資料1-5前回(第7回:平成29年11月17日)の制度・教育改革ワーキンググループの意見

<1.教育課程の改善、指導方法の改善等の学修の質保証>
○シラバスの在り方については、国が例示をした上で、授業の種類にかかわらず一律に同じようなシラバスを作成するかどうかは慎重に検討すべき。また、入試改革が進む中において、学年次を意識したシラバスの在り方、特に初年次との連動性について、これから考えていかなければならないのではないか。

○文部科学省が言う成績評価基準について、何点以上をAや優とするということを成績評価基準と捉えている大学が非常に多いので、まずは成績評価基準の解釈や定義を明確にする必要がある。「GPAの厳格化」という表現では、成績を厳しく付けることが望ましいという誤ったメッセージとして伝わる恐れがあるので、「GPAの厳格な運用」というような表現の方がよいのではないか。厳格化をするのであれば、まずはGPA制度の標準化をすべき。GPA等の評価は全体の学修成果の質保証のためのパーツでしかなく、アセスメント・ポリシーを明確にしなければならない。

○実務家教員は、実務には長けているが、必ずしも教育に長けているかはわからない。実務家教員に対するFDは、今後の新しいFDの内容として追加すべきではないか。

○シラバスにナンバリングの記載をしている割合が低いことは非常に問題である。当該授業科目がカリキュラムの中でどう位置付けられているのか、きちんと学生に示すべき。

○みなし専任教員は、現実に大学から需要があるのか。資格取得を伴う大学など、実務家が必要な大学は既に十分採用していることが多い。経営が厳しい大学で既存の教員をみなしに差し替えて人件費を浮かすところが出てくるのではないか。安易に使われないようにしなければならない。

○みなし専任教員について、「1年につき6単位以上の授業科目を担当し,かつ教育課程の編成その他学部・学科の運営について責任を有する者」とあるが、半期授業で3科目しか担当しない教員が教育課程の編成その他学部・学科の運営について責任を有することができるとは思えない。前田委員と同様の意見で、人件費対策に使われてしまうことを懸念している。大学院であれば、30単位中6単位であるが、学部では124単位中6単位となり、比重が全く違うので、慎重に検討すべきではないか。

○大学全体や学部・学科、学位プログラム単位等、教学のPDCAを回していくためには、内部質保証が前提となっており、そのためにはシラバスの改善やGPA、FD、学修成果の評価などがどのような位置関係にあるのかが見えるような記述が必要ではないか。また、内部質保証については、基準等により厳格に定めてしまうのではなく、ガイドラインのようなもので例示をし、詳細は大学の判断に任せるべきではないか。

○GPAの活用について、学生の質の保証や学修意欲の向上等に関する好事例があれば、示してほしい。

○シラバスの充実について、カリキュラムマップを示すべきである。学生にとっては、前後の科目の関係やつながりを知ることができるし、教員にとっては、前後の科目の関係を意識しながら自らの科目を設計することができる。また、シラバスの中に、コンテンツだけでなく、ディプロマポリシーとの関係を提示すべきではないか。実務家教員のFDについては、実務を行っている間に大学がどのように変化しているかを知ることは重要であるため、必須である。

○三つの方針とナンバリングの関係を明示すべきではないか。GPAの標準化については、TOEICとTOEFL間にも換算式があるように、何かしらの数式を活用することで可能ではないか。

<2.情報公開と学修成果の可視化>
○情報公開の項目を積極的に拡大すべき。例えばアメリカのコモン・データセットやイギリスのキー・インディケーター・セットを参考に、共通の公開項目とする情報と大学の裁量に任せる情報、あるいは大学ポートレートに掲載する情報等に区分する必要があるのではないか。

○大学には、DPで掲げていることがきちんと達成されているかどうかを説明する責任があり,そのために個々の学生の状況の把握が必要になる。大学の説明責任を確保するために,個々の学生の学修成果等を公表することが求められる、という書き方は違うのではないか。

○必要な情報が探しやすいように、大学の公表情報のHPへの掲載場所をある程度指定することはできないか。

○教育の質向上を目指す上で最も重要なことは、学修成果の把握であるが、指針を定めることは難しいと思われる。先進的な取組みをしている大学を参考に問題提起し、各大学が自大学のやり方について考えられるかたちにすべき。

○学修成果そのものを把握ないし計測することは難しく、これは各大学が自主的に判断すべきではないか。一方で、学修時間等のプロセスはインプットとアウトプットの間にある客観的に把握できる情報であり、これなら示せるのではないか。

○定量化できるものは公表すればよいが、学修成果の把握はDPを作った各大学に論証する責任があり,そのためにはアセスメント・ポリシーを明確にすべき。特に小規模大学では定量化し難く、全ての大学が同一の方法や観点で比較されるような方向性になりかねない記述は避けるべき。

