制度・教育改革ワーキンググループ(第7回) 議事録

1.日時

平成29年11月17日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学修の質の向上について
  2. 制度・教育改革ワーキンググループ論点整理(案)について

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,濱名篤,本郷真紹,前野一夫,前田早苗,美馬のゆりの各委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,村田私学部長,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),松尾大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,松永専門教育課長,小山国立大学法人支援課長,堀野高等教育政策室長 他

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第7回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は,大きく二つの議題について,議論いたします。まず,学修の質の向上についてです。前期中央教育審議会の大学分科会において取りまとめられている今後の各高等教育機関の役割・機能の強化に関する論点整理や,今般の諮問の中で教育課程・教育方法の改善や指導方法の改善,また学修に関する評価の厳格化等について検討することが求められております。
 そこで,本日はこれらの事項について資料をまとめておりますので,事務局からの資料説明の後に意見交換を行っていただきます。後半では,本年7月に行われました本ワーキンググループの第1回開催以降,諮問事項の内,制度面を中心に議論してまいりましたが,計6回の議論の中で取り上げてきた議論に関しまして,テーマごとに制度・教育改革ワーキンググループ論点整理(案)として,現行制度の課題や今後の検討の方向性を示しております。この論点整理については,今後親会議であります将来構想部会へ報告することとなりますので,今回先生方には闊達(かったつ)な御意見・御議論をよろしくお願いいたします。
 それでは,まず事務局から配付資料を確認してください。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第にありますとおり,資料1から資料2-2となっております。不足の資料等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】  よろしいでしょうか。
 それでは議事を進めます。一つ目の議題は,学修の質の向上についてであります。
 冒頭申し上げましたとおり,前期中央教育審議会の大学分科会において取りまとめられている今後の各高等教育機関の役割・機能の強化に関する論点整理や,今般の諮問の中で教育課程・教育方法の改善や指導方法の改善,また学修に関する評価の厳格化等について,各高等教育機関の今後の機能強化の方向性とその実現のために検討すべき事項として示されるとともに,検討を求められております。
 そこで,これらについて,特に四つの論点について資料を準備しておりますので,事務局より資料1について御説明を頂いて,その後,意見交換を行いたいと思います。
 それでは,説明をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。大学改革推進室長,平野でございます。
 資料1で御説明をさせていただきます。今,主査から御紹介いただきましたように,前期の大学分科会の方でまとめていただいた論点整理の方が1ページ目に載ってございますが,卒業後の出口を十分意識することや,カリキュラムマネジメントの確立,またファカルティ・ディベロップメント等の重要性について述べられております。
 これまでのこのワーキングにおかれまして,いろいろ大学教育をめぐる制度等については御議論いただいたところでございますが,本日は1ページの下にございますシラバス,GPA,また多様な人的資源の活用について,教員の質保証,こういったテーマについて資料を御用意しておりますので,御説明をさせていただきます。
 1枚おめくりいただきまして2ページでございます。シラバスの厳格な運用についてでございます。(1),現行制度でございますが,大学設置基準におきましては,既に授業の方法,内容,1年間の授業の計画をあらかじめ明示すると規定されていまして,一般的には大学はこれをシラバスという形で作成し,示しています。
 シラバスには,学生にとって授業科目選択のための参考やまた各授業科目の準備学修を進めるための基本となりますので,非常に重要なものでありますし,また教員にとっても授業内容の一層の向上や体系的な教育指導に向けての教員相互が教育内容を調整する際にも使われるものでございますので,教学マネジメントを進めていく上で中核的なツールでございます。
 (2)が現状でございます。明示ということは義務付けされているわけですが,これをシラバスという形で示している大学は,約99%でございます。他方で3ページの上に掲げてございますが,シラバスの記載項目という意味で言いますと,例えば準備学修に必要な学修時間の目安について記載している大学は28%にとどまるとか,人材養成目的や学位授与の方針,ディプロマ・ポリシーとこの授業科目がどう関連しているかについてお示しいただいている大学は28%でして,まだまだ低い水準にとどまっている現状がございます。
 そこで論点でございますが,3ページの下でございます。これはあくまで例えばということでありますが,大学設置基準を改正した上で,明示することとされている講義の方法・内容,1年間の講義の計画,また別の部分で示している成績評価基準のほかに,例えば事前に必要な学修時間の目安やその内容といった規定を整理することも考えられるのではないかという論点でございます。
 また,二つ目の論点は,本日後半でも取り上げられる話題でございますが,学修成果の可視化の関係についても,シラバスの記述が充実することが必要で,また学修成果の可視化の取組を進めることに相まって,ディプロマ・ポリシー,また大学全体の人材養成目的と授業科目の関連を示すことなど,シラバスにこういうことを記載すればどうかといったような一定の指針を示すことも考えられるのではないかという論点でございます。
 続きまして,4ページ目の二つ目の論点のGPAでございます。現行制度といたしましては,GPA自体は法令上の制度ではございません。今,大学設置基準の方でも,成績評価基準は明示した上で厳格な成績評価を担保するということになっていますが,成績評価そのものについては定まった方法がありません。ただ,大学がずっと積み重ねてきたものがあるわけで,一般的にはレター・グレードというものを使っているところが多いかとは思いますが,ここについては規定がないという状況でございます。
 その上で現状でございます。GPAというもの自体が持つ可能性は非常に大きなものでして,個々の学生の学修成果の全体的な状況を把握するという上では非常に有力なツールであるということで,各大学でも学修指導に活用するとか,奨学金や授業料免除の基準に使うといったようなことは行われています。
 一方で,2ぽつ目でございます。米国の大学においては,ほぼ全ての大学においてGPAが運用されていますが,いわゆる4,3,2,1,0といったような5段階の等級を使っている大学は3割程度ではないかとされています。また,10段階以上の等級を設定する大学が半数以上を占めているなど,GPAの内容そのものについては,一律では必ずしもないようです。また欧州につきましては,GPAとは別に質を評価する仕組みもありますので,GPAそのものが一般的とは言えないとされていると承知をしてございます。
 我が国においてもGPA自体は78%の大学が導入していますが,導入している一方で,算出方法は,やはりこれは大学が積み重ねてきたものですので,実態は様々であるという状況でございます。
 そういったGPAについて活用するという意味では,個別の学修指導に活用している大学は65%ですが,GPAをいわゆる履修上限単位数の設定に活用している大学は25%,進級判定に活用している大学は7%,卒業判定に使用している大学が5%ということで,そういった活用については,まだまだ進んでいない部分があります。
 右側,5ページ目,論点でございます,実はGPAについては,過去の大学分科会においても議論をしていただいているところでありまして,平成20年12月の答申,いわゆる学士課程教育の構築に向けてという答申ですが,GPAなどの客観的な基準を学内で共有する,教育の質保証に向けて厳格に運用することが既に提言されているわけであります。
 その中には,国際的にGPAとして通用する仕組みとする。例えば不可となった科目も平均点に算入する。こういったところについて,御提言いただいているとともに,きめ細やかな履修指導や学修支援を併せて行うといったような活用方策についても御提言を頂いてございます。国としても,またこういった平成20年の答申の内容も含めまして,改めて大学に周知をすると。その際,きちんと付加価値を就けてGPAをどのような形で活用されているかといった好事例などと併せてしっかりと周知をしていくことが必要なのではないかということが論点でございます。
 続きまして6ページでございます。実務家教員など学外の多様な人的資源の活用についてということでございます。この専任教員の部分につきましては,いわゆる学位プログラムの論点になるのだとは思いますが,制度的には御案内のとおりで,教員は一の大学に限り,専任教員となるとされております。複数の大学は兼務ができないとされていまして,また,運用としても,教員を一の学部に限り,専任教員としてカウントし,複数の学部の兼任は認められていないという現状でございます。
 一方で,大学設置基準第12条3項にあるように,いわゆる実務家を専任教員とすることができるとされています。また,今般制度化されました専門職大学・専門職短期大学においては,必要専任教員のおおむね4割以上を専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験を有し,かつ,高度の実務の能力を有する者,実務家教員といたしまして,必要専任実務家教員数の2分の1以上は研究能力を併せて有する実務家教員。また,同2分の1以内は,みなし専任教員でも足りることにしています。みなし専任教員の定義は括弧内のとおりでございます。
 また,今後の学校におけるキャリア教育・職業教育という観点からも,職業に必要な能力をしっかり実践的に身に付けさせる機会を確保するという観点から,実践的な教育の更なる展開が必要とされていまして,また教員という意味でも,人材面でもこのようなことについて検討することが考えられるのではないかということでございます。
 8ページをめくっていただきますと現状が記載してあります。大学においては,企業等から毎年1,500人から2,000人が本務教員として採用されているというのが,右側のページの上の学校教員統計調査から分かるわけでありますが,毎年,採用教員の二,三割,近年では十数%という状況でございますが,が本務教員として採用されていると。様々な経験・知見を持った方が,大学教員として授業を担当していらっしゃいます。また,専門職大学院においては,法科大学院,教職大学院を除きますが,約5割が実務家教員という状況でございます。
 ページをめくっていただきまして,10ページの論点でございます。これは,大学については,職業的自立,社会的自立を図るための必要な能力を培うための教育の在り方というものは多様なわけでありますが,どのような役割を担う大学であれ,学問追求の観点だけではなく,様々な実務の観点というものを踏まえながら,学生のこうした自立のために最適な教育課程,授業とは何かという形について,しっかり社会の声を踏まえて,開かれた形で検討を加え,改善していくことが求められるのではないかと思ってございます。
 このようなことを踏まえますと,大学におけるカリキュラムの改善に実務家などの人的資源を参画させること,このような教育改革を促すのが一つの論点ではないかと思います。
 また,最後の丸でございますが,実務家で大学の教育に携われる能力を有する方は,量的な制約もありますので,いわゆる実務家の参画を促すという観点から,専門職大学などにおいて導入されているみなし専任の仕組みを導入する。こういったことも一つ考えてはいかがかという論点でございます。
