組織運営部会(第4回) 議事録

1.日時

平成25年10月2日(水曜日)9時30分~12時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学からの個別ヒアリング(京都大学長及び大阪大学長)について
  2. 大学のガバナンスの在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)河田悌一部会長
(副部会長)北山禎介副部会長
(委員)帯野久美子,北城恪太郎の各委員
(臨時委員)樫谷隆夫,金子元久,清家篤の各臨時委員
(専門委員)赤松洋子,有川節夫,石原多賀子,上山隆大,黒田壽二,小林雅之,田中愛治,森脇道子の各専門委員

文部科学省

板東文部科学審議官,藤木文部科学審議官,布村高等教育局長,小松私学部長,関文教施設企画部長,常盤高等教育局審議官,中岡高等教育局審議官,大槻総括審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,豊岡国立大学法人支援課長,森私学行政課長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐 他

5.議事録

(1)大学からの個別ヒアリング(京都大学長及び大阪大学長)について

 平野大阪大学長及び松本京都大学長から,資料1及び2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。
 また,公開に関する規則に基づき,意見交換終了後から会議が公開された。

(2)文部科学省から,大学のガバナンスの在り方について,資料3~6に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【河田部会長】  本日は,前回からの引き続きの議論ということで,資料3にあります「討論に際しての論点の(例)」に依拠しながら御審議をいただきたいと思います。
 前回は,その3の「大学の自律的改革サイクルの確立,各大学のガバナンス改革に対する支援」ということで事務局からの説明がございましたけれども,まだ,これについては十分な論議が展開されておりませんので,再度,事務局から簡潔に御説明を頂き議論を深めたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  前回残された論点でございますけれども,資料3の3ページ,ローマ数字の3.「大学の自律的改革サイクルの確立,各大学のガバナンス改革に対する支援」というところで,○1から○5までの五つの論点が残されてございます。資料につきましては,資料4,パワーポイント資料の31ページからが関連する資料になってございます。
 前回,一通り御説明申し上げましたので,今回,復習ということで簡単に御説明をさせていただきたいと存じます。
 資料3でございますけれども,残る論点としましては,1点目が情報公開の推進という論点でございます。大学が自律的なガバナンス改革を進めていくためには,より一層の情報公開の推進が必要でないかという点。
 それから2点目。教職員の意識改革ということで,学長,執行部が描いている改革ビジョンを,どのように教職員が理解して共有していくことが必要なのか,できるのかという論点。
 3点目としまして,各大学や大学団体等においても幹部人材の育成とか研修のシステムを設けられている場合もあるようでございますけれども,どういった仕組みが効果的なのか。
 4点目でございますが,例えばアメリカでは大学の教員協会であるとか理事会協会といったような団体が組織されておりまして,それぞれのガバナンスの在り方について合意形成を行っているわけでございますけれども,こういった,我が国においてもいろいろな団体があるわけでございますが,どういった機能が期待されるのかという点。
 最後の5番目でございますけれども,国の事業等におきましても,例えば補助事業の要件として,全学的な取組を求めるなど,ガバナンス改革を間接的に支援するようなものもございますけれども,国の事業等において,どういったガバナンス改革の促進が考えられるのかといった論点を挙げさせていただいております。
 関連する資料でございますけれども,資料4のパワーポイントの31ページが,現在,大学の求められております情報公開に関する規定でございます。国立大学,公立大学におきましては,それぞれ国立大学法人法であるとか,あるいは地方独立行政法人法において,中期目標,中期計画に関すること,あるいは財務に関すること等についての公開が求められております。
 また,教育研究に関することにつきましては,学校教育法の体系において,かなり細かく様々なことについての公表が求められているという状況でございます。
 32ページの資料がアメリカの事例でございますけれども,アメリカにおける大学の教授協会であるとか理事会協会等が作っているガバナンスに関するステイトメントでございます。理事会,学長あるいは教授団,それぞれの役割についてどのように考えていくべきかについての合意形成を,こういったところで図っているという状況でございます。
 それから33ページでございますが,国等による支援ということで,予算を通じたガバナンス改革支援をまとめた資料でございます。特にここでは二つ挙げてございますけれども,1点目の方が,いわゆるGP事業などにおきまして,特に大学の本部に自由度の高い予算であるとか,あるいは教員の配置,ポストといった権限が付与されるようになったというものでございますけれども,そのときの評価が,最近出されましたGPに関する報告書においても,このGP事業等が教職員の意識改革をもたらすとともに,学長が自らのリーダーシップを発揮したパイロット・プログラムとしての役割を果たしたといったような評価もなされているところでございます。
 また2点目として,間接経費でございますけれども,この間接経費についても,競争的資金を獲得した研究者の成果としてでなくて,本来の趣旨としては大学本部,その研究者が利用をさせてもらっている大学全体の環境整備のために使うべきものであるというようなことが,第二期の科学技術基本計画においても,その考え方が示されているところでございます。
 また34ページ,最後の資料でございますけれども,これは来年度の概算要求の資料を中心に国立大学,私立大学,また国公私を通じた各事業について,それぞれガバナンスに関連するものを参考にさせてございます。
 簡単でございますが,説明は以上です。

【北山副部会長】  事務局に質問です。資料の31ページに情報公開について記載があるのですが,これは現時点の情報公開の状況だと思います。
 一方で,大学ポートレートについて大学改革実行プランにも書いてあって,情報公開を進める方向で動いております。したがって,今,検討を進めている内容についても,資料として示していただきたい。皆さん,共通の認識であればいいのですが,その改革の方向に更に何を追加しなければいけないか,このようにしたらいいのではないかといった意見が様々あると思います。
 例えば,大学ポートレートは任意参加で検討が進んでいますが,私の意見では,本来は全大学が参加すべきだと思います。それから,どういうことを追加で公開対象項目にするかについては,例えばアメリカやヨーロッパなどと比較しながら,キーになる項目について議論すべきです。
 情報公開が必要ということは,もう十分分かっているので,今どういう検討状況となっているかというところを御説明いただきたい。

【田中高等教育政策室長】  大学の情報公開につきましては,資料4の31ページの真ん中にございます「教育研究に関すること」にありますとおり,教育研究活動状況の公表については9項目が義務付けられているところでございます。そして,この各大学に義務付けられた9項目の情報というものにつきましては,基本的には各大学が,それぞれのホームページなどにおいて公表するということが前提でございます。
 ただ,このような各大学の取組とは別に諸外国の状況として,例えばアメリカにおきましてはカレッジ・ポートレート,あるいはイギリスにおきましてはユニスタッツというような共通のデータベースを基にした情報公開の仕組みがございまして,そういったものを参考にいたしまして,我が国におきましても,大学ポートレート(仮称)という形で,各大学の情報提供とは別に共通の情報公開の仕組みを設けようということで,大学分科会での御議論も頂きまして,大学評価・学位授与機構を事務局といたしまして,ポートレートの準備委員会で検討し,昨年11月に,ワーキング・グループの検討経過報告を取りまとめているところでございます。
 その検討経過報告におきまして,諸外国の状況や関係者の意向などを踏まえまして,法令に基づくものに加え,どのような情報を公表することが適当であるか,又はその情報の公表の形式をどのようなものにするかという検討がなされております。
 一言で言いますと,ステークホルダーである保護者,学生に分かりやすいものでするように,図表やグラフなどを重視した公表をするという形での検討結果を頂きまして,現在,26年度中のシステムの稼働に向けまして準備をしているところございます。
 さらに,ポートレートの情報をいかに活用していくか,あるいは外国語等によります国際的な発信というものをどうしていくかなどの細部の点につきましては,大学ポートレートの準備委員会のワーキングの方で引き続き議論を行っているところでございまして,次回以降,具体の資料をお付けさせていただきたいと思っております。

