制度・教育改革ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

平成29年9月22日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学位の国際通用性について
  2. 大学の海外展開について
  3. 外国人留学生の受入れ・日本人留学生の海外留学の促進について

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,本郷真紹,前田早苗,前野一夫,溝上慎一,美馬のゆり,宮城治男の各臨時委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長,村田私学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),里見大臣官房国際課長,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)太田一橋大学国際教育センター教授,木田学校法人立命館大学総合企画部長

5.議事録

【鈴木主査】  皆様,おはようございます。それでは,所定の時刻になりましたので,第4回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。御多用な中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,先般の諮問事項の2点目「変化への対応や価値の創造等を実現するための学修の質の向上に向けた制度等の在り方」から,1の「学位等の国際的な通用性について」,それから,2の「大学の海外展開について」,そして,3の「外国人留学生の受入れ・日本人留学生の海外留学の促進について」,外部有識者の先生からのヒアリングも交えながら議論をいたします。よろしくお願いいたします。
 それでは,事務局から配布資料の説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  配布資料につきましては,議事次第に記載してあるとおりでございます。不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】   それでは,議事を進めます。一つ目の議題は「学位等の国際的な通用性について」です。学位等の国際的な通用性については,前期の中央教育審議会大学分科会で取りまとめられております「今後の各高等教育機関の役割・機能の強化に関する論点整理」においても,必要な方策等を検討することの必要性について指摘されているところであります。本日は,この学位等の国際的な通用性について,関連する課題や検討の方向性の案につきまして整理した資料を準備しておりますので,それらを御覧いただきながら御議論をいただきたいと思います。
 それでは,進藤国際企画室長,林大学振興課課長補佐,御説明をお願いします。
【進藤国際企画室長】  国際企画室の進藤と申します。資料1-1に基づきまして御説明をさせていただきます。こちらの資料は,ワードの資料2ページものと,後ろにパワーポイントが付いておりまして,パワーポイントは,右下に数字,小さな字ですけれども,ページ番号が書いております。
 では,1番の背景でございますけれども,グローバル化の進展に伴いまして,高等教育における学生や研究者の国際流動性が年々高まっておりまして,我が国としましても,20年7月に「留学生30万人計画」の骨子を策定しまして,関係省庁が連携して留学生の受入れを推進するとともに,世界で活躍できるグローバル人材の育成を念頭に,意欲と能力のある若者の海外留学等を推進しているところでございます。
 こちらのデータにつきましては,パワーポイントの1ページ,2ページ目にデータが記載されておりまして,パワーポイントの1枚目でございますけれども,外国人の留学生につきましては,最新の統計で約24万人となっております。また,パワーポイントの2ページ目に,日本人の海外留学の状況が書いてございますけれども,最新の統計で5万3,000人程度という数字になってございます。
 こちらの留学生に関しましては,本日3番目の議題で取り扱うことになっているという認識であります。簡単に御紹介だけさせていただきました。
 またワードの背景に戻らせていただきますと,2番目の丸,国際的な人的流動性の高まりに伴いまして,諸外国における多様な学修履歴や学位等を有する学生が我が国の高等教育機関に出願する件数が増加しておりまして,受入れのための適正な資格の評定の必要性あるいは困難が増加をしているところでございます。
 また,一方,日本で学んだ日本人あるいは留学生が,外国の高等教育機関に進学したり,あるいは卒業後に外国で就職したりするケースも増加をしておりまして,日本での学修履歴や学位等が他国の高等教育機関や企業等から評定・評価される機会も増加しているところでございます。
 このような背景を踏まえまして,先ほども鈴木主査から御紹介いただきましたが,本年2月の大学分科会のまとめにおきまして,下線を引いておりますけれども,学士や短期大学士等の学位,専門士などの称号に関して国際通用性を確保していくことは,留学生の受入れ等の観点からも,また卒業後のグローバルな活躍を後押しする観点からも重要であり,そのための方策を検討することが必要というまとめが今年の2月に出ておりまして,その下の丸でございますけれども,3月6日に諮問が出ておりまして,国際的な通用性の確保についても検討することが,関連する報告・諮問等でなされているところでございます。
 また,1ページの3ぽつの,学位等の国際通用性に関連する課題で,在外公館や我が国の高等教育機関,関連する団体,外国の情報センター等から寄せられた情報によりますと,諸外国で日本の学位等の円滑な承認に必要な情報が不足している困難事例があるという報告を受けております。
 例として,ここに二つほど書かせていただいておりますけれども,日本の制度及びプログラムに関する情報や信頼の不足によって,外国での学位の承認のために,例えば大使館等による公的な証明書の追加発行,あるいは当該政府が作る日本の大学リストへの掲載が必須とされるケース,あるいは日本特有の学位,これは準学士,高度専門士,修士(専門職),あるいは省庁大学校の課程修了者への学位等について,他国の機関の担当者になかなか理解してもらえず,承認に苦労した例が報告されております。
 こちらはパワーポイントを御覧いただきたいのですけれども,5ページ目に,諸外国において日本の学位等の円滑な承認に係る困難・事例を幾つか書かせていただいております。この中で,日本の制度,日本特有の学位に関する情報不足ということで,2行は,先ほどと同じように,日本の特有の学位・称号等の理解が不十分な事例と書いてありますが,黒ぽつが三つありまして,一つ目ですけれども,専門職大学院を修了した学生が海外の博士課程に出願した際に,母校のホームページ等の情報から調査研究を主眼に置いた学術的性格の修士課程ではないと受け取られたため承認されず,これは母校から公式レター等が必要として,そのような対応を行った例とか,日本での高度専門士を取得した留学生が母国の大学院に進学しようとした際に,こちらの高度専門士が学士と同じレベルなのかと,直接大学院へ進学できるのかといった,留学生が戻った母国の機関から問合せがあった例,あるいは,高等専門学校を卒業し,こちらは準学士の称号を取得しておりますが,外国の大学に編入できるかどうかが問題になった例が報告をされております。
 また,次の四角に書かれている高等教育機関やプログラムに関する情報不足ということで,一番下のぽつですが,A国の学生が日本の大学で学位を取得したものの,同大学がA国の教育省が作成している推薦リストに掲載されていないがために,戻ったA国において有効な学位として認められず,就職に困難を来した事例というのが在外公館から報告を受けています。このように,諸外国において日本の学位等の円滑な承認に係る幾つかの困難事例が報告されているところでございます。
 またワードの説明資料2ページ目に戻っていただければと思います。今,日本の学位等に関する海外の承認の例をお話ししましたが,次の白丸でございます。我が国の入学資格や編入資格の評定,今度は我が国が受け入れる場合でございますが,留学生の多種多様な学修履歴や学位等を円滑に承認するために必要な諸外国の公式な情報を得るというのが困難な事例,これはいろいろな大学で実際に困られている事例が報告されているかと思います。
 このような幾つかの課題を踏まえまして,今後の検討の方向性として,4ぽつ,このように検討してはどうかという方向性につきまして御説明させていただきます。まず,我が国の高等教育制度の仕組み,あるいは学位等の種類・機関等につきまして,なかなか海外から見て分かりづらいところもございますので,こういった英語の公定訳等も含めて,きちんと整理していくことが必要なのではないか。
 まだ,2番目の丸で,UNESCOの「高等教育の資格承認に関するアジア=太平洋地域規約」の締結と国内情報センターの設立等を通じ,我が国として質の保証を伴う流動性向上のための国際的枠組み作りに参画することが必要ではないかと書かせていただいておりますが,こちらはパワーポイントの7番を御覧いただければと思います。
 こちら,国家間の高等教育資格の相互承認の促進に関しての取組を書かせていただいていますが,UNESCOの「高等教育の資格承認に関するアジア=太平洋地域規約」に関して,若干御説明をさせていただきたいと思います。
 まず,1番に旧地域規約と書かれておりますけれども,学生や研究者の流動性を高める観点から,単位や学位の相互認定を進めようということで,地域規約が定められていますが,こちら,2017年9月現在,21か国が加盟しているのですけれども,我が国は未締結のまま至っております。こちらに関しましては,もともとこの旧地域規約に関しては,教育の質の保証への言及がない,あるいは職業資格の認定への影響などが広範囲に及ぶ可能性があるため,この旧地域規約には我が国は参加しておりませんが,そのような問題点を解消するための規約の改正の議論には,我が国としては参画をしておりまして,2011年に改正規約案というのが採択されておりまして,こちらの締結に向けて,今,準備を進めているところでございます。
 この改正地域規約の中では,1番目の白丸にあるように,資格の評定に関する基本原則でありまして,資格の評定及び承認の手続や基準が公正かつ差別的ではないものを締約国は確保するとともに,自国の教育機関に対して資格に関する情報提供の合理的な要請に応ずるよう指導又は奨励する基本原則を定めるとともに,次の丸でございますけれども,締約国は,実質的な相違がない限り,他の締約国で付与された高等教育を受ける権利に関する資格,部分的な修学及び高等教育の資格を承認する相互承認に関する規定を設けるとしています。さらに,3番目の丸でございますけれども,締約国は,高等教育に関する情報をいろいろ提供する国内情報センターを設立すると。そういった規約につきまして,締結に向けた取組を進めているところでございます。
 こちらは5か国の締結で発効するわけでありますけれども,現在,オーストラリア,中国,ニュージーランドの3か国が締結しているところでありますので,我が国としましても,この条約の締結を目指して検討を進めているところでございます。
 またワード資料の2ページ目に戻っていただきまして,こちら,検討の方向性の2番目の丸まで御説明いたしましたけれども,今後設立が検討されている国内情報センターによって,こういった世界に向けた情報発信を行うことが検討の方向性であり得るのではないかと考えているところでございます。
【林大学振興課課長補佐】  大学振興課の林と申します。続きまして,資料1-2につきまして説明させていただきます。「学位の専攻分野の名称と国際的通用性について」と題した資料でございます。
 現状でございますが,学位に付記する専攻名称の増加については御案内のことと思います。また,1大学でしか用いられていない名称も多いことも指摘されています。グラフを付しております。棒グラフでは,学士の学位に付記する専攻名称の多様性の変化のグラフでございます。平成27年現在で723という数字となっています。
 2ぽつの経緯に移らせていただきます。昭和31年当時,学士は称号でございましたが,大学設置基準制定当初は25種類あったものが,その後の改正を経て,平成3年には29種類となっております。そして平成3年に大学設置基準が大綱化された際に,教育研究の多様化,学際領域への展開等に対応いたしまして,学士,修士,博士の種類が廃止されております。その際に,併せて学位規則の改正において,各大学において学位を授与する際には専攻分野を付記することとされております。なお,この改正の際の施行通知において,「付記する専攻分野の名称は,その社会的通用性に配慮して,過度に細分化しないようにする必要があること」が留意事項として付されています。
 現行制度におきましては,学部・学科の設置認可の審査の際には,学位に付記する専攻分野の名称を大学設置・学校法人審議会で審査いただいているところでございます。ただ,組織変更を伴わない,学位名称のみを変更した場合には,学位規程の変更の報告がなされるのみであるというのが現行制度となっています。
