法科大学院等特別委員会(第113回)議事録

1.日時

令和5年12月20日(水曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 求められる法曹の人材像と今後の法科大学院教育について
  2. 令和5年司法試験合格結果について
  3. 法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成・確保について
  4. その他

3.議事録

【松下座長】  おはようございます。所定の時刻になりましたので、第113回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。ご多用中の中、ご出席いただき誠にありがとうございます。本日はウェブ会議として開催しています。本委員会は公開が原則のため、この会議の模様はYouTubeライブ配信にて公開いたします。ウェブ会議を円滑に行う観点から、ご発言の際には挙手のマークのボタンを押していただき、指名されましたらお名前をおっしゃってからご発言いただきますようお願いいたします。またご発言後は再度挙手ボタンを押して、挙手マークの表示を消していただきますようお願いいたします。またご発言のとき以外はマイクをミュートにしていただくなどご配慮いただけますと幸いでございます。本日も活発なご審議をよろしくお願いいたします。
 それでは委員の交代がありました。この度新しく着任された委員について、事務局よりご紹介をお願いいたします。
 
【保坂室長(事務局)】  事務局でございます。9月27日付で新たに司法研修所事務局長に就任されました石井芳明事務局長に、本日12月20日付で本委員会委員にご就任いただいています。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは石井委員より一言ご挨拶いただけますでしょうか。
 
【石井委員】  おはようございます。司法研修所事務局長の石井でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
【松下座長】  こちらこそよろしくお願いいたします。ありがとうございました。それでは続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
 
【保坂室長(事務局)】  配付資料につきましては資料の1から参考資料の15まで全部で160ページとなっています。電子媒体および紙媒体、委員の皆様にはお届けしているところかと思いますがご確認いただければと思います。
 なお今回参考資料としまして参考資料の6、134ページに早期卒業・飛び入学制度を活用した法科大学院入学者数という事項を追加しています。これに関しましても今後の審議でまた適宜説明資料等で用いていきたいと思いますので今回は参考としてお知らせいたします。以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。資料の方よろしいでしょうか。
 それでは議事次第に従って議事に入りたいと思います。まず議事の1、求められる法曹の人材像と今後の法科大学院教育についてです。今期の審議に当たっての基本的認識にもありましたように、今期は法科大学院開設から20年を迎える節目の期にあたります。これまでの歩みを俯瞰し、その成果ですとか残された課題を整理した上で法科大学院教育の更なる改善充実に向けて必要となる方策について審議をし、提案をしていく必要があると考えています。
 そこで前回も同じ議事を設け本委員会の委員でもいらっしゃいます法務省の加藤司法法制課長よりご発表いただきました。今回は日本弁護士連合会の宇加治恭子副会長より、今後養成すべき弁護士の人材像とか、法科大学院への期待等についてご発表いただき、その後質疑を行うこととさせていただきたいと思います。それでは資料1について、宇加治副会長よりご説明をお願いいたします。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  ただいまご紹介いただきました日本弁護士連合会副会長の宇加治と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは早速ご報告させていただきたいと思います。まず初めに主な活動分野における近年の弁護士の評価です。地方基盤の整備や活動領域の拡大に関しまして、ロースクール世代の若手弁護士が、重要な役割を担っています。司法基盤の整備に関して、弁護士費用保険、日本司法支援センターによる法的サービス利用の拡大や予防法務および企業法務などの訴訟外業務の分野において、近年の若手弁護士の活躍が見られます。
 まず、弁護士費用保険、日本司法支援センターによる法的サービス利用の拡大は、紛争の経済的規模などが原因で、弁護士に依頼することを躊躇していた方々に、法的サービスを受けるハードルを下げることになりました。これらによって、弁護士の業務に対する社会のニーズが増加していますが、その対応において、近年の若手弁護士による人的基盤が重要な役割を担っています。
 次に、予防法務および企業法務などの訴訟外業務の分野です。中小企業においても、予防法務、企業法務のニーズが高まっています。そういった企業が企業内弁護士を採用したり、外部の弁護士に依頼をしたりといったニーズが見られます。このような社会のニーズの増加への対応も、近年の若手弁護士の人的基盤の拡大によって支えられている面があります。
 続いて、活動領域の拡大についてですが、近年の弁護士の中には自ら社会のニーズを掘り起こし、新たな活動領域を拡大している方々もいます。具体的には、海外駐在、地方過疎、児童相談所、スポーツ、企業内・自治体内弁護士、医療福祉関係などの分野で、今まで弁護士があまり取り組んでいなかった部分について、若手弁護士がやりがいを持って積極的に取り組んでいるように感じます。お配りしました資料2、8人のチャレンジという冊子がございます。これは高校生などに法曹の魅力をアピールすることで、法曹志望者の増加を目指すために作成されたパンフレットです。詳細なご説明は割愛をいたしますが、この中にもそういった活躍の場を広げていっている弁護士が掲載されています。また、先ほどの司法基盤の整備に近い話にはなりますが、高齢者、障害者支援や、子ども対策支援、犯罪被害者支援、地方過疎問題解決のための活動など、これまで司法アクセスに困難のあった分野において、若手弁護士が活動の担い手になっているかと存じます。例えば、地方過疎問題に関して言えば、若手弁護士による人的基盤の拡大が、いわゆるゼロワン地域の解消にも大きく貢献してきたと言えます。
 このように、司法基盤の整備や活動領域の拡大に人的基盤の拡大が貢献しているとしても、当然ながら、法曹の質が低下してしまうということはあってはなりません。
 今後、養成すべき弁護士の人材像としては、国民の社会生活上の医師としてふさわしい弁護士を養成することが必要であると考えます。日弁連や法務省の調査では、現在まで質の低下を示す客観的な資料はなく、基本的な資質・能力が備わった法曹が輩出されていると考えられますが、今後とも基本的な資質・能力が備わった法曹が養成され続ける必要があります。そういった基本的な資質・能力を備えた弁護士であることを前提としつつも、法曹の多様性も十分に確保される必要があります。日弁連は現在ダイバーシティ&インクルージョンの推進にも取り組んでいます。この取組の一環として、法曹自体の多様性が確保されることも重要であるように思います。また、社会構造の変化に伴って、弁護士に期待される社会ニーズが多様となっているという側面からの多様性も期待されるところです。法律以外の様々な学問分野での知見や、実社会での業務経験を背景として、多様な社会ニーズに対応できる弁護士を養成することが必要と言えます。法科大学院の主に未修コースにおいて多様な人材を受け入れることが想定されていましたが、純粋未修者や社会人経験者の入学が減っておりまして、人材の多様性が十分に確保されていないのではないかと、この点は危惧をしています。また、弁護士の女性割合の更なる増加を目指すことが必要です。弁護士に占める女性割合は2割程度であり、いまだ十分な割合とは言えません。司法におけるジェンダーバイアス解消の点からも、多様性確保の観点からも弁護士に占める女性割合の拡大は重要な問題です。昨今、法科大学院生に占める女性割合はやや増加して30%を超えるようになり、また司法試験合格者の女性割合は30%に迫る勢いです。しかし、まだ十分ではありません。そのため、引き続き地道に女性の法曹志望者を増やしていく活動を継続していくことが必要です。例えば、リーガル女子という企画が行われています。こういった地道な活動が必要不可欠であり、法科大学院や実務家が一丸となって女性法曹を養成していく仕組み作りが必要です。さらに、地域司法を担う弁護士を養成することも重要です。法曹コースにおいて、地方大学出身者を対象とした特別選抜などの工夫がなされるところですが、更なる工夫が期待されます。また、法律家としての活動領域の拡大や司法アクセスの容易化、新たな社会ニーズに即応した公的サービスの拡充など、法曹が活躍する領域を新たに切り拓き、司法基盤を自ら構築していくことについて、能力・意欲を有した弁護士を養成することが必要であると考えます。日弁連としても、若手弁護士がそのような活動を通じて、司法アクセス向上を図ることができるよう必要な制度作りをし、今後も養成される意欲ある法曹が、こういった活動に専念できるような基盤整備を続けていくことができればと考えています。
 さて、法科大学院に期待することですが、やはり法曹の質の低下を起こしてはいけないため、まずは大前提として法曹に必要な学識およびその応用能力を培うことが期待されます。さらには、法律の基本的知識およびその応用能力のみならず、法律実務基礎科目を通じて、法律実務における基礎的な素養を涵養し、司法修習との連携をさらに強化することが期待されます。それだけでなく、法律の学修のみならず、理系分野など様々な学問分野での学修や実社会への実務経験を経たいわゆる法学未修者を、法科大学院の入学者のうち一定数確保し、法科大学院において法曹となるために必要な学識および能力を身に付けさせていくということが依然として重要です。女性や、出身地域、外国にルーツを有する者など、多様な属性を有する入学者を確保することも重要です。加えて、学生だけではなく、法科大学院で教育を担う教員についても、年齢、性別、研究者・実務家など、多様性を確保する事が必要です。これに関連しますが、司法試験受験科目以外の科目の学修や、多様な活動を担う実務家等との接点などを通じて、新たな活躍の場を見いだし、司法基盤を担う法曹が輩出される例もあります。このような学修環境をさらに充実させることはもちろん、そのような学修環境が提供されているという法科大学院の良さや魅力を発信していき、法科大学院で学ぶことのメリットを周知していっていただくことも重要であると思います。
 日弁連は、8人のチャレンジのパンフレットや、弁護士になろう私の現場という動画で、法曹に興味を持ってもらえるよう努めています。また、法科大学院キャラバンなどで法科大学院協会とも協力して、法曹の魅力を伝える活動を行っていますが、引き続き、こういった協力をしていければと考えています。日弁連からは以上となります。ありがとうございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。ただいまの宇加治副会長からのご説明についてご質問やご所感などがあればどなたからでもご自由にお願いいたします。いかがでしょうか。清原委員お願いいたします。
 
