法科大学院等特別委員会(第103回)議事録

1.日時

令和3年6月29日(火曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 第11期の審議事項について
  3. その他

3.議事録

(1)座長の選任等について
委員の互選により山本委員が座長に選任された。
座長代理については,山本座長から松下委員が指名された。
また,山本座長及び事務局から,法科大学院等特別委員会の会議の公開に関する規則について説明があり,資料1-3の原案のとおり決定された。

【山本座長】 これより公開で審議を始めたいと思います。
改めまして、第11期、初回の中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会の開催に当たりまして、座長に御選任いただきました私から一言御挨拶を申し上げたいと思います。
今期は、前々期、前期に引き続きということでありまして、前々期、第9期におきまして、いわゆる法曹コースの創設ということが議論され、それが法律の改正という形で実現をいたしました。これは主として法学既修者に関する改革といってよいかと思いますけれども、前期、第10期は、それに引き続きまして、法学未修者問題を中心として取り組んで、法学未修者教育に関して一定の改革の提言をして、これも現在実施に移されているところであります。
今期は、正に第9期、第10期においてなされてきた改革が現実のものとなってくる時期に当たるということかと思います。そういう意味では、これまでの改革の成果を見据えながら、それにどのような問題があるのか、更に改革を図っていくべき点はないのかといったことを検討していくという時期に当たると思っております。
ただ、現在の法科大学院の状況に鑑みれば、単に改革の状況を見守るということだけでは許されない状況であろうと認識をしております。
私が、たしか6年前だったと思いますが、初めて座長代理に選任されたときから、毎回、御挨拶を申し上げておりまして、そのたびに、今期こそが法科大学院制度の正念場であるということを申し上げてきました。ずっとそういうふうに申し上げて、毎期正念場ということを言ってきたわけでありますが、今期も正にやはり法科大学院制度としては正念場の時期の2年間に当たるのではないかと思っております。
そういう意味では非常に難しいところではございますけれども、是非皆さんに活発な、自由濶達(じゆうかったつ)な御議論を頂いて、積極的に御意見を頂いて、それを成果として取りまとめていくことができればと考えておりますので、どうか御協力のほど、今期についてもよろしくお願いを申し上げます。
それでは、続きまして、松下座長代理からも一言お願いできればと思います。

【松下座長代理】 座長代理に御指名いただきました松下でございます。前期に引き続いて座長代理を務めさせていただきます。
座長代理というのは、ふだん余り表に出ることのない仕事なのですが、山本座長を支えて、闊達(かったつ)な議論が十分にできますように尽力したいと思いますので、よろしくお願いいたします。私としては、山本座長に事故がないことを祈るのみでございます。

【山本座長】 ありがとうございます。私も間もなくワクチンを接種しますので、多分、御迷惑をおかけしないでできるのではないかと考えておりますが、何かあったときは、是非よろしくお願いをいたします。
今回は第11期として初回の会議となりますので、文部科学省を代表して、伯井高等教育局長より一言御挨拶をお願いできればと思います。

【伯井高等教育局長】 文部科学省高等教育局長の伯井でございます。皆さん、おはようございます。
このたびは、第11期の法科大学院等特別委員会の委員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。また、山本座長、松下座長代理も、どうかよろしくお願いしたいと思います。
今期の開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
昨年から、法曹コースでの教育をスタートした、いわゆる3+2の新制度は、本年、初めての法科大学院入学者選抜を迎えるわけであります。文部科学省としては、引き続きプロセスとしての法曹養成制度を通じた、質の高い法曹となる道をしっかりと確保してまいりたいと考えておりまして、コロナ禍の不安定な状況ではありますが、多くの優位な学生が法曹コースを選択し、法科大学院に進学することを期待しておるわけでございます。法科大学院の教育の充実や、入学者選抜における質の確保の取組に向けまして、本特別委員会での積極的な御審議をよろしくお願いしたいと思います。
また、法学未修者教育の充実につきましては、多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れるという司法制度改革の理念を実現する上で、引き続き重要な柱の一つであります。第10期でおまとめいただいた議論を踏まえまして、さらなる検討をお願いしたいと思っております。
先ほど山本座長からも、法科大学院制度の正念場は今期も続くというお話がございましたけれども、広く社会に貢献できる魅力ある法科大学院の在り方について、大所高所より御意見をいただければと思います。
法科大学院をめぐる現在の状況を更に改善し、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度への信頼を取り戻し、より質を向上させていくために、今期も本特別委員会における活発な御議論をお願い申し上げ、御期待申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

【山本座長】 伯井局長ありがとうございました。
それでは、議事に入っていきたいと思いますが、その前に、中川委員がこの後御予定があり、退出されると伺っておりますので、まず、中川委員より簡単に御挨拶、それから御意見含めてお願いできればと思います。中川委員、よろしくお願いいたします。

【中川委員】 ありがとうございます。大変恐縮に存じます。まず、自己紹介ですが、昨年度より委員に参加しております中川でございます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
この後すぐ授業が始まります。今日は、委員から、どういうことを考えているかということをひとあたり聞く回であるということでしたので、事務局及び座長の御厚意により発言の機会を頂きました。
資料8に、論点の例がございます。ここについて、特に私も異論があるわけではなく、かつ法曹5年コースであるとか、あるいは法学未修者についての技術的な問題につきましては、議論が進む中でお話をすることがあろうかと思います。本日は、ここに挙がっていないもので、我々として意識すべきではないかということを1点だけ申し上げたいと思います。
それは研究者養成でございます。研究者養成は10年くらいかかりますので、今とりかからないともう全く間に合わなくなります。研究者養成といっても、どう養成するのかという議論をするわけではなくて、例えば論点の最初にございます5年一貫教育といった場合の教育目的に、研究者養成も入っているのだということを、我々だけでなく、法科大大学院に関心を持つ学生さんに意識づけをするという共通了解が得られるだけでもかなり大きいのではないかと思っています。
たまたま昨年知ったのですが、医学部の受験は面接をするのですが、そのための調書として、受験生は「なぜあなたは医学部を希望しましたか」というペーパーを書くのですけども、その中に、「医師又は医学研究者として、どのようなことをしたいですか」という問いが書いてあったのです。
高校生に医学研究者としての途まで聞くのかと驚いたのですけども、他方で,なるほどと思いました。これを応用するならば,例えば法曹コースに入ろうとする学部生に、「あなたはどういう実務家になりたいか」という聴き方だけをしてしまうと、私は実務よりも理論に関心があるという学生を完全にシャットアウトしてしまうことになると思います。それを排除することは非常に望ましくないだろうと思います。法科大学院、それから法曹コースは実務家養成だけでなく研究者養成も含めているのだと。そのような広い意味での法曹の教育なのだという共通認識を持つということをできればいいかなと思います。
この関連で中教審として併せて議論することがあるとするならば、司法研修所に入った後、自由に研修先を選んでよいという制度があるのだと思いますが、そこで大学を選ぶと選択肢を設けるべきではないか,ということがあると思います。大学を選ぶのは,別に研究者養成だけではなくて、実務家になりたいのだけど、金融法の最先端を学びたいとか、あるいは外国法を学びたいとか、そういうニーズもあると思います。必ずしも研究者に限った話ではないのですが、大学にも派遣先として門戸を広げていただければ,結果的に、研究者養成にもメリットがあるのではないかと思います。

(2)第11期の審議事項について
【山本座長】 まず、資料2-1について、司法試験の点ですが、丸山委員より御説明をお願いいたします。

【丸山委員】 それでは、令和2年の司法試験及び司法試験予備試験の結果について御説明をいたします。こちらは、本来であれば、この前の期であります第10期の会期中に御説明差し上げるべきものでございましたけれども、委員の皆様御承知のとおり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりまして令和2年の各試験の実施日が延期になった影響で、前期第10期の会期中には全ての資料をそろえて御説明することがかないませんでした。この点、最初におわびを申し上げます。
改めまして、今回、令和2年司法試験及び司法試験予備試験の結果につきまして、新しい委員もおいでになりますので、前回提出したものを含めまして、全ての資料を提出しております。資料のうち、2-1-1から2-1-11までが司法試験に関するもの、2-2-1から2-2-7までが予備試験の資料となっております。
司法試験の結果の概要を申し上げますと、資料2-1-2の枠の最上段を御覧いただくのが一番分かりやすいかと思いますが、こちらにありますとおり、令和2年の司法試験の結果は、合格者数が1,450人、合格率は39.16%でした。また、予備試験合格資格に基づく受験の合格者数は378人でございました。こちらは、2-1-2の表の下の方を御覧ください。
続きまして、令和2年の予備試験の結果です。こちらは資料の2-2-1を御覧ください。
こちらにございますとおり、合格者数は442人でした。このほか、大学や法科大学院別の受験状況、職種別の合格者数の推移などの資料が続いておりますので、適宜御参照ください。

