教学マネジメント特別委員会(第7回) 議事録

1.日時

令和元年7月29日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省東館3階 講堂

3.議題

  1. 教学マネジメントに係る指針及び学修成果の可視化等について
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)日比谷潤子座長
(副座長)小林雅之副座長
(臨時委員)清水一彦、伹野茂、益戸正樹の各臨時委員
(専門委員)浅野茂、大森昭生、沖裕貴、川並弘純、小林浩、佐藤浩章、林隆之、深堀聡子、松下佳代、溝上慎一、両角亜希子、吉見俊哉の各専門委員

文部科学省

(事務局)玉上大臣官房審議官、白間私学部長、西田大学振興課長、平野大学改革推進室長 他

5.議事録

【日比谷座長】  それでは,所定の時刻になりましたので,第7回教学マネジメント特別委員会を開催いたします。
 大変お暑い中,また御多忙のところ,御出席いただきましてありがとうございます。
 本日は,森委員,それから佐藤東洋士委員は御欠席です。
 このたび,事務局に人事異動があったとのことですので,配付資料の確認と併せて御報告をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。令和元年7月9日より大学振興課長が交代してございます。西田憲史が着任をしております。
【西田大学振興課長】  西田と申します。よろしくお願いします。
【平野大学改革推進室長】  続きまして,資料の確認でございます。机上の議事次第に記載のとおりでございます。机上資料はお手元のタブレットの方に入れております。抜けている資料などがある場合には,お気付きのときに事務局までお声掛けをお願いいたします。
【日比谷座長】  資料はよろしいでしょうか。
 本日も,前回に引き続き,「学修成果の把握・可視化」についての御議論をお願いいたします。
 毎回同じことを申し上げていて恐縮ですけれども,今回も主に大学内部における学修成果の把握と可視化,その利活用についての議論をお願いしております。学修成果を含む大学の情報をどのように大学の外に公表すべきかという「情報公表」につきましては,この後,第9回,第10回において扱う予定ですので,このポイントにつきましての議論はその折にとっておいていただきますようにお願いいたします。
 それでは,本日は,まず,事務局から,本日のテーマに関する調査研究として,「大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究」というものがございました。これについての説明をお願いします。
 それから,前回の議論を踏まえて事務局に前回資料のアップデートをしてもらいましたので,そちらについても説明をお願いし,その後,議論の時間をとりたいと思います。
 では,事務局よりお願いいたします。
【髙橋大学改革推進室室長補佐】  失礼いたします。
 まず,大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究について,使用しますのは資料2の方と,委員の方のみになりますけど,席上に,報告書を配付させていただいております。傍聴の方等は,ウエブで公開されているものでございますので,後ほどごらんいただければと思います。
 説明に入ります。
 まず,資料2の方をごらんいただければですけれども,こちら,「大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究」の概要となっております。こちらは,昨年,グランドデザイン答申の議論と並行して実施した調査研究ということになります。実はこの教学マネジメント委員会の第4回のときにも簡単に説明をさせていただいているんですが,簡単な紹介にとどまってしまったため,改めて御説明のお時間を頂いた次第でございます。
 この調査は,調査の概要,1,2の辺りに記載ございますけれども,大学教育の質の向上・確保の観点から,各大学が学修成果を可視化する際に,どのような形での収集,分析,公表を行っているか,その結果についてどのように活用しているかということについて調査を行ったものでございます。
 調査の事項としましては,柱が4本ほどございますけど, 1つ目としては,国内の大学・短大に対するアンケート結果, 730校程度でございます。2つ目としては,国内大学・短期大学へのヒアリング調査,6校。3つ目としまして,海外機関へのヒアリング調査,これが機関がAAC&UとNSSE,そしてインディアナ州立大学インディアナ校の3つでございます。あと最後,4番目としては,企業の採用担当者の方にアンケート,これが1,091名分ということになっておりますけど,行っておりまして,結構複合的な調査結果になっております。
 内容については,1枚おめくりいただいて,まず1,国内大学・短大に対するアンケート結果でございます。こちら,図表1-1というのが左下にございますが,ここにあるとおり,様々な項目に対して学修成果に関する情報の公表や学内共有あるいは教職員での共有というようなことに取り組んでおりますが,各項目について差が見られます。特に単位の取得状況でございますとか,あとは学修時間,学生の成長実感・満足度という辺りは,これは教職員で使うというのはやっているんですけれども,学外への公表というようなものには踏み込んでいけなかったり,あと,先生方だけが知っていて学生・保護者も余り知らないというような話ということで,ちょっと使い方に項目ごとに差が出ているというような現状がございます。あと,こういった今挙げたような項目も含めて活用度合いが高いところもあれば,例えばアセスメントテストの結果やTOEICやTOEFL等の外部試験のスコア,留学率,卒業生に対する評価,卒論・卒研の水準などというふうに,どのレイヤーからも利用度自体がちょっと低いというような項目もございます。そんな現状でございます。
 図表1-2についてですけれども,これは学修成果を公表することへの期待とございます。多くの大学,9割以上のところが,社会への説明責任が果たせるという観点からこの学修成果の公表というものを活用していらっしゃると。ただ,こちらの委員会で主に審議している中で重視しているような項目,例えば学内の教学マネジメントへの気運の醸成であるとか,学生の学修意欲の向上というところにつながると考えている大学は半分ぐらいと,そんな状況になってございます。
 図表1-3でございますが,学修成果を外部に公表する上での課題としては,これは多くの大学が挙げているのが,公表するプラットフォームが整備されていないこと,あと,大学の実態が伝わらず,誤解を生む可能性があるということでございます。
 報告書本体の方の21ページをごらんいただければと思うんですけれども,いろんな分析の項目があるんですが,例えば21ページの一番下のところですと,今,学修成果を外部に公表する上での課題としては,プラットフォームの未整備と,実態が伝わらないというような話もありましたけれども,例えば地域分析を入れてみると,首都圏では,学内で理解が得られていないということがほかと比べて高いですよなんていうようなことも,報告書本体の中では記載がございます。
 また,今のところに関連しますと,1枚めくっていただいて23ページ,24ページというところがございます。ここは学修成果を公表したことに対しての影響というのがありまして,24ページ,「教職員への影響について」なんていうところも,上から1つ目,2つ目というところですけれども,外部に公表する過程で現状を認識することで,学内での教育改善の動機付けにつながった,あるいは教育の質向上に向けたPDCAサイクルの起点となったなどということが,学修成果公表の一つの効果としてアンケートの中で出てきています。
 同じように,ちょっと下の「在学生への影響について」というところの例えば2つ目,授賞等の実績を公表することにより,学生の意欲向上につながった。英語力の高い学生が入学してきているなんていうようなアンケートが挙がってきたり,4つ目の数値で状況を見ることにより,学生の意欲が向上したとの意見があったなどというように,教職員や学生に向けてもこういった学修成果を公表したことの影響としてプラスのものというのが幾つか散見されるところでございます。
 済みません,概要資料の方に戻りまして,3ページ目でございます。こちら,国内大学や短期大学のヒアリング調査でございます。こちらはケースごとになっているので,報告書の方では各大学の記述がありますので,こちら,まとめの方で説明させていただきますけれども,今回,ヒアリングに御協力を頂いた各校からしますと,ディプロマ・ポリシーに設定されるような到達目標というようなもの,これに関連させた学修成果の設定ということを頑張っている大学さんというところに御協力をお願いしました。実際の評価の手法としては,各大学が工夫してというような形になるんですけれども,直接評価としての外部の共通試験,ルーブリック,eポートフォリオ等の活用,間接評価として学生評価,卒業生調査,インタビュー調査等が用いられているということが例として収集できております。
 学修成果を達成するための取組についてというようなことでも,こちらもここまでの議論の中でも非常に重視されておりますけれども,学生に自己の学びを振り返る機会を提供するために,成績上のシステムであったりeポートフォリオというものの活用というものが各大学で行われていると,そういう事例が紹介されてございます。
 あとは,測定や分析というようなところで,自分たちでデータを取った学修成果あるいは外部の共通試験とGPAなどというものがどのように関連しているかなどというような分析を行う大学,あるいは学生調査等の結果を経年比較することによって特定の取組,何かやったことの意味があったかどうか,そういうようなことを測ろうというふうに試みている。あとは,同じ枠組みでやっている学生調査を学校間で比較するなんていうようなことも結構自主的に取り組まれているというような結果でございました。
 こちらも報告書の本体の中だと,例えば50ページのところとかに,各大学同じ作りになっているんですけど,特に学修成果を設定するに当たって,学内でどのような検討プロセスを経てこれが我々の学修成果だということを定めているかというところは,ここは各大学で様々な工夫がなされているところでございます。要は,少数の委員会で案を作って全学に提示していったり,もう最初から50人規模ぐらいの大きな委員会を作って全学的にこれが我々の学修成果だってコンセンサスを作っていく,そういうような形で様々な工夫が例示されており,非常に興味深い,示唆に富むようなインタビューの内容になっているかと思います。
 再び概要の方に戻りまして,学外機関のヒアリング調査の方でございます。こちらは3機関に伺って調査をしてきてございますけれども,AAC&Uの方ではVALUEルーブリックの活用についてということで,インタビューですのでいろんなことを言っているんですが,端的に団体さんの方が主張されていたのは,VALUEルーブリックというものは学んだ知識を定着しているかどうかというだけではなくて,他の状況で使えるかどうかの応用力というものを図ろうというふうにAAC&Uは考えていると。そのために各大学はどういうふうに使ったらいいかであるとか,各大学のカリキュラムにどのように適用させるようなというコンサルティングのようなこともやられているというような内容でございます。そのおかげで教職員の方からは良好な評価を頂けているというような話がございました。
 今度はNSSEで,こちらは学生調査の観点からということでございます。これもインタビューの中で特に主張されたのが,学生調査は継続して実施することで安定した結果が得られるようになると。それによって逆に,当初は批判的な教員の方も受け入れてくれるというような内容になってございます。また,2つ目のところですけれども,収集した学修成果を解釈して実践の場で使っていくという,これは意外と実は難しいと。とにかくこういった学修改善の取組,学生調査を通じた改善の取組に多くの人が関与していくというような意識が高まるということの方が重要であるということでございました。あと,ここの場でもよく比較可能性の議論が出てくるんですが,学生の学修の差というのは,大学同士の差というのもないわけじゃないんですけれども,それ以上に学内でやっている学生とやっていない学生で,ここの差がなぜ生じるのか,どれぐらいの差が出ているのかというような学内の差の方に注目するということが重要であると言われてございます。
 本体の方の77ページをごらんいただければと思います。批判についてというような項目もあるんですけど,例えば2つ目のところとして,プロセス重視であって,成果のところにフォーカスしてないんじゃないのというような批判も受けておりますが,確かにポリシーメーカーとかリーダーと言われる人は成果の方にフォーカスをしてしまうんですけれども,結局,成果が出てきたときの改善とかを考えると,プロセスの方で何が起こっているのかということを把握することが大事であると。そういう哲学に基づいてNSSEは学生調査を行っていますというような記述がございました。
