制度・教育改革ワーキンググループ(第11回) 議事録

1.日時

平成30年2月27日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 単位累積加算について
  2. 工学系教育改革について
  3. 学位等の国際的通用性について

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,鈴木典比古,濱名篤,福島一政,本郷真紹,前田早苗,前野一夫,前田早苗,溝上慎一,宮城治男の各委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),信濃大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,松永専門教育課長,石橋高等教育政策室長,進藤国際企画室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)吉川大学改革支援・学位授与機構研究開発部教授,飯吉京都大学高等教育研究開発推進センター長

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第11回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 前回はリカレント教育をテーマにいたしまして,2名の有識者の先生からのヒアリングや,履修証明制度の現行制度の見直し,それから単位累積加算制度の活用方法等について御議論をいただきました。今回は,前回に引き続きまして履修制度や単位累積加算に関する国内外の取組・事例や,また活用方法等について,本日も2名の先生方に外部からお越しいただいておりますので,御発表いただいた後,意見交換を行いたいと思います。
 その後,後半では工学系教育改革に向けた制度改正の方向性として,学科・専攻の縦割りの見直しや,学部・大学院の一貫教育課程の編成に係る教員関係規定等に関する案が準備されておりますので,こちらについて事務局から説明をいただいた後,御意見を頂きたいと思います。
 また,最後の時間で我が国の学位等の国際的通用性の向上に関する取組について現状や課題,そして継続的に検討する事項等について御報告いただきます。
 それではまず,事務局に異動がありましたので,御紹介いたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。昨日付で前任の堀野室長が内閣府に異動いたしまして,私,石橋が昨日付で政策室長を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。 続いて,事務局から配布資料を確認お願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。議事次第の後ろに資料が五つございます。資料1-1が吉川先生の御発表資料。資料1-2が飯吉先生の御発表資料。それから資料2,が大学における工学系教育の在り方について,中間まとめの概要。それから資料3で,我が国の学位等の国際的通用性の向上に向けての報告。それから資料4が,今後の日程でございます。過不足がございましたら,事務局までお申し付けください。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは議事を進めます。本日前半は,前回に引き続きまして履修証明や単位累積加算に関するヒアリングを行います。本日は外部から2名の有識者の先生にお越しいただいております。お一人目は,大学改革支援・学位授与機構研究開発部教授の吉川裕美子先生です。吉川先生からは,履修証明や単位累積加算など,リカレント教育における多様な学修の在り方について,学位授与の観点から御発表をいただきます。
 お二人目は,京都大学高等教育研究開発推進センター長の飯吉透先生です。飯吉先生からは,諸外国の状況も踏まえ,ICTの利活用も含めたリカレント教育の推進の観点から御発表をいただきます。
 お二人の先生におかれましては,御多用の中,本ワーキンググループに御出席いただきまして,誠にありがとうございます。それでは,早速ではございますが,御発表に移らせていただきます。先生方には,それぞれ10分程度の御発表をお願いいたしております。
 まずは吉川先生,御発表をよろしくお願いいたします。
【吉川教授】  大学改革支援・学位授与機構研究開発部の吉川と申します。本日は,このような機会を頂きまして,ありがとうございます。これから私が所属しております大学改革支援・学位授与機構における学位授与制度と,その中でも特に単位積み上げ型の学士の学位授与に関して報告させていただきます。
 ただ,この中で申し上げることに関しましては,所属機関のことというよりは,私個人の見解ということでお聞きいただければと存じます。座って失礼いたします。
 大学改革支援・学位授与機構の沿革でございますが,平成3年,1991年7月に,まず学位授与機構が創設されました。この学位授与機構は,日本において大学以外で学位を授与する唯一の機関として創設されたものです。その背景には大学審議会等での議論があり,生涯学習の推進ということが目的に掲げられております。その後,平成12年に大学評価の役割が加えられ,平成16年には法人化しまして,平成28年には国立大学財務経営センターと統合しまして,独立行政法人大学改革支援・学位授与機構となっております。
 ただ,この名称を御覧いただいてもお分かりになりますように,学位授与機構という名称は一貫して変わっておりません。これは当機構が学位を授与しているということから,その名称を変えずに学位授与機能を学位取得者,あるいは申請者,あるいは大学関係者等に対して一貫してお示ししているということの現れです。
 当機構が行っております学位授与には二つの類型があります。それは学校教育法第百四条に定められているのですが,独立行政法人大学改革支援・学位授与機構は次の各号に掲げる者に対し,当該各号に定める学位を授与するものとする。まず一号ですが,短期大学若しくは高等専門学校を卒業した者,又はこれに準ずる者で,大学における一定の単位の修得又はこれに相当するものとして文部科学大臣の定める学習を行い,大学を卒業した者と同等以上の学力を有すると認める者に対し学士を授与しています。こちらを当機構では単位積み上げ型の学士の学位授与と呼んでおります。本日の発表は,こちらになります。
 もう一つ,第二号で,学校以外の教育施設で,学校教育に類する教育を行うもののうち,当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるものに置かれる課程で,大学又は大学院に相当する教育を行うと認めるものを修了した者に対し,学士,修士又は博士の各学位を授与しております。こちらは省庁大学校で大学あるいは大学院の相当の課程を有するものを当機構が認定しまして,そちらの課程を修了した者に対して学位を授与しているものです。
 次のスライドは,左側が,先ほど申し上げました単位累積型,単位積み上げ型の学士の学位です。右の図が省庁大学校の課程を修了した方への学位授与となります。平成3年から28年度までの学位取得者の総数は,学士が7万3,046人,修士が2,631人,博士が554人ということで,28年度までに総計7万6,231人の方々に当機構より学位を授与しております。
 このうち,学校教育法第百四条第四項第一号に定められている単位積み上げ型の学士の学位授与です。特徴としましては,個人が高等教育段階で行った学習の成果を評価し,大学の卒業者と同等の学力を有する者に学士を授与しています。1992年度から2016年度までに,この単位積み上げ型の学士の学位授与制度により,延べ5万人弱の方が機構から学士の学位を取得されています。
 また,当機構では多様な専攻分野で学士を授与しておりまして,そちらに示しておりますような28分野で学士の学位を授与しております。その推移が右側のグラフになりますが,現在2,500名弱の方々に学士の学位を授与しています。
 単位積み上げ型の学士の学位授与について,簡単に御説明いたします。左側は大学における学士の学位授与の在り方を簡単に示したものです。各大学においては,大学設置基準に基づき体系的に教育課程を編成し,その中で専門の学芸を教授し,幅広く深い教養を培い,総合的判断力,豊かな人間性を養い身に付けたものに,学士の学位を各大学から授与しています。
 一方,当機構におきましては,教育課程に相当するものとして専攻の区分ごとに修得単位の審査の基準を設けております。これは専攻分野28に対し,専攻の区分が60あります。それぞれの専攻の区分ごとに,ある種カリキュラムのようなものを定めておりまして,そちらの基準に基づいて申請者は単位を修得し,機構に申請するという形になります。
 また,右側になりますけれども,当機構の単位積み上げ型の学士の学位授与におきましては,短期高等教育,すなわち短期大学,あるいは高等専門学校の卒業,又は専門学校等の修了による学修を基礎としておりまして,一定程度のまとまりのある学修を終えた方が,更に大学で科目等履修を行い,あるいは当機構において短期大学,高等専門学校に設置されている専攻科のうち,大学に相当する教育を行っていると認められるものを審査し認定して,そちらで履修した授業科目の単位を申請することを認めています。この大学あるいは認定専攻科での科目の履修を積み上げた単位と呼んでおります。
 申請者は,単位を修得するのと併せて,学修成果と呼ばれるある種のレポート,あるいは実技等の作品を芸術分野では,後ほど申し上げますけれども,実技等の集録したものを提出しまして,そちらを当機構に置かれている学位審査会で審査し,修得単位の審査と学修成果,それから試験の審査の二つを合わせて両方が可と判定とされたものを合格として,学士の学位を授与しております。
 これを申請と審査の観点から表したものが次の図です。申請者は短期大学,高等専門学校,あるいは専門学校において基礎となる学修を終え,更に大学での科目履修等により学士課程教育に相当する学修を行います。その後といいますか並行して学修成果と呼ばれる,自らの学修を成果として表すレポート,あるいは芸術系におきましては音楽の演奏又は創作,美術の作品等を提出しまして,併せて申請を行います。この修得単位の審査と学修成果の審査,並びにその学修成果,個々の申請者が作成した学修成果に対応した形で試験を行い,これは小論文試験,年に2回90分の記述式試験,あるいは芸術系におきましては面接試験を行いまして,その結果を学位審査会に置かれました専門委員会,部会で審査し,修得単位の審査と学修成果・試験の審査の双方が可となった者に対して合格として学士の学位を授与しております。
 御説明申し上げましたように,当機構の学士の学位授与に関しましては,審査において二つの柱を設けています。一つは修得単位の審査であり,もう一つは学修成果・試験の審査です。なぜ学修成果の提出を求め試験を実施しているのかということですが,これは学士取得者に求められる力を,個々の申請者について審査するためです。学修成果をレポートする場合には小論文試験,学修成果を演奏,創作,作品とする場合には面接試験を行っております。審査を誰が行うかということですが,学位審査会の下に専門委員会と部会が置かれまして,そちらに全国の大学の教授からなる360名の方々の専門委員からなる専門委員会,部会において審査しております。
