資料2-1中央教育審議会 大学分科会 将来構想部会制度・教育改革ワーキンググループ 論点整理(案)

中央教育審議会 大学分科会 将来構想部会 制度・教育改革ワーキンググループ 論点整理(案)

1.はじめに

○平成29年3月8日、文部科学大臣から中央教育審議会に対して「我が国の高等教育に関する将来構想について」諮問がなされた。
○諮問に基づいて検討を進めるため、平成29年3月29日、中央教育審議会大学分科会の下に「将来構想部会(以下「部会」という。)」が設置された。また、諮問事項のうち特に制度的面を中心に議論を行う場として、平成29年5月29日、部会の下に「制度・教育改革ワーキンググループ(以下「WG」という。)」が設置された。
○WGでは平成29年7月から12月にかけて計○回議論を行った。今般、議論を踏まえ、「論点整理」を取りまとめ、部会に報告するものである。
○本論点整理は、現行制度の課題や検討の方向性を示したものであり、1月以降は広く各方面から意見を聴取するとともに、より詳細な制度の改善方策について議論を進めることとしたい。

2.WGで議論すべき論点

○WGでは、特に制度面を中心に議論を行うこととし、諮問事項のうち、「1各高等教育機関の機能の強化に向け早急に取組むべき方策」及び「2変化への対応や価値の創造を実現するための学修の質の向上に向けた制度等の在り方」に係る事項を論点とする。
○具体には、以下の通りである。
 
 諮問事項1関連
 ・大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校それぞれの機能強化に向けて、早急に取組むべき具体的施策や制度改正等の方策
 ・三つの方針を踏まえた教育課程の改善、指導方法の改善と、組織的な教育体制の確立
・個々の学生の学修成果の把握・評価の方法の開発と普及、情報公開など、学修成果の可視化の在り方

 諮問事項2関連
 ・「学位プログラム」の位置づけや学生と教員の比率の改善、ICTの効果的な利活用など設置基準の在り方
 ・事前規制である設置基準と事後評価である認証評価の関係、認証評価の在り方、情報公開の推進
 ・学位等の国際的通用性の確保
 ・高等教育機関の国際展開、外国人留学生の受入れや日本人学生の海外留学の推進
 ・地域の産業界との連携、社会にでた者が何度でも学び直せる環境の整備
 ・高等教育機関間あるいは企業等との間での教員・学生の流動性の向上、外部人材を活用した教育の質の向上
 ・効果的な運営のための高等教育機関間の連携 ※平成29年7月28日 第1回WG 資料3-5

3.個別事項
○「2.WGで議論すべき論点」で具体的に上げた諮問事項のうち、過去の答申で検討の必要性が指摘されるなど、制度的見直しの優先度が高い事項を以下の通りとし、議論を行った。
1.教育課程の改善、指導方法の改善等の学修の質保証
2.情報公開と学修成果の可視化
3.学位プログラムを中心とした大学制度
4.認証評価制度
5.学位の国際的通用性
6.高等教育機関の国際展開
7.リカレント教育


1.教育課程の改善、指導方法の改善等の学修の質保証
     ※次回以降追記


2.情報公開と学修成果の可視化
(1)現行制度・現状
 ○平成11年に大学の教育研究活動等の状況の公表が義務となった(大学設置基準の改正)。

 ○平成19年に大学の基本的な役割として「教育研究成果の社会への提供」が位置付けられたことに併せて、情報公開の義務も法律上明記された(学校教育法の改正。同時に大学設置基準の規定は削除)。
その際に、全ての大学が公表すべき事項として、「進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況」といった進路に関する情報、「学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準」に関する情報等が定められた(学校教育法施行規則の改正)。

 ○平成28年に学生の入学から卒業に至るまでの教育に関する基本的な三つの方針(1卒業認定・学位授与の方針=ディプロマ・ポリシー 2教育課程の編成・実施の方針=カリキュラム・ポリシー 3入学者受入れの方針=アドミッション・ポリシー)の一体的な策定・公表を義務付ける規定の整備を行った(学校教育法施行規則の改正)。
       【学部段階】ディプロマ・ポリシーの策定大学数(割合)  725大学(98.1%)
       【学部段階】カリキュラム・ポリシーの策定大学数(割合) 723大学(97.8%)
       【学部段階】アドミッション・ポリシーの策定大学数(割合)737大学(99.7%)
「大学における教育内容等の改革状況について」(平成26年度)