 もう一度,インディアナ大学の方ですけれども,こちらは大学なので,大学としての学修成果の活用等についてインタビュー結果が出ております。大学として卒業時に到達していてほしい能力というのを大学として設定していますと。それを直接評価,間接評価によって把握するように努めていますというような話と,あとは,コミュニティー活動の経験等,大学の発行する正式な書類として正規授業の成績以外のものも学修記録を出していますよということ。また,その手段としては,具体的にはeポートフォリオを活用していますよというような話がございました。
 また,これに関連して,83ページで,ちょっとこのアンケートの趣旨とは違うんですけど,「直接評価と間接評価の組み合わせについて」というところが非常に示唆に富むなというような表現がございました。要は,直接評価と間接評価の組合せというのは,学生に学んでほしいと考える学修成果がちゃんと設定されていた上で,学生が学んだことを測るためにはテストとか課題というような直接評価がございますけれども,何で学ぼうとしているのかとか,どうやって学んでいるのかとか,あるいは何で学んでくれないのかということを知るためには,間接評価であるアンケートとか,そういったものを組み合わせて運用していくと。これは一大学の見解ではございますけれども,ここの場で議論している直接評価,間接評価の議論というのを端的に示しているものかなと思いましたので,御紹介させていただきます。
 最後でございます。概要の4ページ目ですけれども,採用担当者に対する学修成果等に関する意識調査でございます。こちらは企業担当者に聞いてみた結果ということでございますけれども,まず,能力等についてはどういう能力を重視するか等に関しては,これは比較的ほかの調査と同じような,「コミュニケーション能力や倫理観」を重視している,「チームワーク・リーダーシップ」等が重視されているというような結果が出ております。ただ,ちょっとこの調査独特のところとしましては,eポートフォリオを知っていますかというような問い掛け,図表4-2でございますけれども,ここに対しては,「知っていて,実際に使ったことがある」と「知っているけど,まだ使っていない」というような人を合わせると大体35%強という,3割強というのが大学の中で行っているeポートフォリオという取組は知っているという方でした。
 実際使ってみた方々は,これ,4-3になりますけれども,役に立つと考えている方というのが8割を超えるというような内容になってございます。
 そういうので,そこまで知っている方というのはよく中身も見ているということで,4-4のところになりますけれども,やっぱり,知っていて実際に採用に使ったことがあるよという人たちは,例えば学修時間であるとか,授業や課題の自己評価であるとか,インターンシップ,サークル活動などというような,学生が何をやっていたかというところを非常によく見ていらっしゃるというような結果が出てございます。
 あとは,公表することが望ましい情報としては,4-5でございますけれども,これはほかの内容というのもいろいろ出てございますが,この教学マネジメントの関係で言いますと,学部・学科で学んでいることが分かるような情報,あるいは大学の個性や特色が分かる情報というものが出てほしいと。
 大分総論的に御報告申し上げましたけれども,調査研究の内容としては以上のような内容でございます。
【平野大学改革推進室長】  続きまして,資料3-1を御説明させていただきます。
 資料1につきましては,前回の主な御意見でございます。いつものとおり,説明は省略をさせていただきます。
 3-1でございます。修正点について下線を付してございます。主要なところについて,どのようなところを変更したのかということを御報告させていただきます。
 まず1点目でございます。行数で申し上げると8行目,20行目,26~27行目辺りでございます。森委員からの御意見で,教育の評価というものが,評価のための評価ではなく,あくまでPDCAを実践するためのCであると。大学による教育の改善というのを目標にして行われるものであるということを強調するべきであるという意見を踏まえたものでございます。
 続きまして,丸4の1つ目の黒丸でございますけれども,ここの部分は順番を,前は実は大学の教育成果の把握と学生の学修成果という順番で書いてあったんですが,これを学生の方を頭に持ってきたという順番の修正というところはあるわけでありますが,14行目から15行目にかけて,一人一人が自らの学びの成果やその結果身に付けた能力を把握できるようにするということが,非常に学生のうちから重要であるという益戸委員の御意見を反映しているところでございます。
 また,今回,「学修成果」という言葉と「教育成果」という言葉についてどのように考えるのかということがございましたので,学修成果は学生個人の自らの学びの成果,教育成果というのは学生を育成できているということということで,今回,簡便な形で付してございますけれども,最終的なものを作るときには言葉の部分はしっかり精査してまいりたいと思ってございます。
 続きまして,31行目でございます。前回,林委員からでございますけれども,この議論というのはディプロマ・ポリシーが既に完全なものができているということを前提に組み立てられているのではないかと。ここは実際問題があるところなので,ディプロマ・ポリシーの見直しにつながるような可視化ということが重要であるということがしっかり分かるようにする必要があるということでございます。ここは,見直した結果を,「卒業認定・学位授与の方針」の見直しそのものにつなげていくということを書かせていただいております。
 また,この25行目からの黒丸は,前回,大学全体レベルの事項として位置付けていたわけでございますけれども,こういったサイクルの考え方自体は幾つかのレベル,3つのレベル全て妥当するものでございますので,今回のところは総論の方に移させていただいているところでございます。
 続きまして,2ページ目,ごらんください。2ページ目,「大学全体レベル」,1つ目の黒丸でございます。前回,浅野委員の方から,学修成果を測定するということについては大きな困難があると。なかなか短期にできるものでもなく,社会の関心も理解も低いと。なかなか学内においても理解を得られないと。こういったことを踏まえて,しっかり取り組むべき困難な課題であるということを明示したのが3行目から5行目でございます。その上で,各大学の強み・特色を踏まえた大学全体としての教育理念に即して,しっかり大学として開発を進めていくということを強調するという流れにしてございます。
 8行目以降の2つ目の黒丸でございます。こちらについては,学修成果可視化の手法という部分も大事だけれども,例えばスタッフの問題でありますとか,また,よりよい評価を行うためにリソースの配分などの問題ということを議論する必要があるのではないか,このような御意見を益戸委員や吉見委員から頂いているところでございます。今回,8行目から14行目の部分については,大学全体レベルとしてどういった体制を整えるべきかということの理念的なことを書かせていただいたわけでございます。学内で理事・副学長等の所掌の整理などによって責任者をまず明確化する,各組織の代表者から成る委員会を学位プログラムレベルとの連携を前提として構成するなどの段階を踏まえること。その上で,学長のリーダーシップの下で改善を進めることができる全学的な組織を整備すること。その上で,専門スタッフを活用して作業分担を適正化する。ここは今回このような形で置かせていただいておりますが,今後,指針を作るときには,括弧内で入れさせていただいてございますが,あらゆる今回まで取り上げていただいた教学マネジメントに関する営みを運営する上で,組織・体制に関する議論というのは共通する部分でございます。しっかり指針の総論として位置付けることも今後検討してまいりたいと思ってございます。
 続きまして,「学位プログラムレベル」でございます。「学位プログラムレベル」,22行目でございます。前回,大森委員の方から,学修の成果の把握の方法というものについては,これは各大学の「卒業認定・学位授与の方針」に基づいて把握されるべきものであるということを強調していただいたところでございます。その旨を22行目から23行目に盛り込ませていただいてございます。これが,ディプロマ・ポリシーというものが成果の把握・可視化の出発点,元であるということでございます。
 また,31行目でございます。幾つか,文末が「考えられる」というところを「必要」というふうに書き換えている部分がございます。これにつきましては,幾つか後半の方に特に出てくるわけでありますが,全てが段階なしに全部取り組まなければいけない,若しくはそうでもないということが分からないということではなく,何にまず取り組めばいいのかということから始めて,段階的に具体的に記述することが望ましいのではないかという御意見を頂いてございます。そのような観点から幾つか,これは最低限やはり各大学で今後取り組んでいくことが必要だということについては,文末を「必要」というところでさせていただいており,また,その次にというところについては「考えられる」といったような例示という段階分けをさせていただいてございます。この「必要」と「考えられる」の段階の違いというものについては,実は資料3-2なんかで言いますと,把握・可視化の義務付けが考えられる項目ということで,グランドデザイン答申の中で義務化というものを視野に入れているものと,また,そうではなくて一定の指針を示すというもの,この2つに分かれているわけでございます。この義務化というものについては,当然,各大学で必要なので義務化するということが視野に入っているわけでありますので,そこに関係する項目については基本「必要」というふうに現段階では整理をしております。
 続きまして,3ページの方をごらんください。3ページの方は,上の方,幾つか変えているのは,先ほど申し上げた「必要」と「考えられる」というものを仕分けする過程で文章が少し入れ替わっているということでございます。
 21行目,「学修に対する意欲」という部分については,前回,佐藤委員から,これを義務化するのかといったような問題提起があったということで,注意喚起の観点から斜体にさせていただいてございます。また本日も御議論を頂ければと思います。
 4ページをごらんください。4ページの3行目以降7行目まで掲げられているものについてでございます。これ,ちょっと文章が済みません,もうちょっとしっかりこなれたものを作らなければいけないんですが,2つのことを実は反映しているものとして御理解いただきたいと思います。1つは,佐藤委員の方から,学修成果として把握・可視化すべき情報として最も重要なものは,「卒業認定・学位授与の方針」の達成状況であると。これをしっかりと掲げるべきではないかということの御意見がございました。ここについては,もちろん,「卒業認定・学位授与の方針」の達成状況を把握するという目的の観点から何を把握するのかという観点で各項目掲げられているということで,6行目から7行目,「卒業認定・学位授与の方針」そのものの達成状況を把握するために最低限必要な項目が掲げられているという形で,関係性を整理させていただきました。
 その上で,先ほど「必要」と「考えられる」という項目の仕分けについてお話ししたところですが,グランドデザイン答申においては,この点々々の中にある参考丸1,義務付けが考えられる情報の例と,2つ目の指針を示すことが考えられる情報の例というものの境はどこにあるのかということでございます。大学教育研究活動を行っている上で,当然現行の法令に基づいて把握することが,これ,「求められており」って書いてありますが,求められているもの,又は分野とかを問わずに全ての大学において十分把握が可能であって,ディプロマ・ポリシーの達成状況を把握するために必要なものというものを義務付けが考えられる項目として整理しているという考え方でございます。ですので,逆に申し上げますと,この参考丸2の方にあるような義務付けが考えられるような情報ではなくて,可視化というものについては,これは分野によってはこういった活動が行われないということも想定され得るという考え方で,中教審大学分科会将来構想部会の方では整理をしているということについて申し添えさせていただきたいと思います。
 また,19行目から21行目でございます。ここについては,グランドデザイン答申の整理,こうなっているわけでございますけれども,これに加えて,卒業率,リテンションレートのようなもの,中退率,このようなものについては,学修成果の一環として把握すべきではないか,これは外国でもよく使われているといったような御意見,あったわけでございます。前回,少し申し上げたかもしれませんが,この部分はグランドデザイン答申の枠に沿って議論をいたしておりますけれども,第9回以降の「情報公表」の項目ということを整理する際には,当然,なぜそれを把握しなければいけないのかという意義,また方法,こういったところに踏み込んでまいりますので,その際にしっかり検討を行うということをこの段階では明記をさせていただいたということでございます。
