法科大学院等特別委員会(第96回)議事録

1.日時

令和2年5月15日(金曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対応について
  2. 認証評価の充実の方向性について
  3. 定量的な数値目標(KPI)の設定について
  4. 在学中受験資格の導入に伴うカリキュラム等の工夫例について
  5. 法学未修者教育の充実について
  6. その他

3.議事録

【山本座長】大学分科会法科大学院等特別委員会を開催したいと思います。
本来,この第96回の委員会は3月13日の開催を予定しておりましたが,新型コロナウイルスの感染拡大予防の観点から,2回にわたり開催を見合わせることとして,そして本日,本委員会としては初めての形ですけれども,オンラインミーティングということで,改めて開催をさせていただくことになりました。このような形ではありますが,委員の皆さまのお元気なお姿を久しぶりに拝見することができて,私も大変うれしく思っております。
また,本委員会は公開が原則ということでありますので,会議の模様はYouTubeでストリーミング配信をされておりますので,この点,御承知おきをいただければと思います。
早速ですが,本日の議題でありますが,かなり多岐にわたっておりますけれども,まず喫緊の課題となっているコロナ感染症拡大に伴う対応について事務局より,法科大学院協会によるアンケート結果と,それを踏まえた文科省の対応方針について御報告いただいた上,自由に意見交換をいただければと思います。これが最初です。第1点。
それから,次に認証評価の充実の方向性及び定量的数値目標(KPI)の設定につきまして,前回御議論を頂いたわけですが,それを踏まえて事務局で作成いただいた案を基に御説明いただいて,御議論いただきたいと考えております。
それから,第3点ですけれども,令和5年度からの在学中受験資格導入後の司法試験の実施時期につきまして,法務省の丸山委員から御報告を頂き,それを踏まえて在学中受験の導入に伴うカリキュラム等の工夫例というものにつきまして,事務局で作成いただいた案を基に説明をお願いして,御意見を伺いたいと思います。
それで最後に,法学未修者教育の充実という点でありますが,これも前回御議論を頂きましたが,それを踏まえて第10期,今期で検討すべき論点を事務局において整理していただいたということでありますので,その説明をお伺いした上,今回は拠点化とかICTの活用の在り方等に関して自由に御意見を伺うことができればと考えております。
このような形ではありますが,本日も活発な意見交換をよろしくお願いいたします。
それでは,まず初めに事務局の方から配布資料の確認をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】事務局の西川でございます。
本日は,あらかじめ配布資料をメール等でお送りさせていただいております。お手元を御確認いただきたいと思いますが,配布資料としましては,議事次第にありますように,資料の1-1から5-3まで,併せて参考資料の1から5をお届けしております。資料の御確認を頂きますとともに,接続不良等のお困りの点がございましたら,あらかじめお送りしております開催案内に記載の事務局の連絡先にお電話をいただければと思います。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。そのような形で,もし不具合等がありましたら,適宜,御連絡をいただければと思います。
それでは,早速議事に入りたいと思います。
議事の第1点,コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対応ということでありますが,法科大学院協会より現状について取りまとめたアンケート結果が文部科学省及び認証評価機関に対して送付されているということでありますので,それを踏まえた文部科学省の対応方針と併せて事務局より御説明をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】事務局の西川でございます。お手元のまず資料の1-1と1-2を御用意いただきたいと思います。
今般の新型コロナウイルスの感染拡大を受けた対応としまして,各大学においてICTを活用した遠隔授業が積極的に導入されているところでございますけれども,こうした状況の中で先月,法科大学院協会におきまして会員校へのアンケート調査が行われまして,その結果を踏まえた申入れの文書が文部科学省及び認証評価機関に届けられているところでございます。こちらが資料1-1でございます。本日,事務局よりこの内容を御紹介しながら,これを受けた文科省としての対応につきましても資料1-2として併せて御説明をさせていただきたいと思います。
まず初めに,資料の1-1ですけれども,法科大学院協会では今学期のオンライン授業の状況につきまして,4月10日から17日にかけてウェブアンケートという形で実施をされたということでございます。資料の通しページ2ページのところに結果が載っておりますけれども,まず問1(1)にありますとおり,回答のあった37校の全てにおきまして何らかの形でオンライン授業が実施されているということが分かります。
また,次の問1(2)を御覧いただきますと,中でも9割以上のロースクールでは同時双方向型の授業が実施をされていると。一方でその他,録画配信型,いわゆるオンデマンド型ですとか資料配信型,自習学習型といった多様な形態が取られていることも分かります。
また,次のページの問2を御覧いただきますと,昨日,一部の地域で緊急事態宣言が解除ということにはなりましたが,今のような状況が仮に当面夏まで継続した場合にはどういうことが困難になるかということにつきまして,通常どおり実施しにくい事項としては,②当初予定どおりの科目の実施,⑤厳格な成績評価,⑥平常点の成績への反映,⑦臨床系科目の実施,⑩図書室や自習室等の設備の利用,⑪厳正な入学試験,そして最後の⑫認証評価への対応といったものが上げられているところでございます。
さらに,次の4ページ以降の自由記述欄もいろいろな御意見を書いていただいていますが,かいつまんで御紹介いたしますと,まず問3,認証評価基準との関係では,今年の認証評価にそもそも対応する余裕がないといった声,あるいは定期試験や成績評価については一体どのような方法であれば今の評価基準に適合するのか悩ましいといったような懸念や要望が示されているところでございます。
また,少し飛びますが,7ページ以降の問4,研究・教育上の困難ということでは,例えば訴訟実務など実際の事件資料を素材とする資料は情報の秘匿性の点でオンラインには適さないとか,あるいは図書館が閉鎖されているので,なかなか参照できない資料があるとか,学生と教員,学生相互の人間関係の構築が難しい,あるいは未修者に対する個別指導がなかなかやりにくいといったようなことが上げられているところでございます。
ちょっと雑ぱくですけれども,1ページにまた戻らせていただきまして,こういった状況を踏まえまして,今回,法科大学院協会の総意といたしまして,文部科学省また各認証機関に対して,今年度,また将来行われる今年度分の認証評価の実施の在り方について極力柔軟な対応を検討してほしいというのが本文書の趣旨でございます。
これを受けまして,次に文部科学省として対応をどのように取っていくかということについて,資料の1-2,14-1ページを御覧いただきたいと思います。
大きく2点ございますが,1点目としまして,まず文部科学省自身としての対応としましては,制度の柔軟な運用に努めていくということになるわけですけれども,例えばこれまでにも,次のページ以降に抜粋版を記載しておりますが,学事日程や遠隔授業の在り方に関しては累次の通知などを発出させていただいて,またさらには環境整備のための補正予算,これは14-9ページにポンチ絵を載せておりますけれども,こういったものも確保したところでございますけれども,今後とも状況を踏まえて,更に対応が必要な場合,特にロースクール特有の課題に即した対応が必要な場合には,今後ともできる限り柔軟に対応していきたいということが1つでございます。
もう一つは,認証評価機関の方にお願いしなければならないことがあると思っております。1つは,本年度,認証評価を受審される大学もございますけれども,この評価スケジュールを弾力化することですとか,あるいは今年の取り組みについて追って認証評価で扱う場合に,例えばここに掲げておりますような授業の内容や授業の方法といった事柄につきまして,今ある評価基準を形式的に当てはめてしまいますと,場合によっては不適合という可能性が出てまいりますから,今のやむを得ない事情であるとか,あるいは大学としての判断などを総合的に考慮していただきまして柔軟な対応を取っていただくことが適切であることを文科省からもしっかりお伝えしていくことが重要だと思っておりまして,実は今月の8日付で,資料では14-8ページになりますけれども,高等教育企画課から事務連絡という形で認証評価機関への要請を既に行っております。ですので,これを踏まえて具体的にどうするかというところは評価機関ともまた連携を取っていかなければなりませんが,ロースクール特有の課題も含めて,当室としても適宜対応してまいりたいと思っているところでございます。
私からの説明は,簡単ですけれども,以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。この点について,大貫委員からもし補足等がありましたら,お願いしたいと思いますが。

【大貫委員】大貫でございます。それでは,声は届いておりますでしょうか。ありがとうございます。
アンケート結果については,西川室長の御紹介に付け加えることはいたしません。コンパクトに御報告いただいたと思います。
それから,文科省が既に新型コロナウイルス感染症拡大の事態に対応して,様々な柔軟な対応をしてくださっているということも承知しております。この点はお礼申し上げます。
しかしながら,アンケートを見ますと,新型コロナウイルス感染症の拡大という事態において,各法科大学がこれまでどおりの質の高い教育を提供するのに苦労している姿が浮かび上がったと理解しております。申入れ書に書きましたように,文科省並びに各認証評価機関の皆さまにおかれましては,今年度及び将来の認証評価実施の在り方について,是非柔軟な対応を御検討くださいますよう重ねてお願い申し上げます。
他方で,法科大学院としても感染拡大を防止しつつも,可能な限り教育の質を確保するよう努力すべきだと考えております。このためには,これまで以上に法科大学院間でアイデアを出し合いながら法科大学院全体として努力することが必要だと考えております。
法科大学院協会といたしましては,今回のアンケートで明らかとなった個別の論点,幾つか非常に対応が困難であり喫緊の課題が必要とされる事項が浮かび上がっております。例えば,期末試験の実施,ロースクールの入学試験をどのように実施するかといったような問題等について,会員校の現状を把握し,それを踏まえて意見交換の機会を設けて認識を共有するなどの対策を採りたいと考えております。
現在,オンライン授業の実施に当たっての課題や臨床科目の実施の在り方,これが非常に困難を来していることは御想像のとおりだと思います。期末試験の実施や入学試験の実施の在り方等について課題や解決策について把握するために,会員校にアンケートをしております。このアンケートは15日,今日の締切りです。非常にショートノーティスでのちょっと延びる可能性はあるんですけれども,1週間で回答してくれという非常に無理なことを申し上げているんですが,一応今日締切りですが,ちょっと延びる可能性があります。
現在,中間的な集計結果を見ますと,言うまでもないことで,対面で授業を行えないこと等による問題点が具体的に明瞭に示されております。このアンケート集計結果を踏まえまして,更に関係諸機関と,この内容を共有しつつ,必要に応じて関係諸機関の方に申入れ等をさせていただきたく考えております。アンケートの集計結果は,この委員会でも共有させていただきたく考えております。
この機会ですので,もう1点,発言させていただきたいと思います。
現在,非常に異常な事態で,法科大学院は学生さんも,教員事務の方も,仕事,勉学をしているということだろうと思います。西川室長から御紹介いただきましたように,通常の教育業務ですら既に困難を来しているという事態だと思います。こうした状況に,学生も,教員も,事務職員も大変な仕事を抱えております。こうした状況で,当然,大変意味あることだと思っておりますけれども,文科省が実施している加算プログラムについてどうなんだろうかと考えざるを得ません。これは前も委員会で申し上げたんで,非常に負担が多いんです。非常に大学にとって負担が重いということが各方面から言われております。この加算プログラムにつきまして,極端に言えば,今年度は中止する,あるいは中止せずとも,実施するとしても大幅な事務負担の軽減などを考えていただけないかと考えております。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。
それでは,意見交換に入りたいと思いますけれども,御発言を希望される委員は,Zoomの「手を挙げる」の機能をお使いいただいて挙手してください。
また,御発言に当たりましては,インターネットで流しておりますので,聞き取りやすいようにはっきりと御発言いただくこと,御発言の都度お名前をおっしゃっていただくこと,発言時以外はマイクをミュートにしていただくこと,それから資料を参照する際には,資料番号,ページ番号,ページ内の該当箇所等を分かりやすくお示しいただくこと等の御配慮をいただけると有り難いと存じます。
また,文科省としての対応案についての御意見の他,各法科大学院において実際対応される中で難しいと感じていらっしゃる点や工夫をされている点など,適宜御紹介をいただければと思います。
それでは,どなたからでも構いませんので,御発言をいただければと思います。
久保野委員,お願いします。
マイクがミュートになっていると思いますが。まだミュートになっている。

