令和6年10月25日(金曜日)14時00分~16時30分
【松下座長】 それでは、所定の時刻になりましたので、第117回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、御多用の中、御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は、ウェブ会議として開催をしております。本委員会は公開が原則のため、この会議の模様は、ユーチューブライブ配信にて公開をいたします。
ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際には、挙手のマークのボタンを押していただき、指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言をいただきますようお願いいたします。また、御発言終了後は、再度挙手のボタンを押して、挙手マークの表示を消していただきますようお願いいたします。御発言のとき以外は、マイクをミュートにしていただくなど、御配慮いただけますと幸いでございます。
また、御出席された方が全員御発言できますように、大変申し訳ありませんが、御発言は、1回当たり上限2、3分程度を目安にお願いできればと思います。さらに御意見がある場合には、会議終了後に事務局にメールでお寄せいただければ、今回の議事録に反映したいと考えております。委員の皆様の御協力のほど、よろしくお願いいたします。
それでは、本日も活発な御審議をどうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【遠藤室長】 今回の資料につきましては、資料1から5までが全80ページ、また、参考資料1から19までが全58ページとなっております。今回の資料と参考資料につきましては、文部科学省のホームページでも公開をしております。その他、不足がございましたら、御指摘いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。委員の皆様方、お手元の資料は大丈夫そうでしょうか。
それでは、議事に入ります。
議事の1、法科大学院の特色・魅力について(国際)(リカレント)です。
今期の審議に当たっての基本的認識も踏まえて、前回に引き続きましてこの議題を設けたいと思います。今回は、国際をテーマに取組を進められている大学の一つとして東京大学より、そして、リカレント教育をテーマに取組を進められている大学の一つとして慶應義塾大学より、それぞれの現在の取組や今後の展望について御発表いただき、その後、質疑の時間を設けたいと思います。進行の都合上、質疑はまとめて行わせていただきます。
それでは、まず、東京大学大学院法学政治学研究科の垣内秀介副研究科長から、国際分野に関する取組を御紹介いただきます。よろしくお願いいたします。
【垣内教授(東京大学)】 東京大学の垣内でございます。
それでは、東京大学法科大学院における国際的な取組について御説明をさせていただきます。画面の共有をさせていただければと思います。今、スライドのほうは御覧になれていらっしゃいますでしょうか。ありがとうございます。
まず、取組の全体像ということで図をお示ししておりますけれども、私どもの法科大学院におきましては、教育研究上の目的の中で、国際的法分野でも活躍し得るという点を挙げておりまして、開設当初から国際的にも活躍できる法律家の育成ということを重視してまいりました。また、学位授与方針におきましても、国際的法分野についての精深にして広範な知識という点を達成すべき目標の一つとして掲げておりますが、人間と社会に関する広い視野と深い洞察ということにも言及しておりまして、国際的な取組はこういった点にも深く関わるものと考えております。
本日御説明いたします各種の取組は、こうした目標を達成するための取組として位置づけられるものでありますけれども、その中核には、図では右下のほうにあります法科大学院の授業そのものとしての取組でありますとか、それに加えて、海外の動向であるとか、あるいは海外の視点に触れるための様々な機会を提供しているということになります。
教育研究上の目的、あるいは学位授与方針については、次のスライドにまとめておりますけれども、詳細は別紙の資料1を適宜御参照いただけましたら幸いです。
以下では、本法科大学院におきまして注力している取組について、幾つかピックアップをして御紹介をさせていただきます。
まず、英語の授業ですけれども、2年次、あるいは3年次におきまして、法のパースペクティブ、あるいは、英語で学ぶ法と実務1、2といった形で、今年度は年間で14科目ほど、毎年大体同様ですけれども、英語による授業を提供しております。詳細については、別紙資料2に記載をしてございます。
また、別紙資料3にもございますけれども、履修者の数としましては、累計で100名前後ということになっております。別紙資料作成の時点では、今学期、今年度の後半の履修登録者数がまだ反映できていなかったのですけれども、つい先日履修登録が完了いたしまして、今年度も合計で100名強という状況になっております。相当数の学生が取り組んでくれていると言えるかと考えております。また、ここ数年、海外出身の教員の採用を積極的に進めておりまして、このことも英語による授業の充実につながっていると言えるかと考えております。
次に、サマースクールですけれども、これも法科大学院が創設されました2004年以来、コロナ禍で中止となりました2020年を除きまして、毎年開催をしてきています。今年でちょうど20回ということになりました。これは、別紙資料4などにもございますけれども、講師としては、基本的に海外の研究者、あるいは実務家の方にお願いをしておりまして、授業は全て英語で行っております。試験も英語の筆記試験ということでやっております。今年度は、競争法のテーマで開催いたしましたけれども、ちょうどサマースクールの期間中に、アメリカの連邦地裁におきましてグーグルに対する重要な判決が出されるといったことがあり、それがすぐ翌日の授業でまた取り上げられるといったようなこともありまして、学生たちには非常に刺激を与えることができたのではないかと考えております。
このサマースクールですけれども、本学の学生に加えて、海外の大学の学生ですとか、あるいは法律事務所、企業等の社会人の方々など、日頃法科大学院の授業では直接接することのない多様なバックグラウンドの方々に参加していただいております。合宿形式を取っているということもありまして、非常に濃密な交流の機会を提供できているのではないかと考えております。今年度は、法科大学院生としては23名が参加しておりまして、全員無事単位を取得することができたということです。
続いて、海外派遣プログラムですけれども、こちらは、在学中の学生、あるいは修了直後の修了生を1か月程度海外の法律事務所等に派遣するというものになります。時期としては、基本的に夏から秋にかけての期間としております。往復旅費、あるいは滞在費につきまして、大学から一定額を支給しておりまして、大きな負担にならないようにということで配慮をしているということです。
こちらの海外派遣は、従来は専ら修了生を対象としていたものですけれども、司法試験の在学中受験が開始されたことに伴いまして、司法試験受験後の3年生も対象に加えるということにいたしました。その結果、現在では在学生の参加が増えてきているという状況にあります。今年度ですと、ヨーロッパ、アメリカ、あるいは韓国の法律事務所に合計7名を派遣しているということです。派遣先人数の詳細等については、別紙資料8を御参照ください。
また、こちらは最近新たに始めた取組ということになりますけれども、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学法学・犯罪学部との交流協定に基づきまして、同大学のサマースクールへの参加というものを行っております。この交流協定そのものは、2022年に締結されたもので、サマースクールへの参加は昨年度、2023年度から開始をしております。こちらも旅費の補助のために奨学金を支給しておりまして、昨年度、今年度各2名の学生が参加しているという状況です。別紙資料9に参加者の感想なども含めて掲載、紹介しておりますので、適宜御参照いただければと存じます。
また、こちらはこれから開始を予定している取組ということになりますが、日本法ウインタープログラムというものを始めようと考えております。こちらは、主として海外の学生向けに英語で日本法を学んでもらうということを目的としているものですけれども、本学の法科大学院生についても、授業としてこれを受講することを可能としております。こちらは2025年2月、来年2月に第1回目のウインタースクールを開催する予定で現在準備を進めているところです。
また、以上のほかに、主として研究者を志望する学生等を対象としまして、ドイツ語、フランス語の入門講座ですとか、随時、各種の講演会等も実施しております。これらについては、適宜別紙資料を御参照いただければと存じます。
最後に、こうした取組を進める上で課題と感じられる点につきまして、簡単に触れさせていただければと思います。まず、何といっても最大の問題としましては、各種取組を続けるための財源の確保ということがございます。この点につきましては、以前ですと、例えば以前のグローバルCOEプログラムなどのプロジェクトの資金などを充てるということができた時期も過去にはございましたけれども、現在は基本的には各種の御寄附に頼らざるを得ないという状況になっております。ですので、こういう取組をさらに継続し、発展させていくというためには、そういった財政、財源の面での強化、場合によっては支援がいただけると大変ありがたいと考えられるところです。
また、取組を支える人的な体制、これは、実施を担います教員に加えて、事務職員、あるいは補助職員も含めてということになりますけれども、そうしたスタッフの確保も重要な問題となります。今後さらに取組を充実していこうとする場合には、こうした人的体制をさらに強化していくということが必要と考えております。特に、海外との交流を進めるという観点からしますと、先方との信頼関係の構築ということも非常に重要となりますので、ある程度継続的にこういった業務を担っていただける人材というのが不可欠と考えております。
また、こうした国際的な取組ということになりますと、これは例えば司法試験の合格ということに直ちにつながるということにはなりませんので、学生の関心が司法試験といった短期的な点に集中してしまいますと、せっかく機会を提供しましても、笛吹けど踊らずといったことになりかねないという面があります。そのため、こうした取組への関心をどのように高めていくかということも課題であるというように考えております。
最後に、制度的な面ということで申しますと、やや細かいお話となりますが、単位認定に関する問題などが最近悩ましく感じられているところです。現在、専門職大学院設置基準上、外国の大学院で履修した単位を法科大学院で認定するということになりますと、入学前の既修得単位と合算した上で、上限の範囲内でということになっておりますけれども、未修者、あるいは認定連携法曹基礎課程の修了者の場合には若干の余裕があるのですが、そうでない一般の既修者の場合ですと、上限30単位ということで、かつ、その30単位が基本的には法律基本科目、基礎科目の修得とみなすという関係で使い切ってしまうという形になっておりますので、外国に留学して単位等を取得しても、法科大学院の側では認定の余地が全くないといったことになりそうでありまして、今後、1学期間等の長期の留学等をさらに後押ししていくという観点からしますと、多少なりとも単位修得が可能であったほうが、学生としても取り組みやすくなる面はあるのではないかと感じております。こういった点について、何らか検討の余地があるかどうかといったところも課題として感じているところです。
大変雑駁でありますけれども、私からは以上とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、慶應義塾大学大学院法務研究科委員長の高田晴仁教授から、リカレント教育に関する取組を御紹介いただきます。よろしくお願いいたします。
【高田教授(慶應義塾大学)】 慶應義塾大学の法務研究科委員長を拝命しております高田晴仁と申します。専門は商法でございまして、こちらに御出席の弊学の北居功先生の後を引き受けまして、昨年10月1日より委員長を務めさせていただいております。弊学は研究科長という呼称ではなく、研究科委員長という呼称を使っております。私のほうも画面共有にてお話を進めさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
リカレント教育の現状と課題ということにつきまして、弊学のまさに現状と課題についてプレゼンをさせていただくということでございまして、リカレント教育は、弊学におきましては、2014年度から開始させていただいております。これは、専門性の高い継続教育の実施を目的とするという抽象的な目的でございますけれども、やや具体的に申し上げますと、弁護士などの実務家は、従来、旧試験時代は、現在の新試験で選択科目として要求されておりますような各専門分野についての試験というのは行っていなかったということもございまして、そういった分野につきましても新しい法律学の知識を御提供したいということがございました。
