制度・教育改革ワーキンググループ(第5回) 議事録

1.日時

平成29年10月13日(金曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省東館13階 13F1~3会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 認証評価について
  2. 情報公開及び学修成果の可視化について

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,濱名篤,福島一政,前田早苗,溝上慎一,美馬のゆり,宮城治男の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,村田私学部長,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)矢島上智大学法学部長,酒井中央大学総長・学長,下條新潟 大学名誉教授,小島高知大学副学長

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第5回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。御多忙の中,御出席いただきまして,まことにありがとうございます。
 本日は,大きく二つの議題について議論いたします。一つ目が認証評価,二つ目が情報公開及び学修成果の可視化についてです。いずれの議題も8月9日に開催されました本ワーキンググループで一度,御議論いただきまして,本日が2回目となります。本日は認証評価につきましては,3名の先生方に外部からおいでいただいておりまして,ヒアリングの後,意見交換の時間を設けさせていただきます。
 それから,情報公開及び学修成果の可視化につきましても,1名の外部有識者の先生をお招きしておりまして,それから本ワーキンググループの委員でもいらっしゃる濱名関西国際大学学長から発表いただきまして,その後,意見交換を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,まず事務局から配付資料を確認,お願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第に記載してあるとおりでございます。不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】  それでは,議事を進めます。一つ目の議題は,認証評価についてです。本日は,上智大学から矢島基美法学部長,中央大学から酒井正三郎総長・学長,新潟大学から下條文武名誉教授をお招きしてございます。3名の先生方に御発表いただきます。
 それぞれ,矢島法学部長からは,認証評価機関の評価委員の立場から,それから酒井総長からは,認証評価を受ける大学の立場から,そして下條名誉教授からは,認証評価と国立大学法人評価のいずれも評価を受ける国立大学の立場から御発表いただきます。矢島法学部長,酒井総長,下條名誉教授におかれましては,お忙しい中,本ワーキンググループに御出席いただきましてありがとうございます。
 加えまして,認証評価制度の今後の在り方について,平成28年3月の認証評価制度の充実に向けて,審議のまとめと前回の本ワーキンググループでの御意見を踏まえた検討の方向性案についてまとめておりますので,事務局から御説明願います。
 以上を踏まえまして,大学の質保証のための仕組みとしての認証評価制度は今後どのような在り方がよいか,またその在り方を踏まえた制度の課題は何か,意見を交換したいと思います。
 それでは早速ですが,上智大学の矢島法学部長より,特に認証評価機関の評価委員としての観点から御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【矢島上智大学法学部長】  御紹介いただきました矢島でございます。短い時間ですので,要領よくお話ししたいと思います。
 お手元にパワーポイントの資料をお配りさせていただいておりますので,そちらに沿って申し上げたいと思います。
 はじめにのところですが,私自身のお話しする立場というのは,言うまでもなく私の所属する大学や委員として関与しているところの公益財団法人大学基準協会のいずれについても関わるものではございません。認証評価における評価者として,時にその認証評価を受ける大学,受審大学の一員として,ごく限られた経験に基づく個人的な認識を申し上げるにとどまります。また,ここでお話しする内容というのは,今般のヒアリングの狙い,すなわち大学の質保証のための仕組みとして,認証評価制度というものはどうあるべきかという,そこのところを意識しつつ,評価者として長年,認証評価に携わってきた経験を踏まえて,いわば現場目線から認証評価の課題ないしは改善策めいたものに絞ってお話しするということを,あらかじめお断りしておきたいと思います。
 それでは,シートの3ページ目に行きますが,2番目の評価者についてということでございます。私が関与している大学基準協会の認証評価は,ピア・レビューというやり方を取っています。同協会に加盟する大学の教職員が寄って集まって,相互に大学の認証評価作業をするという方式でございます。このところに大学基準協会の大きな特徴がございますが,それに伴って,少なからざるメリットとデメリットを指摘することができるように思います。
 まずメリットを申し上げておきますと,一つ目として,大学の認証評価作業の実状に評価者は触れることになります。その結果として,認証評価そのものがどういうものかということを理解し,その理解を深めさせるという点では,ピア・レビューのメリットがあろうかと思います。
 二つ目は,その評価に当たって他大学の現状あるいはそこでの課題,その課題に対してどのような取組をしているのかということを実感することができます。それは翻って言えば,自らの大学に立ち返ったときに,その自らの大学の在り方についての振り返りといったものにつながるのではないかということでございます。
 これに対して,デメリットと呼ばれるようなものも少なくないかと思いますが,ここでは三つほど指摘しておきたいと思います。大学基準協会のような認証評価機関では,それなりの事前の研修セミナー等を行ってはおりますが,評価者そのものは各大学から推薦されてきたわけでございまして,認証評価作業そのものの経験だとか,向き,不向きといったものについては,残念ながら個人差があるように思います。それが結局,認証評価作業に反映するというのか,影響することがないわけではないという,そういうことでございます。
 二つ目は,分科会報告書の作成をしていくことに結局なり,それが最終的な大学基準協会の認証評価の文面につながっていくわけですが,その作業をしている間に,本当にこれは意味があることなのかと,実に結び付くことなのかということを感じられるようになると,評価者の側で認証評価嫌いというか,認証評価離れのようなものが生まれないとも言えないということであります。
 三つ目は,自ら所属する大学から推薦を受けるわけですが,多くの方がその大学でも結構重要なお仕事,役割を担っておられますので,その関係で,その方たちにおいては忙しさもこれ極まれりというような事態が少なくなく見られるということでございます。
 続きまして,三つ目の評価内容のところに進ませていただきたいと思います。評価内容については,幾つかの観点から申し上げられるかと思うのですが,形式的なものに流れがちな傾向があって,本当に実のあるものなのかということ。その結果,受審大学にとっては,より本質的な課題を指摘してもらったり,指摘してあげたり,そのための改善に向けさせたりするような次元での評価作業ということに至っているのかということ。時に適合となること,あるいはその中での改善勧告や努力課題といったものの数を少なくすることにきゅうきゅうとして,いわば帳尻合わせや,結果オーライ的のようなやりとりに終始する場合もあるのではないかということは正直に申し上げざるを得ないかと思います。
 具体的に申しますと,認証評価作業というのは,書面評価と実地調査に分かれますが,書面評価ということについて言うと,各事柄の性質上,どの大学を認証評価するに当たっても,統一的かつ平準的な評価であるべきということになりますので,おのずとその内容が定型化・様式化する傾向にあるということは否めません。
 大学基準協会の大学基準の内容として,評価のための大項目を10挙げているのですが,実はこの中に,大学の理念の目的だとか教員組織のようなおよそ短期・中期的には変わり得ぬもの,また,財務のように極めて専門性の高いものが含まれています。短期・中期的に変わり得ないものについては,認証評価等の都度,これらを一から書き起こす必要があるのか,時に必要な事項のみ変更が生じたり,改革の過程にあり,それが実現したりしたことを取りまとめれば済むようにも思われます。また,財務のような専門性の高いものについては,専門性の観点から,認証評価とは分けて取り扱われてもよいような気がいたします。
 大学基準の内容としては,法令要件に関わるもの,これを基盤評価と呼んでいます。当該受審大学が掲げる理念,目的,教育目標の達成度に関わるもの,これを達成度評価と言っていますが,この二つに分かれます。
 基盤評価については,在籍者数や教員数,あるいは財務状況に関わるデータなど,毎年度,報告や公表を他の異なる機関から義務付けられている関係で,認証評価に際して常に全て対象とする必要性は乏しい気がいたします。
 達成度評価につきましては,本来,当該受審大学の個性や特徴といったものが最もよく現れるのですが,大学を挙げて作成される長文の自己点検評価報告書というのは,結局,認証評価向けに作成されざるを得ないことになりますので,その報告書それ自体も認証評価作業中に作られる文書も,どちらかというと形式を整えるところに意識が向けられることになります。
 また,達成度評価といいましても,これは大学の自主自立,個性や特徴を尊重するという,そういう趣旨の下で,当該受審大学の掲げた目標や設定した課題の達成度を評価するということになっておりますので,大学であればかくあるべしといった理念的な絶対値を想定した上で,大学の格付けをしているわけではない。そのことを目的にしているわけではないということです。
 結果的には,「適合」という評価が下っても,その意味ではその「適合」の幅には広がりがあって,仮に当該大学で一生懸命やっているので高評価を受けるということであっても,結果的には,よく頑張っていますねというぐらいにとどまらざるを得ないということであります。
 さらに,受審大学において自己点検評価報告書を掲げ,認証評価の対象としていただくためには,それを根拠付ける膨大な基礎資料の提出が求められるのですが,提出しなければならない趣旨というのが,いわば大学と当該受審大学と評価者の側,事務局の側との間で必ずしも十分にコミュニケーションが取れず,伝達し切れないために,結局これはないか,あれはないかということで,再提出や補充提出を求められるということも結構多いと思います。
 また,それに関わって,自己点検報告書にせよ根拠資料にせよ,その評価ということになりますと,どうしても数値化することが多いのですが,例えば学習の成果など,大学教育にあってそもそも数値化しにくいもの,コミュニケーション能力はどうでしょうかとか,思考力はどうでしょうかといったもの,それから仮に数値化できたとしても,それだけで,それのみをもって本当に意味があるのか考えにくいもの,例えば各種検定試験に合格しましたとか,スコアがここまでなりましたということ,そのあたりがあろうかと思います。
 とりわけ,大学の出口のみで測ることに,どれほど意味があるのかということ。教育の成果というものは様々でありまして,それぞれの大学が担っている教育がどのような形で,どこで生かされるのかというのは,必ずしも出口のところだけで判然たり得ているわけではないという,そのことを申し上げておきたいと思います。
 次に,シートのほうを繰っていっていただきたいのですが,実地調査のところについて申し述べたいと思います。実地調査は,受審大学の教職員あるいは学生と面談することがございますので,書面だけでは知り得ない事情,大学全体の雰囲気を知る上で,運ぶだけの意味があると思います。
 ただ,それ自体,限られた日数・時間のために,つぶさに確認したり突っ込んだやりとりをしたりするということが必ずしもできかねるところがあります。また,評価者の側も,先方大学の御事情もある等,いろいろでございますので,日程調整が困難を極め,調査対象や内容が制約されたり,評価者の側が自らの大学で休講して赴かなければいけなかったりするということさえ生じているということです。
 評価サイクルにつきましては,現状では機関別認証評価が7年,独法化された大学では法人評価が6年,専門分野別では5年というサイクルになっています。このサイクルの期間,どうするかという検討の中で,負担の軽減のために長めにするということも漏れ伝わっています。そうすることによって,費用は明らかに軽減されますが,各大学においては既に自ら定めたサイクルで自己点検評価するようになっていますので,評価作業に関わる労力がどれほど軽減するのかということについては,さほどの有益性はないのではないかと思います。むしろ受審大学としては,認証評価の対象によって評価サイクルが異なっていること,そのことに厄介さを感じていますので,専門分野といっても単科大学でなければいずれかの大学に属しているはずで,当該大学の機関別に合わせて,専門分野別としての必要な事項のみ付加的に実施されればよろしいのではないかなと思います。
