専門職大学院ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成28年2月15日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎7号館東館)3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 専門職大学院制度の現状・課題について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘(主査),川嶋太津夫(主査代理)の各臨時委員
(専門委員)青井倫一,大竹由希子,片山直也,上西研,杉本徳栄,添田久美子,松﨑佳子,宮脇淳の各専門委員

文部科学省

(事務局)常盤高等教育局長,義本高等教育局審議官,松尾高等教育局審議官,北山専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録

【座長】  おはようございます。それでは,定刻となりましたので,第3回中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループを開催したいと思います。本日は,前回に引き続き,5名の委員の各先生方から,各分野の現状や課題について説明を頂いて,議論をさせていただきたいと思います。それでは,事務局から配付資料の説明をお願いします。
【事務局】  配付資料でございます。
まず,資料1が,前回のワーキングでの指摘を簡単にまとめたものでございます。資料2が,新たな高等教育機関の創設についての審議経過報告(素案)でございます。資料3-1から3-5までが,本日,5名の委員の各先生方から御発表,プレゼンしていただく資料の範囲となってございます。
以上でございます。
【座長】  どうもありがとうございました。
配付資料に関しては,もし欠落等ありましたら,随時事務局へお願いします。
それでは,前回の議論を事務局サイドでまとめていただいていますので,まずその説明を頂きたいと思います。
それから,新たな高等教育機関について,審議経過報告が行われているということなので,それについても,併せて説明をお願いしたいと思います。
【事務局】  それでは,資料1でございます。
前回のワーキングでの主な指摘をまとめたものでございます。
まず,青井委員からの御発表内容でございますけれども,「日本では専門職大学院が文系の大学院に位置づけられまして,理系の学生や教員が少ないことが問題である。日本人のみを対象とせず,アジアの市場を取り込むべきである。また,人材に対する投資が少ない。学生の投資効果を高めるために,年収アップを雇用サイドに働きかけることが必要である。強いアドミニストレーションが必要である。カリキュラムの革新が必要である。様々な形での社会との連携が必要である。フルタイムのビジネススクールを地方につくるべき。」というような御指摘がございました。
また,上西委員から,MOTに関しまして,「間口が広くて全体像が見えにくいために認知が十分ではない。このため,コア・カリキュラムを開発したものの,本格採用している大学が少ない。認証評価機関との連携強化が必要である。また,文理が分離しているケースが多く,学際領域での体系化が進まないと,教員個人の中での融合を加速すべきである。また,MOT教育,コア・カリキュラムをアジア標準にする取り組みが重要である。」という御指摘がございました。
また,宮脇委員からは,公共政策に関しまして,「政策科学的に基礎領域として展開するためのカリキュラムや教員体制が整っていない。また,研究大学院との差別化が難しい。また,法科大学院,特に法科大学院学生の参加の促進が必要である。業界との連携が未確立である。また,コアカリキュラムという概念が基本的にはない。入学者が多様化し,学力レベルに差があるために,学部レベルの授業展開をせざるを得ない。また,ローテーション人事の問題性,また,研究者教員,実務家教員を問わずにFDの徹底が必要である。」という御指摘がございました。
また,最後に玉腰委員から,公衆衛生に関しまして,MPHの学位を取っても,国内でキャリアアップにつながる仕組みができていない。また,社会人のままでMPHを取るための体制整備がまだ十分ではない。みなし専任教員制度の活用の必要性がある。また,専門職大学院以外の修士課程が増加しておりますが,その質の担保が必要である。また,社会医学系専門医の養成に当たりまして,基礎コースとしての活用を見据えた検討が必要であるという御指摘がございました。
続きまして,資料2,新たな高等教育機関の創設について,審議経過報告(素案)でございます。
これにつきましては,前回のワーキンググループにおきましても,事務局より説明させていただきましたが,2月12日に開催されました中教審の特別委員会におきまして,この資料で御議論がされているということでございますので,特に専門職大学院制度との違いに着目して,ポイントをかいつまんで御説明させていただきたいと思います。
ページでいいますと,まず16ページから御説明させていただきたいと思います。
16ページの2.(1)制度の基本設計というところでございます。17ページの一番上の枠囲いにございますように,学士課程相当の課程を提供する機関と短期大学士相当の課程を提供する機関,この両方の制度化が想定されているということでございます。
(2)の具体的設計,教育内容の方法という枠囲いの2つ目のポツでございますけれども,インターンシップなど企業と連携して行う事業の時間数や実習等の科目の割合について,一定時間数・割合以上を義務づけるということが書かれてございます。これは,専門職大学院制度には,このような義務づけ規定がないということでございます。
ページをめくっていただきまして,教員組織の枠囲いの2つ目のポツのところでございますけれども,研究能力を有する実務家教員の配置を一定割合以上義務づけるとされてございます。これも,専門職大学院制度におきましては,こういった義務づけ規定はないということでございます。
続きまして,19ページの最初の枠囲いのところでございます。1つ目のポツでございます。企業等との連携により,教育課程を編成・実施する体制の整備を義務づけるということとしてございまして,この義務づけ規定も,専門職大学院においてはないということでございます。
飛びまして,21ページの最後の枠囲いを御覧いただければと思います。情報公開及び評価に当たっての注意事項が書かれてございまして,情報公開及び評価に当たっては,ステークホルダーに対して,各機関の教育の質や学生の学習成果をわかりやすく明示していくものとする。こういったようなことが記載されてございます。
最後に,23ページ,一番上の名称というところでございますけれども,名称につきましては,例えばということで,専門職業大学等の名称が考えられる。こういったような内容となってございます。
説明は以上でございます。
【座長】  どうもありがとうございました。
この点に関しても,後々議論いただければと思いますが,ここまでで何か質問あるいは,まとめの中で肝腎なところが抜けている等御指摘がありますでしょうか。
特によろしいようでしたら,おいおい御検討いただきたいと思います。
それでは,前回と同じように,各分野からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
最初に,会計分野について,杉本委員からプレゼンテーションをお願いします。前回同様,10分程度で,御説明よろしくお願いします。
【杉本委員】  お手元の資料3-1をごらんください。
本日,会計専門職大学院の現状及び課題について,6つの見地から御説明申し上げたいと思います。
1つ目ですが,会計専門職大学院と国家試験,特に公認会計士試験との関係についてです。
2002年に金融庁の金融審議会公認会計士制度部会報告として,「公認会計士監査制度の充実・強化」が公表されました。この中で,特に公認会計士試験制度の在り方が盛り込まれておりまして,具体策としましては,専門職大学院教育と公認会計士試験との連携を視野に入れた検討を早期に着手せよという文書となっております。
また,公認会計士の量的な規模について,飽くまで例えばということですが,平成30年ごろまでに公認会計士の総数が5万人程度の規模となることを見込んで,年間2,000名から3,000名の新たな試験合格者となることを目指すとうたわれております。
この文書をもとにしまして,2003年に公認会計士法が改正され現在に至っております。また,2003年に,同じく金融審議会公認会計士制度部会の専門的教育課程についてのワーキングチームが,専門職大学院における会計教育,それと公認会計士試験制度との連携について検討しております。特に,この連携の在り方について具体的に検討を行うということが,このワーキングチームの設置目的となっております。
2ページ目の下の囲いの下のところにありますが,とりわけ会計教育への期待として,「高度な専門的職業人材の養成に特化した『専門職大学院』が公認会計士試験制度との連携を視野に入れた様々な教育の試みを展開・充実していくことが期待される」というように盛り込まれております。
また,3ページの「会計分野の専門職大学院の教育課程等について」ですが,2004年に会計分野の専門職大学院に関する検討会がこの文書をまとめております。この中で,3のところですが,教育課程編成の考え方の中で,会計士専門職大学院は,その中心に公認会計士養成,具体的には公認会計士試験合格者の輩出があることは明らかですけれども,これに加えて,社会からはより広範な期待を寄せられていることを忘れてはならない。
具体的には,新たな試験制度のもとで合格している公認会計士,その試験に合格して終わりではなく,その資格のもとで実務活動を行っていくわけですが,実務研修の実施,更に公認会計士協会によるリカレント教育,また,企業や自治体における会計専門家の養成,こういったものが社会から広く期待されているのだということで,会計専門職大学院に期待が寄せられているというところです。実は,このポイントが今現在も非常に重要な指摘かと思っております。
4ページのところですが,会計専門職大学院の教育プログラムに関してですけれども,公認会計士の世界的な組織として国際会計士連盟というのがあります。そちらが,教育基準に例示されている授業科目を展開しておりますが,これを端的に国際教育基準(IES)と呼んでおります。会計専門職大学院が発足するに当たっては,このIESに準拠して教育プログラムを策定しております。
2つ目ですが,会計専門職大学院の現状についてです。2003年に中央大学が最初に開設しております。また,公認会計士法の改正を受けまして,2005年の開設が最も多く,北海道大学,東北大学以下,関西学院大学まで設立しております。また,2006年,2007年,2009年にもそれぞれ設立され,合計で18校が会計専門職大学院を開設するに至っております。
