制度・教育改革ワーキンググループ(第9回) 議事録

1.日時

平成30年1月31日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」について
  2. 情報公開について
  3. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,
本郷真紹,前野一夫,前田早苗,美馬のゆり,宮城治男の各委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長,村田私学部長,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),信濃大臣官房審議官(高等教育担当),
蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)武市大学改革支援・学位授与機構大学ポートレートセンター長

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第9回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。皆さん御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。本年初回のワーキンググループとなります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,まず前半で,本ワーキンググループの親会議であります将来構想部会にて昨年末に取りまとめられました「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」について御報告いただきまして,その後,意見交換を行います。本論点整理は,昨年末,委員の先生方に同様にお取りまとめいただきました本ワーキンググループでの論点整理が含まれておりますので,取りまとめがなされております。
 また,後半では,情報公開に関する取組について,教育研究活動の情報公開やインスティテューショナル・リサーチに関する国内の現状,あるいは海外の情報公開の状況について御説明いただきながら,本テーマに関する論点を基に議論を行います。また,情報公開と関連しまして,現在取組が進められている大学ポートレートについて,その現状と課題,また改善に向けた取組について御議論いただきます。最後に,現在政府で議論が進められております人生100年時代構想会議におきまして,昨年末中間報告がまとめられておりますので,事務局より簡単に御報告いただきます。
 それではまず,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第のとおり,資料1-1から資料4でございます。不足の資料等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】  よろしゅうございますか。
 それでは議事を進めます。冒頭で申し上げましたとおり,昨年末開催いたしました前回の本ワーキンググループにおいて,ワーキンググループで8回にわたって議論してまいりました論点を整理した,ワーキンググループとしての論点整理を取りまとめたところでございます。その後,この論点整理を含む形で,親会議である将来構想部会にて,今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理が取りまとめられました。昨年末に,委員の先生方にはメールにて資料送付とともに御報告をさせていただいているところでございますが,本日はこの内容について事務局から改めて御報告いただくとともに,今後のワーキンググループにおけるさらなる検討のためにも,前半の時間を使って先生方から御意見を頂きたいと思っております。
 それでは,事務局から資料について説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料1-1及び資料1-2について御説明をさせていただきます。
 資料1-1が将来構想部会として全体を取りまとめた論点整理の概要を1枚に整理したものでございます。昨年,大臣からの諮問文では,冒頭に,第4次産業革命という大きな変化と18歳人口の減少,この二つが大きな時代背景として諮問がなされました。これに対しまして,この将来構想部会としては,やはり人口減少から全てをスタートするというよりは,将来像を描くに当たっては,社会全体の構造の変化に対してどういう人材育成が必要となってくるのかというところからストーリーをスタートいたしまして,その時代に必要となる高等教育機関の教育研究体制というのが真ん中に来ます。そしてその後で,こうした教育研究体制を作っていく中で18歳人口の減少ということを踏まえてやらなければいけないということで,18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置,そして最後に教育の質の保証と情報公開,これはいつの時代でも必要なことですが,こういったことについて議論が必要だという全体の構造の整理にしております。こういった全体ストーリーの中のパーツパーツにこのワーキンググループで御議論いただいた個別の七つのテーマというものが組み込まれているという構造になります。
 具体的には資料1-2を御覧いただきたいと思いますが,1ページめくっていただきまして目次を御覧いただきますと,「はじめに」から1,2,3,4,5,6とあるのが全体のストーリーでありまして,その中に,そのパートパートに,このワーキンググループで御議論いただいた各内容も組み込まれております。そして,別添2ということで,ワーキンググループでおまとめいただいた論点整理そのものを付けているという構造になっております。
 中身を御覧いただきますと,2ページから「はじめに」ということで,平成17年の将来像答申において,緩やかに機能別分化していくという将来像が描かれ,それに基づいて各大学の取組が進められてきたということが書いてございます。しかしながら,3ページ目にございますように,第4次産業革命等の大きな変化,専門職大学制度の創設など実践的な職業教育の充実への期待,また,学位課程の質の問題,それから18歳人口減少,そして国際競争が激しくなる中での日本のポジションの低下,こういった構造的な課題が山積しているということで,今,議論を行っているという整理でございます。
 4ページ目からが社会の構造の変化というものを大きく五つの観点から書いておりますが,一つ目の学術研究や教育の発展という意味では,このアンダーラインのところにキーワードがありますが,学際的・学融合的な研究が進んでいる。また,一つの組織だけでというよりは,チームで人材が結集して行われることが多くなっている。また,教育においても文系・理系にとらわれない学部等の設置や主専攻・副専攻などが進んできているという変化でございます。
 その次,第4次産業革命,Society5.0につきましては,ここにありますように,AI,IoTといった共通基盤技術,産業コア技術,関連データといった様々な技術の組合せが必要となってきているということが書いてございます。
 その下,人生100年時代ということで健康寿命が延びていく中で,次のページへ参りますが,やはり様々な18歳で入学する伝統的な学生だけでなく,多様な年齢層の学生のニーズに応えるプログラムの構築が必要になっている。
 グローバル化につきましては,学術研究におけるグローバル化の進展,産業界におけるグローバル化の進展ということが書かれております。
 次の丸では,特に世界の大学生数ということでいうと,中国,インドを中心に大幅な増加が見られているという中で,海外展開も含めてしっかり考えていかなければいけないということ。
 次に,地方創生につきましては,AI,IoT技術,ビッグデータの活用ということになりますと,これは地方の産業にとっては,その地域の中で生産性の向上,高付加価値化が可能になるということで,全国各地の大学の役割というのがますます重要となってくるということでございます。
 6ページからが高等教育における人材育成の在り方で,一つ目に,まず18歳で入学する伝統的な学生への教育ということですが,社会が変化しても陳腐化しない普遍的なスキル,リテラシーということで,新しい技術に追い付くということは大事ですが,それもすぐ古くなっていくという時代においては,やはり社会が変化しても変わらない伝統的ないわゆる学士力として議論されてきたような論理性,批判的思考力といった能力は引き続き重要なスキル,リテラシーであろうということ。そして,その次のページに参りますが,7ページでは,専門教育において,最近の産業界においては,優れたジェネラリストであることだけではなく,自分の強みとなる専門分野を持っていることが必要となってきているということで,汎用的能力と強みとなる専門性とを兼ね備えた人材育成となるカリキュラムが求められると。
 そして次で,第4次産業革命時代の新たなリテラシーとして,やはり全学的な数理・データサイエンス教育というのが必要となってくるのではないかということ。
 そして,カリキュラムと社会とのチューニングということも必要になってくるということ。
 その下に,社会人への教育につきましては,やはり学術的なアカデミックな教員による最先端の実践の理論化と,実務経験のある教員による最先端の実践例の提供,双方が求められると。そして8ページにありますように,こうなってきますと,最後の8ページの二つ目の丸ですが,カリキュラム編成に当たっては,供給側として用意できるプログラムだけでなく,需要に対応できるプログラムを用意する必要性というのが高まってくる。そして,そういったものは社会人学生の増加によってこういった必要性はより顕在化してくるのではないかということが書かれております。
 そして次,9ページからが高等教育機関における研究体制ですが,大きく二つの視点がありまして,一つ目の丸で,将来の人材需要が次々と変わり得るという前提に立てば,予測が困難な中でも変化に迅速かつ柔軟に対応できる教育研究体制を構築していくことが必要です。一つ目は学位プログラムにつながるような議論でございます。
 そして2点目は多様性ということですが,先ほど社会構造の変化で見ていただいたように,学術研究でも産業界においても多様な分野の知識・技能の組合せが必要になっている。人生100年時代で多様な年齢層の学生が入ってくる。グローバル化の中で多様な国籍の教員や学生が入ってくるということになりますと,今後の高等教育機関は,多様な価値観を持つ多様な人材が集まることにより新たな価値が創造される場となる必要がある。こういった多様な価値観が集まるキャンパスとなるためには,大学や学部・学科における教員の自前主義や18歳中心主義から脱却して,学部・学科を超え,大学を超えた人的資源の共有を通して,多様な教員による多様な教育研究分野の提供,多様な学生を受け入れられる体制,多様性を受け止めるガバナンスの在り方を検討していくことが必要だということで,この「多様な」でくくった4点について次から整理をしております。
 多様な教育研究分野の1点目ということで,時代の変化に応じて従来の学部・学科等の枠を超えて迅速かつ柔軟なプログラム編成ができるようにすることが必要ということで,このワーキンググループで議論していただいている学位プログラムの議論が行われているという位置付けになります。そしてその次の段落で,今後少子化が進行する中で多様な教育研究を行うということになりますと,複数の大学等の人的・物的リソースをいかに効果的に共有できるか。そういう意味で単位互換制度や運用の見直し,あるいは一法人一大学となっている国立大学の在り方,私立大学における学部・学科単位での設置者変更の手続の整備など,大学等の連携・統合を円滑に進める仕組みを検討することが必要である。
 そして,その右の欄に具体的な方策とありますが,これは後ろに別添で付いているものについて,ここだけ見れば一応何のテーマかということが分かるというぐらいの最低限の記述として引用をしております。学位プログラムの問題,そして今,本文にあったような連携・統合の可能性ということで,1,2,4,5と,これは将来構想部会で議論されていた具体的なテーマが書かれております。
