資料1 短期大学ワーキンググループ(第4回)議事録(案)

中央教育審議会大学分科会大学教育部会
短期大学ワーキンググループ(第4回)議事録(案)
 

1 日時  平成26年3月28日(金曜日)13時00分~15時00分

2 場所  メルパルク東京6階 ラ・ルミエール

3 出席者  (臨時委員)小林浩,佐藤弘毅(座長)の各臨時委員
             (専門委員)安部恵美子,大野博之,小杉礼子,小林雅之,小林雅之,滝川嘉彦,清水一彦,中山欽吾の各専門委員
             (文部科学省)常盤私学部長,里見大学振興課長,今泉大学設置室長,田頭大学振興課課長補佐 他

4 議事
【佐藤座長】  皆さん,こんにちは。すっかり春めいてまいりました。
 所定の時刻になりましたので,第4回目になりますけれども,中央教育審議会大学分科会大学教育部会短期大学ワーキンググループを開催いたします。年度末の大変御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 まず初めに,今日はお忙しい中,事例発表者としてお二人の先生にお越しいただいておりますので,御紹介させていただきたいと思います。
 お一人目は,聖徳大学学長補佐の,ジョイス津野田幸子先生でございます。
【ジョイス津野田学長補佐】  よろしくお願いします。
【佐藤座長】  津野田先生は,御案内の方が多いと思いますけれども,長らくハワイ大学のコミュニティ部門の責任者として御活躍なさった方でいらっしゃいます。きょうは議題2といたしまして,「アメリカのコミュニティ・カレッジの在り方とその機能」について御説明いただきたいと思っております。
 お二人目ですけれども,九州大学教育学部長の吉本圭一先生でございます。吉本先生につきましても,短期高等教育の研究者としてつとに高名な方でいらっしゃいます。もちろん,それだけではなくて,非常にリサーチの範囲が広範でございますが,きょうは特に,議題3といたしまして,「短期大学の卒業生調査等からのコミュニティ・カレッジへの道の模索」,こういったテーマにつきまして御説明いただきたいと思っております。
 両先生におかれましては,きょうの審議に当たりまして,御用意いただきました御説明のみならず,是非忌憚(きたん)のない御意見をいただければと思いますので,どうぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 それでは,まず事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【田頭大学振興課長補佐】  それでは,配付資料につきまして御説明させていただきます。
 まず資料1でございます。「短期大学ワーキンググループ(第3回)議事録(案)」でございます。資料は37ページものでございます。
 資料2でございます。「短期大学における卒業生の出身地別就職等の状況例」でございます。8ページでございます。
 資料3でございます。「短期大学で取得できる資格等」でございます。これは一枚ものでございます。
 資料4-1,「コミュニティ・カレッジとしての在り方とその機能について」ということで,4ページのものを用意しております。
 資料4-2でございます。「アメリカのコミュニティ・カレッジ役割と地域との関わり」ということで,22ページのものを準備させていただいております。
 資料5でございます。「卒業生調査等をもとに短大コミュニティ・カレッジへの途を探る」ということで,39ページの資料を用意しております。
 それから,参考資料といたしまして,「地域総合科学科について」という13ページものを用意しております。参考資料2といたしまして,「平成24年度短期大学教育の改善等の状況」ということで用意させていただいております。
 また,ジョイス先生より御依頼がございまして,机上には第2回会議で大野委員より御説明いただきました「短期大学教育の振興について」と,それからもう1つ,清水委員より御説明いただきました,「米国短期大学に学ぶ」を置かせていただいております。
 また,資料1の「議事録(案)」につきましては,追って先生方にメールにてお送りさせていただきますので,御意見,御訂正等があれば,4月11日までに事務局まで御連絡いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとう。資料は大丈夫でしょうか。
 それでは,ただいまから審議に入りたいと存じます。
 まず第1に,前回の会議で委員から御依頼のございました,「短期大学の卒業生の状況」及び「短期大学で取得できる資格」につきまして,データを用意していただいておりますので,事務局から紹介してもらいたいと思います。お願いします。
【田頭大学振興課長補佐】  承知しました。
 まず,資料2を御覧いただきたいと思います。資料2は「短期大学における卒業生の出身地別就職状況例」ということでございます。前回会議の際には,短期大学の所在地を中心にいたしまして,同県内から入学する学生の状況,また,同県内に就職する学生の状況につきまして,資料を1枚めくっていただきまして,3ページから5ページでこれを説明したところでございました。しかしながら,委員の先生方より,これを学生を中心に見た場合にどうなるのかというようなお話がございましたので,そうすると,短期大学が地域の基盤的な産業人材の育成に役立っているという形も見えてくるのではないかという指摘がございました。それを全ての短期大学について行うのは非常に作業に時間が掛かるものですから,資料といたしましては6ページ,7ページにおきまして,2つの地域において確認をさせていただきました。
 中身といたしましては,まず,6ページ,7ページをお開きいただきたいと思います。地方A県内にある短期大学における卒業生の出身地別就職等の状況ということで,これは東京からかなり離れた地方の県内における,ある短期大学の状況を確認しております。それから7ページにつきましては,これは逆に,首都圏にございます短期大学についての状況を確認しております。
 では,6ページの地方A県内の短期大学から少し御説明をさせていただきたいと思います。
 卒業生につきましては,その内訳といたしまして,左から御覧いただきますが,県内の高等学校から入ってくる学生が211人,県外の学生が10人ということで,圧倒的に県内の学生が多いわけなのですけれども,これが卒業するときにどのような状況になるかということで,次の欄には就職とその他ということでそれぞれ分けております。そういたしますと,上の方からいきますと,県内の学生が150人就職をするということで,この学生のうちの140人は県内にとどまるということで,その右の方にそれぞれの業種を記載させていただいております。
 なお,この業種の内容につきましては,1枚おめくりいただきまして8ページのところに,これは日本標準産業分類によって分類させていただきましたけれども,全ての業種については,これは省略いたしまして,ここの中に該当する業種だけ抜き取って入れさせていただいております。したがいまして,例えば建設業というところに7名となっておりますけれども,そういたしますと,どういうところに入っているのかにつきましては,8ページの「大分類 建設業」というところの中を御覧いただければと思います。そういった形で資料を御覧いただければと思います。
 そういたしますと,元に戻りますけれども,150名のうち県内に140名がとどまる形でございまして,それに対して10名の学生が卒業後に出身地県外に移動されるという状況がございました。それから,その他ということで,内容につきましては大学への編入学ですとか,専門学校への入学,あるいは公務員試験に合格しなかった学生が再挑戦するということで,その拠点をどこで行うかというところで分けているわけでございます。県内にとどまる学生が50名,県外に行かれる学生が12名,12名のうちのほとんどは他大学,4年制大学の3年次に編入学であったりですとか,専門学校へ入学,あるいは海外への留学というような状況がございました。
 それから,10名の県外からの学生でございますけれども,この学生につきましては7名が就職し,その他が3名という形でございます。そのうち,自分がもともといた出身の県に戻って就職される方が6名,それから全くの県外に行かれる方が1名,加えまして,点線になっているのですけれども,出身の短期大学の所在する都道府県に就職する方が1名でございました。その他につきましても,3名のうち2名の方が専門学校,あるいはその他ということでアルバイトなどを行うような状況がございました。留学の方は県外という扱いでさせていただいております。
 そういたしますと,A県内につきましては下の方に点線で枠がございますように,自県内での就職率で見ますと,これが93%になります。自県率といいますのは,他県から入学した学生が,自分の県にまた戻ってという学生も含めておりますので,これは上の140人に6名を加えた形になっております。
 なお,これを進学者も含めて自県内にとどまる方ということで見ますと,他県の大学に編入学する学生も多いわけですから,少し減りますが,それでも89.2%という状況がございます。