【久保野委員】よろしいでしょうか。聞こえますでしょうか。失礼しました。ありがとうございます。東北大学法科大学院の久保野でございます。
アンケートに答えました法科大学院の一つとしまして現場で感じていること,そのような御発言も今お許しいただけましたので,意見させていただきたいと思います。
2点ございます。
まず,アンケートに答える中でも感じたところですけれども,物理的・技術的にできることはもちろん何とかやろうとしているわけでございますけれども,それをすることが必ずしも実質的な意味で学修機会の確保になるのか,あるいは感染の危険ということとうまく折り合いがつくのかといったことについて,かなり悩みを抱えて対応しております。
例えばオンライン授業で厳密に出席を取ろうとするということですとか,あるいは筆記試験を予定どおりの時期に,なるべく対面で行おうとすることですとか,そのようなことが学生の不利益を招きかねないといったような悩みです。後者につきましては,先ほど緊急事態宣言の解除への言及ありましたけれども,現在,仙台にある法科大学院から見ましたときに,無理して仙台に来る必要はないということを学生に周知した上で授業をやっておりますところ,筆記試験を対面で行うとなりますと移動を招く,授業を受けながら引っ越しの準備をしてもらう必要が出てくるですとか,そのようなことを手探りしながら必死に着地点を見いだしてやっているというようなことでございます。
それで,既に認証評価につきまして,文部科学省からも現状を踏まえた柔軟な対応ということを明確に打ち出していただきまして大変有り難く思っているところですけれども,認証機関におかれまして,学生の学修を本当に適切に確保するべく,どうか各大学の実情,手探りで行っている工夫の結果,これらを最大限尊重するようにしていただくことを改めてお願いしたいと思いますし,ちょっと立ち入り過ぎかもしれませんが,できましたらQ&Aなどで具体的に示していただけますと,各法科大学として,これでよいのだというふうに安心してといいますか,先ほど申しましたような悩みへの対応というのを必死にやっていけばよろしいのだと思って対応していけるように思っておりまして,是非お願いしたいと思います。改めてお願いいたします。
もう1点が,直接話題になっていることと少しずれまして,学部の法曹コースについてなんですけれども,よろしいでしょうか。

【山本座長】どうぞ,お願いします。

【久保野委員】と申しますのは,法曹コースの本格稼働の1年目がちょうど今に当たっておりまして,とりわけ定期試験の在り方について喫緊の課題になっているということを感じております。全国の法学部の事情が多様ですし,また言うまでもなく学生の数が違うということがありまして,より大きな困難が予想されております。予想されているといいますか,クオーター制を取っている大学において,現時点で学生にどう試験をやるかを示さなくてはならないということであります。大学もいろいろな工夫を現にしているということは承知しておりまして,ちょっと具体的になりますが,実は昨日,本法科大学院連携協議会を初めて行いまして,連携先の学部が本当に苦労しつつ非常に工夫されているというところを感じたところです。しかし,筆記試験を集まってやることは今の時点ではできないという中で工夫を重ねているということであります。
これからも各学部において工夫をしていくということは,もちろんやっていかなくてはいけないと思っておりますけれども,この点につきましても併せて大学側の事情を踏まえつつ,適切な場で,ここなのかということはありますけれども,いずれにしても適切な場で議論がされて対策を見いだしていくことができればと思っておりますので,あえてここで触れさせていただきました。以上です。ありがとうございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,続いて清原委員,お願いいたします。

【清原委員】皆さま,こんにちは,清原です。聞こえますでしょうか。ありがとうございます。
早速に資料1-1ですが,法科大学院協会におかれましては,4月の時点でアンケートをしていただいてありがとうございます。しかも,多くの大学院でオンライン授業を既に4月段階で実施されていることに敬意を表します。また,資料1-2では,文部科学省におかれても迅速に柔軟な対応を表明していただいております。
そこで,2つお分かりになればお答えいただきたく質問させていただきます。
1点目は,大貫委員に伺いたいんですが,先ほど久保野委員もおっしゃいましたように,今年度は「法曹養成連携協定」を交わした法科大学院と法学部においての初年度になるわけですが,その取り組みの中の困難や実施状況について5月に行われるアンケートでも把握され,その実態を問題提起される御予定でしょうか。大変重要な課題であると思いまして,是非その検討の方向性を教えていただければということが1点です。
2点目は,事務局,あるいは委員の方でお分かりになる方がいらしたら教えていただきたいことですが,最高裁判所の司法研修所においても,今年の司法修習については恐らく宿泊型ではなく行っているのではないかなと拝察しておりまして,司法修習においてもオンラインの取り組みがなされているとすれば,法科大学院の取り組み,法学部の取り組みと,司法研修所の取り組みと,この際,よい司法の専門家を養成するという意味では同じ目的でございますので,手法や評価,あるいは実習等との課題において連携できればと思いまして,その辺の実情や方向性についてお分かりの方がいらしたら,この場で共有できたらいいなと思って質問させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,2点御質問があったかと思いますが,第1点の法曹コース連携との関係でアンケートについてということですが,大貫委員,何かございますか。

【大貫委員】清原委員,御質問ありがとうございます。久保野委員からも法曹コースの質保証のやり方について,新型コロナウイルス感染症拡大の状況下で非常に困難な状況にあるいとうことをリマインドしていただきました。我々もそういう問題があるということは承知しておりますが,現在,反省しておるんですが,法科大学院にアンケートはしましたが,学部,法曹コースに向けては直接アンケートとか意見,状況を聞くとかということはまだやっておりませんので,正に久保野委員,清原委員から御指摘いただきましたので,学部の状況について把握して,問題状況をきちっと整理したいと思っております。
法科大学院協会は,法曹コースを設置した大学を準会員として,今,迎え入れておりますので,そういうことで,まだ全部は入っていないんですけれども,何らかの形でコンタクトを取って現状を把握することから始めたいと思っております。御指摘ありがとうございます。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それから,第2点,司法修習との関係ですので,これは染谷委員から御説明をもしいただければと思いますが。
染谷委員,聞こえて……。

【染谷委員】司法研修所の染谷です。よろしいでしょうか。聞こえてますでしょうか。ありがとうございます。
司法修習の関係ですけれども,現在,今期年の修習は全国各地で実務を勉強しているところでございます。今のところ,緊急事態宣言が出た関係で,課題を与えて自宅での学修をやってもらっています。司法研修所に集まっての集合修習は,今年の夏,8月中旬以降ということで予定されておりますが,どういった方法で実践するかということについては,今後の状況を見ながら検討するということになります。
今回おまとめいただきました法科大学院協会のアンケートを見ましても,オンライン授業のいろいろな課題ですとか,あるいは今日もお話が出ていましたが,試験をどうやるかというようなお話も出ておりますので,そういった辺りも参考にさせていただいて適切に検討していきたいと思っております。現在のところは以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,他に御発言はありますでしょうか。
中川委員,お願いします。

