資料1 短期大学ワーキンググループ(第3回)議事録(案)

第7期中央教育審議会大学分科会大学教育部会
短期大学ワーキンググループ(第3回)議事録(案

                                       
1 日時  平成26年2月25日(木曜日)17時00分~19時00分

2 場所  文部科学省東館3階3F2特別会議室

3 出席者  (臨時委員)小林浩,佐藤弘毅(座長)の各臨時委員
                (専門委員)安部恵美子,大野博之,小杉礼子,小林信,小林雅之,滝川嘉彦,中山欽吾の各専門委員
                (文部科学省)板東文部科学審議官,吉田高等教育局長,常盤私学部長,中岡高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,氷見谷私学部参事官,田中高等教育政策室長,今泉大学設置室長,田頭大学振興課課長補佐 他

4 議事 

【佐藤座長】  それでは所定の時刻になりましたので,中央教育審議会大学分科会大学教育部会短期大学ワーキンググループを開催いたします。御多忙の中を御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 今回は,はや3回目でございまして,前回は大野委員,滝川委員,それから安部委員から短期大学の特徴,とりわけ強みについての事例紹介を頂きました。あわせて,事務局から文科省の委託調査研究の成果に基づきまして,短期大学士課程教育の分野横断・共通的能力についての報告がございました。また,清水委員から海外における短期高等教育の役割,そして機能について幅広く御紹介いただいたところでございます。
 本日の議題はお手元の議事次第のとおりでございますが,まず「高校生・保護者から見た短期大学について」ということにつきまして,小林浩委員から御意見を賜ります。2番目に「短期大学卒業生の就業状況について」,こちらは小杉委員からお話を承ります。3番目に,「各専門的職業能力育成の共通性について」,これは前回に引き続きまして文科省委託調査研究の成果に基づき,その中の抜粋として事務局から報告を頂くことにしております。
 この順序で議論する前に,前回,委員の先生方から資料の御依頼がございました。それは短期大学へ地元出身者がどのくらい入学するのか,あるいは卒業生がどのくらい地元にとどまるのかといったような確かなデータが欲しいということでございました。事務局で用意してもらっておりますので,これを報告いただくとともに,これに基づき若干の議論をできたらと思っております。
 それでは,まず事務局から配付資料について説明願います。
【田頭大学振興課長補佐】  御説明させていただきます。
 まず資料1でございます。「短期大学ワーキンググループ(第2回)の議事録(案)」ということでお手元に出させていただいております。この議事録(案)につきましては,追ってメールによりお送りいたしますので,御意見があれば御修正等を3月7日までにお願いしたいと思います。
 資料2でございます。「短期大学の入学者・卒業者に関するデータ」ということで7ページのものを準備させていただいております。
 資料3でございます。「高校生・保護者から見た短期大学~大学・専門学校との違いをどう見ているか」ということで,8枚もの,15ページの資料でございます。
 資料4でございます。「短期大学卒業者の就業状況-労働関連統計データから-」ということで13ページの資料でございます。
 資料5-1でございます。「短期大学における各専門的職業能力育成の共通性について(モデル・コアカリキュラムの可能性について)」という1枚もの,それから資料5-2ということで,「短期大学における専門的職業能力育成の特徴例」,11ページものでございます。
 それから,参考番号をつけておりませんけれども,参考資料1-1といたしまして,東京都私立短期大学協会で作っておりますリーフレット,それから参考資料1-2ということで,埼玉県私立短期大学協会のリーフレットを付けさせていただいております。
 それから,参考資料2といたしまして,これは第1回で使用いたしましたけれども,「短期大学の最近の状況,大学改革を巡る動向から特に短期大学の在り方について検討が求められる視点等」ということで2枚ものを用意させていただいております。
 説明は以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは,審議に入りたいと存じます。
 まず,先ほど申しましたように前回の会議で委員から御依頼のございました短期大学関係のデータに基づきまして,自県内入学者の状況及び短期大学所在地への就職の状況につきまして,事務局から紹介してもらいたいと思います。お願いします。
【田頭大学振興課長補佐】  御説明いたします。資料2でございます。
 「短期大学の入学者・卒業者に関するデータ」ということで用意させていただいております。1枚おめくりいただきたいと思います。最初に都道府県別の学校数について説明させていただいております。上から短期大学,4年制大学,専門学校でございます。短期大学であれば359校,4年制大学では782校というのが合計でございます。そして,それぞれの都道府県別に学校数を入れさせていただいている状況でございます。
 特徴といたしましては,学校数でいきますと,専門学校,4年制大学,短期大学の順でございますけれども,例えば長野県や佐賀県といったところが4年制大学よりも短期大学の数の方が多いという状況がございます。
 3ページでございます。平成24年度末高校卒業者の進路状況でございます。これは平成24年度末に高等学校を卒業した学生のその後の進路でございまして,下から大学,短期大学,専修学校,その他ということで就職等でございます。短期大学につきましては,下から2番目のラインになるわけでございますけれども,全体といたしましては,卒業生の5.4%ということになっております。その中で特徴といたしましては,高いところでいきますと,長野県が9.6%,次いで鳥取県,島根県が8.6%,8.5%,富山県,福井県,大分県,鹿児島県が8.2%で続くというような状況でございます。
 4ページをおめくりいただきたいと思います。平成24年度末高校卒業者の進学者数ということで,これは先ほどの割合から人数の方を入れさせていただいております。
 続きまして5ページでございます。短期大学の県別自県内入学率ということで,それぞれの短期大学が設置されております県の中で入学している者の数ということでございます。全体といたしましては,67.8%となっております。設置者別に見ますと,公立短期大学が63.1%,私立短期大学が68%という形になっております。特徴といたしましては,前回中山委員の方からございましたように,公立短大につきましては,非常に自県内の入学者の率が高いところもあるのですけれども,そうではないところもございます。
 続きまして,6ページでございます。6ページは私立短期大学の分野別自県内就職率ということでございます。これにつきましては,分野別に分かれておりますけれども,例えば教養が一番多く,85%となっております。ただし,この棒グラフにつきましては,パーセントでバーの幅を示しておりまして,そうしますと,人数の方がはっきり分からないということもございましたので,パーセントの横の方に人数を入れさせていただいております。例えば人文では,全体3,149人のうち1,974人が自県内の就職をしているという状況ございます。
 続きまして7ページでございます。私立短期大学の都道府県別自県内就職率ということで,それぞれの就職状況について各県別に示させていただいております。
 説明は以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。
 ただいまの説明に対しまして,何か御質問やコメントはございますか。小林委員,どうぞ。
【小林(雅)委員】  5ページの自県内入学率ですけれども,これは下の注にありますように短期大学の所在する都道府県にある高校から進学した者,短大の側から見て,自県から入ってきた者の割合ということです。もう一つの考え方としては,残留率といいますか,その都道府県に所在する高校からその都道府県内の高等教育機関にどのぐらい入っているかという率,つまり,出と入りと両方から見る見方があるのですが,その資料もあると分かりやすいかなと思います。これはかなり県によって違います。
 それから,後から申し上げて恐縮ですが,進学率のところ,これは単年度で3ページに頂いていますけれども,これも時系列でとれるはずなので,それでどういうふうに推移しているか。特に1992年以降の18歳人口の急減の中でどういうふうに動いてきたかというのはかなり重要だと思いますので,そのあたりのデータも整備していただけると有り難いと思います。
【佐藤座長】  最初のポイントは,高校卒業生の中で自県内に残留をどのぐらいしたかということ。あわせて,4大,短大,専門学校とあるといいと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  入学のところと卒業のところと両方出していただきましたけれども,これを全部つなげた形というのは考えられないでしょうか。つまり,今,地域から若い労働力が流出するというのが課題になっているのですが,その中で地域に若者たちをとどめておく機能のようなことを考えると,入りと出,両方考えなければいけないのではないかということで,全体を調査するのは無理と思いますが,特徴的なところについてあるといいと思います。この県はかなり県内から来て県内にずっととどまるというタイプの機能を果たしている短大であるとか,あるいはほかの地域から人が入ってきて,そのまま県内に定着するという機能があるとか,幾つかパターンが考えられて,もしそういうのが出たら,機能を考える上で大変プラスになるのではないかと思いますので,よろしくお願いいたします。
【佐藤座長】  流入,流出両面を見たいということですね。
 よく短期大学関係者が地域に密着した高等教育機関であると言いますが,そのエビデンスの一つとして自県内入学率が非常に高い,自県内に就職する率が高いということ。例えば5ページ,平均で68%が同じ都道府県から入学してくるということですけれども,ちなみにざっと数えてみて90%以上を占める県が16県あります。逆に出口の方は,7ページを見ますと,14の県において90%以上卒業生が同じ県内にとどまったということが言えるわけです。先ほどの両委員の求められましたデータを更にあわせますと,かなり精密な面白い動態的なチェックができるかもしれないですね。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは,引き続き事務局には可能な限り追加のデータを収集していただきまして,次回に御披露いただければ有り難いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 では,続きまして,議題1の「高校生・保護者から見た短期大学について」というテーマで,小林浩委員から御説明いただきたいと存じます。小林委員,どうぞよろしくお願いいたします。
【小林(浩)委員】  よろしくお願いいたします。
 いろんなステークホルダーがあるとは思うのですが,今回は私どものいろんな調査の結果から見えてくる,高校生,保護者から短期大学はどのように見られているか,あるいは選ばれているかというところを,大学,専門学校との違いから見ていきたいと考えております。
