令和6年8月28日(水曜日)13時00分~15時30分
【松下座長】 それでは、所定の時刻になりましたので、第116回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。委員の皆様方には、御多用中の中、御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は、ウェブ会議として開催しております。本会議は公開が原則のため、この会議の模様は、ユーチューブライブ配信にて公開いたします。
ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際には、挙手のマークのボタンを押していただき、指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。また、御発言後は、再度、挙手のボタンを押して、挙手マークの表示を消していただきますようお願いいたします。また、御発言のとき以外は、マイクをミュートにしていただくなど、御配慮いただけますと幸いでございます。
また、御出席された方、全員が御発言できますように、大変申し訳ありませんが、御発言は、1回当たり上限2~3分程度を目安にお願いできればと思います。また御意見については、会議終了後に事務局にメールでお寄せいただければ、今回の会議の議事録に反映したいと考えております。委員の皆様方の御協力のほど、よろしくお願いいたします。
本日も活発な御審議を、どうぞよろしくお願いいたします。
では議題に入る前に、まず、委員の交代について、事務局から報告をお願いいたします。
【遠藤室長】 よろしくお願いいたします。事務局でございます。
7月22日付で、新たに法務省大臣官房司法法制部司法法制課長に就任されました、早渕宏毅課長に、8月27日付で本委員会委員に御就任いただきました。よろしくお願いいたします。
【松下座長】 それでは、早渕委員より一言、御挨拶をいただけますでしょうか。
【早渕委員】 法務省の早渕でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
それでは続きまして、事務局に人事異動がありましたので、報告をお願いいたします。
【遠藤室長】 事務局でございます。事務局の人事異動について、御報告をいたします。
まず7月11日に、高等教育局長として伊藤学司が着任しております。また8月8日付で、専門職大学院室長として私、遠藤翼が着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 遠藤新室長、どうかよろしくお願いいたします。
続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【遠藤室長】 それでは、資料の確認をさせていただきます。今回は資料1から資料5まで、全て370ページでございます。また、参考資料1から19までが、全58ページということとなってございます。今回の資料と参考資料につきましては、文部科学省のホームページでも公開する予定でございます。
また、昨年度公表してございます、法曹コース調査及び令和5年度法科大学院最終年次在籍者数に関しまして、1点、数字の誤りがありましたので御報告させていただきます。これは、大学からの数値の訂正の連絡があったことを理由としてございますけれども、これにより判明したものでございます。訂正した資料につきましては、後日、ホームページに掲載させていただきます。また、昨年度の法曹コース調査の数値につきましては、本日の資料にも影響するものでございますけれども、本日の資料については、訂正後の数値を用いておりますので、御承知おきいただければと存じます。
以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。本日の資料は、訂正後の数値が用いられているということでございます。
それでは、議事に入ります。
まず、議題1、法務省委託調査「我が国における法曹志望者数に関する調査」についてです。
令和元年度の法改正に当たっては、附帯決議が付されております。即ち、法改正による法曹志望者の増加等に係る効果について、適切な時期に十分な分析及び調査をすべきであるという附帯決議が付されております。これを踏まえ、法務省は令和5年度に委託調査を実施し、その結果が取りまとまったとのことです。今後の法科大学院に関する施策立案の参考とするためにも、本委員会での報告をお願いしております。
本日は、本調査の事務局でもある、法務省大臣官房司法法制部を代表して、本特別委員会の委員も務められている早渕司法法制課長から御報告をいただきます。それでは、早渕課長、よろしくお願いいたします。
【早渕委員】 早渕でございます。それでは、法務省から、我が国における法曹志望者数に関する調査の結果について御説明いたします。
お手元の本日の配付資料のうち、資料1-2が調査報告の本文、資料1-3がその資料編となってございますけれども、かなり大部なものでございますので、本日の御説明の便宜のために、主な内容を、御覧いただいております資料1-1のスライドに抽出しておりまして、このスライドに基づいて御説明を差し上げたいと思います。スライド上では、各ページと対応する調査報告本文のページを記載しておりますので、適宜、御参照いただければと存じます。
次のスライドに進みますが、本調査の目的について御説明いたします。先ほど、松下座長からも御紹介いただきましたけれども、御案内のとおり、令和元年6月に法曹コースの導入を含む法科大学院改革や、在学中の司法試験受験資格の付与等を内容とする、いわゆる連携法の一部を改正する法律が成立、公布されましたが、この法律案の審議の際、衆議院文部科学委員会において、この改正による法曹志願者の増加等に係る効果について、適切な時期に十分な分析及び検証を行うこととする附帯決議が付されております。
この改正法に係る主な内容の大部分は、令和2年4月から施行されたと承知しておりますけれども、それに対しまして、法科大学院在学中の司法試験受験資格の付与等に係る改正部分は、令和4年10月1日に施行されておりまして、令和5年度に、改正司法試験法の下で初めて在学中受験が行われたという状況にございます。そこで、このことも踏まえまして、今般、法改正の効果を検証するとともに、今後の施策について検討するために調査が実施されたということでございます。次のスライドに行きます。
本調査でございますけれども、当省から公益社団法人商事法務研究会に委託をして実施していただきました。具体的には、早稲田大学の石田京子先生を始めとする御覧の研究者の方々から構成される研究グループによって、調査・分析を行っていただいたというものでございます。次に進みます。
本調査の内容、調査項目ですが、御覧の4項目となっております。すなわち、①法科大学院志願者数等推移の分析、②法曹コースの制度や在学中受験資格の活用状況等、③若年層やその保護者等の認識の変化等、④法曹志望者の増加に係る法改正の効果に関する考察、こういう構成でございます。以下では順次、この項目に沿って調査結果の主な概要を御説明申し上げます。
まず、1点目、「法科大学院志願者数推移の分析について」になります。御覧のグラフは、制度が導入された平成16年から令和5年までの各年における志願者数の推移を、棒グラフでお示ししたものでございます。制度導入当初のばらつきが見られる期間ですとか、あるいは、法科大学院入試から適正試験が任意化されたことの影響が表れていると考えられる令和元年度を除いて、全体的な傾向を見ると、平成21年度から平成30年度にかけては、志願者数が減少傾向にあり、他方、令和2年度から令和5年度にかけては、志願者数が増加傾向にあるということが分かります。次のスライドに進みます。
本調査では、これらの傾向のうち、平成21年度から平成30年度までの志願者数の減少傾向につきましては、法学部生の減少、法科大学院の募集停止及び募集定員の削減、弁護士の就職難及びそれについての報道等、司法試験合格率の低下が影響している可能性が指摘されております。
他方、スライドの右側の令和2年度から令和5年度までの増加傾向につきましては、法曹コースの制度の創設、司法試験の在学中受験資格の導入、法曹の魅力発信の取組の充実、弁護士の就職状況の改善、司法試験合格率の上昇が影響している可能性が指摘されているところでございます。
次に進みまして、2点目として、「法曹コースの制度や在学中受験資格の活用状況等について」でございます。
まず、法曹コースの活用状況につきましては、法曹コースの修了者が、こちらに記載しておりますとおり、令和3年度は272名、令和4年度は合計564名と着実に増えておりまして、令和5年度の在籍者数も、こちらに記載のとおり更に多くなっておりますので、令和5年度の修了者も、更に増加すると見込まれるという状況にございます。また、法曹コース修了生の大部分が法科大学院に進学しているということが認められます。これらのことから、本調査では、法曹コースが制度設計どおりに活用されていると評価されております。
続いて、在学中受験についてでございますけれども、令和5年度の法科大学院最終年次在籍者が1,664名であったところ、そのうち1,066名が在学中受験の受験資格により司法試験を受験しておりまして、うち637名が最終合格したということが分かりました。このことから、在学中受験資格も十分に活用されているといえると、本調査では評価されているところでございます。
次に3点目の項目でございますけれども、「若年層やその保護者等の認識の変化等について」でございます。この点につきましては、本調査で3つのカテゴリー、すなわち、①として、いわゆる進学校に通う高校1年生、②として保護者、③として修習74期、75期の若手法曹に対して、それぞれアンケート調査が行われました。その分析結果につきまして、御説明申し上げます。
まず、高校1年生のアンケート結果からです。大学で法律学を学ぶことを視野に入れているかという質問に対し、視野に入れていると答えた割合、この棒グラフの青色の部分でございますけれども、これは、全体では15%程度でございましたけれども、下段の文系の生徒に限りますと、4割を超える者が視野に入れているという回答でございました。
続いて、法曹コースの認知度については、一番下の段の法律学を学ぶことを視野に入れている生徒でも、法曹コースを知っていると答えた者の割合は、青色の部分、20%余りにとどまる一方で、灰色部分のとおり、約半数が法曹コースについて聞いたことがないと回答しており、認知度が、まだ高くないということが分かったとされております。
続いて、将来の職業として視野に入れているものを複数選択式で質問しました結果でございますが、文系の生徒の場合、弁護士を視野に入れている者が約30%、裁判官、検察官を視野に入れている者は、それぞれ17%前後という回答結果でございました。
さらに、進路として法曹を視野に入れるようになった時期についての質問に対しては、青色の小学生の段階、それからオレンジ色の中学生の段階を合わせて、約7割が小中学生の間に法曹を視野に入れるようになったと回答しておるところでございます。
続きまして、保護者のアンケート結果でございます。法曹コースの認知度について質問をしましたところ、将来、子供に就いてもらいたい職業として法曹を選択した保護者であっても、法曹コースを知っていると答えた者の割合は、上の段の青色の部分でございますが、17%程度にとどまった一方で、約半数が法曹コースを聞いたことがないという回答を寄せております。
子供が法曹を目指したいと言った場合にどう思うかということを質問いたしましたところ、反対するという回答はオレンジ色の4%程度でございまして、青色のとおり、70%近い保護者が賛成するという回答でした。
次に、若手法曹に対するアンケート結果でございます。将来の職業として、法曹を第一志望とした時期について質問したところ、法曹を第一志望とした時期について、中学生以前だった人の割合、この青色の小学生と、オレンジ色の中学生の割合が合計で30%余りとなっておりまして、高校生の頃と回答した灰色の部分を合わせますと、合計で47.2%の者が、高校生以前に法曹を第一志望としたと回答しておりました。
続いて、法曹の仕事の魅力について質問したところ、少々細かい表で恐縮でございますけれども、上から2段目、社会の役に立てる職業であること、それから、上から4段目、仕事が面白いことが自分の仕事の魅力であると感じている者が、どちらかといえばという回答を含めてでございますけれども、両方とも9割程度に上ったということでございます。
4点目、最後の項目でございますが、法曹志願者の増加に係る法改正の効果に関する考察でございます。本調査では、これまで御説明した調査や分析結果を踏まえて、最後に法曹志願者の増加に係る法改正の効果に関して考察を加えております。まず、法改正の効果につきましては、令和元年の法改正は、法科大学院志願者数増加など一定の効果があった、また、法曹コースや在学中受験資格についても、順調に活用されていると結論づけられております。
その一方で、法曹コースの認知度は、法曹を将来の職業として視野に入れている高校生や、子供に法曹になってほしいと考えている保護者には、一定の認知度があるものの、広く一般に知られているとは言い難いという点等が指摘されております。
その上で、法改正を踏まえた更なる法曹志願者数増加のための課題といたしまして、次のような点が指摘されております。すなわち、若手法曹の多くが、早い段階から将来のキャリアとして法曹を視野に入れていたということを踏まえまして、若年層、具体的には小学生から高校生を対象として、法曹の仕事やキャリアについての更なる情報発信を継続して行う必要があるということ、また、世代を問わずに、広く社会に対し法曹の仕事の魅力を発信していくことが重要であるということ、更には、法曹養成制度の予測可能性を高めるための適切な情報提供が必要であるということ、こういった点が考察として加えられているところでございます。
以上で、調査結果の概要を御説明いたしましたけれども、私ども法務省といたしましても、この調査結果で指摘されておりますとおり、現段階で法曹コースの創設や在学中受験資格の付与は、法曹志望者数を増加させるとの観点から一定の効果をもたらしているものと考えておりまして、引き続き、志願者数等の動向を見ながら、適切な施策を講じてまいりたいと考えております。
簡単でございますが、御報告は以上でございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。大変興味深い調査結果であると拝察いたしました。
ただいまの早渕課長からの御説明について、御質問、御所感等があればお願いをいたします。冒頭にも申し上げましたけれども、御発言の際には、1回当たり上限2~3分程度を目安にお願いできればと思います。
