教学マネジメント特別委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成31年1月16日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 教学マネジメントに係る指針及び学修成果の可視化等について
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)日比谷潤子座長
(副座長)小林雅之副座長
(臨時委員)浅野茂、大森昭生、沖裕貴、川並弘純、小林浩、佐藤浩章、清水一彦、伹野茂、林隆之、深堀聰子、益戸正樹、松下佳代、溝上慎一、森朋子、両角亜希子、吉見俊哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長、藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、平野大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局担当)、岩本文部科学戦略官、蝦名高等教育企画課長、三浦大学振興課長、石橋高等教育政策室長、平野大学改革推進室長 他

5.議事録

【日比谷座長】  それでは,御予定いただいておりますけれども,4時になりましたので,第2回教学マネジメント特別委員会を開催したいと思います。もう16日ではございますが,遅ればせながら,皆さん,明けましておめでとうございます。
 本日も,御多忙の中,大勢の,ほとんど,1名のみお休みですが,御出席いただきましてありがとうございます。残念ながら,佐藤東洋士委員のみ本日御欠席ということでございます。
 それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。机上の議事次第に記載しているとおりの資料でございます。机上資料の方はお手元のタブレットの方に入れてございます。抜けている資料等がございます場合には,事務局までお知らせください。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 前回,暮れの委員会は1回目ということもございましたので,委員の皆様お一人お一人から御意見を頂戴しました。それは資料1にまとめてあり,事前にもお配りしておりますので,きょうはもう繰り返すことはいたしませんけれども,御確認いただければと思います。
 きょうから本格的な議論に入っていきます。まずは,これまでの中教審の答申,それから将来構想部会における議論,それから本委員会での御意見などを踏まえて作成いたしました教学マネジメント指針に係る指針の策定の考え方や,指針に盛り込むべき事項のこの段階での案,それから,前回御質問がございましたけれども,この委員会の今後の議論の進め方,ロードマップについて,事務局に説明してもらい,その後,質疑及び議論に移りたいと思います。
 では,事務局に御説明をお願いします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。それでは,資料の説明をさせていただきます。
 資料1は,今,座長からお話ありましたとおり,前回の各委員の意見でございます。こちらについては説明を省略させていただきます。
 続きまして,資料2でございます。この教学マネジメント特別委員会につきましては,前回,最後に御説明いたしましたけれども,グランドデザイン答申というものを踏まえまして,教学マネジメントに係る指針の策定,学修成果の可視化と情報公表の在り方に関する検討を行うこととされてございます。なおでございますが,前回御説明したとおり,設置基準等,また,認証評価などの質保証システムの見直しということについては,また別のところで議論されると。先々ということになっているわけでございます。
 その上で,資料2というのは,教学マネジメント指針の策定の考え方,また,具体的に盛り込むべき主な事項についてのコンセプトと柱立てを書かせていただいているものでございます。
 1.が「指針の策定の考え方」でございます。
 各大学において教学マネジメントを確立するということの重要性ということは繰り返し指摘がされているわけでありまして,平成28年が三つの方針の策定,公表の義務化ということに伴いまして,ガイドラインをお示しいただいているところでございます。
 そのガイドラインの中におきましては,しっかり三つの方針に基づいて,組織的な教育,自己点検・評価ということを行うことによって,社会に対する説明責任を果たす,また,大学教育を実質化するということを強調されているわけでありますが,各大学でその三つのポリシーというものを具体的にどのように回していくのかということにつきましては,個々の手法というのを掲げるにとどまっていたわけでございます。
 その結果としましては,三つの方針の策定というものは進んでいるわけでございますけれども,全ての大学においてPDCAサイクルの基点として内部質保証の根幹を担うだけの水準で定められているのかどうか,これに基づく教学マネジメントの体制が確立されている状況とは言えないのではないかという指摘を頂いているわけでございます。
 また,大学や学生というものが,その教育成果・学修成果というものを適切に発信して,社会に対する説明責任を果たしていくという観点から,可視化という取組も必要なわけでございます。
 そのため,この指針においては,過去の答申等で示されている大学教育改革に関する手法というものにつきまして,教学マネジメントの確立,学修成果の可視化・情報公開の促進という観点からしっかり再整理をするということ,特に三つの方針,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーというものに基づいて,不断の教育改革・改善に取り組みつつ,社会に対する説明責任を果たしていける大学運営というものの具体的な在り方を示していくということを基本的な考え方としてお示しさせていただいているところでございます。
 このような考え方に基づきまして,2.――裏の方でございますが,「指針に具体的に盛り込むべき主な事項の整理について」ということを書かせていただいてございます。個々の内容につきましては,資料3の方でまた御説明をさせていただくことになるわけでございますけれども,6個の柱というものを整理させていただいているところでございます。これは,いわゆるPDCAサイクルというものを各段階に応じて設定している項目,また,教学マネジメントというものをしっかり支える基盤となるべき項目,そして社会との接点というところに関する項目というものの考え方でございます。
 丸1番というところにつきましては,学修目標を具体化するということ,ゴールというものをしっかり設定するということについての部分でございます。プランに関わる部分になるわけでありますが,教育の質保証に向けたPDCAサイクルの基点としての「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)は,学生の学修目標として,また,卒業生の能力というものを保証するものとして機能するように,明確かつ具体的に定められることが共通理解となる必要があるという考えの下,まず1つ目の柱でございます。
 2つ目は,授業科目と教育課程でございます。密度の濃い主体的な学修というものを可能とする前提としては,しっかり科目の精選・統合というものも行われた上で,ディプロマ・ポリシーの下にある学位プログラム,これを個々の授業科目が支える構造になることが必要でございます。ディプロマ・ポリシーを効率的に実現する観点から体系的な教育課程を編成する必要があるということで,授業科目・教育課程の在り方を考える必要があるのではないかということでございます。
 この丸1番,丸2番という部分が,大体プランという部分に関わるものになってまいります。
 これに基づいて教育課程というものが実施された上で,丸3番,成績評価ということでございます。大学教育の質の保証の根幹として,また,学修成果の可視化を適切に行う上での前提として,成績評価の信頼性をどのように確保していくのか,こういった項目に係る柱立てが3つ目でございます。
 また,4つ目でございます。個々の科目というところもまた超えまして,学生がディプロマ・ポリシーに定める能力を身に付けていることをしっかり実感して,説明できるように,また,大学がその結果というものを踏まえて教育課程の改善に活用できるように,複数の情報を組み合わせた多元的な学修成果の把握と可視化が必要ではないかということでございます。この観点から4つ目の柱,学修成果の把握・可視化を立てさせていただいてございます。
 これもまた結果を踏まえて1番に戻っていくといったような円環構造というものを一定意識して,1番から4番の構造は立てさせていただいているものでございます。
 5番というものは,教学マネジメントを支える基盤ということでございます。これらの取組,丸1番から丸4番の取組を実施する上では,教員・職員の能力の向上,いわゆるFD・SDといった局面でありますとか,教学IRといったものの進展というものが必要不可欠ではないかということで柱を1本立てさせていただいてございます。
 最後の6番目につきましては,情報の公表でございます。各大学が外部に対して積極的に説明責任を果たしていくということにより,社会からの評価と支援――信頼と支援と申し上げてもいいかもしれませんが,を得るという好循環を形成するという観点からは,大学全体の教育成果,また,教学に係る取組状況等の大学教育の質に関する情報というものを様々な角度から示せるように把握・公表していくことが必要ではないか,このような観点から6番目の柱というのを立てさせていただいてございます。
 資料3の方に移っていただきまして,資料3につきましては,とりあえずこの丸1から丸6の柱ということを生かさせていただいて,それぞれの項目についてどのような事項を盛り込むべきかということについて,現段階で書かせていただいたということ。また,事項相互の関係というものを整理させていただいているものでございます。先ほど座長からお話がございましたように,この項目については,これまでの中教審の答申でありますとか各部会,ワーキングにおける議論,また,前回の本委員会での御発言,このようなものも参考に作成をさせていただいているものでございます。
 実は,きょうの資料の中に白い丸と黒い丸というのが個々の事項でございます。白い丸につきましては,今回,中心的に議論を行っていただきたい事項でございます。黒い丸につきましては,今後,後で資料4の方でロードマップについて御説明を申し上げますけれども,今後,各回で本格的に議論を行っていく機会があるだろうというものとして整理をさせていただいてございます。本日は,主要な項目の部分に加えまして,白丸の部分について特に御説明をさせていただきまして,黒丸の部分については本日は説明は省略をさせていただきます。
 丸1番,「学修目標の具体化」というような柱については,どのようなものが盛り込まれるべきかということについて整理をしてございます。
 四角の中につきましては総論を記載しているものでございます。各大学の個性・特色が反映された三つの方針は,教学マネジメントの確立に当たって,最も重要なものであり,学修者本位の教育の質の向上を図るための出発点とも言える存在でございます。特に「卒業認定・学位授与の方針」は,学生の学修目標として機能するということのみならず,また,卒業生に最低限備わっている能力を保証するものとして機能すべきであると。そのため,明確かつ具体的に定められることが必要であるということでございます。この方針というものを中心として,あらかじめ定められた手順によって大学教育の成果を点検・評価するということが求められるものでありまして,学修目標というものが具体化されているということは全ての出発点になるということでございます。
 個別の項目に入らせていただきます。
 1つ目の丸でございます。三つの方針につきましては,先ほど申し上げましたとおりでございますが,「『卒業認定・学位授与の方針』,『教育課程編成・実施の方針』及び『入学者受入れの方針』の策定及び運用に関するガイドライン」が取りまとめられているところでございます。こちらにつきましては,本日の参考資料の机上資料4ということでタブレットの中に入っているわけでございますけれども,この内容につきましては,もう一度,各大学においては留意をしていただくということが必要だろうと。
 その上で,三つのポリシーガイドラインということとの関係性で,改めて以下の事項については理解を促進する必要があるのではないかということについて事項分けさせていただいているわけでございます。
