令和7年9月30日(火曜日)15時00分~17時00分
【松下座長】 所定の時刻になりましたので、第121回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多用の中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
本日はウェブ会議として開催しております。本委員会は公開が原則のため、この会議の模様はYouTubeライブ配信にて公開いたします。ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際には挙手のマークのボタンを押していただき、私から指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言いただきますよう、お願いいたします。また、御発言後は再度、挙手のボタンを押して、挙手マークの表示を消していただきますよう、お願いいたします。御発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど、御配慮いただけますと幸いでございます。
また、御出席された方全員が御発言できますよう、大変申し訳ございませんけれども、御発言は1回当たり2~3分程度を目安にお願いできればと思います。なお、さらに御意見がある場合には、会議終了後に事務局にメールでお寄せいただければ、今回の議事録に反映したいと考えております。委員の皆様の御協力のほど、よろしくお願いいたします。
それでは、本日も活発な御審議をどうぞよろしくお願いいたします。
まず、委員の交代について事務局から報告をお願いいたします。
【遠藤室長】 事務局でございます。7月17日付で新たに法務省大臣官房司法法制部司法法制課長に就任されました神渡史仁課長に、9月26日付で本委員会の委員に御就任をいただきました。以上でございます。
【松下座長】 それでは神渡委員より一言、御挨拶いただけますでしょうか。
【神渡委員】 法務省大臣官房司法法制部司法法制課長に着任いたしました、神渡でございます。よろしくお願いいたします。
【松下座長】 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
続いて事務局に人事異動がありましたので、報告をお願いいたします。
【遠藤室長】 事務局でございます。事務局の人事異動につきまして、御報告をさせていただきます。7月15日に高等教育局長として合田哲雄、大臣官房審議官として松浦重和が着任してございます。局長の合田より一言、御挨拶を差し上げさせていただきたいと思います。
【合田局長】 本日は法科大学院等特別委員会の先生方には、大変お忙しい中、お集り、お時間を賜りまして、心からお礼を申し上げたいと存じます。7月15日付で高等教育局長を拝命いたしました、合田でございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。私も長く高等教育政策に携わらせていただいている中で、この法科大学院というものは一つの高等教育と社会の在り方を問い直す、重要な取組だったと思ってございます。
私自身のことで大変恐縮でございますが、前職は文化庁の次長という仕事でございまして、宗教法人の担当でございましたので、当時、宗教法人審議会の委員でありました宍戸先生には大変お世話になりました。法原理機関の持っておりますライトネスとデモクラシーにおけるレジティマシーとの間で相当悩み苦しんだのも事実でございますが、しかしその中で法のエビデンスの探し方とロジックというものの大切さを改めて、痛感をさせていただきました。
そういった観点からこの法科大学院における法曹養成ということは、我が国のデモクラシーや立憲主義にとっても本当に大事だと思ってございますので、ぜひ先生方の御議論を賜りながら、しっかりと政策を前へ進めていきたいと思ってございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【松下座長】 どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
それでは続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【遠藤室長】 今回は資料の1から3-4、参考資料の1から7まで、全147ページとなってございます。今回の資料と参考資料につきましては、文部科学省のホームページでも公開している状況でございます。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、議事に入ります。まず議題1、令和7年度連携法曹基礎課程(法曹コース)についてです。事務局から説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。資料1、令和7年度法曹コースの実態調査について、御紹介をさせていただければと思います。
まず、7ページをお開きください。現在の法曹養成連携協定の締結の状況、全国的な状況について、こちらで図示をさせていただいてございます。法曹コースの数については42、連携協定の数については74という状況が最新でございます。
続きまして、少しページが飛びまして、14ページでございます。現在の法曹コース在籍者数の推移ということで、お示しをさせていただいてございます。新しい仕組みが導入されて以降、最新の令和7年度に向けて着実に、在籍者数については増加をしているという状況でありますし、この法曹コース在籍者の男女比の推移につきましても、最新の状況といたしましてはおおむね5対5ぐらいで構成されているという状況でございます。
さらに次のページでありますけれども、法曹コース修了者の進路につきましてもデータをとってございます。最初に令和6年の状況を御覧いただきますと、多くが協定を結んでいるロースクール、または非協定先のロースクールに進学されているということで、73.5%がロースクールに進学されています。令和4年、令和5年、令和6年もおおむね75%前後でロースクールに進学をされているという状況です。
続きまして、26ページをお開きいただけますでしょうか。こちらは法曹コース、当然3年のコースでありますので、学生の質保証が大事であります。実際に法学部の段階でどういったところで質保証の仕組みを設けているのかということで、こちらも伺っている状況でございます。実際のコースの登録であるとか進級時の選抜、さらには修了要件としての成績基準を設けているかどうかといったところが、各大学の中で取り組んでいただいている状況でございます。
続きまして、32ページを御覧ください。法曹コース3年間の教育でありますけれども、非常に厳格な成績評価等を行っている状況でありますので、法曹コースを辞めてしまう学生さんも一定数ございます。こちらについてもちゃんと状況を捕捉させていただいてございまして、一番大きな回答といたしましては法曹志望ではなくなったという学生さん御本人の意思ということもありますし、さらにはその下、進級要件をなかなか満たすことができなくなってきたということであるとか、学修についていくのが困難であるというような声も寄せられているという状況でございます。
続きまして、38ページをお開きいただけますでしょうか。具体的な法曹コースの教育課程、様々な努力をいただいているところでありますけれども、こちらの内容について主立ったものを御紹介したく思います。連携先の法科大学院と共同の課程を開講しているのかどうかというところでありますけれども、現在、左側の円グラフで御覧いただいておりますとおり、12コースで連携先の法科大学院との共同開講科目を開設いただいて、非常に密接な形での教育を展開していただいているという状況でございます。
さらに、40ページもお開きいただけますでしょうか。実際に授業の一部で法律の実務家、裁判官であるとか検察官、弁護士の方々などの協力をあおいでいるような科目があるのかどうかというところであります。おおむね3分の2のコースにおいて、こういった教科科目での御協力をいただいているという回答をいただいているところです。本日、地方の話もありますので、こういった様々な方々の御協力のたまもので教育内容を充実いただいているという状況でございます。
さらにページが飛んで恐縮です、51ページまで飛んでいただいてよろしいでしょうか。学生等に対する指導、ないしは広報活動等について、こちらもデータとしてとっているのですけれども、様々、法曹志望の方々に対して指導を行っていただいている状況でございます。特に法曹コースの登録や、一番下でありますけれども、法科大学院進学等に関する学生等に対する広報活動ということで、在学生に対する指導等広報活動はもちろんのこと、法曹コースを希望される高校生等に対してもオープンキャンパスや高校訪問、出前授業、こういったところで法曹コースというものがあるということ幅広く周知いただいているということで、御回答いただいてございます。
続きまして、52ページも触れさせていただければと思います。実際に法曹コースに在学される学生さんの様子でありますけれども、一番上のところ、法曹の志望度、意欲、熱意ということで、非常にポジティブな御回答をいただいているところです。明確な目的意識を持って、モチベーションを持って、熱心に勉学される学生さんが非常に多いという回答を、これは複数の大学からもいただいているところであります。一方で学修に対する不安ということも同時に寄せられておりまして、当然、授業スケジュールがタイトになっていて、学生さんがやや負担が重いのではないかと感じておられたりだとか、成績評価が非常に厳格であるので、こちらに対する不安を持っておられるような学生さんも一定数いるという御回答をいただいているところであります。
さらに、56ページも補足させてください。地方の関係のお話、本日、行わせていただきますけれども、特にこの法曹養成連携協定、こちらを締結してよかったことといたしまして、法科大学院がない大学や地域に与えた影響ということも回答いただいているところです。残念ながら法科大学院がない県がありますけれども、協定によって法曹志望の学生さんに希望を与えられるようになったとか、目指すことを断念せずに、実際に法曹を目指す学生が増えたというお声もいただいているところであります。
最後に、58ページ、59ページにも触れさせていただければと思いますけれども、58ページの一番上、法曹コース、いいところだけでなくまだまだ課題もありますけれども、特に一番上の丸でありますけれども、法曹コースから実際に連携する法科大学院に送り出している学生の進学後の成績、学修状況等々の情報共有が不十分ではないか。そのコースにおける教育がコース生に有用かつ有効・実効性があるものになっているのかどうなのかというところ、そういったところの情報の共有については課題意識をいただいているところであります。
さらに最後のページでございます。一番下のところ、地元の裁判所、検察庁、弁護士会などの実務家団体への期待・要望も伺ってございます。非常に多くの方々から御協力をいただいておりますけれども、法曹コースの方々からはさらに、法曹の仕事に関して見聞できる講演会やセミナーであるとか実地見学を伴った説明会であるとか、実際には法曹コース生の経済的負担軽減や就職(進路)不安の解消に向けた取組等を、ぜひ積極的に期待したいというお声をいただいているという状況でございます。
こうした調査につきましては、引き続きデータの収集を文部科学省としてもさせていただければと思ってございます。私からの説明は以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、御質問、御所感等がございましたら、次の議題2の際にまとめて御発言いただければと思いますので、ここで議題2に移らせていただきます。
続いて議題2、地方の法科大学院と法曹の地方定着についてです。今期の審議に関する主な論点にもありましたように、今期の前半では地方の司法を支える人材の育成について、議論を進めていきたいと考えております。そこで、まずは日本弁護士連合会の西森副会長から、弁護士の地方定着の現状について御発表をいただきたいと思います。その後、事務局から今後の検討に向けた論点について発表いただいた後に、質疑を行うことにしたいと思います。それでは資料2-1について、西森副会長より御説明をお願いいたします。
【西森副会長】 よろしくお願いいたします。私は日本弁護士連合会の法曹養成担当副会長の西森やよいと申します。高知弁護士会所属でございます。本日は大変貴重な場を設けてくださいまして、ありがとうございます。レジュメに沿って御説明申し上げたいと思います。