【金子委員】  情報公開については私,もう何回も発言していますが,しつこく申し上げます。私は,この程度の情報公開についての情報公開では全く不十分であると思います。
 一つは,設置基準の細則によって一定の情報公開が義務付けられていますが,その方法については大学に任されることになっていますけれども,しかし各大学の実際のホームページを見てみますと,例えば学部別の学生数と常勤教員,非常勤教員が分からない。少なくとも二,三回ボタンを押したのでは分からないというホームページがほとんどです。規模の大きな大学についても同様でした。
 したがって,大学全体について情報公開を行っているものは,すぐ出てきたりすることもあるのですが,やはり学部別でないと意味がないと思います。特に学生に対して教員がどれぐらいいるか,それから常勤教員と非常勤がどれぐらいいるかということに関しては,これは非常に基本的な情報であるにもかかわらず,少なくとも大学からの自主的な情報提示については見ることはできません。この状態は,もう3年か4年ぐらい続いています。
 これについて,やはり,これは文部科学省か,あるいは大学評価・学位授与機構かが,少なくとも,どの程度クリックしなければ見えないのかという形での情報整理はするべきだと思います。実質的に,すると言ってできていない,そこに差があるということは指摘されているのですが,これについて全く何もされないまま,もう3年ぐらい来ているということは遺憾であると思います。何回言っても,これは直らないという状況にあります。
 もう一つ,これは私は新聞にも書きましたけれども,大学評価・学位授与機構において進められているカレッジ・ポートレートについては,重要な機能が全く欠けていて,その方向で,もう方針が固まったように,委員会では言われています。
 一つは,大学の基本的な情報について,私は横並びで一定のデータベースを公開すべきだと主張してきましたが,これに関しては,特に学校基本調査に表れるような全く基本的な情報については公開すべきだと主張してきましたが,私立大学については,これは公開しないということに決めたようです。私は決まった現場にいませんでしたが,決まったと報告されただけですので,その方法についても私は異議があります。
 それから,作られようとするポートレートは非常にきれいで,様々な指標は入れられていって,その意味では,もう2年もかかって検討をして,お金もかけてやっているのだろうと思いますが,しかし,先ほどもお話がありましたが,大学によって,これにエントリーしないことは選べますし,それから今後も,別にエントリーしないことは任意です。
 私は,この任意はいいと思うのですが,しかし逆に最大の問題は,このポートレートでは複数の大学を比較することはできません。一つの大学を決めてしか,この大学について情報があるということを見ることしかできません。
 例えば私の行きたい大学は三つ,四つある場合,この大学の間を比較することは,このポートレートからはできないという設計になっています。
 諸外国の大学情報公開は二段構えになっていまして,一つは自由に検索できるデータベース,2段目はステークホルダー,高校生を中心として,大学を選ぶ際に比較ができる画面が出るような工夫がされています。
 いずれにしても,日本の大学でポートレートと称しているものは,そういった基本的な情報公開の要件を満たしていません。私は,これは何回も大学ポートレート委員会に私,委員で入っていますが,主張しましたが,全くどうしてか分かりませんが,それは認められないと言われました。
 私は,この委員会の民主的な運営から見ても,これはおかしいと思いますし,日本の大学改革の全体の展望からいっても,なぜ先進国の間の中で日本だけがここでとどまるのかというのは分かりません。
 これについて何回も私は申し上げておりますけれども,著しく遺憾であると申し上げます。文部科学省の責任だけであるのかどうかは分かりませんが,とりあえずは文部科学省に説明していただきたいと思います。これは,むしろ日本の大学全体を交えた問題だと思います。
 こういったところで,従来の秩序を壊したくないというプレッシャーが,私は端的に言って働いていると思いますが,こういったところを一つ一つ整理していかなければ,幾らここで議論していても余り意味がない。
 でも,この組織運営部会もそれで議論をやっているわけで,何も手が打たないというのを大変不満に,部会長も指摘されているところでありますが。しかし,私は,こういう基本的なところで,実際にやろうと言ったことも進まないようでは,きちんとした手を打っていないのは当たり前だと思います。
 これについては,私は何回も申し上げますけれども,非常に強く主張したいと思います。以上です。

【樫谷委員】  ここの情報公開と,あるいは教職員の意識改革にも関係するのかも分かりませんが,先ほどお話を聞いていまして,理事会のときに,外部の理事の方の発言が少ないというような意見が出たと思います。少しそれが気になりまして,なぜ,そういうことになるのかということです。それは,きちんと大学の情報が理事に入っていないのではないか,入っていないと意見は言えないです。ですから,入っていない可能性があるのではないかと思います。これは国立大学だけではなくて私立大学も同じです。

【有川委員】  内部の意見がないという意味だと思います。

【樫谷委員】  内部の意見がないのですか。外部からの意見はある。わかりました。
 ほかの経験でも,実は外部の理事の方に,きちんと情報が入っていないことがあります。ですから,内部の方が当然,情報量としてはあるわけで,正しい,適切な意見が本当に言えているかどうかと,そういう心配をしておりました。
 少なくともガバナンスという以上は,その内部の必要な情報は,つまり理事会として,理事として必要な情報は,必ず理事の方に報告をする必要があります。理事会でという形でもいいし,事前の説明でもいいと思いますけれども,そういう形で報告をしていかないと,これは発言のしようがない。あるいは間違った発言をしてしまう,判断をしてしまうという可能性もあると思っております。
 それは,この透明性の高い大学運営もしなければいけないのですけれども,これは外部に対するものだけではなくて内部に対しても,やはり必要な情報というのはしっかり上げていかないといけない。危機感も含めて上げていかないと,教職員の意識改革といっても,これは正しい情報を,財務の本当の意味の状況も含めて上げていかないと,意識などは変わりません。
 通常,私ども企業再生やっておりましても同じです。やはり下まで浸透しないと,組織は変わりません。上だけ危機感持っていてもだめです。
 そういう意味では,内部に対しても,いい情報も悪い情報も含めて,しっかり上げるような仕組みを作らなければいけないと思っています。
 もう1点。大学による自主的改革の推進というのがあって,大学団体についてです。私は公認会計士ですので,日本公認会計士協会という団体があります。これは同業者の団体でもあるわけです。ただ,単なる同業者団体で友好を図ると,こういうだけではありません。その側面も,もちろんあるのですけれども,どちらかというと,やはり自主規制をしていくという側面が強いです。つまり,会計士業界全体の,特に我々,会計監査をしておりますので,それは我々,公認会計士に任されていますから,それをしっかり自主規制して品質を保っていくと,こういう実は団体でもあります。非常に金融庁からも厳しく言われることもありますけれども,やはり自主規制をしています。
 大学の自主規制がいいかどうかは分かりませんが,例えば私立大学なら私立大学全体の自治を,どのようにして団体が見ていくのか。やはり,仕組みがないといけないのではないかと思います。いきなり文部科学省が出てきてもいけないと思います。最後の権限は文部科学省に持っていただかなければいけないと思いますが。
 大学団体の中でも,そういった役割を積極的に果たしていただかなければいけないと感じましたので,そういうことを申し上げました。
 以上です。