それから、授業担当者の判断によるものでございますけれども、法曹資格者以外、特に実務で一定の法律学の知識が必要であるというような方々にも、ぜひそういった知識を提供させていただこうというわけで受入れをさせていただいております。
これは、法科大学院一般の話になりますけれども、理論的・体系的な内容に基づきまして、分量もよくございます各種研修とは違いまして、体系的に分量も多めに御提供ができるということでございます。
さらに、これもまた法科大学院の特徴でございますけれども、一方的に座学的、講座的なやり方ではなくて、双方的な教育手法によって実際に実務で使うスキルを修得していただこうということでございました。
弊学では、2本立てで構成しております。やや混み入りますが、ここで2本柱ということをまず御紹介申し上げたいと思います。
1つ目の柱が、理論的・体系的な継続教育ということで、春学期、秋学期の2回募集させていただいておりまして、こちらは、法曹資格は必須ではなく、お持ちでもお持ちでなくても構いませんということで、さらに2つに分けております。1が専門法曹養成プログラムと称しておりまして、2が個別科目履修プログラムと称しております。非常にお分かりになりづらいかと思いますけれども、ここで用語を頭出しで申し上げる次第でございます。
2つ目の柱が、弁護士モニターの受入れということを行わせていただいております。
第1の柱のほうから逐次御説明申し上げますと、第1の柱は、理論的・体系的な継続教育ということでございまして、1の「専門法曹養成プログラム」、大きな柱の1番のそのまた1番でございますが、こちらは、租税法、労働法、知的財産法、経済法、環境法、倒産法の6つの分野につきまして、専門的な知識と能力を御修得いただくということで、言ってみますと、新司法試験施行前の段階の旧試験では特に試験分野として扱っていなかった、さらに遡りますと、この科目の中には、旧試験時代のそのまた昔は選択科目として存在していた分野もございますが、こちらを原則として1年間時間を見込んでいただいて、プログラムを組ませていただきます。
この修了認定を受けるためには、指定された授業科目から4単位以上を御修得いただき、かつ、ちょっと重い要件にはなりますけれども、指導教員の指導に従っていただいて、リサーチペーパーを執筆して、審査に合格していただかなければならないということになってございます。これに要しますコストにつきましては、ちょっと不躾な話になりますが、審査料を1万8,000円頂き、登録料を8万円頂きます。授業料は年に19万円お支払いいただいております。
なお、残念ながら、これは恥を忍んでという話にもなりますけれども、この専門法曹養成プログラム、1年間勉強していただいて、リサーチペーパーもお出しいただくという方が、修了認定は2015年度の3名、労働法、経済法、知的財産法各1名にとどまっておりますということでございまして、以後、続いていないということが現状としてございます。これは、リサーチペーパーの負担が重い、あるいはその期間をあらかじめ1年間、激務とは別にその時間を確保していただくといった理由があるのではということで、原因及びその対応については検討しているというところでございます。
さらに、1つ進ませていただきまして、1つ目の柱の2でございます。これは、「個別科目履修プログラム」ということでございまして、分野が少し多くございます。租税法、労働法、知的財産法、経済法、環境法、倒産法、会社法、グローバル法務、国際紛争解決、これら9分野につきまして、基礎的・体系的な知識を修得していただこうということでございます。このうち、グローバル法務の受講にはあらかじめ一定程度の英語力の目安といたしまして、TOEICで800点はお取りでないと、なかなかこの授業についていくということは難しいですよということはお示しさせていただいているところでございます。2024年度の提供科目につきましては、恐れ入りますが、時間の関係でリンクの先に御提示させていただいているところでございます。
こちらは、ややお分かりづらいポイントかと思いますが、もう一つ、個別で、アラカルトで、1科目でも御提供科目を履修していただけるものですが、ある分野につきまして6単位固めて履修していただく、あらかじめ計画なさっていても、あるいはなさっていなくて、1科目取って、面白いからもっとやってみようということで差し支えございませんが、6単位御修得いただきますと、修了認定というのを差し上げております。こちらは、費用といたしましては、どちらにいたしましても、1単位であろうと、審査料は頂き、登録料も頂き、授業料は1単位当たり3万8,000円お支払いいただいております。後ほど出てまいりますが、高いんじゃないかというちょっと厳しめのお声もいただいているところでございます。
こちらは、個別科目の履修プログラムで6単位積み上げまして、修了認定を受けられた方は、足元でも1名ほど出ておりますが、現状、この一覧の中では10名ということでございまして、女性はちょっと少なめで1名、それから、企業の方が1名、こちらの修了認定をお取りいただいているということでございます。
大きな柱の2番目でございますが、こちらは弁護士モニターの受入れです。弁護士モニターは、弁護士の方ならどなたでも結構ですという形じゃなくて、一応建てつけがありまして、1つは日弁連様を通した募集、もう一つは私どもの言わば身内になるんでございますけれども、三田法曹会という慶應義塾大学の法曹資格をお持ちのOBOG団体からそれぞれお受入れをしております。
日弁連さんは毎年7月に募集をさせていただきまして、日弁連のホームページでは広報していただいていることでございますけれども、秋学期に向けて10名のモニターを募集させていただいております。科目にあまり偏りがございますといけないということで、各科目およそ5名を上限としておりまして、それを超えてしまうと抽選を行うということがございますが、実態といたしまして、提供科目が多いこともございまして、そこまで集中ということはあまりございません。累計で、日弁連様からモニターをお受入れしたのが84名の方ということでございます。
他方で、身内の三田法曹会は半分の5名のモニターを募集させていただいておりまして、ほかの条件は日弁連さんと同じですが、こちらは累計で計26名ということになってございます。
中には、モニターから入れられまして、モニターですので授業料は頂いておりませんが、さらに勉強を続けられるということで、有料の先ほど御紹介申し上げました個別の科目を履修されるという方もいらっしゃるということでございます。
こちらは、非常にざっくりした数字で大変恐縮でございますが、履修者の総数という形でデータを集計させていただいております。履修期間1セメスターだけで終わった方は、人数126名、今までの累計履修者の総数の74%の方が、1セメスターだけで必要な学識は得られましたということで、その後は特にお越しになっておられないということでございまして、他方、2セメスター、3セメスター、4セメスター、中には7セメスター通われている方もいらっしゃいまして、我々としてはありがたい限りでございますが、お三方いらっしゃいます。比率は2%にすぎませんが、うちお一人の方は、実は企業の方でございますが、大変優秀で、研究熱心でいらっしゃるということで、法科大学院の非常勤をお願いするということになってございます。こういった席で申し上げるのは差し支えがあるかもしれませんが、釣った魚にえさをもらうという言い方もできるかもしれません。
人数の比率は上2つでございますが、特に企業・団体の方がこちらに記載している数字のとおりでございます。さらに、総数のうち英語の科目を1科目でも履修された方は、数字を集計いたしまして、いい意味で意外でございましたが、1セメスターだけ履修していただいた126名の方のうちの88名の方、うち女性内数が30名でございますけれども、英語の科目を履修していただいているということで、英語の法律知識、あるいは実務知識を求めて、このリカレントのコースをお取りになっていただける方が結構多いという実態をここでお示しできたのではないかと思っているところでございます。
有料の履修者、それから無料のモニターの方々は区別しておりませんのは、先ほど申しましたように、モニターから入門して履修者に進まれてという方もいらっしゃいますので、きれいに2つに分けづらいということもあり、同じお声を重ねていただくこともございますので、ここは両方まとめる形で御意見を記載させていただいております。1科目から受講できるところがよいとおっしゃっていただいたり、あるいは法曹資格をお持ちではない方にも出願資格を認めているのがよいと言っていただいたり、実務の現場で役に立つ実務的な内容が多いのはよろしいというお声、それから、中には、インハウスでお勤めの弁護士の方から、なかなか弁護士といってもインハウスと仕事の仕方が違うので、専門知識をこちらのリカレントで身につけることができて結構でしたというご意見もいただいております。
さらには、これは我々にとってはありがたいお声でございますが、英語の授業に関しまして、留学に行くと非常に費用も時間も大変だと。日本国内で会社が引けた後にいらっしゃって、英語科目を学ぶというのは、実務家の隠れたニーズの掘り起こしになっているのではないかというありがたいお声をいただき、かつ、我々の法科大学院の中には専攻が2つございまして、日本の司法試験向け、法曹資格向けの法曹養成専攻と別に、定員30名の英語のみで1年間で学位を差し上げるグローバル法務専攻、いわゆるLL.M.がございますが、そちらはほぼ留学生で占められておりまして、英語科目にはLL.M.の留学生がヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアから集まっていて、いろいろな留学生と交流ができるというのは、人脈づくりの面でもなかなかよろしいというお声をいただいております。それから、個別履修を積み上げまして、修了認定も受けられるので、頑張る目標があってよろしいというお声もございます。
課題といたしましては、これはなかなか我々にとって厳しい御指摘でございますけれども、仕事時間中は授業に出られないので、始業前か、終業後に授業を設置できないかというお声がございまして、実際のところは、6時限を中心に授業時間を設定しておりますので、18時10分からということになります。それより遅くなりますと、事務の体制もなかなか厳しいということもございますので、これは検討課題としてはなかなかハードルが高いということでございます。
それに比べますと、我々にとってすぐに対応をしなければならないのがシラバスで、せっかく取る授業は、忙しい中、授業に参加することが無駄にならないように、レベル感が分かるようにしてほしい、あるいは、一遍受講したのだから、一種のアルムナイとしてその後も継続的に情報提供していただけると「もう一遍行こうか」という気になるので、そのような仕組みをつくってくださいというご意見を頂戴しております。
最後に、ほかのロースクールに比べて受講料、登録料が高いんじゃないかというご意見がございます。これは、申し訳ないですけれども、全学の基準というものがございまして、我々だけでディスカウントするというのは厳しい状況があるということでございます。
課題の検討でございますけれども、先ほど申し上げましたように、恥を忍んで御紹介させていただきましたように、1本目の柱の1で「専門法曹養成プログラム」の修了の認証数が不振であるということがございます。これは、要件が厳し過ぎることが響いているということでございますので、こちらは工夫させていただきまして、もっと履修しやすい方向で検討しているところでございます。個別の科目の履修プログラムのほうは、アラカルトのほうは、御紹介申し上げましたように、履修者数、あるいは6単位を取って修了認定を差し上げた数はそれなりに安定しておりますので、リサーチペーパーの扱いをどうするか等は要検討の点かと存じます。
それから、企業・団体職員の方のリカレント履修者をもっと上げていきたいということを我々は考えておりまして、弁護士のモニター制度はそれなりに機能しているという認識でございますが、現状では、企業さん、あるいは団体さんにどうぞ無料でお越しくださいというモニター制度は持っておりません。これは、どういう企業、あるいはどういう団体に無料席、無料チケットを御用意するかという、そこも難しいということもございますが、あるいは我々のLL.M.の留学生のインターンに御協力いただける企業には、お礼の印あるいは今後の関係を深めるということも含めて、無料の受講を御提供するということも検討しているところでございます。先ほど申しました開講時間、広報等についてももう少し強めていけるのではないかということを検討しているところでございます。
