型の長所を併せ持つように設計されている。またこのことは同時に,事前規制型,事後確認型それぞれにおいて時代の要請や状況の変化によって生じる諸課題と,両者の均衡に常に配慮が求められることを意味している。
 以上を踏まえた議論の方向性です。以上を踏まえ,質保証システム部会における議論では,このような現行の質保証システムの全体像を俯瞰(ふかん)しつつ,「グランドデザイン答申」やその後のコロナ禍を経て表出した大学像を踏まえ,質保証システムのそれぞれの要素の役割や相互の関係を改めて精査し,時代に即した在り方を検討していくことが求められる。その際,学修者本位の観点から質保証システムとして最低限保証すべき「質」についての共通理解を深めるとともに,質保証システムは単に大学を評価するものではなく,大学の自主性・自律性に基づく自己改善を促進するためのものであり,大学は,そうした一連の営みを通して社会から理解と支持を得られること,また,必要な情報を社会に公表し社会との対話を進めることで教育研究等のさらなる充実が可能となることを意識しつつ,いわば「社会に開かれた質保証」の実現を図る観点から議論を深めていきたい,ということでございます。
 今後の議論の進め方です。以上のような前提に立ち,今後の質保証システム部会では,常に質保証システムの全体像を意識しながら,質を保証するための基準や観点,仕組みについて着目しつつ審議を進めてはどうかと考える。
 以下に,このような観点に着目するということで,やや例示的に挙げてあります。1.どのような大学であれば「質が保証されている大学」ということができるのかについて,2.設置基準・設置認可審査の在り方について,3.大学における内部質保証と認証評価制度の見直しについて,4.情報公開の在り方について,5.大学等の質保証に資する定員管理の在り方について,6.質保証を支える人材の育成について,7.オンライン教育や授業内容・授業方法の進展に伴って見直すべき質保証の在り方について,8.その他,質保証システムの見直しに係る重要な論点についてと,以上でございます。
 現行の質保証システムのイメージ図がそこにつけてありますし,基礎資料としてお配りしてある,ここでは参考資料に今日は入っておりますけれども,その部分も参照していただければと思います。
 以上が提案といいますか,今後の議論について,こういうことを意識しながら進めることが必要ではないかということで文章を作りました。この点について皆さんと議論をして,今後の方向性を,ある程度見定めたいと思っております。御発言の際には「手を挙げる」ボタンを押していただければと思います。
 私からは以上です。吉見委員,お願いいたします。

【吉見委員】 ありがとうございます。かなりベーシックなことですけれども,今,吉岡部会長が最初にお話になりましたように,この質保証システム部会で議論する前提として「グランドデザイン答申」があると。「グランドデザイン答申」の一番のコアは,学修者目線への転換ということであったと私は了解しております。
 先ほど既に読んでいただいたとおり,保証すべき教育の質は,何を学び身につけているのか,学んでいる学生は成長しているのか,学修の成果は出ているのか等々ですね。
 つまり,一番のポイントは,教える側(がわ)の教育の質もあるんですけれども,しかし学びの質といいますか,学ぶ側(がわ)の学びの質といいますか,どうすれば学びの実質がちきちんと保証されるのかというところを,この質保証部会で,どこまで詰められるのかということが一番のポイントではないかと私は思います。
 今の議論だと,やや教える側(がわ)に力点が入って,必要な面ではありますが,しかし一番押さえなくちゃいけないのは,むしろ,学生たちがどれだけきちんと学んでいるのかという,その学びの質の保証,これをどうやってきちんと制度的に担保できるのかと,そういう話に向かっていくべきではないかというのが私の意見でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。林委員,お願いいたします。

【林委員】 着目する観点の例,幾つか挙がっているんですが,これまでの議論の中で出てきた,例えば1単位45時間の問題をどうするか,校舎面積とか,具体的に設置基準で規定されているものが今の状況に即して適切なのか,変える必要があるのかと,そういうの検討をどうするのか。
 私,これまでの部会の議論を聞いていると,設置基準を上から見ていって,それで,何かもう古くさいものについて考え直せばいいのではないかと思っていたのですけれども,今,着目する観点の例のところは,在り方についてとか,ちょっと大きな話だけで占められているような気がしてですね。質問としては,その設置基準のそれぞれの項目,事項について,どうするのかというところですね。
 もちろん,それ以外にも,例えば先ほどから議論に出ている学生中心のとなると,ほかの国だと,学生が学内の質保証のプロセスの中にきちんと入ってくることを求めるとかあるんですけれども,恐らく,それは設置基準では無理な話で,認証評価のところでエンカレッジしていくとかですね。今入っている設置基準の中で古くさいものを取り除き,そして設置基準にはないけれども今後求められている事項を,設置基準に入れるか,認証評価で見るかと,そういう仕分をするということを,きっとしなければいけないんだと思うんですけれども。そういう何か個別,個別というか,一個一個具体的にチェックしなければいけない気がするんですけど,それはどうお考えなのかというのをお聞きしたいと思います。