 続きまして,22行目からの黒丸でございます。ここについては,前回,小林浩委員の方から,評価を通じて学生が成長するということが考えられるという中で,学修成果の把握・可視化の文脈で振り返りやフィードバックという要素というものが明示されていないことが非常に気になる,活用,フィードバックということも盛り込むべきではないかということがございました。また,森委員の方からも,学生自身の学びの成長につながるような評価の在り方,このようなことをしっかり用意することが必要ではないかということがございました。26行目から28行目にかけまして,これは在学中に段階的に行われるもの,また,卒業時に最終的なものとして行われるもの,このような場面の違いはあるかと思いますけれども,学生によるフィードバックというものが適切に行われることで,学生がまとめ直した結果というものを基に自らの学修を振り返る,そして,卒業時というもののフィードバックというものについては,しっかりそれを社会に対して示していくということができるようになるという形で,段階はありますけれども,大学の側がしっかり学生さんに学修の成果に関する情報を適切にフィードバックしていくということを書かせていただきました。
 ここに併せて2つ御説明をしておきたいんですが,1つは,前回,ディプロマ・サプリメントということについてはどういうふうに考えればよいのか,これは書面で小林浩先生の方から頂いた御意見の中に入っていたかと思いますけれども,私どもといたしましては,ディプロマ・サプリメントと言われるような,卒業時に成績表というものを超えて学生の能力というものを示していく一つの営み,試みというふうに承知しておりますが,これについては,ここの卒業時に行われる学生がどのような能力を身に付けたかをまとめをして返していくと,こういうところで読んでいくということを今のところ考えているということでございます。
 もう1点は,きょうの配付資料の中に入っておりますので,ちょっと先取りしてしまうようで申し訳ないんですが,大森先生から,各情報というものを組み合わせて,関連付けて,包括的にということについてはどのようなことをイメージすればよいのかというような御質問を頂いていたわけでございます。前回はっきりとお答えできておりませんので,今の段階での考え方ということでございますが,実は,例えばこの資料2ページ目の25行目辺りには,「各大学が自ら様々な情報を組み合わせて」云々ということがございます。また,30行目というところでございますが,「『卒業認定・学位授与の方針』に定められたどの能力を伸長させるかが明らかになっていることが必要」ということでございます。3ページ目で言いますと,例えば3行目,「『卒業認定・学位授与の方針』に定められた能力にどのように結びつくのかを明らかにした上で活用する」,このようなことが書かれているわけでございます。このようなところで実は申し上げたかった趣旨というものについては,情報を組み合わせてというものについては,単独の情報で全ての能力等を代表させるということではなく,様々な情報,また手法というもの,直接的なもの,間接的なものを組み合わせてということを意図している。関連付けてという部分については,例えば4ページの25行目にちょっと書いてありますけれども,「『卒業認定・学位授与の方針』の各項目に紐づけて」ということで書いておりますので,基本的にはディプロマ・ポリシーの各項目というものにどの情報が紐付いているかというのを「関連付けて」というふうに表現していると。そして,「包括的に」というのは,このようなことをやることによって,一面的ではなく,学生の成長,学修上の能力の伸長というものを様々多面的な角度から描き出すことができると,このような意図でございます。頂いた御指摘を踏まえてしっかり最終的な成果物の中では整理学を考えてまいりたいと思ってございます。
 大体,資料3-1の説明は以上でございます。
 こちらの方につきましてはまた,前回頂いた御意見の中でこの部分以外の部分で反映させていく御意見というものもありますので,全て反映できていない部分もありますけれども,このような形で一旦整理をさせていただいてございます。
 資料3-2の方については,修正は基本ございません。基本ございませんけれども,前回もお話を申し上げておりますが,2ページ目でございます。2ページ目の学修時間の丸3番,把握・可視化の方法,学生へのアンケート調査を通じた収集ということ,学修時間を書かせていただいていますが,この下に※で斜体という部分がございます。どのような方法でこれを把握・可視化していくのかという手法の部分,ここについては斜体にしているのは,ここはまたこの会議の場でも結構ですし,その後でも結構でございますので,また各先生から御意見を頂きたいということの部分の一つでございます。
 また,その下2つの部分の学生の学修に対する意欲の部分は,先ほど申し上げたように,前回,少し議論が出ておりますので,注意喚起の観点から斜体ということにさせていただいている部分でございます。
 前回の御意見,資料1に記載させていただいてございますけれども,その意見を踏まえた修正というものは以上になります。よろしくお願いいたします。
【日比谷座長】  御説明ありがとうございます。
 それでは,これから75分程度になるかと思いますが,議論の時間といたします。いつものように,御発言のある方は札を立ててください。事前に御提出の資料がある場合には,そちらにも言及いただければと思います。
 それでは,沖委員,お願いします。次,深堀委員で,佐藤委員。はい,お願いします。
【沖委員】  失礼いたします。沖でございます。
 大きく2つの点について提案をさせていただきたいと思うのですが,まずは2ページ目の「大学全体レベル」のところです。非常にいい文章を書いていただいていますが,1つ,ここは「各大学においては,自らの強み・特色等を踏まえて設定した大学全体としての教育理念に即し」ということになっていますので,例えば正課外学修を含むのか,含まないのか――いや,私は含むべきだと思っているんですが,それが分かるように書いていただいた方がいいんじゃないかなというのが1点目です。
 それから2つ目ですが,4ページから5ページにわたって「ルーブリック」という言葉が何回も使われております。正式な言い方自体がフィックスされているわけではありませんが,例えばカリキュラム・ルーブリックあるいは長期的ルーブリックと呼ばれるルーブリックを指しているところもあれば,コース・ルーブリックの意味で書いてあったり,あるいは採点用ルーブリックのつもりで書いてあったりするところがあります。恐らくこれは読んだ人には全く分からないだろうと思います。そこを、何らかの囲み記事か注釈を別にして分かるように書いていただければいいかなと思います。例えば5ページのところの2行目には,これは恐らくカリキュラム・ルーブリックを意図しておられるかと思うんですが、10行目辺りの「教育課程を担当する教員が集団でしっかりと体制を組み」というのは,ここには「ルーブリック」という言葉は使われていませんが,おそらく前回,横浜国大がお示しになったようなコース・ルーブリックなんかを想定しておられるのでしょう。あるいは4ページの下の方の個々の授業科目レベルならば,やはり採点用ルーブリックという言葉を,特にレポート,実技,グループ活動の評価というようなものを例示して説明しておいた方がいいだろうと思いました。
 それに絡みまして,私の資料なのですが,3ページをごらんいただきたいと思います。VALUEルーブリックは先ほどもお話がありましたが,基本的にはディプロマ・ポリシーで使うような項目を評価するような仕組みとして用いられているだろうと思っています。4ページのところに東京慈恵医科大学の看護学科の例を挙げておきました。DPが大きく8つあって,更にサブDPが2つずつぐらいあるんですが,4ページの下の方はそれをマップとツリーで表したものです。そして,イメージとしてカリキュラム・ルーブリックというのは,次の5ページのところにありますように,1個のDPに対して先ほどサブが2つあると言いましたが,それぞれについてL1からL4(学年を想定)と分かれて書かれているものです。つまり1個のディプロマ・ポリシー(2つのサブDP)を更に学年にブレークダウンしていって,各段階の到達目標として示してあるものがカリキュラム・ルーブリック、そしてそのマップ・ツリーは各段階(L1~L4)に配置されてあります。こういうようなものを使うと,もちろんディシプリンに明確なところじゃないとなかなか難しくて,全部このようなものが整合的にできるわけではないんですが,各段階の重要な科目の学修成果について検証することで各段階の達成度が明確になり,最終的にはL4段階においてDPの達成度の把握ができるのではないかと思います。
 以上でございます。
【日比谷座長】  では,深堀委員,お願いします。
【深堀委員】  ありがとうございます。
 今の事務局からの御報告について,非常に丁寧にまとめてくださいまして,ありがとうございました。これまでの議論の中で,私と,それから浅野委員が主に主張してまいりました観点が大きく抜けていると感じましたので,その点,指摘させていただきたいと思います。
 その点というのは,先ほど事務局のディプロマ・サプリメントについての御説明にも象徴されていると思います。ディプロマ・サプリメントについて,「それぞれの学生がどういう能力を身に付けたのかということを可視化した情報を学位に添付する」というような御説明をされましたが,もともとディプロマ・サプリメントが生まれてきたヨーロッパの文脈の中では,それは個々の学生の能力に焦点化するものではなく,「学位」が制度全体の中にどのように位置付けられ,「学位プログラム」がどのような知識や能力を育成しようとしているのかを客観的に説明することを目的としています。その一つの項目として,成績評価の情報を加え,学生が学位を取得するに値する成績を修めたのかを説明しています。このヨーロッパの質保証の枠組みは,アメリカも追随する形で制度が整えられてきていますが,大学の自律性や多様性を保ちながら質を保証する方法として,学ぶべき点が多いと思います。大学教育とは何か,その中で学位は何を保証するものなのかという大きな枠組みの議論を抜きに,多様な大学で育成された学生の能力を,何らかの一般化された指標で直接可視化することにどれだけの意味があるのか。さらに,大学教育の大きな枠組みを共有しないまま,各大学がディプロマ・ポリシーを思い思いの方法で策定し,それに基づいて非常に精緻な仕組みで学修成果を可視化したところで,一体,何を説明しようとしているのか。これまでに日本でも,「学士力」や「分野別参照基準」の策定など,様々な努力がなされてきました。その成果はこの議論の中で一体どのように位置付くのか。全く無視して議論をすすめてはならないのではないかという点を指摘させていただきたいと思います。
 それに関連して,事前に資料を提出させていただきました。資料4の22ページをごらんください。「参照基準に基づいた抽象的な学修成果」をそれぞれの大学の学位プログラムと授業科目の中でどのように具体化していくのか。それは非常に高度な専門的な判断力(エキスパート・ジャッジメント)が求められる取組ですが、そうしたエキスパート・ジャッジメントをどう涵養していくのかということについての一つの方法論として,国立教育政策研究所でこの10年余り取り組んできたことについてまとめたのが本資料です。
 23ページをごらんください。この取組は,2008年から2012年にかけて実施されたOECD-AHELOの後継事業であります。OECD-AHELOとは,国や大学の違いを超えて,大学が学生にどういった知識や能力を身に付けさせたいのかということについての合意を形成して,テスト問題に具体化できるかどうかを検証する取組でした。日本は工学分野の取組に参加しましたが,この取組を通してエキスパート・ジャッジメントが著しく涵養される効果に着目し,その後も継続的に取り組んでまいりました。図にお示しした通り,延べ25機関65人の専門家に御参加いただいて,参照基準に基づく抽象的な学修成果をテスト問題に具体化する取組を継続しております。さらに,それを各大学で実施して,ベンチマーク情報を含めてフィードバックをすることで教育改善に活かしていくというスキームを,今,開発しているところでございます。
 24ページは,この取組で採用している参照基準です。ヨーロッパ,アングロサクソン国,東アジアの国々の技術者教育の中で合意されている基準に基づいて,OECD-AHELOのなかで作成した枠組みです。25ページが,具体的なテスト問題の事例です。多肢選択式問題と記述式問題の両方を作成していますが,特に「技術者のように考える力」を測定することを目指す記述式問題の例を挙げさせていただきました。
