法科大学院等特別委員会(第97回)議事録

1.日時

令和2年7月7日(火曜日)17時00分~19時00分

2.議題

  1. コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対応について
  2. 法学未修者教育の充実について
  3. その他

3.議事録

【山本座長】所定の時刻になりましたので,ただ今より第97回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。前回に引き続きまして,本日も新型コロナウイルス感染拡大予防の観点からオンラインミーティングという形で開催をさせて頂きます。また,本委員会は公開が原則のため,この会議の模様はYou Tubeにてストリーミング配信されているということでございますので,御承知おきを頂ければと思います。
本日の主な議題は2点です。第1点は,新型コロナウイルス感染症拡大に伴う対応について,法科大学院における対応について,大貫委員より法科大学協会によるアンケート結果などについて御紹介頂いた上,各委員からも所属の法科大学院における取り組み等について御紹介頂きつつ意見交換をしていければと考えております。これを初めのおおむね30分程度をめどとして行いたいと思います。残りの時間,第2点でありますが,法学未修者教育の充実について,事務局において前回この第10期で検討すべき論点の検討ポイントの頭出しをして頂いたかと思いますので,今回はこれらについて時間をかけてじっくりと議論を深めてまいりたいと考えております。本日も活発な御議論をどうかよろしくお願いをいたします。
初めに,本日初出席の委員について,事務局より御紹介をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】事務局・西川でございます。委員の交代について御説明いたします。このたび,大沢陽一郎委員が社内の遠方への御異動がございました関係で,こちらの特別委員会の委員を退任されることとなりました。そして,また,この際,新たに読売新聞東京本社論説副委員長の富所浩介委員に7月3日付で御就任を頂いておりますので御紹介を申し上げます。以上でございます。

【山本座長】それでは,富所委員より一言御挨拶を頂けますでしょうか。

【富所委員】読売新聞社の富所と申します。記者の仕事に就いて間もなく30年になります。その間,法科大学院の関係ですと,初期の司法制度改革の議論であるとか,それから,74校が最初に認可されたころなどの取材をしてまいりました。その他,会社の法務を担当したこともありまして,弁護士さんたちと一緒に駆け回っていた時代なんかもあります。そうは言っても専門家ではありませんので,取材をしてきた立場,あるいは,司法サービスを使う立場から見て法科大学院の現状がどのように見えているのかとか,どう感じているのかということを少しでも御意見できればと思っております。お役に立てるかどうか分かりませんが,今後とも是非よろしくお願いいたします。

【山本座長】ありがとうございます。こちらこそどうかよろしくお願いいたします。
それでは,続いて事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】本日,議事次第をお手元に御用意頂きますと,配付資料といたしまして資料1-1~資料5まで,参考資料としまして1~5をそれぞれお手元にお届けさせて頂いております。併せて,インターネットでも公表させて頂いております。また,今回Zoomでの開催ということで,接続不良等お困りの点が会議中にございましたら,開催案内に記載の事務局の連絡先にお電話を頂ければと存じますので,よろしくお願いいたします。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございます。それでは,議事に入ります前に,今年度の法科大学院の入学者数について調査結果がまとまっているようですので,その内容をまず事務局から御報告ください。

【西川専門職大学院室長】お手元の資料1, 1ページを御覧ください。
令和2年度の志願者数,入学者数についてでございます。こちらのデータは,毎年5月頃に公表してきた数値ですけれども,今回,コロナの影響で実態調査のスケジュールがやや後ろ倒しとなりまして本日の公表となりました。
1ページ,今年度の志願者の総数ですけれども,8,161人で,昨年に比べまして956人減少している状況でございます。また,下の入学者数でございますが,1,711人ということで,昨年よりも151人減少しております。いずれも昨年よりも減っている状況でございますけれども,一方,一昨年と比べますと増えております。昨年,令和元年度につきましては,適性試験の廃止等の影響もあってか,大きく増えたということがございまして,今年はその影響が小さくなったというふうにも考えられるわけでございますけれども,一昨年と比べると増えているということからすれば,ある意味,底を打ったと見ることもできるのではないかと考えているところでございます。
続きまして,1枚おめくり頂いて2ページを御覧ください。うち,一番右側の令和2年度の未修者の数字を御覧頂きますと,黄色い方の棒グラフでございますが,533人ということで,昨年に比べてこちらも98人減少しております。全体に占める割合では約31%ということで,こちらも昨年度34%近かったことからしますと,若干減っている状況ではございます。ただ,人数としましては全体の傾向と同じく,昨年よりは減っているものの,一昨年の509人と比べますと,20人ちょっと増えているという状況でございます。
また,入学者のうちの社会人でございますけれども,それぞれの棒グラフの内訳の数字を書いているところでございますが,既修では160人,未修で173人の,合計しますと333人,こちらも昨年の446人と比べますと,113人減っている状況でございますけれども,一昨年よりは60人近く増えているという状況でございます。
その他,国公私立別のデータを次の3ページ以降に,6ページの資料2としまして,大学院別の入学者選抜実施状況をそれぞれお示ししておりますので,適宜御参照頂ければと思います。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。ということですので,昨年かなり回復への期待が見られたわけですけれども,やはり残念ながら右肩上がりで復活ということにはなっていないようでありますけれども,一昨年に比べれば若干の改善はあるということで,今後,引き続き,委員それぞれのお立場でも数字が少しでも上がっていくように皆で努力をしていくということなのかなと思います。よろしいでしょうか,今の点は。
それでは,議事の方に入りたいと思います。
先ほどもお話ししましたけれども,まず,最初の議題としましては,コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対応ということでありますが,前回も若干の御議論を頂いたところでありますが,その後,法科大学協会において,法科大学院や法曹コースの授業の実施等についてアンケートを実施されたというふうに伺っておりますので,この点,大貫委員より御紹介をお願いできますでしょうか。

【大貫委員】それでは,10分ほどお時間を頂けるようですので,今,座長の方から御紹介があったアンケートについてお話し申し上げます。資料2です。全体の通しページで言うと7ページ以降にアンケートが掲載されております。そこの7ページにありますように,法科大学院協会では,新型コロナウイルス感染症拡大化における法科大学院の講義等についてアンケートを実施いたしました。5月8日~18日までであります。少し前になります。回答校は40校です。そのうち,そこに書いてある募集継続校が33校,これは現在募集継続しているのは35校ですので,ほぼ回答してくださったということです。募集停止校は7校ということになります。
アンケートの内容について,これは27ページもありますので,ざっくりと御紹介いたします。質問は枝分かれしておりますけれども,ざっくりとおおまかな特徴的なところを御紹介することにいたします。詳しくはアンケート集計を御覧ください。
まず,オンライン授業について質問をいたしました。多くの回答校がオンライン授業自身における工夫を積極的に答えてくださいました。学生の通信環境等に配慮し,同時に録画をしたり途中で休憩を挟むなど,集中力を途切れさせない工夫もしております。書き込みは30件程度になっております。オンライン講義と言いましても4つほど類型がありますけれども,その4つに対応させて少し紹介をいたします。
同時配信型のオンライン講義では,学生の通信環境や反応が分からないことなどの課題が挙げられております。34件に上っております,書き込みが。通信障害への対応は依然として大きな課題であるというふうに認識されており,データダイエットに努めているとの回答もございました。少し面白い回答としましては,トラブルが生じた場合に対応する連絡係の学生や事務職員を配置しているところもありました。
オンデマンド型では,学生が集中できるように,動画内容やその長さを工夫したりしている旨の回答がございました。18件の書き込みがございました。これは動画を視聴させる際には,学生の集中力に配慮する必要性があるということがはっきりと分かります。一方で,学生のみならず,大学の通信システムの負担を課題と答えた回答者もございました。
資料配信型,これはちょっとなかなか分かりにくいと思いますので簡単に申しますと,パワーポイントでちょっとお送りして,そこに吹き出しとか音声がついてくるというようなものの資料配信型のオンライン授業等もしております。この資料配信型は,今申し上げましたが,資料作成の負担が大きいことというのが挙げられております。
それから,自学自習型,これはオンライン授業の中でも非常に特徴的なものですけれども,簡単に言いますと,自学自習の指示をして学生に教科書や課題を勉強させる,その後に授業の解説を送ったり,あるいは,授業が終わった後に,授業といっても自習ですけど,その後に課題を出して答えさせる。そんなような授業です。自学自習型では,学生とのやりとりをどうするかが課題であるというようなことが書かれておりました。やりとりがなかなか難しいようです。ともあれ,自学自習型を行っているロースクールは,他の類型との併用であり,多くはないようですが,この類型では学生の理解を確認するためのレポートの提出が多くなっているようであります。もっとも,自学自習型以外でもレポートが多いとの苦情が学生からあったという記述がありました。これは,オンラインの授業は,やはり学生の理解度を確認することが面接授業に比べて困難であることに起因すると思います。要するに,不安になって課題を教員が出し過ぎるという傾向があるということでございます。
次,2つ目のアンケート項目は,臨床法学教育の実施に関する質問でございます。オンラインで臨床法学教育を実施,又は,実施検討をしている大学が,5月の段階ですので,大学が23大学,57.5%でありました。Zoom等を用いて実施しているようでございます。中には,依頼者の許可を取り,実際のクリニックをオンラインで行っているとの回答も見られました。もちろん,面接,対面でない臨床法学教育の限界を指摘する声がございました。1つ御紹介しますと,リモートで行うことは身を置いての研修ではないから,エクスターンシップの本質に外れるというようなコメントがございました。
次に期末試験の実施でございます。特に,多くの意見を頂きましたが,アンケート自身が5月であるというところから,現在,また環境が変わってきていますので,会員校の対応も今御紹介しているところから変更を余儀なくされているところがあるかもしれません。本アンケートの時点では,7月中までに試験実施する予定と回答しているところが極めて多く,通常の筆記試験によるとの回答が72.5%に達しております。一方で,予定どおりに,いわゆる教場試験ができるのか不安視する声が,通常の試験をしないとすると,厳格な成績評価は難しいとするという声もございました。当然,オンラインの場合,カンニングや通信障害の問題があることが指摘されております。更に,オンラインでやる場合です。何を見ても相談しても良い問題をどう作るかが課題であると,要するに,チェックできないわけですから,ということが書かれておりました。
入試についても,多くの会員校の方が苦悩を書き込まれておりました。通常の筆記試験,面接試験を実施する予定と回答した校が多かったのですが,一方で,オンラインでの試験をせざるを得ない状況についても検討しているという回答校も多くございました。そのような場合に,オンラインでやる場合にいかに不正を防止し,公正な試験ができるかが課題として挙げられております。
更に,ちょっと毛色が違っているのですけど,春学期に大学が閉じてしまったことにより入試広報ができなかったと,困ったなということを書いているところもございました。
それから,認証評価と関わりますけれど,既修者認定試験で筆記試験を課さないことが果たして認められるのかということを心配している回答がありました。それから,当然ですけど,リアルで試験を行う場合には感染症対策をどうするかということが書かれていました。
最後に,法科大学院が現在直面している最も困難な問題は何かということを,一般的な質問をしたのですが,これは当然,コロナウイルス問題の収束が見えずに,対策が立てにくいとはっきりと書かれていました。この項目で,少し紹介するに値することを2つだけ申し上げますと,司法試験を受ける学生へのサポートができないことを心配している回答がございました。更に,学生のモチベーションやメンタル面を心配している声もございました。
ちょっと長くなっておりますけれども,先ほど座長の方からお話がありました,もう1つアンケートを実施しております。最近,協会はアンケートばかり実施しておりまして,会員校は相当疲れているのではないかと思いますけれども,この新型コロナウイルス感染症拡大下における法曹コースです。先ほどのものは法科大学院ですけれども,法曹コースにおける講義等についてもアンケートを実施しました。このようなアンケートの必要性は,前回のこの特別委員会において,清原委員からその必要性を御指摘頂いたところでございます。6月26日~7月6日まで実施し,回答校は25校でございました。これは,ちょっと私も数を確認してびっくりしたのですが,実は,法曹コースを設置する大学は34校あるそうです。たくさんあるなというふうに改めて思ったので,34校のうち25校。最終集計はできておりませんので,暫定的な整理に基づいて少し特徴的なところをごく短く御紹介いたします。確定版ができましたら,この特別委員会でも共有させて頂きたいと思っております。
まず,先ほどの法科大学院でのアンケートと大体同様の傾向なのですが,ちょっと特徴的なところを御紹介しますと,オンライン授業ですので,出席をどう取るか,平常点をどのように付けていくかというところについての書き込みが相当ございました。これは法科大学院より多かったです。それから,レポートによる評価をするのだと,そうした場合に厳格な成績評価がしにくいというたくさんの書き込みがございました。
それから,オフィスアワーと個別指導が困難であるということが随分書かれていた。これは,私の記憶では法科大学院の方のアンケートであまり出ていなかったところでございます。それから,図書館の利用が非常にさせにくいと,当然ですが,オンラインでできる分にはいいのですけれども,本をどうしても見たいというときにどうするのかと,郵送するというような非常に大変な対応をしているところがございました。
それから,先ほどのオフィスアワーと関わるのですが,やはり学修上の悩みを抱えている学生等について個別的な面談をするのが,オンラインでは非常に困難であるということを書かれていて,全くそのとおりだなという気がいたします。以上,法科大学院に対して行ったアンケートと,多少違うところをごく簡単に御紹介申し上げました。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,意見交換に入りたいと思います。前回同様,御発言を希望される委員は,このZoomの手を挙げる機能を使って挙手をして頂ければと思います。御発言に当たっては,聞き取りやすいようにはっきり御発言を頂く,御発言の都度,お名前をおっしゃって頂く,発言時以外はマイクをミュートにしていただく,資料参照の際は,資料番号,ページ番号等分かりやすくお示し頂くなどの御配慮をお願いいたします。また,マイクが入っていない,聞こえない場合にはお声掛けをしますので,発言の際,都度,聞こえているかどうか御確認頂く必要はありません。各法科大学院,あるいは,連携先の方向コースにおける授業や定期試験,入学者選抜の実施等に向けた取り組みについて,今,アンケートの結果についての御報告がありましたが,それぞれの法科大学院での工夫や課題など,あるいは,それを社会から見た場合の御意見等,どなたからでも結構ですので,どの点でも結構ですので,御発言を頂ければと思います。それでは,清原委員,お願いします。

