将来構想部会(第9期~)(第8回) 議事録

1.日時

平成29年11月8日(水曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(委員)有信睦弘,村田治の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,金子元久,黒田壽二,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木典比古,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,前野一夫,益戸正樹,両角亜希子の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,伊藤文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,村田私学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見文部科学戦略官,下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),池田大臣官房参事官,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長,井上私学部参事官,堀野高等教育政策室長 他

5.議事録

(1)高等教育機関が育成する人材について,資料1に基づき鈴木委員から説明があり,その後,意見交換が行われた。
【永田部会長】  第8回の大学分科会将来構想部会を始めさせていただきます。
 お忙しい中,委員の先生方には,お集まりいただきまして本当にありがとうございます。
 前回,前々回のときにも申し上げましたけれども,今回の諮問に対する答申に向けて,高等教育機関が育成すべき人材はどうあるべきか,という最も重要な問題について議論すべく,前回も3名の先生方からお話いただきました。
 本日は,本部会のメンバーである国際教養大学学長の鈴木典比古委員から御発表いただこうと思っております。
 その後,前回の会議では,地域における質の高い高等教育機会の確保のための方策について,十分に議論する時間がありませんでした。本日はこれを中心に議論させていただこうと思っています。
 三つ目に,これらを進めるに当たって,大学のガバナンスという点が非常に重要であるということで,国立大学,私立大学それぞれの観点から,いろいろと御意見を頂きながらガバナンスについても考えていきたいと考えています。
 それでは,早速議事を始めさせていただきます。
 最初は,鈴木委員から御発表いただきます。前々回は,吉岡委員からリベラルアーツをキーワードに御発表いただきましたが,鈴木委員から更に踏み込んだ御意見を頂こうということです。
 それでは,よろしくお願いします。
【鈴木(典)委員】  ありがとうございます。鈴木でございます。
 お手元に資料を差し上げておりますが,少しユニークな角度からお話をさせていただきたいと思っております。タイトルが,「高等教育財のグローバル生産軌跡」という耳なれない題を付けてみました。これからの時代に求められるリベラルアーツ教育ということであります。
 最初のページをおめくりいただきますと,2020年の高等教育主要国とございまして,2020年の世界の大学生の数がどのくらいになっているかということですが,2009年,今から8年前は1億7,000万人でした。それが,年率5%くらいの増加率で増えておりまして,2020年には2億9,000万人,約3億人に達するであろうという予想が出ております。
 この高等教育主要国の中で,学生の人数が多い国ということで挙げていきますと,中国,インド,アメリカ,ロシアで全世界の大学生の45%を占めます。また,2002年から2009年までの全世界の大学生は5,500万人増加しましたが,そのうちほぼ半数,2,600万人は中国とインドで増加した学生の数となっています。
 2002年から2009年までの期間で大学生増加率の大きかった国としては,トルコが300万人で74%増加しています。ブラジルは620万人で68%増加,インドネシアは490万人で53%増加したということで,いずれも開発途上国における大学生の増加が目立っているということであります。
 それに対しまして,次のページを御覧いただきますと,日本の18歳人口と大学生の人口はどうかということを示しております。この図はよく御覧になる図だと思いますけれども,平成元年から,大体平成42年まで,40年間くらいに日本の18歳人口がどう変動していくかということと,その間に大学生の数がどのくらいまで変化していくかということを示しております。御覧いただきますと,平成21年から32年くらいまではほぼ横ばいで,大体120万人から110万人台を推移しておりますが,その後,再び減少して,平成40年を過ぎる頃には100万人を切るくらいの18歳人口になっています。
 それに対して,大学進学率は意外と安定して,五十六,七%という割合がずっと続いておりまして,60万人くらいが1学年の大学生の数となっています。四年制大学で考えると4学年で240万人くらいが現在の日本の大学の学生数となりますが,平成40年くらいになりますと,200万人を切って100万人台に低下していくのではないかという予想が立てられております。
 次のページを御覧いただきますと,2020年の高等教育主要5か国とありまして,大学進学率が最も増加するのは中国です。2012年には24%でしたが,2020年には38%に増加します。大学生の上位5か国で1億人を超えます。
 すなわち1位が中国の3,700万人,2位がインドの2,800万人,3位がアメリカの2,000万人,4位がブラジルの900万人,5位がインドネシアの780万人ということで,中国は日本の約15倍,インドが約13倍,約14倍,アメリカが約10倍というように,十数倍の大学生を抱えているということになります。
 しかし,2020年度以降,大学生も漸減していくということで,中国,ロシア,ドイツ,韓国,日本等も大学生の数は減少していくということが予想されております。
 次に,その国を飛び出して,ほかの国で勉強しようという,大学生の国際間移動についてですけれども,留学をする場合に,2009年には350万人が全世界で留学を経験していました。これは全世界の大学生の2%に当たります。これが2020年には580万人くらいになるであろうということで,1.8倍くらいに増加するということであります。特にEU内のエラスムス計画によって,EUの中では複数の大学に在学して単位を積み重ねて卒業していくということが大いに奨励されており,2010年には43万人の学生が,ある国からある国へとEU内の大学をめぐって単位を修得していくということが行われていたということです。
 次のページを御覧ください。大学生の国際間移動をある意味教育財とする考えからしますと,財を輸出,輸入するという考えで捉えられるかと思います。また,大学の海外進出は,教育財を海外で生産するということに当たりますので,ある国の大学が,ほかの国に進出していく,すなわち,直接投資を行って海外生産を行うと見られるわけですが,2017年現在,アメリカ,イギリス,オーストラリアを中心に,約250の大学が海外に分校,ブランチキャンパスを設置しています。進出先は中近東から極東地域に移ってきています。アメリカの大学が最大で,2017年度,77の大学が海外に進出しているということです。また,これらの大学を受け入れる国々の対応も非常に積極的なケースが多く,要するにEducation Hubsというものを作ろう,それから,受入れ国はEducation Cityという拠点の地域を作って受け入れようということで,アラブ首長国連邦,カタール,香港,クアラルンプール,バーレーン,パナマ,シンガポール,韓国,そのほか,これらの国が積極的に受け入れているということであります。
 これらは海外の大学による直接投資ということですが,ここ四,五年で見られるのは,次のページにお示ししてあります,Massive Open Online Courses,つまり,全世界に同時に無料で教科を配信するという,全く新しい次元の世界に向けた教育が始まっております。このオンライン学生が増加しているということであります。あるデータによりますと,2011年には2,100万人の受講生が全世界に散在していたということで,御承知のように,主なMOOCsとしてはedXあるいはCoursera等がございますが,2011年にはアメリカの州立大学では4,7%の大学がこのオンラインを開講しておりました。また,Ace(American Council on Education)が履修科目を正規の単位に認定するということを検討しているということであります。
 次のページを御覧いただきますと,高等教育のグローバル生産軌跡と名付けましたけれども,国内生産から始まって,教育財の輸出・輸入に当たる海外留学,そして,教育財の海外直接投資ということに当たる海外の分校の開設,それから,オンラインの世界配信。これによって,グローバルな教育財の世界標準化ということが進みつつあるということをこの図で示しております。
 次のページを見ていただきますと,「20世紀の大学教育と21世紀の大学教育」ということですが,20世紀の大学教育というのは,いわば大量生産,大量消費の産業社会に見合うような人材を供給するということで,同質的な人材を大量に供給するということを目標にしていました。いわば,人工植林型の教育で,ここはマツを植える,ここはスギを植える,ここはヒノキを植えるというような,専門課程,専門学部生の人工植林型をとっていたということであります。
 ところが,これが21世紀になりますと,活動による学び,アクティブラーニングの学びというものを重視するようになってきます。これは,行動するリベラルアーツといえるのではないでしょうか。ここにおける教育というのは,1本として同じ樹木はないという個の確立を目指す教育であって,これは先ほどの人工植林型と比較しますと,雑木林型の教育ではないかということであります。
 リベラルアーツというのは全人力の教育でありまして,授業は教師と学生が共に作っていくというアクティブラーニングの教育になります。そして,双方向の授業になりますので,ここで予習・復習を必ずやらなければなりません。シラバスというものがここにおける授業の工程表として非常に重要な役割を持ってくるということであります。
 日本の場合,18歳人口が減少していくことを想定いたしますと,人工植林型の同質的人材を大量に供給するという方向については変更を余儀なくされるのではないかというふうに考えております。21世紀は個を確立するための少人数リベラルアーツ教育に変わっていくべきなのではないかというふうに思っています。
 この意味からしますと,この将来構想部会で新しい学位プログラムを考える,あるいは,社会人の学び直しを行うということもこの21世紀を見据えた雑木林型教育と通ずるところがあるのではないかということです。
 次のページをお開きいただきますと,個としての全人力を涵養(かんよう)するということが21世紀教育の特徴である,とあります。個というのは,相手があって初めて確立できることであって,ピンポンの打ち合いによる彼我の認識ということによって個の確立を行っていく必要があります。すなわち,これは教育においては,途切れのない対話の継続がリベラルアーツにおける個の確立の基本であるということであります。