【中川委員】神戸大学の中川でございます。私も一教員として今回のオンライン授業化に参加いたしまして,いろんな同僚が努力しているところを見まして,この状況で今度,来年にかけてかもしれませんが,認証評価に対応する人員を割く余裕はないと思います。かつ現在の認証評価の基準は,当然平常時を想定しておりまして,オンラインというものはほとんど頭に入っていないんです。
そういうことを勘案しまして,文科省が資料の1-2でおっしゃっておられる柔軟化がどこまで入るかということなんですけれども,例えば14-1の一番下の方にある柔軟な対応を検討すべき事項の例として,授業の内容,授業の方法,授業計画に沿った実施というところです。これについては,代表的な科目についてどんなことをやったと。それについて,対面ではないけれども,なかなか悪くないんじゃないのという評価とか,やっぱりこういうところに課題が残るなという基準は,今の認証評価基準ではなくて,御自身が教育を今までやられてきた経験でオンラインでも結構うまくいくな,私自身はそういう経験がありまして,オンラインの方がいいんじゃないかと思う部分もありました。出席が取れないとか,そういうことではなくて,学生にとってこれで十分なのか,それともまだオンラインではどうしてもここがリプレイスできないところがあるのかというところを自己評価してもらうと。教員各自の教育経験のみに照らして評価してもらって,それを出せばいいというふうにしていただくところまで柔軟化・弾力化をしてよいというふうに文科省から評価機関に対して言っていただくことがまず重要かなと思うんです。
評価機関の方も,本当は柔軟にしたくても,自分たちがそこまで柔軟にやっていいのかというところが心配で,むしろ評価機関の方で自分の首を絞めているところがあると思います。今回は実質的には,そういう意味では評価対象としてしないんですけれども,ただ,しないと言っちゃうと何もしないのかということになりますので,むしろ教育現場から評価機関に対して工夫したことを教えてもらうと。科目によっても,同じ必修科目でもやり方が違ってよいと思います。我々のところは一学年が二クラスあるんですが,必修科目によっても一クラス開講にする科目と,それから二クラス科目を維持している科目があります。これは各教員に任せています。どっちがいいかを見ようとしているわけなんです,教育に差があるのかどうかということを見極めたい。
そういうことを含めて,正に危機をチャンスとして,オンライン化でどこまで対面授業の代替が可能かということを調べるという意味で認証評価をやるというふうにしてはどうかと思います。また,それをすると,受ける方も,やったことを出すだけですので,あとは教育者としての感想を述べてくれればいいだけですから簡単だろうと。逆に認証評価の方は,今後の知恵,ノウハウが集められるということで,両方にとっていいんじゃないかと思った次第です。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。他に御発言はございますでしょうか。おおむねよろしいでしょうか。
この点は非常に流動的な状況ですので,引き続き次回以降も御議論を頂きたいと考えております。また,法科大学院協会を中心として,大学間においても情報交換をしながら,この難局を乗り切っていくということが必要なことだろうと思いますので,事務局においては,本日の御議論も参考にしていただきながら,先ほど来出ている認証評価の在り方,認証評価機関とも連携しつつ,必要な対応を適宜,弾力的に取っていただければと思います。
中川委員から最後にありましたとおり,ピンチをチャンスに変えるといいますか,この後,未修者教育の議論でもICTの活用ということが出てきますし,私自身も個人的に授業をやった感想では,結構できるんじゃないかというような,私も初めての経験でしたが,そういう印象を持ったりもしました。そういういろんな経験を積み重ねながら,今後の議論に生かしていただければと思います。
それでは,恐縮ですが,議題がかなり多いので先を急がせていただきますが,次の議題,これは議事の2の認証評価の充実の方向性と議事の3の定量的数値目標(KPI)の設定,これを併せて御議論をいただければと思います。
前回の御議論を踏まえて,認証評価につきましては今回の制度改正を踏まえた認証評価の充実の方向性の案,KPIについては具体的な数値を含めた案を事務局の方で御準備いただきましたので,まずこの点について説明をお願いいたします。

【西川専門職大学院室長】事務局の西川でございます。
それでは,次にお手元の資料の2と3を順次御説明させていただきたいと思います。通しページでは15ページからになります。
まず,資料の2の認証評価についてでございますけれども,こちらはこの資料の「1,背景」というところに記載をしておりますとおり,昨年の制度改正を踏まえまして,今後,各認証評価機関においては評価基準や方法が設置基準の改正等を踏まえて見直されるタイミングになっているわけですが,このタイミングを捉えまして,この際,併せて考慮されるべき論点について前回から御議論を頂いているところでございます。
そして,本日は前回までの御議論を事務局において文章化させていただきましたので,こちらを御確認いただきまして,本委員会としておまとめを頂きたいと考えております。
なお,この資料の内容につきましては,事前に先生方にお目通しいただいていることを前提としまして,恐縮ですが,ポイントのみかいつまんでここでは御説明をさせていただきたいと思います。
まず,背景は今申したとおりですので,次のページの「2.基本的な方向性」に参ります。ここでは,認証評価一般として踏まえるべき,まず内部質保証の重要性といったような事柄を記載した上で,2段落目におきまして現在の認証評価の課題として,評価に伴う負担が依然として大きいことでありますとか,適合認定が必ずしも質の保証につながっていない場合もあるといったような御指摘を掲げまして,それを受けて評価の合理化と,それから実質化とが必要であるということを書いてございます。
これを踏まえて「3.具体的な方向性」といたしましては,前回の御意見を踏まえながら3つの柱で整理をさせていただきました。
1つが(1)形式的な評価の効率化でございます。こちらは評価の負担を軽減する観点でございまして,定量的・客観的に適合性が確認できる事項につきまして,例えば評価の様式を見直し,既存の公表資料や機関別評価の情報などを活用して効率化を図ることが考えられるとしております。
一方で,次のページの「(2)教育内容・方法等に関する実質的かつ重点的な評価ということで, 1つ目の丸で箇条書をしておりますような,いわば教育の成果そのものに関する事項,こういった事柄については,むしろより実質的かつ重点的に評価をされるべきということを記載しております。そして,これらを評価する上では,評価の方法ですけれども,各法科大学院による自己分析をベースとして,PDCAサイクルをそれぞれ自律的に機能させていく必要があるということと,加えましてその分析に使っていただく客観的データとしては,GPAや司法試験結果はもちろんのこと,さらには共通到達度確認試験の成績ですとか進級判定の結果等があるということも書いております。
また,更に評価機関側としましては,こういった各大学の自己分析が適切であるかどうかを見るという観点から,それが妥当であるかを見るという意味の一定のデータ活用の知見に基づいて評価が行われるべきということを書いております。
さらに,少し飛びますが,18ページの「(3)評価対象校の重点化」というところでございます。まず,今までに申し上げた(1)と(2)は,全ての対象校に共通した手法の話ですけれども,この(3)は,全ての法科大学院に等しく同様の評価手法を用いるよりも,一定の基準を基に,いわゆるスクリーニングを行いまして,課題が多いと推定されるような法科大学院を抽出して重点的に評価することも,資源に限りがある中では有効ではないかという御意見が前回ございましたので,それを記載しております。
具体的には2ポツのところですけれども,過去の評価結果や客観的な指標によって一定の教育の質が担保されていると判断できる法科大学院につきましては,確認事項を精査して求める資料を減らし,あるいは実地調査を短縮するといったような工夫ができるのではないか。一方で課題の多いと思われる法科大学院につきましては,(2)で掲げた教育の成果に関する事項を中心に,より丁寧な評価を行うことが適当ではないかとしております。例えば,課題の原因分析を掘り下げることを促し,あるいは評価後も改善状況のフォローアップを行うなどの,自律的に改善サイクルを回せるような,そのための支援をしていくことが望ましいのではないか。
そして,18ページ一番下の4ポツのところですけれども,スクリーニングを行う上で用いる客観的指標としては,これは評価機関ごとに定めていただくべきものではありますけれども,例えば司法試験合格率といったような,この後御説明する政府のKPIなども参照していただくことが考えられるのではないかと記載しております。
具体的な方向性としては,以上3つの柱に整理をいたしました。
そして,最後に(4)個別の留意事項と,(5)その他の事項について記載のとおりでございますけれども,(4)では,2ポツで,教育課程編成については各大学の創意工夫を最大限に尊重するべきこと。それから,次の3ポツでは,論述能力の指導を積極的に評価するべきと。そして,更に4ポツでは,教育方法の評価について,何を教えたかということよりも,学生が何を学んで何を身につけたのかという観点から各大学の自己分析を基に効率的に評価するべきことという書き方をさせていただいております。
以上,本文書につきましては,本委員会からの提言としておまとめを頂きまして,新しい評価基準の下に評価がスタートするのが令和4年度からということになっておりますので,この令和4年度からの評価に反映をさせていきたいと考えておりますところ,本日は忌憚(きたん)なき御意見を頂きたいと思います。以上が資料の2でございます。 続いて,資料の3を説明させていただきます。資料の3,KPIということで関連テーマとして御説明をいたしたいと思いますが,こちらも前回の御議論の続きでございますけれども,今般の制度改正を受けまして政府としての定量的な数値目標,いわゆるKPI「Key Performance Indicator」につきまして,これはあくまで政府が定めるべきものでありますけれども,定めるに当たりまして本委員会からも御助言を賜りたいという趣旨でございます。前回は項目案のみをお示ししていたところですが,御議論を踏まえまして具体的な数値の案を新たに本日お示ししております。
なお,目標年度としましては,今年の法曹コース1期生が最短で修了した翌年に当たります令和6年度と,それからその5年後に当たります令和11年度というふうに共通で置いております。
まずは,大項目1つ目は司法試験合格率でございます。こちらに3種類掲げてございまして,1つ目は累積合格率です。これは以前から7割という目標が存在しておりますところ,直近の実績では,御覧いただきますとおり64.8%と,わずかに及ばないということを踏まえまして,それを目標として継続するとともに,将来的には更に上を目指すという意味でプラス5%としております。
以下,基本的な数値の考え方は同じでございまして,現状をベースに少しずつ上を目指していく,いわゆるストレッチ目標が適当だという御意見も前回頂いておりますので,そういうことを踏まえて設定させていただきました。
累積合格率につきましては,更に前回御意見を踏まえて,未修者の目標も置くことを考えておりまして,こちら直近の実績が49.5%であるところ,まずは大台の50%以上をキープし,さらにはそれを少しずつ高めていくということを目指してはどうかと考えております。
次のページ(2)修了後1年目合格率ですけれども,こちらは前回の御意見を踏まえまして,在学中受験を含めたもの,つまり人によっては2回目の受験までとしてはどうかと思っております。これも直近の実績が47%,これを勘案しましてまずは50%,さらには55%以上としてはどうかと思っております。
そして,3つ目が法曹コース修了者の修了後1年目合格率でございます。これは直近の実績が57.9%と一番下のところですけれども,約60%弱ということでございますから,これもまずは65%という目標を置き,最終的には7割というところを目指すことが適当ではないか。特に今回の制度改正で時間的・経済的負担の少ないルートでの合格予見性を高め,志願者の増につなげていくということを掲げておりましたので,その意味でこれが一義的には重要な目標となるのではないかと考えているところです。
そして,最後に入学者数でございます。これは,今回の制度改革の中で入学定員総数の上限を2,253人としたことを踏まえれば,最終目標としては,これに近い数値となるべきでありますけれども,年々実情を踏まえて,それに近づけていくという形の目標を置いてはどうかと思っています。
なお,冒頭に戻り,21ページですけれども,今御説明したKPIは一義的には政府が説明責任を負うものですけれども,同時に前回,清原先生から御指摘いただきましたように,この目標は社会全体に向けての改革のメッセージであるという点も重要だと考えております。また前回,教育の成果は決して数字だけで評価できるものではないという御指摘も頂いたところでございまして,これも当然考慮すべきだと思っております。それも踏まえまして,今後,各法科大学院におきましては,それぞれの実情に応じた目標を定めて不断の改善に努めていただくべきことはもちろんでありますし,また同時に社会全体としましても法科大学院改革を支援していただけるように文科省としても意識して積極的な情報発信などに努めてまいりたいと考えているところでございます。
私からは以上でございます。

