質保証システム部会(第2回) 議事録

1.日時

令和2年7月31日(金曜日)10時~12時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 我が国の高等教育の質保証システムの在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)永田恭介委員
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,土屋恵一郎,長谷川知子,濱中淳子,宮内孝久の各委員
(専門委員)大森昭生,小林浩,林隆之,前田早苗,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)牛尾高等教育企画課長,西田大学振興課長 他

5.議事録

【吉岡部会長】 おはようございます。
所定の時刻になりましたので,第2回質保証システム部会を開催したいと思います。御多忙の中を御出席いただき,誠にありがとうございます。
本日は,新型コロナウイルス感染症対策のためZoomによるウェブ会議として開催し,その様子をライブ配信にて公開しております。会議資料,音声などは大丈夫でしょうか,皆様,御確認ください。何か問題がありましたら手を挙げていただければと思いますが,よろしいでしょうか。
それでは,議事に入る前に事務局から連絡事項をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日は,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,繰り返しで恐縮ですけれども,御発言の際にはZoomの「手を挙げる」ボタンを押していただき,お名前をおっしゃっていただいてから御発言いただくようお願いいたします。また,発言時以外は,お手数ですけれども,マイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと有り難く存じます。不都合はありますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
また,会議資料につきましては,事前にメールで送らせていただいている次第のとおりでございます。なお,一部,昨日の夕方に委員からのレジュメの資料を追加で送らせていただいておりますので,併せて御確認をお願いいたします。
以上でございます。

【吉岡部会長】 それでは,議事に入りたいと思います。本日の議題ですけれども,我が国の高等教育の質保証システムについて,前回に引き続き意見交換を行いたいと思います。まず,本日の議論の前提として,前回の議論の概要について事務局から説明をお願いいたします。

【牛尾高等教育企画課長】 高等教育企画課長の牛尾でございます。私から,資料に基づいて御説明させていただきます。
資料1を御覧ください。こちらは,前回の本部会におけます先生方の主な御意見を論点ごとに整理してまとめたものでございます。1ページ目のところは検討の視点に関わる御意見,2ページ目からは質保証の仕組みということで,まず総論的なもの,3ページ目で設置基準関係の御意見,4ページ目で設置認可審査,内部質保証,5ページ目で認証評価関係,6ページで情報公表関係,7ページの下で3番として定員管理の関係,8ページから4としまして授業関係,最後のページでその他という形で整理させていただいておりますので,審議の御参考にしていただければと思います。
もう一つだけ,資料の御紹介をさせていただきたいと思います。参考資料5を御用意ください。前回の本部会冒頭に局長の伯井からも御紹介申し上げましたが,教育再生実行会議の議論が今月,7月20日からスタートしております。こちらはそのときに配付された資料でございます。テーマとしては,大きく「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」ということで議論が始まっております。検討課題のところにございますように,高等教育段階についても議論の対象となっているところでございます。それから,秋季入学等についてもこの会議で議論されるということになっております。
次のページ,2ページ目を御覧いただきますと検討体制が出ておりまして,初等中等教育,高等教育それぞれにワーキング・グループがつくられて議論が行われる予定となっております。検討事項で見ていただきますと,本部会における議論と重なるような項目も例として挙がっているところでございます。教育再生実行会議は,基本的には大きな方向性の議論がなされると考えておりますけれども,本部会のテーマとも関わる内容も議論されますので,適宜それぞれの議論の状況を御紹介しながら,それぞれの議論が円滑に,また連動して進められるように事務局としても進行を注視していきたいと思っておりますので,御報告だけさせていただきます。
以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
続きまして,今回事前に意見提出していただいた委員がいらっしゃいます。資料2として整理してございますので,資料2を御用意ください。本日,古沢委員は御欠席ですので,古沢委員以外の方に,この表紙に書かれております順番で御意見を伺いたいと思います。また,谷本委員から追加で御意見を提出いただきましたので,最後にお願いいたします。
本日はほぼ全員出席ということでたくさんの方の発言があると思いますので,まずこの点につきましては1人5分程度で御発言いただければと思います。もちろん短くても構いません。
では,まず日比谷委員からお願いいたします。

【日比谷委員】 おはようございます。日比谷潤子です。意見の骨子を書きましたので,少し補足しながら5分程度でお話ししたいと思います。
この質保証システム部会は18名ですか,私も含めて約4分の1の委員が設置審にもこれまで関わってきた方々かと思います。逆に申しますと,4分の3の方々は設置審議の御経験はそれほどないという方が多いのかなと認識しております。前回も,先ほどの資料1にも非常に意識の低い大学であるとか,劣悪大学という表現がそのまま出ておりますが,それを問題視する御発言がございました。この第1回の部会が終わりましてから本日までの間に,中央教育審議会の大学分科会がございまして,これまた一部の委員は被っているところですけれども,そこで,本部会では委員でいらっしゃいますけれども経団連の長谷川常務理事から,採用と大学の教育の未来に関する産学協議会報告書に基づいて御説明いただいたところです。この資料は,大学分科会のところからどなたでも御覧になれますので,もしまだ御覧になられていない方は是非見ていただきたいと思いますけれども,この中に大学教育改革に関する政府への要望事項というのが合計4点挙がっています。
その一つは,本部会でも議論することになっている大学設置基準等の見直しです。詳しくは,この資料のスライド9を御覧ください。そこには一定の改善はあるものの,依然,大学設置認可やカリキュラム変更等のプロセスが煩雑,柔軟性に欠けるという問題意識が示されており,その上で,大学設置認可プロセスの迅速化,カリキュラム変更の認可プロセスの簡略化が提案されています。
これまた本部会の一部の先生方が私も含めこの協議会に参加していて,議論の経緯にも,私もずっと参加しておりました。新しい学問分野の勉強が効果的にできるような新しい大学,新しい学部,新しい学科,新しいプログラムをつくることは非常に重要で,そこに余り時間がかかったり,また硬直化したりするのがいいと私は言っているわけではないんですけれども,しかしながら実効性のある質保証のシステムを構築するということになると,余りにも手続を簡略化することには,私は大きな危機感を持っています。前回もそういう御発言がほかの委員からございましたが,前回の部会では私は言わなかったので,今日は声を大にして申し上げたいと思います。前回,部会長が,これは質保証システム部会であると,全体としてのシステムを構築することが目的ですので,可能性があるのは設置認可,つまり事前チェックを非常に厳しくして参入を限定的にする,あるいはそこは比較的緩やかにして,認証評価ということになるかと思いますが,それは事後チェックでよくよく厳格に見るということかと思うんですけれども,どのようにバランスを取っていくかということが大変に重要だと思いますので,是非この部会で今後,議論していきたい点だと思います。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。御質問等は,後でまとめて御意見のところで伺うということにしたいと思います。
続きまして,浅田委員,お願いいたします。

【浅田委員】 おはようございます。浅田でございます。私からは,資料に基づいて3点意見を申し上げます。
まず,私の立ち位置といいますか,考え方ですけれど,今,日比谷委員がおっしゃった立場とほぼ同じです。私も設置審査に関わった経験から,規制がある程度緩和されてきて,それはそれで効果はあったのですけれど,やはりできた後の様々なチェックというものがまだ不十分で,機能していないという思いを持っています。
まず1点目ですけれど,本部会の大きな目的であります大学設置基準の見直しについてですが,長年にわたって使われてきた基準を見直すというのはそれなりの大きな理念が必要だと思います。現状を深く理解して未来を見据えるという,その基本的な考え方が整理される必要があるのですが,それは,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。)を受けて,日比谷委員を中心にまとめられた教学マネジメント指針が正に教育機関としての大学が備えるべき機能,考え方,要素が整理されております。この指針の理念と精神を具現化する観点から,設置基準を見直し再構築することが望ましいと考えます。
2点目ですが,PDCAについてです。内部質保証というとPDCAという言葉が出てくるのですけれど,個人的には製造業の品質管理の概念であるPDCAが教育の現場にそのまま適用されるとは思っていないのですが,これに替わる概念が出ておりませんので使われているのだろうと思います。このPDCAの多様性と柔軟性を考えた運用が必要だと考えています。
教学マネジメント指針におきましても,PDCAの階層性が示されております。各階層のサイクルの周期の違いや,あるいはサイクルの開始時期の違い,その非同期性というものを考慮する必要があると考えています。
資料の左下に表がございますが,一番下から教員レベル,学部・学科レベル,大学レベル,それから大学法人レベルと4段階で書いております。それぞれの右のところに周期を書いていますが,教員レベルは1年単位でシラバスをつくって授業を実施して,その結果を見ながらまた改善するというサイクルがあります。学位プログラムレベルは4年間走ってその成果が出ますので4年という単位がありますし,大学レベルは認証評価という7年の単位がありますし,国公立大学は法人評価という6年の単位があって,これらはばらばらです。しかもそのスタートはそれぞれ違うわけですから,それらを全体としてどう管理運営していくかという問題があり,PDCAと一言で言っても非常に複雑な構造を持っています。
ところで,チェックの段階ですけれど,問題解決の分析手法のPPDACというのが最近言われています。これはデータを集めて分析して活用するという教学IRと親和性が高いので,こういう概念もうまく導入していくことが必要だろうと思っています。
三つ目は少し細かい話ですけれど,余り世間で知られていないと思いますので問題提起します。学位の分野という言葉が法律で定められています。学位の種類が余りにも増え過ぎたというのがよく言われているのですけど,法令上は,学位の種類と,学位の分野という定義がございまして,例えば,学士,修士,博士という3種類の学位に関しては19種類の学位の分野が定められております。この学位の分野は非常に重要で,認可申請や届出をするときの条件として必ずチェックするべきものなのですが,実は余り世間で知られていない,大学さえも自ら出している学位の分野について十分認識していない,あるいは忘れているということがしばしばございます。学位に付記される専門分野が非常に増え過ぎたのですけれど,全て学位の分野がひもづけられていますので,その観点で整理することである程度,増えすぎた学位の専門分野の整理ができます。この学位の分野が今後も使われるならば,それをきちんと大学自身も社会も認知できるような形で活用すべきだろうと思います。
私からは以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
続きまして,飯吉委員,お願いいたします。