なお本日は、本調査を担当された研究者を代表して、早稲田大学の石田京子教授にもお越しいただいております。石田教授にも御参加いただき、質疑応答を進めたいと考えております。よろしくお願いいたします。
それでは、どなたからでも、どの点からでも御質問、御所感等をお願いいたします。
それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。清原です。早渕委員、大変に貴重な資料の御説明、どうもありがとうございます。
そこで、資料1-1を拝見しまして、通し番号21ページ、19ページにまとめていただきましたように、この間の特別委員会等での検討を踏まえて、「法曹コースの制度の創設であるとか、在学中受験資格の導入等の効果が、一定程度表れていると判断することができる」という方向性はよかったと思います。
あわせて、19ページに若年法曹の多くが、早い段階から将来のキャリアとして法曹を視野に入れていたということが分かりました。特に中学校以降かなと思っておりましたら、高校1年生を対象とした調査でも、小学校から、将来は法曹を考えていたという数値も少なくありませんし、若手法曹でも小学校が18.7%と、大学生が最多とはいえ、決して少なくない比率で小学生から法曹を意識していたということも確認されました。
そこでこの間、例えば、日弁連あるいは法務省等におかれても、法曹の仕事について、いろいろと体験できるような模擬裁判等も踏まえたPRの機会を増やしていらっしゃるのですが、どうしても高校生、あるいは、早くても中学生が主たる対象になっていたところ、今後は小学生に対して、どのような働きかけをしていくかということが、大変重要になってくるのかなと思いました。
そこで例えば、文部科学省の初等中等教育局との関係で、高等教育局と初等中等教育局が連携をしながら、これは法科大学院に限ったことではないかもしれませんけれども、特別委員会の委員の立場で申し上げれば、やはり法曹に関する正しい情報、そして、法科大学院の制度に対する正しい情報を伝えるような、そうした具体的な方向性を検討すべきかなと考えました。それは、子供たちにとっても役に立つ取組になると思いますので、ぜひ、その方向での高等教育局と初等中等教育局の連携の可能性を探っていただければと思います。
以上です。ありがとうございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
続いて、笠井委員、お願いいたします。
【笠井委員】 ありがとうございます。大変詳細な調査をしていただきまして、いろいろと勉強になるところが多かったです。石田先生をはじめ委員の方々にも、お礼を申し上げます。
私からはある種の質問になります。今、清原委員がおっしゃったことと、事柄として重なっているところもありますが、いつの時点から職業を視野に入れるかという話との関係で、少し思ったことを申し上げます。
資料の、報告書でいくと46ページで、資料の通し番号だと72ページにお医者さんと比べている部分があるのですが、お医者さんの場合と法曹の場合とを比べることの意味が、どういうところにあるのかについて、石田先生にお伺いしたいと思います。といいますのは、お医者さんの場合は、子供の頃からある意味、なじみが深いお仕事でありまして、それと法曹を比べるのも、法曹の仕事というのが、法律学は、ある種やはり大人の学問というか、そういうところもあると思いますので、どこまで一緒にしていいのかなというのが、まずこれを見たときの感想です。
それはあるのですけれども、他方で、やはり若年層、特に小中高校の皆さんに興味を持ってもらわなければいけないというのは、そのとおりだと思いまして、その辺りとの関係で、いわゆる法教育との関係について示唆しておられるのか、これは、石田先生か、あるいは法務省にお伺いしたほうがいいかもしれませんが、お尋ねします。法教育というのも、小中高でやっていると思いますけれども、発達段階に応じた内容にするというところがありまして、必ずしも小学生でないといけない、小学生に集中しなきゃいけないという話ではないと思いますので、その辺りの法教育とのつながりについて意識されている、今の報告の最後の辺りの提言なのかといったあたりも、少し伺えればと思います。
私からは、以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。それでは、医師との対比の点、それから、法教育の点について、石田先生から何かコメントはございますでしょうか。
【石田教授(早稲田大学)】 石田でございます。笠井委員、ありがとうございました。ごく簡単に回答させていただきます。
まず、医師との比較というところに関しては、御指摘のとおりで、お医者さんの場合には、小さい頃からかかりつけ医などの形で、法律家よりも身近に感じる機会があるというのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ他方で、いわゆるこういった進学校に進む学生の中で、将来、資格を持って高度に専門的な仕事をするという形で、よく対比されるのが医師と法曹です。これは、いろいろな教育系調査で、「将来なりたい資格」、「取りたい資格」とか、そういうところでも並べられるものですので、今回もそういった形で、まず同じように比較をしてみようということで挙げました。
1つ結果として、私どもが思いがけなかったところというのがございまして、これまで、教育社会学の先生にも入っていただきましたけれども、こういった比較をしますと、医師を視野に入れている生徒は、大体全体の15%から20%であるのに対して、法曹というのは5%程度だと言われていました。ですから、その5%にアプローチできるのかなと、ちゃんとサンプルが集まるのかなというのを、我々は非常に心配していたのですが、そこからすると予想に反して、より多くの方が今、法曹というのも1つの将来視野に入れるプロフェッションであるということが分かりました。今回の1つ大きな発見と思っているところです。
2つ目の法教育に関しまして、私どもは、そこまでは視野に入れた提言というふうには思っておりません。ただ、調査の報告書にも書いてあるのですが、むしろ小さい方が子供の頃に夢として描くものは、ドラマとか、映画の影響が圧倒的に多いんですね。そういうメディアで、格好よく活躍して人、人権を護っている人という形で弁護士とか法律家を夢に描くと。さらに実はもう一段階ギアが上がるのが、大学ぐらいのようなのですけれども、これは若手法曹への調査で発見できたところですが、そのときというのは、むしろ人との直接的なコンタクトなんですね。実際に法律家に会った、これによってギアがもう一段階上がって、本気で法律家を目指すと。ですから、うまく最初に広くの方へ法曹について知っていただいて、イメージを持っていただく。さらに適切な段階で、より具体的なロールモデルを提供する、こういったことも大事かなというのが、少なくとも研究会の中で考えていたことになります。
以上です。
【笠井委員】 どうもありがとうございました。よく分かりました。
【松下座長】 ありがとうございました。笠井委員から、法教育については法務省からもコメントができればというようなことだったと思いますけど、早渕課長のほうで、何かコメントはございますでしょうか。
【早渕委員】 ありがとうございます。早渕でございます。
御紹介いただきましたとおり、法務省では、文部科学省とも連携させていただきまして、それぞれ学習指導要領に基づいて、小中高の段階で法教育というのにも取り組んでいただいているという状況にございますし、私どものほうで各段階に応じた教材の開発ですとか、あるいは、先生方に対するセミナー、あるいは意見交換ということをやらせていただいているというところでございます。
例えば、こちらの「ルールは誰のもの?」というのは、私どものほうで作った小学生向けの法教育教材なんでございますが、こういう形で、やはりルールとか法的な考え方というところを、法教育に当たって取り組んでいるところでございますが、それと直ちに法曹養成的な、職業的なところまで法教育の中で触れられるかというと、学校現場でやっていただくということもあって、考えなければいけないこともあるのかもしれないのですが、ただ、御指摘いただきましたとおり、模擬裁判にも触れていただくなど、かなり近いところも法教育のエリアでもやっていただいておりますので、そういう観点で、法教育と法曹養成をどのように隣接、接合させていけるかというところは、いろいろ先生方からも御知見をいただきながら、今後も考えてまいりたいと思います。ありがとうございます。
【笠井委員】 ありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして、菊間委員、お願いいたします。
【菊間委員】 菊間です。よろしくお願いします。詳細な御説明ありがとうございました。法曹コースの設置だけではなく、この間の取組が、ロースクールの志願者数の増加につながっているという結果が出たということで、皆様の御尽力の賜物だなと伺っておりました。
ちょうど法教育のお話が出たので少しお話しさせていただくと、私は弁護士会の法教育委員会に入っています。私の所属する第二東京弁護士会だけではなく、全国の多くの弁護士会には法教育委員会というものがあって、小学校から中学校、高校、それぞれのプログラムを作り、ご依頼を頂いた学校に出向き、模擬裁判だけではなくて、小学生の場合は弁護士とはどういう仕事をするのかといった話しをし、直に弁護士と対話をすることで、弁護士という職業をイメージしていただくなんてことはやっております。ですので、プログラムの先生方が授業の中でやるのとは違う形での啓蒙活動というものも、各弁護士会はやっているということをお伝えします。
それと関連してですが、今回の発表は、法曹の多様性という観点からは、少し気になるところがございました。7割の方が、小中学生のときから法曹を志願するということで、それはそれですばらしいと思いますし、私も小学校のときになりたいと思った職業に最初は付きましたので、夢を叶えるということではいいのですが、法務省がそれをさらに加速し、小学生のときから、もっと弁護士・裁判官・検事を目指すようにアプローチをしていき、大学に入ったら法曹コースへ促し、とにかく若いうちにエリートコースまっしぐらという法曹をつくるということに傾いていくと、これはもともとロールクールをつくった趣旨である、【法曹の多様性】とは、やはりずれているのではないか、この視点が欠けすぎではないかと思います。本来のロースクールの在り方というものも、見失わないでいただきたいと思います。
私自身も、様々な学校に出向き、法曹の魅力を伝える活動を行っておりますが、必ずそこで伝えるのは、卒業していきなりなる必要はないのですよ、ということです。社会で様々な経験をしてから法曹になることで、これまでの経験を、最終的に法律という形を通して社会に役立てることができるのだという話しもしていますので、こういった視点も忘れないでお伝えしていただきたいと思います。
法曹の多様性としては、専門性以外にも、地方の弁護士不足、女性弁護士不足、等問題は山積みで、これらはロースクールの志願者が増加したとしても、自動的に解決する問題ではありません。志願者を増やすことが目的ではなくて、やはり意欲のある者がロースクールでしっかり学んで、確実に力をつけて法曹になる、広く国民にリーガルサービスを供給する人材を育てるというところが大事だと思いますので、そこに向けて何が必要なのかという視点は、忘れないで頂きたいと思います。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。法曹の多様性というのは、非常に重要な御指摘だと伺いました。
それでは、佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 よろしくお願いします。詳細な御報告ありがとうございました。
法改正の効果がちゃんと数字に表れているということで、それは非常にいいことだと思いますが、ただ、長期的なことを考えれば、御承知のように少子化、18歳人口の減少という現実も無視できません。
また、文系・理系という話がありましたけど、最近はあまり早い段階で文系・理系を分けるのは良くないのではないかという議論もあります。その心としては、理系人材が足りないとか、特に情報人材が全然足りないんだということがあるんでしょうけど、とにかくそういうことも言われているわけですので、もちろん先ほど、菊間委員のほうからもありましたが、早いうちから法曹になりたいということであれば、それはそれでいいと思うんですけど、今後、文系・理系に必ずしも分かれない中で将来のキャリアを考えるということになってくるのであれば、それに対応したアプローチの仕方が必要になるのではないかと思いますので、ちょっとそこだけ、コメントさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは続けて、大貫委員、お願いいたします。
【大貫委員】 中央大学の大貫でございます。早渕委員、詳細な御報告ありがとうございました。
課題として、若年層への法曹の仕事やキャリアについてさらなる発信を継続的に行う必要性とか、世代を問わず広く社会に対して法曹の仕事の魅力を発信することが重要とされております。こうした必要性は、かねてより認識されております。法曹関係者それぞれに、法曹志願者増のための努力を続けてきています。先ほど、菊間委員のほうからも、こういう活動を続けているという御発言がありました。
私も法曹の魅力を発信するプロジェクトには少し関わってきで感ずることなんですけど、大事なことは、それぞれの関係者が行っている志願者増の試みを適切に連携させ、協力して法曹志願者増を行うことであると思っています。
実は最近、2022年にも、法曹三者と文科省、法科大学院協会の実務者、これは非常に実務的な会議でしたけれども、志願者増の方策について検討が開始されました。その際に実は、今日、早渕委員から御報告された調査を行うということが、法務省のほうから御披露があったわけです。
当時の検討では、例えば、他業種等における人材の獲得に向けた取組について情報収集しようとか、即座にできるものと、時間を要するものを区別した上で、各組織が行っている、日弁連が行ったり、法務省が行ったり、裁判所がやっているいろいろなイベントがありますが、こういうイベント情報の集約とか、出前授業や学校訪問時の資料の共有とか、さらには、必要に応じてイベントにおける配付資料の見直し、さらには、法曹関連情報の一元化などがテーマとして挙げられておりました。非常に積極的に、当時は、まだ志願者が減っている状況でしたので、危機的状況を受けてこのような試みが提案されました。