 何を審査するのかということですが,これは各専攻の区分,先ほど申し上げましたが,28分野,60の専攻の区分ごとに申請者が学士の水準の学力を有するかを審査しているものです。特に学修成果,レポート,あるいは演奏,創作,作品の内容と,それに対して個別に出題される問いへの解答から個人の学力を総合的に判断し,学士の水準に達しているかを判断しています。その過程は,いわば専門委員と申請者との間での学術的な対話というような役割を果たし,それによって学位の質を保証してまいりました。
 本日の私に課せられた役割は,特に社会人の学び直しと,単位累積加算ということですので,当機構において学士の学位を取得された特に社会人に限って,どのような傾向があるかということを申し上げます。
 学士取得の動機につきましては,各専攻分野においての学問的・専門的知識を深めたい,あるいは職場での地位の向上を望む,仕事上有益な知識や技術の習得を望む,あるいは国内外において大学院等に進学したいというような動機で申請されています。その他,特別に職業上必要な資格を取得するための要件として,大学卒業あるいは学士の取得が課されているということをもって申請してくる方もありますし,あるいは特に看護系におきましては,職場において看護大学を卒業した若い看護師の方々が増えてきたということもあり,シニアの方々が自分も学士の学位の取得を目指すということも起きております。あるいは近年,少数ではありますけれども,海外での就職を目指すということから,学士の取得を目指されている方もいます。
 申請者の職業につきましては,看護学,保健衛生系の申請者が多いということもあり,保健・医療職,あるいは会社員,教員等の方がいます。年齢層につきましては26歳以降,30代,40代が主流となっています。
 社会人は,先ほど申し上げました5万人弱の方々の一部ということになりますが,基礎となる学修としては専門学校の修了が今,増えております。短期大学は卒業者が減っていることもあり,減少傾向ですが,大学の中退者というのも一定数,常におります。
 また,積み上げ単位の修得策としては,大学の科目等履修生制度が多く活用されておりまして,通信教育課程,放送大学などもございます。
 申請者の分野としては,先ほど申し上げましたように看護学,保健衛生学,教育学等になっております。
 当機構の学位授与制度の意義と課題ですが,生涯学習への寄与ということに関しましては,短期高等教育修了者に学士の学位取得への道を開いてきたといえると考えております。近年,専門委員の中に当機構の初期の学士の学位を取得された方が大学教授になられて,専門委員を務めているというケースが現れてまいりました。
 また,学士に求められる学力・能力と,その審査に関しては,当初は単位累積加算ということで修得単位の累積を基に学士の学位を授与するということが構想されておりましたが,それだけでは不十分であり,学位の質を保証するためには124単位の修得審査だけではなく,学修成果及び試験が重要ということは認識しています。
 また,当機構は審査機関としての制約がございまして,学修・助言機能を持っていないということと,それから機構の学位授与制度に対する社会の認知が余り十分でないという点は課題となっております。これは生涯学習全般に対しても,社会あるいは産業界において十分な認知がされていないというようにも考えています。
 続いての課題,単位の修得についてですが,申請するに当たって申請者が専門科目,関連科目,それ以外の授業科目の単位を個々に申告しますけれども,その振り分けというのを個人で考えるのはなかなか難しい。しかしながら当機構は審査機関でありますので,教育機能を持っていないということがございます。それから理工系,あるいは保健衛生系におきましても,実験実習系の授業科目は大学において科目等履修生に余り開講されていないということもございまして,この点においては障害となっていると感じるところです。
 また,学修成果と試験の重要な役割については先ほど申し上げましたが,実は専門学校を終えた方であっても,学修成果,つまり小論文といいますかレポート,学術的な文章を一定程度の長さ,機構においてはA4判で10から17枚を課しておりますけれども,そうした論理的な文章を独力で執筆する,まとめ上げるということはなかなか容易ではないということがございます。しかしながら学士としての力を判断するには,これは欠かせないと考えているところです。
 このように,修得単位の審査だけではなく,学修成果・試験において個々の申請者の学力を判断することが評価されて,機構の学士は諸外国においても承認されてきたところです。
 最後に,単位累積加算とリカレント教育に関しての私見でございます。当初,単位累積加算制度としては平成3年の時点では,複数の高等教育機関で随時修得した単位を累積して加算し,一定の要件を満たした場合,大学卒業の資格を認定し,学士等の学位を授与する制度と定められておりました。しかし,大学・高等教育機関の学修はそもそも各授業科目の履修を学修量,それからその達成を証明する単位Creditの累積加算により編成されていると考えることができます。その発祥の地であるアメリカだけではなく,近年,特にボローニャ・プロセス以降,欧州諸国においても単位制度というのは根付いてまいりました。
 その上で,大学での学修とリカレント教育に関して,当機構で学士の学位を取得された方のアンケート等も見て感じますが,当機構への申請者は学士の学位取得を目指しているということです。すなわち学位課程を提供するのか,それとも職業能力を向上するための課程を提供するのかということにおいて,大学での位置付けも変わってくるのではないか。その際に,社会人の学び直しというのは何を意図するのか。アメリカあるいはイギリスでいうところの継続教育と学位課程との区別を,どのように考えるかというところも重要になってくるのではないかと考えます。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 続きまして,飯吉先生,よろしくお願いいたします。
【飯吉センター長】  御紹介いただきました京都大学の飯吉です。よろしくお願いいたします。
 御存じの方もおられると思いますが,7年前に日本に戻りまして京都大学に着任しまして,それまで20年間アメリカで働いておりました。10年間,一番長く働いたところがカーネギー大学分類で有名なカーネギー教育振興財団で上級研究員と,あと知識メディア研究所といいますICTを使った高等教育をどのように改善していくかという研究所ですが,そこにいて所長を務めておりました。その後MIPで3年ほど上級職を務めまして戻ってまいりました。
  本日お話しさせていただくのは,このMOOC,Massive Open Online Courseという,日本でも4年ほど前にかなり一時的なブームになって,メディアなどでもよく取り上げられましたが,これが御存じのようにアメリカで2011年に,もともとはスタンフォードの人工知能入門というものをやられていた,一人はスタンフォードの教授,もう一人はその当時グーグルの研究者だった方が,オンラインで無制限に世界中から受講者を募って,スタンフォードでやられている学部の授業と同じ条件で審査をして評価をして,それで取ったものについては修了証というものを与えてみてはどうかという思い付きで始めたのがきっかけです。これが非常に好評を得て,世界中から10万人以上受講をして,数千人が合格したということになっています。
 これがブームの火付けになりまして,その後,御案内の先生方は多いと思いますが,このMOOCというのは世界中に広がりまして,もともとはアメリカのCourseraとedX,CourseraはAD,edXはハーバード,MITを中心とした非営利の団体が立ち上がりまして,流れとしておもしろいのは,これまでオープンコースウェアと,これは2001年にMITがいろいろな講義教材,ビデオ授業を公開するというので始まったのですが,これと比べるとこのオープンコースウェアというのは2011年にMOOCが始まる前にオープン・エデュケーションの主流だったわけですが,ここまでは大学同士が,うちはオープンコースウェアをこれだけやっているという大学同士の力比べになっていたのが,このMOOCというのは一人の先生が一人の授業,一つの授業というのにフォーカスが当てられていますので,正にここでバトルロワイヤル,スター先生たちと対決。もちろん所属の大学というのは大事なのですけれども,ここで今いろいろなところで起こっている,組織から個人のシフトというのが教員の側にも起こってきているということであります。
 これも有名な話ですが,2012年にニューヨークタイムズで,2012年はMOOCの年というのがフロントページに出ました。日本でも,それから約1年たってNHKを始めいろいろなメディアで取り上げて,一時的にすごいブームになったのをご記憶の方もおられるかと思います。
 現在,このグローバルなMOOCについては,英語で講義がされているものがほとんどですが,本学でも,京都大学でもやっておりますけれども,日本でも十数の大学がこれにCoursera,edX等のグローバルのプラットフォームに参加してやっております。京都大学は今12出しておりまして,制作中のものを含めると15あります。海外それから学内にこのようなものを学生さんたち,先生方にやっていただこうということで周知もしております。
 それから2013年JMOOCという日本の国内向けの,日本語で主に出しているMOOCの協議会というものが立ち上がり,今に至っているわけです。当初100の講義を100万人以上の受講生を集めてやるというところです。100の講義というところは一応達成されたわけですけれども,100万人の受講者というところはなかなか苦しんでいます。
 これに関して,専門家ということもあって,メディアからインタビューをされたこともあります。ここで当初から僕が言っていたのは,制度的なもの,それからJMOOCという仕組み的なものはもちろん日本でも立ち上げられるのだけれども,結局これが活用されて,修了証書が活用されるかどうかというのは,一つは講座の中身ということです。もう一つは,その修了書がどれだけ社会的に評価されるかということであって,以前TOEFL,TOEIC等が官公庁の例えば採用のときに基準になるというような話が出たときに,急にそのようなものにみんな興味が向き出したというようなことがあるように,ある意味の必須のリクワイアントになってくれば,若しくは修了証を取って加算されていった知識であるとか技能というものが,しっかり評価されて社会に受け入れられるようになれば,自然にこのようなものが盛んになっていくだろうということです。
 ですから,教育側,大学の側はこのようなものができるわけですけれども,社会の側からこのようなものを生かす仕組みというものが整備されないと,なかなかうまくいかないというわけで,日本で社会人教育と生涯教育が余り盛んになっていないと,今いわれているリカレント教育の文脈で,余り盛んになっていない中で,日本国内ではMOOCも当然低迷しているわけです。日本の受講者は世界の中で1%未満です。
 ただ,このMOOC自体は世界的には非常に盛り上がってきておりまして,これは一番新しいデータですけれども,ここでは受講者が780万人と出ていますけれども,恐らく数えられているものだけですので,潜在的には一千万人以上の受講者がいる。それからコースもここでは9,400と書いてありますが,恐らく1万以上のものが,ローカルなものを含めるとあるということです。これは,たかだかここ5年,6年の間でこれだけ急成長してきました。