【清原委員】ありがとうございます。大貫先生におかれましては,前回の私の願いを早速にかなえて頂きまして,ご丁寧な調査をして頂きありがとうございます。また,御協力頂いた各法科大学院,法学部の皆さまにも感謝申し上げます。先ほど,御説明を頂きました概要を伺いますと,やはり,このコロナ禍においてオンライン授業と一言でくくることができない様々な類型について,情報通信機器を活用して創意工夫されている実態が分かりました。併せて,学部の学生をどのように(法科大学院が)連携して指導していくかということに対しては,きめ細かい学生指導については課題があるということも明らかになりました。こうした課題についてでございますが,今後,協会で共有をされて,それぞれの悩み,特に平常点の付け方ですとか,入学試験の在り方ですとか,一大学,一法科大学院の課題というよりは連携をして課題解決していく,あるいは標準化していく,そういうニーズが顕在化したのではないかと思っておりまして,今後,この協会のアンケート調査を踏まえました連携の方向性について教えて頂ければと思います。以上です。よろしくお願いします。

【山本座長】ありがとうございます。と言いますのは,大貫委員への御質問ということになりましょうか。お答え頂けますか。

【大貫委員】御質問ありがとうございます。予想していたと申しますか,備えていたものでございますが,もう既に会員校にはこのアンケート結果,法曹コースの方はまだですけれども,会員校では必ずしもありませんけれども,法科大学院に関しては共有が済んでおります。しかし,それだけでは必ずしも十分ではないというふうに考えておりまして,例えば,このようなオンラインでのテーマを決めての意見交換会をすることなどは考えております。今のところ,リアルでちょっと会えませんので,オンラインでテーマを決めて,例えば入試についてどのような工夫をされていますか,平常点の付け方はどうされていますかということを短時間でもいいので,意見交換の機会を設けることなどを考えております。以上でございます。

【清原委員】ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,他にお願いいたします。いかがでしょうか。それぞれの法科大学院での今悩んでいるところ等でも結構ですし,土井委員お願いいたします。

【土井委員】土井でございます。本学,京都大学におきましても,授業についてはZoom等でこれまで進めてきているところなのですけれども,やはり学期末,成績評価について難しい対応を迫られているところでございます。まだ,本学も教授会,あるいは専攻会議等で承認を得ていませんので,現段階での検討状況の御紹介になります非常事態宣言,あるいは都道府県をまたぐ移動制限が解除されたということもございますので,法科大学院につきましても,法学部につきましても,新型コロナウイルス感染予防の対策を十分に取りながら,授業終了後,一定の期間を空けた上で,教室で期末試験を実施することを予定しております。期末試験を教室で実施する場合には,通常と同様の成績評価を行うことができるであろうと思っております。しかし,今後の感染状況によりましては,ICT等を利用して,在宅方式で期末試験を行う方向で切り替えざるを得ない場合があると認識しておりますので,そのための準備も並行して進めているところです。ただ,この場合,成績評価をどのように行うかは,先ほど大貫委員からもありましたように,在宅起案によって測ることのできる資質能力が限られることを踏まえて,現在検討を行っているところでございます。もし,検討の参考にさせて頂けるような貴重な情報等ございましたら,教えていだたければ幸いでございます。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。京都大学の状況について御教示を頂きました。他にいかがでしょうか。どうでしょうか。どこの法科大学院でも恐らくかなり悩んでおられて,しかし,そろそろ何らかの決断をしなければいけない時期に来ているのではないかというふうに思いますけれども,もし検討状況等でお話し頂けることがあればお願いしたいと思いますが。大澤委員お願いします。

【大澤委員】何となく発言しないといけないのかなというプレッシャーに負けて手を挙げました。東京大学の場合は,東京の感染状況,今必ずしも良くないということもございますけれども,授業は全学の方針として,全てオンライン形式でやっております。現在最大の問題は,学期末の定期試験をどうするかです。オンライン形式の授業に対応する定期試験の在り方として,試験も原則オンライン方式でやれということが全学方針として示されまして,さてどうしようかということになったわけですが,特に基本的な法律系の科目等については,法科大学院で対面型筆記試験を全くできないというのはなかなか厳しいというところもあります。緊急事態宣言が解除され,7月以降,様々な国家試験等も,これは当然対面型で行われていくという状況の中で,十分な感染防止措置を取った上であれば,そういう可能性もありうるのではないかということで,本部の方とも話し合いまして,現時点では,オンライン試験に対面型の試験を一部組み合わせて実施する,対面型試験の実施時期はお盆よりも後,8月下旬という時期で行うという方向で考えております。対面型でやるのは,法科大学院の2年次以上の科目で6科目,それから1年次の科目で4科目,そこまで絞り込まざるを得なかったということですが,そういう時期にそういう形で行おうとしています。ただし,対面型試験は感染状況が悪化してしまいますと,やはり断念せざるを得ないわけで,その場合にはオンライン試験に切り替えるという留保付きの状況です。
オンライン試験はオンライン試験で,これもなかなか大問題です。問題をパスワード付きのPDFで示しておいて,時間とともにパスワードを送って開封,解答させ,解答用紙を写真撮影して送ってもらうということを基本として考えておりますが,ただ,監督は十分に及びませんので,様々な資料等を見ることは構わない,そこはもう,そう割り切るしかない。ただ,人と相談しては駄目ということはルールとして定めて,それは発覚したら,不正行為として厳重に処分しますよということは厳しく警告して進めようというふうに考えているところです。果たしてオンライン試験がうまくいくのかというのは,やってみないとわからないのですけれども,一応,そういうことで考えているということでございます。

【山本座長】ありがとうございました。他にいかがでしょうか。
それでは,ちなみに,一橋大学の状況についても,私から簡単に御報告しますと,基本的な状況は今,大澤委員からお話があった東京大学の場合と同様の状況です,東京ですので,やはり感染状況は非常に厳しいということがあります。授業は全てオンラインでやっております。期末試験が非常に問題なのですけれども,一橋大学はやはり全学の方針として,期末試験も全てオンラインでやる。基本的には学生は大学には来させないという方針が取られておりますので,オンラインでやるという方向で現在考えております。
その場合,やはり1つの不安は学生の通信環境の問題で,これにつきましては,その通信環境で十分問題が見られなかった。あるいは,回答を送り返せなかったというような場合につきましては,通信環境追試験という制度を設けまして,それでも回答ができなかった場合には追試験を基本的には認めると。これも学生が本当のことを言っているのかどうか分からないという部分もなくはないのですけれども,もうそこはある程度性善説で考えて,やはり学生の方で通信環境がやはり無理だったのだということであれば,もうそれは追試験を認めていくという方向で考えているということです。幸い,本学は,オンラインでのレポート提出等のシステムが既にありまして,そのシステムを使って,時間も提出できる時間を限定できることになっていますので,試験開始時間にオンラインで問題を上げて,そして,1時間45分とかのタイムリミットを設定して,そのオンラインで回答をしてもらう。ただ,それがうまくワークしないような場合には,添付ファイルで,メールで送るというようなことも認めるし,先ほど申し上げたように,どうしても通信環境が不備だった場合には追試験も認めるという方向で,一応,もう全てオンラインでやるという方向で現在考えているというか,考えざるを得ない状況で,これは正にうまくいくかどうかというのは大澤委員と同じように,どきどきしてはいるところなのですけれども,取りあえずそれでやってみようというのが現段階での検討の状況ということになります。
他にいかがでしょう。髙橋委員からお願いします。