 これは双方向授業によるリベラルアーツ論ということを意味しておりまして,リベラルアーツの対話的授業にとって予習・復習は必須だということでありますけれども,授業進行の工程表というのがシラバスでありまして,教師と学生が,いわば契約書を結んで授業を進行していくということであります。シラバスが重要な役割を果たしているわけです。
 20世紀の,いわば静態的なクラスでは,クラスのマネジメントが教員によって行われていました。しかし,21世紀の動態的なクラスにおいては,クラスマネジメントが教員と学生が共に作り上げていくということが必要になってくるということであります。
 最後のページになりますけれども,インターナショナル・リベラルアーツ,すなわち国際的なリベラルアーツとはということで,この申し上げてきたリベラルアーツ的な枠組みでの授業を国際的あるいはグローバルな状況の中で行うということであります。
 私が奉職しております国際教養大学では,全科目の授業を英語で行う,あるいは,対話を基本とする少人数教育を行う,1年間の海外留学が卒業要件になっている,異文化を経験するための全寮制を敷いているということを通じてリベラルアーツ的な教育を行っているということであります。
 雑駁(ざっぱく)ですが,以上で終わりにさせていただきます。
【永田部会長】  先生どうもありがとうございました。
 それでは,質疑応答に入ります。委員の方々から御質問,御意見ございましたらどうぞ。それでは,有信委員,どうぞ。
【有信委員】  鈴木先生どうもありがとうございます。
 今のお話を伺うと,基本的にはグローバルな展開の中で,結局教育そのものがグローバル競争にさらされている。さらされている対象というのは教育財としての教育の中身,コンテンツであって,しかも,そのコンテンツについての先生の御見解は,コンテンツそのものが従来の個別専門化したものというよりは,いわばリベラルアーツ的なものとしてそのコンテンツの中身が全世界的な競争の対象になるわけですよね。
 そういう意味で,今我々が議論している話はまだそこまで至っていないという気がします。つまり,海外競争力の中での展開という視点からすると,例えば今の,先生が示唆している大学は,国際展開というような視点は実際にはないような気がしますし,日本の大学も個別個別に,その中で国際化はしても,国際展開をしない限りは恐らくこういう意味の同等性であるとか,自分自身の教育の質の転換であるということはなかなか難しいような気がするんですけれども,これは何か具体的にそのような方向性についてお考えになっていることはありますでしょうか。
【鈴木(典)委員】  一つ一つの大学における教育の国際性と,あるいは先生がおっしゃるコンテンツの国際性,あるいは,グローバル化ということに関しましては,やはり大学で開講される科目の種類,例えば数学とか物理とか化学という,標準化が可能な科目においては,やはりグローバルな観点から教育のグローバル化,世界標準化がどんどん進んできています。
 その意味では,日本の大学も,あるいは,日本の大学で使われている教科書等々も標準化に向かっていっていると思いますが,片や日本の文化や歴史,また,日本に限らず各国の歴史,文化,社会というものは国別の特徴を持っているわけでありまして,標準化される科目と国別の特別な意味を持っているような標準化されない科目というものが統合されて教育のコンテンツというものを作っているというふうに思います。
 そこで標準化される科目というのはやはりグローバル化していかざるを得ませんし,国際的にそういうことが難しいような国別の特徴を持っている科目あるいは教育の内容というのは,国際的,あるいは,グローバルな社会に対して,ある意味では国が,我が国ではこのような特別な教育をしている必要があるのだ,という特別な主張が必要だと私は思います。
 要するに,全ての教育の科目が標準化されて,グローバルで同じ科目,同じ教育内容になったのでは,世界で皆さんが同じ考えをするようになるということを含んでいます。これこそ危険な状況だと思います。
 ですから,標準化できる科目についてはグローバル化して標準化していく,国ごとに特徴を持っているものは,それぞれで発揮していくということが,国々が世界で果たす責任であると私は思います。
【有信委員】  最後の部分が一番重要だと思うのです。つまり,国際的に標準化されるものについても,競争力を持たなければいけない。これはそれぞれの大学がきちんと努力して競争力を持ちつつ,その標準化に対応しなければなりません。
 一方で,最後におっしゃった固有のもの,これがいわばそれぞれの国固有の競争力の源泉になります。ただ,その競争力の源泉になるには,各大学が努力しなければなりません。他方,各大学が努力して特徴を出すために,やはり国として政策的な援助が必要である,というふうに理解すればいいですか。
【鈴木(典)委員】  おっしゃるとおりです。
【永田部会長】  国も個々の大学も特徴を出さなければならない,ということですね。
 それでは,佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  鈴木先生の本日のお話では,要するに世界の大学生数はどんどん増えていく。ということは,大学の規模が拡大していくということですよね。
 その中で,日本でも今まで教育の質に関する問題がいろいろと言われていますが,実は教員の能力とか,それから最近は職員の能力であるとかと議論されていますが,教員のきちんとした確保ができないと,例えば本学のように裾野の広いところの学生をたくさん抱えている場合,どうしていくべきか。
 例えば世界で共通するようなスタンダードという話がありましたが,実はそこまで引っ張り上げることができる教員の方の能力開発ということを,やはり一度きちんと議論した方がいいのではないかと思ったのです。これまでも三つの方針の議論や,様々なことをいわれているのですが,大学教員だけは教員免許もありません。そういう意味では,細分化された論文を書いて,ドクターのペーパーがあれば,それで十分教員としての能力を持っていると言えるかどうか,ということも含めて言うと,特に文系などは難しい課題があるのではないかと思いますので,何かいいお知恵があれば教えていただきたいと思います。
【鈴木(典)委員】  ありがとうございます。おっしゃるとおり,大学の教員に関しては,いわば大学で修士課程あるいは博士課程を終われば,あるいは博士論文を修了すれば大学の教員になることができるというような長い慣行,歴史がございます。
 要するに,そのような学位を取れば大学で教えられるという暗黙の前提がございましたけれども,今,先生がおっしゃったように,学生の数はずっと裾野が広まっておりますし,一方で学問研究の分野もずっと広がっておりますので,ある一定の学位を取って,20年も30年も教えられるということも,硬直化,停滞化を招く原因の一つであると私は思います。
 そのようなことから,基本的には,やはり大学の教員といえども,資格を問うような制度を導入する必要があるのではないか。それから,少なくとも10年や20年に一度,大学の教員としてふさわしい資質があるか,あるいは努力をきちんとしているかということを問う必要があるのではないかと私は思います。
 例えばアメリカの医師は,医師免許を取っても,2,3年に一度試験を受けて,免許を更新しているわけです。
 そのような意味で,非常に厳しいレベルを維持しているわけですが,日本の教育を国際的に標準化するという場合には,そのくらいのことを考える必要もあるのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 いろいろと考えさせられることが多い論点であると思います。要はこの将来構想部会が対象にしているのは2040年を見据えた高等教育の将来構想です。そう考えると,今,鈴木先生が御提案になった質の問題,個々の大学の個性や国の個性という論点は当然含まれなければなりません。
 もう一つ手前に戻ると,大学が教える対象者を日本人に限定してよいのかという問題が当然出てきます。日本では往々にして日本人を対象にするという考え方が一般的ですが,世界では国籍を問わず優秀な学生の獲得競争が始まっています。優秀な学生をさらに優秀に育てて,自国の産業に少しでも貢献してもらい,母国に戻る,又は違う国に出ていく,という動きは当然のことだと思います。その中で,日本だけが孤立していて良いのかという問題が既に始まりかけているだろうと思います。
 こうした観点は,今後の大学の規模を考える際に欠かせません。当然,我が国としては財政的に難しい事情はありますが,もしこの観点が欠けてしまうと,我が国の大学は世界から孤立し,いわゆるガラパゴス化してしまいます。
 先生が最後に出された「インターナショナル・リベラルアーツ」を目標に考えると分かりやすいのですが,そこから全て逆算していくと,今やるべきことがだんだんはっきりしてきます。もちろん様々な御異論があると思いますけれども,当然考えるべきことだと思います。
 国立大学協会では将来像の取りまとめを進めており,先日もこの場で御発表いただきましたが,少なくとも留学生を各々の大学で選考せず,国立大学全体で選考し,その後,各国立大学に分配しようという方策も検討し始めています。個々の大学には特徴があるけれども,発信力が十分でない場合もあります。今,鈴木先生が御提案になった課題については,設置形態は異なっていても各大学がそれぞれ工夫するとともに,我々も考えないといけないだろうと思います。
 非常に重要なポイントを御提示いただきまして,大変ありがとうございました。

(2)地域における質の高い高等教育機会の確保のための方策について,資料2-1,資料2-2に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田部会長】  それでは,次に,地域における質の高い高等教育機会の確保のための方策ということで,前回,一度資料をお示ししておりましたが,十分な説明と御議論いただく時間を確保できませんでした。したがいまして,本件について,本日,少し意見交換の時間をとらせていただきたいと考えています。
 それでは,資料の説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料2-1を御覧ください。
 表紙にありますとおり,連携に係る現状の課題と統合に係る現状の課題ということで何点か課題例を用意しております。
 1ページめくっていただきまして,まず,連携に関わる内容です。初めは単位互換制度と「自ら開設」の原則との関係についてとございます。単位互換制度は多くの大学で活用されておりますけれども,そもそも単位互換する際にも,自大学にない科目を他大学と単位互換するということではなく,学部・学科において通常必要とされる授業科目を開設することなく,他の大学の授業科目をもって代替させるような取扱いを容認しようとするものではありません。同等性のある科目を自大学でも持っている上で他大学と単位互換をするという前提になっているところでございますが,4ページ目の現状のところにございますように,その実際の運用についてはかなり各大学に委ねられておりまして,その同等性がどれぐらいあるのかということについて,非常に厳格に運用されているところと,緩やかに解釈されているところと,運用にばらつきがあるのではないかということがございます。