【飯吉委員】 おはようございます。飯吉です。
資料は2点です。当方が執筆したものから抜粋させていただいています。前回は,オンライン教育を活用することで高等教育をどのように拡張し,また質保証に資するようにするかという話をざっくりさせていただきましたが,今回は少し具体的に意見を述べさせていただきたいと思います。強調したいところは下線を引いてありますので,そこを中心にお話しさせていただきます。
まず,御存じのように現在コロナでオンライン授業が多くの大学で進められています。これはHard-Pullということで,強制的な外部的な力によってそれが引き出されていることになりますが,これまで過去20年,30年に渡るオンライン教育を日本について考えると,やはりSupply-Push中心に進んできており,海外で進んでいるということで,我が国でもそういうものを整備しようとしてきたという感があります。ラーニングマネジメントシステム(LMS)とかオンライン授業,MOOCの話も前回ありましたが,Supply-Pushという形ではなかなか拡充していくことが難しいため,やはり考えなければいけないのは,どのようなDemandでどうやってPullしていくかということになります。これは言うは易しかもしれませんが,各大学が自発的・積極的に自分の大学の教育を様々な観点や目的を踏まえていかに高めるか,拡張するかを考え動いていく中で,常にオンラインやICTの活用を基本的な要素として検討することが大事かと思います。また,それを政策や各大学のリーダーシップが,どのように刺激・誘導・支援するかも喫緊の課題だと思われます。
さらに, オンラインやICTを導入する際に,現在のコロナ禍下では,「授業」というレベルが大きく注目されていますが,当然学位プログラムレベルや,部局や学位プログラムを横断していくような,また縦にもはしごを架けていったり,さらにそれらの隙間を埋めていくような活用方法も考えられると思います。対面,ブレンデッド型,オンライン,さらに最近はハイブリッド型という同じ授業を教室とオンラインで同時に受講できるような授業方法も進められており,特にコロナ禍下においては,これも非常に重要です。いずれにしても,学習の多様化,個別化,効率化,それから費用対効果の向上を図ることで,より多くの学生にどれだけ充実した大学教育を提供できるか,ということがニューノーマルを考えていく上で肝要です。
また, 今まで18歳から20歳前半の学生を主な対象として日本の大学はやってきていますが,正課外,高大接続,リカレント等でその辺りをどうやって拡張していくか,大学教育を受ける者をどのように増加させていくかが重要な課題です。あと,前回もバーチャルな交換留学の話を少しさせていただいたと思いますが,現在のコロナ禍下では代替ということになりますが,いずれ通常の渡航を伴う交換留学がまた再開された後でも,このようなバーチャルな交換留学が「呼び水」や跳躍のための「踏み込み板」的な役割も担えるのではないか,という提案をさせていただいています。
もう一つの文献からの引用は,主にMicro Credentialsと呼ばれているものに関してであります。先ほど浅田委員から「学位の種類と分野」というお話しがありましたが, 大学における通常の教育プログラム・学位プログラムは,即時的に変更・アップデートしていくことが非常に難しいものであるということは,皆さんご承知のことかと思います。これに対して,ここに書いてありますように,MOOCなどを活用したMicro Masters,最近はMicro Bachelorsというのも出てきていますが,Nanodegree等,本来大学が学士,修士,博士のような形で出している既存の学位とは違った形の学習成果認証のシステム,これを学位と呼んでいいかどうかは議論が分かれるところですが,例えば「自動運転技術者育成のためのNanodegree」というものがあり,非常に人気があります。こういうものは,なかなか大学としては即応して提供できないため,特に既に社会に出て働いておられる方にも人気がありますし,また例えば,既存の工学部で勉強されている学生たちも正課プログラムの授業科目と並行してこういうものを履修しておくと,就職活動時などに非常に高く評価されるという傾向が,特に海外ではあります。
このようなものを自分は勝手に「仮想学位」と呼んでいますが,これが学位かどうかということはさておき,既存の学位とこのような仮想学位が,今後どのようにバランスを取りながら高等教育のエコシステムを構築していくかを考えていく必要があると思います。
また本部会で,教育プログラムの柔軟性や拡張性を高めるという方向性で議論・検討を進めていくことは非常に大事なことだと思いますが,その場合,やはり質保証が非常に崩れやすくなってくるというか,難しくなってくるという側面がありますので,「教育プログラムの柔軟性・拡張性を高めつつ,どのように質保証を担保するか」が非常に重要なテーマになってくると考えます。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
続きまして,瀧澤委員,お願いします。

【瀧澤委員】 瀧澤でございます。私は前回から初めてこの大学の質保証に関する議論に加わらせていただきましたので,ほかの先生方に比べると一般的な視点ということで,学ばせていただきながら,今,考えているところをお話しさせていただきたいと思います。
全部で4点あるんですけども,最初の1点目は今の飯吉委員の基礎版というような,すごくプリミティブな話ですけれども,コロナ禍で大学がオンライン化を強いられて,私自身もこの春学期に経験したんですけれども,ある程度は機能するな,というところもあった一方で,一度も学生さんたちとじかに会うことができない中で,十分な教育効果が上げられたんだろうかというところもあります。私自身が大学にいた頃のことを考えてみますと,研究室レベルで本当に同じ釜の飯を食べるという日常的な生活の中で得られた人間的な成長というか,そういったところはやっぱりオンラインでは難しいのではないかなというのを非常に感じまして,そういったところを今後どういう形にしていくのか,海外では既にオンラインを積極的に取り入れたり,MOOCというようなこともありますので,先進的な事例をよく知りながら追究していただければと思います。
2番目なんですけれども,ふだん私は割とハイレベルの大学で修士の理系の学生さんと関わることが多いんですけれども,そういったSTEM分野,専門分野の教育は非常にしっかりしているなというのを常々感じている一方で,視野を広げるというか,理系の知識とか技能が今社会の中にある課題をどういうように解決していくのかといったような意欲の部分も含めてなんですけれども,そういったところの動機づけの教育が少し足りないんではないかなというのは常々感じています。
それから,個人レベルで競争するというような種類の課題は非常によくやるんですけれども,グループをつくらせて,その中で一つの課題に取り組んでごらん,というようなことやらせてみますと,どうもリーダーシップを執れる人というのが限られてくるということで,リーダーシップを訓練するような機会ですとか,自分の就職に当たってどういうように生きたらいいのかというような,もっと大きな,従来は高校までの教育でやられていたことなのかもしれないんですけども,知識がある割にはそういった人生の生き方みたいなことについて余り深く考えてこなかったような学生さんも見受けられるものですから,そういったところを強化したような,内容のことになってしまうので,この質保証システム部会の議論にどこまで合うかとは思いますけれども,例えば海外では文系と理系の専門分野二つをもって二つ,ダブルディグリーということで卒業までに課す国もあると言いますので,そういった専門教育,ただ知識というだけではなく,人生の中でどう役立てていくのかというのを分かりやすくあらかじめ学生に示せるような,シラバスの表示なのか,カリキュラムの構成なのか分かりませんけども,そういったこともすごく重要ではないかなと思います。
それから,今日もこのZoom会議をリアルタイムで公開されているというので,すごくいいことだと思うんですけれど,こういった議論が,結果だけが決まって,ある日突然発布されるというようなところではなくて,なるべく現場にいる教員の先生方ですとか,学生さんの声を幅広く取り入れて合意形成していっていただきたいなと,これは一般的な話ですけども,そのように思います。
それから,質の低い大学をどうするかというのはもちろんあるんですけれども,質の高い取組をしている,その取組の個々の事象を横展開していただけるように,自発的になるべく活用していただくような情報交流の場というのを是非考えていただきたいなと,そのように考えております。
以上,雑駁(ざっぱく)ですけれども,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,続いて土屋委員,お願いいたします。

【土屋委員】 私のレジュメはかなり雑駁(ざっぱく)なことを最初に書いてあるんですけども,先ほどの飯吉委員の御発言に,前回と同様に大変私も力づけられました。
私どもはずっと,各大学もそうだと思いますが,メディア授業やオンライン授業を何とか推進したいと思ってきたんですが,残念ながらこれまではなかなか教員全体の総意がそこへいかなかったので,挫折を経験してきました。今度のコロナを機会にしてオンライン授業へと進むことができている状況です。だから,この状況を何とか,先ほどの飯吉委員の話ではDemand-Pullと,自らの意思において行うような形へと持っていきたいと思っております。
ただ,いろいろ気になるのは,例えば7月27日に文部科学省から各大学にお知らせというものが参りまして,それは大学設置基準第25条第1項を挙げて,それが主に教室等において対面で授業を行うことを想定している,そのことに鑑みて,なるべく面接授業の実施を検討してほしいと,つまりオンライン授業だけではなくて面接授業の実施を検討してほしいという要望が来ております。私はそれ自体をどうこうというわけではありませんけれども,大学設置基準第25条第1項がそもそも現状に,あるいは今後のコロナ以後においても果たして適切なものであるのかということについても,この場で是非御議論いただきたいし,あるいは様々な場所で議論した上で,この大学設置基準第25条第1項,教室等において対面で授業を行うことを想定しているというこの前提条件を,そろそろ見直していく時に来ているのではないかと思っております。
つまり,現在のオンライン授業あるいは遠隔授業というものが,面接あるいは対面授業の脇にあるもの,あるいは第2次的なものであるという考え方で恐らく大学設置基準はつくられていると思いますけれども,むしろそれが両方同じ比重を持った,あるいはむしろオンライン授業と連携した大学の授業のあり方をスタンダードにする必要があるのではないでしょうか。教育環境というものを改善していくために,両方とも対等に扱っていくことが,ハイブリッドと言ってもいいですが,大学設置基準上も必要なのではないのかと思っております。
その意味では,私が大変心配しているのは,面接授業の重要性,あるいは対面授業の重要性ということを強調する余り,オンライン授業がやっと軌道に乗りつつあるときに,それをもう一度元に戻そうという動きが,それは反動とは申しませんけれども,そういう元に戻そうという動きが出てきていて,あるいはそれを何か非常に理論化してしまうということになるのではないのかということを大変心配しているところでございます。せっかくJMOOCであるとか,あるいは様々な機会でオンライン授業を行っている大学もありますし,今回のコロナの下でのオンライン授業をやることによって,とりわけ若手の教員たちがかなり意欲的な実験も行っていますので,そういう意欲的な実験をグッドプラクティスとして,そういうものを例に挙げながら,何とかこのやっと動き出した日本における教育のIT化といいますか,あるいは教育のデジタル化といいますか,教育の先端化といいますか,その動きが止まらないようにしていただきたい。あるいは,それを同時に設置基準という上でも考え直していただいて,大学設置基準のこの面での改善なり,改革なりというものが必要なのではないのかと思います。
特に今,我々が直面している問題の一つに,留学生の教育があります。留学生は今,日本に来ることはできないんですけれども,このオンライン授業のおかげで留学生が日本に来ているのと同じような条件の下で勉学を進めていくことができる。その意味では,先ほど飯吉委員がおっしゃっておりましたが,将来においては言わば日本に来なくても,あるいは日本に来ることが大変な負担が実はかかっていて,そのために来られないという留学生も大変多いものですから,来なくても日本の大学と連携しながら同じように授業を受けることができるような環境へと転換していく必要があると思いますし,恐らくそのようになっていくのではないのかと思います。
また,前回申し上げましたようにオンライン授業のことに私がとてもこだわるのは,オンライン授業が大学の質保証の基本的な根幹であると思うからです。教学マネジメント特別委員会で議論されていたことも,私は議事録等も拝見しましたが,やはり多くの大学はもう既に教学マネジメント指針で言われていることはやってきている,あるいはかなり労力をかけてやってきております。むしろこれからの問題は,オンライン授業において明らかになるような質保証の観点というものを,実際の対面授業でもどう生かしていくのかということが問題になると思います。その意味で,オンライン授業のことを私は大変強調したいのは,日本の大学の質保証の基本になり得るものなので,このことを徹底して議論した上で大学の将来につなげていく必要があると思うからです。恐らく大学の未来はオンライン授業の中にあるのだと思っておりますので,その辺を是非この機会に議論していただいて,設置基準の上での改善といいますか,あるいはオンライン授業がより進んでいくことができるような設置基準の改善というものに是非進んでいっていただきたい,そのことを願っております。
以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
本日,古沢委員が御欠席ですので,レジュメはお読みいただければと思います。
続きまして,宮内委員,お願いいたします。