 重要なのが26ページの表です。3つのコラムの右から,「授業科目レベルの具体的な学修成果」(青字)と,「参照基準に基づく抽象的な学修成果」(赤字),学士力等で言われている「汎用的能力」の順に,それらの対応関係,それぞれがどう紐づいているかを整理したものです。大学教員には,このように抽象性のレベルの異なる学修成果を行き来しながら,学修成果の評価を行うことが求められているわけです。大学教員は,青字で示す授業科目レベルの学修成果の評価においては,長年の経験を蓄積してきましたが,今求められているのは,赤字で示す学位プログラムレベルの学修成果,参照基準に基づく抽象的な学修成果の評価なのです。
 次の27ページは,こうしたアセスメント・ツールを教学マネジメントにどう活用していくのか,九州大学で検討を進めている具体例をお示ししております。まず,左の欄の学修成果は,ディプロマ・ポリシーを参照基準枠組みに基づいて整理したものです。一番下から,主体的な学び・協働,知識・理解の習得,知識・理解の応用,新しい知見の創出,実践的場面での活用という分類で並べたうえで,1年生から4年生,修士,博士課程の授業科目がどう紐づいているのかを整理しています。このカリキュラム・マップ(コースツリー)を整理するうえで,先ほど申し上げた授業科目レベルの学修成果と参照基準に基づく抽象的な学修成果との紐付けについての理解が非常に重要な意味をもってくるわけです。
このように整理したうえで,学修成果の達成度の評価を複数の段階で導入しています。例えば2年生で8大学連合会の達成度調査(専門力)などで知識の習得度を確認し,4年生で国立教育政策研究所のテスト問題バンクで考える力を測定し,プログラム修了段階でルーブリック等を用いたパフォーマンス評価を導入するなどの方法でディプロマ・ポリシーの到達度を確認していく取組が構想できます。ルーブリックに基づくパフォーマンス評価の客観性を確保するうえで,先ほど申し上げたエキスパート・ジャッジメントが非常に重要な意味をもつわけですが,達成度調査やテスト問題バンクなどの経験を通して教員が抽象性のレベルの異なる学修成果について議論し,理解を深めることができる点も,非常に重要なポイントとして強調しておきたいと思います。
 29ページは,前回の会議で御報告させていただいた授業科目レベルの学修成果の習得度と学位プログラムレベルの学修成果の達成度の関係を整理したものです。最後の30ページは教学マネジメントのPDCAサイクルですが,学位プログラムレベルのPDCAと授業科目レベルのPDCAを明確に分けたうえで,それらをリンクさせていく仕組みを具体的に考える必要があります。真ん中の細長い丸でお示しした,「学位プログラムの学修成果と授業科目の学修成果を紐付ける取組」,「学修成果を把握・可視化していく取組」が,正にこの2つのレベルのPDCAをつなげていく仕掛けとして御説明させていただいております。
 長くなりましたが、以上です。
【日比谷座長】  佐藤委員,お願いします。
【平野大学改革推進室長】  資料に基づいて……。
【日比谷座長】  あ,ちょっとごめんなさい。平野さん。
【平野大学改革推進室長】  ちょっと,今,深堀先生から頂いた件について補足をさせていただきたいと思います。
 まず1点目のディプロマ・サプリメントということについては,もちろん,そのような沿革というもので出てきているということについては承知している一方で,いわゆる日本版ディプロマ・サプリメントと言われるようなものも出てきたりしていて,今,定義が定まらず,本来のディプロマ・サプリメントとはまた違った言葉も流通していたりするところもあり,実はそういうことも踏まえて資料上あえて「ディプロマ・サプリメント」という言葉を使っていないという形にしておりますので,私の口頭の説明では少し不十分でありましたけれども,そのような理解でございます。
 あともう1点は,事務局としてでございますけれども,先生おっしゃっていただくように,前回,何人かの先生から,大学が作る学位プログラムの学修成果というものを客観的にどのように位置付けていくのかということについて枠組みなどが必要ではないのかという御議論を頂いているわけでございます。実は,それは今こういうふうに,今どのようなところにそういう検討が到達しつつあるのかということはお示ししていただいているわけでありますけれども,今回,この教学マネジメント特別委員会,年末までの中で何をどこまで議論するのかということを第3回の資料の中でも日比谷先生から整理していただいている中で,この委員会,年末までにミッションを果たすという意味では,現行の今の状態というものを踏まえて各大学がどのような形で取り組むのかというところにフォーカスしているという観点からいたしますと,各大学が――これ,以前,林先生からもたしか同じような意見を頂いて,資料反映しておりますが,学位プログラムを作る上で,どういったものをしっかり参照して,どういったような形で客観的に説明できるのかというところは追求するべきであるというメッセージについては盛り込むという形でやらせていただいておりますけれども,その枠組みを超えて,実際にこれをどういうふうに運用を進めていくのかというところはなかなかこの場では扱いにくいところがあると。ただ,一方で,第3回で日比谷先生に御説明いただいているとおり,中教審としても,今後,大学教育の質保証そのものというものをどのように扱っていくのかということで,例えば設置基準,認証評価,その他も含めて,国レベルで大学を超えてどのような質保証を行うのかということについては,部会を設定して議論をしていくということになっております。また,この会議で頂いている御意見はそういうところとも関わるものが非常に多いわけでありますので,こういった意見についてはしっかりとまとめさせていただいて,しかるべき場所に引き継がせていただくということを考えております。
【深堀委員】  はい,よろしくお願いします。
【日比谷座長】  佐藤委員,どうぞ。
【佐藤(浩)委員】  資料4の14ページに沿って御説明をさせていただきたいと思います。まず,今回,タイトルとしては「可視化の議論に関わるミッシング・ポイント」ということで,これまで議論されなかったり,本文の中にまだ取り入れられてないであろうと思われる点について,今回は御提言させていただければと思います。
 まず1点目ですが,アセスメントの前提ということで3つの文章をここで引いております。まず1点目は,『星の王子さま』からの有名な一節。そして2点目は,文科省の国立教育研究所にも勤務されていた板倉先生の文章ですね。特に今回,意欲について出ておりますけれども,意欲のようなものを評価することによって,それが破壊するような結果を及ぼす危険さえあると書かれていることをお伝えしたいと思います。教育学者の中では有名な一節かと思います。そして3点目は,アメリカの大学の歴史の専門家であるミュラー先生ですけれども,学部長・学科長等も経験された方の文章です。測定することに対する批判をしているわけではなくて,測定基準に対する執着を問題視しています。政策の立案者も含めて、ここに書かれているような信念に基づいて測定基準への執着が存在している。これに対する疑義を提起されているということでございます。
 二重丸部分が私の言いたいことなんですが,学修成果のアセスメントというものは適切に行われれば有益なのですけれども,全ての学修成果を把握することはできないし,してはいけないものもある。また,把握した成果の全てが可視化できるわけでもないし,それが改善されるわけでもない。また,意図せざる負の結果を生み出すこともあるということを前提に我々は議論するべきだと考えております。これは,企業に御勤務の委員の方も,御自身の社内での評価を考えていただけると分かることかなと思います。
 そして2番目です。今回,先ほどの事務局からの修正版で,大分書き込まれたかなという気もしておりますけれども,そもそも論のところのアセスメントの目的ということですね。やはり何のためのアセスメントなのか,何のための教学マネジメントなのかについて,学内でやはり熟議の上で出発点を作る必要があると思っております。特に,ここにも引用しておりますけれども,そもそも外から言われたからではなくて,大学自身と学生のために行うべきものであるという,この大前提の確認も学内でしっかりしておく必要があると思います。15ページに移りますけれども,言い方を換えれば,学修成果のアセスメントというのは,全学を挙げての共同研究だと思います。よい研究には当然よいリサーチクエスチョンが必要ということで,鳥居先生の文章を引用させていただきましたけれども,アセスメントに当たっての全学挙げてのリサーチクエスチョン、どういう問いに基づいて進めていくのかということが非常に重要かなと思っております。
 それから3点目に,組織学習としての学修成果のアセスメントというふうに書いてありますが,今のようにこのアセスメントを考えるとすれば,これは組織論でいうところの知識創造の営みそのものであろうかと思います。外から言われただけではないということについても,こんな言葉を使って表現してもいいかなと思っております。
 4番目については,こちらも修正版で対応が若干されたと思っておりますけれども,学修成果のアセスメントの担い手ですね。1層の学習レベルでは,学生や教員,それからミクロレベルでは教員,そして3層では学部・学科長,教務系の職員,そして4層では教学担当の理事・副学長が主たる担い手ということで,当然,それに対するFD・SDあるいはIRerの配置・養成等も必要かと思います。
 また,5番目は,システムと書いてありますが,組織と言ってもいいかと思います。担い手と同時に,どういうシステムや組織でこのアセスメントを進めていくのか,もう少しこの点についても記述してもいいかなと思っております。このシステムを構成する3つの要素として,情報と消化と意思決定というものが書かれておりますが,特に今,各大学で問題になっているのは,消化の場がない,あるいは不足しているということにあるのではないかと思います。PDCAサイクルというのが今回出ていますけれども,特にCからAに移る,あるいはAからまた再度のPに移る辺りのプロセスについて,もう少し書き込んでもいいのかなと思っております。
 それから16ページですけれども,松下委員も書かれていたかと思うんですが,文言についてやはり気になる点が幾つかございます。「把握・可視化」ということで中黒でつないでありますけれども,恐らく厳密に言うと「把握」と「可視化」というのは違うことなのかなと思います。例えば把握というのは,成果のアセスメント(測定)のことなのかなと。あるいは,可視化というものは,その測定された学修成果を量的・質的に表現するということなのかと。この辺りについても用語集の方できちっと定義をしておいた方がいいかなと思っております。
 その上で,この把握・可視化の義務付けと,3番目にあります一定の指針の,ここに私もこだわっておりますけれども,これもしっかりとした定義を基に仕分けした方がいいと思います。義務付けするのは、教学マネジメントを行う上で全ての大学において学内で共有しておく必須の事項,この定義は先ほど事務局が口頭で多分説明されていたと思うんですけれども,あれをしっかりと書いた方が私はいいんじゃないかと思うんですね。ただ,そうなると,実は,アドミッションに関わる情報なんていうのも入ってくるような気もしているんですが,これについては恐らく委員会の領域があると思いますので,ここでは列挙しなくてもいいのかなと思っております。情報例で既に挙がっているもの,特に2番目の義務付けから外すべき情報のところで,学修時間を入れました。というのは私も最後まで迷ったんですけれども,理由の1つは,政策文書で「可視化」というとすぐに学修時間というのが外に出ていくんですが,ほかの国の研究者と話していても,やっぱり高等教育レベルで学修時間を前面に出して議論している国というのはあまりないんじゃないかと思います。国としての品性の問題なのかもしれませんけれども,余りここにこだわり過ぎて,これだけが前に出ていくというのはよろしくないなと感じています。特に初等中等でも,今,個別最適化学習ということが進んでおりますので,時間にこだわるというのをあえてここで出すのはやや時代遅れな感があります。もう一つの理由は、実際に測定の難しさというのも我々経験しておりまして,聞いても結局のところよく分からないというのが続いておりますので,この辺についても再度検討する必要があるかなと思っております。関わって,成長実感・満足度,それから意欲,これについてもまだまだ不確定・不安定なものですので,これを全国レベル――各大学がやるのは御自由だと思うんですけれども,義務付けするということについては私は非常に慎重であるべきだと思っております。その代わりにということで,成績の分布状況ですとかリテンション率を入れてはどうかと思います。これらについては本文中では触れられておりますけれども,結局,こういう指針が出ても,資料3-2にあるこの表が多分出回るんです。これでもって各大学が動くことを考えると,やはりここにきちんと落とし込むなり,ここの情報を精査するということが大事かなと思っております。