法曹志願者増というのは、法曹関係者にとって共通のプロジェクトですので、ぜひとも、今後も関係者が連携をして、志願者増の試みを続けていただきたいと思っております。
以上、意見でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、大澤委員、お願いいたします。
【大澤委員】 ありがとうございます。大澤でございます。今日は、非常に興味深い報告をありがとうございました。
伺っていた中で1つ関心を持ったのは、高校1年生アンケートで、法曹を視野に入れるようになった時期について、小中学生の段階という回答がかなりの数ある一方で、若年法曹アンケートの中では、法曹を第一志望とした時期について、大学生時代という回答が多いという点で、この両者の関係をどう見るのかということに興味を惹かれましたが、これについては、先ほどの笠井委員からの御質問に対して、石田先生のほうから、非常に分かりやすく、的確な御説明をいただいたと思います。またそれについて、菊間委員が言われた御意見は、非常に大事なことだと思いました。
それで、実はもう一つ聞きたいことがございます。今回の調査は、法曹志望者数の調査ということになっておりますが、法曹志望者数というと、今回、主として取り上げられている法科大学院受験者数とともに、予備試験の受験者数というのがあって、予備試験から法曹になるというルートも、現在のシステムの一翼ではあるということになるのかと思います。
他方で、法改正の効果の検証というのが調査の主たる目的だとしますと、法改正自体は、法科大学院の教育に向けられたものですので、そういう調査の中で、予備試験受験者数というのをどのように位置づけて、分析するのだろうかと思ったようなわけです。今回はあまり踏み込んではいないように見えますけれども、調査は、あるいは、今後も継続していくのかもしれません。その中で、やはり予備試験受験者数というのは、それなりに重要な数字ということにはなるのかと思うので、それをどう位置づけて見ていったらいいのかということについて、もしお教えいただけることがあれば、よろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、予備試験の位置づけということについて、石田先生からコメントをいただけますでしょうか。なかなか難しいかもしれませんが。
【石田教授(早稲田大学)】 ありがとうございます。
私がお答えできるのは、恐らくこの調査の中でどのように位置づけて、検討していったかということかと思います.。まず、予備試験自体を受ける層には、非常に若い方もいらっしゃいますけれども大学生が圧倒的に多いと。大学生のうち、どの程度が予備試験に関心を持っているかということについては、実はもう別途の調査、大学法学部調査というのが存在するということを大前提としまして、今回は、法改正の検証をするのが目的ということでしたので、どちらかといいますと法曹志願者がどの程度いるのか、法改正を知っているか、というところに焦点を当てたというものでございます。
しかしながら報告書の中でも、予備試験の受験動向というものにつきましても、一定程度の分析をしております。そしてその中で、今、予備試験というものの位置づけというのが、実は先生方も法科大学院ですとか、法学部で教えていらっしゃる方は、体感としてお分かりだと思うのですけれども、どちらかといいますと、司法試験に自分が受かることができるのかなという形で、模擬試験のように受験する学生がかなりいます。これは、法科大学院に在籍していても、多くの学生が予備試験を受験します。これが一番確度の高い、自分の能力を試す試験だという形の試験に変わってきていますので、もちろん法曹を視野に入れている方が受けているという意味では間違いはないということで、この値というのも、かなり気をつけて見なければならないのですが、他方で、法科大学院志願者と予備試験志願者というのは、今はもう全く独立ではなくて、かなり重複しているということを前提にした上で、その動向を見ていくということかと思っております。
【松下座長】 ありがとうございました。
大澤委員、よろしいでしょうか。
【大澤委員】 結構です。どうもありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、土井委員、お願いいたします。
【土井座長代理】 京都大学の土井でございます。
法曹を志望する者の現状、あるいは、そこに至る経緯について詳細に分析をしていただき、ありがとうございます。この委員会や文科省、あるいは、法曹関係者の御尽力もあって、資料にも示されているような法曹養成制度の改善・安定が図られつつあり、法科大学院志願者、法曹志望者が増加傾向にあるというのは、大変よい知らせだと思っております。
私からは2点、意見とお願いがございます。既に委員の先生方がおっしゃっていることと重複するのですが、やはり第一に、法曹志願者数を増やしていく取組については、先ほど、菊間委員がおっしゃったように、早くから法曹を目指す必要は必ずしもないと思いますし、早くから法曹を目指してもらうために、リクルート活動を若年化させるという必要も、それほどないのかなとは思っております。
ただ重要なのは、やはり、幅広い層の子供たちを対象にして法曹の魅力を伝えていくというためには、法そのものが、社会において重要な意義を果たしているということ、そして法曹が、法の担い手として重要な役割を果たしているということを理解してもらう、あるいは感じてもらうということが、重要なのだろうと思います。
初等・中等教育では、開かれた教育課程ということで、法曹関係者の方にも授業担当をしていただいていて、やはり実物の法曹の方が目の前で、いろんな話をしてもらうということ自体は刺激になろうかと思いますので、笠井委員、あるいは、菊間委員からもありましたけれど、法教育等の学習を充実させていただければと思います。
第2点は、今、大澤委員におっしゃっていた点にも関連するんですけれど、やはり法曹志望者の現状を正確に把握して取組を行っていくためには、予備試験受験者の属性ですとか、受験回数ですとか、そうした情報についても、しっかり収集・分析していただく必要があるのだろうと思います。
法科大学院のほうは、法科大学院の努力と文科省のほうで収集・分析していただいていることもあって、データがかなりあるんですけれども、予備試験のほうについては、必ずしも十分にない状態になっています。推測に推測を重ねるのもいかがなものかと思いますので、この辺の情報収集を法務省のほうにお願いすることになるのかと思いますが、ぜひ、御検討のほどをよろしくお願いできればと思います。
私からは、以上です。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、この議事1について挙手されている方は、今のところいらっしゃらないと認識していますが、次の議題に行ってよろしいでしょうか。
それでは、議事1は以上といたしまして、続いて、議題2、法科大学院の特色・魅力についてです。
今期の本委員会の審議に当たっての基本的認識にもありましたように、今期は、法科大学院開設から20年を迎える節目の期に当たり、これまでの歩みを俯瞰し、その成果や残された課題を整理した上で、法科大学院教育のさらなる改善・充実に向けて必要となる方策について審議をし、提案をしていく必要があると考えております。
そこで前回に引き続き、法科大学院の特色・魅力についてという議題を設けたいと思います。今回は、女性法曹の輩出をテーマに、事務局から論点案と関連データを示していただいた後、女性法曹の輩出に注力されている早稲田大学より、現在の取組や今後の展望について御発表いただき、その後、質疑の時間を設けたいと思います。
それではまず、事務局から御説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 よろしくお願いいたします。事務局でございます。
お手元の資料2をご覧いただければと思います。まず、女性法曹の輩出に係る取組について論点(案)ということで、簡単に1枚でおまとめをさせていただいている資料です。
こちらに記載しておりますけれども、女性法曹の志願者の増加に向けまして、各法科大学院や法曹コースにおいて、どういった工夫が講じられているのかということを、本日は、早稲田大学の皆様からも御発表いただきますけれども、様々な御意見を頂戴できればと考えてございます。
基礎的なデータといたしまして、女性の入学志願者数等のデータはもちろんでありますけれども、新しく創設されました法曹コースに在籍する女性の割合もお示ししております。こういった方々の属性、キャリアプラン等についても、ぜひ大学で指導しておられる現場の皆様のお声を頂戴できればと考えておりますし、さらに、女性特有の様々な事情として、現在どういった課題が存在し、これに対してどういった対応を取っていくのか、工夫ができるのかということも意見交換していただきたいと思います。
また、先ほどの議論でもございましたけれども、女性法曹輩出に向けた裾野をより拡大するために、やはりその入り口であります法学部をはじめとして、他学部、高校生、社会人、こういった幅広い層が法曹を志して、法科大学院に進学するにあたってのインセンティブをどのように高めていくのかということも非常に重要な論点でございます。この点についても、どういった工夫や取組が考えられるかということも御意見を頂戴したいと思ってございますし、やはり、女性の法曹で御活躍しておられる方々のロールモデルの提示であるとか、あとは裁判所、検察庁、弁護士会等の様々な法曹界の関係者の皆様と、どういった形で連携をしていくのが、より効果的なものになるのかというようなことも、ぜひ、御意見を頂戴したいと考えてございます。
こうした論点を御提示させていただいてございますので、本日の意見交換の参考としていただければと存じます。
これ以降の資料として、関係するデータのほうをまとめているところでございます。実際のデータの中で資料の3ページ、通し番号246ページになりますけれども、現在の司法分野における女性の割合ということで、中長期的な流れ、トレンドをお示ししております。やはり従来、関係者の皆様に御尽力をいただきまして、司法分野における女性の御活躍の割合は、着実に伸びてきている状況にあると考えてございます。これをしっかりと私たちも受け継いで、より改善をしていく方向性で尽力させていただきたいと考えているところです。
続きまして、次のスライドでありますけれども、特に法科大学院における入学者、修了者の男女比ということで、まとめさせていただいている資料でございます。特に女性法曹の拡大に向けましては、やはり法科大学院への入学者、そして修了者に占める男女比というものを、しっかりと一定数確保していくことが重要であると考えてございます。
左側のグラフで、青が男性、オレンジが女性で記載をさせていただいてございますけれども、直近のデータで申し上げますと、令和6年度の入学者については、約65%が男性、女性が約35%程度でございます。法科大学院修了者の男女比につきましても、右の棒グラフでありますけれども、令和5年度の修了者につきましては、64%程度、36%程度が女性という形になっている状況でございます。
実際の司法試験のほうの受験者の男女比ということで、通し番号でいいますと256ページ、スライド番号でいうと13ページを御覧いただければと思います。司法試験受験者の男女比でございますけれども、こちらを御覧いただきますと分かりますとおり、平成29年以降の段階で、やはり女性の実際の受験者というものは増加傾向にあるということが、数字上で見て取れるかなと考えてございます。
司法試験の受験者の特に法科大学院修了者、在学中受験者に占める女性の割合も記載をさせていただきましたけれども、こちらは、特に全体の受験者よりも高い傾向にあるということも御認識を頂戴できればと考えてございます。
司法試験の実際の受験者を先ほど申し上げて、今回のこれは、合格者の男女比というものでございます。司法試験全体の合格者に占める女性の割合や数につきましても、平成30年以降は増加傾向にあるという形で、数字上で見て取れるかと思います。
また、司法試験合格者の法科大学院修了者より、在学中受験資格に占める女性の割合につきましても、全体の合格者よりも高い傾向にあるということが、数字上で見て取れるかなという状況でございます。
こうしたデータを踏まえまして、各大学における女性の輩出に係る取組ということで、各大学の皆様に様々な調査をさせていただきまして、具体的にどのような取組をしておられるのかという点を、こちらに記載させていただいてございます。
本日は早稲田大学の皆様から御発表いただきますので、ぜひ現時点で大学としての取組、御尽力しておられる内容について、私どももしっかり学ばせていただきたいですし、意見交換の材料にしていただければと思います。
事務局からの説明は、以上でございます。ありがとうございます。
【松下座長】 ありがとうございました。
続きまして、資料3について、古谷修一早稲田大学大学院法務研究科長より、10分程度御説明をお願いいたします。なお、議題1に引き続き、石田京子教授にも御同席いただいております。石田教授は、教務副主任として女性法曹の輩出拡大に係る取組に携わっていらっしゃいます。
それでは、古谷法務研究科長、よろしくお願いいたします。
【古谷研究科長(早稲田大学)】 ただいま御紹介いただきました、早稲田大学法務研究科の研究科長を仰せつかっております、古谷でございます。パワーポイントを御覧いただけますでしょうか。ありがとうございます。それでは、簡単に御説明をさせていただきます。
私どもが取り組んでおります女性法曹輩出促進の取組について、御説明をさせていただきたいと思います。本日お話し申し上げるのは、この4点です。私どものプロジェクトは、FLPと呼んでおりますけども、Female Lawyers Projectというものです。既に最初の発足からは、10年ほどたっております。2014年に、私どもの教務補助をしていただいている若手の法曹と、当時の教務主任、これは私ですけれども、が議論をしているときに、女性の司法試験の合格率が低いということが問題になり、なぜなんだろうかと話し合いを行いました。そこから、女性を法曹の世界に送り出すことが、多様な人材を法曹の世界に送り出すことの出発点ではないのかということになり、このプロジェクトを始めた次第です。
背景にあった問題意識は、先ほど申し上げましたとおり、女性の司法試験合格率が低いということです。このグラフを御覧いただければと思いますが、これは2014年当時に議論をした2013年までの早稲田大学のデータですが、累積の合格率を見ましても、10%以上の差が男女にはあるということです。
