専門職大学院ワーキンググループ(第2回) 議事録

1.日時

平成28年1月13日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省(中央合同庁舎7号館東館)3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 専門職大学院制度の現状・課題について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘(主査),川嶋太津夫(主査代理),玉腰暁子の各臨時委員
(専門委員)青井倫一,大竹由希子,片山直也,上西研,杉本徳栄,添田久美子,松﨑佳子,宮脇淳の各専門委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局審議官,松尾高等教育局審議官,北山専門教育課長,塩原高等教育企画課主任大学改革官,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録


【有信委員】  定刻となりましたので,第2回中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループを開催したいと思います。本日は4名の委員より各分野の現状や課題について説明いただけることになっております。それから,前回御紹介がありました新たな高等教育機関について議論されているということなので,それについて簡単に議論をしていただいて,それも含めて議論を進めさせていただければと思います。
それでは,事務局から配付資料の確認をお願いします。
【塩田専門職大学院室長】  配付資料の確認をさせていただきます。
まず資料1が,前回ワーキングでの主な指摘をまとめたものでございます。続きまして,資料2-1が,修士課程に学位を同じような学位を付記している修士課程の数でございます。資料2-2が,実務家教員関連で認証評価の指摘例でございます。資料2-3が,教育訓練給付金の制度概要でございます。資料3-1からが各委員のプレゼン資料,3-1,3-2,3-3,3-4を御用意してございます。資料4が,新たな高等教育機関の制度化に向けた論点を整理した資料でございます。
あと,机上配付資料ということで,論点の専門職大学院制度との比較表を付してございます。
以上でございます。
【有信委員】  ありがとうございました。
不備等ありましたら,途中でも結構ですので,事務局にお知らせいただければと思います。
それでは,最初に前回どういう議論が行われたかということについて,事務局が整理してくれていますので,まずその説明からお願いします。
【塩田専門職大学院室長】  それでは,資料1-1から資料2を簡単に説明させていただきます。
資料1を御覧ください。
こちらは,前回御指摘いただいたものをトピックごとにまとめたものでございます。また,社会との連携ということ,特に(1)で産業界とのニーズとの関係ということで御指摘があった内容といたしましては,産業界のニーズをまず把握すべきではないか,足りない分野や不必要な分野があるのではないか,またクロスオーバーが重要ではないか,養成する人材のポートフォリオを大学も戦略的に考えていくべきではないか,また,社会に対しての必要性の発信を考えるべき,こういったような御指摘がございました。また,(2)で学生のニーズとの関係ということでは,学位を有することのメリットが見えなくて学生の入学につながっていないのではないか,メリットの周知が必要であるということ,また,仕事を続けながら専門職大学院に通学できる仕組みづくりが必要というような御指摘でございました。(3)日本企業の実態ということでは,これまでの日本の企業は,新卒を採用し自社で教育する方針でございましたけれども,過渡期にあるのではないかとの御指摘。
また,2ポツの教育課程等の在り方ということでは,(1)で修士課程との差がわかりにくいため,ユニークさを制度上位置づけるべきではないか,また,(2)で必要単位数といたしましては,社会人学生が40単位程度が限界ではないか。また,(3)で学位の国際通用性の視点が必要という御指摘,(4)で新卒と社会人学生を一緒に教育している大学は,うまくいっていない大学もあるのではないかというような御指摘でございます。
ページめくっていただきまして,3ポツ教員の質の担保,こういった観点では,(1)でございますが,実務家教員の割合に上限がないと,実務家教員が教育組織の大半という大学もあり問題ではないか,との御指摘でございました。(2)のFDのところでございますが,FDは機能していないのではないかということ,また実務家教員のFDも必要ではないか,研究者教員が実務家教員から学ぶことが必要ではないかというような御指摘で,(3)では,教員数の確保がネックとなって,修士課程からの専門職大学院への移行が進んでいないのではないかとの御指摘がございました。
また,その他ということで書いてございますので,御参照ください。
続いて資料2-1でございますが,前回の委員会で御指摘がありまして,専門職大学院と分野が重複するようなところをやっている修士課程がどれぐらいあるのかというような話でございます。正確には,カウントされていないですが,学位という観点から,同じような名称の学位を出している修士課程がどれぐらいあるかというのをピックアップしたものでございまして,例えば経営学に関しましては134,会計については4,こういったような状況でございます。
注釈にございますように,公衆衛生につきましては,当局医学教育課が調べた数を書いてございます。また,知財に関しましては,ここに書いてございます協議会の会員校は5校ということでございます。また,臨床心理に関しましては,臨床心理士受験資格に関する第1種指定大学院は152校ある,こういったような現状でございます。
続きまして,資料2-2をごらんいただきたいと思います。
実務家教員のFDの関係の御指摘がございましたので,26年度実施分の認証評価におきまして,実務家教員に関連してどのような指摘がされているのかというのを,御参考までにピックアップしたものでございまして,例えば,(1)のビジネス・MOT関係の大学院に対しましては,例えば,実務家出身の新任教員に対しては,教育技術の向上を図る期間を設けて,OJT方式で指導にも取り組んでいるということで評価をできるような大学。また,研究者教員と実務家教員の教育上の連携程度が不明瞭だというような御指摘を受けた大学もございました。また,実務家教員は,研究論文にまとめるよう努めるとともに,成果を学会で発表するなど積極的にかかわるようにしている。というような,前向きな取り組みを指摘されているものもございます。
また,会計のところでは,例えば会計の2ポツのところですか,研究者教員と実務家教員が共同して実施する授業に特色がある,こういったような御指摘がございました。参考にされてはと思います。
続きまして,資料2-3でございます。
これは前回,専門職大学院におきましてはこのようなメリットがあるということを一応御参考までに。皆さん御存じのことかもしれませんが,教育訓練給付金の制度が拡大いたしまして,ページをめくっていただければと思いますが,教育訓練給付金の支給対象でございます。拡大部分につきましては,(1)から(4)ということで,(3)に専門職大学院というのが位置づけられまして,専門職大学院が認定を受けますと,教育訓練給付金の対象となります。現状といたしましては,1ページ目でございますが,72の専門職大学院,半数近くが認定を受けていると,こういったような状況になってございます。
さらに,資料は特段御用意してございませんが,国家資格となりました公認心理師について,専門職大学院の在り方といいますか,その受験資格の在り方ということで前回御指摘がございました。この法律は,文部科学省と厚生労働省の共管ということになってございまして,現在両省におきまして,どのような形でするかというのを検討中ということでございますので,前回御指摘がございましたような視点をしっかりと当方としても踏まえながら,検討していきたいと思います。
説明は以上でございます。
【有信委員】  どうもありがとうございました。
前回の議論でも相当本質的な問題につながる内容の指摘があったというふうに思いますが,前回の議論の取りまとめに関して,何かご指摘等ありましたら。
特にないようでしたら,次に移らせていただきます。
それでは,4人の先生方からプレゼンテーションをお願いしておりますが,最初に,MBAについて青井委員からよろしくお願いします。
申し訳ありませんが,10分程度にしていただいてということで,よろしくお願いします。
【青井委員】  わかりました。
ビジネススクールといいますか,経営系専門職大学院の課題について御説明したいと思います。お手元には,資料としてパワーポイントがありますけれども,これでしゃべると10分以上になるので,簡潔に話したいと思います。
まず5点ほど課題があって,1つは,不思議なことに,日本の場合には,経営系ビジネススクールというのは文系の大学院だと思われていますが。私のアメリカでの経験からすると,基本的に向こうは文系,理系という発想はありません。
ビジネススクールには理系の学生,教員が結構多い。日本では,技術者のためのビジネススクールを作ってほしいと慶應義塾大学のときに要望を頂きましたが,私としては何でビジネススクールが文系なのかなというのが,これが1つの課題になっています。
2つ目は,海外のビジネススクールから見ると,日本のビジネススクールは日本人を対象にし過ぎる。現代では,日本人を対象に日本人のためのビジネススクールを作るのであれば,海外のアクレディテーション機関からすると,別にアクレディテーションする価値はないということになります。殊にヨーロッパの教員からは,中国,ASEANという大きなマーケットがあり,日本に対し非常に関心を持っているとしたら,そのマーケットを取り込むべきじゃないかと言われています。
3番目は,日本で経営系専門職大学院ができたときには,悪く言うと安上がりでたくさんのビジネススクールができたというのが私の印象です。安上がりでという意味は,各大学は最低限の教員だけをそろえて,その後10年間もほとんど増強はしていない,投資不足だというのが3番目です。
4番目が,日本のビジネススクールのほとんどはパートタイムのビジネススクールです。パートタイムという方法は東京において成立するぐらいで,大阪では若干きついかなと思っています。海外では,例えばニューヨークとかシカゴ,パリ,ロンドンですから,もうちょっと大都市から離れたところではパートタイムでなく,フルタイムのビジネススクールを作るべきではないかと思っています。
5番目は,これは国立モデルと私立モデルになっていて,これは,ある意味では,私立のビジネススクールから見ると,格差のある授業料という観点が出てきます。授業料については,基本的には税金控除で支援すればよいと思います。
スタート時から授業料を200万円とし企業派遣にこだわっているビジネススクールがある一方,立地条件が強みだけのビジネススクールもある。
やっぱりビジネススクールと社会人教育というのは,分けて考える必要があるのではないか。普通の学部の先生方を配置し,学生が18歳から22歳ではなく社会人というビジネススクールがあります。やはり学生としては,ビジネススクールに投資で来ているものだと考える。自己の経験を整理したいから大学院に入学するという人がいますけれども,そういう人たちに対しては既存の大学院に行ってくださいと言っている。我々はどちらかというとキャリア投資のため来てもらっているのですから,ビジネススクールで学んだものを次にどう使うかということを学ぶための大学院だと考えている。
