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資料9

フィージビリティ・スタディの実施領域及びCLA及びCHE等の取組

1.一般的技能

  • 米国のCLAを国際的に実施するパイロットテストとすることを前提に、批判的思考力や分析的論理づけ能力、問題解決能力、筆記コミュニケーションについて学習成果を測定(実施に当たっては、CLAからの助言を受ける)
  • 異なる文化においてCLAを使用することの正当性については、過去に米国内でCLAを受験した留学生のデータによれば重大な問題はないと判断できるが、フィージビリティ・スタディにおいては、アジアをはじめとする非英語圏の国々においても一般的技能を実施することが重要

2.分野別技能

  • 当面は工学、経済学において実施し、将来的に対象教科を増やす方向で検討
  • 既存の取組で参考となり得るものとして、米国のGREやMAPP等が考えられる

3.付加価値

  • 付加価値を測定するのに適当な観点として、科学・技術・工学や医療職に関連する職業能力を測定することや、大学入学直後のCLAを受験した学生を継続調査して成果を比較測定するなどの手法が考えられる

4.背景情報

  • ドイツのCHEによって開発され、既に欧州域内で応用されている、以下の指標を活用するほか、学生層の社会経済的な構成や、学生自身の高等教育を受けた経験の感想、卒業生の労働市場での成果などの特性を測定
    • 学術研究及び教育(学生交流、カウンセリング、eラーニング環境、学習環境と授業の評価)
    • 設備(ITインフラ、図書館、コンピュータ室、図書・雑誌費、教室環境)
    • 国際化志向(留学サポート)
    • キャリア志向(職業関連プログラム、実習のサポート)
    • 研究(博士授与数、業績、外部資金獲得状況)
    • 立地(スポーツ、住居費、大学規模)
    • 総合評価(学習状況、教育研究環境に関する評判、研究に関する評判)

5.その他

  • 実施時期は学士課程の修了直前とする
  • 参加大学は、大学の多様性を十分に踏まえたものとし、著名な大学とそれほど知られていない大学、公立と私立、都市と地域等の違いを適切に含むものとする。アカデミックな学校と職業教育の学校の二層制となっている場合には、職業教育の学校も含むものとする
  • 各国調査の結果は文化や言語面の互換性の観点から専門家により分析されるとともに、計画段階で策定する各種の技術的基準に照らして評価され、成功度を評価された上で、フィージビリティ・スタディ全体の結果を踏まえ、本格実施の可能性を専門家会合において審議し、IMHE運営理事会及びOECD教育政策委員会に報告

CLA(The Collegiate Learning Assessment)について

1.実施機関

教育支援審議会(CAE:Council for Aid to Education)

  • 民間支援により設立された非営利団体

2.開始年度

2000年

3.実施規模

これまで延べ7万人が受験(2007〜2008年度は210校が受験)

4.測定能力

機関ごとに学生の批判的思考や分析的論理付け能力、問題解決能力、及び文章表現力を評価

5.測定方法

  • 実践的作業:一連の資料を検討し、実践的な作業を完成させる。知識や公式を暗記させるのではなく、情報を解釈・分析・統合する能力を問う
  • 分析的文章作業:複雑な概念を操作する能力、命題を検証する能力、妥当な理由や事例を伴う概念を支持する能力、一貫性のある議論を展開する能力、標準英語を記述する能力を問う
  • 試験はインターネット接続したコンピュータにより実施するとともに、SAT/ACT得点において同等の学生集団に期待される付加価値と比較して、どれだけ大きく伸びたのか否かを評価

6.実施方法

【longitudinal test】

  • 1年生300名を抽出し、1年生、2年生、4年生の3回受験させる一方、4年生100人を別途サンプル抽出し、比較分析に活用(実践的作業及び分析的文章作業の試験を180分で受験)

【cross-sectional test】

  • 秋学期に1年生100名、春学期に4年生100人をサンプル抽出して受験(実践的作業または分析的文章作業の試験を90分で受験)

CHE(Center for Higher Education Development)について

1.概要

  • CHEは1994年に財団等からの資金援助により独立機関としてドイツに創設され、高等教育に関する独自の調査研究を実施(年間予算:約3百万ユーロ)
  • 最近では、大手新聞社と連携した大学ランキングの発表や、学士課程修了後の雇用可能性に関する定期調査、大学の国際化プロセスを測定する指標の提示等に取り組んでいる

2.CHEが実施する大学ランキングについて

  • 1998年にランキングを開始し、各機関を3年毎に評価
  • ランキングを実施する上で、以下4つの原則を遵守している
    • 1同じ大学でも専攻によって競争力が異なることを踏まえ、大学全体の評価ではなく、専攻別に評価(現在35専攻でランキングを出しており、新入生が選択する専攻の80パーセントをカバー)
    • 2教育面や研究面など、異なる観点ごとに評価する
    • 3客観的な情報だけでなく、学生や教員の主観的な意見も評価に反映
    • 4大学毎に順位を付けるのではなく、全ての大学を25パーセントのトップ層、50パーセントの中間層、25パーセントの下位層の3つのカテゴリーに分けた上で、それぞれのカテゴリーにおいては大学をアルファベット順に標記するのみとし、個々の順位はつけない

