制度・教育改革ワーキンググループ(第15回) 議事録

1.日時

平成30年6月29日(金曜日) 15時~17時

2.場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13B(東京都港区赤坂2丁目14-27)

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,福島一政,伹野茂、濱名篤,本郷真紹,前田早苗,溝上慎一,美馬のゆり,宮城治男の各委員

文部科学省

(事務局)村田私学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),信濃大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

【鈴木主査】  所定の時刻になりましたので,第15回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。皆さん御多様の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 報道カメラ等のカメラ撮影は,議題に入る前までの冒頭部分のみとさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 前回は,社会人の学び直しに係る制度改正や実務家教員の登用促進について御議論いただきました。また,認証評価制度についても,論点と検討の方向性について御議論をいただいたところであります。
 本日は,先日6月25日に本ワーキンググループの親会議であります将来構想部会で議論され,昨日取りまとめられました「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」につきまして事務局から御説明いただきまして,答申に向けて本ワーキンググループの今後の審議事項について委員の皆様から御意見を頂戴したいと思っております。
 最後に報告事項が3件ございます。人生100年時代構想会議において,「人づくり革命基本構想」が,また,高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議において「高等教育の負担軽減の具体的方策」がそれぞれ取りまとめられたとのことですので,事務局から説明していただきます。
 また,本ワーキンググループでも御議論いただきました工学系教育改革に関する大学設置基準等の改正につきましては,6月8日に開催されました大学分科会において,文部科学大臣の諮問に対して適当と認める旨の答申がありまして,本日,大学設置基準及び大学院設置基準の一部を改正する省令等が公布されたとのことですので,事務局からこれも説明していただきます。
 それでは,事務局から本日の配付資料について確認をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。配付資料が少し多くなっておりますので,御説明いたします。資料1-1,1-2が中間まとめ,それから,概要になっております。資料2が今後の審議事項,資料3が四つに分かれておりまして,人づくり革命基本構想の資料がこの四つになっております。それから,高等教育の負担軽減の資料4も三つに分かれておりまして,概要,報告,参考資料集となっております。資料5が大学設置基準及び大学院設置基準の一部を改正する省令等について,また資料6が今後の日程ということでございます。
 机上に6月15日の閣議決定に関しての資料も,これは御参考までにお配りさせていただいております。これは委員のみということで御配付させていただいております。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,議事を進めます。本日はまず,これまで本ワーキンググループでも御議論いただいております内容を踏まえまして,本ワーキンググループの親会議である将来構想部会で取りまとめられました「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」と,答申に向けた本ワーキンググループにおける今後の審議事項についてであります。6月25日の将来構想部会において,本ワーキンググループに係る審議事項についても意見がありました。その御意見等を踏まえまして事務局で審議する項目をまとめておりますので,委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。
 それでは早速ですが,事務局から資料1-1,資料1-2,それから,資料2について御説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。まず中間まとめ,それから,今後の審議事項について一連で御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず資料1-1をご覧いただければと思います。先ほど鈴木主査からお話がありましたとおり,6月25日に将来構想部会が開催されまして,そこで座長一任,そして,6月28日付で構想部会としての中間まとめが取りまとめられたところでございます。
 資料1-1,めくっていただきまして,目次のところでございますけれども,論点整理からの変更点も踏まえて御説明させていただきます。まず「はじめに」という部分が新たに付け加わっていること,それから,1から6に関しては,基本的に論点整理を深めていった内容で整理をさせていただいております。内容は先生方にも何度か見ていただいているところではございますが,今後の議論の関係性から,特にワーキングで御議論いただいたところを中心に御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず「はじめに」のところは,基本的に2040年というターゲットイヤーを考えたときに,そのときの社会の在り方というところで,2ページから4ページまでで,社会の在り方を,Society5.0やSDGs,それから,人生100年,このようなことで整理をさせていただいたところでございます。
 それから,5ページのところは,高等教育をめぐる国内外の状況,それから,6ページに行きまして,課題と方向性ということで,例えばめくっていただきますと,7ページ目,初等中等教育からの接続と多様性というところ,また,更にめくっていただきまして,9ページ,新たな役割をどう考えるのか,それから,社会との関係性,特に10ページの下のところでございますけれども,やはり質保証の在り方の見直しということで,我が国の高等教育の質が保証されていることが国内外で認知されることが重要,また,保証すべき質とは何かを改めて検討することも含め,現在の設置認可から認証評価,組織を中心とした質保証の在り方を見直す必要があるため書かせていただいているところでございます。
 それから,11ページ目以降,特に11ページは,産業界との協力・連携,特にリカレントを御議論いただいてまいりますけれども,その際にも,人材を育成する側と活用する側での議論を深めていくという観点,また連携が重要であるということを書いているところでございます。
 めくっていただきまして,14ページからが「はじめに」の後の整理になります。まず,社会の変化に対応できる人材とその成長の場となる高等教育というところで,「何を学び,身に付けることができたのか」を一つの焦点として,個々人の強みを最大限に生かすことを可能とする教育への転換ということで整理をさせていただいております。この形の上で,多様性につながる整理をしていきたいというところでございます。
 17ページのところが,教育研究体制に入ってまいります。ここは,論点整理のときに整理をしました,多様な価値観が集まるキャンパス,多様な教員,多様な学生,多様で質の高い教育プログラム,多様性を受け止めるガバナンスということで整理をさせていただいております。
 具体的な方策のところで,例えば18ページ目でございますが,学位プログラムの実現というところで,一つ目の丸は,全体として学位プログラムのためにどういうことをしていくかということの整理,それから,二つ目のところは,本日も御説明いたします工学分野についての整理という形で今後の方向性を書かせていただいております。また,その下の教員の採用と質保証のところは,特に実務経験のある教員のところを整理して書かせていただいているところでございます。
 めくっていただきまして,19ページは,これは多様の学生のところでございます。具体的な方策としてのリカレント教育の充実というところで,履修証明プログラムに対する単位授与を可能とする,また,単位累積加算制度,こういう形で整理をさせていただいているとともに,その下の留学生交流の推進のところは,日本語準備教育,また,留学生の就職促進のプログラムやインセンティブ,それから,大学入学資格の一部の見直しなどを入れさせていただいております。
 また,学位の国際通用性の確保は,英語表記の整理,それから,情報センターの設立の観点,めくっていただきまして,やはり700種類まで増加している学位の名称をどのようにするか,それから,21ページでございますが,高等教育機関の国際展開をどのように考えていくというところを入れさせていただいております。
 また,多様で質の高い教育プログラムのところは,再掲ではございますが,22ページのところの具体的な方策としては,学位プログラム,それから,単位互換制度と「自ら開設」の原則との関係の整理ということで,改めて基本的な考え方を明示すること,それから,一つの大学に限り専任となる原則についてどう考えるのかを整理しているところでございます。
 それから,ガバナンスについては,将来構想部会を中心に議論をしてまいりましたけれども,24ページの3のところで,国公私立の枠組みを越えた連携の仕組みを破線の中に書かせていただいております。これは今後このワーキングにおいて,どのようなインセンティブを付けていくことがよいかというような御議論はしていただければありがたいと思っておりますので,今御紹介させていただきます。
 それから,めくりまして,少し飛ばしますけれども,27ページからが教育の質の保証と情報公開というところで,これはまさにワーキングで御議論いただいたことが中心となって入っております。
 ポイントは,28ページの上から二つ目の丸の辺りでございますけれども,全学的な教学マネジメントの確立とその前提としての学修成果の可視化,設置基準等の見直しを含む入り口での設置認可と認証評価制度の改善及び恒常的な情報公表の促進というようなことを進めていく必要があるというのは,この中間まとめの大きな柱になっております。
 また,産業界においてはというところで,28ページの一番下の段落の「なお」のところでございますけれども,「求める人材」のイメージや技能を具体的に示していくこと,学修成果の情報を選考活動において積極的に活用するとともに,メッセージを出してほしいということも書いているところでございます。具体的な方策は,教学マネジメントの確立,情報公表,認証評価制度ということで整理をさせていただいておりまして,これは基本的にワーキング議論そのものを入れさせていただいているところでございます。
 それから,めくっていただきまして,この先は部会の議論が中心でございましたけれども,18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置の議論がありまして,35ページですけれども,国としての役割の部分が論点整理から付け加わっております。やはり各地域の立地状況や産業状況,歴史的な背景などの特有の事情をきちんと考慮する必要があるということ,国としては,データの整理とか,地域間での連携プラットフォームの構築への関与,制度的整備などを行うということを明確にしているところでございます。
 それから,36ページが機関の役割というところです。これはそれぞれの段階機関の在り方ということで整理をさせていただいております。また,もう一つあります大学院部会の方でも,大学院のところは更に議論を進めることになっております。
