令和7年6月18日(水曜日)10時00分~12時00分
【遠藤室長】 皆様、おはようございます。文部科学省でございます。所定の時刻になりましたので、第120回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催させていただきます。御多用の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
第13期の中央教育審議会が発足いたしまして、引き続き本特別委員会の設置が決定されました。新たな会期でございますので、座長及び座長代理を御選任いただく必要がございます。それまでの間、便宜的に私、専門教育課の遠藤が議事を進行させていただきますので、よろしくお願いいたします。
本日は、ウェブ会議として開催をいたしております。会議冒頭は非公開としておりますが、後ほど会議の公開についてお決めいただきましたら、議事をYouTubeライブ配信にて公開いたします。
まず、議事に入る前に連絡事項をお伝えいたします。会議を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手のマークのボタンを押していただき、指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。また、御発言後は再度挙手ボタンを押していただきまして、挙手マークが、表示が消えていることを御確認いただければと思います。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただければ幸いでございます。
なお、本日はウェブ会議の開催でございますけれども、今後、対面で参加御希望の委員の皆様がいらっしゃいましたら、次回以降は対面とウェブのハイブリッド開催も検討してまいりたいと考えておりますので、事務局までお寄せください。
早速でありますけれども、資料の配付確認ということでございます。今回は資料が1-1から4-4、参考資料が1と2で全233ページとなってございます。今回の資料及び参考資料につきましては、文部科学省ホームページでも公開をしてございます。特によろしいでしょうか、大丈夫そうでしょうか。ありがとうございます。
それでは、議題の1、座長の選任についてということで議事に入りたいと思います。資料1-1及び資料1-2を御覧ください。資料の1-1のとおり、4月23日に開催されました大学分科会において、法科大学院等特別委員会が設置をされました。本日は、今期初めての会議でございますので、本来であれば委員の皆様、お一人お一人の御紹介をさせていただくところですけれども、会議の後半に各委員の皆様に御発言をいただく機会を設けてございますので、その際に自己紹介も併せてお願いできればと思います。
それでは、早速でございますが、今期の座長及び座長代理を選任していただきたいと思います。本特別委員会の座長につきまして、委員の互選による選任としたいと思いますが、どなたか御推薦をいただけないでしょうか。笠井先生、手を挙げていただいてございます。御発言、お願いします。
【笠井委員】 座長には松下委員を推薦したいと存じます。松下委員は前期、12期も座長をお務めいただきまして、非常に適切に座長をお務めいただきましたので、今期もお務めいただければありがたいと存じております。以上でございます。
【遠藤室長】 笠井委員、ありがとうございました。
ただいま笠井委員から座長として松下委員の御推薦をいただきました。皆様、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【遠藤室長】 ありがとうございます。委員の皆様の御了承をいただいたものと受け止めました。
それでは、松下委員に座長をお願いすることとさせていただきたいと思います。
続きまして、松下座長より座長代理の御指名をお願いしたく思います。松下先生、よろしいでしょうか。
【松下座長】 座長に選任いただきました松下でございます。今期の法科大学院等特別委員会では、前期、第12期特別委員会で取りまとめられた「審議のまとめ」も踏まえながら、新たな評価制度に関する動き、これは後ほど御説明があると思いますけれども、であるとか、地方の司法を支える人材の養成、各法科大学院の特色・魅力の更なる伸長などについて具体的な審議を進めていく必要があります。そのため、私といたしましては、座長代理について、前期、第12期の座長代理をお引受けいただいた土井委員に引き続き座長代理をお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、土井委員に座長代理をお願いしたく存じます。
【遠藤室長】 ありがとうございます。事務局でございます。それでは、以後の進行につきましては、松下座長にお願いしたく思います。
なお、座長及び座長代理からの御挨拶については、会議が公開した後にお願いできればと考えてございます。
松下座長、お願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございます。
それでは、まず資料1-3、法科大学院等特別委員会の会議の公開に関する規則(案)ですけれども、この委員会の会議の公開に関して事務局から説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。資料1-3、通し番号で言うと、5ページを御覧いただければと思います。会議の公開に関する規則ということで、その公開や傍聴等について、実際に規定をされてございます。会議につきましては、原則公開、ウェブ会議の場合は文部科学省YouTube専用チャンネルでライブの配信、発言者の氏名を付した議事録等、後日公表する予定となってございます。また、公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があると認めるときは、会議資料や議事録の全部または一部を非公開にできるという旨、概要で記載をさせていただいてございます。
こちらについて御説明をさせていただきました。以上でございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
ただいま御説明がありましたように、この委員会としては、公開に関して、資料1-3のとおりとするということでよろしいでしょうか、いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、この1-3のとおり、ただいまから会議を公開といたします。事務局は配信を開始してください。
【遠藤室長】 大丈夫です。
【松下座長】 ありがとうございます。
それでは、これより公開で審議を始めたいと存じます。改めまして、第13期、初回の中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会の開催に当たり、座長に選任いただきました私から一言御挨拶を申し上げます。
この先ほど資料1-1に御説明がありましたとおり、この法科大学院等特別委員会のミッションは、法科大学院教育の改善等について専門的な調査審議を行うということでございます。私の役割は、委員の皆様方から多様で闊達な御意見を出していただくことに努めるということであると存じております。何とぞ、どうかよろしくお願いいたします。
先ほど遠藤室長からも冒頭で言及がございましたけれども、多様で闊達な意見をお出しいただくために、今回のように完全にオンラインがよろしいのか、あるいは一部対面を取り入れたハイブリッドがよいのかというようなことについても、委員の皆様方から御意見を賜ればと存じます。具体的な内容については、また後ほど私の意見、発言をする機会もあろうと思いますので、冒頭の御挨拶はこの程度にさせていただければと存じます。
続きまして、土井座長代理より一言お願いいたします。
【土井座長代理】 座長代理を仰せつかりました京都大学の土井でございます。松下座長の下、委員の皆様方に率直かつ有意義な意見交換を行っていただくことができますように努めたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、今回、120回の会議は第13期としては初回の会議となりますので、文部科学省を代表して伊藤高等教育局長より一言御挨拶をお願いいたします。
【伊藤局長】 おはようございます。文部科学省高等教育局長の伊藤でございます。このたびは第13期の中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会の委員をお引受けいただきまして、誠にありがとうございます。今期の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
まず、本年2月に中央教育審議会で取りまとめられました、いわゆる「知の総和」答申についてです。本答申では、急速な少子化をはじめとした国内外の諸情勢の急激な変化への強い危機感を背景に、高等教育政策の目的とし、「質の更なる高度化」・「規模の適正化」・「アクセス確保」の3点が指摘されたところでございます。これらのうち、質の保証・向上の観点から、認証評価制度の見直しについても御指摘をいただいてございます。現在、新たな評価制度の構築に向け、活発な議論が行われているところでございます。本委員会におかれましても、法科大学院における認証評価の現状を踏まえ、幅広い観点から御意見をいただければと思っております。
また、高等教育への地理的観点からのアクセス確保も重要な課題でございます。法科大学院におきましては、令和元年度の制度改正によって設けられた各地の法曹コースとの連携による「3+2」制度の効果を検証していく必要があると考えてございます。
最後になりますが、各法科大学院がそれぞれの特色・魅力の伸長を更に図り、有為な人材を輩出し続けることができるよう、公的支援見直し強化・加算プログラムの在り方等も含めまして、活発な御議論をお願い申し上げ、簡単でございますが、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 伊藤局長、どうもありがとうございました。
それでは、議事に入らせていただきます。議事の(2)法科大学院教育の動向についてです。資料の2-1から2-14まで、大部な資料ですけれども、ポイントを絞って事務局より御説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。それでは、私から資料のポイントとなりそうなところを中心に御紹介をさせていただければと思います。資料2-1、通し番号の7ページをお開きいただけますでしょうか。こちらが前期であります第12期の審議まとめ、法科大学院制度20年の歩みと法科大学院教育の更なる発展・充実ということで、概要としてまとめた資料がこちらになってございます。こちら、概要をまとめているので、その内容をポイントだけ申し上げますと、左側、法科大学院制度の20年の歩みということで、これまで司法制度改革審議会の意見書を受けてから、どんなようなことを取り組んできたのかということをまとめていただきました。さらに右側、現状と法曹に対する評価、法科大学院教育への期待ということで、その現状を、合格率であるとか、入学定員、入学者数、そしてロースクールへの志願者数ということで分かりやすく数字としてお示しをさせていただいた内容になってございます。総じて平成の後半までは非常に厳しい状況でありましたけれども、令和の時代に入りまして、その志願者数であるとか、入学者数、入学定員の充足率についても改善傾向にあるのかなという受け止めでございます。この後また最新の令和7年の状況も触れていきたいと思います。
次のページをお願いします。8ページでありますけれども、特に法曹人口、その活動領域が非常に拡大してきているという状況、そして、その法曹に対する評価等についても、これは法務省さんからもプレゼンいただきましたが、実際にその評価についても決して劣っているという評価はなされていないという御指摘をいただいてございます。さらに法科大学院教育への期待ということで、実際に法曹に求められる昔ながらに必要となるような基本的な資質・能力というのは当然ありつつ、一方で、この時代の変化に伴いまして必要とされる特色・魅力というものがやはり法科大学院には必要であろうということで、より発展的・先端的な教育を実施していく、その魅力を伸ばしていくということが期待されるものとして指摘いただいてございます。さらにその下の3つ目、今後の課題等と求められる取組の方向性ということで、今ほど申し上げましたとおり、法科大学院教育における魅力・特色、こういったものをしっかりと伸ばしていくべきだという御指摘をいただいてございます。