 もちろん,ここに挙げたことというのは,大学教育としての質を担保するということは当然の前提の上でという論点であることは,念のため申し上げさせていただきたいと思います。
 最後は教員の質保証についてでございます。大学の教員資格・要件については,学校教育法や大学設置基準に規定されています。設置審査の際には,特定の科目を担当する能力があるかどうか。また,研究指導が可能であるかどうか。このような観点から,教員審査で可・不可を判定しているところでございます。また,認証評価においては,教員組織に関することもしっかり評価基準にして位置付けてございまして,評価が行われているところでございます。
 一方で,大学の人事ですので,当然個別の教員の選考・採用・承認というのは,各大学において自主的・自律的に判断が行われているものでありますし,行われるべきものでございます。
 その上で,ファカルティ・ディベロップメントの重要性は,大学審議会,大学分科会でも議論がされているところでして,平成11年には努力義務化,また大学院では平成18年に義務化。学部段階でも,また平成19年に義務化されているというのが制度の現状でございます。
 1枚めくっていただきまして,最後の13ページでございます。実態として,大学設置基準ではFDの実施は義務付けているものでありますが,FDの内容自体については,これは多様であるということもありますので,能力・知識等について具体化されているわけではございません。一方で,FDの実施状況という意味では,相互の授業参観が55%,相互の授業評価が17%,ワークショップや授業検討会が34%など,取組内容はばらつきが大きい。また別の言い方をすれば,非常に多様であるということでございます。
 ここまでは,もちろん大学の教育というものの特性に照らしてある程度こういうことが起こると思いますが,三つ目のぽつでございます。一方で専任教員の参加率という部分では,全員が参加した大学は11%,4分の3以上が39%でございまして,しっかり全ての教員が,これから実務家なども増えていくという中で,FDを含めて,授業の内容・方法の改善を図るための取組に携わっていくことが必要ではないかという現状でございます。
 また,教員の評価につきましても,研究偏重ということは以前から言われていたわけでありますが,業績評価に教育面を取り入れる大学は68%など,一定の進展はあるわけでございます。
 FDのセンターの設置なども74%と進んでいるわけでございますが,まだまだ十分な体制が整っていない大学も多いわけであります。一方で,教育関係共同利用拠点を活用する取組,コンソーシアムを活用したFDに関する取組など,個々の大学の枠を超えた取組も進んでいる状況でございます。
 最後の論点でございます。大学教育の質の保証を実現する上では,教員の質保証というのは当然欠かせない要素であります。これから大学外部の人材が,より一層大学の教育に携わることが増加すると見込まれる中で,どのような教員の質を確保するかということは課題となり得るわけでございます。FDが実施されているわけでありますが,教員の参加状況や各大学の取組状況が必ずしも十分とは言えない状況があるのではないかということでございまして,例えば新規で採用された職員が,しっかりと教育能力をその大学にふさわしいものを身に付けるという観点から,FD研修の受講状況やまた各大学の取組の状況の公表を義務付けることであるとか,また,国としても何らかの形でFDを実施するに当たっての留意点を示すのかということが論点でございます。また,FDに関する個々の大学の負担を軽減する観点から,教育関係共同利用拠点や大学コンソーシアムの活用も考えられるのではないかということでございます。
 最後でございますが,これは現職教員に対するFDということの論点を中心に参りましたが,いわゆる教員を輩出するという観点から,非常に主要な供給源であります大学院において,大学院生を対象としたプレFDというものをしっかり機会を拡大していくことや,またティーチング・アシスタント,ティーチング・フェローといったような大学院生が教育に携わる機会をしっかり活用することを各大学院に促すということも考えられるのではないかという論点でございます。
 私からの資料の説明は以上でございます。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの資料や事務局からの説明を踏まえまして,御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
 本郷委員,どうぞ。
【本郷委員】  今御指摘のありましたシラバスの充実や,GPAの内実化,教員の教育力向上というのは,いずれも非常に重要な課題であることは間違いないと思います。ただ,現場を見ていますと,例えばシラバスの在りようというのは,若干混乱を来しているようなところも少なくないようにも感じます。根底にありますのは,教員の意識の問題かと思いますが,一方で,例えば授業の種類,一般教養,それから語学,専門科目,あるいは専門関連科目,これを一律に同じようなシラバスを課す。そのステレオタイプを示すということで,それでいいのかどうかということは,慎重に考えないといけないと思います。
 もう一つは,より重要だと思いますが,学年次を意識した利用です。私どもの総合大学ですと,一番課題となっているのはやはり初年次の問題で,ここのところは,例えば非常勤担当率が物すごく高い。大学のアイデンティティーの形成ということに物すごい支障を来すようなところがあります。その場合に,シラバスという形で一定そういった,そうは言いながらも授業を担当いただく先生方の意識の覚醒といいますか,改革を図っていくということは非常に重要な問題で,その場合,最低限どういうことを盛り込んでくださいよというような形を,それぞれのことについて項目を示すというのは,あり得る話だと思います。
 だから,そういう学年次を意識したシラバスの在りようとを当然考慮に入れながら,今時,一方で入試改革が進んでおります。残念ながら,実感として,あるいはどれだけカリキュラム・ポリシーの改革につながっていくのかと非常に疑問に思うところもあるんですが,個人的にはですね。かなり卒業後の進路ということを意識して,4技能のジュウノウとかそういうことが言われているんですが,なかなかカリキュラムそのものとの連動性ということについてはいろいろと課題もあると思います。
 しかし,初年次との連動性というのは,これから当然考えていかなければいけない課題だと思いますので,そういう観点からもシラバスの在りよう,あるいはGPAの意味というものを改めてきっちりとしつらえ直すといいますか,そういう作業をすることが必要ではないかと思っている次第でございます。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
  濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  これまでの積み重ねの内容ではあるんですが,まず一つはやはり4ページ目に出てくる,先ほどの説明で成績評価基準を明示した上でという,これを文部科学省はどう考えているかというところから,まずスタートしています。例えば,何点以上をAとか優とするというのを成績評価基準と捉えてしまっている大学は非常に多いです。そのため,意味を持たないわけです。だから,そこからスタートしていますから,そもそもそれより奥へ入っていないという現状なので,そこらの解釈なり定義をまず明確にしていく必要があると思います。
 GPAの厳格化という言葉を非常に恐ろしいというか,気を付けた方がいい言葉だと思っています。というのは,評価基準が共有されていない状態でGPAの厳格化ということをやり始めると,その言葉として厳しく付けることがいいことだという誤ったメッセージが伝わると思います。ここで書かれている趣旨は,むしろこれまでの議論で言うと,GPAを要するにもう少し教育評価あるいは教育課程の運営の中で厳格に活用しなさいという意味だと思うので,厳格化というよりは,厳格な,有効な活用といった表現にしていかないと,懸念するのはそこのところです。
 GPA制度自体は,ある程度,今の状態だとどうしようもないんですが,評価基準とかを組織内できちっと共有してほしいということが実体化すれば,定量化できる教育評価の基準として比較可能性が出てくると思います。ところが,今の運用はめちゃくちゃです。4点満点もあれば5点満点,10点満点もあります。だから4点が他大学ではトップなのに,5点満点であることを明記しなければ,それは4点が通知表の4と同じです。
 一つは,GPAは必ずしも相対的な評価ではなくて絶対的な評価だというのがあって,アメリカでもGPAインフレみたいのがあって,アイビーリーグの大学は,4に近い,日本の大学院の成績評価もそれに近いと思いますが,そういう評価をしていて,ほとんどみんなが4に近くなります。
 だから逆に言うと,GPAを使って厳格化すればいいかというと,それはそれで次なる問題をもたらすだろうと思います。高等学校の場合は,相対評価ではあるんだが,調査書の中に,5段階のどのぐらいそれぞれ付けているという指標化されたものの中でこの生徒は何点だということがあるので,やるんだったら,まず一つは,GPAの制度をできれば標準化しなければいけないと思うし,それがすぐにできないならば,それぞれの大学がそれぞれのGPAの分布等々をある程度示した上で出さないと仕方がないのではないか。そういうところは,活用としてでき得るんだろうと思います。
 しかし,根本的には,GPAにしても教員評価の話にしても,何のために評価するのかといったときに,実は全体の学修成果の質保証のためのパーツでしかないわけですよね。だから,そうすると,やはりアセスメント・ポリシーというものを明確にしてもらわなくてはいけない。それで,評価するのが,ほっておくとどうしても教員は自分の専門分野,知識の習得というところに力点を置いて成績を付けがちで,学士力等々,コンピテンシーであるとか汎用的能力,これは高等学校の教育改革の中でもそこのところも目指してやっているわけですが,それを受け入れるような評価にしようと思うと,科目担当者にやはり全学的な教育目標との関わりというのを成績評価の面でもある程度反映してもらわなければ,要するにシラバス上は全体の教育目標とどう関係していますよということを仮に書いたとしても,最終的に成績評価はやはり授業内容をどれだけ理解しているかという方に行ってしまってもしょうがないと思います。
 だから,そういう点では非常に難しい課題ではあるんですが,御指摘のようにある程度ガイドライン,標準化すればいいかということだけを申し上げているのではないですが,ガイドラインであるとか,そこらはもう少しメッセージとして明確に整理する必要があるだろうと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続きまして安部委員,日比谷委員,前田委員という順序でお願いいたします。
【安部委員】  ありがとうございます。
 教員の質の保証に関してですが,教員には研究と教育,そしてもう一つ,社会貢献という役目があります。それらの質を保証する際に,特に今般問題になりますのは実務家教員の質だと考えます。新制度である専門職大学,専門職短期大学に限らず,既存の大学の教育内容にも,そして,大学の教員の交流や活性化を行うという観点でも,実務家教員の今後の比率は高いと思います。しかし,実はその実務家教員について,実務がたけているからといって教育力が十分であるということは,必ずしもいえない場合もありますし,実務のその分野や経歴に関してよって多様な個性を持った方が入ってこられるということが予測されます。
 そのために,実務家教員に対するFDが,今後のFDの新たな内容として加えるべきではないかと思います。そうしないとみなし専任の増加や,教員の複数大学での専任化が可能となった場合に,実務家教員の教育力というのをどのように担保するかというのはとても難しい大きな課題になると思いますので,それをお願いしたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  ありがとうございます。
 シラバスについてですが,3ページのところでシラバス記載項目の状況というのがありまして,先ほど御説明がありましたが,低い水準にとどまっていて,これは問題であるというところは多分,赤で囲ってあると思いますが,囲われていませんが上から3番目,当該授業科目の教育課程内の位置付けや水準を表す数字や記号というところ,25.6%なんですが,これを囲ってないのは,大問題だと思います。
