制度・教育改革ワーキンググループ(第10回) 議事録

1.日時

平成30年2月13日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. リカレント教育について

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)川嶋太津夫、小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,福島一政,
本郷真紹,前野一夫,前田早苗,溝上慎一,美馬のゆりの各委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,村田私学部長,
瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),信濃大臣官房審議官(高等教育担当),神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当),
蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)岩永放送大学附属図書館長,乾ケイコとマナブムックシリーズ編集長

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第10回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。皆さん御多忙の中,御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 前回この会議で議論するに当たりまして,前もって全体の中のどのようなテーマを取り扱うかという見通しが分かるようにと御指摘がございましたので,今回先生方へお送りいたしました開催案内の中に,本日の論点をお示しするようにさせていただきました。今後も事前に御議論いただくテーマについて御案内させていただきたいと思っております。
 本日は七つのテーマの一つでありますリカレント教育を中心に議論を行います。まず初めに,社会人の学び直しの手段や,学び直しに関する情報の発信等につきまして,本日は2人の有識者の先生にお越しいただいておりますので,それぞれ御発表いただいて,その後意見交換を行います。その後,昨年までの本ワーキンググループにおける社会人の学び直しの議論でも挙がっていたところですが,社会人の学び直しのさらなる推進に向けた取組における履修証明制度の最低時間数の見直しについて,本日資料を御準備しておりますので,ご覧いただきながら,制度の在り方について御議論を頂きます。また,リカレント教育に対する社会的ニーズの高まり等を踏まえた,単位累積加算制度の活用促進の方策について,こちらも資料を基に先生方に御議論を頂きたいと思っております。最後に,先日8日に人生100年時代構想会議の第5回が開催されたということでございますので,本件についても御報告いただきます。
 それではまず,事務局から配付資料を確認してください。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第のとおり資料1-1から資料5でございますけれども,クリアファイルに入っている資料の最後に,本日御欠席の金子委員からの「放送大学に対する質問」という1枚紙についても机上資料として配付をしております。
 以上でございます。不足の資料等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】  はい,ありがとうございます。それでは議事を進めます。
 まずは本日リカレント教育に係るヒアリングということで,外部より2名の有識者の先生にお越しいただいております。お一人目は放送大学附属図書館長・教授の岩永雅也先生です。岩永先生からは「放送大学における教育と今後の方向性」,副題として「人生100年時代に向けて」と題して御発表いただきます。
 お二人目はリクルート「ケイコとマナブムックシリーズ」の乾喜一郎編集長です。乾編集長からは,リカレント教育プログラム関連情報への効果的なアクセス,プログラム受講による効果の発信の在り方の観点から御発表いただきます。
 お二人の先生方におかれましては,御多用の中,本ワーキングクループに御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは早速ですが,御発表に移らせていただきます。先生方にはそれぞれ10分程度の御発表をお願いしております。
 まずは岩永先生,御発表をよろしくお願いいたします。
【岩永放送大学附属図書館長・教授】  ありがとうございました。今回はこういう形で発表させていただくということ,大変光栄に思っております。
 早速お話を進めさせていただきたいと思うんですけれども,お手元に放送大学資料1-1の「放送大学における教育と今後の方向性」というスライドのプリント版がありますので,そちらをご覧いただきたいと思います。
 まず1枚めくっていただきますと,非常に高齢の方が卒業証書を頂いているという写真がありますけれども,これは99歳の卒業生,もう現在は100歳を超えておられますけれども,加藤さんという方で,昨年の卒業式のときには最も多くの拍手が,学長の3倍ぐらいの拍手が起こった方です。これは従来の放送大学の教育の一つの理念形で理想形とも言える達成例だと思いますが,非常に教養を身につけた人間として,生涯学び続けて一生を終えるという形でいくという一つの理想形を表していると思います。
 ただ,これは本当にこれまでの放送大学の理念の象徴だったのですけれども,次のスライド,3ページ目ですが,これは2014年の10月から始まりました博士後期課程で,今年度初めての修了生が出ました。要するに博士の学位を取った人たちが出ているということで,この中には,見たことがあるという顔の人もいると思いますけれども,実はこちらも年齢はほかの大学の博士に比べるとかなり高くて,4名の方の平均年齢は60歳弱ということで,そういう意味でも特異な博士課程だと思います。とても優秀な論文を皆さん書かれたのですが,全体で9万人もいる放送大学で4名しか出していないということで,量的にはまだ余り大きな方向性とは言えないと思います。
 放送大学の入学者のことについてですけれども,1枚めくっていただきますと,入学者の推移というのが出ておりまして,これは細かく説明しませんが,三つのポイントで見ていただければと思います。左側の,毎年リニアに増加しているところというのは,全国の学習センターが三つ,四つとだんだん増えていった時期でありまして,その人たちのボリュームがどんどん加わっていって増えてきたということです。それが一段落しまして,放送形がCSになったりBSになったりする中で,オンラインも出てくるということで,今世紀に入ったくらいから大体人数が,入学者数が安定してまいりました。これを低いままだと考えるか,安定していると考えるかは価値観の違いのような気もしますが,私たちは安定期に入ったのではないかと考えております。
 それから次のスライドですが,学生の属性を見ていただきますと,職業別で見ると7割以上が有職者であると。これは家庭経営,専業主婦というのも含めてですが。年代別に見ると,他の高等教育機関に比べて非常に多様である。それから性別で見ても均衡しているということが分かります。そういう特徴があるということです。それから入学前の最終出身校ということで学歴を見ると,かつては大学・大学院というのは非常に少なくて,高等学校・旧制中学校というのが3分の2ぐらいを占めていましたが,現在では過半数が大学・大学院卒になったということです。実はこの大学・大学院卒の一定の部分は,放送大学の再入学者でありますので,放送大学の学士の学位を持ってまた入学してくるという形になっております。そういう意味では,学士の称号を付与するという機能,1回付与してそれでそれを使ってどうこうという機能ではないものを,放送大学というのは持っているということは言えると思います。
 それからもう1枚めくっていただきますと,細かく情報が書いてありますが,ここでは二つのことを御紹介しようと思います。
 一つは右側になりますけれども,右側の下になりますが,卒業までに必要な経費が極めて安いということです。これは学位レベルが上がってくるに従って,どんどん国立の標準額に近づいてきますが,それでもかなり低いということが分かります。これが仕事をしながらとか,あるいは年配の方が大学に入ってくる参入障壁の低さになっていると思います。
 それから左側で,順序は逆になりましたけれども,授業科目というのがあって,現在放送大学ではテレビ科目,ラジオ科目,オンライン科目,このほかに面接授業というのがありますが,遠隔系はこの三つでできております。オンライン科目は現在のところ26科目しかありませんが,現在これを重点的に充実させる方向で進めておりまして,恐らく数年後,5年後ぐらいをめどに,テレビ科目,ラジオ科目,オンライン科目が1対1対1になるという形を考えております。これについては確定したことではありませんので,そういう計画であるということだけお示ししたいと思います。
 それから次のスライドは,そのオンラインの,放送と比べたときの特性の比較をしたものですけれども,放送授業というのは実は,いつでもどこでも誰でもと言いますが,必ずしもいつでもどこでも誰でもではなくて,プログラムに拘束されるということがあります。それから受像機がないといけない。ところがオンライン授業というのは,自分の都合のいいときに,iPadでも,スマホでも,あるいはコンピューターでも,パソコンでも,いつでも聞ける。途中でやめて,そこからまた継続的に次に続けて見ることもできるという点で,非常に便利だと思います。しかも放送授業にはなかったインタラクションという機能,つまり相互性ですね,があるということで,今後とも有力なメディアになるものと考えております。
 もう1枚めくっていただきますと,面接授業のことが書いてありますが,これは一方で従来型の面接授業の需要や人気は非常に高いです。何が好きかというと,面接授業で学びたいという,これは年配の方多いですけれども,全国57か所の学習センターとサテライトを拠点として,年間3,000以上のクレジットコース,ただ聞くとか,見るだけではなくて,しっかり単位の取れるクレジットコースとして提供されています。現在では,海外でもコースをするというようなこともちらほら見られるようになっておりまして,いろいろな問題もありますが,学生の人気になっております。土日に行うことが多くて,職業人が学びやすい学習環境になっているというのも人気の秘密かと思います。
 それから次のスライドですが,資格関連という項目がありまして,これは資格関連科目の提供を今世紀に入った頃から重点的に行うようになっております。専ら看護師関連と,それから教員関連が多いですが,特にその中でも教員免許更新講習というのは,近年大きな放送大学のマーケットとなっておりまして,全国で非常に多くの方がこれによって免許更新を行っているという実情があります。
 それから新たな方向性ですけれども,産業界との連携,それから他大学等との連携というのが,これまでももちろんありましたが,どちらかというと形式的な連携を今まで,社会的な要請としてしなければいけないということでやってきたのですけれども,実態はそれほど活発ではないというのが,残念ながら状況でありまして,その最大のネックは,やはり放送大学のシステムの学びにくさ,そういう高等教育機関にいる学生がとるという意味での学びにくさです。働いている人には学びやすいのですけれども,現役の学生がとるという意味での学びやすさというのは,十分に考慮されてこなかったということにあると思います。今年度から新体制になりましたけれども,新体制の中では,この他大学との連携を更に強化する,もっと学びやすい放送大学の利用というものを検討するという方向で,今検討を進めております。そういう意味で,産業界との連携も含めましたリカレント教育の拠点としての,高度で効果的な学び直しとか,あるいは学び足しというすごくいい言葉が論点整理の中にあったので,思わずこれだと手を打ってしまいましだが,学び足しの機会の提供へということで,現在努めているところであります。