【髙橋委員】ありがとうございます。今,山本座長から本学一橋大学の法科大学院についてご報告頂いたのですが,法曹コースについても併せて補足をさせて頂ければと思います。
本学は4学期制を採っておりますので,既に春学期が終わった時点で,法曹コースの必修科目につきましては,オンライン上での期末試験を実施しました。法科大学院にも情報提供致しましたが私も担当者の一員であった法曹コースの必修科目,180名ほどが履修している科目については,学内のシステムの方に直接回答を入力するのではなく, Word等のソフトを起ち上げて,そちらで原稿を作ってからそれを貼り付けるという形で提出させる形式のオンライン試験を実施し,通信環境の負荷がかかり過ぎないような工夫を行いました。ただ,180人弱の試験で,通信環境のトラブルであったり,あるいは,提出がうまくできなかったという学生が数人生じまして,例えば,画面の写真を撮って別途メールで送るなど,様々個別の対応を取ったというところがございました。このような個別の対応が必要になるということが事前に予想されたものですから,法曹コースの必修科目担当の先生からレポートにより評価を行いたいという御相談を受けることもございました。
先ほど大貫委員から御紹介がありました法科大学院協会のアンケートの方でも,多くの大学が懸念事項としているのが論述式の試験ができないという項目ではなかったかと思います。オンライン試験実施に伴うトラブルの可能性からレポートにしたいというような科目が生じることも考えられます。論述式の試験の実施は,この特別委員会の方で各法曹コース設置校について求めていることでもございますので,できれば専門職大学院室の方から,この点についての考え方を早めに御提示頂ければ思っております。以上です。ありがとうございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,大貫委員,今の点に関してですか。お願いします。

【大貫委員】失礼します。中央大学のところは全く御紹介していなかったのですが,これまでの御発言とだいぶ違っていて,大学によっても違うなと思って発言を控えていたんですけど,中央大学の法科大学院ですけれども,これは基本的に面接式の試験をする,法律基本科目全てについてやるという決定を現在のところしております。もちろん,これは感染状況によっては変わりますけれども,幸い,だいぶ定員の充足率が高うございませんので,教室が余っているということがございます。感染対策はかなり十分取れるだろうということで,現在,中央大学法科大学院はそうです。ただし,大学全体としては,基本的にオンラインの試験になるということで,大学院は別途の対応を許されているということでこういう対応にしております。
現在,まだ十分な検討に至っておりませんけれども,もし面接型でやるというときには,別の問題があるのではないかと思っています。1つは,もちろん感染している人は受験を拒否してよろしいのですが,疑わしい人がやってきたときにどうするのだと,一応,こういう症状の方は受けないでくれというようなことを多分言うことになるのでしょうけれども,本当にそれで受けないでくれるのか,ちょっと疑わしいけれどもやって来た人は別室で受けさせるのかとか,新たな別な問題があるというふうに認識しております。先ほど,先生方がおっしゃったように,オンラインでやったときの固有の問題はないのですが,それでやったときと違って,別の問題が集めると生ずるというふうな懸案をしております。まだ,期間としては十分な検討にまだ至っておりませんけれども,そういう問題があるというふうには認識はされております。以上です。

【山本座長】ありがとうございます。それでは,水島委員お願いいたします。

【水島委員】ありがとうございます。大阪大学の状況でございますが,私どもも京都大学さんと同様,講義室での試験が中心となります。一部,オンラインで行う授業もあります。講義室で行う試験については,従来と同じであまり問題がないようにも思われますが,大学の方針として,対面試験の実施に際して「学生本人や保護者が新型コロナウイルス感染のリスクを恐れ,大学に来ない学生が一定数いると思われる。それらの学生に不利益が生じない方法であること」が条件とされております。感染リスクがある者ですので,そうした者についてはオンライン試験で行わざるを得ないと我々は考えています。また,当日の発熱等,通常よりも追試験受験者が多くなることが予想されます。その場合に,講義室での本試験と,オンラインでの追試験,複数の問題を作ることになりますし,かつ,試験方法が異なる中で,どのように公正さを確保できるかを正に今,検討しているところでございます。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,久保野委員お願いいたします。

【久保野委員】ありがとうございます。東北大学の久保野でございます。東北大学の定期試験の状況につきましては,法科大学院は東北大学全体がオンラインの方式でやるという方針であること等を考慮しまして,苦渋の決断ではありましたけれども,オンラインで全て実施するということで今準備を進めております。
特殊と言いますか,議論の中でポイントになりましたのは,1つは仙台ですので,東京とは状況が違いまして,時間を空ければ参集式でできるのではないかということも考えたのでございますけれども,現場,教員からの声としまして,授業の後すぐに試験をすることの有効性といったことが東北大学の委員会ではかなり重視されまして,時間を空けて参集式でやるよりは,すぐにということでオンラインになったということが1つと,あと,前回も少し発言させて頂いたのですけれども,4月当初からもオンラインでやっていまして,仙台に引っ越すべきかということについて学生から問い合わせなども頂く中で,無理して引っ越さなくてよいということでオンライン授業を続けてまいりまして,そうすると,引っ越しの予定と勉学,授業を受けることと試験の関係ということで上のように考えているというのが御紹介でございます。
なお,学部の法曹コースなのですけれども,やはり人数が違いますので,オンラインでやり,かつ,時間を区切らないで行う方向が主体になりそうだというのでやっていますけれども,論述式と呼べるかという問題はありますけれども,実定法の場合,事例問題については工夫をすれば資料を見たとしてもある程度習得度を測れる問題が作れないかということが検討事項になっております。
以上が定期試験なのですが,少し話が変わってしまうのですけれども,参集式を予定されている大学院からのお話にありました「感染の疑いのある方」についてどうするかですとか,感染について不安のある方についてどうするかにつきましては,東北大学の場合,今,入試について非常に悩んでおります。8月に入試を予定しており,東京会場で実施するかどうか,今,正に迷っているところでございます。入試ですので,無理して来る方が一般の試験よりも多いかもしれない点などをどう考えるかというところ,社会的に見てどうかといった辺りも気になるところでございまして,御紹介だけさせて頂きます。以上です。ありがとうございました。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,中川委員お願いします。

【中川委員】神戸大学の中川でございます。今,お話になった多くの大学と,関西と一緒なのかな,あまりよく分かりませんが,基本的には対面でやるということを前から計画をしておりまして,授業自体は全てオンラインなのですけれども,試験は8月のお盆過ぎからやりますので,対面でやるということを,アナウンスをしておりまして,引っ越しが必要な方はそれに併せて考えておいてくださいということをかなり前の段階,5月ぐらいの段階から学生には伝えております。
試験のやり方は,今のところは対面ということを考えているのですが,全学の方針がまだこれから出るということなので,最終的にどうなるかは分からないけれども,今よりも,少なくとも関西の感染レベルが上がらないのであれば対面で行うということにしております。
1つ,特徴的なのは,科目によっては,これは,我々は8月17日ぐらいから対面の期末試験が始まるのですが,それより前に各先生でオンラインの期末試験をやるということはできるというふうにしております。実際に何名かその予定をされている方がいらっしゃるようで,特に,基本的にその場合はテイクホームですので,お互いに相談しないでくださいということだけをお願いをして,それ以外は何を見てもよいということにはなるわけなのですけれども,締め切りまでに通信障害で,通信障害と言いますか,その物によるのですけれども,我々の場合は,大学の課題提出のシステムと,それからGoogleによる課題提出と両方常に使うようにしております。ときどき大学のシステムが,調子が悪いことがありますので,その期末試験についても両方で何とか問題なく出題と,それから提出ができるのではないかと,両方で出して両方で開催するというふうにしているようです。まだ,これもオンラインの期末試験,各自でやっている先生方も様々な事故の場面を想定しながら実験しているという最中だそうで,これをやれば大丈夫という方法がまだはっきりしているわけではないのですけれども,そういう対面と,それから一部の前倒しでオンライン試験と,この2種類でやっているというのがうちの特徴かなと思います。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,おおむね予定された時間になりました。よろしいでしょうか。この問題につきましては,オンラインの授業それ自体についてはかなり皆さん知見がそろってきたところかと思いますけれども,今後,今,議論になっていた定期試験の問題,更に入試の問題ということで,この大学の全ての過程をオンラインで完結することができるのか,どの程度できるのか,何が問題なのかというのは,更に今後いろいろと問題が出てくるところだろうと思いますので,引き続き法科大学院協会を中心に,大学間においても情報交換をしながら,また,当特別委員会においても議論をしながら全体でこの難局を乗り切っていくことができればというふうに考えていますので,引き続き議論の機会を持ちたいと思います。
それでは恐縮ですけれども,次の議題,議題(2),法学未修者教育の充実についての議論に入っていきたいと思います。これにつきましては,まず,第10期で検討すべき7つの論点についてということで,この検討のポイントを事務局の方で整理をして頂きましたので,まずは事務局から御説明をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】お手元の資料3を御覧頂きたいと思います。通しページ34ページでございます。本日は,前回御了承頂きました論点1~7のうち,3~5を中心に御議論を頂きたいと思っております。資料を御覧頂きますと,まず,初めに書かれている論点1と2,こちらにつきましては,前回確認済みという認識でございます。すなわち,未修者を既修者と切り離すことはせずに,2年次以降は同一の課程で学ぶという現行制度を維持するという点につきましては,既に皆さんの合意を得たものというふうに認識をしております。従いまして,そのことを前提として,本日はまず論点3,未修者の多様性にきめ細かく対応できる教育の在り方について,ここの検討のポイントとしましては,例えば次のようなものがあると考えられるところでございます。
まず1点目ですけれども,平成30年度の未修者教育手法の調査研究,文部科学省の委託事業で行いましたもの,本日,別添1として38ページ以降に概要をお付けしておりますけれども,こちらで提案されました様々な方策につきまして,各大学院で実際に行われている現状の取り組みを踏まえまして,その有用性ですとか優先順位,あるいは全国に横展開させるための工夫などをどのように考えるかということがあると思います。
また,2点目といたしまして,これは平成29年にこの委員会でおまとめ頂いたものでございますが,法科大学院未修者等選抜ガイドライン,こちら本日の別添3という形で49ページ以降にお付けしておりますが,あるいは,昨年の連携法や設置基準等の改正によりまして,入学者選抜における未修者への配慮ということが改めて盛り込まれたことを受けまして,入学者選抜の実質化ということをどう行っていくかということがあるかと思います。
また3点目ですけれども,補助教員の確保やその役割,教員との連携や指導ノウハウの検証などにつきまして,どのように工夫をしていくか。それから,4点目といたしまして,法律基本科目を集中的に学べるように,未修者の履修科目につきまして,何らかのさらなる工夫が考えられるかどうか。
更に最後の点ですけれども,学修者本位の個に応じた学びの実現のために,今コロナ禍で行われているICTの活用,これをどのような工夫ができるかといったことを含めまして,幅広く御意見を頂きたいと考えてございます。
また,次の論点4に関してですけれども,こちらは,社会人が仕事を続けながら学びやすい環境の整備についてということで,検討のポイントとして3点書いております。1点目といたしましては,仕事と両立をして,苦労して学んだ結果,最終的に司法試験に合格できないというリスクをなるべく負わせないように,御自身の法学への適性を早い段階で複層的に判断できるような工夫が考えられるかと思っておりまして,例えば,幾つかの大学院で行われております入学前のお試し的な学びの機会なども含めてどう考えるかということがあろうかと思っております。例えば,別添5の資料を御覧頂ければと思いますが,62ページと63ページにございますけれども,こちらは法務省と文部科学省の方で連携して行っております法学部生アンケートでございますけれども,こちらを御覧頂きましても,法学部生であってもやはり司法試験というのは非常にハードルが高いので,それに合格できるか自信がない,あるいは法曹としての適性があるか分からないという学生が多数いるということがございますので,こういった観点が1つあろうかと思っております。
それから,2つ目ですけれども,ここでもICTを活用した遠隔教育について,オンデマンド型などの同時双方向型でないような形も含めたさらなる活用についてどう考えるか。また,その際の教員のエフォートをどう変化させるべきかどうか。
それから3点目に,各学生のライフスタイル等に応じる環境整備の観点に加えまして,現状では3年課程を修了した直後に司法試験に合格している方は2割程度と多くない状況がございますし,また,未修者の標準修業年限修了率は5割以下でございます。こちら別添6という資料にデータもお付けしておりますけれども, 2年次の進級率で見ても8割ぐらいという中で,やはり,3年で直後にすぐ合格しているという人が多くはないという実態も見ながら,よりじっくりと時間をかけて学ぶための,例えば,長期履修制度のさらなる活用などについてどう考えるかということがあろうかと思っております。
なお,長期履修制度の各大学の現行制度につきましては,44,45ページの辺りにデータを記載しておりますので,御参照頂ければと思います。
更に次の論点5でございますけれども,以上の論点3や論点4に関連する取り組みを限りある教育資源を用いて実現する観点から,大学間の連携による効率化についてどのように考えるかという視点があろうかと思っております。
以上の,ちょっと駆け足になりましたが,論点3~5につきまして,本日は中心的に御意見を頂きたいと考えております。ですけれども,この際,次回以降に御議論頂きたい論点6と7につきましても,検討の方向性だけあらかじめまとめてお示しさせて頂きたいと思います。
次,おめくり頂きまして36ページでございます。論点6は,共通到達度確認試験についてということで,1つは的確な進級判定に役立てるべく,この試験の結果をどのように活用するべきかという点,そして,もう1つは,確認試験の実施体制などにつきまして,持続可能なものとするためにどういった工夫が考えられるかということがあると思っておりますけれども,ここで1つ確認試験の試行試験の結果と,それから,それらを受けた方の最終的な司法試験の結果との相関分析につきまして,文部科学省として行ったものの途中経過がございますので,少し御紹介させて頂きたいと思います。別添8,66ページを御覧頂ければと思います。ここにつきまして,専門官の大根田の方から御説明を申し上げます。