 カリキュラム・マップとかカリキュラム・ツリーとかいろいろなことが言われていますが,シラバスを見たときに,この科目がこの当該の教育課程内のどの辺りに位置しているのかということは,一発で分からないといけないことだと思います。これは,一つの例ですが,これを見ますと,高いもの,シラバスはその授業で何を目標にしているか。毎回何をするか。予習はこういうことをしてくださいと。これは低いと思いますが,課題も一応書いてあると。ただ,それだけ書けばいいというものではなくて,教育課程全体の中で,この科目がどうなっているかということが一つ一つ積み上げられての学士課程だと思いますので,このGPAについても同じことが言えると思いますが,部分的にここは取り入れましたということではなくて,セットで,やはり凹凸が多少あるということはあると思いますが,よく趣旨を理解して全体として私たちの大学ではこのようにしていますということが見せられないと,取り入れて,はい,チェック終わりとなってしまうと思うので,そこは十分留意すべきだと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは前田委員,どうぞ。
【前田委員】  みなし専任教員についてですが,これが出てきたのは,例えば大学側からそういう需要や求めがあるのか,どうなのかというところが少し気になりました。例えば今,定員割れをしていて,もういろいろ切り詰めていかなければいけない大学があって,でも教員というのは設置基準上決まっているわけで,そういうときにみなし専任で差し替えていくと,少し人件費が安くなるというような大学は出てこないかと少し気になっています。
 みなし専任教員が必要なタイプの大学と,そうでない大学とあると思いますが,結構資格を取るところに力を入れている大学は,いろいろな背景を持っている,その資格と関連する背景を持っている方を既に専任にされている大学もあると思います。なので,今このみなし専任をあえて入れるという背景がしっかり把握されているのかということと,安易に利用されないかということが気になりました。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  みなし専任教員の件,同じく確認をしたいのですが,6ページ目のところで四つ目のぽつのところで,非常に具体的な提案が出ているんですね。専任教員以外の者であっても,1年につき6単位以上の授業科目を担当し,かつ教育課程の編成その他学部・学科の運営について責任を有する者。
 これ,実務家教員なのかという気がします。これが学部長とか学長・副学長想定の記述であれば分かりますが,実務家教員で6単位しか取らない人たちが出てきて,6単位ということは,授業科目で言うと半期授業で3科目です。前回申し上げましたが,放送大学で全科生としてみなされているのが16単位です。要するに半期科目3科目教えて,こんなことができるはずがないと思います。つまり,3科目しか,恐らく週に1日来るか来ないかの人が,ここに書いているような教育課程の編成その他,学部・学科の運営について責任を有せるはずがないわけで,こんなことを書いてしまうとこれはとんでもない話で,先ほど前田委員が言われたことと同じになるのではないかと思います。
 ですから,これは恐らく従来の管理職を想定したものを実務家に当てはめるということには大変問題があるのではないかと思います。これが,恐らく私も最近社会人の大学院等々を見ていると,確かにそういう第一線でバリバリと活躍している現役の方を連れてこなければいけないという事情が大学院で発生することは分かりますが,では,少なくともアンダーグラデュエートレベル,若しくは短期大学レベルと同等の専門職大学や短期大学でこういうことをやらなければいけない必然性,ましてそれを専任としなければいけないというのは,私も実は前田委員と同じで,人件費対策でこういうことをしてくれというのが出てきているのかとに疑ってしまいます。
 つまり,恐らく専門職大学や専門職短期大学は,大学と同じルールを取れないと思います。設置基準はハードルが高いから,ハードルを下げてよというネゴシエーションでもあったのかと思わせるような感覚を持ちますが,そうでなければ,そうでないという理由と,この辺りを6単位とわざわざ書かれて,おまけのその記述が従来の管理職相当のものを引いてこられて,それを実務家に当てはめるということの具体的なイメージをもう少し説明していただけるとありがたいです。
【林大学振興課課長補佐】  よろしいでしょうか。御質問あった点についてお答えいたします。
 まず濱名先生から御指摘がありました6ページの4ぽつ目の括弧書きの内容であります。これは,既に定められている告示でございます。専門職大学院に関し必要な事項について定める件の告示の一部でありまして,その中でいわゆるみなし専任でいくということで定められているものであります。
 この制度創設当時,実務家を確保していく上で,大学側との人材確保上の困難性なども加味しながら,このような告示が定められたという経緯があると聞いておりますが,ただ,前田先生,濱名先生から御指摘がありましたように,もちろん大学の学部の性質上,実務家の必要性に関しても差はございますし,また事務局から冒頭に説明がございましたように,これは安易な緩和によって教員の質というものの低下を招くことがないようにといったことは当然の前提といった上で,ただ,実務家教員の確保の上で,人材供給の面から考えた際に,どの程度までフルタイムでしっかりとした方を実務家として登用できるかどうかという中で,論点としてお示ししている次第でございます。
 御指摘の点については,当然のこととしてでございます。
【濱名委員】  よろしいですか。
 大学院をベースにされると,30単位中の6単位ということで,20%のウエートを持つ担当者です。ところが124単位ベースになってくると,6単位といったら,では,責任が持てるかといったら持てないわけで,そこについては,逆に制度設計が,卒業要件が全く違うところでのこの単位数というのは安易に出すべきことではないと思いますし,そこらは慎重に判断をしていかないといけないと思います。要するに半期もの,3科目がせいぜいの方が,こういうことをできると文部科学省が考えている。つまり専門職大学だったら,僕も最初に申し上げたように分からなくはないです。だから,そこらはもう少し慎重に検討していただいた方がいいのではないかと思います。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。篠田委員,それから上田委員ということでお願いいたします。
【篠田委員】  シラバスの問題,それからGPAの問題,教員の質向上やFDの問題,相互につながっていると思います。シラバスも御説明の中では,教学マネジメントの中核ツールだとおっしゃっていただきましたが,やはり究極の目標は,内部質保証なり,教育の質向上という構造になってくると,シラバスというのはその入り口といいますか,どういう教育をやるかという,まず明確な指針,方針という形になるわけですが,教学の内部質保証を実現するという点でいうと,前の三つのポリシーのガイドラインのところでは,大学全体,それから学部や学科や学位プログラム単位,更に教員の授業科目単位,あるいは教員個人単位で教学のPDCAを回していく。その実現をするのが内部質保証だということですので,シラバスという点でいうと,まず教員個人の,あるいは授業科目単位ごとの目標を明確にするということで,それを更に濱名先生がそれぞれパーツだというふうにおっしゃいましたけれど,GPAだとか,どのようなFDをやるのか。
 そもそも学修成果の評価をやるというのも,スタートラインは,一つはやはりシラバスということになりますので,大学の方が取り組むときの教学の質向上をしていくときに,シラバスの改善だとかGPAだとかFDだとか学修成果の評価だとかっていうのが,どういう位置関係にあって,どういう流れで,つまり教学PDCAをやっていけば質向上につながっていくのか。内部質保証システムの確立のイメージというのができるかというのが,これはひょっとしたら後の論点整理というかまとめの方の話なのかもしれませんが,そういうのが見えるような記述ということが一つ大切だと思います。
 それからもう一つは,こういう内部質保証システム,教育の質を向上するというのは,内部質保証と言っている以上,外部質保証ではないので,外からの基準でどこまでやるのかということと,自らが立案したディプロマ・ポリシーなり,それを実現するためにどういう教育方法,どういうシラバスでやって,どういうふうに学生を育てていって,どういうふうに学修成果を評価していくとかっていうことについて言うと,大学自身の判断というところが非常に重要なところになってくると思いますので,例えばシラバスのところで一定の指針を示すというふうに書かれているんですが,これをどこまで書き込むのか。
 大学がシラバスを作るときに,教育の質向上をするために,いろいろな要素というのを参考に示していくということは,これは重要なことなのかもしれませんが,それを各項目についてかなり厳格に決めていくということになりますと,これはディプロマ・ポリシーといいますか,目指す教育の目的自身がかなり違いますし,やり方というのはそれぞれの大学が創意工夫で考えていくというところが基本になりますので,こういうことを基準で,全部のところに示し始めると,これが今度は認証評価につながってきて,これをやってないと,書いていないと駄目だということで,それが例えば評価の段階別評価というふうなことも前回も提起されておりましたので,そういうところで,これをやっていないとというようなことにつながってくると,これは画一化というところにつながってくるので,この点は非常に留意をしながら検討していかないといけないのではないかと思います。
 ただ,大学にとっては,もちろん各中身について,ある程度ガイドライン的なものというのを示される。あるいは事例を示される。これは非常に重要なところだと思いますし,自らがやったことについて,しっかり情報公開をしていくということも非常にこれは大切なことではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  上田委員,どうぞ。
【上田委員】  GPAについて,短く申し上げたいと思います。
 最後のところでGPAの活用の好事例について,併せて示す必要があるのではないか。いや,どういう好事例があるのか,私,本当に知りたいと思っていまして。というのは,好事例というのは,例えばここで進級判定の基準になるとか,卒業判定の基準になるとか,そうやって生かしている大学がありますというところで止まってしまうのでは,好事例でも何でもなくて,ただこういう事例がありますよという話だと思うんですよね。それが本当に学生の質の保証であるとか,学修意欲であるとか,あるいは物すごく深い知見につながっていくとか,世界に目が開かれていくとか,本質的に学生の質というものをそれが変えていくというところの好事例を是非示していただきたいと思うんです。
 我々の大学でもGPAを導入しましたが,それで留学生,特に留学するときの判定の基準とかにどんどん入れております。そうすると,もう最初に起こったことは,学期の途中までやって点数が悪くなりそうだと,そこでどんどん履修を落としていって,最後の最後でやめますという学生がもう殺到して,最後の何時間かの先生は,やめますの書類のサインがもう10も20も来るので大変になります。そのため,そこの履修を取り消す期間をもっと前の方にして,最初の3分の1ぐらいのところ以上は駄目だとすると,今度は点数がどこの科目が取れるかということを非常に厳格化して学生は考えていきます。
 つまり,何のためのGPAなのかという話になってしまうので,是非本当に本質的な意味でのこれを導入したことによって好事例があるのであれば,そのことを本当に現場の人間としては知りたいところですので,是非それをお集めいただいて,知りたいというふうに思っておりますので,よろしくお願いします。
【鈴木主査】  では,短く美馬委員から日比谷委員,どうぞ。
【美馬委員】  シラバスのところについてですが,これは先ほど日比谷委員がおっしゃったことにも通じると思いますが,当該授業科目の全体の中での位置付け,これはカリキュラム・マップをきちんと示していくというのがいいと思います。それは,学生にとってもそうですし,教員にとってもそうだと思います。
 これはFDにも関わってくると思いますが,そういうマップを作ることによって,前後の科目との関係を意識しながら自分の授業を設計していくということは,必要なことだと思います。学生にとっても,これがどのようにつながっていくのか,前の科目とつながっていくのかということです。