また,基本的には,質と量の充実が必要である。設置認可されて,一息ついて,大学院をスタートして,その後大学基準協会やその他の認証評価を受審しもう一息ついてというところにアドミニストレーションというのは関心がいきます。しかし,本当の問題は,マーケットへの対応であり,日本の場合には,今までは大企業中心でしたけれども,今はマーケットをベースにして,キャリアチェンジのための一環として,ビジネススクールの価値観を出していかなければならないと思います。
大学をスタートさせて,立派な建物はつくりますが,それ以外,ヒューマンリソースに対する投資はあまり考えられていないというのが日本の場合の欠点かと思っています。
学生にとってのMBA投資のROIを高める必要がある。
時代に合ったカリキュラムを軸にし,時代に合ったカリキュラムを実施していくに際して最も抵抗するのは教授会です。
ビジネススクールにおける教員のクリティカルマスというのは,11名とか15名とかいう教員ではなく,20人,30人の教員の組織において,ビジネススクールにおける様々な新しい実験も出てくる。この点は日本の学校には欠けていると思います。
これまで,基本的には日本人のための学校ということでやってきましたけれども,今後はアジアの成長に乗るために,使用言語については日本語と英語と中国語を合わせたビジネススクールにした方がいいと思っています。
同時に,ビジネススクールにおけるR&Dのための投資が必要になってきます。様々なカリキュラムを作ってみたり,様々な面白い教員を連れてきたり,様々な実験,それらがうまくいけば土俵に乗ってくると思います。
今までのアメリカのビジネススクールは,科目や教員,プログラムで差別化していましたがこれからは,学ぶ環境をどう作っていくかがプロフェッショナルスクールの道かと思います。
ROIを高めるために,ほとんどの学校は,奨学金競争で授業料を下げる方に動いています。私はこれがまずいと思います。MBAホルダーの年収がアップするように雇用サイド,企業サイドに働きかけることが必要になってくると思います。
一番必要なのは,ゼネラルマネージャーです。ビジネススクールは専門職大学院ですから,教授研究して,大きなことを考えるのが教授の役割です。ある意味では,ビジネススクールをどうマネージしていくかという意味では,アドミニストレーションとしては専門職としてのゼネラルマネージャーが必要になってくる。日本の場合には,どちらかというと,研究職で入られている人が多いです。2年間吏員をやって,よかった,また自分は研究に戻れるという形でやっていますけれども,多分6年から8年ぐらいの吏員をやっていかないと,なかなかビジネススクールの発展には向いてこないと思います。ニーズに合わせたカリキュラムの革新をどうしていくか,教授会の抵抗を排除してどう実行するかとなると,すごいアドミニストレーションが必要になってくると思います。
同時に,日本の場合にはゼミが強いですから,個々の教師が学生の品質を担保するという形ですけれども,そうではなく,カリキュラムで,例えば慶應義塾大学なり早稲田大学なり一橋大学なり明治大学のビジネススクールであれば,そのカリキュラムが人を育てているという形が,必要になってくるだろうと思います。
これは,この後,上西委員がMOTプレゼンテーションいただきますし,会計もありますけれども,どちらかというと,日本は差別化しすぎのビジネススクールです。ビジネススクールというのは,ある意味では会計もMOTも知財も,いろんな形を集めた形でというのは,時代時代によって,知財が伸びる時期がありますし,会計のニーズが出るときがありますし,MBAが出てきますし,MOTも出てきます。その意味では,ある程度の大きさを持っている方がいいと思います。
一番の問題は,ビジネススクールの教員をどう養成するかという議論があって,いわゆる学術大学院との距離感をどうつくっていくかという議論と,ビジネススクールになると整理統合は起こるかと,何回か仕掛けましたけれども,各大学のプライドがあり,整理統合は進まないところが出てきていると思います。
次に,アジアのマーケットが,伸びることを考えると,日本のビジネススクールは日本人を対象にするのではなく,アジアの中のビジネススクールということを考えた方がいいと思います。どちらかというと,日本のビジネススクールの教員は,アメリカを見過ぎる悪い癖があります。ハーバード,ウォートン,ケロッグというビジネススクールは,ある意味で極めて特殊な学校で,大きなキャッシュフローを稼ぎ,そのキャッシュフローを投資して,ぐるぐる回していく。ある意味では,日本やヨーロッパのビジネススクールは,そういうビジネスモデルだと持続可能性はないと考えています。
次に,言語が来ます。基本的には,教員の投資システムといいますか,これは実務家教員もそうですけれども,日本のビジネススクールとしては,社会に蓄積した知恵を教室に持ってきて,蓄積した知恵を社会に還元する形が必要であり,そのための収入として,授業料収入だけではなく,様々な形で社会と企業とがインタラクティブに支援していくことが必要になってくる。
ハーバードのビジネススクールがうまくいっているのは,MBAを輩出し,優秀な人をコンサルティング会社,例えばマッキンゼー,ボスコンに就職させて,ハーバードビジネススクールの教育をマーケットに展開していく。この3点セットになっています。日本の場合には,ビジネススクールがビジネス社会を先導するために,アピールするもの,紀要とか何とか言ってこぢんまりとしたものではなくて社会にアピールすることが必須かと思います。 次に,大学の経営陣がビジネススクールに投資をするかについては,難しい問題があると思います。私個人としては,経営系専門職大学院を運営するためには投資をしていかなければならないと思います。投資というのは,建物という意味ではなく,人材に対する投資です。
次に,社会と連携していくということで,学位に集中し過ぎるのは問題かと思っています。
次に,需要サイドのMBAの魅力をどう作るかと同時に,ビジネススクールに向いた教員養成をどうするか。それぞれ学術大学院では優秀な先生がいますけれども,必ずしもそういう先生がビジネススクールに向いているかどうかはわかりません。その意味では,実務家教員に対するFDとともに,アカデミック教員に対するFDも重要で,機能はもっと重要だと個人的には思っています。カリキュラムで学生を教育するのは,個々の教授の品質保証ですることではない。
それと,パートタイムMBAだけでいいのか。日本のビジネススクールを伸ばしていくためには,フルタイムのビジネススクールを,地方に置く必要がある。小樽商科大学や,神戸大学がフルタイムでやってもらうといいんでしょうけれども,どちらかというと,地域のビジネススクールがパートタイムでやっていくというのは物理的にはきついと思います。御存じのようにハーバードビジネススクールも,なぜパートタイムを行っているかというと,あれは中堅都市ですから,ボストンビジネススクールは,ニューヨークではないですから,ボストンでやるとすると,フルタイムでやらなければならない。ニューヨークだと,やっぱりパートタイムも可能になってくると思います。
日本は安上がりというのは,パートタイムMBAで入り過ぎている学校が多すぎますから,いずれ大学側で投資をしていって,パートタイムMBAで稼ぎながら,フルタイムのビジネススクールを作っていくというのが筋ではないかと思っています。
以上です。
【有信委員】  ありがとうございました。
最後にまとめてディスカッションの時間をとってありますので,ここでは事実関係等について何かご質問,わからないこと等があれば,よろしくお願いします。
さっきほど説明されませんでしたけれども,奇妙な教員の年齢分布というのはどういう意味ですか。
【青井委員】  結局,文科省の認可をとるために,それなりの先生を雇っていますから,年齢が高すぎるということです。
【有信委員】  そういう意味ですか。
【青井委員】  私としては,持続的にやっていくためには,若手をどう養成していくかということが重要になってくると思いますが,そのための投資は,ビジネススクールも大学もあんまり考えてないというところです。
【有信委員】  ほかに,何か質問ある方はおられますでしょうか。
それでは,上西委員からMOTについてお願いします。
【上西委員】  私の方からMOTの現状と課題ということで説明させていただきます。
MOTについては少しわかりにくいところがあるので,現状がどうなっているのかということを踏まえて,課題について述べたいと思います。
そもそも,MOTとは何かというところから御説明しないと,いろいろな定義があるのでわかり難(にく)い面があります。MOTの専門職大学院が集まっているMOT協議会という組織がありますが,そこでMOT専門職大学院の在り方を考えたときに,MOTについて次のように定義しました。MOTとは技術を効果的に活用して経営するということであり,まず,利益につながる筋のよい技術をどうやって生み出すのかということです。もともとMOTというのは,そういうR&Dのところを中心に始まったので,そこだけをとってMOTと言われている場合もありますが,それだけではなくて,生み出した技術をどのように育てたら大きな利益を長期間得ることができるのかまで含め,我が国の専門職大学院としてはMOTを定義しています。
そういう意味で,認証評価等も経営系の専門職大学院のカテゴリーの中で受けさせていただいているというところです。
2000年代当初,MOTの専門職大学院ができたころにMOTの意義として言われていたことは,大きく分けると3つです。一つ目は,自ら新しいコンセプトを創出するような人材を育成すること,二つ目はイノベーション創出のために技術を経済的価値に繋(つな)げる人材を育成すること,三つ目は新事業,新産業創出力を強化するために起業家を育成することです。そのためには技術と経営の双方に精通したプロフェッショナルの人材,いわゆる技術経営者を育成することが重要だと十数年前から言われていました。現在でも同様のことが言われているということは,ほとんど同じ課題は残っているのだろうと思っています。
技術経営者とはどういう人かというと,物事を捉えるときに,技術の視点と経営の視点,両方から見て,その焦点,例えば事業化に対する,距離感を出せるということです。日本の失われた10年とか20年とか言われている中で,技術者というのは技術の進化の方向はよくわかるが,距離が近過ぎて戦略がない開発をして差別化ができないとか,遠過ぎて,結局新規事業の幻想に陥ってしまっています。したがって,距離感をきちっと出すことができ,イノベーションをプロデュースできるような人材や,創造的な成果を生み出していくリーダーが必要だということは明確だと思います。ただ,下の方で見ていただくとわかりますが,技術と経営の両方がわかる人材というのは口で言うのは簡単だけれども,幅広い知識とスキルを求めていることになります。そこがMOT教育の難しさにもなっているということです。
MOT系専門職大学院の現状について説明します。横軸が設立年度で,縦軸の上の方が経営系,下の方が工学系です。MOTは両側からのアプローチがあり,マッピングすると現在こういう状況です。MOTの専門職大学院の集まりである協議会には現在11大学が加盟していますけれども,経営学系の大学院はMBAの学位を出しておられて,準会員という形で入っておられます。基本的に,正会員は,工学系の大学が多く,ほとんどが技術経営(専門職)の学位を出しています。また,東京農工大学は24年度から工学府の中に改組して入っており,東京工業大学も28年度から環境・社会理工学院に入ることになります。確かに小さい独立した研究科でやると様々な問題があるので,大きな枠組みの中でやるのはいいことだと思います。ただ,専門職大学院としての独立性がどう担保されるかというのは,1つの課題かと思っています。
