制度・教育改革ワーキンググループ(第6回) 議事録

1.日時

平成29年10月30日(月曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学位プログラムについて
  2. 社会人の学び直しについて
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,濱名篤,福島一政,本郷真紹,前田早苗,前野一夫,溝上慎一,美馬のゆり の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,村田私立大学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私立大学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)古谷早稲田大学教務部長・法学学術院教授,受田高知大学副学長・地域連携推進センター長

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第6回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,大きく二つの議題について議論いたします。学位プログラムについてと社会人の学び直しについてです。いずれの議題も8月29日に開催されました本ワーキンググループで一度御議論いただきまして,今回が2回目となります。学位プログラムについては,学位プログラムを中心とした大学制度について,現行制度とそれらの課題を踏まえた社会の変化や,学生本位の視点に立った学習を実現するための制度について検討の方向をまとめておりますので,事務局からの資料の説明後に意見交換を行います。また,社会人の学び直しにつきましては,早稲田大学と高知大学から,それぞれ先生にお越しいただいておりますので御発表をいただいた後に意見交換の時間を設けておりますので,闊達(かったつ)な御意見をよろしくお願いいたします。
 それでは,まず事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第にありますとおり,資料1-1から資料4まで,プラス机上資料で高知大学からのチラシが入っております。不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】  それでは,議事を進めます。一つ目の議題は,学位プログラムについてであります。冒頭申し上げましたとおり,学位プログラムを中心とした大学制度について,社会の変化や学生本位の視点に立った学修を実現するために,現行と制度とそれらの課題を踏まえまして,学部等の組織の枠を超えた学位プログラムを新たな類型として制度化することについて,その議論等を含めた検討の方向をまとめております。
 初めに事務局より,資料1について御説明をいただいて,その後意見交換を行いたいと思いますので,それでは,説明をお願いいたします。
【林大学振興課課長補佐】  それでは,お手元に資料1-1と資料1-2を御用意いただければと思います。資料1-2につきましては,第3回のワーキングで御議論いただいた際に頂戴した意見の概要をまとめたものでございますので,適宜お目通しいただければと思います。本日,検討の御議論の中心となりますのは資料1-1,検討の方向性について資料を御用意させていただきました。説明させていただきます。
 まず,1でございます。「学位プログラムを中心とした大学制度」が目指すもの。学位プログラムの定義につきましては,一つ目の丸でお示しをしているとおりであります。現行制度におきましては,大学の学部等を置くことが常例とされておりまして,この学部等が設置基準に定める外形的な要件を満たしているということ。そして,設置認可に係らしめるということによって質が保証されているというのが制度上の建て付けになっております。
 また,本来の学部等の組織においては,教育研究が一体的に遂行されることが期待されています。したがいまして,学生の所属する組織,教員が所属する組織,提供する学位プログラム,これが一対一の関係にあるというのが,最初の原則となっております。
 一方で,こうした学部という組織を前提とした大学の在り方については,2点ほど大きく課題が指摘されています。一つ目としては,急速な学術研究の推進や大学教育に対する社会的なニーズ等も踏まえて,研究上の要請と教育上の要請とが必ずしも一致しない場合がある点。二つ目として,学部等の独立性を強調する余り,組織間の協力や資源の結集,これは全学的なものが困難となり,例えば境界領域の分野などの教育に機動的に対応できないことがあるという点でございます。これは従前から指摘されてきた課題かと存じます。
 こうした中で,既に学教教育法の体系でも,大学において学部等以外の教育研究上の基本組織を設けるということができることとされておりまして,一部の大学では,教員組織と教育組織の分離,こうした工夫,取組が見られるところではございますが,しかしながら,次のページ,2ページ目でございます。現行の設置基準におきましては,既存の学内の学部や,学部以外の研究上の組織を,こうした学内の資源を持ち寄って新たな教育課程を編成・実施することを想定しておりません。結局のところ,新しい学部等について,専任教員の基準であるとか,面積基準,施設設備の基準を満たすことが求められることになりまして,大学全体としては新たな資源を用意することが求められることになります。このことが,各大学における学部横断的な取組を躊躇(ちゅうちょ)させる一因となっており,制度上の課題と指摘されております。
 こうした現行制度上の課題を踏まえまして,今後は特に,3月の諮問文にもございましたように,学問の進展や社会の変化に対応した教育,学生本位の視点に立った学習を実現していくために学位を与える課程に着目した在り方,こうしたものを重視していく必要がございます。こうしたことから,複数の学部等を設置する大学が,学部等の枠を越えた学位プログラム,この資料ではこれを学修プログラムということで書かせていただいております。これまでの学部等と異なる新たな類型として設置できるように,制度上位置付けることとしてはどうかと考えております。
 先に資料の6ページの方に,今回初めてでありますが,概念図,ポンチ絵を付けさせていただきました。説明でも申し上げましたように,現行設置基準においては,学生組織,また教員組織と提供されるプログラムが一体となっているもの,これがピンク色で図示しております1であります。従来の教育課程,これも組織と一致した形で学位プログラム足り得ますが,このたび新たに類型として御検討いただきたい学位プログラムの種類といたしましては,こうした組織によらずに学部・学科の枠を越えたプログラム,これを制度上に位置付けていくという論点について御検討いただければと思います。
 オレンジ色で図示しております2の学位プログラムのことを学修プログラムということで,この資料では称したい,整理したいと考えています。この学修プログラムの制度上の位置付けによって,2ページ目の最後の丸にございますように,機動的かつ学部横断的な教育課程の編成,こういったものの実現を容易にしていきたいと考えています。
 さて,この学修プログラムの制度設計上の論点として,3ページから4ページにかけて7点ほど論点を掲げさせていただいております。まず一つ目でございますが,こうした学部等の組織を越えた教育課程の設置基準上の在り方でありますが,このプログラムが既存の学部等の緊密な連携・協力のもとで,教育課程を実施する上で必要な教員の役割分担,施設整備その他の諸条件を整えること,また学修プログラムが既存の学部等の連携・協力のもとで教育課程を適切に実施するためにふさわしい運営の仕組みを備えるということが可能な場合においては,この当該プログラムに連携・協力する複数の学部等においては設置基準上の要件が満たされていることが,これを前提とした上で,原則として,プログラムについて個別に新たな設置基準上の要件を求めないこととしてはどうか,機動的に運用できるようにしてはどうかということでございます。
 2点目といたしまして,大学設置審査との関係の在り方でございます。これが設置基準の運用の機動性を高めるということが趣旨でございまして,単なる設置基準の緩和とすべきではなく,やはりそこにおいては既存の学部等の設置基準上の要件と見るべきところは同様にすべきではないかという論点もセットで考えるべきかと思います。特に学位の種類については,既存の学位ではなく,新たに新しい種類の学位をお出しするということになった場合には,これは原則に立ち返って設置認可を求めるということは,当然に必要ではないかという点でございます。
 3点目といたしまして,教学管理体制の在り方についてです。学修プログラムの質保証の観点からは,シラバスの作成・各授業の実施・成績評価といったカリキュラムの編成・実施,また学生への教育指導,履修指導,担当教員のFDといった学修プログラムの教学管理体制がどうしても必要になります。特に学部・学科の組織を越えたプログラムについては,責任を持って担当する教員を大学として確保するように求めていくことが必要になります。また,学長のもとに全学的な組織を設け,学内の教育課程の質保証の取組を一元的に進めていくという論点も,この延長にはあろうかと存じます。
 4点目として,学修プログラムを担当する教員組織の在り方についてであります。現行制度につきましては,前回のワーキンググループでも議論いたしましたように,設置基準上は「一の大学に限り」と専任教員という規定になっておりますが,運用面では,結局のところ「一の学部・学科に限り」専任教員が張り付いているという実態がございます。そこで,この制度上の位置付けにおきましては,学修プログラムの教育に一定の責任を負うなどの要件を満たす場合には,学部等に所属している専任教員が,この学修プログラムの教育に携わることができるようにしてはどうかと考えます。一方で,一定人数をしっかりとそろえていただく必要もあろうかという論点もあろうかと思います。
 あわせて,先般の25日の将来構想部会の資料でも出ておりましたが,専任教員の在り方の議論というものも,この論点の延長にはあろうかと存じます。この(4)との関係で非常に重要な論点としては,(5)のエフォートの管理の在り方でございます。設置基準上の専任教員の運用の緩和をする場合には,大学教育の質の保証の観点から,対外的にも明確となる方法で教員の勤務状況を適切に管理いただく必要があるのではないかということであります。また,社会人の学び直しニーズの高まりなどに応じて,履修証明プログラム等の拡充が見込まれることと中で,エフォート管理もしっかりと行っていく必要があるのではないかという論点でございます。
 6点目は,学生組織の在り方についてであります。現行制度においては,収容定員は学科・課程を単位として,学部等で学則に定められております。この学修プログラムの実施に当たっては,複数の学修プログラムを構成する学部・学科の定員の範囲内で設定していただくこととしてはどうかと考えます。その際に,6ページの資料は1年生から始まるようなイメージを想定しておりますが,例えば1年生から開講されるようなプログラムの場合には,入学選抜単位としても考えられるのではないかという論点でございます。また,重要な論点としては,所属意識の問題,帰属意識の問題でございます。学修プログラムに参加する学生の帰属意識を醸成するような取組も,大学においては必要ではないかという論点もございます。
 7点目としては,内部質保証の在り方でございます。現行においては,大学,学部,学科,課程ごとに「三つのポリシー」を策定いただくことになっておりますが,学修プログラムの実施に当たりましては,この当該プログラムにおいても,このポリシーの定めること,また,認証評価に当たっても,その単位としてはどうかというものでございます。以上が,制度設計上の論点,7点でございます。
 加えて,その他の論点としては2点ほど5ページ目に付記してございます。(1)については,対象となる学位でございます。6ページも学士課程を想定した絵になっておるのですが,これに関しましては,学士に限らず短期大学学士,学士,修士,博士,専門職学位も含めた全ての学位課程を対象とした制度とすべきではないかという論点もございます。一方で,今般新たに制度化されました専門職大学,専門職短期大学におきましては,設置基準上,教育課程連携協議会であるとか,臨地実務実習,又は4種類の科目を一定単位数以上開設するなど,設置基準上の固有の条件が認められているという性質に鑑みまして,これに限っては慎重に検討すべきではないかという論点もございます。