【清原委員】  ありがとうございます。日弁連の皆様のお取組を総合的にご説明いただきありがとうございました。この8人の弁護士の方の中で特に注目させていただいたのが、5番目の方は現在岩手県の総務部にお勤めで特命課長さんであることとか、8番目の方、通し番号18ページですが、国会議員政策担当秘書をされているということです。日本は三権分立の国でございますけれども、立法・行政・司法という中で、法律家の方というのは、もっぱら司法でご活躍いただくというようなイメージが強いかと思いますが、まさに司法試験合格をされて弁護士資格を持ち登録されている方が、行政の分野ではもちろん国・自治体をはじめご活躍されているわけですが、立法においても活躍されているということが周知されるということは、とても重要なことではないかなとこのパンフレットの内容を見て改めて確認させていただきました。
 もちろん、三権分立は大変重要な仕組みですので、それを尊重するということは大事ですけれども、法律の勉強をしっかりした方が行政分野でも立法分野でも活躍していただくことによって、法治国家としての確固たる強さが増していくのではないかと感じました。そのようなことをこのような取組の中で良い方向でPRしていただくことが、特に若い高校生や、また大学で法律を学ぼうと思っている皆様の進路の広がりを認識する意味で、役立つのではないかなと思いました。以上です。どうもありがとうございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして富所委員お願いいたします。
 
【富所委員】  ありがとうございました。いずれも適切な内容だと思いました。その上で二つほど質問させていただきます。まず一点目は、予防法務や企業法務、それから高齢者障害者支援の取組など、いわゆる法曹に求められる役割が拡大してきている部分です。その点は私も全く同感です。世の中で働き方が多様化してきていますので、普段は弁護士事務所にいながら、週に何回かそうした職場に通い、そちらの仕事をするなど、多様な働き方が可能になっていると思います。ただ、前にも申し上げたとおり、法科大学院と企業を結ぶマッチングの仕組みがなかなかないように感じています。日弁連では、どのように企業の求人情報にアクセスしているのか、あるいは、どういうシステムがあれば使いやすいのか、という点を教えてください。
 それからもう一つは、いわゆる「法曹の質」です。この議論は司法制度改革の当初からありましていわゆる「実務に精通した多様な人材」を確保するという大きな理念と、一方で、司法試験に合格させなければならず、そのためのノウハウも教えなければならないという現実的な問題があります。この20年間は、その狭間でずっと揺れ続けてきたと私は認識しています。弁護士の方と話すと、やはり「法曹の質が下がっている」とおっしゃる方が結構いらっしゃいます。しかし、よくよく聞いてみると、旧司法試験時代の自分たちの時代と、今を比較しているケースが多く、今の時代に求められる「法曹の質」とは何なのか、という議論がないまま、「昔と比べると質が下がっている」という印象論になっていると感じます。弁護士会では、法曹人口を増やした方がいい、減らした方がいいというような意見表明を色々とされていますが、そうした主張は、「法曹の質を確保するため」という理屈が前提になっているケースが少なくありません。そのあたりは、日弁連として、一元的にこうだと言うのは難しいかもしれませんが、どのような議論になっているのか、弁護士の質とは何なのか、ご意見がありましたらお聞かせ願いたいです。以上2点です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。可能な範囲でということですけど宇加治副会長2点についていかがでしょうか。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  全部にお答えできるかどうかわからないですけれども、まず様々な活動分野を前提として例えば企業などと法科大学院の方のマッチングの関係でのご質問がございました。日弁連には就職というか求人あるいは就職をしたいという人のマッチングのサイトなどがあります。そちらの方に企業様の方からもご登録をいただけるというような仕組みをとっています。あと例えばですけれども弁護士になった方を対象にした、いわゆる任期付公務員などの募集の場合とか、あるいは企業様の方からの募集については各弁護士会の方に情報提供するといったようなこともやってございますので、まずはそちらを使っていただいているかなと思います。あとこれは私の感覚の問題ですが、企業様から直接法科大学院の方に求人票をお送りいただくと、あるいは説明会の開催のチラシを送っていただくなどの取組もなされているようでして、そちらについては各法科大学院の方で適切に在学生および修了生の方にご案内がされているものというふうに承知をしています。
 それから法曹の質の関係は今富所委員からも御指摘がありましたけれども、求められる資質というのはおそらく社会の状況によって変わってくるものだろうと思います。また、評価軸をどこに置くかということによっても変わってくるのだろうと思います。日弁連の方でも会内には確かにいろいろな意見がございますので、都度議論するようなこともございますけれども、少なくともその利用者の方、現場の方などの声を聞く限りでは特にその質が下がったというようなことはなく、先ほど清原委員の方からもご指摘がありましたけれども、様々な現場で弁護士が入ったことによって大変助かっているという声も多いです。最近、特に自治体関係は一度弁護士が入っていただくとその後も継続して後任者が欲しいというご指摘が非常に多いと承知をしています。私からひとまず以上でございます。
 
【富所委員】  ありがとうございます。大変よくわかりました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。富所委員よろしいでしょうか。それでは続きまして田村委員お願いいたします。
 
【田村委員】  ありがとうございます。私も弁護士ですので、当事者の意見というか、所感ということも含めて少し発言させていただきます。弁護士になる8人のチャレンジを私も改めて見まして、自分が登録したのが30年以上前になりますが、その当時と比べても改めて弁護士の活動分野が量的にも拡大しているのもそうですし、質的にも大きく変化しているということに気づかされたというのがまず率直な感想でございます。
 宇加治副会長の報告にもありましたが、若手の方たちの新基盤の開拓というのはこれは本当に頼もしいところがありまして、近年では、社会問題の解決を目指すような訴訟がありますが、そういったことを支援するWebプラットフォームの立ち上げですとか、公共訴訟、あるいは泣き寝入りを余儀なくされるような事件というのはあるわけでありますが、こういった事件に対してクラウドの手法を使って訴訟費用を集めて、社会課題を解決しようとするような取組を、もう若手が革新的にやっているという活動が見られることはぜひご紹介させていただきたいというふうに思っています。
 振り返りますと、私、登録した30年以上前というのは、弁護士のあり方についてモデル論というのがございました。在野ですとか、ビジネスですとか人権ですとか、特定のモデル論で、弁護士の仕事というのは説明が可能であるかのような、当時は議論がされていたわけでございます。それはその少数で、精鋭かどうかわかりませんが、権力へのカウンターでよかった。カウンター勢力でよかったような、そういった時代は弁護士の数もその程度で良かったということだったのかなというふうに私自身は振り返っているところでございます。その後、90年代というのはもうご承知の通りの各分野での構造改革がございました。社会の複雑化、高度化、多様化というのはもうこれもご案内の通りでありますが、社会から弁護士に求められるものがもう本当に厚みを増しているというのを、私自身も実感しているところでございます。当然弁護士の方もアップグレードが求められるというところでございます。高齢社会に伴う権利擁護の取組はそうですし、情報通信の本当の革新的な変化ですとか、経済活動は本当にグローバルになっています。地方で弁護士をしていても本当に感じます。例えば家庭問題は少子化も影響があるでしょうか、本当に先鋭化しているというようなことを周りでよく聞きます。あるいは予防法務、裁判外紛争解決、こういったことが整備されていますので、裁判に持ち込まれる数というのは、20年前に比べてもそんなに実は増えてはいないというふうに言われていますが、定型性のない複雑なものになっているということが、これはいろんなことで語られているところでございます。
 要するにもう混沌とした状況で、正解のない中での解決というのが弁護士に求められているという状況が、今のその弁護士の活動にまさに反映していると思いますし、私は今後も同じような変化と発展を遂げていくと思っています。そういった中での質というのは、先ほど富所委員のご質問にもありましたが、やはり弁護士が人的基盤を拡大していき、司法の基盤をしっかりと構築していくことで、弁護士全体として存在意義を示していくというところで、生み出していく必要があるのではないかというふうに捉えているところでございます。以上であります。ありがとうございました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして佐久間委員お願いいたします。
 
【佐久間委員】  佐久間です。よろしくお願いします。この弁護士になろうというパンフレット、弁護士の活動領域が広がってきて、いろんな活躍の場があるということがとてもよくわかり、よくできていると思います。非常にいいと思いますが、ただ一点注文があるとすると、先ほどご説明の中でいろいろな分野出身の弁護士を増やしたいということでしたが、その中には当然理系も入っていると思います。実際、1名医学の出身者の方は入っていますが、理系は医学だけではないので、できれば理系の他の分野の方も取り上げていただけるとよりいいかなと思いました。ということでよろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして井上委員お願いいたします。
 
【井上委員】  井上でございます。非常に興味深いご報告いただきましてありがとうございます。この資料を見て、一つご質問したいと思いましたが、皆さん法科大学院で学ぶ、という中で、非常に実務的な指導があった、あるいは仲間との切磋琢磨がすごく役立ったというふうに書いてあって、なるほどと思ったのですが、宇加治先生ご自身の弁護士の皆様との会話の中で、特に法科大学院でこういうことが役立っているとか、あるいはここが足らないという直接的な声がもう少し聞こえれば教えていただければなと思いました。
 