【山本座長】 ありがとうございました。続きまして、資料3、4、5、7につきまして、それぞれ事務局から御説明をお願いいたします。

【佐々木専門職大学院室長】 資料3-1、通し番号50ページを御覧ください。
横置きのグラフになっております。
まず、3-1でございますけれども、法科大学院の志願者数でございます。令和3年度は、令和2年度と比較をいたしまして約180人の増加ということで、8,342人ということでございます。適性試験の廃止などで増加したと思われます令和元年度には届きませんけれども、平成28年度以降では一番多い数となっております。楽観視はできないものではございますけれども、志願者数は横ばい、やや底を打ちつつあるようにも見える状況でございます。
一方、入学者につきましては、下の表ですが、入学定員には変更ございませんので、そのままでございますけれども、入学者数につきましても、微増、ほぼ横ばいということで、1,724人ということになっております。定員充足率は77.2%でございます。
51ページを御覧いただきまして、入学者を、未修、既修に分けまして、社会人の状況というものを調べたものでございます。未修全体で24人増の557人、既修全体で11人減の1,167人でございます。このうち社会人は、未修が171人、既修が131人ということでございまして、いずれも減少しております。特に既修の分につきましては、30人弱の減となっております。
52ページ、53ページはグラフにあった表などを数字にしている表でございますので、また御参照いただければと思います。
資料の3-2、入学者選抜実施状況の表でございますけれども、これは大学別の状況でございまして、競争倍率を御覧いただきますと、おおむね2倍を超えております。2倍を下回る学校は2校にとどまっております。そのほか、一部の学校で大幅に志願者数が伸びている学校があることも注目をされるところでございます。
なお、恐縮でございますけれども、この中で、千葉大学の数字、令和3年度ちょうど真ん中の上から4段目でございますけれども、26人の入学者数の右隣、うち社会人、うち法学以外出身というのがそれぞれゼロになっておりますが、それぞれ7、3の誤りでございまして、大変失礼をいたしました。後ほど、修正をしたものをまたアップロードしたいと思っております。
資料4でございますけれども、これは56ページになりますが、法曹養成連携協定の現状でございまして、3年4月1日現在で64件になっております。なお、米印がついているものがございますが、これは地方大学出身者を対象とした地方大学枠の対象となる法曹コースのことでございます。
次、59ページ、資料の5-1でございますけれども、これは、前期おまとめいただきました議論のまとめを、私どもから法科大学院あるいは認証評価機関に通知をしたものでございます。
内容は、正に議論のまとめのエッセンスでございますので、多くの委員の皆様、既に御承知おきのところでございますが、幾つかだけポイントを絞って御紹介いたしますと、まず、60ページほどになりますが、ICTのところで、オンデマンド方式は望ましくないというこれまでの見解を改めまして、オンデマンド方式の活用の容認を示しております。
次でございますが、60ページ下段の(3)のところでは、有職(ゆうしょく)社会人におきまして、今のICT、オンデマンド等の活用という点でございますけれども、これは正に大学院が教育効果を高める手法としてどのように活用するか、そこに尽きるということで、この通知においては特に、どの程度だったらオンデマンド方式は駄目で、どの程度だったらよいというような、そういう定型的、数量的な基準は想定しておりませんし、示しておりません。
この点、正に、どのような体制が整えられていて、あるいはその効果がどうかといったことを大学院が証拠を持ってしっかり示した上で実施していただきたいという趣旨を示しているところでございます。
61ページでございますが、(1)の補助教員の部分につきましては、御議論いただいたとおりで、正に教員との連携体制及び補助教員間の連携を整えるということを示しております。その下の司法試験の活用の趣旨等につきましても、これまでどおりの趣旨を引き続きお示しをしております。
62ページでございますが、3の(2)につきましては、法学未修者向けの入学前の教育につきまして、学生の任意性などを阻害しない限り、大学の積極的、前向きな取組を対応するということでございます。これらを各法科大学院、あるいは認証評価機関にお示しをしているところでございます。
次は113ページに飛びまして、資料の5-2でございます。
これは、10期のまとめを踏まえまして、法学未修者教育に関する調査研究の委託事業を実施予定としておりまして、入札の公告を行いまして、7月13日に開札をする予定でございます。
内容としては、3点ございまして、一つは、法律基本科目の未修1年次のガイドライン、二つ目としましては、法科大学院の入学前の導入的な教育手法ということで、以前、酒井委員からも、前期、動画の御発表等頂きましたが、こちらを参考としながら、事例調査を踏まえて、更にサンプルとなる動画の作成を目指すものでございます。3点目としては、先ほども御紹介いたしましたような補助教員に関しまして、この活用に関する好事例等の収集、これらの調査研究を行う予定でございます。
次は159ページに飛びまして、資料7、加算プログラム等の資料になります。新任の委員の方を除きまして、既に内容等について御承知おきの部分が多いと思いますけれども、162ページに飛んでいただきまして、法科大学院の公的支援見直し強化・加算プログラムということでございまして、公立、私立の法科大学院の状況等を基にしまして、国立大学運営費交付金と私学助成の予算配分について、メリハリをつけた配分を行っているということでございます。
163ページのこの表が仕組みになっておるわけでございますけれども、司法試験合格率や入学者数等の指標に基づく基礎額部分と、各法科大学院から提案された5年間の機能強化構想と、それを実現するための取組を評価する加算率の部分から成りまして、基礎額部分は3つの類型で判断をされます。加算率部分につきましては、過去の様々な法科大学院の取組を評価いたしまして、最終的には6段階で評価をさせていただき、ゼロから50%の範囲で加算率ということで算定をいたします。基礎額は、司法試験合格率や入学者数などの内容から成りまして、加算部分につきましては、168ページ以降に各大学の取組もございますけれど、この各大学の取組をそれぞれ判断していくということになります。
なお、昨年度は、164ページに示しておりますが、コロナ禍で司法試験の延期など、いろいろイレギュラーな状況でもございましたので、算出可能な取組について判断するのに柔軟な対応を取ったところでございます。
結果等につきましては、167ページに一覧にしておりますので、また、これを御参照いただければと思います。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、丸山委員の説明も含めて、ただいまの説明につきまして御質問があればお出しいただきたいと思います。ただ、後で意見表明の時間を設けたいと思います。多分、御意見にわたる部分もあろうかと思いますが、その部分については、恐縮ですけれども、この後の議事でお願いしたいと思いますので、この時間帯はその質問に限って、もしあればお出しを頂きたいというふうに思います。
質問のおありの方は、挙手機能を使って手を挙げていただければと思います。いかがでしょうか。特段、質問はございませんでしょうか。
それでは、引き続きまして、資料6の法学未修者教育シンポジウムですね。これにつきまして、酒井委員から御説明をお願いできればと思います。

【酒井委員】 酒井でございます。よろしくお願いいたします。
では、私から、6月19日に開催をされました法学未修者教育に関するシンポジウムについて御報告をさせていただきます。
本シンポジウムの資料とされました、法学未修者教育プロジェクトヒアリング結果取りまとめ報告書とシンポジウム進行次第を本日の資料6として、114ページ以下に配付をしていただいておりますので、こちらに基づいて報告をさせていただきます。
法学未修者教育プロジェクトヒアリング結果取りまとめ報告書については「取りまとめ報告書」の略称で引用いたしますので、適宜御参照ください。
まずは、本シンポジウム開催に至る経過について、資料6の通し番号117ページに基づいて御紹介をいたします。
前期中教審において、法学未修者教育の改善に関する議論が進む中、日弁連法科大学院センターでは、法学未修者教育の内容、方法に焦点を当てた調査研究を行うプロジェクトの立ち上げについての検討が始まりました。また、法科大学院協会におかれても、中教審の議論の進行を受け、カリキュラム等検討委員会に法学未修者基礎教育等検討小委員会が設置されたため、この法科大学院協会と法科大学院センターとの協力体制の下、法学未修者教育の調査研究を進めていこうという構想が生まれました。
このような協力体制の下、まずは法科大学院未修コース出身者に対するヒアリングを実施いたしまして、更に未修コースの指導に当たる教員の先生方に対するヒアリングを実施いたしました。このヒアリング調査は、当初からその結果と調査により得られた法学未修者教育の手法をシンポジウムにより公表、共有することを予定して実施されたものとなります。この調査を経まして、その成果を共有するため、日弁連主催、法科大学院協会共催という形で本シンポジウムが開催されたという経過でございます。
では、シンポジウムの内容について御報告をいたします。
まずは、114ページの進行次第を御覧ください。
前半は、取りまとめ報告書についての報告から始まりまして、4名の法科大学院教員の先生方による法学未修者教育の実践例が報告されました。また、後半では、報告者をパネリストとするパネルディスカッションと質疑が行われました。
では、まず、法学未修者及び教員に対するヒアリング結果について、本プロジェクトの研究代表である日弁連法科大学院センター副委員長、宮城哲先生から取りまとめ報告書の説明がされております。
118ページから119ページを御覧ください。
ヒアリング調査は、まず、未修コース出身の若手弁護士17名を対象として、法学未修者がいつ、どのようなきっかけで伸びたかという、いわゆる成長曲線の確認から始めまして、法学未修者にとって有用であった授業、また、更に踏み込んで、法学未修者にとってマイナスであったと感じられた授業、いわゆるバッドプラクティスも、ヒアリングを行ったという説明がございました。
更に有用であった授業について詳細にヒアリングを行い、その取組を共有すべきと思われる教員の推薦を受けました。その上で、ヒアリング対象となる教員の先生方を選定させていただきまして、教員4名からのヒアリングを行ったという経過の説明がございました。
未修コース出身者からのヒアリングについては、法学部出身法学未修者であっても、成長曲線がかなり後半に偏ったという回答をしている方もいた点などが紹介をされ、改めて、法学未修者の成長曲線が個人によって様々であるということが確認をされました。また、補助教員による文書作成指導が有用であったというヒアリング結果も紹介されました。
また、このヒアリングでは、バッドプラクティスを調査の対象にするという点に大きな特徴があったと思われますが、例えば入り口部分のテーマに関する講義だけが2時間続いたことですとか、自説の紹介に終始する授業があったことですとか、法学未修者が学習にマイナスであったと感じた講義がどのようなものであったかという点も紹介がされました。
グッドプラクティスはもちろん、このバッドプラクティスに関する報告部分が非常に赤裸々に紹介されておりまして、そういった意味で、資料価値の高い報告となっているのではないかと思われます。また、取りまとめ報告書では、調査に基づき、未修合格者の声を踏まえた未修教育の改善方策についての考察が加えられております。
また、教員ヒアリングでは、本シンポジウムに登壇を頂いた4名の先生方から講義資料等の具体的な提供を受けまして、担当されている法学未修者向け科目の詳細についてヒアリングが実施をされました。
取りまとめ報告書においては、各教員の先生方からのヒアリング結果はもちろん、法学未修者教育の取組における共通要素の抽出も試みられておりまして、法学未修者にとって望ましい教育内容、方法についても考察が加えられております。
ヒアリング対象となった先生方の教育内容は、本シンポジウムで個別に発表いただきましたので、引き続き御報告をさせていただきます。
以上のとおり、この取りまとめ報告書は、踏み込んだヒアリングを基に、法学未修者教育の内容、方法について検討が加えられたもので、大変充実した資料となっているかと思います。
続きまして、ヒアリングに御協力を頂きました、東北大学の成瀬先生、刑法御担当、北海道大学の池田先生、民法御担当、神戸大学の田中先生、民法御担当、一橋大学の只野先生、憲法御担当には、本シンポジウムに御登壇を頂きまして、それぞれ御自身が担当されている法学未修者向け科目の内容について、実際の講義内容を惜しみなく公表し、工夫をされている点などを御説明いただきまして、大変示唆に富む発表を頂きました。
特に印象的な御発言について、簡単に御紹介をしたいと思います。
まず、入学前の事前学習についてですが、動画による入門講座を実施されており、そのレジュメのほかに、過去2年分の定期試験の問題ですとか解説を提供されて、さらには外部の理解度確認テストも活用されて、入学前段階の学習を充実させているという御紹介がありました。さらに、その受講状況ですとか確認テストの成果は、学習カルテのような形で活用して、情報共有がされているという御紹介もありました。
また、事前学習については、ガイダンスを実施し、参考文献を示して予習課題を与えているという紹介もございました。学習効果を高める観点から、法学未修者向けに入学前の導入教育を行うことが意識されていると感じました。
また、未修1年次の学習の目標をどこに置くかという点についてですけれども、法学既修者の入試をクリアできることを意識させており、前期は重要な概念についての正確な定義を理解し、その定義を自分で的確に説明できることを目標として、後期は論述能力の肝要を重視するといった学期ごとの役割を明確に区別しているという御紹介もございました。
この学期ごとのカリキュラムの組み方という点では、抽象度の高い分野を後期に回して、前期には具体的なイメージを持ちやすい分野を取り扱うこととして、初学者に理解しやすいカリキュラム構成を意識しているという御紹介もございました。
また、法学未修者教育に当たっての共通の視点として、論文能力の養成を強く意識されているという点が各先生方から挙がりました。1年生の段階で、簡単な事例について思考プロセスを理解した上、法的三段論法を意識した論述を展開できることを目標に文書作成指導を行っているという御紹介もありまして、1年生後期までの時点で、一定の論文能力を身につけさせようとの目標を掲げ、指導を工夫されているという印象を受けました。
そのほかには、繰り返し学習することの重要性を意識して1年生から3年生のカリキュラムを組んでいるというお話ですとか、法学未修者のモチベーション維持のために、若手弁護士の座談会などの企画を用意しているという工夫ですとか、また、卒業生の若手弁護士に学習アドバイザーを依頼し、キャリアデザインにも資する機会を提供しているというお話もございました。
卒業生の実務家と身近に接することで、将来のビジョンを明確に持って、日々の学習のモチベーション維持の効果が期待できるというところかと思いますが、この観点から、若手の実務家をうまく使っていただいているという印象を受けました。
効果的に実務家によるサポートという点ですけれども、やはり文書作成指導も実務家がサポートする有用性が多く指摘されておりました。教員による文書作成の基本的な指導に重ねて、実務家が文書作成のトレーニングを繰り返すことで、文書作成能力を向上させるという、効果的な役割分担が実践されているように感じました。
また、自学自習をする力の養成を促しているという御発言も、法学未修者教育の一つの重要なポイントとして印象に残るものでした。
各先生方のお話は以上には尽きませんが、取りまとめ報告書にも詳細のヒアリング結果が掲載をされておりますので、是非お目通しいただきたいと思います。
最後に、登壇された先生方をパネリストにお迎えしまして、法科大学院センター委員で、9期まで中教審の委員も務められました日吉由美子先生がコーディネーターを務められまして、パネルディスカッションが行われました。
そのパネルディスカッションでは、まず、各先生方の発表から抽出されました、未修1年目の教育は基礎に絞る、枝葉の部分は落とすといった共通のポイントについて議論がされました。何を基礎と位置づけるかという興味深いテーマについて、ある登壇者の先生からは、ほかの分野や科目を学んでから学習した方がよいと思われる部分については、思い切って落とすというメルクマールが示され、また、コアカリキュラムを意識しているという指摘もございました。
さらに、司法試験の論文で問われるものは基礎であり、短答のみでしか問われない分野は周辺分野という切り分けの視点も示されました。法学未修者に何をどの程度教えるべきかという悩ましいテーマについての議論でもあり、大変興味深く拝聴いたしました。
最後に、会場との質疑もされまして、未修1年次の判例学習について、どの程度取り扱っているのかという質問に対し、各パネリストから意見を頂きました。全体として、未修1年目で判例の全文を通読させることを日常的にしているという意見はなく、判例百選レベルの教材で基礎を理解させているといった御意見や、1年生で判例を直接取り上げることは難しいといった意見、また、判例のエッセンス部分を示して情報を整理させるような読み方をさせているといった御紹介もありました。
以上がシンポジウムの概要の御報告となります。これに尽きない大変充実した内容が多くございました。法科大学院での実際の教育内容が公表、共有をされ、各法科大学院法科大学院の教育に還元されていくという貴重な機会となったものと思います。
また、日弁連主催のシンポジウムに学者の先生方に御協力を頂くことは多々ございますが、準備段階から緊密に協力し合っての試みは初めてと言ってよいことだったかと思います。実務家と研究者とが連携し、法科大学院教育の改善に取り組んでいくという意味でも、意義ある機会であったと感じております。
酒井からは以上になります。ありがとうございました。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、片山委員から何か補足いただける点はございますでしょうか。