 最後に,医師・歯科医師・獣医師・看護師等の職業養成課程との整合性でございます。こうした国家試験と連動しているものに関しましては,教育課程そのものの認定が組織に付随しているということに鑑みまして,また学修プログラムも教育の内容,また機動性という性質に鑑みて,この学修プログラムの対象からは除外すべきではないかという点,これも論点としては付記させていただいた次第でございます。
 資料1の7ページ以降は関係条文を付記してございますので,適宜御参照いただければと思います。事務局からの説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。非常に内容的に多岐にわたっている御説明をいただきましたが,ただいまの資料や事務局からの説明を踏まえまして,御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。どうぞ。
【本郷委員】  前回のときに少し御発言させていただきましたが,10年前にもこのワーキングが立ち上がって,これまで何度かこの学位プログラムの議論というのはいろいろな形でなされてきました。ところが,残念ながらそれが抜本的な改革に結び付くに至っていないと思います。今次,このワーキングで当初ございましたように,2040年をにらんで,本当に根本的に大学の組織といいますか,教学体系を変えていくという観点から,このプログラムはどうするかということについて,本格的に検討していくということでございますので,その際に,何が課題かということを経験上お話しさせていただきたいと思っております。
 本日,本当にこれはコンパクトに要点をまとめていただいて,ほとんど課題はこの中に含まれていると思いますが,前々回,福島委員から,私どもでかつて展開しておりましたインスティテュートという名前の新しい試み,具体的には文理総合インスト,それから国際インスト,それから人文総合インストという三つの柱で立っているわけで,これはインスティテュートという名前を付けておりますけれども,内容的には学位プログラムとほとんど変わりのない,そういう試みでございました。
 学部定員の一定数を割いて,最初からインスティテュートという枠組みで学生を募集して,それぞれの学部,あるいは学科専攻に所属をさせながら,他学部のそれ用に準備された授業を受講させ,一定の枠組みの中で単位を取得させることによって,複合的な学びというものを目指したというのが目的であったわけで。結論的に申しますと,国際インストなんていうのは,国際関係学部という,それに特化した学部もございますが,それ以外の法学部,政策科学部,産業社会学部,文学部という四つの学部から,国際インスティテュートという枠組みで学生を募集して,国際関係学部の授業を含めて,いろいろなその分野の関連する授業を受けさせ,さらには,GPも活用させていただきまして,留学を行わせるというようなことで,かなり入学者の資質と,それから語学の到達度,さらにはGPAという点からすると,正直申し上げましてかなり発展したといいますか,当初の目的どおりに成長したことが実感されたわけでございます。ところが,現在これはもうなくなりました。もう運営できなくなったということです。
 どこにそれは問題があったのかということですが,いろいろな形で,いろいろな尺度からこのことを総括しておりますが,やはり一つはこの3ページのところで御指摘されました,確かに学部の枠組みという,制度的な制約もさることながら,(3),(4),(5)で示されました,いわゆる教員課題であります。国際関係学部の教員が中心になりながら,各学部から輪番でインスティテュート担当という教員を出して,それが教学運営委員会というのを組織して,毎年のそういうプログラムを策定したりとか,あるいは学生の指導に当たったりしていましたが,やはり一貫性がありません。そして,教員の方に,本来自分の学部でしかるべきゼミを持って,それなりの教育負担というのを負いながら,プラスアルファでかなりの労力をインストに割かなければならないということで,非常にだんだんだんだんと年次を経ますとばらばらになってまいりまして,しかも当初200名ほどの定員だったのが400に増やしたもので,余計に負担が大きくなったということで,結局は教員の理解と前向きな姿勢が得られなかったということが一番の要因で,結局中断せざるを得なくなったということがあります。
 そうした場合に,この(4),(5)で指摘されていますように,では今後そういったことを担う教員の体制をどうすればいいのかという課題になると思いますが,一つには,なかなか自分の所属する学部で,しかも専門の研究も行いながら,他学部の学生に対して十分な手当てをするということは物理的にも非常に難しい問題があります。したがいまして,それに専念するような教員を採用するということは当然必要になってくるとは思いますが,現在の制度では,私立大学の場合でも,やはり教員の採用というものは,研究実績評価というものを一番機軸に置いておりますから,研究というものに一つの足を置いて持っていないとなかなか教員になれません。そうしますと,どうしてもやはり最初はそういう条件で採用したとしても,年次を経るごとに,本来自分は研究者なんだと,こういうことをサービスでやっているという意識が出てきて,結局はこれが駄目になってしまうということになります。
 だから,本格的にこういうことを検討していくとするならば,いわゆる研究実績評価オンリーだけではない,ほかの指標からの教員というものを採用するというような,そういうシステムを作らざるを得ないということと,その場合には,その教員のエフォートをどうするのか。むしろ一番大事なことというのは,授業の内容はさることながら,やはりまだ何となく入ってきたばかりの,海のものか山のものか分からないような,特に1回生,2回生ぐらいの学生に対して,しかるべきコーディネーターとしての役割を果たすという,これはかなりの労力が要るものですが,そういうことを行う専任の教員というものがかなりの数がないと,これはなかなか運営するのは難しいであろうと。
 ですから,少し課題を分けて,学部,学問特性というのはございますので,一番後ろのところで医師・歯科医師・獣医師・看護師等の職業養成課程は別だと書いてございましたが,プラスして,やはり本当に最初からいわゆる基礎科学をやりたいという,人文系,自然系の,これもやはりそれはそれなりに学位プログラム的にも完結していますからいいと思いますが,要は社会科学的でありますとか,あるいは学際的な分野,あるいは横断的なことをやりたいということに対して,しかるべきコーディネートをきっちりとできるような力量を備えた教員と,それから職員,私立の場合ですと,職員がかなりその役を担うことが多いので,従来の職員の定義,枠組みとは違った,本当にコーディネーターとして動き得るような職員というものも含めて,教職全体で支えていくというような体制を作らないと難しいのではないかと考えた次第でございます。
 最後に,長くなりましたが,もう一つ特色的に作りました,文理総合インストというのは,たまたま同じキャンパスの中で,経済学部と経営学部と理工学部というのが隣接するところにございましたので,経済,経営の中から自然科学的な授業を取る,それを単位化する,その学生と,それから,自然系の中で,今度経済,経営の手腕を学びたいという学生を募集しましたが,自然系の方は,理工学部の学生は,どちらかというと自分の機軸を置いている理工学部の実験等々でかなり縛られるのが多いので,あくまでも余った部分でいわゆる経営的手腕というのを学び,中にはアントレプレナーで新しい企業を興したというような学生もいましたが,問題は経済,経営の学生で,明らかにつまみ食いをするのです。自分の学部よりも単位が取りやすいと,基礎的なことで済むということで。ですから,どうしても学部の教授会の方から,質保証ができないと,これでは学位が出せないということが問題になって,文理総合インストも結局閉塞したという経験がございます。
 このあたりの課題をこれからどのように扱っていくのかというのは,非常に重要なポイントになるでしょうし,現実に今,そういうことを行おうとされている,例えば九州大学の21世紀プログラムでありますとか,あるいは本来はそういう目的も持って設置されたであろう,京都大学の総合人間学部というようなところが,一体何の課題があったのかということをきちんと総括した上で,その問題点を抽出して,しかるべき対策を講じていくということが一番大事ではないかと思います。
 マイナーなことで,ここは少しだけ変えましょうかとやっていても,なかなか体系的な改革にはならないのではないかということを危惧する次第でございます。以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  まず,二つほど質問をしたいと思います。発想は分かりますが,学位プログラムと学修プログラム,海外に説明するときに英語では何と説明するのでしょうか。例えばメジャー制というのをどちらとして説明して,それとこれは異なるというのを,我々は海外に対してどう説明していいのか,途方に暮れるところです。それが一つですね。
 もう一つは,今,本郷委員が最後の方に言われたことに少し重なってきますが,例えば1ページ目から2ページ目に,筑波方式が広がらなかったことについて論及されていて,立命館以前にトライアルをされたのは筑波だと思いますが,これが残念ながらどこにも広がらなかった。その原因は,2ページ目の最初の丸のところを見ていると,要するに,設置基準上の改組転換のときにうまくいかないという問題の立て方を,要するに総括をされているのか,あるいは教授会がそういう形でフレキシビリティーを持って物事を考えてくれないという問題だと考えておられるのかが,今一歩はっきりしなくて,そこをどう捉えておられるか,この二つが質問です。
 私の意見としては,本郷委員と共通するところがあるとすれば,更にまた複雑なトラックにすることが問題の解決になると思いません。というのは,筑波も結局,それがマジョリティーではないから,筑波大学がやっても広がらなかったものを,今度は例えば,今回提案されているのは,複数学部の大学だけで,例えば日比谷委員のところはメジャー制でもうやっていらっしゃるわけです。1学部でできるものが,なぜ複数学部ではできないのかということに対するソリューションが,さらなる多様化という話になってくると,恐らくこの学修プログラムというのは,受験雑誌上もほとんど取り上げてもらえないだろうと。つまり,現在の受験雑誌の取り上げ方でいうと,1学部1学科制で実質的に学科をオミットして,メジャーで募集されている大学はあるんですね。だけどこれ,どういうふうに受験情報として発信しようと思われているのか。非常にマイナーな形で,筑波の二の舞になるのではないかと思います。
 だから,むしろより共通して,学位プログラムというのはメジャー制なんで,メジャー制が基本で,例えばこれをどう記載されるのか。また新しい条文を僕は起こすべきではないと思います。例えば,本日の要覧の86ページに,設置基準の第5条がありますが,第5条の中では,当然のことながら,「学科に代えて学生の履修上の区分に応じて組織された課程を設けることができる」と,これの例示をするのであればいいですが,またまた似て非なる用語を使って,これが社会的に受け入れられて定着するとは到底思えないというのが個人的な意見です。ですから,最初のまず二つの問いに対する所見を伺った上で,また更に発言をさせていただければと思っています。
 これはさらなる多様化で,どんどん細分化したトラックを作れば,既にこの10年,私も中央教育審議会の場を汚すようになってから,そういう方向へどんどんいっているんですね。その結果,ますます外から見て分からなくなっているという,その反省がないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【三浦大学振興課長】  失礼いたします。最初の,学修プログラムということについてでございますが,これは今回の資料の整理上,あえて読替えとして学修プログラムという用語を使わせていただいたということでございますので,この資料で構想しているものも,あるいは現在,学部・学科でなされているものも同様に学位プログラムであると,我々としては認識をしております。資料上の読替えで,この方が分かりやすくなるだろうということで,以下学修プログラムということにさせていただいております。
