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資料5

「各大学や第三者機関による大学の国際化に関する評価に係る調査研究」について

1.経緯

 文部科学省においては、国内外の大学や第三者機関による、大学の国際化に関する評価の在り方について、当面の検討に資するため、平成19年度先導的大学改革推進委託事業において、国内外の各大学や第三者機関による大学の国際化に関する評価に係る調査研究を実施

  • 委託先:東北大学(実施担当:米澤彰純高等教育開発推進センター准教授)

2.報告書の概要

第1部 日本の大学・第三者機関による高等教育の国際化の評価:現状と課題

第1章 調査のねらい・対象・方法

第2章 日本の大学における国際化への取り組みとその現状

第3章 大学国際化への支援と評価

  • 日本の大学における国際化とその評価の取組に関する現状を把握するため、東北大学高等教育開発推進センターより、全国の国公私立大学756校に対し、調査票を送付(回収率82.5パーセント)。調査結果の概要は以下のとおり。
    • 1外国人教員や研究者の雇用については、大多数の大学が積極的に進めるべきだと考えており、また、多くの大学が国際化や国際競争力強化、国際協力について政府の支援を期待
      • -「外国人・研究者をもっと雇用すべき」に対し、「そう思う」「ある程度そう思う」と回答した大学は、82.5パーセント(国立97.3パーセント、公立84.1パーセント、私立80.0パーセント)
      • -大学の「『国際化』、『国際競争力強化』、『国際協力』それぞれへの支援を政府が進めるべき」に対し、「そう思う」「ある程度そう思う」の総計は、「国際化」が93.3パーセント(国立97.3パーセント、公立92.8パーセント、私立91.9パーセント)、「国際競争力強化」が92.8パーセント(国立97.3パーセント、公立94.1パーセント、私立91.9パーセント)、「国際協力」が92.8パーセント(国立97.3パーセント、公立94.1パーセント、私立91.9パーセント)であり、いずれも9割以上
    • 2国際化についての評価は、多くの大学が実施を推進すべきと考えており、既に自己点検評価または第三者評価の一部として、半数以上の大学が実施
      • -「大学独自で自己点検評価を実施し、その一部分として国際関連事項の評価を実施」する大学は、60.3パーセント(国立85.5パーセント、公立57.6パーセント、私立56.1パーセント)、「第三者評価の一部分として国際関連事項の評価を実施」する大学は、60.3パーセント(国立85.5パーセント、公立57.6パーセント、私立56.1パーセント)であり、半数以上の大学が国際化について何らかの評価を実施
    • 3国際化に関連する数値目標の設定については全体に取組が進んでおらず、学生の英語力に関するテストの点数など一部の指標に限られている
      • -国際化に関する取組の数値目標の設定について、全体的に割合が少なく、一番回答率が多かった項目は「学生のTOEFL(トーフル),IELTS,TOEIC(トーイック)などの点数」であり、全体として2割強程度(国立23.8パーセント、公立27.3パーセント、私立21.7パーセント)の大学が数値目標を定めている

第4章 第三者機関による大学国際化に関する評価

  • 大学評価・学位授与機構、大学基準協会、日本高等教育評価機構、ABEST21、会計大学院協会、日弁連法務研究財団、日本技術者教育認定機構の評価担当者に対して、ヒアリングを実施
  • 主な意見として、国際化の評価について一義的な指標や尺度を全ての大学にあてはめるのは困難であり、それぞれの機関に応じた評価を行うことが必要(例えば専門職大学院の場合、工学分野のように国際的なネットワークの中でアクレディテーションを受けていることが評価のポイントになる例もあれば、法科大学院のように社会正義の観点から異なる文化や習慣を持つ人々に対して理解し、支援を行っているなどの取組が評価のポイントになる例などがあり得る)

第5章 大学の戦略的な国際展開及び組織的な国際化に関する考察(大学国際戦略本部強化事業を事例として)

  • 文部科学省が実施している大学国際戦略本部強化事業につき、日本学術振興会がとりまとめた好事例の分析を下に、特徴や課題を整理
  • 好事例としては、慶應義塾大学の国際連携推進機構における、塾長のイニシアティブを展開している事例や、名古屋大学における国際コンソーシアムを基盤として大学全体のパフォーマンスを向上させる事例、長崎大学における熱帯病・感染症、放射線医療科学、海洋環境生物資源など強みのある研究分野を中核として、国際的な研究拠点を形成した事例等がある

第2部 高等教育の国際化評価をめぐる国際動向

第1章 高等教育の国際化評価の文脈(第2章〜第17章の要約)

第2章 アメリカにおける国際化にかかわる政策課題と評価

  • 米国の高等教育の国際化における連邦政府と関連機関による国際教育政策の議論と評価の動向について概観
  • 近年の米国における外国語や国際的知識の習得、異文化理解の強化に対する取組強化の背景について、国際競争力の強化・維持や国際安全保障といった観点から分析

第3章 米国教育協議会(ACE)による国際化評価

  • 高等教育機関に対して国際化に関する活動を展開する非政府研究組織であるACEについて、近年、その評価内容の焦点が、国際関連のプログラムの設置や留学生数など大学機関の組織運営としての成果から、学生の学習効果に移行しつつあると分析

第4章 アメリカにおける学習成果分析の役割

  • 米国における国際教育の学習成果分析について、第三者機関の評価活動と指標開発の現状と課題を概観
  • 学部レベルの学生を途上国に送り出すリンカーン委員会など政策面での推進の一方、多くの大学において留学プログラムを多様化して単位取得を促進する取組が進んでいることを指摘