 最後に,認証評価疲れといったことがよく言われておりまして,なるほど,認証評価そのものを今後どうしていくかということは,なかなか難しいところかと,悩みどころかと思います。私自身,それについての回答を持ち合わせているわけではありませんが,二つだけここでは申し上げておきたいと思います。
 一つは,日本的な特殊事情かと思いますが,大学の設置運営について,事前・事後の両方のチェックが入るようになっています。認証評価の作業の膨大さ,煩雑さといったものを軽減ないし解消していくとすれば,その事前・事後のそれぞれのチェックの機能に照らしつつ,両者の間においてのすみ分けといったことがもう少し考えられるべきではないかと思います。例えば学校基本調査などが例年,各種の学校に対してなされているわけですが,そこで出てくるデータだとか調査結果をもっと有効活用する,再利用するといったことが行われてもよいのではないかということでございます。
 二つ目は,特に達成度評価のところなどは,数値で示すということが求められるのですが,教育そのものは20年,30年の単位で考えられるべきだという点でございます。学修成果などに見られるように,どのような能力が身に付いたか,社会に出るに当たってどのように役立つのかといったことは,なるほど,大学教育の意味を評価する上で必要な面もございますが,それとの結び付きのみで大学教育,さらには大学そのものが評価されることの意味,そのことをもう一度改めて吟味してみるべきではないだろうかということだけ申し添えて,私の御報告を終了いたします。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 続きまして,中央大学の酒井総長・学長より,特に認証評価を受審する立場である大学の観点から御発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【酒井中央大学総長・学長】  中央大学総長・学長の酒井でございます。私からは,ただいま御紹介がございましたとおり,認証評価を受ける側であります大学側から見た課題と今後の望ましい在り方について,本学,中央大学の取組を交えながら述べさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 前の方に画面を用意してございますが,やや字数が多い画面になっておりますので,お手元のハンドアウトの資料をご覧いただいた方がよろしいかと存じます。
 まず,中央大学の概要でありますが,こちらはスライド2のところにお示ししたとおりでございます。6学部,6大学院研究科,3専門職大学院の構成となっております。
 認証評価につきましては,大学全体の機関別認証評価に加えて,法科大学院認証評価,経営系専門職大学院認証評価を受審してございます。本学におきましては,内部質保証システムの基盤として,全学的な自己点検評価システムを2007年度に構築し,毎年度の自己点検評価活動を推進してございます。
 具体的な推進体制といたしましては,お手元のスライド3のとおりでございます。全学的な方針を策定するとともに,大学全体としての点検・評価結果を取りまとめる大学評価委員会の下,各学部・研究科をはじめとする部局ごとに設置する組織評価委員会,学士課程教育や学生生活支援,施設・設備といった諸活動の分野ごとに設置する分野系評価委員会が相互に連携をしながら,部局単位の縦軸と,活動分野ごとの横軸からの点検評価を行い,その結果を自己点検評価報告書として取りまとめているということでございます。
 その上で,更に自己点検評価の妥当性・客観性を担保するために,他大学の先生方などから成ります,学外の人々から構成されます外部評価委員会を置き,第三者的な視点からの評価も毎年度,実施しているところでございます。
 これらを支える事務局といたしまして,学事部大学評価推進課を恒常的な組織として設置しております。
 これまでの本学における認証評価の受審状況,大学評価に関わる取組につきましては,お手元のスライド3のとおりでございます。現在の自己点検評価システムは,2007年度に策定を行ったものであります。以来,自己点検評価の取組を毎年度,実施するとともに,機関別認証評価については2回,専門職大学院認証評価については5回受審し,いずれも適合判定をいただいています。なお,専門職大学院認証評価につきましては,今年度は戦略経営研究科が2回目の申請を行っており,現在,実地調査に向けた準備を進めているところでございます。
 また,先ほどお示ししましたように,恒常的な委員会と事務組織を置いておりますので,1回目の認証評価受審から2年後には,2回目の受審に向けた情報収集に着手し,必要と考えられる環境整備を早期から計画的に進めることができました。
 このような取組の結果といたしまして,2016年度,機関別認証評価におきましては,内部質保証システムについて,長所として特記すべき事項として,高い評価を頂戴しております。
 スライド5に移りますが,このように,本学では自己点検評価の取組が定着し,認証評価でも一定の評価を頂いておりますが,やはり受審に際しての労力・負担は小さくないというのが実状でございます。
 こちらのスライドは,2016年度の機関別認証評価受審に際しての対応実績と,負荷の度合いを図示したものでございます。本申請に向けての報告書作成については,毎年行う自己点検評価で取りまとめる年次の報告書をベースとしながら,計画的に対応をいたしましたので,2016年度の認証評価受審の際にはそれほど大きな負担とならなかったというのが実状でございます。ただし,2009年度の1回目の受審の際には,担当事務局だけでなく,各学部・研究科の執行部,各部局の事務局においても本当に過労死ラインすれすれ,あるいはそれをオーバーしているような,そういう教職員が多数,発生したというのも実状でございます。
 こちらの写真は,今回の申請時に,評価機関に対して発送いたしました申請書と根拠資料一式でございます。今回は,根拠資料のうち電子化できるものはデータ提出となりましたので,この程度で収まりました。点検評価報告書の裏付けとして使用いたしました資料は,約600点。ファイルにいたしますと8センチの厚さのファイル8冊分に相当するということでございました。実際,大学側といたしましては,本申請よりも実地調査前の負荷の方がはるかに大きいものと感じているところでございます。
 本申請に向けての作業は,申請前年度の上半期から始まりますので,期間としては長いのですが,その分,作業の負担は分散してございます。他方,実地調査前につきましては,短期間で多くの事項に対応する必要が生じます。具体的には,実地調査5週間前に書面評価の結果とそれに関連する質問事項が送付されてまいります。大学側は,実地調査当日のスケジュール調整,意見交換出席者の選定や,施設見学ルートの調整と併せて,この書面評価結果に対する見解と質問事項への回答の作成,記述の裏付けとなります根拠資料の整備を行い,実地調査の10日前までに認証評価機関に必着で提出しなければなりません。土日を含めましても,実作業に充てられるのは3週間程度でございますので,この期間は担当事務局,当時は専任職員4名プラス,パートタイマー1名でしたが,短期間にかなりの負荷が掛かったというのが実状でございます。
 ここに掲げております写真は,実地調査当日の意見交換の様子でございます。実際には,この意見交換に加え,本学側の出席者が5ないし20名程度の意見交換が3回,更に在学生のインタビューなども行いました。事前の出席者の選定調整や説明,出席者の手元資料の準備等にも相応の労力が掛かることは,御想像いただけるものと存じます。
 スライド6に移りますが,このように恒常的な自己点検評価システムを置き,毎年の積み重ねを行っていても,認証評価申請に係る大学側の負担は小さくありません。こうした現状を踏まえたとき,果たしてその負担・コストに見合った認証評価となっているかということについては,やはり疑問を感じざるを得ないということが実情でございます。
 ここからは,大学側から見た課題と,そこから考えられる今後の方向性ということについて,3点お示ししたいと存じます。
 第1に,それなりの負担・コストが掛かる認証評価でございますが,教育研究をはじめとする大学の諸活動の改善・改革にどの程度つながっているのだろうかという点でございます。認証評価制度には,事後チェックという役割もございますので,致し方ない部分もあるのですが,法令要件や形式面の確認,あるいは諸活動の内容よりも,責任主体はどこで,どのような規定に基づいて実施されているかといった制度・仕組みに係る評価に重きが置かれているように感じます。
 本学は,大学基準協会の点検評価項目を準用した自己点検評価項目を用いて,毎年度,報告書を作成しておりますが,この項目立てでは,現在行っている取組の状況や,前年度からの改善状況といったものを表現することは,なかなか難しく,そのままの形では今後の改革に向けての材料として活用しづらいと感じているところでございます。事後チェックとしての部分と,それぞれの大学の現在の状況や特色の伸長に資するピア・レビューの部分とを分けて実施するようなことも今後は施行されていいのではないかと感じているところでございます。
 第2に,スライド7に示すとおり,ポジティブな意味でもネガティブな意味でも,評価結果が十分に活用されていないという点が挙げられるかと存じます。例えば事後チェックの性格を有しているにもかかわらず,重要事項に関して法令要件を満たしていない,あるいは認証評価において不適合と判定された大学についても,現在は何のペナルティーもありません。他方で,認証評価においてすぐれた取組を行っているとして,高い評価を受けたとしても,社会一般の方々にはほとんど知られてはおりません。認証評価結果が文部科学大臣に報告されたという報道はなされても,その内容はせいぜい何校が適合,不適合となったという程度であります。また,評価結果はウエブサイト等に掲載いたしますが,本学の場合で約40ページの分量になります。このような大部な評価結果で,しかも長所があちらこちらに分散して記載されているようなものを,果たして一般の方々が丹念に読みほどいていただけるのかどうか,こういったことが疑問でございます。
 法令要件の未充足など重大な問題がある場合には,何らかのペナルティーを課すことで,未然防止あるいは迅速かつ確実な改善を促すような仕組み,また大学の特色がわかりやすい形で公表され,ステークホルダーの大学選びに活用できるような仕組みが必要ではなかろうかと考えているところでございます。
 ただし,すぐれた評価結果を得た場合のインセンティブについては,注意ももちろん必要でございます。改めて申すまでもなく,大学,特に私立大学はそれぞれ建学の精神に基づき,多様で個性豊かな取組を行い,社会に貢献していくという重要な使命がございます。一律の基準を設定して,これに適合しているかどうかという評価を行い,その結果が仮に例えば経常費補助等に直接的に影響するというような形になりますと,結果として,私立大学の独自性・多様性が損なわれるような可能性があることもございます。このようなことになってはもちろん本末転倒ということでございます。
 したがいまして,インセンティブとしては,例えば次回の認証評価までのサイクルを柔軟に運用する,あるいは各種の競争的な補助金申請に当たっての基礎要件として,認証評価での適合判定を課したり,若しくは補助金の内容に関連の深い項目における評価をポイントで加算したりするなど,そういったような形が一例として考えられるのではないかと思われます。
 第3としては,これは制度そのものというよりも,評価手法の課題になるかと存じます。第2サイクルにおいて施行されました評価負担の軽減というものが,認証評価の効果を高めることにつながっているかということであります。第2サイクルの認証評価においては,各認証評価機関とも点検評価項目が大幅に削減されました。大学基準協会の場合は,更に報告書の文字数に上限が課され,一定の大項目を除いては全学的な取組に係る記述のみでよいということになりました。
 さらに,第3サイクルにおいては,各部局単位の点検評価結果を前提としつつ,全ての項目で全学の記述のみでよいという形になると伺ってございます。こうしたことで,確かに申請用の報告書の作成の労は減るかもしれませんが,このことで諸活動の特色が十分伝わるような社会に対して十分な説明責任を果たせるような報告書となるのだろうかという懸念もございます。認証評価には,それなりの負担・コストが掛かりますので,やはり大学の中ではいかに負担を軽減するかということが,まず話題となります。しかし,効率や負担軽減ばかりが優先され,大学や各部局が日々努力している状況を報告書に十分反映できないような評価,既に大学ポートレートや各大学のウエブサイト等で公開されているような情報・データを見れば分かるようなことばかりの評価で,本当の質保証と言えるのかどうかという点であります。