最後になりますが、将来的課題と提言と何か大風呂敷になってしまいますが、一言申し上げますと、リカレント教育は、我々にとりましてはいい意味で期待を裏切りまして、かなりの受講をしていただいている実績があると認識をいたしております。考えてみますと、当初は未修者中心教育という形で法科大学院は出発いたしまして、法律の知識のない方に法曹資格をお取りいただこうというコンセプトがございますが、多くの選択科目を御用意できている弊学のような法科大学院では、一種の社会的リソースといたしまして、社会人のリスキリング、あるいはアップスキリングという形で法務人材の育成のために御貢献できるのではないかということでございます。
ありていに申しますと、未修者の学生さんは、もう会社を辞めて、ある意味人生をかけて、結構な費用と時間を使って一種の賭けに出ていただく必要がございますが、それに比べますとリスクは小さいし、広く、薄く社会的な貢献をやりやすいという意味で、リカレント教育は今後強めていく、強化する意義が大きいのではないかと認識させていただいております。
工夫の余地は多くございまして、開講時間もそうでございますし、あるいは、遠隔教育でございますね。遠隔の方が参加しやすい、あるいはオンデマンドにいたしますと開校時間から解放されますので、いつでも御視聴くださいというやり方も取れるかと考えているところでございます。
他方で、先ほど東京大学さんからもお話がございましたが、モニター制度を拡充するという形で、社会的な貢献のためにまず誘引をさせていただく、無料ですのでどうぞお越しくださいという形を取る場合には、財務上の手当抜きにはなかなか厳しいものがございますので、受講者の方への財政的補助等による動機づけは政策的にお考えいただけるとありがたいと考えているところでございます。
以上、大変長くなりまして恐縮でございます。お耳汚しをいたしました。御清聴ありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
ただいまの2つの御説明について、御質問、御所感等あれば、どなたからでもお願いしたいと存じます。繰り返しになって恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり2、3分程度までを目安にお願いできればと思います。
なお、本日の質疑応答に当たり、東京大学からは法曹養成専攻長の宍戸常寿教授にもお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
それでは、どなたからでも、どの点についてでも御発言をお願いいたします。
佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 佐久間でございます。よろしくお願いします。
垣内先生、それから、高田先生、それぞれすばらしい取組について、お話をありがとうございました。
私のほうからは、垣内先生に質問させていただきたいのですけれども、国際への取組については特色ということでもあるので、それぞれの法科大学院で本体の法曹養成と国際をどう関連づけるのか、それこそ3ポリシーとの関連も踏まえて、それぞれの法科大学院で考えればいいことだとは思うのですが、リソース的に厳しい法科大学院もあるので、みんながみんな東大さんのようなことができるかというと、なかなかちょっと難しいところもあるかもしれないと思います。
それで、さきほど、サマースクールには海外の大学院生が参加しているというお話がありましたけれども、国内の他大学の学生さんを受け入れるということは可能なのか、可能だとしても、いろいろ課題はあろうかと思うのですけれども、そこら辺のお話を伺えればと思います。よろしくお願いします。
【垣内教授(東京大学)】 どうも御質問ありがとうございます。
サマースクールにつきましては、社会人、あるいは海外の学生さんには今参加していただいているということで、そういう意味では、必ずしも東大の法科大学院生だけではないという形にしているということですけれども、一方で、施設、あるいは教員数と学生数との関係での全体のキャパシティーの問題といったこともあり、また、海外の大学から、今御参加いただいているところ以外からも参加できないかというようなお問合せをいただくことも少なからずあるということもありまして、まずはそちらのほうでもう少し多様性を拡大できるといいのではないかというようなことがありますので、国内の他の法科大学院の学生さんについて、およそあり得ないということはないかと思いますけれども、すぐにどこか別の国内の方に広く門戸を開こうということは、今、直近の課題としては検討はまだしていないというのが現在の状況であります。
この点、宍戸先生から何か補足をいただける点はありますでしょうか。
【宍戸教授(東京大学)】 法曹養成専攻長をしております宍戸でございます。お時間を取りまして恐縮でございます。
資料1-2の6ページを御覧いただきますと、今年度のサマースクールの概要を載せておるわけでございますが、実は本学以外のロースクール、具体的に申しますと一橋大学様のロースクール生お一人に御参加をいただいております。これまで、本法科大学院が交流のある法科大学院に、こういうサマースクールをやるので、もし御参加される方がおられればどうぞということは、専攻長のほうから、それぞれの専攻長あるいは法科大学院長の方に御連絡を差し上げることがございまして、実は私からそういうメールを受け取ったという方がこの場にもおられると思いますけれども、こういう形で若干名の御参加はいただいているところではございます。
ただ、恐らく佐久間先生の御質問の背景にあるかもしれませんが、例えば完全公募制というような形では、今、垣内教授が説明したような事情から取っていないといったところでございます。
私からの補足は以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。佐久間委員。
【佐久間委員】 ありがとうございます。いや、当然そういうことだと思うんですよ。もしほかの大学の学生も受け入れるとなれば、お話の中の課題の中にもありましたけれども、東京大学さんだけの取組ということではなくて、それこそコンソーシアムなり、そういうものをつくっていかないと無理だと思うので、そこら辺は別途東大さんだけではなくて考えていくべきなのかなと思います。ありがとうございました。
【松下座長】 佐久間委員、よろしいでしょうか。
【佐久間委員】 ありがとうございます。
【松下座長】 それでは、続きまして、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学客員教授、前三鷹市長の清原です。
垣内先生、高田先生、先駆的なお取組について御説明ありがとうございます。私は中央教育審議会の委員として、そして、生涯学習分科会長として、お二人の御報告に対してコメントさせていただいて、その後に、松下先生と事務局にお願いをしたいことがあります。
まず、コメントさせていただきます。何よりも、今回のお二人の取組というのは、昨年6月に閣議決定されました、昨年度からの5年間の『教育振興基本計画』の今後の教育政策に関する基本的な方針に位置づけられております「グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成」という方針等に適合的な取組について、法科大学院として取り組まれているということで、敬意を表したいと思います。
そして、『教育振興基本計画』の16項目の施策のうちの4番目に「グローバル社会における人材育成」が位置づけられていて、大学等の国際化が基本施策の例として挙げられています。また、8番目に「生涯学び、活躍できる環境整備」が挙げられていて、その中に、「大学等と産業界の連携等によるリカレント教育の充実」、そして、「リカレント教育のための経済支援・情報提供、女性活躍に向けたリカレント教育の推進、リカレント教育の成果の適切な評価・活用」が挙げられていて、まさに東京大学、慶應義塾大学の本日の取組は、こうした方向性を模索しながら、評価や活用に向けても含めて取り組んでいらっしゃると思います。本当にありがたいことです。
生涯学習分科会としては、今年の6月に、中教審の総会で第12期の分科会の議論の整理を報告したのですが、その中の柱の一つは「リカレント教育」でございました。そこで、昨年の9月に中教審に諮問されました「少子化時代の大学の在り方についての中間まとめ」が、今年の9月に大学分科会から報告されたのですけれども、実は、その中には残念ながらそんなに「リカレント教育」についてはまだ触れられていませんでした。
しかし、先ほど特に高田先生が13ページの課題、方向性のところに、しっかりと「法科大学院としてもリカレント教育をしていくことの意義と可能性」についても大いなる示唆をいただきましたし、垣内先生の11ページの整理の中では、まさに「国際的な視野を入れたときに、法科大学院のさらなる可能性の展望が開ける」ことが書かれています。
実は、大学分科会の取りまとめが報告されましたときに、私はできれば今後の検討の中で、アンケートというか、例えば今日慶應義塾大学ではモニターの声を大いに反映されているということで、モニターというか、大学関係者以外の履修生や学生や高校生などの声を聞いてはどうかということを提案させていただいたのです。その上で、例として、今後の大学の在り方について、厳しい再編統合、縮小、撤退も課題になっていたものですから、私、僭越ですが、法科大学院等特別委員会では、実は多くの撤退の事例も踏まえつつ、法科大学院の皆様が連携、協働を強めてきているということ、また、法科大学院が設置されている関係のある大学の法学部以外の、他の地域の大学の法学部とも協定を交わして、法曹コースを設置して、法科大学院への進学を促し、入学者に増加傾向が見られるということなども紹介しました。
そこで、本日の国際化や、あるいはリカレント教育の法科大学院の事例は、他の専門職大学院や大学院にも示唆に富む内容ではなかったかと思いまして、これからはお願いでございますが、ぜひ大学分科会の中に設置されている特別部会で、法科大学院のこうした先駆的な取組について報告の機会を持っていただいたら、法科大学院の中での共有だけではなくて、高等教育全体への取組に向けた情報の共有になるのではないかなと思いまして、御検討いただければと思うほど、2大学の事例は本当に有益なことだと思いました。
以上です。ありがとうございます。
【松下座長】 ありがとうございました。これは私の一存というよりは、事務局のほうに御検討をお願いすることになりますかね。遠藤室長、それでよろしいでしょうか。
【遠藤室長】 御意見をいただきましたので、どういったことができるか検討させていただければと思います。
【清原委員】 すみません、よろしくお願いします。
【松下座長】 よろしくお願いします。
それでは、続きまして、酒井委員、お願いいたします。
【酒井委員】 酒井でございます。垣内先生、高田先生、充実した御報告をありがとうございました。大変興味深く拝聴いたしました。
質問として高田先生にリサーチペーパーに関連することと、所感として主にリカレント教育について3点ほど述べさせていただきたいと思います。
まず、専門法曹養成プログラムの中のリサーチペーパーの負担が重いと思われることが懸念点であるというお話がありましたけれども、差し支えなければ、大体何字程度のボリューム感のものが想定をされているのかというところと、教員の個別指導について、先生からの御報告で最後にオンラインやオンデマンドの活用も非常に重要になってくるという御指摘をいただいていますが、リサーチペーパーの個別指導にも既にズームは活用されている状況なのかどうかというところを差し支えなければ教えていただきたいと思いました。
次に、所感ですけれども、まず、問題意識としても指摘をされていたかと思うのですが、継続して受講する時間の確保というところを実務家の立場から1点申し上げたいと思います。まず、御了解のとおり、弁護士の仕事は非常に波がございますので、恐らく波が緩んでくると、ちょっと勉強してみようかなという気になるタイミングがやってくるというのは非常に私も理解ができるところです。一方、どうしても、どうにも忙しくなってしまう瞬間というのがありまして、しかもそこに大きな責任が伴ってきますので、そこを乗り越えて学習を続けていくということには相当なハードルがあるだろうなと感じます。
一方、博士課程に入学するとか、MBAに入学するとか、そこまでのもっと大きな学び直しですとかキャリアアップということになると、スケジュールそのものをかなり整理して臨むということになるので、そこは全く違った話になってくるのかなと思います。しかし、通常業務を維持しながらリカレントに取り組むということのハードルは、相当に弁護士にとって高いものだと思いますので、そこに関して課題点として御指摘いただいたようなフレキシブルな対応をこれから可能にしていただくということは、非常に重要になってくるであろうかなと感じました。
