法科大学院等特別委員会(第118回)議事録

1.日時

令和6年12月20日(金曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 令和6年司法試験結果について
  2. 法科大学院の特色・魅力について(臨床系教育)
  3. 報告書(素案)

3.議事録

【松下座長】  おはようございます。それでは、所定の時刻になりましたので、第118回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多用中の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日はウェブ会議として開催しております。本委員会は公開が原則のため、この会議の様子は、ユーチューブライブ配信にて公開いたします。
 ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際には、挙手マークのボタンを押し、私のほうから指名しましたら、お名前をおっしゃって、それから御発言をお願いいたします。御発言後は、挙手マークの表示を消していただくようお願いいたします。また、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 毎度のお願いで恐縮ですけれども、御出席された方全員が御発言できますように、大変申し訳ございませんが、御発言は1回当たり上限2、3分程度を目安にお願いいたします。さらなる御意見があるということであれば、会議終了後に事務局にメールでお寄せいただければ、今回の議事録に反映したいと考えておりますので、委員の皆様方の御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 本日も活発な御審議を、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【遠藤室長】  今回の資料につきましては、資料1から5までが全124ページとなってございます。また、参考資料1から15までが全48ページでございます。今回の資料と参考資料につきましては、文部科学省のホームページでも公開しております。その他、過不足等あれば御指摘いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。

【松下座長】  ありがとうございました。お手元に資料はございますでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきます。まず議題1、令和6年司法試験結果についてです。初めに、令和6年司法試験の結果について、司法試験を担当されている法務省から御説明いただき、その後、事務局から、関連するものとして、法科大学院等の教育に関する定量的な数値目標、いわゆるKPIについて御説明をいただいた上で、その2点についてまとめて質疑の時間を設けたいと思います。
 それでは、まず法務省大臣官房司法法制部司法法制課長をお務めの早渕委員から、令和6年の司法試験の結果について御説明をよろしくお願いいたします。

【早渕委員】  早渕でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私から、大別して2点について御報告させていただきます。事務局で資料をアップしていただいていますので、それを使わせていただければと思います。
 まず1点目は、令和6年司法試験の結果についてでございます。令和6年11月6日、本年の司法試験の最終の合否が発表されました。お手元の資料1-1から1-10までが司法試験の結果及び、それに分析を加えた資料でございますが、かなり大部となっておりますので、その概要を御報告させていただきます。
 まず、通し番号3ページを今ちょうどお映しいただいているかと思いますけれども、この資料1-1は、当省の官房人事課が公表いたしました、令和6年司法試験の採点結果でございます。こちらのページに記載されておりますとおり、令和6年司法試験の受験者数は3,779人で、右側にございます前年と比較しまして149人の減少、合格者は1,592人で、同様に前年比マイナス189人という数字になっております。最終合格者は1,500人台ということになってございます。
 続いて、通し番号23ページをお映しいただきたいのですが、こちらは資料1-2、令和6年司法試験の受験状況という資料でございます。まず一番上のグレーの網かけ部分は、先ほど御説明したのと同じ、本年の受験者数や合格者数の合計等が記載されている欄でございます。先ほどはなかったのですけれども、こちらには合格率も記載されておりまして、合格率は全体平均で42.13%、前年比でマイナス3.21ポイントとなってございます。以下では、受験者の属性、受験資格別に受験、合格の状況等を順次御紹介いたします。なお、大変恐縮でございますが、前年比の数字を資料に入れ込むことができておりませんので、その点につきましては、いずれも口頭で補足しながら御説明をさせていただきます。
 まず、グレーになっている網かけの2つ目の部分でございますけれども、こちらは法科大学院修了者に関しての結果でございまして、受験者数は2,072人で前年比マイナス433人、合格者数は471人で、前年比マイナス346人、合格率は22.73%で、マイナス9.88ポイントとなってございます。いずれについても相当程度の数字の減少が見られるところでございまして、その原因については様々なものが考えられるところかと存じますけれども、1つには、法科大学院課程修了後1年目に受験していた層のうちの相当数が、昨年度から始まりました在学中受験によって合格し、今年の受験者層に含まれなくなったという事情も影響している可能性があると考えておるところでございます。
 次に、3つ目、中段のグレーの部分でございますが、こちらは在学中受験資格者に関しての数字がまとめられているものでございます。受験者数は1,232人で前年比162人の増加、合格者数は680人で前年比43人の増加、合格率は55.19%で前年比マイナス4.34ポイントでございました。この合格率は、冒頭で御紹介した全体平均の合格率よりも13%程度高くなっているという状況でございます。
 在学中受験資格者の内訳について、網かけの下の部分で更に詳細に御説明したいと思います。まず、既修者のうち、「法学部(法曹コース)」の欄には、法学部かつ法曹コースから法科大学院の既修コースに入り、法科大学院在学中に受験した方の結果が記載されておりまして、受験者数は212人で前年比プラス25人、合格者数は143人で前年比プラス21人、合格率は67.45%で前年比2%ほど高い状況となってございます。この合格率も全体平均より25%程度高いという結果となってございます。
 また、その1行下、既修者のうち「法学部(非法曹コース)」の欄には、法曹コースではなかったものの、法学部から法科大学院の既修コースに進んで在学中に受験した方の結果が記載されています。こちらは、受験者数は706人で前年比プラス35人、合格者数は426人で前年と同数、合格率は60.34%で前年比マイナス3%余りという内容になってございまして、こちらも全体の平均の合格率より18%程度高いという状況でございます。
 それから、その下の「未修者」欄でございます。これはまとめて御説明いたしますが、未修コースに進んで法科大学院在学中に受験された方の結果ということになります。こちらにつきましては、「全体」という行を御覧いただきますと、受験者数は235人で前年比78人増加、合格者数は69人で前年比10人の増加、合格率は29.36%で前年比8%余りの減少という結果になりました。
 こうした数値から、私ども法務省といたしましては、法曹コースや在学中受験資格について、昨年度に引き続き、今回も一定の成果が出ていると評価できると考えておりますけれども、まだ制度が始まって2年目・2回目ということでございますので、引き続き、各推移を見守っていきたいと考えているところでございます。
 最後に、グレーになっている一番下の部分の欄を御覧ください。こちらは、予備試験合格資格者に関する数値をまとめてあるものでございます。受験者数は475人で前年比122人の増加、合格者数は441人で前年比114人の増加、合格率は92.84%で前年比0.21ポイントの増加、ほぼ同じぐらいということになっておりまして、これまで同様、合格率はかなり高くなっているという状況でございます。
 以上、この一覧表に基づきまして、令和6年司法試験の受験状況等を御紹介してまいりましたけれども、資料1-3以下では、法科大学院別の受験状況等について詳述しておるところでございます。本日はお時間の御都合もあり、御説明は省かせていただきますけれども、お時間があるときに御参照いただければと考えております。
 令和6年司法試験の結果についての御報告は以上でございます。
 続きまして、今年の8月28日に開催された当委員会の第116回の会議で、富所委員から、司法試験合格者の女性比率と比較して、予備試験の受験者合格者の女性比率が低いということに関して御指摘をいただきました。また、土井委員からも、法曹志望者の現状を把握する上では、予備試験受験者の属性・受験回数等についても情報収集・分析していく必要があるという御指摘を頂戴したところでございます。
 これらの点につきまして、現段階で私どもとして、先生方に御納得いただけるほど十分にお答えできる資料を持ち合わせているものではないのでありますけれども、関連して、法務省では、文部科学省の御協力もいただきまして、例年、法曹志望者が減少傾向になってきた要因等を把握し、今後の施策の検討に活用することを目的として、法学部生のアンケートを実施しておりますので、御指摘に関連するものとして、本日はお時間を少しいただきまして、その内容を御紹介させていただきたいと思います。事務局の方、大変恐縮でございますが、資料1-11をお映しいただければと思います。このアンケートは、募集を継続している法科大学院を設置する大学と、法曹コースを設置している大学の法学部生を中心に、ウェブアンケートで実施しておりまして、その回答者は、1年・2年次の在籍者がおよそ60%を占めているというものでございます。
 今、お映しいただいているページを御覧いただきますと、左側の表とグラフは司法試験に関する情報になりますけれども、2014年から本年までの間、女性比率は、まず受験者で見ますと26%程度から基本的には徐々に上昇しておりまして、本年で33%程度、合格者で見ますと22%程度から基本的には徐々に上昇して、本年で大体30%程度となっております。これに対しまして、右側の表とグラフは予備試験に関する数字でございますが、この女性割合は、受験者ですと20%弱から基本的には徐々に上昇して、令和5年で24%ほど、合格者で10%程度から基本的には徐々に上昇しておりますけれども、令和5年でも16%余りというところになっておりまして、委員からも御指摘があったとおり、司法試験の受験者・合格者と比べると、女性比率がそれぞれ10%程度低くなっているという状況が見られるところでございます。
 この点につきまして、法学部生アンケートで予備試験に関する質問をしておりますので、御説明いたします。次のページをお願いいたします。
 こちらの資料は、予備試験の受験予定に関する回答を男女別にまとめた資料でございます。緑色で網かけしている「受験するつもりである」という欄を御覧いただきますと、令和3年から令和5年のいずれの年におきましても、男子の学生と比べると、女子の学生のほうが予備試験を受験するつもりである旨の回答がそれぞれ10%程度低いということがお分かりいただけるかと思います。次のページをお願いします。
 では、なぜ受験に消極的なのかという点について、まず受験を希望する者についての受験理由を男女別で比較してみました。その結果が、細かくて恐縮ですが、本ページに記載されています。各項目についての上の青い欄が男子学生、その下の赤い欄が女子学生の数字となりますが、このうち、まず一番右側の令和5年の欄を見ていただきますと、上から2番目の「経済的に法科大学院に進学することは不可能ではないが、経済的負担を少しでも軽減したいから」という質問に対しては、女性のほうが8%高い回答となっております。また、上から6番目の「法科大学院で学んだとしても、司法試験に合格できるか不安があるから」という質問についても、同様に女性の回答割合のほうが10%程度高くなっています。もっとも、これらはむしろ女性のほうが積極的に予備試験を受験してもよさそうな内容の回答でありますし、そもそも令和3年度・4年度の数値も見ますと、むしろ男女の値が逆転する結果になっているものもございまして、なかなかこれは統計的に有意な差とまでは言えないのではないかと考えておるところでございます。次のページをお願いします。
 続いてこちらは、予備試験を受験しない理由についてのアンケート結果でございます。この質問項目は、令和5年度に新設された質問であるため、令和5年度分のみとなっております。もっとも、御覧いただきますとおり、この回答を見ても、「その他」という、ここに掲げられた以外の理由、非定型的な理由を含めまして、男子学生と女子学生の回答に特段の差や傾向というものは見受けられないのではないかと考えておるところでございます。
 以上のとおり、本日御紹介した法学部生アンケートの結果では、御質問いただきました男女差の理由について確たる結論を得ることはできておりませんけれども、何らかの御参考になればと思い、お時間をいただいて御紹介させていただいた次第でございます。法務省といたしましては引き続き、先生方からいただいた御指摘も踏まえまして、予備試験受験者の属性や動向も含めて必要な調査を行ってまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。