 サプライヤーとしての大学の側のランキングというのは,あくまでも目安ですけれども,数えてみればスタンフォードが一番で170MOOC出しているということで,ざっと御覧いただければ当然これはいろいろ大学の世界ランキングがありますが,上位100に入っているような大学は,3桁や2桁,当然のようにこのようなことをやっているということです。
 アジアの方も盛んになってきまして,1位が100以上出している北京大学,それからインドも相当数出しています。日本は出しているところでも現在十数なので,このランキングからはかなり外になってきます。
 それからMOOCで提供されている講義科目ですけれども,これは理工系のものが多いのではないかと思われるかもしれないですが,意外にバランスはよくて,テクノロジー系,当然IT系が20%,それからサイエンス,テクノロジー系等20%程度,それからソーシャルサイエンスとかヒューマニティーも相当あって,合わせると20%弱です。あとは実学といわれるような,専門資格につながっていくような健康分野であるとか,それから教職であるとか,この辺がそれぞれ10%弱というような形で,バランス的には非常にいいです。ですからポイントとしては,必ずしも専門家育成だけのためのコースが主流ではないということであります。ここは後でお読みいただければと思います。
 これについても,先般この審議会で御議論されていることと,幾つかつながりそうなものということで列挙させていただきました。ただ,先ほど御発表が最初にございましたけれども,特にMOOCなどはアラカルト形式で好きな授業を取って,それで修了書を得ていくという中で,学位プログラムとしてのカリキュラムというところで,もちろん取っている受講者の側は,そのようなことが念頭にないので,そのようなものをどうやってまとめて意味のある塊にしていくかということで,後で少しお話ししますが,そのような試みが始まっています。
 まず一つは,MOOCは今第2期に入っていると思われまして,第1期というのは,ただみんなが好きなものを出して,好きなように受けるというのが第1期だとすると,第2期というのはMOOCの社会的な活用段階,また大学の既存の制度,システムに併せて,このようなものをどのように活用していくかという話になっています。
 まず,アリゾナ州立大学が2015年に始めましたのは,初年時の授業を全てMOOCで取れるようにするということです。ですから,まず入学する必要がなくて,自由に取り始められて,MOOCを受講するときは,普通は50ドル程度の本人確認というものをどこのMOOCの組織でもやるのですけれども,それを払って,修了書はただでもらえます。その修了書が,例えばアリゾナステートで出しているものを,修了書を取ったと,これをアリゾナステートの単位にしたいという場合には,相当のお金を後付けで,受講が終わって修了書を取ってから払えば,それが単位に変換されるというシステムになっています。
 これが仕組みの非常に簡単に概略を説明したものになっていますが,先ほど言った約50ドルというところ,それからアリゾナステートの場合は1コースについて600ドルを課しています。これは先ほどの修了書を単位に交換するときに掛かるお金です。現在この13コース,厳密には12コースプラス1は,最後の一つ浮いている一番下のものは,これはオリエンテーション的なものですけれども,12の初年時向けのコースがMOOCで出されていて,全てアリゾナ州立大学の単位に交換できるようになっています。
 おもしろいのは,例えばこのコースは2単位で600ドルです。小さくて申し訳ないのですが,ここの右のところを見ると,受講期間が書いてありまして,15週の講義になっています。ですから日本で考えても標準的な講義の形になっています。それから別の例としては,2枚目の23ページのコース,工学入門,これも16週です。これは2Creditで,先ほどのは,3Credit,同じ600ドルということ。それから,その次になりますと,24ページになりますが,これは3Creditなのですが,期間のところが何も書いていません。これはSelf-Pacedといって自由に,例えば1年という枠の中で,極端に言えば2週間で終われる人は終わってしまってもいいような作り方になっています。ただ,当然量的には3単位というのが認められる相当分の学修量というのが中に含まれていることが前提になっていると考えられます。
 ですからMOOCにしたことによって,このようにかなり学修時間の縛りというのが緩くなっているということです。
 それから次の2ページほどは,アリゾナ州立大学でどのように単位とか,1単位で45時間相当の学修量というのは日本でもいわれていますけれども,これは大体同じように考えて作られています。あとは学位取得のために必要単位数というのがこのように規定されて,この中で運用されているということになります。
 お値段の方ですけれども,一般の対面の方のアリゾナ州立大学の学生は,1単位当たり約510ドルから718ドル払うのです。先ほど600ドルで3単位をMOOCということになると,大体ざっくり200ドルということで,510から718対200ドルですから,かなりお安く,お得な形で単位が取れていくというようなシステムになっています。
 アリゾナ州立大学は,このほかにも初年時で単位交換できるMOOCのほかに,いろいろなMOOCも出しているということになります。二,三分で大学院のMicro Mastersというのを御説明したいと思いますが,これはMITでedXという組織を通じてやったのが初めてで,これの経緯については細かいことはお話しする時間がありませんが,もともとはMicro Masters始まる前にX Seriesというのをやっていて,CourseraではSEQUENCESと同じような仕組みを考えたのですが,ある講義群,これをまとまりにして,それを全部取った場合に,一つ一つのMOOCの修了書の上位概念として,あるX Seriesの修了書を出すというような形で,カリキュラムとまでは,まだいえないわけですけれども,そのようなもので上位の修了書というものを出し始めた。
 もう一つは,Professional Certificateという専門家としての修了書ということで,これも一つ,今盛んになっていることで,edXではProfessional Certificateといわれていますが,ほかのMOOCの機関でも似たような例はあります。このMicroMasters,2015年にMITが始めて,いまや十数の世界の大学が,このMicroMastersを提供しています。
 まず一つは産業界との連携ということで,このMicroMastersというのは本当の修士号ではないわけですけれども,これを取っていることによって企業での就職が有利になるであるとか,昇任・昇給などを考えるというようにコミットしている大企業が幾つも出ているわけです。
 最初にやったのがMITのSupply Chain Managementという大学院プログラムですけれども,かいつまんでどのような具合かというと,これまでに18万人の人が受講しました。そのうちの750人が一応修了書を取って,MicroMastersはこの対面の修士プログラムの約3分の1の単位を取る。これまで750人がMicroMastersを取って修了したということですが,ここからいろいろ面接とか,ほかのリクワイアメントがあって数十人に絞られた後,実際その後,本当の修士号をMITに通学しながら取るというレベルに入ってきたところであります。ですから,数百から数十人に絞られていくというところですが,MicroMastersだけでも相当の価値があるということであります。
 最後にお金のことですが,Supply Chain ManagementのSCMとbはブレンデッドということです。MOOCを作ったものと考えてください。これに掛かるお金が約1ドル100円換算でいくと425万円ぐらいです。これでも十分高いですが,今までの通学のものは710万円ほど掛かります。ですから3分の2ぐらいの学費で,このMicroMastersを組み込むことによって修士号の値段が安くなるということになっています。
 また,アリゾナステートの場合もそうでしたが,MOOCを通して取った単位は互換できて,ほかの大学でも認められれば単位互換ができるということ。それからMicroMastersの場合は,MicroMastersそのものを互換的に認証してくれて,ほかの修士プログラムでそれを認めて,そこからスタートさせてくれるというところが優れている。
 Courseraはこのような仕組みはないのですが,いきなりMOOCから修士号が取れるというような仕組みに入っていますが,既存のオンラインだけで修士号が取れるというプログラムというのはアメリカにたくさんありますので,そこに帰結している感じがあって,イノベーションいう点ではおもしろくありません。
 それから分野を非常に絞って成功しているのが,このUDACITYという,これはスタンフォードの先ほどの最初にMOOCを作ったスランという先生が始められた企業なのですが,ここは非常に成功していまして,IT分野に主に特化してやっていて,現在5万3,000人,今までに1万8,000人の人がNanodegreeというもの,これは専門レベルの先ほどのProfessional Certificateに近い形で,MicroMastersとはまた違ったものですけれども,企業と提携しながら,このようなスペシャリストを養成していく。今,自動運転のエンジニアを育てるというのが非常に人気があって,今特に人気が高いNanodegreeのプログラムで,先ほどの自動運転のものは4か月間で,コストはたったの8万円であります。これでこのNanodegreeが取れるということであります。
 最後にまとめさせていただきますけれども,アメリカでも既に1,000以上のオンラインだけで修士,学士,また中には博士号も取れるプログラムというのが,ここ20年近く存在している中で,このMOOCというものが出てきたというのは特筆すべきで,つまり組み込み方が,いろいろな応用が,本日お話しさせていただいたような既存の大学の単位認証,学位授与の仕組みに組み込まれてきているということであります。
 あとは,この辺はMOOC以前からあるアメリカ19の州が作ったオンラインだけの,これは公立の大学ですけれども,このようなぐあい。これもMOOCの始まる前から,既にこのような状況があったということで御理解いただければと思います。
 時間を若干オーバーしましたけれども,このような形でDemand Pullの形でMOOCのようなものが出てきたのは,高等教育において,ある部分で歴史的に必然的なものかなというのは,ほかの産業分野,形態を見ていても,そのようなシフトが起こっていますので,オープン・エデュケーションというのも,そのような意味ではブームというよりは,教育の制度,システムの一つのコンポーネントとして歴史的な,社会が発展していく中での必然性ということで出てきたものかなと考えております。
 どうもありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 それでは,吉川先生,飯吉先生の御発表を踏まえまして,御質問,御意見等がございましたら,御発表をお願いいたします。