 1つ目のポツでございます。「卒業認定・学位授与の方針」につきましては,在学生に対しては約束として,対外的には卒業生に最低限備わっている能力を保証するものとして機能すべきものであり,大学はこの方針において具体的かつ明確な目標を示す必要があるということについては,改めて強調しておく必要はあるだろうと。
 1ページの一番下のポツでございます。これは,従前の目標というものについては,やはり既存の教員組織というものを前提として組み立てられがちであったのではないかと。一方で,今後は,学修者・社会のニーズというものにどのように応えることができるのかという観点から,それぞれの大学の強みや特色を活かしつつ,学位プログラムとしてふさわしい明確な目標というものを設定する必要があるのではないかということでございます。
 2ページをごらんください。2ページの上でございます。社会のニーズということが言われるわけでございます。社会のニーズというものは産業界のニーズということにとどまらない,のみならずということでありまして,国際社会や地域社会も含む幅広い領域のニーズであります。また,大学の強みや特色を活かしながら,大学が自らの手で新たなニーズというものを定義して創出していく,このような主体的な姿勢というものが重要であるということを強調させていただいてございます。
 2ページ目,2つ目のポツでございます。専門分野によっては,いろいろな状況によってはということでございますが,「卒業認定・学位授与の方針」というものにつきましては,学内だけではなく,関係する産業界でありますとか,地域社会でありますとか,関係する外部の関係者の意見や国際社会の動向,このようなものも含めて作成するということが適切な場合というのもあるのではないかと。そういった点もしっかり考えていただく必要があるのではないかということでございます。
 3つ目のポツでございます。「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)においては,卒業生が「何ができるようになるのか」ということを,専門分野に係る能力も含めて,適切な観点に分類して明らかにすべきこと,いわゆる普遍的なスキル,リテラシーのようなそういう部分のみならず,専門教育という部分についても,しっかりディプロマ・ポリシーに適切な分類の下,記載していくということが必要ではないかということでございます。その際,その目標というものが学生の学修目標として機能するということ,大学が事後的に客観的な評価というものができるように,「学生は○○することができる」といったような記述で能力を規定するということが原則としては必要なのではないかということでございます。
 4つ目のポツでございます。教学マネジメントの確立に当たっては,大学教育の成果を学位プログラム共通の考え方や尺度にのっとって点検・評価を行うことが必要不可欠であること,その際,点検・評価の目的,達成すべき質的水準,具体的な実施方法について,あらかじめ方針を定めておく必要があるということでございます。これはグランドデザイン答申の中にも取り上げられてございますし,平成24年の答申ではアセスメント・ポリシーと称されていたものということになっているわけでございます。あらかじめ決めておくことが重要であるということでございます。
 最後のポツでございます。教学マネジメントを確立する上で必要なPDCAサイクルというものは,課題が存在しないということを目的とする1回限りの営みではないと。むしろ積極的に課題を明らかにして次のサイクルへの改善につなげるということにこそ意味があるということであります。PDCAサイクルというものをするということの意味ということについては,改めて自覚的になっておくということが必要ではないかということでございます。
 この丸1番の「学修目標の具体化」につきましては,本日,中心的に御議論していただきたいところの1つの内容でございます。
 続きまして,丸2番の「授業科目・教育課程」に行かせていただきます。
 「はじめに個々の授業科目があるのではなく,『卒業認定・学位授与の方針』の下に学位プログラムがあり,それぞれの授業科目がそれを支える構造にならなければならない。同方針を効果的に実現する観点から体系的な教育課程が組織的に編成される必要があり,『カリキュラムマップ』や『カリキュラムツリー』などの手法を活用することが考えられる。また,密度の濃い主体的な学修を可能とする前提として科目の精選や統合が行われた上で,キャップ制やシラバスが適切に用いられ,きめ細やかな履修指導が行われる必要がある」という総論を書かせていただいてございます。
 個別の事項につきましては,丸2につきましては白丸と黒丸が混在してございます。黒丸の部分につきましては,具体的な教育課程というものの中身に踏み込んで編成するときの個々の手法というものも含めた活用の在り方について記載しているところでありますが,本日御議論を頂く白い丸の部分というものは,そういう作業というもの,手続というものに入る前に総論的にしっかりと押さえておく必要があるべきことということで整理をさせていただいているものでございます。
 2ページ目の下でございます。こちらにつきましては,先ほど総論で述べたところと重複する部分でございます。読みはいたしませんけれども,個々の授業が初めにあるということではなくて,プログラムの下に各科目がそれを支える構造になるということについては,しっかり理解を促進していく必要があるということでございます。
 3ページの方でございます。3ページの方につきましては,「卒業認定・学位授与の方針」において観点別に示される「○○できるようになること」からしっかり逆算して,必要な授業科目を開設し,体系的な教育課程を編成することが必要であるということでございます。ディプロマ・ポリシーに定められた目標というものに何の科目が必要なのかということをしっかり検討するということでありますが,同方針への貢献が見込まれない科目については,内容の見直しや取りやめを検討するという必要があるのではないかということでございます。これは三つのポリシーが決まったときから言わずもがなというところではあるわけでございますけれども,改めて強調することが極めて重要な観点であるということで入れさせていただいてございます。
 3ページの真ん中辺りは個別のプロセスの話に入ってまいります。次回以降の議論ということにさせていただいた上で,3ページの下から2つ目でございます。学生が一時に履修する授業科目数が過多であることにより,学生が授業内外の学修に集中できなければ,ディプロマ・ポリシーに定めた目標というのを達成することは困難になるわけでございます。学生の学修意欲というものを保ち,密度の濃い主体的な学修を可能とするために,必修科目というものをしっかり適切に設定するということが必要だろう。また,学生が同時に履修する科目数については,諸外国の事例なども踏まえつつ,大胆に絞り込みを進めていく,このようなことが必要ではないかということを挙げさせていただいてございます。
 その関連する項目ということで3ページの最後の項目でございますが,密度の濃い主体的な学修を可能とするという観点からは,セメスター制の導入など学事暦の柔軟化ということが必要ではないか。また,意図としては,単にセメスターとかクオーターを導入して単純に科目を分割するということではなくて,しっかり細分された授業科目というものを統合して,ボリュームとして適切なものを確保していくということが必要ではないかということが,3ページの最後の丸でございます。
 本日御説明する白丸という意味では最後でございますけれども,4ページの一番上でございます。細分化された授業科目というものを統合するという観点,密度がしっかり保たれるという観点も含めて統合された科目というものについては,ICTの活用やアクティブ・ラーニングへの転換ということも念頭に置きながら,1つの科目の中で講義,演習,実験など多様な学修形態を盛り込むということを促進していくということ,そのようなことによって,「考える」,「話す」,「行動する」など多様な学びをもたらすような工夫というのが求められるのではないかということでございます。そういう場合にあっては,多様な学修形態というものが1つの科目という中で混在することによって,教員の方々の負担というところにも関わってまいります。TAなどによるサポートというものをしっかり行っていくということも重要ではないかということでございます。
 白丸については以上でございます。
 丸3番以降につきましては,総論だけ説明をさせていただきます。
 丸3番,「成績評価」でございます。成績評価の信頼性を確保することは,大学教育の質保証の根幹であり,学修成果の可視化を適切に行う上での前提でございます。厳格な成績評価を行うためにも,各授業科目の到達目標に照らした達成状況を「ルーブリック」等を用いて適切に判断することが重要であります。GPAについては,国際的な通用性を踏まえた運用を確保するとともに,その信頼性を確保するために算定方法や分布を公表する必要があるのではないかといったようなことを現段階では挙げさせていただいてございます。今後,また次回以降,議論を頂くことになります。
 6ページでございます。4本目の柱でございます。「学修成果の把握・可視化」でございます。各学生が「卒業認定・学位授与の方針」に定める能力を身に付けることができていることを実感して,そのことをエビデンスをもって説明できるように,また,大学が教育課程の改善に活用できるように,学修成果の把握と可視化が行われることが必要ではないかと。学修成果の可視化に係る各情報については,今後,把握する意義やその活用の在り方,定義や数値の算出方法等を,各大学の実態を踏まえつつも,しっかり共通理解となるような形で指針において示していく必要があるのではないか。学位プログラム全体としての学修成果を把握するために,複数の情報を組み合わせた多元的な活用の在り方,分かりやすい形での表示について検討する必要があるということについて,現段階で書かせていただいてございます。
 丸5番でございます。「教学マネジメントを支える基盤」でございます。教員・職員の能力の向上は,大学が教育の成果を最大化するために欠くべからざる課題でございます。FD・SDの実質化というものが必要でございます。特に,新任の教員や,実務経験のある教員に対するFDの実施というものを促進する必要があるのではないか。教学のIRについて,学長などの理解を促進し,人材の育成をしっかり進めていく必要があるのではないか,このようなことを現段階で書かせていただいてございます。
 最後,8ページ,丸6番,「情報公表」でございます。各大学が,地域社会や産業界,大学進学者等の大学の外部の声や期待というものを意識して,積極的に説明責任を果たしていくことにより,社会からの評価と支援を得るという好循環を形成するという観点から,大学全体の教育成果や教学に係る取組状況の大学教育の質に係る情報というものを把握・公表していくことが重要ではないか。各情報について,把握する意義,活用の在り方,定義,数値の算出方法,分かりやすい公表方法などを,各大学の実態を踏まえつつも,共通理解となるような形で指針において示す必要があるのではないかということを,現段階で盛り込むべき事項として考えられるのではないかということで書かせていただいてございます。
 資料3につきましては,前回頂いた御意見を踏まえまして,今回,今後議論をしていくに当たってのロードマップをお示しするということになってございました。その一つの内容を表すものとして作らせていただいたものでございました。
 資料4でございます。資料4につきましては,教学マネジメント特別委員会の審議のロードマップということでございます。これにつきましては,第3回まで書いていて,それ以降が3月以降という形になっているわけでございます。御案内のとおり,今期の大学分科会は2月14日をもって任期満了ということでありまして,3月以降の検討については第10期の大学分科会において本委員会の設置をお認めいただいた後に行うということになるものでございますので,今回お示しするという中においては,31年3月以降に送られる案件というものについては,一括してまたその段階で決めるという手続ということになるわけでございますが,おおむねこういう順番で切れ目を入れながら行っていくんだろうということでございます。
 本日行っていただく第2回の議論が「学修目標の具体化」,また,「授業科目・教育課程」の白丸の部分と。次回以降ということで言いますと,「授業科目・教育課程」の話から「成績評価」,「学修成果の把握・可視化」,「基盤」,「情報公表」という形で,順次,柱に沿って議論を行っていただきまして,最終的には指針案の提示・省令案の提示というところに進んでいくという議論の内容と順番ということをおおむねお示しさせていただいているものでございます。