【吉岡部会長】 御質問といますか,御意見ありがとうございます。どちらも,私としてもやや悩ましいところがあるんですけれども。
 最初に吉見委員の観点で,私もグランドデザインにも関わっておりましたのでおっしゃることはよく分かります。ただ,ここでの書き方が教育の側(がわ)になっているのは,学生に勉強しろということを強調することにならないようにといいますか,やはり教育する側(がわ)が学生をどういうふうに,先ほどお話にありましたけれど,エンカレッジし,動機づけを行っていくような仕組みをどういうふうにつくるかという観点は,これはやはり大学側の問題かなと考えたので,書きぶりがこうなっていると思います。おっしゃるとおりだと思います。学生が何を学んでいくのかと。学生のやる気といいますか,勉強することで,キャリアパスが見えてくるとか,そういうことも含めて本来考えていくべきことだと思います。視点はそういうことだろうと思います。
 それからもう一つ,林委員のおっしゃること,どこで仕分していいのかと。私もちょっと考えなくてはいけないと思っているのですけれども,例えば,ここはやはり質保証のシステムを考えるという枠組みを一応作ってあります。ただ,質を保証するというときに,当然その問題が,例えば単位数124単位では多過ぎて,そのようなことではどう考えたって学生は育たないみたいな議論が出てくると思うんですね。そのような議論が出てきた場合には,ここでは多分解決できなくて,システムの問題ではなくなって,それは大学分科会の方に上げていくということを考える必要があるのではないかと考えています。
 事務局はその辺はどのように考えておられるか,御意見いただければと思います。

【淵上高等教育企画課長】 実は,次の資料5の方に,後で御説明をしようと思っていたのですけれども,この部会長の議論の進め方の案でお示しいただいております着目する観点の例,マル1からマル8まで挙げていただいておりますけれども,このマル1からマル8の観点が御了解いただけたとすれば,よりブレークダウンして考えるべき視点はこういう点があるかなというのを資料5で,事務局としてお示しをさせていただいております。
 この中には,先ほど林委員から御指摘がありました大学設置基準・設置認可審査の在り方の中で,時代に即した設置基準とするために見直すべき観点としては,どういうものがあるだろうかということでございます。
 当然,この部会での議論で収まらなければ分科会に,また上げて議論いただくということも,今後の議論としてはあり得ると思いますけれども,事務的に用意させていただいているのは,例えば施設,校地校舎の在り方や科目あたり単位数,履修科目数などの教育課程の在り方,専任教員の在り方などについてどのように考えるかといったような視点も今後,論点にはなってくるのかなとは思っております。
 また,この質保証システムはトータルシステムだと思いますので,この入り口の部分と,先ほどの部会長ペーパーにもありますが,入り口の部分での事前規制的な観点をどう考えるのかということと,それから事後確認型であります認証評価制度,あるいは認証評価制度以外にも,情報公開の在り方ですとか,文部科学省がやっております補助金などでの政策,こういったものとのバランス,整合をどう考えながら,全体として質保証システムをお考えいただくのかということは,今後の議論としては,具体的に行っていただく必要はあるのかなと思っておりますけれども,今回の時点としては,全体の議論の進め方ということを,まず御審議いただいて,それから次回以降,更に個別の論点について,トータルの仕組みを見据えながら御議論いただくのかなというイメージを持っているところでございます。

【吉岡部会長】 いかがでしょうか。林委員,私と今の事務局のとでは多分,きちんと答えにはなっていないような気がするんですけれども。

【林委員】 ただ,今,着目する観点のマル2,設置基準・設置認可審査の在り方について具体的な項目について議論をするということと受け止めました。
 先ほど申し上げましたように,設置基準に入らないけれどもエンカレッジしなければいけない項目も,また別途あると思いますので,そういうのもまた,恐らくどこかの項目に入ってくると思いますので,具体的なところは,そこで審議するということで理解いたしました。ありがとうございます。

【吉岡部会長】 恐らくは,この部会の始まる前には余り想定されていなかったのは,コロナの展開だと思うのですね。コロナの展開のプロセスで,とりわけオンラインによる授業であるとかという,今まで考えてはいたけれども具体化することが余りなかったものが,実際にやってみて,いろいろな問題点も含め,予想以上にいろいろな効果が上がってくる。新しい方法とか技術とかというのも急速に展開しつつある中で,我々は考えなくてはいけないという状況の中にいるわけです。
 大切なこと,これは土屋委員がおっしゃっていることにもつながりますけれども,新しいいろいろな教育の試み,あるいは,更にその中身から言うと新しい教育分野の展開等によって,それぞれの大学に限らずですけれども,全体を通じて高等教育を引っ張っていくような動きがあるのを,例えば現行の設置基準であるとか認証評価のシステムが足を引っ張るということがあってはならないわけで,その辺のところをどう考えるかと。現に動いていることを一方で見ていかなければならないので,なかなか実は難しいのですけれども,この観点がどういうものであるかということを確認しながら進めていく必要があるというので,このようなペーパーを作ったということでございます。
 御自由に御意見いただければと思いますし,幾つか意見があったところで今既に少し入りましたけれども,資料5の方の説明も,場合によっては事務局から先にお願いしてもいいと思っています。
 では,瀧澤委員,お願いいたします。

