令和4年5月10日(火曜日)10時00分~12時00分
【山本座長】 それでは、所定の時刻をやや過ぎておりますけれども、第106回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。
本日も御多用の中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
本日はウェブ会議として開催しております。本委員会は公開が原則であるため、この会議の模様はYouTubeライブ配信にて公開をいたします。本日も活発な御審議をどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、初めに、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】 事務局でございます。
配付資料の確認に先立ちまして、事務局に異動がございましたので御報告いたします。専門職大学院室長、私、森下でございますけれども、佐々木に代わりまして4月に着任をいたしました。よろしくお願いいたします。
配付資料の確認でございます。
事前にPDFファイルをお送りいたしております。
本日は令和4年度の入学者選抜の実施状況についてと法学未修者教育の充実に向けてという2点の議事を御用意してございまして、配付資料の1-1から1-5までが議題の一つ目の令和4年度の入学者選抜の実施状況についての資料でございます。1ページ目から8ページ目ということになります。資料2-1、2-2が後半、法学未修者教育の充実に向けての調査研究の概要になってございます。そのほか、参考資料1、2といたしまして、委員の皆様の名簿と、あともう一つ、法科大学院機能強化構想ということで加算プログラムの審査結果が出てございますので、御参考に添付してございます。
配付資料の説明は以上でございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、早速、議事に入りたいと思います。
本日の議題は大きく二つありますけれども、まず第1点、令和4年度入学者選抜実施状況についてであります。
資料1につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【森下専門職大学院室長】 事務局でございます。
それでは、令和4年度入学者選抜の実施状況につきまして、調査がまとまりましたので御報告をしたいと思います。
資料を御覧ください。資料1-1、法科大学院の志願者数、入学者数、入学定員充足率の推移、資料の1-2が、その全体像をお示しする資料となってございます。
まず、1ページ目の資料1-1でございますけれども、上の段のグラフでございますが、志願者数につきましては、ここ数年8,000人強で、横ばいから微増といった形で推移をしてまいりましたが、今期は昨年度より2,000人程度増加をいたしまして、10,633人となってございます。また、下の段でございますけれども、入学者につきましても、昨年度の1,724人から240人ほど増加しまして、1,968人となってございます。これに伴いまして、上の折れ線グラフでございますが、入学定員の総数に占める入学者数の割合、定員充足率も88.1%と向上しているところでございます。
令和4年度は法曹コース、いわゆる3+2の制度の第1期生が学部3年での早期卒業を経て法科大学院に入学する最初の年度でございまして、その人数がこの中に含まれているところでございます。
次のページの資料1-2を御覧ください。今年度の入学者選抜の全体像の資料でございます。
左から、志願者数、受験者数、合格者数、そして入学者数ということで、一番上の黒い数字が今、資料1-1で御報告した35法科大学院全体の数字ということになります。その内訳を示す資料でございます。法曹コースの学生は、特別選抜入試で法科大学院に進学できますが、5年一貫型は協定関係にある法曹コース生を対象として、学部成績で選抜するものです。開放型は、協定関係にない法曹コース生も対象として、学部成績に加えて論述式で選抜をするものでございます。
3年早期卒業の法曹コース生の法科大学院の志願者数でございますけれども、スライドの左上で、5年一貫型が293人、開放型が248人、合計541人ということになっております。うち実際に合格をしたのが中央の列でございまして、5年一貫型が223人、開放型が66人の計289人ということになります。入学者数が右の枠囲いの列ということで、5年一貫型が167人、開放型が36人の合計203人、これが最終的に法曹コースから法科大学院に入学した数ということになります。
今年度は昨年と比較しまして志願者数で2,000人、入学者数で240人ほど増加をしているところでございますけれども、法曹コース生の志願者数約540人、入学者数約200人ほどが含まれているということで、これが主な増加の原因になろうと考えておるところでございますけれども、それを差し引いても入学者数も40名ほど増加をしておるところでございまして、これ自体はよい傾向なのかなと受け止めているところでございます。
また、資料1-2の下段に法曹コース以外の状況につきまして添えてございます。既修者、未修者コースの志願者は左下に10,092人、合格者数が3,428人、入学者は既修者コースに一般の既修者試験で入学した方が1,176人、未修者コースが589人となっておるところでございます。右に添えておりますが、この中には社会人経験者が345人、法学部以外の出身者が304人という形で含まれておりまして、昨年度はそれぞれ社会人経験者が302人、非法学部出身者が240人ということでしたので、これにつきましても多少増加をしてございます。全体も増えておりますのでそれに従って増えているところでございますけれども、法曹の多様化という観点からは、こうした傾向も続くことが期待されるところでございます。
残りの資料の説明は割愛させていただきますけれども、3ページ目の資料1-3は各法科大学院の平成30年度から令和4年度までの入学定員、志願者数、入学者数などの経年の詳細のデータでございます。4ページ目の資料1-4は、各法科大学院の今年度の入試のうち法曹コースの特別選抜の実施状況、資料1-2の内訳になります。最後、5ページ目の資料1-5は、志願者数、入学者数等の推移を平成16年度の制度発足当初からまとめたものとなっているところでございます。
以上、駆け足で恐縮ですが、事務局からの御報告は以上でございます。ありがとうございました。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、御質問等があればお願いしたいと思います。
なお、御発言に当たっては、この「手を挙げる」、挙手の機能でお知らせをいただければと思います。冒頭にお名前をおっしゃっていただいて、御発言が終わりましたら「手を下ろす」の操作を忘れずにしていただきたいと思います。
いかがでしょうか。
佐久間委員、お願いいたします。
【佐久間委員】 名古屋大学の佐久間です。
単なる質問なんですが、資料1-2に全体像がありますけど、それによると、5年一貫型で223人合格したうち、実際に入学したのは167人ということですが、その差は結局どこに行っているんですか。
【山本座長】 事務局のほうでもし分かるのであれば、お願いいたします。
【森下専門職大学院室長】 事務局でございます。
このデータですけれども、例えば併願をした場合などに複数のところに合格をするケースがございますので、合格者数までは合格した人数をそのまま計上しており、ほかのところも掛け持ちして合格していたりする場合で、入学まではしないというようなケースが含まれているので、若干、誤差が出ているのではないかと考えてございます。
【佐久間委員】 なるほど。じゃあ、5年一貫型に合格したんだけど、ほかのところに進学している可能性はあるということですね。
【森下専門職大学院室長)】 さようでございます。
【佐久間委員】 ありがとうございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、笠井委員、お願いいたします。
【笠井委員】 ありがとうございます。
すみません、あまり個別の大学のことを言うのはいかがかとも思うのですけれど、今の佐久間先生の御質問との関係で、京都大学では5年一貫型で合格をしても、法曹コースの修了が入学の要件になっておりますので、5年一貫型で志願していて合格はしたけれども法曹コースを修了できなかったという人はこの167人には入っていないということになるかと思います。
以上でございます。
【山本座長】 ありがとうございます。クラリファイをしていただいました。
髙橋委員、お願いいたします。
【髙橋委員】 ありがとうございます。一橋大学の髙橋でございます。
感想めいたことで恐縮ですが、法曹コース対象者の特別選抜についてコメントさせていただければと思います。
昨年度の入試は法曹コース最初の年次でして、学部3年生のみが対象となったものでありました。その意味では特別選抜の仕組みそのものについて評価するには時期尚早、少なくとも軌道に乗るまで数年は見ていただくということが必要ではないかと思っております。
その上でですけれども、この数字だけが表に出ますと、特に開放型入試について、極めてハードルが高いという印象が目立っているのではないかとも存じます。一定のスパンで評価が必要なところではありますし、各大学で制度が異なるので単純に数字を積み上げて考えるものでもないと思っておりますが、数字だけが先行して見えますので、特に学生の皆さんにこの情報がどのような形で伝わるのか、モチベーション等への影響がないかといった懸念が杞憂であればよいと思っております。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、大貫委員、お願いいたします。
【大貫委員】 大貫です。
まず、令和4年度の入学試験実施状況を御報告いただきありがとうございました。
今、髙橋さんがまさに直前におっしゃったことをまず冒頭に申し上げたいと思います。法曹コースの卒業生をも対象にした初めての入試であったわけです。その意味で結果には当然、関心が集まると思います。本委員会としても状況をしっかりと把握し、議論の素材とすべきであろうと思います。
ここから先は髙橋先生と同じなんですが、もっとも以前の委員会で私が申し上げましたように、法曹コースはまだ始まったばかりで、状況把握を行い、所要の対応は行いつつも、制度への評価はまだ先だろうと思っております。今、髙橋先生がおっしゃったように、この点は複数の委員の方がおっしゃっていたと思います。もう少し長い目で見ていただく必要性があろうと思います。
そのことを前提にしつつ、一大学の今年の入試について、少し事実と感想を申し上げたいと思います。これも先ほど申し上げた大前提がありますので、これで制度がどうのこうのということではありませんので、一つの事例としてお聞きいただければと思います。
私の勤務校に関して申し上げますと、5年一貫コースの入学試験はそれなりの志願者があり、入学者も確保できました。ただ、連携校によっては志願者の数は相当異なっておりました。初めての選抜ということでかなり慎重に対応されたところもあるように推測されます。これも推測ですけれども。開放型については、先ほど髙橋委員がおっしゃったように、全体の傾向と同じです。志願者も多くはなく、入学者も多くはありません。このことの評価も直ちにできるものではないと私は思っています。
ただ、数字の見え方がどうなるかという髙橋委員の御指摘はもっともだと思います。せめて委員会で少し感想めいたことを発言させていただければと思います。