 続きまして,資料5でございます。資料5につきましては,事前に各委員の先生方に御依頼を申し上げまして,本会のテーマについて御意見,また,関係するデータ等がある場合につきましては御提出を頂けるようにお願いをさせていただいたところでございます。頂いた意見として,大森委員,佐藤(浩)委員,清水委員,林委員,深堀委員,森委員から資料の提出を頂いてございます。ありがとうございました。こちらの方につきましては,まとめさせていただいて配付させていただいているものでございます。
 それとは別に,きょう,先生たちのお手元にだけお配りしているものでございます。文部科学省事務局提出資料ということで机上で配っているものでございますが,大学における科目の単位数というのが今現状どういうふうになっているのかということについては,なかなか網羅的に調べたものが存在するわけではないわけでありますけれども,私ども事務局の方で,一部の大学についてホームページ等を使って開設科目の単位数の分布,また学期制の在り方等について調べさせていただいたものでございます。この選んでいる分野とか規模というものについては,一定のばらけが出るようにという意図で作ったつもりではございますけれども,何せ個別大学の事例でございますので,今回はあくまで先生たちの議論の参考に供するという観点から先生方にはお配りしているというものでございます。これが事務局提出資料の内容でございます。
 以上,資料1は省略させていただきましたけれども,資料2,資料3,資料4について御説明をさせていただきました。よろしくお願い申し上げます。
【日比谷座長】  御説明ありがとうございました。第1回でお約束しましたように,この特別委員会ではできるだけたっぷりと議論の時間をとりたいと。で,大変簡潔に説明していただきましたので,90分丸々これから議論をしようと,そういうことでございます。
 しかしながら,議論は3つのパートに分けて進めたいと存じます。最初に,資料2と資料4で御説明いただきましたけれども,指針の策定の考え方,それから指針に盛り込むべき事項として6つ挙がっているんですけれども,その整理と,それから資料4の今後の検討のロードマップについての御意見を,最初15分ぐらいで伺いたいと思います。その後は,資料3の白丸のうち,「学修目標」を30分,それから「授業科目・教育課程」30分というような大体の配分で進めたいと思います。
 それから,事前に御意見をお出しくださいました委員の方,どうもありがとうございます。事前にその委員の御意見をお読みになっている方ばかりではないと思いますので,意見をおっしゃる際には,資料5のこの部分というようなことも適宜参照しつつ,また,ここにお書きになっていないことももちろん加えておっしゃっていただいて結構ですので,よろしくお願いいたします。
 それでは,まず,資料2と資料4についての御意見をどなたからでも結構ですので,札をお立てください。
 じゃあ,両角委員,お願いします。
【両角委員】  この資料2の6個の事項について議論されるということで,とてもよくまとまっているなと思いました。
 一方で,ちょっと,書いてないことはないけど,もう少し明確に入れた方がよいのではというのを2点述べさせていただきます。1つは,この5番目の「教学マネジメントを支える基盤」に関するところで,どちらかといえば,教職員のFD・SDとかIRの確立といったところが中心的な要素なんですが,そういったものをよりよくやっていくためにも,いわゆる経営者というか,大学の学長,副学長に対するトレーニングと言ったら失礼かもしれませんけれど,知識とか何か場の提供が不可欠なのではないかなと思っています。本当に先生によりけりなんですが,普通の先生が思いもよらず突然に副学長になられたりすると,まずそこから勉強しなきゃいけなくて苦労されていたり,それこそIRですとか重要な組織が何か思いどおりにいってないからといって,新しいものをぽんとまた作って混乱を来すとか,いろんな問題が出ているように思います。教学マネジメントを支える基盤を作っていく上でも,もちろん教職員,IR,大事なんですが,そこをどうやれるかということで,もうちょっと上の層の話は是非議論したいなと思いました。
 あともう1点については,どこにどう入れたらいいのかよく分からないんですが,例えば授業評価をやっていくとか,あるいは学修成果を把握したり,それを可視化していく,情報公開していくといったときに,大学はどうも自前主義に走り過ぎるところがある気がします。共通化できる部分はすればよいのに、それぞれの大学で多大な開発コストを掛けて,ローカル版を大学の中でも学部版,学科版とか作って,後でうまく連携できないとかということが結構起きている気がします。この先,どう考えても厳しい時代を迎えていくので,こういったものを支える基盤的なものをできるだけ共有化していくとか,できるだけ自前主義を脱して何とか全体で効率性と高い効果をあげていく、といったことを実現できないかという観点をどこかに入れた上で議論したらいいなと思いました。
 ちょっと長くなりましたが,以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。じゃあ,深堀委員,それから佐藤(浩)委員,大森委員の順でお願いします。はい,どうぞ。
【深堀委員】  ありがとうございます。私も両角委員と同様の観点からコメントさせていただきます。本会で挙げていただいているテーマのそれぞれについては,教学マネジメントを進める上で非常に重要な要素ばかりで,包括的に捉えられていると考えます。その一方で,今,両角委員から御指摘があったように,教学マネジメントを支える基盤として,社会の環境についても整理して言及する必要があるのではないかと思います。その観点から資料をまとめましたので,資料5の13ページをごらんいただきたいと思います。
 箇条書きの2つ目ですが,まず,教学マネジメントを進める上で,学生に修得させたい学問分野の学修成果の範囲と水準について,何を基準にどう判断していくのかという点について,やはり国として高等教育資格枠組みを設定する必要があると思います。分野別参照基準も,高等教育資格枠組みに沿って定義することが求められます。学修成果が適切な水準かどうか,一体それを誰がどう判断するのかという点について,国としてのマスタープランがないということは,非常に大きな問題ではないかと思います。教学マネジメントについて検討する以上,高等教育資格枠組みの必要性についても議論すべきであるということを,どこかで言及していく必要があるのではないかというのが1点目です。
 次に、箇条書きの3つ目ですけれども,教学マネジメントの仕組みは,例えば技術者教育認定の中で,かなりの労力と時間を掛けて展開されてきました。その結果として,日本でJABEEが定着して社会的に高く評価されているかというと,必ずしもそうではない状況にあります。その背景には,①技術者認定の負担が非常に重いということ,②国際的な通用性のある教育課程を準備することの意義が大学教員の側で十分に理解されていない場合があるということ,③非常に大きなコストを掛けて質保証を行ったところで,それを社会の側が十分に評価して,例えば認定を受けたプログラムの卒業生を優先的に企業が雇用するといった対応をしてこなかったという状況にあります。要するに,労力を掛けて教学マネジメントを整えても甲斐のない社会の仕組みになっているのではないか。そうした状況の中で全国的に教学マネジメントを進めていっても,労力に見合った成果が見込まれないとすれば,大学教員のコミットメントを取り付けることは難しいのではないか。教学マネジメントを進めるためには,取組が評価される環境を整えなければ,十分な協力は得られないということを考える必要があると思います。
 少し観点が変わりますが,「3.授業科目・教育課程に関する事項について」の箇条書きの2つ目ですが,教学マネジメントを進めていく上で,例えばキャップ制などを設けて密度の濃い授業を展開していくと言いましても,日本では4年間の大学教育が厳密に4年間を掛けて実施されている状況ではありません。124単位を修得するためには4年間が必要ですけれども,就職活動等で実質的には3年間しか時間がとれていないわけです。教学マネジメントに真面目に取り組んでいくために,外部環境をどのように整えていくのかという議論を,やはりどこかできっちりと行っていただきたいというのが,申し上げたいことです。
 以上です。ありがとうございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤(浩)委員】  資料5の3ページをごらんいただきたいんですけれども,今回,前半部分は既にこの委員会の方でも議論されたことなんですが,この3ページの下から2段落目のところですね,「そして」のところからなんですけれども,今回,具体的な項目が16ぐらいですかね,挙げられているんですが,出てきている用語自体は決して新規のものではないと思います。これまで答申とか外部評価とか補助金申請に当たっての条件として提示されてきたんですけれども,なぜこれを繰り返しここで出さなければいけないのかということについても考えなきゃいけないかなと思っております。
 それで,次の4ページに移りますけれども,このように事項の列挙だけをすると,2段落目の最後の行なんですが,外部評価とか補助金獲得のためのポイント稼ぎのゲームになってしまう印象があります。これは,前回の自己紹介の中でもそれを言及されておられた先生がおられたかと思うんですけれども,そうならないようにするために,やはりこれらの項目をシステムとして運用する必要があります。ばらばらに運用するのではなくて,改めて教学マネジメントのシステムということを今回は強調した方がいいかなと思っております。
 それで,今回,4層モデルというものを提起させていただきたいと思っているんですが, 6ページになりますが,図式化したものがございますので,こちらを見ていただければと思うんですが,4層で同心円状になっておりますが,第1層は学習レベル,2層がミクロの教育レベル,3層がミドルの教育レベル,4層がマクロの教育レベルというふうに分けております。そこにPDCAの各段階を設定して,今回の挙げられている16項目をプロットしてみたわけですけれども,そうすると,やはりこのPのプランニングのところに関わるもの,それからCの評価に関わる部分のものが多く並んでいるということが分かります。今回出された先ほどの6つの柱になる項目,私自身もこれは非常に重要なものではあると思うんですけれども,やや気持ちがちょっと悪いのは,位相が異なるものが列挙されているということです。こういった構造を理解しないままにそれぞれの項目をつぶしていくというような形になると,結果としてはシステムとして運用がなされないということがまた繰り返されるように思います。ですので,こういった項目の全体像を意識した方がいいかなと思っています。
 その視点から先ほどの6項目を振り返りますと,「学修目標の具体化」と「授業科目・教育課程」というのはプランニングのところに関わるものなんですけれども,1層,2層,3層辺りがやや混在している印象を受けます。それから,3番目の「成績評価」というのは,このC,1層のチェックの段階の話だと思うんですね。今度,4の「学修成果の把握」というのは恐らくカリキュラムレベルでの話ということで,いろんな層に飛んでいる印象を受けます。また,最後の「情報公表」というのは恐らく全ての段階で必要になってくる。特にプランニングとチェックの段階で必要になってくるんだと思うんですけれども。こういう全体像を示すことがまずは大事かなという印象です。
 以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 大森委員,続いてお願いします。
【大森委員】  資料5の1ページの部分でございます。事前に出させていただきましたけれども,少しレベルの違う話ですが,指針に盛り込むべき事項のところで,先ほどの御説明で認証評価等に関してはまた別のところでの議論になっていくんだという御説明がありましたので,それで1つは納得なんですが,とはいいながら,この教学マネジメントというのは内部質保証のかなり根幹をなすものなんじゃないかというふうにも私は理解をしていまして,現場でこれをやっていきましょうって示されたときに,そことの関係がある程度言及されてないと,認証評価は認証評価で頑張りましょう,教学マネジメントはこっちの部署で頑張ってくださいみたいな話になっちゃうんじゃなくて,そこは一体的なものとして,また,そうじゃないと現場もやりづらいということで,何らかの言及は必要なんじゃないかなと感じたということでございます。