まずはお手元の61ページ、資料2-1を御覧ください。上から順番にまいります。まず、0、問題の概要というところでございますが、昨今、司法修習を終えた新規登録弁護士の登録先が大都市に集中していると指摘されるようになっております。大都市集中の傾向が強く見られるという状況です。他方で、新規登録弁護士のみならず、年間の登録者が0人という弁護士会が複数存在しております。このような状態が続くことで、そのような弁護士会では将来的に弁護士不足が生じ、当該地域の市民、企業の方々の司法アクセスが困難になったり、法律相談や当番弁護などの担い手不足が生じたりするという問題につながっていってしまうことが懸念されます。
安心安全な社会インフラとしての弁護士は全国津々浦々に存在するべきであり、そのインフラが整わない地域が出てくる可能性を私どもは憂慮しております。また、地域の経済活動を維持、発展させていくためにも、地域に定着し、地域の実情を知る弁護士が継続的なリーガルサポートを提供することが有益と考えております。このような事態を防ぐべく、事前に対策をしていくことが必要と考えております。
次に1項、新規登録弁護士を取り巻く状況について御説明申し上げます。まず、一斉登録日未登録状況の改善ということについて御説明をいたします。関連する情報としまして、現在の新規登録弁護士の就職状況について御報告させていただきます。以前は一斉登録日、すなわち司法修習を終えて2回試験に合格した修習生が弁護士登録をする最初の登録日に、未登録者が2割以上いたという就職難の時代がございました。しかしながら、現在ではこの数値は改善しております。
具体的な数値で申し上げますと、参考資料1を御覧くださいますでしょうか。ページは63ページになります。この未登録者数の推移のとおり、一斉登録時点で未登録者数が最も多かったのは66期で28%でございました。しかしながら、77期は4.9%となっております。ここ数年で就職状況が大幅に改善されているということを見てとっていただけるものと存じます。
また、次に大都市部への新規登録者の集中というところについて述べさせていただきます。就職先の地域としてどういう傾向があるのかという観点から分析いたしますと、次に参考資料2を見ていただければと存じます。資料2は65ページでございます。カラーをつけてございますけれども、参考資料2の第71期から第77期弁護士会別登録者数を御覧いただければと存じます。新規登録者のうち、東京三会、大阪の登録者数が約7割を占めるという状況が数年続いております。77期では、東京三会の登録者が66.9%で、大阪を加えますと76.0%、これらの方々が東京三会と大阪に就職をされました。
その反面で、それ以外の地域での登録者は不足しており、新規登録弁護士を採用したくても採用できないという声も聞かれているところでございます。さらに、今回の問題意識である新規登録者がゼロの地域という観点から見ますと、一斉登録から12か月後において、新規登録弁護士の登録数が0人であったことのある弁護士会は、2019年から2024年までの間で18会存在してございます。資料2の第71期~第77期弁護士別登録者数、具体的に弁護士会を申し上げますと、長野県、奈良、和歌山、福井、富山、それから鳥取県、島根県、長崎県、大分県、宮崎県、山形県、岩手、秋田、函館、旭川、釧路、徳島、そして私が所属する高知もこの中に含まれております。
次に、参考資料3を御覧いただけますでしょうか。弁護士会別修習期別割合を見てみますと、70期台の登録者が10%を下回る会は山梨、大分、秋田、釧路の4会となってございます。もう一回、申し上げます。山梨、大分、秋田、釧路の4会、こちらは70期台の登録者が10%を下回っております。また、70期台の登録者が20%を超えるというところになりますと、これは多いほうということになりますが、東京三会、それから埼玉、千葉県、大阪、そして鳥取県、福岡県となっております。期の若い弁護士が少ない弁護士会では、今後の国選事件や扶助事件の担い手不足が懸念されるという状況でございます。
このような地域偏在の原因として考えられることについて、御説明申し上げます。新規登録弁護士に偏りが生じる原因として考えられるものとしましては、就職活動の早期化や、東京や大阪といった大都市の旺盛な採用意欲があるとの意見がございます。この大都市の旺盛な採用意欲というものは、大都市の法的ニーズの大きさというものに結びついているということも言えようかと存じます。まず、大都市の旺盛な採用意欲という点では、さきに御説明しましたとおり、76%に当たる人数の司法修習生を受け入れる就職先があるということからも明らかと言ってよろしいかと存じます。
これに、就職活動が早期化しているという原因も合わさりまして、地方での新規登録者が妨げられていると、大都市にとられているという見方がございます。すなわち、都市部の法科大学院に通う学生等が、司法修習において地方における弁護士の業務や生活に触れる前に都市部での内定を得てしまうことで、地方で弁護士をするという選択肢を持つに至る前に進路を確定してしまっているという可能性があると見立てております。この就職活動の早期化につきましては、法科大学院の先生方におかれましては、学生からサマークラークなどの話を聞くことで実感されていることも多いのではないかと存じます。
実際、日弁連が毎年行っている新規登録弁護士の就業状況調査によりますと、就職開始前の時点で現在の就業先に採用が決まったと回答した者の割合は年々増加傾向にございまして、76期では約5割となっております。約5割の人が修習開始前の時点で就業先に就職が決まっているという状況になっています。また、別の調査では約9割の司法修習生が司法修習開始3か月の時点で一つ以上の内定を得ているようでございます。修習前に就職先を決めてしまい、修習生が地方で弁護士をするという選択肢を持たないという問題がある以上は、その前の法科大学院の段階で地方に慣れ親しんでいただければよいのですが、法科大学院がない地域ではなかなかそのようなことも望めないというところでございます。
この点に関しまして、法科大学院と新規登録地の関係についても御説明申し上げたいと思います。レジュメで申しますと3項、法曹養成との関係というところになります。まず、出身法科大学院と登録地との関係についてでございます。直近の法科大学院の資格で司法試験を受験して合格した人が、就職についてどのような動きをしているのかというデータを御紹介いたします。
これにつきましては、参考資料4を御覧ください。こちらは77期の単年度のデータでございますので、このデータから何らかの傾向を読み取ることは難しいという点は御留意いただければと思います。77期の2025年4月1日時点の登録情報によりますと、弁護士会別の登録者における出身法科大学院の地域というものが分かります。例えば仙台につきましては管内の法科大学院から全員が登録されたという状況にございました。また、東京三会、札幌、兵庫県、京都も地元の法科大学院出身者が半数以上を占めております。このように、法科大学院で慣れ親しんだ地域に登録をしている者が一定数いるということは推測できるところでございます。
しかしながら、まだ数値の集積がなされておりませんので、今後、継続的に数値の集積をし、分析をしていくことが必要と思われます。ただ、法科大学院のある弁護士会の登録者数の内訳という視点で見ますと、弁護士会の登録者の半数以上が他地域にある法科大学院の出身者であり、地元の法科大学院とつながりがなくても登録するというケースも相応にあるということを見てとることができます。
法曹養成拠点の登録者ゼロ地域について説明いたします。視点を変えて、新規登録者がゼロであったことのある地域と法科大学院の有無について見ていきたいと思います。さきにも述べましたとおり、過去6年の間に新規登録弁護士数がゼロであったことがある会が、長野県、奈良、和歌山、福井、富山県、鳥取県、島根県、長崎県、大分県、宮崎県、山形県、岩手、秋田、函館、旭川、釧路、徳島、高知の18弁護士会ですが、お気づきのとおりでございまして、これらの弁護士会の地域には法科大学院が存在しておりません。人口や経済規模などの事情による可能性も否定はできませんが、少なくとも法科大学院在学中にその地域に慣れ親しんで登録するということによる地域偏在の解消は、これらの地域では期待できないということになります。
ただし、先ほど述べましたように、法科大学院のある地域以外に登録する方も一定数いますので、法科大学院の有無のみが登録者ゼロの原因とは言えないかと存じます。また、法制養成拠点の地域適正配置という問題を考えますと、現状では地方にある法曹コースの存在が重要になります。法科大学院のない地方の法曹コースから法科大学院に進学した学生が司法試験に合格し、法曹になっているのか、またどの地域に登録しているのかという点を数値で確認していくことも、今後の対策を考える上で有用ではないかと考えております。
次に、予備試験合格資格による司法試験合格者の動向についても述べさせていただきます。このような法曹養成拠点と新規登録者ゼロ地域の関係性を考えるに当たっては、言わば法曹養成拠点とは別次元の存在である予備試験合格資格による司法試験合格者の就職動向がどうなっているかも、検討しなくてはならないと思います。換言いたしますと、予備試験が地域の縛りを受けない存在として、新規登録者ゼロ地域の解消に役立っているのではないかという仮説を検討するということでございます。
しかしながら、予備試験合格資格による司法試験合格者の動向を見てみますと、第77期の予備試験合格資格による弁護士登録者221名のうち、174名が東京三会に登録をしております。そのほかの方々も、神奈川県に4人、大阪に12人、愛知県に4人、福岡県に6人と、ほとんどが大都市に集中しておりまして、法曹養成機関のない弁護士会への登録をされているというケースはごく僅かでございました。
続きまして、このような状況を打開するためにどのような取組が必要なのかについて、お話をしたいと思います。レジュメの5項の日弁連の取組という項目になります。さきに述べましたとおり、修習で地方の生活や地方での弁護士の活躍に触れる前に就職先を確定してしまうというところに、新規登録ゼロの原因があるという可能性がございます。この対策としましては、修習に行く前の段階で地方での生活や地方での弁護士の活躍に触れる機会を提供するという方法が考えられます。
そのような考え方に基づいて行っております取組を御紹介させていただきたいと思います。まず、1つ目は地方会エクスターンシップという取組でございます。この企画は2024年から試験的に実施しているものでございまして、本年、2回目の試行を行っております。2024年度の実施では、中央大学、早稲田大学、岡山大学の各法科大学院に御協力をいただきまして、これら3校から合計22名の学生の応募をいただきました。このうち11名にエクスターンに参加していただきました。受入弁護士会は、初年度ということもありまして6会と限定的でございましたけれども、それぞれの受入人数は函館で3名、旭川で2名、釧路で2名、徳島で1名、高知で1名、愛媛で2名という配分でございました。
さらに、2025年度につきましては規模を拡大し、8校から、合計93名の学生さんから応募をいただいております。その中の29名の方に参加をしていただきました。受入先弁護士会は、富山県、島根県、長崎県、大分県、函館、旭川、金沢、宮崎県、福島県、岩手、鳥取県、奈良、熊本県、釧路、徳島、高知、鹿児島でございます。2025年度の実施はまだ報告書が上がってきておりませんけれども、2024年度の実施の際の報告書を見る限りでは、参加者の満足度が非常に高いということを読み取ることができました。
次に、公設事務所見学ツアーについて御紹介いたします。こちらの企画は司法修習予定者を対象に公設事務所等への赴任、弁護士過疎地域での就職・開業について関心をお持ちいただくために実施するものでございます。2024年11月29日に東日本にて、2025年1月25日には西日本にて開催されております。2024年の東日本で開催されたツアーでございますが、熱海簡易裁判所、静岡家庭裁判所熱海出張所、熱海の法律事務所を見学した後、伊東にございます、もともとはひまわり基金法律事務所であった事務所を見学するという内容でございました。2025年、西日本で開催されたツアーは、和歌山県御坊市にある紀中ひまわり基金法律事務所を見学していただき、地元の弁護士と意見交換をするという内容でした。