 それから,41ページでございますけれども,答申に向けた検討課題というところです。四つの諮問事項に関しましては,四つ目の教育費負担の在り方等についての検討がまだ残っているということ,それから,丸の二つ目で規模の話,それから,設置基準等の見直しを含む設置認可,認証評価制度,情報公表の在り方,それから,規模の在り方,そして,大学院教育の部分を更に議論していくということで,特にワーキンググループにおいては制度面に関する事項について議論を進めており,具体的な提言を受けて更に検討を進める形で整理をさせていただいたところでございます。
 中間まとめの内容は以上になります。
 資料1-2は,概要としてまとめましたので,またご覧いただければと思います。
 今日の議論の中心になります今後の審議事項について,資料2でまとめさせていただきましたので,それも併せて御説明をさせていただきます。また,委員の皆様には,机上資料ということで,横書きで具体の審議の日程を入れさせていただいた紙をお配りさせていただいておりますので,それも併せてご覧いただければと思います。
 資料2でございますけれども,先ほど申し上げました,最終的には大きくまとめますと四つの観点が更に議論が必要だということになっておりますけれども,もう少しそれをブレークダウンして書かせていただいたものがこの資料2でございます。部会でやること,それから,大学院部会でやること,ワーキングでやることで分けておりますので,それも一旦全体を御説明させていただきたいと思います。
 まず質保証のシステムそのもの,設置基準,設置認可,認証評価というところがございますけれども,これについては,まずワーキングの方で御議論いただいて,更に将来構想部会で議論をするというような形になるかと思っております。内容としましては,これは構想部会における意見としては,新しい学問分野のプログラムを大学が作る際の設置認可,定員の設定に関する考え方の整理とか,認証評価結果の活用・発信の在り方についての整理が必要なのではないかという御意見がありました。
 それから,二つ目は,これは将来構想部会の方で議論を進めていくことになりますけれども,国公私を通じた機関や課程に着目した規模の在り方ということで,諸外国の状況,それから,Society5.0などを踏まえた今後の人材育成の状況,それから,我が国の産業構造として中小企業がやはり大半を占める中で,どういう人材育成が必要なのかという観点からの整理が必要ではないかという御意見を頂いているところでございます。
 大学院教育については,大学院部会の方で更に議論を進めていただくことになっております。
 支援方策の在り方は,将来構想部会で,これも諸外国との比較も含めて整理するべきではないかというところでございます。
 学位プログラムに関しては,特段の将来構想部会での議論はございませんでしたけれども,ワーキングの方で設置基準の改正案等を御議論いただければありがたいと思っております。
 それから,リカレント教育については,特に実務家教員の扱い等について議論をしていただいたところでございますが,実際どういうプログラムが必要なのか,また,どういうやり方であれば実際うまくいくのかというところにもう少し踏み込んだ議論が必要かと思っておりまして,さらにワーキングで議論を深めていただければありがたいと思っております。
 めくっていただきまして,先ほど申し上げました連携・統合については,大学等連携推進法人の制度について部会の方で意見が出ておりますけれども,その際のインセンティブとか仕組みの制度設計をワーキングでお願いできればという整理になっております。
 また,国際展開についても一度御議論いただきましたけれども,やはりポスト留学生30万人計画を見据えた留学生の受け入れ,また,戦略的な日本人学生の送り出し,それから,海外大学との単位互換などを考えたときのカリキュラムの標準化,英語化,こういうことも整理が必要ではないかという議論が出ております。
 また,学位の国際的通用性について申し上げますと,学位名称については,中間まとめでも,必要があるという整理ができておりますけれども,高等教育機関や学部の名称の英語表記についてもやはり考え方の整理が必要なのではないかという議論が出ているところでございます。
 簡単ではございますが,説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは,ただいまの事務局説明及び資料を踏まえまして,御意見,御質問等がございましたらお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  前回,社会人の学び直しについてもう少し全体像をしっかり見せてくれというお願いをしたのですが,出てこないのでこちらから発言していきたいと思います。やはり今回の中間まとめに出ているのは,申し訳ないけれども,ほとんど中身がなくて,リカレント教育の充実と書いているのがプラットフォームを作るとか割と小粒なものが多いのですけれども,私はまず非常に大きな問題は,対象者をどう拡大するかということだと思います。
 一つは,他省庁のスキームとのリンケージについては前回発言させていただいたとおりで,一つは厚生労働省の職業訓練給付金がメーンターゲットだと思うのですが,では,その対象から外れている人たちはどうなるのかということなのです。誰かというと公務員です。公務員,教員,この人たちが社会人の学び直しの対象になっていないから不祥事がいっぱい起こるのかなと思いながら,要するに,採用試験後の体系的なトレーニングプログラムがない,これらの知識人層が学び直しをしてくれないと,やはり大きな流れにはならないだろうと思います。
 例えば必要ないのかと思う内容として、危機管理マターもありますし,情報セキュリティとか,あるいは新しいプロジェクトを作ってマネジメントをして産官学協働という,今日も言葉としては踊るのだけれども,そういう新しい課題や手法に対して,どういう学びの場があるのかといったときに,ここのところを考えていただく必要があるのではないかと思います。目前の問題でいいますと,学習指導要領の大改訂をやって,この前も世論調査結果が出ていましたね。プログラミング教育の準備は全くできてないと。これでできるのかというときに,文部科学省の高等教育局の話だけではなくて,生涯学習政策局,初等中等教育局ともっとリンケージをしっかり張ってもらえないかと思うのです。
 では,大学ができることがないかというと,我々は免許更新制講習の実質的なアウトソーシングを受けている立場です。それは一定の収入源にもなるし,やる気のある大学はそういう形で地域に貢献もできる。それはどこの範疇なのかといったときに,初等中等教育局が教育委員会を通じてやっていますでは困ります。まず構造的な対象者層の拡大ということをやって,文部科学省の省内調整で実現可能なことがたくさんあるわけです。だから,やはりそこらのところは少なくとも盛り込んでいってもらう。つまり,社会人の学び直しは難しいではなくて,まず文部科学省の省内から,あるいはパブリックセクターの中からやはりやっていただくということがまずベースになるのではないでしょうか。
 我々は,大学教員になりたい実務家の話を始めたわけですけれども,書きぶりはややトーンダウンしている気はします。けれども,やはりそれだけではなくて,少なくともパブリックセクターの知識人層に対する対応を強く進めていく必要があるのではないかと思うのです。学び直しとか人生100年という話が出ている今のタイミングでやらなければ,こういう20年間積み残してきた課題を解決する契機がないのではないでしょうか。学校教育の大改革が起こっているというのは,そういう点ではジャストタイミングではないかと思います。
【鈴木主査】  なかなか厳しい大きな意見をまず最初に頂きまして,それについて議論するということも可能ですが,もう少し議論いただいて,それからにしたいと思います。
 福島委員,どうぞ。
【福島委員】  今せっかく社会人のことが出たので。社会人の学び直しという場合に,もう大分以前から社会人に対して生涯学習ということでやってきたのだけども,なかなかうまく機能していない。カルチャーセンターに多少毛が生えた程度という感じになってきてしまう。
 この間リクルートだったか何かが調査して分析していましたけれども,要するに,一般の社会人が,企業に勤めている人たちが,会社でもそれなりに時間の保証だとか昇給だとかそういうことに反映しているところは結構学習が進むということです。やはりそういうことを企業側にも我々としては要請する必要があるのではないのかなと。学外理事を入れろだとか,あるいは学修の可視化をして企業の採用のときに提供しろというのは,企業の方がそういうことを言うわけですけれども,我々の側からも,大学としての教育をきちんとやろうと思ったら,その成果を企業に勤めている人たちに反映するというようなことについても要請する必要があるのではないかなと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。
 どうぞ。
【本郷委員】  本郷です。今の点に関しまして,特にこれは社会人の学び直しの単位認証あるいは学位の評価の問題にも関わってくると思うのですけれども,いわゆる現在の通学制課程の教育システムが,何か旧態依然とした,教室,研究室若しくはそれに準ずる場所でないといけないという制約が付いているがために,今時のおよそインターネットの発展とか,いわゆる声高に言われています反転授業等について,社会人に対してなかなか行うことができない。そのためにどうしてもカルチャーレベルにとどまってしまうということがあり得ると思います。
 その点を,たしか文部科学省の告示で平成19年に場所の問題が取り上げられていると思いますので,この辺りは少しお考え直しいただきまして,もう少し今のツールに即応した形での履修が可能となるような,そういう内容を盛り込んでいただきたいと思う次第であります。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続いて,前田委員,そして,川嶋委員という順でお願いします。
【前田委員】  別件でもよろしいですか。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。
【前田委員】  相変わらず質保証のことなのですけれども,意見のまとめのときよりは大分コンパクトになっていて,いろいろうるさい事を言い過ぎたかなという反省がなくもないのですけれども,あの中で言われていたことがおそらくかなり簡単な形で入ってきていると思うのです。例えば評価の負担軽減なんていうことは,なかなか簡単にはいかないのですけれども,きちんとまだ引き続き,うまくできることなのかは検討していくことが必要だと思います。
 もう一つは情報の公表というのが質保証には重要になってくると思います。前からこだわっているところではあるのですが,認証評価制度というのは,認証された評価機関が評価をするという制度ですが,英語のホームページでは,文部科学省はアクレディテーションという言葉を使ってきています。最初は使わなかった。これは最初は質保証よりも教育の質の向上ということを重視していたけれども,これだけ年数がたって,質保証というのがやはり相当重要になってきているからだと思います。それで,やはり英語で海外に説明するのにアクレディテーションという言葉を使っていますし,認定をするという行為がないとなかなかきちんとした質保証にはならないだろうと思います。
 例えばアメリカの教育省のホームページを見ても,アクレディットされた大学を探せるページが正面に出てきています。今のこの制度では,文部科学省はそういったことは手を付けにくいような形になっています。つまり,認証した評価機関が評価していて,その結果,アクレディットしているということであって,その関係性というのはもう少し明確にして,文部科学省が特に国外に対してきちんと認証評価で認証された大学が示せるような形にすると。その方が今の実態に合っているだろうと思いますので,そういうふうにしていただけたらと思います。
 あともう2点あるのですが,そうなってきますと,認証評価機関がアクレディットする,しないということが今まで以上に重要になりますので,前回も申し上げたのですけれども,きちんとその適否を付けるレベルをできる限りそろえる。それ以外の特色をそれぞれの評価機関が持つのはいいのですが,そこも重要になってくるだろうということです。そして,評価機関を評価するというようなシステムも今後は必要になってくるかもしれない。今は自己点検評価を評価機関がしなければいけないというところまで来ていますけれども,その先も考える必要が今後はあるかもしれないということです。