第5章 米国における大学国際化評価の担い手(政府及び第三者機関の役割)

  • 第三者評価機関や非政府組織が国際化評価に積極的に介在する米国の事例を踏まえ、日本においても、国際教育の実務者や高等教育の研究者が連携して、ボトムアップ型の国際化戦略が構築され、各機関の戦略・特色に合わせた国際化の評価を実施すべき旨を提言

第6章 欧州における大学質保証機関制度

  • 2008年に発足したEQAREuropean Quality Assurance Register:欧州質保証機関登録)の現状について分析
  • EQARは未だ運用に至っていないが、大学評価の国際化という観点から、欧州域内での共通枠組みとなる可能性を指摘

第7章 欧州高等教育圏形成における「棚卸し」の役割

  • 欧州における大学国際化の大きな背景であるボローニャ・プロセスの各国別の進度を評価する手法の一つとして運用されている「棚卸しレポート」(Stocktaking Report)について、レポートの作成の経緯や内容等について報告
  • 本レポートを通じて、欧州域内の大学国際化を推進する上では調和が要請されながらも、各国や各高等教育機関の特色や自主性を尊重している点が特筆すべき点であると分析

第8章 EBIEuropean Benchmarking Initiative in Higher Education)による欧州ベンチマーキング

  • EBIは2年間のプロジェクトの最終目標として、グッドプラクティスとなるベンチマーキングのガイドラインを作成していることにつき報告
  • 大学国際化の評価手法として、ベンチマーキングは新たな分野であり、実績の蓄積がないことから、今後の参考になるものと分析

第9章 日本における高等教育の国際化

  • 高等教育の国際化に関する研究者であるHan de Wit教授へのインタビューを収録
  • 同教授は欧州における大学国際化の評価の現状について肯定的な見解を示すとともに、昨今大きな変化を示しているのはアジア地域であり、日本は米国や欧州の取組との比較のみならず、アジアとの連携を模索していくべき旨提言

第10章 予算組織法LOLFの指標群から見たフランスの大学の国際化

  • フランスにおける予算組織法であるLOLFLa loi organique relative aux lois de finances)の分析を通じて、国家予算配分からみた国際化の現状を概観
  • LOLFは各大学の国際化を評価して、予算配分に結びつけるシステムであるが、各大学の文化や多様性を尊重し、国際化を画一的に捉えておらず、今後の高等教育の発展に示唆を与えるものと分析

第11章 ドイツCHEによる高等教育国際化評価指標案(抄訳)

  • ドイツの独立系シンクタンクであるCHECenter for Higher Education Development)が2007年に発表した、高等教育機関の国際性及び国際化に関する指標案に関する報告書の抄訳を掲載
  • 本指標案は、高等教育のマネジメントにおける国際化の位置づけや、人的なものを含めた資源配分についての評価が明確になるものであり、今後の高等教育改革にも参考になるものと分析

第12章 中国の大学の国際化評価とグッド・プラクティス

  • 中国の主要大学3校の国際交流担当者に対して行ったインタビューを収録
  • 中国においても大学の国際化評価システムの導入が検討されており、その対応について大学部内でも大きな課題となっている旨発言

第13章 中国における大学の国際化の評価指標システム

  • 中国における高等教育の国際化に関する過去30年の歴史について概観
  • 中国での高等教育の国際化に関する指標として独自に8つの分類を提唱し、第一の項目として、各大学のステークホルダーが国際化に対し共通した意識や理念を持つことを掲げている

第14章 韓国における大学国際化の現況と評価

  • 韓国で実施された大学の国際化に関する実態調査について、調査方法や結果について分析
  • 本調査を通じて、韓国の大学においても、我が国と同様に外国人教員の採用や単位互換を視野に入れた教育課程の開発や多様化などが重視されている旨指摘

第15章 2007年の世界の大学の科学論文に基づくランキングが台湾の高等教育に及ぼした影響

  • 台湾の高等教育評価・認証協議会が作成した、世界の大学を対象とした科学論文のランキングについて報告
  • 本調査は理系論文の投稿数や引用回数といったアウトプットに特化してランキングを行っているが、台湾国民政府主導により、高等教育の国際競争力を意識したプロジェクトとして実施されているなど、注目すべき点がある旨指摘

第16章 IAUによる大学の国際化調査

  • IAU(ユネスコ内に設立された機関であり、世界570大学が加盟)が世界の大学を対象に実施した、大学の国際化評価に関するアンケート調査の結果や今後の方向性について概観
  • 調査対象となった機関の多くが国際化に高い優先度を置いており、競争力強化や国際連携、文化的理解の促進などのメリットがあるとする一方、主なリスクとして、高等教育の商業化やディグリー・ミルの増加、頭脳流出などを指摘

第17章 指標策定プロセスとパイロット・スタディにむけて

  • 日本における高等教育の国際化評価指標の作成プロジェクト(科学研究費補助金)として実施された、大学の国際化指標のプロセスとチェックリストを再録
  • 8つの指標項目
    • 1大学の国際化に関する公式見解や戦略的目標の設定などの「大学の理念、目標、計画」
    • 2執行体制や能力開発などの「組織とスタッフ」
    • 3予算構成や執行実績など「予算と執行状況」
    • 4研究発表実績など「研究の国際的展開」
    • 5海外からの留学生や研究者の受入体制など「受入システム・情報提供・インフラ」
    • 6大学間連携や海外拠点など「国際連携の多面的な推進」
    • 7言語教育や専門教育における国際化など「大学内の授業におけるカリキュラムの国際化」
    • 8教育交流や新規プログラム開発など「学外機関との連携によるカリキュラム」