(2)課題
 ○各大学が三つの方針に基づく大学教育の質向上に向けたPDCAサイクルを適切に機能させるためには、学生の学修成果に関する情報を的確に把握・測定し(すなわち可視化し)、当該情報を各大学や学部等が取り組むべき目標の設定、目標と現状とのギャップの測定、目標の到達に向けた既存のカリキュラムや教育手法の見直し等に適切に活用することが必要である。

 ○また、大学での教育成果に期待し、大学の教育研究と連携を深めつつある地域社会や企業等に対して大学の説明責任を確保・向上するためにも大学の教育成果について公表を促す必要がある。

 ○現在の公表が義務化されている事項では、人材養成目的等の大学教育の目的・目標に関する事項はあるものの、大学が実際にどのような教育成果をあげ、学生が実際にどのような知識や能力を習得したか等の成果の確認ができておらず、各大学の取組の充実に向けて国としても何らかの方策を講ずることが必要であると考えられる。


(3) 論点と検討の方向性
 ○各大学は、教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、三つの方針に照らして、教育課程の実施を通じて個々の学生が修得した知識及び能力の状況や、学生の学修に係る意識及び行動を把握することが求められるのではないか。また、大学の説明責任を確保するため、各大学はこれらの全体的な状況をまとめ、その概要を公表することが求められるのではないか。

 ○各大学が具体的に個人の学修成果や大学全体の教育成果の把握に用いることができる情報は、世界的にも標準化されたものが存在しているわけではなく、各大学が自ら策定・開発を行うことが期待される。また、どのような情報を活用するかは各大学で自ら取捨選択するものであるが、直接的、間接的に評価・活用できる情報を含め、複数の情報を組み合わせて活用することが重要であると考えられる。
各大学が活用できる情報として、例えば、以下のものが考えられることから、国としては各大学の取組が進むよう必要な情報の把握や公表について一定の指針を示すべきではないか。

【学生が習得した知識及び能力の状況】
 ・単位及び学位の修得状況と成績※
         ※ 可視化の前提として、ディプロマ・ポリシーに明示された知識及び能力と個々の授業科目の関係を整理し、シラバス等に明示する必要がある。
 ・卒業論文などの成果物に対する評価
 ・GPA
 ・アセスメントテスト等の学外試験のスコア
 ・資格や褒章の取得状況
 ・進路の決定状況(就職先・進学先)等の卒業後の状況
 ・卒業生に対する評価の把握
【学生の学修に係る意識及び行動】
 ・学修行動調査を通じた「学生の学修に対する意欲」「学修時間」等

     ※ これらの情報を適切に把握し活用するためには、例えば学修ポートフォリオや履修系統図(カリキュラム・マップ、カリキュラム・ツリー)、ルーブリック等の様々なツールの活用も考えられるのではないか。


3.学位プログラムを中心とした大学制度
(1)現行制度・現状
 ○「学位プログラム」とは、「学生が短期大学士・学士・修士・博士・専門職学位と   いった学位を取得するに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力が明示され、それを習得するように体系的に設計された教育プログラム」といえる。

 ○現行制度においては、大学には、教員と学生が所属する学部等の組織を置くこととされており、これが設置基準等の要件を満たしたうえ、文部科学大臣の認可を得ることによって大学教育の質を担保している。

 ○本来、学部等の組織においては、教育研究を一体的に遂行されることが期待されており、学生・教員が所属する組織と、そこで提供される学位プログラムが、一対一の関係にあることが原則となっている。組織と一体となった従来の大学の学部等で実施される教育課程も、当然に学位プログラムとして機能するものである。

(2)課題
 ○「第4次産業革命」が進展し、産業構造の変化が激しくなる中、必要とされる分野の中長期的な予測に基づいて学部等を設置することが困難な時代になっていることから、将来生まれるニーズに応じて新たな学部等を迅速かつ柔軟に設置できるようにすることが必要となっている。

 ○しかしながら、現行の学部という組織を前提とした大学の在り方には、1研究上の要請と教育上の要請とが必ずしも一致しない場合がある点、2学部等の独立性を強調するあまり、組織間の協力や資源の結集が困難となり、例えば境界領域の分野などの教育に機動的に対応できない場合があるという点が課題として指摘されている。