まず、開放型は法曹コースを卒業すればどこでも受けられるという形で、入試の開放性を確保した制度だろうと思います。このことからすると、この入試枠があること自体が大変重要だと考えるべきだろうと思っております。
さらに、この入試枠で一定の流動性があること、他大学に行ってしまうこと。先ほど併願という御指摘が森下室長からありましたけれども、そういう問題だろうと思います。他大学に行くというのは当然あり得ることだろうと思っています。この枠だけの問題ではありませんけれども、そういう印象を持っております。
これはあくまでも一大学の話、サンプルは一つだけなんですけども、5年一貫型、開放型の入試をパスして入学してきた方についての印象を述べますと、明らかに基礎的能力が高いと私は判断しております。私の専門は中川教授と同じで行政法なんですけれども、自虐的に「六法に入れてもらえぬ行政法」と言っております。学生さんの手が回りにくい科目だろうと思っております。ところが、5年一貫型、開放型入試を通って入学してきた方に関して言うと、ここはしっかりと勉強しているという印象であります。そういう意味で、これもサンプルにとどまりますけれども、自校を見ている限りにおいてはいい人が入ってきたなという印象を受けております。
今後は、ロースクールにおいて法曹コースでしっかり力をつけてきた方をさらに伸ばす教育をしていくということが、もう始まっていますけれども、ロースクールに課せられた責務かなと思っております。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございます。行政法を学部段階でしっかり勉強していて、大変頼もしい発言であったように思います。
それでは、加賀委員、お願いいたします。
【加賀委員】 先生方がおっしゃったこととちょっと重なるんですけれども、各大学の特別選抜の状況を見てみると、国・公・私立5大学ぐらいがほぼゼロという状態になっております。小規模、中規模の大学を見ると1桁台の志願者数というような状態にあるわけですね。その意味では、先ほどから先生方おっしゃるように、少し長い目で見ないと、この単年度だけの推移で何かが測れるというのはちょっと難しいのかなと思っています。
志願者ゼロの代表格としての創価大学の私にちょっと説明させていただければ、本学は自校連携をしております。創価大学法学部との連携になっております。事情はよく分かっておるわけで、なぜゼロだったのか、簡単に言うと、学生たちが3+2、そして在学中に司法試験受験ということに躊躇をしたということが真相なんですね。言わばそこまで短時間で到達する自信がないというのが本学の学生たちの今回の実情でありました。
そうはいっても、次の学年の中には、早期卒業して特別選抜で法科大学院に行こうというメンバーはおりますので、ごく少数の、小規模の場合は顔が見えて、誰が行くかみたいなことが分かっちゃうわけですけれども、少し長い目で見ていただければと思います。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。清原です。
今、法科大学院入学者選抜の全体像のデータを拝見した後、委員の先生方から具体的な現状についてのお話をいただきまして、改めてデータとして示された量としての数値の裏に質的な状況があるということを確認させていただきました。したがいまして、髙橋委員、大貫委員もおっしゃいましたけれども、加賀委員にも実際の大学の状況をお話ししていただきましたように、少し長期的な視点を持って、特に5年一貫型の学生の学びの状況についてはプロセスを追って検証していただければと思いました。
それから、もう一つ、協定関係にある法曹コースであるよりも自校の法学部との連携のほうが望ましいのかなと思っておりましたら、加賀委員に、いやいや、慎重な学生もいるということを伺いましたので、そうした視点も含めて、ぜひ学生の意識あるいは学びの質の法科大学院に進学した後の効果などについても少し、長期と言っても3年とか、5年とか、そういうスパンの中で学生さんの状況を経過観察していただき、そして、次の議題とも関係いたしますけれども、指導においてもそうした学生さんの意識とか成績等を考慮した授業の運営をしていただければなと思いました。
いずれにしましても、受け入れていらっしゃる法科大学院の中で、特に大貫先生の、行政法についてもしっかりと学部段階で関心を持ち、身につけた学生さんがいるというのは、私は市長経験者ですので、本当に好ましく、頼もしい限りでございました。それは一つの事例かもしれませんけれども、象徴として重く受け止め、繰り返しになりますが、先生方がおっしゃいましたように、少し経過を慎重に、質的に評価していくということの意義を感じましたので、よろしくお願いします。
以上です。ありがとうございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、北川委員、お願いいたします。
【北川委員】 早稲田大学の北川です。
今まで既に委員の方々から指摘がされていた、このデータは長期的なスパンで見ていかなければいけないということ、そして、各大学間ごとに事情とか中身が異なってくるということを清原委員が強く御指摘されたところですけれども、同感しております。
そういう意味で、早稲田大学の事情を概括ですけれども少しだけお話をしておきたいのですけれども、先ほど一番最初の資料の中で、入学者数が増えていて、今回初めて始まった法曹コースの数字とかなり近いので、この多くは法曹コースのおかげだろうという御指摘がありました。ところが、私どもの早稲田大学ではこの法曹コースの人数が非常に少ない。そもそも定員に対して半分ぐらいしか志願者はおりませんでしたし、実際に入ってきた人数もさらに目減りしているという状況で、なぜだろうということが内部でちょっと問題になっております。まだ始まったばかりで1回限りなのでなぜだろうかというのはしっかりとは分からないのですけれども、自分が持っております法学部生に聞いたところ、加賀委員のおっしゃるとおり、3年卒業で法曹コースに入って、1年半で司法試験を受けるということを本当にやっていけるんだろうかという不安とともに、3年で無理に卒業するよりも、早く受かりたかったら予備試を受けながら4年制でも考えていって、それからロースクールに入ってもいいじゃないかという感覚を持っている学生がまだ多いのかなという感じを印象的には持ってございます。
本当にサンプル数の少ない一例、話ですけれども、御参考までに申し上げたいと思いました。
以上でございます。
【山本座長】 ありがとうございます。
それでは、潮見委員、お願いいたします。
【潮見委員】 ありがとうございます。京都大学の潮見です。
少々厳しい言い方になるかもしれませんが、お許しいただければと思います。先ほどから議論になっております数字の見え方に気をつけなければいけない、あるいは長い目で見なければいけない、そのことはそのとおりだと思います。そして、そのことをメッセージとして明確に伝えていく必要がある、これもそのとおりだと思います。さらに、これは髙橋委員がおっしゃられたように、そ うしないと学生たちに対して思わぬ影響を与えかねない、これもそのとおりだと思います。
その上でのことですけれども、この数字の見え方、あるいはその他のいろいろな情報もそうですけれども、社会とか国民一般に対して、数字のみから、あるいはそれに関連するデータからある特定のマイナスイメージを与えないように、きちんとしかるべきところで情報を発信あるいは説明していただきたいと思うということを申し上げたいところでございます。
確かに長い目、もちろん清原委員がおっしゃられましたように、長くと言っても2年、3年だと思いますけれども、その間でも、このような数字というものが独り歩きしますと、成果が出ていないのではないかとか、そもそも今回の制度設計がよかったのかどうかというような意見が必ず出てくると思います。とりわけ先ほど加賀委員がおっしゃられたような今年の分析、あるいは学生の意見、それから、先ほど直前に北川委員がおっしゃられたのも同じだと思いますが、そのような意識で学生たちが臨んでいるのだということになった場合には、今回の制度改革で、いろいろやり、法科大学院が頑張っていかなきゃいけない、それこそが法曹養成にとってはプラスの面につながっていくのだという部分に対して、社会、国民、あるいはそれを代表するという方々からの御意見が出てくるということを私は非常におそれています。
来年、在学中受験も始まります。そうなりますと、またその1年目の数字が出てくることになります。場合によれば、これはあまり考えたくはないですけれども、マイナスの方向にさらに議論を加速させることにもなりかねません。
今からのことが本当は言いたいことなんですが、長い目で見なきゃいけませんよ、今回の数字についてはこのような意味があるのですといったことを法科大学院側の方々がいろいろお話しすると、もちろんこれは大事なんですけれども、どうしてもマイナス評価をしたい、あるいはそれに対して批判的な意見を申し上げたいと考えておられる方々からすると、これは自己弁護に聞こえます。
そうなりますと、もちろん法科大学院側が適切な情報の発信、意味づけをするのは必要ですけれども、むしろこれは文科省の皆様方におかれましてもぜひ適切な情報の発信、それから説明を国民一般に対してしていただきたいと思います。何もこれは各法科大学院を守るという意味ではなくて、法科大学院制度を今回このように改革して、しかも在学中受験まで入れたというところをプラスの方向に持っていくために、ここでひっくり返されないように、あるいはさせないために、ぜひお力添えといいますか、むしろ御省として積極的に頑張っていただきたいなと思う次第です。
学生のほうへの情報発信と説明は、法科大学院が頑張らなければいけない。学生に対して、このような情報あるいはデータはこういうことである、あるいは今回の法科大学院制度の改革というものはこのようなプラスの面があり、皆様にとっては一つのチョイス、選択肢が広がったんだということは積極的に法科大学院側が言わなきゃいけない。これは法科大学院側の責務です。それと併せる形で、ぜひ文科省サイドの皆様方におかれましても、この点をよろしくお願いいたします。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございます。大変重要な御指摘をいただいたかと思います。
それでは、片山委員、お願いいたします。
【片山委員】 どうもありがとうございます。慶応義塾大学の片山でございます。
様々な委員の先生方からも御発言がありましたことの繰り返しになりますけれども、3+2も含めた新しい法曹養成制度改革が行われたばかりですので、長期的なスパンでしっかりと育てていくべきだという御発言は先生方に共通していたところかとは思いますけれども、まず、潮見委員からの御発言もありましたけれども、やはりこの単年度での成果をしっかりとPRしていく必要はあるかと思います。志願者は2,000人増えていますし、入学者も240人増えています。それから、御発言はございませんでしたが、競争倍率も2.24から2.54ということですから0.3ポイント増えております。充足率も10%増えております。
これは法曹コースが設けられたことによる一つの効果であろうかとは思います。ただ、法曹コースの定員分で入学者が増えたというだけではなくして、志願者も確実に増えておりますので、これは3+2効果であるとともに、関係諸団体がこの間、志願者増に向けて様々な努力を積み重ねてこられたことも相乗効果を発揮しているという点はありますので、来年度の在学中試験の結果を踏まえなければいけませんから、ぬか喜びは禁物であるということは重々肝に銘じておりますけれども、現時点での成果をきちんとPRしていただければとは思っております。それが第1点です。