 10ページの一番下は,多様な教員ということで,実務家,そして11ページから若手,女性など様々な人材が登用できるように検討する必要があると。具体的な方策の中には,学位プログラムはもう多様な教員という要素でありますし,それから実務家教員という意味では,このワーキンググループで御議論いただいていたみなし専任教員の問題も関係あろうかということでここに位置付けられております。
 11ページは多様な学生ということで,多様な年齢層の多様なニーズの学生に教育できる,また次の丸では,外国人,国際ということで,12ページにありますように,具体的にはワーキングで議論していただいているリカレント教育,学位の国際通用性,高等教育機関の国際展開という位置付けになっております。将来構想部会では,この点について一つ御意見が出まして,学位等の国際通用性の確保といった場合に,こういった名称とか位置付けだけではなく,教育の中身という意味でも国際通用性の議論をしっかり議論していくべきではないかという御意見があったところでございます。
 そして多様性を受け止めるガバナンスということで12ページから13ページに掛けて,高等教育機関は,他の機関や関係する産業界,地域の地方公共団体などと連携して,必要とされる教育研究分野,求人の状況,教員や学生の相互交流などについて恒常的に意思疎通を図るような体制を構築していくことが必要だとしております。また,その四角囲みの下に,大学の経営力の強化という観点から,学外理事等を少なくとも複数名置くなど一定割合以上配置することや,学外理事に期待する役割を明確化する取組を進める必要があるとしております。
 その下には,短期大学,高等専門学校,専門学校,それぞれ特有の課題について,今後引き続き検討が必要であるということが書かれております。
 15ページからが18歳人口減少を踏まえた規模や配置ですが,まず,データの整理といたしまして,15ページ,学士課程への進学者数の増加とありますが,平成17年の将来像答申では,大学・短期大学の収容力は平成19年に100%になる,いわゆる全入時代が早まるというようなことを当時試算したわけですが,当時の予想を超えて大学進学率が上昇いたしまして,18歳人口の減少にもかかわらず大学の学士課程への進学者は増加し続けて,現在でも収容力100%にはなっていないと。特に女性の進学率が10年間で約10ポイント大きく上昇している。これに応じて,短期大学からの転換も含めてですが,四年制大学の数も増加してきたというところでございます。ただ一方で,これに伴う教育の質の低下というのも懸念をされている。また一方で,次の段落では,全体としての学生数が増加する一方で,定員割れの大学が4割に増加している。特に私立大学が多く,かつ小規模な大学が多いという我が国の特徴の中で,特に小規模な大学が多い地方で学生確保が厳しくなっている。こういったところで,地方の学生のニーズに応える質の高い教育機会をどう確保していくかということが重要となってくる。
 そして,16ページでございますが,将来の進学者数の推計ということで,18歳人口自体は,120万人から2040年に88万人に減少しますが,国立教育政策研究所においては,平成26年度までに生まれた者の数,各学年の小・中学校在籍数などを基に,平成45年までの18歳人口を都道府県別に推計をしております。そして,これによって平成45年の大学進学者数は,現在の約85%になります。これについて具体的にどんなデータがあるかというのをファイルで御覧いただきたいと思いますが,手元に緑のファイルが置かれておりまして,真ん中辺りを開くと,各都道府県のデータが並んでいます。各都道府県別に横になった地図と表が真ん中辺りにありますが,例えば30ページを御覧いただきますと,新潟県が出てまいります。ここにまとめてありますのは,真ん中の数字でいいますと,18歳人口新潟県が2万2,000,そして大学進学者数が約9,400人,そして短期大学,専門学校進学率まで書かれておりまして,新潟県の大学数が18,国・公・私で3校・3校・12校と。そして入学定員が全体で5,800人で,国・公・私の内訳が書いてありまして,その下に県外から流入する数というのが2,600人,県内から流出する数が6,100人,差引きでいうと3,500人流出超過という傾向があります。ここまで踏まえまして,仮に現在の進学率のまま平成45年を迎えた場合にどうなるかというのが下の三つでして,大学進学者数は新潟県の高等学校からどこかの大学に進学する者の数,大学入学者数というのが新潟県内の大学に入ってくる学生の数,これが4,500人となっております。そういたしますと,この平成45年に入ってくるのが4,502人,一方で現在の定員が真ん中に,先ほど御覧いただきましたが5,835人ということになりますと,今のままの体制では1,300人の入学者不足になるというときに,そういう推計を踏まえて,ここに並んでいる各大学,各学部,どういう在り方を考えていくのかという経営政略を考えなければいけないというような,そういう議論の材料になるデータを全都道府県について用意をしているところであります。
 これにつきましては,今,進学率を固定したデータしかございませんので,進学率が今後どうなるかという推計を更にした上で,またデータの精度を高めていくということが必要であろうと思っておりますが,こういったデータを用意しているということが,先ほどの資料1-2に戻っていただきますと,16ページから17ページに掛けてそのことが書いてございます。
 先ほどの本文に戻っていただきまして17ページですが,そして,国が提示する将来像と地域で描く将来像ということで,これから人口減少がより急速に進む20年間においては,地方における質の高い教育の機会の確保が大きな課題となるということを踏まえますと,高等教育の将来像は国が示すだけではなくて,それぞれの地域において高等教育機関が産業界,地方公共団体を巻き込んで将来像が議論されるべき時代を迎えているのではないか。そして,その場合にどういうエリアとして考えるとか,都道府県単位がいいのか,それも場所によって様々ではないかということですとか,こういった高等教育機関と産業界と地方公共団体が将来像についてや,具体的な交流方策について議論する地域連携プラットフォームのようなものを構築していく,その在り方を検討する必要があるのではないかということが書かれております。
 大学等の地域配置につきましては,例の23区の抑制問題の部分でございまして,ここは説明を省略させていただきます。
 最後,21ページから大学教育の質保証ということで,ユニバーサル段階になりますと,当然,進学率が上昇して大学に入学する学生の裾野が広がっていくと,かつての少数エリートが通っていた時代とは違うということではありますが,その一方で,次の段落で,我が国の大学については,こうした大衆化の問題を前提としても,教育の質の保証のための取組はまだ不十分であると。実際,学修時間等については,外国よりも少ない,過去と比べても改善されていないというデータがあると。そして次の丸ですが,こうした中で,ここでも議論がありましたが,文部科学省の事業を活用するなどして積極的に改善の努力を行っている大学と改善の努力が不十分な大学とに二極化しているのではないかという指摘もあり,大学全体としてはまだ十分に信頼が得られているとは言い難い。諸外国においても大学進学率が上昇し,高等教育を受ける学生が増加するほど公的負担が重くなり,公費を投入するに値する質の教育を行っているのか,アカウンタビリティーが求められる。
 そして,大学と大学外の社会との関係というのは,世界の歴史の中で様々な相克があり,その在り方は一様ではないが,大学がその研究成果と教育を通して社会の発展に貢献するということについては共通理解があるのではないか。
 そうした場合に,例えば学術研究の対象については,社会の要請だけではなく,多様な教員の多様な関心に基づいて選択していくことが重要という面もあるが,教育の質については,大学が自ら責任を持って保証し,第三者の評価を受け,その成果を社会に積極的に情報公開していくことが必要である。こうした姿が広がることによって,多様な投資や民間からの寄附という意味でも社会に支えられる大学になっていくのではないか。こういった観点から,質保証と情報公開の具体的な方策について引き続き検討する必要があるということで,このワーキンググループで御議論いただいている学修の質の保証の話,それから学修成果の可視化と情報公開の話,次のページに認証評価制度の在り方を引き続き御議論いただきたいという整理になっております。
 最後に,今後の検討課題として,この機能別分化の考え方についての今後の在り方,あるいは大学院の議論がまだ行われておりませんので,大学院のとの関係,そして,この四つの諮問事項のうちの一番下にある財政の問題,一番下ですが,教育研究を支える基盤的経費,競争的資金の充実や配分の在り方,学生への経済的支援の充実など教育費負担の在り方,これについてはまだ議論が行われていませんので,今後引き続き検討する事項であるということで,全体が整理をされているところでございます。
 長くなりましたが,説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは,先生方より自由に御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。どうぞ,川嶋委員。
【川嶋委員】  ありがとうございます。幾つかコメントさせていただきたいと思います。
 一つは多様性と,それから18歳人口の減少の問題です。御説明では,今後の,まずどういう人材を育成するかということがあって,その後,教育研究体制や人口減少の問題というストーリーだということでしたが,一見すると,やはり18歳人口が減っていくので,その減った分をどういう形で学生を補?していくのかということで,これまで余り参加していなかった社会人とか留学生を増やすことによって学生数を維持していこうとも読めますが,多様性といっても,今回具体的に挙げられているのが社会人と外国人ということになっています。ただ,多様性の観点で言えば,問題は単に社会人かそうでないか,外国人か日本人かという問題ではなくて,最後の方にも御説明がありましたが,ユニバーサル化で,いわゆるデモグラフィックな多様性だけではなくて,学力面の多様性,あるいは障害を持っている人とか,あるいは最近つとに問題になっていますが,性的な指向性,LGBTとか,いろいろな観点での多様性というものがあるわけで,もう少し多様性ということについて,多様な人が交わることによって新たな価値が創造されるということは確かにそういう効果はあるのでしょうが,学生にしろ,教員集団にしろ,職員集団にしろ,多様な人々から成る大学というものが組織の活性化にとってどういう意味があるのかということをもう少し議論する必要があるということと,それから,結果として社会人が増え,留学生が増えるということだけではなくて,これはアメリカのAACUという団体がいっていますが,多様性というのはプロセスとして考えなくてはいけない,つまり入り口,入試をどうするのか。入れてからどういう教育なり支援をするのか。そして卒業に当たってどういう支援,18歳の人と社会人の人と留学生の人と障害を持っている人が様々な形で就職に対しての取り組み方は違うので,やはりもう少し多様性ということについては議論を深める必要があるのではないかというのが1点目です。
 それから,2点目は教育の質保証で,本日の資料でも学修時間が依然として増えていないという指摘が21ページにありますが,いろいろな解決方策としてシラバスの充実とかGPA導入とかと指摘されていて,私は一番重要なのはやはりCAP制だと思います。つまり,CAP制は今のところ努力義務でしかなっていなくて義務化されていないと。やはり日本の学生は,授業を取り過ぎている,1週間当たりの単位数が多過ぎるということで,逆に言えば,その分,授業外の学修時間が減ると。24時間しかないわけですから,授業時間が増えればその分,寝る時間を除けば授業外学修時間が減るのは当たり前ですが,やはり単位制度の実質化という観点からCAP制というのを厳密に導入すべきだと思います。
