法科大学院等特別委員会(第111回)議事録

1.日時

令和5年6月23日(金曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 法科大学院教育の動向について
  3. 第12期の審議事項について
  4. その他

3.議事録

【松下座長】  それでは、これより公開で審議を始めます。
 改めまして、第12期初回の中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会の開催にあたり、座長に選任いただきました私松下から一言御挨拶を申し上げます。
 来年4月で法科大学院制度が発足して20年経つことになります。令和元年の法改正により導入された法曹コース、在学中受験が本格化し、特に在学中受験については来月に実際に第1回目が行われるということになります。法科大学院制度は新しいステージに立ったということが言えようかと思います。本委員会としては、その改革の達成の様子を注視し、法科大学院を中心とする法曹養成制度をより良いものとすべく議論を重ねる必要があろうかと思います。座長といたしましては闊達な議論ができますように可能な限りの配慮を尽くしたいと思います。委員の皆様におかれましては御協力をよろしくお願いいたします。
 私の座長としての挨拶は以上なのですが、続きまして座長代理からの御挨拶についてです。私としては座長代理を土井委員にお願いしたいと考えておりますが、本日土井委員は所用により御欠席でございます。追って事務局から御本人に確認し、お引き受けいただけるということであれば、次回以降に改めて御挨拶を頂きたいと思います。
 次に、今回第12期としては初回の会議になりますので、文部科学省を代表して池田高等教育局長より一言御挨拶をお願いいたします。
【池田(事務局)】  おはようございます。高等教育局長の池田でございます。この度は新しい12期の法科大学院等特別委員会の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。新しい期がスタートするにあたりまして一言御挨拶を申し上げます。
 この法科大学院等特別委員会は、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会の下に大学分科会という分科会が置かれておりまして、その下で法科大学院の在り方について御議論を頂く場でございます。今年は令和元年の法改正による一貫教育制度が開始されてから4年目を迎えたところでありまして、326名の方が法曹コース修了後、特別選抜を経て法科大学院に入学しました。
 また、もうまもなくこの7月には初めての在学中受験が実施されることになります。文部科学省といたしましては、プロセスとしての法曹養成制度を通じて質の高い法曹を育てていく途をしっかりと確保してまいりたいと考えており、こうした諸制度の状況について適切に把握し分析していく必要があると考えております。
 また、法学未修者教育の充実は多様なバックグラウンドを有する人材を法曹に多数受け入れるという司法制度改革の理念を実現する上で、引き続き重要であると考えておりますので、この前の第11期の議論も踏まえてさらなる御検討をお願いできればと思っております。
 最後になりますが、法科大学院は法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度の中核機関として平成16年に開設されました。今期は法科大学院開設から20年の節目を迎える年に当たりまして、新しいステージに入るという時期でございます。この法科大学院の制度創設の目的や理念に今一度立ち返っていただいて、この20年で得られた成果、残された課題は何かを整理いただきながら、法科大学院の今後20年、30年先の未来のため、活発な議論をお願いしたいと思います。委員の皆様にはよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは、議事に入ります。法科大学院教育の動向について、資料の議事次第の3、議事の(2)法科大学院教育の動向についてです。資料の2-1から2-15までについて、事務局から説明をお願いいたします。
【保坂(事務局)】  資料2関係については大部にわたっており恐縮ですが、今後の審議にあたっての基礎資料として御用意したものとなります。時間の都合上、15分程度ということでポイントを絞って御説明させていただきます。よろしくお願いします。
 まず、資料2-1、7頁目でございます。法科大学院制度の経緯について、法科大学院開設20年の歩みというふうにしております。この資料の左側に法科大学院を巡る主な動きが整理されておりまして、右側にこの委員会でもよく使われます資料を時系列に並べて見て取れる形で構成をしております。左側は平成13年の司法制度改革審議会意見書におきまして、点線の枠ですが、新司法試験合格者数の年間3,000人達成を目指す。また、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法科大学院を中核とした、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を整備すべきだといったようなことが提言されています。これを受け、平成14年には中央教育審議会の審議を経て、法科大学院の設置基準等について答申され、いわゆる連携法、法科大学院の教育と司法試験等の連携等に関する法律というものが成立しまして、平成16年度に法科大学院が68校で開設、その後74校にまで増えるという経過をたどっています。その下の青枠ですが、法科大学院の参入を広く認めた結果、入学者数はピーク時で約5,800人になりました。一方、司法試験合格者数は、平成20年に2,000人に達した後、ほぼそのまま推移ということで、司法試験合格率の低迷、法科大学院志願者数の減少という課題が生じることとなりました。その後、中教審での御議論や、平成24年度の予算からは公的支援の見直しということで、その予算額の減額の仕組みを導入して対応してきたところでございます。その後、後半の10年、特に平成25年の法曹養成制度関係閣僚会議決定というところで、点線枠内ですが合格者数3,000人程度との数値目標は現実性を欠くということで、当面数値目標は立てないということとなりました。また、27年の推進会議決定においては、また枠内ですが、法曹人口が1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を行うということともに、平成30年度までを法科大学院集中改革期間と位置付け、法科大学院の組織見直し、教育の質の向上、学生の経済的・時間的負担軽減を推進、また、累積合格率が概ね7割以上となるように充実した教育が行われることを目指すということとなりました。この後さらにこの推進を図るために令和元年にはいわゆる連携法等の一部改正が行われまして、下にあるような法科大学院における教育の充実、いわゆる3+2の制度改正、法科大学院の定員管理、司法試験受験資格の見直しということで、在学中受験といった諸制度が導入されたところです。令和2年には3+2の法曹コースが開始されるとともに、令和5年に在学中受験の初めての受験を迎えるという形で進んでおります。
 別紙として関連のあるものを付けておりますが、特に9頁を御覧いただければと思います。9頁には平成13年の意見書の中で法科大学院のこちらの目的や理念について記載した部分になります。目的としては、法科大学院は司法が21世紀の我が国社会において期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立することを目的とし、司法試験、司法修習と連携した基幹的な高度専門教育機関とする。また教育理念として、理論的教育と実務的教育を架橋する。公平性、開放性、多様性を旨とする。そして以下の基本的理念を統合的に実現するものでなければならないとしまして、法の支配の直接の担い手であり、役割を期待される法曹に共通して必要とされる専門的資質・能力の習得、人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図るといったことや、専門的な法知識を確実に習得させる、それを批判的に検討しまた発展させていく創造的な思考力、事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する、先端的な法領域について基本的な理解を得させ、また社会に生起する様々な問題に対して広い関心を持たせ、人間や社会の在り方に関する思索や実際的な見聞、体験を基礎として、法曹としての責任感や倫理観が涵養されるよう努めるというようなことが理念として掲げられております。
 以降、12頁には先ほど紹介した法科大学院集中改革期間に関しまして、左側に平成27年の決定で、法科大学院関係でなされた主な指摘と、右側には文科省における改革の取組が、主要なものが対比する形でまとめてございます。
 また、次の13頁には法改正に関連しまして、この法曹養成制度改革の全体像改革プランということで、プロセス改革、多様性確保の推進、法科大学院のアクセス向上ということを柱にしまして、法改正での対応を中心に様々な取組が進められているということを簡潔に示してございます。
 続きまして17頁目の資料2-2を御覧ください。「中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会の提言等について」という資料でございます。左側にはこれまで縷々御提言、報告、審議まとめを頂いたものについて、中教審から頂いた主だったものを左側にまとめてございます。その一つ右の欄には関連施策としてその提言、報告等を受けましてどういった施策が講じられてきたかということを簡単にまとめまして、このように非常にたくさん頂いていますので、少し分かりやすいようにということで左側の報告、提言等に関連した関連施策を同じ色で対応関係を見ていただけるように示した資料でございます。こちらもこういった積み重ねの上で今後さらにどういったことを、審議を深め取組を充実する必要があるのか、そういうところの手掛かりとするためにまとめさせていただいております。