 こうした中,平成20年12月に,中央教育審議会の答申「学士課程教育の構築に向けて」におきまして,こうした状況を踏まえて,学位に付記する専攻名称の在り方について,一定のルール化を検討するとともに,学問の動向や国際的通用性に照らしたチェック,また,ルール化の検討に当たっては,日本学術会議や学協会との連携強化が提言されています。
 この答申を踏まえまして,日本学術会議が平成26年9月に報告をまとめていただいています。4点ほど提案いただいている内容を挙げさせていただいています。まず1点目として,特定の分野にこだわらず,必ずしも「丸々学」と称する形をとる必要はなく,むしろ学習の主題自体を直截に表記する観点からも定めることを容認されるべきであるとされています。また,2点目として,学部・学科の組織名称と学位に付記する専攻分野の名称は,同一でなくてもよいのではないかとされています。3点目としては,複数の語を組み合わせた専攻分野の名称の意味を,できるだけ明確化するとされています。4点目として,分かりやすく単純で,かつ同様の内容を提供する他大学の教育課程とも共通性のある表現を用いるとされています。
 報告の内容につきましては,資料1-2の10ページ,11ページに,より詳細な抜粋を記載しておりますので,後ほどお目通しいただければと思います。
 一方,制度面でございますが,平成28年3月,学校教育法施行規則が改正されまして,3ポリシーの策定・公表が義務付けられています。また,この3ポリシーのガイドラインにおきましては,3ポリシーは,授与される学位の専攻分野ごとの入学から卒業までの過程ごとに策定することを基本とすることが望ましいとされています。
 こうした中で,論点として二つ,大きく柱を掲げさせていただいております。まず一つとしては,日本学術会議の報告を踏まえて,学位に付記される専攻分野の名称の多様化を,どう受け止めるべきかという点でございます。これにつきましては,学術会議の報告を踏まえて,各大学に検証を求めたいことが報告には記載されていますが,こうした状況をどう踏まえられているか,依然として増加傾向に歯止めがかかっていないことをどう考えるかとういうことです。
 また,別途学位プログラムの検討,このワーキングでは進めていただいているところですが,この学位プログラムが仮に制度上位置付けられ,これが広まりを見せていくことが仮定されますと,学位に付記される専攻分野の名称の多様化の傾向が強まるのではないかという論点もあろうかと思います。
 平成3年以降,3点目の論点としては,各大学で専攻分野については付記していただいているところになっているわけですが,国が再び何らかの管理を行うことが適切とされています。また,各大学における検証の取組を促す場合に,どのような方法が考えられるかという点でございます。
 二つ目の論点の柱でございますが,多様化している現状を前提といたしまして,重要なことは,学位に付記される専攻名称を見ただけで,大学で何を学んだのかが分かりやすくなっているという点でございます。こういった状況をどう対応するかでございますが,ディプロマポリシーという点に着目しますと,一つ目としては,ディプロマポリシーにどのような分野で能力を身に付けたというプログラムなのかを記載していることを徹底していくことで,専攻分野の名称が内容としては明らかになるのではないかという点でございます。また,ディプロマサプリメントの有効活用という点も挙げられると思います。
 特に国際的通用性という観点で言うと,英文表記の際,問題になるわけですが,学術会議の提言を参考にいたしまして,Bachelor of何々,また,in以下という,この表記の仕方をすることを推進して,国際的な通用性を担保するという点でございます。
 最後に,学術会議の報告からいただいている内容です。2,3校といった極めて少数の大学でしか用いられていない専攻分野の名称には,社会における流通性・通用性の面で疑問を感じられるものもあることから,検証の取組という観点の中で,そのような場合にはより分かりやすく共通性のある名称への変更も検討すべきではないかという点でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それでは,ただいまの資料や事務局からの説明を踏まえまして,御意見を頂ければと思います。どなたでもどうぞ。
 美馬先生。
【美馬委員】  本日,本部の都合で途中退席なので,先に発言させていただきます。
 先ほど資料1-1の説明の,2ページ目の4ぽつのところ,検討の方向性というところで,丸一つ目と三つ目で,いろいろ仕組み等を含めて整理して,今後設立される情報センターなどで発信することについてです。これはとても必要だと考えています。
 その中でもう少し検討をお願いいただきたいのは,情報の表現の仕方です。毎回の会議資料も,かなり手間を掛けて皆様に作っていただいていますが,もう少し整理をした形で情報表現、情報デザインをお願いしたいです。それとともに,今後,このようなナショナルセンターを作って提示していく場合のウェブサイトの作り方,特に今回議論になっている学位の対応表などを英語で表現する場合にも,検索したらヒットされるように,見てもらえるようなものを是非とも作成していただきたいと思います。それをただ文部科学省の方々にすぐというわけにも,なかなかできないでしょうから,少しリサーチをして,是非とも皆様が海外からでも活用できるような,こういう今回の資料も含めて,お願いしたいと思います。
【鈴木主査】  川嶋先生。
【川嶋委員】  幾つかあるのですが,一つは文部科学省の御見解をお伺いしたいです。先ほどの日本の学位が分かりにくいという事例紹介の中で,パワーポイントの5ページ目の最初の事例で専門職大学院の話があるのですが,これは海外の大学の疑問は当然だと思います。MAというのはアカデミックディグリーで,MBAというのはプロフェッショナルディグリーで,そのために作った専門職大学院であって,研究主体ではなくて理論と実務を架橋するというのが専門職大学院のもともとの目的なので,これをこのような困った事例があることを審議会で紹介されるというのは,そもそも文部科学省の作られた制度に対しての信頼性をゆがめるのではないかというのが1点です。
 二つ目は,先ほど美馬委員からもお話がありましたナショナルインフォメーションセンターですが,これについてはここに何も触れられていないですが,大学改革支援・学位授与機構で,昨年度か一昨年度,調査研究されて,その報告書が学位授与機構のホームページにも出ております。その後の文部科学省ないしは大学改革支援・学位授与機構の対応状況をお聞きしたいと思います。
 3番目は,学士課程への進学についても,高等学校の専攻科とか,専門学校の高等教育課程とか,多様な経路が制度的に認められるようになりましたし,正に今は専門職大学,専門職短期大学も設置される中で,中等教育も含めて,高等教育,日本の教育制度が非常に多様化しているわけです。当然そうすると,日本の中でもなかなか分かりにくいのは当たり前で,当然海外から見てもなおさら一層分かりにくいと思います。これは従前,これだけ教育システムが多様化してきたら,NQFですか,全国資格枠組みをきちんと整備しないといけないのではないかというのは,中央教育審議会でも様々な委員から御議論が出ていたと思います。これについての文部科学省の検討状況についてもお伺いしたいと思います。この3点です。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。
【進藤国際企画室長】  御指摘,いろいろとありがとうございます。まず1点目の例示に関して,このような例示を挙げたということで御指摘を頂きましたけれども,御指摘を踏まえて,こういった例示の在り方については今後検討させていただきたいと思います。
 また,ナショナルインフォメーションセンターの今の検討状況でございますけれども,正に先ほど御説明した,条約の締結に向けていろいろな準備を進めているところでありまして,その中には,こういった国内情報センターとしてどのような形に設立すべきかということも含まれておりまして,そういった準備を,今,いろいろと一生懸命進めているところでございます。
 また,最後にNQFについても御指摘がございましたけれども,これはいろいろな職業資格など,いろいろなところに絡む非常に大きな問題でございますので,まずはこういった学位などを中心として,できるところからスタートをするというところで,今,議論をしているところでございます。
【鈴木主査】  よろしゅうございますか。では,前田委員,それから日比谷委員にいたしましょう。
 前田委員,どうぞ。
【前田委員】  先ほどの川嶋委員の御指摘の点もあるのですけれども,この挙げてくださった例示が,日本側の問題なのか相手国の特別な事由なのかがこれでは分からないということがありまして,例えば専門職大学院のところも不思議に思ったのは,アメリカのプロフェッショナルスクールは全部駄目なのかと思ったりもしたのですけれども,あと,例えばA国の記載例は,A国教育省の作るリストは一体どのような形で作られているのかによって,例えば国レベルで大学として正規の大学はこれですよと認めれば,相手は飲んでくれるのか,条約を締結すると一体どのレベルのものがクリアにされるのか分からないので,それは締結された方がいいだろうとは思います。依然として問題が残るのか,制度的に解決できるのか,個別大学のある程度問題となってくるのか,その辺りももう少し整理して教えていただければと思いました。
【鈴木主査】  何かございますか。どうぞ。
【進藤国際企画室長】  御指摘は正にごもっともでございまして,こちら,確かにごく分かりやすく例示することを意図して書いたものでございまして,実際には個別具体的な事例は非常にたくさんの事例がございます。それをこのような形で書かせていただいているのですが,こういった条約が締結されて,ある程度情報が整理されたとしましても,個別でこの事例はどうだというところについては,全てがクリアになるかというと,そんなこともなく,特に我が国でできることをやったとしましても,海外で同じようにできるかどうかは,また違った問題もありますので,条約ができれば全ての問題,個別の問題がクリアできるか,そのようにはならないと思っています。ただ,幾つかいろいろな事例を少しずつ解決するに当たって,いろいろなものが整理されていくと,今まではなかなか全てが難しかったものについて,少しでも改善に進むのではないのかと考えているところでございます。
 また,最後,A国のリストについて御指摘がございましたけれども,これも確かにA国でどのように作っているのかは,A国の調査能力など,いろいろなものもございまして,そこはなかなか簡単に解決できる問題ではないのですけれども,このような問題が生じないように,在外公館のようなルートも通じて,いろいろと努力しております。ただ,我が国の情報がなかなか分かりづらいというところも,その一因としては若干ある部分もありますので,そのような部分については,できる部分は我が国としてもやっていきたいと思っているところでございます。
【鈴木主査】  日比谷先生,どうぞ。
【日比谷委員】  ありがとうございます。資料の1-2について,最初に単純な質問をさせていただきたいのですが,この棒グラフの上に,1大学でしか用いられていないものも多いという括弧の中,平成17年度時点で約6割と書いてありますが,これは17が正しいですか。
【林大学振興課課長補佐】  御質問いただいた点は,これは間違いございません。この出典ですが,御報告させていただいている日本学術会議の報告書の中からデータも引用させていただいて,その部分,確認しながら転記しております。
【日比谷委員】  そうすると,この頂いているデータは平成27年までありますので,10年後の最新について,1大学でしか用いられていないものが幾つかは分からないということですか。
【林大学振興課課長補佐】  今,手元にデータがございませんので,また確認をさせていただきたいと思います。申し訳ありません。
【日比谷委員】  それはありがとうございます。でも,私の感触としては,もっと増えているかなという気もしないことはないのですが,そうすると,幾ら何でも,何もしないことはほとんどあり得ないと思います。3ページの論点で,その管理を行うことが適切かというコメントも書いてありますけれども,どこが管理をするかは別にして,どこかでしっかり検証して,1大学のみ,2,3校ということも含めて,それなりの共通性のある名称への変更の検討は必須だと思います。
【鈴木主査】  何かお答え,あるいはお考えはございますか。御要望と。そのほか,いかがでしょうか。
 前野委員,どうぞ。
【前野委員】  2,3点,申し上げたいと思うのですが,一つは,パワーポイントの5ページで,高等専門学校の準学士の例が出ておりましたので,これはいつの頃の話かという点が少しございます。昨今,例えば高等専門学校の中ではかなりグローバル化が進んできておりまして,最新の事例ですと,オーストラリアあるいは英国の大学への編入学は,ごく一部ですけれども提携を結んだ状態で,シラバスやカリキュラムを綿密に比較して,かなり高度なレベルで編入学が可能になっています。つまり3年・4年の2年ではなくて,1年だけで大学院を受験する資格とか,あるいはマスターを1年で博士に進学できる,その資格をむしろ高等専門学校で認めていただいたという事例があったと思います。したがいまして,恐らくこれは走りながら考えなければいけない問題だとは思うのですけれども,どんどん,今,そういう状況に対応しつつあります。