 一つの調査結果として,これも以前お話しさせていただいたかもしれませんが,アメリカの有力な研究大学と,日本の有力な研究大学の学生の学修時間を調べたら,1週間30時間で同じでした。もうアメリカでも30時間しか教室内外で学修していないのですが,その内訳を見ると,アメリカの研究大学の学生は,授業内学修時間が15時間,授業外学修時間が15時間です。日本の場合は20時間と10時間です。なぜアメリカの大学は15時間かというと,15時間分しか履修できないからです。一定の授業料を払ったら15単位分しか履修登録できないのです。それ以上増やそうと思ったら,エクストラの授業料を払わなくてはいけない。要するに15時間の授業内時間ということは3単位科目で5科目です。日本の場合,20時間の授業内学修時間だと2単位科目だと10科目です。当然,これだけ多くの科目を履修していれば,深い学修はできません。ですから,やはりCAP制を導入してきちんと単位制に合った学修時間を教室内外で確保するということを今後は求めるべきだと。もちろん,学生の方にも事情があって,アルバイトしなくてはいけないとか,あるいは就職活動のために1年,2年で前倒しして単位を取っていくという問題もあって,そのあたりの是正も必要ですが,今,高等教育無償化の議論が始まっていますが,やはり生活保護対象の出身の学生だけではなくて,日本の大学生全般が学業に専念できるような支援策を国として考えていく必要がある,その際にはやはりCAP制は非常に重要であると思うというのが2点目。
 最後は,国立大学の在り方といいますか,地方との関係を重視すべきだという,まあ設置形態にかかわらず地域との連携を深めるべきという提案になっていますが,ではその中で国立大学とはどういう意味,意義を持つのでしょうかということです。これを改めて考えていかないと,国費で運営費の50%以上を賄われている国立大学は,なぜ位置する地域に貢献しなければいけないのか。全体を通して今47都道府県に国立大学はあるので,トータルでいえば国の発展に貢献しているとも言えますが,やはり公立大学もあり私立大学もある中で,国立大学の位置付けはますます地域との連携を深めようというのであれば,国立大学の在り方そのものを,ファンディングとか運営組織等も含めて改めて考えていく必要があるのではないかと思います。アメリカでは州立ですし,オーストラリアも州立ですし,ドイツも州立ですし,イギリスはほぼ全て国からの補助金を得ているので,かつ公立とか私立大学はないわけですから,そういう意味ではやはり国立大学の在り方,国・公・私の今後の連携の在り方の中,国立大学の意義,意味というものも改めて検討する必要があるのではないかという,以上3点。
【鈴木主査】  ありがとうございます。前田委員,どうぞ。今,川嶋委員の発言に対しても何かございましたらお願いいたします。はい,どうぞ。
【前田委員】  今,川嶋委員のおっしゃったことはそのとおりだと思いますが,CAP制に関しましては,実は私,認証評価機関に二つが関わっていますが,どちらもチェックをしております。問題は,上限が50という数字です。やはり3年では124単位に達しないくらいのぎりぎりの数字を出すべきだと思っています。
 もう一つは,結局厚生労働省との関係とか資格との関係で,上限設定ができないとのことで,それは仕方がないとされています。学修時間との関係で言っているのに,そこが越えられない壁になっています。それをそのまま放っておくのは,本当はおかしいことだと思っていまして,ここはどうにかならないのかという気はしております。
【鈴木主査】  そのほかいかがでしょうか。はい,上田委員,どうぞ。
【上田委員】  こうやっておまとめいただいてありがとうございます。これで私自身も何か相当全体の見通しが出てきたというか,このワーキングで何をやっていたのかというのがやっと分かってきたようなところがあります。
 二つぐらい申し上げたいのですが,最初は少し希望なのですが,こういう全体の中で,ある部分がワーキンググループに降ってきて,それが議論されていて,このようにはめ込まれているということが,今やっと分かったのですが,今後はもう少し全体の構想の中のここの部分の特定の部分を今回は取り扱っているという見通しを示すとか,あるいはこういう順番でいろいろと特定の問題を話し合っていくということが分かっているとありがたいと。大学はシラバスを作って,今回の授業は全体のこの部分を取り扱っているということを学生たちには分からせているわけで,私の感触からいいますと,このワーキンググループは,教科書が指定されて,全体はこういうことをやるというのがあって,急に前日に,明日はこの分野の小テストをやるので勉強してこいと言われて,その小テストが異常に細かいところの小テストで,もう必死になってそれをやって,全体はどうなっているのかという感じで用意してくるという感じになっていまして,我々は学生ではないとはいえ,もう少し優しく全体の流れとか,こういう意義があるんだよということを言っていただいていると,もう少し有機的に頭が働いたのではないかと思います。そちらの方々は,あるいは委員の方々はみんなプロなので,その全体像が分かっているのかもしれなかったのですが,私はよく分かっていなかったもので,毎回毎回その小テストをクリアするのが結構大変でありましたので,是非そちらをお願いしたいと思います。
 あともう一つですが,これはこの中に書き込まれることかどうかというのは少しあれですが,制度のことをやっているので,全部制度のことをいっているという部分があると思います。ただ,例えば18歳で入学する伝統的な学生への教育というところで,普遍的なスキル,リテラシー,論理性や批判的思考力,広い視野,コミュニケーション能力や他者との共生の力などというのは社会が変化しても陳腐化しない普遍的なスキル,リテラシーであるということは大変重要な点で,そのことへの着目というのは必要ですが,例えばそれに先立って,そもそも自分自身がこの社会をよきものにしていくというそういった志の部分ですとか,あるいはその中で自分自身をどうやって活かしていくのかというある種の学生の意識といいますか,それは教員の意識でもありますが,そういった自己意識みたいなものについては割とそんなに書かれていないと。リテラシーであったり批判的思考力であったりといったものも,ただそれがスキルとして身に付けられているのだけでは少し難しいところがあって,やはりどの大学においても,そもそもなぜこの大学に学びに来ているのか,あるいはなぜ高等教育のところまで我々は来ているかというのは,必ずしもキャリアを築くだけのものではなくて,個人個人,学生学生の中での主体的な深い意味というものがそこに発生しなければいけないと思います。ですから,例えばそれをリューブリックみたいなものを使って評価するといっても,ただこの能力のこの部分がすぐれているとかこの部分が欠けているという,その上位に立つ何かある種のものという,こういう日本にしていきたいとか,あるいはこのように世界をよきものにしていきたいといったような,ある種の統合的なものがないと非常に難しいのではないかと思われますが,もちろん,これは制度についてのワーキングですし,その部会ですので,余り触れられない部分なのかもしれませんが,どこかではそういうものが必要なのではないか。やはり学生を見ていても,スキルも不足していますが,そもそも何のためにこの大学にいるのかという,その自分のそこでの存在意義というか,その意味の深さというものが少し欠けているのではないかということを痛感するものですので,それをいつか議論できればうれしいなと思っております。
 あと,大学の中の多様性ということですが,もちろん,多様性のある大学というのは必要ですが,自分の中での多様性を発見していく。つまり,多様な人がいて,自分は単一で,ほかの多様な人と触れ合っていくというのは,自分の中での多様性に対する感性とか,あるいは自分自身が多様な存在であるというそのことへの発見でもあるので,これを見ていますと,いろいろな年代の人,いろいろな国籍の人と触れ合って多様性のある価値を創造していくのですが,そこでは個人個人の物すごく大きな自分自身の価値変容があるわけで,その自分が単一のものではなくて,自分自身がそもそも多様性を持っているんだという,そのことへの気付きというのはかなり重要だと思いますので,その辺りも,書き込めないのかもしれませんが,どこかで少し考えておきたいところだと思いました。
 以上です。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,本郷委員,それから美馬委員ということでよろしゅうございますか。
【本郷委員】  ありがとうございます。今,高等教育の無償化が議論されている中で全く逆行する話かもしれませんが,一方で,学生にしろ教員にしろ一定の緊張感というか自覚というか,そういうものを導き出す施策というのも考えておかなくてはいけないのではないかと思います。実は,2001年に大分にAPUという大学を作りましたときに,最初は完全単位制学位にしました。単位制学位というのはある意味非常にシビアで,かなり学生もとる授業というものを自らの構想に基づいて精選してくると。ですから,当然自分たちが求めているものが得られなかったら,平気で教員に対していろいろなことを批判してくるわけです,この授業では役に立たないと。逆に教員も,それだけ自覚を持っていれば,結局勉強が足らない学生に対して取り直す,その場合には経済的な負担がまた増えるということになって,いろいろな面で財政的な問題があって,これはなかなか長くは存続できませんでした。今はもうセットにしてというような形の学費を組んでいますが,こういう何も学費だけの問題ではなくて,何がしかのやはり自覚と責任というものを導き出すようなシステムというのも将来的には考えていく必要があるのではないかと思います。
 そのことがまさしく一方で議論されていた例の学位プログラムです。大学を終える際の一つの質保証,成長の保証というものにつながってくる側面もあるでしょうし,あるいはまた,今問題になっているいわゆるキャンパス内外における学修時間という問題についても,一定改善されるような,そういう方向が出てくるのではないかと思います。特に私立大学の場合は,その辺りのところは,学費は柔軟に対応できると思いますが,身近なところを見ていますと,やはり国立大学も全ての画一学費というのをいつまでやられるのかということです。少し議論が違うかもわかりませんが,昨今これだけ18歳が減っていく中で,シビアに,物すごく熾烈(しれつ)に競争的環境が働いているのは,もう御承知のとおり医学部医学科。医学部医学科がなぜ働いているのかというと,それだけ医師に対する指向性が強いのかというと,そうではなくて,国立大学の医学部医学科へ行くと費用対効果が非常に大きいと。基本的には医師1人を生産するのに,作り出すのに6年間で掛かる経費というのは2,300万ぐらいと言われていますが,実際に学費で負担するのがそのうちの300数十万。ですから,そこを見越して医学部医学科へ行きますと決めているという例が高等学校サイドなどに聞くと非常に多いです。そうした在り方というのは果たして妥当なのかどうかということをやはり将来的には考えていかないといけないのではないかと思います。これが1点です。
 もう一つは,少し議論が違いますが,多様性ということは非常に大事だと私も思いまして,その多様性というのは特に受け入れる際の多様性,それから中での学びの多様性と,いろいろあると思いますが,やはりいろいろなタイプの学生と日常接しているというような環境に置かれた方が,明らかに学生は成長します。それは授業で与えられたそういう時間というだけではなくて,いわゆる課外,様々な活動というものを通じて成長する部分が非常に大きいと。ところが,残念ながら,卒業する際の学生の評価指標というのは,基本的には現在でもGPAというのを中心にしていますから,なかなかそれが本当の意味で取り沙汰されている人間力を測るための指標にならないということが残念です。例えば課外活動を4年間非常に率先してやってきた学生というのは,どうしてもGPAというのが平均すると低いです。低いですが,やはりそれだけの人間的魅力があって,例えばキャリア実績等については非常に高い評価を得ていると。このあたりの,一見すると食い違うような要素をどのように克服して,全体の学生の成長の到達度評価指標というのを作っていくのかというのは,やはり今後大きな課題になってくると思いますので,そのあたりのところも今後含めて考えていかないといけないと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  今回おまとめいただいた多様性というのは,ここを通してまとめていくのはとてもよいことだと思いました。そのことについて,なぜ多様であるべきかというその目的と,そのためにどういう方法がとられるのか,それはなぜなのかというところをもう少し通して説明できるといいなと思いました。