【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続いて、KPIについて事務局から御説明をお願いいたします。KPIについては、令和6年度と令和11年度が目標年度として設定されていますが、令和6年の結果を踏まえて、次の目標年度である令和11年度の数値をどう考えていくかについては、次回の中教審の会議で扱う予定ですので、本日はあくまで現状の御報告ということでお願いいたしたいと思います。
 それでは、事務局から御報告をお願いします。

【遠藤室長】  資料2、通し番号の55ページのご説明を差し上げます。法科大学院等の教育に関する定量的な数値目標(KPI)ということで、資料を画面共有しております。
 KPIにつきましては、法科大学院等全体としての司法試験合格率目標ということで、(1)「累積合格率」、また(2)「修了後1年目までの司法試験合格率(在学中合格含む)」等について、それぞれをお示ししているところです。
 令和6年度までを目標に掲げたKPIにつきましては、いずれの項目についても、設定した数値を上回っているのが現状です。特に、全体の累積合格率の70%以上という目標や、未修者の合格率の50%以上という目標についても、結果が上回ってきている状況です。なお、(3)「法曹コース修了者のうち、学部3年で進学した者の修了後1年目までの合格率」につきましては、現在集計中の部分を「集計中」と表示させていただいております。いずれにつきましても、次回の法科大学院等特別委員会において、令和11年度のKPIの設定等について取り扱っていただきたいと考えておりますので、本日は現状の数字として受け止めていただければと考えております。
 事務局からは以上でございます。

【松下座長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明、令和6年司法試験の結果についての法務省からの説明と、文科省事務局からのKPIについての御説明、その2つの御説明につきまして、御質問や御所感等があれば、どなたからでもどの点からでもお願いしたいと存じます。冒頭お願いしましたけれども、御発言の際には、1回当たり上限2、3分程度を目安にお願いできればと存じます。それでは、どなたからでも、どの点からでも、御発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。
 加賀委員、お願いいたします。

【加賀委員】  私の意見は、本当は後のほうがよかったのかもしれません。というのは、先ほどの御説明が特になかった項目についてのお話になります。先ですけれども、言わせていただきます。
 今回の大学別の受験結果から、小規模校が苦戦しているということが割合くっきりし始めたように思っています。今後ますますこういう傾向が出ることを懸念しております。司法試験の合格者数が少なくなると、今度は学生がそこに集まらなくなる。さらに、また合格者が減るという、負のスパイラルに陥っていくという可能性も高くなってきますので、今の法科大学院の数から、これ以上、減らすことは避けなければならないと考えている次第です。したがいまして、当然、それぞれの大学院における自助努力は、これはもう当然のこととして、ここから本格的に小規模校に対する支援も考えなければならないのではないかと思っています。ただ、支援策というのは大変難しいものがありますので、例えば当面、認証評価の見直しであるとか、加算プログラムの方針の見直しであるとか、この辺りのところから、法科大学院教員が教育に専念できるように、もう一段の環境を整えていく必要があろうかと思っている次第であります。
 すみません。先ほどの報告の主たるものとは違うところの領域から発言させていただきました。以上でございます。

【松下座長】  ありがとうございました。非常に重要な指摘だと思います。
 それでは、富所委員、お願いいたします。

【富所委員】  法務省の早渕さん、どうもありがとうございました。御丁寧に説明いただき、分析までしていただいて、大変感謝しております。
 私もこの件は少し気になっていたものですから、知り合いの法学部の先生たち何人かと話をしたりしてみました。明確な答えにはならないかもしれませんが、将来、法曹として働いていくと早くから決断するのは、やはり女性の方が、ハードルが高いのではないかというご意見でした。色々な要素があって親に相談するとか、将来を決めるまでに、やはり一定の時間がかかるという見方ですね。それが、すぐに答えですというわけにはいかないかもしれませんけれども、引き続き私も関心を持っていきたいなと思っています。
 こうしたデータは今後、法科大学院について、男女の比率など、どうバランスを取っていくのかを考える上でも、必要な要素かなと思っておりますので。どうもありがとうございました。

【松下座長】  ありがとうございました。法務省のほうで入念な調査をしていただき、しかし、なかなか、これという答えが見つからないということがよく分かりました。どうもありがとうございました。
 それでは、佐久間委員、お願いいたします。

【佐久間委員】  よろしくお願いします。佐久間です。
 先ほど説明がありましたが、修了者の合格者数が今回かなり減っているわけで、それは在学中受験の影響が一部にはあるのではないかという話ですけど、今回の数字から言うと、それだけでは説明できない部分があると思います。また、一方では、予備試験のほうの合格者は増えているということもございます。そうする、これは、後で出てくる、この期のまとめとも関係するんですけど、冒頭、今日の資料ですと79ページにそのことに関連するグラフが出ていて、また、審議まとめの本文中では、法科大学院修了者の合格率がここ数年30%台と書いてあるんですが、今回、修了者の合格率は30%を切ってしまっています。もちろん、在学中受験と合わせれば30%を超えているのでいいのかもしれませんが、その数字も令和5年より下がっていることは事実なので、そこをどう説明するのかということが当然あると思います。ですので、この数字の意味については、在学中受験を促していることと予備試験の受験動向との関連性の有無を含め、少し丁寧に分析する必要があるのではないかと思っておりますが、その辺はいかがでしょうか。

【松下座長】  以上でよろしいですか。どうも、御指摘ありがとうございました。特に回答を求める趣旨ではないと伺ったのですが、それでよろしいでしょうか。

【佐久間委員】  別にこの場でなくても全然構わないですけど。

【松下座長】  まだなお、これは分析が必要な数字だという御指摘は、非常に貴重な御指摘だと思って伺いました。
 それでは、続いて菊間委員、お願いいたします。

【菊間委員】  ありがとうございます。
 私も同じような質問なのですけれども、今、御紹介はいただかなかったのですが、各ロースクールの合格者数が書いてある一覧の資料があると思うのですけれども、それを見ると、ほとんどのロースクールで、在学中受験のほうの合格率が高くて、修了生とか2回目以降の合格者数が非常に少ないという結果が見て取れます。これを各ロースクールがどういうふうに分析しているのかということを、どなたかにお伺いしたいなと思いました。在学中受験というのは、どうしてもカリキュラムを一生懸命詰め込んで、試験が終わった後にもう一回、後半のカリキュラムをやるみたいな感じで、でも、これだけの方が受かってしまってというか、受かっていて、きっちり修了している人たちが受からないというのは、どういうことなのだろうと。ロースクールの教育をきちっと受けて合格するということからいうと、本来、修了者も相当受からないとおかしいのではないかと。在学中で受かるということは、むしろそうではない、ロースクールだけではないところで、もともと勉強していた方たちが受かっているというふうにも見えるので、これでロースクールの成果だと言うことができるのだろうかというのも思ったんですけど、ここの違いをどういうふうに捉えたらいいのかということを、お話しいただける方がいたら教えていただければと思います。

【松下座長】  どうもありがとうございました。これは、どなたが答えたらいいのでしょうか。難しいですけれども、どなたか、もし大学関係の方で、個人の御所見ということで結構ですので、御披露いただける方がいらっしゃれば御発言をお願いいしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【菊間委員】  いらっしゃらなければ、感想としてそう思ったということで結構です。

【青竹委員】  すみません。大阪大学の青竹と申します。

【松下座長】  よろしくお願いします。

【青竹委員】  私の個人的な意見にすぎないですけれども、大阪大学でも、当初は在学中受験というのは、あくまでも挑戦として受け、あまり合格率が高いとは思われていなかったのですが、去年も今年も、在学中受験の合格率が高くなっておりますけれども、意外なことと受け止めている教員が多くなっています。菊間委員がおっしゃるように、きちんと3年間、勉強して、修了後さらに4月から7月まで集中して勉強して実力をつけて受ける人が受かりやすいと信じていましたので、在学中の時点で受かる人がこんなに多いとは思わなかったというのが正直なところです。ただ、4・5月の春学期に、授業に参加している3年生を見ますと、かなり高い集中力を持って授業にも取り組んでいるということがあります。この時期の参加者は、秋・冬学期の授業での受け答えと全く違っていて、集中力を持って、数か月の間に勉強する雰囲気を共有して、そこで、もともと大学の成績がいいわけではない方でも、実力を伸ばして受かるという人が目立っています。それで、在学中受験の合格率が高いのはどうしてなのかというのは正確には分からないですけれども、4・5月の教育が、雰囲気をつくり出すことではうまくいってということが1つはあるのではないか、ということが私が見ていて思ったことです。