 ただ,全てがそうかというと,そうではないわけで,ひな形的なものを作って,それをそれぞれの高等専門学校,あるいは工学系の大学,短期大学,専門学校で適用していくことをしなければいけないかと思うので,まず1点突破してひな形を作って,それを広めるという作業が,これは絶え間なく必要なのではないかと思います。この件で一つ気になったところがありましたので,申し上げました。
 あと,もう1点,恐らくこれ,私の経験でも,個人情報と絡んで,どうしても事務方が少し臆病になるところがありまして,外国から訳の分からない機関から突然問合せが来て,この学生の件ですけれどもと言われてしまうと,なかなか開示できないと思います。これは校長マターとかそういうところまでいくと分かるのですけれども,なかなか現場で対応できないこともありますので,何かそういうひな形があれば,恐らくもう少し開けた形でいくのかなと思っております。ですから,当然走りながら考えることが必要かと思っておりまして,5ページの事例で出たことが全部に適用しているかというと,そうではないような印象を持ちました。
 あと,もう1点,先ほどの学位の名称に関しましては,恐らく認証評価の再評価の時点で,項目に是非挙げていただくことが必要なのではないかと思います。つまり,学位の名称が適当かどうか,国際性があるかどうかという項目を,是非加えていただければと思っております。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  この点については,昔からずっと同じような議論を繰り返しているわけでありまして,そろそろ決着をつけなくてはいけないというのが,まず合意だと思います。
 その上でですけれども,確かにナショナル・クオリフィケーション・フレームワークのようなものを作るのが一番いいのですけれども,それは非常に難しいこともおっしゃるとおりです。例えば前回の大学分科会の作業ワーキンググループで,整理したものは作っております。縦と横といいますか,修業年限別にどのような学位があるかという表は作っております。これを作る際には相当議論しまして,先ほど話にあった学位授与機構からのヒアリングあるいは報告書を読みながら作っていますので,その辺りがたたき台になるのではないかと思います。
【鈴木主査】  安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。この学位の問題について,称号というのはどのような違いがあるのかということも根本的なところで,一つ,日本は専門士と短期大学士と準学士というのがあって,学士と高度専門士というのがあります。こういうのを国際的な通用性の中でどう説明していくのかというのは,とても問題であると思います。そもそも学位とは何なのか,称号とどう違うのかについて議論をしていかないと,説明がつかないのではないかと私は思います。よろしくお願いします。
【鈴木主査】  溝上委員,どうぞ。
【溝上委員】  学位の専攻分野の名称を合わせていくといいますか,国際的に通用していく上で,これだけいろいろ個別の名称があるところを整理していく流れは十分理解していまして,議論されているとおりでいいと思うのですけれども,国際的に通用する名称で整理をしていったとしても,結局は中身を見ていかないと,ある一つのカテゴリーの質が分からないわけで,それはここで,あるいはこれまでも議論されてきたディプロマサプリメントみたいな形で検討されているのだと思います。私もこの流れがいいと思うのですけれども,他方で,今度はディプロマサプリメントの基準,項目の共通性を見て分かるようになっているものなのかという議論があると思います。ここをどのようにお考えか,お聞きしたいと思います。
 もう一つは,簡単な状況を知りたいのですけれども,先ほどから国際的に通用する学位とか称号の名称の,ある程度の統一,整理を議論されていますけれども,先ほどから議論に出ている各国とのトラブルといいますか,問題事例を考えたときに,国と国とのやり取りのように聞こえますけれども,何か国際的な教育機関で,このような国際的な調整の動きがあるのかどうかということを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【林大学振興課課長補佐】  2点御質問いただいたうち,1点目でございます。ディプロマサプリメントに関しましては,参考資料を資料1-2の13ページに付けさせていただいております。これに対して,何か一定のガイドラインというか,フォーマットのあるものを示しているかというと,現時点では,まだディプロマサプリメントの取組そのものも事例の蓄積が始まっているという状況の中でございますので,そこの段階には至っておりませんが,この活用によって,専攻分野を見て何を学んだのかが分かるような取組自体が重要ではないか,意義あることではないかと考えております。
【進藤国際企画室長】  2点目でございますけれども,各国のいろいろな調整でございましたけれども,資料1-1の最後のパワーポイント,7ページ目で御説明いたしました国家間の高等教育の資格の相互承認を促進することで,このような規約などを締結して,実質的な相違がない限りというのは,各国に応じてそれぞれいろいろな制度を持っておりますので,そういった実質的な相違がない限り,そういった認証を行うような,そういった枠組みを,国家間で努力をしているところでございます。
【溝上委員】  要は国別の検討で今は進んでいてということです。
【鈴木主査】  では,篠田委員,川嶋委員,それから金子委員,お願いいたします。
【篠田委員】  学位に付記する専攻の名称に関わることですけれども,これ自身は御説明のように各大学が定めるということで,設置認可の際には審査をするのですが,学位名称の変更の場合のみについては報告とか届出という形でやられていることで,このようなシステムが既に定着していることですので,大学の特色化だとか個性化だとか機能別分化とかという方向を考えますと,大学のミッションを実現する点では,どのような人材を養成し,どのような学位を出していくのかは要だと思いますので,これについて最初から余り枠をはめたり統制したり誘導するというのは,余り適切ではないと思います。
 ただ,無際限に広がっているという現状というのがあるとすると,それはある程度改めていかなければならないと思いますので,その場合に,各大学の付記する学位,専攻の名称を定めるときに,国際的な通用性がどのようになっているのか,大学で同系のところがどういう名称を付しているのかという情報も含めて,ある程度しっかりとした情報を与えて,それに基づいて再検討する,あるいは自主的に検討して修正する機会を作るとかは非常に重要なところではないかと思いますので,その辺の在り方をどのようにこれから工夫していくのかが,私は重要ではないかと思っています。
 それから,もう一つの側面として,学位の質保証があって,これは既に三つのポリシーが義務化されて,内部質保証システムをいかに作っていくのか,大学の非常に重要な課題として動いてきているわけですけれども,こういう,国内というか,日本のところが努力している質保証の仕組みというのが,海外のところでどのように位置付けられて評価をされていくのかというところですけれども,もちろん日本の質保証の仕組みを海外に合わせていくという必要はないと思いますけれども,日本のやり方をはっきり発信していくというか,海外のやり方と同じではないでいいと思いますけれども,この接続というのも認識をしながら,日本のシステムを自信を持って確立していくという辺りのところ,この辺りのところも非常に重要ではないかという印象です。
【鈴木主査】  川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  ありがとうございます。2点あります。1点は,先ほどのナショナル・インフォメーション・センターに係ることです。ここでは主として日本の高等教育や学位の情報を対外的に発信する機能ですけれども,一方で,NICは海外の高等教育や学位の情報を国内の大学に提供する,双方向の役割があると思うのですが,海外の大学や学位に関する情報について,3番目の本日の審議事項にも関連して,留学生の受入れを増やすとされています。これに関しては,逆に日本の大学も,なかなか海外の大学や学位の信頼性についての把握がしづらいところがあって,京都大学と,大阪大学も最近作りましたけれども,個別大学が独自に大学院の留学生に対しては,スクリーニングのオフィスを設けています。そうしないと,ディプロマミルといいますか,ミルとまでいかなくても,必ずしも学位ではないような証明書で留学を希望するケースが頻発しており,その選別を必要としています。そういう意味で,是非NICというか,国レベルのスクリーニングの組織や仕組みを早急に作っていただきたいというのが1点です。
 それから,送り出しに関しては,国としてNICを通じて様々な日本の高等教育や学位について情報を提供することも重要ですが,一方,個別の大学の取組としては,シラバスをきちんと外国語で整えることも重要だと思います。日本の留学生は大体日本語で授業を受けているのに,何でシラバスを英語化しなくてはいけないのだという疑問も多々あるのですけれども,逆に日本の学生が留学する際に,きちんと英語のシラバスが整備されていることによって,大学でどういう内容を学んだかがきちんと伝わるということもありますので,受入れだけでなくて送り出しという観点からも,各大学できちんと英語のシラバスを整備するというのが重要な課題だろうと思います。
【鈴木主査】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  先ほどの一つ,こういった学位の国際通用性が問題なのであれば,もうしっかりとした国際的な機関で,こういった仕組みを作るべきではないかというお話がありましたが,そのとおりで,できればいいのですけれども,今までの経緯で,私が知っている限りですと,1回,2000年代の初めに,WTAで高等教育,要するに教育サービスの貿易自由化というのが問題になりまして,そのときに日本は,もっと自由化しろと,学位の自由化を認めろという圧力がかなり掛かりました。ただ,それは必ずしも今のお話と趣旨が合うものでもありませんでしたし,これは一部の留学生を受け入れて,その学位を母国で認めさせるという意図が非常に明確だったので,それ以上はうまくいきまんでした。ただ,このときに,中国は結局拒否しました。
 それで,その次に問題になったのは,ディグリーミルがかなり大きくなったときで,特にアメリカの共和党政権の下では,ディグリーミルが政治的な力を持って,かなり制限を緩和しろという圧力が出まして,国際的にこれを認めろという圧力が出ました。それに対してUNESCOが何らかの対応をしようとしたのですけれども,これで委員会ができたのですが,結局これはできないことになりました。一部のアメリカの州ではネガティブリストを作っていて,これは駄目だというリストは作っています。そうしないと消費者情報としては非常にまずい問題が起こっていますが,国際的な統一的な枠組みとしてやろうというのは,かなり努力しましたが,結局ほとんどうまくいっていないとされています。
 今回,本来我が国は,情報センターを早く作ってという話は前からあったのですけれども,なかなかできなくて,今度,新しい条約ができることで,これの準備としてできるというのは大変喜ばしいことで,一つは,外国にこういった情報を発信するのと同時に,日本の中である程度,こういう大学はどうなのかということを大学が聞いても分かると思います。それから,もう一つは,こういう機関が相互承認されると,外国について分からないときはどこに聞けばいいのか分かってくるという意味では,一つの前進だろうと思います。
 ただ,その場合も,この際申し上げておきたいのですけれども,日本の学位制度自体には,相当曖昧なところがありまして,学位規則とか学校教育法で決まっている年限については,相当いろいろな抜け道ができていて,これも何らかの形で再検討は必要なのではないかと思いますが,ただ,忘れてはいけないのは,基本的には,教授会が判断することに最終的になっていることです。ですから,教授会が判断するときの論拠をきちんと得る仕組みが必要で,その意味では,インフォメーションセンターみたいなのを作るのは非常に重要だろうと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。まだ御意見があるかと思うのですが,次の議題にうつりたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして,大学の海外展開について御議論を頂きます。大学の海外展開につきましては,グローバル化が進む中で大学の国際競争力を発展させていくために,今回の諮問事項の一つとして検討が求められております。本日は,大学の海外展開について,論点(案)等をまとめた資料を説明した後に,外部有識者として,一橋大学国際教育センターから太田教授,学校法人立命館から木田総合企画部長にお越しいただいておりますので,それぞれ10分程度お話を伺って,その後意見交換を行いたいと思います。
