法科大学院等特別委員会(第98回)議事録

1.日時

令和2年9月9日(水曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 法学未修者教育の充実について
  2. その他

3.議事録

【山本座長】所定の時刻になりましたので,ただ今より,第98回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催します。
本日も新型コロナウイルスの感染拡大予防の観点予防の観点から,オンラインミーティングという形で開催させて頂きます。従来のZoomとは違う,また新しいソフトですので,若干御不便をお掛けするかもしれませんがよろしくお願いいたします。
なお,本委員会は公開が原則でありますので,この会議の模様は録画して,YouTubeにて期間限定でストリーミング配信をさせていただきますので,あらかじめご承知おき頂ければと思います。
本日の議題は,法学未修者教育の充実についてであります。
前回,酒井委員からの提案を踏まえて,充実した御議論を頂いた論点3から5に加えまして,本日は共通到達度確認試験に関する論点6,修了生の多様な進路の在り方に関する論点7を含めて,御議論をいただければと思います。本日も活発な御議論をよろしくお願いいたします。
議事に入ります前に,このたび新しく着任された委員について,事務局より御紹介をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】事務局の西川でございます。このたび,法科大学院協会におきまして,理事,理事長の改選が行われまして,9月1日付で新たに,慶應義塾大学大学院法務研究科教授の片山直也先生が理事長に就任されました関係で,本日付で本特別委員会の委員に御就任を頂いております。
なお,片山先生のお名前が入りました新しい名簿につきまして,本日,参考資料1としてお配りしております。以上でございます。

【山本座長】それでは,片山委員より,一言御挨拶をいただけますでしょうか。

【片山委員】慶應大学の片山でございます。
この9月1日に法科大学院協会の総会がございまして,そこで次期の理事長を拝命することになりました。何とぞよろしくお願いいたします。
この分科会では,一応,肩書としましては慶應義塾大学の教授ということになっておりますので,必ずしも理事長の立場に関係なく,自由に発言させていただければとも思っております。何とぞよろしくお願いいたします。

【山本座長】よろしくお願いいたします。
また,事務局の方にも異動があったということですので,事務局より御報告をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】続けて,事務局の交代を御説明させていただきます。
7月28日付で,前高等教育局専門教育課長の黄地吉隆が内閣官房内閣参事官へと異動となり,後任に吉田光成が着任しております。また,同日付で前専門教育課専門官の大根田頼久が総合教育政策局調査企画課へ異動となり,後任に西久美子が着任しております。