 一方,首都圏B県内にある短期大学ではどうかというところでございます。
 首都圏につきましては,1つの考え方といたしましては,例えば千葉県,埼玉県であったりとする場合に,生活圏といたしましては東京都とか,あるいは今申し上げましたような隣接する県の方の就職を含めても,生活圏という意味では自県内という考え方もあるのではないかというのもございましたけれども,あえてこれをAの捉え方と同じような形でさせていただいております。そういたしますと,左側からいきますと,県内の学生が193名,それから県外からの学生が36名というところでございました。同じように,これを就職,その他で分けていった場合に,もともと出身であったところに就職して帰るという学生が,B県内の学生で150名,それからB県外の学生であれば23名ということで,合計いたしますと173名おりました。
 全体の就職する学生で,自県内の就職率を求めた場合に,81.2%となります。さらに,進学者も含めますと,85.6%ということで,逆にこちらの方が増えるような形になっております。
 説明は以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして,何か御質問,それからコメントがございましたら,お出しいただければと思います。若干時間を取りたいと思います。大方,予想通りだったのでしょうか。それとも,新しい発見がありましたでしょうか。
【清水委員】  よろしいですか。
【佐藤座長】  どうぞ。
【清水委員】  AとBの短大の専門学科はどうだったでしょうか。
【田頭大学振興課長補佐】  御説明させていただきます。
 まず,Aの大学でございますけれども,こちらはいわゆる人文系と社会学系,それから栄養学で構成されるような大学でございます。それから,Bの短大でございますけれども,こちらは食物栄養学,それから幼児教育系の専門学科になっております。
【清水委員】  ありがとうございます。
【中山委員】  よろしいですか。
【佐藤座長】  どうぞ。
【中山委員】  私どもの短大は人文系と芸術系とを併せ持つような特殊な短大で,公立短大で芸術系を持っているのも我が短大だけになってしまっているという,非常に特殊な構成になっております。県外の出身者が来るのが,大体全体の28都道府県から来ておりまして,県外出身の学生数が全学生の半分近い47%という,非常に特殊な形態になっております。しかも就職状況も,これはもう,もちろん統計的に一番分かりやすいのですが,非常に特殊なケースでございまして,大分県出身者のうちの県内就職率は97%なのですが,県外出身者のうちの県内就職率というのが41%あると。要するに,自分の出身県に帰らずに,大分で就職をする人が半分近くいると,これは毎年の傾向でございます。
 それはなぜかということはなかなか分からないのですが,県外から来る学生は,かなりが芸術系の学科を選んでやっておりますので,卒業した後のいろんな音楽活動とか,若しくは美術的,デザイン的な活動という面から見て,県内で勉強したところでつながりがあるところに就職をするとか,そういったことはあるのであろうと。ただ,毎年必ず半分近くは大分県内にとどまる。しかも,9割の学生が女性ですので,我々にとってみれば非常に有り難い。若い女性が県内にとどまってくれるという意味で,特異な例としてちょっと御紹介します。
【佐藤座長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【小杉委員】  ちょっとよろしいですか。
【佐藤座長】  どうぞ。
【小杉委員】  大変いいデータで,ありがとうございます。とてもよく分かって,いいまとめ方だなと思いました。
 これは無理かもしれませんが,このサンプルの代表性みたいなものが知りたいなと思うのですが,どれだけ典型的なものなのか。例えば県外出身者の比率とか何かが,大体これが普通なのかどうかとか,このデータをどこまで拡張解釈できるのかどうか,何か情報があったら教えてください。
【田頭大学振興課長補佐】  まだ調査をしている段階でございまして,幾つかの大学にお願いいたしまして,データの取り方といたしましては,個人個人の,1人のデータを帯にして,それを突き合わせていくような,そういう作業になりまして,かなり時間を掛けてしまいました。業種のところまでやらなくてもよかったのかもしれないですけれども,やはり業種が見えてこないと,地域のどういうところに働いていかれるのか分からないというのがありましたので,ちょっとそこで欲を出してしまったところもあるのですけれども,今後,そちらの傾向,もう少しサンプルを集めた形でもやってみたいとは思っております。
【小杉委員】  どうもありがとうございます。本当に貴重なデータ,ありがとうございました。
【佐藤座長】  小林先生もにこにこしていらっしゃいますけれども。
【小林(雅)委員】  大変なデータを作っていただき,非常に苦労されたということはよく分かります。ただ,こういったことを明らかにしていかないと,なかなか見えてこないということで無理してお願いして作っていただいたので。ただ,業種別にやるというのは,おっしゃったように確かに必要ですけれども,そこでやると非常に時間が掛かってしまうわけですね。ですから,もしこれを拡張されるのであれば,業種別は業種別の問題として考えればいいので,ひとまずフローを,人の流れがどういうふうになっているかということだけの,もう少しサンプルを増やすなりのことを考えていただければ,小杉委員が言われたことにも答えられるのではないかと思います。
 それから,もう1点は,これもまた無理な注文で毎回申し訳ないのですが,学校基本調査に基本的な数字が都道府県別にありますね。そこから前の図は作られたわけですけれども,それの入学状況と就職状況を組み合わせれば,ある程度の,先ほど小杉委員が言われた,一般性があるかどうかということは分かるはずなので,無理な注文ばかりで申し訳ないのですけれども,そういうことをちょっとチェックしていただけないでしょうか。
【佐藤座長】  ありがとうございます。こういったデータが大変有益であるということであるならば,役所だけにお任せするのではなくて,短期大学関係者も協力しながら,より多くのデータを集めることも十分可能だと思っております。ただ,今,言及ありましたように,大変手の掛かることをやっていただきました。もう少し簡便な方法で,もし可能であるなら,調査の設計なども御指導いただければ有り難いなと個人的には思った次第でございます。
 他にはいかがでしょうか。本件はよろしゅうございますか。それでは引き続き,これまた大きな関心事ということで,テークノートさせていただきます。ありがとうございました。
 続きまして,第2の議題に入りたいと思います。「コミュニティ・カレッジとしての在り方とその機能」を話題にいたしたいと思います。
 先ほど,御案内を申し上げましたとおり,ジョイス津野田幸子先生より御説明いただきたいと存じております。改めまして,ジョイス津野田先生,ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほどもちょっと御紹介いたしましたけれども,より具体的には,津野田先生はハワイ大学カビオラニ・コミュニティ・カレッジ学長,それから,ハワイ大学コミュニティ・カレッジ総長を歴任されるなど,かの地におきますコミュニティ・カレッジにつきまして大変深い知見をお持ちの方でいらっしゃいますし,我が国の短期大学ともお付き合いの豊富な方でいらっしゃいます。そんな高く広い見地からお話を承れれば有り難いと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【ジョイス津野田学長補佐】  ありがとうございます。皆様こんにちは。本日はこのワーキンググループで,アメリカのコミュニティ・カレッジについてお話をする機会を与えていただいて,本当に有り難く思います。それで,私の下手な日本語の説明が,このワーキンググループの役に立つことができたら本当にうれしいと思います。
 この依頼を引き受けた後に,過去3回のワーキンググループの議事次第を拝見させていただいて,そしてさらに,私自身の知識と日本の高等教育のコミュニティにおける経験を照らしてみると,このワーキンググループの先生方は,アメリカのコミュニティ・カレッジについて本当に詳しく御存じの方々が多いので,今更私がここで「これがアメリカのコミュニティ・カレッジですよ」というお話をする必要はないと思います。それで,私のさせていただきたい説明というのは,今までのワーキンググループでなされた議論の幾つかのポイントに対してコメントをして,そしてアメリカのコミュニティ・カレッジ(ACC),そして日本のジュニアカレッジ(JJC)を比較するような形で進めたいと思いますので,それでいいでしょうか。
【佐藤座長】  どうぞよろしくお願いします。
【ジョイス津野田学長補佐】  それで,アメリカのコミュニティ・カレッジについて,もっと詳しいお話は,私は去年の11月7日に私立短期大学研究会で2時間以上お話しさせていただいたので,その資料を参考として,皆さんの手元に配付させていただきましたので,後からごゆっくり目を通していただいたらうれしいと思います。時々,その内容にも触れて今日のお話を進めたいと思います。