 さらには,このシラバスとディプロマ・ポリシーとの関係です。つまり,育てる人間像,その中には特にどういう科目を,どういう知識を学ぶのかというコンテンツ,知識のコンテンツだけではなくて,そこにはコンピテンシー,例えば批判的思考であるとか分析的な思考であるとか,そういったものも併せてシラバスの中に提示していく。
 提示するということは教員について,教員がそれを意識しなさいということも含まれるので。ただ,この辺りをこの質保証の今こうやって議論している中で,中央教育審議会あるいは文部科学省が,どのようにこれをやりなさいというのか,あるいはやはりそれは事例としてこういうふうにやっていくといいものがあるというようなことを示していくのか。その辺りのさじ加減というか,我々がどこまでどうするのかということだと思います。
 あと1点。実務家教員のFDは,必須だと思います。大学教育あるいは学生の現状が,実務をされていた経験の間にどれだけ変わってきているのかという現実をまずは知っていただくというのは,とても重要なことだと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 では,日比谷委員,短くお願いします。
【日比谷委員】  先ほどの上田委員の御発言に少しコメントがございます。途中でやめられるとおっしゃったのは私にとっては大変驚きですが,履修登録を学期の初めにして,一定期間やめたり足したりはできると思いますが,どこかの時点を過ぎたら,もうその後は脱落できない。要するに捨てられない。保険科目というものだと思いますが,保険なしというのがやはりGPA制度の根幹だと思いますので,その辺りについてはいかがですか。
【上田委員】  我々もそのように変えました。ですので,最初の授業15回の中で,4回目ぐらいまでしか,もう落とせないというようにしました。
【日比谷委員】  では,今はもうないわけですか。
【上田委員】  今はないです。
【日比谷委員】  分かりました。
【鈴木主査】  では,前野委員を最後にいたしましょう。ありがとうございます。どうぞ。
【前野委員】  すいません。2点ほどあります。
 一つは,先ほど日比谷先生から御指摘あったように,ナンバリングのことがすごく重要というのは,私もそう思います。それと絡めて,その上の3ページのことですが,三つのポリシーがまだ決まって整ったばかりですので,恐らくその三つのポリシーなり,あるいは学位授与の方針,あるいは人材育成の目的というようなところとナンバリングは関係がありますよという記述がどこかに明示されていることが,まずは必要なのではないかと思います。そうしますと,やはりナンバリングを再度最適化することがあり得るのかというのが1点でございます。ですから,何かそういう記述があれば,これからだんだん整ってくるのかという気がいたしました。
 それからもう一点,先ほどGPAの適用ですけれど,これはかなり難しいですが,実際標準化をすることは可能ではないかと思っておりまして,数学的な処理はいろいろあるのではないかと思います。TOEICとTOEFLの間の換算式がありますので,それと同じようなことをやれば,様々な基準の違うGPAが,例えば分母を書くだけでも大分変わりますし,統計的な処理も簡単だと思いますので,そういう例を挙げていただければいいのではないかと思いました。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 四つの論点ということで,事務局からの説明を頂いた上で皆様から御意見を頂きましたが,非常に示唆に富んだ御意見であったと思っております。それらも含めまして,この四つの論点についてまとめていっていただければと思います。ありがとうございました。学修の質の向上については,以上といたします。
 続きまして,制度・教育改革ワーキンググループ論点整理(案)について,議論を行います。本ワーキンググループでは,本年7月に第1回の会議を開催いたしまして,以降前回までで6回の会議を重ねてまいりました。その中で御議論いただいてきたテーマごとに現行制度,現状,それから課題,それから論点と検討の方向性について,制度・教育改革ワーキンググループ論点整理(案)としてまとめております。
 この論点整理は,冒頭申し上げましたとおり,今後本ワーキンググループの親会議であります将来構想部会へ報告することになります。これまでの御議論を踏まえて御意見を頂ければと考えております。資料2の2ページをご覧いただきますと,7点の個別事項が記載されておりますが,数が多いために本日は二つに分けて議論いたします。前半で情報公開と学修成果の可視化,それから学位プログラムを中心とした大学制度についてです。後半で認証評価制度,学位の国際的通用性,それから高等教育機関の国際展開,リカレント教育について,意見交換を行います。
 一つ目の教育課程の改善,指導方法の改善等の学修の質保証については,先ほど会議の前半で行った意見交換を踏まえまして,次回のワーキンググループで御議論を頂く予定にいたします。
 それでは,まず情報公開と学修成果の可視化,学位プログラムを中心とした大学制度について,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料2-1をご覧ください。
 冒頭,「はじめに」という部分はこれまでの経緯が書かれておりますが,「はじめに」の最後の四つ目の丸にございますとおり,この論点整理につきましては,これまでの論点を現時点で整理したものでありまして,答申は来年の秋頃をめどにと言っておりますので,年が明けてから更に具体的な制度の詰めの議論をしていただきまして,関係方面からも意見を聞いた上でまとめていきます。現段階は,それまでの途中の論点整理という位置付けでございます。
 1ページめくっていただきまして,2ページのところですが,今,主査からありましたとおり個別事項が七つ並んでおりまして,一つ目については本日御議論いただきましたので,次回の会でこの論点の形にまた整理してご覧いただきたいと思います。
 3ページ目,2の情報公開と学修成果の可視化でございます。まず現行制度,現状ですが,二つ目の丸にありますとおり平成19年に学校教育法施行規則におきまして,全ての大学が公表すべき事項として,進学者数,就職者数等々の進路に関する情報,学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準に関する情報などが公表すべき情報として定められております。そして,平成22年には,三つのポリシーの一体的な策定・公表を義務付ける規定の整備が行われております。
 次の下,(2)の課題ですが,課題の三つ目の丸,一番下にありますとおり,現在の公表が義務化されている事項では,人材養成目的等の大学教育の目的・目標に関する事項はあるものの,大学が実際にどのような教育成果を上げ,学生がどのような知識や能力を習得したか等の成果の確認ができておらず,各大学の取組の充実に向けて,国としても何らかの方策を講ずる必要があると考えられるということでございます。
 下の4ページ目,(3)ですが,論点と検討の方向性といたしましては,一つ目の丸,三つの方針に照らして,教育課程の実施を通して個々の学生が習得した知識及び能力の状況や,学生の学修に係る意識及び行動を把握するといったことが求められるのではないか。また,大学の説明責任という観点から,これらの全体的な状況を各大学はまとめて,その概要を公表することが求められるのではないか。
 こうした教育成果の把握に用いることができる情報は,世界的にも標準化されたものが存在しているわけではなく,各大学が自ら策定・開発を行うことが期待されるということですが,どのような情報を活用するかは,各大学で自ら取捨選択するものである。ただし,直接的,間接的に評価・活用できる情報を含めて,複数の情報を組み合わせて活用することが重要であると考えられます。
 そして,具体的に活用できる情報として,例えば以下のものが考えられるということで,国としては,各大学の取組が進むよう,必要な情報の把握や公表について一定の指針を示すべきではないか。その下には,学生が習得した知識及び能力の状況,それからもう一つは学生の学修に係る意識及び行動に関わる様々な成果指標の例が挙げられております。
 次に4ページの下から,学位プログラムを中心とした大学制度ですが,5ページ目,現行制度・現状につきましては,二つ目の丸にありますとおり,大学には教員と学生が所属する学部等の組織を置くこととされておりまして,これが大学設置基準等の要件を満たした上,文部科学大臣の認可を受けることによって大学教育の質を担保している。そして,本来,学部等の組織においては,教育研究を一体的に遂行されることが期待されており,学生・教員が所属する組織と,そこで提供される学位プログラムが1対1の関係であることが原則となっている。組織と一体となった従来の大学の学部等で実施される教育課程も,当然に学位プログラムとして機能するものであるという現状でございます。
 (2)の課題として,今後の産業構造の変化も激しくなる中で,必要とされる分野の中長期的な予測に基づいて学部等を設置するということが困難な時代になっているということから,将来生まれるニーズに応じて,新たな学部等を迅速かつ柔軟に設置できるようにすることが必要となっている。しかしながら,現行の学部という組織を前提とした在り方では,一つには研究上の要請と教育上の要請とは必ずしも一致しない場合がある。二つ目には,学部等の独立性を強調する余り,組織間の協力や資源の結集が困難となり,例えば境界領域の分野など教育に機動的に対応できない場合があるという課題が指摘されている。
 そして,また現行の設置基準は,既存の学部等の学内組織同士が資源を持ち寄って新たな教育課程を編成・実施するということは想定をされていない。そして,そのことが各大学における学部横断的な教育の取組を躊躇(ちゅうちょ)させる一因となっているという課題でございます。
 そして(3)の論点と検討の方向性としては,今後学生本位の視点に立った学修を実現していくためには,学位を与える課程に着目した在り方をより重視していく必要があります。
 次の6ページですが,このことから大学が自らの判断で機動性を発揮し,学内資源を活用して,学部横断的な教育に積極的に取り組むことができるよう,制度を整えるべきである。具体的には,複数の学部等を設置する大学が,学部等の組織の枠を超えた学位プログラムを,これまでの学部等とは異なる新たな類型として設置できるよう,制度上位置付けることとしてはどうか。
 そして,このような学位プログラムの制度設計に当たっては,例えば下記のような論点が考えられるということで,プログラムの質保証の観点から,実施に当たっての教学管理体制,責任体制が必要ではないかということ。また,責任を持ってプログラムを担当する一定数以上の教員組織が必要ではないかということ。その際,実態面では,一の学部・学科に限り専任教員とされている専任教員の考え方の整理が必要ではないかということ。そして,専任教員の考え方と併せて,対外的にも明確となる方法で個々の教員のエフォート管理を適切に行う必要があるのではないか。また学生組織,収容定員については,プログラムに連携・協力する複数の既存学部等の定員の範囲内で設定することとしてはどうか。また,学生の所属意識を醸成する取組が必要ではないか。それから,内部質保証の観点から,三つの方針をプログラム単位でも策定すべきではないか。こうした論点でございます。
 また次の丸で,対象となる学位の範囲につきましては,学士,短期大学士,修士,博士,専門職学位も含めた全ての学位課程を対象とした制度とすべきではないか。一方で,今般新たに制度化された学士(専門職),短期大学士(専門職)につきましては,教育課程連携協議会や臨地実務実習の実施等々,設置基準上,固有の条件が求められていることに鑑み,慎重に検討すべきではないか。
 また,医師・歯科医師・獣医師等の国家資格のための課程認定を伴うものについては,検討の対象から除外すべきではないかというように,これまでの論点を整理しております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,ただいまの事務局の説明,資料を踏まえまして,まずは情報公開と学修成果の可視化,それから学位プログラムを中心とした大学制度の二つの点について,御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
 では,小林委員,それから濱名委員,前野委員というようにお願いいたします。