【菊間委員】  ありがとうございます。

【青竹委員】  すみません。あまりお答えになっていませんが。

【菊間委員】  いえいえ。在学中の方というのは、受験すると決めた瞬間に集中力が高まるというのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ修了の方たちも、要は在学中の方よりは1年遅く、でもちゃんと受けようと思って準備しながら勉強していて、それでもなかなか受からないというか、合格率がここまで差が出てしまうのはなぜだろうと思ったところです。どうもありがとうございました。

【青竹委員】  4・5月に、在学中受験のために、春学期の授業を新たに設けまして、春学期の授業がもしかするとうまくいっている面があるかもしれません。

【菊間委員】  ありがとうございます。

【松下座長】  ありがとうございました。
 ここは私の意見を言う場ではないとは思いますけれども、今の法科大学院の学生というのは、法科大学院に入学する時点で既に、在学中受験できると分かっている人たちですので、在学中受験に向けた、3年次の7月に向けたスケジュールというのを、割に上手に立ててきて、勉強のスケジュールがうまくいっているというのも1つあるのかなと思いました。これは私の個人の感想です。
 それでは、続きまして笠井委員、お願いいたします。

【笠井委員】  ありがとうございます。法科大学院を代表することはできませんし、当然、京都大学を代表することもできないので、全く個人的な感触なのですけれども、青竹先生がおっしゃったことは全くそのとおりで、私も4・5月の授業を担当しておりまして、その前の年までの授業での双方向の問答とは少し感触が違うなと思いました。内容が上がってきているなと感じたというのが実際のところでございます。数字の関係では、在学中に合格してしまった人は当然、修了後は受けないわけですから、その関係もあって、そういう差がついてしまったのかなというところはあるかと思います。あと、全体の合格率とか、そういったこともあるかもしれませんが。それと、これは菊間委員がおっしゃった、法科大学院以外での勉強ということですけれども、大学教員としてはナイーブかもしれませんけれども、法科大学院でしっかりと勉強した、3年次の前期まで勉強したことで、その成果が出たのかなと、一応、期待して理解しております。
 以上でございます。

【松下座長】  ありがとうございました。
 法科大学院できっちり勉強していると、なかなかそれ以外のところで勉強するという時間的な余裕がそもそもあまりないのではないかという声もありそうですけれども。
 それでは、土井委員、お願いいたします。

【土井座長代理】  私も今の点に関連してですけれども、在学中受験をしている学生が多くいる大学では、当初の予想と異なり、ほとんど全ての学生が受けているというのが実際です。当初は、未修者の皆さんは、修了してから受験するという選択をするのではないかと予想していたのですけれども、結構、在学中受験をしているようで、未修者も相当数、合格するという感じになってきているんです。その結果、新しく参入した在学中受験者がいて、その後に、修了後に初めて受験をする人と、修了後に2度目の受験をする人が出てきます。その場合、在学中受験者が多い大学の修了後受験者は、2度目の受験者ということになり、よくできる学生が最初の在学中受験で受かってしまうという状態が出ています。最初から、私は3年間勉強したいから修了受験をするんだ、私は在学中受験をするんだと分かれているなら、それぞれについて1回目の受験になるんですが、必ずしもそうなっていないことから、こういう結果が出ているのではないかと思います。また、もう一つは、3年次の後期は、あまり法律基本科目の授業が多くありません。どうしても、2年生を中心に3年の前期ぐらいまで法律科目が多くあって、その延長線上でそのまますることになりますので、それが、先ほど来出ている勢いというか、あまりたるむことなく、そのまま受験できるという影響があるのではないかなとは思います。
 以上です。

【松下座長】  土井委員、ありがとうございました。
 続きまして、大貫委員、お願いいたします。

【大貫委員】  大貫です。ありがとうございます。
 たまたまでしょうけど、国立大学法人のほうから御意見が出ましたので、私学からの個人的な意見を申し上げますと、先生方がおっしゃるとおり、我が大学も在学中受験が予想以上に合格率が高い。これは何なのだろうというのが、教員の間で話題になっているのですが、先ほど来出ているように、1つはモチベーションの差というのが、どうもあるかなという気がしております。広く聞いてみないと分からないですけど、在学中受験で必ず受かるんだぞと思っているか思っていないかの差というのは、結構大きいかなと思っております。
 それと、菊間委員が、ずっと在学して受ければ、その分、実力がつくのではないかとおっしゃいました。これは我が大学だけではないような気もするのですけど、在学中受験に向けて、カリキュラムを整序しましたので、やはり修了してから受ける学生さんのための手当てがどの程度できているかという問題はあるかなという気はしております。これは、なかなかデリケートなことなのですけれども。
 それから、卒業してから7月に受けるわけですけれども、その間は基本的に、法科大学院の授業を受けているわけではありません。ずっとこれは問題だったわけですけれども、修了した学生さんをどのようにサポートしていくか、教えていくかというのはあったのですけれど、在学中受験制度になったことによって、卒業してから司法試験を受験するまでの期間がより長くなりました。その間は、法科大学院は特に関与していないというところにも一因はあるかなと思っております。
 特に明確な原因というのはアイデンティファイできていないのですけれども、1私学としては、そのような感想を持っています。以上です。

【松下座長】  ありがとうございました。それでは、北川委員、お願いいたします。

【北川委員】  北川です。
 もう既にほかの委員の方々がおっしゃったとおり、同じような印象を持っているのですが、私が勤務する早稲田大学は在学中の受験をする者も多いので、一言、個人的な感想になりますが、申し上げておきたいと思います。
 早稲田大学の場合は、挑戦する早稲田という標語の下、在学中受験が多いのかなと冗談半分で思っていたのですけれども、実態をみると、結構な学生さんが在学中受験をしているのは、1つにおいては、現在は在学中受験が始まっていることを重々承知で入学し1年半後を見据えて学習を進めており、カリキュラムのほうも改正しており、3年の前期までに主要な基本科目を終えて、在学中受験に備えるという整備が進みましたので、その良い効果が現れているのではないかと思います。
 また、先に青竹委員がおっしゃったように、在学中受験が始まって以降、それ以前と比べて、3年の春の学生の集中力、真剣さの変わりようというのはちょっとびっくりするほどという印象です。既修者だと1年目は、それぞれ自分がまだ勉強が足らないところを1年で見いだして勉強を進めていくというようなことで、はじめはそんなにスピード感は感じないのですけれども、2年目の、試験が差し迫った3年生、最終学年の前期というのは、目の色を変えてやっているかなと。雰囲気も、多くの学生が受けているので、そういう雰囲気の中で、頑張らなきゃという意識が高くなっているのではないかと思います。一方において、在学中受験しない人は、慎重に3年間でやっていこうという人もいますが、自信がない人は在学中受験を見送り修了後の受験となり、その結果が数字的には反映されているところもあるのかと思います。
 以上でございます。

【松下座長】  ありがとうございました。それでは、続いて酒井委員、お願いいたします。

【酒井委員】  ありがとうございます。すみません。ちょっと喉を痛めておりまして、聞き取りにくい声で恐縮なのですけれども、手短に2点、述べさせていただきたいと思います。
 まず1点目ですが、在学中受験かどうかという視点もなのですけれども、これまで1回目受験の合格率が高いというのは、在学中受験が始まる以前からの傾向だったと思います。受験生の1回目にかける集中力・出力というのは、やはり高いものだと思うので、それが今、これだけ多くの在校生が在学中受験を選択するという状況で、その傾向がそのまま下りてきているというようなところは本質的にあるのかなという印象です。
 あともう一点、今の北川委員の発言とも重複するところかと思うのですけれども、法曹コースからの進学者が受験生の相当数を占めるという状況の中で、私自身法曹コース1期・2期を指導してきた経験からしますと、こちらも在学中受験をするという前提で、例えば司法試験の過去問でも、法学部の何年生でどれぐらい解いていないと在学中受験までに間に合わないよ、というような指導をしてまいりますので、学生たちも学部の時代から在学中受験に照準を合わせて勉強しております。その法曹コースの学生たちが、在学中で受けているという実態があろうかと思いますので、照準を合わせて受かってくるというのは必然の部分はあるのかなという気はしております。
 また、ロースクール教育に近いところといいますか、その最中で受験をするというときに、法律基本科目の仕上がった直後ぐらいに受けているというようなカリキュラム感にもなってくるのかなと思いまして、そこの効果があるというのも、委員の先生方の御指摘に、なるほどと思ったところです。
 ありがとうございます。以上です。

【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、菊間委員、お願いいたします。

【菊間委員】  すみません。先生方、どうもありがとうございました。各大学の話を伺って、よく分かりました。
 1点、大貫委員がおっしゃった、修了してからの生徒さんへの手当てというところですが、大学によって対応が様々だと思いました。例えば私が通っていたLSは、もともと現役合格率が低かったので、卒業後のフォローをずっと先生方がしてくださっていて、結果的に2回目・3回目で合格する方が非常に多いというロースクールでした。浪人中に大手のロースクールで1回目に落ちてしまった人と、予備校や自習室で会ってお話を聞くと、1回目で受からないと放り出されてしまって、LSからは何のサポートもなくて、1人で勉強しないといけないから大変なんだみたいなことをおっしゃっていた方が何人かいらっしゃいました。在学中受験の成果が出ていることは喜ばしいことだとは思いますが、一人でも多くの方が合格するように、修了生のサポートという点も、各LSで考えていただければと思いました。