 それから,ロードマップについてなんですけれども,今,佐藤先生のお話もお伺いすると,まだまだ議論の余地があるということのようではあるんですが,授業科目とか教育課程云々に関しては,かなり今までのいろんな会議でお話がなされてきていて,我々も現場で理解をしながら,できているかどうかはおいておいて,理解をしながら進めている自負はあります。
 一方で,学修成果の可視化というのをどうしていくかというのは,まだまだ模索中というか,何をすれば可視化になるのかとか,その手法はとか,それぞれの大学さんが今頑張って開発をしている段階だと思うんですよね。それと同じ時間数が割り当てられるのは余りにも学修成果の可視化のところの時間が足りないんじゃないかなと感じたということで,そのロードマップを考えるに当たって,キャップ制は云々という話と成果の可視化の話は,もっと可視化の方に時間が割かれていいんじゃないかなと感じたところです。
 以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,吉見委員,林委員でお願いします。
【吉見委員】  簡単なことです。最初に両角委員が大変重要なことを指摘されたと思いますので,そのことを少し補強しておきたいと思います。放っておくとそれぞれの大学・学部は自前主義に陥るという,これが非常に大きな傾向としてあると思います。「教学マネジメントを支える基盤」のところで,もちろんIRは大変重要なんですけれども,同時に,標準化といいますか,つまり,大学という組織は放っておくとサイロ主義,学部ごとのサイロ主義や大学ごとのサイロ主義に走りますので,そうではなくて,学部を超えた標準化の仕組みを整備する,あるいは大学を超えた標準化の仕組みを整備するということが,やっぱり教学マネジメントを支える仕組みとしては大変重要なのではないかと思いますので,その点,ここに少し埋め込んでいただければと思います。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 林委員,お願いします。
【林委員】  私も事前に資料を提出しておりますので,資料5の11ページをごらんいただければと思います。
 私,1回目欠席しており,そのため自己紹介はしておりませんが,私,昨年の3月末まで学位授与機構の方におりましたので,ほかの認証評価機関もそうですけれども,ずっと内部質保証システムというものをどう考えるかということについて研究会を設けて,本日,浅野委員もいらっしゃいますが,浅野委員にも入っていただいて,そこで議論を進めてまいりました。そこでの検討をベースにしながら申し上げるわけですけれども,丸1のところ,教学マネジメント指針の策定についてですが,ここで述べていることは,今までほかの委員が言われたことと同じでございます。
 教学マネジメントの要素について挙がっているんですが,そのマネジメントの体制,それから学内の仕組みについての言及がほとんどない。私は,教学マネジメントの仕組みというのは内部質保証システムとイコールであると思っています。逆に,別のものを作るということはよろしくないと思っています。特にということで,欧州ESG,欧州の方では欧州全体の共通の内部質保証のガイドラインを作っているわけですが,その中では,中核的な要素としては,プログラムを単位とする質保証,すなわち大学の中で新しいプログラムをどうやって作って学内で承認するかとか,既存のプログラムをどうやって学内でレビューするかとか,そういうところが核であると言っているわけなんですけれども,今回挙がっている事項が,先ほど佐藤委員がクリアに説明されましたが,一部はプログラム単位で書いてあるように見えて,ただ,一部はそうでないように見えるわけですけれども,一体何を対象に述べているのかというのがよく分からない状態があります。なので,まず,原則的にはプログラム単位で検討すべきことはプログラム単位であるということを申し上げていただきたいと思いますとともに,内部質保証の仕組みがどうあるべきかということは議論いただきたいと思っています。
 これも正に佐藤委員が言われたように4層モデルですか,学位授与機構の方で検討したときも図らずもやはり大体4層ぐらいのイメージで考えておりまして,実際の授業というレベルがある1個上にプログラムというレベルがあって,そのプログラムというレベルがこれから議論をされるであろう学修目標の設定とかそういうことをするわけですけれども,では,プログラム実施者が学修目標を設定したらそれでいいかといったら,まずは学内で学部あるいは大学という単位でそれが適切なものであるかということをチェックするような体制が必要ですし,そしてまた,認証評価機関は,そういうチェックを学内でしているかをチェックするという,そういう立場になりますので,そういう階層関係ですね,階層構造というのがしっかりと意識される必要があると思います。
 そういう中で,これから議論が出てくるかどうか分かりませんけれども,共通教育ですとか,あるいは大学の教育の国際化であるとか,もうプログラムを横断したような事項について,どういう形で学内でちゃんとマネジメントしていくかということも議論されると思います。
 最後,1点だけ申し上げますと,先ほど内部質保証システムとイコールであると申し上げたんですけれども,その内部質保証の議論をしている中で一番難しいのは,プログラムのチェックを学部や大学単位でするべきだと申し上げたんですが,非常によくある事例が,自己点検評価委員会を大学で作って,そこが学内のチェックをするんですけれども,では,ここで挙がっているような学修目標の具体化とかそういうものがチェックできるかといったら,そこはまた別の学務委員会であるとか別の形になっちゃって切れているというのが多くの大学の事例で見られます。ですので,冒頭申し上げたように,教学マネジメントのシステムと内部質保証のシステムを一体のものとして考えて,こういう指針の中では理想的な像を示していくことが必要であろうと思います。
 以上になります。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 この最初のポイントについてはそろそろよろしいでしょうか。複数の方から御意見を頂いておりますけれども,それから副座長とも少しお話ししているところですが,そもそも教学マネジメントとは何ぞやということに共通理解が必要であるということと,それから内部質保証との関係,大変に重要なポイントと思いますので,今後,少し見通しを付けて,第3回の委員会では少し見取り図のようなものを御提案できればいいかなと思っているところです。
 1番目の議論のポイントについて,事務局から何か補足はありますか。
【平野大学改革推進室長】  今,座長のおっしゃったことを踏まえて,教学マネジメントというもの,きょう,こういう形で資料3という形でお示ししているものもあるわけでございますけれども,全体像というものがどうなっているのか。今回は確かに,先生たちおっしゃるように,科目レベルのサイクルとプログラムレベルのサイクルという部分が中心的に書かれていましたが,その階層構造というのが明示化されていなかったというところがございます。今後,そこにつきましては,どういう単位でサイクルが回るのかということが分かりやすいように示すということを考えてまいりたいと思います。
 また,この特別委員会において,最終的に成果物としては大学が最終的に用いる教学マネジメントの指針というものを作っていただく,議論していただくということになるわけであります。その前提として国として議論が必要なことということについても御提案を頂いているところがあるわけでございますけれども,これにつきましてはまた今後の議論の参考という形で十分に踏まえてまいりたいと思います。
【日比谷座長】  どうぞ。
【小林(雅)副座長】  まとめのようなことを申し上げますけれど,今のことに付け加えて事務局で考えていただきたいことですが,1つは,きょう,非常に共通の意見が出されていると思いますので,全体像を示すというのは非常に重要な作業ですから,そのたたき台を作っていただくということです。
 その場合,佐藤委員の方で「大道具」,「小道具」の議論を出されているのですけど,これは学生にとって動かせるか,動かせないかということで議論をされているんですが,これは中山茂先生がそういう言い方をされているんですが,「大道具」の方は,上位概念だということもあるけれど見えにくいというのが一番大きな問題です。ですから,まさしく可視化する対象です。それに対して「小道具」の方は,分かりやすいから,可視化されているから,こういうふうにばらばらっと出てくるという,そこのところはよく押さえていただきたいということです。
 それからもう一つは,ここで議論すべきことと議論しなくていいことというのをはっきりさせてほしい。つまり,例えばガバナンスに関わるようなことというのは,ここで議論の対象になるのか。4層構造とか3層構造とかいろんな考え方はあると思いますけれど,ともすればガバナンスとかそういう大きな議論にまで行ってしまう。それはここの議論の対象になるのか,それとも,ガバナンスとかそういう問題はここで扱うことではないのか。それから,深堀委員の方からフレームワークの話が出ましたけど,これも何回も中教審では議論していますが,これは,なかなか大きな問題なので,なかなかまとまった議論ができない。この1年くらいの議論で,やはり検討すべきなのか,すべきでないのか,そういう点はある程度はっきり見通しを付けていただきたいと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  その点も含めて第3回にはきちんと示せるようにということで進めたいと思います。
 それでは,第2の議論で,今度,資料3に移りますけれども,まず,「学修目標の具体化」に関することについて30分程度で議論を進めたいと思いますので,再び,益戸委員からですか,どうぞお願いします。
【益戸委員】  先ほど深堀委員から,大学による質保証は社会から適切に評価されていないのではとの御発言がありました。大学のステークホルダーでもある、民間企業の立場からこの点について若干意見を述べさせていただきます。
 経営改革に積極的な企業は,きちっとしたジョブ・ディスクリプションを作成しています。仕事の責任は何か,何をすると評価されて,何を頑張っても駄目なのかなどをはっきりさせています。そのジョブ・ディスクリプションを遂行する前提は、どんな事が出来るかという能力、そして、何に適性があるかです。採用時には、人事共通の言葉として,能力と適性の範囲で選考しましょう。という言葉があります。表現を換えると,何を勉強してきたか,どんな知識に長けているのかなどが、はっきりとわかれば、お互いに、入社後の仕事を遂行する力のイメージがより分かります。採用時には成績表も頂きますし,面接もあります。面接を通して適性は分かりやすいんですが、成績表を見ても、Aそのものの価値がわからず、成績全体でのAの比率を見たり、正規分布上でどうだろうとの想像には使います。しかし、A評定の背景はわかりません。授業に良く出ていたのか,試験の成績が良かったからか,その科目でどこまで到達したのかなど、能力判定には使えません。もちろん大学によっても,同じ大学の中の学部同士での違いも不透明です。とすると面接重視に偏りがちとなり、学生の過剰な売り込みも起こりがちです。企業は、面接で適性の部分だけ見て、成績からある一定の想像をして合否判断をする。残念ながら、そこにミスマッチの原因があるのではないでしょうか。
 ですから,この資料3の中の丸1,「学修目標の具体化」の中の白い丸の2つ目です,「『卒業認定・学位授与の方針』は,」で,「対外的には卒業生に最低限備わっている能力を保証するものとして機能すべきであり」と書かれていますが,私は本当に重要な点だと思います。これをしっかりする事は、ミスマッチによる早期退職の歯止めにも有効かもしれません。
現在の企業経営は大変厳しい状況にあります。資産・資本の有効活用はとても大切ですし、人手不足でもありますから,データに基づき、しっかりしたビジネスプランが必要です。企業においてバックキャスティングは当たり前です。ゴールを設定して,途中の到達目標を明快にして、しかも常に状況チェックをする。そうしないとなかなか成功はしません。ですから,この時代を支える人材育成の過程・方法は,企業だけでなくアカデミアの皆さんも早い段階から一緒になってお考え頂きたいと思います。企業側もそれによって、より改革できる事があると確信致します。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,沖委員,それから大森委員,お願いします。
【沖委員】  失礼いたします。沖でございます。