 ワーキンググループの課題というのは,私の目から見ますと,日本の短期大学の現状及び最近の日本の大学改革を巡る動向の中に,特に短期大学の在り方について検討が求められている点を検討して,そして短期大学全体の将来を描き出すということです。それは,大変難しい課題だと私は思います。まるで,何か非常に小さい,固い,孤立された箱の中にとどまりながら,変化と成長を期待されているような立場ではないかと私は思います。
 ワーキングの方々が直面する重要な問い,クエスチョンは,「日本の短期大学を特徴付けるミッションとアイデンティティー,使命とアイデンティティーは一体何か」ではないでしょうか。もう1つは,「日本の教育システム内で,短期大学が将来の発展と将来生き残るには何が必要か」,この2つの問いだと思います。
 それで,ワーキンググループの方々が検討された「短期大学の強みの確認」,そして「弱みの確認」というレポートが,お手元の資料にあります。そこに列挙されている日本の短期大学の強みと,ここに列挙されているいろいろな点については,反論,異議をとなえる人は大体いないと思います。しかしながら,多くの日本の4年制大学も,恐らく同じ強みを持っていると主張するのではないでしょうか。
 そうして,弱みの確認については,例の資料の最後に,本当に率直的に列挙されています。これこそが非常に大事な,今から直面しなくてはならない課題だと思います。特に注目するべきは一番初めに書いてある弱み,「4年制大学と専門高校との差別化が図れていない」でしょう。「What is difference between Japanese university, junior college and senmon gakkou?」 ということです,それが1つ。
 もう1つは,「高校生は4年制大学志向が強い」。それはもちろん,アメリカでもそうです。コミュニティ・カレッジという明確なミッション,そしてコミュニティ・カレッジへ入学すれば何ができるか,何を得ることができるか。この点が明確になるまでは,どの学生も,特に高校生は,「自分はもちろん高等教育を受けるのには大学を進学する」,それが普通の考えです。
 ワーキンググループがまだ触れていらっしゃらなかったと思う問いが1つあります。それは私の勝手な考えですけれども,その問いというのは,現在設置されている359の短期大学の中で,短期大学として独立した機関,英語で言いますと,「free-standing institutions」が存在しているのでしょうか。4年制大学の一部ではない短期大学は幾つ存在しているのでしょうか。この問いを別の形で言い直しますと,つまり,短期大学が大学の短期大学部でありながら,独自のミッションを確立して執行することは可能ですか。これは,それが良い,悪いという意味でお聞きしているのではなくて,そういう立場でしたら本当に短期大学のみの明確なミッションとアイデンティティーは可能でしょうかという問いです。
 次に私がアメリカのコミュニティ・カレッジと,そして日本の短期大学(JCC)を比較する形でお話を進めたいと思います。そのディスカッションを円滑に進めるために,簡単ですけれども,「アメリカのコミュニティ・カレッジと日本のジュニアカレッジの比較,Comparative Chart」という対照表を作りましたので,それに従って説明とディスカッションを進めたいと思います。
 1つ目の点は,Mission  distinctiveness,ミッションの独自性,です。御存じのように,アメリカのコミュニティ・カレッジは,それらを特徴付ける明確なオープンドアというミッションを掲げられています。このオープンドアコミュニティ・カレッジ,アメリカの2年制の高等教育機関がコミュニティ・カレッジと発展したのは,ほぼ最近のことです。100年前には,アメリカではジュニアカレッジ,2年制の大学は典型的なジュニアカレッジでした。そこで4年制大学に進学しなくても,必修の教養教育(general education)を受けることができる2年制機関が主でした。
 私の11月の講演資料の2ページ,スライド5,「アメリカのコミュニティ・カレッジの歴史」についてもう一度説明いたします。現在のアメリカのコミュニティ・カレッジは,第二次世界戦争が終わった直後に当時のアメリカの大統領,ハリー・S・トルーマンがブルーリボン委員会というものを指名して,そして当時のアメリカ国が戦後の荒廃から立ち直るにはどうすれば良いかということを進言するように命じました。そして,そのブルーリボン委員会はいろいろなレコメンデーションを伝達しました。その中で私たち教育者にとって一番重要な進言はこれでした。「アメリカ国のどこの州でも安い授業料で,高校以上の教育か職業訓練を受けたいと望む人は誰でも歓迎するという方針を持った2年制カレッジをそれぞれの州に設置すること」です。トルーマン委員会は2年制カレッジが位置する地域の人々のニーズに応じる教育プログラムを提供することも併せて進言しました。それらのカレッジは,その地域の社会,コミュニティのカレッジでなければならないという発言をしました。その発言から「コミュニティのカレッジ」が「コミュニティ・カレッジ」となったのです。その後の,1950年,1960年代はアメリカ合衆国,ハワイも含めて,コミュニティ・カレッジが誕生・成長する時期でした。ハワイでは1964年に,ハワイ大学の一部として,7校のコミュニティ・カレッジが立ち上げられました。
ハワイのコミュニティ・カレッジは今年で50周年を迎えます。その半世紀の間に,コミュニティ・カレッジという高等教育機関の基本的なミッション,オープンドアというのは全然変わっていません。どの州でも,どこでもコミュニティ・カレッジはオープンドアとして,試験なしで18歳以上か高校卒業の人を受け入れます。ただ,入学可能でも,入学した後にはカレッジレベルのスタンダードに合う英語,数学,そしてコミュニケーション能力を持っているかということをplacement testで決められます。その結果,自分が望んだ課程には入ることはできない人は少なくはありません。カレッジレベルの基準に達していない人たちは必修としてremedial education,補習教育の授業を受けなくてはいけません。
 当時のアメリカン・コミュニティ・カレッジの弱点の一つは安い授業料で入学した多くの人たちに,普通のカレッジレベルの授業だけではなくて,remedial educationも与えなくてはいけないことだと思われています。Remedial educationが必要な人たちは特に多いので,授業の予算がそちらの方に使われてしまう。コミュニティ・カレッジはセカンドハイスクール(2度目の高校)ではないかという意見もあります。現在でも,そういう弱みはありますけれども,それを現実と受け止めて,一人一人に合う授業を与えるという方法に各カレッジはいろいろな努力を掛けています。
 比較的,このオープンドア入学を中心とするミッションと,日本の現在の短期大学の教育的役割は異なっています。更に日本の短大の教育機関としてのアイデンティティーが明確ではないと思います。先ほども触れました弱みにも挙げられましたが,これが一番比較的な点だと思います。
 2番目は,対象となる人口層です。コミュティ・カレッジの場合には18歳以上か高校卒業者であれば,全て誰でも入学できます。地域,そして各コミュニティ・カレッジによって違いますけれども,大体の学生,入学生の平均年齢は26歳です。それと比較すると,日本の短期大学の主な対象となる人口層は,カレッジエージレベル,就学年齢の女性だと私は解釈しています。
 そしてもう一つのキーポイントは,主な資金源です。アメリカのコミュニティ・カレッジは1,300校ぐらいありますが,それは主として公立です。その中に2年制度で公立ではない私立の2年制度コミュニティ・カレッジという機関もありますけど,そこには学生に直接与える国からの助成金,スチューデントファイナンシャルエイドというのはありますけど,私立のコミュニティ・カレッジの運営には,公的な資金はありません。公立のコミュニティ・カレッジは州,市,あるいはほかの地域の自治体によって納税の方から予算が入ります。それと授業料を含めて,コミュニティ・カレッジの予算として運営を進めています。
 授業料はできるだけ安く抑えています。授業料というのは,これもやはり地域,各コミュニティ・カレッジによって違いますけれども,ハワイを例としますと,平均的には1/3,33%ぐらいが授業料で,そのほかの66%はパブリックファンディングといいまして,納税金から入る資金を当てにして運営をしています。それに比べると,日本での私立の短期大学は,授業料収入を中心としているようです。この資金源もこれからの日本の短期大学の生き残りに関わるのではないかと私は思います。
 次の比較点は,4年制大学及び高等学校との関係です。この点については,説明を始めると長くなってしまいますので,私の11月の講演の資料を見ていただけたらうれしいと思います。ここで注目していただきたいのは4年制大学との関係と,トランスファー(転入学)とアーティキュレーション(カリキュラムの調整)というのを盛んに進めていることです。
