短期大学の在り方について、本ワーキンググループにおける意見等を整理すると以下のとおりである。
論点1 短期大学の教育の在り方について
○ これまでの短期大学の実績や特長をさらに伸張させるため、学位課程教育ではどのような人材養成を行い、「短期大学士」としての社会的認識を確立させていくべきか検討が必要。(他の学校種との比較も含む)
○ 多様な教育ニーズに応えるため、専攻科及び別科をはじめ、非学位課程の教育について積極的な活用方策の検討が必要。
<短期性を活かした教育(他の学校種との比較において)>
(これまでの主な意見)
○ 専門学校との比較において、短期大学は、既に自己点検や認証評価を受ける仕組みを持っているが、内部的に改善をしていく仕組みを持っているところを今後ますます力をいれていかなければならないし、外にアピールし、顕在化していかなければいけない。
○ 2年間という短い期間で、専門教育だけではなく、アカデミックなことも行い、クラブ活動も行ったり、人間形成のための教育を行ったり、海外研修もするし、教員と接するためのオフィスアワーを持ったり、ボランティアをやったり、地域で地元の高齢者と一緒に活動したりと、実にスムーズに2年間の中にパッケージ化されていて、これこそ短期大学が持つ一つの教育システムである。
○ 短期大学の制度的な位置づけが非常に曖昧になってきている。目的概念を明確にする作業の中で、短期大学の目的をもう一度明確にすべき。
○ 高等教育の最初のステージが短期大学であるというところを現実化させるいろいろな方策を考えるべき。
○ 弱みとして、4年制大学と専門学校とのはざまで短期大学の特色がなかなか見えにくいということがある。また、強みを具体的にきちんと説明する力が不足していると感じる。
○ 業界等、社会のニーズをどれだけ的確に捉えて次の教育研究に活かしていくかについて十分考える必要がある。
○ 全ての人々にコミュニティカレッジ以上の高等教育を保証するというアメリカの例を引くまでもなく、誰もが気軽にアクセスできる短期の高等教育機関の充実は国家としての最優先課題。
○ 短期大学の教育を活性化するためには、地方行政を巻き込んだ短期高等教育の制度的振興策がどのようなものかを考える必要がある。
○ 歴史的には、短期大学は4年制大学とは違って若さを持っている。この若さを生かしつつ、一条校及び短期大学士学位課程としての独占的・自立的地位を確保するということが最も大事なことだと思う。
○ そのためには、生涯にわたる高等教育のファーストステージであるということをもっと強調すべき。短期大学を出ると就職して働く、あるいは地域で生活する、あるいは進学する、さらには学び直しで再び学ぶ、こういう機能を短期大学は持っているわけで、この間の各種政策によって短期大学はファーストステージとしての地位を獲得したわけであるので、ここをもっと強調すべき。
○ 教養、可能性、キャンパスライフの大学、仕事・職業とキャンパスライフも楽しみたい短大、業界・業種、手に職で、そこでしか学べない内容がある専門学校といったイメージを高校生は持っている。
○ 専門学校が盛り返してきているのは、少子化や産業構造の変化に対応した経営的視点でマーケティングを強化してきたということが言える。一つ目は、独自の教育システムの磨き込みや個性化を推進してきたこと。二つ目は、産業構造の変化を見据え、社会環境に合った機動的で柔軟な学科・コースの設置を行ってきたこと。三つ目は、オープンキャンパス、学校説明会など、高校生への伝達力を非常に磨き、募集力を強化してきたこと。この三つの視点が、短期大学ではちょっと後れてしまったというように見える。
<特定分野での専門職業能力の教育>
(これまでの主な意見)
○ 幼児教育、保育、栄養、介護等に代表されるように、社会や地域で重要と認識されている公的資格分野における中核的専門人材を多くこれまでも輩出してきている。
○ 各種実習先の懇談会等を通じて、現在の学生の学びがどのように企業の方に受け入れられているか、また見られているかということの聞き取りをして教育方法の見直しを機敏にして、学生のキャリアアップにつなげているというような職業教育の特徴を有している。
○ 能力開発という角度から見て、短大の努力がだんだん実ってきているが、それが成果としてアウトプットというところまで証明できるかというと、そこまでは至っていないというのが現状。
<職業一般に必要な教養・実務能力の教育>
(これまでの主な意見)
○ 短期大学の教養教育のよさというのは、旧設置基準から受け継がれている人文・社会・自然科学を基礎とした教養、情報科目に代表されるような新しい社会ニーズから生まれた教養、そしてこれらを包括するような言語能力、論理能力の育成プログラムが高等教育としての教養として、職業教育のための基礎ということも含めて、整理されて存在しているというのが大きな特徴。
<地域の人材ニーズに対応した教育>
(これまでの主な意見)
○ 地域の中核的人材とか、地域の高等教育機会に十分寄与してきたということだが、これらについてもやはりエビデンスを出していかないと国民が納得する議論にならない。
○ どういう形で地域に貢献しているかについてもエビデンスを出していくことが非常に重要。
○ 短期大学の大きな特徴である地域貢献、地域が求める専門人材の輩出に始まり、公開講座、免許更新講習、科目等履修、出前講座等を実施して、短期大学が持つ様々な地の拠点としての役割を果たしている。
<企業等社会の人材ニーズに対応した教育>
(これまでの主な意見)
○ 労働市場の側から、今どういうところに需要があって、どういうところに輩出してどう評価されているのか、その辺から短期大学が世の中に提供している価値は何なのかというところを考えていって、そういう強みをもう一度分析し、また、専門学校との差異化、4年制大学との差異化、あるいは高校との差異化とか、そういう比較の視点が大事。
<個人のライフステージ、ニーズに応じた教育>