 ○また、現行の設置基準は、既存の学部等の学内組織同士が資源を持ち寄って新たな教育課程を編成・実施することが想定されていない。仮に大学が既存の複数の学部等の資源を結集して教育課程を実施することとした場合も、新たな学部等の設置と同様に、新たに専任教員や校舎の面積基準、施設設備の基準を満たすことが必要となり、大学全体としては新たな資源を用意することが求められる。このことが、各大学における学部横断的な教育の取組を躊躇させる一因となっている。

(3)論点と検討の方向性
 ○現行制度上の課題を踏まえ、今後は特に、学問の進展や社会の変化に対応した教育や学生本位の視点に立った学修を実現していくためには、学位を与える課程に着目した在り方をより重視していく必要がある。

 ○このことから、学部等の組織において提供される従来の学位プログラムの質を引き続き確保することを前提としつつ、大学が自らの判断で機動性を発揮し、学内の資源を活用して学部横断的な教育に積極的に取り組むことができるよう、制度を整えるべきである。

 ○具体的には、複数の学部等を設置する大学(※)が「学部等の組織の枠を越えた学位プログラム」を、これまでの学部等とは異なる新たな類型として設置できるよう、制度上位置付けることとしてはどうか。
  ※1学部・1学科のみを設置する単科大学等、1学部内で実施する場合には現行制度で対応可能。

 ○このような「学部等の組織を越えた学位プログラム」の制度設計に当たっては、例えば、下記のような論点が考えられる。
 ・プログラムの質保証の観点から、実施に当たっての教学管理体制(責任体制)が必要ではないか。
 ・責任を持ってプログラムを担当する一定数以上の教員組織が必要ではないか。その際、実態面では「一の学部・学科に限り」専任教員とされている「専任教員の考え方」の整理が必要ではないか。
 ・専任教員の考え方の整理とあわせて、対外的にも明確となる方法で個々の教員のエフォート管理を適切に行う必要があるのではないか。
 ・学生組織(収容定員)については、プログラムと緊密に連携・協力する複数の既存学部等の定員の範囲内で設定することとしてはどうか。また、学生の所属意識を醸成する取組が必要ではないか。
 ・内部質保証の観点から、三つの方針をプログラム単位でも策定すべきではないか。

 ○対象となる学位の範囲については、学士、短期大学士、修士、博士、専門職学位も含めたすべての学位課程を対象とした制度とすべきではないか。
一方、今般新たに制度化された学士(専門職)及び短期大学士(専門職)については、教育課程連携協議会の設置や臨地実務実習の実施、基礎科目・職業専門科目・展開科目・総合科目の開設など、設置基準上に固有の条件が求められていることに鑑み、慎重に検討すべきではないか。
また、医師・歯科医師・獣医師等の国家資格のための課程認定を伴うものについては、検討の対象から除外すべきではないか。

4.認証評価制度
(1)現行制度・現状
 ○平成13年から14年にかけて、総合規制改革会議より、国の規制は可能な限り 見直し、事前規制型から事後チェック型へと移行することが求められた。これを踏まえ、事前規制である大学の設置認可についても、大学の質の保証に係る新たなシステムとして、大学設置・学校法人審議会の内規等の審査基準を廃止し、設置基準等の法令上の要件を満たせば大学の設置を認可(準則主義化)することと併せ、大学設置後の状況について当該大学以外の第三者が客観的な立場から継続的に評価を行う体制を整備することとし、認証評価制度は平成16年度に創設された(学校教育法の改正)。

 ○大学等は7年以内(専門職大学院は5年以内)に1回、文部科学大臣の認証を受けた機関(認証評価機関)による認証評価を受けることが義務付けられている。

(2)課題
 ○平成28年3月に、中央教育審議会大学分科会において取りまとめられた「認証評価制度の充実に向けて(審議まとめ)」においては、2巡目の認証評価が実施されている中で依然として、例えば下記の事項が今後の課題として挙げられている。   
 ・内部質保証が有効に機能していると判断された場合における評価内容・方法の弾力化・効率化
 ・大学側の作業負担等の軽減
 ・国立大学法人評価などの他の評価における教育研究に関する評価資料・結果の活用
 ・機関別評価と分野別評価との関係の整理