【小林主査代理】  情報公開について少し意見を述べたいと思います。この情報公開については,積極的に項目を拡大するべきだと思っておりまして,9項目が義務化されているわけですけれど,それ以上に拡大するべきだと考えております。
 アメリカの例で言いますと,例えばコモン・データセットというのがありまして,これは大学関係者あるいは情報公開に関わるような業界が連合して作ったものですけれど,共通に公開すべき項目というのを決めて,ただし大学は全ての情報を公開する必要はなくて自分の裁量で決められるというような仕組みを作っておりますし,イギリスの場合は,キー・インディケーター・セット,KISと呼ばれる,同じような仕組みを作っております。
 こういった共通の公開項目というものを決め,そして義務にするものと大学の裁量に任せるもの,あるいは大学のポートレートに載せるものという区分が必要ではないかと思います。
 その上で,より具体的に情報公開の項目ですが,この情報公開の目的というのは,言うまでもなく大学の説明責任を果たすということが一つですがもう一つはやはり学生や保護者のために大学が何をやっているかということを明らかにするということだろうと思います。
 その点から言いますと,現在,学生の状況に関する項目というのが余りなくて,例えば中退とか除籍とかいうものに関する情報というのがないわけです。私たちが調査したところ,実は大学によって中退と除籍の定義というのは全く異なっておりまして,どういう場合に中退になるか,除籍になるかということについても,一般的にはほとんどの大学は公開しておりません。ですから,その辺りのことをどうするか。それから,より踏み込んで,休学や中退者の数とか率を公表するのかどうか。これはかなり議論の余地がありますけれど,原因とか理由別に公開するとどうかを含めて議論する必要があるのではないかと思っております。
 それから,更に学納金に関してもかなり情報がまだ不足しておりまして,例えば休学中の授業料の扱いというのは,国公立大学は授業料を取っていないわけですけれど,私立の場合ですと,全額納める必要がある大学から全く納める必要のない大学まで様々に分かれておりますけれど,こうした情報というのは一般に公開されておりませんので,そういうことはこれから考えていく必要があるのではないかと思っています。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  情報公開と学修成果の可視化のところですが,非常に気になったのは,4ページ目の(3)の最初の丸を見たときに,三つの方針に照らして,個々の学生が習得した知識及び能力の状況や学生の学修に係る意識及び行動を把握することが求められるというのは,これが最初に出てくるのが非常に気になります。やはり高大接続答申等々で公表するときに,我々が議論の中で一番強調したのは,ディプロマ・ポリシーに書かれていることが達成できているかどうかということであって,個々の学生ということが最重要課題ではなかったはずです。
 それが後ろの方を見ると,大学の説明,又書きであることも非常に気になって,大学の説明責任を確保するために,各大学はこれらの全体的な状況をまとめ,その概要を公表することが求められる。これ,違うだろうと思うんですね。ディプロマ・ポリシーで掲げていることをしっかり達成しているかどうかを説明する責任があって,そのために個々の学生の状況の把握というのも必要で,ここに書かれていることは,個々の学生の把握というのがより重要な課題であるかのような書き方になるので,私自身もここの場で申し上げてきた議論とはかなり距離があると思います。
 それで,結局何を説明するのか。つまり,その概要を公表することで一体何を説明しようとするのかということが明らかになっていない。むしろアセスメント・ポリシーという言葉を避けられているとしか思えなくて,やはりきちんとアセスメント・ポリシーを立案して,アセスメント・ポリシーの理解が不十分であるならば,これから具体的にアセスメント・ポリシーというのがどのような内容とか,どのようなことを明らかにするのかということがはっきりしないがために,こういうことになってしまうと思います。だから,そこのところが非常に気になります。
 以前1回目の会議で,三つのポリシーの策定,実態把握について,文部科学省でやっていただけないかということをお願いしたと思いますが,その後具体的に進んでいるのか,あるいは今後の見通しがあるのかということについて,お尋ねしたいです。先ほどの小林委員の情報公開の話もそうですが,やはりどう実態把握をするのかということを見ていかないと,先ほどの話,資料1-1の方は,ある程度エビデンスベースで書かれているところが若干ありますが,こういうポリシーについて言えば,定めているか定めていないかだけではなくて,その質的な内容を見なければ,実は処方箋を正確に書くことができない。その辺りがやはりないと,こういう書きぶりにどうしてもなってしまうのかと思います。
 そこについては,やはり実態把握を並行して行いながら,結局求めなければいけないのは,ディプロマ・ポリシーの達成度。それが要するにプランのPであるわけですから,そちらをむしろ強調して書いていただく必要があるのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 前野委員,それから前田委員お願いします。
【前野委員】  先ほどもお話ししようと思ったことと少し関係すると思いますが,6ページのところにございます専門職の学士及び専門職の短期大学士のところで,いわゆる教育課程の連携協議会の設置,それから臨地の実務実習の実施等の文言が出ていますが,私,先ほどの資料1の具体的な数字は,これ適当に書くと難しいところですが,こことの関連,つまりみなし専任教員のところの仕事の内容で,今6ページで話していたことは,やはり関連するのかと思っています。私,高等専門学校の人間なのですが,高等専門学校の方でもやはり実習・演習というのは非常に時間が掛かって単位数が少ないです。この辺りをどう考えるかをやはりしっかりどこかに記述しないといけないのかとは思っております。それが1点申し上げたかったことでございます。
【鈴木主査】  よろしいですか。
【前野委員】  はい。
【鈴木主査】  じゃ,前田委員,どうぞ。
【前田委員】  細かいことですが,認証評価のときに,そういう公表情報というのはどこに載っているかというのを探せない大学というのがありまして,検索エンジンがついていると検索したら分かるのですが,トップの画面からどうやってそこに行くのかが分からない場合があります。公表の仕方を余り型にはめるというのはどうかとは思いますが,なるべく見つけられないところに置いておくというぐらい,勘ぐりたくなるような大学もあります。いろいろな人が見るときに,大学であったら,大体ここへ行くと,どこの大学も公表しなくてはいけない情報があるというように,誰もが使えるといいとは思っています。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  4ページのところで,学修成果の把握の中身について出ていますが,教育を改善していく,質向上をしていく上で,これからの最も重要な要というのは,やはり学修成果をどのように把握していくのか。ここのところは,まだそれぞれの大学,研究開発段階であるところが多いと思いますが,それができるかどうか。そういう学修成果を把握して,しっかり改善につながるシステムが機能しているかどうか。これが内部質保証の要だと。今,授業評価というのをやっていますが,これもしっかり改善につながっているようなシステムになっているかどうかという辺りのところが,やはり要のところではないかというふうに思うんですが。
 その場合に学修成果をどのように評価するのか。これは以前の中央教育審議会でも御議論になったかと思いますが,ディプロマ・ポリシーがどのように設定をされるのかということによって,各大学によってエビデンスの証明の仕方というか学修成果の把握の仕方というのは随分違いがあるし,工夫をしていかなくてはならないところで,学力ということだけで言えば,ある程度見えているのではないかと思いますが,それ以外のところをどのように開発していくか。
 それについて,例示で幾つか4ページの半分下のところに出ておりますけれど,これらを拝見しますと,大体現在の認証評価機関,学位授与機構だとか大学基準協会だとか日本高等教育評価機構が示している学修成果の把握の例示とほぼ同じものではないかと思いますが,これはどちらかというと学力レベルを一般的に示すものという形なので,これに更にプラスしてどのような工夫をしていくのかというところが一番肝心なところなので,このように例示をしてしまうと,これでいいという形になってしまうこともあります。
 ですから,何を例示するのかというのは,多分これからもちろん検討のところだと思いますし,学修成果の把握について一定の指針をと書いてありますが,なかなか指針となると難しいと思います。ですからやはり進んだところの例示,前回も濱名先生のところの学修成果の把握について,かなり進んだシステムについて御紹介があったと思いますが,社会人基礎力だとかいろいろな,つまり学力では見られないところを把握している各大学の努力というのは,進んだ大学ではかなり進んでいるというふうに思いますので,それらがしっかり参考になって,自分のところのディプロマ・ポリシーを証明するような学修成果の把握の仕方について問題提起ができるような形でやっていかないと,質向上の次の段階に進んでいくことが難しいのではないかと思いますので,その点,是非御検討いただければと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  今おっしゃった点とも関係しますが,大学の学修成果の把握の可視化の問題ですが,成果そのものを把握ないし計測することは,やはりかなり難しい。これを議論していればいつか答えが見つかるかというと,私は必ずしもそうではないのではないかと思います。それは,むしろ各大学が自主的に判断すべきことではないかと思います。
 ルーブリック等々も,基本的に全大学に妥当するようなルーブリックというのは,私はやはりないのではないか,それぞれやはり手作りでやっていくところによさがあるのではないかと思います。
 じゃ,何が把握できるかといえば,私は基本的には学習の行動といいますか,インプットとアウトプットの間にあるところで客観的に把握できるところを把握するというのが,やはり一番重要ではないかと思います。例えば学修時間というのが一つの例ですが,あるいは授業に対してどのような考え方を学生が持っているか。例えば,今まで取った授業の中で30人以下の授業がどれくらいあるのかとか,かなりそういった客観的に工夫すれば,プロセスについて重要な情報を得るということは可能です。
 今,朝日新聞がやった調査を見ていますと,やはりそういった鍛えた学生数が少ないところというのは,いろいろな教育上の工夫をしている割合が高いとか,やはりそれなりに一定の関係が見えてきます。ですから,客観的に見えるところをある程度把握するということは,やはり非常に重要なのではないかと思います。
 それを私はそのまま公表するかどうかは一つの考え方ですが,少なくとも認証評価の際の客観的な資料に使うべきではないかと思います。アメリカの認証評価では,現在学修課程か学修成果に関する何らかの共通的な調査というもののエビデンスを添えるということが求められていて,それは大体,今申し上げたような指標を幾つかの大学がコンソーシアムを組んでやった資料をそのまま使っているようなことがほとんどですが,そういった意味で,かなり柔軟に把握できるところは使いますが,把握できないところは次善の指標を使います。しかし,それはかなりクリティカルなところに使っていくということは,私は非常に重要ではないかと思います。
 以上。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  私は,この学位プログラムを中心とした大学制度について,少し意見を述べたいと思います。6ページの上から二つの丸で,1学部1学科のみを設置する単科大学等では現行制度で対応可能と書いてあります。私どもはこういう現行制度で対応可能な学校でございまして,5ページの真ん中辺りにありますが,境界領域の分野などの教育,あるいは学際領域と言ってもよろしいかと思いますが,実際にそういうメジャーというのを作っていますが,もう10年ぐらいそれをやっておりますが,その経験を踏まえて申し上げますと,今八つそういうものがありますが,うまくいっているところとうまくいっていないところがあります。