 更にもう1点は,今,法令違反があったときに,評価機関は,法令違反がありますといってそこまでは言えます。だけれども,そこから先,文部科学省がそれをどう使うということをしていないので,そこのところはもう少し,質保証という点からいえば,関与するということもあるのではないか。つまり,法令違反があったところに関しては,文部科学省が何らかの監督をするというようなことも,認証評価導入時には考えにくかったことですけれども,今はやはりそういうことも考えていいのかなと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。いろいろな御意見を頂いておりますが,もう少し御意見を頂いて,そして,まとめといいますか,もう一度戻っていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 川嶋委員,それから,溝上委員,それから,美馬委員に行きたいと思います。どうぞ。
【川嶋委員】  ありがとうございます。まず今,この中間まとめの全体的なトーンといいますか,読んだ印象ですけれども,中央教育審議会としての取りまとめということなので,1点は,教育の改善,あるいは今,前田委員の指摘があったように質保証についての言及箇所が非常に多いのですが,しかしながら,現実に我が国の今後の高等教育を考えると,高等教育の質保証・向上は当然のことながら,やはり構造的な問題,特に少子化に伴って日本の高等教育全体の規模とか構造をどうするのか,システムをどうするのかということが一番切実な課題だと思うのです。しかし,この案では,その課題が後半に回されているのは,どうなのだろうと思います。もっと前面に出すべきではないのかと思います。
 それからもう一つは,今回のこの内容は,国に対しての期待や要望がない。これを読むと,各機関あるいは地方が何かしなければいけないということはたくさん書かれているのですが,では,その中で国はどういう役割を負うべきかがほとんど書かれていない。例えば24ページにありますが,この囲みの中で下から二つ目の白丸で,複数の高等教育機関,産業界,地方公共団体との恒常的な連携体制の構築と書いてあって,唯一ここには,国による「ガイドライン」策定を検討するというぐらいしか書いていなくて,それは,国は今後高等教育については,今後は規制緩和進めて,機関と地域の自己責任に任せるということなのか。これまでの中央教育審議会のいろいろなまとめとか答申だと,国に対して,こういうことをしてほしいという期待や要望を書いてきたと思います。それらが実現されているかどうかはまた別の問題ですけれども,やはり中央教育審議会としては,国に対してもこういうことをすべきだという提言は是非入れるべきだろうと思います。
 ちなみに,その隣の23ページ,非常に瑣末なことですけれども,2ポツの私立大学の連携・統合の円滑化に向けた方策で,最後に「支援する」と書いてあるのですが,これは誰が支援するのかも分かりません。国に我々は期待するのですけれども。
 それからもう1点はまた同じような観点なのですけれども,高等教育の将来像ということであれば,今申したように,学士課程だけではなくて,短期大学,高等専門学校,それから,大学院,専門学校等の高等教育のトータルな姿・形を示す必要があるのだと思うのです。ところが,多くの部分,特に前半の方は,各教育機関に共通する課題という形,実は主に学士課程に相当する内容が記述されて,36ページ以降でようやく専門職大学とか短期大学,高等専門学校,専門学校,大学院という形での今後の検討課題が示されているだけなのです。
 専修学校を含む高等教育への進学率が7割にも達する現在,先ほどの社会人も含めてですけれども,その中でそれぞれの高等教育機関はどういう役割を持つべきなのかという,そういうシステム的な観点からの構想を示さないと,将来像の提示と言われてもなかなかタイトルどおりの内容にはなっていないのかなという感があります。
 これも前々からいろいろな答申やまとめ等で,学士課程と修士課程等の大学院の役割分担についても,学士課程では教養教育,一般教育を中心として専門教育については基礎的なことにとどめ,より高度な専門教育は大学院で行うことが何度も提言されているにもかかわらず,実際は学士課程教育がますます専門教育化しているという面もあるわけで,そういう意味でも,改めて日本の高等教育システムをリストラクチャリングするぐらいの気構えで考えていかないと,20年30年たっても日本の高等教育が国際的に評価されないままなのではないかという懸念を抱いております。
 最後に1点だけ,社会人の学び直し等で本郷委員も御指摘されましたけれども,やはりある意味,日本の場合,これは高等教育だけではないのですけれども,ICTの教育の活用というのは全く遅れています。いわゆる開発途上国,発展途上中の国に比べても,ICTの教育への活用は本当に遅れていると思います。もちろん質保証の観点も重要ですけれども,今の時代,それこそSociety5.0の到来が指摘され、AIが発達し,データ分析の人材が必要ということであれば,そのインフラとしてのICTの高等教育での活用ももっと強く打ち出すべきです。最後に付け加えれば,そもそも高等学校の調査書の電子化さえまだできていないというようなことは,ICTの活用の観点からいくと,日本はかなり後進国の状況にあるのではないかと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 溝上委員,美馬委員,日比谷委員,濱名委員。どうぞ。
【溝上委員】  溝上です。私も教育の質の保証のところをお話ししたいと思います。書かれてある内容が,今回の高等教育の将来像の提示というところに関して特に大きく新しいことがあるわけではないと思いますので,むしろこれから社会が非常に縮小していったり,18歳人口が減少していく中で,改めて教育の質保証をどう位置付けるかという観点が大事なのかなと思って読んでいます。
 私としては,例えば2008年の学士課程答申が出てから今の10年間,高等教育の構造化というのを,教育とかそういう三つの方針も含めて構造化を非常に進めてきて,言ってみたら,90年以降の様々な教育の質的に関わる方法とか改善をしてきた流れの仕上げだと私は理解してきたわけです。改めて今回のまとめを見ても,もう新しいものはそんなに出てきているわけではないので,どちらかといったら,もうしっかり仕上げていく,そのための今回のまとめだったり,答申であったりと,私はそのように理解しています。
 私の方で取ってきた2007年からの全国大学生調査がありまして,3年に1回取っています。2007年から取っていますので,2008年が学士課程答申として,この10年間の大学生の学修であったり,様々な成長というのを大きくいろいろ取っているんですけれども,実際結果を見て,非常に衝撃というか,改めて確認しているのは,やはり学生の学修とかいろいろな成長がこの10年間どうしても変わっていると出てこないことです。むしろよくて現状維持で,項目によっては落ちていることもあって,上がっていかないといけないものが,いい結果として出てこないですね。
 そういう状況の中で,90年から長い目で見て改革を今位置付けていくと,本当にこれから大学教育というのは変わるのかなということが,クエスチョンが非常に大きく出始めています。私としては別にそれで見放していくとか,関わっていかないとか,そんなことも全然考えていないのですけれども,精一杯やれることはしていきたいと思うのですが,ただ,そういう状況の中で,教育の質保証で例えば28ページに書かれている,質の保証とか情報公表に取り組まない大学は例えば社会から厳しい評価を受けるとか,退場とか,ちょっと厳しいことが書かれてありますけれども,まさに今そういうステージなのではないかなと個人的には思います。
 その上で一つだけ,書き方においてこういうふうにあったらなと思うことを付け加えたいのですけれども,結局,今までやってきた大学の教育改革の,ポイントはあるのですけれども,私なりに一番変わらないといけなかったのは,講義改革,講義だったと思います。講義改革。27ページに書かれている授業外学修時間の5時間ぐらいの平均というのがいつまでたっても変わらない。20年たっても変わらない。私の全国調査で先ほど見た10年間の中でも,むしろ少し落ちていっているぐらいで,国立教育政策研究所の調査とか他の様々な調査とほとんど結果は変わらない。誰がやっても,大体状況はやはりこうだなということになっているのですけれども,この大もとは,授業外学修時間の長さではなくてやはり講義が単なる,かなりいい講義にはなってきていると思うのですけれども,学生が育っていくような講義とか授業にはなっていないということですね。
 それ,うまく書かれているなと思うのは,やはり14ページのこの全体の中間まとめをいろいろ整理しているところがあるわけですけれども,結局,初等中等教育の改革もそうですけれども,「何を教えたか」というところから「何を学び,何を身に付けることができたのか」,この転換に向かって今進んできたわけです。だから,講義は先生方非常によく頑張ってやられるようになったと私も思いますし,学生の満足度も高いのですけれども,何を学んで,何を身に付けていったのか,これが学士課程答申以降の一つのトーンでもありますし,教育全体のトーンなのですけれども,ここができていないというか,決定的に弱いです。だから,ディプロマに対しての内部質保証であったり,アセスメントということも弱くなっていく。だから,やっていっても余り結果がいい形で出てこないということが予想されます。
 ですので,27,28ページの教育の質の保証のところに,前段の14ページの「何を学び……」辺りに,どういう点の質の保証をしっかり落としていかないといけないのか,それが求められているのかというのを書き加えてくださるといいかなと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  全体を読んで,欠けていること,加えたいことについて2点あります。
 まず初めに,2040年ということからで「はじめに」が付いたのは,具体的に想像できてとてもよいと思います。今,結局これだけいろいろ改革を行っていく中で,問題は,日本が人口減少が進むということと,高齢社会が更に進むということだと思います。そのときに,高等教育については,単線型から複線型へという形で18歳入学だけではないとここにも書かれています。人口減に対しては一人一人の生産性を上げていかなければならないわけです。そのときに,やはりICT,コンピューターをどの専攻であってもきっちり使いこなしていく力が必ず必要です。
 それともう一つは,産業界の要請というか,産学一体となって取り組んでいかなければならないのではないかというときに,大学の質保証ということで大学だけが改革するわけではなくて,一斉採用をやめるという,そこについてなぜ今までもこういう中に入ってこないのか。つまり,一斉採用があるから,またそこで学生たちは,4年生のゼミとか卒業研究とかも十分できないまま,特に地方から東京に出ていっていろいろな面接を受けたりしてなかなか帰ってこられない。それがまた経済的負担になるということです。人口減と高齢社会になっても,いろいろなところで学び直しとか,リカレントとか学び足しが行われる中で,一斉採用だけが変わらないという,やはりもうそういうものはこちらからもきちんと言っていっていいのではないかと。つまり,産学一体となって全体の問題としてそういったことに触れていく必要があるのではないかと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 日比谷委員,濱名委員,上田委員,お願いします。
【日比谷委員】  ありがとうございます。資料2で今後の審議事項をお示しいただいておりますけれども,私も大変に重要と思っていることは質保証。特に認証評価制度について幾つか今日は申し上げたいと思います。