 これも簡単に行ったことではないのです。私が1982年にハワイのコミュニティ・カレッジの総長に任命された時に,私が一番初めに持ち出した問題は,ハワイの大学システムの中で2年制と4年制とのトランスファーを普及させないといけないということでした。そのときに私が4年制大学の方々からぶつけられた質問は,「それはオーケーですよ。でも,そちらの7校のコミュニティ・カレッジのどの準学士号を対象としてアーティキュレーションをしましょうか。みんなばらばらでしょう」と言われてしまいました。そのとおりでした。きちんとしたトランスファー(転入学)とアーティキュレーション(カリキュラムの調整)を果たすには,コミュニティ・カレッジの中できちんと自分たちの学士号,学位をはっきりと明確にするべきでした。そしてカリキュラムの内容,学問だけではなくて,ボケーショナルトレーニングの専門分野の職業訓練の基準も含めて,そして,7校の中で共通的な,ある一貫的なカリキュラムと学士号を作り上げないと誰も信用してトランスファーという話には関わってこられない。7校のコミュニティ・カレッジの中でコミュニティ・カレッジ内のカリキュラム調整をするのにも3年間掛かりました。各コミュニティ・カレッジからは,特に先生たちは様々な競争意識を持ち,反対の声もありました。それを一貫的に学生のために,そして誰にでもきちんと説明を明確にするスタンダードを作りましょうということには本当に時間が掛かって,ようやくハワイ7校共通の各コミュニティ・カレッジの基本準学士号(AA準学士号,AS準科学士号,AAS準応用学士号)を設置し,誰にでも説明できる教育基準・ポリシーを作成しました。そして資格を与えることができるということを明確にできたことで,その後の転入学のトランスファー・アレンジメントに進むことができました。それは簡単に高等教育の中でできることはないので,コミュニティ・カレッジとして何が目的か,何を明確にしなくてはいけないか,何が基準として伝えないといけないかということをお互いに自分たちではっきり確認してから,それももって,ようやく4年制大学と編入の準備を進めることができました。
 最近は,ハワイの大学のシステム内では転入学やカリキュラムの調整は普通となりまして,編入というのは,2年制から4年制に編入するのみではなく,4年制大学の方で,例えばハワイのマノア校,本校の4年制大学に合格して,そこで履修している学生たちも,自分の選択で4年制大学での授業を続けないで,2年間コミュニティ・カレッジでゆっくり自分が何をしたいかということも経験しながら授業を受けたいとか,自分が4年制大学に入ってこういう方向で勉強したいと思ったのですけど,それはちょっと間違っていたかもしれないので,自分の教育の道を変えるにはコミュニティ・カレッジの方に戻って,もっと安い授業料で勉強して,そしてまた4年制大学の方に戻りたいと考える学生も普通となりました。ですから,学生の選択オプションというのも大事にするという形でトランスファー,アーティキュレーションという関連を築き上げてきました。
 トランスファーをしなくても同時履修ということもできます。英語でいいますと,これはconcurrent registrationといいまして,1つのキャンパス,例えば2年制大のコミュニティ・カレッジに入学をして,きちんと成績がよかったら4年制大学でも履修をできる,同時に2つのキャンパスで履修という形もできるという制度になっています。そして,高校との連携というのは,Early Admissionといいまして,資格をきちんと取られている高校生は,高校生でありながらコミュニティ・カレッジで授業を受けることができるというアレンジメントも可能です。そして,コミュニティ・カレッジ,アドバンス・プレースメントといいますと,高校生ながらカレッジレベルの科目を勉強して,そして,コミュニティ・カレッジに入学したときには,その単位は受けてあるので,取らなくてもいいという形でカレッジの勉強を続けることができます。いろいろな形で非常に接続的な取組をカレッジと高校間できちんと備えております。
 それに比較してみますと,私の見る立場からは,日本の短期大学と大学の間では,4年制機関の編入が可能だと聞いていますけれども,余り周知されていないように見えますけど,私が間違っているかもしれません。そして,高等学校との関係では,学生募集活動を除いて,カリキュラム上の連携やアカデミックな関係はほとんどないのではないかとも感じますけれども,私の勘違いかもしれません。
 次の比較の点は,コミュニティ・カレッジの学位に対して,社会的な通用性,流通性,Nature and the“perceived value”of degreesです。それは私の去年の講演の中の13,14,15のスライドを見ていただくとお分かりになると思うのですが,13のスライドといいますと,5ページの左のコラムの下の方に「準学士号」と書いてありますけど,「アメリカの準学士号はカレッジが授与する学業上の資格であり,各コミュニティ・カレッジの信用性が関わることなので,どのコミュニティ・カレッジでも準学士号の質については本当にこだわっています。」と挙げています。それで,いろいろな学士号もありまして,14のスライドにも説明しておりますけれども,ハワイのコミュニティ・カレッジの中では,各学位の目的も明確に公表しています。
 例えばAAといいますと,Associate in Arts,これは準学士号であって,一般教養,専門職業準備教養の分野で,大学レベルの科目,少なくとも60単位が必要。そして,この学士号を受けると,4年制大学への編入も可能です。
 もう一つは,AS,Associate in Science degreeといいまして,準科学士号で,専門技術関係分野で,あるいは科学技術,数学などの学士号課程の編入が可能であります。
 その次はAASといいまして,Associate in Applied Science,準応用科学士号であり,これは専門職,技術的な分野で採用できる必要な実力と技術を特徴にして,4年制の大学の編入は目的とされてはいませんけれども,大学レベルの科目が含まれているということです。
 そして,最後に特徴がある準学士号というのは,ATS,Associate in Technical Science,技術系準学士号で,特定の職業,技術の資格を習得して,従来の関係を越えて,台頭する分野の採用につながっております。これには特別な訓練が必要でありますので,このATSは企業,産業,雇用主に認知された教育目的が含まれていて,企業の方々との相談やアドバイスを受けながら作り上げた準学士号です。このように,いろいろな準学士号を作って,その質を管理することに力を入れています。それに比べて,私がはっきり分からないのは,日本の短期大学士号というのは,一体何を目的として与えていらっしゃるのでしょうかということです。
 次のページになりますが,次の比較点は,コミュニティ・カレッジ数,全機関数と履修者数の規模ですよね。アメリカのコミュニティ・カレッジ,2年制大学はアメリカの全高等教育機関の約37%を占めていて,そして800万近くの学生を受け入れています。そうすると,これはアメリカの高等教育の全体の学生数の30%にもなります。全体の高等教育の学生とすると,大学院も含められていますので,2年制と4年制の学生数だけに比べると,37%よりもっと大きい割合になると思います。ですから,コミュニティ・カレッジ,アメリカの2年制の高等教育機関は高等教育の一部として大きく役割を果たしています。
 日本では,今,359校のジュニアカレッジが14万人ぐらいの学生を対象としていらっしゃるので,これをもっと数を上げるには何をしなくてはいけないのでしょうかということも1つの問題となると思います。
 最後の比較点といいますと,やはり教育文化の相違ですね。コミュニティ・カレッジという機関は平等主義,どの学生でもスタートラインを同じにするという平等の機会を提供することが目的で,私たちの考えでは,一人一人の学生の高等教育の入門は終点ではなくて,コミュニティ・カレッジに入学する学生たちには,2年制度以上の高等教育に挑戦する機会を与える,だから,コミュニティ・カレッジへの入学は,コミュニティ・カレッジを受ける教育だけではなくて,コミュニティ・カレッジの1つの大事な役割は,学生たちをコミュニティ・カレッジ以上の教育に挑戦する可能性,機会を与えるということも1つの大事な役割だと思っていますので,トランスファー(4年制大学への転入学)というアレンジメントは本当に必要だと私たちは思っています。
 こういう形の平等主義,そして,一人一人の学生にオプションを与えるという文化は日本の一般の社会の中で受けとめられる文化でしょうか。それとも短期大学は2年制ですから,入学から2年できちんと卒業しなくてはいけないという文化で,アメリカですと,時間は問題ではない,結果が問題だ,ですから,入学をして2年制の課程を4年間掛かっても3年間掛かっても,そして,卒業をしなくても何か役に立つことを身につけて,世間に出ていくことも認められています。
