法科大学院等特別委員会(第108回)議事録

1.日時

令和4年10月7日(金曜日)13時00分~15時00分

2.議題

  1. 令和4年司法試験合格結果について(報告)
  2. 第11期の議論のまとめの方向性について
  3. 複数の法科大学院の連携、地域の自治体や法曹界、産業界との連携について
  4. その他

3.議事録

【山本座長】  それでは、少し遅れましたけれども、これより第108回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。
 御多用の中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、一場委員、北居委員が御欠席ということであります。
 また、本日はウェブ会議として開催しております。本委員会は公開が原則であるため、この会議の模様はYouTubeのライブ配信にて公開をいたしております。どうか本日も活発な御審議をよろしくお願いいたします。
 審議に入ります前に、大変残念なお知らせがございます。当委員会の委員である京都大学の潮見教授が、本年8月、御逝去されました。潮見先生は、言うまでもなく、民法学の分野で多大な御功績を残され、また、当特別委員会の委員としても積極的に議論に参加をいただいており、法科大学院の振興、発展にとって、余人をもって代えがたい存在でありました。ここに心より御冥福をお祈りしたいと思います。
 それでは、事務局に人事異動があったということですので、事務局から御報告をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】  事務局でございます。
 法科大学院の担当局長に異動がございました。9月1日付で、高等教育局長の増子に代わりまして池田が着任をいたしまして、本日出席をいたしております。一言御挨拶をさせていただきます。
【池田高等教育局長】  9月1日付で高等教育局長を拝命いたしました池田でございます。約10年程前に大学振興課長をしておりまして、その当時、法科大学院も含め大学教育を担当しておりましたが、それ以来の着任でございます。よろしくお願いいたします。
【山本座長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】  事務局でございます。
 配付資料、いつも大部で恐縮でございます。議事次第冒頭に掲げましたが、資料1-1から資料6と、あと参考資料という形で御覧いただいておるとおり御用意してございますので、御報告をいたします。よろしくお願いいたします。
【山本座長】  それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、令和4年司法試験合格結果についての御報告ということで、資料1に基づいて加藤委員から御説明をお願いいたします。
【加藤委員】  法務省の加藤でございます。令和4年司法試験の結果について御説明いたします。
 お手元の資料1-1から1-10までが司法試験の結果に関する資料でございます。
 結果の概要をかいつまんで申し上げます。
 お手元の資料1-2にありますとおり、令和4年の司法試験の結果は、合格者数が1,403人、前年比で18人減少でございます。合格率は45.52%、前年比で4.02ポイント増加でございました。また、予備試験合格資格に基づく受験者の合格者数は395人でございました。このほか、大学や法科大学院別の受験状況等につきまして資料が続いておりますので、適宜御参照ください。
 私からの説明は以上でございます。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、資料2の関係につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】  事務局でございます。
 文部科学省からは、資料2に基づきまして、法科大学院のKPIの状況について御報告をしたいと思います。資料2、通し番号の47ページを御覧いただけますでしょうか。
 令和2年に当委員会で定めていただきました数値目標、KPIにつきまして、資料2の下線部が、今年度の司法試験の結果を踏まえた更新部分でございます。
 まず(1)でございますけれども、いわゆる累積合格率、各年度の修了者数に対する修了後5年目までに合格した方々の割合でございます。
 小文字のa、既修者、未修者合わせた全体でございますが、令和6年度までに7割以上、令和11年度までに75%以上を目標に掲げたところ、下線部を御覧のとおり、今から5年前の平成29年度に修了をした方々の累積合格率が70.4%ということで、目標である70%に到達したところでございます。
 また、bは、未修者に限った数字でございますけれども、これも令和6年度に5割以上ということを掲げておるところですが、今回49.4%となっているところでございます。
 また、次に(2)修了後1年目までの司法試験合格率ということで、今年までは在学中受験はございませんので、修了者のうち一発で合格をした方々ということになります。KPIでは令和6年度までに5割以上ということを掲げておるところでございますが、今年度の数値は55.1%ということで、これまでで最も高い数字になっているところでございます。
 (3)は、法曹コースに係るデータでございますので、来年からこれが計測をされるデータということになるところでございます。
 なお、一番下の入学者数に係るKPIにつきましては、2,000名を目標にしているところでございますが、5月に御報告をしたとおり、今年度は1,968名、これは法曹コースを含めてでございますが、そういう結果だったというところで更新してございます。
 さて、次のページ以降でございますけれども、今回の試験結果について少し分析を加えたものでございますので御紹介いたします。
 まず、48ページでございますが、単年度の司法試験合格率、これは受験者に対する合格者の割合でございます。法科大学院修了生全体では、折れ線グラフにあるように37.7%だったところでございます。
 また、次のページは実数のほうです。49ページでございますが、合格者数の推移ということになってございます。
 さらにその次のページ、50ページをおめくりいただくと、既修者コース、未修者コース、法学部、非法学部の別で合格率の推移を示したものとなってございます。
 さらに、51ページでございますが、今度は修了後1年目の方に限定した合格率の推移ということで、ブルーのグラフが全体でございまして、全体として54.5%、未修者につきましては緑でございますが、32.6%ということで3割を超えておりまして、これまでで最も高い数値、初年度が32.3%で、ずっとそれを下回っておりまして、それを初めて超えたという状況でございます。
 次のページ、52ページでございますが、修了後1年目から5年目の各世代の累積合格率を並べたものでございます。一番右が5年目でございますので、先ほどのKPIの(1)と対応すると。また、一番左が初年度、今年度修了した方々の初年度なのでKPIの(2)のデータと一致するというところでございます。
 御覧のとおり、大体修了後3年目、なので3年前に修了した方々では、ブルーのところ、既修者、未修者合わせて7割を超えてきているというところでございます。既修者に限りますと、2年目の世代ではもう73.5%ということで7割を超えている、また未修者につきましても、3~5年目には大体各世代5割前後まで至っている、合格をされているという状況でございます。
 最後のページは5年目の累積合格率を、その前に遡って5世代分並べた資料ということになっております。これもじりじりと上がってきているというところでございます。
 私からの説明は以上ですが、御説明したとおり、一部のKPIを達成し始めたり、未修者の合格率が過去最高になるというような状況がございます。法科大学院の先生方や学生方、受験生の皆さんの御尽力がデータに表れてきているのかなと考えているところでございます。私からは以上でございます。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの加藤委員、それから事務局からの説明につきまして、御質問等あればお出しいただければと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 大貫さん。
【大貫委員】  すみません、手を挙げずに。
 御報告ありがとうございます。KPIのところで少し申し上げたいと思います。
 KPIは、今、森下室長が御紹介のように、数値的目標で、目標達成に向かってプロセスを適切に管理していくということですので、当然数値になっております。法科大学院に関しても数値目標になっていて、その指標がもちろん司法試験合格率ということになっております。このこと自体は、法科大学院が法曹養成教育を行っている以上、問われることは致し方ないと思っています。
 しかしながら、委員の皆様御承知のように、法科大学院は、司法試験合格と併せて、社会に応える幅広い専門知識を涵養したり、法曹としての豊かな問題意識も与えるという役割も持たなくてはいけないと思います。
 法科大学院としては、こうした司法試験合格に向けて、教育以外の教育も行っていくことが当然必要で、そうした教育を行っていることを社会に発信していく責務があるだろうと思っております。
 少し話がこの観点で関連しつつも飛びますが、いわゆる加算プログラムというのがございます。これは、委員の皆様御承知のように、法科大学院が特色ある取組を行うことを後押ししてきたところであります。
 もっとも、加算プログラムの審査については、かつては文科省から積極的に多様な取組を例示しつつ、毎年、各法科大学院に創意工夫を申請してもらっていたと承知しております。その後、より適切な評価を行うべきとの趣旨から、2019年度からと承知しておりますが、最初に5年間の計画を提出してもらい、以降、毎年の進捗に応じて審査するというスタイルに変更されていると承知しております。
 この審査の仕方の変化と、先ほど室長からもお話がありましたけれども、累積合格率が法科大学院のパフォーマンスを測る重要な指標であろうという見解が審議会で出されたことなどから、各校の提案も合格率を意識したものになっていると思います。
 これはこれでよろしいのですけれども、各法科大学院の司法試験合格に向けたものではない取組、これが2019年以前ですとたくさん見られるわけですけれども、そうした特色ある試みもたくさん出てくるような加算プログラムの運用をお願いしたいと思っております。
 また、ついでにもう一つ、恐縮ですが申し上げたいことは、加算プログラム自体は、コンセプトとして、法科大学院間のめり張りある予算配分という見地に立っております。この見地から、配分される補助金等のパイは一定なわけで、それを分け合っているということになっております。
 これをどう考えるかですけれども、私としましては、一概に否定できないところもあるのですが、法科大学院によりやる気を出してもらうように、可能であれば、このようなパイが一定だというところも、今後に向けて検討していただければありがたいなと思っております。
 以上です。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、酒井委員、お願いいたします。
【酒井委員】  ありがとうございます。
 御説明のありました資料の司法試験合格率の推移、修了1年目という表についてですけれども、今年、法学未修者コースの合格率が30%を超えるという非常にうれしい結果が出たなとまずは受け止めております。私としては要因が非常に気になるところではあるんですけれども、複数の要因があり得ると思いますので、直ちに分析することは困難かなとは思います。しかし、昨年度の委託事業の第1事業において、FD研究会が開催されまして、法科大学院協会を中心に、非常に熱心に未修者教育の向上、改善について、教員における取組がされているなどの経過もございますので、そういったことが成果として、未修者合格率の向上につながってくるという段階は来るのではないかと期待をしているところでございます。