【片山委員】 どうもありがとうございます。法科大学院協会の理事長を務めておりますので、法科大学院協会から一言コメントをさせていただきたいと思います。
法科大学院協会は、先ほどの酒井委員からの御紹介にもありましたとおり、本プロジェクトに主任である山野目章夫教授(早稲田大学)、それから副主任である小池信太郎教授(慶應義塾大学)を中心としたカリキュラム等検討委員会のメンバーでヒアリング、インタビューの段階から参画してまいりました。報告書及びシンポの内容につきましては、酒井委員からの御報告のとおりでございます。グッドプラクティス、バッドプラクティス、いずれも法科大学院の現場に立つ協会会員校の教員にとり、大変参考になるものであったかと思います。
特に今回のシンポジウムで御登壇いただいた、まさしくグッドプラクティスを実践されている、4大学の先生方は、非常にお忙しい中、長時間のヒアリングにも御協力いただきましたし、また、一種、企業秘密とも言える授業のノウハウを惜しみなく御披露くださったことに感謝を申し上げなければいけないと思っております。
私も含めまして、法科大学院の教壇に立つ会員校の教員の多くが、御報告、パネルでのディスカッションから、自身の授業、そして、法学未修者教育のカリキュラムの改善に向けて、大きな示唆を得ることができたのではないかと確信しております。改めて、大学の垣根を越えたFD活動の重要性を痛感した次第でございます。
実は、今回のシンポジウムの参加者数は、2時間半のシンポジウムの間、常時、ほぼ140人を超えておりまして、最大150人に達しました。日弁連から御提供いただいた申込者177名の内訳の数字から私なりに推計をしますと、弁護士を兼ねておられる方も含めて約90人の法科大学院教員が参加したものと思われます。このうち58名の方がシンポジウム後のアンケートにも御回答くださっております。
今回のプロジェクトの意義というのはその内容もさることながら、ヒアリングからシンポジウムでの報告、パネルを通して、日弁連法科大学院センターのお力をお借りしつつ、法科大学院の垣根を越えたFD活動を実施することができたという点にもう一つの大きな意義があるのではないかと考えております。
協会では、この後、未修者プロジェクトからバトンを受け継ぐという形で、夏か秋以降、修了生の若手弁護士を中心とした団体である法曹ネットワークさんと連携をして、未修者教育の充実化に向けた取組を進めていければと考えています。
それは、ICTや反転授業の手法を用いた憲法、民法、刑法の法律基本科目の授業の在り方を検討していければと思っておりますが、その中核となるのが、カリキュラム等検討委員会が中心となって企画する協会内FD活動ということになります。今回のシンポと同様に、グッドプラクティスとされる授業を素材として、未修者教育の在り方について、法科大学院の垣根を越えて、全国の法科大学院教員で意見交換を行う場を提供できればと考えております。
是非、今回のシンポ、プロジェクトの成果を踏まえて、さらに、それを進化、発展させることができればと考えている次第です。この特別委員会の委員の先生方、特に法科大学院の先生方の皆様には、また後日、案内を差し上げますので、御所属の先生方に広く御周知をいただければと思っております。
以上で追加説明を終わらせていただきます。貴重な時間、大変ありがとうございました。失礼いたします。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの酒井委員、それから片山委員からの御報告につきまして、何か御質問等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
私自身もシンポジウムに参加させていただいて、グッドプラクティスはもちろん、バッドプラクティス等では大変参考になって、自分の授業のやり方をこれからまた変えていかなければいけないなというふうに痛感したところはございました。
よろしければ、引き続きまして、今日の中心的な審議の対象であります、今期、第11期の審議に関する主な論点についての議論に入っていきたいと思います。
それでは、まず、事務局より、資料8についての御説明をお願いいたします。

【佐々木専門職大学院室長】 資料8を御説明いたします。これは、11期の審議に際しまして、論点と考えられることにつきまして、仮に事務局で例示的に整理をしてお示しをしたもので、本日の御議論、あるいは御発言の参考にしていただければというのが趣旨でございます。
まず、今期の課題として考えられる一つといたしましては、法曹コースが今年度、正に入学者特別選抜の1回目を迎えるタイミングでもございまして、新たなこの5年一貫教育の着実な実施に向けまして、法曹コースがより高め合う方向でいろいろ取り組むべき点等について整理をさせていただいているところでございます。
一つは、例えば法曹コースの特別選抜の実態の把握と着実な実施に向けた方策ということで、教育課程や進級、あるいはその特色ある取組等につきまして。
二つ目といたしましては、法曹コースと法科大学院の有機的な連携ということで、例えば、法曹コースにおきましては、遠隔地で協定を締結する場合などもございますので、こういった連携が有機的、実効的になっているかという意味での工夫の状況。
3点目でございますけれども、今回の制度改正に併せ、在学中受験がスタートする中で、司法試験の実施時期が従前の5月から7月中下旬に変更されます。正に、それに必要な所定科目範囲をどう配置していくか。あるいは3年次の学事暦をどうしていくか。こういった問題も御検討ということになるかと思います。
4点目といたしましては、この5年一貫教育を見通しました魅力あるカリキュラムをどう作っていくかということで、法科大学院の3年次後期等、正に先ほども少しお話ありましたように、司法修習との効果的な接続、あるいはその展開・先端科目や法律実務基礎科目、臨床科目等も含まれると思いますが、こういったものの特色ある取組、そして、司法試験の合格者がそういった3年後期に混在することへの対応、そのほか、5年間でございますので、法学部から法科大学院ということで、正に法学部教育をどう充実するか、こういった点が考えられるところでございます。
次に、第10期の最後のまとめをしていただいた法学未修者教育のことですが、さらなる御検討ということで、これは資料7にもありますような委託研究事業の成果を随時、御報告をさせていただきながら、その在り方やアウトプット、改善策を具体化していくものと理解をしております。
そのほか、残されている課題の一つとして、共通到達度確認試験の在り方があるかと思います。今年度、本格実施3回目を迎えることから、令和6年度以降の方向性についても御議論いただくものと考えております。
その他でございますけれども、やはり今後の志願者増、あるいは法科大学院、法学部への志望者の増加を目指して、裾野の拡大を図っていくことが重要かと考えております。そのためにも、法科大学院や法学部の魅力の発信とともに、社会から認知されて期待される存在であることが重要で、法曹のみならず、地域社会にその機能や役割を理解していただいて、そういう意味での役に立つ法科大学院という側面をしっかり打ち出していけることが重要かと考えております。