 資料2で,認証評価結果の活用・発信の在り方に関する整理が必要だというのは,私が将来構想部会で申しましたことを取り上げていただいたのだと思いますが,顔ぶれが変わりましたので,もう一度申し上げます。私どももそうしているので余り大きな声では言えないのですが,今,認証評価制度の受審結果が来ますと,PDFファイルにして,大学ウェブサイトに載せて,それで終わりですよということのんですけれども,大変率直に申しまして,誰も読まないと。よく読んでもらうと,どこの大学についてもいいところも分かるし,ここを改善しなければいけないというような問題点も分かる資料だと思いますけれども,全く人に読ませることを想定しないで公表していると言わざるを得ない。
 特に私は,これから大学に入りたいという人が,これは高校生であっても,リカレント教育で例えば大学院に行きたい人も,まずそこを見て,どんな大学か知りたい,どういう強みがあって,ここは足りないというようなことを知りたいと,そのときにもっと活用されるものであるべきだと思いますので,公表の仕方については,自分たちが努力することもありますけれども,やはり今のような形では難しいかなということです。
 それともう一つ,認証評価制度について,本日の資料ですと30ページです。先ほど前田委員からもアクレディテーションというようなお言葉がありましたけれども,やはりここがもっと,大学の適・不適を判断するのはこれを見るというふうになるためには,やはり不適である場合には,例えば受審期間をもう少し短くするとかですね。何となく横並びで7年に1度みんなやっていればよろしいというようなことからは是非とも脱却する必要があると思いますので,審議事項に入っていますけれども,これからその辺りのことはこのワーキンググループでしっかり議論していく必要があると思います。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 濱名委員,それから,金子委員,上田委員,福島委員,篠田委員の順序で行きたいと思います。
【濱名委員】  私にとりましては,質保証の問題は29ページでアセスメントポリシーが多少論証していただけたので,今回のところは余りそこについては騒ぐつもりはないですし,前進だとは思うのですが,それを軸にしていかなければどうしようもないと思っています。
 他方,さっき川嶋委員が言われたことに,同感なのですけれども,やはり将来構想答申といずれ言われたときに,将来構想はどこに書いてあるのかといったら,前段は結構元気がいいのだけれども,具体的に何をやればいいのかというとわかりにくい。後ろの方は撤退のやり方とか整理のやり方で,文部科学省は大学の店じまいの準備に一生懸命になっているというようなメッセージが伝わっていくのでは将来像は展望できないと思います。
 展望を開くには二つしかないわけで,一つは社会人市場に対してどう規制緩和をして,どう質保証と両立していきながらやっていくのかということで,私はまだ道はあると思っているわけです。地方大学がどう生き残っていくのかという話にしないと,社会インフラとして一旦作った大学がなくなっていくと,本当に大変なことになる。
 では,どうすればいいのか。地方でも成り立つ,ライフラインに関わる職業というようなものに大学がもっと積極的に関与していけばいい。地方公務員の育成もそうでしょうし,あるいは警察官とか郵政とか消防とかこういうものもないと地域社会が成り立たないですね。この前ちょうど,JRと郵政が連携して,駅の切符販売を,無人駅に郵便局が移ってやるという話があったのですが,そんなに軽く考えていていいのか,切符売るだけなのかという話になってくると,やはりそこでサーティフィケートプログラムとかそこから始まって,領域の専門性の高い教育を作っていかなければいけないという分野ではないかと思うのです。社会人にもプラスになるし,地域に定着する学生の育成にもなる。そんなことの可能性もやはりどうすれば促進できるのかというようなものを具体的に議論した方がいいと思います。
 更に言うと,グローバル化の話が出ているのにもかかわらず,19ページから21ページまでのところで見ると,リカレント教育はまだしも,留学生は交流。交流しても大学は収入が増えないのです。交換留学では双方向で行くだけだと学費は相殺されるだけです。問題は,国際通用性,質の問題もいいのですけれども,国際展開についての記述がわずか3行。これでは全くだめだと思います。10年前に大学設置基準を改正して,海外キャンパスができるようにしたけれども,ハードルが高過ぎて1校も行っていないという状況を考えたら,やはり規制緩和を質保証と並行してやっていかなければいけない。現状としてはSGUも海外で教育をしていないわけです。国費を使ってやっているのはオフィスだけです。
 考えると,海外キャンパスをもっと作れるような仕組みをどう作っていくのか。これは例えば諸外国では結構ありますよね。3プラス1とか,4プラス0という学位プログラムのもあるわけです。海外へ全く行かなくても学位が取れる。日本の大学は,日本語というのはそうでなくても難しいのに,日本に最終的に来なければ難しいけれども,海外ブランチに近いものをやっているのは,立命館大学の大連しかないわけです。そこの問題をもっと掘り起こして,海外からトランスファーする学生をもっと増やしてこないといけないのではないか。日本の産業界はアジアに進出していっていますよね。だけど,そこで必要となる人材はどこから供給するのかと思います。あるいは,地方に留学生ができるだけ定着するような仕組みを具体的な将来構想に対するヒントとか規制緩和とか例示して,国は大学がどうしていくべきかという提案要素がなければ,将来構想答申というので読んでもらえなくなる。
 質保証とかそれも大切であることは,言ってきたわけですけれども,他方,やはり将来構想答申は,これからどういう方向がオプションとしてあるのか。機能選択しなさい,緩やかにしなさいと書いているだけで,その機能を実現するために国はどのような方策が打てるのか,あるいは他省庁とリンケージを張ってやることができるのかということを示さなければいけない。やはり中央教育審議会は,文部科学省に対してのみならず,ほかの省庁に対してももう少し情報発信していかなければいけないのではないかと思います。厚生労働省もそうですし,総務省もそうだと思いますし,郵政から警察庁まで実は我々が発言していく相手はたくさんあるのではないかという,そのような思いで拝見をしています。これから審議していくのでしょうけれども,できるだけ抽象論ではなくて,具体的なオプションとか可能性とか規制をどういうやり方で変えていくのかというようなことを盛り込んだ答申にしていく必要があるのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続きまして,金子委員,お願いします。その後,上田委員,お願いします。
【金子委員】  私,皆さんの言うことを聞いて全くそのとおりだと思うのですけれども,ただ,我々はここで何を議論することを求められているのかよく分からなくなってしまってですね。この中間まとめを見ますと,1が「はじめに」で,これは全体として社会がどう動くかということが書いてあります。1,2,3,4,5と書いてあって,それぞれ,将来に向けて高等教育で何が問題になるのかということが書いてあって,この四角の囲みの中で,具体的にどのような方策が必要かということが,それぞれ課題が書いてあります。ただ,答申に向けた検討課題というのはかなり抽象的なことが書いてあるだけですし,それから,そのうちこれから検討するのは,この具体的な内容,方策の部分を検討するのでしょうか。であれば,どこがプライオリティーになるのか,どういう順序でやっていくのか。
 それから,資料2は,私は将来構想部会に出ていましたけれども,それぞれもっともですけれども,皆それぞれ思い付いたことを言っているだけで,これはそれぞれ必要なものを書いてあるというわけではなくて,将来構想部会,大学院教育の在り方で,専門性に偏らないリベラルアーツ教育は,大学院でリベラルアーツって何のことか私はよく分からないのですが,それはそういう意見があったのかなと思いますが,これが重要なヒントになっているのか,それとも,これから議論するときには何か次に新しいアジェンダが出てくるのでしょうか。
 それから,少し気が付くのは,これはワーキンググループですから,本来かなり具体的な議論をしていかなければいけないのではないかと思うのですが,今まで余り,現在のシステムとか,例えば法規上の問題とか,いろいろと既に錯綜していてよく分からなくなっているものとか結構あるんですね。先ほどおっしゃっていたようなICTの使い方なんて,結構使い方によっては全く今,制限ないような使い方ができるようになっていて,使わないのはむしろ大学が悪いというようなことですが,ただ,それは使わないのは理由があるわけです。それから,例えば社会人について,放送大学が若い人の職業教育の部分が減っているとか,リアリティーとしていろいろな問題があるわけです。それで,このうちのどれをこれから議論していくのでしょうか。
【鈴木主査】  今は御質問の形で終わられたようですが,それも含めてもう一度,時間も制限がありますけれども,今日は非常に多様な御意見を頂いていますので,それがもう少しまとめられればと思っていますので,最後の方に時間を取りたいと思います。
 上田委員,どうぞ。
【上田委員】  最初に読ませていただいて,この前お話しさせていただいたときは,何か非常によく出来ているなという感じがして,すばらしいと言ったのですけれども,今日いろいろな先生方のお話を伺っているときに,これは若干何かねじれがあるのかなということが気になってきまして,そこのことだけをコンパクトにお話しさせていただきます。
 「はじめに―2040年の姿―」というところから始まっているのは物すごくよくて,あと,SDGsとかそこら辺が取り上げられていて,我が国の社会や経済を支えるのみならず,世界が直面する課題への解決にいかに貢献できるかという観点が重要であるということが最初にと出ていて,まさに日本がそういう世界の問題を解決するような者として牽引していくような教育を行っていくのだという,非常に志高く出ている。そのことはいろいろなところで書かれているところですね,社会のことを考える。
 ところが,よくよく考えてみると,そこで社会の変化に対応できる人材とその成長の場となる高等教育と書いてあるのですけれども,もしそこで主体性と言うのだったら,社会の変化に対応できるのではなくて,社会をどのように変化させていくかということを考える人材を生み出していかなければいけないのではないかと思うのです。
 そこで,主体性という言葉ですけれども,先ほど溝上さんがおっしゃったように,教育の中での主体性といえば,いかに教えられるかということではなくて,自分がどのように学ぶかという,教育者と学習者との間の主体性ですよね。しかし,社会の中での主体性というと,社会の変化にどういうふうに対応していくかという,それは余り主体的じゃなくて,自分がどのようにこの社会を牽引し,どのような社会を実現していくかということが社会の中での主体性なんですよね。だから,最初は社会の中での主体性ということで出発したのだけど,途中から教育の中での主体性ということに話がすり替わってそのまま行っているので,自分たちが主体となって社会を動かしていくという部分はどこに消えてしまったのかなという感じですね。
 社会の変化に対応できる人材と言った途端に,社会は私たちの外にあって,そこから要求されるものに我々は対応するという,主体ではないような書きぶりになってしまっている。もちろん今までの大学は,社会の変化に対応できていない部分が多々あったので,そのことを指摘することはそれは重要だと思うんですが,最初の出発点に対しての受けとしては,もはやここで何か矮小化されているというか,そこの次元が変異したという,大きなギャップを感じるところがあります。
 私たち,東京工業大学をいかに改革するかということで,世界のトップ大学にたくさん行って話を聞きましたけれども,やはりそこで衝撃を受けたのは,例えば土木工学の人が,東京工業大学とか東京大学とかいろいろな日本の大学では,何か薬剤を打ち込むとこれだけ土壌が堅固になります,はい,ゼミの発表おしまい。大学2年生のときからそういうことをやっています。