 それから,筑波大学の例というのが,資料にもございますし,今濱名先生からも御指摘をいただきましたが,筑波大学の取組があればこそ,既存の大学に様々ないい影響を与えたことというのはたくさんあると思っておりまして,その中の一つが,現在いろいろな大学で進められているような,教教分離と言われているような教育組織と教員組織を分離すると。教員組織と言うべきか,研究組織と言うべきかは微妙ですが,教教育分離というのが進められているということだと思います。
 ただ,そこで既存の設置基準上の規定との関係で,機動性という意味で,必ずしも現在のニーズに合った形で様々な対応ができていたかというと,そこはやはり難しいところがあったのではないかという観点から,今回の御提案をさせていただいたと認識しております。
【鈴木主査】  どうぞ。
【濱名委員】  新たな制度を作るというわけではないということであるならば,先ほどの設置基準の第5条に書かれている条文のサンプルをもう少し広げていくという,様々な可能性があるということを理解させていくという御提案なのか,それとも設置基準上,新たな制度を作ろうという御提案なのか,それはどちらでしょうか。
【三浦大学振興課長】  考え方としては,新たな制度を作ろうという,今のお話でいうとちょうど真ん中ぐらいなのかもしれません。単科大学,一つの学部であるときには,現在の学科制,課程制の併用のような形で,ここに示しているようなことは実現可能だと理解しています。ただ,複数学部,総合大学と言われているような中で,組織の枠を越えてやるような場合には,やはり新たなルールをきちんと定めないとできないのかなと認識しております。
【鈴木主査】  よろしいですか。川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  今のところに関連しているかもしれませんが,1点確認と,あとはコメントを述べさせていただきたいと思います。
 3ページの(2)のところの最後の2行に,「学修プログラム修了者に授与される学位が新たな種類や分野のものとなる場合には,設置認可を得ることを求めるべきではないか」ということですが,一方で今,三浦課長からの御説明のように,機動性を高めるといって,クロスディスプラリーとか,そういうプログラムを作りやすくするんだというお話ですが,大学として考えた場合は,むしろ学位は同じでも,その次の分野を,新しい分野を作りたいという要望の方が強いと思います。そうすると,この3ページの(2)というところが,結局今までどおり学位の各個の中の分野を新しく開拓しようと思ったら,結局大学設置審査を受けなければいけないということになって,それが本当に大学の求めているところなのかどうかということがまず1点あります。
 それから,本日のお話の前提は,最後のところに書いてありますが,学部,学士課程なのか。僕はこれを読ませていただいて,すぐ頭に思い浮かんだのはむしろ大学院の方で,今,卓越大学院構想が動き始めていて,あの構想の中では,学内の複数の研究科,又は学外,他大学や機関との連携で新しい卓越大学院プログラムを作っていくということになっているので,むしろ卓越大学院構想の方が,こういう方法の方が適しているのかと思います。先ほど濱名委員がおっしゃったように,学士課程というのはかなり基礎基本で,割としっかりとした仕組みの方が日本の場合適していて,むしろ修士,博士の方を流動的に新しい分野を開拓していけるような仕組みにした方がいいかと,読んでいて思ったものですから,その2点についてのお考えをお聞きしたいというのと,あとは質保証のところです。
 学位ということで言えば,学位審査はどこがやるのかというのは,教員組織の在り方と非常に大きく関わってくると思います。先ほど,立命館大学の話ですと,結局最後の文理融合のところは各学部に所属している,本籍のあるところで学位審査をしているということでしたが,そういう仕組みをそのまま残したら元の木阿弥(もくあみ)なので,やはり学位審査をする組織として,きちんと教員組織を置くということ,従来の学部・学科の教授会であるということが明確になると思います。
 (3)の教学管理体制の最後の2行のところ,「学内の教育課程の質保証の取組を一元的に進めていく必要があるのではないか」といった,ここは学長になっているので,今の制度ですと,最終的には全て学長の責任のもとになっていますが,諸外国,アメリカとかイギリスを見ると,結局評議会なんですね,教育の質保証を持つのは。評議会の中に,例えばイギリスですと,レビューコミッティー,既存の教育プログラムのレビューを評価するコミッティーと,今度新たな分野を開拓するディベロップメントコミッティーとか呼ばれている,そういう二つのコミッティーがアカデミックセネットの下に置かれていて,新しいプログラムを大学の責任で設置するときには,ディベロップメントコミッティーで今度の新しいプログラムが,大学が授与する学位の内容と水準にふさわしいかどうかを自分たちの責任できちんと判断する。それを評議会がやっています。
 これは今回の話と直接関わりませんが,どうも学教教育法とか学長のリーダーシップ,ガバナンスの強化ということで,評議会の位置付けが,大学によりけりかもしれませんが,ほとんど名目上の組織になってしまって,機能していない。だから,大学としてはやはり評議会というのは教学,又は教育,研究についてきちんと自分たちでセルフガバナンスしていくという位置付ける必要があると思うので,それは一方で,学長サイドとのパワーバランスもありますが,そういう意味で,やはりここももう少し今後,質保証の管理体制といいますか,これから,何でもかんでも反対する組織というイメージではなくて,やはり教育,研究のことについては自分たちの責任でやっていくという,そういう認識を持った組織に評議会というのはなるべきだろうと思うので,是非こういう新しい制度が生まれるとしたら,新しい制度なのか,読替えなのか分かりませんが,そういうのができてくるのであったら,評議会の在り方についてもきちんと指摘すべきではないかと思います。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。
【三浦大学振興課長】  すみません。一つ目の,3ページ目の(2)のところ,大学設置審査との関係において,まさに先生御指摘のとおりでございます。ただ,今回の御提案としては,大学設置審査上の審査を緩くするとか,甘くするとかということを考えているわけではありませんので,そのプログラムの組み方として,そういうものが必要であれば大学の判断でできるように枠を少し広げたいという趣旨でございます。大学設置審査に係らしめるべき範囲をどうするかということについては,まさに御議論いただきたい観点の一つではありますが,事務局の御提案としては,今回の話と,設置基準上の審査の範囲を広げたり狭めたりするということは考えていないということが一つ目でございます。
 二つ目の,むしろ大学院ではないかということについては,事務局としても全くそのように考えております。卓越大学院という御紹介がありましたが,既に走っているもので言えば,リーディングプログラムというようなものもございますが,そういった観点からすれば,むしろ説明はリーディングプログラムのようなものを例示した方が,より分かりやすかったとは思いますが,議論の流れとして,まず学部段階の話として整理をさせていただいた上で,ほかの学位プログラムについてどうするかというような資料の作りにさせていただきました。
 (3)の教学管理体制の部分についてでございますが,今回の御提案の中では,(3)の最後の「また」以下の2行というのが,直接的には関係ない部分ではございます。「また」より上の部分について,今回の御提案の中で,こういった観点,論点があるのではないかとさせていただいたつもりでございます。ただ,それに触れる以上,やはりもう一つの論点として,現在は学長なり大学なりが学位を出すことになっておりますが,各組織,学部なりの教授会が責任を持っているということについて,横のレベルで,今の先生の御紹介で言えば,レビューコミッティー的な役割というのをもっときちんと日本の大学も果たしていく必要があるのではないか,そういう取組をきちんとする必要があるのではないかということも踏まえまして,また書きとして2行追加させていただいたという趣旨でございます。
【鈴木主査】  それでは,溝上委員,それから福島委員,そして日比谷委員,お願いします。
【溝上委員】  問題は,中身は分かるのですが,現場の教員の感覚としていろいろ考えてみるに,ここで学修プログラムというものが出てくることが,やはり重い,しんどいという意味ですが,そう感じます。御承知のように,今大学の方で三つのポリシーの策定がなされて,それから内部質保証,学修成果の可視化と作業が,学位プログラムに向けて非常に進んではきていても,内実がなかなか伴わないという状況の中で,また多分これが5年,10年ぐらいかけてしっかり中身のあるものとして進んでいくという中で,ここにもう一つ,先ほどの本郷委員の話もそうですが,学部・研究科所属とか,学位プログラム所属に関する何か示唆的な言葉が入ってくることは重いという印象があります。
 質問は,学位プログラムということを立てないで,学位プログラムの中身をしっかり規定する,あるいは詳細にもう少し大学側に説いていくというか,そういう方向性は考えられないのかというのを質問させていただきたいと思います。
【三浦大学振興課長】  必ずしも御質問の意図を私は正確に受け止めているかどうか分かりませんが,まず仮にこういった方向の制度改正がなされたとしても,やらなくてはいけないわけではありませんので,こういうことを是非やりたいんだという大学に対して,もし現行制度上の隘路(あいろ)みたいなものがあるのであれば,そこは取り除いていきたいという趣旨でございます。
【溝上委員】  私の質問はとても単純で,学位プログラムという言葉を使わないで,今,三浦課長のおっしゃっている方向性を実現していくことはできないのかということです。
【三浦大学振興課長】  考えます。すみません。
【鈴木主査】  それでは,福島委員,お願いします。
【福島委員】  前回に比べると大分分かりやすくなったなという感じがしますが,ただやはり,一定程度の教育研究水準のある大学にとっては,やろうかということになるのではないかと思います。やはりいわゆる分厚い中間層が来ている大学でやっていると,学生たちにはしっかりとした基礎と構造的な学問をきちんと学ばさなくてはいけないという,これが今,我々の課題で,部分的にこういうことが出てくる可能性もないわけではないですが,なかなか全ての大学には適用が無理かと思います。三浦課長もおっしゃっていたので,そういうことなのかと思います。でも,実際やるのであれば,本郷先生が立命館大学の事例をおっしゃっていただきましたが,やはりそれを一つの教訓にして,そこからやるのであればどういうことをやらなくてはいけないのかということを,せっかく赤裸々におっしゃっていただいたので,それはやる必要があると思います。
 特にやはり学生に対する教育責任を負おうとすると,教室の中の教育だけではなくて,その領域以外の教育ということもあるはずなので,それがこのプログラムの,どういう教員組織にするかどうか分かりませんが,そこが本当に担えるのかどうなのか,学部に基礎があるという以上,このあたりをきちんと整理していかないと,せっかく作っても,また危ういものになってくるのかと思うので,そのあたりの詰めが必要かと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。日比谷委員,どうぞ。それから,上田委員,そして前野委員という順でお願いします。
【日比谷委員】  ありがとうございます。2ページ,少し先に学修プログラムとか学位プログラムは英語で何と言うかというのはお答えがなかったのですが,何か考えつきました?