 日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  御説明ありがとうございました。吉川先生に伺いたいのですが,スライドの5で学位取得者数の推移を御説明いただいたのですが,これを拝見しますと,2000年代まではかなり増えてきているのですが,2010年をピークにだんだん減ってきており,特に2016年度は2,500名を割り込むというようなことになってきていますけれども,最近減ってきているということをどのように分析していらっしゃるかということ。
 最後に幾つか課題もお示しいただいたのですけれども,課題との関係で,今後どのような方向に進むことがよいとお考えかという御見解を伺えれば幸いです。
【吉川教授】  御質問ありがとうございます。スライドの5ですが,当機構での学士の単位積み上げ型の学士の学位授与の申請者の一番多いのは,実際のところは短期大学,あるいは高等専門学校を卒業した後に,直ちに認定専攻科に進んで,そちらで単位を修得し,機構で審査を受けて学士の学位を取得するという,大学卒業者と同じぐらいの年齢層の方が,実際のところは非常に大半を占めております。
 ただ,本日の私に課せられた課題というのは,特に社会人ということでしたので,そちらに焦点を当てて申し上げました。
 人数が減っている部分に関しては,いろいろな解釈はあると思うのですが,一つには認定専攻科の学生数が減っているというのも,ここに大きく反映されています。これは大学においても同じかと思いますが,少子高齢化ということで,そもそも減ってきているということと,高等専門学校において定員の管理をかなり厳しくされてきたということも,近年は影響しているのではないかと考えております。
 あと,生涯学習と申しましても,これだけ高等教育が拡大してまいりますと,そちらで学士の取得を目指される方というのも当然増えてきていると考えるところで,当機構の学士の学位授与制度を利用して学士を取得する方々がどのような方かということにも関わってくると考えております。
 最後の課題のところですけれども,今後どのようにということですが,一番多くの社会人の中での申請者の方は看護学,保健衛生の方です。今後,生涯学習も含めて,単位積み上げ型の申請者が増えるかどうかは,あくまでも申請者が当機構に申請してくれるかということで,こちらからなかなか申し上げにくいところも多いのですが,ただ,先ほど触れましたけれども,何らかの形での途中で大学を中退せざるを得なかった,あるいはその後,中退した後に職業に就いているというような方が,放送大学あるいは通信制などを利用して授業科目を履修し,数年というか,かなり長い期間を掛けて機構に申請されているということもアンケート等からは分かっております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続きまして,溝上委員,濱名委員,美馬委員,前田委員という順番でお願いいたします。
【溝上委員】  飯吉先生に質問したいのですけれども,単位制と授業外学修の時間数との関係です。例えばアリゾナの例が出ましたけれども,2Creditで1週間に6から8時間とありますけれども,ここには多分授業外学修時間としての学修量が含まれていると思うのですけれど,Creditの数と時間数を提示するときに,どのような感じでこの時間数を計算されているのかということです。
 最後つなげていきたいのは,日本でも海外ほどではないにしても,MOOCがいろいろ発展してきて,日本では御存じのように,この20年単位制の問題がずっと検討されていながら,授業外学修時間というものがほとんど伸びずにきているわけですけれど,日本でMOOCということが作られる場合に,ここはどうなっているのか教えていただければと思います。
【飯吉センター長】  ここのところは,正直なところ非常に緩いのではないかと考えます。そもそもMOOCというものが最初に作られたものは15週間でアメリカでもきちっと対面で,それまで既存の講義と同じような形で作られていたものが多かったのですが,学習者の利便性ということで,6週間から8週間のものという形で,普通の大学の授業では1講義と見られないような単位のものが出てきている。
 それから,例えば1週間当たりの学修量ということですけれども,もちろん授業ビデオを見ている時間というものはカウントできるわけですけれども,それぞれ課題に取り組む時間等はまちまちであるので,あくまでもおおよその目安というように。
 ただ,御存じの方もおられますけれども,優秀なMOOCの学修者は,実際60分の講義のビデオを1.2倍速で48分とかで見てやっていますので,その辺りは対面の授業ではできないことを,テクノロジーを使ってやっていて,12分間分を何か埋めなくてはいけないのかという議論にはなるかと思うのですけれども,そのようなことで総学修量という観点から取られていますけれども,例えば授業時間プラス授業外での学修量はどれだけというような形で厳密には規定されていますので,教える教員の自己申告という形でMOOCの場合はされていることがほとんどです。
 ただ,アリゾナステートとかMicroMasterの場合は,もちろん大学院プログラムであるとか学部の審査を当然経ているわけですから,そこで特にセルフラーニングという,セルフペーストという,自分で受講する期間を設定してペースを調整できるものについては,特に厳格にそこのところは学内できちっと審査されていると考えます。
 日本では,まだそのような単位を互換されているという例がありませんので,その辺りの話にはなっていないと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 それでは,濱名委員どうぞ。
【濱名委員】  まず吉川先生にお尋ねしたいことがあるのですが,二つありまして,一つは資料のハンドアウトの9ページ目に,学士取得の動機として,海外での就職という記述があるのですが,このあたり,どのようなエビデンスで,事実このようなことがあり得るのかということが余り実感として伝わってこないのですけれども,それと関連していうと,今回の御発表のエビデンスとなるような,逆に機構としては学修者あるいは取得者のバックグラウンドデータはどの程度集めていらっしゃるのかというのが一つです。
 もう一つは,前期の大学教育部会で,最後まで私自身反対した案件が一つありまして,4ページ目に出てくる単位積み上げ型の対象なのですが,高等学校の専攻科,主に看護と言われたのですけれど,高等学校の看護学科を中心として,その専攻科の単位を基礎にして大学編入学資格というのを前の期の中央教育審議会で認めたわけですが,4ページ目を拝見していると,それは機構としては現段階として対象にはされていない。個人的にはされなくてもいいとも思うのですが,これは制度的に対象にはされていないと理解してよろしいのですか。
【吉川教授】  御質問ありがとうございます。
 まず1点目の海外での就職ですが,これは学士を当機構で取得された方からも,海外で就職するために証明書を出してくれというような問合せが年に数件来ております。それほど多くないですが,ただ近年,その問合せというのが増えてきまして,海外といいましてもカナダ,アメリカ,オーストラリア等において,特に看護師として当地において認証を受けるためには,4年制大学の学士同等の資格を持っていることが看護師として働く上での条件になっているというか,看護師資格が当地においてきちんと同等のものだというように認められるためには,大学卒業資格であるところの学士の取得というのが前提にされていることが多々あり,そのために学士の取得を目指されている。つまり専門学校あるいは短期大学を出て,既に日本の国内においては看護師として働いておられる方が,海外に行って就職したいというような方も中にはおられる。
 それから,工学系でもそのような問合せがありまして,これは東南アジアの国だったのですが,そちらでエンジニアリングとしての適格認定を受けるためには,大学卒業等の資格を持っているということが必要であるということで,そのようなお問合せがあったりしています。
 2点目ですけれども,高等学校の専攻科修了者に対しては,大学への編入学が認められましたので,当機構においての基礎となる学修というのは全てそれに準じた形で認めております。したがいまして,現在高等学校の専攻科の修了者というのも,基礎資格に入ります。
【濱名委員】  4ページの図にないのは,まだ。
【吉川教授】  これはここには書いていなかったのかもしれないのですが,その前の図だったかもしれませんけれども,私が6ページ目に載せているところ,あるいは7ページ目に載せているところの専門学校の隣に小さく「等」と書いておりますのは,それを指しております。
【濱名委員】  「等」の中に入っていると。
【吉川教授】  ただ,本日の御発表に関しては,その点について余り細かく発表すると複雑になるということで割愛させていただいたところです。
 ただ,今期,当機構においては4月期と10月期の年に2回申請を受け付けておりますが,10月期に初めて高等学校の専攻科で対象となる方の申請がございました。ただ,それは看護ではなかったのですけれども,保健衛生系です。
【濱名委員】  今のリプライですと,学位の通用性,つまり何のために学ぶかというのが一つの大きな論点になると思うのですけれども,学位の持つ重要性というのが日本国内の例としてはまだ多くないにしても,かなり国際的には学位というものに対する重要性は,まだ根強くあるというように理解したらよろしいのですか。
【吉川教授】  本日の発表の資料の中にも書かせていただきましたが,当機構の学士に関しても,既に25年余り創設以来普及しているというか,学士だけに関しても5万人近くの方が取得され,その方々が海外に出られることもありまして,国外の資格認証機関からも,当機構の学士取得者についての照会というのは以前からございます。その際に,当機構においては,先ほど御説明申し上げたように,基礎となる学修を終えた後に大学等で更に学修をし,その学士としての力を学修成果並びに当人への個別の試験によって確認しているということをきちんと説明した上で,大学で取得する学士と同等であるということは理解いただいていると個人的には思っております。
【濱名委員】  ありがとうございました。もちろん機構のことだけではなくて,学位の持つ国際的な通用性というか,学位そのものです。この場合であれば,バチェラーという学位であるとか,マスターという学位に対する国際的な流れとしては,吉川先生御自身としても,その信頼性が揺らいでいるような感じはお感じになっていらっしゃらないというように理解してよろしいですか。
【吉川教授】  国内あるいは国外において高等教育を受けた人が移動するときに,高等教育機関間で移動するとき,上位の段階に移動するとき,あるいは国を超えてまた学修を続ける,あるいは就職するという際においてもディグリーというものは,その意味というのはますます高くなっているといいますか,日本においてもかなりディグリーの位置付けというのが,大学卒業ではない,学位の取得という方向にかなり視点が向いてきているような気もいたしますけれども,諸外国においてはそもそも大学卒業というよりは,ディグリーの取得ということが大事である。それが,日本の学士取得者が国外に出ていったり,あるいは海外からの留学生が増えたりするということによって,ディグリーとしての意味というものはより高まっているというか,関係者の間でも認識されてきているのではないかと感じております。
【濱名委員】  ありがとうございました。
【鈴木主査】  美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  吉川先生と飯吉先生お二人に同じ質問になります。今のディグリーという考え方がばらばらのもの,単位を積み上げればそれでよいのかという議論はなされているのでしょうか。