 私の方から多様性のことを3点について今意見を述べさせていただきます。学生と,それから教員と,それから制度の面の3点です。先ほど上田委員もおっしゃいましたが,学生については,多様であること,そういう多様な中での自分と人との違いの中から自己が確立してくるというように,自分とはどういう強みがあるとか,自分がやるべきことは何なんだという,そういうものが出てくるのだと思います。そういう中で,普遍的なリテラシーというのがここで挙げられていますが,そこには,新しいこういう将来が不透明な時代にあって,自分で学んでいく力,大学を出てからも学び続ける力,その部分がやはり重要なので,もう少しそこのところに触れていただきたいなと思いました。
 それから,教員について,教員の多様性ですが,ただこれは外国からいらした方とかだけではなくて,男女もそうですし,分野とか経歴とか多様な教員が関わるということがどういうことなのか,その人を呼んできて何か一つ科目を任せればよいというものではないと思います。その中で,例えば学際的な教育であるとか,先生方自身がチームになっていくような,そういうカリキュラムというようなものも必要なのではないかと思いました。だから,そういう仕組みです。
 というわけで,最後,制度のところですが,実際にそういう多様な教員が入ってきたときに,それをどのようにやっていくことで多様性のよさというのが出てくるのかということは,ここでは多様性を受け止めるガバナンスということが書かれていましたが,多様性を受け止めるだけではなくて,促して新しいものを生み出すガバナンスという学内の仕掛け,制度というのも必要ではないかと思います。例えばうちの大学では,そういう学際的ないろいろな人たちが集まる学内の共同研究を促す仕掛けであるとか,共同授業をする,分野の違う人たちがチームティーチングを行うことによって新たな教育方法や教育内容について出来てくるというファカルティー・ディベロップメントの機能もそういうことによって出てきています。
 というわけで,例えば多様性がなぜ必要なのかというところにおいては,私たち20年前に大学を作るということでずっと教育理念とか方法とか考えてきましたが,そのときには2点やってきたことがあります。それは,学修の共同性ということと,学修の社会性ということで,学修の共同性というのは,共同的な活動の中で学ぶということが深化する,これは学生だけではなく教員もそうである。それから学修の社会性というのは,社会との関わりの中で学修というのが動機付けられていく,これは学生も教員も。というわけで,そういう多様性を受け止めるに当たってのそういう制度,それから今回はここでは議論になりませんでしたが,ラーニングコモンズのようなそういう空間ですね,そういうものをこの中で多様性ということで促していくんだということを強調できればと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  論点整理を読ませていただきまして,今の御報告もお伺いしまして,特に地方創生,その中で中核になる地方大学の発展をどのように実現していくのか,どういうメッセージを出していくのかというところについて多少感じたところがありますので,その点について発言をさせていただきたいと思いますが,大学を取り巻く情勢の中で,冒頭4ページから,社会全体構造の変化の中で五つの柱の重要な一つとして地方創生というのが位置付けられて,その文章の中にも,全国各地においてポテンシャルを引き出す上で大学が果たす役割は極めて大きいということで,御報告の中でも,全国各地にある大学の役割がますます重大になっているので,私自身も,数としては圧倒的多数を占める地方の中小規模の大学,これの教育水準や経営をどのようにしていくのかというのは,日本の教育全体をどのような役割を果たすものとして再構築するとか確立していくのかという上では,大規模大学の問題というのも非常に今重要な問題だと思いますが,大きな要のところではないかと思います。
 その上で施策を見ますと,10ページのところでまずぱっと具体的な方策というところを見るわけですが,そうすると,最後の5のところで連携・統合の円滑化に向けた方策ということで,具体的には,他法人との合併や撤退を含む早期の経営判断が行われるように支援をするということで,ここのところがばっとメッセージとして出てくるわけです。冒頭にお示しいただいた論点整理の概要のところでも,地方創生の柱が書かれていて,真ん中の施策のところには大学間の連携・統合,円滑な撤退の手続ということで,ここのところがぐっと出てくると。もちろん,合併とか撤退とかというのは重要な施策の一つだと思いますし,この点については国の支援が重要だということですので,この点を制度,システムとしてもきちっとする,また支援するということが重要なところだと思います。だから,淘汰(とうた)を進めるという強いメッセージというのは一方で必要なのかもしれませんが,一方で,地方大学にどのような支援をするのか,改革を後押ししていくのかというところについてはっきりしたメッセージを提示していくというのは,また一方で重要なところではないかと思います。
 そういう目で15ページ以降の18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置のところで見ていきますと,15ページに地方における教育機会ですとか,それから次の17ページのところでも地域で描く将来像,最後の19ページのところでも,これは大きなタイトルにはなっていませんが,有識者会議の報告として,地方大学の振興について幾つかの施策がそれぞれのところで出ておりまして,地域ぐるみで自治体や企業も含めて地方大学を支援する体制をどのように構築していくのか,あるいは経営の支援とか,学生の教育支援だとか,さらには財政とか人的な支援ということもあり得るのでしょうが,そういう地方創生の要としての地方大学をどのように再生をして強化をしていくのかというあたりのところ,このあたりが施策のところでもある程度目に見える形でメッセージがタイトルとして打ち出されると,まとめ方としては非常に圧倒的多数の地方にある私立大学がこれからやはり経営改善に向けて厳しい時代に立ち向かっていくときのメッセージとして伝わっていて,だから,そういうような形で地方大学の振興についてある程度総合的にまとめるというようなこともメッセージの伝え方としては重要ではないのかという印象を持ちました。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。宮城委員,どうぞ。
【宮城委員】  先ほど上田先生もおっしゃっていたこの会議の位置付け等について,少し私も議論ができたらと思いましたが,今後の議論ということで言えば,確認と御相談ですが,例えばこの構想部会の論点整理の最後の24ページのところの今後の検討課題ということで,特に支援方策の在り方というところが出ていますが,ここは確かにより踏み込んで議論しなければならない点だと思いますが,例えばこういうことをこのワーキンググループでより具体的に議論していくということでよろしかったでしょうかということと,あるいは,もともとのこのワーキンググループの論点整理のところをより深めていくとことが今後の位置付けになってくるのでしょうかというところで少しお聞きしたいと思います。
【鈴木主査】  事務局の方でいかがでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  今の24ページで申しますと,お答えとしては,基本的には,この4番目の基盤的経費等々につきましては将来構想部会の方の位置付けになっておりまして,このワーキンググループでは,諮問事項の(1)と(2)の比較的制度としての詳細な部分について,これまで七つ取り上げていただいたものについて今後更に具体的に詰めていくというのが予定でございます。
【宮城委員】  分かりました。それであれば,私としては,この今回のワーキンググループの論点整理のところで,やはり学位プログラムのことがすごく大事なテーマになっていると思っていますし,とても具体的でよい提案がされていると思っております。ここをもっと深めていけたならとも思っております。さらには,1番の教育課程の改善,指導方法の改善等の学修の質保証のところは,まだ出ている観点が抽象的といいますか,これそのものが改革にそのままつながっていくというよりは,もう一段深めた整理をしないと,その後のアクションにつなげていくには少し距離があるなということを思っておりまして,ここをもう一段深めていくということをこの場で進めていくというのは大事になってくるのかということを思いましたということをお伝えできればと思います。
【鈴木主査】  そのほかいかがでしょうか。では,金子委員,どうぞ。
【金子委員】  このワーキンググループのアジェンダについてはよく書かれていると思いますが,今お話にあったように,教育プログラムが一つの焦点になっているわけですが,こういうふうに考えると,教育プログラムのアイデア自体を,今お話になったように深めていく,深化していくということも重要ですが,制度的な背景についてどの程度の範囲で議論ができるのかということがやはり非常に大きな問題になると思います。それはやはり学校教育法とか設置基準自体に関わる部分ができてくるので,それをどの程度の範囲を対象に含むという議論をするのかということが具体的にはかなり大きな問題になると思います。例えば,教育プログラム制にすると,今までの学部を中心とした教育ガバナンスの設定自体がそのままでは有効ではないので,今,学校教育法が改正されましたから,学部教授会が独占的に教育課程について権限を持っているということはなくなって,意見を言うことになっていますから,では逆に,その大学の中で教育プログラムについて誰がどうやって責任を持つのかということはやはりかなり大きな問題になってくるだろうと思います。それから,御存じのように設置基準も基本的には学部学科を基礎として作られていますから,これについてどのような運用ができるのかということは大きな問題になると思います。
 それから,これに関連して社会人の学修とか,社会との垣根を低くするという趣向のことが述べられていますが,それは重要だと思いますが,中心として書かれているのは,教員の多様化というか,社会人教員に大学に参加してもらう,あるいは教育課程あるいは学部を超えて教員が教育に参加するという意味での柔軟化ですが,それでさっきの大学設置基準の考えをどう考え直すかということと関わって具体的に考えていかなければいけないと思いますが,もう一つ気がついたのは,学生をどうするかということで,学校教育法第105条には履修証明書の学生は学生以外の者を履修証明課程に入れることができると書いてあります。それはかなり固い規定の仕方が既にしてあって,これは大学設置基準の書き方に係っているわけですが,要するに,ほかの国ではフルタイム,パートタイムというふうにして考えているものが,日本の学校教育法の体系は大学生というものをかなり固く入学基準がある者として捉えていて,大学設置基準にも履修証明書の学生については,履修証明書の学生を入れたら何か適当な措置をしなければいけないとか書いてありますが,それは具体的にどういう措置があるかというのは全然書いてないわけです。そういう意味で,社会との垣根を低くするといって柔軟化するためにはかなりいろいろと考えなくてはいけないことがあって,それは今,教員の問題は具体的な職業大学の話があって出てきているので浮かび上がってきていますが,法規上の体系自体について少し考えなければいけないところがかなりあって,これはどの程度のところをその対象にするのかということがやはり考えておかなければいけないことではないかと思います。