MOTの1つの大きな特徴として他の分野と違うのは,扱う間口がすごく広いことです。工学といっても,サイエンスとテクノロジーが複雑に絡み合っているので自然科学まで含むことになり,MOTは自然科学から社会科学まで全部カバーしなければいけない。それから,体系化が進んでいるところもあれば,まだまだ途上のところも混在している中で教育をやらなければならない。したがって,何を学べばよいのかというのがなかなか分かりにくいし,学んでどのような能力が身につくのかというのも分かりにくい。すなわちMOTの全体像が見えにくいということです。このことが,社会的認知が十分に進まない大きな理由だと思います。
この課題を解決するためにはコア・カリキュラムを作って,どういう能力が身につくかを明示し,社会に発信することが重要だと考え,2008年10月から2010年3月まで1年半かけて開発しました。MOTの専門職大学院の修了生が最低限習得しておくべき能力というのを,大学と産業界の委員の方々の御意見や修了生の御意見,パブコメも頂いてまとめ上げたものが,コア・カリキュラムということになります。
基礎知識項目というのは,基本的にMBAでも学べるところだと思いますが,経営の基礎です。違うのはMOTとはどういうものかという概念的理解とか,技術と社会,というものを位置づけていることです。また,大きな特徴は中核知識項目として,イノベーションマネジメント,技術戦略・R&Dマネジメント,知財マネジメント,オペレーションズマネジメントの4本柱をMOTのコア領域としていることです。その下に括弧で書いてあるイノベーション・マネジメント(5)というのは,その領域が5つの中項目で構成されていることを意味しています。項目の数が5とか10とか,全部で合わせると69項目で成り立っている体系です。
さらに,知識の獲得だけでは不十分なので,総合領域という,課題解決などの創造的活動を通して実践的能力を身に付ける領域を設けています。右側は,各大学が独自の強みを活(い)かした教育を行う領域であり,コア・カリキュラムと半々ぐらいの割合になるのが望ましいと考えています。
それを,開設科目と具体的にどのように関連づけるかについて説明します。縦軸が69項目プラス総合領域として,修了生が修得すべき能力を挙げており,横が開設科目です。開設科目は,カリキュラム・ポリシーに従って各大学が設定するもので,その中で,重点的に扱う領域をマトリックスの中で埋めていって,それがディプロマ・ポリシーとかカリキュラム・ポリシーと全部整合して回るような枠組みになっています。これで,MOTを学んだ修了生が必ず身につけているべき能力を規定しているという形です。
将来は,二重丸とか丸とかをもう少し数値化したり,重みづけをして,数値で見えるような取り組みにしていくことを考えています。
それを具現化したカリキュラムの例です。右下から見てください。技術的バックグラウンドを持った方が入ってこられて,経営の基盤をまず必修で学びます。その後,展開科目で基本的なイノベーションのプロセスを選択必修で学んで,その後,応用科目で,大学の強みとする分野に特化した科目群を学びます。さらに,右上の方の特定課題研究で創造的な活動を必修で行うというものです。課題が,右上に書いていますけれども,かなり技術の中身まで踏み込む必要がある場合がありますが,そこをどこまで踏み込むかがポイントです。修了生や在学生に一番満足度の高いところではありますが,教員の数にも限りがあるため,技術の中身にどこまで踏み込んでいくべきかというのが大きな課題になっています。
現状を御説明させていただきましたけれども,まとめますと,MOTの特徴というのは経営から工学までの扱う間口が広いこと,体系化が進んでいるところと,まだそれほど十分じゃないところがあることです。したがって,全体像が見えにくく,社会的認知が十分じゃないことが課題となります。そこで,MOTのコア・カリキュラムを開発しました。産業界にも参画いただき,社会が求める内容にはなっていると思います。産業界からも,これを活用して社内の教育にも使っているという話は,よくお聞きしています。
問題は本格的に採用している大学が少ないことです。まだ,一部採用はしているが,本格的に採用している大学は多くありません。それは,教員の数にも限りがあり,理想的にはこうだと思っても,そこまで踏み込むことができない状況があるのだとおもいます。したがって認証評価のときに,この大学は経営系の教員が少ないとか,経営系をもっと充実するべきだとか,個別に判断するのではなく,コア・カリキュラムと連動した基準により評価するようにすると,もっと普及が進むのではないかと思っています。
2番目の教員組織の課題ですが,アカデミックと実務との橋渡し,その融合だけではなく,MOTの場合は工学と経営学,理系と文系の融合の難しさがあり,文理が分離しているケースが多く見受けられるように思います。これに対して,学術と実務は割とうまく融合しています。それは,お互いそれぞれリスペクトできる部分があるからだと思います。専門職大学院に来ているアカデミック系の人は実務に興味があるので,実務家の話をよく聞くし,実務家も,自らがやってきた経験を理論化したいということで,積極的に融合できています。しかし,工学と経営学は文化も違うし,価値観そのものが違う部分があり,学際領域での体系化が進んでいかない原因になっていると思います。それぞれの専門家がいるだけでは,融合分野としては不十分で,教員個人個人が融合していかないと発展できないので,個人の中で融合するための枠組み,仕組みをつくっていかないといけないと思っています。
先ほど青井委員からもありましたけれども,ビジネススクールは当然グローバルに展開していかないといけないわけですが,MOTの場合,幸い日本の技術力や研究開発力,ものづくり力のブランドがあるので,日本で学びたいという話を良く聞きます。しかし,留学生に対するニーズを十分に生かし切れていません。コア・カリキュラムの英語版を海外,特にアジアの大学で説明すると,これを使ってMOTの大学院をつくりたいという大学も出てきています。日本のMOTのコア・カリキュラムは海外でも評価いただいているので,アジアの標準にしていくような取り組みをすると,それをベースにいろんな単位互換等が進み,知名度も上がり,ブランド力も向上し,アジアから優秀な学生が来るようになるのではないかと思っています。
以上です。
【有信委員】  ありがとうございました。
特に,今の説明で,質問や,事実関係等の確認はございますか。
はい,どうぞ。
【川嶋委員】  コア・カリキュラムのところでMOTの認証基準(案)について,具体的にその認証評価団体に説明できているか。あるいは,今受けている大学認証評価に,こういうものを新たに基準として入れるのか。そのあたりはどうでしょうか。
【上西委員】  MOTの専門職大学院協議会は当時10大学だったんですが,そこで認証評価もやりたいと思っていました。認証基準,括弧して案と書いてあるのは,案をつくって実際試行したということです。しかし,5年間で10大学が受審するとして,例えば1大学300万受審料であれば,5年間の収入が3,000万ということになり,それを運営できるかいろいろ試行しましたが,専門職大学院協議会でそれをやるのは無理だということで,諦めたという経緯がございます。
したがって,基準そのものは作っていますが,現在受審している経営系の認証評価機関は経営系全体を対象にしているためMOTの基準をそのまま入れるのは困難な状況です。
【有信委員】  はい,どうぞ。
【片山委員】  ほとんど勉強していない領域ですので,幾つか事実関係について御質問させていただきたいと思います。1つは,経営系と工学系と分かれているということですけれども,アドミッションの段階で,どういう学生が入ってきているのか。理系の学部から入るのは非常に入りやすいと思いますが,文系の学生が入ってきて対応できるものなのか。ということと,学部生が上がってくる割合と,社会人の方で入り直しの割合。また,アドミッションの内容を伺わせてお聞かせいただきたいのが1つ。もう一点は,首都圏に集中していると聞きますが,地方の大学で,どのような規模で教員数がどのぐらいでやっておられるのかというところをお聞かせいただければと存じます思います。
【上西委員】  はい,ありがとうございます。
新卒者の割合ですけれども,基本的には,東京理科大学と山口大学などは,実務経験10年ぐらいの人をということで新卒者はいません。学生の平均年齢は40歳を少し超えるぐらいで,ほとんどが理系出身です。ほかの大学では,新卒者が半数程度入っておられますがその場合でもほとんどが理系だと思います。実務経験が必要だという大学と新卒も受け入れている大学は半々ぐらいです。やはり10年以上,平均20年ぐらい実務経験を持った方と新卒者,特に文系の方が一緒に学ぶのは,難しい部分があるというのが現状だと思います。
それから,地方の大学の例として山口大学は,1学年定員15人,専任教員は14名です。実際,入学者は定員の130%以内ということで,20人近くはいますけれども,1学年15人は山口県だけではとても無理で,広島と福岡にサテライトのキャンパスを置いてやっています。今は宇部,山口の本体の方は日本語での教育はやめて,秋入学で全て英語での授業を行うことで海外から学生を集め,そちら側を充実,拡大していく方向をとっています。そうしないと,地方では難しい現状があります。
よろしいでしょうか。
【有信委員】  ありがとうございました。
ほかに質問はありますでしょうか。
それでは,次に公共政策大学院から,よろしくお願いします。
【宮脇委員】  それでは,お手元にA4の一枚紙で私の名前が右肩に入っているもの,資料3-3というものがございます。これで,ポイントを絞って御説明させていただきます。
公共政策大学院ですけれども,その現状と課題ということで,まず現状について簡単に御説明いたします。
入学者ですが,受験者そのものというのは減少傾向にございまして,当然入学者についても,非常に制約的になってきています。公共政策大学院としては,東京大学が一番規模が大きくて,1学年100人台から200人台ということでございますが,そのほかのところにつきましては,大体30人規模ということでございます。
入学者,受験者等も学部生からの進学というのが減少しておりまして,社会人,留学生というところで維持をしているという構造でございます。
丸2のところですけれども,社会人につきましては,地方議会の議員ですとか退職者の方が中心でして,現役の公務員の方はいらっしゃいますけれども,ボリュームというのは多くない場合が多い。先ほど青井先生が社会教員という指摘をされましたけれども,それをお聞きする中で,その社会教育的な性格の方が強くなってきてしまっている側面があると思っております。
そして,留学生はアジア中心で,行政機関からの派遣ですとか,あるいは大学からの進学をしてくるということで,中国,台湾,韓国,東南アジアというところからお越しいただいております。
進路ですけれども,これにつきましては,前回も簡単に御報告いたしましたように,学部生との間の就職先に大きな違いはありません。よくグローバル化の中で,国際機関へということですけれども,ここは,現実問題としては就職というのは非常に難しいということで,結局,留学生がアジアの行政機関に戻っていくというパターンの中で,グローバル化ということを取り組んでいるところが多いということがございます。