○小規模大学・短期大学の場合、自大学のみで情報公開を行うことが難しいこともあるので、同じような養成目標や分野、短期大学であれば職業人養成のプロセスなどについて、コンソーシアムを組んで、そのプロセスに対して説明責任を持つというような試みも必要ではないか。

○大学の努力がわかる情報を公開していくことが重要である。公開方法については、必ずしも全大学一律の方法で情報公開するのではなく、大学がコンソーシアムを組んで、同じフォーマットで学生に質問した内容を公開するということはあり得るのではないか。また、それを認証評価に活用していくことが重要ではないか。

○個々の学生の習得した知識や能力の変化を把握することは、IRの充実なしにはできないので、情報公開の中にIRという用語を書き加えるべきではないか。

<3.学位プログラムを中心とした大学制度>
○複数学部にまたがる教育を成功させるためには、教学組織の責任体制がしっかりしていること、一定数以上の教員がコミットしていること、担当する教員のエフォート管理が明確になっていることが重要。そういう意味では、「必要ではないか」と記載していあるが「必要である」と思う。

<4.認証評価制度>
○大幅に項目等を削減する、あるいは重複項目を整理するということには賛成だが、前回の評価結果によって項目を削減する場合は、極端に変化する項目もあるため、削減できる項目かどうかの整理が必要ではないか。財務状況については他で見ているから削除するということはよいが、認証評価の際には添付すべき。そうしないと、財務状況も含めた全体の姿が見えなくなる。

○内部質保証を重視した評価がまだ始まっていないにもかかわらず、それがうまくいくという前提で検討の方向性が作成されているが、本来は内部質保証が機能することが確認された上で検討されるべきではないか。

○段階別評価を実施している国はほとんどない。ある基準に対して合か非でよいのか、そこに段階を付けるのか、どのように段階を付けるのかなど、非常に難しいのではないか。

○大学の機関別評価について、7年というサイクルは世界的に見て長いのではないか。

○内部質保証が有効に機能しているということを重視して、評価に対して一定の弾力化を図るという方向には賛成である。評価方法については、段階別評価という方法を非常に強く示唆する文言になっているが、内部質保証にはいくつかの段階があり、大学全体、学部・学科・学位プログラムレベル、個々の授業・教員単位それぞれでPDCAが機能しているか、様々な側面から見ていかなければならない。それらを評価するためには、総合的な評価が求められるので、段階的に評価をすることができるのか。認証評価機関ごとに内部質保証がされていると認定をする明確な基準をもって臨む方法でよいのではないか。

○認証評価の本質的な問題は、教育内容が非常に多様化したために横断的なプログラム評価が非常に困難になっているということである。評価方法については、ある程度自己評価に依拠せざるを得ないと思われるため、必要なプロセスに関するガイドラインなど、自己評価に関する基準が必要ではないか。

<5.学位等の国際的通用性>
○学位の名称について、英語に限らず、日本語の学位も一般的に学術的に広く認められている分野の日本語名称を付記することにすれば良いのではないか。

<6.高等教育機関の国際展開>
○海外展開をすることで,高等教育をその国に確立すると同時に、高度人材の獲得に繋げるなど我が国もメリットを得るということがとても重要である。そのためには、18歳以上に限るのではなく、15歳以上の若年層に対する高等教育システムを入れることにより、我が国の考え方、言語、産業技術の展開方法等を知っていただいた上で日本に来ていただくことが重要ではないか。

<7.リカレント教育>
○「リカレント教育」という言葉は、1980年代にOECDが作った言葉であるが,それが急に復活してきて特に定義もなく使用されているので,リカレントとは何かという説明を付けていただきたい。

○これから対応しなければならないものを意識するのであれば、「リカレント教育」よりも「社会人の学び直し」という用語の方が妥当ではないか。

○履修証明制度の柔軟化だけではなく、学生のエフォート率を加味したかたちで「学生」の定義付けを行ったり、定員充足の問題等と関連付けて考えるなど、社会人の学び直しを推進するための政策的な誘導を、整合性を持って考えていくべき保っていくためのものを作るべき。

○社会人教育に対して、社会人と大学生を混ぜた形で教育をしようとしているのか,あるいは社会人を特定化した形で別プログラムとしてやろうとしているのかが見えにくい。実情を見ると、後者のプログラムしか成功していない。内容・方法については,かなり開発していく必要があることを指摘した方がいいのではないか。

○リカレント教育は非常に多様な形態を取り得るので、議論する際にイメージが描きにくいところがあるので、それをどのように整理するかが問題ではないか。

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