【瀧澤委員】 ありがとうございます。先生方と違って質保証,どういうふうに具体的に押し込めばいいか分からずに,自分が今,学生で入学したとしたら,どういう大学だったらうれしいかなと思って,皆さんのお話を伺いながら考えたんですけれども。オンラインが自由にできるようになってきますと,自分の入った大学以外の個別の授業でも,自分が必要とするレベルの授業を受けて単位が取れるのであれば,非常に便利かなと思うんですね。そうしたときに,どの大学を選べばいいのか。レベルというんですか,そういったものが外から見えると,非常に取りやすいのではないかなと思うんですけれども。
 今,どのような大学であれば質が保証されている大学という,最低限のレベルがどこかみたいな線引きみたいな書き方がしてありますけれども,いろんなレベルの大学のレベル感を測れる尺度みたいなものが,こういった制度の中で取り込まれると,もっと自由な大学間の単位の交流みたいなことができて,学生にとっても利便性が上がるのではないかなと感じました。具体的にどのように制度に落とし込むかというのは全然分からないんですけれども,そんなことを思いましたので,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,大森委員,お願いいたします。

【大森委員】 ありがとうございます。議論の進め方ということなので,その点に関してだけなんですけれども。恐らく今後,今日4回目で,何となくヒアリングをしたり,全体のイメージ感を,いろんな自由な発言の中で,すり合わせていると思うんですけど,委員の皆様のお話を聞いていると,かなり多岐にわたっているということが分かったという段階のような気もしています。
 委員としては,次参加する第5回は,第6回はというときに,今日はこの観点についてのみ議論しますみたいな議題の明確化みたいなのがあると,その件に関してはこういう意見がありますと。例えばニューノーマルについては第8回でやりますから,それまでは違う議論をやりましょうとか,何かそういう毎回のテーマが定まっていないと,何か,どこでどの発言をしたらいいのかなというのが見えづらいなと思っています。そういう会議の進め方をもし御検討いただけるのであれば,今日はこのテーマだよ,そのほかのことは次の回で言ってねみたいなふうにしていただけると,すごく参加しやすいな,頭も整理しながら参加できるなと思っているんですが,いかがでしょうか。
 以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。今日少し観点ということ,議論の進め方というか,それをどういうふうに進めるかについてという議論のペーパーを出して,その後に少し細かくして更に資料5を用意したのは,どこまで絞り込めるか分かりませんけれども,回数ももちろん限られているので,少し論点を絞っていこうという意図がありますので,おっしゃるような形を取り入れるようにさせていただきたいと思います。

【大森委員】 ありがとうございます。

【吉岡部会長】 では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】 私は,大学設置基準を弾力化することも,オンライン教育を推進することも,これから新しいことに取り組もうとしている大学に道を開くという意味でいいことだとは思います。ただ,その一方で,益々(ますます)重要になるのが内部質保証ということになると思います。
 例えば,認証評価において,教員組織は,ほとんどチェックはしていません。設置基準に人数が足りているかを確認するぐらいです。そのプログラムにふさわしい教員が用意されているのかというのは,大学が自分で質を保証していると示さない限り,認証評価で確認するなんて,毛頭無理な話です。
 なので,設置基準が大綱化されるときには,必ずその一方で,大学が内部質保証として何ができていることを示すのかという観点を,きちんと見ていかないといけないと思っています。
 繰り返しになりますが,この内部質保証について,認証評価機関で,かなり差があると思っています。例えば自己点検・評価の結果,問題点が出たら,それを改善しています,だから内部質保証できていますというところもあれば,もっと厳しく内部質保証についてシステムができていて,それが成果を上げつつあるのかということを,エビデンスを出すことを求めているところもあります。設置基準を緩和して新しいことができるようにすることと,それが大学として責任を持ってできているということを内部質保証すること,これは絶対セットで考えなければいけないと思っています。
 あと1点,先ほどの御発言の中で気になったのは,例えば大学設置基準において124単位が多過ぎるかどうかを考える際には,アメリカが120単位であるとか,ヨーロッパが単位互換のための共通単位として導入しているECTSとの比較で著しく低くなるようであれば,これは日本の大学の質として保証できないと思いますので,この辺も,やはり国際的な観点というのも入れながら,設置基準の大綱化を考えなければいけないなということを思いました。
 以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。それでは,浅田委員,お願いいたします。