【山本座長】:ありがとうございました。それでは,質疑,意見交換に入りたいと思いますが,本日の議論の目的としては,西川さんからもお話がありましたように,(2)の認証評価の充実の方向性については,当委員会による決定という形で本日取りまとめることを目標としております。また,KPIについては文部科学省が定めるものでありますけれども,それについて参考というか,助言というか,そういうことを当委員会としてできればということを予定しているということであります。
それでは,御発言を御希望の委員は,(2),(3),どちらでも結構ですので,挙手をお願いしたいと思います。
それでは,大貫委員からお願いします。

【大貫委員】度々失礼いたします。声は入っていますでしょうか。
私は2つのテーマのうち,認証評価の方について意見を申し上げます。
まず,事務局が整理された案は,前回の我々の意見交換を踏まえてまとめられているように思います。全体として大学院側の作業量が軽減されているという点を評価したいと思います。その上で3点申し上げたいと思います。
まず,認証評価間の関係ですけれども,法科大学院の認証評価というのは,あくまでも分野別評価で機関別評価ではございませんので,機関別評価との関係を整理して,まず重複をなくすべきだと思っております。これが第1点でございます。
第2点です。まず,西川室長の御説明でも少し言及されていましたけれども,これまでの認証評価機関が行った受審校へのアンケートというのを見ますと,8割弱の大学院が「受審して非常に満足」,あるいは「満足」と答えています。ところが他方で,受審準備の負担感の項目という質問がありまして,それを見ますと約8割5分の大学院が「非常に負担であった」,あるいは「負担だった」と答えています。今回テーマとなっている認証評価の効率化・重点化は,機能していない認証評価を機能させようということではなくて,コスパを上げることを目指しているんだろうと思っています。これは,まずは認証評価機関の方にリップサービスをするわけではなくて,現に私はそうだと思っています。
恐らく認証評価機関の事務局の方からしますと,現状ではどの評価項目も必須であるというお考えだろうと思います,多分。しかし,無駄ではないということと必要であるかどうかというのは,やっぱり分けて考えるべきだろうと思います。認証評価は,あくまでも法科大学院の教育の質を上げることが目的のはずであります。その手段として認証評価は非常に有効で重要な手段だと思います。しかし,手段に時間を取られていないのかということを非常に危惧いたします。やや大げさに言いますと,本来の目的に割く時間が必要以上に認証評価に割かれているという現実があるのではないかと。非常にきつい言い方ですけれども,そういうふうに考えています。今回の事務局案にあるような思い切った合理化・効率化を図るべきだと重ねて申し上げます。
3点目です。資料2の通しページでいうと,18ページのところでございます。3ポツの(3)のところに,次のようにあります。過去の認証評価結果や客観的指標に基づく評価対象校の重点化とあります。主にここに関わることを申し上げます。
過去の評価結果を重視するとございますが,これは私の解釈では,過去の認証評価において法科大学院が十分な内部質保証の仕組みを持ち,機能していると評価されたということを指すんだろうと思っております。そのような評価を受けた仕組みが現在もあるということを評価して重点化するものだと理解しております。一般に客観的な指標というと司法試験ばかりが出ますが,決してそうではないということだと思います。司法試験の合格率だけで客観的指標を取るわけではないということが大事だろうと思います。
繰り返しになりますが,適切な評価のためには,現在,事前に準備を依頼している資料は全て必須というお考えを認証評価団体は持っていらっしゃるのかもしれませんけれども,資料が必要かどうかは認証評価において確認する必要性があるかどうかで決めるべきだろうと思います。過去の評価結果に鑑み,あるいは一定の客観的指標をクリアする法科大学院については確認の必要性がそれほど高くないということで,事前準備資料を思い切って減らすということをやっていただきたいと思っております。前回と重なる内容ですが,以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。続いて土井委員,お願いします。

【土井委員】土井でございます。私も認証評価について申し上げたいと思います。資料17ページの(2)に加えて,18ページの(3)について進めていただくこと,特に認証評価が積極的な方向で展開するように進めていただきたいと考えております。
今回示されているような考え方が認証評価全般に当てはまるとまで申し上げるつもりはございません。ただ,次に述べるような理由で,専門職大学院,とりわけ司法試験など国家試験と密接に関連して適格認定制度が重要な意義を有する専門職の養成課程の認証評価を充実させるためには有益な方策ではないかと考えております。
第1に,法科大学院は法曹養成のための教育機関になります。法科大学院創設時は,法科大学院の定員と司法試験合格者数の不均衡の問題などがありましたけれども,先般実現した制度改革によって,法科大学院が法曹有資格者を養成するための教育機関であるということは明確にされたと理解しております。したがって,学生の皆さんに司法試験に合格するための基本的な能力を修得してもらうことが法科大学院の重要な目標であって,その目標の実現を指標として考慮し,評価全体を考えるということは,法科大学院に関する限り自然な流れなんだろうと思います。ただしかし,第2に法科大学院の目標は司法試験の合格だけではございません。より優れたよりよい法曹を育てること,あるいは法曹有資格者が多様な領域で活躍できる能力を育成することも,また重要なんだろうと思います。
したがって,認証評価には,各法科大学院が必要最小限度の教育基準を満たしているかを評価する面と,より優れた取り組みを引き出して評価していく2つの役割があると思います。ただ,この両者を混然一体として行うことに無理があったと思います。法曹有資格者の養成という段階で問題を抱えている法科大学院については,必要最小限度の教育水準を満たすように評価機関が重点的に評価し,改善をしていくということが必要だと思います。しかし,客観的指標に基づいて期待される数の法曹有資格者を輩出している法科大学院については,その部分の評価にエフォートを割くというのは必ずしも効率的ではなく,むしろより優れた取り組みに積極的に誘導していくのが適当だと思います。
その意味で,今回の議論は,客観的指標を満たした法科大学院は認証評価はどうでもよいというわけではなく,認証評価の段階を整理して,それぞれの段階にふさわしい認証評価を実施していくことができるという,そういう積極的な方向で理解すべきものなんだろうと思います。したがって,ここでのKPIの議論も,このような段階を整理するスクリーニングテストの基準に関するものであって,適格認定自体を数値基準だけで行うものではないということは確認しておくべきだろうと思います。
それから第3に,こういう取り組みを行うためには,各法科大学院の内部質保証の仕組みを機能させる必要がありますし,その点についての評価が重要であると私も考えます。ただ,内部質保証の仕組みだけを取り出して評価を行いますと,そのための委員会を設置しているのか,関連する委員会との関係はどうなっているんだ,委員会の開催の頻度はどの程度で,それを確認できるための議事録が作成されているかという形で,また認証評価が進んで事務量が増えていくという恐れもあるわけです。それを避けるためにも,何を実現するための内部質保証なのかということを明確にして,それと関連付けながら整理をしていただく必要があるんだろうと思います。私からは以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,続きまして酒井委員,お願いします。

【酒井委員】委員の酒井です。私からも認証評価に関して,特に資料2の18ページ(3)の評価対象校の重点化の指標に関して意見を述べさせていただきたいと思います。
先ほど大貫委員から御指摘いただいた点とも重複すると思うんですけれども,客観的指標として司法試験の合格率というものが独り歩きをしてしまうことに対する懸念が強くございます。観点は2点ありますが,司法試験の合格率を上げることで認証評価の負担が軽くなるというような直結する図式が余りにも強くできてしまいますと,合格の観点から法律基本科目を重視することが非常に効率的だということは明らかなところかなと思いますので,一方で実務科目ですとか展開・先端科目,その辺りのウエイトが必然的に落ちてきてしまうようなことが起きるんではないかということを心配するところです。当然,土井委員もおっしゃったように,法科大学院を卒業した者は皆,法曹を多くが目指すということですので,合格というのが一つの大きな通過点であることを否定する趣旨は全くございませんし,そこを確実に確保するということは必要なことだと私も思っております。ただ,その先,実務家として活躍できる有用な人材を育てるという観点からは,実務科目の充実や展開・先端科目の設置,これはロースクールの使命と言えることだと思いますので,そこに悪影響を及ぼすような基準が余り前面に出てしまうようなことは避けていただきたいと思うところです。
また,合格率という意味では,率直に申し上げますと,未修者教育の改善はまだまだこれからと,やっと本格的に議論が始まるところでございますので,当面,率だけ見ますと,未修者の存在そのものが,率直に言ってしまいますと,各校の足かせになってくることが懸念をされます。そのときに各校で未修者に対する教育を消極的に抑えていくというような,例えば定員を減らすですとか,そういうような方向にこの基準が影響してしまいますと,未修者コースに対しても非常に大きなダメージになると懸念をいたします。無論資料の(4)の方で未修者教育の充実などの目的で創意工夫されているロースクールに関しては,これを尊重するというような留意事項が書かれているところではございますが,評価対象の重点化というのは各ロースクールにおかれては非常に関心の深いところだと思いますので,そこの客観的な指標が未修者コースにマイナスになるような設定をされることを避けていただきたいと思います。ただ,さはさりながら,重点化をするに当たっては指標もせざるを得ないというところはあると思いますので,例えば合格率1本というようなメッセージ発信になるのではなく,未修者教育ですとか,実務教育ですとか,そういった部分に関しても十分に充実化をしているロースクールに関して,ある種重点化の対象から外していくようなことが分かるような基準が設定されるメッセージを是非発信されるよう,慎重に検討いただきたいと思うところです。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは高橋委員,お願いいたします。

【高橋委員】高橋でございます。私からは,KPIについて御質問をさせていただきたいと思います。
大変基本的な事項で恐縮なんですけれども,この21ページに上げられているKPIですと,法科大学院全体の司法試験合格率について目標値を定めるということになっております。法科大学院全体についての合格率というのは,法科大学院出身の合格者÷法科大学院出身の受験者数という数値と理解しておりますけれども,分母の方につきましては入学者を増やすということも併せて目標に掲げられているという状態ですので,そうしますと分子が増える見込みがあるのかということになるのかと思うのですが,この目標値をどういう対応で実現するということが想定されているのか,教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,これは事務局の方からお答えを頂くことになりますか。