 以上,雑駁(ざっぱく)でしたけれども,現在の放送大学が現在の放送大学が行っているリカレント関係の教育とその背景について御説明させていただきました。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 併せて本日御欠席の金子委員から御質問の資料が出ておりますので,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,クリアファイルの中の一番下に,机上資料として金子委員からの「放送大学に対する質問」というペーパーがございます。
 簡単に内容を読み上げますと,1番目に学生の構成として,放送大学はその設立から幾つかの経緯を経てきているが,現在の社会的な役割をどう考えているのか。年齢別に放送大学の学部学生数の年次推移を見ると,ということでグラフがありまして,一つ目に明らかに最も増えているのは60歳以上で,その次は50歳代,二つ目に他方で20歳代は減少,三つ目に特に問題は生涯教育の焦点とも言える30歳代に顕著な低下が見られる点としております。
 二つ目に社会的需要に対する機能として,学生の構成の変化は,放送大学の役割が実質的に変質していることを示すものである。現状では高齢者の需要(直接的な職業への関連がない)には対応している。しかし,労働市場の流動化に対応するべき機能は,むしろ低下しているのではないか。
 3点目に情報開示ということで,こうした点を更に調べようとしても,十分な情報が公開されていない。ウエブサイトで当年の学生数は示しているものの,時系列などの詳細なデータは分からない。上述のデータも,一部は過去の法人評価報告書から入手した。修士課程についても,学生総数はほぼ停滞しているようだが,その詳細は不明。放送大学の内部では技術的な問題についての議論があるようだが,大学としての社会の需要にどのように応えるのかについて,体系的な分析や議論がなされているのか。相当の国費が投入されていることを考えれば,この点での議論と外部への発信は不可欠ではないかということでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,この御質問について,岩永先生から御回答をお願いいたします。
【岩永放送大学附属図書館長・教授】  御質問ありがとうございました。大変示唆に富む御質問だと思います。
 まず学生の構成ということですが,ここで金子委員は在学者のグラフを出されていて,その60代以上が増えているということですけれども,これ入学者で見ると,それほどの差がありません。ほかの年齢層も,60代も,50代も,同じように推移しているということで,実は在学者で見ると,60代の方というのはほかの大学と違いまして,ストックで存在する方が多いんですね。で,30代,20代の方はフローで存在する人たちが多くて,もちろん入学しますが,4年間,5年間で卒業するという人たちが若い人たちなのに対して,放送大学の50代,60代の方は,卒業してもまた更に入ってくると。出ても出ても入ってくるという人たちなので,ストックとしてはどうしても多くなります。これが一時期の放送大学の方向性でもありまして,全部のコースを修了するとグランドスラムという名称を与えてたたえるという,その方向性も今どうなのかなというので,ちょっと見直しをしていますが,そういうこともありまして,在学生の数で見ると,どうしても年齢層が高くなるということはやむを得ないかと思います。
 反論ということでもありませんけれども,ここで金子委員が生涯教育の焦点とも言える30歳代と書かれていますが,ここには個人的には非常に異論がありまして,違和感がありまして,1970年代のOECDが提唱したリカレント教育というのは,学びと仕事の間のリカレントでした。学んでは仕事をして,仕事で足りないものがあったらまた学ぶと。またそれで仕事に帰っていくというリカレントだったんですけれども,現在のそういう状況,日本の状況を考えてみますと,そうした狭義のリカレント観ではなくて,学びと社会活動との間のリカレントということを考えるべきだと考えています。この社会活動は,もちろん職業生活,職業活動も含まれますけれども,それだけではなくて,例えば地域活動とか,ボランティアとか,学校支援活動とか,あるいは家庭経営とか,子育てとか,様々な形での社会参加が含まれると思います。そういうことをしている方が放送大学では非常に多いです。
 更に言えば,技術や知識というものをただ生産したり,提供したりするサイドだけではなくて,それを効率的に高い水準で消費したり,利用することのできる能力の高い市民層の形成というのも重要だと思います。片方でどんなにすぐれた技術を提供しても,それを受容する市民層がないと,ただの技術だけに終わってしまいますので,そういうような意味で,教養のある能力の高い市民層の形成というのも私は重要だと思って,生産者とか,起業者ばかりをただ作って,その生産物を高度に,かつ効果的に利用する人たちがいないという社会は,やはり半端な社会ではないかなと。成熟した社会というのは,そのどちらもバランスよくあるというのが理想だと思います。ある意味では,OECDが1970年代に出したような理念から,現代の日本という成熟した社会を前提としたリカレント感というのを,放送大学がむしろ積極的に出していくべきだと自覚をしております。
 それから社会的需要,これは今のことでも出てきましたけれども,要するに社会的需要というのがレーバーマーケットだけではないと私たちは考えておりまして,レーバーマーケットだけを考えると,確かに放送大学大丈夫かというような御質問は出てくるかと思いますけれども,ではその人生100年時代ということを標榜(ひょうぼう)している現代において,60歳だからだめかというような話も,逆にとりたいという感じがするわけです。ということで,私たちの持っているリカレント観というのは,少し30代が中心であるというような,30歳代が中心であるというような,そういうリカレント観とは違うことをお答えさせていただきたいと思います。
 それから情報開示に関してですけれども,大学ホームページでは数字で見る放送大学として,各課程の,課程というのは学部,修士,博士ですけれども,年度別入学者数とか,在学者数,性別・職業別・年齢別の卒業者数,あるいは入学者数を公開しているとともに,大学概要等でもこれは公開しておりまして,あるいはホームページの作りが悪いということも含まれて御指摘いただいたのかもしれませんが,できるだけそういう資料をどなたでも利用して検討していただけるような形で今後も考えていきますけれども,併せまして今,本学に欠けておりましたIR組織についての立ち上げの議論も早急に進めるべく検討を進めております。そのIRの組織でストックした様々なデータを体系的に,相互に関連して出していくという努力もしていきたいと思います。まさに金子委員の御指摘とか,御要望に応えられるような体系的な分析等を,今までややもすると欠けていたかもしれませんけれども,進めていきたいと思っています。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 続きまして乾編集長,よろしくお願いいたします。
【乾ケイコとマナブムックシリーズ編集長】  初めまして。乾と申します。よろしくお願いいたします。
 こちら,資料1-2の方をお手元にお願いいたします。
これまで長く社会人に対して,大学・大学院もそうですが,一般の資格講座であったり,通信講座であったり,基本的には仕事に向けてキャリアチェンジであったり,キャリアディベロップメントを提案する,そのための学び事を提案する仕事をしてまいりました。
 大学・大学院については,めくっていただいて次のページにあります,こうした雑誌を通じまして,累計これまで創刊以来でいうと1,000名以上の社会人学生をこの本の中で取り上げてまいっております。本日はこうした事例と,あと情報誌の編集長という商売人でございます。部数を獲得していくためにマーケティング活動をこれまで繰り広げてまいりましたので,その中を通して気付いたことをお話しさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず4ページ目,大前提としておかせていただきましたが,社会人には18歳とは異なり,この時期が来たから進学をするというような,もちろんそういったマスト要件はございません。その中で旅行や,飲食や,そういった活動と並行して検討して学習を決定される。そうした形で学習を実施されている方々というのが,毎年データをとっていきますと社会人,有職者の中の約20%弱いらっしゃいます。
 次の5ページ目,6ページ目,これ男性と女性で調査データをとっているものですけれども,その実施率,特に特徴としては,一番下の赤とオレンジのところが実施した方々,年齢を追うごとに下がってきております。上のブルーのところ,これがこれまで実施したことはない方々,残念ながら実施したことがない方々,年齢は上がっても下がりません。そして実施していないということが,実施した方が大体一定と。これはどういうことを示しますかというと,学ぶ人は学び続ける一方で,学びを実施しない方々はそのまま実施されないまま,ずっといっていかれるということを示しております。そこが一番大きな特徴ということになります。
 次,7ページ目に行っていただいて,その中で学習を実施しない。学び事,習い事を実施しない理由というのを調べてきております。これが大きく4点に分かれます。
 8ページ目にアンケートデータを付けていますが,大きく4点に分かれます。一つ目は学習者の実施条件が合わない。費用面です。で,もう一つ重要だと考えておりますのが,学習者の学習意欲,こちらが喚起できていない。実際やってみたいと思う学びと出会うことができれば,お金以外の問題というのはかなり何とかできる部分がございます。
 ただし9ページ目,図式として常々考えているものですけれども,学び,こちらを実施するかどうかということについては,大きな課題が一つございます。例えば旅行とかであれば,ほとんどの場合実施する前と後で価値観の変化はございません。一方で学びの場合は,お金を投じて購入するものというのは,授業時間や,更に言えば授業内容でもない。それを通じていかに自分が変われるか,成長するかというところにお金を出して購入をしているわけです。原理的に学習実施後と前とでは,価値観変化しています。つまり,学習実施前に学んだ後どうなるということを,学んだ後に自分はどう感じるかということを想像してもらわないといけない。そのとき大きな役割を果たすのが,自分と同じような人たちが学んだらどうなのかと。どうなっているかということを示すようなロールモデルになります。私自身,長年情報誌作ってまいりましたけれども,このロールモデル,適切な自分と近しいロールモデルというものが掲載されていない情報を作ったとしても,なかなか難しいものがあります。ロールモデルをいかに出すかというところが,一番ポイントとして長年やってまいりました。
 さて,これまでのところは社会人学習一般の話です。こちらについては通信講座や,独学というものも含んだ内容です。大学・大学院に注目するとどうなるのかというところは,これからお話しさせていただきます。
 10ページ目,こちら下にノンブルが入っていませんが,学ぶ手段として,厳しい数字ですけれども,ほとんどの学び手,大学・大学院を利用していません。決して多数派ではない学び実施者の更に3%であると。こちらに公開講座2.3%,それで,通信講座と通信制大学を一緒にして聞いておりますが,こちらについても14.1%の何がしかの数字だという形になります。これ,実施率が約20%以下ですので,掛け合わせてみると,次のページで全体の0.5%以下という形になります。
 社会人の中で大学・大学院を利用している人は0.5%以下だと。250人とかに一人。高等学校でいえば学年に一人というような状態です。更にもう一つ言うと,学ぶ人は学ぶ人で集まります。学ぶ人の周りには学ぶ人がいらっしゃる。ということは,ほとんどの場所には社会人学生というものは存在していません。先ほど学ぶ意欲を喚起するにはロールモデルが大切だということを申し上げました。実態としてのロールモデルに,社会人学生のロールモデルに出会う機会というのは非常に少ないレアなケースだということです。さらには職場の中で,自分が大学や大学院に通っていることをカミングアウトしている方,なかなかいらっしゃいません。我々の中では隠れキリシタンみたいな言い方をしております。そういった状況である以上,なかなか現物に出会うことがない。その結果,社会人のための各種制度です。次の12ページ目,各制度の認知度ですけれども,こちらについても非常に厳しい数字になっています。この中身を話し始めると,それだけで発表時間が何時間も終わってしまいますので,こちら後でご覧いただければと思います。