【大根田専門官】専門官の大根田でございます。66ページの以下のところを,簡単に説明をさせて頂きたいと思います。
御案内のとおり,67ページにございますとおり,共通到達度確認試験におきましては,第1回試行以降,計5回試行を経て,令和元年度から本格実施という状況になっているところでございます。66ページに示させて頂きましたとおり,あくまで途中段階ではございますが,今回,複数回における共通到達度確認試験の結果と,その学生が司法試験を受けた,その司法試験の短答式試験の結果に関しまして,その関係等を,少し分析をさせて頂いたものでございます。
68ページ,69ページを御覧頂ければと思いますが,まず68ページに関しましては,第2回,第3回,第4回,それぞれの試行試験の結果につきまして,それぞれ一定の正規分布性が認められるということが確認できているところでございます。
また,次のページ69ページでございますが,全体の得点率に関して,また,憲法,民法,刑法それぞれに関しまして,共通到達度確認試験の得点率と,司法試験の短答式試験の得点率の関係をそれぞれ見てみましたところ,一定の相関性が認められ,特に,全体に関しましては0.5を超える相関係数ということが確認できたという状況でございます。繰り返しになりますけれども,あくまで現時点での分析でございまして,今後,データの追加等をした場合にデータが変動し得るというところは御留意頂けたらと思います。以上でございます。

【西川専門職大学院室長】再び西川でございます。最後にもう1点だけ,もう一度,資料36ページにお戻り頂きまして,最後の論点7に触れさせて頂いて終わりたいと思います。
最後の論点7につきましては,多様なバッググラウンドを持つ未修者が法曹資格を得て,その後どのようなキャリアを歩んでいくことが期待されるのかという観点が中心ではあるわけですけれども,ここでもう1つ検討し得る論点といたしまして,最終的に法曹にならなかった人につきましても,法科大学院の修了によって得た学修成果や,あるいはその学位を社会で生かせることが法科大学院教育の成果としては重要な視点であると認識しておりまして,ここのところもどれぐらい扱っていくかということも含めて御議論を頂ければと思っております。
少しデータを御覧頂きたいのですが,行ったり来たりで恐縮ですけれども,別添10の71ページを御覧頂けますでしょうか。円グラフを10個並べているものでございまして,一番右上のところ,上の段が未修者,下の段が既修者なのですが,一番右上が修了後5年目となります,平成26年度修了生のデータ,進路を載せているものです。文部科学省の調査の結果ですが,御覧頂きますように5年間5回司法試験を受け終わって最終的な結果として未修者全体について見ますと,4割ちょっとの方が最終的に司法試験に合格しているわけですが,一方で,最終的に受からずに就職をした,あるいは受けるのをやめて元の会社に戻ったという方が一部いらっしゃる他,46%が進路不明ということになっている状況でございます。ここではやはり法科大学院でせっかく学んだ学修資産がその後どういうふうに生かされているのか,まず把握すらできていないという現状がございまして,こういったところをどうしていくかということにつきましても,検討対象とし得るのではないかという問題意識を持っているところでございます。本日は議論がここまでいきますと拡散いたしますので,論点6と7については次回以降に御議論頂きたいと考えておりまして,論点3~5の議論の関係で必要に応じて触れて頂くことは構いませんけれども,3~5を中心にお願いしたいと思ってございます。
最後に,資料4に今後のスケジュール感を,記載をしております。88ページでございます。簡単なものですが,本日は論点3~5を中心に御議論を頂きまして,次回9月頃を考えておりますけれども,今後は論点6,7まで広げた形での御議論を頂きまして,秋ごろに一度中間的なまとめをして頂き,その後,更にできれば関係者からのヒアリングなども交えながら,来年1月までに最終的な報告をおまとめ頂くと,こういうようなスケジュール感で御審議をお願いできればと考えております。事務局からは以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,ここから議論に入っていきたいと思いますが,本日は酒井委員より未修者教育の改革案についてペーパーで御提出を頂いておりますので,まず,こちらについて恐縮ですけど10分程度で御説明を頂ければと思います。酒井委員よろしくお願いいたします。