(3)論点と検討の方向性
 ○内部質保証が有効に機能していると評価された場合(例えば、段階別評価で高い評価を得た場合)は、次回の認証評価においては、内部質保証以外の評価項目は、前回評価で指摘を受けた箇所や改善を図った箇所、大学が評価を希望する項目のみの確認とすることは考えられないか。

 ○「財務に関すること」については、国公立大学における法人評価の年度評価や、私立大学が独自に実施する外部評価等において、内容、期間、体制等に関する一定の要件を満たし、認証評価よりも短いスパンできめ細かく受審していると確認ができた場合は、機関別評価において「財務に関すること」の評価を受けていると整理することはできないか。

 ○国立大学法人については、国立大学法人評価において、大学の教育研究の状況について学部・研究科ごとにきめ細かに評価していることに鑑み、国立大学法人評価と認証評価の目的等の異同に留意しつつ、効率化の観点から認証評価制度の在り方を根本的に見直すこととしてはどうか。(一方で、公立大学法人評価については、認証評価機関の教育及び研究の状況についての評価を踏まえることとされていることから、認証評価と法人評価で重複する評価項目を整理することはできないか。)

 ○専門職大学院に係る分野別評価については、制度創設当初に「専門職大学院は新たに創設される制度であり、第三者評価による質の維持向上が不可欠である」等という理由から設けられているが、制度創設当初に設置された専門職大学院については既に3巡目の分野別評価に入っていることなどから、受審期間を7年以内とし、機関別評価と一体的に行うことを可能とするなど、根本的に見直すこととしてはどうか。

 ○複数回にわたり認証評価を受審している大学については、評価の実益性や負担軽減の観点から、前回評価で指摘を受けた箇所や改善を図った箇所はこれまでどおり評価することとするが、その他の項目については、評価項目から削ったり、自己評価書の記載内容を大幅に縮減したりすることを可能とするなどの改善を図ることは考えられないか。

 ○「不適合」とされた大学については、評価結果を改善に繋げやすくする観点から、受審期間を一時的に現在の7年以内(5年以内)よりも短くすることは考えられないか。

5.学位の国際的通用性
(1)現行制度・現状
 ○国際的な人的流動性の高まりに伴い、諸外国における多様な学修履歴・学位等を有する学生が日本の高等教育機関に出願する件数も増加している。また、日本で学んだ日本人や留学生が、外国の高等教育機関へ進学したり、卒業後に外国で就職したりするケースも増加し、日本での学修履歴・学位等を他国の高等教育機関や企業等から評定・評価される機会も増加している。

【専攻分野の名称の多様化について】
 ○平成3年に学士が学位と認められた際に、29種類に限定列挙されていた学士・修士・博士の種類が廃止され、各大学において専攻分野を付記することとなった。

(学位規則の改正)
その後、学位に付記する専攻分野の名称は増加を続けている(平成6年:250 → 平成27年:723※)。
例えば、「流通マーケティング」、「世界教養」といった「○○学」ではない名称も存在している。
また、1大学のみでしか用いられていない名称も多い(平成17年度時点で約6割は専ら当該大学のみで用いられている)。※大学改革支援・学位授与機構調べ

 ○平成20年12月の「学士課程教育の構築に向けて(答申)」において「学位に付記する専攻名称の在り方について、一定のルール化を検討するとともに学問の動向や国際的通用性に照らしたチェックがなされるようにする」ことや、「ルール化の検討に当たっては、(科学者の代表機関である)日本学術会議や学協会等との連携協力を図る」ことが提言された。
上記答申を踏まえ、日本学術会議は、平成26年9月に提言「学士の学位に付記する専攻分野の名称の在り方について」を取りまとめた(あくまで提言であり、各大学に強制するものではない)。

(2)課題
 ○日本で学んだ日本人や留学生が、諸外国での進学や就職に際して、日本の学位等の円滑な承認に必要な情報不足による困難事例がある。例えば、外国での学位の承認のために、当該大学が政府によって認可されているか等、大使館等による公的な証明の追加的発行を求められたり、当該政府がつくる日本の大学リストへの掲載が必須とされたりする事例や、日本特有の学位等(例 「準学士」、「高度専門士」、「修士(専門職)」、省庁大学校の課程修了者への学位等)について、外国機関の理解不足である事例等がある。
 