 どちらがよい・悪いとは私は思っていません。最近のアメリカのコミュニティ・カレッジが注目している改革もあります。清水先生の発表に書いておられた「入り口から出口へ」という点に力を入れています。例えば,ハワイのコミュニティ・カレッジが今年50周年を迎えます。50周年のキャンペーンでは,全7校のコミュニティ・カレッジが「Agree to Degreeという学位習得に向けて前進しましょう」というテーマを定めています。ただ入ってきて目的をはっきりしないで授業を受けているだけでなくて,きちんと整えられた学士号があるので,それを目的としてきちんと準学士号を受けて卒業しなさいというキャンペーンを学生一人一人に呼びかけています。教職員も一人一人,「自分も学生たちがきちんとディグリーを獲得できるように支援をします,お手伝いをします」という契約書にサインをして,それをキャンペーンの1つとして50周年を祝っています。
 いろいろな比較を下手な言葉で説明しましたけれども,ここで一度やめて御質問を受けてもいいのですが,私が11月の講演の最後に申し上げた質問は,「日本版のコミュニティ・カレッジという言葉をよく聞きますけれども,『日本版のコミュニティ・カレッジ』のコア・ミッションは一体何でしょうか?」,それを一番お考えになるべきではないでしょうか。日本の短期大学がこれまで教育の上で強みとしてきた領域は何でしょうか。そして,伝統的に教育の対象としてきた人は誰でしょうか。そういうことを考えて,日本の短期大学の新しい発展をできるように私は祈っています。
 そしてもう一つ,勝手なことですけどお伝えしたいことは,日本の短期大学の将来の課題,問題,チャレンジは,今議論なさっているワーキンググループ,コミュニティ・カレッジ中心の方々,短期大学にのみ与えられるチャレンジではないと思います。できるだけ広く高等教育システム全体の共同が必要じゃないかと思います。
 それで,今後の審議にもこのようにもっと広く,大学側の先生たち,もちろんこのワーキンググループには清水先生とか小林先生という方々が参加なされているので幸いです。でも,その方々のほかにも短大と大学同士の議論が必要ではないかと私は思います。
 それでもう一つ勝手なアドバイスと思われるかもしれませんけれども,教育,特に高等教育というのは,教育の世界のみの問題ではなくて,各国の社会の問題,チャレンジだと思います。ですから,今の日本の短期大学を新しい方向に発展するというのは,従来の授業料を頼りに運営をする私立短期大学・大学で解決できるのでしょうか,それとももう少し日本国の方針,ジュニアカレッジに対する考えは何でしょうかと私はよく思うことがあります。
 本当に何かまとまらない,いろいろ準備をしてきたのですけど,話し始めるといろいろ煩雑になってしまって,お分かりにならない点が幾つかあったと思いますけれども,時間があるときに私が去年発表した資料も読んでいただいて,私が比較をした点も見ていただいて議論を続けていただけたらどうかと思います。本当に申し訳ございませんでした。
【佐藤座長】  先生,ありがとうございました。大変多岐にわたった比較や我が国の短期大学に対する疑問や御提言など力いっぱいお話しいただき,ありがとうございました。ただいまのジョイス先生の意見発表を下敷きにさせていただきまして,しばらく御質問や議論をしてみたいと思います。どなたでも結構ですから,どうぞ御発言ください。
 清水先生。
【清水委員】  ジョイス先生,ありがとうございました。日本の短期高等教育を元気付けるような御提案を頂きました。1つ確かめておきたいところがあります。アメリカのコミュニティ・カレッジの平均年齢がほぼ26歳とおっしゃいました。日本の場合には,多分18.5歳ぐらいですか。アメリカのコミュニティ・カレッジに通う人たちはどういうバックグラウンドの人が多いのでしょうか。つまり,一旦職業へ出てまた入ってくる,あるいは家庭に入ってまた戻ってくるとか,26歳というとハイスクールを卒業してからは大分ありますよね。
【ジョイス津野田学長補佐】  そうですね。ですから,どういう人々かというと,一言にはお答えできません。一人一人の目的によってですけど,一部は高校を卒業して,自分の事情によって,コストとか,それか自分は大学には入学できないからコミュニティ・カレッジの方から始める。もしも自分が高等教育を受ける資格があるとすれば,4年制の方にも進む,そういう自分の目的がある。そのほかは,自分は社会人として勤めているけど,やはり高等教育を受けたいと思って入学してくる。ですから,そういう人たちは仕事をしながら入学してもらう。ですから,パートが多いです。きょうの発表では申し上げませんでしたけど,年齢別じゃなくて,フルタイム,パートタイムというのは,パートタイムの方が60%です。勤めながら履修する,コミュニティ・カレッジに通学する人が多いです。ですから,アメリカの高等教育,4年制大学でもそうです。4年制の課程を4年で卒業するという学生は25%ぐらいです。2年制大学ですと,2年の課程を2年制できちんと卒業するのは10%ぐらいです。それがいい点か悪い点か分かりませんけれども,アメリカという社会はそういう社会なので,アメリカではそれでオーケーと言われています。でも,日本ではそういうことは許される,私の目から見ると,それは社会的に受けとめられないではないかと私は思います。
 ですから,それはその国の文化で違いますので,それはそれでいいのだと思います。ですから,私が一番気に掛かっていることは,日本版のコミュニティ・カレッジ,そちらの方向に向きたいということを聞きますと,コミュニティ・カレッジというイメージをきちんと確認なさって,そして,コミュニティ・カレッジの中のいい点をアダプテーションとして使っていただけたら,それは役に立つ。ただ,コミュニティ・カレッジという方向だけに,名前と想像する,地域と近くになるとか何とか,そういう考えだけで進めると,高等教育がゆとりに教育になってしまうと私は思います。ですから,本当にその国の文化によって,高等教育に当てる期待が違いますので,それはきちんと理解して,今からの日本の短期大学の改革を考えていただいた方がよいのではないかと私は思います。
【清水委員】  ありがとうございます。先生の印象で結構ですので,AAとかAASというトランスファーにつながる学位を取得するのは若い層が多いと思われますか。
【ジョイス津野田学長補佐】  いいえ。それは学位,準学士号によって違います。例えば,余り上手に説明できなかったのですけれども,私の11月の説明の中に幾つかの学士号を並べています。
【清水委員】  14,15のスライドにAAとか,16ですね。
【ジョイス津野田学長補佐】  そうです。16ですね。ですから,AAとかAAS。AAに向けて入学して進む学生たちは,やはり高校から入ってくる若い年齢の学生の方が多いかもしれませんね。
【清水委員】  そうです。そんなイメージがあります。
【ジョイス津野田学長補佐】  ATSとかAASという特別な学士号の種類になりますと,もっと年齢が高い。
 その次のスライドにもありますけれども,ここにはAAT,Associate of Arts in Teachingというディグリー,学士号もありますよね。それは,特別にハワイ州の小中学校の先生を育てるコースなので,それに挑戦して入る方々は,自分のキャリアチェンジとか,そういうことを考えられている。
 もう一つは,Associate degree in paralegalと言います,私は日本語で何と言っていいのか分からないですけど,法律事務局,弁護士の事務局に勤めるセミプロフェッショナル,そういう人たちのアソシエイトディグリーというのは,やはり,特にこれは女性の方が多くて,それで何年かオフィスセクレタリーとして勤めてきて,でも,自分はもっとプロフェッショナルな仕事をしたいというのでその分野に入って,その人たちのためには,その授業を受けるスケジュールですか,それは5時から9時まで,そういう時間割のみで授業を与えておりますので,仕事が終わった後にコミュニティ・カレッジに来て,それを受けて,何年か掛かってそのディグリーを受けて,卒業して,就職する。ですから,再就職ですよね。新しいキャリア,そういうこともできます。
 ですから,26歳というのは,そういう人たちを全部含めて。
【清水委員】  どうもありがとうございました。
【佐藤座長】  ほかにいかがですか。小林先生。
【小林(雅)委員】  どうもありがとうございました。多くの点を非常にクリアにしていただいたのですが,逆に質問もたくさんあるのですが,時間の関係で1つだけ質問させてください。
【ジョイス津野田学長補佐】  どうぞ。きちんと質問にお答えができるか分かりませんけれども。
【小林(雅)委員】  この短期高等教育について考えるときに,日本は私立が圧倒的に多い。学生数で言うと9割以上が私立です。
【ジョイス津野田学長補佐】  そうですね。
【小林(雅)委員】  学校数でも非常に多いわけです。それに対して,アメリカは,コミュニティ・カレッジは大部分が公立ですね。
【ジョイス津野田学長補佐】  公立です。
【小林(雅)委員】  私立も,先生がおっしゃったように若干ありますけれども,非常に数が減っている。そこは非常に大きな違いだと思います。
【ジョイス津野田学長補佐】  そこが一番の違いです。
【小林(雅)委員】  これはアメリカだけではなくて,イギリスとか,ほかの国も,大体,短期高等教育というのは公立の機関が多いですね。