次のページをお願いします。そのほか、2つ目の柱として5年一貫教育のより円滑な実施ということで、法改正に伴う様々なポイントがありました。法曹コース、特別選抜、在学中受験ということで、それぞれの制度のポイントとなるようなところのエビデンスをしっかりと取っていきながら、その現状を把握していくべきだということで、その状況を注視していくべきだということの御指摘をいただいてございました。
3つ目の柱でありますけれども、多様な法曹志願者の確保、未修者の教育ということで、幅広い方々が法曹を目指せるような環境や、その教育の充実が引き続き重要であるという論点ですとか、4つ目の柱で、法科大学院教育を担う先生方、教員の確保も非常に課題であるという御指摘をいただいてございます。最後に司法修習との連携の強化ということで、より接続という意味で質の高い形での教育、連携が図っていけるようにということで御指摘もいただいていたというのが資料2-1、昨期の第12期の審議のまとめを受けたものでございます。こういったものを受け止めまして、第13期により深堀した議論が出来ればと考えているところでございます。
続きまして、飛びますけれども、資料の2-4、57ページまで飛んでいただいてよろしいでしょうか。スライド、画面でも投影をさせていただいてございますけれども、資料2-4、57ページで、特に令和7年度の段階の数字をここに記載させていただきました。一番右側のところ、上のグラフの一番右側のところを御覧いただけますと、令和7年の法科大学院志願者数につきましては、実際、青いバーで書いてありますけれども、1万5,271人ということで、一番状況が厳しかった平成30年の8,058人に比べますと2倍弱ぐらいまで志願者数が増えてきているというのが見て取れるかと思います。さらにその下、入学定員・入学者数につきましても、その充足率が100%弱ということで、95.4%まで改善してきているというのが現在の数字の状況というものでございます。
さらに、少し触れさせていただくと、61ページも御覧ください。細かい数字になるのですけれども、志願者数・入学者数のこの推移と志願倍率のところ、実際にこちら、御覧いただけるかと思います。一番下のところが令和7年の志願倍率ということで、一番右下の右隅のところ、7.1倍という数字が出てきてございます。この数字というのが、いわゆるロースクールができた後、平成16年、17年、18年、19年辺りですけれども、こういった頃の志願倍率とほぼ同程度ぐらいまで、当初の平成16年は若干違う値かと思いますけれども、かなり法科大学院に入ってくださる方の選抜機能というのは非常に高まってきているのかなというふうにこの数字を見て受け止めているところであります。より質の高い法曹を育成していくという意味でも、こういったところもとても大事な数字かなということで御紹介をさせていただきました。
さらに少し飛んで恐縮でございますけれども、資料2-11、ページで77ページをお開きいただいてよろしいでしょうか。法科大学院修了者の司法試験累積合格率の推移ということで、修了後5年目までの数字がこちらでまとめさせていただいているものでございます。要すれば、着実にロースクールにおける教育、先生方の御尽力によりまして、司法試験の累積合格率というのは、年を経るごとに改善傾向にあるかなと受け止めてございます。最新の数字で申し上げますと、令和元年のものが累積合格率修了5年目まで行っておりますけれども、こちらについては74.1%というところまで伸びてきているというのが、この数字上、見て取れるかと思います。
さらに、資料2-12、81ページを御覧いただけますでしょうか。司法試験合格率、この単年の推移というところでございます。こちらにつきましては、在学中受験が開始されて、昨年で2回やりましたけれども、一番右側のほう、司法試験合格率のところで、括弧で在学中受験という形で数字が2つ出てございます。いずれも59.5%、55.2%ということで、新たな制度が導入されて、在学中であっても一生懸命、学生さん、取り組んでいただいて、非常に高い合格率が出てきているというのが数字上、見て取れるかと思います。ただ、第12期の御審議の中では、この2回だけでいいとか悪いとかと判断するのではなく、しっかりと情報を把握して、その状況を注視していくべきだということの御指摘をいただいている状況でございます。
続きまして、資料2-14まで飛んでいただいて、ページ数は91ページまでよろしいでしょうか。今期、皆様に特に御審議、御検討いただかなければならないなと考えておりますこの法科大学院に対する公的支援見直し強化・加算プログラムの配分率の算出イメージのところ、改めておさらいも含めまして御紹介をさせていただければと思います。法科大学院に対する予算上のメリハリということでありますけれども、大きく2階建てになってございます。基礎額に当たる部分が、いわゆる左側にその内容を書いてありますけれども、指標といたしまして、司法試験の合格率であるとか、競争倍率、入学者数というような、客観的に把握できるような数字というものを基準に類型ごとに何%措置するというところが算出される仕組みとなってございます。
さらに右側、2階建ての2階部分でありますけれども、ここの部分で法科大学院ごとの魅力や特色を伸ばしていくような形で、それを加算分という形、加算額という形で各大学院の皆様に考えていただいて、例えば未修者の教育であるとか、社会人学生への支援であるとか、女性の法曹輩出といったような、こういったような特色に当たるような部分をプラスアルファで加算するという構造になってございます。いずれも、こういう指標はありますけれども、大学自身が考えていただいて、大学ごとの状況がそれぞれ異なりますので、大学ごとにその中身を考えていただいて、それを審査させていただいて配分を行っていくというところの仕組みでございました。
このようなところがあって、実際の配分率、これは94ページのほうに記載させてございますけれども、各大学の実際の配分率の一覧が94ページのところに記載をさせていただいているものでございます。御覧ください。名古屋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学というところで配分率120%ということになっているというようなところです。その他、大学それぞれ御覧いただいているとおりの状況になってございます。こうした予算配分の在り方について、もちろん今まではこういった形でやらせていただいてきているのですけれども、今後の方向性を踏まえまして、どういった在り方がより適切かということで、まさに御意見を頂戴できるとありがたいなと考えているところでございます。
ありがとうございます。私のほうから、今期のポイントとなりそうな資料を御紹介させていただきました。以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
この会議の後半に各委員に御発言をいただく時間をまとめて用意しておりますので、ただいまの事務局からの御説明に対して御質問等がありましたら、その際にお願いいたします。
それでは、次の議事に入ります。議事の(3)第13期、今期の審議事項についてです。第13期の審議に関する主な論点について議論をするために、事務局から資料の3及び4-1から4-4について御説明をいただいた後に各委員から御意見をいただければと存じます。
それでは、まず事務局から御説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。まさに今期に御審議いただく一番大事なところの内容になりますので、丁寧に御説明させていただければと思います。資料3、通し番号165ページでございます。第13期の審議に関する主な論点についてということでございます。特に審議に当たっての基本認識、その3つ目の丸のところを御覧ください。前期までの審議を踏まえまして、法科大学院の質の確保と負担軽減のバランスを踏まえた新たな評価制度への移行を念頭に置いた認証評価制度、この在り方であるとか、地方の司法を支える人材の養成、こういったことをやはり検討する必要があるだろうということで、先ほども局長から申し上げたような内容になってございます。さらには、多様な法曹志願者の確保や未修者教育の充実等々についても、こちらの基本認識として記載をさせていただいているところでございます。
実際の個別の論点のところに参りますけれども、この第13期、大きくは2年間でございますので、前半の1年間程度で御審議いただきたい内容と後半の1年間程度で御審議いただきたい内容という形で大きく二つに分けさせて記載をさせていただいてございます。まず、(1)法科大学院に係る評価制度等についてということでありますけれども、まさにこれまで様々御紹介させていただきましたとおり、中央教育審議会の答申の「知の総和」答申におきまして、認証評価制度の新たな評価制度へ移行するということ、この辺の方向性について提言をいただいております。今後の全体の議論や審議を踏まえつつ、法科大学院における、特に分野別認証評価の意義や必要性、その改善すべき点などについてぜひ御指摘をいただきたいと思ってございます。
なお、法科大学院については、これまでも認証評価の仕組みも非常に厳しく詳細に様々な法令上の規定も踏まえまして、評価されてきた側ということであろうかと思います。まさに今期の中央教育審議会は、今申し上げたような新たな評価に関する御審議もいただいておりますし、また、先日も大学院部会がありましたけれども、こちらで「3+2」の議論とか、御指摘もいただいているようなところがあって、ある意味、法科大学院において、これまで試行錯誤していただいていた内容が、同じ様々な会議の中で御審議いただいているような状況も同時並行でございます。ぜひ皆様の御知見をいただきながら、よりよい高等教育政策の質の保証、質の確保、質の向上も含めてでありますけれども、ぜひ御指摘をいただきたいと考えているところでございます。
これが一つ目の丸でありまして、二つ目が先ほど申し上げました加算プログラムの在り方であります。前期の第12期でも、その在り方の見直しの検討ということで指摘をいただいてございまして、今期がまさにその在り方を具体的に検討していかなければいけないと考えているところであります。先ほども申し上げましたとおり、今後、法科大学院教育の振興を図る、今後も振興を図っていくために新たな評価制度との関係性も考慮しつつ、どのような仕組みとしていくべきか、今後重点的に振興していく取組内容としてどのようなものが考えられるかというようなこと、ぜひ御審議をいただきたく考えてございます。
次のページになりますけれども、(2)地方の司法を支える人材の養成についてというところでございます。地域の自治体や法曹界、産業界との連携、複数の法科大学院との連携等、これまでも様々な取組を進めていただいてございます。これに対応するための更なる方策について、どのようなものが考えられるかということで、論点として挙げさせていただいてございます。若干、補足いたしますと、法科大学院自体というより、その法科大学院に入る入り口サイドと出口サイドの議論があろうかと考えてございます。
入り口とは、すなわち、高等学校から大学、大学院といったような地方や地域の中での学びの場をしっかりと確保していくといったところの論点の重要性も当然あろうかと思いますし、一方で、出口サイドとして、こちらで書かせていただいているような法曹界の方々や、さらには企業の方々や弁護士事務所の方々、今回もメンバーとして御参加いただいてございます法務省の皆様や最高裁の皆様、日弁連関係の皆様等々、そういった出口サイド、社会の側からの御尽力、御協力も賜ることが必要不可欠かと考えているところでございますので、それぞれのお立場、その観点からぜひ建設的な御意見を頂戴できるとありがたいなと思ってございます。
もちろん、法科大学院はあれもこれもできるという組織ではないものということは明確に申し上げておきたいと思いますけれども、いずれにしても、貴重な人材が地域の中で活躍いただけるように、少しでも法科大学院として何ができるのか審議を深められればと考えてございます。