 例えば,吉川先生の御発表の12ページのところ,学修成果に当たると思います。例えば,学修成果と試験のところでレポート,つまり総合的な視点,日本の場合だとゼミナールがあったり,卒検があったり,卒論があったり,そういう全体を俯瞰(ふかん)する機会が大学の中であると思います。そのところはもう単位の積み上げでディグリーが取れるのであれば,それは個人の責任においてやることで通用するということでしょうか。
【吉川教授】  先ほど御説明申し上げたつもりでした。6ページ目のスライドのときに,当機構においては,カリキュラムに代わるものとして習得単位の審査の基準をまず設けております。これは,それぞれの各分野の下に置かれた専攻の区分が60ございます。それぞれにおいて,専門科目としてはどういう柱で履修する,関連としてはどういうものが必要である,それ以外の一般教養,共通科目と呼ばれる部分ではどうするかも含めての基準を設けております。単位の申請者は基準の即した形で自らの学修を申告し,その学修がなされたことの自らの力の証明として学修成果を提出しているわけです。
 ですので,単に授業科目を履修しそれを積み上げて当機構に申請しているわけではございません。ある専攻の区分に即した力が付いているかどうかを自らの論述,その分野にふさわしいテーマの下に,自ら学修した内容を基礎として自らの考えあるいは意見を論理的に述べることを行っています。
 それに対して,大学の教授であるところの専門委員が個別にその学修成果を全て読んで,個々人に対して適した問題を作ってくださっています。これは非常に手間がかかり,そこまでする必要があるのかということは二十数年ずっと言われてきました。近年,学位の質の保証が高く言われることになっております。また,当機構の中でも専門委員の御理解も進んでいて,そのレポートに書かれている内容に対して欠けている部分,あるいはこういう視点に対して当人はどう考えるかというようなかなり踏み込んだ内容の試験問題を作ってくださっています。それに対して個々の申請者が90分で回答するという本当に個別審査を行っています。これほど手を掛ける必要があるのかという御批判も受けます。
 ただ,申請者のアンケートを読んでいますと,自分がまとめた学修成果,レポートに対して,審査委員が非常に内容を理解し自分に欠けているところに的確な指摘をしてくれて,自分が学士の学位を取得したことを実感できるというアンケートの結果も頂いています。これは単に授業科目を履修して単位を積み上げたことではなく,自らが4年間大学卒業と同等の学修をした成果をきちんとまとめて,それに対して審査を受けた結果を自らの申請者も認識してもらえていると機構内では考えております。済みません。長くなってしまいました。
【飯吉センター長】  個人的な意見も入りますが,積み上げ方でやっていったものを既存の学位に合わせるには,今吉川先生が言われたような大変な御苦労があります。しかも個別にやってきたもの,例えばずさんかもしれないですがそこでプリセットされたもの,例えば学校の給食は栄養価や価格,いろいろなものが考えられて皆同じように提供されている。自由に取れる科目も大学のカリキュラムの中にありますが,ざっくり言うと例えばそういうものです。今度はビュッフェのようなところに行って,そうすると皆好きなものだけ食べて,その栄養価はどうだと。学位を出すために,最後は帳尻を合わせなくてはいけないと。そうすると,今吉川先生が言われたような非常に御苦労があると。ですので,そもそもそこに合わせていくことに限界があるのではないかというのが,個人的な意見です。
 前にこのような話がありました。日本の上場企業の人事担当の課長ぐらいの方10人ぐらいに個別に聞きました。日本で学位は取ったけれども余りそんなに大学としてはまあまあという大学の卒業者と,高卒出だけどハーバードやMITやスタンフォードといった大学が出しているMOOCの修了書10をきちんと取っている人と,どちらに就職のインタビューをしたいですかと。そうしたら10人中10人とも後者と言ったので,学位は信用されていないのかと感じました。そこの通用性は皆修士課程に進みたいから大学の学位が必要だという人は,今,吉川先生が言われたように,海外の大学に行くときにそういう要件になっているからということです。そういうところで最低限必要とされるものとしての学位という意味ではもちろん質保証されていますし,担保されています。
 MOOCの流れなどを見ていると,10単位分を取って,例えばその自動運転の専門家といったもの,そのほかに幾つか太陽光発電の専門家の修了書を取った人,そういうものを幾つか集めてそれを既存の工学士の学位と置き換えていけるのかと。ただ,最終的には産業界や雇用側で,一体その人が持っている能力や知識はどれだけ有用かという判断を始めれば,そもそもここに既存の学位はなくてもいいと言われています。
 御存じのように,日本の大学院の博士課程に進学する人が少なくなっています。修士ぐらいであと専門的な研究をするにしても,企業の研究所の方がそこで論文博士で行くコースが出てくるわけです。そもそもその辺りから学位の本質的な,また学位プログラムの実質的な価値は低下傾向にあるのはもう非常に明白なのではないかと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。前田委員,それから安部委員の順で,安部委員で質問は終わらせていただきます。
【前田委員】  飯吉委員に御質問させていただきたいと思います。非常に大部な資料でまだ頭が整理できていませんが,アクレディテーションとの関係で少しお伺いしたいと思います。
 15年くらい前に最初にバーチャル・ユニバーシティが出てきて,その第1号が認定されたときは相当批判もあったのですが,今MOOCに関してはその辺りで問題になっていないのでしょうか。例えば,先ほどの初年次教育に置き換えるというのは,恐らく機関別の評価の中ではそれほど問題にならないと思いますが,職業資格としては学位がアクレディットされたところから出ている学位なのかは重要だと思います。その辺りも議論になっていないのか,もし,御存じであればお聞かせいただければと思います。
【飯吉センター長】  ありがとうございます。そもそもプロフェッショナルな学位は最終的に国家試験や,世界的にもそうですが,そういうもので担保されるので,そこに至るまでのどのように使うのかはそれほど重要視されていないということであります。ですからまず,実学的な部分,専門家教育ではそういう一定の今までの資格に委ねているところが多いかと思います。
 ただ,最初のところで言われたバーチャル・ユニバーシティはインチキ大学だというか,そこで要するにバーチャル大学で取った学位は,放送大学は立派な大学ですが,いまだに「本当の大学ではないです」という人が相当いると伺っています。その程度の認識です。
 ただ,ここ20年ほどオンライン大学が欧米中心に発達していった中で,今やイギリスのUKのオープン・ユニバーシティもそうですが,そこの学位が非常に形骸的なものだと言う人はいません。それはもうとりも直さずそこを卒業した方々が社会できちんと通用しているかどうか。きちんと知識も技能も十分にあるかというそこのレピュテーション,そこの評判や評価は非常に固まってきて,それにはもちろん少なくとも数年はかかるわけです。そういう形で社会的に認知がきちんとされてきたので,オンライン大学も広がってきて,先ほど言ったようにアメリカでも千以上の学位プログラムがオンラインだけで取れるものがある状況に入っています。
 MOOCは飽くまでも今のところはパーツとして使えるところで使うという使い方をされていますので,学位でパーツ一つ一つの実質性やどれだけ綿密にそれが評価されて認証されているかということはないです。それは飽くまでも既存の学位プログラム,しかも新しく作られたマイクロマスターのような枠の中で,ただマイクロマスターと言っても初歩的なところしか基本的にはカバーされていません。残りの3分の2は,修士の課程は通学で,もっと専門的な高度の修士の教育は対面で受けるのが一般的です。
【鈴木主査】  よろしいですか。安部委員,どうぞ。
【安部委員】  御発表ありがとうございます。吉川委員に御質問させていただきます。
 私どもの短期大学も認定専攻科を持っております。定員10名の小さな専攻科ですが,短期大学卒で社会に出た人のキャリアアップ,特に幼児教育関係,保育関係の学び直しです。地方では通学圏にそれに該当する四年制大学の学部がないものですから,専攻科の中で午後2時半から6時までの授業で,インターンシップをしながら学ばせるという専攻科の2年課程で学位を頂きます。
 吉川先生が11ページに御指摘されたように,この機構で学位を授与されることに対する社会的な認知度がさほどなくて,なかなか希望者というか,ここで学び直そうと考える人が少なく,社会に余り認知されていないです。しかしながら,先ほど質の保証ということに関して,機構では学修助言機能は持たないとは言いながら,先ほどのアンケート調査の御発表もありましたように、一般の大学編入をした学生よりもむしろ専攻科では非常によく学生が勉強していて,自信を持って学士取得者として終了後はまた保育の現場で活躍する人材となります。
 この審査機関としての制約で,社会の認知度が低いことについてどのようにお考えか,展望がないのかどうかについて御質問させていただきたいと思います。
 以上です。
【吉川教授】  ありがとうございます。
 社会の認知度に関しては,機構の創設当初から社会の方々に生涯学習を通じて非常に努力して取得した学士の価値を認めていただきたいと,いろいろな限られた範囲ではありますが,手立ては講じているつもりですが,まだまだ十分でないことがございます。本日このような機会に発表の機会を頂きましたので,是非当機構においての学士の学位授与制度,あるいは省庁大学校の方々も含めて,大学ではないけれども国として唯一学位を授与できる機関として当機構が存在していることを是非お分かりいただきたい。
 それから,大学において退学された方がその後,今経済的な理由もありまして何らかの理由で中途退学をする方が増えています。アンケートなどを見ますと,そのときに大学の職員の方から当機構の学位授与制度があることを聞いて,数年かけて大学の科目等を履修,あるいは放送大学において授業科目を履修し,そして当機構で学士の学位を取得したと。これによって大学卒業と同じ資格を手に入れたことによって,先のキャリアアップにつなげたいという御意見も頂いております。是非大学におかれても,もちろん大学への再入学という道も開かれているとは思いますが,一つの可能性として当機構も存在していることを周知していただければと考えている次第です。
【安部委員】  ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。宮城委員お願いいたします。
【宮城委員】  飯吉先生の御見解をお伺いしたいのですが,今後の展望という意味で,例えば数十年という単位で見たときに,この潮流がどのように進化していくとお考えかという部分と,あと日本の学修者の利用はMOOCなど必ずしも多くないというお話がありました。その辺で日本の学修者及び大学の対応において,改めて課題意識がおありでしたら頂ければと思います。