【松下座長】  それでは宇加治副会長お答えできる範囲ということだと思いますけどもよろしくお願いいたします。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  私も地元は福岡なのですが、地元の法科大学院で非常勤講師をしており、実は今年度も授業は持っているということでございます。学生の声としては例えば法曹倫理などを教えていたこともございますけれども、そのときの学生などにはやはり現場に出てみて、授業で聞いていたことについて思うことがあったとかですね。あとはローヤリングと言いますけれども、法曹としての振る舞いといいますか、例えばクライアントさんと向かい合っての法律相談であるとか、相手方との交渉であるとか、そういったときの技法などについてシミュレーションをやりながら、演習をやっていくというような授業を担当しています。そういったものはロースクールで基本的な科目、例えば民法とか刑法とかの科目をやりますけれども、それを現場で使うということはまた違う技術がいるとか、考え方がいるとか、依頼者に寄り添うってどういうことだろうかとか。そういったことは普段の授業との対比でも結構学生から感想をもらうことがあって、そこはかなり法曹の現場とロースクールの授業を繋ぐということを意識した上で教えています。それぞれの人がそれぞれの困りごとを抱えて法曹に相談に来るのであるといったことについては、できるだけ体感してもらうような形で呼びかけをしておりまして、そこはある程度学生に伝わっているのではないかと思っています。以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。なかなか、もっと拡充してほしいところについてお話はしにくいですかね。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  現場で教えている感覚からしますと、法律を頭の中で学ぶとか、ある意味抽象化して学ぶだけではなくて、目の前のクライアントのことを考えて学ぶということは非常に知識を深く身につけるとかですね。あるいは自分が法曹になったときのことをイメージして学修をするということができるので、例えば倫理感であったり振る舞いであったりというものは、すぐに身に付くものではございません。ロースクールの間にそこの基礎に触れながら、基礎科目の勉強もし、実務科目の勉強もしということをしていく中で、だんだん一歩ずつ法曹に近づいていくそのトレーニングができるというのは、法科大学院教育の極めて優位なところではないかと思っていますので、実務家教員としてはぜひ強化していただきたいなと思っているところではございます。以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。答えやすくない質問をしてしまって申し訳ないです。井上委員よろしいでしょうか。
 
【井上委員】  はい、やはり実践的な話であることがポイントだろうと改めて伺っていて思いました。ぜひそういうふうな法科大学院があると良いと感じた次第です。ありがとうございます。
 
【松下座長】  ありがとうございました。他いかがでしょうか。宇加治副会長のご報告の中では若手弁護士という言葉が何回か出てきましたが、法科大学院の初期の修了生はもう経験10年を越えていて、そういう意味では立派な中堅ですよね。もちろん直近の人たちみんな若い人たちですけど。座長があまり喋るのはいけないですけども8人のチャレンジ、これ最初の第一版、それから第二版が2019年だと思いますけども、今後も同じようなもの、第三版以降も作る予定もあるというふうに理解してよろしいでしょうか。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  今、日弁連の方で具体的にというところはないですが、実は日弁連が作っているものでもう一つ社会人版というものがございます。これはまさに社会人経験者で法科大学院に入って弁護士になっている人たちを、特集したというパンフレットが別途ございます。あと最近はこれの地方版作っております。例えば沖縄弁護士会とか、あとは島根県弁護士会などが、その地元の弁護士をフューチャーして取り上げるということをやっております。やはり各地域で、地元の弁護士と地元の住民の方それから企業の方が、方言を使って、クライアントさんがお話をできる、ご依頼ができるというようなそういう関係性は非常に重要だろうと思っています。そういった取組を各弁護士会でやってくださっています。各弁護士会がこういう地元でパンフレットを作ったりするようなことに関しましては、日弁連として補助金を出す形で取組を促すといったようなことをやっております。日弁連がというのもありますが、もっと各地の個性が出せるようなものが今作られていますので、そういったものもいろいろ活用できるのではないかと思っています。
 
【松下座長】  ありがとうございました。法曹志望者の多様性に向けて細分化された広報活動されているということで大変それは頼もしく思った次第です。それでは笠井委員お願いいたします。
 
【笠井委員】  ありがとうございます。法科大学院の教員も何か発言しなきゃいけないかなと思って発言させていただきます。法科大学院の教員は、今日のお話でいきますと、ある意味「まな板の上の鯉」でありまして、弁護士の質が下がっていると言われたら大変だなと思っていましたので、そういう客観的なデータはないと伺って、少し安心しています。ただ、我々が心して教育に取り組まないといけないなと思いますのは、実践的な教育というのも当然法科大学院がすべきですけれども、研究者としてのいわゆる法律基本科目や選択科目の教育についても、やはり法曹を育てているということを意識しながらやらなきゃいけないなということです。これは自分もいつも考えながらやっていることで、そういうふうに思っています。例えば双方向の問答でも、学生には、教員が聞いていると考えずに、依頼者がこう質問したらどう答えるかと問う形でやるようにするとか、そういうことは心がけております。
 本日は、そういったことも大事だなと改めて感じました。あと、法曹の質との関係では、先ほど富所委員がおっしゃったように、「最近の法曹は…」みたいな話はどこでも出てくる話かなと思います。ただ、我々が若い頃も、私は司法修習40期で、35年以上前に修習をやっていましたけれども、その頃でも「近頃の修習生は…」とかいろいろと先輩から言われていたところもあって、いつでもそうかなとも思います。その反面、やはり先輩法曹の信頼を得ていかないといけないということは間違いないですので、そういった修了生を出していかなければいけないし、法科大学院制度は良くないと言われないように頑張らなきゃいけないなと改めて感じました。感想でございます。ありがとうございました。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続いて髙橋委員お願いいたします。
 
【髙橋委員】  大変有益なご報告いただきましてありがとうございました。日弁連が作られているパンフレット・動画は大変魅力的なものになっていて、各法科大学院では予算的な問題もあって、これほど素晴らしい広報資料というのはなかなか作れないというのが現状かと思っています。動画の方では本学の修了生が出ていたものもございましたので、実は学部のオープンキャンパスの機会に、質問コーナーの横でそれを上映させていただいて参加者の目に触れるようにしたというようなこともございました。この資料を各法科大学院がそれぞれに利用するということはおそらく実践されていると思いますが、こういう資料は相互リンクを貼ったりすると、アクセスが増え、検索エンジンで上の方に上がってくるようなこともあるらしく、せっかく良いものを作っていただいたので、やはりたくさんの方の目に触れるようにするというのが最も大切ではないかと思っています。そのためには、文部科学省や法務省、各法科大学院が連携をして相互リンクを貼るというような試みを率先してやっていくことが必要ではないかと存じております。以上です。ありがとうございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。確かにそうですね。これだけのものがたくさんの人に目に触れるように、どのように考えたらいいのか大事なことかと思います。それでは大貫委員お願いいたします。
 
【大貫委員】  ありがとうございます。聞こえてますでしょうか。宇加治副会長、詳細な報告ありがとうございました。それから田村委員からも補足的な大変力強いお言葉をいただいて、弁護士に求められることが量・質ともに拡大していて、それに弁護士が一生懸命対応しているという姿をまさに垣間見させていただきました。特に宇加治副会長からコメントがあったかと思いますが、自治体の弁護士の数がものすごく増えていまして、私は行政をやっているものですから、関心を持っているところです。実は日弁連の先生方とチームを組んで23区の区長を訪問しまして、ぜひ任期付弁護士を採用してくださいっていうことをやったことがありました。それが功を奏したのかわかりませんけどだいぶ増えていて、実は23区の副区長2名が任期付でから入られた弁護士の方、今、多分専任だと思いますけど、生まれているという、まさに極めて拡大しているのを身をもって実感しています。質問なんですが先ほど富所委員が少し質問されたのですけれども活動領域の拡大のところは項目的に見ると二つ出ていて、大変常に重要な課題だというふうに思っています。富所委員がおっしゃったようなマッチングの仕組みなどは大変重要で、一つはやはり宇加治先生少しだけ言及されたのですが弁護士会がやっていること、過疎領域の拡大についてのところもしさらにあれば教えていただきたいというのが一つ。
 それからあと、かつて法務省の肝いりで過疎領域の拡大に関する意見交換会が開かれて、国際それから自治体、それから福祉等の分野にわかれて、いかに活動領域を拡大していくかっていうのを連携してやったことがありました。過疎領域の拡大というのは弁護士の方だけでできないところもありますから、各組織が連携してやらなきゃいけないところもあります。今私よくわからないのは、この連携の仕組みなどが何かございましたらば教えていただけないでしょうか。法科大学院教員らしからぬ質問で申し訳ございません。質の確保が重要だということは笠井委員が申し上げたように私も心しておるところです。以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは宇加治副会長、可能な範囲でということでお願いいたします。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  連携の取組としては、法曹養成制度改革連絡協議会ですかね。法務省、日弁連なども含めてさせていただいていますので、そちらの方で様々な分野での活動領域の拡大等について意見交換などさせていただいているところかと思います。そのあたりがまず一つあるかなと思います。
あといくつかご質問があったようですけれども、全部が出てこないのですけれども、まず一点そこでご回答ということでよろしいでしょうか。個別にここをというところがありましたら、申し訳ございませんがもう一度言っていただけますでしょうか。
 
【大貫委員】  質問にはお答えいただいたと思います。もし弁護士会の過疎領域の拡大の試みのところをもう少し詳しくお話いただけますか。これだけです。そんなにたくさん質問していません。
 
【宇加治副会長(日弁連)】  ありがとうございます。活動領域という意味では先ほど自治体について、大貫委員の方からもお話がありましたけれども、最近は企業内で働く方が非常に増えております。いわゆるインハウスと言われるものです。企業のいわゆる外にいて顧問弁護士相談を受けたりするわけじゃなくて企業の一員として働くといったことで、現場と一番近いところで仕事がしたい、あるいはチームとして仕事がしたいということで、そこを積極的に選ぶとか。
 あと一つ考え方としては今、弁護士もいろんな方が出てくるところで、特にライフイベントなどを考慮するとチームがしっかりしていると、例えば出産育児などでそのしばらく仕事をセーブしなければいけないときにもきちんと環境が整っていた上で、状況に合った形で仕事ができるとか、そういったことでご選択をされている方も結構いらっしゃるように思います。特に企業内は今、女性の弁護士の割合が非常に高くなっている分野だと思います。またそこでインハウスの弁護士の方々が活躍されることによって、企業の中での法務の価値というのが高まっているというところも現場的には非常に強くあるのではなかろうかと思っています。
 あとは活動領域の拡大の関係ですと、最近では例えば刑事弁護の関係でも新しい取組があります。これまではいわゆる被疑者、事件になった後に、裁判になるのかならないのかとかそういうタイミングのところから弁護士が関わっております。裁判を終わると、仕事終わりという感じでしたけれども、ここももう少し幅を広く再犯をしないといったようなところまで見据えた形で関係機関と連携をしてサポートしていく寄り添い弁護士と言ったりしますけれども、こういった形での活動なども最近弁護士会としても力を入れているところでございます。あとは、精神保健と申しまして、いわゆる精神障害のある方が医療機関に強制的に入院させられていると、そこはどうなんだと。社会に復帰できるのではないか、あるいはその施設内での処遇が悪いことについて改善を求めていくべきではないかということについては、まさに司法アクセスが十分でなかったところに弁護士がしっかりと関与していくということで、人権擁護や活動として非常に注目されているところではないかと思います。以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。大貫委員よろしいでしょうか。
 