 それでは,まず,事務局から御説明をお願いします。
【進藤国際企画室長】  それでは,資料2に基づきまして御説明をさせていただきます。
 まず,背景でございますけれども,経済,社会のグローバル化が進展して,そういう中で,3行目にありますとおり,米国や英国,オーストラリアなどを中心としまして,海外校や海外キャンパスの設置等,大学の海外展開を非常に進めている事例がございます。
 後ろにパワーポイントがございまして,次のパワーポイントの,また大きな1枚目でございますけれども,こちらは,なかなか情報が少なくて,研究者のチームが報告しているものでございますけれども,海外ブランチキャンパスを設けている国,米国や英国,フランス,ロシア,オーストラリアなどが,こういったキャンパスを持っています。あるいは外国の大学を積極的に受け入れている国々ということで,中国,ドバイ,マレーシア,カタール,シンガポールなどの例を記載させていただきました。
 また,パワーポイントの2ページ目でございますけれども,マレーシアの事例というのを書かせていただいておりますけれども,こちら,国家の戦略としまして,黒ぽつで言うと3番目の高等教育戦略,これは2007年からの戦略でございますけれども,ここには国際化を推進すると書かれており,右矢印の右側でありますけれども,海外の教育機関と連携し,ツイニングプログラム等を推奨し,外国大学のマレーシア分校を誘致すると,こういった取組を国として行っている国があるという事例がございます。
 また資料の1ページ目に戻っていただければと思うのですけれども,背景の2番目の丸でございますが,一方,我が国においては18歳人口が減少しており,国内の学生のみを対象とする大学には限界があると,そういった中,大学の国際競争力を維持・発展して,我が国の大学が世界に開かれた高等教育機関として期待される役割を果たすためにも,そういった大学の更なる国際課,あるいは大学の海外展開を促進することが求められているのではないかということを,背景として記載させていただきました。
 2番目の定義でございますけれども,この会議では「海外展開」と書いてありますが,海外展開は非常に広い意味がございまして,パワーポイントの3ページ目を御覧いただきたいのですけれども,大学の海外展開といった場合には,いろいろな形態がありまして,このプログラムと書かれている左側でございますけれども,フランチャイズやツイニング,あるいはダブルディグリー,ジョイントディグリー,あるいは単位の互換協力,こういったものについても海外の展開でございますし,右側の機関の移動形態と,これはいろいろな機関を設置するということで,ブランチキャンパス,あるいは独立機関,あるいはサテライトセンターを設ける,こういったいろいろなものが海外展開としてはあり得ることを,まず御説明をさせていただきまして,また資料の1ページ目に戻っていただきます。
 そういった海外展開,いろいろあるのですけれども,今回,この中で,海外校と本日御説明させていただくものは,我が国の大学設置基準第57条に基づいて設置される海外に置かれる大学の学部や学科を指す形に整理をさせていただきたいと思います。
 まず,これまでの経緯は,3番の過去の提言等に書かれておりますけれども,平成16年の3月に,こちらの審議のまとめで書かせていただきますが,我が国の大学が外国において学位授与につながる教育活動を行う場合に必要な基盤作りが求められるということで,下線を引いてありますけれども,我が国の大学が外国において行う学位授与等につながる教育の課程について,その制度的な位置付けに所要な整備を行うことが必要ではないのかという提言を受けまして,次の2ページ目に行きますけれども,現行制度の制度改正,平成16年12月に,2ページ目の冒頭になりますけれども,省令の改正,あるいは告示の設置がありまして,大学の海外校に関する告示というのが定められているところでございます。
 こちらはパワーポイントの10ページ目を御覧いただければと思うのですが,趣旨のところに記載されておりますけれども,我が国の大学が外国において教育活動を行う際の大学の設置基準を満たしていたものについては,我が国の大学の一部として位置付けることを可能とすることで,可能となった活動ですけれども,外国に設置した学部等において教育課程の全てを実施すること,あるいは,外国に設置した学部等において教育課程の一部を実施することが可能になる制度改正を平成20年度に行っていることでございます。
 また2ページ目の資料に戻っていただきますと,こういった制度改正を行っているところですけれども,実際,この大学設置基準第57条に基づいた海外校が設置されている事例は現在のところないという実態がございまして,今年の3月の諮問の中で,こういった高等教育機関の国際展開について検討すべきではないかという諮問をさせていただいたところでございます。
 こういった国際展開の場合には,広い意味ではいろいろな海外展開,先ほど海外校は事例はないという御説明をさせていただきましたけれども,広い意味での海外展開については我が国でも実績が幾つかございまして,後ほど太田先生や木田先生からも御説明をしていただくことになりますけれども,パワーポイントの4ページ辺りをさっと御覧いただきたいんですけれども,我が国は,長岡技術科学大学とベトナムハノイ工科大学,あるいは豊橋技術科学大学とマレーシア・ディステッド・カレッジとの間のツイニングプログラムをやっています。あるいは,5ページ目には,ジョイントディグリーを平成26年から進めておりますけれども,こういった事例が,今のところ進んでいる事例であります。あるいは,6ページ,7ページは,いろいろな海外展開の事例のタイプを整理しているものでありますけれども,6ページの左側のタイプ1というのは,日本の大学が海外キャンパスを設置するというものですけれども,6ページの右側には,各大学が受入国に現地法人を設けて,そこが大学を設置する形態もありまして,あるいは,7ページに行きまして,海外がサテライトキャンパスを設ける事例もありまして,その事例は8ページのところに記載させていただいていますけれども,ハワイ東海インターナショナルカレッジにおきましては,米国にこういった法人を設立した上で,実際教育を行っています。あるいはサテライトキャンパスとして,名古屋大学のアジアサテライトキャンパス学院の設置といった例が,国内でも海外展開をしている事例でございます。
 このような事例を踏まえまして,また元の資料の2ページ目に戻っていただければと思います。いろいろな事例を御説明させていただきましたけれども,こういった海外展開を進めるに当たっての論点として,次の点について是非御意見を賜ればと考えておりまして,大学の海外展開にはどのような意義や可能性があるのかにつきまして,改めて御意見を頂ければと思っております。大変優秀な学生を集める手段,あるいは国際的な知名度向上も考えられるのかと思います。
 2点目としましては,我が国の大学が,先ほどの設置基準を満たす海外校,こちらについては実績がないことでございますけれども,この阻害要因は何なのかにつきまして,御意見を賜ればと考えております。これは国内の制度上の課題も指摘されておりますし,展開先,これはいろいろな国に展開していくわけで,そういった相手国の制度上の課題があったりする場合もあるかと思います。
 こういった大学の海外校の開設,こういったものを促進するためには,どのようなインセンティブ方策が考えられるのかとされています。これは諸外国の制度がなかなか分かりづらいものに関する情報提供,あるいは,在外公館等における現地におけるサポート,あるいは,幾つかやっている先行事例の紹介,あるいは,いきなり海外校ではなくて,段階的に海外にそういった浸透していく,そういった方策のモデルの提示,こういったことが考えられるかと思いまして,記載をしておりますけれども,こういった論点につきまして,後ほど御意見を賜ればと考えております。
 また幾つかの事例は,これから太田先生,木田先生に御説明いただけると思っています。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続きまして,一橋大学国際教育センターの太田教授より,大学の海外展開に関する世界の潮流を,トランスナショナル教育の観点を中心にお話を頂きたいと思います。
 本日は,お忙しい中,本ワーキンググループに御出席いただきまして,ありがとうございます。それでは,10分ほどでよろしくお願いいたします。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  一橋大学国際教育センターの太田と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 本日の私のお話は,トランスナショナルエデュケーションが私の研究分野の一つであることと,もう一つは,私自身が,10年程前ですけれども,一橋大学に対してアブダビのハイアー・カレッジ・オブ・テクノロジーというところからブランチキャンパスを作らないかという話があって,実現はしなかったのですけれども,そのときにいろいろ経験したことも踏まえて,研究と実践の部分からお話をしたいと思います。
 最初に,パワーポイントの資料で,トランスナショナルエデュケーションの概括的なことを,ジェーン・ナイトの論考を基に書いております。まずは,120か国がトランスナショナルエデュケーションに,関与していると言われておりまして,一つの例としては,イギリスでは,国内で学ぶ外国人留学生が44万人ぐらいいるわけですけれども,イギリスの学位などの資格を得る課程を外国で学ぶ,つまり課程の全部をイギリスに来ないで外国だけで修了するという人が,70万人ぐらいいることです。このような状況を,ジェーン・ナイトは,第1世代,第2世代,第3世代と,これは移っていったというよりは,2,3が加わっていって,トランスナショナルエデュケーションがだんだん大きくなっていったことを解説しています。一般的によく知られているような学位の留学だとか,短期留学,単位留学,交換留学みたいなものから,第2世代としては,ツイニングとかフランチャイズ,アティキュレーションプログラムが加わります。アティキュレーションについては,また後で御説明します。ジョイント/ダブルディグリーのようなもの,ブランチキャンパス,そして第3世代は,教育ハブ,エデュケーションハブというのが非常にいろいろなところでできていまして,それがトランスナショナルエデュケーションの集積のようになっていて,海外の大学がそこに集まっている,プラス,そこに国内の大学なども入ってきて,一つの大きなハブを作っているということです。
 次のページに行きますと,ジェーン・ナイトの論考に従って,ステューデントハブ,タレントハブ,ノーリッジ/イノベーションハブという三つのタイプに分けています。ステューデントハブというのが多く,箇条書で二つずつ書いていますけれども,上の段はステューデントハブという根拠になるハブのフォーカスです。2番目は,そのハブを作る目的あるいは政策的意図を書いております。内外の学生の獲得と教育及び外国の高等教育機関分校の誘致,これがステューデントハブで,国内外の学生の高等教育へのアクセスを向上し,高等教育機関の国際化と現代化を図ります。収入の増加という面を狙っている部分ももちろんあります。それから,知名度・ブランドの向上です。
 日本の近くで言えば,韓国の仁川空港の近くに仁川グローバルキャンパスというのがありまして,海外の大学を10校ぐらい集めたいということで,既に4,5校入っています。あるいはシンガポールのグローバルスクールハウス構想みたいなものです。そういったものの中でのステューデントハブという,一つの大きな位置付けがあると思います。それから,タレントハブ,ここにある人材の獲得を主としたものです。それから,ノーリッジ/イノベーションハブのような,新しい技術とか技術革新の創出を目的としたものです。これらはこの三つのタイプに分かれるのではなくて,このハブは1と2,ステューデントハブとタレントハブが半分半分ぐらいだ,タレントハブとノーリッジハブが半分半分だというような分け方をしています。
 その次のページに行きます。トランスナショナルエデュケーションの種類と事例ですけれども,上が協力・共同型と書いています。これは大学間の協力とか共同的な事業として行っているものであります。下は独立型で,これは,ある外国の大学が独立的にやっております。ただ,独立型の場合も国の支援を受けている場合があります。この独立か共同かは,高等教育機関の視点からの区別です。
 先ほどから出ているツイニングとかジョイント/ダブルディグリーがまずあって,その次に,アティキュレーションプログラムですが,私がアメリカの大学のアドミッションオフィスで働いているときに,もう大分前ですけれども,そのときから普通にあって,1対多で行います。一つのアメリカの大学が,アティキュレーションのアグリーメントを,例えばマレーシアの10大学ぐらいだとか,あるいはタイの何大学とか、日本の専門学校,それから短期大学などと結んでいました。そういったところから編入できるシステムができていて,その編入に当たっては,最初から,元の母国のプログラムから編入したときにどの科目が単位認定されるか全部表組みでできているわけです。