 本日の話をお聞きになるときに,大学人として,短大人としてではなくて,かなり前になってしまうかもしれませんが,自分が一高校生になったつもりで,進路選択をするときにどんなふうに短大を見ているのか,あるいは保護者になったときに,自分のお子さんを進学させる側としてどう見るかという視点でデータを見ていただければと思います。
 1ページを開けていただきまして,これは文科省でまとめている学校基本調査の高校卒業の現役の進学率の推移になっています。22年のところに赤い縦の点線が引いてありますが,ここで大学,短大,専門学校を合わせた進学率が約7割で止まっておりまして,濃いブルーのところは大学,短大を合わせた現役の進学率ですが,22年をピークに減少に転じています。短大は平成6年の13.8%をピークにずっと下がってきているという状況です。特に赤の専門学校進学率(現役)を見ていただければと思うのですが,ピーク時よりは下がってはいるのですが,2009年,平成21年を境に4年連続進学率が上昇に転じています。2008年9月にあったリーマン・ショック後,専門学校の進学率が高まっているということです。
 次のページは,これも学校基本調査のデータを引っ張ってきて入れたものです。これは短大の入学者数を100としたときに,分野がどのようなシェアになっているかというものでございます。そうしますと,過去から比べて増えている分野が三つあります。一つが,ピンク色の保健というところで1990年の4.3から7.0まで増えています。もう一つ圧倒的に増えているのがブルーの教育です。恐らく保育だと思いますが,16%から37%という形で倍以上になっている。あと,緑のその他というのがありますが,その内訳を細かく見ていくと,キャリアデザインといったような学科系統が増えていることが分かりました。これは学校基本調査のデータでございます。
 次のページが短期大学進学希望者の進学希望分野です。これは私どもの方で高校を卒業するとき,進学先が決まったときに振り返っていただいて,どんな行動をしたかを調査しております進学センサスというものでございます。これは隔年で実施しておりまして,2009,2011,2013という形で見ていきますと,経年でずっと増えているのが一つだけあります。これが教育・保育という分野です。あとは被服・食物・栄養・生活というところが割合は高いのですが,減ってきている。看護・医療のところもちょっとでこぼこしている。一番減っているのは,英語・英文というふうになっております。
 では,この子たちが進学先を選ぶ際に重視する項目は何か。これを私どもは学校選択重視項目と呼んでおりますが,ちょっと項目が多くて恐縮なのですが,大学進学者は男子,女子で分けております。なぜかというと,特に短大進学者の方は,大体9割が女子というふうになっていますので,女子と比べて見られるように,男子,女子は折れ線で表すようになっております。男子と女子で大分重視項目が違っていることが分かると思います。短期大学がオレンジの棒グラフ,専門学校進学者は緑の棒グラフになっております。
 そうしますと,大学,短大,専門学校とも「学びたい学部・学科・コースがある」というのが1位になっておりますが,2位になりますと,大学進学者は「校風や雰囲気が良いこと」というふうに学風を重視するのに対し,短大は「資格取得に有利であるから」というのが2番目に来ております。
 ちなみに,赤字で示しておりますが,短大の方が大学よりも値が大きくなっているポイントはどこかというと,「資格取得に有利」,これが21ポイントぐらい大学よりも高く出ています。あるいは「就職に有利である」,それから「自宅から通える」,この三つが大学よりもかなり高めに出ています。
 逆に大学の方が短大よりも高めに出ている項目は何かというと,「有名である」「偏差値が自分に合っている」あるいは「国際的なセンスが身に付く」といった項目で,大学の方が10ポイント以上高くなっているというようなところです。
 余り比較されることはないとは思うのですが,専門学校と短大では,専門学校の方が短大よりもポイントが高い項目は何かというと,「専門分野を深く学べる」というのが,何と30ポイントぐらい専門学校の方が高くなっています。事実がどうかは別ですけれども,高校生がこう見ているということです。それから,「卒業後活躍できる」のも専門学校の方が多くなっていまして,「社会で役立つ力が身に付く」というのも専門学校の方が高くなっているということで,短大進学者は総体的に見ると,「資格取得」「就職に有利」「校風や雰囲気を見ながら自宅通学を重視する」といったような項目を見ていることが,高校生目線で分かってきます。
 次のページを開いていただきますと,次のページは,高校生の進路希望の移り変わりです。これは最終的に短期大学に進学した生徒の最初の希望がどこからどう変化しているかというようなものを追って出しております。
 そうしますと,3月卒業時はみんな短大に入りますので100%になっていますが,高校1年に入ったときには何と2割しか短期大学を希望している人はいません。どこから移ってくるかというと,大学を考えていた生徒が4割,未定という生徒も3割ぐらいいまして,どちらかというと,専門学校から変わってくるというよりも大学や未定から変わってくるということが見えてきます。
 ここに,これはデータでは出していないのですが,大学から短大に進路変更した生徒たちに,なぜ変更したのかを聞くと,時期によって大分違いまして,高校3年生の9月,夏休み前までぐらいは,「家族の勧めがあった」あるいは「取ってみたい資格ができた」というような回答が多くなっています。高校3年生の9月以降,後半になってきますと,「受験の結果が不合格であった」とか「学力に合わせた」というような回答が出てきます。
 逆に専門学校から短大に進路変更した子たちに聞いてみますと,早期,大体高校3年生の春くらいまでは「新しい分野に興味を持った」とか「仕事に役立つ知識や技術が身に付くと思った」というような回答が多くなっています。高校3年生の4月以降,大体夏休み頃,これは「家族の勧めがあった」ということで,特にお母さんの影響がかなりあると思いますが,そういった家族の勧めというのが出てきています。
 一方,その次のページは,逆に大学に進学した子が100になっています。上の方が,最終的に大学に進学した子は,どこから進路変更しているかというと,実は最初から大学を考えていた子が多くて,短大,専門学校から大学に移るという生徒は余りいないということが分かります。
 専門学校進学者については,大学,未定から移っている生徒が多く,短大から移行しているかというと,そうでもないというような形になっております。
 次のページは,何度か高校生は志望校変更しますので,学校種を変えたではなくて,第一志望を変更した理由を聞いています。これも大学進学者と短大進学者に聞いていますが,青が大学進学者になりますが,「センター試験の成績を見て」「模試の成績を見て」というふうな,成績を見て進路変更,第1志望を変えるのが多いのに対して,オレンジの短大は,1位が「オープンキャンパス・体験入学に参加して」というように,いわゆる現場を見て第1志望を変えていくというようなことが多くなっています。短大が大学よりも多い項目は,1番目が「オープンキャンパス」,これが10ポイント以上高くなっています。2番目が「経済的理由」というのが出てきておりまして,こういったところが第1志望を変更する理由になってきております。
 そのみんなが参加するオープンキャンパスなのですが,何を知りたくてオープンキャンパスに行っているのか,これは大学,短大,専門学校進学者に聞いております。そうしますと,短大進学者で見ますと,1位が「キャンパスの雰囲気を見る」,2番目が「取れる資格が知りたかった」,3番目が「在校性の様子や雰囲気」「学校で勉強できる内容」というような順番になっております。
 短大,大学で比較すると,短大の方が大学よりも高いポイントでいきますと,やはり「取れる資格を知りたかった」,あるいはキャンパスよりも「教室,実習室の雰囲気を知りたかった」という生徒が多くなっています。それから「就職の情報」「学費などの情報」を知りたくてオープンキャンパスに行っています。
 逆に大学の方が短大より高い項目で言いますと,「勉強できる内容」「入試の情報」「キャンパスの雰囲気」といったような項目があります。
 専門学校が短大よりも高い項目でいきますと,「学費の情報」「就職状況」,それから「どんな先生がいるか」というのも専門学校の方が高くなっているというような結果になっております。
 続きまして,先ほど地元というのが出てきましたが,これは高校生に進学する前に,実際どうかではなくて,地元に残りたいかどうかを聞いています。2009年と2013年を比較しますと,2009年には,短大進学者は46%と他の学校種と比べても圧倒的に地元に残りたいというのが高かったんですが,リーマン・ショック以降厳しい経済環境,家計の状況を受けて,どの学校種においても高くなっております。大学も10ポイントぐらい,専門学校も10ポイントぐらい,短大はもとから高かったですから,一番高い方ではありますけれども,4.5ポイントの上昇ということで,大体半数ぐらいの子が地元で進学したいと思っていて,以前ほど短大だけが地元に進学するというような状況ではなくなってきたということが言えるのではないかと思います。
 次のページは,大学,短大,専門学校に行きたいと言った生徒に,それぞれの学校種に行くメリットは何ですかと聞いています。そうしますと,数字を入れておりませんが,学校種によって大分ランキングが変わっておりまして,大学に行きたいと思った生徒の考えるメリットは何かというと,1位が「将来の選択肢が広がる」,2位が「学生生活が楽しめる」,3位が「クラブ・サークル活動を楽しめる」,4位が「幅広い教養を身に付けられる」,5位が「有名企業や大手企業に就職できる可能性が高くなる」ということで,そんなにいろいろ考えているわけではなくて,大学に行って教養や可能性を広げて,キャンパスライフも楽しんで,いいところに就職したいというような意向が見えてくるというところです。
 では,短大はどうかというと,1位が「早く社会に出られる」,2番目が「自分の目指す仕事・職業に就ける」,これは大学の中では出てこない言葉でした。それから「自分のやりたい専門分野に集中できる」,それから「やりがいのある仕事ができる」,「学生生活が楽しめる」というようなことで,短期ということで,早く社会に出られるということを前提とて,専門の勉強を生かして仕事,職業というのが出てくる一方,「学生生活が楽しめる」という大学のいわゆるキャンパスライフについても期待していることが分かります。 専門学校についてはどうかと申しますと,1位が「自分のやりたい専門分野に集中できる」,これは専門学校に行く生徒に聞くと,やりたいこと以外はやりたくない,勉強したくないというふうに言いますが,それに近い感情だと思っていただければと思います。2番目が「自分の目指す仕事・職業に就ける」,3番目に「手に職をつけられる」,4番目に「特定の業種・業界に就職しやすい」,これは大学にも短大にも出てこない,これが業界,業種という言葉です。それから,これが私は驚いたのですが,「そこでしか学べない内容がある」というのが専門学校では出てきます。
 これをまとめますと,教養,可能性とキャンパスライフの大学,仕事・職業とキャンパスライフも楽しみたい短大,業界・業種,手に職で,そこでしか学べない内容がある専門学校というふうなイメージを高校生が持っているというようなところです。残念ながら,これだけを見ると,教育の特色というところをうまく伝えられていないのではないかということが見えてくるというふうな形だと思っております。