【吉田専門教育課長】専門教育課長の吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【西専門官】専門官の西と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【山本座長】よろしくお願いいたします。
それでは続いて,事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】本日,お手元の議事次第にありますように,本日の配布資料といたしましては,資料の1-1から資料の5まで,併せまして,参考資料として1から4をお手元にお配りさせていただいておりますので,御確認ください。
なお,資料の不備あるいは接続不良等,お困りの点がございましたら,開催案内に記載の事務局の連絡先までお電話を頂ければと存じます。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございます。
それから,やはり議事に入る前に,今年度の法科大学院関係状況調査について,既に一部調査結果がまとまっているということのようでありますので,議事に関係する内容を中心に,事務局の方から御報告をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】それでは,まず,議論に先立ちまして,データの紹介をさせていただきたいと思います。
お手元の資料の1ページから3ページの資料の1―1に基づきまして,今年度の法科大学関係状況調査の結果のうち,法学未修者教育に関連する新規調査事項についての概要を御紹介させていただきます。
まず,お手元の1ページを御覧いただければと思います。
こちらは,法学未修者,社会人教育一般に関する調査ということでございまして,全法科大学院を対象に調査をしましたけれども,こちらで集計しております対象校は募集継続校の35校でございます。
初めに,Ⅰ(1)としまして,働きながら学修できる環境の整備に関して,幾つか聞かせていただきました。
まず,多くの法科大学院で,入学前に法的知識などを学べるようにするための取り組みが行われているということに加えまして,今回も御議論に出ております,長期履修制度,この実態を聞きましたところ,13校において制度が実施されているということでございます。また,昼夜開講制・夜間コースの設定につきましては,6校で行われているということでございます。続けて,長期履修制度について,制度は13校で持っているということですが,実際に活用している状況について聞きましたところ,実際に活用している学生さんがいる法科大学院は7校,合計で43人が制度を利用されているということ。また,未修者についてですが,平均の履修期間は4年及び5年であったということでございます。
続きまして,(2)番,カリキュラム・教育方法等における工夫でございます。
こちらについては,多くの法科大学院で,まず1年次に論文能力を育成するような機会を設けているということに加えまして,7割ほどの法科大学院では,司法試験の問題も活用して指導を行われているということでございます。
また,過去の議論を踏まえまして,1年次の履修登録単位数の上限を,本来36単位のところを最大44単位まで法律基本科目を中心に増やしてよいということになっておりますけれども,この制度の運用について尋ねたところ,19校において活用されているということで,必ずしもかなり多くの大学院で使われているというわけではないということが分かっております。
また,次の法律基本科目につきまして,学部との共同開講をしているところは6校。また,複数の法科大学院が連携して未修者教育を実施している法科大学院は6校ということでございました。
次の(3)番,正規の教育課程外の支援としましては,いわゆる補助教員を含めたメンター・チューター制度,あるいはTAによるサポートなどが多くのところで行われていたり,また,1年次に法曹と交流する機会ですとか,実務に触れたりする機会を設けているというところもたくさんございました。
また,修了後の支援としても,自習室の提供ですとか,試験の情報,あるいは就職情報の提供などを多くの法科大学院で行われているという状況でございます。
続きまして,2ページにまいりまして,ICTの活用状況を新たに調査させていただきました。
今般,コロナウイルスの対応がございまして,現状では多くのところでいわゆる遠隔授業が行われているわけですけれども,今回の調査では,そのコロナの感染が拡大する前の状況と現在の状況,さらには,仮に今後,コロナが収束した場合において,遠隔授業をどのように活用していく意向かということを尋ねさせていただきました。
これについて,まず,同時双方向型の状況を聞きましたところ,コロナの前においては,いずれの科目群においても,80%以上の法科大学院で実施をしていなかったという状況でございますが,一方,現在においては,いずれの科目群においても9割の法科大学院がこの同時双方向型の遠隔授業を実施しているという状況でございます。また,仮にコロナが収まった場合においては,約30%強の法科大学院において,引き続き,この同時双方向型の遠隔授業を実施していきたいという意向でございました。
なお,その下に書いております,メリットや課題につきましては,以前の法科大学院協会のアンケートとほぼ同様の内容でございます。
続きまして,(2)番,オンデマンド型。こちらについては,従来,法科大学院では活用がされてこなかったところでございますけれども,現在,コロナへの対応ということで,約50%以上の法科大学院で実施されている状況でございます。
また,授業そのものといった形ではなく,多様な形で活用がなされているということでございました。これにつきましては,コロナが仮に収まった場合においても,50%以上の法科大学院が何らかの形で,引き続き活用していきたいという御意向をお持ちでございます。
また,次の(3)番ですけれども,この遠隔授業を実施するに当たっては十分な通信環境が前提になるわけですが,何らかの経済的その他の支援が必要だった学生は,全体の7%でございまして,これらの学生に対しては,多くの法科大学院で経済的支援あるいは大学の教室の開放といったようなその他の支援を行われ,実際には遠隔授業に全ての学生が対応できるような配慮がなされているということでございました。
この遠隔授業に関して,次の(4)と(5)ですけれども,遠隔ではやりにくいというが声が多かった部分を具体に聞いてみました。
1つは,(4)番の実習を主たる内容とする科目。例えば,模擬裁判などについてでございますが,これについては対応が分かれておりまして,やはり対面で行う必要があるので時期をずらす,あるいは実施日程を削減するという対応をされているところもあれば,一方で,今後の弁護士業務のICT化も見据えて,遠隔で何らかの工夫をしながら行っているというようなケースもございました。
また,定期試験につきましては,基本的には大講義室で密を避けながら,例えば,司法試験のような形に準じて行ったというところもあれば,やはりリアルでは難しいということで,自宅にての実施でオンラインでの監督を付けるというような形での実施もございました。あるいは,試験の代わりにレポートを課すといった対応も見られるところでございます。
また,入試につきましては,多くがこれからだと思いますけれども,御予定としては,試験の予備日の設定ですとか,筆記試験の簡略化,あるいは場合によってはオンラインでの面接のみといったような形での工夫がなされているところでございます。
最後に3番目,補助教員についてお伺いさせていただきました。
ここで補助教員というものは,一番上のアスタリスクにありますけれども,法令上の明確な定義がございませんので,今回の調査におきましては,「法科大学院の研究指導,授業担当認定を受けておらず,授業補助や質問対応,相談対応,ゼミでの指導などを行う有給の者」というふうに定義をさせていただきました。この場合,名称も実際にはアカデミック・アドバイザーですとか,チューターやメンターなど,様々各大学において呼ばれている方々を含んでいる概念でございます。
これについて尋ねましたところ,(1)番ですが,35校中32校においては補助教員を利用しているという回答でございました。また,残りの3校につきましても,例えば有給ではなく,無給の方がいるといったようなケースも含めて,今回の定義には当たらないものの,実態としては助教や地域の弁護士会が主体となって学生の支援を実施しているといったような形で,何らかのものが行われているということが分かっております。
具体的に,各大学からお答えいただいた数字を右の表に載せておりますけれども,ざっと御覧いただきますと,非常にばらつきがございまして,例えば人数で見ますと,4~5人といったところから,最大84人というところもございますし,また,それぞれの方の1人当たり1か月平均労働時間を見てみますと,1~2時間というところから,最大40時間を超えるようなところまで幅が広いということが分かっております。
(2)番,補助教員が行っている役割としましては,授業の補助の他に,むしろこちらの方が多いんですが,授業外における指導ということで,ゼミの実施ですとか,質問対応や学修方法に関する相談対応,こういった形で幅広い役割が担われているということでございました。
最後に,補助教員を活用する上での課題ということですけれども,これは前回の御議論でも出ておりましたとおり,やはり1つは優秀な人材をいかに確保するかという点。また,法科大学院の執行部や担当教員との連携がなかなか難しいといった声が聞かれているところでございます。以上,雑ぱくですけれども,今回の調査の一部について,かいつまんで御紹介させていただきました。
なお,4ページ以降14ページにかけてのところは,今御紹介したデータの詳細版でございますので,適宜御参照いただければと思います。
あと最後に1つだけ,これとは別途,法科大学院協会によりまして,全国の法曹コースにおける遠隔授業の実態についてのアンケート調査を行っていただいておりまして,本日は参考資料の方で御紹介をしております。こちらも後で御覧いただければと思いますが,法科大学院と同様に,多くの学部においても遠隔授業を実施されているということですとか,やはり同じような御苦労や御工夫があるということが見えておりますので,適宜御参照いただきたいと思います。私からの説明は以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,ただ今の御説明につきまして,御質問等があればお伺いしたいと思います。現時点では,特段よろしいでしょうか。
本日の議事と関係するところでの御説明でありましたので,またそれでは,議事に入ったところで,もし確認等が必要であれば適宜していただければと思います。
それでは,早速ですが議事に入りたいと思います。
本日の議事は,法学未修者教育の充実についてということで,論点ごとに,事務局から,まず資料の説明をお願いしたいと思います。なお,論点6に関連いたしまして,共通到達度確認試験の部分ですが,本日は共通到達度確認試験管理委員会事務局より,中條信義さんにお越しを頂いておりますので,試験の実施について御説明を頂く予定であります。
それでは,まず,事務局から説明をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】お手元の,まず,資料2に基づきまして,御説明をさせていただきたいと思います。通しページの15ページを御覧ください。
こちらは,論点の3から5に関する前回の御意見を内容ごとにまとめさせていただいたものでございます。主な御意見としまして,1つは,入学前導入教育に関する御意見を複数いただいております他,酒井委員からの御提案を受けまして,これに関する御意見,また,その他,入学後の学修時間あるいは長期履修制度といったような制度面での御意見など,多数いただいております。これらに関しましては,本日も引き続きの御議論をお願いしたいと思います。
ここで,前回の御議論に少し関連しまして,大学間で授業の共有をするといったアイデアが1つございましたけれども,これに関連して,1つだけ情報提供をさせていただきたいと思います。
現在,大学分科会におきまして,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申を受けまして,新たに「大学等連携推進法人制度(仮)」の検討が進められているところでございます。こちらの内容は,参考資料の4,53ページからのところに記載がございますが,大学が国公私立の枠を越えて強みを持ち寄り,リソースを効果的に活用するという趣旨によって,一定の要件を満たす連携法人を設立した場合,次の54ページにありますように,必修や選択の科目も含めまして共同開設として実施した場合に,各大学でその科目を自ら開設をしなくとも,それぞれの大学において単位認定ができるようになり,主幹大学でない科目の教員は,そのエフォートを演習やゼミ等の少人数教育に充てることができるようになるということでございます。
また,次の55ページにございますように,そういった場合に,ICT,多様なメディアを活用することができるということですとか,また,一番下にございますように,他の大学の教員や学生との交流による刺激などの効果も含めまして,教育水準の向上が期待されるといったことが謳われております。
こちらの制度は,最後の56ページにありますように,現在,パブリックコメント中でございまして,今月の大学分科会への諮問,答申を経まして,早ければ来月にも公布,施行される見通しのものでございます。この場は,決してこの制度自体について御検討をいただく場ではございませんし,また,本件は全学的な連携制度の話でございますので,法科大学院のみ同士の連携にはそのまま当てはめられる制度ではございませんけれども,大学間でこういったICTも使いながら資源を共有して,質をお互いに高め合っていくという発想が,前回の御議論にも通じるところがあるというふうに考えまして,大学全体の動きとして,参考までに共有させていただくところでございます。
続けて説明をさせていただきたいと思います。次は,お手元の資料の3。3-1と3-2がございますが,論点6,その後,論点7と続けて御説明をしてまいります。
まず,お手元の資料をお戻りいただきまして,21ページ,資料の3-1を御覧いただければと思います。こちらは論点6関係でございますけれども,検討のポイント,青字の部分は,前回御説明したとおりの内容でございます。本日は,この論点の議論に資する資料として,試験結果の活用という観点から,2つの資料を御説明させていただきます。
1つ目は,22ページにあります,共通到達度確認試験の試行試験の成績と,司法試験の短答式試験の成績との相関分析についてでございます。両者の間には,相関係数でいうと0.55といった形で,一定の相関関係が見いだせるところでございます。
また,次の23ページ,これは確認試験の試行試験の点数分布を示しておりまして,右側が点数が高い層でございますけれども,その上にピンク色でかぶせて示しているのが,その中で司法試験の短答式に最終的にその合格水準を満たした方の人数でございます。こちらを見ていただきますと,ある意味当然なのですけれども,右側の確認試験の点数が高い層ほど,ピンク色で示した司法試験の合格水準レベルの方の率が高いということが分かります。具体的には,上の点線囲みにも書いておりますように,確認試験の得点率の上位70%以上の層を見てみますと,司法試験の方の短答式合格レベルが8割以上に達するのに対しまして,確認試験の下位10%層について見てみますと,司法試験の合格レベルは4割に満たないということでございます。
ただ,ここで併せて着目していただきたいのは,確認試験の成績が低くても,最終的に司法試験に合格される方も,左側の方にいらっしゃるというところでございまして,進級判定におきましては,こうしたところにも一定の配慮が必要ではないかと思われるところでございます。
続きまして,各大学で1年次から2年次への進級判定がどのように行われているかについて,24ページ,法科大学院協会による調査報告書を御覧いただきたいと思います。
こちらの今年7月実施の調査によりますと,確認試験の結果の活用方法として最も多かったのは,この24ページの真ん中ぐらいにあります表の②番,進級判定の際に確認試験の最低得点を設定して,それを満たさなければ進級不可という形で,進級条件の1つとして用いるという方法でございまして,全体の半数弱がこれを採用しているということでございました。その他,GPAなどとのセットで総合判定に用いるケースなど,様々にございます。
一方,その最低得点を設定するという中においても,その最低得点として定める水準は大学によって様々でございまして,こちらの内容が,25ページの方の自由記述欄に具体的に書かれておりますけれども,例えば,下位15%は不合格とか,逆に上位80%が要件といったような形ですとか,あるいは全国平均得点の何%以上,あるいは偏差値でいうところの幾つ幾つ以上といったような形で,多様なラインが引かれているところでございます。こうした線の引き方については,今後は,先ほどお示ししたような全国的な分析結果に照らしまして,これが妥当であるのかということを各法科大学院において検証いただきながら,必要に応じて見直しをしていただく必要もあると考えられるところでございますけれども,未修者が法学への適性を早期に客観的に全国基準で判断できるようにするという,そもそもの趣旨の観点から,こうした進級判定の用い方について,本日御議論いただければと思っております。
また加えまして,28ページからの別添3でございますけれども,こちらは昨年度,令和元年度の加算プログラムの調書を基に,文科省において確認試験の進級判定への活用パターンを整理したものでございますけれども,こちらの1ページ目,28ページの方は今の内容と重複いたしますので,次の29ページの方を御覧いただきますと,確認試験につきましては,単にその線引きに用いるだけということではありませんで,過去問を学修に活用されたり,授業改善に活用されたり,また,学生の傾向分析に用いたりといったような使い方もされているところでございまして,こうしたことの在り方についても併せて御議論いただければと思っております。
さらに,これに関して,本日は持続可能な試験実施の在り方の検討に資するようにということで,現在の実施体制等につきまして,確認試験管理委員会事務局の中條氏より御説明を頂きたいと思います。中條さん,よろしくお願いいたします。