【山本座長】 ありがとうございました。この後、各委員からそれぞれ御意見を伺いたいと思いますが、その前に、もし、御質問があるようでしたら承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、第11期、今期に審議したい、あるいは審議すべき事項につきまして、本日御出席の各委員から御意見をいただければと思います。先ほどの資料8に記載されている事項についてでももちろん結構ですし、あるいは、これは先ほど例示というお話がありましたが、これ以外にも、先ほど中川委員から既に研究者養成という点が提示されたかと思いますけれども、ここに記載されていない事項でも、この点は是非今期審議すべきだという点がございましたら、御自由に御発言をいただければと思います。
資料1-2の名簿順に御発言をお願いしたいと思います。御発言に当たりましては、初回の会議ですので、簡単な自己紹介も含めていただければ幸いに存じます。ただ、他方で、ちょっと時間も限られておりますので、恐縮ですが、お一人2分程度を一つの目安として御発言を頂戴できればと思います。
それでは、まず、清原委員からお願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学客員教授、ルーテル学院大学学事顧問・客員教授の清原慶子です。私は、専門は法律学ではありませんけれども、三鷹市長を4期16年務めます前は、「政治参加」、「行政参加」を研究していた政治学、社会学の大学研究者として、司法制度改革推進本部で、「国民の司法への参加」を検討した「裁判員制度・刑事検討会」及び「公的弁護検討会」の委員をさせていただきました。そうした経験も含めて、資料8の主な論点案を踏まえて発言をさせていただきます。
初めに、順不同ですが、3の「その他」として、「法科大学院・法学部の魅力向上に向けた積極的な情報発信と社会への貢献に係る検討」の項目から出発したいと思います。
最初の項目に「法学部、法曹コース、法科大学院の志願者数を増やすための方策」とありますが、正に私はこのことが、第11期で深めるべき具体的な論点を考える出発点の危機感というか、問題意識でございます。と申しますのも、通しページ5ページの「令和2年司法試験の受験者数、合格者数」は前年比で減少している点、50ページの資料3-1で「法科大学院の志願者数」も、近年横ばいである点です。今後も若年人口の減少は確かですから、このままでは、志願者は更に減る可能性があります。
法治国家としての日本を担う法曹界の実務家人材はもちろんのこと、中川委員の御指摘のように、大学研究者、教員としての人材、さらには、企業や国、自治体政府の法務人材の確保が不可欠です。志のある質の高い人材確保は、法治国家としての、言わば民主主義を維持するために極めて必要だと思いますので、その教育改革が、正に今期、山本座長が言われたように、正念場であるとして認識しながら、教育改革を全体として発信していければなと思います。
そこで、資料8で具体的な1として挙げられました、「新たな5年一貫教育制度の着実な実施について」の検討については優先順位が高いと賛成いたします。コロナ禍で本当に御苦労されている(法科大学院・法学部の)先生方の実感に基づいて、有為な人材が法学部を志願し、法曹コースを選択し、法科大学院を志願してくれるような、明確で分かりやすい道筋が示せればと思います。
次に、2番目、「法学未修者教育のさらなる充実について」の継続も不可欠です。18歳人口の減少が言われて久しいとともに、人生100年時代でございます。裁判を傍聴すると、国際化、少子長寿化、デジタル化に加えて、感染症対策も課題となっていることが分かります。
そこで、法学以外の分野の志願者を、ぜひぜひ確保したいと思います。法科大学院協会で、昨年の12月からカリキュラム検討委員会の下で小委員会がつくられています。しかも、先ほど酒井先生が御紹介されましたように、6月に日弁連と法科大学院協会が協働して実施の「法学未修者教育プロジェクトヒアリング結果の取りまとめ報告書」が発表され、シンポジウムも行われています。是非、本特別委員会では、法科大学院協会が主体的に行う検討、それから協会と日弁連との協働によって進められる検討を踏まえつつ、特に現場の「法学未修者教育を支える制度的な在り方」について、場合によっては法改正なども必要になるかもしれませんけれど、有益な具体策を検討していくことが使命ではないかと受け止めています。
最後に、「ICTを活用した教育方法の検討」については、単独の項目で取り上げることがなくても、今の1と2の課題を検討し、解決するための基盤として位置づけることが有効だと思います。
最後に、恐縮ですが、私は資料7の名簿に示されていますように、この数年間、「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム」の審査委員会の委員を務めさせていただいてきました。法科大学院の皆様の生の声をヒアリングで聞かせていただいて、本当に、改革の熱気を感じていますが、コロナ禍の困難も感じています。通しページ235ページに、「コロナ禍を契機とするICT活用」がまとめられています。是非現場の皆様の教育におけるデジタル化の動向、特に法学未修者教育における有効性を踏まえて、必要な制度の改革の基盤としてのICTについて、例えば今年の5月の通知はその一歩だと思いますけれども、是非検討することができたらと思います。何よりも、法科大学院の教員の皆様と実務家の皆様との協働と連携に敬意を表して、それを支える制度の在り方に関する特別委員会の検討ができたらなと願っています。今期もどうぞよろしくお願いいたします。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、続きまして、佐久間委員、お願いいたします。

【佐久間委員】 名古屋大学の佐久間と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私、名古屋大学で副総長をしているのですが、担当の中に人社系の改革というのも入っておりまして、人社系というと、当然法科大学院も入ります。ただ、私、もともと専門は人文学ですので、法曹は全く専門外でございます。ですから、これからいろいろ勉強させていただきたいと思いますけれども、その一方で、私、中教審の大学院部会の委員もさせていただいているところでございます。大学院部会の方も問題山積なのですけれども、特に専門職大学院を含めた人社系に関しては、「このままでいいんですか」「これからどうするんですか」とさんざん言われていて、いろいろ議論しているところではあります。
そもそも人社系で一くくりにするなという話ももちろんあるのですが、ただ、大学の学部からなかなか進学してもらえないという悩みは共通していると思います。そういう意味では、先ほど来話題になっております3+2、5年一貫教育というのは、ほかの大学院に応用できるかどうかは別として、法科大学院にとっては有効な解の一つだと思いますので、そこは是非着実に進めていかなければならないのではないかと考えているところでございます。
その一方で、今、人生100年とか、人生の中で3回大学に通うべきだという話があるわけですけど、そうなってくると、大学の門戸を広げるということも考えないといけなくて、法科大学院の場合はそれが法学未修者教育につながっていく部分があるでしょうし、いわゆる社会人のリカレントといったことも重要なテーマになるのではないかと思います。これは大学院部会の方でも重要な論点の一つになっているところです。3+2の一貫教育の話と、門戸を広げる、つまり社会人リカレントといった話は、方向性としてはやや違うので、なかなか難しいところかもしれませんが、是非、この特別委員会で御議論をいただければと思います。
もう一つは、これも当然関連はするのですけれども、やはり大学院にとってキャリアパスの問題は非常に重要であると思います。人文系の場合は、博士後期まで行ってしまうと、ほとんど大学の世界に進むしかなくて、「そんなことでいいのですか。ほかのキャリアパスはないのですか」とさんざん言われているわけですけれども、法科大学院の場合には、取りあえず実務家養成という明確な目標はあるわけですよね。
ただ、最初に中川委員からも御指摘があったように、法科大学院にも研究者の養成という役割は当然あるわけで、その点についてはやはり整理する必要があると思います。それは法科大学院だけではなくて、大学院全体の在り方にとっても重要なテーマだと考えておりますので、そこら辺も是非、この今期の特別委員会で御議論いただければと思うところでございます。

【山本座長】 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
それでは、続きまして、一場委員、お願いいたします。

【一場委員】 司法研修所事務局長をしております一場と申します。よろしくお願いします。私自身、本職は裁判官ですけれども、法曹養成に関わるのは、十数年前に熊本大学の法科大学院に派遣教員として派遣されて、刑事を教えていまして、それ以来、昨年に司法研修所に来て、2回目ということになります。
今回の特別委員会の審議事項につきましても、資料8につきましては、特にどれも重要な論点かなというふうに思っております。とりわけ、こちらの1の四つ目のポツに、司法修習との効果的な接続とありますけれども、もちろん御承知のとおり、連携法においても、法科大学院教育との有機的な連携の下に修習を行うとされておりまして、これまでも法科大学協会の皆様とも、お互いの教育内容について意見交換させていただきましたけれども、やはりこれまで以上に意見交換を充実してやっていかなければいけないなということを改めて痛感しております。
こちらの委員会での審議の内容も踏まえつつ、司法修習の方でも、新たな5年一貫教育を踏まえて司法修習も変える必要があるのか。その前提として、司法研修所における司法修習において、一体我々は司法修習生にどういう力を身につけてもらわなきゃいけないのか。そのためにどういう教育がいいのか。それをこれまでもずっと追い求めてきたわけですけれども、改めて、やはりもっと皆様にちゃんとお伝えできるように、しっかり言語化して、それを法科大学院協会の皆さんにも披露して、お互いにどういう教育をしていく、連携していくのがいいのかということを十分に議論していきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いします。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、続きまして、井上委員、お願いいたします。

【井上委員】 井上でございます。私は現在、日本ペイントホールディングス株式会社で執行役最高法務責任者ということで、業務執行の役員をさせていただいております。もともとは、旧司法試験を受験しまして、合格して、国内の法律事務所で実務家をやり、その後、2003年くらいから企業の方に入りまして、15年以上、企業法務に関わっております。
今ここにいらっしゃる委員の先生方は多くが法科大学院の先生方かと思いますけれども、私は法科大学院は実は経験したことがございません。ただ会社で卒業生と一緒に仕事をする経験はいろいろございまして、その中でも、司法試験に合格した企業内の弁護士、あるいは法科大学院は卒業し司法試験は合格されていない方、それから完全なる法学部ではない社会人の方など、様々な背景をもつ混成組織で、皆さんに御活躍いただいているという経験がございます。そのような経験を踏まえて、どんな学生教育が望ましいか、あるいは、社会、企業がどんな人たちを求めているかということをお伝えして、若い方々が、キャリアプランを具体的に持って、「よし、ここで頑張るぞ」と思っていただけるような教育制度にしていければと思っております。
具体的には、この241ページの中の最後の「魅力向上に向けた積極的な情報発信と社会の貢献に係る検討」というところが一つポイントかなと思っておりまして、最近の若い学生は「いかようにも働きます、会社の言うとおりにします」という方は少なくなっております。明確にキャリアプランを持って、それに合った場所を探すというよう感性の方が多くなっていますので、学校側もこの辺をはっきり「君がここで頑張れば、こんなキャリアプランが描けるよ」という話をしていくことで、頑張る元気も出てくるのではないかと思っています。
この辺りを上手に発信し、魅力的なカリキュラム作りも連携していければ、学生が更に増えたり、あるいは、必ずしも司法試験に合格せずとも、世の中でいろんな形で活躍できる場が広がるのだという意識を持って学習に臨んでいただけたりするのではないかと考えており、その辺りの論点を深めていければと思っています。

【山本座長】 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
それでは、続きまして、大澤委員、お願いいたします。