【林大学振興課課長補佐】  申し訳ありません。あくまで今回は便宜上,非常に事務的な説明になってしまいますが,学位プログラムで特に概念上,学部・学科の組織に関わらないものについて学修プログラムということで整理上置かせていただいておりますので,まだ順番として英語名称までは考えは及んでいないというところが実情でございます。
【日比谷委員】  それでしたら結構です。
 6ページのこの図を見ると,新たな類型の学位プログラムでは,,1年生のときに化学と生物と情報を取って,それから経済を取って,また生物を取って,地学と西洋史を取ってというように見えてしまいます。
 一方2ページのところで,学位プログラムの最後の丸で説明がありますが,学内の資源を結集して機動的に学部横断的な教育課程を編成できるというところまではよさそうに聞こえますが,その後の括弧の中でナンバリングの話が出てきます。ナンバリングというものは,そもそも化学なら化学の中で100番,200番,300番,経済も100番,200番,300番というものであって,化学の100番を取ったから経済の200番に行けるわけでは全くないとすると,さっきつまみ食いとおっしゃったと思いますが,そういう印象をこれは非常に与えてしまいますが,そういう意図でこの図を作っていらっしゃるわけではないと思います。
 例えば,この例に挙がっている,学士(理学)で専攻はSDGsを想定するとやはりSDGsの中でも,例えば水資源の問題であるとか,理学の中に包含されるものが17の目標の中で幾つかあると思います。ですが,それを組み合わせて,その中のナンバリングというようにもう少し絞り込まないと,非常につまみ食い的な感じを与えてしまうので,多分そういう意図でおっしゃっているのではないと思いますが,そこはどうなのかと思いました。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。
【三浦大学振興課長】  先生御指摘のとおりでございまして,作図能力に問題があると反省をしております。2ページの括弧書きに書いてあることの方を,むしろ我々としては積極的に進めたいと思っている中で,例えば実際は,こういった仕組みが整った上で,必ずしも1年生からというよりは,多分1年生は既存の学部に入って,その中でいろいろ学ぶうちに,興味,発展の方向性がいろいろ広がっていき,その中で,全学的にどういった科目を作れるのか,どういったメニューを用意できるのかという方が,多分現実的かという気はしないこともないんですが,端的に今回,何回も御指摘がありましたが,たまたま読み替えさせていただいている学修プログラムというのを分かりやすく表現したらどうなるかということで6ページを作らせていただいたので,意図としてはまさに今,先生から御指摘があったような形で作りたいと思っている図でございます。
【鈴木主査】  上田先生,お願いいたします。
【上田委員】  私はこの学修プログラム,学位プログラムを加えていくというのは,総論としては全く賛成であります。やはりもう少し広いところから言うと,日本の社会というのは,どの組織に属しているかということに異常にこだわっていて,そこで何をやるのかということが非常に見えてこない社会だということを,文化人類学者として,私は日々感じております。あなたはどこにお勤めですかといったら,三菱何とかという会社の名前を言えばそれでいい。どこの大学にいますか,何学部にいますかといったら,何となく分かってしまう。ですが,そこは何をやっているのかということ,あるいはそれが外の社会的課題をどう解決していくのかということが問われる時代において,何とか学部に属していますという,そのことだけで説明が済んでしまうような在り方というのは変えていかなければいけないと思っておりますので,そういう意味では,この学位プログラムを付け加えていくというのは,私は全く賛成であります。
 ただ,これが,学修プログラムになっても,さっき三浦課長がおっしゃったように,全部の大学がやる必要はないわけで,例えば濱名先生の大学のように,非常に先鋭的なことをなさっているところはもう既にやられている。しかしながら,より学科が固定化されている大学というのはありまして,私たちも先般,大学の改革をやったところでは,本当に応用化学の人と無機化学の人は全然話ができない。同窓会も違う,何十年も,何百年もではないですが。でも,隣の学科ですら全く交流がなくて,そこで世界的課題に取り組むこともできない。金属工学の人と何とか工学の人は,材料工学だけど全然話さないということが続いているようなところにおいては,やはり例えば,貧困に向かって科学技術は何ができるのかという,貧困というSDGsのアイテムのようなことを一つ定めて,そしてそれが文系の学科,学部のようなものと,経済学であったり,あるいは平和学であったりというようなものと横断して,こうした学修プログラムが作られていくというのは,まさにすばらしい取組ではないかと思います。
 やはり設置基準までいじる。我々はそれをやって,横断コースみたいなのを先般作ったわけですが,それというのは,すごく大変なことになりますので,その時期その時期に応じた学修プログラムをここで組み立てていただいて,そこは非常に緩和していただくというのは,ある種そういう親の組織に属して,その単位さえ取れば,それの同窓会に入ったら,もうそれで一生終わりといった,割と大きくて身動きがとれないような大学にとっては,こうしたものが作っていけるというのは大変な救いになると思います。
 大学一つ一つの御事情があると思うし,これは必ずしもやらなくてはいけないというものではないと思いますので,是非こうしたものを整備していただくというのは大変ありがたいのではないかと私は思います。
【鈴木主査】  続きまして,前野委員,美馬委員,前田委員お願いいたします。
【前野委員】  分かりました。まず,今の御議論とも少し関連しますが,私のテーマとしまして,やはり最近の,恐らくデータサイエンスの急速な発展,あるいは社会の対応,ビッグデータの問題が当然あと二,三十年に起きてきますので,今おっしゃっていたような従来の縦割りの社会では,もう生きていけなくなるのは恐らく見えているのではないかと思っております。ですから,当然分野が違うと全く分かり合えないと,私もよく大学で体験したことでございます。それ自体が一つ,多様性なのかという認識がありまして,そういう困難を超えない限り,やはりそういった新しい世界に対応できないのかという認識は持っておりますので,それが大前提かと思っております。したがいまして,学士力,あるいは修士,博士も含めた学位プログラムの意義というのは,やはりあるのではないかと思っております。
 もう一つですが,先ほどの話で,大学院がやはり重点的ではないかという御議論がありましたが,それももちろんそうですが,今我が国では,やはり学士力が相対的に相当落ちているという認識がありまして,例えば工学部で言いますと,皆余りテクニシャンを希望していない。リサーチャーを希望している。ディベロップメントですね,開発をするエンジニアがいないです。エンジニアがいないということは工学としては致命的で,中がすかすかになってしまう状態になりますので,そういった層を育てるためには,やはり学士力がとても重要になるのではないかと思っております。
 学士力といいましても,例えば機械なら機械のプロパーではもうやっていけない時代になっておりますので,横断的な何かを学士の間に学ぶことが,やはり重要なのではないかと思っております。もちろん修士,博士でもそうですが,特に学士力は,もう少し強化してもいいのではないかと思いました。
 あと,マイナーな話で,実はこの学位プログラム自体が学位と書いておりまして,実は高等専門学校の場合は準学士という,昔の工学博士のような称号という形で進んでおりますので,この進めるプログラムの中に,どこかに称号のことも少し書いていただけるとありがたいと思っております。
 また,これはやはりマイナーな問題ですが,例えばいわゆる骨太の方針に相当するようなところでも,やはり高等専門学校という文言が入り,高等専門学校と大学の共同教育課程といったものも入ってきていますが,これはやはり学位プログラムの発想に基づいて進んでいるのかという認識ですが,若干問題がありまして,労働制が違うという,裁量労働制にはなっていないという問題がありますので,そのあたりをどのように今後捉えていっていただけるのか,それをお考えいただければと思っております。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。では,美馬委員,前田委員,それから篠田委員で打ち止めにさせていただきますが。どうぞお願いします。
【美馬委員】  本日お聞きして,この学位プログラムの改革がなぜ必要かというのは,まだはっきり私の中では納得できないというか,理解できないです。今回,6ページに図をお示しいただいて,これは大分分かりやすいと思いますが,これを見ると,何となく理学部に主があるような気がします。ほかに情報取って,経済取って,歴史を取ると,何となくここからイメージできるのは,学際的といっても,環境科学とか環境工学で,更にそこに経済,政策というような,何かそんな感じなのかと思います。
 例えば,うちは本当に単科大学の一つの学部しかありませんが,例えば,コースごとによって決まっていますが,例えばここに出てきている経済学部の何か単位を取るとしても,そのまま経済学部のものを取ったからといって,その内容が,ここで言う,例えば環境工学と科学の人が聞いてもうまく位置付けられるような内容になっていないと,これを取っても仕方ないと。例えば,先ほどのうちの場合だと,複数コースに開放するような形で内容を,ある科目については,どちらにもいいような内容としてなっているということを保証した上で,そういう人たちに開放するというようなことをしています。
 つまり,そのようにして,特に大きな制度は改革しなくても,この科目については経済学部の学生だけではなくて理学部,工学部の人にとっても意味がある科目の内容であるというようなことを,それぞれの何か各学部でそういうものを作っていくことによって,特に何かここで新たなプログラムをしなくても,そういうものをメジャー制度とはまた違うかもしれませんが,そういうことで適用可能だと思いました。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。前田委員,どうぞ。
【前田委員】  前回の学位プログラム構想の議論のときには,私のイメージでは,もっと大幅なことを考えているのかと思っていましたが,これは設置認可のところだけが省けて,少し簡単に作れるという以外,イメージとしてよく分からないので,今後の着地点はどこなのかという気が,これで終わるのかというのがよく分からないということがあります。
 それともう一つ,学位プログラムなら,学位を中心とした質保証という考え方になるようですが,これには余りそういう観点は見受けられないし,先ほどのお話の中でも,途中からプログラムに移行というようなこともありましたけど,ではその場合の三つのポリシーはどんなポリシーだろうと思いまして,学位を中心に考えてプログラムを作るという発想が弱いという気がします。
 なので,着地点がどこなのかというのが質問と,学位中心に考えられていなくて,何となく便利なものができるというように見えてしまうというのが意見でございます。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  私の方は,この運営のシステムというか,マネジメントについて少し御質問というか,意見も含めて御質問したいと思いますが,4ページの最後のところで,内部質保証の在り方が提示されておりますが,三つのポリシーを今度新しく作る学修プログラムで作りなさいとなっていますが,これ,以前の大学教育部会で決めた三つのポリシーのガイドラインのところでは,学位プログラムごとに三つのポリシーを作るのはお勧めですが,最後は大学が判断をしなさいというか,していいというような扱いになっていたのではないかと思います。
 今回の場合には,こういう形で学修プログラムを作った場合には,三つのポリシーを必ず作れというのが明確な基準として示すという方向かどうかということと,それから,学部や学科単位で幾つかの学位を出しているところがあるのではないかと思いますが,その場合には,それは学部単位でもいいのか,学位プログラム単位でやっていくのか,と申しますのは,認証評価で三つのポリシーを教育質保証していくというのを,認証評価の重要な事項として位置付けましたので,受ける大学側の方としては,学位プログラムが認証評価の単位になるというのは,そんなに軽い話ではないというか,それなりの体制と組織を作っていかなければいけない。全てが学位プログラムに,単位で質保証を管理していくというのなら割合単純ですが,一方で学部単位,学科単位が残っていて,それに学修プログラムというのが並立する形で全体を管理していかなければいけませんので,その辺りの組織運営的な,学長がそれを管理する場合に,学部や学科も管理するし,学修プログラムも管理をするという形になっています。
