法科大学院等特別委員会(第85回) 議事録

1.日時

平成30年3月13日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 13F1~3会議室(中央合同庁舎第7号館東館13階)

3.議題

  1. 法科大学院教育状況調査について
  2. 法科大学院教育等の改善・充実について
  3. その他

4.議事録

【井上座長】
 定刻ですので,第85回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催させていただきます。
 本日は,法科大学院教育状況調査の結果について御報告を頂いた後,前回に引き続いて法科大学院教育等の改善・充実について御議論いただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 まず,事務局の方から配布資料の確認をしてください。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に議事次第を御用意願います。本日の配布資料は議事次第のとおり,資料1から資料3でございますが,そのほかに机上参考資料として2種類の資料を配布しております。机上配布資料の一つは,本年度,慶應義塾に委託をして,慶應義塾大学を始め7大学が連携して,法学部において法科大学院の既修者コースと一貫した教育課程を編成する場合に,学部4年間で行う場合と,3年間で行う場合には,どのような違いが生じるのか。また,必要な工夫や課題は何かについて調査研究をしていただいた報告書の,総論部分の最終調整中のものでございます。法学部と法科大学院と一体的な教育課程を編成する上での一つの成案ではありませんが,各大学において検討するに当たっての有意義なものと考えられますことから,完成前のものですが,机上配布資料として配布させていただいております。本資料を含め,不足,落丁等ございましたら,お気付きの際に事務局までお知らせ願います。
 また,過去の本特別委員会の資料等につきましては,タブレットの中に収納されております。操作等が不明な点がございましたら,挙手をしていただければ,事務局の者がサポートに参ります。
 以上でございます。

【井上座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,早速ですが議事に入ります。初めに,法科大学院教育状況調査については,御承知のように文部科学省が行う調査であり,本委員会の下に設置したワーキンググループがそれに協力するという形で実施されておりますが,このたびその調査結果がまとまったとのことですので,事務局の方から説明をお願いしたいと思います。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に,資料1,平成29年度法科大学院教育状況調査結果を御用意願います。座長のただいまの御説明のとおり,本調査は本省が行う調査に,本特別委員会の磯村委員を主査とするワーキンググループに御協力いただき,実施したものでございます。本委員会の片山委員,木村委員にもワーキンググループのメンバーとして御協力いただきました。改めて3名の委員の方に御礼を申し上げます。
 それでは,御説明申し上げます。1の調査方法でございます。書面調査につきましては,昨年の11月に実施したものでございますが,客観的指標等に照らして課題があると認められる法科大学院に対し,書面の作成を通じて改善に向けた取組を促すとともに,教育実施状況を把握することを目的に,以下の昨年度ヒアリング,実地調査を受けたところ,また,客観的に指標,入学者選抜や司法試験の合格率等,客観的指標に関して一定の水準を下回る場合に該当する法科大学院13校を対象に実施したものでございます。
 また,ヒアリング調査につきましては,昨年12月に書面調査の結果,特に必要があると認められる場合等の法科大学院7校を対象に実施したものでございます。また,実地調査については,授業方法などの教育実施状況を把握することにより,改善に向けたより適切な助言を行うことを目的として,書面調査及びヒアリング調査の結果,特に大きな課題があり,実施において状況を確認した上で助言を行うことが特に必要と認められる場合となった1校を対象に実施したものでございます。
 なお,昨年度実地調査を行い,かつ募集を継続している3校については,1年後に特に新たな助言等をするのではなく,経過観察とするのが適当ということで,ヒアリング調査までにとどめたというところでございます。
 続きまして,2ページ目,調査結果の概要でございます。記載のとおり,本調査においては,昨年度調査において指摘した課題について,改善に向けた取組がなされているかどうかというフォローアップの観点を含めて実施しました。その結果,多くの法科大学院において,昨年度調査において指摘された課題への対応や,客観的指標に関する課題についての原因分析や自己評価が行われ,それらに基づき改善に向けた取組に着手していることが確認できました。
 一方で,一部の法科大学院において,指摘された課題への対応や,客観的に指標に関する課題についての原因分析及び自己評価が十分に行われていないことが確認され,当該法科大学院に対しては,各調査を通じて改善に向けた助言を行ったということで,具体的な記述については以下のとおりでございます。
 まず(1)の,志願者確保及び入学者の質の確保についてというところでございます。その5行下でございますが,入学者数に改善傾向が見られる法科大学院においては,志願者確保のため,学部の講義・演習科目を法科大学院教員が担当するなど,自大学法学部と連携した取組を行うとともに,受験者の地域的動向を分析し,学外試験会場の見直しと増設や,県外からの入学者に対し優先的入寮枠を設ける取組などが確認されました。
 また,現状では入学者数に改善傾向が見られない法科大学院においても,自大学法学部と連携を図ることについて組織的に検討の場を設けるなどの取組が確認され,今後の成果が期待されるとしております。
 続きまして,3ページ目でございますが,まとめの部分,各法科大学院において一層強化していく必要がある取組が書かれておりまして,特に2行目でございますが,自大学法学部と連携を図るに当たっては,既修者コースへ進学することが可能となるよう,基礎学力の定着と向上が図れるような取組を併せて検討することにより,司法試験合格状況の改善に向け,より一層の入学者の質の向上が期待されるとしております。
 続きまして(2)の教育の質の向上についてです。まずカリキュラムの見直しでございます。複数の法科大学院において,科目配置などのカリキュラムの見直しに着手している状況が確認されました。カリキュラムを見直すに当たっては,法科大学院の抱える課題の原因を分析した上で検討しているとの回答もありましたが,他の法科大学院の事例研究を行い,その成功事例を自大学法科大学院に適用することについての検討も必要であると考えられるとしております。
 また,既にカリキュラムを見直した法科大学院についても,成果が得られるまでは一定の時間を要すると考えられ,学生の学修状況を踏まえながらカリキュラムを運用しつつ,基礎学力の定着と向上を図りながら,効率的・効果的な学修が可能となるよう工夫することが求められるとしております。
 続きまして,進級判定及び修了認定の厳格化でございますが,昨年度に続いてGPA基準の引上げや再試験の廃止が行われていることが確認され,更にGPA基準の引上げを検討しているところも確認されました。また,GPAは司法試験結果との相関分析にも活用され,相関関係があることを確認しているところもあります。修了後1年目の司法試験の結果が振るわないような法科大学院においては,そのような相関分析に基づいた進級判定及び修了認定の適正化を進め,学生及び修了者の質の向上に努めることが期待されるとしております。
 修了生に対する支援については,1年目に司法試験の合格者を出すことができないような法科大学院においては,在学中の指導を抜本的に改善するとともに,修了生に対する支援についても一層強化していくことが期待されるとしております。
 主な課題として,修了後の修了生の動向を十分に把握していないということや,リソースの問題から修了生全員に対しての指導は難しいという回答が得られています。このような課題の改善に向けた取組として,修了後も継続的に面談を行うなど,支援を行う機会を設けることや,4ページ目でございますが,弁護士になっている修了生に協力を仰ぎ,学修支援を行っていることが確認されたとしております。
 続きまして,ロール・モデルの提示について,4行目でございますが,ロール・モデルとなる修了生が少ない法科大学院においては,在学生に対して積極的に司法試験合格者との交流の機会を設けるなどの取組を行うことが期待されるとしております。
 また,他大学との連携について,学生減少に伴い小規模化している法科大学院においては,双方向性・多方向性を確保した授業の展開が困難となります。学生が自身の学修到達度を把握しにくくなることが懸念されます。複数の法科大学院から他大学との連携,単位互換を行っているとの回答がありましたが,履修者が少数にとどまるなど,十分な効果が期待される連携に至っていない状況が確認されました。学生の基礎学力を向上させるという観点から,主要科目についても連携して,学生同士が切磋琢磨(せっさたくま)する環境を構築するといった取組が期待されるとしております。
 また,その下でございますが,FD活動が形骸化している状況が確認される法科大学院も存在しました。例えば,他の法科大学院と共同してFD活動を実施するなどの工夫が期待されるとしております。
 その下の3番,組織的な取組の必要性について,でございますが,複数の法科大学院においては個々の教員による取組は行われているけれども,組織全体としては取組として行われていない,改善状況も進んでいない状況が確認されました。法科大学院長等の責任者の主導の下に,学長を始め大学執行部の支援も得て,組織全体として改善に取り組むことが期待されるとしております。
 5ページ目のまとめは,先ほど冒頭申し上げた調査結果の概要と重複するところが多いので,省略させていただきます。
 また,次のページ,別紙がヒアリング調査及び実地調査における所見でございます。
 最後のページは,こちらが書面調査も含めて行った大学や,全ての大学の入学者選抜実施状況や司法試験合格状況が記載されている資料でございます。
 説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。ワーキンググループ主査の磯村委員に,補足説明をお願いします。

