制度・教育改革ワーキンググループ(第12回) 議事録

1.日時

平成30年3月26日(月曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学修の質保証について
  2. 工学系教育改革について

4.出席者

委員

(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,濱名篤,本郷真紹,前野一夫,前田早苗,溝上慎一,宮城治男,美馬のゆりの各委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),信濃大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,松永専門教育課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長,石橋高等教育政策室長,平野大学改革推進室長,伊藤生涯学習局参事官 他

5.議事録

【鈴木主査】  所定の時刻になりましたので,第12回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。皆さん3月の末で御多用の中,御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 前回は単位累積加算制度及びオンライン教育等について,2名の有識者の先生からのヒアリングを行いまして御議論いただくとともに,工学系教育改革に向けた制度改革の方向性について意見交換を行いました。
 今回は論点整理でお示しした七つのテーマのうち,学修の質保証と,学修成果の可視化と情報公開につきまして,事務局から説明いただいた後,意見交換を行いたいと思います。その後,後半では,前回に引き続きまして工学系教育改革に向けた制度改正の方向性として,委員からの意見を踏まえた資料が準備されておりますので,こちらについて事務局から説明をしていただいた後,御意見を頂きたいと思っております。
 最後に,先週23日に,人生100年時代構想会議の第6回が開かれたということですので,本件につきましても御報告いただきたいと思います。
 それでは,事務局から配布資料を確認方お願いします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。議事次第に沿いまして,配布資料は資料1から資料4まででございます。不備がありましたら,事務局までお願いいたします。
 また,前回のワーキンググループで御発表いただきました,大学改革支援・学位授与機構研究開発部教授の吉川先生から資料の御提供がありましたが,都合により前回のときにお配りできなかったため,本日机上にお配りしております。パンフレット形式になっているものでございます。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,議事を進めます。本日前半は学修の質保証に向けて,学修成果の可視化と情報公開,教育内容・方法の改善等に係る教学マネジメントの確立の必要性等につきまして,事務局から説明いただいた後,御意見を賜りたいと思います。
 それでは早速ですが,事務局から資料1について説明をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  大学改革推進室長の平野でございます。資料1に沿って説明をさせていただきますが,最初の主査の御発言にもありましたように,今日は論点整理で年末にお示しした七つのテーマのうちの,学修の質保証と学修成果の可視化と情報公開,この二つの項目について統合した形で御説明をして,出口の方を見据えた議論をさせていただければと思ってございます。御了承おきください。
 私から資料1に沿って20点程度,時間超過することはあるかもしれませんけれども,御説明をさせていただきます。資料1を御覧ください。先ほど申し上げましたとおり,これまで学修の質保証,学修成果の可視化,情報公開につきましては,様々ツールの部分について議論を行っていただきました。ツールの議論というのはやってまいったわけでございますけれども,そもそもこういった議論をどうして行っているのかという点について再度確認をした上で,又御説明をさせていただきたいわけでございますが,1ポツの教学マネジメント確立の必要性でございます。
 本日,学修の質保証の向上に関する取組について,そもそも論でございますが,学生が大学での学修を通じて様々な知識,能力を習得し,主体的に学び,考える力を身に付けて社会で活躍するということにつきましては,社会が求める人材が大学教育により養成され,社会の発展に寄与するという社会の視点のみならず,学生が社会に進出した後も,自己実現や幸福を追求できるという学生側の視点というものも重要でございます。
 二つ目の丸でございますが,学生が社会に通用する知識,能力を主体的に学び,考える力を身に付けるということに関しましては,これまでの類似の答申で御指摘がされていますとおり,学士課程教育において単位制度の趣旨を踏まえた教育の実質化,また,学生の主体的な学修を促すような質的転換,こういったものが重要でございますが,このような質的転換というものをしっかりと図っていくためには,個別の教育方針,教育改革に係る手法というものを効果的に活用するということではありますが,根本になるのは各大学が学長のリーダーシップの下で,三つの方針に基づく体系的で組織的な大学教育を,学位を与える課題,プログラム単位共通の考え方や尺度,これはアセスメント・ポリシーでございますけれども,こちらを踏まえた適切なPDCAなど,点検・評価を通じた不断の改善に取り組みつつ実施する,教学マネジメントの確立ということが必要になってくるわけでございます。
 その観点で,教学マネジメントの確立に当たっては,学生の学修成果に係る情報というものを的確に把握・測定して,教育活動の見直しに適切に活用するということ。また,教学マネジメントから少し踏み出る話かもしれませんが,各大学が地域社会や企業等の外部からの声や期待というものを意識して,積極的に説明責任を果たしていくという観点からも,大学全体の教育成果の可視化ということについては取組を促進する必要があるのではないかということでございます。
 1枚めくっていただきまして,2ポツにこれまでの審議の整理という部分がございます。これまでの審議の結果でございますので,今日ここで詳細にレビューはいたしませんけれども,シラバス・GPAについて,また学修成果の可視化については論点整理ということでまとめているわけでございます。こういったことについて,具体的に申し上げますと,シラバス・GPAなどについて記載の充実に向けた一定の指針を示すとか,GPAの算定方法についても,情報活用の好事例というものを示すとか,また,学生の学修成果の可視化についても,しっかりどういったものを把握すべきなのか,全体的な概要をどうやってまとめて公表すべきなのか,こういったツール,各論については議論をしてきたわけでございます。
 1ページに戻りまして,最後の丸でございます。これまで,こういった個々の項目につきましては,大学設置基準の大綱化以降,各大学においてカリキュラム改革,また教育組織の見直し等の取組というのはかなり進展しているということでございますし,過去の大学分科会,また中教審の答申におきましても様々な観点から多様な大学の教育改革に係る内容や手法というものについては,累次言及をしておりまして,国としてもこれを政策的に後押ししているということでございます。
 一方で,これは御指摘があるところは,大学教育改革については,積極的に努力を行っている大学と,そうでない大学とが二極化をしているのではないかということでございます。これが一律に内容が取り組まれているかというと,さにあらず。
 また過去の答申等で,いろいろな個別の事項についても示された手法というものもあるわけでございますが,実はこれは個々の答申ごとのタイミング,また関心事項というものに応じて個別に切り出して説明がされているわけでございまして,教学マネジメントという観点から,必ずしも一元的な形で示されたものとはなっていない。
 また,過去の答申を丁寧に読み込んでいただくと,かなりいろいろなことが書いてあるわけでございますけれども,その当時に比べましても相当大学教育改革は進んでおりまして,個別のものについても更に手法が開発され進化しているといった現状があるわけでございます。
 2ページをめくっていただきまして,このような観点から,今まで論点整理で,先ほど追加して配られたところでございますけれども,論点整理で触れられているようなことも含めまして,大学が本来持っている組織としての力を十分発揮できるように,大学の自主性の中で不断の改革というものが取り組めるような素材を,教学マネジメントという観点から一元的に整理をして,確立していくことが必要なのではないかという問題提起でございます。
 2ページ,3ページは,これまでの論点整理の抜粋でございますので,割愛させていただきまして,4ページを御覧ください。本日の論点でございます。これまでの各答申や論点整理,今回の論点整理等踏まえまして,今後各大学での教学面での改善・改革というものの取組を促していくという観点から,必要な制度改正に加えまして,各大学における取組に際してどのような点に留意をして,どのような点から充実を図っていくべきかということにつきましては,今回の論点整理の内容のみならず,過去のこれまでの答申というものも含めて,教学マネジメントという観点から網羅的にまとめた指針というものを,大学分科会で,今後しっかりと新たな場所も含めて検討をして,設けて作っていくということ。そしてそれを大学に示していくということが必要なのではないかという論点でございます。
 2ページ,3ページに論点の中にありますけれども,実はこの論点整理の中においても,国としていろいろなことを示すことになってございます。シラバスの記載に向けた充実の一定の指針とか,GPAの指針とか,情報公開の指針とか,このようなものを示すことになっているのですが,こういったものがばらばらと出ていって,何のためにこれを総論としてやっているのかということと切り離された形で理解されるということは,これは,私どもとしても本意ではございませんので,しっかりと過去の答申のレビューというところも含めて丁寧に行っていく必要があるのではないかということでございます。
 4ページに戻っていただきまして,教学マネジメントに係る指針に記載する事項としては,例えば以下のようなものが考えられるのではないかということでございます。これは今後しっかりと項目の出し入れということも含めて議論していく必要があると思ってございますけれども,おおむねの方向性としては,これまでの中央教育審議会の大学分科会,ないし過去は大学審議会で触れたような個々のツールというところのみならず,総論の部分というものについてもしっかりとこれをもう1回位置付け直すということが必要ではないかと思ってございます。これを一体的に示していくということでございます。
 総論の部分としましては,プログラムとしての学士課程教育,三つの方針という部分,ここについてもしっかりと御理解をいただけるような記述が必要ではないか。その観点から,全学的な教学マネジメントの確立ということで申し上げますと,明確な教育目標の設定,これに基づく体系的な教育課程,すなわちカリキュラムの構造化を含んだ教育課程の構築ということ。アセスメント・ポリシーというものをしっかり踏まえた内部質保証体制や教育改善に関するPDCAサイクルを確立するということ。そのPDCAサイクルに基づいて,学内の資源配分というものを適切に行っていくということ。このようなマネジメント・サイクル,マネジメントの在り方というものをしっかりと質保証,質的転換に向けて示していくことが総論に盛り込まれる内容かと思ってございます。
 各論については,細かに説明はいたしませんが,教育内容の改善という意味では,カリキュラム編成をどのように高度化していくのか,ナンバリング,履修系統図,このようなものも含め,また,カリキュラム編成という意味でいいますと,社会のニーズに応えていくという観点から,どのように外部の人材を上手に巻き込んでいくのかという論点なども考えられます。
 また,教育内容としても,アクティブラーニングやICTを活用した教育をどのように進めていくのか。また,教育方法の改善という意味でいいますと,学事歴の在り方,主専攻・副専攻,CAP制の適切な運用,履修指導体制の確立。シラバスにおいても,どのような形で記載事項を充実していくのか。成績評価基準というものを適切にどのように運用するのか,その際にはルーブリックないしGPAこういった部分についても当然,一定程度見ていく必要があるのではないかということでございます。
 また,学生個人の学修成果というものを,どのように把握するのか。学修時間というものの確保と把握の方法,学生による授業評価,こういった観点につきまして,どのようなものを望ましい水準,モデルとして考えていくのかということでございます。