【中條氏】商事法務研究会の中條と申します。
それでは,お手元の資料3-2,通しページで申しますと,30ページ,31ページのところを御覧いただきたいと思います。
「第1回試験の実施状況」を簡単に御報告させていただきます。令和2年1月12日の日曜日に実施をいたしました。対象者は,カテゴリーA,B,Cというふうに分けさせていただきました。カテゴリーAというのは,入学時に受験が予定されていた学生,カテゴリーBというのは,入学時にはまだこの共通到達度確認試験を受験することが想定されていなかった学生で,両方とも未修1年次生です。要するに,留年とか長期履修等々で滞留した学生がカテゴリーBということになります。カテゴリーCが上記以外の在学生ということで,既修の2年次生以上ですとか,未修の2年次生以上の方,あるいは長期履修の方等々がこちらに入ります。カテゴリーAは,進級判定資料の一つとして活用することが予定されていて,カテゴリーB,Cは参考資料としての活用ということになっていると,その辺りでカテゴリーを分けたということです。
受験の状況ですが,志願者数は687名でした。当日の出席者は603名で,カテゴリー別に申しますと, Aが482名, Bが62名ということで,各法科大学院から申告のあった未修1年次生は704名いたのですが,実際の受験は544名であったということになります。
試験内容ですけれども,憲法と刑法は30問50分,民法は45問75分となっております。各科目の先生方の作問時のお話を伺いますと,大体平均して6割から7割の得点を想定した問題作成をされたということです。結果を御覧いただきますと,平均点が50点満点の科目は30点台,及び35点台ということで,大体その想定内,75点満点の民法が47点台ということで,こちらも想定内という結果が出ております。アスタリスクを付けております刑法が2名少ないのは,受験番号のマークミスということで,もともとは0点にするという扱いを謳っていたのですが,0点にしてしまうと,平均点が大きく変わってしまうということで,欠席扱いということで採点をさせていただきました。
31ページの2「実施体制について」というところです。共通到達度確認試験管理委員会を法科大学院協会と,公益財団法人日弁連法務研究財団とで共同で組織しています。
その下に,委員の構成を示してあります。委員長が法科大学院協会の理事長,副委員長は日弁連法務研究財団の理事長で,それぞれからの推薦委員を加えて,合計6名で構成されています。その管理委員会から,私ども公益社団法人商事法務研究会が実施についての業務委託を受けるという形で実施をしております。
冒頭で片山先生からも御挨拶がありましたが,9月1日の法科大学院協会の総会で,片山先生が理事長に御就任されましたので,明日開催予定の共通到達度確認試験管理委員会の席上で,大貫先生から片山先生へと委員長が交代をするということになります。もうお一方ですが,日弁連推薦の二川先生から武内先生に委員が交代するということで,明日の管理委員会をもってメンバーが替わりますが,現時点ではまだ変更前ということで,この6先生のお名前をここに掲げさせていただきました。
3の「実施にかかる経費について」ですけれども,ここに挙げさせていただいている項目が中心となります。実際には,各法科大学院の規模を未修者の数に基づいて計算した分担金と,実際の受験者の受験料,及び日弁連法務研究財団からの拠出金で運営しております。実は,問題作成の会議を開く際の会議室の室料等については,全て私どもの会議室を無料で使用していただくことによって,サービスをさせていただいております。その他,人件費等のところで,当会の規定による金額よりもサービスをするということで,実施の経費を下げる御協力をさせていただいております。
実は,昨年度につきましては,収入が支出を上回り,繰越金が生じております。その繰越金については,現在は単年度で計算をしておりますので,年をまたぐような分析等についての費用は全く計上していないということになりますので,その辺りに使わせていただくためのプール,それから,受験者は流動的ですので,受験者が減っても維持できるような形での若干のプールということになります。
昨年度の分担金の計算の対象は,先ほど申し上げましたように,704名でした。今年度は各法科大学院に調査をしたところ,未修1年次の在籍者数ということで申告を頂きましたのが663名でした。ここで分担金の収入が減ることがはっきりしております。また,昨年度の受験率からいたしますと,恐らく受験者数も昨年度よりも減るということになりそうですので,受験料も減ってくるということになります。
ただ,逆に,経費については,昨年度,私どもの方でかなり削った形で契約をしたために,かなり厳しい運営になってしまったということで,今年度については,管理委員会とお話をさせていただきまして,若干増額になっているということで,昨年度からの繰越金を一部経費増額分の補填に充てさせていただくような形に,恐らくなるのではないかと思っております。
4「作問について」ですが,作問委員,点検委員等については,憲,民,刑それぞれ6名から8名の作問委員及び点検委員3名で構成をしております。当初は予定がなかったのですが,第1回の結果を踏まえて,次回の作問に生かすためにフィードバック会議というものを開催いたしました。その結果,かなり今年度の作問に生きるような結果が示されましたので,各科目で昨年度の反省点を踏まえて,あるいは良かった点を踏まえて,今年度の作問をしていただくということになっております。
工程としては,昨年度は8月から作問を開始して,12月半ばまで作問がずれ込みました。当初は12月の頭には校了予定だったのですが,点検会議を踏まえて,問題の差し替え等の必要が出たためにちょっと遅れてしまったということで,今年は少し早めに進めようというお話でした。しかし,この新型コロナの関係もありまして,なかなか思うに任せず,ほぼ昨年と同様のスケジュールで作問検討会のスケジュールを入れさせていただいております。
各作問委員は問題のレベル感だけではなくて,全体の難易度調整とか,出題分野のバランス等々に気を使って作題をしていただいておりますので,かなり御負担をお掛けしているということになると思います。本日御出席の委員の先生方の中にも,これまで作問に御協力いただいた先生がいらっしゃいますので,その辺りは直接聞いていただければと思います。ただ,重要な論点は毎年変わるものではないこと,逆に受験者は毎年変わっていくことなどから,今後は過去問の利用を積極的にしていこうという検討も管理委員会の方では始めております。
最後に,5「各法科大学院の役割」というところですけれども,結局,コストダウンを図るような仕組みにしたわけですので,実施に向けた準備の他に,当日の試験監督,それから,問題冊子を実際に各法科大学院で印刷をしていただく,解答用紙の回収から全て当日の実施についてはお願いをしているところです。
また,欠席者への追試験ということについてですが,これは管理委員会の方では問題を準備するだけの余裕がございませんので,各法科大学院にお任せをしているというところで,各法科大学院の御負担も一定程度重くなっているということを御報告させていただきたいと思います。
私からは以上でございます。

【西川専門職大学院室長】中條さん,ありがとうございました。続けて,事務局でございます。
最後に資料の4,論点7の関係を御説明して終わらせていただきたいと思います。お手元,資料32ページを御覧ください。
こちら,論点7,検討のポイントは,こちらも前回御説明したとおりでございますけれども,基本的な問題意識としましては,この経済社会の変化に応じて,法的なニーズというのがますます多様性を増している中で,改めて多様なバックグラウンドを持つ人材の重要性や必要性,あるいはその出口感といったものをどう認識すべきかというところでございます。
その際に,法曹資格を取る修了生だけではなく,最終的に取れない,あるいは取らない修了生,さらには修了しない学生さんもいらっしゃるわけですけれども,そういったことも含めて,法科大学院教育の成果というものが広く社会に還元されるべきというような視点も含めての御議論をいただければと思っております。
本日,参考資料として,33ページ以降に幾つかデータをお付けしておりますけれども,まず33ページの上側,こちらは前回の資料でございまして,少し復習いたしますと,未修者コースの修了生は一番上の右上のものが,修了後5年目の未修生の状況でございますけれども,未修者コースの修了生,司法試験の累積合格率は4割台にとどまっておりまして,残りの大半について,各大学のデータでは「進路不明」となっている問題でございます。一方で,この33ページの下から35ページにかけてのところには,平成27年度に文科省で実施いたしました,法科大学院修了生活動状況調査のデータを引いておりますが,これによりますと,法曹資格を有しない修了生の多くは,民間企業や公的機関に多く就業しておりまして,また,34ページの下にありますように,法曹資格の有無を問わず,修了生の資質,能力を高く評価する声も聞かれているところでございます。
また,関連しまして,35ページの下から37ページにかけてですが,こちらは以前,この特別委員会で杉山委員から御紹介のありました企業法務部門の実態調査のデータでございます。
これを見ますと,法科大学院修了生に対する企業の採用意欲というのは,近年顕著な拡大傾向にございまして,例えば,37ページの下の方を御覧いただきますと,弁護士資格がなくとも修了生を採用したいという企業が2014年の第10次調査では8%台だったものが,2015年の直近のデータでは24%まで増えているということでございます。
またさらに,次のページにまいりまして,企業内弁護士についてですけれども,男女比率を見てみますと,こちらにあるように,40%を超えているということで,弁護士全体に占める現在の女性比率が2割に満たないことなどを考慮しますと,企業というキャリアを促進することが女性の活躍のしやすさにもつながるというふうにも考えられるところでございます。
また,最後に,これはあくまで多数の事例の中の一部としての御紹介になりますけれども,法学未修者からスタートして弁護士となられ,法科大学院入学前の多様な経験を生かして,新たな法的ニーズを掘り起こしている修了生の事例の御紹介でございます。
38ページにお三方の概要を,その後ろに,日弁連のパンフレットなどをお借りしながら,それぞれの詳しい御紹介を載せさせていただいております。例えば,39ページからの吉田弁護士は,一級建築士としての知見を生かされて,不動産や建築関係の強みを持つ弁護士として活躍をされていらっしゃいます。また,41ページの山崎弁護士は,宇宙工学を学んだ経験を生かして,宇宙ビジネスの法的支援等で活躍をなさっています。また,42ページの小塩弁護士は,大学ラグビー部で日本一を経験したことを生かして,スポーツ庁で日本版のNCAA,大学スポーツの統括団体ですけれども,こちらの設立に寄与されるといったような形で,スポーツという専門を生かした弁護士として活躍をされています。今御紹介したお三方はいずれも弁護士でいらっしゃいますけれども,この他,法曹資格を持たなくても,社会で活躍されている修了生の事例もございまして,こういった方を含めて,この十数年にわたる法科大学院における人材養成が,リーガルマーケットの量的あるいは質的な充実に寄与していることを示す一例であろうというふうに考えられるところでございます。
現在,未修者教育の議論をしていただいておりますけれども,こういった流れを更に進めていくという観点から,未修者と呼ばれております,要すれば,多様な人材の発掘,あるいは育成の在り方,こういったことについて,少し高い角度から,本日は幅広く御議論いただければと考えております。
長くお時間頂戴いたしましたけれども,事務局からの説明は以上でございます。


【山本座長】ありがとうございました。
それでは,早速,意見交換に入りたいと思いますけれども,残された時間はおおむね75分程度だと思います。便宜上,それぞれの論点ごとに御意見をお伺いしていきたいと。具体的には,論点3から5につきまして,前回の議論の補充を頂くと。それから,論点6,論点7について,順次御議論いただきたいと思います。
今後の審議スケジュールの観点から,一応,全ての部分について御意見を頂戴したいというふうに考えておりますので,それぞれの論点部分について,おおむね25分とか30分程度で次に移っていきたいというふうに思っております。
ですので,恐縮ですけれども,その論点について御発言希望がある場合は,できるだけ早く手を挙げていただいて,その発言の意思を示していただければ,非常に助かります。もし万が一,手を挙げるの機能がうまく働かない場合は,御自身でミュートを切っていただいて発言に移っていただいて,私の方から指名させていただきますので,そういう形で御発言いただいても結構です。
なお,手を挙げた後,手を下げるのは,御自身でしかできないのがこのWebexのようですので,恐縮ですけれども,発言を終えた後は手を下げていただいて,ミュートに再びしていただければというふうに思います。それから,マイクが入っていない場合は,こちらからお声を掛けますので,聞こえていますかという御確認を頂く必要はありません。
それではまず,論点3から5につきまして,前回の御議論を踏まえてお気付きの点,あるいは追加の御意見等があればお願いしたいと思います。それでは,まず,清原委員,お願いいたします。