 次のページ,13ページ以降では,学習開始に至るまでの過程,社会人の学習開始に至るまでの過程はどうなっているのかと。13ページ目というのは資格講座,大学ではなく資格講座の例です。こちらについては自らのキャリア課題を認識していったときに,それを解決したロールモデルと出会って,できそうだと判断,で,学習開始に至るという,そういう流れになります。資格という分かりやすい目標があることで,学び手,自ら探索する行動をとりやすくなります。
 次のページ,14ページ目,ほぼ全く同じですけれども,大学・大学院の場合も,こういう行動が実現されているところはございます。特に履修証明プログラムの中でも,例えば青山学院大学でやっていらっしゃるワークショップデザイナーだったり,岩手大学のアグリ管理士であったり,名古屋商科大学のウィークエンドMBAであったりとか,そういった誰を対象とした何のプログラムなのか,明確なプログラムの場合は,こうした資格と同じような行動をとりやすくなっています。ただし,そうしたプログラムは,まだまだ少ないのが実情ですし,分野的にも地域的にも非常に限定されています。また,学び手自身に対する周知もそうですが,それの支え手たるキャリアコンサルタントであったり,企業人事であったり,こうしたキャリア支援者の方々にもそのプログラムの存在,なかなか認識されているわけではございません。
 もう一つ問題ございまして,こうしたプログラムを検索して探そうと思っても,大学の各ホームページの中ではかなり深い階層のコンテンツであったり,別ドメインの中に入っていったりします。検索をかけても,グーグルやヤフーの中で上位に上がっていることは基本的にはありません。
 更に次のページ,社会人大学院の場合,長年やっておりまして,ここが一番大変だというところが,学習開始までの工程というのが非常に長くなってくること。まずはキャリア課題を考えて,何か探して学び始める。その中で学び手同士のコミュニティの中でロールモデル,ああ,大学院に行くという,そういう手もあるのかというものに出会って,そこから入学を検討していっていただくというような流れになってまいります。
 次のページ,アクセスする上でポイントは2点です。その意味では初期の検討のところで,大学・大学院のプログラムが入ってくるかというところで,もう1点,そういったロールモデルと出会うところにつながっていくかという点。
 17ページ目,こちらの方に今までやってきた上での社会人の学び検討過程における大学・大学院の情報にアクセスする上での課題というのをまとめてみました。大きく三つ章立てしております。一つは社会人の学習意欲を喚起する機会が非常に少ないというところです。先ほど申しましたロールモデルと出会う機会,あるいはキャリア支援者への周知が非常に足りないということ。二つ目,学習者のキャリア課題にピンポイントで答える学習機会,まだまだ少ないということ。三つ目,発見のされなさです。ここは大学のホームページの点,それから各研究科や学部,様々なセミナーといった,発表機会があり実施されていますが,こちらなかなか発見することはできません。更にもう1点,これは厳しいところになりますが,カスタマーと話をしていても,各プログラムが対象とするのは誰か,そしてどんな人になってほしいのかというところがなかなか分かりにくい。明確になっていないことも多いということもございます。根っことしては,社会人向けに広報を行う人的・資金的リソース,非常に限られているというところが現状になるのかと思っております。
 最後のページ,私の方で考えております,学ぼうとしている人に大学・大学院を選択肢に加えてもらうと。何といっても3%,実施率3%とお話ししました。97%が白地です。まずは様々な形で民間で学んでいる人に対して,大学・大学院に気付いてもらう。引きつけるということが先決かと思います。そのために何をすべきかというところでの私見を述べさせていただきます。
 まず1点目,各大学から発信する情報の改善というところです。単発のセミナーから正規課程に至るまで,実施しているプログラムが誰を対象にどうなるプログラムなのか,しっかり明確にしていただきたい。その際には,例えば履修証明プログラムや,単発セミナーでもいいですが,そのプログラムの中に資格名のような形で付与することも非常に有効な手段だと思います。2点目というか,その1点目の中身ですが,あとは各大学のホームページにおける社会人を対象とした改善です。社会人が興味を持つテーマで検索した際,各研究科・学部のコンテンツが上がってくる状態を目指すこと。もう1点は社会人向けに広報を行う人的・資金的リソースの配分です。
 2点目,社会人がテーマに即してピンポイントで学べる機会のさらなる拡充と書きました。例えば,IoTであったり,ビッグデータであったり,ブリーフデータだったり,メンバーのモチベーションを上げたい,そういったピンポイントで社会人の課題に応えられる機会をいかに拡充するかと。で,単発の教育から始まって,そこからプログラムを通して正規課程へと。こういう体系性こそ大学が一番持っている,民間にはない大きなアドバンテージです。そこを生かすためにも,入り口の拡充が必要なのではないかと考えております。
 3点目はキャリア支援部門への周知,特にキャリアコンサルタントや,企業人事への情報提供です。その場合,企業にとってもメリットのある話になります。例えば教育訓練給付金制度,専門実践の対象講座であれば,企業の教育研修費,非常に軽減されます。そういった形で,企業視点でいかにメリットを出して知らしめていくかというところもあります。
 最後は民間教育機関,各種民間の企業等々との提携。入り口は自前だけ用意する必要がありません。ここは学習者のコミュニティに流れる,情報が流れる仕組みさえできれば,大学・大学院に目を向けていってくれます。例えば今,キャリアコンサルタントの講座が,その後筑波大学と提携をされて一貫したプログラムになってくるというところもございます。まずは学び手に今選ばれていないという状況を認識した上で,是非選ばれる体制を作っていただきたいと思っております。学び手側や企業側の問題も決して小さいものではありませんけれども,提供者である大学では,かなりまだまだいっぱいできることがあると思っております。私自身ずっと大学の広報をやっておりまして,是非豊かなコンテンツをもっと社会に知っていただきたいと思いまして,失礼なことも多々申し上げてしまったかもしれません。御容赦いただければ幸いです。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。
【鈴木主査】  はい。ありがとうございます。
 それでは岩永先生,乾編集長の御発表を踏まえまして,御質問,御意見等ございましたら発表をお願いいたします。
【溝上委員】  いいですか。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。溝上先生。
【溝上委員】  溝上です。岩永先生に御質問いたします。
 この発言はこのワーキンググループでは3回目ですけれども,要はリカレント教育,学び直しという言葉です。今の乾編集長のお話にも関連しているんですけれども,岩永先生にお話を聞きたいと思います。大学だけではありませんけれども,学校教育の社会的機能の見直しとして,この社会人を広くとって,そういう人たちへの対処を機能拡充していくというか,教育機関としての見直しも含めて機能拡充していくというのがここでの大きな話なんだと思います。これ非常に大きなもので,先ほどおっしゃいました人生100年というところの時代ということと絡めても,やはり非常にしっかり落とし込んでいかないといけない。
 先生がおっしゃいました,先ほど70年代のOECDの学びと仕事です。ここはよく分かります,リカレントで。今,先生自身もおっしゃったように,学びと社会活動,必ずしも仕事の職務とか,あるいは業務をいろいろ豊かにしていくということだけではなくて,もっと心理的にも,社会ネットワーク的にも広げていくための学びというのもありますし,先生御自身がリカレント教育ということの中に学び足しという言葉は非常にいい。私もそう思っております。足すだけでもないと思いますが,学生の話になってくると,現役の学生,リカレントという言葉が合わないこともあります。先生はこういう状況で,リカレント教育という言葉をそれでもいいと思われるのか。
 あとこの話はやはり放送大学だけではありませんけれども,放送大学の学生がどういう動機で受講しているのかという,その動機の話が余りなかったような印象を受けますが,そこと含めての話だと思います。御意見を伺えればと思います。
【岩永放送大学附属図書館長・教授】  どうもありがとうございました。リカレントという概念でいいのかということでしたけれども,リカレントを進めるということで国の方針,文部科学省を中心とした教育政策の方向性が決まっているので,我々はそのリカレントから出発しているわけですが,ただ御存じのように放送大学というのは,ほかの18歳人口が多く入ってくる大学とは少し違っているものも多々ありまして,外側からの要請,社会からの要請というのを翻訳しながら,我々の言葉で進めていかなければいけないところがあると思います。リカレントもやはりその一つで,いろいろな運営会議でも随分検討して議論しましたが,ではこのリカレントというのをどういう形で我々は前面に押し出してやっていったらいいかということで,いろいろな言葉を考えましたが,今のところはお手元にこういう「Vision’17」という水色の,実はこの色は放送大学のスクールカラーですけれども,ものがありますが,この中にありますように,この見開きで学長が偉そうに腕組んでいる写真のところがあります。
 これの3というところに教育理念というのがあって,Grade-up Learningの実践と。私たちがリカレントを翻訳して放送大学的に言うとしたら,それはグレードアップだろうということに今考えておりまして,この論点整理の中でも,キャリアアップという言葉がたくさん出てきます。ただキャリアアップでは,放送大学語ではないです。放送大学語にするとすると,キャリアアップを目指すリカレント教育というのを別の言い方をすると,やはり人間としてのグレードアップを目指すリカレント教育ということになるかなということです。具体的な取組としては,リカレントする先としては社会活動,もちろん職業も入りますけれども,ボランティアも入るし,社会活動も入る,地域活動も入ると考えておりまして,特に放送大学はほかの大学よりも圧倒的にハンディキャップの人の比率が高いんです。ハンディキャップの人たちに無理やり仕事をさせるという硬直した考え方はあり得ないので,私たちはそのハンディキャップの人たちも理性的に社会を見て,社会に参加していくと。いろいろな形で参加していくという形でのリカレントを考えているということです。
 それから動機ですが,実は,溝上委員のところに前にいたヘッドの大塚先生と一緒に,放送大学開学からずっと,放送大学の学生の動機調査をやっていましたが,いろいろな事情があって,その期間調査していないのです。だから10年ぐらい動機調査というのが十分にできていないので,これは大変だということで,さっきIRのお話をしましたが,IRの中で放送大学の学生がどういうつもりでどういうことを考えて,何を目指して,どういうロールモデルを持って放送大学に入ってくるのか,来たのかということを,現実にどういう学習状況であるかということも含めて,調査を今しているところでありまして,4月にはその成果が出てくると思いますが,まさに言われたとおり,直接先生たちが毎日触れている学生でないわけで,そういう調査をしないと,何を考えてどういう学習態度でやっているか,皆目見当がつきません。早急にやりたいと思っておりまして,現在それを進めているところです。どうもありがとうございました。
【鈴木主査】  はい,ありがとうございます。
 それでは福島委員,そして前田委員お願いします。
【福島委員】  福島でございます。どうもありがとうございました。