 先ほど来,申し上げておりますように,簡素化できる部分として,観点が重複しているような項目の統合や,既に公表されているようなデータで把握可能な基礎的な要件については,大幅に簡素化する反面,教育の内容や方法,諸活動の改善に向けて行っている努力といったものについては,深く掘り下げるような評価方法を模索していく必要があるのではないかと考えるものであります。以上,認証評価を受ける側としての課題認識を述べさせていただきました。
 その一方で,認証評価制度を大学の改善・改革に資するものとして機能させるためには,私ども大学の側でも更に努力すべき事項は少なくないと思います。適合判定をいただいたからこれで安心ということで終わらせるのではなく,評価結果で評価いただいた事項について,大学のPRポイントとして積極的に活用していくこと,あるいは認証評価が果たしている役割や,それを通じて明らかになった事項・成果を大学内に広く共有・還元し,大学が今後目指していく姿,現在行っている取組のクオリティーを更に高めていくための原動力として,今以上に活用していかなければならないものと思われます。また,改善すべき事項として御指摘いただいたことについては,速やかな対応に努めることは言うまでもございません。
 以上,中央大学からの御報告とさせていただきます。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 それでは最後に,新潟大学の下條名誉教授より,特に国立大学法人評価との兼ね合いについての観点から,御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【下條新潟大学名誉教授】  下條でございます。私は,認証評価委員として国立大学の認証評価,そして国立大学法人の評価に関わってきましたので,その立場から,資料3に沿って話をさせていただきます。
 2ページはスリップしていただきたいと思います。
 3ページ。これは現在の機関別認証評価制度,これは2巡目をほぼ終わろうとしております。認証評価では,御存じのとおり10の基準を設定して,81の観点から自己評価書を出してもらっています。これを5名ないし6名の委員がチームとなって書面調査を行い,訪問調査では2日間かけて,大学側,学生・職員らとの面談を含めて授業参観,施設の視察等を行い,審議を繰り返して評価報告書を仕上げるということになっております。これは御存じかと思います。
 評価に係る私の感想としては,この認証評価制度は,課題はあるものの定着して,いわゆる評価文化なるものが醸成されていて,大学の質向上に一定の寄与をしていると思います。しかし,既に本日も御指摘,御発言があったように,中央の細い線の四角で囲んである,特に赤丸1,赤丸2,赤丸3のような課題が浮き彫りにされ,御承知のように昨年3月,省令の一部改正が行われて,現在3巡目に向けて評価基準の見直し準備中であるわけであります。
 1枚めくって,4ページを見ていただきたいと思います。これも既に様々なところで指摘され,本日の御発言にもありましたが,評価作業量の負担感が非常に高いということでございます。資料の中で間違いがあるのですが,自己評価書は,この資料では「4万字」でありますが,7万字以内で作成するということで,総合大学等は大体200から250ページ以上になる大学もございます。結構膨大な作業になっているわけであります。
 昨年の省令改正を受けて,現在,機構ではワーキンググループが1年以上かけて審議をして,骨格がまとめられました。既にご覧になっている方が多いかと思いますが,5ページ,6ページに,その3巡目の大学機関別認証評価のポイント(検討案)ということで,右上にアクセス先とパブコメの募集期間が書かれておりますが,10月31日必着でございます。
 細かくて申し訳ないのですが,このウエブでアクセスしていただければお分かりかと思いますが,ポイントを赤字で示しておりますので,ご覧いただきたいと思います。1として,内部質保証に関する評価を重点評価項目としていること。2として,丸の3番目になりますが,カリキュラム・ポリシーがディプロマ・ポリシーと整合性がしっかり取れているかどうかということを確認するということ。また3番目として,青字で示したJABEEから法人評価の青字の部分,いわゆる第三者評価などに係る資料や結果の活用・連携と,これを明確化するということでまとめられております。
 6ページをご覧いただきたいと思います。真ん中辺りに,9,評価業務の効率化として挙げておりますが,これまでは全て文章の記述を求めていたわけですが,根拠資料で分析が適切にできるという場合は,その文章は求めないというような趣旨が示されております。これを私としてはパブコメを受けて更に審議して,よりよい幾つかの課題が解消するような最終的に案になればと思っております。
 7ページをご覧いただきたいと思います。これは説明の必要はないかと思いますが,法人法の下での6年ごとの評価。これは中期目標等に対する業績評価という性格を持つものでございます。
 8ページに,認証評価と国立大学法人評価,これはもうここにおられる方は皆様,よく知っておられることと思いますが,あえて比較対照をして示しております。これは法令が別の関係で,目的とするところが違うということでございますが,実際,両者の評価に関わると,赤点線で示したようなところはほぼ重複していると考えられます。
 それで,9ページをご覧いただきたいと思います。大学機関別認証評価は,大学における教育の状況を定期的に点検する機能を持つもので,教育の使命・形態がますますこれから多様化していくと。そのような中でのこの認証評価の持つ意味というのは,ますます大きくなると考えております。
 しかしながら,法人評価が求められている国公立大学では特に学部・研究科での教育の状況の点検評価,これの業務の重複感が非常に強いと。更に専門職大学院やJABEE,JACMEなどの特別な分野別の教育評価がある学部・研究科が持つ重複感は一層強いということがあるわけであります。
 私は両方の評価を担当させてもらった限りでは,評価の目的の違い,例えば認証評価では質保証,また法人評価では達成度評価ということの区分けはあるのですが,その意識をしっかりと持ちつつ,内容については共通部分を整理すれば,より両者の評価にマッチするのではないかと思っております。例えば法人評価では,目標に対してよりよい成果ということで,成果を中心に記述する傾向がございますが,認証評価ではこのことはすぐれた点としてしっかり示しておりますので,これは認証評価の報告書を見ればお分かりかと思いますが,そういうところも含めてかなり重複点は解消できる余地があると思っております。
 これからより効率的な認証評価制度になっていくことを願うわけでございますが,以下,丸で示したような点で,問題は,実施時期と点検項目については法令の下でしっかりと共通して整理していく必要があると。それには時間がかかるかもしれませんが,そういった余地は十分あると考えております。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 それでは,資料4につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  資料4をご覧いただきたいと思います。ただいま御発表いただいた皆様の内容とも関連いたしますが,今後の認証評価制度の在り方について,こういった方向で検討を進めてみてはどうかという案をまとめております。
 枠囲みの部分を見ていただきたいと思いますが,一つ目は,内部質保証に関連いたしまして,1とありますように,内部質保証が有効に機能していると評価された場合,例えば,先ほど学位授与機構のものでも段階別評価を取り入れるというのがありましたが,そういったところで高い評価を得た場合などは,次回の認証評価においては内部質保証以外の項目については前回評価で指摘を受けた箇所や改善を図った箇所のみの確認とするといったことは考えられないだろうかという点でございます。
 次に,下の枠囲みでございますが,1とありますように,財務に関することにつきましては,国公立大学における法人評価の年度評価ですとか,あるいは私立大学が独自に実施している外部評価等において,認証評価よりも短いスパンできめ細かく受審していると確認できた場合には,機関別評価においては財務に関する評価をもう既に受けていると整理をすることはできないだろうかという点でございます。
 次に,2につきましては,国立大学法人については,国立大学法人評価において,学部・研究科ごとにきめ細かに評価をしているということに鑑み,認証評価の必要性を含め,認証評価制度の在り方を根本的に見直すこととしてはどうかということでございます。
 一方で,公立大学法人につきましては,公立大学法人評価制度が認証評価を前提とするものとなっておりますので,直ちに根本的にというよりは,重複する評価項目を整理するということで考えられないかということでございます。
 3が,専門職大学院における分野別評価につきましては,制度創設当初には専門職大学院を新たに創設される制度であって,第三者評価による質の維持向上は不可欠であるという理由から設けられましたが,既に創設から15年がたった現在において,機関別評価の中で一体的に行うといったことは考えられないだろうかという点でございます。
 4点目は,複数回にわたり認証評価を受審している大学,もう第3サイクルに入るわけですが,そういった場合に,前回評価で指摘を受けた箇所や改善を図った箇所についてはこれまでどおり評価することとするが,その他の項目については評価項目から削ったり,自己評価書の記載内容を大幅に縮減したりすることを可能とする。例えば認証評価機関のそれは裁量に任せるなど,そういった改善を図るということは考えられないだろうかと。
 そして,その他ということで,「不適合」とされた大学について,受審期間を一時的に7年あるいは5年という期間よりも短くするということは考えられないだろうかということでございます。
 かなり踏み込んで,原案として書いておりますので,そういう制度を実際,考えていく際には,いろいろクリアしなければならないハードルは多いかと思いますが,ここを出発点にして,どういう方向性で議論をしたらよいかということについて御議論もいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは,ただいまの資料及び事務局からの説明を踏まえまして,御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
【川嶋委員】  一つだけよろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【川嶋委員】  今の事務局説明の案で,どういう意味かということを確認したいのですけど,1ページから2ページ目にかけての枠内で,2のところで,国立大学について,2ページ目の頭のところに「認証評価の必要性を含め,根本的に見直すこととしてはどうか」というのが,この認証の必要性も含めということが,国立大学については法人評価一本でいいというインプリケーションでしょうか。
【鈴木主査】  どうぞ,事務局。
【堀野高等教育政策室長】  そこまでも視野に入れて,ある程度そういう場合には国立大学法人評価の中に若干,付け足さなくてはいけないことも出てくるかと思いますが,本格的に効率化ということを目指していくのであれば,そこも排除せずに根本的な御議論を頂きたいということでございます。
【川嶋委員】  あともう一点だけ。
【鈴木主査】  どうぞ。
【川嶋委員】  その点については,多分,私立大学さんからもいろいろ御意見,御異論はあるかとは思いますが,それは今後の議論ということで。
 それで3の専門職大学院の分野別認証評価のところで,確かに制度自体は15年たっているのですが,これからも新しく設置される専門職大学院は出てくることも十分あり得るわけで,ここでの書きぶりだと,制度が15年たっているから,もう要らないのではないかとも取られかねないので,ここはやはり最初の冒頭のところにもあったように,よく言われるリスクベースで,新設と一定の実績がある大学という形でしっかり書き分けるというか,考えを,認証評価自体もそうですけど,この分野別評価についてもそういう使い分けといいますか,整理をした方がいいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。前田委員,どうぞ。
【前田委員】  事務局の方から御提出いただいた資料について,方向性としては,やはりこちらの方向性はあるとは思いますが,自分の経験上からいきますと,何回も,何回もといいましても,認証評価になってからはそれほどではないです,2回やったところぐらいですが,今まで問題なかったところが悪化するというケースもあるので,そこをどう拾っていくかというのも,実は頭の痛い問題だと考えています。