レジュメの6項でございますが、中教審法科大学院等に望むことについて申し上げます。日弁連といたしましては、このような日弁連の取組は継続していきたいと考えております。また、地方会エクスターンシップにつきましては、法科大学院の皆様に引き続き御協力を賜りたいと考えております。また、このような出口の部分での対策のほか、そもそも地方の方たちに法曹を目指そうと思ってもらえるような企画を行ったりもしておりますが、法曹を目指したいと思った方が目指せる環境づくりというのは法科大学院の皆様のフィールドになってまいりますので、そこはぜひとも御協力を賜りたいと存じますし、その観点から行っていただけることを中教審で御審議いただければ、大変幸いでございます。
学生の都会志向、大企業志向は弁護士業界のみではなく日本の社会全体の問題であり、地方の魅力を若い人たちに早い段階でアピールしていくことの必要性を日々実感しているところでございます。都市部で法科大学院に進学した学生が地方に目を向けてもらえるような授業や情報を提供していただきますとともに、例えば法曹コースで社会インフラとしての弁護士の必要性や、地域の多様な活力を支える法曹となるために有益な素養を教えていただけるなどということもしていただければと考えております。
日弁連からの御説明はここで一旦、以上とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、事務局より資料2-2について御説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。御紹介いただきました資料2-2について、御報告をしたいと思います。こちらは、これまで中央教育審議会等で審議されてきた中で特に地方に関係する御発言、委員の皆様からいただいたような論点について、事務方のほうでまとめさせていただいた内容になってございます。
具体的に申し上げますと、まず1ページ目、特に文部科学省中央教育審議会において審議されてございます、「知の総和」答申というのが今年2月に出てまいりましたけれども、この中で掲げられております高等教育政策の3つの目的、質・規模・アクセスという3つの目的の観点がありますけれども、こちらと法科大学院等との関係についても整理をさせていただいてございます。
そのページの下のほうでありますけれども、言わずもがなでありますが、法科大学院はまさに法曹養成のための教育の質の向上に向けて、この20年間ずっと尽力されてこられた先生方の努力のたまものであろうと思いますし、特に定員の管理につきましても、規模という観点で申し上げましても、法務省さんと文部科学省で定員をしっかりと管理させていただいて、実際に質の向上も図ってきたという経緯がございます。その成果といたしまして合格率の向上等が図られてきたわけでありますけれども、今後、法科大学院ごとの特色・魅力をより発揮していき、多様で質の高い法曹を輩出し続けていくということの重要性、これが指摘をされたというのが前期までの御指摘、審議であったところであります。
今後、中教審の指摘の中でありました3つ目の観点、アクセスの観点でありますけれども、特に法科大学院においては入口に当たる、本日御説明をさせていただいた学部、さらに高等学校段階という観点で何を行っていくのか。さらには、今ほど日弁連の西森先生からも御指摘をいただいた出口の観点からどういったデータ、どういった取組がなされていくのかということで、審議を深めていくことが適当であろうと考えているところであります。
また、(2)のところでありますけれども、これまで司法制度改革審議会の意見書からどういった形の地方の指摘がなされてきたのか、公的な文書についても簡単にまとめさせていただいているのが、次のページ以降という形になってございます。
さらにページが飛びまして、72ページまで行きたいと思いますけれども、特に現状について今、申し上げられることを整理させていただいてございます。法科大学院の入口に当たる面について、その現状についてということでより深掘りをしていければと思いますけれども、まず1法曹コースについて、本日冒頭申し上げましたとおり、現状を明記させていただいている状況でございます。このうち、特に地方の法曹コースと法科大学院との連携の状況につきまして、本日の議題においてもとても大事な論点になろうと考えてございます。
さらに2つ目、地方大学出身者を対象とした特別選抜ということで、法科大学院に入るに当たって地方大学出身者を特別に、まさに選抜しておられる法科大学院が6つあるというのが現状でございます。この運用の状況等々はとても大事な論点になろうと考えてございます。さらに、高等学校段階での取組ということで、これまでも本当に日弁連の皆様等をはじめ多くの方々に法曹の魅力を、高校生等に対してしっかりと発信いただいてきたものと承知をしてございます。これを、よりもう一段深掘りをして、どういった形で高校生や保護者等に対して情報の発信、質の高い法に関する、まさに法曹養成に関する話も含めてでありますけれども、取組ができるかということを考えていく必要があろうと考えてございます。
こういった面でありますとか、あとは(2)につきましては出口面のところ、関係するデータにつきましては今後の審議を踏まえまして、関係する省庁の皆様、団体の皆様から情報をいただきたく思っているところです。
大事になりますのが(3)のところかと考えてございます。入口面と出口面との関係と地域性をよくよく深掘りして考えていかなければいけないというところです。その観点は幾つかお示しをしますけれども、地方の法科大学院と地域定着の状況についてということで、端的に申し上げると、地方の法科大学院に入学した卒業生は実際にその法科大学院が設置されている地域に定着しやすい傾向があるのではないか、まさに西森先生の本日のプレゼンにもありましたけれども、この点について法科大学院ごとに当然、傾向が異なるかと存じますので、こちらについてしっかりと把握していく必要があるのではないかということ。
さらに2つ目、法科大学院等における実践的な教育の状況でありますけれども、非常に実践的な教育を行っていただいて、まさにエクスターンシップであるとか地方での学びをしていただいております。教育的な意義はもちろんあるんですけれども、3+2の制度が始まって以降、これは法科大学院3年時の秋ということでありますので、法科大学院の学生の一部にはもう内定を得ている学生さんがいるというような状況も実際にあると伺ってございます。このことについてどういうふうに受け止めるかというところであります。
さらには法曹界との連携活動の状況ということで、こちらも本当に様々な面でロースクールの教育に御協力いただいているところです。「また」以降に書いてありますとおり、特に地方部の法曹界における採用活動や教育に関する状況につきましては、都心部の法曹界の動きについて一定程度違いがあるのではないかという御指摘もいただいているところであります。ぜひ、ここは関係する機関の皆様とも連携させていただきながら、データや取組の収集等を行っていってはどうかというところでございます。
さらには学生本人の就職に対する意識等々の状況でございます。まさに今、在学をしております学生さんがどういった形で就職の情報をとっていて、どんな情報を求めているのかといったところ、こういったところは当然、日進月歩で変わっていくかと思いますけれども、しっかりと情報把握していくべきではないかと考えているところです。
さらには、産業界等と比較した人材獲得の状況というところも大事な観点かと思います。近年、法曹の活躍する場が非常に広がっており、特に企業内で活躍される法曹の方々が非常に増えておられます。非常に積極的に企業の皆様も人材獲得に努力されておられると思いますので、これに負けないようにと言ってはあれですけれども、これを分かった上で本当に必要な地域において必要な対策、打ち手をとっていくということも大事だろうと考えてございます。
さらにその次、法科大学院修了後の活躍の状況でありますけれども、これは従来もそうでありますけれども、地方において充実したライフスタイルや働き方をされておられる先輩の方々に対して、そういった魅力をしっかりと発信していっていただくということも当然、大事になるだろうということで、幾つか切り口を申し上げさせていただきました。
さらに次のページでございます。具体的な方向性ということで、西森先生からお話がありましたけれども、地方に関する議論においてはデータの収集が極めて重要になると考えているところでございます。特に法科大学院を中心といたしまして、入口に関する情報の収集の例について挙げさせていただいてございますし、さらには出口に関する情報の収集の例も挙げさせていただいているところです。文部科学省だけではなかなか対応できないところもあろうかと思いますので、本日御参加いただいている関係省庁の皆様、ぜひ御協力賜れればと考えてございます。
さらに(2)のところでありますけれども、こちらは御参加の先生方にぜひアイデアといいますか、お取組の提案をいただきたいと思ってございますが、こういった情報、エビデンスに基づきまして、どういった施策・対応が考えられるのかということ、ぜひ御提案いただきたく考えてございます。当然、各先生方のお立場、さらには法務省さん、研修所さん、日弁連の皆さん、企業の皆さんと、様々な委員の方々に御参画いただいてございますので、いろいろな角度からどんな施策が有効なのかということを審議いただけると非常にありがたく考えているところです。
私からは以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの西森副会長及び事務局からの御説明について御質問、御所感等あればお願いしたいと思います。繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり2~3分程度を上限として、それを目安にお願いできればと存じます。それではどなたからでも、どの点についてでも、御発言のある方は挙手をしていただければと思います。
田村委員、お願いいたします。
【田村(伸)委員】 創価大学の田村でございます。私からは、本学の就職の実情と、それから少し意見を述べさせていただければと思っております。本学は東京八王子にございまして、3年次の在学中受験が終わったら就職活動をしなさいというふうに就職については指導をしておりますが、本学の場合は早期に内定が出るというのはあまりなく、修習中に内定が出るのが多数派というふうに聞いております。やはり東京が最も多く、首都圏、それから大阪、名古屋辺りに就職する方が多数であると把握をしております。
法律事務所に就職した卒業生の話を聞いてみると、ある程度事務所に弁護士の数がいて、指導体制等も割と整っていて、様々な事件を扱うような事務所に行きたいと、そういった希望は聞いております。一方で法テラスに就職する方も一定数おりまして、話を聞いてみますと事務所経営をあまり気にせずに、純粋に目の前の困っている人を助けることができるという点に魅力を感じているようで、そういう意味では先ほどお話がありました地方に対する法曹の必要性といいますか、そういったことに関して共感する学生は一定数いるのではないかと感じております。一方で、地方からの求人ですとかエクスターンシップですとか、そういった募集は本当に少なく近年数件ある程度かと認識しております。以上が大体本学の、小規模校の実情というところではございます。
その上で一言、若干述べさせていただきたいと思うのですけれども、地方在住の法曹人材の需要というのは一体、もう少し具体的にどういうことかというのを考える必要があるのではないかと思っております。すなわち、裁判等においては依頼者からの相談も、それから裁判もリモートで対応できるようになっていて、そういう意味では地方からの司法に対するアクセスというのは非常に便利になっているわけでございますけれども、その一方で刑事弁護ですとか、ウェブにアクセスしにくい高齢者をはじめとする方とか、そういった案件というのは、会いに行くだけで一日がかりで非常に大変だと聞いているわけで、特に若い方はそういったところはなかなか敬遠する傾向にあるのではないかと思います。それから企業という話も先ほど出ましたけれども、本学の場合は法律事務所から転職をしてインハウスに行くという方が結構いると把握していますけれども、やはり本社のある東京でということになるのではないかとは思っております。
法曹資格を持っていて地方で働くという点について、こういう仕事があってやりがいはこういう点でというような、刑事弁護とか、行政庁とか、地方の企業もそうですし、そういった細かい隙間に埋もれがちな需要に光を当ててアピールしていただければ、法科大学院生の中にはちゃんと一定数の興味を持つ人はいるのではないかと思っております。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