【松下座長】  どうもありがとうございました。修了生への手当てというのは、引き続き大事な問題だと思います。御指摘ありがとうございました。

【遠藤室長】  御指摘を頂戴いたしましてありがとうございます。
 この後ご説明差し上げます「12期のまとめ」でも触れようと思っていたところですが、今ほどご説明差し上げました司法試験の合格率に関しては、特に在学中受験制度が始まって、在学中受験と法科大学院修了者を足し合わせた合格率というのが、過去の制度の合格率と比較する上では重要な数値になってくるであろうと考えてございます。当然ながら、今までは法科大学院を修了した上での試験でありましたけれども、在学中受験が始まったことで、在学中受験と修了資格の合格者数、ここから算出される合格率がどう推移しているかというデータを見ていく必要があると思っています。
 これを見ますと、昨年は非常に合格者数も多く、合格率も上がっておりましたし、今年も、確かに昨年度よりは合格率・合格者数が下がっておるのですけれども、過去の新しい制度が始まる前の数字と比較して決して下がっているものではないと思います。ですので、こういったデータをしっかり把握しておくということと、あとは新しい制度が始まって、まさに今回、2回目ということでありましたので、早渕委員からの御説明にもありましたとおり、在学中受験で合格を早めにされる方がいらっしゃって、従来の受験者に加えてそういった方々が加わったこの一、二年がまさに変動の大きい一、二年だったかなと思っておりますので、この一、二年のみの結果で慌てるということではなくて、やはり一、二年目さらには来年の数字を見た上で、この制度の数字の取扱いを考えていくべき段階なのだろうと考えているところです。
 今、画面共有でお示ししているこのスライドは実際の単年度合格率なのですけれども、エメラルドグリーンで描かれているような「司法試験合格率(在学中受験+修了)」のような合算したデータも把握しておりますので、こういったものを見た上で、法科大学院の教育や新しい制度の評価を総合的に見ていくべきであろうと考えているところであります。
 私からは以上でございます。

【松下座長】  事務局からの御説明、ありがとうございました。
 司法試験の結果についての御意見がずっと続いていますけれども、KPIのほうは、達成できてよかったですねという話でいいんでしょうか。
 KPIは、特に御説明を伺って御意見がないということであれば、そのとおりということでよろしいでしょうか。
 それでは、いろんな御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。それでは、もし必要ならいつでも戻ることは可能ですので、随時戻って御発言いただくことは構わないことを前提に、議事の2に進ませていただきます。
 議題2は、法科大学院の特色・魅力についてということで、臨床系教育ということでございます。昨年度より在学中受験が始まって、この委員会の中でも臨床系科目の充実について御心配される声もあったことから、今回、このテーマで議題を設定させていただきました。今回は、特色ある取組をされている大学の一つとして立命館大学から御発表いただき、その後、質疑の時間を設けたいと思います。
 それでは、中山布紗・立命館大学大学院法務研究科副研究科長から御発表をお願いいたします。よろしくお願いします。