 教職員の資質の向上という部分につきましては,スタッフ・ディベロップメントの高度化。また,ファカルティ・ディベロップメントの高度化というようなことも考えられますし,これを個々の大学ということだけではなく,大学コンソーシアムや教育関係共同利用拠点というものも活用して,各大学どのように位置付けていただくのかということ。
 5ページに参りまして,教学IR体制ということでございまして,IRに期待される役割,そしてIRというものにつきましても,単独の大学だけということではなくて,大学コンソーシアムや教育関係共同利用拠点なども活用して,IRに必要な人材育成なども含めまして,どのように各大学で位置付けることが望まれるのかということ。
 最後は,教学マネジメントという観点を少し超えるところもございますけれども,情報公開,この後で,5ページ以下の部分で御説明いたしますけれども,情報公開についても,どのような情報公開の在り方というものが期待されるのかということについては,省令で義務付けられた項目,また,省令では直接義務付けられていないけれども,各大学が情報公開を行うことが期待されるという項目と,その内容についての解説,こういったものも必要ではないかということでございます。
 その点々の下の丸でございます。これらの指針というもので示す内容は,各大学で一律に取り組まれるべきもの,これは当然そういったものもあるわけでございますけれども,一方で,なかなか各大学で一律に取り組むことが難しいものも含まれることが想定されるわけであります。単に,あるべき姿,理想像というものを考えていくことも重要でありますが,一方で,各大学の取組の実態というものも考慮していくことが必要ではないかということでございます。
 この次の丸の部分は,この指針の性格という部分でございます。教学マネジメントに関する指針は,教学面での改善・改革に資する取組というものを促していくための一つのよりどころとして機能する,これをもって大学の関係者が参照・活用していくということの位置付けというものが考えられるわけでありますが,そもそも教学マネジメントというものは各大学が本来自らの責任で取り組むものでありまして,各大学の実情に合致した形で進めるものでございます。そのため,この指針というものは,特定の取組というものを大学に強制するという性格を有するものでないということ。
 また,各大学もこの取組の指針とか,また,ここで紹介されるような他大学のグッドプラクティスというものを,総論に立ち返ることなく,咀嚼(そしゃく)することなく学内でそのまま実施しようということについては,大学としてふさわしい主体性を発揮したものとはいえないのではないか。各大学が創意工夫を行って,学士課程の質的転換に向けた取組を確立するということが根本であるということについては,確認をした上で,併せて周知をするという出発点の確認は重要であると思ってございます。
 その観点から,教学マネジメントの指針の策定に当たっては,単にこのようなことという,モデル的なものだけではなくて,各大学の好事例といったものの周知を図って,しっかり使っていけるものにする。その一方で,使い方についてはしっかりと考えていただくことが必要かと思ってございます。
 最後の丸でございますが,教学マネジメントに関する指針につきましては,これは評価に携わる者とか,また広く大学に携わる者というものについて,その大学の取組というものを考える上でのツールの一つとして使っていただくということも期待されますし,また,将来的にこのマネジメントの指針の取組というものが定着してきたという暁には,教学マネジメントに係る指針で示された項目が認証評価とか設置基準の関係者が参照し,留意するものという形で作られていくことが望ましいのではないかと思ってございます。
 ここまでが教学マネジメントという観点で,これまでの学修成果の可視化,またシラバス・GPAというものをしっかり統合的に議論した上で,総論と併せて示していく一つの形という形で示させていただいたものでございます。
 5ページの下からが,これまで累次御議論いただいているところでございます。学修成果の可視化と情報公開という項目でございます。これは3ページに,これまでの議論の到達点というものは示されているわけでありますし,また,ここの学修成果の可視化ということに限らず,情報公開というものをどう考えるのかということにつきましては,一度御議論いただいているわけでございます。この情報公開,学修成果の可視化というものにつきましても,教学マネジメントが確立されて,三つの方針というものがアセスメント・ポリシーに照らして達成されているかどうかということを検証するためには,しっかり不可欠なものとして取組を行っていく必要がある。つまり学修成果を把握して,それをしっかり学外,学内,一定の点検・検証が可能なものにすることが必要なわけであります。
 6ページ目の丸でございます。今回言い続けているところは,どのようなものを一律で大学で,ある意味,義務付けの形で行っていって,どのようなものは,そのようなものとは違った形で行っていくのかという考え方を整理させていただいてございます。
 6ページの上の丸でございますが,学修成果を可視化して,大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るためには,まず現行の法令に基づいて大学として当然把握することが求められているもの,全ての大学において十分把握が可能であって,把握・活用することに意義が認められる,このような観点を設けまして,こういったものについては国として各大学に対し把握を義務付けることが必要ではないかということでございます。
 これは大学として当然大学である以上は予定されている活動については義務付けということでありまして,まずここは把握すべき情報という意味でございますが,単位の取得状況,学位の取得状況,成績,進路の決定状況,進学率,就職率,その他卒業後の状況,学修時間,学生の成長実感,満足度。これは具体的な部分は又推進などに譲る部分があると思いますが,学生の学修に関する意欲,こういったものについては,まずしっかりと把握をしていただくことを義務付けているということが必要ではないか。
 その上で,次の丸でございますが,また,これは教学マネジメントというところを少し超えて,説明責任を確保していくという観点から,今申し上げたような個々の把握すべき情報というものの,各大学の全体的な状況というものはまとめて,それは情報公開をしていくことが必要ではないかということでございます。
 ですので,上の丸にあるポツも,各項目については,学生個人について把握をするとともに,大学全体の状況というものはしっかりと外に向かって公表していくということでございます。
 こういった学修成果の可視化という観点のみならず,二つ目の丸のポツでございますが,入学者選抜の状況,修業年限期間内の修了する学生の割合,留年率,中途退学率,教員一人当たりの学生数,学事歴の柔軟化の状況,履修単位,CAP制の状況,シラバスの内容,シラバスは学生に対して示すことになっていますが,今公表とは位置付けられていないという状況でございます。早期卒業や飛び入学の状況,FD,SDの実施状況,このようなことも説明責任の観点から,新たに情報公開をこれは義務付けるということが考えられるのではないかということでございます。いずれも大学設置基準ないしその他の法令において各大学が行うこととされているものに類する情報ということでございます。
 一方で,6ページの下でございます。各大学の自主的な活動の中で把握や活用がされているもの,実態が各大学において様々であるものの把握・活用することに意義があると認められるもの,こういったものについては,各大学必ずしも行われるということが想定されていないものもございますので,一律に把握を義務付けるということは難しいわけでありますけれども,先ほど申し上げた教学マネジメントの指針の中で各大学の取組の参考になるような把握や活用というものの在り方について,一定の指針というものを示していくということが考えられるのではないかということでございます。
 6ページから7ページに掛けてでございますが,アセスメントテストの結果,TOEIC,TOEFL等の学外試験のスコア,資格取得や受賞,表彰歴の状況,卒業論文や卒業研究の水準,留学の率,卒業生に対する評価,このようなものについてはしっかりと把握をするということが考えられるのではないかということでございます。
 また,次の丸,先ほどと同じ構造でございますが,把握をするというだけではなくて,これらの大学の全体的な状況というものをしっかりと情報公開していく,説明責任を果たしていくという考え方も,併せて示していく必要があるのではないかということでありますし,また,学修成果の可視化というところを少し離れた部分でございますけれども,ナンバリングの実施状況や履修系統図の活用状況,GPAの活用状況やIRの整備状況,教員の業績評価の状況,このようなものについても公表が期待されるものとして,しっかりと在り方を大学分科会として示していく必要があるのではないかということでございます。
 7ページの下から三つ目の丸でございます。法令での義務付けが考えられる情報の定義とか,数値の算出方法というものにつきましては,先ほど申し上げたような指針の中でもしっかりと検討をして,示していく必要があるのではないかということでございます。
 例えば学生数と退学,留年,卒業率といったようなところは,何を学生数として取るのか,何を分子として取るのか,こういったところについてはしっかりと定義を明らかにしていくということ。大学の実態に即して考える必要があるということでございます。
 また,学生の成長実感,満足度や,学生の学修に対する意欲というものにつきましては,様々在り方が考えられるわけであります。具体的に申し上げますと,学生の成長実感とか満足度というものについては,学生というものが企業でいうところの顧客といったものとは若干違った性格を有することもしっかり踏まえた上で,学生というものが単にサービスを受ける,利益を享受するという立場だけではなくて,大学の活動全体の参画者であるといったところ,こういったものも踏まえまして,単に満足度ということではなくて,三つの方針というものもしっかり意識しながら,こういったものを測定・把握していくといったことも必要ではないかということでございます。
 最後から二つ目の丸でございます。このようなものにつきましては,当然可視化,情報を公表・検証する際には,ディプロマ・ポリシーと学修成果がどのように関連しているかといったところについても考える必要があるわけでありますし,これはアセスメント・ポリシーの考え方に通じるものでございます。
 最後の丸でございます。各大学がどのような情報を公表するということにつきましては,今までのお話で,これは一定の方向が見えてくるものではないかと思っているところでございますが,一方で,これらの情報を大学関係者だけではなく,個々の大学だけではなく,社会全体が効果的に活用できるようにするためには,全国的な収集とか調査といったものを通じて,整理して比較できるような一覧化できる機能を確保していくこともしっかり頭に置きながら,考えていく必要があるのではないかということでございます。
 長々と説明申し上げましたけれども,今追加で配られました論点整理でございますけれども,論点整理で七つ論点を挙げていただいている中の,一番目の教育課程の改善,指導方法の改善等の学修の質保証,二つ目の学修成果の可視化と情報公開,この二つの論点につきまして,今後議論の取りまとめに向けて,どのような方向で考えられるのかということの一つの案をお示しさせていただいたところでございます。
 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。ただいま説明を頂きましたように,七つの論点整理のうちの二つについて説明を頂きました。
 それでは,ただいまの事務局の説明,あるいは資料を踏まえまして御意見,あるいは御質問を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  ありがとうございます。かなり検討していただいたことが,よく分かります。それで,教学マネジメントと情報公開は,順番はこの順番の方がいいのですが,情報公開は,言い始めると切りがないので,内容的なところについては,かなり慎重にやらなければいけないし,この場で細かく全部やっていくのかというところには疑問があります。
 それで,前段の教学マネジメントの方針では,やっとアセスメント・ポリシーをまともに取り上げていただいて,ありがとうございます。そこらからスタートしていく作り付けというのは,よく分かるのですが,各論を見たときの整理の仕方が,まだディテールをフォーカスしているような分け方になってしまっているというのが,一つ残念なところなのです。