(これまでの主な意見)
○ 学生の個別のニーズには柔軟に対応してきたと自負しているところではあるが、それを短期大学全体の問題として共有し、例えば経済界の代表者等の意見を聴くなどという機会が少なかったのではないかと思う。
<学士課程教育への接続教育の在り方について>
(これまでの主な意見)
○ 短期大学は高校ともつながっているし、大学ともつながっているし、場合によっては大学院ともつながっている。一方で高等専門学校や専門学校とは横のつながりもあるという意味で、非常にいい位置にいる。つまり左右上下どことも接続できるという利点を活かす方策を考えた方がいい。
論点2 短期大学の機能の在り方について
○ 地域に密着した短期高等教育機関として、多様な社会の要請に応えていくため、今後どのような機能・役割を担っていくべきであるか。
<高等教育の機会均等を確保する役割>
(これまでの主な意見)
○ 地域に密着した人材養成を行っている日本の短期高等教育機関であるという自負はあるが、地方の小規模校など、地方に行けば行くほど学生数が減少しており、これは教育の機会均等をそぐものではないかという危機感を持っている。
<地域の生涯学習の拠点としての役割>
(これまでの主な意見)
○ 短大基準協会の認証評価結果によると、地域と短期大学が密接な連携をとっていて、さらに生涯学習の拠点となって様々な活動をしているというような事例も多く盛り込まれている。短期大学が地域と連携をとりながら、教育の目的を達成しようとしているというようなことが分かる。
<特定分野の専門職業に関する社会人等の学び直し機能としての役割>
(これまでの主な意見)
○ 文科省の方でも学び直しの関係で社会人の奨学金についての予算を付けたりと、少しずつ環境整備が出来つつあるので、やはり広くそういった制度について世の中の理解を進めていくことが必要。
<長期履修制度の活用等多様な社会層への対応>
(これまでの主な意見)
○ いずれの短期大学も積極的に社会人を受け入れていきたいという気持ちがあるところが多いというように思っているが、実際社会人が短期とはいえ、2年間正規の課程に通うというのは結構負担であり、一部では、非学位課程を活用して、何とか社会人の学び直しに役に立てないかということを研究している向きもある。
<多様な非学位課程の開発>
(意見なし)
<個人のライフステージ、ニーズに応じた幅広い機能の在り方>
(意見なし)
論点3 短期大学教育の質保証について
○ 認証評価の在り方など、短期大学の質保証はどのように充実・強化を図っていくのか。
<各省が求める資格要件と卒業要件単位との関係>
(意見なし)
<抽象的基準の明確化や社会人教育への対応など短期大学の現状と大学設置基準の在り方>
(意見なし)
<学修成果を重視した評価、各短期大学が重点を置いている機能等に着目した評価等、短期大学教育の質的転換等を促進するための認証評価制度の改善充実>
(これまでの主な意見)
○ 認証評価の評価活動を通じて、短期大学がお互いに学び合っているという大変いい点がある。それぞれピアレビューを基本としているので、学長や理事長をリーダーに色々な階層から成るチームが編成され、それぞれの短期大学に行って評価活動を通じて学び合っているということが大変すばらしい。
○ 短大が独自に行っている相互評価が、あまり社会には知られていない。認証評価はかなり広まってきたが、このお互いに評価して、そこで質を高めていくというのは短大ならではのシステムであるし、ここがきちんと充実、向上していけば、短大の質が保証され、もっと高まっていくのではないかと思う。
(これまでの主な意見)
○ 教員の質保証が特に重要。短期大学の教員は教育に比重が重いわけだから、そういう観点からどのように質保証をしていくのか。
<短期大学間での学科分野毎、共通教育に関する質の強化への取り組み>
(意見なし)
<関係団体等が取り組むべき短期大学全体の質保証等への活動>
(意見なし)
論点4 コミュニティカレッジ機能等の在り方について
○ 日本版コミュニティカレッジ(仮称)について、今後どのように構築していくのか議論が必要。
<短期大学が担うべき日本版コミュニティカレッジ(仮称)の在り方>
(これまでの主な意見)
○ 最終的には、アメリカのコミュニティカレッジのように、若者たちの高等教育のファーストステージとして、また、地域を担う重要な高等教育の場として位置づけられていくのではないか。
○ アメリカと日本では、改革に20年の差があると考えている。それは大衆化の導入が20年の違いがあるところから来ているのではないかと思うが、日本の高等教育を見るときには、20年前のアメリカを見れば、同じような足跡が見られると思う。
○ なぜ今日のようなコミュニティカレッジがアメリカでは発展したか、その答えの一つは、やはり格差社会であることや、教育格差が大きいというバックグラウンドにあると思うが、日本とは少し状況が違うので、その辺は押さえておく必要がある。
<地域総合科学科(短期大学基準協会認定事業)の現状及び在り方>
(意見なし)
<多様な専攻科及び認定専攻科の在り方>
(意見なし)
※その他
<高等学校、企業等に対するPR等(高等学校及び企業等は短期大学についてどのような感想を持っているか)など>
(これまでの主な意見)
○ 高校生の立場から見ると、短期大学はどのような教育でどうなれるかというところが今ひとつ見えづらくなっていると感じる。女子の社会進出が進んで、一生働こうとする中で、短期大学の価値は何なのかをきちんと定義して伝えていく必要がある。
○ 「きめ細やかな教育」の具体的な説明の決め手が不足していた。高校生、社会に対して短期大学のよさをしっかりと伝えていくことができていなかった。
○ 高等学校卒業後は4年制大学か、職業教育というと専門学校かの選択肢になって、そのはざまで短期大学は取り残されてきたきらいがあると分析している。
高等教育局大学振興課