それから、もう一点は、清原委員から質の保証の話の御発言がございましたけれども、全くそのとおりでございまして、数字だけを見て判断するというのは確かに今の段階ではよくないかと思いますけれども、数字だけを見ても、全体の入学定員とのバランスと比較しても、やはり今回、かなり偏りが出てきているかなという印象を受けております。そういう意味でも、数字だけではなくして、各法曹コースで実際にどのような教育が行われているのかというのをやはりそろそろチェックしていく時期が必要かなと思っておりまして、この点、認証評価が一応、現段階でアンタッチャブルということにもなっておりますが、質保証が重要であることは言うまでもありませんので、法曹コースの現状をしっかりと把握して、情報交換も必要でありますし、未修者でやってきているようなFD活動も法曹コースでも必要になってくるかと思いますので、そういう意味で、実際にどういう教育が行われているのかという現状把握が同時に必要かなと思いました。
それから、三つ目ですけれども、開放型に関しても数字の取扱いに注意せよというのは委員の先生方がおっしゃるとおりかと思いますが、他方、大貫委員から御発言がありましたとおり、枠があることの重要性というのは、公平さとかイコールフッティングという意味で重要であることは言うまでもないかとは思います。
他方、開放型に関しては募集定員がそもそもゼロというところもありますので、理念であるとかの見直しみたいなものも議論していく必要はあるかと思いますので、その点を併せて付け加えさせていただきました。
以上、3点でございます。よろしくお願いいたします。
【山本座長】 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
基本的には委員の皆様の御発言のトーンは同様のものであったように思います。志願者数の増加、入学者数の増加、充足率が向上した、そこに法曹コースが一定の寄与をしたとすれば、それはまず最初の成果としては一定の効果を上げたということかと思います。
ただ、当然のことながら、法曹コース、それから3+2という今回の改革の真価が問われるのはまさに今からということなんだろうと思います。来年には在学中受験の第1回が控えております。それに向けた大学院の教育の充実ということが何よりも求められているということだろうと思いますし、今、潮見委員からの御指摘のとおり、対外的な説明というものを今後どのようにしていくかということにも十分に配慮していかなければならないということだろうと思います。
いずれにしても、この問題は今期にとどまらず来期もそうだと思いますけれども、この法科大学院等特別委員会において十分なフォローアップをしていかなければならないところだと思いますので、今回はその入学の段階の最初の御報告であったということかと思います。
それでは、よろしければ次の議題、法学未修者教育の充実に向けてという点に入っていきたいと思います。
法学未修者教育については、昨年度の委託事業として、第一に法律基本科目の教育や反転授業等のICTを活用した教育の在り方、第二に、法科大学院入学前の導入的教育手法の在り方、第三に、補助教員の組織的・機能的な活用、この3点に関しまして、調査研究の委託が行われております。
本日はその調査研究を実施していただいた一般社団法人法曹養成ネットワーク、いわゆるPLE-Netから青野理事に御出席をいただいておりますので、まずその研究結果について御報告をいただき、その後、この法学未修者教育の充実について御審議をいただきたいと思います。
それでは、青野理事から、御説明をお願いいたします。
【青野理事・事務局長(法曹養成ネットワーク)】 紹介いただきました、一般社団法人法曹養成ネットワークで理事をしております青野博晃と申します。事務局長も兼任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、早速ではございますけども、当法人において昨年度受託をいたしました委託事業「法科大学院における法学未修者教育の更なる充実に関する調査研究」の御説明を申し上げたいと思います。
成果報告書本体は資料2-2、100ページを超える大部のものとなっておりますので、資料2-1として概要を作成しておりますので、本日はそちらに基づいて御説明をさせていただきたいと思っております。
まず、概要の1ページ目でございます。
御承知の委員の先生方がほとんどかと思いますけれども、本特別委員会第10期におきまして法学未修者教育の改善、充実に向けた議論が交されて、2021年3月末に議論の取りまとめがなされたものと理解をしております。
こちらの取りまとめでは、特に1点目、多様な経歴や能力に配慮した学修者本位の教育の実現、2点目、法科大学院間の協働よる全体の教育水準の向上、この二つが未修者教育の充実に向けた課題として整理をされ、課題を踏まえた五つの対応策が提言されております。
今回の委託事業は、この五つの対応策のうち、学修者本位の教育の実現と、効果的・効率的な学修に向けた法科大学院間の協働という対応策の二つについてさらに調査研究を行うというお題を課されておりまして、概要版の1ページ目に①から③で記載をしております三つのテーマが設定をされております。本委託事業ではこの①から③のテーマごとにそれぞれ第一事業、第二事業、第三事業と言い表しておりますので、本報告でもそのように表現をさせていただきたいと思っております。
なお、口頭ではございますけれども、本委託事業は法科大学院協会との全面的な協働体制に基づいて実施されたものでございまして、この場をお借りいたしまして、法科大学院協会の先生方には深く感謝を申し上げたいと思います。
さらに、本調査研究では、後に述べます第一事業のFD(ファカルティー・ディベロップメント)セミナーにおいてかなりの法科大学院教員の先生方の御参加をいただいて議論をした経過がございますし、また、第二事業、第三事業では、アンケート、モニタリング調査、ヒアリング調査など、各法科大学院の先生方に多大な御協力をいただいております。重ねて御礼を申し上げたいと思います。
さて、第一事業、法律基本科目の教育ガイドライン反転授業等のICTを活用した教育の在り方、こちらについての概要を御報告いたします。概要版の1ページ目でございます。
第一事業の調査研究の手法といたしましては、まず、優れた取組を行っている教員の先生を講師としつつ、また、法科大学院教育を実際に経験した実務家、弁護士でございますが、こちらをオブザーバーに招いて、憲法、民法、刑法の3科目について、FDセミナーを開催いたしました。
また、反転授業に踏み込んだ調査研究を行うということが今回のお題として設定されておりますので、アクティブラーニングに深い知見をお持ちの教員の先生、また現に授業でアクティブラーニングを実践していらっしゃる実務家教員の先生を講師としましてFDセミナーを開催しております。
計4回のFDセミナーでは、各回、20名から40名前後の法科大学院の先生方にオンラインで参加をしていただいております。
報告書本体では7ページ目以下にFDセミナーの概要を整理しております。
FDで得られました多様な意見に基づいて、さらに研究会を重ねて、今回の提言をまとめさせていただきました。
概要版2ページ目、報告書本体は42ページ目から、未修者教育の在り方についての共通した提言として、5項目を整理してございます。
そちらの提言という矢じりのところの①から⑤になりますけれども、まず、こちらの①、予復習全体のコーディネートについての提言が整理されてございます。御承知のとおり、法科大学院未修者1年次では、2年次から既修者と同じように授業を受けるということになりますので、既修者として入学した者と同程度の知識と理解、また事例に対する解決を示すという意味を含む知識と理解の運用能力を身につけるというのが必要なことになっております。
これは相当に困難が伴うものではないかとの指摘がこの研究会でなされておりまして、その実現のためには、単に学生の自学自習に委ねるのではなくて、教員が積極的に予習、授業、復習という学修プロセス全体をコーディネートしていかなければならないという提言に至っております。
そして、そのためには、②でございます、学生を消極的な授業の受け手とは捉えずに、学生が学びの主体である、教員はその導き手として学修を促すというアクティブラーニングの考え方が重要であるという指摘がなされております。
アクティブラーニングの具体的な方法論としては、③ICTを活用した反転授業として、オンデマンドによる予復習やウェブ上のクイズなどを実施して、未修者は学修レベルが入学当初から様々でございますので、その様々な未修者学生に対してそういったオンデマンド等を活用して効率的に学修を促し、その上で、リアルタイム授業のときには学生が主体的、能動的に学ぶというようなことの有用性が指摘されております。
他方で、このような学修プロジェクト全体のコーディネートをするためには、その下の④、予復習の具体的な所要時間の想定が必要であるという指摘がなされております。本調査研究では、大学設置基準を参考に、2単位の科目に対する授業外の予復習時間を4時間とするべきではないかとの提言を取りまとめさせていただきました。4時間というのは、2単位科目を1コマやると、その1コマに対して予復習に4時間という数字ですね。
これは、法科大学院においては必要な授業外の学修時間として現実的にその程度が必要であろうという指摘とともに、これを大幅に上回るような予復習を強いるということは、有限な学修総量の中で未修者が勉強をしていることに鑑みますと、他の科目とのバランスを欠くのではないか、また能動的な未修者の学習を損なうんじゃないかという指摘がなされたところでございます。
最後に、こちら⑤でございます。学生の学修総量が有限であるということと関連しますけれども、教員においては、効率的な授業設計として、どの段階で何をどの程度に深く教えるかについて配慮しなければならないというスモールステップの考え方の視点が重要ではないかと指摘をされております。
第一事業ではこの五つの提言をまとめまして、これは3科目(憲、民、刑)に共通する要素であろうと整理をさせていただきました。
報告書本体の43ページ以降でございますけれども、この五つの提言に基づいて、憲法、民法、刑法の3科目の科目特性に応じた授業の際の留意点でありますとか、具体的に反転授業をどういうふうに設計するのか、特定の単元を取り出しまして、実際にどのような授業プランがあり得るのかを具体的に検討しております。
また、アクティブラーニングのそもそもの理論的な整理として、報告書本体23ページ目以下に掲載をしております。お手隙の際にお読みいただければと思います。
第一事業の御報告は以上でございます。
第二事業に関してでございます。
第二事業は概要版の3ページ目からになりますけれども、法科大学院入学前の導入的教育手法の在り方に関する調査研究となります。報告書本体では72ページ目以降になります。
第二事業の調査研究の手法といたしましては、まず、法科大学院協会の会員校に対してアンケートを実施した上で、未修者コース入学予定者に向けてどういう教育をどのように行っているのかという実態を調査いたしました。また、適切な導入教材がどのようなものなのかというところに関しても意見を求めました。
こういった実態調査の分析は本体の73ページ目からになりますけれども、それらの分析を踏まえまして留意点を整理し、本委託事業では、未修者向け導入教材の在り方を研究するための一つの試案、資料として、動画教材を三つ試作しております。