 先ほどの佐藤委員のお話にあったように,まず,資料2の中でフェーズに分けて話をするというのが大前提になりますが,この1番目の「学修目標の具体化」というのは特にフェーズが混在しているかと思います。三つのポリシーを中心に書いてありますが,実は私が考えている一番大きな問題というのは,科目の到達目標のレベルなんですね。科目の到達目標が実は本当にひどいレベルのものが多いようです。先生方については,何ができるどころか,何々を教えるとか,何々を目的とするとか,いろんな書き方をしておられるんですが,そこが不十分な書き方であるがために,DPとのマッピングができない,ツリーもできない,体系性も整合性も保証されない。もっと大きな問題は,到達目標がいいかげんに書かれているために,成績評価がいいかげんになることです。成績評価が到達目標の達成度の評価になっていない。だから,到達目標からマッピングされるDPもいい加減になるし,GPAも信頼できない。そういう意味で,私はシラバスの到達目標は一番重要なことだろうと思います。したがって,この「学修目標の具体化」をフェーズに分けるということを大前提にしながら,まずは先生方の授業の到達目標を明確にすること,具体的に何ができるようになるかということをしっかりと書いていただいて,それを評価する,それが成績評価だということをしっかりご理解いただけるようにすることが重要で,丸1から丸3,あるいは丸2も含めて、フェーズに分けて整理することが必要かと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  大森委員,どうぞ。
【大森委員】  ありがとうございます。私は,資料5の2ページ目のところの上の方に書いたんですけれども,むしろ素朴な疑問というか,私が勉強不足のところがあるので,ちょっと教えていただけるとこの議論がしやすくなるなと思ったところなんですが,DPは質保証であるということ,これができるようになったということの保証であるということは,そのDPが達成されてないとやっぱり卒業させるわけにはいかないということの理解でいいのか。そうすると,設置基準上では124単位で4年間となっていて,124単位取って4年間在籍しているのに,何らかのテストなのか何か分からないけど,それでDPが達成できてないがために卒業させませんということが起こるのかということが1つ。そういう方向にこれから進むのかということが,この議論が今までどうなっているのかということを教えていただけると有り難いなということが1つと,それから,もしそうだとすると,DPが,PDCAで考えると,「チェックしたら学生のあれが足りてないですよね。じゃあカリキュラム改善しましょう」というレベルの話じゃなくて,足りてないということがあっちゃいけないということですよね。全員が卒業できないみたいな話になっていくという,そこら辺の議論がちょっと私は読めてないというところです。
 それからもう一つ言うと,DPからブレークダウンしてカリキュラムを作ろうという議論を今これからするわけで,それは当然そのとおりだと思います。そうすると,逆に言うと,そのカリキュラムで単位が取れているということは,DPが達成できているはずなわけですよね。だとすると,DPをチェックするという必要がどうなってくるのかとか,そこはDPと卒業の質保証との関係を,私は初めてこの委員会に参加しているので,実は現場でもかなり今,学内でそこが議論になっていて,どこまで精度を持ったDPを作るかというところで,いつもここで止まるんです。どなたか教えていただけると有り難いなと思って質問です。
 以上です。
【日比谷座長】  どなたかという投げ掛けがありましたが,それについてのお答えでしょうかね。じゃあ清水委員,お願いします。
【清水委員】  認証評価をやっていますと,GPAが一定以上取らないと卒業できないという大学がありまして,それは卒業の判定違反じゃないかという議論がありました。日本の卒業制度というのは,124単位の修得と修業年限の組み合わせになっておりますので,そこをクリアしていれば卒業できるはずです。GPAが足りないから卒業させないというのは,法的な根拠がないので,結局それは関係ないという結論になりました。今のDPも同じだと思います。DPについても規定が今のところありません。将来的にはできるかもしれませんが,現時点ではそれで卒業をさせないというのは法的には無理だと思います。
【沖委員】  よろしいでしょうか。
【日比谷座長】  じゃ,沖委員,どうぞ。
【沖委員】  すみません。大森委員の事前に提出された文章を見ていて,私もその部分にアンダーラインを引いて,これは重要な観点だなと思った次第です。多分,深堀委員がよく知っていらっしゃると思うのですが,基本的には,今,清水委員がおっしゃったように,単位がそろえば卒業というのが大前提になろうかと思います。ただ,ほかの国においては,例えばGPAに即して,あるいはまたほかの基準も含めて,卒業証書にランクがあるというようなところもあり得るわけですね。その意味で,DPというのはどちらかというとそういう種類の目標になろうかなという気はしています。非常に卑近なところで申し上げますと,例えば医学部医学科などで,卒業はしたけれど,国家試験に落ちてしまったというような状況もそうではないかなと思います。ただ,基本は,大学全体として機関レベル若しくはプログラムレベルでDPの達成度を測るということと同時に,個人レベルでもやっぱり測っていくということが今後必要になってくるのではないかと思います。それから,DPを定める際には指標と基準ですね,これはもう大学に依拠するし,学部,そのときの状況に依拠するし,当然変わり得るものですが,それをやっぱり事前に決めておいた上で,その学生さんが卒業する時点でどの程度達成したかというような評価をするということが重要かなということも思っております。
【日比谷座長】  それでは,深堀委員,林委員でお願いします。どうぞ。
【深堀委員】  御指名頂いたのは多分,チューニングについて申し上げるためではないかと思いますが,チューニングに限らず,イギリスの高等教育質保証も同様に,内部質保証システムが非常に重視をされており,授業科目レベルの具体的な学習成果とプログラムレベルの抽象的な学修成果のひも付けが非常に厳格に検討されている特徴があります。その意味で,プログラムレベルの学修成果にひも付いた授業の単位を取れば卒業が認定される仕組みになっています。先ほど、高等教育資格枠組みは本会の検討の範囲ではないというお話がありましたが,成績評価の客観性を主張するためには,客観性の根拠となる枠組みが共有されていなければなりません。国が成績評価の客観性を求めるのであれば,そのマスタープランとなる基準を示さなければなりません。
 資料に挙げさせていただきました別の観点についてコメントさせてください。大学の教育現場について,沖委員から「むちゃくちゃだ」という御発言がありましたが,実際には,それぞれの先生が学生さんの姿を見ながら一生懸命に教育をされているのが実態に近いのではないかと思います。担当しておられるそれぞれの授業科目の中で,学生を伸ばしたいという気持ちを十分にお持ちなのがほとんどのケースではないか。繰り返しになりますが,何をもって適切な水準の学修成果ということについての考え方が共有されていないために,授業科目の学習成果とプログラムレベルの学修成果をどうひも付ければよいのかということについて具体的なイメージが持てないし,それを鍛えるための研修の機会もほとんど提供されてこなかったわけです。一方的に「ねばならない」と言うのではなく,何を基準にどういう活動に取り組めばそれが達成できるのかということについてのサポートを十分に提供していく必要があります。エキスパートジャッジメントを高めていくために,どういう仕組みが必要なのかということも併せて議論しなければ,一方的に大学にばかり責任を押し付けることにならないのかということを問題提起させていただきたいと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  じゃ,林委員,お願いします。
【林委員】  今の議論の流れとは違いますけれども,大丈夫ですか。
【日比谷座長】  はい。
【林委員】  これに関しても,私,事前に提出資料がありますので,11ページになりますけれども,議論の流れとは違うと言いながらも,根底は深堀委員がお考えのところとも近いのかなと思っていますが,丸2,「学修目標の具体化に関する事項」というところです。草案で身に付けることが期待される知識・能力を踏まえて学修目標を具体的に設定することであるとか,社会からのニーズを踏まえて設定するというのは,全くそのとおりで,それは全く異論ないんですけれども,ただ,加えてということで次のポツですが,大学やプログラムの多様性は当然ながら十分に尊重する一方で,やはり学位を授与するということですので,学位のレベル,それから学位に付記している分野にふさわしいかという,そのレベルでの確認を促さないと,モラルハザードが起きかねないと考えていますと書いてあります。プログラム実施者が自ら学修目標を立てて,その達成を確認するという構造なので,現状のカリキュラムを維持させることを前提にした学修目標を立ててしまうことがあり得ます。しばしば文科省の資料も,PDCAサイクル,PDCAサイクルと書いてあるんですが,学位授与機構で議論しているときに,PDCAサイクルの考え方自体は別に否定するものではないんですが,直接的にPDCAサイクルって余り言い過ぎるのはやめようということにして,恐らく作った資料にはPDCAサイクルという言葉は出てない,わざと使わないようにしたんですね。というのは,やはりどうしてもPDCAサイクルが,ここに書いてあるように,今のことを肯定するためにP――Pイコール学修目標ですので,それを立ててしまうと,幾らそれをチェックしても,そのチェックしましたということが免罪符になってしまって,全然教育の改善につながらないようなことがあり得るだろうと。なので,余りPDCA,PDCAと言うのもどうかということがあります。
 「そのため」というのは次のポツですが,学修目標を立てる際には,今の草案には社会ニーズを踏まえてということは書いてあるんですが,可能な限り何らかの参照基準を用いて各プログラムが授与する学位に対しても十分なものであることを,まずプログラム実施者自身が説明でき,そして,さっき申し上げたように,大学が各プログラムが適切な学修目標を立てていることをちゃんと学内でチェックすることができるようなことを促しておくことは必要だと思っています。参照情報としては,ここに書いているように,例えばということで日本学術会議の「参照基準」であったり,あるいは専門職に関係するような分野ですと,専門職団体において期待される能力が示されている資料であるとか,あるいは各種の資格試験の実施要項等に定められた能力であるとか,あるいはそういうのがないような学際的な分野でしたら,国内外の他大学の類似のプログラムでの期待される学修成果の内容であるとか,あるいは本当に外部評価者みたいな形で外部者が関与してそこで意見を述べることであるとか,それから,括弧で書いてありますけれども,分野に限らず,その大学として各学位課程で横断的に求めている能力との関係とか,そういう形で何らかの参照情報を用いて,ちゃんと学修目標が作成されているということを促すことが必要であると考えています。
 以上になります。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 松下委員,どうぞ。
【松下委員】  学修目標のことで大森委員がおっしゃるかなと思って待っていたんですが,大森委員が書か学修目標のことで大森委員がおっしゃるかなと思って待っていたんですが,大森委員が書かれていることについて,私も非常に強く感じているところがありまして,申し上げたいと思います。私,今ちょうど,京都大学の中で3ポリシーの見直し作業に関わっておりまして,そのときにDPのレベルで学修目標を明確かつ具体的に書くということは非常に難しいなと感じています。ところが,ここの箇所ではDPで明確かつ具体的にと求められているので,DPを書かれる教員や職員の方々から,どの程度明確かつ具体的に書くんですか,学位プログラム全体でそういうことが書けるんでしょうかという悩みが出てきます。私は,大森委員が書かれているように,ある程度抽象度を保った上で,それを評価する際のいろんな仕組みのところで具体的に評価できるようにするとか,あるいは,先ほど沖委員が言われたように,その下の各カリキュラム・各授業科目に落としていったときに,ある明確さ,具体性を保つように,そういう仕組みができていればそれでいいのではないかと考えております。