 そして丸3番目にある、「指針を出す事項」ですけれども,こちらは,学内で共有することが想定されたり望ましい情報だということなんですが,ここはいろいろ出ておりますのは全て挙げてもいいと思うんですが,前回,松下委員が発表された例えば重要科目における学修成果,こういったものも卒論につながるものとして入れる必要があるのかなと。ただ,こんなふうにして考えていくと,実はいろいろほかにも出てきて,国家試験の合格率とか臨床実習とか統合実習とか卒業制作ですとか,こういったものが漏れていて一部の評価指標だけが出ているというのが,どう考えたらいいのかなということなんですね。ですので,一定の指針というよりは,学修成果として扱われる情報例として列挙するぐらいにとどめた方がいいようにも思っております。
 以上でございます。
【日比谷座長】  それでは,松下委員,両角委員,益戸委員,浅野委員の順で行きます。松下委員,お願いします。
【松下委員】  ありがとうございます。今,佐藤委員がおっしゃったところでちょうど私の前回の報告のお話が出てきましたので,16ページのところから申し上げますと,医学系の臨床実習とか看護系の統合実習,芸術系の卒業制作とかいったものも,私の方では重要科目の中に入れて考えております。卒業論文などもそうです。
 では,私の方の意見ということで書かせていただいた部分,31,32ページのところをごらんください。
 論点を3つ挙げていますが,1番目,2番目については,既にかなり先ほどの事務局の御報告の中で対応してくださっているので,余り付け加えることはないんですけれども,今,佐藤委員がおっしゃったように,実際のところ,非常に効力を持つのはこの資料3-2だと思うんですね。資料3-1で直された定義の部分が資料3-2では修正が反映されてないように思いますので,そちらの反映をお願いします。
 それから,5月の委員会の議題で,ちょっとさかのぼるようで申し訳ないんですが,本日のインテージリサーチの調査報告とも関係しますので,3番目の全国学生調査について少し私の意見を申し上げたいと思います。
 原案と意見に分けて書いております。原案のところは繰り返しになりますので,意見のところだけ申し上げますと,今回の全国学生調査で参考とされたものとして,英国のNational Student Surveyと,それからきょうお話のあったNSSEが挙げられていました。ですが,細かく見ますと,参考にしておられるものとは食い違っている部分があるわけですね。その食い違っている部分については,別に全く同じものにする必要もないと思うんですが,なぜそういうふうに変えられたのかが十分説得力がないところもあるのではないかなと思います。
 まず1点目,参考とされた英国のNational Student Surveyでは,最終学年対象で回答率50%以上となっていますが,この調査では3年生の秋を対象にするということになっています。質問項目の中の問7で,幾つかの学修成果を挙げて,大学教育はどのくらい役に立っていると思うかというのを尋ねておられるんですけれども,例えば,「文献・資料・データを収集・分析する力」とか「論理的に文章を書く力」,「問題を見つけ,解決方法を考える力」,「多様な人々と協働する力」といったようなものは,4年生で本格的に取り組む卒業論文・卒業研究,臨床実習・教育実習等で伸ばす学生が多いんですね。きょうもある私立大学の方々とお話ししていたんですが,3年まではゆるやかな伸びだが,4年生になってこういった経験を通してぐっと伸びると言っておられました。多くの大学教員はそういうふうに感じていると思います。私は,3年生対象とした場合にその辺りが十分把握できないのではないかと思うのです。
 多分,今回,3年生対象にされたのは,4年生対象だとすると回収率が低くなるとか,生活時間が4年生だと1,2,3年とは少し違った結果になるので,参考にしにくいといったような理由によると考えられますけれども,回収率は工夫次第では一定水準を確保できると思うんですね。今でも卒業時の調査を各大学で行っていらっしゃいますけれども,そのやり方などは参考になると思います。4年生対象になれば,問4の大学での経験についての質問でも,卒業論文・卒業研究なども含むことができて,より明確に大学4年間での成果を把握しやすくなるのではないかと思います。
 この教学マネジメントでは,学士課程4年間のカリキュラムの体系化ということを非常に重視しているわけです。にもかかわらず,全国学生調査では3年生の秋を対象にするということになると,残りの1年余りの成果はこの調査で把握しなくていいのかということになりかねないと思います。教育成果・学修成果の可視化を図るということを考えたときに,4年間のカリキュラムの体系化が重要であるということと,3年秋でこの調査を行うということ,そこにはちょっと矛盾があるのではないかと考えております。
 それから,調査結果の取扱い,これは多分,この後,また次回以降の「公表」のところで議論になることだと思いますが,きょうのインテージリサーチの御報告の中で,NSSEでのヒアリングの結果が書かれていたところ,御紹介がなかったので少し注意を促したいんですけれども,77ページ下から2行目のところに,「私たちの方で結果を集めた後は,組織の方に結果を送り,私たちの方では公表していない」とありますよね。何で公表していないのかということなんですが,78ページの1番目の丸ポツのところですけれども,「今はデータの公表がプッシュされる時代ではある」,説明責任を果たすということで,そういうものがプッシュされる時代ではあるが,「一方では,一体それが調査に対してどのような影響があるのか考えることが重要だと思う。アカウンタビリティ自体が組織にとって一番良い結果をもたらす行動を,どの程度促すことができるかということを考えなくてはならない。イギリスでは,NSSという学生の満足度の調査が行われているが,自分の組織がよりよく見えるように学生を動機付けして,良い答えを出すようにキャンペーンを行っている」というふうに,NSSEの方からのNSSに対する批判が書かれているわけです。
 実際,私の方の32ページのところに戻りますが,以前からキャンベルの法則ということがよく言われていて,「いかなる定量的な社会指標も,それが社会的な意思決定の場でより多く用いられるほど,その指標は退廃への圧力を受けやすくなり,その指標がモニターしようとする社会的プロセスを歪曲し,堕落させがちになる」ということが言われているわけですね。ハイステイクスのテストなんかでよく指摘されてきたことなんですけれども,テスト以上に質問紙の場合はそういったことが恣意的にやりやすくなってしまうという危険性があります。今,この学生調査の試行調査にかなりの大学が参加意向を示してくださっているということなんですが,この辺りのところをまた改めて御検討いただければと思っています。
 以上です。
【日比谷座長】  試行調査については,何か事務局からお答えになることはありますか。
【平野大学改革推進室長】  本日,私ども,直接の担当ではないものですけれども,こういったような御意見を頂いたことは担当課の方にしっかりとつなげさせていただいて,今後の検討に活用させていただきたいと思います。
【日比谷座長】  では,両角委員,お願いします。
【両角委員】  ありがとうございます。私,きょう,資料はないんですけれど,ちょっとお話ししたいなと思っていたことをちょうど佐藤委員が前半のところでまとめられていたので,それに追加という形で意見を述べさせていただければと思いました。
 このジェリー・ミュラーさんの『測りすぎ』という本,今,すごくはやって,皆さん読んでいますけれど,この委員会に出ていると,これをみんなもっと読んだ方がいいのではないかという気持ちにとてもさせられます。いつも議論にブレーキを掛けるような発言ばかりして申し訳ないんですが,ミュラーさんの言う測定執着といったところにやや行きかけていないかと思います。特にこの本の中でも高等教育も一つの事例として出てくるわけなんですが,企業の場合は,測り過ぎて利益がなくなるところまではやらない。利益がなくなればそこで止めるけれど,大学というのは恐ろしいところで利益という概念がないので,大学のだけでなく,関係機関である認証評価機関とか政府とかいろんなところがデータの測定に夢中になってとことんやってしまうということを書いていて,ああ,今,日本でも同じようなことが起きていると私は思いました。だから,たとえこの場の議論で指針に過ぎないと強調したところで,今後、この指針が認証評価や補助金配分の評価手段などで使われ,みんなが過度な測定へこのまま走っていくんじゃないかなという危険性をすごく感じていまして,そこを止めないといけないというか,測りすぎてもいいことをもたらさないということが言われているということは心に強く留めてもいいかなと思いました。
 また,企業でも,佐藤先生の中で野中郁次郎先生の研究にも言及されていますけど,野中先生が最近おっしゃっていることで,日本企業も欧米の管理手法をまねし過ぎて,オーバーアナリシス,オーバープランニング,オーバーコンプライアンス,その結果,競争力を失っていて,もうちょっと直感的なものとか大事にした方がいいんじゃないかと書かれています。正にこれも今,日本の大学で起きていることじゃないかなという感覚をすごく抱いています。例えばこの資料も本当によく考えて作られているんですけれど,いろんな大学さんと話をしていたりすると,研究者が例えばこういう専門用語を使うのは分かるのですが,大学の中の教職員もみんなこういう用語を使って話しているというのは,すごく思考を狭めていないかと感じることがよくあります。だから,厳密な定義を言えば,先ほどの例えば沖委員がおっしゃったルーブリックも確かにそのとおりで,そのほかの点でも資料の中で厳密にいえば少し違うと思うところもあるのですが,だからといってそれらを全部厳密にしていくことがこの指針として本当にいいのかなというようなことをちょっと感じていたりもします。
 学修成果といったときに,いろんなレベルがあるという議論はもちろんありまして,個々の学生の能力をきちんと見える化したり,成長を実感させてあげるという,あるいはその大学の教育力がどれぐらいなのかということをきちんと示す,あるいは,深堀委員がおっしゃったような学位といったものの保証とか,いろんなレベルがあると思うんですけれど,やはり一番大事なところというか,この会議でやるべきところは,個々の学生の学修力をどう上げてあげるのかって,そこが一番大事なんじゃないかなと思いまして,そうすると,いろんな難しい言葉を使い過ぎずに,うちの大学の学生たちは本当に成長しているのか,満足しているのか,この学校に入ってよかったのか,どういう能力が伸びていて,どこが弱そうなのかという平たい言葉で,学内できちんと皆が理解できる言葉でそれぞれの大学の中で建設的な議論が行われ,その中での一定の合意形成,協力の中で教育が行われることの方が大事じゃないかなという気がしています。
 今日の資料2で面白いなと思いましたのが,例えば採用担当者の学修成果の意識調査というのは,eポートフォリオも意外に使われているんだというのもすごく面白かったんですけれど,例えば図表4-1の新卒学生の採用の際にどういう能力を重視しますかというと,ものすごい重視している。だけど,図表4-5の大学が公表することが望ましい情報というのは,大学側は大事だと思って必死にやっていると思うのですが,意外にみんなたいして重視していないと答えている。これは企業採用者の回答であって,むしろ高校生とか保護者の方がこういう情報は知りたいのかもしれないんですけれど,何か大学の教育力を示すためにここは出しておこうというコンプライアンス的な発想でやっていくというよりも,図表4-1のようなことがやっぱり社会で求められていて,そこが「ん?」と思われているからいろいろ大学に対する批判があるということで,個々の学生の能力をどう伸ばしてあげるかというところにあくまでも主眼を置く議論が必要じゃないかなと思いました。
 ちょっと長くなっているんですけれど,それを考えて教学マネジメントというときに,この事務局が御説明いただいた資料3-1で,「大学全体レベル」,2ページ目のところに書かれていますけれど,大学の組織・体制に関する事項は指針の総論として位置付けることを検討ということで,是非そうしていただければと思うんですが,学長のリーダーシップといったものも随分いろんな形で支援されて実態も進んできているなと思う一方で,本当に教育改革を進めるような体制というのは,まだ多くの大学で十分に整っていないと思っています。特に大きい大学であると全学の教育の責任者って一体何をしているのかと思いアンケート調査の分析などをしていますと,学内の調整ばかりをしているというような姿も見えてきていまして,意外にそうした教学マネジメント体制がまだ十分確立できてなくて,困っているところも多いので,そこに対する少し指針のようなものが出せたり,指針というか,幾つかのいい例でもいいのかもしれないんですけど,そちらの方がむしろ大事なのではないかと思います。それなくして,何か改革の小道具のようにいろんなキーワードがあちこちでささやかれて,それを基に無理やり学内で議論するような方向に使われないように,書き過ぎないというのも一つあるんじゃないかなと思いました。