 一方で,授業科目については自ら開設するというルールが平成19年にできておりまして,これとの関係でも,単位互換等を行う際に,自大学でどこまでの科目を用意した上で他大学と連携するのかという課題がございます。
 5ページ目に論点とありますけれども,今後,複数の大学間における単位互換制度の活用については,資源の有効活用,教育内容の豊富化,多様な教育ニーズに応えるという意味で有効性があるのではないか。更にICT技術の向上によって,遠隔地であっても効率的かつ効果的な学習ができるようになっているということも考慮し進めていく必要があるのではないかということ。次の丸で,一方で,これを濫用してしまうと,自ら卒業に必要な単位数を自開設の授業だけでは取得できない,必修や専門科目を自ら開設しない,体系的な教育課程が編成されなくなるということがないように,そのような懸念に応える必要がある。また,大学において必要な授業科目を「自ら開設」するという規定は,過去に一部の大学で発生した資格試験予備校に必要な授業科目を丸投げしていたという不適切な事例を受けて設けられたという点も考慮しておく必要があるということで,このような注意点も含めまして,単位互換の解釈や,「自ら開設」の原則の考え方を改めて整理する必要があるのではないかということが1点目でございます。
 次のページは,教員の専任に関する部分で,教員は,一つの大学に限り専任教員となる原則についてでございます。
 設置基準上は,設置基準第12条というところにありますとおり,「教員は,一の大学に限り,専任教員となるものとする」とされておりまして,複数の大学を専任教員として兼務するということは許されていないというところでございます。
 そして,運用上のことで言えば,設置審査の際には,「教員を一の学部に限り専任教員としてカウントする」という運用がなされているということでございます。
 7ページのところの現状ですけれども,「一の学部に限り専任教員としてカウントする」という運用のために,特定の学部・学科の専任教員が他の学部・学科の教育研究には関与できないものと理解されている実態があるのではないか。学部横断的な教育の取組を躊躇(ちゅうちょ)させる一因になっているのではないか。
 そして,二つ目に,複数の大学でクロスアポイントメントということは契約として行われているわけですけれども,一の大学に限り専任教員となるということの規定の例外はありません。クロスアポイントメントにより複数の大学と雇用計画を結んで,50対50のエフォート率が協定上定められたとしても,現行法令上は複数大学の専任になるということは認められていないということでございます。
 この現状に関する論点として,今後,一部の大学において,学部横断的な教育プログラムや教員の所属組織と学生の所属組織の分離ということが進んでいるという中で,本ワーキンググループでも学位プログラムの議論が行われておりますけれども,そういった柔軟なプログラムを作っていく場合において,教員を一の学部に限り専任教員としてカウントするという運用は緩和してよいのではないかという点でございます。これは一つの大学の中で複数の学部で専任としてカウントするという運用の問題でございます。
 また一方で,専任教員の趣旨を踏まえますと,各教員の学生に対する責任ある関与をきちんと確保するという観点から,各教員のエフォート管理の仕組みを構築する必要があるのではないかということ。
 そして,これだけ情報インフラ,交通インフラが発達しているという時代の変化を踏まえると,将来的には,複数大学でのクロスアポイントメントを活用した強力な連携体制を作り,教員を共有して活用するという方向性も考えてはどうか。
 この場合に,各教員の責任ある関与を確実にするという点で,複数大学間で各教員のエフォート管理の仕組みをしっかり構築する必要があるのではないか。例えば一つの教員を二つの大学で専任教員として扱うということを許容した場合に,現在の1校分の教員数で2校分の設置認可が可能となってしまうということになってしまうため,そのような点などについては慎重に検討する必要があるのではないかということでございます。
 次に三つ目ですけれども,9ページから大学間の連携ということで,これまでのヒアリング等でも取り上げられておりましたが,全国大学コンソーシアムが各地に作られています。そして,さらに,大学間連携というのが様々な例として行われてきています。また,大学間だけではなく,地方自治体や産業界との連携が行われ始めています。このような様子をヒアリング等でも御覧いただいたわけですけれども,論点として,これまでに大学間ではコンソーシアムが全国的に広がってきており,国公私の枠を超えた複数大学間での科目の共同開設や単位互換といった連携も出てきています。これに加えて,大学間だけではなく,地方自治体や産業界との連携の取組というのも始まってきていますが,今後,全国各地でこういった複数の高等教育機関と地方自治体,産業界とが恒常的に連携を行うような体制を構築していくことが必要ではないかということでございます。前半は以上でございます。
【永田部会長】  まずは前半の連携について御説明いただきました。
 これまでの議論の中で,様々ところで大学間の連携が強化されていて,これから多様な教育を展開するときに,連携は大いに大切であるという御意見が多く聞かれました。したがいまして,これまでの連携の在り方について問題があるだろうか,という視点でまとめさせていただきました。
 一方で,これは現状ですので,今後のよりよい連携のために,更にどうすべきかということを考えなければいけないという課題もございます。
 例えば最後のところで,地域における大学間等の連携強化という部分で,大学間や地方自治体等との連携とあります。その中身を見てみると,連携を進めにくい仕組みが存在しているということに気付かれると思います。
 事実,例えば私が学長を務めます筑波大学もつくば市や茨城県,周辺の研究所と国際戦略総合特区を進めているのですが,特区として資金を直接受け取ることができません。そこで,つくばグローバル・イノベーション推進機構という一般社団法人を設立し,その法人が資金を受け入れるようになって初めて機能的に研究が推進できるということになりました。
 コンソーシアムも同様の事情だと思います。京都大学と京都工芸繊維大学,あるいは京都の私立大学が連携して一つの事業を行うとして,黒板は京都大学が出す,白墨は京都工芸繊維大学が出す,レポート用紙は違う大学が出す,という方法をとらざるを得ません。大学間はもちろん,地方自治体と連携するとなったときに,さらに難しくなります。ですから,コンソーシアムを組むのは良いのですが,実際に動かすためには様々な問題を抱えています。
 したがって,大学間のコンソーシアムや地方自治体と大学の間でのコンソーシアムの形成を進めること自体は結構なことですけれども,それをサポートするための仕組みがないといけないだろうと思います。
 ここに整理した課題に対して意見を述べるとともに,少し先走った御提案まで述べさせていただきました。さらに自由に御意見を頂ければと思います。
 それでは,有信委員,どうぞ。
【有信委員】  連携ということは非常に重要だと思うのですけれども,ここに挙げられた個別の現状や論点を見ていると,何となく少し視点が違うような気がしています。基本的には,大学の自律性・自主性ということをどのように考えるのかということが非常に重要だと思うのです。
 教育研究の自由ということが認められていて,それが大学の自律性の根拠になっているわけです。教育研究の自由ということをベースにしながら大学が独自に人材育成を行うという過程の中で,先ほど鈴木先生が御指摘になったような,新しいリベラルアーツという形で独自の競争力のある教育体系を主張していく,ということが一方で当然あるべきだと思うのです。
 その中で,一大学だけで十分やり切れない,つまり学生の立場に立ったときに,学生が身に付けたい資質,能力に関して言うと,それぞれの大学が特徴的に提供しているものでは十分ではないという観点があって,これを学生がどのような形で身に付けるべきかという視点が重要だろうと思います。
 そうだとすると,これは単純に教員の側(がわ)から兼任に関する論点についての議論になっているのですけれども,むしろ学生の側(がわ)から,ある意味で様々な大学が特徴的に提供している教育要素を自分なりに構成し直して,先ほど各大学が提供するシラバスが学生とその大学との契約関係だという話がありましたけれども,その契約関係というものをもう少し広げるような形で,学生自身が新たな契約関係を作ることができるような形も考えられるのではないかと思うのです。
 もちろん大学側が連携によって新たな競争力のある教育体系を提供するという視点も一方でありますけれども,一方で,将来的に見ると,もう少し学生と大学との間の関係で,学生が複数の大学で自分が身に付けたい資質や能力についての学びの設計ができて,それをきちんと身に付けられるという視点を実現するような形でのフォーメーションも考えるべきではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。学生の立場からどうあるべきか考えることは,基本中の基本だと思います。
 続いて村田委員,どうぞ。
【村田委員】  今の有信委員の御発言に少し近いんですけれども,今の御説明は,いってみれば,地域における高等教育機関をどう保つかという話だと思うんですが,そこのところは連携では難しいのではないかと思っております。
 現在私は,大学コンソーシアムひょうご神戸の副理事長,そして,西宮市大学交流協議会の議長をしております。実際,複数の大学の連携というのは,確かに緩い形ではできるのですけれども,学生一人一人の教育に責任を持つのは,やはりそれぞれの大学でしかないわけです。それを連携によって救えるというのは単なる夢物語でしかなくて,失敗するのが目に見えていると私は思っております。
 そのような意味では,むしろ地方の高等教育の質を担保するためには,前にも申し上げたかと思うんですけれども,先ほど永田部会長や鈴木先生のお話にもありましたように,これからを見据えていくときに,世界がどうなっていくかということについて,学問の多様性,科目の多様性に対して,やはり学位プログラムというものを柔軟にしていく,そこに各大学が責任を持って,そのようなことができるような体制にしていくことの方が,より重要なんだろうと思います。
 それから,もう一つは,統合につきましては,やはり統合がしやすいような形で考えていかなければいけない。むしろ連携よりも統合して,一つの大学が責任を持ってやっていく,それぞれの大学が責任を持ってやるという方向で考えるしかないのではないかと考えております。
 以上です。
【永田部会長】  大変発展的な御意見でした。
 そのほかはいかがですか。
 ここは問題の核心です。つまり,大学が連携をすることで,本当により高度な高等教育ができるのかが問題です。有信委員や村田委員が今おっしゃったように,高次の目的に照らせば当然できるのですけれども,今のシステムではできないかもしれません。ですので,そのシステムを変えること自体に問題はないのですけれども,その高次の目的を達成するために,連携の仕組みは一体どうしたらいいのか,ということです。