 ○日本での入学資格や編入学資格の評定において、学生の諸外国における多様な学修履歴・学位等を円滑に承認するために必要な、諸外国の公式な情報を得ることが困難な事例が多数存在する。

【専攻分野の名称の多様化について】
 ○学位に付記される専攻分野の名称が多様化しており、特に、諸外国での進学や就職に当たり、学位を見ても「大学で何を学んだのか」が分かりにくいという指摘がある。

(3)論点と検討の方向性
 ○日本の高等教育制度の仕組みや、学位等の種類、機関一覧等を、英語公定訳を含めて整理すべきではないか。

 ○UNESCO「高等教育の資格の承認に関するアジア=太平洋地域規約」の締結と国内情報センター(National Information Centre:NIC)の設立等を通じ、質の保証を伴う流動性向上のための国際的枠組み作りに参画すべきではないか。加えて、NICによる世界に向けた情報発信を推進すべきではないか。

【専攻分野の名称の多様化について】
 ○学位の名称は、修得する学問の本質に従って定めるという考え方を徹底すべきである。その上で、学位プログラムごとにディプロマ・ポリシーにどのような分野でどのような能力を身に付けるプログラムなのか記載することを徹底していくことによって、当該学位に付記された専攻分野が何を示すのか明らかになるのではないか。また、ディプロマサプリメント(学位証書補足資料)を添付することは考えられないか。

 ○英文表記として、日本学術会議の提言を参考に、「Bachelor of(学術的に広く認知されている分野の名称)in(現在付記している名称)」とすることを国が推奨し、国際的な通用性を担保することは考えられないか

6.高等教育機関の国際展開
(1)現行制度・現状
 ○平成17年に学修機会の国際化及び日本の大学の海外展開の観点から、日本の大学が外国において教育活動を行う際、日本の大学の一部と位置付けることが可能となった(大学設置基準等の改正)。これにより、外国に学部、学科その他の組織を設けることができることとなった。

(2)課題
 ○現在までに、上記制度の活用が十分に進んでいない。その背景としては、日本国内での教育活動を前提とした制度等を、外国での教育活動展開の条件として等しく適用する困難さ(校地校舎の自己所有、収容定員管理 等)等の課題が指摘されている。

 ○一方、大学の国際競争力を維持・発展させ、日本の大学が世界に開かれた高等教育機関として期待される役割を果たしていくためには、海外展開を促進することが求められている。

(3)論点と検討の方向性
 ○日本の大学が海外に学部、学科その他の組織を設置する場合に直面しうる課題(阻害要因等)を整理し、対応を検討すべきではないか。例えば、外国では日本と同様の条件遵守が難しい制度の改正や、大学がより積極的に海外展開を検討できるようにインセンティブを付与する等の方策が考えられるのではないか。

7.リカレント教育
(1)現行制度・現状
 ○IT技術等の進展に伴う産業構造の変化や長寿命化社会の到来といった経済・社会の急速な変化に応じて、職業や働き方の在り方が様変わりしている中で、生涯を通して社会で活躍し、また我が国の労働生産性の向上を実現するためには、社会に出た後も学び続けることにより、新たに必要とされる知識や能力、技術を身に付けていくことが不断に求められる。

 ○これまで、リカレント教育は、大学や専門学校等において、科目等履修制度や履修証明制度等を活用しながら、様々なプログラムが提供されている。平成27年には、文部科学省においても、大学等における社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを「職業実践力育成プログラム」(BP)として文部科学大臣が認定する制度を創設し、大学等におけるリカレント教育の更なる促進に取り組んできた。

 ○現在、政府では、人生100年時代構想会議が設置され、人生100年時代に求められる教育等の在り方について検討が進められている。また、働き方改革等の観点から、女性の再就職支援機能の強化を求める指摘もされている。今後、日本は人口減少社会と知識基盤社会のなかで、経済を成長させ、一人一人の国民が豊かで健康に生きていくことができる社会を目指す必要がある。

 ○そのためには、例えば、WGのヒアリングにおいて人生の中で3回大学に入るのが当たり前の社会を創るべきだと指摘されたように、大学を主として中等教育修了後の生徒を受け入れる機関から、個人の人生のキャリアチェンジ・キャリアアップを担うことができる機関へ転換していくことが求められている。