 ですので、未修者合格率の向上について、きちんと今後も把握をしていくこと、また、複合要因はあり得るとしても、その要因についてきちんと分析をしていくことは今後もぜひ続けていくべきであろうと考えるところです。
 これについて、合格率が上がるということは、もちろん未修者コースの募集の観点からも、人材登用にプラスだと思いますし、要因が幾つかであってもはっきりすれば、まさにそれが未修者コースの志望者に対してのアピールになると思いますので、そのように考えたところをお伝えいたしました。ありがとうございます。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。
 私も、今、酒井委員が言われたとおりの思いを今回の御説明で受け止めておりまして、重ねて、一言発言させていただきます。
 この間、特に未修者の教育について、各大学院が相互に連携をしながら研究をし、長引くコロナ禍の中で、デジタルの側面での教材の研究をされています。また、先ほどおっしゃいましたように、教員、スタッフの研修を充実するなど、未修者の皆さんが希望を持って法科大学院で学べる環境を整備されてきたことが、数字として顕著に表れたと思います。これは来年以降の数字をしっかりとつかまえなければいけないと思いますけれども、私は、やはり皆様の御努力が、このような数値として顕在化していくこと、見える化することは、さらに法科大学院の皆様の動機づけにもなると思いまして、一定の評価を共有しながら、さらに法科大学院間の連携を推進していただくことを願っております。
 なお、未修者だけではなくて、既修者についても上昇傾向が見られるということです。ただ、もちろん全員が合格するわけではございません。大貫先生が言われましたように、法科大学院で学んだことの一つの成果は、もちろん司法試験合格をし、法曹界で活躍をしていただくことになると思いますけれども、法務博士として多様な現場で御活躍いただくということもあり、今回、司法試験合格率の推移の中で、逆に合格しなかった方の価値、意義にも目を向けつつ、数字至上主義にならないというこれまでのこの特別委員会の観点を再確認させていただきました。
 皆様、本当に御努力ありがとうございます。以上です。
【山本座長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 全体的には、望ましい方向に向かっているということを表した数字ということかと思いますが、今、清原委員からも御指摘ありましたように、来年度以降も、引き続きしっかりとモニターしていく必要があるし、また、必ずしも司法試験合格率だけの問題ではないという御指摘もいただきました。今期の議論の取りまとめの中にも生かしていきたいと思います。
 それでは、引き続きまして、次の議題、資料3、今期の議論の取りまとめに向けて、法科大学院の特色・魅力の更なる充実に向けて、第11期の議論のまとめ(案)という文書が示されております。
 これまで、法科大学院に係る様々な論点について委員会としても議論を重ねてまいりましたが、御承知のように、この特別委員会も残り半年ということになっておりますので、終盤に向けまして事務局に今後の審議の見通しをまとめてもらっております。
 それでは、事務局から簡単に御説明をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】  ありがとうございます。事務局でございます。
 資料3を御覧いただけますでしょうか。1枚目がポンチ絵で、2枚目がこれまでの審議の経過に今後の予定を添えたものとなってございます。
 この特別委員会では、これまで様々な御議論を賜ってきたところでございますが、任期も残り半年となってきたところでございまして、今期の議論のまとめに向けた見通しについて座長と御相談をいたしましたので、御提案をしたいと思っているところでございます。
 今期、第11期は、前期の第10期の未修者教育に係る御提言を受けて、各校における取組を充実させることであるとか、いわゆる「3プラス2」や在学中受験などの法改正を終えて、その効果が出るまでの端境期に当たる期間であったところでございます。このため、今期は、その法改正に関連して各法科大学院がカリキュラムをどう工夫しているかであるとか、未修者教育の充実のためにどういう取組をしているか、こうした各法科大学院の様々な取組をフォローアップしながら御議論をいただいて、より充実、改善すべき点などについて御指摘、御意見をいただいてきたところでございます。
 今期の議論のまとめといたしましては、そうした御意見を整理、集約いたしまして、法科大学院の特色や魅力を更に充実する方策として、残りの審議を通じておまとめいただきたいと考えておるところでございます。
 御覧いただいている資料でございますけれども、まずポンチ絵のほうは、法科大学院制度の論点や課題を俯瞰できるように、これまで御指摘をいただいてきた事柄をプロットしているものでございます。主にこのポンチ絵で御説明をしたいと思っております。
 見出しは、これまで法科大学院の特色・魅力の更なる充実に向けて御議論いただいたので、仮にタイトルとしてございます。
 まず、ピンク色の部分でございますが、これは今期に限らず、従来から多様なバックグラウンドを有する人材の確保とプロセス改革の着実な実施、法科大学院教育の充実という大きく二つの観点からこれまで御議論をいただいてきたところでございます。
 その下のブルーや緑の四角が論点や課題を時系列にプロットしたものでございますが、ブルーのものは、一度少し御議論いただいたもの、緑は今後取り上げていきたいものを示しておるところでございます。
 まず、左側の法学未修者教育の部分につきましては、例えば、入学前の導入教育の充実であるとか、1年次の間に重点化すべき学習内容、あとFD活動や補助教員による授業の質の向上、こういったことにつきまして論点として上げているところでございます。
 これらにつきましては、先ほどちょっと言及ありましたけれども、5月にPLE-Netさんの調査研究の成果を踏まえて御議論をいただいたり、前回には、社会人教育について、筑波大学や日本大学のプレゼンをいただいたというところでございます。
 また、グリーンになってございますけれども、共通到達度確認試験も本格実施から4年目を迎えてございますので、今後取り上げて、御報告をしたいなと思っているところでございます。
 また、右側の学部段階・法曹コースというところでございますが、これは昨年9月、104回になりますが、いわゆる「3プラス2」の法改正の施行を受けた各校における状況について共有させていただきまして、今後に向けて議論をいただいたところでございます。今年度の調査研究の対象にはしておりますので、今後も情勢を把握していきたいと思ってございます。
 またその下、2年次、3年次でございますが、これにつきましては、3年次、後期の授業科目の充実など、在学中受験が来年から始まりますので、そのためのカリキュラムや指導の工夫、あと司法修習との連携といったものが課題として上げられようかと思っております。在学中受験の対応につきましては、昨年暮れの第105回の会議と記憶しておりますけれども、各校の状況を共有いたしまして議論をいただいたところでございます。
 また、司法修習との連携につきましては、法科大学院協会さんのほうで議論が進んでいると伺っておりますので、今後御紹介いただきたいと考えているところでございます。
 最後、下の段でございますけれども、複数の法科大学院との連携、地域の自治体や法曹界、産業界などとの連携につきましても重要な論点でございますので、これにつきましては、本日、金沢大学、岡山大学の法科大学院からヒアリングを行って、御議論いただきたいと考えてございます。
 以上、このように、1年半の間にかなり広範に御議論をいただいてきたところでございます。様々貴重な御意見を賜っておりますので、次回事務局で、ここまでいただいてきた御意見、御指摘を整理いたしまして、何かまとめの素案のようなものを御提示したいと考えておりますので、またぜひ、抜けがないか御意見を賜りまして、最終的なまとめに向けて御議論を進めていただければと考えておるところでございます。
 私からは以上でございます。
【山本座長】  ありがとうございました。
 今のようなお話で、具体的な素案につきましては次回御提案いただくと。そして、恐らく次々回、最終回ということになると思いますが、取りまとめに向けての御審議をいただくということになろうかと思います。今の時点で、ただいまの事務局の説明について、何か御質問あるいは御意見、こういうところが抜けているということでも結構ですので、御発言あればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 中川委員、どうぞ。
【中川委員】  中川です。
 未修者の1年次に重点化すべき学習内容という項目が今の資料3の左側にございますけれども、委託研究の報告の発表があったときに、憲法、民法、刑法という枠組みで考えているのが古いというか、有効ではないのではないかというようなことを控え目に申し上げました。憲、民、刑というくくりで1年次で学習すべき内容という設定にしてしまうと、どうしても憲法としてはここまで教えてほしい、民法としてはこれをやらなきゃいけないという学問分野からの発想になるんですね。
 しかし、そうではなくて、学生のほうからすると、例えば、手続のここだけは、民訴、刑訴、それから行政法も手続ですが、横並びにしてどこが違うのかというところを知りながら学ぶのが効率的ではないか、そして民法も、民法全体を学ぶのではなく、あるいは民法典、民法学を学ぶのではなくて、例えば、極端に言うと契約と不法行為だけ、そこをやるというのでもいいと思うんです。最初1年次に何をやらないと2年次にうまく行けないかという観点からセレクトできないか。既習で入っている人も、別に全て民法をきちんと全部やっているわけではないんですよね。
 そういうふうに必修科目の全体をばらした形で、こことここだけが重点ではないかというような組み立て方ができないか。それはなかなか法学部ではできないことですけれども、法科大学院でならばできるだろうと、そういう根本的な発想転換をしなきゃいけないのではないかなということを思っておりました。委託研究の報告のときに申し上げたのは、憲法で授業をするときに、素材となっている法律とか条令の読み方を学生はよく分かってないという指摘が憲法の先生からありまして、それに対して私は、いや、それは行政法が教えているんだと言ったんですけれども、そこで言いたかったのは、そのように実際に学生が必要な知識というのは、いろいろな法律、7法のあちこちにばらついていて、そのばらついているのを既修者は何年かかけて自分なりに整理していくのですが、もっと効率的にやるには、法科大学院の1年目で、ばらついているところを学習者の視点でピックアップしていくという、7法全部の垣根を取り払った構成をしないといけないのではないかということを考えております。
 ですので、憲、民、刑という今のくくりを基にすると、恐らく同じことの繰り返しになってしまうので、もっと根本的なことを考えてはどうかなと考えています。もちろんこの期ではそこまでできませんけれども、もし未修者について次の期も検討するのであれば、そういった観点のアプローチも入れてみてはどうかなと。少なくとも中川がそういう意見を言ったということは入れていただければなと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。
【山本座長】  ありがとうございました。かなり抜本的な問題提起をいただいたかと思います。
 それでは、佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】  よろしくお願いします。