これがなぜなのかということが問題になり、そのときにいろいろと議論をいたしました。主には4つぐらい原因があるのではないかと考えられます。1つは、女性特有の健康上の問題。これは、出産とか育児とかということも含むものです。第二には、家庭内の性別による役割分担みたいなものがあって、仮に御結婚をされてない女性でも、家庭内で家事などの分担が求められるというようなことが多いのかもしれない。第三には、そもそも御家庭の御理解というか、女性が大学院に行くことや、司法試験に挑戦をする、場合によっては何度か挑戦をするということに対して、否定的なイメージが持たれているのかもしれないということです。そして最後に、そもそも女性法曹の先輩たちが少ないので、キャリアモデルが圧倒的に不足しているのではないかということです。
どれかが決定的に大きな影響を及ぼしているというよりは、これらが複合的に関係しているのではないかということに、結論としては行き着きました。したがいまして、学生生活上の直接的な支援ということも重要ですし、同時に、女性が一般的に置かれている社会的な状況を考慮して、ロースクールでの教育をしていく必要があるのではないかということになったわけです。
そこで、具体的にFLPの活動の柱としては、3つのことを想定して行ってきております。1つは、先ほどのセッションでも議論になりましたけれども、法曹を志す女性の層を広げていくことが必要であるということです。中高生や学部生も含めて、法曹になるビジョンを広報していく必要があるだろうということが、1つです。
もう一つは、学生に身近なロールモデルやメンターを提供することによって、自らがどういう形でキャリアを形成していけば良いのかということを、身近に感じてもらう機会を提供していくことが必要だろうということです。
そして最後に、女性の学生が具体的に直面する問題に対して、ロースクールとして、学修支援を提供していく必要があるだろうということです。
学修支援のことについて申し上げますと、これは女性のアカデミックアドバイザーなどからヒアリングをして出てきたものですけれども、例えば、幼稚園とか保育園のお迎え時間が夕方にあるので、必修科目の時間をこれにバッティングしないように配慮する。また、予防接種のために、どうしても子供について付き添わなければいけないので欠席をしたいというような要望がございます。こういう場合には、欠席にはなりますけども、成績評価において不利益な扱いはしないなど。現在ではこれに加えて、例えば、遠足とか、運動会とかいうようなものも同様な扱いをするようにしております。
それから、出産・育児を在学中にするという学生もいます。こういう学生は、休学する場合もあります。私どもは私立大学ですので、休学をいたしますと基本的には大学からのサービスはなくなるわけですけれども、この出産・育児による休学中についても、アカデミックアドバイザーの個別のサポートをきちんとして、復学時に大きなギャップがないようにしています。このような形で、女性の学生に対する直接的な学修支援を行っております。
それから、学内体制について御説明を申し上げますと、現在は教務主任が3名おりますので、この3名の教員に加えて、法務教育研究センターの女性の助手が1名、そして、アカデミックアドバイザー数名が入って、大体2か月に1度ずつぐらいの頻度で会議を開きながら状況を確認し、新しいプロジェクトの内容を作っていくということになります。
先ほど述べました柱の1つである、中高生を含めた広報については、毎年6月に、FLPシンポジウムを開催しております。全国に向けてハイブリッドで行って、オンラインでも参加していただけるようにしております。これについては、千葉大学様、琉球大学様、それから中央大学様の御協力もいただきながら行っているところです。直近では2か月ほど前にシンポジウムを行いましたけども、190名ほどが登録されています。中学生が1名、高校生が23名、大学生が136名というような登録状況です。
それから、ロールモデルやメンターという観点では、女性法曹カフェ、おしゃべりカフェといったようなものを設けております。女性法曹カフェは、12月に開催しておりまして、これは学内向けのものです。おしゃべりカフェは、不定期に年に何度か行っておりまして、これは「会いにいけるロールモデル」という形で、女性の法曹の方に来ていただいて、お茶を飲みながら1時間程度の語らいをする場としています。多いときには10名ぐらい、少ないと2~3名でじっくり話をするというようなことをやっております。
データをきちんと集めることが重要ですので、毎回の司法試験の合格者についてはアンケートを行い、学生のニーズなどを把握し、それを基にアカデミックアドバイザーとの意見交換を行って、次の新しいプロジェクトの内容を作っていくという流れで進めています。
先ほど申し上げましたけども、2014年に議論を始め、2015年からはちょうど、いわゆる加算プログラムが始まりましたので、最初に私どもはこの女性法曹輩出というプロジェクトを挙げました。最初の目標は、志願者における女性の割合を40%にするということでした。2018年当時は32%でしたが、昨年の直近のデータは38.1%です。まだ少し目標に届いておりませんけれども、入学者については45.8%になっております。
次のグラフを御覧いただきますと、志願者における女性割合も着実に増えております。下の黄色い部分でございます。それから入学者も、ここ数年は40%を優に超えておりまして、このまま順調に行けば、ほぼイーブンになるのではないかと考えているところです。
それから、司法試験の合格者における女性の割合を40%にするということも、1つの目標でした。2018年当時の司法試験合格者の比率は、男性が大体75%、女性が25%というのが早稲田の状況でしたけども、直近の2023年度では、早稲田全体の合格者のうち41%が女性になりました。したがって、合格者の男女比でいいますと、女性の合格者の割合は確実に増えてきております。もちろん全国的にも女性の合格者の割合は増えてはきておりますけども、それでも先ほどのデータにもございましたとおり、まだ3割に達していないという状況です。早稲田の場合には、4割を超えており、10年かかってここまで到達したことになります。
御存じのとおり、次の新しい加算プログラムの申請が行われたところですが、このFLPのプログラムを引き続き進めていくことで申請し、お認めいただきました。目標は、女性の累積合格率を70%にするということです。
これまで、2004年から2022年までの女性累積合格率は、57.2%です。男性に比べると、まだまだ低い状況です。これを70%にまで上げることによって、私どもとしては、女性が早稲田のロースクールに入学すれば、確実に法曹になれるという状況を作り出していきたいと考えているところです。
これからの課題ですけれども、最初のセッションでも少し議論になったところかと思いますが、3プラス2が導入されたことによって、どういう道筋を通っていけば法曹になれるかということが、非常に明確になったと思います。これは実は、女性にとっては非常に有利なことでして、漠然と不安を持っていた保護者の方々にとっては、学部で法曹コースに入り、そこからロースクールに行くという設計がはっきりし、早い段階からロースクールを志望し、法曹になるのだという道筋が見えてまいります。この辺が女性法曹を増やす上では、非常に有利に働く側面かと思います。
それから、先ほど累積合格率を7割にと申し上げましたけども、やはりロースクールに行って司法試験を受けて、本当に法曹になれるのかということの不安が、保護者の方々にはあります。それを払拭することが重要で、女性の法曹志願者に、御家庭が後押しをしてくれるような状況を、我々としてつくっていく必要があるだろうということです。
それから当然、女性のエンパワーメントを進めていくという点で、教職員の意識の共有がやはり重要ですし、他大学とも連携してこれに取り組んでいく必要があるだろうと考えているところです。私どもの目指す先は、女性の法曹を単に増やすというだけではありません。法曹界の出身者というのは、政治や行政、さらには企業経営にも人材を輩出していく重要な母体ですので、ここに女性の力が集まってくるということは、日本社会全体の女性のエンパワーメントに大きな役割を果たすと考えているところです。もちろんそれは、20年後、30年後に花を咲かせることであろうとは思いますけれども、私どもとしてはそのために力を尽くしていきたいと考えているところです。
簡単な御説明で恐縮でございますけども、先生方からの御質問等をお受け申し上げたいと思います。ありがとうございました。
【松下座長】 どうもありがとうございました。ただいまの古谷研究科長からの御説明につきまして、御質問、御所感等があればお願いをしたいと思います。繰り返して恐縮ですけれども、御発言の際には、1回当たり上限2~3分を目安にしていただければと思います。それでは、どなたからでも、どの点からでも御質問、御意見等をお願いいたします。
北川委員、お願いいたします。
【北川委員】 早稲田大学の北川でございます。ただいま、古谷研究科長には非常に分かりやすい御報告をいただきまして、ありがとうございました。その上で、私からは質問ではなく、思ったことを申し上げたいと思います。
古谷先生の御報告の初めのほうで、スライドでは265ページに当たる箇所でございますが、女性法曹の推進を阻む要因の1つとして、保護者や家族の否定的なイメージがあるのではないかという御指摘がございました。私も、そのような感覚を有しております。
私の経験では、例えば、地方出身の法学部生から、学生自身は法曹に関心があるのだけれども、卒業後は地元に戻って就職することを親が希望しているので、ロースクールに進学することを断念したという話を聞いたことがありますし、そもそも地方の親御さんの中には、娘を親元から離れて下宿させることを望まず、地元の大学にしか進学を許さないといったような保護者の方もいらっしゃいます。経済的な理由からだけではなくて、若い女性の独り暮らしに対する懸念、その中には、若い女性の独り暮らしに対する安全面の懸念だけではなくて、偏見も含まれているように感じることがあります。こうした話からも、法曹コースやロースクールがない地方では、女性法曹の輩出促進を阻むハードルが、都会と比べて高い気がいたします。
先ほどの調査報告書の中にあった、高校生の保護者に対するアンケート調査に、男子高校生と女子高校生の各学年のそれぞれの保護者からの回答結果の数値が分けて記載されていましたが、それらをざっと拝見した中では、双方の保護者の回答の間で有意な差を見つけることはできませんでした。しかし、今述べましたように、アンケートには出てこない地方の女子高校生の保護者特有の意識があるように思います。
先ほどの調査結果によりますと、法曹コースの認知度もまだまだ低いということであり、さらに地方の法曹の増加も考えていくべきところでありますので、地方の若年層に対する法曹コースやロースクール進学の広報活動を検討する際には、その子供たち、若年層自身への働きかけだけでなく、まさに保護者にも働きかけて、その中でも女子法曹の魅力といったものを意識的に訴えて、先ほどの偏見を乗り越えて、保護者世代の意識を変えるような何らかの訴えかけの工夫が必要であるように思います。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは、加賀委員、お願いいたします。
【加賀委員】 古谷先生、どうもありがとうございました。大事なテーマについて、10年前からこういうふうに取り組まれてきたことを、本当に敬服をいたしました。
私は意見及び質問になりますけれども、今日、古谷先生の御報告の中になかった点になるんですけれども、長い意味で、私は法科大学院の教員、この人たちの中に女性教員が増えていくことは、実は大変重要かなと思っております。創価大学は早稲田大学と違って小さな小規模の法科大学院ですけれども、現在25%、4分の1が女性教員。法科大学院長は女性ですけれども、少しずつ女性教員を増やそうというふうに考えておるわけですけれども、いかがでしょうか。古谷先生のほうで、早稲田大学として、そんなような考え方をお持ちなのかどうか、お聞かせいただければと思います。
【松下座長】 ありがとうございました。古谷先生、それではお願いいたします。
【古谷研究科長(早稲田大学)】 これは、痛い御質問をいただきました。
本日、この画面上に私どもの法科大学院が抱えている女性教員の3分の2が参加しております。3名しかおりませんので、実は地方の国立大学の法学部、あるいは法科大学院と比較してもずっと低いと思っています。これは確かに非常に大きな問題でございまして、女性法曹を増やそうと言いながら、足元が全然増えていないというのが現状です。
ただ、これは非常に大事なことで、ロールモデルの一番大きなポイントは、やはり日常的に接する教員が、どれだけその問題について意識をするかということあります。この点で、当然、女性の教員がたくさん増えることは重要なことと思っており、ここは私どもも反省をして増やしていきたいと考えております。
【松下座長】 加賀委員、よろしいでしょうか。
【加賀委員】 すみません。痛い質問をしたようで申し訳ありませんでした。
【松下座長】 今の点は、今後の課題ということで、早稲田大学に限らず、どこの大学でも同じように重い問題として受け止めていただければと思います。
【加賀委員】 ありがとうございます。
【松下座長】 それでは、大貫委員、お願いいたします。
【大貫委員】 大貫でございます。今、手を挙げている委員の方は女性が圧倒的に多くて、少数派である加賀委員と私が少し頑張らなきゃいけないと思っています。
もちろん冗談ですけれども、まず、事務局からの説明に含まれていた女性法曹を輩出するための試みは、大変参考になりました。なるほど、こういう試みがあるのだということを、私は不明を恥じながら読んでいました。いろいろな方策が取れるなと学習いたしました。こういう試みは、法科大学院間で常に共有したほうがいいかなと思っております。申すまでもなく、早稲田大学の女性法曹輩出の促進の取組は、大変参考になりました。早稲田大学の皆さんは10年以上前からやっている取組で、中央大学も少しやっているようですけれども、私自身の意識は相当遅れていたと思っております。
古谷先生の御報告で女性法曹が増えない要因は、司法試験だけにあるわけではなくて、様々な複合的要因にあるとされています。もっともだと思います。決定的要因はないとおっしゃったのですが、全くそのとおりだと思います。