後半に特に御審議いただきたい論点についてということで、(3)と(4)でまとめてございます。(3)のほうは制度改正が行われた後、しっかりと状況を注視すべきという御指摘を踏まえまして、特に前半の地方のほうとも関わりますけれども、法曹コースの運用について、その状況についてぜひそのデータを見ながら御審議いただけるとありがたいと考えているところでございます。まさに地域の学びの場としての法曹コースでありますので、その質の確保や、そこの法曹コースから法科大学院につながる特別選抜の在り方、さらには在学中受験の実施の状況も踏まえて御審議をいただけるとありがたく考えているところです。
(4)につきましては、先ほども御紹介がありました魅力・特色をどうやって伸ばしていくのかというところで書かせていただいてございまして、未修者の教育であるとか、多様な志願者の確保等、こういったところも引き続き重要でありますので、ぜひ建設的な御指摘、御審議をいただければ非常にありがたいかなと考えているものでございます。以上が論点の案ということでお示しをさせていただいているような内容でございます。
続きまして、資料4-1のほうも併せて御紹介をしたく思います。特に緑の枠囲みで記載をされております答申の内容部分、その抜粋について御覧をいただければと思います。本年2月の「知の総和」答申の中で、特に新たな評価制度に関する認証評価制度の見直しということで答申をいただいた内容でございます。下線を引いてあるところを申し上げますと、例えば学部・研究科等に応じた定性的評価を導入するとともに、さらにその教育研究情報に基づく定量的評価を行い、これらに基づき在学中にどれぐらい力を伸ばすことができたのか、そういった大学の教育の質を数段階で示した上で公表など、新たな評価制度へ移行するための制度改正を行うということで御指摘をいただいてございます。
さらには、その新たな評価制度における評価結果の公表であるとか、より分かりやすい形での国民に対してお示しをしていくような仕組みであるとか、さらには評価におけるデータの活用、データベースの整備についても御指摘をいただいている状況でございます。
こうした答申を踏まえまして、まさに御審議が進められているところでありますけれども、169ページであります。法科大学院協会のほうから、先日、6月10日の段階で御意見書ということでいただいた内容になってございますので、こちらも簡単に御紹介をさせていただければと思います。
170ページに行ってもらっていいですか。法科大学院における質の保証・質向上に向けた主な取組ということで、大きく三つにカテゴリー分けして記載をしております。これを一体的にやってきたということが、法科大学院にとっては、非常に一生懸命やってきた内容のポイントとなるかと思います。認証評価につきましては、細目省令等の改正を踏まえまして、明確に厳格な認証評価を行ってきたというところが1つ目の柱。さらに右側、加算プログラムのように予算上のメリハリもしっかりやってきたというようなところが1点。さらにその下でありますけれども、法令改正に伴いまして時間的・経済的な負担軽減を図るような仕組みを作ってきたということ。こういった主な取組が相まって、冒頭申し上げたような現状、志願者数が増えてきているというところ、こういったところにつながってくるのかなと考えている状況でございます。
こういったところをパッケージ的にやってきたことを踏まえて、さらに次のページでありますけれども、今回は新たな評価のほうの話でありますので、認証評価に関して、これまで中央教育審議会のこの法科大学院等特別委員会で指摘されてきた内容についても、改めておさらいをしていきたいと思いますし、こうした方向性をしっかり踏まえた上で新たな評価につなげていきたいなと考えている次第です。具体的な方向性のところを申し上げますけれども、一つ目、形式的な評価のその効率化、非常に細かく例示もいただいておりまして、様式上の工夫であるとか、機関別評価との重複排除みたいなところも御指摘をいただいてございます。
さらに2点目、教育内容・方法等に関する実質的かつ重点的な評価ということで、評価項目によって軽重はあるということで、とても大事になるようなところは、ここですよということも審議会の中でも御指摘を既にいただいている。1から4に挙げているものでありますけれども、御指摘をいただきました。さらに三つ目、過去の評価結果や客観的な指標に基づく評価対象校の重点化ということで、例にありますとおり、質が担保されているようなものについては、優遇といいますか、質問項目・調査項目を精選した、より軽い負担でということであるのですけれども、一方で、課題がある場合の法科大学院については、より重点的に丁寧に評価をしていって、フォローアップなどもしっかりやっていくというような、こういった評価対象校によって取扱いを、軽重をつけるというような方向性があるのではないかという御指摘をいただいたという内容でございます。このようなところが認証評価に関して、法科大学院において、令和2年の段階で御指摘いただいた内容でございます。
さらにその次のページでありますけれども、今回の答申を受けまして法科大学院協会として、では、どういった形で考えていくのか、その基本的な考え方をまとめていただいたものでございます。真ん中から下以降でありますけれども、今回、議論をいただく新たな評価がより効率的・効果的で、大学側が意欲的に取り組むことができる制度設計となることを強く期待するというコメントを頂戴してございます。私もワーキンググループ、フォローアップしておりますけれども、非常に評価の業務が大変だ、忙しいというような御指摘も様々いただいてございますので、そういった業務に見合うより意欲的に取り組んでいくような仕組みが大事だろうという御指摘をいただいてございますし、同時に司法制度改革の理念を踏まえまして、法曹関係者や大学関係者等の外部有識者にしっかり参画いただいて、客観的で公平性・透明性を確保した仕組みが必要である。これは法曹の理念もそうですし、新しい評価でも引き続き重要な理念であろうということで御指摘をいただいている内容でございます。
さらに、その次のページ以降でありますけれども、例えば具体的な論点で、こんなのが挙げられるのではないかということで挙げていただいた内容になってございます。大きく1から6までありますけれども、評価区分の考え方としては、これまでは法科大学院、今まで一生懸命、認証評価等やってきたということもございますので、法科大学院の枠組みというものをしっかり尊重しながら、評価を実施していくべきではないかという御指摘をいただいてございます。
論点2つ目でありますけれども、より柔軟な受審期間の設定ということで、やはりこれも二つ目にありますとおり、課題があると評価された場合には受審期間を短縮化する。これは従来の既に質保証システム部会で指摘されていることですけれども、より受審期間を短縮化し、一方で、すぐれていると評価された場合には、受審期間を延長するなど、より柔軟な受審期間を設定することが考えられないか、検討できないかという御指摘をいただいてございます。
論点3につきましては、データベースを十分に活用いただいて、法科大学院の事務負担の大幅な軽減をしっかりと図っていただきたいという御指摘をいただいてございます。
論点の四つ目でありますけれども、この中で二つ目のダイヤと三つ目のダイヤのところでありますけれども、新たな評価を担う事務体制をどのように整備して、主たる評価者であります大学の教員の皆様を確保するのか、そのリソースをしっかりと十分に確保できるのかについても、やはり丁寧な検討が必要ではないかという御指摘をいただいてございます。三つ目のダイヤのところは、これは法科大学院特有なものでありますけれども、分野別の認証評価機関が三つ存在してございます。ロースクールだけでですね。この点について、評価結果として数段階の評価が行われる場合、これが公平に評価できるのかといったところの十分な検討も必要ではないかという御指摘がございました。
論点の5点目でありますけれども、評価基準・評価項目でありますけれども、高等教育として基盤となる部分と分野固有で求められる部分というものがあるのではないかという御指摘を頂戴してございます。
最後に論点の6でありますけれども、評価結果の活用、その方向性を考えれば、やはり優れた成果を上げた大学への優遇であるとか権限の付与であるとか、一方で、課題のある大学に対しては、より厳しく指導する、より丁寧にということかと思いますけれども、指導していただくというような仕組みで、意欲を持って取り組んでいただくような仕組みとしてはどうかという御指摘をいただいてございます。
なお、この公的支援見直し・加算プログラムがありますので、法科大学院の場合は、この加算プログラムと新たな評価の取扱いについては、慎重に検討していくべきだという形で御指摘をいただいている状況でございます。
こういった御指摘をいただいておりますので、これを受け止めまして法科大学院等特別委員会においても、まさに御審議をより深堀っていけるとありがたいなと考えている次第でございます。すみません、ざーっと申し上げましたけれども、今期の特にポイントとなりそうな資料を御紹介させていただきました。事務局からは以上でございます。ありがとうございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、第13期に審議をすべきであると考えられている事項に関して、先ほど遠藤室長から資料3に基づいて御説明をいただきましたけれども、本日、御出席いただいている各委員より資料の1-2の名簿順に従って御発言をお願いしたいと存じます。御発言に当たっては、今回、初回の会議でございますので、簡単な自己紹介も含めていただければ幸いです。それほどタイトではないと思いますけれども、時間の限定もございますので、お一人当たり、大変恐縮ですけれども、上限二、三分をめどに御発言をいただければと存じます。
なお、本日は石井委員、大貫委員、道上委員が御欠席です。一部の御欠席の委員から御意見を頂戴していますので、リアルの発言が終わりました後、後ほど事務局から代読をお願いしたいと存じます。
それでは、1-2の名簿順ということで、まず佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 よろしくお願いします。名古屋大学の佐久間です。今期で3期目になろうかと思いますが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。さて、この法科大学院等特別委員会は、当然、法科大学院関係の方、あるいは法曹関係者で構成されていると思います。そのような中で、私は、名古屋大学の副総長をやっておりますが、もともとの専門は人文学ですので、法科大学院に直接関わりがあるわけではありません。それなのになぜこの委員になっているのかという話ですが、中央教育審議会には大学院部会というところがございます。私はそちらの委員をやっておりますので、その関係で入っているのではないかと思います。大学院全般のことを考えるのが大学院部会なのですが、法科大学院も大学院の一つですので、その立場から何かしら申し上げられればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
さて、大学院部会でも大学院の課題についていろいろ議論しておりまして、その中には先ほどあった適切な評価の在り方ということもあるわけですけれども、人社系の大学院ということで言えば、なかなか日本人の学生が学部から大学院に進学してくれない、どうしたら良いのかという課題がございます。また、進学してくれたらくれたで、今度は、キャリアパスはどうするのかという問題が出てきます。大学院部会でもそこら辺を議論しているんですけれども、そういった問題に関しては、法科大学院には法曹の養成という明確な目標がありますので、ある意味、恵まれている部分があって、あまり問題にはならないのかもしれません。実際、法科大学院で取り組んでいる法曹コースの3+2については、大学院部会で、進学者の確保に向けた取り組みを行うにあたって参考になるのでは、という話も出ています。もちろん、法曹コースの在り方については、この特別委員会で引き続き検証していく必要があるとは思いますが、人社系大学院の課題を考える上でも法曹コースは重要な取組だと思います。