2点目として、リカレントの修了認定がもたらす価値を一層上げていく必要があると強く感じるところです。勉強することそのものが実務に直結する、プラスなる、価値があるというのは大前提だと思うのですけれども、弁護士は一定の年次になってきますと、特に法律事務所に所属する者としては、どうしても売上げに責任を持ってくる立場になってくる方が多くなりますので、この時間をかけることで弁護士としての集客であるとか営業であるとか、そういうところにつながってくるかどうかという選択をシビアにせざるを得ないということが出てまいります。ですので、リカレント教育そのものに対する社会的な認知度も今上がってきて、優位性も高まってきている社会状況だと思うのですけれども、我が業界でも、こういうすばらしい教育を受けて、弁護士をしてキャリアが上がっていくんだというような価値をますます発信して高めていくことで、両輪として受講者が増えてくるのではないかと感じたところです。
最後に3点目ですけれども、これは業界的な目線になってくるのですが、弁護士会では日弁連、単位会ともに、現在充実した研修を設けているという実態がございます。それもかなりの割合で、オンデマンドで講座が配信されていて、特に連続講座ですとか専門性を深めていくような実務講座も展開をされているという状況がございます。私もよく隙間時間で、それこそ倍速にしてしまったりして受講するのですけれども、そういうもので知識等を補っていっている弁護士はかなり多いのではないかと思います。したがって、このような研修を越えてリカレントを受講することの意義ですとか、より魅力的なポイントが発信されていると、その選択の際に、「研修だけじゃなくてちゃんと学び直そう。」というような意欲にもつながってくると思いました。そういう選択の観点があるということを一つ御紹介といいますか、指摘をさせていただきたいと思います。
以上になります。ありがとうございました。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、第1の質問の点について、あるいはそれ以外のコメントについて、さらに何かあれば、高田先生、お願いいたします。
【高田教授(慶應義塾大学)】 大変鋭い、すばらしい御指摘、アドバイスをありがとうございます。
第1点の御質問の件でございますけれども、リサーチペーパーの実績が少のうございまして、そのときの実態というものを、恐れ入りますが、私、必ずしも把握していないということで、お恥ずかしいですが、まずおわびを申し上げなければならないということでございます。
今後、御指摘のように、オンラインでのリサーチペーパーの指導ということは当然あり得べしと考えておりまして、ただ、その指導方法、指導内容、それから、仕上がりのリサーチペーパーの分量等は、御指導の先生方の裁量ということで、分野の特性、テーマの特性ということがございますし、何しろ昔と違いまして、一般的に学位論文の量と申しますのは、増やそうと思えばコピー・アンド・ペーストで幾らでも増やせるという恐ろしい世の中になってございますので、特に何万字じゃなきゃいけないということの線引きというのは難しいかと存じているところでございます。
ほかの頂戴いたしましたアドバイスの点でございますけれども、本当に時間の確保のために弁護士の先生にフレキシブルに御受講いただけるような体制、それから、修了認定につきましても、医師の世界の専門医の認定でございますね、そこまで公的、周知性の高いところまではなかなか難しいかと思いますが、修了生の方で、弁護士としてのホームページにこれこれの専門の修了認定を取りましたということを上げていただいている例もございます。
最後に、弁護士会、日弁連さん、単位弁護士会のほうの研修でございますけれども、実は、過去には私どものほうから、ぜひこれを弁護士会の研修のメニューに入れていただけませんかというオファーもしたことがございまして、今のところなかなか難しゅうございますけれども、行く行くは特に英語科目の御提供とかは我々のほうがやりやすいということがあるかもしれませんので、ぜひその辺は御相談させていただければと思っているところでございます。本当にありがとうございます。
【松下座長】 ありがとうございました。酒井委員、よろしいでしょうか。
【酒井委員】 ありがとうございました。非常によく理解できました。
【松下座長】 それでは、続きまして、前田委員、お願いいたします。
【前田委員】 どうも、前田でございます。
本日は、垣内先生、高田先生におかれましては、すばらしい取組の御紹介をいただきまして、ありがとうございました。私の所属しております神戸大学でも、類似の取組というのはしておりますけれども、我々のところにはないすばらしいプログラムを御紹介いただきまして、私としても非常に勉強になるところが大でした。
私からは、高田先生のほうに、リカレントプログラムに関して御質問させていただきたいと思います。今回のリカレントプログラムというのは、修了認定というものは出しますけれども、特に学位をあげるわけではない、そういうプログラムだということだと思います。こういったリカレント教育を大学側が提供するときに、修了認定だけを出すというものもあれば、修士の学位、博士の学位を差し上げて、さらに深く教育をするといういろいろな段階があると思います。それぞれにメリット、デメリットというのがあると思うんですけれども、高田先生、あるいは慶應義塾大学として、段階ごとにどういったニーズがあって、各プログラムがそれらのニーズにどうやって応えていると捉えていらっしゃるのかというのをぜひ教えていただければと思います。
と申しますのも、神戸大学でも授業を履修できるだけのプログラムというのも用意していれば、さらに、より深く、博士号を与えるというプログラムも用意していて、それぞれにメリット、デメリットがあって、どれだけうまく実務家の方々の需要を捉えられているのだろうかということは常に考えているところでございます。ぜひその辺りについて御意見があれば頂戴できればと思いました。よろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、高田先生からよろしくお願いします。
【高田教授(慶應義塾大学)】 貴重な御意見、鋭い御質問ありがとうございます。
私どもが修了認定という仕組みをつくらせていただいておりますのは、御指摘のように、修士とか博士とかいうことになりますと、学位の授与基準、公的な基準をきちんとクリアしなきゃいけないということもございまして、例えばアラカルトで頑張って6単位を取ったら、その専門の分野は勉強しましたねという、言わば草の冠とでも申しましょうか、いきなり高いところのハードルを越えるというところではないけれども、勉強はしましたよということで、実質的にともかく例えば知的財産法について知見がないと仕事がしづらいので、まとまった、体系的な勉強をしたいというニーズに例えばお応えしますという趣旨でございます。頑張って6単位を取りましたら、知的財産法について一通りの履修はなされましたねということで、私どもはそこは責任を持って修了認定を出させていただく。教育の実質及びそのモチベーションでございましょうかね、そういうところが狙いであると我々は認識しているところでございます。
他方で、大きな話になってしまいますけれども、我々専門職大学院といたしまして、専門職学位というのを授与しておりまして、これは修士課程相当であるという位置づけになってございます。したがいまして、神戸大学様のように上に、博士課程に進んでいただいて、非常に国際的に通用するドクターの学位をお取りになる、あるいは研究者のほうに進まれる、この一種の人の流れ、後継者育成の流れを細らせてしまうと、こちらの審議会でも先生方が御議論なされておりますように、あしたの我々の世界がなくなってしまうという存立危機かと思っておりまして、修了認定からさらに進んで、ぜひどうですか、ドクターに行って博士をお取りになられませんか、医学博士をお取りになるお医者さんもいっぱいおられますし、法学博士をお持ちになっていらっしゃる弁護士ということでいかがでしょうと、そういう流れができましたら理想でございますけれども、我々はそこを目指してまだ頑張っているところでございまして、全く御指摘はごもっともと存じている次第でございます。ありがとうございます。
【松下座長】 前田委員、よろしいでしょうか。
【前田委員】 ありがとうございました。
【松下座長】 それでは、続きまして、お委員、お願いいたします。
【井上委員】 井上でございます。本日、御発表ありがとうございます。
高田先生に質問させていただきたいと思いますけれども、私、企業の中で法務を見る、General Counselとしてずっと長いこと企業法務もやっております中で、法科大学院をリスキリング、アップスキリングの場として使うニーズというのは潜在的にすごく高いと思っております。ただ、高田先生のメモによりますと、企業のリカレント履修者が少し少ないという御指摘がございました。一方で、東京大学の法科大学院のサマースクールは、この資料によりますと大変企業様にも人気のようで、たくさんの御参加をいただいております。
その辺は何か違うのだろうかとこの資料を見ながら考えておりまして、恐らく科目の硬さというか、租税法、労働法、知的財産法云々という、これが非常にアカデミックな、体系的なお勉強なのか、それとも多少実務的なノウハウ等も入ったものなのか、そこら辺りの中身はどのように理解すればよろしいでしょうか。その点の質問をさせていただいて、今後、企業法務をやっていらっしゃる方々に、こういうのがありますから勉強しませんかとお話しするときの糧にしたいと思うので、教えていただければと思います。
【松下座長】 これはどなたにお答えいただいたらいいんですかね。
【井上委員】 高田先生に。
【松下座長】 高田先生ですか。
【井上委員】 はい。
【高田教授(慶應義塾大学)】 ありがとうございます。井上様の今の御指摘、半ばお叱りと受け止めさせていただきました。
【井上委員】 いえいえ、とんでもないです。
【高田教授(慶應義塾大学)】 いや、本当に井上様と同じ御指摘やお叱りを内部でも頂戴することがございまして、企業法務を実際にやっていらっしゃる方から、一体ニーズをどれぐらいくみ上げて、そのニーズにどれくらい応えようとしているのかと、きちんと広報できているのかとアドバイザリーボードを通じまして非常に強い御意見をいただいておりまして、これは何とかしなければいけないと思っているところに、さらに背中をどんと押していただいたということでございます。
東京大学様との大きな差というのは、もろもろの要因があるかと存じますので、私どものほうではいかんともしがたい面も大きゅうございますが、少なくともあまりにもアカデミックな、お勉強し過ぎのように受け取られてしまっているといたしますと少々残念でございまして、実際のところは、企業の方から、いや、これは大学のお勉強かと思って来たら、すぐに仕事に使えるような知識を授けてもらって実によかったとおっしゃっていただいたこともございますので、内容を精査し、広報にも注力してまいります。ありがとうございます。
【井上委員】 ありがとうございます。
【松下座長】 井上委員、よろしいでしょうか。
【井上委員】 ありがとうございます。そういうお話であれば、非常に頼もしく、楽しみに伺いました。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、前田委員の御質問に対して、北居委員から補足があるということですので、北居委員、お願いできますか。
【北居委員】 しゃしゃり出まして、すみません。先ほどの学位の件でございます。私どもは、できれば博士号まで面倒を見たいという要望があるんですけれども、残念ながら博士課程を持っておりませんので、法学博士号を授与することはできないということでございまして、実は、先ほど高田先生からご説明がございましたように、私どもは、グローバル法務専攻という専攻を持っておりまして、ここを修了しますと、法務修士号を授与するという形の修士号を法務博士号とは別個に設けております。
ですので、ここで修士号を使っておりまして、法務博士号もございますので、なかなかそのほかに学位をそれに見合う形で用意するのが難しいということが、認定の問題にとどまっているという局面があるという、この事情も御理解いただければと思っている次第でございますが、ただ、酒井委員がおっしゃるとおり、学位も含めて認定制度の社会的評価をいかに高めて、定着させていくのかということこそまさに課題だと感じておりまして、これについて何かよろしいアイデアがあれば、ぜひ御教示いただきたいというところでございます。
以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。前田委員、何かございますか。
【前田委員】 いえ、特にございません。ありがとうございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、土井委員、お願いいたします。
【土井座長代理】 ありがとうございます。京都大学の土井でございます。
東京大学、慶應義塾大学からは、とても先進的、挑戦的な取組を御紹介いただき、ありがとうございます。私からは、東京大学の国際的取組について、垣内先生に3点ほど質問をさせていただきます。