 例えば,国際連携専攻という制度が設置審査上認められていますが,これは明らかに専任ではなく,母体の研究科の専任教員が国際連携専攻も担当しています。
 これは設置審査上明確に認められているので,それがましてや,一の大学の中で認められないという現状をどう考えるのかということです。設置基準を見直してみますと,一の大学に限り専任となるということは明確に書いてありますけれども,それ以上のことは書かれておらず,学部や選考については運用上の問題なのです。しかし,かなりきつく縛られています。
 ですから,有信委員,村田委員がおっしゃったように,こういう制度を新しく創ろうというのが一番分かりやすいと思います。村田委員の場合は,連携だけでは難しいから,統合した方が良いとおっしゃっているわけです。
 それでは,有信委員,どうぞ。
【有信委員】  余り一人でしゃべってもしょうがないんですけれども,もう一言。
 これは教育と研究を一緒に考えるとすごく難しい部分があって,教育,研究の自由と一言で言ってしまいますけれども,今,日本の研究力で一番問題になっているのは,非常にすぐれた研究者がいながら,なおかつその研究部隊がクリティカル・マスを割ってしまっているという実情があるような気がするのです。
 日本では,それぞれ特定の研究分野に優秀な人がいても,そこに十分な研究者群が集まっていません。例えば非常に先端的にとんがった研究が幾つかの大学で並行でやられていても,それぞれの研究者はみんな,あそこと私のところは違うという差別化をするわけです。
 なぜ差別化をするかというと,それぞれの研究者宛(あ)てにファンディングがなされていて,これは先ほど永田部会長がおっしゃったこととも関連するんですけれども,結局,そのようなお金の流れ方があるが故に,どうしても自分のところと他の研究者との違いを峻別(しゅんべつ)しなければ,自分のところにお金が来ないわけです。
 本当は,ある特定の大きな研究目標を立てて,そこにそれぞれの研究者が参画しつつ,より大きなスコープでファンディングを取れば,きちんと研究グループが作れて,より大きな力になると思うんです。
 先ほどの,コンソーシアムにお金が出ないというのも,そういうやり方をしようとすると,お金の出る出方がないのだと思うのですけれども,何かその辺の工夫を考えるべきではないかという気がします。
 教育についてそれをどういうフォーメーションでやるか。研究だと今のような形で,ある種の特定の連携グループに対して大きなお金を出すということは可能かもしれませんけれども,今度は教育を含めてそれをやる場合に,どうするかというのは少し知恵を絞る必要があるのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私は今まで専任教員という考え方は日本の大学教育の質を守る,質を確保するという点で非常に中心的な指標の一つであったと思います。専任教員一人当たりの学生数というのは,いろいろな意味で,クリティカルな教育の質であって,それを基準として見ても,相当大きな問題があるということが分かるわけです。
 ただ,この専任教員という考え方自体が,社会における大学の地位にかなりそぐわないものになってきているということは事実で,これをどのような形で編成し直すのかということがこれから問題になるのだと思うのですが,まず,第一に申し上げたいのは,この問題の出し方について,教員は一つの大学に限り専任になるという原則が問題だということですけれども,一方で,社会,企業と大学を兼任する場合はどうなのかという問題もあると思うのです。
 大学間では一つだけということを大学設置基準で決めているわけですが,そもそも大学教員というのは,他の職を兼ねない,一方,企業の方は,講師として大学で授業をある程度やることはあるけれども,所属は企業である。そのように,人事上かなり明確に帰属が分かれていることを前提とした規則だと思うのですが,実はその概念が今,かなり曖昧になっているところもありまして,人事上も企業と大学等の両方にかなり深く関わっている人が多いわけです。
 逆にこの規定をかなりねじ曲げて解釈しているところも実際にはかなりあるわけで,私は某株式会社立大学を見ましたけれども,常勤教員の平均給与が3万円というので驚きました。なぜかというと,みんな企業に属しているからです。しかしながら,これが専任教員なのです。それはほかの大学に属していないから,ということです。設置基準をそのまま解釈すれば,このようなことも可能だということになると思います。
 何か他に設置基準上の細かい規定があって,それを実質的にはできないようになっているかもしれませんが,少なくとも普通に解釈すると,そういうことになると思いますし,実際にそうやっている例があります。
 ですから,一の大学についてだけが問題なのかという点で言えば,必ずしもそうではないのではないか,ということです。
 それから,もう一つは,一の大学であっても,大学の中の幾つかの組織への帰属はどうなのか。この場合,問題は,二つの学部に属するのが良いのか,悪いのかという問題もありますが,もう一方で,大学と,特に大学院があるところで大学院が部局化しているところは,大学院と学部の二重帰属が当たり前になっているわけです。これをどのように扱うのかということも,問題だろうと思います。
 また,これは先ほどの有信委員の話にありましたが,社会との関係で,企業からお金をもらって,一時,例えば研究センターのようなところに帰属するという形が,一部の大学では考えられているわけですけれども,その場合には,大学に属しながら,学部には属さず研究センターに一時的に属する,あるいは,両方に属するというケースもこの頃できています。そのような意味で,大学内での組織との関係はどうなのかという,かなり重要で複雑な問題が生じている。これをどのように考えるのか。
 それから,最後ですけれども,普通余り議論されていませんけれども,今までの専任教員というのは非常に大きな意味があって,少なくとも国立大学は部局に分かれています。学部,あるいは,大学院が部局化したところは大学院が所属部局として明確になっているわけです。センターの場合も,国立大学では合同して一つの大学内組織を形式的に作るというような形を取っているところがほとんどです。それはなぜかというと,大学教員の大学運営に参加する組織は一つでなければいけないというのが原則なのです。二つ参加するのはおかしいのです。
 例えば学長選挙について,これは選挙もけしからんという話はありますけれども,一人の教員が複数大学において専任教員となった場合,学長選挙はどこの枠で参加するのか。これは二つの大学で参加してはいけないわけです。専ら属するところで参加するべきなわけです。大学運営に関する幾つかのところで,同一の人がいるというのはおかしくて,一つ主要な教授会の組織で対応するというのが,これまでの考え方でした。これをこれからどうするかは別の問題ですけれども。
 そういった意味で,大学教員がどこに属するのか。それはどのような仕事を与えられるかというのと同時に,どのような権利を与えられるのかということとも関連しているので,かなり幅広に考えなければいけないということを申し上げておきたいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。要はこの専任とは何かという定義一つについても相当考える幅があり,解釈次第では大きな転換をもたらすという金子委員の御意見です。
 先ほどの御説明の中に,教員の所属組織と学生の所属組織の分離が進んでいる中で,という話がありました。しかし,多くの大学では,教員も学生も同じように学部又は研究科に所属しますので,この学生はそこの研究科の人,という概念になっています。
 ところが,学位プログラムであれば,そこに誰が教えにいっても良いですし,学生もそのプログラムを取っている限り,いろいろな先生とコンタクトすることも当たり前だというふうになります。
 そのような一部先進的な試みを行っているところもあり,法律ではただし書きでそれが保証されています。
 今申し上げましたように,「一の」という文言一つでこれだけの問題があって,逆に言うと,この「一」をどのように緩和するか,あるいは,どのように法律改正するかで,大学の作り方が大きく変わるということを金子先生は今,おっしゃったのだと思います。
 益戸委員は企業の方ですので,このような教育現場のことは余り御存じないかもしれませんが,「一の大学に限り専任教員となるとする」,この基準1個でこれほどの規制が掛かっているということについて,どうお考えですか。
【益戸委員】  正直申し上げまして,大変びっくりしました。今のやり取りを聞きながら感じたことは,大学経営はどうなっているのか,大学のガバナンス改革は,その後どう進展したのだろうかということです。
 と申しますのは,御存じのとおり,企業はM&Aもやりますし,企業連携もやります。常にステークホルダーからの監視があるわけです。その結果,株価や業績の上下変動があります。非上場のオーナー企業であっても,銀行融資のレートが低くなる,高くなる等,必ず外部からの評価が出ます。経営は,緊張感を持って,企業の実力に基づいてできることをやり,さらにその上で,また背伸びをして新しい企業改革をしていくわけです。
 私が経済同友会教育問題委員会の副委員長の頃,2012年3月に「私立大学におけるガバナンス改革・高等教育の質の向上を目指して」という提言作りに参加しました。その後,大学はどう変わったのでしょうか。従来型の日本企業の経営は,本来なら牽制(けんせい)機能を働かせるべき,社会取締役,監査役でも同じグループの出身者や社長の盟友が取締役を務めていたりして,あまり深い議論のない取締役会が存在していました。
 しかしながら,日本企業はグローバルに見て,もっとガバナンスの改革が必要であるという強い意見が主流となり,外部人材が社内に入るようになったわけです。その結果,上場企業やオーナー企業経営への信頼感が非常に増しました。株価は上昇です。
 前回も申し上げましたけれども,私は,この高等教育の将来構想を考える上で,もっと企業と大学との間の信頼を強めることが必要だと思うのです。そうだとすると,きちんとしたガバナンス改革ができたかどうかということをしっかり検証した上で,前に進んでいくことも重要ではないかと思っています。
【永田部会長】  大変ごもっともな御意見であると思います。
 古沢委員はこの「一の専任」という一言が非常に重くのしかかっているということは御存じでしたか。
【古沢委員】  実際,現場でどのように運用されているのか,少し不勉強で分かりませんけれども,先ほど金子先生がおっしゃったように,専任教員一人当たりの学生数ということで教育の質が担保されてきたと思うので,その点はどうなるのかということについて,ここにも課題として挙げられていますけれども,もし改正するのであれば,その点で何らかの仕組みを作る必要があるのではないかと思って聞いておりました。
 また,企業の場合も,確かに役員の場合は兼任があるかと思うんですけれども,企業の社員の場合は,副業はなかなか難しく,一般にはできないと思います。その点も含めて,なぜ大学だけが,この一つの大学に縛られるのかという点でも疑問を感じます。