【清原委員】ありがとうございます。清原です。
未修者教育につきましては,この間,皆さまと共有してきた意識として,入学時点において法学に関する学識に差があったとしても,むしろ多様なバックグラウンドという強みを生かしていただきたいということです。それを法科大学院で磨いていく方向性,それを御一緒に御議論してきたと思います。
従いまして,「法学未修者」という,法学については未修者という表現ではありますけれども,むしろ司法の分野を拡充していく創造的な存在として認識してきたと思います。
そこで,1点,20ページの「3,その他の入学後における取り組みに関する御意見」として整理していただいている,「学修時間の確保」の〇の2つ目について,賛成し,その拡充について提案をしたいと思います。
すなわち,法律基本科目を中心に,学修する環境を更に整えてはいかがと思います。そのためには,「基礎法学・隣接科目や展開・先端科目の必修単位数を見直す」という御意見が既に出されており,私もそれは大変有力な条件整備ではないかなと,このように思います。在学中受験が可能になったこともございまして,これは学修時間の確保という中の位置付けというよりも,むしろ「法律基本科目の重点的履修を推進するための履修単位の見直し」といった項目にして,明確にその改善の方向性を示して,皆さまと御議論してはいかがかなと,このように思います。
ただし,展開・先端科目については,大変有力な科目でもありまして,例えば,司法試験受験後に,その後半に履修して,その後の展開を展望するという意義付けもあるというふうに思っています。
この基礎・隣接科目と,それから,展開・発展科目の単位数というのは,12単位プラス4で16単位となっているようでございますが,それをどの程度削減することが望ましいのかということについては,やはり法科大学院の先生方のこの間の御経験を尊重して,適切な方向性が示せればと,このように提案をいたします。
2点目に,一言申し上げます。今回,大変タイムリーな調査をしていただいて,資料1-1で御紹介いただいております,1ページ目の「(2)のカリキュラム・教育方法等における工夫」の項目の3番目に,「約60%の法科大学院が法学未修者1年次の履修登録単位数の上限を,36単位を超えて最大44単位まで拡大している」とありますが,拡大していない法科大学院もあるわけでございまして,その趣旨としては,恐らく単位数を増やすという形での支援よりも,単位数を絞って集中してもらうという,そういう理念も働いているのではないかなと思いまして,単位数についても,このような調査の結果も尊重したいと思います。
最後に一言,「オンデマンド型の取り組み」についてでございますが,これも今回の調査で明らかになりましたように,多くの法科大学院がこれまでは実施していなかったけれども,今回のコロナ禍の中で取組を開始される学校が増えている。これは,同時双方型による遠隔授業は最も喫緊の課題として対応されているわけです。そこで,これからはこうした「ICTを使った教育」と,それから,「対面型の教育」の調和,バランスが課題になっていくわけですが,未修者の教育を念頭に考えますと,通信教育ではない,法科大学院だからこその「授業の質の維持」という課題がございますので,「適切な未修者へのオンデマンド方式による授業の活用」と,それから「対面による支援のバランス」について,今回のコロナ禍を経験して,具体的な提案ができれば望ましいと考えます。
以上です。よろしくお願いします。ありがとうございます。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは続きまして,水島委員,お願いします。

【水島委員】補助教員の活用について述べさせていただきます。17ページに御指摘いただきましたように,補助教員は担当教員との適切な連携が不可欠と考えます。本日御紹介いただきました状況調査によれば,活用が進んでいる法科大学院もありますので,活用が進んでいる,先進的な法科大学院の取り組みを学ばせていただければと思います。
今後,補助教員の活用が進むと思いますが,私は労働法の専門でして,その立場から,少し心配がございます。補助教員の活用を進めることは,ロースクール出身の若手弁護士の本業の時間を,もしかすると,侵食してお願いすることにもなりかねない。あるいは,本業に加えて多くの時間をお願いすることにもなります。無理なお願いにならないように,特に修了者ですと,教員,ロースクールの方が強い立場にありますので,注意が必要だと思います。
もう1点は,法科大学院によって,労働時間が様々で,先ほど御説明にありましたように,これは恐らく有給の時間であって,実際には少なからずの無給労働があると推測いたします。
労働に対して適正な報酬を支払うということは当然でして,可能であれば財政的手当があると有り難く思います。それが難しい場合は,補助教員の活用を進めようとする余り,この無給のボランティアに頼りすぎないよう,無給であることを前提としないよう,注意が必要と考えます。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,酒井委員,お願いできますか。

【酒井委員】はい。
私から3点申し上げたいと思うんですけれども,まず1点目が,オンデマンド講義に関する点になります。前回の私の改革案では,オンデマンド講義プラス補講で単位認定をするという新しい仕組みを導入してはいかがかということを提案させていただきました。これは当然,これに限らず,社会人が受講しやすい夜間などの時間帯に完全に双方向の講義をICTで開講できる,実際にしているというロースクールに関しては,本来のロースクールの講義に近いものがICTで供給可能ということになろうかと思いますので,単位認定可能とすべきと考えます。このような点も踏まえ、実施するロースクールの選択に委ねられるような形で,最終的に改革案として取りまとめていくことが望ましいというふうに考えておりますので,補足をさせていただきます。
また2点目が,動画の関係ですね。全国的な講義配信システムの導入という件についてなんですが,私の改革案の方では,既存の講義から選定するというプランと,新たな新規コンテンツを制作するということもあり得るだろうという2本立てで提案をさせていただいたかと思います。しかし,前回の議論を踏まえますと,やはりなかなか既存の講義から選定するということの難しさも感じますし,また,コンテンツをいかに良いものを作っていくかということが重要だというような潮見委員からの御指摘もあったかと思いますので,やはり別途作っていくというのが現実的なのかなというふうに考えているところです。
また,どのような動画を作成すべきかという点については,やはり議論だけをしていても,なかなかいいものが見えてこない,どういうものにしていけばいいのか分からないというようなことが予想されますので,実際にサンプルを作成するですとか,適していると思われる講義を共有して視聴するなどして検討できる体制が作っていけるとよいのではないかと考えます。
また,検討・作成の主体ですけれども,これは当然,未修者教育に携わってこられた研究者教員の先生方が中心になるということは言うまでもありませんが,やはりロースクール世代の実務家を加えていただきたいと思います。特に,学生の側からどのような教材を求められているのかという点を確実にニーズとして逃さず織り込めるような体制で進めていくことが,これはマストかなと思っておりますので,その点も指摘をさせていただきます。
また,コンテンツについては,本当にこれからの検討になっていくかなと思うんですけれども,科目別教材,予習教材はもちろんのこと,頂いた意見にもありますように,導入教材ですね。これは条文の読み方,判例の読み方,また,実務家がいわゆる事例問題を解決するに当たって,どのような思考の順序をもって問題に取り組んでいくのかということですとか,そういったエッセンスの部分を盛り込んだような動画というのは,これは非常に早く未修者に届けてあげたい。これはロースクールによってもそれぞれ工夫があるところで,ただ,さはさりながら,ばらつきのあるところかなと思いますので,こういったものから,まず作成をしてみると非常に有益なのではないかなということを申し上げさせていただきたいと思います。
また,最後になりますが,先ほどの清原委員からの御指摘にも関連し,補助教員をいかに活用していくのかという点にも関係する点です。法律基本科目の単位数を増やしていくかどうかというところなのですが、やはり未修者にとっては、インプットとアウトプットをバランスよく両輪として行っていくということが司法試験合格に対しても不可欠と考えるところです。また,私ども実務家というのは,書く仕事が業務の多数を占める仕事ですので,書くトレーニングという部分が不可欠だと思います。
法律基本科目そのものを増やしていくということは,やはりインプットを増やしていくという方に偏っていくかなと思いますので,やはり書くトレーニングを補助教員で担保していくということは,不可欠かと思います。やはり補助教員を,そういった観点でより活用していくということは,是非推進されるべきだと思います。また,先ほど,水島委員からも御指摘があったように,すぐに新規予算をというのはなかなか難しいかと思うのですが,やはりきちんと予算付けをして,その身分を担保していくということで優れた人材を確保できる,また,補助教員の方も良い環境で指導に当たれるということが言えると思いますので,その辺りを是非推進していけると非常によろしいのではないかなと思うところです。以上になります。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは続いて,土井委員,お願いいたします。

【土井委員】ありがとうございます。
先ほど,清原委員から御提案のあった点について,私も基本的に賛成です。
未修者教育の改善については,これまで,この特別委員会においても議論を重ねてきたところですし,昨年3月には,委託調査研究の報告書が出されて,更に7月の会議で,酒井委員からICTの活用について有益な意見書を提出いただいたところです。いずれの改善策も有益なんですけれども,やはり同時に学生に時間と労力を要求します。履修単位数を増やせば,その分,学修量も,成績評価を受ける負担も増えます。視聴用教材を充実させれば,それを見る時間が必要になりますし,補助教員から丁寧な指導を受けるにも時間と準備が必要になります。
ただ,問題は,現在の状況で履修者にそのような時間,あるいは余裕があるか否かという点だと思います。一概には言えませんけれども,かなりの数の学生は予習復習に追われておりますし,中には精神的,心理的に追い詰められていくという者もいないわけではありません。
教育改善だからといって,やはり何をどのように教えるかにばかり気を取られてはならないのであって,学修者に何ができるのか,それによって何をどこまで身に付けることができるかという点に注意が必要なんだろうと思います。そうした意味では,このような改善策が有効に機能するためには,学生が適切に学修できる条件,環境を整えなければならないと思います。
その方法としては,第1に,未修者に要求する学修量の合理化を図ることと,第2に未修者が学修に用いることができる時間を増やすこと,この2点をしっかり考える必要があると思います。
第1の点は,先ほど清原委員から御指摘がありましたように,未修者は既に多様なバックグラウンドを踏まえているわけですので,何を学ぶことに集中すべきかという点を考えて,履修を義務付ける科目の見直し等を検討する必要があるんだろうと思います。
第2の点は,入学前の科目等履修の充実を図る,あるいは長期履修制度の活用です。長期履修については,既に制度があるんですけれども,これを認める要件が厳格だったりしますので,在職者に限らず,制度を柔軟に活用する方向が示されればと思います。
論点1で了解しましたように,法科大学院は未修者と既修者が同一の課程で共に学ぶことであることはそのとおりなんですけれども,しかし,それぞれの状況に合うような形で,教育課程の最適化を図ることができるような工夫はすべきなんじゃないかと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,加賀委員,お願いできますか。