2ですけれども,もともと公共政策大学院は公務員受験のための機関ではないですが,どうしてもそういうイメージになっている。これは公共政策で中身を特化できないというところにもあるわけですが,公務員受験ということを目指してくる学生もかなりございます。ただ,そういう学生は,大体1年生で合格をしていくということで,ほとんど授業を受けていない。結局,退学措置ということになりますので,この辺のところも課題として挙げられると思います。
組織的に申し上げますと,多いのは法学研究科の内組織,法学研究科の中の組織として設置しているもの。あるいは法学研究科の経済学,工学系の研究科との連携組織という形で設置しているものがございます。先ほど,MOTのところで工学系との連携というところがございましたけれども,工学系は主に社会工学系でございました。例えば災害ですとか,まちづくりですとか,そういうところが中心となっているということです。
組織的には,研究教員,実務家教員ともにローテーション人事でございますので,2年間程度でのローテーションで移ります。ですから,組織全体を長期にわたって支えていただく研究教員も実務家教員も実は確保が非常に難しい。同時に,先ほどゼネラルマネージャー,GMのお話がありましたが,ここの部分が,正直言いますと欠落をしてしまっているということがございます。
ただ,研究教員につきましては,10年たちましたので,そろそろ2回り目ということで,全くの公共政策の初心者ではないということですが,これは後ほどの項にもなりますが,本籍が法学研究科,経済学研究科等にございますので,公共政策に専念するという度合いに課題があるかなと思っております。
2番目が一番重要なところでございまして,(1)の専門性の希薄化ということでございます。分野特化の問題で,丸1のところですが,設置以来認証評価でも議論になっていますが,結局公共政策って何かということでございます。公共政策というのは基礎領域なのか,それとも応用領域なのかということでございます。例えば,ここに書いてありますように,法政策とか経済政策,技術政策に特化をすれば,法学研究科の応用領域で展開することも可能になってまいります。日本の場合に,公共政策を政策科学的に基礎領域として展開をするというところでカリキュラム等や,教員対策がまだ整っていないということです。
一方で,これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども,自分の関心事だけに的を絞って入学してくるということが非常に多い。したがって,この基礎的な領域を形成しようとすると,非常に乖離(かいり)感を持たれる。それは努力をしなければいけないわけです。
丸2は先ほど御紹介したとおりでございます。
以上の点から,丸3の研究大学院,例えば,私ども法学研究科の中にも専修コースというものがあって,社会人に入ってきていただいておりますが,こことの差別化が事実上極めて難しいということがございます。研究者へのルートというのは,研究大学院の方がございますので,むしろ研究者,あるいは社会人の中でも研究大学院の方を選ばれるというところがございます。
それから,丸4の法科大学院との関係ですが,実は,法科大学院の改革は進んでおりますけれども,2年ぐらい前までは,法科大学院の学生の中から公共政策の授業を聞きたいという学生,要するに途中で公務員志望に転換していくという学生が,理由はともかくとして3分の1ぐらいおります。そういう学生を,ある意味公共政策の授業の中で取り込んでいくことが非常に重要な枠組みであるわけですけれども,仮に法科大学院が従来の司法試験に順化していくと,この部分についての連携が細っていくわけですが,法科大学院と公共政策の学生の資質の共有部分,重なっている部分というのは,非常にあるのではないかなと思っておりますし,そこを大切にすることが将来的にあるのではないかと思っております。
それから,これは前回も御報告いたしましたが,業界関係が希薄でございまして,国,地方自治体,独立行政法人,あるいはNPO,非営利団体,あるいは職員研修など,様々なパターンはありますが,この業界関係との連携が非常に多様であることもあり,なかなか確立がされないところがございます。
3番目にお移りください。カリキュラムです。先ほどから御指摘があるところですが,実は,公共政策にはコア・カリキュラムという概念が基本的にないわけです。認証評価もやりましたけれども,選択必修科目はあります。必修科目を設定しているところがなくて,要するに,学生のニーズに合わせて様々なことが学べる,形にしてしまっている。ですから,学生数に比べて展開科目がものすごく多いという状況にございます。
したがって,1つの科目に,1人とか2人という状況も発生をしていて,そうなってくると,公共政策は,政策議論をしていくことが非常に不可欠なわけですが,そういう議論というものを展開する場づくりができないということもございます。ですから,コア・カリキュラムをどうするかということに,その分野の特化,ある程度の特化というのは,必要ではないかと思っています。
それと,丸2ですけれども,入学者が非常に多様化をしていて,社会人,留学生,退職者,こういった方々が多いので,非常に入学者の学力レベルに差があります。ここは,他のところと違うところかもしれません。
例えば,工学系の学生は,法学ですとか経済学を全くやっていない。それから,退職者になってきますと,はるかかなた昔にやっているものですから,学び直さないと公共政策の基礎がつくれないというようなことがあります。これは,入学試験をどうやっているのかという御質問になると思いますけれども,ここの部分で,やはり学部レベルでの授業展開というのがどうしても不可欠になってきてしまっていて,この組合せをどうしていくかということがございます。
それで,授業の必要単位数は決して多くはないわけです。1回目のところでも御指摘ありました。授業の質という問題の方が,私どもとしては大きいのかと思っております。
最後に教員体制です。ローテーション人事ですので,先ほど来申し上げているような運営についての柱というものが掲げられていないということ。それから,理論と実務の架橋ということですが,研究教員,実務家教員を問わず,教員養成,FDというところをもっと徹底していく必要性があるのではないか。実務家教員の方は,国ですとか地方自治体からお越しいただいているわけですが,現職の行政の方がお入りいただくと,ほぼ同格の方が教えることを教わる構造になってきてしまって,うまくいかない。そういう問題があります。ですから,こういう教員体制は,今までの10年間を踏まえて検討し,取り組んでいかなければいけないところです。
大学院の運営の継続性については,先ほど御紹介したとおりです。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【有信委員】  どうもありがとうございました。
今の説明に対して,事実関係のところで何かご質問ありますでしょうか。
はい,どうぞ。
【杉本委員】  カリキュラムのところで,学部レベルの授業展開の必要性の説明がありましたが,これは,別途その科目を設けておられるのか,それとも,既存の授業の中で,そのレベルを落として展開されていくのか,どちらですか。
【宮脇委員】  正確に申し上げますと,両方です。例えば,法学部出身の学生は,統計学を全くやっていないという状況です。それは大学院の中で工学系の学生向けではなくて,標準偏差からスタートをした,ある意味大学院レベルではなく学部レベルの授業も幾つか展開をしています。
ただ,それだけではカバーしきれませんので,単位認定にはなりませんけれども,積極的に学部の授業を聞くようにと指導はしていますが,やはり学生は単位認定に直接結びつかないと積極的ではないという問題もあって,必要なものを全部そろえるという体制には,残念ですけれどもなっておりません。
【有信委員】  ほかに質問ありますでしょうか。
なかなかいろいろ問題点が出ていますけれども,引き続き説明にいきたいと思います。公衆衛生分野について,玉腰委員からよろしくお願いします。
【玉腰委員】  前回もお話ししましたように,私自身は専門職大学院の設置されている大学に所属しているわけではありませんので,まず,現実どうなっているかということを,設置された大学のうち,認証評価の委員会に一緒に入っている3大学の先生に確認をさせていただきました。それから,認証基準協会からも少し情報を頂いたものを,まずまとめてあります。
昨年度,認証基準の見直しを行いまして,公衆衛生系専門職大学院の対象としているものはこれだということで,丸1,丸2,丸3とまとめてあります。丸2番のところにありますように,かなり公衆衛生というもの自体が広い範囲に及んでいるということで,丸3番目にありますように,出している名称が必ずしも公衆衛生学修士ではないところもあるというのが実態です。
設置の状況ですが,ここにありますように4つの大学,京都大学,九州大学,東京大学,帝京大学に設置されていますが,学部として独立させているのは帝京大学のみで,あとの3つは,医学系のところの中に入っているという形になります。社会人に配慮したことをされているのが2か所と聞いていますが,帝京大学については情報を十分に収集し切れていませんので,不足があったら申し訳ありません。
社会のニーズですけれども,平成17年の答申に資料にお示ししましたように書かれていまして,公衆衛生系の専門職大学院が必要だということになっています。実際には,関係する職業団体として行政機関,あるいは保健医療や福祉,環境に関係するような機関,医療機関,教育研究,民間組織など考えられるわけですけれども,そことの連携が十分にいっているかどうか,理解が十分追いついているかというと,恐らく不足な部分があるだろうと思われます。といいますのは,このMPHの資格を取っても国内ではキャリアアップにつながる仕組みができていない。あるいは,そこに所属する人たちがMPHを取るための配慮が十分にはされていないというのが現状です。
学生については,3つの大学の情報を得ていますけれども,新卒の割合は,九州大学,帝京大学では非常に低く,社会人が多いということがわかっていただけると思いますが,京都大学では17%という状況だそうです。
定員の充足率につきましては,認証評価の結果から拾っておりますので,現状,今の時点ではありませんけれども,お示ししてあるものになっています。
カリキュラムに関しましては,いずれの大学もアメリカで言われている公衆衛生の基本専門領域,これを目指すことというのは基本になっていまして,疫学,生物統計学,環境健康科学,社会行動科学,健康政策管理学,これに関しては教育がされています。先ほど申しましたように学位の英文の名称は,Master of Public Healthですけれども,日本語にすると少し異なっていて,この5領域に関しても,重みは大学によって,何を中心にするかによって若干違っているというのが現状です。
教員に関しましては,実務家教員がもちろんある一定割合置かれているわけですけれども,実務家教員の実態が本当に実務家教員かというと,かなり広く解釈をしていて,既に研究教員的に研究的なことをやっている方も実務家教員として認めているという部分も,実態としてはありそうです。
それから,先ほどのところでローテートの話がありましたけれども,公衆衛生系では医学研究科の中に置かれているということもあるかと思いますけれども,教員のローテートがあまりうまくできているとは聞いておりません。