【西川専門職大学院室長】事務局の西川でございます。累積合格率につきましては,かねてより70%以上という目標がございまして,これは,今の前提では1,500人程度の合格者数ということを置いた場合に,それが70%以上に当たるということになりますと,その逆算で2,300人程度という法科大学院の定員規模が適切であるという御議論を経まして,そういった目標が立てられていると理解をしてきたところでございまして,その前提は基本的に変わっていないところでありますけれども,ただ実際には修了年度も異なる方々が様々に入り組んでの合格者数ですから,そういう単純な計算には実際にはならないわけでございますので,そういう意味ではそれ以上のお答えがなかなか難しいところではありますけれども。
高橋先生の問題意識としましては,そこは入学者数が増えれば,それで有為な学生が増えれば,それに応じて合格者数が増えてしかるべきということもおありになるのかと受け止めましたけれども,それは当然,法務省からもそういうふうな御説明が従来されていると理解をしております。ですので,今後,もちろん有為な志願者が増えて,それによって,入学者数ありきというより,根本的には志願者が増えていただくということが非常に重要でございますから,そこの目標に向かっての適切な目標となるように,きちんと運用していくことが必要だと考えているところでございます。

【山本座長】高橋さん,よろしいですか。

【高橋委員】ちょっとよろしいでしょうか。

【山本座長】どうぞ。

【高橋委員】基本的に,分子はなかなか動く数値ではないだろうと認識しておりますので,目標値を達成するために分母を減らすという話になるのではないかという懸念がありまして,これはまた,もう一つの入学者を増やしていくという話とも,齟齬が合っていないのではないかと思いましたので,実現できる目標値にしていただければと思っております。ありがとうございます。

【山本座長】ありがとうございました。2,200人,75%を掛けると単純計算では1,650人になって,予備試験がそこにプラスアルファであるということ,ごくごく単純に計算すると,そういうことになるということかと思いますけれども,その辺りのあれも当然踏まえていらっしゃるんだろうとは思いますけれども,引き続きお考えをいただければということだと思います。
それでは,続いて中川委員,お願いします。

【中川委員】中川です。KPIの件と,それから認証評価と,それぞれ意見を申し上げたいと思います。
今,高橋委員から御指摘のあったとおり,資料3,21ページ以下につきましては,計算すると合わないというところをどう説明するかというか,そこら辺は何かペーパーとして,もちろんその不整合は分かっているんだけれども,こういうことを考えているんだという説明が趣旨のところの末尾あたりに要るかなと思うのが1点と,それから2の項目22ページの(3)ですが,私,ここの数字は高過ぎるだろうなという気は個人的にはするんですけれども,その理由が参考で書かれている修了者の母数が非常に少ないということです。現時点での学部3年での進学者というのは,大学院によると思いますけれども,神戸大学の場合は大体今でも年に2人,3人,そんなレベルなんです。なので,彼らの合格率というのは,1人がこければ全体が下がるという非常に大きな差が出ますので,余り参考値にならないと思うんです。かといって,そうは言っても文科省としては何も書かないわけにはいかないだろうというお気持ちもよく分かりますので,せめて(3)の参考のところには,母数が何人なのかと,学部3年次から法科大学院に入学した者というのは全国で何人ぐらいかを示してはどうか。それを母数とした47%というのは,64%というのは。そういう意味では,やや参考値としては危ないといいますか,フラジールな感じの参考値なんですよということは資料の上でも分かるようにしておいていただいた方がいいのかなと。それがないまま,この資料を見ると,外部の方,特に議員の方とか,あるいはそれ以外の方は,以前はよかったのに,法曹コースを入れたら急に質が悪くなったという議論をされてしまうと思うんです。統計の母数数が違いますので,そこが分かるような形で,とりわけこの22ページの(3)は資料として作成していただけないかという意見でございます。
今度は資料2の法科大学院の認証評価でございますが,これは18ページの(3)のところ,皆さまの御指摘のあったところでございます。先ほど土井委員からあった御意見に私は非常に賛成でございまして,ここに書かれている抽出化して,それから真ん中3番目の白丸の真ん中辺りですが,課題の原因について自己分析を促し,必要に応じて改善を検討する契機となる,そのような認証評価にすると。これは最小限度ができていない法科大学院に対する認証評価の仕方であると切り分けをし,他方で必要最小限度はできていると,より上を目指すという法科大学院については,そこを重点的に評価すると。こういう2段階といいますか, 2トラックに分ける理解というのが非常に適切ではないかと私も思います。
その上で,酒井委員がおっしゃった未修者教育です。未修者教育は,必要最小限の評価トラックか,より上を目指すトラックのどちらかに入れるという整理でもいいと思いますが,場合によってはもう一個別の,未修者教育だけはどの法科大学院も常に見るというのもあるかもしれません。ここは私も今,考え方は定まっていないんですが,未修者をちっちゃくして既修者だけで教育すれば必要最小限を満たすと考えて,そういう方向に駆られてしまっては未修者教育が十分できませんので,未修者教育だけは第3のトラックとして常にきちんと見るということもあるかもしれません。これは,まだ確たる考えではないんですが,土井委員及び高橋委員の御発言を聞きながら思ったことです。
認証評価についてあと2点,ちっちゃいことだけですけれども,18ページの末尾の「なお,客観的な指標としては」というところです。KPIを参照することも考えられると。おっしゃるとおりなんですが,ただKPIは,先ほど議論がありましたように,全国のものであり,かつ結構高い数値なんですよね。ここで必要最小限ができていない大学としてくくり出すものは,およそKPIとかけ離れていますので,書くまでもないのかなという気がいたしました。そんなKPIはぎりぎりで達していませんという大学は,ここで想定しているような,くくり出して特に重点的に見るという大学ではないと思いますので,この「なお」はなくてもいいのかなと感じたのが1点です。
もう1点は,更に小さなことですけれども,19ページの(4)の3番目の丸の2行目です。「論述能力を涵養(かんよう)するための添削・指導」とありますが,「添削・」は要らないんじゃないかと。こう書くと添削はしなきゃいけないといろんな人が考えてしまうと思いますので,もちろん添削も含みますけれども,しかし添削だけではありませんし,添削しないけれども,論述指導というのはありますので,単に,涵養(かんよう)するための指導等でいいんではないかと思いました。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは井上委員,お願いします。

【井上委員】認証評価結果の開示について20ページに記載がございますが,その点について1つ意見を述べさせていただきたいと思います。
19ページに,「教育方法については,学生が何を学び,何を身につけたのかという観点から評価すべき」という記載がございますが,この中身がきちっと,特に優れた取り組みや特色が開示されると,そのような情報は,卒業生を採用して活躍いただく企業にとっても非常に有意義であると考えられます。
従いまして,具体的に司法試験に何人合格しましたという情報だけでなく,どういったことを学んだのか。例えば実務科目,あるいは先端科目でも,このようなことを身につけましたという中身が積極的に評価され,開示されていくと,非常に有り難いと思います。そのような取り組みができるとよいと思い,意見させていただきました。

【山本座長】ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,取りまとめということでありますけれども,この資料2及び資料3というのは,今般,こういった制度改正の趣旨を確実に実施していくという観点から,一方では政府において法科大学院全体の状況について客観的な指標(KPI)を定め達成するということが求められ,他方では法科大学院においては,この客観的な指標等によって実質化・重点化された認証評価を受けるということが期待され,それが認められるべきであるという観点から整理されているものと認識しております。
本日の御議論で,特に客観的な指標という部分については司法試験の合格率だけではないということを踏まえて,今,いろんな御議論を頂いたかと思いますが,基本的にはこの2つの資料の考え方については,当委員会としては一定の共通認識を得ることができたのではないかと私としては認識しております。
そこで,当委員会としては,この資料2につきましては,本日頂いた御意見を踏まえて,事務局において必要な修正等を行っていただきまして,恐縮ですが,最終的な調整につきましては,座長である私にお任せをいただければと思います。
また,資料3につきましては文部科学省の方で定められるということでありますので,御意見を踏まえて文部科学省において最終的なKPIを定めていただくということになろうかと思いますが,そのような取りまとめでよろしゅうございましょうか。
ありがとうございます。どうも。リアルな場ではないので,皆さんのお顔を見てということではありませんが,拍手,その他,丸とか頂いておりますので,御異論はないということで理解をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
なお,最初にも西川さんの方からもありましたように,今回の議論は法曹養成制度改革の取り組みを法科大学院だけで担うということではなくて,政府,あるいは法曹関係者を始め社会全体でそれを支えていくということが前提になっていたと理解しておりますので,各委員それぞれのお立場で引き続き,この改革の完遂に向けて御協力をいただければということを私からもお願いしたいと思います。ありがとうございました。
それでは,続きまして議事の4の方,在学中受験の導入に伴うカリキュラム等の工夫例という問題について入っていきたいと思います。これについては,まずは法務省の方から司法試験の実施時期に関する報告を頂いた後,続けて事務局から御説明をお願いしたいと思います。
それでは,まず丸山委員からお願いできますか。