この中で,東北大学が昨年10月に,既存の2コース,公認会計士コースと会計リサーチコースに加えて国際会計政策コースを開設しております。これは公認会計士の養成とは全く切り離して,海外から会計プロフェッショナルを日本で教育するということで展開しているプログラムとなっております。
18校の会計専門職大学院があるわけですが,その会計専門職大学院の教育水準を向上していく,さらには,お互いの会計専門職大学院が連携するという目的で,2005年4月に会計大学院協会を発足しております。会計大学院協会の中で,公認会計士試験制度に関してもそうですし,各種それぞれ事業内容があるわけですけれども,この間に,5ページにあります(1)から(4)のような提言を公表しております。
18校が,会計専門職大学院を開設したわけですが,あいにく2011年から,5ページに示しましたように,募集停止を表明している大学院ができてております。2011年は愛知淑徳大学,2014年度から募集停止は愛知大学,15年から募集停止は法政大学,立命館大学,甲南大学となっております。また,2017年度からは,中央大学も募集停止を表明しております。
6ページのところでは,会計専門職大学院の入学状況をまとめております。こちらは,会計大学院協会でそれぞれ集計したもので,注のところにも示しておりますが,あいにく2008年度に関しては集計データはありません。それ以外のデータをここで網羅して示しております。
2006年度,右端のところを御覧いただきますと,定員総数と入学者総数,これの倍率が1.11倍になっております。ただ,2007年度からは,右端のところで赤で表記しておりますけれども,1倍を割っております。2014年度は0.54倍,また,入学者に対してだけではなくて,志願者総数に対しての割合でも,2014年度は0.79倍となっております。2015年度に関しましては,前年度に比べて増加する状況となっております。
このように入学状況は非常に深刻な問題に直面しているわけですけれども,最も大きな課題が,公認会計士試験の受験者減少の影響等により会計専門職大学院の入学志願者が著しく減少しております。会計専門職大学院の制度の存立にかかわる喫緊の課題となっております。
3つ目の項目が,コア・カリキュラムの開発についてです。
平成20年度に,文部科学省が,「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育推進プログラム」を募集しております。そのプログラムの募集に当たりまして,東北大学,青山学院大学,関西学院大学の3校で,会計大学院におけるコア・カリキュラムを申請し,選定されました。
取り組みの目標としては,会計大学院におけるコア・カリキュラム,具体的には公認会計士試験等の試験科目,更に会計実務基礎,国際教育基準に基づいた授業科目体系について,調査・研究・形成するということと,それを踏まえた実施枠組みの形成を目標として掲げております。
その成果が,平成22年2月に公表されました。その中では,コアカリキュラム,それと「各開設科目の学習の到達目標」,また,「授業で取り上げるべきテーマと内容」を提示しております。ただ,ここで提示された「授業で取り上げるべきテーマと内容」がほとんどの科目で,非常に多岐にわたって列挙されておりまして,会計専門職大学院が展開する講義時間数で必ずしも対応できないものも見られるという課題があるかと思います。
4つ目の項目として,教育課程の在り方を示しました。
先ほど御紹介しましたように,会計専門職大学院の教育課程は,国際教育基準(IES)に基づいた教育プログラムで編成されております。また,企業の不祥事や,公認会計士,監査法人等の一連の社会問題等あるわけですが,かねてよりこれらの問題が生じ,いろいろと御指摘があった関係で,会計専門職大学院において倫理教育を徹底すべきということも,会計専門職大学院に課された教育プログラムとなっております。
こういったもので教育課程を編成しているわけですが,教育課程の在り方について一つの課題を挙げるとすれば,発足当初から国際教育基準に基づいてプログラムを編成していますが,この国際教育基準に新たな基準がつくられる等,改訂されているにもかかわらず,これに対応した教育プログラムとはなっていないところがあるということを,課題として挙げることができるかと思います。
さらに,冒頭申し上げましたが,会計専門職大学院の役割,社会的期待として寄せられているものというのは,公認会計士の合格者を輩出するというだけではなくて,リカレント教育や,企業や自治体の会計専門家を養成することもあるわけですが,会計専門職大学院が発足してから,ほとんどの会計専門職大学院が,専ら公認会計士試験合格者を輩出する教育を展開してきました。言い換えると,社会人のリカレント教育などの対応が希薄だったというところがあります。
これが課題として挙げることができるのと同時に,今現在,会計専門職大学院が直面している,特に入学者が非常に減少している状況の中で,この社会人等のリカレント教育への対応について再認識して取り組んでいく必要があるのではないかと思っております。
5つ目の項目ですが,8ページに会計専門職大学院の第三者の認証評価に関して示しております。
これまでの第三者評価を整理しますと,2つの法人のもとで認証評価を受けております。一つは,特定非営利活動法人国際会計教育協会によるもの,もう一つは,公益財団法人大学基準協会によるもので,その評価機関はおおよそ2分化されている現状となっております。
ただし,特定非営利活動法人国際会計教育協会の認証評価についてですが,2015年3月31日に,この協会そのものが廃止されております。これを受けまして,今現在,文部科学省と相談の上,新たな認証評価機関の設置の取り組みを展開しております。
第三者評価の関連で,課題として挙げることができるものとしては,「『日本再興戦略』―改訂2015」,さらには,文部科学省の中央教育審議会大学分科会大学院部会が公表いたしました「大学院教育改革の推進について」,これは昨年の9月に公表されておりますが,とりわけ,国際的な評価機関からの評価を積極的に受けること,また,世界基準の教育プログラムを構築すること提示されています。とりわけ後者の世界基準の教育プログラムを構築することは,会計専門職大学院では国際教育基準に基づいた教育プログラムを展開しておりますので,ほぼ充足できるかと思いますが,前者の国際的な評価機関からの認証評価に関しましては,会計専門職大学院の目的,さらにはコストや労力,こういった見地に照らし合わせると,会計専門職大学院の対応は非常に難しいという状況にあります。
最後に,公認会計士試験の内容について御紹介したいと思います。9ページからになります。
公認会計士試験志願者・合格者の状況は,金融庁公認会計士監査審査会で公表されているものですが,2006年から2015年のものまでを示しております。願書提出者,論文式試験受験者,試験制度に関しては短答式試験と論文式試験がありますが,最終的に論文式試験合格者が,公認会計士の資格付与へとつながっていきます。それと願書提出者と合格者との対比,論文式試験受験者と合格者との対比による合格率を示しております。
御覧いただきますと,願書提出者に関しましては,2010年に最も多くなっております,2万5,000名余り。それと,合格者に関しましては,2007年に4,000名余りとなっております。公認会計士として活躍するためには,試験に合格するだけではなく,試験合格後に監査法人等の実務補修を受け,最終的には日本公認会計士協会に登録しなければいけません。
ということで,公認会計士試験合格者の監査法人等の就職,これが非常に重要になるわけですけれども,多くの合格者を輩出しましたが,大手監査法人等の受入れ体制が十分整っておらず,「待機合格者」が2008年から数年間にわたって生じております。この「待機合格者」問題が社会問題になりました。ということで,2011年から2015年まで,志願者が減少している状況になっております。これと対応する形で,合格者もが非常に少なくなっているという状況にあります。
この合格者・志願者の状況を踏まえまして,課題として挙げるとすれば,国際教育基準は第1号にも関わりますが,改正公認会計士法のもとでの日本の公認会計士試験は,基本的に受験資格に大学で一定の教育を受けた者等の規定がなく,受験資格が明確に定められておりません。ということで,極端な話で申し上げると,高校生も受験できるというのが,現行の公認会計士試験制度となっております。
なお,「待機合格者」の対策としては,金融庁が2010年に「公認会計士制度における懇談会」を発足し,その対応策として,新たに「企業財務会計士」制度案を国会に提出しましたが,2011年度に見送りとなり,制度化されるには至っておりません。
また,この現状を踏まえまして,金融庁主導のもとで,日本公認会計士協会,さらには日本経済団体連合会を初め金融団体4団体と意見交換会を開催しております。これを受け,2014年の「日本再興戦略」のもとで,10ページの冒頭にありますように,「監査の質の向上,公認会計士資格の魅力の向上に向けた取組を促進する」ことが掲げられました。
また,先ほどの意見交換会のもとで,平成26年度の改訂定で,「当面のアクションプラン」が発表されております。その中で,日本公認会計士協会における取り組みとして,会計大学院協会と共同で会計大学の学生,さらに,公認会計士試験の受験者・合格者等に対してアンケート調査やヒアリング調査を実施し,実態を把握することが掲げられました。
これを受けまして,2014年9月から2015年5月にかけて共同調査を実施しました。この共同調査の成果としては,昨年6月25日に105ページもの報告書を発表しております。あわせて,日本公認会計士協会と共同でシンポジウムも開催いたしました。この共同調査で,数多くの点,問題点が明らかにななりました。一つ大きな課題として明らかになったのが,会計学を専攻する学生の減少などの「会計離れ」が大学教育の中で既に生じているということです。
最後に,公認会計士試験に関して,会計専門職大学院の在学生・修了生がどういう合格状況にあるのかをまとめております。
先ほど御紹介しましたように,公認会計士試験の志願者が大きく減少しております。合格者も,それに対応して減少しています。表の右端のところに,会計専門職大学院の在学生と修了生の試験合格者に占める割合を示しております。2008年が5.9%でしたが,2014年度に関しましては13.1%の割合を示しております。
会計専門職大学院を修了した場合には,改正公認会計士法のもとで,短答式試験の4科目のうち3科目が免除になります。唯一,企業法だけが免除科目ではないわけですが,在学中に試験に合格すると,ほとんどの学生が会計専門職大学院を修了せずに退学し,就職しています。こういったところも,会計専門職大学院教育の在り方の課題として指摘できるかと思います。
以上です。

【座長】  どうもありがとうございました。
前回同様,議論は後でまとめて行うということにさせていただきたいと思います。とりあえず事実関係等で,何かご質問等ありますでしょうか。
はい,どうぞ。