【大貫委員】  大変豊かな例を示してくださいまして、ありがとうございました。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは中川委員にご発言いただいて、他になければ次の議事に進みたいと思いますが、中川委員よろしくお願いいたします。
 
【中川委員】  ありがとうございます。2点コメントさせてください。1点は今日いろいろ議論ありました法曹の質をどう測るかということです。今日の会議で皆様共通でおっしゃっていたことかなということを確認させていただきたいですけども、法律サービスのサプライヤー側といいますか、法科大学院ないしは弁護士側の方で、良くなったとか悪くなったとか言うのではなくて、やっぱりそれはカスタマー側といいますか、消費者側といいますか、あるいは企業などの事業者側といいますか、法律サービスのニーズを受ける方から見てどうなのかというのが唯一の基準であろうと思いました。その過程で田村委員のおっしゃった弁護士の置かれた環境の激変は、非常に同感するところで、実は我々研究者も同じ激変のなかですけども、30年前とはもう全然測る尺度が違うというところ、非常に重要な御指摘だと思いました。日弁連あるいは法務省もそうかもしれませんけれども、クライアント側の法律ニーズに応えられているかっていうところから考えると。そのニーズは何かっていうことに対する感度が必要ですけれども、そういうふうな視点で、法曹の質を測ることが今後検討できたらいいなというふうに思いました。これが一点です。
 もう一点は清原委員がおっしゃった三権の中で若手弁護士がどこに行っているかの話です。注目に値することとして、政治に関しても進出しつつあると思います。逆に言うと行政、すなわち国や地方自治体で働くという選択肢はもう学生の間ではもう当たり前の話になっています。企業内の法務はもっと当たり前で、今や全然新しくないです。今まだ新し目があるっていうか、まだ少ないのが対立法府の仕事でありまして、ふたつに分かれます。一つはロビイングという活動です。これがまだ日本で手探りのところ、一部の弁護士はやっているのですけどあまり外に見えてこないです。しかしルールメイキングに関する非常に重要な法律家の仕事だと思いますので、これにもう少しフォーカスを当てる必要があるのではないかと。
 もう一つは政治そのもの、政治家になっている人です。例えば私達の法科大学院の修了生で、宝塚市長になった方がいらっしゃいまして、山﨑晴恵さんという方ですけども、そういう進路をめざす方もこれからどんどん増えていくだろうというふうに思います。議員とか市長とかですね、そういったところにも視野を広げていただくと、ますますその法の支配の徹底という意味でいいと思いました。以上、2点です。ありがとうございました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。ご発言のある方はご遠慮なく挙手をお願いしたいのですが、よろしいですか。それではもしもまた何か議事の1についてありましたら戻ることは躊躇しないで行いたいと思いますけれども、とりあえず議事の2に進ませていただきます。
 議事の2は令和5年、司法試験合格結果についてであります。今年の司法試験においてはご案内の通り初めて在学中受験が実施され、また法曹コースの修了生が司法試験を受験し始めるというそういう節目を迎えました。この令和5年の司法試験の合格結果について枝番が多くありますが資料2に基づいて加藤委員より、それから資料3に基づいて事務局よりそれぞれご説明いただき、その後で質疑を行うこととさせていただきます。
 それではまず資料2関係について加藤委員よりご説明をお願いいたします。
 
【加藤委員】  法務省司法法制部司法法制課長の加藤でございます。私の方から令和5年司法試験の結果についてご報告いたします。お手元の資料の2-1から2-10まで大部になりますが、これらが司法試験の結果に関する資料となります。分量が多いので結果の概要を申し上げます。お手元の資料2-2、右下に53というページ番号が振ってあるかと思いますが、資料2-2の令和5年司法試験受験状況と題する資料をご覧ください。こちらにございますとおり、令和5年の司法試験の合格者は1,781人となっております。前年比でプラス378人と、1,500人を超えたというような状況でございます。また合格率につきましては45.34%、これは前年比でマイナス0.18ポイント、若干下がっているというところでございます。さらに、この表の中で特に在学中受験資格者という欄、グレーの三つ目のところ、真ん中より少し下のところをご覧ください。こちらに在学中受験資格者に関しての情報が記載されていますが、1,114人の方が出願し、1,070人が受験されました。そして、合格者が637人で、合格率は59.53%となっておりまして、全体と比較すると14.19%合格率が高いという状況でございます。さらに、その内訳を見ますと、いわゆる法曹コースから法科大学院の既修コースに入り、さらに、在学中に受験したという、法科大学院を利用した中で最短のコースで合格した方は、受験者187人に対して合格者が122人で合格率は65.24%まで上がっています。これは、全体と比べると、19.9%高い合格率となっています。また、法曹コースではなかったものの法学部から既修コースに進んで在学中に受験された方も671人おり、そのうち426人が合格し、合格率は63.49%とかなり高い合格率となっています。さらに、法学部以外の学部から法科大学院の未修コースに進んで在学中に受験された方も47人おり、そのうち25人が合格し、合格率は53.19%ということで、全体よりもかなり高い数値となっています。まだ、この新しい制度が始まって1年目ですので、来年以降がどうなるかということもきちんと見据えた上で、さらに改善すべきところは改善していくというようなことになろうかと思います。
 今回、一定の結果は出ているものの、さらにまた来年以降もしっかりと見ていきたいと考えています。次に、予備試験ですが、一番下のグレーの枠囲みのところにございまして、予備試験は353人の方が受験され、327人が合格ということで、前年を下回っていますが、92.63%と高い合格率となっています。この他、大学や法科大学院別の受験状況等につきまして、資料に掲載していますのでお時間がある時に皆様適宜ご参照いただければと思います。私の方からの説明は以上でございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして資料の3について事務局よりご説明をお願いいたします。
 
【保坂室長(事務局)】  事務局でございます。文部科学省からは資料3に基づきまして法科大学院等の教育に関する定量的な数値目標、KPIの状況についてご報告をしたいと思います。通し番号資料79ページをご覧ください。令和2年本特別委員会での議論を経て設定をいたしましたKPIにつきまして、79ページの下線部が今年度の今回の司法試験の結果等を踏まえた更新部分でございます。まず、法科大学院の全体としての司法試験合格率目標の括弧1、累積合格率です。この累積合格率は各修了年度に関して修了後5年目までに合格した方々の割合という形になります。小文字a、全体ですね、既修者、未修者合わせた全体でございますが、令和6年度までに70%以上を、11年度までに75%以上というのを目標に掲げています。今回、今から5年前、平成30年度の修了者の累積合格率が5年目で72.9%となりまして、目標の70%というのに到達をしています。またBは未修者に限ったものとして令和6年度に50%以上を目標に掲げていますが、今回49.1%という数値になっています。次に括弧2、修了後1年目までの司法試験合格率、括弧在学中合格含む、ということですね。こちらは既修未修合わせたもので令和6年度までに50%以上を、11年度までに55%以上を目標に掲げています。今回、令和4年度修了者の修了後1年目の合格率が55.5%ということで目標に到達をしています。なお今回の司法試験からは在学中受験が始まり合格者も出ていますが、項目にある通り修了後1年目までの試験合格率として設定をしていますので、今回の在学中受験の結果は次回の司法試験後、令和5年度修了者の修了後1年目の合格率の数値に包含されて表れてくるということになりますので、ご承知おきください。次の括弧3、法曹コース修了者のうち、学部3年で進学した者の修了後1年目までの合格率で在学中合格含むについては次回の司法試験後に初めて計測をされる仕様となります。なお参考値として下の方に毎年度の早期卒業および飛び入学により入学した者に占める修了後1年目合格者の割合というのを記載しています。状況については現在集計中でありまして、でき次第また更新をさせていただきます。一番下の法科大学院入学者数目標につきましては令和6年度までに2,000人以上を目標にしています。今年度の入学者数1,971名ございまして、これを受けて更新をしています。
 次のページ以降ですが、今回の試験結果をグラフでの資料にしていますのでご紹介をいたします。まず80ページです。こちらは司法試験の単年での合格率の推移になります。法科大学院修了生全体での合格率については折れ線グラフにありますように32.6%、一番右のところが令和5年の数字でありますけれども、32.6%になりました。また今回から二つの数値を追加しています。一つ目が在学中受験した方と、法科大学院修了者を合わせた場合の合格率でして、これが40.7%となっています。二つ目が在学中受験者に限った場合の合格率でありましてこれが59.5%となっています。下の方にあります棒グラフは、毎年度の受験者数と合格者数の実数の推移となります。一番右は今年度については色が三つにわかれておりまして、青が在学中受験関係、緑が法科大学院修了者関係、灰色が予備試験合格者関係の数値となっています。続いて次のページ、81ページご覧ください。こちら法科大学院修了者の司法試験累積合格率の推移、全体ということで、既修未修者を合わせた全体のものとなっています。各年度の修了者について修了後1年目から5年目までの累積合格率を並べたものです。一番右が5年目の数字でありまして先ほどのKPIの中の括弧1の項目と対応します。また一番左が1年目の数値でして、こちらのKPIの括弧2と対応するという関係です。全体として修了後1年目から5年目まで年度を追うごとに上昇している傾向にあるというふうに考えています。
 82ページをご覧ください。82ページは既修者についての状況を同様に表したものとなっています。直近の状況を見ますと左側、令和4年度修了者の合格率につきましては修了後1年目で63.1%となっています。また、一番右側5年目の部分ですが、5年目を迎えました平成30年度修了者につきましては82.9%という数値となっています。83ページは未修者についての状況です。年度により上下がありますが直近の状況を見ますと、令和4年度修了者の合格率は左側で32%となっています。また修了後5年目を迎えた平成30年度修了者については累積の合格率が49.1%となっています。84ページから86ページにご参考として、司法試験合格率の推移単年、司法試験合格率の推移修了後1年目、また試験合格者数のこれまでの推移ということを資料としてお付けしています。この中で84ページの司法試験合格率の推移、単年というところですね。未修・既修に加えて法学部・非法学部別ということでグラフを作成しています。これまでにご紹介したように数値としては全体の合格率は平成28年度あたりを底にしまして、近年法科大学院関係については上昇傾向にあるということでございます。特にここ数年のところで一番下ですけども、未修者コース、非法学部という方々の集団についてのグラフがあります。これは濃い青色で表示されていますけれども、ここ数年上昇傾向にありまして、直近では令和5年度について24.5%ということで、高い数値になっています。まだまだ全体の合格率からすればより向上を図っていく必要があるということでございますが、純粋未修で未修者コースに入られた方が3年間の法科大学院教育を経て、こういうふうに合格をしているという様子が見て取れるという状況でございます。文部科学省からの説明は以上でございます。
 今回、審議開始にあたりまして、第12期の審議に関する主な論点についてという資料を提示させていただきまして、その中で審議に当たっての基本認識として、令和元年度の法改正により導入された諸制度に関し、その成果の評価にあたっては中長期的な視点で臨む必要があることに十分に留意しつつとした上で、今年度から実施される在学中受験の状況等について適切に把握分析し、より円滑な制度実施に向けた方策について検討していく必要があることというふうに提示をさせていただきました。今回、在学中受験に関しましては特に初回ということもありまして、なかなか難しいところかとは思いますけれども、有識者の方々からのご意見賜りまして今後の検討に活用させていただきたいと思いますので、何卒ご議論のほどよろしくお願いいたします。以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それではただいまの加藤委員と、それから事務局からの説明についてご質問ご所感等あればどなたからでもご自由にお願いいたします。いかがでしょうか。それでは大貫委員お願いいたします。
 