【大澤委員】 東京大学の大澤でございます。前期第10期以来、今期もまた加わらせていただくことになりました。どうかよろしくお願いいたします。
審議事項ということでありますけれども、資料8を見せていただいて、基本的にはこの資料8に挙がっているようなことを軸にというか、幹にしながら枝葉を広げていけば、多くの現在の課題は捉えられるのかなという感じを持ちました。
先ほど中川委員が研究者養成のことを言われましたけれども、カリキュラムの問題の一環ということで位置づけて、そこに包摂して議論できる可能性を示唆されたのは、そのとおりだと思ったところです。
1につきましては、第10期の前半でも議論をしました。2の法学未修者教育の充実についても、第10期の後半で議論して取りまとめができたということかと思います。今期は正に、これを前提にして、プラクティスを積み重ねながら、その成果を検証しつつ、その結果を持ち寄って、よりよいものへとしていく段階なのかなと思っております。よい方向が見つかれば、第10期のまとめを文科省から御通知いただいたのも一例ですが、何らか、よい方向へと全体を誘導していく方策を講じることが考えられます。そういう意味で、いろいろなよいものを、あるいは悪いものも含めてかもしれませんが、持ち寄って議論していければと思います。
その上で、今日のいろいろな御報告も伺いながら思ったことを二つだけ申し上げます。一つは、法学部の法曹コースと法科大学院の法学既修者コースをつなげた一貫教育ということで申しますと、やはり予備試験との関係が非常に重い課題だということを改めて実感いたしました。
実感したというのは、大学ごとの受験者数の表が先ほど丸山委員から示されました。あるいは自分が不勉強だったのかもしれませんけれども、今まで、こういう表で数字として突きつけられたのは初めてのような気がするのですが、非常に多くの人間がやはり予備試験の方へ行っている。これをどうやって、プロセスとしての法曹養成の方へ引き戻してこられるのかということについては、現場での工夫を重ねるとともに、いろいろ情報交換しながら考えていかなければいけないだろうと思います。
それからもう一つ、司法試験の在学中受験というものが始まる中で、もちろんこれは法曹になるまでの時間を短縮するという点で大変大事な制度改革でありますが、他方、やはり法科大学院での教育に余裕がなくなることは間違いありません。これまで余裕を使って、例えば研究者養成のためのプログラムを組んだり、あるいは海外派遣のプログラムを組んだりといったことができていたわけですが、そういったものを今後はどうしていくのか。司法試験に受かることは大事ですが、法科大学院の使命は決してそれに終わるものではなく、その中で、どうやっていくのか。これもまた皆様方と意見交換させていただけたらと考えておるところです。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、大貫委員、お願いいたします。

【大貫委員】 大貫です。私は中央大学で行政法を担当しておりますけれども、法曹養成制度に関しては、2003年の法科大学院協会設立から昨年の9月まで、法科大学院協会の仕事をしてまいりました。9月に協会理事長を退任しまして、片山委員に引き継いでいただいたところであります。引退できるかなというふうに思っておったのですけども、更にこの委員会で議論をしろということですので、再度、参加させていただくことにいたしました。
今回のテーマについて、できるだけ短く申し上げたいと思います。先ほどの清原委員、あるいは井上委員の御発言とも重なりますけれども、あえて申し上げたいと思います。
一つは、10期の取りまとめは既にお手元にあるのですけども、このまず第一に、本取りまとめに含まれている方策の進捗の確認と成果の検証が必要だろうと思います。やりっ放しではなくて。とりわけ、効果的教育手法の開発が確実に進むように、本委員会も側面から支援しなくてはなりません。そうした進捗の確認と成果の検証だけではなくて、取りまとめ、通しページの89ページに書いてありますけれども、本委員会において、更に検討を進めなくてはならないことがあると思います。
どれも重要なことが書いてあるのですけども、清原委員、井上委員がおっしゃったように、特に法曹志願者や法科大学院進学への意欲、関心を高める取組の在り方が重要だろうと思います。
先ほど改めまして佐々木室長から志願者の動向をお聞きしまして、やはりこれは慄然とせざるを得ないのではないかと思います。法科大学院進学者、ここ6年は8,000人程度で横ばいでございます。それから、社会人の進学者は明らかに減少の一途(いっと)をたどっております。
法学未修者教育、更に法曹コースの教育を基礎とする法学既修者教育が充実しても、志願者が来なければどうにもなりません。ですから、私はこの取りまとめに書いてあるような、法科大学院教育の成果の社会還元、修了生の多様なキャリアパスに関する広報、それから法科大学院の学びの成果の積極的発信等は積極的に今期に取り組んでいかなければならないことだろうと思っております。これは大変重要であるということは、清原委員、井上委員がおっしゃったとおりだと思います。
そして、本委員会でこうして法学未修者教育を継続的に取り上げていくことは、法学未修者を重視しているという重要なメッセージになるものだと思っています。そのことが潜在的志願者への働きかけになると私は確信しております。もっとも、今言ったことは、必ずしも法学未修者だけに関わる問題ではありません。その意味では、241ページ、資料8の3ポツのその他の例示は極めて適切なまとめになっていると私は思います。
それから、法曹コースと法科大学院教育の連携についても当然重要なテーマになると思います。しかし、法曹コースは始まったばかりです。恐らく、関係者が力を尽くして、その運営に当たっている段階です。本委員会においては、事務局の御提案にもありましたように、現状把握というのがなされると思います。しかしながら、まず今やることは、現状を把握して、それを各校に共有し、各校の検討の素材に提供することが大事だと思います。これが1点です。
それから、法曹コースについて検討する際には、法曹コースの運営のために有効な施策を本委員会として提示することに主眼が置かれるべきだと思うのです。課題ありだということが特筆大書されないように是非お願いしたいと思います。これまでの法科大学院の短くはない歴史を見ますと、課題があり、それ見ろ、問題だという御指摘がなされてきたことは、私はしっかりと覚えております。その点はきちっと注意をして、本委員会としては、法曹コースにちゃんとエールを送るというスタンスでやっていただきたいと思っております。
最後に、事務局の課題整理の中で、特に1点のみ、その意味を強調したいと思います。これは、司法研修所の一場委員がおっしゃったことと関わることです。資料8の通しページ241ページの1ポツにあります。最後の黒丸に「法科大学院3年次後期における司法修習との効果的な接続」とあります。本委員会の法曹コースに関する検討は、言うまでもないことですが、法学部と法科大学院の連携を中心に検討することになります。しかし、プロセスとしての法曹養成の実現という目標の中で、法科大学院と司法修習の連携も極めて重要な論点だと思います。このことは、一場委員が適切に御指摘いただいたことだろうと思います。特に、在学中受験を選択する法科大学院生にとっては、3年後期の在り方は極めて重要です。
この論点について、本委員会で、どのような議論ができるかは整理しなくてはなりませんが、これまで以上のスムーズな司法修習への接続が実現されるよう、各法科大学院においてカリキュラムの工夫がされるよう、本委員会において支援の検討ができればと思っております。ほかの論点が重要でないということではありませんが、やや毛色の変わった論点ですので、1点申し上げました。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、加賀委員、お願いいたします。

【加賀委員】 創価大学の加賀と申します。どうぞよろしくお願いします。
創価大学で法学部長6年、それから法科大学院長も6年、法学研究科長も務めましたけれども、現在は、法学部の教授でございます。第9期と第10期のこの特別委員会の委員を務めさせていただきました。私は小規模法科大学院の代表なのだろうという位置づけで、自分のことを自覚し、また、そのような観点でものを考えさせていただいて発言させていただいているつもりでございます。
第9期と第10期で法学既修者、法学未修者の検討がなされ、施策が決まっていきましたけれども、山本座長がおっしゃるように、正念場、正にこの第11期の時期というのは、もう最後だと思うのですね。法科大学院の施策を検討、実施したもの、9期、10期の内容というのは、ある意味では、法科大学院が浮上していく最後というふうに私は自覚をしておりました。その意味で、重大な局面に来たと思っております。
241ページの第11期の審議内容については、全く異存ございません。なおかつ、その他の1番最初の黒ポツの志願者数を増やすための方策、清原委員も井上委員も大澤委員も大貫委員も言及されましたけれども、本当にここ、にわかに名案はございませんけれども、大変重要な箇所だというふうに認識している次第でございます。

【山本座長】 ありがとうございます。御配慮を頂きまして恐縮です。
それでは、続きまして、笠井委員、お願いいたします。

【笠井委員】 ありがとうございます。京都大学の今、法科大学院長をしております笠井と申します。民事訴訟法等の民事手続法を担当しております。特別委員会は、本日初めて出席いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。なお、これまで特別委員会の下の幾つかのワーキンググループでは仕事をしたことがあります。また、法科大学院協会の仕事は、発足当時からずっとやってきておりまして、今は理事をやっておりますけども、そういう意味で、今日御出席の先生方には、いろいろとふだんからお世話になっています。
私は今回初めてで、委員会の状況について十分に理解しているわけでもございませんので、身近で感じていることをお話しさせていただければと思っております。
私がこれまで接してきた法学未修者枠の修了者にも、現在、法曹として大活躍している方がたくさんいらっしゃいまして、その御活躍の様子を、直接又は間接に知る機会がよくあります。そういった多様なバックグラウンドを持つ法曹というのは、法科大学院制度がなければ法曹界が得られなかった人材であると思います。そういったことから、先ほどからお話に出ています、そういったロールモデルになるような方の存在についてアピールしていくことも大事で、法科大学院の魅力として重要だと感じております。
他方で、法科大学院での法学未修者教育が様々な困難を抱えていることは、もうこれは改めて言うまでもないことでございまして、私自身も、法学未修者の科目を担当したり、また、教育全般に目を配るべき立場を経験したりしまして、日々悩み、対応を試みているところですけれども、法学未修者として入学した方々の中には、法曹への道を法科大学院の在学中、あるいは修了後に諦める結果になってしまう人たちが一定数存在するというところで、そういった人たちを極力少なくするようにすることが、大きな課題だと感じております。
このたび、特別委員会委員の末席に加わる機会を頂きましたので、自分の授業も含めて、更に工夫を試みまして、ここでの議論も材料として、いろいろと頑張っていければと思っております。
例えば、法学未修者1年次の授業で、対面授業を前提にしつつ、オンデマンド配信を何らかの形で取り入れるといった工夫もしてみたいなと、今考えているところでございます。
新たな5年一貫教育については、先ほど大貫委員からもありましたように、まずは状況を見なければいけないということかと思います。この秋に最初の入試がありますので、まず、その状況を見て、更に来年の春以降、学部学生の連携法曹コースの修了状況、1期生が法科大学院に入学した後の学業の状況等をよく把握して、また、他大学の状況等もいろいろ参考にさせていただきながら、今後の方向を考えていきたいと思っております。
その法学未修者教育と5年一貫型教育制度に共通する事柄として、これは自分の大学でも悩んでいることなのですけれども、司法試験の在学中受験への対応と法学未修者教育の充実の両立をどうやって図っていくかが非常に大きな問題であると感じております。
3年生の前期をできるだけ、ある種、圧縮して、在学中受験に備えるというカリキュラムを考えつつあるのですけれども、それで法学未修者の方は本当にいいのかという問題が他方にあります。法学未修者の方について、どうやって手厚くサポートしていくかについていろいろ考えておりまして、自大学の問題としても、法科大学院制度全体の問題としても考えていかなくてはいけないと思っているところでございます。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、片山委員、お願いいたします。