【宮脇委員】  事実関係として,6ページの入学状況ですが,先ほど2015年度について,志願者総数が増えて,しかも,入学者総数もかなり,150人弱という形で増えていますが,この要因は,何か明確な点はありますでしょうか。
【杉本委員】  年度の右隣に調査対象校数を示しております。これは,募集停止を表明した会計専門職大学院を反映しているわけですけれども,前年度の2014年度と比べると,3校減っております。母集団が少なくなったというところが一つあるかと思います。
それと,この表にはまだ網羅しておりませんが,平成28年4月入学について,各校にヒアリングを行ったところ,昨年よりも更に入学志願者が増えているとの連絡を受けております。
2015年度から募集停止する会計専門職大学院が複数校ございまして,東京地域では法政大学,関西地域では,立命館大学と甲南大学が募集停止を表明しているわけですが,該当する地域の会計専門職大学院の入学者が地域内の他校へ入学希望を示しているというところが一部あるかと思います。
【宮脇委員】  因果関係がまだ整理ができないため後ほどに再度質問させていただきます。
【座長】  わかりました。では,後ほどお願いします。
それでは,臨床心理分野について,松﨑委員から,御説明よろしくお願いします。
【松﨑委員】  臨床心理専門職大学院の現状ということで,まとめさせていただきました。
まず,臨床心理の専門職大学院でございますが,目的としましては,心の専門家である臨床心理士の養成を目的としているところでございます。
心の専門家は,社会的に問題になっております鬱の問題や,ひきこもり,不登校,児童虐待,災害や職場のメンタルヘルスなど,医療保健機関,福祉,教育,産業など,様々な領域で活動しており,社会的ニーズは今後も高くなってくるものと思っております。
この専門職大学院は国立2校,私立4校の合計6校でございますが,専門職大学院のほかに,同様の臨床心理士の養成をしております日本臨床心理士資格認定協会が指定している大学院が160校弱があります。
この指定大学院と専門職大学院の大きな違いは,専門職大学院の目的でもある実務に特化した教育に,力を入れているところでございます。それぞれ学内の実習施設を持っておりまして,そこで日々の学内実習を行っております。学外実習においては,指定大学院は,医療領域に加えてもう一領域,教育領域や,福祉領域などで,計2領域の学外実習を行っておりますけれども,専門職大学院におきましては特に臨床心理の主たる領域でございます医療領域,福祉領域,教育領域,の3領域に対して行うなど,学外実習に力を入れています。
指定大学院と専門職大学院は,目的としては,非常に似た学生の養成をしているわけですけれども,なぜ専門職大学院に移行していかないのかというと,学部教育との兼任の問題,教員の配置の問題が一番ネックになっていると思っております。
それでは,専門職大学院の状況でございますけれども,6校のアンケート調査の結果を示しております。定員は6校で135名でございます。教員数は学校によって若干違いまして,今お示ししているような状況でございます。そして,実務家の教員数,教員の配置率が,6校平均で約47%でございます。
この6校の現在の受験者の動向でございますが,平成24年,25年,26年は,320人から340人で推移しております。入学者数は121人から114人で推移しており,入学定員の約90%で推移しておりますが,若干減少ぎみでもございます。受験の倍率でございますが,およそ2.7倍から2.8倍でございますので,受験者数が減って入学者数が若干抑えられたというよりは,受験者の質の確保のため,若干抑えぎみの入学者をとっているという状況でございます。
それから,修了者の進路でございますけれども,心理職の常勤職,それから心理職の非常勤職に,約半々の就職率でございます。見ていただくとわかりますように,心理職以外の就職についている学生はほとんどいない状態です。その他の部分は,留学生が帰国して,就職先が不明であるとか,臨床心理の学生は女性が非常に多いので,結婚であるとか,そういう形で就職が,まだ決まっていない学生たちが含まれております。
それから,博士などに進学している学生が6校合わせて大体11人でございます。大学によって違いがありますが約1割強という割合でございます。
そういう意味で,専門職大学院の目的でございます心理の専門職を養成することに関しましては,専門職大学院は非常に目的に沿った輩出をしていると思います。
ただ,心理職そのものの課題でもございますけれども,常勤と非常勤の割合が半々であるということですが,もともと心理職の社会的な就職状況が、常勤職の勤務先はこのぐらいの割合しかないという状況がございます。公務員であるとか病院の常勤職以外の場合は,スクールカウンセラーを初めとしまして,非常勤職が多い状況でございまして,スクールカウンセラーを週に2日やって,病院の非常勤を3か所行うという形の勤務形態をとっている方たちが,心理職の場合は多いという状況です。そういう意味での社会的な心理職の就職先をどのように増やしていくかということも課題になるかと思います。
それから,臨床心理士の資格試験でございますが,臨床心理士の資格自体は,上に書いております財団の日本臨床心理士資格認定協会が行っている試験でございます。専門職大学院6校の平均を平成24年,25年,26年で出しておりまして,およそ85,6%というところでございまして,全国の他の指定大学院出身者の平均が,下に書いております60%前後ということで考えますと,専門職大学院の修了者の合格率は非常に高い状況にあります。もちろん,大学院での差が若干あるという状況ではございます。
3つ目に,社会のニーズに対しての高度専門職業人の輩出,社会との連携ということを考えますと,ひきこもり,鬱病等,様々な問題が増加していく中で,臨床心理に対してのニーズが高いということがあり,学生の専門職への意欲も非常に高いのと比べると,現場でのキャリアに対しての処遇が非常に不十分であるという問題がございます。
それから,全ての大学院が臨床心理センターなどの学内の実習施設を設置しておりまして,先ほどのいろんな諸問題に関して市民の方々の心の相談,それから,今非常に増えております発達障害に関しての御相談などを日々受けているところでございます。それに関連しまして,公開講演やシンポジウムといった様々な形で,社会に向けての研究,教育,臨床の成果を還元しているところでございます。
これに関しまして,各大学それぞれ独自の取組を行っております。関西大学では,附属の実習施設が一般企業とカウンセリングの契約をしております。また,帝京平成大学では,地元の自治体,市町村などと連携して,市町村への専門的な知識の提供を行っております。また,鹿児島大学では,22年の地域支援の臨床実践と実務教育を活用した新たなシステム型教育プログラムを実践し,その後,大学の独自の予算化により,地域支援プロジェクトを継続して地域展開をしております。また,九州大学では,修了生の進路,アフターケアも含めまして,NPО法人九州大学こころとそだちの相談室を設立いたしまして,市民の方たちのカウンセリング,それから不登校,ひきこもりの方たちの居場所づくりや発達障害の子どもさんたちのための家庭教師の派遣事業など,様々な事業や,修了生,専門家向けの研修会及び市民向けの研修会などを行っているところでございます。
それから,4つ目の教育課程の在り方についてでございますが,講義・演習・実習含めまして,教育担当,研究担当の教員と実務家の教員が共同授業をするという形で,お互いに補完しながら科目を展開しております。特に,授業評価のアンケートや入学してきた段階から,修了時のディベロップメント調査,そして理解度のアンケート調査などを行い,FDにおいて教育課程の在り方の検証・改善を行っているところでございます。また,修了生の就職先へのアンケート,学生との意見交換会など,各校状況に応じた取り組みを行っております。
この中で,社会人の学生への対応でございますが,社会人が2割から5割を占める大学院と,大半が新卒である大学院というところで分かれておりまして,状況は若干違いがございます。ただ,どこの大学院も,社会人の学生の受入れに関しては,長期履修制度とか,入学後の基礎的な心理学の学力を補うための少人数クラスの取り組みであるとか,担当教員の個別指導などを行っているところでございます。社会人経験者は,リーダーシップを発揮して,主体的な学びの場の構築に大いに寄与しておられる方たちが多く,そういう意味では,専門職大学院の社会人の受皿としての機能というのも大きいと思っております。
5つ目の教員の質の担保についてでございますが,先ほど申しましたように,共同開講などで補完しながら展開をしております。国立大学におきましては,科研費などの応募というのがかなりございますので,九州大学におきましても鹿児島大学におきましても,実務家教員も含めて,科研費などの採択がされている状況でございます。
それから,研究教員と申しましても,臨床の教員でございますので,臨床の研究教員の先生方も,それぞれ心理臨床のフィールドを確保しつつ,自らの心理臨床の技能も磨いておられる状況がございます。そういう意味では,研究と,実務が,かなりコラボしながらやっている状況と考えております。
6つ目に,その他ということで,現状課題をまとめております。
前回少しお話をさせていただきましたけれども,臨床心理士の養成を目的として培われてきております専門職大学院の仕組みや教育実績というのは,今後,大きな役割を果たしていくものと考えております。
ただ,昨年の秋に,国家資格でございます公認心理師法案が制定されました。このことは今後の心理師の職場を広げていく,意味で非常に大きい役割になるということで,私どもも期待しているところでございます。ただ,昨年の秋に制定されたばかりでございまして,現在,試験制度をどういう機関が実施するのか,大学・大学院のカリキュラムがどのようなものになるのかというところが,まだ示されていない状況でございます。その中で,専門職大学院としまして,この新しくできます公認心理師,これまで養成してきております臨床心理士,どちらの資格にも対応できるような特化された制度が必要であると考えております。
特に,公認心理師の場合は,心理学の学部を出て専門職大学院に入ってきている学生の場合は問題がないと思いますし,社会人として,心理学の学部を出て社会人経験をし,専門職大学院に入ってきている学生にとっては,本当によい形のものになると思います。一方で,他学部等を出て,社会人経験をして,臨床心理士になりたいということで入ってこられる社会人入学者に対しましては,公認心理師の受験資格は与えられないため,臨床心理士の資格というのは非常に重要になるのかと思っております。
そういう意味で,まだ不確定要素があるところでございますので,専門職大学院としましては,公認心理師,臨床心理士,どちらの資格にも対応できるようなカリキュラム等を今後考えていく必要があろうかと思っております。それに加えまして,認証評価の在り方,基準も,それに合致したものにできるように,是非検討もしていただきたいと考えているところでございます。