【酒井委員】酒井です。未修者コース改革に関する議論が本格的に始まるところ,未修者コースで教育を受けた立場から,また,最近のコロナ禍での現状等も踏まえまして,一案として未修者コース改革案を提案させて頂きます。議論のたたき台にして頂ければ幸いです。御説明する改革案は,本日配付頂いている資料5,89ページからとなります。
まず第一に,改革案作成のベースとなる問題意識を記載しております。法曹コースの設置,在学中受験の実施に伴いまして,在学中合格を目指す未修者は,従来以上に厳しい闘いを強いられることになり,一方,在学中受験を選択しない未修者にとっては,司法試験受験までの期間がかえって延びることになるため,従来以上に手厚いサポート,例えば,長期履修制度の一般化ですとか,卒業後も視野に入れたサポート体制の構築が必要になろうかと思います。
一方で,法曹コースが設置された現状では,近い将来,既修者コースの主体は,新卒の法学部生となることが予想されます。法曹志願者の多様性確保という観点からは,これに逆行するという他ない状況になろうかと思われますので,未修者コースの多様な人材の受皿としての役割は改めて重要性を増すものと考えています。本来,未修者コースの理念は多様な人材の登用にあったわけですけれども,現状これが十分に機能しているとは言い難いところですので,このような未修者コースの理念を改めて古くて新しい存在意義として位置付けまして,その実現のための改革を行うことを御提案したいと思います。
このような観点から,第2に,未修者コース改革案の骨子を記載いたしました。現在,コロナ禍で冒頭にも御紹介ありましたけれども,各法科大学院においてもICTの活用が進む中,未修者コース改革においてもこれを活用する方向での柔軟な改革をすべきと考えております。
改革の観点としては2点ございまして,1点目は,社会人学生向けに柔軟な時間帯で受講を可能にする体制の構築,そして,2点目として,合格率が低迷する未修者コースへのてこ入れとして,他校の講義を柔軟に活用する形でのサポートシステムの構築となります。
では,以上2つの観点から,第3として具体案を御説明いたします。2案ありまして,1つ目がオンデマンド方式による授業配信システムの導入。こちらは補助教員の活用を踏まえたものになります。そして,2つ目が特に優れた講義配信システムの導入となります。
まず,89ページ下段のオンデマンド方式による授業配信システムについて御説明をいたします。社会人からの志願者増加のためには,特に,未修1年次のカリキュラムを兼業体制で乗り切れる体制をどのように構築するかという課題があると考えますので,1年次の法律基本科目を中心にオンデマンド配信を行うということを主軸に御提案いたしました。しかし,2年次以降についても可能な限り広範な科目をオンデマンド配信可能とすることを目指すべきと考えております。
90ページの中段ほどにあります①~③に基本的な枠組みを記載いたしました。まず,①として,自校のカリキュラムについて全科目をオンデマンド配信可能として,学生は正規の授業時間に出席しなくても配信された授業を視聴可能な体制といたします。②として,そのオンデマンド講義を受講した学生に対して,視聴した講義の補助的な位置付けで,教員又は補助教員とのディスカッションを義務付けます。このディスカッションはZoomなどのオンラインで行うことも可能という体制を想定しております。このプロセスを経て,③として,正式に単位を付与するという仕組みとなります。また,③部分に記載をしましたとおり,この方法で単位付与が可能なのかという点につきまして,メディア告示2号との関係で議論が必要かと思われます。また,補助教員に関連して,90ページ(2)にその人選の留意点などを記載いたしました。
また,(3)として,この仕組みを導入する場合に検討すべき事項を列挙いたしました。①はオンデマンド受講の対象となる学生の範囲ですが,これはオンデマンド受講により単位を付与する学生を社会人兼業体制など,教場での受講が困難な学生に限定をするのか,それとも全学生を対象とするのかという問題になります。全学生を対象とするという場合には,夜間コースですとか,通信制法科大学院に代替する仕組みというふうに位置付けることが可能かと思います。
また②がオンデマンド配信された動画の情報セキュリティーの問題ということになります。
また,③が配信する動画を講義の動画そのものとするか,オンデマンド配信専用のコンテンツを別途作成するかという点になります。前者であれば,傍聴と同様の効果が想定をされ,後者であれば,オンデマンド配信の特性に合わせた講義の配信が可能となるかと思われます。
④は,学生のモチベーション維持の観点からスクーリングの設定に関して議論すべきという御提案になります。具体的なスクーリングの設定の仕方は多様と思われます。
また,⑤はオンデマンド受講の学生が受講時間プラス補講を正規のカリキュラム期間内で終了することは時間的にまず困難と予想されますので,未修者の長期履修制度の積極的導入についても議論されるべきという点です。
また(4)に補足といたしまして,配信される講義をオンデマンドによる単位付与の対象となる学生だけでなく,通学生の復習教材としても活用すべきという点を指摘させて頂きました。繰り返し授業を視聴できるということは,全学生にとって非常に有益な復習ツールになると考えるところです。以上が1点目についての御提案になります。
次に,91ページの下段からの特に優れた講義配信システムの導入ついて御説明をいたします。
現在,残念ながら未修者の合格率は低迷し続けているという状況にございますので,各法科大学院において未修者教育の底上げは必須という状況と理解しております。そこで,全国一律に,特に未修1年生の教育に適した講義を視聴教材として配信をして,全国の法科大学院で視聴可能とするという案を御提案したいと思います。
この配信動画の利用方法は,原則として,配信先の法科大学院の自由とすることを想定していますが,少なくとも学生個人の予復習教材として位置付けるということは最低ラインかと考えております。法科大学院間で教育に格差があることは否定できない現状かと思いますので,このような教材を配信することでその格差をある程度整えていって,未修者の基礎学力向上につなげることを期待しての御提案ということになります。私個人の感覚で申し上げますが,もし私自身の学生時代にこのような教材が配信をされていたとすれば,学期中は自校のカリキュラムの予復習に追われて,これを消化すれば司法試験合格も視野に入るという感覚で勉強しておりましたので,例えば,夏休み,冬休みなどの長期休暇中に補助教材として利用するということに役立てたように思います。ただ,一方で,恐らく学期中にも自分のペースで配信教材に依拠をして学修をしたいという学生のニーズもロースクール,又は,科目によってはあり得ると考えますので,多様な活用方法があるのではないかと考えるところです。
この仕組みに関連する検討事項を92ページの(2)から記載をいたしました。①は対象科目の設定についてとなります。未修1年次の全科目とするか特定の科目にするかなどの選択肢があり得ます。
また,②としては,対象とする講義の選定方法が挙げられます。配信対象を全科目とした場合に,法科大学院ごとにカリキュラムの差があるために,配信校と非配信校とのカリキュラムの不一致をどのように調整するかという問題ですとか,更には科目間の連動をどのように維持するかという問題が生じるかと思います。可能な限り,一般的なカリキュラムを敷いているロースクールを重点校のような形で指定をして,一括配信をするというのも一案でしょうし,配信科目を限定するという選択肢もあり得ると思います。また,大前提として,誰がどのような方法で配信する講義を選択するのかと,また,更に作成をしていくのかという問題も当然ながら検討しなければならない事項と考えております。
また,③として,アクセスの容易化を挙げました。学生が使いやすい形でこのような教材が配信をされなければ意味がありませんので,どのような配信方法を取るかを学生の利便性の観点から検討すべきと考えております。
また,④では,視聴教材の活用が開始する場合,各法科大学院の活用方法を蓄積して,共有,検討を継続する体制を構築すべきであるという点を挙げさせて頂きました。
また,⑤については,オンデマンド方式の授業について指摘したのと同じく,配信する動画を講義の撮影動画とするのか,それとも視聴教材用に特化したコンテンツとするのかという問題点ということになります。以上が2についての御説明です。
私からの改革案の御説明は以上になります。このような機会を頂きましてありがとうございました。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,意見交換に入りたいと思います。本日は,先ほど事務局より説明がありました論点3~5までを中心に御議論頂きたいと考えておりますが,今,酒井委員から御提案を頂いた未修者コースの改革案,オンデマンド方式を中心としたICTの活用でありますとか,補助教員の活用,あるいは,長期履修制度の一般化,更に,特に優れた講義の配信システムといった辺り,事務局からのこの整理して頂いたポイントと重なり合う部分も多いと思いますので,まずは,今の酒井委員からの御提案に関する部分を中心に御意見がございましたらお出しをいだたければと思います。お知らせを頂ければというふうに思います。中川委員お願いします。

【中川委員】酒井委員の御提案ありがとうございます。私,これを拝見して思ったのは,現時点であればこれは全部すぐできると思うのです。全部撮っていますので,オンライン授業なので。あと,Zoomだと全部録画されます。録画を必ずアップするようにしているのです。それは,我々はGoogleのクラスルームを使っているので,そこはクラスルームの番号さえ教えれば誰でもそこに入って見ることができます。それを他大学までやれば,それは他大学に見てもらうこともできる。なので,予習から,それから予習課題があって,それで,私の場合はレポートも出させているのですけれども,それを,Zoomを使いながら皆さんのレポートを見ながら理解の不十分なところをより深めていくということをやっているのですが,それを全部見られるのです。問題は,これがなくなった後,対面授業になると途端にこれが難しくなるというところがございまして,酒井委員も書かれているのですけれども,やはり撮影というのはなかなか難しいのです。オンライン授業がある種,制約があるので,予習ビデオも作るわ,事前に課題も出すわということをやっているのですけれども,ある意味,対面の方が非常に雑にやるのです。その場で予習課題だけをぽんと出して,では,その場で何かしゃべってみてという感じでやりますので,それをうまく撮るというのは,実はなかなか難しいのかもしれません。なので,これはどちらを,今だったらこれは全部できると思うので,どうやって今のオンライン授業のいいところを対面が復活しても維持できるかということを考えると,ということが突破できれば,これは技術的には非常に簡単にできるのではないかというふうに思いました。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。他にいかがでしょうか。それでは,松下座長代理からお願いいたします。

【松下座長代理】
酒井委員のご提案に係る場面よりも,時間的には前の段階に関わることです。事務局で御説明頂いた論点4に関係して,検討のポイントの1つ目のところで,適性が分からないままに学ぶのはリスクが高いという御指摘があり,適性を早い段階で確認できるようにする工夫として,例えば入学前の科目等履修などの例が挙がっています。これは,入試に合格した後に入学前に科目等履修を行うということだと思いますけれども,もっと手前で検討できてもいいのではないかという気がします。例えば,受験を検討する,法科大学院に志願するかどうかを検討する際に,授業のいわばお試しをするということができてよいのではないかということです。このお試しには,オンデマンド型のICTは非常によくなじむような気がしますので,例えば,幾つかの授業のさわりだけ10分ずつ聞いてみて,こういう授業についていけるかどうか考える機会を与えるというのは,かつてだったら授業を録画して誰でも見られるようにするって何となく抵抗があったような気がするのですが,昨今,そういうことを言っていられない事情で慣れざるを得ない状態になって,こういうことも考えられるのかなと思いました。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,清原委員お願いします。

【清原委員】ありがとうございます。清原です。酒井委員におかれましては,論点3の未修者の皆さまの魅力とその力を生かすこと,それから社会人の皆さまが経験を尊重しつつ学修を継続するために,論点5であります「ICTの活用」について前向きな,積極的なご提案を頂きました。
司法制度改革の中で,やはり今は「未修者」という表現にはなっておりますが,基本的には「多様な人材が法曹に志願してほしい」と,「幅広い力のある人が国民・市民の幅広い生活実態に即した司法を進めていこう」ということが理念だったと思っています。従いしまして,未修者の皆さまが先ほどの冒頭の御報告で,一昨年よりは増えたけれども昨年よりは減ったというようなことについては,やっぱりできる限り門戸は開いておくというのが第一番だと思います。その意味で,今おっしゃって頂いたように,まず,進学を決意するためのプロセスに正しい法科大学院の情報が必要で,そのために法科大学院の授業について,いわゆるオープンキャンパスということで出向かなくてもICTを使って授業の雰囲気や自分自身の経験が生かせる可能性などについて検証できるICTの使い方があると思います。また,入学してから1年次,2年次以降でこのような使い方をと酒井委員が言ってくださったような使い方が,私もあり得ると思っています。
そして,今,幸いコロナ禍の中で法科大学院及び法学部の法曹コースでICTの活用については,迷いながらも実践中です。ですから,是非それを未修者教育に生かすとするならば,どのようなふうに生かせるかということを私たちが特別委員会として提案する,実績に基づいた提案ができる強みがあると思います。これまで加算プログラムでもICTの活用を提案されることは少なからずあったのですが,しかし,なかなかその実績を上げにくいというお悩みも同時にありました。けれども,今は,表現はちょっと平たくて申し訳ないのですけど,「そんなこと言っていられない」ので,やはりしっかりと創造してこられていると思うのです。
そこで課題は,先ほど先生方もおっしゃいましたけれども,「オンラインでできることと」,「ICTでできること」と,「対面でできること」のバランスをどのように未修者の方にも取って頂けるか。とりわけ,未修者の皆さまが法学は未修だけれども,自分が持っている強みとして知見,経験,それをどう司法試験に結び付け,そして実際に結び付けていくかという文脈づくりには,やはり教員,あるいは補助教員の「適切な対面による指導」が必要でしょう。もちろん,オンラインで今の時期だったら補足的なことはできると思いますけれども,これからの意味で,初等・中等教育では,「対面の授業とオンライン・遠隔教育のハイブリッド型」ということを目指していらっしゃいますが,法科大学院においても,とりわけ未修者の皆さまが自信を持ってメンタルにも強く乗り越えるためのハイブリッドを提案していけたらと,このように,酒井委員の御提案を聞きながら思ったところです。よろしくお願いします。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,北居委員お願いいたします。