卒業後のキャリアですけれども,先ほど申しましたように,就職時に優遇される仕組みにはなっていないというのが現状です。修了者の進路につきまして,これは基準協会から資料を頂きまして数字を入れてありますけれども,医療機関,あるいは行政機関から来ている方も多いということで,そちらに戻っていく方ももちろん一定割合ありますが,下の方にあります大学進学というのが,大学の特性を反映して東京大学,京都大学ではかなり高くなっているというのが現状です。
専門職大学院以外に公衆衛生学の修士を要請するコースというのは,最近になりましてかなり増えてきています。わかる範囲でホームページから情報を収集していますけれども,ここに示しましたように7大学,また1年コースが東北大学で設置されています。また,大阪大学では,社会人への配慮として,夜間や夏季の集中講義があるということが大きく特徴としてうたわれています。
以上のことから,最後のページになりますが,課題として挙げられますのは,まず1つは,もともと公衆衛生という現場として自治体がターゲットに考えられているわけですけれども,そことの連携がまだうまくいっていない。そういうところから人が来る仕組み,そして人を返す仕組みが,まだうまくいっていなくて,それはどうも自治体側にも周知が十分にいっていないのではないかということも言われております。ここのところは是非,ここの組織,あるいは厚労省などから通知をしていただければいいのはないかと関係者からは聞いています。
それから,みなし教員制度のところで,実務家教員をうまく取り込んで,現場にうまく教育の場を求めるというような仕組みを,きちんと整理していく必要があるだろうと考えます。
一方で,専門職大学院ではない公衆衛生学の修士養成コースが今増えてきていますので,その質の担保を検討していく必要があると考えています。
最後に,医師に特化される話になりますけれども,専門医機構による専門医の認定制度がこれから始まっていきますが,その中で公衆衛生をどう位置づけるかという議論が出ています。社会学系の専門医を養成していく形になってきた場合には,この制度もまた活用していく必要があるだろうということで,公衆衛生系の専門職大学院は必ずしも医師に特化したものではありませんけれども,これも併せて考えていく必要があるだろうと考えています。
以上です。
【有信委員】  ありがとうございました。
今の説明に関して,何かご質問ありましたら。
はい,どうぞ。
【川嶋委員】  先生に質問というよりは,2枚目の実務家教員の比率ですけれども,認証評価を受けている東京大学で3割を切っているんですが,これはどのような関係,考え方でしょうか。
【玉腰委員】  申し訳ございません。私は,このときの評価に関与していないので,現状はわからないです。すみません。
【有信委員】  すみません,事実関係で質問したいんですけれども,公衆衛生というと,例えば,医学部の出身者なのか,医師の方々も入っていると思いますけれども,通常のコースの出身者とはバックグラウンドも違うし,ダイレクトに入るとすると修業年限だとか,様々な違いがありますよね。この辺は,公衆衛生というのはどういう基準でアドミッションがされますか。
【玉腰委員】  入学に際してということですか。
【有信委員】  つまり,そういう区別の部分をどういうふうに扱っているかということです。
【玉腰委員】  1年コースを設置しているような場合には,1年コースに入る条件として,6年制の医学,歯学,薬学などに限るというような制限だったり,あるいは,更にプラス実務経験の年数をほかと区別するというようなことは,生じているようです。
【有信委員】  なるほど。基本的には,医学,薬学のような素養を前提として,この公衆衛生の各年数をやるということですね。
【玉腰委員】  そうですね。
【有信委員】  この目的がものすごく高級なことを言っているため,予防医療や,医務系のことだとすると,ある意味で,ここで目的としている部分がどうなのかと気になりまして。
【玉腰委員】  実態として,2年間で医学に関する教育を十分に付加しているかというと,多分はそうはなっていないと思います。
【有信委員】  はい,どうもありがとうございました。
4つの分野の先生の説明を伺いましたけれども,続いて,専門職大学院制度の検証にあたって新たな教育機関に関する議論が行われていると紹介がありましたが,その辺の関係も踏まえなければいけないということもありますので,現在の検討時点として御説明よろしくお願いします。
【塩原主任改革官】  主任大学改革官の塩原と申します。現在,中教審の特別部会で行われています新たな高等教育機関の現在の検討状況につきまして,御報告をさせていただきます。
資料は,資料4ということで新たな高等教育機関の制度化に向けた論点,これは第8回の直近の特別部会における配付資料から抜粋したものでございますが,こちらを御覧いただければと思います。
まず,現在における状況,背景でございますが,中教審におきましては,昨年4月に文部科学大臣からの諮問を受けまして,この新たな高等教育機関の制度化につきましては,中教審総会直属の特別部会による検討が現在,進められているところでございます。
この新たな高等教育機関につきましては,一昨年7月の教育再生実行会議における第5次の学制改革についての提言でも,その設立が求められたものでございます。現在の学校制度では,例えば,大学院段階には専門職大学院があり,高等学校,後期中等教育の段階では専門高校があるのに対して,高等教育のアンダーグラデュエイト,高等学校卒業後の進路に当たる部分では,職業教育に特化した,かつ相当な質保証がされた学校制度が現状においてはないということでございまして,職業教育全体の振興のためには,この段階にも従来の大学,短大や専門学校,高等専門学校とは別に実践的な職業教育に特化した新たな機関を創設すべきではないか。このようなことでございまして,この制度化の検討が始まったわけでございます。
特別部会におきましては,既に8回にわたる会議が開催されておりまして,制度化に当たって,論点を大きく9つの項目に分けまして,まずは,それぞれの論点項目について,一通りの各委員からの御意見を伺う,こういう状況でございます。
本日の資料4,こちらは直近の第8回会議の配付資料でございます。これは,各論点の検討のための論点整理用のメモとして会議で配付されたものでございまして,特別部会では,飽くまでこれを材料に各委員からの意見を伺っているという状況でございますので,意見の集約はこれからということでございます。
この状況でございますことをあらかじめお断りさせていただきますとともに,専門職大学院ワーキングの先生方には,以下の説明につきましては,今,新たな高等教育機関についてこういったことが今検討,議論されているんだということとしてお聞きをいただければと思います。
それでは,資料の中身についての説明でございますが,特別部会におきましては,高等教育機関としての3つポリシーのうち,まず,出口の設定にかかわりますディプロマ・ポリシーの在り方についての指針というのを最初に重点的に行っているものでございます。
その最初,論点1でございますが,論点1は,養成する人材像・身につけさせる能力ということでございます。その1ページ,養成する人材につきしては,新たな機関を創設することによって,この下の四角囲みにあるような人材養成を強化してはどうかということで,議論がなされております。黒丸にもございますが,専門性が求められる職業を担うスペシャリストとして,高度な技能等を強みに企業等の事業・実務の主力を担い,事業活動における新たな価値の創造を先導するような役割を担うことのできる人材等を,この養成すべき人材像として挙げております。
これは,専門職業人材にしても,専門性を持って,現場レベルでの事業の改善,革新等を現実にしていくような層を主に想定するということでございまして,専門職大学院が養成しているような高度専門人材とは別に,実技や実務等に特に専門性を持った層を養成することなどを中心に,念頭に置いているものでございます。
続きまして,2ページ目は,身につけさせる能力としまして,こちらは,教養,基礎教育及び専門教育を通じて,この2ページ下の囲みのような能力の育成が目指されるべきではないかということで説明されております。この新たな機関の教育を通して身につけさせる能力において重点に置くところとして,1つ目は,特定の職業に対しての専門的知識の理解を深める専門高度化,2つ目は,特定の職業に関しての卓越した技能等を育成して,実践的な対応力を強化する実践力の強化,3つ目は,一定の産業・職業分野において,当該分野全般の基礎知識・技能等を育成します分野全般の精通,4つ目は,それら実践的な技能や実践知と理論知,教養等を統合して,課題解決等へ結びつけることができるような総合力の強化,これが当該それぞれの専門的な職業領域についての能力強化のポイントとして挙げるとともに,更に職業人一般として共通的に求められる基礎的・汎用的能力,主体的なキャリア形成を図るために必要な能力ということで,自立した職業人のための学士力の育成,こういった5つのポイントを方向性として打ち出すことを現在,検討しております。
続きまして,論点の2でございます。
資料は4ページになりますが,こちら論点2では,養成する人材像等を踏まえた必要な修業年限と,その修業者に対する学位授与の取扱いについて検討しているものでございます。
まず,修業年限につきましては,学士相当の学位取得に基づく4年制の課程,短期大学相当の学位取得に基づく2年制,3年制の課程と,双方制度化するとともに,特に1つの新しい切り口といたしましては,修業年限4年の課程につきましては,これを前期,後期の2つの段階に区分することも可能とし,4年を2年プラス2年,ないしは3年プラス1年の積み上げ型の学士課程として構成いたしまして,その前期を出た段階で短期大学相当の学位が取れる,このような設計も現在検討されているところでございます。
続きまして,論点3以降,こちらからはカリキュラム・ポリシーにかかわる内容になってまいります。その最初は教育内容・方法の特色ということでございます。この内容・方法の特色でございますが,四角囲み,5ページの2つ目の黒丸にもありますように,各分野等のうち,実習や演習等による科目の割合について,一定割合以上を義務づけることとしてはどうかと。さらに,その下の黒丸でございますが,企業等と連携して行う授業,これは典型的には企業内実習,インターンシップでございますが,こういった授業の時間数を一定以上確保することを義務づけることとしてはどうか,こういったことが含まれております。また,この5ページの一番下の黒丸でございますが,それまでの授業等で身につけた知識・技能等を統合し,真の課題解決力・想像力に結びつけるための総合的な演習科目というのを,それぞれの課程の最後の段階で義務づけると,このような教育内容の特色づけなどを図ることが検討されております。
続きまして,6ページでございます。さらに,教育内容・方法に関しましては,カリキュラム編成等における産業界との連携のための仕組みということでございますが,産業界のニーズを教育課程に反映をさせるため,企業や経済・職能団体との連携によって,教育課程を編成するための体制の整備,具体的には委員会の設置のようなものでございますが,そういったことを義務づけすることとしてはどうかとあります。
さらに,6ページ一番下にございますように,この機関が,社会人の学び直しにも機能を発揮するようにという観点から,この機関では,多忙な社会人等をパートタイム学生や科目等履修生として積極的に受け入れるための支援,さらには,短期の学習成果を積み上げて学位取得につなげるための様々な制度的な資格を組み入れていくこととしてはどうかということを,現在検討しております。
7ページでございます。