 例えば,アクティブラーニングやICTを活用した教育の促進というのは,これは教育内容なのかというと,本当は教育方法なのだと思うのが,教育内容がすかすかになってしまう。ではどうすればいいかというと,シラバスというのは教育内容の設計図ですから,むしろ教育内容の中で位置づけをしていただくというような整理の方が妥当なのではないかと思います。教育方法はなぜこれほど膨らんで見えるのかというと,本来は前回の高大接続答申でいうカリキュラムポリシーは,内容と方法と評価という三つの分け方を一応したのです。評価は審議途中まで入っていないのを,最後に入れてもらったのです。だから教育方法の中に,例えば成績評価の適切な運用とか,学生個人の成績の評価とか,明らかに教育評価の内容だと思うので,柱立てももう少し,今までの答申を踏まえた形と分類を整理した方がいいと思います。
 その場合,授業評価というのを内容の改善に位置付けるのか,あるいはこれは教育評価の一環だというように捉えていくのか,ここは微妙なところがありますので,その辺は溝上先生とか,この面に強い方がおられるので,きっと御発言があるのかと思います。
 全体がもう少しバランスよく,ディテールに傾斜しすぎるのではなく,全体の趣旨に合った形の俯瞰(ふかん)をして欲しいというメッセージにした方がいいのではないかということです。
 以上です。
【鈴木主査】  川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  様々なご提案がありますが、一つ一つの内容はともかく,よく言われるように政策あれば対策ありということで,これまでもいろいろな取組を努力義務とか義務化してきたのにもかかわらず,結局日本の大学教育の改善がなかなか進まなかったという厳しい評価が定着しています。つまり義務化すれば当然各大学は対応策をとって,結局実効性のない形骸化した取組になってしまうということの繰り返しだったのではと思います。今回は,何をマストとレコメンデーションするのか,そのあたりの切り分けを改めてもう少し議論する必要があるのではないかと思います。
 例えば,把握を義務化するという6ページのところで,学修成果の把握を義務付ける項目として,最後の方に成長実感,満足度,意欲というのがあるのですが,これは正しく学生の主観的な評価に他なりません。次の7ページのところに留意事項が記載されていますが,このような主観的な情報の把握を義務付けるというのは,大学から対応策をとられやすいし,なおかつその結果を公表までも将来義務付けるということになると,学生,大学にいろいろな混乱が起きるのではないかと思います。
 イギリスなどでもNational Student Surveyという共通の学生アンケートを実施していますけれども,最近はどうか知りませんが,当初はかなり大学が数字を操作して公表していたということもあるので,客観的に測定可能な学修成果の把握及び公表というのは必要なことかもしれませんけれども,主観的な項目について,把握まではともかく,それを公表させることはかなり問題があるのではないかと,ご説明を聞いていて感じました。
 それから,ガイドラインについては,先ほど濱名委員の方から,もう少し整理が必要だというお話もありましたけれども,ガイドラインに盛り込むべき事項としては,一つは設置基準上定められている項目について,それを実効化するにはどうしたらいいのかという項目については,ガイドラインの必要性はあるのかもしれませんけれども,それ以外の項目について,例えばIR体制の確立というのは,今のところ必ずしも設置基準上で義務化されているわけではないので,設置基準上で定められた事項についてのガイドラインというものと,それ以外の教学マネジメントに資するような事項については,きちんと切り分けてガイドラインの中に整理すべきだと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,いかがですか。前田委員,どうぞ。
【前田委員】  いろいろ整理されていて,このようなことをやっていかなければいけないというのは非常によく分かるのですけれども,大学の認証評価や外部評価の経験ですが,大学に訪問した時に,大学側の出席者からは,熱心にやっている,頑張っているという熱気が伝わってくるのですが,一般の教員に,そのことを実際にやっているか聞くと,全然知らないままことが進んでいたりすることがよくあります。やらなければいけないとされていることに取り組むことは,一応形式上は出来るけれども,結局今,川嶋先生がおっしゃったとおり,対策ありきの部分になってくると思うのです。内部質保証というのは,やらなければならないこと、大学としてやりたいことをどれだけ教員に浸透させるかということだと思うのです。全てが出来ないとしても,なるほど,やらなければというように思えるような仕掛けを,どうやって作ったらいいのだろうといつも悩むところです。
 前にも申し上げたかもしれないのですけれど,アメリカの大学でも結構嫌々やっているのだなというのは,行くと分かるのですけれども,例えば教学担当の副学長が,教員職を離れ,もう教員に戻らないというような方が教員にやれと言っても,教員は言うことを聞かない。しかし,教員の中でほかの先生方から非常に尊敬されているような経験豊かな方がリーダーシップをとると,あの人が言うのだったらやらなければと思ったりするというように聞きました。マネジメントのところで,色々やならければならいことが並んでいるのだけど,やったようには見えるけれども,本当に改善が進んだ形になるのかというのが怪しいなという気がします。どうやって本当にやらなければいけないという気持ちにさせていくのかというあたりに少し切り込めたらいいなと感じました。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 溝上先生,どうぞ。
【溝上委員】  2点あります。一つは,1ページ目の教学マネジメントとアセスメント・ポリシーです。同じことを言いますけれども,教学マネジメントという言葉,非常に私はいいと思います。今,小学校,中学校,高校でカリキュラム・マネジメントという言葉が出てきていて,大学でいったらその三つの方針に相当する取組と近いことが展開していると思います。そのときに,大学で三つの方針をつないでPDCAを回すと今まで言ってきたのですけれども,このようなマネジメントに相当するものがしっかり付かないと,なかなか説明とかできないと思うことが今までありましたので,マネジメントの部分が同じで,教学とカリキュラムと違いますけれども,初中と合わせていくということを私などは捉えて,この言葉遣いはいいなと思います。
 私事ですけれども,私は桐蔭学園という横浜のところで顧問をしていまして,そこで初中で三つの方針に近いような,例えばDPに相当する学校目標とか,あるいは学力の3要素とか,資質の能力の三つの柱とかいいますので,そのようなところを立てていきながら,アセスメントを今準備して進めているのですけれども,何を指標としながら,最終的な大学でいうDPに相当するところを付けていくかという,そのようなものがないと先生たちは非常に主観的になって,各学年でいろいろアセスメントをやっているのですけれども,DPに相当するところを,これと,これと,このようなところで見ていくというように,ある程度ポリシーを立ててやっていかないと,非常に統一感がないというか,付ける先生によってまちまちになるというのを最近経験していまして,そのような意味では,アセスメント・ポリシーというのは私は必要だなと,最近すごく自分の経験から強く感じています。
 もう一つですけれども,情報公開は是非私は,慎重にですけれども進めていただきたいと思います。それで,学修時間なのですけれども,授業外学修は当然入っていると思いますし,単位制との絡みもありますので,これは入れていってほしいと思いますけれども,ただ最近,10年間ずっと学士課程答申から3年おきに実施している大学生調査というものがありまして,最近まとめたのですけれども,この10年間授業外学修時間はほとんど変わっていないのです。これだけ国として,あるいは大学もいろいろ取り組んできていながら,ここが大学によってかなり,先ほどおっしゃられたように二極化していると思うのですけれども,大学生はといっていくには大ざっぱ過ぎますので,どのような大学がしっかりやっていてというのを,このような観点から見たいと個人的には強く思います。
 最後ですけれども,川嶋委員がおっしゃった,主観的なというあたりですけれども,学生の成長実感と満足度は,多分分けて聞かれた方がいいと思います。満足度は結構高いのです。ところが成長実感というのをどう聞くかによるのですけれども,これは聞き方によってはかなり落ちます。私などが,もし又何かガイドラインを作るときには相談してくださいと思いますけれども,例えば学修から未来への希望を感じるかとか,このようなことは大事なのです。学んでいるところから,自分の将来につながっていくという実感が欲しいわけです。このようなことを成長と捉えてくれれば,かなり卒業後の仕事社会への移行のようなことも含めて関連してくると思いますけれども,ただ,そのような聞き方をすると50%を切ってくるのです。
 つまり大学生活とか,いろいろ学校生活は七,八割ぐらいの割合で満足していると答えてきますが,学んでいることが未来につながる実感としてあるかとなったら,半分を切るのです。これが専門分野別によっても,もっと動きます。この辺を分けた検討というのを期待したいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,本郷委員,その後,上田委員。濱名委員ももう一度ですか。次,濱名委員という,そのような順序でお願いいたします。
【本郷委員】  ありがとうございます。20年ほど前から大学評価というのは声高に言われているようになって,このような本日お示しになったような資料というのは当然これは大学内でも検討して,それなりに取り組んできたわけですけれども,結局そこで公表されているのは,ありていに申し上げて,専門の部局と専門の教員が要するに作っているだけの話であって,大学教員間に,このようなことをやらなければいけないというような共通の認識というのは,まずないのです。
 それは一つは,大きな障害になっているのは,大学の授業の性格あるいは規模等の問題で,画一的な評価指標を出すというのは難しい。特に昨今はいろいろアクティブラーニングでありますとか,個別,個々の学生を様々なルーブリックで評価していくようなことをやればやるほど,共通した指標というのはGPAの成績分布など立てるのが,どれほど意味があるのかということについても,共通認識というか理解が得られないということなのです。
 だから,そのようなことで,どうも専門的にただ上っ面だけの数字を並べるにすぎない,終わってしまっているというような恨みがあると思います。
 一番問題は何かといったら,どのような形で教員にそれだけの意識と前向きの姿勢というものを引き出すかどうかということです。そうなってくると,最終的には教員評価と関わらざるを得ない。能力評価というと非常に難しいかも分かりませんけれども,そのような努力評価,姿勢の評価というものは必ずなし得る。だからPDCAサイクルを本当に回すような会議体,あるいはそこでどのような議論がなされているのか,どのような形で改善に取り組まれているのかということについては,それは詳細に報告して,それについての客観的な評価を得るということは可能だと思いますので,むしろそのような方向で,まず持っていく必要があるのではないかということです。
 残念ながら,この中では個々の教員に対する云々というところまで踏み込んではおられませんけれども,それがないと最終的には,先ほど先生の御指摘ありましたように,結局はこのようなことで出しなさいということで,その求めに応じる形で幾らかの専門者が,それに対して見合うようなものを作ってくるということで終わってしまう。これでは全く体をなさないと思いますので,その辺のところは抜本的な改革が必要ではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 上田委員,濱名委員,篠田委員,小林委員という順序でお願いします。
【上田委員】  どうもありがとうございます。これだけおまとめになったことには敬意を表したいと思います。
 それで,私が申し上げたいことは,前田先生,本郷先生がおっしゃったことを,もう少し先に進めたいということでありまして,東京工業大学,私の大学で相当ドラスチックな大学改革をしました。そしていろいろなところから大変な成功事例だと評価をされて,大変うれしく思っております。教員が1,100人ぐらい,学生が1万人ぐらいのところで,それを抜本的にガバナンスをしっかりしまして,学長主導で変えていったということなのですが,その大学にしましても,最初に変わるのは,一番目覚めた部局の先生たちとか,職員の方々が変わる。初年時教育をやれば,学生は物すごくドラスチックに変わります。
 しかしながら,一番変わらないのは教員組織で,それもそうした改革というものの意味が意識化されていない部局の,それも末端の評議会とか,いろいろな改革をやっている委員会に出ていない教員には,なかなか情報が届きません。学長から何から,何回も説明会をやり,ナンバリングするのには,このような意味があり,アクティブラーニングをするには,このような意味があるということを何回も説明会を開いております。