【宮内委員】 宮内でございます。この部会がシステムをつくる部会だということは十分に承知しておりますが,私も質そのものの話をさせていただきたいと思っております。
今回のCOVID-19は日本にとって黒船と,悲惨な敗戦と同じように,パラダイムのシフトと捉えております。飯吉委員,土屋委員と同意見ですが,オンライン化は絶対止めてはいけないと思います。この参考資料2に主な検討の視点と書いてある点は非常に合点がいきます。日本のデジタル化,これは20年遅れていると言われますが,COVID-19のおかげでこの数か月間で半分ぐらい追いついたかもしれません。デジタル化を阻んできた大きい壁というのは,インフラ未整備もありますが,やはり意識の問題だったと思います。在宅勤務もオンライン授業も,やってみたら結構できるというように日本社会が実感しているのが現在だと思っております。日本の低い生産性,労働市場の硬直性,低学力,これが成長を妨げていると思います。このパラダイムシフト,これが自己変革力に欠けているこの社会を進化させる絶好の機会と考えています。
オンラインの利点というのは,時間や空間を超えていつでも,どこでも,誰の授業でも,誰と一緒でも,何度でも,またどの科目でも,ダブルディグリーも好きなように学習できるようにすることと思います。画一教育からの脱却であり,それこそ日本の多様化のチャンスであると考えます。また,マスターやドクターコースへの進学の向上にもつながると考えております。日本の学生が日本中の大学で,いや,世界中の大学で単位を好きなように取る時代に応じた設置基準に変えなければいけないと考えております。
どこの大学を卒業したかとか,どの大学に入ったとかということはこれから重要じゃなくなると思います。何を学習するのか,何を学んだのかが重要になってきて,学生たちは常に自分は一体何が好きなのか,何をやりたいのか,何で生きているのかということを常に考える訓練です。WHYを考える文章表現力,これをもっともっと強化するというために,私は初年次教育というのは非常に重要になると考えております。
そこで,基礎教育とか一般教養教育という言葉が陳腐化しているので,Critical Thinking Courseといったものであります。ここで前回も必修化してほしいと言っておりますが,大学には学習指導要領がありませんので,制度上は「モデルコアカリキュラム」というようなものをイメージしております。これも対面とオンラインの組合せを行いますと,実現が非常に容易だと思っております。偏った受験勉強をして,リメディアル教育を必要としている日本の大半の学生には「読み書きそろばん」の繰り返し学習をしなくちゃいけないと思うし,このオンライン化によってそれが実現可能だと考えております。ユニバーサル化した大学に共通する最低限の質保証として議論する際の落とし穴があると思います。それは喫緊の課題に振り回され過ぎることです。ITリテラシーが劣っている,英語力が劣っているということで技能開発が重要だということは,私自身,産業界の人間として痛感しておりますけれども,そういった技術論に集約し過ぎてしまうと,教育そのものが薄っぺらな方向に向かうのかなということが心配です。この質保証の話なんですけども,しつこく申し上げている次第であります。
初等中等教育から高等教育,生涯教育まで一貫して何を学ぶのか,何のために学ぶのか,そもそも教育の目的は何なのかということを常に議論するようなフレームワークづくりをしなければいけない。これが受験のための勉強ではなくて,面白い学習を奨励する運動につながると思っております。面白いと思って学習する人材層が厚くなればなるほど,厳しい競争社会で勝ち残るたくましい社会づくりになるのではないかなと考えております。長い目で人材教育をするという姿勢を,こういった質保証システム部会でも常に枕言葉のように言っていくことが必要ではないかなと思っております。
それから,質保証なんですが,誰のためにするか,これは大学のためであり,学生,社会,教員のためなんですけれども,いつでもどこでも,というオンライン化がおのずと大学の授業の公開性を促進すると思います。それで認証評価等についてですけど,より公開性,それと社会的認知度の向上が求められていると思います。認証評価が,私は変だなと思っているところもあります。設置基準に合致しているかどうか,事後チェックということは大事なんですが,常に変化する国際的視点を組み入れることが不可欠と考えております。
私の大学では海外にいる学者たちと一緒に連携して,オンラインと対面のハイブリッドで博士課程をつくることを検討しておりました。でも,日本に設置すると成果の認証をどうするかというのが課題になるわけです。実業の世界では,会計監査というのは二,三十年前には財務諸表や決算書類が正しいか,正しくないか,これを見極めるのが仕事でした。今はコンプライアンス問題に加えて,それぞれの事業の将来性を監査人が評価する,それからこのプラントは価値がないと言って減損処理を助言する,つまり監査がマーケットに対して保障するということが今,期待されているわけです。監査に求められる基準というのは日々厳しくなっております。また,海外の子会社との連結決算を我々はしなきゃいけないということで,国際性というのはおのずから要求されてくるわけです。
日本の監査法人,4大監査法人とありますけれども,それぞれが提携して,デロイト-トーマスですとか,KPMG-あずさ,プライスウォーターハウス-あらた,アーンスト・ヤング-新日本というように,国際的なコンソーシアムの一員となっています。さらに,国によっては企業と監査法人の癒着を防ぐために強制ローテーションの考え方もできております。学校の認証評価も,評価者に外国人枠というのを入れたらいいなと思います。会計監査の世界では国際的なアライアンスをつくることで,国際的視点で物を見るということが恒常化しています。学校の,大学の認証評価にも監査法人の企業監査の手法というのが参考になるのではないかなと考えております。
以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
続きまして,大森委員,お願いいたします。