【丸山委員】法務省司法法制課長の丸山です。よろしくお願いいたします。
まず,在学中受験の導入の話なのですか,その先々のお話をさせていただく前に,委員の皆さんの御関心が高いと思われます今年の司法試験の実施時期に関する検討状況について,少し御説明を申し上げます。
4月8日付けで今年の司法試験の実施時期,実施延期が発表されたところでございますけれども,一昨日,5月13日には,法科大学院協会から司法試験委員会に対して,実施時期について,できる限り早期の決定・公表を求める申入れが提出されたところと承知しております。また,4月15日,日弁連からも同様の申入れ書を頂いております。その中で,法科大学院協会,日弁連共々,今年の実施に向けて最大限の協力を惜しまないと言及していただいておりまして,そのことにこの場を借りて改めてお礼申し上げます。
現在の状況ですが,司法試験委員会におきまして,関係各所の御協力の下,実施時期等についてできる限り速やかに公表できるように鋭意検討を進めているとのことでございます。受験生をはじめとする関係者の皆さまには多大なる御心配をお掛けしておりますが,公表までもう少々お待ちいただければと存じます。
それでは,本題に入らせていただきます。
在学中受験資格の導入に伴うカリキュラム等の工夫例についての検討に先立ちまして,令和5年以降の司法試験の実施時期等について御説明申し上げます。
お手元に配布されております資料4を御覧ください。
資料4の1枚目,通しページの23ページの第一の1でおまとめいただいておりますとおり,司法試験委員会において協議がなされました結果,在学中受験資格の導入後,すなわち令和5年以降の司法試験につきましては,毎年7月中旬から下旬までの間の時期に実施することが決定されました。議論の状況につきましては,23ページの注のところで司法試験委員会の議事録がアップされておりますURLも御紹介いただいておりますので,随時御覧いただければと思います。
なお幹事会におきましては,この問題に関連しまして,ギャップタームを解消するための司法修習の開始時期の見直しについても議論されました。その結果,司法修習の開始時期につきましては毎年3月20日頃とするのが相当であるということで幹事全員のコンセンサスが得られ,司法試験委員会におきましても特段異論は述べられなかったところです。
これを受けまして最高裁判所におきましては,令和5年以降司法試験の合格発表の後に実施する司法修習につきましては毎年3月20日前後に,最も早い年で3月19日になる可能性があるとお聞きしておりますけれども,司法修習生を採用し,司法修習を開始することとしたということでございます。こちらにつきましては,本年4月24日付で各法科大学院に宛てて通知を発出済みと伺っておりますので,お含みおきいただければと思います。
続きまして,資料4に戻りまして,23ページ,2,カリキュラム等工夫の必要性のところで言及していただいております在学中受験資格の取得に当たって修得が必要となる所定科目単位について,再度御説明をいたします。
この2の中ほどにお書きいただいておりますように,基本的には司法試験の試験科目に対応する科目の単位とする方向で考えております。そして,縦2,23ページの一番下,最終行の辺りにありますとおり,こちらは法科大学院課程の修了要件として定められた単位数と基本的に同一となるものと考えております。
少し補足して申し上げますと,法律基本科目については,基礎科目30単位以上及び応用科目18単位以上,選択科目については4単位以上とすることが考えられます。その上で,資料4の2枚目,通しページの24ページを御覧ください。この中で所定科目単位の修得時期についても触れていただいておりますが,こちらにありますとおり,司法試験の実施時期,それからこの要件が充足されているかという確認手続のために要する期間などを考慮しますと,法科大学院3年次の学生が在学中受験をするためには,2年次終了時までに全ての所定科目単位を修得する必要があるとなります。
なお,実務基礎科目の一部の単位を所定科目単位とするかどうかについては,その要否を含めて現在検討中でございます。法務省からは以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは事務局,引き続きお願いします。

【西川専門職大学院室長】続きまして,文科省の西川の方から説明を申し上げます。
ただ今,丸山委員から御説明を頂きましたとおり,令和5年以降の司法試験の実施時期が決定されたことを受けまして,今後,各法科大学院においては学事歴やカリキュラムの工夫や検討をしていただくことが必要となると考えられますけれども,これについても,先般,法科大学院協会からも文部科学省としてできる限りの支援をしてほしいという御要望も頂いておりますため,今般,具体的な工夫がどのようなものが考えられるのかについての選択肢の提示をさせていただくことといたしました。
資料の4を御覧いただきまして,今,第一の1と2の1ページのところは丸山委員から御説明いただいたとおりでございますけれども,その次の通しページ24ページの2段落目以降を御説明申し上げたいと思いますが,ここでは今後,在学中受験を希望する学生が2年次の修了時までに所定科目単位を修了して在学中に受験するための工夫として,大きく2つの観点が必要だということを書いております。
2段落目のところ,「カリキュラムは」という段落で書いておりますのは,2年次の終了時までに所定科目の単位を修得できるようにするための工夫,すなわちカリキュラム全体の科目配置の見直しや,あるいは希望する学生のみが所定科目を2年次までに修得できるような選択肢を与えるという方法も考えられると思っております。
もう一つ,次の段落,「また,現在の」という段落では,司法試験の当日に物理的に対応できるようにするための,3年次前期に当たると思いますが,そのカリキュラムの工夫も必要だということを書いています。ここでも全ての学生が7月中・下旬に例えば授業や試験を受けなくても済むように工夫するパターンの他に,希望する個別の学生さんのみに,そうした選択肢を与えるということもあろうかと思っております。その具体的な選択肢を書いておりますのが,次の25ページ以降でございます。
まず,第二のところに,さっき1点目と申し上げました2年次までに所定科目の単位を修得できるようにするための工夫例を書いております。1つは(1)履修指導上の工夫としまして,例えば学部の法曹コースの時点から積極的に法科大学院の科目を先取り履修することを促していくということもありますし,また次のページに参りますが,3年次配当に今なっている科目をそのままにしながら,希望する学生については2年次での履修を認めてあげるということや,さらには選択肢としては,次にありますように,自分の大学に限らず,近隣の法科大学院で例えば2年次までのうちに科目等履修によって所定科目を2修得できる道を開いてあげることも考えられるところでございます。
そしてさらには(2)遠隔授業の効果的な活用ということで,正に今行われております遠隔授業を例えば今後も恒常的に活用することとして,大学間連携によって所定科目を履修させる工夫も選択肢としては考えられるところでございます。
次の27ページ以降,第3のところは司法試験実施時期の工夫の話,すなわち3年次前期のカリキュラムのことですが,これは大前提としましては,試験の当日に必修の授業での拘束さえ入れなければ試験は物理的に受けられるわけですので,特段の工夫は必要ないという考え方もあり得るところですけれども,ただ実際には試験前のしばらくの期間,準備に充てることも必要といったようなお声もありますので,取り得る選択肢を幅広にお伝えするものでございます。
これについては,例えば(1)に書いておりますように,学事歴の工夫として4学期制(クオーター制)を導入して,第2クオーターに当たる夏学期には授業を取らないようなことも選択できるようにするというやり方もあれば,(2)にありますように,既に今,コロナ対応で実施もされているかもしれませんけれども,少し学期の期間を詰めるために週2回授業を行ったり,あるいは土曜・日曜日を活用したりというようなことで授業の期間を短縮して7月を空けていくということも考えられます。
また,さらには(3)期末試験の実施時期の工夫ということで,授業はやって,その後いったん司法試験を挟み,期末試験は司法試験の後に回すということもあり得るわけでございます。
さらに,次のページに参りまして(4)授業時間の工夫ということで,1回の授業時間を延ばした上で回数を減らす。例えば,90分の授業を105分に延ばした場合に,これまで実施回数が15回だったものを13回に減らすというように,学修時間のトータルを維持しながら期間を減らすということも制度上可能でございます。
また,最後,(5)開講科目の工夫として, 1単位の科目を置くということもできますし,また期末試験を行わないでレポート課題とすることができる科目を置いて日程に余裕を持たせることも考えられるところでございます。
以上,御説明した工夫例は,いずれも,その次の29ページ以降に現行制度の参考条文を載せておりますけれども,この現行制度の下で既に取り得る選択肢を改めて整理してお示ししているものにすぎませんで,これらを採用するかどうかは各大学の御判断ですし,特に在学中受験を希望される学生さんがどのくらい見込まれるかということも踏まえながら御判断いただくべきことだと思っておりますけれども,タイミングとしましては,在学中受験が可能となるのは令和5年ということで,その年度に最終年次となる学生,すなわち既修者では令和4年度入学,未修者では令和3年度入学,来年度の入学の学生さんであるということになりますから,来年度からのカリキュラム編成に向けて各法科大学院の実情に応じた検討をお願いしたいと思っております。
本日ここで御説明した趣旨は,委員の先生方からお気付きの点がありましたら御指摘を頂きまして,これを適宜,この紙にも反映させた上で,今後,各法科大学院に文部科学省から周知をさせていただくこととしたいということでございますので,御自由にお気付きの点をお聞かせいただければと思います。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。そのようなことで,恐らく来年度から未修者については新しいカリキュラムが適用されるということで,各法科大学院においては既にかなり御検討されているのではないかと思いますが,その中で困難を感じられている点とか,あるいはこういった工夫をしているというようなことがもしありますれば御発言いただければと思いますが,いかがでしょうか。
特段,手は挙がらないでしょうか。
大貫委員,お願いします。

【大貫委員】失礼いたします。苦労している点とか,そういうことではないのですが,今,西川室長からの御説明を聞いて確認しておきたい点,特に文章を変えてくれという趣旨ではありませんけれども,2点申し上げたいと思います。
1つは,この委員会でも何度も議論になっていますし,私も申し上げた在学中受験というのはオプションだろうと思います。今回の改革の非常に重要な肝ではありますが,オプションだろうと思います。これは法務省も,この法律の制定過程で何度も言明していることであります。従いまして,全ての法科大学院が在学中受験を前提としたカリキュラムを編成することが義務付けられるわけではありません。これは非常に大事な点だろうと思います。在学中受験を念頭に置かず,修了後の受験を基本に置くことはもちろん認められるべきだろうと思います。
従いまして,先ほど丸山委員,それから西川室長からも御説明がありましたけれども,在学中受験ができるためには,試験時期等の関係からいうと,2年次修了時までに必要な科目が取得できるようにする必要性があります。ですから,法科大学院によっては,このようにする大学があっても当然いいし,他方で3年次までに司法試験が受験できるような科目を履修できるようなカリキュラムを編成するということでもよろしいと思います。
しかしながら,先ほど西川室長からも,希望する学生さんがいればというお話が何度かあったと思います。今回の制度改革の一つ重要な目的には,法曹になるための時間的・経済的負担の軽減を一つの目的としていたということを考えますと,3年次までに司法試験の受験に必要な科目の単位が修得できるようカリキュラムを基本的につくる大学であっても,希望する学生がいれば,2年次までに在学中受験に必要な科目が履修できるようにしておく必要性があるんだろうと思います。これが第1点であります。
それから,先ほど西川室長がコンパクトに御説明いただいたカリキュラム等の工夫例というのは,在学中受験を希望する者との関係で在学中受験がスムーズにできるカリキュラム上の編成,工夫ということだろうと思います。これは非常に重要な点だろうと思います。ただ,これも立法過程を振り返っての話ですけれども,在学中受験資格を導入することによって,法科大学院教育に積極的な意味合いがあるのだという位置付けがされました。どういうことかというと,在学中受験後の3年次の後期に学生は展開・先端科目などの法曹として今後の発展可能性につながる科目や,先ほどもちょっと話題に出ましたけれども,司法修習に接合する実務科目を集中的に学ぶことができることが上げられておりました。従いまして,ここは研修所と法科大学院をどのように個別的・実効的に接合するかという議論はしなくてはならないと思います。これはさておき,今,西川室長が整理されたのは,在学中受験資格導入に伴うカリキュラム等の工夫例,在学中受験がスムーズにしやすくなるようにという工夫例でしたが,各法科大学院は,今申し上げましたような3年次のカリキュラムの工夫ということも忘れずにやるべきではないかと思っております。これは今話題になっているカリキュラムの工夫例ということからすると,やや拡大の嫌いがありますが,申し上げておきたいと思います。
2点目です。資料4ですと,これは26ページのところを御覧いただきたいんですけれども,先ほど西川室長から言及があって,現在,我々は遠隔授業で大変苦労しております。中川委員はとてもいい面もあると。もちろん,いい面もあるんですけれども,大変苦労しているのが実情であるというのをお伝えしなければいけないと思います。
この26ページの遠隔授業の効果的な活用についてですが,次の議題の(5)と共通してやっていただきたいことがあります。文科省に強く求めたいことが1つあります。ICTの活用については,平成29年のこの問題について調査した報告書は,現在から見ると非常に消極的な立場を取りました。どういう立場かといいますと,録画された動画を見た後に十分な指導することによって単位の修得をさせる。オンデマンドということになりますが,これについては非常に消極的な評価をしております。この点は大きく変えられるべきであろうと私は思っております。
今回の新型コロナ感染症対応のために,各法科大学院もICTの活用をこの新学期に積極的に行っております。ところが,法科大学院においては,先ほどの報告書もあり,オンデマンド方式を含む自宅で授業を受けるということは,これまで認められてこなかったと理解しております。これが現状です。しかし,今回の緊急事態を受けまして,文科省も最近の通知で,少なくとも臨時的な措置としてはオンデマンドも含めて認めるんだということを決定されております。これが資料の1-2,通しページでいうと14-3というページで,明確に今回運用を柔軟化するということを書いております。是非とも,私個人的には,今回の例外的な対応ということではなくて,今後,恒常的にこのような自己決定が認められるようにしてほしいと思っております。
今回,例外的である法科大学院でICTを活用した授業が大規模に行われておりますので,こうした経験を踏まえて,ICTの適切な活用の在り方が法科大学院協会において確立することを希望しております。長くなりましたが,以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは高橋委員,お願いします。