 済みません,長くなりました。
【日比谷座長】  益戸委員,お願いします。
【益戸委員】  民間の立場からお話をさせていただきたいと思います。教育学的については,私は素人ですのでよく分りませんが,度々申し上げているとおり,ここにいらっしゃる委員の先生方ばかりであれば何も問題はないという大前提でもあります。グランドデザイン答申を作ったとき,学修者目線で物事が考えられるようにしようとか,その先には,人生失敗しないようにしてあげられないといけない厳しい時代が待っている,という大前提を確か議論したと思います。
 例えば,企業側の採用についても,このアンケートに採用担当者の意見が出ておりますが,もし,企業の経営者にこのアンケートをとった場合,もっと厳しい意見が出ます。ところが,それが人事部の採用担当に落ちるとかなり過去の採用の延長上になってしまいます。企業経営者というのは相当厳しい今後の経営状況を考えているわけです。ですから,学生諸君にも是非次の時代に備える準備をして欲しいというわけです。
 常に私はこの委員会は第2回委員会の日比谷メモに戻る必要があるのではないかと申し上げています。教学マネジメントがしっかり出来ていないところに対して幾つかのことを提案するようにしなければいけません。ですから,もちろん書き過ぎもいけませんが、書かな過ぎもいけません。例えば,佐藤委員から学修時間,満足度,意欲の話が出ましたが,学修時間について,海外と日本の大学では全然違うことを吉見先生から教えていただいてびっくり致しました。しかし,今まで学修時間を測るスケールはありませんでした。また,自分がどのぐらい勉強しているのかを考えることすらしていない学生が多いのではないでしょうか。従って,測り方のルールを作れば良いのではないかと思います。組織経営からしますと,その方が,学生や従業員が,その組織に属して勉強や自分の人生の目標を達成しているのか,その達成に至る満足度はどうなのかということを常に組織としては理解しておくということは,重要な観点だと思います。それなくして組織運営はあり得ません。
 そして,意欲についても,これを測るというのは非常に難しいですが,その意欲の後に出てくるものは,目標をいかに達成できたかということも一つの結果だと思います。今まで学修者側に立ったいろいろな目標設定がなかったので,それが果たしてできたか,できないかということを考えるだけでも,この成長実感とか満足度とか意欲というものは非常に重要な点でしょう。確かにこれを数字で出すことは非常に難しいですが,前回申し上げましたとおり,あなたの状況はこのくらいと評価をすることは,より成長意欲は高まっていくと思います。そこも含めて是非御検討を頂きたいと思いました。
 私たちは,これからの厳しい時代を生きるために,生き残れるように,高等教育を通じて,または大学院,博士課程を通じて,十分,自らにとって満足のいく人生を送れるように送り出していく高等教育の仕組みを考えていくことが重要です。大学側ができる,できない,学長が困る,困らないということを考慮して教学マネジメントを考える必要は全くないのではないかと思っております。

【日比谷座長】  浅野委員,お願いします。
【浅野委員】  私からは,本日の資料3-1について,少し気になるところがありましたので,コメントさせていただきます。
 まず,1ページ目の26行目辺りからのところで,佐藤委員あるいは両角委員から御指摘がありましたように,学修成果については,どうしても測定論の話になっていってしまいます。このことを,少しでもマイルドにするにはどういったことを検討する必要があるのかということを考えながら,私が実際に実践している中で直面してききたことを踏まえてコメントさせていただきます。
 まず,PDCAという言葉がよく出てきますが,学修成果の測定に当てはめると,実はPのところに非常に多くの時間を要するということがあります。つまり,ポリシーを設定することに始まり,そのポリシーに基づいて学修成果をどう測定するのかというデザインの部分に多くの時間と学内関係者との調整等々が不可欠となってきます。従来,学修成果の可視化というと測定が焦点化されてしまう,すなわちチェック(C)の方にどうしても重きが置かれがちです。本来は,そうではなくて,やはりPのところ,原点であるPのところをしっかりやらなければならない,あるいは,そこにすごく時間が掛かる,困難を伴うということを前回もコメントさせていただきました。その点については,2ページ目に反映していただいていて,ある程度は読み取れるかと思いますけれども,いま一度,PDCAサイクルの中で,学修成果の測定のスタート地点としてのPとその重みということが分かるように書いていただくのがよいのかなと考えた次第です。この部分がしっかりなされない限り,その後,どのような優れた測定方法を実践しても,ポリシーやカリキュラムとの紐づけができず,測定した結果を有効に活用することができなくなりますので。以上です。
【日比谷座長】  ちょっと整理させていただきますが,この後,溝上委員,伹野委員,吉見委員,川並委員,小林委員の順で進めたいと思います。溝上委員,お願いいたします。
【溝上委員】  溝上です。皆さんの御意見,結構賛同する部分が多いですので,ちょっと重複する部分もありますけれども,益戸委員がおっしゃったように,教学マネジメント,学修成果の可視化,できていない大学がたくさんあって,そこに見せていく最小限といいますか,両角先生がおっしゃっているのも全くそうだと思うんですけれども,そういう観点からすると,先ほど佐藤先生とか松下先生もおっしゃったように,資料3-2というのは多分中心に見られていくだろう。それにまつわる説明というのは余り見られない気もしますけれども,私たちの教学マネジメントの委員会としてはできるだけ適切に正確に定義とか関連付けをして説明をしていくというのが役割だろうと思います。
 この3-2って本当に非常にブラッシュアップもされていくと思いますけど,こういうのを出していただいていいと思います。ちょっと今申し上げたような全国やっていないところにこれが見られていくという観点からすると,例と言いながら多過ぎるんじゃないかなと思います。半分ぐらいがいいかなと思います。やっぱり書かれていると,やっていないところとかは特に全部やろうとしてきますので,それこそ両角先生おっしゃったアナリシスし過ぎというか,やり過ぎというか,そもそも教学マネジメントをしっかり行っていくということがどういうことかということが,もっとやっぱり私たち何度も議論しないといけないと思うんですね。それを高等教育の発展,社会に対して挑戦,社会を作っていく,私たちの教育,研究とか社会活動も含めて大学教育が非常に社会に貢献していく,発展していくということを見せていくためのものであることが基本なので,こういう形式をしっかり整えて,マネジメント,教学をしっかりやっていますということを示すことが基本的に大事なのではなくて,そこから社会にちゃんと私たちの内なる活動を伝えていくというんですかね,それこそアカウンタビリティという話がそういうところで私なんかは出てくるんだと思います。
 そこをちょっと確認したいんですけれども,2つちっちゃいのを加えたいんですけれども,沖委員が正課外の話をされましたよね。準正課の話もあります。教学マネジメントといったらディプロマにつながるので,どうしても正課に焦点が当たるんですけど,今みたいな何のために教学マネジメントとか質保証等していくのかといったら,当然それは社会とかステークホルダー,高校とか保護者も含めて,そういうことも含まれるので,ディプロマをベースにした学修成果の把握・可視化でもいいですし,内部質保証でもいいんですけど,でも,大きくはやっぱりアカウンタブルというか,私たちの活動をちゃんと外に向けていくということが大事になってくると思うんですね。そのときに,学生って正課だけで学んでいるわけではなくて,正課外の比重ってやはり結構大きいんですよね。今までは正課の方が十分でない――専門分野にもよりますけれども,十分じゃなくて,正課外ですごく成長して頑張ってという話が出てくるので,大学教育のこういう見直しがあるんだと思うんですけれども,それイコール正課外を外していいということではないので,こういう教学マネジメントとか学修成果というときに,そこをどういうふうに位置付けていくのかはちょっと難しい課題だなと正直思っています。この資料3-2の中にも,特に学生の成長実感とか満足度とかという辺りにはこういう話が関わってきますね。大学教育と広く言うときに,正課,正課外というのは,やっぱり大学としてはクラブ活動みたいなのは分かりやすいですけれども,例えば施設とか,あるいは学生の活動への支援とかやっているわけで,だから,そこをメインに持ってき過ぎたら駄目なんですけど,何かうまく位置付けられないかなということをちょっと聞いていて思いました。
 もう一つ,佐藤委員の学修時間に関してなんですけど,それ以外のことは大体賛成なんですが,これについて私はとても大事だと,済みません,申し上げておきたいと思います。学修時間それ自体を議論することがよくないというか,そこは賛成なんですけど,余りにも短過ぎますよね。特に授業外の学修時間,これは初等中等教育でも家庭学習の時間というものが非常に,特に教科学力も含めた学力格差につながっているというのはよく知られる話で,それは大学の中でも海外と比較して短いとかという議論じゃなくて,単位制度の観点からの話でもなくて,そもそも短過ぎるということを,私,ずっと申し上げてきました。もう10年以上申し上げているわけで,測定の仕方の難しさがあるのは,これは実は結構難しいです。ただ,ここは大事な観点だというのは私の方からお伝えしておきたいと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【日比谷座長】  伹野委員,お願いします。
【伹野委員】  学修成果の可視化ということでございますが,御参考に,国立高専における取組の事例をここでちょっと紹介させていただきたいと思います。学修者主体の教育ということで,国立高専では学修成果の可視化についてもいろんな試みを今までしてきました。それで,資料4の17ページからですが,現在の取組の状況というのをここで説明させてもらいます。
 まず,17ページ目です。まず,国立高専の教育というのは全高専共通のモデルコアカリキュラム,MCCと言っていますが,図の下の方に書いてありますけど,を基盤とした教育と,あと各高専独自の特色のある教育から構成されています。その教育内容は,ウエブシラバスで公開されて,それに従って教育実践が行われることになっています。教育実践の成果である学修成果は,各高専で成績やアンケート結果などを様々な形で可視化されておりますが,高専機構全体としては,学修成果の可視化につながるものとして3つの仕組みを今現在用意しているところです。1つは,CBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)を利用したMCC到達状況の可視化,2つ目が実験スキルの可視化,もう一つが分野横断的能力の可視化ということでございます。
 それで,18ページをごらんいただきたいと思いますが,ちょっと図の中に差し込んだ表等が余り鮮明じゃないので,非常に申し訳ありません。後で差し替えさせてもらいますけど,18ページをちょっとごらんいただきたいと思います。この3つの仕組みのうち,CBTを活用したMCC到達状況の可視化の概要でございます。MCCというのは,国立高専,全高専が学修すべき内容と到達目標をまとめたものです。その到達状況を可視化するためにCBTを活用するということです。昨年度から運用を全高専に開始しておりまして,成績や分析結果は教員に配付されます。現状では,学生が自らMCCに対する到達状況を確認できるシステムというのは,まだそこまでできていませんが,現在検討中の高専ポートフォリオでの実現を近々に立ち上げるということを今目指しています。
 次,19ページでございます。19ページが実験スキルの可視化の概要でございます。実験・実習というのは高専教育の非常に中心になるもので,社会実装教育,実践教育を非常に重視しているということで,高専教育としては非常に重要な位置付けをしております。その中で,実験を高専全体である程度統一した基準で実施し,スキルを測定するということで,身に付けた実験スキルを明確にするということで,現在,そのスキルの可視化について検討しているところでございます。標準的な実験書を作成し,それに合わせたスキル評価シートに基づいて可視化の活用を開始したというところでございます。まだこれから,今検討中の点もありますが,評価に専用のシステムを活用するということをすれば,教員評価と学生評価の結果というのがいつでも確認できるということになるということです。