【加賀委員】加賀です。
先ほど御発言がありました補助教員の活用について,重ねて発言をさせていただきます。
未修生にとってはとても大事な制度だというふうに思うんですね。特に,多様なバックグラウンドを持った学生たちですので,その人たちが法律学という分野において学修を進める上で,未知の領域に入っていきますので,正規の教員だけではなく,ある種の学修方法でありますとか,そういうものをちゃんと一緒に指南してくれるチューター。本学ではチューターというふうに呼ぶわけですけれども,そういう存在というのは大変重要であるというふうに思っております。
先ほど,水島先生も御指摘いただきましたけれども,正規の教員との連携が大事だ,したがって,非常に正規の教員も時間を割かれることになり,なおかつ修了生といいましょうか,チューターたちの,補助教員の負担も増えるということは本当に考えなければならない制度だというふうに思っております。
その上で,今まではかられていないことですけれども,かなり多くの大学が補助教員制度を導入しているということは今日御発表いただきましたけれども,これは非常勤講師にするしかないとは思うんですが,科目を設けることはできないだろうかというふうに考えております。チュートリアルという名称か何かを付けまして,それぞれの勉強について,科目について,チューターが科目を担当するということで,そこでもっていろんな役割を果たすことはできないんだろうかと。ペイの問題も含めまして,そのような制度にできないかというふうに考えている次第です。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。
時間の関係であれですが,今,私が把握している発言希望者は,あと,菊間委員,中川委員,髙橋委員のお三方だという理解でよろしいでしょうか。
それでは,菊間委員からお願いいたします。

【菊間委員】菊間です。ありがとうございます。
私は,酒井案の全国的な講義配信システムの導入について,意見を述べさせていただきます。
1のオンデマンド方式による授業とも関連するのですが,何でも聞いてくださいという形で補助教員を配置していても,それを利用する生徒が近年どんどん減っているという話を,補助教員を実際にやっている弁護士から聞いています。では,未修者は一体どこで勉強しているのかというと,未修者がロースクールの授業についていくために,予備校の基礎講座を利用しているという本末転倒な自体が,今も相変わらず続いているようです。
コロナ禍で各ロースクールがオンデマンドの授業を行っているという状況がありますので,この酒井先生の第2案の配信システムについて,現実的なのは,特別なチームを作って新しい授業を作った方がいいのではないかという酒井先生の御意見が先ほどあったんですけれども,私はどちらが現実的かといえば,今もう既にオンデマンドで配信しているならば,その授業を配信する方ではないかと思います。
次に,ではどの授業をどうやって配信するのかというところで議論が出ると思うんですけれども,分かりやすい基準を作るという意味で,未修者の合格率が一番高かった学校が翌年の配信を担当するというふうに持ち回り制にしてはどうかと思っています。もちろん,合格は2年次以降の先生方の授業の成果だというところも重々承知はしていますが,そ分かりやすい指標としては,未修者合格率を基準とすることがいいのではないかと。
未修者がなぜ補助教員を使わず,予備校を利用するかといえば,予備校を利用して合格した人が多いという実績が,予備校がどんと出しているのもあるんですけれども,未修者を予備校に向かわせていると思います。この補助教員に聞いていて受かるのだろうかという不安が,合格実績の高い予備校という分かりやすいところに,未修者を向かわせているような気がするので,この授業でロースクールの未修者が去年一番受かったというのは分かりやすい指標で,未修者にとって聴講するモチベーションが上がるのではないかと思います。
また,合格をしない生徒の話を聞いていると,先生が悪かった,ロースクールが悪かったと,環境のせいにしている生徒も多くいます。そういう意味では,同じ授業を受ける機会を与えることで生徒の方にも言い訳をさせず,覚悟を持って勉強をしていただくということで,その方が私は現実的じゃないかなと思います。
もちろん,ワーキングチームを立ち上げてということができれば一番よいですが,その議論をする余り,時間がかかりすぎたり,意見がまとまらなくて結局何もできなかったという事態だけは避けていただきたいと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,中川委員,お願いします。

【中川委員】2点申し上げます。
1点目は,通し番号15ページの1の上から3番目の丸ですね。入学前,未修者の入試の仕方なんですが,少しトライしてはどうかなと考えることあります。神戸大学では未修者の入学後,非常に丁寧に授業をやっているんですが,全員が必ずしもうまくいくわけではない。
やっぱり法律の論じ方とどうしても,合わないという方はいらっしゃいまして,そうしますと,入学後何をするか,だけでなく,入学前のもう少し適性を見ることはできないかと思うわけですね。
既修者の場合は,法学部に行っていることで,大体自分がどれぐらい,法律に適性があるか分かっているわけです。未修者にも,やっぱり法律論をチャレンジするというか,トライする機会を正式に与えてみてはどうかなというふうに考えております。
現在は,未修者の入試は法律に関することをやっちゃいけないということになっているのですが,この3番目の丸に書いてあるような,一発入試ではなくて,入学前に法律の授業を受けてみて,簡単な問題を解かせてみてどうかと。こういう法律の議論の世界になじめますかというようなことを見るわけです。それが入学前の時点で駄目だから不合格にするかどうかはちょっとまだ微妙なんですけれども,そういう法律的な能力を,適性試験としてではなくて,実際の法律の問題でやってみるということを,パイロットでもいいですけれども,やらせてもらえたらうれしいなと思います。それが意味ある選抜につながるかの調査という意味も含めてですね。現行法ではそのような入試をするとルール違反になりそうなので,発言をいたしました。
もう一点は,先ほどの通し番号の10ページだと思いますが,オンラインと,それから対面でどちらがいいかという話なんですが,それぞれどういうメリット,デメリットがあるかということをよく同僚と話しております。オンラインでしかできないことは何だろうかと。ここの10ページに挙がっているのは,恐らく緊急の調査の結果だから致し方ありませんが,教員側の発想ないし感想だけなんですね。
学生側がオンライン授業についてどのように感じるんだろうかということをいろいろ同僚に聞いてみました。1つは,オンライン授業だとどうしてもできないということが,学生間で,お互いどれぐらい授業が分かっているかという水準感,相場感がオンライン授業だと掴みにくいんですね。授業の後,ちょっとお互いに話をしたり,あるいは友人同士が話をしているのが聞こえてきて,みんなそんなに分かっているのかとか,誰も分かっていないなとか,そういうところがわかるわけですけれども,オンラインはそこが自然発生しない。とりわけ新入生の場合はそれは難しいですね。そういう自分で自己修正する,これはやばいぞと思うようなところもオンラインで環境ができればいいんですけれども,それが今のところはできていないということがデメリットかと思います。
それから,これもなるほどなと思ったんですが,我々が授業をしているときに,教室全体の雰囲気を見て,もしかしてみんな分かっていないんじゃないかと思って,もう一度説明を繰り返すことがあります。それは確かに,オンラインではなかなか分からない,分かりにくいなと思いました。それが1つです。
もう一つは,学生側として,ずっとうちにいるので,生活と学修の時間の切替えが難しいという感想があるようです。やっぱり学校に行って,ちょうど仕事も一緒ですけれども,場所を変えることによって,勉強のモードに入るということ。むろんこれは学生によりまして,ずっとうちがいいと言っている人もいるし,変えた方がいいという人もいるようなんですけれども。そういった学生目線でのメリット,デメリットもあってもいいんじゃないかと思います。
誤解がないように付け加えておきたいんですが,私はオンライン授業は非常にうまくいっていると思っている方ですので,決して対面授業に戻すべしとか,そういう趣旨ではないんです。けれども,現在我々のもっている調査結果が,ちょっと教員側すぎるかなという気もいたしましたので,今後,そういうふう学生目線の調査もしていただくといいんじゃないかと思いました。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは続きまして,髙橋委員,お願いいたします。

【髙橋委員】ありがとうございます。
全国的な配信コンテンツについてですが,私は酒井委員の先ほどの御意見にほぼ賛成いたします。
特に,実際の講義を利用するというのは,確かに簡便で速やかにコンテンツが提供できるという利点はあると思いますが,その講義を受講している学生のプライバシーの問題などもあるかと思います。実際,本学では,前期の授業で,音声やビデオの録音・録画に対して学生から強い抵抗感が示されまして,結局,少なからぬ授業でビデオオフを認めるという形で,教員は暗闇に向かって講義をしているという状態がございました。ですので,そういった同意が得られるということが条件になるので,むしろハードルは比較的高いのではないかと思います。
それから,未修者教育に比較的定評のある一部の教員の声ですけれども,やはり各法科大学院における教育コンテンツというのは各教員が工夫を重ねてきた結晶物でありまして,これを共有するということにはなじまないのではないかという意見も示されています。そこで,多少煩雑になることは否めませんが,何らかの独自のコンテンツを作成する方向がよいのではないかと思います。
そしてそのコンテンツの中身についてですが,基礎的な知識の確認という御意見がありましたけれども,一昨年の未修者教育の委託事業に少し関わっておりまして,その過程で,未修者の少なからぬ数が,まず基本書をそもそも読めないという悩みを抱えているということが分かってきました。基本書を読めないということになると,何ページから何ページまでと予習課題を課されても,それに追いついていけないという状態が生じるので,当然,インプット,アウトプット以前の問題になっているのではないかと思われます。その意味では,現在の未修者というのは,法科大学院立ち上げ当初の未修者が抱えていた問題とは大分異なる問題を有している状況になっているという可能性もあるのではないかと思います。
そこで,動画を作成するならば,そうした予習の前提となるような学修方法についての指導教材というようなものがあると,非常によいのかなと思います。また,こうしたオンデマンドの教材の作成につきましては,コロナ禍の下にある教育の現場から大変負担が重いという声も聞いておりますので,教材の作成に当たっては,文部科学省様の主導で十分な支援の枠組みを作っていただきたいと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
なお御意見あろうかと思いますけれども,恐縮ですけれども,先ほど申し上げましたように,今日,一応,全体やりたいと思いますので,この点についてはこの程度にしたいと思います。恐縮ですが,発言を終えられた委員は,手を下ろしていただければ幸いです。
それでは続きまして,論点6の方に移りたいと思います。共通到達度確認試験の今後の活用,あるいはその持続可能な実施体制の構築等に関する御意見をお伺いできればと思います。御質問でも結構ですので,よろしくお願いいたします。
それでは,木村委員,お願いいたします。