【北居委員】酒井先生には大変公益的で有意義な御提案を頂きまして,私ども過去の教育を深く反省しているところでございます。先ほど,酒井先生がおっしゃったように,長期履修制度,入学してから後ろに延ばすという発想で丁寧な教育を積んでいくという御提案がございましたけれども,そこでも松下先生の御発言はむしろ前に,入学前にそれを延ばして,勉強時間を延ばして確保していくという発想で,ちょっと違ったような方向を向いているのですが,そもそも私どもの恥をさらすような経験なのですけれども,数年前に未修者の入学試験をやりまして,入学成績が芳しくなかった学生さんがいたのですけれども,入学していただいて,3年後には最上位の成績で修了された方がいらっしゃいまして,これは何を意味するかというと,私どもの入学試験の失敗を意味するわけでございます。これは私ども特有のことなのかもしれませんけれども,教育をどうするのかということも大事ですけれども,どのように入学の選抜をするのかということがそもそもものすごく大事だと思っておりまして,そのときに,恐らく,どこの法科大学院でも法律学を問うてはいけない。これはいろいろ認証評価に引っ掛かってしまいますので,それ以外の知識でその能力を試す。そもそもここに何かしらの矛盾ないし限界があるのではないかということを少し前から考えております。例えば,入学前とか,あるいは長期履修ではなくて,入学をもうちょっと時間的な線で判断していく,お試しをしてみると言ったって,入れるかどうか分からないことを一生懸命やりませんので,一旦,例えば,仮入学みたいなことを認めて,そして,その間,例えば半年とか勉強を積んで,そこで定期試験というか,ある種,法律学の試験をやってみて,そこで初めて正式に入学をするといったような,今は単なる思い付きですので練られておりませんけれども,例えばそういうことをやっていくようなやり方もありはしないか。そのような場合に一つ問題となるのは,未修者の入学試験には法律を入れてはいけない,これが足かせになってしまいますので,その辺も含めて入学選抜の在り方をもうちょっと柔軟にいろいろと考えていく余地がありはしないかということを御提案申し上げます。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,井上委員お願いできますか。

【井上委員】井上でございます。論点4に関して1つ意見させて頂きたいと思います。酒井先生の御提言にも関連するのですけれども,この論点4のところで「法学への適性が分からないままに仕事をしながら学ぶことにリスクがある」という記載がございます。そして,資料40ページにも「非法学部出身者,社会人経験者は法曹に対するイメージを持たないまま入学する場合が多い」ということで,かなり意識において,何となくの憧れ等々で入っていらっしゃるのかなというふうに思いましたが,ここのギャップを埋めるのもすごく大切ではないかと思いました。その中で酒井先生がおっしゃったオンデマンド,あるいは,オンラインでの教育で,例えば,法曹者との交流の機会のようなものも,実現可能なのではないかなと思います。
従って,1年生に授業の中身をオンラインで提供する以外に,そういった適性とか,あるいはイメージづくりについてもオンラインを活用すれば,早期の段階で具体的なイメージを持った上で学修していくことができるのではないかと思いました。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。井上委員,今,最後の部分が若干聞き取りにくかったのですが,最後におっしゃったことを繰り返して頂けますでしょうか。

【井上委員】学修意欲を維持する取り組みという意味で,法曹に対するイメージを持たないまま入学するという問題がございますので,法曹と交流する機会,あるいは法曹の実務を知る機会という場を提供する必要があると思いますが,それがオンデマンドによる情報提供,交流ということにもなじむと思いますので,オンデマンドの授業提供の中に授業の中身プラスアルファで,そういった学修意欲を維持する取り組みでもオンラインが使えると思います。そういうことを検討されてはいかがでしょうかという意見でございました。

【山本座長】ありがとうございます。失礼しました。それでは,続きまして,潮見委員お願いいたします。

【潮見委員】京都大学の潮見です。ありがとうございます。特に,酒井先生がきょう御説明されたことについて感想を含め,更に,これからこういう方向で検討してはどうかということも含めて少し自分が考えているところをお話しさせて頂きたいと思います。
御説明にもありましたけれども,今回のコロナの問題があって,結局,それがオンラインの授業というものを全法科大学院で展開させるきっかけにもなりました。実際にオンラインでされた授業の良いところを,それを未修者の教育に活用していくことは,特に,ICTの活用という点では,私は非常に意義があるというように思います。ですから,その方向で未修者教育というものを更に充実させるという検討は,これから先いろんなところで進められたらいいのではないかと思います。
その上で,幾つかこれから検討したらどうかというか,あるいは,この辺りは更に詰めなければいけないのではないかということを発言させて頂きます。大きく分けると,要するに,ハード面とソフト面,この2つです。ハード面については,オンデマンドの教材を誰が作るのか,それから私は,専門は民法ですけれども,民法の例えば債権総論について,例えば複数の先生がそういう教材を作ってストックしておくのか,それとも誰か1人に任せるのか,とかいったような問題があります。要するに,どの方がどういう教材を作るのかというところです。それから,更に,ハード面でそれに関連することですけれども,そうして作られたオンデマンド教材を,これを各法科大学院のカリキュラムとどのように結び付けられるのかということを考えておかなければいけない。これは複数の可能性があると思うのです。例えば,ある教材を連携している各法科大学院で自分の授業,自分たちの法科大学院の授業に使うというような形で考えていくという方法もあり得ましょうし,あるいは,どこかでまとめてストックしておいて,それを各法科大学院が使いたければ使うというような形も考えることもできようかと思いますし,これ自体は実際にそれぞれの法科大学院が今後各自のカリキュラムをどのように構成していくのかというところにも大きく関わりますから,少ししっかりと検討をしていかなければいけないのではないかと思います。なかなか一筋縄ではいかないような気もしないわけではありません。
問題は,そうしたハード面での検討作業というのをどこでやるのか。実際にどこかでフォーラムなり,あるいはタスクフォースなり,そのようなものを使って集中的に検討をしていくということが望ましいのではないかというふうに思います。それ以外にもハード面はいろいろ少し気になるところがあるのですけれども,これはもう省略いたします。
もう1つソフト面ですけれども,今年,久しぶりに未修者の1年の民法の授業を担当しています。オンデマンドでやっています。他の方の民法の授業もオンデマンドでいろいろ少し,あるいは,オンラインでやっているというところも見て,あるいは,未修者の1年生の話もいろんな形で伺っています。その印象なのですけれども,恐らく,他の法科大学院もそうなのかなというところもありますが,ソフト面でも,問題は2つあって,1つは,これはコンテンツが肝であるということです。コンテンツがうまくできていなければ,幾らICTを活用してもこれはかえって未修者教育にとっては逆効果になります。実際にオンラインとかオンデマンドでやるときには,学生さんが見えないからというか,事前教育も必要だからというので非常に複雑なレジュメを渡したり,あるいは,たくさんの教材,あるいは学説を示して,それでさあ勉強してねという形でやられるような方もいらっしゃるようには伺っていますけれども,かえってそうすることによって学修の達成度が落ちています。混乱しているという,そういう声も一部では聞こえてきます。その辺りを考えた場合に,コンテンツをどういうふうにするのかというのは,これはかなりしっかりとした物を提供しないと駄目じゃないかという感じがいたします。
それから,もう1つは,これは清原委員がおっしゃられたことと同じような印象を持っているのですが,オンデマンドでやる場合には,そのときには,やはり対面での授業をかなり重視してやらなければいけないというように思います。特に,今,酒井先生の御提案のところでは,いろいろスクーリングとかいろんなものを書かれていまして,それもそうだと思いますが,それ以上に大切なのは,コロナ前の未修者の対面での教育であったときには,学生さんたちが自習の段階,予習の段階,復習の段階で一緒に勉強するというような,そういう機会がありました。そして,一緒に先生のところに質問に来るというようなこともありました。例えば研究室の中でディスカッションもすることもできるというところがありました。そういうことが学生を,未修者を育てていって,それから,最終的に司法試験の合格に向かわせるという面もありました。オンデマンドであればあるほど対面での日頃の教育面でのケアというものを十分できるような,そういう面をどう築いていくかというのを考えなければいけないかなと思います。これは単に補助教員が何か教えるとか,あるいは,後でビデオを見直して何かする以上の法科大学院での学びの成果であり,そのための場だと思っていますので,これはまた,いろいろなところで検討を加える際の参考にして頂ければと思います。長々となりました。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,土井委員お願いいたします。

【土井委員】土井でございます。酒井先生には未修者コース改革案について詳細な検討をお示し頂いてありがとうございます。非常に興味深く拝読させて頂きました。この酒井先生の案と,資料3の論点案を踏まえて,私の方から意見を申し上げたいと思います。
今回,酒井先生から御提案頂いた,第3の具体案は2本柱になっております。この2つの柱については,それぞれの趣旨,目的を明確にして,それぞれ具体的やり方を検討するのがよいのではないかと思っております。
まず,第1の柱,オンデマンド方式による授業配信システム型の教育課程の整備という,これにつきましては,やはり案を拝読する限り,このような教育課程の立ち上げ,あるいは,その継続維持にもかなりのコストが必要で,法科大学院として,また,各教員として相当なコミットメントを求められることになると感じました。その意味では,このような教育課程の整備を全ての法科大学院に求めるのはなかなか難しいのではないかというのが率直な感触です。この第1の柱は,資料3の34ページ,論点4に関わるもので,基本的には働きながら学ぶことを希望する社会人や,法科大学院が存在しない地域に在住している方を対象とする遠隔教育の実現の問題だと思いますので,これを目的としてそのような教育を担当する意欲のある法科大学院を中心に,集中して取り組んで頂くのが適当なんじゃないかなと思います。その意味では,第1の柱の実現のためには,法科大学院間での役割分担,選択と集中を検討する必要があるのではないかと思います。
他方,第2の柱につきましては,ほとんど全ての未修者を対象にして,とりわけ1年次教育の改善を目標に取り組むべき課題であると思います。この点は,資料3の34ページ,論点3に関わるわけですが,未修者教育を実現させるために,授業の工夫や様々な取り組みを行う必要があるわけですが,未修者の皆さんにとっても1年は365日ですし,1日は24時間しかないという点に変わりはございません。従って,あまりに多くのことを実施しますと,結局,消化不良を起こしたり,精神的に過剰な負担をかけてしまったりするということになります。従って,このような改善を行うためには,やはりそれを費やすことができる時間をどうやって生み出すかということも重要な点だと思います。とりわけ,法学の学び方を学ぶ期間をどういう形で未修者の皆さんに取って頂くのかが重要な点だろうと思います。
この点について,1つは司法試験の在学中受験が可能になりましたので,その意味では3年で教育課程を修めて,4年目に司法試験を修了後受験するのか,4年かけて教育課程を履修して,4年目に司法試験を在学中受験するのか,こうした点について選択肢は広がったと思えますので,こうした選択肢を可能にするための環境整備,先ほど来出ています長期履修制度の一般化等が必要になるのじゃないかと思います。
また,以前にも申し上げましたけれど,やはり,純粋未修者の皆さん方は既に多様性が身に付いているわけですので,法律科目を中心に学んで頂く,そして,その中で多様性を発揮して頂くことが期待されると思います。その意味では,未修者の皆さんについては,基礎法学・隣接科目や展開・先端科目の必履修単位数を見直しなどして,選択科目としての法律基本科目との間で選択を広く認められることなどを検討してよいのではないかと思います。
こうした取り組みを行う場合には,どうしても法律基本科目を中心に新たな授業負担が増える可能性が出てくるわけです。これを例えば学部の授業の聴講などで補えれば,1つの案なのですけれども,しかし,教育課程上の制約もございますし,キャンパスや時間割上の制約などもあって,そう簡単な話ではないと思われます。この点について,今回,酒井先生が御提案頂いている第2の柱は,いわゆる反転授業の実施を可能にするなど,かなり有効な方策になり得るのではないかと思っています。その意味では,必ずしも特に優れた講義の配信による課題を抱えている法科大学院の改善という視野にこだわることなく,広く検討してみてよいのではないかと思います。
最後に,先ほど潮見委員の方からも言及がありましたけれども,こうした取組み,あるいは今後検討になる共通到達度確認試験の実施など,こうした取組みを持続可能な形で続けていくために,どのような体制を整備するのかということは非常に重要な問題になると思いますので,この点についても検討する必要があるかなと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,山野目委員お願いいたします。