 どういうところがうまくいくかというと,6ページの真ん中の丸三つ目のところですが,とにかく教学の責任体制がしっかりしていて,一定以上の教員がそこにコミットしていて,かつ非常に明確に担当する教員のエフォートが管理されているかと思います。この三つがないと,決してうまくいかないので,複数学部となればなおさらそうだと思いますので,必要ではないかと書いてありますが,必要であるということを申し上げたいと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 そのほか,いかがでしょうか。
 濱名委員。その次,安部委員,お願いします。
【濱名委員】  私は,金子委員とはかなり意見が異なりまして,まずこのまとめ方の中でも,米印,4ページ目の下のところで,これらの情報を適切に把握し活用するためにはという添え書きのようにポートフォリオとかルーブリックが出てきて,だから,ディプロマ・ポリシーは各大学が独自で定めていいという形を取ってきたわけです。それぞれの私立大学は,それぞれの個性に基づいて到達目標を設定するということに対して,定量化できるもので測るとおっしゃるのは,全く理解できないです。情報の公表は小林委員がおっしゃったように公表すればいいわけですが,異なる到達目標の論証というのは,それぞれの大学の責任ということで前回の答申でも決めているわけですから,それがここに挙げられているような定量化しやすいものを並べて,しかし,この卒業論文の成果物に対する評価はルーブリックを使わなかったら,教員の主観的評価になってしまうわけですから,やはりかなり違うのではないかと思います。
 ですから,定量化できるものは公表すればいいですが,学修成果の把握はディプロマ・ポリシーを作った各大学が論証する責任があり,それに対してアセスメント・ポリシーを私は明確にするべきだと,これは重ねて申し上げたいと思います。やはりそうでなければ,小さい大学は,定量化しにくいわけです。小さい大学ならではできることをしっかりやればいいわけで,全ての大学は同一の方法論であるとか観点で比較されるということに対しては,私はそういう方向になりかねないような記述は避けるべきだと思いますし,前回の私の報告も含めて,議論がこういう内容になっていたとは私は理解しておりません。かなりこれは異議を申し上げたいと思います。
【鈴木主査】  安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。
 情報公開についてですが,4ページ,先ほどから話題になっておりますいろいろな情報公開の項目がありますが,これはある意味,高等教育機関が出す教育の結果を公表しているという情報公開です。むしろこれに加えてもう一つ必要なのは,各高等教育機関がどのような教育をやっているのかという,プロセスに対しての説明です。情報を公開する際にも,大学というのは機能分化の中で多様な学校が存在し,そこには多様な成果というのが考えられるわけです。
 ただし単独の,大学で,本当に小さな大学などは,どのような情報公開をしていいか分からないというところがあります。よって同じような養成目標とか,同じ分野を持っている大学同士,例えば私どもは短期大学ですが,短期大学の職業人養成においてどのようなプロセスが学修成果につながっていくのかに関して,大学間連携のでコンソーシアム等で共同での情報公開を行うことで,プロセスに対する説明責任を果たすような試みなどをする必要もあるのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  今,濱名委員が,金子委員と意見が違うとおっしゃったのですが,私は余り違っていないと思います。
 私は別に何か成果をそのまま測る方法があって,それを全部同じように公開しろというのは,むしろ私はできないというふうに申し上げていました。ただ,今,安部委員がおっしゃったように大学の努力が分かる情報,そういったものについてはなるべく公開するのが重要で,しかもそのときに全大学一律で必ずしもやらなくて,大学がコンソーシアムを組んで,こういったことを公開すると。同じフォーマットで学生に聞いて,それを公開するといったことはあり得るのではないかということを申し上げたので,そこはかなりいろいろな要因が働いて,これを一律的に全部公開しろといった場合に問題が生じるとか,様々な問題があると思いますが,しかし,今から何をするべきかというと,やはりある程度公開できるところ,それが大学側の努力を表すような指標である。そういったものはなるべく公開していく。しかもそれを認証評価に使っていくということは,重要なのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,ございますか。もし,なければ。
 ありますか。美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】   この情報公開のところには,IRという言葉は全然出てきていないですが,インスティテューショナルリサーチを進めるとか活用するとか,改革していくときという今までの話と,ここの情報公開とはどのような関係がある。あるいは,ないから全くその言葉が出てこないのでしょうか。
【鈴木主査】  事務局,どうぞ。
【平野大学改革推進室長】  示し方の問題があったのかもしれませんが,私どもも決してこれを,実際のときに挙げた例示の部分というのは,一律に公開をするということを想定しているというよりは,まさにここの下線で引いてございますように,世界的に標準化されたもののない中で,各大学やはり自らの戦略の,自らのディプロマ・ポリシーと言っていいかもしれませんけれど,したがって策定・開発していって,自ら取捨選択していくということは当然の前提であると思ってございます。
【鈴木主査】  よろしいでしょうか。
【美馬委員】  つまりどういうことでしょうか。
【平野大学改革推進室長】  あたかもこれが一律で公開するようなことを意図しているかのような誤解が,会場の方も含めてあったのかということでありますので,そこは補足したという趣旨でございます。
【美馬委員】  私は一律に公開するということを言っているわけではなくて,IRというのを使っていきましょうとか,その原理とはどうだと言っていることで,いろいろな情報を集めて分析をしていくということと,今回の情報公開ということの関係性について全然触れられていないのですが,そこはどうなっているのでしょうかということです。
【平野大学改革推進室長】  すいません。今のは先生に対するお答えということではなかったものですが,対応していませんでしたが,先生のおっしゃった趣旨というのもしっかり含めて検討していきたいということでございます。
【濱名委員】  関連して。
【鈴木主査】  どうぞ。では,濱名委員でおしまいにさせていただきます。
【濱名委員】  個々の学生の習得した知識や能力の変化を把握しようとすると,IRの充実なしではできないわけです。個々の独立したデータではつなげないので,むしろ個人に焦点を当てたIRを用語として入れていかないと,把握はできないです。要するにアグリエートされたデータは,後で分析しきれないので,そこのところがなくて,機関間比較にむしろIRの関心が行っているということに私は非常に危惧を感じているところなので,むしろそちらは今回の原案の意図から,趣旨から言えば,今,御指摘があったところは非常に重要なポイントなので,書き加えていただいた方がいいのではないでしょうか。
【鈴木主査】  よろしゅうございますか。
 多々御意見を頂きました。ありがとうございます。
 続きまして,認証評価制度,学位の国際的通用性,高等教育機関の国際展開,リカレント教育について,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  まず,6ページ下から7ページの認証評価制度についてでございます。
 (1)現行制度・現状については御案内のとおりでございまして,平成16年度に創設をされ,(2)の課題ですが,昨年3月の大学分科会のまとめにおいても,引き続き課題として内部質保証が有効に機能していると判断された場合の評価内容・方法の弾力化・効率化,大学の作業負担の軽減,国立大学法人評価など,他の評価における教育研究に関する評価資料・結果の活用。機関別評価と分野別評価の関係の整理等々について,引き続きの検討課題として挙げられております。(3)の論点と検討の方向性ですが,一つ目に,内部質保証が有効に機能していると評価された場合は,次の認証評価においては内部質保証以外の評価項目は,前回評価で指摘を受けた箇所や改善を図った箇所,大学が評価を希望する項目のみの確認とするということは考えられないか。
 また,2点目に財務に関することにつきましては,国公立大学における法人評価の年度評価や,私立大学が独自に実施する外部評価等において,一定の要件を満たし,認証評価よりも短いスパンできめ細かく受審していると確認できた場合には,機関別評価において財務に関することの評価を受けていると整理をすることはできないだろうかということ。
 次のページで,国立大学法人については,国立大学法人評価において,大学の教育研究の状況について学部・研究科ごとにきめ細かに評価をしているということに鑑み,国立大学法人評価と認証評価の目的等の異同に留意しつつ,効率化の観点から認証評価の在り方を根本的に見直すこととしてはどうか。
 次に専門職大学院に係る分野別評価につきましては,制度当初に専門職大学院は新たに創設する制度であるので,第三者評価による質の維持向上が不可欠との理由から設けられておりますが,もう3巡目の分野別評価に入っているということなどから,受審期間を例えば7年以内とし,機関別評価と一体に行うことを可能とするなど,根本的に見直すこととしてはどうか。
 次に,複数回にわたり認証評価を受審している大学については,前回評価で指摘を受けた箇所や改善を図った箇所はこれまでどおり評価することとするが,その他の項目については,評価項目から削ったり事故評価書の記載内容を大幅に縮減したりするといったことを可能とするなどの改善は考えられないか。
 最後に不適合とされた大学については,受審期間を一時的に現在の期間よりも短くするということは考えられないだろうかという論点でございます。
 次に学位の国際的通用性でございますが,現行制度では,国際的な人的流動性が高まっているという中で,その下の専攻分野の名称の多様化ということで,平成3年の時点で29種類に限定列挙されていた学士・修士・博士の種類が廃止され,各大学において専攻分野を付記することとなった。その後,専攻分野の名称は増加を続けて,平成27年には723種類になっている。そして1大学のみでしか用いられていない名称も多い。平成20年の学士課程教育の答申においては,専攻名称の在り方について一定のルール化を検討するということですとか,ルール化の検討に当たっては,日本学術会議や学協会との連携協力を図ると。この答申を踏まえて,日本学術会議が平成26年に提言をまとめたところでございます。
 課題といたしましては,例えば外国での学位承認のために当該大学が政府によって認可されているかなど,大使館等による公的な証明の追加的発行を求められたり,当該政府が作る日本の大学リストへの掲載が必須とされたりする事例,また日本特有の学位,準学士,高度専門士,修士(専門職)等々について,外国機関の理解が難しいといった事例がございます。また専攻分野の名称の多様化については,諸外国での進学や就職に当たり,学位を見ても大学で何を学んだのか分かりにくいという指摘がある。
 論点といたしましては,一つ目に,日本の高等教育制度の仕組みや学位等の種類,機関一覧等を,英語公定訳を含めて整理すべきではないかということ。二つ目にユネスコの太平洋地域規約の締結と国内情報センターの設立等を通じて,国際的枠組み作りに参画すべきではないか。また,世界に向けた情報発信を推進すべきではないかということ。
 そして,専攻分野の名称の多様化については,学位の名称は,習得する学問の本質に従って定めるという考え方を徹底すべきではないか。その上でディプロマ・ポリシーにどのような分野でどのような能力を身に付けるプログラムなのかを記載することを徹底することによって,専攻分野の内容が明らかになるのではないか。そして,英文表記として,日本学術会議の提言を参考に,Batchelor of広い分野,そして細かい分野については,inの後に示すといったようなことを国が推奨することによって,国際的通用性を担保するということは考えられないかということでございます。
