将来構想部会(第9期~)(第19回) 議事録

1.日時

平成30年5月25日(金曜日)10~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(委員)有信睦弘,村田治,山田啓二の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,金子元久,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木雅子,伹野茂,千葉茂,福田益和,益戸正樹,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長,常盤生涯学習政策局長,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官,村田私学部長,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,丸山私学助成課長,齋藤留学生交流室長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

(1)  我が国の高等教育の将来構想について,村田委員,麻生委員から御発表があり,その後意見交換が行われた。

 

【永田部会長】  おはようございます。定刻になりましたので,第19回の将来構想部会を始めさせていただきます。

 前回, 2040年を見据えた高等教育の将来像について,佐藤委員と福田委員から御発表いただき議論を行いました。また,国際化の動向について,東北大学の米澤先生と早稲田大学の黒田先生に御発表いただき,議論を行いました。

 本日は,前回に引き続き高等教育の将来像について,村田委員と麻生委員に御発表をお願いしております。その後,高等教育の海外展開や,留学生の受入れなどについて議論をしたいと思っております。このテーマについては,将来構想部会の下の制度・教育改革ワーキンググループにおいても議論が進んでおります。その議論も踏まえ,大学の海外展開や留学生30万人計画の報告を頂きながら,ポスト留学生30万人計画等についても御議論いただくことになるかと思います。

 それでは,事務方から配布資料の確認をお願いいたします。

【石橋高等教育政策室長】  配布資料につきましては,資料1が村田委員の御発表資料,資料2が麻生委員の御発表資料になっております。資料3から資料6までが海外展開等の国際化の状況の資料になっております。資料7が今後の日程でございます。不足がございましたらお申し付けください。

【永田部会長】  それでは,早速始めさせていただきます。6月末に取りまとめる中間まとめに向けて,2040年を見据えた高等教育の姿というものについて更に議論を深めたいと思います。

 本日,村田委員と麻生委員に御発表をお願いしております。最初に,村田委員から御発表をお願いしたいと思います。

【村田委員】  それでは,私から御報告,発表させていただきます。お手元の資料を御覧いただければと思います。1枚目,2枚目でございますが,これまでこの構想部会で様々な議論をしてきておりますが,余り深く議論されていないのは,恐らくAIの影響だと考えております。その意味で,第4次産業革命への対応を考えていく必要がございます。人工知能あるいは自動化への対応です。

 特に大学で,あるいはリカレント教育も含めて,AIを活用する人材の育成です。2040年を見据えて,どう考えていくかが極めて重要であると思います。そのために大学教育においてAIを活用する人材を,どのように大学教育で育成をしていくか。そしてその制度設計。急激にAIの活用人材が不足するということが言われています。そのために制度設計やプログラムの開発が極めて重要な課題と考えています。

 もう一つは,マル2のところです。労働需要の変化へどう対応していくか。野村総研の調査では,これから10年から20年を掛けて49%の仕事がなくなるということです。恐らく5年もすれば大きく労働市場の構造が変わってくる。その中で,どのような仕事が新たに生まれてくるのか。そしてまた,なくなる仕事,AIに取って代わられる仕事はどうだろうかということを考える必要があります。特に非定型的でコミュニケーション能力が求められる仕事が,これからもAIには代替されない仕事というように一般に言われております。

 そしてさらには,どういった仕事が新たに生まれてくるかということを考えながら,そして更により重要度のある仕事,人間が直接より手をというか,頭を使ってやる仕事はどのようなものか。例えばAIのアウトプットを人に分かりやすく伝えていく,顧客に分かりやすく伝えていくような仕事。あるいは大局的な観点に立って判断をしていくような仕事は,これからますます重要となってきます。そういった意味では,真の意味でのコミュニケーション能力の育成ということが重要になってくると考えています。

 更に必要となる能力開発のプログラムや制度設計はといいますと,急激な人材不足に対応しましては,e-LearningやOff-Campusだけの授業で単位認定を行う制度。今の設置基準ではそれができません。それができる制度にしておかないと,急激な人材不足に対応できないのではないかと思っています。

 更にコミュニケーション能力を身に付けるために,チームで課題を発見し,実践的な授業,あるいは正課外の教育がますます重要になってくると考えています。

 そして更に最も重要なことは,AIの発達によって新たに生まれてくる仕事,あるいは労働需要の変化に柔軟に対応できるようにしておく必要がございます。どのような仕事がこれから必要になってくるのかというのは,5年,10年,15年たっていくと,これは変わってきますので,それに対して柔軟な学位プログラムを構築することが極めて重要だと思っています。

 もう一つ重要なのは,現在AI人材といえば,どうしても理科系というわけになっています。そうではなくて,社会科学系,人文科学系であってもAIの仕組み,あるいはIoTについてある程度分かっている必要があると考えています。その意味で,少なくとも大学入試段階での理系と文系の区別を廃止するということが,これから本当に日本が世界と伍(ご)していくためには,重要ではないかと思っています。

 もう一つ重要なのは, AIの発達によって社会構造が二極化されるということも言われております。中間層が減るということです。そのときに,人でないとできないような仕事,例えば職人的な仕事というのは残ります。そのときに大学教育,専門学校等も含めてのどういった形でこの二極化に対応するような教育を,高等教育全体でしていくかという役割分担も今から考えておく必要があります。このところがほとんど今考えられていないのではないかと思っています。

 AIで仕事がなくなる一方,AIが発達しても残る仕事,職人的な仕事に関しては,むしろ需要が増える可能性があります。そこをどうするかということを考える必要がございます。

 そういったことを前提に,4ページ目,教育の質の保証を考えたいと思います。その中で一番重要なのは,学修時間の確保であろうと思います。もちろん学修時間を確保するためには,準備学修,授業後の課題を課すことが必要となります。けれども,これらをやるためには少人数での授業や,既にアメリカははるか昔からされていますようにTAやLAの配置,これが重要であろうかと思います。そのためにもボリュームゾーンである私立大学のST比の改善が急務だと思います。そこをどうするかということが,これから重要になってくる。

 同時に,日本の場合,どうして学修時間が少ないのかという原因を究明していく必要があろうかと思います。恐らくモチベーションがなかなかない。そのような意味では,課題発見型の能動的な学びの仕方を導入することによって,学生自らが学びたいようなことをして学修時間を増やしていく。単に学修時間が増えても中身が空っぽ,密度がない場合には意味がないわけですから,少しそういった基本的なところを考えていく必要があろうかと思います。

 それから柔軟な学位プログラム。質の保証を行うためには,柔軟な学位プログラムは極めて重要で,AIの発達だけではなくて,複合的な現実の問題,現実の問題はかなり複雑で入り組んだ問題が多いわけですから,その現実問題を解決するためには,一つの分野の知識では到底対応できない。その意味でも,教育組織と学位プログラムの分離をやっておくことは,本当に必要なことだと思っております。

 現実の問題は非常に複雑に絡み合っているがために,むしろメジャー,マイナー制度を必須化することぐらいを考えないといけないのではないか。特に学部教育段階ではメジャー,マイナーを必須化するというようなことを考え,それによって複合的な視点を養っていくということが必要だろうかと思います。

 よく将来構想部会でも議論になっておりますが,永田部会長がよくおっしゃいますリベラルアーツというのは,実は一般教育ではなくて,むしろ専門教育をきちんとやりましょうという話です。そのような意味ではメジャー,マイナーの制度を必須化するぐらいの形にしていかないといけないのではないかと思っています。

 引き続きまして,大学の機能分化についてです。機能分化は必ず必要であると考えております。必須の条件ですけれども,各大学が持つ自大学内での相対的な強み,経済学でいうところの比較優位の考えで,自大学の中でどこが優位だ,強みだということ,そしてその特徴を伸ばすことを目的とすべきです。将来構想部会,4月17日「資料2」の人材養成の三つの観点(イメージ図)にあるような固定的なステレオタイプの機能分化に誘導すべきではなくて,各大学の立地条件,建学の精神に照らし合わせまして,自由で柔軟な機能分化を行う必要があろうかと思います。

 今申し上げました三つのような,イメージ図にあるような形にしてしまいますと,それは大学を三つのタイプに画一化してしまうという恐れがございます。むしろ多様性が損なわれると考えます。

 それからもう一つ,それぞれの大学が機能分化を自主的にしていくことが極めて重要であると申し上げましたが,このことは認証評価との連動が重要になってくると考えています。認証評価は最低限の条件をクリアしているかどうかという点で,認証評価が行われております。しかしながら,例えば国際化,地方創生,研究成果,就職実績,外部資金の導入等と,このようなカテゴリー別にして機能分化を図るとともに,認証評価におきましても,このような項目がどのレベルで達成できているかということまで認証評価をするべきだと思います。認証評価と抱き合わせることによって機能分化の実質化,そして認証評価の実質化が図っていける,そういった制度設計も考えられるものではないかと考えています。

 それから大学の規模と連携・統合について。大学の規模に関しましては,AIの影響がまだ完全には予測できないところです。労働需要の構造変化がどうなるかは分かりません。そのような意味では,柔軟に対応できるように2040年の大学等の収容定員に関しては,あくまで市場メカニズムにある程度任せながら,保護や廃止といったものを余り政策的に誘導すべきでなくて,極力市場メカニズムに任せた方がいいのではないかと思います。 大学の連携・統合に関しましては,人口減少や過疎化を考えますと,都道府県別ではなくてブロックごとで大学配置を考えていかねばならない。更に4割の自治体が存続の危機に瀕(ひん)している,今後瀕(ひん)するだろうと言われております。そして大学教育には,労働生産性に関する様々な分析でも出ておりますが,集積のメリットがございます。大学教育はサービス業ですので,集積のメリットがあるということを考えた場合に,各県の中核都市に大学を集約させることも必要だし,あるいは過疎を考えた場合にはe-LearningやOff-Campusでの授業の制度設計が必要だろうと思います。