ただ、一方で、前期の議論にもありましたけれども、法科大学院を修了した後、一部はやっぱり後期課程、博士後期課程に進んでほしいという部分、そこについてはやはりまだ課題がいろいろあろうかと思います。もちろん、全員が進学する必要はないわけですし、後期課程については、大分経済的支援が充実してきたということはあるわけですが、それだけで学生さんが進学してくれるかというと、なかなかそう簡単な話でもありません。学生さんに来てもらいたいなら、やっぱり学びたいと思っていただく必要があると思います。そのためには、直接法科大学院の教育に関わっていない私が言うのは大変僣越ではございますが、法科大学院でどういう教育が提供できるのか、その魅力を高めていくことは、当然のことながら重要だと思いますので、このことについては前期に引き続き議論できればいいなと思っているところでございます。というわけで、簡単ではございますが、以上です。よろしくお願いいたします。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして青竹委員、お願いいたします。
【青竹委員】 大阪大学の青竹と申します。2期目になります。大阪大学ではFD教育企画委員を担当しておりまして、この数年は特に未修者教育の課題に重点的に取り組んでおります。今日も資料を詳細に御提示いただきましたけれども、未修者教育の取組の経過について、留年率とか標準修了年数修了率ですか、こちらもよく大阪大学でも1つの目安といいますか、成果の指標として取り上げ、問題として挙げているんですけれども、ただ、他方では未修者の中には、ゆっくりと時間をかけて取り組む人もいますので、留年率が多少高いということとか、標準修了年数修了率が低いというだけでは、本当の問題とは言えないのではないかと考えております。
重要なのは、やはり最終的に合格できるかどうかということになるかと思いますが、今日の資料の79ページを拝見しますと、平成30年修了者の未修者の修了者で、5年目までに合格できる確率が49.1%にすぎないということで、大きな問題ということで認識しましたけれども、今日、御紹介いただいた資料の令和元年度修了者は56.9%に上昇していますので、未修者教育への対応の成果が出ていると見ることができるのではないかと、そういう印象を持ちました。今後も分析する必要があるかと存じます。未修者教育の充実に関しては、12期でもこれまで各大学での取組が紹介されて、こちらでも検討、議論しましたけれども、解決できる問題でもなく、課題が多いということが分かったというところにいるかと存じますので、今後もこの場でも各大学院での取組について情報交換、活発な意見交換があればと願っております。
それから、重点的に取り上げることとして取り組まれていることではないかもしれませんけれども、グローバル化についても、国際分野についても魅力ある大学院の取組という中では重要かと存じますが、大阪大学では去年からようやく海外のエクスターンシップの授業を新設したところでございます。ようやく新設したのですが、3年生の在学中受験が終わった冬学期に向けての募集だったのですけれども、残念ながら希望者ゼロ、最終的にゼロになってしまいまして、今年度は夏休みも含めて募集したところ、今のところの希望者は11名と増えておりますが、何分初めての試みですので、他大学でどのような海外のエクスターンシップ制度を設けているのか、そういった情報も知りたいところではあります。個人的な興味も含めてということになってしまいますけれども。長くなりまして、申し訳ございません。ぜひ勉強させていただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
石井委員と大貫委員は本日御欠席ということでよろしいですかね。それでは、名簿の順で、次は笠井委員にお願いいたします。
【笠井委員】 京都大学の笠井正俊と申します。法科大学院を含む大学院と法学部の双方で民事訴訟法、倒産処理法等の民事手続法関係の授業を担当しております。また、本年4月から大学院法学研究科長と法学部長をしておりますけれども、この委員会では個人の立場で発言させていただきたいと考えております。この委員会の委員は、今期で3期目になります。その他、法科大学院制度の発足当時から、この委員会の下の幾つかのワーキンググループでの仕事もさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
今期の検討においては、先ほどもお話がありましたように、法科大学院に係る評価制度等が課題の一つとなっております。私は、先ほど法科大学院協会の発表があったとされました教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループの委員も拝命しております。こちらは本年5月から月一、二回のペースで会議が開催されています。そこで、法科大学院の認証評価の在り方については、大学全体の新たな評価の在り方の検討との関係をも考慮しまして、何らかの見直しが必要となるか、また、必要となるのであれば、どのように見直すべきか、そういったことについてこちらの法科大学院等特別委員会での議論から得られた知見を生かして、その新たな評価の在り方ワーキンググループでも意見を述べるなどしていきたいと考えております。また、そちらのワーキンググループでの検討も踏まえて、本特別委員会での議論にも参加していきたいと考えております。さらに、今期の検討における、そのほかの論点も、いずれも重要なものですので、引き続き委員会の場で様々な御意見を伺って、よく考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 おはようございます。私、弁護士の加藤貴子と申します。第一東京弁護士会に所属しておりまして、今年度よりこちらの委員会に参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
自己紹介ですが、私は平成24年に法科大学院の未修コースを修了しまして、その年の司法試験に合格いたしました。未修コースなのですけれども、大学が法学部ですので、純粋未修ではありません。一旦、大学を卒業して社会に出てから法科大学院に入学いたしました。法曹養成の関係に関しましては、弁護士になってから出身の法科大学院で補助講師という学生さんの簡単な質問に答えたりだとか、ゼミを開催したりというようなことをやっておりました。また、3年ほど前までは、司法研修所の民事弁護教官室の所付も務めさせていただいておりました。
法科大学院の出身ということで、ありきたりな法科大学院の感想ではありますが、私が在学していたときにも同級生、先輩、後輩に他学部出身、純粋未修の方ですとか、社会人経験者もある程度いらっしゃいました。私は社会に出てからの入学になりますので、大学からストレートに入ってきた学生さんたちとは大分年齢が離れていました。司法試験に合格するという目的以外にも、普通に社会で生活していればあまりお友達にならないかなというような方々と知り合えたり、一緒に勉強することができたというのは、やはり法科大学院の魅力の一つでもあると思っております。
それから、教員も研究者や実務家の方々から、大学よりも小規模なクラスやゼミなどで講義を受けられるというのも良かったです。実務家になったとしても、理論というのは大事なことだと思いますので、研究者の方のお話を聞けるというのもよかったなと思っております。
今回の委員会の審議に関しては、この各法科大学院の特徴や魅力の更なる慎重ということからしまして、私の一番印象的なところは、加算プログラムの評価対象との関係でも問題になると思うのですが、現在の制度で在学中受験になっていて、先ほど青竹先生からもお話があった秋学期、司法試験が終わった後の講義において司法試験に関わらない内容の授業ですとか、実務との架け橋になるようなという授業を設置することで、各校の特色というか、工夫というところでも出せるところなのではないかと思っております。そういった各校で特色のある授業を受けられるというのが、法科大学院の魅力になってくるのではないかと感じておりますので、法科大学院側だけではなく、学生に対しても有益となる仕組みなどをこれからこちらで検討させていただければと考えております。
こういった委員に参加するのは初めてのことではございますが、皆様の御意見を伺いながら、これまでの経験も踏まえまして検討や議論に参加させていただければと存じます。よろしくお願いします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして北川委員、お願いいたします。
【北川委員】 ありがとうございます。早稲田大学の北川と申します。どうぞよろしくお願いします。私は早稲田大学のロースクールと法学部でも教えており、法曹コースの科目も担当したりしております。私も3期か4期、ちょっと古株になってきた部類なのですけれども、まだまだ未熟なところがあります。特にこの委員会では皆様のそれぞれの立場からのご意見や各法科大学院の取り組みや特色の御紹介をいただいて勉強させていただく機会となっています。
ちょうど私がこの委員を拝命した頃から、法科大学院の改革では法曹コースの開設、それに伴う入試制度改革があり、在学受験がありということで慌ただしい状況の中で現場を過ごしてまいりました。この委員会でも新制度に伴う現場の悲鳴というか、こういう問題があるみたいなことを指摘させていただいたことがありましたけれども、今般、そうした改革が年度を追って進んできて、どういう状況が出てきているのかというエビデンスもしっかりとっていきながら動向を見極めていきたいという事務局の適切なご認識の基で、さらに充実した制度の運用を目指すということが今回いただいた資料に書かれてございましたので、現場の状況もすくい上げながら、何かいい提言に進むことができるよう、意見を述べさせていただければと望んでおります。
事務局から本日第13期の審議に関する主な論点についての案というものを頂戴しておりますけれども、非常に分かりやすく、コンパクトにおまとめいただきまして全く異存のないところでございますが、その後半部分で特に議論いただきたい論点というふうに書かれてありますところの、法曹コースの運用については、より一層の検討、改善の余地があると思っております。特にここにも書かれておりますけれども、複数の連携協定を提携している法曹コース及び特別開放型選抜の実施の点については、現場は結構苦慮してきたところかと思っております。だんだん落ち着いてきてはいるのかもしれませんけれども、まだまだ問題があり、法曹コースの教育の質保証の点も含めまして議論を重ねなければいけないところかと思っております。
次に、順序は逆になりましたけれども、前半で特に議論いただきたい論点ということで頂戴しております中で、本日一言申し上げておきたいのは、法科大学院に係る認証評価制度の在り方ということについての改善方向に向けての取組ということでございます。先ほども事務局から御説明をいただきましたけれども、審査する側、そして受審校もそうなのですけれども事務作業の負担無駄を省き、しらみ潰しの形式的な審査ではなく、重点、実質的な評価をきちんとやる、メリハリ評価が重要であると思っております。客観的なエビデンスに従って公平・公正に審査するのが認証評価のつとめなのだということも分かっておりますが、実際に認証評価で審査する側を担当してみますと、ロースクールの実情に併せて個別的な審査の必要性というのも実感しております。特に大規模校はともかく、地方の小規模校にはとても頑張っているにもかかわらず、形式的な指標からすれば、例えば、なかなか司法試験の合格率につながらないけれども、非常に個別、魅力のある取組をされていて頑張っている法科大学院があります。そういうところはしっかりと積極的評価できるような評価の在り方が望まれてよいと思います。地方に根差す法曹を頑張って生み出そうとしているロースクールの在り方にも光を当てながらの評価ということもあっていいのかなと思ってございます。少し個別な意見を申し上げましたけれども、今後とも引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして久保野委員、お願いいたします。