【浅田委員】 奈良県立大学の浅田でございます。本部会ですが,質保証システムというと,質について議論して,目指すところとして,設置基準を見直すという一つの目標があると感じています。現在の設置基準を見ていただくと,いわゆる定性的な内容と定量的な内容が含まれております。外形的に分かりやすい定量的な,量的な基準というのが示されていまして,それは設置基準が最低基準であるとうたっていますので,その部分は認可のときチェックしますし,認証評価でもチェックします。ただ,質を量に転換して見るということの矛盾が当然ここにはあるわけですね。でも,量で見ないと,ある意味で野放しになってしまう部分はきちんとしましょうということで,この数字はどう変えるのかというのはさっきの単位数の話だったりしますが,そのときに必ず原点に戻ってしまうのが,大学は性善説なのでしょうか,性悪説なのでしょうかということです。今700を超える大学があって,非常に努力をして質のいい大学もあれば,非常に質が悪くなってきている大学もあったりする。それが混在する中で,一つの法令で基準というものをどう定めるかという,この難しさは,ずっと我々は抱えてきたと思います。今後,コロナの影響も受けて,多様化していって,柔軟化していかなくてはいけない,国際的にも日本の大学を強くしなくてはいけないということで,やはり,いろんな意味で緩和しようという大きな動きの中に今いると思います。その緩和した中で,質をどうするか。そのときに,先ほど出ています内部質保証というキーワードが使われて,大学自身が自らよく努力すればいい,それを認証評価で外からチェックすればいいということになり,その仕組みが,うまく機能するのか,しているのかという話になっていきます。認証評価は基準を各機関が定めて,それでチェックしていくという仕組みで動いているんですけれど,先ほどから指摘ありますように,例えば教員の数は見るけれど質を見ているわけではないよとか,そういうところまで入ってくると,なかなか難しい現状があります。というのは,認証評価の負荷がどんどん重たくなっていったとき,回らなくなります。一方で,先ほどから出ている質を大学自身が保証する部分と,外から見て保証する部分のバランスをどうするかという,これはトータルのシステムの中で難しいところだと思っています。
 そういう中で,本部会の議論の方向性として,大学の質を保証するために,いかにして,全体としてチェックポイントをつくるかという話をしなくてはいけなくて,そうなると,教員であるとか,学生であるとか,職員であるとか,施設であるとか,そういう項目に入っていって,やはり決められるものは量を決めましょうみたいな話になっていく。本質的に,今と枠組みが変わらない形があって,なかなか悩ましいと思っています。
 そういう中で,日本の大学の将来を考えたときの発展的で自由に,より向上していく大学を支援するような枠組みと,一方で最低基準をぎりぎりで守れないような大学をどのようにしてよくする仕組みをつくるのか,あるいは,よくならないならば,もう撤退していただくような仕組みをつくるのか。そういう両面性を常に見なくてはいけないという意味で,本部会の視点といいますか,観点が多様であるということについて,私自身も答えを持っているわけではないですけど,難しいなと感じているところです。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。杉谷委員,お願いいたします。

【杉谷委員】 杉谷でございます。今後の進め方ということでございましたので,それについて申し上げさせていただきます。御提案いただいている論点はとても重要ですし,基本的に,この流れで進めていくのかなと思っております。ただ,最初に,この「質が保証されている大学」についてという,根本的なところを議論するのは私も大賛成で,とても重要だと思いますが,その一方でかなりここの部分が難しいとも思われます。恐らく設置認可のときに求められる質と認証評価で求められる質については,認証評価が大学の多様性を前提にしつつ,内部質保証もしっかりと行うという観点から考えると,そこでの質というのは,恐らく設置認可時と意味合いが少し違ってくる可能性があるかと思います。
 ですので,議論についてはちょっと抽象度が高くなる可能性もありますし,最初にこの質の部分の議論をしつつ,個別具体論に入っていく形で,最後に,またここの質の話に改めて戻っていき,最終的にどういうふうに整理できるのかという観点で進めていくのがよろしいのではないかなと思った次第です。
 先ほど私が質問したこととも関わりますが,質といったときに一体何を指すのか。もちろん学びの質というのもとても重要で,よく分かりますが,繰り返し申し上げてきたように,学修成果を測定するということ自体もなかなか難しい現状の中で,どこまで質を保証するのか。大学をエンカレッジしつつというふうに考えると,やはり個別具体論も織り交ぜながら議論を進めていった方がよろしいのかなと思った次第です。
 以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。吉見委員,お願いします。


【吉見委員】 追加的な発言ですけれども,具体的には,これは最初に土屋委員がお話になったこととも関わりますけれども,何のために質保証の議論をしていくのかということの議論が必要なのではないか。常にそうした問題意識というのは必要ではないかと思います。
 個別の大学についての質保証をする。そういう視点では,大学という全体像,780ある全体像が,もう持ち切れなくなっているというのが現状だと思います。グローバルに見ても,それは難しくなっている。そうなってくると,むしろ,700,800ある大学あるいは短大含めて,もっとある大学のシステム全体が,どうやればクオリティーを上げていくことができるかという観点が必要で,そのためには,問題を個別の大学一つ一つで見るのではなくて,縦横の風通しのよさをどうつくっていくかということだと私自身は思います。
 先ほどの短期大学の議論の中でも出ておりましたけれども,短期大学の問題を,学生のトランスファーと飯吉委員がおっしゃっていた,この問題をもっと太くしていくためには,やはり最初の2年間と,こういった点も含めた形でのトランスファーをもっと容易にしていくために,縦の風通しを,つまり学生の流動性を拡大していくことが必要です。それから横の風通しということを見ても,国内だけを考えても,先ほど瀧澤委員の方から出ていた,つまり大学という枠を超えて,授業だとかプログラムを取っていくことが,つまり学生が複数の大学を動いていくことが可能になるような仕組み,それを可能にするベースに質保証というのは当然必要になってまいります。
 これは海外との間もそうであって,学生が動いていって,いろんなところで単位を取って,それで学修成果を収めていくという,この風通しのよさをつくっていくために質の保証というのはベーシックになるわけで,こういう形で,風通し,横断性を良くしていく。縦断性といいますか,風通しをよくしていかないと,どんどん日本の,企業も大学もサイロ化していくというか,タコつぼ化していく。それぞれの組織の単位で閉じていくと,これ日本社会全体に,もう未来がないというか,社会全体が沈没していくわけですね。なので,それを変えていくためには,日本の高等教育全体に風通しのよさをつくっていく視点が,やはり不可欠ではないかという認識を持っております。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,長谷川委員,お願いいたします。