【高橋委員】先ほど丸山委員の方から,受験資格取得のために必要な単位数として,実務基礎科目の一部を在学中受験資格の要件にするかどうかを検討されているという御指摘があったと思うのですが,この理解でよろしいでしょうか。もしそれらの科目を追加ということになりますと,恐らく各法科大学院とも,このコロナ禍の中で相当苦労しつつカリキュラムの作業を進めているのではないかと思いますので,できる限り早く方針を決めていただくことをお願いしたいと存じております。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。丸山さんから何かコメントはありますか。

【丸山委員】高橋先生,ありがとうございます。最後に御指摘がありましたとおり,法務省としましてもできるだけ速やかに,この省令について皆さまにお示しできるようにしたいと考えております。実務基礎科目の一部の単位を所定科目単位とするかどうかということは,先ほど申し上げたとおりでございますけれども,全般的なお話で申し上げますと,今回の在学中受験資格の導入によって,まず司法試験の出題の在り方のそのものには大きな変更はないということが大前提とになります。そうすると,実務基礎科目が所定科目単位に含まれるか否かにかかわらず,少なくとも司法試験に合格するために必要とされる学識・能力については,所定科目単位である法律基本科目の中で十分に培われる必要があると考えておりますので,基本的にはそういう発想の中で省令をつくっていくということになろうかと思います。ですので,余り御懸念を頂く必要はないのかなと思っておりますが,いずれにしても早期にお示ししたいと考えております。

【山本座長】それでは清原委員,お願いします。

【清原委員】:ありがとうございます。清原です。大貫委員の発言に触発されて,一言だけ申し上げます。
ただ今,在学中受験資格の導入に伴うカリキュラム等の工夫例の中で,重要なポイントとして,「遠隔授業の効果的な活用」の指摘が意味を持ってくると思います。新型コロナウイルス感染症対策の中で,各法科大学院ではオンライン授業について今正に実践をされています。そのことが感染症対策の対応にとどまらず,在学中受験資格の導入に対する対応にとどまらず,今後法科大学院の質の高い授業の確保のために生かされる方向性で検討されればと願っておりまして,今の対応の中での御苦労が未来を開くのではないかなと感じましたので発言させていただきました。「遠隔授業」と呼ぶべきか,「オンライン授業」と呼ぶべきか,あるいは「オンデマンド授業」と呼ぶべきか,いろいろなICT活用の類型を整理しながら,どうか是非前向きに取り組んでいただければと思います。よろしくお願いします。ありがとうございます。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,おおむねよろしいでしょうか。
この点につきましては,本日の御議論を踏まえて,事務局の方でこの資料の必要な修正等をした上で,各法科大学院に対して改めて事務連絡等でお示しいただく他,是非,個別の大学からいろんな問合せ,相談があると思うんですが,それについて丁寧に応じていただきたいということ。それから,認証評価との関係でも,このカリキュラムの工夫等について,認証評価機関と十分な連携をお願いしたいと思います。
それでは,恐縮ですけれども,次,最後の議事に移りたいと思います。
ちょっと時間が押しておりまして,毎回,法学未修者の問題は非常に重要だと言いながら時間が押してしまい恐縮なんですが,若干ひょっとすると時間の延長をお願いするかもしれませんけれども,未修者教育の充実です。
前回の御議論において,幾つか論点が示されたかと思いますが,本日は事務局においてそれらを整理いただいたということですので,それについて御説明を頂いた上,本日はこの10期,今期で扱う論点,そしてその大きな方向性について御議論を頂いて,ある程度の共通認識を得たいと思っておりますので,まず事務局の方から資料の説明をお願いします。

【西川専門職大学院室長】事務局西川でございます。
それでは,お手元の資料の5-1から御説明をさせていただきたいと思います
まず,今期,第10期の審議の中で未修者教育に関しての論点を前回までの御意見を踏まえまして大きく7点にまとめてみましたので,御確認いただきたいと思います。35ページでございます。
まず,個別の論点を御覧いただきまして,論点の1ですけれども,こちらが議論の大前提となります現行の制度,すなわちワントラックで2年次以降,既修者と未修者が共に同一の課程で学ぶとしている今の制度については,そもそも見直す必要があるかどうかという基本的な認識の確認がまず必要ではないかと思っております。
次に,論点2としまして,同一の課程を学ぶことを前提とすれば,ただし現実には未修者と既修者では成長曲線には差があるということが言われておりまして,最終的には司法試験合格率の差ともなって表れている現状を踏まえますと,同一課程に入る前の1年次の教育というのを重点的に検討していただく必要もあるのではないかとして論点2としております。
次の論点の3は,多様な未修者に対しては,個々人の特性に応じた柔軟な学修メニューの提供やきめ細かな学修支援が必要となるわけですけれども,これを行う上で,これまでに既に補助教員の活用が鍵であるといったような具体論も御指摘いただいているところですが,これも含めてどのような具体的な解決策があるかということが一つあると思います。
次の論点の4は,これも繰り返し御指摘いただいております,社会人が,仕事を辞めないで続けながら学びやすくするための工夫について,例えば今もお話がありましたICT活用や,あるいは夜間開講,昼夜開講,長期履修の活用促進などが既に御指摘されていますけれども,この辺り具体的にどこから手を付けていくべきか。特に,今,大貫委員からも御提言いただきましたように,ICTの活用につきましては,平成29年2月に研究協力者会議のまとめがございまして,こちらの資料5-3の3ページというところにも付けて,前回も御説明したものですけれども,ここでは,端的に申し上げれば,オンデマンド型は法科大学院には適さないというようなまとめになっているわけですけれども,一方で目下コロナ対応としては特例的にオンデマンド型も含めて行われていることも事実でありますから,こうした実態も踏まえながら今の指針を見直す必要があるかどうかも含めて御議論いただくことがあると思っております。
次の論点5につきましても,これも繰り返し提案されてきた,いわゆる教育拠点の在り方についてでございます。どうしてもコストがかかります未修者教育を限りある教育資源を用いて効率的に実施する上で,この拠点という発想は依然有力でございますが,これをどう具体化していくのかということがあると思います。
次の論点の6は,1年次の修了時点で,今,受験が必須となっております共通到達度確認試験につきまして,前回の御議論では,これを恒常化して司法試験結果との相関関係もよく分析して蓄積しながら活用してくことですとか,試験の実施体制そのものを充実させていく必要が指摘をされたところですけれども,これのもう少し詳細についてどう具体化していくかということ。
そして,最後に論点の7としまして,ここはそもそも論なのですが,求められる未修者のいわば人材像,特にこれまでも言われているグローバル化や技術の進展に加えまして,今般,新型コロナウイルスの影響で更に大きく世の中が変わろうとしている状況にありまして,未修者という者に対しては一体どのような具体的な多様性を求めて,そしてまたその出口や進路をどう描いていくべきなのか,こういった認識についても併せて確認しながら御議論いただくことが必要ではないかということで,少し論点の数は増えたのですが,この7つの事柄を今後深めていくということについて,本日はここに過不足があるかどうか,あるいは議論の順番についても何かご提言があれば頂きたいと考えているところでございます。
併せまして,もう一つだけ失礼します。資料の5-2を御覧ください。
資料の5-2は,この中でも論点の1と2の部分を本日できれば方向性として確認させていただきたいと思います。これがずれてしまいますと議論の大前提が崩れますので,具体的には論点1の2で未修者を既修者から切り離さずに今の制度を維持することでいいかどうかということでございます。
端的にはそこだけなんですが,もしそれでいいとするならば,ここの2ポツに書きましたように,今の論点が7つありましたけれども,もう少し視点を引いてみると,大きくはこういった3つぐらいのストーリーになるのかなと。1つは,既修者と一緒に学べる最低限のスタートラインを維持するための1年次教育の抜本的な強化,ここに拠点化という発想も含めていくということと,併せて2年次から共に学ぶための2年次に進級する時点で一定の質保証を具体的にする仕組み,そしてさらには未修者ならではの活躍の場であるとか進路を見据えた教育の在り方ということで,こういった大きなストーリーを論点7つという形で進めさせていただくことでよろしいかどうかということでございます。
以上でございますが,ちなみに本日もう一個,資料5-3という形でICTの活用に関する現行制度についての資料もお配りしておりますが,これは前回,通信制という選択肢もあるのではという御提案もあったので,通信制も含めた今の制度を整理したんですが,お時間が足りませんので,本日はここは省略をさせていただきまして,次回以降に改めて御説明という形にさせていただきたいと思います。
駆け足で恐縮ですけれども,以上でございます。御議論の方,よろしくお願いいたします。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,この資料5-1の論点案,それから資料の5-2の大きな議論の方向性ですか,この点について御意見があればお出しを頂きたいと思います。
清原委員は,これはあれですか。この点についての御意見。先ほどのが残っている。
じゃあ土井委員,お願いします。