【飯吉センター長】  数十年は難しいですが。大学はなくなるかというと大学はなくならないと思いますし,その研究者としての教員,教育者としての教員,社会に貢献するものとしての教員というのは必要です。そこはなくならないと思いますが,それぞれの教員といってもいろいろな役割分化がされていく。大学の機能分化もされていく。その中で学位だけではなくて,その大学が出している教育講義等,講義という単位ベースのものも変わっていく可能性もあると思います。そういうものが組み合わされて,例えばサービスラーニングやインターンシップ,そういうものもいろいろ含まれる。それから社会人としての経験,先ほどのウエスタン・ガバナイズ・ユニバーシティは,その技量・知識を持っていれば,必ずしも大学の講義の単位を取っていなくてもある職業経験から得られたものが,この学位授与機構のようなところで認証・評価されれば,それで単位を幾つ持っているのと同等と認める方法です。それが19の州に認められた形でやっていると。
 ですから,こういう仕組みがより柔軟にその人の能力や知識・技能を評価していくことが整ってくれば,その提供される教育の学修の方法は非常に多様になっていくと。その多様になっていく一つ一つを質的にコントロールしていくよりは,そこの出口,後からのところでやっていくような形になります。
 ただ,それが大学である,政府であるところが決めたものだけやるのではないです。白タクとは言いませんが,ある企業が自分はこれとこれを,例えば先ほどの専門家のものを持っていればそれは非常に有用な人材です。別に学位がなくても,修士がなくても「うちは採用を重視します」ということはあり得ます。実際そうなってくると,かなり戦国時代的な形にはなっていきます。受益者,学修者の立場で考えればいいことではないかとは考えます。政府や大学が,そういうところにとっては非常に大変な時代になるのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 吉川先生,飯吉先生におかれましては,本日は御多用の中,本ワーキンググループに御出席いただきましてまことにありがとうございました。感謝申し上げます。ありがとうございました。
 それでは,続きまして,工学系教育改革に向けた制度改正の方向性に向けて議論を行います。工学系の教育研究を行う大学が,科学技術の進歩や産業界が求める人材ニーズに即応できる柔軟な教育組織編成を可能とする制度改正が検討されております。この制度改正の方向性について,事務局より資料を御準備いただいておりますので,これらについて御議論を頂きたいと思います。
 それでは,事務局から資料2について御説明をお願いいたします。
【松永専門教育課長】  ありがとうございます。専門教育課長の松永でございます。資料2について御説明を申し上げます。
 先ほどございましたように,現在工学系教育改革に向けた制度改正を検討しております。今御覧いただいております資料2の1ページ目は,その前提となります大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会の中間まとめの概要でございます。これは昨年文部科学省にこの検討委員会を設置いたしまして,下にございますように産業界の方,大学関係の方,約半数ずつ入っていただきまして集中的に御審議を頂いた結果でございます。
 上にありますように,課題・背景といたしましては,まず産業分野の急激な変化と,特に情報関連技術の急速な進展の中で社会構造の革新がもたらされていることがございます。その中で大学の工学部につきましては,明治以来の学科・専攻の編成に基づく一つの分野を深く学ぶ形が成功体験となってまいりました。今後は新たな産業の創出を目指す,またそれらを支える人材を育成するための工学教育,そのための革新が喫緊の課題であるということで意見を頂いております。
 そのために講ずべき具体的施策がその下でございます。まず,学科ごとの縦割り構造の抜本的な見直しを行うこと。またその下でございますが,主たる専門に加えて副専門の分野の知識についても習得をするべきであると。そのためにメジャー・マイナー制,例えば工学とバイオや工学と医学との主専攻,副専攻の形での学修をしていくべきであること。そのために右上でございます。例えば学士・修士の6年一貫で教育課程を編成すること。現在国立大学の工学部におきましては,約半数の学生が修士に進学をしている状況がございます。そういった中で,例えば6年制という中にありまして,先ほど申し上げた主たる専攻に加えて副専門を習得していくことを進めていくべきであることがございます。一つ飛びまして,右下です。そのために産学共同教育体制の構築が必要である。例えば産学連携協働によりますプログラムの開発・提供によりまして,より実践的な学修をしていく必要があります。
 この中間まとめの要請も受けまして,その後また文部科学省の中に別途有識者によります会議を設けまして,具体的にこれを実現するための制度改正について御審議を頂いているところでございます。その方向性について,3ページ目からまとめております。
 先ほど申し上げましたような方向性での工学系教育改革のためのそれを具体・具現化するための制度改正といたしまして考えておりますことは,現行の設置基準上,大学・大学院におきまして教育組織と研究組織を分離する形で,教育ニーズへの適切な対応を重視した組織編成を可能とするための制度といたしまして,学部にありましては学科に代えて課程を設けること。大学院段階にありましては,研究科に代えて研究科以外の基本組織を設けることが可能となっております。この課程あるいは研究科以外の基本組織を活用いたしまして,より柔軟な組織編成,また教育の展開ができるようにしようというのが狙いでございます。
 具体的にまず1番目としまして,学科・専攻の縦割りの見直しでございます。特に大学の工学系,工学部につきましては,専攻分野の縦割りに陥りやすい指摘がございます。その中で複数の工学の専攻分野を横断した教育課程の実施に向けまして,工学部等における柔軟な教育体制の実現を可能とする必要があるという問題意識でございます。
 具体的に行いたいと考えているのは,まず教員の基準でございます。工学部に課程,工学系の大学院に研究科以外の基本組織を設けた場合の教員の基準を学部単位,また研究科以外の基本組織の単位で定めるということでございます。現在例えば工学部の課程におきましては,この課程を設けた場合の教員基準が設けられておりません。したがいまして,学科と同じ基準で運用がなされている実態がございます。そこを学部あるいは研究科以外の基本組織全体で教員の数の基準を定めるということでございます。これによりまして,産業界のニーズを踏まえて複数の専攻分野を組み合わせた教育課程の展開を促進していきたいということでございます。
 2番目が学生の収容定員についてでございます。これは現行上も課程等を単位としつつ,学部,あるいは研究科以外の基本組織ごとに定めるとなっております。そこの部分を再度明確化したいと思っております。これは制度改正というよりも通知等で示していくことを考えております。これによりまして先ほどと重なりますが,産業技術の変化に伴う人材ニーズに応じた収容定員の柔軟な変更を促進していきたいということでございます。そのための質保証のための措置といたしましては,例えば課程をおく工学部等で実施をされます教育課程の内容,これをカリキュラム・ツリー等でしっかりと定めまして学生等に示す必要があると考えております。
 ページをおめくりいただきまして,4ページでございます。もう一つが,先ほど申し上げました例えば6年制学士・修士の一貫で教育課程を編成する場合の教員についてでございます。一つが丸1,他の分野の専任教員の扱いでございます。先ほど申し上げたように,工学部あるいは工学系の研究科以外の基本組織等におきまして,一貫教育を行う場合であります。工学以外の専攻分野の授業科目を盛り込む場合は,工学部等に置くものとされて教員に加え,当該他分野の授業科目を担当する教員を置くものとする。この場合にこの当該他分野の授業科目を担当する教員につきましては,学内の工学以外の学部・研究科の専任教員をもって充てることができることとする。具体的に申し上げますと,現在他の研究科・大学院におきましては,他の研究科の専任教員が工学系の研究かあるいは研究科以外の基本組織で研究指導を行うことができないわけでございますが,それを可能としようというものでございます。これに伴いまして,1人の教員について申し上げれば,エフォート管理の規程及び計画を学内できちんと定めていただくことが必要だろうということでございます。
 2番目が実務経験教員でございます。これからの工学系教育におきましては,より実践的な教育が必要であろうということがございます。そのために企業との連携による授業科目の開設が望まれます。そういった企業との連携による授業科目を開設する場合に工学部等に置くものとされている教員の数に加えまして,企業からの実務経験教員を専任教員としておくことを求めたいということでございます。その場合にこのプラスアルファ,加えておく実務経験教員につきましては,専任の教員以外の者であっても1年につき4単位以上の授業科目を担当し,かつ教育課程の編成,その他の組織の運営について責任を担う者,現在専門職大学院や専門職大学にございますみなし専任教員と要件としましては同様の考え方をここに盛り込んでおります。これによりまして,より実践的な内容を盛り込んだPBL等の実施を促進してまいりたいということでございます。ただ,実務経験教員と申しましても,そのための質の保証の措置は必要でございます。その教育力の強化に向けました,例えば組織的なファカルティ・ディベロップメント等の実施を求めていく内容となっております。
 以上が,現在検討しております制度改正の方向性でございます。資料の8ページを御覧いただきたいと思います。そこに四つほどの図を挙げております。先ほど私から御説明申し上げましたのは,左下のものでございます。これは学部についてです。現行の,課程という制度を用いた場合に学部に学生定員,あるいは教員組織が付いて,その中で下にありますような課程を柔軟に設けていく狙いでございます。他方,右側が現在御議論も頂いております学部等の組織の枠を超えた学位プログラムでございます。こちらにつきましては,複数の学部等を設置する大学におきまして,学部等の組織の枠を超えての学位プログラム,こういったものをこれまでの学部等とは異なる新しい類型として設置できる方向での御審議を頂いているものと承知をしております。
 一方で,今私から御説明申し上げました今回の工学分野の制度改正につきましては,現行教育組織等,研究組織の分離を図るために設けられております課程,あるいは研究科以外の基本組織という制度を前提としまして,工学分野においてこれらの現行の制度を活用しやすくするための教員や収容定員に係る規定の整備を行うものでございます。一つ別のものということで御理解を頂ければと考えております。
 さらに,9ページ,10ページでございます。御説明申し上げております工学系教育改革をより実現するための措置としまして,御紹介申し上げるものでございます。9ページ目は平成30年度予算案の中に計上されております,例えば学部と大学院が連結をしてメジャー・マイナーという形での教育課程を編成し実施をするプログラムの開発に当たりまして,現状把握等をフィージビリティスタディの形で実施をする予算を計上しております。拠点としては30年度3拠点と少ないわけでございますが,そういった実証研究を行うための支援策ということで盛り込んでおります。