【片山委員】 片山でございます。私は慶應義塾大学の法科大学院で民法を担当しております。法科大学院協会の方では、大貫前理事長からバトンタッチを受けまして、昨年から理事長を拝命しております。
未修者教育の改善について旗を振っている関係上、私自身、今、法学未修者の民法の授業では、オンデマンド予習用教材を作成して、それを学生に事前に視聴させて、それを踏まえた反転授業を試行するなど、個別の取組もやっております。
この特別委員会で議論すべき点につきましては、資料8でまとめていただいた内容にほぼ尽きるかと思いますので、それで議論を進めていただくということでよろしいかと存じますが、その際の視点ということで、私なりに考えております問題意識について、幾つか話をさせていただきたいと思います。
一つは、今回の制度改正で一番重要な点は、段階的かつ体系的な教育ということで、法学部も含めた新しい法曹養成システムを構築し、その段階的・体系的な教育という点から、基礎的な科目、応用科目、その二つをきちんと法律基本科目においても区別していこうということだと思います。
そして、基礎科目の教育を担うのは、学部の法曹コースとともに、法学未修者コースの1年目ということになりますので、その意味で、両者は本質的にそんなに変わるものではないと私自身は思っております。今、せっかく法学未修者教育の中で、いかにそれを充実させるかという議論をしておりますので、それを是非法曹コースの教育にもフィードバックするという考え方が必要ではないかなと考えている次第です。
この特別委員会でも、恐らく法曹コースの教育の現状の調査は行われるかと思いますけれども、それを踏まえた上で、法学未修者教育と対比をしつつ、議論を更に深化できればと考えているのが1点でございます。
それから、2点目ですが、法曹コースを設けた意義を改めて検討していく必要があろうかと思います。もちろん、3+2で、期間の短縮化ということは重要ではあるのですけれども、むしろそれ以上に重要な意義は一貫教育を導入したという点にあると思っております。
そのことを私自身が明確に感じたのは、本務校の法曹コースの説明会で複数の学生から、「私は学部で交換留学を考えているのですけれども、その場合、法曹コースの推薦枠に入るのでしょうか」というような質問が何件かあったことがきっかけでした。そういう意味では、法曹養成制度の理念としての多様な法曹の養成というのは、これは何も法学未修者コースの専売特許というわけではありませんで、実は法曹コースの法学部の学生さんにも、多様な人材であってほしいということをきちんと我々からメッセージとして伝える必要があるのではないかと思っております。法曹コースというのは、実は、むしろそのための一貫教育制度ではないかなと考えているぐらいでございます。
本来は、ゆとりを持って、語学のインテンシブコースとか、交換留学で外国語や外国文化を学んだ学生とか、あるいはリベラルアーツやセカンドメジャー、そういった分野での学問を研究した者、あるいはボランティアとかスポーツに熱心に取り組んだというような学生も積極的に法曹コースに取り込むことを検討していくべきではないかと思っております。先ほどから議論になっております研究者の養成という意味では、ゼミの卒論を含めた法律学の研究活動も重要ということになるのかもしれません。
予備試験につきましては、制度的な見直しを特別委員会でも是非積極的に議論をして、提言をしていただきたいとは思いますが、他方で、法曹コースにおける多様な人材の養成という点を強調することによって、また、そのことが将来のキャリアパスにもつながるという点をきちんと示すことによって、いわゆる予備試験との差別化を図って、若い世代の法曹志願者の心をつかむということも、重要な検討課題の一つではないかなと考えている次第であります。
それからもう一つは、応用教育とか実務教育の充実化という意味では、いよいよ法曹コースの学生を来年度から受け入れることになりますので、応用教育、実務教育の在り方の見直しを今回の特別委員会では議論をしていただければと思っております。応用ということは、単に、基礎を踏まえて細かな解釈論を展開するということではなく、基礎を踏まえて実務に応用していくというのが実務家教育の法曹養成における応用科目の位置づけとなります。
そういった意味では、既修の司法試験までの1年半で、どういった学修の成果を上げるのか、その教育目標について、改めて司法試験との関係も含めて議論していく場や枠組みを、この特別委員会で直接それを議論はできませんけれども、そういった場や枠組みを設けることについては御検討していただければと思っております。
そして、最後が、司法試験を終えた後の半年強の充実した、その法科大学院らしい教育の在り方を検討していただくということですが、一場委員、大貫委員からも御指摘がありましたように、司法修習との連携という点については協会でも非常に重要視しておりますので、このたび、司法修習連携等検討委員会という専門委員会をつくりましたので、是非、一場委員には、協会との議論を深めていく機会にしていただければと存じております。
その中では、様々な紛争解決方法とか専門化、グローバル化等に対応した実務教育の導入といったことも併せて検討していただければと思っておりますし、独自のプログラムを各法科大学院のセールスポイントとして、リカレント教育も視野に入れた、最後のセメスターの法科大学院相互の連携といったことも併せて議論していただければと考えている次第です。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、菊間委員は本日御欠席ということですが、事前に御意見を頂戴していると伺っていますので、事務局から代読をお願いできればと思います。

【佐々木専門職大学院室長】 代読いたします。
第10期に続きお世話になります。弁護士の菊間と申します。本日は第11期の初回にもかかわらず、出席できずに申し訳ありません。第10期は、法学未修者教育の充実について議論をさせていただきましたが、まだ道半ばな部分がございますので、今期も引き続き議論をさせて頂ければと存じます。
現在の予備試験の枠組みが変わらない限り、一定数の学生が、学部在学中から、法科大学院ではなく予備試験を目指してしまうことは防ぎようがないと思いますが、むしろ社会人については、周囲の声を聞いていると、法科大学院に対する潜在的ニーズが大きいという印象を受けていますので、経済的負担、時間的制約を工夫することで、法科大学院ルートをもっと増やしていくことが可能だと思います。法科大学院側の努力だけではなく、文科省として、企業や経済団体等への働きかけをすることも必要なのではないかと思います。
働きながら夜間の法科大学院に通った社会人弁護士という立場から、今期も発言させて頂きますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【山本座長】 恐縮です。それでは、続きまして、北居委員、お願いいたします。

【北居委員】 慶應義塾大学の法務研究科委員長の北居でございます。10期と引き続き、今期もよろしくお願いいたします。既に志願者数であるとか研究者養成、あるいは予備試験等の問題がよく取り沙汰されておりまして、法科大学院教育の魅力発信というのが非常に重要であるということでありますけれども、とりわけ法学未修者教育の充実、それから、5年一貫型の制度の成功というのは非常に大きな問題だと感じております。
ただ、現場では一つのジレンマがありまして、先ほど大澤先生がおっしゃったとおりでありまして、5年一貫型の司法試験合格という成果を目指す余りに、法科大学院における特有の教育内容のある種の薄さと申しますか、ぎりぎり感というのが現実に出てきてまいりまして、果たして今後、法科大学院の教育の在り方をどうするのかというのは、実は、改めて問い直されている現状ではないかと考えております。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、北川委員、お願いいたします。

【北川委員】 早稲田大学の北川でございます。法科大学院で刑法を担当しています。法学部の方でも、必修科目の刑法やゼミを担当しております。
今年から初めての委員でございますので、本日は、決して大局的な見方というのはできません。むしろ常々、一教員として感じている草の根の意見を若干申し述べさせていただきたいと思います。
一つは、資料の8にもございましたように、法曹コースが進んでいって、その魅力をいかに伝えるかというのが一つに課題になってくる、こういうことでございましたけれども、実際に私が法学部の学生と接していて、特に今年からは特別選抜の入試が行われるのに、彼らはまだ法曹コースにさほどの期待はしておらず、まだ様子見なのではないかという実感を持っております。むしろ現役の司法試験というか、法曹を目指す学生さんにとって、これまでの通り予備試ルートで行きますと、在学中に受かれば、例えば大きな法律事務所から内定の声がかかって、一種エリートコースに進んでいくことができるという期待が大きくて、先ほど片山委員がおっしゃいましたように、その予備試ルートとどのように差別化するか、法曹コースの魅力をどうアピールするのかが大きな検討課題であると思います。予備試ルートではなく、法曹コースに来た方が、より法曹実践的な教育を在学中から受けることができて、自分の将来にとっても役に立つのだということを彼らに早い段階から伝えていく必要があると感じております。
もう一つは、法曹コースの魅力を伝える相手方として、大学に入る前の高校生にも積極的に、こうしたコースがあるということを伝えていく必要があるのではないかと思っています。私、去年、一昨年と法学部の入試の広報を担当して、高校生に話をする機会がございましたけれども、彼らはほとんど知らない状態でした。法科大学院と法学部の入試の広報を連携することによって、積極的にそういった高校の現場にも法曹コースに関する情報発信をしていく必要があるのではないかと感じた次第です。
あと、法曹コースの設置に伴う法科大学院教育の悩みに関しまして、既に北居委員や大澤委員もおっしゃいましたように、学習プロセスが非常に逼迫(ひっぱく)する、教育期間が圧縮されて、プロセス的に特に法学未修者に対する教育が非常に難しい状況になっていると感じております。
そうした中でICT教育の活用も視野に入れてということになるのかと思いますところ、去年、コロナ禍下での未修者の授業において、私も、オンラインでリアルタイムで授業はするのですけれども、足りなかった部分をオンデマンドで補習として彼らに配信するということを試してみました。そうしたところ、彼らから、オンデマンドの動画を見て勉強できるという環境については、非常に有り難いという意見が寄せられたのですけれども、しかしながら、結構時間がかかると。ほかの科目の学修もいっぱいいっぱいなのに、あちこちでオンデマンド配信されて、そして反転授業もしてということになりますと、ただでさえ圧迫されている学習時間がより逼迫(ひっぱく)して、なかなか全てに手が回らなくなるという悩みも聞こえてまいりました。こうした問題をいかに解決したらいいのかというのが現在の現場の悩みでございます。
これからも本委員会で意見を申し述べさせていただける機会があることを有り難く存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