 それともう一つ,専門職大学院に関する3についてですが,本来であれば,私は方向性は逆で,専門職大学院できっちりやるから,機関別の方はそれほどやらなくていいという方がいいと考えております。というのは,専任教員の資格というところは非常に難しくて,機関別で見る各学部・研究科の専任教員の評価よりも,かなり専門職大学院の方が厳格にやっているのではないかと思います。ですので,それをぽんと機関別の方に入ってくるというイメージが少し湧かないと。どちらかというと専門職大学院をしっかりやっているから,機関別はそれほど内容を見ないという方が理にはかなっているかなという気がしています。
 以上でございます。
【鈴木主査】  これは御意見あるいはコメント,御質問,どういう取扱いでよろしいでしょうか。
【前田委員】  意見です。
【鈴木主査】  御意見ですか。
【前田委員】  はい。
【鈴木主査】  何か文部科学省の方から,事務局の方からありましたら。
【堀野高等教育政策室長】  踏み込んだたたき台ですので,おっしゃっていただいているように,どんどんたたいていただければと思っております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,小林委員,お願いします。
【小林主査代理】  本日の御報告と,大体,平成28年3月に出された中央教育審議会のまとめで問題点はかなり出尽くしているという感じがします。それで,特に評価の負担軽減についてはかなりやらなくてはいけないということで,もう大学改革支援・学位授与機構の方で進められているということですけれど,一つ気になるのは,こういった既存のデータを利用したり,あるいは前回の報告書を利用したりするということはそれでいいと思いますが,そうしますと,何か全体像が非常に見えにくくなってしまうというおそれがあるのではないかと思います。
 つまり部分的なものだけ出てくるというイメージになってしまいますので,その大学が全体としてどうなっているかということがつかみにくくなってしまうという,そういう問題があると思いますので,そこの工夫が要るのではないか。例えば前回の報告書の抜き刷りを付けるとか,あるいは大学ポートレートなり学校基本調査なり既存のデータを利用する場合には,それを添付するなり,そういうやり方の工夫が必要ではないかと思います。これは意見です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。そのほか。濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  資料についてですが,本日の下條先生の御報告の資料と見比べてみると,かなり過激な原案をお出しになられたなという気がします。
 恐らくこの後を考えていくと,専門職大学とか高等教育機関がどんどん多様化していって,それぞれが全然異なる仕組みで認証評価や質保証をしていくというのは,社会的にほとんど受け入れられない方向へ行くだろうということに対する懸念は共有しますが,国立大学法人評価と認証評価が決定的に違うのは,認証評価は第三者が評価するところです。国立大学法人評価は,設置者である文部科学省が評価をするというところに統合するというのは,これは筋としておかしいという。むしろ組織目標に対して立てた計画がどのように実行されているかというのは,これは私立大学も含めて認証評価の中でそのパフォーマンスとしてやられている一つの形態であるはずです。だからやはりそういう点では,ベクトルが逆だと思います。
 だから逆に認証評価の中で法人評価の要素をどう織り込んでいくかという発想で見ていただかないと難しいのではないかと思います。そうでないと,設置者別の質保証の仕組みというのが増えてくると,今後,公設民営大学の公立大学設置者自体が替わっていくというようなケースが出てきたときに,認証評価としての整合性が担保できなくなるのではないかと思います。
 ですから効率化するという方向は結構ですが,やはり方向としては,認証評価というものにどう統合させていくかという発想で,それと学校種によっても特殊性が強調されると大変困ったことになるのでというところは,考えていただいた方がいいと思います。
 専門職大学院については,先ほど御発言があったとおりで,アメリカのアクレディテーションを見ていると,むしろ専門分野別評価ですぐれている分野が引っ張っているということを関係者に聞くことが非常に多いので,標準化してしまうと,とがっている部分についての評価をあきらめてしまうと,この認証評価,質保証というものを引っ張るのは誰なのかということについて疑問があります。せっかくこうして制度を作り始めたものについては,やはり15年たったからというよりは,私もやはりその成果をどう全体の制度の中に吸い上げるかという発想で見ていただいた方がいいのではないかと思います。
【鈴木主査】  今のは御意見ですね。
【濱名委員】  はい。
【鈴木主査】  福島委員,お願いします。その後,上田委員お願いします。
【福島委員】  実は一昨日まで実地調査を受けていて,生々しいところがございまして,受審者側の責任者でいろいろ対応していたものですから,矢島先生や酒井先生のお話は非常に共感を持って受け止めることができたのですが,非常に端的に申し上げますと,認証評価というのは,大学としての体裁が整っているかどうかということを確認するものではないのかなと思うのですが,そうであれば,私ども大学基準協会で受けているので,10の基準の取扱いについては,もう少し簡素化できないのかと思います。
 むしろ,認証評価とは違うと言われてしまえばそれまでですが,例えば私どもの大学がいろいろ改革をしていることについてのバックアップ的といいますか,励ましていただけるような指摘などが頂けると,何十人も並んで受審を受けるわけですので,もう少し元気が出るかなと思いますし,何か少しそこに味付けをしないと,やる方も元気が出てこないなという感じがいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。続きまして,上田委員,それから篠田委員,お願いします。
【上田委員】  本日の3人の先生方の穏やかな口調の中に,深い憤りが感じられる,その何か内声が響いてきたという感じがいたします。私も大学の内部で相当聞き取りをしてきましたが,やはり現場は大変疲れております。
 あと,先ほど濱名先生,福島先生がおっしゃったこととほとんど同じですが,私たち大学では,学生に対して教育の中で,評価というのはあなたのランキングを決めるのではなくて,励みになることなんだと。だからそこでますますあなたのいいところを伸ばしていく。だめなところを赤点付けるというんじゃなくて,もうここまでやったんだからもっと頑張っていけよという,そういうものが評価なんだということを,今回の教育改革の中でも何回も言っているところです。
 ですので,やはりそこで大学の中でここを伸ばそうとしているというところは,別項目でやる。今のだと,前の学期で赤点取っていないから,次はそこを免除みたいな感じですよね。それで赤点取ったところだけもう一回やれみたいなのですけど,大学の中でも,やはりここを見てほしいというところがあると思うので,そこを集中的に見て,本当に励ましていただきたいというところがあります。
 私たちの大学では,いろいろな企業の社長さんとか招いて,セミナーなどをやってますが,やはりこれ,これからは日本の産業は選択と集中です。だから同じ家電でも,全部の製品を作るというのではなくて,あるいは自動車メーカーでも,全部の製品を作るというのではなくて,ここに集中して,そこでいい質のものを作っていくというところに選択と集中をしていくという,そのさじ加減が非常に重要だということです。
 大学は企業ではありませんから,うちの大学はここがいいという,その選択と集中をもっと加速して,いいところがもっと評価されて,なおかつ外の社会にも見えていくという,そこを可視化していくというような意味で,もっと励まされ,励ましていくような評価というものが頂ければと思っております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  矢島先生や酒井先生が,評価をする立場と受ける立場で御発表いただいて,実態について非常に感じるものがあったのですが,やはり多くの方が意見出しているように,何でもかんでも全てのことをデータ出させてチェックをするというところから変えていかなくてはならない段階で,資料4にあるように,やはり内部質保証というのを軸にして,中心にして動かしていくということについても,そういう方向というのは私は基本的な方向としてあるというか,いいのではないかと思います。
 括弧の中に書いてある段階別評価で高い評価を得た場合というようなのについて言うと,これは議論をしなくてはいけない。つまり内部質保証が有効に機能しているというのは,どういう評価をすれば有効に機能していると言えるかどうかというところなのですが,このあたりのところで,また矢島先生や酒井先生からも御意見もお伺いしたいと思いますが,内部質保証システムといえば,それはやはり三つのポリシーなり,大学としての目標を掲げて,それを実践して,しっかりやっているか,やっていないかということを評価していく。後で濱名先生から学修成果について発表がありますが,こういう例えば学修成果でチェックをしたことがしっかり授業の改善につながっているかどうかということがしっかりやられて,そのサイクルが動いているかどうかということを検証する。その検証というのがやはり軸になっていくというのは,私は非常に重要だし,そこのところが大学の運営としては根幹ですので,そこに焦点を合わせていくということだと。
 それで,新しい認証評価基準を見ましても,例えば大学基準協会で,内部質保証システムという大項目において5つの柱を掲げているのですが,その最後のところには,評価結果を改善・向上に向けた取組に行っているか,つなげているかが評価の最後のところですので,ここをどういうふうに,つまり検証していくのか。これは認証評価機関がやれるところと,やはり受け手である大学のところが評価を改善につなぐような組織なり運営なりをしっかり作っているかどうかというのと,相互関係といいますか,というところがあるのではないかと思います。
 その点で,この改善につなげていくような内部質保証システムなり達成度評価,達成度評価のところでは,矢島先生もこれは当該大学自身の目標や課題が評価の前提になるということをおっしゃっていますので,それに基づいて努力をして,それがしっかり成果につながっているかどうかというところが重要なところだと思いますし,酒井先生の御発表の中では,例えばシートの4のところで,長所として特記すべき事項の中で書かれているというのは,評価されたところは,やはり評価の結果について次年度の事業計画だとか各組織レベルの行動計画の策定に活用している,つまり評価の結果を改善に生かしているから評価できることで,これがやはり私は内部質保証システムなりPDCAのサイクルが動いているという状態じゃないかなと思うのですが,こういうことをやはり中核にしながら,評価を進めていくという方向で大きくかじを切っていくということについては賛成。
 矢島先生が評価をする立場で,私も日本高等教育評価機構の評価に関わっていますので,評価する機関としての難しさというのもあるのですが,そのあたりで,内部質保証システムを評価していくときに,今後どのような,基準協会として展開になっていくのかといいますか,そのあたりについて御意見があれば,是非伺いたいと思いますし,酒井先生については,中央大学として,シートの3番のところにあるような非常にしっかりした評価組織を作っていらっしゃるのですけど,これを例えば助言・勧告して,助言・勧告した後の先がどうなるのかというところが,私は非常に重要なところで,ここが改善にしっかりつながっていくかどうか,あるいはつながっていくような検証がされているのかどうなのか,そういう組織運営。ここのところが評価機関の評価とうまく合っていけば,その大学は改革のサイクルが回っていくという構造になっていくので,こういうのを評価機関と大学が一緒になって作っていくというのが重要ではないかと思っております。
 【鈴木主査】  三先生,短くお答えいただければと思いますが,いかがでしょうか。
【矢島上智大学法学部長】  何か厄介な難しいお題を頂いたような気がしますが,二つだけ申し上げておきたいと思います。
 内部質保証という場合に,基準協会の方のようなやり方ですと,当該大学が何を課題として考えているのか,何を次の目標設定として選んでいるのか,それについてのサイクルがどう動いているかの評価になりますので,得てしてそれは相対的なものたらざるを得ないというのでしょうか。そうすると,頑張り方だとか,頑張るところの目線というのはおのずと異なってきますから,それをどのように平準的なというか,客観的な,対社会的と言うべきか,評価の対象とするのかというのは,非常に悩みどころというか,難しいところがあるということを感じている,それが一つです。