7ページは,教員組織,教員資格等ということでございます。最初,教育組織の構成ということでございまして,7ページの黒丸2つ目にありますように,専任の実務家教員を一定割合以上配置する。これは専門職大学院の制度設計に倣ったものでございます。このようなことを,新たな機関についても考えますとともに,さらに,その下の小さい黒ポツ,小さい点でございます。「さらに」ということでございますが,職業教育の高度化,職業教育における理論と実践の架橋を図るという観点から,実務家教員のうちに一定の研究能力も有する,実務も研究も両方わかっている,そういった者が一定数含まれるようにする,このようなことを今回の制度の中で現在,検討しているものでございます。
更に8ページでございますが,8ページの下段の方に,教員の質担保のためのその他の措置ということでまとめておりますが,一番下の黒丸にございますように,大学等での教育経験のない専任教員に対しては,採用後一定期間の研修を必要とするなどの措置を講じることとしてはどうか,こういう点が検討されております。
続きまして,9ページでございます。
教育条件,専任教員数,施設設備などでございますが,こちらにつきましては,9ページから10ページにあるとおりでございます。これは,大学,短期大学設置基準の水準を踏まえつつ,質の高い職業人養成にふさわしい適切な水準を定めると。具体的な議論はまだ審議会の中では深く掘り下げての議論はないということ,たくさんの意見が出ておりますが,こういった方向性での検討が現在進んでいるということでございます。
次が11ページでございます。
11ページは,アドミッション・ポリシーにかかわる入学者の受入れについてでございます。この機関についての入学者の受入れにつきましては,意欲,能力,適性等により,多面的,総合的に評価して,例えば,高校でも専門高校の卒業生なども含めた高校卒業生,社会人学生など,多様な背景を持った学生を受け入れるということとしてはどうか。特に入学者選抜につきましても,学力試験だけではなく,資格,技能検定等の成績,各種大会での実績などの,そういったものも選抜に活用することを推奨してはどうか等が検討されているわけでございます。
続きまして,論点の7でございます。
論点の7は,これまで3つのポリシーを通じた教育機関としての質保証の在り方,さらには,それ以降,制度全般にわたる事項が各論点として挙げてありますが,最初の質保証の仕組み関係といたしましては,質の高い実践的な教育機関を担う機関として,設置認可に関しては独自の設置基準等を制定してその設置認可をすべきこととしてはどうか。
さらには,教育情報,財務情報の公表や自己点検評価,認証評価等,これにつきましては義務づけすることとしてはどうかということでございます。とりわけ,このうちでも,教育情報の公表につきましては,現行の大学単体と同等ないしはそれ以上の情報公表を求めることとしていってはどうか。更に認証評価につきましては,分野別質保証の観点を取り入れた効果的な方法を検討すること等,検討課題に挙げているものでございます。
論点の8,こちらは14ページでございますが,こちらは新たな機関に関するその他の制度設計でございます。まず,研究についての取扱いということにつきましては,この機関,教育機能に重点を置くものとしますが,大学体系に位置づける機関として,新たな機関の目的の中には研究も含まれることとしてみてはどうか。また,教育課程の編成・実施等に際して企業・団体等の参画を得るという,先ほどの教育課程の編成の委員会等の仕組みを入れていきつつ,一方,教育研究機関としての自立性は担保し得る仕組みとして,例えば学位授与等の専門的事項につきましては,教授会で審査するような仕組みとしていってはどうだろうか。さらに,この期間の養成する対象分野,対象となる職業,実践教育分野でございます。この制度として分野限定は行わないこととし,これは,実際には学問の教育と実技・技能の教育を融合させた,そういった専門職業人養成というのがより効果を発揮し,そういった専門職業人材についての具体的なニーズがある分野に,今後こういった機関がありますと,このようなものとして考えているものでございます。
最後のページでございますが,他の高等教育機関との関係等についてでございます。既存の大学等との関係では,修業年限の通算,相互の転学,単位互換等を可能とする仕組みを整備して,既存の大学,短大等と新たな機関との連携教育を促進するような仕組みを入れていってはどうか。さらに,大学,短大が一部の学部,学科を新たな機関に転換して併設することなども可能とする等の論点があるのでございます。
以上が,これまでの審議状況でございます。特別部会では,次回,1月20日以降でございますが第9回の会議が予定されておりまして,次回以降は,審議経過報告の取りまとめに向けた御審議を頂きまして,最終的には,本年年央を目途に答申をいただければと考えているところでございます。
以上が,審議状況でございます。よろしくお願いいたします。
【有信委員】  ありがとうございました。
それでは,加えて事務局から,専門職大学院と新たな高等教育機関との差異を整理していただいていますので,説明を簡単にお願いします。
【塩田専門職大学院室長】  それでは,机上配付資料でございます。参考という形で,先ほど説明ございました,議論中ということではございますけれども,論点を整理した先ほどの資料と現行の専門職大学院制度での相違点というものを整理したものでございます。
そこに書いてございますように,演習,実習,実技,こういったものを一定割合にするよう義務づけるというような御説明がございました。また,その下でございますが,インターンシップ等の企業と連携して行う事業についても,これを一定時間数以上実施するよう義務づけるということがございましたが,現在の専門職大学院制度におきましては,右側の方でございますけれども,義務づけるというような規定まではございませんということと,その下でございますが,企業等や経済団体,職能団体等の連携により教育課程を編成,実施する体制,委員会等を踏まえた,これも義務づけとございましたが,現行制度ではそういった義務づけの規定まではないということでございます。
ページをめくっていただきまして,教員組織でございますが,実務家教員のうちに研究能力を有する者が一定数含まれるものとするというような御説明がございました。専門職大学院制度におきましては,実務家教員の割合というのはございますけれども,その中で研究能力を有する者を含めるというような規定はございません。
また,最後でございますが,FDの関係で,教育経験のない専任教員に対しては,採用後一定期間の研修を必要とするなどの措置を講ずる仕組みというような御指摘がございました。これにつきましては,FD自体の規定はございますけれども,こういったような具体的な規定を書いたような措置,仕組みは用意されていないということでございます。
以上でございます。
【有信委員】  どうもありがとうございました。
新しい高等教育機関がどういう形で取り組みをなさるかというのは,今後の議論に回すことだと思いますけれども,ある意味では,専門職大学院とかなり重なるようなところもあって,それを踏まえて議論していく必要があります。これが提言されたとして,どういう形で高等教育機関を設置されるのかというのも,まだよくわからない部分があって,18歳人口これだけという中で,新たな高等教育機関ができているので,私立大学がそっちへ転換するのか,今の専門学校が更にブラッシュアップするのかというような,様々な議論はあり得ると思います。ただ,専門職大学院の方はもう少し先というか,出口側に向いたような形で少し議論を進めていければと思います。
今の新しい高等教育機関の議論も踏まえながら,少し様々な議論をしていただきたいと思います。
先ほど,4つの具体的な例について,課題に関する説明が多かったと思いますが,1つは,教員の問題,あるいは学生の問題,を例えば専門職大学院の性格によっては新卒の学生が入ってきても出口につながらないというような,そういうケースもありますね。MOTのように,今の日本の企業の問題ということなので,両方変えていかないといけないというところもあるかと思います。
それから,目標,目的設定。つまり,全体像がよく見えない。出口で一体どういうスキルというか,どれだけの能力,スキルを持った人たちを育成しようとしているのかということ。それと併せて必要な部分,コア・カリキュラムがどういうふうにできるのかという問題がありました。要するに高度な専門職,専門的な職業人を養成すると,高度であるが故に,一般の人間からは見えない部分がいっぱい出てくるわけですよね。そうすると,先ほどの専門的職業人としての在り方みたいな部分についてのところが今の説明の中ではなかったわけですけれども,コード・オブ・コンダクトのようなものは実際には必要ないのかという話だとか,出口にどうつないでいくかということ。明らかに法科大学院のように司法試験が見えているものだとか,会計のように公認会計士が見えているもの,それからMBAのように社会的なレピュテーションがある程度確立しているものを,日本の中でそのレピュテーションをどういう格好で確立させていくかというような部分,出口上いろいろなケースで違うと思いますが,この辺,少し全体で議論していただければと思います。出口とかかわり合いはありますけれども,グローバル化,つまりどういう出口の中で国際的に,グローバル化というのは2つ意味があると思いますけれども,要は国際的に通用するような専門的職業人を養成する,そのときの国際的ということの見方も,青井委員の説明にあったように,欧米を基準にするのか,あるいは東南アジアを対象にして,日本がある意味で新たな基準としてつくり上げていくのかというようなことも含めて,いろんな課題があると思います。どんな点からでも結構ですので,今までの説明をもとに,30分ぐらい議論する時間はあると思いますが,どんな課題でも御意見いただければと思います。
【青井委員】  1つは,先ほどの議論にありましたけれども,実務家教員の研究能力です。
私は,実務家教員とアカデミック教員と分けることは,基本的には好きではありません。全部教員です。実務家教員を引き合いに研究能力というより,一番の問題は,大学は新しいもの,何か面白いものに興味を持たせるような仕組みが必要であり,これは別にアカデミックであろうが実務家であろうが関係ないと思います。そういうところは欠けてきているというのが,1つの大学の今の課題だろうと思います。これが,第1点。
それと,先ほどの出口,カリキュラム,入り口という,この3点セットで多分,質の保証をするのだろうと思いますけれども,教育訓練給付金については諸刃(もろは)で,定員を充足しているかどうかが割と大きな変数になっていると思いますけれども,やはりビジネススクールとして入り口を強化して,若干短期的には数を落としてでもクオリティを上げたいという政策をとると,定員が充足しないことから教育訓練給付金の対象に認定してもらえないということがあって,幾つかの学校は渋々,本来なら落ちるべき人間を入れているところも私立大学ではなきにしもあらずなんだろうと思います。その辺が,なかなか頭の痛いところになってくると思います。
3番目は,先ほどの私のプレゼンテーションで言い忘れましたけれども,日本で一番欠けている言語は,数学,統計学だと思います。基本的にマネジメントになってくると,最後は数字が必要です。数字と何が結びついているかというのを,ちゃんと理解しないといけない。御存じのように,1950年代か60年代に,アメリカのビジネススクールの教員が数学は弱過ぎるというので,多分フォード財団かどこかがお金を出して,教員の数学のトレーニングをしたと思います。