【長谷川委員】今の吉見委員の意見と同じで,もしかしたら資料5の方に関わることなのかなと思っていたんですが,やはり今後,これからの時代に合った大学の設置基準について考えるときには,正に資料4でも指摘いただいたとおり,オンライン教育の普及を踏まえて,時間的・空間的な制約を超えて,学内外の様々な資源を活用する,ということが非常に大きなポイントだと思っております。
 また,「グランドデザイン答申」にも掲げられた「学修者視点」ということを重視することも踏まえますと,正に学生がどういう科目,どこの大学のどういう科目を取りたいか,若しくは大学外のいろいろな機関も利用して,どういう学修をしたいかという学生本位の希望に寄り添って,より自由に科目を履修して教育が受けられる,そういったカリキュラムの編成を今後は目指すべきではないかと考えます。そのために必要な設置基準を考える,そういった学修を阻害しない,最低限の質保証は必要だとしても,そのような学生本位の希望に添った学修,履修の仕方を阻害しないような,最大限生かせるような大学設置基準の在り方というものを考える必要があるのではないかと考えます。
 以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。この後,既に少し内容的に入っておりますが,資料5について事務局から簡単に説明を頂く予定です。
 では,飯吉委員お願いいたします。

【飯吉委員】 先ほどの吉見委員の風通しのお話や,今,長谷川委員が言われたこととも関係しますが,大学としての質保証を考える上で,自前で学位を出す大学としての質保証はそれでいいと思いますが,今後,大学間連携や土屋委員の資料の中にもあるような,確か2つの大学に所属する学生と例示されていましたが,複数の大学の中における質保証を考えることも重要だと思います。今,日本と海外の大学の間で,ダブル・ディグリー,デュアル・ディグリー,ジョイント・ディグリー等が取り組まれていますが,正にこのような教育的連携が,もっと細かいレベルで,恐らく日本の大学間で,さらには短期大学も巻き込んで行われていく可能性があります。そうなると,このように一組織を越えて合わせ技でいろいろと提供される教育の質保証は一体誰が面倒を見るのかということについては,今まで余りなかった議論かもしれませんが,学修者中心の目線から見れば,やはり非常に大事になってくると思います。
例えば,3ポリシーも,一つの大学の中で完結する,一つの学部の中で完結するということであれば,今のもので十分だと思いますが,今後教育プログラムをより柔軟に複合的にしていく中で,現在の3ポリシーという考え方をそのまま当てはめ続けられるかは,よく分かりません。このような観点も,是非今後の議論に含めないと,結局,「教育プログラムの自由度を上げる必要性」や「学生の視点の重視」なども,言っているだけで終わってしまうのではないかと危惧します。つきましては,高等教育における質保証について,是非,大学という一組織を越える観点も含めて議論がなされればと期待しております。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,事務局から資料5を基に,今後の議論の論点について説明をお願いいたします。