 それから国立と私立の間の関係がとりわけ問題になりますが,地方国立大学と公立大学のすみ分けと統廃合,これも極めて重要な課題だと認識してございます。運営費交付金も地方交付税も,これは税金です。その税金が本当に公的な高等教育に効率的に回っているのかも検証していくことが必要ではないかと思っています。

 そして5番目,修士課程,博士課程修了者の増加策です。御存じのように知識基盤社会の到来によって,より幅広い層に,より高度な専門知識が必要となってまいります。そのために大学院の教育の役割が重要になっていまして,これもOECD等のデータで博士課程の修了率と労働生産性が正の関係にある,こういったデータもございます。

 それから大学教育が,当然今ユニバーサル化されております。その中で,大学教育の目的が知識や技能だけではなくて,コンピテンシーレベルの汎用的な能力の獲得へ軸足が移ってまいります。そうすると当然,専門的な知識・技能の修得は大学院の役割へとなってくると思っています。このことは,大学進学率の上昇ということを考えた場合,あるいは高等教育の進学率の上昇を考えた場合,知識レベルでの平均的な能力の低下というものは否めないわけで,そのような意味では大学院教育の役割は重要になってくると思います。

 最後ですが,リカレント教育につきましては,学部レベルのリカレント教育というのは50%以上の人が大学に行く状況において余り重要ではないと考えています。これも昔から生涯学習の研究で言われていますように,大学を出た人は,むしろリカレント教育を受ける率が高くて,その求める知識は大学レベルでなくて,大学院レベルである。更に知識基盤社会といったときに,むしろ大学院レベルのリカレント教育が重要で,そこをどうしていくかということが極めて重要だと考えています。

 しかしながら,社会科学系や工学系,分野によっては修士課程を充実させていくのか,更に博士課程まで充実させていくのか。あるいは高度職業人の教育をしていくのか,そのあたりを制度設計していく必要があろうかと思います。特に博士課程といった場合には,研究者養成の場合,これは理科系,自然科学系は装置設備に莫大(ばくだい)にお金が掛かります。ここのところは国立大学に任せるというような選択も当然あるべきだと思っています。

 それから,これも極めて重要なマル2でございますが,産業界と大学とのマッチングが全く今なされていない状況で,産業界からは大学のリカレント教育,あるいはそのような教育がなっていないと言われます。逆に大学から申し上げますと,産業界の就職の在り方が新卒一括採用であって,全く高度成長期の下での採用,あるいは,日本型雇用慣行を大前提とした就職の制度です。そのあたりのことを社会科学系,工学系の分野ごとの産業界と大学とのニーズ,そして教育体制との具体的なマッチングが必要かと思っています。私の報告は以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 続いて,麻生委員から御発表をお願いしたいと思います。

【麻生委員】  それでは資料2を御覧ください。短期大学の歩みと特色です。今からの発表は短期大学を中心に考えたものです。高度成長期に女子に適した大学であり,ピークは平成5年の53万人で,その当時は高等教育入学者の約20%が短期大学生でした。それから現在,平成29年のデータですが,337校,内国立が今は0校です。公立が17校,残りは私立短期大学ということになります。

 特色としましては,二年制,三年制の短期大学士の学位を授与できる機関であり,それから教養教育・職業教育のバランス。きめ細かい学生支援。大学への編入。自己点検・評価,教育の質保証並びに内部質保証,全国に点在する学校です。また,地域からの入学者が多く,就職者も多い。女子教育に貢献している。二年制,三年制ですので学費負担が低廉である。地域の活性化に貢献する。特に専門職業人養成という観点では,幼稚園教諭や保育士,その他資格系の就職が多いことです。

 3ページ,これは平成29年度の速報で,短期大学と大学と専門学校を分野別で比較しております。学生数を見ると数が明らかに違うのですが,比率で見ると枠で囲っておりますように教育系,家政系,人文系,保健系が他の機関よりも多いという特色を持っております。目的である職業教育や実際生活ということに結び付いています。

 4ページ,これは平成26年に大学分科会の下にあった短期大学ワーキンググループで出てきた短期大学の機能別分化です。1番,2番,3番,4番と,このような分化をするという提案がなされまして,それぞれの短期大学の特色を機能別分化によって出していこうということが平成26年に示されております。その中で,下に書いてあります1番目,2番目,3番目は短期大学に進学することを前提としたファーストステージ教育ということが記されております。

 次に5ページです。議論の対象とすべきは,これから約20年先にどのようになっていくかということを,様々な角度から推計できるわけです。このグラフによると,何となく先のイメージとして見えてくるものがあります。

 このままいくと短期大学の入学者は減少していくであろうと考えております。しかしながら,先ほど申し上げたような観点から,短期大学が持っている使命を終わらせていいのかということを考えなければなりません。したがって,制度改革や機能強化という点は,今後議論していくうちでは必須であると考えております。

 次に6ページを御覧ください。短期大学を法的視点から抜粋してみました。真ん中に短期大学を書いておりますが,学校教育法の中で規定されている大学,それから今度できます専門職大学,短期大学,専門職短期大学,それからその次に高等専門学校,次に専修学校(専門課程)です。線を意図的に引いているわけではないのですが,上の三つの丸が第9章の大学に規定されております。大学は全てこの大学の9章に入っており,その目的の文章は「深く専門の学芸を教授研究し」という文章が入っております。

 それから高等専門学校については「深く専門の学芸を教授し」と「研究」は入っていませんが,実際は研究をしていると思います。それから専修学校(専門課程)は「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成又は教養の向上を図る」。その中で「専門課程を置く専修学校は専門学校と称する」と,11章の126条2項で規定されております。

 このような四つの大学体系として, 2年制,3年制の教育機関が短期大学と専門職短期大学で,4年制で規定されているものと違うのは最後のところの文章です。「応用的な能力を展開させる」という文言が4年制大学は末尾に書いてあります。短期大学と専門職短期大学には「能力を育成する」という文言が書いてあります。これらは抜粋ですので,このような法律上の体系になっているということです。

 では,7ページにお進みください。今までの議論の中で,大学のランキングや学力がどうなるかということも議論されてきました。けれども,短期大学に関係する者として,短期大学は特色ある大学としての役割を担うべきであろうと思っております。当然,世界のランキングで短期大学が出てくることはありません。

 それから2番目で,大学教育を受けた者全てに対して,また中等教育修了者に対して,大学教育を受けることを提供するということを短期大学は目指すべきだと思っております。

 それから,これは生涯教育にも関わるのですが,地域に住んでいる高齢者のアクセスしやすい大学。それから次の丸の,介護人材の育成,そして少子化対策に必要な保育士,幼稚園教諭の育成です。また,全国の地方都市に散在しておりますので,その地方のニーズを受け入れて人材養成できます。それぞれの専門分野もありますが,そのような人材を育成していくことが地域貢献につながるだろうと考えております。

 それから,教育の質保証という観点から,高等教育としての質が保証された高等教育機関である大学としての位置付けです。これは国際通用性につながってくると思います。後でも申し上げますが,米国のコミュニティ・カレッジのような役割を担うべきだと思っております。

 最後に,大学教育の前期部分の教育を担うという観点も入れておくべきだと思います。といいますのは,短期大学は法律上,大学の編入が認められております。その観点から,今後このような前期課程,後期課程の議論が出てくると思います。

 それから8ページです。これは以前に出されました,左上に小さなイメージ図で高等教育機関の役割,左側が学術重視,右側が職業重視ということで,その真ん中に枠で囲んである大学体系で,先ほど申しました大学,専門職大学,短期大学,専門職短期大学です。ここで提言させていただきたいのは,2040年に向けて,大学制度というのは大変複雑になってまいります。そこで短期大学を含めて,全て大学という位置付けは間違いないのですが,それぞれの設置基準等が違うことは承知の上でございますけれども,大学の例えば前期課程,括弧書きにしてあります。若しくは大学(二年制・三年制)という名称を使う。若しくは何々大学丸々学科(二年制)というような表現もできるのではないかと思います。これは現行の法令ではできませんが,そういったことを今後考えることが大学の体系の整理になるのではないかと思っております。

 前期課程という概念が出てきたのは,後ほど説明しますが,平成31年から発足する専門職大学には,前期課程,後期課程を置くことができるということが法律上に記載されています。ただし,前期課程のみを置くことはできないようになっていますが,そこに着目することで,前期課程のみを担えるような形にできないかと考えております。

 3番目には四年制大学の現状型を維持しつつ,前期課程・後期課程を置くことができるという考えを活用できないかということです。

 2番目に戻りますが,短期大学の卒業者に与えられている現在の学位は短期大学士です。これは以前も申し上げましたけれども,短期大学士という機関名称が学位になっているのは違和感があります。「さんずい」の準学士は,今は学位ではなく,高等専門学校が称号として使っております。アソシエイト・ディグリーであるならば,准教授で使われている「にすい」の准学士の学位であるべきであろうと考えております。

 それから4番目は実現が難しいと思いますが,四年制大学を出て飛び級の制度の後に早期卒業制度というものもあります。大学院に進学する場合,学士の学位を取って3年の教育を受けて大学院に進学するということを考えれば,現行の大学は二年制,三年制,四年制,六年制がありますので,三年制の短期大学の卒業者が一定の条件を満たした場合,学士の学位を与えるような制度設計もあってもいいのではないかということを提案させていただきます。