【大森委員】 おはようございます。共愛学園の大森です。どうぞよろしくお願いします。
資料を用意させていただきましたけれども,本当にこの議論は,改めて日本における大学とは何なのかとか,大学の役割は何なのかという議論なんだなと,ちょっと感じてきているところです。そのイメージの幅が結構大きくて,前回のまとめを拝見しても,我々の中でもそこの幅がなかなりあるなというようなことは感じていて,そのイメージが,実は社会の皆さんが大学に対して持っているイメージ,ゆえに,社会からいろいろな要望がお聞きできるわけですけれども,その幅にもなっているのかなとちょっと感じています。
前回お話ししたように,柔軟性というところと最低限の質保証の分岐点というのがどの辺なのかということを探らなきゃいけないのかなと思っていて,今日はその意味で少し細かいことを申し上げるんですけれども,このことは議論の余地があるのかなとか,もう解決済みなのかなとか,私も新参者なので少し細かなことを申しますけれども,議論すべき内容じゃないとか,議論する可能性があるものなのかというようなことを少しお尋ねするような形で発言させていただきます。資料に幾つかまとめてあります。
1番のところですけれども,グランドデザイン答申では,多様性と柔軟性の確保ということがしっかりとかなり強くうたわれていると思います。質保証は現在一律でなされていますが,現行のシステムが,グランドデザイン答申が言う柔軟性や多様性と合致しているのかということを検証していくという作業がこの部会なのかなとも,私なりには理解しているところです。
先ほど日比谷委員が経団連との会議のお話をされて,私もその一番端っこの方に加えてもらっていたんですけれども,少し日比谷委員とは違う観点になっちゃうんですけれども,我々,大学を何のためにやっているかと,教学マネジメントのときも何回も言ったんですけど,やっぱり学生の幸せな将来のためにやっている,もうそれ以上でもそれ以下でもないと思っていて,学生たちというのは卒業した後に社会に受け入れてもらっていく,その中で幸せをつかんでいくという必要があると思っていて,そうすると,一定程度社会が求めているものとか,社会に受け止めてもらえる力みたいなものを身につけていってもらいたいという思いで今教育しているわけです。そうすると,我々大学はやっぱり社会の動きということをしっかりと捉えて,そこにある程度伴走しなきゃいけないし,あるいは逆に社会の動きを生み出していくというのも大学の役目なのかなとも思っています。そういう意味では,社会の変化のスピードと大学の変化のスピードというところをもう少し見ていく必要があるかなと感じているところです。もちろん,大学が多様だからといって複数の基準を幾つも作っていくというのは絶対得策ではないので,基準の中にどのぐらいの幅を持たせられるのかということなのかなと思っています。
細かいことをその下に書いてありますけれども,全部は時間がないので申し上げませんが,教員の在り方についてはそこに三つ書いたところで,クロスアポイントなんかがもっと明確に打ち出されてもいいのかなと思っています。それから,日比谷委員が日頃おっしゃっているST比,これはもう本当に重要なんですけど,加えてクラス規模の割合みたいなことというのも観点としてあるのかなと思いました。
あと,設置審の先生方には本当に御苦労いただいているんですけれども,研究業績主義ということから脱却できるのかどうか,これは大学としてどうなのかという御議論はあると思うんですが,社会人教員というようなことも,実務家教員ですか,言われているし,研究業績が一つの設置上の大きなポイントになってくるがゆえに,大学の中における教員評価も研究至上主義になっている部分というのはどうしてもあるような気がしています。研究をおろそかにするつもりは全くないんですけれども,教育であるとか地域との関わりであるとか,そういったところが今,非常に重要になってきている中で,研究業績主義というところがどうなのかなと感じています。
それから,学生の在り方ですけれども,社会人学生や留学生,これは大学によって感覚が違うと思うんですが,多様な学生を受け入れていこうといったときに,地方なんかだと4年間フルで入学したい社会人というのはそんなにいません。でも,短期で集中して学びたいというリカレントニーズは高いわけです。そういった学生をたくさん受け入れてあげたいと思うんですけれども,それは正直言うと学生数にカウントされませんので,そういう学生さんが幾らいても,18歳がいないと定員割れ大学と地方の大学は言われるわけです。だからそこら辺が,ちゃんと柔軟性,多様性を確保するためには考えていく必要があるかなと思っています。
それからさっきの定員の充足,おかげさまでうちは教育改革で定員が埋まってきたと思って,今の倍率がかなりついていると思ってはいるんですけれども,一方でいろいろな地方の大学さんへ行かせていただくと,すごいいい教育をしているけれども定員が必ずしも埋まっていないというところがやっぱりあるんです。教育の質と定員というものは本当に相関があるのかということは,誰もまだちゃんと見ていないんじゃないかなと思っていて,その辺のことは認証評価の中で,定員充足していないとすぐ何かというところがあるような気がしています。
それからカリキュラム。自ら開設原則に関しては,今回,連携推進法人等の制度でかなり緩和されていくと思うんですが,そこでできるのであれば,よりそれを援用していく可能性があるのかどうかというあたりです。あと,我々のような素人は1単位当たり45時間ということの根拠みたいものを学生に十分に説明できてないところがあって,それが設置基準にあるからだよ,みたいな話になっちゃっていて,この辺は議論の余地があるのか,ないのか,これは専門の先生方にお聞きしたいところです。
完成年度については,そこに書きました。
あと,(5)で国際通用性ということもこの議論の中でたくさん出てくると思います。これも非常に重要なんですが,全ての大学がそうなのかどうか,私の感じでいくと,地方創生を担っている立場からすると,より多くの大学が,勝手につくった言葉ですけど,地域通用性を高めていくという必要があると思っています。その辺のことがほとんど出てこないというのが,ちょっとじくじたる思いはあるところであります。
2番は,これは質保証を支えるための環境整備みたいなことなので,ちょっと周辺的なことです。教学マネジメントのガイドラインづくりみたい,モデルづくりみたいなものというのがあるといいなとか,監査の機能をしっかりやっていくための支援があるといいなと。
最後,三つ目は,やっぱり我々は,さっき土屋委員もおっしゃっていただきましたけど,質保証に向けてかなり大学として頑張ってきていると思っています。もう日々そのことをやっているという感覚すらあるんですけど,社会の皆さんからは「大学駄目じゃん」みたいに言われる。それは言葉が違うからではないかという感じが実はあって,例えば本学が教学マネジメントシステムをつくりながら,ルーブリックを通して学習成果を可視化しながら学生の成長を・・・,と地域の中でお話をしても,余りぴんときてもらえないんです。そのことをちゃんと伝える言葉を持つとか,それから,そうでないならばちゃんと国として,大学が今こういうことやっているというのを各大学任せにしないで,もっとアピールを社会の皆さんにしていくということを通して大学の取組を支援していく,社会に理解していただく取組というのも並行してやっていくという必要があると感じています。
以上です。ありがとうございました。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,最後に谷本委員,お願いいたします。

【谷本委員】 私,谷本と申します。短期大学教育に携わる立場から発言させていただきたいと思います。5点あります。資料は,追加資料として昨日,送らせていただいたものになります。
まず,一つ目なのですけれども,ICTを活用した授業の実施に係る質保証について。先ほど飯吉委員,瀧澤委員,土屋委員,いろいろな先生方から御発言がありましたとおり,コロナウイルスによる感染予防・対策のため,多くの大学・短期大学でオンライン授業が展開されております。今こうやって環境も設備も整えて,オンライン化を実践している大学も多くなってございますので,このオンライン授業を評価するフレームワークというんでしょうか,枠組みを今後,構築していくことが必要だと考えております。
二つ目はリカレント教育の質保証について。社会人がフルタイムの仕事を持ちながら大学・短期大学に通うことは,時間的にも大変制限が多いものとなっております。そこで,アメリカのコミュニティ・カレッジのように,例えば単位制と修業年限に少し柔軟性を持たせるという形,あるいは学位取得に当たっては,既修得単位を時間的に3年,4年,5年の期間を認めるという形の,ある種の時間的有効性を担保する,こういった対応が必要じゃないかと考えております。
三つ目ですが,先ほど大森委員からもお話がございました地域社会からの視点に立った質保証システムについて。進学,就職のタイミングで若い人たちが都市部に流れていくということが,地域社会にとっては大きな課題となっております。地域の大学・短期大学が魅力的な教育プログラムを提供するということはとても大切ですが,それに加えて自治体や地域の産業,NPOなどと信頼関係の下,連携・協力を行って実践的な学びを提供していくこと,地域で活躍できる人材を養成していくことが大学・短期大学の使命の一つであると考えております。そのような観点から,各大学・短期大学の質保証,あるいは地域に対しての情報公開といったものについて新しい方向性を見いだす必要があるのではないかと考えております。
四つ目は留学生に対する質保証について。外国人留学生は増加傾向にありまして,2019年度は31万人ということです。これは,本日配布の参考資料4の26ページに統計が掲載されております。そのうち高等教育に在籍する学生の数は23万人,留学生全体の約3分の2で,残りの3分の1が日本語学校にいるということです。出身国別に見ていきますと中国,ベトナム,ネパールの順に多くて,この3か国出身者だけで20万人を超えております。私たちが国際化,グローバル化と言うときに欧米の方を向いているんですけれども,国内で明らかに国際化が進展しておりまして,このような留学生に対する教育の質というのはどのように担保されているのか,また,していくべきなのかという議論も必要かと考えております。
五つ目はアーティキュレーションに係る質保証について。今後,リカレント教育が広がると,短期高等教育機関を卒業して一定の社会経験を経た人が,より高度な専門性を目指して4年制大学に編入学する,このようなケースが想定されると思います。20年ぐらい前,短期大学に在籍した学生の数は大変多ございましたが,これらの学生さんたち,卒業された方々が再び大学に戻ってくる場合,アーティキュレーションが必要になってくるかと思います。また,大学間における流動化が進むと,留学生が日本の大学に編入学する,日本人の学生が編入学,転入学するといったことに対してアーティキュレーションに係る質保証というのが大学横断的に必要になってくるのではないかと考えております。
以上,雑駁(ざっぱく)な意見でございましたけれども,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。
今,ちょうど時間のほぼ半分が過ぎたところでございます。この後の時間は基本的に自由討論といいますか,議論のために取ってございます。皆様,いろいろおっしゃりたいことがあると思うので,いろいろなところに話が広がっていくのは,それ自体は現段階では構わないと思うんですが,取りあえずは,まず,今,御発表いただいた7人の委員の方々に対する質問があれば,その質問を受け付けたいと思います。「手を挙げる」ボタンを押していただければ,こちらの方で指名させていただきます。よろしくお願いいたします。大森委員,それから前田委員の手が挙がっております。
大森委員,お願いいたします。

【大森委員】 ありがとうございます。すみません,しゃべってばかりで。
質問というか,先ほど土屋委員がおっしゃっていた設置基準で教室等というところの部分,オンラインの関係で土屋委員はおっしゃっていただいたんですけれども,例えば本学とかだとどんどん地域に出ていって「地域がキャンパスです」みたいなことを言って地域の中で学んでいる,あるいは海外でももちろん学んでいるということを考えると,そういう観点からもここの基準というのは議論できるのかなと感じました。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】 何人かの先生からオンライン教育を進めるということが提案されていますが,私もそれには反対ではありません。ただ,認証評価に関わって,若しくは自分の大学の中でオンラインを進めていくというときに,非常に難しい問題としては,大人数のオンデマンド型のオンライン教育の成績評価に代表される質保証,この問題を抜きにしてオンラインは進められないのではないかと思っています。ですので,オンラインを進めるべきだとおっしゃっている先生方のどなたでも結構なんですけれども,その辺りをどのようにお考えなのか,御意見があればお伺いしたいと思います。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
オンラインといっても双方向型の場合もありますし,小さいゼミ等を想定している場合もあります。それこそオンデマンドの場合もありますし,流しっ放しのような,いつでも見られるものなどいろいろあると思うのですが,その点につきまして何か御意見はございますでしょうか。
土屋委員,よろしくお願いします。

【土屋委員】 確かにおっしゃるとおり,オンデマンドにせよ,あるいはオンラインにせよ,それをどう質保証していくのかということは,先ほどどなたかがおっしゃったようにこれからあるフレームをつくってやっていかないとならないんですけども,オンデマンドに関しては,例えば最初に慶應大学や早稲田大学がやっていたときがあったと思うんですが,その経験もあると思いますので,是非慶應大学や早稲田大学のオンデマンド型のオンライン授業を開始したときの成績評価についての成果,あるいはどのようにやったのかということを是非伺いたいと思っています。私が聞いたのは,これはもう十数年前ですけれども,オンデマンド授業はリピーターが多いと,何回も,2回も3回も学生は見て,そういう意味では教育の成熟度が高まったということはよく聞きました。私もそう思います。聞きっ放しなのではなくて,つまり大学の大教室授業のような聞きっ放しなのではなくて,何度も何度も聞き直すことによって学生は教室での授業よりも成熟度を高めると。また,どこを聞き直したかを今は見ることができるので,教師の側(がわ)も一体どこを学生が分かっていないのかということを確かめることができるということも今は言われています。その意味では,むしろオンデマンド授業の方が対面型の授業よりもはるかに教員と学生との間のコミュニケーションが,あるいは一体何を理解させたらいいのかということに関するコミュニケーションを含めて非常に進化しているんだと思います。
ただ,テストをしたりするときにどうしたらいいのかについては,これから検討していかなければならないんですけれども,最近はオンライン授業が対面よりも劣っているというような認識があるんですけど,私は,それは違うと思います。むしろオンライン授業の方が学生と教員との間のコミュニケーションを高めるし,あるいは学生自身の教育の習熟度を確かめる,確認するためにも,実はオンラインの方がはるかに優れていると思います。それは飯吉委員にもお伺いしたいんですけども,その辺のことは恐らくアメリカなんかの体験も含めて,その辺の認識は共有されているのではないのかと私は思っております。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
順番からいって長谷川委員,先にお願いいたします。