【木村委員】ありがとうございます。
先ほどからお話が出ていますけれども,やはり未修の方はすごく向いている方もいらっしゃいますし,やってみてやっぱりどうも合わないという方が,かなり分かれるようには思います。この委員会にも,恐らく未修から勉強され,素晴らしい法曹になられた委員もいらっしゃると思います。未修の方は,すばらしく成長される方もいるし,そうでない方もいるという,かなりはっきりしているような気がします。
それで,先ほどから,入学前とか入学時とかという議論が出ていたんですけれども,どうも私の感覚では,ある程度やってみないと分からないような気がしています。例えば1年なら1年程度やってみて,伸びる方はすごく伸びるという実感があります。その意味では,共通到達度試験を活用するということは非常に意味があると思っているんですけれども,ただ,先ほど,費用の問題も出ていましたけれども,もともと共通到達度は最終的には司法試験の短答に変わるかもしれないというようなことも念頭に置いて始めた経緯があったと思っております。そうしますと,今は状況が全然変わっているわけですから,もうちょっと軽いと言ったら語弊がありますけれども,もう少し効率的なやり方というのがあるんじゃないかというふうには思います。
先ほど,過去問の活用とかもありましたけれども,そういうものもどんどん活用して,要は自分が向いているか,向いていないかをチェックするという,そういうような位置付けとして,今後進めていく必要があるんじゃないかなと思っております。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
他にいかがでしょうか。北居委員,お願いいたします。

【北居委員】ありがとうございます。
すみません。全体的な大きなお話ではなくて,たちまちのお話で申し訳ないんですが,中條さんに多少お伺いしたい部分がありまして,来年1月に恐らくまた共通到達度試験が実施されるかと思うんですけれども,このコロナだとかインフルエンザの問題の中で,例年のような対面の教室での実施が可能なのかどうか。もしできないならどうするのか。
あるいは,もしできない場合は,ICTを活用したようなやり方というのが将来的に可能になるのか。そのようなことも含めて,ちょっと状況を教えていただければなということを質問させていただきました。すみません。

【山本座長】それでは,中條さん,可能な範囲でお答えいただけますか。

【中條氏】非常に難しい問題だろうと思います。今年度の実施の方法については,結論は,明日の管理委員会でお諮りする,決定をしていただくということになっています。ただ,方向性としては,もちろん対面式の試験であることが前提だろうとは思いますが,1月の試験日にどういう状況になっているかというのは,現状でどう推し量ろうとしても分からない部分がありますので,そこは非常に難しい問題となろうと思います。
また,ICTの利用についてですけれども,こちらの方も,CBTを活用,運用し始めてしまえば非常にやりやすいものなのかもしれませんけれども,実際に導入するまでのコストを考えると,なかなかすぐにそちらの方に踏み切るのも難しいのかなと,私個人の感想ですけれども,思っております。

【山本座長】ありがとうございました。
北居委員,何かコメントをお願いします。

【北居委員】ありがとうございます。
実は,実施をする際に,結構,ロースクール側もいろいろと人手その他が掛かって,費用の問題はもちろんございますけれども,そういう労力の面も結構ないわけではない。そのときに,オンラインでこういう試験をやっていくような在り方というのは,やはり長い目で考えていくべきだというのが1つと,もう一つは,やはりコンセプトとして,みんな集めて一時にどんとやるという形ですけれども,オンラインだと,あんまりこういうのは難しいだろうというときに,あらかじめこの問題をちゃんと一定期間の間にクリアしなさいと。全部クリアしたら評価しますといったような,ちょっと試験のコンセプトの在り方を変えていくようなこともあるんじゃないかなと,個人的には少し考えておりまして,発言させていただきました。失礼します。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,菊間委員,お願いいたします。

【菊間委員】私も今の御意見に賛成します。
いま一度,原則に戻って,集団の中での順位を競うのではなく,自分の到達度を確認するための試験ということで,未修者1年次に活用するということに限るのはいいのかなと思いました。
詰め込み式の勉強は駄目だというのはもちろんそうなんですけれども,ただ,知識が定着していないと,論文を書きたくても何を書いたらいいか分からないというところがありますし,社会人に多いのですが,論文の勉強をしていると勉強をしている気分になるので,暗記と思われている短答の勉強がおろそかになって,肝心の基本的な知識が2年生,3年生になってから危ういと。そこで焦ってしまうという方も多くいらっしゃるので,1年生のうちに短答で求められるような知識をしっかり押さえておくということはとても意味があると思います。
費用と人材の問題ですが,これまでの共通到達度試験ですとか,司法試験の過去問を全てストックして,今お話があったように,1か月なら1か月間と期間を決めて,春休みの間,例えば,全未修生がその問題を受けるたびに違う問題が出てくるようなシステムを作っていただき,例えば,9割以上正解したら進級認定されて2年生に上がれるというような形で活用することはできないのでしょうか。そもそも今までの共通到達度試験と考え方が違うのかもしれませんが,そういうやり方で使うという方がいいのではないかと思いました。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,中川委員ですか。お願いします。

【中川委員】先ほど,中條さんから,オンラインでは難しいシステムを作らなければいけないということでした。実施する法科大学院側で工夫できるのではないかと思いました。例えば,我々であればGoogle Classroomを使って,ぱぱっと試験が実施できちゃうという気がするんですけれども。あとは,Zoomか何かで,なりすまし受験をやっていないことを確認すればよいので,費用もかけずにできると思うんですけれども。

【山本座長】ありがとうございます。
中條さん,何かコメントはあります。

【中條氏】私も,そういう形で各大学了解の下でやる分には全く問題はないんだろうと思います。ただ,不正行為がないかどうかのチェックのところが,マークシートの試験だけに,論文式の試験に比べると,若干難しい部分があるのかなというのを危惧しているというところはあります。
あともう一点,ICTを活用したCBTの導入のためには,やはり問題のストックが重要です。先ほど,菊間委員の方からもありましたが,司法試験の過去問とか,そういったような問題のストックが十分できれば可能なのかもしれませんが,問題ごとのレベル感を付けるためには,何年にもわたってモニタリングをするといったようなことをしないと,なかなか問題のレベル感の統一というのが難しいところであろうかと思います。
また,法律の問題ですので,先生方には釈迦(しゃか)に説法ですけれども,法改正,新しい判例ですとか,そういったようなことの手当てのために,常に問題全体を見直しながらやっていかなければいけないというのが,コストあるいは労力の掛かるところだろうというふうに感じております。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,片山委員,お願いいたします。

【片山委員】まず,本年度の実施に関しましては,恐らく明日9月10日に,管理委員会が実施されますので,そこである程度,議論がなされることになるのかと思います。実施方法に関しましては,それなりの準備が必要でしょうから,総会を12月の上旬,1か月ぐらい前には開催をして,そこで周知徹底が図れればと、協会執行部としては考えております。
その間,基本的に司法試験と同じように,リアルの対面での実施,教場での実施をお願いしたいところでありますが,あくまでも教育の一環ですので,オンラインで授業を実施しているところにそれを強要するというか,無理やりお願いをすることは難しいと思いますので,オンラインでの実施も視野に入れて検討しなければいけないと考えています。
実際にどのような形でオンラインでの実施を行うかという点は,恐らく現場での先生方のお知恵を拝借してということになりますので,10月中には,アンケート等で各ロースクールの状況をお伺いして,それを管理委員会の方にフィードバックして,最終的にその実施要領を確定したいと思っております。
それから,将来的な話ですが,恐らく医学部のCBTの試験のような形での実施を皆さん,お考えになっていて,CBTということを仰っているかもしれませんが,これもそんなに簡単なことではありませんし,それから,医学部の共用試験はいわゆる実技試験OSCEとの組合せで初めて意味のある,一種の仮免許を与える,実際の患者さんを前にした実習を行うための仮免許のような位置付けということになりますから,そのような大義名分があって,初めてCBTの本格実施というのは意味があるとは思っております。
昨年度,第1回目がようやく本格実施されまして,試行実施も含めますと6回目ということになりますが,これまでの感触としましても,未修者から既修者に上がる段階に,進級判定として,それを厳格に行い,かつ短答式の形式で基礎的な知識の確認をすることの必要性という点は,十分認識されているかと思いますし,司法試験との相関もあるということですので,まずはこの5年間の実施をしっかりやっていって,成果につなげたいというところかと思いますが,将来的な可能性としては,やはり2つの可能性を検討していく必要はあるかと思っております。
1つ目は,医学部のような共用試験を目指して,本格的にCBTの形で実施していくという方向性ですが,他方では、1年から2年目への進級判定ということだとしますと,本来的には,これは各ロースクールが責任を持って実施すべきだということになります。
それが必ずしも十分にこれまで行われていなかったということから,共通到達度という形で,共通の試験を実施していると考えられるということであれば,この間,計10年間の実施を通して,試験問題の作成という意味でのノウハウやツールが蓄積してきましたので,しかるべき段階に各ロースクールにお返しして,そういったツールを活用して,各ロースクールで実施してくださいという方向性も十分考えられるのかと思います。
その場合は,恐らく現時点それを判断するということは難しいでしょうが,来年度の試験が3回目ということになりますから,その辺りで,方向性を検討していく必要があろうかは考えているところでございます。いずれにしましてもいましばらくは実施を確実に行っていくということが重要かと思います。その後は,恐らくどこかの段階でその2つの可能性のどちらを模索していくかということを,この中教審でもしっかり議論していただければと思います。長くなりましたが、以上でございます。