【磯村委員】
 ごく簡単に,3点について,私自身が調査に協力させていただいた立場から申し述べたいと思います。
 先ほど室長からの御説明でも既にありましたとおり,一つは,組織としてどう対応するかという問題がかなり大きくあったかと思います。これは法科大学院の中で,教員個人は課題を認識しているけれども,法科大学院全体として共通認識に至っていないという問題があるとともに,現在のように法科大学院と法学部の連携等が求められる中で,法科大学院としては改革したいが,法学部との調整がうまく進んでいないというようなケースも多くございました。
 2点目は,カリキュラムを含む教育課程の在り方に関しては,いろいろな法科大学院で随分御努力を頂いているのですけれども,これは成果が現れるまでに一定の時間を要する改革であって,先ほどございましたように,昨年度の調査を踏まえてカリキュラム改革をされている法科大学院については,現時点では成果が現れていない場合も,今年度に実地調査をすることにほとんど意味がないということで見送ったというケースがありました。したがって,例えば二,三年たって成果が現れていないというときに,またどうなるかという問題が残されています。
 3点目が制度全体に関わる問題なのですけれども,志願者確保あるいは競争倍率の確保についても,各法科大学院で努力されている状況はうかがえますが,個々の法科大学院で解決できるという問題ではないというところがあって,ある意味では,ある種の徒労感といいますか,これだけやってもなかなか成果が出てこないのではないかという印象を持つような法科大学院もございました。
 以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 ただいまの御説明について,御質問等があれば御発言をお願いします。
 よろしいですか。それでは,本教育状況調査の結果も踏まえて,今後の審議を行っていきたいと思います。
 次の議題ですけれども,前回の会議において,本委員会におけるこれまでの議論を踏まえ,法科大学院等の教育の改善・充実に向けた基本的な方向性(案)が示され,それについて皆様から活発な御議論を頂いたところであります。皆様から頂いた御意見を踏まえまして,事務局で資料を修正してもらっていますので,前回からの変更点を中心に,説明をお願いします。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に資料2と,前回からの修正点を見え消しで表示しております机上参考資料を御用意願います。「はじめに」の二つ目の丸でございますけれども,法科大学院志願者,入学者が減少している状況につきまして,就職状況がよい状況等があるというような御意見を踏まえまして,修正しております。
 また,三つ目の丸でございますけれども,先端的な法領域について基本的な理解を得ることは,そのとおりだけれども,多様なバックグラウンドを有する者がその知見を活用することや,三権の一翼を担うべき人材としてますます活躍が期待される,そのような分野の一つとして,福祉部門など公的部門などがあるという御指摘を踏まえて修正しております。
 また,ただ時間が早くなればよいわけではないと,プロセスとして質の高い法曹を養成する必要があるという御指摘がありましたことから,資料1ページ目の一番下の行で,その部分を追記しております。
 続きまして,2ページ目でございますけれども,法科大学院教育の説明をすべきだという御指摘がありましたので,理論と実務を架橋するという一言を加えさせていただいております。
 また,2ページ目の下から三つ目の丸でございますけれども,純粋未修者を引き付ける上で,法曹として実績を積んでいる者の活躍状況を広報するというような取組について,しっかりやっていくべきだという御意見がございましたので,取組を継続・強化するというような文言を追加しております。
 また,法学部の教育の意義,地方の法曹志望者に配慮した制度設計とする必要があるという御指摘がございましたので,その2点について新たに丸を付け加えて追記しております。
 3ページ目,法曹コースの在り方についての一つ上の丸でございますけれども,法曹志望が明確な学生等に対して,学部段階から効果的な教育を行う,これが限定され過ぎではないかという御指摘があり,そのとおりかと思いますので,法曹志望者や法律の学修に関心を有するという形に修正しております。
 また,「2.法学部の法曹コースの在り方について」,かなり丸が多くなりましたので,小見出しを付けさせていただいておりまして,最初の基本的な考え方の一つ目の丸でございますが,法学部,法科大学院の連携をして,後ほど出てきますが,特別選抜枠のような形を設けてスムーズに進学できるようにするに当たっては,法学部での厳格な成績評価が求められるのではないかという御指摘がございましたので,その部分を追記しております。
 3ページ目の一番下の丸でございますけれども,法曹コースの目的について追記をさせていただいて,法曹コースについては4年プラス2年もあるけれども,現在の状況等を踏まえまして,優れた資質・能力を有する者については,早期に法科大学院に進学できる仕組みを明確化するという形にしております。
 また,4ページ目でございますけれども,法曹コースの教育課程について認定する仕組みや,制度として質の保証を図る方策については,下の2番目の,教育課程の具体的な要件として引き続き検討するということであります。
 また,基本的な考え方として,一貫した教育課程の内容や,法科大学院に進学前の学修によって既修得単位と認定される科目等については公表するとしております。
 (2)の,教育課程,4ページ目の下から三つ目の丸でございますけれども,学生はなかなか進路を決めない方もいるということです。そのような方がしっかり法曹に法科大学院を経由してなれるように,学生が法曹を目指す道が狭められないように留意しつつというように,御意見を踏まえて文言を追記しております。
 5ページ目でございますけれども,真ん中の部分,このように法学部において法曹コースを設置する際には,一貫した教育課程の編成等について自校又は他校の法科大学院と連携,協議することを必要とする,この部分については前から書いていたところでございますが,場所を移動させております。
 続きまして,5ページ目でございます。法科大学院との接続ということの一つ目の丸でございますけれども,法曹コースを履修し,法科大学院進学時に法曹コースを修了する予定である学部3年生,4年生という形で明確化したところでございます。また,入学者選抜枠について,定員の5割程度を上限として認めるということは変わりませんけれども,現在入学者数が充足率に達していないところが大半でございますので,実入学者数の5割程度を超えないという部分を追記しております。ただ,詳細な制度設計については,引き続き検討するとしております。
 その下,5ページ目の一番下の丸でございますけれども,地方枠を設けることも期待されるとして,また,これまで法学既修者の能力を測るに当たっては,法律基本科目に相当する科目をしっかりとした筆記試験で実施してきたということでありますが,今後は各大学の判断で,筆記試験を実施しないような場合には,他校の学生の能力を適切にするために,5ページ目から6ページ目にございますけれども,入学の際に共通到達度確認試験の活用も期待されると,前回の御意見を踏まえて記載しております。
 また,その下の6ページ目の上から一つ目の丸でございますが,地方の学生が法科大学院を受けて法曹になることができるようということに関しまして,一つの丸を設けて明確化しております。また,上記の推薦入試を含めた入学者選抜や教育課程の連携により,地方の学生が学修しやすい環境になっているか,その整備状況について,文部科学省は毎年,法科大学院に関してかなり詳細な状況調査等を行っているところでございますので,そのような中で確認をしていくということでございます。
 その次,法学未修者教育の質の改善について,こちらも小見出しを付けさせていただいております。最初が,新たな質保証プロセスの導入ということでございます。6ページ目の下でございます。これまで奨学金につきましては,一度留年をしたら支給対象から外れるということでございましたが,学生支援機構が取扱いを改めたということで,その部分の記載をしております。各大学において適切に運用することが期待されるという形でまとめております。
 続きまして,7ページ目の教育課程の部分でございます。前回の御意見を踏まえまして,一つ目の丸の後半部分,併せて実務家教員の実務経験年数の要件について,科目の特性も踏まえながら,教育の質の保証を前提に見直しを検討するとしております。その下の部分,文言の修正,微修正等をしております。
 その下の公的支援の部分でございます。上から二つ目の丸でございますけれども,御意見を踏まえまして,多様なバックグラウンドを有する法曹を輩出している場合には,併せて評価することとするとしております。
 その下の丸でございますけれども,未修者教育の優れた事例収集を体系化するとともに,未修者教育に対する効果的な教育方法を教育することというのは前回から記載しておりましたけれども,別のところに記載していた,複数法科大学院で連携して教育を実施することというものを併せて,そのような教育が必要であり,教育課程の在り方を含めて,前回しっかりとした検討の場を設けるべきだという御意見がございましたので,それを踏まえて,調査研究を行うと,その成果を法科大学院教育に還元するという形にしております。その他の必要な支援方策については,引き続き検討するという形にしております。
 事務局からの説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 意見交換に入る前に,まず,ただいまの説明につきまして,不明な点等があれば御質問をお願いします。

【中島委員】
 2点お尋ねしたいと思います。まず,3ページ目の「2.法学部の法曹コースの在り方について」の「(1)基本的な考え方」の最初の丸の2行目ですけれども,厳格な成績評価に関して,法科大学院に倣ってとあるのですけれども,これは具体的にどういったことを想定されているのかというのが1点目です。
 それから2点目が次のページ,4ページになりますけれども,4ページの修正をされた丸ですが,法科大学院と一貫したものとして認定する要件ということなのですけれども,この効果といいますか,統制力というか,強制性というか,どの程度のものを今のところ想定されているのかという,この2点についてお伺いしたいと思います。
 以上です。