【久保野委員】 ありがとうございます。東北大学の久保野恵美子と申します。よろしくお願いいたします。この委員会は4期目の参加となっております。東北大学では学部と法科大学院の両方におきまして民法を長らく教えております。また、昨年度から法学部・法学研究科の科長を拝命しておりますけれども、笠井先生のおっしゃったことと同じように、この会議では、所属の代表とは異なる立場として参加しております。13期の審議に関しまして論点の案をおまとめいただきまして、私も、いずれもこれらを重点的に議論することには意義があるものと思っております。
それで、4点ほど簡単にお話させていただきます。一つ目の認証評価につきましては、法科大学院協会からの御意見の中にもありましたけれども、評価者が法科大学院の研究者教員が務めている場合が多いということですから、この問題は、法科大学院の研究者教員の業務負担の多寡に関わるものであり、最後に掲げられております研究者の養成・確保とも深い関わりがあると思っております。この観点からも、評価の軽量化、合理化ということは重要なのではないかと思います。
次に(2)の地方の司法を支える人材につきましては、東北大学におりますと、地方大学、つまり、法科大学院のない地域の学部との連携、協定、そして入試における地方枠の働きや成果ということが気になっており、東北大学にいる一教員の印象からしますと、数は多くないわけですが、比較的うまく機能しているのではないかという印象を持ちます。それらについて、より広く調査等を検討していけるとよろしいのではないかと感じます。ただ、他方で出口につきまして、地方への定着につながっているかということは、恐らく大きな課題があるのだと思いますので、こちらは先ほどお話もありましたように、出口サイドの側の方々との対話等も通じて議論していけるとよろしいかなと思います。
最後の研究者の養成・確保についてなのですけれども、本当に重要な問題だと感じておりまして、法科大学院教育、法科大学院の制度は安定し、特色を出そうとしている状況の中で、それを支える教員が、実は本当に足りないのではないかという危機感が前期の議論時から共有されているように思っております。この問題は、取り上げ方として項目として1個立ててもよいぐらいの重さではないかと思っております。また、今後の議論の中で、法科大学院を出て研究者になっている方のデータですとか、どういうルートがうまく機能しているかという辺りの実情を広くこの期に捉えることができるとよいと思います。好事例などを見ながら議論を重ねていきたいと思います。
なお、博士課程との接続だけではなく、一旦、実務に出られてから、出た方か戻ってくるようなプロセスにつきましても注目していってよろしいのではないかなと思います。
最後に、修了生の追跡ということが大事だと思うのですけれども、いずれの論点につきましても、修了生の御意見等を伺って制度改善等に生かしていくということをより一層進めていけると有益なのではないかと思います。
まとまりのないコメントになりましたけれども、自大学の経験も踏まえつつ、より広い視点から好事例などを御教示いただきながら、検討に参加してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして宍戸委員、お願いいたします。
【宍戸委員】 東京大学の宍戸と申します。ありがとうございます。私は憲法、情報法の教育研究に携わっております。それから、昨年度は1年間、私が勤めております東京大学の法学政治学研究科法曹養成専攻長、いわゆる法科大学院長を1年間務めておりましたが、現在は平でございます。その意味で、個人的に現場の教員として意見を申し上げていきたいと思います。この委員会は今期からで初めてでございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
資料3にお示しいただいている主な論点については、違和感ございません。意見を若干簡潔に申し上げたいと思います。まず第1に評価制度についてですけれども、これまでも先生方がおっしゃってきたことですが、現場の教員もしくは受審の責任者としての負担感は、相当なものがあると感じております。他の評価、加算における審査等の重複感もございますし、それから、実際に基準自体は非常に柔軟化してきたということもあるとは思いますが、やはり現実の審査の現場におきましては、審査の公平性を担保する意識が強いのか、審査に当たられる方、受審側、いずれにおいても非常に形式的な行動態度がなお強いように思われるところであります。
実際に各法科大学院は、質保証のための様々な取組をしておりまして、例えば3+2に関連して言いますと、連携協議会から外部の御意見を聞くとか、あるいは重点的な取組については、通常の審査委員の方だけではなくて、その取組について専門的な知見を有する方のコメントをいただくなど、より合理的で効率的な評価の在り方を模索してよいのではないかと私自身は考えております。振り返ってみますと、法科大学院の認証評価は、法科大学院への参入をできるだけ広げた上で、法科大学院の質を保証し、場合によっては退出を促すといった機能があったように思われますけれども、現在の法科大学院の状況を鑑みますと、そのようなことよりも、全体として大学院、あるいは広く法学教育、法曹養成の質を上げていくという観点から、決して画一的な公平性でない認証評価の在り方を議論させていただければと思っております。
残り2点、簡潔に申し上げたいと思います。一つは、いわゆる3+2等のコース等の、新たな法曹養成の仕組みに関する評価ですが、私の個人的な感覚では、本法科大学院におきましては、先ほどもお話がありましたAセメスターを有効に学生たちも活用していると申しますか、例えばリサーチペーパーを書くとか、留学に行く等の様々な取組ができているかなと思っております。1点、むしろ、出口ではなく入り口との関係で気になっておりますのは、法曹コースを作りはしたものの、法学部生が連携先の法科大学院の授業をいわば聴講したり、履修したりすることについては、ハードルが依然としてあるということでございます。
これは、一つには先ほどの認証評価にも関わりますけれども、法科大学院の授業の双方向性を担保する観点から、履修者の数を限定しなければいけないということがあり、その結果として法科大学院の学生がどれぐらい履修するか分からないので、その法学部生の履修もあらかじめ枠を取っておくことができないとか、いろいろな事情があることによるものだと思いますが、この辺りの柔軟化によって、3+2のメリットを生かす。そのことは法学部段階では十分に学習できないような先端的、展開的科目や理論的な科目で、法科大学院で開放されているものを早期に履修し、研究者養成を法科大学院を通じて高めていくということにもつながるものと考えております。
最後、加算プログラム等々の見直しということでございますけれども、これについては法科大学院の修了生の方々が法科大学院をどう思っているか、あるいは法曹の方々が法科大学院に対して、現在の法曹のニーズとの関係で、こういう教育をしたほうがいいのではないかとか、あるいは、クライアントである企業等から見て、社会の現状、例えばDXとかGXとかとの関係で、こういった基礎的なことを法曹には勉強してきてほしいとかいったニーズとしてどういうことがあるか。
これまでも地域の司法の人口の確保であるとか、未修者のてこ入れといったことがありましたけれども、そういったことを各法科大学院で重点的に行えるよう、また、各法科大学院が目いっぱい頑張ると部分最適になるけれども、全体最適にならないということもあると思いますので、法科大学院制度全体として全体最適になるように各法科大学院がそれぞれメリハリをつけて行うのだけれども、例えばこういった場で、あるいは文科省において、法科大学院制度全体をまとめられる機能、今、ここが足りないからここについては手を挙げていただく法科大学院をそちらに誘導するとか支援するとかいったことができるといいのではないかと考えております。長くなりましたが、私からは以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 ありがとうございます。一橋大学の髙橋と申します。商法分野を専門としておりまして、法科大学院と法学部の双方で講義を担当しております。前期に続きまして委員を務めさせていただきます。学生に近いところに身を置いております末端の一教員といたしまして、今期も色々と学ばせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
事務局におかれましては、第13期の審議の論点をおまとめいただきまして、誠にありがとうございました。重要な課題はほぼ網羅されており、また、既に複数の委員からも追加の論点を御指摘いただいていると認識しておりますので、認証評価をはじめ挙げられている個別の課題については、その都度検討させていただきたいと存じておりますが、ここでは(3)の四つ目の在学中受験に関連いたしまして、少し細かいところですけれども、1点意見を述べさせていただければと存じております。
在学中受験の導入を受けまして、多くの法科大学院がカリキュラム改革を行って、前期もこの改革後のカリキュラムと、特に司法修習との連携について御紹介をいただいたところであったと存じます。合格者のその後の教育、あるいは事務局から先ほど御説明があった法曹コースへの影響といったことも重要な課題ではあると認識しておりますが、同時に惜しくも合格に至らなかった方についてのフォローアップに関する知見の共有をそろそろ始めていくという必要性もあるのではないかと思っております。
特に修了後の司法試験受験が原則であった従来に比べまして、同じキャンパスの中に合格者、不合格者、受験をしなかった方が混在して学ぶという状況になっておりますので、特に一部の不合格者にとっては、モチベーションの維持が非常に厳しいのではないかという懸念がございます。また、教育の内容という以外にも、法科大学院全体として、広く学生への接し方について、かなりデリケートな問題が生じていまして、例えば統計データを収集するに当たって、学生に合否その他の状況を尋ねるというのも非常に気を使うところがありますし、あるいは教室の中で修習であるとか就職活動の話題を出すという際に、教職員がかなり神経を使うというようなことが現実に発生しているのではないかと認識しております。
こうした点は、各法科大学院で、もう既に課題になっていると思われまして、既にその対策を始めておられるところもあるのではないかと思います。そうした知見は可能な限り共有して、各法科大学院の工夫に役立てることが適切ではないかと思っております。この点もご検討頂ければ幸いでございます。今期もどうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
今期は田村委員がお二人いらっしゃるのですが、まず田村智幸委員、お願いいたします。
【田村(智)委員】 ありがとうございます。札幌で36年目の弁護士をしております田村智幸でございます。私は北海道大学の法科大学院の開設時ですので、もう20年ぐらい前になりますが、実務家教員としてローヤリング、いわゆる弁護士学を教えたという経過がございました。また、8年前、日弁連の執行部で今の渕上玲子会長と一緒に法曹養成を担当しておりました。さらにその後、強化・加算プログラムの委員を務め、あるいは日弁連の法科大学院センターで委員長を務めたという経過にございます。今期が2期目の委員でございます。
弁護士会、全国に52の単位会がございますが、小規模会をはじめとして実は多くの地方会で新規登録者が減少しております。長期間、新規登録者がいないという弁護士会も多数ありまして、一つ前の76期、昨年の司法修習修了者の登録状況ですが、一斉登録の時点で新規登録者がゼロ、あるいは1名という弁護士会が52分の25ある状況になります。私の所属する札幌弁護士会でも新規登録者が減少しているという状況がありまして、こうした担い手の減少というのは、地域の司法アクセスへの機会の減少に直結しますので、東京や大阪といった大都市への集中ということは、私自身は非常に大きな問題であると思っています。この間、関係者の方々のたゆみない努力で法曹志願者や入学者が回復してきてはいますが、地方の司法を支える人材の養成、この委員会でしっかりと取り組み、方策、制度を考えていく必要があると思っております。