他方、諸外国のことについて石田京子先生と事前にちょっとやり取りをする機会があったのですけども、石田先生の御教示によりますと、アメリカ、韓国、ヨーロッパも台湾もそうなのですが、ロースクールレベルでは、半数が女性だということです。それから、法曹も女性が4割だということです。実はこの数字は、早稲田大学に関しては、もうほぼ達しつつあるということであると思うんですけど、全体が全然そういっていないわけです。ヨーロッパ等は、今、石田先生の御紹介によれば、かなりの数の女性法曹が輩出されているということで、女性法曹問題をクリアしたと言われている。石田先生のお言葉によると、諸外国で日本の状況を話すと、日本の状況はミステリアスだと言われるということを教わりました。
質問なのですが、諸外国の試みで、我が国で女性法曹が増えない、複合的要因に対応する際に参考になる試みというのはあるのでしょうか、というのをお伺いしたいです。ひよっとして、そのようなものがないということなのかとも思います。日本はミステリアスだとされるわけですから日本は極めて特殊で、諸外国は、何もせずに普通にやっていて増えたということなのか。そうなると、日本はつける薬がないということになってしまう可能性があるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。何か学ぶべきところがあれば教えていただきたいというのと、特に諸外国が工夫していないとなると日本は深刻な状況にあるわけですが、それをどうしたらいいのかということについて、石田先生にお伺いできればと思いました。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。なかなか難しい質問だと思いますけれども、石田先生、可能な範囲でお願いいたします。
【石田教授(早稲田大学)】 大貫委員、ありがとうございます。
私が説明可能な範囲となりますが、まず、欧米やアジアでこの問題をクリアしたというのは、あくまでも数の問題なんですね。いろいろなところで、まだ所得格差ですとか、あるいは、パートナーは男性ばかりであるとか、そういった問題は抱えています。ですので、いまだに法律家内部における女性の問題というのは、グローバルに議論される課題になります。
しかしながら、なぜ女性の数が日本だけこんなに少ないままなのかというのは、諸外国から、私が国際会議等で報告すると必ず言われるところでです。例えば、アメリカですと1980年代ぐらいまでは、女性はロースクールで少なかった。そういう場合には、今、早稲田でやっているような形で、女性が入りやすいコミュニティーとはどのようなものだろうかという問題意識というのはずっとありましたし、そういったことを議論するようなフォーラムというのもございました。
でもこれが今、これだけ日本が、諸外国と比べてこれだけ女性法律家の数が少ないままなのは、1つには、多くの国において1970年代、1980年代の、いわゆる女性解放運動ですとか、ウーマンリブの運動の中で、社会における女性の格差というのが、日本と比較すれば解消されたところがあります。日本の場合には、これは法律家だけではなくて、本日の資料にもありましたけれども、男女共同参画局がいまだに取り組んで、2020年までに30%、女性を指導的な立場に置こうと言ったけれども、それが成し遂げられなかった。ほとんどのところで成し遂げられなかったというのが現状ですので、そういう意味では、法曹界だけの問題ではなくて、社会全体の問題があっての法律家の現状だと思います。
ただ、先ほどからお話ししているとおり、随分、法学部ですとか、教育の分野において、女性が参画するようになりましたので、将来的にはよくなるのだろうと。でもこのままただ待っていても、その動きというのは恐ろしく緩やかなので、できることに取り組むべきではないかと思っている次第です。
【松下座長】 ありがとうございました。大貫先生、よろしいでしょうか。
【大貫委員】 ありがとうございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして、井上委員、お願いいたします。
【井上委員】 井上でございます。早稲田大学にて、このような取組がされているとは、存じ上げませんで、10年も前から精力的に取り組まれているということで、成果が出ていることを非常にうれしく思っております。
私は、実務法曹家から企業法務に入って長いのですけれども、振り返って女性資格者の社会での活躍度を見ますと、やはり資格を持っておりますと、非常に活躍する場が多くございます。しかも資格があるということで、ライフ・ワーク・バランスも取りやすいという現実もございます。一旦、少し仕事を絞って、また子供が育ったら社会に復帰する等の自由度も生まれますので、普通に会社勤めをされて、ずっとキャリアアップをしていくのに比べると、かなり自由度が利くライフサイクルを持てるということを、ぜひ、親御さんたちにも御理解いただきたいなと、強く感じております。
ぼちぼち法務部長も女性が出ておりますし、それぞれ留学に行かれたりとか、そういう機会も多くございますので、ぜひ、この若い時期の数年の勉強の時間は、確かに親御さんにとっては心配かもしれませんけれども、その先のライフプランが非常に充実するということは間違いないと思いますので、そのような理解を持っていただいて、学生さんにも粘って合格まで到達していただきたいですし、親御さんのサポートを得られるような情報提供等々を、ぜひしていただければと思って一言申し上げます。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは続きまして、菊間委員、お願いいたします。
【菊間委員】 菊間です。御説明ありがとうございました。10年前から取り組んでいらっしゃって、その成果が非常にすばらしい形で出ているということで、私も早稲田の卒業生なので、非常にうれしく聞いておりました。
合格者の問題や、志願者の問題というのは、今までの先生方のお話しにもあったとおり、司法試験特有の問題ということではなくて、その先の、働き方の問題が非常に大きいと思います。
今も井上委員からお話がありましたけれども、女性の法曹の中でも、かなりの数の方がインハウスのほうに入られていて、弁護士事務所で働くという方が少ないです。同期を見ていても、出産を機に弁護士を辞めてしまうという方もいらっしゃいます。女性の弁護士が全くいないという支部が全国に約60支部あるということも聞いております。女性の法曹と言っても、一人ひとり考え方も生き方も様々なはずなのですが、そういう意味では、女性の法曹の多様性は、まだまだ実現されていないと感じます。
ニューヨークの弁護士と話しをした際に、夫婦で共働きのケースで、私のほうが稼ぐから、子供が小さいうちは、夫が仕事を辞めて子育てしていると、それを当たり前に言う女性弁護士がたくさんいて驚きました。そして彼女たちからは、驚くこと自体が男性は外で働く者、という固定観念に縛られていて、おかしいと言われました。
日本では、法曹界はそこまで男女平等になっているとは言いがたく、弁護団会議や事務所の会議が、来客対応の終了した夜に設定されることも多いですし、子供のお迎え、夕食の支度をしながら、オンラインで会議に参加して、と時間をやりくりしながら働いている女性の弁護士は多いです。全てがぎりぎりの状態でスケジュールを組んでいますので、子供が病気になった、打ち合わせが長引いた、等のイレギュラーが発生すると、全ての予定が狂ってしまうということもあって、やはりそういう働き方だと、なかなか弁護士事務所では仕事ができないので、福利厚生がしっかりしていて、労働時間がある程度確定しているインハウスのほうがよいなと、転職する方も多いですよね。
もちろん様々な選択肢があってよいと思うのですが、私は、もっと弁護士事務所で働く女性弁護士も増えてほしいなと思うので、そこで質問なのですが、女性の卒業生がどういう形で働いているのかということを、継続的に連絡を取り、把握しているということはあるのかをお聞きしたいです。あとは、先ほどちょっと教員が出ましたけれども、今現在の課題というか、もう少しこういうふうにしたらもっとよくなるのではないかというところで、何かお考えがあったら教えてください。お願いします。
【松下座長】 ありがとうございました。これはまず、古谷先生にお願いしましょうか。
【古谷研究科長(早稲田大学)】 追跡の問題ですけども、これは1つの課題ではあります。卒業してすぐに社会人になる学部生とは違い、修習に1年行った後に、どういう仕事を選ぶのかということになりますので、そのインターバルの間も含めて、我々が継続してコンタクトを取れるかどうかということが重要になります。
今、申し上げたように、このプロジェクトは、実はこれから法曹になる人たちに対するのと同時に、既になった人たちを把握するということも非常に重要です。ロールモデルとなる方を、我々が積極的に把握していき、その方々に後輩の教育に協力いただくという循環をきちんと作っていくことが必要です。そのために、どういう方々がいるのかということを把握していくということも、私たちの1つの課題として取り組んできました。それが非常に効果を生んできており、とりわけ女性の法曹については、私たちは相当程度に把握をしていると思います。
それから、女性の教員を増やすことについては、なかなかいい方法がないというのが大きな問題かなと思います。もちろん完全な公募をして、教員をイーブンに選んでいくということが重要であることは間違いありません。ただ、卵が先か鶏が先かという問題になりますけども、結局、アカデミックマーケットに女性の数が少ない状況の中で、そこからロースクールの教育をできるだけの人材をどうやって選んでくるのかという問題に直面します。こうした循環がうまくできていないというのが正直なところでして、これは法学部、法学研究科における教員養成という問題とも関わってまいりますけども、そこをうまく連携させていかなければなりません。
これは、私どもが持っているバイアスの問題でもありまして、女性の教員をどうやって増やしていくのかは、次の課題として真剣に考えていかなければならないと思っております。
【松下座長】 古谷先生、ありがとうございました。
石田先生から、何かございますか。
【石田教授(早稲田大学)】 いえ、特にはございません。
【松下座長】 どうもありがとうございました。菊間委員、よろしゅうございますか。
それでは、先に進ませていただきます。酒井委員、お願いいたします。
【酒井委員】 ありがとうございます。酒井です。古谷先生、非常に充実した御報告をありがとうございました。私も菊間委員と同じく早稲田の出身でございますので、大変うれしく母校の取組を拝聴いたしました。御報告の中に関連をいたしまして、特に2点、意見と所感を申し上げさせていただければと思います。
まず、女性法曹を増やしていくという観点から、ロールモデルの発信が非常に重要であるという御指摘については、強く共感するところでございます。女性に限らず、キャリアプランをどのように発信するかが重要という点は、本日の前半の御報告とも共通するところかと思いますが、特に女性について選択のハードルがあるという中で、どのようなモデルを発信していくかということが、特に重要になるというふうに強く感じるところです。
また、最近の学生ですとか、若者たちに接していますと、男女を問わず、非常にQOLを高く求めるという傾向が強くなっていて、これは社会全体の働き方改革の成果でもあるのかなと思うところでございますが、このような傾向も押さえて、さらに法曹を選んでもらえるようなモデルを発信しなければならないというところを意識する必要性が強いであろうと思います。
こういった観点からは、井上委員からもございましたけれども、やはりインハウスロイヤーというキャリアプランが、今現状、真っ先に挙がってくるだろうなと思うところです。本特別委員会の御報告もいただいた結果もございますが、非常に需要と供給が一致しているという分野にもなってきているかと思いますので、今後もこの点を積極的に発信されるべきだろうと思います。
一方で、ここはもう完全に菊間委員と重複してしまうんですけれども、あえて申し上げますと、キャリアモデルとしてインハウスだけでよいのかという点は、私も非常に強く感じます。いわゆる法律事務所勤務の弁護士業務の中にも、女性が望まれる分野というのは確実にございますし、活躍の分野もあると確信しております。ですので、幅広いキャリア発信を意識しながら、女性志願者を増やしていけるということが望ましいと思います。
ただ一方で、やはりそれは法律事務所側がこのような女性のニーズに応えるような勤務を可能にする体制にあるのかという問題が非常に大きくございますので、働きやすい事務所の在り方ですとか、これを増やすという業界側の取組とも連動させていくべき問題だと考えるところです。
以上が1点目になりまして、もう一点が、古谷先生から、やはり妊娠ですとか出産を選択するという女性特有の問題の部分。また、子育て世帯に対して、どのようなサポートをするべきかという点についても、非常に重要であり、取組をされているという御指摘がありましたので、そちらに関連をして発言をさせていただきます。
私自身、妊娠・出産を経験しておりまして、2人子供がいるんですけれども、非常に個人差が大きいライフイベントで、そこに関する希望も本当に多様だということを感じます。例えば、産休・育休1つについても、できるだけ長く休みたいという希望を持たれる方もいれば、1日でも早く復帰したいというふうに望む方もおられると思います。また、子育てにどれぐらい注力したいかという問題についても、できるだけ時間をかけたいという方もいれば、アウトソースできる部分はできるだけして、勉強や仕事に注力したいという方もいるという、このような多様な希望に合わせて、きめ細かいサポートができることが本来は望ましいと思います。あまりステレオタイプに休みたいはずだとか、できるだけ家庭に時間を取れるようにするべきだとか、そういうことではなくて、いろいろな希望があるということを踏まえての対策が取られていくと、より望ましいと感じましたので、その点を発言させていただきます。
以上、2点になります。ありがとうございました。
【松下座長】 ありがとうございました。後者の点は大学に限らず、社会全体がそうですよね。どうもありがとうございました。
それでは、久保野委員、お願いいたします。
【久保野委員】 ありがとうございます。久保野でございます。貴重なお取組について御報告いただき、ありがとうございました。
個人的には、女性という属性は属性の1つに過ぎないという観点も大事だと思っておりますけれども、ただ、社会的不利に結びつきやすい属性だというのは、もちろんですし、また、個人的なことを申し上げて申し訳ありませんが、所属機関におきまして、初めて管理職になった先輩を見て育ち、そして現在、管理職に女性が複数いることが当たり前である状況のメリットを肌で感じる者の1人としまして、早稲田大学の取組は、本当に貴重だとありがたく思います。
その上で、1点質問で、1点は感想のようなものになります。