【長谷川委員】 ありがとうございます。
日比谷委員から産学協議会の政策要望の話が出ましたので,それに関する補足コメントと,それから質問をさせていただきたいと思います。
日比谷委員は御存じだと思いますが,産学協議会の報告書で,大学設置認可プロセスの迅速化とカリキュラム変更のプロセスの簡略化を要望したのは,正に質の高い教育をされている大学の学長から,今のデジタルトランスフォーメーションに対応した新しい学部をつくるということについて,もう少し迅速にできないかという要望があったことを踏まえて要望をしているということです。質保証という観点から,非常に質の低い大学に関しては,事前チェックや事後チェックをやらなくてはならないという日比谷委員の御指摘自体はよく理解できるところです。実は,産学協議会ではなく,経団連で2018年6月に出した大学改革に関する提言では,まず,将来も含め,日本の大学進学者数の減少や定員割れ大学が増えているという状況を踏まえれば,日本全体で大学の研究,教育の質を維持・向上させる観点からは,現在の大学数や定員規模の適正化を図らなくてはならないということは要望しております。また,その観点で,経営悪化傾向にある私立大学については,早期撤退や再編を促すために補助金支給などのインセンティブを与えるということや,政府や日本私学振興・共済事業団の経営相談機能を強化して,大学に,合併も含む経営改善に向けた取組を早期に促すような仕組みを早急に構築すべきであるということも提言しております。
ただ,このときに想定していたのは,正に経営が悪化して,定員割れになって,もうどうしようもないという私立大学については早期撤退とか,再編を求めているんですが,逆に今,日比谷委員の方から教育に関し,その事前チェックの中で問題がある場合は退場もあり得る制度を構築するという御発言があったんですけれども,この場合は,例えば,どういった基準が具体的に考えられるのかと思って御質問させていただきます。

【吉岡部会長】 日比谷委員,何かすぐに補足することがあればお願いします。

【日比谷委員】 もしかするとちゃんと伝わっていなかったかもしれませんが,私が退場もあり得る制度の構築と申しましたのは事後チェックの方です。ですから,事後チェックをしたときに,いろいろな観点があると思います,何年たっても定員が満たされないとか,そういうところを申し上げたつもりです。よろしいでしょうか。

【長谷川委員】 設置基準の事後チェックということですか。

【日比谷委員】 そうです。

【長谷川委員】 分かりました。すみません。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】 一つ前のトピックの,前田委員,それから土屋委員がそれに対して御質問されたところに戻りたいのですが。

【吉岡部会長】 どうぞ。

【飯吉委員】 まず,オンラインの大規模授業で教育的な質が担保できるかというお話でしたが,そもそも通常の対面の大規模授業で質が担保されているのかどうか,我々もしっかり見ていないというところもあるかと思います。宮内委員からお話があった, オンライン化すると見える化されるというか,透明化して見えやすくなってくる部分もありますし,土屋委員もオンライン化が今後は基礎的・基幹的になるのだというお話をされましたが,その意味で,大学教育が可視化されるチャンスだと思います。ただ,現在のコロナ禍下では, オンデマンド学習を中心とした大規模授業だけではなく,様々なタイプ,Zoom等を使った同時双方向型やビデオやテキストを使ったオンデマンド型,その両方を組み合わせたものなどがあります。では,どのタイプが一番人気があるかというと,実はどれも人気があるし,どれも人気がない。つまり学生は,受ける授業の内容や先生方の教え方のスタイル等とオンライン授業のタイプがうまく合っているかという観点からの満足度や,学習成果の達成度なども含めて オンライン授業を評価をしているわけで, 「同時双方向とオンデマンド」のどちらが良いか,または「オンラインと対面」のどちらが良いかというような極端に二極化した比較に基づいた議論などは,もう終わりにしたい感じがあります。
評価についても, オンラインだけで学生の学修評価をしなければならないという厳しい状態に今ある中で,我々はまだ十分にその方法を探究していないですし,やり方にも習熟していない。今どこの大学でも,「オンラインで期末試験を厳格にやるにはどうするべきか」,「来るべき入学試験もどうすればよいのか」というような議論になっているかと思います。実施する方法はあるのですが,不正防止対策にかなりコストがかかったり,プロクターや試験監督がオンラインで試験中監視を行うという海外の事例などもありますが,それらが日本の入学試験の規模で現実的に適用できるのかということも,やはり考えていかなければならないと思います。
ということで,このような部分はまだまだ開発途上でもあり,大事なのはやはり,それぞれの授業において,普通の対面授業でもオンライン授業でも,ただ一方向的に授業をダーッとやって,あとは学生にレポートを出させて,それに対してはフィードバックしないとか, 期末考査でマルチプルチョイステストだけで安易に学修評価してしまうとか,そういうことをやめていくということです。もう少し複合的・多角的に学修評価を考え,その中でオンラインか対面か,さらにはオンラインもオプションとして常時念頭に置きながら授業を組み立てていくことができるようになればと思います。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,小林委員,お願いいたします。

【小林委員】 小林でございます。
宮内委員に質問させていただきたいんですが,先ほどの御発言の中で,どこの大学で学んだかというよりも学習歴がこれから大事になってくるということで,それでいろいろな大学で学んだものをきちんと学習歴を評価すべきだという御意見があったと思います。そうなってくると,今はデジタル化によっていろいろな大学で学べるようになって,そしてブロックチェーンのようなもので個人の学習歴が管理できるようになると,今は大学と学位授与機構が学位を出すという権限があると思うんですが,これがどこかのアクレディテーション団体が,どこの大学ではなくて,そのいろいろなものを学んだ学習歴の積み重ねを学位として認定するといった全く根本的に違った質保証の在り方が出てくるような気がするんですが,今回のこの部会の中でそこまで議論した方がいいのかどうなのかというのは,どのように宮内委員はお考えかをお聞きしたいのですが,よろしいでしょうか。

【吉岡部会長】 すみません。宮内委員の前に手を挙げている方がいらっしゃいますが,宮内委員も手を挙げていらっしゃったので,まず宮内委員に今のことを含めてお願いします。

【宮内委員】 ありがとうございます。
私は世の中の流れを後追いする形じゃなくて,たまには日本の文部行政が世界をリードすることをやったらいいと思っております。日本の認証団体だけでは多分権威づけというのはできないと思いますので,国際的なネットワークをつくる。これも試行錯誤の繰り返しに多分なると思うんです。せっかくこういうパンデミックが起きたんで,せっかくというのはおかしいですが,パラダイムシフトだと思っておりますので,これを災い転じて福となすということができればいいと考えております。
それと,先ほどの前田委員のオンライン教育,またオンデマンド型の大教室の授業の質保証ですが,これはいろいろなアンケートを取ると非常に面白い結果が出てきています。かえって集中できるとか。もう一つは,出席を取るときに,僕たちは携帯電話の写真でノートを撮らせるようにしたんです。ノートを取るということが出席の確認になると。今までノートなんか取ったことがなかった子がノートを一生懸命取るようになる。そうすると,取り方をお互いにエクスチェンジし合うというように,いいか悪いかという議論もいっぱいあるんですけども,取りあえずオンデマンド型の授業でいい点は一体何なのかということをみんなで発掘してみようという運動を僕らはしております。
多分これからは学習評価をどうやってやるかというと,リアルとオンデマンドというか,バーチャルのハイブリッドでやるようになるのかなと。バーチャルのオンラインでの試験にチーティングの問題が絶対あると思いますが,目の動きを見ると,精度の高いカメラができると多分チーティングについては目の反射で隣から誰かが差し入れてもみんな分かるように多分なる。いずれにしろ,そういうことというのは絶対に完璧な防止はできない。リアルとバーチャルの組合せのハイブリッド。そしてリアルについては,リアルプレミアムというのがこれからついていくんじゃないかなと思っております。ということで,とにかく新しい教育の形をつくれたらと今は考えております。
以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,吉見委員,お願いいたします。

【吉見委員】 吉見でございます。オンラインの話が随分出ておりましたので,私からも三点だけコメントさせていただきたいと思います。
第1点ですが,既に出ていた議論と関わりますけれども,同じオンラインといっても,小人数の同時双方型,つまり同期するオンライン授業と,多人数のオンデマンド配信型,これは非同期のオンライン授業では構造的に違いますね。ですから,前者の少人数・双方型の場合には,これは実はST比の問題と非常に関わってくるのですが,大学のST比がちゃんとなっていればオンラインで非常にいい成果が出てくると思います。この同期型ならば,質保証もそれほど問題にはなることはないですし,やり方を工夫すれば対面以上の成果が期待できるし,常態化させていくこともそんなに難しくはないと思います。
問題は,多人数のオンデマンド配信型のオンライン授業のほうです。つまり,非同期で事前に録画して多人数に配信する授業です。非常勤講師なり若手で多く授業を持っていらっしゃる先生が,何百人という多人数を受け持っていて,1人で自分の授業を録画して,オンデマンド配信するような場合の問題です。こうした場合の質保証に,私は疑念を持っています。もし,多人数の学生を相手にするオンデマンド配信型の授業を広げていくのであれば,必ずティーム・ティーチングといいますか,TAの配置とか,全体の組織化とか,そういう組織的な体制を大学がどれだけつくっていけるのかという,そういう組織化が必要になってくるように思います。そこが担保されない限り,非常勤講師や若手の先生それぞれに任せるようなやり方にしないこと,これがとても重要なことだと思います。
2番目ですけれども,オンライン自体には,私は非常にポジティブでして,とても重要なことは,例えば身障者の方とか,それから子育て中の方とか,それから先ほど出たリカレント教育とか,そういう方々の大学へのアクセスとの親和性は極めて高いのですね。ですから,オンラインが開く可能性というのは,そういう普段だったら毎日のようにフィジカルに大学に来て授業を受けることが難しかった人たちが,やる気と能力があればどこにいても大学の授業に参加できるようになることです。それで,母集団は物すごく広がりますから,そのときに,先ほど谷本委員からちょっと出ていたと思いますけども,修業年限の柔軟化とか,こういう複数の組織的な改革と組み合わせてオンライン教育の発展を,技術だけではなくて制度改革と組み合わせてやっていく必要があると思います。
第3点は,オンラインの先にどんな大学の未来が見えるかということです。オンライン授業の普及というのは,地球規模で地理的な距離が問題にならなくなっていくということですから,そうすると,これは今回の部会の中核的テーマになると思うんですけれども,我々が未来の大学の質保証を考えるときに,これは国民国家の大学の質保証の問題というよりも,グローバルソサエティといいますか,地球社会をベースにしたら大学における質保証とは一体何なのかということが問われてくるようになると思うのです。
そうすると,大学間の流動性,それは日本国内の東京なり関西なり地方なりをまたぐ移動ということもあるでしょうけれども,同時にグローバルな大学間の流動性も拡大していく。オンラインでの授業の共有化とフィジカルな移動が連動していく。その中で質保証の仕組みをいかに考えていくのかという,グローバルソサエティの中での質保証の仕組みをどう考えていくのかという,これはすごくチャレンジングな問題だと思いますけれども,オンライン化の先には地球社会における高等教育の質保証とはどうあり得るのかということを,一番遠くに見据えた上で我々の議論はすべきではないかと思っております。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
今手を挙げていらっしゃる方はいらっしゃいませんが,ほかにいかがでしょうか。
では,土屋委員,よろしくお願いします。