 それから,少し前の議論に戻るんですけれども,先ほど,自前主義の問題と標準化というお話が出てきました。私も自前主義の非効率性というのは感じてもいるんですが,一方で,実際には既にかなりの標準化が進んでいるのではないかとも思います。例えば,京大で3ポリシーを見直しているときに何が一番判断基準になっているかといえば,認証評価の大学評価基準や分析項目です。それに沿って大学全体でどのように3ポリシーを設定していけばよいのかという観点が作られ,その中で各部局が3ポリシーの見直しをやっているという形になっています。ですので,実質的には,認証評価の評価基準とか分析項目がある意味,標準化の枠組みとして機能しているのではないかと思います。ですので,これは多分,この特別委員会の中でずっと議論になることだと思うんですが,標準化と多様性というのをどう折り合いを付ければいいのか,どこで折り合いを付けるのかというところをどの内容についても議論していかないといけないだろうなと感じています。
【日比谷座長】  じゃあ,森委員,清水委員,浅野委員,一番最後お願いします。
【森委員】  ありがとうございます。
 申し上げたいのは3点です。まず,今,松下委員がおっしゃったように,DPに関しては,やっぱり抽象度が高いものにならざるを得ないだろうと思っております。特に今回,この議論に関しては,システム的な話が中心なので,余り内容については触れないのかなとも思うんですが,結局,DP論の中で重要なのは,グランドデザイン答申にもありましたように,汎用的技能とか授業横断的な資質・能力をも含めて明示化するということです。しかし実際には難しい問題を含みますよね。例えばアセスメントをどうするか,といった問題です。間接評価と直接評価を駆使して多面的な評価が必要になりますが,直接評価には危険性が伴うのかなと思いますし,そもそも,学生が「私はコミュニケーション能力,GPA3.2だわ」とかいうふうになる可能性もあるわけで,そこに偏差値的な学力観が入り込むことに危機感があります。話が少しそれましたが,当然ながらDPは知識に加えて汎用的技能や資質・能力を盛り込んでいくということを,つまり内容に関しても,私は今回の内容の中にやっぱりうたった方がいいのではないかなと思ったりします。今回は本当にシステムの話になっているので,整合性の話かもしれませんけれども,やはりこういうときには踏み込んでいかなければいけないのではないかなと思っています。
 そして,2点目は前の議論に戻るんですが,PDCAの話です。先ほど林委員からもあったんですが,私,基本的にはこれは,内部質保証を前提に,話質向上の話にしていかなければいけないのではないかなと思います。つまり,学生の学びをもっともっとよくしていこうという前向きなアクションにするということであれば,今回,PDCAのAのところが欠けていることに非常に違和感を感じるんですね。今までFDとかSDとかを外部講師を呼んで話を聞けば終わりみたいだったものから,PDCAのCで今現状,学生の学びがどうなのかを学内で共通しつつ,じゃあどこを変えていけばいいのかといったような学内へのアクションへの一歩として位置付けるような形に今回見せられたらいいなと思ったりします。
 あと3点,やっぱり質保証のところなんですけれども,成績評価,非常に重要だと思います。そういう意味で,事前に意見として書かせていただきましたけれども,私はミクロ,ミドル,マクロと責任主体を明らかにした上で3層構造でレベルを分けた議論をすることによって混乱が防げるのではないかなと思いました。
 以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 では,清水委員。
【清水委員】  学修目標について資料を提出してありますので,7ページ,スライドの資料ですが,今回のグランドデザインの最も強調されるべきところは,学修者本位の視点に立つということと,従来の教育目標に代わる学修目標という,4年間に身に付けるべき学修成果というところにあります。最初の資料は三つのポリシーを,実際,本学で策定するときの教職員への共通認識のために私が示したもので,これに沿って各組織で――各組織というのは学位プログラムごとですが,作成してもらいました。学位プログラムは,本学は3学部それぞれが1つの学位ですので,その意味では非常に作りは簡単でした。前職の筑波大学のときにはある1つの学部の中に4つの学位がありました。大学院の場合にも1つの研究科あるいは専攻に複数ありましたけれど,全て学位ごとに教育目標を全部作り直しました。どんな大規模な大学でも,今回の学修目標を立てるというのは不可能ではないと思います。その作業はできるはずです。ですから,今回の学修目標を強調するならば,やはり学位プログラムごとに三つのポリシーを作るというのが私は本筋ではないかと思っております。
 その上で本学の場合の実際の例をお示しすると,各大学は理念・目的の下に教育目標を持っているわけですから,この教育目標からDPを策定します。DPを策定すれば,次のCPとか,あるいはAPも策定できるはずです。それぞれのDPにおいてはいわば学士力をいかに策定するかということとイコールであると考えています。下の方の黄色は3つのポリシーにそれに付随したサブシステムです。
 このような考え方で作ったのが次のページになります。まず,大学にも全体の共通の目標があるはずです。その6つの教育目標からDPを6つ抽出しました。それを本学では学修成果という形でそこに表してあります。それを更に学士力という短い言葉で表したのが6つの力です。それを測定する方法,これは後の議論になりますが,それも併せて作りました。DPの後にそれぞれカリキュラム・ポリシー,そしてアドミッション・ポリシーと続きます。8ページ目が大学全体の共通した三つのポリシーです。以下,各学部とか学科ごとにも三つのポリシーを策定しましたが,例示で看護学部の学士専門力を示すと,同じように看護学部の教育目標からDPを抽出して,そのDPに基づく専門力というのを8つ掲げ,同じように測定方法,そしてカリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーというようになります。こういうものを大学全体,学部,そして学科ごと,ある学部はコースを3つ持っていますので,コースごとに三つのポリシーを策定して,ホームページで全てこれを公表してあります。ですから,教育目標が明確になっており,そこからどういうDPを引き出すかという作業さえきちっとできれば,あとはそんなに難しいことではないと思います。
 ついでに,最後の10ページの資料も用意しました。既に意見も出ていますが,これはある大規模な大学の全ての学生の修得単位数の平均値をとったものです。これが実態なのです。4年間キャップ制をとっていても,日本の大学教育というのは4年間が均等には履修されてない。こういう現状をなくしていくような教学マネジメントというものが求められているという資料でございます。
 以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,浅野委員,小林委員でお願いします。
【浅野委員】  ありがとうございます。学修目標の見直し,あるいは具体化に関しましては,さきほど清水委員がおっしゃっていたこと,あるいはこれまで他の委員の方々,特に林委員がおっしゃっていた,教育プログラムというのが一つのキーになるんだろうと思います。これまでの答申等では学位プログラムとして議論されていますけれども,実際にやってみますと,それでも結構,粗いといいますか単位が大きすぎるというケースがあります。例えば理学,工学について見てみると,同じ学位の下に複数カリキュラムが設定されいるケースがあります。そうなりますと,学部レベルのDPを作る際,学科またはコースの学習目標を寄せ集めて,それをつないだり統合したりすることで,非常に抽象化されたものになってしまいます。数学なら数学,物理なら物理,化学なら化学といったように,カリキュラムを基本単位としてポリシーを作っていかないと,この後の議論に出てきます学修成果の測定・把握において,支障が出てきます。すなわち,抽象度が高い学習目標の達成度を測ることはできませんし,仮にできたとしても,個々の学科やコースレベルではあまり意味のないものになりがちです。そのため,カリキュラム単位で学習目標を定め,それに応じてポリシーを策定し,具体的なポリシーの達成度を把握していく,このプロセスが重要であろうというふうに考えております。したがって,DPをどのように作るかを考える前に,どの単位(学科,コース,またはカリキュラム)で策定するかが先決事項であると捉えております。
 ご参考にまで,山形大学の場合は6学部ありますが,現在22の教育プログラムを置いています。この教育プログラムの単位を最初に決め,その後,大学全体のポリシーを整理し,学部レベルのポリシーは敢えて設定しませんでした。先ほどお話ししました理由から,学位単位にしてしまうと結構曖昧になってしまいますし,実際それが実質的な効果を持ちえないことになりますので,教育プログラム(カリキュラム)単位まで落とし込むということを最初に行いました。
 一方,策定したポリシーの見直しを行う際,一つの構造的な問題としてあるのが,三つのポリシーは学生便覧を通じて毎年入学してくる学生さんに対して示しているため,容易にできないということがあります。あるに入学してきた学生さんはこのカリキュラムとこの目標でいきますよというのを大学としては公約しているわけですから,理由はあるにせよ,途中で変えることは難しいという制約があります。そもそも学内での議論が難しいというのもありますが,入学年度ごとに違うポリシーでいくとなりますと非常に管理が煩雑になっていきますので,こうした構造的な問題を前提にポリシーの見直しは議論する必要があるのではないかと考えているところです。
 もう一点,議論の視点が少しずれて恐縮ではございますが,これまで出てきているポリシーとカリキュラムあるいは科目の対応をどうするかを考えるうえで,日本の場合,科目の学習目標は個々の担当教員が設定するケースが多いのが現状だと思います。アメリカであれば,コースカタログという形で,学部・コースの目標までは全て決まっています。そのため,コースで提供している科目の目標などはコース全体の位置づけを考えたうえで決められています。そうしますと,担当教員はそのコースの目標を前提に,自分がどういう授業方法でそれを具現化するのかということを考えることになります。この流れがいいか悪いかについて,議論の余地はありますが,カリキュラムの体系性,目的の整合性などを考えていく際,日本の現状のようにDPを決めて,その先は先生方が個人の判断で授業の目的を書いているという流れですと,なかなか体系性や整合性のコントロールは難しいという問題があると思います。実際,私も実践していくうえで,容易ではありませんし,大阪大学の佐藤委員などが取組まれておられますカリキュラムコーディネーターの育成などとも関わっていくところですが,大学全体として,組織として教育をするという今の流れの中で,学修目標を立てて,その学修目標を踏まえて個々の教員がそれぞれの科目の位置づけを自ら考えるという従来型の流れでは対応が難しいように思えます。学部または学科やコースの目標についての共通理解がない中で,個々の授業を担当する先生方が暗中模索しながら授業科目の目標を立てている現状では,体系性や整合性はとりにくいと感じているところです。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 この2番目のポイントは,この後,小林委員,溝上委員で終わりといたしまして,3番目に移りたいと思います。どうぞ。
【小林(浩)委員】  大学の外からの目線でいきますと,これまでいわゆる入学時の偏差値で見ていたところから卒業,入学の国から卒業の国に移っていく大きなプロセスの中にあると思っていまして,そこでの学修目標の具体化というのが外から見たときに非常に大きな視点なのだなと思っております。今,世の中で言うと,偏差値を見ていたのがだんだんランキングを見るようになってきて,ほかに見るものがないみたいな状況になっていると思います。
 その中で2点ありまして,1つは,先ほどからいろんな委員がおっしゃっているとおり,標準化と多様化,個別化というところだと思いますが,例えば外から見たときに,経営の学位を取っているというのが,だったらここまでできているなというのが多分標準化というところで参照基準というところになってくると思います。一方,この大学だったらこんなことを身に付けられているなとか,こんな素養があるなというところが個別大学の多様性というところであって,それは各大学の建学の精神や教育の理念,ミッション,ビジョン,バリューというところに結び付いているんだろうなというところだと思います。先ほど深堀委員のお話を聞いてちょっと考えたんですけど,やはり参照基準みたいなものが全然社会には伝わっていないので,この経営学位を取ったということは,どこまでできているのかというのを社会の人は誰も知らないんですよね。入試科目に数学はないけれども,本当に統計できているんだろうかみたいな,そういった見方を多分していると思います。ここについての標準化と多様化というところがあると思います。