【清家委員】  御質問の点について,私も私立大学の団体の会長をしておりますので発言させていただきます。日本の私立大学全てが加盟しているわけではないのですけれども,日本私立大学連盟と私立大学協会とが一緒になって日本私立大学団体連合会というのがありまして,私は日本私立大学連盟の会長と日本私立大学団体連合会の会長を兼ねております。その両者で,実は情報の公開については専門の委員会を設けて,加盟校に,基本的にはこういうことは最低限公開していきましょうということを決めてございます。そして,それに基づいて,実は河田部会長の日本私立学校振興・共済事業団のところで情報の公開の実務をやっていただくということにしてございます。
 もちろん,更に,これでいいのかということを議論し続けていかなければいけないと思っておりますが,少なくともこれまでそういう形で,私立大学は団体の中で行っております。

【樫谷委員】  大学と会計士業界とは異なるので,同じ論理で申し上げてはいけないということはよく分かっているのですが,我々は,もちろん,そういうルールを作って,協会の会員に示して,守るように指導するのですけれども,守っているかどうかのチェックをしております。守っていなければ,これは戒告だとか,あるいは会員権停止とか,そこまでの規制をしていきます。必要でなければ,必要に応じては監査ができないというような措置もやるようになっているということです。
 ただ,それが大学は,果たしてそこまでやっていいのかどうかという問題は別ですけれども,自主規制するというのは,自分たちの自治として,自主的な権限も振るいながら物事を進めていくようなことだと思います。

【帯野委員】  先ほどの御発言ですが,外部理事に限らず,外部人材の登用は,大切だと思います。ヒアリングを受けた両学長に質問する時間がなかったのですが,アドミニストレーションの部分で,なかなか旧国立大学の伝統の中で育った職員だけでは,トップ10を目指すのは難しい課題だと思いますので,そこのアドミニストレーション部門をどう改革するか。そこでも,やはり外部人材の登用が大切だと思います。
 ただ,問題は,きちんと情報を上げないということもありますが,大学に限らないのですが,日本の組織というのは単一的で,外部から人を入れることによって,組織改革をしようとしながらも,その人材を逆に組織力になじませようとするところがあります。
 私も民間で非常勤で理事をしていますが,うちの大学は外部の理事なのだから仕事をしてもらいやすくしようということで,お膳立てをしていてくれるので仕事ができていますが,一般的に,そこは違うのではないかということを言っても,これが大学だと外部の人材を大学という特別な組織になじませようとします。外国人の登用,女性の登用についても同じです。外国人を入れて企業をグローバル化しようとするのに,日本の企業に外国人を馴染ませようとする。そういう組織の風土というものが日本全体に,単一化された社会の中であると思います。
 ただ,この問題の解決のためには,そういう意識の改革とともに外部の人材を増やす。やはり一人ではできません。3分の1ぐらい外部の人材を入れるとか,そういうドラスチックな外部の人材登用というのが一つのキーワードではないかと日頃感じております。

【北城委員】  この組織運営部会で議論する背景は,もともと学長がリーダーシップを発揮して改革を進めるために,今の組織運営の在り方でいいのかということがあったと思います。ただ,組織運営の課題にもいろいろあります。これから論点整理するのでしょうけれども,やはり国立大学と公立大学と私立大学ではそれぞれ仮題が異なります。私立大学などは規模によってもいろいろな課題があるので,私は論点整理するときに,まずは国立大学の運営に関して整理するのが良いと思います。例えば,先ほど両総長からの御意見もありましたけれども,学長の権限や教授会の役割をどうするのか,学長の任期や選考をどうするのかなどを,まずは国立大学について論点整理をして,その上で,公立大学はどうなのか,私立大学はどうなのかという議論にしていった方がよいと思います。全部一緒に議論するといろいろな意見が出て,こういう大学もある,ああいう大学もあるということで議論が収れんしません。まずは国立大学を集中して議論して,その上で,それが私立大学とか公立大学にどう影響するのかを議論することで,行く行くは法制度の整備などにも結び付けていった方がいいのではないかと思いました。

【赤松委員】  私が見てきた大学というのは私立大学なのですけれども,定員割れをして,もう数年たっているとか,赤字もずっと続いているという状態の大学が多かったのです。でも,定員割れをしているといっても,施設は立派なものが設置基準でありますし,補助金も投入されているということで,経済的に非常にもったいない状況が続いていたという感じがあります。では,改革ビジョンはというと,考えあぐねているような状況ですので,こちらの○3幹部人材の育成・研修ということにおいて,やはり,国立大学だけでなく全大学も対象に後に入れるということであれば,その改革モデルを示すなど,リサーチ・ユニバーシティーではない部分についても手当てが必要ではないかと思いました。
 あと,情報公開に関しても,手続的な適性も重要と考えるのですけれども,規定にのっとった手続で大学の決定がきちんとなされているかというだけではなくて,その決定過程の透明性。どういう情報によって決定がされたか。それから,その情報について,どういう検討や協議がなされたかという,その決定過程の透明性自体も必要という意識が内部にも広く浸透していくと,その結果,決定の公正さも担保されていくようになると思います。

【河田部会長】  赤松委員の発言された,いわゆる定員割れで,ビジョンももう一つという,それについては日本私立学校振興・共済事業団で,黒田委員,金子委員,北城委員,北山副部会長などにも講師として講演していただいて,私立大学の理事長や学長を対象とする“リーダーセミナー”という合宿セミナーをやって,私大のいわゆるリーダーの意識改革もやっています。それから,昨年度から“スタッフセミナー”を開いております。これは文部科学省からも3人の講師に来ていただいて,2泊3日で若手の職員に対し,私立学校法,学校経営,教学理解を深めるなどの勉強会をやっております。
 ただし,問題なのは,そこに来られない学校もあって,そういうところをどうするか。そこは文部科学省の担当部署と協力しながらやっているのですが,そういう実態がございます。