【永田部会長】  最近は企業でも,一つの会社にだけ務めているわけではない人がたくさん出てきていますね。
【古沢委員】  そうですね。
【永田部会長】  それでは,佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  学部以外の教育基本組織を置くことができるようになっているわけですよね。永田部会長のいらっしゃる筑波大学も学群や学類があって,そこに学生が所属しています。そして,系という組織に教員がそれぞれデパートメンタルに所属しています。
 私がいる桜美林大学も学群,学類,学系という形にしているのですが,実は教員をどこにどう張り付けるかというときに,設置基準上では学群に張り付けなくてはならないですよね。ところが,審査は学系の方で行うため,そこで屋上屋を架すような議論をして複雑になっています。一の学部に関して専任となるということ,そして,筑波大学を少し勉強したりしていますが,学系に教員は所属しているとなっていて,そのところの調整をどうしたら良いのかと思うのです。
 申請するときには学群のところに人数がきちんと確保できているかどうかということで,多分申請すると思います。
【永田部会長】  公の管理としてはそうなっています。ですから,我々筑波大学でも中期目標期間の評価あるいは年度評価のときに,学群,系という単位と,系,研究科という両方に分けて評価を受けています。大変手間がかかります。設置基準からいうと,作ってもいいけれども,一の大学に限り専任となっていて,更に運用上,一学部あるいは一研究科に専任になっているため,そのようにせざるを得ないのです。
【佐藤委員】  そういうことを含めて言うと,設置基準そのものが構造的に昔から全然変わっていないためにこのようになっていて,これもきちんと議論していただけると良いと思います。
【永田部会長】  もちろん良かれと思って作られている設置基準なわけですけれども,時代が変わってきたということであれば,それは当然見直しを考えざるを得ないと思います。
 見直しの理由は,先ほど申し上げたように,地方創生であったり,グローバル教育であったり,それから,先進的な教育であったりしますが,それを実現するために必要だから変えるわけです。単に自由にいろいろなところで教えたいという意味ではないんだということですよね。
 では,今,連携の話をしました。次に,先ほども村田先生から話がありましたが,統合という,ある意味では連携以上に責任の持てる体制であるけれども,連携以上に相当のパワーが必要です。その統合ということに関して,事務局で用意した資料があります。
 それでは,御説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料2-1の11ページを御覧ください。
 国立大学について,一法人が一大学のみを設置していることについてということでございます。
 御案内のとおり,現行制度におきましては,一つの国立大学法人が一つの国立大学を設置し,法人の代表と大学の学長が一致するという制度になっております。国立大学の法人化のときの考え方としては,1点目に,学長が法人化前から大学運営全般にわたって意思決定を行う権限と責任を有してきたところであり,法人化に当たってもこのような学長の権限と責任を更に発展・充実させる方向で検討することが求められたこと。2点目に,一の国立大学ごとに国立大学法人を設立することが大学の運営の自主性・自律性を高め,自己責任を強める上で自然な形であり,大学相互の競争的な環境の醸成や大学の個性化に資することが期待できること。3点目に,学内における教学と経営の円滑かつ一体的な合意形成の確保を図ることができる仕組みとすることが必要である,ということで,現在の制度になっております。
 今後の論点として,法人と大学との基本的関係をどのように考えていくのかということです。
 その次のページに図がありますけれども,上の図は現行制度を示しております。下の図は,平成24年の大学改革実行プランで提案された,国立大学の一法人複数大学方式という考え方でございます。
 11ページに戻ります。論点の二つ目ですが,公立大学法人や学校法人と比較して,国立大学法人としての望ましい姿は何なのか。また,ガバナンス改革の推進という観点から望ましい法人の形をどのように考えるのか。一つの法人が複数大学を設置することについて,具体的にどのようなメリットがあるのか。デメリットがあるとすれば,どう乗り越えることができるのか。更に具体的に,法人の理事長と学長をどう任命するのか,また,役員会,経営協議会,教育研究評議会はどういう形にすべきなのか,といった論点があるのではないかということでございます。
 13ページにつきましては,今の国立大学法人制度の話に直接係るものではありませんが,教員養成学部については,一定の連携・協力,教員養成機能の統合等について報告が出ているところでございます。
 次に,14ページからは私立大学についてでございます。現行制度では,学校法人の合併ということについて,私立学校法に規定があり,大学の設置者変更については学校教育法に規定がございます。そこにありますとおり,学校教育法第4条のアンダーラインを御覧いただきますと,学校の設置者の変更については,当該各号に定める者の認可を受けなければならないという,学校の設置者変更についての手続があります。
 学校法人の合併につきましては,私立学校法第52条に,学校法人が合併しようとするときは,理事の3分の2以上の同意と,所轄庁の認可という要件がございます。
 そして,合併の効果として,合併を存続する学校法人又は合併によって設立した学校法人は,合併によって消滅した学校法人等の権利義務を承継するといった規定が設けられているところでございます。
 その下,現状の項目の二つ目のぽつにございますように,私立大学については,大学や法人の独立性や独自性が強く,大学間や大臣所轄法人間の合併の事例は少ないという現状がございます。
 論点といたしまして,一つ目に,私立大学の特色化・強みのある分野への資源集中という観点から,学生の募集,施設設備・調達・事務処理等の共同化等を進めていくべきではないかということ。
 そして,二つ目に,特に地方の大学については,地方自治体や産業界と大学が形成するプラットフォームに積極的に参加し,地域の高等教育に関する中長期計画も踏まえた教育研究活動や地域政策と連動した産学連携を行うなど,各種主体との幅広い連携を進める。そのような中で,戦略的な大学間,法人間の連携・統合を進めることができるのではないかということ。
 次のページですけれども,各法人の成り立ち,独自性を生かして,一定の独立性を保ちつつ,緩やかに連携し,規模のメリットを生かすような経営の幅広い連携・統合の在り方は考えられないか。また,統合される学校法人の建学の精神の承継に配慮した仕組みの検討など,多様な連携・統合策は考えられないだろうか。
 そして,その際に,強みのある分野への資源集中を進め,円滑な事業譲渡に資するよう,現在,大学単位でしか認められていない設置者の変更について,学部・学科単位での設置者変更を認めるなど,制度面での改善を検討すべきではないか。
 これは,下の図にありますとおり,現行法では,大学単位で別の学校法人に設置者が変わるという手続があるわけですけれども,学部単位ということになりますと,その認可の手続が規定されていないために,今ある学部を廃止して新たに設置するという手続を踏むことになることから,学部単位の設置者変更という手続を設けてはどうかということでございます。
 そして,上の丸に戻りますと,文部科学省や日本私立学校振興・共済事業団の経営相談機能を強化すべきではないか。
 また,最後に,学生を抱えたまま学校法人が突然経営破綻に陥ることを防ぐため,経営悪化傾向にある学校法人に対して,経営状況をよりきめ細かく分析した上で,各私立大学の自主性・自律性に配慮しつつも,法人の自主性に任せるだけではなく,他法人との合併や撤退を含む早期の適切な経営判断が行われるよう,文部科学省や日本私立学校振興・共済事業団が支援し,状況に応じて更に踏み込んだ指導・助言を行うことが必要ではないかという論点でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 今,国立大学と私立大学の例を出していただいて,統合という問題を法律的な観点から御説明しました。ですが,ここで法律的な問題について議論するわけではなくて,統合が生み出すメリットやデメリットについて,まずは考えていきたいと思います。その際,統合することで経営的に楽になるということは後の問題です。要するに統合することに価値があるかないか,ということが一番重要な問題なのです。独立してやっていることにより価値があるのであれば,それでいいわけです。そこの部分を考えなければいけません。
 一例として,地域を考えたときに,その地域における教育研究に関する計画的な将来像が立たない中で,高等教育機関が乱立しているだけだとすると,高等教育に携わる者の責任は国公私立ともに非常に重いわけです。
 そのように考えたときに,何か強さを生み出すことができるような統合であれば,それはメリットになるであろうと思います。
 それから,先ほどのグローバル化するというときに,外国の大学との統合の可能性も当然あるわけです。そのような観点も近未来的には生じる可能性があるということも念頭に置きつつ,御意見を賜りたいと思います。もちろん国公私立大学だけではなくて,短期大学や専門学校,あるいは,高等専門学校といった機関もどう調和できるかというのは非常に重要なことだと思います。
 では,麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  国立大学の一法人が一大学のみを設置していることについては,ここに書いてあるとおり良く理解できるんです。今,部会長が言われました国立高等専門学校においては,一法人で複数校を設置していると聞いておりますので,実際のメリットやデメリットといったものが示されれば,この議論も深くなるのではないでしょうか。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 前野委員,どうぞ。
【前野委員】  今,国立高等専門学校のお話がございました。国立の場合,独立行政法人という形で機構が置かれており,国立大学法人とは異なる形態になっております。各歴史的にはそれぞれの国立高等専門学校が単独でスタートしておりますので,その歴史あるいは風土といったもの,あるいは教育に対する考え方はそれぞれで異なっております。それが個性にはなっているんですけれども,全体として,今,できるだけ標準化しようとする動きがあります。これはやはり独立行政法人のメリットの一つかと思います。常に51校の高等専門学校の校長,副校長,あるいは主事といった人たちがいろいろな場面で密に連絡を取り合っております。
 それから,全国にある51校の高等専門学校を五つのブロックに分けまして,そのブロックで必ず年に二,三回はそれぞれの立場で集まって議論や情報共有をするようにしております。いつもどうしようかという悩みの話ばかりなんですけれども,高等専門学校のもう一つのメリットとしては,個性が残っている点かと思います。それぞれが少し張り合うところがありまして,先行する高等専門学校が切り開いたものを速やかに情報共有して,その他のの高等専門学校に広めていくというシステムは割といい状態ではないかと思っております。