 あと,最後の20ページでございますが,分野横断的能力の可視化の概要でございます。分野横断的能力とは,コミュニケーションスキル,論理的思考力,主体性,チームワーク力など高専教育の横串となる力であります。育成すべき重要な能力として位置付けております。この能力の可視化というのは非常に難しい面もありますので,各高専での教育実践を通して,アセスメント指標,標準ルーブリック,育成モデルをまとめて,全高専で活用可能なものとして現在提示しております。教育評価,自己評価,学生相互評価などの測定結果というのは,専用のシステムを活用して教育活動や能力ごとの測定結果と履歴が閲覧可能となっているところでございます。
 以上でございます。
【日比谷座長】  それでは,吉見委員,お願いします。
【吉見委員】  ありがとうございます。大変重要な意見が幾つも出ましたので,それをフォローアップするという意味で一言発言をさせていただきたいと思います。
 まず,資料3-1ですけれども,この間のこの種の資料の出来上がり方を見ておりますと,この委員会の場でそれぞれの専門家の先生方がそれぞれ的確な,細かい専門的な御指摘をされますね。そうすると,事務局がそれぞれの御意見を一生懸命取り入れようと個々の意見に対して部分最適化をしていくんですね。ですから,また質問が出ると,委員に向かって,先生,その意見はここに取り入れましたとか,あの論点はここに取り入れましたとかいうふうに,毎回毎回,事務局の御報告では,何委員から出た話はここに取り入れましたって御説明されるんですね,かなり時間をかけて丁寧にですね。そのそれぞれの部分最適化が積み重なっていくと,だんだん聞いているほうは全体像が分からなくなってくるんですね。つまり,どんどんどんどん細かくなっていって,専門用語が一杯入ってきて。ここにいらっしゃる事務局は,非常に有能な日本国の官僚でいらっしゃいますので,それぞれのご意見をきちっと文書のなかに細かく埋め込んでいく。で,個々の意見を一見,整合的であるかのように取り込んでいくことは,確かに官僚的には重要なことなんですけれども,結局は玉虫色になりますね。そうすると今度,これを公表されたときに使う側に何が起こるかというと,要するに大学の側はつまみ食いをするんです。つまり,自分に都合がいいように答申からそこに埋め込まれた部分部分の文章を引っ張り出してきて,つまみ食いをして辻褄を合わせて自己主張をするということを必ず大学という組織はやります。そうすると,結局,何のために大変苦労をして議論し、答申を出したかがだんだん分からなくなる事態が起こるんです。これだけみなさん,努力をしていながらですよ。
 やっぱり,これはさっき佐藤委員が言ったことに賛成ですけれども,何のためのアセスメントなのか,何のための教学マネジメントという主軸の議論を非常に強力に前面に出して,これだけは全大学がとにかく聞いてくれということを言わないとだめでしょう。で,できるだけそうじゃない要素は,いろいろ先生方の御意見があっても,濃淡、メリハリをしっかりつけていく,そのために喧々諤々の議論をここでやっていく必要がある。ですから事務局は何々を入れましたということを御説明するんじゃなくて,軸はこうです,この論点とこの論点が対立しています。両立はしません,どちらを優先しますか,それはなぜですか,何が未来の日本にとって最重要ですかということを正々堂々と説明する勇気を持っていただきたいですね。対立点を明確にし,選択を迫っていくことが必要です。
 そのときに,今のこの3-1の文章を見るとやっぱり気になるのは,多くが「べき」論なんですね。つまり,学生にとってこれが必要である。大学にとってこれが必要である。それはそれぞれ分かるんだけれども,ここもさっき大変いいことを両角委員が言ってくださったんですが,やっぱりここに欠けているのは社会ですよ。つまり,大学が,あるいは学生たちが,大学で教えて学生たちを社会に送り出していく側が,社会と交渉していくというか,ネゴシエーションしたりコミュニケーションしていくときに,この学生はこれだけの力を持っているんだ,これだけの学修成果があるということを社会との間でコミュニケーションし,ネゴシエーションしていく。そのための仕組みとして学修成果の可視化が必要である。ハッタリをかませということを私は言っているわけじゃないですが,しかし単なる説明責任という以上に,この社会を可視化を通じて変えていくという,そういうふうな社会との関係再構築のツールとしてこれは考えるべきだと私は思います。
そうすると,先ほど出ていた企業の採用担当者とか企業側が見ている視点と,大学側,こういう形でアセスメントでやっている側の視点のずれはとても気になるし,これを,益戸委員もおっしゃっているとおりですが,社会の側がどう見るのか,大学側が何を目指すのか,この接点をきちんともっと詰める必要がある気がいたします。
 最後に,これは溝上さんと同じですけれども,佐藤委員が言われたことはほとんど賛成ですが,最後の点だけはやっぱり僕も反対です。学修時間の測定は難しいと思いますけれども,しかし,これは外すべきではないと思う。なぜならば,教学マネジメントの相当部分が学生たちの時間構造のマネジメントの問題です。つまり,時間というのが,特に今の学生たちにとって有限なんです。ものすごく有限な時間で,その自分の有限な時間を,これはバイトとか,これは授業とか割り振っている中で,学生たちに,その時間の分節化を有効にさせてあげるにはどういう教学マネジメントが適しているのかを考える必要があるのです。だから私は毎回くどいように,1週間当たりで学生たちが履修する科目数を圧倒的に減らさないと,半減させないと,学修成果なんか絶対上がらないということを言い続けているわけです。学生の有限な時間のマネジメントということをちゃんと視野に置かないといけなくて,そのためのステップとして実質的な学修時間という指標はやっぱり重要です。この実質的な学修時間の可視化は、もっと議論を詰めていくべきポイントです。
【日比谷座長】  川並委員,お願いします。
【川並委員】  川並です。学修時間の捉え方について学生たちに話を聞きますと,学修時間というのは机にかじり付いて調べ物をしている時間が学修時間とイコールだと捉えているようでして,実はきのうオープンキャンパスがありまして,短大の保育科の学生たちと過ごす時間が非常に長かったので,学生たちとくだらないことをいろいろと話していたんですけれども,その中で「どれぐらい勉強しているの」って聞きましたら,「1時間から2時間ぐらい」って,まさしく短いと言われている時間なんですが,じゃあ実際に学生たちが,受験生が来て,また,受験生の弟とか子供たちがそこのオープンキャンパスについてくるわけですけれども,当然,説明を聞いていると飽きてくるわけです。その飽きてきたちっちゃな子供たちに対して学生たちが,自分たちが持っている折り紙とかでいろんなものを作ってぱっと目の前に出してあげたりして,子供たちの気を引いているわけですね。で,「その折り紙はどうやって練習したの?」って言ったら,「休み時間を使って練習したり,家に帰って折り紙の本を見て作ったり,また,先生の指導を受けたり」と。同じように,歌を歌いましょうという話になれば,1年生でも非常に流暢にピアノを弾くわけです。ピアノを弾くのも,それは一朝一夕に弾けるわけではないので,「ピアノって1日何分ぐらい練習しているの?」って言ったら,「最低1時間はピアノ弾いています」と。それは学生たちの学修時間に入ってないんですよね。ですので,その学修時間というのが,それこそ知識だけではございませんので,是非その捉え方の定義も少し広く捉えて,先ほど学外でのという活動の話も出ていましたけれども,その辺を少し広くとっていただけるように工夫をしていただけたら有り難いなと思っております。
 それと,資料4の6ページで,私どもの学修成果に基づいたカリキュラムマップを使った学修成果の可視化をちょっと試みたので,例えとして出しましたが,カリキュラムマップが構造的には,幼児教育を学ぶということで,上から地域で学ぶ,保育を創造する,表現技能を身に付ける,子供を理解するって,上からそれぞれの目標が定められていて,その定められているものごとにGPAの平均を出してみたというような形で,今まだ,これ,始めたばかりですので,分析をするところにまで至っておりませんが,このような形で学修成果の可視化を試みてみた例として資料にお出しさせていただきました。委員の先生方から何かアドバイスがあれば頂ければと思います。よろしくお願いします。
【日比谷座長】  では,小林委員,お願いします。
【小林(雅)副座長】  非常にまとまってきたというところと,まとまってこない部分と,両方に分かれてきているような気がしますが,一応まとめる立場の方から少し申し上げたいのですけれど,まず,きょうはっきりしたことは,事務局が一生懸命やっていただいているのは分かりますが,実は書かれていないことがかなりある。可視化できていない。つまり,口頭で説明された部分というのはかなり多いのだけど,それが実は書かれてない。だから,委員も分からなくなってきてしまっている。例えば現段階で各大学ができるようなことだけをやると,きょう事務局はおっしゃいましたけど,それは今まで何回か言われていますけど,実は明確には書かれていない。それから,別の部会があるから,そこに送るという話も,これも何回も言われているのですけれど,ここには明確に書かれていないので,むしろ総論に書きますというのはきょう2ページに書かれているので,何かそっちに行っているのかなというふうに思われるのです。ですから,その辺りをまさしく可視化していただきたいということです。
 次の問題として,きょう非常に重要だと思っているのは,やはり評価できないことは評価できないのだということです。可視化の限界ということが非常にはっきり分かって,これも明確には今まで言われてきていなかったと思うのですけれど,その辺りのこともやはり最初に書くべきだと思います。今の段階では全てのことは可視化できないということはここにも書かれているのですけれど,もっと明確に書いた方がいいと思います。私もサン・テグジュペリの星の王子さまの話は,授業の一番最初にやるのですけれど,では,見えないものを見えるようにするにはどうするのかって,次の議論をしないといけないわけです。ですから,限界があるって話をした後で,だけど,では評価できないものを評価するにはどうしたらいいのかって,そういうことの繰り返しです。この評価の問題というのはずっとそうやってきたわけで,ですから,何十年も同じような議論をしているわけですけれど,その中で少しずつ少しずついろいろなものができて進んできたと,そういうふうに思っていますので,理論的には可視化や評価は完全にはできない,しかし,その中でどういう努力をしてきたかということが一番重要だと思います。
 今回の場合には,きょう明確に言われたように,そこの部分でもうできないものはこことしては使えないわけです。中教審としては使えないけれど,各大学がやりたいということだったらやっていけばいいという,それは最初からそういうスタンスでずっと言われてきたと思いますけど,そこもまだ完全に明確になってない。ですから,例えば様々な事例を出していただいて非常に参考になると思いますけれど,これを集約するということは不可能です。この場で集約するということは,多分,きょうの学修時間の話にしてもそうだけど,できないわけですから,これはあくまで参考の事例です。こういう事例がありますから,各大学ではこういうことをやってくださいという,そういうことになるしかないわけです。
 それで,学修時間についてきょういろいろ議論が出ましたから,私もまだ決められないのですけれど,同じ定義でやらない限りベンチマーキングはできません。だけど,同じ定義といっても,これだけいろんな考え方があって,ピアノの時間を入れるかどうかまで入れたら相当違う議論になるので,多分できません。それから,3年生でやるか,4年生でやるかという議論もあるし,いろんなことが言われましたので,ここでは多分,学修時間を入れるか,入れないかというのはもう少し議論しなければいけませんけれど,相当難しいなという印象を受けました。
 ただ,きょう,意欲とかやる気については,ほとんどこれは難しい,ただ,達成度を測るという意味ではそれはできるのではないかという議論もありましたので,その辺はもう少し詰めていく必要があるかと思います。