(参考)評価に際しての基本情報となる要素

要素 収集すべき情報
学生の構成 全学生数、女性学生の比率、新入生数、近年の学生数の推移
学生の成果 期末試験の平均成績、在籍期間、卒業率、期待される卒業時期と当該期間で卒業した学生率
国際化志向 ECTSへの参加、外国語講座、留学や海外派遣の義務、留学生、外国人教員、主要な連携相手国
教育と学習 学生数に対する教員の割合、ジョイントディグリーの有無、プログラムの構成、オフィスアワーやカウンセリングの充実度、eラーニング、プログラムの多様性、透明性、学際性、教員や学生の交流
インフラ 図書館、ITインフラ、実験施設、その他分野特有の施設
研究 スタッフ1人当たりの研究資金、特許、出版、引用度、博士課程の学生数、教員による研究面での評価
労働市場 インターンシップの義務や機会、キャリア参加に関する学生の自己評価
立地・大学
  • 【立地】立地地域の人口、学生の人口に占める割合、主要な交通手段、生活条件、賃貸相場
  • 【大学】学生数、主要な専攻分野、カウンセリング、図書館の開館状況、スポーツ、創立時期
学生や教員による総合評価 プログラムに対する学生の満足度、教員が自らの専攻分野において学士課程への進学を薦めたい5つの大学、及び研究面でのリーダーと考えられる5つの大学

CLA、CHE以外に海外で行われている取組の例

1.GRE(Graduate Record Examination)

実施機関

ETS(Educational Testing Service)(米国)

開始年度

1930年代初頭より、前身となるテストを実施

受験者数

約40万人(学士号授与者の約3割が受験)

主な目的

大学院入学志願者の選抜

  • 共通テストと分野別テストの2種類があり、共通テストは言語能力、数量的能力、批判的思考と分析的記述の3分野について実施され、特定の学問分野に限られない一般的技能を測定(選択式、試験時間は2時間)
  • 分野別テストは生化学、細胞分子生物学、生物学、化学、コンピュータサイエンス、英文学、数学、物理学、心理学等の15分野において、学生の到達度を測定

2.MAPP(Measure of Academic Proficiency and Progress)

実施機関

ETS(Educational Testing Service)(米国)

開始年度

2006年(前身のAcademic Profileは1987年から実施)

受験者数

1987年のAcademic Profile も含めて延べ100万人以上が受験

主な目的

学士課程前半の学生の一般教育の到達度を測定

  • 選択式試験と小論文により、批判的思考や読解力、文章表現能力、数学的能力を評価(試験時間8時間)
  • 試験の結果は、各大学のカリキュラム向上等のための資料や、アクレディテーション等の指標として使用

3.CAAP(Collegiate Assessment of Academic Proficiency)

実施機関

ACT(The American College Testing Program)(米国)

開始年度

1988年

年間受験者数

1988年から2001年の間に600校以上が参加し、45万人以上が受験

主な目的

一般教育における到達度測定

  • 読解力、文章表現技能、数学的能力、科学的能力、批判的思考の選択式試験及び小論文の作成の6分野につき、大学が必要な分野を選択して試験を実施(試験時間4時間)
  • 試験結果は、各大学の教育プログラム向上等のための資料や、学生の付加価値の評価のための資料として活用

4.Provao(ポルトガル語で"Big Test"の意)

実施機関

CESGRANRIO(ブラジルの評価専門機関)

開始年度

1995年(2003年まで実施)

年間受験者数

毎年選定された専攻の学生が全員受験(2003年は26専攻で7割以上の学生(46万人)が受験)

主な目的

高等教育機関の評価

  • 評価は概念理解や客観的思考、新たな状況への知識適用能力を図る筆記試験や、学生やその家族の社会経済的状況、及びProvaoを受験した学生自身の感想に基づいて分析(試験時間4時間)
  • 機関ごとの成績はAからEまでの成績が公開されるとともに、学生個人の成績は本人のみに通知
  • Provaoの受験は学位取得の必須条件であるが、Provaoの成績にかかわらず学位を授与することは可能

5.ENADE(Exame Nacional de Desempenho de Estudantes: the National Exam of Student Achievement)

実施機関

CESGRANRIO、CESPE(ブラジルの評価専門機関)

開始年度

2004年

受験者数

3年毎に選定された分野につき、20人以上の卒業者がいる機関の1年生、4年生が受験(2005年は13分野、28万人が受験)

主な目的

高等教育機関の評価

  • 一般的技能として、推論能力、詩的文章の解釈、共通点の発見、連想能力、絵図の理解を測定するとともに、公共政策や社会ネットワーク等についても調査(試験時間4時間、30問の分野別問題と10問の一般的技能にかかる問題)
  • 2002年の与党敗北を受け、Provaoに代わる制度として導入
  • 卒業生の成績6割、新入生の成績15パーセント、両者の平均値25パーセントで機関としての成績を5段階で表示するが、機関の能力、教育、知識生産プロセス(研究)、社会的責任についても評価
  • Provaoと同様、受験が学位取得の必須条件であるが、ENADEの成績にかかわらず学位を授与することは可能

6.EGEL(Examen General Para el Egreso de la Licenciatura: the General Examination for the Expenditure of the Degree)

実施機関

CENEVAL(メキシコ)

開始年度

1994年

受験者数

不明

主な目的

分野別専門家としての技能を測定

  • 試験内容は分野別技能に限定され、分野別の基礎的な知識や能力の習得度を測定(33分野において選択式問題で実施)
  • 結果は大学に各学生の成績が送付されるが、対外的には非公表
  • 試験は週末にいくつかのセッションに分けて実施(8〜10時間)