【井上座長】
 事務局の方からお答え願います。

【大月専門職大学院室長】
 1点目の御質問でございますが,法科大学院で厳格な成績評価をするということでございます。法科大学院に関しては,この十数年掛けてかなり厳格な成績評価を確立してきたということで,一貫的な教育課程を編成するに当たってはそれに倣うことが必要だろうという,委員からの御意見がございましたので,そのような形にしております。先ほどの2点目の御質問とも関係しますけれども,法曹コースの要件として,そのようなことを設けるようなことを考えたいと思っておりますけれども,どこまでそれが最初から現在の法科大学院のようにリジッドな形でできるのか,最初は各法学部での自主性も尊重しながら徐々に進めていく形になるのではないかと考えております。
 2点目の御質問でございますが,認定する仕組みについても,一度昨年7月に職業教育実践プログラムというような例を示させていただいて,このような例なども参考にしながら考えていきたいということを御説明したところでございます。詳細はしっかり詰めていく必要がございますけれども,具体的な要件として,そのような形で認定された場合には,4ページ目にあるような教育課程に関しまして,一番分かりやすい例ならば,修得単位の認定について,これまでは法科大学院入学後に修得単位と見なせるものが30単位であったものが,例えば10単位程度ということで,例えば40単位程度まで拡張するようなことができると,ここに書いているようなことが受けられるようになると考えております。
 以上でございます。

【井上座長】
 よろしいですか。
 ほかに御質問ございませんか。特にないようですので,これからの意見交換の中で疑問点が出てきましたらまた,その点も含めて御発言願いたいと思います。
 それでは意見交換に入ります。前回の会議でも申し上げたとおり,できましたら本日,この案について更に立ち入って御検討,御議論いただいた上で,本委員会として一定の共通認識を得るに至ることができればと考えておりますので,是非その点も念頭に置いて御協力いただければと思います。
 それでは,どなたからでも結構でございますし,どの点からでも結構ですので,御意見がおありの方は,挙手の上御発言願います。
 潮見委員,どうぞ。

【潮見委員】
 意見という形で,確認も兼ねて申し上げたいことがございます。
 まず,最後の点,ローマ数字の「Ⅲ.その他検討すべき事項」,この1の最後の丸です。これは「1.法学部の教育の改善・充実策等について」という中に整理されておりますけれども,この一番下の丸の部分は学部教育の話ではなくて,大学院における研究者養成等に絡むものだと思います。
 そうであれば,しかも加算プログラム等で研究者の養成などについていろいろエンカレッジするという方向も出ていることも考慮したら,この丸については項を別に立てて,理論と実務に精通した研究者の養成等についてでもいいですし,研究者養成及び研究力の強化策等についてでも結構ですので,そのような形で挙げていただければ有り難いと思います。
 更にそれと併せて,この文章ですけれども,理論と実務に精通した研究者を養成し,高度な教育を持続可能とするためにというようにまとめられており,もちろん高度な教育を持続可能とするというのは非常に重要ですが,併せて研究水準の維持といいますか,発展継承を推進するという,そのようなミッションも,法科大学院それから法学研究科にはあるのではないかと思います。少なからぬ法科大学院には,そのようなミッションがあると思っておりますので,少しそこを御検討いただければと思います。これが1点目です。
 2点目ですが,7ページ目,未修者の質の改善のところです。新たな質保証プロセスの導入の方になるかもしれませんが,今回付け加えられた赤い部分を見ていますと,「(2)教育課程」の下の丸の最後に,法科大学院において好事例を共有し,創意工夫を促進することとするという文章がございます。これは私個人が前から思っているところですけれども,未修者の教育の工夫,あるいは取組についての共有ということは,少なくとも現在でもいろいろ行われていて,万策が尽きたとまでは申し上げませんが,かなり意識の共有というのは出来上がっているところもあろうかと思います。
 他方,入学者選抜の部分についての工夫や取組というものについて,果たして従来どこまで好事例を共有して創意工夫を促進してきたのかというところについては,まだやらなければいけないところが残っているのではないでしょうか。むしろ,幾ら教育課程を整理しても,肝腎の入試のところできちんとした選抜ができていないと耐えられないことになります。今回も,この整理の方では教育課程のところには赤の部分で,この部分が補充されておりますが,入試の部分についても同じような好事例の共有,創意工夫の促進という文章を入れていただけないかと思います。
 このままですと,7ページの上から3行目のところに,純粋未修者については,入学者選抜のみでは法曹に必要とされる資質・能力を3年間で身に付けさせることができるかを判断するのが困難な面があるという,かなり現在行われている入試に対するネガティブな評価が表だって書かれているので,そこを何か工夫することができればいいのではないかと感じるところがありますので,御検討いただければと思います。
 最後に3点目ですが,6ページ目の一番上の丸です。この赤で付け加えた部分についてのみ,少し確認がてらお尋ねしたいところ,それから御意見を申し上げたいところがございます。共通到達度確認試験の活用が期待されるという部分です。確認というのは,このように書くことによって共通到達度確認試験の活用というものが今後の法科大学院の既修,しかも法曹養成コース用の入試選抜のところで,標準装備として導入するということを推奨するつもりはないですよねという御確認です。
 要するに,これを入れることについてはプラスの面もありますが,マイナスの面もあるし,それぞれの法科大学院を含めて検討をする必要があるのではないかと思いまして,このようなものもあってもいいよねという程度のものであることの御確認です。
 なぜ申し上げるのかと申し上げますと,現在の司法試験の実施時期を考えたら,共通到達度確認試験の実施時期や実施体制について,まだ詰めなければいけないところがたくさん残っているのではないかと思いますし,さらには,いろいろな法科大学院があろうと思いますが,法科大学院を目指そうとする,しかも今回の法曹コースでは優秀な学生を法科大学院の方に目を向けさせて進めさせようというように考えておられるときに,このような共通到達度確認試験という一つの関門が出来上がったときに,しかも現在の共通到達度確認試験試行試験の問題レベル等を考えた場合には関門にすらならない,しかし,試験を受けなければならないというようなことになると,学生たちがそのような苦労をして法科大学院に進学しようと考えるでしょうか。むしろ,それであれば学生たちは予備試験の方に流れ,予備試験を通ったら後は法科大学院に行かなくても,司法試験に合格できるというような感じで考える人たちにとって,法科大学院という進路選択を控えるという方向にもなりかねないのではないかというようにも強く感じるところがあります。
 要するに,活用が期待されるという部分ですが,もう少し将来を見越した形での検討をするというぐらいの文脈で理解できるような表現にしていただけないかと思います。決してやってはいけないというわけではありませんし,プラスの面もあるというのを私は重々承知しておりますから,その上で文言の検討で御工夫を頂ければという意見です。

【井上座長】
 どうぞ,笠井委員。

【笠井委員】
 今,潮見委員が御指摘された部分は,前回の私の発言に関係するものと理解しますので,その観点から発言したいと思います。潮見委員のおっしゃるとおりではあるのですけれども,「このようなものもあるよね」という程度にはとどまらない問題であると考えております。
 先ほど潮見委員,マイナス面もいろいろあるとおっしゃられ,その点の検討は確かに必要であること,文言にはいくばくかの修正が必要なことには同意しますが,プラス面も十分に考えていただきたいと思います。
 まず1点は,既修者教育についても,課題を抱えた大学院がたくさんあるのに組織的な取組がなされていないとの指摘が,第1の報告議題である状況調査報告の組織的な取組の必要性についてという項目にあります。先ほどの報告書要旨の説明でも触れられたように,個々の教員は,その課題を意識して取組を行おうとしているのに,一方で,大学は組織的に取り組んでいない,あるいは学部と大学院との連携という観点からみての組織的取組にやや欠けるところもあるという指摘もあるのです。教育の質を担保すると,とりわけ既修者の教育についても課題を抱える大学においては,教育における質の担保の観点から,こうした共通到達度確認試験の導入ということを考えてよろしいのではないか。
 もちろん,この対象を幅広にいろいろな設定をいたしますと,それに対する負担とか,学生の意欲とか様々な問題を発生させることは間違いないと思いますので,その点についての慎重な検討は必要だと確かに理解するのですけれども,このようなものもあるよというよりは,もう少しましだということを申し上げたい。
 それから,この点は共通到達度確認試験の対象を,前回の私の発言では既修者コースの入学試験選抜制度の一部として使うということのアイデアであったわけですけれども,既教育課程における使い方も考慮することができるのではないでしょうか。
 共通到達度確認試験に,幅広に活用方法を求めて行っていくということについては,プラスもマイナスもあるので,その点を考慮しつつ,これを自覚するが故に,押し付けるやり方ではなくて,とりわけ既修者教育,あるいは未修者教育に課題を抱える法科大学院が個々に積極的にやっていくべきだというメッセージを発した方がいいのではないかと思います。
 共通到達度確認試験の信頼性という点については,誰も信頼できないという方はいないと思います。そのような意味で,この試験の精度を高めつつ,かつ,非常に難しい話ですけれども,各方面に負担にならず,入学者も含めて呼び込みを図ることができるような活用方法を考えていくことが必要なのではないでしょうか。
 前回の発言の「弁明」も含めて,この点を是非御考慮いただきたいと思います。
 以上です。