【中山副研究科長(立命館大学)】  よろしくお願いいたします。立命館大学の中山です。このたびはこのような報告の機会をいただきまして、誠にありがとうございました。
 それでは、画面共有をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、報告を始めさせていただきます。立命館大学法科大学院の臨床科目は3つございまして、弁護士事務所での研修、エクスターンシップ。また法律相談、リーガルクリニック1は、京都府舞鶴市に1泊2日で法律相談をしに行くというもの。リーガルクリニック2というものは、女性の相談に特化したものでございまして、こちらは法科大学院内のリーガルクリニック室で行うものでございます。配置が最終学年ですね。ちょうど3回生で配置されておりまして、この3つのうちのいずれか1科目を履修して、単位取得をしなければ修了できない。選択必修という形を取らせていただいております。
 この配置の時期、具体的には在学中受験が始まる前から、かねてより、主として最終学年の前期、8月の下旬から9月にかけて配置しております。これは、在学中受験後も変わりません。幸運なことに在学中受験が始まりまして、司法試験が7月になったことで、在学中受験をした院生は、その直後に臨床科目を受講するということになります。このように、臨床科目を選択必修として位置づけまして、主として最終学年前期に配置する理由は、大学院生にとって、やはり学習を進める上で大きな刺激になるということを期待し、また将来の進路希望を具体的かつ現実的に考えさせる絶好の機会の提供になるという、そういった信念の下に配置してきました。
 また、以前はそうは言いましても、臨床科目はやはり面倒くさいなとか、そういったふうに否定的な態度を示す学生も一定数おりました。しかしながら、実際に受講した後はがらりと変わりまして、やはり体験できてよかったという意見のほうが多うございます。ところが、最近はコロナ禍で、やはりオンラインでのコミュニケーションしか取れなかったということへのストレスもあったのか、また司法試験の時期の変更、特に在学中受験が導入されてからは、教員も驚いているのですけれども、学生の側、院生の側が、臨床科目が3つあるし、何にしようかなということで、非常に真剣に選択するようになったと。廊下を歩いていても、ちょっと先生、いいですか、リーガルクリニック1と2で迷っているのですけれどもという質問を受けたり、非常に臨床科目が院生の学習の動機づけとして機能してきているなという実感がございます。
 近年は、エクスターンシップを学部生の段階で経験する者も多くて、すでに学部生のときにエクスターンシップに行かせてもらったので、せっかくなのでリーガルクリニックを今回やりたいですというふうに、ちょっとニーズが変わってきました。2015年頃までは、やはり院生にとってはエクスターンシップ、弁護士事務所に派遣されることで、ちょっと合格後の就職のために顔を売っておこうとか、そういったことからエクスターンシップに選択希望が殺到しておりまして、そういったことからGPA要件を課すということをしてきたのですけれども、じわじわと、2016年を境に、エクスターンシップはちょっとやっぱりお金がかかるからとか、様々な理由で希望する院生が減りまして、現在は、過年度5年分の実績を見たところ、エクスターンシップを選択する者が最終学年の40%、またリーガルクリニック1・2を選択する者が全体の60%程度ということで推移しております。
 それでは、まずエクスターンシップのほうから、趣旨や科目概要を見ていきたいと思います。
 エクスターンシップは、言うまでもなく、実務家の仕事を見せていただく。そして、実務の要領を体験的に学ぶことを目的としているものなのですけれども、実習先は、多くは弁護士事務所です。こちらは大学が斡旋をして事務所を紹介する、派遣先を紹介するという形や、自己開発型、自分で弁護士事務所を探して、ここに行きたいというふうに見つけてくるという形、法テラスや地方公共団体、大阪府豊中市や京都府宇治市など、また企業法務がございます。
 開講時期は、先ほど臨床科目は主として夏期、8月下旬から9月中だと申し上げましたが、エクスターンシップに限っては加えて春、3回生に進級する直前の春休みである2月から3月の間に派遣するというタイプもございます。でも、春・夏いずれにしましても、集中あるいは通算して2週間、実習していただき、その上で単位を認定するということになっております。
 そして、エクスターンシップではどのようなプロセスで派遣先を選んでいるのか、どの学生をどの事務所、どの自治体に行かせるとか、そういったことを決めているかと申しますと、まず毎年10月中に、選択希望届を提出させます。具体的には、エクスターンシップかリーガルクリニック1・2、どちらがいいかということで希望を出していただきます。エクスターンシップを第1希望とする院生は、例えば知財とか独禁法など、もう既に特定の分野のスペシャリストになりたいという意欲がある者が多いです。また、この3年ぐらいで、刑事弁護を専門としたいので刑事弁護の実際を見てみたいというような、具体的な目的を持つ学生がエクスタシーシップを希望する傾向にあると実感しております。エクスターンシップを希望する学生には、教員が、学生1人当たり30分程度かけて面談を行います。志望動機に加えまして、興味関心、また将来携わりたい業務内容等を聞き取ります。それを報告書に一人一人まとめまして、その後、11月中に、実務家教員を中心に組織された学内委員会、エクスターンシップ委員会というものを開催いたしまして、院生とのマッチングを行います。委員を務めている実務家教員の多くは、京都弁護士会・大阪弁護士会所属なので、多くの受入先の魅力・強みを把握しておられます。ですので、例えばこの子は倒産法を中心にやりたいのだったら、絶対この事務所やで、ここの事務所は専門やで、だからこの事務所で合うんじゃないのとか、そういったアドバイスをしていただいて、それでマッチングをするという工夫をしております。
 この派遣先、2024年度、今年度の実績なのですけれども、春は、少ないですけれども4名いまして、派遣先には弁護士事務所、そして自治体、法テラスがあります。そして、この弁護士事務所の中には、全てではありません、数件なのですけれども、立命館大学ロースクールのOB・OGがいらっしゃる事務所がございます。
 続きまして、リーガルクリニックのほうに移りたいと思います。言うまでもなく、法律相談をさせる、対応してもらうということになるのですけれども、とりわけ、科目の獲得目標として、1.事情聴取の方法と、2.法的な事実整理、あと、3.法的対応方針の選択・検討とございますが、院生に説明会で強調しています。リーガルクリニック1では、やはり事実の聞き取りが大事だよということを言っております。院生が普段から起案、司法試験対策として事例問題を解いているときに、そこで出てくる事実は、きれいに、きちんと整理された、まるで裁判官が認定した事実だと。つまり、スーパーで売っているきれいに加工されたお刺身なんだよと言っています。ですが、リーガルクリニックで法律相談に行く、法律相談に対応するということは、事例問題で用意されているようなきれいない事実ではなく、整理されていない事実だよ、だから、マグロ1匹を自分でさばくのと一緒だと言っています。いろいろなお話を聞いた上で、それから取捨選択して、法律論に必要な事実というものを聞き取っていくということが大事だと。そういったことを話しております。
 実習先は、先ほども申し上げましたように、リーガルクリニック1は京都府舞鶴市、そしてリーガルクリニック2は学内リーガルクリニック室で実施するのですけれども、そのうち1回は滋賀県の大津市とタッグを組んで、大津市のほうで法律相談をするといった機会もございます。学内予算、年単位ですが、リーガルクリニック1は80万円、2は140万円程度でございます。
 リーガルクリニックの相談者数・受講者数を、この5年分を表にしてみました。左の表がリーガルクリニック1でございまして、右が2でございます。このように、受講者・相談者ともに安定して、舞鶴法律相談、1のほうになりますと、毎年、大体40人ぐらい、近年相談者が増加しているという傾向にございます。2005年度から2024年度までの相談者数累計は、リーガルクリニック1は1,026人、リーガルクリニック2は486人となっております。
 次にリーガルクリニック1と2の違い等を紹介させていただきたいと思います。まず、リーガルクリニック、京都府舞鶴市において法律相談を実施しますが、法科大学院設立当初、法学部の法律相談部の顧問をしていた教員が、ローの専任教員になりまして、法律相談部で一度、舞鶴市に行ったことがあると。非常によかったので、協定を結んで、ぜひとも毎年、臨床科目として法律相談を受け入れていただけないかと、その先生が乗り込んでいったと。その結果、舞鶴市さんも非常に弁護士が少ない地域ですので、法律相談を市のイベントとしていろいろ実施されたりしていたので、もうぜひにということで御縁がございまして、続いているものでございます。相談は例年、9月初旬から中旬の土曜日・日曜日、1泊2日で行います。学生が3人1組でチームを組みまして、1人サポートで担当教員が1名つきまして法律相談に当たるのですが、学生1チーム当たり、2日間で合計五、六件の相談を担当するということになります。相談時間は1時間でございます。法律相談の場所の提供や日程調整などの運営には、舞鶴市役所様の御協力をいただいております。また、法律相談のメンターとして、舞鶴市で実際に活躍している立命館大学法科大学院OB弁護士がいます。このほかにも、在学中にリーガルクリニック1を受講したという方で、現在、弁護士で御活躍の方に、サポートというか非常勤というような形で、1泊2日、来ていただいて、学生への指導をしていただいています。毎年このような形でやっております。
 法律相談の内容といたしましては、やはり地域に根づいた弁護士がよく取り扱うような相隣関係が多いです。また、誰の所有か分からない土地があるのだけれどもとか、お墓の問題等も毎年よく見られます。また、相談者の声ということなんですけど、ちょっと例として、アンケートを必ず取っているので載せさせていただいていますが、毎年、法律相談を実施させていただいているので、例えば10年前にも1回相談させていただいて、ちょっとまた来ましたというおばあちゃんとか、そういった方もいるのですけれども、このように若い方が自信を持って現場へ出られる日が来るためのお役に立てたならうれしいですなど、相談対応していただいてありがとうございましたということのみならず、もう近年はすごく、院生に対して司法試験を頑張ってねという応援のまなざしを感じることが多くなってまいりました。
 リーガルクリニック1の学生の声なのですけれども、実務の内容だから、司法試験には出ないからという理由で、ロースクールで学ぶ機会を失わないように頑張ろうと思ったとか、あと、弁護士になった後、1人で答えられるかなということを考えたと。それで、勉強のモチベーションになったといった意見がほとんどでして、過去に私が覚えている院生は、舞鶴法律相談で、まだ弁護士バッジもつけていない段階で、ちゃんと聞き取れているかなと不安の中、何とか対応したら、法律相談、本当にもうありがとうございましたと何度もお礼を言ってもらえて、すごく感銘を受けたと。それで、キャレルの自習室の自分の机に、舞鶴の人を忘れるなというような、付箋に貼って、すごくモチベーションが下がったときには、それを見て、よし頑張るぞというふうに勉強をしていた子が過去にいました。
 続きまして、リーガルクリニック2のほうですね。女性と人権ということで、こちらを御説明、御紹介させていただきます。こちらは完全予約制で、院生2、3人と、実務家協力弁護士と、チームを組んで法律相談を行うものでございます。女性に特化した法律相談でして、離婚問題やDV、児童虐待、雇用差別など、女性の人権が特に問題となるような事案について、先ほども資料をちょっと出させていただきましたが、2005年以降、現在まで延べ500件近くの相談に対応しております。理論と実務の架橋を重視する取組の一環として、法科大学院で開講しております基礎法学・隣接科目(「ジェンダーと法」)に対応する臨床科目として開講しております。実際に、ほとんどの受講生が、この「ジェンダーと法」を受講しまして、ジェンダーの観点から見ての法律や判例の意義・課題などを学んでおります。
 法律相談は、8月下旬から9月下旬の日曜日に計4回、そのうち1回は大津市で、1チーム当たり1日1件から2件の相談を担当するという形になっております。リーガルクリニック1のほうは、1泊2日、法律相談に行くという、事前にロイヤリング、模擬法律相談という練習があるのですけれども、それが終われば本当にもう現地に行って、もう本当にすぐに対応するということになるのですが、リーガルクリニック2の場合は、まず1回目は、女性弁護士の先生が相談対応している姿を見るといった形から入りまして、それを経て実際に2回目以降、学生が主体的に法律相談に当たるといった形、段階を踏むという形になっております。
 女性をテーマにしておりますが、履修する学生の男女比には大きな隔たりはございませんで、男性学生のほうが第1希望にするとか、結構、リーガルクリニック2を選択される男子院生が実は多いんですけどね。少なくないんです。女性が抱える問題に対する理解を深めるいい機会だということで、ぜひにということで履修するケースも例年見られます。
 リーガルクリニックの相談者の声なのですけれども、相談する窓口が分からずに、ちょっと戸惑っていたところ、大変助かったとか、疑問が法律的にどうなのか明確になったとか、そういった喜びの声が多いです。また、学生側の感想なのですけれども、いろんな弁護士の話を聞けたとか、あと実務家を志望することへの意欲が出た。また、相談者が何を知りたいのか、どのような解決を望んでいるのかを読み取る訓練ができた、家族法への苦手意識がなくなったというような意見が多いです。また、実際にリーガルクリニック2を受講した院生には、弁護士になった後も、弁護士会内でDV研修などを担当したり、女性の法律相談に特化して頑張りたいというような子が多いんです。リーガルクリニック2で学んだことを着実に実務に生かして、実際に活躍しているというOB・OGが少なくありませんということです。
 また、リーガルクリニック2では、特にDV被害や性被害に遭った女性が心理的カウンセリングを受けたいと思う場合もあるだろうなと想定しまして、学内の心理教育センターの案内パンフレットを受付に用意して、その需要に応えるという形を取っております。
 学生への指導についてなのですけれども、やはり守秘義務の遵守については、特に厳しく指導しております。臨床科目受講者は、事前に「法曹倫理」等の科目を学習しまして、守秘義務講座の受講や研修要綱の説明を受け、職務上の倫理や守秘義務を遵守する旨の誓約書を提出します。エクスターンシップやリーガルクリニックを受講するに当たり、守秘義務講座とマナー講座の受講を必須としております。また、臨床科目の履修に当たって、やはり何だかんだ、学生さんはすごく真面目です。自分自身、まだ司法試験に合格していないし、まだ人生経験だってそんなに豊かでないし、こんな私がちゃんと話を聞けるのかとか、受け止められるのだろうかとか、あるいは間違った知識、誤った知識をアドバイスとして言うのではないかと、結構、緊張する院生が毎年多いんです。そういった学生たちには、いやいや、まだ資格を持っていない、何者でもないという今の自分が人を助けられるだろうかと、そういうふうに思えるということが、まさにリーガルマインドなのではないかと。そういう視点があるからこそ、依頼者の相談をより丁寧に聞けるのではないかなと。もう、キャリアを積んで、経験からこれはこういうことだなというふうに要領よくやっていくということも、それはプロだけれども、やっぱり、まだ司法試験に合格していないあなた方だからこそできる対応というか、そういったことがあるはずだと励ましているところでございます。
 あと最後に、今後の展望ということなのですけれども、いやいや、まず、理論と実務の架橋という観点で、臨床科目をこれまでどんなふうにつくっていこうと工夫してきたかといいますと、なかなか難しいところはあるのですけれども、リーガルクリニック1では、やはり法律相談に1泊2日で行く前に、教員が相談者役を演じるロイヤリングを1日、朝から夕方まで、もう午前9時から夕方の5時ぐらいまでですけれども、院生にはチームを組ませて、そして担当教員が相談者役で演じるということですね。こちらに非常に力を入れています。練習したという経験を残すだけではなくて、これはすごくよかったよとか、いや、もっと突っ込んで、兄弟構成はとか、年収はとか、そういうことも聞いてもいいんだよというふうに、聞き取りのときの留意点とかを話したりしています。また、リーガルクリニック2に関しましては、出来上がったパッケージで院生受講者に体験させるのではなくて、チラシ作りや、あと売り込みというか広告方法ですね。京都新聞に電話をして、すみません、こういう法律相談をやるので広告を載せてくださいとか、また相談者に別途お配りするパンフレットといったものを、受講者が自分たちで作っていくという、そういう機会を与えることで、実習をより主体的にというか、そういう気持ちを持たせるようにしています。
 また、エクスターンシップについては、事前に事務所とのマッチングに取りあえず力を注いでいるのですけれども、その後、事務所とエクスターンシップの内容についてどのようにすり合わせるかというところでは、立命館大学ロースクールでは臨床科目専門の事務員を1人置いておりまして、その事務員を通して、今度派遣するこの子はこういう子ですというふうに事前にちょっとお知らせするとか、また、それだけでなくて、事前に、研修が始まる前の段階で学生を挨拶に行かせるのですけれども、そこでもきちんと自分がやりたいこととか、こういうことを見せていただけますかとか、そういったことをきちんと受入れ側の担当弁護士の先生とお話をして、そこで出し惜しみしないように、きちんと聞いておいでというふうに背中を押したりしていることですかねということです。
 すみません。長くなりましたが、そうはいいましても、いろいろ課題もございまして、近年、インハウス・ローヤーを目指す学生が増えておりまして、企業法務を経験したいという動機でエクスターンシップを希望する者も多いので、ニーズに対応した派遣先をもっと充実させる必要がございます。もう喫緊の課題です。また、在学中受験が始まり、司法試験受験日程が7月になったことから、やはりエクスターンシップは以前に比べて、司法試験の受験後に実習できる夏期、9月を希望する者が圧倒的に増えました。春期、2月・3月に実施することの意義を再度検討しつつ、夏期に多くの学生を弁護士事務所に送り出す体制を整える必要がございます。
 また、こちらには書いていませんが、エクスターンシップを実施する中での苦労話というと、どうしてもGPAが少し低めの子を送り出すときに、やはり、これはどうしようかなというか、なかなか、いろいろこうしなさいとか、先方からこういう資料を作っておいでと言われたことをきちんとやれるかなとか、そういった心配がございますが、事前に大学でできることというか、指導できることはきちんとやっていくというか、それは実際に研修に行く学生も、自分はこんなにGPAが低いのに大丈夫かしらとか、そういった不安を抱えているので、そういった不安を少しでも払拭できるようなサポートが必要だなと考えています。
 また、リーガルクリニック2では、先ほど申し上げましたように、心理教育相談センターと連携しているのですが、現時点においては、相談者に対して、学内のカウンセリングルームが利用できますよと案内するにとどまっております。今後は、法律相談時に弁護士だけでなく心理カウンセラーも同席していただくなど、より強固な連携を図っていく必要があるかと考えております。
 長くなりましたが、報告は以上です。ありがとうございました。