 法科大学院は、既修だろうが未修だろうが社会人だろうが、とにかく司法試験に合格することが目標ではあるわけですので、現に、この第11期でもいかに合格率を上げるかという議論をしてきたわけですから、別に資料3、それ自体はいいと思います。ただ、先ほど大貫委員や清原委員からの御指摘もありましたし、また、前回社会人の話をしたときに、そういうお話が結構出たと思うのですが、法科大学院の学生さんのほとんどが司法試験に受かるというのであればともかく、現状そうではないわけですから、合格率を向上させる努力はしつつも、司法試験に受からなかった学生さんはただ残念な人ということで終わらせてしまってはいけないのではないでしょうか。
 今日たまたま資料の中にある第10期のまとめにもそれらしきことは書いてありますけれども、そこら辺、もちろん司法試験に合格することが最大の目標ではありますが、司法試験に受からなかったとしても法科大学院で学ぶことに意義があるんだということを示していく必要があると思います。もしかすると資料3の一番下にはそれが少し入っているのかもしれませんけれども、そこら辺はぜひ入れていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】  一橋大学の髙橋でございます。
 法科大学院の魅力・法曹の活躍に関する発信というのが、表の一番下にございますが、57ページの審議経過と、それから91ページの参考資料を対比したときに、まだ御検討いただいていないかと思われる点として、他学部出身者の志願者増加に向けての取組という事項があると思います。社会人については御議論いただいたところだと思うのですけれども、ぜひこの機会に、他学部出身者の志願者増加についても御検討いただけないかと思っております。
 特に法曹になるまでの期間短縮というのが強く謳われるようになっておりますが、学部3年ですと、法学以外の領域の関心領域があったとしても、学ぶ時間がないというのが学生の現実ではないかと思います。そのような法曹が増えていくというのも、また非常に心配なところでして、将来の法曹全体の構成、また、早期卒業者が法科大学院に入学してから学ぶ場所としての環境を確保するという観点からも、様々なアカデミックバックグラウンドを持った方の入学が重要になると思っております。
 もちろん社会人の志願者も重要ですけれども、併せて他学部出身者というのも進学を促すような取組をぜひ行っていただければと思います。
 学部の教育などに携わっておりますと、まずそもそも法曹という進路の可能性自体が他学部生には浸透していないと聞くことがございます。本学でもそうですが、各法科大学院とも相当の広報努力はされていると思うのですけれども、学部・大学院あるいは学部間を越えた活動というのは、現実的には必ずしも容易ではないところがあります。また、特に法学部のない大学への広報というのはどうしたらいいのかといいますと、個人的な伝手などを使うしかないという状況にあるかと思います。この辺りは、ぜひ文部科学省で工夫の可能性を探って、御検討いただけないかと考えております。
 以上です。
【山本座長】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 既に今日の段階でもかなり重要な、あるいは根本的な御指摘をいただいたかと思いますけれども、先ほどもありましたとおり、次回以降、この点、取りまとめに向けて本格的な御議論をいただく予定ですけれども、今日も少し御遠慮いただいて御発言いただいてない委員もおられるのではないかと想像しますので、恐縮ですけれどもお気づきの点があれば、次の会議までの間に事務局のほうにお知らせいただいて、こういう点も書いてほしい、こういう点も考えるべきだということをお知らせいただければ、最初の素案の段階で、ある程度それを反映したような素案がつくれると思いますので、そのような形で事務局まで御連絡いただけますと、取りまとめの関係で大変ありがたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、よろしければ、次の議事(3)複数の法科大学院の連携、地域の自治体や法曹界、産業界との連携について、本日のメインテーマになりますが、こちらに移らせていただきます。
 後ほど御紹介いたしますけれども、本日は、金沢大学と岡山大学の関係者をお招きし、御発表をいただく予定であります。そのお話を伺って、これらの連携の推進により期待される成果や具体的な取組、課題等について審議をしてまいりたいと考えております。
 まずは、資料4-1から4-3につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】  事務局でございます。
 ヒアリングに先立ちまして関連資料を御用意いたしましたので、御紹介をさせていただければと思います。
 まず、59ページ、資料4-1を御覧ください。御報告をお聞きになる際に、あるいはその後の意見交換の際の御参考までに簡単に論点を書き出してみたものでございます。
 連携によってどのような成果が見られて、どのような取組が有効であるかとか、あとはそのための課題は何かとか、そしてこうした取組をほかの大学にも水平展開していくためにはどのようなことが考えられるかについて、ぜひ御意見を賜られればと考えておりますが、ここの範囲に絞られる必要はございませんので、忌憚なく意見交換していただけたらと思います。
 ほかに関係資料といたしましては、資料4-2は前期、第10期の未修者教育の議論のまとめの中でも法科大学院間の協働であるとか、法科大学院教育の成果を地域に社会還元するべきだという御指摘がございましたので、今回のテーマと関わる部分として添付したものでございます。
 最後に、資料4-3、67ページの文科省から最近出した通知を御紹介させていただけたらと思っています。
 「単位互換制度の運用に係る基本的な考え方について」ということで、令和元年に発出をした文科省の通知でございます。本日の金沢大学の御説明の中で単位互換に係る御説明がございます。この通知ですけれども、単位互換につきまして、法科大学院に限らず大学全体に通じた話ではありますが、いわゆるグランドデザイン答申の提言を受けまして、各大学が多様な学習ニーズに応じるために、柔軟な対応が取れるように、運用の考え方を全大学に通知したものとなってございます。
 小難しいので概要だけお話しをしますが、例えば2のところでは、単位互換、伝統的には大学間で協議して、あらかじめ単位互換協定みたいなものを結んで、この科目とこの科目が互換している、というようなことまでやるのが典型的なものですけれども、今日では、コロナの状況を踏まえてもそうですが、ICT技術が発達したり、あるいは大学間でコンソーシアムを組むというようなこともあるので、あらかじめ想定していた授業科目でなくても、例えば、個々の学生から申請があり、それが教育上有益であって、しっかり必要な手続を経れば、単位認定をすることも差し支えないというふうに示したものでございます。
 また、ページをおめくりいただきまして3のところでございますが、単位互換をする授業科目の内容とか水準について一つの考え方を示したものでございまして、一般には、単位互換でございますので、自大学に置かれている授業科目と内容的に、あるいは水準が同じなり同等以上だということで認定するという仕組みなわけでございますけれども、これを全ての授業科目について厳格に一対一で求めてしまうと、結局自大学で既にやっている科目しか単位を置けなくなってしまいます。また逆に、どんな科目でも互換できるとなってしまうと、カリキュラムの核となる授業科目についても、しっかり対応していないほかの大学の何の授業科目とでも単位互換することが可能になってしまうという。この部分の個別具体の判断は各大学、学長に委ねられているというところですけれども、この通知では一つの考え方として、○のところでございますが、例えば単位取得が卒業・修了の要件になっているような必修科目については、それは内容・水準に一対一対応を求めてはどうかと。また、一方で、特定の科目群の中から選択をするような選択科目の場合であれば、その科目群が置かれた趣旨を踏まえて、その範囲が同等であれば単位互換を認めていいのではないか、といった考え方の目安を示したところでございます。
 以上、今日の議論に先立って、情報提供させていただきました。以上でございます。
【山本座長】  ありがとうございました。またもし何か御質問があれば、次の御発表の後、審議の時間を設けたいと思いますので、その中で御質問等いただければと思います。
 続きまして、資料5及び6に基づいて、金沢大学と岡山大学から御発表をいただきたいと思います。
 本日は、金沢大学大学院法学研究科長の尾島茂樹先生、それから、岡山大学大学院法務研究科長、佐藤吾郎先生にそれぞれ御参加いただいております。金沢大学より複数の法科大学院の連携について、岡山大学より地域の自治体や法曹・産業界との連携について、それぞれ御発表いただき、それに基づいて質疑応答、御審議をいただきたいと考えております。恐縮ですが、時間の関係がございますので、それぞれ15分程度をめどにお話しいただければと思います。
 それでは、まず金沢大学の尾島先生、よろしくお願いいたします。
【尾島法学研究科長】  ただいま御紹介いただきました金沢大学の尾島でございます。本日はこのような機会をお与えいただき、どうもありがとうございます。時間も限られておりますので、早速報告に入らせていただきます。
 資料は全体の資料の5でございますけれども、通しページの71ページのところから始めさせていただきます。よろしくお願いします。
 まず、目次のところでございますが、本日の御報告は大きく二つに分かれておりまして、大学間の連携と、それから学士課程との連携でございます。大学間の連携が、さらに二つ分かれておりまして、金沢大学と他の大学、要するに1対1で連携をしているというものと、それから四大学連携というのを始めましたので、これについて御報告させていただきたいということでございます。
 二大学連携につきましては、千葉大学さん――以降「さん」というのは省略させていただきますけれども、千葉大学、筑波大学、一橋大学と連携させていただいております。四大学のほうは、金沢大学、九州大学、千葉大学、筑波大学、――金沢が最初になっておりますが、これはあいうえお順です――四大学でやっておる連携について、以下、御報告させていただきます。
 まず、二大学連携でございますが、72ページになります。
 連携の契機ですけれども、これは先ほど話題に出ていましたが、加算プログラムというのがありまして、連携を支援しますよということがありました。これが契機であるんですけれども、結局やるのであれば実のある内容の連携をしたいということで、以下のような連携をしてきているということでございます。
丸1 のところ、一つ目ですけれども、共同授業を開講すること等による互いの強みの提供ということで、それぞれ教員は、日頃研究しているわけですけれども、その分野は、当然ですが自大学にない研究をされているということもありますので、そういう授業の提供を受けることが可能となります。
 千葉大学とは共同開講で「現代法の諸問題」という授業を開講しておりまして、これは1単位でございます。なので、8回授業をすることになりますけれども、千葉大学と金沢大学、各4名のオムニバスの授業になっております。まず共同開講の授業がある。
 それから、もう一つ、既に互いの大学で行っているような授業、活動に、もう一方の大学の学生や教員も参加するという形の協働ということも行っております。
 それから、二つ目ですけれども、丸2 他大学の学生と授業を一緒に受講することによって学生が切磋琢磨できるということでございまして、先ほど申しましたとおり、千葉大学とは共同開講科目をやっておるわけですけれども、筑波大学とは単位互換科目というのをつくりまして、両方の大学の学生が参加するということをやってきております。