 しかし,ケンブリッジとかでは,そこで土壌が堅固になると一体世界にどういう変化がもたらされるのか,どれぐらいの規模でこれが採用されたらどういうような構造が変革するのかという,常に社会の構造がどのように変化され,そして,これが何年後かにどういう技術になっていくのかということを一つ一つのゼミの発表でやらないと,「君,ここで発表終わっちゃうの?単にこれの強度がこうなった,材料の強度がこうなりましたというところで終わるの?」と言われるので,若いときから博士課程に至るまで,一つ一つの授業の中で,一つ一つのゼミの発表の中で,世界はいかにあるべきかということを突き付けられてやって,その集積としての差が物すごく大きいんだということを発見させられて,うちの大学もそうならなければいけないと。なかなかならないのですけれども,でも,そういうことをやっている。
 つまり,教育の中での主体性というのが,単に何を学んだかというところで止まるのではなくて,本当に社会の中での主体性をいかに盛り込むかということを考えなければいけないのではないかということにすごく気付かされたんですけれども,そこら辺の議論は今まで余りやられていないので,この中間まとめに入ることなのかどうなのかということは私は分からないところがあるんですけれども,その部分をまず指摘させていただきます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 福島委員,篠田委員,前田委員,美馬委員という順序でお願いいたします。
【福島委員】  社会の変化に対応できる人材とその成長の場となる高等教育ということに関わってなんですが,ここに書かれていることはそのとおりだなと思います。それと,個々人の強みを最大限に生かすことを可能とする教育ですが,率直に言って,いわゆる知識レベルの学力のある子たちが行っている大学では余りこういうことは問題にならないのかもしれませんが,いわゆる分厚い中間層と言われる子たちが来ている大学では,講義の内容をいくら改善してもなかなか難しい側面もあります。それでもちろん学びのモチベーションが出来てくる子たちもいるのですけれども,そうでない子たちも結構いるわけです。
 せっかく学修成果の可視化と言っているわけですけれども,その学修成果をきちんと成果があるとなるためには,そこへ行くまでの成長を促すような,私流に言わせていただければ,成長の可視化ということができないと,大学教育というのはなかなかうまくいかないのかなと。少なくとも中間的な大学,分厚い中間層が入っているような大学の場合には,そこをきちんとやらないと,学びのモチベーションが上がっていかないと思います。例えば入学前教育だとか,あるいは初年次教育だとか,最近は余りそのことについてたくさんのことを聞かないのですけれども,その成果のほどはどうなのかなと。幾つかの大学のことは伺っていますけれども,その辺りのところはもう少し議論しておく必要があるかなと。
 例えば27ページ辺りには,教育の質の保証と情報公表の丸の1番目の最後のところに,高等教育機関は,修了時の学修者の「伸び」を意識した質の向上を図っていく必要があるということで若干それに近いようなことが表現されているのですけれども,もう少し具体的な教育の中身をきちんとやるということに向けて,学生たちのいわゆる学びのモチベーションをどう引き出すことができるかということもやっていく必要があるのではないのかなと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  この中間まとめを読ませていただきまして,やらなければいけないテーマといいますか,課題が非常に大きいし,2018年問題と言われていた,これからますます厳しくなる大学状況の中で,やはりかなり果断な改革をやっていかなければいけないということになりますと,大学の側からすると,それをどう推進をしていったらいいのかということです。
 例えば22ページの多様性を受け止めるガバナンスの丸の二つ目のところに,これ,以前はなかったのですけれども,学長のリーダーシップ。この間中央教育審議会や文部科学省が提起をして改革を進めてきた中身が書かれておりまして,やはりこういうリーダーシップを強化して,実際に改革を進めていく。後の方で具体的な措置でいえば,例えば私立大学の連携だとか統合だとか,国公私の枠組みを越えた連携の仕組みだとか,これはもちろんやり方の自由度を高めるということだと思いますけれども,それを本気でやろうとすると,相当果断な経営とか運営が求められてくる。その場合に,何を強化していかなければいけないのか,どこを強めていかなければいけないのか。その点で,ここに書かれておりますような学長のリーダーシップ,あるいはいろいろな制度改正のところの取組を実質化していくという方向というのは非常に重要だと思いますけれども,ただ,その延長線上だけでできるのか。
 私,私立大学協会の私学高等教育研究所に属していて,去年,学校教育法前と後のガバナンス,マネジメントの変化の調査をしたのですが,やはりかなりはっきり変化といいますか,効果といいますか,出ているんですね。例えば意思決定時間が明確に短くなっている。だらだら意思決定が延びるということはかなり少なくなっているとか,それから,決断も,最後はトップあるいは幹部のところでできるとか,そういう比率が10%あるいは15%ぐらい高まっていますので,そういう変化は出てきているのですけれども,その延長線上だけでいいかというと,なかなかこういう決断はできない。
 しかも,後の方で学外理事の登用促進ということが出ていますけれども,これは特定の目的で提起をされていることだと思いますけれども,やはり経営側というか,私立大学でいえば,学長の権限だけではなくて,理事会と理事長の権限,あるいは役割,意思決定の組織の機能とかということがありますので,そういう意味ではかなり強い方針を持って,しかもトップを支えていくような補佐体制を強化して,意思決定機構を整備して,それを推進していく体制というか権限というのを相当強めていかないといけない。こういう体制を推進していく上で,この辺りのところをもう少し書き込むといいますか,という辺りのところが非常に大切なところではないかと一つは思っております。
 同じことは,教育の質保証についても言えると思っています。27ページから教育の質保証と情報公表ということが書かれておりますけれども,これを推進していくためには,ガバナンス,マネジメントが非常に重要です。その辺りのところが27ページの一番下の丸のところから28ページにかけて書いてあり,基本的にはこういう形で三つのポリシーに基づいて,それを実際にやっぱり遂行して,評価をして,改善につなげるというマネジメントをやっていかなければいけない。この辺りのところは次の29ページの教学マネジメントのところの最初の丸で具体的に,これも今までなかったところが書かれていて,これは非常に重要なところだと思います。
 溝上先生もおっしゃいましたけれども,やはり最後は授業の改革というか,講義の改革のところまでつながっていかないといけないと思います。だから,学修成果の評価ということについて公表する。公表というのも非常に重要な要素だと私はもちろん思いますけれども,そういう学修成果の評価とか教育評価というのが,最後,改善に結び付いていくような仕組みとか仕掛けとかリーダーシップが非常に重要で,そこがないと,いくら評価をして公表しても,それだけで改善していくという形にはならないと思いますので,その辺りの仕組み,仕掛け,体制,組織をどのようにやっていくのか。
 認証評価機関の評価基準が,前のサイクルと今年から始まったサイクルと,私,読んでみて一番変わったのは,結局PDC,チェックまでやるのだけれども,それをいかに改善につなげていくのか,つまり,学修成果の評価だとか授業評価で問題になった点が実際に改善につながっていくかというところまで各認証評価機関はチェックしようとしているんです。実績を示せ,証拠を示せというようなところまで言っているわけです。でも,ここのところがないと,やはり実際には教育の改善が実行していかないものですから,その点で学修成果の評価,更にそれを本当に改善につなげていくような仕組みというところをもう少し。文章の中ではもちろん書いてあります。例えば情報公表のところで,情報を的確に把握・測定し,教育活動の見直し等に適切に活用するとか書かれてはいるのですけれども,この辺りのところがはっきり見えるようなメッセージも重要ではないかなと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 前田委員,美馬委員,安部委員,宮城委員,その順序でお願いいたします。
【前田委員】  今のお話と関連することもなくはないのですけれども,まず一つは,今まで委員のお話の中にあった規制のことですけれども,規制緩和は大分されているとはいえ,何か守らなければいけないということが先に立ってしまって,教育をしていくときに,ゴールがあって,どういう人を育てたいからこうやっていくというときに,いろいろな制約があるとできないというか,どちらかというと制約を守ってやっていこうということで,ゴールに向かっていい教育をしようというところがどうしても何となく弱くなっているかなという気がします。
 ほかの国の設置基準というのはよく分からないのですけれども,評価基準というのはすごく緩やかで,そんなに数値のことをいろいろ言ってなくて,ゴールに向かってきちんとできているかが大きいような気がしています。それは私が認識不足なのかもしれないのですけれども,その辺りが規制に対して慣れてしまっている。規制されてやっていくということに慣れてしまっているのかなという気がしています。
 それと,教学マネジメントのことですけれども,私が心配しているのは,こうやってまた教学マネジメントに関して何か文書が出たりすると,それさえ守ればいいのだろうというような形で大学が取ると,せっかく作っても意味がない。やはり最後は個々の科目なので,それぞれの先生が納得して,それでやっていけるようなものにしないと,結局全部,降ってきたから機械的にやって,できたことにするという文化から抜け出られないので,その辺りは,せっかく内部質保証と言っているので,これはチェックチェックではないのだと。下からも上にいろいろな物が言えるという,大学のそれぞれの教員が主体的にそれこそ関われる,そういうようなシステムづくりもしないと,いくら,今度はこれを出しました,あれを出しましたとやっても,そのとおりやりますで終わってしまわないように,教学マネジメントというのを出されるときにその辺りに留意をしてほしいという気もしています。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 美馬委員,安部委員,宮城委員という順序でお願いします。
【美馬委員】  先ほどの上田委員がおっしゃった,社会を変革していく人材というところで思い出したのですけれども,今年の2月にOECDのEducation2030の中間まとめが出ましたね。その中の教育目標で,従来のキーコンピテンシーズに加えて,変革を起こす力,トランスフォーマティブコンピテンシーが必要だというのが加わっています。変革を起こす力と仮に訳を置くとして,それには三つあると。その一つが新しい価値を創造していく力。2番目が緊張を和らげジレンマを解消していく力,3番目が責任ある行動を取るということです。
 先ほど上田委員がおっしゃっていた変革していく人というのは,いわゆるチェンジエージェントとよく言われますけれども,OECDの中では,それをエージェンシー,主体性という,行為主体性ですけれども,そういう言葉で表していて,そこには,生徒や学生のスチューデントエージェンシーも必要であるとともに,ティーチャーエージェンシー,教える側の,先ほど前田委員もおっしゃっていたような,カリキュラムを自分で変えていくような,そういった教師のティーチャーエージェンシー,それらを含めて全てがラーナーエージェンシーであるということがうたわれているのです。ですから,ここでも,将来の方向性というのは,やはり主体性というのが社会を積極的に変革していく,そういう力であるというそのトーンは,こちらでも生かしていったらいいかなと思います。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。私,36ページの各高等機関の役割等についてのところで申し上げたいことがあります。やはりこの機関それぞれの,いわゆる大学院は少し違うのですが,4年制ではない高等教育機関,おのおのの機関ごとの役割はきちんと書いていただいているのですけれども,私は,いわゆる4年制ではない,短期の高等教育機関の役割の総括というか,まとめが必要ではないかと思うのです。