 続きまして19頁以降は、よく見慣れた資料といいますか、そちらを時点更新したものが中心となってまいります。19頁の資料2-3でございます。令和5年現在の法科大学院の設置状況ですが、34校、入学定員2,197名ということになっております。
 続きまして21頁目、資料2-4でございます。令和5年度については、法科大学院の志願者数が上段にあります。また下段の入学者数が共に増加をしていまして、これは平成30年度を底としまして若干の増加傾向がみられるという状況でございます。入学定員充足率も約90%ということになっています。
 22頁は、入学者数の推移の中で非法学部出身者関係の数が分かる資料となっております。令和5年度の非法学部出身者は、既修・未修合わせまして308名、前年度が304名という中で、ほぼ横ばいという数字になっています。
 23頁は、入学者における社会人経験者の数をまとめたものになっております。令和5年度は既修・未修合わせて360名で、前年度は348名ということで微増という形になっています。以降は年度別・校種別に細かくまとめた表が続いております。
 27頁の資料2-5を御覧ください。令和5年度法科大学院入学者選抜の全体像でございます。左からの志願者・受験者・合格者・入学者数、入学定員とまとめておりまして、特に特別選抜の状況がよく見て取れる図になっているかと思います。今年度の数字を隅付き括弧、前年度の数を丸括弧の中に入れております。志願者は5年一貫型で510名、開放型で669名です。合格者数も5年一貫型で356名、開放型で229名、入学者については5年一貫型で228名、開放型で98名ということで、法曹コースの修了生として入学した方は326名ということで、前年よりも着実に増加をしているというところでございます。なお、右下にございます未修者コースの入学者全体は583名ということで、前年の589名とほぼ同数ということになっています。
 次に29頁の資料2-6につきましては、各法科大学院の令和元年度~令和5年度の5年間の入学者選抜の状況を表にしてまとめたものになっております。
 また31頁の資料2-7につきましては、特別選抜に限りまして各大学院の状況をまとめたものとなっておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 33頁の資料2-8は、修了者数の推移です。少し減少しているという形になっていますが、先ほど御覧いただいたように令和4年度・令和5年度は資料の中で数字が1,900人台の入学者が確保できているという状況ですので、修了者に関してはまた令和5年度・令和6年度の状況を注視していきたいと考えております。
 35頁の資料2-9は、標準修業年限修了者数・修了率の推移を更新しております。以降、校種別・年度別での数字が表としてまとめられております。適宜御参照いただければと思います。
 次に43頁の資料2-10でございます。こちらは令和2年に特別委員会での審議を経て設定したものでございます。累積合格率等々の数字が令和6年度・11年度の目標として設定されております。6年度の目標については概ねここにありますように、下線が引いてある所が直近の数値で達成しつつある状況です。この頁の下部の※に“令和11年度のKPIについては、令和6年度の達成状況に応じて必要な見直しを行う”ということとしておりますので、また来年見直しを行うことを予定しております。
 続きまして、45~47頁は、資料2-11です。こちらは法科大学院修了者の司法試験累積合格率について、全体・既修・未修の別にまとめたものになります。全体では70%を超える。46頁にある既修では80%を超える年が現われている。未修に関しましても、なかなか行ったり来たりという部分もございますが概ね50%程度というところまで来ておりまして、全体的に上昇しているという状況でございます。こういった実情をよく文科省としても対外的に発信していかなければと思いますが、また引き続き関係者の皆様に御協力いただきながら進めていければと思います。よろしくお願いします。
 続きまして49頁、資料2-12です。司法試験合格率のこれまでの推移になります。一番右が直近の令和4年の司法試験の合格に関する数値となっております。全体で1,403名の合格者のうち、法科大学院修了者が1,008名。こちらの単年での合格率を三角のマークが付いた折れ線で表現されていますが、37.7%ということになりまして、こちらも平成28年度の20.7%を底にしまして上昇してきているという状況でございます。
 51頁、資料2-13は「文部科学大臣認定を受けた法曹養成連携協定一覧」ということで、いわゆる法曹コースに関連するものになります。令和5年度現在で70の連携協定、40のコースが設置をされておりまして、昨年度よりも増加をしている状況でございます。
 55頁からの資料2-14は、いわゆる加算プログラムについての資料になります。本年3月17日に公表した加算プログラムの評価結果になりまして、以降の頁で各法科大学院の取組をまとめられておりますので、適宜御参照いただければと思います。現在の加算プログラムの枠組みは、今年度までの5年間のパッケージで実施してまいりました。それで来年度以降どうするかという資料が133頁からの資料になります。
 133頁からは資料2-15で、1枚めくっていただいて134頁を御覧ください。来年度からのプログラムの方向性については、前期の特別委員会で議論いただいたところでございます。そこで頂いた方向性を踏まえまして、概ねこれまでと同様の枠組みで、また5年間のパッケージで継続をするということとしております。基礎額と加算率というものをそれぞれ算定しまして配分率を決定するということも同様ということで維持をしておりまして、少し今回新しくなっているところが134頁の上の枠の中の3つ目の丸です。“プロセスとしての法曹養成の実現に寄与する取組であっても定量的な指標では評価しにくい取組もあることから、こうした取組を推進するための仕組みを導入”ということが書いてあります。こちらは各大学からの御提案を受けまして、来年度以降の5年間のパッケージにおいては新たにこういった定性的なものの取組も含めていただくことができることとしまして、頂いた提案についてはプログラムの審査委員会の委員が公表してお返しをするという取組を新たに始めることとしております。
 以上、大部にわたって恐縮ですが御説明差し上げました。よろしくお願いします。
【松下座長】  ありがとうございました。20年間を振り返り、これからというところを展望する御説明であったかと思います。ただ今の御説明について御質問があればお願いいたします。なお、時間の関係上ただ今の資料に関する以外の御質問・御意見等は、その後の議事でお願いしますので、取りあえず今の御説明のあった資料についての御質問等があれば、どなたからでもお願いいたします。いかがでしょうか。御質問等があれば挙手マークを使ってください。よろしいですか?では、もしただ今の資料についての御質問があれば、また随時戻っていただくということにして、次に進ませていただきます。
 議事次第の(3)第12期の審議事項についてということであります。第12期の審議に関する主な論点について議論をするために、事務局より資料3について御説明を頂いた後に、各委員から御意見を頂ければと思いますが、中川委員がこの後御予定があり退室されると伺っておりますので、ここで中川委員より簡単に御挨拶と御意見をお願いいたします。
【中川委員】  神戸大学の中川です。11時前に出なくてはいけませんので、発言の機会を頂きましてありがとうございます。自己紹介でございますが、神戸大学で行政法を担当しております。法科大学院につきましては制度設計の時からずっと関わっておりまして、こちらの委員会では10期からの委員で、今回が3期目ということになろうかと思います。
 資料3を拝読をいたしましての発言です。資料3にも反映されているかと思いますが、ちょうど11期の末尾の時にこういう発言をいたしました。制度のスタート以来ほぼ20年経ちまして、新しい制度をスタートアップするときにはいろいろな混乱が起きるものなのですけれども、かなりそれが収まってきたのではないか。司法試験合格率であるとか、志望者数の安定、あるいは少し増えつつあるとか、就職に関して言うと今はむしろ全然人が足りていないという状態であるというところで、今までのような視点を捨てろという意味では全然ありませんけれども、このあたりでもう少し違う視点が必要ではないか、それは現在私たちが置かれている法曹ニーズ、特にデジタル化というのは非常に大きいのですけれども、これまでにない法曹ニーズの量、それから質が急速に増えていて、それがいわゆる大企業とかあるいは政府においてどういう立法をするかというだけではなくて、自治体においても例えばAIを使うというだけでいろいろなことに気を付けなければいけない。個人情報保護や知財等も含めてですね、そういうことがアドバイスできる人が各自治体にいないことにはどうしようもないと、そういう状態になっていると思います。そういう意味で高度な法曹養成にもうすこし方向性を向ける必要がある。これまでは、基礎的なことがきちんと教育できますという状態をとにかく全法科大学院において提供していただくことを目的にしていたのですが、それはもちろん引き続きということでありますが、それに加えてもっと上を目指すというような質的な向上を現在の法曹ニーズにキャッチアップするような、そういう高度法曹の養成というところに動いていく必要があるのだろうと思います。ただ、これは全ての法科大学院がそうしろということではなく、やはり法科大学院ごとの個性に応じた対応であろうと思います。それからLSの連携というのも、司法試験の合格率をアップすることに向けた連携もあれば、その高度法曹養成といったところにキャッチアップしていくものもあるだろう。例えば自治体に対してもっとサポートできるような法曹を創出できないかとかそういう、企業法務に対してとか地方自治体も、そういった形の連携というのもあるのだろうと思います。そういう意味で各ロースクールの個性というのを非常に重視した多様な取組としてこんなこともできないだろうかということをこちらから発信することが重要かと思います。