 このあたりが,3ページの方に戻っていただいて,(3)の教学管理体制のところに関わってくると思いますが,先ほどの御発言では,川嶋委員が学位審査をどこでやるのかというお話もありましたし,福島委員が教育責任体制はどうなるのかという御意見もありましたが,ここのところを読むと,学生への教育指導だとか,履修指導だとか,FDも含めた教学管理体制が必要だ,作るというようになっているわけですが,このあたりのところをどこまで学修プログラムで作っていくのか,整備していくのか。それがある程度ないと,後の方で責任を持って担当する教員を確保するように求めるというのですが,担当者だけではなかなかそういうことはできないので,一定の管理組織というのが当然必要になってくる。
 しかも教育課程の質保証を一元的に,最終的にはもちろん学長が管理するということになりますが,その辺りの組織体制をどのあたりまで整備するのか。それは大学にもちろん任せるといいますか,大学がきちんとこうやるということが明示されればいいという考え方,扱い方もあろうかと思いますが,このあたりのところが,大学にははっきり管理体制として見えるような形にしておかないと,せっかく向こう7年間,質保証をやれやれと一方では言っておきながら,その組織がなかなか曖昧だとなってくると,なかなか難しいのではないかと思いますので,その辺要望でもありますし,少しどこら辺まで組織体制をイメージしているのかというところがもしあれば,お聞きできればと思います。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。
【三浦大学振興課長】  その前に御指摘をいただきました,学位中心の考え方になっていないのではないかという御指摘がございましたが,我々としては,学位中心,学位プログラム中心の考え方にのっとった形でこの資料を作っていたつもりでございますので,そういうのが伝わっていないというのはまことに不徳のいたすところということで,反省をするしかないわけでございます。
 今の篠田先生の御質問につながりますが,4ページの(7)のところでございます。当然学位プログラムごとに三つのポリシーを求めるのが好ましいということですが,今回の組織の枠を越えて新たな学位プログラムを作るときには,やはり当然にしてディプロマ・ポリシー,それに伴うカリキュラム・ポリシーというのは定める必要があると考えています。その上で,それに責任を持つ体制をきちんと構築しなくてはならないということで,3ページの(3)のところを書かせていただいたつもりでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
【義本高等教育局長】  三浦課長のお話に若干補足的に言うと,前田先生のお話の中で,結局中途半端ではないかというお話があります。これは,今の設置基準でも,結局学部という基本組織にかえて新しい別の組織を設けることができる,まさしく教教分離といいますか,教員の所属組織と教育プログラムを分けて考えましょうということを,今の制度上でできる形になっています。ただ一方,現実問題とすると,やはり学部という形,学科ということが大きいので,そこを超えて一遍に組織を見直すことはなかなか難しいというのが,大学の今の状態だと思っています。
 ですから,本当なら今おっしゃったように,根本的に変えるという大学はそれでやっていただいても結構ですが,一方,学部,あるいは学科というような基本組織も維持しながら,先ほど上田先生からお話がありましたように,柔軟性をより持たせた形において風穴をあけていくという制度での設置基準の改正ということも視野に置いた場合,こういうことができるのではないかということで御提案させていただいていると御理解いただければと思います。また先ほど美馬先生からもお話がありましたように,例えば工学部であれば,今後の議論としては,学科というのを1学科しか置かなくて,あるいは学科も置かなくてコースを設けて柔軟に設計するという大学もいろいろやっていただいていますので,そこはそこでやればいいと思いますが,それでもなおなかなかやはり学部の壁があって,これは鈴木先生もおっしゃっていただいていますが,なかなかカリキュラムの革新とか改変が進まない。あるいは,そこで固定化している。
 一方,時代の流れにおいては,かなりいろいろなことを学際的にやらなくてはいけないし,メジャー,サブメジャーも考えないといけない。あるいは,文系,理系を超えたということを考えました場合,こういう措置を設けることによって,各大学のカリキュラムの改革,システムの革新につながっていくことが制度上できないかということでの問題意識として提起させていただいていると御理解いただければありがたいと思っております。
 ただ,その場合,篠田先生もおっしゃっていただきましたように,学部ではなくて学位プログラムがやはりベースですから,そこにおいての管理というか,あるいはそこをやはり規律していく組織,あるいは仕組みということについては,本日御意見いただきましたので,今後考えさせていただきたいと思っているところでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。このテーマにつきましては,もう延々と議論を重ねることができると思いますが,方向性として,将来を考えたときに,やはりこういう方向を考えていく必要があるのではないかということで,先生方からもこの方向については考えるべきだというお考えもいただきましたし,また実際的に,あるいは技術的に,あるいは経験的に,なかなか難しいというお考えもいただきました。これらを統合,総合して,なおいい道を探っていかなければいけないと思われますので,議論については本日はここで終わりにいたします。
【小林主査代理】  すみません,一言いいですか。どうも議論を聞いていますと,学位プログラム,学修プログラムというのが分かりにくいというのはそのとおりですが,それ以前に,既存の大学のことが書いていないので,既存の大学で何をやっているかということが分からなくて,新しいプログラムを理解しなくてはいけないという,そういう書き方になっていると思います。ですから,学部を中心とした現行のやり方がどういうもので,それに対して学位プログラムがどういうことになっている。それに対して,今度は学修プログラムという新しいものを作るという,そういう設計になっていますので,もう少し一般の人が分かるためには,今の大学がどうなっているかということを書いていただきたいです。これは注文です。
【鈴木主査】  という注文を受けましたので,よろしくお願いいたします。
 それでは,ありがとうございました。学位プログラムにつきましては以上といたします。
 続きまして,社会人学び直しについてでございます。前回は事務局から,社会人の学び直しのさらなる推進に向けて,現状や課題を説明した後,今後の人生100年時代を見据えまして,年齢等にかかわらず,誰もが人生を再設計する社会における大学や大学教育の在り方について議論を行いました。
 本日は,早稲田大学から古谷教授,高知大学から受田副学長にお越しいただきました。お忙しい中,ありがとうございます。それぞれの大学における社会人の学び直しに係る取組を,10分程度で紹介していただきます。
 早稲田大学におかれましては,長年にわたり,社会人の学び直しに取り組まれてきただけでなく,最近では日本橋に新たにオフィスを設けるなど,大学として組織的に学び直しに取り組むための体制を整備し,企業と連携したプログラムを実施するなど,現在も学び直しを大学教育の一つの柱として位置付け,積極的に推進されております。
 高知大学におかれましても,地域に根差した大学として,地方創生や地域の課題解決などに積極的に取り組まれてきましたが,今回は特に地元の産業界や地方公共団体との緊密な連携による社会人の学び直しについて,現在の取組を御紹介いただきます。
 前回の議論にもありましたが,今後18歳人口が減少していく中で,大学や大学教育の在り方についても,正規の学生だけを中心にしたものから転換を図っていくべきという御意見がある中で,社会人の学び直しを大学のミッションとしてどのように捉え,どのように位置付けるのか。それから,地域や産業界との関係をどのように構築していくべきなのか。そしてその上で,学び直しを推進するに当たっては,時間的,経済的な課題も指摘されますが,我が国の学び直しの推進のために,大学や企業,行政としてどういった取組が求められるのかといったことにつきまして,お二人からの御説明の後に議論を深めてまいりたいと思います。
 それでは,早稲田大学の古谷先生にお願いいたします。
【古谷早稲田大学教務部長・法学学術院教授】  ただいま御紹介をいただきました,早稲田大学の古谷でございます。時間も限られておりますので,早速説明に入らせていただきたいと存じます。資料の2-1を御覧いただければと思います。
 2ページ目を御覧ください。早稲田大学は,約130年前に校外教育制度という社会人教育を始めております。これは戦後,夜間学部を設置するまで続きまして,約200万人が受講をいたしました。その後も社会人入試を取り入れ,専門職大学院を設置するなど,社会人に配慮した取組を行ってまいりました。現在,早稲田大学の社会人教育は,四つの柱で企画,実施されております。一つは,専門職大学院を中心とする正規教育,二つ目には,エクステンションセンター,三つ目に,今少し御紹介をいただきました,WASEDA NEOという新しい取組。そして四つ目に,履修証明プログラムでございます。
 スライドの3ページ目を御覧いただければと思いますが,2016年における早稲田大学の学生や社会人の受講生の方の年齢分布を見ますと,このグラフのようになります。当然のことながら,圧倒的に20代前半までの学部生と大学院が多いことが分かりますが,60歳を超えたシニア層も大変大きな存在になっていることが御理解いただけるかと思います。その大部分はエクステンションセンターの公開講座の受講生になります。2016年度の実績で申し上げますと,エクステンションセンターは1,821の講座を開講し,延べ4万277名が受講されておりますが,その60%以上が60歳を超えたシニア層になります。生涯にわたって学び続けるという点で,エクステンションセンターは重要な役割を果たしていると言えますが,一方で,大学を卒業し,社会の第一線で活躍されている方々のキャリア形成,スキルアップに貢献しているかというと,必ずしもそうとは言えない側面がございます。こうしたことから,早稲田大学は教育事業の対象として,正規学生とシニア世代に加えて,20代後半から40代後半のいわばミドル層のニーズに応えた教育を展開しようとしております。
 スライドの4ページ目を御覧ください。この図は,人生サイクルを基準として,どのような教育を提供していくのかを示した概念図でございます。2のステージに関して,大学が18歳から22歳の学部学生を主軸とする教育を展開することは間違いありません。しかし,正規学生の中には,ロースクール,ビジネススクール等の専門職学位課程で学び,さらなるキャリア形成に挑戦する社会人が含まれております。こうした専門職学位プログラムの充実・発展は,社会人教育の王道であり,また基盤であると考えております。
 また,既に御説明を申し上げましたとおり,エクステンションセンターにおいて,3のシニア層の教育が行われております。しかし,その教育内容は,いわゆる技芸的な講座も含まれておりまして,シニア層の学習コミュニティーを形成する上では大いに貢献をしておりますが,更に人生の第2サイクルを始めるためのシニア向けのキャリア教育という観点が薄かったことは否定できません。人生100年時代を考えると,シニア層に向けた教育についても,その内容を再検討する必要があると認識しており,そうした観点でエクステンションセンターの講座内容の改革を進めているところでございます。他方,先ほど述べましたとおり,3のミドル層のニーズに対応した教育事業の展開は重要になります。
 こうした観点から,本年7月にスタートをさせたのが,WASEDA NEOの事業でございます。これまでもビジネススクールを中心に,エグゼクティブ教育を行ってまいりましたが,それらに加えて,更に社会の課題解決に貢献できる人材育成を,日本橋キャンパスを拠点に置き,本格的に開始いたしました。2017年は,未来志向の方々が集い,交流するセミナーとラウンジを提供し始めました。出勤前の1時間を自分の成長のためにと銘打って,ブレックファーストセミナーなどを開始したところでございます。2018年からは,各業界のミドルマネージャーを対象とする未来創造のワークショップ,サービスビジネス業界の変革リーダーの養成,ビジネスに直結する法務関係のプログラムなど,実務に役立つプログラムを順次開始していく予定でございます。
 WASEDA NEOは広く浅く展開する社会人教育とは異なります。それは,大学が本来持つ,人材を育成するという機能を,正規学生を超えて社会人にまで拡張し,グローバル化する社会において,これをマネジメントできる有為な人材を育成することを目的としております。その点で,企業や国内外の大学との連携が重要な柱になります。
 この3の世代における教育で重要なことは,受講者が必ずしも学位や単位を求めているわけではないということです。資格としてのMBAなどではなく,むしろ実際に自分自身を触発できる講座,自分自身で起業するということもあるでしょうが,それに加えて,勤務する職場を自ら積極的に変えていきたいという意欲をかき立てるような場が求められております。さらには同じような志を持った人々とつながり,そのネットワークをもって新しいキャリアシーンを切り開きたいという思いに応えることも重要な要素であろうと思われます。