【土屋委員】 今のお話で,オンデマンドが今後ティーム・ティーチングなりとつながっていかなきゃいけないんじゃないのかというお話がありました。前回,私もお話し申し上げましたが,まさしく大規模授業の場合にそれが果たして質保証になっているのかという,先ほど飯吉委員もおっしゃっていましたが,その点は私も非常に疑問に思っているところもあるので,むしろオンデマンドにすることによってほかの教員もこれを見ることができる。つまりFDがそこで実際行われるので,むしろオンデマンドにしたことによって質保証が前進するというように私は思っています。その点では今のお話と,そのことへの不安がおありになるというのは分かるんですけど,むしろその不安を解消する手段こそが,私はオンデマンド授業であると思います。
また,これまでのような時間割という概念もそこではなくなってくるので,学生がかなり自由に何度も見ることができるし,また教員もそれを見ることができるので,オンデマンド授業によってこそ,なぜ非常勤の方と限定されたか分かりませんけども,専任であっても,やはり大規模授業についての第三者によるチェックというものはこれによって可能になるのでないのかなと思います。
この機会ですので,先ほど大森委員からお話があった地域のことですけども,私は今,文部科学省のインターンシップ表彰制度もやっておりますけれども,その中でインターンシップが一番進んでいるのは,実は地方なんです。地方の自治体や,あるいは商工会議所と連携しながら,実はインターシップは非常に成熟して行われています。そういうのを見ていますと,大学の授業も,先ほど大森委員がおっしゃったように教室の中だけではなくて企業の中でも,あるいは地方自治体の官庁なり,あるいは市役所の中でも,言わば自由に拡張していくことによってコミュニティー型の大学の在り方というのは,今後,設置基準上も考えていく必要が私はあると思います。場所はどこでもいいんじゃないかと,それはオンラインもそうですけども地域コミュニティーを,インターシップ等も我々は既にそういう成果を持っているので,どこでも,大学であろうと,会社であろうと,あるいは官庁であろうと,どこでも授業の場所を設定して,学生が地域を中心とした文化や,あるいは経済の勉強ができるような体制に設置基準もつくっていくべきではないのかと思いますので,その点では大森委員の御意見に私は大変賛成でございます。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,飯吉委員,お願いいたします。

【飯吉委員】 先ほど吉見委員が大規模授業のところで言われた,教員の考え方というか,大きく言うと教員の文化といいますか,それを変えていくべきだ,というのは本当に大事な御指摘だと思います。
オンライン授業になって,各大学で言われていると思いますが,やはりTA,ティーチングアシスタントの重要性,これは海外だとティーム・ティーチングというのは,教員のティーム・ティーチングもありますが,院生や学部生も巻き込んでいく。それぞれにとっての教育トレーニングになりますし,皆で手分けしてやることで担保される教育の質もあると思います。多様化への対応,例えば理解が遅い学生へのリメディアル的な対応なども, ティーチングアシスタントが担当する。オンデマンド学習は,やはり投げっ放しではいけないわけで,そこら辺の学生への細かな対応をどれだけできるかが大事です。吉見委員が言われたように, 1人の教員で200人,300人の学生に対応するというのは無理な話ですし, オンラインで先生が大勢の学生から大量にeメールを受け取って個別に返事をするというようなことにも陥りたくないわけで, この機会に是非この辺りも考えていく必要があります。また,オンライン授業を通じて発案されることや変わり始める教員の文化が,おそらく対面でおこなわれる大規模授業にも反映されていく,という逆輸入的な効果もあるかと思います。
それから,地球規模のお話も全くそのとおりだと思います。ただ,これもオンデマンド型授業と関連していて,吉見委員は距離のことを言われましたが, 時間的なこともあります。吉見委員が前回お話になっておられた「時間の質の低下」ということとも関わるかもしれません。先ほど日本に来られない留学生がオンラインだと海外から授業を受けられるという話がありましたが,リアルタイムでやると時間帯や時差の問題があって大変きつい学生もいるわけです。日本の昼間の授業を受けるのに夜中の3時に起きて受けなければならないとなると, それだけで不平等なことになります。ですから,この点でもオンデマンドを効果的に活用するということは,例えばオンデマンドでも実際の授業を撮って配信するという方法もありますし,そこら辺も柔軟に考えていただければと思います。
また,世界的な規模の質保証というとちょっと気を失いそうになるわけですが,例えばCOIL(Collaborative Online International Learning)のような形で,異なった授業の一部をオンラインでランデブーさせていく,というような方法もあります。各国,各地域の教育の質保証の枠組みの中で,ローカルな各授業のある部分を,ベン図の共通集合部分のように共有していくというようなことはオンラインを活用してできると思いますので,そのような広い視野に立って,本部会でも議論が進められればと思います。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
濱中委員,お願いします。

【濱中委員】 早稲田大学の濱中でございます。
先ほど土屋委員のご発言で早稲田大学の名前も挙がっておりましたので,私からも少し現状の説明をしたいと思います。といいましても,既にいろいろオンラインの話は出ていますのでごく簡単にと思います。
オンライン授業に関しましては,私も今年度初めて取り組みましたが,ほかの先生方もおっしゃっていますように大きな可能性のようなものを感じております。オンラインそのものの可能性もありますし,オンライン授業の経験を踏まえることによって逆に対面の授業の見直しも深まるといいますか,これまでにない視点からの見直しができるように思っています。
ただ,そうした可能性は強調したうえで申し上げたいのは,いまこの状況で試みているオンライン授業はかなり特殊だということです。少なくとも私の周りでは,いま,個々の教員がそれぞれオンライン授業を展開しており,相互に調整だったり,相談だったり,そういうことができているわけではありません。コロナ禍のロックアウト状態ですので,教員同士は集まることができず,という状況です。打ち合わせもないまま,とにかくオンライン授業を設計しなくてはということで,各自が取り組んでいました。
したがいまして,例えば,もし,今後,オンライン授業を本格的させるということになったとしても,教員同士が話合えるなかでのオンライン授業と,現段階でのオンライン授業は異なっているでしょうから,その点は踏まえておく必要があるように思います。とはいえ,少なくとも,議論ができる環境下で展開されるオンラインの方が,より大きな可能性を持っているはずだとは思いますが。
もう一つ申し上げたいのは,大学を超えた組織の意味です。今回,孤立した中で授業の準備を進めたわけですが,国立情報学研究所が発信しているオンライン授業関係の様々な情報には本当に助けられました。研究倫理などは,すでに組織を超えた体制での取り組みも行われています。オンライン授業についても,すでに豊富な知恵を持っている組織中心に,学術界全体でオンライン授業の質を担保するという試みが発展する可能性などはないのか,ということを考えておりました。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
永田委員,お願いします。