 もう1つ非常に重要な課題がやはり教員養成・研究者養成でございまして、これは多くの大学関係の委員が同意するところだと思います。研究者養成はほぼ崩壊している状態です。研究者を育てるのに8年ぐらい掛かりますので、このまま手をこまねいているとそもそも法科大学院の教員がいないという、気付くと誰もいなくなったということになります。以前からそうなりつつあるのです、若手の採用が全然できていないので。そういう意味では研究者養成は、これも全ての法科大学院がするということではなくて、そういうことに関心がある法科大学院に限られるとは思いますけれども、研究者養成について私たち自身が非常に危機感を持って発信をしていく必要があろうかと思います。
 最後に1点、未修者に関してです。これは引き続き非常に重要な課題なのですが、正直、教育手法という観点ではほぼやり尽くしているのではないかという、少なくとも神戸大学ではそういう実感を持っております。そこで、その教育手法だけではなくて、そもそもどういうところからリクルートするのか。私個人的には理科系特に理工系の方は非常に法律の思考と親和性が高いと思っております。未修者コースに来てくれた人をどうやって教育するかだけではなくて、どこにとりに行くかというような意味での取組を、こんな取組もあるのではないかということをこちらから発信することも重要ではないかと思っております。
 私からは以上でございます。
【松下座長】  どうもありがとうございました。いずれも非常に重要な指摘かと思います。それでは、中川委員におかれましては適宜御退室いただくということにいたします。それでは、事務局から資料3の説明をお願いいたします。
【保坂(事務局)】  それでは、資料の145・146頁目の2頁にわたりますけれども、資料3「第12期の審議に関する主な論点について(案)」を御覧ください。第10期・11期における資料の形式を踏襲しまして、審議にあたっての基本認識と個別の論点で構成しております。今回、基本認識を4つの丸で整理しており、この丸に対応して個別の論点において(1)から(4)までを記載しております。まず基本認識の部分について読み上げまして、その後に個別の論点について要旨を御説明したいと思います。
 審議に当たっての基本認識の1つ目の丸です。法科大学院開設から20周年を迎える節目の期に当たり、これまでの歩みを俯瞰し、その成果や残された課題を整理した上で、制度創設の際の目的及び理念も踏まえつつ、法科大学院教育の更なる改善・充実に向けて必要となる方策について、包括的に審議し提案していく必要があること。
 2つ目、令和元年度の法改正により導入された諸制度に関し、その成果の評価に当たっては中長期的な視点で臨む必要があることに十分に留意しつつ、法曹養成連携協定に基づく連携法曹基礎課程(法曹コース)及び特別選抜の状況、今年度から実施される在学中受験の状況等について適切に把握・分析し、より円滑な制度実施に向けた方策について検討していく必要があること。
 3つ目、前期までの本委員会における審議を受け、引き続き、法学未修者教育の充実、法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成・確保、複数の法科大学院の連携、法科大学院及び法曹コースの魅力の発信等に関する方策について検討していく必要があること。
 4つ目、上記のような法科大学院教育の改善・充実に向けた審議を通じ、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(いわゆる連携法)に規定する目的、法曹養成の基本理念等を踏まえ、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携をより一層図っていくための方策について検討していく必要があることとしております。この4つ目の丸の“法曹養成の基本理念”については、連携法では、多様かつ広範な国民の要請に応えることができる、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹が求められているというふうに規定されており、このことに鑑み、国の機関、大学その他の法曹の養成に関する機関の密接な連携の下に法科大学院における教育等が行われるものとされております。
 続いて個別の論点です。
 (1)は今後の法科大学院教育の改善・充実に向けて講ずるべき方策等についてです。これまで法科大学院に関して行われてきた法令改正、公的支援見直し強化・加算プログラム等の施策を整理し、20年間の歩みを検証した上で、今後の法科大学院教育の改善・充実に向け、重点課題をどのように設定し、またこれに対応するために講ずるべき方策としてどのようなものが考えられるかということです。ある種大きな方向性のようなものを意識しながら、皆様に御審議いただくような準備ができるかと考えてございます。審議を深めるために追加的に必要なデータ等があれば、事務局でできる限り御用意させていただきたいと思いますので、お気付きのことをお寄せいただければと思います。
 次の146頁を御覧ください。(2)は一貫教育制度のより円滑な実施、在学中受験の対応についてとしております。令和元年の法改正により導入された諸制度に関しては、当面はこれを着実に実施していくことが基本になると考えておりますが、法曹コース、特別選抜、在学中受験のそれぞれについて状況を適切に把握・分析した上で、もし何らかの課題が見られる場合には、各法科大学院におけるグッドプラクティスの共有の手法も含め、どのような対応・方策が考えられるかということを書いてございます。
 (3)前期までの議論を受けて継続して検討すべき事項についてです。ここで、4つポツで挙げています法学未修者教育、法科大学教育を担う教員の養成・確保、複数の法科大学院の連携や地域の自治体や法曹界、産業界との連携。法曹志望者の魅力の発信というものを挙げていますが、これらを進めていくためにどのような方策が考えられるかということです。
 最後(4)はその他として、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携をより一層図っていくための方策としてどのようなものが考えられるかとしています。前期で法科大学院教育と司法修習との連携について取り上げさせていただきましたけれども、引き続き連携を図っていく観点から、委員の皆様方から御意見を頂戴できればと考えております。
 本日委員の皆様から頂いた御意見も踏まえ、松下座長と御相談をしながら、今期を通じて有意義な御審議を頂けるよう、事務局において適切に準備を進めさせていただきたいと考えております。以上です。
【松下座長】  ありがとうございました。この後、各委員から御意見を頂きますけれども、その前に、ただ今の資料3とその御説明について御質問があるようでしたら、この段階でお願いをいたします。いかがでしょうか。よろしいですかね。それでは、もし何か御質問があれば、御意見の中で含めて御発言いただく形でも特に構いませんので、それでは各委員から御意見を頂戴したいと思います。
 今期第12期に審議が必要な事項に関し、本日御出席いただいています各委員より、3頁の資料1-2の名簿順に御発言をお願いできればと思います。御発言にあたりましては、今回は12期の初回の会議でございますので、簡単な自己紹介も含めていただければ幸いです。時間が限られておりますので、恐縮ですけれども2、3分を目安に御発言をお願いいたします。それから、本日御欠席の委員からも御意見を頂戴しているようですので、後ほど事務局から代読をしていただくことになります。その節はよろしくお願いいたします。それでは、1-2の名簿の順に従いまして、まず清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  皆様、こんにちは。杏林大学客員教授、前東京都三鷹市長の清原慶子です。私は研究者としては「自治体行政における市民参加と協働」、地域情報化等についての研究や、高齢者や障がい者の選挙におけるバリアフリーや電子投票の在り方等の「政治における参加」について研究していたことから、司法制度改革推進本部において「司法への国民参加」を検討する『裁判員制度・刑事検討会』及び『公的弁護制度検討会』の構成員を務めていました。そこで裁判員制度の創設に係る刑事訴訟法等の改正に際しては、衆議院の法務委員会に参考人として招致された経験があります。そして三鷹市長在任中より本特別委員会の委員を拝命するとともに、数年前まで法科大学院のいわゆる加算プログラムの選考委員も務めておりました。
 それでは、第12期の審議について重視していきたい点を申し上げたいと思います。本特別委員会ではこれまで法科大学院の先生方、未修者として弁護士になられている方を含む法曹界の皆様をはじめ、委員の皆様の審議によって法科大学院協会の皆様の連携・協働が深化してまいりました。そして、法科大学院、法学部の教育の質の向上と持続可能性に向けて、法曹コース創設の導入や、未修者教育に生かす共通到達度試験の取組、また、オンデマンド・ビデオ教材の施策等が図られてきました。皆様のこれまでの御努力に敬意を表しますとともに、資料3の内容はこれまでの経過を踏まえてまとめていただいているものと受け止めております。ここでは時間の関係で3点に絞って申し上げます。
 1点目は、2頁目の個別の論点の2点目についてです。松下座長も池田高等教育局長も仰いましたように、今年度は法科大学院がつくられて20年を迎えます。そして法曹養成連携協定に基づく法曹コースや、特別選抜によるいわゆる3+2の状況が把握される必要があります。また、今年度から実施される在学中受験等について、実態を適切に把握し検証していくプロセスに入ると思いますが、その「検証の在り方」が課題だと思います。決して短兵急に評価してはいけないと考えます。そこで、適切で丁寧な検証の手法を検討して、その上で的確に検証し、改善に向けて提案する必要があると思います。いわゆるEBPMのエビデンスの把握の仕方が重要です。この度、加算プログラムの取組においても、数値目標、定量的指標に加えて、定性的な指標の在り方が課題とされていると先ほど報告されました。本特別委員会でも、定性的な指標についての検討が必要と考えます。またその過程で、これまで進められてきた学部と法科大学院の連携に加えて、法科大学院と司法研修所の連携、あるいは法科大学院と自治体や企業等との連携についてもさらなる検討が進むことを願っています。