 もう1点は,きょう全く出てきていないんですけれども,高大接続の観点でいきますと,これまでの知識・技能重視型から学力の3要素という形で,この予測不能な社会の中で生きていく資質・能力として,知識・技能だけじゃなくて,思考力・判断力・表現力,そして主体性・多様性・協働性という学力の3要素を高校・大学を通じて育んでいきましょうねということで,2022年,現在の小学校6年生が高校に入学したときからカリキュラムが大きく変わっていくわけです。各大学はその学力の三要素に基づいてアドミッション・ポリシーを設定して,そこでカレッジ・レディネスですよね,うちの大学に入るには学力の3要素でこれを準備してきてくださいというのを公表して,それが高校の先生に伝わって,社会に伝わって,それで大学を選ぶようになるはずなんですが,そこからの継続性というところが何もつながっていないんじゃないかなという感じがしています。大学は大学でいいのかもしれないんですけれども,あれほど議論して大きな教育改革だと進めていたことが,どうやって育ってきた子たちを大学で引き継いで育てていくのか,社会に送り出すのかという視点が何かあってもいいのかなというのを学修目標のところで感じました。
 以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 じゃ,溝上委員,どうぞ。
【溝上委員】  溝上です。既にもう多く議論が出ていますので,私なりにはここは同じことを重ねますけれども,考えとして述べておきたいと思うんですが,先ほどの標準化とか個別化とか,ここなんですけれども,この前のワーキンググループから前回も同じことを言っているんですが,結論としては,やはり大学の個別の学修目標あるいは指標を立ててのアセスメントを非常に大事にしつつも,やはり標準化というのをどこかしら入れていかないと進まないというのは,私の立場として,繰り返しになりますけど,お話ししておきたいと思います。
 そこで,それでもなぜそう思うのかというときに,もう今,小林委員がおっしゃった,あるいは両角委員とか吉見委員も違う形でおっしゃいましたけれども,やっぱり社会との関係とか,あるいは信頼というものが大学に対して揺れているというか,大分失っているんだと思うんですね。それは今の小林委員のお話に基づけば,知識というところよりは,どちらかといえば技能とか能力とか,社会に出ていくときに求められる資質・能力の知識以外の部分ですね。それももちろんレベルがいろいろありますから,コースのカリキュラム・授業レベルで見ていく部分と,非常に抽象度の高いところで汎用的に見ていく部分と,それは様々にあって,非常に個別的な水準においては,大学が独自にアセスメントしていくしかもちろんないと思いますし,それが大事だと思いますが,非常に高いところでは,やはり社会の方々が見て,ああ,そうか,ここの大学の学生というのはこういう感じで力が付いてきているのかとか,あるいは付いているのかということをやっぱり見たい,見せなければならないんだと思うんですね。それで初めて社会との関係とか信頼が修復されていくといいますか,関係がとれていく。そういう考えに基づいて,標準化ということの標準化の実際の進め方はたくさんあって,下手な方途をとっていくと非常に乱暴な話になりますので,緩やかな中で,例えばディプロマの中で知識以外の能力とか態度に関わる部分は結構書き方は自由でいろいろありますけど,大きくは結構共通する項目がどの大学にもあるわけですね。それを個別に測定していくとそれぞれの大学ではこうだというのは分かりますけど,全体ではどうだということはなかなか分からないので,せめてこの部分を例えば共通の項目あるいは同じような形で尋ねていくという形で標準化ということを部分的にとっていくというのを私なんかは考えています。
 あと,私,発達の心理学者でもありますので,能力とか資質がそんなに大きく変わっていかないというか,18,20過ぎた学生が,非常に客観的な標準レベルの能力テストでそんなに上がっていくとか高い得点をみんなが見せていくということは,大学を標準化し,並べて,これが乱暴な序列になってはいけないというのが常に譲歩文ですけれども,ただ,能力偏差値みたいなのが出てきては最悪なので,そうならないようにしていくことがやっぱり大事だと思います。そういう中でよく出ている議論は,やはり学年別の主観的な,あるいは成長のそういう能力に対する変化というのを大学が社会に対して見せていけば,この大学のレベルとか,あるいは特徴の中で学生がこういうふうに変化して,学生自身が非常に身に付いているとか,こういう示し方もあると思いますので,先ほど森委員がコミュニケーションの話で,「私,コミュニケーション何.0」とかで,こういう話はもちろん一番駄目な流れですけれども,こういう世の中に対して,あるいは成果として示していくときには,先ほどから出ているように多次元・多様化というのが大事ですので,コミュニケーションはこれぐらいだけれども,思考力はこうだとか,そういう感じで示していくということを真摯にやっていけば,世の中も全ての次元において100点だとは思っていませんので,そういう努力がこれからの大学に求められるかなということを思います。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,ここで本日3番目のトピックに移りますけれども,資料3のうち,「授業科目・教育課程」について白丸が1,2,3,4,5ですか,付いておりますけれども,このトピックについて御意見をお願いいたします。吉見委員,どうぞ。
【吉見委員】  ありがとうございます。前回も申し上げたところでございますけれども,この「授業科目・教育課程」に関して,私は,最大の問題は,1人の学生が1学期に履修する科目数の多さだと思います。これは3ページの下にも書いてあるとおりでございますけれども,日本では,多くの大学で1人の学生が1学期に10~12,場合によっては14ということもあるようですが,科目を履修している。これは米国の大学で言えば,トップレベルのユニバーシティーであれば4~5科目です。圧倒的な差がある。2倍以上の差があるということです。問題は単に日米の差というだけではなくて,1週間に10も12も14も科目を履修していたら,実質的な学修時間,そもそも予習や復習の時間が確保できるかという問いですが,私はこの答えは明確にノーだと思います。普通の学生であれば不可能です。
 なぜノーなのかという理由,あるいはなぜここに問題の根本があるのかという理由は,幾つも説明できるわけですけれども,例えば第1に,10~12の科目が1週間に並んでいるということは,1つの科目は1コマしかとれません。つまり,1週間に一度しか先生とは会わないということですね。そこの条件の中で深い学修などできるはずがないと思います。米国であれば,2回か3回,1週間に会うわけですね。2回か3回のうち1回はTAがディスカッションする授業になっているでしょうけれども,この構造的な差があるということです。
 しかも,予習ということに関して言えば,仮に12,学生が科目をとっていて,1人の先生が2つ文献を読んできなさいというか,2つの課題を出したとしたら,その学生が1週間にこなさなければならない課題は24になります。これは不可能です。不可能なことを要求すれば,途中で嫌になっちゃって全部放棄しちゃうということが,当然,学生たちの行動としては出てきます。しかも,そのくらい科目が多いということは,一つ一つの科目が軽いということになります。大体,このお手元の事務局がそろえてくださった資料にもあるように1単位か2単位なんです。1単位か2単位の科目ということは,学生の視点からすれば,これを科目を切ると言いますけれども,簡単に捨てられるんです。つまり,学期に出ていて何人か割と厳しい要求をする先生がいたらば,その先生はもう面倒くさいから,その先生の科目は途中で捨てるという行動,スーパーで商品を選んで,途中のレジの前に行って戻しちゃうのと同じで,そういう消費的な行動を誘発する構造に私はなっていると。逆に言えば,1つの科目の単位数が4単位ないし6単位ともっと重ければ,簡単には学生は捨てられません。いやが応でも,先生が要求するリクワイアメントに従って一生懸命勉強するという,これは日米の学生たちの勉強の仕方の差にもなってくるわけで,日本の学生が勉強しないのは決して真面目じゃないからじゃなくて,そのような勉強をさせる構造にカリキュラムがなっていないからだと思います。さらに,4年間でこれを総計したときには70科目とか80科目になるわけで,そうしたら,4年生になったときに,1年生で何を勉強したか,何の科目をとったのかって,普通の人間であれば忘れちゃいます。それが日本の現状だと思います。
 もう一つ付け加えて言わせていただければ,教員サイドからしても,当然ながら教える科目数が多いわけですから,そうすると,一つ一つの科目に対して準備が十分にできない。しかもリソースが分散されますから,TAの配置も不十分になるという,いろんな弊害が多数出てくるわけで,この問題,つまり,日本の大学の教育の根本の問題は,軽く,広くなっている。これ,今,この教学マネジメントの基本的な方向性がもっと深く,そして深く学ぶ体制を作っていこうと。そうすると,これは軽いという部分を何とかしないと変わり得ないわけですね。
 そうすると,具体的には何をすればいいかというと,1科目当たりの単位数を増やす。つまり,1単位ないし2単位の科目をなくしていって,4単位以上の科目を基本にする体制に変えていくという,これをどうするかということが,この授業科目・教育課程の編成にとって根本の問題だと私は思っていますので,それを提起させていただきたいと思います。
【日比谷座長】  それでは,川並委員,佐藤委員,溝上委員の順でお願いします。
【川並委員】  科目数の問題は,免許・資格にも影響してくると思うんですけれども,いろいろと免許・資格について問題が出ると法律が改正されて,そのたびに取得単位が増えてくるということと,さらにまた,省庁間をまたぐとそれぞれの調整,してくださっている部分はあると思いますが,その調整がうまくいかないと,そのまま更に付加として乗っかってしまうというようなことも存在するのではないかなと思いますので,是非,特に短期大学は免許・資格を取って卒業して社会に出ていく学生が多いので,その辺も含めて御検討いただけたらと思います。よろしくお願いします。
【日比谷座長】  じゃ,佐藤委員。
【佐藤(浩)委員】  事務局に質問なんですけれども,3ページの下の丸に「密度の濃い主体的な学修を可能とする観点から,セメスター制の導入など学事暦の柔軟化」という文言があるんですが,ここでなぜセメスター制という具体的な――ほかにもクオーター制とかありますよね。このセメスターだけを取り上げたのかという理由を聞きたいんですが。
【平野大学改革推進室長】  すみません,「など」というところでほかのものも当然読み得るというつもりで書いたんですけれども,セメスターだけを推しているというものではございません。
【佐藤(浩)委員】  現状としては,多分,セメスター制が多いですよね。だから,それを導入するというのはちょっと現実的にはずれているかなという印象だったので,書くのであれば具体的に書かれた方がいいような気もします。
 以上です。
【日比谷座長】  それでは,溝上委員。
【溝上委員】  吉見委員の先ほどのお話を続けて私なりに考えるところを述べたいんですが,私,アクティブ・ラーニングとかうるさく言ってきましたので,活動をやっていても,深い学びになっていかない授業に対してのいら立ちというのはたくさん感じてきましたけれども,でも,先生方の授業力とかそういったことの問題ももちろんあるんですが,他方で,やっぱり吉見委員おっしゃるような単位の,要は制度・システムの問題の方も結構あるなとずっと感じてきました。つまり時間が短いわけですよね。90分の中でいろいろ工面する,非常にそういうところにどんどんやっていける力量の高い先生だったらいろいろやれるんですけど,多くの先生方はなかなかできない。で,ゼミとか非常に豊かなインタラクションであったり議論というのが,卒業研究とかそういうのができるのは,やっぱり同じ教員で,同じ学生たちで,多くの時間を共有して,結構お互いの共有情報というか,そういうのも蓄積されて心が動くんですよね。そういう認知的ないわゆる学修というのが一方で大事なんですが,他方で,いわゆる情意面といいますか,そういうお互いの,同じ教師の授業ですね,先ほどの吉見委員の話をちょっと加えたら,4単位というだけじゃなくて多分週複数回という,そこがとても大事で,それを大分以前のように年間4単位で週1回やっていたのでは話は変わりませんので,やっぱり週複数回で単位を3単位,4単位と増やしていって,同じ先生の同じ学生を週複数回見ていくというのが,私なんかは,非常に心も動いてお互いの共有知も増えて学修が深くなっていく一つの制度的な在り方かなと思います。