 これは最近でも,例えば香港,シンガポールみたいなところは,高等学校を出た後,4年制大学に行く人が,まだ20%ぐらいしかいません。この前も香港に行って調査したのですが,香港では20%が高等学校を卒業して大学に行きますが,40%弱ぐらいは,準学士,短期大学に当たるものに行っています。その後,ほとんどの人は,トップアップディグリーにつないで,どうしてもバチェラーまで欲しいということなので,日本に留学に行けないかということで,いろいろ相談を受けたりもしました。そういったアティキュレーションプログラムというのが,かなり広がっています。
 その次のフランチャイズプログラムは,アジアで私が見てきた事例では,一般的に言うと,学位授与権を持っていない高等教育機関,専門学校のようなところに,欧米の大学が学位課程を持ってくるということです。私が一番感心したのは,シンガポールのSIMという,シンガポール・インスティテュート・オブ・マネジメントですけれども,経済団体が作った学校の事例です。SIMは,シンガポール初の私立大学であるSIMユニバーシティーを作っているのですけれども,SIM本体そのものがまだ残っています。そこは大学の学位は出せませんので,イギリスとかオーストラリアだとかアメリカの大学がたくさん入ってきて,そこでいろいろなプログラムを同時進行に行っております。フランチャイズユニバーシティーと呼ばれていて,学期も,それから授業時間も,みんなプログラムごとにばらばらです。大きなキャンパスの中で,複数の大学が同時に動いているという状況です。
 それから,バイナショナルユニバーシティーです。これは日越大学とかドイツの事例がベトナムであります。
 それから,独立型としては,ブランチキャンパスです。ブランチキャンパスも,先ほど統計資料のようなものが出ましたけれども,定義がかなり曖昧です。物理的にしっかりキャンパスを持っているところもあれば,フランチャイズのように間借りして,実際は物理的なハードウエアは,全部そこの専門学校なり,地元のところが提供していて,ソフトウエア,つまり課程とかプログラムだけを持ってきている場合でもブランチキャンパスと数える場合もあります。そういったものも含めて,ここでは私はあえて自前の海外分校と書いていますけれども,独立して行っているものです。独立していながら,その後,共同型に変わっていく場合もあります。日本のテンプル大学のように,最初は独立していましたけれども,今度,昭和女子大の中に入っていくと,共同型になっていきます。
 また,ディスタンスエデュケーションがあります。
 最後のところで,課題を挙げていますけれども,質を伴った学生と教員の確保,これはどこも,トランスナショナルエデュケーションを出すと苦労していると言われています。最初これをやるときに,大体メーンキャンパスの先生がわざわざ遠いところ出掛けていってやったりするのですが,そのようにずっとやれませんから,学生が増えて,規模が確立してくると,大体本校の基準で,その出先で採用することになるのです。本校と同じレベルの先生が確保できるかは分かりません。
 それから,学生の確保。ホスト国の政府から支援される場合,例えばシンガポールのようなグローバルスクールハウスで,最初,シードマネーとしてたくさんお金をもらって外国の大学がプログラムを始めても,その後は,ある一定の期間からは自立的な経営が求められます。そこで学生が集まらないと,閉校していきます。中東においても,シンガポールにおいても,その他のところでも,外国の大学が作った分校が閉校しているケースはかなりあります。大体その場合は二つ大きな事由があって,一つは学生が集まらなかったことです。
 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の場合は,シンガポールに出ていって,1セメスターで閉めました。学生が集まらなかったケースもありますし,また政府の補助金が切れるとうまくいかないとされています。イギリスの大学,オーストラリアの大学が,かなり積極的に海外に出していますが,ほとんど公立大学ですから,自分のところのタックスペイヤーからのお金は外に持ち出せませんので,ローカルホストの方で援助してもらって立ち上げます。そしてその後は自立的に運営するとなるのですけれども,そこがなかなか難しいことです。
 それから,本校と分校のブランド力の差です。アジアの人が留学をするとき,分校より,本校に行く人が多いです。韓国の場合,仁川グローバルキャンパスで海外のキャンパスを誘致したのですが,学生が十分に集まっておりません。韓国政府の考え方は,海外留学熱が余りに強いので,海外の大学を持ってきて,韓国の中で留学しなくても海外の大学で勉強できるようにするというものです。しかし韓国の方たちの考え方は,本場に行かないと駄目だということになるので,分校はなかなか学生が集まらず苦労しているという実態があります。
 それから,先ほど言った,受入国の支援がどれぐらい続くか、それから,規制・制約の問題です。そもそも海外の大学を受け入れないという国も,まだまだあります。あるいは,受け入れるけれども,最初に何億円か持ってこないと駄目だというハードルが掛かっている場合もあります。それから,税制上の優遇がされているかどうかもあります。外国に出ていったけれども,その学校は,そこの地元の学校と同じ待遇でない場合もあるということです。そういった税制上の優遇だとか学生に対するベネフィットへのアクセスが,どれだけ保たれているかです。
 それから,地元の高等教育機関との協力・連携関係が,どこまでできるのか,という問題です。これは双方がライバルになってしまうのか,パートナーになってしまうのかということです。
 外交・地政学的リスクは一般的なことなので,あとは供給国側の規制です。日本の大学が出ていくときに,定員規制とか管理の問題,どこまでそれが外国の分校まで及ぶのか,外国に出ていったら別な扱いになるのか,そのあたりの問題も出てきます。定員の問題は,国際編入学では特に重要になってくると思います。
 それから,供給大学の課程やカリキュラム及び学位・資格の受入国における妥当性,関連性,通用性です。例えば、オーストラリアの大学が香港で建築に関わるフランチャイズのプログラムを出したときに,オーストラリアでの建築の状況と香港では全く違うので,それではレレバンスが低いという話もありました。あるいは,AACSBなどの国際認証をしっかりと受けているかどうかなどです。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 続きまして,学校法人立命館の木田総合企画部長より,立命館大学が中国の大連理工大学と共同して大連理工大学・立命館大学国際情報ソフトウエア学部を設立した事例を参考に,海外展開における意義と課題についてお話を頂きます。よろしくお願いいたします。
【木田学校法人立命館総合企画部長】  よろしくお願いいたします。紹介いただきました立命館の木田と申します。資料の4を御覧いただければと思います。御紹介いただきましたように,本学の海外展開の事例としまして,中国の大連市に,中国政府の認可による共同の学部を作って運営している事例がございますので,それについて中心にお話をしたいと思います。
 スライドの2ページを御覧ください。この取組の大学の中での位置付けですけれども,本学では現在,2011年度から20年度の10年間に,R2020という中期計画を立てておりまして,現在,その後半期計画の最中ですが,この中の重点課題としまして,グローバルイニシアチブを設定しております。これはもちろんSGUの取組なども含まれるわけですが,その中で非常に重視しているのが,海外大学と共同でいろいろなプログラムを作っていく取組で,その一つがこの大連理工大ですし,それ以外にもジョイントディグリーやダブルディグリーといった取組を進めております。
 このプログラムを実施しているのは本学の情報理工学部という学部ですが,この学部は非常に危機意識が強くて,これからはもうグローバル展開しないと将来的に行き残っていけないのではないかということで,これまでも,例えばハノイ工科大学での慶應大学さんと一緒にやったIT人材育成とかアジア人材とか,最近ですとグローバル人材育成推進事業とか取り組みましたし,今年からは,理工系の学士課程では初めて英語で卒業できる基準コースも設けたということでございます。
 次の3ページを御覧ください。この共同での学部の設立の目的と意義でございますが,6点整理しております。一つは,これから少子化していく中で,優秀な学生は世界中におりますので,そういった優秀な学生を世界から確保することです。それから,ICT分野ではグローバル人材の需要がこれからますます高まっていくので,それに応えていこうということです。それから三つ目が,日本型の高等教育というのは,実は海外で非常に受けがいい面もありますので,そういったことを訴求ポイントとして海外展開を図っていきたいということです。そして4点目は,理工系の学生は,どうしても卒業研究なんかでキャンパスにいる時間が長いので,なかなか国際化,海外留学する機会がありませんので,理工系学生の海外留学の促進,そして5点目は,本学のプレゼンス向上、6点目は学内への波及効果ということで,こういう取組は他学部への刺激にもなり,また,キャンパスの内なる国際化にも貢献するということで,意義付けをしてまいりました。
 スライドの4ページを御覧ください。設置に至る経緯は御覧いただければと思いますが,当初は大連理工大学から,こういうことができないかと,合弁で学部を作ることはできないかという相談があって取り組んでまいりまして,大体4年から5年ぐらいかけて開設に至ったことでございます。
 続きまして,5ページを御覧ください。設置形態でございますが,先ほど冒頭に申しましたように,中国政府の認可による学部設置でございます。当初,日本側でも認可を得て学位が出せないかと考えていたのですが,と申しますのも,中国が合弁で海外の大学と学部作る際の基準,法令として,中国での学修だけで海外の大学の学位を出せることという要件があって,それを満たすためには現地で学位を出す仕組みができないかを検討したんですけれども,これは先ほどの文部科学省の説明にありましたように,設置基準等を満たす必要があることで,非常に困難でもありますし,中国の特殊な事例としては,土地は全て国有地でありますので,それを我々が購入や長期借地することも非常に困難であることから,その仕組みではない形で,ツイニングのような形で学位出す仕組みにしてきたことで,学位については,定員は100人ですが,そのうち40人は本学の情報理工学部に3年次に転入して,この学生たちは両大学の学位を取れると,転入しなかった学生たちは大連理工のシングルディグリーになると,こういうスキームになってございます。
 6ページ目を御覧ください。この学部の基本コンセプトと特色について書いておりますので,お目通しいただければと思います。特色のところの二つ目に書いておりますが,教育負担は,講義全体の修了要件のうち,3分の1は本学が科目を提供し,教員も派遣して担当するとしております。ただし,教養科目とか基礎科目は,専ら大連理工に担当してもらって,専門科目のうちの半分は本学が担当するという形にしております。施設・設備とか,そういった整備は全て大連理工側の責任ということで,本学はソフトの提供のコストだけを負担する形になってございます。
 7ページを御覧ください。今,申しましたスキームを少し図にしておりますが,先ほど申しましたように,この学部自身は大連理工大学の学部の位置付けですけれども,共同運営委員会を設けまして,本学から教員を出して運営をしている状況になっております。
 8ページを御覧ください。カリキュラムの概要ですが,比較的日本のカリキュラムに近い設計になっておりまして,教養科目や言語科目,基礎専門科目を学んで,こういう専門科目,そして卒業研究という形で,大学院進学する人が多いわけですけれども,こういう形で設計をしておりまして,先ほど申しましたように,教養科目や基礎に近いところは大連理工が専ら担当し,本学は基礎専門,固有専門を半分ぐらい担当する形で運営をしております。そして,3年次からは40名が本学に転入することになっております。
 9ページを御覧ください。現況ということで,100名の定員設定に対しまして,14年度から開設しておりますが,基本的には100名が大体充足するという形で,学生確保については成功していると思います。それから,本学への転入については,初年度40名で,2年目の学生たちが,この9月に32名ということで,これも40名の設定をしているのですけれども,おおむね充足していると考えてございます。そして今年度からは,先方で2学科に増やして,定員も100人から210名に増やす形で拡充している状況になっております。