それで、今期の論点についてですが、私もこの資料3にある論点について異存はございません。そのうち、質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキングの議論のピッチが、非常に速いと聞いておりまして、我々が今期前半で取り組む認証評価についても、いろいろ早めに考えないといけないことがあると思っています。少し感じていますのは、質保証ワーキングでは、質の向上のみならず、いわゆる規模の適正化をかなり意識しながら、新しい評価制度が議論されているように私には感じられます。これがいいことか、どうなのかということは別として、その一方で、私たち法科大学院では、早くから質の向上ですとか、あるいは規模の適正化のことについては、この20年間ずっと取り組んできたという歴史がございますので、この法科大学院において行われる新しい評価制度の目的や意義をどこに求めるのか、見いだすのか、そこは明確に整理をしておく必要がまず大前提として必要なのではないかと思っています。
また、ロースクールでは、この10年間にわたってメリハリある予算配分を実現してきた強化・加算プログラムにおいても、認証評価とある意味同様の内部の質保証すなわち、組織の自己点検の方法を通じてPDCAを回すということをやってきていますので、評価項目や評価の手法、活用の仕方についても、強化・加算プログラムとのすみ分けをきちっと考えて制度を設計していかないと、評価疲れが言われる中では、関係者の方に受入れられにくいのではないかなと感じています。
それと、大本の知の総和答申との関係ですが、冒頭に局長からも御紹介がありました高等教育施策の目的として、質の向上と規模の適正化のほかにもう一つ、アクセスの確保ということが大事な三つ目ということで指摘をされています。このアクセスの確保には、地理と社会経済という二つの側面がございますが、地理的観点でのアクセスの確保を考えたときは、私のいる地方における関係団体や関係機関との連携、あるいは都市と地方をどうやってつなぐのか、そういった動きを促進させる取組や施策、そうした状況を踏まえて地方の司法を支える人材の観点ということを新しい評価制度の重要な目的や意義として位置づけるということは、私は十分あり得ることなのではないかなと思っています。それは、法の支配を全国津々浦々に行き渡らせるという司法制度改革の原点にもつながることだと思うからでございます。
こうした新しい評価制度の評価項目や評価の手法を考える際にも、数値化、あるいは物差し化によっては、測られにくい優れた取組があるということは、私たちのこの委員会で過去たくさんの法科大学院での優れた取組例の報告を聞いていたことからも明らかだと思っています。ですので、私は社会への説明責任の側面を持つ、この認証評価において、数値化して定量評価できるものと定性評価がふさわしいものもあると思っています。私たちは法科大学院、専門職大学院ですので、あまり4年制大学に比較した議論をするのは、ふさわしくないことは承知の上で、あえて言いますが、今の大学では、もちろん学力もそうですけれども、コンピテンシー、メタ認知とか非認知、成長志向のマインドセット、こういったものをどうやって定性的に評価していくかということが、恐らく社会から求められていて、そのことがワーキングでも議論の背景にあるのではないかなと思っています。
同様に、実は私たちの専門職大学院でも、共感力ですとか、あるいはマインド、こういった学力ではなかなか測れないことが、私のような実務家においては重要な資質だと思っていますので、そういった観点で何か取組とか対策を評価、支援することができないのかなと思っています。
長くなりましたが、もう1点だけ、未修者教育の関係でございます。すみません。今期の論点で、後半で議論される未修教育に関してですが、皆様、御承知のとおり、共通到達度確認試験は、これが本格実施からもう5年を経て非常に定着してきている状況にございます。これは平成27年の政府の法曹養成制度改革推進会議決定でも指摘をされてから10年、大学で今、積極的に活用されているというふうに理解をしていますが、私もこの本格実施の前に日弁連の執行部としていろいろな関係機関と協議させていただいて、これは非常に重要だから何とか本格実施につなげたいということを解いて回ったということを思い出すところであります。
ただ、その一方で、在り方とか試験の方法、実施主体、それから、財政的な課題、いろいろ検討を要することが様々あると思っています。財政面では、現在、日弁連も財政支援に関わっているところですが、本来、制度ですので、これはちゃんと自走していただかないといけないのかなと思っておりますので、指摘をさせていただきました。
すみません、長くなりましたが、以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして田村伸子委員、お願いいたします。
【田村(伸)委員】 皆様、こんにちは。創価大学の田村伸子と申します。今期から新任ということですので、まず初めに簡単に自己紹介させていただければと思います。私は、もともと弁護士をやっておりまして、いわゆるマチ弁ということで数年間、弁護士業務をさせていただいておりました。育児中に法科大学院がちょうど設立をされまして、最初は法科大学院要件事実教育研究所というところに参りまして、法科大学院に携わることとなりました。その後、初めは実務家教員ということで専任講師になりまして、その後、学位を取得しまして現在は研究者教員ということで、法科大学院と学部の方で民法、要件事実等を教えております。昨年度から創価大学法科大学院の研究科長を仰せつかりまして、研究科長をさせていただいております。本校の教員で、前期まで委員を務められていた加賀譲治先生は、私の前の前の研究科長になりますけれども、小規模法科大学院の立場で様々意見を述べさせていただければありがたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
若干意見を述べさせていただければと思います。まず最初に新しい評価制度ということに関しまして、今まで認証評価を受けていた身としては、やはり事務室も含めて非常に負担が多いということは御指摘のとおりだと思っております。よい評価が出れば、それこそ次の認証評価までは、ある程度、5年とは言わず、7年8年、あるいは10年ぐらい期間を置いていただく、そういう形にしていただければ非常にありがたいと思っている次第です。また、法科大学院が設立されて、もう20年たちますので、例えば当初は研究者と実務家教員との協同とか、あるいは理論と実務の架橋ということが非常に重要なテーマであったかと思いますけれども、20年たってみると、その辺りに関しては、そんなに強調しなくてもいいのではないかとか、あるいは教育内容等については、ある程度の裁量を法科大学院に認めるべきところは認めていいのではないか。あまり重箱の隅を突つくような認証評価というのは、なるべく避けていただきたいなというのが正直な感想というところでございます。
それから、加算プログラムに関してということなのですけれども、私自身がいつも感じておりましたのは、基礎部分なのですけれども、やはり司法試験の合格率ということが非常に大きく評価されているのではないかなと思っておりまして、そうすると、それに加算される部分、加算率のところの、例えば法曹コースとの連携ですとか未修者教育の充実とか、女性法曹とかいろいろありますけれども、その辺りも結局は司法試験の合格者輩出に向けたものであって、重複して評価されているような感じがしていたということであります。
加算プログラムを教員の立場で考えてきた自分の今までの自戒の意味も込めましてということなのですけれども、その辺りは、もう少し学校の例えば学生の成長をどう評価するとか、もう少し修了生の活躍をどういうふうに評価するかといった裾野を広げていく、そういうことが大事なのかなという感想を持っているという次第でございます。特に小規模校ですと、一人合格者が増えたか、減ったかということで、やはり合格率というのは非常に変わってきます。その辺りは予算によって司法試験の合格者を出すのだというプレッシャーが非常に大きいといいますか、かけられているという感じがしておりますので、その辺りの感想を述べさせていただきました。
それから、最後になりますけれども、地方の司法を支える人材育成、あるいは未修者教育とか、多様な人材の確保というところにも関連してくるかもしれませんけれど、学生の立場からすると、地方から法科大学院に入学し、合格した後に地元に戻りたいというときに、今の仕事を捨ててとか、自分が今住んでいる住居を離れて、家族とも離れて法科大学院に入学するというのは、非常にハードルが高いのではないかと感じております。そうするとオンラインとか、あるいは通信教育みたいな形で、何かしら法科大学院の未修コースのお試しコースみたいなものを考えることができないのかということは思っているところであります。未修者として入学してしまうと、法科大学院としては進級率が問題とされてしまうというような形になってしまいますので、例えば正式な入学者ということではなくて、オンライン等を活用して科目履修などを活用できないかと。ある程度の単位数に関しては入学後に単位取得を認めるというような、そういう制度がもし可能であれば良いのではないかと思っております。
社会人や非法学部の方に関しては、最初から法科大学院を目指すというよりは、予備試験にというような風潮もなきにしもあらずなのかなと感じておりまして、その辺りを法科大学院として何か手当ができればいいなと思っているところでございます。なかなか制度上、厳しいということは私自身も思っておりますので、問題提起という形で勝手ながら述べさせていただきました。新任ということで、いろいろ分からないこともありますけれども、先生方に教わりながら、携わらせていただきたいと思いますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、土井座長代理、お願いいたします。
【土井座長代理】 京都大学で憲法を専攻しております土井でございます。よろしくお願いいたします。今期の審議事項につきまして、私から意見を申し上げます。先ほど遠藤室長から御報告いただきましたように、司法試験の累積合格率など法科大学院の教育に関するKPIが順調に達成されていますし、また、令和7年度法科大学院入試の志願者数が最も少なかった年と比較してほぼ倍増し、志願倍率が7倍に達しているということは、かつて当委員会で競争倍率2倍の確保を打ち出していたことを思い起こしますと、大変よい状況になっていると思います。このような状況を踏まえますと、今期の委員会において第一に法曹コース及び在学中受験の動向について、いましばらく注視しつつも、制度を持続的に安定させるための措置を講じていく必要があろうかと思います。
令和6年度末の法科大学院修了者数が1,583名ということですので、法曹を安定的に輩出するためには、今後、これを大きく下回ることがないようにしなければならないと思います。そのためには、法曹にとって必要な基本的能力の育成について底上げを図り、法科大学院間での格差を縮小する方向で施策を講じていく必要があり、法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムにつきましても、そのような方向で仕組みの見直しを図るべきではないかと思っております。また、法科大学院教育を引き継ぎ、発展させる優れた担い手をどのように確保していくかも持続可能性の観点から重要な検討事項になると思っております。
次に、第二には法曹に対する社会の多様なニーズに応える教育を提供できるように、制度の更なる発展を図るための取組を行う必要があると考えております。その際には、新たに意欲的な教育的取組を行っていくことが可能となるような、人的体制とそれを支える財政的基盤が必要になってまいります。そうした後方支援を十分に行わず、このまま現場に多くの負担を課していくことになりますと、いずれ破綻を迎えかねません。これは法科大学院だけの問題ではなくて、高等教育全体の在り方に関わる問題かと思いますので、より広い視野から方向性を議論できればと思います。