 こうした教育を受ける側のニーズを考えてまいりますと,私どもの教育にまだ穴があることが見てとれます。専門職大学院は,正規の学位を授与することに価値があり,他方でWASEDA NEOにおける教育は,時間数や開講曜日,時間などにおいて柔軟性を持ち,学位というよりは実質的な触発とネットワークの構築に主眼があります。しかし,とりわけ社会人初期の世代においては,学位まではいかないまでも,一定の資格証明を得ながら,次のステップにキャリアアップしたいと希望する人々が相当数おります。しかし,彼ら,彼女らは正規の授業を,つまり毎週同じ時間に15回の講義に通うといったことは難しい状況でございます。早稲田大学は,このようないわば2.5の世代への対応が重要であると考え,こうした観点から,履修証明プログラムを展開することを考えております。
 その第1弾として,2018年度からは,高度なIT技術者のための学び直し教育プログラム,スマートエスイーと読んでおりますが,スマートエスイーの開講を予定しております。これは先頃御採択をいただきましたenPiT-Proのプログラムの一環として展開する予定でございます。
 スライド5ページを御覧ください。以上のような社会人教育の様々なプログラムの相互関係を,講座内容のレベルを念頭にまとめますと,この図のようになります。専門職大学院を含んだ正規教育が中核となり,学部・大学院で培われた知の開放が,エクステンションセンターの公開講座として展開をされます。WASEDA NEOは,専門職大学院での教育内容を更に高度化・専門化し,より高いレベルのエグゼクティブ教育を行うとともに,それとは逆向きに,大学外部で培われたノウハウを正規教育に還元するという,そのような意欲的な教育を指向する場になります。
 履修証明プログラムは,正規教育の科目から編成することも考えられますが,安易にプログラムを設置しますと,公開講座がそうであったように,シニア世代だけが受講生になる可能性があります。こうしたことを考えますと,履修証明プログラムには,一定の体系性と専門性が必要であり,それに加えて,それがターゲットとする受講者が履修しやすい時間帯で開講されることが必要になります。こうしたことから,履修証明プログラムが抱える課題も明確になってきております。先ほど申し上げましたとおり,早稲田大学は履修証明プログラムを特にキャリア開発に結び付く社会人の学び直しに活用したいと考えていますが,こうした現役の社会人は,正規科目が開設される平日昼間に来校することはできません。そのため,おのずと夜間や休日に講座を設置することになります。そのため,通常の単位計算の基準となる開講時間などを厳格に適用しますと,なかなか履修ができないというのが実情かと思います。その点で,履修証明を出すための基準について,より弾力的な運用というものが望ましいと考えております。
 加えて,こうした夜間や休日の講座開設は,新たに講師を依頼したり,カリキュラム編成の担当をする教員を雇用したりと,コスト的な負担が大きいのが実情でございます。社会人教育には民間業者,国立大学,私立大学等多数の競合が存在しております。受講料は残念ながら低価格に抑えざるを得ず,私立大学には経営的に見て非常に不利な状況であると思われます。更に残念ながら,私立大学助成は科目等履修生には若干の考慮がされておりますが,こうした柔軟性を持った講座には助成金がございません。2016年度の財政状況で申し上げれば,早稲田大学は,学生の納付金が全財政の65.3%を占めております。社会人教育のコストを直接関係のない現役学生の負担に任せるわけにはいきません。社会人教育を積極的に行う大学に,特別な支援などを行うなど,財政的な側面も考慮した上での社会人教育の制度設計を御議論いただければ幸いでございます。
 大変に雑駁(ざっぱく)な説明でございますが,早稲田大学の現状は以上のとおりでございます。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 続きまして,高知大学の受田副学長より御発表いただきます。
【受田高知大学副学長・地域連携推進センター長】  それでは,高知大学の紹介をさせていただきたいと思います。本日は,こういう発表の場をいただきましたことを,心より御礼申し上げます。10分ということなので,今お手元にありますハンドアウト,右下にページ数が振っておりますが,これを御覧いただきながら,順次進めてまいります。
 高知大学における社会人の学び直しの取組で,2ページ目を御覧いただきますと,本日中心にお話し申し上げるのは,地域の自治体,あるいは産業から求められている中核の人材の育成プログラムでございます。高知大学土佐フードビジネスクリエーター人材創出事業,略してFBCと言っているプログラムを中心にお話し申し上げます。
 3ページを御覧いただきますと,ここに本学と高知県の概要がございます。もう御覧いただければお分かりのとおりですが,1点だけ申し上げておきたいのは,本学の学生,教職員の数を合わせますと,高知県の人口の1%を超えるということです。この1%の寄与というのは少なくないと思っております。
 次の4ページを御覧いただきまして,FBCとはというのが書いてあります。高知県の伸び代として,食品産業の振興というのを,県の産業振興計画として打ち出しております。その産業振興の中核を担う専門人材の育成を目的としたものです。歴史は平成20年度から,文部科学省の科学技術振興調整費を使ってスタートさせました。したがって,最初の5年間は国の補助で進めておりまして,受講生から受講料は頂きませんでした。その後,これを政策誘導的に地域に波及をしていきたいという思いで,第2期FBC2ということで,自立運営をしております。後ほど申し上げますが,地域内で毎年3,500万の予算を維持しながら,進展をさせております。文部科学省のBP,あるいは国家戦略プロフェッショナル検定としての,「食の6次産業化プロデューサー」の育成プログラムにも指定されております。
 5ページを御覧いただきまして,ここがまずそもそも目的としているものでございますが,高知県は農業算出額等一定はございますが,付加価値の創出のメカニズムが非常に脆弱(ぜいじゃく)である。そこで,食品産業の付加価値創出の担い手を育成する必要があるということがそこに書き込まれております。
 そこで,6ページを御覧いただきまして,これを具体的に課題として設定をし,県としては6ページの右側にございますように,現在の尾崎正直知事のもと,高知県産業振興計画を策定し,推進をしております。農林水,商工,観光,あるいは産業連携ということで柱を明確にし,その中に連携テーマとして,食品産業の振興というのを柱立てしております。
 縁がございまして,私が全体の検討の委員会の委員長を務めまして,今,フォローアップ委員会の委員長も務めております。本学としては,この振興のために,是非とも求められる中核の人材をFBCとして20年度立ち上げて,育成を進めているというものでございます。
 7ページを御覧いただきまして,FBCのミッションステートメントが書かれております。これは2のミッションステートメントで,定量的な人材の育成数,あるいはその質といったところと同時に,産業に対するインパクトがどこまであるかということを,経済効果も明確にして進めております。
 8ページを御覧いただきまして,ここが実施体制でございます。当然自治体との連携は極めて緊密でございます。そして,大学の複数学部から企画運営委員会を外部の皆様とともに設置をいたしまして,これからお話し申し上げます養成コースのプログラムを進めているものでございます。受講生としては,食品加工業はもちろんですが,自治体やJA,さらには10%以下で本学の学生も,現在受講料を払って受け入れているところでございます。
 そして,9ページを御覧いただきまして,これが今の財政状況でございます。高知県の寄附講座として,毎年1,250万円を頂戴しながら,大学も社会人教育に一定の投資をし,更に受講料や地域の地銀,さらには企業からの様々な寄附をいただき,3,500万円を確保しております。この予算で,特任の講師4名,そして事務職員2名を確保しているところでございます。
 10ページを御覧いただきまして,ここにFBCのコース,その概要と,それから,受講生の一覧がございます。A,B,Cコースというのがありまして,2年コースのAコースでは,主に県の食品関係の企業のトップを更にレベルアップしていきたい。Bコースは開発,あるいは製造現場を担う責任者,そしてCコースは1年コースですが,経営感覚を身に付けた一次産業の担い手ということで,座学,演習,そして課題研究として,企業から課題を持ち込んでいただいて,OJTでその解決を図っているというものでございます。
 下にございますように,食Pro.コースを履修すれば,食Pro.のレベル1,あるいはレベル2,これを認定しますということと,サーティフィケートに関しては,履修証明に関しては,当初からお出しすることができるプログラムにしております。右側に受講生の内訳,年齢構成を御覧いただけると思います。
 次の11ページを御覧いただいて,人材育成の流れがございます。募集から修了に至るまで書いてありますが,大切なことは,所属長の推薦がまずもらえる方,そして受講料を,例えば右側にございますように,自治体から補助をしていただいたり,企業からそれを賄っていただいたりしております。そして最終的には修了認定を行うということで,学会で発表するような受講生というのも輩出することができるようになっております。なお,修了証書については,学長と知事の連名にしているということで,自治体とのコミットメントは御理解いただけると思います。
 次,12ページ,ここはOJTで課題解決をやっているというものでございます。かなり本格的なものもございまして,昨年度のテーマでは,常温流通可能なところてんの開発ということで,これは特許も取得いたしまして,現在高知空港で買うことができますので,御紹介をしておきます。
 それから,13ページ,これが輩出数でございますが,これまで10年間で約500名弱の修了生を輩出できる見込みでございます。
 そして,14ページにいきまして,修了した修了生たちのネットワークを,同窓会組織としてFBC倶楽部として運営をしているということが書いてあります。ここには新商品を開発し,その試作品に関して評価し合ったり,それぞれの課題を持ち寄ってお互いに解決をしたり,最新の情報をアップデートしていくということをやっているものでございます。3か月に一度の頻度でやっております。
 それからあと15ページ,さらには16ページ,ここはビジネスとしての展示商談会等を,国内のみならず国外においても指導しております。ここには学生もペアを組ませるというようなことで,グローカルプログラムと称しております。
 16ページを御覧いただきまして,こういうことによってフォローアップをしていった学生たち,修了生たちが,その後も技術相談を不断に持ちかけ,その後,大学との共同研究に発展をし,そして研究という意味での本格的な取組を進めていくというケースが出ております。これによって研究室を立ち上げた企業,研究員の雇用というところも実現しております。
 17ページに幾つか事例を,修了生の活躍ということで書いてありますが,本学の学生の場合は,非常に地元定着率が高いというのが特徴です。残り1分でございますが,18ページに経済効果,大体目標を達成していること。それから,19ページに受講生の満足度が高いこと等が書かれてございます。20ページに,これらは一定評価をしていただき,そして他地域でも大いに参考になるということで,我々にとっての励みの言葉もいただいております。
 最後に21,22,23ページは,来年度以降,11年目の取組でございます。我々は,研究開発に対して,地域企業の軸足を移していただきたい。研究開発に対する投資マインドを高めていただきたいということで,ミッションステートメントを22ページ,研究開発マインドという言葉を明記して進めていくところでございます。23ページに,その予算は更に増やして,年間5,000万円を,今目標でやっているところでございます。24ページに,そのプログラムということで,また御覧いただければと思います。
 最後に,本学としては,食品以外も,観光人材の育成。先ほどチラシをお配り申し上げましたが,こういったものをこのFBCの後続事業として更に立ち上げていく予定でございます。後半はCCRCのことを含め,生涯学習に関しても,これを拠点化していきたいということで紹介をさせていただきました。
 少し超過しました。申し訳ございません。
【鈴木主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの古谷教授,受田副学長からの御発表を踏まえまして,御意見をいただければと思います。濱名先生,どうぞ。
【濱名委員】  二つの事例,大変参考になる御報告ありがとうございました。高知大学は私も科研費の調査で根掘り葉掘り聞きにいったという経緯もありますので,ある程度存じ上げているところですが,両先生のお話の中で非常に気になったのは,やはり持続可能な事業としての部分です。