 ですから,あくまでここでできるのはそんな細かな議論じゃなくて,大まかな比較です。だから,学修時間にしても,1時間から5時間とかの単位でやっているわけで,非常に大まかな比較しかできないということを前提にして議論しないと細かいところに陥ってしまうという,そういうことをまず確認しておけばいいんじゃないかと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  あと,清水委員,大森委員,こちらの小林委員,そして林委員ですので,お一人2分半から3分ずつぐらいでよろしくお願いいたします。
【清水委員】  ありがとうございます。2つお話ししたいと思いますが,1つは,基準の大綱化で自己点検・評価から始まって30年たちます。自己点検・評価は義務化され定着しておりますが,その行く末が私は大学の内部質保証システムの確立だと考えております。その意味では,今回の議論がDPに基づく学修成果の把握というのは正にそれにつながるものであり,日本で大学内部質保証システムが確立すれば,これは大学にとって大変すばらしいことだと思います。その内部質保証という言葉が全然入っていない。学修成果の把握が目的ではなくて,その後の教育改善に役に立つという、何よりも内部質保証システムの構築が重要となります。それが今後の設置基準の改正とか,あるいは認証評価制度の見直し,こういうものにつながっていきますので,是非内部質保証システムの構築が今回の議論の行き先にあるというのをここで入れておいた方がいいというのが1点。
 もう一つは,今日は,学修時間をめぐるすごいいい議論ができたと思いますが,世界に誇れるのは,日本では,先ほど伹野先生の高専の話がありましたけれど,高専ですそのほかに、卒業論文とか,ゼミとか,あるいは就職率とか,さらには大学体育があります。就職率についてはOECDで91%でトップですよ。なぜこういうものをもっと発信しないのか。これだけ入学した学生を最後まで卒業させているわけです。日本の高等教育産業を世界に知らしめるためにもっと我々は目を向けた方がいい。卒業論文,ゼミ,そして大学体育もそうです。学修時間で言えば,授業時間に関する調査として,文科省が週平均20時間,日本の学生は授業で勉強していることを明らかにしました。それをもっと出すべきじゃないですか。授業時間をもっと世界に訴えて,こんなに日本は授業時間に費やしていると。先ほど川並先生がおっしゃったように,看護などの専門職では124単位のうちの100単位近くが学校指定規則で決まっているのです。だから減らすことができないわけです。それだけ授業を多くやらないといけない。厚労省のためにも,こんなに授業時間をやっているというのをもっとアピールした方が私はいいと思っています。授業時間を何時間やっていますというのをもっと堂々と発信した方がいい。いずれにしても,日本の高等教育の特徴となるものを世界に訴える絶好の機会ではないかと私は思います。
 以上です。
【日比谷座長】  大森委員,お願いします。
【大森委員】  ありがとうございます。先ほど吉見先生から社会とのずれというお話があって,そのとおりだなと思っていて,これも成果の可視化という意味では,学生が就職している企業さんに,「本学としてディプロマとしてはこういう力を付けようと思っていますけれども」ということをずっと聞いています。そこの期待値と実際のずれというのを企業さんに聞くと,結構期待と合っているという項目もあるけれども,「ここが育ってないよ」と言われるところもあります。そこのはざまを埋めるためにカリキュラム改革を今またしているんですけれどもということが必要かなと思いました。
 それから,溝上先生がおっしゃってくださった正課外ということと,今回,事務局からお話しいただいた学修者と大学,つまり「学修成果」と「教育成果」という表現をしていただいたのはすごくよかったと思っていて,やっぱり学生たちが力が付いていれば,まずそれでいいんだと思うんです。その力を付ける機会というのは学位プログラムの外にある可能性も当然あって,結果としてディプロマにつながるような力が付いちゃうこともある。学生は大学のプログラムじゃなくて勝手にインドに行ってきたという学生もいたりして,でも,結局付くわけですね。で,それが学位プログラムの外にあるから,この学生にはその力がないとは絶対言えないし,言うべきではないと。ただ,一方で,学位プログラムとして大学がそれを評価していったときには,学生がインドに行かなかったら付けられなかったとすれば学位プログラムとしては不十分なのでというところが明確にできるように今回のでなったので,非常に有り難いなと思いました。
 学修時間は,川並先生がおっしゃったとおりで,うちも学生インタビュー型FDというのをやっているんですけれども,「勉強しているんじゃない,みんな」と言ったら,「あれ,発表の準備ですから」って言われて愕然としたということがあります。これはだから,「学修ってね」ということを言ってからアンケートをしたら何かやらせじゃないかとも思いつつ,そこら辺が,やっぱり学修観というのを学生自身も変えてあげないと,高校までの学びというのがかなり固定化されているなと思っています。
 最後,佐藤先生がおっしゃっていただいたので,私が言いたかったことがすごく明確になったのは,消化の仕方なんです。総合的に統合してというのが分からないと言い続けているのは,やっていない大学さんにも「やろうよ」って言ったら,調査まではできるんじゃないかと思うんです,アンケートとったりとか何とか。でも,それをどういうふうに消化するかという,多分,消化不良になっている可能性はあるんですけれども,消化の仕方というのをどう見せられるかが勝負で,きょうお示しした,うちでちょっと前,文科省さんと相談して作った資料なんかも,アクティブ・ラーニング増えました,その結果,学修時間増えました,そうすると「共愛12の力」が伸びています,そして最終的に学生の成長感というのも上がっていますというふうに一応ラインを作って物語化しているんですけれども,そういうことでいいのかどうかですが,そういう評価の仕方,「何を調べてください」はかなりできると思うんですけど,それを統合する消化の仕方というのを事例などをたくさん入れ込んでお示ししていかないと,ただ,これはこうです,これはこうです,これはこうです,以上というふうなことになるんじゃないかななんて思ったところで,きょう,消化というお話が正にしっくりきました。
 以上です。ありがとうございました。
【日比谷座長】  小林委員,どうぞ。
【小林(浩)委員】  きょう,大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究の共有をしていただきました。私もこの中の委員をさせていただいたのですが,最後の企業の採用担当者のところで本音だなと思ったのは,公表する方が望ましい情報としては大きく2つですというところです。学部・学科で学んでいることが分かる情報と,大学の個性や特色が分かる情報だと言っているので,どんな個性・特色のある大学で,何を学んできたかさえ分かればいいというのが,はっきり言ってしまえば企業側の考え方なんだろうなと思います。そのほかのところは,学生が自らの経験を基に自分で語っていくという形になるのだと思います。それで,大学側はというふうに主語をすると,大学の個性を明確にして,特色をきちっとはっきりと出して,どの学部でどの学科で何が学んだのかが分かって,何が身に付くのかというのを明確にすればよいということです。もう一方,学生の側は,高大接続改革が進行し、これから高校の授業も変わってくるんですね。新しい学習指導要領では、探究型学習ということで,自己の在り方と生き方を見据えた上で探究型の学習をしていくことになります。それは、生徒自らが問いを作れるようになるというように高校の授業の方が変わってくるわけです。これを受け入れる大学側の方も,それをやはり継続して,どちらかというと今までは高校は受け身の教育で,大学は自ら主体的にという形だったんですが,高校までが多分これから新しい学習指導要領で随分変わってくるという中で,大学の方もやはり,今回入れていただきましたけど,学生の経験価値を振り返って内在化して,それを成長につなげていくというところのサポートをしていくというところが必要になるんじゃないかなと思っています。
 なので,きょう正課外の話もありましたが,前回,私も提出資料の中に正課外も含むのかというふうな質問をさせていただきましたが,これはできれば入れていただきたいと思います。第4回で御発表された金沢工業大学さんはeポートフォリオの中に正課と正課外を両方入れて,自分のキャリアを見つめ直す,フィードバックをしているというのが非常に特徴でした。ですので,そういった自己肯定感を醸成するとともに,未来のキャリアを自分で考えるためのフィードバックの在り方あるいは学修成果の共有の仕方というのが必要かなと思います。
 1つだけ言わせていただくと,皆さん,就活のときに大学生がアルバイトとか、クラブ・サークルの話ばかりすると言われます。それはなぜかというと、そこは自分の中で経験価値として内在化できているからだと思います。逆に,大学の授業の話をしないのは,そのままスルーしてしまうのでなかなか内在化できていないということなのだと思います。なので,きょう入れていただきましたけど,振り返りの時間を設けて、学生がきちんと自分自身の中に内在化して,自分の言葉で語れるような仕組みにしていくことが、学修者本位の教育という点で重要ではないかと思います。
【日比谷座長】  じゃ,林委員,お待たせしました。
【林委員】  きょう,お話を聞いていて私の頭の中は混沌としていて,先ほど小林副座長の整理で非常によく分かったんですけれども,資料3-1の方では,学修成果の把握といったときに,ルーブリックだ,eポートフォリオだ,あるいはディプロマ・ポリシーからのカリキュラムマップができた上での授業の評価だという話があるのに,3-2になると一気にそれが測定論に落ちて,eポートフォリオの話なんか出てこない。何か数字でとれるようなものだけが挙がっている。さらに,単位の取得状況とか学位取得状況のように,教育をして学ばせたことによって必然的に出てくるアウトプットみたいな話と,本当に何を学んだかみたいなアウトカムみたいな話が混在していて,構造が,一体何を測定しているのか,あるいは測定できないものをどういう形で捉えようとしているのかという,構造が今,分かりにくくなっちゃっている。これまでの議論でも,分野によっては専門職の育成なので大体指標で見れるようなところもあれば,人文学のように,何とか努力をしてもやはり分野として長期に学修成果が得られるということを言っているところもある。そう考えると,必ずしもこういう形で全てのものがこの表でできますという表現ではなくて,なかなか難しいんですけれども,学修成果という項目の中で,学修成果をいかに把握するかという,その取組をしっかりとやって,そしてその中から幾つかの定性的な情報が出てくればいいという,そういうレベルの発展段階あるいはそういう分野の特性のところと,そうじゃない,もうしっかりと出てくる分野のところがちゃんとあるんだということが分かるようにきっと説明してもらった方がよい。今,例えば資金配分との連動とかそういうところで,本当に単純に学修成果を指標で示せみたいな話が外から来るわけですけれども,そうではいけない,そうでは出せない分野があるということをこういうところでしっかり議論をして示して,そういうところは学修成果を把握しようと努力している取組などがある種の代替のものになるんだというメッセージが出せればいいと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それで,時間が限られておりますので,きょう言い足りなかったこと,あるいは御発言がなかった,少なかった委員におかれましては,後日,事務局にまた更に意見をお送りいただければと思います。
 それでは,最後に事務局からお願いします。
【平野大学改革推進室長】  本日も本当に御熱心に御議論いただきまして,ありがとうございました。きょうで一応,「学修成果の把握・可視化」,一段落でございます。また,「情報公表」の議論というのはあるわけでありますけれども,きょう頂いた意見というものも踏まえまして,しっかり指針の成果物というものを作る過程で消化させていただければと思っております。特に幾つか御指摘いただいた根本的な考え方の部分というのがしっかり見えるようにするべきであると。吉見先生などから,要は枝葉で幹が見えなくなるようなことがないようにという御指摘を頂いたものと承知しております。そういったことを踏まえて,しっかり事務局としても,今後,考え方を整理してまいりたいと思います。
 次回は,8月29日午前10時からの開催ということでございます。詳細はまた御連絡をさせていただきます。
 資料の郵送を希望される先生は,附箋に記載の上,机の上に置いておいていただければと思います。
 ありがとうございました。
【日比谷座長】  それでは,ちょっと時間過ぎましたが,これで第7回の教学マネジメント特別委員会を終わります。ありがとうございました。


―― 了 ――

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