 もう一つは,基準協会の方で内部質保証の方にアクセントを置いてかじを切る,そのあたりの含みはどうなんですかという御質問ですが,私は基準協会の方の委員を務めておりますが,さしたる委員ではございませんので,大したことは申し上げられなくて,ただ申し上げられるとすると,内部質保証について,従来は外からチェックをするというところにアクセントがあったのですが,第3期向けについて言うと,その当該大学が自らの責任においてその所属する教育組織の単位等をどのように質保証に向けてガバナンスしているのかと,チェックしているのかと,改善に向けさせているのかと,そちらの方にどうもアクセントが置かれているやに私の方は理解していますので,その点が第2期のものとの性格の違いとして,私の理解では申し上げることができるかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  そのほか,いかがでしょうか。どうぞ,酒井先生。
【酒井中央大学総長・学長】  中央大学の酒井です。御指摘ありがとうございます。実は非常に難しい問題で,ある意味,認証評価,内部質保証システムの構築というのを本質とする認証評価の一番根幹に関わる部分だと伺いました。
 中央大学の場合ですと,指摘いただいた課題でありますとか,改善のための指摘・勧告でありますとかというのは,必ず次年度の重点課題という形で切り分けて,そこを集中的に改善のために努力していく,こういう形で,特に指摘のあった部分についてはPDCAサイクルの重点ということで取り上げております。
 その評価については,毎年,外部評価委員の先生方から評価を頂いておりますので,その点検を受けて,その年度にどの辺まで進行してきているかということを評価し,また次年度の課題を改めてそこで策定するという形で回しているというところでございます。
 お答えになっているかどうか分かりませんが,そうして取り組んでいるということです。
【鈴木主査】  下條先生,いかがでしょうか。
【下條新潟大学名誉教授】  一番難しいところでございますが,問題は,その体制ができているか,またサイクルが回っているかどうかということで,ベーシックなところから順次,教育の質保証の向上ということを評価せざるを得ない。しかし,実際はかなり難しい側面があるかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,溝上委員と日比谷委員にお話しいただきまして,それでこのセクションは大体終わりにしたいと思います。どうぞ。
【溝上委員】  溝上です。意見です。
 評価制度の中身とか運営については,いろいろ御意見,出ていますので,出ていないこととして,特に酒井先生のお話の中に出ていました適合,いい評価結果を得てもメリットが少ないというか,そういうものが余り取り上げられないという点を,私なりに大事だと思うことをお伝えして,意見としたいと思いますが,特にこれだけ費用も掛けて時間と労力を掛けて行われる認証評価とか法人評価の作業が,やはりそのステークホルダーといいますか,特に私が思いますのは,受験者といいますか,高校生とか高等学校,それから企業とか官公庁も含めて,卒業生を採用とかしていくわけですが,そこにもう少し開かれていくような,評価の後の作業,そこがもう少し取り上げられていけばと思います。
 高等学校側も大学選びについて指標が少ないとよく言われます。偏差値はもちろんあるのですけど,もっと,こんなに大学が頑張っているのに,高等学校が本当にそれを知らなくて,もったいないなとよく思って,それを伝えていくチャンネルが何かしら要るとずっと考えているのですけど,こういうものは大きな一つであって,これだけの作業をしているわけですから,やはりもっともっと高等学校も含めて社会に伝える何か装置が要るなと,そう思います。意見です。
【鈴木主査】  では,日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  ありがとうございます。福島委員と同じく,私どもも今年,受審をする年に当たっております。もうお済みになった方はいいのですが,来週,実地調査と。午前中ずっとこの話をしていたので,本当に一言一言,身につまされつつお話を伺いましたが,その中で,酒井先生のお話に労力のことが書いてあります。酒井先生のところは大変に大規模な大学で,私どもとは余りに規模は違うのですが,でもこの段ボールの数とか,人が並んでいるのとかを見ますと,何分の1というようにすると,ほとんどそのとおりか,実は規模が小さくなればなるほど労力はもっと大きいので,本当に労力が掛かります。例えばその受審年度の9月から10月,ここしばらくの間は,労力というところは星5つですが,私,7つか8つぐらいここは星を付けたいような心境でございまして,大変に短い期間にいろいろなことをしなくてはいけません。
 それで,その割に,評価が改善につながらないということもありますし,今この案が来ている段階で,最終的にどうなるか分かりませんが,褒められるところは割と決まっているのですよね。それで,7年前,私は副学長でしたので,これの責任者で,全部やりましたが,そのとき褒められたことと,今回,褒められたことは割と一緒なので,余り意味がない。先ほど前田委員から,悪くなることがあると。それはあると思いますね。悪くならないようにした方がいいと思うのですけど,同じことを褒められているのは,あんまり意味がないのではないかと思いました。
 そこへ行きますと,ベストプラクティスを積極的にPRする晴れの舞台というのは,大変にこれはすばらしいお言葉だと思いますが,ここ最近,すごく頑張ったことは,今のところ報告書案では褒められていないのです。それで,この回答を求められているところで,質問は来ましたので,その質問項目に回答するところで,もうこれどうしても褒めてほしいと思って書いているのですが,そのめり張りというか,いつも同じところを指摘するのではなくて,やはり今期の目玉はこれみたいな,何かそういったようなことができるとよいかと思っています。意見でございます。
【鈴木主査】  どうぞ。
【小松文部科学審議官】  すみません,お時間がないところを。大体これでこの主題は終わりだということですので,諮問していろいろ審議をお願いしている立場から,今後もまた更にまとめていくので御議論いただかなくてはいけないと思うので,簡単に箇条書的に申し上げたいと思うことがございまして,一つは,基本構想部会ということで,この実状を本日のようにしっかり踏まえ,またいろいろなアプローチの方法が提案されて,それをまとめていくということは大事だとは思いますが,制度的なことで釈迦(しゃか)に説法を承知で申し上げますと,この制度自体は,そもそも大学の設置認可の審査の大幅な大綱化をやろうということで,それを国で事前規制をするのではなくて,そこのところを大幅にする,大綱化するのとセットで,しかも国の認可団体ではなくて認証しかしないという自主的な団体によって,その後にどういうふうに動いているかというのを見て,そのことによって社会の信任を得て,そして公的な支援とかリソースも確保につなげていこうというのが根本的な意義でございます。
 これはもう皆様,御存じですが,ただその効果が上がっているかとか,投入労力と実際のアウトプットなりアウトカムが釣り合っているかというところは,大いに工夫の余地があると思うので,そこは御議論いただいたらいいと思いますが,根本はそういうことでございまして,それと同時に,またそれは大学のコミュニティー,個別の大学ではなくて大学のコミュニティーとしての見識として,それをどのように認証評価をもって世に問うていくかということで,そのことである種,大学の自主性というか自治性というものを確保していくという点で,非常に重要な作業であるということがありますので,今のそういういろいろ苦しいところはそうだと私もすごく思いますが,基本構想をやるとすれば,この点に立ってどうこの制度を積極的に活用していくかということについて,やはりいろいろお知恵を更に頂かないといけない段階かと思います。
 長くなって恐縮ですが,この議論は例えば行政も行政評価というのを今やっていて,膨大な量の,人によっては写真に撮りたいというくらいの膨大な量の資料を各行政分野で作って,評価して出していて,それがどのぐらい,掛けた労力が行政の向上につながっているかというような同じような問題がどこでも起こっております。そういう意味では,共通の問題と,大学特有の問題というのも整理してみなくてはいけないかと思います。
 そういう意味でいうと,下手すると内向きだと言われるおそれがあって,成果が出ていないといえば,出せばいいではないかという反論が返ってきますし,ゴールではなくて出発点だろうと。そういう意味では,ここがオーケーになったから,大学としてすばらしいということにはならない。大学として存立しているということについて,一応の根拠があるということしか言えないという,しかしそこは非常にシビアに,国の認可とかの手を離れておりますので,どうやって自律的に確保するかという点では,別の意味で果たしている意味がありますので,この点をしっかり担保しないと,大学の建つ基盤が弱くなるおそれがあるということを申し上げたいと思います。
 あと一点だけ,短く一つ。この中に出てきますが,これはたたき台という意味で書いてあると思いますが,先ほど濱名先生などからも御議論ありましたが,法人評価と認証評価というのがあって,国立大学の方は特に両方あって大変だということを言われるのですが,それは中身を整理したらいいかと思いますが,国立大学法人の評価は,国家意思で立法府が立法して設置するという大学が,それを根拠に存立を保障されていて,そしてそこに私立大学などから比べると膨大な公費が直接に投入されている。これは公立大学でもそうですが,それにもかかわらず法人格を持っていて,独立に意思決定を最終的にはするという形になっているわけですが,それは組織形態なり経営体としてきちっとしたお金の使い方になっているかということを,設置目的に照らしてチェックをするということでありますから,先ほどのように,私立大学の方には御議論があるだろうという話が出て,それから,そこは寄せ方が逆じゃないのというような御議論が出るのは,これもまたもっと整理をしなくてはいけなくて,大学としてどうあるべきかということに照らしての評価と,今のような特異な,国立ということについて,法人が公費なり公的な支援に足る設置目的に照らした評価をされている活動ができているか,これは独立行政法人評価もあるわけでございまして,そういった点は,それぞれ目的が違いますので,ただ,項目が非効率に教育研究を妨げるような労力を無理やり生んでいないかというような点からは,しっかり見直しをする必要があると思いますが,その点は大学全体として,国公私を通じてのコミュニティーのものとはまた別の評価が行われざるを得ないという点はあると思います。
 長くなりましたが,今後また御議論いただいて,基本構想としてまとめていかなくてはいけないので,制度的な基盤のところについて,あえて諮問している側として申し上げさせていただきました。失礼いたしました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。今,審議官からお話がありました制度的な基盤という側面ももちろん考えなければいけませんし,それから皆様から御意見を頂いた個々の問題,あるいは大学が直面している問題等についても考えなければいけないという,非常に重大,広大でありながら微妙な分野というかテーマですので,今後ともまた議論していただくということになると思いますが,今回は以上で一応終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 改めまして,矢島法学部長,酒井総長・学長,下條名誉教授に,本日お忙しい中,御出席いただきまして,ありがとうございました。認証評価については以上といたします。
 それでは,続きまして,情報公開及び学修成果の可視化について,御議論いただきます。本日は,外部有識者として,高知大学から小島副学長にお越しいただいておりますので,高知大学における質保証の取組についてお話を伺います。
 また,本ワーキンググループの委員であります関西国際大学学長の濱名先生からは,「三つのポリシーの実質化と教育の質の保証について」というテーマで,10分程度でお話を頂いた後に,意見交換をしたいと思います。
 それでは,小島副学長,よろしくお願いいたします。
【小島高知大学副学長】  失礼いたします。ただいま御紹介いただきました高知大学の小島でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 高知大学では,昨年度,大学教育再生加速プログラム,いわゆるAP事業のテーマ5を採択していただきまして,昨年度から約1年間にかけて取り組んでまいりましたことを,本日は中心に御報告をさせていただきたいと思います。お手元の資料と,それから前にも資料を出していただいております。
 まず,本学ですが,四国にございます高知県唯一の国立大学でございます。6学部,1教育プログラムがございます。学部学生約5,000名,教職員1,851名,教育の基本目標といたしましては,総合的教養教育を基盤とし,地域協働による教育の深化を通して課題解決能力のある専門職業人を養成するということを教育の基本目標に掲げてございます。