 なぜならば,2040年というのは,ずっと前の文章にも書いてありますように,生涯学習,社会,リカレント教育,そういうものを大学が取り入れていかなければいけないというときに,4年制大学の中の機能として附帯をしてもいいのですけれども,短期の高等教育機関が,どのような役割を果たしていくか,どのように使っていくのかについては,各高等教育機関の役割おのおのではなく,短期高等教育全体の質の保証や担保についても言及してもらいたいと思います。次時代を見据えた高等教育の将来構想が4年制大学だけに偏った言及ではなく,リカレント教育等にも非常に使いやすい短期の高等教育機関の意味合いにも言及することが必要ではないかなと常々思っております。
 それから,4の18歳人口減少を踏まえた大学の規模や地域配置に関してですけれども,今回は本当にいろいろなデータを見せていただいて,地方と都市部の格差,地域格差が非常に高等教育の将来像を検討する上でも大きいということを見せていただいたところです。そして,それは日本の中の異なる地域性に対し,国が全体的に号令を掛けるだけではなくて,地域が高等教育に対しての責任を負わなければいけないということだと思います。
 多分この次の議論になってくると思うのですけれども,地方自治体とか,あるいは地域のいろいろな関連,ステークホルダーとかと大学がどのように連携を組んでいくのかということ,それが地方の適正な高等教育機関の規模とか,そういうものにつながっていくのではないかなと思うのです。だから,そういうことで得られるようなインセンティブをどういう方向で付けていくかをこのワーキングで話していただけばというようなことを考えます。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 宮城委員,本郷委員,伹野委員の順でお願いします。
【宮城委員】  私も,高等教育の質を高めていくということにおいて,先ほどから何人かの委員の方がおっしゃられたような主体性,それは学生の側,教える側双方だと思うのですけれども,そこのポイントがとても重要になるということを改めて今回中間まとめでうまく全体像をまとめていただいた中を俯瞰する中で思いました。
 私は特に,立場的にも学ぶ側の学生の方の角度から言及させていただきたいのですけれども,象徴的にいえば,18歳の時点での学びに対して向き合う姿勢みたいなものが,その後の高等教育の学びや人生100年時代ということをにらんだときのリカレント教育への向き合い方みたいなことを決定的に影響付けるポイントになるのではないかと私は思っています。18歳の時点でどのような準備をして高等教育に向き合うかということですね。
 そのときの学びの姿勢が本当に教育の質を変えていくと思っているのですけれども,そのときの重要な要素としての実践を通した学びという経験をできるだけ早い段階から取り込んでいくということを私としては提案したいなと思っています。この点について,主体性をどう育むか,学びに対する向き合い方ということの準備をどうしていくかを,是非今後の審議においても議題として上げることができたらと思いました。
 具体的には,まとめの中にも少し触れられていますけれども,中等教育との連携の部分。中学,高校に対して,やはりその準備ということでいえば,どうしてもパートナーシップというか連携が必要になってくる領域だと思いますので,そこをどう向き合うか否やということとか,施策としては,数年前から議論に上っているギャップイヤーとか,当然インターンシップ,それから,最近イギリスですごく注目されているdegree apprenticeshipみたいな形での,産業界と連携して大学が共にカリキュラムを作って,それを新しい学びの形として18歳の時点の選択肢にできるというようなことが,結果的に私はその後の学びに大きく影響していくと思っています。
 特にさっきのdegree apprenticeshipは,例えばイギリスでいえば,IBMとか大手企業も参画しつつ,一緒にこの仕組みを作っていっているのですけれども,産業界の変化と連動していくということもありますし,さっき美馬委員がおっしゃった新卒一括採用みたいな,かつての社会システムの中で作られ,現状すごく硬直化しているような構造を私は打開していくという意味においても,そういう新しい産業界とのパートナーシップを前提とした学びのプログラムが具体的に提案されてもいいのではないかとも思っています。
 この部会でそこの具体的なところのプログラムを議論するのかというのもありますし,そういうことが行われていくためのインセンティブであったり,制度の変革みたいなことが必要な部分を議論していくということも含めて,是非残りの審議の時間で今後のテーマとして上げていくことができたらと思いました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 本郷委員,それから,伹野委員,お願いします。それで大体御意見,まだまだおありだと思いますが,一応締め切らせていただくということにできればと思います。
 どうぞ。
【本郷委員】  ありがとうございます。このワーキングでも何回か取り上げられた問題で,個別の課題に関する事柄ですけれども,いわゆる大学教員の定義と組織の問題というのは,一つの柱にして扱っていただけないかというのが率直なところです。ちょうどクロスアポイントメント制度が引用されておりますけれども,例えば18ページのところでそのことが触れられてはおりますけれども,その問題というのは,実は22ページで同じように出されているところの,教員は一つの大学に限り専任となる原則と,この辺りと密接に絡まるところで,それが分散する形になっていますので,どうも焦点がつかみにくいところがあるのではないかと思います。
 やはりもっとこのクロスアポイントメント制度を積極的に活用するとなりますと,設置基準上あるいは補助金上,専任カウントをどう捉えるのかと。また,任用する際の任用基準を,従来の大学教員,特に専任教員の場合ですと,言うまでもなく研究実績が主たる評価指標になるわけですけれども,そうじゃない,教育実績とか実務経験というものを,やはり何がしかの指標を確立するということが必要じゃないかと。
 あるいはまた,もっと大きな目で見ますと,これだけグローバル化が進展して国際的な大学間連携みたいなものが声高に叫ばれる中で,例えばセメスターの関係で半年間,1セメスターだけ他国の大学へ出向する場合,それは専任カウントできないのか,これはあくまでも客員カウントでないとできないのかという問題は,今後やはり当然取り上げられるべき問題になってくるのではないかと。そうすると,教員の定義と,それから,資格認定という問題がもう少し柱としてやはり設定していただく方が望ましいのではないかと思っている次第でございます。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 伹野委員,どうぞ。
【伹野委員】  非常に印象でございますが,今,本郷委員がおっしゃったことは,まさしく我々もそういうことを思っているところでございます。主体的な学びということと,あと,教育の質保証に関してどういうふうに関連するかという話ですが,先ほどどなたかの委員かが指摘されていましたが,何を学んだかと,身に付けるものは何を身に付けたかというような教育の本質的な物の見方を変えるという見方をここでやる必要があるだろうと。
 実は我々高等専門学校の中ではその議論をずっとしています。そして,高等専門学校の中の議論を今ちょっと紹介させてもらいますけれども,教育の質保証というのはどういうものとして我々は捉えるかということなのですけれども,一つは,確かに学生が何を学んだかということをメーンに持ってくる。そのためには,今,国立の高等専門学校が51ありますけれども,どこの高等専門学校を出ても同じ教育のレベルにあるということを産業界から認めてもらうような質保証をしようというのが一つの目標としている。
 そのためには,今,非常に大変な議論をしているのですが,ずっといろいろな議論をすると,やはり行き着くところは教員の質保証という大変な問題になってくる。ただ,今,高等教育機関で教員はどういうふうに採用されているかというと,ほとんどの場合がさっきおっしゃったように研究業績とかで,教育に対する経験とかというのは数値化できないというところもありますのでなかなかそこのところが見えない。そこの部分は,採用してから,教員がFD等で成長するのをみんなで期待しようという話ですけれども,実際はそこまでの余裕はない中で,こういう教育体制の議論でやはりいろいろな制度とか組織とかそういう議論は確実に重要です。
 それと,その中で教員をどう育て上げていくかという議論と,その教員をどう高等教育機関の中で教育していくかというような,学生の教育はもちろん重要ですけれども,教員の教育というのはどうやるかということも何かの形で議論ができると非常にいいなと感じはしているというところでございます。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。まだまだ御意見頂きたいわけですが,時間の制約もございますので,一応。
 非常に多様な御意見を頂きましたので,これは主査としてもまとめるのはほとんど不可能であると思うわけですが,社会人の教育,パブリックセクターにも及ぶべきだという意見から始まって,それから,国に対してもいろいろリクエストをするというトーンの中間まとめが必要ではないかとか,あるいは認証評価に関して,法令違反という辺りのケースに関しては文部科学省辺りの関与がもっと必要ではないかということやら,あるいは卒業生の一斉採用等についてもこれを考える必要があるのではないかと。
 それから,先生自体の講義の在り方の改善をやっていくべきではないか。それから,この中間まとめで,新しいアジェンダをどういう形で持っていこうとしているのかがよく分からないという御意見もございました。それから,学生に社会を変革する主体性について,スチューデントエージェンシーあるいはティーチャーエージェンシーという形でコンピテンシーを持たせるということが必要ではないかということもございました。
 それから,具体的な教育の学び,あるいはモチベーションということをどう高めていくかということ。それから,制約を守っていればよろしいのではないかというふうな雰囲気が今でも日本の高等教育にはあるということやら,それから,地方,地域のステークホルダーズと大学の連携をどう進めていくかということ。それから,先ほどの,主体性を持った学びをどう進めるかということもありますけれども,18歳で将来を決めるという非常に重要なときに,中高大連携をどうするか,あるいは産業界全体としてどうこれを扱っていくか。それから,先ほどの教員の質の保証ということも必要だと。クロスアポイントメントも含めて,大学教員の定義あるいは在り方,あるいは教員の教育の在り方等も必要であるということが出てまいりました。
 私は全部をカバーしてないと思うんですが,このようなことを頂いてですね。
 まだ時間的にあと10分ほど皆さんから御意見を頂ける時間がありますので,まだ御発言していただけない方,では,小林主査代理,それから,金子委員,お願いします。