 それから,基本的な問題は,大学生の学修を確保することだということが強調されているのは,私は大変重要だと思いますが,ただ,そのときに基本的な問題は何かというと,私はCAP制とかGPAというのは,何か規則で絞るというところは余り実はワークしないのではないかと思って,まあそれはそれでいいですが。重要なのは,やはり教員が学生に時間を掛けるような教育,授業をするということで,それがやはり必ずしもそうなっていない。日本の教員はやはり教育よりもリサーチに非常に重点を置いて考えていますし,それから客観的な条件としてST比が非常に高い。だから実際に個々の授業で一人一人の学生に対して対応する時間がたくさんとれないという問題が日本では非常に大きい。私たちの調査で,学生の学修時間を増やすのに一つの非常に有効なアプローチは,学生にペーパーを書かせて,それに対して,その個々のペーパーに教員がしっかりコメントを付けて返すと。これは私たちの調査だけじゃなくて,いろいろなところでこれは非常に効くということが分かっていますが,それをやるにはやはり具体的な時間が必要なわけです。それに対して教員をどのようにエンカレッジしていくのか,あるいはそれが可能な条件をどのように作っていくのか。あるいは条件等そういったプロセスに関して情報開示を行い,更に大学評価においてそれを非常に重要な視点として取り入れていくのか。それはやはり最終的に非常に私は重要であると。FDがかなり一つの解決策として示されています。FDは重要だと思いますが,FDだけではない,客観的な条件をどう作っていって,どう誘導するのかというところが最終的な問題というか最も基本的な問題なので,そういったことも論点に加えていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。非常に多方面から多様なコメントといいますか,御意見を頂きまして,これは当然今,今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理というのを発表していただいて,これに対するコメントですので,非常に多様な観点から頂きましたが,これをどのように制度・教育改革のワーキンググループとしてこの整理の中に盛り込んでいっていただきたいということは,非常に難しいと思いますが,いずれにせよ,この我々のワーキンググループの意向というものは,親会議の方の将来構想部会の方に取り入れていっていただきたいという非常に強い思いがありますので,これを事務局もお考えいただいて,どのような取り入れ方法があるかということを考えていただきたいと思います。
 はい,お願いいたします。
【義本高等教育局長】  今,金子先生にお話しいただいたこととか,あと宮城先生のお話に関連いたしますが,多分,今後のワーキングで深めていただきたい話として,私どもの問題意識を述べさせていただきますと,もう少しそれを具体的に動かしていくためのルールとかいうことに,制度に落としていかないといけないという課題があると思っておりまして,それが恐らくこの数か月の中での議論をこのワーキングでしていただきたいと思っています。設置基準の在り方の問題,今お話ありましたように学部学科を中心としてプログラムを構成していくことに対して穴を開けていくとなれば,当然設置基準をどう触っていくかという問題も関連いたしますし,教員の在り方とか,それから学生の学びということについても,これは設置基準の問題なのか,解釈をもう少し明確にしていくかという話もありますが,そういうレベルも含めてということがあると思っております。
 それからもう一つは,金子先生の方からGPAとかあるいはナンバリングとかいろいろな形でのそういうあれがあるが,むしろそれをどう全体として回していくのが必要なのか。それは恐らく教員の先生方の授業をどう構成していくのか,あるいは全体としてのカリキュラムをどうマネジメントしていくのかという観点の御議論だと思っております。これは日頃から鈴木主査の方から日本の大学教育の問題点としてあげられています。授業外の学修時間が少ない,それから金子先生の問題にも関連いたしますが,教員の持ちコマ数が多過ぎる。それは裏返せば,恐らくST比の教育条件の問題もあると思いますが,恐らくは全体としてのカリキュラムの開設科目の数とか,あるいはその重複をどういうふうに整理するかという問題ももしかしたら関連するかもしれません。それから,全体としてはカリキュラム改革がなかなか起こってこない。それは多分学部とか学科の壁の問題があると思いますが,そこをどう打ち破っていって,全体として教員自身の意識を改革していく,あるいは全体としての教学マネジメントを回していくにおいての一定のルール作りを考えるとかいう点が恐らく今後設置基準の問題とともに必要ではないかという問題を私どもとしては今事務局の中で議論しておりますので,そういう点も含めて,実装して動かしていって質の改善につなげていくためにはどうしたらいいのかということについての御議論を深めていただければありがたいと思っています。
【鈴木主査】  ありがとうございます。時間的な配分からいたしますと,このあたりでこの議論は一応終わらせていただきたいと思いますが,強いて今このことをというのがございましたらお受けいたしますが,よろしいですか。
 それではありがとうございます。親会議である将来構想部会では,本年5月中の中間報告を目指して議論が進められておりますので,本ワーキンググループにおいても,制度面を中心に引き続き議論を進めてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続いて,情報公開についての議論を行います。さきの論点整理におきましても,大学等における情報公開の具体的な方策について引き続き検討することが必要であるとまとめられているところでございます。つきましては,本日,情報公開に関する取組について,教育研究活動の情報公開やインスティテューショナル・リサーチに関する国内の状況,あるいは海外の情報公開の状況についてまとめたものを資料としてお配りしておりますので,これを踏まえまして,提示されている論点等も踏まえながら情報公開の在り方について御議論をしていただきたいと思います。またあわせて,現在取組が進められている大学ポートレートについて,その現状と課題,また改善に向けた取組について,同様に資料を準備しておりますので,こちらも踏まえて先生方に御議論をいただきたいと思っております。
 それでは,事務局から資料2-1と資料2-2について続けて御説明をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  大学改革推進室長の平野でございます。資料2-1に基づきまして,5分間程度ですが,御説明をさせていただきます。
 1ページ目が,本日は学修成果の可視化の議論をこれまでしていただきまして,学修成果の可視化に関する情報の公開についてはこれまでもワーキングで御議論いただいているわけですが,それとも密接に関わりますが,いわゆる学修成果の可視化とは少し離れた部分の情報公開を含めて本日は対象にしています。1ぽつの(1)の部分は,これは以前から学修成果の可視化でも御説明をしている経緯と現状の御説明ということになってございます。書かれているとおりの,今,学校教育法施行規則第172条の2にもとづいて公表がされているという現状でございます。
 1ページめくっていただきまして,2ページ目でございます。学修成果の可視化の際にも,IR(インスティテューショナル・リサーチ)については非常に重要であるという御指摘を複数の委員から頂いたところでございます。IRにつきましては,定義といたしましては,ここに大学分科会のものを入れてありますが,教育研究また財務に関してデータを収集・分析して,大学の意思決定を支援するための調査研究ということでございますが,今現状で,2ページの下にございますが,IRを専門で担当する部署を設けている大学は,これは平成23年に比べると非常に増えてきていますが,現状3割でございます。また,IR部局における担当業務ということで,右側の3ページの方に載っていますが,主にいわゆる自己点検評価や認証評価に関係するデータをそろえる,分析するといったことが中心に行われているわけでありますが,その率もまだ2割に届かないわけでありまして,また,学生の学修成果の評価のためのデータ収集・評価という部分につきましても,まだ18%にとどまっている現状がございます。2ページの方は,大学として専門の部署を設けているかということですので,法人として設けているケースも場合によっては少しあるかもしれませんが,大きな傾向としてはこういうことになっているわけでございます。
 3ページ目の下の方,海外の情報公開の状況でございます。この後,堀野の方からポートレートの話もございますが,外国も情報公開ということで共通のプラットフォームを用意した上で,分かりやすく示すということには注力をされている状況でございます。米国につきましては,中等後教育総合データシステムというものが全米の教育統計局という政府の機関によって管理・運用されてございます。このデータは,連邦政府の奨学金プログラムに申請する大学はこれを出さなければいけないという条件になっておりますので,データを出さないと連邦奨学金プログラムに申請ができないという形で,この奨学金の代価という形でこういったシステムが構築されているということでございます。
 4ページの方へわたりまして,カレッジ・ナビゲーターというものがございまして,下の上の方に載ってございますが,学費・生活費,中退・卒業率,分野別の学位取得状況,部活動から第三者評価の結果,キャンパスの安全といったような,なかなか日本では見掛けないデータもございますが,こういったものを確認することができますし,また,カレッジ・スコアカードというものがありまして,下の方になりますが,学費や経済支援,学資ローンの負債額,卒業後の平均給与といったような経済的な面のデータというのも,各大学を比較しながら確認をすることができるということになってございます。この卒業後の平均給与といったものにつきましては,これは大学ごとに調べるというのもなかなか難しいデータということもあるのかもしれませんが,米国の内国歳入庁が有する連邦貸与奨学金利用者の収入に関する情報の方から引き抜いて算出していると聞いているところでございます。
 次,5ページの英国でございます。英国の方では,イングランド高等教育財政カウンシルと,大学入試の手続を担う大学・カレッジ入学サービス機構というものが,大学が提供する教育コースごとの情報を一元的に提供するUnistatsというものを構築しているところでございます。このデータに関しましては,全国学生調査や英国高等教育統計機構が行う就職状況調査といったような国が行う調査からデータを引き抜いているというもののようでございます。教育コースごとに学生満足度や就職や認証評価の状況,学業継続状況や学位の取得状況,入学条件等の確認,また比較可能なものとなっているということでございます。
 本日残りの資料は論点ですが,今,各大学によって公開する情報の内容や質,示し方には差がございます。1ページの方にあるように,こういったことについて公表してくださいということについては,大学設置基準上決まっていますが,その中身をどう示すのかというのは大学ごとにやり方には差がある状況でございます。平成23年度に文部科学省に設けられました調査研究協力者会議の中間まとめというところで,大学における教育情報の活用・公表に関しては,留意点というのを示していただいています。この内容というのは,現状においても通用すべき内容が含まれているものと考えておりまして,こういったことも含めて情報公開のいわゆる各大学の留意点というのをしっかり示していく必要があるのではないかということでございます。
 二つ目の丸は,学修成果の可視化に関してこのような情報をしっかり公表していくべきではないかという議論は一定いただいていますが,またそれと併せて新たに法令で情報公開を義務付けるような項目があるかどうかということについてでございます。例えば入学者選抜の状況や,修業年限期間に卒業する学生の割合,留年率,中途退学率,いわゆるST比(教員1人当たりの学生数),卒業後の進路状況。卒業後の進路状況というのも現状の省令の中でも,卒業者の数とか,就職者数とか,状況に関することということで書いてはいるわけですが,更に具体的にする部分があるのではないか。また,資格取得の状況等が考えられるのではないかということでございます。例えば卒業率という部分も外国では留学ということも考慮しなければいけないので,そういったことも併せて判断ができるようにと,例えば5年間での卒業率も一緒に示す必要があるのではないかとか,こういったような現状があるようですので,こういった情報の公開についてどう法令上考えていくかということでございます。