 岩永先生に御質問させていただきたいのですが,最後の方,10ページのところに,「本学の映像授業化ノウハウを活用し,各大学の特色ある専門教育の共有を促進」となっておりますが,少し具体的なイメージを教えていただけないかなということですけれども,なぜそんなことを申し上げるかといいますと,もう一つ,すぐ分からないかもしれませんが,例えば各地の学習センターの教室の稼働率がどのくらいになっているのかですとか,あるいは収録設備の稼働率がどの程度になっているのかと。そのあたりがはっきりすると,こういう,先ほど申し上げたようなことがイメージが少しはっきりしてくるかなと思いますが,リカレント教育の拠点ということでこれからやられていくということであれば,放送大学だけが何かいろいろなプログラムを作るということよりは,多くの大学が通信教育課程を持っていますが,実際に収益が上がっているといいますか,経営として十分に成り立っているところは本当に数大学だけだと思います。そういうことを考えますと,更に広がりを持つということを考えると,拠点ということで本当に役割を果たしていただくということであれば,もう少し施設の活用,あるいは放送授業を作ろうと思うとすごいコストがかかりますので,そういうようなものの共有といいますか,そういうところで御検討いただくことができるのかどうなのかということについて,お伺いしたいということでございます。
【岩永放送大学附属図書館長・教授】  よろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【岩永放送大学附属図書館長・教授】  どうもありがとうございました。
 エビデンスですが,今用意しておりませんで,教室の稼働率とか,収録施設,端的に言ってスタジオの稼働率ですが,その資料を今詳細にすることはできないです。ただ,例えば地方の割と小規模の学習センターです。島根,鳥取,佐賀といったところはほぼ平日には授業も行っていないし,もちろん試験も行っていないので,そういうものをならして稼働率というと,かなり低くなると思います。土日はもうほとんど埋まっていますけれども。いわゆる乾先生のところのようなマーケットマインドで考えていくと,稼働率は非常に低いだろうと思います。それから収録設備も,これはどのぐらいが一応スタンダードなのかよく分かりませんけれども,季節変動が激しくて,10月から次の年の2月ぐらいまで,びっしり詰まっている状態です。ただ,4月,5月,6月ぐらいは空いていますので,ならしてスタジオの設備使用率を見ると,5割を少し超えるか,6割ぐらいかというところだと思いますが,これは正確な数字は今分かりません。
 御指摘のあった放送大学ならではのスキルとか,蓄積とか,それから知見とかを最大限に生かして各大学の共有教育とか,共通教育の高度化に寄与するということは,実は放送大学の開学以来ずっと考えておりますが,理念としてはどこの大学でもそれはいいねと言って,連携をしていただくのですが,実際問題として,例えば放送大学というのは試験問題を解答するのが1年間の,ある科目については同じ日の同じ時間に一斉に全国でやります。そうすると,その大学のスケジュールに合わないということが多々あります。それから,各大学では日常点とか,そういうものも加味して点数をつけますから,合格率が9割とか,単位取得率が9.5割とか,そういう科目が多いと思いますが,放送大学の場合には非常に客観的につけてしまうので,ややもすると科目によっては単位が取れないという学生が出てきて,こんな不便だと使えないなということがあります。その辺りのところのずれというか,放送大学でのやり方と,それから各大学,これ大学もいろいろ多様性がありますけれども,大学とのやり方とのずれをどうやって調整していくかということはずっと課題になっていましたが,今は放送大学としては,これは方向性です。方向性ですけれども,放送大学としては,まるっと全部放送大学のものを使ってもらうという形ではなくて,一番基礎的な部分だけを使って,あと専門的な部分はその大学,その大学の学生の能力とか,それこそロールモデルとか,与えられている社会的地位とか,そういうものによって作ってもらうということを考えています。
 そういう意味で,映像のノウハウというのを生かすというのは絶対に必要だと思いますが,ただ一つだけ,放送大学はスタジオを持っておりますし,ディレクターも抱えておりますので,放送授業を作ることは専門です。ただ,放送という形で各大学に提供していいのかというのは,今我々もいろいろ内心考えておりまして,放送はやはり学びにくいです。特に学生の場合にはインターネットで学ぶという方がずっと現実的なので,放送のように作りながら,実は双方向性を加味したインターネットの形にすれば,学生が自宅でそれぞれに勉強できるということができるので,それで基礎的な部分を提供するという形でのすみ分けというか,使い分けをしていただければと思います。
 放送は昔学生を一つの部屋に集めて,みんなで小さな画面を見て勉強するという,ちょっと昭和30年代か何かの放送教育のような様相を呈していたんですけれども,もうそういうことをやっていたら絶対学生は来ないというのが分かっておりますので,これからはますます本体の方よりも更に積極的にインターネット化というのを,こういう連携教育に関しては進めていかなければなと思っておりますので,そういうことが全国に広まっていけば,またもう一つワンステップ上がるんではないかという気がしております。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。前田委員,前野委員,美馬委員,篠田委員と,お手を挙げていただいていますが,時間が迫っておりまして,委員の皆さんそれぞれに御質問を頂いて,それを岩永先生と,それから乾先生と,ノートをとっていただいて,それで全体に対してお答えいただくとしていただきたいと思います。
 それでは前田委員,どうぞ。
【前田委員】  御報告ありがとうございました。それぞれの先生に一つずつ御質問したいのですけれども,まず岩永先生,リカレント教育とは少し離れてしまいますが,今は三つのポリシーに沿って大学は学生を育てるということがありますから,今までよりはブランドというよりは,何を学んだ,身につけたのかということが重視されるようになっていくとは思いますが,放送大学の,例えば誰でも受け入れるという形で卒業させていくときに,やっぱり20代の学生に何かしらフォローアップが必要ではないかという気がしておりますが,その辺りいかがなのかということが一つです。
 それから乾先生に御質問したいのは,企業側が自分のところに働いている人に力をつけさせたいのかどうかということについての調査というのは行われたことがあるのか,あるとすればどう思っているのかというような形の調査が行われているとすればお教えいただきたいという,この2点でございます。
【鈴木主査】  はい。それでは続きまして前野委員,お願いします。
【前野委員】  ありがとうございます。そ岩永先生に御質問でございます。
 お話の中で社会的需要,あるいは学生の構成についてのコメントの中で,能力の若い市民層というコメント,お話がありましたが,それに絡みまして,情報系のことを御質問したいと思います。特に昨今ですと情報セキュリティーの関連で,いわゆる能力の高い市民層が必要になっている。あるいは底上げが必要だということが言われておりいわゆるウイルスといったものは,風邪などと同じように無防備なところから侵入して罹患(りかん)することが特徴ですし,また一方でデータは,いわゆる路傍の岩石と同じように,そのものには価値がないものですけれども,精錬的な作業をすると翡翠(ひすい)などは宝石となり得るものだと思います。したがいまして,能力の高い市民層を作っていくという意味から,情報系あるいは情報セキュリティーやデータサイエンスと,こういったところはここ5年くらいのレベルで急速に充実が必要だと考えていますが,9ページのところから資格等につきましても,6ページの方では情報のことは書いてありますが,9ページの資格には情報系のことが全く書かれておりません。したがいまして,放送大学としてのお考え,それから具体的な展開についてお答えしていただけるとありがたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  それでは美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  岩永先生と乾さんと,一つずつ御質問させていただきます。
 先ほど岩永先生には,金子先生からの質問に対するお答えの中で,ビジネスだけではないと,生涯学習が。それは古い狭い考え方であるというところに,私どうしてもやはり違和感を抱きます。というのは,今回最初に御説明があった100歳の方であっても,何か年齢層を見ても,自己啓発というところで,何か国費を投じてやっている大学が自己啓発のところに,私別に社会活動とか,社会参加を否定するわけではないのですけれども,そこに吸い込まれていってしまっているような気がしてなりません。自己啓発のそのプロセスを支援するということだけではなくて,結局それを更に社会実践の領域や活動に結び付けるところまでを含むような,もっとフォローアップが必要ではないか。つまり,今やっているのはここを聞きに来ている人の,そういう方が社会活動をされている,参加されている方が多いというのは,何かあくまでも個人に任せているわけです。そこのところで,やはり疑問があります。
 そのユーザーの動機についても,ユーザーというか,学ぶ人たちの動機というのに合わせるのではなくて,ニーズ調査だけではなくて不十分で,更にそこから導いていくような,そういうことが今の時代にあっては必要ではないかと思っているので,そのあたりどうお考えなのか。つまり社会的変化,その中での役割,社会が変わっている,人口減少社会においての,やはり放送大学の社会的役割というのは変化しているはずで,その変化に応じた積極的な対応というのが望まれるのではないかというので,そこをお聞きしたいと思います。
 それから乾さんのお話としては,大学の広報としてはとても参考になりました。ありがとうございます。
 今回,やはり個人としてのお話,学習者個人へのアプローチの話で,それは動機付けといった内発的なものです。もっと知りたい。例えばそれをやった後,企業側がそういうことを評価するからやっているのか,あるいは評価すればもっとやるのかという外発的な動機付けのところについて,何かデータや御意見をお持ちだったら教えてください。
 以上です。
【鈴木主査】  それでは篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  大学が2018年問題と言われていますように,18歳人口の長期低落のスタートの年ということになりますので,やはり社会人学生をどのように教育をしていくのかというのが,大学にとってはこれから非常に重要な課題だと思います。それに対して,例えば乾さんの頂いたデータで,大学・大学院で学んでいるのが3%だという状況で,こういうのがどこから来ているのかということなので,今発表のデータではなくて,本日配付の資料4の人生100年時代の8ページに,大学の25歳以上の入学者の割合が出ていますが,日本は2.5%ということで,大体さっきのデータと合っているということですけれども,OECDの平均を見ますと16.6%ということで,ドイツだとか,イギリスだとか,ヨーロッパの主要国でも大体15%前後はある。日本との差が相当あります。だからこの原因が一体何なのか。大学側の問題,もちろん乾さんも御指摘いただいたように,ホームページが,例えば18歳人口対象になっていて,社会人からはなかなかアクセスがしにくいし,修了後のイメージだとか,資格だとかが明確に出てこないというところも重要な要因で,そのあたり,我々も本当に努力をしていかなくてはいけないと思います。
 一方で,前田先生も御質問になったんですが,やはり送り出す側の方です。費用が最大の,乾さんの分析だと費用が障害の最大のテーマというか,問題だと言ったときに,それはどのように解決ができるのか。本人の負担だとか,奨学金だとかというようなこともありますが,やはり送り出す側の支援だとか,それから受講しやすい環境作りだとか,このあたりもどのようなメッセージを出していくのか。ロールモデルが偏在しているというのは,これもデータがあればですが,つまり送り出すような企業や団体はかなり送り出しているので,周りに現在学んでいる人や過去に学んだ人がいるけれども,送り出していないところについていうと,全然そういうロールモデルが存在しないという,その偏在しているような状態なのかと思いますと,その辺りをどのように改善をしていくのかというか,その辺りが諸外国の進学率との差が出てきているのかというあたりです。このあたりを,できればお二人で,感想というか,御意見というか,あればお聞かせいただければありがたい。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは大変申し訳ありませんが,短く岩永先生,乾先生,では岩永先生の方からお願いいたします。