 6の高等教育機関の国際展開につきましては,平成17年に日本の大学が外国において教育活動を行う際,日本の大学の一部として位置付けることが可能となっておりますが,課題といたしまして,現在までにこの制度の活用が十分に進んでいないと。その背景としては,日本国内での教育活動を前提とした制度等を,外国での教育活動展開の条件として等しく適用する困難さ。例えば校地校舎の自己所有ですとか,そういった課題が指摘されております。そして海外展開を促進することが求められている。
 3番の論点といたしまして,こういった海外展開の際に直面し得る課題,阻害要因等を整理して対応を検討すべきではないか。例えば外国では日本同様の条件遵守は難しい制度の改正,あるいは積極的に海外展開を検討できるようなインセンティブの付与の方策が必要ではないか。
 そして,7番にリカレント教育でございます。リカレント教育の必要性は高まっているわけですが,二つ目の丸にありますとおり,科目等履修制度や履修証明制度を使いながら様々なプログラムが提供されていて,平成27年には職業実践力育成プログラムとして文部科学大臣が認定する制度を創設している。更に現在,政府では人生100年構想会議ということで,人生100年時代に求められる教育の在り方ということで,リカレント教育に焦点が当たっております。そして,ワーキンググループのヒアリングにおいては,人生の中で3回大学に入るのが当たり前の社会を創るべきだという指摘もあったところでございます。
 下の(2)課題につきましては,プログラムの内容や費用負担,履修時間等について様々な課題が指摘されており,OECDの中でも社会人学生の割合は低いと。アンケート調査では,大学等で学ぶことを原則認めていないとする企業の主な理由として,多くが本業に支障を来すためと回答している。また,実際に学び直しを経験したことのない社会人の多くが,障害要因として費用が高過ぎる,1年未満のプログラムが少ないと言っている。あわせて,リカレント教育を行っている社会人の中では,大学等で学んでいることを企業に報告していないといった方も一定数いるといったような調査がございます。
 今後の方向性(3)の構成として,国や大学等は,リカレント教育を大学等のミッションとして明確に位置付けるべきではないか。そして,その際,次の丸で,どのような社会人・企業をターゲットとし,どのような知識・スキルを身に付けさせるのかを明確にすることが不可欠ではないか。
 次に産学連携によるプログラムの改善・充実という観点から,大学等と企業・産業界等の対話の場を構築し,産学連携によるプログラムの改善・充実を推進することができる体制整備について検討してはどうか。
 また,最後のページですが,こういった場合には,更なるリソースが必要になるという観点から,大学等におけるリカレント教育を拡充していくためには,産学官一体となって支える仕組みが必要ではないかということ。
 そして,次に社会人が学びやすい環境の整備ということで,受講に伴う経済的負担の軽減という意味で,より短期の実践的・専門的なプログラムの認定制度の創設に向けて,履修証明制度について総授業時間数120時間以上という現行規定の見直しを検討してはどうか。また放送大学やMOOCの一層の活用方策について検討してはどうか。
 最後にリカレントプログラムへのアクセス改善ということで,情報発信をより効果的にする仕組みを検討してはどうかという論点でございます。
 説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,認証評価制度,学位の国際的通用性,それから高等教育機関の国際展開,リカレント教育と4点について御意見を頂ければと思います。
 小林主査,濱名委員,前田委員,こちらまで。その順でお願いいたします。
【小林主査代理】  3点ほど申し上げたいのですが,最初に認証評価の問題ですが,大幅に項目等を削減する,あるいは同じような重複しているものをもう少し整理するということは賛成ですが,その中で若干気になるのが,一つは,こういった前回よかったからといって必ずしも今回は分からないという項目もたくさんあるわけです。つまり変化しにくいような項目と変化しやすい項目というのがあるわけで,例えば財務状況なんていうのは非常に極端に変化することもあるわけですから,6年間同じでいい,前回よかったからいいというわけにはいかないわけです。そういったところは,もう少し整理が必要ではないかと思います。
 それから,これは前回申し上げましたけれど,このように財務とかそれから前回よかった点についての項目を削除してしまいますと全体像が分からなくなってしまうという問題がありますので,逆に言えば,これはもう全体を付けていただければいいわけで,財務をほかのところでやっているからそれを削除していいというのは賛成ですが,それは財務情報というのは,認証評価のときには付けてもらわないといけないと思います。ということが1点です。
 それから2点目といたしましては,学位の名称の件ですが,この英文の方のところ,100ページにありますが,この表記の仕方というのは確かに一番分かりやすいと思いますけれど,これを邦文についても当てはめるということができないのかということです。つまり,一般的に学術的に広く認められている分野の名称を入れて,それを日本語でまず評価して,その上で各大学が順次付けられるという形式にすれば,もう少し整理ができるのではないか。そのガイドラインといいますか認められている名称というのをどう作るかというのは,文部科学省としてある程度のものを示すということが必要かと思いますけれど,そういったような整理をすれば,もう少し分かりやすくなるのではないかということです。
 それから3点目ですけれど,これは細かいことですが,リカレント教育というのが非常に急に出てきまして,特に定義もなく使われているわけですけれど,これはもう1980年代にOECDが作った言葉でありまして,それが急に復活してきたというようなところがありますので,もう少しリカレントとは何かが分かるような説明を付けていただきたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続いて濱名先生。
【濱名委員】  私も何点かあります。
 1点目は,私もリカレント教育という言葉を使われると,一時代前の,自分のやりたいことを学びに行くというような気がするので,むしろ社会人の学び直しという方が,現在のこれから対応しなければいけないものを意識するならば,そちらの用語を使う方が妥当ではないかと思います。
 2点目は,社会人が学びやすい環境の整備のところは,残念ながら私や川嶋委員が言った話はほとんど無視されているような気がしています。我々が申し上げたのは,履修証明制度の柔軟化ということだけではなくて,学生というものの定義自体の見直しをするべきではないかということが趣旨であって,履修証明の規制緩和をしてほしいという議論はここで出たのでしょうかと。私は余り記憶にないので,少し話が違う方向へ行っているのではないかと思います。学生のエフォート率も加味した形で定義付けであるとか,定員充足の問題等々ともつなげて,やはり考えた方がいいと思います。要するに社会人の学び直しをミッションだと言うのであれば,そのミッションに対する政策的な誘導とか整合性を保っていくためのものを作っていかなければ,いつまでたっても,大学にやりなさいと言うだけでは,なかなか動かないというところが一つあると思います。
 もう一点は,全体を通底して,社会人の教育に対して,社会人と大学生をある程度混ぜた形で教育をしようとしているのか,あるいは社会人をある程度特定化した形で別プログラムとしてやろうとしているのかが,少し見えにくいところがあります。前回の報告で言えば,早稲田大学の事例は,明らかに社会人を主対象とした教育プログラムです。私は,幾つか社会人の大学院のことを今,聴取していますが,その中で言うと,成功しているのは,社会人とアマチュア,つまり伝統的な学生が一緒になって教育をしたら,それがうまくいくと思っている大学は,うまくいっていないのです。
 やはりむしろ社会人の専門職大学院等々でうまくいっている事例は,徹底的に要するに一般の大学以上にFDもやっていて,徹底的に授業の進捗管理もしている状態でうまくいっている。ちなみに私の知り合いの某東大教授が,専門職大学院に行ったそうですが,やはり専門知識を持っていないと,大変な思いをしたようです。やはりそれは,対象者によって,少し分野が違う人が調査気分である程度1科目取りに行ってみたら,そんな状態があったというので,やはり社会人を対象とするこの学び直しの制度設計自体も見直していかないと,教員の側もそうです。18歳,19歳を教えている気分で大の大人を教えて,同じ教え方をされると,大人はもう要するに続けない。そこらは少し要素として,社会人の学び直しにとっての内容・方法というものについては,かなり開発していく必要があることは指摘した方がいいのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 前田委員,どうぞ。
【前田委員】  認証評価制度についてですが,まず大きな点で言えば,内部質保証を重視した評価がまだ始まっていないのに,それがうまくいくという前提で作られているということが非常に危ういと思います。これはやはり認証評価制度で,内部質保証が機能するんだということが分かった次に考えられるべきことだろうと思っています。
 あと個別点で言えば,最初の丸のところで,1行目に括弧して,例えば段階別評価で高い評価を得た場合とありまして,段階別評価というのは時々話に出てくるような気はしますが,段階別評価をやっている国はほとんどないと思います。つまり何のために段階別評価をするのかというのは,その認証評価がどういう制度かということと関わってくると思います。要するにある基準に照らして合か非かというところでいいのか,そこに段階を付けるのか。その段階は,とても難しいと思います。どういう基準で段階を付けるのか。内部質保証ができているか否かだったら,余り大学の性格によって差は出ないのかもしれないですが,段階別というのは,なかなか難しいだろうと思います。
 あと,小林委員がおっしゃったのと同じで,7年間もするといろいろ変わるので,前にいいと言ったところがいいかどうかは分からないということがあるのが,少しひっかかっています。
 それから,専門職大学院の評価ですが,特に海外の専門職大学院と競おうと思っていることなどを考えたときに,7年で大丈夫なのかということが気になります。
 それから,その一つ上の,国立大学法人のところは評価があるから,国立大学は根本的に見直すということですけれど,本当にそれでいいのかというのは前回の議論で出たところですが,根本的に見直すとしか書いていないので,どういうことをお考えなのか。括弧内に書いてありますが,本当にそれでいいのかというのは,ひっかかるところです。
 あと一つ細かいことで言いますと,私がいつもうらみに思っているようなところですが,最後の丸で,不適合とされた大学についてはとありますが,制度的に不適合がないのに,不適合とされた大学という書き方が大丈夫かということがあります。一つ質問ですが,不適合とされた大学の評価をもし早めるとしたら,それはどこの評価機関を受けてもいいですよね。その評価機関にそこから先まで面倒を見る義務はないと思いますので。その辺りが,気になります。 以上です。
【鈴木主査】  どうでしょうか。今の前田委員のお話は,御質問ですか。
【前田委員】  そうです。不適合とされた大学が受けるのは,どの評価機関でもいいですかというのが質問です。
【鈴木主査】  どうでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  恐らくそういうことではないかと。どこでもということにならざるを得ないかと思いますけれど,そこまでまだ具体的に想定して書いているわけではありませんので,今後また御議論いただきながら検討していきたいと思っております。
 国立大学との関係につきましても,前回はかなり認証評価をやめたらいいのではないかぐらいの決め打ちの書き方をしておりますが,そこはもう少し慎重に考えた方がいいだろうということもありまして,こういう根本的に見直すという言い方をしておりますが,ある程度ただ項目を減らすという言い方だけだと,これまでも何回も言っているので,抜本的に本当に負担軽減ができるのかという思いがありまして,そういった意味では認証評価制度という形を残すとしても,かなり思い切った見直しができるような方向で検討をするというニュアンスでこう書いております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続きまして上田委員,篠田委員,前野委員という順序でお願いします。