 それから丸3 ですが、学生の交流も結構メインに考えておりまして、一緒に授業を受けるだけではなくて、それぞれ話し合うような機会も学生間で設けるようにしております。
 それから、話し合うのは学生だけではなくて教員もということで丸4 ですけれども、ノウハウの提供を受けるとか合同でFDをしたりということで授業改善をしていけたらということでございます。千葉大学、筑波大学、一橋大学と合同FDを継続的にやってきております。
 先ほど出ました千葉大学との内容で、72ページの下のほうにいきます。まず一つ目ですが、リーガルクリニック、金沢大学では「クリニック」という名前の授業がありまして、これは民事法律相談をしております。実際に市民から学生が法律相談を受けるという授業ですけれども、それに千葉大学の学生さんに来ていただいて見学していただくということをやっております。その後、意見交換をするということをやってきました。これは移動を伴いますので、コロナ禍では、やむを得ずオンラインで、この事後指導に千葉大学の学生さんと教員に参加していただくという形で続けてまいりました。
 成果としては、他大学の学生、教員を含めた検討により議論が深まったり、あるいは議論を通じて学生が交流できるということがございました。
 もう一つ、千葉大学のほうのイベントといいますか、活動に参加させていただいているということで、73ページの上のほうにいきますけれども、千葉大学のほうで裁判員裁判を傍聴されているということでありましたので、金沢大学の学生、教員がそちらに参加させていただくという企画をしていただいております。これには、なぜ?ということがあるかもしれないですが、そこに書いてあるとおり、金沢は実はあまり裁判員裁判の数が少ないのですが、千葉は比較的多いということがありましたので、裁判員裁判に触れる機会が結構あるということでございます。これも移動を伴いますので、コロナ禍では傍聴ができないので、やむを得ず、千葉の地裁の裁判官が講義されますので、それをオンラインでこちらに流していただくという形で活動を継続してきたところでございます。
 それから、73ページの下のほうにいきますけれども、教員間の交流としまして合同FDをやってきております。合同FDですので、当初は、全員は無理なんですがお互いに他大学を訪問して、そこでFDに参加するということで始めたのですが、これもコロナ禍で移動が難しくなったのがありまして、ここ2年ちょっとはオンラインで行っております。これは逆にメリットとしては、出張する人数が減りますので参加者を増やすことはできるんですけれども、オンラインで教員が話し合うというような取組をしてきております。
 コロナ禍になりますと、テーマはオンライン授業の仕方であるとかオンデマンドをどうやってやるかとか、そういう授業のやり方、あるいは学生がどういう状況にあるか、通常ですと、大学で学生が集まって自主ゼミみたいなことをしているんでしょうけれども、コロナになってそれができなくなったから学生はどういう勉強をしているのだろうかというような話、あと、コロナで筆記試験ができないときにレポートに替えたけれどもどうかなとか、これは前回の特別委員会でも議論になったと承知しておりますけれども、そういう情報交換をしております。
 金沢大学は、実はコロナ禍でも双方向にはこだわりまして、オンラインで同時にやるということはやっておりました。なので、オンデマンドの経験はほとんどなかったんですけれども、例えば千葉大学ではオンデマンドを主でやったということで情報提供を受けております。
 それから、74ページの上のほうにいきますけれども、オンラインの学生交流会というのをやっております。これは、もともと弁護士チューターを入れたICTの合同自主ゼミというのを企画していたのですけれども、これも結局コロナ禍でできなくなってしまいましたので、その代替として学生交流会というものをやろうということになりました。
 これは、学生を募ってオンラインでいろいろな意見交換なり情報交換なりをするということをやってまいりまして、例えば、未修の学生ですと、実はこの間、9月にもやったのですが、半年間授業を受けてみてどうだったかとか、あるいはどのくらい理解できたとか、勉強をどういうふうにしているとか、あるいはお勧め教材なんていうのも「こういう本がいいよ」みたいなことを学生同士が話しているということをやっております。
 金沢大学は、皆さん御存じのとおり、周りに全く法科大学院がないので、学生が他の法科大学院の学生と交流するということが事実上難しいです。その欠点を大いに補っておりまして、こういうことをやることによって、他の法科大学院のレベルが実感できたとか、他の法科大学院の学生の勉強方法とか日常生活が分かったとか、そういう感想がありまして、学生からも一定の評価を受けているということでございます。
 次に、筑波大学ですけれども、筑波大学は御存じのとおり、社会人の夜間法科大学院ということで、特にオンデマンド等の技術についてずっとやってきておられることもありまして進んでいます。オンデマンドはビデオを撮影して、それを見せることですが、そのノウハウを受けるということだったのですけれども、これもコロナ禍になりまして、どちらかというと、それがみんなでできるという状況になりましたので、特別な技術がなくても現在ではやれるという状況になっております。
 あと、筑波大学との関係で中心となっていましたのは、単位互換をやるということですけれども、これは後にお話ししますけれども、四大学連携のほうに現在では発展しております。
 それから、合同FDも同じように筑波大学と一緒にやってきております。
 75ページのほうにいきまして、一橋大学との連携ですけれども、これは大きく二つの柱がありまして、一つは一橋大学で行われている進級試験の問題の提供を受けることをいたしておりました。これも、実はコロナ禍でできなくなってしまっている面もあるんですけれども、現在では教材として共有しまして、また教材作成の参考として活用させていただいているということで、これについてはまた一橋大学と協議しながら、どういうふうに進めるかというのをやっていきたいと考えております。
 それから二つ目、これも同じようにやっておりますけれども、合同FDをやっておりまして、コロナ禍で大学に来れない中で、学生がどういう勉強をしているかというような情報交換をしてきました。
 以上が、金沢大学と、もう一つ相手方があるという形での連携でございます。
 次に、四大学の連携を御説明させていただきます。
 四大学といいますのは、金沢、九州、千葉、筑波ですけれども、これは声を掛け合ってこの大学ということになったということでございますけれども、もともとの目的は、一つは資料にありますとおり、司法試験受験の選択科目についての学生の選択肢を増やしたいということがございます。金沢大学は、司法試験の選択科目について、4単位開講している科目と2単位しか開講していない科目がありました。そうなると、実際学生は4単位開講科目のほうに流れる傾向がありました。他方、もう一つ、これは修了要件の変更ですけれども4単位必修化になりまして、そうなると、例えば4単位開講してこなかったような科目を取る学生にとっては、ぜひとも4単位を提供したいということがございまして、これが一つの目的でした。
 それからもう一つは、先ほど単位互換のところでありましたけれども、学生の多様なニーズの高まりに対応するということがありまして、自大学で開講していないような基礎法学・隣接科目について、他大学で開講している科目が受講できれば、それはそれで学生のニーズに合っているのではないかということで、受講を可能にすることが目的でございました。
 この点につきましては、76ページの上のほうにいきますけれども、2021年3月から四大学が2、3か月に1回、オンラインで集まりまして、断続的に協議を重ねておりました。法科大学院長や教務担当教員、関係教員、事務職員という方々に御参加いただいて協議を重ねてまいりまして、2022年前期から単位互換を開始いたしました。
 その単位互換を今年の前期でやったのですけれども、その具体的な状況が76ページの下の辺りに挙がっておりまして、金沢大学から1科目、千葉大学から2科目、筑波大学から1科目提供されて、受講者については御覧のとおりの状況になっております。
 後期の状況につきましては77ページの上のほうにいきまして、金沢大学から2科目、九州大学から2科目、千葉大学から2科目、筑波大学から3科目提供されるということで、現在始まったところです。
 2023年度も同じように実施予定で現在調整中ということになっております。
 この授業科目をどうやって決めているか、77ページの下のところですが、まず、需要と供給です。この大学でこういう授業が欲しい、この大学がこういう授業を出せるということを協議の中で話し合います。現在スタートさせることを最大の優先事にしましたので、ひとまず担当者の意向も尊重するということで、科目担当者がやってもよいということが大前提でありました。御覧のとおり、司法試験の選択科目、基礎法学、隣接科目が主に対象となっております。
 評価方法は同時オンラインの筆記試験やレポート、授業方法はハイブリッドやオンデマンドでございます。これは遠く離れていますので、やむを得ないということです。
 ただ、この四大学の課題としましては、授業時間というのが結構大きくて、学年歴が相違しています。要するに何月何日に始まって何月何日に学期が終わるか、それぞれの大学で違うとか、授業時間帯が違うとか、特に筑波大学では夜間の開講ということもありまして、これが結構な問題でありますが、いろいろ乗り越えてやってきておりまして、基本的に開講大学に合わせるような趣旨でやってきております。
 大学間連携は以上にしまして、あとは学士課程との連携ですけれども、金沢大学はいわゆる3プラス2は金沢大学内でのみ連携しておりまして、金沢大学の法学類というところで連携しているということで、以上のほかに、総合法学演習というのを法科大学院の教員が提供する科目としてやっております。それから入門ロースクールというのを新たに立ち上げまして、これはどちらかというとロースクールの魅力というよりは、金沢大学のロースクールに来てもらおうという趣旨で、金沢大学の魅力を発信できるような科目として設定させていただいております。このようなことを新たに始めております。
 そのほか、法学類との連携で、リーガル・プロフェッション・プログラムといいますのは、そこにありますとおり、法科大学院関係のイベントを法学類生に案内して、法学類生に来てもらうというような試みをやっております。
 それから、先取履修の勧めです。法学類の学生が金沢大学の法科大学院に進学するに当たって、先取りしておくと法科大学院に入ってから、その授業科目が認定できるよということで、特に合格者について勧めるということをやってきております。
 時間の関係がありましたので、ちょっと早口になりましたけれども、以上で終了いたします。御清聴ありがとうございました。
【山本座長】  尾島先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、岡山大学の佐藤先生、よろしくお願いいたします。
【佐藤法務研究科長】  岡山大学の佐藤でございます。本日はこのような貴重な機会を与えていただきありがとうございます。
 時間の関係もありますので、早速御説明させていただきます。
 通し番号82ページの上、岡山大学法科大学院の基本情報を御覧ください。事実関係はここに書いてあるとおりでございますので、特徴をかいつまんでお話しさせていただきます。
 3の入学者属性にありますように、1学年19名ですので、規模としては、大規模な大学のゼミの学生数と同程度です。実態は、ゼミの運営のようなものですので、名前と顔が全員一致しております。専任教員が17名、そのうち実務家教員が5名という構成です。教員と学生の距離が非常に近いことが特徴です。
 次に、司法試験合格状況につきましては、82ページ下を御覧ください。