【井上座長】
 「弁明」を超えて,更に盛り込めという御意見のようにも聞こえたのですけれど,それも書き込むべきだという御意見ですか。

【笠井委員】
 このようなものであるという程度以上のものは。

【井上座長】
 それは分かったのですが,最後の部分は,既修者の教育のためにも活用すべきだという御意見でしたので。

【笠井委員】
 率直に言って,そうです。

【井上座長】
 そうすると,弁明の範囲を超えていますよね。その意味で,どこかにそのような趣旨の文章を加えるべきという御意見なのかなとも思われたのです。そうでないとすれば,この案自体については,最初の弁明のところだけをお聞きして,もう一つの方は,将来の検討課題というように理解させていただくことになるだろうと思うのですけれども,どちらの御意見でしょうか。

【笠井委員】
 座長の御意向に従った処理で構いません。

【井上座長】
 私自身の「意向」というものは特にあるわけではありませんが,検討させていただきます。一番目の点は,ニュアンスが違うのですけれど,文言で工夫できるかなとも思われますね。
 どうぞ,中島委員。

【中島委員】
 先ほどの質問に関連して,2点お願いしたい点があります。1点目の質問というのは,厳格な成績評価に法科大学院に倣ってという修飾語がついているわけですけれども,大学院に倣ってというところは,できれば削除していただきたいと考えます。非常に形式的にいえば学部の,学士課程の成績評価の基準が,専門職大学院に倣った基準になるというのは余りよろしくないと思います。より実質的なことを申し上げますと,学部の成績評価の基準をコースによって評価基準を変えるというのは,非常に困難を伴うものです。実際,その学生さんの学部時代における正課,課外の活動をみると,こういった成績評価GPAなどを使って奨学金を得たり,留学に出掛けたり,いろいろな活動をします。したがって,法曹コースにいる学生だけが厳格な成績評価を受けるということになると不利益を被りかねません。それはこの委員会が目的にしているところの質の高い法曹養成,より幅広い裾野の中から将来を担う法曹人材を発掘していくという観点からも,慎重な運用が必要なのではないかと思いますので,冒頭に申し上げましたように,単位の実質化とか厳格な成績評価というのは必要だということは当然のことですけれども,法科大学院に倣ってというところの表現については排除をお願いしたいというのが1点目です。
 それから2点目の今回の学部とロースクールとの一貫的な教育課程ということで,先ほどの御説明を伺っていても,どうもまだ腑(ふ)に落ちないところが,コースの認定の話なのか,あるいは個別に置かれている科目がロースクールの先取り学習的に認定されるのかという,幾つかのことがまだきちんと整理されずに俎上(そじょう)に上がっているのではないかという受け止め,認識を私はしております。
 ですから,これは表現を改めるということではないのですけれども,今後の検討に当たって,より丁寧で慎重で,かつ柔軟な検討をお願いしたいと要望を述べさせていただきたいと思います。
 以上,2点です。

【井上座長】
 今の点でも結構ですし,ほかの点でも結構ですが・・・。どうぞ,磯村委員。

【磯村委員】
 今の3ページの,法科大学院に倣ってという部分は,前回私が発言をさせていただいた趣旨を少し考慮していただいたところに関わるのだと思いますが,法科大学院に倣ってというのが,法科大学院と全く同じという意味であるとすると,書き込み過ぎであるということは,そうかもしれないのですけれども,このような法曹コースを経ることによって,ある種,特別選抜枠で一般入試とは違う形で入学できるということになると,学部科目の成績評価において,例えば受験者の半数に優が与えられるというようなことであれば,それは法曹コースにおける成績評価として適切ではなくて,法科大学院に倣ってという表現はともかくとして,一般的な学部と同じ緩やかな基準でいいかというと,必ずしもそれはそうではないのではないかというのが私の前回の発言の趣旨であったということを申し述べたいと思います。
 もう一つだけ。4ページのところの(2)教育課程の一番下から二つ目のところで,学生が法曹を目指す道が狭められないように留意しつつというのが,今回新たに付け加わったのですけれども,前回,例えば3年生,4年生になって改めて法曹を志望するような学生にも配慮する必要があるという御趣旨の発言だったと思いますが,これは私の理解によれば,比較的遅い段階になって法曹を志望する学生諸君は,法曹コースに入らなくても,一般入試で法科大学院に進学することはできるので,そのような方にとっては別にこのコースがあるからといって,進学の道が狭められるということではないように思われます。
 逆に気になりますのは,例えば未修者について,もう法学部出身者からは受け入れないというような選択を仮に認めると,法学部に在席はしていたけれども,途中までクラブ活動に時間を注いで,法律の勉強をしなかった学生諸君は,いざ一念発起して法律家を目指そうとしても,そのようなタイプの学生が行けるルートがなくなってしまうことになり,それはそれでよくないのではないでしょうか。そのようなニュアンスを含めて理解していただくと,これはこれで意味があるというように感じました。
 以上でございます。

【井上座長】
 では,瀬領委員。

【瀬領委員】
 今のことについて一言,中島委員の発言に賛成するということなのですけれども,過去,関西の私大で法曹コース的なものを作ったところが,法曹コースの成績が悪くて,一般の方がよくなったという傾向があって,法曹コースをやめたという経緯があるのです。
 中島委員の御発言にあったように学生は,いろいろな活動をします。海外留学や国内の派遣などです。そのような活動への派遣選考に際して,大学では,他の学部の学生と同じ基準で評価をします。厳格な評価自体を否定するものではありませんが,そのような意味では,学生の学びの多様性を考えると,余り厳しくし過ぎると多様性への動きを抑制することになります。どのように厳格な評価とバランスを取って,学部生としての多様な学びを経てロースクールに進学することを確保しようとすると,慎重に考えて設計しないと,学部運営上は非常にいろいろな問題が出てくる可能性があります。その点は注意をしていただいてもいいのではないかと思います。
 そのようなことから,法科大学院に倣ってというような形で限定をするということについては,少し注意をした方がいいのではないかと個人的には経験上思うところです。

【井上座長】
 どうぞ,髙橋委員。

【髙橋委員】
 私も,法科大学院に倣ってというところは削除していただいた方がいいかと思っております。中島委員・瀬領委員の御指摘のとおり,法曹コースの学生についてのみ評価の考え方を変えるのであれば,同コースの学生に不利に働くという問題もあり得ると思いますし,また,法曹コースの学生についてだけ異なる評価方法を用いるというのは,実際どのように評価をするのか,同じ教室で学ぶ法曹コース以外の学生についてはどうするのか,これらの学生にもマイナスの影響が生じないかというような問題が必ず出てくるような気がいたします。
 もちろん,緩やかな成績基準で推薦を認めるのは適切ではないと思いますが,「法科大学院に倣って」というよりは,「厳格な成績要件を課す」とか,そうした表記にはとどめていただいた方が良いのではないかと思います。

【井上座長】
 そこのところは非常に難しいと思うのです。他面で,法科大学院の方でいろいろ特典が与えられるわけですから,それに見合った質保証が必要となる。無論,法科大学院の方で個々の学生を個別的に評価して特典を与えるかどうかの判断をするということも,論理的にはあり得ないわけではないですが,それは非常に難しいので,法曹コース認定のところで質保証のために一定の要件を課すことが必要になるということなのです。
 そのときに,法科大学院と同じというのは,確かにおかしいと思うのですが,そのような特典を与えて良いような要件というものを設定できるかどうか,でしょう。
 ですから表現としては,確かに引っ掛かるかもしれませんが,そこを差別化しないでたくさんあるコースの一つで,そこを取っても何の意味もないということでは意味がないわけですので,その辺をいかに工夫できるかでしょう。
 どうぞ,大沢委員。