ほかの委員からはいかがでしょうか。富所委員、お願いいたします。
【富所委員】 どうもありがとうございました。日本社会がシュリンクしている中で、この手の問題は司法だけではないと思っています。御存じかもしれませんが、医療も似たような状況にあるので、その辺りの対応策は参考になるのではないかと思いまして、話しをさせていただきたいと思います。
医療に関しては偏在の問題というのは二つあると思っています。「都市と地域の偏在」、それから「診療科の偏在」です。地方の病院に医師が集まらなくなっていて、維持が難しくなっています。診療科について言えば、例えば救急や外科などは勤務がハードだということもあって人が集まらず、直接美容の世界に行くという「直美」の問題が指摘されています。美容外科などは都市部に多いので、結果的に医師の都市部への集中を助長している側面もあると思いますそうした人たちが増えている中で、どのように地方に人材を集めていくのかが同様に課題になっています。
もちろん司法の世界とは異なる点もあると思いますが、その中で私なりに普段考えていることを、申し上げたいと思います。医学部について言うと、医師が不足している地域や診療科で働くことを条件に奨学金が貸与されたり、学費の負担が軽減されたりする「地域枠」というのを設けています。法科大学院でも一部こうした制度を導入しているところがあるようですけれども、こうした制度を設けて、修了生らに地域に根づいてもらうのを政策誘導するというのも一つの考え方かと思います。ただ、これだと学生の働く場所を制限してしまう面もあると思いますので、この辺りの制度設計をどうするのかというところは、きちんと考えなければいけないと思っています。
それからあと、せっかく法科大学院同士の連携協定があるので、大学院同士で連携をして、人材の確保に向けて協力していくということも、何がしかの形ではできるのではないかと思っています。ここはあまり具体的にアイデアがなくて申し訳ありません。最後に、これは法科大学院がどうこうというよりは、むしろ単位弁護士会の問題なのかもしれませんけれども、医師の場合は、人がどうしても集まらない場合の解決策は「広域での連携」です。県境を越えて隣の病院と協力する、搬送してそちらで見てもらうといったことがあります。ですので、弁護士会という単位、県の中だけで物を考えず、例えば東北なら東北、四国なら四国の中で人を融通し合って、足りないときは人材を供給してもらうというような形も、一つの在り方ではないかと思います。そこに何らかの形で法科大学院なりが協力、連携していくということもあり得るのではないでしょうか。思いついたままに話しましたけれども、私からは以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
挙手の順番で言うと次、笠井委員ですかね。
【笠井委員】 よろしいでしょうか。
【松下座長】 お願いします。
【笠井委員】 ありがとうございます。西森先生のお話は大変興味深く、いろいろと勉強になりましたし、法科大学院としても取り組んでいかければならないと思っております。また、今の富所委員のお話もなかなか耳の痛いところがあるような気もして伺っておりました。西森先生にお伺いしたいのですけれども、まず取組の中で地方会エクスターンシップというのがすごく興味深く、こういうのはなかなかいいのではないかと思いましたけれども、私が聞き漏らしたかもしれないのですが、2025年について希望者との関係で参加できた方がやや少なかったように聞こえました。もし間違っていましたら教えてください。そういう意味では、地方の弁護士の先生方が受け入れる準備がどのくらいできているのかということは気になりましたので、その辺りについて教えていただければと思います。
それと関係しますけれども、エクスターンシップだけではなくてまさに就職するときに、大都市の旺盛な採用意欲という話が出たのですけれども、地方の採用意欲が旺盛でないといけないと、こちらとしては責任転嫁するようで申し訳ないのですが、そのように思うところでございまして、その辺りで地方の採用意欲の実情について、採用意欲は旺盛なんだけれども大都市にこの辺りの理由で負けてしまうのだという辺りが、もし何かありましたら教えていただきたく思います。主に質問です。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、西森副会長、お願いしてよろしいでしょうか。
【西森副会長】 皆様方の御意見と御質問を賜りまして、ありがとうございます。そういたしましたら、まず笠井委員からいただきました御質問のところからお答え申し上げてよろしいでしょうか。エクスターンシップにつきまして関心をしてくださいまして、誠にありがとうございます。そのとおりでございまして、93名の方から希望があったけれども、29名の受入れしかできなかったというところの御指摘だと思います。各地の弁護士会で今年が初めての実施という会が多くございました。昨年は6会で継続したのが5会というところで、各地まだ様子が分からないという中で、手探りで手を挙げていただいたというところがございました。あと、実は私自身もエクスターン、昨年受入れに協力させていただきまして、その中でなかなかどこまで見せられるのか、守秘義務が厳密に課せられるかどうかというところが曖昧な中で、どういう準備体制でできるかというようなところもございましたので、まだ試行段階、試験段階というところもありまして全員の方の受入れができなかったというところです。結果的には3分の1以下になってしまっており、ここは正直残念に感じるところでもございます。今後につきましては、手を挙げて地方に関心を持ってくださった方々にできるだけ参加していただけるような、あるいは参加が難しくても何らかの形でフォローできるような、そういう体制を整えていければいいなというのが、個人的には思っているところでございます。
また、地方の採用意欲が旺盛でないといけないのではないかと、それも全くそのとおりでございます。ただ、地方それぞれ実情が違っているところもございまして、日弁連で統一的にこれぐらいの採用意欲で旺盛に毎年これぐらいは求人かけてくださいと言えるようなところがないというのも実情でございます。各地の法律事務所の単位では、来てほしいと思っている事務所は恐らくございます。そういう中で、どういう情報を発信していくことでニーズのある学生、そういう意欲のある学生さんとマッチングできるかと、こういうところがそれぞれ皆、手探りになっている関係で、意欲はあってもなかなかそれを表明できていないというところはあるのかもしれないと、これも個人的な印象ではございますが、思っております。地方でも来てほしいというニーズがあることは間違いないということもありますので、その限度の回答になってしまいますが、よろしゅうございましょうか。
【笠井委員】 どうもありがとうございます。よく分かりました。ありがとうございます。
【西森副会長】 ありがとうございます。
【松下座長】 よろしいでしょうか。
それでは、挙手の順で言うと次、佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 ありがとうございます。よろしくお願いします。これはなかなか難しい問題だと思うんですけれども、法曹コースはあるけれども法科大学院がないといった場合に、離れた場所にある法科大学院との連携であるとか、あるいは入り口の部分で地域特別枠を設けるといったことは非常にいい取組だと思います。ただ、地元から離れた法科大学院に進んだときに、その学生さんが修了後は地元に戻るかというと、そうではないようにも思います。ですから、実際、該当する学生の皆さんがどういう意識を持っているのかということは改めて調べてみるといいのではないかと思います。
もちろん、修了者の就職先は法科大学院がある場所とは限らないわけですが、地元でもない場所に就職する人がいるかというと、先ほどのデータ、資料なんかを見ても、例えば東北地方の県なんかは実際ほかの地域から行っている人はいないわけだし、地元出身者以外を呼び込むのもまた、なかなか難しいのではないでしょうか。先ほど富所委員から医者の場合についてご指摘がありましたけれども、医者の場合は地元に大学があってそこに地域枠が設定されているので、少し違うところもあると思います。ですからそもそも地元に法科大学院がないとなかなか難しい。
ただ、そうは言っても今さら法曹コースだとか、ましてや法科大学院を今ないところにつくるわけにはいかないわけですから、そういう中で何ができるかということを考えないといけないと思います。日弁連さんのほうでは、先ほど紹介された取組もありますし、そのほか経済的な援助みたいなことも行っていらっしゃると伺っておりますけれども、法科大学院でできることはやはり教育面の取組で、地方で活躍している人もいるんだというロールモデルを示すとか、地道な話ではありますけれども、いろいろ教育カリキュラム上の取組を行っていくしかないのではないかなと思います。ただ、先ほども申しましたように、学生さんの意識というのは調べてみてもいいのではと思いました。ということで、よろしくお願いします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、次に久保野委員、お願いいたします。
【久保野委員】 ありがとうございます。東北大学の久保野でございます。東北大学はまさに東北地方に存在する唯一の法科大学院ということで、一方で地方の法曹従事者を充実させるという使命を持っていると考えております。ただ、他方で、同時に、資料の75ページに研究者養成や国際化を見据えた法科大学院像と地域に根差した人材の法科大学院像、併記されておりますけれども、両方をしっかり行えるということが大事だと思っておりまして、学生の希望との関係で言いますと、要するに、様々な選択肢があるということ、様々な教育機会、学習機会があるということが確保された上でしっかり選択ができるという環境を、どう整えるかということだと考えております。
そのように申しましたけれども、東北大学の実践におきましては、軸足や重点ということで模索をしてきているところがあるというのは、もちろん正直なところでございます。その上で今回、地方ということに着目して申しますと、大きく3点申し上げたいんですけれども、一つは、東北大学の実情といたしましては、新潟大学の法曹コースと連携をしておりまして、こちらにつきましては定期的に連携協議も行っておりますし、優秀な法曹を目指す学生さんに進学いただいて、法曹になるという夢を実現するということで、一定の道筋ができていると感じております。
もっとも性質上、数が多いというものではございませんで、しかし数は多くないけれども、法曹になりたいと思ったときに一つのそのようなルートがあるということは、大事なのではないかと感じているところでございます。ただ、こちらもなかなか入口、出口、例えば出身の地域、出身の高校、そして学部、法科大学院を経てどこに定着していくかということについて、広くデータを拝見して分析するということを、足元ではできておりませんので、今日の資料の中で指摘がございましたようなデータの収集ということを高校も併せてということが大事かと思っていますけれども、データの収集を行い、キャリアの道筋のようなものを可視化していくこと、道筋をどうつくったらいいかを探っていくということは重要かと思います。
また、あと2点については、一般的なお話、アイデアのレベルですけれども、幾つも御意見が出ておりますように、市場原理によって決まっている部分も多いというところがありそうでして、大学としてできることは限りがあるとは思います。けれども、例えば先ほど日弁連さんのエクスターンシップのお話がありましたが、各法科大学院が大学の所在地を中心にエクスターンシップを行っているのだと思います。東北大学でも仙台と東京の事務所に受け入れていただいているということがありまして、今後は、例えば東北大学であれば東北地方の仙台以外の弁護士会との関係で、エクスターンシップのチャンスをつくることが有効でありそうかどうかなど、弁護士会との御相談によって、リクルートの意味を兼ねての法科大学院へのアプローチを、法科大学院で歓迎するというような関係もありうるように思います。つまり、リクルートを積極的に行っていただいたりエクスターンシップを開拓するということは、実はまだ余地があるのかもしれないと感じました。また、学部段階についても法曹各界で今力を入れていらっしゃると感じておりまして、そこは発展の余地があるんだろうと改めて感じたところでございます。