 次のページになりますが,これは全国高等学校PTA連合会とリクルートで一緒に高校生の保護者にアンケートを採っているものです。これも2年に1度ずつやっていますが,保護者が重要だと思う情報について,短大では「進学費用」が1位で,2位が「資格の取得状況」,3位が「就職状況」になっております。大学では,1位が「入試の制度」,2位が「進学費用」「学部学科の内容」,3位が「将来の職業との関連」となっていて,大学に比べ,短大,専門学校の保護者は,左から10個目の「大学・短大・専門学校の学校種の違い」というのを重要視しているというのは,大学をそもそも考えている保護者は余り「学校種の違い」というところの情報を必要としないのですが,専門学校,短大に進学する保護者は重要と考えているという回答も少なくないことが分かってくると思います。
 次のページに,以上のことから短大を取り巻く環境の整理をさせていただいております。大学・短期大学のマーケットでいきますと,大学進学率が,1992年,18歳人口ピークの団塊ジュニア世代が18歳のときから比べますと,大学進学率は大学だけ見ると倍になっている状況です。うち女子が17.3%だったのが45%まで増えている。短大の進学率は,これは過年度を含みますが,12.4%から5.3%まで下がってきていて,25万人いた短期大学進学者は6.4万人まで減ってきている。専門学校はどうかといいますと,92年は18%,35万人だったのが,2013年は21%まで増えていますが,人数的には減ってきているというようなところです。
 この中で,高卒求人が大分変化しておりまして,この92年には高卒の求人が167万人もあったのですが,2013年は22万人くらいしかないということで,高卒で就職するのではなく,その後の大学,短大,専門学校に行って社会に出るというのがかなり増えてきていることが分かると思います。
 世の中の働き方の変化というところも,これは後ほど多分小杉委員の方から御報告があると思いますが,男女雇用機会均等法が成立した後,女性のロールモデルというのが少ない,女性総合職がまだまだ少ないという状況があります。
 一方,ダイバーシティというのを進めていくということで,産業構造の変化もあって,女性の活用もこれから進んでいくだろうと言われています。
 90年代には,もともと短期大学の卒業生が担っていた一般職のマーケットが,派遣に置き替わるというようなことが起こってきました。それから,女性も一生働くということで,以前は短大を出てお嫁さん候補みたいなことも言われましたが,今は一生働くというようなことでお嫁さん候補からの脱却という表現にさせていただいております。
 一方,就職のところでライバルが増えておりまして,地元志向というのは,入学だけではなくて卒業のときもありまして,有名4大生が総合職ではなくて一般職に応募するというような,親元から通いたいというから,就職のときに,いわゆる短大の就職マーケットを侵食しているということ,自宅から通える地元で長く働きたいというニーズも高まっています。一方でグローバル人材ニーズも広がっているというところです。
 「必要とされる力」でいくと,やはり社会人基礎力ですとか,ジェネリック・スキル,人間力,それから仕事に直結した資格を持って,よくトレーニングされた人材というのが定性的なところでよく聞くところでございます。
 下段が先ほど調査の中で出てきたメリットや進学プロセス,保護者の意識を整理しているところでございます。
 次のページに,では,そのようなデータから整理して,進学者から見た進学先として,短大が求められる三つの方向性とその課題というところを整理しました。
 一つが,仕事直結の資格ということで,保育・幼児教育,医療技術関係を中心に,なりたい職業・仕事から学校を選ぶ傾向がある。そうしたところで,課題は,短大で取得可能で,社会的なニーズを満たして,仕事に直結する資格というのは「保育」しかないのかというようなところが一つポイントかと思います。以前短大で取れていた資格が,産業構造の高度化,看護もチーム医療ということで4大に移っていったり,栄養も,栄養士から管理栄養士ということで4大に移っていくというようなところが一つあるかと思います。
 二つ目は,ジェネリック・スキルを備えた地元で働く女性ならではのキャリアというのが,派遣法の改正で,これを3年で正規雇用しなければいけないとか,そうしなくてもいいとかというふうに揺れています。そうした状況の中,短大卒で長く働いてくれる子をきちんと採りたいというようなニーズが出てきているというのはお聞きしております。そのときに,ニーズがあるのは,就職に強い何々短大と,地元で割と形容詞が付いて言われる短大さんは,割と地域の一番校として金融とか地元企業に安定した人気を保っている。それから,教養をベースにした,実社会で,組織で働くためのトレーニングというのが必要とされているのではないかと考えています。
 そうしたときに,課題として考えられるのは,地元企業や産業界,地域のニーズをきちんと把握しているかどうかというところが重要になってくると思います。それから,社会ニーズを満たす人材育成する教育システムになっているかどうかというところ。三つ目は,ラーニング・アウトカムというふうに言われますが,客観的に見て,何を学んで,何ができるようになったのかというのが見えるようになっているかどうかというところが課題になってくるかなと思います。
 三つ目は,大学への編入というところに可能性があるというふうに考えております。ただ,残念ながら,社会に出てから学ぶコミュニティ・カレッジ的な役割を果たす短大は今,日本に少ないのではないか。今どこに行っているかというと,やはりこれも専門学校に行っていまして,専門学校の入学者の3割は,今,社会人というような状況になっています。
 しかし,編入学に価値を置く短大も出てきておりまして,国公立や有名私大への編入ということを,主たる目的ではないにしても狙えるというような方向性を出している短大さんもあります。大学の年平均退学率は3%と言われていまして,4年間で12%くらい,7万人くらいは退学すると言われています。そうした中で,大学に入ってミスマッチではなくて,一度短大で学んで,そこから編入するという,それほどやりたいことが絞れていないのに,いきなり経済的に厳しい4年に行くというところではないマーケットもあるのかなと思います。
 それから,先ほどのデータを見てくると,後半の進路変更層は,割と大学の不合格層も出てきております。言い方はよくないかもしれないのですが,リベンジマーケットというのがあるのではないかと思います。
 課題として,日本では,いかに入学するかが価値になっていて,その後の流動性が担保されていないのではないかと考えています。編入や転学という制度が未整備のために,この辺が非常に分かりづらい。編入枠や定員も分かりづらくて,見ると,若干名というふうに募集枠が出てくるんですね。これが非常に見えづらいのではないか。
 それから,ホームページを見ていて分からないのが,そもそも短期大学と短期大学部と書いてあるんです。そうすると,高校生に聞くと,例えば大学を併設している短期大学は編入ができるんだけれども,短期大学からはできないのではないかといったように,多分大学の方は普通に分かると思うのですが,少子化で1人しかお子さんがいないときに,経験知が積み上がらず分かりづらい,というのもあるのではないかと思います。
 学生が短大卒業の姿を描くための「特色ある教育・サポート」(短大ならではの価値)が明確になっているか,というところが一つポイントではないかと思います。
 そうした中で,ちょっと恐縮ではありますが,示唆という形で最後にまとめさせていただきました。現在の高校生から見た短期大学の価値は,2年間,言い換えれば低コストで早く社会に出られるということで,資格が取得できて就職できるというところが一つポイントになってきています。そのために,少人数で教育サポートの仕組みがしっかりしていると見られているというふうに思います。
 しかし,高校生のフラットな視点で見ると,この価値は,実際どうかは別として,同じ2年制課程を持つ専門学校と重なって見えてしまっています。専門学校から見れば,産業構造の高度化により,専門学校が主としてきた分野,看護,リハビリ,健康・スポーツ,ゲーム等が,大学の学部・学科に移行してしまって,2000年以降,非常に専門学校進学者を減らしてきた。そこから,今,盛り返してきているのはなぜかというと,専門学校では少子化や産業構造の変化に対応した経営視点でマーケティングを強化してきたということが言えると思います。
 大きく三つあると思います。一つは,独自の教育システムの磨き込みや個性化を推進してきたこと。二つ目は,産業構造の変化を見据え,社会環境に合った機動的で柔軟な学科・コースの設置を行ってきたこと。三つ目が,オープンキャンパス,学校説明会など,高校生への伝達力を非常に磨き,募集力を強化してきたこと。こういった三つの視点が短期大学ではちょっと後れてしまったのかなというふうに見えます。
 リーマン・ショック以降,教育費の家計負担が重くなる中で,選ばれたのは,実はマクロで見ると,短大ではなくて,専門学校であったということが言えるのではないか。社会人も,短大ではなく専門学校を選択している。ただ,短大は,専門学校と異なり,キャンパスライフがあり,教養教育とか図書館など学ぶ環境は充実しています。
 しかし,ここで学んで,社会に出てどう役立つかというのが,残念ながら見えづらくなっているのではないかと思います。ラーニング・アウトカムというのが強く求められてくる中で,短大を出てどうなれるか,そのための教育・サポートの仕組みはあるのかというところ,これが高校生や保護者の視点から見ると伝わっていないのではないかと感じるところでございます。
 短大の目線から見ると,いやいや,違うだろうというところがたくさんあるかもしれませんが,高校生の目線,保護者の目線で見ると,こう見えているというところを御理解いただければと思います。
 以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。大変多岐にわたったデータを提供いただきまして,小林委員ならではの視点から率直な御示唆をたくさん頂戴いたしたと思います。
 ただいまの意見発表につきましてしばらく取り上げて質問,議論をしていきたいと思いますが,いかがでしょうか。どなたでも結構でございます。
【滝川委員】  15ページに書いてあります短期大学への示唆という文章を読ませていただきまして,まさにそのとおりだなと実感いたしております。ただ,先ほどは高校生になったつもりでと言われたのですけれども,短大の視点から考えてみますと,ちょうど真ん中ぐらいのところに1,2,3と三つ書いてありまして,磨き込みが足りないとか,柔軟じゃないとか,オープンキャンパス,高校の説明会の募集力が強化されていないと書いてあります。例えば,私の目から専門学校などを見ておりますと,少し誇大広告も許されるかなというふうに思います。
 資格につきましては,先ほどの資料の中にもありましたように,やはり幼児教育,栄養,それから介護といったところが短大の三つの主たる分野になりますので,それ以外の分野に関しても,もっと幅広く短大では手を出した方がいいのだということは,この資料を見させていただきましても痛感するところです。ただ,短大教育とはどういうものなのかということを考えたときに,本当にふさわしいのかどうなのかと思わされるものも散見されるわけで,そういう議論の中で,短大がそういう選択肢を選んでこなかったという実情があろうかと考えております。