【山本座長】ありがとうございます。
それでは,潮見委員,お願いいたします。

【潮見委員】今,直前に片山委員がおっしゃったことについては,私は全面的に賛成です。
その上で,一言申し上げたいことがどうしてもあるので,発言させてください。
それは,先ほど,中條さんの報告にもありましたけれども,今回の共通到達度確認試験についても,出来が6割,あるいは7割だという御報告がありました。この問題レベルということを考えたときに,未修者が1年修了したときに,6割から7割しか点を取れないような問題をここで出して,それで1年次修了時の理解能力を確認するということが果たしてよいのだろうか。それとも,日本全国の法科大学院の1年次修了未修者がこの程度の能力しか持っていないのか。私は後者ではないと思います。
先ほどから,司法試験の問題の活用等々というお話もございましたが,実際に今回の共通到達度確認試験というものが1年次終了時,そこから2年次に向かうときに,どこまでの基本的な理解力,あるいは基本的な,例えば,制度とか概念に関する理解ということが備わっているのかということを期待するのかという観点から見たときに,現在出しているような内容の問題が果たして適切なのか。さらには,司法試験の短答問題で出しているような問題をここで使うことが適切なのか。
私も過去に予備試験も旧司法試験も新司法試験も作題と採点をする機会がありましたから,ある程度のレベル感というのは分かったつもりで申し上げますけれども,共通到達度確認試験のレベルと内容をもう一度検証したり,確認する必要がありはしないかということを申し上げたいんです。
各法科大学院の段階的な学修というものを踏まえながら,1年次の終了時の理解度の到達度というのは見なければいけない。これは,片山委員がおっしゃったとおりですけれども,全国レベルで見たときでも,レベル感がこれでよいのか,是非御検討をお願いしたいと思います。むしろ9割方できるような試験問題にした方が2年次,3年次の学修にステップアップしていただくための一段階としては適切だというふうに思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,論点6については,おおむねよろしいでしょうか。
未修者の自己確認というか,現状確認という意味では,こういう試験には意味があるだろうという意見が一方であり,他方では,やはり様々なところでの負担という点について言及がありました。何人かの委員から提案があった医学部的な方式につきまして,これは私はこの制度を創設するごく初期の頃から関わって,医学部の実際のテストを作っているところなども見に行ったりしたことはありましたけれども,中條さんなんかも言われましたように,最初の段階でかなり問題のストックを作って大々的にやっておられるということで,ちょっとこの法科大学院の制度とは事情が違うということ,それから,医学と法学の違いということもあって,現状のような方式に落ち着いたという経緯もあったわけです。ただ,予行を含めて6回程度,既にやっていて,今後どういう方向が望ましいのか,再度検討する必要はあるだろうということは御指摘のとおりだろうというふうに思いました。
ただ,片山委員も言われましたように,今の今,この段階で新しい方向に踏み出すのかというと,本格試験を1回行ったところですので,もう少し様子を見る必要があるのではないかというのが,片山委員の御発言の御趣旨だったと思いますけれども,いずれにしても,引き続き,この点についても,他の未修者教育の充実の様々な論点との関わりの中で,引き続き議論をしてまいりたいというふうに思いますが,本日はこの程度にできればと思います。
それでは,恐縮ですけれども,まだ手を挙げ続けられている先生方は下げていただければと思いますが。最後の論点7,法科大学院修了生の進路の在り方についての議論に移りたいと思います。
それでは,富所委員からお願いいたします。

【富所委員】
ありがとうございます。
前回,出口戦略が大事だということを申し上げたので,発言させていただきたいと思います。論点7にも「グローバル化とビジネスモデルの転換」とありますが,各企業でも,コンプライアンスは非常に重要になってきています。例えば,IT系のスタートアップ企業などは,社員が非常に若い。そういう中で,難しい契約を結ぶなどしており,リーガルマインドを持った人というのは,需要がすごく高まっています。しかし,そうした学生がどこにいるのか,逆に学生たちからすると,どういう企業にそうした需要があるのかということが,なかなか分かりにくいと思います。
調査結果にもありましたけれども,司法試験に合格しなかった人がその後どうなっているのかが分からないという実態があるようなので,このあたりは,なかなか難しいとは思いますが,しっかり追跡調査することが大事なのだと思います。
それから,マッチングをどうするのかということは考えないといけないと思います。
これは,大学のキャリアセンターなどでやるのか,そのあたりは一朝一夕にはいかないかもしれませんが,法曹にならなかった人たちも,どういうふうに社会で活動していくのかという仕組みを作り上げないと,いけないように思いました。
あと1点,追加です。論点の3~5にも関わりますが,法科大学院の連携が6校,17%しかないという結果が出ていました。各大学で競うべきところと,それから,業界全体で裾野を広げるべきところがあると思います。それは民間でも同じです。特に未修者に関しては,やはり業界全体で裾野を広げるべきテーマなのだと痛感しています。
ですので,先ほどのオンラインの議論などもありましたが,こういうときはリーディングカンパニーが業界を引っ張るのが通例です。ですので,ここにいらっしゃる大学の方々とか,あるいは協会の方で,横のつながりを強め,未修者全体の問題として,総合的に対応していくということが必要だと思いました。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,大貫委員,お願いいたします。

【大貫委員】大貫です。
それでは,この最後の論点に関して,この事務局の資料を読んだときに思い出したことなんですが,2013年から2014年にかけて,国・地方公共団体・福祉等の分野における法曹有資格者の活動領域の拡大に対する分科会というのが法務省の下に設けられて,活動領域の拡大の問題を議論しました。これ以外に,海外展開,それから,企業という部会も設けて,議論をいたしました。そのときのことが頭によみがえりましたので,そのときのことを思い出しつつ,3点申し上げたいと思います。
まず,法科大学院修了生というふうに広く取っていても,これはこれでよろしいと思うんですが,ロースクールが法曹有資格者を育てるということを第一目標といたしますので,一応,以下の発言は,法曹有資格者,かっこ付きの候補者を念頭に置いております。ただ,受からない方を排除するという趣旨ではございません。
まず第1に,事務局の文書にありますように,多様なバックグラウンドを有する者が法の分野でその知見を生かせるようにするためには何が必要かということを考えますと,これは先ほど申し上げた分科会で何度も申し上げたんですが,法曹イメージの転換がまず必要ではないかというふうに思っております。
本日の資料の16ページにも,ある委員の発言で,法曹イコール法廷をイメージする人が多いようだというのがありますが,私も正に今でもそうだろうと思います。この分科会の際に申し上げたことは,事後紛争解決型,あるいは法廷中心型法曹から,予防法学的法曹,リスク回避を目指す。政策形成型法曹,積極的な秩序形成に携わる。そういったような法曹イメージというものをきちっと我々は持つべきではないかというふうに発言いたしました。現在この時点でもそういうことを強調する必要性があるんではないかという認識。これは全てのステークホルダーの課題ではないかと。それが1点です。
それから,第2点は,富所委員が言われたことで,ミスマッチでございます。多様なバックグラウンドを持った者が法の分野で活躍することが求められている。これはもう間違いのないことだろうと思います。2013年,2014年の時点では,本当に需要があるかということが議論になったんですが,もうそんなことではないと思います。中教審の前の期で,杉山委員が言っていたんですが,もはや企業法務の分野で弁護士はもう足りなくなるぞ,どうしてくれるんだという発言をはっきり言ったのが記憶に残っています。もう既にそういう時代であります。ですから,ニーズがあるかどうかを議論している段階ではございません。
従いまして,富所委員と全く私の問題意識は一致するんですが,法曹有資格者受入れ側と法曹有資格者の間でミスマッチが発生している。これを解消するための取り組みを具体的に提案しなくてはいけないんですね。マッチングの場,あるいはマッチング組織というものをきちっと立ち上げる必要があると思います。
それと,これは富所委員ももう言われたことですけれども,情報共有が足りません。法曹有資格者受入れ側,弁護士会,法科大学院等の意見交換の場を立ち上げるべきであると思っております。これがマッチング不足。ミスマッチ解消です。
3点目が,法曹有資格者,これは候補者ということになると思うんですが,候補者へのサポートの問題であります。多様なバックグラウンドを有する者は,経験的に,その分野の知識は持っているんだろうと思います。しかし,それらの知識を社会で応用的に使用するスキルを必ずしも持っていないようにも私は思います。
先ほど申し上げた法曹イメージに関係させて申し上げますと,予防法学的スキルや,政策形成的スキルを伝えることが私は必要だろうと思っています。ですから,多様なバックグラウンドを有する者にも法科大学院は提供すべきものがあるんだと思っております。中大ローは,選定するわけではありませんけれども,第一線の公務員になる方のために,政策形成と法という科目を作っております。
これは,中央省庁の各省庁の政策担当者に講義をしてもらっています。また,中大ローには,コーポレートファイナンスと,数理法務の講義を会計学の先生が担当されます。これによって,企業法務の分野で活躍する力を付けてもらっております。ですから,多様なバックグラウンドを持っている人間の方にも,こういったローでの教育の必要性はあるということを申し上げたいと思います。
先ほど,発言が大分続いたので,前の論点のところで一言申し上げたいんですが,清原委員,土井委員の御発言,一定の実務経験を持った方には,法律基本科目の免除をする。これに賛成でございます。私,賛成です。
しかし,1点,制度化に当たっては文科省に考えていただきたいことがあります。御案内のように,平成26年の高等局長通知によりまして,既に実務経験者に対しては,展開・先端科目等を免除して法律基本科目に変えることができるという取扱いがされています。2から4単位ということになります。これが実は一部の,悉皆(しっかい)的な調査ではございませんが,調査をしたところによると,それほど使われていないということが現状としてあります。その原因はよく分からないんですが,この通知にある,当該実務経験に相当する展開・先端科目というのは,やっぱりなかなか運用しづらいのではないかと思います。ですから,これが1つ原因になっている可能性があります。
従いまして,申し上げたいことは,制度化するに当たっては,各法科大学院がうまくこの法律基本科目,振り替えをできるようなシステムとしていただきたいというものがここでついでに申し上げたことであります。
最後に,元に戻りますけれども,法曹有資格者,候補者へのサポートに関して,最後に申し上げたいことを1点だけ申し上げます。
多様なバックグラウンドを有する方に法の分野で活躍していただくには,キャリア形成への不安を払拭しなくてはなりません。自治体に公務員が入っていくときに,一番シュリンクさせたのは,要するに,自分のキャリア形成がどうなるのかということが見えないということでありました。従いまして,この点の不安を払拭してやる必要性があります。そのための一つのやり方としては,本日,事務局が準備してくださった資料にあるような,活躍している法曹有資格者,様々なバックグラウンドを持ちながら活躍している法曹有資格者の姿をロールモデルとして積極的に展開するなどの措置が必要だろうと思います。
また,自治体法務の分野でもやっていることですが,既に自治体で働いたことがある人の経験を共有するなどのことが必要になっています。少し長くなりましたが,以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,井上委員,お願いいたします。