三つの内容は、実体法と手続法の全体像を概観するという動画教材を民事法と刑事法で一つずつ作ってございます。また、同一事例を用いて、その同一事例に対して民事法からのアプローチ、刑事法からのアプローチでそれぞれ解説をしていって、民事法の考え方と刑事法の考え方の違いを学生に理解してもらうという動画を1本、この計3本を作成しております。動画教材そのものに関しましては今回、資料とはしておりませんけれども、委員の先生方には御覧をいただいているのではないかなと思っております。
動画教材における留意点に関しては、本体の76ページ目以降にまとめております。
動画教材は、作った後に法科大学院の未修者コースに入学予定者の学生さん、未修者コースに現に在籍をする学生さんを中心として、あと、教育に当たる教員の先生方に見ていただいて(モニター視聴)、その上でアンケートも実施して整理をさせていただいております。
こういった調査研究を踏まえまして、第二事業では、導入教育教材の在り方について、三つの提言に達しております。資料2-1の概要版では3ページ目の下のほう、報告書本体は85ページ目以降に記載をしてございます。
まず、①多様な視聴者層をカバーする教材の展開の重要性が指摘されております。未修者の入学当初からの学習レベルは大変様々でございまして、動画教材が設定をするターゲット層、どのような学生さんに焦点を当てるのかによって必要とされる教育教材の内容も様々になるかと思います。
一方で、今回かなり悩ましかったのは、分かりやすい動画を作ろうとすると動画そのものが長時間化してしまう。そうすると学生さんは頭に入っていかないという難点がございまして、本委託事業ではちょっと手法を変えまして、短編アニメーション動画を作成して、そういう動画で分かりやすく解説ができないかという試みをいたしました。先ほど申し上げたいわゆる民事法、刑事法からの二つのアプローチで違いを知っていただくというような動画がこの短編アニメーションに当たっております。
こちらの動画に関してモニタリング視聴とアンケートを取らせていただいたんですけれども、率直に申し上げまして賛否様々な御意見をいただいておりまして、ターゲット、難易度の設定は本当に難しいなとこの調査研究で改めて感じた一方で、動画教材の形式を例えばこういったアニメーションに変えておりますけれども、そういうふうに形式を変えて、難易度とテーマを意識して切り分けたコンテンツを複数作成するということをすれば、視聴者の、つまり未修者の学習レベルに合わせて動画教材を作成していくことができるのではないかというのが今回の提言となっております。
また、4ページ目になりますけれども、②動画教材の使用方法についても提言がされております。動画教材の使用方法としては、大変多様な場合が想定できて、自学自習、予復習の際に用いることもあれば、反転授業そのものでかなり中心的に用いることもあろうかと思っております。そのため、そういう使用場面ごとに、どういった配信方法にするのか、どういうふうに学生さんに見ていただくのかを検討する必要があるのではないかという指摘がなされております。
例といたしまして、今回の第二事業の調査研究では実際にこの調査研究に関与された教員の先生が授業でGoogleフォームを活用して動画教材を見ていただいているというようなことがございまして、そのような手法についても今回の調査研究で指摘をさせていただいているところでございます。
さらに、3点目、動画教材プラットフォームの構築について提言を整理しております。先ほどから申し上げているように、難易度やコンテンツが異なる複数の導入教育教材を学修に活用するためには、教員単独もしくは法科大学院単独でそれを複数準備していくというのはかなり困難な部分もあろうかと思っております。そのため、法科大学院、教員、こういったものをまたいで、複数の異なる導入教育教材に自由にアクセスができるような仕組みを構築していく必要があるのではないのかという指摘をさせていただいております。
以上が第二事業の整理になります。
4ページ目の真ん中から下のところでございます。第三事業について御説明を差し上げます。
第三事業は補助教員の組織的・機能的な活用に関する調査研究でございます。報告書本体では87ページ目以降になります。
第三事業、こちら補助教員の活用に関する調査研究における手法は、先行する法務研究財団の調査研究でございますとか、あと、文部科学省のほうで定期的にやられている教育状況調査もございますので、それらを踏まえつつ、法科大学院協会の会員校に対して、補助教員による学修支援を組織的・機能的にどういうふうに活用しているのかというアンケートを実施しております。
また、このアンケートを踏まえまして、法科大学院8校を選抜させていただいて、また法科大学院で補助教員を務めている実務家の先生、この法科大学院と補助教員それぞれについて、個別のヒアリングを行っております。ヒアリングの際には、例えば法科大学院の地域であるとか規模、合格率というところを見ておりますけども、そういった属性とか特徴などを踏まえまして多様な法科大学院にヒアリングをさせていただいておりまして、様々な実態を踏まえた意見を聴取できたのではないのかと考えております。
アンケート及びヒアリングを踏まえまして、総括として、補助教員の活用の教育効果としては、正課の授業を補うことにより、成績向上でありますとか学生のモチベーション向上につながるといった指摘がなされているところでございます。
そういった調査研究を踏まえまして、第三事業では二つの提言を整理させていただいております。
まず、①安定的・継続的・発展的活用の必要性でございます。補助教員の活用に当たっては、さきに申し上げましたとおり、教育効果を肯定するという意見が大多数を占めていたものの、実際に補助教員を活用するに当たっては、予算的な制約でございますとか、補助教員に負担を強いるという、そこの負担感の問題、大学側がどのような授業をしてほしいかといったものの調整の必要性、また、特に地方の法科大学院で指摘がありましたけれども、補助教員を担う人材確保が継続的になし得るのかといった課題の御指摘をいただいております。
そのため、提言では、キャリアパスを含めて、補助教員が法科大学院教育に関与していくための仕組みを確立するための方策を講じる必要があるのではないか、特に将来の法科大学院教育、法曹養成の担い手を確保するという視点からもこの点が重要ではないかという整理をさせていただいております。
また、5ページ目の下のところでございます、②情報共有とネットワーク構築の必要性も提言として整理をさせていただきました。補助教員の活用につきましては、各法科大学院の実情に応じて創意工夫、また独自の活用の仕方をされているという傾向が強く見られる一方で、補助教員の活用に関しての法科大学院をまたいだ議論であるとか情報共有というものが十分にされていないのではないのかという御指摘があったり、また、今回ヒアリングをさせていただいた補助教員の先生からも、これは同一大学または大学をまたいでの両方を指してございますが、補助教員間での交流であるとか意見交換を行いたいというような御意見もございました。
そのため、各大学における補助教員の活用について、取組の共有、議論をする場を設定する必要があるのではないか、また、教育手法、どういう教材を使うのかといった点を含めた補助教員間での意見交換や、実際の補助教員が授業をしていくに当たってのお悩み相談というような点まで含めて、ネットワークを構築して横のつながりをつくっていくのが重要ではないかという提言を第三事業では整理をさせていただいております。
以上が第三事業の説明でございます。
ここまで申し上げましたのは第一事業、第二事業、第三事業の調査研究御報告でございますが、少しだけ雑感を述べさせていただければなと思っております。
今回、第一事業では、アクティブラーニングの活用をしながらの学生本位の学修の在り方というテーマでFDセミナーを実施させていただいて、法科大学院協会の全面的な御協力をいただきながら法科大学院を超えて議論がなされておりまして、内容的にも大変有意義なものであった理解をしております。ぜひこのような取組は委託事業が終わった後も継続的なものにしていただきたいというのが今回、委託事業に参加をしましたメンバーの総意でございます。
また、これは時間的な制約からちょっと議論が及ばなかったところではあるんですけれども、本来、第二事業や第三事業の内容というのは、第一事業の提言で触れさせていただいている、例えばアクティブラーニングの活用であったり、復習時間の活用であったりというものの中で、ではどういうふうに動画教材を使うのかとか、どういうふうに補助教員を使うのかという第一事業を土台にしたある種のパーツとしての検討になるはずではないかと思っております。そういったパーツという部分を意識して、相互に役割を補い合いながら、さらに全体の議論を深めるべきであったのだろうと思っております。
最後に、法科大学院教育を実際に経験した修了生が今回かなり参加をさせていただいております。法科大学院教育の経験者の意見を積極的に活用することも教育の改善、充実というテーマからは重要ではないかと考えたところでございます。
長くなりましたが、私からは以上でございます。
【山本座長】 青野理事、詳細な御説明をいただきまして誠にありがとうございました。
それでは、審議に入りたいと思います。
ただいまの調査研究につきましての御質問、御意見でも結構ですし、あるいは未修者教育の課題全般について本日は意見交換がしたいと思っておりますので、そういう全般的な御意見でも結構ですので、どなたからでも御発言、御質問をよろしくお願いいたします。
それでは、潮見委員、お願いいたします。
【潮見委員】 ありがとうございます。青野先生、どうもお疲れさまでした。詳細な調査と分析の作業を、関係者の先生方も含めてですけれども、やっていただきまして、本当に感謝申し上げます。ありがとうございました。今回の御報告を伺って、先生方の大変な御尽力があったんだろうなと感じました。存分な成果もそこに示していただいておりますから、より一層そのように感じました。
その上で、青野先生が最後に雑感としておっしゃられたことについて、私は大賛成です。というか、もし今の御報告で雑感としてお示しになられたことを御発言されなければ、その点をどう考えているのですかとお尋ねをしたかったぐらいのものです。そういう意味では、これから先もさらに御面倒をおかけすることになろうかと思いますが、第一事業に関わる事柄について、むしろ第二事業で検討されたこと、あるいは第三事業で検討されたことをいかに具体的に取り込んでいくのかということをぜひお考えいただきたいと思う次第です。
その理由を申し上げます。第一事業ということで御検討された内容は大変勉強になりました。その上でのことですけれども、第一事業の課題のほうですが、未修者教育、とりわけ基礎科目に関する教育については、もちろん今回調査に当たられた先生方とか歴代の法科大学院協会あるいは日弁連の関係者の皆様方の御尽力、それから現場の教員の方々の努力があって、1年次の教育の内容、とりわけ授業の内容とかについては望ましいと考えられる方法が確立してきているのではないかと思います。
法科大学院制度が発足してから20年近くが経過しようとしております。当初はおびただしい数の法科大学院が存在しておりました上に、そこで教える教員も手探り状態の方々が多かったと思います。その意味では、未修者教育はこうあるべきであるという角度からのとりわけ基礎科目の教育の内容とか方法を検討して、その内容を共有する、そして活用していくということについては大きな意味があったと思います。