 それから,3番目の高校生に対してオープンキャンパスや入試のときにどのようなアプローチをしているかという問題に関しましては,やや専門学校に対して不満な部分がありまして,私たちはやはり高等学校の教育を乱してはいけないということを大前提に考えますので,余りにも早い段階で合格者を出したり,高校生たちにアプローチすることに対して同義的なストップがかかるわけです。例えば専門学校展において,担当者から合否判定と見間違うような示唆が有ったり,2年を対象にした学生募集なども見られ,誠実に行っている短大が同列に比較されるのは疑問に思います。
【小林(浩)委員】  ありがとうございます。まさに先ほど申し上げた編入というところで申し上げても,専門学校からも大学に編入できるというふうになっておりまして,そうした面から見ると,先ほどの広告の面であっても,質の保証を専門学校にも求めていくところが必要な時期になってきているのではないかという気はしております。
【佐藤座長】  ありがとうございます。大野委員,どうぞ。
【大野委員】  ありがとうございました。私も同じページですが,御指摘のとおり前回私からも短期大学の弱みで確認をさせていただいたとおり,短期大学側としても専門学校との差別化が十分図られていないとか,きめ細かな教育と短期大学関係者は標ぼうしておりますけれども,具体的な決め手が足りなくて,伝わっていないということを改めて確認させていただきました。
 他方,機動的で柔軟なコース設置に関するところについてですけれども,そもそも設置基準が違いまして,設置に至るプロセスが,機動的にできるのか,大学としてのきちんとしたミッションに基づいて人材育成をどう考えるかというところの根本的な違いがあることと,あと,これは説明するのがなかなか難しいのですけれども,教養という,大学の中にはとっても大事な核になるものがございまして,これは卒業してすぐ役に立つかどうかは別として,長らく人生設計というか,人生を送っていく上で,自分の頭で考えたりだとか,いろんな場面に遭遇したときに,いろんな人と協調してやっていくときの基になるような力というのを大学教育というのは重視しているところが専門学校と大きく違っていて,ただ,これは高校生や保護者にはその設置基準の違いはなかなか分からないかもしれませんけれども,そういったところが随分違うのではないかというふうには思います。
【小林(浩)委員】  ありがとうございます。まさにそこが伝わってないところだと思いまして,ここにわざわざ図書館とかと書いたのは,図書館は専門学校にはありませんし,一生働く時代になってくると,そこで身に付けた教養とか勉強する,学習する習慣といったようなことなど,2年間で身に付いた知識,技術というのは,必ず陳腐化していきますし,メンテナンスが必要になってきますが,そのときに学習する習慣があるとか,そういったことが身に付いているというのをきちんとどうやって伝えていくか。どこも皆さんいい教育をやっているというふうに言われるのですが,そこの差が分からない。こういったところの教養の,多分年をとってきてから初めて教養の大切さが分かるという方もたくさんいらっしゃいますし,あるいは図書館で勉強する習慣ですとか,キャンパスで学ぶ価値みたいなものもきちんと伝えていくというのが重要なのではないかと思います。
【中山委員】  一般論ではないのですけれども,私たちの短大というのは,県立で50周年を3年前に済ませたような歴史がある短大でありまして,卒業生が県内にとどまって家庭を持ち,その子女がまた来るというようなケースも結構あります。
 ただ,学科が芸術系と人文系とに二つに分かれて,状況はかなり違います。例えば,今短大で美術,音楽をやっているところは,公立ではもう日本でうちだけになっておりまして,北海道から沖縄まで学生が来ます。一方,人文系は,やはり8割ぐらいは県内から学生が来るということで,かなり状況は異なりますが,どうやって学生たちを集めるかということは,我々自身も広報をやらなければいけない。ただ,誇大宣伝はできませんので,先ほどのお話ではないのですけれども,我々の活動を地域の新聞だとか,マスコミが取り上げてくれるというようなことで,「芸短はすごいね,こんなこともやっているの」と市民が言うような状況までなってきて,これが入学率にかなり影響を及ぼしているところがあります。
 だから,芸術大学の4年制に落ちたけれども,浪人すると大変なお金がかかるから,うちに来て,卒業した後,編入学しようというようなことで,最近は音楽大学でも編入学を認めているところがかなりありますので,そういうう回ルートで行くという学生も多い。学生がどういう目的でうちの音楽に来るのかということを注意深くリサーチして,それに合ったような教育体系をきちんと作っていくというようなことを,この五,六年,私が着任して以来やってきたことが,定員割れを起こさずにきちんと学生が集まっている理由になっているのではなかろうかと思っております。
【小林(雅)委員】  ありがとうございました。非常にいいデータで,いろんなことが確認できました。特に短大と大学,専門学校の相違というのが,大体思っていたとおりのところと,まだ違うところもあるのですが,特に大学と専門学校を比べますと,進学費用に関心が高いとか,進路変更について大学から変わっていくというのは,短大の方が多いというのは,これは初めて見たデータで,専門学校はもともと専門学校志向が強いというところで,短期大学の場合と少し違うというのが具体的に確認できました。
 一つ御質問は,4ページ目に進学先を選ぶ際に重視する項目は何かということで,先ほど御説明があったのですけれども,2番目のところで,「資格取得が有利である」というのが,短大の方が専門学校よりわずかですが高い。短大も資格志向が強いというのは言われているわけですけれども,私は専門学校の方がずっと強いかなと思っていたら,意外と短大が強いということで驚きでした。
 それに関連して,14ページ目ですが,仕事に直結する資格として,保育・幼児教育,医療技術関係を中心にということで資格のことが書かれているのですが,「短大で取得可能で,社会ニーズを満たし,仕事に直結する資格は「保育」しかないのか」という,これがよく分からなくて,では,上の医療技術とかは何ですかということになるのが一つ。
 もう一つ,これはまた事務局にお願いですが,私,それこそ高校生の保護者にはもうなれないのですけれども,孫の保護者ぐらいにはなれると思っていますが,では,短大で取れる資格とは何かという一覧が全然ない。あるいは専門学校でも結構ですけれども,どうも資格の中身が,重なっている部分も多いのですけれども,かなり違う者も多いのではないかと思います。そのあたりを整理していただければと思います。
【小林(浩)委員】  ありがとうございます。
 あえて「保育」と言い切ってしまったのは,今,短大さんを回ってみて,集まっているのは保育がほとんどというところに残念ながらなっていまして,看護系の専門学校がないエリアですと,看護系も非常に集まっているのですが,3ページ目にシェアのグラフを出しましたけれども,途中若干保健というのが伸びたのですが,13年はちょっと下がってきていたりとか,ここら辺が盤石で伸びているわけではないというところで,幼児教育は結構盤石で伸びていますので,そういった形で言わせていただきました。
 あと,保護者のところで言うと,実は先ほど申し上げたとおり,進路変更に関する保護者の影響は,短大に進む学生は結構影響が大きいと思っています。ちょうど今の親の世代が短大のピーク世代なんですね。ですので,今きちんと短大の価値を打ち出すというのが非常に重要ではないか。そうしないと,また何年かたちますと,親の世代が短大でなくなってくるということですので,今のうちにいろんなことをきちんとやっていくことが必要ではないかと私は思いました。
【佐藤座長】  ありがとうございます。もっともっと掘り下げたいところですけれども,豊富なデータと核心を突いた問題提起がありますので,またいずれこのお話は是非このワーキンググループで取り上げさせていただきたいと思っています。
 なお,言わずもがなですけれども,最後に小林浩委員がもう一回取り上げた3ページ目ですが,教育というのが一番多い。御指摘の14ページで保育しかないのかと書いていますけれども,文科省の学校基本調査で分類したこの3ページの教育というのは,実は学校教育法による教育,つまり,幼稚園の教諭だけではなくて,社会福祉施設としての保育士もこの中に包含されております。ということで,幼児教育,保育しかないのかということになるのではないかと思っております。
 これを指摘いたしましたのは,次に発表していただきます小杉委員の場合には,厚労省の統計ですので,保育士というのが福祉の方で現れてくる。この辺のところも混同ないようにデータを読まなくちゃいけないなと,言わずもがなですけれども,御指摘申し上げました。ありがとうございました。
 それでは,時間の関係で次のプレゼンテーションに移りたいと思います。「短期大学卒業者の就業状況について」,小杉委員,よろしくお願いいたします。
【小杉委員】  では,私からは厚労省系の統計から何が分かるかということで,主に統計から見えたことを整理するということをさせていただきたいと思います。あわせて,私どものやった調査の中でも,一部短期大学を取り出すことができるものがありましたので,それを加えまして,少し労働市場,ないし卒業者の方から見た短期大学の特徴を整理してみようかと思います。
 最初のページに注を書きました。いわゆる一般的な統計で短期大学卒業者だけを取り出すということはまずありません。最近の統計で,専門学校とは切り離して短大・高専という枠組みだけで取れるものは幾つかあります。多くの場合は,短大・高専というのはもともとあったのですが,それに専門学校ができてから,専門学校を設計上,2年制から4年制以下の専門学校は,短大・高専の枠に入れるという調査記入上の注意がついていまして,大抵の場合には専門学校・短大・高専は全部一つの枠に入った統計になります。ということで,なかなか短大だけというわけにはいかないことが一つあります。
 それから,短大・高専という枠組みで見たときに,短大は圧倒的に女性が多くて,高専は圧倒的に男性が多いという学校群です。今回,私は女性ということに注目した統計の整理の仕方をしています。その方が少しでも短大の問題がきれいに見えるかなということで,女性短大卒というのに注目したデータの整理だと思ってください。
 開けていただきまして,最初に「労働市場における短大卒業者」ということで,いろんな統計から整理してみました。あと,幾つかちょっと面白いなと思ったことがあったので,この三つの点は付録的にお話しさせていただきたいと思います。
 まず3ページ目,一般的な話なのですが,これは今小林委員からありました女性の労働市場がどう変わっているかという話です。まさにおっしゃったとおりなのですが,それをグラフにしています。労働力率という言い方をしていますが,労働市場に参加している割合です。これは女性の働き方がよくM字型カーブというふうに言われてきました。つまり,出産して子供が小さい時期は仕事に出ないという形,かつて短大卒の女性の多くの場合,お嫁さん候補という話がございましたけれども,早く労働市場から退出して,後々また戻ってくることはあるかもしれないという,そういう生き方が,モデルというような見方をされていたことがあるのですが,現在,M字型も底が上がると申しますが,80年代には,子供を産んで小さい幼児がいるような年齢層の女性たちが労働市場に出ている比率はせいぜい半分だったのですが,現在では,まず底という年齢が随分高くなっていますし,その大体7割が労働市場に出ている。これだけ女性の社会進出,労働市場への進出が非常に進んでいるという現状があります。