【小林主査代理】  いろいろ意見が出たのですけれども,今後の答申まであと3回ぐらいしかない。それで,先ほど金子先生の方からもありましたけれども,今後どうするかということは少し考えなければいけなくて,検討事項といいますか,これから検討しなければいけないという話が今日はたくさん出ていて,それはとてもこの3回でできるような話ではありません。しかし,今後の検討事項として検討するに値するということはきちんとやはり答申にも書くべきだと思いますし,なかなかそう簡単に少し検討したらできるようなものではないかということは分かっているわけですから,むしろそういうことだということを分かってもらうということも重要なので,そういう書き方にしていただけたら,皆さんが言っているもやもや感みたいなものはもう少しなくなるのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私は皆さんのお話を伺っていて,大体三つくらいに分かれたテーマがあったと思います。一つは,やはり教育の質の問題です。これは溝上先生もおっしゃっていましたけれども,もう10年ぐらい余り現状が変わっていない。なぜ変わらないのか。これはやはり政策上の問題も私はあると思いますが,これに関する問題は非常に重要な問題としてある。それから,2番目は社会人の参加。これも現状として余り進んでいない。これはなぜなのかというところまで掘り下げて議論をしなければいけない。それから,3番目がやはりガバナンス,教員制度,それから,認証評価といった一連のかなり具体的な制度上の問題がある。これ,大体三つぐらいで意見が出ていて,私は大変面白く伺いました。
 ただ,それはそれで,こういう意見が出たことは伺って大変貴重だと思いますけれども,今,小林先生おっしゃったように,これからどこへ行くのかというので,全体としても余り間違っているという意見はないのだろうと思うんです。だから,これは余り今さらいじるということは私は必要ないと思うんですが,今さっき申し上げた三つのものは,それぞれ全部つながっているわけです。どこの部分をピックアップすれば一番効果的なのかということを事務局もお考えいただきたいですし,我が委員会も考えなければいけないのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
【小林主査代理】  もう一ついいですか。
【鈴木主査】  はい,どうぞ。
【小林主査代理】  すみません,これは将来構想部会の方でお伺いすることかもしれませんけれども,これ,諮問に対応した形で書かれてない。これはあえてそういうふうにしているのかもしれませんけれども,その辺りのことは事務局としてはどうお考えなんでしょうか。
【鈴木主査】  事務局,どうぞ。
【石橋高等教育政策室長】  ありがとうございます。中間まとめの段階において,特に諮問の順番で各答えを書いていくということを意識したというよりは,やはりどういう議論の流れを整理するかということで一旦整理はさせていただいております。小林先生がおっしゃるとおり,特に四つ目がまだ出来ていないということもありますし,1,2,3についてもまだ深掘りができていない部分もありますので,それは最後,部会での御議論も踏まえて,順番とか書き方というのは,答申のときにどうするかというのはまた整理が必要かなと思っております。
 事務局としてこれからの進め方ということで,今,小林先生と金子先生から御示唆頂いたとおり,金子先生おっしゃったとおり,大きく言うと今の三つ,それから,またもう一つ,留学生の部分をどう取り扱うかということも四つ目の柱としてはあるのかなと事務局としては今お伺いしていて思ったところでございます。実際関連することもたくさんありますし,その辺りをどういうふうに整理するか,資料の出し方は我々としても工夫させていただきたいと思っております。
 あと,中間まとめにということで御意見を頂いたところもたくさんありますが,これは実際,答申に向けてまた中間まとめを土台にブラッシュアップしていくことになると思いますので,今日頂いたものは,御議論をするということよりも,中間まとめに今,修正というか,今後答申のときに修正できる分野も幾つかあったと思っておりますので,それは事務局としてテイクノートさせていただいて,また答申案に向けての議論のときに見ていただければありがたいかなと思っております。
 今の提案に何かまたございましたら,おっしゃっていただければと思います。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。小林先生,ありそうな感じですね。どうぞ。
【小林主査代理】  将来構想部会の方では先送りにされてしまったことですけれども,今日も何人かの,特に研究者の方から,高等教育全体をどう考えるかというものがないということがかなり意見が出たと思います。これ,将来像を出すのが難しいから,簡単に出る問題ではない。ですから,それは皆さん分かっている上で言われているのですけれども,やはり個々の大学とか短期大学とか高等専門学校とか,専門学校についてはほとんど議論が出ていないと思いますけれども,そういったものについて,個々で議論するだけではなくて,全体をどうするかという議論もやはり要るので,それがないのでばらばら感というのが非常にあると思うので,それは是非考えていただきたいと思います。
【鈴木主査】  どうぞ,事務局から。
【石橋高等教育政策室長】  これも部会での議論かなと我々としても思っているのですが,部会長と御相談をしている中で,やはり川嶋先生もおっしゃっていただいた,縦というか,そこに注目した議論というのが今まで欠けていたと。それをやらないと,やはり規模,将来像というのは考えづらいのではないかというところでございましたので,今それは事務局として準備をしているところでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
【川嶋委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ,川嶋先生。
【川嶋委員】  金子委員,小林委員のまとめの後に言うのもはばかられるんですけれども,本日は,将来構想部会が出された中間まとめ案に対してそれぞれ意見を言わせていただいたということだと思うんです。では今後ワーキングとして何を議論するのかというと,名称は制度・教育改革ワーキングなので,教育の質保証ということと,それを支える制度を,教員組織の在り方も含めてどのように整備していくのかという課題が,このワーキングのメーンのイシューなのかなと思います。余り回数もないようですけれども,今後はそこに焦点を絞った形で議論をしていただければなとは思います。
【美馬委員】  すいません。
【鈴木主査】  どうぞ,美馬委員。
【美馬委員】  質問です。今回我々の議論,この間,6月15日に閣議決定で三つぐらい出ましたよね。未来投資会議と,ここにもある人づくりと。特に未来投資にはかなり人材育成と教育についても踏み込んで書かれていて,今後どういう人が必要で,どういう社会にしていくかというのが書かれていたので,その辺りのすり合わせというか,そこは参考にしなくてもいいのですか。ここはここで別にやっていけば。
【瀧本大臣官房審議官】  よろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【瀧本大臣官房審議官】  今日はお時間の関係で資料配付だけにとどめさせていただきましたけれども,閣議決定ですので,ある程度報道等にも,骨太であれ,未来投資戦略であれ,全部出ておりますので。ただ,当然ながら,政府として,会議体,委員のメンバーは違いますけれども,今後に向けての必要なものということでの提言としてまとめられているものですから,当然こちらの議論とも関連してくることにはなるものでありまして,そういう意味で参考にしていただきたいということで配付はさせていただいております。
 ただ,先ほどワーキングでということについては,冒頭に資料説明をさせていただいた資料2の中に,一応これまでの議論の中で事務局としてある程度整理できるものとして,部会で主に議論いただくべきものと,ワーキングで議論いただくべきものとを一応整理させていただいたつもりでございます。
 この中で,特にワーキングの方は,諮問事項の中でも制度に直接関わるようなものについての議論を深めていただきたいということで,資料2の中にあるとおり,設置基準の見直しを含む設置認可,あるいは認証評価制度,今日もお話ございましたけれども,かなり重たい事柄も含まれております。とりわけ,教員の専任云々の関係でいうと,学位プログラムの議論をしていく中でこれも外せない議論になってまいりますし,そういったことがある程度,リカレントも含めて,ワーキングの方に主として制度的期待をさせていただきたい部分についての事項を書かせていただきました。
 とはいえ,今回の中央教育審議会の諮問ないしは将来像の答申に向けた議論は,いずれにしても,将来をにらんで高等教育に期待される事柄について今日全ての委員から御発言頂いた事柄は全て重要な御指摘だと思いますので,そうしたもののうち,本当に制度改正に向けてかなり詰めて議論していただきたい事項と,小林代理からもございましたが,ある程度,まずはこういう議論をするけれども,その先にまだこういう課題がございますよということできちんと指摘をしていただくべき事項というのは,当然議論の時間の関係を考えますと出てくるのかなと思います。その辺りは,できる限り委員の先生方の,全体としてお一人お一人の委員の立場でそれぞれ重要な観点ではあっても,一定程度のコンセンサスを得ながら少し整理をさせていただけたらありがたいかなと思っております。
 また,冒頭の委員の御発言の中で御指摘ありました,国に対するリクエストというか,要請,要求が足りないというのは,別に事務局が意図的に潰しているつもりはないので,これまでの中央教育審議会の答申のように,国,それは文部科学省だけに限らないと思いますが,あるいは企業等の社会に対する要請もあるかとは思いますけれども,中央教育審議会としてきちんと打ち出していくべきというものについては,御議論いただいた上で盛り込んでいくということには何ら事務局として抑えようとしているものではありませんので,そうした意見も出しておいていただけたらと思います。
 ただ,基本はこの場は,部会に対していうと,特に制度に近いような事柄についての議論を中心にということでありますけれども,重要な点については,こちらで御指摘いただいたものを,また将来構想部会,親部会の方にもきちんとフィードバックできたらいいかなと思っております。いずれにしても,よりよい高等教育を目指して,前向きな,ペシミスティックだけじゃない,大変恐縮ですが,ペシミスティックなところの制度的な議論もきっちりとしていただく必要はあるのですが,それだけにとらわれない,前向きな将来に向けての議論もいただけたらありがたいかと思います。
 すいません,ありがとうございました。
【鈴木主査】  一つ,川嶋委員からだったと思うのですが,ICTについての御意見を頂いたんですが,これは金子委員の三つにまとめていただいた中にはまだ含まれていなかったかと思うんですが,私としては,このICTとについても四つ目ぐらいに入れて議論していただければと。これは大学全体のみならず,教育全体の問題としてもICTとどう対応して,対処していくかというのは避けられないことですので,そのことを考えていただければと思っている次第です。
 それでは,ほとんど時間が参りましたので,この部分につきましてはこれにて議論を終了させていただきます。本日の御意見も踏まえまして,本ワーキンググループで今後の議論を進めてまいりたいと思いますので,今後ともよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。
 最後に,報告事項が3件ございます。人生100年時代構想会議において「人づくり革命基本構想」が,また,高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議におきまして「高等教育の負担軽減の具体的方策」がそれぞれ取りまとめられたとのことですので,事務局から説明をしていただきます。
 4月27日の制度・教育改革ワーキンググループにおいても御議論いただきました工学系教育改革に関する大学設置基準等の改正につきましては,本日大学設置基準及び大学院設置基準の一部を改正する省令等が公布されたとのことですので,事務局からこれも御説明をお願いします。
 それでは,事務局から,資料3-1から3-4,資料4-1から4-3,資料5について,続けて御説明をお願いいたします。
【森友主任大学改革官】  では,失礼いたします。まず資料4-1をご覧ください。A4の横置きの青い資料でございます。昨年末に取りまとめられました政府の新しい経済政策パッケージの中で出されました高等教育の無償化の具体的な中身について,文部科学省において高等教育段階の負担軽減方策に関する専門家会議という会議を作りまして,その場で御議論いただきました報告がまとまっております。その内容の概要が資料4-1でございます。