【山野目委員】ありがとうございます。論点4について意見を申し上げます。資料3の,通しページで申しますと35ページになります。論点4のところがポツが3つ示されておりまして,そのポツの2つ目のところで,感染症対策として行われているICT活用の実績を踏まえつつ,有職者が学びやすい教育環境を整備する観点から今後どのようなことを考えていったらよいかという問題提起がされております。同時双方向型に限らずという問題提起があり,このことを含めて積極にこのポツの前段で示されている論点を考えていくべきであろうという意見を申し上げます。
思い返しますと,司法制度改革審議会の意見書が述べていた双方向性,多方向性ということの大切さということを改めて確認する上で,このたびの機会というものは,その実質的な意味を問い直す大変良い機会ではないかというふうに考えます。「同時双方向型に限らず」という文言がございますけれども,確かに,双方向型がたしかであるとともに,それは同時でなければならないかということを私たちは今考えさせられているものであろうと感じます。その後に,「時間や場所に縛られない遠隔授業の在り方ということを考える」とあり,これも積極に考えるべきでありますし,酒井委員が本日お出しくださったペーパーは,この方面のことについて大変丁寧に,更に言えば見事に整理してくださっていると感じます。今,私,論点4のところで申し上げておりますけれども,それは酒井委員が論点3を中心におっしゃったことと通底するというか,基本的な問題の構図はほとんど共通するものであります。論点3,4,5にまたがってこういうふうな取り組みを積極に進めていったらよいのではないかと感じます。
そこのポツの後段では,「教員の教育へのエフォートの割き方はどのように変化するか」という,それは大変考え込まなければいけない問題提起もされてございます。中川委員がおっしゃったように,また,先ほどの土井委員の御発言で御注意があったように,時間や場所に縛られない授業をICT活用などにより新しく工夫する試みを全ての法科大学院の教員がやることが効率的で良いことなのかということは,もちろんそうではないわけでありまして,また,それを具体的に進めていくに当たっても,潮見委員から実質的,実際的な御注意を頂いていたところであります。この辺りのことについては,今後,研究の機会をどういうふうに設けていったらよいかというところから考え始めていったらよろしいと考えますし,オンデマンド動画の在り方,法科大学院教育における位置付け等について,この審議会や文部科学省が従来提示してきた見解や考え方について,本日,酒井委員が問題提起をしたことを発端として見直さなければならない点があるものであるとすれば,そういったことについてもどのように議論を進めていったらよいのかということについて,手順を考えていくことが望ましいと感ずる次第でございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,大貫委員,お願いいたします。

【大貫委員】ありがとうございます。論点が3~5までということを中心にということですけど,今回,酒井委員から非常に積極的な意欲的な意見書が出されました。それについてちょっと感想を申し述べたいと思います。
2つの柱があるということは今共有されていると思います。自校におけるオンデマンド方式による授業配信システムを取られている。それから,特に優れた講義の全法科大学院への配信システムということでございます。
前者に関して2つ申し上げます。第1の柱について申し上げると,教員又は補助教員とのディスカッションが大変重視されております。特に,補助教員の役割が重視されています。法科大学院における法学未修者への教育手法に関する調査研究において指摘されていますように,未修者教育は個別的事情に対応した丁寧な対応が求められます。担当教員のみではなくて,補助教員による丁寧な教育が不可欠だろうと思います。こうしたことは,現在法科大学院の教育に携わる者ではかなり共通の認識になっていると思われます。
しかし,2つここで申し上げます。オンデマンド授業を前提として,補助教員による手厚いフォローを行うことによる大変丁寧な授業を実現できます。しかし,担当教員にとってはオンデマンド授業であることにより,先ほど来出ていますけれども,講義,録画の負担,それから補助教員との連携等に相当な手間を取られます。ですから,これは必ずしも担当教員の負担軽減にならないだろうと私は思っています。その意味で,土井委員がおっしゃったように,全ての法科大学院でできるのかというところは考えなくてはいけないと思います。しかしながら,これがうまく機能すれば私は相当な効果があると思っている。これが1点です。
それから,補助教員を配置しても,これも法科大学院の先生方は先刻来御承知だと思いますが,担当教員とは適切な連携をしなくてはなりません。勝手にやったのでは何の効果もございません。これが難しいです,大変難しいです。これをどうするかということに解はないのですけれども,先進的な法科大学院でやっている連携の試みをまず学んで,どういうやり方,連携のやり方があるのか,担当教員と補助教員の連携の在り方について検討しなくてはならないというふうに思っております。
続いて,第2番目の配信の方でございます。これは,非常に意欲的だろうと思っております。しかも,私が注目したいのは,動画の使い方が各法科大学院によってかなり自由に行われているというか,非常に使い勝手がいいものだと思っています。
しかし,私は,しかしと言いますか,動画にもいろいろあるだろうということで1つ提案申し上げたいと思います。先ほど,潮見委員が御発言でコンテンツをどうするのと,コンテンツが大事だよと,これは全くそのとおりであります。酒井委員が全法科大学院に配信するというのは,要するに,誰かの講義,例えば,潮見委員の講義をそのまま配信するというのがイメージです,これは。そればかりではないだろうということを申し上げたいと思います。もちろん異論があることは承知の上です。潮見委員も絶対異論はあるということを承知の上で申し上げるのですが,例えば,法学初学者が授業を受ける際に前提となる基礎的な知識を確認するための短い動画を配信するというのもありだと思うのです。例えば,専門家の中川委員もいますけれども,例えば,行政手続法という行政において極めて重要な法律の骨格を15分の講義で作ってみる。それを全国の法科大学院が利用可能な状態で配信するというのも,僕はありだというふうに思っております。もちろんこれはいろんな使い方がある。予習に使う,復習に使う,それから補助教員のフォローで使う,いろんな使い方があっていいと思います。もちろん,こういうのできるのかと潮見委員から言われそうですけど,これはやはりやりましょうと,やってみるに値するのではないかというふうにお答えしたいというふうに思っております。
少し長くなりましたけど,全国に対する動画配信の論点のところのもう1つのところ,ちょっと先の論点ですけれども,これは潮見委員の発言にもいみじくも出ていたのですが,この動画を撮影し,配信するというようなことを誰が一体,誰の講義を選ぶのだとか,誰が編集するのだと,短い講義,この問題が出てくると思うのですね。これは文部科学省のペーパーでは,教育拠点という言い方がされていたと思う。多分,どこかの法科大学院に中心的にやってもらうというイメージだと思います。しかし,私は,これは個々の法科大学院にやってもらうにはちょっと重いのではないかと思っております。
ですから,次のようなことができないと思っています。こういう仕事を一手に引き受ける全国に1つのコンソーシアムみたいなものを作れないかというふうに思っております。あまりめったなことは言えませんけど,法科大学院協会は正にそういうことをするためにある組織ですから,法科大学院協会が協力する。それから,ちょっと先走っていますけど,現在,法曹養成に関わっている弁護士とか研究者がこの法曹養成教育の改善を目的として様々な活動を行う。実は,一般社団法人を作るという話が出てきております。まだちょっと設立できていないので申し上げられないのですが,この法人もその設立目的からすると十分にこの仕事を担えると,こういう組織と法科大学院協会が協力して優れた講義をセレクトする,編集する,配信するということが行われていいのではないかというふうに思っております。
ちょっと長くなりましたけど,最後にこれどうしても言っておきたいことがありますので,潮見委員のおっしゃったこと,あるいは清原委員がおっしゃったこと,非常に関係するところですので早口で申し上げます。
現在,全国でオンライン授業が行われております。酒井委員の提案のように,オンデマンドで使う講義も行われていますし,いわゆる,リアルタイムで双方向の授業も行われています。むしろ,こちらの方が主流で行われているのではないかと思う。しかし,先ほどちょっとアンケートの調査結果の報告で御紹介しましたが,いろいろあります。例えば,資料配信型,パワーポイントを配信して読ませる。それから,自学自習型のオンライン授業というのもあります。これは先ほど申し上げたような自学自習させる。こういうのもあります。我々,今,オンラインの授業をやっていると,オンデマンドとか,いわゆる双方向をどうしても中心に考えてしまうのですけど,必ずしもその必要性はないもではないかというふうに私は思っております。
御存知の先生方も多いと思いますが,熊本大学の大学院で教授システム学専攻というのがございます。ここは全てオンライン授業です。つまり,キャンパスに一度も行かずに卒業できるのです。この法科大学院のオンラインはどういうことをやっているかというと,これはeラーニングと名付けているのですが,これは実は先ほど私が紹介した自学自習型のオンライン授業です。ここの大学院では,その自学自習型を中心にして,たまにオンライン,リアルで会ったりするというのを行っています。こういうやり方もあると思うのですね。
先ほど,潮見委員も清原委員もおっしゃいましたけども,先ほどの論点はいわゆる面接授業とどう組み合わせるかということだろうと思いますが,私はオンラインの中にもいろいろあるので,何もオンデマンドとかいわゆる双方向だけにこだわらずに,未修者にとって一番いいような教育の在り方というのを考えるべきじゃないかというふうに思っているところです。今年度前期の大規模なオンライン授業の実施の経験は,この点において非常に参考になるというふうに思っております。長くなりましたが以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,富所委員お願いいたします。