 2点目に、(3)継続して検討すべき事項の4点目に、法曹志望者の増加に向けた取組が書かれていまして、これについて申し上げます。法治国家として適正のある優れた人材が法曹を志願し、選択していただけるような取組は極めて重要です。もちろん法科大学院、法曹コースの魅力を発信することは引き続き重要ですが、未修者(別の意味では専門家、経験者)の皆様が法科大学院に注目していただくことが大事です。そこで最近法務省のホームページに、検察庁説明会が今年の8月及び9月に法務省と大阪地方検察庁で開催されるとの告知がありました。内容は、講話として検事の仕事とその魅力、説明として検事のキャリアイメージ、また模擬取調室の見学や取調べ実演、現職検事との座談会とありました。ただ、対象は大学生、法科大学院生とあります。これは実施後に今後は高校生も対象に開催されることもよいのではないかと思いました。また、大阪弁護士会では「来たれ、リーガル女子!」と呼びかけて中高生の皆さんに法律家の仕事についての説明会をしているようです。また、法テラスもスタッフ弁護士の就職説明会をされたり、参議院の法制局の説明会が法科大学院生を対象に開催されたりしています。今朝の新聞には、6月24日に民間による法科大学院進学相談会があるという広告が載っていました。私は、この取組については司法関係者の皆様の連携と協働により、司法の仕事について早期に、つまり子どもや若者に対する適切で訴求力のある広報が必要ですし、ぜひ検討していただければと思います。
 3点目です。これは今社会が急速にデジタル化、また生成AIをはじめAIが普及してくる時代を迎えています。初等・中等教育においてはGIGAスクールが定着しています。もちろん法科大学院をはじめ高等教育でもパソコン、タブレットというのは普及していますし、インターネットの活用も普及していますが、さらに法科大学院の教育の中で、いかに望ましいデジタル化、DX化が進められるべきか、あるいは教育手法や研究テーマだけではなく、広報の手段としても適切なデジタル化が検討課題になってくるのではないかと感じました。
 以上、資料3は大変充実した内容になっていますが、私として重視したい点について絞って発言いたしました。どうぞ今期もよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは、本日佐久間委員は御欠席ですので、青竹委員、お願いいたします。
【青竹委員】  よろしくお願いします。大阪大学高等司法研究科に所属しております青竹と申します。ロースクールの授業では民法、主に家族法分野を担当しております。学内委員ではこの数年FD教育企画委員会に所属しまして、授業改善のための研修を実施したりカリキュラム改正を検討したりということに携わっております。最近では在学中受験の対応としまして、2単位授業の1単位化を目指し、いくつかの2単位の授業を春学期と秋学期に1単位ずつに分けて実施し、7月の夏学期に余裕を持たせるといったカリキュラム改正に取り組んでおりまして、今年度はその効果を実証して、さらにカリキュラム改正を実施するという状況になっております。
 ですので、資料3では法曹コース、在学中受験の分析、方策の検討、それから未修者教育の充実、研究者養成の確保、複数の法科大学院との連携に着目しております。中央教育審議会の法科大学院等特別委員会には、水島先生から引き継ぎまして初めてメンバーに入れていただきますが、この委員会では、委員の皆様の多大な御尽力によりまして様々な重要な改革をされ、合格率も上がり始めるなど、徐々に改革が良い効果を出し始めているようにお聞きしております。今後のロースクールのさらなる向上のために少しでもお役に立てることができればと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは、一場委員、お願いいたします。
【一場委員】  司法研修所の事務局長をしております一場と申します、本職は裁判官ですが、前期・前々期から引き続き委員を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 前期の最後の委員会でも申し上げましたけれども、司法研修所としても連携法で定められている法科大学院における教育と修習との有機的な連携をより一層図っていく必要があるということはよく認識しております。その有機的連携の前提として、現在の司法修習の状況を理解していただくということが必要であると考えておりまして、先日実施された臨床法学教育学会におきましても司法修習の状況を報告したところでございます。また、このような相互の教育内容の理解を前提とした上で、有機的連携の内容としては、相互の教育の個別具体的な中身を議論していくべきであると考えておりまして、その場として法科大学院協会と司法研修所とで意見交換を実施するというようにしております。
 実は昨日その意見交換会を実施したところですが、この意見交換会では法科大学院協会の司法修習連携等検討委員会の主任をされている東京大学の和田先生からの御発案により、当面は実体法または手続法上の同一の論点につきまして、法科大学院及び司法修習所双方で、どのように教えているのかをプレゼンすることはどうかと。狙いとしては連携法にいう司法研修所が習得させるべき実務に必要な能力について、司法研修所でどのように教えているのかということを法科大学院の皆様に御理解いただいて、その能力を習得するためにもお互いに必要な教育はどのようなものがあるべきなのかということを議論することが狙いになります。昨日はその1回目で、事前に強盗罪の成否が問題となる司法研修所の検察教官室の「起案の講評」という講義を視聴していただいた上で、当日検察教官室から強盗罪の成否を検討するにあたっての検察官の思考過程、要するにその講評で修習生に学ばせたいと意図していることについて説明させていただきました。これに対して、法科大学院側からは事前に和田先生の、刑法の授業のうち強盗罪に関する部分を視聴させていただいた上で、当日和田先生から東京大学法科大学院での刑法の講義の全体像と、その講義で意図されていることの御説明を頂きました。非常に充実した内容で、その後の意見交換も活発に行われたところです。次回は民事系で同様の意見交換を実施したいと考えておりますが、当面このような取組を通じて有機的連携がさらに進むように務めてまいりたいと考えております。今期もよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続いて井上委員、お願いいたします。
【井上委員】  井上でございます。私は現在日本ペイントホールディングスで常務執行役、General Counselを務めておりまして、第10期から、企業法務、産業界の声を法曹養成につなげるという趣旨で参加させていただいていると理解しております。
 この法科大学院も20年経つということで大分歴史が出てまいりましたけれども、産業界はかなり変化が厳しく、次々に新しい課題が生じております。このような中で、企業の中の法務部も、過去に比べると非常に重要性が増しております。皆さん人手が欲しいということを仰っておりまして、この法科大学院の卒業生というのは、大いなる期待を持って企業側も見ているというところがございます。また、弁護士資格を持たれた方も、今10%程度が確か企業に入られており、実務家のみならず企業の中で活躍される法曹も増えています。現場のニーズあるいは期待をこの教育の中にぜひ取り込んでいただいて、若い人にもっと法曹や、法務のエキスパートとして世の中で活躍していただきたいという思いで、今後活動させて頂きたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして大澤委員、お願いいたします。
【大澤委員】  東京大学大学院法学政治学研究科で刑事訴訟法を担当しております大澤と申します。本日は大学の本務の関係で、遅れての参加となりました。本委員会には第10期・第11期に引き続いて今回も加えていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 事前にメールでお伝えいただいたところによれば、今期の審議事項に関して、自己紹介も兼ねて話をせよということだったと思いますので、そのような理解で話をいたしますと、今期につきましては頂いた資料の中に課題は網羅されているという印象を受けました。10期・11期ずっとそうでしたけれども、法曹コースと結び付けた一貫教育というのがこの間の大きな課題であり、それが今期はいよいよ在学中受験が実際に行われるということになるわけで、その辺りも含めた制度全体のパフォーマンスがどうなっていくのかということは、しっかり見ていくことが必要であろうと思っております。それとともに、法学部と法科大学院をつなげた教育ということになると、どうしても元々法科大学院の理念にあった多様な法曹の輩出、育成ということがおろそかになりがちでありますので、そうなってはいけないということで、やはり未修者教育の部分をしっかり見ていくことも必要であると思われます。これも10期・11期でやってきたことですけれども、一貫教育の部分と、それから未修者教育による多様性ある法曹の輩出という部分と、これは2本柱であろうと思っております。
 それ以外に大学の現場から見てみると、やはり今後の法科大学院教育を担っていく教員・研究者の育成というのは、この20年を迎える時期に一つ非常に重要な問題であろうと思っております。ぜひこれは状況等を把握して、何か問題があればきちんと検討していくということが必要かと思っているところです。
 前期の経験から申しますと、いろいろと問題をあげつらうのではなくて、良いプラクティスを見つけて皆さんで共有しましょうという取組みは、非常に楽しくて有益だったというふうに思っています。これから法科大学院はますます個性を生かしながら多様な教育を創意を持ってつくり上げていくべき時期かと思いますが、グッドプラクティスを共有しながら我々がそのような動きを下支えできたらいいかと思っております。以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして大貫委員、おねがいいたします。