 10ページを御覧ください。将来構想と課題ということで,規模拡大は今年からされているのですが,もう2,3年後には新しい学科を追加して,定員を300名規模にしようということです。それから,現在は基本的に中国の学生が入っているのですが,日本人の学生であるとか,他の地域の学生,留学生を増やしていきたいです。それから3点目に,日本型スタイルの卒業研究の現地化をしていきたいと思っていまして,日本の,文系で言うとゼミとか,理系の卒業研究が,非常に海外で売りになる仕組みではないかと考えているのですが,中国の特殊な事情としては,4年生になると,ほぼ全学生が1年間の企業インターンシップに出掛けてしまって,ほとんど大学にいないそうです。そうすると,日本のように研究室にこもって研究するとかデータを集めることはできなくなるので,通常,中国の学生は,企業のインターンシップの事例を卒論にまとめたりするらしいのですけれども,これを何とか折り合いを付けて,卒業研究にも参加できるような仕組みを作れないかということでやっているところです。それから,今後のところとしては,更に本学でも卓越大学院の構想を,検討しているのですが,そういう卓越大学院の海外拠点としての活用であるとか,あるいは本学の海外キャンパスとして位置付けた展開とか,そういったことができないかということも考えてございます。
 続きまして,11ページを御覧ください。これは大連理工とは直接関係ないのですけれども,その他にも本学で幾つかの海外展開の取組がありまして,最近の事例だけ申しますと,文部科学省の資料にもありましたけれども,来年の4月からは,国内の学士課程では初めてとなるジョイントディグリーを実施するということで,この場合には全学生が2年間はアメリカの大学で学ぶということですので,ある意味2年間は海外キャンパスで学ぶという位置付けになろうかと思います。それから,同じく来年の4月には食マネジメント学部という学部を設置し,これは大学ではないのですけれども,ル・コルドン・ブルーという機関と提携してディプロマを出すことも考えております。そして,最後の事例として,19年の4月を目指して,現在,グローバル教養学部という新しい学部の設置を構想中でございます。これは入学者全員がオーストラリアの大学とのデュアルディグリー,ダブルディグリーを取る仕組みを考えてございまして,全員が1年間キャンベラで学ぶことを考えております。
 そして,12ページを御覧ください。今のように幾つかの海外展開をしているわけですが,今回,大連理工の事例の中で,幾つか課題,あるいは国への要望で,4点整理させていただきました。
 1点目は,海外キャンパスの設置は,法令上はできるようになっているのですが,設置基準を満たす校地・校舎の自己所有等が必要だということで,これは非常にリスクが高くて,基本的に我々私立大学ですので,学部ごとに財政的自立を財政規律にしているわけですが,仮に100人の入学定員で海外にキャンパスや校舎を造ると,完全にこれは採算割れというか,財政的に赤字になってしまいますので,そういうことなしにできるようにしたらどうかということで,これは例えばですが,既に海外協定大学には立派なキャンパスと施設と図書館があるわけなので,そういう場所で授業をする場合には,こういう基準を満たさなくてもいいと、例えばアメリカのアリゾナ大学は,最近,マイクロキャンパスという展開で,海外協定校を自大学のキャンパスに見立てて単位を出す,学位を出すことをやっているらしいので,そういうことをしたらどうかと思います。
 2つ目が,先ほど太田先生もおっしゃっていましたが,定員設定とか定員管理の柔軟化です。これも定員管理の厳格化の中で,海外でもそれが適用されると,非常にマネジメント上は苦労するということです。
 3点目は,海外で展開する場合の現地情報の少なさがあります。法令とか現地の高等教育の基準・制度について国レベルでのサポートがあると,非常に助かるということです。
 最後4点目は海外展開の促進で,こういったことには立ち上げ期に相当なコストが掛かりますので,そういったことへの財政支援などがあると,進みやすくなるのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは,少し時間が差し迫っておりますけれども,ただいまの太田教授,木田部長から頂きましたお話,あるいは事務局からの説明を踏まえまして,御意見を頂ければと思います。
 日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  木田部長に一つ質問です。御説明ありがとうございました。出口について伺いたいのですけれども,パワーポイントの8ページですか,カリキュラムの概略というところで,大学院進学と書いてあるのですが,就職のこともお考えかということと,具体的に,併せまして9ページで,14年度の9月に多分最初の方々が入ってきているのだと思うのですが,この9月から最終学年が始まっているはずなので,実際のその方たちの進路の決定状況とか,あるいはどういうところを目指しているのか、特に大連で4年プログラムを終えた方が,例えば日本の大学院に進学したいとか,日本で就職したいとか,その辺りのことを教えていただければと思います。
【木田学校法人立命館総合企画部長】  御質問ありがとうございます。この方たちの進路ですが,8ページには大学院進学しかないように書いておりますが,実際には企業への就職というのも想定しておりまして,中国の企業あるいは日本の企業とどちらにも行けるように,プログラムの中でも産学連携での教育とかインターンシップなんかを組み入れておりますし,先ほど申しましたように,中国では基本的に4年生になると企業インターンシップに入っていくらしいので,そういった機会を使って就職もするということです。
 実はこのプログラムが始まる前に,パイロットで30名だけ先行的にやっているプログラムがあり,15人がうちに転入をしていまして,その子たちは,既に3分の2は大学院に行って,3分の1程が企業に行っています。その3分の2のうちの更に半分が本学の大学院に進学し,あとは,国内の有名な国立大学に進学している状況でございます。
 それから,現在4年生になっている学生たちで,本学に入ってきた人たちは,これから卒業研究に入っていきますし,日本語については,目標としては転入するまでにN1まで上げてくださいと言っているのですが,実態としてはN2ぐらいで入ってきます。卒業するまでにN1レベルに達することになっていて,大学院に行かれる方は3分の2ぐらいになるとされています。3分の1程の一定部分は日本の企業の就職を希望されると思いますので,そういったことのサポート,支援をしていこうと考えてございます。
【日比谷委員】  ありがとうございます。
【鈴木主査】  では,前野委員,どうぞ。その後,溝上委員,お願いします。
【前野委員】  どうも貴重なお話,ありがとうございました。お二人の先生方にお伺いしたいのですが,一つは,先ほど卒研との関連でお話しされていたのですが,それぞれの国でそれぞれの事情があって,ラーニングの仕方です。例えばPBLとか,プロジェクトベストラーニング,あるいはリサーチベストラーニングを実現するときの問題点のようなものがあったら教えていただきたいです。あともう1点,教職員の研修と流動化,つまり教職員側の質の保証的にはどのような御努力をされているかをお伺いしたいです。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  PBL云々のところまでは,私はまだ調べていません。それよりも,先ほど申し上げましたように,海外にオフショアプログラムを出すことは,そこで学んだことがその社会で生かせるものなのか,レレバンスがどうあるかが,非常に問われているわけです。特にフランチャイズの場合は,そこで完結してしまいますので,そこが非常に問題になっているということです。ツイニングの場合は,先ほどの木田部長の話ですが,日本に連れてくることが前提になっていると,日本語でしっかりと指導していかなければならないことになりますので,そこで卒業する人のプログラムと,ツイニングやアティキュレーションのように編入学することが前提になっている場合は,カリキュラムの中身がかなり違ってくるということです。
 教職員のことについて言えば,私が調べたものの中では,職員はほとんど現地採用です。教員は,先ほど言いましたように,本校から行く人もいるのですけれども,そうではない場合もあります。本校の教員は集中講義でやってしまうこともあります。アメリカのシンガポールのSIMで展開しているものを見れば,最初と最後の節々のところはしっかりと本校から教員が来るのですけれども,その間は大体現地教員に任せているように思います。また,学生の身分等は,全部本校と同じようにしているというところもありますし,そうではないというところもあります。
【木田学校法人立命館総合企画部長】  私も答えた方がよろしいでしょうか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【木田学校法人立命館総合企画部長】  今の国の教育事情との関係ですが,先ほど申しましたように,今回の取組の場合には,日本型の高等教育を展開することで,日本式の卒業研究とかゼミをやります。これは実は日本は割と独特な制度だと最近分かってきたのですが,非常に優位性があって,小さな集団で学びのコミュニティを使って,学生同士がいろいろ励まし合いながら学ぶという環境です。そういったことができるということで,日本に留学しない大連だけで4年間過ごす学生も,卒業研究というものを置いて,そういう学びのコミュニティで学ばせることを,取り組んでいる最中でありますので,問題点というよりは,先ほど申しましたように,向こうの就職事情,進学事情との関係で,どう折り合いを付けていくかというのが調整事項になっています。
 質保証の観点での研修ですが,職員につきましては,本学で結構海外大学の職員のスタッフ研修の受入れをやっておりまして,そういったことをやっています。教員に関しましては,共同の運営委員会で教員同士のディスカッションの場が一種のFD的な役割を果たしているかと思います。
【鈴木主査】  どうぞ。
【溝上委員】  太田先生と木田部長に同じ質問をしたいと思うのですが,聞き漏らしたかもしれませんから,その場合は改めて教えてください。
 私が理解している限りで,例えば日本の大学の,あるいはそちらの大学とかのブランドをいろいろ海外に広げて発展させていくことは,とてもいいことだと,喜ばしいことだと思います。他方で,太田先生が少しおっしゃいましたけれども,香港とか韓国の事例で,高校生から上がっていくときの,日本で言えば,国際的に学生あるいは高校生が関心を広げて,いろいろ活動を広げていくときにこの話がどのようになるのかということを改めて教えてほしいです。日本というのは,御存じのようにユニバーサル化していて,そんなに海外に行きたいと思わなくても何とかなってしまいます。その何とかなってしまう中でもいろいろ問題があるのは承知のとおりですけれども,こういう点をもう少し教えてください。
 それから,木田部長には,立命館の最初の目的の中に,日本の学生がいろいろ向こうでも学べるようなことが目標に書いてあったと思うのですけれども,向こうの学生が日本に来て40人というのはいいのですけれども,日本の立命館の学生が向こうに行くような制度・システムはどのようになっているのか,教えてください。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  お答えします。香港,シンガポール,ともに大体先ほど言いましたように,20%程のところでキャップが掛かっていて,それ以上大学に高校から行かないので,そういうトランスナショナルエデュケーションが,高等教育の大衆化の一翼を担っていると思います。それだけではなくて,大学院レベルだと,プロフェッショナルデベロップメントの部分を担っていると思います。
 そういったところでもう一つ明らかなのは,トランスナショナルエデュケーションの場合は学費が高いことです。香港の場合は,香港の普通の大学に行けば学生は国の援助をもらえますけれども,トランスナショナルエデュケーションに行けば,どうしても学費が高くなります。そこでの競争,それだけお金を払ってでも人が来るかどうか、先ほど言いましたニューサウスウェールズ大学が1セメスターで人が集まらなくてシンガポールのキャンパスを閉じたのも,結局学費が非常に高いわけです。それだけお金を払うのでしたら本校に行った方がいいではないかとなってしまう部分は,どうしてもあると思います。
 ただ,もう一つは,ブランチキャンパスという,狭くとらえる考え方もありますけれども,アティキュレーションだとか国際編入学みたいなことを考えて,香港のように多くの人がまだアソシエートディグリーで終わる状況にあり,その人たちがトップアップのディグリーで海外を目指しているところでは,かなり日本に対する期待があります。香港には実際それを支援するために動いている人もいるのですが,日本の大学は学部の編入学が本当に少ないと言っています。国立大学では留学生の編入学はほとんどないですし,私立大学でも非常に狭まっていて,それが問題だとされています。それは突き詰めると,どうしても定員管理のところに行きつきます。今後定員管理が厳格化されていくと,留学生を入れるところは本当になくなっていくのではないかという危機感を私は覚えています。
【溝上委員】  先生。その部分はよく分かりました。ありがとうございます。日本の高校生にとって,この話は関係ないのかを教えていただきたいです。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  日本の……。