 きょうの先生のお話では,1948年のトルーマン・コミッションの勧告が非常に大きかったというお話でしたけれども,例えば,今のオバマ大統領も,コミュニティ・カレッジは重要だと強調されていますよね。
 ただ,これも先生の報告の中にあったのですけれども,連邦政府の役割というのは,基本的にはステューデントファイナンシャルエイド,学生への経済的な支援だけに限られているわけですね。ですから,連邦政府,あるいは州政府でもいいのですけれども,短期高等教育,コミュニティ・カレッジに対してどのような政策を取れるのかということをお聞かせ願いたいですね。というのは,ここは国の政策を考える場ですので,これから文部科学省がどういうような政策を取り得るのかということについて,何か示唆があるようなことがあれば教えていただきたいのですが。
【ジョイス津野田学長補佐】  ちょっと難しい課題ですね。
【小林(雅)委員】  アメリカの連邦政府なり州政府が,どのようなコミュニティ・カレッジへの支援策を取っているかというのでも結構です。
【ジョイス津野田学長補佐】  アメリカですと,やはり州立が多いので,その州のニーズによって,コミュニティ・カレッジがこういう分野で,職業に対して訓練ができるとか,それに必要な予算を与えてくれる。ですから,州とコミュニティ・カレッジとの連携というのは,やはり役に立つ分野の方には予算を与えるとか。
 それで,初めに,1960年代にコミュニティ・カレッジが,特にハワイで設立されたときには,授業料は1単位じゃなくて,1学期が25ドルだったのです。本当にばからしくて,それがすぐ40ドルになりました。現在の授業料は,1学期1,730ドルです。ですから,25ドルから1,730ドルで,学生が負担しなくてはいけない部分がだんだん増えている。それでも,コミュニティ・カレッジは,4年制大学と比べるとアフォーダブルですよね。
 そのほかに,連邦政府の方からは,機関宛てにじゃなくて,直接学生宛てにステューデントファイナンシャリーという資金や,ステューデントローンを与える。
 州とコミュニティ・カレッジの予算の関係は,ですから,私が総長のときには,私の一番大切な役割は,今年のコミュニティ・カレッジはこういう目的です,今までこれをきちんと果たしました,この成功がありましたと説明しながら,今度はこれだけの予算が欲しいですと,それを毎年毎年繰り返してお願いしなくてはいけない。そういうやりとりで,州とコミュニティ・カレッジの信頼関係がある。
【小林(雅)委員】  ありがとうございました。
【佐藤座長】  ありがとうございました。それじゃ,小杉委員。
【小杉委員】  大変勉強になりました。ありがとうございました。
 私,1つ,私自身が実は雇用の方の,労働の政策に関係していることから,お聞きしたいことが,学士号が,やはり雇用に備えるとか,雇用主に認められるとか,そういうことが条件に入っているのですが,そのあたりの教育プログラムの策定過程で,どうやってそのプログラムが雇用に備えているかとか,雇用主から認められているのか,そういうことはどういうふうに,教育プログラムの中に反映する仕組みはどうなっているのでしょう。
【ジョイス津野田学長補佐】  そのことを説明したかったのですが,私がそちらにお出ししているスライドの18ページになりますけれども,新しい課程とかプログラムを設立するときには,Systematic Program Developmentということが必要になります。
 経済的なプログラムの発展,それで労働組合とか地域の企業の方たちのアドバイスを受けて,そのアドバイスは臨時的ではなくて,どの分野でもその地域から,諮問会議というのですか,アドバイザリーコミュニティというのを設けられていて,その人たちのアドバイスを受けて,こういう資格とか,新しい分野でこういうことを身に付けてもらいたい,こういう就職先がありますということを受けながら,それに向けてプログラムを立ち上げる。
 そのときには,新しいプログラムを作るときには,就職先はどれぐらいありますかとか,いろいろな,ニーズ・アセスメントといいまして,そこのコミュニティでどれぐらいの勤め先がありますかとか,給料はどれくらいですかとか,これを始めると何が必要ですかといういろいろな情報を集めて,それをプログラムの形にする。学内の許可を受けて,最終的には理事会の許可を受けて,そしてそれを始める。
 始めてから5年間は,暫定というのですか,プロビジョナル,それを5年間続けて,きちんと資格も,学生たちも入学する。そして卒業できて,就職する。就職して,これぐらいの給料を受けて,就職先にこういう機会があったとか,そういうデータを集めながら,最終的には5年後に,5年前に始めた課程はこういう結果が出ました,これをまだ続ける可能性があるので,正式なプログラムとして続けたい。それの許可を受けたら続けることができるのですよね。
 でも,その後にも,毎年毎年このプログラムの健康診断をします。去年はこれだけの学生が入学して,これぐらいの予算が掛かって,そしてこれぐらい就職した。成績がだんだん悪くなって,就職先もなくなったということになると,このプログラムを廃止することもできる。ですから,だんだん,地域と関係しながら,毎年毎年調べて,教科を見て,そして,続けるか続けないかを。そういうふうに新しく取り替えていくので,ですから,そういうことをしないと,州の方に予算を求めに行くときにも説明ができません。
【佐藤座長】  よろしいでしょうか。
【小杉委員】  ありがとうございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。もっともっと伺いたいのですけど,時間が経過いたしておりまして,津野田先生にはこれからも接触させていただく機会があると思いますけど,先ほど先生が言われたハワイのAgree to Degreeですか,これについて少しお尋ねします。なぜ今,Agree to Degreeなのでしょうか。
【ジョイス津野田学長補佐】  今なぜですか。やはり50年後でも,学生が,ディグリーを受けるという意識を持っていない学生が多いです。ですから,できるだけきちんとした資格を受けなさい,そういう機会があるので無駄にしないでということで。
【佐藤座長】  分かりました。一方,私どもが理解しているアメリカのコミュニティ・カレッジというのは,非常にしなやかな制度で,トランスファーが主な目的であることは重々承知しておりますけれども,それだけでなくて,ターシャリーエデュケーションであるとか,アダルトベーシックエデュケーションだとか,リカレントエデュケーションとか,本当に多様な学習機会を提供するのがコミュニティ・カレッジだと思っております。
【ジョイス津野田学長補佐】  もちろんそうです。
【佐藤座長】  そうですよね。それで,今なぜディグリーに絞り込むのか,何か政策的な意味があるのかなというふうに思ったわけです。
【ジョイス津野田学長補佐】  それは,多分ハワイのコミュニティ・カレッジが本当に注目している目的で,全国的にそういうことではないと思うのですが。
【佐藤座長】  ありがとうございました。残すところ30分だけになってしまいましたので,議題3に移らせていただきたいと思います。
 短期大学の卒業生調査など,いろんなリサーチをやっていらっしゃいます吉本圭一先生から,短大卒業生調査等からのコミュニティ・カレッジの模索といった観点でお話を頂きたいと思います。
 吉本先生は教育社会学の御専攻でございますけれども,短期大学についても,そしてまた専門学校の多様な職業教育についても,たくさんのリサーチをやっていらっしゃる方です。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉本教育学部長】  それでは私の方から,卒業生調査のお話をしようということであったのですけれども,そこまでたどり着くかどうか分かりませんけれども,「コミュニティ・カレッジへの途を探る」というのを付け加えておきました。考えていないことはないのですが,もう既に津野田先生からいろいろありましたので,これから議論していただくネタは十分あると思いますので,むしろ卒業生調査からの知見をお話しするだけでもよいかと思っております。
 ここの中に,3つばかり卒業生調査があるのと,パネルの調査がもう一つあるのと,専門学校の,ほかの文部科学省の調査を比較したのとか,私が行いましたヨーロッパとの比較,大学卒業生の調査を使っているのとか,いろいろとございます。
 端的に言うと何かというと,先ほどの資料2でしたか,田頭さんから説明を頂いたような分析,この場で政策を考えるために2つ例を取り出してやるということですが,本当の,問いがあれば,それは学校がやることであって,しかし,学校がやるにはかなり大変なこともあって,そうすると私は,単純に言うと,なぜ学校基本調査で卒業後の状況を調べて事足りるとしているのだろうということが常々疑問ですので,こういう形で何回も何回も卒業生の調査をしている。
 これは卒業した5月に調べて,正確に言うと3月の末頃に事務が一生懸命,九州大学もやりますけれども,彼はどこに行くことになったというだけの情報を集めて,学校基本調査で報告している。それでも若干分析のしようはあるのですけれども,進路と産業,職業の情報しかない。最近は県外就職,県外移動のことも,ある時期,政策的なテーマがあったときはやっていましたけれども,卒業後の就職の県外移動というのは,今やっていませんよね。