【赤松委員】  統計的に見ても,定員割れが2分の1とか,赤字が3分の1とか,そういう実態を聞くものですから,少し心配になり発言させていただきました。

【石原委員】  先ほど有川委員から,法人としておかしいことを監事は指摘してほしいとおっしゃる御意見がありました。私も,そのとおりだと思っております。
 大学のガバナンスに関しまして,外部からの目がきちんと入る。それも法律に基づいての立場としてというのは二つありまして,監事と,もう一つは経営協議会の外部委員でございます。
 この中で,監事でございますが,約70%以上は非常勤の監事でございます。ガバナンスをきちんと把握しながら,問題点を言えば直るかというと,そのようなものではないわけです。法人としてのガバナンスの課題をどうするかというのは,どういうタイミングで,どういう状況で,どのようないろいろな手だてを講じたら,きちんと伝わるか。伝わった後どうするかということは,かなりの周到な準備や,人間関係などが把握されていくということが必要なのですが,それが非常勤の場合ですと,非常に大変だろうと思っております。
 決められた会議に月に何回か出るというのでは,その出来上がった会議での資料への判断ということですので,どうしても限界があります。
 ここにも非常勤監事としている理由が書かれておりますが,2名のうち,せめて1名は非常勤ではなく,できる限り,今後のガバナンスの観点から,常勤で,また学長の改革の方向をサポートしたり,いろいろと法人の状況を見るという点でも,多様な人材が登用されることが望ましいのではないかと思っております。
 もう一つ,監事は国立大学法人では役員と規定していますが,執行部でない役員の位置付けや支援体制は法人になって初めての取組であるだけに,どのようにしたらよいのか前例がないだけに,難しいという状況があります。
 規則による位置付けでなくとも,運営で位置付けることがございます。今後のことを考えましたら,そのことをもう少し意識して,例えば,組織図でも学長のほぼ同じ並びぐらいに,監事と書いてあることが多いのですが,当然,これによる良さもあるのですが,今後は各大学での位置付けについて,更に充実できる方向が,ガバナンスの観点から必要ではないかと思います。
 最後に,もう1点。非常勤の監事を選ぶときに,その方を生かせる仕組みというものを,それぞれきちんと考えていかないと,会議で発言なさっても,大変いい御意見ですということで終わってしまうことも多いのではないのでしょうか。また,監事同士の話の中で,私立大学と比べて国立大学の場合,その大学に対しての愛着,愛情が薄いということがよく言われます。自分の大学に愛着や愛情を持って,この大学のために頑張るという教職員をどのように養成していくのか。また,なぜそのように薄くなってしまっているのか。このことも大きな課題ではないかと思っております。
 以上でございます。

【黒田委員】  ありがとうございます。先ほどから出ていました学長のリーダーシップでありますが,旧帝大の総長は大変だと思います。というのは,カレッジの集合体で,ほとんどのことが部局で決定されてしまっているということです。その部局の中に,総長自ら,学長が教授会に出られないと,そういう規定まで作られているということです。ですから,学校教育法と国立大学法人での整合性も十分とれていないのではないかという感じを受けました。
 教授会の規定などでも,重要事項を審議するために教授会を置くというのが学校教育法に書かれているわけですが,その細目について,国大法人法の方では,学長と教授会の関係をどう位置付けているのかということです。
 というのは,昔から学長はカレッジの総合体の上に乗っかっているだけという国立大学だったわけです。学長自らが改革を進めていくという思いはあっても,教授会が部局で決まっているものですから,なかなか動けないと,そういう状態がずっと続いて,それが現在,法人化されても,それが生きているということです。それが,それぞれの大学の内部規程によって,そうなってしまっているという。そこを動かしていかないと,なかなか改革はできないだろうと思います。
 それからもう一つ,先ほどから情報公開の推進ということがあります。私立大学の場合は,情報公開の推進について今,日本私立学校振興・共済事業団で十分に検討させていただいているわけでありますけれども,金子委員御心配のことは,私立大学の場合はクリアされると思います。
 これをどういう格好でやるかということですが,第一の目的が,高校生に理解される情報公開の在り方です。それから,保護者に対して理解されるということが大前提になっています。情報公開が研究者のためのデータを提供するものではないということを日本私立学校振興・共済事業団では決めているわけです。ですから,比較検討する場合も,高校生がどの大学とどの大学を見たいということであれば,それが見られるようになるわけです。自分で比較ができるような格好をとる。そういうことで今,プログラム開発を進めていただいていますので,私立大学の場合は,恐らく心配されるようなことは起きてこない。高校生が十分に理解できる範囲のものが完成します。
 一覧性ということをよく言われますけれども,一覧性ですと,数値を並べるだけになってしまうのです。大学名がざっと並んで,項目ごとの数値が並ぶという。それでないと一覧性というのは作れないです。文章で表現する,書くという。その大学の特徴は何であるかというのは,やはり文章で表現するわけですから,そういうものを一覧性にするなどということは,ほとんど不可能に近い。コンピューターの中で,一つの画面の中でそれを表すというのは不可能に近いです。
 ですから,それはそれなりに比較ができる体制をとっていきたいと思っていますけれども,さほど私は心配をしていません。私立大学の場合は,しっかりとできると思います。
 それから,各大学や大学団体での研修の話がありますが,それは私立大学の場合は清家委員筆頭になって,いろいろな研修会をやっていただいています。私立大学協会,私立大学連盟の両方で私も講演などをさせていただいているのですが,理事長や学長の研修会,それから教職員の研修というのを年に数回に分けてやっていますので,その点では随分意識が改革されてきていると思っているところです。
 先ほど北城委員が言われたように,ガバナンスの問題は,やはり国立大学の方はどのように変えるのか,法的に変える必要があるのか,それが私立大学の場合はどうするのかと,少し分けて考えないと,一つの物差しではなかなか決め切れないと私も思っていますので,そういう審議の仕方をしていただきたいと思っています。