他方で、その後の20年ほどの時代を経た今を考えますと、現在まで残って成果を上げている法科大学院とかそこで教えている研究者の教員たちは、例えば未修1年次に何をどのように教えたらいいのかというコアな部分については、いろいろやり方はあると思いますけれども、しっかりと理解できているのではないかと思います。口幅ったい言い方ですけれども、報告書の中に書かれている基礎教育の実際の授業の内容とか方法については、これは民法に限ってということで申し上げるしかないのですけれども、恐らくは、未修者教育を担当されているそれぞれの法科大学院の多くの民法の先生方は、自分も、あるいは自分が所属している法科大学院もこのようなことはもう意識的に実践している、何も特筆するほどのものではないと感じられることが多いのではないかと思います。私個人はそのように感じました。
大変貴重なヒアリングで、その先生方が各自何をやっているのかというのはよく分かって面白かったですけれども、このような内容であれば、少なくとも私、私の周辺、それから私がこれまでいろんなところで拝見をしてきた今残っている法科大学院の民法の先生方の基礎科目の授業では実践されている。もちろんICTの活用のところはそこにいろいろ工夫の余地はありますけれども、少なくとも未修者に授業でどのように何を教えたらいいのかというところに関しては皆さんそれなりに頑張っておられて、むしろそれをさらに伸ばしていただきたいですよというぐらいのところかとも思ったわけです。
現場を預かり、また視察等をする目で見ましたならば、時代は確実に変わっています。新しい若い世代の教員もたくさん登場していますけれども、まさにロースクール世代の教員が大半ですし、あくまで民法に限ってですけれども、何をどのように教えるべきかという点については、私どもの世代と比べて恐ろしいくらい優れた素質を持っている人たちが多いです。それは自分たちが教わったからだと思います。個人的にはそう信じております。
その意味では、きれいごとを捨てて申し上げましたならば、基礎科目の現場の授業の内容、あるいは学修の後の予習復習はもちろん前提ですけれども、また、そこに重点を置いて検証をしていくというやり方はいいのですけれども、この先、先ほどの第二事業あるいは第三事業につなげる形で少し重点をシフトしていったほうがよいのではないかと個人的には感じました。その意味では雑感というところに大賛成です。
とりわけ申し上げたいのは三つほどありまして、一つは、これは第二事業ですけれども、特別委員会でも精力的に検討されている法科大学院入学前の導入教育をどうするか、それを第一事業にどうつなげていくのかというところを深掘りしていくというのは意味があるのではないかと思います。
それから、今から申し上げる二つがポイントですけれども、二つ目ですけれども、時間的あるいは難易度の関係で未修の1年次の授業で教えない、そして自習に回した応用部分を2年次以降に既修者との交流の中でどのように修得させるか、その検討がこれからやるべき課題の一つではないかと思います。要するに、これは自習なのか予習なのか分かりませんが、この部分について、どのようなツールを使って、具体的にどのような内容で教えていくのかということを考えなければならないように思います。
それから、三つ目、重点の二つ目ですけれども、今年も私は未修者を教えているのでこれもよく感じるところなのですが、未修1年次の授業で教えるべき範囲ですよとされているのですが、実はその基礎部分についての理解の定着についてはなかなか難しいところがあります。その理解の定着をどのようにやっていくのか。これはコンテンツのほうにも関わると思います。その意味で第三事業に関わるのですけれども、より充実した理解へ深めていくためには、それぞれの、とりわけ未修の1年次の学生さんたちにコンテンツ面を含めてどのようにサポートしていくのかということが大事なのではないかと思います。
三つほど簡単に申し上げましたけれども、これらこそ、これから先、頑張る必要があるのかなと思います。民法の部分に限ってということなので、ほかの領域とはちょっと違っているかもしれませんのでその分は割り引いて考えていただければいいと思いますけれども、もしお時間とかがありましたら御検討いただいたらありがたいなと思います。
最後に、また厳しいことを申し上げますけれども、申し上げた3点を抜きにして未修者の合格率は上がらないと私は思います。未修1年次の実際の授業でどこを削ぎ落としてここまで教えましょう、それを頑張って学生にやってもらって、あとは予習復習に任せましょう、そしてそれをサポートしましょうと言っても、そのサポートの部分をきちんとしておかないと、さっき申し上げたように、授業で教えることについては今いらっしゃる教員の先生方はかなりしっかりしていると思います。私の目から見てもちゃんと教えている方々のほうが大半です。そうなりますと、じゃあ未修者にとって、ここの法科大学院に入って、それから法曹に育っていって、それで今までの経験を活用して活躍していただく、そのために合格してもらうということであれば、さらに今申し上げたような第二事業、第三事業の観点から未修者をサポートしていくということをぜひ強く進めていただくという方向で、これはまた法科大学院各校それぞれの責務ではありますけれども、お互いに手を取り合って頑張っていければいいのではないかと思いました。
ちょっと長くなりましたけれども、最後の雑感に触発されて好きなことを申し上げました。どうもありがとうございました。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。清原です。
法科大学院における法学未修者教育の更なる充実に関する調査研究について、まさに青野先生からこの間の成果を御発表いただきまして、二つのコメントと一つの質問をさせていただきます。
一つ目でございますが、本報告書の14ページから15ページ、通し番号ですが、法曹養成ネットワーク、そして法科大学院協会の先生方が、法科大学院の教員の方も含めて、実務家の皆様とのネットワークでまさに未修者教育において「学修者本位」という視点で協働の取組をされたということは本当に意義が大きいと思っています。
最後に青野先生おっしゃいましたけれども、例えばFDセミナーとか、研究会とか、この委託事業に法科大学院の未修者教育を受けた当事者の方も報告者として加わりながら成果が上がったということですが、これを持続可能なものにするキックオフがこの研究ではなかったかなと思います。委託事業が終了されても、まさに法科大学院の皆様と法曹養成ネットワークの皆様との協働、コラボレーションはぜひ継続していただきたい。
なぜならば、まだ課題が残っていますし、きっと触発されていろいろな課題が見えてきていて、これを全体としてというよりも焦点を集めて研究された成果が本日報告されたと思っていますので、残された課題あるいは表れてきた課題について、先生方の負担にならない方向で、しかも実際の未修者教育の充実という達成感が成果として表れるような仕組みを継続していただければなと心から思いました。それが1点目です。
2点目は、第一事業についての取組で、特に今回、基本3科目の教育の在り方ということで絞られてはいますけれども、アクティブラーニングの考え方に焦点を当てられるとともに、「アクティブラーニング型授業」についても相当な検討をされて、報告書も随分紙数を割いてくださっています。高等教育でもアクティブラーニングというのはこのところ特にキーワードとして言われておりますけれども、では実際にどのようにそれを実現していくか、あるいはキーワードとして「逆向き授業設計」、あるいは「反転授業」、要するに今までのプロセスとは違う、逆向きであるし、反転授業も有効に生かすことが未修者には有意義であるということから、今までの授業をレビューされるとともに、実際にやっていらっしゃるアクティブラーニングの経験者から学んでいらっしゃるし、それを広げるための内容を整理した報告書を作っていただいていると思います。したがって、法科大学院の先生方でFDセミナーに参加されなかった皆様にもこの報告書の特に「アクティブラーニング型授業」については大いに参考になるのではないかなと承知しました。したがって、この報告書はぜひ広くあまねく普及していただきたい。
特に授業に悩む先生方はいらっしゃる。先ほどもおっしゃいましたけれども、若手の先生方のほうが上手なところがあるかもしれません。アクティブラーニングを受けて、それを反省し、批判しながら評価して自分なりの授業をつくっていらっしゃるかもしれないので、若い法科大学院の先生方からシニアの先生方が学ぶという方向性、そういう逆向き、反転授業もあるかもしれませんけれども、この「アクティブラーニング型授業」のことは理念ではなくて実践なので、しかも未修者には有効性が高いという成果も伺っておりますので、ぜひ広くあまねく流布していただければと思います。
3点目は、コメントと質問なんですけど、その意味でも、特に第二事業の法科大学院入学前の導入教育手法の在り方というところですごく大事な指摘がされていました。それは、これまでも酒井先生は私的な動画教材を作ってくださっていて、端緒となるスタートアップをしていただいて、さらに今回、アニメーションのことも含めて広げていただいているんですが、通し番号の10ページに、②として、そのために、「動画教材の使用方法では、例えばGoogleプラットフォームの利用を事例としてみた」とか、③では、「動画教材プラットフォームの構築が重要である」と提起していただいています。
先ほど来、法科大学院の協働が有効と申し上げましたが、特にこのような動画教材については、必ずしも導入の教材だけではなくて、一般の授業においても反転授業等での有効性もありますから、法科大学院間での共有とか、良い教材の利用可能性を広げるということはとても重要だと思っています。
しかし、ここで質問なんですね。そうはいっても作成コストの負担がありますし、作成する人材や仕組みが難しくてはなりません。容易で、そして機材なども例えば廉価でレンタルできるとか、最新のものが使えるとか、あるいは配信方法についても、クラウドを利用してセキュリティーを担保するとか、「利便性とコストのバランス」を取っていくことが極めて重要だと思います。
しかも、御提案では条件に合わせてより多様な動画教材が必要であるし、有益であるということです。そうであるならば、なんですが、それでは、今後、この作成コストの負担や共有をしていく際の制度的な壁であるとか、克服しなければいけない条件は何かあるでしょうか。私はこの御提案に極めて賛成なんですけれども、研究の過程で実現していくための壁があるとすれば早めに提起していただいて、そうした有効性を実現するための条件整備についてもこの特別委員会で検討ができればよろしいのではないかなと思います。
小学校あるいは中学校ではGIGAスクール構想で1人1台タブレットが実現しておりますし、高等学校、大学でも、学生、生徒の負担はありつつもそういう時代になっています。そうであるならば、法科大学院でもぜひ有効な条件整備をと思っておりまして、この点については、条件整備の方向性についての提案を少し聞かせていただければと思います。
以上です。よろしくお願いします。ありがとうございます。
【山本座長】 ありがとうございました。最後の点は御質問ということですが、青野理事からもしお答えいただける点があれば、お願いしたいと思います。
【青野理事・事務局長(法曹養成ネットワーク)】 青野でございます。清原先生、ありがとうございました。
今日は酒井委員が御出席をされておりますので、第二事業の御担当は酒井委員にやっていただきましたので必要であれば補足をと思いますけれども、御指摘の点は私たちも大変悩ましいなと思っておりまして、じゃあこれをプラットフォームにしていくというのはできるんだろうかという検討は我々のほうでもいたしましたが、課題としてちょっと感じるところの一つは、ありていに言えば、他人の作った動画をその先生は使いやすいのかと。御自身の授業に合うものを使いたいという意識は多分かなり強いと思うんですね。特に御自身の教育手法とか教え方に自信を持っていらっしゃる先生であればあるほど一般的に共通した教材が本当に使えるのかという疑問が出るんじゃないのかという指摘は今回の委託事業の中でもいただきました。