【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの中山副研究科長からの御説明について、御質問や御所感、御意見等があれば、どなたからでもどの点についてでもお願いいたします。繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり上限2、3分程度を目安にお願いできればと存じます。それでは、いかがでしょうか。
 それでは、大貫委員、お願いいたします。

【大貫委員】  中山先生、ありがとうございました。法科大学院ならではの科目に非常に熱量を投入していて、随所に感心させられるところがありました。私は個人的にはマッチングのところですね。これだけ丁寧にやってマッチングされているということに驚きを感じました。先ほど後半の部分でもおっしゃいましたけれども、すり合わせを職員の方がやっていらっしゃって、きちんと受け入れ事務所に挨拶に行かせる。ここまで丁寧なことというのは、なかなかできていないだろうと私は思っております。また、中山先生のような、積極的で情熱ある教員の方の御努力のたまものにより実施できているのではないかと思いました。
 質問をできるだけ簡単に申し上げます。エクスターンのところなのですが、これは本学でも当然やっているわけですけれども、エクスターンに行って、どのように指導していただくのかということを、どう大学として関与していくかという問題があると思うのです。エクスターンシップにおいて教育課程としての教育効果が得られるように、派遣先と実習内容等に関する何らかのやり取り、事前調整等が必要になる場合もあると思うのですが、こういった点について立命館大学はどんな工夫をされていらっしゃいますでしょうか。
 以上です。

【松下座長】  ありがとうございました。
 では中山先生、お願いしてよろしいでしょうか。

【中山副研究科長(立命館大学)】  どうもありがとうございます。
 エクスターンシップは、事前、研修に行かせる前は、報告でもお話ししましたように、専門の事務員が、今回派遣する大学院生の特性とか希望であるとか、GPAも含めまして、情報を先に提供するという形を取ります。その後、研修が始まる前に、学生に事務所に挨拶に行かせるときにすり合わせということになりますが、それを別に文書に残すわけではございません。ただ、研修が始まりましたら、受講者には必ず研修日誌を書いていただくということですね。例えば、本当に何時に何々をしたとか、あと裁判所、法廷にちょっと同行したとか、それでどんなことをしたかという日誌を、必ず研修中は毎日書かせるのですけれども、そこで必ず、その日誌に、1日こういうことをやりましたというのを、指導の弁護士の先生にも見ていただいてサインをいていますので、実は研修後、単位認定をするときに、その研修日誌を見ることができ、受講者が何をしたのかということがもう全日程、全て分かるということになっております。また、指導に当たっていただいた弁護士の先生には、やはり2週間の研修を通じての、今回の受講者の態度だとか、能力・スキルはどうだったかとか、あと所見を書く欄ももちろんございまして、そういった評価ですね。すごく積極的に取り組んでくれたとか、こういうところはちょっと弱いから、もっと努力をするようにと伝えたとか、そういったことを、資料をデータとして、もちろん成績をつけるための根拠資料ではあるのですけれども、ここの事務所の先生は何年度にも受け入れていただいた事務所で、こういうことをしてくださったので、今回も、この学生だったら、希望するニーズにこの事務所は合っているなとか、そういったデータにもしております。
 お答えになったかどうか分かりませんが、差し当たり、以上でございます。

【松下座長】  ありがとうございました。大貫委員、よろしいでしょうか。

【大貫委員】  よく分かりました。事前に一般的な、こういうことを教えてほしいということを提携事務所に伝えるというよりは、まさにオーダーメードで、立命館の取組は全体としてそうだと思いますけど、提携事務所との個別のやり取りの中で、まさに学んでほしいことを具体化していき、またそのアウトプットを得ているという印象を持ちました。ありがとうございます。

【松下座長】  ありがとうございました。それでは、続きまして笠井委員、お願いいたします。

【笠井委員】  ありがとうございます。
 中山先生、どうもありがとうございました。大変充実して特色のある取組をされているということで、特に京都府内の大学にいる人間として、舞鶴での法律相談、リーガルクリニック、私も個人的ですけれども法律相談部の顧問をしていることもありまして、頭が下がる思いがいたしました。
 以上が感想なのですけれども、質問としては、開講時期の問題について質問したいと思います。まさに学習の動機づけとか大きな刺激という意味では、こういう機会を早く持つことができればよいというのがあるかと思います。その関係で、主に夏の時期ということで、司法試験も在学中受験になるとそれが終わった後ということで、先ほど最後のほうのお話では、そちらのほうに特化することもあり得るというお話だったと思うのですけれども、むしろ法曹倫理の授業が終わった後の3年次になる前の春の時期にやるということができれば、本当は理想的かなと個人的には思うのです。そういうこととの関係で、春にやることの意義などについて、立命館大学でどのように考え、時期の問題についてどういう御検討をされているのかについて伺いたいと思います。この辺りは当然、在学中受験であるとか、あとはサマークラークなどの話もありそうですので、なかなか難しいところもあるかと思いますけれども、その辺り、開講時期と学習への動機づけ等の関係の御検討について何かございましたら御教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【松下座長】  それでは、中山先生、お願いいたします。

【中山副研究科長(立命館大学)】  笠井先生、どうもありがとうございます。
 いや、本当に難しい話で、教員間でもやはり意見が割れておりまして、たまたま本当に在学中受験が始まる前から、臨床科目は主として最終学年の夏期、8月・9月に置くということで、ただ在学中受験が7月になったことから、もう棚からぼた餅的に、在学中受験をする者にとっては司法試験の後だからということで、御指摘がありましたように、最初に臨床科目を設置したときの意義づけですよね。やはり、どんな法曹になりたいかとか、そういったことを具体化させるすばらしい契機になるだろうということだったのですけれども、現実にはまだ在学中受験が始まってからそんなにたっておりませんが、もう大学院生の、特に在学中受験を最初から狙っている院生の意識としては、やはり受験で疲れた心身を癒やされたいみたいな、もう在学中受験の邪魔になるような日程でないし、受験で疲れて、どうしよう、受かっているか分からないという不安の中で悶々と過ごすよりは、リーガルクリニック等、臨床科目があるおかげで、何とかモチベーションを維持できるとか、そういった意識を持つ者が多いんです。
 なので、逆に言いますと、先生がおっしゃるように、3回生に上がる前の春休み期間中のエクスターンを志望する者は、もう在学中受験にあまり興味がない者、いや、じっくり最終学年は学習に専念したいから、最終学年になる前に行っておこうみたいなことで二極化しているという感じなので、どちらに軸を置くかということで、ちょっと教員の中でも意見が割れているというところでございます。
 以上です。

【笠井委員】  ありがとうございました。大変よく分かりました。こういうふうに質問をしましたので、京大のことを言わないとずるいのかなと思います。執行部の許諾も得ていませんけれども、京大はエクスターンシップを100人ぐらい受講していて、在学中受験が始まる前は春期のほうが多かったのです。3月とかのほうが多かったのですけれども、始まった後は、それでも有意な数、春にいすが、大体4対6ぐらいの割合で春と夏という感じに、私の知っている数字ではなっています。
 以上です。ありがとうございました。

【松下座長】  どうもありがとうございました。立命館大学と京都大学の実情について御紹介いただけて有意義だったかと思います。  それでは、今、手を挙げていらっしゃる方はいらっしゃらないと認識していますが、次の議題に移ってよろしいでしょうか。
 それでは、次の議事に移ります。中山副研究科長におかれましては、本日はどうもありがとうございました。

【中山副研究科長(立命館大学)】  ありがとうございました。失礼いたします。

【松下座長】  それでは、最後に議題3、第12期審議の取りまとめ(素案)についてです。今期の審議のまとめとして、事務局において報告書の素案を作成されましたので、この素案について事務局から御説明をいただき、委員の皆様から御質問や御意見、御所感等を頂戴したいと考えております。
 それでは、まず事務局から御説明をお願いいたします。