 次に,AP事業の概要になります。本学のこのAP事業ですが,大きく三つの柱を持っております。一つ目ですが,全教職員を対象とした意識改革を行うということ,二つ目が,これは全学生を対象としておりますが,多面的な評価指標を用いて,学生を評価していく,学修の成果を評価していくそれを外部と協働して開発していくということが二つ目の柱。三つ目が,学生のその成長を検証する際に,地域と協働して検証するという,外部評価も得て検証していくという,その三つの大きな柱を立ててございます。
 次ですが,高知大学事業の概要ですが,それらの大きな三つの柱の中の具体的な取組内容になりますが,まず一つ目が,学修成果の可視化のために,学修e-ポートフォリオを今年度,構築いたしました。
 それから二つ目が,成果を検証するために幾つかの授業外学習時間ですとか,大学教育満足度,また学生生活満足度等の調査を実施いたしました。
 それから三つ目が,ディプロマ・ポリシーに基づくアセスメントツールの開発とその実施をいたしました。
 そして4番目,5番目は,客観性を担保するということの仕組みといたしまして,他大学と比較できるように,外部の客観テストの実施ですとか,教学IRコモンズの実施を行いました。
 そして6番目,7番目ですが,今度は出口の課題を検証するために,卒業生調査の実施,また卒業生とその就職先の上司へのインタビュー調査というものを今年度,実施いたしました。
 次のページですが,AP事業前に,本学が抱えていた課題ということで,学生に対する質保証と大学全体の質保証の2点でまとめてみました。
 まず,学生に対する質保証の面では,授業科目全体,授業ごとの成績,学生が取った授業科目の成績は,学生にはもちろん知らせておりますが,成績の分布というのを公表しておりませんでした。ですので,学生は自分が優か良かは分かりますが,全体,例えば30人で,5割が優の中の優なのか,あるいは1割が優の中の優なのかという,いわゆる成績の分布というのは一切公表しておりませんでした。そういう問題がございました。
 また,アセスメントを幾つか行っておりましたが,その結果のフィードバックが十分でなく,その結果をフィードバックするというシステムがございませんでしたので,学生によっては,そのアセスメントを取りにこないというような,十分なフィードバックができなかった,そういうシステムがないというのがございました。
 大学全体といたしましても,同じですが,結果のフィードバックをするシステムがないということ,また,大学の満足度アンケート調査等は,学部独自では行っておりましたが,全学で統一したフォーマットというのを持っておりませんでしたので,全体としての実態というのを明らかにすることができておりませんでした。
 また,卒業生調査につきましても,一部の学部では実施しておりましたが,全学的な実施は至っていませんでした。それがAPの事業の前に本学が抱えていた課題になります。
 次のページをご覧ください。その課題を解決するために,今回AP事業で取り組みましたことですが,まず左側の学生に対する質保証の取組のところでは,まず下にありますが,e-ポートフォリオを構築いたしました。このことで,今まで十分にフィードバックできなかったことを,例えばGPAですとかセルフアセスメントシートの結果ですとか,外部客観テストなどのフィードバックを実質的にフィードバックができるようになったということ。また,成績評価ですとか単位の修得状況につきましても,より分かりやすいような形で,可視化をするという意味ですが,できるようになったということが学生に対する質保証への取組になります。
 大学全体の質保証の取組といたしましては,まず教学IRに関するデータを一元管理する,そして測定する。学部ごとに実施していたものを全学として実施するということ。
 そしてアセスメント関連は,全学統一のフォーマットで実施をして,更にそれを検証するということ。
 そして,本学の情報だけで評価するのではなくて,先ほど申しました外部テストを実施するなどで他大学とのデータの比較検証をするというようなことを担保するということを,今回のAP事業で実施してまいりました。
 次のページがe-ポートフォリオの活用事例になります。これがe-ポートフォリオの実際の画面ですが,ホームの横の履修状況という画面になります。学生個人がこれをアクセスして,この履修状況の画面に参りますと,真ん中あたりです。自分が今現在,履修登録をしている授業科目があて,それの成績,授業科目ごとに科目の平均点,標準偏差,そして成績分布という項目を設けました。
 これをクリックすると次のページになります。授業科目ごとに成績分布を表示という欄です。自分が履修した授業科目の成績分布をこういう形で表示いたしました。ただし履修生が10名以下の場合は,やはり個人が特定される危険性がございますので,10名以下の授業には適用いたしておりません。11名以上の授業科目でこれを実施いたしました。
 その次のページですが,左のグラフがその学期に修得した単位数,そして右側がこれまでに修得した単位数ということで,今回,今学期のもの,そして今までの修得した単位数,優とか良とかを棒グラフで表すようにいたしました。
 その下のグラフですが,これが入学時から卒業時まで各1年生の1学期,2学期というように,入学時から卒業時までの修得単位数とその折れ線グラフがGPAの推移を表すことになっております。共通科目と専門科目と合計という形で,この折れ線グラフで表示しております。
 現在は個人のデータのみを表示するようにしておりますが,学部平均ですとか学科ごとの平均というようなものも,制度としてはというか,機能としては今,ポートフォリオ上で可能ですが,まだ学内の合意というか,どこまで公表するかというところはまだ合意を得ておりませんので,現在は個人データのみを表示しております。
 次のページをご覧ください。ディプロマ・ポリシーに基づく11の能力の測定結果ということで,セルフアセスメントシートというのを1年生と3年生に実施いたします。その結果をこういう形でポートフォリオ上に結果を表示し,受検後すぐに彼らがこれを見ることができるということをポートフォリオ上で実現いたしました。
 次のページをご覧ください。アセスメントの開発ということで,セルフアセスメントシートにつきましては24年度以降,実施しておりましたが,今回の28年度に実施した三つのポリシーの見直しの際に,本学が掲げる総合的教養教育の10の力とそれを統合した外部に働き掛ける力という11の力を定義いたしました。それに基づいたセルフアセスメントシートを開発いたしました。この改定時には,学内だけで決めていくのではなくて,地域の企業や教育委員会に所属する社会人の方にも一緒にそのセルフアセスメントシートの開発に取り組んでいただきました。
 その次のページをご覧ください。卒業生アンケート調査の結果になります。昨年の12月から1月に実施いたしました。昨年度卒業生1,071名に対して,これは郵送によるアンケートを行いました。約20%の回収率でした。調査項目には,そこに掲げているような1番から5番の内容を行いました。
 それから,その次のページをご覧ください。同じく出口の検証ということで,卒業生とその就職先の上司へのインタビュー調査を実施いたしました。首都圏,高知県内それぞれに就職している29組を,卒業生とその上司,その就職先の上司の方にインタビューを行いました。
 最後のページです。今後の質保証の取組ということで,現在,e-ポートフォリオを構築しておりますが,更にこれを現在は先ほどお示ししました全体のページが今,出来上がっておりまして,あと学部ごとにカスタマイズをするようなページ含めて,ここにありますような授業科目ごとのルーブリックですとかアンケート機能の充実を今,取り組んでいるところです。
 そして,今回テーマ5のAPの事業の中ではディプロマ・サプリメントを発行するということが求められていますが,ディプロマ・サプリメントにつきましては,31年度に発行できるのを目標に現在,検討しておりますが,その前段階として,先ほどのe-ポートフォリオですが,デジタルで入れていくので,卒業したら彼らは全然見られなくなりますので,せっかくの4年間の成果なので,それを何とか学生に持たせられないかというような御意見もございましたので,このプレ・ディプロマ・サプリメントというのは,e-ポートフォリオのサマリー的な内容で,今,彼らが4年間学んできたことを何とか途中で見せられないかということで今,検討をしております。
 これにつきましては,今年度の年度末には学生全員に対してこのプレ・ディプロマ・サプリメントは発行をできるように今,準備を進めているところです。
 以上でございます。
【鈴木主査】  どうも先生,ありがとうございました。続きまして,濱名委員から御発表をお願いします。
【濱名委員】  それでは,若干パワーポイントで入れていない,IRデータで配れないのがありますので,それは御容赦いただきたいと思います。
 まずこれはおさらいでございますが,高大接続ポリシーの中でアセスメント・ポリシーの話が出てまいります。内部質保証の話にいつの間にかすり替わっていますが,私どもの感覚からいうと,高大接続答申の中では,このアセスメント・ポリシー,大学全体としての共通の評価方針の確立というのが前提にあったと思いますが,そこのところが努力義務のままで,質的転換答申で出てきた方針のフォローができていない。
 私の主張は,基本的にはこういう評価方針を各大学が3ポリシー別々に定めるのであるならば,こういうポリシーがなければ,PDCAなどできるはずがないというのが主張でございます。では,それならどうしたらいいのかとよく言われますので,本日は私どもの事例も含めてお話しさせていただければと思っています。
 これは,「カレッジマネジメント」に書きましたポンチ絵です。アセスメント・ポリシーとは何をやるのか。線が一番太いのは,PDCAといいながら,ディプロマ・ポリシーが到達目標だとするならば,これに対する評価と,それに向けての教育活動を評価するというのが主たる機能ではあります。当然,CPの中で教育内容や方法が掲げたとおり行われているか,あるいはそれらに効果があるかということも対象になってくると思いますし,アドミッション・ポリシーどおりの選抜方法が取られているか,あるいはそれに効果があるかとういようなこともアセスメント・ポリシーの中で扱っていくべき内容であると考えております。
 学修成果の評価というと,どうも全体として一つの方法で全てのDPを評価できるというようなイメージを持たれている向きが多いようですが,実際に私どもが調べに行っている大学,これはカールトン・カレッジというアメリカのリベラルアーツカレッジの事例です。ここの場合は,日本のディプロマ・ポリシーに当たるラーニング・アウトカムというのはこの六つで,どちらかと,それらは時間の関係で読み上げませんが,比較的リベラルアーツ大学としては一般的だと思います。
 注目していただきたいのは,それぞれの目標ごとに,評価基準や評価方法が違うということです。見ていただきますと,ラーニング・アウトカムLOの1は,これは非常に漠然とした世界観,世界の人々,芸術,環境,文学,科学,制度についての継続的な学びに必要な知識を獲得したことを示すことができるというものを,どういうエビデンスで評価するのかといったときに,この場合ですと6種類の測定尺度と方法があげられています。
 それで,様々な調査を用いられていますが,色で付けていますのは,直接的な評価なのか間接的な評価なのかの違いです。全国スタンダードのものと,このカールトン・カレッジが作っている独自基準のものと,業者が作成しているタイプのものと,基準もこの3種類があります。ですからこの一つの目標に対しても6種類の方法と基準を使って評価します。
 この二つ目は,LO3に飛んでいるのですけど,この場合も見ていただくとお分かりのように,ポートフォリオも出てまいります。ルーブリック評価を教員が行う場合も出てきますし,グループフォーカスインタビューも出てまいりますし,リテラシー・ポートフォリオでありますとかサーベイでありますとかアセスメント・テストでありますとか,学生調査のデータでありますとか,この一つのラーニング・アウトカムをどういう方法で分析していくのかということが非常に明確になっています。アメリカではアセスメント・ポリシーとは言いません。アセスメント・プランと呼びますが,こういう設定になっています。
 LO4になると,評価方法は4種類です。問題を公式化して解決することができるというような目標になってくると,評価にCLAなどのテストも使われていますが,ルーブリック評価がかなり入り込んでいる。このルーブリック評価になってくると,それぞれAAC&Uのバリュールーブリックを参考にしながら,各大学が独自に定めている部分も出てくるわけであります。
 それでは,本学ではどういうふうにアセスメント・ポリシーに基づく評価の実践を行っているかという話です。私どものプロフィールは,中小規模の大学でございます。しかしながら私ども,DPでは六つの目標を掲げています。それぞれの学位プログラムごとに定めているのが六つあります。五つはジェネリックスキルというか,大学共通の自律性,多様性理解,社会的貢献性,課題発見解決力,コミュニケーション能力。それと専門知識・技能の活用力ということが到達目標です。それをいつの段階でチェックするのか。