【永田委員】 御質問が続いておりますけれど,意見を述べさせていただきます。
本部会の意義を考えると,吉見委員がさきほど述べられたことを少し拡張して,世界基準,あるいは国際的なステージの上での質保証ということについて議論する必要があるのかなと思います。
そのときに我々がまず行うべきことは,高等教育における質保証の観点を示すことだと思います。先ほどから話題となっているオンライン授業はそのうちの一つなのですけれど,多くのキーワードのなかから,我々が質保証を考えるときの視点・観点を述べることが必要です。問題は基準が決められないということであり,「こうでなければいけない」ではなくて,「この点について考えなければいけない」ということだと思います。
なぜ基準が決められないかというと,今後数十年の間は,先ほどの議論で言えば,個性を持った各大学が自らの特色に応じて質保証をすることが重要だと思います。そのような観点から考えると,全ての大学がオンラインをやらなくてはいけないわけでもないですし,文理融合をやらなくてはいけないわけではないと思います。初等中等教育は全ての学校に共通の学習指導要領があって,それを十分実施できたかできなかったかを議論すればよいのですが,大学はこれと異なり,各大学が目指す教育の方向に向かって自分たちの三つのポリシーを働かせています。そう考えたときには,こうでなければならないという基準ではなくて,この観点であなた方の大学は何を考えていますか,という視点が質保証の基盤になるだろうと思います。
そう考えると,先ほど議論されていたオンライン授業については,各大学が主張された三つのポリシーにのっとって教育が行われているかどうかがチェックポイントです。それが社会から受け入れられるかどうかは,よければ学生が集まり悪ければ集まらないという,日比谷委員がおっしゃった市場原理に任されることになるだろうと思います。
大学に質保証が求められる理由は,大学にしかできないことが何かを考えると分かります。それが学位授与の権限です。知識を与えるだけであればカルチャークラブでもできますし,文部科学省以外が所管しているいろいろな学校でもできますけれど,学位を与える権限を有するのは,浅田委員がおっしゃったとおり大学と大学改革支援・学位授与機構だけです。そうであるならば,先ほど述べたように大学の多様性を認める限りは,大学の質保証とは,結局はその大学の学位の質ということであり,本来はそれが議論の中心にならなくてはいけないと思います。
なぜこのように述べるかというと,私自身も会議や講義などでオンラインを利用する機会が増えて,なかなか面白いなとか,やはりオンデマンドより双方向の方がやりやすいなとか,いろいろ考えるところがあります。そのうえで,果たしてこれで知識を身につけたからといって,本学の学位を授与できるだろうかと考えたときに,少し違うかなという気になりました。我々の学位というのは知識の量に対して授与しているわけではないので,もう少し違う観点が必要かなと思いました。
同じような視点から,留学のことを考えてみました。オンラインであれオンデマンドであれ,諸外国で自分が行きたい大学なり,学びたい学部等についていろいろな知識を日本に居ながらにして得ることができる時代になっていて,いまの学生たちもそのことをよく知っています。しかし,わたしは,それだけではやはり不十分であり,その国の文化,風習や,風土や気候に身を置かなければできない,分からないことがあると思います。そこだからこそ生まれる発想というものが必ず存在し,だからパスカルは日本には絶対生まれなくて,フランスに生まれているのです。それを知ることが留学の一番重要な目的なのではないかと思います。
同じように個々の大学は同じではありません。個々の大学の学風と呼ばれているものがあると思いますけれど,その中で学ぶことの意義,さらにその質が保証されているかどうかということが議論の中心になります。その際に,オンライン授業についての問題はもちろんあります。例えば,質保証のためにオンラインにより取得できる単位の上限や,認められるオンライン授業の基準などの詳細は,改めて議論する必要があると思います。しかし,それよりまず先に本部会で議論するべきことは,浅田委員がおっしゃった学位とは何か,各大学の個性とは何かという問題ではないでしょうか。その結果,御意見があったようにいろいろな講義を受講して幅広く学ぶという大学が出てきても,そうでない方針をとる大学が出てもいいと思いますが,その前提として学位の質保証という視点が大切だと考えます。
最後に,設置基準とか設置認可のプロセスというのは必要条件です。つまり大学としてこうやりたいというものに対して,それがそろっているかどうかということを見ているだけです。では,十分条件をどこが保証するかということについては,実は十分議論されていません。十分条件とは何かというと,それこそが個々の大学がなすことです。質保証の問題を考えるときに,これらをトータルで考えるべきであって,あくまで認証評価はその一部であるという認識を持つことが,必要ではないかと思います。
繰り返すと,大学の特性から一般的な基準を示すというよりは,観点を出さなくてはいけないのではないかと思います。また,設置基準であるとか設置認可では,大学の必要条件を見ているだけであって,十分条件を見るための制度ではないということです。ということは,大学が大学として十分成り立っているのか,質の高いレベルで,あるいはその望むレベルで行われているかどうかを担保するシステムが必要だと思います。申し上げたとおり,現在の認証評価制度ではまだ十分ではないかもしれない,だから改善が必要なのかもしれない,という議論だと思います。
そういうわけで,オンラインが主流になる時代が来るのかなと思いますが,だからこそ,先ほど述べたような現地でしか感じられない匂いや文化の価値がますます重要になるのではないかと思っています。
皆さんのご質問とは少し観点が違ったかもしれませんけれど,質問というよりは意見として申し上げました。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。整理していただいてありがとうございます。
私もちょっと永田委員と同じようなことを考えておりまして,一つは,ここでの議論を今後整理していくためにも必要なのですけれど,質保証というときに,何の質保証なのかということについていろいろなレベルが当然入ってくると思うのです。大学の質保証というのは大きいのでどういうふうに捉えるか。これは大学とは何かということと結びついています。それからもうちょっと細かく,大学の中で学部教育の質保証の話と,大学院,しかも修士の質保証と博士の質保証には違いがある。博士だと学位の問題と直結しますけれども,その辺のどこまでをここでやるかということは,どれも大事なんですけども,考えていかなくてはいけないと思っています。大学院部会というのがあるので,そういう意味では学部教育がここではまずはメインだと思います。大学院の議論を排除するつもりは全くないのですけれども,学部のことをまず念頭に置かなければならないかなと思っております。
というのは,一つは研究の質保証というのは大学の質保証の中で非常に大きなものであって,これも分けられないと思っておりますけれども,ここではやはり教育の質保証という部分が重要な議論になるだろうと思っていて,まずそこは考えなくてはいけないと思っています。
それで申し上げたかったのは,教育の質保証といった場合に,例えばオンラインの議論,私もオンラインはすごく可能性があると思いますし,一時言われていた反転授業みたいなものなど,オンラインを使えばものすごくやりやすくなるだろうとか思うのですけれども,これは授業の質保証に近い部分だろうと思うのです。授業の質保証ということと,それから学生にとっての大学の持っている意味というのは少しずれる。今,永田委員がおっしゃったように,いろいろな大学のいろいろな授業を受けることができるという話と,これは学位の話と外れる別の点ですけれども,学生が自分の大学に行って,そこで学んでいくということの持っている意味はちょっと違っていると思うのです。設置基準でも,授業の質保証の部分で成立している規程の部分と,それからもう少し広く,例えばキャンパスの在り方であるとか,図書館であるとか,図書館はまだ直結しているかもしれませんけれど校地の面積であるとか,一人一人の学生のスペースとかというのは,多分学生生活というもうちょっと広い部分が念頭に置かれている。そういう意味では設置基準で考えているのは個々の授業の質保証の問題とはまたちょっと違う,より広い部分を念頭に置いて考えられていると思います。
ですので,オンライン化されていくことでできることとは別に,今,永田委員がおっしゃったみたいに,例えばキャンパスが持っている意味であるとか,例えば課外活動,昔でいう課外活動が今は課外教育という言い方がされるように,大学で行われているクラブ活動であるとかといういろいろなことが持っている意味というのは,むしろ最近,非常に重要視されてきています。それからボランティアであるとか,とにかく行ってみるという意味での留学,インターンシップとかということが持っているいわゆる人間形成における意味というのが,大学教育ということを考えるときの中に含まれているわけです。ですので,その辺をどこまで視野に入れながら基準とすり合わせることができるのかということは考えておいた方がいいだろうと思いました。ちょっと長くなりました。
すみません。飯吉委員が手を挙げていらっしゃるので,まず飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】 短めに。
今,吉岡部会長と永田委員が言われた,どのレベルでの質保証かということや学位が大事ということとも絡みますが,例えばレゴのようなブロック玩具を考えればいいと思うのですが,まず一つ一つのブロックの質,例えば何度使っても摩耗しないとか壊れないということがブロックの質的要素としては大事で, これが謂わば「授業レベル」で,それらを組み合わせて作り上げられる構造物が「学位プログラムレベル」に相当するかと思います。つまり,学位プログラムの質保証というのは,このような構造体の質保証として必要なわけです。ただし,今話が出ているのはそれ以外の部分,つまり正課外やさらに言えば教育以外の部分,例えば大学の文化であるとか存在意義などとも大きく関わってきますし,大学の歴史や国や地域などの立地的背景も関係するかもしれません。さらに言えば,ブロックで作った構造体をどのように配置し,コミュニティーというか環境全体に適合・貢献させていくか,そこでの質保証も考えなければならない。これについては「言うは易し」で,なかなか考えにくいところもあるのですが, こういう時代になりオンラインというものが教育に入りつつあるからこそ,ますます大事になってくる部分かと。つまり,今後「大学が大学として存続し続ける」ために,正課外の部分というのは実はとても大事であり,その部分が学生にとって教育的にどのような意味を持っているのかを考え,発展させていくことは,非常に重要になってくるかと思います。
以上,コメントです。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,土屋委員,お願いします。

【土屋委員】 今,永田委員や吉見委員のおっしゃったことはとても大事なことなんですが,そのことを考えていない日本の学長や大学人はいないと思います。それは正論すぎるくらい正論です。しかし,そうしたことがメディア授業との関連でいわれると,まさしく,必ず教授会でそういうことを言う人が出てきて日本の教育の先端化の足を引っ張ってきたんです。この10数年を考えても,それに足を引っ張られてできなかった。当然大学の文化であるとか,あるいはパスカルが日本に生まれていないのは当たり前であって,ところがそういうことを言い始める者によってオンライン授業はつぶされてきた。この経験を我々は十数年積んできたので,これが今やっと教育の先端化に目鼻ができようといるので,もう少し繊細な議論をしてほしいと思います。失礼を承知で,これまでメディア授業の推進のために苦労してきた人々のためにも,私はそのことだけはやはりここで強調しておきたいと思います。
以上です。

【吉岡部会長】 私もオンライン化は基本的に進めたいと思っております。
すみません。今まで発言されていない杉谷委員が手を挙げられたので,杉谷委員,お願いいたします。

【杉谷委員】 ありがとうございます。
先ほどの永田委員,それから吉岡部会長のお話を伺って,私も同様に考えます。本日の議論は非常に勉強になりまして,今後の高等教育のグランドデザインをある意味改めて模索しているようなお話を伺いまして非常に勉強になったんですが,基本的にこちらの部会は質保証システムの全体的な仕組みについて議論するということかと思います。ですから,そういった遠い将来像を視野に入れつつも,質保証システムという軸から当面はぶれないで議論をしていくのが重要なのではないかなと思っております。
その上で,制度設計に落とし込んだときに,大学の現場というのは教員だけではなく,直接的には学生にも影響が及びますので,そこのことも視野に含めながらどのように制度設計していくかというのが大事なことであると考えます。その点について,永田委員の,観点を提示すべきであって,基準を提示するのは難しいのではないというお話に非常に感銘を受けました。そういった方向で進めていただくのがいいのではないかなと思います。
ですので,国が制度として保障すべき質保証システム,それこそ国が保障すべき質保証システムというのはどこまでなのかということを考えていけたらなと思っております。非常に抽象的な発言で申し訳ないんですけれども,よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
初めての発言で,林委員,お願いいたします。