 最後に,このような考えに至った趣旨と歴史を含めて,現在の大学制度は,4年間の学修を大学と規定して臨床系の医学部等を六年制として,戦後大学として機関名称により制度化されております。ただし短期大学につきましては,短期の大学ということで4年制大学に移行しなかった,若しくはできなかったところが残っております。これは米国におけるジュニア・カレッジという概念もあると思いますので,ジュニア・カレッジについて言及させていただくと,最近はコミュニティ・カレッジという表現をするところも多くなってきました。場合によっては多様化するニーズに対応するコミュニティ・カレッジ。呼び方としてはツーイヤー・カレッジやフォーイヤー・カレッジという名称も使われておりまして,場合によってはツーイヤー・カレッジの教職員が,ツーイヤー・カレッジとしての誇りを持った研究,教育を行っています。日本短期大学の教員がそうではないとは言いませんが,米国は誇りを持ってやっております。そのような体系を見習うべきではないかということを考えております。

 それから,アメリカの制度を見れば,現在の状況がちょうど20年後を見据えたものとよく似ているような気がします。そうしますと,現在のアメリカの制度というものを是非参考にした形での短期の大学としての位置付けを考えるべきだと思っております。

 オバマ政権のときに,多くの方に高等教育の機会を与えるという観点で,コミュニティ・カレッジへの進学を相当推奨したということも,皆さん御存じのとおりと思います。その結果どうなったかは分かりません。

 次に,高等教育の基本を書いておりますので,読んでいただければ分かるのですが,アメリカでは今セルフ・スタディーからアクレディテーションによる認定の流れというように進んでおり,日本にも当然そのようなことが必要です。そのような形でアメリカのアクレディテーションというものと,日本の認証評価というものを比べると差が歴然としておりますので,大学設置の場合は,例えば最初の設置認可,アフターケア,7年以内に1回の機関別認証評価があります。この認証評価の在り方も今後強化すべきであると考えております。

 それらを含めて,国際通用性の観点では,欧州の高等教育圏のレベルと同等の5Aの高等教育機関として,それが通用するような観点で今後大学の在り方を進めていく必要があると思います。

 これらのことを踏まえて,短期大学の制度設計をある程度見直すことにより,大学体系の中の確固たる位置付けとして全ての大学教育を受けたい方にその機会を提供するということを,是非今後議論すべきだということを考えております。以上です。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 それでは,お二人の御発表を基に議論を行いたいと思います。はじめに,村田委員に対する御質問等を先に受けたいと思います。いかがですか。

 では,小杉委員,どうぞ。

【小杉委員】  ありがとうございます。村田委員の発表,大変賛同するところも大きいのですけれども,今回の技術革新というのは非常に大きくて,また速度が速いもので,労働需要も大きく変化するのも目に見えていると思っています。

 その中で,速度が物すごく速いので,リカレント教育の部分が非常に重要になっているというように思っています。最後におっしゃっていましたとおり,日本でリカレント教育がこれまで十分発展してこなかったのは,一つには企業側の姿勢が問題であるのは間違いないと思います。日本型雇用慣行といわれる,一括採用の後に内部労働市場での異動,更にOJT,企業内教育訓練という形で企業の中で教育訓練をするという仕組みについて,村田委員は専門の立場から現状をどう認識されているか。

 そして,これに対して村田委員は大学と産業界のマッチングの必要性を指摘していらっしゃいます。では,一体どこからどのように手を付けるべきか。その辺,何かお考えがあったら教えていただきたいと思います。

【村田委員】  ありがとうございます。今の一括採用というのが日本型雇用慣行に基づいたものであって,同じレベルの,同じ質の人を採用して,それによってOJTでやっていくことを前提にしています。残念ながら企業はもう既にバブル崩壊の後,財務的にも,そして技術のスピードにも対応できなくて,ほとんどの企業で自前でのOJTができなくなってアウトソーシングをしている状況です。ところが,一括採用で採用すると,新卒の労働者は自分でやっていくような精神が余りなく,横並び意識だけがまだ残ってしまっていて,そこのところが非常に難しい。

 そして一方で企業は,日本の大学に関しましては,新卒一括採用で採用して,なおかつ大学に対しては,日本の大学教育はなっていないというのです。メーカーなどは海外から優秀な人材を採用しているというわけです。

 例えば,一括採用をやめることによって,どの段階でも採用できるような形にしていくとが必要だと思います。大学側あるいは学生の側にすれば,大学時代きちんと実力を付けておかないと難しいのだという意識改革にもなります。これは御存じかと思いますけれども,日本の場合の一括採用,賃金の後払い制度は,ある意味,非常にリスクをヘッジしながら効率よく労働者を雇っていくという制度になっています。企業側も少しそのあたりを考えて,抜本的に考えていく必要があると思っております。

 もう1点,マッチングの問題です。日本の場合はサービス業でアメリカの約5割,それから製造業でアメリカの約7割の労働生産性しかありません。アメリカと日本では,サービスの質が違うといわれますが,サービスの質を考慮しても,日本の場合は労働生産性が低い。一方アメリカは,サービス産業に関しては知識集約型と位置付けて,かなり高等教育を受けた人が入っていっております。それで生産性を上げていっているわけです。まだまだ日本のGDPの中で70%を占めるサービス業に対して労働生産性を上げていくのは可能です。そこのところをどのようにマッチングしていくかということが重要です。そこはMBAなどの大学院での教育をどうするのか,そして企業が何を必要としているのか,ということを,お互いに話をしながら,大学は課程を作っていく必要があると思っています。

【永田部会長】  益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  村田委員,麻生委員のお話は,教育は市場メカニズムによって変わっていくものである。私は,大変納得できる点が多く,分かりやすいプレゼンでした。ありがとうございます。

企業側の努力というのは,これは常にいわれていることであります。既に始まっているところもあります。例えば,バークレイズでは,80年代から今皆様が言われていることを始めています。日本企業では,10年後にそれができる企業,逆に30年たってもできない企業が出てくるでしょう。会社規模や経営環境に左右されて,全てが変わる保証はありません。しかし,社会にでる前の教育段階で,様々な変化の可能性などは,しっかり教えていくことは重要です。

私自身の外資系企業の経験では,卒業年次が何年だとか,どこの高校卒業か大学は,などの質問は余り意味がなく,聞かれる機会は余りありませんでした。今後,日本もそのような方向に変わっていくのではないかと思ってお話を聞いていました。

村田委員に是非お聞きしたいことがあります。村田委員の大学は非常に海外のネットワークも広いと思いますし,キリスト教を通じて連携している学校も多いと思います。企業ではよくマーケティング調査とか,同等レベルの国内外の企業を比べてビジネスプランを立てたりすることがありますが,例えば,海外大学の運営方法や卒業後のアウトプットを一つのベンチマークにして,自己評価を行うような取組についてはどのようにお考えになりますか。

【村田委員】  ありがとうございます。実は関西学院はこの3月に「 K w a n s e i  G r a n d  C h a l l e n g e 2 0 3 9 」というものを発表いたしました。創立150周年に向けての大きな長期ビジョン,そしてそれに基づく長期戦略を作りました。関西学院大学はアメリカの宣教師が作ったものですから,大きなベンチマークとしてアメリカの制度を参考しております。

 例えば,オバマ大統領が就任最後の年に作られましたカレッジスコアカードというものがございます。これは各大学を卒業した学生が,例えばどれぐらい年収を稼いでいるのか。それだけで計るのは問題があるかと思いますが,それぞれの大学に払った費用と,その収益を比較しているのだと思います。そういったことまで考えて大学教育はいかに効果があるかということも含めて,最上位の目標として「質の高い就労」,さらに,豊かな人生といったものをどうするかというようなことを,どう定義していくのかということを参考にしながら長期ビジョンを作っていった。このような経緯がございます。

【永田部会長】  佐藤委員,どうぞ。

【佐藤委員】  村田委員,ありがとうございました。非常によく整理されて,必要なことをまとめていただいていると思います。

 一つだけ,村田委員は柔軟な学位プログラムには大学入試段階での文系,理系の区別の廃止ということを言っておられます。これはそのとおりで,必要なことだと思っています。ただ,大学側だけではなくて,中等教育,高等学校のレベルできちんと対応しないと,この問題は大学の教育課程を想定した入試ではなくて,高等学校の教育課程をチェックするための入試になっているとしたら,どこかで考えなければならないことだと思います。

 それから村田委員が学修時間の確保のためにST比の改善が私立大学に必要だということをおっしゃっている。そのとおりだと思います。世界のランキングを見ても,ランキングを決めるときにはST比というのは割と大きな要素になっているのだと理解をしています。ただ,今の私立大学が抱えている課題からいうと,ST比を改善しようとすると,非常勤教員に頼るか,あるいは人件費の問題ということがあります。財源を確保しないと,この問題を改善するのはかなり大変だと思います。設置基準が最低基準ですから,そのような意味でも,その手当が必要かなと思っています。

【村田委員】  まず一つ目。文系,理系の入試段階での廃止という主張に対しまして,高等学校の教育というのは重要かもしれません。しかしながら,高等学校で文系と理系に分かれているのは,大学入試で文系と理系で試験が違うからであって,入試の仕方が恐らく間違っているのだろう。例えば,東京大学で全ての学部で理科2科目,社会2科目を全員に課しますとすれば,文系,理系分かれないわけです。

 逆に言いますと,文系,理系関係なしに入試をやっておきますと,大学に入ってから,こちらの学問の方が面白いなと,今でいう転学科が実現可能です。文理融合はよくいわれますが,文理融合は理科系から文系への融合であって,文系から理科系というのはなかなか難しい。そこは積み重ねの学問ですから,大前提として高等学校までの間に両方やっておきなさい,そのことはある意味ではリベラルアーツの教育にもつながっていきます。入試段階でそのようなことは必要だと考えております。