 他方で,授業外学修の話においても,時間数の話はもちろん形式的な話で,時間が長ければいいという話じゃないのはもう皆さん御承知のとおりですけれども,でも,やっぱり一杯,10科目とか15科目とかとって,そこで授業外学修をそれぞれが求めていて,吉見委員のおっしゃるように,例えば2つの課題が与えられて24の課題はできないとか,そんなことももちろんあるんですけれども,でも,10種類,15種類の課題を授業外でするということの表面的な状況というのは,質的にもやっぱり問題だと思うんですよね。やっぱり3つ,5つぐらいの量を質的に深く取り組んでいくという意味でも,そういう複数回授業の形でディープにやっていくということが教学マネジメントの質保証とかそういうところにもつながっていくものだと思いますので。
【日比谷座長】  それでは,今の点についてでしょうか。では,松下委員。
【松下委員】  私も週複数回授業というのはとても重要だと思います。前回の自己紹介のときにもちょっとそういうことも申し上げたんですけれども,ただ,その際に問題になるのが日本の大学設置基準です。大学設置基準では授業科目を授業形態ごとに割り振るような形になっていますよね。講義,実験,実習,演習,それぞれを1~2単位ずつというふうに。ですので,大体教員は,講義科目,実験科目,実習科目,演習科目といった言い方をします。一方,例えばMITなどでは,1つの「電子回路」といった授業科目に12単位があてられていて,その12単位に,講義,ラボ,レシテーションをどのように割り振ってもいいというふうになっています。4・4・4とか,3・2・7とかそういう形です。ですので,もし今,溝上委員や吉見委員がおっしゃったことを本気でやろうと思ったら,大学設置基準の見直しもやらないといけないんじゃないでしょうか。現状では,深く学ばせたいと思っていらっしゃる大学では,講義科目と演習科目,実験科目などがうまくつながるようにカリキュラム上で工夫されている,そういうところもあります。でも,それになると多分自前主義の努力に委ねることになりますので,設置基準も含めて見直すような,そういう覚悟が必要になってくるんじゃないかなと思います。
【日比谷座長】  では,ちょっと,平野さん,どうぞ。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。今の御指摘を私なりに理解した範囲でということでございますけれども,設置基準の第21条に単位の規定がございます。そちらにおいては,今,松下先生おっしゃったように,講義,演習については云々,実験については云々というようなことが書いてあるわけでございますけれども,いつ改正されたかは正確に今申し上げられないんですが,第3号ということで,講義,演習,また実験,実習,実技以外のものとして,「一の授業科目について,講義,演習,実験,実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については,その組み合わせに応じ,前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする」という規定がございます。実はこれは,2つ以上の方法を組み合わせて多様な形の授業形態が必要ではないかという議論を反映して改正がされたものでございますけれども,もしかしたらまだ余り活用されていない項目なのかもしれません。
【松下委員】  失礼しました。ただ,それは一単位の中での工夫なんですね。
【日比谷座長】  関連ですか。
【清水委員】  はい,関連して。
【日比谷座長】  はい。
【清水委員】  その意味で,先ほどから単位制度の運用というのが教学マネジメントに関係しております。ですから,最初の6つの区分けの5番目ですか,教学マネジメントの基盤辺りには単位制度の運用というものを入れておいた方が私はいいと考えています。というのは,先ほどの多くの科目を履修するとか,あるいは1単位の規定についても各大学独自に定められます。演習も,15時間でやっている大学もあるし,30時間でやっているところもあります。また,実験,実習を依然として45時間でやっているところもあります。当初の実験,実習45時間を1単位にしたのはフィクションだったのです。旧制から新制へ移るときの苦肉の策で作ったもので,欧米では通用しない。それで平成3年に弾力化して30~45と変えたわけです。それでも,大学によっては実験・実習・実技を45時間でやっているところもあります。単位制度の運用というのが日本の場合は非常に難しいので,そこのところは教学マネジメントの基盤になる部分だと私は思います。単位制度の運用状況というのもどこかで入れておいた方が質保証の面ではいいと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  本日この後,伹野委員,それから小林委員をもって終わりとしたいと思いますので,お待たせいたしましたが,どうぞ。
【伹野委員】  伹野でございます。
 シラバスの件で気になっているところです。ここに書かれてあることは、まさしくそのとおりと思います。シラバスは学生と教員との契約書であり,DPと授業科目の関連をどのように学生に周知するかは大変重要なことです。この内容が各大学等で利用されれば,すばらしいことと思います。
 今回の教育改革の大きなポイントは,学修者主体の教育に転換することです。学修者主体とは,「何を教えたか」から,「何を学んで,何を身に付けたか」ということです。この点をシラバスにどのように反映させるかが重要です。
 また,学修者の評価が教育システムに反映させることが必要と思います。何を教えたかという教員目線,学校目線の教育体制にどのように学修者目線を取り込むかの議論も必要に思います。
 以上です。
【日比谷座長】  じゃ,最後どうぞ。
【小林(雅)副座長】  3ページの最初の,一番上の白丸について少し話したいのですけど,その前に今の議論のことで言いますと,参考までに申し上げておきますと,1コマの時間でも実はかなりいろいろな考え方はありまして,例えばスタンフォードだと,語学学修というのは大体45分でやっている。そうかと思うと,ゼミなんかだと90分なり,場合によってはその倍,180分ぶっ続けでやるというような,非常に柔軟なカリキュラムを組んでいます。ただ,これは学生にとっては非常にとりにくいという逆の問題も出ますので,その辺はいろんな考え方があって,それを使っていけばいいのだと思っています。
 ただ,きょう,全体に関わるのですけど,聞いていて非常に気になるのは,こういう議論というのは,大体,ともすれば理想的になり過ぎる。教育の議論というのは大体そういうのが多くて,きょうのも,ディプロマ・ポリシーについて,それがひも付けられてカリキュラムができて,科目が決まりということが前提で全部話が出ていたんですけれど,現実にはそれは非常に難しいわけです。それは森委員がおっしゃったように,そもそもディプロマ・ポリシーの到達基準なんていうのは,まだそんなことを測定している例というのはないわけですから,更に数値化なんていうのはとてもできないという,そういうような状況にあるのですけれど,きょうの議論というのはどっちかというと,こういうふうになればいいよねという議論になってしまっている。そこのところで非常に気になるのが,そういった場合に,できない場合どうするかという担保が必要だと思うのです。そういう議論がないので,ちょっと理想的になり過ぎているというのは気になります。
 その場合,今まで大学がそれをどういう形で担保をとってきたかと考えると,これは無駄の哲学,あるいは「遊び」です。つまり,余計なものを入れておくことによって,何かができなかった場合にそれを担保にしてきたという,そういう歴史があるわけです。ただ,大学が、それに安住していたことも事実です。無駄でいいんだというふうになってしまうと,科目数はどんどん増えるというようなことが起きてきたわけですから,その辺はもう考え直さなければいけない時期に来ているとは思うのですけれど,ただ,そういったこともあるということを一応念頭に置いて議論する必要があるかと思います。
 そこで,本題に戻るのですけれど,3ページの上のところに,ディプロマ・ポリシーにおいて「できるようにすること」,これはそのとおりですけど,逆算して,必要な授業科目を開設し,体系的に教育課程を編成することが必要である,これも理想論としてはそのとおりなんです。ただ,今申し上げたように,それが本当にできるかというと,かなり難しい。その上で,「同方針への貢献が見込まれない科目については,内容の見直しや取りやめを検討する必要もある」と。これはかなりきつい書き方ですね。そういうこともあるかもしれない。無駄で重複した科目を置いたりとかそういうこと,あるいは何のためにやっているか分からないような科目があるということは,それは論外だとは思いますけれど,ある程度こういったことを許容していかないと大学というのは動いていかないと私は思っておりまして,そういう意味ではこの書き方はちょっときつ過ぎると感じまして,そういう場合もあるぐらいだろうと思うんです。「必要がある」というと,何かそういうものはどんどん切っていけというふうに聞こえますので,その辺は少し考えた方がいいのではないかと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございました。大変活発に皆様から御意見を頂きまして,ありがとうございます。
 本日の議題は以上となりますけれども,次回は,資料4にありますように,「カリキュラム編成の高度化」,「柔軟な学事暦の運用」についてテーマとして取り上げるつもりでございます。併せまして,ちょっと前半で申し上げましたけれども,そもそも教学マネジメントとは何ぞやというようなことについても改めて資料を用意して御提示をしたいと思っております。
 ここで,委員の皆様に1つお願いがございます。きょうは,意見のある方は事前にお出しくださいということでお出しいただいて,頂いたものについては事前にシェアをいたしました。そういうことは今後も続けると思いますけれども,例えばこの「カリキュラム編成の高度化」というところで,履修系統図とかいろいろな取組の話になると思うんですが,大学,短大,高専に御所属の委員の方,そうでないお二人の方はよろしいんですけれど,御自身が学校でこういうものを作っていらっしゃる,学校として備えているよというものがあると思いますので,詳しくは,毎回,事務局から早めに御連絡をしますが,それぞれの御所属のところから,場合によってはたくさん学部をお持ちだというようなことであれば代表的な取組ということになると思いますけれども,事前に資料の御提示をお願いし,それを,はい,一,二の三,どんということでここで並べてみるというような試みもしてみようかと思っております。同一大学からお三方いらしているところもありますが,そこについてはまた別途御相談をさせていただきますが,その際にはどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,事務局からお願いします。
【平野大学改革推進室長】  本日は活発に御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
 次回の日程は2月13日でございます。詳細は調整の上,追って御連絡いたしますけれども,今期の大学分科会の下に置かれる教学マネジメント特別委員会という意味ではここで1回切れるという形になるわけでございます。
 また,先ほど来,座長から御紹介いただきましたけれども,教学マネジメントというものの全体の在り方という部分の議論,また,次回以降,議論するときにも階層分けの構造,こういったところについては十分意識した上で資料等は御準備させていただきたいと思います。
 本日の資料につきまして御郵送を希望される委員の方は,附箋,手元に置かれていると思いますので,郵送希望の旨,書いていただいて机に残していただきますれば,職場の方にお送りさせていただくこととしてございます。
 本日はどうもありがとうございました。
【日比谷座長】  それでは,本日はこれで終わりにします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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