なお、余談になりますが、東北大学が模索してきた面があると先ほど申し上げたんですが、東北大学の場合、むしろ一定程度前については東京に就職したいときには不利に働くのではないかと考える学生がおりましたところ、実はそうではないんだということを発信することに努めた時期もございまして、情報提供に力を入れ、また東京の事務所が直接説明会に来てくださるといったようなことを介して希望者が増え、就職者が増えるというようなことがございましたので、冒頭に申しましたとおり、そのような都市型の弁護士への道もチャンネルがある、地方についてもチャンネルがあるといったような、しかも地元だけではなくさらに東北大学で言えば東北地方全体といったようなことを、バランスよく進めていくことができると理想的だと思いました。実際にどのぐらいできるかというのはいろいろな資源等の問題等を踏まえての検討次第という面もございますが。
そして最後に1点、すみません、長くなりまして、富所委員のおっしゃった地方枠に関連しまして、東北大学で地元の弁護士会と話しておりまして、待遇面ですとか経済面の点が大きいと認識されていると伺っております。奨学金、資料の中でも59ページや74ページで触れられていますけれども、奨学金という点は一つポイントなんだろうと思います。例えば単なるアイデアですけれども、この地方会に入会した場合には返還免除になるという形で、拘束はできないという富所委員のおっしゃったところもすごく大事なんだと思いますので拘束はできませんけれども、しかしそういう希望を持っている学生がその単位会から奨学金をいただいて、そこに就職すれば返還しなくてよいと。でも進路の希望が変わったら返還はするというのも一つ、制度設計としてあり得るのかと思いました。以上でございます。ありがとうございました。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、田村智幸委員、お願いいたします。
【田村(智)委員】 札幌で弁護士をしております田村智幸でございます。私は、まず法曹コースについて最初に室長から御報告ありましたので、少し所感を述べさせていただいた上で、法科大学院と法曹の地方定着について所感と意見を述べたいと思っております。
まず、法曹コースについてですが、16ページ、法曹コース修了者の進路についてという資料をいただいています。私、昨年も述べたように思うんですが、右下、4番の学内に法科大学院がなく、同一都道府県内に法科大学院がない法曹コース、5コースございます。進路ということで、この進路の状況をずっと着目しております。この5コースというのは、恐らくその次の17ページのところの番号でいきますと6番ですとか8番ですとか15番ですとか17番ですとか18番。6番は今、久保野先生からも御紹介があったように、東北大学とのパイプが非常にきっと強くて、在籍者が多いということなのかと思っていますが、こういったところ、まだ4年間ですのでもう少し長く見ていく必要があるとは思うのですけれども、協定先ロースクールへの進学者や率が思ったほどあまり伸びてきていないということが、私としては非常に気になっております。
21ページの資料を見ていただきますと、具体的にどれぐらいの数が修了して進路に向かっているかという、この資料を経年で見ていく必要があるんだろうと思っていますし、また先ほどの番号も大学によってそれぞれ違うようなところがございます。どういった違いがあるのかをしっかり分析していただきたいと思っています。そこで分かってくることが必ずあると、私は思っています。さらには法曹コースの間口の広さ、入口の広さとか狭さ、前提事情が違うというところも当然ありますので、そういったところもフォローしながら確認をしていただきたいと思います。
さらには地方からの法曹養成とその後の地方への定着、全体で見ようとした場合はこの5つの大学以外の各地方の法学部等の動向についても調べていただく必要があるのではないかと、私は思っております。これがまず、法曹コースについての御報告を聞いての所感でございます。
続いて、法科大学院と法曹の地方定着についてでございます。西森副会長、ありがとうございました。日弁連の報告を見ますと、資料の中で、第77期で登録者は65ページを見ると少し増えていますけれども、これは在学中試験が始まって修習を経てということでの合格者、登録者の増えだと思いますが、それでも1か月後の地方の登録者数はあまり増えていないと私は思います。私のいる札幌と札幌以外の道内3会でもそれぞれ事情は違うと思いますが、地方の弁護士として私は日弁連の報告に少し付け加えをしたいと思います。
地方の弁護士というのは、地方社会の中でエッセンシャルワーカーの意識を持って業務をしている、そういった同僚が非常に多いと思っています。裁判交渉業務とか予防法務でもそうですし、実際、アウトリーチを一生懸命やっているという、そういう仕事のスタイルを頑張ってやっている同僚もたくさんいますし、公益活動の側面のある人権、刑事などを中心とした委員会活動、さらには災害とか貧困、その他の最前線の現場で支援する弁護士になるとなおさらエッセンシャルワーカーの意識を持ってやっています。こうしたところで法曹の地方定着が進まないと、公益活動や最前線の活動が本当に細く細くなっていきます。そういった強い懸念を持っています。
先ほど笠井委員から地方の採用意欲についての御質問がありましたが、こういった最前線の活動とか広域的活動のことを考えると、私は少し次元の違う話なのではないのかと思っております。日弁連の取組はありますし、私の所属する北海道でも弁護士会連合会が大学生をひまわり公設事務所にバスツアーを組んで泊りがけで連れていって、地方の弁護士の業務とか生活をしっかり見聞させるという、そういう取組をしていますが、しかし少しぐらい増えても弁護士が地方に行かない状況が続くのであれば、私としては抜本的な政策誘導が必要なのではないかと思っています。
そうしたときに、文科省から資料2-2にあるペーパーが上梓されたことは非常に心強い限りですので、まずこのことを申し上げた上で、私もう1点、付け加えさせていただきたいと思っています。72ページと76ページに入口と出口という整理がされていますが、入口と出口があれば当然、その中間に入口に誘導して出口にいざなう大きなルートがあります。これが法科大学院でございます。この法科大学院の取組に対する公的な支援としては、公的支援見直し強化・加算プログラムがございます。私も以前、委員をしておりました。
これはあくまで大きな枠の中での資源の配分でありますし、加算部分は、現在は5年間の機能強化構想と実現を行うという取組ですので、もちろんその評価対象の中には地域の自治体や法曹界、産業界との連携という項目もあるわけでありますけれども、令和6年から既に2巡目が始まっています。そうしたことを考えると、ここに大きなめり張りをつけるということは難しいと思っています。まして、こういう取組にどういう地方定着への効果があるのかということまでが、何も検証されていない中で行われているのではないか。失礼ながら、私も数年前、委員をしていましたし、そういった観点から申し上げたいと思います。
今の大学というのは、この「知の総和」答申を見ても、質の維持と適正規模、そしてアクセスの確保です。この3つを政府が、要するに人口減少の中でしっかりやっていく。2035年の崖以降、崖を滑り落ちないようにやっていくという強いメッセージを、「知の総和」答申で発していると理解をしています。文科省の資料の後ろに、国立大学法人の機能強化に向けた検討会、私立大学の在り方検討会の会議の資料が引用されていますが、さらに付け加えますと2025年の骨太の方針、地方創生2.0の推進ということで、皆さん御承知だと思います。
政府がいろいろな予算施策を組むときに、その中心になる骨太の方針でございます。ここに人や企業との地方分散とか、産学の地方移転のことがしっかり書かれています。11ページにしっかり書かれています。資料は手元にありませんが、あとでお読みいただくと分かると思います。こうしたことを、急激な少子化の進行とか地域の人口産業構造の変化を前提に、高等教育のアクセスの確保に向けてしっかりとやっていくということで、わざわざ言及しているところですので、これをぜひ政策誘導と結びつけていただきたいと思います。
今日のお話でも地方枠、それから奨学金のことがありました。真水的な政策誘導がどこまでできるかというのは技術的なところもあるので、文科省にお考えいただくところでありますが、そういったことまでしっかり踏み込んでいただかないと、地方で弁護士をしている私としては本当にこの地方の法曹定着について大きな不安を抱いているということで、申し上げさせていただきました。東京・大阪の大きなロースクールの先生方は、五大、四大と言われる法律事務所への就職率、失礼ながら気になるところだと思っていますが、でもこうした地方定着の味方、UターンですとかIターンですとかということに向けた講座とか取組を同時に行っていただきたいと思っています。
もちろん若い人に向けてどういったことが効果があるのかということは、もっともっと分析する必要があると思っていますが、私としては以上のようなことを意見として申し上げたいと思っております。少し長くなりまして、申し訳ありません。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。時間の関係で、今挙手をいただいている方で御発言を打切りたいと思います。これから松井委員、神渡委員、青竹委員、道上委員の順で御発言をいただきたいと思います。それでは、まず松井委員、お願いいたします。
【松井委員】 松井です。企業の法務の責任者をしております。まず、法律実務家の地域間偏在に関して、法科大学院制度がどのようなアプローチをとるかということについて申し上げる前提として、補足的にコメントさせていただきます。ほかの委員の方もおっしゃっていましたが、人材の大都市の偏在というのは法律実務界だけに生じている問題ではなくて、日本全体、そして多くの産業において生じている深刻な問題であると理解しております。
また、法律実務界においての問題ですが、執務する場所として大都市以外の地域が選ばれていない状況というのは複合的な要因から生じていると理解しております。私自身の経験ではないので見聞きした内容にはなりますが、これまではいわゆる町弁業務を一定程度受任して収益基盤を形成しながら、国選や当番、弁護士会の法律相談といったいわゆるインフラストラクチャーとしての業務を担当する形というのが一つのモデルケースとして存在したと認識をしておりますが、現在の状況は全国に支店を展開して広告集客するといったような形の事業者の登場もあり、その姿にも変容が生じていると聞いています。そういった状況については、大都市以外の地域のインフラとしての弁護士のあるべき姿というものをしっかりと再定義した上で、別の議論が必要だと考えておりまして、こちらは残念ながらこの委員会での議論の枠を超えたものになってしまうと理解をしております。
また、企業の積極的なリクルート活動について、先ほどプレゼンテーションの中で言及いただいたので、ひとつ私のほうから共有をさせていただこうと思います。まず、前提として、初回の委員会でも申し上げたかと思いますが、企業内法務の担い手というのは、法曹資格の有無に関わらず、需要に対して人数が非常に不足している状況になります。多くの企業がかなり人材確保に苦労している状況ですが、その中でも難しいと言われているのが東京以外に本社がある企業、中でも地元に法科大学院がない地域が難しいと言われております。企業においてもそういった状況であるということを、ひとつ共有させていただければと思います。
そういった状況を踏まえた中で、では法科大学院においてどのような対策を取りうるのか、1人でも多くの方に多くの地域の法律実務の担い手になっていただくということを考えた際に一つ考えるのは、早期に多様な法曹の姿を知る機会を設けることが必要になると理解しております。法曹コースにおいてはそのコース中に、また法科大学院においては入学後の最初の学期において、様々な業務を行う講師がリレー登壇するような機会を設けるといったことが必要になってくると思い、そういった科目の設置を後押しすることができるのではないかと考えております。私は企業法務の一端を担うものですが、現在の企業法務中心の就職活動については法科大学院が社会において必要となる多様な法曹を輩出する機能を果たすという観点から危惧をしております。ですので、最初の時点でしっかりと、様々な法曹の姿があということについて、しっかりと伝えることが重要だと考えています。