【上田委員】  認証評価のところについて,伺うことと意見があるんですが。
 私,このワーキンググループに出ていて,この認証評価の回のときの,何かあのやるせない雰囲気というのがすごく印象に残っておりまして,つまり評価する方も物すごい多大な労力を注(つ)ぎ入れていて,これでいいのかというふうに思い,評価される方もそういうふうに思っていると。その原因は二つぐらいあって,物すごく労力が掛かっているという,それが第1点で,そのことについては今回ここで書かれていますが,もう一つはあそこで何かやるせなかったのは,この大学のここがいいとか,ここが物すごく創発的で力を入れて取り組んでいるということをなかなか評価できない。あるいは評価される方も,せっかくここまでやっているのに,そのことが評価されないでスルーされていくという,何か前進していくところが全然表れないというやるせなさというのはあったと思います。
 今回は,それについては書かれていないというのは,そもそも認証評価というのは,そういうものではないというお考えでしょうか。認証評価というのは,もう最低限のそのことをチェックするのであって,そこが前向きにどう進んでいるかとか,ここで新たなものが出てきた,そのチャレンジングなことを評価するというのは,そもそも認証評価ではないので,そこについてはカテゴリーエラーだという感じでしょうか。
 ただ,あそこでやはり我々は前向きに取り組んでいくわけで,あそこでそれだけいろいろと言われたことが,ここには書けないのかもしれませんが,何か無視されてしまうというのは,私としてはもったいないという感じがしたので,伺ってみたいと思いました。
【鈴木主査】  まずは前田委員,それに対するお答えがありますか。
【前田委員】  一つ難しいのは,チャレンジングなことをやっていて,成果が出ていると褒められるのですが,認証評価機関としては,やっている途中段階で成果が見えないことはなかなか褒めることはできないのです。多分そういう部分もあるのではないかと思いますが,第1期よりも第2期の方が評価機関は褒めるということは一生懸命やろうとはしているのではないかと思います。
【鈴木主査】  それでは篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  同じく認証評価のところのページで言いますと,7ページになりますか。前田委員がおっしゃったところと同じ意見ですが,内部質保証というのが有効に機能している。これは今後の大学の多分根幹の課題の一つでありますし,認証評価も次のクールから,そこが最重点に大きく転換をしておりますので,そこを重視して,そこがしっかりやられているとことについては,一定の評価の軽減といいますか弾力化を図るという方向については,私はいいのではないかと思います。
 括弧で,例えば段階的評価というように,やり方をかなり強く示唆するような文言になっているのですが,内部質保証と言った場合には,この部会でも議論をずっとしているように幾つかの段階があって,私が所属している日本高等教育評価機構の場合には,大学全体については,例えば中期計画だとか経営改善計画だとか大きな計画がしっかりPDCAが機能しているか。それから教育のシステムについては,学部・学科・学位プログラムレベルでそういう三つのポリシーが機能しているか。それから個々の授業単位,教員単位でそういう改善のサイクルが動いているか。いろいろな側面で見ていかないと評価ができないわけですし,その評価の仕方も,本日議論になったようなシラバスや三つのポリシーの中味から,教育方法の改善から,それからそういうのがしっかり学修成果で評価をされているのかというようなサイクルが回っているかどうかというところで見てくるということになりますと,相当総合的な評価が求められることで,なかなか段階を付けてというところが可能なのかどうなのか。やはりその辺りのところは,認証評価機関ごとにきちんと内部質保証がされているという認定をする明確な基準をもって臨めばいいのではないかと思います。これが一つです。
 それからもう一つ,全体のまとめ方のところですが,今申し上げましたように内部質保証,教育の質向上ということが大学にとって大きなテーマだとしますと,論点のところで挙げられております,例えば1番とか2番とか4番辺りはそういうところに関連をする条項になっていますので,大学の側から,こういう議論を受けて大学の側が教育改革をしていこうとするときに,やはり方針・教育プランを明確にして,それを評価して,改善するという流れで大学は考えますので,それに沿って何をしなければならないかということがある程度流れに沿って見えるような形の整理の仕方というのが,最後のところでは是非御工夫いただく。図で分かるようにするとかいろいろなやり方があろうかと思いますが,改善をする大学の側の方にメッセージがしっかり伝わっていくようなやり方というのを,まとめ方というのを是非お願いできればと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 では,前野委員,それから金子委員,お願いいたします。
【前野委員】  それでは,高等教育機関の国際展開について,少しロングレンジの話をさせていただきたいと思います。今,国際展開ということで幾つかの大学が海外展開をされているのですが,これにはやはり我が国として少しポリシーを確立させながらやっていった方がいいのではないかということでお話をしたいと思います。
 各大学からすると,あるいは高等機関からすると,まず海外展開をして,特にASEANの国等で展開をして,大学の活動を広げて知名度を増す的なお話もありますし,また18歳以上あるいは大学院の学生を獲得するという面があると思いますが,一つにはそういったことがあると思いますが,やはり少しロングレンジで考えると,その国の発展に寄与すること,つまり海外展開をもって,まず高等教育をその国に確立して,同時に私どもも何かメリットを得るというのがとても重要なことかと思います。
 それと同時に,また高等教育を卒業した高度人材の日本への獲得と定住,単に留学生でやってきて,すぐ帰ってしまうようなことではない方がいいのではないかと思っておりますので,そういった両方の面からすると,例えば18歳以上で限ってしまうと,これは欧米の大学にかなわないのです。例えばインドやほかの優秀な学生をアメリカが一杯集めていますけれど,中国とかですね。それと対等に日本が戦えるかというと,これは難しいと思います。
 したがいまして,高等専門学校も今,海外展開していますが,15歳からの若年層というのを,その国の発展に,高等教育システムを入れることによって寄与することと同時に,若年の,つまり15歳からの我が国の考え方,あるいは言語,あるいは我が国が特徴を持って発展している産業技術の展開方法といったものを知っていただいて,それから日本に来ていただくということはとても重要なことではないかと思います。
 今,国内では高大接続という形でとても議論されていますが,例えば高大接続のやり方を海外展開すると。こういったことを大学の方あるいは短期大学の方も考えていただいていいのかと思います。高等専門学校は,今まさにそういうことをやり始めているのですが,それぞれの国の事情がありまして,そう急速にはもちろん展開できませんし,ともすればその国の単に例えば自動車的になりますと,自動車の整備をやるだけの学校というように考えられますが,そうではなくて,我が国の得意な分野,かなり現実から高度な分野までの高等教育ということを考えますと,やはりそういった若年層を開拓する。それから日本の考え方になれていただいて,いずれ我が国に高度人材としてやってきていただいて定住するというスタンスを考えることはとても重要だと思っておりますので,この国際展開についてはもう少しこれからも固めていただきたいと思います。
 例えば具体的に例を示しますと,ちょうど9ページ目の真ん中辺り,日本特有の学位とありますが,これは準学士,高度専門士,修士(専門職)といったものがあります。あるいは省庁大学校の課程修了者の学位といったものは,もちろんほかの国では余り見掛けないものですから,知られていないですが,むしろこれは我が国特有なものとして大いに広めていく。あるいは実態と併せて広めていかなければいけないことだと思いますので,恐らくそこをこれからも国際展開のキーワード的なものとして,例えば私どもは高等専門学校の人間ですが,日本の準学士というのはどういう実力を持っているかということを具体的に示すことはとても重要だと思いました。
 当然その英語訳ですね。Batchelor of何々というのだと多分違いますので,どういう形の,ディプロマを使うのかどうか分かりませんけれど,そういったスタンダードを作るような意識でやっていただければと思っております。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  一つは評価の件ですが,これだけ読んでいますと,大変だから変えようというような気がします。労力がたくさん掛かることはもちろん問題ですが,もう少し本質的な問題があって,それは教育内容が非常に多様化しているために横断的なプログラム評価というのは非常に難しくなっているというのは,基本的なやはり評価の問題点だと思います。
 専門分野別の評価というのは,かなり難しい。そのときに,どのようにやっていくのかと,評価していくのかということは問題で,その場合には,やはり内部の評価というものにある程度依拠しなければいけないということだと,思いますが,ただ,そのときに自己評価について,何らかの基準が必要だということは,やはり思います。
 先ほど篠田委員が,そういった標準を作っているという例をおっしゃいましたが,何らかの形でガイドラインを作る,自己評価についてどういうものが必要なプロセスであるのかということについて何らかのガイドラインを作るということ。何が要件なのかということを議論しておくということは必要なのではないかと思います。
 それからもう一つリカレント教育についてですが,基本的にやはりリカレント教育というのは,名前は別として,問題は非常に多様な形態を取り得るので,なかなか議論がしにくく,イメージが描きにくいところがありますので,それをどのように整理するかというのが問題だと思います。
 例えば120時間の問題も,これは私,履修証明制度ができたときからこういった委員会に参加していますが,そのときに120時間というのは比較的厳しいのではないかという意見がありましたが,最初は制度としては厳しくするということで,もう少し柔軟にしてもいいのではないかと申し上げた覚えがありますが。ただ履修証明だけではなくて,履修証明を課せられて修士あるいはほかの学位に結び付けられる累積的な考え方をどう考えるのか。
 あるいは一部には実際には1年間でマスターを取れる制度を実施しているところもあります。そういった意味で,1年マスターとか,一定の分野については,どういう要件であればそういったものが認められるのかといったふうに少し幅を広く取って,どのような制度が可能であるかということを整理するという姿勢が必要なのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 本日は,取り上げるテーマが非常に多くございましたし,また一つ一つが非常に深い内容を持っておりましたので,非常に多くの方々から御意見を頂きました。本日頂いた御意見を反映させた上で,11月29日水曜日に開催予定の将来構想部会に報告をしたいと思います。具体の修正につきましては,私に一任をお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 本日の議題は以上となります。最後に今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  次回は,12月6日水曜日10から12時を予定しております。場所は本日と同じ,この会議室でございます。
 いつものとおり郵送を希望される委員の先生におかれましては,机上に置いてある附箋に郵送御希望と御記入して残していただくよう,お願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは本日の議事は終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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