日本の場合には,少なくとも昔は数学はすごいとされていましたけれども,今は数学,統計学の弱体化はもう悲惨なものになってきています。ここをどう強化していくかというのは経営系というか,ビジネススクールにとっては大きな課題になってくると思います。どちらかというと,数学という言語を,昔は日本人は世界でトップだと言っていましたけれども,今はトップではないだろうと思います。ビジネススクールに行くと,数字とやっていることとの関連性をちゃんとつけるというのは,アメリカ人ができているとは思いませんけれども。
最後は,ハーバードに行ったときの一番の数学の問題は,IQは高いけれども,正当な数学教育を受けていない人が結構いるので,そういう人たちにどう対応するか。教員にとっての一番大きな問題で,非常に頭は良いですけれども,数学自体はそんなに知らないと言います。だから,授業に出ていると,何で10進法ばかりやるのか,13進法はどこへ消えたのかとか,そういう質問をする学生がいて,数学の素養のない教師にとってみると,なかなか答えにくいといいますか。素養がある人間は,N進法はと言ってそこでごまかしますから,これはまた大きな問題が出てくるんだろうと思いますけれども,日本でも,IQは高いけれども数学の教育をちゃんと受けていない人たちに対して,プロフェッショナル・スクールとしてどう対応していくかというのは,1つの課題であることは事実です。
以上です。
【有信委員】  実務家教員という言い方は,もともと導入のときにかなり積極的に言われたわけですけれども,そのときの議論にもありましたけれども,実務家教員として入って,例えば5年いてもまだ実務家教員かと,こういう問題があるわけですよね。したがって,公共政策のように,教員が実際の現場の方と実務家教員がローテーションしていれば,常にフレッシュな実務ベースの経験,知識が導入されるけれども,教員自身がローテートしないと,そのままどんどんその中に行ってしまって,その中で,実際には大学教員として本当にそれなりの資格がある形でやっていけるかというのは,多分別の問題として考えなければいけない話だと思います。
それから,数学の問題は確かにそのとおりで,中でも統計学については,日本の学生は全般的にアメリカの学生と比べると,基本的な素養がないですよね,全般的に言って。そういう問題も実はあるということで,それは専門職大学院の中でも別途考えないといけない話かもしれない。
ほかに,御意見あればどうぞ。
【片山委員】  今日,御報告を頂いた4つの専門職大学院の共通しているのは,出口として,特定の資格と結びついているわけではないということ点ともあるんでしょうけれども関連するのかも知れませんが,それ以上に,例えば,いわゆる専門職大学院としての,例えばMBAもあれば,アカデミックな大学院としてのMBAもありますと。それこの点は,ほかの4つの大学院もやはりそうであったというところなんですけれども共通していると思いますが,そうしますと,この2つの大学院の中で,具体的な教育の中身がどう違うのか。ということもさることながら,結局,出る出口として,その一方は高度な専門職の養成ということに特化しているわけですけれども,結局,出口においては,結果において,それほど差がないということなのでしょうかうのがあるのかもしれない。
教育機関として2つの道筋があるということは決して悪いことではないと思いますけれども,その外から見ておりますと,それぞれの役割分担が一体どうなっているのかということは気になるところであります。そうしますと,場合によっては,この専門職大学院の枠組み自体が不要なのではないかというようにも,当然発展することが議論にもなりかねないあるかとは思いますので,その点部分を何かしら明確に提示できる必要があるのかなというふうに思いましたので,まずその点を述べさせていただきました。
【有信委員】  すごく重要な問題だと思います。実は,その問題を扱うには,大学院答申,17年答申というのがあり,その議論の中で,大学院のそれぞれの学位がどういうものであるかということについて,いろいろ議論がありました。それで,それぞれ定義がなされていますので,後で確認していただければと思いますけれども,そのとき私はたまたま末端で参加していて感じたことは,基本的には,大学院というのは,いわばPh.D.コースと,いわゆる専門職課程としての修士課程と,そういうふうに大きく分かれるという前提で議論をされていた方も何人もおられたような気がします。特に今の国際的な基準から見ると,MBAは特別ですけれども,それ以外のところでいうと,Ph.D.という学位は共通性があるけれども,マスターという学位にはないです。ボローニャ・プロセスでは定義され,アメリカでもマスターという学位を出していますけれども,一般にマスターという学位そのものが実際ちゃんと確立しているかというと,そういうわけではない。その中で,日本だけ極めて特別な状況になっているという背景もあり,そういう意味で,本来の学問をやる部分,あるいは研究者としての能力,あるいは外に出て活躍するというときも,極めて高度な専門性が要求されるものは,Ph.D.でなければいけないということが議論されたような気もします。
だから,そういう背景の中で,どうやって考えていくかという,かなり大きな問題だと思いますね。
【川嶋委員】  まず,青井先生のプレゼンは,多分ビジネススクールだけではなく,日本の大学全体に当てはまるような課題を幾つか提言されている。例えば,ニーズに対応していないとか,個人に塾のようであり,みたいにカリキュラム,プログラムで教育できていないとかですね。だから,また,一旦プログラムをつくると大学は投資しないとか,ビジネススクールだけではなくて日本の大学の現状に非常に当てはまるような御指摘だったと思います。
それはそれとして,幾つか個別に専門職大学院の課題といいますと,これまで既に御指摘されていたとおりですけれども,出口のところ,どういう人材を育成するのかということが大きな課題です。それから,先ほど説明のあった新しい高等教育機関でも,どういう人材像や,習得させる能力,つまり付加価値ですね。付加価値を明確にしないと,やはりROIも高まらないし,企業も評価しないだろうということで,このあたりを明確にする。その際,この新しい高等教育機関との差別化をどう図るかという点について,これは先ほどの御説明ではスペシャリストと書いてあったんですけれども,この専門職大学院はプロフェッションですよね。スペシャリストを育成するのとプロフェッションを育成するのとは明確に違うと思います。そのあたりを今後,差別化するということも必要で,プロフェッションといった場合,何がスペシャリストと違うのかというと,やはり自立性とか,一種のギルドみたいなものが,業界ですか,そういうものがあって,そこへの参入のための資格としてプロフェッナル・スクールでの学位が必要だということです。しかしこれは,いかんせん日本ではそのプロフェッションという団体自体が存在しないということですので,このあたりをどういうふうにして育成というか,専門職大学院の関係を明確にしていくのかというのが重要だろうと思います。
それから,最後にもう一点,投資ということで,MBAもMPHも,そのキャリアアップというのになかなかつながらないということですけれども,来る学生はそれを期待してくるという,投資として入学してくるというお話でしたけれども,例えば,大学も投資しないというお話でしたけれども,その専門職大学院を出た学生を活用する,MBAですと企業というのはビジネススクールに投資しないですか,寄附するとか,日本の場合,そういう行動というのはないですか。
【有信委員】  企業への質問ですが,どうですか。
【大竹委員】  当社の事例で恐縮ですけれども,直接MBAの大学に寄附しているというケースはないですけれども,社員への投資ということで,MBAに毎年一定人数を送り込むという,取り組みを当社でも行っていますので,そういった形でのつながりに現時点ではとどまっているのではないのかなというふうに思っております。
【有信委員】  MBAを取ってきたら,給料は上がりますか。
【大竹委員】  昨年より新たに出すという形で,当社も動き出しているというところなので,今までは確かに変わらなかったというところはありますけれども,今後は逆に,そのタイトルを持ってきた者をどう生かしてもらうかという観点では,会社も考えていかなくてはいけないというふうには思っています。
【有信委員】  だから,グローバル化が進んでいる企業は,そういう意味で外国というか,例えば欧米先進国のただ雇用する人たちも多いので,そことその人事処遇制度を合わせていかなければいけないという問題にも早速対応しようとしているところがあるわけですよね。ですから,今まで駄目だったからといって,これからも駄目ということではないという前提で,少し議論していただければと思います。
【有信委員】  ほかに。
【青井委員】  さっきの片山委員の議論に対してなんですけれども,海外から見ると,日本の学校はみんなMBAと書いています,英語で書くと。
基本的には,Ph.D.のコースはマスターは通過点であってという議論になっています。それ以外は,全部プロフェッショナル・スクールになってくる。
その意味では,多分,明治でもそうです。政治経済学部でも商学部でも経営学部でも,みんなマスターでMBAと書いていますけれども,やっぱりあれは,個人的には片山委員の言うように,整理した方がいいだろうと思います。そうしないと,海外の認証機関が,貴学はMBAコースが幾つあるのかと言われて,1つしかないとか言ったら,そんなことないと,いっぱいあると言っていますね。残念ながら,我々はかまけて,自分の学校のよその学部のホームページを見ていないので,見たら,えっという議論が出てくるので,そこは学術大学院として研究者なり,将来の教員の養成に注力してもらった方が私はいいだろうと思います。
ただ,皆さん,様々な形で学生を集めるために苦労されているのはよくわかっていますし,同時に,明治の場合には,中国人の留学生が多くいますけれども,基本的にはビジネススクールに行きたいけれども,授業料が段違いに違うので,既設の大学院に入っているという人が結構いるので,その辺,プロフェッショナル・スクールと,ある意味ではPh.D.とすっきり分けるというのは1つのこれからの道かなと,個人的には思っています。
【有信委員】  私も個人的にはそういう意見ですけれども,MBAに関して言うと,中国の大学の先生が日本のMBAのコースというのは30人とか40人という定員で,中国ではMBAのコースを開設するといったら,あっという間に200人,300人の学生が集まってくる,一体これはどうなっているのかということを言っておられたのを思い出しますけれども,はっきり言って,中国だとか東南アジアは欧米流の考え方で動いている。むしろ定員削減よりは,授業料を安くしても留学生をいっぱい入れた方がいいんじゃないかという考え方もあり得ますね。
どうぞ,どんな観点でも。特に公衆衛生だとか,かなり観点が違うと思います。公共政策も,ある意味で出口というところからすると観点が変わってくるというところもありますので,それぞれ先ほどの説明を補足するという格好でも結構ですけれども,具体的に御議論いただければと思います。
【玉腰委員】  公衆衛生の話で言うと,行政とかなり強く結びついている必要があるという点では地域性が大事になって,今,専門職大学院が4か所ありますけれども,全国全体を見たときに十分かというと,それでは足りていないといえます。
一方で,グローバル化ということを考えていったときには,今の状態ぐらいが適切なのかもしれないと,あるいは,もう少し増やすにしても,どの地域に持っていくとうまくいくのかということもあります。公衆衛生というその特徴から社会人に是非入ってもらおうと思うと地域に必要であるし,一方で国際的な視点からはどうすればいいのか,少し分けて議論しないといけないのかな,地域性を考えると難しいところがあるのかな,というふうに私自身は感じています。