質問につきましては、ただいま直近のご発言でも出産・育児の話が出たんですけれども、私も自分の法科大学院での経験として、出産・育児を終えた後の女性が、学生として帰ってくるということが複数ございまして、これも女性だからとあまり強調するのもおかしいかもしれませんけれども、そのような出産・育児を経て、昔の夢を実現したいという方もいれば、新たに抱いた問題意識から、ぜひ法律家にという方もいらっしゃるようなんですけれども、そのような方々にも、より学びやすい環境につながっていくといいなと思って伺っておりました。
それで、そのようなタイプの女性の学生さんについてのお取組ですとか、何か御知見等がもしありましたら、教えていただけましたらと思います。また、今後に向けて、そのような方について何か考えられることなどがありましたら、教えていただけましたらと思います。それが1点です。
もう一点は、感想になりますけれども、冒頭に属性の1つとわざわざ申し上げてしまったのですが、御報告の中でも、出発点だというふうにおっしゃっていたことが大変印象に残りまして、やはり女性の法曹進出がうまくいくような制度になっていくということは、それ以外の多様性、あるいは、個々人の背景に応じて法曹なっていくことの後押しを広くしていくことができるという基盤という意味で、非常に重要なのだろうなと思います。
この女性に関する取組というのが、多様な背景や属性を持った法曹志望者が希望をかなえていくということにつながっていくことを期待します。
北川委員から御指摘のありました、地方といった要素もその1つだと思うのですが、冒頭のアンケートにつきまして、どういう対象を抽出したか御紹介があったと思うんですけれども、抽出方法、恐らくその影響で、都市部が中心だと思いますし、年収なども、ある程度、特徴が見られるような分布であるということが見られたところでありまして、特に地方の女子学生がどういう状況かというのは見えないようなところがあると思います。それで、そのような様々な、地方といったようなことも含めた多様性につながっていくことを期待する次第です。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。1点目の質問については、古谷先生にお願いしてよろしいでしょうか。
【古谷研究科長(早稲田大学)】 御質問ありがとうございます。確かに育児などを終えられたのだろうなと思われる志願者もいらっしゃいます。ただ、イメージとしては、全体としてはそれほど多くはなく、これもまた問題なのだろうと思っております。もちろん、いわゆるセカンドキャリアとしてロースクールに入ってこられるという方は、男女を問わずいらっしゃいますけれども、1つのハードルとしての子育ての終了みたいなものを契機にロースクールで学ぼうという方は、私どもの印象としては、それほど多くはないと思います。もちろんそういう方が入学してこられれば、当然のことながらサポートをすることになります。
それから、こうした方々の多くは未修者として入学されます。出身学部が法学部であってもです。先ほどのデータにありましたが、実は未修者は女性が多いということも明確でして、したがって未修者のサポートというのは、女性サポートと直結してくるということになります。私どもは、未修者については、1対1のアカデミックアドバイザーのサポートをつけるということをしておりますので、このサポートのなかで、これまでのキャリアを聞きながら、ではどうすれば良いのかを考えることになります。これは、先ほど御指摘いただいたように千差万別ですので、どのような対応が一番良いのかということを、フレキシブルに考えることが必要かと思います。カリキュラム構造の遵守、出欠の厳格性や成績評価の厳格性という大前提はありますけれども、それを踏まえた上でなおかつ、私どもが最大限にフレキシブルに行動することによって、個々のニーズに応えていくという姿勢が大事なのではないかと考えているところです。
【松下座長】 ありがとうございました。久保野委員、よろしゅうございますか。
それでは、次に清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。大変貴重な御報告をいただいて感謝します。簡潔に古谷先生に2点と、石田先生に1点、質問させていただきます。
古谷先生、1点目は、FLP活動であるとか、男女問わず未就学児のいる学生に対する配慮などを通じて、このように入学者における女性の比率が増えたり、合格者における女性の比率が上がったりという効果があったことはよく分かりました。このようなFLPの取組が、学内の他の大学院の研究科とか、学部とか、あるいは女子学生だけではなくて、男子学生にも影響を与えたのではないかなと推測されまして、その辺のことを少し御披露いただけたらというのが1点目です。
2点目は、274ページの最後のところで、これからの課題の最後として、「早稲田から他大学とも連携した発信・取組を強化し、女性法曹の輩出を牽引していく」とあります。「女性法曹になるなら早稲田」という御自信をお持ちになりながらも、他大学とも連携して発信したいというふうに提案されているので、具体的にどのような内容を連携したいとお考えかということを、教えていただければと思います。
石田先生に、1つ質問させていただきます。先ほどの法務省の調査にも加わっていらしたので、いろいろな実態を踏まえていらっしゃると思います。今回の御報告は、政府の方針や国際的な潮流にのっとって、女性法曹を増やすことが必要であり、このような取組をするという立てつけにはなっているのですが、それでは、「なぜ、女性法曹を増やす必要があるのか」という問いかけを受けたときに、これだけの実績を積まれていると、絶対に意義がありますよというふうに言えるものをお持ちだと思いまして、何か所与のものとして女性法曹を増やすということが前提となっているかのように議論が進められるのでなくて、いや、「女性法曹は必要です」というメッセージも、このタイミングでは必要かなと思いまして、ぜひ、石田先生には、そのことについてメッセージをいただければありがたいです。
以上です。よろしくお願いします。
【松下座長】 ありがとうございました。それでは、古谷先生、2点についてよろしくお願いします。
【古谷研究科長(早稲田大学)】 FLPの活動は、先ほど申し上げましたとおり、ロースクールに入った学生だけではなくて、これから入ろうとする学生に対するアプローチが重要になります。したがって、とくに早稲田大学法学部との関係の中では、法学部の学生に対して、私どもが強くアピールをしていくということをしております。もちろん、機関的な協力というのが、まだ十分にできているわけではありませんけれども、できる限りそういう形の協力を進めていく必要があります。早稲田大学は、それ以外にも中学・高校、附属・係属の学校を持っておりますので、そういうところも含めた連携というのも進めていく必要があるだろうと思います。
他大学との連携につきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、FLPのシンポジウムなどでは、千葉大学様や琉球大学様、そして中央大学様との協力などもさせていただいております。側聞するところでは、今回の加算プログラムで女性法曹輩出についてプロジェクトを出されているロースクールが多いと伺っておりますので、そのようなプロジェクトの具体的な中身を少し精査させていただきながら、協力できるところは協力していきたいと思っております。早稲田だけで変えられるものではありませんので、全体としてどのような形で女性法曹の輩出を進めるかは、個々のロースクールの枠を越えて、協力をしながら対応すべき重要なポイントだと認識しているところです。
【清原委員】 ありがとうございます。
【古谷研究科長(早稲田大学)】 あとは、石田先生に。
【松下座長】 それでは石田先生、お願いいたします。
【石田教授(早稲田大学)】 清原委員、大変本質的で重要なところに御質問いただきましてありがとうございます。
なぜ女性法律家を増やすことが重要なのかと。逆に言いますと、そもそも男女が半々なのに、なぜ法律の専門家は女性2割でよいのかということかと思います。私自身は、法社会学を専門としておりまして、今回の調査ですとか、法務省さんの調査以外にも様々な形で実証研究をしてまいりました。その中では、明らかに男女で司法アクセスの容易さが違うんですね。男性は、簡単に弁護士に相談できたり、依頼できる。けれども、同じような問題を抱えていても、女性は司法アクセスに非常に困難を抱えたりする。
例えば、法律家としてもし選べるなら、男性・女性、どっちの弁護士がいいですか、というような調査をしたことがあります。女性はどちらかというと「女性がいい」と答える方が男性よりも多い。けれども地方においては、先ほど、菊間委員からも御指摘がありましたけれども、女性弁護士がそもそもいなかったりする。そうすると、女性弁護士に相談したい女性は、司法サービスにアクセスできなくなってしまいます。そういうところでも、実質的に司法アクセスに大きな格差があるという現状があります。そして、これが背景にあるのだと思うのですけれども、法制度への信頼度ですとか、司法制度への信頼度でも、男女で現状において格差がある、女性は司法制度に男性ほど信頼を置いていない、という調査結果が出ています。
私は、このこと自体はやはり問題なのだろうと思っております。ですから、女性法律家のためでも、あるいは、女性法律家コミュニティーのためでもなくて、少なくともそれだけではなくて、日本社会の法の支配ですとか、平等を促進するといった点から、やはり女性法律家が必要なのだと思っております。
以上です。
【清原委員】 ありがとうございます。今伺って大変心強く思いました。事務局でこの点について、「資料2:女性法曹の輩出に係る取組について論点(案)」を作っていただいた一番上のところに、今、石田先生が示唆してくださったようなことが書かれるといいのではないかなと思いました。どうもありがとうございます。
以上です。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは続いて、佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 よろしくお願いします。早稲田大学の取組は、非常にすばらしいと思いました。
ちょっと酒井委員の御発言と大分重なるのでごく簡単に申し上げますが、今日の最初の議題のアンケートにもありましたけど、法曹については、仕事と家庭が、なかなか両立し難いというイメージが大分強く持たれているわけですよね。それが、どこから来ているのか、テレビドラマの影響なのか何だか分かりませんけど、とにかくそこは、別に女性だけということじゃなくて、男性にとっても、今の若い人にとっては非常に重要な観点になっていると思います。もちろんこれは単に法科大学院の問題だけじゃなくて、社会全体の問題なのかもしれませんけど、仕事と家庭の両立が難しそうというイメージを払拭する努力は必要なのではないかと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは続きまして、富所委員、お願いいたします。
【富所委員】 富所です。古谷先生、どうもありがとうございました。大学がこれだけ努力をされているということが、よく分かりました。
先ほど菊間委員、酒井委員、佐久間委員からも話がありましたように、大学側だけではなくて、やはり受け入れる側の法曹三者の働き方も変わっていかないと、なかなか女性法曹を増やしていくということには、直結はしないのかなと思って伺っておりました。
私が知る、かつての法曹の姿といえば、部署やポストによっては、昼も夜もないし休みもないという働き方が普通でした。それも今ではだいぶ変わってきたと思います。一時期、女性は公務員である裁判官とか検察官のほうが、育休や産休が取りやすいということもあって、女性の割合が高かったと認識しています。しかし、先ほどから話があるように、今の分かり世代は男女ともにクオリティー・オブ・ライフの意識が非常に高くなっています。裁判官や検察官は、今度は転勤がある。今はもう転勤が嫌だという人が非常に多いんですね。職務の性質上、そうした希望をどこまで叶えられるのかという問題はあると思いますが、やはり法曹三者の働き方を変えていかないと、なかなか女性の数が増えていかないのかなと思って伺っておりました。これは意見です。
それからあと1点だけ質問があります。長らく疑問に思っていたことなので誰に伺ったらいいのか、文科省か法務省かということなのかもしれませんが。司法試験の合格率を見ても、それから、法科大学院の入学者を見ても、ざっくりいうと男性と女性の比率は、大体7対3ぐらいの感じになっていると思います。一方、予備試験だけは、女性の受験者が2割少々で、合格者に限ると1割ぐらいで推移しているんですね。なぜこうした状況になっているのか。何か課題なり、問題点なりがあるのかなというのを前々から思っていたので、もし分析をされているようでしたら、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【松下座長】 これは、なかなか難しい質問かもしれませんが、早渕課長のほうで、何かコメントできることはございますか。
【早渕委員】 早渕でございます。予備試験に関するデータの分析については、先ほどの第1部でも土井先生、大澤先生から御指摘いただいたところですが、私どものほうで、ちょっと古いんですけれども、平成29年に予備試験に関するアンケートの調査をやったことがございまして、その点は、石田先生ほかに、おまとめいただいた報告書の中でも触れられているところでございます。
このときですと、そのアンケートの回答者の中では、女性は21.4%というふうになっておりまして、この後の最近の状況を、今は手元に把握しておらないんですけれども、御指摘いただきましたので、その点も踏まえて、またどういう状況になっているのかというのを、今後、見てまいりたいと思っております。ありがとうございます。
【富所委員】 ありがとうございます。
【松下座長】 先ほどの土井委員の御指摘にもありましたけど、予備試験受験者、あるいは合格者の属性の調査というのは、願書以外のところでデータを取るのはなかなか難しいというようなこともあろうかと思います。しかし今の富所委員の御指摘も踏まえて、法務省のほうで何か御検討いただけることがあればよろしくお願いしたいと思います。
この議事2について挙手をされて、しかしまだ指名をされていないという方はいらっしゃらないと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、次の議事に入りたいと思います。議事3が、令和6年度連携法曹基礎課程(法曹コース)について、それから議事4が、令和6年度司法試験の在学中受験に向けた教育課程の工夫等についてということですが、この2つの議題に関しては、議論の時間を確保する都合上、事務局からまとめて説明をお願いし、その後、議事3と4を通じて質疑の時間を取りたいと思います。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