【岩永放送大学附属図書館長・教授】 
 まず前田先生からの20歳前後のお話ですけれども,学生に対してほかの大学でやっているような,例えば就職支援とか,就業支援というような話は,もちろん放送大学では今まではなかったわけです。ただ,やはり20歳代で入ってこられる方もいらっしゃって,そういう方は放送大学を出てからキャリアアップをしようと。あるいは就職をしようと。今まで仕事に就いていなかったけれども就職しようという方もいらっしゃるので,その辺りについては我々も就業支援という形で,窓口を作るかどうかまで入っておりませんけれども,今までそれは我が任にあらずという態度をとってきたことを反省しておりまして,若い人たちにも対応して,全ての多様な学生に対応と初めて言えるのではないかということを考えております。今のところは十分なことができていないという,残念ながらそういうお答えしかないと思います。
 それから前野先生の,能力の高い市民層に絡んで,情報系の底上げ,特にウイルス対策とかいうことですけれども,ウイルス対策そのものに直接は関係しませんが,情報系の先生たち,これはもともと隣のメディア教育開発センターにいた先生たちですけれども,情報系の先生たちを中心に,大学院博士課程の情報学というのも立ち上げる予定にしております。まだ確定はしていないですけれども。それ以外に,本日お配りした中に緑色の紙があったと思いますが,こういう形で,データサイエンスの講座なども,これは単発のものですが,開いて,こういうものを収録しながら放送していこうという試みもしておりまして,決して放送大学が情報系に疎い人たちだけの大学ではないということは,私たちもひしひしと感じておりますので,対応を今急いでいるところであります。
 美馬先生からありました,大変厳しい御意見ですけれども,自己啓発という目標に吸い込まれていくというのはなかなかすごいお言葉だなと思いましたが,実はこれは私だけかもしれませんけれども,放送大学の学生はある意味では既に授業料を払っていると考えることもできるわけで,それは税金を払っている人たちで,ほかの大学の18歳から24,5歳までの層の人たちが,ほとんど税金というものを所得からは払っていない人たちに比べると,ずっと所得税なり,様々な税を払ってきた人たちです。ということは,国庫に自分たちの税をずっと納めてきた人たちが,その一部を自分の学習に使っていると考えることもできるのではないかと思うので,そういう自己啓発のためだけにそういう公費を使うことはいかがなものか,それは違和感があるというのは,私は実は違和感がなくて,前払をしているだけではないかなとも考えられます。
 ただ,やはりそういう人たちに対しても,では自分で好きだったら地域活動してくださいとか,ボランティアしてくださいというだけなのは,確かに言われるとおり無責任だと思いますので,そういう方向での地域の人材をまとめていってどこかに紹介していくというような形での放送大学の関与ということは十分考えられると思いますから,例えば面接授業の講師として,講師補助者として入ってもらうとかいうような意味での構造的なやり方というのはあって,それが今エキスパートという形で放送大学も認証制度をやっておりますけれども,それが,あるいはロールモデルになっていくのではないかと。それをモデルとして市民の文化力に,放送大学として制度的に関わっていくことができるのではないかと思っています。
 それから,最後篠田先生の御質問については,確かに25歳以上の統計をOECDでみると,他の先進国は10%以上で,高いところは20%近くまでいって,日本の場合には2%,3%と,その辺りで滞っていますが,これは制度的なこともありますし,それから日本の若年労働市場が非常にきちっと整備されているということもありますので,一概には言えないと思います。ただ,やはり余りに一度卒業してから学ぶ人に対する思いとか,それから配慮とかいうものが,今までは少な過ぎたと考えておりますので,そういう人たちが学びやすいシステムに,少なくとも放送大学はもっとしていかなければいけないと思っているところです。
【鈴木主査】  では乾委員,どうぞ。
【乾ケイコとマナブムックシリーズ編集長】  一つ一つが,関連し合っておりますので,続けながらお話しできればと思います。
 まず前田先生から伺った,企業側の教育研修についての調査はあるのかということですが,これは各企業団体,経団連さんだったりとか,経済産業省だったりとかで実施をされています。厚生労働省もそうです。そのため,データは存在しております。実際に能力を身につけさせたいというところについては一定です。ただし,そのための費用,教育研修の費用です。こちらについては2011年でがくんと落ちて,そのままずっと落ちたままの状態ではあります。その際に,対象として偏在しているところもございまして,管理職あるいは管理職から上の人たち,エグゼクティブになるところは決して下がってはおりません。エグゼクティブMBAのような形や,あるいは東大でやっていらっしゃるEMPみたいな,それは高額な役員予備軍のようなプログラムというところは,決して下がっていないです。あと今の求人状況でございますので,新規求職者を,就職を呼び込むための教育研修というところは決して下がっていません。
 ということは,あともう一つ,これは直接篠田先生のお答えにもつながりますが,偏在という部分もありますが,実際に今大学・大学院に通っていらっしゃる方々というのは企業派遣ではないです。文系でいえば95%から97,8%は自費の入学者です。自分でお金を投資して,時間とお金を投資して,いえばお金だけではなく,その時間もし働いていたらもっと稼げたわけですので,逸失利益まで含めるとかなりな投資をしている形になります。それをやって入学されていると。諸外国との原因の中で一番大きいのはここです。海外でいうと,入学はほぼほぼゼロ円です。その中でよく日本人は今の段階で2.5%も入学していてすごいと。自費の負担でここまでというのは,正直な感想です。社会人学生の方々,かなり取材をしてきましたけれども,かなりの部分を犠牲にして投入して,大学での学びに投じています。海外の方々に伺っても,そこまで悲壮にいろいろなものを犠牲にしなくても学べます。そこはやはり日本との大きな違いだと思っております。
 あともう一つ,これも篠田先生の御質問に直接つながるところだと思いますけれども,諸外国と日本の場合でいうと,大学の定義がやはり少し違っていると感じています。諸外国でいえば,日本でいう職業訓練校に当たるところ,職業訓練施設に当たるところも,みんな大学としてカウントされておりますので,例えばドイツであれば,そういうところと全国の資格制度がリンクしている。大学の範囲,大学として見られる範囲というのは非常に広いと思っております。日本でいうとかなり狭い規定,規定というか,定義になっていると感じております。
 それから企業側の評価が外発的な動機付けになるのかという美馬先生の御質問ですが,これは思い切りなります。なので,民間の教育機関の初期の動機付けというのは,やはりここです。いかに就職がやりやすくなるか,いかに稼げるようになるかと。ただし,これはもちろん,言葉は悪いですけれども,まき餌的な部分もございまして,最初に引きつける部分はそうかもしれません。だから最初の段階で興味を持って検索をしてみるというところでは,それは必要ですけれども,実際に調べていきますと,学び事ですので時間の投資もかなりしなくてはいけない。それに見合うものがあるのかどうか,自分はそれを身につけていくことができるかどうか,いえば資格の勉強を長いこと続けていくことができるかどうかという部分でいえば,かなりな内容認知が進んでいると思っております。例えば大学でもそうですし,資格講座であったりのところでも,初期に接点を持つ先生方であったり,広報担当者,かなりそこは充実したコミュニケーションをやっておられます。ただスタートの段階でやはり資格というものがある,企業で評価される資格がある,それは企業に転職成功された方がいらっしゃるといったことというのは,外発的なスタートの動機付けというのは本当にどれだけあっても足りることはないと思っております。
 ただデータとして,エビデンスがどこまであるかというところでいくと,ここについては動機の中でのアンケートというのは私の方でしているところではありますが,具体的に企業側がどのように評価しているかというのは個々の状態によって違ってきているので,まとまったデータというのは恐らく存在していなかったと思っております。
【美馬委員】  入り口だけではなくて就職した後の途中での,そういうものというのはありますか。外発的な。
【乾ケイコとマナブムックシリーズ編集長】  就職した後の……。
【美馬委員】  後に,何かこれをやっていると,新しいことを学ぶと,更にそこは企業の中では評価されるということはありますか。
【乾ケイコとマナブムックシリーズ編集長】  データという形では出せないですけれども,私の中で,媒体の中で大学に入学後の姿というところで,実際学び始めた後,企業で働いている中で学んだ後どうなるかというところでいくと,直接的につながったというデータというのはなかなか出てこないです。その代わり働き始めて成果が出せるようになって,その成果が異動であったりとか,登用であったり,転職であったりとかというのにつながったというような事例であれば,かなり多く出てきます。その事例に触れる,そこがそういう意味では先ほどの中身につながりますが,そこがエビデンスの状態で数字で出せるものではなくて,個人の体験談という形でしか手に触れることができないので,なかなかロールモデルに触れない限り入学に結び付いていかないというのの,ニワトリと卵みたいな関係にあると思っております。

【鈴木主査】  ありがとうございます。岩永先生,乾編集長におかれましては,本日は御多用の中,本ワーキンググループに御出席いただきまして,まことにありがとうございました。改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 続きまして,履修証明制度について議論を行います。履修証明制度につきましては,さきの論点整理においても,より短期の実践的・専門的なプログラムの認定に,制度の創設に向けて履修証明制度について総授業時間数120時間以上という現行規定の見直しを検討すべきであるとまとめられているところですけれども,本日この点につきまして,現行の履修証明制度における課題や今後の対応案についてまとめたものを資料2としてお配りしておりますので,これを踏まえて,社会人の学び直しにおける履修証明制度の活用を視野に入れた在り方について御議論を頂きたいと思います。
 事務局から資料2について御説明をお願いします。
【福島専門教育課企画官】  専門教育課でございます。資料2をご覧いただきたいと思います。履修証明制度の短縮によりますリカレント教育のさらなる推進についてというものでございます。
 概要のところにまずありますとおり,履修証明制度,今最低時間数120時間以上となっておりますけれども,これを見直すということでどうかという内容でございます。
 まず履修証明制度,御案内のところございますが,平成19年に学校教育法が改正になりまして,大学等における履修証明制度というのが創設をされたということでございます。
 で,二つ目の丸にありますとおり,その学習の履歴というのを証明するということで,履修証明書を交付できるという仕組みになっております。
 この履修証明の仕組みにつきましては,三つ目の丸にありますとおり,学校教育法施行規則,それからその際の施行の通知におきまして,以下のように記されています。対象者,社会人等と,それから内容につきましては,これはその一定の教育計画の下に編集された体系的な知識・技術の習得を目指した教育プログラムとしております。期間につきましては,目的・内容に応じて総時間数120時間以上ということで,各大学で設定をすると。証明書につきましては,履修証明書を交付するということ,併せましてプログラムの内容の公表,それから質の保証の仕組みの確保ということが,併せて記載をされておるところでございます。