 ただ,それが全学に浸透するかというと,そうでもありません。東京工業大学,うちの場合は本当に全学の改革が大変評価を頂いている大学ですら,まだ改革後2年でありますけれども,その前2年間ぐらい準備期間があって,今2年ぐらい,もう改革後のカリキュラムが進んでおりますけれども,末端の教員の中にはやっと,外ですごく我々の大学の改革が評価されているな,何か変わってきたのだな,我々も頭を切り替えなければいけないのではないかなぐらいのところだと思うのです。これは過小評価し過ぎかもしれません。
 教員の組織というのは非常に変わりにくいですし,その意識が徹底した部局は非常に改革が進んでいきますけれども,ボスの先生とか,古くからの先生が,そのようなものに全く理解がないという部局は,本当に意識が変わっていかないというところがあります。
 ですので,本当に先生方がおっしゃったように,これが本当に教員の隅々までどうやって意識が浸透していくのか,あるいは本当にこれをすることが大学をよくしていくこと,ひいては学生をよくしていき,日本をよくしていくことだという意識が持てるかどうかというところに関わっていると思うのです。その部分に関する記述というのは,非常に少ないと思います。
 一つ一つの指標で,義務化する,あるいはこれが求められるという指標があるのですけれども,例えばこういった委員会の中では,それがどれだけ重要なことかというのは議論されているのですけれども,一人一人の教員は,この数値がどのような意味を持っているのかという教学的な意味,あるいは教育学的な意味を分かっていないと思うのです。
 例えば,人間ドックの数値だとしますと,ただ,あなたこれでレッドゾーンに入りましたと来ても,その人には何が何だか分からないわけです。ですから,その数値が,この評価というものがどのように教育を本当に改善していくのかという。例えば人間ドックを受けていくと,この数値は正常値はこうでとか,あるいはこれがまずいときには,こういった教育の障害が起きますとか,人間ドックの場合,このくらい厚い解説書が付いてくると思うのですけれども,そうしたものを整備していただいて,一つ一つの数値が本当に教育をよくすることに寄与するのだという意味が分かるようなものを渡していただかないと,これが大学に行って,学長がこれをやれと言う,あるいは教務担当の委員長がこれをやれと言っても,その人すら分かっていない可能性があって,分かっていないことを,一人一人の教員にこれをやれと言っても,結局は数字だけ出せという通達だけは行くと思うのです。
 ですから,こうした委員会で,このことの重要性ということで語られている情報量と,末端の,それも学長に行くところで既にスラッシュされていると思いますし,そうすると,もう単なる数値だけを出せというのが行くことになると思いますので,このことをやることが,どのように質保証になって,どのように大学をよくして,学生をよくするのかということについて,もう少し情報とか,あるいは好事例ということが書いてありますけれど,そこから立ち直っていった大学ですとか,そうしたことをエンパワーするような部分をもっと挙げていただければと思います。
 文部科学省がいえば,それは評価だから,みんなやらなければいけないのだけれども,今やるべきことは,これを義務化して,ただ数値を出していくことではなくて,本当に教育をよくすることですので,それに向けての雰囲気作りというのを是非よろしくお願いします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  先ほど教学マネジメントの部分で,情報公開のところなのですけれど,今の上田委員の話をつなぐ形になるかも分からないのですが,公表の項目が一元的で,定量的な項目にほぼ終始している。私立大学改革総合支援事業の項目設定と全く同じで,各大学が定量的な数値を上げることに汲々とするという可能性があって,それは今,上田委員がおっしゃったことと共通するのです。
 では,何かというと,前段で教学マネジメントがアセスメント・ポリシーに基づいてと書かれるのであれば,ここの部分では,それぞれの大学がどのようなアセスメント・ポリシーで学修成果を把握しようとしているのかという,定性的な部分の記述をしてもらうというのが,まず土台ではないか。それに基づいて収集されるであろう定量的な尺度という部分も含めた評価方法が出てくるのが自然な流れでありまして,これを見ていると,先ほど川嶋委員が言われた主観的評価,あるいは間接評価といわれるものが出ている一方で,直接的な評価はほぼ定量化されたものだけで,学修成果と可視化の議論の中で出てきているものは少ないのです。そこが,まず非常に気になるところです。他方,6ページ目の終わりから7ページ目の頭で,これから一定の指針を示すというところになると,すごく飛び跳ねていまして,アセスメントテストの結果というのですけれど,アセスメントテストは,今までの答申で出てきたことがない言葉なのです。これはアセスメントテスト等を活用した学修成果の把握の可能性ぐらいの書きぶりが,現状としては相当なものであろうかと思うのが,ここについては学修成果の把握の方法が,何か確立しているかのごとくの記述です。実は確立していないし,ポリシーが前提として,社会に対して発信されていないから今の混乱があるわけですから,そこのところについてはもう少し丁寧に書かないといけない。どのように可視化していいかということを前に進めていくために,このような指針とか方法論の例示をしていくということで,出来ていない課題に対する今後の文部科学省としての支援策を,このような形で考えていくという記述にしないとまずいし,大学に求めるものは,基本的な方針にのっとってということの方がいいのではないかと思います。
 あとは細かいところでいうと,留年とか中退を問題視しているようなのですけれど,単位累積制とか社会人の学び直しを考えると,そこらを想定していない項目設定になっているのです。長期就学とか,社会人学生の比率,これらについては今回は学士課程の話しか想定されていないと思うのですけれども,これが大学院というような話に展開していくことを考えると,そこらも視野に入れた形で設計しておかないとまずいのではないか思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続いて,篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  冒頭の御説明で,今まで教学マネジメントについて一元的に記載をした,まとめたものがないということで,私もそのように感じておりまして,学士力答申でも,一応教学経営という言葉は3回ぐらいでてきますし,質転換答申でも教学マネジメントという言葉を多用して説明をされておりますし,ついこの間の三つのポリシーのガイドラインについても,教学PDCAという言葉が使われているわけですけれども,そのようなものを総括をして,どのように大学を,あるいは教育の質保証を実現をしていくのかということに焦点を合わせた記述はないので,このような形で,あるべき姿,方向性というものを大学に示していくというのは非常に重要だし,意味のあるものではないかと思います。
 その上でなのですけれども,まだ中身はこれから検討されていくことになるのではないかと思いますけれども,教学マネジメントというのは,あるいは内部質保証というのは一体何なのか,どうやったら実現できるのか,このあたりは非常に私自身は重要なところで,この点については,旧の大学教育部会で出したガイドラインの三つのポリシーの運用に当たって留意すべきところで,三つの柱を出しているのです。これは学位プログラムレベルのPDCAということ,更にそれを具体化をしていくためには,各教員レベル,授業科目レベルでそれがシラバスに具体化をされて,授業改善のサイクルが回っていくこと。三つ目には,それら全体を学長が統括するリーダーシップの下で,大学の将来構想とか,中期計画レベルで,つまり教育の質向上というのは授業改革だけに収れんされませんので,それは冒頭の目的にもありますように,学生の社会的な自立を考えると,就職支援ということもありますし,いろいろな手を,これは教員だけではなく職員も含めて教育の質向上に向かわせていかなければいけない。そうしないと実現できない構造ですので,そのような構造をどうやって作っていくのかという,大学に自覚的に作っていく全体構造をきちっと示すような提起。余り教育だけ,授業だけに焦点を絞り込んだマネジメントだとすると,それは全体の質向上を実現するようにはならない。
 私学の場合には,経営と一体になってそのようなものを作っていかなければいけませんので,その意味では,学校教育法改定の学長のリーダーシップの確立から始まって,今回のSDの義務化も,あるいは教職共同の一体化も,SDの目的自身が適切かつ有効な教育を実現するためというのが目的ですので,焦点としては大学の一番の目的である教育の質向上というところに,マネジメント改革も,ガバナンス改革も,リーダーシップも収れんをされてきていますので,その構造全体が大学に分かるような,そのような自覚的な改革を促していかなければ,大学の評価は高まっていかないのだという,このあたりのところを強調するようなまとめに是非していただければありがたいと思いますし,その点で見ますと,各論のところでは組織の運営とか意思決定の体制とか,責任と権限の問題とかに余り触れていなくて,IR体制の確立についてだけは触れていらっしゃいますけれども,教育の内容とか方法改善をしていくためには,それをどうやって実現をしていくのか,誰がどこに責任を持つのか,どことどこが連携してやっていくのかということを意識して作っていかなければいけない。これがないと教学マネジメントというのは絶対実現できないと思いますので,そのあたりの全体構造が分かるような形での提起。
 ただ,やり方を具体的に提起をすることは,私は余り好ましいことではないと思いますので,その構造が分かるということが重要で,そのような点でいうと,内部質保証,教学マネジメントを実現をするという点でいうと,一番の肝は自主的,自覚的な改革がいかに出来るか。先ほど前田先生も言っておりましたけれども,教職員をいかに巻き込むかというか,その気にさせて動かしていくのか,これしかないわけです。
 法令で強制する部分というのは,もちろん一定程度あってもいいと思いますけれども,大学が自覚的に動かない限り,実現は絶対できないと思いますし,義務付けだとか法令でやらなければならないことがたくさん出てくれば,それをこなすことに精いっぱいになってしまうということになりますので,中心点は大学をいかにそのように自覚をさせて,自らの改革をちゃんと実現していくように動かしていくかどうかというところ。このメッセージが一番重要だと思います。
 その点で,細かいところでいいますと,例えば冒頭のところの1ページから2ページに必要性について書いてある最後のところです。国として教学マネジメントの確立を一層進めていく必要があるというように書いてあるのですけれども,メッセージとしては,そのような意図ではないと思いますけれど,各大学がそのようなものを確立していく,あるいは国がそのようなことを支援していくというところに結論的には位置付けていただきたいと思いますし,全体の新しい教学マネジメントに対する提起も,そのようなスタンスで是非おまとめいただければ大変ありがたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  一つコメントと,一つ質問したいのですけれど,大体各委員の意見というのは,それほど違っていないと思いますし,今まで出てきたことがかなり集約されて出てきていると思うので,重複するのは避けたいと思っていたのですけれど,今,篠田先生から,私が言いたいことを少し言われてしまったので,そこのところは簡単に申し上げますと,教育成果の可視化というのは,ごく一部にすぎないわけで,これは大学教育全体の質の保障をどうするかということの中の一つにしかすぎないわけですから,そこのところはもう少しきちんと書いていただきたいということです。
 これは非常に重要なことだと思っておりますので,その点については是非お願いしたいということです。
 ただ,今までの意見で出てきたのは,教育成果の可視化がいかに難しいかという議論になっているわけで,そのために外形的になったり,数量化出来るだけになってしまっているということが問題だということで,その点についても十分に配慮していただきたいということなのです。
 それで,溝上委員の方から,小中学校との比較が出ましたけれど,小中高の場合には学習指導要領というものがあって,それに基づいてかなりのことが出来るような仕組みになっているのですけれど,大学の場合は大学設置基準で,これは先ほどもありましたけれど,大学設置基準以外のことというのは非常に難しいわけです。ただ,その大学設置基準というのは非常に抽象的でありまして,一つだけ例を申しますと,専任教員という言葉はありますけれど,専任教員の定義というのはないので,何が専任かということでもめてしまう。そのような状況ですから,そこで数量化などしたら,ST比とかここにも書かれていますけれど,大きな問題が生じることは間違いないので,そのようなことを考慮していただきたいです。