 それからST比に関して,佐藤委員がおっしゃるとおりでございます。これからアクティブラーニング含めてコミュニケーション能力を高めていく,それもグローバルな意味でのコミュニケーション能力,語学も含めて相手と交渉をして自分の主張をしていく。そのためには自分の考えをまとめ,人に伝えるようにしていく,そういった訓練や論理的な思考が必要です。そしてデータに基づいて,データを読みこなし,それで説得をしていくという能力が重要になってくるわけです。かなり手間が掛かる授業をしていかないといけません。そのような意味では,ST比の改善は極めて重要です。

 御存じのように,THE(ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション)の世界ランキングの重要な項目の一つはST比です。日本の場合は,ST比が悪い場合も多いので,そこのところで余りランキングが上がらないということがございます。文部科学省の方に,本当にいい人材を送り出すためにはST比の改善が重要だということも御理解いただければと思ってございます。

【永田部会長】  小林委員,どうぞ。

【小林委員】  二つ質問がありましたが,一つは佐藤委員がもう質問されましたので,もう一つだけにします。村田委員の主張には大体賛成です。授業で非常に柔軟な機能分化をしていくということで,相対的な強みや特徴を伸ばしていくという方向,これは2005年の答申とかなり似ているのです。大学が自ら選んで機能分化していくというやり方です。

 それに対して,今出てきているのは固定的な類型や,ある意味で規制を掛けていくという方向については,これはなぜこのようなものが出てきたかという議論があります。機能分化が進んでいないという批判が非常に多くあり,それに対して誘導的な政策をとってきたということがあると思います。

 益戸委員も言われていましたが,市場競争というのがキーポイントになっていると思います。それは擬似的な市場であって,経済学でいう市場とは若干違うと思います。いずれにしてもそのような市場競争を中心にしていけば,結果として対応ができているというような発想で行われていると思います。しかし,そうなると,高等教育政策というのは一体何をするべきかという問題が出てくると思うのです。つまり,誘導もしない,それから,ただ任せていればいいというものでもないということになると,一体何をするべきか。

 そうなってくると,社会の変化に対応するために高等教育の構造を柔軟化するなり,多様化するということが必要だと思います。村田委員はどのようにお考えですか。

【村田委員】  ありがとうございました。まず機能分化につきましては,若干誘導的な政策を行っているというお話ですが,自由にやっていく形の中で認証評価を活用すべきだと思います。認証評価は,御存じのように事前評価から事後評価のチェックにいく中で認証評価が出てきます。先ほど申し上げましたが最低基準しかやっておりませんので,そこをもう少し機能分化も含めて,認証評価で得意なところといいところをランク付けすることによって実質化できるのではないかという,一つのアイデアでございます。

 それから小林委員の御意見はもっともだと思っています。二つ出ている大きな問題として市場メカニズムをどう考えるのか。大学教育,高等教育全体で一つの公共財,あるいは準公共財という意味で,どうすべきか。だからこそ運営費交付金あるいは私学助成金等々,あるいは地方交付税から出ているわけです。そういった意味で公共財としての役割はあるわけです。それはある意味,大前提です。

 ところが一方で,私学と国立に関しましては,公共財という位置付けの中で,市場メカニズムという観点を考えるときに,そこに純然たる違いが出てきてしまっている。ある意味では,公共財を定義した上で,競争をしていくといった制度設計がなされていないのではないかというのが疑問でございます。そのような意味では,イコールフィッティングの下で競争していく。イコールフィッティングするところでは,ある程度規制とまでいわなくても,監督等々が必要です。もちろん経営的に難しい大学は当然潰れないと仕方がないわけです。そこは市場メカニズムに任さざるを得ない。ましてや人口が減少し過疎化していく中で,これも経済学の言葉でいうバブル崩壊の後のゾンビ企業という言葉があります。財政的に難しいにもかかわらず,どんどん金融機関が追い貸しをして存続させたゾンビ企業。大学もゾンビ大学などという言葉が専門雑誌の中でありますから,そういったゾンビ大学はかなり整理していく必要があります。

 それと公共財との位置付けですが,国公私に関係なく公共財としてどのように捉えていくかという抜本的な議論が必要だと思っています。

【永田部会長】  それでは,ここから麻生委員に対する質問もお受けします。山田委員,どうぞ。

【山田委員】  村田委員,麻生委員,ありがとうございます。村田委員の第4次産業革命の対応,教育の質の保証,大学の機能分化については全面的に賛成をいたします。特に大学の機能分化の在り方について,固定的なステレオタイプの機能分化に誘導すべきではなくて,立地条件や建学の精神等に照らして柔軟な機能分化を行う必要があるということについては,大いに賛同するものであります。

 ただ,大学の連携・統合ということについては,今の状況からすると必要であると考えるのですけれども,もっと多様化していいのではないかと考えています。例えば,中核都市に大学を集約させるというお話は,表現上はすごくいいと思います。けれども,実際考えてみますと,中核都市というのは大体20万人以上の都市を考えております。20万人以上の都市というのは,日本で東京の特別区も合わせますと大体130あります。実は日本海側には10もありません。鳥取市に至っては20万人を切っております。松江市も厳しい状況にあります。そうしますと立地条件と建学の精神とかを考えると集約については,欧米の大学でも大学しかない都市もあり,大学を中心に発展をしている町もあると思います。そうした点を考えると,新たな大学の集約化について,タイプがもっと多様化していいのではないかと考えてございます。

 その上で,大学の連携・統合のためのプロセスをどのように作るかということが問題ではないかと思います。中核都市の集約化という話になると,違ってくるのではないかと思いますが,その点はいかがですか。

 それからリカレント教育ですけれども,修士課程,博士課程の修了者の増加対策は大変有用だと思っています。これからの眼目だと思っております。ただ,実際地域で見てみますと,大学院に進む人は割と高齢者の方,リタイアした方が多い状況です。実際,リカレント教育で非常にニーズが高いのは,先ほど麻生委員の御発表にありました保育士や介護人材のところであります。これからリカレント教育において短期大学の方々が大きな役割を果たしていただけるのが一番有り難いのではないかと思うときがあります。

 そういった点についてどう考えるのか,御意見をお伺いしたいと思います。

【村田委員】  ありがとうございました。大学教育は労働集約的という意味では集積のメリットがあります。一つ例示として,ある県をとった場合にばらばらになっているのではなくて,一つの都市に集めた方が効果があろうということです。

 少し考えていただきたいのは,現状を見ればそのようなことですが,22年後,本当にどうなっているのか。18歳人口が減って,労働力人口が3分の2に減っているような状況で,過疎化がどんどん進んでいく中で,本当に地方に大学が点在をしていて機能するのかどうかということです。

 山田委員がおっしゃるように,ある都市やある市が大学を集めて若者の街にしていくというのは十分あり得る話です。けれども,教育は様々な学生が集まって,いろいろな情報を交換する。そういった集積のメリットは極めて大きいわけです。経済学の文献でもリカレント教育といいますか,成人教育も含めて集積のメリットがかなりあることははっきりしております。そのような意味では,中核都市とあえて書きましたけれども,集積のメリットを利用する必要があるのだろうと思います。

 同時に,過疎をどうするかということで,e-LearningだとかOff-Campusでの授業だけで単位が取れていく,そういった制度設計も併せて必要だと考えてございます。

 それからリカレント教育につきましても,これから10年ぐらいは介護人材が必要であろうと言われております。介護人材も,御存じのように短期大学出の資格と大学出の資格が違ったりします。いろいろな形で資格に縛られているところがあろうかと思います。むしろ私がここで申し上げたいのは,そういった制度的な問題だけではなくて,むしろ対外競争力を付けていくためには,大学院レベルでの教育が必要になってくるだろうということです。そこのところをどうシフトさせるかということを考えている。そのような意味では,保育士や介護人材といったところとは若干違う次元のことを考えているのかもしれません。

【永田部会長】  鈴木(雅)委員,どうぞ。

【鈴木(雅)委員】  二つございます。一つは,最初の2のところにありましたように,学修時間の短さです。採用をしている中で,学生に話を聞くと勉学よりもアルバイトに時間をさいています。アルバイトの中身も,コミュニケーション能力を身に付けるためということで,多くの学生が飲食業等でのアルバイトをしています。実際にアルバイトでコミュニケーション能力が付いているかというと,微妙です。さらには,今の企業の中で本当に欲しい能力は,問題解決力へと移ってきています。そのような意味では,大学の中でもう少し社会の実態を理解していただけるよう工夫を強化することが必要ではなかろうかと思います。

 もう一つは,リカレント教育を増やすに当たっては,私立大学の中で開示されている情報が少ないように思います。リカレント教育を強化するには大勢の人に対してもっと開けた私立大学の情報公開が必要だと思います。例えば財務指標などの詳細はみえません。様々な情報の見える化を更に検討いただきたいと思います。

【村田委員】  ありがとうございます。まずアルバイトに関して,いろいろなアルバイトがありますけれども,場合によってはインターンシップに近いような形で,非常にいい教育になっている。ただ,これも幾つかの高等教育の研究成果でありますように,大学時代の学修時間と,それから大学を出た後の学修時間が比例して,その後の年収だとか職位につながっていく。大学の学修時間は,残念ながら直接年収や職位には結び付いていかないのですが,ワンステップ置いて大学を出た後の学修時間は年収や職位につながっている。