私の勤める企業では例年エクスターンシップの受入れをしております。今月も4つの法科大学院から合計7名、受け入れをしており、その中で私たちの仕事つぶさに見て体験いただくことのできるエクスターンシップの重要性を再確認しました。就職のタイミングが非常に速くなっているということについてほかの委員の方も言及されていましたが、大手法律事務所だと在学中受験の前の段階で内定が出ているという状況だと理解をしております。ですので、当初は受験後の半年間の在学期間に本質的な学びが得られるのではないかと期待をしていたのですが、その時点には内定が決まっているということになると興味関心というものが限定されてしまうということになるため、より多くの法曹の仕事に触れる時期を繰り上げていかなければいけないのではないかという問題意識をもつようになりました。地域でのエクスターンシップにおいては単位会の弁護士の皆様の意欲的な関与が必要になると理解をしており、その際には学生の方を信頼して多くを体験する機会をご提供いただければと思っております。
また、学生の方々にこれまでに地方での執務というのを考えたことがあるかという質問を私のほうでもしてみましたが、考えたことがある方というのは御出身地だったりとか在学していた大学の所在地だったりとか、何かしらその地域に縁がある方が多いという印象を受けました。これは私の観測範囲の話にすぎませんので、こういった状況についてより強固なデータでサポートされるようであれば、まずはそういった方に法律実務家を目指していただく母集団に入っていただくことに意味があると思いますので、大都市以外の居住者を受け入れる地域枠、そしてその後の就職を条件とする奨学金の代弁済といった制度にも価値があると考えております。
長くなりましたが、冒頭申し上げたとおり、法曹の地域的偏在の問題は法科大学院だけの問題ではないと考えておりますが、一つ一つの取組には非常に意味があると考えておりますので、そういった取組を一つでも行うことが必要だと考えております。以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、神渡委員、お願いいたします。
【神渡委員】 法務省の司法法制課長の神渡でございます。私自身、法曹として25年目に入るんですけれども、私は九州の人口7,000人ぐらいの町の出身です。これまでの議論の中でいろいろな意見があったところではあるんですけれども、地方出身だから地方に行くということでは必ずしもないと思っております。また、地域に司法試験に合格する可能性がある学校があるからといって、じゃあそこに行くということでは、必ずしもないと思っております。
人口動態などを考えたときに、これから先、法科大学院が地方にあれば地方に学生を誘導できるということでは必ずしもなく、まずは地方での就職、日弁連からの報告の中で希望している事務所はあると思いますというところではあったんですけれども、地方での就職というのが具体的にどの程度あるのか、そしてどういった仕事があるのかということの発信は、かなり重要なのではないかと思っています。地方に手を挙げている事務所がどの程度あるのかということのエビデンスも大事だと思いますし、就職したい人たちにとって、地方で人手不足で手を挙げている事務所があるからといって、事務所であればどこでもいいというものではないんだと思います。そういった意味で、どうして法曹を希望するのかという動機に立ち返った上で、そのニーズに合った仕事が地方にあるのかということがかなり大事なのではないかと思っております。
その意味では、法科大学院と高等教育機関との連携ということに関連するのですが、この日弁連の発表の中で一番大きな地方偏在の原因として私なりに考える大きな理由としては、就職活動の早期化という問題があり、これについてはどうにかいろいろな手を打っていかなければいけないのではないかと思っております。大手の事務所が大学時代から、もしくはロースクール時代から奨学金を用意してしまうというような、いろいろな現状の話も風聞します。
そうなってくるとなかなか他に目が向かないという松井委員からのお話があったかと思いますけれども、それはそのとおりなのではないかと思う部分もあります。その意味では、高校生よりももっと若い段階から、いわゆる法教育というところでもあると思いますし、職業教育というところでもあると思うんですけれども、特に地方においては、周りに弁護士などの法曹がなかなかいない中で、例えば地方の先生たちが法教育とマッチングさせていくとか、若いうちにこういった仕事があるんだという啓発や、広域的な仕事、地方で弁護士をするという意味など法曹を将来的に志望する動機につながるような、法教育だったりエクスターンシップだったりいろいろな取組を行っていく可能性があるのかなと思っております。
結局、やりたい仕事がそこになければそこに行かないということだと思います。ビジネスの中でも、地方でビジネスの商機を見いだしている方々がいらっしゃると思うんですけれども、我々法曹としても、地方に魅力のある仕事、その仕事をやりたいと思えるような関係をいかに若い段階から構築していくかという視点は、今後、必要になっていくと思っております。そういった意味では、法教育はそういう文脈で語られるものでは必ずしもないんですけれども、法律に興味を持ってもらう、そして地域に自分のやりたい仕事があるという状況をどうやって創出していくかということを、各団体、それから省庁も含めていろいろなことを考えていかないといけないのではないかと思っております。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、青竹委員、お願いいたします。
【青竹委員】 よろしくお願いします。大阪大学ロースクールでも、やはり学生は大手の事務所を目指す人が多いと思います。香川大学と連携していますけれども、先ほど指摘があったように、地方出身の人が地方に戻るとも限らないという状況を実際に見ております。そして2点、これから対策を立てられるのではないか、ロースクールとして何かできるのではないかということを考えております。
一つはエクスターンシップで、地方の事務所のエクスターンシップに特化したエクスターンシップを新設するというのがあるかと思います。そして時期について、在学中受験が終わって秋冬の授業が始まる前の、8月終わりから今の9月中旬までの時期に、北海道、九州を始めとする東京・大阪以外の地域でのエクスターンシップを新設して後押しする、そして資金の援助も何とか対策を立てた方がいいのではと思います。
2点目に、地方の事務所に御所属の先生にロースクールで授業を持っていただくというのがあるかと思います。在学中受験後の実務系科目の充実というのはテーマになっていますし、修習との連携というのも重要ですので、オンラインという可能性もありますので、ロースクールの学生に先生から実情を話していただいて、やりがいや、地方ならではの意義というのをアピールしていただく、実際に働いていらっしゃる先生にお話しいただくというのが学生に一番伝わるのではないかとお聞きしました。以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは道上委員、お願いいたします。
【道上委員】 ありがとうございます。道上でございます。既にたくさんの先生、皆さんおっしゃってくださっているところなので、もうあまり新しいことはというところではあるんですけれども、私、東京にもともと6年間就職をした後に今、神戸で就職をしておりまして、東京での仕事、地方での仕事、双方とも見ている側から感じると、確かに学生は大手であるとか特に東京での就職を非常に求める傾向にありますし、それは私のときもそうでしたし、今新たに来る修習生も同じような傾向にあると思います。
なぜ東京を求めていくのかというのはもちろん人によって違いがあるでしょうし、先ほど松井委員もおっしゃっていたように複合的な要因があると思いますが、一つは大きな仕事があるのではないか、それからざっくばらんに申し上げてしまうと、弁護士は仕事ですので、収入というか利益がどれぐらい出てくるのかというところが大きなポイントではないかと思っています。
金銭的なところは表立って誰も言いにくいというところもありますので、なかなか実際の部分と学生への伝わりがリンクしていないのかなというところは、気になるところではあります。実際に大きな事件が東京にあるというのはそうだとしても、地方にも大きな会社さんはいらっしゃいますし、全国的にニュースになるような事件も地方で起こっているものがたくさんあると思います。そういう状況について、学生が実際にいろいろな仕事をしたり就職先を選択するときに、想起されるようなことがなかなかないというのが難しいところなのかと思います。
以前は、地方の現状を皆修習で知って、それを踏まえて就職していくということだったのだとは思いますが、今はそもそも修習の開始時点でほとんどの方の就職が決まっているとなると、修習で知ったとしても、申し訳ないですけれども時既に遅しというような状況にはなっているので、その前の段階での学生への情報的なアプローチ、それは日弁連であるとか弁護士の側からもそうだとは思いますけれども、していく必要があるのだろうと思います。
ただ、修習に行く前、さらに言えば合格をする前の学生にとって、日弁連からの情報がどれぐらい情報として重要性が高いかというと、むしろ法務省であるとかロースクールであるとか、そこからの情報の方がアプローチもしやすいし届きやすいしというところがあると思います。なので、そういったところで一つまた何か方法があればいいのかと思ったところでございます。以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
まだ御意見あるかもしれませんが、冒頭申し上げましたとおり、さらにまだ御意見があれば会議終了後に事務局にメールでお伝えいただければ議事録には反映できますので、もし御意見あればそのようにしていただければと思います。
それでは、次の議題に入りたいと思います。議題3、中教審大学分科会における議論について(新たな評価制度)です。事務局より資料3-1から3-4までについて御説明いただいた後に、質疑の時間を設けたいと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
【鈴木室長】 私は大学設置評価室長をしています、鈴木と申します。よろしくお願いいたします。私から、資料3-1と資料3-2、主に資料3-1でございますけれども、それを使って、教育学習の質の向上に向けた新たな評価の在り方ワーキングの、議論の整理の概要を御説明させていただければと思います。
本ワーキングでございますけれども、今年の2月に出されました「知の総和」答申において、教育研究の質のさらなる高度化を図るために、新たな質保証向上システムの構築と併せて認証評価の見直しが提言されたことを受けまして、大学分科会の下に質向上・質保証システム部会を設けまして、さらにその下に認証評価に特化した形でのワーキングが設置されたものでございます。ここには笠井先生も委員として加わっていただいておりますけれども、5月に第1回が開催されまして、3か月間で6回審議をさせていただいたところでございます。
主には認証評価を実施している機関別認証評価機関、分野別認証評価機関、あとは認証評価を受審する高等教育機関の各種団体、これについては法科大学院協会からも御意見を賜りました。あと、高等教育との接続という観点から高等学校関係者とか経済団体から幅広く意見をいただきまして、あとは委員のワーキング、委員の皆様の意見を踏まえまして議論のまとめ・整理という形で、8月に公表させていただいているところでございます。これはまだ議論の整理という段階でございますのでこれで決定というわけではなくて、こういう方向性に沿ってさらに新たな評価制度について議論していくことを考えております。
では、3-1でございますけれども、大きく第1部、第2部に分かれてございます。第1部につきましては、新たな評価の基本的な考え方を書かせていただいております。認証評価制度の現状と課題でございますけれども、20年が経過しまして、もちろん認証評価が導入されたことによって内部質保証システムが各大学に導入が進んでいるということはプラスとして我々、評価しておりますけれども、ここに3点、課題があるのではないかという形で指摘させていただいているところでございます。