 ただ,情報公開自体は私は積極的に進めるべきだと思っていますので,前田委員が言われたように,合意できるものから少しずつ。今,教育の9項目だけですから,少しずつ広げていくというのがやり方ではないかと思います。
 そこで質問なのですけれど,この中教審の議論というのは,秋までに答申を出すということになっているわけです。ここに書かれているような項目については,大学ポートレート準備委員会では1年掛けてさんざん議論しました。中退率をどうするか,今言った教員の定義,学生の定義。それで結論が出た部分もありますし,出ない部分があったわけです。この秋までに,どこまでやるのかということです。非常に大きな議論をする,このようなことを方針で臨むということでしたら,それは一つの方向性を示すということの意味があると思うのですけれど,今言われたような細かいことについても,ここで議論するべきなのか。それは文部科学省のほかの委員会なりで議論するべきなのか。あるいは大学に任せるのか。あるいは第三者機関等に,あるいは第三者の委員会等に任せるのか,その辺の見通しはどうなっているかということをお聞きしたいと思います。
【鈴木主査】  いかがですか。御質問。どうぞ。
【平野大学改革推進室長】  今,私ども事務局として念頭に置いておりますのは,当然細かい項目,また,あえて今日の資料などでも,例えば数値の算出方法についてもしっかり指針において示す必要があるのではないかといった形で,細かい部分の議論,またどのようなものが大学関係者の同意が得られるものであって,どういったものはそこまで行かないのかといった仕分けを秋まで行うというのは,かなり現実的でないと思っています。一つ一つの項目がかなり議論を要する事項である,また総論というもの,三つのポリシーということについても,しっかり意義を確認するということについては,大学分科会の中で新たに場を設けて,そこでしっかりと時間を掛けて議論をする必要があると思っておりますので,私どもとしては秋口の将来構想部会のまとめについては,大きなベクトルというか,方向性を示した上で,新たな場においてしっかり大学分科会として御議論いただくことを想定したわけでございます。
 ポートレートの会議との関係について補足があれば,企画課の方からになりますけれど,特になければ,そのようなことでございます。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 安部委員,どうぞ。
【安部委員】  この教学マネジメントの視点は,基本的には学士課程の教学マネジメントということですけれども,総論と各論の中で,総論に関しては,私ども短期大学士課程あるいは高専の準学士課程,今後専門職大学の制度化の中の専門職短期大学等々があるので,総論はこれでいいのですけれど,各論に関して,2~3年課程の短期大学士課程等々のマネジメントには少し違うところがあります。先ほど濱名先生が,退学率それから修業年限内での卒業率などのお話が出ましたけれども,2年制課程は,今後社会人の学び直しの場,リカレント教育の場の役割があります。よって,各論に関して,学士課程ではない課程の教学マネジメントの在り方については,若干の配慮というか,書き加えていく必要があるのではないかということが1点。
 それから,短期大学などはみんな小規模なのですけれども,教育改革は二極化が進んでいると思います。小規模大学の中では,本当に存続を掛けて教育の質の向上を目指した教学マネジメントの確立を,非常に熱心にやっているところが結構あると思うのです。そのようなところの教学マネジメント改革を進めるために,先ほど好事例を出すというお話があったのですけれども,小規模校ならではの好事例を多く出すことによってリーディングをしていただくとか,あるいは共同利用拠点の活用を進めるための施策をとっていただくとか,そのようなことが私ども小規模で,学士課程ではないような課程には必要ではないかというようなこともあります。その辺,御配慮いただければと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  今日の教学マネジメントの全体についてです。教員をどう動かしていくかが,先ほど何回もいろいろな方から出てきました。ひとつ私たち公立はこだて未来大学の事例で言えば,2000年に開学した1学年240人の小規模な大学です。今から21年前に考えたのは3つのことでした。それがうまく回ってきて今あるので,ここでそういったことがほかでも適用できないかというお話をさせていただきたい。
 私たちが当時考えたことは,初等教育であった総合的な学習の時間からオープンスペース,チームティーチング,これを大学教育の中でできないだろうかというところでした。それが,今ではプロジェクト学習の形になり,いろいろな形でオープンスペース,それがラーニングコモンズになり,今チームティーチングのところです。これがとてもファカルティデベロップメントに効いています。つまり,一人一人の先生方が,自分がアクティブラーニングをやらなければといろいろ言うときに,先生方がアクティブに自分たち大人の方がアクティブラーニングをするには,チームになってやっていくことがとても効果的であると,私たちは20年近くやってきて思います。そういう中で,教職員も含めて我々がコミュニティとして大学の学習共同体の形でできてきて回り始めると,それがいろいろな形で動機付けになってきます。
 なので,ここでどのように変えていくかは,教員も職員もマインドセットを変えるというとても分かりやすいそれが私は大もとにあって,我々がこういう時代にあっていろいろなデータが出てきています。学習観や教育観は本当にここでもう変えなければいけない,変わるというはっきりとしたメッセージの中に,ではどのように……。それを制度として取り込んでいくものもあるでしょう。それを推奨の形でもいいでしょう。その中には例示として,例えば,どこかの好事例を出してきたり,ただ事例を出すだけではなくて,ここでのポイントは何なのか。それが適用可能なデザイン原則のような形で事例を出してくるなどだと思います。
 最後に,もう一つは今日の話の中で余りなかったです。学生を中心としてどういう大学教育のシステムになっているのかということでは,授業だけではないと思います。だから,正課と課外,例えば私の所属する大学の場合は,今の三つのほかに途中で出てきたのはピュアチュータリングといって,授業以外で学生が学生をチュータリングするというチュータリングの研修制度を作って,大学院生あるいは4年生が1,2年生のある科目を見ていくことを課外でやっていきます。それは,双方にとってとても成長があることがデータからも出てきています。なので,ここで考えるのは,単に教える授業だけではなくて,それがクラブ・サークル活動もあるかもしれません。そういった活動も含めての教学マネジメントではないかと思います。これは私たちの大人のアクティブラーニングです。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  二つ申し上げたいと思います。
 一つは,この文書はかなり革命的なところがあります。というのは,今まで大学の教育の質をよくするのは,基本的には大学の自主的な努力に任せていたわけです。ただ,考えてみると,先ほども溝上先生のお話にもありましたが,10年くらいほとんど何も変わっていないのではないかと。何かやらざるを得ないのが基本的な背景にあると思います。
 5年前くらいに,先ほどお話があったポートレートなど作られましたが,これも全く進展していないと。今でも機能していない。議論しているかもしれないけれども,議論しているだけという状況にあります。そのときに具体的な指標をある程度確立して,それでもってそれを大学の内外が認識することは非常に重要です。しかも,それが一部大学だけでできないのであれば,大学のほかの機関が全大学について,一定の基準でもって指標を作ることもできたらどうかという提案です。これは今までの個々の大学の自主性を尊重する,言ってみれば私にとっては,非常に偽善的なテーマから決別する一つの重要な段階とさえ,私には言えるのではないかと思います。
 ですから,これは決して個々の指標どうのこうのという問題ではなくて,その態度自体がこれでいいのかという議論は必要だと思います。私は,それは必要な段階に来ていると思います。諸外国を見ても,かなり類似の取組が既に行われていて,日本はむしろ非常に遅れていると私は感じています。
 それからもう一つのテーマは,先ほどから議論にありましたいろいろな努力をしているけれども,個々の先生が動かないのではないかという問題です。これは大学マネジメントとしては非常に重要な問題です。これは教学マネジメントと言いつつ,指標の話しかしてないですが,指標を使ってどうするかというか,中のマネジメントをどのようにするかについてほとんど触れていないわけです。これは非常に重要な問題で,こういった情報を作った場合にどのようにモビライズすると使っていくのかが,これから更に検討すべき問題だと思います。
 私どもは先週国際会議をやりました。基本的な問題は,大学の組織と大学の先生の行動はどのように関わっているのか。しかも既に日本はどれくらい特殊なのかという欠点です。国際規格のデータを見ますと,日本の先生は非常に特殊です。先ほどのお話にありましたが,大体授業の相談を互いにしないです。皆授業は自分のものだと思っているわけです。だから,ほかの人が関わるのを非常に嫌うわけです。先ほどの美馬先生のお話にあったように共同で発展させれば非常に面白いことが分かるかもしれないし,先生自体にとってもいいのかもしれないが,とにかく拒否します。これは基本的には戦前からの伝統があって,しかもそういうわがままが許されてきたと,そういう状況が作られてきたことでもあると思います。そういう指向性をどのように先生がしていくのかは非常に大きな課題です。
 最近5年間で,大学教育改革について非常に重要な取組の一つは,学術会議の参照基準でした。ところが,これはほかとの分野でほとんどできていますが,ほとんど使われていません。なぜかと言えば,ここもあるだけで,誰もこれに基づいて何をしようと議論していないです。ですから,もう大体できたままでそのままお蔵入りになっています。
 もう一つは,学術的な専門分野だけでできているので,それが弱みになっているところも一つあるとは思います。しかし,そういったものを作ってもそのままではワークしていない。それをどのようにいかに生かしていくかということは,教学マネジメントがどのように生きていくのかも非常に重要な課題だと思います。その教学マネジメントがどのように活動していくかについても,先ほどからの御意見にいろいろありましたが,議論すべきであると思います。
 これは言ってみれば,先ほど言ったことに関わるのですが,ある程度大学の中の動きに手を突っ込むようなことを中教審ないし文科省がやらないとにつながります。私は,これはある程度そういったことをやらざるを得なくなっているのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 上田委員,いかがですか。
【上田委員】  最後に短く申し上げます。大学改革は今まであるものを動かすので,一番重要なのはパッションだと思います。それを成し遂げていくという本当の情熱,熱意がないとできないわけです。私たちの大学は学長にもパッションがあったし,執行部全員にパッションがありました。あと私たちリベラルアーツがこれだけ評価されているのは,もうFD研修を何回もやっていて,小さい組織ですが隅々の先生まで「行くぞ」と。「この大学を変えていこう」と,もう火の玉のようになってやった。それがあるからできる部分があります。
 こういった文部科学省の出てくるものの書きぶりにも,それはここにパッションを投入することはできないけれども,その向こう側にはすごいパッションがあることが感じられるようなものにしていただきたいです。
 というのは,これだけの指標を出せばいいですというこの書きぶりが,もっともアクティブラーニング等に遠いだめな先生の象徴です。「この課題だけを出して何日までにやってきなさい」と言って,その意味も分からなければ,「それをやらなかったらもうこのクラスにいられなくなってしまう」ような何か脅しでやられているような感じです。