【溝上委員】  日本の大学の戦略としては分かりました。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  日本の高校生ですか。
【溝上委員】  にとって,この話は関係があるのかということです。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  例えば,仁川のグローバルキャンパスに行くと,そこでハブを作って入学の対象としている学生は,韓国だけではありません。東アジアから学生を集めたいという計画をもっています。韓国はもう一つハブを済州島にも作っています。それは中等教育ですけれども,同様に東アジアの生徒をターゲットにしています。シンガポールもそうです。シンガポールのトランスナショナルエデュケーションも,シンガポール人だけでなくて,その地域の学生を集めたいという意識は強くありますから,もちろんグローバル化の中で,日本からもそういうものにひかれていって,例えばアメリカの大学のプログラムを,アメリカまで行くと大変だけれども,韓国とかシンガポール,香港で学びたいという人が出てくるという可能性は十分あると思います。
【木田学校法人立命館総合企画部長】  すみません,私への御質問の,日本の学生の留学に関して,鋭い御指摘だなと思ったのですが,当初の目的にはそれは明確に書いてあるのですが,今のところ,日本の学生が向こうに行って学修することにはなっていないのですね。それは現地での学びの魅力みたいなものをうちが十分打ち出せていないとか,最近の国際情勢の中で,中国よりはほかの国・地域に関心のある学生が多いこともあります。
 学部全体としては,インドのIITとかと連携して,現地の学生とPBLをするプログラムを別にやってはいるのですけれども,このプログラムに関しては,なかなか日本人の学生の留学を訴求させることになっていませんので,これはこれからの課題かと感じております。
【鈴木主査】  前田委員,どうぞ。
【前田委員】  お二人の先生,貴重な報告,ありがとうございました。直接の質問ではないのですけれども,海外キャンパスですけれども,例えばアメリカだと,ブランチキャンパスに関しては,国内だろうが国外だろうが同じ厳格さで評価がなされて,実地にも訪問しているのですが,それより問題なのは,もっと小さいプログラムで,例えば10年のスパンの間にできて消えていくようなものは質保証にひっかからないということがあるということです。規程の中でも,例えば何%を海外でやる場合は,それは評価に行く規定を設けていたりするのですが,それにもかからないのが数多くあって,非常に困っている話がありました。
 先ほどの議題で,日本でも,学位の名称のふさわしさとかはしっかりと見ていくべきだとお話があったのですけれども,今の機関別認証評価の中でそこまで丁寧にできるのかというと,難しいところがあると思います。そうなってくると,海外に展開するものの質保証は,日本の国内と同じようには考えるのは難しいと思います。それでも,海外に広げるためには,質がしっかりしていることを保証する仕掛けは作っていかないといけないと感じました。
【鈴木主査】  よろしいですか。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  トランスナショナルエデュケーションはできてもなくなるということが非常に多いものです。アメリカの場合は,私の母校も含めて,先生がおっしゃったとおり,アクレディテーションの対象にしっかり入っていますし,学内組織に位置付けて,たまたま物理的に外国にあるだけだという仕組みなので,きちんとしているところはそれをやっていますけれども,そうではないところもあると思います。
 最初の話に戻りますが,このように海外展開が増えていくと,ナショナルインフォメーションセンター,それからフォーリンクレデンシャルエバリュエーション,これをしっかり,国あるいは民間のレベルでやらなくてはいけないです。私のところでも大学院生の願書の中で,ブランチキャンパスで学んだ人が一橋の大学院に志願するという事例があります。そうすると,私のところに電話が掛かってきて,これはどういう意味ですかと質問されます。この人はイギリスの大学出身だけれどもマレーシアにいて,1回もイギリスで学んでいなくて,マレーシアで全部の課程を修めていますと説明します。それで,この成績だとイギリスの大学院に行けないから本学を志願してきたかもしれないですというような話をします。フォーリンクレデンシャルエバリュエーションとナショナルインフォメーションセンターが,大体の先進国ではきちんと出来上がっているので,そこでこのような情報を交換できます。また、ナショナルインフォメーションセンターが,エニック・ナリックのような国際的な連携をとっているので,そこで国を越えて情報を常に交換しています。日本がそのループの中に入っていないというのが,大きな問題だと私は思います。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 宮城委員,どうぞ。
【宮城委員】  木田部長がおっしゃった日本型卒業研究の現地化というのに大変興味を持ちましたが,先ほどおっしゃっていただいたのは特徴には違いないと思うのですが,実際に中国の中でどう評価されているのかという部分と,あと,中国ではインターンシップをやるというのに対して,これはインターンシップをやらずに日本型スタイルを導入するというパターンもあり得るのか,それとも何かハイブリッド型みたいなことを追求されようとされているのかという,お聞かせいただけたらと思います。
【木田学校法人立命館総合企画部長】  ありがとうございます。まず後者の御質問から言いますと,ハイブリッド型を追求しようとしており,現地の進学・就職事情というのに配慮する必要がありますので,インターンシップに行きながら,でも日本のようにずっと研究室にいることは物理的にできませんので,週に2回ほど,研究室に来て勉強し,またインターンシップと往復するような,そういう仕組みができないかということで,今,やっております。
 それから,現地での評価ですが,もともと向こうからの要望としても,日本式の高等教育で優秀な人材を世界に出していきたいということがあって,そういうカリキュラムや日本の特徴を説明して,向こうからも非常に期待があると。実際にはこれから卒業研究に入っていきますので,その後の学生たちの成長であるとかそういったことを,またアセスメントとして検証していく必要があると思っております。
【宮城委員】  ありがとうございます。それと,もう一つだけ,この設置基準のお話で,課題として挙げていらっしゃることはもっともであると思いましたが,この辺り,事務局側の見解といいますか,もし,非常に実はハードルが高いとか,実際に検討は進んでいるとかという状況があったら,お伺いできたらと思います。
【鈴木主査】  事務局,お願いします。
【進藤国際企画室長】  本日,様々な御意見がありますので,そういった御意見を受けながら,きちんと検討しないといけないと思っているところでございます。
【太田一橋大学国際教育センター教授】  一つだけ言ってよろしいですか。その点で言わせていただくと,教育の中身の質保証というのは,世界的に大体共通化してきていると思いますが,日本の定員の考え方がかなり特異であって,編入学の枠を作ろうとすると,それは1年生のときから空けておかなくてはいけない,2年生のときにも空けておいて,3年生で編入生が入る。そうすると,1,2年生のところの学生がいない分の収入はどうなるかとか,そういった問題があります。海外の学会で日本の定員の話をすると,なかなか理解してもらえません。定員が柔軟化して,例えば留学生は外枠にするとか,国際編入学は外枠にするといった方策を取り,そこは別個に質保証するという形をとらないと,トランスナショナルエデュケーションのような意義があることでも大学はなかなか外国に出ていけないという現実的な問題や,縛りがあると私は思います。よろしくお願いします。
【鈴木主査】  その御発言を最後にいたしまして,次に進みたいと思います。
 外国人留学生の受入れ,日本人留学生の海外留学の促進について御議論いただきます。本年8月に,「高等教育機関における外国人留学生の受入推進に関する有識者会議」におきまして報告書がまとめられておりますので,まず事務局より,外国人留学生受入促進に向けた方向性や方策等をはじめとした留学生政策をめぐる現状施策について説明を頂きます。加えまして,本年5月に「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議」の中で,その中間まとめが出ましたので,こちらも高等教育部分を中心に御説明を頂きたいと思います。
 事務局から説明をお願いいたします。
【齊藤留学生交流室長】  それでは事務局より,まず,留学生政策をめぐる現状と施策につきまして,先ほど御紹介ありました有識者会議の概要も含めて御報告申し上げます。5分間で駆け足になることをお許しください。資料の5-1を御覧ください。
 1ページ目を開けていただきますと,留学生政策の基本方針で御案内のことかと思いますけれども,真ん中の青い部分でございます。2020年までに留学生交流を倍増させることで,日本人の海外留学に関しては,大学生に関しては12万人を目標,それから外国人留学生の受入れに関しては30万人を目標ということで,各種の施策に取り組んでいるところでございます。
 続きまして,3ページ目が,日本人の海外留学の現状でございます。3ページ目がOECDのデータに基づくものでございまして,日本人の海外留学ですが,全体としては横ばいないしは減少傾向にあるということで,5万3,000人というデータとなっております。これは受入国側の大学に在籍する留学生の数をベースとしたデータでございます。
 一方で,4ページにございますように,我が国の大学が把握している日本人学生の状況でいきますと,在籍しながら短期で留学するといったことも含まれますので,この場合には8万4,000人ということで,主に短期で増加しているという状況でございます。
 5ページ目でございますが,それを受けまして,文部科学省で海外留学の支援の制度を組んでおりますが,まずもって,そういった日本の学生の留学するための機運を醸成することが必要だということで,海外留学促進キャンペーンということで,各種の取組を行っているところでございます。その上で,支援策といたしまして,左側にございますが,国費による支援で,大学院の学位取得,それから学部の学位取得のための奨学金,それから大学間の協定に基づく派遣,それから受入れといったことに関しまして,支援を行っているところでございます。
 それから,右側の部分ですが,詳しくは6ページ目を御覧いただきますと,このほかに新たに官民の協働によります「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」というのを行っております。これは企業から寄附金を頂きまして,企業が参加した上で,短期の留学であっても,留学に行く目的・意義,それから留学に行った成果をどのように生かすのかといったことを,事前・事後研修といった形でブラッシュアップして,主体的に留学に取り組んでいただくという形で取り組んでおりまして,こちらも成果が出てきているのではないかと思っております。
 最後に7ページ目でございますが,特に日本人の海外留学に関しましては,総務省の政策評価というのが近年出ておるものがございまして,先ほどのOECD統計と日本の大学に在籍する方の統計の違い等も踏まえまして,勧告というところでございますが,特に短期留学について,グローバル人材育成の観点からどのような効果があるのかを明確にするべきだという御指摘を頂いております。我々といたしましては,そこのところが課題だと考えておりまして,先ほどのトビタテでございましたような事前・事後研修を通じて短期留学の効果を定着させる,あるいは国内のグローバル人材育成の様々な取組の中に,そういった留学というのをいかに融合させていくかといった観点で検討する必要があると考えているところでございます。
 それから,8ページ目以降が,留学生の受入れの現状と施策でございます。9ページ目でございますが,「留学生30万人計画」を定めておりまして,日本留学への誘いから受入れ環境作り,それから卒業後の社会の受入れといった,全体を通じて取り組んでいくことをしております。
 10ページ目でございますが,世界の留学生交流につきましては拡大の一途でございまして,2010年代には400万人を突破するという状況でございまして,11ページ目にございますように,英国,欧州,北米等のみならず,例えば中国ですとか豪州ですとかいうところで大幅に受入れを伸ばしているという状況でございます。
 12ページ目の外国人留学生の我が国の状況でございますが,全体としましては23万人で,30万人に近付いている状況でございますが,内訳といたしましては,緑の日本語教育機関での受入れが多いことと,高等教育機関でも専修学校(専門課程)での受入れの増加というのが,この伸びを押し上げているという部分がございますので,大学等での受入れが課題と考えております。
 13ページ目が,それを受けました文部科学省の取組でございますけれども,先ほどの30万人計画の入り口から出口までという考え方に基づきまして,各種施策を行っています。今後といたしましては,一番上に書いてございますように,優秀な方を獲得するための海外の出先におけるプロモーション,それからリクルーティング機能というのを強化する必要があるということでございますので,こういった取組をしております。