【金子委員】  情報公開の件に関して,今のお話は,高校生が見られるサイトについては少なくとも複数大学の比較が可能になるのではないかということでしたが,少なくとも私が見ている限りでは,それは不可能です。見せると書いてありましたので,それは申し上げました。そうなればよろしいと思います。
 ただ,一般的にデータ公開は研究者のためであるというのはとんでもない間違いだと私は思います。これは社会一般に,こういったデータが公開され,様々な形でそれを使って,大学のことを社会が理解することには非常に重要だと思います。
 大学改革には二つの側面があって,一つは中からの改革ですが,もう一つは外からの改革です。外から大学は何をやっているのかということを一応監視して,それに対して,ある意味では社会,市場的な淘汰が進むといったことも,ある意味では必要かもしれません。
 私は,先ほど申し上げましたけれども,今の状態は,学部別に学生数と教員数,非常勤教員数の数が分からないのです。比較することは全くできないのです。非常に単発的な情報を見てしか分からない。これは正常な状態でしょうか。私は,それは日本の国立大学の将来を考える上で非常に問題があると思います。
 しかも,それが,国立大学が良くて私立大学が悪いとは限りません。実は,私立大学でも非常に努力しているところは,国立大学よりも良い状況になっているところはあります。
 そういう意味で,教育の質を考える上で,非常に基本的な資料はそこにあるわけですから,それを公開していただくのは当然であると思います。それは決して一研究者のわがままではありません。
 それは1点,情報公開に対して申し上げたいことです。
 もう一つ,ガバナンスについて,これからの議論の方向ですが,国立大学,私立大学に分けて議論されるのは大変結構だと思いますが,ただ,この組織運営部会の視野はどこまで行くのかということは考えておいた方が良いことではないかと思います。
 先ほどの国立大学法人の学長の権限については,非常におかしなことで,実は国立大学法人の理事会と称するものは学長の任命によってできているものでありまして,実は正式には学長の監視機関はないという極めて特殊な設置形態をとっているわけです。これ自体を視野に入れて議論をすると,結局,国立大学法人制度,要するに独立行政法人制度の法律が半分ぐらい適用されているのですが,それ自体の枠組み自体について,議論の視野を広げないといけないことになってしまいます。そこまで考えるのかどうかということは,やはり私は,これまでの議論の経過,それから,この組織部会ができた経緯から鑑みて,少し疑問ではないかと思います。
 むしろ焦点は,日本の大学の教育の高度化というものをどうやって進めていくのか。そのときに,やはり学内のリーダーシップ,各学部だけで決められる実態性はおかしいのではないかという議論から始まっているわけで,むしろ,そちらの視点を重視すべきなのではないかと思います。
 以上です。

【有川委員】  先ほどの石原委員の御発言ですが,監事につきましては,大学によって異なると思いますが,本学では大事な会議はほとんど出ておられます。一人は常勤で,一人は非常勤です。一人を非常勤にした理由は,会計関係のことをしっかり見てもらうために公認会計士である必要があると判断していまして,その方々は大体大きな仕事も持っていらっしゃいますので,常勤で来ていただくことはあり得ないわけです。
 それで,監事がおっしゃったことは,大学としてはしっかり聞きます。明らかに違うことに関しては違うと言いますが,監事に指摘されたことは,非常に大事です。他の役員は学長法令ですが,監事は大臣発令されていることもありまして,かなり緊張感を持ってやっています。
 そういうことで,監事に指摘していただくのは,大学を変えていく上で非常に大事だということで,先ほど,そういったことを申し上げたわけです。

【森脇委員】  資料3の3.の各大学の自律的な改革,推進,ガバナンスの改革支援のところですが,法改正で支援するという視点ももちろんあると思いますので,それは皆様の御発言に反対するものではありません。また国立大学を,まずは焦点に置いてはどうだろうかというのも,これも反対するものではありません。加えてもう一つ,こういう点にも目配りしておいた方がよいのではないかと思う点を申し上げたいと思います。
 それは,先ほど二つの国立大学から御発言があったのを聞いておりましても,法的な面の課題について相当絞っておられるように感じました。リーダーシップが発揮しにくいというのは,こういう点が問題なのだと。そのほかにも無論あるとは思いますけれども,法的課題はそれはそれで,重く受けとめる必要があると思います。それとは別に,リーダーシップが発揮しにくい内部環境,それから外部の環境があると思うのです。それらについて,今こちらの方に○1から○5まで挙げていただいているので,もっと知恵を出して,どうしたら進めやすい環境を作って支援できるかという,具体的な議論が重要です。その方策が,少し弱いように私は感じます。
 その中で,3.の○5のところで,例にあげられている補助金,補助事業の件などについて,たまたま関わったことがあったので述べますと,その補助事業の評価のポイントとして,全学的な取組であるかという点が出されたのですが,それに対しまして,国立大学と公立大学が大変意欲的に取り組んで,何とかしようという意欲を感じました。私立大学も,もちろん感じましたが,その温度差があると私は思いました。
 ですから,これも支援の一つではないかと感じたのです。改めて,これを読みまして,そのように思いました。
 また,教授会がよくないと一般には言われるのですけれども,それも100%否定するつもりもないのですが,ただ,先ほどヒアリングで総長が言われたように,一人一人の教員や職員が,これではいけない,変革したいと,そういう考えを全く持っていないわけではないと,私が感じました。これは,どの大学でも一緒ではないかと思うのです。強烈に反対する人もいるけれども,これではいけなくて何とかしたいが,そのきっかけが,なかなかつかみにくく,具体的な行動に移しにくいといったときに,今お話したような補助事業の評価ポイントが出されると,どの大学も全学的な,部局を超えた取組をやらざるを得ないからやりましょうなどということになり,これも変わる契機にもなると思いました。
 そのほかのところでも,もっと知恵を出して,もっと実態を見据えれば,変わるきっかけとなる支援を見つけることができるかもしれない,それだけで解決するなどということを申し上げているわけではないのですが,そういう視点も,私は重要ではないかと思っております。