 古谷先生はそのことに論及されていましたが,実際に例えば,WASEDA NEOの授業料等が私立大学の事業としての条件を充たしているのか,今後どの程度の,収支は見通しになっているのかというのをもう少し詳述していただければと思います。
 受田先生の場合も,これが,高知大学で持ち出しが現状1,500万,次の計画でも2,000万ということを考えていくと,実際には二,三千万円の収入では人件費も出ない。恐らく教職員の犠牲が前提でなければ,この事業は継続できないというようになっている。成果は私も地域に対する貢献として非常に大きいですが,このあたりの持続可能性についてどうお考えか,あるいは誰がもっと費用負担するべきだと受田先生はお考えなのかを教えていただきたいと思います。文部科学省については,社会人の学び直しという点について,費用負担は誰がしていく制度設計なのか伺いたい。大学に余裕があるときは,大学の機能の一つとして地域貢献とか社会貢献というのはありましたが,もはや多くの私立大学はそんな余力はありません。そういう状況になってくると,新たな学習者として社会人を我々は捉えていかないとやっていけなくなると思いますが,そのあたりについてどうお考えか。
 学生の定義の見直しをしていただかないと,私立大学はこれ以上対応していけないだろうと思います。つまり,履修証明プログラムは,小松文部科学審議官が担当のときに御努力いただいて作っていただいて,これはいい布石になっていると思いますが,問題は受講者の身分や名称が学生ではないということが,問題だということです。先ほど古谷先生が言われたように,科目等履修生は補助金の対象外でもありますし,定員充足率とも関係ない。結局は,教員に負担は求めなくてはいけないが,それを国立だと対価も出ないという状態だとするならば,これはやはり学生数に入れざるを得ないのではないかと思います。パートタイム学生という言葉があるにもかかわらず,我が国の定義では科目等履修生という名称で,学生の定員外というのを改善すべきだと思います。
 ところが,放送大学は,1科目でも学生証を支給していて,全科履修生は16単位という設定になっているわけです。これで,一応8年で卒業でき得る計算になっていますが,8年やるかどうかは別にして,放送大学の学生数にはカウントされているということを考えると,やはり学生の定義自体,学生とはいかなるものかという定義の見直しをしていかないといけない。私立大学にとってみれば,定員充足率を気にしながらの社会貢献というのはないだろうというところです。これが両立できるような制度設計にしていただかざるを得ないのではないかと思います。文部科学省は,費用負担の問題と,学生の定義というものに対してどのようにお考えか。
 それと更に言うと,8年という年数設定していること自体が妥当なのか,例えばアメリカなどを見ると,5,6年が卒業率計算のベースになっているわけです。長期履修というのは,最低在籍年数の2倍という制限で,頭打ちにさせること自体がそもそも問題ではないか。要するに,学び直しという話になってくれば,古谷先生が御指摘になったように,様々な多様なニーズが出てきていることはあります。実は社会人が学び直しをするのが一番難しいのは学部です。学士課程は卒業要件が124単位というしがらみがあるので,短期大学や専修学校から編入学してくるにしても62単位が要件ということを考えていくと,年数制限というのはかなり高いハードルになる。学生のキャップ制はしようがないと思いますが,年数制限については非常に大きなハードルになっていると思いますが,そのあたりの見通しについても,あちこちに振ってしまいましたが,お聞かせいただければと思います。
【鈴木主査】  どうでしょうか。最初の費用の負担につきまして。
【古谷早稲田大学教務部長・法学学術院教授】  早稲田大学の場合について少しお話を申し上げますと,まずエクステンションセンターでは, 4 万人の受講者がいますが,毎年の受講料収入から,講座運営に必要な直接費を引いて残るのは1割あるかどうかというぐらいのものでして,その他の施設や管理コストも考えると余り利益があるわけではないということです。
それから,WASEDA NEO は当然のことながら,始めたばかりですので赤字でございますが,できれば3 年後に5 億円の売上げをと考えております。ただ,先生がおっしゃるとおり,収支として大変苦しいわけですが,しかし逆に,学部・大学院生の定員は抑えられておりますので,もうこれ以上伸びようがない。収入を得る道がない。その点で言うと,社会人教育に収入増の活路を求めていくしかないというのも,また現実でございます。その点で,ある意味で非常に嫌らしい言い方になりますが,質を極めて高くしてでも科目単価の高いものを設置していくことも考え,エグゼクティブ教育に向かっていくということもあります。これは例えば,企業の研修などを丸ごと引き受けるとかいうことを含めていきますと,それなりの収入にはなってまいりますので,実際3年後に5億円できるかどうかというのは,絶対自信があるわけではありませんが,しかし,それをやっていかないと,今後私立大学の経営というのはなかなかうまくいかないだろうと思います。
 ですから,この社会人の学び直しというのは,単純に教育の幅を広げるだけではなくて,私立大学にとってみると,収入の道を多様化する,多元化するということに大きく関わっていると思っております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。どうぞ。
【受田高知大学副学長・地域連携推進センター長】  収入に関して,持続可能性をどう担保するか,これは我々にとって,非常に大きな課題です。ただ,5年間まがりなりにも国の補助が終わって,自律で運営できたということに関しては,一定やれるのではないかという自信をつかみつつあります。予算規模を膨らませて,23ページ,5,000万円程度を目指していくというところを御紹介いたしましたが,我々はまず,受講料収入を全体の運営費の10%以上に今回上げております。つまり,受益者の負担を当然のごとく上げていくということ。そして,今後更に求めていくのは,我々に対するステークホルダーは誰かと考えていったときに,地域の企業であり,地域の自治体であり,地域そのものがステークホルダーとして様々な方がいらっしゃるということから,その方々に対する貢献度をしっかりと評価をしていただき,また発信をすることによって対価としていただくということは考えております。
 それで,具体的には商品開発等で,このプラットフォームで生み出された商品に対しては,一定のロゴを我々作っておりますので,そのロゴを付して,そのブランド力でリターンをいただく。あるいは,今,500名程度の受講生を輩出していきましたので,これが同窓会組織として毎年会費を頂戴しながら,仮に1人が1万円会費を拠出できるようになれば,またそこから500万とかという金額が積み上がっていきますし,そういうところを全部積み上げた状態で,ポートフォリオ的に見ると脆弱(ぜいじゃく)な形はあり得ないだろうと思います。
 最後に,今我々がやっている目的というのは,最終的には産業振興の担い手である人材育成ですが,これは地方創生そのものだと思っています。ですから,例えば国の御支援に関しては,文部科学省も教育の面でという意味では,私たち,大変心強いサポーターになっていただけるであろうし,なっていただきたいと思っておりますが,今後,まち・ひと・しごと創生本部であるとか,様々なBPを含めて関係している省庁の皆様にも御支援をいただきたいと思いつつ,積み上げていっているという状況でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。どうぞ。
【義本高等教育局長】  濱名先生から,文部科学省はどうするのかというお話をいただきましたので。お答えになるかどうかは分かりませんが,今考えていることについてお話しさせていただきたいと思います。
 今後,恐らく学生の構成も,将来的には新卒の学生に依拠しているところから広げて考えなくてはいけない。それが人生100年時代の考え方でありますので,それに応じた形での,学生の定義とか,あるいは教務の関係の在学の期間についても一定の整理をしなくてはいけないという課題は持っているところでございますし,また短期的に言うと,23区の例の定員問題の中において,社会人,あるいは留学生は例外にしようかという議論があれば,目先の問題として,社会人の学生というのは定義を置かないといけないという議論も出てきますので,そうするとこの中においても整理した上で,また御議論をいただく機会が出てくると思っております。
 それから,費用負担はどうするのかという問題,これはなかなか難しいところですが,先ほど受田先生からありましたように,やはり地元の自治体としっかり組んで,地元の産業界と密接に連携し,本当に必要なニーズにしっかり応えるところについては,やはり費用を負担して出そうかというところはありますので,そこにどう応えていくのか。こういう言い方をして大変失礼かもしれませんが,大学が自前のプログラムを作って,自前の先生だけでニーズはあんまり考えないで作っていくとなると,なかなかそれは合わないし,学生も来ないという話がありますので,その辺りの中身の見直しとかやり方については,多分セットで考えていかないといけないという議論があると思いますし,そうするとやはり外部のニーズをちゃんと的確に捉えるとか,あるいは外部の方々も取り入れて,プラットフォーム的に中身を見直していくということ自身に拍車をかけていかないと,なかなかうまくいかないというところがあります。
 ただ一方,お話がありましたように,もし仮に学生の定義を幅広く考えるのであれば,今の基準ですとか,あるいは財政支援の仕組み自身も,おのずと整理をして考えなくてはいけないという問題意識は持っているところでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。では溝上委員,どうぞ。
【溝上委員】  前回も申し上げましたが,すみません文部科学省の事務局の方々に御意見を申し上げたいのですが,学び直しという言葉を,最後何とか変えてほしいなと,改めて申し上げたいと思います。今,古谷先生が二度ほどおっしゃいましたが,全体的には社会人の教育について,お二方がお話をされたわけで,生涯学習と学び直しの中には重なる部分も多くありますが,でも,今,人生100年の話が出ていますし,そういう意味でのキャリア形成とか,第2のキャリア形成ですね。あるいは,地域とか産業の振興とか,地域の人材育成とか,いろいろな機能がこの社会人の教育の中には含まれています。社会人の定義の再定義ということも含めて考えたときに,やはりこの言葉が持つ古さといいますか,新しいところに向かう,何か別の言葉が早く出てきてほしいという意見を申し上げたいと思います。
 もう一つは,受田先生に質問ですが,私どもこのテーマは非常に関心を持っていまして,いろいろ勉強しているのですが,社会人の受講者がいろいろ来て,いろいろな機能で学んでいると思います。本日は地域とか産業の振興に当たるところを大きくお話しされましたが,受講者がいろいろ学んで,同窓会組織というネットワーク,これは大変すばらしいと思いますが,やはり最後,産業界というか,地域とつないでいくところのマッチングというのがなかなか難しいという話も全国ではかなり聞いていて,学びましたが,産業,地域の方から見ると,結局,やはりそこのマッチングを果たしていく専門スタッフの方々が必要になると思いますが,そこについて,お話しくださればと思います。
【鈴木主査】  どうぞ。
【受田高知大学副学長・地域連携推進センター長】  御質問ありがとうございます。私たちも,先ほど義本局長のお話にもございましたように,地域に役に立つプログラムでなければならないと思っていますので,今,溝上委員の御指摘のように,学んだものが生かせる仕組み作りというのは相当踏み込んで考えているつもりです。
 具体的に申し上げますと,このプログラムには,県の公設研究機関や,例えば産業振興を担っている産業振興推進部の地産外商課といったところがしっかりとスクラムを組んでいます。したがって,生産,加工,流通,販売まではほぼシームレスにつながっていて,我々としては,できる限り学んだことが実際に生かせるような,こういう環境作りを積極的に指導しているつもりです。
 そういう意味で,我々のミッションステートメントというのが,このプラットフォームで生み出された商品の売上高を積算し,あるいは,そこでの寄与率もしっかり考えながら,経済波及効果を試算していますが,ここに一定あらわれているのではないかという思いがございます。
 最後に,我々は毎年,外部評価委員会をかなり密にやっています。ですから,最終的には地域にとって,ここはどうかというところは,我々の方から意見を求めておりますし,最終的に5年の区切りでは,その5年を振り返って,講師陣であるとか産業界のリーダーからも,このプラットフォームに対して価値があるかどうかということをしっかり御意見をいただき,もし価値がないのであれば,プラットフォームを無理やり維持する必要はございませんので,完全に終わってしまってもいいのではないかという思いで常に外部の意見もいただいているところでございます。