【有信委員】  その説明を聞いていて思いましたが,パブリック・ヘルスという語感,パブリック・ヘルスと言えば,先進国と発展途上国で大きく内容は変わりますよね。それと公衆衛生という言葉が与える語感とが何か全然合わない。公衆衛生というと,どちらかというと,発展途上国でのパブリック・ヘルスみたいな話で,ここで公衆衛生の専門職大学院をつくるときの目的としたのが予防医療だとか,そういう話になっている。これはむしろ先進国の方の問題の方が,金になるというか,経済性等々を考えると,むしろそちらの方に行きたがる学生は多いのではないかと思います。だから,名前を変えるという手も,なくはないのだと思いますけれども。
【玉腰委員】  京都大学が社会健康医学系専攻という名前を使っているというのは,そういう背景があるのかもしれません。
確かに,パブリック・ヘルスを公衆衛生と訳すこと自体がどうなのかという議論は,ずっとある話で,パブリック・ヘルスという言い方をすると,むしろ医学までも取り込んだ概念じゃないかというふうに考えている方たちもたくさんいます。アメリカでは取り込んではいないにしても,パブリック・ヘルスとメディスンは独立して学部があるわけですけれども,日本に来ると途端にそれは,公衆衛生は医学の下に入ってしまうという,その構造の捉え方の問題というのは大きいかもしれません。
【有信委員】  ほかに,御意見ありませんか。
はい,どうぞ。
【川嶋委員】  これは非常に難しいですけれども,つまり,技術経営の場合はコア・カリキュラムを共通でつくって,カリキュラムの統一化を図っているということなので,それは質保証として非常に重要なのかもしれませんけれども,それ以前の専門職大学院の差別化,統一化と性格といったときに,コア・カリキュラムだけではなかなかその競争力がつかない。私の理解の範囲では,海外のプロフェッショナル・スクールですと,それぞれカリキュラムの内容,あるいは特色が明確で強調,理論重視なのか実践重視なのか,あるいはケースメソッドを多用するなどの教育の手法を差別化するなど,様々な形で個性化して競争しながらお互い切磋琢磨(せっさたくま)しているという現状がある。そういうふうに理解していますが,そのあたりの共通の部分と個性的な部分というのをどのように,これは必ずしも専門職大学院だけの話ではないかもしれませんけれども,30単位,40単位という非常に限られた単位数の中で,共通性と多様性,個性を,どのように図っていくのかというのも,1つの論点になるのかとは思いました。
【上西委員】  MOTでコア・カリキュラムを作ったとき,当然,各大学の独自性を阻害することになってはいけないというのが重要な論点でした。MOTでは40単位を修了要件にしているところが多いので,その半分程度をコア・カリキュラムでカバーして,半分程度は独自性でそれぞれの大学の強みを持つようにしようと考えました。そこが1つの目安で,それが4割,6割になってもかまわないし,6割,4割になってもいいけれども,半々程度を1つの目安にしようということでコア・カリキュラムを作りました。
【有信委員】  では,コアカリキュラムで半分ぐらいカバーできるということですか。
【上西委員】  半分ぐらいを,コアカリキュラムでカバーするのがいいのではないかという考え方です。
【有信委員】  69項目もあって,それが,40単位の半分程度でカバーできるのかという,そういう疑問もあると思いますけれども。
【上西委員】  69項目を20単位の中でカバーできるかということですね。はい,確かに,20単位相当の10科目で69項目全てをカバーするのでは容易ではないため,修了までに取得した全科目の中で69項目を満たしていれば良いという考えを取っています。そういう意味で,取得した科目と69項目の間のマトリックスをつくって,全部カバーできていれば良いということです。科目対応ではなくて,取得した単位全体の中で69項目が入ればいいという考え方をとっていることにより,効率的にコアカリキュラムに適合させることができます。科目と対応させると,かなり制約が厳しくなって,運用しにくくなるので,コアカリキュラムの内容が全体として半分程度で,どの科目の中に入ってもいいという形であのマトリックスをつくっているということです。
【有信委員】  公共政策に関して言うと,例えば今,科学技術イノベーション政策のための科学という議論が一方であって,GRIPSだとか幾つかの大学に拠点ができて動いているという部分がありますよね。そういうのと今の公共政策とGRIPSとの関係は,さっき言ったいわゆる専門職大学院と研究大学との関係にもかかわるけれども,例えば,東京大学の公共政策の人たちは,そのGRIPSのプロジェクトにもかかわったりしているわけですよね。この辺は,どういうふうに考えますか。
【宮脇委員】  東京大学の場合には,正直言うと,体力というのはあって,これから展開していくということだと思いますけれども,多くの公共政策について見ると,実はその学部レベルでの公共政策の基礎的な部分が供給されていない部分がほとんどだということだと思います。
ですから,実際上は,先ほど触れましたけれども,法政策とか経済政策だとかいう形での政策の授業は展開しているわけですけれども,そもそもの公共政策全体の考え方とか議論の仕方というような授業は,ほとんど展開されていないという実態があります。そこを形成していくことがまず先になっていて,しかも,そこが,先ほど教えていただいた研究大学院と専門職大学院,先ほどの御助言でいけば,専門職大学院の方がその公共政策の基礎領域の研究が基本で,応用分野の方については法政策とかそういう形で一定の特化した部分に展開していくと,専門職大学院としては,いわゆる公共政策,そういうすみ分けの仕方もまたあるのかなと思います。
ただ,あまりにも供給されていないので,そこの土台というのは,統計学でもそうですが,必要であり,私ども,例えば北海道大学で言えば,その応用領域としての観光政策だとか,いろんなものはあり得ると思いますが,その基本のOSの部分が確立できないと,幾らその上に積み上げたとしても,ペーパーに書きましたけれども,何か主観的な感覚での議論だけで満足してしまって,それが生産物だということになってしまうと,これは社会的な意義を果たしていないという感じはしています。
【有信委員】  だから,そのOSの部分を,これはほかにも多分共通だと思うんですけれども,OSの部分が十分ないところを,どうやれば,確保できるかというのは,学内の協力体制を少しつくるのか,あるいは,もう少し違うことですか。
【宮脇委員】  学内の協力体制は,これは不可欠だと思っています。例えば身近な例ですけれども,学部の授業をとっていただいて,一定範囲であれば単位にしてもよかったはずですけれども,授業の時間割が全く合わないとか,すごく小さいことなんですが,基本的なところで問題が出てきて,同じ法学研究科の中でもそういう問題が起こってきてしまうということは,やはりもう少し授業時間帯を広げていって,全体としての基礎力をつけられるような体系をつくっていくということは,私は必要なのかと思っています。
【有信委員】  はい,どうぞ。
【片山委員】  全く異なる視点ですけれども,今日こういった,お話をお伺いした,専門職大学院もそうですけれども,例えばビジネス系,経営系ということになりますと,MBAとMOTというのは,かなりの部分で内容的に重複をしているということになりますので,たまたま各大学が,うちはMBA,うちはMOTという形で専門職大学院を設置しているということですけれどもわけですが,本来,関連しているところからしますと,例えば,教員の面からしますと,その人材の資源配分という意味では,重複している部分については整理が可能ということになりますし,それから他方,学生の方から,学ぶ方からしますとしても,クロスオーバーの領域については,これはダブル・ディグリーということになるのかもしれないですけれどもですが,両方の学位が取れれば,それに越したことはないの取得が可能となるということになるのもあるのかもしれませんので,場合によっては,その点から,専門職大学院相互の関係といいますか,それも今後検討していく必要が大いにあるのではないかなというふうにとも思った次第でございます。【有信委員】  これも多分,重要な視点だと思います。
はい,どうぞ。
【青井委員】  いいですか。今の議論に対して,上西委員はどう考えるかは別として,ビジネススクールサイドからすると,MOTというのは差別化されたビジネススクールで,そういう意味では,マーケティングに特化した学校というのも出るかもしれませんけれども,ビジネススクールは広い意味ではマネジメントスクールで門戸を広げて,その中に様々な特化したところがあってもいいかなと。そっちの方が経営としてはうまくいくので,あんまりみんな差別化して,うちはMOTだ,うちはビジネススクールだ,うちはマーケティングスクールだとか何かやってくると,クリティカルマスにいかないので,日本にとってみると,そんなにいいことではないかと思っています。
以上です。
【有信委員】  ありがとうございます。
そういう方向での,日本の場合は,差別化する方に動きがちですよね,各大学も。
【青井委員】  そうです,言われるとおりです。
【有信委員】  それが研究でもそういうことがありますから,その辺含めて,今後とも議論していければと。
ほかに御意見ありませんか。
はい,どうぞ。
【杉本委員】  青井委員の御報告の中で,若手教員の養成が必要だという御指摘がありましたけれども,非常に我々もそれは感じておりまして。ただ,今置かれている専門職大学院の状況からすると,どうしても即戦力が必要だということと,採用時の弊害が学内にどうしてもあります。専門職大学院のカリキュラムを教えるだけの能力を有しているかどうか,それが大きなハードルになってしまい,若手教員の採用を見送るというのが多々見られます。
それで,先ほど新しい高等教育機関の制度化の御報告がありましたすけれども,教育の質の担保,これを行うに当たっては,採用後の研修が必要だという,これも非常にいいアイデアだとは思いますが,これはそれぞれの置かれている大学院の学内の事情もありますので,是非とも厳しい状況の中ででもこういったシステムがとられるように制度化していただければ,採用時の弊害の,若手教員の育成,こちらの方にも結びついていくのではないかと思っております。
【有信委員】  結構難しい問題ではありますけれども,確かに検討する必要があると思いますね。
ありがとうございました。本日もいろいろ議論いただきましたけれども,特にほかにないようでしたら,事務局サイドで整理をしていただいて,次の議論に役立てたいと思います。
それでは,当面のスケジュールについて,事務局から説明お願いします。
【塩田専門職大学院室長】  それでは,当面のスケジュールについて説明させていただきます。
第3回につきましては平成28年2月15日の10時から,第4回につきましては3月9日17時からを予定してございます。次回も引き続きまして,5名の委員からのプレゼンテーションを予定してございます。
以上です。
【有信委員】  どうもありがとうございました。
それでは,今日は活発な議論,いろいろありがとうございました。次回,またよろしくお願いします。
本日はこれで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

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