【富所委員】読売新聞の富所です。せっかくですので2つほどちょっと御意見申し上げたいなと思っています。
1つ目なのですが,御存知のとおり,未修者の教育というのは,司法制度改革の一丁目一番地,多様なバックボーンを持つ人材をどうやってその知見を生かしていくかということが大前提としてスタートしていますので,そういう中にあって夜間の開放とかやっぱり数が減ってきてしまったというところがありますので,先ほどいろいろ御提案ありましたように,ICTとかを活用して,仕事と両立しながら受けられるようにするということはとても大事だと思いますし,何も1大学で全部やらなくてもいいわけで,先ほどから意見が出ているように大学間連携とか,そういったコンソーシアムでもいいかもしれませんけれども,やはりこういう大きな理念をしっかり生かしていくために有効に資源を活用していくということがとても大事なのかなというふうに思いました。
それから,あと,法学への適性が分からないまま法科大学院に入る学生たちの件なのですが,先ほどオープンキャンパスの話も出ていましたけれども,その辺もとても大事だと思います。更に言えば,法曹を目指す方は,やっぱり法廷に立っている姿とかをイメージしている人がやっぱり多いのじゃないかなと思うのですけれども,いわゆる,司法サービスを利用する側からすると,企業なんかもそうなのですが,今,コンプライアンスの問題というのは本当に多種多様です。法廷戦術に強い先生ももちろん必要なのですが,それ以外に,例えばですけれども,ICTのことも詳しく知らないと,そういうトラブルなんかも起きますし,あと,エンターテイメントとか,そういうような,むしろ交渉力だったりとか,それからあと,こちらは困ってお願いする立場なので共感して頂けるみたいな,そういう共感力みたいなところもとても大事なのですよね。ですので,法曹に向いているかどうかというところは,大学の授業が自分に合っているかどうか,大学院の授業が合っているかどうかというところだけではなくて,もっと先々まで見据えて,自分が法曹の中でもどういう,多種多様なニーズがある中でどういう法曹に自分がなれるのかというところをやっぱり考えてもらうことが必要なんじゃないかなと思っています。
そのためには,論点の7番目になると思うのですが,やっぱり出口戦略をしっかり理念を作っていかないと,大学院修了して,自分はじゃ何になれるのか,何になりたいのかというところをしっかりイメージできるような形を作っていくことが重要だと思います。この辺はまた後日議論になるのだと思うのですけれども,取りあえず今思ったことを申し上げました。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,木村委員お願いいたします。

【木村委員】ありがとうございます。感想めいたことで恐縮ですけれども,2点お話ししたいと思います。
ICTは先生方のお話を伺っていろいろな工夫があるということが分かったのですけれど,オンデマンドと同時双方向とはかなり違うもので,酒井先生が非常に魅力的な御提案を頂いているのですけれども,オンデマンド型というのは確かに未修の1年次に関してはかなり有効だと思います。ただし,2年次以降になるとどうしても双方向がかなりウエイトを占めてくるようになるので,1年目は有職のまま,職業を持ったまま大丈夫ですよと言いながら,2年次以降になってから,対応できないという話になると困るので,そこのところはちょっと工夫が要るのかなというふうに思いました。
それともう1つ,これは先ほどから潮見先生の授業を聞けばという話が出ていましたけれども,オンデマンドで優秀講義と言ってしまうと,実は全国で1つあればよいのではないかという話にもなりかねないので,正に誰がどうやってそれを作るのか,それをどう決めるのかといったところはかなり慎重な検討が要るのかなというふうには思いました。
それと,さっき土井先生がちょっとお話になっていましたけれども,そうしますとやっぱり特定の大学に未修教育をある程度お願いするみたいな話になってくるのかなという気もしまして,そうしますと,今までの議論とはかなり違ってくる面もあるのかなというふうには思っております。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。菊間委員。

【菊間委員】弁護士の菊間です。よろしくお願いします。
多様な人材を法曹に向かわせる,そして,その方たちがきちんと合格までして頂くという観点から,酒井委員の提言について少し意見を述べさせて頂きます。
まず,スクーリングの件については,賛成いたします。社会人でロースクールに通っていて,途中で脱落していった友人のほとんどは,やはり夜間だとしても平日の授業に間に合わないということで,諦めてしまった方がとても多かったという点から,平日の授業がオンラインというのは,社会人にとってはとても魅力的だと思います。ただ,社会人はどうしても仕事に締め切りがあれば,授業よりも仕事を優先せざるを得ないような状況がある中で,オンラインだけでやっていると,自然と仕事仕事となって,自分がロースクールに通っていることを忘れてしまうようなことになりかねないので,週1回ぐらいは学校に行き,同級生から刺激を受けるという環境は必須だと思います。平日はオンライン。土曜日は朝から晩までロースクールで授業というようなカリキュラム編成が良いのではないかと思いました。
また,優れた講義の共有という点についてなんですが,自身の1年目を振り返ってみると,自分が受けている授業の予習・復習だけで精いっぱいで,その他に新たなものを持ってきて頂いても,とても見る余裕はないのではかと思いますので,やはり,夏休みや冬休み,まとまった時間があるときに見られるような教材としてのものがあると良いなと。ですから前期の授業をすべて録画して,全国に配信するということではなく,憲・民・刑で私はいいと思っているのですけれども,その中の主要な論点とか,前期でここだけは押さえておかなくてはいけないよというところを何回かにまとめた動画を作って頂いて,それを全国の未修者が,夏休みや冬休みに共有するというような形が良いのではないかと思いました。
そういう観点で考えると,動画制作の負担がかなり大きいので,どこかのロースクールに任せるということではなくて,精鋭チームで集まって別に作って頂くということができれば理想だなと思います。
あと,最後に論点4のところの有職者の入試の在り方というところで,入学してからちょっと自分のイメージと違ったという方がいるのではないかというお話がありました。私が見ている限り,ほとんどの社会人の方で合格なさっている方は,入学前から仕事と家庭と勉強の両立を図るべく環境整備して臨んでいる方です。ロースクールに入って,仕事もやって,子どもの運動会も行って,家族と旅行も行って,それで3年間で合格するというのはやはり難しいので,家族や職場の理解が大事になります。入学前に環境整備が大事だというところと,あと,様々な職種の社会人ロースクール生がどのようなスケジュールで勉強しているかを,具体的に見せて差し上げて,入学後の自分の生活スタイルをイメージしていただくという取組も必要だと思います。
最後に,長期履修制度ですが社会人は転勤や部署移動がつきものですから,仕事との両立が可能な今のうちに,ということもあるでしょうし,長期と言っても,4-5年が限度ではないかと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。これでおおむね手を挙げておられた方,大澤委員お願いいたします。

【大澤委員】締めようとされていたのかもしれないところ,すみませ。なるべく簡単に済ませるようにします。
ICTの利用ということがだいぶ言われておりましたけれども,ICTに何を期待するのか,何のためICTを使おうとするのかというところで幾つかの異なった目的がありそうで,有職者の方に未修者として勉強してもらう,そのために時間の融通が効く形でオンデマンド型のICTを使いましょうという議論と,それから,もうちょっと違う,何度も聞き返せるとか,そういう観点からのもの,それから更にもう1つ言うと,やっぱり未修者の教育というのは,未修者固有の部分は1年間で非常に時間が短い,不足しているというところもあって,その中で基礎的な知識を入れながら,それを使う練習もしていかなければいけない,その辺りでなかなか時間が足りないというところがあって,それを補うツールとして使いたいということもあるのかもしれません。
それぞれでどんな形のICTの使い方がいいのかというのはあるかと思いますが,ICTそのものを授業の本体に持ってくるというやり方もあれば,知識を入れるのにはかなりオンデマンド型の授業が使えますから,ICTは予習的な教材として使うというやり方もあるかと思います。後者の場合には,それで基礎知識を入れた上で,授業は先ほど土井委員が反転授業と言われましたけれども,むしろそういう方向へ思い切って組み替えていくというような可能性あるのかなと思った次第です。どういう目的によるのかということで,いろいろと使い方があるのだろうと思います。
それから,負担が重いという話も出てきましたが,私はサボり人間なのかもしれませんが,例えば,知識を入れるためのオンデマンド型であれば,1回撮ると実は使い回しが効くかもしれないのですね。そういう意味では,1回目を作るのは大変かもしれないけれども,作ってしまえば,それで回していけるかもしれない。もっと言うと,学部の授業をうまく使って,それを使い回す。使い回すという言い方が適切かどうか分かりませんが,そんな可能性だってあるのかもしれません。これはある大学が,あるいは,ある教員が意を決してこうやってみると言って,新しいタイプの授業に踏み切れば,それでできてしまうことかもしれないとも私は思います。全体として足並みそろえてやろうとすると,これは大変なことなので,やっぱり大学ごとの創意工夫というのが生きてくる場面なのかなという気もいたします。
それから,もう1つ,制度の誤解があるかもしれないし,こんなことしてもあまり意味がないという見方もあるかもしれませんが,申し上げておきます。未修者の学修を後ろに広げる長期履修に対し,前に広げるとするとどんな方法があるかということで,お試し授業とか,ガイダンス的なものというお話がありましたけれども,科目等履修の制度,あれは使う余地はないのだろうかということを思いました。科目等履修でお試しをして単位を取ってしまえば,それは法科大学院に入学した後には,既修得単位として認定できるということになりますから,入った後の負担軽減にもなりそうです。ただ,制度上本当に使えるかという点は確認していません。それから,法科大学院の基本科目の中にそういう入学前の人たちを受け入れるというのは多分今までにはなかった発想だと思いますから,随分突飛な発想かもしれませんけれども,何かないかということでお話を伺っていて,そんなことも可能性としてないのかなということを思いました。私は以上です。

【山本座長】ありがとうございました。おおむね予定されていた時刻になっておりますけれども,きょうの段階で是非という御意見があればお伺いしますが,よろしいでしょうか。それでは,活発な御議論ありがとうございました。本日の議論は以上とさせて頂きます。
本日は,酒井委員から頂いた御提案を手掛かりとして,この未修者教育の改善という,今期のこの特別委員会の最も重要な課題について様々な具体的なアイデアを頂くことができたというふうに思います。大変充実した御議論を頂けたというふうに思います。
次回以降に向けてですが,先ほど事務局の方から今後の予定ということについて御紹介を頂いたところであります。本日の御議論を踏まえて,この論点3~5までについて事務局の方でこの検討ポイントを更にリファインをして頂いて,それに基づいて議論を更に進めていくとともに,共通到達度確認試験の実施体制等も含めて,あるいは,きょう論点7につきまして,既に富所委員などから御指摘もご示唆もあったところをやりますので,この論点6及び7につきましても議論をすることができればというふうに思います。事務局においては,本日の議論を整備頂くとともに,さらなる議論に必要な準備,資料の作成をお願いしたいと思います。
それでは,その他,各委員あるいは事務局から何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは,これで本日の会議を終了したいと思います。若干の時間を超過いたしまして申し訳ございませんでしたが,次回日程につきましては,改めて事務局の方から御連絡をさせて頂きたいと思います。本日は長時間にわたり熱心な御議論を頂きありがとうございました。

―― 了 ――

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