簡単ですが,以上でございます。
【座長】  どうもありがとうございました。
何かご質問等ありますか。
【川嶋委員】  専門職大学院と指定大学院の関係ですが,例えば,松﨑先生のところの大学院は,財団法人の資格認定協会のメンバーでもあるわけですか。
【松﨑委員】  そうです。1種指定大学院と2種指定大学院,それに専門職大学院という形で,臨床心理士の資格の中の受験資格に入っております。
【川嶋委員】  それと,もう1点,今度新しくできた公認心理師について,最後におっしゃっていましたが,学部で心理学を勉強して専門職大学院に来た場合は,うまく教育の連携ができるとありましたが,指定大学院も同じような考え方でよろしいですか。
【松﨑委員】  そうですね。指定大学院の方も,そういうルートで来ている学生にとっては,そのまま公認心理師の資格も取れていくと思います,カリキュラムが整えばですね。しかし,やはり社会人の問題については,同様の課題を抱えていると思っております。
【川嶋委員】  ありがとうございます。
【座長】  それでは,法科大学院について,片山委員から,よろしくお願いします。
【片山委員】
それでは,法科大学院について御説明させていただきます。
法科大学院に関しましては,同じ中教審の中で,特別委員会が組織され,随分議論を進めておりますし,政府レベルでも,法曹養成制度改革推進会議が発足し,去年の6月には報告書も出ておりまして,ロースクール自体の改革については,かなり議論がなされているところではありますけれども,本日は,それと重複しない範囲で,法科大学院制度について,専門職大学院全体に関する議論に関連する部分を主としてお話をしていきたいと思っております。
基本的な問題点は,先ほど杉本委員から御報告があった会計専門職大学院と,資格と直結しているという意味では類似の問題が,法科大学院でも生じています。
まず,スライドの2ページのところから,プロセスとしての法曹養成制度の中での法科大学院の位置づけという点を再度確認しておきたいと思います。法科大学院は,専門職大学院の中ではかなり異例のものであり,修業年限は3年,修了要件は93単位ということになっております。ただ,そのうち,学部等で法学の基礎的な学識を有すると認める者については,法学既修者と呼んで,1年の在学期間と30単位の修得が認定されるということになっています。また,学位も,法務博士という学位になっています。専門職大学院の目的は,専ら法曹の養成を行う教育機関ということであります。法曹の資格は司法試験の合格が前提となりますが,法科大学院の修了によりその司法試験の受験資格が与えられるということになっています。
3ページ目のスライドに移ります。法科大学院の位置づけというのは,まさしくプロセスとしての法曹養成の中の一過程であるということで,この点は会計の大学院と異なりまして,連携法という法律が既に,ロースクールの立ち上げの段階から制定されております。その中で,プロセスとしての法曹養成の必要性が説かれ,第1段階が法科大学院,第2段階が司法試験,第3段階が司法修習という3段階になっております。次の4ページ目のスライドのところになりますが,その中で法科大学院は,法曹養成のための中核的な教育機関として位置づけられているということになるわけであります。
他方,次の5ページ目のスライドのところになりますけれども,今日,法科大学院のシステムの問題点の一つとして考えられる点は,法学部との関係であります。
大きく分けまして,大陸法型のフランスやドイツのような,学部で法曹養成を行うというシステムから,アメリカ等の,コモン・ローの国々のロースクールでの法学教育を行う制度に移行するということで,ロースクール制度が導入されたわけですが,我が国においては,法学部を存続させつつ,3年制の法科大学院を新設したということで,法学教育・法曹教育における重複が生じています。
他方,それを反面教師として,韓国では法科大学による法学専門大学院を設置する大学では,法学部の廃止を義務づけたところです。
法学部が残るということで,先ほどもお話ししました法学既修者と法学未修者という2つの概念ができております。法学未修者は修業年限3年が原則ということになりますが,既修者は修業年限2年コースへの入学が認められるわけです。
ただ,未修者という概念でありますけれども,法学未修者というのは,学部卒ということではなくして,法学の基礎的な学識を有すると認められる者ということで,その判定は法学既修者の試験で行いますので,法学部卒であっても,それが不合格であったら,未修者に入るということになります。これを,いわゆる隠れ未修者と呼んでおりまして,他学部や他研究科,あるいは社会人の方々を純粋未修者と呼んでいるわけです。
6ページ目のスライドになりますけれども,法科大学院では,多様なバックグラウンドを持った人たちを受け入れるという本来の趣旨から,法学未修者を3割以上受け入れるという基本方針のもとに,多くのロースクールでは既修者コースと未修者コースを分けて,定員を7対3という制度設計をしてきました。
しかし,実は未修者コースにも,隠れ未修者が大勢入ってくるというのが今の現状です。そうしますと,アンダーラインがついておりますとおり,学部レベルで法学教育を受けている者が再度法科大学院の,しかも未習の3年コースに入ってくるということになり,そこで教育の重複が生じているということになります。
そもそも専門職大学院は,グラデュエートなレベルの教育を行うべきところですが,そこで学部レベルの教育を行っているということでいいのかという点,逆に,むしろ法学既修者の教育は,2年コースを原則とするべきであり,未修1年の教育は学部に委ねるべきではないかという議論が一部ではなされているところであります。
以上,法科大学院教育と学部の教育との関係が,今後の一つ大きな検討課題となるかと思います。7ページのスライドを見ていただきますと,左上の青の部分ですけれども,およそ30単位程度が,学部の教育との重複が生じている部分ということになります。
他方,2番目,法科大学院の現状ということですけれども,これは会計専門職大学院と同様に,法科大学院の志願者が激減しております。これは報道のとおりでありまして,当初は7万人を超えていた志願者が今は1万人ということですが,複数のロースクールを併願して受験しますので,実質的には,適性試験を受けている人数は4,000人前後というのが,今の状況となっています。
9ページ目のスライドのところにデータがありますとおり,今も,定員削減は進んでいますが,それでも追いつかず,定員に満たない状況が続いています。
その原因は何かということですけれども,10ページ目のスライドになりますが,1つには,司法試験合格者・法曹資格者の増加という点が挙げられます。かつては500人という厳しい試験でありましたが,今は2,000人,それが少し減少して1,800人,この後1,500人を目標と言われていますけれども,かつてからすると,司法試験の合格者が増え,11ページのスライドになりますけれども,法曹人口は,かつて1万7,000人程度であったものが,4万人近くに増えております。
そこで,次の12ページのところですけれども,一般に,法曹資格を取っても弁護士事務所への就職が非常に難しい,就職難であるとか,年収が減少しているということが報じられています。下のデータがありますとおり,修習が終わった後に一括して登録を弁護士会に行いますけれども,その一括登録時点で,事務所が決まっていないと登録ができません。その未登録者の割合というのは確かに,一番下にいきますと4分の1ぐらいは未登録者であることから,就職難であると言えるのかもしれません。しかし,1年を経過すれば,企業法務等も含めてほぼどこかには決まっています。そういうことですので,果たしてどこまで就職難ということが言えるかということは疑問はなくはありません。更に年収減に関しましては,正確なデータがあるわけではありませんので,クエスチョンマークをつけさせていただいております。
次に,スライドの13ページ目ですけれども,司法試験の合格率が低迷しているということが挙げられます。当時は,ロースクールに入れば70%,80%の合格率ということを前提に制度設計されていましたけれども,実際には25%を切るような状況で,特に法学の未修者に関しては,10%を超える程度にとどまっています。
以上の主として2つの要因から,志願者が減少し,法科大学院の統廃合が進んでおりまして,ピーク時には74校あったものが,今は44校に減少しているという状況であります。
そして,14ページに移りますけれども,更にその問題に拍車をかけたのが,司法試験の予備試験の導入ということになります。予備試験は,平成23年に旧司法試験が終わりまして,それと同時に導入されました。これは,予備試験に合格すれば,ロースクールで勉強しなくても司法試験の受験資格が認められるというものでありまして,そこにも書いておりますとおり,年々合格者数が増えております。しかも,非常に重要な問題は,その合格者のうちの多くが東京大学,中央大学,一橋大学,京都大学,それから慶應大学という,ロースクール制度を支えている主要な大学から多くの合格者が出ているという状況でありまして,この予備試験の導入が法科大学院制度に大きな影響を与えているというのが今の状況です。
一番下に数字が書いてありますとおり,予備試験の受験者数というのは毎年激増しております。今1万人を超えて,しかも学部,法科大学院在学中の者が5,000人弱おります。それに対して,右がロースクールに入るための適性試験の受験者ですけれども,実数は4,000人ぐらいになっているということですので,今や学生の意識としては,まずは予備試験にチャレンジして,それが駄目ならばロースクールという状況が続いているということであります。
それを受けまして,15ページのところになりますけれども,政府が法曹養成制度の改革の推進会議を発足し,2年間の検討を経て,昨年6月30日に,さらなる推進についてという報告書を出しているところでございます。
問題は多岐にわたりますけれども,その中で,法科大学院については,集中改革期間を平成30年度までとして,組織見直し,これは公的支援の見直しを文部科学省で進めていただいておりますけれども,それによる統廃合を促進するということです。教育の質の向上という意味では,未修者教育の充実とともに,先導的な取り組みを支援したり,それから共通到達度試験を導入したりという点,もう一つは,経済的な負担,時間的な負担の軽減という点から,学部からの早期卒業,飛び級入学等が議論されているところでございます。
それから,16ページのスライドになりますけれども,さらに,法科大学院は,今後目指すべき法科大学院像として,合格率を上げるということとともに,3つ目の丸のところになりますけれども,社会の様々な分野で活躍できる法律実務に携わる高度の専門職業人を多数輩出するということが望ましいということで,法廷で活躍する弁護士像から,民間企業やグローバルなフィールドで活躍する法曹を育てていく,いわゆる職域拡大が議論されているところでございます。