【大貫委員】  大貫でございます。法曹コース設置、在学中受験制度がセットになった法曹養成制度改革が行われてから初めての在学中受験が行われて、その結果を加藤委員のご説明で詳細に知りました。法科大学院関係者、法曹養成に携わる者としては今回の結果を、当然のことながら注視しておりました。結果はここだけを見れば裏切らなかったということだろうと思います。しかし保坂室長もおっしゃったようにこの委員会でも何人もの委員の方が発言されましたように、制度改革の成果・結果の評価は短期的になされるものではなく、中長期的になされるものと思います。これは確認すべきだろうと思います。以下当然のことも含まれるところかと思いますが、法曹コースを修了した学生さんは、私自身も初めて教えて、その方が合否出たという1回に過ぎませんけれども、それを前提に三つ申し上げたいと思います。
 まず第1に、法曹コースを経て法科大学院に入学して在学中に司法試験に合格した方はどのように育ったのかということであります。初回の受験者はまだ3年後期の授業が残っていますけれども、これは検証しなくてはならないと思います。既に、要するにある程度の論評が可能な程度に在学中受験の数がありましたので、教員の中でも在学中受験で合格した人はこうだねなんていうことの印象めいたことはなされていますが、これはしっかりと今年も含めてやっていかなきゃならないことだろうと思います。ご承知のように在学中受験をする学生さんは相当に時間的にタイトな中で勉強をいたします。そのことが学修にどう影響が出ているのか否か、改善すべき点がないのかは継続的に検証が必要だろうと思います。
 これに関して個人的な感想を少し申し述べさせていただきますと、確かに在学中受験を見据えますと、2年次修了時点までに司法試験の受験に必要な基本的なところは教えなくてはなりません。かといって授業時間を増やせませんので、これまでの短い時間でかつて教えてないことを教えなくてはならない状況です。こういう状況から一部では司法試験の準備に特化した教え方になるのではないかという懸念が出されていたというのは、ご承知のことかと思います。もちろん私だけの経験ですが、十分に教員同士でもまだこれからというところですので、私だけの経験ですが、時間が限られていればそれに対応した講義することは可能だというふうな印象を持っています。これまで以上に教える内容を精選して、さらに予習、授業を復習、事後的フォローの循環をしっかりと構築して、丁寧な講義をすれば時間の不足は十分に補えるなという印象でございます。要はやり方だというふうに思いました。特に教える内容を精選せざるを得なかったことは、私個人は極めてよかったと思っています。教師はあれもこれも全て大事だと、自分の科目のことは特にという傾向がございます。そういう状況にあるかと思いますけれども、絞らざるを得ない状況にあります。ロースクールで教えるということは。この状況は真剣に考える機会を提供して、適切な精選はできるのではないかと思っています。これが一点でございます。
 二つ目です。法科大学院は在学中受験を選択しない人ももちろんいます。それから未修コースの学生さんもいます。先ほど加藤委員のご報告の中で、在学中受験をした未修者が非常に極めて高い合格率を示していると思いますがこれはなぜなのかということですね。これらも含めて在学中受験を選択しない人、未修コースの学生さんにとって制度改正はどうだったのか。そこに課題はないのか、やっぱり検討する必要性があると思っています。特に未修コースの方の実情については、現に在学している方、修了した方のご意見なども聞いてみたいと思います。
 三つ目でございます。初回の在学中受験をされた方はまだ教育が残っていますが、果たして制度改正後、法科大学院らしい教育は維持できたのか、さらに進化させられたのかという検討が必要だろうと思います。またこれも法科大学院らしい教育の一部ということになると思いますが、司法修習との連携がどう構築され、進化させられたのかの検証が必要だろうと思います。予備試験との関係では大変重要なところだと思います。宇加治先生の報告の中にもこの教育の実施ということは触れられていたということであります。この制度改正、実は個人的には法科大学院協会に関わっています。理事長で関わった案件で、松下先生も専務理事として関わっておられて、ある意味非常に感慨深い改革でありました。何度も申し上げますがここで決まったわけではないですが、第1回の試験結果が出たというやっぱり一定のお考えはありますので、感想めいたことを申し述べることをお許しいただきたいです。
 法科大学院協会でも実はこの制度改正について大変な議論がございました。大変厳しい意見もございました。そのうち厳しい意見の中で、ある場所で大変情熱を持って法科大学院教育にあたられた方で成果も出している方が、このような発言をお許しいただきたいのですが、このような制度改革後の法科大学院で皆さん教えたいと思うのかという大変厳しいご指摘を受けました。私はその発言に応じてそれは問題設定が違うのだと。制度改正後の法科大学院で教員が教えたいという、そういう場にすることが大事で、それはできるのだというふうにお答えしたのであります。私は、それはできると今でも同様に思っています。以上でございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして、菊間委員お願いいたします。
 
【菊間委員】  菊間です。よろしくお願いします。私も53ページの資料の内容に注目しました。法曹の多様性ということで未修者の合格率を見ていく中で、法科大学院らしい教育ができていたのかどうかというところはこれから議論されるべきところだとは思います。先ほど加藤委員のご説明からもあった通り、在学中の受験資格者のうち、未修者の非法学部の合格率が53.19%と非常に高いと。ここがやはり期待ができると思いました。うまく勉強の方法を見つけていければ、きちっとこうやって合格率が上がっていくというのはとても興味深い数字です。この一方その上見ていただくと法科大学院修了者の未修者の合格率を見ると、法学部出身者が15.9%で、非法学部が19.12%と低くなっています。在学中受験で非法学部ということは、ロースクール入ってから勉強して3年目です。まさにここはロースクールの成果ということが言えると思いますけれども、一方で卒業、修了した人たちがどうして未修者でこれだけ数字が低いのかというところは、何か分析できるところはあるのではないかと思いました。
 83ページの未修者の累積合格率の推移を見ていくと、1回目の合格率が上がってきているところもありますが、かつては1回目から2回目、3回目ってだんだん増えていきますけれども、今は大体1回目でがんと伸びてそこからは平行線というような感じなので、やはり短期決戦というか、集中的に勉強した方が、効率が良いという結果ではないかなと思いました。私が受験した頃は3回しか受験できなかった時代でしたが、1回目で受かるつもりで勉強しないと、3回以内で受からないという話があって未修者ながらみんな必死で勉強して1回か2回で受かっていくという感じでした。5回以内で受かればいいと思っていると、ダラダラ勉強してしまうこともあるのではないかと思います。今回のこの未修者非法学部の在学中の方がどういう勉強したのかってところを分析したいですけれども、未修者でもしっかり準備をして計画的に勉強すれば、ロースクールの授業でこうやって合格できるというのは非常にいいことだと思うので、法曹コースで65.24%という数字も高くて素晴らしいですけれども、法曹の多様性というところで言うと、未修者がとても大事だと思うので、未修者が在学中でも53%合格しているっていうところは、もう少し強調して、そして分析をしていただく必要があると思います。もちろん今年の数字だけではわからないと思いますが、ここに、ロースクールの未修者の方の方向性が見えてくるのではないかという気がしました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして前田委員、お願いいたします。
 