 この履修証明の仕組みを前提としまして,平成27年度に職業実践力育成プログラム,BPといっておりますけれども,文部科学大臣がプログラム,これを認定する仕組みを作っております。この履修証明制度が,このBPの認定要件の一つに位置付けられているところでございます。
 次のページを見ていただきますと,最初の一つ目の丸でございますが,履修証明プログラムと,これ現在開設しているところは大学として115校で,証明書交付者数が2,900人程度というのが,これ27年度の実績というところでございます。
 で,3番の現状と課題というところでございます。履修証明制度につきましては,できてから大体10年でございますけれども,「社会人を対象とした調査では」としておりますが,二つ書いてございまして,総時間数の短縮,短期プログラムの拡大の要望が多い。それから大学側の方としても,120時間に満たないプログラム,これを多数実施しているという実態があります。
 二つ目の丸でございますけれども,社会人に対する調査研究におきましては,障害要因としまして,先ほどもございましたが,やはり費用の問題,それから短期のプログラムが少ないという回答が出ておりまして,改善すべき点というところで,やはりそもそもプログラムの認知度,評価,これを高めるということと併せまして,授業時間数につきまして短時間の修了が可能なものを入れてほしいというのが高い割合で出たところでございます。
 三つ目の丸でございます。これはBPをやっているところの大学にお聞きしたものでございますけれども,この実態としまして,大学が実施をする体系的なプログラム,実態を見ますと120時間以内のものが8割を占めていると。それから,それぞれの一つ一つのプログラムについて,募集定員に占める受講者数の割合というもので見ますと,履修時間が61から90時間ぐらいのところが大体高いというような結果が出ているという状況でございます。
 これにつきましては,資料で申し上げますと, 5ページ目,それから6ページ目が今申し上げたところの調査結果の概要についてお示しをしたものでございまして,5ページ目が,今申し上げたプログラムの時間数の割合の問題,それから6ページ目,こちらが募集定員に占める受講者数の割合について記載をしたものでございます。
 2ページにお戻りいただければと思いますけれども,今後の対応というところでございます。先ほど主査からもございましたが,8月の本ワーキングでも,短くするということで一度御提案をさせていただいたところでございますが,今回につきましては社会人向けの公開講座の実施状況として,今申し上げたような実態があるということ,ただ一方で履修証明というのは,単発の講座あるいは授業科目ではなくて,これらを体系的に編成した,やはりまとまりのあるプログラムということになっておりますので,最低の授業時間数につきまして,やはり一定の体系的,高度なものが必要と考えています。それを踏まえまして,今回の御提案としましては,履修証明プログラムについて最低時間数を60時間としてはどうかと。これにつきましては,学校教育法を受けまして学校教育法施行規則に規定がございますので,こちらの改正を併せてやってはどうかということの内容でございます。
 3ページ目をご覧いただきますと,こちらは60時間程度で体系的なものをやっているプログラムの例ということで,ここでは五つ挙げてございます。植物工場における中核的な専門人材,あるいはビジネス,あるいは計算技術科学,こういったものが現在取り組まれているという状況でございます。
 説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,ただいまの事務局からの説明,あるいは資料を踏まえまして,御意見,御質問がございましたらお願いいたします。
【川嶋委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。川嶋委員。
【川嶋委員】  一つは60時間以上に下げることに異論はないですが,例えば海外の大学を見ると,大学が授与する資格というのはディグリーとディプロマと,それからサーティフィケートというものがありますので,日本もやはりその区別,学んだ内容とか水準に応じて,60時間以上の場合と従来どおり120時間以上学んだ場合の,何か差別化をする方がいいのではないかということです。名称といいますか,位置付けとして。
 それから二つ目は,先ほどのお二方の報告にも関連しますが,今の120時間でも結構たくさん受講生を集めている履修証明プログラムというのはかなりターゲットが明確であるということと,かなり資格につながっている。そういうプログラムは受講生も多くて,阪大でも医学部とかの,医師とか看護師さんを対象にした履修証明プログラムは非常に人気が高いということ。で,最後にやはりそういう意味で,一つの大学が授与する資格ということであれば,学位プログラムに準じたような形で三つのポリシーとまでは言いませんけれども,きちんと大学の内部質保証システムの中の対象の教育プログラムとして位置付けるという形でいくのがよいのではないかということです。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。何かお答えございますか。もしなければ,そのほかの先生方,いかがでしょうか。
【溝上委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  溝上委員,どうぞ。
【溝上委員】  一つは教えてほしいのですけれども,120時間というのはそもそもどういう時間というか,根拠で立てられたものかということです。もう一つは質保証とか,そういうところまで含めて議論されるということですから,例えば現役の学生であれば単位制で,授業外学修とかがありますが,こういうものは含められているのかとか,含める方向なのかと。教えてください。
【福島専門教育課企画官】  質保証のところです。
【溝上委員】  はい。それでもいいです。
【福島専門教育課企画官】  そもそもが120時間というところでございますけれども,先ほど申し上げましたとおり,やはり単発の講座ではなくてある程度のまとまりというところで,例えば120時間ということですので,セメスターで4科目,講義の時間として,講義だけということで15時間ということであれば,2単位で4科目ぐらいの計算になりますので,当初は大体そのぐらいのまとまりぐらいの時間数ということでやったのではないかと聞いているところでございます。
 質の保証の部分につきましては,実際プログラムの中身がそういうビジネス系のものから資格系のものまでいろいろ種類がございますし,取組の中身もワークショップ形式からいろいろ実態ございますので,それに応じた質の保証のやり方というものを考えていただいて,それを公表していただいているというような状況でございます。今回120を60ということですので,ここについてはもっとより丁寧に見ていく必要があると考えているところでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。よろしゅうございますか。溝上委員。
【溝上委員】  質保証に関しては分かりました。私が申し上げたのは,単位で計算するときには,授業外学修時間が入りますよね。そういう考え方は,ここではとらないということですね。
【福島専門教育課企画官】  そうです。
【溝上委員】  分かりました。
【鈴木主査】  そのほか,いかがでしょうか。
【川嶋委員】  あと1点よろしいですか。確認で。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。川嶋委員。
【川嶋委員】  これも前回の議論のところで出て,今回の資料でも明確に学校教育法でも在学する大学生以外を対象とするということになっていますが,前の議論の中でもその辺りの御意見とか出たと思いますが,例えば大阪大学もそうですが,幾つかの大学で副専攻とか副プログラムという形で,在学している学部生や大学院生に対して,ある一定のまとまりのある科目を8単位とか16単位取ると副専攻を修了したとか,副プログラムを修了したとかという形で証明書を出しています。そういうものとつながりというのをやはり切り分けた方がいいというお考えでしょうか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【義本高等教育局長】  この議論は次の単位累積加算制度の問題の中において,多分に関連してきますので,そこでまた併せて議論いただければと。ポイントは正規の課程の中においても一定のまとまりをとれば,それについて一定の評価をするということについても含めて考えるということについての,一応問題提起をさせていただいていますので,それが恐らく川嶋先生のお話につながってくるかと思います。
【鈴木主査】  前野委員,どうですか。どうぞ。
【前野委員】   実は高等専門学校の場合は,人数的には非常に学位授与機構から認定される学位が多いのですけれども,特例認定専攻科でございまして,特例認定専攻科は今そういうシステムをとっているんですが,かなり専攻の範囲を狭めておりまして,本科と言われる大学の1年,2年に相当する年齢の単位の取得状況と,それから3年,4年の専攻科の単位の取得状況を合わせて認定されるということで,今動いて実際やっているんです。もし,この単位累積加算制度が適用されて,余り数は多くないと思うのですけれども,高等専門学校の学生,あるいは社会人として高等専門学校に入る学生さんがいた場合に,別途といいますか,機構側からいわゆる試験を受けて面接をして単位を認定すると。そういうコースを別途考える必要があるのかなという認識がありまして,数が少ないので,例えば機構全体としてやっていただけるといいという気はしているのですが,その辺りの感触をお伺いしたいです。【鈴木主査】  どうでしょうか。御意見として承っておくということでよろしゅうございますか。
 はい。そのほかございますか。これ自体120時間以上というのを60時間以上という,時間的な変更も含まれていて,その中でやはり体系的なプログラムにするということがありますので,まだ議論を続ける必要があるかと思いますけれども,別の機会にまたあると思いますので,そのときまでにまたお話を伺いたいと思います。
 それでは,この議題に関しましては以上とさせていただきます。ありがとうございます。
 続きまして,単位累積加算制度について議論をいたします。単位累積加算制度につきましても,先般の論点整理の中の社会人が学びやすい環境の整備において,社会人の多様な学習形態に対応できるよう,単位累積加算制度について検討してはどうかという整理をしていたところであります。本日はこれを踏まえまして,単位累積加算制度の現状,制度の仕組みや課題,また検討の方向性について,資料3としてまとめておりますので,この資料をご覧いただきながら,単位累積加算制度の活用の促進方策について検討を行いたいと思います。
 事務局から,資料3について御説明をお願いいたします。
【林大学振興課課長補佐】  それでは,事務局から御説明いたします。お手元に資料3番を御用意いただければと思います。「単位累積加算制度の活用促進による社会人の学び直しの更なる推進に向けて」ということで御説明申し上げます。
 単位累積加算制度につきましては,1ページ目にございますように,2ぽつめに制度について御説明しておりますが,複数の高等教育機関で随時修得した単位を累積して加算し,一定の要件を満たした場合に大学卒業の資格を認定して学位を授与する制度でございます。我が国におきましては,平成3年以降制度改正で整備されてまいりまして,現行制度におきましては,独立行政法人大学改革支援学位授与機構の定める要件を満たした場合には,この学位授与機構からの学位の授与,学士の学位が授与されるという仕組みでございます。