では,17,18,19と若干重複しますので,飛ばしますが,以上の状況,改革の基本的な方針をもとに,21ページのスライドということになりますけれども,私が考えるところの,専門職大学院制度における法科大学院の課題と展望というところに移らせていただきます。これは中教審の特別委員会とは全く無関係で,あくまでも個人的な意見ということで御理解いただければと存じます。
第1は,学部教育との関係という点は,先ほども申し上げましたとおり,やはり教育の重複が生じているということになりますので,この部分については,場合によっては,2年を原則とするという方向への転換も検討すべきではないかということを考えております。
それから,次のスライドの22ページのところになりますけれども,今,法科大学院改革の中で,時間の短縮化という議論がございまして,高等教育における5年一貫の法曹養成教育の確立・充実ということが言われているという点です。すなわち,学部3年,ロースクール2年で,5年という一貫教育ということになります。
しかし,他方,法曹養成制度に関しましては,連携法のもとに,その趣旨が法科大学院までは及んでいますが,それ以前の学部においては,例えば少人数の教育を行う必要性といった点が出てくるはずですが,現在のところ学部教育に関しては連携法の射程外のところにあります。ですから,学部との一貫教育を考えていく上においては,専門職大学院制度全体における学部教育との関係という点についても,更に検討を進めていく必要があるのではないかと考えています。
第2に,23ページのところになりますけれども,法曹リカレント,それから高度専門職業人の養成と法科大学院との関係ということであります。リカレント教育の重要性ということは,先ほど会計専門職大学院でも御指摘がございましたとおりですが,まさしくロースクールでも同じような議論が行われているということでございます。
大規模のロースクール,ここでは慶應の例を挙げさせていただいておりますけれども,実は,必修科目以外の展開・先端科目群は,非常に充実しております。慶應義塾大学の場合は,公法系,民事系からグローバル系等々,100を超える選択科目がございます。これは,早稲田大学とか中央大学とかの大規模校では同様でありまして,それを生かす形でリカレント教育を行うべきではないかということで,24ページのスライドのところに移りますけれども,一つは,科目等履修制度を活用した法曹リカレント教育が既に始動しております。中央大学,慶應義塾大学等で進めております。慶應義塾大学の場合も,そこで租税法,労働法,知財法,経済法,環境法,倒産法,あるいはグローバル法務といった分野に関しまして,一定の単位取得あるいはリサーチペーパーを提出した者に専門認証を行うという動きが一つであります。
それから,25ページのスライドのところに移っていただきますと,次の試みが,これは私どもの慶應義塾大学で今考えていることですけれども,新たな専門職大学院を新設するという動きです。ビジネス系あるいは経営系という言い方がありますけれども,法律系に関しては,今,法科大学院があるわけですが,その周辺部分を,いわゆる法律系の専門職大学院という形で補うという制度設計であります。
リカレント教育に関しましては,先ほど申し上げたような科目等履修生制度を使うということも考えられますけれども,むしろ法科大学院の展開・先端科目の科目を外に出して,別の30単位相当の専門職大学院を併設するという構想を,これからは検討していくべきではないでしょうか。これは,アメリカのロースクールにおけるJ.D.とLL.M.の関係に相当するもので,私どもは「日本版LL.M.」と呼んでいます。
そこで,26ページのところですけれども,今日,一番求められている法曹リカレントが,グローバル化社会に対応したグローバル法曹の養成だということでございます。慶應義塾大学はこの点,国際性ということを理念として挙げておりますので,21世紀の法化社会を先導する,グローバル法曹,法曹のリカレントということが一つ,それから,法曹資格の有無に限らず,企業とか国際機関のリーガルスタッフとして働く,法務専門職と呼ばせていただいていますけれども,そのような法務専門職の養成をする必要があると認識しております。そこで,法務研究科の中に,英語を使用言語として,1年で学位取得が可能な日本版LL.M.の開設を検討した結果,グローバル法務専攻(法務修士)という新しい専門職大学院という形で,今,設置申請を検討しているところでございます。
具体的には,27ページのところが,その授業科目ということになりますけれども,28ページのところに移っていただくと,学位の種類としては専門職学位で,法学関係という学位分野がございますので,そこからグローバル法務修士(専門職)という学位を与えるという専門職大学院ということになります。
29ページのところを見ていただきますと,この試みの基本的な考え方を図式化したものでありますけれども,いわゆるロースクール,法科大学院の中に,グローバル系の科目,英語での授業科目は既にありますが,これを外に出して学位を与えることによって,3つないし4つのことを可能にするという構想です。
繰り返しになりますが,その一つが,グローバル法曹の養成,リカレントです。さらに,グローバル企業や国連等の国際機関のリーガルスタッフの養成という点。それから,留学生を受け入れることによって,オンキャンパスでの国際化を図る。それから,93単位のロースクールでは,海外のロースクールとのダブルディグリー等はおよそ不可能でありますけれども,外に出して30単位で,英語で行うということにより,海外提携校とのダブルディグリー等を可能にするという考え方であります。
30ページを飛ばしていただきますと,31ページのところになりますけれども,法科大学院に付設する新しい専門職大学院ということで,基本的には,アメリカ等のLL.M.に倣って,1年を標準修業年限とする専門職大学を検討していきたいと思っているところです。すなわち,32ページになりますが,原則は2年というのが専門職大学院ですけれども,法科大学院の付設の専門職大学院という点からは,設置基準の第2条第2項,括弧書きの専門分野の特性により,特に必要があると認められた場合と考えられますので,1年ということを検討できないかという点。それから,必要教員数の考え方ですけれども,これは,基本的には法科大学院という一つの専攻の中の科目を外に出してということになりますので,一種の分割設置に近い場合と考えられますので,それに応じた教員数を御検討いただければと考えている次第であります。
最後,33ページのところになりますけれども,三つ目の課題が,教員養成,研究者養成という点でございます。
法科大学院を設置するということで,教員養成といったものが大きく後退したということが指摘されています。それは,従前の教員養成のプロセスが,学部の研究会での指導,そして修士におけるペーパー指導,そしてドクターでの研究指導という形で,一連のプロセスとして教員を養成していたとわけですが,ロースクールができて,優秀な教員の多くがロースクールに移ってしまったということで,教員の養成が非常に難しくなっているという状況を踏まえて,二つの点から考えていく必要があろうかと思っています。
一つは,法科大学院の学生に対するリサーチペーパーの指導,あるいは助教の仕組みをより広く活用していくこと。二つ目は,専門職大学院の設置基準5条の2項で,専門職大学院で指導する教員は,修士課程では専任教員として指導ができないということではあるのですけれども,教員の養成という視点からは,修士課程,それから法律系の専門職大学院の二つの専攻での兼担といった可能性も,今後は検討していく必要があるのではないかと考えている次第でございます。
以上が法科大学の現状と課題です。
【座長】  どうもありがとうございました。
法科大学院に関しては,別途,特別検討委員会で議論がされていますけれども,今の説明は,非常にほかの大学院にも参考になる内容かと思います。
何か事実関係で,御質問ありますでしょうか。
それでは,教職大学院について,添田委員からよろしくお願いします。
【添田委員】   お配りしました資料ですが,表を見ていただきますと,よく全体像がおわかりいただけるかと思います。
まず,教職大学院ですが,平成20年に設置が始まったわけですが,現在は,国立大学が21校,私立大学が6校,それから,平成28年4月に開校しますところが18校で,4月からは45校が開設されるということになります。
まず,一つ大きな課題は,定員の充足率ではないかと思います。お手元の資料で,数字に四角括弧がついているものは,定員割れをしている大学でございます。現27校のうちの12校で,定員が割れているという状況にあります。この点につきまして,学部新卒者と現職院生をそれぞれ分けて御説明させていただきたいと思います。
まず,学部新卒者のインセンティブということですが,大都市圏の大学等では,地方から出てきている学生さんもたくさんいらっしゃるので,確保は割とできるというところがありますが,地方の大学ですと,地方にいる学生しかおりませんので,なかなか困難ということ。それと,採用試験に合格した者に対しては,都道府県の教育委員会では,登載猶予ということで,大学院を卒業するまで待っていただけるという制度がありますが,前にも御説明させていただきましたように,学生の方は合格したら教員になってしまうということです。
今のところ,採用試験の1次試験の免除などの特例措置がある県では,若干志望者は増えていますが,そういう特例で増えると,志願者全体の質という意味では,下がってしまうということが一方にあります。ということで,現実では,定員確保と採用試験の合格率,教職大学院の場合は,100%教員を目指せと言われております。ということから考えますと,定員を充足させるのがいいのか,合格させる方を目指すのかというところに,非常にジレンマがあるということだと思います。
現職院生につきましては,現職院生のほとんどは派遣に頼っている割合が多いということで,倍率などを見ていただきましても,資料にはございませんが,現職の場合は1.02とか1.03とかいうことで,県教委委員会,市教育委員会から派遣された先生方を受け入れるというような制度をとっているところがほとんどです。もちろん一般の方もいらっしゃいますが,そういったことから,人数は派遣していただける枠に依存しているわけですから,大きく増えるということはなかなか望めない。
なぜ一般の先生方が,派遣以外の先生方が来られないかということですが,大学院休業制度があるのですけれども,これで参りますと,無給ということになります。無給で授業料を払うということで,非常に経済的に厳しいということです。
2点目としましては,修了後の待遇ということが明記されておりません。もちろん,今派遣されている先生方,これまで派遣された先生方は,お戻りになった後,非常に管理職等に進まれている方が多いわけですが,一般の方が入ってこられても,そういう推薦以外の方が入ってこられて,そういうことが守れるのかというと,そういうところでのお話合いは,まだまだ進んでいないところであります。