【前田委員】  前田です。私も53ページの資料2-2を大変興味深く拝見いたしまして、これに関してコメントさせていただきたいと思います。在学中受験はまだ始まったばかりですので、このデータだけを見て軽々に判断すべきではないということは重々に承知していますけれども、これを見て感じたことを述べさせていただきたいと思います。在学中受験の者の合格率が高かったというのは、比較的勉強が進んでいる者が、選択的にこの道を選んでいるということを考えますと、ある程度予想できたことと言えるかもしれないと思っています。一方で、他学部出身者、非法学部の者が既修者も未修者も平均より高い合格率が出ているというところ、それから在学中受験で未修者の法学部非法曹コース出身の者がやや低い数値が出ている点から、何か見て取れるのではないかということが感じられました。先ほど菊間委員もおっしゃっておりましたけれども、非法学部の方でも未修者コース、あるいは既修者コースの在学中受験で良い結果が出たということは、法学の学修を長期にしていなかったとしても、法科大学院できちんと学修することができれば、この司法試験に合格できるということを示していると思います。これはとても明るいニュースと申しますか、肯定的に捉えられる点だと思います。
 一方法学部出身の未修者コースの在学中受験の成績が悪い点につきましては、今までの教育経験と照らして、少し想像たくましくいたしますと、こういった者の中には法学の学修との相性が必ずしも良くないものがおりまして、そのことが反映されているのかもしれないという感想を持ちました。そういったことを考えますと、もしかしたら法科大学院において、そういう必ずしも適性を有しない者に対する、底上げの教育というものが重要になってくるということを示していると思います。さらに申し上げますと、法科大学院の未修者入試において、将来の適性が高いものを有効に選抜する必要性もあると思います。この点につきましても、既に各法科大学院が、未修者入試の選抜方法については様々な工夫をしているところだと思います。入試のことですので、なかなか情報共有することはできないですけれども、できる範囲でノウハウの共有などをして、その未修者入試の選抜の適正化を高めていくことが必要だろうというふうに考えています。私からは以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続きまして酒井委員お願いいたします。
 
【酒井委員】  酒井でございます。よろしくお願いいたします。私から2点、在学中受験者の合格率に関連をして2回目以降の受験者に対するサポートの問題と、未修者に関する今後の傾向等とサポートの問題について述べさせていただきたいと思います。
 まず在学中受験者の合格率がやはり相当程度高くて、従来の受験1回目の合格率が高いという傾向にさらに拍車がかかってくる形というふうに受け止めています。ただ一方で82ページの既修者の司法試験累積合格率の推移を見ますと、既に令和2年度の合格者について修了後2年目から3年目の伸び率が例年に比べて落ちてきているというような数字が見て取れるのではないかと思いますけれども、やはり2回目以降の受験者というのがこの現役受験者の合格率に押されて合格率が下がってくるという傾向が既により強く出てきていると感じています。在学中受験の導入当初から2回目以降の受験者については、司法修習までのギャップタームが大きくなってしまうという問題は指摘をされてきたところだと思います。そうしますとやはり2回目以降の司法試験受験者のバックアップという問題が一層重要となり、2回目でぎりぎり合格できるのか、3回を受験するのかという局面でのバックアップは従来以上に切実な問題となってくるのではないかなと思うところです。現状、教育の現場としては法曹コースを充実化させなければならないし、在学中受験者の合格率も向上させなければいけないし、非常に負担がかかっている状況という中で、2回目以降の受験者のサポートの拡充により負担が重なってくるというのは、切実に感じるところです。一方で、従来と異なる点としては、在学中に受験があるので、在学中に不合格の期間が明らかにあるという状況が生じていると思います。このような変化によって、カリキュラムとの兼ね合いで正規教員におけるサポートがしやすいという側面が出てきているのかなという気もいたします。在学中の不合格期間というようなものも有効に活用をして、2回目以降の受験者の動向についてもきちんと情報収集を行ってサポート体制を作っていくということが望ましいのではないかなと考えるところです。またTAですとか学習アドバイザーについても、在学中であると活用しやすいというようなところもあろうかと思いますし、このような観点からも引き続き傾向を見つつ検討されるべき問題点だろうなと考えています。
 また未修者についてですけれども、これ菊間委員等からもご指摘がありましたように、非常に非法学部未修者の合格率が高かったという結果を、私も驚きをもって、また嬉しく受け止めたところです。一方でこの合格率の結果を見て来年以降やはり非法学部の未修者が、私達でも受かる可能性があると、やっぱり在学中チャレンジしようという人が、増えてくる傾向が出てくる可能性もあろうかと思います。未修者の受験者の数が増える中でこういった成果が同じく出てくるのかどうか、それがどういった教育の成果としてありうるのかというところは非常に気をつけて見ていく必要があるだろうと考えていますし、良い教育をされて、こういった結果が繋がっているというロースクールの取組については、ぜひ全体において共有ができるとよろしいと思います。この結果をますます未修者出身者としては強くなってほしいなと思うところでございます。以上2点でした。ありがとうございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは続いて土井委員お願いいたします。
 
【土井座長代理】  詳細なご報告ありがとうございました。私からは2点意見を申し上げたいと思います。まず第1に司法試験の合格率が昨年とほぼ変わらずに、かつ相当数の学生が在学中受験を行って高い合格率を示してくれたことは、新制度の滑り出しとしては、良い成果ではないかと受け止めています。ただ皆さん方おっしゃっておられますように、単年の結果だけでは、制度を正確に評価することはできないと思っています。試験の数値は年によって変化もございますし、それから在学中受験者と修了後受験者が重複して新規受験者となることによる影響も、単年で全て解消することは難しいと思っています。酒井委員からも今ご指摘ありましたように、今年在学中受験者が好調であったということは、修了後受験者にその分だけしわ寄せがあったとも考えられるところですので、関係機関におかれましても、来年も引き続き適切な対応をしていただくことで、そうしたひずみを解消する必要がありますし、法科大学院としても必要なサポートをしつつ、複数年受験者に、今少し努力を続けていただきたいと思っているところです。第2に今後将来的に在学中受験が一般化し、高い合格率で安定することになれば法科大学院3年次の後期のカリキュラムや夏季休暇における学生の活動を充実させることが、法科大学院教育の付加価値を高める上で重要になってくるのではないかと思っています。
 そのためには、まず第1に在学中受験者が高い合格率を示すように安定させていく必要がございます。この点は、未修者と既修者の違いもあろうかと思いますし、各大学院によって異なる面もあろうかとは思いますけれど、少なくとも既修者につきましては学部3年での進学を重視するのか、それとも在学中受験による合格というのを重視するのかという点について検討しなければならない局面も出てくるのではないかと思います。既修者の法科大学院入学時の基礎学力を確保するという観点はやはり重要になってこようかと思いますので、3年卒業、飛び入学者の数をどうするのかという点については各法科大学院の実情に合わせて、何年かの経過を見ながら見極めていく必要があるのではないかと思います。
 またそれと同時に各法科大学院がその特色を生かして、当初より期待されていた司法試験合格だけを目的としない教育カリキュラムの充実を図る必要性が出てくると思いますので、この点につきましても、本委員会で前向きの検討を進めていくのが良いのではないかと思っています。私からは以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは久保野委員お願いできますでしょうか。
 
【久保野委員】  ありがとうございます。久保野でございます。2点申し上げますけれども1点は今直近のご発言にございました通り、中長期的に評価しなくてはいけないということではありますけれども、特に今年は出願者が特殊な属性のグループの年に当たっているということがありまして、先ほどひずみという表現もございましたけれども、来年の数値に注目しなくてはいけないと思っています。当然共有されていることではあると思いつつも、一言まず触れさせていただきました。その上で主たる発言の趣旨としましては、地方の出身の枠につきまして冒頭の議題でも言及がありましたけれども、東北大学の例で、今年の結果を見たところの印象で申しますと、地方大学との連携や地方枠を設けての法曹コースからの募集といったものがうまく働いた可能性がうかがわれるかと思っております。資料の見落としでなければ、地方枠の成果といったものの分析はこれからなのかなと思っています。その点についても成果がわかっていくと有益なのではないかと思いました。以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。地方枠のデータはなかったような気がしますが、もし可能なら今後ということでしょうか。他はいかがでしょうか。
それではこれも先ほどと同じく必要であれば躊躇なく戻るということにいたしまして、それでは本日の議事の3に進みたいと思います。議事の3は法科大学院教育を担う教員、研究者の養成確保についてです。本年6月の会議でお示しした第12期の審議に関する主な論点にありましたように、法科大学院教育の継続性、発展性の観点から、法科大学院教育を担う教員、研究者の養成確保は重要であり、現在どのような状況にあり、各法科大学院においてどのような取組が行われているのかを明らかにし、課題が見られる場合には、これに対応するための方策としてどのようなものが考えられるかについて審議をし、提案をしていく必要があると考えています。時間の都合上まず今回の会議におきましては、現状に関するデータを事務局よりご報告いただいて、その上でまた今後の会議において、法科大学院における取組を紹介し、さらに審議を深めていただくことを考えています。
 そういう意味で今回は頭出しということだと思いますが、それではこれから現状に関するデータをまとめた資料の4について、事務局よりご説明をお願いいたします。
 