社会から評価として何を期待されているかというと、教育の質を明らかにすることであるということでございますので、それがまだまだ十分にできていないのではないかということで、1の社会的機能の再確認の必要性ということ。2につきましては、評価をすること、評価を受けることの負担感、あとは徒労感、こういうところに対して何かしらの手を打つべきなのではないか。3につきましては、認証評価によって機関の改革にはつながったんですけれども、学生の学びの成長とかに寄与するカリキュラムの改善というところも、十分につながっているのかという課題が指摘されているところでございます。
そういうことを踏まえまして、右側でございますけれども、新たな評価への転換ということで、「知の総和」答申、これから学生数が減っていく中で教育の質を高めていかなければいけないと。教育の質を不断に見直すことが必要であるのであれば、教育の改善が必須であろうと。教育の質と教育の改善を、まさに各大学で行われている内部質保証とこの新たな評価制度で担保していきましょうということをうたっているところでございます。
そういうことを考えた上で、ではどういう改革の方向性であるべきかということでございますけれども、1つ目でございますけれども、学修者本位の教育、各大学・学部学科で掲げている3ポリシーを基盤とする教育成果と、学生が在学中どのぐらい成長したかについてきちんと評価によって可視化して、ちゃんとそれが教育改善につながっているかという観点を評価すべきなのではないかいうのが1つ目。
2つ目でございますけれども、高等教育機関はこれまで以上に自らが行う教育活動に対して社会からの理解と支持を得ることが必要になってくるということから考えますと、この評価についても社会に理解されやすい形の公表の仕組みが必要ではないかということ。(3)でございますけれども、先ほど課題でお示ししましたように、徒労感、負担感というものがあるのであれば、そこをちゃんと解消していかなければいけないということで、効果的、効率的な評価の実現を図っていく、これが大きな方向性でございます。
その上で、具体的にどういう形で新たな評価を構築していくかというのが第2部でございますが、評価の主体でございますけれども、これについては今もピア・レビューを基本としておりますので、教育の質を見るに当たってはピア・レビューの観点が重要だということと、そこは維持したいと思っております。あとは、評価機関につきましても今は複数存在しておりますので、そういう中で評価の基準とか評価結果のばらつきというところがありますので、そこの評価の基準・観点のばらつきをなくすような調整組織の設置を検討してはどうかということ。あと、評価機関については認証をしておりますけれども、認証後について文部科学大臣が、評価がちゃんと適正に行われているかという、評価機関に対する評価の適正性を確認するシステムを設けてはどうかということが言われております。
2つ目でございますけれども、その評価をどういうところを評価していくのかということでございますけれども、先ほど言いましたように、学生が学修成果を上げられているかという点の可視化を我々は求めていきたいと思っておりますので、であるならばまさに今の機関別ではなくて学位の分野に基づく、学部・学科・研究科ごとの教育の質の評価を重視する制度の構築を考えていってはどうかということで、引き続き検討とされているところでございます。
3番でございますけれども、評価の視点でございます。これにつきましても、まさに1つ目に書いてありますように、養成すべき人材像、DPに照らして、学生が必要な学習成果が上げられているかという点を可視化して、教育の改善に活用されているかというところを、まさに評価の中心に据えていこうということでございます。今、マネジメントとか財務とかそういうところはありますけれども、そうではなくてここを中心に据えた評価に変えていきましょう、その上で評価項目を考えていきましょうと。
このワーキングの一つのゴールとして2つ目でございますけれども、これについて項目指標を共通化することによって具体的な評価基準、項目指標のモデルを示していきましょう、これを引き続き検討していきましょうということが言われているところでございます。学修成果の可視化と言われたときに、成績等の直接評価と学生アンケート、間接評価の双方の観点で行うようにしましょうということ。4つ目でございますけれども、当然先行している分野別評価、まさに法科大学院がそうだと思いますけれども、そういうところについては新たな評価との関係を整理して、これまでの取組が損なわれないようにちゃんと検討していきましょうということが、現時点で書かれているところでございます。
4番の評価手続、どのように評価するかでございますけれども、ここは段階別評価の導入ということを検討するということで今、検討を進めているところでございます。この段階別評価につきましては分かりやすく、かつ改善につながると書いてありますけれども、ちょっと言葉足らずなところがあるので補足しますと、現在、大学というところは偏差値とか立地とか、かならずしも各機関の教育の質とは直接関係ない価値判断で、社会的評価であったりとか、進路選択が行われていることが現状でございますので、このような現状を打破するために、教育の質を分かりやすく評価・発信することが必要だろうということと、いい取組を段階別に評価することによって先進的な取組、課題というものがよりほかの高等教育機関にも分かりやすくなりますので、把握・共有することで自己改革、自己改善が進むのではないかということで、改善につながるという形で、段階別評価を導入したらどうかということが今、議論としては書いてあるところでございます。
その上で評価の手続の効率化については、データベースを構築してより効率的に行っていくということと、今の認証評価については実地調査を必ず、絶対行うことになってございますけれども、ここは各評価の状況に応じてやってもやらなくてもという形で検討したいと考えております。
最後、5番目でございますけれども、評価の結果につきましては、公表内容とかフォーマットは統一的に検討していこうということ。あと評価の結果については、国の政策に活用できるようにしていくということと、場合によっては、高い評価を得た機関については受審期間の延長とかのインセンティブも併せて検討してはどうかという形で、今の中での議論の整理がまとめられているところでございます。
冒頭に言いましたように、これで全て決定というわけではなくて、こういう方向性で引き続き議論していきましょうということで、秋以降、個別の論点を議論していく予定になってございます。私からは以上でございます。
【松下座長】 次、遠藤室長、お願いします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。私からは資料の3-3及び3-4について、御報告をさせていただければと思います。まず、法科大学院に関する評価機関へのヒアリングの結果ということで資料の3-3にまとめさせていただきました。
101ページを御覧いただけますでしょうか。分野別認証評価の意義についてということで、今ほどの御報告にも重複する部分はあるんですけれども、法科大学院の分野別認証評価を行っている3つの団体について、それぞれ回答をいただいたものでございます。例えば学位授与機構におかれては、教育活動・内部質保証に対して一定の役割を果たしてきたというお話であるとか、大学基準協会におかれては、各種の法令の遵守状況のみならず、法科大学院自らの理念・目的に応じた多様な発展を支援してきたということで、分野別認証評価の意義について、評価団体としてもしっかり御認識いただいて取り組んでいただいているという状況でございます。
あと、104ページを御覧いただければと思います。実際に、新たな評価を具体的に検討していくに当たって、現状の認証評価に対する課題意識について、今現在、負担だと思っているようなことをお伺いしてございます。いずれの団体につきましても、評価委員の確保については非常に負担と感じておられると。これは恐らく評価団体もそうですし、評価委員として参加される大学の先生方もそうでありますけれども、こういったところに負担感を感じておられるということの回答をいただいている状況でございます。
さらに、107ページもよろしいでしょうか。重要と考える評価基準ということで、今後、具体的な評価基準についてこの新たな評価の議論を受け止めて考えていく必要があると認識しておりますけれども、この中で法科大学院における特に重要と考える評価指標、評価基準はどういったところかということでお伺いをしているものです。学位授与機構及び大学基準協会におかれては、令和2年の段階で法科大学院等特別委員会で審議をいただきました、評価項目として重要だということを挙げているんですけれども、こちらについて事務連絡で各法科大学院に発出させていただいている状況でありますけれども、これら例示として挙げたような項目についてはいずれも重要だということで認識をいただいてございます。恐らく法科大学院等関係者におかれてはこうした事務連絡、中教審のこれまでの審議を尊重していただいてこういった受止めになっているのかと、我々、考えているところでございます。
時間の関係上、その他の項目については割愛をさせていただきまして、その次の3-4の法科大学院へのアンケートの結果についても触れさせていただければと思います。115ページを御覧いただければと思いますけれども、分野別認証評価、法科大学院側の受止めといたしまして、有益であるということと、どちらとも言えないというのが大半を占めているというような状況でございます。
117ページも御覧いただけますでしょうか。分野別認証評価の有益性についてであるんですけれども、特にどちらとも言えないというふうな回答をされたところについてお伺いをすると、もちろん評価制度自体は有益であるんだけれども、一方で作業的・経済的コストに見合った評価とは言えないのではないかというような回答をいただいている状況でございます。
121ページも御覧いただけますでしょうか。評価結果を踏まえ、対応した事項についてということで挙げさせていただいてございます。当然、認証評価の機関も大事だということで御指摘をいただき、かつ法科大学院においてもしっかり対応しなければいけないということで、対応いただいた項目を幾つか挙げていただいておりますけれども、最も多い内容として成績評価や単位認定の基準、その次に授業の方法、さらには入学者の選抜方法ということで、いわゆる3つのポリシーに関わるようなところについては、当然ながらしっかりと御覧いただいているという状況でありますが、一方でそうでないような1とか0とか2とか、指摘項目として対応した項目について数が少ないような項目もあったりしますので、現状の評価においてもとても大事な項目と、ある程度もうクリアされているような項目というのが、こういったところからも見てとれるのではないかと受け止めているところです。
さらには、123ページを御覧いただければと思います。現状の分野別認証評価において課題であると感じている事項についてということで、先ほどのものともかぶりますけれども、作業負担が非常に負担に、評価作業が負担となっていて、教員の教育研究活動に支障が生じているであるとか、さらには機関別認証評価との作業が重複して負担になっているというような回答、こちらが非常にあったりするという状況でございます。
最後でありますけれども、127ページも御覧いただければと思います。実際に今後、優れた評価を受けた場合、課題があると評価を受けたような場合、優遇策や指導の方策等について何か要望あるのかということでお伺いをしておりますけれども、最も多いのが調査項目の簡易化、すなわち優れた内部質保証の仕組みであるとか教育が充実しているような法科大学院については、調査項目の簡易化を図ってもいいのではないかという御指摘であるとか、さらには受審期間の柔軟化についても検討することが考えられるのではないかということが大勢を占めているというような状況でございますので、こちら現状の認証評価制度に対する御指摘を賜っているところでありますけれども、こうしたアンケート結果も受け止めて、事務局としても新たな評価の議論により資するような形で生かしてまいりたいと考えている次第でございます。
事務局からは以上でございます。ありがとうございます。
【松下座長】 ありがとうございました。ただいまの事務局からの御説明について御質問や御所感等があればお願いいたします。私の不手際で時間も限られていますので、繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり2~3分程度を目安にお願いできればと思います。それでは、どの点についても、どなたからでも御発言をお願いいたします。