 また,10ページでございます。こちらも御紹介ですが,産学連携による科学技術人材育成に関する大学協議体のイメージでございます。これは黄色い四角の中にもございますように三つ目の丸でございます。例えば,これは理工系に限ったものでございますが,具体的な人材育成のための産学連携による教育の推進に関する仕組みを検討するものとして大学と産業界の対話の場を設けるものでございます。既にこの大学協議体につきましては,設置をいたしまして御議論を頂いております。今年度内にこの大学協議体と産業界との対話の場を具体的に作りまして,今後は産学連携による具体的な教育プログラムの開発等についての意見交換,議論等を期待しております。
 以上駆け足でございますが,御説明申し上げます。以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,ただいまの説明,あるいは資料を踏まえまして御意見,御質問等ございましたらお願いいたします。
 川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  ありがとうございます。専門職大学院ワーキングでも議論していた内容と重なる部分もあるので,質問とコメントをさせていただきます。
 まず,質問というか資料の確認です。4ページの先ほど御説明された2ぽつの丸1の二つ目の白丸です。学内の他学部の専任教員をもって充てることができるのは,今でも授業の担当は学内で兼担できます。ここで使われている専任教員の意味の確認です。設置基準上の必置教員数という意味での専任教員という用語をお使いなのかどうかの確認をまずしたいと思いますが,いかがですか。
【松永専門教育課長】  ありがとうございます。一つは先ほども申し上げましたように,特に大学院レベルにおきましては,研究指導を,研究科をまたがってできるところに意義があろうと思っております。数につきましては,一つ目の丸に書きましたとおり,工学部等に置くものとされている教員の数は,基本従来の基準に基づきまして定めた上で,この他分野との連携を行うに当たってはプラスアルファで置くイメージでございます。
【川嶋委員】  ありがとうございます。専門職大学のときにたしかにそういう議論があって,研究指導が可能かどうかは学内兼担でも教授会が認めれば今でも可能ではないかという議論があったと思います。
 これ以下は私のコメントです。今回の御提案は8ページにある右側の方が本来学位プログラムについてこれまでずっと議論してきた本丸だと思います。今回の御提案はできるところ,可能なところから学位プログラム化というか,時代のニーズに応じた工学教育に対応できるようにということなので,大筋には異論はないです。
 例えば実務家教員が大学に参画すべきだと今いろいろなところで言われています。本来例えば専門職大学院ですと,実務家教員はある一定の割合専任教員でいなければいけないというきまりがあります。しかし,一旦大学院の専任教員になると,なかなか異動ができない,もうその大学の普通の教員になってしまう。本来実務家教員は,実社会での情報をきちんと大学にフィードバックすることであり,実社会の動きは速いので,実務家教員を固定化してしまうと実務家教員を入れた意味がないです。
 本来であったら,国全体で大学の世界と実務の世界とお役所の世界で人事交流の仕組みができあがっていれば,別にあえて実務家教員云々と言わなくても,大学教育・大学院教育の中に社会のニーズがうまく反映されるとは思います。それが日本の場合できあがっていないのが問題だと思います。そういう意味では,みなし専任教員の方を固定化せずに,流動的に活用される方向が目的にふさわしいと思いました。
 それから,これも専門職大学院の議論の中であった他専攻,他研究科,他学部との兼任でエフォート管理ということです。ある意味,よくできる先生や気が弱い先生はどんどん頼まれて,あちこちで引っ張りだこになっていろいろな授業をどんどん担当していくことがあります。このエフォート管理は日本の場合名目だけで,結局どの部局から給与が出ているかというリワードと仕事の責任分担を明確にしないと,今お話したように,できる先生はどんどん仕事が増えていってしまう状況が起きます。前にも授業料の従量制と単位制度の関係についてお話をしましたが,そういう意味で日本の大学はマネジメントをきちんとやるようにしていかないと、教育の質保証の仕組みも機能しない。
 最後は,ダブルメイジャーやマイナー・メイジャーの話です。今イノベーションを起こすためには,単に工学的な発想だけではなくて人文科学的な価値に関する知識・考え方と,それから持続可能性,きちんと作ったものが今後商品としてあるいは社会の中できちんと普及していくかも考慮する必要があります。言うまでもないのですが,フィージビリティとバイアビリティとデザイアビリティというこの三つの要素が重なり合って,初めてイノベーションが生まれるとよく言われています。工学の分野でも経営や経済学の研究,そして人文系の科目,これをきちんと学ぶことによってイノベーションが引き起こせるような人材がこれから生まれてくると思います。その辺の副専攻やマイナー・メイジャー制もきちんと取り入れていく必要があるのではないか。
 1枚目の裏側の図を見ますと,専門教育のところはもうほとんど工学系の専門分野ばかりです。一般教養が少しだけ下の方に書かれているだけです。そうではなくて,工学以外の分野の科目等ももう少し大きな柱にすべきで,社会科学,人文科学を工学系科目と同等の教育の柱にしていくことが必要ではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。本郷委員,濱名委員,宮城委員,小林委員,前田委員という順番でお願いいたします。
【本郷委員】  ありがとうございます。これは工学分野の話ですが,将来的に全分野にわたってこういった方向性は極めて妥当,こうあるべきだろうと考えます。と申しますのは,学科単位の定員のしばりは非常に大きなネックになっているところがございます。その中でも特に教員の抵抗が恐らく一番強い,基礎科学的な分野,文学部の教員ですから,そういうところに属しています。
 文学部と申しますと,かつては硬直的に哲・史・文という三つの学科がまるでギルド集団のごとく,それぞれの定員からか何からしばって全然融合しようとしなかった。それをもう少しフレキシブルにした方がいいということで,私の勤務校では文学部1学部1学科ということで人文学科にしました。それでもなおかつ学域や専攻が先に立ってしまいました。例えば,後任人事を振るときなどは全然違う分野の方を認めようとしない方向性があります。
 しかしながら,その一方で社会的ニーズはかなり変わってまいりまして,人文系で申しますと昨今の政治情勢を反映して中国系・東洋系は非常に不人気です。不人気であれば,現行の学生規模を維持していくとなると当然質の低下が起こります。それも抜本的に組み直さざるを得ないことが当然起こってくる。そうすると,初めてそこで学科の定員が動き出す方向が出てくるわけです。
 これが理工学部の場合でも明確です。一時は例えば石油化学などがもてはやされたけれども駄目になった,原子力工学はどこに行ったなどそういうことになって,かなりそのときのニーズの必要に応じてカリキュラムを組み直すことが可能になってきます。できれば,制度的には大くくりにしておいて,そういった大学あるいは学部それぞれの課題に応じて新しい形を作る方向性に持っていく方が,むしろ今課題となっております学位プログラムの実質化という点に関してもいいのではないかと思います。
 それともう一つは,教員組織と教育組織の問題です。既に20年ぐらい前にこれも先駆的に私ども理工学部でこの試みをやりました。教員の定数や教員の人事はあくまでも教員組織,理工学部に縛り付けて,そこから学部に出向して授業を持つことになったのですが,残念ながらこれは10年で倒れました。なぜ倒れたかというとこれは明確です。結局教育課題を議論するメンバーと教員の問題を議論するメンバーが全く同じでした。課題も同じであるならば,メンバーも同じですから,当然二度手間,三度手間であることで元に戻ってしまったことがあります。
 ですから,一番何が必要だったかというと,それをもっと巨視的に,分野横断的に見通せるようなカリキュラム・コーディネーターの組織がまず必要であると。それをどれだけやり遂げるかが今後のこういう教員組織,教育組織の分離の問題につながってくると思います。今の方向性からすると,もうむしろ制度的にはそのように変えていくと,自ずからそのように展開していくのではないかと考えております。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  実務経験教員という,実務家教員という名称とまた代えられているので意味が違うことだろうと思います。着眼としては大変結構だと思います。専門職大学や専門職大学院の場合ですと,職を離れてきてその実務家教員の成れの果てをそういう言葉を使ったことがありますが,実務を離れてしまって戻れなくなる教員の問題だというのに対して,今回のものは加えておくということでプラスアルファであることと,そういう点ではまた元の職場に戻っていくことができる仕組みだと拝察しました。
 それは結構だと思いますが,まず伺っておきたいのは,実務経験教員の資格要件をどう考えていくかが一つです。それともう一つは質保証で,組織的なFD等の実施を求めるというだけでは恐らく弱いのではないかと。つまり,FDが義務化された背景は,大学の教員は,知識は持っているけれども教えることとは別だということだったはずです。実務家も全く同じで,できることを知っていることと教えることは別だと。残念ながらFD全体を各大学にお任せということではかなり足りないだろうと思います。社会人自身に,産業界の方等々に大学教育をしてもらって戻ってもらうことはプラスだと思います。大学で教えることに対する体系的なサーティフィケートプログラム等々の充実が必要になってくるのではないかと。
 これは前回の論点整理の中でもあったと思います。大学共同教育利用拠点やコンソーシアム,様々なノウハウの蓄積は,ある程度はされてきていると思います。それを別に1種類に統一する必要はないと思います。せっかく履修証明やサーティフィケートという考え方があるわけです。大学の教員になっていくため,ティーチングのためのそういうトレーニングをしてもらえませんと,逆に言うと現場の話をただするだけではこういうイノベーションは起きないだろうということがあります。その辺りの制度的な強化を盛り込んでいくことが,社会人の学び直しの模範をまず大学で教えるところから始める効果が期待できるのではないかと思います。これは意見です。
【鈴木主査】  御意見ありがとうございます。
 宮城委員,どうぞ。
【宮城委員】  私もコメントです。先生方もおっしゃったように,この場でも議論されている学位プログラムなどの移行,導入に当たって,今回工学系の領域において先駆けて取組をしていくのは非常に重要だと改めて思っております。
 そこで,一つコメントというか要望です。最後のページの大学協議体という形を作って,対話の場を作っていかれるということです。できましたら,更にそれを踏み込んでいただいて,実際の例えばインターンシップや場合によっては教員養成を産学共同の教育を支えていく実施主体としての座組みのようなものを設計していただくことはできないかと思っています。以前もここでも発表があった「トビタテ留学ジャパン」の官民協働のプラットフォームのような形です。例えば企業からも実質出向で人を出していただいて,今の実際の産業界の要請と連動して,かつそれを具体的にその協働を支えていける実施機能を持った座組みを仕立てていくことが,本当に必要とされるタイミングでもあると思っております。その辺も是非併せて御検討いただければと思っています。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 小林委員,前田委員,そして金子委員,お願いいたします。