 ただ,一方で,独立行政法人の場合,予算がどんどん切られますので,高等専門学校は非常に厳しい状態でございまして,理工系の高等専門学校でありながら,人件費が非常に高い割合を占めています。大学に負けずに外部資金は取っているんですが,やはり厳しい状態にあります。
 そうしますと,長期の視点から見ると,理工系の設備をどのように更新して維持していくのか。そして,教育研究をどうやって維持するのかということは非常にシビアになっております。
 一方で,これは組織上の問題で,裁量労働制を採ることはできないので,例えば土日を使った取組などをしようと思ってもなかなか難しいものがあります。また,連携をしようとしても,国立大学,あるいは私立大学では裁量労働制を採っている教員の方がとても多くいらっしゃいますので,そのような方々との雇用上の問題が起ききます。まだ,いろいろと克服しなければいけない点はあると思います。
 独立行政法人である国立高等専門学校機構という組織は都内にありますが,密な関係を築いている一方で,やはり現場とのずれというものがあります。もちろん教員も機構の側(がわ)に流動化という観点で入っており,そこで全体の意識共有,情報共有を図っているのが実情です。
 徐々に良い方には向かっていると思いますけれども,まだ問題はあるという状態かと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。全国に51校の国立高等専門学校があって,地理的に互いに遠いところもあるので,個々の学校により随分事情が異なるとは思います。
 事務方に一つお聞きしたいのは,資料には国立大学と私立大学のことが書いてあります。国立大学はここに書いてあるとおりだと思うんですけれども,私立大学と公立大学の統合というのは法律上は規定できているんですか。
【堀野高等教育政策室長】  法律上,特に公立大学と私立大学との統合に関する規定はございません。
【永田部会長】  つまり,統合することはできるけれども,やるとなればいろいろな課題があるということでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  やろうとした場合に,統合してどちらかの学校法人,または公立大学法人になってしまえば,その制度にのっとれば良いのだと思いますが,そうでないとした場合には,公立大学法人には地方交付税が,私立大学には私学助成が入っていて,どういう法人ができたときにどういうところにお金が流れるのか,といった考えるべきことが多々出てくると思います。
【永田部会長】  その通りです。その場合は,特に公立大学の場合には,国からの運営費の流れが違うというのは大きな問題です。
 この問題は,後で解決すれば良いのですが,なぜここであえて触れるのかというと,大都市から離れた地域ほど,その地域にある国立であれ公立であれ私立であれ,その責務は非常に大きくなると思います。東京23区の定員抑制というのもありましたけれども,都市に行けば連携が進めば何とかなるのではないか,という感じがあるかもしれません。しかし,地方に行けば,それぞれ国公私立の枠組みを超えて非常に重い責務を背負っているという中で,連携をまずは組んだその先の統合というのは,メリットを生かす,機能を生かすという意味で考え得るのではないかと思っています。
 連携についても,コンソーシアムを組むといっても,先ほど述べたように,入ってきた資金が縦割りで使い勝手が悪いということでは,連携の効果が十分発揮できません。そして,こちらも先ほど述べましたが,もう一段上のレベルの連携のシステムを作っていかないと,恐らく連携が有効には機能しないだろうというふうに思うわけです。
 佐藤委員,いかがでしょうか。
【佐藤委員】  今,事務局から説明がありましたけれども,最近,私立の学校法人から公立大学法人になる場合,新設の法人を創るというよりも,設置者変更というような形で設置審査が行われています。地方で誘致してこういう大学が欲しいんだということで創ったものの,うまくいかないとなったときに,出した資材をどうやって生かしていくかという問題になると,やはり公立大学として残しておきたいという選択肢があっても,これはごく自然なのではないかとは思うのです。
 けれども,これは仕組みとしては,公立大学法人のようなものが創られて,それに吸収されるような形になるわけではなくて,新たに公立大学法人を創るわけでしょう。設置者変更だけで本当にいいのでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  新たに公立大学法人を創る場合もありますし,公立大学法人として既にある大学の中に入っていくという場合もあるのではないかと思います。
【角田私学行政課長】  これまで事例としてございますのは,既にある私立大学を公立大学に位置付けるというものでございますので,今,佐藤委員がおっしゃったように,手続的には設置者変更することになります。
 一方で,もともと学校法人立であったものを公立大学法人立にするという必要がございますが,通常,新しくその自治体で公立大学法人を設置して,そこが変更された後の設置者になるというパターンがこれまでではほとんどであるということでございます。
【永田部会長】  では,千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。私立大学の連携・統合の円滑化に向けた方策についての資料を読ませていただきますと,効率化であるとか,あるいは,経営状態が健全なうちに,破綻に陥らないうちにということで,特に地方大学の経営の逼迫(ひっぱく)ということがテーマになっているようなんですけれども,それを改善して,なおかつ地元に必要な人材を育成していくというところに専門職大学という制度を使えないかと思っております。これは教養を重視したこれまでの大学に比べて,専門職大学では企業との連携ということが前提になりますので,その地域で必要な人材を育成するというような性質を持つような大学になるのではないかと思います。
 それから,敷地の問題や校舎の問題,あるいは,教員について,ここの資料にも,複数の大学が協力した授業ということで,先ほどの自ら開設とちょっと違う話が出てきているわけですけれども,言い方がこれが正しいかどうか分かりませんが,L型の専門職大学というような形を一つの新しい制度として,地元に役立つ人材を専門職大学が担っていくというような形を考えてはどうだろうかと思います。
 以上です。
【永田部会長】  それは大いに期待されているところだと思います。
 福田委員,どうぞ。
【福田委員】  ありがとうございます。設置基準は一つの中で,例えば統合にしましても,連携にしましても,大阪では大阪府立大学と大阪市立大学が議会の承認を得て一緒になっていくスケジュールになっていますけれども,これが私立大学でどこまでできるのか。それを一つの基準でやっていくと,非常に難しいと思います,片方は完全につぶれるまでは統合ではなく吸収しかないかと思います。
 品位がない話かもしれませんが,経営ありきなのです。経営をよくするためにはどのような学生サービスをするのか,どのような教育をしていくのか,どのような研究を発表していくのかという,全て経営につながるのが私立大学だと思っております。将来近いうちに設置基準のいろいろなお話も出てくると思いますので,そういった一つのルールでということが,昔の官立大学から始まって,今,私立大学がどんどんと増えている中では難しいかと考えてございます。
 以上です。
【永田部会長】  現行のルールにおいてはその通りですが,ここで検討すべきは,それをどう凌駕(りょうが)していくか,ということです。つまり,大学が本当になくなったら,卒業生にとって母校がなくなるという事態が繰り返されます。我々としては,そうならないよう,やはり責任を持たなければいけません。
 経営の問題はもちろんありますけれども,今,ここで検討すべきは,我が国の大学をはじめとする高等教育の質をどのように担保していくか,ということだと思います。
 そのために,まさに,福田委員がおっしゃったような課題を越えていかないといけないので,非常に難しいわけです。
 では,両角委員,どうぞ。
【両角委員】  私立大学が統合した事例について何件もインタビューをしたことがあるのですが,実際,これまでに統合したところは,いわゆる対等合併の例は余りなく,吸収合併が多かったのです。
 その理由を聞いていくと,もともと連携の歴史があるとか,建学の精神が近いとか共通の土台があるのですが,それだけではなくて,やはり吸収される側(がわ)というのは,経営が厳しくなっている大学であることが多く,例えば少なくとも,施設の更新などは全然できていないような状態なのです。吸収する側(がわ)に経済的な負担が相当にかかっています。
 しかも新しい学部を創る場合も,そのまますぐに移行できるわけではないので,かなりの学生を抱える期間が生じるとか,あるいは,事務手続が非常に大変であるとか,様々な負担があります。そのようなところを吸収した大学というのは,非常に強い大学しかないということと,逆に吸収されたい学校はたくさんあるけれども,実際に吸収された大学を見ると,何らかの魅力がある,それぞれそれが成立する条件というのは意外に難しいものであると感じたときに,一つ思ったのは,吸収する側(がわ)が現在自己負担で全部やっているところを,補助金等のサポートで,後押しすることができるのではないかということを,その吸収された学校の方が言っていました。
 あと,このような私立大学の統合の話をされるときに,私立大学の経営が厳しくなったところをどうするかという話が出てくるんですけれども,実際,厳しくなるのは地方の小規模な大学であることが多いのです。そうすると,それを吸収するような学校というのはその地域にはどこにもない。それだけの体力がある学校は都市部にあるので,そういったところがわざわざ吸収するメリットというのはあまりないわけです。ボランティアではないのだとおっしゃる大学さんもありまして,もっと強くなるための統合の制度で改善すべき点はたくさんあると思うのですが,経営の危機といったものを統合で何とかしようというのは,少し厳しいのではないかというのがこれまで見てきた印象です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 では,安部委員,どうぞ。
【安部委員】  今の,両角委員のお話にありましたように,地方の大学で本当に厳しいところが統合するというのはなかなか難しいという点はおっしゃるとおりだと思います。一方で,先ほどの連携の話なんですけれども,地方の大学が連携するということは,私は,地方に住む人の高等教育の機会を保障するためには不可欠だと思っております。
 もともと,現状では,地方にある大学でも実際には地方との関わりが少ないというような現状がずっとあったと思います。特に私立の大学や短期大学においては,地方自治体や産業界との連携において,一つの私立大学,一つの私立短期大学が地方に対して何かを提案しても,あなたの大学だけとは実施できないという回答が自治体等からは返ってくることが多い。そうであれば,他の大学と連携することが,様々な事業を地方でやっていく条件になります。特に人材育成の方針を立てたり,あるいは,どういう人材がこの地域で必要かというようなことをテーマとするときは,やはり大学間の連携を組むことから始まるのではないかと思います。