【井上委員】今,大貫委員が多々御示唆くださいましたが,非常に共感しております。私も企業法務が長いのですけれども,前委員の杉山委員が指摘されたとおり,今,企業の中での法曹,あるいは法務的なバックグラウンドを持つ人材のニーズが非常に高まっております。
そして,例えば37ページで,法科大学院修了者を弁護士資格がなくても採用すると回答した会社は24%となっていますが,これをもっと増やすべきではないかと思っております。なぜまだ24%なのか。8%から24%には増えましたが,ポテンシャルとしてはここが非常に大きくなると思っております。
今,大貫委員がおっしゃったように,昨今の企業では,臨床法務,係争が起こってからの対応ではなくて,イノベーションを起こすための戦略法務,あるいはリスクを予防するための予防法務という分野への取り組みの必要性が求められているところです。そういう観点で,法律のみに非常に詳しい学生よりも,他の分野の知見も非常に高い学生は,柔軟にいろいろな部門で活躍できるポテンシャルがあるので,企業のニーズに合うはずです。企業からはそのような場があるということを学生にも知らしめ,一方大学側から企業側にも,ニーズにフィットする学生が法科大学院卒業生にはいるのだ,ということの周知をより深めていくのが,今後の取組としてよろしいのではないかと思います。
例えば,具体的に,学生さんへの情報提供ということであれば,企業法務のニーズを知らしめるセミナーなどをやっていただく大学もおありだと聞きますし,キャリア形成局というような所がもしあれば,そこで積極的に,司法試験に受からなかった残念な人材ということではなくて,もっとより前向きな積極的なスキル,経験を積んだ人材である,ということをアピールするようなアドバイスをする機能を持たせまして,積極的に,法科大学院卒業生が企業で活躍できるよう橋渡しをする役割を担っていただきたいと思います。
あるいは弁護士会,それから,企業の法務団体等々も,そういう人材を企業は取るので,ぜひ頑張って勉強してくれ,というようなメッセージが出せるような取り組みも,今後していくのがよろしいのではないかと思いました。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,丸島委員,お願いいたします。

【丸島委員】丸島です。
法科大学院修了生を受け入れる立場から,社会人など未修者コースの人材確保の重要性について述べたいと思います。私は現在,日本司法支援センター,法テラスの業務に関わっておりますが,法テラスには法科大学院修了生の方々も常勤職員として働いておられ,また,スタッフ弁護士と呼ばれる常勤弁護士には,若い法学部卒の方々も多いですが,最近は,志望者や採用内定者の三分の一から半数近くに,社会人や他学部出身の未修者コースの方がおられて,それぞれに活躍しています。
常勤職員の場合は,特に法科大学院創設の初期の方々の中には,司法試験に合格しなかったものの意欲も能力も大変に高い方々がおられます。最近は,法科大学院の定員や入学者数も当初の頃よりしぼられ,合格者数の目安が1,500名程度というところで,多くの志ある未修者の方々がしっかりと教育を受けて,法曹資格を取って活躍していただくということを基本に考えていくべきであろうと思われます。
社会人など未修者コースを経てスタッフ弁護士を希望する方々の中には,例えば,医療や福祉の仕事に従事してこられた方,金融機関で働き地域回りをする中で様々な地域住民の課題にぶつかり法曹を目指された方,あるいは国や自治体公務員として活躍された方,NPO職員の方,弁理士として知的財産分野で活動してこられた方,民間企業の法務担当の仕事をしてきた過程で消費者の問題や事故の被害者の対応にあたって問題意識を深められた方,国際人権の活動に携わってこられた方など,多彩な方々が法科大学院の未修者コースで学び,スタッフ弁護士として人権や公益活動の分野で働く法曹になろうとされておられます。
しかし、先ほどからのお話にもありましたとおり,こうした多様な経験を有する皆さんが,法曹資格を取得してからのキャリアプランについて悩まれていることが多いということもまた皆さんに接していて感じています。この間,法テラスのスタッフ弁護士の志望者が減少してくる傾向がありましたため,ここ数年,各地の法科大学院と教員の方々の協力を得て,北海道から九州まで,現役のスタッフ弁護士たちが現地に赴き,学部生や法科大学院生に向けて,スタッフ弁護士の生の活動とその魅力などを語ってもらってきました。おかげさまで去年あたりからその効果も出はじめ,スタッフ弁護士の志望者,採用内定者も増えてきております。若い方々は裁判官,検察官に途中で進路を変えられたり,一般の法律事務所に入所されることも少なくないですが,それでも徐々に志望者や内定者が増えてきたことは喜ばしいことです。
これはやはり,スタッフ弁護士が,法廷活動にとどまらず,地域の福祉関係など様々な関係機関との連携を通じて高齢者,障害者,あるいは外国人,自然災害の被災者,その他,困難を抱える女性や子供たちの権利擁護,法的支援など,様々な活動をし活躍しているという姿を,具体的に活き活きと生で伝えることによって,皆さんが法曹となってからの活動をイメージし問題意識も生まれてくる。また,受け入れ側の私たちの方も,将来のキャリアプランとして,シニアスタッフ弁護士など長く活躍できる環境を整え,またスタッフ弁護士として活動した後には,例えば自治体や国その他の公益部門,人権分野で働く,あるいは国際分野で働くなど,様々なキャリアプランを模索しながら,ミスマッチが起こらないよう本人の希望を活かし柔軟に考え対応していくなど,そうした取り組みが,少しづつよい方向に動き始めているという感じがしています。
企業活動の領域でも最近は多くの企業内弁護士が活躍するようになっていますが,企業内弁護士の採用が成功している多くの例がある一方で,一部には,弁護士を社内に置いておけばよいというくらいの感じで採用し,必ずしもうまく機能していない例も見られます。
そういう意味では,実務法曹と法科大学院,そして企業や様々な団体などの受け入れ側,これら関係者が協力して,学生に対して,現に活躍している組織内弁護士の姿などを積極的に示していくこと。そして,その組織内での役割や将来像などを含むキャリアプランを十分に整理し提示していくこと。こうした共同の取り組みの場を設けることが,社会人や他学部出身の未修者の法曹志望者に対して大変重要になっているのだろうと思います。
それから,養成課程における未修者の悩みとしては,やはり司法試験に受かるだろうかということがまず第一にあるのでしょう。どうしても最初の段階で法的思考になじむのには時間を要しますし,様々なバックグラウンドをもった様々な個性の方がいらっしゃいますので,非常にきめ細かな教育的対応が必要であろうと思います。そうしたことを踏まえた未修者教育の課題と方向性については,すでに法務研究財団などいろいろな実践と調査研究の成果に明らかになっています。
動画発信の問題を含むICTの活用や補助教員の活用など指摘されている課題について,実務家と研究者が共同して,優れた教育実践を集約分析し法科大学院全体が共有できるよう,個々の法科大学院を超えた取り組みのプラットフォームになるようなものを設けて継続的に未修者教育の向上に取り組むということがやはり必要なのではないかと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。他にはよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,そろそろ所定の時刻になりましたので,本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。
これまでの議論には,例えば,ICTの活用のように,現在のコロナウイルス感染症対策の経験を途切れさせることなく,今後も引き続き取り組んでいくべき事項,あるいは今日御議論いただいた,共通到達度確認試験の実施体制の検討のように,今後の実施結果を踏まえて,継続して検討していく必要のある事項など,かなり多様な,レベルの違うような論点が含まれていたように思います。
そこで,一応,これで最初に設定していただいた論点については一通り御議論をいただけたということになろうかと思いますので,今後は議論の取りまとめに向けて論点整理を行い,どのような場で,どのような手順で進めていくのか。その優先順位等も含めて,より具体的なレベルで検討していく必要があるというふうに思います。
次回に向けては,事務局において,そのような論点整理案といいますか。そういうようなものについて,必要な準備をお願いしたいというふうに考えております。
その他,各委員から,あるいは事務局から何かございますでしょうか。

【西川専門職大学院室長】事務局からよろしいでしょうか。

【山本座長】お願いします。

【西川専門職大学院室長】本日も活発な御議論を頂きまして,ありがとうございました。
今後のスケジュールでございますけれども,43ページの資料の5にございますように,次回は10月22日,木曜日の15時から17時を予定させていただいております。今のところ,今回と同様に,オンラインでの開催を予定しています。ここで,先ほど座長からありましたように,これまでにいただきました議論の中身を論点整理案という形で事務局にて整理をさせていただきまして,これについての御議論を頂きたいと思っております。
また,この10期の任期が来年の2月まででございますけれども,この10期の間に,引き続き御議論を進めていただく中で,例えば,11月,12月頃にヒアリング等とありますのは,本日御議論の中でもありました,例えば,教員の側,大学の側の目線だけではなく,学生側,学修者側の目線も取り入れるべきではないかという御意見もございましたので,例えばそういった視点も含めて,また材料を御用意しながら議論を深めていただき,最終的には1月頃に,この10期における議論のまとめという形で方針を出すという方向で御検討をお願いしたいと思ってございます。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,本日の会議はこれにて終了したいと思います。長時間にわたりまして熱心な御議論を頂き,ありがとうございました。

―― 了 ――

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(高等教育局専門教育課専門職大学院室)