 また、次に83ページの上に、過去5年間の修了生の進路を示しています。
 次に、83ページの下を御覧ください。
 本研究科の基本理念は、地域に奉仕し、地域に根差した法曹養成です。特徴は、地域に貢献する法科大学院として、地域貢献のための組織を立ち上げた点にあります。大学の附属組織として弁護士研修センターという組織を2012年12月に立ち上げましたので、ちょうど今年で10年になります。イメージ的には、社内ベンチャーのように別組織を立ち上げてやっていきましょうということになります。
 この組織を運営するうえで、地域貢献の内容を明らかにし、機能を明確化して体系化しました。この体系、枠組みを、自称岡大モデルと呼んでおります。
 わざわざ組織を立ち上げた理由は、継続性を確保するためです。最初に申し上げましたように、小規模な組織ですので、例えば、就職支援についていえば、複数の個人の教員のコネを頼れば、当面のニーズには対応できてしまうレベルなのです。しかし、個人の教員のコネに依存しますと、、移籍や退職があるとそのままなくなってしまうということを恐れまして、当初から、10年以上の仕事になるよね、じっくり取り組みましょうということで組織を立ち上げました。
 次に、活動内容について説明させていただきます。第一に、機能1、人材輩出、すなわち、人を出すということです。基本的な方針を、「岡山で育てて、地元へ戻す」としています。中四国の交通要地であることを活かし、中四国地域における法務系人材の養成拠点としての役割を果たすということです。
 第二は、リカレント教育です。修了生あるいは地元の方の教育を行うということです。
 第三は、シンクタンク機能です。知恵を出すということです。公法系実務家教員の先生にセンター長をしていただいております。
 基本的には、法科大学院の執行部が必ずOATCの組織に入り、毎月1回委員会を開催し、議事録も記録しております。今月で109回の委員会を開催している状況です。
 次に、84ページを御覧ください。全体図を簡単に御説明いたします。
 まず、左側をご覧ください。中四国地方における人材還元ルートを示しています。中四国地方の高校から岡山大学あるいは愛媛大学、香川大学を通じて本研究科に進学する。基本的に岡山で育てて地元へ戻すという人材還元ルートの確立を標榜しております。これは、中四国地域で活躍したいという者のルートを確保するということでございまして、首都圏、関西圏に行くなというわけではございません。地元で活躍したい人のルートを確実に確保しましょうという趣旨でございます。
 次に右側を御覧ください。先ほど申し上げました三つの機能が実際にどうやって機能するのか、岡大モデルとして、全体図を示したものです。
 まず、一番下の部分をみていただきますと、中四国地方の高校から、岡山大学を含む中四国地方の大学に進学します。さらに、本研究科に進学したうえで、自治体や企業、医療福祉施設のほうに進む人の流れを示しています。自治体、企業、医療・福祉施設の各分野に対応した形で、研究会を設立しています。この研究会は、シンクタンク機能とリカレント教育の両方を担っております。その上に掲げてありますのが、地域のそれぞれの分野の課題です。コンパクトな都市形成、地域公共交通計画等々の地域の課題を解決して地域社会に貢献するという構図です。
 次に、具体的な連携についてお話しさせていただきます。84ページの下でございます。
 行政法実務研究会という研究会を2013年から立ち上げておりまして、理念的には行政法理論と自治体実務の架橋を目指すということでございます。
 特に特徴的なのは、地域特有のテーマを扱っているということです。地方においては、特に、少子高齢化で人口減少が進んでおりますので、空き家条例や地域公共交通など、特に人口減少社会において課題解決が非常に切実な問題について、テーマにしてきております。このようなテーマを議論する研究会に、県庁職員などの自治体職員、弁護士、行政法研究者等が参加しております。
 ほかに、権利擁護研究会を立ち上げております。地域権利擁護等についても、下の参加者の説明文にありますように、法律職のほか社会福祉協議会職員等々が参加しております。
 特徴は、法科大学院生も参加できるようになっている点です。この研究会に参加することによって、実務での最先端の議論を目の当たりにするということができます。近年はコロナ禍の影響により、オンラインによる参加方式が普及した関係で、オンラインによる参加が可能となっています。在学中は、参加しなかった者も、実務に入ってから、新たに参加するという状況が生じています。具体的には、和歌山県から修了生がZoomで参加するということがあり、修了生、在学生、そして実務に従事している者が参加しております。さらに、自治体からの参加者には、法科大学院で合格しなかったけれども、各地の県庁、市役所で活躍しているという職員が出ております。我々としては、修了生をも参加するプラットフォームのような機能を有すると考えております。
 次に、85ページの上を御覧ください。
 総社市、瀬戸内市との弁護士派遣です。この取組には、自治体への支援に加えて、これは既に就職した若手修了生弁護士を継続的に派遣していることから、若手弁護士が経験を積む場、権利擁護の実務に習熟する場という機能を有しております。連携の開始時から、定期的に若手弁護士を派遣しており、延べ5人参加しております。
 次に、法曹界との連携につきましては、授業参観を行っているほか、中四国地域の大学で若手弁護士が法曹の魅力を伝えるという趣旨で講演会をしております。
 次にまいります。86ページです。
 本研究科の大きな特徴であると考えているのが、岡山経済同友会との連携です。2012年に岡山経済同友会と、地元企業の法務の実態について共同調査をいたしました。アンケート調査およびヒアリング調査です。岡山大学のみの力では到底実施できない内容です。岡山経済同友会事務局から根回しをしていただきまして、スムーズにヒアリングをすることができました。
 2012年当時の実態としては、法務のみを行う者は、ほとんどいない状況でございました。法学部卒も半数で、メーカーにはほぼ法学部出身者は少ないということから、法務部門をこれから立ち上げる時期であるということをヒアリング調査によって、はじめて認識した次第です。法務を担当可能な人が非常に少なく、現場も実際には知識不足で、企業としても必要性は分かっているが、どのように取り組んでいけばよいのか、模索中であるというのが2012年の岡山の状況でした。
 そこで、ヒアリング調査を通じて何社か回ったわけですけれども、各社が法務部門の立ち上げ期にあるという状況でしたので、「いい人がいたらぜひお願いします、おたくは専門家養成機関でしょう」という話になったことが、人材輩出の取組の契機となりました。
 次に、86ページの下ですけれども、リカレント教育といたしまして、法務担当者基礎研修というのを実施しております。これもヒアリング調査をきっかけとして実施するようになった取組です。場当たり的な対応ですとか法務全体の知識がない、あるいは首都圏、関西圏の研修は時間がかかり過ぎて、若手に強く受講を勧めているのだが、実際には現在の業務に上乗せになり負担になるのでなかなか行きたがらないという悩みをいただきました。、当初、当方は、法科大学院なので高度な法律知識が求められるのではないかと予想をしていたのですが、とにかく基礎的な知識をお願いしたいという要望がございまして、基礎研修をしております。
 全体としましては、地域における企業法務のニーズを把握して、法科大学院より地元企業に人材を輩出する、この流れができたということになります。
 次に、87ページに移らせていただきます。
 九州大学との連携については、時間の関係もありますので、4番目の施設の相互利用を制度として開始しているという程度にとどめさせていただきたいと思います。
 次に、活動の成果でございます。87ページの下です。
 人材輩出の基本方針としては、基本的には、営業活動は一切しておりません。そもそも法科大学院の行うことではないですし、さきほど説明させていただいた経緯からしても、現場からの要望があって、輩出するという方針にしております。さらには、個人のコネに頼らないという趣旨から、人材輩出にあたっては、必ず組織決定を行うという形で、透明性を確保しております。
 次に、人材輩出の特徴について、お話しいたします。先ほど申し上げましたように法務部門の立ち上げ期で人がいないという状況において、第一号として法務部門に人材を輩出いたしました。それが2014年から2016年、2017年ぐらいです。輩出先の企業は、、まず、一人法務の状態になります。次に、今まで埋もれていた法務業務が殺到するという状況になり、今度は、二人目をお願いします、という依頼が来ております。
 我々としては、法務に強い総合職が求められているものと認識しております。つまり地元の組織を背負って立つ、法務に強い総合職が求められていて、資格の有無にかかわらず、活躍できる人材が欲しいということです。、我々が、地元組織に、定期的に人材送り出していることに、地方国立大学としての役割があると考えております。
 次に、学生からの評価について、お話しいたします。学生からの評価も高く、手厚い就職支援が法科大学院受験の動機だった学生もおります。我々の今までの経験からしますと、受験を3回すると、大体5回まで挑戦します。受験2回目で就職支援を要望する修了生がほとんどです。5回受験後、民間企業への就職を希望する例は珍しいので、ここに挙げております。企業側からは、人材として、非常に高く評価されていると理解しております。
 学生側からみれば、2回目までに短答試験に合格すれば、法務担当者としての就職は十分にあるという状況にございます。現在、8社から採用希望があり、待っていただいているという状況です。
 結果としましては、延べ人数では、組織内弁護士16名、法務担当者9名を輩出しております。単位会別の組織内弁護士の比率としては、地方としては比較的な大規模な人数となっております。現在14名おりまして、そのうち7名が岡大、他は、金融機関等に在籍している状況です。
 次に、88ページのほうにまいります。
 法務担当者養成基礎研修を実施しております。扱うテーマを資料に記載しています。基本的な考え方は、法務担当者養成の基礎を岡大が担当し、専門性の高い分野は、顧問弁護士の先生に相談してくださいという趣旨から、第1回のテーマ、法務の基礎では、顧問弁護士とのスムーズな連携方法を取り上げています。法務部門の立ち上げにおいて、一番大変な基礎的な部分を、地元国立大学が担当するという役割分担をしております。
 次は英文契約基礎研修について、説明させていただきます。本研究科からの人材輩出の第一陣は、地元メーカーでした。実際に、法務の業務についてみると、英文契約をチェックしてほしいという社内ニーズがあること、修了生としては、これまで、英文契約に関する勉強をしてきていないが、対応する必要があること、さらには、少なくとも契約書の構造等、基礎的知識を習得する必要があるといったことが判明いたしました。そこで、1回あたり3時間の研修を6回、修了生である組織内弁護士および法務担当者を対象に、組織内弁護士の経験のある弁護士の方にお願いして実施していただいております。
 次に、シンクタンク機能に関する活動の成果です。先ほど申し上げましたように、地域特有のテーマについて議論しております。議論を契機として、当該テーマに関連する自治体の条例についての法律相談を教員が受ける機会が増えております。とまた、研究会会員が論文や判例評釈を執筆して、紀要に公表することを通じたシンクタンク機能をも果たしております。
 先ほど申しましたように、法科大学院を出て、自治体に就職し、法規担当部門に配属され、条例作成等で活躍している者がかなりおります。そういったメンバーが姫路市役所や福山市役所から参加しております。研究会が、在学生、修了生が情報共有をするプラットフォームの機能を果たしております。