【遠藤室長】 事務局でございます。
それでは、私からまず資料4、令和6年度法曹コースの実態調査のポイントについて御説明申し上げたいと思います。
スライドの通し番号でいうと285ページですけれども、まず、こちらのほうで、令和5年度段階における法曹コースの在籍者数及び修了者数、法科大学院進学者数等の全体の規模感について、数字でお示ししているものでございます。
法学部在籍者数、また法曹コース在籍者数を示しておりまして、その修了者が法科大学院にどの程度進学しておられるのかというのが、この数字でおおむね把握いただけるかなと考えてございます。
さらに、スライド287ページですが、今回、文部科学省において、実際に法科大学院に進学しなかった理由に関しましても調査をさせていただいてございます。一番大きな理由といたしましては、やはりほかの進路、法務担当を除く企業様への就職等、法学に関係しないところの進路を学生さんのほうで御判断されて、進路変更されたというところが、一番大きな理由としてございました。やはり、法曹コースに在学した者であっても、様々多様な進路変更をしておられるという実態も一定程度ございますので、この辺は受け止めなければいけないと、私どもも考えてございます。
さらに289ページには、こちらは法曹コースを修了した方々が、実際にどの程度、進学しておるのかというところを、棒グラフでそれぞれお示しをさせていただいているところです。当然、修了者数は増加している状況でございますけれども、協定先の法科大学院に進学する方々の割合が約53.6%、非協定先の法科大学院に進学する方々が19.8%ということで、おおむね修了者の70数%程度が法科大学院に進学されているというような状況がございます。やはりこれぐらいの進学者の規模は、私どもも一定数しっかり確保していきながら、法曹コースにおける質の充実であるとか、さらにそこからつながる法科大学院への進路をはっきりさせていくという取組に、しっかりと注力してまいりたいと考えているところです。
これ以降の資料につきましては様々ございますけれども、時間の関係上割愛させていただこうかなと思っておりますが、法科大学院、特に法曹コースを修了して法科大学院に実際に進路、入学される方々の学生の質の保証というところは、当然、重要な論点でございますので、これは各大学において様々取組をいただいてございます。今、スライドでお示しをさせていただいておるのが、まさに法曹コースにおける登録、さらには進級時の選抜、さらには進級要件等について、各大学において、どのような取組をされておるのかということを、1枚の概要でまとめさせていただいたものになってございます。
やはり法科大学院には幅広い方々にもちろん入学をしていただきたいですし、同時に質の保証というものをしっかりした上での学内における教育の充実を図っていくという取組を、我々は引き続きモニタリングしてまいりたいと考えているところでございます。
以降の取組につきましては、お時間の関係上、割愛をさせていただきまして、次の資料5のほうに参りたいと思います。
在学中受験に向けた教育課程の工夫等に関する調査ということで、335ページ目以降が、実際に今回の調査でございます。
343ページに、最新の令和6年の司法試験の在学中受験資格に基づく出願者数等についてということで、まとめさせていただいてございます。ページの下の表を御覧いただきますと、これは令和5年の司法試験の実績です。司法試験の在学中受験資格に基づく受験結果についてということで、お示ししているものであります。左側は合計となっておりまして、最終学年在籍者数に占める在学中受験資格、学長認定の取得者数は約8割ということ。さらにその中で、実際に司法試験を受験された方が、約64%程度という状況になってございます。
これが、令和5年司法試験の実績でありまして、最新の令和6年のものについて、上のほうの表で示しておりますけれども、最終学年在籍者に占める学長認定取得者数の割合が約85%程度。これは令和5年と比べますとやはり5ポイント程度増加しているということ。さらには、これは既修・未修に関わらず同じ程度のポイントは、しっかり伸びてきているという状況がございます。
下の受験者数、合格者数につきましては今後調査を実施する予定でございますが、やはり学長認定の受験資格の取得者数が伸びてきていることに伴って、やはり受験者数も伸びてきているのではないかなということが推察されるものでございます。
こういったように、在学中受験というものが、法科大学院の中で根づいてきている状況が、まだ2回目ではありますけれども、見て取れる状況かなと考えてございます。
さらに359ページにお示ししている通り、やはり在学中受験は、始まったばかりの取組ではありますので、各大学において、様々な工夫に取り組んでいただいている状況でございます。実際の修了単位の要件、履修単位上限、開講日であるとか、あとはカリキュラム上の工夫であるとか、こういったところを、本当に各大学の皆様、国立、私立を問わず、お取組をいただいている状況がありますので、これを具体的に文字でまとめさせていただいたのが、これ以降の資料となってございます。
こういったものを、我々はしっかり皆様方に共有をさせていただいて、よりよい取組を、ぜひ各法科大学院において活用いただけるとありがたいと考えているものでございます。
もう一点だけ、365ページでありますけれども、実際に在学中受験が導入されたことによります法科大学院教育への影響についてということも、各大学の皆様に調査をさせていただいてございます。やはり非常にポジティブな御回答を頂戴しているものと、ちょっと不安だな、改善が必要であるなと思われることの両方の御意見を頂戴しているものでございます。ぜひこの後、皆様方に御意見をいただきたいと思いますけれども、様々な御意見を頂戴してございますので、この後の意見交換の参考にしていただけると非常にありがたいと考えている次第です。
事務局のほうからは、ざっくりでございますけれども以上でございます。よろしくお願いいたします。
【松下座長】 どうもありがとうございました。ポイントを絞って御説明いただいたというふうに伺いました。
ただいまの事務局からの説明について、資料4と5を通じて、御質問あるいは御所感、御意見等があればお願いいたします。なお、繰り返して恐縮ですけれども、御発言の際には、1回当たり上限2~3分程度を目安にお願いできればと思います。
それでは、どなたからでも、どの点からでも御自由に御質問、御意見等をいただきたいと思います。
それでは、髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 ありがとうございます。詳細な資料の取りまとめをいただきまして、誠にありがとうございました。
議題3についてですが、繰り返しこの委員会でもご指摘のあったところでありますけれども、法曹コースに関しましては、その創設期の試行錯誤の過程にコロナ禍が重なったことや、学部から法科大学院にかけて教育期間も長くなったことに鑑みますと、安定的な成果を得るというには、まだ相当程度時間がかかるというものだろうと推測されます。
しかし、他方で、加算プログラム等に顕著に表れているところではありますが、短期間での定量的な成果を求められているという側面も強く、特に母数の小さな法曹コースでは、相当程度運用に苦労しておられるのではないかと存じます。
資料の通し番号332ページには、各法科大学院でお困りのことであるとか、今後の改善の方向性について書かれておりますけれども、その中に既にカリキュラムの見直しを考慮されているという大学院もあるようで、当初設定の要件が厳し過ぎて、適切な志願者が確保できないという課題を感じておられるという大学もあるかと推測いたします。ただ、コース生の確保ということと、その質的保証の確保ということのバランスは非常に難しいところでもありますので、継続的な情報収集は非常に重要であると思いますが、長期的な評価は切り離して考えることを強調していただければと存じております。
他方で、法務省様の御報告の際にも御指摘がありましたけれども、より多くの方にアプローチする法曹コースの広報であるとか、法曹コースと法科大学院間の情報共有というような問題は、法科大学院の垣根を越えた共同の枠組みが必要になっている側面もあると思います。
前者の広報に関しましては、関係諸団体の皆様に、様々な広報資料を作成いただいておりますが、関心の浅い層には、それらの資料がまだ十分に届いていないというのが現状だと思いますし、後者に関しては、開放型入試のケースも含め問題が小さくないものではないかと推測しております。こうしたある種、テクニカルな側面については、すぐにでも対応できる点もあるのではないかと存じます。課題の整理に際しては、こうした短期・長期の課題の仕分けというのを、御検討いただければと存じております。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは続きまして、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 田村でございます。ありがとうございます。法曹コースのことを中心に、少し所感を述べさせていただきます。
私は、札幌の法律家ですので、地方大学の法曹コースの状況を気にしながら、今回の資料を拝見させていただいていました。通し290ページだと思いますが、母数は少ないんですけれども、右下ですね。丸1から丸3と比較をしまして、協定先のロースクールや非協定先のロースクールに進学する方の割合は、就職する学生と比べても、それなりに多いのかなと思いました。地方で学ぶ学生というのは、シャイであります。こういったシャイな学生が、進路を変えずにしっかりとロースクールに進学している傾向が垣間見えるのかなと思っておりますので、この傾向を、今後も私自身は注視をしていきたいなと思っています。
それで、地方からの養成のルートの確保というのは、もともと司法改革審議会の理念であります、全国あまねく法の支配を行き渡らせるという理念を実現することが大前提になることでございますので、このルートを、どうやって太くしていくかということは、極めて重要なことであると思っています。
細かい数字を見ていきますと、291ページ以下に、各大学ごとの数字も出ていますし、地方の大学の固有名詞は挙げませんけれども、地方大学枠の対象となる法曹コースでの養成といったところは、有力校や大都市圏と比較しても遜色ないのではないかと、数字を読んでいて思いました。もちろんこの法曹コースのボリューム感は、例えば、登録時の選抜が緩ければ登録者が多くなりますし、片方で修了時のGPA等の修了要件が上がれば、修了者は少ないという、ある意味、当たり前の傾向が出てきますので、これだけで地方の大学が健闘しているという評価までは、まだできないかなと思っていますが、もう少し深掘りした検討を長期的にはしていく必要があるのではないかなと感じています。
さらに教育内容の面でございますけれども、資料の314ページ、あるいは320ページ以下のアピールポイントのところが分かりやすい資料でございますけれども、法曹コースでの地元実務家の指導、法曹の魅力、あるいは法文書の作成とか、その他のフィールドワーク的なことも含めて、実務との架橋を前倒しで行うということに、地方に人材を還元させる素地を図ることができる、それにつながるようにも感じているところでございます。
今の中学生、高校生は、御承知のとおり探究型学習ですとか、フィールドワークの重視など、学びの仕方が変わりつつあるということでもございますので、こういった教育の手法というのは、接続することができるようにも感じているところでございました。
いずれにしても地方の大学、これは地方の国立大学も含めてですが、地方の大学のミッションの1つは、地域の人材を地域でどうやって活躍させるかということにあることは、私は間違いないことだと思っています。18歳人口が減少していくこれからでございますので、地方の私立の大学が普通に行っているオープンキャンパスですとか、高校へのアウトリーチのようなことも含めて、法曹コースに向かう裾野を広げていくということも、考えてよいのではないかなと思っています。
ただこの点は、最初の議題でもリクルート活動の若年化がいいのかという御指摘もありましたので、個別にいろいろ検討されるべき問題かなと思いますが、法曹コースの認知度をしっかりと上げていくということが重要なことだと思っています。
最後になりますが、法曹コースができる以前から、地方の学生が法律家になって地方に戻るというルートが非常に細っています。これは法曹コースができても、連携先の中央にある法科大学院を修了して中央に残ってしまうと、全国あまねく法の支配を実現するということは困難になるわけでございます。日弁連には、全国で52の単位弁護士会がありますが、近年、約20の弁護士会で、毎年新規登録者がゼロとかワンとかという状況にあります。そういった中で日弁連は、中央にある法科大学院の在学生が、地方の弁護士会等での就業体験、短期間になりますが、エクスターンシップを行うというようなことを企画していると聞いていますし、私の地元の北海道弁護士会連合会では、2年前からですけれども、地元の大学生や法科大学院生が、北海道の中でもさらに過疎地にある道内のひまわり基金公設事務所を訪問するバスツアーというようなことを企画しています。私も去年参加して、30名以上の学生と一緒に学びを深めてきました。
要するに大学、法科大学院、弁護士会、さらには諸官庁や自治体も含めて、最初の議題で、大貫委員から共通のプロジェクトだというお話がありましたけれども、各機関がしっかり連携して、地域の学生が地元に戻って活動できる体制をつくり上げていくということが、非常に必要なことだろうと思っています。
すみません。少し長くなりましたが、以上でございます。
【松下座長】 どうもありがとうございました。
それでは続きまして、青竹委員、お願いいたします。
【青竹委員】 よろしくお願いします。大阪大学ロースクールの青竹と申します。在学中受験と法曹コースについて、大阪大学での状況を少し報告させていただきます。
在学中受験についても、ロースクール、法学部の両方でよい効果が出ていることを確認しております。ロースクールでは在学中受験に向けて、5月までに終わる春学期の1単位の科目を増やしましたが、3年生の春学期の授業に集中して熱心に取り組む学生が増えております。
また、法学部で法曹を目指す学生が、法曹コースと合わせてですけども、やはりより早くに法曹になれる可能性があるということが、勉強の励みになっていることが伺われます。