【淵上高等教育企画課長】 それでは,既に議論が内容に及んでおりますけれども,改めて資料5について簡単に御説明させていただきたいと思います。先ほどの部会長の御提案の観点ごとに,更にブレークダウンをした論点をお示ししているものでございます。
一つ目は「質が保証されている大学」についてということで,国として保証すべき質の範囲ですとか,高等教育の質保証として着目しなければならない観点,学修成果による質保証,社会との対話を通じた保証の在り方,実効的かつ効率的な質保証の仕組みといったような論点があろうかと考えております。
それから大学設置基準・設置認可審査の在り方につきましては,先ほど申し上げました設置基準の中身の問題に加えまして,二つ目の丸ですけれども,設置認可審査の役割,あるいは,その見るべき観点といったような論点があろうかということでございます。
認証評価制度につきましては,まず「有効に機能している内部質保証」はどういうことだろうかということ。また,内部質保証において学修成果を保証するために考えられる仕組みというものがあり得るのかどうか。また,受審の弾力化・効率化を含むインセンティブ,「不適合」となった場合の事後処置,分かりやすい認証評価といったような論点,それから次のページに行きまして,認証評価機関の質保証という点を挙げさせていただいております。
情報公開の在り方については,大学ポートレートの現状,役割,公表する情報の項目一覧化について。
それから定員管理の問題といたしましては,先ほど少し申し上げましたが,設置基準,設置認可審査,認証評価に加えまして,国立大学の運営費交付金,私学助成,それから設置認可の定員管理といったような別の行政の仕組みもございます。こういったものについて,どう考えるかということ。それから,従来出ております定員管理について,収定ベースの考え方などについてどう考えるかといったようなこと。
それから人材の育成の論点。さらに,オンライン教育についてどのように考えていくべきかと。
それから最後には,その他の論点として,学位の分野の名称についてどう考えるかと,こういった論点が,多岐にわたる論点があろうかと思います。
こういったものについて,今後どのような形で深めていっていただくか,部会長とも御相談しながらと思いますけれども,本日の時点で,更に加えるべき論点,あるいはどのように進めていったらよいかということの御意見を賜れればと考えております。
取りあえず以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。大変多岐にわたる論点があるということが確認できたのではないかと思います。先ほども御意見を頂きましたが,ここで,例えば,ある程度設置基準を緩やかにすべき要素があるということがあるにしても,これは日本の高等教育全体の質を上げていくためにそういう要素が必要だということであって,当たり前ですけれども,どんな大学でも取りあえず大学という名前があれば参入できてということの道を開こうとしているわけではもちろんないわけです。その辺は,前田委員がおっしゃったように,やはり我々は今,国際的な環境の中で学問を研究しているわけで,大学の質といった場合でも,先ほどの流動性を確保するためにも,それぞれの大学の質と全体としての日本の高等教育の質というものの水準をつくっていかなければならない。そのための設置基準等の考え方といいますか,質保証の考え方だというのが基本であろうと思います。
それで,浅田委員がおっしゃったように, 性善説,性悪説というのは,実際に審査,設置審査等に関わっているとどうしてもそういうことを考えざるを得ないのですけれども,基本的には,やはり大学はそれぞれの学問の自由を持っているわけですね。大学の自治ということがやはり基本にあって,それぞれがそれをきちんとやっていくのは大学の責任だと思います。
そういう意味では,性善説か性悪説かというと,多分我々は,大きく言えば性善説に立って考えていかざるを得ないだろうと思うのです。
もちろん,極端に言えば, 一切規制をかけずに,みんな大学というのをつくってやっていって,それで駄目な大学はそこから落ちていく,誰も選ばないというような,そういうイメージというのもあるかもしれませんが,それは実際にはほとんど不可能で,大学に入ってくる学生のことを考えると,そういうようなシステムはつくれないのは,これもまた当然なわけです。だから設置基準による事前の仕組みというものがあるわけで,そうして入った学生たちが,きちんと自分たちが学びたい学びが確保できるかということを保証していくためのシステムが,事後的といいますか,幾つかの認証評価も含めたシステムで考えられていく。それが質保証の基本的な仕組みだろうと思っています。
ただ,ここで質保証システムとして考えるべきことというのは,それが唯一の,つまり,このシステムができれば全てがうまくいくということを考える必要はなくて,それに対して,例えば,それぞれの大学が流動性を深めるような努力をするとかというようなことによって,実際には質が上がっていくということだろうと思います。
ここのシステムのところで全てがやれるようにするというふうには考えなくてもいいのではないかと個人的には考えています。余りシステムを堅く考えていくとかえって風通しが悪くなる,流動性が厳しくなっていって,個別の大学に対する負担が増えていってしまうということではないかと思います。これはやや感想的な,個人的な意見ですけれども。その中で,今出てきたような様々な論点を少しずつ整理していくということが必要だろうと思います。
もう一つ,この設置基準による審査,設置審議会の審査というのは,これは正に行政的な審査になっています。それに対して認証評価等は,むしろそういう意味では自律的な評価ということになって,やや構造が違うのですよね。それが一貫して動くようになるということが必要なのですけれども,ただ,文部科学省的にというか,国として関われる部分, 関わるべき部分と,そうではない部分というのは多分,考えておかなければならない。制度の本質の部分が違っているということがあって,それも含めてここでは考えなければならないということだろうと思います。ここは中央教育審議会であって役所そのものではないわけですので,そこは自由に考えることができるので,そういう展望で考えていく必要があると思います。そういう意味では自由な発言といいますか,自由に考えていきつつ,最後の落としどころを, どこかで考えていくということになるだろうと思います。
少し長くお話しいたしましたが,ほかに今の資料5のことも含めて御意見はございますか。今日の議論全体でも構いませんし,これまでの回を含めてということでも構いません。あるいは今後の議論の進め方等について何か一般的な御意見も含めて発言がある方は,御発言願います。
では資料6について,事務局から説明をお願いいたします。