【遠藤室長】  事務局より、資料4を中心に御説明させていただければと思っております。スライドも画面共有させていただいてございます。
 今回は第12期の審議のまとめ(素案)ということで、「法科大学院制度の20年の歩みと法科大学院教育のさらなる発展・充実」ということで、スライドでまとめさせていただいているものです。
 まず、1ポツの「法科大学院制度の20年の歩み」ということで、過去20年間において、特に政府及び中央教育審議会においてどういった議論がなされてきたのかということを、客観的な時系列としておまとめさせていただいているというものでございます。当時からの20年間の歩み、ポイントとなりそうな制度改革や提言等を踏まえまして、現在に至るところの歴史的な背景といいますか、これまでの法科大学院制度の経緯をお示ししているというものでございます。
 さらに2ポツの「現状と法曹に対する評価、法科大学院教育への期待等」と題したうえで、まずはマル1の「法科大学院の現状と課題」というタイトルでまとめさせていただいております。司法試験の結果及びロースクールの入学者定員と入学者数等、ロースクールの志願者数について、データを時系列でまとめさせていただいております。
 司法試験の結果を御覧いただきますと、ポイントとなる年度があるかなと思っておりまして、合格率が一番低かったのが平成28年であります。ここが20%であったというのが当時の状況でありました。法科大学院制度ができて、そこからどんどん合格率が下がっていったという状況でありましたが、そこから、令和5年に在学中受験制度が始まりまして、令和6年と徐々に司法試験の合格率が上がってきていて、現在、40%弱になっております。在学中受験の方々と修了者を含めておりますけれども、中長期的なトレンドとしては合格率が向上傾向にあるというのが見てとれるかと思います。
 さらに右側、ロースクールの入学定員・入学者数について、こちらもポイントとなる数字だけ申し上げたいと思いますけれども、平成26年に59.6%、いわゆる定員に対する入学者数の充足率が一番低かった年がこの年でありました。ここは、やはり大学経営という意味では非常につらい数字ではありました。実際のロースクールの入学者数が一番少なかった年が平成30年、1,621人というのが、一番入学者が少なかったという状況でございます。同じ平成30年にはロースクールの志願者数一番少なく8,058名ということでありました。こうした一番厳しい状況だった時代を経て、令和6年のところを御覧いただきますと、定員の充足率も94.5%、実際の入学者数についても2,000人を超えて2,076名ということになっておりますし、さらにはロースクールの志願者数についても、右側の青いグラフでありますけれども、この数年間で大幅に志願者数が増加してきているというのが数字上見てとれるところかと思います。やはり在学中受験等の制度改正が影響してきているのかなと受け止めている状況でございます。
 次のページ以降、実際の「法曹人口・活動領域の拡大、法曹に対する評価等」について、法務省様にもプレゼンテーションしていただいたこともありましたけれども、幅広く法曹が養成されてきて、活動領域についても拡大してきたということ、また、若手法曹の一般の資質・能力や活動の質についても、他の法曹と比較して劣っているという評価はなされていない、という御指摘を頂戴しているものであります。
 さらには右側、「法科大学院教育への期待」というところであります。やはり、不易と流行という言葉があるように、どの時代においても必要とされる法曹としての資質・能力というのは当然ありつつも、今の時代に求められるような資質・能力を育てる法科大学院としての特色・魅力や、発展的・先端的な教育の展開への期待というもので御指摘をいただいておりますし、一方で、やはり法科大学院の入学者のうち一定数は未修者を確保することは、より多様な法曹を輩出していくという観点から重要であろうという御指摘も頂戴しております。
 こういったことを踏まえまして、3ポツの「今後の課題等と求められる取組の方向性」ということで、各委員の皆様方に御審議・御指摘をいただいた内容を大きく5つの柱でまとめております。
 1つ目が、「法科大学院教育における特色・魅力ある取組の推進」ということで、様々な大学の皆様にプレゼンテーションをしていただきましたけれども、それぞれの各法科大学院で取り組んでおられる企業内法務とか国際分野とか先端分野といったようなところを中心に、ポイントとなりそうなところをまとめさせていただいております。
 次のスライドでありますけれども、「5年一貫教育のより円滑な実施」ということで、制度改正がなされて、2年目を迎えたところですけれども、学部段階の法曹コースから特別選抜を経て、法科大学院在学中の司法試験受験に至るまでのデータ等々を中心にまとめております。私どもとしては、こういったポイントとなるようなデータをしっかりと集め、状況を注視していくというのが基本になろうかと考えてございます。
 さらには3つ目、「多様な法曹志願者の確保、未修者教育の充実」ということでございます。未修者教育に関しましては、過去の法科大学院等特別委員会においても様々な御指摘をいただいておりますし、各大学においても指導の充実に努めていただいているものと承知しております。しかし、未修者の数や割合については既修者に比べて少ないかなというところでございますので、未修者の教育について、さらに多様なバックグラウンドを持つ法曹をしっかりと確保していくという意味では、重要であるということを記載しております。
 さらには4つ目でありますけれども、「法科大学院教育を担う教員の確保」ということで、学生の多様なキャリアパスの1方策として、研究者という道への関心を喚起するような取組というのも大事だろうという御指摘を頂戴しております。研究者という進路に関する積極的な情報の発信、自発的な情報の公表ということも大事だろうということを書かせていただいてございます。
 最後に、「法科大学院教育と司法修習との連携強化」ということで、これまでも法科大学院協会の皆様や、司法研修所の皆様との連携の御発表もいただきました。やはり、教育の内容をより充実させていく観点から、より積極的な連携を図っていくことが大事ということで記載させていただいているものです。
 以上、かなり掻い摘んで申し上げましたけれども、今期、テーマとして取り上げさせていただいた内容を中心に整理させていただいたものです。ぜひ御指摘、御質問を頂戴できればと思います。以上でございます。

【松下座長】  ありがとうございました。資料4、概要版で御説明いただいたということですけれども、ただいまの事務局からの御説明について、御質問、御意見あるいは御所感等があればお願いいたします。繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり2、3分程度までを目安にお願いできればと思います。それでは、どなたからでもどの点についてでも御発言をお願いいたします。
 それでは、富所委員、お願いいたします。

【富所委員】  どうもありがとうございました。必要な要素が過不足なく入っていると感じております。非常に上手にまとめていただいて感謝申し上げたいと思います。
 1点だけ、前文の過去の振り返りの部分ですけれども、「深刻な課題を抱える法科大学院」という言葉が何度か出てきます。これは、我々は分かっていますけれども、今の人たちが読んだ場合に、15年前とか10年前の法科大学院を巡る状況を全部理解できているわけではないと思いますので、いわゆる「深刻な課題」が経営上の問題なのか、それとも例えば合格者が極端に少ないとか、定員割れしているとか、そうした実績上の問題なのか、いろいろと想像が広がってしまう恐れがあります。ですので、「マルマルなど深刻な課題」というように、丁寧に例示をした方がいいかなと感じました。
 以上です。

【松下座長】  ありがとうございました。確かに、知っている人が読めばあれかと思いますけれども、初見の人もいらっしゃるかもしれないので、その辺は事務局で御工夫をお願いしたいと思います。
 それでは、続いて清原委員、お願いいたします。

【清原委員】  ありがとうございます。杏林大学客員教授、前・三鷹市長の清原です。事務局におかれましては、大変充実した内容をまとめていただき感謝します。何よりも1点目、「法科大学院制度20年の歩み」をこれだけ網羅していただいたこと、しかも今期は、何よりも法曹コースを修了して法科大学院に進学した学生が初めて在学中受験を行うという、皆様と検討してきた具体的な改革案が実行に移されて、それが現実になったという、その年の取りまとめということで、意義を重く受け止めているところです。
 特に、まず1点目に申し上げたいのは、まず1が「法科大学院制度の20年の歩み」、2が「現状と法曹に対する評価、法科大学院教育への期待等」になっていて、3が「今後の課題等と求められる取組の方向性」となっています。今期は「今後の課題」よりも、「これまでの課題」についてもかなり整理して検討したので、タイトルについては「今後」という表現のみで大丈夫なのかなと思っています。「直面している課題と求められる取組」ということで、前向きに私たちの今期の議論をまとめてもいいのかなと思いました。
 特に私は、市長経験者なので重視したのが、例えば本文の108ページに、「時代のニーズに対応した高度な資質・能力を有する法曹の養成」として、「1、法的紛争の予防及び解決に際した国際的な視野」、そして2として、「法曹の職務の拡大によって、法規律が存在しない分野で、公正かつ効率的なルールや標準を新たにつくり出す能力」、「3、エビデンス・ベースで政策決定を行うための、実証研究や経済分析等の他分野の知見等を活用できる能力」と列挙していただいたのは、とても重要なポイントだと思うんです。つまり、既存の法について適切に対応するのみならず、変動する社会において適切な法の支配を実現し、公正な法秩序の堅持のために、法曹に求められる法政策の形成能力は、国にとってだけでなく、自治体にも不可欠で、この108ページの列挙というのはとても重要だなと思いました。そして、併せて法科大学院の取組も紹介していただいているところに特徴があります。
 2点目に111ページなんですけど、少子化との関係で、概要にも明記していただいておりましたが、総括の最後のマルに記載していただいています。すなわち、「人口減少時代においても法曹志願者増加を図っていくために取組をしてきて、令和2年度から令和5年度において法曹志願者数が増加傾向にある」と。「その要因は、皆様の持続的な法曹志願者の確保に向けた発信があった」というところです。実は、間もなく中央教育審議会で取りまとめが行われる、大学分科会が特別部会をつくって検討してきたのが、「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方」です。まさに法科大学院だけではなくて、高等教育全体が急速な少子化の中でどう持続可能性を持っていくかを課題としているわけです。したがって、今期の法科大学院の取組が示してきた1つの上向き傾向というのはとても重要な証左だと思いますので、ぜひ発信していただければなと思います。法科大学院の関係者だけにとどまらずに、高等教育全体に法科大学院の取組の一定の成果を発信していただければと思います。
 最後に3点目なのですが、今回、項目4として「法科大学院教育を担う教員の確保」と、5点目に「法科大学院教育と司法修習との連携強化」を明記することができました。これは、私は本当に重要な項目だと思っています。法科大学院が本当にいい教育をしていくためには、本当に「質の高い教員の確保」が重要です。これをしっかり明記できたこと。そして、そのためにも、「法科大学院教育と司法修習の連携強化」が、「法学部と法科大学院の連携強化」に加えて大いに前進していただいていること、本当にこれはとても重要な項目を明記できたと思います。ですから、通算124ページの「おわりに」に列挙されているマルの内容は全部重要なんですけど、特に最後から2番目のマルに、「地域の司法を支える人材の養成と教員の確保に係る取組はこれからも検討を行っていく」と書いてくださっています。「おわりに」に記載されている内容は全部重要なんですけれど、やっぱり法科大学院が、いろいろな改革の中で20年、法曹志願者を増やしてきたということを踏まえて、さらに持続可能なものにするために、この「おわりに」の部分を、「おわりに」というタイトルではなくて、「今後の発展に向けて」とか「今後の課題解決に向けて」とか、そういうタイトルにしていただいて、検討の継続性を示すためにも「おわりに」というタイトルにしないでいただいたほうがよいのではないかなと思いました。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【松下座長】  どうもありがとうございました。この辺は事務局で工夫していただけるものと思います。
 それでは、続きまして髙橋委員、お願いいたします。