 要するに大学のときにどれだけ勉強や物事に向き合ったかということが,就職後の社会に出てからのいろいろな課題に対する向き合い方に大きく影響してくるということです。例えば,実践的な課題をとおっしゃっていたのですが,関西学院大学はSGUを取ったときにダブルチャレンジ制度というものを導入しました。これは自学部で学ぶ以外に海外に行ったり,それから複数分野専攻制で別の学位を取ったりします。もう一つ大きいのはハンズオン・ラーニング。これは実社会の課題を解決していく。そこで実社会の課題を解決するために,この解決策に専門分野として何と何を学ばないといけないかということに気づいていくと考えています。

 そのような意味で,モチベーションを与えながら課題を解決する,あるいは課題を発見する能力をどのように身に付けていくか,その制度設計が極めて重要だと考えております。

【永田部会長】  金子委員,どうぞ。

【金子委員】  最初に村田委員に伺いたいのですけれど,日本の社会人の大学参加は,日本の企業の在り方とかなりシンクロナイズしているということがあって,なかなか難しい。特に問題となるのは,両者にどのような要求があるのか。それをマッチングさせていくところが難しいというのは,これまでの議論で10年近くずっと言ってきています。なかなかどうすればマッチングができるかというところに名案が浮かばない。

 大学履修証明課程の履修単位数を半数にするということは,そのような意味ではフレキシビリティーを増やすという意味で意味があると思います。ですが,更に多様な社会的なニーズをくみ上げて,大学が対応したプログラムを作っていくのには,これからどのような方法があるのかということは,中央教育審議会で議論しなければいけない非常に中心的なテーマになってくると思います。村田委員はそのような方面も専門のようですから,何かお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

 もう一つ,TA,LAを増やすべきとおっしゃいましたが,TA,LAの問題だけではないと思います。日本の大学の先生にアンケートをしますと,役に立つと思う項目の中でTA,LAは最低です。日本の大学の先生はTAを使いません。なぜかというと,自分の授業は自分のものであって,自分の考えどおりにやるから,変にTAなどがその辺をうろちょろしていても困るということです。出席票を集めるとか,プリントを配るくらいのところで,このようなことをやりたいから,このような組合せにする。しかも基礎的な考査については何人かの先生が大体同じようにやれば,TAを訓練できるのです。アメリカにおける大学のTAの使い方というのは,大体そうやって使っているわけです。日本の教育,特に個々の授業を自分のものとして考えて,公共財と考えないという傾向が非常に強いと思います。

 文科省の学長の調査では,大学にある授業は必要以上に多いという人が8割ぐらいいます。それはST比が高いのと全く矛盾しているわけです。ただでさえ先生が少ないのに,先生が勝手なことをやっているわけです。このような形の一種の統制,調整が必要だと思います。学長としては,そういったことをこれからどうしてやっていかれるだろうかということをお聞きしたい。

【村田委員】  ありがとうございます。まずマッチングに関しては,社会科学系でサービス産業のところで労働生産性をどう上げていくかというところに絡めて,一体何が問題か。アメリカでは知識集約型の産業に変わりつつあって,生産性が上がっていっているわけです。そこのところをどうするかは,関西生産性本部の副会長もしておりますので,具体的に何ができるのかについて関西生産性本部で調査を始めようかなというようなことを考えています。

 それから二つ目の御質問は,ある意味で非常にそのとおりでございます。例えば関西学院大学の経済学部では既にある一定の基礎科目に関しては全ての先生が受け持ち,シラバスも完全に決めてしまっています。誰が持ってもできるのだ,だからTAを付けてやるというような,教員集団の共同作業としてやっていく,そのような制度は設けております。そこはやっていかないと日本の教育はよくならなくて,この授業は俺のものだから,俺が勝手にするのだというような話は時代遅れもいいところです。そこは学長としてもかなり言っていますし,教育権ではなくて教育する義務はあるというのが基本的な認識でございます。そのような方向で関西学院大学は今進めているところでございます。

【永田部会長】 

 金子委員,どうぞ。

【金子委員】  麻生委員に伺いたいのは,アメリカのコミュニティ・カレッジというのは職業訓練機能を重視するから四年制大学への進学というのは二つ重要な観点としてあるわけです。けれども,日本の短期大学から四年制大学への編入というのは,2010年ぐらいまでは増えていたのですが,それ以降かなり減少しているのです。これは短期大学としてはどのようにお考えか。

 素人目に考えてみますと,地方による格差が非常に増えた場合に,むしろ小規模の短期大学が地方にある程度散在していて,中規模の私大,あるいは国立大学を中小都市に作る。それでもって一種のリーダー機能をそこに発揮させるというのは,一つ考えられるところではないかと思うのですけれども,このようなことは素人考えですか。

【麻生委員】  金子委員の御質問ですが,アメリカのコミュニティ・カレッジの中にも,学位に関してAA,ABというタイプがあります。トランスファーできるものとできないものがあるはずです。日本はそのようなものがございませんが,2012年ぐらいから職業教育で完結して就職するというタイプと,四年制大学に進学するタイプとございます。最近の傾向を見ますと,地方の小さな都市にある短期大学は,自分たちの持っている教育資源を使って四年制大学に移行している例もあります。例えば,四年制大学に移行すると,短期大学へ進学して四年制大学の編入を求めるよりも,最初からそちらを目指している方は,そちらの選択肢ができるということです。そのような点で四年制大学の数が増えております。短期大学からの移行,改組転換の例が多いということが一つの原因になっているのではないかと思われます。

 特に職業教育においては,短期大学2年間若しくは3年間の完結型で,その職に就くというのが大変多くなっているというのは,金子委員がおっしゃるとおり事実です。その機能というのはニーズがあると思います。このニーズに対応できる短期大学としての在り方,また四年制大学の中にその点を入れるという考え方はありますけれども,地方にも四年制大学がありますので,これらのバランスの問題が,機能分化における議論の争点になっていくべきだと思っております。

【永田部会長】  福田委員,どうぞ。

【福田委員】  ありがとうございます。麻生委員に同調的意見として,特に9ページですが,リカレント教育について。私が前回発表させていただいた中でも,キャリアチェンジ若しくはキャリアアップということを申し上げておりました。これは鈴木委員のお話にあったように,社会の実態なり,経験をした人たちがキャリアチェンジやキャリアアップをするということがほとんどだと思います。 それをすればどれだけの効果があるのか,どれだけの費用が掛かるのかということが一番の着眼になっておかしくないのではないか。要するに需要と供給の関係です。

 そういった中では,効果は,もちろん新しいキャリアを得るとか,その地方に根差すためにキャリアチェンジしていく。先ほども保育士とか介護士という例がございましたけれども,そういったことをしていくためには,国家的な資格の共通性,このような仕事がこの地方ではニーズとしてあるというような社会的な評価というものが,まず共通の物差しとして要るのではないか。

 それから全て会社が費用を出してくれるわけではありませんので,キャリアをチェンジするときにはお金が掛かります。アメリカの2年制のコミュニティ・カレッジの話がありましたけれども,コミュニティ・カレッジに入るのに大体1年から2年待ってから入学する応募者が多いということです。応募者が多いというのは,お金が要らなくて,国の制度としてほとんどが奨学金で出してくれる,州が出してくれるそのような制度があるから2年から3年待ちだそうです。州によって異なりますが,早く職に就きたいために短期大学若しくはキャリアカレッジに入学する。これも奨学金が90%ぐらいは出ます。

 そのような中で,概念として効果はいいとしても費用が掛かるのであれば,2年間でやらなければいけないのか。62単位できればいいのではないかということで,1.5年で62単位は可能です。1.5年要するに18か月でアソシエイト・ディグリーは出せます。もちろん認証機関を経てです。

 日本も社会人を相手にするのに年数というよりも,例えば短期大学の卒業資格ということになれば62単位,1.5年でというような議論というのも必要ではないでしょうか。生涯学習の中でリカレント教育は年数にこだわらないということを一緒にやっていければと考えてございます。

 以上です。

【麻生委員】  簡単に申し上げます。私の所属する短期大学では,幼稚園教諭,保育士,小学校教諭,それから情報メディア学科はIT技術者育成の二年制の短期大学です。地方都市においてリカレント教育における二つの要素を感じています。一つは,おっしゃるとおりキャリアアップのためということです。 例えば,主婦の方がある程度自分の子供を育て上げた上で,時間ができたので幼稚園教諭か保育士を取って,そのような職に就くために必要な免許資格を取ってみようという場合は,資格を取るというキャリアアップになると思います。

 それからもう一点,例えば地域に一つしか短期大学がありませんので,リタイアした方が自分は高等教育を受けていないけれども,近くにあるから勉強させてくれないかということで65歳を超えた方が来る。彼らは決して短期大学卒業や学位の取得を目指しているわけではなく,その地域にある高等教育機関で生涯学びたいという観点で来ていると思います。

 実際費用が掛かりますので,学校としても若干の奨学金の制度を考えております。したがって,もう少し学びたいと思っておられる地域の方々に対する支援は,もっともっとあっていいのだと思っております。

 以上です。

【永田部会長】  千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  ありがとうございます。麻生委員にお伺いしたいのですけれども,人口減少社会の日本で,18歳人口の全国規模での推移の予測においても短期大学の学生は減っていくと推計されています。 恐らく地方で見ると,もっと減少のカーブは大きいと思うのです。

 そのような中で,短期大学は資料にもありますように,教育,家政,保健など職業に直結した教育,また我々専門学校は医療を中心とした地元に必要な人材の育成というのをやっています。減少社会の中で,今のままだと地元の需要を賄えなくなるということが起きるのかどうか。その辺も考慮していかなければいけないと思いまして,もし情報があれば教えていただきたいと思います。

【麻生委員】  正確な数字は忘れましたけれども,都市圏の短期大学の進学率は低いです。地方の短期大学にはそれなりのニーズがあるという観点からいえば,そのような需要に対応できる地域密着型の短期大学は必要だと思います。ただ,全体の人口減とともに,数が減ってきます。そこで設置者の多くが私学ですので,経営的なことをどうしても考えなければなりません。教育の質を保ちながら,人材養成をするということになれば,それなりのお金が掛かります。