 6ページ目の下の部分でございます。海外の先進的な事例というものも考慮する必要がありますし,また海外の大学というものが,例えば先ほどの連邦奨学金の対価としてこういうものを出すといったような形で一定義務のような形になっているといったようなことも含めて,大学にどこまで一般則としてこれを義務付けていって,また,ある何かとのバーターとしてこういうものを義務付けていく,そういったような背景というものも十分考慮する必要があるのではないかということでございます。
 最後のページでございます。IRにつきましては,これは各大学で取組を進めていただいているわけでありますが,この在り方という部分についてはかなり各大学の方で独自に今お考えになって進めていただいている中でありますので,これを更に広げていく観点から,目的や役割の明確化,組織的な位置付け,人材の育成方法等についても在り方を示していく必要があるのではないかということでございます。特にIR部門を支える人材を育成するという観点については,これは各大学が人を集めてやっているわけでありますが,今,文部科学省で行っている一つの取組であります教育関係共同利用拠点といった枠組みを通じて,例えばIR人材の育成という観点でのFD,SDといったものもしっかり位置付けていって取組を促進していくことが必要なのではないかということでございます。
 最後,こうした環境が整って,各大学におけるIR体制の整備が可能になる段階に進んだ暁には,IR体制の整備についても法令上位置付けるということが考えられるのではないかということでございます。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【堀野高等教育政策室長】  それでは続きまして,資料2-2に基づきまして,大学ポートレートについて御説明いたします。説明は私から行いますが,本日は大学改革支援・学位授与機構の武市大学ポートレートセンター長にも同席を頂いております。
 それでは資料2-2でございますが,大学ポートレートの概要ということで,大きく3点,関係者に分かりやすく大学の教育活動を発信する,大学の活動状況把握・分析のための教育情報活用,共通的な情報の公表を通じた大学による各種調査への対応の負担軽減ということで進められてきております。下の枠囲みにありますとおり,大学ポートレートで発信している大学情報,このアンダーラインが引いてあるところは,先ほどの学校教育法施行規則で公表が義務付けられている項目。それにプラスアルファの情報が提供されているところでございます。
 そして,沿革として3ページ目ですが,平成23年の協力者会議,それから平成24年~26年の準備委員会を経て,26年7月に大学ポートレート運営会議,大学ポートレートセンターを設置して,27年3月から情報提供が始まっているところでございます。
 次のページですが,日本の1,000以上の大学・短期大学が参加をして情報提供している。そして,特に大学団体,認証評価機関等による自主・自律的な取組として実施をしていると。特に国公立大学については大学改革支援・学位授与機構,私立大学の情報については日本私立学校振興・共済事業団が担当しております。学部等ごとに,学べること,進路,学費等の情報を掲載して,さらに,個々の大学ならではの大学の個性,魅力が分かる情報を掲載ということでございます。
 5ページからウエブサイトの,最初は検索画面がありまして,次のページに国公立の,例えば北海道大学の場合の基本情報ですとか,右の枠は学生支援の情報,次の7ページで三つのポリシーあるいは進路の状況といったものの例を出しております。
 更にめくっていただきまして8ページ,私立大学,金沢工業大学の例ですが,建学の精神から始まりまして,課外活動の状況ですとか,9ページ目にも進路の状況といった形で公表がなされております。
 そして10ページですが,この大学ポートレートを実施してきて課題ということですが,公表画面のアクセス数が多くないということで,次のページに数字がありますが,そういう一つの課題。そして情報の内容が難しく,受験生や保護者に分かりやすい情報になっていない。それから画一的なランキングにならないようにペーパービュー形式としているため,一覧性に乏しく,大学間や経年の比較・検討が行いづらい。また,取得可能な資格で検索できるなどの検索機能の充実が必要である,こういった課題があるところでございます。
 次のページをめくっていただきますと,改善に向けた取組といたしまして,29年3月に受験生や保護者の利用が多いモバイル端末に対応したウエブサイト,もともとはパソコン用の仕様になっていたので,スマホで見ると小さいとかいろいろありましたが,その辺りに対応しました。次に,入試、費用及び経済支援,キャンパス関係の項目については,幾つかの大学を選んで一覧に並べて閲覧できる機能というのを追加いたしまして,国公立については平成29年11月から運用開始,私立は平成30年度から運用開始予定ということになっております。下の13ページに一覧機能の例があって,国立なので並べても余り差が出ないですが,こういう機能ができてきていると。そして12ページの三つ目に,日本の大学に留学を希望する外国人留学生に対して,各大学の教育に関する基本的な情報を英語で共通に提供する国際発信版を運用開始予定ということで,国公立については平成30年8月から運用開始を予定しております。
 めくっていただいて最後の14ページが大学ポートレートの国際発信のイメージであります。
 以上,大学ポートレートの課題と取組,改善事例でございます。説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,ただいまの事務局の説明や資料を踏まえまして,御意見を頂き,御質問をお願いいたします。美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  すみません,質問1点です。今御紹介いただいた海外の方のカレッジ・ナビゲーター,カレッジ・スコアというのは,これは組織がいろいろな大学をまとめて整理したものだと思います。で,今一方で大学ポートレートの方で御紹介いただいたのは,一つの大学がどのように出しているかということで,これは例えば日本の場合は見にくいとかアクセスが多くないという場合に,こちらのいわゆる進んでいるというアメリカの方での一つの大学でのもっと見やすいとかアクセスが多いものがどういうものがあるかというのは何か例がありますか。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。武市さん,お願いします。
【武市大学改革支援・学位授与機構大学ポートレートセンター長】  大学ポートレートセンター長の武市でございます。
 先ほど御紹介いただきましたように,平成26年7月に,今の組織名で申しますと大学改革支援・学位授与機構の中にセンターを設置いたしまして,運営を進めているところでございます。今,美馬委員からの御質問に対してお答えいたしますと,少なくともカレッジ・スコアカードのようなことは,恐らく大学ポートレートで求められているのかどうか,これは運営会議の基で方針が決定されるという形で進めておりますので,一機構である運営組織としての私どもの判断だけでは進められないという事情がございます。その一つには,情報の収集に係る部分で,国公立大学と私立大学とが別個に行われている,しかもそれがそれぞれ義務化されていないで任意であるというところにございます。したがって,今御指摘いただいたのはそのことだけではないと思いますが,カレッジ・ナビゲーターあるいはUnistats等々につきましては,今のポートレートの検討を行っていただきました準備委員会,これは先ほどの報告にございましたが,まとめをいただいております資料2-1の6ページにありました中間のまとめ,これがポートレートの具体的な検討に至った画面でございますが,そこでも十分に検討した上で,我が国で公開・公表できるものはどうであるかというのが準備委員会で議論されたところでございます。本日の委員の方々にはこれにも御参画いただきましたし,また,運営会議の方でお世話になっている方々もいらっしゃいますので,何かありましたらそちらからも御回答を頂ければと思います。
 以上です。
【堀野高等教育政策室長】  よろしいですか。この日本の大学ポートレートとカレッジ・スコアカードが基本的に違うのが,大学ポートレートというのは自主的に各大学が集まって情報提供窓口を作って提供しましょうという仕組みです。このカレッジ・ナビゲーターというのは,もともと連邦教育省の統計センター(NCS)の方で出しているものであって,カレッジ・スコアカードというのは,オバマ政権になってから連邦教育省ホームページに教育省直轄のページにありますが,やはり社会の方から大学教育の質とか成果を分かりやすく見える化するという形で行われていると思いますが,いずれにしても,これは政府が情報を集めて,しかもペル・グラントを出すのなら受けるところはしっかり情報公開しなくてはいけないというもので,政府直轄で情報を集めて公開をしているという意味では,日本でやっている大学ポートレートの大学の自主的な情報公開とは基本的な仕組みが違うということかと思います。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。
【美馬委員】  何か質問の仕方がまずかったようで,今回の組織として誰が出すのか,何のために出すのか,そしてその見せ方はということです。つまり大学を幾つもまとめて見せるというのは,行政がやるべきものなのか,何か民間とか企業とかが多分こういうことというのはどんどん進めていくので,あえて行政的なものがやることの意味というのがあると思います。だから,何のためにこれをやるのかということ。
 それからもう一つは,見せ方の問題だと思いますが,やはり日本のものはアクセスが多くないというのは,見せたい人に見てもらえていない,それからそれがインフォメーションデザインとしてきちんとそのあたりができていないということもあると思ったので,アメリカでこういういい見せ方のものがあれば知りたいというのが一つです。
 それから,それは透明性という問題では,情報公開というのが,もっと例えば文部科学省とか日本政府全体の問題であって,例えば未来政府という本でしたっけ,サンフランシスコのいろいろな行政の情報が出ているというような,そういう方向に,そういう大きな流れの中で今回のこともあるのかどうか,そういうものを文部科学省としても御検討しているのかどうかというのもお聞きしたいと思います。
【鈴木主査】  どうぞ。
【堀野高等教育政策室長】  どういう在り方がいいかというのは今後の検討なわけですが,何のために情報を集めるか,あるいはその情報を集めることと見せ方というお話で言えば,見せ方でいうと,政府機関がやるよりも民間の方が圧倒的にうまいということは容易に想定をされますので,その場合に,では情報を集めるのは誰がよいのか,今のような大学の自主的な集まりで自主的に持ち寄るのがいいのか,あるいは政府として一定の情報を集めて,それを誰が編集して見せるかは,見せる目的を持った方々がそれぞれ上手に使っていただけばよいのかとか,そういった情報の集め方と使われ方も含めて今回あるべき,どう変えていったらいいかということを御議論いただければと思っております。
【美馬委員】 最後にもう一つ,それは例えばそういうデータを集めてRESASの中に載せるというのはないのですか。
【堀野高等教育政策室長】  RESASに入れるのがいいかどうかというのはまた少し考えないと分からないですが。
【美馬委員】  でも,あれはかなり大きなもので,省庁を超えてデータを集めて,いろいろなところに使えるようなデータを基に政策を立案できるような形での,地方などにも,そういうものに載せて,そうすると,いろいろ本日ここで出てきた人口予測も含めて,それから地域の産業とか,病院の数とかいろいろなものが入っているので,そういう中に入れていただけるとまたそういうものに使っていけるのではないかかと個人的に思います。