 最後に89ページに移らせていただきます。簡潔に、現在の課題について、述べさせていただきます。
 基本的には、現在までの活動は、おおむね、岡山県内にとどまっておりますので、他の地域との連携強化が必要です。さらには、弁護士会および企業との連携強化が必要です。何よりも法科大学院としての信頼を得て、入学者を確保する必要があります。
 さらには、コロナ禍の影響がかなりございまして、顔の見えるネットワークでつないできたところが、コロナでネットワークが切れている状況にあります。コロナ禍が、ある程度収まったときに、地方における対面ネットワークというものを再構築する必要性があると考えております。基本的には、中四国地域の中核拠点を標榜して活動を継続していくという方針です。
 特に、最後に付け加えさせていただきますと、我々は、理念として、修了生が母校とともに卒業した後も成長するような機会を提供することが重要であると考えています。要するに合格したらおしまい、母校と縁が切れる、というのではなくて、修了後も母校とともに様々な形で共に成長するというような形式をぜひ取っていきたいと考えておる次第でございます。
 以上で報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【山本座長】  佐藤先生、どうもありがとうございました。
 両校から大変意欲的な活動の御報告をいただき、また大変中身は興味深いものがあったように思います。恐らく委員からも多くの御質問、あるいはコメント等おありかと思います。
 一応、審議につきましては、2部制といいますか、前半部で複数の法科大学院の連携について、後半部で地域自治体、法曹・産業界との連携について御審議をいただきたいと思っております。その際には、資料4-1の論点(案)も御参照いただきながら御議論いただきたいと思います。おおむねあと40分程の時間が残っていますので、恐縮ですが20分ずつぐらいで審議をしたいと思っております。なお、佐久間委員は先ほど途中御退出の御予定ということでしたので、今の区分に関わらず、御発言いただける点は全て御発言いただいてから御退出いただければ大変ありがたく存じます。
 それでは、まず前半部分、複数の法科大学院間連携、この点について御質問でも御意見でも結構ですので、御自由に御発言いただければと思います。
 加賀委員、お願いいたします。
【加賀委員】  どうも、金沢大学の尾島先生、ありがとうございました。大変有意義でした。魅力を大学院としてつけられているということ、大変貴重な御報告と受け止めました。
 お聞きしたいのは二つあります。金沢大学法科大学院として、千葉大、筑波大、一橋大、九州大という国立大学の連携をなさった、この大学との連携になったきっかけ、理由が何だったのでしょうかというのが1点です。
 もう一つは、単位互換のところで科目のこともお教えいただきましたけれども、いわゆる基本科目ではない選択科目や基礎科目での連携になっているのかなと思いました。これはやっぱりそういう方向なんでしょうか、基礎科目の連携というのは難しいのかなとちょっと感じておりますけれども、いかがでしょうか。以上2点です。
【山本座長】  尾島先生、お願いします。
【尾島法学研究科長】  ありがとうございました。
 1点目ですけれども、すみません、私、実はこの連携をした当時、ここにいませんで、後々に引き継いでいることはございますので、その範囲でお話ししたいと思いますけれども、先ほど御報告したとおり、まず連携のきっかけとなりましたのは加算プログラムがあります。そこで、どこで連携しようかということになったわけですが、いろいろ探して、千葉大学は旧六ということもありまして、お願いしたところ受けていただいたというように聞いております。あと、筑波大学につきましては、社会人であったり夜間であったりということで、そういうノウハウがあるということがありますので、こちらから連携をお願いしたということかと思います。それから、一橋大学についても、これは個人的なつながりはあったと聞いておりますけれども、そこでお願いしたところ受けていただけたということでございます。
 四大学につきましては、実は、筑波大学から呼びかけがあったんですけれども、もともと連携しているということで、そのほか、千葉大学とか九州大学も含めて連携しませんかということでお話がありまして、受けさせていただいたという経緯でございます。
 それから、2点目の単位互換の件ですけれども、先ほど文科省からの説明がありましたとおり、必修科目を単位互換するというのはかなり困難を伴うということもありますので、先ほど申しましたけれども、まずできるところからということを考えますと、こういう選択科目からということになっていかざるを得ないかなということです。必修科目を単位互換するということは、結局、内容も含めてレベルも含めて、全部一致させるということになると思うんですけれども、その辺りが難しいということかと考えております。
 以上でございますが、よろしいでしょうか。
【加賀委員】  ありがとうございました。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】  後者のほうですけれども、先ほど申し上げた、司法試験に限らない法科大学院の意義ということとの関係で言うと、岡山大学さんの取組は非常に興味深い取組だと思いました。岡山大学さんの事例も参考にして、また議論を深められればいいと思うんですけれども、ただ一方で、教育もしつつ、いろいろ要望が殺到するとなると、なかなか処理するのが難しいという面もあると思います。御説明があったかもしれませんが、そこら辺で苦労なさっていることとかあるのでしょうか。
【山本座長】  佐藤先生、お願いします。
【佐藤法務研究科長】  御質問いただきありがとうございます。教育の実施と教育以外の要望への対応のバランスは、常に課題となっております。法務研究科教員の本業は、当然のことながら、法曹養成教育です。リカレント教育の実施にあたっては、適材適所という観点から、本学を修了した組織内弁護士が担当しております。英文契約研修についても、外部の組織内弁護士の先生方にお願いしているという状況でございます。法務研究科教員の負担が過大にならないようにすることは、常に、課題として考えていることです。特に、オンライン授業の実施等のコロナ禍における対応、オンライン授業の実施、早期卒業、在学中受験等制度改革への対応等によって、非常に忙しい時期が続いております。法曹養成教育以外の要望への対応については、マンパワーのバランスに配慮しつつ対応せざるを得ないというところが実情です。
【佐久間委員】  どうもありがとうございます。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。
 金沢大学法科大学院の取組を通して、複数の法科大学院の連携によって、合同FDであるとか、単位互換であるとか、教員、そして学生の交流によって活気がある取組がなされているという御報告を心強く受け止めました。
 私、今は退任しておりますので、お話しできるのですが、加算プログラムの選考委員をさせていただいていたので、この加算プログラムがインセンティブになったということを大変うれしく受け止めています。
 さて、二つ質問させていただきます。一つは、複数の法科大学院が円滑に連携していくに当たっては、担当の教員あるいは事務職員が、効率的に異なる大学の学事日程などを踏まえながらコーディネートしていくということが求められます。決して重い負担になってはいけないので、効果を高めるためにも、工夫をして運営に当たっていらっしゃると思いまして、円滑な運営のためのシステム化などの工夫というのでしょうか、そういうことを1点伺いたいなと思います。
 2点目は、一橋大学さんとの連携で、進級試験問題の提供を受けて、教員も学び、学生にもプラスになっているということですが、こういうことを通して、研究者同士として複数の法科大学院の先生方が共同研究をするとか、授業や教育以外に研究者としての交流というのでしょうか、それは合同FDも含めて、何か兆しが見えるのでしょうか。あるいは、これまで共同研究をした研究者同士の関係というのが、より一層連携に効果的に働いているのでしょうか。教員の皆様のそれぞれの研究へのメリットなどについて、もしさらに補足していただく内容がありましたら、よろしくお願いします。
 以上です。ありがとうございます。
【尾島法学研究科長】  どうもありがとうございました。
 まず、御質問の1点目につきましては、確かに非常にハードルが高いのです。何とかしなければならないのですけれども、少なくとも、さっき申し上げたとおり、この四大学の試みは、スタートさせようということをひとまず優先しました。それで、この学事暦あるいは授業時間等、全てひとまずは実施大学によるということにさせていただきましたので、実施大学に従って学生が授業を受けるということになります。そうなると、事務職員も含めてですけれども、それぞれの関係する大学の、例えば授業がいつから始まるとか、何時から授業をしているとか、そういうことも含めて把握していかなきゃいけないということがございました。
 この点で、ひとまず、今はコロナということもあるのですけれども、これはどの程度今後も認められるかということも話し合いながらやっていたのですが、授業は基本的にオンデマンドにしようという方向になったんです。これだと、学事暦とか授業時間の違いが一番ハードルが下がるのではないかということがございました。ただ、中には、例えば同時にやりたい、双方向でやりたい授業とか、あるいは、すみません、さっき時計をちらっと見たものですから言い間違えたところがありましたけれども、試験につきましても、同時にオンラインでつないで、要するに試験会場をオンラインでつないで筆記試験をやるということをやったこともありますが、それもなかなか難しければレポートを基本にしようとかそういうこともございまして、ひとまず始めて半期が過ぎたところでございますので、走りながらできるところは直していくという形になろうかと思っております。
 二つ目でございますけれども、研究者同士ということですが、実は、各教員の研究分野は基本的に関係なく交流しているということです。FDはどちらかというと授業改善でございますので、研究分野とは関わりません。なので、研究に関わるような交流は、恐らくそれぞれの学問分野、学会なり研究会なりで別途ということになっていくんだろうと理解しておりますが、質問の趣旨を捉え間違えているかもしれないですけれども、以上のような趣旨でよろしいでしょうか。もちろん別途いろいろな交流が深まるということはございますけれども、研究について何かということは、個人的、あるいは学会のレベルということになっていくのではないかと考えております。
 以上です。
【清原委員】  どうもありがとうございます。よく分かりました。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、大貫委員、お願いいたします。
【大貫委員】  尾島先生、プレゼンテーションありがとうございました。大変興味深い試みと拝察しました。
 少し小さい問題になるかという気もしますが、先生のパワーポイントの77ページの授業方法のオンデマンドについてお尋ねいたします。
 今、オンデマンドのことに言及がありましたけれども、オンデマンド授業は、まさにやり方によっては法科大学院の連携を大きく進める可能性がありますので、ここについて少しお伺いいたします。
 これは文科省で後から補足があれば教えていただきたいですが、現在、コロナ禍ということを前提にして、オンデマンド授業を実施すること、全面的に展開することは認められているわけですけれども、その際に、私の理解では、受講生との双方向的やり取りを何らかの形で確保されていなければならないという割と大変な条件がついていると思っております。例えば質問対応がきちんとなされているかとか、理解度の確認のために小テストやレポートが行われているかというようなことを求められています。これはオンライン授業全てについて求められていることであります。現状ではそうです。