 要するに,この発想自体が是非是非,これはこのワーキングで言うことでもないですけれども,個人を対象として,プログラムを対象として,それからプログラムの中で学ぶ学習者を対象として,先ほどの話にありましたけど,学習者を串刺しにしてと言いましたけど,学習者単位のキャリア調査をしていかないと,本来,普通に見えるものが見えないのではないかと思っています。
 きょうは,そうは言いながら,もっと見えるはずのものがあるのですが,簡単に卒業生調査の知見を紹介させていただいて,2ページ目の発表の構成というところを見ていただければ分かりますけれども,卒業生調査からの知見,そして大学や短大,専門学校を比較しましょうと。
 コミュニティのカレッジという話がありましたけれども,地域のステークホルダーと,先ほどの津野田先生の言い方だと精神論のようなところもありますけれども,どこまでステークホルダーと関わるのか。ステークホルダーと関わる力があれば生き残るだろうし,ステークホルダーが余り期待しなければ生き残れないかもしれない。はっきりしていることだと思いますので,ここが議論かなと思っています。
 国全体としては,第三段階教育において,これからどういう,いろんな学校種も含めて役割をはっきりさせていくのかということは,大変楽しみに,期待しておるところです。
 1-1,卒業生調査からの知見ということで,2004年に8校の九州の短大が手を挙げまして,短大基準協会で調査をいたしました。卒業後10年までの範囲を1,3,7とピックアップしまして,卒業後1年目,3年目,7年目,つまり20代の後半ぐらいのところに,どういうふうにキャリアをたどっているのかを調べました。
 人間形成や就職支援について短大教育を評価しているけれども,ある種,長期的な効用はだんだん下がっていく。卒業後の年数とともに効用感が頭打ち,低下しているということが出てきました。それから3番目のポイントで,キャリアの天井にぶつかっていると感じている者が,卒業後7年目までの者には多いです。特にこれは女子のキャリアの問題が関係していると考えます。
 今度は2005年に,実は次の年ですけれども,年度で言うと2年度後ぐらいに,もう少しサンプルを拡大して,学習成果を比べてみようということをやりましたのが1-2-1の表です。いろんな学習成果,学習成果であり社会に出てからの評価にも関わるのですけれども,そういうものを見ますと,この数字を読むのはとても大変ですけれども,全体に見えてきたのは,先ほどのスライドとちょっと違う傾向がある短大も1つ見つかったというか,若干あった。
 Jの短大ですけれども,Jの短大の効用感を見ると,実は効用感が卒業後の年数とともに増加しています。教育の改革があったというような要素は非常に難しいので,そこを捨象して言いますと,後で見ますけど大学の場合には,卒業の年数と比例して効用の逓増傾向がある。これは何回調査してもこういう傾向があります。短大の場合には,いろいろと見て逓減傾向がある,下がっていく。ところが逓増傾向にあるのがJの短大で,どちらかというと教養型の短大であったかと,人格形成中心かなというようなことは見えました。数としてはむしろ多くないと思います。
 スライドの6に行きますと,職業効用型と人格形成型,ある種どこかではっきりとメリハリを付けて,すみ分けているような状況があるのかなと思います。このあたりはまだまだ分析が要ります。ちょっとスライドの番号がずれていましたね。スライドの7も,その話の続きです。
 いずれにしても,人格形成型というのは,若干,限られた数ですけれども,多数ではないけれども,残っている。その場合,単に教養授業というよりも,どうもデータを細かく見ていくと,専門の卒論で鍛えるというところの効果が意識されているのかなと思いました。幾つかの可能性,たくさん可能性があるので,こういうのはまさに各学校で調べていただく以外に,我々研究メンバーがこれ以上タッチできない領域が出てきます。
 次に,3つ目の卒業生の調査は,短大,専門学校を同じ枠組みで,ウェブで調査をいたしたところですけれども,卒業後の初職の継続率というところで,全体によく似ているのですけれども,専門学校の医療系国家資格は,かなり高い比率で卒業後10年まで残っている。あとの領域は,初職からかなり変わっていく。
 どう変わっていくかがスライドの9にありますけれども,必ずしも最初の仕事場に,職場に継続することばかりがいいことではないのですが,9ページの右側のような,現職がもともとの卒業した分野と関連しているかというような関連度というのは,1つ,大切にしてもいい指標ではないかなと思うのですけれども,それで見ますと,ここの黄色の部分は移行がうまくいっている領域,青い部分は少し課題が残っている部分なのかなと思います。短大で言うと,ビジネス,芸術あたりは,現職はもともとの分野と関連性が弱くなっている。専門学校の医療系国家資格は,卒業後,年数を経ても専門分野でずっと,転職していたとしても継続しているというところが見えます。
 どの段階で能力形成があるかというのは,いろんな分析をしているところが10と11でありますけれども,飛ばします。
 若干の技術的なアドバイスのようですけれども,短大教育の中で,あるいは専門学校教育の中で,どういうものが移行にプラスになるのかというところで,インターンシップ等の就業体験の有用性が見てとれます。短大の中でも,ビジネス・キャリア分野でインターンシップが大分広がってきています。資格実習があるところ,資格実習はないけれどもインターンシップをやっているところ,インターンシップがないけれども学生が個人で専門と関連するアルバイトをやる,そういうふうにふるい分けをしてみますと,いろんな形でのインターンシップや専門関連アルバイトは,専門分野と関連のある職業への移行を支援するということが分かってきました。これが13番目あたりのスライドです。
 そういうふうな経験をしていることは,14ページですけれども,これは就職の話ばかりではなくて,濃い黄色のところがプラス評価が高いということなのですが,最終的に,仕事から人格形成へ,更に総合的に振り返って,短大,専門学校への満足度が高くなるというような傾向があります。
 次の15枚目のスライドは,こういうものをリグレッションしたもので,分野の条件とか,いろんなことがありますので,これをどう見るかというのはありますけれども,卒業後の年数とともに,その学習を続けていく上での学校教育の評価が逆に下がっている傾向がある。このあたりが,要するに効果が,専門学校も同じようなことですけど,短期のものの効用が必ずしも長続きするとは限らない。このことは労働条件の側,労働市場の側の問題でもあるのですけれども,教育の側でもこれをどう考えていくかということはあるだろうと思います。むしろ次のステップに,高等教育のセカンドステージを提示するということが重要なのかもしれません。
 16ページに,今までの項をざっくり簡単に小括しておきました。短大をそれぞれの分野で専門学校と比べたときに,職業への円滑な移行には課題を残している部分もある。
 能力形成というところで,飛ばしましたけれども,職業的な能力というのは卒業後に獲得されていると卒業生は思っているので,必ずしも短大,専門学校で専門的な職業能力を身に付けることばかりが必要とは限らないだろうと,基礎的,社会的能力というような側面でよいのであろうということは考えられるところです。
 それから,小括の17ページに,インターンシップなどの職業統合的な学習,よくWork integrated learningと言いますけれども,こういうのがそれぞれ有効であって,全ての学校がやらなきゃいけないというわけではないのでしょうが,こういう取組を通して,エンプロイアビリティーかどうか分かりませんけれども,移行を支援していく,移行の支援をより強化していくということは課題になっているのではないかと思います。
 短期高等教育の効用というのは,即効性はあるが,卒業年数とともに効用の逓減傾向があるということがポイントになろうかと思います。
 これも飛ばしましょうね。2番目のところは,文部科学省の専門学校の調査,それから短大の卒業生の調査,大学の卒業生の調査を比べたものですけれども,短大の卒業生の仕事というのが,分野とか,いろんなコントロールの条件が必要ですが,一人前になるための訓練スパンが比較的短い仕事に就いているということが出てくるかと思います。それから仕事と専攻分野の対応というものも,むしろ初職から現職で下がる。
 20ページのスライドにあるのですけれども,レベルのところも大分違いがあるのですけれども,例えば短大は,初職のときには専門分野と関連する,適切なところで仕事をしていたというのが,現職になると下がっている。専門学校,大学,ほかのグループは,逆に少しずつ上がっている。こういうのがずっと見てとれるところを,これからみんなどう考えていくのでしょうかということをお聞きしたいように思います。
 2-4も同じような傾向ですので,ちょっと飛ばします。