【小林主査代理】  将来構想部会では既に申し上げたことですが,こちらでは申し上げていないので二つ意見を申し上げたいと思います。
 一つは定員管理の問題です。これは将来構想部会では定員管理という考え方自体を見直した方がいいのではないかと申し上げました。本日は時間がありませんので詳しく申し上げられませんが,前回の将来構想部会でも定員管理というやり方がかなり限界に来ていることがいろいろな例で示されたと思っております。ただし,付け加えておかなければいけないことは,当然のことながら質の保証の担保が大前提になるわけであります。そこを考えて定員の管理の在り方を考え直した方がいい。これは更に言えば,大学設置基準自体と考えるかという問題です。
 それに関連するのですが,もう一つは本日の議論でも出てきました。標準修業年限という考え方自体も,これは今までの大学の設置の非常に大きな柱になっているわけです。これが単位取得に伴うような修了の在り方とかなり矛盾してきているところがあります。これも考え直した方がいいのではないか。例えば,本日の工学部での6年制一貫という言い方をされていますが,例えば5年制や5.5年制もあり得ることです。実際ハーバードの教育は5年制ですし,スタンフォードは5.5年制を採っております。こういった柔軟な考え方も必要ではないかということです。学位授与機構についても同じように,標準修業年限に基本的にはしばられて学位を授与されていますので,その辺を含めて全体を考え直した方がいいのではないかということです。
 以上です。
【鈴木主査】  前田委員,どうぞ。
【前田委員】  単純な御質問です。今の話の次にするのは少し形式ばっていますが,6年一貫制になった場合,途中で何かの事情でやめなければいけない人は高卒になってしまうのか。学士など救済のようなことが考えられているのか,そこだけ教えていただければと思いました。
【松永専門教育課長】  当然4年で卒業ということも中には,考えております。
【鈴木主査】  よろしいですか。どうぞ。
【前田委員】  要するに,そういう6年一貫制は柔軟性を持たせようということですね。ありがとうございました。
【鈴木主査】  では,金子委員,どうぞ。
【金子委員】  これはむしろこの議論の進め方についてお聞きしたい。たしかにこの工学部についての議論は,ある意味では先行して大変面白い例だと思います。ただ,私たちはこのワーキンググループでは,こういった形態をどのようにして作るかをずっとこれまで議論してきているわけです。より一般的なレベルで議論しています。
 ところが,今,工学部から出ているこの案は,課程という形でそれを具体化しようということです。そうしますと,それが認められればそちらに当然事実としてはここの議論が拘束されるわけです。これはよろしいのかどうかをお聞きしたい。
 特に,例えばこの説明の時間で後ろから2番目のところです。学位プログラムは学部では一串しかないように書かれています。当然学位プログラムは複数できるわけです。法学部で公務員になりたい人や法学の学位プログラムを作ることは当然考えられるわけです。そういった意味で,一般的な学位プログラムと私たちが言っているものと,この課程と称しているものがどういう関係になるのか。これは言葉だけの問題だけではなくて,概念上非常に混乱する可能性があると思います。そういった意味で,工学部の方の議論は急いでいるのかもしれませんが,ここでの議論とどのような関係にあるのか。これを文部科学省の問題の投げ方としてもう1回整理していただけないかと思います。
 学位プログラムを前には実は「履修プログラム」としてもいいのではないかと申し上げましたが,あえて学位プログラムとしているのですね。そうしたならば,学位プログラムと課程とはどう違うのかという問題も当然出てきます。一般的な問題と今工学部から提案されているものがどういう論理的な関係にあるのかをきちんと整理して問題を出していただかないと,いきなりこの場で「工学部はこうやります」と言われても,納得できません。
【鈴木主査】  今の金子委員からの御質問に対して今お答えになりますか。あるいは,もう少し時間を置いてということになりますか。
 局長,お願いします。
【義本高等教育局長】  おっしゃるようにこの工学部が先行する形で提案させていただいています。本郷委員のお話にもありましたように,ほかの多分学部でも聞きますので,コーディネーターの話も含めてそれを実行していくにはどうしたらいいかという御議論も更に深めていただければ有り難いと思っています。
 今金子委員のお話にありましたように,元々昨年からこのワーキングで議論していただきますのは,学部のあるいはその壁を越えて柔軟にプログラムを編成すること自身が今できないので,設置基準を見直ししてそれをやっていこうということでございます。もちろん作り方もありますが,当然これは一つのプログラムではなくて,複数できることは当然のことでございます。そういう理解でいたいと思います。
 ただ一方,現状においてもその工学部の中の学科に縦割りがある中において,それを解消したいというニーズがあり,しかもそれを修士も含めて6年一貫の教育体系としてまとまった形でやりたいというニーズがまずあります。それに応えていこうと先行させていただいています。議論としては,当然のことながら併せて全体としてどのように組み替えていくかについての御議論も,できればこのワーキングの中においてもまとめていただければ有り難いと思っております。ですから,それにおいてはその議論を拘束する理解ではないと思っております。
 それから,本日頂いた御意見については非常に貴重な御意見でございます。例えば,濱名委員から頂きましたように実務家の教員についても,これは人生100年会議においても同じような議論がございました。実務教員といっても基本的には経験を教えるだけではなかなか大学教育になりません。教える能力も含めてある程度持続的な形で安定的に実務家の教員自身を確保できるような方策を考えてほしいという話がございます。その点においては,本日濱名委員が頂きましたようにサーティフィケートなども非常に示唆に富む話でございます。私どもとしては深めていきたいと思っております。ありがとうございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。文部科学省におかれましては,本日頂いた御意見も踏まえて制度改正に向けた御検討をお願いしたいと思います。また,その検討状況につきましては,改めて本ワーキンググループに報告をお願いいたします。
 最後になります。学位等の国際的通用性について,我が国の学位等の国際的通用性に関する現行制度や現状,またそれを踏まえた課題や国際的通用性の向上に向けた現在の取組状況と継続的に検討する事項について,資料3にまとめております。事務局より報告をお願いいたします。
【進藤国際企画室長】  それでは,資料3に基づきまして,我が国の学位等の国際通用性の向上に向けた取組の現状について御報告をさせていただきます。
 9月に本ワーキンググループでも御報告をさせていただきました。国際的な人的な流動性が高まりまして,諸外国における多様な学修履歴や学位を有する学生が日本の高等教育機関に出現する例が増えている。また逆に日本で学んだ日本人,あるいは留学生が外国の高等教育機関へ進学したり,また外国で就学したりするといった機会が増加しています。
 そこで,2番目の課題でございます。日本で学んだ日本人や留学生が日本の学位等の円滑な承認に必要な情報不足等によって,様々な困難事例があることが御報告されております。特に下から3行目でございます。日本特有の学位等,準学士,高度専門士,修士(専門職),こういったものについて外国機関の理解不足である事例等がいろいろと御報告されております。また,日本での入学資格や編入学資格の評定において,外国から来られる学生の多様な学修履歴,こういったものの円滑な承認に必要な様々な情報入手に困難事例が生じている課題がございます。
 そこで,3番目の現在の取組と継続的に検討する事項でございます。こういった状況を踏まえまして,昨年の12月です。「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約」を我が国は昨年12月に締結をいたしました。また同月中に韓国が締結をしまして,5か国が締結をしたことを受けまして,今年の2月1日にこの規約が発行しております。
 その規約の中身につきましては,2枚目のカラー刷りの資料を少し御覧いただければと思います。この規約の目的は,これも昨年9月に御説明いたしましたが,目的にありましたとおり,高等教育の資格の相互承認等を行うことによりまして,学生や学者の移動を容易にしてアジア太平洋地域における高等教育の質を改善することが目的でございます。主な内容の四角の2番目にございますが,資格に実質的な相違がない限り,他の締約国が付与した高等教育の資格の承認又は評定を行うことを内容としております。また,四角の一番下にございますが,各国は国内情報センターを設立し,様々な情報交換をすることになっております。右側にまた絵が描いておりますが,我が国もこういった国内情報センターを設立しますが,他の締約国も同じような国内情報センターを設立します。そこで様々な意見交換を行うことによりまして,資格の承認に寄与することを目指しているものでございます。
 また1枚目に戻っていただきます。最後の丸でございます。この国内情報センターにつきましては,これからこの設立に向けた準備を進めております。こういったNICの設立を通じまして,質の保証を伴う流動性の向上のための国際的な枠組み作りに参画するとともに,我が国の高等教育制度の仕組みや学位等の種類,高等教育機関の一覧等につきまして,こういったものを世界に向けてきちんと情報を発信していく。そういった取組を進めてまいりたいと考えております。
 簡単ではございますが,以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本件は報告のみとさせていただきます。
 本日の議題は以上となります。本日は非常に重要な,しかし未来志向的な議題を議論いただきました。ありがとうございます。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  本日は活発な御議論を頂き誠にありがとうございました。
 次回のワーキングは3月26日月曜日,10時から12時を予定しております。開催場所につきましては,追って御連絡いたします。また,本日時間の都合上御発言できなかった内容等がございましたら,事務局宛に御連絡いただければと思います。本日の資料につきましても,郵送を希望される先生方におかれましては,机上に置いておいていただければと思います。
 以上でございます。
【鈴木主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,これにて閉会といたします。
――了――

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