【大沢委員】
 基本的に,今回の基本的な方向性について,新しい丸を加えてくれとか,この丸を削除してくれという意見はありません。この中で,地方の法曹志願者に配慮した制度設計をしてほしいということがきちんと書き込まれているということもよかったと思います。
 その上で,幾つか気になった点だけを申し上げたいと思います。今回この法曹コースを設けて,意欲と能力のある学生に学部3年と法科大学院2年という道を開くということは,時間的,経済的な負担の軽減を図るという意味でも理解できると思います。
 一方で,意欲はあるのだけれども,じっくり4年で学びたいという人も当然いると思うわけで,そのような意味で,この法曹コースが3年だけではなくて4年ということも,ある程度きちんと読み取れるようになっているのも,これでいいのではないかと思うところです。
 そこで考えると,この法曹コースでは3年で行く人もいれば,4年で行く人もいる。それから,これから法科大学院と法学部の連携も,いろいろな連携の授業の在り方などが変わってくるといったときに,5ページの一番上ですが,単位数の上限を一定程度緩和するという記載がございます。要するに,法科大学院で取ったものと見なせるようにする。それが10単位ぐらいでいいのか,それで十分なのかというのは,私は大学の専門家ではないので分からなかったのですが,共同でいろいろこれからやっていく授業など工夫されて,いろいろな取組が出ていくときに,3年ではなくて法曹コース4年で行く人がいることを考えたときに,10単位程度で十分なのか,もう少し必要なのか,私は専門家ではなくて,なかなか分からないことですから,その辺というのは,これから検討されてもいいと思った次第です。
 それから未修者教育については,ここで現在非常に入学者数が減っている状況を考えると,入学者の質を確保するという点から,「3割以上」を見直すということはやむを得ないと思っているのですけれども,ただ,前にも申し上げましたが,これが未修者の切捨てというか,未修者を削減していいのだというような誤ったメッセージにならないようにしていただきたいというのが非常に強く願うところでありまして,制度創設時のときのように優秀な未修者が法曹を目指すというのが,本来あるべき姿だと思うのです。
 ですから,前回の会議で私は欠席しましたので,議事録を見させていただいて思ったのですけれども,鎌田委員がおっしゃっていたと思いますが,こういったことが未修者の定員を一気に削減するようなことにならないように,そういったメッセージを何らかの形で発するべきではないかというのは私も非常に思っているところです。
 未修者を法科大学院が受け入れたら,これも前に申し上げたのですが,未修者の社会人の方とか,実務経験者の方が自分の仕事をなげうって法科大学院に入ってくるということは,皆さんそれなりに覚悟を持って法科大学院に入ってくるわけですから,受け入れた法科大学院はきちんと法曹に育てるという責務があると僕は思うのです。
 ですから,これはこれからの検討だと思うのですけれども,ここでいろいろ案が出ている法科大学院同士の連携強化とか,奨学金のいろいろなシステムの充実とか,入学前の期間をどうやって使っていくか,そこを有効活用していく,そういったことを何らかの形で,今後の検討で結構なのでパッケージとして,こういった形になるのですという姿を社会人の方とか,これから法曹を目指す方に示せるような形に,今後の検討をしていただきたいと思うところです。
 以上です。

【井上座長】
 どうぞ,長谷部委員。

【長谷部委員】
 ただいまの大沢委員の御発言と問題意識は共通するところがあるものですから,発言させていただきたいと思います。当委員会で法曹コースの話が割合早い段階で出てきたときには,時間的,経済的負担を軽減するというところに重点があるかのような,そのような印象を受けていたのですけれども,今回のこのペーパーを拝見しますと,全体のトーンとして,それはそれほど大きくなくて,むしろ法学部と法科大学院とで一貫した教育課程であるとか,一貫した法学教育であるとか,そういったところが割合強く出ていると,むしろそこに重点があるのかというような印象を持ちました。そこの関係で,先ほど法科大学院入学前に取ったものとみなす科目が10単位で十分なのかどうかという御発言もありましたけれども,10単位という数量的なものが十分かどうかという問題以外にも,ここで想定されているみなすものというのが,法律基本科目に限られているかのような,そのような感じもあります。例えば慶應義塾大学の方で作られた,非常に詳細な資料が大変参考になると思うのですけれども,これは,基本科目7科目についてでありますが,法曹になるために必要であって,法科大学院でも,できれば入学のときに身に付けていてほしいと思うのは,例えば比較法であるとか,それから法情報調査のデータベースを使って判例文献を検索するような技能だとか,できれば学部段階で,むしろ身に付けておいた方がいいのではないかと思ったりします。
 特に比較法は,グローバル化という観点からいっても非常に重要ですし,それから現在の法解釈とか立法を相対的に見て,新たな可能性を自分で考えていくという上でも,比較法というのは非常に重要だと私などは思っているのですけれども,そのような意味で,学部段階でそういった科目についても履修できるようにして,かつ,それが先ほどの厳格な単位認定ということもありましたけれども,非常に成績が良いと,Sであるとか,Aであるとかという非常によい成績を取った場合には,それを履修したものとみなすとか,そういった方向性もあり得るのではないかと思います。
 これは今後引き続き検討していくべきであると,4ページ目あたりに書かれている内容に当たるのだろうと思いますけれども,そういった,必ずしも法律基本科目に限らないような形で一貫した教育課程というものを考えていただければと思います。
 以上です。

【井上座長】
 ほかの方,いかがですが。

【加賀委員】
 ほかのことになって申し訳ないのですけれど,3ページの「1.法科大学院と法学部の連携強化について」のところです。先ほどもお話がありましたように,これがかなり今回のメーンになっているというように私も理解をしております。すごく大がかりな変更だと思うのです。大学界,法学部でもそのように受け取ると思うのですけれども,このままの表現では何か等質化といいますか,どこの大学の法学部も法科大学院も,このような連携をしていく,どこの大学院も法学部も同じような印象になってしまうと,かえってこれはよくない。
 つまり申し上げたいのは,各大学の特色を生かすことが,今回の制度の作り方においてはすごく大事なことではなかろうかと思っています。大規模校は大規模校なりの特色を,もちろん出せると思いますけれども,小規模校においても,特色を出すことによって,一貫という言葉も出ていますけれども,そのような教育を出していくところであります。
 その点が3ページの1の連携強化に関する四つの丸の中には込められていないかと。どのような表現をするかということになるかもしれませんけれども,そのようなことを感じております。
 以上です。

【井上座長】
 どうぞ,松下委員。

【松下委員】
 資料2の5ページで,法曹コースの教育課程のところなのですけれども,上から二つ目の丸に,法学部において法曹コースを設置する際には,自校,他校の法科大学院と連携,協議することを必要とするとの記載が前回のバージョンに比べて付け加えられています。主語は法学部が連携,協議するとなっていますけれども,法科大学院の方から見れば,法科大学院は自校,他校の学部と連携,協議するというようになるのだろうと思います。そうやって連携,協議することによって,同じページの下の方にあります,入学者枠の設定のような特別扱いをするということと結び付いてくるのだろうと思いますけれども,法科大学院から見て,個別の学部と必ず連携,協議しなければいけないかというと,ほかの選択肢もあるのではないかという気もします。つまり法科大学院から見れば,学部の法曹コースのカリキュラムを見て一定内容のものであれば,個別の連携や協議はなくても入学者枠を作ることは考えられるのではないかと思いますので,連携,協議のような固い個別のものだけではなく,法科大学院から見て,このような法曹コースならいいですよという認定のようなやり方もあっていいのではないかと思いますので,ここは御検討いただければと思います。
 それから,純粋に表現だけのことなのですけれど,1ページの下から4行目から2行目で,三権の一翼を担うべき人材として養成された法の担い手として,法曹界のみならず云々(うんぬん)とありますけれども,三権の一翼ということは司法権のことをいいたいのだと思います。司法を担うべき人材として養成された法の担い手として,法曹界のみならず企業,官庁というのは,趣旨がよく分からないので,言いたいことが,もし,法曹有資格者は古典的な意味での法曹界のみならず,いろいろな分野に出ていくべきだという趣旨だとすれば,もう少しそれが分かるような書きぶりの方がいいような気がするので,表現を工夫いただければと思います。
 以上です。

【井上座長】
 要するに,高度の法律専門職として養成されたという趣旨なのだと・・・。

【松下委員】
 そうです。そのような人たちが古典的な意味での法曹界のみならず,多様な分野でということだと思うので,その趣旨が出るような書きぶりにしていただきたいと思います。

【木村委員】
 先ほどの長谷部委員の御発言に関係したことなのですけれども,4ページの上から二つ目の丸で,既修得単位として認定する科目は公表するとなっておりまして,何を既修得単位にしてもらえるのだろうというのは学部生にとって非常に関心の高いことだと思うのですけれども,そうしますと,それは5ページ目で,先ほど長谷部委員がおっしゃった10単位の既修得単位の緩和の中身と関連すると思いますが,結局その科目が,これに当たるということになるというように理解してよろしいのかということと,7科目で10単位というのは,どのようなことになるのかというのを,もし分かれば,教えていただきたいと思いました。よろしくお願いします。