第1に、英語科目についてですが、通しページで17ページに別紙資料3をつけていただいていて、主要な科目の履修者数を挙げていただいています。これは恐らく延べ人数で、真ん中のグローバル・ビジネスロー・サマープログラム、資料4以下のプログラムと同様のものとして理解させていただいた上で、それを前提にした場合、英語科目をはじめ、こういう国際的なプログラム等に関心を持っている学生が実数で1学年どれぐらいいるというイメージを持っておられるのかというのが1つ目の質問です。
2つ目は、海外派遣プログラムについてですが、これを実施されるのはいろいろな意味で御負担だろうと思いますので、これを継続しておられることには心から感服させていただいております。その上で、受入先は法律事務所が多いようで、期間は20日から1か月程度という感じかと思うんですが、参加されている方は具体的にどういう活動をされておられるのかということをお伺いしたいと思います。また、第3に、このプログラムに参加される場合、特に在学生の場合ですけれども、何らかの経済的支援を大学等で実施されているのでしょうか。この3点について御教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、垣内先生、お願いいたします。
【垣内教授(東京大学)】 土井先生、どうも御質問ありがとうございます。
最初の点については、確かに履修者数は同一の方が複数の授業を取っているという可能性が当然ありますので、100人それぞれ別の学生がこういった授業を積極的に取っているということでは必ずしもないということかと思います。
これも、時期によって若干変動はあるということかと思いますけれども、ここ数年はある程度落ち着いているという感じなのかなと私自身の感触としては感じておりますが、サマープログラム、サマースクールに出る学生というのが20人から30人ぐらいという形でここ数年は推移をしております。これは、10年ぐらい前ですと60人とか70人という時期もありましたので、より多くの学生がそういったことに関心を持っていたということがあるんですけれども、そういう意味では、ここ数年はその点では10年前と比べると少し少なめであると。
ただ、サマープログラムは夏期ということで、かつ泊まりがけということもありますので、いろいろな事情でここには参加できないというような学生で、しかし、英語での授業等に非常に関心を持っているという方もおられますので、サマースクールに参加する20名、30名にプラスアルファで四、五十名程度というところなのか、厳密に調査をしているということではありませんので、私たちはそれぐらいいるのかなというような感触を持っているところです。また後で宍戸先生からもし補足いただける点があれば、お願いできればと思います。
それから、海外派遣につきましては、以前は国際機関等への派遣も行っていたということなんですけれども、コロナ禍以降は基本的に法律事務所への派遣ということで、一種のインターンのような形で、事務所の業務にいろいろついていってみたりというようなことをしているということかと思います。これは、行く事務所によってもいろいろやり方があると思いますので、事務所に応じて具体的には様々ということかと思いますが、基本的にはインターン的なイメージで考えていただければよろしいのではないかと思います。
また、経済的支援についてですけれども、定額の補助をするという形になっていまして、行き先によって旅費等も変わってくるものですから、それに応じてという形なんですけれども、私の聞いたところでは、アメリカとかヨーロッパということですと、たしか65万円とか、そういったお金を旅費、滞在費の原資としてお渡しをして、それで出入りがあるということはあるのかもしれませんけれども、それを超える分については自己負担をお願いするというような形で、奨学金を出すということで財政的な支援を行う、経済的な支援を行っているということです。
差し当たり私からは以上ですけれども、宍戸教授から何か補足いただける点があれば、お願いしたいと思います。
【宍戸教授(東京大学)】 お時間がないところ恐縮です。土井委員、御質問ありがとうございます。
2点目、3点目について若干補足をいたしますが、ズームのチャット欄のほうで関連するサイトをお送りしてございます。まず、経済的な支援につきましては、今、垣内教授から説明いたしましたとおり、基本的には往復旅費及び一定の滞在費を様々な御支援に基づきまして当該派遣学生に対しては支給を行っているということになります。
また、学生はインターンを今のところ派遣された海外法律事務所で行っておりますが、その詳細につきましては、実はレポートがダウンロードできるようにしておりまして、全世界に向けて公開をさせていただいております。かなり詳細なそれぞれの学生の率直な印象などが載せられておりますので、もしよろしければこちらをぜひ御覧いただければと思います。
私からの補足は以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
1点目の土井先生の御質問で、垣内先生から40人、50人という数字、例えばというお話がありましたけれども、2年、3年は、1学年の人数は230人でよろしいんですかね。その中の例えば四、五十という数字だということでよろしいですかね。
【垣内教授(東京大学)】 そのようなことです。
【松下座長】 一応母数も明らかにしたほうがいいかなと思いまして。
それでは、もうこの議事1について挙手をされている方はいらっしゃらないと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、次の議題です。議事1については、どうもありがとうございました。議事2は特別選抜の実施状況・工夫・課題等です。法科大学院の入学者選抜において、法曹コース出身者を対象にした特別選抜が導入されてから、今年で4年目になります。現在の各法科大学院における特別選抜の状況を把握する観点から、事務局において実施している調査を基に御報告をいただきたいと思います。
それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 よろしくお願いいたします。通し番号53ページの資料3として「法科大学院における特別選抜の実施状況等について」ということでポイントを御紹介したいと思います。
スライドの55ページまで行きますけれども、まず、法曹養成連携協定と特別選抜の関係性についてお示ししております。令和元年度の法改正によりまして、いわゆる3+2ができたわけでありますけれども、このスライドの下段にございますように、新しい法曹養成ルートとして法曹コース修了者が法科大学院へ進学するに当たっての入試ということで、特別選抜という仕組みを設けております。55ページでは、特別選抜の制度的な背景を紹介させていただきました。
続きまして、57ページでありますけれども、実際の特別選抜のイメージをまとめております。左側はいわゆる法曹コース、連携法曹基礎課程というものでありまして、青字で書いてあるように法科大学院と連携協定を締結している法曹コースの学生が5年一貫型の選抜を受験できます。さらに、法曹養成連携協定の締結がない法曹コースの学生については、緑字で記載しているように、開放型選抜という形で選抜がなされております。この5年一貫型と開放型選抜の2つをもって特別選抜という形で呼んでおります。これ以外に、一般の大学の学部であるとか、社会人の経験者等の方々が受験できる一般選抜がございます。
実際の選抜はこういった構造になっておりまして、特に特別選抜に関して、右側の矢印のところを御覧いただきますと、募集人員に関しては入学定員の2分の1が上限となるという規定がございます。とりわけ、5年一貫型選抜について申し上げますと、募集定員の上限は原則として入学定員の4分の1と制度上定められております。これは、3+2という仕組みができるに当たって一定程度の推薦枠というものも必要なんだけれども、一方で、法科大学院における多様性・公平性というものをしっかりと吟味する観点から、こういった上限が定められてきているというのが現状でございます。
現在の入学者数等についてご説明差し上げたいと思いますけれども、61ページでは、それぞれ令和4年から令和6年の段階で、選抜区分別で見た入学者数をお示ししているものでございます。令和6年の棒グラフを御覧いただきますと、約85%が一般選抜で、15%弱が特別選抜で入学されているというのが現在の状況となっております。なお、特別選抜の中でも、5年一貫型選抜で入学された方は12.2%、開放型選抜で入学された方は2.5%という数字になってございます。
65ページでは、大学別の令和6年度段階の入学者の特別選抜の実施状況ということで、こちらのほうにお示しをさせていただいております。特別選抜については各大学によって取組に異なる点がございますけれども、特に開放型選抜を実施しなかった法科大学院が16校、個別の事情があるので実質的には11校で、約3分の1の法科大学院において開放型選抜は実施していないということです。もちろん実施は大学の判断に委ねることになっておりますけれども、開放型選抜を実施していない大学があるということは、御承知おきください。
それ以降のページに、実際の特別選抜の実施時期や、試験の実施内容のほうについてもまとめさせていただいているところです。時間の関係上、こちらのほうは割愛をさせていただきます。
最後に、69ページでは、実際に特別選抜に関する法科大学院の所感ということで、簡単なアンケートの結果をお示ししております。特別選抜を開始して法科大学院に入ってくる学生の質、受験者の質というのはどういった受け止めをしているのかというところをお伺いしたものでございます。右側、受験者の質と書いてありまして、5年一貫型、開放型というところを御覧いただきますと、おおむね9割弱ぐらいの法科大学院において、予想どおり、想定している学生の質が担保された上で入学をしてきてもらっているという回答をいただいております。今後も法曹コースから法科大学院への接続という意味で、一定程度質が担保された形で制度が運用されていくことが非常に大事だと考えております。
事務局からは以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの御説明につきまして、御質問、御所感等があればお願いをいたします。繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり二、三分程度までを目安にお願いできればと存じます。
それでは、どなたからでも、どの点でも御発言をお願いいたします。
それでは、青竹委員、お願いいたします。
【青竹委員】 大阪大学の青竹と申します。丁寧な御報告、御紹介ありがとうございました。
法曹コースについては、大阪大学でも、今後、司法試験の合格率を見ながら、課題を検討することになるという段階で、現段階では課題の検討といったことはまだきちんとしていません。寄せられている意見としまして、特に法学部の4年生から法曹コースにより筆記試験免除で、特別選抜で進学する場合に目立つこととして、ロースクールの専門科目の試験を受けたことがないために、ほかの4年生に比べると、若干デメリットになっている可能性があるのではないか、そんな意見があったところです。
ほかについては、今後検討していきたいという状況でございます。
以上になります。
【松下座長】 青竹委員、どうもありがとうございました。
それでは、続いて髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 ありがとうございます。一橋大学の髙橋でございます。
詳しい取りまとめをいただき、誠にありがとうございました。2点ほど所感を申し上げさせていただければと思います。
まず、63ページの右上のグラフで、開放型選抜の入学者の属性を見ますと、令和5年度と6年度で差があるようではありますけれども、非協定先からも一定数の入学者があるということで、受験者の属性においては、おそらくこれと同等か、あるいはそれ以上の非協定先からの受験者がいるのではないかと推測いたしております。
その一方で、58ページを見たときに、開放型選抜については相対的に合格率が低く、入学者数も少ないことがやや気になるところであります。この数値の要因は、受験者数や受験者層の属性、あるいは併願の状況といったような様々な要因が推測されるかとは思いますが、開放型選抜の運営の難しさもあるのではないかと思っております。
5年一貫型・開放型選抜いずれも特別選抜のハードルが高過ぎるというメッセージが学生の側に伝わりますと、そもそも法曹コースに学生を誘導して、法曹のキャリアに関心を持ってもらうということ自体も難しくなるということがあるように推測いたしております。
62ページを拝見すると、現時点では、法曹コースから一般入試で入学してきている学生も相当数あるようでございますので、コースの仕組みがあることによって、学生の学力が向上したり、あるいは志望者の裾野を広げるといったようなことも今のところは一定程度成功してきているものと推測しております。このようなバランスを崩さないような配慮が、今後必要になるのではないかと感じております。