 こちらの五つについては大体,半年に1回,それぞれチェックをしている。五つの項目については自己評価だけではなくて,アドバイザーとチューニングをします。学生の自己評価のリライアビリティーというのはそんなに高いわけではないです。やはりアドバイザーがインタビューをすると,評価が上がる学生も10%以上います。下がる学生も10%以上いるので,その学生の自己評価だけで評価するというのは,私はやや危険だと思っています。
 それともう一つ,専門知識については,大きく分けて2年修了段階で専門基礎知識を,必修科目を出題エリアとして,それぞれの学科で到達確認試験というのをやります。これまでは,どちらかというと答えが一つしかないものを中心にやっていましたが,現在,開発しているのは,答えが一つでない,知識を活用すればいろいろな形で記述ができるといった問題です。これから必要とされる要素を入れていこうとしているわけです。
 それと3年修了段階で,成績と修得単位数で4年生の卒業研究の履修ができるかどうかという,こういう構造でございます。
 私どものベンチマークの具体的に5項目につきまして,本日は時間の関係で,これはこれまで中央教育審議会で一,二度御説明させていただいていますので,どういう能力をどういう中項目で測定するのかという基本的な構造についての資料でございます。これも説明は割愛させていただきます。
 大きなポイントになってきますのは,アセスメント・プランとは何なのかということです。私どもはこう考えています。大学レベルと学部学科,学位プログラムレベルと学生個人のレベルの3層構造で,これは評価の位相というのですが、やはりこのように設定するべきだと思います。これをきちんと整理しないと,話がマクロな話とミクロな話が行ったり来たりするということになります。
 マクロな話というのは,今,学位プログラム単位で求められているのは,この真ん中の層です。学位プログラムごとの質保証。他方,それを大学全体としてできているかどうかということも重要でございますので,私どもの場合,まず一つの柱として,この一番右端,テストの成績があります。これはどこの大学でもやっている部分であります。
 それにKUIS学修ベンチマーク,到達確認試験,卒業研究という方法で評価を進める。到達確認試験は,先ほど申し上げた次第でございます。当然のことながら,卒業研究について複数の教員で個々の学生の評価をすることに加え,その成績の付け方が妥当かどうかということについては,サンプリングしたものをカリブレーションしながら検証評価していく。これがやはり一番重要になってくると思います。そういうことがルーブリック評価全体として機能しているかどうかというのが,大学全体での評価で確認していくべき内容になってくる。
 到達確認試験は当然,学生個人評価からいいますと,2年修了段階で60%以上取れなければ再試を受けてもらいますので,3年の修了までの間に再試を受けて通らなければ4年生になれないという仕組みにしています。専門基礎知識の獲得は個人にとって重要でございますが,学科レベルであれば,どのぐらいの合格率なのかということで,最終的に全員が2年修了段階で合格できているかどうかを評価する。大学全体とすれば,それらの分布がどういう状態になっているかということがポイントになってきます。
 ベンチマークについては,学生個人の評価だけではなくて,それぞれの学部学科単位で,学位プログラムレベルで、どの程度その学科の教育がそれぞれの目標を強化しているかを評価できますし,大学全体としての達成度を評価するという構造になっていきます。
 こういう形で,知識獲得と汎用性能力,それをルーブリックも活用しながら,最終的に我々にとって大切なのは,学生が何をできるようになったかということを,学生たちが自己説明できる,エビデンスを持って説明できることがポイントだと考えています。
 それで,学修成果の評価方法はいろいろなものがございます。これを書き出してみましたが,到達確認試験というのは,これは書いておりませんが,専門的な知識に関する直接的な評価です。私どもの場合,それ以外にもこういう方法があります。汎用的な能力については,本日御説明しておりませんが,入り口段階で言語運用能力と数理的分析力。これは大学入試センターが始めたものを,私どもが継続して活用して,今,発展させております。
 それと,間接データでいいますと,学内,私どものパートナー大学とコンソーシアムを作っていますので,そこでの適応調査というサーベイと,あと大学IRコンソとの比較をしております。ただし,大学IRコンソのデータについても,機関レベルとか学位プログラムレベルの情報収集が主でございますので,サンプリングで,全員に受けさせているというわけではありません。
 それで,これがベンチマークのセルフチェックです。どういう回答をさせているのかということです。これも先ほどの高知大学より本学の方が開始したのは早かったと思いますが,それをこういう形で回答した結果を,レーダーチャートで4年間の変化を示し,全体で8回ありますので,その都度フィードバックしているという形でございます。
 これは配付データにはありません。これがベンチマークの達成状況で,どのぐらい行っているのかと。一応4段階評価ですが,レベル3まで何とか到達させたい。レベル3以上が8割というのが,私どもの組織目標ですが,残念ながら60%から75%までしかレベル3にまだ到達していないという現状です。これはそれぞれ,我々の大学としての機関評価をしていくときに課題があるということです。
 何が一番できているのかというと,本学の場合ですと,世界市民としての多様性理解かが一番自己評価が高いです。これは私どものカリキュラムの中でやっておりますグローバル・スタディという海外プログラムが効果を上げていると思っております。
 これは到達確認試験の受験結果です。これも配付資料にはありません。これを見ていただきますと,これは教育学部の教育福祉学科ですけど,1回目に通るのが多いですが,学科ごとに違ったりするわけです。例えば英語教育学科ですと,1回目ではこれだけしか通らないとか,あるいは未受検の学生が残念ながらいるというような違いです,こういう形で,それぞれの学科の教育はうまくいっているか。2回目までに何%,大体合格しているかということで,それぞれの学位プログラムとしての単位,組織単位でのメリットが大体,達成度が評価できるということです。
 私どもの教育学部は間接データでいいますと,これが大学IRコンソのデータとの比較です。これもお配りしておりません。1年生と3年生を比較した場合に,どのぐらい伸びているか。1年生の段階でも分析力や問題解決力が他大学全体よりやや高めですが,3年生になると全体として更に差が大きくなって伸びている。したがって,そういう点では教育成果は上がっているのだと見ていますし,異文化の人と協力する力,これも見ていただきますと,グローバル・スタディの効果が上がっていると我々は評価していますが,3年になると大体3分の2以上の学生が,高まったと評価している。異文化と協力する力が高まったとか,グローバル問題認識力というのも,他のIRコンソの大学と比べて大差が出てきているというような見方をしております。
 これも自分の考え方や研究を発表する,あるいは授業中のディスカッションの機会について,他大学と比べてどうなのかの結果です。教育方法としては,教員が提出物に添削やコメントを付けて返却しているとかというのが,大体本学では8割ぐらいありますので,こうしたところが,我々としては自分たちの教育方法がどの程度機能しているのかということを,こうして確認している。
 学生自身の成長を実感するために,我々はこうしたルーブリックも使いますし,IRでデータ活用も行い,それらの開発のために一般社団法人学修評価・教育開発協議会という法人を作っております。学生には答案とかレポートも返して,それに加え学生と面談するリフレクション・デイというのを半年に1回作ります。こうしたことで学生にフィードバックをして,グローバル・スタディとかコミュニティ・スタディといった,経験型プログラムで強化をしていくということを中心に教育方法の充実を行っています。更に学生たちから様々なデータを取るので「評価と実践」という授業科目を作って,評価ということ自体を理解させていって,なおかつ学生たち,就職出口によって時期が違うので,自分でどの時期にグローバル・スタディに行くとか,どの時期にインターンシップに行くかということを考えさせるラーニングルートマップというのを作っております。
 こういうのは,もともとは,文部科学省からの補助金で最初は開発をいたしました。それで,アセスメントとしては,我々はこう考えています。測定可能な目標達成が必要。それと直接と間接を組み合わせて評価を行うことが重要。それと私立大学の独自性とか,DPが全部違いますので,全国標準の評価だけでは無理だということです。それで,独自性を活かすにはルーブリックが有効だと考えました。それと重層的で多元的な評価ということがアメリカの学修成果から学んだ我々のノウハウだと考えています。
 必要条件としての教育力の可視化にはどんなことが必要なのかということがあるのですが,これはお読みいただければ分かるのですが,あと見ていただきたいのは,これが今やっております,APでやっておりますアクティブ・ラーニングと学修成果の可視化の複合型の取組です。
 何をしているのかというと,企業と大学の評価のずれが世間からたたかれている理由なので,これを何とか企業と大学の評価のカリブレーションをやらなくてはいけないということを考えています。
 インターンシップをやっていくときに,AP型インターンシップといって,我々のKUIS学修ベンチマークの項目の一部をインターンシップの評価に使っていただくという試みをしています。問題解決型,企業から頂いた課題を材料にしながらということになっています。これはもともと私どものKUIS学修ベンチマークで始めたのですが,項目が多過ぎるということで,インターンシップルーブリックというのを作りまして,例えば前に踏み出す力は項目としてもう入れるべきだということ等でございます。
 こういうインターンシップの構築をして,最終的にこういう外部とのチューニングをしていかないと,ディプロマ・サプリメントも重要なのですが,最終的に評価観のすり合わせを社会としていかない限り,我々が努力していることについてはなかなか評価してもらえないと。そういう点では,まずやはり自分たちが何に基づいてPDCAをするのかという方針を,まず明確にして,それをどのような時期でどのようにしていくのかということが重要です。最後に付けております,配付資料にはございますが,どういう形で我々が4年間通じてデータを取っていくかという計画表です。
 これはアメリカの大学のアセスメント・プランではよくやる手法ですが,毎年やるものと,どの時期にどういうデータ収集をするのかを定めています。ですから,認証評価に合わせてデータを集めるのではなくて,我々が毎年,定点的にやるものと,2年に一度やるものとかということを含めて評価プランを作るということが,ある意味で日常的にPDCAとが行えるようになるということにつながっていく。それがアセスメント・ポリシーという理解をしております。以上です。
【鈴木主査】  濱名先生,ありがとうございました。
 それでは,時間が差し迫っておりますが,小島副学長,濱名委員からの御発表を踏まえて,御意見を頂ければと思います。美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  とても先進的な取組の御紹介,ありがとうございました。小島副学長と濱名委員お二方に同じ質問をしたいと思います。
 今回,の議論のテーマが,学修成果の可視化ということでしたが,結局こういう学生が学んだかどうかということについて,こういうデータを取ると,教員の方にも問題がある,例えば学生がこういう成績,あるいはここまでしか学ばなかったことは,教え方に問題はないのかという視点もあります。そういう教え方,あるいはその内容について,それが適切であるかどうかというのは,この学生への可視化をどのようにファカルティー,FDとか教員に返していくのかということについて教えていただければと思います。
【鈴木主査】  それでは,どうぞ。
【小島高知大学副学長】  ありがとうございます。本学が,可視化いたしましたのは,今年度の1学期の成績から,やっと分布を公表することになりました。
 それで,教員は自分が指導している学生の成績は全部見られます。当初,全ての教員が全ての授業についての授業の成績の分布を表示するように予定はしましたが,やはりかなり反発もございまして,今,全部の教員に分布を公表はできておりません。なので,学生は見られますが,全ての教員が全ての先生たちの公表を見ることができていないという状況かと思います。
 なので,教員は自分の学生の取っている授業科目の成績分布を見ることはできますが,全ての教員がまだ見ることができないので,それを直接,教員へのFD等に使うことまではまだ至ってはおりませんということです。
【美馬委員】  大学として,カリキュラム・ポリシーなどへの見直しというようなことは全然制度としては入っていないということですか。
【小島高知大学副学長】  はい。すみません。まだその公表されたところが今年の8月ですので,これからそれについての取組をするということです。