【中田専門官(事務局)】  専門官の中田です。先ほど松下座長もおっしゃいましたように、法科大学院教育が将来的に継続し発展していくためには、それを担う教員、研究者の養成確保は重要な課題でございます。今期の初回、第111回の会議におきましても、先生方から若手の採用が全然できていない、研究者養成は危機的な状況にある、法科大学院を経て、研究者の道に進む人材の輩出も重要である、といったご意見をいただきました。現場での実感としてのご懸念、危機感を共有いただいたところでございますけれども、なかなか現状を客観的に把握することのできるデータでまとまっているものがございませんでしたので、この度、関連のデータを整理いたしました。
 それでは資料の4についての説明をさせていただきます。時間が限られていますのでポイントを絞って説明いたします。通し番号87ページ、表紙でございますので、1枚おめくりいただきまして、通し88ページ。こちら目次でございます。3部構成となっておりまして、第1部では学部・修士・博士の学生、第2部では研究者、第3部では大学教員の状況をまとめています。
 二つおめくりいただいて、通し番号90ページ、資料4の番号で言いますと3ページ目をご覧ください。最初に学校基本調査を基に作成いたしました学生の入学状況のグラフを見てまいります。こちらは学部の入学者数の推移を棒グラフで示したものでございます。学問分野別に色分けをしておりまして、赤色が社会科学分野でありまして、その中に法学が含まれています。黒の折れ線グラフ、こちらは入学者全体に占める法学部の入学者の割合を示したものでございます。具体の数値はグラフの下に表で示しています。こちらを見ていただきますと、この20年間で全体の入学者数は増加をしていますが、その一方で、法学部の入学者数、全体に占める割合ともに減少しているということがわかります。
それでは卒業状況を割愛して1枚飛ばしていただいて、5ページ、通し番号92ページをご覧ください。こちら大学院修士課程の入学者数の推移でございます。入学者全体はこの20年間で増減ありましたけれども、同水準まで戻ってきています。一方で、法学分野の入学者数、全体に占める割合は減少しておりまして、この10年ほど、700人から800人程度、全体に占める割合は1%程度で推移をしています。
 1枚飛ばしていただきまして、7ページ、通し番号94ページをご覧ください。こちらは大学院博士課程の入学者数の推移でございます。入学者全体として減少傾向にございまして、法学分野の入学者数、全体に占める割合も減少しており近年は100数十人、全体に占める割合としては1%程度で推移をしています。
 次に1枚飛ばしていただいて9ページ、通しの96ページをご覧ください。こちらは法学部の志願者、入学者、在籍者、卒業者の推移を示しているところでございます。グレーの折れ線グラフは留学生の割合を示しています。入学者数、左から二つ目の濃い青色のグラフの方でございますけれども、先ほど全体の傾向を説明する中でご紹介しました通り、入学者数は減少傾向にありまして、近年は3万5000人前後で推移をしています。一方で志願者数、黄緑のグラフでございますけれども、こちらは増加と減少の大きな波があるということが見てとれます。
 その次に進んでいただきまして、次10ページ。通しの97ページでございますが、法学系の修士課程の推移でございます。志願者数、黄緑の棒を見ていただきますと、平成28年頃まで減少傾向にございまして、その後少し増加をしているような状況でございます。入学者数については平成15年頃から比べますと減少しておりまして、ここ10年ほど700から800人程度、留学生の割合については増加をしておりまして、13%程度まで増加しているという状況でございます。1枚おめくりいただきまして、11ページ、通しの98ページ、こちらは法学系の博士課程の推移でございます。志願者について見てみますと、平成16年から18年には500人を超えておりましたけれども、その後減少いたしまして、近年は300人程度となっています。入学者につきましても、平成19年頃までは200人台半ばだったところ減少といたしまして、近年は100人台半ばで推移をしています。留学生の割合につきましては、修士課程ほどは高くはない割合に推移しています。近年は6%程度となっています。
 今までご覧いただきましたデータから、学部、修士、博士のそれぞれの段階におきまして法学系の入学者数、その全体に占める割合、ともに減少しているということが見てとれます。志願者数につきましては、法学部は増加と減少の大きな波が繰り返しあるということなので、一概に減少しているということはございませんが、修士博士につきましては、志願者数は20年前と比べますと減少しているというような状況にあるかと思います。
 それでは次に、修士博士の就業者のうちどれくらい大学教員、研究者になっているかということを見てまいります。少し進みますが、15ページ、通しの102ページを見てください。こちら修士課程修了者の就職者の内訳でございます。横の棒の色がついている部分が割合を示しておりまして、四角囲みで示している数字、こちらは実数を表しています。数字二つございますけれども、左から大学教員、研究者の数を表しています。こちらを見ていただきますと、修士を出てからすぐ教員になった者を合わせた方は数名程度とごく少数、きわめて稀なケースであるということがわかります。
1枚飛んでいただいて17ページ、通しの104ページをご覧ください。こちらは博士課程の修了者の就職者の内訳でございます。赤色の部分こちらは大学教員の割合を示していますが、四角の中に示されている実数について見ますと、平成14年頃には70人以上であったところ、近年は30から40人程度となっておりまして割合、実数ともに減少しているということがわかります。大学教員以外の研究者、オレンジの部分につきましては20年前は数名程度でしたけれども、平成23年以降は10人以上という形で推移をしているところでございます。
 それでは次、第2部の研究者に進みます。20ページ、通しの107ページをご覧ください。こちら科学技術研究調査に基づいておりまして、この調査につきましては、最小単位が法学・政治学でございますので、政治学分野の研究者も含んだ形となっています。水色の棒グラフは研究者数を表していますが、平成24年頃まで増加したもののそこから減少しているということでございます。全体に占める割合、赤の線グラフでございますけれども、全体に占める割合につきましても、近年は減少しているということが見てとれます。研究者については簡単でございますが、以上でございます。
次に大学教員の状況についてご紹介いたします。22ページ、通しの109ページをご覧ください。こちらは3年ごとに実施されています、学校教員統計調査を基に作成したものでございます。22ページ、通しの109ページのグラフ、こちらは大学教員数の推移を示しているものでございます。青の全体のところを見ていただきますと、教員数全体としては増加傾向にあるということがわかります。法学分野のデータにつきましては平成22年からデータを得られたため、そこから教員数の実数を赤線で、全体に占める割合を黄緑の線で示しています。平成22年から令和元年、この9年間の間で、法学の大学教員につきましては実数、割合ともに減少しているという傾向が見てとれます。
 それでは1枚おめくりいただきまして23ページ、通し番号としては110ページをご覧ください。こちらは大学教員の平均年齢の推移を表しているものでございます。全体、青色のところを見ていただきますと、全体として平均年齢が上がってきているという傾向があることがわかります。法学分野、赤色のところについて見ていただきますと、全体より高い数値を示しているということがわかります。平成28年頃まで上昇した後、令和元年では少し下がっていますけれども、依然として法学分野の教員の平均年齢が50歳を超えているということがわかります。
 次に24ページ、通しの111ページをご覧ください。こちらが最後のスライドとなります。教員の年齢分布を平成22年と令和元年で比較したものでございます。一番右のピンクのグラフが法学分野のものでございますが、特に下から三つの部分、20代、30代の教員数、こちらが減少をしているということがよくわかります。一連のデータを通じまして学生、研究者、大学教員の現状を見てまいりましたけれども、今後の未来を担う法学系の若手教員、研究者、学生の数、こういった数は少なくなっているという現状が示唆されておりまして、やはり法学、法科大学院の教育を担う教員研究者の確保は喫緊の課題であると思われます。
 それでは駆け足での説明となり申し訳ございませんでしたが、ご質問、また、データをご覧になってのご所感、研究者の養成確保についてのご意見などございましたらお願いいたします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは今中田専門官からお話しありました通り、ただいまの事務局からのご説明についてご質問、ご意見ご所感等があればどなたからでもご自由にお願いいたします。それでは清原委員お願いいたします。
 
【清原委員】  ありがとうございます、清原です。私からは今日がこのテーマについてのキックオフということですので、ご提案したいことがございまして申し上げます。私自身は、このテーマは極めて法科大学院教育の持続可能性を目指す上で重要な課題だと認識しています。同時にこの委員会でこのテーマを検討することは法科大学院の持続可能性にとどまらず、日本における高等教育の持続可能性についても非常に関連すると思いまして発言させていただきます。実は9月25日に盛山文部科学大臣から中央教育審議会に、『急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育のあり方について』の諮問がございました。皆様ご存知だと思いますが、改めてこの委員会でも共有して臨むことが望ましいのではないかなと思います。
 この諮問のテーマにありますように、少子化の中での高等教育の教育と研究の質をいかに確保していくか、またはデジタルの力を活用した地方創生やリスキリングによる労働市場の改革も踏まえながら検討することが求められている諮問でございます。その中で特に私が注目したのは、理由に関して次のような記述があることです。すなわち、「学生が文理横断的にこうした知識スキル態度および価値観を身につけ、AIには果たせない真に人が果たすべき役割を十分に考え実行できるよう、高等教育機関においては中等教育段階における取組も踏まえ、そのような人材の育成に取り組むことが必要となる」とあります。
 また、「社会に出た後も新たに必要とされる知識スキル態度および価値観を身に付け、またそれを更新していくためのリカレント教育も一層求められている。このような人材の育成がひいては、個人及び社会のウェルビーイングの実現に繋がるものと思う」とされています。一部の報道などでは、AIが普及すれば、いわゆる司法の世界もAIが席巻するのではないかと言われていますが、私は必ずしもそれを肯定するような立場ではありません。むしろ、改めて法科大学院の現実社会に根ざした教育が必要だと思っています。既に11月末に大学分科会の中に14名の委員による高等教育の在り方に関する特別部会が設置されて検討されていますが、この項目の中に必ずしも明確に、具体的に教員や研究者に言及している項目はなかったのです。もちろん、趣旨としては含まれていると思いますが、例えば一番目に「2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿」。第2に、「今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保のあり方」、第3に、「国公私の設置者別の役割分担のあり方」、第4に、「高等教育の改革を支える支援方策のあり方」とあります。
 ただ先ほど、在学中受験の最初の結果についての大貫委員の発言に、「タイトな日程の中でも、精選した授業を行うことが求められ、一定程度、それができたのではないか」という趣旨があることからもわかりますように、「学修者本位の適切な授業ができる教員の養成」の意義は、改めて再確認されたと思います。また、久保野委員から「地方枠定員を設置したことの意義についても検討したらどうか」という、これも大変重要なご提案だと思います。そこで、私はぜひこの特別委員会でも、諮問に対する答申に向けて、特に「適性のある質の高い大学教員の確保の重要性や、そのための方策」について有効な提言ができれば、法科大学院にとどまらず、専門職大学院のあり方についても一石を投じることができるのではないかなと思います。
 法治国家である日本国の司法の担い手を養成する法科大学院の教育および質の確保は、高等教育において、重要かつ喫緊に解決すべき課題であると同時に、日本社会が法治国家として、その質を確保し続けるための「司法」のみならず、「立法」「行政」の質の向上のためにも必要だと思うからです。
何か大上段で申し訳ないですけど、この特別委員会のこのテーマの設定は、まさに未来の高等教育を開く方向性にも繋がると思いまして発言をさせていただきました。皆様よろしくお願いいたします。以上です。ありがとうございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。貴重なご指摘だと思います。ただいま酒井委員、加賀委員、佐久間委員、青竹委員からお手が挙がっており、今申し上げた順番でご発言をお願いします。誠に申し訳ありません。私の段取りが悪くて時間の制約もありますので、ポイントを絞ってのご発言でよろしくお願いいたします。それでは酒井委員お願いいたします。
 