 これを学歴別に見たのが図の2です。学歴別に言いますと,学生が外されるので,若いところの労働力率はぐんと高くなるのですが,そこはちょっと置いておきまして,学校種別に見たとき,赤の短大・高専・専門学校,高校プラス2年ぐらいの教育課程を出た人たちの労働力率を見ましても,一番底が70%というところです。これだけ多くの人たちがまず労働市場にいて,そして子育て期,子供の小さい時期も労働市場にいる,つまり,これだけ女性というものの生き方の中に労働の意味が非常に大きくなっています。短大教育における職業教育の意味がかなり大きくなっているのが現状だと思います。かつてのように,ある意味で人生のための教養というところも非常に重要ですが,この実際の労働市場を考えたときには,職業教育的な側面というのをなくしては語れない状態だろうと思います。
 次のページでは多くが労働市場に出るという前提の上で,では,労働市場の中での短大卒というのはどういう位置付けなのかということを考えたいと思います。
 労働市場の状況を見るときに,一番多く使われるのが,この失業率という統計です。図の3になります。失業率というのは,すぐ仕事につけて仕事をしたいと思って仕事を探しているけれども,仕事が見つからない人というのが失業者の意味です。失業率の統計,これは男女全体の計でトレンドを示しております。失業率は景気のバロメーターですので景気変動で大きく変わるのですが,2000年代の特徴的な傾向として,学歴間格差が非常にクリアになっているということがあります。2000年以前は,実は4年制大学以上だけがちょっと低くて,ほかは余り変わらないという状態だったのですが,2000年代になってから,いわゆる高校までの学歴の方と大学卒の学歴の間ぐらいに短大・高専・専門卒の失業率が位置するようになっています。労働市場の需要ということになりますけれども,高等教育卒業者の方に需要が偏ってくるという傾向がありますが,その中で学歴の違い,高校卒業で労働市場に出るのとは違うということが,2年プラスアルファの教育を受けたことの意味になってくると思います。
 これを今テーマにしております女性の若い層に限定したものが次の図の4です。これは15歳から24歳と25歳から34歳,二つの図にしておりますけれども,ここで女性の若い層だけに限ってみると,まず15歳から24歳層は,ほとんど4大と短大の違いがないということ。もうちょっと上の25歳から34歳でも大きな違いはなくて,高校卒業までの段階で就職するか,高等教育,2年制であれ,4年制であれ進学するかということの違いの方が女性の若い層で大きくなっている。それだけ高等教育の意味が女性の方が大きいということが言えるのではないかと思います。
 こういう市場の中で,先ほど出た職種の話です。どういう仕事に就いているのかというところが,同じ高等教育卒業者の中でも学校種によってかなり違いがあるということを示したのが図の5です。図の5は,若い層に限ったわけではなく,女性の各学校教育卒業者全体の傾向を見たものです。真ん中が短大・高専卒ということで,この調査は就業構造基本調査というものですが,これはすごく大規模なもので,この調査では専門学校と短大・高専が分かれて統計でとられています。
 これで見ると,非常にはっきりしているのは,看護・准看護といった領域は,圧倒的に専門学校卒が多い。事務職へは4年制大学と短大卒と大体同じぐらい比率で就いています。そして,専門技術職の比率は,4大卒の方が多くて,短大の場合には,販売やその他の方が比較的多くなるという学校種の違いが出てきます。
 短大卒は,専門系の職種の人よりも事務職が多いという状態ではあるのですが,次のページに行っていただきまして,その短大卒業者を年齢段階別に分解してみたものです。こうして見ると,紫色の事務職中心というのは,これは実は30歳後半以降,今から15年とか20年前に短大を卒業した人たちなんです。こういう人たちの場合には事務職が圧倒的に多いわけなのですが,若い世代ほど事務職比率が減って,そして,左側の専門技術系の人たちが圧倒的に多くなってくる。この茶色に示した社会福祉専門職,これはほとんどが保育士を示しています。
 それから,緑色の教員もほとんどが幼稚園教諭,この辺の専門技術職の中でも幼児教育関係の専門職という人が,やはり現在の若い短大卒の女性にとってメインの職種領域というふうになってくるのだと思います。これだけ短大の方の教育が変わってきたということでもあります。
 次に,今労働市場では,この職種との話と同時に,非正規という問題があります。雇用形態としての非正規というのは,図7に若い世代の非正規比率を出しましたけれども,80年代までは,15歳から24歳,つまり,学校を卒業してすぐの人たちというのはほとんど正社員だったわけですが,それが90年代初めから2000年にかけて一気に非正規比率が高まっています。20代後半から30代にかけても全体に非正規比率が高い方向に変わってきています。女性の25から34歳層というのは,いわゆる結婚して主婦でパートという方も含まれているので,もともと高かったのですが,それ以上に今は上がっていて,2000年代に入ってから女性の4割,男性の20代前半ですと3割ぐらいが非正規という状態がここずっとつづいているわけです。
 この非正規問題というのは,社会的な課題としていろいろ言われています。一般には,まず収入が伸びないこと。そして収入が伸びないために結婚ができず少子化の要因になっている。あるいは社会保障から漏れがちであって,非正規のままでは不安定な状態が続くこと。そして非正規であると能力開発の機会がないというような様々な形で非正規雇用にとどまることの課題というのが指摘されているところです。
 図8でこの非正規比率をやはり失業率と同じように若い女性を学歴別に見て示しました。これも失業率とかなり近いグラフであることがお分かりになると思います。やはり高校卒業までの方の非正規比率が非常に高いのに対して,4大,短大ともに余り変わらない比率で非正規比率は相対的に低い。ただ,25歳から34歳になると,短大と4大の間の差が出てきて,4大の方がより非正規比率が低い,こういう関係が見えてきます。
 全体として労働市場,若い人たち,特に若い女性の労働市場というのが学歴の要因が大きくなって,安定的な仕事というのはより高等教育を受ける必要が出てきて,それが多分専門職などにも反映されていると思いますが,そういうところにより安定的なものがあるという形になってきているのだと思います。
 さて,今の非正規の話をもっと詳しく見たのが次の8ページ目です。これはやはり就業構造基本調査という先ほどの非常に大規模な調査で,短大だけを取り出すことができます。かつそれを年齢別にできますし,職種別にも見られます。専門学校,短大,大学を比較してみますと,実は短大卒というのは,非正規比率がこの中では高いです。ただ,年齢別に分解していきますと,やはり若い層の非正規比率は比較的低くて,年齢が高い層,40代,50代の非正規比率が高いので,むしろ40代,50代の場合には家庭を重視した働き方をした非正規という選択という面があると思います。
 これを更に職種別に展開しましたのが右側です。今増えております専門技術系の職業の中でも,実は大学や専門学校に比べて短大卒の場合の専門技術職,保育や幼稚園教員が中心ですが,この場合の非正規比率は高いんですね。ただ,これもやっぱり年齢で分解しますと,かなり違いまして,大学出てすぐ,短大出てすぐぐらいのときの非正規比率は非常に低くて,8割方が正社員であるわけですが,後半になってきて40代あたりの非正規というのは,むしろ選択なのかもしれません。家庭を重視した働き方をする中で,専門技術を生かして短時間の勤務をするというような選択ということも考えられます。
 一方,そのほかの職種についても,4大卒とは違いがあって,4大卒に比べてやはり非正規比率が高いというのが専門学校と短大の両方の特徴です。サービスや販売では,若い世代でも非正規比率が高く,これは職種の特徴でもありますが,高等教育を卒業したということのメリットがある意味で生かされていない可能性が高いというふうに思われます。
 さて,これらの統計というのは,その時点のものなのです,今推測として20代の初めの人たちは,多分最初は正社員で入っていて,だから,若い人たちは正社員比率が高くて,30代後半,40代の場合には,むしろ選択で,一旦家庭に入った人たちが非正規で労働市場に出ている可能性があるというふうに申し上げましたが,それはここでは推測でしかありません。
 そこで,私どもがやった調査があります。基礎統計のような大規模なものではございませんけれども,少し傾向が分かるので,紹介させていただきたいと思います。図9と図10ですが,この調査は,政令指定都市と東京都に住んでいる25歳から45歳層をエリアサンプリングという手法で選びまして,これまでの職業キャリアについて,20歳の頃はこうで,25歳の頃はこうでという形でそれぞれについて聞いて,それを類型化したものです。紫色で示したのが,現在非正規で働いている人たちですが,紫色の濃い方は,一度は正社員や自営,家業など,非正規ではない働き方をしたことがある人たちです。それに対して薄い方は,非正規と無業しか経験していないというタイプで,今一番問題になっている,労働市場の中でかなり恵まれないという状態で,キャリアが築けない人たちというふうに考えられているところです。
 この人たちの比率というのは,やはりこれも学歴によって差があるのですが,短大卒の人たちを年齢別に展開して見たものが下の図です。この調査は25歳からしかとっていませんが,この33というのは34の間違いですが,30代,40代で非正規の働き方をしている短大卒の方は,圧倒的に紫一面に塗りつぶされた一旦は正社員になった人たちだということが分かります。選択としての短時間勤務などの非正規である可能性が考えられます。ということで,一番課題である若い時期の,経験が積めない非正規とはちょっと違う可能性があるということは指摘できるところかと思います。
 そこまでが働き方,正規・非正規,職種についてですが,次のページで,もう一つ働き方の統計でよく見られる指標の一つが賃金です。賃金についても,学歴別の賃金の比較ができるのですが,やはりこれも短大・高専・専門学校まで全部まとまった統計でしかとれません。図11の統計は何かといいますと,高卒の方を100としたときの高等教育卒業者の賃金の違いを見ています。それを年齢別に見ているということなのですけれども,凡例がついてなくて申し訳ないのですが,青が20歳から24歳です。その次の赤が25歳から29歳です。そして緑が30歳から34歳です。例えば短大・高専卒女性の90年代初めあたりは20歳から24歳で106ぐらいになっています。高卒の方の同じ年齢層の賃金が100だとして,ちょっと高い。20代後半になると差が大きくなって,年齢が高まるほど学歴間格差は大きくなるということなのですが,これを経年で見ていきますと,90年代の後半から2000年代の初めにかけて,青とか赤のグラフは右肩上がりになっていることが分かります。この時期に学歴間格差が高まった。失業率でも女性の場合の高卒との違いが大きくなったと話しましたが,まさにこの辺のところで高等教育卒業者,短大卒者の賃金水準がかなり高卒と比べれば高まる,より労働市場で高く評価されるという方向に変わっていったということが分かります。30代になりますと,それほど変化はありませんが,少しその後の,この層が年が上になるとグラフがちょっとずれるんですね,2000年代後半になってから少し右肩上がりの状況が見えます。