 短期大学関係者が一番悩んでいるのは,地方ではニーズはあるのに,数は減っていく。そこで経営的に厳しくなり,募集停止を考えなければいけないというような流れになることです。そうなったときに,地方の短期の高等教育機関である短期大学がなくなってしまうということを懸念しております。別の側面からの支援を考えることによって,地方でニーズがあるものに対応していくシステムを構築することが必要であり,これは現実問題としては経常費補助金を含めた支援になっていくと考えております。

【永田部会長】  安部委員,どうぞ。

【安部委員】  ありがとうございます。金子委員から,短期大学の編入というのはここ10年以上減っている傾向があったのではないかという御指摘がございました。現行の短期大学の役割は,労働市場に結び付く技術的に職業スキルのプログラムを,ヨーロッパレベルの5Aの四年制大学よりも短期間で,2年以上の5Bクラスの教育を,日本でいうと高等専門学校や専門学校など,このレベルの職業教育にシフトしてきたのが最近ではないかと思います。

 特に地方におきましては,麻生委員の御指摘のように専門職,短期大学で取得できる資格,代表的は保育関係の人材ですけれども,そのような人材養成をしてきました。

 一方,地方では空洞化が起こってまいります。短期大学に入学を志望する人はだんだん減っていくことは明らかでございます。ただし,それは18歳を対象にしているだけの話でありまして,先ほど村田委員がおっしゃいましたけれども,リカレント教育は大学院レベルでないと意味がないというような御指摘もありました。地方におきましては,高等教育にまだアクセスしていないような20代後半から30代ぐらいまでの人たちを教育するということ。短期大学が得意とする分野だけではなくて,専修学校の分野で,短期間で4年要らない職業教育,並びに麻生委員もおっしゃったような人生100年を見越した,リタイア後,自分を生かした仕事を何かしたいというときの短期間の学ぶ機関というようなところで,短期大学というよりも,短期の高等教育機関の必要性というのは,地方,都会問わず必要な気がします。

 ただ,私ども短期大学は私学が97%です。国立,公立大学も17校ありますが,四年制に改組転換をしている学校もあると聞いております。高等教育の枠組みの中で,短期の四年制ではない高等教育機関の役割というのを,是非2040年をにらんで,リカレント教育,学び直し,この機会を提供する機関としての位置付けをしていただきたいと思います。

 短期大学はそのようなことを少しずつやってきました。小杉委員等の御指摘のように,なかなか労働市場とのマッチングがうまくいかなくて,地方で学び直しの機会を提供するということ。山田委員がおっしゃったように保育士の養成は厚労省との連携で機会の提供が進んでいますが,なかなかうまくいっていないというようなところがございます。成人の学び直し,労働生産性を上げるための学び直しの機会として短期の高等教育機関の有用性は,あるのではないかと考えております。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  リカレント教育は,今後重要になってくるというのは,そのとおりです。ただ,今のところなかなかそのようにはできていない。例えば,大学院のコースにいる立教大学の社会人院生などでも,会社に秘密で来ている割合というのは一定程度いるのです。つまり,今でも日本の企業で会社員でありながらリカレント教育に通っているというのは,転職するつもりではないかと疑われるような状況にある。その点,企業だけにやってほしいというのではありませんけれども,意識改革というのは企業側もやっていっていただかなければならないだろうと思います。

 もう一つは,これはもう少し広い社会全体の考え方だと思いますけれど,日本の社会で学位というものに対する意識が非常に弱いと思います。修士を持っている,あるいはドクターを持っているということが社会的な評価,あるいはもう少し具体的にいえば給料に反映してこないというのが現状にあるだろうと思います。その辺は変えていかなければならないと思います。

 よくいわれるのは,例えば博士の人間を会社で採っても,なかなか使いにくい。社会的常識がない人間ばかりで使いにくい。専門性はあるかもしれないけれども,それでは困るということもいわれるのです。これは多分大学側の教育の問題で,大学にとっての大学院というのは,あるいは大学教授にとっての自分の授業というのは,自分の分野の専門家として後継者を育てていくという意識から,まだ離れていないのだと思うのです。金子委員がおっしゃっていたように,私物化しているという側面かもしれません。

 それに対して,学位というものが持っている意味というものを,きちんと考えなければならないということと,それから大学院教育におけるリベラルアーツの問題といいますか,狭い意味での専門性だけではなく,企業を含む社会との関係というものをしっかりと身に付けていく教育体系は,大学の中でもう少しちゃんと整理しなければならないと思っております。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】  コメントだけにいたします。三つあります。一つは,先ほど来出ている集積化と,大学あるいは短期大学の問題。昔調べたことがありまして,短期大学というのは人口が20万から25万ぐらいの都市で,ただし都市の規模ではなくて通学圏として1時間半ぐらいのところに20万ぐらいあれば,大体一つできる。大学の場合はもっと大きくなければいけないし,専門学校はもっと小さいわけです。そのような意味では地域配置では,ある程度の機能分化はなされているというように考えます。

 ですから,どのように考えるかということに,一つの意味があると思います。

 もう一つ,2番目に麻生委員が言われた機能分化。以前の中教審のワーキンググループでやったときに,短期大学というのはかなり機能分化が進んでいて,ある意味純化されている。残るべきものが残っているというように考えられるわけでありまして,そのような意味で,ニーズがあるとおっしゃっていた。そのとおりだと思います。だけど,それでいいのかというのが今問われているわけです。新しいニーズはどこにあるのか。AIの議論が出ましたが,例えばAI化したときにどのようになるのかということは考える必要があると思います。それが2番目です。

 最後に,これも麻生委員のおっしゃったことですけれど,3年で学位ということは一つの考え方だと思います。標準修業年限の考え方をとれば,そのようなことがいえます。けれども,そうしたら別に3年でなくても,3年半でも2年半でもありえる。ただし,無条件に認めるというのは難しいわけです。単位認定を非常に厳格にするあるいは認証評価をしっかりとやる,そのような条件があれば標準修業年限という考え方は少し弱めてもいいのではないかと思っています。以上です。

【永田部会長】  佐藤委員,どうぞ。

【佐藤委員】  麻生委員の新しいイメージというか,提案が幾つかありました。 一つは,アソシエイト・ディグリーというように短期大学士と言っているものを,国際的にどう説明をしていくのかというのは課題だと思います。それからもう一つは,アメリカのコミュニティ・カレッジの話です。

七つぐらいの州では,州立大学にアクレディテーションの課程の授業を担当してもらい,アクレディテーションを取れれば,コミュニティ・カレッジでもBAを出すことができるような制度になってきている。また,例えば,アリゾナ州立大学などもそうだと思いますが,もともとは教員養成のノーマルスクールが四年制のプログラムを足しています。 アメリカでは学位授与権を認められているので,アソシエイト・ディグリーを発行するという学位授与権を保持したまま,四年制のカレッジあるいはユニバーシティになっているところがあります。日本では別設置校です。要するに,大学は大学として,その中で教育課程として分けて,専門職大学は前期・後期に分けて,前期が終わったら準学士,短期大学士を出してもいいという知恵出しがあると思います。もう少しスムーズになるという印象を持っております。

【永田部会長】  ありがとうございました。本日は特に短期大学を中心に,地域との関わりや課題についても議論が行われ,大変有意義でした。セッションの最後に,中間まとめに向けて共通理解を深めたいと思いますので,私から少しだけ意見を述べさせていただきたいと思います。

 本日の議論の中で,TAや修業年限の問題が出てきました。これらの問題に関連して,制度や教育の質向上の取り組みとして,科目ナンバリングであるとか学位プログラム化等の話が進められています。先ほど日本の授業は教員自身が教えたい内容になっているという話もありました。そうした現状を変えるための教育課程の体系化に関わる議論です。

教育課程が体系化されていれば,TAが授業に関わることに何の問題もありません。また,科目ナンバリングが整備され,どこまで学んだら次に何を学べばいいかを学生が分かっていれば,問題も少なくなります。こうした仕組みのもとでは,卒業に必要な単位を取れさえすれば,早く卒業しても長く在学していても,大きな問題は起こりません。

 そのような状況であっても,大学あるいは高等教育機関の授業や教員各々は,決して画一化しているわけではありません。ガイドラインは完備されているとしても,個々の授業等は教員の個性や専門分野の個性が反映されて成立しているのだ,というのが前提だと思います。

 同じ議論を大学の機能分化でも考えていただきたいのです。科目ナンバリングと学位プログラムについての議論でガイドラインと申し上げましたけれど,そこに個性がなければそれを高等教育とは呼べませんから,それは自由闊達(じゆうかったつ)でいいわけです。論点整理ではそのようなイメージで述べており,それは必要条件であって,十分条件は各大学が十分その個性を入れて作っていただかなければいけない,というような書きぶりにしていることを理解していただきたいと思っております。

 もう一つ,最後に申し上げたいのは認証評価についてです。認証評価において大学の機能を評価してはどうかという御意見がありました。しかし,認証評価とは本来,アクレディテーションという単語が意味するとおり適格認定であり,機能評価ではないことを認識する必要があります。したがって,認証評価の強化はあるとして,それとは別に大学の目標達成度を測るような評価があってもいいのではないか,という趣旨の御意見かと思っています。