なので、今回は実務家教員が動画教材を作ることにして、例えば特定の何とか説とか、そういう話にあんまり行かずに、本当に基礎の基礎を実務家が教えるというようなところになるべく焦点を当てることにいたしました。教員の先生方の使いやすさをどのように確保するのかという点は課題であろうなと思っております。
また、権利関係のところが正直ございまして、特定の動画教材を作ると、やっぱりそれはその先生のノウハウでもありましょうし、そこには当然、著作権その他の権利がございますので、それを広くどこからでも学生がアクセスできるというような仕組みをつくった場合に、そういうのに御協力、御提供いただくというのは全体としてある程度、システム的に構築をしていく必要があるのだろうなと思っております。
また、率直に言うと、予算のところもございます。こういう動画教材を作りやすい環境がもうかなりあるなと思っておりまして、例えば第10期のまとめの際に酒井委員から出された動画はZoomを使って講義をしたのではなかったかと思っております。そうするとほぼほぼ費用はかかっていないというようなところもございます。今回の委託事業ではあえて業者さんに編集等々をお願いしておりましたけれども、今、ある程度安くはできるようになってきたなと。ただ、先ほど申し上げたように、複数のコンテンツを作っていくというところになってくると、その予算的な手当てを大学をまたいで全体としてどのように負担をしていくのかというところも課題になってくるのではないのかなと思っております。
酒井先生、何か御指摘があれば。
【清原委員】 ありがとうございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、酒井委員、今の点の補充も含めて、御発言をいただければ。
【酒井委員】 はい。では、今の青野理事からの御説明に若干補足をさせていただきたいと思うんですけれども、まず、冒頭お話のありました、どのような動画コンテンツが実際に先生方に使っていただきやすいかという点はかなり議論をしたんですけれども、先ほど潮見委員からまさに御指摘があった点と共通するなと思うんですが、授業で扱わないようなところですとか、授業ではここまでは説明し切れないんだけれど自修に任せておくのは心配だというようなところ、基本、自修で読むときにこういうところの説明で行間を埋めるようなもう一言があると未修者にはすごくうれしいなというような幾つかのポイントがあると思うんですね。なので、そういうところを狙って小さな動画を積み重ねていくというのが非常に現実的に重要なものになっていくのではないかなというのが私がイメージとして今のところたどり着いているところでございます。
あと、プラットフォームをどのようにつくっていくかというのも非常に悩ましいところがありまして、報告書の本体のほうでは引用しているんですけれども、TEDという英語教材向けの動画コンテンツを配信しているサイトがございまして、これはかなり人気があって広く活用されているサイトのようで、今回私も見たりしたんですけれども、広く一般に公開をされているサイトなので、例えばセキュリティーの問題ですとかはそういったところの会員制を緩くする程度でいいというような位置づけになると思うんですけれども、ただ、ロースクールの大学生向けの動画コンテンツの配信となりますと、先生方の知の集積である講義を配信するというようなことになってくる部分がございますので、当然、権利関係をきちんと整理させていただくという前提の調整ですとか、また、サイトのセキュリティーの問題は、先ほど清原委員からも御指摘をいただいたんですが、ダウンロードフリーでは到底成り立つものではないと思います。その辺りのセキュリティーをきちんとしていくということには相当の予算の裏づけは不可避なのかなと考えておりまして、やはりどこかに制作を進めていくような受皿になるある種、動画配信の母体が設置をされて、そこに複数口になるのか、どこから予算がつくのかということはありますが、そこにある程度予算を集めていって何とか運営していくというような形をつくれると理想的なのかなというところまでが今のところ行き着いている私のイメージでございます。
青野理事の御説明の補足は以上になります。
【山本座長】 ありがとうございました。
続けて御発言をいただければと。
【酒井委員】 ありがとうございます。
そうしましたら、私もPLE-Netのメンバーとして関与いたしました第一、第二、第三事業、主に第二ですけれども、その辺りについての補足と、あと、委託事業では補足し切れなかったさらに議論が必要と考える点について、それぞれ発言をさせていただきたいと思います。
まず、第二事業についてなんですけれども、御紹介いただいたとおり、試行的に3本の動画を制作したんですけれども、やはり私としても、大前提としてターゲットになる未修者をどのように設定するかという点が非常に難しいなと実感いたしました。
モニターアンケートも私、全て精読しているんですけれども、数字として見るとおおむね高評価ではあるのですが、やはり細かくコメントをいただいているようなものを見ますと、回答者の属性ですとか在籍している年次などによって内容ですとか難易度の評価にはかなりばらつきがございました。これは未修者教育全体に共通する課題だと思いますけれども、今後引き続き動画教材を展開するとすれば、それぞれの教材について、ターゲットは分析的に絞っていく、学修のどの段階にぶつけていくのかということも緻密に設定をする、そして最大限の教育効果を発揮できる内容を詰めていく必要があろうと感じました。
また、今回、サンプル動画の中で比較的短時間のアニメーション動画を1本作成しているんですけれども、この程度の短い動画教材であるとかなり柔軟に設定をして、いろいろなものを提供できる可能性はあるなというところは実感したところでございます。
続いて第一、第三についてなんですけれども、御報告いただいたとおり、各チーム、限られた時間の中でかなり密な調査、検討を重ね、報告書の提出に至っております。
第一事業に関しては、既に複数御指摘もいただいておりますが、この法科大学院等特別委員会での連携、協力の下、未修者教育についての研究が続いて、情報が共有される体制が継続するということが非常に重要と考えております。
特に今後の未修者教育について避けて通れない論点としては、在学中受験を施行する未修者にどのようなサポートをすべきかという問題があろうかと考えます。また、これと同時に、在学中受験を選択しなかった未修者にとってはギャップタームが長くなるということが不可避ですので、卒業後のサポートをどのように行っていくのかという問題が発生することになろうかと思います。
実際に在学中受験が始まった後でなければ未修者がどの程度、在学中受験をするのかとか合格率を底上げするためにどのような課題があるのかということは未知ですが、いずれにしても、各校の状況ですとか未修者向けの対策について、連携が不可欠であろうと考えます。
また、第三事業では補助教員の活用について調査研究されておりますけれども、それも同じく、在学中受験となればやはり未修者の属性に合わせたきめ細かいフォローの重要性が増すものと考えますので、その実情に合わせた補助教員の活用が一つの対策となり得るのではないかと考えるところです。このように新しい制度の中で生じる課題も直視をしながら、委託事業を第一歩として、このような体制を継続して検討を続けていくことが重要であろうと考えるところです。
次に、委託事業では補足し切れなかった点、そして、社会人未修者向けの教育の在り方ですとか、在職しながら学修する社会人に配慮したカリキュラムの在り方など、社会人に特化した未修コースの在り方について議論をすべきだろうと考えるところです。
本日、資料1-3で入学者の選抜状況を御報告いただいておりますけれども、競争倍率を見ましても、夜間を開校している筑波のロースクールと日本大学のロースクールの倍率がいずれも4倍を超えてきているというような数字が出ておりまして、社会人の志願者も増加したというような御報告もありましたが、これは大変興味深く拝見をしたところです。
検討すべき点は多岐にわたる論点だと思いますし、法曹コースが設立されていよいよ在学中受験の実施を控えるというようなハードな課題が重なることにはなると思うんですけれども、多様なバックグラウンドを持つ社会人の方々に未修コースへの入学を検討していただくためにも、まず社会人が履修しやすい教育体制を実現すべく改善が必要と考えるところです。
委託事業の第一事業のほうではアクティブラーニングを含めて未修者教育の在り方に関する非常に具体的な提案がされておりまして、これは社会人向けにも発展させることも期待できるのではないかと考えておりますので、今後議論すべき点として指摘をさせていただきたいと思います。
以上になります。ありがとうございました。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、富所委員、お願いいたします。
【富所委員】 読売新聞の富所です。
青野先生、それから酒井先生はじめ調査研究に関わられた方々、本当にどうもありがとうございました。
この中で私は数少ない法学未修者になりますので、その観点から一つ意見を申し上げたいと思います。
特に動画ですけれども、事前に拝見させていただいて、私どもの若い記者たちにもぜひ見せてあげたいなと思う内容でした。
新聞社に入ると、通常、多くの記者は地方の支局に出まして、そこで事件、事故や司法の現場の取材をします。私は経済学が専門でしたので、そこで初めて刑事法や民事法の世界に触れたわけです。法律の世界というのは、学んできた方とそうでない方の格差が非常に大きいので、両者が共通言語で話すことが極めて難しい。私たちの世代だと、「習うより慣れろ」ということで、現場で色々なことを経験しながら、あと、自学自習しながら積み上げていく形になるわけです。最初のうちは「おまえ、そんなことも知らないのか」と随分言われました。この「そんなことも知らないのか」というのが法学未修者にとってはかなり敷居が高くなる要因ではないかと思っています。
先ほど動画の使い方としては「基礎の基礎」というお話が出ていました。「そんなこと知らないの」と言われるのが嫌で、質問することさえ難しいという人も中にはいると思います。そういう方にもアプローチしやすくて、法律の入り口として学ぶには、非常に有効なのではないかと思いました。
動画の利用には、色々な権利の関係や著作権の関係があるのはよく分かります。ですが、法学未修者の、しかも野球で言うとキャッチボールとか素振りから始めなきゃいけないという方々には、これはどこの大学の権利だからとかいうことを乗り越えて、「協働」も研究の一つのテーマになっていることですし、法科大学院全体としてサポートしていくという体制づくりが必要なのではないかと感じております。
動画教材が充実してくると、逆に「では、授業はすべて動画でいいじゃないか」という議論にもつながりかねない面も一方でありますので、活用後、授業とどう接着していくのかというところがとても大事なのではないかと思います。その点の議論は今後必要になるかもしれませんが、まず法学未修者が入り口でつまずかないようにするための方策として、こうした動画を活用していくことはとても大事ではないかと私は感じております。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、笠井委員、お願いいたします。