【井上座長】
 これは御質問の部分もあるので,大月室長の方からお答え願えますか。

【大月専門職大学院室長】
 今,木村委員がおっしゃった,正に既修得単位が10単位ということと関連はしてくるということでございますけれども, 5ページ目の上から一つ目の丸にありますように,この10単位というのは法律基本科目というよりは,基本的に,例えば基礎法学や,隣接科目や,法律基本科目と関連が深い展開・先端科目等を基本的に考えております。
 過去の委員会では法律基本科目も当然対象となるのであろうという御意見もありましたが,今後そこも認めるかということはありますけれども,法科大学院において双方向,多方向的な法律基本科目の授業を行うというのは,そこは基本的には変わらないのではないかというように考えております。
 また,長谷部委員から御指摘ございましたけれども,今回慶應義塾大学をはじめとする7大学がまとめていただいた報告書において,あくまでも法学部において法科大学院でいう法律基本科目に相当する科目を,どのように形で学べば既習コースにスムーズに円滑に進むことができるか,今までなら4年ですが,3年でもできるかどうかということを検討していただいたものでございます。法学部の法曹コースにおいては,それ以外の科目についても適切に学んでいただくことが期待される,そのような形の制度設計にしようと考えております。
 以上でございます。

【木村委員】
 仮にそうだとしますと,学部のときに,基礎法的な科目を取って,それを既修得単位として認めてもらうということかと思うのですけれども,そこを評価するといっても,各大学でばらばらなものを出されても,学部生としてはすごく困るというか,自分が何を取っていいのか分からないというようなことになると思ったのですが,将来どうなるか分かりませんが,そのような問題がないのかということだけ確認させてください。

【大月専門職大学院室長】
 具体的にどのような形で公表していただくのかというのは,まだ具体的なものはございませんけれども,法科大学院については,毎年状況調査で履修科目の人数等まで調べているところでございまして,このような科目に関して公表いただくことについては,それらのことを考えれば,やっていただけるものかと思っています。
 ただ,学生に分かりやすいように公表できるように,ある程度,様式とか形式をそろえた方がよいのかもしれませんけれども,そのあたりについては,各法科大学院とも御相談しながら決めていきたいと思います。

【井上座長】
 法科大学院の方は,展開・先端科目で何単位取りなさいという定め方で,その展開・先端科目としてリストアップされている科目には,ある程度の幅があると思うのですが,それに相当するような科目を学部で取ってくれば,それは法科大学院の方で展開・先端科目を取ったものとみなしますと,恐らくそのような定め方をすることは十分可能だろうと思います。そうだとすると,自校の法学部で全部は提供されていなくても,そのうちの幾つかは,標準装備として提供されているのが普通だと思われますので,それほど不都合は生じないのではないでしょうか。そこのところは要件の定め方をいかに適切に柔軟なものにするか,ということだろうと思いますね。
 学部生で優秀な学生が法科大学院に進学しようと希望するときに,先に取っておこうという気になってくれるような示し方をしないと,意味がないだろうと思うのですね。

【木村委員】
 ありがとうございました。

【井上座長】
 どうぞ,磯村委員。

【磯村委員】
 今の点に関連する,5ページの現行30単位で単位数の上限として既修者認定ができるということの意味なのですが,現在は一般的には既修者試験を受けて,その科目について単位を認定するという形で30単位というのが上限して認められているのですけれども,法曹コースということになると,恐らく法曹コースでどのような法律科目を勉強したかを考慮し,それに応じて30単位プラス10単位を上乗せしていくという仕組みになっていくと思いますので,従来の30単位の考え方も,既修者試験と切り離して考えないといけない部分があるのではないかと感じました。
 もう1点は趣旨確認なのですが,資料の3ページ,Ⅱの1,三つ目の丸の趣旨なのですけれども,「そのため」に続くところで,3行目に,連携の実効性を高めるためとあって,最後に,兼務を認める制度改正について,法科大学院において活用するべきであるというくだりがあります。
 従来の法科大学院は,むしろ法科大学院に専属する専任教員が多い方が望ましいという制度設計で出来上がっていたのですけれども,この三つ目の丸のメッセージは,むしろ兼務をする教員が多い方が望ましいという方向に転換したのか,あるいはそうではなくて,そのようなこともあり得るという程度のニュアンスなのか。この表現だと,兼務をしていない教員が多過ぎると,かえってよくないという趣旨に読めそうなのですけれど,そこの趣旨は事務局としてはどのようなお考えだったのですか。

【大月専門職大学院室長】
 このような制度改正を行いますので,法科大学院によっても活用してほしいということではございますが,フルに活用するか,どの程度活用するかについては,法科大学院に委ねられるということであります。
 なお,先ほど長谷部委員,木村委員から御指摘があった点につきまして,5ページ目のところでございますが,今の書きぶりでは確かに,磯村委員からの御指摘にありましたけれども,法律基本科目等を非常に学修して,その結果として30単位以上に既修得単位としてみなせるような,その部分も一応入っていることは入っておりますので,その点について具体的に制度化するに当たりましては,委員の皆様方の御意見も聞きながらやっていきたいと思っております。
 以上でございます。

【井上座長】
 ほかに御意見はありませんか。どうぞ,岩村委員。

【岩村委員】
 今日のこの御用意いただいた基本的な方向性の案については,今日いろいろ御意見はありましたけれど,私としては基本的にはこれでおおむねよろしいのではないかというように思っております。もちろん,いろいろ御意見も出たので,その辺についてどう取捨選択し,書きぶりをどうするかとかいうようなことについては,座長と事務局にお任せすればよろしいかというように思っております。
 あと,1点だけなのですが,先ほど議論になりました,法曹養成コースにおける成績評価の問題ですけれども,各大学それぞれ御事情があるということは,今日伺いまして理解はしたところですが,先ほど磯村委員の御指摘にあったように,法曹養成コースということで,それが結局,法科大学院の特別選抜へとつながるということがあるとすると,法曹養成コースにおける成績評価ということについては,一定の厳格さというものがないと説明がつかないのではないかと思います。
 もし,そこを余りきつくしないのだということになると,結局のところ,選抜のところできつくやらなければいけないということになってしまって,そうすると,そもそも接続のものが,選抜の段階で切れてしまうことになってしまうというように思います。
 ですので,書きぶりをどうするかという問題はありますけれども,ある程度特別の選抜をやってもいいのだという説明が付く程度の,きちっとした成績の厳格な評価というものは必要なのではないかと思いながら,先ほどのお話を伺っておりました。
 あと,最初大事だと思ったのは潮見委員の御指摘で,見え消し版だと8ページ最後,研究者の養成のところは,潮見委員のおっしゃるとおり,ここは一つ項目を立てていただいて,整理していただいた方が明確にもなりますし,メッセージ性も強くなるかと思いますので,そこは御検討いただければと思います。
 以上でございます。

【井上座長】
 項目を立てるのか,項目を削るのか・・・。

【岩村委員】
 項目を削るのはちょっと。是非そこはやめていただきたいなと思います。

【井上座長】
 どうぞ,土井委員。

【土井委員】
 ありがとうございます。私も本日の基本的な方向性案は,委員会におけるこれまでの議論を適切にまとめていただいたものであると考えております。先ほど来,各委員から御意見が出ておりますが,御意見のほとんどは具体化に向けて検討を早く進めるべきだということかと思いますので,本日このような方向性について共通理解を図った上で,その具体化に向けて速やかに検討を進めていただきたいと思います。
 そこで私からは,具体的検討における留意点として2点ほど述べさせていただきます。第1に,今回の既修者教育改革の要は,法学部に法曹コースを設置して,法科大学院教育との連携を図る点にあります。この法曹コースに期待されていますのは,何よりもまず高校生,あるいは法学部生の法律実務,法曹への関心を高め,法曹志望者を広く集めて,その能力の底上げを図ること,これが第1です。第2には,3年卒業を活用することで法曹資格取得までの時間的,経済的負担を軽減して,優れた資質を持つ者が法科大学院で充実した教育を受けるインセンティブを強めることだと思っております。
 法曹志望者身の裾野を広げていくと同時に,その頂を高めていかなければならないということなのだと思います。恐らく今後検討を進めていく上で,この二つの要請のバランスを制度全体として,あるいは各法科大学院において,どのように図っていくかということが重要になってくるのだと思っております。
 これまで法科大学院を取り巻く負のスパイラルといわれてきたものを断ち切るためには,インパクトのある改革でなければなりませんが,制度への信頼を確実にするためには,学生に対しても,あるいは社会に対しましても納得が得られる結果を示していかなければならないと思います。
 また,法科大学院制度を取り巻く現状を考えれば,今回の改革をできるだけ速やかに進めなければなりませんが,他方で,学生の間で混乱を招いてはいけませんので,円滑な移行のためには一定の時間的な枠を設定して段階的に目標を実現していくことも必要になるかもしれません。
 いずれにしましても,今回の改革案はこれまでの取組の集大成であるという面がございますので,失敗は許されないということからすれば,今申し上げたような点についてしっかり見通しを立てていかなければならないと思います。
 その見通しをしっかり実現していくためには,法曹コースを認定する仕組みや制度として質保証を図る方策,あるいは法科大学院の入学者選抜における質保証等が必要不可欠になりますので,この点につきましては引き続いて検討をしっかり行っていただきたいと思います。
 第2に,未修者教育についてですが,先ほど大沢委員からもありましたように,未修者教育は多様なバックグラウンドを有する優れた人材を法曹として輩出して,法曹の視野を広げて活動領域の拡大を目指すという目的を持つものでございます。したがいまして,厳しい状況下にありましても,司法制度改革の基本理念に関わるものとして将来に確実につなげていく必要があると思います。
 今回,既に様々な改善策が盛り込まれておりますし,法科大学院としても積極的に取り組む必要があると思います。ただしかし,より中期的には,多様なバックグラウンドを持つ者が,3年間の教育を通じて法曹となるための基礎,基本をしっかりと学修するために,どのような教育が効果的かという観点から,カリキュラムの内容を含めて,教育内容の方法について抜本的な検討が必要になってくるのではないかと思います。
 今回の取組,あるいは調査研究を行っていただくことを通じて,是非そうした検討につなげていっていただきたいと思います。
 以上,申し上げましたような点に御留意いただいて,司法試験あるいは司法修習との有機的な連携の在り方を含めて,更なる検討を速やかに進めていただければと思います。
 以上です。