【濱名委員】  私の方も。
【鈴木主査】  どうぞ。
【濱名委員】  いろいろな観点でやっておりますが,今年,FDで学科ごとに到達確認試験と必修科目の相関データを全部出しました。そうすると相関のものすごく高い科目と,非常に低かった科目,中には負の相関の科目が1科目ありまして,その担当者は頭を抱えました。つまり,その科目で成績がよかったことが,到達確認試験のスコアと相関がなかったということですから。そういう形でまずは各教員に結果を返していかなくてはいけない。
 当然のことながら,ベンチマークについてはアドバイザー,あるいは自分の受講者がベンチマークどう伸びたかなのですが,最初,それをかなり重視していたのですけど,どうも学生が同時に10科目以上履修していることを考えると、10分の1の1科目の貢献で,直接的にデータで見るのはリスクが高過ぎると考えました。むしろ学生が自分の能力が高まったきっかけが何だったかという振り返りの中で,特定科目名が出てくることを評価するべきだということで,汎用的能力はそういう見方でみるようにしています。
 専門的知識は比較的,測定がしやすいですし,なおかつ成績評価の仕方について,同じレポートとかを使って,ルーブリック評価のカリブレーションをやっています。そうすると自分の評価の仕方が非常に辛いとか甘過ぎるとか,どういう点がほかの人とずれているのかということについて自覚してもらうのは,一定のサイクルで毎回のPDAではありませんが行っています。FDCAではありませんが,一定サイクルで毎年大体,例えばプレゼンテーションルーブリックで評価してみる,あるいは,専門性を問わなくても分かるようなレポートの評価でカリブレーションをやるとか,そういうやり方で,自分自身の,我々が評価するというよりは,今回の到達確認試験と科目の相関分析は専門知識についてはショック療法だったのですが,むしろ教員が自覚してもらうことが重要です。
 それと授業評価は中間評価で全部フィードバックして,学生たちにその教員がどう改善したかということも説明してもらうようにしているので,そのあたりで気付いてもらうことが重要です。それらの成果が一応,全体としては悪くないデータになっているのかと思っています。
【鈴木主査】  それでは,溝上委員,お願いします。
【溝上委員】  濱名先生にお伺いしたいのですけど,コミュニケーション能力や外交性とか,こういういろいろな人に関わっていくのって,本当に変わりにくいというか,難しくて,お伺いしたいのは,こういう汎用的能力に関するところを自己説明していけるような,そういうことも十分,教育的に意味があると思いますので,それはいいのですけど,最終的に質保証といいますか,学修成果として見ていくときに,最後はどのようにされているのか伺います。
 あるいは一時元だけで質保証というか,全体の評価となるわけではないと思いますので,そこが多少低くても,ほかのところが高いとかで総合的な評価になると思うので,お伺いしたいと思います。
【濱名委員】  コミュニケーション能力よりもっと難しいのはいっぱいありますので,社会的貢献性とかはもっと大変だと思っています。知識を知ったら社会的貢献性が上がるわけではないので,我々としては,だからコミュニケーション能力を高める,あるいは汎用的能力を高めようとすると,本学の学生の現在の特性を考えると,体験型学習プログラムを通じて,それでその成果について外化してもらって,コメントを受け、そのあと再内化したものをもう一度,その報告を繰り返してもらうと,そういうプロセスの中で,やはり自身の評価と,エビデンスをしっかり残していくというやり方を取っていて,最終的には書いてもらう。やはりむしろ失敗から学んでもらうとか,あるいは最初,うまく説明できなかったことが,1回フィードバックされた結果を受けて,次のプレゼンテーションのときにできるようになったというところです。
 それで,最終的には汎用的能力を客観的に評価できるということは,僕は難しいと思います。そこについては,ただ我々もベンチマークの5項目が全部パーフェクトにできるというのは,私たちの組織目標ではありますが,学生はその五つ全部でなくても,一つか二つしっかりエビデンスを持ってプレゼンテーションなりアピールができれば,産業界とかもしっかり評価してくれますし,やはりそれはそれで自分の強みというのを自覚してもらうことも非常に重要であると。そういうぐらいの状態で,今の状態,満足はしていませんけれど,非常に悪い状態とも思っていないというのが現状で,お答えになっていないかもわかりませんが,そのような形です。
【溝上委員】  分かります。ありがとうございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。続きまして,福島委員,それから上田委員,お願いします。
【福島委員】  濱名先生にはまだいろいろお聞きする機会があると思いますので,小島副学長にお尋ねしますが,e-ポートフォリオについては,大学側はどう活用されているのかということですが,学生が自分のことを見ることはできますが,逆に大学の方は,例えば教員や職員が成長のために促すようなことができるようになったのかどうなのかということが一つです。
 それからもう一つが,セルフアセスメントについては非常に重要だと思いますが,これは途中で地域の人だとかということで改善をされたということなのですが,一番元の開発は独自でやられたのかどうなのか。
 その2点についてお伺いしたいです。
【鈴木主査】  どうぞ。
【小島高知大学副学長】  まず,本日お示ししたのは,これは学生のページです。教員のページも作っております。教員につきましては,授業担当者の立場と,それからアドバイザー教員,アドバイザーの立場という二つのページが見ることができます。ですので,一つが教員は自分の授業担当者のページにおいては,自分の授業担当科目についての内容と,それからそこに先ほど,まだこれからですが,授業科目ごとのルーブリックを入れたり,授業科目ごとのアンケート機能を入れたりするようなことを今後,考えています。
 なので,教員はそういうところで授業担当者と,もう一つはアドバイザーとしての立場が,いわゆる指導教員ですので,指導教員の立場としてのページですと,自分が指導している学生の,先ほどの学生の履修登録,履修状況とかが見られるようになっておりますので,それが教員にとってのポートフォリオの利用になります。
 それから,二つ目のセルフアセスメントシートですが,最初,平成24年度に作ったときは,学内だけで,大学教育創造センターを中心に,学内だけで作りました。
【福島委員】  ありがとうございます。
【鈴木主査】  よろしいですか。上田委員,どうぞ。
【上田委員】  お二人の発表,大変示唆深くて,もっともっとたくさん質問したいところですけど,短く行きます。
 今回のこの可視化ということには結び付かないかもしれないのですけど,例えばインターンシップルーブリックを見まして,教員にやってもらいたいと思いました。例えば心豊かな世界市民になるとか,それで,教員の方はどうなっているのでしょうかというのをお伺いしたいです。
 というのは,教員も大学にいる中で成長していく存在だと思うためです。ところが,学生に対してこういういろいろなことを段階別にやっている割には,教員はひたすら外部資金をどれだけ取ってきたかと,査読付きの論文をどれだけ書いたかというのを毎年,毎年,それでチェックされるのはものすごく,消耗的で,成長モデルというのがないことで評価を繰り返しています。
 若いときは,やはり何か外部資金しっかり取って研究しますが,あるところから深めていくとか,教員も何かある種のこういうルーブリックではないけど,成長モデルというのはあるはずなのに,教育者自体の成長モデルが異常にないということを痛感しているのですが,そこはいかがでしょう。
【濱名委員】  私どもはございまして。
【上田委員】  ありますか。
【濱名委員】  一応,組織目標と中期目標もありますが,それに併せて,学内ポジションごと,要するに学部長とか,あるいは学科長レベル,あるいは教授,その職階別に分野ごとのウエートと,それと目標を決めてもらって,その目標に基づく評価を行っています。期首,期中,期末の面談と評価があり,それが,賞与などに反映される形になっています。
 ですから,我々としてはどういう教育をしたいから,自分自身の立てた目標で,私どもの場合は教育にウエートを置いた大学ですので,そういう点からいうと,比較的一体的に動いて連動していると思っております。
【上田委員】  ありがとうございます。
【小島高知大学副学長】  教員評価システムというのはもちろんございますけど,今回,先ほどの三つの柱の一番初めに,こういう改革をするときは,教員の意識改革がやはり一番重要で,またそれが一番難しいところですが,本学,授業公開週間とかをしながら,やはりこういう教育の改善に教員が取り組むということについて,大学全体で取り組みながら,教員も一緒に成長していく仕組みを作っていきたいと思っています。
【鈴木主査】  よろしゅうございますか。安部委員,どうぞ。
【安部委員】  時間超過して申し訳ございません。私も実は幾つかの短期大学間でお互いにベンチマークを取りながら,共同教学のIRネットワークシステムで学生調査等を実施し,学生に自分の成績や調査結果がすぐ見られるようなシステムを作っています。これを長くやっていて強く思いますのは,濱名先生が,18ページ目に示されている,学生自身に評価の重要性を理解させるというようなことが大切ということです。だからそのための新科目を開講されたとおっしゃっているのですが,まさに学修成果というものがどういうものなのかということを学生がしっかり分かって,それを向上するために,自分はどうすればいいかと考える,そういう意識付けがとても大事ではないかと思います。そうしないと,学修成果の可視化が,その学校のエビデンスを作るためだけにあるようなところで終わってしまえば,労力を使う割には意味がないわけです。その辺りのところ学生の学修成果の見える化に対するモチベーションを高めるということについて,どのようにお考えかということをお聞きしたいと思います。
【濱名委員】  ありがとうございます。まさにそうで,我々もそのデータを学生からもらうと,授業時間の中に食い込んだり,ガイダンスが長くなったりと,それだけでは,我々にとってはプラスになり,それを活用しますが,まさに評価とは何なのかということを理解してもらう必要がある。つまり学生たちは大学に入るまで評価されることしかしたことがないわけです。成績に対する異議申立制度は導入している大学はありますけど,異議しか言えないのではしょうがない、ルーブリックというのは評価の観点や基準を明らかにすることによって,自分の評価能力を高めるかもわかりません。更に言えば,コンピテンシーとは何か,社会人基礎力とは何か,社会が何を評価するのか,就活でどんな評価の動きをしているのかというようなこともやはり情報提供して,自分自身の自己評価能力を高めて,自分の能力を高めるというふうにしていかないと,社会へ出ていったときに,また評価されることしかできないという卒業生を出したくないということもあって,それでこういう形をやっております。
 それで,なおかついろいろなことをただ与えるだけではなくて,ラーニングルートマップでとにかく自分の目標と計画をマッピングさせるというか,中期計画をしっかり立てるというのは,優秀な学生は簡単にできるかもわかりませんが,本学に来る学生たちは,やはりそこから習慣付けをしていくというのが非常に重要だということで始めた次第でございます。
【安部委員】  ありがとうございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。まだまだ御意見,議論は展開できると思いますが,時間が5分ほど超過しておりますので,これにて終了させていただきますが,本日の議題は以上となります。
 次回は,学位プログラムと社会人の学び直しについて議論をしていただく予定であります。
 また,本ワーキンググループの上に置かれております将来構想部会では,年末に論点整理を出すこととなっておりまして,それに向けて,本ワーキンググループも部会に今までの審議状況を報告することになっております。審議状況をまとめたペーパーにつきましては,次回かあるいは次の次の回に議論していただきたいと思っております。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いします。
【堀野高等教育政策室長】  今後の予定につきましては,資料9にあるとおりでございます。次回は10月30日月曜日の16時から18時,場所は文部科学省3階の3F1特別会議室を予定しております。いつものとおり,本日の資料について,郵送を御希望される先生につきましては,机上の付箋にその旨,残していただくよう,お願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  それでは,本日の議事は終了いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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