それからもう一つ、法曹コース出身者全般について、社会人や他学部出身者などに比べ、非常に視野の狭い法曹を社会に送り出すコースのように認識されている向きも一部にあるのではないかと存じます。確かに期間の短縮だけを念頭に置いているという学生も多くあり、その点は制度の課題と認識しておりますが、他方で、学部時代に自ら隣接する学問領域や理数系の科目を含めた別の学問領域も何らかの形で学びたい、あるいは様々な経験を積みたいと考えている学生も確実にいるように現場では認識しております。
弊学でも今年、5年一貫型選抜で、留学でフランスに滞在中の受験生に対してオンラインで面接試験を実施したという例がございました。筆記試験の受験を必要としないという枠組みがあって、初めて受験が可能になったというところもあったかと思っております。学業成績のハードルが非常に高いので、法曹コース内にそうした学生の数を著しく増やすということは難しいかもしれませんけれども、少数派であっても、そうした長期的な自己投資を考える学生が進学しやすいようにする仕組みというのも、今後考えていく必要があるように感じております。
【松下座長】 ありがとうございました。いずれもごもっともな指摘かと思います。
ほかはいかがでしょうか。それでは、もし何か質問、あるいは御意見等があれば、今日の冒頭申し上げたとおり、この後に事務局にメール等で御連絡いただくということにいたしまして、それでは、議事2については以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、議事3、法科大学院教育と司法修習の連携です。法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、いわゆる連携法は、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習生の修習との有機的連携の確保を目的として制定されました。この有機的連携の確保という観点から、司法修習の現状であるとか、法科大学院教育への期待について、司法修習を行う立場である司法研修所から御発表をいただきたいと思います。
それでは、司法研修所の事務局長をお務めでいらっしゃいます石井芳明委員から御説明をお願いいたします。
【石井委員】 司法研修所事務局長の石井でございます。よろしくお願いいたします。本日は説明の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
今、松下座長から御発言がありましたとおり、連携法にも規定がされておりますけれども、法曹養成において法科大学院教育と司法修習が連携することは重要であると認識をしております。このテーマにつきましては、本委員会の第109回の委員会で、東京大学の和田教授からも御報告がされておると承知しておりまして、これと重なるところもございますけれども、今回は司法研修所から説明をさせていただきたいと思います。資料を投影していただいていますので、こちらに基づいて説明したいと思います。
次のスライドをお願いします。説明の前提といたしまして、まず、司法修習について簡単に確認しておきたいと思います。法曹となるためには、司法試験に合格した後、1年間の司法修習を終えることが必要とされております。より具体的にはまず、司法研修所における導入修習を行った後、裁判、検察、弁護の各分野別の実務修習を8か月ほど行いまして、その後、各修習生の興味や関心に応じた選択型の実務修習、それから、司法研修所における仕上げの集合修習を行っております。
資料の右下のところに小さく写真をつけておりますけれども、こちらが司法研修所で修習生が授業を受ける階段教室の様子ということで、御参考までに御覧ください。
今申し上げた司法修習ですけれども、これを通じまして、法科大学院で学んだ法理論教育及び実務の基礎的な素養を前提といたしまして、法律実務に関する汎用的な知識・技法のほか、高い倫理感や職業意識を備えた法曹を養成しておるところでございます。
なお、司法修習は、これまで司法試験の合格発表後、11月の末頃から開始しておりましたけれども、在学中受験が開始されたことに伴いまして、今年度からは開始時期を3月下旬に変更して実施をしております。これにより、法科大学院修了生は法科大学院の修了から間を置かずに司法修習を開始することになっておりまして、法科大学院教育と司法修習の連携の重要性は増しているとは認識をしているところであります。
次のページをお願いします。先ほど御説明した1年間の修習のスケジュールを時系列で示させていただいたものが、資料で映させていただいているというものになります。今申し上げたように、今年度から時期を少しずらし、3月末から修習を開始しております。このうち、研修所で行う集合修習のカリキュラムにつきましては、随時見直しを行っておりますけれども、近時は裁判、検察、弁護といったそれぞれの分野における固有の知識といったもののみならず、共通して必要とされる法的問題解決のための基本的かつ汎用的な技法と思考方法の修得にも力を入れております。
修習の中核は、この図でいきますと真ん中にあります実務修習でありまして、その前、修習の初めに司法研修所で行う導入修習が、まさに修習への導入を図っていくものとなっております。その目的としましては、修習の開始段階で修習生に不足している基礎知識、能力に気づいてもらうとともに、効果的、効率的に実務修習が行われるようにすることを目的として実施をしておるものでございます。
次のページをお願いします。本日の主なテーマとなります法科大学院教育との連携というところでございますけれども、具体的な連携といたしましては、法科大学院協会と司法研修所との間で意見交換会を定期的に実施をしております。このような連携、具体的な連携を行うに至った経緯については、先ほど申し上げた第109回の委員会で和田教授からも御説明されております。当初は、法科大学院協会の執行部の先生方との間で総論的な意見交換を行っていたところでございましたけれども、令和4年頃から、法科大学院協会に加盟しておられる法科大学院からもオープンに参加していただく形といたしまして、その話題につきましても、講義内容に関する具体的なテーマなどについても取り上げることとして実施をしております。現在は、年におおむね3回ほど実施をしておりまして、毎回、双方から多くの教員や教官が出席をいたしまして、活発に意見交換を行っているところであります。
資料のポツの3つ目のところで、近時の意見交換を行ったテーマを御参考までに記載をさせていただいておりますが、ここに書いております民法における物権変動でございますとか、刑法における共謀といった、修習生に検討を求めることが多いような論点につきまして、同一のテーマを設定した上で、法科大学院、それから司法研修所がどのような講義を行っているか、お互いの講義の様子などを事前に視聴などした上で、意見交換当日は、それぞれの講義の中で力点を置いているポイントですとか、あるいは学生や修習生がなかなか理解するのが難しく感じている点はどういったところにあるかといったことにつきまして、率直な意見交換を行っているところでございます。
そうしたら、次のスライドにお進みいただければと思います。こうした連携を通じて、どういった効果が上がっているのかというところですけれども、連携を通じまして、法科大学院の教育の中で司法修習をより具体的に意識していただけるような契機となっているということはあるのではないかなと思料しているところでございます。先ほど来述べております東大の和田教授のこの委員会での御説明の中でも、連携の成果ということといたしまして、資料に少し引用させていただきましたが、少なくとも「裁判手続のイメージ形成まで指導する必要があるということが分かった」、あるいは、「実務における手続の具体的イメージを持って教育することが重要であることが改めて認識された」といった指摘をいただいているところでありますけれども、こういった意識を持っていただけることで、司法修習との連続性というのは格段に高まるのではないかなと思っております。
また、司法研修所の側といたしましても、法科大学院における教育の実際を把握できるということは、修習のカリキュラムですとか教材の作成、特に先ほど御説明した修習開始の直後に行う導入修習の中でどういう点に力点を置くべきであるとか、講義のレベル感などを把握する上で参考となるものでありまして、非常に有益であると認識をしておるところであります。
修習の開始時期が変更になりまして、法科大学院と修習の連続性が非常に高まっている中で、こういった連携の重要性は今後も増すと思われますので、引き続きこういった枠組みでの連携を継続していくことが重要ではないかと理解をしております。
次のスライドをお願いします。最後に、今後の期待ですとか課題について少しお話しさせていただきます。まず、当然のことではございますけれども、法科大学院で法理論に加えて実務の基礎的知識を学んでおくことは、その後に行います司法修習を円滑かつ効果的に行う上で重要と理解しております。この点、例えば、司法修習の一番最初の導入修習では争点整理等の演習を行っておりますけれども、法科大学院で基礎的な実務の知識を修得することができている方は、比較的スムーズにこういった演習に取り組むことができているのではないかなという印象がございます。
在学中受験が開始されたということを踏まえまして、多くの法科大学院では、実務系の科目の履修時期を修習に近接する時期にするといった工夫をしていただいていると聞いておりますけれども、今後、連携がますます密になりまして、そういったことが図られていくということによりまして、法科大学院の修了生につきましては、スムーズに導入修習に入っていってもらえることが予想、期待をされているというところでございます。
また、ポツでいくと2ポツ目ですけれども、これは今回御説明しておる連携とは直接の関係はないかもしれませんけれども、いわゆるギャップタームが解消されまして、法科大学院の修了後すぐに司法修習が開始されるということになり、今年度はその制度変更がされて最初の年ということになります。現在まで、修習生の様子を私が聞いておる限りは、総じて真面目に修習に取り組んでもらっているということでありまして、学修に対する動機づけが継続しているのではないかというような指摘をする指導担当者もおるというところであります。こういった傾向は研修所としても歓迎できるところでございまして、今後もこういった傾向が続くということを期待しております。
なお、資料にはございませんけれども、今年度は制度変更後の最初の年ということで、その影響について御関心もあるかもしれません。現時点では確たる評価をすることはなかなか難しいですけれども、現時点までの印象といたしましては、今年度修習を行っている修習生の資質や能力といったところにつきましては、昨年までと顕著な差異があるとまでは感じていないというところになります。
資料に戻りまして、ポツの3つ目でございます。課題というところについて少し言及しますと、これは法科大学院修了生に限るものではないのですけれども、実体法ですとか手続法の基本的な知識の定着というところで不十分な方が一定数おり、この点は引き続き課題かなとは認識をしております。研修所としても、そういった修習生が自学、自修に取り組めるような教材を配付しているところでありまして、実際、そういったものを活用して、修習の期間中に実力をぐんぐん伸ばしてくるという者も少なくないところであります。
法科大学院生の様子を、意見交換会を通じて伺っておりますと、司法試験に合格した後もいろいろな意味で忙しい様子ですけれども、基本的な知識の定着に関しては、先ほど申し上げた課題というところはあろうかなと思っておりますので、こういった点の指導にも引き続き御尽力いただけるとありがたいかなと思っております。
いずれにしましても、こういった点も含めて、今後とも法科大学院とのより一層充実した連携を図っていきたいと考えておるところでございます。
簡単な御説明でしたけれども、私からの説明は以上ということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの石井委員からの御説明につきまして、御質問や御所感等あればお願いいたします。繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり二、三分程度までを目安にお願いできれば幸いでございます。
それでは、どなたからでも、どの点についてでも御発言をお願いいたします。
それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 大変詳しい御説明ありがとうございます。「法科大学院教育と司法修習の連携」については、かねてから有意義ではないかとお願いをしてきた立場として、本当に両者が連携を強めていただいていることに敬意を表します。ありがとうございます。