 これに対して4大卒は,実はもともとかなり賃金格差がありました。90年代初めから100に対して120ぐらいです。全体として若い層は少し右肩上がりですが,それほど大きな違いはないのですが,特に短大卒の場合の賃金の状態が,先ほど失業率でも次第に4大寄りになっていく過程がありましたが,この賃金でもそういうことが言えて,そこに職種構成の違いなども多分いろいろ入っているのですが,労働市場の評価の全体としてはより高等教育を受けたことがより評価される,そういう方向に変わっているということが言えると思います。これが市場側から見た全体的な評価ということです。
 この後は,ちょっと付録で付けさせてもらった,そのほかの要素です。
 一つが能力開発です。就業構造基本調査の中には,過去1年間に能力開発を実施したかどうかを個人に聞く形の調査項目が入っています。勤め先による職業訓練を受けたか,あるいは自発的に,自己啓発という言い方をしていますが,自発的に能力開発を行ったかということです。
 これに注目したのはなぜかというと,先ほどジェネリック・スキルの話がありましたが,まさにその一つのジェネリック・スキルが自ら学ぶ,下に中教審答申の「生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ」という報告書名が出ていますけれども,こういう生涯学び続ける,まさに変動の大きな社会の中で就業機会を得ていくために,あるいは就業でより能力を発揮していくためには,やはり能力開発を自らするということ,これが非常に大事であるということが,現在大学教育の中でも盛んに言われているところです。
 では,その能力開発を実際に卒業者たちはしているのかというのを見たものがこれです。勤め先による職業訓練というのは,それ以外の要素があるので外しますが,特に注目したいのは自発的な能力開発です。これは15歳以上の全ての人が入っていますので,就業していない人たちも入っている数字ではありますが,自発的に職業能力開発を行った者の比率が,高等教育卒業者の方が高いことは間違いないのですが,その高等教育の三つの種類の中で比べると,4年制大学が一番高いです。これはどの年齢段階でも4年制大学が高くなります。その次ですが,専門学校と短大・高専,これは女性なので,まず短大を比べますと,専門学校より短大の方が能力開発実施率が低くなっています。
 先ほど教養の話があって,教養のメリットはこの生涯学び続ける力だという話がありますが,それが果たしてこの段階ではまだ開発されていないといいますか,能力開発するかしないかというのは,仕事に就いているか就いていないかにすごく大きな影響がありますし,それがフルタイムの仕事であるか,パートタイムの仕事であるかですごく違いがあります。パートタイムの仕事が多いということが,かなりマイナスの面になっている可能性があります。
 あるいは,職種が専門職の場合には,専門技術職は非常に能力開発をよくしますが,販売職とか事務職の場合にはその比率がかなり低くなりますので,そういう職種の違いとか,いろんな要素があるのですが,ざっと見て,学歴だけで比較すると,決して短大卒の方が教養をやっているから違うのだという理屈が通らない可能性があります。
 ただし,次のページを見ていただきたいのですが,これは先ほど私が使いました私どもでやった調査です。全国4,000人ぐらいの人たちのうち,女性が半分で2,000人ぐらいなのですが,その女性の人たちの中で,短大を卒業した人と4大を卒業した人をとりまして,大学や短大の教育で「どんな教育が充実していましたか」と振り返りで聞いてみたものです。ここで何を見たいかというと,これは年齢別にとっています。折れ線グラフがどれだけ変化しているかを私は注目したいと思っています。
 4大の折れ線グラフは,なかなか変化しません。変化しているのは,学外での体験,インターンシップ等の充実度で,これはかなり変わっています。4大はかなりこの面では変わったのですけれども,大きな変化というのは,隣の短大に比べると,変化が非常に遅いといいますか,なかなか変わっていません。これに比べて短大の方のグラフは,明らかに青の若い層が高くて,紫色の古い時代に大学を卒業した層の評価が低いということが言えると思います。
 何が言いたいかというと,やはりインターンシップのほかに「学生の発表や質疑の機会が多い授業」や,「データや資料の分析・収集方法について学ぶ授業」,「グループでの作業やディスカッションが多い授業」,「学生自身で課題をみつけて調査・研究をする授業」,いわゆる先ほどの中教審答申の中にあったアクティブ・ラーニング,まさにジェネリック・スキルを高めるためにはこういう教育が重要だろうと思われた教育については,やっぱり短大がフロントランナーだなということは間違いなく言えると思います。卒業生が明らかにそれは評価しています。そういう変化が起こったことは確かです。ただ,その変化と,今アウトプットとして実際に学んでいるかというと,ここのところの関連はまだ十分に分析ができないわけですけれども,そこのところはまだ出てこないのかもしれない。ただ,今大学教育が目指している変化の方向に対して,実際に変化していると卒業生が感じているのは,短大教育の方であるということです。
 実はこれは専門学校についても同じようにとれます。専門学校も4大に比べれば明らかに変化していますが,もともとのこのカーブが全く違う形をしていますので,つまり,サークルや部活が全くないとか,そういう違いがありますのであえて出していませんけれども,一番遅いのが4年制大学ということは間違いありません。
 ということで,能力開発という角度から見て,短大の努力がだんだん実ってきているけれども,それが成果としてアウトプットというところまで証明できるかというと,そこのところはまだかなという,これが今の状態です。
 最後にもう一つ付録で付けさせていただいたのは,これは先ほどの地域の話にちょっと関係があるのですけれども,学校から見たものではなくて,これは事業所から見た調査です。その中で新卒,この調査は2012年なので,2012年に学校を卒業した人たちをどのぐらい採用したか事業所に聞いた調査です。こういう事業所調査をして,これは女性だけをとっていますが,どういう学校種の人たちを採用したかというので,黄色い部分は,4年制大学と短大の間に差が小さい,あるいは逆転している地方です。つまり,その地方の事業所にとって短大がどれだけ重要な人材供給源になっているかということを示しています。特に,過疎化ということが問題になっている地域では,かなり黄色いマークがついているところが多いということです。今の短大の重要性を考えるときには,事業所側からみて,ほかの学校種と併せて全体の労働力供給源としてどれだけ役割を果たしているか,そういう視点から議論することも大事かなと思ってあえて付けました。
 以上,何かの提言というよりは,今労働関係の統計から分かるということをお示ししました。以上です。
【佐藤座長】  ありがとうございました。大変豊富な,いろいろな角度から見ていただきましてありがとうございました。
 やや時間が押しておりますけれども,ただいまの発表につきまして何か御質問,御意見,お気付きの点等はいかがでしょうか。小林浩委員,どうぞ。
【小林(浩)委員】  ありがとうございました。大変参考になりました。
 10ページで賃金の上昇が見られるというようなお話がありました。左側の短大・高専・専門学校卒の25歳から29歳の赤のグラフが2000年以降急激アップしている,これは先ほど職種が変わった可能性がというお話をされていましたが,ここに何が起きたのか,職種が変わったのか,産業構造が変わったのか,急に短大が評価されたのか,何が変わったのかが分かれば教えていただければと思います。
【小杉委員】  これ以上のデータ分析はしていないので分からないのですが,私が推測しているのは,図6で見ました,これは平成24年段階での職業構造ですが,これがかなり10歳期の間に違っていますね。つまり,事務系の職種の比率がだんだん4大卒の方に移っていくというようなことの中で,より短大が専門技術系,保育士を中心とするような専門職系に比重を高めている,この辺の要因かなというふうに思っています。
【佐藤座長】  ほかにいかがでしょうか。滝川委員,どうぞ。
【滝川委員】  11ページの表について,重ねた質問になるかもしれませんが,このNは働いている人だけではなくて全ての女性ということになるわけですか。
【小杉委員】  はい。
【滝川委員】  そうすると,例えば先ほど御指摘があったように短大・高専の30歳以降のところ,17.8とか17.5とか19.9,これが専門学校より低いという御指摘だったんですけれども,ここは例えば職業に就いていなくて家庭に入っている人たちもこの中に入るということなんですね。そうすると,そういう可能性を考慮した,分析はできていないということなんでしょうか。
【小杉委員】  これは公表されている統計なので,こういう形でしか出てないんですね。職業に就いているか就いていないかも含めて教育歴で分析できるデータは,今のところ,外に出されていないので,それは分からないので,これでしかありません。ただ,この年齢層の労働力率は,ほとんど学歴による差が小さいので,仕事に就いているか就いていないかをコントロールすれば差がなくなるのではないかというのは,ちょっとそれは分かりません。労働力率,先ほど見たものでも専門学校と短大を分けて出てないので,ひょっとしたら,それが分けられれば違うものが出てくるかもしれません。今分かる範囲ではこれしか分からないということです。
【滝川委員】  分かりました。そうしましたら,私が申し上げたかったのは,まだ短期大学の学生たちの中には,資格を取って就職をするだけではなく,結婚をして家庭に入ろうとする層はないわけではなくて,そうした層が数字を下げている可能性もあると考えてよろしいですね。
【小杉委員】  はい,それはもうここに出ている数字だけなので,この年齢層の全ての女性だということです。
【滝川委員】  分かりました。
【小林(雅)委員】  10ページの賃金のことで,質問というか,コメントに近いのですけれども,これまで日本で言われてきたことは,女子の大卒の収益率の方が短大収益率よりも高かったわけです。ですから,大学に行くことは経済合理的な行動であるということが言われてきたのですけれども,この小杉委員の,若年層だけなのですけれども,これだけ短期高等教育卒の賃金が上がってくるということになると,それに対して違う行動がとられる可能性があるということになると思うのですが,それについてこれだけのデータでなかなか言えないと思うのですけれども,もし何かコメントがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
【小杉委員】  やはりこれだけのデータでは言えないというところなのですが,賃金という話だけではなくて,失業率,非正規比率というようなところを見ていきますと,若年層の,特に大学を出たてぐらいのところまでの範囲ではほとんど差がなくなってくる感じがあるので,そこはあるだろうと思います。ただ,20代後半以降になると,やはり2年の高等教育と4年の高等教育で差が出てくるので,若い層では縮まっているかもしれないけれども,上の方ではそうでもないかなという感じがしています。