【淵上高等教育企画課長】 資料6につきまして,その他諸会議の動向について少し現状を御報告いたします。この質保証部会で御議論いただくことに関連するような議論が,ほかの会議体でも行われておりますので,少し御報告をいたします。
資料6の1ページ目が,総理直属の教育再生実行会議での議論でございます。右肩にございますように,この資料自体は8月25日の資料でございますけれども,教育再生実行会議には今2つのワーキングが設けられております。
めくっていただきまして2ページ目が,教育再生実行会議の高等教育ワーキングでございます。この高等教育ワーキングには,本部会からは日比谷副部会長が御参画を頂いておりますけれども,去る9月14日に第1回のワーキングが開催されたところでございます。
このワーキングでの具体的な検討課題といたしましては,国際化あるいはデジタル化といった観点から,新たな高等教育の在り方を考えていくということになってございます。
検討事項例の1にございますように,ニューノーマルにおける大学の姿とはどういうものかといったようなこと,それから2番目がグローバルな目線での新たな高等教育の戦略,3点目は,それらを実現するために必要な方策ということで,ハイブリッド化など,ニューノーマルにおける大学教育を実現するための仕組みの構築や環境の整備,質保証の在り方ということで,大学設置基準の弾力化などについても御議論いただくということでございます。
こちらでの御議論につきましても,また随時,この質保証部会の方にも御報告をさせていただければと思います。
それから関連する通会議体としまして,5ページ目にございます国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議というものもございます。これは専ら国立大学の今後の経営の在り方についての議論を行っているところでございますけれども,この中間取りまとめ(案)が去る25日に議論をされております。まだ案でございまして,25日の議論を踏まえて,座長預かりになっているということでございますけれども,そこでの議論といたしましては,国立大学と国との基本的な関係をどうすべきという議論がベースにありますけれども,本部会に関係するテーマといたしましては,8ページ目にございます評価の在り方といたしまして,国立大学に関する評価が様々,重層的に走っております。この9ページの少し5行目ぐらいにありますけれども,法人評価以外に行われている評価の仕組みも含めて重複を排除して簡素化を講ずるといったような議論が行われているところでございます。
また,13ページ目御覧いただきますと,定員管理の柔軟化といった議論が行われております。
14ページからは,留学生の定員の在り方についてどう考えるかといったような論点,あるいはジョイント・ディグリーについての手続の簡素化といったようなことも議論されております。
そして最後,15ページ目でございますけれども,こちらでも新たな時代の「大学ニューノーマル」の早期実現ということで,17行目にございますが,国としては,大学設置基準の学修単位数や収容定員の考え方などについて検討すべきといったような議論が行われているということでございます。
こちらの議論も,また引き続き共有をさせていただきながら,御審議を深めていただければと考えているところでございます。
事務局からは以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。それでは,日比谷委員から発言を頂いて,その後,今,挙手がある大森委員と土屋委員の意見を伺いたいと思っております。あと林委員も手を挙げられました。以上でよろしいでしょうか。
 では日比谷委員,よろしくお願いします。

【日比谷委員】 今御説明のありました教育再生実行会議の高等教育ワーキング・グループに入っておりますので,9月の14日に行われました議論の中から,ごく簡単に概要と,私が重要な視点だと思ったことを御報告申し上げます。その日は,ニューノーマルにおける学びについての議論をいたしました。発表者からは,特に,このコロナ禍でのオンライン授業の中で,いろいろな経験をそれぞれの大学がしたわけですけれども,その報告ですとか,どちらの大学でもなさっていると思いますけれども,学生調査の結果の分析第1報というようなものを伺いました。
 それに続く意見交換で,こちらとも大変に関連が深いですが,設置基準の中で,いわゆる60単位上限の緩和ですとか,校地校舎問題等,緩和すべきであるというような意見が,これは相次いだと言ってよろしいかと思います。
 その後の議論で私が非常に重要だと思いましたことは,一言でオンライン授業と言っていますけれども,例えばオンデマンドのものと双方向のものというのは,かなり違いますので,同じように緩和をするといっても,どういうものだったら,どういうふうに単位を付与するというような,もっと詳しい議論が必要であるということ,あるいはオンライン教育の効果は,実は受け手の学生の属性によって,かなり違いがあるというような結果も見えてきておりますので,一口にオンライン教育というのではなくて,やはりセグメント化した分析等の結果も十分に,これから考えていくような必要があるということが出ました。
 2点目は,御承知のとおり,現在も通信教育制度というのがございますから,これから通信教育制度と,どういうふうにすり合わせていくかということ,非常に大きな論点になっていくかと思います。
 3点目として,もっと非常に大きい問題ですが,そもそも大学の機能とは何なのかと。春以来,前期はとにかく教育を止めるなということで,どこもオンライン授業を中心に走ってきましたけれども,大学は授業だけではないと。大学には集まる場としての機能ですとか,あるいは所属するところとしての大学という機能もあります。これは,この委員会というか,ワーキング・グループには産業界の方もいらしていますけれど,実は企業にとっても同じで,働きに行く場としての企業とオンラインで仕事するということはどう違うのかという議論も行われているそうなので,非常に大きくは,21世紀の大学の在り方を考えるという点では,本日の議論と通底する部分もあると思いますけれども,大学の機能は何なのかと。風通しとか,縦方向とか,いろいろ御意見が出ましたけど,そういう中で,どのように質を保証していくかということが重要だというような意見が出ました。
 以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。それでは,大森委員,お願いいたします。