また,学校の方では,現職の先生が教職大学院に出られますと,その後を臨時採用の先生で補うということで,現場としては,ベテランの先生が出ていった後が臨時採用の方ということで,手薄になるということがあって,なかなか行ってもいいというような判断にはならないということです。
表を見ていただきますと,特色というところに,昼夜開講というものや1年制というものがありますが,こういうものを置いても,なかなか進まないというところがあります。つまり,そういった既存の修学スタイルを大きく変えて,入学前に単位等をとって入るといったような形で,入った後の軽減をするというような,新しいスタイルを提案する必要があるのではないかと思っております。
次に,教育課程です。教育課程に関しましては,かなり広範なカリキュラムが決まっておりまして,45単位以上ですが,うち10単位は実習をすることとなっております。それ以外にも,共通科目というものが規定されておりまして,5領域に及ぶということで,これは10科目20単位設定するとなっておりますが,この共通科目につきまして,幾つか問題点がありますが,3つ御紹介したいと思います。
まず,1点目というのは,この共通科目は,ストレートマスターと現職,両方がとるということになっております。教職大学院の場合は,ワークショップとか事例研究といったものが多いわけですので,そうなりますと,なかなか教職の経験者というところで,新卒の方がいると話が深まっていかない,基本的なところでうろうろしてしまったりすることも見受けられます。そういったことから,現職の先生方の中には,新卒の指導をしているような気がするというような御意見が出る場合もあります。もちろん,そういったことで非常に,学び合うということでメリットは大きいのですが,なかなか難しいところが残ってくるということです。
2点目としましては,今,45単位中の20単位が共通科目に設定されているわけですが,ということは,45から20を引いて,更に実習の10単位を引くと,15単位しか残りません。この15単位で専門科目を学習するとなった場合,バランスが,専門職大学院というカテゴライズの中にある大学院としてはいかがなのかということが,一方にもあると思います。
それから,もう一つ,3つ目としましては,既に免許を持っている,あるいは現職でやっている先生方に,この共通科目のそれぞれの領域について,領域の中のことを,全体を触れるようにというような指導もありますが,学部で受けたり,現職のときに既に研修等で受けているのに必要なのかと非常に疑問を感じております。
それから,コース設計というところで,コースというところの表を見ていただきますと,一番左端がコースの数で,学卒のみを対象とするコースが,ある大学にはあります。次に,経営ということで,経営というコースを設けているところは,全て現職のみ,そのコースに入れるということです。これを見ていただきますと,学卒のみというコースを設定しているところが非常に少ないということがおわかりいただけるかと思います。
そもそも,本来ならば,教職の経験に応じて,あるいはニーズに応じて,コースを設定するというのが本来のやり方かと思いますが,定員を見ていただきますと,教育の単科大学以外は非常に定員数が少ないわけです。20人とかで,そんなに5つも6つもコースは引けないということもありまして,コースを立てていないというような形になっております。
そこで問題となりますのは,先ほどの共通科目でも問題としてお示しさせていただきましたけれども,現職と新卒が,コースに分けていないということは,そこでまた共修するわけです。ということは,共通科目でも問題となっていますが,専門科目でも,教職経験のある者と教職経験のない者が一緒に専門科目を学ぶといった場合,科目にもよりますが,様々な問題があると。達成目標等,到達レベルを現職とストレートマスターでどう図るのか。あるいは,一つの科目の中に違う達成レベルが設定されるということがそもそもあり得るのかというような問題も,そこにはあろうかと思います。
もちろん各大学では,履修されるときに,現職の方にはこちらをとってからとか,ストレートの方には,こちらをとってからとるようにというような指導もされていますけれども,そもそも設定しているカリキュラムの体系というものが考えられて,体系づけられているわけですけれども,それが履修指導のもとに変更されているわけです。ということでいきますと,カリキュラムの体系化というものが成立するのか,しているのかというところで,少し疑問を感じております。
それから,専修免許状ですが,前回も申し上げましたように,専修免許状は取得の義務がございませんので,取らなくてはならないということではないというのが,一番大きな問題かと思います。
2番目としましては,教職大学院の場合は,ほかの専門職のところと少し違いますのは,専修免許状というものを取るために,課程認定というのを受けないといけないわけです。そうしますと,課程認定というところで認定科目が認定されるということを目指しますと,なかなか独自性のあるようなものが出しにくく,科目設定というところで,折り合いが難しいところもあります。この点につきましては,現在,一部緩和される,つまり,教職大学院は学部の課程認定とは少し違う科目設定をできるような形で認められつつあるということです。
2番目,大学教員についてです。最低の必要人数が11人ということでございます。しかし,TTで授業を行いますし,教職大学院は教科によらない科目設定,つまり国語とか理科というような科目設定をしないということになっておりますが,実際に授業研究は国語,理科,社会ということでせざるを得ません。そういうものを超えて授業ということではありませんので,場合,各教科を網羅する必要があるわけです。ということで,11人では各教科は絶対に網羅できません。
ということで,既設の学部あるいは大学院の先生方に,その部分を助けていただくというようなことに頼っているわけですけれども,教員が兼担という形でかかわるよりは,もちろん教職大学院に専任という形でかかわっていただいた方が,より質も上がると思いますけれども,教職大学院に移られると,学部の教科で持てる科目数が制限されるというような問題もありまして,なかなかそういうふうにはいかないということが全体の問題としてあります。
実務家教員についてですが,教職大学院で実務家教員という形で来ていただく方のキャリアパスというのは,大体3つあります。一番多いのが2つです。まずは,都道府県や市町村の教育委員会との交流人事ということで,指導主事さん等が一定年数来て,3年なら3年来て帰っていただいて,また次の方が来るという交流人事です。それから,教職大学院のある都道府県の退職校長さん,これをみなしとしてお雇いする場合。実務家教員の方のキャリアとしては,この2つがほとんどで,あとは公募という場合もありますが,公募の場合は,完全に実務家というよりは,研究者としてもやっていらっしゃるような実務家というような形になろうかと思います。
この実務家に関しまして,かなり改善はされてきたのですが,学校現場というのは非常に忙しくて,学校現場で活躍されている先生というのは,なかなかペーパーを書くという機会に恵まれません。ペーパーを書かれても,研究の発表会とかいうような形のペーパーですので,枚数が1枚とか,そういったものですので,なかなか課程認定等々でカウントしていただけないというようなことがありまして,実務家の先生方,すばらしい実践をされているのだけれども,ペーパーがないのでという方がたくさんいらっしゃるということです。
2番目の大学教員ですが,2分の1教授が必要ということもありますし,先ほど申しましたように設置基準と課程認定の両方を通る方ということですので,それなりの業績がある方ということで,かなり年齢が上がっていくということになります。教職大学院が設置された平成20年あたりでは,現場との共同ということに対して,まだ理解のいかない方もいらっしゃいましたが,現時点においては,かなり理解は深まってきたかと思います。
問題は何かというと,FDということですが,ティームティーチングでやりますので,そのティームティーチングの中では,お互い切磋琢磨して,授業の内容,質を上げていくということができますが,カリキュラム全体の中で,隣の授業が何をしているのかということを,単なるタイトルとかシラバス上だけではなくて,実際の中身を熟知していないと,本当にそのカリキュラムが有効に働かないということが,非常に,受ける受講者が入れかわり立ちかわりじゃありませんので,同じ受講者がずっと先生の授業を受けるわけですから,隣の先生の言っていたことを,また隣の先生が同じようなことを言うということであっては,非常に時間の無駄ということになります。
そういった意味で,カリキュラムの体系を意識して,隣の関連授業で何をしているかというところまで意識した授業を展開していただく必要があるのですが,なかなかそこまでは,お忙しいということもあるでしょうけれども,進んではいないということで,さらなるFDが求められるということかと思います。
認証評価機構につきましては,そこにありますように,22年に認証評価を立ち上げておりますし,教職大学院全てがこの認証評価機構に加盟しておりまして,ピアレビューという形でやっておりますし,平成20年,21年に設置した全ての教職大学院は,1回目の認証評価を終えて,今年度2回目を受けているというような形になっておりますので,大きな問題はないかと思います。
以上です。
【座長】   何か事実関係で御質問ありませんか。
それでは大竹委員,よろしくお願いします。
【大竹委員】  日立製作所の大竹でございます。御説明をしていきたいと思います。
改めまして,日立グループの企業紹介ということで,スライドを数枚御用意しております。
御覧いただいているのが,日立グループ連結でのビジネスの状況ということでございます。
まだ,日立というと,家電というイメージをお持ちの方がたくさんいらっしゃいますが,こちらの表でいきますと,生活・エコシステムという分野があります。ここが当社の家電の部分ということでございまして,全体の約10兆円弱の売上げのうち,1割を切っているという状況でございます。情報・通信分野というところが19%ということで,当社の売上げのメーンというふうに,ビジネスが変わってきたという状況でございます。
また,日立製作所に関して申し上げますと,この情報・通信分野と電力システム,それから社会産業システム─社会産業システムはエレベーター,エスカレーターですとか新幹線などの分野です。こちらが主に製作所がかかわっている分野ということで,電子装置・システムから時計回りに金融サービスの分野までは,主に日立のグループ会社が担っているというビジネス形態になっております。
日立の事業戦略ということでございますけれども,先ほど申したとおり,家電分野の領域はかなり狭くなっておりまして,現在は,インフラをベースとしました社会イノベーション事業と命名していますけれども,こういった分野でグローバルにビジネス展開しているということで,事業を進めております。こういった,グローバルというのが,今後の求める人材というところにも非常にかかわってくるというところであるかと思っております。