【土井委員】土井でございます。事務局で整理をしていただきまして,ありがとうございます。法学未修者教育の改善は,これまでも難しい課題でございましたし,様々な論点がございます。ただ,日弁連法務研究財団にお願いした委託研究などの成果もありまして,重要な課題についてはある程度共有できるようになってきていると思います。また,そのような課題の中には,各法科大学院で改善のための工夫を行うべきものと,本委員会で制度的整備,あるいは支援を検討すべきものに整理することができるんだろうと思います。
法学未修者教育の改善をできる限り早く軌道に乗せるためには,前者の課題については早急に各法科大学院の取り組みをお願いするとともに,本委員会としては後者について集中して審議をし,方向性を示す必要があるんだろうと思います。その意味で,本日の資料5-1の論点を5-2でお示ししていただいているような形で整理することについて,基本的に賛成でございます。
その場合,議論の前提としましては,資料5-2の1ポツに示されていますように,法学未修者と既修者の教育課程を完全に分離して2つの制度にはしないということ。その意味では,未修者教育の拠点化といっても,法学未修者の教育を特定の法科大学院に集中させて法学既修者のみを教育する法科大学院を認めるものではないということは,議論の前提として確認しておく必要があるんだろうと思います。
その上で,特に私が本委員会で議論する必要があると思いますのは,法学未修者,ここでは他学部出身者や社会人を想定しますけれども,このような皆さん方は既に多様な能力・経験を持っておられるわけです。そうしますと,法科大学院においては,特に1年次において法律基本科目を中心に法律学の基礎を身につけてもらって3年間をかけて法律学に集中して取り組んでもらう,そしてその中で自らの能力・経験を示していっていただくということが可能な制度的環境を整えることが大事なんだろうと思います。そのためには,本委員会において,履修すべき科目の在り方の改善ですとか,ICTの活用などのための制度整備を積極的に行っていくべきだろうと思います。
先ほど大貫委員や清原委員からも御指摘がありましたように,ICTの活用は非常に重要だと思います。各法科大学院,あるいは法科大学院全体として法学未修者教育に限られた資源をどのような形で重点的に配分していくかという問題にも関わる事柄でありますし,今回の新型コロナウイルス問題でICTの利用がいや応なく進んでおりますので,これを契機にして集中して検討すべきだろうと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。それでは,続いて菊間委員,お願いできますか。

【菊間委員】弁護士の菊間です。よろしくお願いします。
個別の論点は,論点1から6まではよいと思うんですけれども,7は後で話しますが,前提として今お話があったように,2トラック,ワントラックということで,ワントラック前提でいくということで私もいいと思います。今までのお話を聞いていて,そもそも法学未修者がロースクールを選ばなかったとしたならば,行くとしたら予備試験で,予備試験はイコール予備校に行くということになるわけです。ロースクールか予備校かどちらを選ぶかを考えたときの基準となってくるのは,例えば,どちらが合格率が高いか,期間がどうか,経済的に安いかどうかということぐらいで,それはいずれも予備試験の方が有利なところが今現状ではあるのかなと思います。
今年も複数の社会人から相談を受けましたけれども,その中でロースクールに行くメリットは何と聞かれたときに私が答えているのは,エクスターンですとか,クリニックですとか,模擬裁判とか実務につながるような経験ができるということと,ロースクールにいるときから,裁判官や,検事や,弁護士と触れ合う機会がものすごく多くて,その中で実務,働き方が具体的に明確になるというところとお話ししています。また,ロースクールで知り合った先生方と弁護士になった後も仕事をしていることもたくさんあるので,そういう人脈づくりみたいな,人脈という言い方がふさわしいかどうか分からないんですけれども,そういうこともロースクールのメリットかなと。
予備校に行くと,自分一人で勉強して,受かることは受かるかもしれないけれども,その後,1人きりで入っていくわけだから,そういう意味では大変な部分もあるかもねという話をしているんです。そうすると,ロースクールが合格率というところに傾けば傾いていくほど,未修者がロースクールに行く意味がなくなっていくような気がします。もちろん,予備校とか予備試験に行かないように,ロースクールコースの期間を短くする等は大事なのですけれども,ロースクールのよさというものをもう一回この会議の中では議論していただきたいですし,社会人だって,学部から上がる人だって,ロースクールに行った方が,その後,法曹に入ったときに意味があったよねと思える経験がロースクールできるんだということをアピールすることが大事だと思います。もちろん,ロースクールの先生方にとっては,合格率も認証評価の一部ですし,それで生徒が来る来ないが変わってくるので,合格率を意識するのはとてもよく分かるのですが,それとそういう実務教育とのバランスというものをもうちょっとしっかり考えた方がいいのではないかなと思います。
あと論点7なんですけれども,これは多様なバックグラウンドと書いてあることからすると,恐らく社会人を想定して書いているのかなと思うんですが,私が15年前にロースクールの試験を受けたときに,ある国立大学の面接で,アナウンサーなんてこの資格は要らないでしょうと言われたんです,面接官から。それで,私はこういうふうに思ってと言っているのに,別にそんな取る必要はないでしょうと言われたすごく嫌な思い出があって,それが15年前なんです。今となってみると,いい選択ですよね,何て言われることが多いのですが,当時はそんな状況だったんです。
そうすると,私も含めて委員の皆さんは基本的に法律に携わっている方たちばかりで,その方たちが想定するよりもっと違う次元で,社会人で法律を学ぼうという人が来るわけですから,余りそこを私たちが何か導かなきゃいけないと思う必要もないかなと思います。私たちの想像をはるかに超えていく人たちがたくさん出てきてほしいなと思います。そういう方たちは恐らく,司法試験に受かっても弁護士にはならないと思うんです。法曹三者になるわけではなくて,弁護士の資格を取った方が仕事をする上で有利になるとか,社会で活躍するときに自分の発言に信頼を持ってもらえるとか,自分なりの考えをもって入学なさるはずで,ゴール設定は御自身が既になさっているのではないかと思います。そういう社会人にとって魅力的なロースクールであってほしいと思います。
そうすると,最初に戻りますが,皆さんずっとここまで今日,よりよい法曹を育てるのがロースクールだと,司法試験合格だけが全てじゃないとおっしゃっていたとおりで,よりよい法曹を育てるためには,点数を取る勉強だけが全てではないし,青臭いことを言うようですが,リーガルマインドを持つ人材を数多く輩出し,社会に還元していくことも大事なことで,そのためには,ロースクールならではの教育の充実ということが大事なのではないかと思います。この部分がロースクール初期の頃より薄まっているような気がするので,そこをもう少し考えていただけたらなと思います。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。どこの国立大学なんだろうとちょっと気になりましたが,それはさておき,他にこの点で御意見はいかがでしょうか。先ほど申し上げましたが,少し時間を延長してもと思いますけれども。
それでは有信委員,お願いします。

【有信委員】:聞こえますでしょうか。
先ほどの菊間委員の御意見にも触発されたわけですけれども,7番目のポイントについては,もともと法曹制度改革を含めて当初からずっと議論をやりながら,なかなか具体的にいい方向性が出てきていない。私が一番重要だと思うのは,今ある法曹というんですか,弁護士,裁判官,検事というような枠内で物事を考えるのではなくて,例えば今のコロナのような状況の中でまた世の中が大きく変わってきていて,しかも産業そのものの在り方も大きく問われますし,その上でICTの活用というのは,何も教育だけではなくて,ビジネスを含めて大きく仕組みを変えるという方向に動いている。
そういう中で,基本的に法律というのは極めて重要な役割を果たすということになってきますので,そういうところで,いろんなビジネスにせよ,ICTにせよ,様々なバックグラウンドを持った法律の専門家が今以上に必要になってくるわけです。多分,相当混乱が起きるということは予想されます。したがって7番については,きちんと議論をして,いい出口を見つけていくことが必要なような気がしています。以上です。

【山本座長】ありがとうございました。他にございますでしょうか。おおむねよろしいでしょうか。
それでは,本日事務局から示していただいた資料5-1の論点については,基本的には御了解いただけたと思います。
論点7について,菊間委員,あるいは有信委員から御指摘がございましたが,それを踏まえて更に論点7は深掘りが必要だろうと思いますけれども,基本的には論点としてはこういうものがあり,そして資料5-2にありますとおり,大きな論点,論点1,あるいは2というものとの関係においては,2トラックということではなくてワントラックということで,基本的には2年次以降,法学既修者と未修者が混在する形で学習していくということを前提として未修者教育の在り方を考えていくという大前提については御異論は基本的にはなかったということで,それに基づいて今後議論を進めていきたいと思います。
その上で,今後は各論的なお話,拠点化の話,ICTの話,補助教員の活用,あるいは共通到達度確認試験といったような個別の論点について,順次御議論を深めていっていただければと思います。
それでは,本日予定していた議論はおおむね以上のとおりですが,各委員,あるいは事務局から何かございますでしょうか。
西川さん,お願いします。

【西川専門職大学院室長】西川でございます。最後に短く2点,失礼いたします。

1点目は,参考資料の2として48ページなんですが,お配りしております法曹養成連携協定大臣認定の最新の状況について簡単に御紹介でございます。
令和元年度においては,1月から3月にかけて3回申請を受け付けてまいりまして大臣認定の審査を行いまして,最終的に令和元年度において大臣認定を受けた連携協定の総数は56となりました。連携法科大学院の数としては28,そして学部側の法曹コースの数としては34となっております。そして,また今年度以降に新規の申請を検討されている大学もあると聞いておりますので,またそういった動きがありましたら,今後とも御報告させていただきたいと思います。
最後に,次回の日程ですけれども, 7月7日の火曜日17時から19時で予定をさせていただきたいと思います。そして,現時点でオンライン開催とするか通常開催と戻させていただくかは決まっておりませんので,また追って御連絡をさせていただきたいと思います。以上でございます。

【山本座長】ありがとうございました。本日は初めてのこのオンライン開催という試みでしたけれども,委員の皆さまの御協力の結果として,リアルの会議と基本的にはほとんど変わらない形で開催ができて,充実した御議論をいただけたのではないかと思います。御協力,ありがとうございました。
それでは,若干時間を過ぎてしまいましたが,本日の会議はこれまでとしたいと思います。ありがとうございました。

―― 了 ――



 

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