【義本高等教育局長】  それはやはり,先生がおっしゃった何のためにそのシステム自身を使うのかということでありますので,同じデータでも使う目的によっても違うでしょうし,RESASはどっちかというと地域地域での産業の在り方ですとか政策を立案するための道具としてということでありますので,そういう情報も多分あるかもしれませんし,先ほどのアメリカとかイギリスでやっているようなのは,やはり学生とかあるいは保護者とかいわゆる幅広くステークホルダーにのってみて大学の実情を分かってもらうためのデータという形での恐らく提供ですので,それを誰に提供するか,あるいは単一のところで提供するだけではなくて,複数で利用することがあると思いますが,その辺を含めて整理をいただければありがたいと思います。
【美馬委員】  文部科学省のRESASへのデータの提供というのはとても後れていると一方で聞きましたが,そんなことはないですか。何か余りにそういうのを出していくと,教育の格差とかが明らかになってしまうとか,何かそういう話を聞きました。
【義本高等教育局長】  それは誤解だと思います。内閣府に対しては誠実に対応していますし,学校基本調査も含めてですが,ただ,集めているデータ自身が結局ここにあるものもないものもございますので,今後それをどうするかという問題が出てくるかと思いますので,それができれば恐らく連携が出てきて,もう少し幅広いデータを持っていくことになると思いますが,決して意図的にそういうことにしているということはございませんので,誤解のないように。
【美馬委員】  そうですか,分かりました。
【鈴木主査】  そのほかいかがでしょうか。上田委員,どうぞ。
【上田委員】  どうもありがとうございます。果たして単一のページで全部やれるのかというのは非常に疑問があるところで,例えばやはり我々大学関係者としては,どの大学においても自分たちの大学が非常に魅力的なものであるということを示したいし,あと,大学全体としても,大学に行くということはこれだけ魅力的なキャリアも開いていくし,あと,自分自身が変わっていって活気ある人間になっていけるというのは示したいところです。ただ,大学のパンフレットを見ていますと,もちろん作り方がうまいので,目の輝いている,特にかわいい女の子が写真に出ていて,私はこんな企業に就職して,あれがよかった,あるいはある先生のゼミで大変見開かれたというのですが,普通の人からすると,でも何%の人が見開かれたのだろうとか,何%の人が世間に行って成功しているのだろうというのは同時に知りたいところで,その二つのデータを一緒に入れるということはなかなかできないのではないか。つまり,ある種のIRに基づくようなデータベースとしての物すごく冷徹なというか,そういうところが誰でも見られるようにしておくということは非常に必要で,ただ一方で,それだけが大学の価値ではないので,やはり目指しているものとか,活躍できるキャリアとかそうしたものを自由自在に置いておけるようなサイトというのを何かダブルでやっていくことというのはできないのか。もしその後者の方を民間だけに任せるということになれば,財務力のある大学だけが物すごい巨大な広告を打っていけるということになってしまいますので,そういうところもしっかりやっていきたいというところで,例えば今の枠組みの中でそうした両面を切り分けるというようなことはできるのかできないのか,まあそういうのが検討課題になると思いますが,どちらも両方徹底的にやるという方向性なのではないかかと思っております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。どうぞ。
【義本高等教育局長】  事務局から何度も恐縮です。
 上田先生の発言に関連すれば,恐らく提供する側の都合のいい情報だけではなくて,リアルなところの情報はどうなのかというところの話もあると思っています。アメリカにおいては学生調査もしておりますので,学生の満足度とか,学生そのものに聞いて,恐らく提供側と違うようなものがあったりしますので,そういうことも含めた形での通常見える形でどう設計するかということについても恐らく御議論があると思っています。ですから,恐らく今後の議論としましては,提供する大学に対してどういうふうに求めていくかだけでなくて,例えばそれとは別に学生の調査をイギリスでしたら国が定期的にやっていますが,そういうことも含めてどう考えるかということについても恐らく今後の議論をいただければ,先ほど金子先生の方から学生調査について,これは東大が恐らく研究者レベルでやっておられますが,それをもう少し公的にやっていくかという議論もあろうかと思っております。
【鈴木主査】  よろしいですか。続きまして安部委員,それから前田委員,それから小林委員という順番でお願いします。
【安部委員】  IRのことについて申し上げたいのですが,IRを専門で担当する部署の設置状況に関して,私立大学等は350ぐらい,専門のところは176,そして専門ではないがあるというところは166ということですが,IRの専門従事者が担当するIRを作るということは,小規模の大学ではとても難しいものがあると思います。だけれども,特に地方の小規模の大学,短期大学も含めてですが,教学部門に関するIRについては共同で行うような仕組みをプラットフォーム事業等の中で推進していくということが必要ではないかと思います。今,改革が必要なのは,本当に地方の小さな大学です。これらがどのように個性を出していくか,地方のニーズを共同で拾っていくか,学生に対してどのような教育を行っていくかということが,大きな課題になりますが,一つの学校のみでは物すごく負担が大きい。それを共同でやる仕組みができれば,結果的には情報発信もできるのではないかという気がします。特に教学部門の大学間共同IRということの推進を考えていただけばと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。続きまして前田委員,どうぞ。
【前田委員】  やはり認証評価などをやっていますと,大学ポートレートの方に書かれている情報では不足で,2-1の6ページの論点のところにあるアンダーラインにあるような情報というのはどうしても必要になってきて,学生の動きが見えないのでこういうのは重要だと思っています。ただ,就職率ですが,就職希望者に対して就職した人の率というのを文部科学省は求めているということで,多くの大学が90%ぐらいになっていますが,そこの部分に関してはポートレートの方が実数を求めているので,差で分かります。例えばポートレートでは,100人いて20人就職して,進学は余りしてなさそうな大学は,後の人はどうしたのだろうと思いますが,希望している人で割る方法では,よく見ないと,非常によく就職していますということになってしまうことがあるので,進路状況に関しては丁寧に見ないといけないかという気がしています。
【鈴木主査】  ありがとうございます。では小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  まず,大学の情報公開を推進すべきということは言うまでもないことですが,そのことをまず前提にした上で,少し私の考え方を述べたいのですが,国とか政府がやることと,それから各大学が行うことというのはやはり峻別(しゅんべつ)しなければいけないと考えていまして,国とか政府というのは,やはり先ほど美馬委員の方からも質問ありましたが,何のためにやっているかというと,それは非常に信頼性のある情報を提供するということが一番の目的なわけでありまして,そうしますと,ある程度共通のフォーマットで画一的なものにならざるを得ないという性格を持っているわけです。例えば韓国ですと,虚偽記載に対して罰則まで設けているというようなことをやっていまして,非常に信頼性を高める工夫をしています。それに対して,アメリカの場合でいいますと,NCS,統計センターですが,そこがやっているアイペーズという,先ほど説明ありましたが,日本でいうと学校基本調査に当たるものがあって,それを公開しているという性格を持っているわけですから,これは非常に信頼性が高い情報を提供しているということに一番の意味があるわけでして,そこのところはイギリスでもヒーサが同じようなことをやっていますし,オーストラリア,各国今そういうことでやっているわけでありますから,そういう信頼できるデータがあって,それを公表しているというのが国の役割だと考えております。
 それに対しまして,各大学の方は,やはりこれは自分たちで自由で裁量に基づいてやっているわけですから,ある意味創意工夫を出せるわけです。そういう観点で情報公開を推進していくべきだろうというのが基本的な考え方だと思いますが,ただ,そのようにしますと,当然問題に出てくるのは,共通のフォーマットがなくて,ばらばらの定義のものが出てきてしまうという問題はあるわけですから,そこのところはある程度共通のフォーマットを作るというのは必要かもしれません。ただ,現在の国の施策としてやっていることを見ますと,余りにも外形的で画一的なものが多くて,実質的に創意工夫ということが非常にやりにくいようなものになっているのではないかと思います。そういう意味で副作用の方が大きいと思います。
 先ほどのまとめにありましたシラバスについても,国が何かシラバスの在り方まで決めるというようなことは余りにもやり過ぎだと思っております。ただ,片方で,繰り返し強調しますが,ある程度共通のものがなければいけないということはそのとおりだと思いますので,例えば論点として多様性ということが本日盛んに前半で出てきましたが,学生も多様化しているし教員も多様化しています。ですから,ST比といったっていろいろな定義の取り方で変わってきてしまいますから,そういうことをどのように考えるかというようなことは国の在り方として一つの指針を出すということはあり得ると思いますが,あくまでその範囲で考えるべきことであって,大学に対して外形的なものを示すということがいいかどうかということは少し考えていただきたい。これは今までのいろいろな中央教育審議会の政策というのは大体そのようにしてできていると思いますが,必ずしも強制ではない,モデルを示すだけだという形でやっておりますが,各大学は今それに対してほとんど強制的に従わざるを得ないというような考え方でやっていて,これは大学側にも責任があると思いますが,そういうことでやっていますので,もう少し国のやることと大学に任せることをきちんと分けた議論が必要ではないかというのが1点目です。
 それからIRについても全く同じことが言えまして,私もIRは推進しなければいけないということでずっとやってきましたが,例えば学長の下に各学部と部門ごとに配置するか等の在り方を検討するとありますが,これは各大学がやるべきことであって,これをどちらがいいかなどということはアメリカでもそんなことはやっていないで,それこそ非常に多様性を持ってやっているわけでありますから,一つのモデルを示すとかそういうことはあり得ると思いますが,これも繰り返しになりますが,そのようにやりますと,今の大学はそれをやらなければいけないととりますので,その辺りは少し考えていただきたいと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。はい,どうぞ,川嶋委員。
【川嶋委員】  今までの委員の御意見の繰り返しになるかもしれませんが,安部委員からもお話がありましたように,やはり大学によってはリソースがないというところは,重要性は認識していても,それに割くだけのリソースはないというのが現実で,今週の月曜日に内部質保証のワークショップをやりましたが,そのとき同じテーブルが地方の国立大学の単科大学の評価担当の理事の方々でしたが,基本的に重要性は分かるがそれに充てるポストがないというお話でした。今の小林委員のところの箇所も,最後に,法令上位置付けることも考えられるのではないかということは,やはりまだ現実的にはかなり遠いというか,認証評価とかでは組織があるのではなくてIRの機能があればいいというところにまだとどめている段階で,そういう点では少し現実を見た上での提言をしていくということが必要だろうと思います。
 このリソースがないということに関しては,前半の議論で局長がおっしゃったことに関連するのですが,やはり日本の高等教育は学生がたくさん単位をとり過ぎ,科目をとり過ぎ,それから先生もたくさんの講義を担当している。ですから,そういう中でカリキュラムのリストラをしていく中で人的リソースも浮くのかもしれませんので,大学全体の教育的なリソースの配分を考え直す中で,必要なところはIRに人を割いていくというようなことも可能ではないかという,そういうくらいの方向で考えていく必要があると思います。