現在の新卒の採用状況ということで御説明いたします。
バブルの時代は,1,000名を超える新卒を毎年採用してきておりましたけれども,バブル崩壊,それからリーマンショック等,あと当社のリーマンショック後の大赤字と,様々な経験をいたしまして,現在は新卒は600名。技術系が500名,文系が100名という形になっております。経験者採用に関しては約150名,多少毎年前後いたしますけれども,プラス,高卒合わせて毎年800名前後を採用しているという状況でございます。多様性を推進するということで,外国人もKPIを持って採用するということでございますので,実際,日本人を採用するというのは,新卒の場合は540名程度という状況でございます。
選考・配属に関してですけれども,技術系,事務系で採用の仕方を変えております。
技術系はジョブマッチングという手法をとっておりまして,先ほど,最初のスライドで,たくさんの事業分野があることお示しいたしましたけれども,事業範囲が広過ぎて,なかなか技術系の専門性が,一括配属という形になりますと,学生の要望に応え切れないということもありますので,技術系の中だけで約50の職種・分野を学生に示して,そこから学生が受けたいところを3か所受けられるといったやり方にしています。こうしたやり方によって,こちらも学生の専門性を確保するということを行っております。
いわゆる学歴の内訳ですけれども,ほぼほぼ9割,修士卒という状況でございます。残り1割で,博士,あと学部卒・高専卒もおりますけれども,9割が修士という状況でございます。
一方,事務系ということですけれども,ここは,よしあしあると思いますが,旧来型の一括選考,配属も人事の方で一括して配属するという形をしております。ただし,面接の際に,営業をやりたいとか,経理をやりたいとかという希望を聞きながら,大体の人数を見ながら,合格を出しているという状況でございます。
学歴ですけれども,ほとんどが学部卒ということになります。修士も少し増えてきたかなというところで,現在1割程度ですけれども,特に目標値を持って修士卒を採用しているということではないので,応募割合という形になってくるかと思います。
近年,公共政策ですとかロースクール,会計の専門職大学院を出て受けに来ているという学生さんも少ないんですけれども一定数出てきているかなとは思っております。ただ,公共政策を出ていても,営業をやりたいというような形で,8割は営業希望というところでございます。
学生の特徴としては,語学力が非常に高くなってきていると思います。事務系はTOEICの平均点が,今,750点ぐらいです。ほとんど履歴書を見ていても,800点を超えていて当たり前という感覚が非常に出てきております。また留学も,文部科学省でトビタテ!留学JAPAN等ありますけれども,採用の現場では,非常に留学経験のある学生が増えているという実感がありまして,長短含めてもかなりの数,感覚値ですけれども,半数以上,何らかの留学経験があるなというところでございます。ということがありますので,事務系の場合は,専門性はそれほど重要視していないというのが,旧来型ですけれども現状でございます。
今回,ワーキンググループに参加させていただくということで,採用の人材ニーズというのはこちらでも把握していますが,教育に関しても,各分野どういったニーズがあるのか,各部門の部長,本部長クラスに改めてヒアリングした内容を今回載せさせていただいております。
まず,法務からお伝えいたしますと,昔に比べれば,専門性を見るようになってきておりますけれども,専門性だけではなく,経営的な視点が求められるという状況でございます。一方,経験者に関しては,即戦力を期待するということですので,弁護士資格保持者を採用することはあるということですけれども,あくまでも,求める人材,ニーズにマッチした人が,たまたま弁護士資格を持っていたというケースも多いと聞いております。
一方,教育ですけれども,先ほど片山先生からお話ありましたけれども,当社の場合,アメリカのロースクール,1年でアメリカの手法を学べるということで,また英語も学べるし,人脈もつくれるというところで,こういったプログラムが非常に人気といいますか,ここには本当に人を出したいと思っているといった御意見がありました。また,MBAも行かせたいという思いが強いということです。
国内のロースクールに関しては,お話を伺ったところ,裁判実務に関するものが多いので,やはり企業法務に関する勉強ができるのであれば,是非行かせたいといった意見も出てきているという状況でございます。
次,財務です。ある意味,法務,財務,それから,この後御説明する知的財産も同じなんですけれども,専門性が以前に比べれば高くなってきていますけれども,経営視点がなくては駄目ということで,はっきり部長も申しておりましたが,財務部長ではなくてCFOが必要というふうに申しております。本社の場合,グループ会社がたくさんあるということもあって,日立製作所の親会社がグループ会社にCFOを輩出していくという責任を感じ,教育をしているといった状況でございます。
ただ,採用の現場では,海外大卒の,いわゆる海外に留学している日本人で,ファイナンスを専攻して会社に受けに来るという学生も,一定数超えてきたというところでございます。こちらも,先ほどの法務と一緒で,経験者では,税理士・公認会計士資格ホルダーを採用するということはございます。
ただ,やはり経営視点ということもありますが,財務・経理の場合は海外赴任が非常に多いというところで,また,人数をそれほど海外赴任先で確保できない場合は,財務業務のほかに人事業務も兼任するということが非常に多くあるということがあるので,幅広い仕事を引き受ける素養ですとか人間力みたいなものが必要というところでございます。
教育に関しては,こちら,お示ししておりますけれども,FASS検定を組み合わせて教育しているということです。こちらもMBAに関心がありますし,海外駐在が多いので,語学力は非常に求められるという分野でございます。
知的財産ですけれども,主にMOTやMBAというところが関係してくるかところではございますが,実際に採用しているのは,ほとんど理系の修士以上の学生を採用しているということです。深い専門性を持ちつつも,幅広い技術に関しても知識が必要という状況です。法律的な知識というのは会社に入ってからで構わないという認識で,今教育をしているという状況です。
弁理士に関しては,以前は資格奨励しておりましたけれども,現在,特に弁理士の奨励はしていないという状況でございます。弁理士として必要な業務というのは,今,外注しているものが非常に多くなってきていると聞いております。
教育に関しては,知的財産は,MOT,MBA,ロースクールともに,社員に行かせたいというニーズがあるという状況です。海外に行かせたいということです。また,社員も,米国弁護士に関心があるという社員が多いという状況でございます。
ここまで御説明してきたとおり,専門知識だけでは駄目ということと,経営視点,それからグローバル対応力というのが,各部門共通して言えることでございます。
最後,MOTとMBAに関してですけれども,先ほど知的財産部門でMOTのニーズはあると申しておりますが,研究開発部門で,いわゆる技術者の部門に関しては,特にMOTに関するサポートや,社員として是非取らせたいというニーズは,現時点ではあまりないという状況です。
逆に,博士を取らせたい。先ほど,9割修士ということでお伝えしていますけれども,博士号を取得させたいということで,こちらは制度としても,経済的な支援や時間的な免除といった形で,博士号取得支援を会社として積極的にやっております。この制度も,一定の社員に限られてしまうので,支援が受けられなくても,個人的に勉強している社員も多いという状況でございます。
他社さんに伺っても,メーカーさんですと,こういった博士号取得に関する支援をしている会社さんはあり,博士を取らせたいというニーズは非常に高いと感じております。
一方,MBAですけれども,先ほどからお伝えしているとおり,どの分野も,MBAは非常に取らせたい,海外で勉強させたいという意識が非常に高いというところです。語学力,勉強の内容,人脈づくり,それから海外での対応力を身につけることができるということが,海外でMBAを取らせるということに非常に魅力を感じているということでございます。
最後,私見ではございますけれども,当社の社内の部門のヒアリング,それから他社様もヒアリングをした結果で,個人で感じていることを書かせていただいております。
やはり日本の場合,特に大手企業は,新卒一括採用,それで終身雇用ということで,教育も全部含めて面倒見ますという意識が,まだまだ非常に強いと思います。転職率も,海外に比べれば低いというところで,アメリカなどは,片手では済まない以上の転職が当たり前の文化があるわけですけれども,一方,働くことをやめて学生に戻るというのも,また当たり前という状況かと思います。
こうした中,専門職大学院という形で,1回社会人が大学院に戻るというのは,非常になじむのではないかなという中で,日本の場合だと,なかなか会社の外に教育を含めて出てこない,会社が育てるという意識がまだまだ強いと思っているので,なかなかここを変えていくというのは,非常に難しいというところはありますけれども,ここは一つ課題といいますか,社会人で大学院生を増やすというのが一つのポイントになってくるのかと思っております。
ただ,先ほど来申しておりますとおり,少しずつ専門性を見るようになってきておりますし,MBAですとかグローバル対応力という観点で外に出したいという意識も,今強くなってきているところもございますので,そこのニーズとのバランスにもなってくるのかなと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【座長】   事実関係で,何かご質問がありましたらどうぞ。
今のお話は,日立製作所という日本のトップ企業の事情でして,一方で,今のお話にもありましたように,大企業の中ですら一部変わりつつある。ところが,日立製作所の外に出ると,もっと大きく変わっている部分があって,そこのところはまた事情が違うので,それを勘案して,これが全てだとは思わないように,ただし,大学に対する,ある種の期待値というか思いは大きく変わっている企業でも,本当に必要な教育をしてくれていなければ,それは当てにされないということになるのだと思います。
そういうこともあって,是非,これからいろいろ御議論いただければと思います。
【座長】  何か質問なりコメントがありましたら,どうぞ。
最初に質問ですが,会計関係のところで,待機合格者がどんどんたまっていて,会計士事務所である種の訓練,法科大学院でいうと司法修習みたいな感じでしょうか。これは,待機合格者数の数を減らせば,もっと活性化すると考えていいですか。
【杉本委員】  資料9ページのところの図表で示しておりますけれども,2008年から「待機合格者」の問題が起りましたが,この問題は2012年におおむね解消しております。