 だから,「やってください」ということはいいですが,その言い方が何か「やってください」というのを裏切っているというか,だめな先生がただひたすらもう,それもやる気のない学生さんに向かってかき立てるのではなくて,「はい,何月何日までにこの課題をやってくださいね」としか言わないようにしか見えないのは自己矛盾です。そこら辺から変えていかないと,これは教育のことをやっているので,是非そこら辺をお願いしたいと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 多々御意見を頂きまして,こういう字面だけでは改革がなかなか進まないこと,先ほど来パッションあるいは手を入れる,あるいは人情,熱意などというそういう非常に人間的な側面が,どうも教員を動かすには大切だということがるる述べられておりました。その辺りのことをどう文章化して伝えていくかが,引き続きの課題であるのではないかと思っております。
 御意見多々あると思いますが,本件につきましては次回のワーキンググループにおいても御議論いただく予定としております。各委員におかれましては,引き続きよろしくお願いいたします。
 それでは,続きまして,本日の後半は前回に続きまして,工学系教育改革に向けた制度改正の方向性について議論を行います。前回のワーキンググループにおいては,先生方から多くの御意見を頂きました。これを踏まえまして,本日事務局にて改めて資料を準備していただいておりますので,説明していただいた後に御意見を頂きたいと思います。
 それでは,事務局から資料2について御説明をお願いします。
【松永専門教育課長】  専門教育課長の松永でございます。資料2に沿いまして,工学系教育改革について御説明申し上げます。
 まず,資料の5ページを御覧いただきたいと思います。前回のこのワーキンググループで工学系教育改革に係る設置基準の改正の事柄について,御説明申し上げました。5ページにありますように,左側が現行の仕組み,実態でございまして,教育研究組織としての学科ごとに縦割りの構造が見られる中にあります。今回の改正におきましては,右側にありますように,学部として教員組織,学部単位で教員の基準を定め,また学生の定員につきましても学部で管理することを明確化することによりまして,その下にありますように,教育に関しましては各専攻分野をまたがって柔軟な組織を作っていくことを可能としようとするものでございます。
 これについて御説明申し上げました際に,前回この改革について「課程」を設ける趣旨が1点と,現在御議論いただいております学修プログラムとの違いについて御質問,御意見を頂きました。そこについて,まず整理をさせていただいたものを御説明申し上げます。
 資料1ページにお戻りいただきます。今回の工学教育改革では,学部につきましては学科に代えて課程を設けることができるというこの課程を使って,進めていこうとしております。そもそもその課程制につきまして,大学設置基準が施行されました昭和31年当時の状況についてでございます。そこにございますように,当時は「学部の種類により学科を設けることが適当でないときは,これに代えて課程を設けることができる」とされておりました。課程は「広い専門分野にわたって合目的意図をもって総合的に履修させるような場合に使われるもの」として制度化をされたものでございます。主として,教員養成課程として使用されるものでございましたが,制度上はそれ以外の分野においても使用されることが想定されておりました。
 恐縮でございますが,3ページに当時の解説がございます。3ページの上段ですが,イの課程のところの4行目からでございます。先ほども申し上げましたが,「広い専門分野にわたって合目的意図をもって総合的に履修させるような場合に使われるものであり,教育上の履修コースを重視したものである」とございます。「例えば」ということで教員養成関係各部についての事柄もございますが,そのおしまいには「工学部に機会システム工学課程等を置いたりする例がある」ことがございました。当時からも,教員養成課程の分野以外においても使用されることは想定をされておりました。
 また,1ページにお戻りいただければと思います。平成3年に大学設置基準が一部改正になりました際に,この課程の設置につきまして,従来学部の種類によって学科を設けることが適当でない場合と限定をしておりましたものを改めまして,学部の種類に関わらず当該学部の教育上の目的を達成するために有益かつ適切であると認められる場合に,この課程を設けることができるとしまして,活用の拡大を図ったところでございます。条文につきましても下にあります第五条です。「学部の教育上の目的を達成するため有益かつ適切であると認められる場合には,学科に代えて学生の履修上の区分に応じて組織される課程を設けることができる」と,これが現行の規定でございます。
 そういった課程制の趣旨からしまして,今回の工学教育に係る設置基準改正について,2でございます。現行制度では,どのような学部でも課程を設置することは可能となっております。課程制の下では,広い専門分野にわたって合目的意図を持ち,総合的に学生への教育活動が行われるよう,教員の所属組織とは一対一の対応関係とはならない形で教員を配置することが想定されております。現在の審査では,課程を置いた場合であっても,学科制に準じて課程ごとに一定数の専任教員の配置を求めておりまして,活用しづらいものとなっております。課程を置く場合の教員の基準が現在ないということでございます。
 一方,工学分野におきましては,産業技術の急速な進展を受けまして,工学部の教育を産業界のニーズを踏まえた複数の専攻分野を組み合わせた内容に適宜発展させることが求められております。これは,前回産業界の方,大学関係者の方々にお集まりいただきました有識者会議でも求められているものでございます。例えばとしまして,学部単位で教員数を管理できるようにすることによりまして,その学部の中で柔軟な教育の課程を編成することを可能とする体制が必要であると。
 今回の改正では,先ほど来申し上げております課程制の趣旨と,この工学教育を取り巻く状況を総合的に勘案をしまして,工学部に課程を置く場合に,学部単位で必要教員数を管理できるようにしようとするものでございます。併せまして,教育の質を担保するため課程の設置審査に当たっては,教育課程における各授業科目を担当する教員を確認できるよう,関係資料の提出を求めることとしたいと考えております。
 その下,御議論いただいております学修プログラムとの関係でございます。学修プログラムとは,学部学科や研究科専攻において提供される教育の課程に加えまして,複数の学部等を設置する大学が,学部等の組織の枠を超えた学位プログラムを,これまでの学部等とは異なる新たな類型として設置できるよう制度上位置付けることを想定して,御議論いただいているものと承知をしております。
 これに対しまして,今回の工学教育改革は,先ほど申し上げました現行の課程制を取った場合に現在定められておりません。設置基準上の必要教員数を定めまして,学部単位でその教員数を管理しようとするものでございます。飽くまで現行の課程制を前提とした上で,工学部内における柔軟な組織設計を可能とする観点からの制度改正であると考えております。
 以上が,課程制についてでございます。もう一つ,前回お諮りを申し上げました内容としまして,例えば学部4年と修士2年の6年一貫で教育課程を編成する際に,他の分野の教員又は実務家教員の登用,導入を促進することを申し上げました。今回改めて文言等の整理の中で議論をいたしまして,一貫教育ということではなくて,学部と大学院の連続性に配慮した教育課程という形で御説明を申し上げたいと思います。
 まず,イメージからでございます。7ページに図を挙げております。現状は工学部,学部での4年と修士の2年がございます。学部の終わりに卒論,また修士の終わりに修論ということでございます。そこのまた科目によっては内容として重複するものもございます。その辺りの重複を見直しまして,精選をいたしまして,また科目につきましてはナンバリング等を導入して,より系統的な履修が可能となるようにすると。その生じた隙間に,下にありますように,複数分野にまたがる学修や企業と連携した実践的なPBL等を盛り込んでいって,主専攻・副専攻を実現していこうというものでございます。
 これは飽くまでイメージ図でございます。それにつきまして,文字で整理をさせていただいておりますのが,6ページでございます。ポイントだけ申し上げます。
 この連続性に配慮した教育課程につきましては,意義としまして,修士若しくは博士の学位取得を到達点として,これらの教育全体で養成すべき人材像と修得させる能力を設定することが可能になる点,また連続性に配慮した教育課程におきまして,先ほど申し上げました工学以外の専攻分野の授業科目や企業等との連携により実施する授業科目など,実践的なPBL等を念頭においておりますが,そういったものの開設を促すなど新たな教育内容の追加が可能となること,また共通の基盤教育と専門教育などといった重要な年次の区分が可能となりまして,そこで例えば早期卒業や飛び級の制度の活用が容易になると。区切りとしまして,2年,2年,2年や3年,3年といったものも考えられます。
 また,その連続性に配慮した教育課程につきましては,飽くまで現行制度を前提としております。学部と大学院はそれぞれ独立しております。ですので,学士課程の修了,大学院の入学は従来通り行われるものでございます。ですので,この学部の修業年限を6年に延長するものではございません。飽くまで現在ございます学部と研究科の連携によりまして,連続性に配慮した教育課程を編成できるようにとそれをしやすくするための制度上の位置付けでございます。
 また,それに伴う質保証に係る措置としまして,そこにございますように学士課程の修了における学位授与等や大学院への入学につきましての質保証は従来どおりの対応が求められます。また更に,連続性に配慮した教育課程を編成する大学につきましては,設置審査におきましても,そこにありますように,例えば前回でも申し上げましたが,教育課程全体の履修の系統,カリキュラム・ツリー等を明示すること等々につきまして求めていきたいと考えております。
 少し細かくなって恐縮でございます。8ページ以降が,現在事務局として考えております設置基準の改正の案,イメージでございます。内容につきましては,前回も御説明申し上げましたが,かいつまんで申し上げます。
 まず,今回の改正につきましては,工学分野に係る例外でございますので1章を立てて,工学分野に係る大学院の研究科における教育との連続性に配慮した教育課程に関する特例と,これは大学設置基準ですので学部の方でございます。そこにありますように,工学に関する学部を設ける大学であって,当該学部を基礎とする大学院の研究科におきまして,連続性に配慮した教育課程を編成することができるとまずおきまして,その連続性に配慮した教育課程を編成する大学におきましては,工学以外の専攻分野に係る授業科目,企業等との連携により授業を実施する授業科目,その他の多様な授業科目を開設するよう努めるものとすると述べております。
 こういったものを置く場合の教員についての手当てが,次の49条の3の3行目以下でございます。「当該工学以外の専攻分野に係る授業科目の授業の実施に必要な教員を置くものとする」としました上で,「この場合において,加えて置く教員については,当該大学における工学以外の専攻分野の学部における専任教員をもって充てることができるものとする」と。二つ目が,実務家教員についてでございます。「企業等との連携により授業を実施する授業科目を開設する場合は,当該授業科目の授業の実施に必要な専任教員として実務家教員を置く」ことにしております。「この加えて置く場合には実務家教員につきましては,1年につき4単位以上の授業科目を担当し,かつ教育課程の編成その他の教育研究上の組織の運営について責任を負う者を実務の経験等を有する教員とすることができる」と。これがみなし教員の規定を持ってきたものでございます。
 下の方にございますのは,課程を設ける場合の専任教員の基準を学部ごとで決める内容でございます。詳細は省略させていただきます。
 以下は大学院設置基準につきましても,同様の手当てをする案でございます。実際にどのようなものをイメージしているかにつきまして,13ページに現在の例を1つ挙げさせていただいております。こちらは名古屋工業大学の例でございます。こちらは工業大学でございますので,学部としては工学部1つでございます。その中に複数の学科と並んでこの「創造工学教育課程」が置かれております。左側に説明がございますように,学部4年と大学院2年のシームレスな学びを掲げていらっしゃいます。また,分野横断でメジャーとマイナーのようなこと,以下にありますような科目を学んでいくことでございます。中ほどの図にございますが,少し小さな字で恐縮でございます。赤い丸の中に黄色い字で書いてあります。13の分野の1つと他の分野の知識を組み合わせて学ぶことで様々な工学課題にチャレンジできますと。複数分野をまたいだ学習を行う内容になっております。
 14ページが,そのカリキュラムの体系図でございます。先ほど柔軟な区分と申し上げましたが,6年全体の中で3年後期までを全学,学部全体で共通に学ぶ時期ということで,その中で緑のところにありますような科目について学んでいくと。下の方の専門につきましては,徐々に専門性を深めていく学習を行っていく内容となっております。例えばでございますが,このような形での教育課程の編成が促進されるようにとの趣旨で,今回改正についての御提案を申し上げております。