次に、資料3の論点案で示されていますように、地方の司法を支える人材の養成のように、法科大学院における教育の内容、方法の改善だけでは対応できない課題もございます。地方の司法を支える人材の養成は、法曹の皆さん方はもちろん、それのみならず、地方自治体や産業界とも連携して、地域の法曹の在り方、職域拡大を含め、法曹全体に対するニーズの状況、それから、法曹の就職、転職の動向など、データや情報を踏まえて適切な施策を講じていく必要があろうかと思います。
かつて法科大学院を取り巻く状況が厳しかったときには、このような各種のデータ、情報が収集、提供されてきたのですけれども、最近はあまり目にしなくなってきております。便りがないのは、よい便りということなのかもしれませんけれども、将来を見据えて制度が正の循環をたどるようにするためには、関係機関との連携、協力を強化して、基礎となるデータ等を恒常的に収集し、それに基づいて、全体として適切な施策を検討することが重要になるのではないかと思っております。
私からは以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして富所委員、お願いいたします。
【富所委員】 読売新聞の富所と申します。現在、論説委員会という部署で社説やコラムの執筆に携わっています。過去には司法制度改革の取材に携わりまして、法科大学院については74校が開校した20年前に現場で記事を書いていました。本委員会は、10期の終盤から参加させてもらっていますので、3期目か、4期目かということになります。この中では数少ない法学部以外の出身者ですが、よろしくお願いいたします。
法科大学院制度は、紆余曲折ありましたけれども、在学中受験が定着しつつあり、情勢もようやく安定してきたと感じています。一方で、学生は在学中の司法試験受験に加えて、予備試験を受けているケースも多いため、常に試験準備に追われ、なかなか授業に身が入らない状況もあるとも伺っています。教育は、いつも理想と現実の狭間で揺れていますし、学生の最終目標が司法試験に合格することである以上、こういう傾向は、ある程度やむを得ないのかなと思っていますが、「合格率」と「目指すべき教育」の実現という、このバランスをどう取るのか、どう二兎を追っていくのかというところを改革から20年が経過した今、改めて振り返ってみなければいけないのではないかと思っています。こうした考え方は、大学の評価の視点にも影響してくると思っています。
その認証評価の問題については、法科大学院側から「評価疲れ」という声が随分出ていますので、負担の軽減というのは必要だと思いますし、学生の声や満足度を評価に反映すべきだという意見もあろうかと思います。最終的には、評価の結果が入学先を選ぶ際の指標になっていくような発表の方法とか、そういうことも含めて十分な改善が必要なのだろうと思います。
最後に1点ですが、新規加入がゼロの単位弁護士会がかなり多いと言われておりまして、弁護士の「地域偏在」というのは、これは医療も同じような状況にあるのですが、深刻な問題だと思っています。法科大学院として、この問題とどう向き合うのか、どうしていけばいいのかというところも論点になると思っておりますので、本委員会では、そうした点についても議論を深めていければと思っております。以上、よろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして中川委員、お願いいたします。
【中川委員】 中川です。神戸大学で行政法を担当しております。私はこの特別委員会は4期目でしょうか、数年前から務めさせていただいております。法科大学院制度については、制度が始まる前から文科省及び法務省からいろいろな仕事をさせられておりまして、法科大学院制度が始まった当時の大混乱を本当に今でもまざまざと覚えております。
ですので、今回、事務局から報告がございました入学倍率であるとか、司法試験の合格率、これがやっと設立当初想定していたものに戻ってきたというところは非常に感ひとしおです。当時、文科省が法科大学院の設置認可を絞ってはいけないという非常に強い圧力がございまして、手を挙げた大学はみんな法科大学院を設置できるということになった結果、認証評価でうまく絞ることもできずという状態がしばらく続きました。結局、20年かかってやっと法科大学院制度が安定したのかなというところは、非常に貴重な経験であったと思います。ほかの教育分野でもぜひ参照していただきたい経験だったかと思います。
今期の論点について幾つかコメントいたします。
一点目は,認証評価です。先ほど申し上げたこととも関係するのですが、私は認証評価につきましては、学位授与機構のほうで、これも始まった当初から、つまり20年以上前からずっと委員を務めておりまして、現在では一番古株になっております。20年以上やった結果、私の正直な感想は、やっぱり認証評価というのは本当に期待してはいけない。外部の方は物すごく期待されるんですけれども、実際には物すごく難しいんですね。やられているほうからすると、これを出すことに何の意味があるのか分からないという資料を延々作らされる。たとえばある作業を文書化していないから文書化しろと認証評価側は言うんですけれども、受審側からすると何でこれを文書化する必要があるのか、なぜこんなデータを取る必要があるのかも分からない。けれども、一生懸命調べて出さなければいけないという作業を延々と繰り返しているんです。
なぜそれが起きるかというと、評価をする側の特に事務職員は教育をやっている人ではない。それから、委員の中にも教員ではない第三者がいらっしゃいます。みんなに分かるような非常に分かりやすい資料は、結局は文書でなければいけない、データとして数値がなければいけないということになる。そこで役に立つかどうか分からないけれども、とにかく作れと。認証評価するほうは、非常に真面目にそれをやる。本当に誠心誠意やっているんですが、やればやるほど受審者側は、もう怨嗟の声しか出てこない。何でこんな文書を作ることに意味があるのかと。
二点目は、先ほど社会は定性的評価を求めているというふうなお声がありましたが、私は,恐らく求めていないと思います。認証評価をどれだけやっても誰も見てくれない。学生は結局、定量的、つまり司法試験合格率か何%か、何人合格かしか見ない。それが一番重要な評価で、学生からみるとそれ以外に評価の軸はやっぱりないんですね。消費者からみた評価軸はそれしかないのですね。また、定性的評価がそもそも可能かという問題もあるんです。教育学の先生たちと,法科大学院制度始まった当初に相当議論をして分かってきたのは、こういう定性的評価は、あるいはそもそも認証評価そのものが,根本は自己評価でありまして、そもそも改善をする気がある先生でないと生かせない。外部からはやっぱりよく分からないんです。
このあたりは医療と似ておりまして、各大学、あるいは各学生の個性はすごく多様です。同じ定量的なデータであっても、意味するものが全部違う。その違いが分かるのは、もうそこの人にしかない。教育の改善もそういう個別性、実質性というのが非常に強くて、したがって、同じ基準で全ての大学を評価しようとすると、結局、よく分からないデータをひたすら作って、何か認証評価してもらったけれども、別に受審側の役に立つわけでもない。評価対応にかけたこの時間は何だったんだということが続くわけなんですね。なので、やはり認証評価については、安易な期待をしないで、本当に慎重に導入するということが必要だと思います。そのためには認証評価の目的をはっきりさせるということが大切です。現在の法科大学院の認証評価制度は、目的を問題校に絞るというふうに数年前から限定したんですね。
それに対して、先ほどあった中教審で新しく始まろうとしている大学全体に対する新たな評価制度の目的を見るとやっぱり総花的なんですね。何もかも評価しようとしている。留学生にも、それから、日本の学生にもみんなに役に立つ評価をしたいようです。しかしそんなものができるはずがないというのが法科大学院での認証評価制度から得られた経験です。そんなバラ色なことができるのだったら、とうの昔に我々もやっています。けれども、やっぱりできないんです。20年やっても分からない、方法が。しかも、法科大学院という非常に狭い教育分野に限定した認証評価制度であってもそれができない。それを様々な領域横断的な学部もある全部の大学でできるのかというのは、本当に心配でしようがないというところです。法科大学院での認証評価の20年の歴史をぜひこれは中教審全体についてもよく利用していただきたいと思います。決して安易に期待していただきたくないというのが現場での非常に正直な感想です。
もう1点は、加算プログラムです。加算プログラムの役割は、2種類あると思います。一つは法科大学院の本来の機能を強化するという部分。もう一つは、法科大学院から、いわばあふれ出た、法科大学院の関係はするんだけれども、そこからほかの教育機関、つまり法学研究科とリンクしてやらなければいけない部分の強化,という2種類があると思います。後者は法科大学院のコアのミッションではありません。前者がコアのミッションです。コアのミッションに関しては、神戸大学の場合は海外エクスターンシップであるとか、企業内法務の教育であるとか、あるいは未修者教育、この3本柱で非常に長くやっておりまして、正直もうやり尽くした感がございます。これ以上、開発しようがないというところまでやったという実感があります。
ですので、今、私たちがやるべきだと思っているのは、法科大学院からはみ出たところです。一つは弁護士のリカレントです。やはり法科大学院で習うのは本当に基礎科目、基礎力をつけるというところです。ここが一番、実務から求められているところです。ここはしっかりやっているんですが、法科大学院を出た後10年たつと、やはり聞いたことのない法律がどんどん出てきます。特にここ最近、この5年は非常に激しく動いておりますけれども、そういった大きな変動を孕む法制について、ほかの弁護士、あるいは教員たちが何を考えているのかということを一緒に学ぶようなリカレント教育が必要である。これは法科大学院がする教育ではなく,法科大学院卒業生が大学に戻ってきて恐らく法学研究科が受け皿になるわけです。将来的にそこにつながるような教育を法科大学院でやる。しかし、教育を提供する主体は法学研究科であるというのがリカレントだと思います。
それからもう一つは、先ほど久保野委員がおっしゃいましたように、研究者養成です。法科大学院は若手教員が本当にいない状況です。跡継ぎがいないのですね。そのため今は、大学間で結構な年齢の教員を奪い合っている状態です。有望な若手を奪い合うなら分かるんですけれども、中堅を奪い合うしか、もう人がいない。若手がいないので、そういう泥仕合状態です。法科大学院を出て後期課程に行って研究者を養成するとき、これも法学研究科の後期課程ということになります。ここに経済的に助成するだけでも、かなり状況は改善される。一部の大学ではちゃんと経済的手当ができているんですけれども、全般的には少ない。こういったことも加算プログラムで対応できるようにしていただけないか。法科大学院がメインの教育ではないのですけれども、法科大学院でできない、しかし、法科大学院の修了生にとって必要なリカレント教育と、それから、法科大学院に必要な研究者教員の養成、このふたつを加算プログラムの対象としてはいかがかなと思います。
その関係で、すみません、最後に一言だけ。先ほど久保野委員がおっしゃった資料の166ページですか、後半で議論する(4)の最後の丸です。研究者教員については、もう一つ項目を作ってもいいのではないかというふうにおっしゃいました。私も同じ意見です。例えば(5)という新項目を建てる形ですか。法科大学院そのものが教育の場ではないのだけれども、法科大学院を、先ほど土井委員がおっしゃった継続を可能にするため、持続可能にするためには、法学研究科とコラボとしなきゃいけない。それが一つは研究者の養成であり、もう一つがリカレントであるという形で、(5)という項目を新たに作るのも確かにアイディアだなと先ほどの御発言を聞きながら思いましたので、私からも発言をしたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして早渕委員、お願いいたします。
【早渕委員】 法務省司法法制部司法法制課長の早渕と申します。私どもは司法試験制度等を所管している立場から、法曹養成の一翼を担うということでこの会議に参加をさせていただいております。私個人のことで申し上げれば、前期の途中から引き続き参加させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