【大森委員】 ありがとうございます。質が保証されている大学についてというところから多分,議論が行くときに,先ほど来の御議論を聞いていたら,やはり「グランドデザイン答申」が言っている学修者本位とは何なのかということを,もう一回確認をしてから進まないといけないのかなと感じました。教学マネジメントの考え方でいうと,教えたいから教えるのではなくて,きちんと力が身についたことを保証してあげますよというのが学修者本位であると。そうすると,余り幅広に取ってもいいよというのは,逆に教学マネジメントの考え方と,少しぶれてくる部分がある。学びたいことを学べるのが学修者本位のか,力をしっかりとつけてあげるのが本位なのかみたいな意見のすり合わせをしてからガイドラインを考えていくという必要があるのかなと,もう一回そこを御議論いただくのがいいかなと思いました。
 また,多様性ということを座長がおっしゃっていたので。今,国立大学も3つの地域に,国際に,それから特色のというのを挙げて,自分で選んで,されていますけれども,そういう機能分化をもう一回踏まえて,自分の大学はどの機能だということを踏まえると,それに合わせた質保証は何なのかというのが見えてくると思っていまして,その多様性という可能性も,質が保証されている大学といったときに考える必要があるかなと思ったという2点です。
 そのときになったら,また改めてお話しさせていただきます。ありがとうございます。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,土屋委員,お願いいたします。

【土屋委員】 先ほど大森委員がお話になっていたテーマ設定についてなんですが,このまま多様な問題をそれぞれ言い始めてしまうと,結局まとまらないままに,最後は意見の集約という形で終わってしまうのではないかという心配があります。その意味では,せっかく吉岡座長にこのような形で議論の進め方について案を出していただいたので,次回は,是非この中から一定のテーマを決めて,それぞれのお話をさせていただくことがとてもいいのではないのかなと思います。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,最後に林委員,お願いいたします。

【林委員】 何点かあるのですが,最低限の質については,杉谷委員が先ほどおっしゃいましたけれども,質が保証されている大学というのは,いろんな議論があり得ますから,設置基準との関係を考えると,何を大学として認めるかという,その基準を,今のアフター・コロナの状態においてどう考えるかということを,まず考えるべきだと思います。
 ただ,それも,別に最低限の話ではなくて,前回の第3回の会議で国立大学協会の副会長がおっしゃっていましたけれども,例えば海外の大学と単位互換するときに,そちらの大学とこちらの日本の大学で水準が同じになっていて単位互換できるのかとか,そういう問題が生じていると。それは結局,イギリスとかですとナショナル・インフラストラクチャーと言われますけれども,結局,学位のレベルをどう記述しているかとか,分野ごとに水準をどう考えるかと,そういう問題が,日本ではインフラができていない,あるいは国としてできないのであれば,特に日本の大学は多様なので,相互に種類の異なる大学間で,そういうものをつくるという取組をエンカレッジするとか,何かインフラについても,最低限の質を議論するときに一緒に議論しなければいけないと思います。
 それから,先ほど国立大学法人評価との関係の話がありました。その話もこの委員会でどこまで議論できるかというのはあるのですが,例えば最低限の質を質保証あるいは認証評価で見て,パフォーマンスの方は法人評価,国立大学だけですけれども,法人評価の方で見るとか,ある程度の切り分けを考えないと,もう受ける大学の方は,二つの評価で何か同じことを見られていて負担ばかり大きいと,そういう状態がずっと続いていますので,ある程度そこの重複も併せて検討しなければいけないと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます ちょうど時間ですので,本日の議論はここで終わりにしたいと思います。大変いろいろな御意見も頂きましたし,どういうふうに考えていくかということについて,少し整理する必要がありますけれども,次回までに少し考えて,できれば論点を,その都度,こういう議論をしていきましょうということを少し絞ってですね。その場合,もちろん事前に事務局から,次はこの辺に重点を置くということをお伝えして進めたいと思います。
 なかなか,実際に顔を合わせていないので,終わった後に少し議論するとかということもできないので,難しいのですけれども,その点も含めて次回以降,進めていきたいと思います。
 今日は非常にいろいろな議論が出ておりますけれども,大分お互いの考え方が分かってきたというところもありますので,次回の議論で更に深めていきたいと思っております。
 では,次以降の開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日も活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
 今日いろいろな御意見を頂きましたので,今後の議論する観点の例ですとか,テーマ設定につきまして,事務局で少しお時間を頂いて調整させていただきたいと思います。そのため,次回の開催日時,方法,場所等は,また追って御連絡をさせていただければと考えております。
 また,本日時間の都合上,御発言できなかった委員がおられましたら,その内容等につきまして事務局までメールでお寄せいただければと考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【吉岡部会長】 以上でございます。それでは,これで第4回質保証システム部会を終了いたします。
何か御意見,批判も含めて,ありましたら事務局に伝えていただければと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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