 少し長くなりましたが,以上でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,多少時間が迫っておりますが,ただいまの事務局の説明あるいは資料を踏まえまして御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
 川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  ありがとうございます。まず1点確認させていただきたいのは,この学科に代えて課程を設ける御提案と,最後の連続した教育課程を設ける提案は別々の提案であると理解してよろしいですか。
【松永専門教育課長】  ありがとうございます。端的に申し上げますと,別でございます。後ろの方の連続につきましては,特に課程制は置かなくても学科の形でも行えると考えております。
【川嶋委員】  分かりました。ありがとうございます。
 それで,先ほどの一つ目の審議事項ではマネジメントのお話でした。主としてどちらかというと教育課程のマネジメントでの議論が多かった最後の方では教員の話も出てきました。結局マネジメントというのは,目的を達成するためにいかに資源を最適に配分するかに関わることです。大学で言えば,お金も施設もそうですが,教員と学生という人的リソースをいかに教育目的を実現するために効果的に配分するかということだろうと思います。そういう人的リソースの裏付けがないと幾ら教育課程のマネジメントをしても実効性がないことになります。
 そういう意味では,今回工学部は先行してということなので,それについてはそれほど違和感はなくて,順次御提案の学修プログラム,学び修めプログラムというものを制度的に整備していけばいいだろうと思います。つまり,工学教育の目的を達成するために,教員というリソースと学生定員というリソースをいかに最適に配分するかという、まさにマネジメントのための仕組みを作る御提案と理解しています。私はそれはそれで結構だと思います。
 ただ,細かい話になりますが,文章で気になることがあります。例えば,1ページの最後のところに「産業界のニーズを踏まえた」という言葉があり,あと15ページの前回の文章の引用にも2か所ほど「産業界が求める人材育成」「産業界のニーズ」という言葉が出てきています。工学という分野が産業界に直結しているかどうか,あるいは工学の先生たちがそうお考えかどうかの是非の判断は別にしても,今回の工学部の教育課程の柔軟化は,単に産業界のニーズに適切に対応するためだけではなくて,工学の研究分野の新しいニーズにも対応するために,こういう柔軟な仕組みが必要だと私は理解した方がいいと思っています。この産業界のニーズが全面的に出てくる,そこだけが出てくるのはいかがなものかと感じております。
 それから,もう1点は学士と修士の連続性のところは,先ほどの図のところで下の方に留意事項として書かれておりますが,これまで大学院教育については随分以前から流動性を確保することが重要であると繰り返し指摘されてきました。つまり,特定の研究室への囲い込みをするべきではないと言われてきました。大学院については,学生の移動をもっと盛んにするべきだという議論がずっとなされてきました。同じ大学から同じ大学院に進学することが,日本の研究の水準を狭めている御議論もあったと思います。留意点で小さく書かれておりますが,他大学の学士課程から大学院に進学する学生についてもきちんと対応できるような対応を考えていただくことを,この図には書かれておりますが,是非ともきちんと書いていただきたい。
 最後,また質問になります。現行の学科制を取っている工学部が課程制に変える場合には,新しい設置基準として改めて設置審査を受ける必要があるということでしょうか。
【松永専門教育課長】  学位に変更がない限りは届出で足りると考えております。
【川嶋委員】  はい,分かりました。ありがとうございます。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,美馬委員,小林委員でお願いします。
【金子委員】  我々が受け取っているこの灰色の本の設置基準と,これは基礎とされている時期より1回ずれていますか。この11章がこの設置基準では違うタイトルになっていますが,この本の後に1回改定がありましたか。
【松永専門教育課長】  専門職学科のときに1度……。
【金子委員】  単純にずれていると考えればよろしいですか。
【松永専門教育課長】  はい,たしかそうです。
【金子委員】  分かりました。そのときに違和感があるというか,工学分野の連続性に配慮した教育課程で,要するに大学院の学部との連続性があるものを作る場合に,その工学以外の者の専任教諭を置くことができる,あるいは実務教員を入れることができるなど,新しい要素がここにだけ入っているのは,何か僕はバランスが余りよくないような。これはある意味では,ほかの連続性がない工学部についても言えることですし,あるいは工学以外についても言えることではないかと思います。なぜこのようにして第12章を作って,このような特別な書き方をしているのでしょうか。
 もう一つ,この資料ですと第12章の第49条の3の下の方です。「この場合において,加えて置く実務の経験等を有する専任教員については,専任教員以外の者であっても,1年につき4単位以上の授業科目を担当し,かつ教育課程の編成その他教育研究上の組織の運営について責任を担う者を実務の経験等を有する教員とすることができる」と,何かよく分からないです。ここで言う「実務の経験等を有する教員とする」というのは,その前の主語自体が実務の経験等を有する者なので,何をここで期待しているかがよく分かりません。何を期待しているのでしょうか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【松永専門教育課長】  ありがとうございます。
 まず,49条の2の部分で置きましたものは,これは特に工学分野に限った話ではなく現行でもできる話ということは当然でございます。ただ,49条の3でその場合の教員についての措置を書くために49条の2をまず置きました。49条の3で言わんとしていることにつきましては,現状運用上ではございますが,専任という者が組織を超えてまたぐことができないところにつきまして,特に大学院で他の研究科におきましては研究指導ができない部分につきましての措置,これをできるようにしよう……。
【金子委員】  それは研究指導の問題です。例えば授業を出すことは全く今も行われているわけですよね。何か特別に何かこういう規定をする必要があるでしょうか。しかも研究指導となりますと,これはかなり違う問題が出てきます。要するに,それは論文指導ができるということですか。
【松永専門教育課長】  はい。それと2項につきましては,工学分野で必要とされる教員数の基準は別途,先ほど申し上げましたように定めるわけでございます。実務家教員をこの企業等との連携による授業を実施するために必要な場合には,その数に加えて専任教員としてまず置いてくださいとした上で,後半の,先生から御指摘いただいた部分につきましては,その実務家としての専任教員というカウントの中でそのみなし規定を持ってきたということでございます。
【金子委員】  実務家教員でも専任教員の中のカテゴリーに入れるものがあると。後半の方で言っているのは,そのカテゴリーに入らなくても「実務の経験等を有する教員とすることができる」と。こうなった人は何の数に入るのですか。
【松永専門教育課長】  例えば,一定の工学分野について何人専任教員が必要ですという数がございます。それに加えてこの実務家教員をまず専任教員として置いてくださいということがございます。そのプラスアルファで置かれた部分につきましては,そこにありますような一定の要件の元で軽減が図られております。専任教員ではございますが,工学部本来に求められる専任教員の数プラスアルファの部分についての規定でございます。
【金子委員】  専任教員,要するに実務家教員でも専任教員の中にカウントできるものがあるという規定がまず一つあって,それに加えて実務家教員で教員になることはできるものがあると。この場合専任教員ではなくて実務家教員であると,そういうカテゴリーがあるということですか。
【松永専門教育課長】  もう一度お願いします。
【金子委員】  ここの2項で言っているのは,実務家教員であって専任教員とカウントする人がいると。それはできると。でも,実務家教員であっても専任教員にならない人もいるということでしょうか。
【松永専門教育課長】  ここで定めたい事柄としましては,本来工学部で必要な専任教員プラスアルファで,まず専任教員として置いてくださいということがございます。この部分につきましては,例えば4単位の方を何人か集めて工学部の中の専任教員1人という考え方は取りませんということでございます。外にまず置いてくださいというのがございます。その外に置いてくださいという中にありまして,一定のみなしをすることでございます。
【金子委員】  そのみなしというのは,専任といてカウントはしないと。
【松永専門教育課長】  いえ,これは専任としてのカウントでございます。
【金子委員】  最後のところで言っているのは,しかし,実務の経験等を有する教員とすることができる,専任教員以外の者であっても最後のところで実務の経験等を有する教員とすることができるものとすると書いてあります。これは専任教員以外の者ではないですか。
【松永専門教育課長】  ここで考えておりましたのは,加えて置く専任教員についてでございますので,表現ぶりについては検討させていただきたいと思います。
【金子委員】  かなり錯綜してきているような,はっきり言って私にはよく分かりません。
【川嶋委員】  必置専任とそうでない専任の違いが明確になっていないということではないですか。設置基準上の必置教員としての専任と大学の裁量で上乗せして配置している専任の区別が明確に記されていないということかと思います。
【金子委員】  でも,この文章で必置専任と大体このような言葉は出てきていないですし。分かりました。いずれにしましても実務家教員を入れなければいけないことは分かりますが,そのカテゴリー自体についてかなり錯綜していることと,しかも連続性がある課程のみに,しかも設置基準の最後の部分にばかっと出てくるのが私はなかなかしっくり来ないです。
【松永専門教育課長】  整理をさせていただきます。前回御説明申し上げたことからしますと,16ページの下のところにございますことが,端的に言えばやりたいことでございます。それを,先生の御指摘も踏まえて,もう少し規定ぶりにつきましては精査させていただきたいと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 続きまして,美馬委員,小林委員,上田委員,それから濱名委員,前田委員ですが,時間が非常に迫っております。上田委員までとさせていただきたいと思います。どうぞ。
【美馬委員】  では簡潔に。一つ質問と一つ簡単にコメントです。
 このように細かく学科専攻縦割りとなって人が動かせないのは,私は今まで不勉強で知りませんでした。これで今日議論になっている工学部がこのように設置基準を変えていくべきということですが,そこで質問です。これは工学部以外でも必要ではないですか。これは何で工学部だけ取り出しでやるのかは前回お話があったのでしょうかというのが一つ質問です。
 それから,2番目はコメントです。これはもっと制度の法改正という以外にもっと踏み込んで,なぜ例えば実務家が必要か,なぜ他専攻の人が必要か,それを運用していくところをもっと踏み込んで書かないといけないのではないかと思います。それが先ほどの上田先生のパッションということだと思います。具体的なもっとイメージですね。つまり,実務を経験していた人を教員にすればそれでいいというものではないし,他専攻の例えば工学部の中に心理学や統計学を幅広くするためにその人を一人連れてくればそれで済むものではないと思います。そういう人が入ってほかの先生方とチームになって,この中でどういう心理学が必要か,関係しているのか,この中で統計学はどう関係しているからというようにして,専攻自体が全体が動くそういうチームの中に入っていかないと,単に心理学の人を入れて実験心理学のやり方を教えても仕様がないと思います。別に実験心理学を否定しているわけではないです。
【鈴木主査】  御質問で。
【美馬委員】  工学部だけでいいですか。なぜ今これなのでしょうか。
【松永専門教育課長】  今回工学部につきまして,先行してという形で御提案になっております。これは二つございます。一つは比較の問題でしかございませんが,他分野に比べると産業界との接点が大きいと考えられるところが1つでございます。もう一つは,前回御説明申し上げましたが,工学につきましては昨年の1月から半年間かけまして,産業界の方と大学の関係者の方の有識者会議を設けまして,そこで速やかにこういう改革を実現していく必要があるという御提言を受けましたので,今回先行して御提案申し上げております。
