資料3-2 法科大学院共通到達度確認試験第2回試行試験 実施報告書概要

○ 試行試験の実施について
<今回の試行試験の試験問題について>
・「共通的な到達目標モデル(第二次案修正案)(以下、「到達目標モデル」)」及び問題作成担当者が所属する法科大学院における到達目標を参照しつつ、法科大学院の2年次までの学修を通じて修得すべき基本的学修内容の修得を確認できるような問題を出題。
・これまでに実施された試験との比較・検証をあわせて行うことが有益であると考えられるため、各科目の一定数の問題については、過去の法学既修者試験で出題された問題を使用。

<参加した法科大学院・学生へのフィードバックについて>
・試行試験を受験した学生に対しては、所属する法科大学院を通じて全体の試験結果の概要、各科目の設問ごとの正解、正答率の一覧、得点分布表などのデータが公表されており、これらにより、参加学生は全国規模での学修到達度を確認することができるようになっている。
・また、試験問題に関する解説を公表し、学生の自習用に活用させることとした。
・昨年度においては、個別学生の採点結果の情報は参加法科大学院には提供しないこととしていたが、本年度については、法科大学院における成績等と試行試験の結果の比較分析を行うため、所属する学生の試験結果を、参加した法科大学院に提供することとした。もっとも、学生の試験結果を成績評価等に流用されるのではないかとの懸念に対応するため、試験結果の送付は平成28年4月以降に行うこととした。

○ 試行試験の実施上の課題について
<試行試験を実施する会場について>
・本年度の試行試験は平日の午後に実施されたが、社会人学生の参加が困難であるとの指摘もあった。社会人学生の参加の機会を十分に保障する必要があるとした場合、実施日や実施の方法等についても、さらに検討が必要。

<特別措置が必要となる学生への対応について>
・視覚障害を有する学生については、商事法務研究会において、試験問題の点訳を行い、マークシートへの墨訳は当該法科大学院で行った。各科目の試験時間についても、実施校の判断でそれぞれ1.5倍の解答時間とする措置をとることとした。今後、共通到達度試験が本格的に実施される場合には、特別措置に関する対応を十分に整備することが必要。

<参加学生・法科大学院へのフィードバックの在り方について>
・昨年度においては、個別学生の採点結果の情報は参加法科大学院には提供しないこととしていたが、本年度については、平成28年4月以降、参加した学生の成績について、参加法科大学院に成績情報を提供したうえで、法科大学院の成績等と試行試験の結果の比較分析などの作業を依頼することとした。
・このような対応の当否については、当日実施した学生のアンケート結果や参加法科大学院からのフィードバック等によって、さらに検討する必要がある。

○ 試行試験の結果の分析・検証について<全体的な分析について>
・総受験者の平均点は、166.31点(240点満点・得点率69.3%)となっており、仮に平均的な層の学生が試行試験を受験したものと仮定した場合、試験結果は概ね良好であったと考えられる。
・平均点が、昨年度に比べて大幅に上昇しているのは、未修1年次だけではなく、2年次学生が参加したことによる。未修1年次の平均点は、153.23点(得点率63.85%)であり昨年度とそれほど大きな差はない。
・本年度の試行試験は、法科大学院の1年次学生のほか、2年次学生も参加したが、学年、既修・未修によって成績に有意な差が生じた。未修1年次学生の平均点が153.23点であったのに対し、未修2年次学生の平均点は165.71点、既修2年次学生の平均点は176.36点となり、未修者についても1年次と2年次では、学修について確実な進捗が認められること、未修者と既修者の間には、2年次においても、学修の達成度について一定の差異が認められることが明らかになった。

<出題範囲について>
・到達目標モデルは3年間の法科大学院の学修によって到達すべき目標・水準を示すものであることから、未修1年次学生の到達度を確認する試験としては、とりわけ基礎的な理解を確認する必要がある。他方、今回は2年次学生も参加することから、やや発展的・応用的な内容についても出題し、法科大学院における学修状況を検証することも重要である。今回の試行試験では、到達目標モデルの中でも基礎的な問題を中心としつつ、やや発展的・応用的な問題も一定数出題した。
・今回は、出題範囲を特に限定しなかったが、法科大学院によって教育課程が異なる場合においては、出題範囲を限定する、あるいは、各法科大学院が成績を分析・評価する際に一定の問題を除外するなど、いかなる対応を講ずべきかについては、さらに検討が必要。

<問題形式、配点等について>
・基礎的な知識の確認とともに、一定の知識を前提とした思考力を確認するためには、正誤式問題と多肢選択式問題を併用する必要があると思われるが、両者のバランス(今年度は民法で2:1、憲法・刑法で5:3)については、今後、試行を重ねることで慎重に検討する必要がある。
・マークシートによる解答方式では、発展的・応用的な思考能力を具体的に確認するには限界があるが、基本的な知識や思考力を確認することは十分に可能であると思われる。法科大学院における学修の到達度を確認するための試験としての性格、また、仮に進級判定等に利用する場合、短時間で多数の答案を採点する必要があることに鑑みれば、マークシートによる回答方式が適切と思われる。

<問題の難易度について>
・問題の難易度については、おおむね適切であったと思われるが、やや発展的・応用的な問題については正答率が低い傾向が見られた
・確認試験を、とりわけ未修1年次の学生に対して、基本的な知識・理解の定着度を確認するという趣旨からは、やや出題水準を下げ、もっぱら基礎的な知識を問うべきとの理解もあり得るが、正誤に紛れのないかたちで、さらに基礎的な出題をすることについては限界がある。
・なお、解答時間については、未回答の問題がそれほど多くなかったことから、大幅な不足はないと思われる。

<問題数について>
・今回の試行試験では、未修者・既修者、学年ごとに試験結果を細かく分析するため、試行的に問題数を増やし、憲法・刑法は各40問、民法は60問とした。全体の成績を分析したところ、特定の分野や範囲に限って正答率が著しく低下するような状況は特に認められず、むしろ出題内容や形式によって正答率が左右されているように見受けられた。
・適切な問題数については、なお慎重な検討・分析が必要と思われるが、少なくとも今回は、出題数を増やしたことによる有意な影響は特に見受けられない。出題内容や形式をさらに工夫すれば、昨年度と同程度の問題数であっても、各科目の全般的な理解を確認することは十分に可能であると思われる。なお、出題数を増やした場合、解答時間も延長されることになり、実施運営上の負担・困難が伴う。

<問題作成の体制について>
・本年度の問題作成においては、試験委員を作問委員と点検委員に分け、作問委員が作成した問題案を、点検委員が難易度、適否などについて点検を行った。
・点検委員による点検は、作問委員とは異なる観点からの指摘を受ける機会であり、有益であった。とりわけ民法、刑法については、法曹実務家(弁護士)が点検委員に加わることによって、実務的観点から、出題形式や内容に関するコメントを得ることができた。
・点検作業において実務家が適切に関与し、問題案の実務的な意義や位置づけについて、適切な指摘を受けることは重要な意義を有している。点検委員として法曹実務家が加わる必要があるか、また、いかなる立場の実務家が加わるべきかについては、科目の性質によって異なるところがあると思われるため、さらに検討が必要。

注)この文書は、「法科大学院共通到達度確認試験(仮称)の試行に関する調査研究」報告書を踏まえ、事務局においてまとめたものである。

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