 この受講生とのやり取り、今、例示申し上げましたけれども、これはオンデマンド授業の場合はどうなるのかというのが質問です。もし、自校にない科目について、他校の科目をオンデマンドで受講させるということになりますと、その自校は科目がないわけですから、その自校の教員は、なかなかその質問対応とかレポートを出して採点するとかいうことは基本難しいんだろうと思います。そうすると、これは一体誰がやるんでしょうかという話になりはしないかと。先ほどのお話ですと、授業を実施する大学のほうでということになってしまうのかどうかということです。
 広い問題で言うと、先ほど清原委員がおっしゃった連携のための様々なコーディネートという大きな問題を御指摘になりまして、それに関わると思うんですけれども、オンライン授業を実施する場合に、まさにオンラインで受講する学生のフォローは、誰がどのようにやるのかということを、細かい問題かもしれませんが、お教えいただければ幸いです。
 以上です。
【尾島法学研究科長】  どうもありがとうございました。
 先ほど例に出しましたが、金沢大学が提供しております、76ページのところに法理学という授業がありますので、それを例に御説明させていただきます。
 この法理学の授業は、ひとまず同時双方向もやるけれども、筑波大学では、それを録画したものも見られるようにしてほしいと、それを視聴することによって出席というカウントもしてほしいということでしたので、事実上、そちらはオンデマンドと同じような形になるということでございます。この法理学では、毎回授業をするとウェブ上に小テストを出すということにして、それをきちんと解いているということで、オンデマンドの方が出席したというように扱ったということです。
 あと、金沢大学のシステムに入れるようにIDなどを取っていただきまして、金沢大学のシステムの中にWebClassというのがあるんですけれども、そこにチャットルームがつくってあって、学生はそこでいつでも自由に質問できて、もちろんメールでしてもいいと。チャットルームですので、学生同士が双方向でそこで議論できるような場を提供しているということで、オンデマンドの授業に求められている即時の対応というのは、結局、今のお話ですと、実施大学のほうでやっているということになろうかと思います。要するに授業の一環としてそこまで求められているんだという認識で授業を実施しているということでございます。
 こんなところでよろしいでしょうか。恐らく求められていることは、これで満たしているのではないかと理解しているんですけれども。
【大貫委員】  尾島先生、まさにどんぴしゃの答えをいただきありがとうございました。
 追加で、自校の学生のフォローは、今、双方向的やり取りは実施大学のほうでやるということで、それは結構負担が重いなという気がしたんですけれども、受けに行かせている大学の方は、その自校の学生をフォローするとか、そういうことはあるんでしょうか。
【尾島法学研究科長】  基本的にないですね。なので、結局、提供を受けている科目については、提供大学で全部面倒を見ていただくということで始まっております、今のところは。なかなか難しい問題ではありますけれども。
【大貫委員】  ありがとうございました。
【山本座長】  よろしいでしょうか。
 それでは、片山委員、お願いいたします。
【片山委員】  慶應大学の片山でございます。尾島先生には様々なロースクール間の連携の試みをされているというお話を伺うことができまして、本当に大変勉強になります。どうもありがとうございました。
 私のほうから2点、質問をさせていただきます。
 1点目は、今後ロースクール間の連携は様々な形で推進していかなければいけないと思いますが、その際に、貴学がやっておられるように、二大学間での連携を深めていくのか、それとも複数の大学間でのコンソーシアム的な連携を深めていくのかという点は重要なポイントになるかとは思います。ただ、なかなかコンソーシアム型というのは難しい面もあり、ハードルが上がるのではないかと想像します。そこでお伺いしたいのは、二大学で様々な連携を進めておられる中で、それとは別に、複数大学間の四大学での連携を進めていかれることのメリットをどのようにお考えになっておられるのかという点が第1点でございます。
 それからもう1点は、来年度、在学中受験が始まりまして、特に3年の夏から秋学期にかけまして、今まで以上にロースクールならではの魅力的な科目を展開していくことが求められておりますし、各ロースクールにおいても、そのための準備を進めておられるかと思います。そのような観点から、この四大学、あるいは相互の二大学の協定の中で、来年度の3年次の秋学期に向けて、こんなことをやれないかとか、こんなことをやってはどうかという議論がもし今の段階で出ていれば、ぜひ参考にさせていただければと思っております。その点についてご議論がございましたら、差支えのない範囲でお伺いできればと存じます。
 以上2点、よろしくお願い申し上げます。
【尾島法学研究科長】  片山先生、どうもありがとうございました。
 まず1点目のメリットでございますけれども、金沢大学は、今お話ししたとおり、まず二大学で始めてきました。この四大学のお話は、結局、司法試験選択科目4単位必修化とか、いろいろなことがありまして、科目の提供を増やしたいということがございました。そうなると、いろいろな大学からいろいろな科目の提供を受けることができれば、多様な科目を提供できるという意味では、かなり大きなメリットになろうかと思います。選択肢が増えるということです。
 もちろん連携するために、恐らく二大学間では必要ないようなことも含めて、多様に協議しなければならないということになりますので、そちらのほうは大変ですけれども、一旦できてしまえば、提供し合えるものが増えるという点で、こちらのほうにも踏み出したということだと理解しております。
 それから2点目ですけれども、この点については、まだ議論が進んでおりませんで、ひとまず、この時点でやれることをやってみようということで始めたところでございます。確かに司法試験が7月に終わりまして、秋をどうするかということも含めて、今後いろいろな科目が提供できればいいので、先ほどありましたけれども、例えば基礎法学・隣接とか、ほかに多様な展開・先端科目とか、いろいろなものが提供し合えれば、また発展に寄与できるのではないかと考えておりますが、具体的には、この辺りは全く現在ではしておりません。
 以上です。
【片山委員】  どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、大澤委員、お願いいたします。
【大澤委員】  すみません、時間も限られているのでなるべく簡潔にいたします。
 興味深いお話をありがとうございました。法科大学院間の連携ということで、教育のメニューを充実させる、メニューを増やすということもありますけれども、学生間の交流が有効な意味を持っているということを言われたのは、非常に私は興味深く思いました。いろいろな多様な学生が集まって学ぶということが法科大学院のいいところであって、それを、こういう法科大学院間が連携することで補っていけるのかなと思った次第です。
 そういう中で、御質問したいのは、筑波との学生間交流で、やっぱり筑波の場合は社会人の方々がおられる、そういうところでの交流が何か金沢大学にとってプラスの方向で見えるところがあるだろうかという点です。
 それから、コメントとしては、今、多様性と申しましたけれども、今度は逆に、同じ問題を持っている、例えば社会人の人、あるいは理系出身の人たちが、法科大学院を越えて横につながることで、お互いに助け合ったり、あるいは、それぞれ大学の教育を改善していく上でやっていけることがあるかなということを思いました。こちらはコメントです。これだけ申し上げて、質問のほう、簡単で結構ですので、よろしくお願いいたします。
【尾島法学研究科長】  どうもありがとうございました、大澤先生。
 社会人も含めて一緒の授業を受けることで刺激になっているんだろうということが一応あるかと思います。法科大学院の授業を双方向でされたりすることもありまして、お互いに意見を発言し合うこともあると思いますので、今のところは、千葉大学ほど学生間の交流が筑波大学のほうは進めておりませんので、あまり成果と言えるようなものはまだ上がってないかなと感じはしますけれども、少なくとも授業を一緒に受けているということが重要なメリットになっているのではないかと考えております。
 その中に、社会人もこうやって勉強しているんだということが、こちらの学生にも見えます。実は金沢大学にも社会人は結構入ってはいるんですけれども、その中で、お互いに勉強をどんな感じでやっているか分かるというのはメリットかなと考えております。
 簡単ですが、以上でよろしいでしょうか。
【大澤委員】  ありがとうございました。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、まだ御質問等あるかと思いますけれども、時間の関係がございますので、次に後半部分、地域自治体や法曹・産業界との連携について、この部分について御質問、あるいはコメント等、御自由にお出しいただければと思います。
 富所委員、お願いいたします。
【富所委員】  佐藤先生、どうもありがとうございました。19人の学生に対して、ここまでやっているということに非常に感銘を受けました。質問というより感想を述べさせていただきたいと思います。
 法科大学院の活性化には、大学同士や外部との連携が非常に重要な課題だと思います。特に、自治体とか産業界、法曹界という外部との連携が、今後ますます重要になってくるだろうと考えています。
 学生にとって、法科大学院に入るメリットは、どこまで満足感が得られるかだと思います。一つは、司法試験に合格すること、もう一つは、合格しても、しなくても、就職に役に立つといったことでしょう。こうした実感が得られることがとても大事なのだと思っています。
 法科大学院は、実務に強いというところが特徴だと思います。そこを伸ばしていくためには、外部としっかり連携をしていくことが重要です。
 外部との連携については、法科大学院の教育に協力してもらうだけではなくて、逆に自分の大学院にはこういう学生がいるんだ、こういう学問を教えているんだということを広く知ってもらう機会にもなると思います。こうした取り組みを、他大学も含めて、もっと広げていく必要があると思っております。
 以上です。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、井上委員、お願いいたします。
【井上委員】  井上です。岡山大学の取組を拝聴いたしまして、大変感銘を受けました。特に産業界に属する者として一言申し上げますが、岡山大学法科大学院が産業界のニーズを直接ヒアリングして、それのニーズに合ったサービスというか、プログラムを御提供されているというところがものすごく新鮮でございます。
 ここにありますとおり、法務に強い総合職が欲しいというのは、どの企業も押しなべて同じ声でして、ある意味、法曹資格者よりも法務に強い総合職のほうが企業にとっては欲しいかもしれません。それぐらいニーズがあると法科大学院の皆さんには思っていただきたいと思うんです。
 そうすると、法曹を輩出するということに加えて、産業界との連携コースというぐらいを打ち出していただいて、そういう人材を輩出するんですというようなアピールを、ぜひ法科大学院にはして頂ければなと思いますし、学生さんも、そういうことで社会貢献できると分かれば、もっと大勢法科大学院に入ってくださって、そこで意味のある実務的な学習をすれば、社会に出て非常に役に立つというきれいなストーリーが進められると感じております。