 それから,情報の項目で,先ほど前田委員からもあった就職率というか,6ページの最後の二つ目の白丸の下線部が書いてある情報は,実は認証評価で出してもらっている情報が多いです。ですから,データとしては認証評価でも把握していて,それをどういう形で公開あるいはポートレートに結び付けていくかということの工夫をしていく必要があるということと,最後に情報公開については,小林委員からもお話ありましたし,平野室長からもいろいろ御説明があって,全く国によって状況が違うと。イギリスですと,要するにユーキャスというところを通じて全ての大学が出願するという仕組みになっています。ですから,どうしても出願に際して進路選択に必要な情報を提供せざるを得ないというところがありますが,日本の場合は各大学が出願を受け付けているので,画一的あるいは統一的に情報を収集したり提供したりという状況にはないです。ですから,これも説明どおりですが,日本という状況,現実を見極めた上でどうしていくのがよろしいのかという現実を見た上での議論にしていかないと,なかなかまとまらないのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。金子委員,それから前野委員ということで,それでおしまいにさせていただきたいと思います。どうぞ。
【金子委員】  最初に,大学ポートレートについてアクセス数が低いのは,やはり必要な情報を与えていないからだと思います。基本的には私は,大学間の比較がある程度できるということは非常に重要で,大学情報が社会全体に一般に情報を公開するということもありますが,高校生が実際に大学を選択するときにいかに参考になることができるのか,そういう意味で使いやすいということが非常に重要なわけだと思いますが,今のところ,一覧表というか大学間の比較ができるような体制になっていないということが一番今のところ限界があるのではないかと思います。
 ただ,この点で考えると,今お話があったように,諸外国と日本は違うと言えば違いますが,しかし逆に言えば,日本はむしろ諸外国の中で全く例外的に情報提供が後れているという事実は見なければいけないと思います。特に先進国の間ではかなりアグレッシブに情報提供をしているわけで,ある意味では私は,今までそういう大学の自主性は大切だというような議論から,その議論の結果として何も出さないというところに出たのが,私はむしろ情報をきちんと確保して,特に正確性だけではなくて悉皆(しっかい)性が非常に重要だと思います。出しているところと出していないところがあるという状況の中だと非常に偏りますし,典型的に今落ちているのは,東洋経済とかプレジデントとかがとれるところだけとってきて,そうすると必然的に起こることは,大きな大学で有名な大学が有利になります。これは要するに基本的に偏差値体制を強化しているだけです。多様性を育てるといいつつ多様性はむしろ犠牲にされてしまって,小大学はむしろ振り向かれない,情報が提供されないという状況が生じているわけで,私は基本的には情報はかなり大きな幅のものを政府が公開する段階に来ていて,それをどう消化するかは,先ほど来お話にあるように,いろいろな主体が取捨選択して示すということが必要になっているのではないかと思います。私はここの部分は,ある意味では日本の大学の体制が一番後れている元凶だと思いますが,大学は自分たちの自主性がある,それから大学の先生は自分たちの教育に自主性がある,よそから介入を許さない,情報も出さない,それが何となく今まで通ってきたわけですが,私は各国の状況を見ていると,それがもう通らなくなったというのが1990年代以降の今大きな趨勢(すうせい)で,それには特質があるとは思いますし,慎重であるべきところもあると思いますが,そういう大学の自主性とか教員の自主性だけを金科玉条として進んでいるのでは,現代に必要なイノベーションは起きない,そこはある意味では非常に大きな選択がここに懸かっていると思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。前野委員,どうぞ。
【前野委員】  先ほどのリソースに関連した件で,私も資料1と関連して申し上げようかと思って悩んでいたのですが,このリソースに関しては,本来はできるだけ可能な限り公開すべきと思いますが,やはり多分都合の悪いこともあるというのは当然認識しております。例えば,資金的なバジェット・リソース,それから設備のリソース,ソフト上のリソース,それからヒューマン・リソースとおっしゃいましたが,ヒューマン・タイムリソースのようなものが必要なのではないかと。つまり,常勤の数,非常勤の数,それに加えてエフォートという考え方がありますが,今,エフォートが非常に曖昧に使われていて,かなり都合のいいようにエフォートを使い分けています。それから本来は,1の論点整理でありました,例えば多様性に対応するエフォートは各大学あるいは各教員がどのぐらいやるのかというのを集積すれば,トータルの多様性の項目に対応できるトータルのヒューマン・タイムリソースが分かると。ただ,それは当然テンポラリーに変わりますので,例えば今現在ではこういう面でヒューマン・タイムリソースが足りないが,例えばそれぞれの機関が考えている三つのポリシーに比べて近未来的にはこういう方針でやりたい,あるいは他の機関と連携でやりたい,こういうような指針を示していくことはとても重要ではないかと思います。
 私,最近というかここ数年とてもいいと思ったのは,これは非常に冷徹ですが,科研費の全国ランクが文部科学省から示されておりまして,1位の東大から1件だけの採択まで全部ランキングになっています。以前は幾つかに分かれておりましたので全体像が見えませんでしたが,我が国の教育研究機関がどのくらいの,これは科研費だけに限ったことですが,科研費の取得状態にあるかが一目瞭然になったと。これは非常に厳しいことですが,私どもは当然,例えば高等専門学校ですと小さな機関ですので,数は少ないですが,目標のようなものを定められる。このくらいを狙おうということが非常によく分かるようになったので,教員も動きやすくなっているということがございます。それに近い,そういうような出せる範囲でヒューマン・タイムリソースのようなものもできるだけIRで出していくのは,それぞれの機関にとってはいいことなのではないかと思います。ただ,作業が大変なので,これがうまくいくかどうかは分からないですが,そういう考え方もあり得るのではないかと思いました。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは時間も迫っておりますので,最後に,人生100年時代構想会議における中間報告について御報告いただきます。前回の本ワーキンググループでも,第3回人生100年時代構想会議について事務局から御報告いただいたところですが,その後,人生100年時代構想会議で中間報告がまとめられたとのことでございますので,その内容について事務局から御報告をお願いします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,簡潔に御説明をさせていただきます。資料3,1ページめくっていただきますと目次がございますが,高等教育に関連のある部分は第4章と第9章でございます。
 まず第4章は,6ページを御覧いただきたいと思いますが,6ページから高等教育の無償化ということで,左の6ページはこれまでやってきた給付型の奨学金の創設等々について書かれておりまして,7ページの上から5,6行目あたりですが,貧困の連鎖を断ち切り,格差の固定化を防ぐため,どんな貧しい家庭に育っても,意欲さえあれば専修学校,大学,もちろん短期大学も含めての大学に進学できる社会へと改革することが急務である。そしてこの段落の最後ですが,授業料の減免措置の拡充と,給付型奨学金の支給額を大幅に増やす。その後,具体的な内容ということで,支援措置の対象は,低所得者世帯に限定する。第1にということで,授業料減免措置につきましては,3行下ですが,住民税非課税世帯の子供については,国立大学の場合はその授業料を免除する。私立大学の場合は,それに加えて私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応を図る。1年生は入学員も免除する。第2に,給付型奨学金については,学業に専念できるよう必要な生活費を賄えるような措置を講じる。次のページに支援対象者の要件ということで,学業がきちんとしていない場合には打ち切るということでございます。そして8ページに支援措置の対象となる大学の要件ということで,大学支援措置の目的は,大学等での勉強が就職や起業等の職業に結び付くことにより格差の固定化を防ぎ,社会で自立,活躍できるようにするということで,支援措置の対象となる大学ということで,丸1として実務経験のある教員による科目の配置,丸2,外部人材の理事の任命が一定割合を超えていること,丸3成績評価基準を定めるなど厳格な成績管理を実施していること。丸4法令にのっとり財務情報,経営情報を開示していること。こういったことについて検討の場を設けてガイドラインを策定する。文部科学省の中に昨日有識者会議がスタートしたところでございます。
 9ページ,実施時期については2020年4月から,詳細については来年夏までに一定の結論を得るということでございます。
 次に12ページでございますが,来年夏,今年の夏ですが,に向けての検討ということで,リカレント教育というのが第一に出ておりまして,今後の人生100年時代においてリカレント教育が新たな教育と社会の循環システムの中心となる。そして次の段落でも,誰にとってもいつでも学び直し,やり直しができる社会を作る。そしてこのためにリカレント教育を抜本的に拡充。それから現役世代のキャリアアップ,再就職支援,様々な学校データ単位を積み上げて卒業資格として認める仕組みの活用,雇用保険制度等の活用も含めて来年夏に向けて検討とされております。その下に,また具体的なことが書いてございます。
 13ページに,(2)ですが,オーストラリアのHES(後払い制度)の事例も参考としながら,中間所得層へのアクセス機会についても検討を継続する。
 そして(3)として,大学改革や大学教育の質の向上ということで,大学の外部の人材がカリキュラム編成に関わる方策ですとか,社会の最前線で実務に当たる人材の教員としての登用。あるいは少子化で4割の私立大学が定員を満たすことがない状況の中での大学連携・統合を可能とする枠組み。それから,学修時間が少ないという話がありまして,学修成果を可視化するための客観的な指標を作ることが求められる。最後のところに,これらの課題については他の検討の場でも議論が行われており,本構想会議での議論と並行して検討を進めることを求める。この中に中央教育審議会のこの会議も含まれていると考えております。
 説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。本件は,時間の関係もございますので,報告のみとさせていただきます。
 本日の議題は以上となります。いろいろな御意見を頂戴いたしましてありがとうございました。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  次回につきましては,資料4のとおり,2月13日10時から12時,場所は本日と同じこの部屋でございます。議題につきましては,済みません,いつも我々も準備状況との兼ね合いで早めにお知らせすることがなかなかできていなかったところですが,次回につきましては,リカレント教育,いわゆるその中でのEラーニングの活用も含まれたリカレント教育について議題としたいと考えております。
 以上でございます。
 本日の資料について郵送を希望される先生におきましては,附箋にその旨残していただくようお願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  それでは,本日の議事は終了いたします。どうもありがとうございました。


――了――

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