【山本座長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、久保野委員、お願いいたします。

【久保野委員】 久保野でございます。前期の10期から委員を務めさせていただいております。この3月まで東北大学の法科大学院の法科大学院長を務めておりましたけれども、現在は、法科大学院及び学部の両方で民法を教えるという立場でございます。
そういう立場から、法学が社会に貢献していくための、よい教育というのはどういうものかという中での法科大学院の在り方、あるいは法学部の在り方ということに一方で意識がございますし、同時に、国立というよりは、地方の中規模大学の法科大学院としての問題関心というか、意識で参加しております。
三つございますけれども、一つは感想で、法学未修者教育のシンポジウム、先ほど御紹介いただきましたシンポジウムが非常に画期的で、可能性を感じたという感想がございます。
2点目としまして、既に出ておりますジレンマの問題に関わりまして、法学部における法曹実務家を養成する教育と一般法学教育との関係、あるいは法学部の変容といったものについて注意を払っていきたいと思います。といいますのは、法学部は法曹になる人が行く特殊な学部といったような印象が強まりがちだと感じておりまして、そこをうまくバランスを取っていき、広く法学を学ぶことで、法学の専門性に魅力を感じたので、法学を生かして実務家として生きていきたいとなるような、そのような法学部であってほしいと思っております。
5年間での教育課程についても、そういう意味では、連携一貫で効率化できるので幅広く法学部で学べますというような方向を意識したいというのが2点目です。
3点目に、これは、冒頭の中川先生、あるいはほかの方々からも出ております研究者養成に関わりまして、より広く法曹養成教育を支える人材の拡充につながるとよいなと思っております。一方で、研究者につきましては、やはり効率的に目的を達成できるということで、研究者を目指しやすくなっていて、関心を持っている学生も増えていると感じていまして、それが1点と、もう一つは法学未修者教育への補助教員の活用を生かして、法科大学院時代になってから実務家になって、経験を積んでいる方が増えておりますので、そういう方がより本格的に教育に関わっていくというのにつなげられればよいなと思います。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、酒井委員、お願いいたします。

【酒井委員】 弁護士の酒井でございます。今期も委員続投となりましたので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
簡単な自己紹介をいたしますが、私は、早稲田大学の商学部を卒業いたしまして、2期の法学未修者として一橋大学の法科大学院に進学をいたしました。現在、弁護士12年目というところでございます。
今期議論すべきと考える点について、簡単に3点申し上げたいと思います。
まず1点目が、資料8-2に関連する法学未修者教育の改善の問題です。前期の取りまとめを受けまして、これから正に法学未修者教育の改善が実践されていくタイミングかと思います。最初の一歩ともいえる、先ほど御報告をいたしました法学未修者教育シンポジウムが開催をされましたけれども、各法科大学院が協働して法学未修者教育をいかに改善していくのかという情報の共有や実践によって、これから試行錯誤がされていくかと思います。
委託事業の御説明などもありましたので、中教審においてもその経過報告を定期的に受けるなどして、継続的に法学未修者教育改善についての実践状況をウォッチして、適時に必要なフォローを行う体制をつくっていくべきと考えております。
また、取りまとめに、法学未修者についての課題が網羅をされたわけではないと理解しております。社会人学生の教育改善ですとか、法学未修者コースの志願者増ですとか、法学未修者の在学中受験対策ですとか、まだ議論すべき重要な課題が多くございますので、今期でもその積み残し部分を積極的に議論していくべきと考えております。
2点目は、資料8-1にあります法曹コースに関する問題です。多くの委員の先生方から、まずは情報共有を徹底すべきという御意見ありましたので、そこは割愛をさせていただきまして、個人的には、やはり法曹コースの学生が、予備試験も選択肢にあり、法科大学院進学をしても在学中受験に向けて一直線というような傾向が強いと感じております。このような学生達に対し、視野を広げる観点から、キャリアデザインに資する科目を法曹コースに設置し、法曹コースから法科大学院に進学して、こんな法曹になれる、こんな有資格者として資格を生かして活躍できるというビジョンをしっかりと示していくような体制がつくっていければと考えております。
3点目は、これも複数の委員の先生の方から出ておりますが、研究者養成についての問題です。これまでも、研究者養成待ったなしという御指摘はあったかと思いますが、本格的な議論には至ってないかと思います。私もこれまで、私どもの後輩を育てるために研究者の先生方に一層御尽力いただきたいという話ばかりをしてまいったわけなのですが、法科大学院においては、優れた研究者と実務家が協働して、理論と実務を架橋するような教育をするということが想定をされていて、研究者の先生方による教育がその土台にあるということは指摘するまでもありません。その教育の担い手が枯渇をしてしまっては、法科大学院教育の質の向上どころか、維持も難しくなるという本質的な問題が起こり得ると懸念をしております。
一方で、実際に法科大学院を卒業して、司法試験に合格をされて、博士課程を終え、研究者になられた教員の先生が非常にすばらしい指導しておられるということも先日、その実践に触れる機会がございました。このような優れた研究者が法科大学院から輩出をされるように、法科大学院卒業者の進路として、キャリアプランの一つに明確に加えて発信をしていくという対策を積極的に採っていくべきと考えております。また、この観点から、一旦法曹になった卒業生が博士課程に戻り、研究者になるというようなルートも顕在化をさせていくということが有効かと思いますので、そのような議論もしていければと考えるところです。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、潮見委員、お願いいたします。

【潮見委員】 京都大学の潮見です。私も続投になります。民法を専攻しております。もうしばらく京都大学の副学長を務めていくことになろうと思います。いろいろな意見が出ていましたが、令和5年に在学中受験が始まります。これと連動した今般の3+2の改正は、法科大学院制度の命運を握っていると思います。失敗は許されません。様々な観点からの議論を積み重ね、あるべき法曹養成制度の一環として発足した、法科大学院制度の火を消してはいけません。
他方で、3+2、あるいは在学中受験制度の公表後も、以前と同様に、予備試験優位という客観的な状況、それから予備試験合格という勲章が欲しいという法曹志望者の意識というものは続いています。そのような中、私は今回が改革のラストチャンスであると思っております。その意味で、今回の論点案として示されていることに異存はありません。
中でも、特に在学中受験に対応した法科大学院カリキュラムの充実は急務であると思います。学生を含めた各方面へのヒアリング等を通じて、それぞれの法科大学院の取組、工夫についての情報収集、それを受けた検討、さらにはよりよい教育を各法科大学院が実現できるよう、特別委員会としても、各法科大学院を支援していくことが重要であると考えます。
その際、これは笠井委員もおっしゃったことですが、在学中受験に巻き込まれることとなる法学未修者の方々について、配慮を尽くした検討が必要であると考えます。法学未修者教育をめぐる議論は、10期は入学前を含めた導入部分が中心でありましたが、在学中受験との関連を意識したカリキュラムと法学未修者教育の在り方は、これは是非とも考えなければならないと思います。
研究者養成についても一言申し上げます。中川委員等がおっしゃった法科大学院を経由しての研究者養成の在り方の検討が必要である。これは私もこの間ずっと言い続けてきたことであります。併せて法科大学院を経由しない研究者養成の在り方、これも、むしろ真剣に考える必要があると思います。各大学を取り巻く状況は、法科大学院が発足した2004年当時とは全く違ってきています。選択科目、あるいは先端科目にとどまらず、7法科目についても、今言った観点からの検討というものが必要ではないかと思うところであります。
さらには、大学全体としても、大学院教育、とりわけ博士後期課程での若手研究者の養成が喫緊の課題となっております。こうした全体的な視点を視野に入れて、研究者養成を法学の場面でも考えていかなければいけないと思っております。

【山本座長】 ありがとうございました。
続きまして、髙橋委員、お願いいたします。

【髙橋委員】 一橋大学の髙橋でございます。前期に引き続きまして、どうぞよろしくお願い申し上げます。
資料8に挙げていただいているのは、いずれも重要な今期の論点と認識しておりますが、特に法曹コースの現状につきましては、学生にも追跡調査を行って、これを基礎として、必要な調整事項があるようであれば、必ずしも完成年度を待たずに調整を行い、また、あわせて、予備試験など周辺制度との関係も明らかにするということが肝要ではないかと思っております。
早い大学では、既に3期目の学生に向けた説明会等も始まっていると存じますが、特に法曹コースはその立ち上げとともにコロナ禍という事象が発生しましたので、教員と学生、そして学生相互間のコミュニケーションが通常よりも大きく制約されてきた中で、基本的な法的思考方法の習得に苦慮していたり、あるいは進路を大きく見直したりという学生も多く存在しているのではないかと存じます。
そもそも法学部は、法科大学院と異なりまして、法曹を志す学生のみに教育リソースを当てる場ではございませんし、また学生も、たとえ一度は法曹コースを選択したとしても、将来にわたって法曹を確たる進路としている学生ばかりではありませんので、そうした学部教育の特性も改めて鑑みまして、必要に応じた柔軟な対応を御検討いただければと存じております。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、富所委員、お願いいたします。

【富所委員】 読売新聞社の富所です。よろしくお願いいたします。これまで主に司法と教育の分野の取材をしてまいりまして、現在は論説委員会というところに所属をして、社説やコラムの執筆などを担当しています。
私は法科大学院の関係者でもありませんし、法学部の出身でさえありません。ですので、今の法科大学院が外部からどのように見えているのか、そういった視点で今期もお話をさせていただければと思っております。
論点については、私は1点だけ申し上げたいと思うのですが、やはり「出口戦略」がとても大事だと思います。世の中、特にビジネスの世界では、デジタル化であるとか、それから脱炭素、CO2の排出削減ですね、こういった新しいビジネス分野がとても注目をされていて、リーガルマインドを持った人材の必要性が非常に高まっていると感じています。
ですが、法科大学院を修了された方々が、どういう分野で活躍されているのか、また、法科大学院ではどのような教育を行っていて、どういう人材を育成しているのかということが、まだまだ社会に十分に届いていない印象を受けています。今期の議論の中で、この辺をどう高めていけるのかというところを話ができればなと思っております。
以上です。今後ともよろしくお願いいたします。

【山本座長】 よろしくお願いいたします。
それでは、続きまして、松下座長代理お願いいたします。

【松下座長代理】 松下でございます。
資料の8につきましては、基本的に異論ありません。各論については、今後の議論の中で発言をさせていただければと思います。本日は、今後の議論の際に留意すべきことについて一言だけ申し上げたいと思います。
教育というのは人づくりでございますので、制度の成果が出るまで、そして評価をすることができるようになるまで時間がかかるということでございます。ですので、今後の議論に際しましても、基本理念は維持しつつ、しかし、拙速を避けて、じっくりと評価をし、必要な見直しをするということに留意すべきであると考えます。
甚だ簡単ですが、私からは以上でございます。