 最初のほうで、憲、民、刑の切り口で必要な学習は何かということを考えなくてもいいのではないかということを、たしか中川先生が仰っておられましたが、まさにそのとおりでして、もっと大きな枠でどのように法律・法務は役立つのかということから考えていただいてもよろしいのかなと思っています。必ず役に立ちますので、ぜひもっと大勢の学生さんに法科大学院卒業生になっていただき、社会に貢献していただきたいなと思いますので、その点の連携の強化をお願いしたいと思いました。よろしくお願いいたします。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、久保野委員、お願いいたします。
【久保野委員】  ありがとうございます。東北大学の久保野でございます。お話、どうもありがとうございました。外部との連携を実質的に本当にしっかりなさっているのに、私も同様に感銘を受けました。
 それで、産業界のお話は今出ましたけれども、権利擁護ですとか行政法務といったものは、近年本当に重要性が高まっている分野で、そして地方所在の大学として、特に貢献が見込まれるような分野に実質的な成果を出されているということが非常に印象的でございます。その中で、修了生が母校とともに成長し、修了生という財産といいますか、貴重な修了生たちとともに法科大学院の意義を発揮しているというところも大変貴重だと思います。その経験のある修了生がある程度出てきているからこそ、法科大学院の歴史の中で、こういう取組がより充実してできているという面があるんだと思います。この点は、この11期での検討課題といいますか、法科大学院の存在意義というものをどのように社会に還元していくかというときに、大事なポイントになると思って伺いました。この点、今のはコメントです。
 質問が二つありまして、まず、修了生とともにというときに、人数が少ないので人間関係を通じて活動しやすい面はあるかとは思いますが、お話の中でも、それに頼り過ぎることについての懸念があるんだといった御指摘もある中で、修了生との関係や修了生同士の関係を維持、発展するために何か工夫なさっていることとか、あるいは現実に指摘できることがもしありましたら教えていただきたいと思います。それが1点です。
 もう1点が、地方に返すほうの話としまして、高校にもし何かアプローチとかをなさっていることがあれば、教えていただければと思います。この点は、学部のレベルで法学部離れといったことをどう防ぐか、あるいは高校生のレベルにどのように発信するかということが課題になっているかと認識しておりますので、教えていただければと思います。
 以上です。
【佐藤法務研究科長】  ありがとうございます。今の御指摘の点は、まさに我々の懸念しているところです。1学年20人程度の規模で運営しておりますので、よくも悪くも人間関係は密になります。教員と学生の間の関係も、距離が近いという事情もありますので、個別の人間関係に依拠しないように運営をする必要がでてきます。、基本的には、こういう会社から人材が求められているという事実を修了生のメーリングリストを通じて、時期を見て、「今、こういう会社がこういう者を欲しがっている、人材を要望している」という形で必ずオープンにするようにしております。要するに、誰か特定の者について就職を支援するのではなくて、潜在的な候補者全員に情報を共有することによって小規模な組織ゆえに生じがちな弊害をできるだけなくしていこうと考えておる次第でございます。
 それから、高校との関係については、岡大法学部が高校訪問をする際に、法科大学院の情報を提供する形で、法学部を通じて法科大学院の情報が高校に提供されるように工夫をしているとともに、岡山弁護士会の中の法科大学院支援委員会が、若手弁護士が高校を訪問して仕事の魅力を話してもらう取組を行っております。そういった取組を最近始めまして、今、3校程度の高校で実施しているところです。結局、高校生に、法律を使って自分たちが社会に何を貢献できるのかということを具体的に示すには、若い先生が生き生きと活躍していることを魅力的に語っていただくのが恐らく一番説得的だろうと思いまして、そういった取組と連携をさせていただいているところです。
 以上でございます。
【久保野委員】  どうもありがとうございました。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、菊間委員、お願いいたします。
【菊間委員】  菊間です。佐藤先生、どうもありがとうございました。私も、ほかの委員の方と一緒で、すばらしいなと思って感動して聞いておりました。
 以前から、この委員会の中で、合格者だけではなくロースクールを卒業したということが評価されるようなロースクールでなければいけないのではないかということや、あと産業界との連携をロースクール側からアプローチすべきではないかとお話しさせて頂いておりましたので、それらを実際に実践なさっているロースクールがあるのだということを知り、すばらしいと思いました。
 その上で質問させていただきたいのですけれども、先生の先ほどの御説明の中で、産業界との連携のきっかけとして、岡山の経済同友会のほうに御協力いただいて、ヒアリング調査をしたところから始まったということでしたけれども、経済同友会とのそもそもの交流というか、きっかけはどうやってつくっていかれたのかということが1点です。
 もう一つは、地元での就職支援までしてくださると、大変対応が手厚い印象なのですが、志願者数は増えているのか、あるいは、こういう試みをやることによって安定的に受験者が来ているなどということがあるのかという点を教えてください。
 また、地方の弁護士会では、一部、法曹の増員反対を打ち上げている弁護士会もあったりして、ロースクールに非協力的な弁護士会もないことはないんですけれども、岡山県の弁護士会は、そういう意味では非常に協力的なのかどうか。それが、こういった試みをやる上で非常に有益なのかということについて、3点、教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
【佐藤法務研究科長】  ありがとうございます。経済同友会に関しましては、ビジネスローに関する専門の教員がおられまして、そもそも専門分野を通じて、個人的な関係があったという点がございます。岡山経済同友会の中の企業法務会計委員会という委員会が実際の連携先ですが、そこに地元の弁護士の方、公認会計士の方、業の経営者の方もおられるという構造になっております。さらに、経済同友会にそもそも所属している本研究科実務家教員の先生方もおられるので、以前から顔見知りというか面識はある、という状況でした。我々が地元企業の法務の実態調査を行いたいと考えている旨を岡山経済同友会の幹事の方や事務局長とお話しさせていただいたとこと、実は我々もそれは地域の課題と考えているんだということなり、協力しましょう、ぜひ共同で実態調査しましょうとおっしゃっていただいて、取組が進んだということです。実態調査を行った結果、「これからなんですね」ということがわかったというのが率直なところでございます。
 次に、就職支援と志願者に関するご質問にお答えします。これは実はすごく難しいところがございまして、どのくらいPRをするかが悩みの種なのです。我々は、修了生を送り出す際に、「法務博士自体に本当に意味があるんだよ」と言っています。なぜならば、法務研究科での教育を高く評価して、地元の企業はみんな引く手あまたで待ってくれているんです。だから誇りに思ってくださいねと、送り出すんです。一方、一般的には、司法試験に受かってこその法科大学院というイメージもありますので、就職支援のPRをしすぎると、合格実績がそれほどよくないから、受からなくても大丈夫だよというメッセージを積極的に出しているのだと思われはしないか、という懸念があります。例えば個別の入試説明会とかで話すことはしているのですが、ホームページなどで大々的にPRするべきか、法曹養成教育組織として、どの程度までPRすべきかという点については、組織内部でも議論があるところですが、今のところ慎重に対応しております。本研究科は、未修者が比較的多いのですが、未修者コースを受験するかどうか検討する際には、就職支援に関する情報が、例えば岡大法学部の学生にも伝わります。先輩が2回目受験を終えて、企業に就職するという具体的な情報が伝わりますので、そういう意味では、未修の志願者が増えるという効果はあると考えております。
 次に、弁護士会について、お答えします。岡山弁護士会全体でどうかというのは分かりませんが、岡山弁護士会には、法科大学院支援委員会という委員会がありまして、その委員会には非常に積極的に支援をしていただいております。また、岡山弁護士会の法教育委員会が岡大法学部、法科大学院と連携して、中学生・高校生に教育を行う枠組みが機能しておりますので、基本的には非常に積極的に協力していただいているという認識でございます。
 以上でございます。
【菊間委員】  ありがとうございました。
【山本座長】  ありがとうございました。
 清原委員、挙手をいただいていたと、あるいは御遠慮されたのかもしれませんが、もしあれでしたら、簡潔に御発言いただければと思いますが。
【清原委員】  ありがとうございます、何度も発言させていただいて。
 私は質問ではなくて、佐藤先生に感謝とお願いがございます。何よりも、岡山大学におかれましては、法科大学院がない四国の学生さんも受け止めながら、中国・四国において、とても重要な法科大学院の役割を継続してこられています。しかも、自治体や法曹界との連携はもちろんのこと、産業界との連携を強めていただき、法科大学院の学生さんの数は決して多くはないかもしれませんけれども、まさに中国・四国地域、さらには九州方面にも、岡山大学法科大学院の存在が法務の重要性を発信してくださっています。どうぞ引き続き、地域との連携を、そして総社市や瀬戸内市をはじめとする自治体の政策法務にも御貢献いただきまして、リカレント教育、そしてキャリアの皆さんの持続可能な活躍のために御貢献いただければと感謝を込めてお願いを申し上げます。ありがとうございます。
 以上です。
【山本座長】  ありがとうございました。
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日も大変活発な御議論をありがとうございました。文字通り、たくさんの貴重な御意見をいただきました。何より両大学からの御発表の内容は、今後、我々として、複数の法科大学院の連携、あるいは地域自治体、法曹・産業界との連携を考えていく上で大変参考になるものでした。委員の皆様と私、全く同じ感想を持ったものと思いますけれども、大変それぞれの御活動には感銘を受けたところであります。引き続き、このような活動を推進していっていただきたいと思いますとともに、そのような活動を横に広げていくことも、これは我々の役目ということになろうかと思いますので、各法科大学院で、またそのような様々な活動をしていただけるよう、そういった基盤を整備していくことを考えていきたい、最終的な取りまとめに生かしていきたいと存じます。
 尾島先生、佐藤先生、本日は誠にありがとうございました。
 それでは、最後ですが、次回会議日程につきまして、事務局からお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】  事務局でございます。本日も御議論ありがとうございました。
 次回の会議、12月を予定しておりますけれども、日程につきましては改めて調整をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【山本座長】  ありがとうございました。
 それでは、これにて本日の法科大学院等特別委員会を終了したいと思います。長時間にわたりまして熱心な御議論をいただきまして、本日もありがとうございました。
 


―― 了 ――
 

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