【酒井委員】  ありがとうございます。この法学研究者養成というテーマはかねてから私自身も非常に重要なテーマとして受け止めておりまして、今期正面から議論されるということを非常に嬉しく思っています。そもそも実務家としても、私達の後輩の養成を研究者の先生方にお願いするばかりで研究者の後進の育成については無関心、放置というのは非常に勝手な話だろうと思っていますので、実務家サイドもきちんと協力をしていくということも非常にいかにも重要だと考えています。また清原委員の方からも法治国家という言葉がございましたけれども、本委員会から位置づけにおいてはその研究者の先生方に法曹養成の担い手としての役割を求めるという観点からの話にはなるのだと思いますけれども、一方で、研究者の先生方というのは立法や法改正において非常に重要な役割を担っておられて、優れた研究者が輩出をされていくということは、法治国家が適正にワークしていくということにおいても必須と考えています。このような観点から法科大学院で実務をきちんと学び、それをベースにお持ちの研究者の先生方が輩出されるとすれば、これは実務にも直結した非常に有益な、有機的な法整備に繋がるということが期待できると思いますので、大きなプラスと考えています。
 では実務家サイドが何ができるだろうということを考えたときに、すぐ思いつくことはないですけれども、実務家教員が法科大学院の教育ですとか法学教育に関わるにあたってやはりキャリア学習を担当するということが比較的多くあるのではないかなと思っています。私自身も担当いたしました。そのキャリアを示すという中で意識的に研究者というルートを一つの選択肢として示していくということが一つ実務家サイドにはできることなのではないかなと考えるところです。
 また議論は続くというお話しでしたので次回以降も発言できればと思っていますけれども、私自身、実は学部卒業時点で研究者志望だったという経歴がございまして、そのあたりでどうして研究者志望だった私がここにこうして弁護士になっているかというような話しも踏まえて、できるだけ有益な議論に繋げていければと思っていますのでよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは加賀委員お願いいたします。
 
【加賀委員】  松下座長から今日は頭出し、キックオフ的なテーマだというふうにおっしゃったので短時間でお話しさせていただきます。文科省の方からは有益なデータを提供していただきありがとうございました。減少傾向にあることだけはしっかりと把握した次第です。二つだけお話しさせてください。
 一つはこの研究者養成、本当に大問題であり超難問というふうに思います。その中で、法科大学院の研究者教員に話が絞られていくのは狭過ぎるかなと。実は法学部の教員、もちろん法律科目の教員ですけれども、ここの方が分量的には、人数的には多く存在するわけですので、この点も視野に入れながら検討した方がいいかなと思っているのが一点です。
 もう一点は日本学術会議が平成23年、12年前に法科大学院できて7年後ですけれども、法学研究者養成の危機打開の方策ということで、法科大学院後に必ずしも博士後期課程に進学するという当初の期待が現実にならなかったということを前提に、報告書を作っておられますので、このあたりも参考にしながら今後審議をお願いしたいなというふうに思っています。今日は以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして佐久間委員お願いいたします。
 
【佐久間委員】  佐久間です、よろしくお願いします。研究者の養成は非常に大事だと思いますが、同じ中教審の大学院部会の方で人社系の大学院のあり方が今議論されていて、法科大学院ではない総合法政専攻みたいな後期課程に進学して研究者を目指すという方ももちろんいるわけだけれども、現実問題として研究者になれるとは限らないわけだから、研究者以外のキャリアパスも見つける必要がありますよねという議論になっています。そうすると今ここで議論しようとしていることはある意味方向性として逆なので、次回以降の議論になるかと存じますが、この議論の射程はどこなのかということも確認する必要があると思います。今日は時間がありませんので、一言だけ申し上げました。よろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  ありがとうございました。ご指摘の点については引き続き考えていくことになろうかと思います。それでは青竹委員お願いいたします。
 
【青竹委員】  よろしくお願いします。大阪大学でも法学系研究者の養成が手薄であるということを認識しながら、実際には余裕がなく手が回らず、対応できないという状況でした。でもこのたび具体的に対応せざるを得ないという状況を認識しまして、今年度カリキュラム改正をいたしました。法科大学院では課題研究という科目があり、リサーチペーパーの作成を指導する内容です。履修者は本当に少なく、ほとんどいないという状況で、3年生だけに開講していたところ、これを今後2年生にも開放し、1年生向けに新たに課題研究初級編を設けました。来年度からカリキュラム改正が実現いたします。ただ、器を設けただけでは研究者養成には当然繋がりませんので、やはり研究者に適性のある学生を見極めて呼びかけていくという積極的な行動も必要になってきているのかどうかということを考えているところです。他大学の取組を共有しながら今後取組を検討できればありがたいと思います。以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして前田委員お願いいたします。
 
【前田委員】  前田です。手短に1点だけ申し上げたいと思います。若手研究者の養成が滞っている様子がデータで表れているのかなというふうに今日の発表を受け止めておりました。様々な方策あろうかと思いますけれどもその中で一つ、私が重要かもしれないと考えているのが、一旦実務家になった人が研究者として戻ってくる、大学に戻ってくる道を開くことかなというふうに思っています。先ほども少しお話ありましたけれども、研究者という進路に興味を持ちつつも実務家という道を選んだという方は少なくないだろうというふうに思っています。そのような方たちが大学に戻ってきて専業の研究者になる道筋を、用意しておくことというのが重要だと思います。私の専門、知的財産法ですけれども、こういったビジネスローの分野では実務と研究の垣根は比較的低く、そういった潜在的な需要は小さくないというふうに感じている次第です。実務家の方が仕事を完全にやめて、あるいは場合によっては仕事を続けながら研究指導を受けて研究能力を磨いて、最終的には専業研究者に転身できる道筋があると、より研究者という選択肢が取りやすくなるのではないかというふうに思っています。神戸大学では弁護士向けの博士課程があって、これは研究者の養成を第一の目的としたものではないですけれども、そういった神戸大学の経験というのも、実務から研究者の道の議論するに当たってはお役に立てる部分もあるのではないかというふうに感じています。私からは以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは大貫委員お願いいたします。
 
【大貫委員】  はい、大貫です。時間がないところ申し訳ございません。先生方と同様に法学教員と考えています。これは加賀委員のご指摘のように法学部の教員も含めたというふうに考えるべきだと思っています。この法学教員の養成が危機的状況にあることを改めて数字で確認させていただきました、事務局に感謝申し上げます。個別的にはともかく後継者の養成について、このように全体として検討しようとすることはこれまであまりなかった。なかったのだろうと思います。これまでは個々の研究者あるいは個々の大学がそれぞれの後継者をどうするかということを考えていたのだろうと思います。その意味でこのように本委員会で、一般的なテーマとして取り扱うというのは大変画期的だと思います。どう対応すべきかについて私自身は自分の本務校も養成がうまくいっておりません。公の場で言っていいのか、まあこれわかることですので。うまくいっていません。後から叱られるかもしれませんけども、現実に研究者を生み出してないので、これ事実ですから、そういう意味で私なかなかアイディアがないのですが、しかも法学部の養成はかなり個別的だろうと思います。教員によってもその専門によっても大学によってもかなり個性的なところがあったというのが、従来だと思います。ある意味特異的にやってきたというところがあると思います。といっても悪い意味ばかりじゃありませんので、これは、私は良い意味での個性的だったと思っていますけれども、他方で聞くところによると大学によってはそれなりに後継者養成ができているところがあるというふうに思っています。
 今述べましたように後継者養成というのは個性的で、そういう意味でどの程度意義があるか計りかねるところですけれども、これらの大学のやり方を好事例としてぜひ共有できないかと思っています。後継者養成は個性的とは言っても、例えば法科大学院修了後博士課程に進学してもらうのか、助教に行ってもらうのかでも異なるでしょうし、法科大学院在学中に研究者志望の方のためにどんな授業が持てるのか、先ほど青竹委員からカリキュラム改正したというお話しがあったのでぜひお伺いしたいところです。例えば研究論文を書くプログラムを設けているのか。どういう開講の仕方をとっているかとか。それから志望者を、これも青竹委員がおっしゃいましたが、志望者を増やすためにどういう試みがありうるのか、こういったことはある程度一定程度、個性的ではある研究者養成でも共有できることじゃないかと思いますので、ぜひ事務局におかれましてはそういう好事例を共有していただけないかと思います。12時1分過ぎたようです。以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは他いかがでしょうか。時間も過ぎていますけどもどうしてもということであれば、一人程度ご発言いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。冒頭申し上げました通り、今後またどこかで本議事を改めて設け、審議を深めていただくことを予定しています。今日はキックオフですので引き続きよろしくお願いいたします。それでは事務局からお知らせがあるということですのでよろしくお願いいたします。
 
【保坂室長(事務局)】  事務局です。本日の資料のうち参考資料5、8、9についてですが法科大学院の入学者に係るデータがございます。こちら6月、9月の各委員会に示した数字と本日の資料で一部異なっている部分がございます。理由としましては複数の大学から開催後に数値の訂正の連絡あったものということになります。今回の会議資料では最新のものとなっていますが、過去開催分の会議資料につきましても数値を訂正したものを後日ホームページに掲載することといたします。連絡は以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。資料の数字の訂正ということですね。それでは以上で本日の議事を終了いたしたいと存じます。今後の日程については事務局から追って連絡をしていただきたいと思います。それでは本日これで閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
以上
 

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