【座長】  待機合格者は,今はもう問題ではないと,こういうことですか。
【杉本委員】  はい,今現在はもう問題ではありません。
【座長】  それでは,ほかにどうぞ。
【片山委員】  大竹委員にお伺いしたいのですが,今,海外のMBAやLL.M.に常に派遣したいと考えていらっしゃるが,その理由として,人脈形成,それから,海外への対応力ということを挙げられていました。是非,企業さんにおかれましても,その視野を日本の専門職大学院に広げていただきたいと思っていますが,一つお伺いしたいのは,海外というときに,基本的にはアメリカを考えられていらっしゃるのか,それとも,アジアの時代ということでもありますので,アジア等も視野に入れてお考えなのかという点。それから,もう一つ,私が様々な企業の法務部の方々と話をお伺いしていますと,海外のLL.M.に派遣するということに対して,コストの問題がある。現状では,2,000万円近くかかるということのようですが,そういったコストの削減を何とか図りつつ,グローバル化対応していく必要があるいう意識をお持ちであるというお話をお伺いしたのですが,海外への派遣コストの問題と,それから派遣をされている社員の方,ほんの一部の方だと思いますが,もう少し裾野を広げて,多くの社員の方に専門性とグローバル対応力をつけていただくという視点が必要かと思いますが,そういった点を企業はどのようにお考えなのか,お伺いできればと思います。
【大竹委員】  ありがとうございました。
私も片山先生の御発表を伺い,まさに日本でLL.M.を御検討されるというお話を伺ったので,非常に関心があり,この点をお伺いしたいと思っておりました。
やはりコストの観点もあるので,年間海外に送れて1名ぐらいという状況でございます。アメリカに今,行かせて,学ばせているということがありますが,語学の観点もありますけれども,アメリカの司法を学べる,しかもそれを1年で学べるというのに非常に魅力があると,当社の法務部長が申していたという状況でございます。
逆に,アメリカの司法に関する勉強というのと,日本版LL.M.をつくられる際に何かご検討されているのかというのを,逆にお伺いしたいなと思っております。
あとは,裾野を広げたいという観点では,企業法務に関する理解ということを社外でも広げていきたいということもあるので,先ほども発表の中でお伝えしたとおり,今の日本のロースクールの中ですと,裁判実務に関するカリキュラムは非常に充実していらっしゃると法務の部長も把握していいますが,一方,企業法務に関するものが,まだ少ないのではないかということです。あと,2年あるいは3年行かせなくてはいけないという時間的なところもあるので,短期のものですとか,あとは夜や週末に社会人向けを意識された講座があったら,是非社員に行かせたいと申しておりました。
会社の企業法務が集まる会というのがあり,そこで,企業法務としての意見を法曹の分野の方々に,専門の方々にお伝えする機会があるとも聞いておりましたけれども,そういったことも通じて,企業法務を社外で勉強させる,学べる機会というのを会社としてもつくっていきたいというニーズは,あるとは聞いております。
【座長】  ニーズはあるんですよね。それから,特にアメリカの司法を勉強させたいというのは,例えばクラスアクションだとか,海外で事業展開をするときに,特にアメリカ,あるいはEUではEUの法制度の中で,突然課徴金を課せられたりするわけです。ですから,そういうことに対する知識が,実は日本の法科大学院ではほとんど,教えられていないというようなこともあって,極めてローカルになっているのではないかと思います。ですから,今片山先生から御提案があったような新しい仕組みは,非常に有効かもしれないと思います。
【宮脇委員】  いろいろお聞きして,各大学院共通の課題が多いなと感じました。
今のやりとりにも関連しますが,ロースクールについていえば,日本の法曹資格と結びついているが故に,国際的な分野に対する教育ができないというか,やらないということです。ですから,その辺が,資格と専門職大学院教育との関係で,幾つかの課題になっているのだと思いました。
これに関連して,会計大学院もそうだと思いますけれども,向こうの場合,いわゆる今でも学部での専門教育が非常に根強く残っている中で,その上に大学院レベルで専門職大学院を設置してきたというところが,一長一短で,専門職大学院の大きな問題の根元があるのではないかと思います。
先ほど片山先生の御報告の中で,既習者と未習者の話があり,今後法学部との連携で5年のプログラムをつくるというお話があり,一方で,ロースクールの理念としては,多様な学習歴のある学生を3年間で法曹の専門家に育てていくという理念もある。何が一番問題かというと,法学部を残したままロースクール,韓国のように法学部をなくしてしまい,法曹家の育成というのは専門職大学院で行うと割り切ればよかった。その点,非常に法学部の関係が,依然として,会計もそうですが,会計士や税理士試験を学部在学中に受験しろと,経営系とか会計系の学部で,そういう指導をしている大学も幾つかあると聞いています。その上で会計大学院ができた。ただし,ロースクールとは違って,必ずしも会計士の資格とは結びつかないと。
それから,ほかの大学院についても,先ほどの臨床心理師もそうでしたけれども,学部までの教育と今後の大学院教育との関係が難しくなってくるのではないかというお話がありましたし,それから,横の関係でいえば,どの分野の専門職大学院も,いわゆる専門職大学院と,専門職大学院ではないけれども同じ学位を出している大学院との関係が難しくなっているということで,日本の場合,高等教育の体系が縦の関係,学士課程と専門職業人になるための大学院。横の関係で,同じ修士の大学院との関係。今後,冒頭に紹介されました新しい実践的な高等教育が,学士ないしは短期大学課程ということでできる。
ですから,非常に積み上げてきた日本の高等教育制度は複雑になり過ぎたというか,隘路に押し込まれているので,そのあたり,専門職大学院だけの話ではなく,全体の高等教育の仕組みをどうするかということを考えていかないと,この大学院部会も,繰り返し繰り返し同じような課題がよみがえってくるという気がいたします。
最後に1点だけ質問で,会計大学院についてお聞きしたいのですが,2002年と2003年に,それぞれワーキングチームの報告が出ていて,公認会計士試験制度との連携を視野に入れた検討というのが,2年続けて赤字で書かれている。視野に入れた検討,その後はどういう検討状況になってきているのかをお聞きしたいのですけれども。
【杉本委員】  金融審議会のもとでの検討ですが,飽くまでこれは金融庁主体の審議会で,このような検討が行われ,その結果としての報告書です。最初の2002年12月の報告書を踏まえて,公認会計士法が改正されたつながりになっています。
それと,今御指摘いただいた学部での専門教育との関連ですが,今日御報告しました資料の2ページのところにもありますが,金融審議会でのワーキンググループの報告書の中ですが,3の「会計教育への期待」というところの(1)の1つ目の丸のところです。
実は,学部で専門教育がこの間,行われていますが,非常に大きな弊害として公認会計士試験の受験者は,学部教育だけではなくて,圧倒的多数が受験専門学校に依存しているという事実があります。ですから,この点が当時,非常に問題になっています。専門職大学院の在り方に関しても,その設置の在り方に関しても,ここのところは非常に重要なポイントだったと認識しております。
【座長】    専門職大学院の中で,特に会計大学院も,法科大学院もそうですけれども,全体に専門家の育て方の基本的な考え方が,先ほど,ヨーロッパ型からアメリカ型に変更されたという言い方をしていましたけれども,要は,必要な専門的な知識・技能を身につけるための教育訓練としての専門職大学院で,だから,プロセスとしての法曹養成というのは,当然,高度な専門的な知識・技能を見つけるためには,一定期間の教育訓練,あるいは実地も含めた訓練が必要であって,一発試験だけで専門的な技能がはかれるわけではないいう思想がある。にもかかわらず,従来日本でとってきた試験一発でというのは,基本的には機会均等を図るために,全ての人が学歴・経験関係なく,その試験をクリアすれば資格が与えられる。こういう考え方が完全に克服されないまま,新しいプロセス,養成という考え方が来ているということで,これは,基本的には,全て教育プロセスによって専門家を養成する考え方に変えていくべきだろうというのが全体の考え方で,その線で少し議論をすべきだろうと思います。
単純に言うと,試験に合格したからとか,非常に頭がいいからというだけで,数学,物理ができるというだけで医者になった人に手術を任せられますかと,こういう問題だと思います。ノーベル賞をとっても手術が下手な先生はいます。それは適材適所で,きちんとした,プロセスが必要だという観点で,今の専門職大学院をどう見るか。例えば臨床心理士は,指定大学院とダブルメジャーになっているわけです。それから,教職大学院のところは,ある意味で,プロセスとしての養成の仕方が実は全く明確でないと,こういう説明をしていただいたような気がします。
将来的には,教育系の大学院は専門職大学院という形で統合されるだろうという動きの中で,教育系の専門職大学院の在り方をもうちょっと明確にしていく必要があるような気がします。
それから,それ以外の専門的職業,専門職,教職系も含めてですけれども,いわば受入れ側とのマッチングの問題は,先ほど大竹委員から説明ありましたけれども,まだまだ企業サイドの理解が十分とは言えない。企業サイドはまだ,日本のそういう教育をあまり信用していないと思えるので,これだけ法科大学院にせよ,会計大学院生にせよ,議論を進める努力をしているにもかかわらず,その内容が企業側に伝わっていないし,企業側がまだそこまで踏み込んでいないというところもあるので,ここはまた別途方策を考えなければいけないということだろうと思ういます。
ほかに何かご意見ありましたらどうぞ。
特にないようでしたら,これらの観点で,今後議論を深めていければと思います。全て一律にはいかないかもしれませんが,多分課題ごとにまとめて類型化はできるような気がしますので,その方向で少し議論をしていければと思います。
それでは,事務局から何か連絡事項ありましたらどうぞ。
【事務局】  次回のスケジュールでございますけれども,3月9日17時を予定してございます。場所等は,また追って連絡させていただきます。よろしくお願いします。
【座長】  今日は,いろいろ広範に説明していただいたので,一気に理解が進んだかどうか,不安はありますけれども,今日の御説明等を踏まえて,次回からも議論を進めていきたいと思いますので,よろしくお願いします。
それでは,本日はこれで閉会にしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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