宍戸委員、お願いいたします。
【宍戸委員】 東京大学の宍戸でございます。本当に手短に申し上げます。例えば、よかった認証評価を受けた法科大学院の受審期間を短縮するとのは多分、法科大学院側にはすごく頑張って認証評価を受けて、いい点を上げようという大変なインセンティブが働くと思いますが、他方で審査機関の方の側にそういうインセンティブが働くのかということが問題であろうかと思います。いい点をつけて、いい評価をするということによって、次回以降スキップされてしまうということが、審査機関の経営とかいろいろなこととの関係で本当に大丈夫なのかということになりますので、そのインセンティブ構造をどうつくるかということが、大変課題であるかと思いました。この場でいろいろいい知恵が出てくるといいと思っております。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 一橋大学の髙橋でございます。資料3-4の法科大学院のアンケート結果ですけれども、特に123ページの結果は、評価も課題も、いずれも現場の一教員から見て実感に沿った内容だと思います。認証評価というのは評価側にも受審側にもやはり非常に負担の重いものでありまして、にもかかわらずそれに見合った建設的な改善策の共有につながっていないというのは根本的な課題なのではないかと存じます。
こうした認証評価というのは、大学の評価に関わらず、どういった評価であったとしてもそうした不満というのを完全に排除するということはできないものですので、一定程度は回避できないものだろうと存じますが、更なる改善を図れば多少は緩和できる余地があると思いますので、法科大学院の認証評価の課題に挙げられている点は、大学全体の評価においても参考にしていただくのが適切かと思っております。
一つは125ページの3つ目に法科大学院側から課題として挙げられております、根拠資料やデータが過大であるという点でございます。一般論として、評価者というのは情報収集について必要以上の情報を集める傾向があるのではないかと思われますが、評価対象者は、受審年度だけではなくて、日常的にこの認証評価に合わせて情報収集を行って整理・分析を行わなければならないことになりますので、これが負担感を更に大きくする原因になっているのではないかと思われます。必要な情報収集の範囲についても、常に再検討していく体制があればと存じます。
もう一つ、法科大学院側のアンケートでは、評価項目を簡略化することが課題に挙げられているのに対して、評価機関のほうからは重複の回避はともかく大きな簡略化は不要というように、認識のずれが見られます。こうした評価側と受審側の認識のずれというのは、互いの徒労感を増幅させる原因だろうと思いますので、何かこの評価の枠組み自体について双方の意見交換であるとか、あるいは受審側・第三者からの評価の機会であるとか、そういったものがあるとよりよいと感じております。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、田村伸子委員、お願いいたします。
【田村(伸)委員】 創価大学の田村でございます。法科大学院側としては大筋資料のとおり実感しております。要件が非常に重いわりに、効果はそれほど大きくないというのが一番の不満の原因なのではないかと思っております。前回も私は、この点に関して意見を述べさせていただきましたけれども、加算プログラムとの重複といいますか、その点も気にはなっております。両者のすみ分けをもし考えるとすると、認証評価のほうについてはある程度必要最低限というか、法科大学院としてクリアすればいいという点を示していただきまして、それ以上のところについては加算プログラムで補助金が効果としてありますので、そういったところでカリキュラム、授業の内容、授業の実施の方法ですとか、各法科大学院の特徴を生かした事項とかについては法科大学院の裁量をある程度広く認めていただいて、その辺りは自由競争に委ねるというような形ですみ分けを考えてはどうかと思います。そうした方向で、認証評価のほうの負担を減らしていただけると非常にありがたいと思っております。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。
まだ若干時間がございますので、どの点からでも、どなたからでも御発言いただければと思います。
【遠藤室長】 松下先生、よろしいでしょうか。
【松下座長】 どうぞ。
【遠藤室長】 事務局でございます。本日の議題の中で、前半の地方の話もそうですし、今ほど御説明申し上げた認証評価の話もそうですけれども、特に加算プログラムの在り方については各法科大学院の皆様方、大変関心が高い事項かと思います。現状、各法科大学院の皆様方に対して加算プログラムの在り方等々について、今後どういった在り方が望むべき方向性であるのかということを、御意見を伺うようなアンケート調査をかけさせていただいているような状況でございます。ぜひ、そこで加算プログラムのような予算のめり張りというものについてどう考えるべきであるのかというところを、ぜひ各法科大学院のお立場から積極的に御意見を頂戴できればと考えているところです。
御承知の通り、加算プログラム自体は非常に司法試験の合格率をベースといたしまして、さらにその上に法科大学院ごとの特色ある取組を評価していくような、そういった仕組みでありますけれども、この方向性を今後ずっと同じ形でいくのか、そうではない今の時代に合った形にブラッシュアップするとか、どういった形で持っていくのかということを幅広く御指摘いただきたいと思います。この2時間のみのお時間だと短いですので、ぜひそこは丁寧にお話を伺っていきたいと考えていることは御承知おきくださいませ。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
加算プログラムの今後についても、言わば頭出し的な御発言であったと思いますけれども、いかがでしょうか。
あまりこういうところで座長が思ったことを言うのはどうかと思いますけれども、今日の話の全体を通じて最後のところの新しい評価、例えば法科大学院の修了生は地方での弁護士業務の意義についてよく理解してそれを実践するというのは、こういう新しい評価の中ではどういうふうに評価されるのかなというのは、私自身はよくまだ分かってないということがさっき分かりました。私の意見はともかく、ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、特に御意見ないようでしたら、本日はここまでということでよろしいでしょうか。繰り返しなりますけれども、もし何かあれば事務局まで御意見を寄せていただければ議事録に盛り込むことは可能ですので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。それでは、若干早いですけれども、これで本日の議事を終了いたします。今後の日程については、事務局から追って連絡をしていただきたいと思います。本日はどうもお疲れさまでした。閉会いたします。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
【髙橋委員】
◆議事(2)地方の法科大学院と法曹の地方定着について
他の委員の皆様のご指摘の通り、なかなか険しい道のりであろうとも思いますし、抜本的な改革の検討も必要と存じますが、まず地道な試みの第一歩として、地域での働き方について学生への情報提供・キャリア教育を広げていくということは重要かと認識しております。
個人的な経験ですが、法曹コースの独自科目をアレンジする際に、実際に地方の公設事務所で活躍されている先生からお話を伺う機会を作るべく、地元を離れることの難しい先生にオンラインでご参加頂くために、当該科目については、オンライン講義の単位数上限の制約の中で”オンライン科目”にカウントされるようにした、ということがございます。
これは卑近な一例に過ぎませんが、都市部の大学であっても、教育の中に、地方で活躍する法曹に係るキャリア教育を取り込みたいという要望・ニーズは、法学部・法科大学院の双方に一定以上あるだろうと拝察しております。他方で、地域で活動しておられて、かつ教育活動への協力を依頼しうる人材の数は必ずしも潤沢とは言えないため、それが障害になっているという点も考えられるところです。
そこで、エクスターンシップ同様、地方で活躍する法曹全体のリソースが限られている中では困難もあるだろうとは存じますが、教育へのご協力をお願いできる人材のアレンジメントに関して、地域の弁護士会等を中心とした何らかの窓口、仕組みのようなものが置かれると大変有難いところではないかと存じております。
【加藤委員】
◆議事(2)地方の法科大学院と法曹の地方定着について
・就職活動の早期化傾向が、今後も変わらないとなると、少なくとも法科大学院の中で、さまざまな弁護士像や専門職である弁護士が、地方で働くことの意義ややりがいなどの情報に触れる機会を設けることが必要であると思う。
・各法科大学院の取組などを共有することも必要ではないか。
・また、地方の学生がそのまま地方に就職するわけではないというご意見もあり、それは確かにその通りであると思ったが、地方にい続けたいが、近隣に法科大学院がなくて進路を諦めるという学生もいるように思う。具体的なアイデアがあるわけではないが、教育の質を確保しつつ一部オンラインの活用などで、法曹を目指す間口を広げることができないか、との感想を持った。
【北川委員】
〇法科大学院に係る評価制度等の在り方
・資料3-1(中央教育審議会の答申)「『新たな評価』への転換」について
「教育の質」と「教育の改善」を内部質保証と認証評価機関で確認するという点については、各法科大学院と法科大学院認証評価は既に先行して、PDCA評価を重視した取り組みを進めてきたと考えている。法科大学院において「何を学び、どのような能力を身につけさせるか」は学部教育に比して明確であり、これまでも教育の質向上と改善の努力が評価の中心とされてきたものと理解している。
その上で、「改善の方向性」を検討するにあたり、特に留意すべきは、(2)の「社会に理解されやすい形で公表される仕組み」に関してである。事務局の説明にあったように、偏差値や就職率に基づく評価ではなく、「養成すべき人材像に照らして学生が必要な学修成果を上げられるか、その為の教育改善に取り組んでいること」を重視することは妥当である。したがって、資料3-4の125頁の自由記述の最後に挙げられた「司法試験合格者数や合格率が平均を下回ったからといって直ちに低い評価になるような運用はしないでほしい」といった指摘も首肯できる。もっとも、法科大学院の社会的な存在意義を考えると、評価を司法試験合格率等の結果(成果)と完全に切り離すことは困難である。とはいえ、たとえ合格率が低迷しても、合格率が高い大学以上に手間と時間をかけて学生の指導を手厚く行い、指導方法の工夫・改善につとめる法科大学院が存在することも事実である。
したがって、評価においては、合格率等を教育成果そのもの(及び追求すべき課題)として扱うのではなく、合格率の現状をふまえた教育改善の取組みを重視すべきである点を確認すべきである。その際、在校生や修了生からの評価(なお、在校生への聞取りは訪問調査が望ましい)、独自性のある教育実践、地域社会への貢献や地域との連携(とくに地方大学における就職支援や地域との協働)を積極的に評価対象とし、それらを社会に広く伝える仕組みを整備することが望ましいと考える。
・「評価の負担」の問題について
本日の会議で髙橋委員からの指摘にあったように、評価側と受審側との間で評価項目や根拠資料の意義や内容等に理解の齟齬が生じないよう、事前に協議の機会を設けることは、双方の負担軽減に資すると考える。
なお、資料3-3(評価機関へのヒアリング結果)103頁において、Web活用や提出資料の電子データ化により負担軽減が進んでいることが示されている。しかし一方で、アップデートされる電子資料が膨大化し、評価委員が目を通すのに多大な時間を要する、または提出(根拠)資料の説明意図が判然としないといった問題も指摘できる。評価側が必ずしも資料量の多さを求めているわけではなく、むしろ評価判断に必要な資料を効率的に確認したいと考えている。したがって、提出資料の在り方(とくに何のために提出する根拠資料なのかの精査)についても改善を検討すべきである。
高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係