 以上が全体の概要でございますが,最後に有識者会議の報告について,資料の5-2で御紹介申し上げます。詳細は御覧いただければと思いますが,1ページ目から要旨が書いてございます。先ほど申し上げましたような,世界で留学生の獲得競争というのが熾烈(しれつ)になっているという中で,我が国の留学生の受入れに当たっても,どういった学生のタイプかに応じて戦略的に行っていく必要があるということで,主に二つのカテゴリーに分けております。
 2ページ目の2番の(1)というところにございますように,我が国として戦略的に受入れを強化すべき学生というところに関しましては,我が国の高等教育機関の教育研究環境を充実させていくことですとか,大学院の長期受入れを基本として奨学金を支給していくこと,それから,先ほどございましたように,留学の海外拠点におけるワンストップサービスを作るといったことを打ち出しております。
 (2)のところで,それ以外にも,日本に関心を持つ多様な学生というのをいかに受け入れていくかというところで,ここは,幅広い高等専門学校,それから専修学校(専門課程),日本語教育機関を含んだ日本の留学先の情報の分かりやすい発信といったところ,それから日本の就職のための情報発信といったところを中心にまとめていただきまして,具体的に方策といたしましては,4ページ目,5ページ目に,それぞれの項目に応じて提案していただいたというところでございます。
【鈴木主査】  資料の6-1,6-2について,原田国際協力企画室長のお話をお願いいたします。
【原田国際協力企画室長】  ありがとうございます。大臣官房国際課でございます。お手元の資料6-1を御覧いただければと思います。
 当省では,主に初等中等教育分野とはなりますが,国際バカロレアの推進を進めております。国際バカロレア,通称IB資格につきましては,国際的に通用する大学入学資格として,世界の主要な大学における入学審査等に幅広く活用されているところでございます。日本におきましても,このような状況を受けまして,国内における普及拡大に努めているといったところでございまして,主な取組としましては,黄色いポンチ絵のスライドの下で,主な取組といったところを説明させていただいてきたところでございます。
 今後,更なる国際バカロレアの推進方策を検討するために,今年,「国際バカロレアを中心としたグローバル人材を考える有識者会議」を設置させていただき,本年5月に中間取りまとめをお示しいただきました。そちらが資料6-2となります。グリーンと青の資料となりますけれども,簡単に御紹介させていただきます。
 この中間取りまとめの中におきましても,特に国内の大学における国際バカロレアの活用推進が指摘されているところでございます。海外におきましても,国際バカロレア生は数多く修了生がおりまして,特に優秀なこのような外国人の修了生を留学生として受入れを進めていくといった観点からも,国内大学の入学者選抜におきまして,IB活用を推進していくことが重要だろうと考えております。
 また,中間取りまとめにおきましては,右下の小さい字で恐縮ですけれども,大学教育及び大学入学者選抜におけるIBの活用促進とありますけれども,大学入学者選抜における活用のほかに,大学教育におけるIBの活用の提言を頂いているところでございます。例えば海外の大学,主に米国等でございますけれども,IB資格を取得して入学した学生に対しては,そのIBの科目の中でも特に優秀な点を修めた場合におきましては,その点数に応じて大学における単位認定などを行う仕組みがございます。こういった取組につきましては,国内におきましても優秀なIB修了生を取得するという観点からも,国内における単位認定などを推進していくことが重要ではないかと考えているところでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは,ただいまの報告を踏まえまして,御意見,御質問を頂ければと思います。
 前野委員,どうぞ。
【前野委員】  どうも御説明ありがとうございました。私から若干個人的な意見も申し上げたいと思いますけれども,特に今,留学生の受入れ等につきましては,どちらかというと大学生,大学院生,それから海外への展開もそれが主ではないかと思うんですが,私どもは高等専門学校の教育にタッチしているというところから,海外でも今,高等専門学校のシステムの展開を図り始めております。これは非常に大きなメリットがありまして,高等専門学校というのはもともと産学連携,実践,そこからスタートして教育研究までというところでございますので,それぞれの国に合わせた若年層,言葉で言いますと,後期中等教育,私どもは逆に早期高等教育と言っていますが,15歳からの現地の産学振興,産業振興と同時に人材発掘,これはそれぞれの国で経済発展が違いますので,まだたくさんこれから優秀な人材はいるけれども,産業が発展していないところがございます。そこでそれぞれの国のプラスになるような産業の発展と同時に人材育成,と同時に,日本にお呼びして,優秀な高度人材として大学あるいは大学院に行っていただけるような人材を,若年,つまり15歳から発掘すると,そういうシステムはとてもいいのではないかと思っております。
 したがいまして,それぞれの国に,これは国の事情があって早急にはできないのですけれども,長期的な展望を持って,それぞれの国に日本のスタイルのような,15歳からの非常に若年,特にITになりますと早くなりますので,早期からの産学連携,人材発掘,両方できるようなシステムを是非展開していただきたいと思っております。
 今,幾つかの国で展開しておりまして,それぞれの国の事情で難しいところもありますけれども,非常に我が国の教育システム,先ほど来いろいろな先生方がおっしゃっているように,研究を少しやりながら産業の実践もする,そういった教育というのはなかなか各国でもできておりませんので,非常にいいシステムではないかと思いますので,それぞれの国の事情もあるのですけれども,是非展開をしていただきたいと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,それから宮城委員,お願いします。
【金子委員】  これは文部科学省に伺いたいのですが,30万人計画というのはどういう基準で設定されたのか分かりませんが,どの程度この量的な目標が重要なのかというところは,私,疑問に思っていまして,実は留学生の拡大というのは,今,節目が変わりつつあると思います。文部科学省の資料の10ページに,拡大するステューデントモビリティーというグラフがありますが,これ,2011年までしか出ていないんですが,しかもこれ,円の大きさで書いてあるのでよく分からないのですけれども,普通の折れ線グラフにしますと,1990年代から2010年ぐらいまでは,大体10年間で倍以上伸びるという物すごく爆発的な拡大がありましたが,どうもそれ以降はかなり減速しているようです。それで,一番右の2025というのはオーストラリアの予測で,これ,しかも古いですし,大体オーストラリアというのは留学を商売にしようとしている国ですから,かなりこれも強気に書いていると思いますが,これから先は,かなり私は慎重といいますか,むしろ質的な側面を見て,どうしたら日本のメリットになるのかをよく考えるべきではないかと思います。
 例えば日本の周辺を見ても,外国への留学者数って,例えば中国からは3年前ぐらいに減り始めました。韓国も同じぐらいに減り始めまして,今,台湾も減っています。日本は10年ぐらい前に減り始めましたが,これは偶然ではなくて,多分いろいろな原因があるだろうと思うので,ここら辺は,なぜなのかというのは十分に突き止めるべきだと思います。
 日本の場合,この12ページですが,最近になって受入れがかなり増えていますが,これは明らかに,景気が上向いて人手不足が生じていることによって,留学生の労働市場がかなり拡大していることが大きいと思います。出身国も,中国,韓国が中心だったのが,更に東南アジアに広がっていて,そこの人たちが日本に,半分は労働市場,あるいは学校を終えた就業機会を求めてきているというところが,新しい市場として非常に大きな意味を,今,持ち始めているので,これは日本にとってどういう意味があるのかというのは,かなり慎重に考えるべきではないかと思います。
 それからもう一つ,こういった意味でも,この人たちが入りたいのは,多分,むしろ職業関連の課程ではないかと思います。そういう意味で,職業関連の,今度,専門職大学ができますけれども,そういうところの質的な管理をかなりしっかり作っておかないと,非常に低質の疑わしい学校ができてしまうことも起こりかねないと思います。そういう意味で,留学生というと,増えて何でも望ましいように思われていましたけれども,今,考えなければいけない時期に入っているのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 宮城委員,それから上田委員で打ち止めとさせていただきますので,どうぞ。
【宮城委員】  「トビタテ!留学JAPAN」についてですけれども,私も立ち上げからお手伝いをさせていただいてきたのですけれども,改めて官民の協働の枠組みや,実践のプロジェクトをベースにされているところも含めて,今回の将来構想部会の大きな課題でもある,イノベーションの担い手となる人材とか創造型の人材を育てていくという視点に立ったときに,ヒントといいますか,改めて評価として,どういうことが「トビタテ!留学JAPAN」の成果として言われているかというのをコメントを頂けたらと思います。
【齊藤留学生交流室長】  まず,先ほどの金子委員の30万人のことを申し上げますと,平成20年度に30万人計画が立てられまして,そのとき,端的に言うと,政治的な目標で定められたことですが,参考としては,その当時の日本における学生数に占める留学生の割合といったことの目標感を考慮したと聞いております。
 質の問題につきましては,委員の御指摘のとおり,非常に重要な問題だと,取り組むべき問題だと考えております。
 それから,「トビタテ!JAPAN」のイノベーションの担い手としてのということで申し上げますと,そういった先ほどの事前・事後研修というところでございましたが,主体的に自分のキャリアですとか留学の意義を考えてもらうと。それから企業と早期にネットワークを作るといったところが重要でございまして,その後,卒業生たちのネットワークというのも意図的に作っているところがございますので,そういった今後の主体性あるイノベーションを担う人材といったところが,非常に意義があるのではないかと我々は思っておりますが,もう少し分析をしたいと考えております。
【鈴木主査】  どうぞ。
【上田委員】  もう最後になりましたので,短く申し上げます。グローバル人材とかそういうことがずっと言われてきて,国際化が言われてきましたが,それがどのようにイノベーションというものに結び付くのかというところに関しては,そんなに検証は行われていない気がします。私が,大学などで教えていて,留学した子はどんどん成長していくし,あと,留学しないで同じようなテストで点を取っていても,各国からの留学生たちはしたたかで,もう人間的にもタフです。
 そういう意味で,今,これからのイノベーション人材というのは,この頃はやっていますレジリエントであることが物すごく重要で,何か壁にぶち当たったときに,そこからもう一回立ち上がっていく力があるのか。あと,大体うちの先端科学なんていうのは5年で全部陳腐化しますので,大学で習ったことなんていうのは5年間で役に立たなくなったときに,もう一回学び直して,自分のやっている分野が駄目になったときに,そこで創発的にもう1回何かを発見していけるかという,そのレジリエンスの部分が問われているわけなので,そういう意味では,留学をするというのも,単にグローバル人材になること以上に,レジリエントな人間になるというところをもっと押し出すことができないのか。単に国際化とかグローバルと言っている時代は終わってきたのではないかと思いますし,企業もそういうレジリエントな人材を求めているわけですから,そういった形での何か押し出しというのができるのではないかと思いました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,本日の議題は以上となります。今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程につきまして,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  次回のワーキンググループは,10月13日金曜日16時から18時を予定しております。場所はこの建物の13階,1から3会議室を予定しております。
 また,本日の資料について郵送を御希望される先生方につきましては,机上の付箋に郵送御希望という旨を御記載いただき,残していただくようお願いいたします。
【鈴木主査】  それでは,本日の議題は終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局大学振興課