【美馬委員】  そうしたら,それは産業界からあったから仕様がなくこれを始めたのであってということになってしまいませんか。やるのならもっとほかのも同時にやるべきだったと思います。産業界からの意向があったから文部科学省は始めたということですか。
【松永専門教育課長】  産業界と大学の工学関係の先生方からの御意見を受けて,こういう会議を発足させたという経緯でございます。
【鈴木主査】  どうぞ。
【小松文部科学審議官】  補足させてください。今の御疑問などがきちんとお答えしながらやっていかないといけないと思います。
 経緯的には,そうした新しい基準を作っていくことになりますと作業が要りますので,それが進んでいるところからというのが一つございます。それから今の産業界というお話は,そういう御議論の場があって提言を受けたのは行政としては一つのプロセスですので,それをきちんとこなしていかないといけないです。
 ただ,先ほど川嶋先生からお話もありましたように,そういうものもありますが,ここでの御議論をいろいろ伺っておりますと,文部科学省自身が本来そういう考え方ですが,言ってみれば学問的にみても,工学という分野が直面している新しい分野をどう切り開くかというときに,従来の学科が,それがよくてやっている分にはいいですが,動かそうとしたときにその基準などがないために動かせない,今まで基準に準拠しながらやらないとできないので制約ができてしまうのは取った方がいいだろうということです。
 それから,一面産業界とのニーズとも関係はいたしますが,直接的には社会的なニーズは工学にもたくさんございます。もちろん,公害を防ぐ,環境安全の問題もありますし,安全性の問題もあります。学校でしたら,発達段階の動線の問題をどうするのか。あるいは高齢者はどうするのかなど,そういったトータルの中に今の産業界というお話もあると。それを象徴的に語られやすいということだと思います。
 そういった点を踏まえまして,ここの御議論を踏まえて,実務的な基準を定めていくことになりますと,ほかの分野を全部やった方がいいという考え方はあると思います。それを一斉に全部同じ時期にやろうとすると,膨大な時間がかかって全体が進まないこともあります。そうしたそのトータルで考えて,まず工学を進めるということで御議論いただいて,御了解を頂ければとそういう趣旨でございます。
【鈴木主査】  では,小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  時間が迫っていますが,どうしても確認したいことが二つあります。
 一つは,前回の議論で工学系についてはこういう形で進めるけれども,ワーキングでは別に議論しているわけです。この工学系の議論を前例としない,そこまでは今言いませんが,前例としてもいいですが,それを含めて議論することになっていたと思います。それは合意ができているのではないかと私は思っております。それが1点目です。
 それから,もう1点は確認したいことです。先ほど金子先生が言われた設置基準の改正のところです。8ページです。改正のところで第49条の3で「教員を置くものとする」とあります。それから,その2項でこれも最後に2ページにわたって「置くものとする」と書かれております。「置くものとする」という場合には,普通の解釈で言うと「置かなければいけない」という意味に解釈されると思います。これは「置くことができる」とは相当違う議論になると思いますが,これは必ず必置ということで提案されているということでよろしいでしょうか。
【松永専門教育課長】  この連続性に配慮した教育課程を置く場合で,企業等との連携により授業を実施する場合には,必ず本来の数プラスアルファでこういう方を置いてくださいという趣旨でございます。
【小林主査代理】  分かりました。そうしますと,これはもう少しきちんと議論しないと,かなり重要な問題を含んでおります。先ほど言った前例としないこととも併せて,もう少し議論しないと,ここで今回で決めるのは非常に難しい議論になっていると思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 上田委員,どうぞ。
【上田委員】  では,手短に申し上げます。理工系の大学の中で文系の教員をやっている者として申し上げます。
 この工学部の改革は,まさに私たち東京工業大学がこの二,三年やってきた改革そのものですので,そういう意味で私はこれを大変高く評価したいと思います。改革をやってみて分かったことは,一つ一つの専門分野でもうがちがちになっていて,そこが企業とも結び付きもあるし,先生一人一人はそこでお金も入ってくるので,自分の研究室さえよければいいという先生方もたくさんいらっしゃいます。
 そういう意味では,余り工学部は変わっていけない。例えば金属工学なら金属工学,何とかなら何とかというところでがっちり固まっているので,こういうイノベーションが逆にできない部分を抱えています。こういったことが今回提案されたのは,大変すばらしいことだと思います。
 ただ,その中で先ほど川嶋先生もおっしゃったように,この書きぶりが私は非常に気になっております。例えば,東京工業大学は2030年までに世界のトップ10のリサーチユニバーシティになるといって,たくさんその世界のトップ10のリサーチユニバーシティを視察しました。そうすると,そこの大学のミッションが多くは「21世紀社会をよきものにするために」,「この世界をもっとよいものにするために」とミッションに掲げています。日本の大学は役に立たないと責められてきたので,「社会のお役に立つ」とすぐ言いたがります。
 ところが,「社会のお役に立つ」と「21世紀をよきものにする」のは全然違っています。「社会のお役に立つ」と言った途端に,その考える主体は誰なのかというと,社会の方が考えてくれて,大学はお役に立つためにその手足となって頑張るということです。世界のトップ10のリサーチユニバーシティというのは,皆自分たちが21世紀をよきものにする,よきものにすると言った途端に,大学に対して「では,よきものって何ですか」と。「どうやったらよきものになるんですか」という考える主題が,大学の側にあるということです。そうならなければ単に社会が,産業界が「こういうことをやってください,ああいうことをやってください,では手足となって頑張りますよ」と。大学が手足でしかなくなる。それは大学ではないと思います。
 そのことを中心に考えて我々は改革をやってきました。ここの書きぶりが「産業界のニーズを踏まえた」ということが強調されています。ニーズではなくて,そこからシーズを生み出していく。まさに,大学の側から産業界にも提案を行っていく。もちろんニーズにも対応しますが,大学の側から提案をしていく新たな……。
 ですから,この名古屋工業大学のこれは非常に優れていて,「新たな価値・ものを創造する」,協働して新たなものを創造していく。そこの創造性がないと,単に手足となって働くものになってしまうと思います。
 そして,そのことが大きく問題になるのは,これが工学系教育が先取りしていて,それからいろいろなほかの分野に広げていくことをおっしゃっています。この書きぶりが人文社会分野に広がっていった場合に,この書きぶりでそちらも書かれてしまうと「大学って一体何なのか」になってしまうと思います。その二重の意味も含めて,これは意外と工学部教育だけではなくて,「大学とは何なのか」という大きな問題を含んでおりますので,そこら辺を是非大学の側から発信していくことを是非盛り込んでいただければと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。濱名委員,それから前田委員には,発言の機会を差し上げられずすいません。本件につきましては,工学系教育改革の方向性を明日開催されます本ワーキンググループの親会議でもあります大学分科会と将来構想部会の共同合同会議においても,御意見を頂くことになっております。そこでの御意見も踏まえまして,改めて次回の本ワーキンググループで議論をしていただくことにいたしたいと思います。そのときに御発言をお願いいたします。
 時間が来ておりますが,もう一つ非常に短く最後に,先週23日に第6回人生100年時代構想会議が開催されました。リカレント教育を議題に検討が行われたということですので,当日の資料等も含めて,事務局から御報告をお願いいたします。
【伊藤生涯学習政策局参事官】  失礼いたします。生涯局参事官の伊藤と申します。よろしくお願いします。お手元の資料3と机上に配られております水色のこの資料に基づきまして,本当に簡単に御報告を申し上げたいと思います。
 資料3で,23日金曜日に行われました人生構想100年会議で,各委員からリカレント教育の一層の推進に向けて様々に御意見を頂きました。多岐にわたりますので,文部科学大臣の資料だけ御紹介申し上げます。資料8で全部組まれているので恐縮です。資料8の見取り図としては,3ページが全体の方向性で文部科学大臣からも御発表いただいた内容でございます。ここの柱だけまずは御紹介申し上げます。
 大臣からは,リカレント教育の今後一層の拡充ということで大きく柱として4点と。リカレントプログラムの供給拡充で産学連携の教育プログラムの一層の充実とともに,それをしっかり質の保証をしていくということで,より短期のプログラムについても質保証をすることと,あと制度できちんとその質保証を裏打ちしていくことで履修証明制度,単位累積加算等の利用促進,そして放送大学等を活用した実務型オンライン講座の大幅拡充が報告されました。
 2点目の柱として実践的な教育を行える人材の確保です。先ほども御審議いただいておりましたが,実務家教員,実務があればいいということではなくて,しっかり質の確保をするための研修プログラムの開発受講促進と,人材共有のためのプラットフォームの創設を進めていく方針を提示させていただきました。また受講しやすい環境の整備であったり,また産業界等に対してもこれらを支える機運の醸成を求めさせていただきました。
 これらを受けまして,総理からは最後お配りいたしております1枚紙でございます。内閣総理大臣発言でございます。ポイントとしては,この資料の下から4行目からでございます。この夏に全体としてこの100年時代構想会議の基本構想の取りまとめられる中におきまして,4点です。教育訓練給付の拡充,産学連携によるリカレント教育プログラムの策定,企業等におけるそういった学びをした者を積極的に中途採用していくこと,また技術者のリカレント教育等について検討を進めるということで,関係大臣に対してより検討を進めていくよう御指示があったところでございます。
 今回の議論を踏まえまして,夏に向けて関係省庁とも連携して施策の検討を進めてまいりたいと思います。また,随時御報告差し上げたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本件は時間の関係から報告のみとさせていただきます。
 本日の議題は以上となります。最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  それでは,御説明いたします。次回は4月10日火曜日16時から18時の会議になります。よろしくお願いいたします。
 また,本日の資料につきましては,郵送を希望される方におきましては,机上に置いております付箋等にその旨を記載いただきまして,机の上にそのまま資料を置いていただくようお願いいたします。
 また,本ワーキンググループの委員でいらっしゃいます前野委員が,御所属の木更津高等専門学校の校長を定年退職されることから,本ワーキンググループの委員につきましても御退任されます。本日がワーキンググループとしては最後の御出席となります。前期中央教育審議会以来,貴重な御意見を数多く頂いてまいりまして,どうもありがとうございました。
【鈴木主査】  それでは,前野委員,一言お願いします。
【前野委員】  それほど長い時間ではありませんでしたが,定年退職ということで,本当にありがとうございました。いろいろ申し上げたいこともたくさんあったのですが,なかなか十分な知識もなく,ありがとうございました。特に先ほどの1の学修の質保証の向上に関しましては,非常に環境が整ってきた印象があります。学生がいかにこの環境の中で,受動的な姿勢から能動的な姿勢に1年でも半年でも早く変えられるような手法,また先ほど来おっしゃっていただいているように,教員が自分の研究以外の極めて受動的な姿勢からいかにして能動的な姿勢に変わるかという方法を是非御議論いただければ非常に有り難いと思っております。
 どうも本当にありがとうございました。
【鈴木主査】  前野委員におかれましては,本ワーキンググループに積極的に参画いただきまして,主査として御礼申し上げます。ありがとうございました。
 それでは,本日の議事は終了いたします。どうもありがとうございました。

――了――

お問合せ先

高等教育局大学振興課