 負担軽減の大きな内容としては,一つには授業料の減免,それからもう一つには給付型奨学金の支給ということで,二つございます。対象範囲とございまして,パッケージでも,住民税非課税世帯,モデル世帯で年収270万円未満でございますけれども,そこの授業料減免ということです。具体的には,国公立大学について申し上げますと,授業料・入学金の標準額ということで,国立大学について規定されております省令上の標準額を上限とするということでございます。私立大学につきましては,授業料について,国立大学の授業料の標準額に加えて,私立大学の授業料の平均額との差額の2分の1を国立大学の授業料の標準額に加えるということで,およそ,今のデータですと70万円程度が私学については上限になるのかなということでございます。
 それから,他の学校種,短期大学,高等専門学校,専門学校については,大学に準じて取り扱うということです。国立についてはそれで標準額となりますし,私立については,それぞれの学校種の国立の額を標準とするわけではなくて,全て国立大学の授業料の標準額を基礎とするという考え方で整理をしております。
 また,給付型奨学金につきましては,理念と致しまして,学生が学業に専念するために必要な生活費ということもございます。他方で,社会通念上妥当なものであることも大事だという二本柱がございます。今回の報告の中では,下に書いてございますが,対象となる経費について,修学費や課外活動費等こういった経費が対象となるということにしておりますが,額については今後更に所要額を精査ということで,これからの検討になっております。特に対象経費と致しまして,中頃にございますけれども,授業料以外の学校納付金につきましては,私立の在籍者に限り手当てをするということと整理をされております。
 それから,授業料減免,また給付型奨学金両者ともでございますが,支援の崖・谷間が生じないように段差を設けていくということになっております。具体的には,下の括弧に書いてございますが,家族4人のモデル世帯で年収300万円未満,つまり,270万円から300万円未満の世帯は,270万円未満の3分の2,それから,年収300万円から380万円未満は3分の1という形で階段を作っているところでございます。
 それから,裏面,次のページですけれども,今回の無償化に関しましては,支援対象者と,支援措置の対象となる大学等の要件がそれぞれございます。支援対象者の要件と致しましては,大学等の高等教育機関に入る際に,高校在学時については,一定の成績を取っている場合はもとより,成績が取れていない場合であっても,レポートの提出,面談等によりまして,学習意欲,学習状況を確認した上で進学対象になるということでございます。また,大学等に進学後については,学習状況について一定の要件を課しまして,上の星印のところですけれども,大学の退学等の処分を受けた場合には1回で打ち切りと。また,その下にございますが,例えばGPA等の客観的指標に基づいて,その学生が所属するところが下位4分の1である場合,それが2回連続で下位4分の1ですと打ち切りになるというような指標も設けているところです。
 それから,支援措置の対象となる大学等の要件と致しましては,パッケージにおいても,実務経験のある教員による科目が一定割合配置されるということでございましたが,検討の中で,卒業に必要となる標準単位数の1割以上ということになっております。4年制大学の場合には124の1割ということで13単位ということでございます。また,実務経験のある教員が必ずしも教えていなくても,内容が実践的な教育である,インターンシップとか,あるいは実習等を内容とするようなものであれば,実務経験のある教員の科目と同等とみなすということ,あるいは学問分野の特性等によって満たすことができない場合には,やむを得ない理由等について説明をすることが必要だということも付言しております。
 また,外部理事につきましても要件がございましたが,パッケージの中では,例示と致しまして2割以上というような指標が例えばで示されておりましたが,こちらは大学改革における中教審における議論も踏まえまして,同様の複数任命,複数以上ということとしております。
 それから,次のページでございます。いわゆる機関要件の残りの二つですが,成績の関係,それから,情報公開の関係につきましても,それぞれ大学につきましては,基本的には現行でも法令にのっとってやることが決められているような内容を改めて規定をしているところでございます。
 ※のところにございますが,経営に問題がある大学等について,高等教育の今回の新しい支援措置によりまして実質的に救済がなされることがないように,例えば経営に問題があるとして早期の経営判断を促す経営指導の対象となっており,かつ継続的に定員の8割を割っている大学については対象にしないことなどを検討するとされておりまして,これらの取り扱いについても今後検討していくとしております。
 資料3-1ですが,人づくり革命ということで,人生100年時代構想会議の資料,概要をお付けしております。1ページの下の方にございます高等教育の無償化につきましては,今ほど御説明いたしました専門家会議の内容と同一の内容が盛り込まれているところでございます。
 さらに,4ページ以降には,大学改革の章立てがございます。そこの中でも,各大学の役割・機能の明確化とか,大学教育の質の向上,学生が身に付けた能力・付加価値の見える化,経営力の強化,大学の連携・統合等ということで,基本的に現在中央教育審議会で先生方に御議論いただいている内容が盛り込まれている作りとなっております。
 以上でございます。
【美馬委員】  すいません。
【鈴木主査】  どうぞ,美馬委員。
【美馬委員】  先ほどの負担軽減の案の要件のところですが,今実際に本学で起きている問題として,本学以外でもあると思うのですが,高等専門学校から3年生に編入してくると,単位の読み替えがきっちりいかなくて必修科目が残ったりして,年限で終わらなくなる場合が出てきています。そうなると,奨学金が止まってしまうのです。それは自分がサボっていて留年するとかではなくて,読み替えができない場合が結構ほかでも起きていると聞いているのですが,その場合,そこに対する措置は何かあるのでしょうか。
【森友主任大学改革官】  細かいのですけれども,専門家会議の報告,資料4-2がございますが,4-2をお開きいただければ,6ページのところでそういったことも補足するようにしております。そこの白丸の上から三つ目ですけれども,他大学等への転学・編入学の場合,現行の給付型奨学金では通算4年間ということに普通なりますけれども,転編入学により4年間で学位を取得できない事由がある場合に限り,最大通算6年間まで支給できると,これも入れております。
【美馬委員】  変わったのですか。ありがとうございます。
【鈴木主査】  よろしゅうございますか。
【美馬委員】  はい。
【鈴木主査】  ありがとうございました。それでは,本件については,報告のみとさせていただきます。
 それでは,工学教育に関する設置基準等について,事務局から説明をお願いします。
【原田専門教育課課長補佐】  資料5に従いまして,大学設置基準及び大学院設置基準の一部を改正する省令等が本日公布・施行されました。改めて内容を説明いたします。
 1ページ目の資料「大学設置基準・大学院設置基準の一部改正【概要】」をご覧ください。まず改正の趣旨です。現行の設置基準上,大学・大学院において,教育組織と研究組織を分離し,教育ニーズへの適切な対応を重視した組織編成を可能とするため,学部段階にあっては「学科」に代えて「課程」を設けること,大学院段階にあっては「研究科」に代えて「研究科以外の基本組織」を設けることが可能となっております。
 ただし,教員や収容定員を学科・専攻等の単位で管理していたため,学科・専攻等での縦割りが原因となっているとの指摘あったところ,工学系の教育研究を行う大学が,社会の要請・産業分野の変化に迅速に対応できるよう,これらの現行制度を活用して教育を展開しやすくするために,今回,大学設置基準等の改正を行いました。
 具体的には主に二つございます。一つ目が,「課程」等を設けた場合の教員基準を定めること,二つ目が,工学分野における学部と大学院の連続性に配慮した教育課程を編成することとなっております。
 まず一つ目の「課程」等を設けた場合の教員基準を定めることにつきましては,1ポツの学科・専攻の縦割りの見直しの部分ですけれども,工学部では,専攻分野の縦割りに陥りやすいという指摘がある中で,複数の専攻分野を横断した教育課程の編成や実施に向け,柔軟な教育体制の実現を可能とする必要があるというのが問題意識でした。具体的には,マル1,「課程」等を設けた場合の教員基準,これは現在定められておりませんけれども,これを定めております。その際には,学部等の単位で人数を定めることにより,学部等全体で教員編成を行い,複数の専攻分野を組み合わせた教育課程の展開を促進したいと考えております。それから,マル2,学生の収容定員でございます。「課程」等を単位としつつ,学部等全体で管理することできることを明確化し,このことについては通知等でもお示ししたいと考えております。
 次に2ページです。工学分野において,学部と大学院の連続性に配慮した教育を編成することを進めていくための規定を定めました。工学以外の専攻分野の内容や,企業等と連携した実践的な内容を盛り込んだ教育課程の実施・促進に向けまして,他分野の教員あるいは実務家教員の配置を容易にしたいというのが問題意識でございました。
 具体的には,マル1ですけれども,連続性に配慮した教育課程を編成する場合には,工学以外の専攻分野の授業科目を開設するよう努めるものとする。この授業科目を開設する場合には,工学部等に置くものとされている必要な専任教員数に加えて,当該授業科目を担当する教員を置くものとすることを規定しました。この場合,加えて置くほかの分野の授業科目を担当する教員につきましては,学内の工学以外の学部や研究科の専任教員をもって充てることができることとしました。これは例えば大学院におきましては,研究科を超えての研究指導ができるようになるということですので,そのための質保証のための措置としまして,大学として教員のエフォート管理の規定及び計画を定めるものということを求めていきたいと考えております。
 それから,マル2です。連続性に配慮した教育課程を編成する場合に,企業等との連携による授業科目を開設するよう努めるものとする。この授業科目を開設する場合には,工学部等に置くものとされている必要な専任教員数に加えて,企業から実務家教員を教員として置くものとすることを規定しました。この場合,加えて置く実務家教員につきましては,現在,専門職大学院等に置かれているみなし専任教員の規定を活用いたしまして,例えば1年につき学部では6単位,大学院では4単位以上の授業科目を担当し,かつ教育課程の編成その他の組織の運営について責任を担う者で足りることとし,一線で活躍しておられる実務家の登用を促進したいと考えております。
 改正の内容としては以上でございます。
 3ページ以降には,今申し上げた内容を改正した,大学設置基準等の新旧対照表を付けております。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本件につきましては,報告のみとさせていただきます。
 本日の議題は以上となります。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料6をご覧ください。7月17日以降予定を入れさせていただいております。また,場所等は追って御連絡させていただきます。
 資料については,送付を御希望の方は,机上に残していただければと思います。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 それでは,本日の議事はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。
――了――

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