【大貫委員】  中央大学の大貫でございます。前期に引き続き今期も委員として務めさせていただきます。専門は行政法をやっております。これまで法科大学院との関わりを振り返りますと、20年経ったのだなと思いますが、法科大学院協会という組織を通じて様々に法曹養成に関わってまいりました。ということで、20年ぐらいこの仕事をしているということになります。令和元年の時にたまたま協会の理事長をしていて、その時にこの連携法等の改正等に携わる機会を持ちました。それまでは、委員会の別の場でも申し上げたのですがあの改革がされるまで非常に法科大学院は厳しい状況に、今もそうだということはあるのですが、相対的に今は安定していると思いますけれども常に厳しい状況に置かれておりました。正にこの連携法等の改正でステージが変わった段階にあると理解しております。このステージが変わった段階できちんと我々法曹その他の関係者の方も仕事をしなければいけないと思っています。
 今回の論点について意見を申し上げますが、私の法曹制度との付き合い方から言いますと、どうもディフェンディングになるという傾向がありまして、どうも制度をきちんと守らなければいけないという発想が強いので、その辺の発想からの発言だというふうに御理解いただければと思います。まず、いわゆる3+2及び在学中受験制度について、その成果の評価に当たっては、中長期的な視点で望む必要性があるということは第11期の当委員会の共通認識となっております。そのことを踏まえつつ、本委員会において今年度初めて行われる在学中受験の結果を受けての分析と評価の仕方を外に向けて適切に発信する必要があるかと思います。清原委員はかなり前向きなことを仰ったと思うのですが、私はきちんと説明しないとまたこの制度についてネガティブな評価がなされることを大変恐れております。このことは潮見委員が委員会で何度も強調されたところだと思っています。これはきちんと我が委員会において取り上げ発信するべき問題だろうと思っております。このことに関連して、これは法科大学院制度、司法試験の合格率等を見ますと相対的に安定しているというふうに言えるかと思います。もちろん課題はありますが。KPIも目標を達成したものもあれば達成しつつあるものもあります。このことをどのように社会に発信していくかということが問われているのだろうと思います。これが第1点目の指摘でございます。
 2つ目は、これは前にも申し上げたことですが、加算プログラムは保坂(事務局)が御紹介のように今回一定の改正がなされております。繰り返しますと、定量的な指標では評価しにくい取組や、安定的な数値上昇がまだ見込めないものなどについても評価するというふうに明確に書かれております。しかしながら予算とは連動しておりません。いわゆるグッドプラクティスの表象にとどまるという言葉は正直本当です。私としましては、予算と連動させて法科大学院らしい取組をエンカレッジしてほしいというふうに思っております。さらに、取組をしていても客観的な数字としてすぐ表れないことというのがあります。これも予算的に難しいのですけれども評価していただきたいと思っております。また、非常に実現しにくいことだろうと思っていますが枠が決まっている予算を配分する仕組み、例えば経常費補助金を決まっていてその中でパイを分け合うという方式は、何らかの再検討の余地がないかなと思っております。現状ですと疲弊する法科大学院はますます疲弊するという構造になっているというふうに言えるのではないかと思っております。
 3つ目でございます。政府の法曹養成制度改革推進会議は、2015年6月30日に法曹養成制度改革の更なる推進についてという文書を発表しております。これも先ほど保坂(事務局)の御紹介にありました。ここの文章で当面1,500人程度の司法試験合格者を輩出されるよう必要な取組をするというふうに明記されております。また、この改革を受けまして文科省告示で入学定員総数は2,300人程度を上限としています。KPIとしては入学者数として2,200人程度を目標にするということになっております。いずれの数字も法曹への需要は潜在的にあると思っております。法曹への需要を見据えた上で、さらに法曹志願者を増やすという取組が伴った上で、いずれもどこかで検討する必要性があるのではないかと思っております。以上、前向きな点は中川委員や清原委員にお任せして、ディフェンディングなやや後ろ向きな人間からの発言でありました。今期もどうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして加賀委員、お願いいたします。
【加賀委員】  創価大学の加賀です。4期目の委員となりました。今期もどうぞよろしくお願いいたします。創価大学の法学部長、法学研究科長を務め、それから委員をやっている途中で法務研究科長を務めておりました。現在は法学部の教授ということになります。いつも申し上げてまいりましたけれども、小規模法科大学院の代表というつもりで話をさせていただいています。20年間必死に各法科大学院、また関係者が良質な法曹養成をするという目標で行っていた法科大学院であります。今後永続的にまた安定的に法科大学院が成熟するように、基礎力の強い、それから法の正義を実現できる法曹養成を目指していきたいと思っております。
 2点だけ具体的なことを申し上げたいと思います。1点目は、研究者の養成の点でございます。本当に創価大学でも困った事態になっております。どこの大学も割と深刻なのだろうと思います。ただ、深刻だということは言えても、全体として一体どうなっているのだろうかと。もちろん、法科大学院の教員を確保しなければならないということもありますけれども、実は法学部での教員をどうするのかという、こちらの方が人数的にはすごく多いわけであります。この点も踏まえて、何とか各大学の現状を、自分の大学のことしか分からない私たちかと思いますので、全体的な現状が少しこの委員会で提示していただければ議論しやすいかと思っております。
 また産業界との連携は、私は今後司法試験合格者あるいは修了生にとっては大変重要な就職先というふうに私は思っております。法務部のニーズは高いということもあります。ただ、ここも全体的に法務部のニーズがいかほどのボリュームがあるのかということになると、少し分かっていないわけです。眼前の修了生たちがこの会社の法務部に入りましたというようなことの報告を得て、そうかこういうところに行けるのかということが分かっても、なかなか全体としてどうだということが分かりにくい。あとそれから、法科大学院出身の弁護士資格を持っている法務部の従業員の人が、こういうことはそんなに出てくるかどうか分かりませんけれども、どんな評価を受けているのかということも分かればいいなと少し思っている次第です。以上2点でございました。ありがとうございます。今回もよろしくお願いします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして笠井委員、お願いいたします。
【笠井委員】  京都大学の笠井正俊と申します。よろしくお願いいたします。法科大学院を含む大学院と法学部の双方で民事訴訟法、倒産処理法等の民事手続法関係の授業を担当しております。法務コンプライアンス担当の副学長もしておりまして、京都大学の法務室には法科大学院出身の弁護士も3名おり、一緒に仕事をしております。大変素晴らしい仕事をしています。一昨年の秋まで、コロナ禍で大変だったのですけれども、法科大学院長もしておりました。この委員会では第11期に引き続きまして委員としてお世話になります。その他法科大学院制度の早い時期からこの委員会の下のいくつかのワーキンググループでの仕事もしておりました。
 今期何をするのかという話になりますが、法科大学院の開設から20周年ということで、この間法科大学院を含む法曹養成制度に関しては様々な改革が加えられてきたわけです。それらはいずれも意義があったと思いますけれども、他方で制度がなかなか落ち着かなかったというところもあろうかと思います。そういう意味で今期の審議では、20年を経て法曹養成制度において法科大学院がこれまで果たしてきた役割を確認した上で、今後も法科大学院の教育や社会での役割を充実させていくためにどのような方策が考えられるかということを、できれば落ち着いてじっくりと考えることができればと思っております。もちろんいわゆる3+2の改革の成果も今期のうちにある程度表れてくるものと思いますけれども、じっくりと考えることができればよいと申し上げたのは、そういった改革の評価はあまり短期間に固めるべきではないと思うという趣旨も含んでおります。
 少し具体的な論点として、法科大学院の今の課題としては、未修者教育の充実や多様なバックグラウンドを持つ法曹の輩出と、新しい制度である法学部教育との連携による一貫した法学既修者の教育との両立をどのように図っていくべきか、ということであろうかと思います。そのためにはもちろん法科大学院に多くの有為な人材が入学してくださるようにするための情報発信や、各方面との連携も大きな課題であります。さらに、大学の研究者教員の立場からしますと、法科大学院を経て法学の研究者の道に進む人材の輩出も大切であると考えております。そういう研究者養成に関する、具体的な数字等も含めた、これまでの状況に関する資料等も、どれだけ危機的かを御理解いただくことも含めて、我々大学側が協力しないといけないと思います。個人的な発言となりますが、できる範囲で協力をした上で、そういった議論もできればと思っております。このようなことを念頭に置きながら、委員会の場で皆様から様々な御意見を伺って考えていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続いて加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】  法務省司法法制部司法法制課長の加藤と申します。よろしくお願いいたします。私は、一昨年7月から専門委員を務めており、今期で2期目となります。私の仕事では司法制度改革の推進、企画・立案を含めて事務分掌の一つとし、その一環としてこの法曹養成についても担当している次第でございます。