【林委員】 林でございます。
まず,先ほどのキャンパスであるとか図書館であるとか大学単位というところなんですけれども,例えば認証評価,今は内部質保証にシフトしてきていますけども,そうすると今,内部質保証を見るときに,例えば図書館であるとか,キャンパスであるとか,学生支援であるとか,そういうものが大学の中でちゃんと有効に機能しているかをチェックする体制があるかということを内部質保証として求めるようになってきています。
なので,今の動きとしては,そういうものについても質保証の視点に入ってきているんですが,ただなかなかまだ大学はそれを大学内でチェックすることができていないし,コロナ禍の中でそれが有効であるというのは一体どういう状態であるのかということについてもまだ共通の観点ができていないと,そういう状況にあるかと思いますので,それはまた認証評価機関とか,あるいは大学と一緒に議論して詰めていくところだとは思います。
それよりも前に永田委員が言われたところなんですけども,国際的に大学が学生流動していくというところになったときの質保証ですけれども,基本的に二つの側面だと思うんです。学位ごと,つまり学士,修士,博士,あるいはこの分野の各学位だったら最低限こういうものを教わっている,なので,ほかの国の大学に行ってもその学位レベルだったら授業を取っても大丈夫という,そういうレベルの話と,それから個別,個別の大学が独自の観点の下で最低限よりも上のレベルでちゃんと教育ができていることを質保証するというレベル。前者に関しては,これまで何度も日本はナショナル・クオリフィケーション・フレームワークがない数少ない国の一つだという議論はずっとあって,結局,修士の学位,博士の学位というのは一体何ができる人のことを言っているのかということが不明瞭だという議論は延々とあるんですけれども,なぜか日本はその議論が煮詰まっていかなくて,学士に関しては学士力という議論はあったんですけども,修士,博士についてはそれがないので,そうすると,一体,修士,博士というのは何ができる者なのかというその議論は,もうちょっとあってもいいんじゃないのかなとは思います。
一方で,内部質保証の方はそれを超えるところの話ですので,それをどうやっていくか。日本はほかの国の内部質保証と比べると今の状況は緩いので,しっかりとプログラムごとに水準までチェックしている状態にはなっていないので,そこをしっかりどうやっていくかということを詰めていかなければいけないと思うんです。
それで,一番初めの日比谷委員と,その後の長谷川委員の議論でもありましたけれども,結局やっぱり二極化なんだと思うんです。リスクベースの質保証システムを入れていかなきゃいけないんだと思うんです。つまり駄目なところはしっかりと見て,もうできていると分かったら認証評価もすごい簡単にするという,きっとそのコンセプトでいかなければいけないと思っていて,日比谷委員が気にされているのは,まず設置されたばかりの,あるいは設置される段階の大学のところが底抜けしていないかという話だと思いますので,通常は設置審査を厳しく,あるいは初回の認証評価を厳しくするようなシステムを取ると。一方で,長谷川委員が言われたようにトップ大学は,もういつまでも設置基準のことでちまちま細かい作業をさせられるのは困るというのは,それもそのとおりで,そういうところは大幅に簡素にして,大学としてそれぞれの立てている目的に対してちゃんと学習成果が上がっているかということを内部質保証しているかに焦点を置く。そういうような二極化の発想をどうやって設置基準,あるいはシステムの中で入れていけるかということを議論できればいいんじゃないかなと思っています。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,今,小林委員と前田委員が手を挙げていらっしゃって,あと10分ちょっと,15分ぐらい時間がございますけれども,まずはこのお二人に御発言いただきたいと思います。
では,小林委員,お願いします。

【小林委員】 ありがとうございます。小林でございます。今,委員の方はほとんど大学の中の方ですので,大学の外からの視点でお話をさせていただきたいと思います。
今のお話の中で大森委員もおっしゃっていましたけど,外に説明するときになかなかこういった議論が伝わらないですとか難しいということで,なかなか御理解いただけない状況が続いていると思います。大学の数は1990年の507校から,2019年には786校に1.5倍になっていて,浅田委員がおっしゃったいわゆる学位に筆記する専攻分野の名称,学部名称だとすると29から700以上に,24倍以上になっていて,外から見るとこの大学の特徴は何なのかということがまず分からない,そして学部や学科で何を学んで,何が身についたのかが,大学の外から見えないといったところが多分一つの大きな問題じゃないかと思います。これを一言で言うと情報公表の質保証,研究,教育それぞれの観点で,分かりやすく情報公表していく,情報公表にも質保証というのが求められるのではないかと思います。
先ほどブロックチェーンでの学位は大学ではなくてレゴの積み重ねみたいなものだというようなお話がありました。そうではなくて,それぞれの大学,学部というのを見ていくときにきちんと分かりやすく,高校までは国が定めた学習指導要領に則してここまで学ぶというのがあるのですが,大学に学習指導要領はないので,各大学が三つのポリシーにそれをきちんと記して,特にディプロマポリシーであればどのような力が身につくかというところを示していく必要があると思います。おそらくこれはよりオンラインになってくればなるほど重要になっていくはずです。企業も今は労働時間から成果の評価へと移行しつつありますが,大学もそういった見方をされてくるのではないかと思います。
そして,入り口のところのアドミッションポリシーについては,きちんと入学する準備をここまでしてきてくださいという,いわゆるカレッジ・レディネスがきちんと明示できているかというと,なかなかそうなっていない大学もあるような気がします。ですので,大学側がいろいろ努力しているのは分かるのですが,その取組を分かりやすく伝えていく,いわゆる社会環境が変化する中で大学も大きく変わっているというのをきちんと説明責任を,説明責任というとちょっと義務化という風にとらえがちですが,きちっと社会に伝えていく,公表していくという観点で,情報公表の質保証についてもきちんと議論していく必要があるかなと思っております。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,前田委員,お願いします。

【前田委員】 前田です。
先ほど吉岡部会長が,課外活動が重要になっているというお話をされたんですけれども,今の設置基準に課外活動というのは視野に入っていないのではないかと思っています。いわゆる教育課程としてどれだけそろえているかということだけであって,もしかしたら課外活動の重要性は初等中等教育にはもう少しうたわれていて,高等教育だけない可能性があると思います。
もう一つ,先ほど世界に向けてといいますか,世界レベルでの質保証という話が出たかと思いますが,少し古い情報ですが,アクレディテーション団体のネットワークというのが世界レベルで活動していて,そこで国を越えた評価機関の相互承認(ミューチュアル・リコグニション)という話は出ていたのですけれども,あまり進展していませんでした。現在では,ヨーロッパはEUでアクレディテーションの相互承認が進んでいるのかもしれませんし,ASEANも何かやっているかもしれないんですけれども,もし進んでいるとすれば,日本はその流れに乗っていないのではないでしょうか。認証評価機関のいくつかはアジアの評価機関と連携しているようですが,相互承認まではまだ程遠い状況にありまして,世界ではどこまで進んでいて,相互承認にはどのような条件が必要なのかということは確認してもいいのかなと思います。最近追いかけていないので,私の勉強不足かもしれませんが。
以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
浅田委員,お願いします。

【浅田委員】 浅田です。
先ほどから認証評価の話が出ていますが,認証評価を軽減化していくという流れそのものについては私も賛成ですけど,一つ注意しなくてはいけないところがあると思っています。それは,今の制度では7年サイクルで受けるのですけれど,7年たつと学長が替わっていたり,執行部が入れ替わっていたり,そもそも現場の先生も流動化して替わっている可能性があって,非常にうまくいっていたいい状態の大学が変質している可能性があります。大学というのは変化していく組織体ですので,カリキュラムを変更していたったり,教員組織の変更もあったりします。質の保証という観点で見たとき,あるタイミングで非常に質のいい大学が何年か後に変質しているということも考慮しなくてはいけないと思っています。
それからもう一点,これは教えていただきたいことですけれど,コロナによって全国のほとんどの大学が通信制の大学になってしまいました。通信制の大学というのはそれなりに歴史があるので,教育の質,あるいはその保証というのは現状でどうなっているかというのを,御存じの方に教えていただきたいと思います。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
今の通信制のことについて,何か事務局の方ですぐ答えられるようなことはありますか。どうぞ。

【牛尾高等教育企画課長】 通信制について,申し訳ない,ちょっと今,手元に十分な材料がないので,次の機会なりにまとめて,オンラインとの関係もありますので,少し御説明するような機会をつくりたいと思います。すみません。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
いろいろ先ほどから御意見もありましたように,MOOCも進んでおりますし,それから,放送大学の経験というのもあるので,多分その辺の経験というのは,どういう形でそれを設置基準に入れるかどうかというのは別ですけれども,考えていくときに必要ではないかと思いました。
今,手を挙げていらっしゃる方がいないので,私から。
一つ,今,課外活動の位置づけの点について前田委員からお話がございました。課外活動というのは,直接設置基準上で扱われていないと思うのです。ただ,課外活動と言われていたものが非常に重要であるというのは,多分どの大学も気づいていたというか,非常に重視していくようになって,今までは授業の外側であったもの,例えばボランティアであるとか,インターンシップであるとかというようなものについて,それを何らかの形で授業と結びつけて単位化していくというのは多くの私立大学では,少なくとも私の知っている限りでは非常に進んでいると思います。そういう意味では課外活動と,それから授業との境界というのが変わってきていると思います。ですので,その辺も場合によっては考えていかなければならないだろうと思います。
もう一点,先ほどの大学の質保証の議論に関わるのですが,設置基準上は職員というものについて,職員を置かなければならないという規程はありますけれども,大学職員についての明確な言及というのはほとんどありません。教員については非常に厳しく審査もかけているんですけれども,職員についての記述というのはほとんどありません。職員も,実はいろいろなレベルの職員が今いるわけで,実験職員のような形で実験等に非常に深く関わっている人もいれば,いわゆる事務の職員の方もいらっしゃいます。例えばどれだけの人数の学生にどれだけの事務職員がいるかみたいなことは,もちろん全然決められていません。それから,ほとんど教員と同じような形で学生の教育に関わっているという職員の方々もいらっしゃいます。もちろん事務職員でも窓口で学生の教育に関わっているという方もいるわけです。これはまた先の方で考えていけばいいことかもしれませんけれども,職員の位置づけというのはかなり重要だと私は思っておりまして,設置基準上に書き込むかどうかは別としても,それをどういう形で組み込むかということも含めて考えに入れないとならないだろうと思います。特に国際化であるとか,いろいろなことを進めていく中で中心になっているのは職員の活動ですので,職員をきちんと大学教育の中に位置づけるということが必要ではないかと思いました。
時間的にはちょうど時間なのですけれども,今,手を挙げていらっしゃる方はいらっしゃらないので,よろしいでしょうか。いろいろな問題が本日も出てまいりました。事務局の方で整理されるのは大変だと思いますけれども,どれも非常に重要な問題で,次のステップの中で考えていかなければならないことだと思います。
ということで,本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。
それで,次回以降の日程等について,事務局から説明をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日は活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。
次回の質保証システム部会は8月31日月曜日,午後1時から3時,13時から15時を予定しておりまして,大学団体等からのヒアリングを予定しております。開催方法,場所等につきましては,また追って御連絡させていただきます。本日,時間の都合上,御発言できなかった内容がありましたら,事務局までお寄せいただければと思います。
以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
前回のように言い切れなかったことであるとか,少し整理したりということであるとか,あるいはほかの委員の方についての御意見等がありましたら,事務局の方にレポートを送っていただければ,それをここで共有していくというようにしたいと思います。時間も限られておりますし,やはりオンラインでは何となくやりにくい部分というのも恐らくあると思いますので,積極的に発言等のレポートを送っていただければと思います。
ありがとうございました。それでは,以上で第2回の質保証システム部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

── 了 ──


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