 最後に,地方における人材需要として介護の分野が必要だ,という御意見がありました。確かに現在はそうですが,2040年を迎えたときに果たして状況は同じでしょうか。恐らく,介護の現場はロボット化がかなり進んでいるでしょうし,ビッグデータの活用も進んでいるはずです。もちろん,介護や医療の現場で働く者に求められる患者や高齢者に対する尊厳や覚悟は不変ですが,恐らく力仕事や単純労働はロボット等に代替されて残っていないと思います。そのような現場で働く人材をこれから育てなければいけないということで,常に2040年の社会を頭の中に置きながら議論をしなければならないと思います。

 以上,理解を深めるための補足とさせていただきます。

 

(2)   高等教育の国際化について,資料3,4,5に基づき事務局から報告があり,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  それでは次,前回の国際化に関連した議論に資料を付け加えて御説明を頂き,皆さんでもう一度議論を深めたいと思います。

 それでは資料3,4,5について御説明を頂きたいと思います。

【蝦名高等教育企画課長】  資料3を御覧いただければと思います。大学の海外展開につきまして,これまでワーキンググループで御議論いただいております。この資料では,まず大学の海外展開の意義につきまして三つの丸で整理してございます。

一つには,学生や教員も含めた国際的な流動性が高まっている中で,国境を越えた進学先の選択というものが世界的に行われている。我が国の大学としても,国内での大学の国際化とともに海外展開を図っていくということが必要ではないかということでございます。

 二つには,そうした取組を通じて教員や学生間の交流が更に促進をされるとともに,大学にとってより魅力のある教育プログラム作りにつながっていくのではないかということでございます。そのことが我が国の高等教育機関の教育,研究力の向上等につながるのではないだろうかというです。

 三つ目には,18歳人口が減少している中で,我が国の大学もこれまで培ってきた知見やリソースを活用して,世界に開かれた高等教育機関として期待される役割を果たしていくということが重要ではないかということを整理してございます。

 その上で,これまでの審議の整理,年度末の論点整理の中で記載をされている内容について,抜粋してございますので説明をさせていただきます。現行制度・現状の部分ですが,平成17年に学修機会の国際化と日本の大学の海外展開を図る観点から,大学が外国で教育活動を行う際,日本の大学の一部と位置付けることが可能となる制度が創設してございます。これによって外国に日本の大学の学部や学科等を設けることが可能になってございます。後ほど触れてございますが,その制度の活用は十分進んでいないということが課題ございます。

 2ページ目に課題とございます。現在までに外国に学部等を設置することができる制度の活用は十分進んでいないということでございます。なぜかについては,外国における教育活動の展開の条件として,日本の様々な制度が前提とする条件を等しく適用するということになっているわけです。しかしながら,状況として困難なものを招いているのではないか。例としては,校地校舎の自己所有とか収容定員の管理など,日本国内と同様の基準を,海外展開の場合にも適用していることをどう考えるかが課題として掲げられてございます。

 論点と検討の方向性としては,なかなか展開を困難にしているような要因を整理し,対応の検討を行う必要があるのではないか。例えば,外国において日本と同条件の遵守が難しい制度を緩和する必要があるのではないかといいうことでございます。例としては,在外公館や海外における日本関連機関等との連携の仕組みなど,海外展開のインセンティブとなるような方策が必要ではないかということを方向性としてございます。

 2ページの3番,海外校の開設に向けた対応として,これは論点整理以降の検討として4月の時点で整理をしてお示しした内容でございます。(1)海外校の開設に当たって課題分析で,一つには校地校舎の自己所有というものを取り上げてございます。論点整理でも例示してございますが,現在原則として校地については,申請地において申請者が自己所有をしている必要があるというのが,2ページの一番下に示されてございます。これが大原則であります。3ページ目に,こうした原則に対する例外として(ア)と(イ)がございます。(イ)を御覧いただければと思います。開設時以降20年以上にわたって使用できる保証のある借用である校地であって,次のいずれかに該当するものということで例外が設けられてございます。その中で特に(ウ)というのを御覧いただければと思います。開設時以降20年以上にわたり使用できる保証を得ることが困難な特別な事情があるということでございます。大学等の教育研究上の目的を達する上で,やむを得ない理由があると認められる場合において,学校教育法に定める当該大学等の修業年限に相当する年数以上にわたり使用できる保証のある借用地については,原則に対する例外として取り扱うことが可能ということとなってございます。

 また校舎その他の必要な施設についても,校地と同様の規程があるということでございます。

 例えば中国などの例としては,土地が基本全て国有地であるということからの自己所有要件をクリアするのは困難です。また,20年以上にわたり使用できる保証というのも,なかなか簡単にクリアすることができないのではないかということが懸念されます。

 一方,告示の中では,先ほど御覧いただいたように20年以上にわたり使用できる保証を得ることが困難な特別な事情がある。教育研究上の目的達成でやむを得ない理由がある場合には,修業年限に相当する年数以上,大学の場合4年,使用できる保証があればよいとされてございます。この場合の特別な事情あるいはやむを得ない理由が,どのようなものが該当するのか。例えば海外校の場合はどうかということについて,これまで示してくるところがなかった。そこで,海外校の場合,こうしたものが適用されるかどうか判然としない中で,展開に消極的になってきたことがなかっただろうかということが課題だろうと思ってございます。

 定員管理につきましては,現在国内に学部等を開設する場合であれば,歩留りを考えて入学者を確保することを行っております。定員を大幅に超過いたしますと,例えばほかの学部の新設などかできないというペナルティーが課されることになってございます。国内であれば受験者数や,それまでの実績などを踏まえて一定の予測が可能であるということではございます。けれども,海外展開の場合に同じルールを適用するとなりますと,難しい面があるのではないか。そのことが海外展開に対して消極的となる理由となっている面があるのでないかというようなことを整理してございます。

 4ページ目,検討の方向性について,校地校舎に関連しては,例えば海外で協定校があった場合に,そうした協定校の校地や校舎を活用する。先ほどのような要件の下で活用するというような運用改善の余地はないだろうか。そうしたことを行ってはいかがかを提案してございます。

 具体的には(2)の二つ目にありますように,困難な特別な事情,あるいはやむを得ない理由として,協定校におけるそうした校地校舎の活用といったようなことが該当し得るということを明確化する,あるいは協定校との間で内容の確約ができている場合に可能であるということを示すことが考えられないだろうかということでございます。

 また,定員管理については,海外の場合,我が国の場合と大きく異なる不確定要素があり得ることも踏まえて,教育内容の質を担保できることを前提に,例えば定員超過率の基準の在り方について,海外展開を行う場合のルールを考えるべきではないかとお示しをしてございます。

 4ページ,多様な形態による大学の海外展開というところで,例えば海外の協定校との連携により提供される学位プログラム等は,日本の大学への優秀な外国人学生の受入れ等に寄与しているというようなことを背景として整理いたしました。その上で,検討の方向性として,こうした海外の大学との連携した上でのプログラムの提供を促進していく必要があるのではないかということでございます。

 その際,教育の質保証を行うために,相手方の大学の質をどのように担保していくのかといったようなことが課題になるのではないか。そうしたことについて検討を進めていく必要があるのではないかということでございます。

 また,先進的な取組事例の普及を図ることが重要ではないかといったことをお示してございます。

 5ページ目,海外展開に係るインセンティブについて,例えば現地情報の提供に関して,在外公館であるとか海外の日本関連機関との連携を一層強化するといったようなことを考えていってはどうかといったようなことなどをお示ししてございます。

 以上の資料に基づきまして,4月27日にワーキンググループで御議論を頂いた際の,委員から頂いた御意見を資料5に整理をしてございます。一つには,海外キャンパスについて,先ほど申し上げた定員超過の例外措置といったことは,国内と海外でダブルスタンダードになることになるけれども,それでよろしいのかどうかといったような御意見があったということでございます。

 大学の海外展開については,4年制大学だけでなく,短期大学も含めて検討していくべきではないかということでございます。それから,海外キャンパスの設置といった攻めに出ないと,留学生の獲得が困難な状況になってきているということで,制度改革も視野に入れた検討が必要ではないかという御意見も頂戴してございます。

 大学の国際化,留学生の増加定着において,規制緩和や制度改革の取組を行うことが必要でございます。成果から逆算した総合的な戦略を立てながら臨んでいく必要があるのではないかといったような御意見も頂戴してございます。

【齋藤留学生交流室長】  続きまして,資料4に基づきまして,ポスト留学生30万人計画を見据えた留学生政策について御説明を申し上げます。この資料も4月27日に御議論いただいたものでございます。

 御案内のとおり,政府におきましては留学生を2020年までに30万人増加させるという計画を立てております。これに基づきまして,今後関係省庁の連絡会議におきまして,今後の在り方,検証ということが行われていくということでございます。現状としましては,2017年現在で26万7,000人でございます。日本語学校,それから専門学校含めた数字でございますが,30万人の受入れ達成に近づいているという状況でございます。

 課題としましては,大学の国際化という観点で申し上げると,日本語学校,専門学校の伸びは大きいものの,大学特に学部段階での受入れというのは,まだまだ課題があるということでございます。それから諸外国との架け橋人材といった観点で見ますと,出身者がアジアに偏っているということに加え,留学された後の経験者のフォローアップが国全体としてできていないという課題がございます。

 それから三つ目,高度外国人材としての定着に関しては,近年,留学生における我が国の企業への就職について期待が高まっている中,その期待に応えられていないということがございます。

 米印にございますように,負の要素といたしましては,働きながら学ぶ留学生が増えたということで学習面への影響,中途帰国の状況が出てきております。世界的な動向をひるがえって見てみますと,右上のグラフにございますように,2010年頃までは急激に世界の留学生交流数が増えてきておりましたが,それ以降400万人台で頭打ち状況になってきているという状況です。より留学生の獲得競争が激化している一方,受入れ国の状況としましても米国におきまして初めて新規の受入数が減少してきていることなど,プレーヤーとしても変化が見られるといったことがございます。こうした中で,より優秀な留学生を確保していくために,戦略的な対応が必要であるのではないかという説明でございます。