【佐藤座長】  多分まだまだお聞きになりたいこと,議論したいことが多かろうと思いますが,今日は,恐らく私どもの議論の中で初めて労働力としての短期大学卒業生ということをクローズアップしていただきました。また追ってこのことを話題にしたいと思います。きょうはこの辺で次の話題に移りたいと思います。小杉委員,ありがとうございました。
 それでは,3番目,各専門的職業能力育成の共通性につきまして,文部科学省の委託調査研究成果に基づきまして,事務局から説明願います。
【田頭大学振興課長補佐】  御説明申し上げます。この御説明は,むしろ御提案というか,御意見を賜りたいというようなことになるわけですけれども,今回御説明させていただきます資料5-1,資料5-2でございますけれども,この資料5-2の方でございますが,これは「短期大学における今後の役割・機能に関する調査研究」ということで,前回ジェネリック・スキルについての調査の結果について御説明させていただいたところでございますけれども,今回は専門的職業能力育成についてということです。本来この調査研究業務委託事業につきましては,各専門分野についてのモデル・コアカリキュラムの可能性,モデル・コアカリキュラムを作ることによってどんな可能性が生じるかというところを委託事業で研究していただきたいというところがございましたので,今回はそういったベースで御提案的な形になるのですが,御説明させていただきたいと思います。
 まず資料5-1でございます。「短期大学における各専門的職業能力育成の共通性について」(モデル・コアカリキュラムの可能性について)というふうに示しております。
 1番でございます。「短期大学が強みとしてきた職業分野教育の質の共有について」ということでございます。
 (1)短期大学は特に競争力を有し,社会に多く輩出している分野,例えば幼児教育,保育,看護,栄養学などについては,その職務内容や責務は,地域等の職場環境の違いはあっても,専門的職業人として備えるべき要件は共通している。
 (2)短期大学間での教育内容の共有は,これまで,学会等による教員間の情報の共有であったり,それぞれの就職先からの要望に共通するものがあったり,あるいは汎用的な研究書や事例などから,それぞれの短期大学が伝統的に工夫しつつも,結果的に類似した形でプログラム化され,学生への教育に共通した形で提供されてきたのではなかろうか。
 (3)一部の地域では,こうした共通した専門分野について,短期大学間で連携し,共通の問題点等についてこれを共有し,それぞれの大学において教育内容の改善に利用してきたものと思われます。
 そこで,専門性の非常に高い職業についての能力育成について,このモデル・コアカリキュラムの可能性について,この際どうであろうかということでございます。
 資料5-2でございますが,例えばということで,「短期大学における専門的職業能力育成の特徴例」ということで調査委託いたしました結果について少し御説明させていただきたいと思います。
 1番は,「幼児教育の傾向」というふうにしております。この調査におきましては,幼児教育のみならず,保育,介護福祉,ビジネス実務等についてもこのような形で特徴について調査をしたわけでございますが,今回は時間がないこともございますので,幼児教育に特化して御説明させていただいて,そのモデル・コアカリキュラムの可能性について御審議いただければと思っております。
 まず調査の方法ですが,これは必要な能力の整理につきまして,短期大学と就職先であります幼稚園の双方に同じ質問をしておるわけでございますけれども,質問事項といたしましては七つの質問項目を設けまして,1番目に幼稚園教諭としての資質能力,2番目に総合的指導力,3番目に個別的・具体的保育知識・実践力,4番目に保護者・地域との関わり,5番目に園内における協働性・関係構築性,6番に専門的知識・技術,7番に子育て支援力というような形で調査をしたわけでございます。
 その中でこういった資質,教育の内容について5段階に分けまして,「非常に重視している」というのが5,「全く重視していない」というのを1,「標準的である」のを3ということで,5から4にしたわけでございます。
 この1項目から7項目につきまして少し説明させていただきますと,例えば1番目の「幼稚園教諭としての資質能力」というところでございますけれども,アンダーラインを中心に説明させていただきますと,「短期大学が重視している能力」というところでは,「子供に対する信頼と責任感」というようなところが非常に高いところがございまして,一方,幼稚園の現場からいきますと,卒業直後に獲得が期待される「卒業直後の短期大学生に期待している能力」というところでいきますと,「子供に対する信頼と責任感」「組織の一員としての自覚・責任感・協働性」が非常に高いというところがございます。
 さらに,就職現場の方からは,「採用後3年から4年後に期待される能力」というところにつきましては,今申し上げましたような「子供に対する信頼と責任感」「組織の一員としての自覚・責任感・協働性」というのが非常に高いわけなのですが,それに加えまして,「危機管理能力」「保育現場でのコミュニケーション能力,提案力」といったところが全体的に高くなってくるという傾向がございます。
 次のページでございます。同じように「総合的指導力」というふうなところで確認いたしましても,例えば短期大学側から言いますと,「子供の心情を思いやり共感する力」であるとか,「自ら指導計画を立てる力」「保育環境全体を構成する力」というのが非常に高いというところがございますけれども,職場側からいきますと,採用して直後の場合では,「子供の心情を思いやり共感する力」ということで,これは共通しているわけでございます。これは採用後,3~4年後の方に期待するものといたしましても非常に高いわけですが,全体といたしまして一番低い「障害児・特別支援を必要とする子供への対応力」が3.98ということで非常に高い傾向がございます。
 次に,「個別的・具体的保育知識・実践力」といったところでございまして,これは2ページと3ページでございますけれども,例えばこれは非常に特徴的なところがございまして,短期大学の方では,「ピアノ技術」「豊かな表現力」「絵画造形能力」といったところが重要であるとしているわけでございますけれども,採用側の方といたしましては,採用して直後の短期大学生に対しては,いずれもそれほど重要であるというふうにはしておらず,むしろ3年から4年後のところでほとんど全ての多くの能力について期待をしているというようなところがございます。
 3ページのグラフ1-3を見ていただきたいと思いますけれども,点線で輪を示しておりますけれども,赤い輪のところは「短大で重視されているが,現場ではそれほど重視されていない」というようなもの,青いところにつきましては「短大でそれほど重視されておらず,しかしながら現場では非常に重視している」というような,こういった形で非常に顕著に見られるわけでございます。
 同じように,これは4ページ,「保護者・地域との関わり」,それから5番目の「園内における協働性,関係構築性」,6番の「専門的知識・技術」,7番の「子育て支援」それぞれにつきまして,それぞれの傾向を調べていくことができますと,6ページからになりますけれども,モデル・コアカリキュラムの試行ということになるわけでございますけれども,もともとこの調査をやるに当たりましては,平成14年の報告書の中で,幼稚園教員の資質向上ということで,その専門性については9点挙げております。1番から9番でありますけれども,例えば幼稚園教員としての資質ですとか,幼児理解・総合的に指導する力,こういったものが必要であるとしたわけでございますけれども,先ほどの七つの分野と加えまして,これを五つの専門的能力の領域に設定した場合に,下の方に黒い丸がございますけれども,1番から5番というふうな分類で分けられるのではないかということで,こういった形のものが7ページにございますモデル・コアカリキュラムという形で整理ができるのではないかというところでございます。
 ただし,モデル・コアカリキュラムと申し上げましても,全ての大学が同じことをするということではありませんで,この図にございますように,モデル・カリキュラムをベースにいたしまして,しかしながら,各短期大学は独自に設定するカリキュラムというものもしっかりと特徴を出していくところが必要でございまして,それぞれの項目に対して各大学が独自に設定する能力を作っていく形が必要なのではないかということで,この調査は結んでいるわけでございます。
 8ページ以降につきましては,それぞれの項目につきまして一般目標ということで,これはその領域全体の達成目標であり,到達目標としておりますのは,短期大学の卒業時点で達成しなければならない目標でございます。
 また資料5-1に戻らせていただきますけれども,このような形でモデル・コアカリキュラムの可能性が見いだされるわけでございますけれども,2の(1)でございますが,学生に提供する2年間のカリキュラム策定には,各教員の多くの労力が求められるわけでございます。実際には,こうした労力が教員個々の教育スキル向上につながることは言うまでもないわけでございますが,ただ,小規模で限りある各短期大学の教育資源,これは教員の数ですとか教材,それから施設などでございますが,これらが効率よく機能し,また,その質を保つために個々に短期大学教員がそれぞれの努力のみによってカリキュラムを模索していくことが,果たして最適と言えるのかということでございます。
 2番目でございますけれども,短期大学間が連携し,また多様なステークホルダー,これは就職先ですとか,あるいは地域,行政なども含めてですけれども,こういった要望を短期大学全体で受け取り,あるいはこういったステークホルダーの参画を得て反映させることで,実践的かつ信頼性を確保した各大学のカリキュラム策定が可能となるようなモデル作りというのが必要ではなかろうかということでございます。
 3番目でございますけれども,こうした特定分野に関して専門的な職業能力の共通の教育内容についてのモデル・コアカリキュラムの策定というのは,どのように短期大学間の教育の質の確保に有為であるかということ,その場合に必要とされる条件や問題点,モデル・コアカリキュラムによる様々な可能性について整理をしてみたいということで,このあたりについて委員の先生方から御意見をいただければと思います。
 説明は以上でございます。
【佐藤座長】  ありがとうございました。
 これまた膨大な調査の中の一つをピックアップして,大変要領よく説明していただきました。ただいまの説明に対しまして質問や御意見はいかがでしょうか。大野委員,どうぞ。
【大野委員】  ありがとうございました。短期大学振興対策特別委員会の中でも,前回議論の抜粋ということで御紹介をさせていただきましたが,コミュニティ・カレッジの日本版ということで,特に今御紹介いただいたモデル・コアカリキュラムの可能性については学修成果を明確にして,短大が一丸となって養成された,卒業した人材はこういった力を備えていると。先ほどお話があったように世の中に分かりやすく発信していくことが必要ではないかということで議論されておりますので,方向としては大変大事であると思ってございます。