 裁判所職員定員法などは特にそうなのですが、国会の対応をしていると、まだまだロースクール教育に対して厳しい御指摘を頂くということがございますし、再三にわたって裁判所職員定員法の附帯決議の中で「法曹の質の確保」がうたわれております。国会やそのバックグラウンドを含め、法曹の質に向けた運営というのは関心が非常に高いと感じております。
 そうした中で、やはり今回の資料3の中にあります論点案でまとめていただいたものは、いずれも重要なことだと思いますが、私が特に関心を持っておりますのは、法曹人材の確保という点であり、有為な人材をいかに確保していくかというところでございます。それにはやはり法曹コースやロースクール教育の魅力ある教育を色々な各層にアピールしていかなくてはならないと、それは中高生や未修者等色々なところに対して教育というものをアピールしていく必要があるかと思います。そのためには、ロースクールと我々の法曹実務、さらには、教育現場や産業界、こうしたところの連携をいかに図っていくかということ、そして、そのターゲットのそれぞれのニーズに即した情報の発信をしていくことが重要かと思っております。特に、昨今の社会経済というのは非常に変化が目まぐるしく、例えば、ICT、生成AI、あるいは、外国人との共生社会の実現、ダイバーシティ等々、政府としてもこうしたものに対応するために色々な施策を講じております。それに伴い、社会経済等も非常に構造自体が大きく変化していく可能性があるかと思います。法的にこれまでにない新規のものも含め、多様なニーズが生じてくると、司法の担い手であります法曹は、こうしたニーズの変化などを鋭敏に察知し、的確に対応していかなくてはならないだろうと常々考えております。
 法曹に求められる資質・能力、これは先ほど連携法のところで仰られましたが、これ自体は基本的なものでございまして、何ら変わるところがないということは私も信じるところでございます。ただし、その求められる能力の中に、社会の変化に的確に対応する柔軟性であるとか、あるいは新たなことに取組んでいく好奇心や意欲といったものが必要かと思いますし、10年20年先を常に見通して社会経済の変化に即応できるような法曹実務家を多く育てていくことも重要なのだろうと思います。そうした観点から、私の個人的な考えではございますが、こうした変わりゆく社会におきまして、法曹が果たすべき役割について動的に捉えていき、それぞれのロースクールの特殊性・独自性を出す意味でも、先端技術や先端分野なども踏まえた法曹教育に取り組んでいただいて、それらを情報発信の素材の一つとして、色々な各層に対してアピールしていく。そしてロースクールに入ってこういったものを学んで法曹界に出ていきたいというようなニーズにも応えられる。それによってそういったところに興味を持っている有為な人材も確保できる。こういったことを考えているところでございます。
 いずれにしましても、こうした有為な人材を確保していくために色々な創意工夫を凝らした形で方策を講じていかなくてはならないと考えておりますので、引き続き皆様と十分御議論をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして菊間委員、お願いいたします。
【菊間委員】  弁護士の菊間と申します。よろしくお願いいたします。私は10期から参加させていただいておりまして、自分の経験から未修者、特に社会人出身者の法曹を増やすという観点から、様々な意見を述べさせていただいてまいりました。この審議会での先生方の御意見・御発言等をお聞きしておりまして、親の心子知らずではないですが、学生側は勝手なことをいろいろ言いますけれども、ロースクールに携わる先生方の真摯な御努力に本当に毎回感銘を受けてまいりました。実際に未修者の一回目の合格率が回を重ねるごとに伸びているというところからしても、未修者の教育は良い方向に前進しているということを、この間ずっと感じてきております。
 今回、3+2というものが始まりますけれども、これは予備試験組をロースクールに呼び戻すという観点では効果があるとは思うのですが、そもそもの法曹の志願者を増やすという観点からすると、違った施策が必要ではないかと考えています。司法試験は非常に険しい道ですが、その登りきった先にきらきらしたゴールが見えるからこそ、そこを目指して頑張ろうと思うわけですから、法曹として働く我々が、自分たちの仕事の魅力を発信し続けていく必要があると思いますし、今までお話が出てきている産業界の連携というところも含めて、もっと各地の弁護士会がロースクールと連携しながら、弁護士や裁判官や検事の働き方、仕事の魅力、やりがい等を、世の中に向けて発信する必要があるのではないかと思っています。
 今回の資料の中で加算プログラムに対する各大学の工程表を拝見させていただきましたが、女性の入学者数をKPIに設定している大学が、私が見た限りでは千葉大学と早稲田大学の2校だけでした。いま法曹界は裁判官、検事、弁護士で多少の差はあるのですが、女性比率は18%ぐらいです。先日、ジェンダーギャップ指数が日本はさらに低下したという報道がありましたが、政治家の数だけではなく、司法において女性の数を増やすということも、私はとても大事なことだと思っています。母数が増えないと多様性が実現できません。女性にも様々な方がいます。「女性弁護士」とひとくくりにはできません。女性の多様性を法曹界の中で実現することは、利用者にとっても、より自分に合った弁護士を選ぶことができるようになるということで、有益なことしかないと思いますので、ぜひその入り口のロースクールにおいても女性の法曹の輩出というところをもう少し考えていただきたいと思います。今期もどうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続いて酒井委員、お願いいたします。
【酒井委員】  弁護士の酒井でございます。よろしくお願いいたします。私は2020年から一橋大学の法学部で特任准教授を拝命しておりまして、直近では法律家と現代社会ですとか法律実務入門という名称のキャリア学習科目も担当しております。教育の現場でも非常に良い経験をさせていただいております。
 それでは法科大学院が20周年という節目を迎えるにあたって、総括的な審議を行っていくというような方向性について、大きく賛同する中で具体的に私自身が議論すべきと考えている事項や視点について、主に4点程度申し上げたいと思います。
 まず1点目は、法曹コース設置後また在学中受験の開始後におけるロースクール教育の在り方という点になります。いよいよ来月法曹コース1期生が在学中受験を迎えるという状況になりますので、その司法試験の合格率というところに注目が集まるというのは必然という状況かと思っております。このような状況の中で私としては、ただでさえ現在司法試験合格率の数字がひとり歩きをしてロースクールの評価の主要なポイントを占めてくるという傾向にある中、その傾向がさらに強まっていくのではないかということに強い懸念を抱いております。
 本来の法科大学院の理念に立ち返りますと、法科大学院は理論と実務を架橋して法的思考力はもちろん実務的な素養を備えた法曹を養成するというところがその存在意義であるものと理解しております。法曹コース設置、在学中受験の開始によって、カリキュラムや学生の学習状況というものに実際にどのような影響が出てくるかということが分かりますのが正に今後というところになろうかと思いますので、まずは正確に現状を把握した上で各校において在学中受験対策に偏重するようなことなく、それぞれのロースクールの特性を生かしたカリキュラムを実現できるよう、まずは情報共有を徹底するといった体制を整えていくことが重要であろうかと考えております。この点については前期中教審において在学中受験を踏まえてのカリキュラムの変更に関する現状の調査をしていただいているかと思うのですけれども、もう少し詳しい変化の状況等といったものが分かるデータが頂けると非常に議論も進みやすいかと思っておりますので、その辺りをお願いしたいと思っております。
 一方、最低限のニーズとして司法試験合格というものが当然ございますので、現実問題としてカリキュラムを調整せざるを得ないというところがある程度出てくるかと理解をしております。特に各校の本来特色となるべき展開・先端科目や実務科目が影響を受けてくるという可能性があるところかとは思っているのですが、この観点からは、法曹コースと連携をするという現状がある中で、やはり法曹コースにおいて理論的な実務科目を積極的に設置して、積極的にロースクールと連携をさせていくというような観点から補っていくというような方向性もあり得るかと考えているところです。
 次に2点目ですけれども、これは未修コースへの人材の誘致、また未修コースの在学中受験の動向・結果の把握という点になります。前期も申し上げてきた点ではありますけれども、法曹コースの創設、法科大学院との連携が始まって、既修コースの学生がより均一化してくるというところはより傾向が強まるだろうと予想しております。したがってやはり法曹の多様性確保という観点からは未修コースの意義が増すところと思いますので、社会人経験者・他学部出身者をいかに誘致するかという点を、より議論を進めて具体的な施策として提言をしていくことができればよいかというふうに考えるところです。また、未修者教育という観点からは、未修者が在学中受験をしてどれくらい合格をするのかということが、具体的な数字としてやはり表れてきてしまうという状況があると思いますので、それが数字としてひとり歩きをしますと、志願者層の受験動向にも影響してくるということは想像に難くありませんので、この辺りは慎重に数字の出し方、またそれに対する評価等々は注視をしていくべきというふうに考えております。