 短大の場合,卒業経過年数が短いグループで評価が高い。逆に言えば,短いグループというか最近の卒業生の方が,最近の短大は教育改善が進んで評価が高くなったと言えるかということですけれども,徹底して分析していくと,やはり短大における教育の効用の逓減がむしろ顕著なのではないかと思います。
 このことは,短大が女子中心であるということで,20代後半,そのあたりの問題を考えたときに,その説明の要因ですけれども,同じように専門学校を女子だけで分析しても傾向が変わらないという意味で,考えるべき課題はあるだろうと思います。
 時間が限られていますので,3の方は,今度は卒業生調査というよりも,今の文部科学省が学校基本調査しか用意していただけていないという段階では,各短大がこういう形で調査をして,しかも1つの短大で調査している限り,A学科とB学科の違いがあったときに,どっちが問題なのかよく分からない。
 何回も調査すれば去年よりはよくなったとかが分かりますけれども,去年よりよくなったことが本当にすごかったということなのか,何とかぎりぎり頑張ったのか,それとも相当トップでどんどん向上しているのか,そういう意味でベンチマーキングが必要である。
 そうすると,私,常々こういうふうにやっているような,一緒に調査をしていく,共同の調査が必要なのかなということで,3-1,3-2,3-3が,これは短大基準協会等でも,どこまでの調査をしていますか,一緒にやってみましょうということをいろいろな形で取り上げて,26ページのスライドにありますように,卒業生までコンタクトをする,卒業生までコンタクトすれば今度は企業にコンタクトできる,企業からさらには大学・高校,地域関係者というのはなかなかコンタクトがとれていないというのが,この段階,2007年ぐらいの段階のものです。
 いろいろな研修会をやったりしていましたけれども,時間がないので,28からの地域総合科学科のテーマは,きょうは入っていないので飛ばします。それなりに面白いところはあるのですけれども。
 最後の4で,まとめに入りたいと思います。短期大学の教育方法論は,結局どこまで大学モデルに忠実であるのか,忠実であるべきなのか,適切なのかということですね。これは,ここでの基本的な問いであろうと,問われていることであろうと思います。
 大学の目的に換えて,83条の目的に換えてといったときに,何をどこまで換えているのかということが本当は分からないので,このあたりのゴールが,津野田先生がおっしゃった,明確な,共通の,独自のミッションは何かということを議論していただければと思っています。
 36ページにありますように,今,ターシャリーエデュケーション,第三段階教育という形で国際的には中等教育以降の教育を捉えようとしている。そこの中には,それを拡張して,非大学セクターがそれぞれの国でそれぞれの形で展開する。それぞれの非大学セクターは多くの場合,結構,制度のレベルで,あるいは機関単位で大学セクターへ転換していくというアカデミックドリフトの動きがありますけれども,しかし,この高等教育の,第三段階のマス化,ユニバーサル化の中で,逆にボケーショナリズムというのが展開する。ボケーショナリズムというのは,ノートン・グラブさんなどはかなり批判的に見ている部分もあるのですけれども,しかし,何らかの形で職業への移行というのに対応していく必要が出てきている。
 そこで,中教審の職業実践的な教育に特化した枠組みとか,こういう議論が出てきているわけですけれども,さて,日本の場合にこれからどうしていくのでしょうかという問いだけを37のスライドに書いておきました。短期大学士,準学士,専門士,このレベル,高校の看護科の専攻科というのは,これまでのISCEDで言うとレベル4になっている。
 それから,次のスライドに書いていますけれども,38ページですが,つまり看護師というのは,高校の看護科専攻科,ISCED4という形で教育もできる,あるいは専門学校のISCED5でもできる,4年制大学の,今度は新しいISCEDですけれども,6でもできる。一体,海外のこういうふうな国際的な読替えというか,通用制を考えた仕組みと,日本はどういうふうに折り合っていくのか。
 今の新しいISCEDの2011年改訂のものでは,ISCED5というのに短期の第三段階教育が入り,これは短大,専門学校,高等専門学校が典型的に入るのですけれども,さて,短大は,一般教育というのか,ゼネラルエデュケーションというのか,ボケーショナルエデュケーションなのか。海外で機械的に,国際的に読替えができるようなものに無理に当てはめることはないですけれども,しかし,やはりそういうアイデンティティーを探していくということは必要だろうと思います。
 時間があと5分になったのですが,最後のページは,専修学校では職業実践専門課程というのが始まっている。端的に言えば,職業の,職業による,職業のための教育だろうと思います。とりわけ,教育の統制のところ,教育課程編成委員会とか学校関係者評価の委員会とか,ここに,企業等の連携の下で,そういうメンバーが確実に入っているということを入れている。ある種,そういう形の輪郭をはっきりさせる方向性を打ち出しているわけですが,短大はコミュニティのカレッジというからには,またスローガンみたいになってしまいますけれども,地域の,地域による,地域のための機関になり得るのだろうかと,少なくとも今の段階,何回もそういうことを意識しながら観察していますけれども,何か距離がまだまだあるように思ったりするのです。
 そういう形での報告をさせていただきました。
【佐藤座長】  ありがとうございました。時間が少なくて大変申し訳ございませんでした。
 お一人だけ,何か御質問なりコメントなり,手短にどうですか。いかがですか。
【滝川委員】  先生,貴重なお話をどうもありがとうございました。
 今の御説明の中で,やはり最後の言葉が一番耳に残っておりまして,私どもコミュニティ・カレッジといったものを模索しつつ,そういうふうな新たなスキームの中に入っていくことはできないかと模索していますが,そういう方向に行けるのかどうか,今の観察の状況だと分からないというところを,先生,もう少し御説明いただけたらと思うのですけれども。
【吉本教育学部長】  普通に,就職先との関係というのは,各短大それぞれにコンタクトを持っていますよね。そのコンタクトを持っているところが,それこそコミュニティ・カレッジが,先ほどの津野田先生が言われたように,何か定常的な委員会を持って,むしろそういう方に学校の中に来ていただくような,そういう仕組みの中で何かダイナミックな動きができてきたら,追うようなことではないかもしれませんが,そういうことを示していくことができてやはり,地域の中で見えるようになっていくということなのではないかと思います。
 今,ある学校を見ていると,経営学科だけれども,観察していると,商工会議所の人とほとんどコンタクトしたことがない。商工会議所の方も,短期大学はやはり小さい分だけ,何か働き掛けがないと見えてこないということがあると思います。ある種,お互いの関係が見える化するような仕組みがこれからできればいいのかなとまずは思うのです。ちょっと短いですけどね。
【佐藤座長】  ありがとうございました。話が佳境に入りそうなところで大変申し訳ないですけれども,時間切れでございます。当ワーキンググループとしては,津野田先生が再三警鐘を鳴らされたように,コミュニティ・カレッジという言葉を,アメリカにおけるものと同意義で使うつもりはさらさらないですけれども,では,どう言い換えたらいいかとか,間違いなく地域の人材養成のために貢献したい短期大学が,地域の様々なセクターと様々なコラボレーションが必要だというところまでは分かっているのですけれども,それがどのように可能なのか,しかもパブリックファンディングのないところでそれを実現するにはどうしたらいいかなどなど,まだ課題が残っているわけです。
 事務局と相談いたしまして,できたらもう一度だけ地域との関わりについて,もう一度だけというか,もっと深く掘り下げて,議論ができたらなというふうに,座長としては思った次第でございます。
 時間になりました。事務局からアナウンスメントをお願いします。
【田頭大学振興課長補佐】  次回,第5回になりますけれども,短期大学ワーキンググループでございますけれども,4月24日の木曜日,15時からということで,文部科学省の3階でございます,3F1会議室において開催させていただきたいと思います。
 委員の先生方におかれましては,追って開催通知を送らせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
【佐藤座長】  ありがとうございました。
 最後に,座長からお願いですけれども,今日は委員の先生方に十分議論していただく時間がなかったわけでございますけれども,もし,お二人の発表者に対する御質問,コメント,それから,それを基にして当ワーキンググループで議論すべき論点等々,お気付きの点がありましたらば,何かペーパーに起こして事務局の方にお寄せいただければ有り難いと思います。
 では,これで本日のワーキンググループを終了いたします。

── 了 ──

 

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