 その条件につきまして,少し細かいですが,説明を続けさせていただきます。まず,資格としては二段構成になっていまして,基礎資格として,学位規則においては片括弧でaからfまで記載しておりますように,a)大学で2年以上在学して62単位以上単位を修得した者,b)として短期大学又は高等専門学校の卒業者,c)といたしまして一定の要件を満たした専門学校を修了した者,d)といたしまして一定の要件を満たした高等学校等の専攻科を修了した者と。e)として外国において学校教育における14年の課程を修了した者,そしてf)として,これは旧国立工業教員養成所又は旧国立養護教諭養成所という機関がございまして,この卒業者に対しても認められていたというのが,この基礎資格でございます。
 この基礎資格を有している者が新たに修得すべき単位といたしまして,この資料の構成が,基礎資格との連動になっておりますので若干分かりにくいですが,a)に関しては,大学に在学した期間及び修得単位を含めて通算4年以上にわたって授業科目を履修して124単位以上,通常の大学の卒業と同等の要件ということになると思いますが,を満たした方になります。次のbからf,片括弧bからfの基礎資格の方に該当するのが2になりまして,2年以上にわたって以下の単位を62単位以上修得するということ。大学あるいは大学院の単位。
 1枚おめくりいただきまして2ページにございますように,大学の科目等履修生としての単位や,短期大学の専攻科又は高等専門学校の専攻科のうち,機構が認定した専攻科の単位,あるいは大学の専攻科の単位といった単位でございます。これらの資格を満たした上で,3番,専攻に係る専門の学芸を体系的に履修すると。幅広く学んでいただいて豊かな人間性を涵養(かんよう)するような適切な配慮をした履修をされるということ。加えて4点目として4番がございますように,専攻に関してしっかりと専門性が担保されるということでございます。専攻に係る単位数は62単位以上,これを履修するということをもって申請をしていただき,更に学位授与機構で審査を受けることになります。
 この学位授与機構の審査でございますが,この修得の単位,学習成果についての審査と小論文又は面接による総合判定を行っていただいた上で,学位の授与について審査を行った上,合格した方には学士の学位が授与されるという仕組みになっています。
 現状につきましては,グラフを記載しております2ページの下をご覧いただければと思います。
 平成28年度までの通算で4万8,638人となっておりまして,このうち約90%を短期大学,あるいは高等専門学校の卒業者が占めています。大学中退者や卒業者は約2%の1,063人にとどまっているという状況です。また,3年制の短期大学や専門学校を卒業した方が,主に大学の科目等履修生等として単位を修得した後,学士の学位を授与した,こうした方は約16%の7,760人となってございます。
 その上で,本日お諮りをしたい検討の方向性でございますが,3点ほど記載してございます。高等教育機関間の連携の状況も見ながら,先ほど御審議も頂きました履修証明プログラムの受講歴など,更に多様な学習成果の積み上げにより,学士の学位を授与するという方法も考えられないかという点。2点目といたしましては,例えば卒業ができなかった学生に対しても,大学での学習のまとまりを一定のまとまりを評価して,こうした評価する仕組みを通じて単位の修得の積み重ねがよりしやすくなるような方法,こういったものを例えば考えることができないかという点。このほか3点目といたしまして,特に本日のテーマでもございます社会人の学び直しのニーズに対応していくために,この単位累積加算制度のさらなる活用に向けて,何か御知見おありであるようであれば是非お願いしたいと思いますが,どんな取組が考えられるかということでございます。
 関連する政府方針等ということで,3ページの5ぽつに記載しております。
 4ページ以降は関連する法規を記載してございますので,参考までにお目通しいただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,ただいまの事務局の説明あるいは資料を踏まえまして,御意見,御質問を頂きたいと思います。
【川嶋委員】  済みません。質問を1点だけ。
【鈴木主査】  川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  質問というのは,この見直しの御提案は大学改革支援学位授与機構における単位認定を基にお話しされているのか,それとももっと斬新というか,各大学でもこういうことを可能としようという方向性でお話しされているのかというのを少し,まず確認させてください。
【林大学振興課課長補佐】  現行制度では学位授与機構の制度が前提となっております。一方で使われているニーズも,現状の数字を見ますと限られた方々が活用されていると,こういう状況にかんがみて,まずは現行制度をどのように使いやすくしていくのかということでございます。で,その上で中長期的な,これは解決策にもなろうかと思いますが,もちろん各大学における学位授与ということも,もちろん検討の視野からは排除するものではございませんけれども,ただ個々の大学による学位授与には限界がございますので,まずは学位授与機構の仕組みをベースに,更に中長期的な視点として何か御知見があれば,賜れれば幸いでございます。
 以上です。
【川嶋委員】  分かりました。ありがとうございます。
【義本高等教育局長】  川嶋委員もおっしゃったように,この問題は結構論点が広がります。それで,現状においては結局短期大学とか高等専門学校の専攻科という形で,短期の高等教育機関の学位を前提にして,それを積み上げるものについてどう評価しようかということで成り立っている仕組みなので,そこの取扱いをもう少し柔軟にできる余地があるかどうかという問題があるというのと,それからこの3枚目に挙げさせていただきましたように,先ほどの履修証明プログラムもそうですけれども,質の保証を前提とした上で,正規以外の課程で取ったものも含めて,今後何回も学び直しをしていくという観点からすれば,それもある程度評価していく。今の仕組みとしては,基本的には正規のプログラムに入って,それを積み上げていくということを前提に作っていますので,そこら辺りをもう少し柔軟にできる余地はないかという問題。それから,ここの検討の方向性の二つ目にも書かせていただいていますように,今の仕組みとしては,卒業しなければそれまでの評価ということについては,基本的にはアメリカと違って無になってしまうというケースがある。あるいは,先ほど川嶋委員のお話にありましたように,メジャーあるいはサブメジャーという形にして,学位と違う形で取ったものについての一定の評価をすること自身も,制度的に今なっていないということを考えました場合,その辺りをもう少し丁寧に議論することができるのではないかということがございます。
 特に今の点については,先週の人生100年構想会議においても,鎌田先生から,予備教育課程というお話をされておりましたけれども,そういうまとまりがあるものを一定の評価をするということを考えてはどうかという御意見はありますので,そういうことも参考にしながら,問題提起をさせていただいたところでございます。ですから,ポイントとしては,これまでのように正規のプログラムに2年をベースにして積み上げていくという形での取組については,もう少し柔軟にする余地があるかどうかという問題。それから履修証明制度のような形で,正規以外に入ったけれども,ある程度質を保証すれば,それも含めてカウントするということをもう少し柔軟にする余地があるかどうか,その辺りも含めて御議論いただくこと自身が,もう少し学び直し,あるいはこの議論においての累積加算ということにもつながっていくのではないかということでございます。ですから,先ほど林補佐が申し上げましたように,ベースとしては今の学位授与機構,あるいは大学での積み上げということを前提にしながら,そこの問題を解決し,更にいけばもう少し文字どおりの幅広い意味での,累積加算でいえば,もろもろのことを積み上げていけば大学で認めるという仕組みまで考えるという余地がありますけれども,恐らく段階を踏んでいかないとなかなかこの議論というのは進んでいきませんので,それをもう少し詰めていただければありがたいということで問題提起させていただきました。
【川嶋委員】  それで諸外国を見るとAPLという形で,アセスメントプライアーラーニングといって,それまでに学んできたことをきちんとアセスメントした上で,大学の単位として認めるという制度がありますが,一方で日本の今の大学の改革の現状を見ると,学位プログラムといいますか,教育プログラムとして三つのポリシーに基づいて学位を授与しなさいということが大学には強く求められているというか,それをしなくてはいけないという認識の中で,もう単位累積加算制度,今でも機構がやっていらっしゃるようなことと,学位として三つのポリシーに基づいて養成すべき人材像を明確にして,それに必要なカリキュラムを体系的に編成して,それでDPで定めた成果を獲得した学生に学位を授与しなさいという制度設計と,このようにして幾つかの大学ないしは教育プログラムで学んできた人たちの実績を集めて,それで学士という学位を授与するという,この二つの制度をどうやって文部科学省としては整合性あるものとしていかれようとしているのかというところに少し,まだ私自身回答がないので,是非御回答をお願いしたい。
【義本高等教育局長】  それもここで御議論いただいて,私どもとしては詰めていきたいと思っておりますけれども,基本やはり全体としては学位プログラムというリジットな形で三つのポリシーを作るというようなベースが質保証の前提にしておりますし,また情報公表という形にしている一方,先ほど申しましたように柔軟な履修ですとか,あるいはこれはこの議論の中でもありましたけれども,なかなか大学間の流動性が乏しいとか,あるいは連携を今後進めていかないといけないとか,あるいは何度も学び直しをしていく,あるいはその上においては一定のまとまった期間ではなくて,やはり細切れで履修していくということを考えれば,そういう要請にも応えていかないといけない。ですから,質の保証の問題とそういう柔軟性をどう上手に均分して,整合性あるものとして考えないといけないかということだと思っております。ですから,まとまりをやはり履修する場合の質保証の在り方をどうするかということを考えた場合,単純に三つのポリシーをリジットに当てはめて,それについて作らなくてはいけないということになれば,大学にとってみても御負担もありますし,それ自身が,では何なのかということになりますので,それにふさわしい質を保証,あるいはそれを取り入れた場合,大学として御判断いただくためにはどういう条件を考えればいいのかということについての,私どもとしても考えたいと思いますけれども,そういうヒントになるような御議論をここで賜ればありがたいというのが本日の問題提起でございます。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。前田委員,どうぞ。
【前田委員】  記憶が定かでないですが,前にこちらに出た資料で,大学院に行く学生数がもう増えていないけれども,こういう履修証明プログラムとか,そういったものに社会人なり何なりで行くということがあるというようなことが,たしか資料で見えたような気がしています。
 それと学び直しというのもありますが,学び足しということもあるとすると,例えば履修証明プログラムのようなものを積み重ねて,大学院につながるというようなことは考えにくいでしょうか。御質問です。
【林大学振興課課長補佐】  まず入学資格という点に関しては,各大学院の判断で現状でも,それは可能性としては認められる仕組みになっているかと思います。ただそれが学位につながる仕組みとして整備されるかどうかというのは,今,現状は学士の学位についての単位累積加算制度について本日は議題としてお示ししておりますので,更にその先の検討事項なのではないかと考えております。
 以上です。
【義本高等教育局長】  前田委員もおっしゃるように,多分大阪大学のたしかナノプログラムか何かの履修プログラムといったことの御紹介を事例としていたと思いますけれども,ここの問題は基本的には学士の学位を取るということだけではなくて,やはり学んだレベルが,例えば大学院でそういうものがあれば,それをどうカウントして大学院につなげていくかということについては理論的に同じでございますので,そういう観点から幅広く議論いただければと思っております。