 また、3点目として情報発信の在り方について述べさせていただきます。まずは法曹志望者数について触れておられる委員の先生方も多かったですけれども、既に各機関において広報戦略を進めておられる中、一定の成果はありつつも大きな盛り返しまではなかなかつながっていない状況かと思うのですが、これまでの発信を見てまいりますと卒業生の活躍や新しい分野の開拓という観点からの発信は多く見かけられるのですけれども、一歩踏み込んで、創設20年経っているという時期をみますと、現在ロースクール出身世代の私ども法曹が法曹界の中核を担う世代になってきているという現状があろうかと思います。正にロースクール世代の法曹がロースクール教育を経てボリュームゾーンになって価値を発揮している時代と言えると思いますので、この観点から一歩深めたアピールができるのではないかと、そういったことが必要なのではないかと考えております。
 また、大枠の数値目標等々の発信という点なのですけれども、法科大学院に関する大きな改革も一段落いたしまして、ロースクールの適正な規模感ですとか定員、また司法試験合格率・合格者数との兼ね合いなどについて、ある程度一つ安定したといえる状況を迎えるべきタイミングかなというふうに思っていまして、これは本当に慎重な検討の上ということになると思うのですが、ポジティブな数値としてどのくらいが適正規模で、今そこに向けてどこまで満たせているのかというような辺りを積極的に発信していくことが必要なのではないかというふうに感じています。どうしてもいつまでも創設期と比較をして、志願者・定員・合格者が減ったという話ばかりがいまだに先行しがちな話ではありますので、ここを打開していくということも一つ課題として検討する必要があろうかと思っております。
 最後なのですが、研究者養成に関してです。これは法曹サイドも重い課題として受け止めなければいけない問題だと私自身も思っております。ロースクールの研究者の先生方に私たちの後輩を育ててくださいとお願いするばかりで、研究者養成が危機的状況にあることに目を向けないのは非常に無責任であろうと思います。また、研究者はもちろん法曹養成だけがその役割というわけではなく、様々な立法や法改正においても重要な役割を果たされるという職務におありになりますので、その法曹界が適正に維持されていくために正に不可欠な人材であるということを改めて認識をして、実務家サイドにおいても協力体制を構築していくべき論点であろうというふうに理解をしております。
 意見としては以上になります。私自身、委員としても総括の期と位置付けて引き続き微力を尽くしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして髙橋委員、おねがいいたします。
【髙橋委員】  ありがとうございます。一橋大学の髙橋でございます。専門は企業法でございまして、法科大学院と学部の両方で教鞭を執っております。こちらの特別委員会には2017年より参加の機会を頂いております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 資料3につきまして、まずは早速にたたき台を作成いただきました事務局の皆様の御尽力に感謝申し上げます。一般論は既に多くの委員から御指摘があったところですので、私の方からは些末な点で恐縮でございますが2点申し上げたいと存じます。
 まず、個別の論点の(1)の1つ目の中黒に、「公的支援見直し強化・加算プログラム等の施策を整理する」とあり、今後その内容のみならず枠組み自体についても再検討の対象になるのではないかと拝察しております。現在、各法科大学院に対して令和10年度までの本プログラムの構想調書の作成依頼を発出していただいておりますけれども、途中で期間延長はしていただいたものの、学期中に1カ月半程度でここから5年間の計画を立てることが求められた形となっていたかと思います。在学中受験に対応したカリキュラムの改定を含めまして非常に大きな改革を行った直後、あるいはそれが進行中というところで、まだその成果についてデータが極めて少ない中で、今後5年間を想定するというのは必ずしも容易な作業ではなく、また各法科大学院の選択による自主的な取組は一定程度尊重していただいておりますが、定性的項目の取扱いについてはまだ試行段階といった様相もありまして、各法科大学院は自大学の取組をどのようにKPIに置き換えるかということについて様々な観点から議論を行った上で、中期計画を立てる必要が生じていると思われます。そもそも本プログラムの長所は、このような取組を通じて最終的には調書に必ずしも現れないものも含めて、各法科大学院に対して真摯に現状を見つめ直して中期計画を検討するよう促すという、そのプロセス自体にもあるのではないかと思います。スピード感はもちろん重要ではありますけれども、中教審で検討してきた項目に対する各法科大学院での検討プロセスが形骸化してしまうことのないように、中長期的な方針の設定を促す施策の実行にあたりましては、可能な限り実施スケジュールや進め方といったものも視点に含めた枠組みを検討していただければと存じております。
 それから、個別の論点の(2)につきましては、学部教育と法科大学院教育への影響という項目がございますが、当然のことながら法曹養成システム全体の中での一貫教育の設計という視点も重要であると思いますので、予備試験の受験者であるとか、あるいは結果として最終的には法曹への道を断念せざるを得ないというような方も含めて、本制度の存在そのものが法曹を志すあらゆる方に及ぼすプラスないしはマイナスの影響の推移、あるいはその可能性というものも含めて、改めて分析に含める必要があるのではないかと存じております。
 また、やや下のレベルの論点ではありますけれども、法曹コースのスタートはコロナ禍の影響をまともに受けるという形になっておりまして、学部での長期間にわたる教育を前提としていますので、おそらく再来年辺りまでは法科大学院の入学者に影響が及ぶ可能性があるかと思っております。今後、一貫型教育の質的保証あるいはより一般的にICT教育の当否の検証といったことも検討課題になってくると思いますが、この法曹コースの初期的なデータの収集・分析にあたっては、こうしたコロナ禍の影響の可能性も併せて御検討いただければと存じております。今期もどうぞよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして田村委員、おねがいいたします。
【田村委員】  札幌で弁護士をしております田村智幸と申します。新任でございます。私は法科大学院の開校から5年間、地元の北海道大学で実務家教員を務めた経歴がございます、第1世代の教員でございます。ロイヤリング科目を中心に、対話型授業やシミュレーション教育を行ってまいりました。当時は多様なバックグラウンドを持つ学生が多く、教室の半分ぐらいは社会人がいました。教室はいつも熱気にあふれていました。この10年間、私は日弁連で法科大学院の法曹養成を担当し、副会長として当時は施策の形成にも関与させていただきました。現在は日弁連法科大学院センターの委員長を務めております。
 御案内のように10年前は志願者の大幅な減少で、回復をどうするかということが最大の課題でございました。合格率の低迷、弁護士の就職難、さらには時間的・経済的負担を軽減する、いろいろな諸問題を解決するための制度改正が行われ、現在は累積合格率の上昇、3+2、在学中受験、そして人材は取り合いの状況ということで、効果は着実に表れていると思います。ですが、回復期を迎えている今であるからこそ、これからの取組というものが非常に肝要であると思っています。3つほど申し上げたいと思います。
 1つ目は、個別の論点の(2)の黒ポツの1つ目にもあるとも思うのですが、地方を中心に法科大学院を設置していない法曹コースを持つ大学がございます。そこの学部教育の変化に注目をしています。地方の出身者が地元で学んで、そして全国津々浦々に法の支配を実現する、これは紛れもなく改革審の理念でございましたし、現在の国の責務であるというふうにも考えております。ただ、変化には時間を必要とします。数値のみにとらわれずに定性的な変化というものにもぜひ着目してほしいと考えています。そして、関係者の皆様には今期の在学中受験の結果の発信の仕方には最大限の留意をお願いしたいというふうに思っております。
 2つ目は、実務家教員の経験を踏まえてということでございますが、法律実務基礎科目は法律基本科目の学習に与えるプラスのフィードバック効果を改めて強調したいというふうに思っています。実務を知れば学習は間違いなく活性化します。在学中受験でカリキュラムのすみ分けが起きるのは必然なことでしょうし、混在問題等現在の諸課題をフォローしていくということもとても重要なことだとは思いますが、実務科目が埋没していくようなことがないかという点についても同時にしっかりフォローをしていきたいと思います。そしてその一方で、学部のうちから魅力的な実務家に触れさせる、いろいろな方法を通じて学生がキャリアの道筋をしっかりと描けるようにしていくということがとても大事なことだと思っております。
 3つ目は、社会人のリクルートというお話が中川先生からもございました。社会人の皆さんは多忙です。社会人志願者のためにどうやってひき付けることができるコンテンツを工夫していくのか、様々な環境整備をしていく必要があると思います。社会は多様であることで無類の強さが発揮できるのだと思っています。多様なバックグラウンドを持つ法曹養成を死守することは、業界が生き残るための生命線であると私は思っています。
 最後に、これまでの20年を踏まえるということですので、次の20年を視野に入れる必要がございます。ただでさえ少子化、18歳人口は減少していきます。教育の力で一人ひとりの資質や能力をレベルアップする。底上げにとどまらずレベルアップしていくことが、20年後に本当に振り返った時にできているのかということが問われているのだろうと思っております。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは続きまして富所委員、おねがいいたします。