【河田部会長】  一応,今まで検討に際して,資料3に基づき御議論いただいてまいりました。いろいろ問題点はございます。
 ですから,整理が必要な論点はどれなのか,それから,教育基本法や学校教育法などの法令と学則などといった各部局の学内規則の関係ということで,それぞれ設立主体ごとによる法が違うわけですので,共通部分,国立大学法人法,私立学校法,公立大学の地方独立行政法人法などとの関係を考慮しながら,どこをどう変えるのか,あるいはそれを政令なり省令なりでなんらかの規制をしていく必要があるのではないか,そういう観点で現在,事務局や北山副部会長と話しておりますので,あと,その問題について御議論を頂きたいと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  資料5と資料6に基づいて御説明させていただきたいと思います。
 資料5としまして,これまでの御議論を背景にいたしまして,事務局として整理が必要と考える論点を2点に集約をして挙げさせていただいております。
 1点目が,学長や教授会に関する法制度と実態と挙げておりますけれども,これは北山副部会長からも何度か御指摘を頂きましたが,法制度と実態に乖離(かいり)があるとすれば,それは一体どういうところに理由があるのかといったような問題意識でございます。
 制度上,学長に権限があるにもかかわらず,例えば人事や予算について,なかなかそれが発揮できないとか,あるいは教授会が制度上,審議機関であるにもかかわらず議決機関として機能している場合もある。そういった指摘がなされるのはどうしてなのか。また,その上で,どういった政策的対応が求められるのかといったことについて御議論いただきたいと思っております。
 2点目でございますけれども,適切な学長選考の在り方ということで,現在,教職員による投票,いわゆる意向投票が行われているケースがあるわけでございますけれども,それについて,そもそもどのように考えるべきなのかということです。また,一概に投票が行われている場合であっても,例えば投票結果を,そのまま学長選考会議等において採択をするような場合もあれば,それを重視をする場合。あるいは単なる参考扱いの参考の一つとする扱いという場合など,その位置付けも非常に多様でございます。
 また,諸外国を見ましても,例えばイギリス,フランス,ドイツなどでは,学長が教員組織の選挙で選出されることが一般的であるというような諸外国のプラクティスもあるところでございます。
 また,金子委員からも御指摘いただきましたけれども,大学運営にすぐれた適任者を選考するために,どのような方法が考えられるのか。特に諸外国と比べても,いわゆる学長層のマーケットといいますか,流動性が低い状況で,実際にどのように選考していくことがフィージビリティーがあるのかということについても考えていく必要があると存じます。
 また最後ですけれども,この学長の選考方法,国立大学,公立大学,私立大学がある中で,中央教育審議会として,どこまでの方向性を出すことができるのかということについても御議論いただかなければいけないと存じます。
 資料6は,これまでの御説明の資料の再確認になるかと思いますけれども,1ページの,主な論点に関する制度の現状を再確認していただきたいと存じます。学長の権限でございますが,学校教育法92条,「学長は校務をつかさどり,所属職員を統督する」とございます。校務に関して学長が最終的に判断を行う権限を有するとともに,所属職員に対して指揮命令を行うことができる権限は,ここで明定されてございます。なので,仮に学部教授会,教職員が反対する場合であっても,学長の判断が優先する仕組みは法律上できてございます。
 2点目,学長の選考方法でございます。国立・公立大学法人については,学長選考会議,学長選考機関が学長を選考するとしてございます。それ以外の法律上の規定はございません。私立大学については,そもそも一切規定はございません。
 先ほど申し上げましたように諸外国,イギリス,フランス,ドイツでは学長は教員の選挙により決定をされております。アメリカなどでは理事会が外部のサーチ会社などを使って任命をするケースが多いようでございます。
 現在,日本における状況としては,選考会議で決定をする場合が56%,教員による投票の結果に従って決定する場合が24%,教員による投票結果を参考として決定する場合が22%というのが,国公私を丸めたデータでございます。
 3点目が教授会です。学校教育法93条で教授会は,「大学には,重要な事項を審議するため,教授会を置かなければならない」とされております。教授会は明確に審議機関として位置付けられておりまして,法律上,議決権というのが与えられてございません。したがって,学長が教授会の判断に拘束されることは法律上はございません。
 重要な事項について審議されるとございますけれども,この重要な事項については,基本的には各大学の判断に委ねられているという状況でございます。
 以上が法律上のスキームの再確認でございます。
 次の2ページでございます。こちらも再確認でございますが,教授会に関する規定の経緯について,もう一度まとめたものでございます。
 この教授会の規定については,戦前は帝国大学でありますとか一部の官立大学だけに設けられていた,ある意味,特権的な規定でございましたが,戦後,この教授会の規定が大学の自治を守る観点から望ましいということで,学校教育法において,国公私を通じた制度としてビルトインされたという経緯がございます。
 その上で,教育公務員特例法におきましては,特に憲法との関係から,公権力が大学の人事等に直接関与しないということから,教員人事等に関して教授会に決定権を,この教育公務員特例法において認めていたという経緯がございます。ところが,この教育公務員特例法につきましては,平成16年に国立大学が法人化され,また公立大学についても今,次々に法人化をされている中で,これらの適用は外れていっているという状況でございます。
 その際,国立大学法人法,あるいは地方独立行政法人法におきましては,各法人の自主性・自律性を尊重する観点から,内部の組織の在り方についてはなるべく法令で規定しないという考え方がとられていたという状況でございます。
 次の3ページでございます。現在指摘されている課題。これは一般的に言われているものでございますけれども,学長については権限が弱くて,なかなか人事,予算に関する権限が発揮できない。学長の選考については教員の投票結果による影響が大きいのではないか。そのために適任者を本当に選べているのか。教授会については,審議機関でなくて議決機関として機能しているのではないかといったような御指摘がございます。
 まさにこれは,実は国公立大学が法人化する以前の制度に,大きく影響を受けている部分がございます。学長の権限については,法人化以前については,学部教授会であるとか,あるいは教員組織である評議会といったものがあり,それらが学長や学部長の選考,また教員の人事に至るまで権限を持っていたという状況がございます。
 学長の選考についても,従前は評議会が学長の選考について決めていったという状況でございます。
 また教授会についても,選考や人事,さらに勤務評定についてまで決定権を認められていて,実際議決機関と位置付けられていたわけでございます。
 こういった状況がございますけれども,先ほど平野総長,松本総長のお話もございましたけれども,では一体,今,各大学の内部規則はどのようになっているのかということを,もう1回確認してみたいと存じます。
 4ページが,各法令と学内規程の関係について,ピラミッドの絵で整理したものでございます。憲法,特に大学に関しては,大学の自治,学問の自由というものが頂点にあるわけでございますけれども,そこから,特に教学面については学校教育法であるとか,あるいは経営面については国立大学法人法,私立学校法といった法律がございます。それぞれ法律からの委任を受けて,政令であるとか省令,さらに告示といったものを作ってございます。さらに,それらを具体化する,明確化するために,通知等を作る場合もございます。こういったものを受けて,各それぞれの大学が内部規則として,例えば全学的な学則を作ることもあれば,各部局ごとの規則といったものを作ることもございますし,あるいは法人の基本規則としては定款や寄附行為といったものがあるわけでございます。
 それぞれ当然,例えば憲法であるとか学校教育法,上位の法令に行くほど抽象度は高くなり,逆に省令であるとか告示等については,より具体的で明確な基準を決めているということになります。
 次の5ページでございますけれども,学内規程の状況について少し例示をさせていただいております。5ページは学長選考に関する内部の規程でございます。
 黒枠の上の方の規程でございますけれども,総長選考会議は意向投票の結果を尊重して総長候補者を選考するという内部規則を作っている大学のケースでございます。これは,まさに教員投票を行い,その結果をもって総長選考会議の結果にするということを内部規則で決めております。
 下の例でございますけれども,今,意向投票を行わないで選考を行うケースでございます。この場合の選考の手段としましては,経営協議会や教育研究評議会が総長候補者の推薦をすると,あるいは教授団の連名により書面で推薦をすることも可能である。こういうものに推薦をされた方々について,選考会議が最終的な総長候補者1名を決定するという内部規則でございます。
 次の6ページでございます。学部長の選考に関する規程でございます。これも二つの事例をお入れしておりますけれども,上の事例は,学部長の選考を実質的に教授会に委ねているケースでございます。学部長の選考は,当該学部等教授会において行う。学部等教授会は,候補者1名を決定したときは学長に申し出,そして前条の申出に基づき部局長を選考し任命するということになっておりますので,ここでは実質上,学長には決定権がない。学長の決定権は学部教授会におろされているということになります。
 その次の6ページの下の段のケースでございますけれども,学長は複数の候補者の中から学部長を指名することができるようにしているケースでございます。
 学長は,部局長の選考に当たって,教授会に候補者の推薦を求めるものとする。前項の規定にかかわらず,学長は,特に必要があると認めるときは,部局長を指名することもできる。そして,あらかじめ複数の候補適任者を選出するという規定が設けられております。
 これによって学長が,ある意味,自分の意にかなう方を選ぶことができるという実例がございます。
 7ページでございます。教員の人事に関する内部規程の例でございます。
 上の例でございますが,教員人事に関する権限を基本的に教授会に委任しているケースでございまして,選考については教授会又は運営委員会で行う。部局等の長は選考に関して,教授会に対して意見を述べることができると書いてございます。まさに,これは教育公務員特例法時代の規程を引きずっているような内部規程でございます。
 一方で,この下段の方でございますけれども,教員選考について学長や学部長はどのように関与していくのかということを明確に規定しているケースでございます。この場合でも,基本的には選考は学部単位で行っているようでございますけれども,特にこの7ページの下の3番というところでは,学長は,候補者の選考が行われる組織の長に選考方針,選考理由,選考結果等について説明を求めることができる。さらに学長は,教員の選考に関して必要と認めた場合には,教育研究評議会に審議を求めることができると,学部がそれぞれの独断に陥らないで,学長がしっかりと関与できるような規定を内部に入れているという規程でございます。
 最後,8ページでございます。間接経費に関する規程でございます。これは少し色合いが違う部分もございますけれども,間接経費の問題については,この部会でも何度も取り上げられてございます。この配分の割合,間接経費の配分が当然多い方が,間接経費の中において全学共通経費の部分と各学部,あるいは研究者に帰属する部分の配分割合について,これも各大学ごとに,それぞれの割合が違っておるという実例がございます。
 上から全学の取り分。すなわち大学本部に吸い上げるといいますか,本部に帰属する部分について5割としている例,6割としている例,7割としている例にあるように,それぞれの大学によって,この間接経費の扱いについても,かなりの違いが出ているということがございます。
 以上,駆け足で御説明いたしましたけれども,この内部規程だけ見ていただきましても,旧教育公務員特例法の時代のような制度設計をそのまま,かなり色濃く受け継いでいるところもあれば,これらは国立大学中心の規程でございますけれども,国立大学の中においても相当な変革をされている例もあるという状況でございます。
 こちらからの説明は以上でございます。