通し番号72ページのところで、特に注目されるのが、今年度から修習開始時期が3月下旬に変更になったということ、そして、現時点、非常に円滑な状況であるということで、私は、特に在学中受験が開始されましたので、3月下旬に変更されたこと、そして、次のページにありますように、導入修習というのが年度として早まったということは意義があると思っているんですが、他方で、例えば既に修了されて、受験されて、合格された方であるとか、あるいは予備試験で合格された方もいらっしゃるわけなので、この時期のメリットというのを多角的に評価されて、この時期になったと思うんですけれども、「開始時期が3月下旬になったことの意義」について、さらにもう少し御説明いただくと心強いです。よろしくお願いします。
【松下座長】 それでは、石井委員にお願いしてよろしいでしょうか。
【石井委員】 石井でございます。御質問、御意見ありがとうございます。
御指摘のとおり、3月になりまして、先ほど御説明したとおり、法科大学院生は非常にスムーズにというか、修習に円滑に入っていけるようになったのかなと思っております。
御指摘いただいたような、前の年度に法科大学院を修了しておった者等というのも当然いるわけでございますけれども、そういった者につきましては、従前から修習までの期間は空いておりましたので、そういった意味での変更というのは限定的なものかなとは認識しておるところでございます。
また、修習のスケジュールが、年度というか、いわゆる学事歴みたいなものと比較的近くなったというところにつきましては、どういった立場の修習生にとっても、その後の予定を立てやすいという点では一定の意味はあったのかなと思っているところでございます。
【清原委員】 一言よろしいでしょうか。
【松下座長】 どうぞ。
【清原委員】 ありがとうございます。総体的にこの時期が最適というような御判断であると思います。年度が4月から始まるというのが日本社会なので、いろいろな意味で最適かなと思いますけれども、ぜひ引き続きこの「開始時期の意義」などについても検証していただいて、よりよい導入修習からの内容へとさらに質を高めていただければありがたいです。よろしくお願いします。ありがとうございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 田村でございます。石井局長、どうもありがとうございました。
実は日弁連にも司法修習委員会がございますし、私、札幌におりますが、全国52の単位会はそれぞれ司法修習委員会がありまして、かつ、指導担当弁護士が司法修習生を指導しているという、修習生とさらに距離が近い立場にございます。
恐らく今日の中心的な問題意識というのは、教育と修習をシームレスにどうやって連携していくかということですとか、あるいは、特に在学中受験が始まったということで、教育や学習のすみ分けをどうしていきますかという問題意識が中心になるのかなと思っているところでありますが、実は修習生は、昔も今も、修習期間が2年あった当時も、今現在は1年ですが、1年の当時も、あまり変わらない特徴を持っているというところは確認しておく必要があるのかなと思っています。指導担当にアンケートを取りますと必ず出てくるのが、当事者目線で物事を考える訓練がなかなか追いついていないということですとか、あるいは、立証に関する意識というか、力点の置き方が足りないということですとか、これもよく言われますが、キーワードとかフレーズに飛びついてしまう、たとえば殺意の認定では凶器の用法や創傷の部位なんかはそうなんだと思いますが、そういったことが言われたりしますし、とかく正解を探そうと一生懸命になるというのは、修習期間が2年当時も1年当時も変わらないのかなと思っています。
それに加えて、これは具体的にどこまで申し上げられるかというのは置いておいて、いろいろ現代の世相を表すような特徴を持っている修習生が増えているのかな、非常に個性的な修習生も一定数いるのかなというようなことを修習委員会なんかでアンケートを取ったりすると聞くところであります。
ですので、私は、シームレスな連携ですとか、あるいはすみ分けの問題は非常にこれから重要になってくるとは思っていますが、昔からある今申し上げたような問題も含めて、いろいろな問題点を修習生になる学生をロースクールから送り出していただく、そういう送り出す立場のロースクールに対して、弁護士会を含めて、研修所も含めてお伝えをして、当たり前のことですが、それを共有していくということが大前提、基本として一番大事なことなのかなと思っています。
以上でございます。ありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、久保野委員、お願いいたします。
【久保野委員】 ありがとうございます。久保野でございます。御報告ありがとうございました。
それで、一言、お礼に近いんですけれども、この連携の取組につきまして、法科大学院の教員の人数が必ずしも多くないということもあると思いますし、私自身、御案内いただいて、関心を持ちながらも、なかなか出席できないこともありまして、申し訳なく思っています。
ただ、そうであっても、例えば今年度の場合、民事裁判教官室から要件事実について作られている共通教材、特に導入段階において基本的なところをしっかりやってほしいという趣旨でご作成されたものだと思いますけれども、それを丸ごと参考資料として御案内と一緒にお送りいただきまして、拝見して大変勉強になりました。出席するだけではない、広い波及効果を持った取組を、積極的に教材を示すなどして行っていただいていることの意義を強調させていただき、お礼を申し上げたいと思います。
このような教材を拝見して、研修所での問題意識というものを実務とは接していない研究者教員でもより一歩深く理解する手助けになっていると思いますので、そのような理解ができることが、先ほども話題になりました教育の共通性ですとか、課題の認識のために意見交換をする前提としても非常に重要なことと思います。単純なお礼を申し上げたいだけで、長くなりましたけれども、今後もそのような教材の共有なども含めて取組をお願いできましたらありがたく思います。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。今、久保野委員から言及があったのは、要件事実についての教材ですよね。あれは私も勉強させていただきました。
ほかはいかがでしょうか。それでは、北居委員、お願いいたします。
【北居委員】 先ほどの御報告、石井先生、どうもありがとうございました。
在学中受験から、3月からもうギャップタームなく、スムーズにむしろ研修が進んでいるのではないかというようなお話をお聞きしまして、まさに3+2も併せて、当初の制度設計の予定どおりの成果ないしは運用ができつつあるということで、私は大変いい結果が出ているのではないかと思っているんですが、ただ、私が1点だけ危惧を持っておりますのは、今まではギャップタームの間にリサーチペーパーを書いて、それで研究者を志望してくれる学生というのを一定程度確保できていたんですけれども、この余裕が全くなくなってしまいまして、それで、正直、3年の夏に司法試験を受けて、秋学期の半年でリサーチペーパーをそれ相応のレベルで書くということは、恐らくほぼ不可能という状況で、ますます研究者教育が追い込まれているという状況がございます。
これについて、たちまちどういう妙案も全くないものですから、逆に、法科大学院の関係者の皆様全体でこの問題を共有した上で、何かうまい妙案というものがないかということを手探りで考えていくべきではないかと考える次第でございます。どうぞ何かアイデアがあったらぜひ御教示いただきたいと思います。
以上でございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。今の御指摘については、引き続きこの委員会でも折々に各委員から御指摘をいただければと思います。北居先生、今、ここで何かということではないですよね。貴重な御指摘ありがとうございました。
それでは、富所委員、お願いいたします。
【富所委員】 どうもありがとうございます。1点、お話を伺った感想を申し上げたいと思います。
今、田村委員からもお話がありましたけれども、修習に関して言うと、ある種の社会的な風潮のようなものを反映して、時代とともに変わっていかなければならない部分があると思います。もちろん実務や技術の指導がとても大事なことは論をまちません。ただ、最近、学生さんたちと話すと、よくタイパ、コスパという言葉が出てきて、効率を非常に大事にしている印象を受けます。こういうことを言うと「昭和のおやじ」だと言われそうですが、とてもビジネスライクに映る面もあります。
先ほど司法修習の役割として、職業意識や倫理といった話が出ました。法曹という仕事の公益性を考えると、そうした部分をきちんと指導していただくことが今の時代には大変重要なことなのではないかと思っておりますので、その部分にはとても期待したいと思ってお話を伺いました。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。この点も貴重な御指摘かと思います。
ほかの委員の方はいかがでしょうか。
司法研修所と法科大学院協会の意見交換会というのは長い歴史があり、私も何年か出ていますが、その昔は、私が大学で実施した定期試験の問題と採点の結果というのをさらしたこともあって、こんなことを教えていましたということを司法研修所に知ってもらうことで、恥ずかしかったですが多少は役には立ったのかなと先ほど思い出したところです。
ほかの委員の先生方はいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、おおむね目安の時刻でもございますので、最後の議事に進ませていただきます。最後に、議事4、報告書(骨子案)についてです。今期、第12期ですけれども、この審議のまとめとして、事務局において報告書の骨子案を作成したということですので、この骨子案について事務局から御説明をいただき、その後、委員の皆様から審議の取りまとめの作成に当たり御意見等を頂戴したいと考えております。
それでは、まず、事務局から骨子案について御説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 ありがとうございます。
それでは、事務局から骨子案について御報告、御案内させていただければと思います。通し番号79ページでございまして、第12期の審議のまとめ(骨子案)をお示ししております。
まず、ローマ数字1つ目でございますけれども、法科大学院制度20年ということで、この20年、司法制度改革からスタートして、法科大学院の意義や中央教育審議会における審議の経過を中心といたしまして、どういった審議がなされてきたのか、折々に御提言や御報告をいただいているところでありますので、こうした議論と実際の制度改正がどういった形でなされてきたのかというところをお示しする必要があるというのを考えております。
ローマ数字の2つ目はこれまでの歩みを踏まえて、現状の法曹に対する評価や法科大学院教育に対する今後の期待等についてまとめたいと考えております。
算用数字の1ポツの現状でありますけれども、例えば入学者や司法試験合格率といった入口と出口に関する現状に加え、法科大学院における教育の内容が改善されてきたことについても触れる必要があるだろうと思います。
算用数字の2ポツは、法科大学院教育を通じて法曹人口が増加し、さらには、本委員会でも御報告をいただきましたとおり、様々な活動領域に拡大して、様々な現場で御活躍されている法曹の方々がおられます。こうした法曹の方々の現状に対する評価等について盛り込みたいと考えているところです。
算用数字の3ポツのところで、今後の特に法科大学院教育に対する期待というものを書いていったらどうかなというものでございます。
ローマ数字の3ポツのところで、今期、特に各大学の皆様に御発表いただきました様々な内容をこちらに盛り込んでいったらどうかなと考えておりまして、算用数字の1ポツのところは、本日も御発表いただきましたような法科大学院教育における魅力・特色ある取組というのをしっかりと伸ばしていこう、これを推進していこうという方向性の紹介ができればと考えております。
算用数字の2つ目は、本日も御説明させていただきましたけれども、いわゆる3+2、5年一貫教育の円滑な実施に関しまして、現状をモニタリングすべしという御意見もこれまでいただいたかと思います。こういったところを記載していくべきと考えております。これが2点目。
算用数字の3点目につきましては、女性も審議のテーマとして取り上げましたけれども、こうした多様な法曹志願者を確保していく、さらには未修者の方々への教育をしっかりと充実していくことについて。未修者の教育については、従来の中央教育審議会でもかなり御審議をいただいているところでありますけれども、引き続き重要なテーマであろうと考えているところです。
さらには、算用数字の4つ目、今期もたくさん御意見を頂戴しております法科大学院教育を担う教員ないしは研究者の養成・確保というものをどういった形で進めていくべきであるのかということでございます。本日も御指摘いただきましたけれども、こういった研究者、教員の確保というところでございます。
算用数字の5ポツのところ、これも今ほど司法研修所の皆様より御発表いただきましたけれども、法科大学院教育と司法修習との連携の強化ということで、まさにシームレスな形で両者が連携をしっかりと図っていくということについて記載したいということでございます。