【富所委員】  読売新聞社の富所と申します。記者の仕事を始めてから30年ちょっとになります。これまでは主に司法と教育の分野を担当してまいりました。本委員会については10期の途中から参加させていただいております。数少ない法学部以外の出身者でもありますし、法科大学院が外部からどういうふうに見えているのかというところを中心に意見を申し上げてまいりました。法科大学院制度開設から間もなく20年というお話が冒頭にありました。私は、司法制度改革の当初から法科大学院制度のスタートに至る頃まで、ちょうど現場におりまして、こうしたテーマを取材しておりました。ですので、もう20年も経つのだなという思いと同時に、法科大学院を巡る一時期の厳しい局面を考えると、かなり状況も落ち着いてきて、志願者数も増えるなど、明るい兆しも見えてきているというように現状を認識しているところです。
 この状況の中で、これからどんなことが必要なのかということを考えると、やはり個人的には「付加価値」と「差別化」がキーワードではないかと思っています。学部卒や予備試験組と比べて、やはり法科大学院を出た人は頼りになると。そういう評価をいかにしていただけるようにするのか。それから、法科大学院を出た学生さんたちにとっても、「出てよかった」と充実感を持っていただけるのか。そうしたところだと思います。そのためには、法科大学院の教育内容や良い点を情報発信していくことは極めて重要だと思っていますし、中身の点で言うと、原点ではありますけれども実務教育をいかに充実させていくのかというところ。それから、時代が急速に動いていますので、AI等への対応を含めたいわゆる教育内容の高度化のようなものにどれだけ取り組んでいけるのかというあたりが、やはり冒頭申し上げた「付加価値」や「差別化」につながるのではないかと考えております。そういったことも含めまして、今期は皆さんと一緒に有意義な議論をしていければと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
【松下座長】  ありがとうございました。中川委員から既に御意見を頂いておりますので、お待たせいたしました、前田委員、お願いいたします。
【前田委員】  神戸大学大学院法学研究科で知的財産法を担当しております前田と申します。私は今期から委員を務めることになりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。最初に簡単に自己紹介させていただきますが、私は2004年に法科大学院の1期生として未修者コースに入学いたしまして、私は元々理科系の出身でございまして、他学部出身者として法科大学院を修了いたしました。その後、司法試験と司法修習を経た後に研究者になりまして、2011年から神戸大学の法科大学院で今度は教員の立場として法科大学院教育及び運営に携わってまいりました。その間には未修者プログラムの担当等もいたしております。法科大学院の未修者コース出身で、かつ法科大学院の研究者教員という私の経験を生かしまして、本委員会の議論に少しでも貢献したいと考えております。
 先ほど示していただいた資料3について、これ以上に特に付け加えることはないと思うのですが、私の特に重要だと考えていることについて何点か意見を申し上げたいと思います。
 まず1つ目は、近時行われてきた法科大学院改革についてです。法科大学院については一時期深刻な状況にあるという指摘もありましたが、様々な改善策が施されて、データ上好転し始めたということが表れてきたかと思っております。具体的には、加算制度や3+2等様々な施策が講じられてきたわけですが、私としましてはこれら複数の施策のうちどれが具体的に数字の改善に寄与しているのかということを客観的に検証していくということが必要かと思っております。そういった過去の検証が今後の施策を検討する上でのデータになるだろうというふうに思っております。
 それと関連してですけれども、既に各委員御指摘のところですが、法科大学院というのは、今後は今までとフェーズが変わっていくのだろうと考えております。つまり、直近までは法科大学院制度の立て直しというところに重点が置かれてきたと思うのですけれども、今後はその制度の安定的運用ということが重要になってくると思っておりまして、良い大学院教育をさらに伸ばしていくということに重点がシフトしていくべきであろうと考えております。いわゆる加算プログラムに関しましても、そういった点を踏まえて今後の位置付けの変化というのを考えていくべきだろうというふうに思っております。
 最後ですけれども、法科大学院の課題としましては研究者養成と未修者教育というのが私は重要であるというふうに考えております。特に研究者養成については先ほど来複数の委員が危機的だという御指摘をされていますけれども、私もそのように思っております。これについては養成機能を担う大学院というのはどうしても法科大学院の一部の大学院ということになっていくのだろうというふうに思います。その一方で、全ての大学が利害関係を有する事項ということになっていますので、大学を越えた連携が必要な場面というのが出てくるのだろうと思っております。まずは研究者という進路の魅力、重要性というのを学生にアピールしていくことが一番重要かと思いますが、その他の施策が必要になるだろうと思っております。
 それから、未修者教育についてですけれども、既に各大学が様々な取組をして、メニューについては比較的出尽くした状況かというふうに思っております。ただ、様々な効果のあるメニューについて全ての大学院が同じように採用できているわけではないのだろうと思いますので、他大学の成功事例等を共有しながら底上げを図っていくということが必要かと思っております。
 私からは以上でございます。今後ともよろしくお願いいたします。
【松下座長】  ありがとうございました。それでは、事務局から御欠席の委員からの御意見の代読をお願いいたします。
【保坂(事務局)】  それでは、佐久間委員からの御意見を頂いておりますので、代読いたします。
 「名古屋大学副総長の佐久間です。本日は出席することができず大変申し訳ございません。第11期に引き続き委員を務めることとなりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。私の専門分野は人文学で、大学でも直接法科大学院の運営に関わっているわけではありませんが、副総長として人社系を担当していること、また法科大学院も大学院に違いなく、中教審の大学院部会の議論にも加わっておりますので、そうした立場から本特別委員会での議論に少しでもお役に立てれば幸いに存じます。法科大学院につきましては、数値目標の達成に向け概ね順調に推移していることは大変よろしいことかと存じますが、数字には必ずしも表れない部分で未修者教育の充実については依然して議論が必要だと思います。他方、特別選抜に関しましても、大学によって状況は様々なようですが、他のルートとの関連性も含め課題は少なくないのではないかと存じます。また、法科大学院は専門職大学院として一般の大学院と括りは異なりますが、人社系という括り方をするならば、その存立基盤は必ずしも盤石とはいえません。その意味では、法科大学院が担う役割や教育課程の特色等について社会に向けてより一層積極的な発信が必要なのではないかと思います。以上、どうぞよろしくお願いいたします」。
 以上です。
【松下座長】  代読ありがとうございました。活発な御意見を様々頂きまして、どうもありがとうございました。たまたまなのですけれども委員の名簿でいうと50音順で私が最後ですので、最後に私も一言述べたいと思います。時間も迫っておりますので手短に済ませたいと思います。
 私は東京大学大学院の法学政治学研究科に属しております。専門は民事訴訟法・倒産法でございます。先日、法科大学院協会の理事長も拝命いたしました。本委員会には2013年の5月から、正確に言えば当時は法科大学院特別委員会でしたけれどもそれ以来本委員会のメンバーを務めております。
 資料3について、既に出尽くしたところではあるのですが、まず在学中受験については運用が落ち着くまで若干時間が掛かるかもしれず、そういう文脈で各委員から中長期的な評価が必要だという御指摘をされたものだと思います。しかしこれはやってみないと分からないのですけれども、取り急ぎ対応することが必要な課題が出てくる可能性もあろうかと思いますので、そういうことについては迅速な対応をぜひ心掛けたいというところでございます。
 2つ目に、未修者教育ですが、入った後にどう教育するかというところについてはもうほぼやることが尽きているのではないかというのが中川委員の御指摘でありましたが、私としてはまだ紹介されていないグッドプラクティスで教室の中に隠れているものがまだあるのではないかと思っておりますので、引き続き情報収集をしていきたい、法曹の多様性を確保するために頑張りたいということであります。それから、今までは入った後の教育手法に割と意見が集中していたのですが、未修者教育の入り口である入学者選抜について、何かできることがないかということも検討してよいのではないかということを考えております。
 それから最後に3点目、法科大学院の教員の話です。確かに非常に危機的な状況にあるのですが、まだアメリカのロースクールなどと比べてみますと、一回実務家になってから法科大学院の教員になるというルートはまだ乏しいように思います。一回実務家になってから研究者になるというルートについて、どういうことができるのかということも考える必要があるかと思いました。私からは以上です。
 もう時間も大分迫っておりますが、さらに御発言のある委員がいらっしゃいましたらお願いいたします。いかがでしょうか。挙手をしていただければ。大分時間も迫っておりますのでよろしいですか。発言を封じる趣旨では全くないのですけれども、どうも御議論ありがとうございました。本日頂きました御意見を踏まえて、事務局で適切にまとめていただくようにお願いをいたします。
 それでは、事務局は本日の議事をこれで終了してよろしいでしょうか。それでは、本日の議事を終了します。ほぼ定刻に終えられて、委員の皆様方の御協力に感謝をいたします。今後の日程につきましては事務局から追って連絡をしていただきたいと思います。それでは、本日の法科大学院等特別委員会は以上ということでございます。どうもありがとうございました。

以上

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