【笠井委員】 ありがとうございます。
私からは質問になります。主に第一事業の関係だと思いますので青野先生への御質問になるかと思いますけれども、その前提として、大変貴重な研究をしていただきまして本当にありがとうございました。提言も含めてもっともだと思いますし、それから、酒井先生も関与された事例の教材についても大変興味深く拝見しまして、分かりやすいなと思った反面、今のお話を聞いていると、これでも難しい方はいらっしゃるんだなというのもちょっと思ったというところもあり、そういう感想をまず持っております。
それを前提にして質問なのですけれども、第一事業の提言のところでアクティブラーニングとICTの話は先ほどからよく出ているんですけども、私の質問は二つありまして、その一つが予復習についてです。予復習について4時間というのは制度上そうだと思いますし、これは未修者だけじゃなくて、既修者というか、2年次以降の教育でも同じだと思うのですけれども、先ほどから出ているどの辺りの人をターゲットにして考えればいいのかという辺りのコーディネートはすごく難しいなと思っております。
これ自体は先ほどの第二事業のお話でも出てきましたけれども、いろんな方がいらっしゃるわけで、特に未修の方には純粋未修の方もいらっしゃればある程度法律を知っている方もいらっしゃって、少なくとも一番トップの人ならば2時間で予習できるだろうみたいな設定はすべきではないと思うのですけれども、逆に、全員が2時間でできる範囲でしか予習の教材を与えてはいけないみたいなことになるとそれはそれで随分難しい話でありまして、その辺りについて、どの辺りをターゲットとして考えるべきなのかといったようなことがこの検討グループの皆さんの中でもし何か議論があったのであればお聞きしたいなというのが一つです。
それから、もう一つ、これも第一事業の中でコア・カリキュラムの話が少し出てきていまして、本体のほうでいくと41ページの注16、全体の資料のページ数で53ページですけれども、コアカリについて、1年次の段階における優先度を盛り込む形でバージョンアップをされと書いてあって、これも非常に重要な話だなと思いますし、コアカリ自体の改訂は今後、課題になってくると思っているのですけれども、私なんかはそういう1年次の段階で教えるべきことの抽出などがあったらいいなと思う反面、自分が未修の授業をやっていてもどこまで教えるべきかというのは日々悩んだ経験がありますので、実際に言葉にしてコアカリを作って、ここまでは未修、ここからは2年次以降とうまく分けられるかどうか、実際にやってみるとなるとすごく難しそうだなと想像するところです。これは度々意見が出たと注に書いてありますので、その辺りについて、検討メンバーの方々の中でどんな御意見があったのかなと。
結局、二つの点とも議論の状況を伺いたいという質問でございます。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、2点御質問ですが、青野理事からお答えいただけますでしょうか。
【青野理事・事務局長(法曹養成ネットワーク)】 青野でございます。笠井先生、ありがとうございます。
予復習のコーディネートのターゲットをどうするのかというところなんですけれども、すみません、そこのターゲットをどこまでにするのかというのはあんまり明確に議論はされていなかったような私の記憶ではあるんですが、ただ、たしかこの辺りでは純粋未修者の方をターゲットにして議論をしていたように思います。先ほどから話が出ていますように、未修者の方のレベル感って、私ごとですけれども、私も一応、ロースクール未修者で入りましたが、出身は法学部ですので、そういう意味ではえせ未修者なんですけれども、僕のような人間をターゲットにするというよりは、多分もう少し他学部、社会人から入ってきた学生さんが限られた時間の中で予復習をしていく、そのときにどういうコーディネートをすべきかという議論であったように理解をしておりますので、対象は純粋未修者であったのかなと思います。
ただ、この時間というところもかなり議論がありまして、一応、報告書上は4時間とお書きをさせていただいているんですけれども、本当にそれで足りるのかという意見もあれば、私のほうで覚えておりますのは、これはもっと時間を増やして週四十何時間勉強するべきとの意見について労働基準法は週40時間だよねみたいな議論もあって、学生のワークライフバランス、学習とライフのバランスみたいなところも結構議論になったところがございますというのが1点目でございます。
あと、コアカリの点に関しましては、そもそも今のコア・カリキュラム自体の改訂が大分なされていないので、特に民法とかは法改正もございましたので、そういったものに対応すべきではないのかという議論があったことを前提に、コアカリ自体が総花的過ぎる、詳し過ぎるのではないのかというような指摘がありました。コア・カリキュラムとしては存在しているんですけども、それを未修の段階でどこまでやるのか、これは3年間の最後の到達地点であればいいはずだ、そうすると未修の段階でどういうふうにするべきなのかという議論をもう少ししていくべきではないかといったような意見交換が特にされていたように私は記憶をしております。回答になっているような、なっていないようなでございますけど。
【笠井委員】 大変勉強になりました。今伺ったところで、純粋未修をターゲットにしなきゃいけないというところは、私自身もちゃんとできていたか反省しなきゃいけないかもしれません。
あと、1年次のコアカリに関しては、3+2との関係で、法学部でどこまで教えるかという話もあったかと思うので、その辺も参考になるかなと思いながら伺っておりました。どうもありがとうございました。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、久保野委員、お願いいたします。
【久保野委員】 ありがとうございます。久保野でございます。
感想、コメントと、笠井先生の質問とかなり重なってしまうんですけれども、質問をさせていただきたいと思います。
この調査研究事業につきましては、私自身もFDに参加させていただくなどしましたし、動画も拝見しまして、非常に有意義なものだと本当に感じているところでございます。
その延長のようなコメントになりますけれども、二つありまして、一つは、入学前の導入教育につきまして、先ほど酒井委員が最初の発言でおっしゃった目的設定といったものには大変共感するところがございまして、なかなか個別の科目では扱えないようなことについて、実務家の方が実際に活用した背景の下で語りかけるということの有用性を非常に感じます。こちらが共通教材で発達していくというのは1年次の個別科目の教育の充実に直接、間接に非常に役立つのではないかと思います。
もう一点の感想は、純粋未修者というターゲットのお話がたった今出ましたけれども、地域や規模による差はあるとは思いますけれども、純粋未修者は学校あるいは制度の中でやはり少数のところがありまして、孤立感や、情報の共有に限界があるように思います。その点、直接つながるのがもちろん一番いいとはいえ、そうでなくとも、補助教員の方が他大学と情報共有をしながら補助に当たっていただけている状態ですとか、あるいは教育内容について教員間や補助教員がこのように議論をしているといったような取組が、純粋未修者が情報を共有しながらある程度以上の自信と確信を持って勉強していくということに非常に役立つのではないかと感じたところです。
質問のほうですけれども、ただいまコア・カリキュラムあるいは共通到達度試験との関係が出ましたことと重なりますが、1年生でどこまでやるかということにつきまして、私自身は民法を専攻していますけれども、潮見委員よりはやや自信がないと申しますか、そこの振り分けはなかなか悩ましいところがあると感じている中で、今回の授業の中で既に実施された共通到達度試験と振り分けとの関係で今後に向けての御意見といったものが何かあれば教えていただきたいと思いました。
と申しますのは、1年生の共通教材的なものとして過去の共通到達度試験の問題というのは活用の方法を考えてもいいのではないかと感じているところなものですので、その辺りについてもし何かありましたら教えていただけましたらと思います。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、青野理事、お答えいただけますか。
【青野理事・事務局長(法曹養成ネットワーク)】 青野でございます。久保野先生、ありがとうございます。
共通到達度確認試験に関して触れられているのかというところなんですけれども、明確に共通到達確認試験そのものを題材として議論をしたという経過ではなかったようには記憶をしておりますが、ただ、共通到達度確認試験というものがあるので、そこに示されているレベルには達するような授業設計が必要なのではないのかというような議論がございました。例えば、今私が見ているのは本体の50ページ、大阪大学の片桐先生が憲法に御参加いただいておりましたけれども、憲法なんかですと、共通到達度確認試験で一定の水準の得点を得られる程度の基礎的知識及び推論能力を修得するという到達目標をある程度意識をしながらカリキュラムを作っていくというようなお示しはされているところかなとは思います。ただ、共同到達度確認試験そのものを題材的に扱ったというような経過はあまりなかったかなと記憶はしております。
【山本座長】 ありがとうございます。
それでは、北居委員、お願いいたします。
【北居委員】 恐れ入ります、北居でございます。
いろいろと勉強させていただきました。第一事業の中身で自分の授業も反省しきりでございます。
導入教育については、要するに法学の授業が必要なのかなという気が私はいたしました。学部1年で法学を学びますが、何を言っているのかよく分からないというのが実はボディーブローのように後で効いてくるのかというような気がいたしまして、動画にする、その他いろいろ工夫はございますけれども、中身としてやはり法学的な知識が基礎にまず出てくるというのは後々重要なのかなと非常に感じた次第でございます。
第三事業につきまして1点、青野理事にお伺いしたいんですが、ネットワークが重要だとおっしゃるのはよく分かる面と、もう一つ、ほかの補助教員やほかの大学の補助教員がどういうことをされているのかを知りたいという欲求もよく分かるんですけれども、それは1回2回聞いたらすぐ分かる話でありまして、このネットワークをどういうコンテンツ、中身で継続を図っていく見通しなのか、もし可能ならお聞かせいただければと思っております。
以上でございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
青木理事からお答えいただけますでしょうか。
【青野理事・事務局長(法曹養成ネットワーク)】 青野でございます。北居先生、ありがとうございます。
このネットワークの構築というのは、実は我々法曹養成ネットワークそのものも、法科大学院ごとではなくてそれを全体としてつないでいくというようなところを設立趣旨にしておりまして、一つの課題としては認識をしております。
例えば、メーリングリストがあります。法科大学院で補助教員をされる先生方が、所属するロースクールを超えてそのメーリングリストに「こんなことを今教えようと思っているんだけど、ここがうまく学生さんに理解をしてもらえないんですけど、どういうふうに工夫をされていますか」ですとか、「こんな教材を使っているんですけれども、もうちょっとこういうのはありませんか」ですとか、そういうお悩みとか御相談をしていくようなメーリングリストの作成であったり、あとは、補助教員のFD活動が一つ、意味があるのではないのかと思っておりまして、例えば、ロースクールで補助教員がどういうふうに教えていらっしゃるのかというのを模擬授業でやっていただいて、それをみんなで議論するというような研修、研鑽の場を大学をまたいでつくっていくというようなことはあり得るのではないのかなと思っております。