 それは,いわゆる大学が開かれた形で,ステークホルダーの声を聞くということにもつながると思います。そういうことをした上で,18歳の人口が減るという話をいつも聞くわけですけれども,地方の18歳は特に減少が激しいことを踏まえると,当然高等教育機関というものの,規模の縮小,そこから均衡というステージを恐らく迎えます。そのときに統合ということをどのように考えていくのかという段階に進んでいくと思います。
 ですので,連携の段階の中で,先ほどの一大学のみでの専任教員を少し緩めたり,あるいは,大学間での単位互換制度,あるいは,例えばコンソーシアムの例がありましたが,教職科目などは連携大学間で共同で実施するということなどをやっていって,そして,次なるステージで,地方に必要な高等教育機関の規模や分野というものが決まってくるのではないかと私は思います。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 黒田委員,どうぞ。
【黒田委員】  ありがとうございます。一法人が一大学しか設置できないということになっているのは,今国立大学だけなのです。公立大学は公立大学法人が複数の大学を持つことができます。私立大学も学校法人が幾つかの大学を持つことができます。国立大学が別扱いになっているのですが,これはやはり,国立大学も複数の大学を持てる法人にして,合わせた方がいいと思うのです。
 しかし,ここで問題になるのが,法人の長(おさ)と学長をどう区別するかということですが,やはりこれは複数の大学を持つことになれば,法人の長(おさ)と学長は別にした方がいいと思います。たまたま複数の大学の中の一人が法人の長(おさ)になってもいいわけですけれども,責任が全く違うと思いますので,分けるべきであると私は考えます。
 そうしていくことによって,国立大学は地方においても活性化してくると思うのです。今,それぞれの国立大学がそれぞれの立場でどこかのまねをしているという状態です。独自性が全く国立大学にないわけですから,そういうことをしっかりとやっていただきたいと思います。
 それから,私立大学の合併の問題は非常に難しいものです。先ほど,両角委員が言われたように,もう駄目なところは本当に駄目で,どこも引き受け手がないという状態です。そういう中でそのような大学をどのように生き残らせていくかということになると,これは設置基準とも関係するのですが,単位互換制度であったり,また,今,放送大学の単位を取っても,その大学の単位に認めていくということは非常に難しいのです。内部の規則をしっかりしておかないと,その単位を自分のところの単位に認めるということは非常に難しい。そのようなこともありますので,単位互換の在り方ということをやはり考える必要があるのではないかと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。大学をどのように存続させていくかどうかということが出てきました。けれども,それよりも,どのようにその地域の学生に勉強する機会を担保できるか,という問題だと思います。
 有信委員,どうぞ。
【有信委員】  国立大学法人の中に複数大学を置くという点に関しては,アメリカの州立大学システムの制度設計が恐らく参考になると思うんです。州立大学システムは各州全て同じではなくて,多少バリエーションがありますし,あるいは,アカデミック・セネットというようなこともあります、。たしか前にも調査した結果があったので,その辺を見ながら制度設計の議論をやった方が,よりフォーカシングできるような気がします。
【永田部会長】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私は国立大学法人に複数大学を置くというのは,やって意味がある例が本当にあるのか,ないのか,非常に疑問に思っています。需要があるならば,議論すればいいのですけれども,その形を私立大学とそろえるというのは,ほとんど意味がないと思います。
 それから,アメリカの州立大学システムの制度は,やはり歴史的な事業があって成立したのであって,要するに半分は文部科学省みたいなシステムなのです。そのような行政的な機能を政府との間に一つかませているだけで,それを日本でやる意味は私はないと思います。
 一法人が複数大学を持つというのはほとんど日本だけなのです。アメリカの州立大学制度も性格が異なるものであると思います。
 それについては,本当にやりたいところが出てくれば議論すればいいと思いますが,私は今,何で議論するのかということが余りよく分かりません。
 一方で,それより前に伺いたいのは,私立大学の問題ですけれども,先ほどお話ありましたように,自分からやりたいところがあって,それをやりやすくするというのは確かにあるのかもしれません。もし今の制度であれば,一つの大学の経営が非常に難しくなって,ほかの大学に学部の単位だけで吸収されるために相当の手間がかかるというのであれば,それを軽減させる方法が何かあるのかもしれませんが,それが法律レベルの問題なのかどうかは私は少し分かりません。むしろ設置基準や設置認可の話ではないかという気がします。
 文部科学省にお聞きしたいんですが,経営困難な私立大学の扱いについては10年くらいずっと問題にしてきています。実際,2014年の学校教育法,私立学校法改正で,文部科学省の監督権は強化されました。それから,立入検査権もできました。そういった意味で指導する体制も法的な根拠はできています。
 その後,私立大学等の振興に関する検討会議というのもあったかと思うのですが,一応の手は何かいろいろと打っておられるんでしょうけれども,現在の段階で,経営困難大学に対してどのような手当てをするというようなことが決まっているのでしょうか。
 その上で,この統合に関わる制度が制約になっていると思っておられるのかどうか,どこが制約になっているのかをお聞きしたいと思います。
【永田部会長】  事務局,いかがでしょうか。
【角田私学行政課長】  前段で金子委員から御指摘いただきましたものは,本日御説明いたしました資料の15ページの下の図に書いてある件であると思います。この件につきましては,御指摘のように,学校教育法に設置者の変更としかなく,学部の設置者の変更という規定がないためにできない,というようなことになっておりますけれども,現実には,法令改正という形をとるのか,あるいは,今,これを基に行っております設置審査の中の設置者変更の部分についての運用を変えるということで足りるのかどうかということについて,少し法令的な詰めが必要ではないかと考えているところでございます。
 実際には,ポンチ絵にございますように,これを仮に譲渡するということを考えますと,一旦廃止して,新しく創り直すという手続をとっているわけでございます。一旦創り直すという場合には,通常の学部の新設という手続をとっているわけでございますが,これをある意味簡素化すれば,同様の効果が得られるわけでございますので,そういうことを含めて考えていく必要があるのではないかと思っております。
【永田部会長】  後段はいかがですか。
【井上私学部参事官】  もう1点御質問がございました経営困難な大学,学校法人に対する対応でございますけれども,文部科学省の方では,学校法人の健全な経営の確保に資することを目的としまして,学校法人運営調査という仕組みを持っております。そちらで様々なデータ等を見ながら,学校法人を御訪問させていただくなど,専門家の先生方の御協力も頂いております。
 その中で,やはりうまくいっていて大丈夫そうなところと,残念ながらそうでないところというのがございまして,経営に困難を抱えるというところにつきましては,日本私立学校振興・共済事業団などとも連携しながら,一緒に経営改善の計画についてフォローさせていただいたり,必要な指導,助言をさせていただいて,フォローアップをしております。
 そこで回っていって大丈夫になったということであれば,自分で御卒業してやっていっていただくというようなサイクルで対応させていただいております。
【永田部会長】  金子委員,御質問がありましたら簡潔にお願いします。
【金子委員】  今のお話を聞くと,そういう制度がうまく機能しているように聞こえるのですが,なかなか実態としては経営困難大学への相談はかなり難しいところがあるように私は聞いております。その点はいかがでしょうか。また,その原因はどこにあるのでしょうか。
【井上私学部参事官】  経営困難というレベルにもよるかと思います。実際にかなり難しくなっていったときにどうするかということは,今ここで論点にも出ていたような,制度上何か工夫すべき点,また,更に我々が踏み込んでやらなくてはいけない点もあるのではないかということで,今の仕組みだけでいくと,やはり難しいというところは確かにあるのだと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。 では,最後に,佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  本日の私立大学の連携,統合についても,あるいは,国立大学法人一大学についても,この議論は,今,どのように対応するかという議論になっている気がします。2040年を見据えたときに,地方にとってどういう大学が必要かということを議論するならば,私立大学だ,公立大学だ,国立大学だという縦に割った考え方ではない議論をした方がいいのではないかと思いました。
【永田部会長】  ありがとうございます。その点では,以前,各地域における大学の分野別の所在マップを作りましたが,今後,どう考えるかはまだ議論していません。したがいまして,現状についてを先生方に資料としてお渡ししたというところでございます。
 この連携と統合については,本日で終わりではなくて,本日が最初の議論であって,これから,本日頂いた意見をまとめて,論点を絞り直してお諮りしたいと思います。

(3)大学のガバナンスについて,資料3-1,資料3-2に基づき事務局から説明があった。
【永田部会長】  それでは,本日予定していました最後の内容です。大学のガバナンスに関して国立大学,私立大学のそれぞれの昨今の取組や様々な会議での議論の状況について,事務局から先生方に御報告いたします。
 それでは,よろしくお願いいたします。
【小山国立大学法人支援課長】  失礼します。国立大学と私立大学で分けて御報告させていただきます。最初に国立大学について資料3-1を御覧ください。
 表紙をおめくりいただいて,ざっと,御覧いただいた資料ばかりかもしれませんが,本日も御議論ありましたように,国立大学法人化以降,模式的に示してございますけれども,各大学で法人格を持って,それぞれの判断で個性,特色を際立たせていただく,改革を促進するという趣旨で,全ての大学が非公務員型で法人格を持つ形で,平成16年からスタートいたしました。
 第2期中期目標期間の半ばで,ミッションの再定義として,それぞれの役割,特色をはっきりさせようという作業が入りました。