【井上座長】
 では,大貫委員。

【大貫委員】
 一言発言申し上げます。私も土井委員と岩村委員と同様に,基本的に今回の取りまとめに賛成です。その上で幾つか申し上げたいと思います。皆様御承知のように,法曹志願者は減少しております。磯村委員によるワーキングの報告の際にも,志望者増に関して各法科大学院が既に非常に手詰まり状態にあり,徒労感が漂っているということが指摘されました。法曹志願者が減少していることは紛れもない事実だろうと思います。社会のインフラたる法曹を養成するプロセスが,今困難な状況に直面していることは間違いないことです。
 この法曹志願者の減少の要因はいろいろあろうと思いますけれども,法曹人口の予測と現実の動きの乖離(かいり),そして法科大学院が想定よりも多い定員でスタートせざるを得なかったことなどによって,司法試験の合格率が伸び悩んだところに一つの要因があったと思います。
 今般,本委員会において,学部連携について様々な視点から多様な議論がなされましたが,その議論は何よりも法曹志願者を増大させることを目指しております。併せて既修者の法的能力を向上させ,司法試験合格率を上昇させること。予備試験に流れる学生を大学教育課程に取り込むことを目的としていると思います。そうした目的のために,主に二つの手段が議論されたと理解しております。
 一つは,3年あるいは4年の法学部法曹コースを作り,効果的な法律学習を行うこと。もう一つは,法曹コースの「3+2」の5年間コースにより,法曹になるまでの学生の時間的,経済的負担の軽減を行うということです。
 法曹志願者の減少という事態に直面したとき,法曹三者,文科省それから法科大学院関係者が状況及び方向性について認識を共通にしてこうした手段を取ることは,加賀委員御指摘のように,各校の特色に対する配慮を伴いながらも,必要であろうと思っております。
 他方で,法科大学院の定員が過剰であったことなどにより,司法試験合格率の低迷を招き,法科大学院志願者が減少してしまった前車の轍(てつ)を踏まないようにしなくてはいけないと思っております。そのために,以下の点に注意を払う必要があるのではないかと思っております。法曹コースが効果的な法学教育を行い,また,法曹コースの「3+2」の5年間コースが学生にとっての時間的,経済的負担の軽減となり,その結果,法曹志願者の増大につながるためには,このコースを経た学生の法的能力が向上し,司法試験合格率が安定したものとならなくてはなりません。そのためには,法曹コースが学生の実力を高める効果的な教育を提供できるよう,制度設計がなされ,法曹コースの卒業者の質保証がされなくてはなりません。
 もちろん,法曹コースに接続する法科大学院の教育課程も,法曹コースと適切に連携し,そうした実力養成に寄与するとともに,法曹コース卒業者の質保証においても一定の役割を果たさなければならないと考えております。このことは土井委員の指摘とも重なりますけれども,最も重要なことだろうと思っています。
 併せて2点発言することをお許しください。1点は,地方において法科大学院がない大学で学んでいる学生に対する配慮が必要だろうと思います。今般の取りまとめにおいては,例えば各法科大学院の方針に基づく地方枠への言及なども行われており,一定以上の配慮がなされております。この点については,引き続き十分な配慮をお願いしたいと思います。
 もう一つは未修者教育です。この点,本取りまとめでは,その重要性が十分に示されていると思います。例えば複数法科大学院で連携して教育を行うことにも言及されております。そのことも含めて,未修者の教育課程の在り方について調査研究をすることを掲げています。これは多少私の意見も入れていただいたのではないかと思っていますけれども,このような検討の場のあることは,多様なバックグラウンドを持った方にロースクールに来ていただくという観点から見ると,大変重要なことだと思っております。
 しかしながら,この調査研究は一定の時間枠の中で実効的で具体的な未修者対策を打ち出すことが必要だと思います。しかも大沢委員の言葉を借りれば,私も前回申し上げましたパッケージとしての未修者対策を打ち出す方向で検討していただきたいと思います。
 長くなりましたが,本日の基本的な方向性(案)をステップとして,更に充実した検討を進めて最終取りまとめを行い,具体的取組を速やかに構築し,その取組によって法科大学院が法曹養成制度の要として安定することを期待しております。
 以上でございます。

【井上座長】
 ほかの方,どうぞ。

【岩村委員】
 先ほど土井委員が非常に重要なことをおっしゃいましたので,私も追加したいと思います。これで基本的に構成というものが取りまとまっているということになりましたら,この後,できるだけ速やかに具体的な方策についての検討を進めていただきたいと思います。と申しますのは,前にも私は申し上げたのですが,この手のカリキュラムの改革であるとかコースの改革というのは,どうしても年次進行でやらなくてはいけないというところがあり,スタート時点が遅くなると完成時点が遅くなるという問題がございます。
 したがって,各大学がやろうというところはなるべく早く検討のスタートが始められるように,具体的内容の詰めというものを,余り私はこの言葉は好きではないのですが,ここでは使わざるを得ないのですが,スピード感を持ってやっていただければと思いますので,その点をお願いしておきたいと思います。

【井上座長】
 どうぞ。

【瀬領委員】
 ありがとうございます。同志社は既に早期卒業を4年間実施して,実質「3+2」的な運用をしております。ただし,それは推薦選抜制度がないという前提のものです。「3+2」の学生でも通常の入学試験を受けるという前提で運用しております。そこでは当然,成績評価の在り方等も違ってきますので,今般推薦入学制度を導入するとすれば,本学においても見直しが必要になるのだろうと思います。その点で,この間ずっと強調してきたのは,先ほど加賀委員がおっしゃったように,早期卒業制度の制度設計運用,あるいは法曹コースの設計運用に関しても,各大学の自由度を重視する形の具体的な検討をしてほしいと思います。ここではまだ,そこまで踏み込んでいませんし,それは恐らく入試の制度設計,あるいは早期卒業についても在り方の検討となるでしょうから,具体的なことは次の検討になると思うのですけれども,今の段階でそれらの枠をはめないように,多様性を確保できるような方向での議論を,この段階では考えてほしいと思います。
 同志社の場合は,例えば何がロースクールの教員にとって一番大事かというと,ロースクールの教員が学部の授業で,要するにエクササイズといいますか,ゼミ的なものをもって憲民刑の具体的な事例問題を学生と検討することです。それによって,学生の不十分な点などを把握して,それを既存の学部の講義にフィードバックし,学部教員と連携を取って学生の学修を把握していくことを行っています。その学生が同志社のロースクールに上がることによって,当然ロースクールの教員も学生の学部時代からのいろいろな特徴も知っていますから,ロースクールでもより十分な教育ができる,このような点をロースクールの教員も評価していました。これは同志社の単なる経験なので,今般制度が変われば,また新しいことを考えなくてはいけなくなるとは思うのですけれど,そのような各大学の特徴があると思います。その点を十分生かせるような,柔軟性を持った多様な制度を作れるような検討を今後お願いしたいと思います。