簡単でございますが、こういったところが今期御審議いただいた内容についてまとめさせていただいた案でございます。こちらについては、ぜひ積極的に御指摘、御質問を頂戴できればと思っております。
以上でございます。
【松下座長】 御説明ありがとうございました。
ただいまの事務局からの12期の審議のまとめ(骨子案)について、御質問あるいは御所感等があればお願いをしたいと存じます。本当に繰り返しで恐縮ですけれども、御発言の際には1回当たり二、三分程度までを目安にお願いできればと存じます。
それでは、どなたからでも、どの点についてでも御発言をお願いいたします。加賀委員、お願いいたします。
【加賀委員】 遠藤室長、どうもありがとうございました。2つあります。
1つは、これはお願いといいましょうか、3の1の法科大学院教育における魅力・特色ある取組の推進というのは、今期の委員会で発表していただいた岡山大学での取組だとかありましたよね。ああいうどちらかというと規模的には小さめのところの取組もぜひ記載をしていただければと思います。
これは意見で、もう一つは、これも意見といえば意見なんですけれども、中に入っちゃっているとは思うんです。つまり、今期の一つの大きな話合いのテーマは、5年一貫型、いわゆる法曹コースの学生がどういう進学をしていったか、もってそれが合格にどう結びついていったかということが大きなテーマになっていたかと思うんです。もちろん特に2と3でそれは全部書かれていくと思うんですけれども、この項目の立て方の中に法曹コースという言葉が出てきたほうがいいのではないかなと思うんです。それの現状と、課題にも出てくるしというような。これは意見です。中身に書かれるということは当然分かった上で、この見出し、小見出しの中にも、法曹コース、5年一貫型という言葉がもっとはっきり出たらいいなと思いました。意見でした。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。今の時点で何か事務局からございますか。
【遠藤室長】 御指摘を頂戴いたしまして、どういった柱立てにするかについてはもちろん検討させていただきたいと思いますし、大学院の規模に応じてといいますか、大学院ごとにそれぞれやっておられるような取組があるというのは当然ですので、そこにもしっかり触れる形でまとめる必要があると考えております。
【松下座長】 どうもありがとうございます。
【加賀委員】 ありがとうございます。
【松下座長】 加賀委員には、貴重な御指摘どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、大貫委員、お願いいたします。
【大貫委員】 ありがとうございます。中央大学の大貫でございます。まず、事務局におかれましては、骨子案の作成ありがとうございます。
私、大きなところでは異論はございません。11期の取りまとめの際にもそうでしたけれども、実際に内容を書いていったり項目を細分化していきますと、今、まさに加賀委員の御指摘のとおりですけれども、内容ももちろんですけれども、項目のまとめ方や順序などが随分議論になると思います。そういった議論を経て、問題は解決されていくのだろうと思っておりますので、大きなところではまず異論はございません。
そういう前提で、この段階で意見を2点申し述べさせてください。ローマ数字の2の3ポツのところです。法科大学院教育への期待とありますが、もちろん法科大学院にとって教育は最も重要なことだろうと思います。他方で、法科大学院は社会とともに歩む教育研究機関として社会貢献も行ってきたと思いますし、今後も行うべきだろうと思います。
一例を挙げ始めると大変なのですが、最近の例を挙げますと、例えば被災地で復興支援に取り組んでいる法科大学院があります。現在、能登地方は、震災の後に大雨の被害に見舞われて非常に大変厳しい状況にありますが、早稲田大学の法科大学院が震災復興支援で現地入りをしています。そのとき、図らずも大雨による被害に遭遇します。現地に入った学生、教員がまさに大雨の被害からの復興を支援しています。例えば罹災証明に関する法律相談にも、東京にいる行政法の教員が応じたりしています。まさにリアルタイムで復興を支援しているわけです。これはあくまで一例です。
また、本日の慶應義塾大学のリカレント教育も、広い意味では社会貢献だろうと思います。高田先生のスライドにもそう書かれておりました。こうした法科大学院が持っている学生も含めたリソースを利用した社会貢献こそが、社会とともに歩む法科大学院の姿を示すことになり、法科大学院はより一層社会に根づくことになるのではないかと思っております。
こういった観点から、3ポツの法科大学院教育への期待の項目は、社会貢献など法科大学院の幅広い役割、当然ここには研究も入ると私は思っています。この幅広い役割に対する期待として書いていただけないかと思っております。これが1点です。
2点目は、小さいところですけれども、ローマ数字の3の4です。先ほど北居委員の御指摘もありました、法科大学院教育を担う教員の養成・確保のところです。法曹コースの設置後、特にですけれども、法学部との連携は強くなりました。法学部の教育も法曹養成の重要な一部になっているはずです。そうしますと、法学部で教える教員の確保も当然法曹養成にとっては重要なことですので、あえて限定はしていないと思うんですが、法学部教育を担う教員の養成・確保も含むような形で、広く言いますと、法学教育に携わる教員の養成・確保の問題として書いて頂けないでしょうか。
以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。事務局において適切に御検討いただけるものと思います。
【遠藤室長】 ありがとうございます。
【松下座長】 それでは、佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 佐久間です。よろしくお願いします。
おおむねよろしいかと思うんですけれども、ただ、今日リカレントの話もありました。今、大貫委員からの御指摘にもありましたけれども、リカレントはどこに入るかというと、多分、ローマ数字の3の3ぐらいに入るのかと思うんですが、「多様な法曹志願者の確保、未修者教育の充実」ということだけだと、社会との関係が見えにくくて、そこに入れてしまうと、未修者教育の充実という大きな課題の陰で、リカレント教育が少し埋没してしまうような感じもあるので、そこら辺は何か工夫をいただけるとよろしいかなと思います。よろしくお願いします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。今の大貫委員、佐久間委員の御発言に連動して発言させていただきます。
私、この間、法科大学院と特別委員会で法科大学院協会の皆さんが本当に法科大学院の違いを越えていろいろな連携をされてこられたこと、本当に有意義だと思っています。さらに、今日、司法修習との連携強化の中でも、法科大学院協会と司法修習所が丁寧な、きめ細かい対話を重ねていらっしゃるということも分かりました。法科大学院協会の皆さんの法科大学院の連携、協働ということが、例えば法科大学院教育への期待の中にある社会貢献というか、あるいは地域の振興であるとか、さらには、同じ大学ではない大学の法学部と法科大学院の連携などを見ても、大きいと思います。
それから、田村委員が、先ほど司法修習において各支部の日弁連の皆様が連携をして、対応して、指導をしてくださっているということも分かりまして、そうなると、法科大学院協会、そして日弁連の皆さん、そして法務省、司法修習所、そういう法曹に関わる皆さんの「連携のプラットフォーム」というか、そういう機能を法科大学院が大変ニュートラルに果たしていらっしゃるのではないかなと思います。法科大学院制度の20年の歩みの意義の中に、そうした司法の世界を国民により身近なものとし、司法の人材を発掘し、育成するだけではなくて、「社会と法曹との関係をより身近にしてきた」というようなことを、1に書くのがいいのか、あるいは、いろいろなところにちりばめられているので、ちりばめられる感じで書いていただいてもいいと思うんですが、要するに、大学院の皆様の連携、協働、そして地域、自治体、そして企業の皆様も含めて、民間活動団体の方も含めた、日弁連の方も含めた「多様な、多層的な連携」を醸し出してこられたということを一定程度総括する時期かなと思いまして、そんな内容が最初に込められるのか、全体を通じて終わりに込められるのか、何か位置づけていただければありがたいなと思います。よろしくお願いします。
【松下座長】 御指摘ありがとうございました。これも事務局において適切に検討していただけるものと思います。
それでは、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 ありがとうございます。私からは手短に1点です。地方からの法曹養成、そのルートの確立なのか何なのかという書き方の問題もありますが、法曹コースという制度の下に位置づけてしまうと、どうしても議論が広がらない。ただ、当委員会の役割、あるいは当委員会の射程範囲もありますので、ここは事務局に適切に検討していただくことになると思いますが、地方からの法曹養成、そのルートの確立というような取組課題については、ぜひ記載を御検討いただけないかなと思っています。
以上でございます。
【松下座長】 貴重な御指摘どうもありがとうございました。
ほかの委員の方はいかがでしょうか。富所委員、お願いいたします。
【富所委員】 私からも簡単に1点だけ。これは、ローマ数字2の2ポツ、「活動領域の拡大」の部分に入ってくるかなと思うのですが、法科大学院が開校してからのこの20年間で、社会情勢は大きく変わりましたし、法律の持つ意味合いも重要性を増してきていると感じています。法曹で言うと、インハウスも増えていますし、環境や人権などの問題に対応するため、企業や行政で必要とされる法律家の需要も高まっています。この辺の社会情勢の変化ということは、ぜひ盛り込んでいただきたいなと思っております。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。ごもっともな御指摘だと伺いました。
ほかの委員の方はいかがでしょうか。
それでは、土井委員、お願いいたします。
【土井座長代理】 それでは、私からも一言申し上げます。法科大学院制度が設立されて20年という節目に、本委員会として審議のまとめを出すということは重要な意義があると思います。この20年間、当初法科大学院制度を設置した理念をどう実現していくかという問題、それから、他方で、現実に様々な課題が出ましたので、その課題にどう対応していくのかというこの両者のバランスをどう図ってくるのかということで努力をしてきた20年だという印象を受けています。
令和に入って、先ほど来出ていますように、法曹コースができ、5年一貫型の特別選抜、それから在学中受験というかなり大きな制度改革を行ったということになるんだろうと思います。この制度改革の評価というのは、まだ制度が動いてそれほど長くたっていませんので、確定しているわけではありませんけれども、この制度が確立して、適切に運営されていくということになると、この20年の中で言えば大きな節目というか、進んでいく方向に違いが出てくる時期なのかなという気は個人的にはしています。
今までのところは、法科大学院の質保証というところが非常に重要な課題で、法曹を養成するためにどういう質を保証して、制度を確立していくのかというところで、この委員会としても方向性を示して取り組んできたところですけれども、今後、今回3ポツの部分に書かれているような取組の方向性を考えていくということになると、各法科大学院の自主的な取組、あるいは各法科大学院が様々な取組をしていくということを支援していくという、多様性を確保しながら支援していくという形に変わっていくのかなという気もしますので、その辺、20年について振り返って、一つの方向性を示していくということであれば、そういう法科大学院の今後の制度運営の在り方等についても少し示していっていただければなというような気がします。
以上です。
【松下座長】 御指摘ありがとうございました。これも事務局において適切に御検討いただけるものと思います。
ほかはいかがでしょうか。今日、委員会の冒頭でも申し上げましたけれども、御意見があれば、この会議が終わった後でも、事務局にメール等でお寄せいただければ、それで御検討いただけますし、報告書の目次立ては後でいじると大変なので、重要な御指摘ほどなるべく早くいただければ幸いです。
それでは、予定された時間より若干早いですけれども、この時点で御意見が特にないということであれば、委員会は以上とさせていただきたいと思います。
それでは、本日の議事を終了いたします。今後の日程については、事務局から追って連絡をしていただくということになっております。
それでは、皆様、どうもお疲れさまでございました。
以上
高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係