 第3期中期目標期間は平成28年度から始まっているところですが,黄緑の太い矢印で,国立大学経営力戦略を出してございます。それが次の3ページ,平成27年6月の国立大学経営力戦略でございます。経営という言葉を使ったことも文部科学省としては当時,思い切ってお出しした意気込みの表れではないかと思いますが,本日の御議論でもありますように,経営,ガバナンス,大学にとってそれが何かという御議論は更にあろうかと思います。
 具体的内容について,このページの下の方を御覧いただきますと,まず,括弧1の機能強化について,三つの重点支援の枠組みを,第3期中期目標期間に財政上設けて支援しています。それから,括弧2について,それらを含めて組織再編,学長裁量,個々のパフォーマンスを発揮しやすい環境整備などを進めていただくということ。括弧3については,財務基盤の強化。それから,括弧4は特定研究大学ですが,現在に至る指定国立大学法人制度もこのとき構想が初めて出ております。また,卓越大学院,卓越研究員の制度も,このとき大学の経営という観点で一体的にお示ししたところです。
 次の4ページは,学校教育法と国立大学法人法の改正についてでございます。一番下を御覧いただきますと,平成27年4月1日施行とございます。学校教育法では副学長,教授会の役割が明確化されたところですが,赤字の国立大学法人法については,学長選考会議が学長選考の基準を定めることや,経営協議会は委員の過半を学外委員にすることなど,本日に至る改正が示されたところでございます。
 実態として,次の5ページに,学長選考の最近の事情を円グラフで示しております。平成29年5月時点ですが,学長選考の状況は,法改正後このようにばらけてきています。法改正前から意向投票の規定がなかった大学も3大学ございますし,法改正後に4大学が規定を廃止しております。また,意向投票をやっているものの,逆転して当選したが,学長選考会議の議で決まったという大学もございます。
 円グラフ左半分の20大学は1位の方が選ばれたという結果になっておりますが,制度上は飽くまで学長選考会議の参考としてのものであるという状況でございます。
 次のページは,指定国立大学法人制度についてでございます。これはすでに御存じのこととは思いますが,東北大学,東京大学,京都大学の3大学が指定され,右下の4大学が指定候補ということで,構想の調整中でございます。
 次のページは,そのうちの一つの京都大学の構想概要です。一番下の箱を御紹介しますと,ガバナンスの強化の部分の1番に,京大版プロボストとございます。本構想にのっとって,京都大学では10月から理事の中から総括的なお立場のプロボストを学内で決定されました。
 それから,戦略調整会議という名前になったようですが,次代を担う教員を集めて,全学的な立場からの会議も発足していると伺っております。
 次のページは予算要求について,現在要求中ですので,ガバナンス改革に向けて,各大学の機能を最大化すべく,メニュー別に募集したいというような補助金も盛り込んでおります。
 また,次のページでは,大学のガバナンス改革の推進方策に関する検討会議というものも,大臣決定で進めさせております。これは,各大学の学内規定の総点検などから始まっておりますが,現在も引き続き御議論を続けていただいているような状況でございます。
 10ページ以降は御参考でございますが,国立大学協会でもガバナンス改革に向けて,今年5月,多岐にわたる提言を出していただいておりまして,細かくは省略いたしますが,検討事項1で学長のリーダーシップ,戦略的な資源配分等々,それから,検討事項2では,13ページの一番下で,将来の経営人材の養成に取り組むべきということ。15ページからは,検討事項3として経営協議会の構成の問題。16ページでは検討事項4,教育研究評議会の開催頻度とか審議事項の整理の問題。それから,17ページは,検討事項5として監事の役割も重要でございますので,補佐体制の強化,あるいは,常勤を増やす方策,内部監査との役割分担。最後には,18ページですが,検討事項6,社会に対する説明責任の一層の強化と多岐にわたり御議論いただいて,各大学の御努力を続けていただいているところという状況でございます。
 以上です。
【角田私学行政課長】  それでは,引き続き,私立学校のガバナンスについて,資料3-2に基づきまして御説明申し上げます。
 資料を2枚おめくりいただきまして,5ページ目の参考資料1に,学校法人のガバナンスの仕組みについて1枚でまとめております。
 御覧のように,理事会を中心とした仕組みとなっているところでございます。学校法人制度については,他の公益法人制度とのバランスも考えつつ,学校を運営する公益性と公共性を備えた法人として,ガバナンスを含め,制度が整備されているところでございますが,一方,私立学校は建学の精神,設立の経緯,学校を支える人々,教育研究の内容等,実に多様なものでございます。この多様性と自主性を尊重して,多くの事項を寄附行為に委ねる仕組みになっているところでございます。
 また,大学ということだけではなくて,高等学校以下,幼稚園まで設立する,小規模の法人も含めたものとして一つの制度で運用しているということでございます。
 この法人制度は昭和24年にスタートしておりますけれども,その後,昭和50年に私立学校振興助成法の制定に伴う改正や,近年では平成16年,そして,平成26年に大きな改正をしております。特に平成16年の改正におきましては,この図にございます理事会,監事,評議員会,さらには情報公開に関する規定について強化したところでございます。
 このような中で,その次のページでございますが,ガバナンスの強化も含めて検討するということで,昨年4月に私立大学等の振興に関する検討会議を設置いたしまして,本年5月に取りまとめを頂いたところでございます。
 その内容でございますが,8ページ目の参考資料3,議論のまとめということで,1枚にまとめたものを御覧いただければと思います。
 下の段,三つございます。私立大学に求められる教育研究,ガバナンスの強化,経営力の強化と支援ということで,それぞれ御提言いただいているところでございます。一番下のガバナンスの強化でございますが,理事会機能の充実,評議員会機能,また,監事の機能,そして,情報公開を推進するとございます。さらには法令だけではなくて,自主的なルールということで,ガバナンス・コードを作ってはどうかという御提言も頂いているところでございます。
 具体の内容については,この資料の1枚目,2枚目で,特にガバナンスに関係する部分を抜粋しております。この中で,2枚目の裏側,今後の検討及び方策の推進というところの二つ目の丸を御覧いただきますと,今回のこの検討会議の報告を受けまして,大学設置・学校法人審議会その他の場で更なる検討を行うということとされたところでございます。
 これを受けまして,最後のページでございますけれども,大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の下に学校法人制度改善検討小委員会を設置いたしまして,検討を進めることとしているところでございます。
 説明は以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 また詳細に御覧いただきますと,進んでいる部分があるように思います。

(4)人生100年時代構想会議について,資料4に基づき事務局から説明があった。
【永田部会長】  それでは最後に,人生100年時代構想会議というものが官邸で開かれております。その進捗状況について,簡潔に御説明いただきます。
【堀野高等教育政策室長】  資料4を御覧ください。第2回の人生100年時代構想会議が10月27日に開催された際の資料でございます。
 幼児教育,高等教育の無償化・負担軽減について議論が行われております。
 資料をめくっていただきまして,3枚目から資料1とありますけれども,内閣官房事務局から提出された資料でございます。7ページ目のスライドを御覧いただきますと,所得別進学率ということで,所得の低い世帯ほど大学進学率が低いということと,その下に,高等学校卒と大学・大学院卒で生涯賃金が7,500万円違うというデータがございます。
 その次のスライドで,国立大学の授業料が上がってきているということと,給付型奨学金制度が導入されているということについて書いてございます。
 次の9ページでは,大学教育と企業の求める教育内容に若干ずれがあるのではないかということが書かれております。
 そして,10ページには,国立大学法人・学校法人の理事の構成について,産業界の出身者がまだ少ないのではないかという資料でございます。
 こういった資料を受けまして,次に資料2については,慶應義塾大学の樋口先生のペーパーですけれども,2枚目の高等教育の部分では,最初のぽつで,所得の低い家庭の子供たちに限って支援策を講じるべきということ。2点目に,生活費を賄うためのアルバイトを行うことなく勉学に専念できるような仕組みとするという観点から,授業料減免措置と給付型奨学金を大幅に拡充すべきということ。3点目に,国費による支援を受けるという以上は,しっかりと勉強しているということを確認して,条件にふさわしくないという場合には支給を打ち切るということ。4点目に,格差の固定化を防止する仕組みとして支援策を導入するという以上は,エンプロイアビリティを向上させる取組を行っている大学のみを対象とした支援策とすべきということ。そして,その中で,大学における実践的な教育を充実させる必要があることから,産業界の人材がカリキュラム編成に関わっていること。あるいは,学外の実務家教員を積極的に登用することなどを支援対象となる大学の要件とすべきという意見が出ております。
 その次の資料3については,連合の逢見先生からの資料ですけれども,1ページめくっていただきまして,2枚目のところに,授業料の無償化や学費の低額化,また,給付型奨学金の対象の拡充といった提言がなされております。
 更にめくっていただきまして,資料4は高橋委員のペーパーですけれども,ここにおいても,授業料の減免措置や給付型奨学金を大胆に拡充すべき,対象は低所得者に限定すべきということ等々が書いてございまして,四つ目のぽつのところでは,上記の支援措置の対象となる大学については,産業界からの外部人材を一定程度,理事として任命して,ガバナンス改革に取り組んでいると実社会から評価されている大学に限定すべきという意見が出されております。
 議論の状況は以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 ここまでは一般的な教育の格差是正という話が多かったかと思いますが,次回は高等教育がテーマだと聞いております。
 それでは,次回の予定ですが,短期大学,高等専門学校,それから,専門学校,これらの役割について議論したいと考えております。
 また,本部会の下に設置され,学位プログラム等について検討いただいている制度・教育改革ワーキンググループの審議状況についても御報告いただくことにしております。
 それでは,皆様方,お忙しいところどうもありがとうございました。本日は以上とさせていただきます。

―― 了 ――

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室