【井上座長】
 ほかに御意見ございますか。どうぞ。

【日吉委員】
 私も今回の基本的な方向性には異存ございません。これを基にたくさんの委員がおっしゃったように,速やかに,より具体的な検討を進めていく必要があろうかと思います。
 一つだけ,あえてコメントというか御願いをしますと, 2ページ,「法科大学院等の教育の改善・充実に向けた基本的な考え方」において,幾つか丸がありますが,既修者コースについてはこのような改革,未修者コースについてはこのような改革というように大きな方向性がまず示されているわけなのです。今までの今日の議論でも,既に表れているように,既修者コースの方については大体,多少の温度差はあるにせよ,ある程度のイメージのようなものが出来上がりつつあって,あとはそれを実現していくための具体的な要件を考える,認定をどうするのだとか,そのような検討に入っていく段階に来ているのかと思うのですけれども,未修者コースの方は,先ほど大貫委員からも意見がございましたが,非常に重視していただいているということについては,非常に結構なことだと思うし,その方向性でやっていかなければならないと思うのですけれども,現時点ではまだ調査研究をしましょう,そして早くいろいろ知恵を集めて,それを共有しましょうという,やや抽象度の高い段階にとどまっている。これからいろいろなことを調べていって,情報も集めて整理して,それから具体的なことを考えていくのだという段階。やや進んでいる段階に差があると感じました。
 そうしますと,結局のところ既修者コース,未修者コース,どちらも連携も含めてですが,法科大学院及び大学の法学部の限定されたリソース,特に人的リソースの中で全てをやっていかなければならない。その中で未修者コースと既修者コースをどうするのかということに,結局はならざるを得ないのではないかと思います。
 ですから,私の現段階での懸念としては,先ほど来,出ております未修者コースについても,ある種パッケージとして具体的な案を出していってほしいという思いを共有するものなのですけれども,そのときに既修者のコースの方の改革はずっと先に進んで,具体案が進んでいるということになったときに,パッケージとして示したいのだけれども,これは誰がやるのだというような,全体の人的リソース,我が国の法曹養成全体のキャパシティーのようなものを,全体を見通してバランスよく両方にきちんと対応していけるようなバランスで配分されていくことも留意しつつ,それぞれ既修者コース,未修者コースについての具体化の検討というものを進めていただきたいと思っております。

【井上座長】
 今の点は非常に大事だと思うのですが,一方で,法曹養成コースを学部の方に設けてもらい,それと連携する形で既修者の方の改革を図っていくというのが一つの筋で,しかし,それについても,先ほど岩村委員がおっしゃったように,年次進行ですし,これから具体的に詰めるのは結構困難を極める点もたくさんあると思うのです。それを詰めた上で,更に年次進行でそれを実施していくのに,ある程度時間が掛かるわけですね。
 他方,未修者の方は,先ほどスピード感というのは嫌いだとおっしゃったのですけれども,現状に鑑みますと,じっくりやっているというわけにはいかず,むしろ集中してインテンシブに検討して,具体的な案を出していかなければ,立ちゆかなくなるわけで,そうしますと,それほど大きくずれてはこないのではないかと思いますね。

【潮見委員】
 すみません,簡単に,高等教育局長以下にお願いということで,一言申し上げたいことがございます。今回の基本的な方向性ということについては,個々の委員の方々含めて私も共感するところがございます。また,この間の動きについては,法科大学院での法曹養成教育とか,あるいは法学部の教育に携わっている人間からすると,ある程度情報もあり,今どのような方向に進んでいるかということでの議論というものは結構進んでいる,あるいはいろいろな形で検討されていると思います。
 ただ,実際に,先ほどもスピード感を持って具体的な施策を大学の中で行おうとすると,どうしても大学本体における理解というものが非常に重要になってまいります。法学研究科の教授という立場を離れて,大学執行部側の立場に立った場合に,実際になぜ「3+2」が必要なのか,なぜ大学は4年制で学部を卒業しようというシステムを構築しているにもかかわらず,3年で修了,卒業をさせるという策を法曹コースに登録した者に対しては導入しなければならないのかという事柄について,なお十分な理解が得られているとは言い難い状況にあろうかと思いますし,そのあたりのところについて,法科大学院における法曹養成教育というものを充実していくのには,この制度が是非必要なのであると。3年時での卒業というものをある程度強調していくことも重要であること,さらには,未修者教育において他大学との連携というものについても,ある程度視野の中に入れた形で教育の在り方というものを考えていかなければいけないことを,分かっていただけるような形でのバックアップ,御支援ということをお願いしたいと思います。
 大学の中にいる人間として一番大変だと思うことの一つが,今申し上げたところなのです。よろしくお願いいたします。

【井上座長】
 御意見はまだまだおありだと思うのですけれど,そろそろ時間のこともお考えの上,御発言いただければと思います。

【有信委員】
 今まで未修者をどうするかという話と,それから既修者で優秀な学生に対して,いかに負担を少なくして法曹に向かわせるかということで議論をし,まとめられた,その内容については基本的にはこれで私は異存ないのですけれども,また別途,大学院部会でいろいろ議論されている専門職大学院の在り方,それから大学分科会で議論されている将来の高等教育制度の在り方,このようなことと含めて,それと一方で,世の中で今,急速に進んでいるAI等々の技術的な進展も含めて,ELSIのような問題を本当に真面目に考えていかなければいけないと思います。
 このようなことを考えると,未修者教育が非常にこれから重要になって,法学未修者を法曹に持っていくところのシステムが非常に重要になってくると思うのです。
 ですから,今回のこの内容は専門職大学院の中でも極めて進んだ議論で,ある方向を出しているので,これをほかの専門職大学院の中でどのように位置付けていくかという話と,それからもう一つ,将来の高等教育の中で,先ほども出ていましたけれども,要するに学部教育をどのように考えるかという話です。学部教育と大学院教育をどのように考えていくのかというところの議論も,本当は必要なのです。だから,法学部の特定の人たちに対して「3+2」でという仕組みを作ったときに,日本の大学の学部教育をどうしていくのかという観点でも考える必要があると思います。
 それから海外,例えばヨーロッパではバチェラーというのは3年というシステムになってきていますが,そのようなことも含めつつ,議論をやっていかなければいけないと思います。その中で,今回のこの取りまとめの意味は結構重要になってくると思いますので,今後の議論のときに,そのようなことを是非頭に入れつつ進めていただければと思います。

【井上座長】
 ありがとうございました。どうぞ,義本局長。

【義本高等教育局長】
 今,有信委員からまとめていただきましたように,今,大学の改革の議論はかなり進行しておりまして,将来の在り方をどうするのかというグランドデザインの議論をしており,その中でも,今お話しいただきましたように,他学部との連携ですとか,あるいは学部と大学院をどうつないでいくのかとか,あるいはいろいろな資源を,授業科目ですとか,先生も含めてですけれど,シェアリングをどうしていくのかというような話がございます。
 そのような議論と,ここでの議論は整合性を取る形でしないといけませんし,そのようなことができると思っておりますので,そこをどうするのかという話について,我々としても今後,今頂きました御意見も含めて,具体の制度設計を作る際においても,そこをかなり意識しながらしっかり整理して,学内でも使っていただけるような形での話ですとか,あるいは今後大学の関係者あるいは団体に対して説明をする機会もございますので,そこは丁寧にさせていただかないといけないと思っております。
 それから今,有信委員から頂きましたように,多分今後一つの専門分野だけではなくて,クロスオーバーで考えていかないといけない。ましてや第四次産業革命の時代においては,恐らくいろいろな新しい技術が出る中において,どうそこに立ち向かっていくのかという形で,それは多分法曹養成の中にも出てくる話がありますので,法学部以外の方から広く人材を集め,あるいはカリキュラムを工夫していくということについての話もしっかりやらないといけないと思っています。
 それから質の保証。今日の議論でも強調いただきましたけれども,大学教育全般について,どのようにそれをしっかり進めていくのかがベースになっております。成果を見える形にして公表していくというだけではなくて,教学のシステム自身をどのように回していきながら,そこの中で評価,あるいは成績を厳格にし,質の高い学生を育てていくということが基調にありますので,その点はしっかり強調できる形にさせていただきたいと思っているところでございます。
 いずれにせよ,スピード感を持って,私どもとしては,今日頂いた御意見も含めてしっかり整理して,形を作るということにさせていただきたいと思いますし,この問題については,文科省だけではなくて,大学の現場の先生方,それから法務省,最高裁も含めて法曹に関わる方々と,今後いろいろな形での制度の在り方について議論が進んでいくと思いますので,その点をしっかり視野に置きながら議論を進めていきたいと思っております。
 どうもありがとうございます。

【井上座長】
 そろそろ本日の会議を締めたいと思うのですけれども,ほかに特に御発言ございますか。よろしいですか。
 それでは,これぐらいにさせていただきます。本日御議論いただき,私の理解では,この案については,本委員会としておおむね共通認識が得られたのではないかと考えます。様々な御意見を頂きましたので,もちろん修文をする必要のあるところもあるわけですが,基本的な部分については皆様の意見が一致したと受け止めさせていただいてよろしいですか。
(「異議なし」の声あり)

【井上座長】
 ありがとうございます。
 修文については,基本的には座長の私に御一任いただければと存じます。事務局と私の方で相談しながら修文を行いますけれども,それでもなかなか知恵が出ないとか,迷うところがないとも限りません。そのようなことから,内容に踏み込んで修正することになる点が仮に出てきたときは,皆様に再度御意見をお伺いするとして,基本的には私の方に御一任いただくということでよろしいですか。
 もちろん,このように修文しますということは,皆様に御連絡をして,御確認いただくという手続は踏ませていただきますけれども,そのようなことでよろしいですか。
(「異議なし」の声あり)

【井上座長】
 ありがとうございます。
 それでは,これで本日の会議を終了いたします。次回の予定については,改めて事務局の方から皆様の方に御連絡し,調整をさせていただきます。
 どうもありがとうございました。


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