【河田部会長】  松本総長からも最後に,小規模の国立大学法人は割とうまくいっているというお話もありましたし,やはり旧帝大,大規模校は非常に古い強固な伝統と慣行が残っておって御苦心があるということです。これを考えていただいただけでも,国立大学法人の中にも様々なパターンがあるということは,よくお分かりになるでしょうし,監事の位置についても,やはり違いがあるとのことでした。それだけ多様性があるということでございます。

【田中委員】  幾つか多様な論点があるのですけれども,私がコメントしたいと思いましたのは教員の人事についてです。学部長なり学長が教員人事にどこまで口を出すかというところに関しては,ちょうど前回のこの会議のときに私,イギリスに出張しておりまして,オックスフォードとケンブリッジでお話を聞いてまいりました。その前にも2011年と13年の3月にアメリカの大学を幾つか回ってお話を聞いてまいりましたけれども,共通している点がございまして,それはアカデミックな基準で最も良いと思う教員を選ぶということについては,誰がいいかということは,その専門の教授たちのところに任せているそうです。ところが,大学によって違うのですけれども,それをそのままにはしない。その選んだ者を,そのままのチェックにするわけではないということは共通しているようでした。
 そのときに,特にアメリカの場合は,これも大学によって相当差があります。例えばイェール大学とコロンビアでは相当のやり方の違いがありますけれども,プロボーストオフィス,若しくはディーン・オブ・ファカルティのところで各学部,デパートメントで選んだ教員の選び方について,口を入れて差し戻すことがある。
 例えばイェールの場合には,選考が公平であるかどうかを見ているということを言っています。例えば選考委員会の委員の中に候補者のメンターがいると。昔の指導教師がいる場合に,それは差し戻すことがあるというようなことで,コロンビアの場合には,その手続上のフェアネスだけではなくて,この講師は弱いということで,例えばプロボーストオフィスがデパートメントの8名から推薦状をとったところ,プロボーストオフィスは,更に7名増やして15名からとるということまで言っています。
 その手続において差し戻すということをしているようです。つまり,A候補を採りなさいとか,B候補を採りなさいということは言わない。オックスフォードのディビジョンのヘッドが言っていましたのは,例えば学長が物理学のときに,経済学のどの分野のどの研究者が一番先端的で,どういう教育が今そこで行われるかということは知る由もない。そこについて口を出すことは意味はないと思っているということをおっしゃっています。
 ただ,それをそのまま認めるのではなくて,やはりフェアであるかについて注意を図っているということをおっしゃっていまして,単にトップダウンで権限を出せばいいということでないというのが,そういう世界のトップレベルの大学のおっしゃっていることのようには聞こえておりました。

【小林委員】  先ほどの大学の情報公開について,少し準備委員会のワーキング・グループの主査として申し上げたかったのですが,これは議題が戻ってしまいますから,また後で,後の機会に申し上げたいと思います。
 現在の問題ですけれども,きょうの事務局の資料でも,非常に大学によって違う,国立大学によって違うということは河田部会長も言われたとおりです。きょうのお二人の総長の話にもありましたけれども,例えば,学長選考会議が事前に候補者を出すか,出さないかということも大学によって全然違うということで,東京大学の場合には,きょうのこの資料のちょうど中間の形で,事前に候補者を5名選出した上で意向投票するという形になっているわけです。そういった,いろいろなやり方があって,それを十分,まだデータとして出されていないと思います。
 私立大学については,事前に候補者を出すかどうかということについては日本私立学校振興・共済事業団のアンケートに出させていただきましたけれども,国立大学は一体どうなっているかというのは,様々な事例を出していただいたのは結構なのですけれども,全体像が,やはり見えないというのがあります。限られた時間で事務局に負担をかけることになって申し訳ないのですけれども,やはり全国立大学がどうなっているかを調べていただけないかという御注文です。よろしくお願いします。