【溝上委員】  プログラムとかプラットフォームのマッチングは充実しているのはよく分かりましたので,私が一番気になっているのは,個人個人がマッチングしていくようなところに向かうのかという。大学の学部でいったら,やはり就職部やキャリア支援部があって,個々につなぎます。そういうところがあるかを,最後に確認したいです。
【受田高知大学副学長・地域連携推進センター長】  お答えになるかどうかというところですが,我々,学んだことがゴールではないということを申し上げていて,そして先ほどの同窓会組織で,常に窓をオープンにしています。そして,先ほどもフォローアップの数字を少し御覧いただきましたが,技術相談等を常時受け入れて,そしてその技術相談も含めて,つなぐべきはつなぎ,そして我々がそれを背負わなければいけない部分に関しては,共同研究等でしっかりと課題の解決に努めていくということは行っております。
【溝上委員】  分かりました。ありがとうございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。川嶋委員,それから美馬委員,それでおしまいにさせていただきます。
【川嶋委員】  今回の2件の御発表は,もともと主査がイントロのところで,正規学生以外のところの教育をどうするかということで,二つの優れた取組を紹介していただいたわけですが,説明するまでもなく,19世紀から20世紀にかけて,大学の地域貢献,社会貢献という形で,例えばシカゴ大学は最初からエクステンションのディビジョンを持って発足したわけです。しかし,大学というのが学位授与機関である限りは,やはり学位の正規コースの学生をいかに増やしていくかという,先ほどの濱名委員との発言と同じですが,それを考えた場合には,やはり学生の定義という点で言えば,現状では厳しいものがあって,アメリカとかイギリスではFTE(Full Time Equivalent)という制度があって,結局,例えばセメスター当たり15単位以上履修しているとFull Time Equivalentの学生としてカウントされ,なおかつ授業料も標準額がチャージされると。それよりも少ない9単位とかの受講の場合は,パートタイムという形で授業料もそれに応じて減免されるという形になっていて,結局連邦の補助金は,ヘッドカウントではなくてフルタイム換算にしたときに学生が何人いるかということで,それに乗数を掛けて補助金が支給されるわけです。
 だから,先ほど出た長期履修生もあらかじめフィックスして,倍かかるから授業料は半額だということになっているので,やはりそれでは大学で学生として学べないという人はかなりいると思います。ですから,やはりこれからFTEという考え方をきちんと導入すべきであって,もう一つは,単位制度の実質化という点からいっても,学生は国立であれば五十数万円払えば,キャップ制はありますが,年間30とか40単位取っていて,本来的にはどう考えても単位制度に合わない履修をしているわけです。きちんとフルタイム制と授業料をリンクさせるということによって,学修のパターンも柔軟化できるし,在学している学生の学修の深まりも担保できる。
 それから,先ほど前半の定義でもあったように,それも教員とか職員にもFTEの考え方を導入すれば,例えば先ほど課長の過重な負担とかということ,エフォート管理ということがありましたが,ICUでは教員1人当たり何単位というのは決まっているそうですが,それをもってフルタイムの教員と定義するとお聞きしたことがありますが,やはり教員についてもフルタイムというのは,大学ごとでいいのですが,きちんと何単位分を担当した場合にはフルタイムの教員としてカウントし,なおかつ複数の学位プログラムを担当したときは,その按分(あんぶん)を考える。
 大学の生産性というのは,要するに,単位数です。総単位数で大学全体の生産性というのを計量的に把握しているので,それぞれの学修プログラムで何単位出しているかによって,学内のリソースアロケーションもできるという形ですから,いろいろな意味で,是非FTEの考え方を検討していただきたいと思います。
【鈴木主査】  美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  本日は,早稲田大学と高知大学のお話,どうもありがとうございました。二つの大学に対してお聞きしたいのですが,本日のここでのお話は,正規の学生外の教育について出しましたが,そこでの教員のエフォートについてです。私も地域大学にいて,地域貢献等やっていますと,やはり結局,こういうところに関わる教員というのは,分野が限られていたり,専門が限られていたり,ほとんどボランタリーな形で,その人たちの貢献意欲にかなり頼っているところがあるのではないかと思われますが,そのブランドマネジメントや商品開発についてです。私のところでも,同窓会組織が自主的に活動して貢献してくれるところもあります,こういった場合に,教員が要するに,自分の担当科目以外というか,正規の授業以外のところにかなり,一部の教員だけがそういうところを担っているということをどのように解決なさっているのかをお聞きしたいと思います。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。
【古谷早稲田大学教務部長・法学学術院教授】  早稲田大学の場合には,正規科目以外のところは,正規の教員が関わることは余り多くはありません。エクステンションセンターも10%ぐらいが正規教員で,あとは業務委託の形で授業を行っております。WASEDE NEOは若干ビジネススクールの先生方が関わっていらっしゃいますが,外部の講師なども入れます。正規教員がWASEDA NEOで講義をする場合には,通常の教員の,いわゆるエクストラのフィーではなく,外部でその手の講演をしたときにどのぐらいもらえるのかということを考慮しながら出すということ。それをしないと,WASEDA NEOではなくて別のビジネススクールとか別の講演会で講演をされてしまいます。
 これは経済的に言えば,我々にとっては大きな痛手ではありますが,しかしやはりそれだけ高いレベルの講義をやっているのでたくさんいただきますと。それはやはり自信を持って言えるだけの内容にしたいと考えています。先生がおっしゃるように,確かに通常の教員が,この手のいわゆるエクステンドされた科目に関わっていくことは,単純なエフォートの増加にしかなりませんで,教員のインセンティブに余りならないと。もう一方で,研究もしなくてはならないという中で,これは言ってみれば教える側をどのように確保するかというのが課題であると思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
【受田高知大学副学長・地域連携推進センター長】  お答えします。今の御指摘も,極めてこういったプラットフォームを持続していく上では大きな課題であるというのは,御指摘のとおりです。我々,大学でかなり初期から,エフォート管理に関しては緻密に,そのエフォートを具体的にトップにしっかり評価をしていただき,それをずっと組み立てていって,ある教員の総合的な業務に関する評価をやっていくというシステムを導入していますので,こういう外付けでやっている業務自体が,全く学内において評価されないということはありません。ですから,評価は適正にされているというのが1点です。
 それとあとはインセンティブとして,どうしてもやはりお金のことが必要になってくるので,今,非常に些少(さしょう)なのですが,1時間授業やると1万円くらいのお金を,現実的にはこのプラットフォームから学内の教員に対しても払うということはやっております。あとは修了生とか,ここで学んだ人たちの活躍にどれだけ貢献しているか,それによって自分自身に跳ね返ってくる部分の評価がたくさんありますので,それがモチベーションになっているというのが実態かと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 最後に人生100年時代構想会議につきまして御報告をいただきます。現在,官邸で人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに関わる検討を行うため,人生100年時代構想会議が置かれておりまして,先週27日金曜日に,その第2回の会議が開催されたとのことであります。
 それでは,事務局からお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,手短に説明をさせていただきます。資料3を御覧ください。金曜日の会議では,議題として,幼児教育,高等教育の無償化・負担軽減について議論が行われたところでございます。
 初めに,内閣官房の事務局からの配付資料が,資料1として横の資料がございますが,初めの方は幼児教育ですので割愛いたしまして,7ページ目のスライドからが高等教育でございます。まず7ページで,所得の低い世帯ほど大学進学率が低いというデータです。その下に,生涯賃金が,高等学校卒と大学・大学院卒で7,500万円差があるという状況でございます。8ページに,国立大学の授業料,入学金ともに,かなり上がってきているということ。そして,その下の欄に,給付型奨学金制度が導入されたことが書いてございます。次の9ページには,大学教育と企業の求める教育内容に違いがある部分があるというデータがございます。そして次の10ページに,国立大学法人・学校法人における理事の構成ということで,産業界出身者の割合は比較的低いというようなデータがございます。
 そして次のページから,委員の提出の資料ですが,資料2とあります,慶応大学,樋口先生の資料の2ページ目を御覧いただきますと,高等教育につきまして,所得の低い家庭の子供たちに限って支援策を講じるべきだと。そして,生活費を賄うためのアルバイトを行うことなく勉学に専念できるような仕組みとするべきだということで,授業料減免措置と給付型奨学金を大幅に拡充すべきとございます。次の黒丸で,国による支援を受ける以上は,きちんと単位の取得状況,成績管理などを厳格に行って,一定の条件に適合しない場合には支給を打ち切るということとすべきだと。
 そして次の丸で,格差の固定化を防止する仕組みとして,こういった支援策を導入する以上,エンプロイアビリティーを向上させる取組を行っている大学のみを対象として支援すべきであると。例えば,実践的な教育を充実させるという観点から,産業界の人材がカリキュラム編成に関わっているとか,学外の実務家教員を積極的に登用していると,こういったことを支援対象となる大学の要件とすべきという御意見がございました。
 次の資料3は,連合の会長代行様の御意見ですが,2ページの部分の高等教育にございますとおり,4のところで高等教育の無償化ということで,授業料の無償化,あるいは公費負担を増額して学費の低額化という提言がございます。5番というところでは,給付型奨学金制度の拡充の提言がございます。
 最後に資料4で,高橋委員の意見書ですが,やはり授業料減免措置や給付型奨学金を大胆に拡充すべきと。その際,対象は低所得者などに限定をすべきといったことですとか,やはりアルバイトに専念することによって,学業が疎かにならないよう,給付型奨学金を拡充するにあたっては,生活費も賄えるようにすべきであると。そして,その次の次の丸に,上記の支援措置の対象となる大学については,産業界からの外部人材を一定程度,その理事として任命して,ガバナンス改革に取り組んでいるなど,実社会から評価される大学に限定すべき,こういった提言が行われたところでございます。
 なお,官邸のホームページには,もう結果が出ておりますが,最後の安倍総理の発言として,格差の固定化を防ぐため,どんな貧しい家庭に育っても,意欲さえあれば専修学校・大学に進学できる社会へと改革します。所得が低い家庭の子供たち,真に必要な子供たちに限って,高等教育の無償化を実現します。授業料の減免措置の拡充とあわせ,必要な生活費を全て賄えるよう,給付型奨学金の支給額を大幅に増やしてまいりますという発言があったということでございます。
 報告は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本件は,報告のみとさせていただきます。
 本日の議題は以上であります。次回は,今までの議論から落ちていた論点を中心に御議論いただくとともに,本ワーキンググループの上に置かれている将来構想部会に,今までの審議状況を報告するための骨子案について御議論いただきたいと思っております。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いします。
【堀野高等教育政策室長】  今後の予定は,資料4のとおりでございますが,次回は11月17日金曜日,10時から12時を予定しております。場所は,本日と同じこの部屋でございます。
 いつものように,資料について郵送を希望される先生方におかれましては,付箋にその旨を書いて残していただくようお願いいたします。以上でございます。
【鈴木主査】  それでは,本日の議事は終了いたします。皆様,御協力ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局大学振興課