今期の主な論点案について特に異存はございません。その中で特に関心を持っているところとしては、地方の司法人材の点がございます。この点について、我が国は、現在かなり大きな社会構造の変化に直面しているとも言われているところでございまして、政府全体として地方創生2.0の基本構想が閣議決定されたと承知しているところでございます。
その中で、この地方の司法人材という点についても、一方では田村智幸先生からの御発言のように、私どもとしても必要とする方に必要とする法的支援が届かないという社会であってはならないという思いを強く持っております。他方で、土井先生から先ほど御指摘がございましたように、人口が減ると法的需要も減るのではないかという見方もあろうかと思いますので、やはり現状把握をしっかりしていくことが必要になるのではないかと思っております。いずれにしても、この委員会での先生方の御意見等も伺いながら、法務省としても何ができるかということを考えてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして前田委員、お願いいたします。
【前田委員】 東京大学で知的財産法を担当しております前田と申します。今期で2期目になりまして、前期から引き続いて委員を務めることになりました。本年の4月に神戸大学から東京大学に所属が変わりましたけれども、引き続きよろしくお願いいたします。
私自身、法科大学院の未修者コースを1期で卒業しておりまして、理科系の学部から法科大学院に入学したという経歴を持っております。そういった学生としての経験と、それから、複数の法科大学院で教育に携わった経験を生かして、本委員会の審議に少しでも貢献できればと考えております。
それで、今期に議題に上がっている点について幾つか所感を申し上げたいと思います。まず、法科大学院の評価制度に関してです。私が理解するところ、評価制度の目的というのは、理念的に考えると、学生もしくは社会から求められる教育の最低限の質を担保するということと、学生が法科大学院を選択する上で必要な情報を整理し、公開させるということにあるのかと思っております。現実にそういう機能を果たしているかはともかく、理念的にはそういうことになるのだろうと考えております。加算プログラムというものもございますけれども、それは以上の機能に加えて法科大学院間の競争を促進させるということもあるのかと思います。
具体的な制度を検討するに当たっては、そういう目的を踏まえた上で、目的を達成するのに必要かつ十分な簡素な制度構築というのが必要になるだろうと思っております。法科大学院というのは、様々な高等教育があります中で、比較的教育の出口におけるダイレクトな競争にさらされているものの一つではないのかと思っております。当初はともかく、少なくとも現在では紆余曲折を経て、そのような状態になりつつあるのかなと捉えているところです。そして、教育の質というのは、結局、どれだけの人材を輩出できたかというところが一番かと思いますので、そういう出口における競争が存在するのであれば、その中で質の担保というのは、自然と行われていく部分もあるのだろうと思っております。評価疲れというものが様々指摘されていますけれども、そういった点も踏まえて、各法科大学院の自然な取組が、自然な形で評価されるということが理想だと思います。
続けて、後半の論点として様々挙がっていますけれども、その中で未修者教育と、それから、先ほど中川委員もおっしゃっていた研究者養成について簡単にコメントしたいと思います。未修者教育については、先ほども様々御意見がありましたけれども、一言で申しますと、入学した学生を全員、1年間で既修者に追いつかせるというのは、必ずしも容易ではない場合があるということを踏まえる必要があるのかと思っております。各人、様々な個性がございますし、あるいは様々な事情の中で、それぞれのペースで勉学をされたいという方もいらっしゃるところだと思います。そこを踏まえて、緩やか、ゆっくり勉強されたい方には、それに合わせた教育を、直ちに既修者に追いつく能力がある方、あるいは意欲がある方、状況にある方についてはそれを支援するという、多様な支援が重要なのかと思っているところです。
それから、先ほど研究者養成について中川委員がリカレントと研究者養成とが大事だというふうにおっしゃっておりましたけれども、私としても、そこには非常に共感するところがございます。法科大学院というのは法曹を養成して、その段階で教育は終わりというものでございますけれども、法曹の勉学というのは、そこで終わるわけではなく、生涯にわたって能力向上が求められるわけです。そして、そういった場となれるのは、法科大学院というよりは、それ以外の大学院、法学研究科ということになるのだろうと思います。大学が実務法曹と一定のやりとりをしながら、新しい知を継続的に生み出していくサイクルというのを作ることが重要なのではないかと思いまして、そういった中で自然と研究者養成にもつなげていけるような体制が構築できれば望ましいのかもしれないと思った次第です。
私、まだ2期目でいろいろ不勉強な点も多々あると思いますので、今後委員の皆様方と御議論させていただきながら、様々勉強させていただきたいと考えております。引き続きよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、松井委員、お願いいたします。
【松井委員】 今期より委員に就任いたしましたユニリーバ・ジャパン・ポールディングス合同会社代表職務執行者の松井さやかと申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は、2004年に日本に法科大学院が初めて設立された年に法科大学院に入学しておりまして、卒業後、司法修習を経て法律事務所に弁護士として執務をしておりました。その後、米国の法科大学院への留学を経て、帰国後に、いわゆる企業内弁護士として企業に入社をしたという経緯になります。日経上場企業の経営企画部を経まして、2019年よりユニリーバ・ジャパン・グループに入社をいたしまして、現在はジェネラルカウンシルとして法務部門の統括責任者を務めますとともに、経営チームの一員として持ち株会社の代表職務執行者を務めているという形になります。
ユニリーバという会社は、イギリスに本社がある消費生活材のメーカーでして、日本ではLUX、Doveというようなブランド名で消費者の皆様に親しんでいただいている会社となります。当社の法務部では、現在、毎年5名のエクスターン生の受入れをしておりまして、また、年間合計10名の司法修習生を選択式実務修習プログラムとして受入れをしております。受入れ期間中というのは、業務との両立に苦労するというのが実情なのですが、実務家としての生活を始める前に多種多様な経験を積んでいただきたいという思いから受入れを継続しております。また、企業法務部の連合組織を通じまして、各地の法学部、法科大学院の学生の皆様に企業内法務を知っていただくための講演会活動といったものも行っております。
私が法科大学院を卒業してから、気づくともう20年近くの時がたっておりましたので、今回、委員をお引受けするに至りまして、また、今期の審議事項の検討につきましても、決して懐古的にならず、現在の法科大学院がより魅力的な存在となるような、そういった意見を申し上げることができればと考えております。
企業内における法務人材の現状を申し上げますと、企業内弁護士に関しては存在感が増しておりまして、弁護士資格を得た方がファーストキャリアとして選択するケースも増えております。ただ、他方、企業内に必要な法務人材の総数としては、法曹資格の有無にかかわらず、需要に追いついていないというのが現状だと認識しております。法科大学院というのは、入り口として法曹資格を得ることを目的とした教育機関だと認識しておりますが、より広い観点で社会に魅力的な法務人材を増やすための教育機関として、また、法科大学院の入学者お一人一人にとって法科大学院の卒業ということ自体がより重要な意味を持つような、そういった法科大学院になるような形の評価基準について、議論をさせていただければと考えております。
また、現在、在学中受験制度によって在学期間の最後の半年間については、試験のプレッシャーを比較的感じずに卒業後にどのように社会に貢献することができるのかということを見つめることが可能な時期になったと考えております。その時期に企業内法務に限らず、その他の専門分野、例えば刑事弁護、公益訴訟、過疎地での弁護といった現在若手の担い手が不足していると言われる範囲につきましても知見を深め、視野を広げる機会があれば、より社会に対して総合的に貢献する人材を輩出することができる、そういった法科大学院になるのではないかと考えております。こういった場に不慣れでして、御迷惑をおかけすることもあろうかと存じますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、事務局から欠席委員の御意見の代読をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。本日、御欠席であります道上委員から頂戴しておりますメモについて代読をさせていただきます。
神戸で弁護士をしております道上貴美子と申します。弁護士としては11年目となります。早稲田大学大学院法務研究科を5期、未修で修了し、現在に至ります。ロースクールには修了後もアカデミックアドバイザーや助手として、その後も関わらせていただきました。まだまだ不勉強な点も多く、御迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、いわゆる法科大学院世代として微力ながらお手伝いができればと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
委員の皆様方におかれましては、活発な御意見をどうもありがとうございました。今期の議論の充実が大いに期待できる第1回であったかと思います。座長の私があまりいろいろなことを言うのもどうかと思いますが、一言、二言だけ申し上げさせていただきます。
学習院大学の松下でございます。今期も座長を拝命いたしております。この委員会、昔は「等」のない法科大学院特別委員会だったのですが、2013年から委員を務めています。
今期の議論の論点については、既にもう十分に意見が出尽くしているところですが、まず、新たな評価制度については、現場での負担の軽減ということもさることながら、専門職大学院である法科大学院の教育の質とは何かという、かなり根源的な議論が必要なのではないかと思います。評価のための評価ではなく、認証評価制度の目的を踏まえた議論が必要であろうと考えております。
それから、令和元年の制度改正によるいわゆる3+2とか、在学中受験が法科大学院の教育、あるいは学生の動向にどのような影響を与えているのかというのは、引き続き注視が必要ではないかと思います。現時点で合格率が比較的好調であるという側面がある一方で、その裏側に何があるのかということは注視をしていく必要があろうかと思います。
委員の皆様方の御協力でほぼ12時なのですけれども、何かこの際ということで御意見がある方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いいたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。もし何かまた次回に向けて御意見等ありましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
それでは、ほぼ定刻ですので、どうもありがとうございました。本日いただいた御意見も踏まえて、事務局において適切にまとめていただくようにお願いいたします。
それでは、本日の議事を終了したいと存じますが、よろしいでしょうか。今後の日程につきましては、事務局から追って連絡をしていただきたいと思います。本日は、どうもお疲れさまでございました。以上でこの法科大学院等特別委員会、第120回を閉会といたします。どうもありがとうございました。
以上
高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係