【清家委員】  3点,少しばらばらかもしれませんけれども,コメントさせていただきます。
 1点目は,先ほど松本総長,平野総長のヒアリングの際にもコメントしたことでもあり,今,田中委員が言われたことにも関係しますけれども,やはり教員の人事の問題については,恐らく誰を選ぶかということは学長の権限ではなくて,それぞれの専門分野の人たちが選ぶことが原則だということについては共通認識があると思います。
 ただ,それを学長の権限として例えばどの部局に何人配分するかという点が論点なわけです。それから今,田中委員が言われたように,手続が公正であるかどうかということについて執行部がきちんとチェックを入れる。これも大切だと思います。
 その意味では,先ほども少し申しましたけれども,執行部が,人事も含めて部局をコントロールする一番重要なツールは予算決定権です。予算で管理する,人員配分も含めて予算を決めることが執行部に認められることが非常に重要かと思っています。
 2点目は,そういうことも含めて,きょう,お話が出た学長選考の在り方などもそうですが,私立大学の場合は,そのガバナンスの在り方も非常に多様であります。先ほど建学の理念の話をいたしましたけれども,建学の理念に基づいて,個性のある教育や研究が行われるということが,私立大学の何よりの存在意義だと思っています。
 平野総長が言われたように,学内に多様性のあることも大切ですし,日本の高等教育の中に多様性を確保することも大切で,それが私立大学の役割だと思っていまして,その多様性の中にはガバナンスの多様性もあると思っています。
 したがって,私立大学に関してガバナンスの在り方を国が一定の方向で,このようにすべしということを,今の学校教育法の定め以上に規定するようなことは,私は望ましくないと思っています。
 3点目には,その私学の多様性ということが意味を持つのは,多様な私学の中から人々が選択をすることができるということでありまして,その意味では,先ほどから議論が出ている情報の公開というのは非常に大切なポイントです。
 そして,特に私学の場合は,これは国立大学とは必ずしも同じではないかもしれませんけれども,教育の内容だけではなくて財務の内容などについての情報公開も大切であると思っています。
 ですから,その意味では,これはまさに河田部会長のところで今そういうプログラムを作っていただいているわけですけれども,私立大学に関しては,教育の内容にプラスして,やはり財務の内容の情報公開をどのように進めるかということをきちんと考えていく必要があると思っています。
 以上です。

【帯野委員】  私,きょうの資料の御説明でも一つ分からないのが,学部長の権限と責任です。恐らく内規で定めるということで,各大学によって異なるのかもしれないのですが,具体的には,その学部の選挙で選ばれるということは,学部のいわば利益代表者のような形の存在であるかと思います。
 そうしますと,なかなか執行部がリーダーシップをとろうとするときに,うまくいけば良いのですが,前向きな緊張関係が築きづらくて,平野総長のおっしゃるようにドライビングフォースにならないという点で,やはり理事とともに学部長も,学長に指名権を与えるというのが,ガバナンスを確立する上の大きなキーワードになると思いますので,是非それは検討をいただきたいと思います。

【金子委員】  一つ申し上げたいのは,やはり実態としてのガバナンスは相当多様だということで,きょうの御議論でもいろいろと出ていました。
 外国も見ていると,各国の例が出てきたのですが,ドイツの例は余り書いていないです。なぜかというと,ドイツの大学は,大変多様らしいのです。学長の名前も,ヨーロッパで伝統的にレクターといって,これは先生の一人で,学長になったら,また辞めてしまうというタイプの古典的な学長をレクターと言うのですが,もちろん長期的にやって責任を持つのをプレジデントと言うのですが,今,このプレジデント制とレクター制が並行しているのです。いろいろなガバナンス組織が,どうも並行しているらしいので,ドイツがこういったガバナンス体制であるというのは非常に難しい。
 アメリカも,よく分かったようで分からないところもあって,例えばハーバードというのは19世紀の終わりまで理事会が二つあったのです。日本でいうと理事会と評議委員会みたいなものですが,どうも慶應大学と早稲田大学が,その二つの形をとったのは,どうもハーバードを見てきたからではないかと私は思っています。
 それから,現在はハーバードは,どちらかというと一つの理事会の方が強くなっています。でも,大学によって財政的な独立性は非常に差がある。レスポンシビリティーセンターとか,レベニューセンターとか,いろいろな言い方していますけれども,相当差があります。
 問題は,相当差があって,実は,よく見てみると,モデルとして相当違うものがあるということが分かってきた場合に,この部会が,一般的にどういうところに問題があるかということは議論できるのですけれども,法令上で,こういうところで全般,大学一般に絞ることは本当に技術的にできるのかどうかということは,やはり少し考えておいた方がいいのではないかと私は思います。
 もう一つ別の方法として,この部会で,例えばどういうタイプのものがあって,どういうタイプにはどういう問題があるのかという形の指摘をする文書を出すとか,そういったことは考え得ることではないでしょうか。
 政治的に,そういったことが可能なのかどうかは私は分かりませんけれども,そういった意味で,かなり多様なもので,多様なところがいいというような状況の中で,法的な改正を無理をしてやることは賢い方法なのかどうかということについては考える余地があると思います。
 以上です。

【樫谷委員】  学長ということではないのですけれども,学部長の選出は専門分野なので,学長としてなかなか分かりにくいので,どの人をとは言いづらいということがあると思います。そのとおりだと思いますが,ただ,その選考のプロセスです。本当に学外も含めて,最適というのはなかなか難しいと思うのですけれども,適切な人が選ばれたのかどうなのか。何か談合組織のようになっていないかとか,そこはどのようにチェックをされているのでしょうか。その中から選ばれたら,別の人を示さない限りは,拒否はできません。ですから,それはどのようにしてチェックされているのか,どのような実態になっているのか,もしお分かりの方がいらっしゃったら教えていただきたい。

【有川委員】  自分の大学の例ですが,大方がそうだろうと思いますが,学部長等につきましては,部局や学部の教授会で決めますので,そこで選出された方を,まず普通は問題がありませんので任命します。昔は大臣発令でしたので,そこでいろいろなことが起こる可能性もあり,学長の選出に関して問題が発生した例があったと思いますが,学部長に関しては特に問題が発生した事例は聞いておりません。

【河田部会長】  よろしいでしょうか。
 それでは本日の審議はここまでにさせていただきます。この部会としては,ガバナンスに関して年内中に取りまとめということが求められております。
 金子委員から,法令上ここで縛ることが可能なのかという御発言もありましたし,それから指摘する文章にとどめていたのでは大学は何も変わらない,法令上の改正も必要だという御意見もありましょう。それから,きょう,お二人の総長に来ていただいて,やはり,細かな学内の規程については,まだ不備や矛盾があるという問題もわかりました。とともに,国立大学の法人化が急いで行われたため国立大学法人については総点検していただきたいという,そういう御意見もございました。
 次回までに事務局とも論じまして,ではどういう形ができるのか,本日までの議論を踏まえた上で審議の取りまとめのたたき台のようなものを作らせていただいて,これではぐあいが悪いとか,いろいろ御意見も頂きたいと思います。かつ,田中委員からいろいろなオックスブリッジ,イェール,コロンビアなどのお話もございましたし,それから松本総長から,もう少し小規模の国立大学の意見も聞くべきであろうとの御意見や,私立大学の小規模校の意見が,もし誰か適当な方があれば聞いてもいいと思います。やはり,そういう実情をよりよく知っていただくことが必要かと思いますので,そのようにさせていただいて,そして学校教育法93条の,「重要な事項を審議する」について,その教授会の審議の枠組みみたいなものが必要かどうかということも問題になろうかと思いますので,その辺のことを,また先生方のお知恵を得て,年内にきちんとした文章ができればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はどうもありがとうございました。

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