【山本座長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、丸島委員、お願いいたします。

【丸島委員】 弁護士の丸島です。
私からは二つです。一つは、資料8の論点1、2についてですが、いずれも大事な論点だと思います。司法制度改革審議会の意見書が出されてから今年で20年ということで、いろいろな振り返りもされていますが、今次の改革の中で、法曹人材の養成・確保という課題は最重要のテーマの一つでありました。
この分野は、これまで長年課題の指摘はされながらもなかなか議論が進んでこなかったこともあって、改革はかなり本質的で抜本的な内容を持つものとなる一方で、旧制度と、あるいは旧制度の考え方と妥協的な部分も多分に抱えざるを得ませんでした。そのようなところは、法科大学院制度を巡る様々な難しさの要因でもありました。しかし、法曹養成教育に関わる学者・実務家教員の先生方や多くの関係者の取組と努力の中で、今回のテーマでもある、学部と法科大学院との一貫教育であるとか、法学未修者教育の充実に向けた法科大学院協会と日弁連との協働などといった積極的な取組が行われていることは非常に重要なことだと思います。
この間のこうした取組の成果と直面している課題については、この場で共有し、こうした新しい方針が本来の趣旨、目的にかなったものとして軌道に乗せられるような、この2年間の委員会の議論でありたいと思います。
二つ目には、法曹養成教育の充実、法曹志望者確保の前提として、やはり現実に育ってきている若い法曹が全国津々浦々でどんな活躍をしているのか、どのように社会の期待に応えているかという姿をしっかりと伝えていくということが、やはり根本的に大事なことだと思います。
私は現在、日本司法支援センター、法テラスの運営業務に関わっていますが、法テラスでは、毎年多数の新規登録弁護士が法テラスの契約弁護士となって社会的経済的な困難を抱える人々を支援する法律扶助事件や国選事件などの仕事に当たっており、また、毎年何十名もの新人弁護士が常勤弁護士として採用され、フルタイムで福祉機関等との地域連携を含む生活困窮者等の法的支援業務を担って活動しています。こうした活躍は、企業や自治体ほかの公的部門など各分野でも同様に見られることだと思いますが、現在の社会状況を見てみますと、例えば、コロナ禍の下で生活苦や仕事の困難、差別や虐待など様々な困難に直面する若者や女性、高齢者、あるいは在留外国人、また過疎地域の住民、自然災害の被災者などが各地に数多くおられます。このような方々の傍らにあって困難を抱える人々の権利擁護のために頑張りたいと考えている若い新法曹は少なからずおりますし、他方では、企業や官公庁で長年働き多くの社会人経験を積んだ方々が、人生の後半をこうした社会課題に取り組みたいと考え法曹を志望し、法学未修者教育を経てこられた方々も少なからずおられます。
こうした人たちの地道な活躍を、将来の進路を考えている学生の皆さんにどのように伝えていくかということは、法曹志望者の確保という課題を考える上で極めて重要なことです。キャリアデザインとかキャリア学習の重要性について、どなたかも言及されておられましたが、毎年法テラスの常勤弁護士希望者の面接や採用活動を通じて感じることは、一部には非常に強い問題意識と意欲を持って法曹を目指す方々がいらっしゃるのですが、他方では、法律家が今の社会で何を期待され、どこでどのような活躍が求められているのか、自らがどのような法律家を目指すのかということについての理解や認識がやや弱まっているのではないかと感じるときもあります。学部段階も含む学生段階で、できるだけ多様で活き活きと活躍する法律家の姿に具体的に触れ、法曹とは何かを考え、今のそしてこれからの社会の中で自らの役割を考える機会というのをもっと多く持てるようにしていくことがとても大切だと思います。
そのような意味で、論点3にありますとおり、社会の中の法科大学院という観点から、法曹人材の活躍の道ということと法曹養成課程の学修とがより緊密にもっとつながっていくように、法曹界や企業、あるいは公的な部門と法科大学院が様々な連携協力をするような方策を具体化していきたいもものだと考えております。
以上でございます。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、丸山委員、お願いいたします。

【丸山委員】 丸山です。法務省で司法法制課長を務めております。出身は検察官ですが、法務省勤務中に、法曹養成制度の改革、あるいは司法試験の実施などに携わってまいりました。
本日、法曹養成制度に関しましては、複数の委員から御指摘を頂いたところでございます。まずは令和元年の法改正によって創設された新制度の成果をしっかり見定めていくということになろうかと思っております。
今回お示しの審議に関しての案については、いずれも重要なものと考えておりますが、3がとりわけ重要と感じています。といいますのは、近年は法科大学院が単に司法試験までの通過点ということではなくて、いわば法的なものの結節点、結び合わせる点として機能し始めていると感じているためです。
代表的な役割は丸島委員が第10期の最終回で言及されていましたが、研究者と実務家の結節点としての役割です。申し上げるまでもなく、法科大学院は研究者と実務家の双方が指導に当たっておりまして、学生が双方の視点で学習を進められることはもとより、研究者、実務家双方にとって様々な良い影響があると伺っております。理論と実務が相互に作用し合う法科大学院という場、一つの知の拠点として機能していると感じております。
また、お示しの3のその他のところにありますが、リカレント教育が充実することで、法科大学院は法曹志願者と、既に法律家として働いている実務家、言わば先輩と後輩の結節点ともなり得ます。学生にとっては、将来の法律家像を考える好機になるのではないかと思います。
さらに、法務省の所掌事務との関係で申し上げますと、法科大学院生による児童生徒に対する法教育にも期待をしております。小中高生にとりましては、少し年上のお兄さん、お姉さんに教わるということは法教育を超えてキャリア教育としての意味もありますし、法曹志願者の掘り起こしにもつながると思っております。また、法科大学院生の側(がわ)からは、自分が教えることで自分の理解度が分かるという感想を聞いたこともあり、自らの学修を深める効果もあると思います。
法科大学院創設から17年が経過して、法科大学院は法的なものの結節点、社会的なインフラの一つとして機能をしており、本特別部会におきましても、その役割を広く世の中に知らしめることを含めて御審議いただければと思います。
以上です。

【山本座長】 ありがとうございました。
それでは、水島委員、お願いいたします。

【水島委員】 大阪大学で労働法を担当しています水島です。今期もよろしくお願いします。
2点意見がございます。法学部生の中には、入学時から法曹への道を強く意識し、実際にも法曹コース特別選抜に強い関心がある者がいます。論点1に掲げられた、新たな5年一貫教育制度の着実な実施について異論はありません。他方、入学時は法曹志望であったけれども、意欲を失い、就職等の活動を契機に当初の志望を思い返し、法曹を目指す学生もいます。法曹コース特別選抜をアピールし過ぎることで、このような学生が法科大学院進学を諦めてしまうことがないよう、注意が必要だと考えます。
また、法曹コース特別選抜の成果を示すのに、数字が必要であることは承知しておりますが、大学が数字を意識する余り、優秀な学生に無理矢理法曹コース特別選抜を選択させるようなことがあってはならないと思います。そのため、スタート時点での法曹コース特別選抜の評価は、単に入学者等の数で行うのではなくて、一貫教育の内容や質といった観点で行うことが、健全な法曹コース特別選抜の発展に必要ではないかと考えます。
2点目ですが、法学未修者のうち、純粋未修者は1年次の学習に苦労することが多く、論点2のとおり、第11期では、法学未修者教育のさらなる充実の検討が始まると思います。その議論と直接関係しないように思いますが、司法試験選択科目の立場から申し上げたいことがあります。
基本7科目の学習は、法学部出身者が有利になりがちですが、主に2年次から開始する司法試験選択科目では、法学部出身者が知らない、持っていない、そういったものを他学部出身者や社会人経験者がそのバックグラウンドで身につけていることがあります。このような強みが授業への関心を高め、学生の勉強意欲を促し、さらには学生の自信につながっているように思います。私の担当する労働法では、社会人経験のある学生にこのような傾向が見られます。また、他学部出身者の中には、知的財産法や国際私法、環境法に関連するテーマでの研究を学部時代にしたという者もいるようです。
現時点で具体的な案はないのですが、司法試験選択科目を活用することで、純粋未修者のモチベーションを上げ、置いてきぼりになることを回避することができるのではと考えております。

【山本座長】 ありがとうございました。以上で、委員の皆様から御意見をお伺いすることができました。活発に御意見を頂戴してありがとうございました。資料8の全般について御意見をいただけたと思いますし、また、付加的に、研究者養成の問題とか、予備試験の問題等々についての言及もいただけたかと思います。
私から1点だけ、この資料、どなたからも言及がなかったので一言だけ申し上げますと、この資料8-2の法学未修者教育の二つ目のポツで、共通到達度確認試験の方向性の検討ということが挙がっております。御承知のように、共通到達度確認試験、今年で2回目だったかと思いますけれども、本格試験として実施をされました。令和6年以降、どのような形で行っていくかということは、この法学未修者教育の充実全体との関わりもある論点だと思いますけれども、今期の後半以降ぐらいには、少し方向性を考えていかなければいけないという時期が来るのではないかと考えておりますので、この点についても御審議をいただければと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、既に時間が超過しておりますけれども、今日の時点で、なお御発言がもしある委員がおられれば御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
大貫委員、お願いいたします。

【大貫委員】 大貫でございます。時間が超過しているときに申し訳ありません。法曹コースに関する情報共有として、是非とも聞いておきたいことがございまして、お許しください。
現在、正に法曹コースの一貫型、開放型に対応する法科大学院入試が行われております。法曹コースでは、御承知のように日々の講義も厳しく実施され、進級判定も厳しく行われております。相当に絞られた学生が法科大学院の入試を受けるというふうに想定しております。この相当に厳選された学生さんが受ける一貫型及び開放型の入試において、これまでの法科大学院入試において遵守が求められていた、いわゆる2倍基準というものの取扱いがどうなるのかということをお聞きしたいと思います。
私は一定の考えを持っておりますけれども、多分いろいろな法科大学院が悩んでいるところではないかと思いますので、時間のないところで恐縮ですが、事務局に御質問をしたいと思います。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、事務局から今日の段階でお答えいただけるところがあれば、お願いしたいと思います。

【佐々木専門職大学院室長】 ありがとうございます。今、御指摘がありました特別選抜につきましては、5年一貫型、開放型、いずれについても、応募動向も不透明なところでもございますので、これらについて直ちにいわゆる2倍基準を当てはめて、先ほども御紹介いたしました加算プログラムであるとか、あるいはその先にあります認証評価などでチェックを頂くということは、今のところちょっと考えづらいところかと思います。
なお、その法曹コースの特別選抜の状況次第で、いわゆるその他の一般選抜が応募動向等でいろいろ影響があり得るとも思われますけど、これもまた予想が難しいと考えられまして、令和3年の入学者選抜の動向を見まして、必要があれば、これらの基準の当てはめ等についての考え方について、何かお示しをする必要があるのか、そこら辺を考えていきたいと思っております。

【大貫委員】 ありがとうございました。

【山本座長】 ありがとうございました。それでは、本日頂きました御意見について、事務局においては精査をしていただいて、この資料8の審議事項案について更新したものを作成していただきたいと思います。
なお、委員の皆様にはもし言い切れなかった点等ございましたら、書面等で事務局の方にお寄せを頂いて、事務局においては、そういう書面でお寄せいただいた御意見も踏まえて、次回以降の審議事項、審議内容について御検討いただければと思いますので、そのような形で、言い足りなかった点、委員の皆様に御意見をいただければと思います。
それでは、本日の議事については、以上とさせていただきたいと思います。
今後の日程につきましては、事務局の方から、追って御連絡していただきたいと思いますので、引き続き、御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。
それでは、本日はこれにて終了したいと思います。長時間にわたりまして、熱心な御議論ありがとうございました。


―― 了 ――
 

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