ただ、在学中受験者の中には、7月の受験に精力を使い果たしたということなのか、秋冬学期の授業に極端にやる気がないという学生が、何人も出てまいりました。特に深刻だったのが、在学中受験にせっかく合格したのですけれども、春夏学期の単位を落として修了できない方が出てしまいました。
法曹コースについても、非常によい効果が出ていることを確認することができております。法学部の学生と実際に接してみますと、やはり先ほど申し上げたとおり、早くにロースクールに進学して、法曹になれる可能性があるということが勉強の励みになっているということが、以前と比べて顕著にうかがわれ、高い意識を持って1年次から受験勉強をする学生が増えています。
そして法曹コースに指定された科目の授業も、以前よりもロースクールに近い形でカリキュラムを確実に、体系的に実施する授業が多くなっています。ただ、あえてマイナス面の効果も御報告させていただきますと、法学部の授業で、司法試験と必ずしも直結しない、ロースクールの授業では絶対に取り上げることができないような比較法的な考察ですとか、制度の沿革などをじっくり話す機会、雑談も含めてですけれども、そういった機会が以前よりも減っていて、法学部の授業のよさが減っているのが残念であるという意見が複数の教員の間から出ております。これは、研究者養成という面では大きなマイナス要素であると、残念ながら言わざるを得ないという意見がありまして、法曹コースのよい面があるのは確実で間違いありませんけれども、近年重視されている研究者養成とのバランスを取る必要があるかと、少し御指摘させていただきました。ありがとうございます。
以上になります。
【松下座長】 ありがとうございました。
それでは、大貫委員、お願いいたします。
【大貫委員】 時間がないところ恐縮です。
今、青竹委員の御発言を聞いて発言をさせてください。法曹コース3プラス2と、在学中受験制度を導入する際には、幾つかの心配が示されておりました。その1つは、今まさに青竹委員がおっしゃったことですけど、法曹になるための力をつける教育という点では、法曹コースと在学中受験制度は、短い期間で密度の濃い教育を行うことを可能にしますが、他方で、学生は第一の関門である司法試験のための勉強に集中して、法曹としての豊かな資質を涵養する学修をおろそかにするのではないかという危惧が、大分表明されていたと思います。
制度改正の当時の議論では、法曹としての豊かな資質を涵養する学修を法曹コースで行うという意見もありました。しかしながら、私は自分の所属校を見ていても、今の青竹委員の御発言を聞いていても、非常に法曹コースはタイトで、たくさんの単位を取らなくちゃいけませんので、大変厳しいだろうなと思っております。時間的にはかなり無理なのだろうということです。
したがいまして、法曹としての豊かな資質を開発する学修というのは、やはり法科大学院でこそやらなくちゃいけないのではないかと、私は思っております。
今回のアンケートの回答を見ますと、在学中受験導入後、展開・先端科目履修者が増加したとか、司法試験に直結しない科目の履修を積極的にする学生が増えたなどという、ポジティブな結果が一部見られます。
他方で、展開・先端科目については、単位取得をすればいいという傾向が強まっているとも指摘されています。あるいは、司法試験科目以外の科目を軽視したり、受験対策ばかりに目が向くようになる懸念があるとかいうことが書かれております。
まだ制度は始まったばかりですけれども、法科大学院らしい教育をこれまでどおり実施した形でやっていくことは、極めて重要だと思っております。まず、法曹コースをへて在学中受験で安定的に合格者が出るということは大変重要なことですけども、それと一緒に、法科大学院らしい教育も実現されるべきだと思っております。これが1点です。
もう一点は、2つ目の危惧なんですけど、法曹コースと在学生受験制度は既修性に焦点を合わせた改革であります。新しい制度の下では、未修者は苦戦するのではないかというふうに言われていたわけであります。この点、数字を見ますと、細かくは申し上げませんが、在学中受験をした未修者は、それなりに善戦していますし、未修者の在学中受験者のうち、標準修業年限修了者についてみれば、相当の合格率だろうというふうに見ます。ですから結局、ここは未修者教育を充実させることが課題になっているのかなという気がいたします。
そのせいか、先ほどのアンケート結果で改善が必要な点が各法科大学院から指摘されているわけですが、未修者教育に言及された法科大学院は、私が見る限りなかったと思うんです。このアンケート結果が、制度改正が未修者にとって問題がないということで推移しているのか、よくわかりません、。未修者教育が制度改正の下で何か忘れ去られているのではないかという気も私はいたします。
繰り返しますが、まだ制度は始まったばかりですが、在学中受験制度の下での未修者教育の動向については、やはり本委員会としても注視していく必要性があるのではないかと思います。
以上でございます。
【松下座長】 ありがとうございました。未修者教育の問題は、この在学中受験とか法曹コースの話とはまた違う次元の話として、しかし重要な話として存在していることは間違いないのだろうと思います。本委員会でも、引き続き、その点については注視をしていく必要があるのではないかと思います。ありがとうございました。
ほかに挙手をされている方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいですか。
ここで急に事務局に振るのも何なのですが、事前の打合せでは、事務局の説明をもう少し長い時間取っていただくはずだったのが、いろいろ事務局に御配慮いただいて、先ほどの資料4と5について、かなり本当に絞った説明をされたように伺いました。もし追加で何か、あらかじめ説明しようと思ったけど先ほどはしょったところで、ここはというところがあれば追加することって今は可能ですか。急に遠藤室長にむちゃ振りして恐縮なんですけど。
【遠藤室長】 ありがとうございます。そうですね、私のほうで、かなりはしょったような形で御紹介をさせていただいたものであります。
よろしければ資料4の例えば320ページ目以降、こちらのほうもぜひ御紹介をさせていただければ幸いでございます。
今回、本委員会のテーマが、やはり非常に厳しい時代を乗り越えて、令和の時代になって、学生の皆様が着実に法曹を目指していくという段階のフェーズにございますので、この中で、各大学がどういった形で魅力あるカリキュラム、ないしは、法曹コースをつくっているのかというのは、非常に重要なところだと思います。全ての大学が、全く同じになる必要は全くなくて、やはりそれぞれの大学が持っている、特有のリソースをぜひ活用していただきながら、魅力あるコースをそれぞれにつくっていただく、先ほどの議論にもありましたけれども、特に地方における学生の皆様に対して、しっかりとアピールしていく上でも大事だろうと考えてございます。
こちらの中で、各大学の皆様のお名前もちょっと挙げさせていただいてということではありますけれども、特にここは我が大学の魅力になりますよということを幾つか挙げさせていただいておりますので、ぜひ参加されている皆様方には、一読いただけると非常にありがたいと思っている内容でございます。本当にこれは各大学の中で、あの手この手で工夫をしていただきながら取り組んでおられる内容でありますので、ぜひ御覧をいただきたいものと、私どもは認識してございます。
また、この資料の中で特に申し上げたい点として、324ページ目以降に、実際に法曹コースに入られた方々の学生さんの様子を中心に、まとめさせていただいている内容になってございます。実際のカリキュラム等の制度的な面ももちろんですけれども、実際に学生を指導するに当たって工夫されている内容についても、これは各大学の皆さんにお伺いをさせていただいて、工夫されている内容を記載させていただいているというものになってございます。
この中で、特に学生の様子みたいなものも、今、スライドでお示しをさせていただいておりますけれども、書かせていただいてございます。やはり制度的な面と併せて、まさに学生の様子というのを見ていただくことは大事かなと思っておりますが、例えば、一番上の行に書かせていだたいていますけれども、法曹コースがあって、非常に熱心に学修される学生さんが多いというようなことであるとか、やはり目標がしっかりしておられる学生さんが多くいるのかなと思います。着実な歩みが見られるということであるとか、入学時、1年次の段階から非常に目的意識を強く持たれて専門科目への意欲が高いというようなこと、そういった形の学修意欲が高い学生さんの存在が、ほかの学生にも良い形での影響を与えているというような御回答もいただいているものであります。
一方で、今ほど委員の皆様からも御指摘をいただいておりましたように、やはり学修に関する不安、例えば学修に関する負担であるとか、法科大学院の進学に関する不安についても回答がございます。やはり授業スケジュールがタイトになってきているということであるとか、定期試験の成績評価であるとか、あとは早期卒業の認定基準が厳格であることであるとか、連携先の法科大学院の特別選抜枠が限定されていること等、法曹コースについても質保証というのは、バランスが大事なのだということとは思いますけれども、こういった点は、学生の声としても若干不安に思われているということがあると。ここは明確な、必ずこうすればいいという決まったものはないですけれども、こういった声も聞きながら、工夫していく必要があろうかと考えてございます。
あとは在学中受験の実際の取組についても御紹介をしたいと思ってございます。在学中受験に関しましては、先ほどは、ほとんど規模の話だけ申し上げたところであります。343ページ目以降のところで、こちらが先ほどスライドとして御紹介をさせていただいたものでありますけれども、一方で、各大学の個別の状況について、その次のページ以降に各大学のお名前を挙げさせていただきながら、公表させていただいてございます。
全ての大学が、同じように在学中受験が必ずみんな増加しているというわけではなくて、増えている大学もあれば、一方で在学中受験者数が数字上は減少している大学というものも実際にございます。このことは、よくよくやはり見る必要があるなと考えてございまして、やはり大学個別の事情であるとか、もちろん学生の志向であるとか、あとは予備試験の受験であるとか様々な要因があってこういった数字が出てきているとは思いますけれども、大学ごとに差がある中で、全体としては在学中受験者数が増加しているということを、引き続きモニタリングしていく必要があると考えております。
さらには、カリキュラム上の工夫についても、357ページを御覧いただけますでしょうか。在学中受験を踏まえた工夫や配慮についてということで、当然、各大学において迅速に取り組んでいただいているものと、一方で、なかなかまだまだ制度的なところがあって、大学の中でも、当然調整もあるのだと思いますけれども、こうしたものを踏まえて、これから着手していくというような項目がございます。
右から3つ目にあります授業科目の配置につきましては、各大学の中で工夫を既にしておられるようなものでありますし、真ん中に書いてあります開講日に関しましても、かなり多くの大学で取り組んでいただいているようなものがございます。
一方で、学事暦に当たるような、大学の教育のまさにスケジュールの根本を成すようなものについては、やはり学内でも様々な御意見がきっとあるのだろうなと拝察しますけれども、これはちらちらと取り組んでいらっしゃる大学が出てき始めているというような項目もございます。
ですので、在学中受験に関する工夫に関しましても、やはりやりやすいところと、しっかりとした準備が要るようなところというものがありますので、この辺を我々はしっかりとこちらも見せていただいて、皆様に情報共有をしっかりとしていきたいなということを考えているものでございます。
あとは実際には、やはり今ほどの365ページ目以降が、やはり大事かなと思ってございます。法科大学院教育への影響ということで、これはポジティブな面と課題となるような面の両方あるということを御報告申し上げたところであります。
実際の教育に関するもの、まさに先ほど、委員の皆様からも御指摘があったように、法科大学院であればこそ提供できる教育というものをいかにして確保しつつも、一方で在学中受験に取り組む学生に対しても、しっかりとした教育を提供できるのか。当然ながら在学中受験に合格する学生と不合格になる学生が同じ大学院の中でいることに対する教育的な配慮であるとか、モチベーションの維持の在り方についても、やはり学内で実際に指導しておられる先生方は、いろいろ工夫をされながら、配慮いただきながらやっておられるのだろうと考えますけれども、我々も常に見ていかなければいけないと考えているところでございます。
若干補足をさせていただきましたけれども、事務局のほうからは以上でございます。もしこれに関しまして、さらに委員の先生方から御指摘を頂戴できれば、ぜひお伺いしたく思います。ありがとうございます。
【松下座長】 遠藤室長、どうもありがとうございました。急に振ってしまって申し訳ありません。
【遠藤室長】 とんでもございません。ありがとうございます。
【松下座長】 しかし、先ほど最初に御説明いただいた、うんとポイントを絞った御説明に加えて、今さらに重要なポイントを足していただいたので、今、遠藤室長からもお話がありましたけれども、さらに今御説明があった点、あるいは最初に御説明があった点、あるいは、いずれにも御説明がなかった点も含めて、もし御意見等があれば御自由にお出しいただければと思います。あとまだ若干お時間がございますので、ぜひ、御意見を賜れればと思いますが、いかがでしょうか。
特によろしいですか。冒頭にも申し上げましたけど、もし御意見があれば、会議終了後に事務局宛にメール等でお知らせいただければ、議事録に盛り込むことも可能な範囲でできるということだと思いますので。
それでは、予定していた時間、今日は2時間半を予定して3時半終了予定だったのですが、若干まだ数分時間がありますけれども、特に御意見がないということであれば、以上とさせていただいてよろしいでしょうか。
それでは、本日の議事を終了いたします。今日は、冒頭から私が発言を制限することばかり申し上げたので、皆さんのほうで非常に気を使ってくださったのではないかと、ちょっとじくじたるものがないわけではないんですけれども、以上で本日の議事を終了といたします。
今後の日程については、事務局から追って連絡をしていただきたいと思います。
本日は、どうもお疲れさまでございました。
以上
高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係