【山本座長】 よろしいですか、北居委員。
【北居委員】 ありがとうございました。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、菊間委員、お願いいたします。
【菊間委員】 ありがとうございます。
青野先生、取りまとめをありがとうございました。そして、この調査研究に参加した先生方に心から敬意を表します。ありがとうございました。
先ほど潮見先生の御発言にもありましたが、読ませていただいて、ロースクールは私の時代から格段に進化していると感じました。こんな授業を自分が生徒として受けたいなと思うような報告がたくさんありました。授業をどう進化させていくかということについては、今回の報告書にあるとおり、各先生方が努力してくださっていらっしゃるので、私からさらに追加して述べることはございません。
そうだとすると、ではなぜ未修者の合格率が伸びていかないのかという問題に直面します。3+2が始まったことで純粋未修者の方がたった1年で既修者に追いつくというのはさらに難しくなっています。入学時からスタートダッシュを相当しっかりかけないと1年では追いつけない状況にあるのだということをまず純粋未修者の方たちが感じながら1年間過ごせるかというところがポイントになるのかなと思います。
私の経験では、社会人ですと、家庭もある、子供の運動会も行きたいし、夏休みには家族旅行にも行きたいと。でも、そんなことをやっていたら純粋未修者が1年で既修者には追いつけないんだよと言っても、やはりなかなかそこのバランスがうまく取れなくてずるずる行ってしまうというパターンが少なからずありました。そこで、勉強をサポートするという観点ではなく、勉強する体制をサポートするような試みが有用ではないかと思いました。企業でも今、1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングで、若手社員に対してKPIを設けて、上司がその人の到達度をきちっと見ていって、1か月ごとにミーティングをしながらその人の到達度をサポートしていくという制度を取り入れているところは多いですよね。
ダイエットでライザップという企業があります。食べ物をコントロールして運動すれば痩せると誰でも分かっているけれども、自分自身を律しながら行動することができなくて、だから皆さんあれだけのお金を払って通っているという実態があります。勉強も、これをやればいいんだと先生方がすばらしい教材を出してくださって、それをやればよいと分かっていても、できない。そこが純粋未修者の難しいところだったりするのかなと思うので、そこまでやる必要があるのかという議論はあるかもしれないですけれども、補助教員の方たちなのか、もっと別の専門家の方たちなのかが入って、生徒一人一人に対して、その人のレベルに合った、いつまでにこれをやりましょうというサポートを徹底的にやっていけば、もともとやる気があって入った皆さんですから順調に伸びていくのかなという気がいたします。LS生活全般を通してやらないまでも、最初の半年間ぐらいのスタートダッシュが本当に大事だと思うので、そこで一人一人にそういう方がついて、勉強の予習復習、授業の取り組み方、日々の過ごし方等について、徹底的にアドバイスをしていくというやり方があるともう少し未修者の合格率は伸びていくのかなという気がしました。
以上です。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、井上委員、お願いいたします。
【井上委員】 ありがとうございます。
私も今の菊間委員のお話に少し近いかと思いますけれども、企業の中で若手育成等々もしておりますし、あと、コンプライアンス教育なども今、やはり動画にしております。昔は講義で一方的にお話をしていたのが、つまらなくて身につかないという声があって動画配信をしております。全く知らないこと、そんなことまで、というような基礎を御説明するのには動画は非常に効果的、イントロダクションとしてはとてもいいと思うんですね。
そのレベルであればどの法科大学院でも恐らくベーシックとして必ず共通に知っておいてほしいことですので、そういう意味では、できれば著作権云々をおっしゃらずにシェアードにしていただいて、皆さんで共有して、そこのベースをまず作っていただく。その上で、各教授の先生方の個性で、アクティブラーニングなり何なりでそれぞれの学生の更なるブラッシュアップをしていただくという関係性がよろしいのではないかと思います。
当然、知識は知って終わり、ではございませんので、法曹養成と言うからにはそれを使いこなしてアウトプットを出して、問題を解決していくというところまで導いていただく必要があると思います。そのためにはさらに深い授業が必要なのですけれども、受け身で仕事をする、授業を受けるというのが比較的、若者気質として言われておりますので、主体的に参加する学生をつくるという観点の何か仕掛け、あるいは働きかけもぜひお願いしたいと思っています。
企業の1on1で若手を指導する際も、与えられたものをやるだけではやはり丸はつきませんで、自ら課題を見つけていってそれにチャレンジする、そういう人が求められている時代です。学生さんも同じように、自分がどこができなくて何が必要なのかが分かれば解決は早いので、そのような主体的な学習意欲をどうやって促すかということも意識しながらプランニングしていただくと、かなりゴールが見えてくるのではないかなと思います。
補助教員の方々のサポートなどはそういう意味で非常に効果的と思いますので、イントロダクションの動画で見て「分かった分かった」というその気持ちを、じゃあ自分が実際にそれを使いこなして社会の役に立つためにはあと何をやればいいのかということを、具体的に学生がイメージして動けるようなプランにしていただけるといいなと思いまして意見を申し上げました。
ありがとうございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、片山委員、お願いいたします。
【片山委員】 慶応大学の片山でございます。
法科大学院協会の理事長ということで一言、御礼を申し上げたいと思っております。このたびは未修者に関する委託事業をPLE-Netさんのほうで受託していただいて、協会にも声をかけていただく形で協働して実施できて、一定の成果を得ることができたかと思っております。青野先生はじめPLE-Netの先生方に心から御礼を申し上げたいと思いますし、協会の各法科大学院の先生方にも、それぞれお忙しい中、第一事業、第二事業、第三事業に大変な御協力をいただいたことにも重ねて御礼を申し上げたいと思っております。
今日、委員の先生方からいただいた様々貴重な御意見をさらに反映させて、ぜひ継続的に未修者教育の改善に尽力していきたいと思うわけですけれども、一つは今後のFD活動ですけれども、今回、特に未修者の春学期の授業を念頭に置いてFD活動をやってきましたけれども、その後継続していかに基礎的な知識を深めていくかということも重要だということもありますし、協会としては、この秋には民訴と刑訴、両訴のFD活動を少し進めていきたいと考えているところでございます。
それから、もう一つはコアカリとの関係等を笠井委員のほうからも御指摘いただきましたが、コアカリ等の在り方を通じて、再度、法科大学院における実務家養成としての在り方、未修者教育の在り方も含めて検討していく必要があるということで、ここはカリキュラム検討委員会の中で中央大学の宮下先生を中心にコアカリ等の小委員会を設けて総論的な議論も始めていきたいと思っております。これらの点に関しましては、また協会関係者の皆様方あるいは実務家の弁護士の方々の御協力を得ることが必要かとは思いますので、改めて前出しでお願いのほうをよろしく申し上げます。
時間となりましたので、以上とさせていただきます。引き続き御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
【山本座長】 ありがとうございました。
ほかにはよろしいでしょうか。
あと、中川委員が途中退席をされましたが、事前に事務局のほうに御意見をお伝えいただいていると伺っていますので、事務局のほうから中川委員の御意見を御紹介いただけますでしょうか。
【森下専門職大学院室長】 事務局でございます。
途中退席されました中川委員から第一事業に係る記載に関しましてコメントをお預かりしておりますので、発言させていただきます。いずれも御賛同いただくという意見でございます。
まず、御提言のアクティブラーニングに関する記載につきまして、中川先生も実際に必修科目の行政法の中で展開をされていらっしゃるということで、教育効果の上がる方法である、共感するという御意見をいただいてございます。
また、本文の55ページ以降ですけれども、憲法、民法、刑法ごとにもう少し詳細な記載がございますが、その中の憲法学の部分の未修者の学修範囲について、ある程度厳選をしていくべきではないかというような提言がございますけれども、この部分について賛成であるということ。
また、憲法学の学修に当たりましては、条文を解釈して、事実を当てはめて、結論を出すという、いわゆる三段論法だけを学ぶのではなくて、実際に問題となっている公権力などの規定がどのようなもので、先例となる事案とどう違うのか、こういったバックグラウンドについてもちゃんと学修しなくてはならないんだといったことも提言の中に入ってございまして、こういったことにも賛同すると。その上で、こうしたことには特に行政法の学修との役割分担を意識的に行うことが重要ではないかというような御意見を賜っておりますので、御報告をいたしました。
ありがとうございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、よろしいでしょうか。
時間になりましたので本日の委員会はこの程度とさせていただきます。
最後になりましたけれども、このような充実した調査研究をしていただき、それをこの場で御報告いただきました青野理事をはじめとする一般社団法人法曹養成ネットワークの皆様方に私からも改めて御礼を申し上げたいと思います。
この三つの事業を踏まえての議論をしていただきましたので、おかげさまで議論の中身はかなり深まったのではないかと認識をしております。ただ、加えて、新たな問題点、課題の御指摘も多々いただいたかと思います。この法学未修者教育のさらなる充実という点は、前半で御報告をいただきました法曹コースの在り方と並んで、今期の当委員会の重要な検討課題であると認識しておりますので、この問題については、議論の仕方も含めて事務局とも相談をしつつ引き続き議論をしてまいりたいと思いますので、どうか引き続きよろしくお願いを申し上げます。
それでは、本日の議事は以上で、最後に事務局のほうから御連絡があれば、よろしくお願いします。
【森下専門職大学院室長】 事務局でございます。
次回の会議日程につきましては、また調整をさせていただいて改めて御連絡をいたしますので、よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、本日の法科大学院等特別委員会はこれにて終了いたします。
長時間にわたりまして熱心な御議論をいただきましてありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係