 ○その点で、従来、日本では、リカレント教育について、社会人の学び直しと言われることが多いが、今後は、新しい知識やスキルを学んだり、自らの知識やスキルに必要な学び足しを行うことが社会人の学習の中心となるべきである。

(2)課題
 ○大学等におけるリカレント教育については、大学等が提供するプログラムの内容や費用負担、履修時間等について様々な課題が指摘されており、日本は、OECD諸国の中で、大学の学生に占める社会人学生の割合が低く、リカレント教育が広く行われているという状況からはほど遠い。

 ○例えば、文部科学省のアンケート調査では、従事者が大学等で学ぶことを原則認めていないとする企業の主な理由として、多くが「本業に支障をきたすため」と回答している。

 ○また、学び直しを経験したことのない社会人の多くが、学び直す際の障害要因として、「費用が高すぎる」、「1年未満の短期間で学べる教育プログラムが少ない」と回答している

 ○あわせて、リカレント教育を行っている社会人の中には、大学等で学んでいることを企業に報告していない者も一定数いることが調査で明らかになっており、日本においてリカレント教育を進めていくためには、大学等で学ぶことを応援し、学んで知識やスキルを身に付けたことを評価する社会にしていくことが重要である。
そのためにも、企業は、どのような知識やスキルを社員に求めているのかを具体的に明らかにし、大学等と連携してプログラムの開発・実施に結びつけていくことを進めていくことが必要である。

 ○さらに、内閣府の調査では、社会人が大学等で学びやすくするために必要な取組として、「学び直しに関する情報を得る機会の拡充」とする回答が一定数ある。

(3)論点と検討の方向性
 ○こうした課題に対応しつつ、今後、さらに社会人が学び続けることができる環境整備を進めるため、国や大学等は、リカレント教育を大学等のミッションとして明確に位置づけ、ますます多様化する高等教育や大学等の役割・ニーズに応えていくよう大学改革を進めていくことが必要ではないか。具体的には、以下のとおりである。

 ○なお、リカレント教育を進める上では、どのような社会人や企業をターゲットとし、そのニーズに応じて、どのような知識やスキルを身に付けさせようとするのかということを明確にすることが不可欠である。

【産学連携による教育プログラムの改善・充実】
 ○社会人や企業等からは、実践的・専門的なプログラムの充実を求める声が多いことから、特に、地方におけるリカレント教育の推進の観点からも、大学等と企業・産業界等との対話の場を構築し、産学連携によるプログラムの改善・充実を推進することができる体制の整備について検討してはどうか。その際、こうした動きに柔軟に対応できるよう学内の組織・体制等を変えていくという視点を持つことも有益である。
また、大学等にとって、リカレント教育の実施は、正規の学生への教育に加えて、更なるリソースを要するものであるため、今後、大学等におけるリカレント教育を量的・質的に拡充していくためには、産学官が一体となってこれを支える仕組みを構築していくことが必要ではないか。
併せて、この仕組みを構築する中で、産学が連携し、求められる職業能力の可視化を進め、企業や業界において社会人の学んだ成果の活用や、仕事への接続が図られるよう取組を進めていくことが必要ではないか。

【社会人が学びやすい環境の整備】
 ○社会人が学びやすくなるよう、受講に伴う経済的負担のさらなる軽減方策について検討するとともに、より短期の実践的・専門的なプログラムの認定制度の創設に向けて、履修証明制度について、総授業時間数120時間以上という現行規定の見直しを検討してはどうか。

 ○社会人が遠隔地からもリカレントプログラムを受講できるよう、放送大学やMOOC等の一層の活用方策について検討してはどうか。

 ○なお、オンライン教育は、急速な情報技術の進展に対応して、世界中の国や地域で広く取組が進められてきているが、社会人学生だけでなく正規の学生に対する教育の在り方や教育内容、教育方法の変革に繋がることから、その推進方策について検討する必要がある。

【リカレントプログラムへのアクセス改善】
 ○社会人や企業等が必要とするリカレントプログラムが、どの大学等でどのように行われているのかという情報が十分に知られていないことから、社会人・企業等といったセグメント別に、大学等のリカレントプログラムに関する情報へ効果的にアクセスすることができるような仕組みを構築するとともに、プログラム受講による効果について発信する方策について検討してはどうか。

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高等教育局大学振興課