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参考資料1

21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(中央教育審議会 第二次答申 平成9年6月)

第2章   大学・高等学校の入学者選抜の改善
第4節   学(校)歴偏重社会の問題
 過度の受験競争の緩和のためには、大学・高等学校の入学者選抜の改善や大学改革・高校改革が必要であるが、この問題は、第14期中央教育審議会の答申において、詳細な分析がなされているように、学(校)歴偏重社会の問題とも関連が深い。学(校)歴偏重社会の問題は、企業や官公庁における採用や昇進の在り方、特に、採用において、形式的な学(校)歴を重んじてきたことや、親を含めた多くの国民が、学(校)歴神話とも言うべき、「いい学校イコールいい会社イコール幸せな人生」といった図式をかなりの程度信じてきたこと、さらには、親を含めた国民の横並び意識や同質志向に起因するものと考えられる。こうした形式的な学(校)歴を偏重するという我が国の社会状況あるいは社会意識は、少しずつ変わりつつあるものの、なお根強いものがある。
 このように様々な要因や背景が絡み合って学(校)歴偏重社会の問題が生じていることを考えると、これを是正するためには、学校・企業・親などがそれぞれの立場で取組を進めることが必要であり、学校が悪い、企業や官公庁が悪い、親が悪い、などとお互いに責任を転嫁するようなことは決して建設的とは言えない。学校側の取組については、既に大学・高等学校の入学者選抜の改善や大学改革・高校改革に関する種々の提言を行い、その実行を求めたところであるが、こうした取組のみならず、企業・官公庁の採用・昇進の在り方の改善や、親を含めた国民の意識改革を行うことが、この問題に対処していく上で欠かせない。
 企業や官公庁における採用や昇進の在り方が、学(校)歴偏重社会の一つの大きな要因となり、過度の受験競争を助長してきた面があるが、経済構造が大きく変化し、終身雇用や年功序列などの日本型雇用慣行が揺らぎ、企業を取り巻く環境が厳しさを増しつつある今日、企業においては、採用や昇進の在り方を改革しようという動きが現れている。
 そうした改革の動きは、経済団体が企業に対して実施している様々な調査においてもうかがうことができる。例えば、平成8年に実施された経済団体連合会の調査によれば、企業の多くは、採用に当たって「熱意や意欲」(調査に回答した企業のうち、当該項目を選択した企業の割合は、文系学生の採用については84.3パーセント、理系学生の採用については71.5パーセント。以下も同様。)、「創造性」(文系37.4パーセント、理系45.9パーセント)などを重視していると回答しており、「出身学校」を重視すると回答している企業は一部にとどまっている(文系6.6パーセント、理系5.1パーセント)。また、平成9年に実施された経済同友会の調査によれば、「企業内の能力主義が徹底し、社会にも能力を重視する意識が浸透する」、「企業間の人材の流動化が進み、企業が学歴にこだわらない採用ができるようになる」などといった考え方に基づき、8割以上の経営者が「現在の学歴偏重の意識は将来是正される」と予想している。
 もちろん、こうした考え方が、実際の企業の採用等の在り方に十分反映しているとは言い切れないが、上記の経済団体連合会の調査によれば、学校名を聞かない採用を実施している企業(文系11.9パーセント、理系9.2パーセント)や通年採用を取り入れている企業(文系15.1パーセント、理系17.1パーセント)がいまだ少数ではあるものの、増加してきているなど、着実に変化が生じつつあると考えられる。
 また、官公庁においても、例えば、国家公務員の場合、平成4年度以降、1種試験合格者の採用に当たって、特定大学の出身者に偏ることなく、多様な大学等の出身者から採用するよう配慮することとなるなど、努力が始められており、合格者の中央省庁における採用内定状況(行政職・法律職・経済職)を見ると、従来は特定大学が全体で6割程度を占めていたが、近年は5割程度になるなど、徐々に変化が現れてきている。
 今後、こうした企業等の改革の動きは加速されるのではないかと考えているが、学(校)歴偏重社会を是正する観点から、企業において、指定校制の完全撤廃はもちろんのこと、学校名にこだわらない採用、新卒一括採用の見直し、評価基準の多様化など、形式的な学(校)歴よりも学習歴を重視した人物・能力本位の採用や、形式的な学(校)歴にこだわらない能力主義に基づく昇進などに積極的に取り組むことを強く要請したい。また、官公庁においても、こうしたことは同様であり、形式的な学(校)歴にこだわらない採用や昇進を強く要請したい。


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