 2ページ目,これを踏まえまして,まず留学生の受入れによって目指す大学の姿というのは何であったのかといったところに立ち戻る必要があると考えております。まず一つ目,留学生の受入れのためだけのプログラムから脱却しまして,日本人学生,留学生,社会人等多様な価値観が交わることで,新たな価値創造を促すといった意味での真の国際化といったことを目指す必要があるのではないかということでございます。

 それに加えて,都市部の大学に限ることではございません。地方の大学におきましても,グローバル時代の地域の発展を担う人材として留学生が非常に重要なプレーヤーとなるといったことがあるということでございます。大学の国際化のいい取り組みを全国に展開していくことが必要ではないかという基本的な立ち位置でございます。

 留学生政策の方向性といたしまして,三つ大きな柱を立てております。一つ目,大学の国際化を実現する多様な留学生交流の推進といったことで,大学の学部段階における受入れの拡充といったことでございます。資料3の説明とも重なる部分でございますが,海外の協定校と連携いたしました形で,例えばツイニング等のプログラムによりまして多様な形態による留学生交流,受入れ,交流を推進していくことが考えられるのではないかということでございます。

 二つ目に,(2)留学経験者のネットワークの拡大に関しましては,受入れ国の多様化に加えて,日本留学経験者のネットワーク構築といったことがございます。それから,ネットワークの活用といったことを,国を挙げて行っていく必要があるということでございます。

 (3)高度外国人材として留学生の我が国への定着促進に関しまして,現在文部科学省でもモデル的な取組としまして,大学,自治体,企業が連携して留学生の就職を促進する取組を行っております。これを全国に広げていくということでございます。それから,日本留学の誘いという海外における活動の際から,大学等の魅力のみならず,大学を経て日本で高度人材として活躍していくというキャリアパスを発信していくことが重要ではないかということでございます。

 今後の具体的な施策でございますが,海外大学との連携による戦略的な留学生交流の推進のところは,資料3で提言させていただいた部分もございますが,その点に加えまして,一番下の丸にございますように,例えば18歳以上といった年齢制限,それから12年未満の学校教育課程を持つ国から来られる留学生といった方等につきまして,大学入学資格を緩和していくといったことが考えられるのではないかということでございます。

 それからその下にございますように,日本語準備教育(ファウンデーションコース)の積極的活用といったことで,これは必ずしも日本語能力が十分ではないものの,すばらしい能力のある留学生に関しまして大学に条件付で合格させた上で,日本語の準備教育を施すといったコースの設置推進でございます。

 それから右側に行きまして,産学官による就職促進の仕組みの構築で,全国展開といった取組と,在留資格変更の際の手続緩和といったことを組み合わせて行っていくようなことが考えられるのではないかということでございます。

 それから留学情報の一元化・海外でのリクルーティング強化といったことに関しましても,海外拠点では在外公館,大学事務所,JETRO,JICAと様々な主体がございますが,これをワンストップとしてサービスを構築して,日本留学のキャリアアップの魅力を発信するといったことでございます。

 それから一番下の丸にございますように,留学生が日本に来る際の入試の在り方といたしまして,共通試験としての日本留学試験を今提供しておりますが,これをもう少し大学のニーズに沿うもの,それから海外で利活用が進むようなものに変えていくといったことが考えられるのではないかということでございます。

 これを踏まえまして,資料5でポスト30万人を見据えた留学生政策といったことで御意見がございます。三つございまして,一つ目は,入試の観点から,留学生のための入試の考え方が必要ではないかということ。二つ目は,留学生の経済支援。三つ目は,留学生の宿舎等の問題で,関係省庁との連携が必要だという点について御指摘いただいております。

 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 留学生30万人計画の今後の施策について考えていくことが必要かと思います。もちろんまだまだたくさん議論しなくてはいけませんけれども,こういった方面まで視野を広げて議論をしているということです。有信委員,どうぞ。

【有信委員】  質問です。留学生30万人計画ができて,その後,様々な施策が打たれてきたのだと思いますが,この程度しか増えていないということが現状だと思います。一つお伺いしたいのは,設置認可上,各大学の定員管理をやっています。この定員管理がある限り,海外に作るときには設置認可を経なければいけない。このような話になるのですかというのが一つ目の質問です。

 それから二つ目の質問,大学の問題がすごく大きいと思っています。 つまり,留学生が日本の研究,あるいは学問を学びたいといっても,それを英語で教えられない。グローバル30に選ばれた大学が英語一貫教育のプログラムを作ろうとしたときに,すごく苦労しているのです。東京大学のような大大学ですら,プログラムを作るのに相当な苦労をしていたのを見ています。

 つまり,大学側の状況は変わってきていて,英語で教育できるようになっているかもしれませんが,もっと努力をしないと留学生は増えないのではないでしょうか。

 それから海外に大学を作るときには,例えば中国のようなところで企業が出ていこうとすると,先ほど共同でという話がありましたけれども,合弁でないと中国では独自には進出できないわけです。だから合弁に類するような協定大学云々(うんぬん)とありましたけれども,もう一歩進んで共同で設置できるような形態まで考えなければいけないと思います。これは質問というよりコメントです。そのようなことまで考えていかないといけないだろうと思います。

【蝦名高等教育企画課長】  1点目,海外に学部等を作るときの設置認可について。平成17年からこの制度をスタートしております。同様に,設置認可の手続が必要でございます。今回その整理をして,こうした我が国の独自性の強過ぎる制度かもしれませんが,質保証を維持するための仕組みを引き続き行いつつも,実情に応じて緩和もできる余地がないだろうかということを検討してございます。

【義本高等教育局長】  30万人計画のときと,かなり違っている事案になってきている。当時は多分大学の国際化をかなり強調し,拠点を作る大学を作って,英語で授業をするということをかなり推進していこうということがありました。御説明いただきましたように,かなり企業も,日本語ができて,英語ができて,しかもそこで日本に就職するというような形での需要は非常に高まってきた。この状況はかなり違います。また,欧米大学との交流の問題と,アジアからの交流と,恐らくかなり違うパスがあります。英語の授業を増やすというだけではなくて,むしろ現地の学校と協力して日本語の教育もして,日本においては日本語教育も併せて展開していくということが必要であり,自身も柔軟に考えることが大事ではないかという話が一つございます。

 それから,蝦名課長から申し上げましたように,海外校というのは基本的には日本の設置基準が適用し,日本のブランチとして作るという形態で,かなり固い制度で作っておりました。けれども,それだけでいいのか。有信委員がおっしゃったように合弁で作っていくとか。資料でも御説明しましたように,向こうの大学の制度に乗っかった形で認可を受けるような形の新しい形態を作って,それが実質上プログラムとして日本の大学が関わっていく形にして柔軟にし,そこで連携するような展開がないと,なかなか広がりがないというような背景がございます。これは方向性の御議論を提示していますけれども,緻密に話を頂いた上で作っていけば,もう少しよいものができるのではないかというのが一つでございます。

 もう一つは,政府全体の動きとしては,高度専門人材をかなり呼び込んでいこうという動きが,ここ数年加速しています。今回の成長戦略でも恐らくそれが目玉になっていき,文科省だけではなくて法務省とか,あるいは経産省と連携して,それを組織的に政府一体として挙げていこうという話があります。そのような背景の中での御議論をしていただければ有り難いです。その延長線上としてポスト留学生30万人計画という話をしております。少し改定して作っていかないといけないという背景があると御理解いただければ有り難いです。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 残り時間が少なくなりました。私が言いたいことを,義本局長に全部言っていただいたので,これで終わりにしたいのですけれども,いかがですか。

 金子委員,どうぞ。

【金子委員】  いろいろな問題があるのは分かります。ただ,アウトバウンドの話が全く出てきていません。要するに,バランスの問題があると思うのです。量的に物すごく拡大しているのは1年間くらいの留学です。4年で学位を取るというのではなくて,1年間の交流というのは非常に大きくて,これがある意味では数をまとめるには一番合理的で,組織さえできれば,ある程度できるという部分がかなり多いので,そういったものをどう考えるかということが非常に重要だと思います。

 それから外国に設置する場合にフォーカスし過ぎていると思います。ほかの大学に課程だけ共同するというようなことはかなり可能です。大分調べられているのだと思うのですけれど,中国やベトナムというのは土地を借りたり建物を作ったりすると,物すごく大変なことが起こっています。撤収や何かするときに全然金をもらえないとか,物すごくトラブルがあります。中国などと共同建設ができるようにはできていないのです。20年前から法律も頻繁に変わるのです。そのような意味で,かなり慎重に検討された方がいいのではないかと思います。

【永田部会長】  前半部分のアウトバウンドに関しては,今回意識的にまとめておりません。今回はインバウンドの話だけにしております。いずれ機会があるときに,アウトバウンドに関して議論はさせていただくと思います。

 残念ながら,今日は時間が来てしまいました。最後に御説明いただいた今後の施策のところを見ていただいて,施策がどうして出てきたかは,先ほど義本局長が説明をされたと思っています。そのような形でもう一度見ていただいて,改めて時間を設けさせていただこうと思います。

 本日はここまでですが,事務局から今後の予定等を述べてください。

【石橋高等教育政策室長】  御議論ありがとうございました。次回の将来構想部会でございますけれども,大学分科会との合同会議を予定しております。6月8日金曜日15時から17時半,同じ場所,第二講堂でよろしくお願いいたします。

 資料の郵送については,いつもどおりでございます。

 以上でございます。

【永田部会長】  本日はどうもありがとうございました。

 

── 了 ──

 

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