【髙橋委員】  ありがとうございます。一橋大学の髙橋でございます。網羅的で丁寧なまとめをいただきまして、ありがとうございました。
 1点だけ、本日前半で話題になっておりました在学中の受験に関連して、資料の通し番号の116ページから117ページの囲みの中の最後にあります「在学中受験導入による法科大学院教育への影響」という項目の整理について、意見を述べさせていただければと存じます。
 この資料には、在学中受験が学生のモチベーションにはおおむねポジティブな影響を及ぼしていて、課題は授業内容であるとかカリキュラムの編成といったところにあると記載されていると思いますが、脚注の29にもありますけれども、第116回の本委員会の資料から、各法科大学院へのアンケート結果を改めて拝見しましたところ、不合格者・合格者双方のモチベーションにネガティブな影響も見られるという指摘も少なからずございました。大変個人差の大きな問題だと思いまして、司法試験の結果をもって改めて意欲向上の契機につなげているという方も確かにあるだろうとは思うのですけれども、他方で、合格者・不合格者・不受験者が教室に混在する状況の中で、合格者・不合格者双方に、3年後期の学習のモチベーションにマイナスの影響を及ぼしているという報告も複数存在するようでございます。特に不合格者の方に対しましては、今まさに3年生最後の学期が進行しているという中で、モチベーションであるとか、あるいは精神面でのケアであるとか、日常的な法科大学院側の対応において、かなりデリケートな問題が生じていて、各科目の授業の中身であるとかカリキュラムといったところにとどまらない、全体的な環境の調整という側面から意識的に取り組まなければいけない状況が生じているということも、実感としてあるところでございます。
 こうしたことは、必ずしも制度的な改善をもって容易に対応できるという問題ではないと思うのですけれども、本日前半でも修了者対応というのが課題の一つとして挙げられていたように、在学中受験の結果発表後のモチベーションの転換というのがうまくいかないと、在学中受験の合格者と、修了後に受験を続ける方の差というのがますます広がるということになりかねず、特に一般的に見て、法学の学習に慣れるまでに少し時間がかかりがちな未修者の学習者にとってあまり望ましくない環境につながりかねないという懸念もございますので、少なくともそういったネガティブな指摘があったということは書きとどめておいたほうがよいのではないかと思いました。
 以上でございます。ありがとうございます。

【松下座長】  ありがとうございました。今、画面に出ている2つ目のポツあたりの書きぶりの問題でしょうか。それはぜひ、今の御指摘を踏まえて、事務局において御工夫をいただけるものと思います。ほかはいかがでしょうか。
 大貫委員、お願いいたします。

【大貫委員】  時間がないところ、ありがとうございます。これまでの議論を踏まえて、本当によくまとめていただいたと思います。
 改めて読んでみて1点だけ申し上げます。なかなか難しいのですけれども、最初の、法科大学院20年の歩みというところは、これは本当に、関係者がこれを読むと感慨があると思います。こんなに大変だったんだなということが改めて思い起こされ、私も一部に関わっておりますけれども、感慨深いものがあります。ようやく皆さんの努力で、少し小康状態を得ていると思っております。
 まとめ方について異存はないのですが、総括のところなのですが、やや言いにくいのですけれども、先ほど富所委員もおっしゃった、「深刻な課題を抱えた法科大学院」と、ここに出てくるわけです。少し定義らしきものがあるのですけれども、どういう意味で深刻なのかというのは確かに分からないので、修文が難しいですけれども、対応が必要だとは思います。
 私は、法科大学院がこれだけ困難になったのは、やはり率直に言えば法科大学院ができ過ぎたということが1つ重要だと思うのですが、私の見る限り、そのことは明示的には出てこないのです。個人的な考えですけれども、教育に競争原理というのはどの程度妥当するものかという、根本的な問題にも関わるのではないかと思っています。総括ということで、法科大学院ができ過ぎたということは事実として言えるのではないかと思いますが、そういったことにも言及してほしいなという気はいたします。
 それから、弁護士の就職難ということが書いてあるのですけれども、これもそのとおりなのですが、これは私の個人的な意見ですけれども、多くの法曹を生み出して、弁護士さんを念頭においていますけれども、弁護士さんを受け入れるための仕組み、弁護士さんと仕事・職域をうまく結びつける仕組みをセットしておかなかったということが、やはり大きいのかなと私は思っております。もしそういう分析が妥当でなければ、それはそれまでですけれども、そういったことも書き込んでいただけないかなと思いました。
 以上でございます。

【松下座長】  どうもありがとうございました。マックスで74校などという辺りをどう書くかという問題かもしれないですね。

【遠藤室長】  事務局から補足させていただきます。もちろん、いただいた御指摘を踏まえて検討したいという前提ですけれども、「20年の歩み」については、その時点時点での、政府や審議会の報告でまとめていただいた内容や表現ぶりを、できるだけ忠実に記載するという哲学で整理しております。今、大貫先生がおっしゃったような内容を本文にどのように書けるかというのは、よく考えたいなと思います。御指摘ありがとうございます。

【松下座長】  どうもありがとうございました。土井委員、お願いします。

【土井座長代理】  お時間のないところ、すみません。
 法科大学院制度、20年の歩みを適切に整理していただいて、また今後の方向性を示す、よい取りまとめ案を作成していただいて、ありがとうございます。基本的に私自身はこの取りまとめに異論はございませんので、法科大学院教育の今後の在り方について、私の意見を述べさせていただきます。
 このまとめ案は、今後の法科大学院の方向性について、第1には、法曹として必要な法的知識・技能等を備えた者を確実に輩出し続けること。第2に、法曹が活躍する多様な分野を開拓し、そのような分野で活躍できる多様な人材を配置すること。この2つの柱を掲げていただいているのだと理解しております。第1の方向性は、まさに法科大学院制度が20年をかけて取り組んできた課題で、先ほど来出ていますように、法科大学院の統廃合など痛みを伴う取組を通じて安定した成果が出てきていると思います。残された課題は、まとめ案にも記されているとおり、5年一貫教育の円滑かつ安定した実施になるだろうと思います。
 個人的には、学部で3年を過ごすのか4年を過ごすのかは、学部で何を学び経験するかという学生の皆さんの選択の問題ですので、どちらかを制度として強いるべきではないと考えますが、ただ3年卒業を望む学生の皆さんが相当数おられる以上は、連携協定を有する全ての法科大学院と法学部が、法科大学院で学ぶために必要な知能・知識等を身につけることができる教育課程を確立することが必要になると思います。
 第2の方向性につきましては、企業内法務、国際分野、先端的課題など、いずれも重要な部分を取り上げていただいています。この中で、女性法曹の輩出は、全ての法科大学院が取り組むべき課題だと思いますが、そのほかは各法科大学院がその特色を生かして創意工夫すべきだと考えています。従前から、法曹の数を増やすことで法曹の活躍分野を拡大するのか、法曹の活躍分野が拡大して初めて法曹の数を増やせるかをめぐる議論がございました。ただ、現実はその中道を行くものになってきているのだと認識しております。今後、法科大学院は、大学が提供する教育課程であるという特性を生かして、積極的に法曹が活躍する分野の拡大に貢献していくべきなのだろうと思います。また、このような目標を実現していくためには、この法科大学院等特別委員会と認証評価機関、あるいは法科大学院協会等がどのような役割分担をしていくのかということについても、検討しておく必要があるのかなと思っております。
 最後に、今回、法科大学院教育を担う教員の確保との関連で、通し番号122ページの3つ目の丸で、法科大学院等の教育を担う教員は、我が国の司法を担う法曹を養成するという重要な使命を担っており、その職務が進路の一つとなり得るような取組が必要であると記していただいています。ただ、最初に加賀委員がおっしゃられましたように、基本的な教育の上に多様で発展的な教育を充実していくということになりますと、これはかなり大きな負担を伴うということになりますので、やはり法科大学院の教育体制・環境を充実するための取組というのが、残された課題になるのではないかなと思っております。
 私からは以上です。

【松下座長】  どうもありがとうございました。
 現時点でほかに挙手されている先生はいらっしゃらないようですけれども、まだ時間が若干ありますので、どなたからでも、どの点についてでも、御発言をお願いできればと思います。
 それでは、久保野委員、お願いいたします。

【久保野委員】  ありがとうございます。遅れて参加いたしました。失礼しました。
 この取りまとめにつきまして、適切にまとめていただいたものと感じております。
 2点、コメントですけれども、1つは、2の「5年一貫教育のより円滑な実施」の中で、「法曹コース(R2~)」というところの4つ目に、地方枠に関わるような言及をしていただいているところは、非常に大事な点に触れていただいたものとありがたく思っております。制度設計の中で、地方枠の設置ということがございまして、数が多いという性質のものではありませんが、法科大学院の社会的な使命を考えたときに重要な点かと思います。
 2点目は、先ほども言及のありました教員養成に関わる122ページあたりの点に関わるのですけれども、京都大学でのお取組の中で、経済的な待遇が充実しているという御紹介があるのですけれども、一般的な記述のほうでは、課題として経済的支援については、現状では、見落としがなければ、触れられていないようにも思いました。この点、大学院に入るということによる経済的な面でのマイナス面を補うということが確保できるかというのが重要な課題となっていると認識しておりまして、東北大学でも現にその点がネックになって進学していただけないというようなことも起こっているということもございまして、もし可能でしたら、課題のほうにも、経済的な問題があるということについて触れていただけるとありがたいと思いました。
 以上です。

【松下座長】  ありがとうございました。
 ほかに手を挙げている方はいらっしゃらないですかね。それでは、おおむね定刻ですので、特に御発言がなければ、以上とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 冒頭申し上げましたとおり、さらに御意見があれば、会議終了後に事務局宛てにメール等でお寄せいただければ、今回の議事録に反映したいと考えております。
 それでは、特に御発言がないということであれば、ここで本日の議事を終了いたします。今後の日程については、事務局から追って連絡していただきたいと思います。
 それでは、本日の特別委員会は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。


以上

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

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