【鈴木主査】  はい,小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  違う角度から問題提起したいのですけれども,この単位累積加算制度というのは,学位プログラム等と並んで今までの学部を中心としてなされてきた大学の組み立て方について,もう少し違う形を与えようという,そういう試みだろうと思いますが,その場合,修業年限が4年ということになっておりまして,これが全ての前提に作られているわけです。この大学改革支援学位授与機構の規則を見ましても,4年以上いなければ,実質的には学位が取れないという仕組みになっていますけれども,そういうところももう少し柔軟に考えていいのではないか。特にこういった形で新しい単位の履修を認めるということになると,そういうことも含めてもう少し,特に社会人の場合には時間が貴重ですから,必ずしも4年いなければいけないということではないのではないかと思いますので,その辺りも含めて考える必要があるのではないかと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。では本郷委員,どうぞ。
【本郷委員】  少し社会人のリカレントという基本からずれるかもしれませんが,まず段階的に国内でこういう履修の認定というものを,単位認定をどれだけ柔軟化するかというのは非常に大事だと思いますが,やはり一番大きく考えられるのは,今一つの大きな課題である国際化の中で,国際的な単位互換とか,あるいはデュアル・ディグリー,ダブル・ディグリーをどう考えるかという,その一歩になるような履修の認定でないといけないと思います。だからそこまで構想して,いろいろな問題点というものを抽出して,それにどう対応するのかというところまでを考えていくかどうかということです。その辺りについてお考えを是非ともお伺いしたいと思います。
【義本高等教育局長】  本郷委員がおっしゃった点もそうだと思っていますし,基本的にはこの話というのは社会人の学びとかということだけではなくて,大学の単位の認定とか,質保証をどう柔軟化し,あるいは大学間の連携を進めながら進めていくのか,あるいは学習者の目線に立って言えば,より柔軟な形で取れて,しかもそれについて評価されるというような仕組み自身を構築していくかという話ですので,今おっしゃったような国際的な条理の中ではどう考えるかという視点も併せて御議論いただかないといけないと思っていますので,御指摘ありがとうございます。
【小松文部科学審議官】  一言いいですか。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。
【小松文部科学審議官】  ありがとうございます。非常に多角的な視点というか,論点が出ていると思いますが,大学の本質であって世界中で通用するような形の,例えば学位の国際的通用性とか,そういうことも議論になっておりますけれども,そういった意味での大学の本質であり,独自の仕組みである学位の授与,ここはきちっと体系性を持ち,また今修業年限の話も出ましたが,学びやすさと同時にやはり問題になっています学修の量,要求される量とか,それによる信頼性とか,そういったものは,それはそれで一つ議論がここでいろいろ進めていただいておりますので,これはこれできっちりしておかないと,日本の大学というものの信頼性とか,本質に関わることだと思いますので,ここはここで更に御議論をお願いしたいと思っているわけですが,他方で大学は,それは制度的にしっかりできるだけの,言ってみれば知的リソースを制度的に持っている,それぞれの機関として持っている,そういう仕組みでございますので,今の高度知識基盤社会ということになりますと,その知的リソースが社会的に,単に学位かそうでないかということではなくて,様々な形でその連携,結び付いていくという柔軟性が求められてきていると。そのニーズの増大というのは,政府全体としての100年時代構想にしても,そういったものが非常に強く出ているわけでございます。
 それで,先ほど,そういう意味ではその知的リソースとしての大学が,正規の課程とそれ以外も含めてどのように社会的に連携したり,働きかけをしたりしていくかということを,信頼性ある形で今後どのように発展させるかということが今問題だと思います。その間の交通整理が必要だという川嶋委員のお話がございまして,そのとおりでございますけれども,今まででもそういう意味では,例えば入学前の既修得単位の算入とか,あるいは違う大学同士の正規の課程でやっても単位互換であるとか,それから諸外国との留学でどこまで認めるかということ,まず一つはそういうことによって学位に結び付いていく部分というのは整理をしてきていただいております。更に制度的にいえば,今の履修証明制度や,あるいは少し毛色が違いますけれども,専攻科とか別科という制度も,制度的にはもともとあるわけでございまして,そういう意味では学位か学位でないかという二分論ではなくて,それぞれ整理はされているけれども,その間をどのように学位プログラムとして評価し,結び付けていくかということを新しく再整理をしていくということができれば,今日政府全体としても人生の過ごし方,学び方が変わっていく中で大学がどう重要,更に引き受け,あるいは働きかけることができるかということができるかという,そういう段階に差しかかっているかと思うのでございます。そのあたりを更にこの場でいろいろ御議論を頂きたいと。もちろん高等教育局,事務方からも様々な提案と御議論の材料を供していくということになろうかと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
【鈴木主査】  前野委員,お願いいたします。
【前野委員】  少し一般的な議論をさせていただきます。
 恐らくこの単位累積加算制度は,高等専門学校の教育に携わっている者としては非常にいいのではないかと思っております。一番大きな理由は,一つの教育機関,あるいは複数の教育機関で学んだ学生が,学位授与機構という第三者機関で実質的な質保証を受けると。これは高等専門学校でもそうなんですけれども,各学校で学んでいたことを最終的に別な第三者機関が卒業として認めるというのは,とてもある意味プレッシャーになっておりまして,生半可な教育では駄目だという大前提になるのでございまして,これはとても,ある意味質保証としてはいいのではないかと思います。
 ただ一方で,先ほど細かな質問をさせていただいきましたが,余りがちがちに学位プログラムを規定されますと,それ以外から入ってきた学生がいろいろなものを必修的に受けなければいけないということで,少し厄介なことになります。したがいまして,先ほど御説明いただいたような柔軟な履修体系による学士ということは,やはり必要なのかと思います。数的にはそれほど多くないですが,そういった柔軟な形態も許容するような,かつ質保証するようなシステムはとてもいいのではないかと思っております。
 ただ学士の名称につきましては,これやはり学士の名称につきましてはいろいろな議論があると思いますので,これは学位授与機構の方で学士の分類はある程度されていると思いますけれども,それで足りるのかどうかという問題はありますし,またグローバルな面から,どういった学士名称が適当なのかという議論もしていただくと非常にありがたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  どうぞ。
【義本高等教育局長】  この問題について議論を深めていきたいとすると,やはりこの単位累積加算制度の問題だけではなくて,履修証明制度についての仕組みを,今短縮の話しかしていませんけれども,この資料2に書いてございますように,今の仕組みとしては表示するものとして内容とか,期間とか,証明書,それから質保証としては内容の公表とその質を保証するための仕組みを確保ということしか書いていませんが,それを大学として柔軟に活用しながら質保証を維持するとすれば,どういう形でそういうものをもう少し見直していくとか,その履修証明制度自身の在り方についても併せて御議論いただくこと自身が,今川嶋先生,あるいは小松文部科学審議官が申し上げたことについても議論を深めていただくことにつながるのではないかと思いまして,その説明をさせていただきました。
【川嶋委員】  よろしいですか。1点。
【鈴木主査】  どうぞ。
【川嶋委員】  先ほどの学位授与機構の申請者で,大学中退者と卒業者は非常に少ないという数字が示されていた,あそこの中退者,特に大学を卒業していない中退者については,これは今の仕組みだと2年以上在籍していないと基礎資格がないということで少ないと理解してよろしいでしょうか。
【林大学振興課課長補佐】  細かく分析しているわけではないので,まだ原因としては確定できないですが,ただ中退者のデータをこちらの方でも事前に確認したところ,2年未満で中退する人が半分ぐらいいるので,やはりその点学びの,論点でもお示しをしたように,ある程度の学びのまとまりを評価する仕組みというものも必要なのではないかなと,そのような認識を持っているところでございます。
【鈴木主査】  よろしいですか。
【川嶋委員】  はい。
【鈴木主査】  この単位累積加算制度も非常に将来的に重要な,しかも柔軟でなければいけないという性格を持っているわけでして,再びこれも議論をしていただくということになるかと思いますが,この資料2,あるいは資料3,これなどはやはり大きな改革につながっていることでございますので,今後ともよろしく御議論をお願いいたします。
 最後に先週の8日に第5回人生100年時代構想会議が開催されまして,大学改革を議題に検討が行われたということですので,当日の資料も含めまして,事務局から御報告をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは資料4をご覧ください。2月8日に行われました人生100年時代構想会議の資料を一通り付けております。一番後ろをめくって最後のページの資料10とありますけれども,その手前数枚が林文部科学大臣から,この中央教育審議会の将来構想部会,このワーキングも含めました論点整理,12月にまとめていただいた論点整理について林文部科学大臣から御報告をしたものでございます。その中で,中央教育審議会においては幅広く大学改革全般御議論いただいておりますので,人生100年構想会議で議論されているような議題についても,この中央教育審議会の中でしっかり議論を行われているという報告をさせていただいたところでございます。
 資料4の最初のページに,その会議の最後の安倍総理大臣の発言がありますけれども,2月8日の議論で4点,1点目に大学の役割・機能の明確化,2点目にカリキュラム編成のプロセス,3点目に大卒生の質の改善,それから4点目に国公私の枠を超えた大学の連携・統合を可能とする制度等についての御意見があったと。そして,関係閣僚におかれましてはということで,各論点について御議論いただいて,またこの100年時代構想会議で再度御議論をしたいというお話があったところでございまして,引き続きこの中央教育審議会で御議論いただいていることについて,100年時代構想会議に報告をしながら進めていくということとなっております。
 説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本件は時間の関係から,報告のみとさせていただきます。
 本日の議題は以上となります。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明願います。なお,本ワーキンググループといたしましては,将来構想部会と併せて5月,6月を目途に中間まとめの取りまとめを目指して議論を進めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  今後の日程については,資料5にありますとおりでございまして,次回につきましては2月27日10時から12時,場所はこの会議室でございます。また,議題につきましては決まり次第メールで御連絡させていただきます。
 本日の資料につきまして郵送を希望される先生方におかれましては,いつものとおり附箋にその旨残していただきますようお願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本日はこれで議事を終了いたします。どうもありがとうございました。
――了――

お問合せ先

高等教育局大学振興課