【滝川委員】  私も今の特別委員会の内容についての話をちょっと補足させていただきたいと思います。今のモデル・コアカリキュラムの可能性についての御説明は,一つの分野の専門のことについての話が中心だったのですけれども,広い分野が短期大学の中にもありますので,別の切り口から御説明したいと思います。私はこれまでの2回の会議の中で四つの論点の話をしてきました。一つは質保証を内在しているということ,それから教育プログラムが短大の中には存在しているということ,それから地域貢献がその中にある,短大としてやっている,地域連携をやっているということ,それから,将来性の展開として,国際通用性だとか,ファーストステージといったものが考えられるというような話を申し上げてきたわけなのですけれども,そういったことを,今後全ての短期大学が地域との連携があるのなら,こういうことは最低限やらなければいけないよというようなベーシックなコアカリキュラムみたいなものを備えていくことが方向性としては一つ考えられると思います。
 もう少し具体的なイメージで申し上げますと,短期大学の上に更にハイヤーなエデュケーションのグループを作って,そこは,今申し上げましたような教育のプログラム,質保証の件,地域貢献の件,国際通用性の件についての,そういう基準を満たしていれば,ハイヤーグループとして認めていく。その結果,徐々に短期大学の中でそういうグループが増えていくことによって,より一層地域との密着性が強まるとか,国際通用性が高まるとか,このような仕組みが短期大学の中に内包されていかないだろうかということを,今模索しているところでございます。
 具体的な項目を少し参考のために申し上げますと,例えば学位課程と非学位課程を有することによって地域の多様なニーズに応えられるプログラムを実現しているか否か,学校間の連携により多様なプログラムを実現しているか否か,自治体との連携が明確であるか否か,そうした具体的な実績があるか否か。それから,卒業生がコミュニティに貢献するなどの成果の還元をしているか否か,それから,認証機関による認証を受けているか否か,このようなことを基準としながらハイヤーグループといったものを形成することによって,地域の皆様のニーズに合ったものを提供していけるのではないかというようなことを模索していきたいと考えております。
【佐藤座長】  今の滝川委員のコメントの前段につきましては,実は,前回取り上げた分野横断・共通的目標の設定という話の中で,前回は時間の関係で割愛されていますけれども,実は「短期大学士課程の分野横断・共通的モデル・コアカリキュラムへの挑戦」ということで提言も出されたりしております。言ってみれば,4年制大学における学士力が中教審でしきりに議論されました。それでは,短期大学士は一体何なのかというような視点から,そちらの方にも挑戦しております。折がありましたら,また参考にしていただければと思います。
 最後に,こういうことについて,特に基準協会ですか,幾つかのクライテリアを設けて評価しようというのは。
【滝川委員】  イメージとしましては,コアカリキュラムや基準やらを私たちが独自で作っておくというのは,自画自賛になってしまいますので,学者の先生方とか企業の皆さんに入っていただきながら,そういうコアの基準を共に考えていく。そして,その評価につきましては,今私どもが認証を受けております基準協会で評価をしていくというのが,現実的なんだろうと思います。
【佐藤座長】  御案内のようにモデル・コアカリキュラムということにつきまして,学術分野でかなり進展している分野もあれば,まだしもというところもあって,様々でありますね。医学でしょうか,最も早くそれが確立されたとされているのは。それから歯学だとか薬学あたりがそれに追随していましょうか。獣医学もそうでしょうか。そんなところですが,今御紹介いただきましたのは短期大学が強いと最前から言われている幼児教育や保育に関して挑戦してみようという一つの試みであったと思います。
 私が余り多く話してはいけないのでしょうけれども,なぜこういうことにチャレンジしたかというと,例えば幼児教育であれば,教員養成課程としての課程認定を受けるために様々な基準が文科省から定められております。保育士につきましては,無論厚生労働省の指定規則によって細かく定められております。
 ただ問題は,そのような公の規則にのっとっていればそれでいいというところで満足していたのではいい教育にはつながらない。そこで,それを最低基準として,更に短期大学ならばどのような付加価値を付けることができるかを真剣に考えていこう。それが短期大学としてのモデル・コアカリキュラムであるというふうに位置付けて,しかも,大切なことは,これは今滝川委員の御指摘どおり,短期大学関係者だけのひとりよがりではなくて,様々なステークホルダーの参画を得て,むしろそういう人たちの共同作業でもってモデル・コアカリキュラムを作っていこう。そして,更にその先は,モデル・コアカリキュラムができれば,それにのっとっていればそれでよしとするのでは,これまたいけないのであって,そこに最終的にはそれぞれの短期大学ごとの味付けと申しましょうか,建学の精神や,その地域性やモデルリソースの特色を加えて,その短期大学独自の高い教育を目指そう,そういう呼びかけの一つであります。
 同様のことが保育士,介護福祉士,それから,ビジネス社会の方でも試みておりまして,これは一つの呼び水として,短期大学関係者並びにそれを受けてくださる受入れ側のステークホルダー,あるいは高等学校,あるいは教育情報産業の皆さん,多様な方々とこういうことが更に進められればいいなと望んでいるところでございます。
 余り座長が言ってはいけないことかもしれませんけれども,ほどよいときですので言及させていただきました。
 ほかに何かございますか。どうぞ。
【小林(信)委員】  モデル・カリキュラムとかいうのを初めて私は聞いたところなので,今座長のお話で話がよく見えてきたところでございます。ちょっとお伺いしたいのですけれども,今,モデル・カリキュラムのところで表がありましたけれども,7ページ,例えば今まで10代でいけば,9の点を五つにまとめてというようなお話ですけれども,それをモデル・カリキュラムとすると。そのほか,短大独自に設定するカリキュラムという欄があるのですけれども,ここの部分,業界の人間からすると,いろんなニーズというのを今まで聞いていただいてないわけですね,短期大学というのは。聞いていただいて,変えられる余地というのがどのぐらいあるのか。今,文科省さんの方でいろいろカリキュラム設定に当たって指定されていて,この部分はやらなければいけないですよという部分と,今後皆さんが共通的に各学科でモデル・カリキュラムでこれは設定しましょうということですが,先ほどの小杉委員の発言でも,多くの人間が職業人になるわけですから,産業界からこういうふうに変えてくれとか,例えば,これはまさに幼稚園なら幼稚園の現場の方の協会なり,いろんな団体の声としてこういうふうに変えてくれという余地というのがどのぐらいあるのか。
 ちょっと分かりにくいかもしれないですけれども,多分教育界は制約が多い。専門学校というのは,先ほどの説明のように自由な科目の設定というのをやってくださるんですよ。業界がこういうカリキュラムを組んでくれというと,そういうのを考えてくださるところがあるんですけれども,短期大学の中で何か制約みたいなものがあるのか,ちょっとお伺いしたい。
【滝川委員】  短期大学の多くを占める幼児教育,それから保育,栄養士,介護,この分野に関しましては,厚生労働省が定めているそういうカリキュラムがあって,更に学会や業界団体がつくったそれに対するガイドラインとかコアカリキュラムといったものが存在しますので,まずそこがベースになって,それにプラスアルファとして考えてはどうかと思います。例えば私どもの栄養の関係ですと,もっともっと病院に送り込みたいなと思うので,臨地実習の数を増加するというようなところが,今のところの限界になっておろうかと思います。
 ただもう一つ,専門課程についての話だけではなくて,幅広く短期大学教育全体を考えれば,私が先ほど試案として申し上げたところが一つの答えになるのではないかと思います。すべからく全ての短大が,みんなで共通したコアカリキュラムを作っていこうとか,この辺を短大の最低基準にしようといったものでまとまるかどうかは分かりません。短大が今日から全部,これが基準ですよというふうにスタートすることはできないので,恐らく先ほど申し上げたようなハイヤーグループを少し作るといったような段階的な方策をもって,短大全体の船を上方に向けていくというような,手法がとることが必要になるだろうと考えております。
【大野委員】  産業界の声がどれだけ聞けるかということについては,学位課程と非学位課程というお話がありましたが,学位課程に限定して言うと,かなり保守的というか,硬直的な部分があって,これは文科省さんではない,各省庁からの指定規則によらないと当該資格は与えられないということですから,限られた2年間の中でその資格に見合う力をつけるということになると,相当ニーズに応える幅というのは減ってくるのが事実でございます。
 他方,非学位課程の方で言いますと,今度はそういった制約がありませんから,こういったところについては,短期大学人は余り注目していなかったという反省に立って,企業,産業界との対話と協働というんですか,新しいプログラムを作っていく余地というのはそういうところにあるのだと思います。
 ですから,どういったところにニーズがあるかということから始まっていかないと,こういった取り組みはうまくいかないと思いますけれども,どれだけ変えられるかということについては,そういった分け方でできるのではないかと思っています。
【佐藤座長】  ありがとうございました。
 大変議論が白熱してきたところでございますけれども,もうすぐタイムアウトでございます。今日の話題は以上で打ち切らせていただきまして,事務局の方から今後の予定をお願いします。
【田頭大学振興課長補佐】  御説明申し上げます。次回,第4回の短期大学ワーキンググループにつきましては,3月28日金曜日13時から開催させていただきたいと思います。場所等の詳細につきましては,追って御連絡させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【佐藤座長】  次回でございますけれども,私といたしましては,今まで各委員の先生方のフリートーキングなどから出てまいりました一つの重要な核でありますコミュニティ・カレッジ機能,これについて取り上げられればいいなと思っているところでございます。次回のワーキンググループでは,是非それを一つの議論の視点に据えてみたいなと思っております。コミュニティ・カレッジという特定の性格を帯びた短期大学の在り方ということに絞り切るという意味ではございませんで,地域における短期大学の役割,地域と短期大学,地域の様々なセクターと短期大学,そういうような幅広い議論ができればいいなと思っております。
 なお,情報ですけれども,先週の2月21日,衆議院の文部科学委員会におきまして,ある議員から地域の女性に対する短期大学の役割が非常に重要であるというような御指摘がありまして,文部科学大臣との質疑があったそうでございます。短期大学のそれぞれの地域での役割はもっと期待されるべきものがあるというふうに,そこの議論から感じられた人たちが多かったと思います。詳しくは衆議院のホームページにアップロードされているそうでございますから,是非ごらんいただければ有り難いと思っております。
 それでは,時間が参りました。今日は大変ありがとうございました。これで閉会といたします。

 

 

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